BNPLが続々と

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

みなさんこんにちは。私はAnna(アナ)。今現在、当然の権利である短い休暇を楽しんでいるAlex(アレックス)記者の代わりに今回の記事をお届けする。The Exchangeも1週間お休みしたが、ニュースは止まることはない、では始めよう。

先買い後払い(BNPL、Buy Now, Pay Later)スペースは、フィンテックの中でもっともホットな業界の1つだ。少なくとも2020年8月にSquare(スクエア)がオーストラリアのAfterpay(アフターペイ)を買収するために、驚異的な290億ドル(約3兆1900億円)を費やすと発表して以来そうなったということができるだろう。しかし、今週はその状況に本当に火がついて、報道価値のあるBNPL関連の発表が続々と行われた。詳細を見てみよう。

最大のニュースは間違いなくPayPal(ペイパル)が日本のPaidy(ペイディ)を27億ドル(約3000億円)で買収するという決定だったが、Amazon(アマゾン)がMaxLevchin(マックス・レブチン)氏のAffirm(アファーム)との契約を結んだこともも大きな動きだった。米国を拠点とするAmazonの買い物客が50ドル(約5500円)以上の購入で後払いが可能になるこの機能は、BNPLが主流になりつつあることを示す明確な兆候ではないだろうか。

関連記事:米PayPalが日本のペイディを3000億円で買収、アジアで「BNPL」後払い市場に参入

そして、それは世界をリードする電子商取引市場(eコマース)のほんのひと握りのプレイヤーだけに限った話ではない。最近のラウンドに反映されているように、世界中のBNPLスタートアップが成長しているのだ。例えばヨーロッパに焦点を当てたScalapay(スカラペイ)は7億ドル(約769億円)の評価額で1億5500万ドル(約170億3000万円)を調達したが、一方コロンビアのAddi(アディ)はシリーズBを7500万ドル(約82億4000万円)拡大して合計1億4000万ドル(約153億9000万円)にしたことを公表した。

AddiのMary Ann Azevedo(メアリー・アン・アゼベド)氏はTechCrunchに対して「いまやBNPLはどこにでもあります。ラテンアメリカも例外ではありません」と書いてきた。だが、これは同じモデルをコピーアンドペーストしたものではない。市場が異なればニーズも異なり、重要な内容の調整につながる。その中で主なものは?BNPLは必ずしもeコマースと同義ではないということだ。

実際のところ、Addiのパートナーには実店舗も含まれている。これは、eコマースは急速に成長しているものの米国と同じレベルにはまだ達しておらず、それでも分割払いはすでに行われている市場では理解できる現象だ。しかしそれはまた、eコマースや小売を超えたBNPL自身の自然な拡大としても起こっている。

サンフランシスコを拠点とするスタートアップのWisetack(ワイズタック)は、この流れの良い例だ。同社はHVAC(空調システム)の修理から配管までをカバーする訪問型ホームサービス企業たちに、BNPLサービスを提供している。Wisetackはこの非常に断片化された業界に対して、業界特化型SaaSプロバイダーのHousecall Pro(ハウスコールプロ)やJobber(ジョバー)などと組んでプロを取り込むことで、巧みにアプローチしている。ああ、それから同社は4500万ドル(約49億5000万円)を調達したばかりだ

小売を超えて拡大するBNPLに特に見られがちなのは、より大きな支払いに広がっているということだ。例えばWisetackのCEOであるBobby Tzekin(ボビー・ツェキン)氏によると、サービスベースの企業に対する購入価格は平均4000ドル(約44万円)から5000ドル(約55万円)になるという。BNPL企業にとってはエキサイティングな話だ……だがその一方で、この新しいセグメントをすでに調査中の規制当局からの監視が、強化される可能性もある。

BNPLは無利子かつクレジットカード決済の代替手段として捉えられているが、公的機関や消費者保護団体は、顧客による過剰支出やリスクの過小評価を助長する可能性があるとの懸念を表明している。

この懸念は英国EUでの規制の強化につながり、そのことはBNPL大手Klarnaの(クラーナ)の「あり得るが差し迫っていない」IPOに影を落とす可能性がある。CrunchbaseによればKlarnaはこれまでに37億ドル(約4066億円)を調達している。同社がAffirmの跡を追って公開することは論理的だが、タイミングは重要だ。

関連記事:後払い販売(Buy-Now-Pay-Later)が英国で規制対象に

非常に多くの資金がこのセクターに流れ込み、統合もすでに行われているので、注目し続けておけば間違いなくおもしろいだろう。

Factorial、WaveそしてSPAC

The Exchangeは今週休止していたものの、TechCrunchとExtra Crunchで消化すべき話題はたくさんあった。以下に私の注意を最も引いたものを並べる。

Factorial(ファクトリアル)とSMB(中小企業)への賭け:スペインのHRスタートアップであるFactorialは、5億3000万ドル(約582億円)の評価額の下で、シリーズBラウンド8000万ドル(約87億9000万円)を調達した。これはそれ自体注目に値するが、Tiger Globalが主導していることでも注目に値する。しかし、私のお気に入りの部分は、SMBにサービスを提供することでお金が得られることに、スポットライトを当てていることだ。

ちょっと宣伝:これは私が数週間前に書いたExpensifyEC-1での重要なポイントでもあった。

TechCrunchのIngrid Lunden(イングリッド・ランドン)記者が指摘したように、Factorialの台頭は「エンタープライズテクノロジーの世界が、ようやく大規模な組織向けに構築されたツールを小規模な顧客向けにライトサイズ(適切なサイズ)で適用することに注意を向け始めた、はるかに長期的で大きなトレンドの一部」なのだ。

通常、ライトサイジングとは、製品の不必要な複雑さを回避することを意味する。多くの場合、既存のエンタープライズ相手の企業ではなく、それのみに焦点を当てている企業が得意としている。そして、それは単なる一時的な流行りではない。各企業がこの先もずっと集中していくことができるセグメントとして理解されているのだ。

資金調達の波:先週の初め、アフリカはこれまでで最大のシリーズAを記録した。モバイルマネーのスタートアップWave(ウェーブ)の2億ドル(約220億円)のラウンドが行われた。評価額は17億ドル(約1868億円)で、今回の調達は、米国とセネガルに拠点を置く同社を、アフリカのフランス語圏における初のユニコーンに変えた。

このマイルストーンに最初に到達したのがフィンテック企業だったことは当然のことだと、Tage Kene-Okafor(タゲ・ケネ=オカフォー)氏はいう。アフリカ大陸ではフィンテックがVC資金の大部分をずっと引き付けてきたからだ。アフリカのスタートアップシーンに関するニュースレターであるSubstack(サブスタック)のThe Big Deal(ザ・ビッグ・ディール)によれば、2021年前半にアフリカのスタートアップに流入したベンチャーキャピタルの48%がフィンテックに投資されている。今回の巨大なラウンドによって、年次集計をチェックするときには事態がさらに偏ったものになっている可能性がある。

より高いレベルから見た場合、これはアフリカのテックセクターが2021年に記録を更新するだろうという予想を裏付けているように思える。これは特に厳しかった2020年以降、より一般的には資金不足の文脈から眺めると望ましい状況だ。

関連記事:2021年のアフリカへのVC投資は史上最高額を記録するとの予測

SPACすべきか、SPACせざるべきか:ブルームバーグによると、Traveloka(トラベローカ)はPeter Thiel(ピーター・ティール)氏のBridgetown Holdings(ブリッジタウン・ホールディングス)とのSPACを介して公開する計画を撤回している公開するかしないかで迷っているのではない:旅行業界ニュースサイトSkift(スキフト)で、Travelokaの広報担当者は公開を「さらなる事業を成長させる願望を抱くカテゴリリーダーとしてのTravelokaにとって、自然な進化です」と説明している。

インドネシアの旅行大手が考慮しているのはその公開へ至る道筋だ。情報筋によれば、SPACが「支持されなくなった」ために、同社は代わりに伝統的な米国のIPOを選択する可能性が高いとブルームバーグに語っている。これらはブルームバーグによる表現で、私の意見ではない。私はそう言い切るにはまだ少し早いかもしれないと思っている。

確かにこの2月によく見かけた「SPAC投資で常に勝つのは、売り手だ、一般投資家はそうでもない」という批判的見出しの中で、規制強化が迫っているのは間違いない。

それにもかかわらず、私の同僚であるRyan Lawler(ライアン・ローラー)記者が、先週大いなる反例を持ち込んできた。Better.com(ベター・ドット・コム)が、SPACのAurora Acquisition Corp(オーロラ・アクイジション・コープ)と「約77億ドル(約8462億円)の投資後評価額」で合併する予定だ。両者のCEOによれば、従来型のIPOは、簡単に業種を分類できる企業にとっては理に適っているという。しかしSPACは、ライアン記者が書くように「他の金融サービス会社と比べて、単に住宅ローンの貸し手と見なされるよりも大きな野心を持つ」Better.comのような会社に適しているかもしれない。

これは例外的なものだろうか?おそらくはそうだろう。しかしそれはまた、SPACがまだプレイするカードを持っているというサインかもしれない。

では今回はここまで。The Exchangeは月曜日から通常のスケジュールに戻る予定だ。

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Anna Heim、翻訳:sako)

ブランソン氏のヴァージン・オービットが約3513億円の評価額でSPAC上場へ、合併後はNASDAQで取引

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)は、特別目的買収会社(SPAC)との合併により株式を公開する予定であることを発表した。この取引により合併後の企業価値は32億ドル(約3513億円)となり、Virgin Orbitは1億ドル(約110億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を含む4億8300万ドル(約530億円)の現金残高を得ることになる。この取引が完了した場合、合併後の会社はNASDAQで「VORB」のティッカーシンボルで取引される。

このような取引が計画されていることは、CNBCが2021年6月に報じていた。最近では、SPACは民間宇宙ベンチャー企業のイグジットオプションとしてポピュラーな選択肢となっている。例えば、Rocket LabのSPAC合併は承認されたばかりで、8月25日に取引が開始される。Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏のもう1つの宇宙企業であるVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は、ブームの先駆けとなった最初の大きなSPAC取引だった。

