ヴァージン・ギャラクティックが民間宇宙船でのセカンドテストに成功、動力付き宇宙飛行へ一歩前進

Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)が、宇宙船「SpaceShipTwo」(スペースシップツー)の認定プログラムで大きな節目を超えた。今回はグライドフライトで、同社の無動力宇宙船VSS Unity(ユニティー)を、ボーイング747を改造したVMS Eveと呼ばれるキャリアー機でから打ち出されたあとグライダー飛行した。

このフライトは、Virginがニューメキシコ州の打ち上げ施設、Spaceport America(スペースポート・アメリカ)からUniftyを飛ばす二度目のテスト飛行だったが、前回よりも高高度、高速で行われた。これによってVirginは、Spaceport Americaから動力付き宇宙船を打ち上げる次の段階に進む。同施設からの打ち上げは初めてだが、Unity自身はすでにテスト飛行経験があり、2019年に地上55.9マイル(90km)を超音速で飛ぶ非常に印象的なデモンストレーションを行っている。

Virgin Galacticが、米国カリフォルニア州のMojave Air and Space Port(モハーヴェ航空宇宙空港)で動力付き宇宙船のテストを復活させたのは2018年で、Unityの先行機であるVSS Entrepriseの墜落死亡事故から4年後のことだった。当時フライトの副操縦士だったMichael Alsbury(マイケル・アルズベリー)氏は不幸にも事故で亡くなり、操縦士のPeter Siebold(ピーターシーボルト)氏は重傷を負った。

Unityにはそのような問題はなく、米国時間6月25日の無動力グライドフライトも完璧に計画通り進み、ニューメキシコの打ち上げ施設で、飛行条件や航空機、宇宙船の振る舞いに関する重要なデータをVirginに提供した。この施設は将来的に、Virgin Galacticの旅客が宇宙旅行の出発・帰着する場所となる。

旅客を宇宙旅行に連れて行く目標に向けた次の大きなステップは、Spaceport Americaから動力テスト飛行を実施することだ。すでに述べたように、Unityは動力飛行テストをすでに複数回行っており、Virginの宇宙飛行士訓練責任者であるBeth Mosesも参加しているが、目的達成までには、本日のテストで集めたデータを検証し、動力宇宙飛行に成功に必要な打ち上げ・飛行システムの修正など、やるべき中間作業がいくつも残っている。

Virginは商業宇宙飛行を早ければ今年中頃に開始することを目標にしていたが、今もまだ重要なテストが必要であることから、実際に旅行者を乗せて打ち上げるスケジュールは最善のシナリオでも今年末以降になりそうだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

手が顔に触れないようにする新型コロナ警告ペンダントがオープンソースに

いまや世界中でいろんなウェアラブルが、新型コロナウイルスを検出できる、予防できる、感染していないことを証明できるなどと主張している。しかし、NASAのJet Propulsion Laboratory(ジェット推進研究所、JPL)のウェアラブルデバイスは、新型コロナウイルスの拡散を本当に防げるかもしれないが、複雑で高度な技術とは無縁の製品だ。

JPLのウェアラブルデバイスであるPULSEは、3Dプリントで作った部品と安価で入手しやすい部品を使って作られており、あるたった1つのことだけをする。それは、自分の顔を手で触らないように警告することだ。JPLの設計者は「簡単だから技術のない人でも作れる」と主張し、実際に多くの人々や企業が作れるように、すべての部品のリストと3Dモデルのファイル、そして組み立て方の詳しいインストラクションをオープンソースのライセンスで提供している。

PULSEは一種のペンダントで、首にかけて顔から15〜30cmの位置に長さを調節する。人の手が着用者の顔に近づくと、赤外線を使った近接センサーが感知する。すると振動モーターが震えて警告を発する。手がさらに顔に近くなると、振動はもっと強くなるという仕組みだ。

ハードウェアそのものはシンプルだが、狙いはそこにある。どこにでも売ってる3V(ボルト)のコイン形電池で動き、ケースを作るための3DプリンターがあってGitHubにアクセスできる人なら、自宅で短時間で組み立てられるだろう。

もちろんPULSEは、単独で新型コロナウイルスを排除できるとは考えていない。汚染されている手が人の口や鼻や目に触れることは伝染の1つの経路にすぎないからだ。例えば、呼吸飛沫がウイルスの空気伝染を起こすこともあるだろう。しかし、通常のマスクを着けるだけでも感染のリスクは相当減るのだから、手が顔に触れる機会を減らすことも、ほかの方法と組み合わさって拡散の防止に役立つだろう。

ウェアラブルの中には、症状が出たり検査で陽性になる前にウイルス保有の有無を教えてくれるものもある。でもそれらは未実証の製品が多く、また人体のウイルスへの露出を制限することはできない。JPLのPULSEには、日常生活の中で新型コロナウイルスなどの感染症の拡散を抑えるポジティブな習慣を身につけるというメリットがある。

画像クレジット: NASA JPL

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAがより良い月面トイレの設計のため、クラウドソースでの支援求める

NASAは米国人を月に再び立たせ、月面に人類の恒久的なプレゼンスを確立することを目標とするArtemis(アルテミス)計画の準備を進めており、HeroXとの提携で開始したクラウドソーシング・コンペティション(HeroX記事)では、宇宙飛行士が月面で大小の排泄をするためのより良い方法の設計を募集している。このコンペティションでは具体的に「宇宙と月面の両方で使用できる、完全な機能を備えた軽量トイレのための革新的なデザイン」を募集している。

このコンペティションは「世界的なイノベーターのコミュニティー」に対して誰でも門戸が開かれており、8週間にわたって開催され、優勝者には最高3万5000ドル(約380万円)の賞金が贈られる。驚くべきことに、NASAが外部の人やHeroXのクラウドソーシングプラットフォームを利用して、人間の排泄物の管理に関する革新的な技術を集めたのは、これが初めてではない。2016年のSpace Poopチャレンジ(HeroX記事)も大きな注目を集め、3人の受賞者に総額3万ドル(約320万円)が贈られた。

以前のコンペティションでは完全な宇宙服を着た宇宙飛行士に最適なシステムを設計することに焦点が当てられていたが、これは宇宙飛行士がアルテミスの着陸船に乗って月面に移動する際に使用する、大きくてかさばるEVAスーツを宇宙飛行士が脱いでいるときに使用する今回の挑戦で求められていたトイレ設計とは、まったく異なるものである。NASAによると、国際宇宙ステーション(ISS)で使用されている微小重力用のトイレはすでに機能しているが、月の低重力環境では異なる設計が必要となり、また月への旅の性質から小型で電力効率の良い設計が求められている。

