わずか8分でストレスを軽減できるTrippのサイケデリックVR瞑想アプリ

消費者のウェルビーイングやマインドフルネスを支援するモバイルアプリを投資家に売り込むスタートアップ企業が増えているが、中にはユーザーが周囲の世界から完全に切り離されるような、より没入感のある方法を模索しているスタートアップもある。

Tripp(トリップ)は、没入型のリラクゼーションエクササイズを開発している企業だ。それはガイド付き瞑想アプリで体験できるような種類のものと、より自由な形の体験を融合させることを目指したもので、ユーザーはVRヘッドセットの中で、フラクタル図形や光る木、惑星が目の前を通り過ぎるのを見ながら、日常から離れて自分の思考を探求することができる。

その社名が示すように、このスタートアップ企業は、幻覚剤を使わずに、サイケデリックトリップの際に感じるものを模倣した視覚と聴覚の体験を作り出そうとしている。

「幻覚剤を摂取することに抵抗を感じる多くの人にとって、これはより穏便な方法でサイケデリック体験の一部を提供できる、摩擦の少ない代替手段です」と、同社のNanea Reeves(ナネア・リーブス)CEOはTechCrunchに語った。「このアイデアは、マインドフルネスとビデオゲームの仕組みを組み合わせることで、人々の感覚を実際にハックできないかと発想したものです」。

Trippによると、同社はVine Ventures(ヴァイン・ベンチャーズ)とMayfield(メイフィールド)が主導し、Integrated(インテグレーテッド)などが参加した投資ラウンドで、1100万ドル(約12億2000万円)の資金調達を完了したという。これで同社が調達した資金の総額は1500万ドル(約16億6000万円)となった。

画像クレジット:Tripp

近年、VR関連のスタートアップ企業の多くは、投資家の熱い支持を得ることに苦労している。主なテックプラットフォームが次々とバーチャルリアリティへの取り組みを終了させ、今やFacebook(フェイスブック)とソニーだけがその分野の提供者として残ったが、彼らも依然として収益化に苦心している。その一方で、多くのVRスタートアップ企業が取り組みを続けているものの、5年前にこの分野の企業を支援していた多くの投資家は、より幅広い用途が期待できるコンピュータビジョンやゲームのスタートアップ企業に目を向けている。

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リーブズ氏によると、新型コロナウイルスの影響から、人々のマインドフルネスやメンタルヘルスに対する意識が高まったため、投資家もこの分野のプロジェクトを積極的に支援するようになったという。

Trippは、Oculus(オキュラス)とPlayStation VR(プレイステーションVR)の両方のストアにアプリを配信しており、月額4.99ドル(約550円)のサブスクリプションという形で利用できる。

同社はさまざまなガイド付き体験を提供しているが、ユーザーは「Tripp composer」を使って独自のビジュアルフローを構築することもできる。

カスタマイズだけでなく、Trippの大きな売りの1つは、消費者により深く、より早く瞑想体験を提供することであり、ユーザーはヘッドセットを装着してから8分という短い時間で、ストレスを軽減できると同社は主張する。

Trippはこのプラットフォームを、企業のオフィスでウェルネスソリューションとして活用することも検討している。現在はこのソフトウェアプラットフォームの治療器としての有効性を研究するため、臨床試験を行っているところだ。

同社によると、このアプリでは、これまでのべ200万回以上のセッションが、ユーザーによって行われたという。

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画像クレジット:Tripp

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ウォールマートのグローサリー配達用AIがより賢くなっている

新型コロナウイルスによるパンデミックが買い物方法、特にグローサリーの買い方を変えたのは驚きではない。グローサリー配達アプリのダウンロード数は2020年3月に過去最多を記録し、同年4月にはWalmart Grocery(いまはWalmartアプリに統合されている)がAmazon(アマゾン)を抑えてGoogle PlayとApp Storeの買い物アプリランキングで1位になった。しかしパンデミックによる規制が緩和されても、消費者はまだグローサリー配達やピックアップのサービスをパンデミック前よりも頻繁に使っている。

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Walmartのグローサリー配達サービスは引き続き人気を博していて、これはAmazonやInstacartのような企業にとっては競争となり、それにともないWalmartが使うテックも拡大してきた。Walmartは米国時間6月24日、オンライングローサリー注文で賢く代替品を提案するためにどのようにAIを訓練しているかについて情報を共有した。

AIをグローサリー配達に持ってくるのはまったく目新しいことではない。2020年5月にWalmartは当時新しく導入したExpress配達サービスのための適格性を決定するためにどのようにAIを使っているかを披露した。米国が新型コロナ感染拡大に見舞われていた1年間、Instacartのエンジニアは「何がグローサリーの棚にあるか、そして駐車場を探すのにどれくらい時間がかかるのかといったことまで予測するために毎日膨大な量の情報」を処理したと報告している

では、Walmartのグローサリー代替品のためのAIをユニークなものにしているのは何なのか。Walmart Global TechのエグゼクティブバイスプレジデントSrini Venkatesan(スリニ・ヴェンカテサン)氏によると、WalmartがAIに教えるのに使うことができるデータの量は膨大なものだ。毎週2億人がWalmartの店舗とオンラインで15万を超える種類のグローサリー製品を買っている。AIはそのデータを消費者行動、好み、需要を予測するのに使っている。

「我々が構築したテックは、次に入手可能な最適のアイテムを決めるために、サイズやタイプ、ブランド、価格、買い物客の集計データ、各顧客の好み、現在の在庫など何百もの変数をリアルタイムに考慮するのに深層学習AIを使っています」とヴェンカテサン氏は説明した。「AIはあらかじめ顧客に代替品を認めるよう、あるいは欲しくないとの意思表示を示すよう尋ねます。これは将来のレコメンデーションの精度を高めるために学習アルゴリズムにフィードバックする重要なシグナルです」。

チェリーヨーグルトの代替品について即断するために(同じブランドの違う味でもいいか、あるいはより高価なブランドから出ている同じ味のものを確保するか)、Personal Shopperに聞くのではなくAIが判断する。Walmartはこのアルゴリズムの開発を2020年開始し、以来、顧客の代替品受け入れは改善した。

「アルゴリズムを導入する前はおおよそ90%でした。しかし今では97〜98%ほどです」とヴェンカテサン氏は話した。

2020年WalmartはPersonal Shoppersの数を17万人超に倍増させた。3750店舗が注文品のピックアップに、3000店が配達に対応していて、これは人口の68%をカバーしている。2021年初め、WalmartはAmazonのPrime Nowと競合するExpress配達サービスの買い物額35ドル(約3900円)以上という縛りを撤廃した。

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カテゴリー:人工知能・AI
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画像クレジット:Walmart

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

AndroidアプリがAmazonアプリストア経由でWindows 11に登場、ウィンドウとして動作

エコシステムは奇妙な仲間を生む。米国時間6月24日に行われた「Windows 11」イベントでは、最近記憶する中でもっとも奇妙な、そしてもっとも予想外だったニュースの1つが発表された。Microsoft(マイクロソフト)は、次のメジャーバージョンのOSでAndroidアプリを利用可能にする。

チーフプロダクトオフィサーであるPanos Panay(パノス・パネイ)氏は、この追加を「もう1つだけ小さなサプライズ」と呼び、モバイルアプリはスタートメニューやタスクバーに統合できると述べた。また、OSの新しいアプリ配置UIの一部として、タイル状に整列させたり「ウィンドウ」になったりする。

画像クレジット:Microsoft

これらのAndroidアプリは、Amazonアプリストアを経由してMicrosoft Store上で提供される。同社は、OSのデモで動作するTikTok(ティックトック)を紹介した。同アプリはモバイルファーストのデザインから予想されるように、縦長のポートレートで表示されている。

Androidアプリは185万種類あるので、現在のところ、これはMicrosoftのアプリストアに新しいコンテンツを大量に流し込み、最新の人気モバイルアプリをいきなりプラットフォーム上で利用できるようにする方法だ。しかし(Intel Bridge上に構築された)この体験が最終的にどれほど良いものかは、時が経ってみないとわからない。

Windows 11は2021年の年末ホリデーシーズンにリリースされる。

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画像クレジット:Microsoft

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

TikTokの好敵手Kuaishouが全世界でMAU10億人突破、東京オリンピックの放映権獲得

TikTok(ティックトック)の中国での最大のライバルであるKuaishou(クアイショウ、快手)にとって、現地時間6月23日は特別な日となった。海外では動画アプリ「Kwai」で知られる中国のショートビデオ企業は、月間アクティブユーザー数(MAU)が10億人を突破したと発表した。

それはどのくらいの規模なのか?FacebookのMAUは2021年3月時点で28.5億人だった。TikTokは2021年中に12億MAUを超えると予測されており、その中国版Douyin(抖音)は2020年9月にすでに6億人のデイリーユーザー(DAU)を獲得したと発表している。つまり、Kuaishouにはまだ追いつく余地があるということだ。

中国はKuaishouの主要な市場であり続ける。同社の海外のMAUは第1四半期に1億人を突破し、その間に「南米や東南アジアでの戦略を進めた」ことで、2021年4月には1億5000万人にまで急増したと、同社は決算説明会で述べている。

香港に上場しているKuaishouの株価は、6月23日に6%以上も上昇して1株あたり200香港ドル(約2860円)近くになり、時価総額は約8300億香港ドル(約11兆8640億円)に達したが、それでも2021年2月のピーク時の415香港ドル(約5930円)を大きく下回っている。

Kuaishouの世界進出は、海外市場で躍進している中国のインターネット企業はByteDance(バイトダンス)だけではないことを思い出させてくれる。中国のJoyy(ジョイ)が所有するBigoはインドで非常に人気のあるライブビデオアプリだったが、現地政府によって禁止されてしまった

Kuaishouの創業者兼CEOのSu Hua(宿华)氏は23日の記者会見で「Kuaishouは2011年からパイオニアとして、世界中のインターネットユーザーに自分のライフストーリーを記録し、共有する機会を提供してきました」と述べるとともに、同アプリが東京2020オリンピックの公式放映権を獲得したことを発表した。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Kuaishou中国SNSオリンピックアプリ東京オリンピック