Virgin Galacticは人を軌道下飛行で宇宙に連れて行くことにフォーカスし、Virgin Orbitは同様の技術で小型衛星のペイロードを地球低軌道に運ぶことに重点を置いている。かつてこれら2社は1つの会社だったが、それぞれの市場により焦点を当てるために2つに分かれた。Virgin GalacticとVirgin Orbitは2021年、両社とも大きな進展を遂げ、Galacticでは初のフルクルー宇宙飛行、Orbitでは初の商業衛星ペイロード輸送ミッションなど、画期的なフライトを達成した。

関連記事:ヴァージン・オービットが初の商業ペイロード輸送の打ち上げに成功

Virgin Orbitは、特別仕様に改造したボーイング747旅客機の主翼からLauncherOneロケットを打ち上げており、このロケットは打ち上げシステム全体の第1段として完全に再利用可能だ。また、VOX Spaceという子会社を持っており、そちらは国家安全保障関連の打上げサービスを提供している。

Virgin Orbitが合併するブランクチェックカンパニーNextGen Acquisition Corp. IIはGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元パートナーが率いており、合併が成立した際には、信託財産から最大3億8300万ドル(約420億円)の現金を提供する予定だ。

画像クレジット:Virgin Orbit

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

ブランソン氏のヴァージン・オービットが約3513億円の評価額でSPAC上場へ、合併後はNASDAQで取引

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)は、特別目的買収会社(SPAC)との合併により株式を公開する予定であることを発表した。この取引により合併後の企業価値は32億ドル(約3513億円)となり、Virgin Orbitは1億ドル(約110億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を含む4億8300万ドル(約530億円)の現金残高を得ることになる。この取引が完了した場合、合併後の会社はNASDAQで「VORB」のティッカーシンボルで取引される。

このような取引が計画されていることは、CNBCが2021年6月に報じていた。最近では、SPACは民間宇宙ベンチャー企業のイグジットオプションとしてポピュラーな選択肢となっている。例えば、Rocket LabのSPAC合併は承認されたばかりで、8月25日に取引が開始される。Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏のもう1つの宇宙企業であるVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は、ブームの先駆けとなった最初の大きなSPAC取引だった。

Virgin Galacticは人を軌道下飛行で宇宙に連れて行くことにフォーカスし、Virgin Orbitは同様の技術で小型衛星のペイロードを地球低軌道に運ぶことに重点を置いている。かつてこれら2社は1つの会社だったが、それぞれの市場により焦点を当てるために2つに分かれた。Virgin GalacticとVirgin Orbitは2021年、両社とも大きな進展を遂げ、Galacticでは初のフルクルー宇宙飛行、Orbitでは初の商業衛星ペイロード輸送ミッションなど、画期的なフライトを達成した。

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Virgin Orbitは、特別仕様に改造したボーイング747旅客機の主翼からLauncherOneロケットを打ち上げており、このロケットは打ち上げシステム全体の第1段として完全に再利用可能だ。また、VOX Spaceという子会社を持っており、そちらは国家安全保障関連の打上げサービスを提供している。

Virgin Orbitが合併するブランクチェックカンパニーNextGen Acquisition Corp. IIはGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元パートナーが率いており、合併が成立した際には、信託財産から最大3億8300万ドル(約420億円)の現金を提供する予定だ。

画像クレジット:Virgin Orbit

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

ブランソン氏のヴァージン・オービットが約3513億円の評価額でSPAC上場へ、合併後はNASDAQで取引

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)は、特別目的買収会社(SPAC)との合併により株式を公開する予定であることを発表した。この取引により合併後の企業価値は32億ドル(約3513億円)となり、Virgin Orbitは1億ドル(約110億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を含む4億8300万ドル(約530億円)の現金残高を得ることになる。この取引が完了した場合、合併後の会社はNASDAQで「VORB」のティッカーシンボルで取引される。

このような取引が計画されていることは、CNBCが2021年6月に報じていた。最近では、SPACは民間宇宙ベンチャー企業のイグジットオプションとしてポピュラーな選択肢となっている。例えば、Rocket LabのSPAC合併は承認されたばかりで、8月25日に取引が開始される。Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏のもう1つの宇宙企業であるVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は、ブームの先駆けとなった最初の大きなSPAC取引だった。

Virgin Galacticは人を軌道下飛行で宇宙に連れて行くことにフォーカスし、Virgin Orbitは同様の技術で小型衛星のペイロードを地球低軌道に運ぶことに重点を置いている。かつてこれら2社は1つの会社だったが、それぞれの市場により焦点を当てるために2つに分かれた。Virgin GalacticとVirgin Orbitは2021年、両社とも大きな進展を遂げ、Galacticでは初のフルクルー宇宙飛行、Orbitでは初の商業衛星ペイロード輸送ミッションなど、画期的なフライトを達成した。

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Virgin Orbitが合併するブランクチェックカンパニーNextGen Acquisition Corp. IIはGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元パートナーが率いており、合併が成立した際には、信託財産から最大3億8300万ドル(約420億円)の現金を提供する予定だ。

画像クレジット:Virgin Orbit

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

大麻大手のLeaflyがSPAC合併経由で上場へ、評価額は約590億円

Leafly(リーフィー)は公開企業となるのにMerdia Merger Corp. IとのSPAC合併に目を向けている。Leaflyを約5億3200万ドル(約590億円)と評価し、上場で1億6150万ドル(約180億円)の調達を見込んでいるこの取引には、同社がMerida Capital Holdingsなどの投資家からこのほど調達した3150万ドル(約35億円)も含まれる。

MeridaはLeaflyの社名を受け入れ、Leaflyはティッカーシンボル「LFLY」でNASDAQに上場する。Leaflyの既存の株主は合併会社の約72%の株を保有する。取引は2021年第4四半期に完了する見込みだ。

Leaflyは2010年に創業され、大麻のマーケットプレイスとリソースのリーダーとして成長した。同社は痛みや小売店、最近のイベントなどに関する詳細な情報を含む、消費者向けコンテンツの専門ライブラリーを提供している。小売店向けとしては、7800のブランドと4600の小売購読者が利用しているサブスクベースのプラットフォームを運営している。報道によると、Leaflyは2021年に4300万ドル(約475億円)、2022年には6500万ドル(約720億円)の売上高を見込んでいる。

成功しているにもかかわらず、同社は解雇や経営陣の交代など不安定な2020年を送った。2020年8月にYoko Miyashita(ミヤシタ・ヨウコ)氏がCEOに就任し、より良いオンラインショッピング体験の構築に注力してきた。2021年2月に同社はeコマースツールを改善すべくJaneと提携した

SPAC合併経由で上場することで、Leaflyはまさに米政府が大麻規制を緩和しようとしている時期に成長段階へと足を踏み入れていることを示している。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Leafly大麻SPACNASDAQ

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(文:Matt Burns、翻訳:Nariko Mizoguchi

電動航空機メーカーLiliumがアズールブラジル航空と総額約1100億円の受注に向け交渉中

ドイツの電動航空機メーカーであるLilium(リリウム)は、ブラジル最大の国内航空会社の1つであるAzul Brazilian Airlines(アズールブラジル航空)と、総額10億ドル(1092億円)におよぶ220機の受注に向けた条件交渉を行っていると、両社は米国時間8月2日に発表した。アズール航空との契約が進めば、Liliumにとって創設以来最大規模の受注であり、南米市場への初進出を果たすことになる。

Liliumの広報担当者は「タームシートには調印しており、今後数カ月以内に最終合意に向けて動き出します」とTechCrunchに語った。

この220機の航空機は、ブラジルで運航される新しい共同ブランドの航空会社ネットワークの一部として飛ぶことになる。両社が合意に達した場合、アズール航空は7人乗りフラッグシップ機の運航とメンテナンスを行い、Liliumは交換用バッテリーを含むカスタムスペアパーツと機体の健康状態を監視するプラットフォームを提供する。

納入は2025年に始まる予定だ。これはLiliumが計画している欧州と米国での商業運航開始から1年後にあたる。ただし、これらのタイムラインは、Liliumが各国の必要な航空宇宙規制機関から、主要な認証承認を得ることが前提となっている。アズール航空は今回の契約の一環として「ブラジルで必要な規制当局の承認プロセスにおいてLiliumをサポートする」と述べている。

仮に契約が成立したとしても、Archer Aviation(アーチャー・アビエーション)がUnited Airlines(ユナイテッド航空)から10億ドルの注文を受けた際の条件と同様に、Liliumが一定の性能基準やベンチマークを達成することが条件となるだろう。しかし、このような金額の受注があるということは、市場や投資家に対して、電動垂直離着陸機(eVTOL)がまやかしではないという肯定的なシグナルであると考えられる。

また、これもArcherと同様に、LiliumはSPAC(特別買収目的会社)方式での上場を計画している。同社は2021年3月、Qell Acquisition Corp.(ケル・アクイジション)と合併して「LILM」というティッカーシンボルでNASDAQに上場する意向を明らかにした。SPAC方式は、交通機関業界全体で一般的な上場手段となっているが、特に資本集約的なeVTOLスタートアップには人気がある。

この合併は、同社の事業継続のために必要なものと思われる。ドイツのニュースサイト「Welt(ヴェルト)」によると、Liliumは2019年の貸借対照表に、SPACとの合併が完了しない場合には2022年12月に資金が枯渇すると記したリスク警告を追加したとのこと。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:LiliumeVTOLドイツブラジルAzul Brazilian AirlinesSPAC

画像クレジット:Lilium

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Lucid MotorsはEV工場拡張計画で市場デビュー

Lucid Group(ルーシッド・グループ)、旧Lucid Motors(ルーシッド・モータース)のCEOであるPete Rawlinson(ピート・ローリンソン)氏が、米国時間7月26日にアリゾナ州カサグランデにある工場を270万平方フィート拡張すると発表した。これは、同社が45億ドル(約4956億円)の資本注入を受けて正式に株式公開した数時間後のことだった。

また同社は、フラッグシップモデルの高級電気自動車セダンLucid Air(ルーシッド・エア)の有料予約が1万1000件に達したと語った。

Lucidの広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、この拡張された部分の一部は、Project Gravity(プロジェクト・グラビティ)いう謎の呼称で呼ばれている、自動車メーカーが近々発表する予定の高級電気SUVに利用される予定だという。Gravityについては、2023年の発売予定であることと、Airと同じバッテリープラットフォームを採用すること以外、現時点ではあまり知られていない。欧州連合知的財産局に提出された特許図面は、ルーシッドフォーラムのメンバーたちが初めて目にしたものだが、ルーシッドのウェブサイトに掲載されているレンダリング画像以上のものではない。