もちろんNASAは、ユニークで革新的な宇宙用トイレのデザインを考え出すために、外部の人々に完全に頼っているわけではない。すでに内部では、既存バージョンの小型化に取り組んでいる。しかし航空宇宙産業の外からの新鮮な視点が、同分野で働くことに慣れていた人々では考えられないような解決策を見出す助けになることを期待しているため、これを外部の学者や研究者、デザイナー、エンジニアにNASAは公開したいと考えている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAとESA、JAXAが新型コロナ監視用の地球観測ダッシュボードを開発

NASAは、欧州宇宙機関(ESA)および日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協力して、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響を監視するために衛星からの地球観測データを収集し、ダッシュボードを介して提供することに取り組んでいる。このダッシュボードは各機関が運用する地球観測衛星によって収集された写真、大気の質、温度、気候などの指標データを統合したものだ。

新型コロナウイルスに関する地球観測データは、水質、気候変動、経済活動、農業における世界的な変化を把握できる。これは政治家、保健当局、都市計画者などに重要な情報を提供し、都市に住み働く人々の暮らし方を大きく変えている、現在進行中の世界的な新型コロナウイルスの短期的、あるいは長期的な影響を調査するための重要な情報を提供することを目的としている。

プロジェクトに関わっている各宇宙機関は、4月にプロジェクトを立ち上げ、機関を超えた国際的なコラボレーションをあっという間にまとめた。これまでのデータでは、活動の減少による大気や水質などの環境の改善といった大きな変化だけでなく、港湾での荷揚げ作業やショッピングモールの駐車場の車の台数など、主要な経済活動が大きく減速していることも示している。

このプロジェクトは特に新型コロナウイルスとその影響に関するデータを提供することを目的としており、現在の計画では同ウイルスによるパンデミックのみを対象としているが、ESAの地球観測プログラム担当ディレクターであるJosef Aschbacher(ジョセフ・アシュバッハ)氏は電話会議の中で、ダッシュボードを新型コロナウイルスの範囲を超えて拡張するかどうかをすでに検討していると述べている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

新型コロナで延期していたテスラの大規模バッテリーイベントと株主総会は9月15日に仮決定

Tesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏はかなり前から「Battery Day(バッテリー・デイ)」を宣伝してきたが、とうとう数カ月以内には実現する見込みだ。マスク氏はTwitter(ツイッター)で、2020年9月15日が「テスラの株主総会とバッテリー・ディ」の「仮予定日」となり、これには通常の株主総会とテスラ車両に電力を供給するバッテリーのセル生産システムの案内が含まれると語った。

もともと2020年4月に予定されていた 「バッテリー・ディ」 は、すでに何度か延期されている。5月そして6月へと延期されたが、マスク氏が明かした最新の9月というスケジュールは、現在進行中の新型コロナウイルスによる世界情勢と、テスラ社内での新型コロナウイルス(COVID-19)への対応、地方自治体によるロックダウン、従業員の健康と安全に関する複雑な問題(Bloomberg記事)を考えると、はるかに現実的に思える。

パワートレインのコンポーネントを含む予定だった以前のイベント内容は変更され、バッテリー・デイはバッテリー性能と出力の改善に焦点が絞られる。Tesla Model Sは、走行距離400マイル(約640km)以上のEPA認定を得た最初かつ唯一の電気自動車であり、またテスラは低コストで長寿命の新しいバッテリー技術に取り組んでいることが報じられており、2020年中か2021年初めに中国向けのModel 3に導入される計画だとReuters(ロイター)が2020年初めに報じている。

これはテスラが2019年にサイバートラックを発表して以来、初めての重要なイベントとなるだろう。同社のバッテリー技術に関する革新は、内燃式燃料車からより多くの顧客を移行させ続けるという点で、テスラにとって最も重要な優位性となる可能性が高く注目を集めることになるだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

アップル、独自プロセッサを搭載したMac miniを今週から開発者向けに提供

Apple(アップル)は開発者が同社のシステムオンチップ(SoC)ベースのMacへと移行するのを手助けしたいと考えており、開発者向けのハードウェアなどのリソースを数多く用意する。アップルの開発者向け移行キットには、A12Zプロセッサを内蔵したMac miniが含まれており、プレリリース版のmacOS Big Surが動作する。

開発キットのスペックとしては、16GBのRAMと512GBのSSDが含まれ、Xcodeがプリインストールされており、すぐにアプリ開発に取り組める。これはかなり初期段階のプレリリースキットで、アップル独自プロセッサを搭載した最初の市販Macは今年後半まで出荷されない。アップルのTim Cook(ティム・クック)CEOは、米国時間6月22日に開催されたWorldwide Developers Conference(WWDC)のキーノートで語った。

アップルはIntelベースのMacも引き続き販売する予定で、これには新製品も含まれる。完全にMacのラインナップが移行するには2年かかると伝えられている。一方、開発者キットは早ければ今週中にもプログラム承認された開発者向けに出荷されるとCook氏は語った。同社は開発者がスムーズに移行できるように、できるだけのことをするつもりだ。

今回のDeveloper Transition Kitにくわえて、アップルはQuickstartプログラムを作成し、開発者が新しいApple silicon上でアプリをユニバーサルかつネイティブに動作させるプロセスを支援する。具体的には、新しいSoCに関するサンプルコードフォーラムやドキュメントが提供される。ハードウェアを含むDTK自体の価格は500ドル(約5万4000円)で、キットは数量が限定されるため、既存のmacOSアプリケーションを所有している開発者が優先して入手できるという。

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(翻訳:塚本直樹)

成層圏気球で宇宙クルーズを目指すSpace Perspectiveが2021年に試験飛行を予定

商用宇宙旅行ビジネスへの参入を目指す新しい企業がある。ただし、これまでとは違うユニークな乗り物を使用するというのがミソだ。Jane Poynter(ジェーン・ポインター)氏Taber MacCallum(テイバー・マカラム)氏が創設したスタートアップSpace Perspective(スペース・パースペクティブ)は、高高度気球で地球の大気圏縁まで与圧カプセルを飛ばすことを目的としている。このカプセルには8名の乗客が搭乗でき、6時間の飛行が楽しめる。予定料金は1人12万5000ドル(約1300万円)。