画像クレジット:Kuaishou’s Kwai app

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

ライブ会場の再開に合わせてMixhaloが対面式ライブイベント用音声ストリーミングの新技術を発表

全米各地のライブ会場が再開される中、Mixhalo(ミックスヘイロー)は、その対面式ライブイベント用のオーディオストリーミングプラットフォームに「Mixhalo Over Cellular(ミックスヘイロー・オーバー・セルラー)」と「Mixhalo Rodeo(ミックスヘイロー・ロデオ)」と呼ばれる2つの新機能を追加することを発表した。

1つ目の機能は、その名の通り。Wi-Fiに頼る代わりに5Gを活用する。これはMixhaloの初期のWi-Fi製品で魅力とされていた「超低遅延」を提供できると、同社では述べている。

Mixhaloはこの機能を展開するために、携帯電話会社と協力しているが、その社名は明らかにしていない。ただし、この機能はLTEでも利用できるものの、明らかな理由により、5Gの方が低遅延を実現できる機会が多いと言及している。

もう一方の「Rodeo」は、既存の会場の無線ネットワークと連動するように設計されているため、追加のオーバーレイシステムを導入する必要がない。

「Rodeoシステムでは、既存のアクセスポイントがMixhaloのトラフィックを認識し、それに応じてネットワークデータの準備やバッファリングを行うことができるため、実際にネットワークの負担を軽減することができます」と、CEOのJohn Vars(ジョン・ヴァース)氏はTechCrunchに語った。「2015年以降にワイヤレスシステムを導入した会場であれば、Rodeoをサポートするために必要なハードウェアを備えている可能性が高いです。会場のサーバールームにサーバーを設置する必要がありますが、これがRodeoの唯一のハードウェアコンポーネントです」。

画像クレジット:Mixhalo

Incubus(インキュバス)のギタリストであるMike Einziger(マイク・アインジガー)氏らが共同で設立したMixhaloは、Pharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)氏の協力も得て、Disrupt 2017(ディスラプト2017)のステージでプロダクトを発表し、その超低遅延のストリーミング技術でライブイベントのサウンドを観客に届けることを約束した。

当然のことながら、2020年と2021年前半は、ライブイベントと結びついたスタートアップ企業にとって非常に大きな苦難の時となった。新型コロナウイルス感染流行の初期には、契約終了にともない人員削減を余儀なくされたとヴァース氏はTechCrunchに語ったが、その後は多くのパートナーシップのお陰もあり、なんとか成長していると付け加えた。

(左から)ファレル・ウィリアムス、Mixhaloの創業者でCEOのマイク・アインジガー、TechCrunchシニアライターのAnthony Ha。2017年5月17日にニューヨーク市のPier 36で開催されたTechCrunch Disrupt NY 2017 – Day 3のステージにて(画像クレジット:Noam Galai/Getty Images for TechCrunch)

「このような状況の中で明るい兆しが見られたのは、一歩下がって中核製品の改善に集中する機会が得られたからです」と、ヴァース氏は語る。「これらの改善には、今回発表したMixhalo RodeoやMixhalo over Cellularの他、会場内の物理的な位置に基づいて遅延を動的に調整する機能などが含まれています。新型コロナウイルス感染流行前のビジネスに全力投球していた中では、これらの改善に取り組む時間や機会が得られなかったかもしれません。これらの新機能により、スポーツ界のパートナーからの関心が高まり、Mixhaloの使用例が本格的に飛躍することを期待しています」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Mixhaloライブストリーミングイベント音楽音楽ストリーミングエンターテインメント5Gアプリ

画像クレジット:WIN-Initiative

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Androidスマホで「Googleが繰り返し停止しています」エラー多発、Google Japanが「不具合を修正中」として解決策を試すよう呼びかけ

Androidスマホで「Googleが繰り返し停止しています」エラー多発、Google Japanが「不具合を修正中」として解決策を試すよう呼びかけ

Androidスマートフォンで「Googleが繰り返し停止しています」というエラーが表示されるとの報告がSNSで相次いでいます。

筆者の手元のスマートフォン(Galaxy S21 Ultra)でも同様のエラーを確認しており、一時Googleアプリが開けなくなっていましたが、現在(15時21分)は開けるようになっています。(更新:15:32)再びGoogleアプリが開けなくなりました。

また、NTTドコモも公式Twitterアカウントで、一部のGoogleアプリが利用しづらい状況にあることを案内しています。

このエラーは、同社が配信したGoogeアプリの最新バージョン「12.23.16.23.arm64」に起因している模様。ストアで更新をアンインストールするか、設定からGoogleアプリを無効にするといった対処方法がSNSで紹介されています。

同様のエラーは日本のみならず、全世界で報告されています。

Androidスマートフォンでは、今年3月にもGoogle PlayやGmailなど一部のアプリが起動できなくなる不具合が発生しています。その際はシステムアプリの不具合が原因とされていました。

Google Japanは「不具合を修正中」とツイートしたうえで、問題が発生した場合、下記解決策を試すよう呼びかけています。

  1. Androidの設定アプリを起動
  2. アプリと通知をタップ
  3. 〇〇個のアプリをすべて表示をタップ
  4. アプリのリストから、Googleを探してタップ(あるいは右上の検索ボタンでGoogleを検索
  5. ストレージとキャッシュをタップ
  6. 「ストレージを消去」または「容量を管理」をタップ
  7. 「データを全て消去」をタップ

注:これにより、Google アシスタント の設定を含む、Google アプリの設定のいくつかが初期化されます。設定を変更していた場合は、再度見直して頂くようお願いいたします。

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:アプリ / モバイルアプリ(用語)Android(製品・サービス)Google / グーグル(企業)バグ / 脆弱性(用語)

プライバシー重視を追い風に快進撃中の検索エンジン「DuckDuckGo」がブラウザとしても使えるデスクトップアプリ開発

テクノロジーとプライバシーの保護をめぐる話題が沸騰を続けている。そこで、ユーザーを追跡しないことでかねてから評価の高い検索エンジンのDuckDuckGo(DDG)がこのほど、2020年末に既存および新たな投資家の混成グループから、主に「二次的投資」で1億ドル(約110億円)あまりのバランスシートの底上げを達成したことを明らかにした。

同社のブログで名が挙がっている投資家はOmers Ventures、Thrive、GP Bullhound、Impact America Fund、そしてWhatsAppの創業者Brian Acton(ブライアン・アクトン)氏、「world wide web」を発明したTim Berners-Lee(ティム・バーナーズ=リー)氏、VCでダイバーシティの活動家Freada Kapor Klein(フレーダ・ケイパー・クライン)氏、そして起業家のMitch Kapor(ミッチ・ケイパー)氏などだ。そうそうたる顔ぶれである。

DuckDuckGoによると、二次的投資であることによって、初期の社員や投資家の一部がその財務状態を強化するとともに、株式の一部を現金化できた。

しかし同社はこうも言っている。すなわち2014年以降ずっと利益が出ている同社は「繁昌」しており、1億ドル以上の年商を各年に報告している。したがって今同社は、外部投資家の鍋で煮られ続ける必要がない。

同社の最後のVCからの調達は2018年で、それは、Omers Venturesからしつこく迫られた1000万ドル(約11億円)のラウンドだった。Omersは、今そのい金があれば目標とする成長、とりわけ国際化を達成できる、と口説いた。

DDGには、他にも発表すべき数値がある。同社によると、そのアプリは過去12カ月で5000万回以上ダウンロードされた。それまでのすべての年を合わせたよりも多い。

また月間の検索トラフィックは55%増加し、米国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど一部の国ではモバイルの検索エンジンのナンバー2の地位を獲得した(StatCounter/Wikipediaによる)。

上のデータは「我々はユーザーを追跡しないのでその数を挙げることはできないが、マーケットシェアの推計とダウンロード数および各国のアンケート調査などによるとDuckDuckGoのユーザーは7000万から1億と思われる」、と言っている。

ヨーロッパでは、GoogleのAndroid選択画面の変更が迫っている。そこでは、規制当局からの強制により、Googleは同社のOSが動くモバイルデバイスのユーザーに、彼らがデフォルトの検索エンジンを設定するとき競合他社の製品も提示しなければならない。これによってDuckDuckGoの各地での運は、大吉に向かうと思われる。

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Googleは、他の検索エンジン企業が、自分がAndroidの選択画面に表示される権利をオークションへの入札で買うという悪習をやめる予定だから、プライバシーなど独自の価値命題を持つライバルで、しかもDuckDuckGoのようにブランド知名度もある企業には、Googleのマーケットシェアを奪うチャンスだ。

DuckDuckGoはブログで、ヨーロッパやその他の地域でマーケティング活動を強化すると確約している。

そのブログ記事は「また弊社の好調なビジネスは弊社に、今すぐにでも使える、オンラインのプライバシーのためのシンプルなソリューションがあることを多くの人びとに伝えるためのリソースを与えている。2021年5月は弊社は、全米の屋外広告やラジオ、テレビなどの広告を駆使し、175の大都市圏でこのことを宣伝してきた。ヨーロッパや世界中のその他の国にも、この努力を広げていきたい」と述べている。

……なのでDDGの二次資金の多くの部分が、同社のグロースマーケティングに投じられるだろう。同社は今、オンラインのプライバシーや、ユーザー追跡、そして長年のデータスキャンダルを背景とする、まるで自分のことが知られているかのような気持ち悪い広告に対する人びとの関心が盛り上がっている今を、好機として利用したいのだ。

Appleが最近iOSユーザーにサードパーティのアプリ追跡とそれを無効にする方法を教えるようになったことも、これらの問題への一般大衆の気がかりを高めている。Appleは下の例のような、Apple自身の良く出来た広告によって、人びとの関心を惹こうとしている。

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シンプルで説得力のあるマーケティングメッセージでプライバシーを語ることは容易ではない、と言っても過言ではないだろう。それを考えると今のプライバシー技術は使いやすさとアクセシビリティーの両方でかなり進歩した、と言ってよい。