また、主要部品であるボディパネルなどを含む、より多くの部品生産を内製化することを計画していると、広報担当者は付け加えた。これらの部品は、これまで外部のサプライヤーが扱っていたものだ。

カサグランデ市議会は、2021年3月に約100万平方フィート(約9万2900平方メートル)のスペースを拡張する計画を承認した。約7億ドル(約771億円)をかけて建設された工場の第1期工事は、着工から12カ月という記録的な速さで完成した。Lucidによると、生産能力を年間約3万台から最大40万台まで拡大したいと考えているという。

Lucidの公開までの道のりは長く、時には困難も経験した。同社は当初、電気自動車のセダンを早ければ2018年に生産することを目標としていたが、すぐに資金難に陥り、このスケジュールはどんどん後ろにずれていった。Lucidは、2018年にサウジアラビアの政府系ファンドから10億ドル(約1100億円)の投資を受けて大規模な資金調達を行った。同ファンドはLucidがSPAC(特別買収目的会社)のChurchill Capital IV Corpと合併するまでの間、筆頭株主を続けていた。

この合併には、先週ちょっとした問題が発生した。これは重要な提案に対して十分な数の票を集めることができなかったからだが、これは、一般投資家の増加とスパムフィルターの誤作動が原因ではないかと、経営陣は投資家向け電話会議で説明している。

今後、「Lucid Group」という名称で事業を展開するLucidは、ティッカーシンボルLCIDで上場されている。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Lucid GroupSPAC電気自動車工場

画像クレジット:Lucid Motors

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(文: Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

インシュアテックの評価額を心配すべきだろうか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

皆さん、こんにちは!素敵な一週間を過ごせただろうか?私は眠りを覚ます胸焼けを感じながら32歳になった。ということで個人的には、ちょっとしたいいことも、悪いこともあった。だが、それでもマーケットは待ってくれない。全く、微塵も揺らぐことがない。つまり、インシュアテック関連株の下落や、この状況がスタートアップ企業にとってどのような意味を持つのか、また多数のIPOについてなどの話題は尽きないということだ。面白い!

さて新規上場企業であるKaltura(カルトゥーラ)、Couchbase(カウチベース)、Enovix(エノビックス)と行ったチャットの詳細に入る前に、まずインシュアテックについて話しておくことにしよう。

ここ1年ほどの間に、Root(ルート、自動車保険)Metromile(メトロマイル、自動車保険)、Lemonade(レモネード、レンタル保険)などの、インシュアテック系のスタートアップが続々と上場している。ここでは、現在の彼らのパフォーマンスがどのように見えるかを簡単なダイジェストでご紹介しよう。

  • Root:1株あたり7.72ドル(約853円)。IPO価格27ドル(約2985円)から71.4%ダウン。
  • Metromile:1株当たり7.26ドル(約803円)。合併後の高値から64.4%下落。
  • Lemonade:1株あたり86.97ドル(約9614円)。IPO価格の29ドル(約3206円)から199.9%上昇。

思い出して欲しいのは、RootとMetromileがLemonadeの後に取引を開始したことだ、つまりその下落は長い時間軸ではなく短い間隔で発生した。だからこそ、この状況が興味深いのだ。

何が起きているのだろうか?さて、(SPAC、IPOなどの)何らかの形で公開したインシュアテックの3社に2社は極めて厳しい状況にある。このことは、まもなく完了予定のSPAC主導の合併を進めているHippo(ヒッポ)にとって、良い兆候とはとても言えない。こうした大幅な下落は、インシュアテックスタートアップにとっては明るい材料ではない。彼らは、自分たちの価値に対する一般投資家からの疑問に答えなければならない。

LemonadeのIPO後の好調な業績は、懸念を払拭するものだろうか?難しい質問だ。同社は、自動車保険をはじめとする新しい市場への拡大に奔走している。最新の決算報告書によると、同社は今年初めにテキサス州の寒波により多少の打撃を受けたものの、その点を除くと、同社が他の2社がやっていないことをやっているのかどうかは明らかではない。ともあれ投資家が注目しているのは、RootやMetromileではなく、Lemonadeなのだ。IPOに向けてまだ規模を拡大している多くのインシュアテックスタートアップにとって、何故そうなるのかや、他の2社よりもLemonadeに近付くにはどうすればよいかを解明することは、重要な鍵となるだろう。

IPOの季節到来

この2週間、The Exchangeは上場する企業のCEOと電話で話し、彼らの最近の状況を学ぼうとしてきた。というわけで、以下に示したのはKaltura、Couchbase、Enovixの人たちとのチャットの電話メモだ。

Kaltura

  • メモ:オンラインビデオに特化したKalturaは、今年初めに株式公開を申請したものの、そのIPOを延期し、また別の資金調達イベントを行った
  • The Exchangeが、KalturaのCEOであるRon Yekutiel(ロン・イェクティエル)氏に話を聞いたところ、同社のIPOのタイミングは、2021年初頭の公開市場の混乱の影響を受けていたという。それは驚きではなかったが、確認できたことはよかった。
  • そしてその停滞の原因の一部は、Archegos(アルケゴス)の破綻によるものだったとイェクティエル氏はいう。それは理にかなった説明だが、私たちは初めて知るニュースだった。
  • イェクティエル氏は、株式公開が遅れたことを決して嬉しくは思っていないと述べた(公開は事前に公表できる唯一の資金調達だからだと彼はいう)。とはいえ初回に彼の会社が話をしていた投資家たちは、二度目のIPOに際しても変わらずKalturaを熱心に応援していると付け加えた。
  • CEOによれば、Kalturaの第2四半期の速報値は、年初に話していたことが実現していることを投資家に示すことになったという。また、継続的な成長のためには、新製品の取り込みが重要であるとも強調した。
  • イェクティエル氏は、20%の高値を記録した初日の値付けと取引結果に満足している。それ以上だと過剰で、それ以下だと不足だとも指摘している。
  • Kalturaの価格が3月のIPO時の価格帯に比べて低かったことについて、イェクティエル氏は「第一印象を与えるチャンスに3度目はない」と述べ、同社としては公開を完了させたかったのだと語った。そして、その通りにやりきった。自分の考えの中で迷子にならないためには重要なことだ。
  • 本記事執筆時点で、Kalturaは1株あたり10ドル(約1105円)のIPO価格から17.5%上昇している。

一つの逸話を紹介しよう。Kalturaはかつて、現在のTechCrunch Disruptカンファレンスシリーズの前身であるTechCrunch50イベントの、さらに前身であるTechCrunch40の初期において、物理的なトークンによる1票の差により優勝した。イェクティエル氏はそのトークンをまだ持っていて、チャットの最中に見せてくれた。素晴らしい!

Couchbase

  • The Exchangeは、NoSQLデータベース企業であるCouchbaseのCEO Matt Cain(マット・カイン)氏に話を聞いた。Couchbaseの価格は1株あたり24ドル(約2653円)で、IPO時の価格帯だった20(約2211円)ドルから23ドル(約2542円)を上回った。
  • この記事を書いている時点では、本日の取引で9.2%上昇し、33.20ドル(約3670円)となっている。
  • カイン氏は、かなり厳密な台本に基づいて受け答えをした。これは、失敗して刑務所に入ることを心配している上場したばかりのCEOとしては、ごく普通の状況だ。ということで求めていた詳細な回答は得られていない。しかしそれでも、Couchbaseもリモートでのロードショーが増加することによって、会議の密度を高めることができた企業だったことなどを知ることができた。
  • CEOは、Couchbaseの前にある機会の規模、すなわちオンライントランザクション処理データベースの世界についての議論に集中していた。彼は、世の中にこれ以上大きな市場を見つけるのは難しいと主張し、そのことが投資家たちに、彼の会社が何かを成し遂げられるかもしれないと期待させているのだ。データベースの世界の市場が、カイン氏が考えている位大きいのであれば、スタートアップ企業の活躍の場はたくさんあるだろうというのが私たちの解釈だ。
  • 私たちは、公開市場の投資家たちがオープンソース企業をどのように見ているのかを知りたかったのだが、彼からはあまり話を聞くことができなかった。それでも、この会社のIPOは非常に強力なものであり、OSSで作られていることは、イグジットを目指す会社にとって必ずしも不利ではないことを示唆している。

Enovix

  • The Exchangeは新しい公開企業Enovixの話を聞きたいと思っていた。同社がSPACで上場したばかりだからだ。なぜそれが重要なのか?なぜなら、SPACで上場を目指すバッテリーに特化した企業が他にもあるからだ。そのため、今回のチャットは後に続く仕事への良い地ならしとなった。
  • それに、公開企業と話すのは大好きだ。嫌いなひとがいるだろうか?
  • 「合併して新しいティッカーシンボルで取引を開始した」日は、彼の会社にとってIPOのようなものかとたずねたところ、創業者でCEOのHarrold Rust(ハロルド・ラスト)氏はそうだと答えた。もっともな答だ。
  • 私たちは、同社のSPAC合併日が第2四半期から第3四半期にずれ込んでいることに気づいた。それはなぜだろう?手短にいえば、会計に関するいくつかのSECの変更に起因している。チャットから受けた印象は大したことではなかったのだが、Enovixの合併日を少し遅らせる原因となった。
  • なぜSPACで株式公開を行うのか?現金だけでなく、その合併に関わるスポンサーも、業務知識という点で重要なリソースなのだとラスト氏は述べている。同社は、SPACスポンサーのネットワークからも採用を行っていて、これは注目に値すると感じられた(ほら、実際の投資家による付加価値だ!)。
  • まだ収益を上げていないもうひとつのバッテリー企業SES(SPAC間近)よりも自社の評価額が低い理由を聞かれたラスト氏は、SPAC取引における自社の評価額は交渉によるものであり、もし会社が成功するなら11億ドル(約1216億円)と評価されようが14億ドル(約1548億円)と評価されようが、実質重要ではないと答えた。
  • Enovixの 興味深い点は、 需要の高まるEV(電気自動車)向けの電池技術に着手していないことだ。 その代わりに、ハイエンドの電子機器をターゲットにしている。その理由は?バッテリーをハードウェアに搭載するためのサイクルが早く、価格競争力を持てるからだ。しかし、いずれはEVにも参入したいと考えている。
  • 同社の1株あたりの価値は17.33ドル(約1916円)で、Yahoo Finance(ヤフーファイナンス)の評価では25億ドル(約2764億円)となっている。これは、予想されていたものよりも良い結果であり、SES自身の将来のデビューに向けての良い兆候だ。