同社によれば、この計画では「Spaceship Neptune」(スペースシップ・ネプチューン)と呼ばれるカプセルに乗客や観測機材を載せて、高度およそ3万メートルを巡航することになっている。厳密にはそこは宇宙ではないが、地球が丸いことが実感できる壮大な眺めを同社は約束している。Space Perspectiveの説明では、6時間の空の旅の内訳は、上昇に2時間、大気圏の縁の飛行に2時間、地上への帰還に2時間となっている。計画では、フロリダ州のケープカナベラル宇宙センターから気球によって打ち上げられたカプセルは、大西洋上に帰還し、着水後に乗客とカプセルが船で回収される。米連邦航空局(FAA)がSpace Perspectiveの有人飛行全体を監督することになるが、予定されている有人ミッションに先立ち同局との事前協議が行われている。有人飛行が実現するのは、少なくともまだ数年は先になる見込みだ。

どこかで聞いたような話だと感じた方もいるかも知れない。おそらくそれは、Space Perspectiveの創設者が駆け出しのころに、これとよく似た事業を展開する会社を立ち上げているからだろう。ポインター氏とマカラム氏は、以前にWorld View(ワールド・ビュー)という成層圏気球の企業を共同創設している。当初のミッションは、通信や地上観測用の機材の打ち上げだったが、カプセルに人を乗せて気球で飛ばすミッションも目標として表明されていた。

World Viewは今も営業しているが、ポインター氏は、昨年2月、CEOの座をRyan Hartman(ライアン・ハートマン)氏に譲った。World Viewの第一本社はアリゾナ州にある。製造と打ち上げ施設の運営をそこで行い、技術の開発と展開を続けつつ、定期的に気球を打ち上げている。

Space Perspectiveは、それとはまったくの別会社だと同社の担当者は私に話してくれた。前述のとおり、同社はフロリダ州のケープカナベラル宇宙センターからの打ち上げを予定しているが、将来的にはフロリダ州のセリル宇宙港、アラスカ州とハワイ州の民営打ち上げ施設なども必要に応じて使用することになるという。

画像クレジット:Space Perspective

このスタートアップは、Neptuneカプセルの試験飛行を、早ければ来年から開始する計画を立てているが、人はまだ乗せられない。その代わりに、実験機器を載せることになる。これも、Space Perspectiveが市場投入を目指す技術目標のひとつだ。

この事業は、「ほぼ宇宙」旅行業界の面白い入口になるだろう。SpaceX(スペースエックス)がCrew Dragon(クルー・ドラゴン)で計画しているプライベートな商用宇宙飛行には及ばないが、Virgin Galactic(バージン・ギャラクティック)やBlue Origin(ブルー・オリジン)の事業を肩を並べる魅力的な対抗手段となり得る差別化がそこにはある。ポインター氏とマカラム氏はこの事業を、World Viewがより実用的な産業と商用ペイロードのミッションに集中できるよう、そこから離れたベンチャーとしてスタートさせたようだ。それによりSpace Perspectiveは、高高度有人飛行という特別な目標をより大きく掲げられるようになった。

画像クレジット:Space Perspective

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(翻訳:金井哲夫)

マイクロソフトがスコットランド沖の海底データセンターを新型コロナワクチン開発に活用

新型コロナウイルスの効果的な治療法を発見する努力における課題の1つは、簡単にいえば規模の問題だ。 ウイルスが健康な細胞に感染するメカニズムを解明するためにはタンパク質の構造解明がカギとなる。

新型コロナウイルスの折り畳み構造をモデル化するためには巨大なコンピューティング能力を必要とするため、一般ユーザーのパソコンをグローバルな分散処理ノードとして利用するFolding@homeのような取り組みが非常に効果的だ。Microsoft(マイクロソフト)は、こうした努力に貢献するためにオンデマンドで処理をスケール可能な海底データセンターを利用しようとテストを始めている。このデータセンターは海上コンテナのサイズで事前にセットアップされ海底で高効率かつ長期間作動できる。同社はスコットランド沖の海底データセンターを新型コロナウイルスのタンパク質のモデル化に提供している。

同社は以前からプロジェクトに関わっていた。35mの冷たい海底に沈められたデータセンターは、すでに2年前から研究に貢献している。ただし新型コロナウイルスに研究の焦点を移したのは最近だ。これはもちろんパンデミックの治療、感染拡大の防止のために新型コロナウイルスの解明が緊急に必要とされてる事態に対応したものだ。

この水中データセンターは写真のように円筒形で864台のサーバーを収めており、相当の処理能力を備えている。海中に沈めたのは海水による冷却で作動の効率性を確保しようとするためだ。大容量の処理装置は途方もない発熱量があるため冷却システムが欠かせない。ゲーム用の高性能パソコンに精巧な冷却装置が用いられれるのはこのためだ。ましてデータセンターのレベルになれば冷却が極めて重要になるのはいうまでもない。

データセンターを水中に沈めれば自然冷却が実現でき、プロセッサを安定して高速で動作させることが可能になる。ファンや複雑な液冷配管が不要になるだけでなく、冷却に用いられるエネルギーも節約できる。

Natickと名付けられたこの海底データセンターが期待どおりに機能すれば将来のコンピューティングにとって朗報だ。こうした分散型データセンターを需要に応じて海底に沈めることで高効率なオンデマンド分散コンピューティングが可能になるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceXが洋上宇宙船基地を計画中、月や火星に加えて超音速地球旅行にも使用

SpaceX(スペースX)がテキサス州ブラウンズビルの洋上施設のために専門家を募集していることが求人広告でわかった。目的は、同社の大型打ち上げロケット “Super Heavy”(スーパー・ヘビー)の発射場所となる洋上宇宙基地の開発と建築だ。SpaceXはその大型ロケットを、今後大型の運搬ロケットを月や火星に送り込むため、さらにはこの地球上での2点間移動のために使用するつもりだと、SpaceXのCEO Elon Musk(イーロン・マスク)氏が語った。

Musk氏はTwitter(ツイッター)で、Dan Paasch氏が最初に見つけたその求人広告の目的はこれだったと語った。以前SpaceXは、同社の打ち上げロケット、スーパーヘビーのコンセプトを紹介し、同時に宇宙船Starship(スターシップ)を超音速地球旅行に使って、長時間のフライトを数時間に短縮する構想も話した。しかしこうしたコンセプトはこれまでCGのみで、どこからどうやって飛び立つのかは今日までわからなかった。