というわけでDuckDuckGoのビジネスは確かに、ウェブの進化における現在の重大局面にぴったりはまっているようにも見える。同社のブログは「シンプルなプライバシー保護を言い表す代名詞のようなものになりたい」と言っている。ということは、もはや対象はニッチではなく全世界だ。

「あまりにも長く、オンラインのプライバシーに関する議論は懐疑論者たちが支配してきた。もちろんプライバシーは気になるが、でも彼らには何もできないと。今こそ、この悪質な定説を葬り去るべきだ」、とDDGのブログは言っている。

プライバシー追究歴13年のこのベテラン企業には、今後の製品の計画もいろいろある。

同社はすでに2018年に追跡ブロックを検索エンジンに導入したが、今後の計画では、もっと総合的なプライバシー保護機能「何でもありのプライバシー集大成」を展開したい。そこには検索とは一見無縁なメール用の保護ツールもあり、数週間後にベータでローンチできる。そしてそれは「新しい受信トレイを作らなくてもプライバシーを強化できる」そうだ。

ブログ記事はさらに続く。「この夏の終わりごろには、アプリのトラッカーブロックがAndroidデバイスでベータで使えるようになる。ユーザーはアプリトラッカーをブロックできるようになり、自分のデバイスの楽屋裏で起きていることへの透明性が増す。そして年内には、今のモバイルアプリの完全に新しいデスクトップバージョンをリリースする。それはメインのブラウザーとしても使えるもので、我々のシンプルでシームレスな総合的プライバシー機能により、弊社のプロダクトのビジョンである『シンプルになったプライバシー』を現実にしたい」。

それは、今私たちが目にしているプライバシー技術の、もう1つのトレンドだ。検索エンジンなら検索エンジンという特定の一種類のツールで、注意深く、信頼を損なわないようにして堅固な評判を構築してきた者が、ユーザーの成長とともに、さまざまなアプリを取り揃え、完全に総合的なプライバシー保護システムを提供していく。

たとえばメールアプリのProtonMailはプライバシー企業Protonに姿を変えて、エンド・ツー・エンドの暗号化メールだけでなく、クラウドストレージやカレンダー、それにVPNまで揃えて、それらすべてが同社のプライバシー重視の傘の下に整然と収まっている。

プライバシー技術は今後ますます開発が加速度的に進み、これまでのついでの技術からメインストリームの技術へと変貌を遂げるだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:DuckDuckGoアプリプライバシー検索エンジン

画像クレジット:Frank Vassen/Flickr CC BY 2.0のライセンスによる

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アマゾンがアプリストアの手数料引き下げとAWSクレジットで小規模開発者を支援

Apple(アップル)やGoogle(グーグル)といった大手アプリストアに続き、Amazon(アマゾン)がアプリ開発者を支援する「Amazon Appstore Small Business Accelerator Program」を間もなく開始すると、米国時間6月15日に発表した。この新しいプログラムは、対象となる売上の少ないアプリ開発者からアマゾンが受け取る手数料を削減するというもの。これまでAmazonアプリストアでは、アプリ内課金を含む収益の30%が手数料として徴収されていたが、今回のプログラムが開始になると、前年の収益が100万ドル(約1億1000万円)以下だった開発者は手数料が20%に引き下げられ、さらにAWS(アマゾン ウェブ サービス)のクレジットが提供される。

このプログラムの仕組みは、2020年末に発表されたアップルの「App Store Small Business Program」と似たものだ。アップルのプログラムでは、年間の収益が100万ドル以内であればアップルから差し引かれる手数料が15%に引き下げられ、100万ドルを超えると標準の30%に移行する。この手数料率は翌年に入っても継続される。一方、2021年になってからGoogleが取った方針はやや異なり、Google Playストアを通じて得た収益が毎年100万ドル分までは手数料が15%に引き下げられるというものだった。

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アマゾンが徴収する手数料はそれでも20%と、アップルやGoogleより依然として大きいが、これは開発者にAWSクレジットという別の特典を提供するためだ。

同社によると、1暦年におけるAmazonアプリストアからの収益が100万ドルに満たない開発者は、収益の10%をAWSサービスのプロモーションクレジットとして受け取ることができるという。これによって開発者が利用できるAWSサービスには、コンピューティング、ストレージ、データベースなどのインフラストラクチャー技術から、機械学習や人工知能、データレイクやアナリティクス、IoT(モノのインターネット)などの新興技術まで含まれると、アマゾンは述べている。このAWSのクレジットに手数料の減額を合わせると、開発者は最大で収益の90%相当を受け取ることができると、アマゾンは主張する。

開発者の収益が当年中に100万ドルを超えると、標準手数料率に戻り、年内はAWSクレジットを受け取れなくなる。

翌年以降に開発者の収益が再び100万ドルを下回った場合は、その次の暦年には再びプログラムの対象となる。

「私たちは、クレジットを通じて小規模な事業者がAWSを使い始められるように支援し、そのアプリビジネスを容易に構築・成長させることができるようにしたいと考えています」と、AmazonアプリストアのディレクターであるPalanidaran Chidambaram(パラニダラン・チダンバラム)氏は発表の中で述べ「AWSを使うことで、開発者は幅広い技術に簡単にアクセスでき、革新を加速させ、想像できるほとんどすべてのものを構築できるようになります」と続けている。

アプリストアの手数料を引き下げる動きの背景には、大手テック企業のビジネスの性質に対して、Basecamp(ベースキャンプ)、Spotify(スポティファイ)、Epic Games(エピック・ゲームズ)などの大規模なアプリパブリッシャーが反競争的であると主張し、規制当局からの圧力が強まっているという現況がある。Epic Gamesはアプリストアの手数料をめぐってアップルを提訴しており、この裁判の結果が前例となる可能性もある。このような状況に対応し、アップルとGoogleは善意の表れとして、自社のアプリストアプラットフォームの収益に大きな影響を与えない範囲で、小規模事業者から徴収する手数料を引き下げることにしたのだ。

アマゾンによると、この新しいプログラムは2021年第4四半期に開始となる予定で、参加方法についての詳細はその時に発表されるという。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Amazonアプリ

画像クレジット:Amazon

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Android版「Googleアプリ」にセキュリティバグ、検索履歴などほぼすべての個人情報が危険に晒されていた

50億以上のインストール数を誇るGoogle(グーグル)の名を冠したAndroidアプリに、最近まで攻撃者が被害者のデバイスから個人情報をこっそり盗み出すことができる脆弱性があったことが明らかになった。

モバイルセキュリティを専門とするスタートアップOversecuredの創業者であるSergey Toshin(セルゲイ・トーシン)氏は、ブログ記事の中で、この脆弱性は、Googleアプリがアプリ自体にバンドルされていないコードに依存していることと関係があると述べている。Googleアプリを含む多くのAndroidアプリは、Android端末にすでにインストールされているコードライブラリに依存することで、ダウンロードサイズや実行に必要なストレージ容量を削減している。

しかし、Googleアプリのコードにあった欠陥のため、正規のコードライブラリではなく、同じ端末上の悪意のあるアプリからコードライブラリを引き出すように騙される可能性があったという。すると悪意のあるアプリがGoogleアプリの権限を継承し、ユーザーのデータにほぼ完全にアクセスできるようになっていた。このアクセス権には、ユーザーのGoogleアカウント、検索履歴、メール、テキストメッセージ、連絡先、通話履歴へのアクセスの他、マイクやカメラの起動、ユーザーの位置情報へのアクセスなどが含まれる。

攻撃が機能するためには悪意のあるアプリを一度起動する必要がある、とトーシン氏は述べているが、この攻撃は被害者の知識や同意なしに行われるという。悪意のあるアプリを削除しても、Googleアプリから悪意のあるコンポーネントを取り除くことはできないとのこと。

Googleの広報担当者はTechCrunchに対し、同社は2021年5月にこの脆弱性を修正しており、この欠陥が攻撃者に悪用されたという証拠はないと述べている。Androidに内蔵されているマルウェアスキャナー「Google Play Protect」は、悪意のあるアプリのインストールを阻止するためのものだ。しかし、どんなセキュリティ機能も完璧ではなく、これまでにも悪意のあるアプリがその網をすり抜けたことがあった。

トーシン氏によると、今回のGoogleアプリの脆弱性は、2021年初めに同社がTikTok(ティックトック)で発見した別のバグと類似しているという。そちらのバグは、悪用されると攻撃者がTikTokユーザーのセッショントークンを盗み、そのアカウントを支配することが可能になるというものだった。

OversecuredはAndroidのGoogle Playアプリや、最近ではSamsung(サムスン)のモバイル端末にプリインストールされているアプリなど、他にもいくつか同様の脆弱性を発見している。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:AndroidアプリGoogleバグ

画像クレジット:Nicolas Economou / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

Spotifyがライブオーディオアプリ「Greenroom」を提供開始、Clubhouseのライバル誕生

Spotify(スポティファイ)は2021年3月、ライブオーディオマーケットへの参入を加速させるために、スポーツ専門のオーディオアプリLocker Roomを運営する会社を買収する発表した。そしてSpotifyは6月16日のSpotify Greenroomの立ち上げでその目的を遂行する。Spotify Greenroomは、世界中のSpotifyユーザーがライブオーディオルームに参加したりルームをホストしたり、ときにそうした会話をポッドキャストに変えることができる新しいモバイルアプリだ。同社はまた、新しいアプリに将来多くのコンテンツが加わるようにするためのCreator Fundも発表した。

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Spotify GreenroomアプリそのものはLocker Roomの既存のコードをベースにしている。実際、現在のLocker Roomユーザーは6月16日からブランドとデザインが改変されたGreenroomエクスペリエンスになるのを目にするとSpotifyはTechCrunchに語った。

Locker Roomは白と赤みがかったオレンジ色のスキームを使っていたが、新しいGreenroomアプリはかなりSpotify派生物のような外観で、Spotifyと同じカラーパレット、フォント、イコノグラフィーを使っている。