盛りだくさんだった。ここまで私に付き合って、ささやかなThe Exchangeニュースレターを読んでいただき感謝している。世界のベンチャーキャピタル市場やエドテックなどに関する長文記事を読みたい方は、こちらからすべての記事がアクセス可能だ

ではまた、お元気で。

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

Lucid MotorsのSPAC合併は経営陣が議決権行使を促した後に株主が承認

電気自動車(EV)のスタートアップであるLucid Motors(ルーシッドモーターズ)が、特別買収目的会社(SPAC)であるChurchill Capital IVと合併することが、米国時間7月23日の株主総会で承認された。ただし、個人投資家の投票数が少なかったため、両社は合併の期限を1日延長していた。

このような問題が起こるのは珍しいが、伝統的なIPO(新規株式公開)を経ずにSPACと合併する企業が増えれば、より一般的になる可能性がある。

この問題が発生したのは米国時間7月22日で、株主は合併の一環として提案された議案のうち、1つを除くすべての議案を承認した。第2号議案は、会社の定款を改定し、重要な資金調達を行うためのもので、他の議案よりも高い定足数を必要とした。合併を実行するためにその議案の承認も必要だったため、定足数に達しなかったことで、結局すべてのプロセスが停止してしまった。

株主が足りなかった原因は、個人投資家がSPACのプロセスに慣れていなかったことと、信じられないことに、スパムフィルターがうまく機能しなかったことにある。

ChurchillのMichael Klein(マイケル・クライン)会長は、株主に送られた電子メールの一部が誤ってスパムフォルダに送られた可能性を指摘した。Gmailのスパムフィルターのようなローテクなものが、数十億ドル(数千億円)規模の企業合併を妨げるとは信じられないかもしれないが、今回のケースではそれが起こった可能性があるようだ。

クライン氏は22日に行われた投資家向け電話会議で「我々は単により多くの票を必要としているだけです」と述べた。Lucid MotorsのCEOであるPeter Rawlinson(ピーター・ローリンソン)氏も「第2号議案に投票していただきたい」と直言した。

「多くの方にとって、この投票プロセスが初めてであったり、標準的でないことを認識しています」とクライン氏は続けた。同氏はその後、多くの個人株主に感謝の意を表しつつ「新しいプラットフォームや新しいアプリから参加している」株主に議決権行使を促した。「それらのツールは必ずしも議決の場へはっきりと導いてくれるわけではないのかもしれません」。

パンデミックが始まって以来、アマチュアトレーダー、いわゆる「リテールトレーダー」の数が爆発的に増加した。大きく寄与したのはRobinhood(ロビンフッド)のようなアプリだ。ゲーミフィケーション戦略を活用して、ユーザーがどこからでも株式を売買できるようにしたのだ。この現象の極めつけは、GameStopやAMC entertainmentのような破綻企業の株式の爆発的な価格上昇として歴史に刻まれることになるだろう。価格上昇は、「r/wallstreetbets」というサブレディット上のリテールトレーダー軍団によって引き起こされたのだ。モルガン・スタンレーのレポートによると、米国の株式取引量に占める個人投資家の割合は約10%で、2020年9月の最高15%から減少している。

しかし、ミーム株の価格上昇が何かを示しているとすれば、それは個人投資家が強力な力を持っているということだ。モルガン・スタンレーのレポートによると「個人投資家は一般消費財、通信サービス、テクノロジーなど、消費者が親しみやすいセクターの企業を好む傾向がある」という。これが、Churchill SPACが多くの個人投資家の目に留まった理由かもしれない。

サブレディット「r/SPACs」に投稿された高評価の記事の中で、あるReddit(レディット)ユーザーは、新規の個人株主に議決権行使を促した。「これは普通じゃない。SPACが株主に自らの利益のために行動するよう懇願する必要が生じたことなどなかった。必ず議決権を行使して欲しい。行使しなければならない。不投票はイエスとはみなされない。不投票はただの不投票だ」。

Lucidの合併延期は、ミーム株取引とはまったく異なるシナリオだが、個人投資家が引き続き市場を形成しているという新たなリマインダーだ。

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タグ:電気自動車Lucid MotorsSPAC

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

自動運転開発AuroraがSPAC合併で上場へ、評価額は約1.4兆円

2020年12月にUber(ウーバー)の自動運転部門を買収した自動運転車両スタートアップのAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は特別買収目的会社(SPAC)であるReinvent Technology Partners Yとの合併を通じて上場する。

米国時間7月15日に発表されたこの取引は、LinkedIn共同創業者Reid Hoffman(リード・ホフマン)氏とZynga創業者Mark Pincus(マーク・ピンカス)氏、マネージングパートナーのMichael Thompson(マイケル・トンプソン)氏によって立ち上げられたSPACとAuroraが最終的な協議を行っているという6月のTechCrunchの報道のとおりだ

関連記事:自律走行技術のAuroraがリード・ホフマン氏の最新SPACとの合併に向けて最終交渉中か

NASDAQにティッカーシンボル「AUR」で上場する合併会社の想定される評価額は130億ドル(約1兆4275億円)だ。Uberの自動運転部門の買収後のAuroraの評価額は、100億ドル(約1兆980億円)だった。

合併取引を通じて、 ​AuroraはBaillie Gifford、Counterpoint Global (Morgan Stanley)やT. Rowe Price Associates, Inc.が管理するファンドや口座、PRIMECAP Management Company、Reinvent Capital、XN、Fidelity Management and Research LLC、カナダ年金制度投資委員会、Index Ventures、Sequoia Capitalといったプライベート投資家、並びにUber、PACCAR、Volvo Groupからの戦略的投資で10億ドル(約1100億円)を調達する。

合併会社は、クロージング時に現金約25億ドル(約2745億円)を保有することを見込んでいる。当局に提出した書類によると、ここには2021年3月18日に完了したIPOで調達したReinventの信託口座にある9億7750万ドル(約1070億円)が含まれる。

「当社にとってこれは大きな次なるステップです」とCEOで共同創業者のChris Urmson(クリス・アームソン)氏は7月15日のインタービューで述べた。「明らかに我々のプロダクトをマーケットに持ってくる必要があります。しかし我々はこの上なく当社のチーム、そしてこの取引がもたらすリソース、そしてパートナーにこの上なく胸躍らせています」。

Auroraは4年という期間で、話題を振りまくスタートアップから上場企業になった。同社は2017年にSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏,、Drew Bagnell (ドリュー・バグネル)氏、アームソン氏によって創業された。3人とも自動運転車両テクノロジーに取り組んできた経歴を持つ。

2020年12月に同社はUberの自動運転部門、Uber ATGを複雑な取引で買収することでUberと合意し、これにより合併会社の評価額は100億ドルになった。買収条件により、AuroraはUber ATGに現金を払わなかった。Uber ATGはトヨタ、デンソー、ソフトバンクのビジョンファンドから2019年に10億ドルの出資を受けたのち、評価額は72億5000万ドル(約7960億円)だった。米証券取引委員会に提出された書類にとると、現金の代わりにUberは合併会社の株式26%を受け取った。

買収後、AuroraはUber ATG従業員の統合にここ数カ月を費やし、現在の総従業員数は約1600人だ。Auroraはつい最近、北米向けの自動運転セミトラックを共同開発することでVolvoと合意に達したと述べた。少なくとも数年は継続すると予想されているこの提携は、VolvoのAutonomous Solutions部門を通じて、Volvoの顧客のためにハブ間の高速道路を自動運転で走行するトラックの開発と展開に注力する。

大規模なベンチャーキャピタル

ホフマン氏、ピンカス氏、そしてトンプソン氏は、彼らが「大規模なベンチャーキャピタル」と呼ぶコンセプトを促進してきた。これまでSPACはそのスケールに達するためのコンジットだった。3氏は白紙小切手会社であるSPAC3社を組成した。

それらSPACのうち2社は非公開企業との合併を発表した。Reinvent Technology Partnersは2月に電動垂直離着陸機を開発するJoby Aviationとの合併取引を明らかにした。Joby Aviationは2021年後半にニューヨーク証券取引所に上場する。Reinvent Technology Partners Zは住宅保険のスタートアップHippoと合併した。

3氏の3つめのSPACはAuroraと合併するReinvent Technology Partners Yで、このSPACはIPOで8億5000万ドル(約930億円)を調達するために8500万株を1株10ドル(約1100円)とした。そして割り当て超過をカバーするために追加で1270万株を発行し、調達総額は9億7700万ドル(約1070億円)となった。同社はNASDAQに上場していて、ティッカーシンボルRTPYUで取引されている。

多くの点で、AuroraとReinvent SPACの合併は理に適ったものだ。

Auroraはすでにホフマン氏と接点があった。2018年2月に同社はGreylock PartnersとIndex Venturesから9000万ドル(約100億円)を調達した。Greylockのパートナーであるホフマン氏とIndex VenturesのMike Volpi(マイク・ボルピ)氏はシリーズAラウンドの一環でAuroraの役員会に加わった。そして2019年にAuroraはSequoia Capital、Amazon、T. Rowe Price AssociatesがリードしたシリーズBラウンドで5億3000万ドル(約580億円)超を調達した。このラウンドにはLightspeed Venture Partners、Geodesic、Shell Ventures、Reinvent Capital、既存投資家のGreylockとIndex Venturesも参加した。

SPAC取引の両面からホフマン氏とReinventが現れたのは、前例のないことではないが、ありふれたことでもない。アームソン氏は、潜在的な利益相反を避けるためにホフマン氏がこの協議に加わらなかった、とTechCrunchに語った。

「一方でリード(ホフマン氏)の理解と会社との付き合いを考えると、リードは今回の機会を理解するのに最も適した人物の1人です」とアームソン氏はインタビューで述べた。そして、利益相反を回避するために、ホフマン氏はAurora、Reinveintどちらのサイドででも協議に加わらなかった、とも語った。

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タグ:Aurora Innovation自動運転SPAC

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

110兆円の馬たち、過剰な調達ラウンド、そしてFutureの未来

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

短い1週間が過ぎた。雑談のネタはあまりないが、お伝えしたいことはたくさんある。だが、それは楽しい話題ばかりなので、一緒に楽しむことにしよう!

まずは、高価な四足動物についての話題。

1兆ドル(110兆円)の馬とは?