スターシップとスーパーヘビーの主な開発目的は、SpaceXとMusk氏が火星へ人間を運び、月を始めとするさまざまな星間天体を植民地化して「人間を星間生物にする」というゴールを実現することだ。こうしたゴールはほとんどの人にとって無縁に感じられるが、同じ完全再利用可能宇宙船を使って、この地球上で2点間超音速旅行のコストを大幅に削減するという同社の狙いは、はるかに現実的だ。

宇宙を使った2点間移動は新しい概念ではなく、SpaceX以外にも実現を目指している人たちがいる。地球の大気圏の端、あるいは外側を飛ぶことで、燃料費や飛行時間を大幅に減らせるという発想だ。たとえばニューヨークとパリを1時間以内で移動できる。実際SpaceXは、2017年の発表の中で、スターシップを使った2点間移動は地球上のどの都市とどの都市の間も1時間以内で結ぶことができると語っていた。

SpaceXはスターシップをテキサス州ブラウンズビルで開発中で、そこは洋上設備技術者を探す求人広告が出された場所だ。同社はこの地域のテスト・開発施設を拡大中であり、州内の運営に特化した人材の増員も計画している。

Musk氏は今後の計画について多くを語らなかったが、別のツイートに答えて、この計画で「石油プラットフォームを改造し、ハイパーループで陸地と輸送する」ことは「十分計画のうち」であり、出発地や目的地の宇宙基地と地上を結んで乗客をピストン輸送することも考えていると語った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

MITがカメラを使わずに個人のバイタルサインを遠隔監視する技術を開発、介護施設での活用に期待

MIT(マサチューセッツ工科大学)の研究チームは、対象者のバイタルサイン(生命兆候)を、接触型センサーやウェアラブル機器を使うことなく、周囲にすでに存在する無線信号を使用して観察するシステムを開発している。MITのコンピュータ科学・人工知能研究所(CSAIL)を拠点とするそのチームは、システムをさらに改善し以前観察した個人を特定し、時間の経過とともに記録するしくみを開発した(CSAILリリース)。個人情報とは一切関連付けないためプライバシーは守られている。

「RF-ReID」と呼ばれる新技術の特徴は、老人ホームや長期介護施設などで共同生活している高齢者を、個人単位で経時観察できる点だ。個人の状態を経時的に観察できることは、基準となる健康状態からの変化を観察、検知する上で極めて重要だ。

医療施設では患者の生命兆候を経時的に観察するためにさまざまな方法を用いているが、深刻な限界に遭遇することがある。カメラはプライバシーへの配慮が十分とはいえず、個人を時間とともに識別する上でも、衣服の違いといった外見のわずかな変化に依存するため限界がある。従来の遠隔監視装置が利用する個人の記憶と一貫性に頼っているのに対して、MIT CSAILのシステムは使用する個人によらず動作する。

開発者によると、RF-ReIDシステムは新た加わった個人の身体的動作を10秒弱見るだけで識別する。体の大きさ、歩く速さと足取りなどを、周囲に存在する無線信号を使って推測する。

システムは個人を特定する情報や履歴を必要としないため、プライバシーが保護された監視システムの基礎となりうるものであり、介護施設で新型コロナウイルス(COVID-19)感染者が出た場合に、介護福祉士が隔離や検査を行うのにも役立つことが期待できると研究チームは言っている。

画像クレジット:MIT CSAIL

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

「Sonos Arc」は単体でも組み合わせても素晴らしいサウンドバー

Sonos(ソノス)は過去2年間、驚くほどのペースで常に新しいハードウェアをリリースし続けてきた。さらに称賛すべき点は、同社がリリースするすべての製品が素晴らしいパフォーマンスを発揮しているということだ。今回新たに発表されたSonos Arcサウンドバーも例外ではない。筋金入りの5.1chサラウンド信者でさえ転向させてしまうほどの、同社史上最高のホームシアターサウンドデバイスを生み出してくれた。

概要

Sonos Arcは、すでにあるSonosのホームオーディオシステムにワイヤレスで組み込めるように設計されたサウンドバーで、HDMIオーディオリターンチャネル(ARC)を介してテレビやA/Vレシーバーからのオーディオも受け入れる。最近のほとんどすべてのテレビにはHDMI ARCポートが少なくとも1つは搭載されているため、Arcはビデオソースの標準HDMI入力として機能するだけでなく、接続されているスピーカーやステレオシステムにもオーディオを出力できる。

ARCをサポートしていない場合に備えて(テレビにこれがない場合は、ほぼ確実にTOSLINKデジタルオーディオ出力ポートがあるはずだ)、Arcには光デジタルオーディオHDMIアダプターも付属する。また、Sonos独自のメッシュネットワーキングテクノロジーを介してSonosの他のスピーカーに接続するワイヤレススピーカーとしても機能するため、自宅全体のワイヤレスオーディオセットアップに、マルチルームスピーカーがもう1つ加わるということになる。

Arcは、Sonos Sub、Sonos One、One SL、Play:1などSonosの他のスピーカーと組み合わせることで、サブウーファーと2台のリアスピーカーを備えたより完全なワイヤレス5.1chシステムを作り上げることも可能だ。ただし、これはオプションの拡張機能であり、Sonos Arcの優れたバーチャルサラウンドレンダリングを堪能するために必ずしも必要ではない。この新しいハードウェアには、Sonosのサウンドバーでは初めてのDolby Atmosのサラウンドサウンドエンコーディングも含まれている。

デザイン

Sonos Arcは、Sonos Oneのデビュー以来同社が守り続けているモダンなデザインを受け継いでいる。黒か白のモノブロックのボディに滑らかなライン、円形のホールグリルデザインが施され、Play:1で見られたコントラストカラーのグリルデザインよりも現代的な雰囲気に仕上げられている。

ArcはSonos Beamのデザインの真髄を継承しているようにも見える。Sonos Beamは内蔵マイクとGoogleアシスタントやAmazonのAlexaなどの仮想音声アシスタントをサポートしたSonosの最初のサウンドバーだ。しかし実際はSonos Beamよりもかなり大きく、45インチという長さはむしろ、同社がこのカテゴリーに初めて参入した際に発表したSonos PlaybarやPlaybaseに近い。

この長さをお伝えするために書くと、これは著者が所有する65型のLG C7 OLED TVの全長とほぼ変わらない。またSonos Beamよりも少し高さがあり、3.4インチとなっている。私の環境の場合はそれでもまだ十分に余裕があり、テレビ台のテレビの前に置いても、観ていて画面が隠れることはないが、もし読者がBeamと同様のセットアップでArcを設置しようとお考えなら、機器周辺を少し片付ける必要があるかもしれない。