新アプリを利用するには、Spotifyユーザーは現在のSpotifyアカウント情報を使ってサインインする。そして関心のあるものを結びつけるためのオンボーディングがある。

画像クレジット:Spotify

当面、聴くオーディオプログラムを見つけるプロセスは主にアプリ内でのユーザーのグループ参加に頼る。これはLocker Roomが展開してきたものに似ている。Locker Roomではユーザーはお気に入りのチームを見つけてフォローしていた。しかしGreenroomのグループはもはやスポーツにだけ結びついているのではなく、より大衆的だ。

聴きたいと思われるコンテンツにユーザーをつなげるためにSpotifyのパーソナライゼーションテクノロジーを活用するというのがGreenroomの計画だ、とSpotifyは語った。例えばすでにSpotifyでフォローしているポッドキャスターがSpotify Greenroomでライブを行う場合、ユーザーにノーティフィケーションを送ることができる。あるいは、ターゲットを絞ったレコメンデーションをするために、あなたがどのような種類のポッドキャストや音楽を聴いているのかを活用することもできる。

Spotify Greenroomの機能セットは、ClubhouseやTwitterのSpaces、FacebookのLive Audio Roomsなど、他のライブオーディオサービスのものとほぼ同じだ。ルームのスピーカーは丸いプロフィールアイコンでスクリーン上部に表示され、リスナーはスピーカーのものより小さなアイコンで下部に表示される。ミュートオプションやモデレーションコントロールがあり、ライブオーディオセッション中にリスナーをステージに登場させることもできる。ルームは最大1000人をホストでき、Spotifyは今後この数をさらに増やす見込みだ。

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リスナーはアプリで「ジェム」をあげることでスピーカーにバーチャルの拍手を送ることができる。この機能はLocker Roomから来ている。スピーカーが稼いだジェムの数はセッション中、プロフィール写真の横に表示される。差し当たってはこうしたジェムに金銭価値はないが、Greenroomがまだ収益をあげる方法を提供しておらず、これは明らかに次のステップのようだ。

Spotify Greenroomと同種のライブオーディオアプリの間にはいくつかの主な差別化要因があることは記すに値する。まず第一に、Spotify Greenroomはホストが好きな時にオンにしたりオフにしたりできるライブテキストチャット機能を提供している。ホストはライブオーディセッションが終わった後にそのオーディオファイルをリクエストし、ポッドキャストのエピソード用に編集することもできる。

おそらく最も重要なことは、ライブオーディオセッションがSpotifyによって録音されることだ。これはモデレーション目的のためだと同社は話す。ユーザーがGreenroomオーディオルームに関して何か問題を報告すると、Spotifyはどのようなアクションが必要かを判断するために録音を調べることができる。これはClubhouseが対応に苦慮してきた部分だ。Clubhouseのユーザーはときに、アプリ内でリアルタイムに有害性や乱用に直面してきた。ここには人種差別や女性差別のような問題の多い分野も含まれる。直近では、反ユダヤ主義やヘイトスピーチのために数多くのルームを閉鎖しなければならなかったとClubhouseは述べた。

SpotifyはSpotify Greenroomのモデレーションは既存のコンテンツモデレーションチームによって管理されると話す。もちろん、Spotifyがいかに早く不適切なユーザーに対応したり、行動規範に違反したライブオーディオルームを閉鎖したりできるかは今後明らかになる。

6月16日のアプリの立ち上げはユーザーがつくるライブオーディオコンテンツにフォーカスしている一方で、SpotifyはGreenroomでさらに大きな計画を持っている。今夏、同社はプログラムが組まれたコンテンツに関する発表を行う計画だ。これは他の新機能の立ち上げとともに最優先事項だとしている。Locker Roomで知られていたスポーツコンテンツに加え、音楽、カルチャー、そしてエンターテインメントに関連するプログラミングが含まれる。

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同社はまた、Spotify Greenroomに音楽にフォーカスしたコンテンツを根づかせることを期待して、Spotify for Artistsチャンネルを通じてアーティストにSpotify Greenroomを売り込むとも話す。そしてクリエイター向けの収益化オプションも今後視野に入ってくることも認めたが、それらがどのようなものになるか具体的な詳細は示していない。

加えて、Spotifyは米国のオーディオクリエイターが収入を得られるようにするのをサポートするSpotify Creator Fundを発表した。しかしこのファンドの規模や、クリエイターが受け取れる額、基金分配のタイムフレーム、選考基準、その他の要因など詳細は明らかにしなかった。将来この機会について話を聞きたい人向けのサインアップフォームを提供しているだけだ。これはクリエイターにとって、オプションがたくさんある中で比較検討を難しいものにしそうだ。

Spotify Greenroomは世界135マーケットのiOSとAndroidで6月16日から利用できるようになった。Spotifyそのものが展開されている178マーケットと同じ規模ではない。差し当たっては英語のみだが、今後成長とともに拡大する計画だ。

カテゴリー:ネットサービス
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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

2021年第1四半期のモバイルゲーム週支出額が過去最多の約1872億円に、パンデミック前から40%増

新型コロナウイルスパンデミックでは、ロックダウン下に置かれた消費者がゲームなどエンターテインメントのオンラインソースに目を向けたため、モバイルゲームに対する需要が増えた。しかし新型コロナ規制が緩和されても、モバイルゲーム需要は減退していない。モバイルデータ分析会社App AnnieがIDCの協力を得てまとめた新たなレポートによると、2021年第1四半期の世界のゲームダウンロード数は2019年第4四半期に比べ30%多く、2021年第1四半期のモバイルゲーム週支出額は過去最多の17億ドル(約1872億円)だった。

この額はパンデミック前より40%多い、とレポートにはある。

画像クレジット:App Annie

北米と西欧マーケットにおける2021年第1四半期のモバイルゲーム支出額の前年同期からの成長は、米国とドイツがそれぞれのマーケットを引っ張った。そしてアジア太平洋地域を除く世界の成長ではサウジアラビアとトルコがリードした。アジア太平洋地域は2021年第1四半期のモバイルゲーム支出額の約半分を占めた、とApp Annieは指摘した。

画像クレジット:App Annie

モバイルゲーミング分野の成長は、部分的にはパンデミックにより加速したが、そのペースはデジタルゲーム消費の他のフォームを上回っている。2021年、モバイルゲーミングの支出額はPCとMacの2.9倍、家庭ゲームコンソールの3.1倍とリードをさらに広げた。

画像クレジット:App Annie

ただ、この変化はモバイルとコンソールのマーケットが合併しつつある中でのものだ、とApp Annieは指摘している。クロスプラットフォーム能力やソーシャルゲーミング機能など、より多くのモバイルデバイスがコンソールのようなグラフィックスやゲームプレイエクスペリエンスを提供している。

リアルタイムのオンライン機能を持つゲームがアプリストアの売上高チャートのトップを独占する傾向にある。例えば2021年第1四半期にiOSとGoogle Playで世界で最も売り上げが多かったモバイルゲームはRobloxだった。その次がビジュアルエクスペリエンスが評価され、WWDCでAppleデザイン賞を獲得したGenshin Impactだった。

画像クレジット:App Annie

レポートはまた、ゲーミングを取り巻く広告マーケットと、My NintendoやXbox Game Pass、PlayStation App、Steam、Nintendo Switch、Xboxアプリなどゲームコンソール用のモバイルコンパニオンアプリの成長についても分析した。こうしたアプリのダウンロード数はロックダウン下で2020年4月にピークに達したが、パンデミック前よりも好調を維持し続けている。

画像クレジット:App Annie

広告面に関しては、ゲーム内モバイル広告に対するユーザーマインドは2019年第3四半期に比べて2020年同期は改善したものの、米国では動画リワード広告とプレイアブル広告(実際に触って遊べる広告)が好まれた。

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カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:App Annieアプリ

画像クレジット:Nasir Kachroo/NurPhoto / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

WordPress.comのオーナー企業Automatticがプライベートな日記アプリ「Day One」を買収

Automatticは、MacおよびAppleモバイルデバイス向けの人気ジャーナリングアプリ「Day One」を買収し、オンラインライティングプラットフォームのラインナップを拡充する。Day Oneは、2011年3月にMacおよびiTunes App Storeでリリースされて以来、1500万回以上ダウンロードされており、ユーザーが自分の考えを共有できるプライベートな場所を提供、App Storeのエディターズチョイス、App of the Year、Apple Design Awardを受賞し、様々なレビューで賞賛を受けている。

買収の条件は公表されていない。Day Oneは10年間、自己資本のみで運営してきた。

Day Oneの追加は、Automatticの今増加中のライティングツールコレクションの興味深い拡張だ。同社のライティングツールといえば今やブログプラットフォームのWordPress.comとTumblrがその筆頭だが、後者は2019年にAutomatticが、その古びたソーシャルブログネットワークを親会社のVerizonから、同社の買値10億ドル(約1100億円)のほんの一部のわずかな金額で買い取ったものだ(TechCrunchTechCrunchはまだVerizonがオーナーだ)

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WordPressやTumblrのように公開することを重視したアプリとは異なり、Day Oneはプライバシーを重視している。このアプリはテキスト、メディア、さらには音声記録を含むすべての日記エントリーに対して、エンド・ツー・エンドの暗号化を提供する。また、自動バックアップ、Instagramの投稿の自動インポート、ボイストランスクリプション、テンプレート、リッチテキスト形式、位置情報、オプションである本へのプリントといった高度な機能や、Spotify、YouTube、Facebook、Twitterなどの他のプラットフォームとの統合も行っている。

Day OneがAutomatticに加わったことによって、ユーザーは本来プライベートな日記の一部をWordPress.comやTumblrで公開したり、近々、それらのコンテンツをDay Oneにインポートできるようになる。既存のTumblrユーザーにとっては、プライベートなエントリーを誤ってメインブログに公開するのではなく、より保護・バックアップされたライティングツールに同期するための手段としても有効だ。

Automatticの発表によると、買収後もDay OneのCEOであるPaul Mayne(ポール・メイン)氏がDay Oneの開発を継続する。12名のチームも、現在のままだ。