The Echangeは、先週から2021年第2四半期のベンチャーキャピタル市場の調査を始めている。Anna(アンナ)の協力で、最初の記事はかなりいい感じに仕上がったと思う。他にもたくさんの記事が待ち構えている。しかし、ユニコーン関連の数字が、私の心を鷲掴みにした。考えてみて欲しい

  • 2021年第2四半期に生まれたユニコーンの数は136社で、過去最高を記録した。
  • CB Insights(CBインサイツ)が指摘するように、これは「1年前の2020年第2四半期に誕生した23社のユニコーンの約6倍であり、2020年全体で誕生した128社のユニコーンをすでに上回っている」のだ。

この角の生えた馬(ユニコーン)ブームの結果、現在世界には750頭のユニコーンがいることになった。元TechCrunch関係者で優秀な人間であるKatie Roof(ケイティ・ルーフ)氏がこの統計をツイートしたとき、私が最初に思ったのは、ユニコーンの価値が合わせて1兆ドル(約110兆円)を超えたということだ。

だがその直感は大きく外れていた。実際の数字は2.4兆ドル(約260兆円)近くなのだ(CB Insightsのデータによる)。これは驚くべき大きな数字だ。比較してみると、世界の未上場ユニコーンの合計は、現在のApple(アップル)の価値の2兆4200億ドル(約266兆円、Yahoo Finance調べ)とほぼ同額である。

ひょっとすると私は、現在ほとんど凍結された状態で非公開市場に置かれているユニコーン株式の量に、過剰反応しているのかもしれない。特にユニコーンのエグジットは増えているのだから。しかし、今日の高いエグジットレベルをもってしても、時間をかけてこの特別な状況を解消していくことは可能なのだろうか?いや、そうとは思えない。第2四半期に、週末を含めても1日あたり1.5社のユニコーンが増え続ける状況の中ではそれは無理な話だ。

資金調達ラウンド

先週は1つの資金調達ラウンド(非常に興味深かったこのr2cラウンド)についてしか書けなかった。その大きな理由は、他に噛み砕くべきことがたくさんあったからだ。しかし、より詳細な財務情報を掲載していないラウンドは取材しないと宣言してから、ベンチャーキャピタルからのピッチの入力がゆっくりになったのも事実だ。

先週の連休でピッチのボリュームが減ったのか、それとも私がみんなを怖がらせてしまったのかはまだはっきりしない。しかし、私は資金調達ラウンドのピッチのインバウンド量を、全体としても、業界別 としても、何が起こっているのかを判断するための材料に利用している。だから私は読者のみなさんに(1)私に何かネタを送ってもらえること、(2)それと同時にたくさんの情報も共有してもらえることを期待している。

宇宙のSPAC

Y Combinator(Yコンビネーター)はきちんとした組織だ。その最近の投資先の1つが、 Albedo(アルベド)だ。同社は地球の超高解像度写真を撮影する低軌道衛星のネットワークを構築することを目指すスタートアップである。それを実現するのはNatasha(ナターシャ)記者の言葉を借りるならクソ難しいことだが、既製の衛星部品や軌道上での燃料補給などの、さまざまな新しい技術を導入することで、可能になるかもしれない。

関連記事:10cmの高解像度衛星画像提供を目指すAlbedoが10.8億円調達

Albedoやそれに似た会社があるからこそ、私は毎年Demo Day(デモデー)を見に行くのだ。今後何が起きるかを目にする機会を持つことができるし、非常にわかりやすく楽しい体験だ。

だからこそ、今週、衛星画像処理会社2社がSPACで株式公開することを発表したときに、私は興味をそそられた。わかったことは、この両社が狙っているのは、低解像度の画像を提供することなので、真の意味でAlbedoとは競合しないということだ。しかし、彼らは……別の理由で注目されている。

Satellogic(サテロジック)は、このシンプルで芸術的な一連のチャートを提供している(各チャートの日付は必ず確認して欲しい)。

画像クレジット:Satellogic

また、Planet(プラネット)は下のグラフのように、衛星技術の経済がいかに未来にかかっているかを強調している。

画像クレジット:Planet

同社の長期的な粗利益率の目標は80~85%(資料によれば売上原価は15~20%)だが、そこに到達するまでにどれだけの時間がかかるかがここから読み取れる。これは、ベンチャーキャピタルの世界に興味深い問題を投げかけている。

つまり、Albedoのような企業が、十分なネットワークを構築し、スケールアップするためには多くの時間と資金が必要になるということだ。そして、普通のソフトウェア会社なら製品を販売した初日から得られるような粗利益を得るために、規模を拡大していくことにも時間がかかるだろう。

これが、たとえわずかでも持続的な成長が期待できるソフトウェア製品に多くの資金が集まっている理由の1つだ。利益率の高い経常収益は、価値創造のためのチートコードのようなものなのだ。そうして、投資家はだれでもそこに資金を投入したいと考えることになる。衛星技術は、一般に非常に重要なものなのだが、とにかくコストが高く、時間がかかる技術なのだ。

私の疑問は、ソフトウェア企業がベンチャーキャピタルへのリターンを生み出すことに長けているせいで、他の形態のスタートアップ企業が注目や資本を得るために苦労するのではないか?ということだ。すでにそうなのだろうか?

Future

最後に、取り上げるのはFuture(フューチャー)だ。正確にいえば、Future(未来)の未来だ。私はこのa16z(アンドリーセン・ホロウィッツ)によるサイトが気になっている。

このサイトが開設されて以来、私は毎週数回チェックしては、ベンチャーキャピタルの集合的意識を知りたいと思ってきた。私がそうするのは、私が変人だからというだけではない──まあ変人だけど!──またメディアがハイテクを嫌っているという記事を読んで心配したからでもあるが──率直に言えば──宇宙的に潤沢な資金を持つベンチャーグループがどんなサイトを作るのかに興味があったからだ。やはりすばらしい人材が採用されている。

私たちはFutureブログの発行サイクルの合間を縫っているようだ。メインコンテンツの最後の記事が出たのは約1カ月前で、最新のエントリーは6月25日付だ。そしてその最新記事は、7月にさらなるコンテンツを出す約束をしたメモに過ぎない。

これは予算、約束、派手なドメイン、そしてa16zの世界の中で何かを語るべき人の数を考えると、少々物足りないかも?もっとたくさんの言葉を尽くせばよいのに。7月がどうなるかに期待しよう。

さて今回はここまでとしよう。ではまた。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchangeユニコーン企業SPACa16z

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

暗号資産のCircleがSPAC合併経由で上場へ、評価額は約4940億円

Circle(サークル)は公開企業となる計画を発表した。暗号資産会社である同社はSPAC(特別買収目的会社)のConcord Acquisition Corpと合併する。CircleはCoinbase(コインベース)のCentreコンソーシアム創設メンバーの1社として知られている。他の暗号資産パートナーとともに、Circleは人気のステーブルコインUSD Coin(USDC)を発行してきた。

SPACは上場している白紙小切手会社だ。SPACとの合併はテック企業にとって上場企業になるための人気の手法となった。

Circleによると、取引での同社の評価額は45億ドル(約4940億円)だ。合併に関与している投資家は4億1500万ドル(約456億円)の私募増資を約束した。同社はまた、このほど4億4000万ドル(約483億円)を調達した。つまり、Circleは合併完了時に多額の資金を手にする。

2013年創業のCircleはもともと、主流のビットコイン決済プラットフォームを作ろうと考えていた。しかし後にソーシャル決済アプリへと方針転換した。同社はブロックチェーンテクノロジーを持ち、一種のVenmoのクローンのようなものになった。そのうち、ビットコインを送ったり受け取ったりする能力を取り除きすらした。

「自社のことをビットコインのスタートアップだと考えたことはありません。そうしたテクノロジーに関与していたため、メディアは確かに当社をビットコイン会社だと分類しました。3年前に会社を興した日から、当社は新しい消費者金融会社を構築することに注力してきました。インターネットが機能するようにお金を動かす会社です」とCircleの共同創業者でCEOのJeremy Allaire(ジェレミー・アレール)氏は2016年にTechCrunchライターのNatasha Lomasに語った。

消費者向けのサービスはまだ展開されていないが、アレール氏がすでにプログラムによってお金を動かすことについて考えているのは興味深い。2017年と2018年にCircleは暗号資産に注力するために再び方針転換した。大手の暗号資産投資家のための店頭取引デスクを立ち上げた。

同社は、当時米国最大の暗号資産取引所の1つだったPoloniex(ポロエニックス)を買収した。また、わずかな暗号資産を売買できる実にシンプルなモバイルアプリCircle Investもリリースした。

しかしCircleの最も有望なプロダクトはステーブルコインであるUSD Coin(短縮するとUSDC)だった。名称からわかるように、1 USDCは常に1 USDの価値がある。従来の暗号資産と異なり、USDCの価値は狂ったようには変動しない。発行社が常に流通しているUSDCと同額を銀行口座に持っていることを監査法人が定期的にチェックしている。

USDCにより、1つのウォレットから他のウォレットへと金を動かすことは標準のAPIコールを使うほどに簡単になった。CircleはCircle Accountsなど、USDCに関するさまざまなインフラプロダクトを追加した。同社はまた、フィアット通貨と暗号資産の間のギャップを橋渡しするものも構築した。

現在250億USDCが流通していて、Circleは2023年末までに1900億USDCが流通すると予想する。そして同社はUSDCを有効利用する金融サービスを構築するのにUSDCの人気を活用するつもりだ。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Circle暗号資産SPAC

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

衛星画像スタートアップのSatellogicがSPAC合併で上場へ、評価額は約940億円

宇宙分野におけるSPAC狂騒は鎮まったかもしれないが、まだ終わっていない。地球観測スタートアップのSatellogic(サテロジック)はSPAC上場の最新例となる。同社はCantor FitzgeraldのSPAC(特別買収目的会社)であるCF Acquisition Corp. Vとの合併を通じて上場する。

Satellogicはすでに軌道に衛星17基を打ち上げており、毎日アップデートされるサブメーター解像度の地球画像を提供するのに衛星コンステレーションを300基に拡大することを目指している。

SPAC取引ではSatellogicを8億5000万ドル(約940億円)と評価し、ここにはソフトバンクのSBLA Advisers GroupとCantor Fitzgeraldによる1億ドル(約110億円)の私募増資も含まれる。合併会社の売上高は2025年までに約8億ドル(約885億円)になると見込んでいて、取引完了時の現金残高は約2億7400万ドル(約300億円)とSatellogicは予想している。

同社は2010年の創業以来、TencentやPitanga Fundといった投資家から計1億2400万ドル(約140億円)弱を調達した。Satellogicは、比較的リーズナブルな価格でそうした解像度の衛星写真を商業顧客に提供することができるのは自社の衛星だけ、とうたっている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SatellogicSPAC衛星コンステレーション

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】SPACブームは止まるところを知らず、消費者向けテクノロジーに変化をもたらしている

編集部注:本稿の著者Mike Murphy(マイク・マーフィー)氏はベンチャーキャピタルとプライベートエクイティの機会に焦点を当てたニューヨーク市に拠点を置く投資会社Rosecliff Venturesの創設者兼CEO。

ーーー

消費者向けテクノロジーは本質的にリスクの高い投資分野だ。最良のアイデアであっても、製品のストーリーがエンドユーザーに適切に販売されなければ、失敗に終わる可能性がある。統計ではその時点までのことしかわからない。結局は、顧客はその製品を信頼したいと思っている。

ストーリーをうまく伝え、市場のリーダーになった企業は従来、新規株式公開のルートを選んできた。つまり、自分たちのストーリーを、自分たちの商品を購入する人々ではなく、銀行主導の舞台で機関投資家に売り込んできたのだ。

しかしこの18カ月の間に、金融機関を通さず、優れた経営者と提携し、より直接的に公的資本にアクセスしようとする企業に新たな扉が開かれた。SPAC(Special Purpose Acquisition Company、特別買収目的会社)との合併だ。

適切な消費者向けテクノロジー企業にとって、SPACとの提携は公共資本へのより直接的なアクセスを提供するものとなる。これらの企業は、P&Lを通じて機関投資家を説得するのではなく、製品を利用している個人投資家を含む投資家に対して、長期的にどのような企業になり得るかを説明するためにより多くの時間を費やすことができる。

このような手段が証券取引所で人気を集めていることは間違いない。2020年には200社以上の企業がSPACとの契約を通じて株式を公開した。しかし、どのような資産が注目を集めたとしても、それが爆発的に拡大することを期待する関係者が出てくるだろう。

教訓はすでに得られており、おそらくさらに多くのことが起こるだろうが、SPACを景気回復の終わりを示すものとして扱う人々は間違っている。これらの手段は、従来の門番を排除し、個人投資家が企業のストーリーを買うか売るかを決定できるようにする一方で、公開市場への正当なルートを提供する。

SPACバブルの主張

まず、否定論者の懸念に対処することが重要だ。SPACの活動が急激に増加していることから、アナリストらはこの傾向は誇張されていると推測している。企業の上場が早すぎ、資金を失った者が公的資本を受ける前にそれにアクセスできるようになっていると主張している。

しかし、どのような時期に市場に参入するのが「早すぎる」のだろうか?2020年に最も成功したSPACのストーリーの1つであるDraftKingsは設立から約8年後に株式を公開し、FacebookはIPOまでにほぼ同じ期間非公開だった。一方、世界で最も利益率の高いAppleは、設立から4年に満たない時期に上場した。テニュアは投資家の心を動かす要因かもしれないが、テニュアがなかったからといって上場が止まることはなかった。

収益性がIPOの要件となることも稀であり、Uber、Tesla、Amazonはいずれも損失を計上しながら上場した不採算事業の代表例である。

こうした事例すべてにおいて、明確で一貫性のあるビジョン、強力なリーダーシップチーム、そしてリーダーがビジョンを実行するのを見届ける投資家の忍耐力が、従来的な成功のための財務指標を打開している。

市場はストーリーの評価方法を認識している

株式市場は四半期決算に執着している。1株当たり利益に対するアナリストの予想をわずか1セント下回るだけで、株価は急落する。しかし、すべての企業がこのように評価されているわけではない。多くの企業は、将来のビジョンと目標に向けた進捗状況を評価されている。SPACは、従来の投資を支援する十分な財務データがない場合でも、強力なチームやビジョンに投資する効果的な方法である。

バイオテクノロジー企業は、投資家が市場、特にパンデミック後の市場をどう見ているかを示す優れた時宜を得た例である。バイオテックは通常、開発中の治療法と、それが役立つ可能性のある患者について説明する対象となる市場の推定値、請求可能な価格、臨床試験のスケジュールなどを提供する。しかし、初期段階のバイオテクノロジー企業が医薬品を販売するのは何年も先になる可能性があり、利益を上げること自体は難しい。FDAは、承認申請前の最終段階である第II相および第III相試験の完了までの期間を最長6年と見積もっている。

それでも投資家はこれらの企業に資金をつぎ込んでいる。アナリストらは、詳細な調査の結果、新薬の臨床試験が進行する可能性があるとみているが、これらの企業は損失を出しながらも、株価が何年も上昇する可能性がある。市場はこれらのリスクをとることに対して高いリターンを期待するが、一定の価格に達する可能性がある。

消費者向けテクノロジーのストーリーテラー

SPAC路線は消費者向けテクノロジー企業にとって理想的な選択だ。SPACは従来のIPOよりも経営陣とビジョンに重点を置いており、この業界は常に先見の明のある企業に支配されてきたため、同セクターに恩恵をもたらしている。

SPACに投資している投資家たちは今後、Direct-to-Consumer(直接消費者に繋がる)テクノロジーに注目すると思われるが、それは従来の限られた意味でのD2Cではない。

消費者は、これまで以上に迅速かつ確実にアクセスできる商品やサービスを求めている。幸い、テクノロジーによってこれらの選択肢を増やすことに成功する傾向のある企業は、自社製品をエンドユーザーに直接届ける方法を知っている自然なストーリーテラーだ。必然的に、これらの企業はSPACの投資家から注目されることになる。

例えばフィンテックは、顧客の携帯電話に直接バンキング機能を提供し、多くの側面においてDirect-to-Consumerとなっている。2020年には、遠隔医療の革新により、ほとんどの医療予約が待合室からリビングルームに移行し、旧式の医療管理手法がデジタルシステムを採用することを余儀なくされた。

マットレスのような実店舗でしか入手できなかった商品が、CasperやPurpleなどの企業によって自宅に直接配達されるようになった。自動車メーカーの中には、ピザを注文するのと同じくらい簡単にクルマをデザインして購入できるところもある。

新型コロナウイルスのパンデミックにより、テクノロジーを活用したより迅速なサービスへのアクセスの必要性が顕在化したことで、この傾向はさらに加速している。そして私たちが「平常に戻る」ためには、この傾向が高まることが必要だ。SPACは、これらのアイデアをより早く市場に投入し、これらの企業が需要を満たすために必要な資金を提供するために存在する。

この先にある道筋

憶測、否定、そして「バブル」のような印象にもかかわらず、SPACは何十年も前から存在しており、一瞬にして消滅することはなさそうだ。実際のところ、SPACとの契約のペースは落ち着くかもしれないし、トレンドが続くにつれてリスクプレミアムも高くなるかもしれないが、消費者向けテクノロジーの変化と同じように、SPAC自体も消費者に最良のサービスを提供するために進化するだろう。

SPACモデルは多くの点で、消費者向けテクノロジーの発展と非常に類似している。つまり、確立された構造の破壊を促進するものであるということだ。さらに、取得前のSPACへの投資家は、そのような投資に従来必要とされていた資本を必要とせずに、ベンチャーのような機会にアクセスすることができる。

最終的には、企業の成功は、目標を達成するか上回るか、あるいは何らかの要因で需要が引き伸ばされるかにかかっている。ルールは変わっていないし、リスクも報酬も変わらない。

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(文:Mike Murphy、翻訳:Dragonfly)

SPACの作るグラフは誇大広告の限界を探るものになっている

この1年、自分でも認めたくないほどSPAC(特別買収目的会社)投資のプレゼン資料を見てきた私は、彼らの異常な強気に強い苛立ちを感じている。保守的だと言われるかもしれないが、上場企業たるもの、でたらめばかりであってはならないし、上場しようとする会社もおそらく同様の目標を目指すべきだ。

その点、従来型IPOのS-1申請資料はすばらしい。数字に関して実に誠実だ。資料に来年の予測は入っていないし、今後5年間のことなどもちろん書かれていない。たしかに会社は自分たちのビジネスモデルや方法を売り込むだろうが、S-1申請は誠実さという意味でかなりよくできている、多くの場合

SPAC投資家の資料は正反対だ。どういう意味かは下のグラフを見て欲しい。


過去の売上?そんなの必要?。これを見てください、今後もしかしたら、理論上、起きるかもしれない成長率です。CAGR(年複利成長率)201%!といったところだろうか。

こちらも興味深い


はい、そうですか。

Local Bounti(ローカル・バウンティ)のSPAC投資家プレゼン資料の超高精細画像がここにある。私の見つけた最も鮮明なバージョンだ。グラフをお楽しみあれ。


私はグラフのタイトルを「Alexの将来のブログ投稿数」に変えて、次の評価面接で使おうと思う。

これもすごい、今度はPear Therapeutics(ペア・セラピューティクス)の作品だ。


そしてもう1つ、これは最近のEmbark(エンバーク)の資料にあったもので、TechCrunchも取り上げている

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過去の売上実績はどうなっているんだ?2021年や2022年、2023年の予測は?そんなの知らん!

SPACの実績予測の正確性について我々が学んだことを踏まえると、一連の数値を受け入れるためにはゴジラサイズのSalt Bae(ソルト・ベイ / 塩振りおじさん)が必要だと私は思う。

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タグ:SPAC

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

自動運転トラックのEmbarkがSPAC合併で上場へ、評価額は約5770億円

創業5年の自動運転トラックのスタートアップEmbark Trucks Inc.は現地時間6月23日、バリュエーション52億ドル(約5770億円)で特別買収目的会社Northern Genesis Acquisition Corp. IIと合併すると発表した。

Embark(エンバーク)は自動運転トラックに対してまた別のアプローチをとっている。ライバル企業TuSimpleのアプローチである、トラックを生産して運用するというものではなく、EmbarkはAVソフトウェアをサービスとして提供する。運送業者と車両所有者は1マイルあたりのサブスク料金を支払うとソフトウェアにアクセスできる。Embarkのパートナー企業はMesilla Valley Transportation、Bison Transport、Anheuser-Busch InBev、HP Inc.などだ。

運送業者はこのソフトウェアが使えるハードウェアを自動車メーカーから直接購入する。そのため複数の部品やメーカーで「プラットフォーム・アグノスティック」となるようシステムをデザインした、とEmbarkは話す。同社によると、ソフトウェアは1秒あたり長さ60秒のシナリオを最大1200シミュレートでき、走行する他の車両の動きのためにそうしたシナリオを使って適応予測をする。

Embarkは、SPAC取引に関する投資家へのプレゼンテーションで、2023年までに「ドライバー不要」あるいはセーフティドライバーなしでのオペレーションの開始、そして2024年に米国のサンベルト(北緯37度以南の地域)での商業展開を目標としている、と説明した。しかし、Embarkはそれを達成するためのテクニカル上のマイルストーンに到達していない。ソフトウェアはまだ緊急車両とのやり取り、タイヤ破裂や他の機械故障への対応などですべきことがある、と説明した。

合併が完了すれば、Embarkには2億ドル(約220億円)の私募増資を含め、現金で約6億1500万ドル(約680億円)が注がれる。私募増資の投資家はCPP Investments、Knight-Swift Transportation、Mubadala Capital、Sequoia Capital、Tiger Global Managementなどだ。

Embarkはまた、元運輸長官のElaine Chao(イレーン・チャオ)氏が取締役会に加わると明らかにした。まだ24州でしか商業展開が認可されていない自動運転トラックの業界に身を置く企業にとっておそらく大きな恩恵となる。

Embarkは2016年にCEOのAlex Rodrigues(アレックス・ロドリゲス)氏とCTOのBrandon Moak(ブランドン・モーク)氏によって設立された。両氏はカナダのウォータールー大学でエンジニアリングの学位を取りながらともに自動運転に取り組んだ。Y Combinatorを終了したのちにEmbarkはすぐさま計1億1700万ドル(約130億円)を調達した。ここにはSequoia Capital がリードした3000万ドル(約30億円)のシリーズBラウンド、Tiger Global Managementがリードした7000万ドル(約780億円)のシリーズCラウンドが含まれる。

合併取引は2021年下半期に完了する見込みだ。SPAC合併経由で上場する競合社のAVトラックデベロッパーPlusの仲間入りすることになる。TuSimpleは3月に従来のIPO上場を選んだ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Embark Trucks Inc.トラック自動運転SPAC

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

LiDAR開発のQuanergy Systemsが1550億円の評価額でSPAC上場へ

米国カリフォルニア州サニーベール拠点のLiDAR(ライダー)会社Quanergy Systems(クアナジー・システムズ)は6月22日、中国最大の国営投資コングロマリット傘下の特別買収目的ファンドであるCITIC Capital Acquisition Corp.と合併することに合意したと明らかにした。

Quanergyを14億ドル(約1550億円)と評価するこの取引は2021年下半期の完了が見込まれている。合併完了後はプロフォーマネットキャッシュで約2億7800万ドル(約310億円)が同社に注がれる。ここにはPIPE(上場企業の私募増資)による4000万ドル(約44億円)が含まれる。

LiDARは大半の自動運転システムの必要不可欠な構成要素だ。有名な例外はTeslaのスタックで、同社は自動運転の追求をサポートするために純粋にビジョンベースのシステムの開発を試みている(Tesla車両は現在は自動運転ではなく、レベル2の先進運転支援システムと考えられるものを有している)。QuanergyはソリッドステートシリコンLiDARユニットのデベロッパーだ。これは物体までの距離や物体の形を測定するために光フェーズドアレーを通じて低出力レーザーを出す。歴史的にLiDARセンサーは動き、一般的には周辺地域をスキャンできるようレーザーを回転させるためのメカニズムに関わってきた。同社はまた、センサーデータを解釈する知覚ソフトウェアも手がけている。

Quanergyがニューヨーク証券取引所上場に至るまでには紆余曲折があった。同社は2016年に250ドル(約2万8000円)以下のLiDARを開発したと発表し、かなり誇大した話をした(参考までに、同時期にVelodynはLiDARセンサーを7万5000ドル、約830万円で販売していた)。このニュースによりQuanergyはユニコーンステータスを獲得し、IPOの可能性が浮上したとBloombergは報じた。しかしQuanergyが技術的な問題に直面した後、興奮は和らいだ。

そして同社は2020年1月にCEOで共同創業者のLouay Eldada(ルアイ・エルダーダ)氏が社を去ると発表した。Kevin Kennedy(ケビン・ケネディ)氏が暫定CEOとなり、4月に正式にCEOに就任した。Quanergyは世界に自動車部門とIoT部門の350を超える顧客と40の提携を抱える、と話す。同社の投資家には自動車メーカーのDaimlerとGeely、そしてSamsungやEnterpriseなどがいる。

QuanergyはSPAC合併で得る資金をR&Dの促進、負債の支払い、運転資金に使う。取引が完了すれば、同社はティッカーシンボル「QNGY」でニューヨーク証券取引所に上場する。

SPACのCITIC Capital Acquisition Corp.は中国のコングロマリットCITIC Groupが支援する投資会社CITIC Capital Holdings Limitedから資金提供を受けている。Quanergyは対米外国投資委員会(CFIUS)の承認を得る必要がある。CITICの持ち分が10%以下で、Quanergyはいかなるドライバーのデータも記録していないことから、同社はCFIUSが合併を承認すると予想している、とロイターは報じた。

SPACとの合併で上場するLiDAR会社はQuanergyが初めてではない。AEyeは20億ドル(約2210億円)のバリュエーションでCF Finance Acquisition Corp. IIIと合併する予定で、VolvoのパートナーLuminarは34億ドル(約3760億円)のバリュエーションで合併した。

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タグ:Quanergy SystemsLiDARSPAC

画像クレジット:Quanergy

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

BMWとフォードが出資する全固体電池デベロッパーSolid PowerがSPAC合併で上場へ

Ford(フォード)とBMWが出資する全固体電池デベロッパーのSolid Power(ソリッドパワー)が上場する。同社は米国時間6月15日、特別買収目的会社Decarbonization Plus Acquisition Corp IIIとの合併を通じてNASDAQに上場し、取引後の時価総額は12億ドル(約1320億円)になると明らかにした。

取引では現金約6億ドル(約660億円)を獲得する見込みで、ここにはKoch Strategic Platforms、Riverstone Energy Limited、Neuberger Berman、Van Eck Associates Corporationなどの投資家からの1億6500万ドル(約181億円)のPIPE(上場企業の私募増資)が含まれる。Solid Powerは声明文の中で、調達した資金は成長とオペレーションにあてると述べた。

全固体電池はバッテリーテクノロジーにおける待望の次なるブレークスルーだと多くの人は考えている。この名称は、従来のリチウムイオン電池にある陰極と陽極の間をイオンが動くメカニズム、液体電解質を使用していないためだ。これについてはMark Harris氏が2021年初めにExtra Crunch記事で詳しく書いた。この液体の構成要素を取り除くことで、全固体電池はより安全で、エネルギー密度もはるかに優れているとSolid Powerは話す。同社は6月15日の投資家向け説明会で、同社のバッテリーが1回のフル充電で航続距離500マイル(約805km)を提供でき、寿命は従来のバッテリーの8年の2倍超となる見込みだと説明した。

Ford Motor CompanyとBMW AGはSolid Powerの出荷能力について強気の見通しを持っていることを明らかにしてきた。2社はSolid Powerの2021年5月の1億3000万ドル(約143億円)のシリーズBラウンドをリードし、試験的に生産される自動車規模のバッテリーを2022年初めに納品するという共同開発契約を結んだ。

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SPACとの合併は2021年第4四半期に完了する見込みだとSolid Powerは述べた。ニューヨーク証券取引所ではティッカーシンボル「SLDP」で取引される。

Solid Powerは、SPAC経由で上場する最新のバッテリー会社だ。主要ライバルの1社はVolkswagenが出資するQuantumScapeで、同社は2020年9月にSPAC合併経由で上場し、企業価値33億ドル(約3631億円)とした。2021年初めには欧州のバッテリーメーカーFREYRとパワーシステムデベロッパーのMicrovastもいわゆる「白紙小切手」会社との合併を発表した

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タグ:BMWFord全固体電池バッテリーSolid PowerSPAC

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

Lordstown Motorsが電動ピックアップトラックの生産見通しを大幅に下方修正、それでもさらに現金が必要か

Lordstown Motors(ローズタウン・モータース)と特別買収目的会社(SPAC)が見たキャッシュリッチの夢は、単なる願望に過ぎなかった……。同社が米国時間5月下旬に発表した第1四半期の業績は、赤字まみれの残念なものだった。

赤字の原因としては、予想を上回る費用の増加、さらなる資金調達の必要性、2021年のEndurance(同社初の車両)の生産台数が想定を下回り、約2200台から1000台に減少したことなどが挙げられる。要するに、同社は巷の予想よりも多くの現金を使ってしまい、Enduranceの量産が予定よりも遅れてしまったのだ。

2020年、SPACとの合併により上場した同社の株価は、合併後の最高値から急激に下落している。同社の株価は、米国時間5月24日に公表された2021年第1四半期報告書を受けて、取引終了後にさらに7%下落した。

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Lordstown Motorsは約1年前、社運をかけた全電動ピックアップトラックEnduranceの試作車を披露したが、投資家を盛り上げることはできなかった。

Lordstown Motorsは、CEOのSteve Burns(スティーブ・バーンズ)氏が所有していたWorkhorse Group(ワークホース・グループ)から派生した会社である。1998年に設立されたWorkhorse Groupは、バッテリーや電気輸送技術を扱う小さな上場企業であるが、さまざまな局面で苦しい経営を強いられていた。その分社であるLordstown Motorsは、11月にGMからオハイオ州ローズタウンにある57万6000平方メートルの工場を買収し、2021年後半から年間2万台の電気トラックの製造を開始するとしていた。

生産上の不幸、資本上の懸念

第1四半期の決算は収益ゼロ。1億2500万ドル(約136億円)の純損失を計上して5300万ドル(約58億円)の資本的支出を行ったLordstown Motorsだが、その多額の支出に見合うだけの成果を上げることはできなかった。

同社は報告書の中で、Enduranceの生産を2021年中に開始するが、その生産量は「せいぜい事前予想の50%程度」と述べている。それにもかかわらず、多額の現金を取り崩したことは、投資家にとってはうれしい話ではない。