この大きなサイズは見掛け倒しではない。これによってArcよりも低価格のBeamと比べてはるかに優れたサウンドを実現している。Arcの内側には音を上向きに響かせるドライバー2つと、長い円柱状のサウンドバーの両端に面したドライバー2つを含む11基のドライバーが搭載されている。これらのドライバーによる効果と、その長いプロファイルによって可能となった距離間隔が、左右背後から響く臨場感を実現している。

背面には音質をさらに向上させ、Arcを専用のウォールマウントに取り付けられるようにする土台を備えたベントバーが付いている。壁に取り付けるにしてもテレビ台の上に置くにしても、Arcは非常に魅力的なハードウェアだ。電源とテレビに接続するのにたった2つのケーブルしか必要なく、ホームシアターにありがちなケーブルの散乱を解決してくれる上、ほとんどのインテリアと難なく調和する。

性能

上述したように、単一のスピーカーだけでこれほどまでに音の分離感と没入感のあるバーチャルサラウンドを実現したSonos Arcの達成は実に素晴らしい。同製品は私が体験したSonosのサウンドバーの中で最高のサウンドレンダリングであり、おそらく既存のサウンドバー史上最高のオーディオ品質と言っても過言ではないだろう。

ステレオサウンドフィールドのテストでは、オーディオトラックが左右で良い結果を示しており、Dolby Atmosサポートはそれを提供するコンテンツがある場合にこのメリットを発揮している。音声明瞭度に関してもArcは単体使用で非常に優れている。Beamの場合はシステムにSonos Subを追加してローエンドの周波数を処理し、ハイエンドの明瞭度を高めるようにしない限り、場合によっては聞きにくいこともあったと感じる。

ArcはSonos Subやリアとして機能するSonosの他のスピーカーと組み合わせることで間違いなくメリットを発揮するが、同サウンドバーはこれまでに同社が発表したどの製品よりも単体としての性能が高く、出費を節約したい場合や、テレビの内蔵スピーカーに最小限のシステムをプラスして何とかしたい場合におすすめだ。

Sonos Arcにはマイクも含まれているため、AlexaやGoogleアシスタントに話しかけて音楽を再生したり、テレビをオンにしたりとさまざまなことができる。アシスタントを接続しないでマイクをオフのままにしておく場合は別だが、私にとっては素晴らしい機能で、リビングルームエクスペリエンスの中心的存在となっている。大きな部屋で同デバイスから離れた場所にいても、このマイクはコマンドを十分に認識できるようだ。リビング、ダイニング、キッチンを仕切る壁がないオープンコンセプトの広いエリアであっても、音声対応スマートスピーカーは1台で済むだろう。

Arcはさらに、そのままでAppleのAirPlay 2のスピーカーとしても機能する。ミニマリストにとってこれはもう1つのセールスポイントだ。例えばテレビの背面にApple TVを取り付けてワイヤレスで使用できるため、ワイヤーをまたひとつ減らすことができる。また、Sonosアプリを開かなくてもスマートフォンからArcに音楽やオーディオを簡単にストリーミングできる。

アップデートされたSonosのアプリ

アプリと言えば、Sonos Arcは6月8日にリリース予定の同社の新モバイルアプリと互換性がある。既存のアプリも新アプリと並行して残る予定だ。既存のアプリは新しいバージョンを使用できないSonosの古いハードウェアをサポートするために引き続き利用される。

著者はSonos Arcのテスト期間中にこの新アプリをベータとして使用したが、期待していたほど劇的な変化は見られなかった。新アプリは確かによりクリーンでモダンな印象で、より優れたインターフェイスとなっているが、既存バージョンのユーザーにとっては予想通りの位置にすべてが収まっている。ほとんどの変更はおそらく見えない場所に存在するのだろう。同アプリは、最近リリースされたSonosのスピーカーやアクセサリーの最新チップセット、高メモリー、および更新されたワイヤレステクノロジーで動作するように設計されているはずだ。

一言で言えば、この新しいアプリでは使い慣れた制御システムがより快適で新鮮なものにアップデートされており、Arcのような最新のスピーカーには美的観点からも性能面からしてもぴったりだと言える。ベータ版でさえも、2週間のArcのテスト中に問題が発生することはなく、すべてのサービスと音声アシスタントにおいて問題なく動作した。

総合評価

Sonos Arcは間違いなく最高レベルのサウンドバーである。799ドル(108,800円/税抜)という価格とそれに見合う優れたオーディオ品質を備えている。PlaybarとPlaybaseの素晴らしい後継機種であり、あらゆる点においてこれらを上回る結果となっている。またBeamとの比較対象にもなり得るため、Sonosのホームシアターラインナップには、あらゆる予算に応える卓越したオプションが揃うようになった。

汎用性とデザイン性に優れたトップクラスのワイヤレスサウンドバーをお探しなら、Sonos Arcスピーカーをぜひ試してみてはいかがだろうか。

関連記事:IKEAがSonosと共同開発したWi-Fiスピーカーを発表、2台でステレオ化も

Category:ハードウェア

Tag:Sonos オーディオ     ガジェット

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(翻訳:Dragonfly)

ドイツの産業用ロボット向けノーコードプログラミングスタートアップのWandelbotsが約32.2億円を調達

ドイツのドレスデンに拠点を置くWandelbotsは、83Northが主導したシリーズBで3000万ドル(約32億2000万円)を調達した。他にNext47ならびにMicrosoftのM12ベンチャー投資部門も今回の調達に参加している。Wandelbotsは、非プログラマーが産業用ロボットに簡単にタスクを「教える」ことができるようにすることを目指すスタートアップだ。

Wandelbotsは調達資金を利用して、ハンドヘルドのコードフリーデバイスであるTracePenの市場デビューを加速させる予定だ。TracePenを使うことで人間のオペレーターは産業用ロボットが模倣すべき望ましい振る舞いを、すばやく簡単に実演してみせることができる。通常、特定のタスクを実行するようにロボットをプログラミングするためには、目的を達成するための非常に専門的なスキルセットを持つプログラマーが必要なだけでなく、膨大な量のコードを書くことも求められる。これに対してWandelbotsは、ロボットに何をしたいかを示すだけでプログラミングを簡単にできるようにしたいと考えている。そして新しいタスクを実行したり、組立ラインの他の場所に組み込むために再プログラミングする際には、また別の振る舞いを示せば良い。