メイン氏はTechCrunchに次のように語った。「私たちは彼らのチームがスムーズに統合されるように努力しており、一緒になって集団的で強固な文化を作り続けることができます」。メイン氏によると、現在の顧客に関しては、移行プロセスというものはない。何もかも、これまでと同じだ。

メイン氏はブログで、Day Oneを売却した理由に触れている。それによると、WordPress.comやTumblrを支えている技術的、財務的、そしてセキュリティのメリットにDay Oneもアクセスできるようになるという魅力は大きいものだという。

「これはとてもエキサイティングなニュースです。Day Oneを立ち上げてからの10年間、私は世界で最高のデジタルジャーナリング体験を作るだけでなく、長く使っていけるものを作るために努力してきました。Automatticに参加することで、Day Oneの保存と寿命は確実なものになるとこれまで以上に確信しています」とメイン氏と語る。

メイン氏はまた、Day Oneのプライベート性を変更する予定はないが、このアプリは今後Automatticの他の製品と統合され、サブスクリプションモデルによって維持されることになると述べている。既存ユーザーには、価格の変更はないとのこと。

Sensor Towerのデータによると、Day Oneのモバイルアプリは全世界で440万インストールされている。2020年のインストール数は約99万3000件で、2019年の100万件以上から10%減ったが、このわずかな減少は、ユーザーが新型コロナウイルスによるロックダウン中に自宅のコンピュータからジャーナルを更新したため、デスクトップ版のダウンロードが増えたことが原因となった可能性がある。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Day OneAutomatticWordPress.comTumblr買収アプリジャーナリング

画像クレジット:Day One

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Appleが買収したDark SkyのiOSアプリとウェブサイトが2022年末で終了へ

Apple(アップル)が2020年3月にDark Sky(ダークスカイ)を買収した後、かなりきめ細かな天気情報を提供するDark Skyアプリがおそらくなくなるだろうということは分かっていた。しかし同年7月にAndroid版が終了すると発表した一方で、iOS版の方ではなくすべき制限がいくらか残っていた。「今回」はiOS版は「ノーチャージ」になる、とDark Skyは述べた。

それから1年、Dark Skyのブログがわずかに更新され(9to5macが気づいた)、Dark Sky iOSアプリ、API、ウェブサイトの提供期限が案内された。共同創業者のAdam Grossman(アダム・グロスマン)氏は以下のように書いた。

既存顧客向けのDark Sky APIサービスのサポートは2022年末まで展開されます。iOSアプリとDark Skyウェブサイトも2022年末まで利用できます。

ここに解釈の余地が残されていることは指摘するに値するだろう。2022年末にシャットダウンするとは明言されておらず、ただ2022年末まで展開することを約束している。おそらくそれ以降の運命は流動的ということなのだろう。TechCrunchはこの点についてAppleに説明を求めていて、返事があるまでは今回の告知をシャットダウンが控えていることのヘッドアップとしてとらえる。

実際には今回の告知は逆にAPIとDark Skyウェブサイトのエクステンションだ。以前、ウェブサイトは2020年8月にシャットダウンされる予定だった。一方、APIは2021年末のシャットダウンが予定されていた。

今回のニュースの数日前に、AppleはiOSにビルトインされている天気アプリのオーバーホールをWWDCで発表していた。

[原文へ]

(文:Greg Kumparak、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルが2021年「アップル・デザイン・アワード」を発表

Apple(アップル)は2021年のApple Design Award(デザイン・アワード)優勝者を、バーチャル開催のWordwide Developers Conference(WWDC)の期間中に発表した。例年は会の終了時に行われていた。カンファレンスの前にAppleは、ファイナリストのプレビューを公開し、技術、デザイン、創意工夫を組み合わせたアプリやゲームの成果を紹介した。そして6月10日の夜に6つのアワード部門の勝者を発表した。

Appleは、各部門でアプリとゲームを1つずつ、勝者に選んだ。

Inclusive(インクルーシブ、包摂)部門の賞は、多様な生い立ち、能力、言語の人たちを支えた作品に贈られた。

2021年の優勝者は、米国企業、Aconite(アコナイト)の非常にわかりやすいゲーム、HoloVista(ホロビスタ)が選ばれた。ユーザーはモーション・コントロール、テキスト・サイズ、テキストのコントラスト、サウンド、視覚効果の強度を調整することができる。ゲームはユーザーがiPhoneのカメラを使って隠された対象を探したり、パズルを解いたりして進んでいく(TechCrunchの紹介記事)。

画像クレジット:Aconite

もう1つの勝者、Voice Dream Reader(ボイス・ドリーム・リーダー)は20以上の言語に対応したテキスト読み上げアプリで、適応調整と高度なカスタマイズ設定が可能だ。

画像クレジット:Voice Dream LLC

Delight and Fun(楽しさとおもしろさ)部門の勝者は、Appleテクノロジーによって強化された記憶に残る魅力ある体験を与えた者に贈られる。ベルギー発のPok Pok Playroom(ポク・ポク・プレイルーム)はSnowman(スノーマン、Altoのアドベンチャー・シリーズ)からスピンアウトした子ども向けエンターテインメント・アプリで、よく考えられたデザインと微細な触覚効果、サウンドエフェクト、相互作用を使用している(TechCrunchの紹介記事)。

画像クレジット:Pok Pok

もう1人の勝者、英国のLittle Orpheus(リトル・オルファウス)はストーリーテリングとサプライズと楽しみを組み合わせたゲームコンソール的体験を提供するカジュアルゲームだ。

画像クレジット: The Chinese Room

Interaction(相互作用)部門の勝者に輝いたのは、直感的なインターフェースと簡単なコントロールを提供するアプリだとAppleはいう。

米国拠点のいやみったらしいお天気アプリ、 CARROT Weather(キャロット・ウェザー)は、ユーモラスな予報、ユニークなビジュアルと楽しませる体験で賞を勝ち取った。Apple Watch(アップル・ウォッチ)の文字盤とウィジェットも提供されている。

画像クレジット:Brian Mueller, Grailr LLC

カナダ発のゲーム、Bird Alone(バード・アローン)は、ジェスチャーと触覚と視差にダイナミックなサウンドエフェクトを巧みに組み合わせ独自の世界に命を吹き込む。

画像クレジット:George Batchelor

Social Impact(社会的影響)部門では、デンマークのBe My Eyes(ビー・マイ・アイズ)が選ばれた。視覚障害者や弱視の人たちに、世界中の有志がカメラを使ってものを識別させる。現在30万人以上のユーザーが450万人以上の有志に支えられている(TechCrunchの紹介記事)。

画像クレジット:S/I Be My Eyes

英国のustwo games(アストゥー・ゲームズ)がAlba(アルバ)でこのカテゴリーの勝利を得た。環境の大切さを教えるゲームで、プレイヤーは野生生物を保護し、橋を修理し、ゴミをかたづけていく。ゲームがダウンロードされるごとに植樹も行っている。

画像クレジット:ustwo games

Visuals and Graphics(ビジュアル・グラフィクス)部門の勝者は「驚くような画像、巧みに描かれたインターフェースと高度なアニメーション」を特徴としている、とAppleは言っている。

ベラルーシ拠点のLoóna(ルーナ)は眠りの世界を提供する。リラックス運動とアトモスフェリック・サウンドにストーリーテリングを組み合わせることでユーザーが眠りにつくのを手伝う。このアプリは2020年末Googleの2020年「ベスト・アプリ」に選ばれた

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画像クレジット:Loóna Inc

中国のGenshin Impact(ゲンシン・インパクト)は、モーションブラー、シャドウ・クォリティー、フレームレートをプレイ中に再構成できるゲーミングのビジュアル限界を押し広げたことで勝者に選ばれた。

画像クレジット:miHoYo Limited

Innovation(イノベーション)部門の勝者はインドのNaadSadhana(ナードサダナ)、アーティストの演奏と公開を支援するスタジオ品質の音楽アプリだ。AIとCore MLを使用して音程の正確さのフィードバックを返し、マッチした伴奏を生成する。

画像クレジット:Sandeep Ranade

Riot Games(ライオット・ゲームズ)のLeague of Legends:Wild Rift(リーグ・オブ・レジェンド:ワイルドリフト)は、複雑なパソコンゲームの名作を元に、タッチスクリーン・コントロール、初心者のための自動ターゲティング・システムやモバイル独自のカメラセッティングなどを加えた完全モバイル体験を提供して賞を勝ち取った。

画像クレジット:Riot Games

2021年の勝者たちはハードウェアとアワードそのものの入ったプライズ・パッケージを受け取る。

勝者を特集したビデオはApple Developerウェブサイトのここにある。

「2021年のApple Design Awardの優勝者たちは、私たちが優れたアプリ体験に期待するものを再定義しました。彼らの正当に評価された勝利に祝福を贈ります」とAppleのWorldwide Developer Relations担当副社長、Susan Prescott(スーザン・プレスコット)氏が声明で述べた。「デベロッパーたちの仕事はアプリとゲーム・プレイが私たちの日常生活に不可欠な役割を具体化するとともに、新たな6つのアワード部門の模範例となりました」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleWWDCWWDC2021アプリ

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

iOSアプリ内でそれぞれのサブスクの管理や返金が可能に、アップルがStoreKit 2を発表

iOSアプリの中でサブスクリプションを購入し、後でキャンセルしたりアップグレード、ダウングレードあるいは払い戻しをしたいと思ったことのある人なら、そのための変更や申請のやり方がわからなくて苦労したことだろう。中にはアプリをiPhoneから削除するだけでサブスクリプション料金を取られなくなると信じている人もいる。iPhoneの設定アプリやApp Storeを探し回って返金方法を見つけようとする人もいる。Apple(アップル)が今週のWWDC 2021で発表したStoreKit 2は、そんなユーザーの苦労を少し和らげてくれるかもしれない。

StoreKitはAppleのアプリ内購入を管理するためのデベロッパーフレームワークだ。ここ数年複雑さをましている分野だ。なぜなら、多くのアプリが1回の買い切りからサブスクリプション方式に切り替ええ、さまざまなコースや期間や機能の選択肢を提供しているからだ。