バーンズ氏は米国時間5月24日に行った投資家との電話会議で「当社の調査によると、当社の自動車に対する需要は非常に旺盛である。しかし、資金の問題で、当社が期待する数の車両を製造できない可能性がある。そのため当社は常に資金需要と戦略的資本を含むさまざまな種類の資金調達を調査している」と話している。

先般のSPACとの合併による資金調達にもかかわらず、Lordstown Motorsの2021年末の流動資産はわずか5000万~7500万ドル(約55億~約82億円)であろうと予測される。2020年末の同社の手元の現金は6億3000万ドル(約688億円)、2021年第1四半期には5億8700万ドル(約640億円)だった。同社は、通常の事業費の現金支出に加えて「2億5000万~2億7500万ドル(約273億~約300億円)の資本的支出」を見込んでいる。

バーンズ氏によると、同社は資産担保型の資金調達について金融機関と協議中とのことだが、どの金融機関かは明かされていない。

「当社には負債がなく、多くの資産があり、多くの部品を購入しています。そのため、資金調達に協力してくれる企業があるのです」とバーンズ氏。Lordstownは、米国の「先端技術を利用した自動車製造に対する融資プログラム(Advanced Technology Vehicles Manufacturing、ATVM)」の対象になることも諦めていない。バーンズ氏が「2010年1月にATVMの融資を受けていなければTesla(テスラ)は存在していなかった」と繰り返す中、同社の経営陣によると、審査機関によるデューデリジェンスが何度か実施されたとのことだが、時期についてはコメントされていない。

SPAC合併後の企業にとって、Lordstownのいまひとつな業績と弱気な取引は、SPACを利用してEVやその他の自動車関連企業を上場させるブームが時期尚早であったかもしれないということを示している。

Lordstownは、2020年9月に時価16億ドル(約1750億円)のSPAC合併を発表し、株価は52週高値で1株31.80ドルまで高騰した(米国時間5月24日時点では8.77ドル)。

バーンズ氏は、ハブモーターの構造や物理的なシンプルさなど、同社が主張する競争優位性を自賛し、それが所有コストの軽減につながると話す。しかし同社は、EVに新規参入したRivian(リビアン)やTesla(Cybertruckを生産開始予定)、さらにはFord(フォード)のような歴史のあるメーカーとの厳しい競争にさらされている。Fordは2021年5月初め、同社の名を冠したF-150トラックモデルの電動モデルを発表したが、価格は4万ドル(約490万円)以下に設定された。

しかしバーンズ氏は、同社が競合他社と同位置にあり、自動車の需要に応じて「飛びかかれる」ようにしておきたいとの思いを繰り返し、Rivian R1TやFord F-150 Lightningには及ばないものの、約400kmの目標航続距離を達成する自信があると話す。

Lordstownは、2021年1月に10万件というマイルストーンを達成したと発表された予約注文について、ざっくりとした最新情報も公開した。バーンズ氏は、そのうち約3万台が「車両購入契約」と呼ばれるものに変更されたと話すが、そのうち何人がどの程度の支払いを行ったかについては言及せず「その契約の多く」が何らかの頭金を含む契約であると述べるにとどまった。

同社は、2台目の電動バンの開発にも着手しており、2021年の夏の終わりには試作車が完成する予定だ。

決算

Lordstownの第1四半期の業績に目を向けると、非常に複雑な製品のテストと生産規模の拡大に苦慮している収益を生み出す前の段階の企業であることがわかる。非常にコストの高い取り組みだ。

同社の計算書は次のとおりである。

画像クレジット:Lordstown

同社の販売管理費が以前よりも増加しているのは、研究開発費が急増していることに比べれば大したものではない。Lordstownの株式を保有している投資家は、早く製造が軌道に乗り、大量生産につながることを期待しているが、これは納得しがたい損益計算書だ。

2021年第1四半期、Lordstownは研究開発費として約9万1000ドル(約1000万円)を支出した。LordstownのCFOであるJulio Rodriguez(フリオ・ロドリゲス)氏は「予想を上回る研究開発費の増加は、サプライチェーンの逼迫(ひっぱく)やコロケーションによる部品コストの上昇が主な要因です。ベータ版のコスト、スピード配送を含む出荷コストの上昇、一時的な外部エンジニアリングへの依存の拡大はこの影響を受けたものです」と話す。

同社幹部は、自動車の予約注文を偽装していると主張する空売り筋のHindenburg Research(ヒンデンブルグ・リサーチ)の告発についても、簡単に言及した。Hindenburgによると「広範な調査の結果、Lordstownの注文はほとんどが架空のもので、資本を調達し、正当性を得るためのまやかしであることが判明した」とのこと。

バーンズ氏は投資家に対し、同社が報告書の疑惑を調査するために特別独立委員会を設立したことを伝えた。この委員会は、同社が協力している米国証券取引委員会による調査とは別のものだという。

なお、このようなLordstownの決算にもかかわらず、TeslaとNikola(ニコラ)の株価には大きな変化はなかった。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Lordstown MotorsSPAC決算発表電気自動車

画像クレジット:Lordstown Motors

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(文:Alex Wilhelm、Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

自律走行技術のAuroraがリード・ホフマン氏の最新SPACとの合併に向けて最終交渉中か

複数の関係者によると、自律走行車技術をてがけるスタートアップ企業のAurora Innovation(オーロラ・イノベーション)は、Reinvent Technology Partners Y(リンベント・テクノロジー・パートナーズY)との合併に向けて最終的な合意に近づいているという。同社は、LinkedIn(リンクトイン)の共同創業者で投資家のReid Hoffman(リード・ホフマン)氏や、Zynga(ジンガ)の創業者Mark Pincus(マーク・ピンカス)氏、マネージングパートナーのMichael Thompson(マイケル・トンプソン)氏が起ち上げた最新の特別目的買収会社だ。

その障害となっていた問題の1つは目標とする評価額で、これまで200億ドル(約2兆1900億円)という高い金額が提示されていた。現在の評価額は120億ドル(約1兆3100億円)に近づいており、早ければ来週にも取引が発表される見込みだと、この件について話す権限がないため名前を伏せている複数の情報筋は述べている。

Auroraはコメントを控えており、Reinventもコメントを辞退した。

ホフマン氏、ピンカス氏、トンプソン氏の3人は「スケールの大きなベンチャーキャピタル」というコンセプトに強気の見通しを持っており、これまで3つのSPAC(ブランクチェック・カンパニー)を設立している。そのうち2つのSPACが、非公開企業との合併を発表した。Reinvent Technology Partnersは、2月に電動垂直離着陸機メーカーのJoby Aviation(ジョビー・アビエーション)との合併を発表し、2021年後半にニューヨーク証券取引所に上場を予定している。Reinvent Technology Partners Zは、住宅保険のスタートアップ企業であるHippo(ヒッポ)と合併した。

Reinvent Technology Partners Yとして知られる彼らの最新のSPACは、8500万株の新規公開株の価格を1株あたり10ドル(約1100円)とし、8億5000万ドル(約931億円)を調達した。このSPACは追加で1270万株を発行し、総売上高は9億7700万ドル(約1070億円)に達した。同社の株はNASDAQ証券取引所に上場されており、ティッカーシンボル「RTPYU」で取引されている。

Auroraはすでにホフマン氏との関係を持っている。2018年2月、AuroraはGreylock Partners(グレイロック・パートナーズ)とIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)から9000万ドル(約98億6000万円)を調達した。Greylockのパートナーであるホフマン氏とIndex VenturesのMike Volpi(マイク・ヴォルピ)氏は、シリーズAラウンドの一環としてAuroraの取締役となった。Auroraは翌年、シリーズBラウンドで5億3000万ドル(約580億円)以上を調達。このラウンドはSequoia Capital(セコイア・キャピタル)が主導し、Amazon(アマゾン)やT. Rowe Price Associates(T.ロウ・プライス・アソシエイツ)をはじめ、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャーズ・パートナーズ)、Geodesic(ジオデシック)、Shell Ventures(シェル・ベンチャーズ)、Reinvent Capital(リンベント・キャピタル)の他、以前からの投資家であるGreylockやIndex Venturesも参加した。

ホフマン氏とReinventのように、1つのSPACにおける双方の会社に関係しているというのは珍しいことだが、前例がないわけではない。例えば、T.J. Rodgers(T.J.ロジャース)が設立した特別買収目的会社は、同氏が2012年から取締役を務め、筆頭株主でもあるバッテリー技術会社のEnovix(エノビックス)との合併を2月に発表したことを、当時Bloomberg(ブルームバーグ)が報じている。今回の場合、ホフマン氏はAuroraの取締役ではあるが筆頭株主ではない。

2017年にSterling Anderson(スターリング・アンダーソン)氏、Drew Bagnell(ドリュー・バグネル)氏、Chris Urmson(クリス・アームソン)氏の3人によって設立されたAuroraは、野心的な1年を過ごしている。12月にはUber(ウーバー)の自動運転部門(Uber ATG)を買収することで同意し、合併後の企業価値が100億ドル(約1兆956億円)に達する複雑な契約を行った。

Uber ATGは、Toyota(トヨタ)やDENSO(デンソー)、SoftBank Vision Fund(ソフトバンク・ビジョン・ファン)から2019年に10億ドル(約1096億円)の投資を受けて72億5000万ドル(約7940億円)の評価額となったが、同社を買収するのにAuroraは現金を支払わなかった。代わりにUberがATGの持分を引き渡し、Auroraに4億ドルを投資した。この取引により、Uberは合併後の会社の26%の株式を取得した。ちなみに、米国証券取引委員会へ提出された書類によると、UberはUber ATGの86.2%(完全希薄化ベース)の株式を保有していた。Uber ATGの投資家は、全部で13.8%の株式を保有することになった。

買収から数カ月間でAuroraはUber ATGの従業員を統合し、現在は約1600人の従業員を抱えている。さらに最近、AuroraはVolvo(ボルボ)と北米向けに自律走行セミトラックを共同開発することで合意したと発表。ボルボの自律走行技術部門であるVolvo Autonomous Solutions(ボルボ・オートノマス・ソリューションズ)を通して数年間の継続が期待されるこのパートナーシップは、ボルボの顧客のために、ハブ間の高速道路で自律的に運行するトラックの開発と配備に焦点を当てている。

Auroraは規制当局に提出した書類の中で、2021年3月の新規株式公開で5490万ドル(約60億円)分の株を売却したことを明らかにした。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Aurora InnovationSPAC自動運転

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)