Wandelbotsがこうしたことを可能にするために開発したソフトウェアは、もともとドレスデン工科大学のコンピュータサイエンス学部で行われていた研究から生まれたものだ。このスタートアップは、2017年のTechCrunch Disrupt Battlefieldコンテストのファイナリストであり(未訳記事)、2018年にはPaua Ventures、EQT Venturesなどが率いたシリーズAラウンドで、680万ドル(約7億3000万円)を調達した。

Wandelbotsにはすでに、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、BMW、Infineon(インフィニオン)などの大手企業を含む、複数の著名なクライアントを抱えている。そして米国時間6月17日には、その製品TracePenを初めて一般向けに販売し始める。同社のテクノロジーは、産業用ロボットのプログラミングに、何カ月もの時間とそれに関連するコストを費やしているすべての人たちを救える可能性を秘めている。そして最終的には以前は予算要件から諦めざるを得なかった小規模な企業でも、この種のロボットを実用的に活用できる可能性が生まれるのだ。

関連記事:Wandelbots wants to reinvent the way we program robots(未訳記事)

電子メールでWandelbotsのCEOで共同創業者であるChristian Piechnick(クリスチャン・ピエニック)氏に対して、 Tesla(テスラ)を含む企業たちが、これまで以上に工場を自動化しようとする際に直面する課題を、彼らのプラットフォームは解決することができるのかと質問した。

「自動化に関わる破綻現象は、ロボットによる自動化によって導入された柔軟性のなさ、複雑さ、コストによって引き起こされました」とピエニック氏はメールで返信してきた。「普通人びとは、ロボットの総所有コストの75%がソフトウェア開発によるものであることを意識していません。ロボットによって引き起こされる問題が利益を殺していたのです。これこそがまさに、私たちが取り組んでいる問題です。私たちはメーカーの方々が、これまでにない柔軟性でロボットを使用できるようにし、ロボットの利用コストを大幅に削減します。当社の製品は、ノンプログラマーが簡単にロボットに新しいタスクを教えることを可能にすることで、見つけるのが困難でコストのかかるプログラマーの関与を減らすことができるのです」。

Wandelbotsが今週発表するデバイスならびにコンパニオンプラットフォームであるTracePenは、実際には元からあるビジョンを進化させたものだ。元のビジョンでは、スマートな衣服を使用してリアルタイムで人間の行動を完全にモデル化し、ロボットの指示に変換することに重点を置いている。ピエニック氏によると、TracePenへ向けた会社のピボットは同じ基礎となるソフトウェア技術を採用しているものの、プロセスと操作の面では顧客が既にいる場所により近い場所で使えるようになっており、それでも元のコスト削減と柔軟性という性質を失っていないという。

関連記事:ジャケットを着るだけでロボットのプログラムを可能にするWandelbotsが77億円を調達

私はピエニック氏に、新型コロナウイルス(COVID-19)とそれがWandelbotsのビジネスにどのように影響したかについて質問した。それに対する彼の答えは、それが自動化への需要を押し上げ、その自動化に役立つ効率性への需要を様々な目立つ形で押し上げているというものだった。

「新型コロナウイルスは、様々な形でグローバルな製造業の考え方に影響を与えてきました」と彼は書いている。「まず、グローバルに分散したサプライチェーンのリスクを軽減するために、リショアリング(海外に出した拠点を国内に呼び戻すこと)を行なうという大きな傾向があります。ボリュームを拡大し、品質を確保し、コストを削減するためには、先進国にとって自動化は当然の結果です。私たちは、ほぼ即座にROIを実現できる技術と、非常に短い市場投入時間によって、時流に乗ることができています。さらには、人間の労働者への依存と職場の制約(例えば労働者間の距離)が、自動化の需要を途方もなく増大させているのです」。

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(翻訳:sako)

肥料や農薬を葉の気孔から取り入れさせて99%の高効率で植物に吸収させるナノ粒子技術

植物の施肥や農薬の撒布は一般的に損失の大きい問題だ。今、工業生産や食品生産の農業で使用されている物質のわずか1%しか実際に植物に取り込まれていない。残りは土壌に流出している。カーネギーメロン大学のGreg Lowry(グレッグ・ローリー)氏のチームは世界で初めてこの比率を逆転させ、植物が最大99%の効率で分子を吸収し、わずか1%しか無駄にしない技術を実証した。

ローリー氏らの研究は、Nanoscale Communications誌で公開されている査読論文で概説されているように、植物に吸収させたい分子物質である成長や作物の収量を最適化するように設計された栄養素や、破壊的な虫や害虫から植物を守る殺虫剤などを、ナノ粒子でコーティングすることで実現している。

本誌は2019年に、この技術をデモンステレーション前の段階で紹介したことがある。現在、ローリー氏のチームは、植物の葉の表面にある気孔に合ったサイズのナノ粒子を実際に生産することができるようになっている。その作業は基本的に、葉の表面にある受容体のためのレゴブロックをカスタマイズして作り、そのレゴブロックに届けたい栄養素を結びつけて完璧にフィットさせるようなものだ。

この実証はチームの仮説を裏付けるものだ。これによってさらなる開発の可能性や最終的には商用化の見通しも立てられるようになった。収穫可能な作物の40%がいまだに植物病害で害虫などで失われていると同社は推定しており、この技術はおそらく農薬としての商業利用の可能性が最も高いと考えられている。また、この技術を使うことで植物の栄養分や肥料の吸収率を上げて生長を刺激することもできる。それらを組み合わせることで、1回のナノ粒子の投与で防除と施肥の両方ができるため、労働生産性においても植物や作物の生産量を増加させる大きな可能性がある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXの小型衛星ネットワークStarlinkが巨額な公的資金を得るためには7月中に低遅延の実証が必要

SpaceXは高帯域で低レイテンシーのグローバルなインターネットサービスのバックボーンとなる、低地球軌道(low-Earth orbit、LEO)の小型衛星ネットワークであるStarlinkを構築している。しかしその努力が、収益を上げるために必要な今後の資金源のひとつが時間切れになるかもしれない。連邦通信委員会(FCC)の要求によると、農村地区のブロードバンドに助成する160億ドル(約1兆7200億円)の国の資金に応札する者は誰であっても100ミリ秒未満のレイテンシーを実証しなければならない。しかもその締切は来月、2020年7月だ。