画像クレジット:Apple

現在、サブスクリプションを管理または解約したい人は、App StoreかiPhoneの設定から行うことができる。しかし、設定アプリからそこへ至るためにはApple ID(画面トップの自分の名前とプロフィール写真がある部分)をタップする必要があることに気づかない人もいる。設定アプリやApp Storeの使い方に慣れていないために挫折することもあるだろう。

ちなみに「アプリ内サブスクリプション」の返金を要求するにはさまざまな方法がある。たとえばメールの受信箱からAppleの領収書を探し出して、「Report a Problem (問題を報告)」リンクをタップすれば、問題があったときに返金を要求することができる。これは、サブスクリプションを間違えて(あるいは子どもが!)購入してしまったときや、約束されていた機能が目的どおりに働かなかったときなどに有用だ。

Appleは、専用ウェブサイト提供していて、そこではアプリやコンテンツの返金を直接要求することができる(「Apple 返金手続き」などのワードで検索すると、たいてい検索結果のトップにこのページが出てくる)。

しかし、多くのユーザーは技術に長けていない。そんな人たちにとって、サブスクリプションを管理したり返金手続きをする最も簡単な方法は、おそらくそのアプリ内で行うことだ。このため、多くの良心的アプリ開発者は、ユーザーをAppleのサブスクリプション管理や返金のページに誘導するリンクをアプリ内に設けている。

StoreKit 2は、デベロッパーがその種の仕組みをさらに簡単に実装するための新しいツールを導入した。

新しいツールの1つがManage Subscription API(サブスクリプション管理API)で、デベロッパーはユーザーをApp Storeにリダイレクトすることなく、アプリ内で直接サブスクリプション管理ページを表示することができる。またデベロッパーはオプションとして、ユーザーに「Save Offer(割引特典)」画面を表示して、解約を思い止まらせるための割引などを提案したり、サブスクリプションを中止する理由を尋ねる出口アンケートを行うこともできる。

新機能が実装されると、ユーザーはApp Storeでサブスクリプションの解約や変更を行う時とまったく同じ画面をアプリの中で見ることができる。解約後には、解約の詳細とサービスが使えなくなる日付の書かれた確認画面が表示される。

ユーザーが返金を要求したいときは、新しいRefund Request API(返金手続きAPI)を使えば、ここでもApp Storeや他のウェブサイトにリダイレクトされることなく、アプリ内で直接返金手続きを開始できる。ユーザーは表示された画面で、返金して欲しい項目を選択し、返金を求める理由にチェックを入れる。返金手続きはAppleが処理し、返金を承認または却下した通知がデベロッパーのサーバーに送られる。

しかし、中にはこの変更でもまだ十分ではないというデベロッパーもいる。彼らは顧客のサブスクリプション管理や返金の手続きを、プログラムによる方法を使って自分自身で行いたいのだ。ちなみに、現在ユーザーが返金申請の結果を受け取るまでには最大48時間かかるとAppleは言っているので、混乱を招く可能性もある。

「Appleは手続きを多少スムーズにしましたが、デベロッパーは未だに返金や解約を自身で主導することができません」とRevenueCat(レベニューキャット)のCEO Jacob Eiting(ジェイコブ・イーティング)氏は指摘する。この会社はアプリ開発者がアプリ内購入を管理するためのツールを提供している。「これは正しい方向への一歩ですが、誰が返金の責任を持つかに関して、デベロッパーと消費者の間の混乱を大きくする恐れがあります」。

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つまり、アプリの中で申請がやりやすくなったことで、ユーザーは返金手続きをデベロッパーが行っていると信じる可能性がある。実際には今と同じくAppleが行っているのに。

新しいプロセスが対応していないシナリオもあると指摘するデベロッパーもいる。例えばユーザーがアプリをすでにアンインストールしていたり当該デバイスをすでに所有していない場合には、従来と同じく他の方法で返金を申請しなくてはならないことだ。

しかし消費者にとっては、この種のサブスクリプション管理ツールができることは、今以上に多くのデベロッパーが、サブスクリプション管理や返金申請のボタンをアプリ内に置くようになり、体験が向上することを意味している。ユーザーがアプリを使うこともサブスクリプションを管理することも簡単にできるようになれば、デベロッパーは顧客維持や利用度の向上が見込め、App Storeのレビュー評価も高くなる、とAppleは述べている。

StoreKit 2の変更は、サブスクリプションと返金を管理するためのAPIに限定されていない。

デベロッパーは、新たにInvoice Lookup APIも利用できるようになり、ユーザーのアプリ内購入を調べて請求書を確認したり購入に関する問題を特定したりすることができる。例えばApp Storeですでに返金処理が行われているかどうかを知ることができる。

新しいRefunded Purchases API(返金済み購入API)を使うと、デベロッパーが特定ユーザーによる返金をすべて見ることができる。

新しいRenewal Extension API(更新延長API)は、使用不可期間が生じた場合に、デベロッパーが有効な有料サブスクリプションの更新時期を延期することができる。たとえばストリーミングサービスがダウンした場合などのカスタマーサポート問題に対応するためだ。このAPIを使うとデベロッパーは、年間2回まで、それぞれ最長90日間サブスクリプションを延長することができる。

そして、新しいConsumption API(コンテンツ消費API)では、デベロッパーがユーザーのアプリ内購入に関する情報をApp Storeと共有できる。これはApp Storeでの返金承認手続きの際に役立つ情報だ。ほとんどの場合、ユーザーは購入直後からコンテンツを使用し始める。しかしこのAPIを使うことで、App Storeはユーザーがアプリ内購入したものを一部あるいは全部使ったのか、あるいはまったく使っていないのかを知ることができる。

他には、ユーザーがアプリを再インストールしたり別のデバイスでダウンロードしたときに役立つ変更がある。これまでユーザーは、新たにダウンロードしたり再インストールしたアプリに、完了した支払い状態を「購入の復旧」によって手動で同期する必要があった。これからはその情報はStoreKit 2が自動的に取得するので、アプリはユーザーの支払状況を直ちに更新できる。

全体としてはStoreKitフレームワークにとって大きな意味のあるアップデートだが、デベロッパーが自身のサブスクリプション顧客に対するコントロールを拡大することに対するAppleのためらいぶりは、この会社がどれほどアプリ内購入を支配したがっているかをものがたっている。おそらくそれは、過去にデベロッパーによる返金管理を許そうとして痛い目にあったためだろう。

2021年5月、Epic Games(エピック・ゲームズ)対Appleの反トラスト裁判に関連してThe Vergeが報じたところによると、AppleはかつてHulu(フールー)にサブスクリプションAPIを提供したところ、Huluが高額のサブスクリプション・プランにアップグレードしようとしたユーザーに対して、App Storeを通じて自動的にサブスクリプションを解約する方法(訳注:Appleの手数料を回避するため)を知らせていたことを知った。AppleはこうしたAPIの誤使用を防ぐために行動を起こす必要があることを認識し、Huluは後にAPIへのアクセスを失った。それは、当該APIが広く利用可能になる前のできごとだった。

その反面、サブスクリプション管理と返金を、デベロッパーではなく、Appleに任せることは、Appleが詐欺行為防止に関連する責任をもつことを意味している。詐欺行為はユーザー、デベロッパー両方によるものがあり得る。また、ユーザーにはサブスクリプション請求を1カ所、すなわちAppleで管理したい、という要望もある。デベロッパーとの個別のやりとりは、一貫性のない体験になりがちでユーザーにとってありがたくない。

一連の変更が重要なのは、サブスクリプション収入がAppleの裕福なApp Storeビジネスに多大な貢献をしているからだ。WWDC 21の前にAppleは、2020年のApp Storeでのデジタル製品とサービスの売上が前年比40%増の860億ドル(約9兆4080億円)に伸びたことを報告した。2021年1月Appleは、App Storeが2008年に開始して以来、2000億ドル(約21兆8800億円)以上をデベロッパーに支払ったてきたことを発表した。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleWWDCWWDC2021サブスクリプションアプリApp Store

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

サムスンのプリインストール済み純正アプリに7つのセキュリティ上の欠陥

モバイルセキュリティを専門とするスタートアップが、Samsung(サムスン)のプリインストールされたモバイルアプリの中に7つのセキュリティ上の欠陥を発見した。悪用された場合、攻撃者は被害者の個人情報に幅広くアクセスできる可能性があるという。

Oversecuredによるとこれらの脆弱性は、Samsungのスマートフォンやタブレットに同梱されている複数のアプリやコンポーネントに見つかったとのこと。Oversecuredの創業者であるSergey Toshin(セルゲイ・トーシン)氏はTechCrunchに対し、脆弱性はSamsung Galaxy S10+で確認されたが、あらかじめ組み込まれているアプリはシステム機能を担うため、Samsungのすべての端末が影響を受ける可能性があると述べている。

トーシン氏によると、これらの脆弱性により、同じデバイス上の悪意のあるアプリがSamsungの純正アプリの権限を乗っ取ることで、被害者の写真、動画、連絡先、通話記録、メッセージを盗み出し「ユーザーの同意や通知なし」に設定を変更できた可能性があるとのこと。

これらの欠陥の1つは、デバイス全体で「多数」の権限を持っている「Secure Folder(セキュリティフォルダ)」アプリの脆弱性を利用してデータの盗難を許していた可能性がある。トーシン氏は、このバグを利用して連絡先データを盗めることを実証実験で示した。Samsungのセキュリティソフトウェア「Knox」の別のバグは、他の悪意のあるアプリをインストールするために悪用された可能性があり「Samsung DeX」のバグは、メッセージアプリや電子メールの受信箱、さらにユーザー通知からデータをスクレイピングするために利用された可能性がある。

Oversecuredは脆弱性の技術的な詳細をブログで公開し、バグをSamsungに報告した。同社によれば、Samsungはこれらの欠陥を修正したという。

Samsungはこれらの脆弱性が「一部」のGalaxyデバイスに影響を与えたことを確認したが、具体的な機種のリストは提供していない。また「全世界で報告されている問題はなく、ユーザーのみなさまの機密情報が危険にさらされたことはないとご安心いただけます」としながらも、それを裏づける根拠は示さなかった。「当社は、この問題を確認した後、すぐに2021年4月と5月にソフトウェアアップデートによるセキュリティパッチを開発・発行することで、潜在的な脆弱性に対処しました」と同社は述べている。

複数のバグバウンティを獲得して集めた100万ドル(約1億1000万円)の自己資金で2021年初めに立ち上げたOversecuredは、自動化されたプロセスを利用してAndroidコードの脆弱性を検索するスタートアップだ。トーシン氏はこれまでに、TikTok(ティックトック)やAndroidのGoogle Playアプリにも同様のセキュリティ上の欠陥を発見している。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:SamsungGalaxyバグOversecuredアプリ

画像クレジット:eanne Cao / TechCrunch

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

アップルがApp Storeに製品ページA/Bテストとアプリ内イベントの宣伝を導入

Apple(アップル)は米国時間6月7日、App Storeの今後のさまざまな変更・改善を発表した。これにより、開発者はより効果的にアプリのターゲットユーザーを見つけ、より多くの人々にアプリを発見してもらえるようになるという。また、アプリ内でどのようなイベントが行われているかを強調することで、新規ユーザーにアプリをダウンロードしてもらい、既存ユーザーの再訪を促すことを目指す。

同社によると、App Storeは現在175カ国で毎週6億人のユーザーに利用されており、App Storeの開設以来、開発者に2300億ドル(約25兆1300億円)以上の支払いを行ってきたとのことで、アプリ開発者にとってのビジネスチャンスを強調している。

だがApp Storeの成長にともない、アプリ開発者にとっては、新しいユーザーに向けてアプリを販売したり、自分のアプリを見つけてもらうことがより難しくなっている。今回の新機能は、そのような状況に対応することを目的としている。

画像クレジット:Apple

1つの変更点は、アプリのプロダクトページに関するものだ。2021年からアプリ開発者は、複数のカスタムプロダクトページを作成して、ユーザーごとにアプリの異なる特徴を紹介できるようになる。例えば、スクリーンショットやビデオ、アプリのアイコンなどを変えて、ユーザーの好みをA/Bテストできるようになる。

また、アプリ内で起こっているダイナミックな出来事を継続的に宣伝することもできる。Appleは、アプリやゲームは常に新しいコンテンツを展開しており、ストリーミングサービスでの映画のプレミア上映や、Pokémon GO(ポケモン GO)フェスタのようなイベントもあれば、Nike(ナイキ)フィットネスチャレンジのような期間限定イベントも行われていると説明した。しかしこれらのイベントは、すでにそのアプリをインストールしていて、さらにプッシュ通知をオプトインしているユーザーしか発見できないことが多かった。

画像クレジット:Apple

Appleは今後、開発者がこれらのイベントをより効果的に宣伝できるようにし、アプリ内イベントを「App Storeの中心」に位置付けていくという。イベントは、アプリのプロダクトページで紹介することができる。ユーザーは、イベントの詳細を確認したり、通知を受け取るために登録したり、現在開催中のイベントにすばやく参加したりすることができる。また、パーソナライズされたレコメンデーションやApp Storeの検索を通じて、イベントを発見することも可能になる。

また、App Storeのエディターがベストイベントをキュレートし、新しいApp Storeウィジェットでは、ユーザーのホーム画面上に今後のイベントが表示される。

Appleによるとこの機能は、すでにイベントを運営している開発者も、これから始める場合も含め、すべてのデベロッパーに開放されるとのこと。

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タグ:AppleWWDC 2021WWDCApp StoreA/Bテストアプリ

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

アップルが過去10年の間、業界をリードした理由がわかる1通のメール

1通のメールが、Apple(アップル)のApp Store(アップ・ストア)を巡ってEpic Games(エピック・ゲームズ)が訴えた裁判に関連して公表された文書の一部として、インターネットに出回っている。私はこのメールをさまざまな理由で大いに気に入っている。少なくともそこからは、Appleが過去10年間この業界の活力源であり続けている理由を推定することができる。

その中心は、ソフトウェアエンジニアリングSVP(上級副社長)であるBertrand Serlet(バートランド・サーレイ)氏が、2007年10月に送ったメール、iPhoneが発売されてからわずか3カ月後のことだ。そのメールでサーレイ氏は、AppleのApp Storeの概要を事実上すべて説明している。2020年に推定640億ドル(約7兆120億円)をもたらしたビジネスだ。そして、さらに重要なのは、そこから無数の巨大インターネットスタートアップとビジネスが生まれ、iPhoneのネイティブアプリを活用していることだ。

このメールの45分後、Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏はサーレイ氏とiPhone責任者のScott Forstall(スコット・フォーストール)氏にiPhoneからメールを送った。「もちろん。ただし2008年1月15日のMacworld(マックワールド)で発表できること」。

Apple University(アップル・ユニバーシティ)はこのメールの専門コースを作るべきだ。

お気に入りのInternal Tech EmailsがTwitterでシェアしたメールがここにある。アカウントの持ち主は知らせて欲しい。差し支えなければ詳しく紹介したい。

1. ユーザーを保護します。そのために誰がアプリを配布できるかをコントロールする(登録システム、ポリシーなどが必要)
2. ネットワークを保護します。そのためにアプリが安全な状態で動作することを保証する(悪用していないことの確認)
3. 開発プラットフォームを提供しよう(Leopardの走っているMacで開発、デバッガー、シミュレーターなど)
4. APIを持続可能にします(プライベートとパブリックを区別する、クリーンアップ、ハードウェアの詳細を隠蔽、APIのドキュメントなど)

これを今すぐやりましょう、正しいやり方で。まともなサポートのない中途半端なストーリーではなく。SDKを最速で出荷することに集中するために、ソフトウェア・エンジニアリンググループに必要な人材をいくらでも集めます。

サーレイ氏の書いた概要にはApp Storeの基本理念が7つの文で書かれている。ユーザー保護、ネットワーク保護、独自のデベロッパープラットフォーム、持続可能なAPIアプローチ。人的資源を明確に要求している。最速で公開するために必要なソフトウェアエンジニアリングの人材だ。

最後でも、はっきりと尋ねている「このゴールに賛成してくれますか?」。

情報に通じた読者なら、カッコ内の説明を見て、業務範囲と人月を推測できるだろう。そしてサーレイ氏はこれらの選択について「一切」の「理由〉を書いていない。彼の頭の中では、iPhoneデベロッパーにSDKを提供するためには、すべてが明白で必要な枠組なのだ。

各項目に関する詳細な論拠もない。多くの場合、論拠は互いに事情がわかっている状況では不要であり、次の2つのどちらかの精神的負担を発信する役割を果たすだけだ。

  1. プロジェクト概要を伝える相手が何もわかっていないと思っている。
  2. 自分に自信がなく、今も自分を納得させようとしている。

どちらも、仕事の初期目標を伝えるのに賢い方法ではない。大きい枠組みの中で、小さな権力しか持たない人々に根拠を説明する時間はこれから先いくらでもある。

iPhoneソフトウェア開発の歴史に詳しい人なら、Nullriver(ナルリバー)というデベロッパーが公開したInstaller(インストーラー)を知っているだろう。iPhoneにネイティブアプリをインストールすることを可能にする2007年夏にリリースされたサードパーティ製インストーラーだ。2008年には、その後ずっと有名になるCydia(シディア)が続いた。そして8月、9月にすでにこのまったく非公式な方法でアプリを配布する実験を行っていたデベロッパーがいた。Craig Hockenberry(クレイグ・ハッケンベリー)氏の偉大なるTwitterific(ツイッタリフィック)やLucas Newman(ルーカス・ニューマン)氏とAdam Betts(アダム・ベッツ)氏のLights Off(ライツオフ)などだ。

スティーブ・ジョブズ氏がiPhone上のサードパーティアプリを許すことを躊躇していたことを示す証拠は山ほど出回っているが、このメールは、決断が下され時だけでなく、完成時期の公式タイムラインも示している。そしてその時期は、いつ電話がかけられたかに関する怪しげな情報よりもはるかに前だった。ハッキング好きのサードパーティの試みが初めてiPhoneにたどり着いたわずか数週間後、最初のiPhone jailbreak(ジェイルブレイク)ツール群 が出現してから2カ月足らずだった。

そこには、このフレームワークにスティーブが自ら手をくだす必要も意志もない。部下にあらゆる場面でフィードバックを返すよう求めるリーダーを私は何度も見てきた。そもそもなぜその人たちを雇ったのか?彼らのスキルと判断力のため?細部への気配り?ものごとを成功させようとする強い願望?

だったら、彼らに自分たちの仕事をさせればよい。

サーレイ氏のメールはよく練られていて、狙いが非常に正確だ。しかし、同じように重要なのが返信だ。どうみても短すぎる時間軸(App Storeは結局2008年に発表され、その年の7月に公開された)の要求によってハードルは上がり、合わせてこのプロジェクトに関わる全チームに対する緊急性が求められた。何をおいても早く作らなければならない。

良いものを作ることにかけて、Appleが秀でている理由はこの能力にある。常に優れているわけではないが、●常に100%のものなどなく、10年間に出したソフトウェアとハードウェアのヒット率は驚くほど高い。鮮明で無駄がなく甘えも曖昧さもないコミュニケーションと、自身の能力と自分が雇った人たちの能力を確信しているリーダーが組み合わされば、自らの関与を誇示するためにプロセスの動きを止める必要はない。

人間は1人では生きられない。明確でよく練られた提案書やプロジェクト概要書も、自信のない無能な幹部に送れば、縄張り争いや説明要求の無限ループを引き起こすだけだ。そして幹部がいかに効率的で、いかに社員が有能でも、思考の明確化が「歓迎され称賛される」環境がなければ、大胆で意図を明確にしたプロダクト開発は実現できない。

このメールのやりとりは、現在のアプリエコシステム時代全体とインターネット技術の爆発的成長フェーズを支える恐ろしく重要な歴史の一片だ。そしてそれは、これほど長い期間Appleを効果的で並外れて効率的な会社にしている環境の象徴でもある。

これは学んだり真似たりできるものだろうか?おそらく。ただし、関わっている全員が上に上げた重要項目を育むのに必要な環境を作ろうという意志があるのなら。10回中9回、あなたの幹部は瀕死状態にある。成功するために大胆な取り組みをしたり、いばらの道を進むことを妨げる環境だ。しかし、10回目には、魔法が手に入る。

そうだ、この機会に乗じて次のミーティングはメールでできるかもしれない。

バートランド・サーレイとスティーブ・ジョブズがメールで世界を変えられたなら、たぶんあのミーティングはいらないだろう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleApp Storeスティーブ・ジョブズiPhoneアプリ

画像クレジット:Matthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Nob Takahashi / facebook

サブスクリプション管理や自動貯金に加え資産・負債の一元管理も目指す「Truebill」

パーソナルファイナンスのスタートアップ「Truebill」は、Accelが主導して4500万ドル(約49億3000万円)のシリーズD資金調達を実施した。同社がシリーズCで1700万ドル(約18億6000万円)を調達したのはわずか数カ月前のことだ。設立以来の調達合計額はこれで8500万ドル(約93億円)となった。

今回の資金調達ラウンドには、既存投資家であるBessemer Venture Partners、Cota Capital、Eldridge Industriesも参加している。

Truebillは、米国に住む人々の財務管理を支援するいくつかのツールを提供している。このアプリの主な特徴の1つは、すべてのサブスクリプションを1カ所で管理できることだ。ユーザーは、アプリで不要なサブスクリプションをキャンセルすることもできる。携帯電話やケーブルテレビの料金については、Truebillが値引き交渉まで行ってくれる。

最近になって、同社はこのアプリを経済的なパートナーにするための機能を追加している。支出に関するインサイト、健全な毎月の予算の作成とアプリによるその追跡、クレジットレポートの閲覧などが可能になった。

Truebillでは、自動的にお金を貯めることもできる。Truebillはユーザーの口座を分析し、お金が残っているときに貯金することができる。

現在、同社はすべての資産と負債を一元管理するウェルスマネジメントダッシュボードの開発に取り組んでいる。ウェルスマネジメントはお金のあるアカウント1つ1つに接続する必要があり、そうしないと全体像が見えないため少々煩雑だ。

共同創業者兼CEOのHaroon Mokhtarzada(ハルーン・モクタルザダ)氏は、声明でこう述べた。「自分の財務状況をより良く理解し改善するために、毎日1万人以上の会員がTruebillに登録しています。今回の資金調達により、Truebillをオールインワンの総合的なプラットフォームに変革し、会員のみなさまがサブスクリプションや支出を管理するだけでなく、貯蓄を最適化したり、財務状況を改善するために、情報に基づいた意思決定を行えるようにします。Truebillは、一般消費者にとって最も価値のあるメンバーシップに急速になりつつあります」。

ご覧のとおり、このスタートアップは急速なペースで成長している。2020年11月以降、ユーザー数は100万人から200万人へと倍増した。同社は月間400億ドル(約4兆3800億円)のトランザクション量を分析している。

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カテゴリー:フィンテック
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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

ポケットの中の音楽スタジオ、700万ユーザーを獲得した作曲アプリ「Rapcha」

YouTube、Snapchat、Twitter、TikTok、FacebookのInstagramは、映画やテレビの業界を根底から覆した。撮影監督やディレクター、俳優はテクノロジーの革新を活かして新しい作品を作り、それを何十億もの消費者に直接見てもらうというニューウェーブを起こしている。2021年4月末、ある新興企業が230万ドル(約2億5000万円)の資金調達を発表し、音楽の世界にも同様のインパクトをもたらそうとしている。

Rapchat(ラップチャット)は、ユーザーが(その名の通り、ラップやその他のジャンルの)音楽を作ることができるアプリで、ユーザーはクラウド上のビートにボーカルを乗せて楽しむことができる。

ソニー・ミュージックエンタテインメントとニューヨークのベンチャーキャピタル企業Adjacent(アジェイセント)が共同で主導した今回の資金調達は、2018年にRapchatが行った170万ドル(約1億9000万円)のシード資金調達ラウンドの延長線上にあり、CEOかつ共同創業者のSeth Miller(セス・ミラー)氏は、同社がより大きなシリーズAの準備を進める一環としての調達であると話す。

ミラー氏とPat Gibson(パット・ギブソン)氏が、2015年に大学在学中に副業として会社を構想した際に、(Snapchatの)chatという言葉をひっかけた言葉遊びを除けば、少なくとも今はRapchatとSnapchatにつながりはない。Rapchatはすでにかなりの規模に拡大している。

現在、Rapchatには約700万人の登録ユーザーがいて、プラットフォームでは毎月50万人のアクティブユーザーが、約10万曲のビートカタログを使って、約25万曲を作成しているという。ユーザーは1日平均35分アプリを利用していて、これは、楽曲を作るユーザーだけでなく、その楽曲を聴いたり共有したりするためにアプリを利用する人たちのソーシャルグラフ(人と人とのつながり)が形成され始めたことを意味する。

Rapchatは、今回の資金調達を利用して、Rapchatのコンペティション「Challenges」の賞金額を増やすなど、プラットフォーム上でできることを拡大していく予定だ。より多くのアーティスト、プロデューサー、業界のエグゼクティブからプラットフォーム上で指導を受けられるようにしたり、プラットフォームのリーチを拡大して、TikTok、Snapchat、Spotify、Apple Musicなど、クリエイターがすでに多くのコンテンツを制作していて、音楽が重要な役割を果たしているプラットフォームとより緊密に統合したりすることも検討している。

Rapchatの成長は、音楽を簡単に作れるようにしたいという同社の夢を実現しただけでなく、クリエイターエコノミー(クリエイターのマネタイズをプラットフォームやテクノロジーが後押しする経済)における貪欲さと歯がゆさを物語っている。世の中には広大な音楽制作の世界があり、自分が評価されるかどうかを知りたいと思う人が増加しているのだ。

巨大なクリエイターエコノミーにおける音楽クリエイターの存在を考えたのはRapchatだけではない。

Voiseyというアプリも類似のサービスを提供しているが、メインは音楽トラックではなく、短いクリップを作って録音し、それを他のプラットフォームで共有することに重点を置いていた。あまり普及はしなかったが、新しいアーティストへの注目を少し集めることに成功し、2020年Snapにひっそりと買収された(現在のところ、SnapはVoiseyのアプリを維持している)。

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TikTokの親会社であるByteDance(バイトダンス)も、別の音楽作成アプリJukedeckの買収を行っている。Snapの買収と同様、この買収がどこでどのように行われているのか、今のところ完全には明らかになっていないが、うわさによると、TikTokは新しい音楽サービスを開発中で、より多くのコンテンツをTikTokの音楽レイヤーに接続することができるようになるらしい。

そして、このトレンドを最も裏づけることといえば、Facebook(フェイスブック)がRapchatの真似をしたことだろう。Facebookの社内部門であるNPE(新製品実験)チームは、2021年2月に「BARS」を発表。ユーザーはこのアプリで自分のラップミュージックを作ることができる。

関連記事:Facebookがラップを制作・公開できるTikTok風アプリ「BARS」を発表

このような状況下、ミラー氏は(少なくとも今のところは)、新しいプレミアム機能のテストを含め、Rapchatの実績に非常に満足し、自信を持っている。現在アプリは無料で使用できるが、プレミアム機能では、クリエイターに、もっと多くの制作ツールや、作品を共有してマネタイズするためのより良い方法を提供する予定だ。その鍵となるのは、音楽のライセンス料を要求しないということ。Rapchatの価値は、クリエイターが音楽を制作し、それらのトラックのメタデータを使って音楽がどのように使用されたかを追跡することにあり、クリエイターはロイヤリティを維持することができる。

この控えめなアプローチは、Rapchatとその創業者たちが、スタートアップ企業の中ではやや異質な存在であることに由来する。このアプリのアイデアは、ミラー氏とギブソン氏がオハイオ大学(コロンバス)の学生だった2013年に生まれたという。

「大学生の誰もがSnapchatやInstagramなどのアプリを使っている時代でした」とミラー氏は話す。「私たちは、ビデオを撮るためにこれらのアプリを愛用していましたが、音楽を作るためのアプリはありませんでした。そこで私たちは、Startup Weekend(スタートアップウィークエンド)のコンペティションで、『Snapchatのような、ラップのためのスナップ 』というアイデアを提案しました。その際に誰かがRapchatと言ったのです」。

2015年、彼らはこのアプリを携えて500 Startups(ファイブハンドレットスタートアップ)に参加し、本格的にこのアイデアに取り組み始めたが、それでもビジネスを構築し、投資家の注目を集め、資金を調達するまでには何年もかかっている。その理由の1つは、音楽は扱いが難しいもので、ざっくりというならここ数年の流行は制作サービスではなく、ストリーミングだったからだ。

しかし、ミラー氏とギブソン氏は諦めなかった。「この市場が巨大であることを知っていたのは私にとってはとても意味のあることでした」とミラー氏は話す。「モバイルデバイスが登場し、Instagram、VSCO、Snapchatなどのアプリは人々をフォトグラファーや映像作家に変えました。Substackも人々を執筆者に変えています」。そして今、Rapchatがラッパーのための世界を開拓しようとしている。

AdjacentのリードインベスターであるNico Wittenborn(ニコ・ウィッテンボーン)氏は、声明の中で次のように述べる。「Rapchatはポケットの中の音楽スタジオです」「Rapchatで世界中の誰もが、どこにいても、スマートフォンから直接音楽を録音して公開できるようになります。ユーザーは創造性を最大限に活かすことができます。モバイルを活用したテクノロジーを誰にでも利用できるようにすることがAdjacentの目指すところであり、この次世代の音楽プラットフォームを構築するRapchatのチームをサポートできることを非常にうれしく思っています」。

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タグ:Rapchat音楽資金調達クリエイターアプリ

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)