この巨額な公共資金オークションの締切は2020年10月29日だが、応募の締め切りは7月15日だとEngadgetは伝えている。FCCによれば、LEOで衛星を運用しているプロバイダーは、もっと高い高度の静止衛星よりも有利かもしれないが、指定された閾値を満たすためには中継局やハブ、目的局の端末などで発生するレイテンシーを考慮に入れる必要がある。

SpaceXはFCCは同社ネットワークの能力を疑う必要はないと考えている。同社が目標としているレイテンシーは20ミリ秒未満であり、それは地上でケーブルを使用する高帯域ネットワークより優れていることもあるという。

SpaceXは、Starlinkの特に2020年における展開を急いでおり、既に7回の打ち上げミッションで計418基の衛星を送り出している。これは現在操業している民間衛星企業の中では最も多い。このハイペースの背景には、2020年末までに米国とカナダの顧客にサービスを提供したいという目論見がある。その後、世界中の顧客にサービスを提供することを目的としている。

SpaceXの歩みはこれまでのところ順調なようだが、でも巨額な政府資金提供のための要件は、同社にとって時期が尚早かもしれない。それでも、この構想に関連した連邦政府の契約は他にもあり、後に同社がそれらの交付対象になることも十分ありえるだろう。

画像クレジット: Starlink

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Colorの新型コロナ検査データも陽性者の大半は症状軽微か無症状であることを裏付ける

サンフランシスコ拠点のColor(カラー)は米国6月15日、自社の検査プログラムに関するデータを公表した。それによると新型コロナウイルス(COVID-19)で陽性となった人のほとんどは発熱なども含め症状が軽微か、無症状だった。既存のデータや研究と同じ分析結果だ。カリフォルニア州の検査ステーションで同社はこれまでに3万人超の検査を行った。その結果は全米で地域や州の経済を再開させる動きが続いているにも関わらず、広範な検査がいまだに経済再生プログラムの鍵を握っていることを示している。

Colorによると、検査を受けた人の1.3%が新型コロナ陽性で、そのうち78%が症状が軽微か、あるいはまったく症状がなかった。つまり特に目立つ症状が皆無だった。加えて37.7度以上の熱があったのは12%のみだった。職場や共有施設での体温チェックのような方策で感染拡大を抑制しようという取り組みにとっては悪い知らせだ。

Colorのデータは、WHO(世界保険機関)が最近発表した情報と一致する。WHOは新型コロナ検査の結果が陽性となった人の最大80%が症状が軽微か、まったく症状がないと指摘した。またColorは症状があったと答えた人がどんな症状を経験したのかについての具体的な情報も明らかにし、大半の人が咳が出たと答えた。ただし実際に陽性となった人が報告した症状で最も多かったものは嗅覚の喪失だった。これは、熱などよりもましな症状だ。

Colorはサンフランシスコ市との提携のもとに同市の最前線で働いているエッセンシャルワーカーにも検査を行った。そうした人の検査結果も含めたColorのデータで他に興味深いのは、陽性となった人の大半は若く(68%が18〜40才)、白人やアジア人よりもラテン系と黒人系のコミュニティで陽性率が高かった、という点だ。この2点に関するColorのデータは、他の機関や研究者が発表した結果を裏付けるものであり、性急で不用意な経済再開で誰が最も影響を受けるかという懸念をサポートするものだ。

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

米食品医薬品局が臨床試験で死亡例が続いた抗マラリア薬の緊急使用許可を撤回

米国食品医薬品局(FDA)は、クロロキンとヒドロキシクロロキンに対して出していた緊急使用許可(EUA)を撤回したとThe Washington Postが報じている。いずれも抗マラリア薬で慢性関節リウマチの治療にも用いられている。この薬品はDonald Trump(ドナルド・トランプ)大統領が新型コロナウイルス(COVID-19)の治療に効果があると発言していることでよく知られているが、現在進行中の世界的なパンデミックを起こしている感染症に対する効果の可能性を示した初期の医学研究結果は、科学的正当性に乏しく重大な懸念が指摘されている。

その後の研究では相反する結果が出ており、ある研究チームは、多数の死者が出たためにこの薬剤の臨床試験を中止した。2020年3月下旬にFDAは、クロロキンとヒドロキシクロロキンの使用に対してEUAを発行したが、有効性と安全性に関する検証結果が実にさまざまであることから医学界、薬学界による強い批判を呼んだ。その後の臨床試験で死亡例が続いたことを受け、FDAは同薬品の使用に関する警告の声明を発表した。

FDAは、同局の完全かつ厳格な承認プロセスを経ていない治療法や機器の使用を迅速化することがリスクを上回る、と判断した場合にEUAを与える。新型コロナパンデミックによって、FDAは通常よりも多くのEUAを発行しており、中でもその発症原因である新型コロナウイルスによる感染を診断する検査機器に対しては特に多い。

トランプ大統領はクロロキンとヒドロキシクロロキンの効果を無責任に吹聴した挙げ句、感染を免れると誤って信じている予防手段として自分自身でこの薬品を服用し始めた。同薬品の供給は、高まる需要によって強い圧迫を受け、紅斑性狼瘡や慢性関節リウマチなど、承認済みでその効果が臨床的に実証されている疾病のために必要としている人びとが、悲惨な状況に直面する恐れを生んでいる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スコットランドの宇宙開発スタートアップSkyroraがロケットの準軌道打ち上げに成功

先週末は、SpaceX(スペースX)やRocket Lab(ロケットラボ)といった民間のロケット打ち上げ事業者を目指すスタートアップを含め、打ち上げミッションで忙しい週末だった。エディンバラに拠点を置くSkyrora(スカイローラ)は、米国時間6月13日土曜日にスコットランド沖の島からSkylark Nanoロケットの打ち上げに成功し、その計画の重要なマイルストーンを達成した。

Skyroraは小型ペイロードのための手頃な輸送手段を提供することを目標として、ロケットを開発している。同社は2018年の初ミッションを含めてSkylark Nanoを2回打ち上げているが、スコットランドで計画されている3つの商業用スペースポートのうちの1つであるシェットランド島からの打ち上げは今回が初めてだ。

Skylark Nanoは、Skylark-LとSkyrora XLという商用打ち上げロケットと並行開発されているロケットだ。Skylark Nanoは高度約6kmと宇宙には到達していないが、同社の推進技術を実証するのに役立つだけでなく、サブオービタル(準軌道)打ち上げ用のSkylark Lや、軌道打ち上げ用のSkyrora XLの開発に役立つ重要な情報を収集する。

Skylark Lは現在開発中で、先日にはロケットの完全なスタティックファイアテストに成功した。現時点では、早ければ2022年にもイギリスを拠点とするスペースポートから、商業的打ち上げを開始する計画だ。

またSkyroraのアプローチは、機体の構造に3Dプリント(Additive Manufacturing)を採用し、従来のロケット燃料よりも排出量が少ないと主張する廃棄プラスチックから製造されたケロシン(液体燃料)を使用する点でもユニークだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ロケットラボが12回目のElectron打ち上げに成功、NASAとNROのペイロードを投入

世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが一時停滞した後、Rocket Lab(ロケットラボ)はニュージーランドでの最初の打ち上げミッションを再開した。米国時間6月13日の早朝、ニュージーランドのマヒア半島にある発射場から12機目のElectronロケットを発射し、米国家偵察局(NRO)、NASA、ニューサウスウェールズ大学キャンベラ校から委託されたペイロードを投入した。

打ち上げは米国東部夏時間午前1時13分(現地時間で午後5時13分)に行われ、ミッションは滞りなく遂行された。ロケットラボはその後、Electronが目標軌道に到達し、ペイロードの投入も計画どおりに行われたことを確認した。

ロケットラボは打ち上げ能力の大幅な拡大に向けて準備を進めており、米国バージニア州ワロップス島に新たな発射場を開設した。射場はすでに完成しており、最初のミッションは2020年初めに予定されていたが、施設を閉鎖して重要なミッションに焦点を当てることで新型コロナウイルスの拡散を食い止めようとするNASAの方針により計画が遅れ、初の打ち上げミッションも延期された。

ニュージーランドは現在、ロックダウンを完全に終えている。同国の迅速な対策と比較的小規模かつ分散した人口のおかげで、新型コロナウイルスの感染は迅速に封じ込められ、感染率をゼロにすることができた。これは、ロケットラボの既存の事業にとっても、またマヒアの施設に第2発射場を設置しようとしている同社にとっても良いニュースだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

インターステラの民間宇宙ロケット「モモ5号機」が宇宙到達前にエンジン停止

多くの民間打上げ会社が、宇宙へ行くコストの削減を求めて新たな宇宙船の開発を続けている。宇宙を目指す最新の事例がInterstellar Technologies(インターステラテクノロジズ、IST)。2003年に設立された日本の民間ロケット開発会社だ。同社は2017年に初めてロケットを打上げたが、宇宙に計画通り到達することはできなかった。そして2019年、同社の観測ロケット MOMO-3はカーマン・ライン(高度100 km)をわずかに超えたが、本日打上げられた観測ロケット MOMO-5(モモ5号機)は、残念ながら計画通り宇宙に届くことなく、大気圏を脱出する前の最大動圧点、Max-Qに到達する前後に何らかの誤動作と制御不能に陥ったとみられている。

MOMO-5は日本時間14日午前5時15分に打上げられ、無事発進したように見えた。この打上げはISTの既存の開発プログラムに基づき、同社が「ファミリーセダン」と呼ぶ小型低価格のロケットを使って少量の貨物を宇宙に送るデモンストレーションを目的として行われた。

ISTのアプローチで興味深いのは、最先端技術を謳うのではなく、ロケット技術の「伝統的手法」を活用し、新たな製造技術と近代的材料を加えることで極力コストを下げ、幅広い顧客が利用できるようにすることに焦点を当てていることだ。ある意味で、SpaceXやRockt Labのアプローチに似ているが、ISTはいっそう近代化にこだわらず、ライバルより効率を高めることに注力している。そうすることで、定期的に商業打上げできるようになった時には、コスト優位性を得られると考えている。

日本の北海道で打上げられたMOMO-5は、スケジュールがCOVID-19(新型コロナウイルス)や5月の連休のために、2019年末と今年始めから再三変更された。MOMO-5は全長約10メートル、重さ約1トンで、Rocket Labのロケット、Electronよりも小さい。

ISTによると、MOMO-5は指令センターから送られた「緊急停止」命令によって予定より早く飛行を終え、その後海面に安全に着水した。早期中止の詳しい理由は後に発表される予定。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXがブロードバンド・インターネット衛星Starlink58基を打ち上げて累計538基に、他社衛星3基との初の相乗りも

SpaceX(スペースX)は、通信衛星のStarlink(スターリンク)を58基打ち上げた。前回のStarlinkミッションからわずか10日しかたっていない。これで軌道上で稼働可能なStarlinkブロードバンド・インターネット衛星は計538基となった。また同社は今回の打ち上げで、Starlink用の積載スペースを初めて他社と共有し、2基のStarlink衛星の代わりに、衛星画像解析サービスなどを手掛けるPlanet(プランネット)のSkysat(スカイサット)衛星を3基運んだ。

SpaceX最新のStarlink打ち上げは同社が年内に予定している米国、カナダの一部消費者向けブロードバンド・インターネットサービスが実運用に近づいたことだけでなく、天文学者の要望に答えるべく衛星のデザインを改定したことでも注目に値する。

Stalinkは、比較的低い軌道を周回することから、太陽光反射による明るさが夜間観測の妨害になると科学者から批判を受けている。SpaceXは、前回打上げた衛星のうちの1基に太陽光反射を軽減する展開型サンバイザーを搭載したが、今回は58基全部に搭載した。


これでStarlinkが、地球上で天体観測する科学者と平和的関係を築けるといいのだが、最終的にはこのサンバイザーが多数のStarlink衛星に設置された結果どう変化するのかを見るまでわからない。

本ミッションは、SpaceXの公式SmallSat相乗りプログラムの下で実施された初の運行であり、同プログラムでは小規模な衛星運営者がSpaceXのウェブポータル経由でSpaceXの打上げに便乗の予約ができるという、比較的柔軟な「オンデマンド」方式を提供している。SpaceXがライドシェア事業に力を入れている理由は、Rocket Labなどのこの市場に特化したサービスを提供するの打ち上げ業者が、同社のライバルとなって損益に影響を与えかねないと認識しているからだ。

米国時間6月14日の打ち上げは米国東部夏時間午前5時21分(日本時間同日午後6時21分)に行われ、使用されたFalcon 9第1段ブースターの軟着陸回収も行われる。このブースターは以前、国際宇宙ステーションに補給物資を運んだSpace Dragon 2基の打ち上げに使用されたものだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook