メール環境を変更せずに「自動消滅メール」を送ることができるPluto Mail

Pluto Mailは「メール版Snapchat」を標榜するサービスだ。ただし、提供するサービスは、送信したメールの自己消滅機能だけではない。送信済みながら開封前のメールを編集したり、メールが開かれたかどうかを確認することもできるようになっている。また送信したメッセージをDropboxに保管しておくこともできるようになっている。

現在のところサービスは完全にオープンな状態ではないベータ版として運用されている。但しこちらのリンクから、先着500名までは登録して使ってみることができるようになっている。

このPluto MailはRough Draft VenturesおよびDorm Room Fundから3万ドルのシード資金を調達している。自分で使っているメールアカウントとリンクして、自分がいつも利用しているメールアドレスを使ってメールを送信することができるのも大きな特徴だ。メールは送信前にJEPGファイルに変換される。そして予め指定しておいた有効期間を過ぎると、送られたJPEGイメージが消え去るという仕組みになっている。

「Plutoはメールのコンテンツを画像に変換して保存しておくようになっています。保存場所は利用者の方のDropboxないし、Plutoのサーバー上ということになります。メール中にはiframeとimageタグが埋め込まれて、受け手の方にメッセージが送られます。メールが開封された際には、iframeタグの中にDropboxないしPlutoのサーバー内に保存してある画像が表示されるようになるわけです。そうした仕組みのおかげで、メールを送った後でも送信者側からメッセージの処理を行うことができるわけです」。そのようにPlutoの共同ファウンダーであるDavid Gobaudは言っている。

Dropboxと連携するようにしたことによって、送ったメールを取り消したい場合などには単純にDropboxのApps Folder内にあるPluto Mailフォルダーを削除すればよいようになっている。

もちろん、送ったメールが自己消滅型のものであるとわかったら、受け手はスクリーンショットをとっておくことで「消滅」を回避することができる。あるいは画像をダウンロードしておくことも可能だろう。しかし読まれる前に削除することもできるし、少なくとも「テキスト」が相手のメールボックスに残り続けることはない。

「Yahoo Mailの容量が25MBであった事態と、状況は大幅に変わりました。現在は事実上無制限の容量が提供されており、メールは永遠に残り続けるようになったのです。しかしすべてのデジタル情報が一生残り続けるという状況が正しいものなのかどうか、疑問に感じています」とGobaudは言っている。

GobaudはPluto Mailの素案を2年前に考えついたのだそうだ。しかし実現に向けて、たとえばわざわざ新しいメールアドレスを使うようなものにしたくなかったし、またメールの受け手にも新しいメールクライアントを使わせるようなものにはしたくないと、アイデアを練ってきたのだそうだ。そうしてついに作成側も受信側も、アドレスを変更したりメールクライアントを変えたりする必要のない、それでいて自動的にメールを消滅させたり、あるいは送信を取り消したり、読まれる前に編集したりする機能を実現することができた。

Gobaudおよび共同ファンダーのLindsay Linは、ふたりともハーバード・ロー・スクールの学生だ。ただしGobaudはスタンフォードでコンピューターサイエンスを専攻した元Googlerでもある。卒業時は大統領府にてソフトウェア・オートメーションのチームを作り、そのチームを率いていたこともある。Linの方はバージニア大学で数学を専攻し、ロー・スクールに通いながらRuby on Railsを使ったプログラミングも学習したそうだ。

Dropboxのアカウントとリンクしない場合、作成したメッセージはPlutoのサーバーに保管されることとなる。この場合、メタ情報(タイトル、受信者など)も併せて保管され、のちの管理に利用することもできる。もちろんサーバーにメールを残しておきたくないというケースも考えられるわけで、その場合にはすべての情報を消し去ることもできる。

「メールの完全削除後も、バックアップ用として最大3日間、メタ情報は保管されます。また、メールの消滅期間が到達したり、あるいは送信を取り消した際に自動的にサーバーからも完全削除することもできます」とのこと。

Pluto Mailと同様の機能はSecretInkでも実現している。さらにはGmailでも送信取り消しを行うことができる。もちろん自動消滅型メッセージといえば、誰もがSnapchatを思い浮かべもするだろう。

Gabaud曰く、Pluto Mailの新しさは「アプリケーションをダウンロードしたり、プラグインを導入する必要がないところです。また受信者側には何の作業も必要ありません」とのこと。「メールアドレスを持っている誰に対しても自動消滅メッセージを送ることができるのです。一緒に新しいサービスを使おうと説得する必要もありません。これがPluto Mailの特徴であり、大きな利点だと考えています」。

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(翻訳:Maeda, H


nanapi「けんすう」が語る、ユーザー投稿サイト運営でやってはいけないこと

起業家の失敗談をテーマにしたイベント「FailCon」が18日、日本に初上陸した。FailConは、成功談ばかり語られるイベントが多く開催される中で、失敗談を研究して成功につなげようと、2009年にサンフランシスコで誕生したイベント。東京・代官山で開かれたFailCon Japanでは、 nanapi共同創業者の「けんすう」こと古川健介氏が、「CGMサービスを作る上での失敗」をテーマに講演。学生や予備校生向けのコミュニティサイト「ミルクカフェ」やハウツーサイト「nanapi」、スマホ向けQ&Aアプリ「アンサー」など、ユーザー投稿サイトの運営での失敗談とそこから得た教訓を語った。

ミルクカフェでは何度も警察に出頭

一番最初は19歳の時に「ミルクカフェ」というものをやっていました。どういう仕組みかというと、ユーザーが好き勝手に投稿して、「この授業が良かった」とか「予備校のあの先生、教えるの下手だよね」とかも投稿されていました。投稿しているのが学生さんなので責任を追わせるのは嫌だと思って、全部ボクの責任というふうにしたんですね。

そうすると、めっちゃ責任を負わされてですね。めっちゃ警察に行ってましたし、内容証明もがんがん来るし、訴訟での損害請求額は総額6800万円。でも、僕も学生でお金がなくて払えないので無敵だったんですね。

警察のような公的機関はいいんですけど、すごく大きな宗教団体の人が右翼を使って圧力をかけてきて、「街宣車呼ぶぞ」みたいな。すごい面白いと思って、ぜひ来てくださいという話で盛り上がったんですけど、そういうのがあると結構面倒臭いなと思うようになりました。

ミルクカフェの反省を活かした「したらば掲示板」も……

管理者が自分だからいけないんだと思って作ったのが「したらば掲示板」。ユーザーが好きに掲示板を作れるのですが、「自分の責任で管理してください」というものなので、我々は責任がなくなるんです。ユーザーも自分の掲示板を宣伝してアクセスが伸びていまして、2003年で3億PVだったりして、日本では100番ぐらいになってたりしました。

ただ、ユーザーからすると「掲示板は自分のもの」という意識があるので、広告を貼られるのを嫌がるんですよね。流行ってサーバー費用がかかるのにお金が入らない。成長すればするほどお金がなくなっていく感じで大変だなあと思いました。それで、ライブドアに事業譲渡せざるを得なかったという失敗をしてしまいました。

じゃあ次何やろうと考えてみると、やっぱり意見を交換するものは人が傷つく、これからはポエムだなと。主語とかなくて、「空がきれい」とか。ポエムが来るなと思ったんですけど、ポエムが来なかったんですね。ポエム来ないのかあと思って結構びっくりしました。

ハウツー版ウィキペディアの難しさ

その次にやったのがnanapiです。いろいろ考えてみて、人の意見がぶつかり合うものはトラブルが多いし、だからといってポエムぐらい振り切ってもニーズがない。そこで、生活に便利なネタを投稿するサービスを始めることにしました。

簡単に言うとWikipediaのハウツー版みたいなイメージ。これが結構難しくて、Wikipediaが解説する名詞と違って、ハウツーはコンテンツの粒感がバラバラなんですね。名刺とか固有名詞はひとつのコンテンツになるのですが、ハウツーだとドラクエのクリアの仕方から、ドラクエのこの洞窟の攻略法など、あらゆるレイヤーにわたって難しい。主観と客観もあったので、Wikipedia式は難しいと感じました。

最近気づいたのは、もともとは人が困るようなものを検索させたいと思ったんですが、検索できないものがあるということ。例えば、寂しいという悩みは、「寂しい」と検索してもいい情報が得られないんですね。我々のサービスの検索キーワードを見ても、寂しいで流入する人がベスト3くらいに入っていたんですよ。人は寂しいと思うと寂しいと検索するんだと。

検索しても解決しない悩みを解決したい

あんまり解決していないのでどうしようと思って作ったのが、即レス型の「アンサー」なんです。実際の例としては、「仕事にいきたくないー」「俺も」みたいなやりとり。仕事に行きたくないのは悩みなんですけど、検索してもしょうがなくて、「俺も」の2文字でいいんですね。それでユーザーさんが課題を解決するというか、解決まではいかなくても楽になることが起こっていたりします。

例えば、「次はぁ〜 おなりもん」という質問が飛んで「東京タワーのそばだよ」というと、のっぽんという東京タワーのキャラクターがボットで投稿したりします。そのほかにも、「化粧水は絶対にけちっちゃだめなんですってね」と言うと、島耕作が「そうですか」とボットで反応したりする。これは講談社に許可を取ってやっているんですけど、めちゃくちゃウザいじゃないですか。ユーザーは嫌がっているんですけど、島耕作がたくさん出てきます。

お題を投げてコミュニケーションしたかったのですが、こういったことはTwitterではできない。「おはよう」と言っても返信が少ないんですね。アンサーだと20〜30件くらい返ってくる。ユーザーが求めている緩やかなつながりとか、雰囲気を作っていたりします。今はアンサーが伸びていて、nanapiともつなげています。例えば、「大福の作り方を教えてください」といったときに、nanapiから引っ張ってコンテンツを出したりしています。

コミュニティサイトを作る際の5つのポイント

コミュニティサイトはボランティアや選挙事務所と同じなんです。社員は給料を払えば基本的に働いてくれますが、そうじゃないとモチベーション設計をしないといけない。このへんが難しいんですね。行き過ぎると誹謗中傷が起きたり、緩すぎると情報価値がなくなる。これをやると、こちらが立たず……ということになるんです。

人と人とのコミュニケーションは思い通りに行かないんですよね。そこで気づいたのはロジカルに考えないことです。意味のないことをやらないコミュニティはうまくいかない。2ちゃんねるのおみくじ機能とか、FacebookのPokeとか。

あとは数字で考えないのも大事です。この数字が伸びているので伸ばしましょうとすると、なぜか壊れるのでやっていなかったりします。

この機能の意味や価値は何かと説明できるものはイケてなくて、「島耕作がレスしたら面白いよね」「ユーザーが不便になるよね」というところからやるといいと思います。今のところ結果は悪いですけれど。意味不明にするのは大事で、素人考えだとわかりやすさやシンプルさが良いとされますが、わかりにくいからこそスティッキネスになったり、知りたくなるという人間の心理があるので、その辺を意識しています。

あとはゴールを明確にしないこと。例えば、クックパッドは「料理で困っている人を解決する」という価値が明確ですが、これを明確にするとつまんないなあと思うんですよね。コミュニティの話は非言語的な部分が多くて説明しにくいんですが、あえてゴールを明確にしないで、「この機能を付けるとユーザーがどうなるか」というのが大事だったりします。

手段を目的化するというのもよく言っています。目的に向かって手段を当てるのはアメリカ的な考えですが、手段自体を目的化したほうがよいと思っています。日本で言うと、初音ミクはこういう曲が作りたくて「手段」として使うよりも、初音ミクを使っていかに面白いことをするか、というのが起こっていて、新しいクリエイティブが生まれています。人間が生み出すものは、こういう目的のために作るというよりも、それ自体がめちゃくちゃ楽しいので盛り上がっていくのが強いんじゃないかなあと思っています。

アンサーも半分くらいは質問になっていないんですが、「会社に行きたくない」「俺も」と話しているうちに話が膨らみ、上司が嫌だったり、その上司ってこうだったんだよねと、会話で気づいたりする。上司の問題を解決しようとして、「あなたの心の持ちよう」と答えが返ってきても人は変われない。コミュニケーションをしているうちに解決したり、気持ちが楽になることを目的にしたほうが面白い。ビジネス的、ロジカルにやると面白くないと思っています。


スマホと遺伝子検査で個人に合ったダイエットを指導する「FiNC」を使ってみた

語学から美容、ダイエットまで、いわゆる「コンプレックス産業」の市場は大きい。例えば語学ビジネスの市場規模(英会話教室やeラーニングなどの主要14分野の合計)は2012年度で7892億円、エステティックサロンの市場規模は2013年度で3554億円、メタボリックシンドローム関連市場(ダイエットや予防から治療まで含む)に至っては、2004年で7兆5000万円という数字が発表されている(いずれも矢野経済研究所調べ)。

そんな巨大市場に挑戦するスタートアップがFiNCだ。同社は3月から、オンラインでの指導を含めたダイエットサービス「REPUL」を提供。6月18日より名称を「FiNCダイエット家庭教師(FiNC) 」に変更して本格的にサービスを開始した。

FiNCではまず、遺伝子検査や血液検査、300項目にわたる生活習慣に関するアンケートを実施。検査結果に基づいて、管理栄養士が「ダイエット家庭教師」となり、60日間でダイエットの知識や食事のバランス、食べる順番、トレーニング方法といった体質に合ったダイエット方法を指導するほか、電話やSkypeで相談を受ける。上位プランでは同社が運営するスポーツジムや、提携する全国200のスポーツジムを自由に利用できる。栄養士に関してはクラウドソーシングを活用しており、サービス開始時点で50人をネットワークしている。

基本的なサービスとしては、毎日専用サイトで朝、昼、晩の食事と、朝晩の体重を専用のサイトに登録する。食事の内容に対しては栄養士から5段階での評価や、指導のコメントが付く。なお食事はもちろんのこと、体重計の写真までアップロードを求めることで、虚偽の申告を防いでいる。

先に言っておくと、僕は約1週間ほど有料サービスをモニターとして利用させてもらっている。その上での感想だが、これがなかなかよくできているのだ。炭水化物や脂質の多い食事だと栄養士から厳しい指導が入るし、毎日の体重を数字で意識することになるので、否が応でも体重を減らすよう意識をするようになる。これまで自分1人ではダイエットを継続できなかった人間にとっては、この“鬼コーチ”の存在は大きい。蕎麦と野菜天丼を食べたあと、「炭水化物×炭水化物、やってしまいましたね…」と栄養士からコメントがあった際にはさすがに参ってしまったが、実際1週間弱で1.5kgほど体重を落とすことができた。FiNCによると、これまで数百人が利用して、平均減量値は6.3kg、途中で脱落したのは2人ほどだそうだ。取締役COOの岡野求氏も7kgを落としたと語っていた。

また日々の行動によってポイントが貯まるようになっており、ダイエット終了時にAmazonのギフト券や同社の商品と交換できるという仕組みになっている。

価格は食事指導の回数やサプリメント提供の有無などで30日2万9800円〜60日9万9000円のプランまで3種類を用意する。プログラム終了後も約半数が月額1万円程度のサプリメントなどを購入しているそうだ。

スマートフォンがビジネスチャンス

「たとえジムに来てもらっても、1週間168時間のうち、2時間ほどしか指導できない。でもそこ以外をカバーしないと意味がない」そう語るのはFiNC代表取締役社長 CEOの溝口勇児氏。同氏は高校在学中からフィットネスクラブの運営・コンサルを手がける企業に入社したのちに独立。自身でフィットネスクラブの運営やコンサルティングを手がけてきた。

同氏が手がけるフィットネスクラブはすでに黒字経営。また、DNA検査やサプリメントなども独自に提供してきたとのことだったが、いざダイエットを成功できるかというと、意志の強い人間でもない限り、前述の“指導をしない166時間”をうまく使うことは難しい。そこで、スマートフォンを利用した指導で1週間168時間の指導を実現すべく、FiNCを立ち上げるに至ったそうだ。「スマートフォンによって、対面でしか提供できなかったサービスを非対面でも提供できるようになった」(溝口氏)

今後は、BtoCでのサービス展開のほか、BtoE(法人の福利厚生)、BtoBtoC(各種スポーツジムと提携してのサービス提供)でのビジネスも予定している。また、食事評価の機能だけをアプリ化し、今夏にもフリーミアムモデルで提供する予定もあるそうだ。将来的にはDNA検査や血液検査を無料にすることも予定する。さらには定期宅配なども予定で、溝口氏は「家庭の冷蔵庫をとっていく」と語る。

ダイエットというと、都市伝説のようなモノからFiNCのように科学的な検査をもとにしたものまで幅広く、ともすれば怪しく見られがちだ。だがネット、スマホと結びついて大きく飛躍する可能性を持つサービスは少なくない。

米国では、糖尿病予防プログラムを展開するOmada HealthがAndreesen Horowitzなどから2300万ドルを調達。ダイエット支援アプリのnoomも7億円を調達して話題になった。FiNCでも、事業シナジーのあるCVCを中心にした資金調達に動いているという。「競合は出てくると思っている。どうぞまねして下さいという気持ちだ。僕らは何歩も前に行く。あとはお金だけというところになってきたので、やりがいもある」(溝口氏)


大手Web企業→スタートアップの流れが来る? クラウド会計「freee」にex-Googlerが続々ジョイン

日本のスタートアップ業界でex-Googler(GoogleのOB/OG)の存在感が高まってきている。今年4月にローンチしたクラウド予約システム「Coubic(クービック)」を手がける倉岡寛氏、5月に東証マザーズに上場したDSP事業のフリークアウトを設立した佐藤裕介氏は、どちらもGoogle出身。クラウド会計ソフト「freee」を運営する佐々木大輔氏もその1人だ。TechCrunch Japanでは5月、「大企業を飛び出してスタートアップの世界に飛び込んだ理由」というテーマでイベントを開催したのだが、その際に佐々木氏が「海外のex-Googlerは起業したり、スタートアップにジョインするのが普通の選択肢」と語っていたのが印象的だった。そのfreeeにex-Googlerが続々とジョインしている。

2013年9月には、日本の中小企業向けマーケティングで「みんなのビジネスオンライン」のプロジェクト立ち上げから推進までを統括していた東後澄人氏が取締役として就任。今年2月には、Google日本語入力のUXなどを担当していた関口聡介氏が加わった。そして今日、2003年にGoogle Japanの17番目の社員として入社し、中小企業向けの広告営業チームを立ち上げた野澤俊通氏が執行役員に就任した。野澤氏はGoogle時代、フリークアウト佐藤氏の上司でもあった人物だ。

佐々木氏によれば、野澤氏は「中小企業向けのオンラインセールス・サポートチームのマネジメントのプロ」。Googleはかつて、「プロダクトがよければすべての問題を解決するというような思想の組織」だったというが、「野澤さんは、人がスケーラブルなサービス提供をする価値を実証してきた」と高く評価している。同氏の加入によって今後は、新規や既存ユーザー向けのサポートといった「人の手を含めた」サービスを強化する狙いだ。

冒頭で紹介した弊誌イベントには、リクルートを経てA/BテストのKAIZEN platformを創業した須藤憲司氏もご登場いただいたが、同社には2014年2月、元Google Japanの小川淳氏がカントリーマネージャーとして加入したほか、グリーおよびGREE Internationalでゲームやアドテクノロジー分野のプロダクトマネジメントを手がけた瀧野諭吾氏が参画している。

いわゆる大企業というのと違うのかもしれないけど、Googleのようなテックジャイアントからスタートアップという流れは来ているのかもしれない。


【動画】EC向け写真をクラウドで一気に白く切り抜き・レタッチ、「ZenFotomatic」創業者らに聞いた

2010年6月に大阪・堺市で創業したグラムスはファション系ECサイトを運営する会社としてスタートした。もともとファッション業界で働いていた創業者で代表取締役の三浦大助氏によれば、ネットでファッションアイテムを売るのは店舗などオフラインで売るのと違った難しさがあるという。

「単に納品された商品のビニールを剥がしてラックにかければ売れるというわけにはいきません。写真も撮らないといけません。何が難しかったというと、撮影後の写真の処理でした。そこで、より日々の運営を楽にするために、インフラとして開発を始めたのがZenFotomaticです」

商品を撮影してECサイトに画像を掲載するわけだが、このとき、商品を輪郭に沿って切り抜いたり、背景に映り込んでしまった余計なモノを除去するなどのレタッチ処理が必要になる。コントラストや明度、場合によっては色みなども調整するし、位置合わせなども行う。

こうしたレタッチ処理を人間がやると、手慣れたデザイナーでも1枚辺り5分程度かかるため、レタッチの単価は1枚100円程度になる。単純な切り抜き以上の複雑な処理を依頼すると数百円となることもあるという。ここを機械処理で一気にクラウドでやってしまおうというのがZenFotomaticだ。1枚辺り10〜25円で処理できるという。

以下の動画を見れば、だいたい何をやってくれるか分かると思う。

ぼくが気になったのは「レタッチ」といっても、単純に既存の画像処理ライブラリを使うなどしただけであれば、誰にでも実装できてしまうし、差別化できるのかというところだ。画像処理エンジンを開発しているエンジニアのホスフォード・ブレイン氏によれば、このエンジンは4年かけて社内向けとして開発してきたもので、他社がキャッチアップするのは容易ではないとのこと。実はZenFotomaticでは利用者が「この写真はレタッチに失敗している」と思えば、課金されないようになっている。この人間が判断したエラー情報のフィードバックは重要で、ブレイン氏はエラーが起こった原因の解明とアルゴリズムの改変を、過去4年間続けてきたそうだ。コンピューターサイエンスの画像処理研究の分野からアイデアを得て実装することもあるものの、実際の処理の多くは試行錯誤や自分たちで考えたアイデアによるのだという。

現在まだZenFotomaticは一般向けサービスとしてオープンしたばかりだが、プロモーションなしで国内1200アカウント、国外700アカウントと利用が広がっているという。今後の展開は? どの程度の市場性があるのだろうか? TechCrunch Japanでは、三浦氏とブレイン氏に話を聞いた。


24歳以上限定のインタビューメディア「another life.」は一般人版「情熱大陸」

スポーツや芸能、ビジネスといった分野の著名人に密着取材するドキュメンタリー番組「情熱大陸」。各界で活躍する人物の普段は見えない素顔が出てきたりするのが面白いわけだけれども、ドットライフが運営する「another life.」(アナザーライフ)は、一般人版「情熱大陸」と言えるかもしれない。24歳以上で何かに情熱を捧げる人を取り上げるインタビューサイトで、登場人物は情熱大陸で紹介されるような「成功者」だけではないのが特徴だ。

自分の半生を伝えるサイトといえば、日本では「STORYS.jp」「ザ・インタビューズ」といったものがある。前者はいわば自分語り、後者は匿名の質問に答える形だ。アナザーライフはザ・インタビューズに似ているが、「実名・年齢・職業」というプロフィールを明記していることと、一問一答形式ではなくストーリー形式なのが違い。「特に自分と同じ年齢のインタビュー記事は、特別なモチベーションで見る人が多い」と、ドットライフCEOの新條隼人氏は語る。

サイトには、仲間のトラブルでバンドの解散、親友との絶縁、バイト先の解雇が重なり、自分の部屋から約3カ月間出られなくなる挫折を経験しつつも、音楽番組を見て自分の未練に気づき、「音楽を成就か成仏させなくては」と再度バンド活動を復活させたドラマーの話から、最近イスラエルに拠点を移したサムライインキュベートの榊原健太郎氏野菜版オフィスグリコ的なサービス「OFFICE DE YASAI」を手がける川岸亮造氏ら弊誌でも紹介した人物のインタビューまで100本近く記事が掲載されている。

記事の本数については、3月に終了した「笑っていいとも」のテレフォンショッキングのように、インタビューされた人が面白いと思う人を紹介する形式で増え続け、年末までには700本に達するという。7月3日に放映するTBS系列のスポーツエンタメ番組「SASUKE」の出場者のインタビューを掲載することも決まっているそうだ。記事は新條氏を含むドットライフに所属する3人に加え、インターン5人が執筆している。

内輪メディアの壁を超えられるか

今年2月のオープン以降、記事全文を読むために必要な会員登録を行うユーザーは月130%ペースで増加。6月末には1万人を超える見込みだ。現時点では「知り合いが出てるから見てみよう」という人が多く、会員数は記事が増えるごとに、その人の友達が登録するかたちで増え続けている。

こうした経緯もあり、「知り合いしか読まないんじゃない?」と思わなくもないが、今後は読者が「興味を持てた」ボタンを押した記事を解析し、関心にあった記事を配信することで、「内輪」な記事以外の閲覧数も増やす狙いなのだとか。17日にリリースしたiPhoneアプリでは、こうした記事を毎日プッシュ通知する機能を備えている。

収益面は「まだまだ先」だが、いくつかの方法を検討している。例えば、クラウドファンディングやスキル販売サイトなど「個人を打ち出す」プラットフォームと提携し、これらのサービスにインタビュー記事からユーザーを送客するごとに収益を得たり、記事広告の出稿などだ。

ところでなぜ、アナザーライフで紹介する人物は「24歳以上」なのか。新條氏が言うには「日本人が夢を諦める平均年齢だから」(出典:キリンビールの日本人夢調査)。かく言う新條氏も24歳だ。「やりたいことが見つからないと言うと、僕らの年代は『ゆとり世代』と世代論で語られがちですが、昔からそうだったわけではありません。打ち込めるものがなくモヤモヤしているだけ。今の自分の見えている範囲ではやりたいことが見つからなくても、他の人の人生を知ることで価値観が明確になる。昨日までと違う人生を踏み出すキッカケを提供できれば」。

ドットライフCEOの新條隼人氏


加熱するフードデリバリー市場、日、米、東南アジアのそれぞれの事情

編集部注:この原稿は、ベンチャーキャピタルであるサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV) ヴァイスプレジデントの白川智樹氏による寄稿である。CAVでは東南アジアを中心に海外に11の拠点を設置し、現地企業への投資も実施している。本稿では、その各拠点からの情報をもとに、アジア全体で盛り上がりを見せるフードデリバリーサービスについて読み解いてもらう。なお本稿は後日CAVが運営するブログ「RisingAsia」にも掲載される予定だ。

2014年に入り日本で一気に盛り上がりを見せているネットを使ったフードデリバリー市場。アジア、米国の8カ国11拠点で投資活動を行うCAVの持つローカルネットワークを活用し、この注目市場を俯瞰してみたい。

本格的な立ち上がりを見せる米国

米国では、1年程前からローカル特化型のデリバリーサービスを展開刷るスタートアップが多数出てきている。6ドルの弁当を配達するY Combinator出身の「SpoonRocket」や同じくY Combinator出身でローカルレストランの食材を取り扱う「Doordash」、500 Startups出身で社員向けにランチを提供している企業にケータリングサービスを行う「chewse」などが代表例となっている。DoorDashに関しては、2013年9月にKhosla VenturesやCharles River Venturesなどいわゆる“トップティア”のベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達に成功している。

米国ではピザなどの宅配はこれまで一部あったものの、飲食店が配達機能を持っているケースはあまり多くなかったため、配達をスタートアップ側が担うことでフードデリバリー分野はこれから本格的に立ち上がっていくと見ている。しかし上記以外にも特化型サービスが多数生まれており、すでに過当競争の様相を見せている。

・出前(昼食/夕食)「SpoonRocket」「Doordash
・法人向けケータリング「chewse
・通販(生鮮食品)「Instacart

「オフィス設置型」も多い日本

出前をIT化した「出前館」や法人弁当ニーズを捉えた「ごちクル」が多くのユーザーを獲得していたが、2014年に入り、外出する手間を省くオフィス設置型のサービスや、米国のトレンドに合わせ「○分以内」で個人に配達するファストデリバリー型のサービスが増加している。ファストデリバリー型は配達網の早期確立により、速配ニーズの強い周辺分野への進出を狙っていると考えられるが、上述した米国とのインフラの違いは大きく、既存サービスとの差別化が必要とされるだろう。

・出前(昼食/夕食)「出前館

・弁当(昼食)「ごちクル」「bento.jp」「渋弁.com

・オフィス設置型(昼食)「オフィスグリコ」「 オフィスおかん」(2014年5月にCAVが出資)「 OFFICE DE YASAI

・通販(日用雑貨・食品・飲料) Yahoo!ショッピング「すぐつく

1.2兆円の市場規模を持つ韓国
韓国のフードデリバリー産業は日本以上に生活インフラとして浸透しており、12兆ウォン(約1.2兆円)の市場規模を誇る。この巨大市場のIT化はPCに先んじてスマートフォンから始まった。韓国最大のフードデリバリーアプリである「配達の民族」は市場シェア60%、合計ダウンロード数は1000万件を達成しており、現在はテレビCMを展開することでよりマス層へのリーチを狙っている(CAVでは2014年3月に同社に出資している)。また、電話注文によるファストデリバリーも一定層に普及しており、今後はこの分野のIT化も予想される。

・出前(昼食/夕食)「配達の民族 」「YOGIYO

・高級店に特化 「FOODFLY

中国では「出前」ビジネスに強み
日本同様、中国においても店舗側で料理を配達する文化があるため、出前館型のビジネスモデルはニーズが強い。現在大手となっているのは2009年に設立された「饿了么」である。中国12都市で展開しており、登録店舗は約2万店舗、年間交易額は6億元(約100億円)となっている。社員数は200人を超え、2013年11月に米Sequoia Capitalの中国法人から2500万ドル、2014年5月に中国レストラン情報サイト最大手である「大衆点評社」から8000万ドルの戦略投資を受けた。日本からは2011年末に出前館運営の夢の街創造委員会が「得利好(Deli-hao)」を北京市内で開始したが、2013年に事業撤退をしている。

インドネシアでは渋滞がサービスの利用を加速
ベトナムやタイでは、フードデリバリーの文化が日本に比べて定着していない。これは配達中に食事が冷めてしまうことへの懸念や、ワーカーの昼食時間の長さ(ゆっくり外で昼食を取りたいと考えるため、昼食時間が平均1時間半程度と長い)に理由があるようだ。2012年以降にRocket Internetの展開するサービス「foodpanda」をはじめ10社以上のフードデリバリーサービスが乱立したが、現在も未成熟市場であり被買収など淘汰が進んでいる。

一方、インドネシアはジャカルタなど都市部で特に渋滞が多く外食に時間がかかることもあるため、フードデリバリーが比較的利用されている。KFC、Pizza Hut、Domino Pizzaなどをはじめとして飲食店側で配達機能を持っていたり、オフィスで掃除や雑務を担うオフィスボーイに依頼しテイクアウトを行ったりすることもある。現在、東南アジア圏に事業展開するFoodPandaや、ローカル企業の「Klik Eat」(夢の街創造委員会が出資)などがサービスを展開している。加盟する飲食店の中には、配達機能を持っていない店舗も多いため、事業者がにバイク便を用いて配達している。


実は女性8割のコミュニティになっていた料理写真共有サービス「ミイル」、体制を刷新して再始動

自分で作った料理や飲食店で食べた料理の写真に、美味しく見せるフィルターをつけてアップロードして交流する写真SNS「miil(ミイル)」運営のミイル。2013年に創業者だった中村仁氏が代表取締役を退任し、取締役だった高橋伸和氏が代表に就任。さらに2014年5月にはミイル(当時の社名はFrogApps)が創業期に出資を受けていたサイバーエージェント・ベンチャーズの元取締役である大下徹朗氏が代表となった。

先日代表に就任したばかりの大下氏に会ったところ、今後はミイルを「食を通じたコミュニケーションサービス」と再定義してサービスを展開するといった話を聞くことができた。

ミイルの登録ユーザーは現在32万人。そのうち8割は女性ユーザーで、中でも10〜20代のユーザーが6割を占めるのだという。月間で40万枚の写真が投稿され、Facebookの「いいね!」に相当する「食べたい!」は月間で900万件も付く。写真をきっかけにしたコメントのやりとりも多い。「料理は大変な家事。だがそれが作品や趣味として楽しめるようになっている」(大下氏)

ミイルがサービスを開始した当初、「スマホ時代のぐるなび、食べログ」の座を狙う料理写真共有サービスが複数あった。その多くは最近話題をあまり聞かなくなったのだが、ミイルはそういった店舗検索のサービスではなく、料理好きな女性に刺さるコミュニティとして成長していたようだ(その一方で、レストラン検索機能なども強化する予定があるそうだが、これは有料オプションとなるらしい)。ただまだユーザー数は30万人弱、まだまだ伸びしろはありそうだ。

そんなミイルは6月16日、「アンバサダー制度」を開始。あわせて、認定アンバサダーによる食品EC支援事業を開始した。

食品EC支援事業では、miilのアクティブユーザー数人を「アンバサダー」として認定。クライアント企業の商品をそのアンバサダーに無償で提供して、その商品を使ったメニューなどの投稿を促す。クライアント企業やミイルがアンバサダーへ金銭を支払うことはせず、いわゆる「ステマ」にはならないようにする。そのほかミイル内に「おとりよせショップ」を設置して、アンバサダーや商品購入者による写真の投稿や生産者による写真の投稿、ECサイトへの誘導などを進める。第1弾として、新潟県のカガヤキ農園と提携して事業を展開する。ミイルでは今夏中にも5件程度の提携を狙う。


JavaScript 1行でサイトを多言語化、ボタン一発翻訳の「WOVN.io」が良さそう

先日とあるWebサイトの新規制作のために見積もりを取ったら、日本語・英語の「多言語化対応」のためだけに18万円が計上されていて、卒倒しそうになった。翻訳料じゃなくて、単にCMSを多言語設定にするのに18万円ってナンノコッチャと思ったのだけど、Webサイトの文章やコンテンツを多言語化するのは手間もコストもかかる頭の痛い問題であることは間違いない。言語切り替えメニューは、どこに配置するのか、それは国旗アイコンなのか文字列なのか、言語ごとにURLパスはどう切り分けるのか、サブドメインで対応するのか、コンテンツ更新の同期はどうするのか、翻訳はどこに外注するのかなど、考えなきゃいけないことは多い。そして実は何より、コンテンツの更新となると、HTMLやCMS上で対応箇所を確認しながら訳文をコピペするという面倒な作業も発生する。

大手グローバル企業のWebマスターなら、ありあまる予算をクラウドソーシングにぶち込むなり、Web制作会社に翻訳ごとまるっと投げてしまえばいいのかもしれないけど、それにしたって、結構なグローバル企業のWebサイトで、英語と日本語で異なるコンテンツが表示されているなんていうケースに出くわした経験は誰にでもあるんじゃないだろうか。要するに大変なんである。

この問題を「なるほど!」という感じで、あっけなく解決するのが、創業間もないミニマル・テクノロジーズが提供する「WOVN.io」(ウォーブン)だ。独立系VCのIncubate Fundから450万円のシード投資を受け、ここ数カ月ほとんど1人でWOVNを実装してきたミニマル・テクノロジーズ創業者でCEOの林鷹治氏は、起業した理由を「ふとアイデアを思い付いたから」と語る。

元サイトには手を加えずに多言語化できる

もともと林氏は、Stores.jpを運営するブラケットでグロースハッカーとして活躍していた。グロースハッカーとして、ブラウザ上でA/Bテストが簡単にできるOptimizelyのサービスを使っていて、「あれ? これを多言語化に使えばいいんじゃない?」と同僚との会話の中で気付いたのだという。Optimizelyはブラウザ上で、ボタンやテキストといった要素を移動したり編集したりして、バージョンAとバージョンB……と同一ページで複数の異なるバージョンのページをユーザーに見せることができるツールだ。「A案」「B案」と出し分けることで、どちらがより良い反応が得られるかを見た上でデザインを決めるのがA/Bテストだ。

ポイントは、異なるバージョンを見せるために、元サイトにJavaScriptのスニペットを入れるだけで良いというところ。実際のコンテンツはOptimizelyのサーバから各サイト訪問者に提供される。これと同様の仕組みを多言語化サービスに使ったのがWOVNだ。

JavaScriptを1行、書き足すだけ

使い方は簡単で、WOVNでアカウントを取って、多言語化したいURLを入力。WOVNがHTMLをフェッチして解析した上でボタン類やコンテンツのテキスト要素を一覧して並べてくれる。ここで翻訳ボタンを押すと、マイクロソフトの機械翻訳サービス(Bingのもの)を使って主要10言語の訳文を生成することができる。訳文は手で編集することも可能だ。

次に、元サイトでJavaScriptのスニペットをHTMLに埋め込む。スニペットといえば、1行から5行程度ものが多いけど、WOVNでは実際に1行にすることにこだわったそうだ。

すると、Webサイトの右下に(モバイルでは下部に帯状に)、以下の画面のようなドロップダウンメニューが表示されて、訪問者は言語切替ができるようになる。技術的にいえば、各言語はハッシュタグの付いた個別のURLが割り当てられることになるが、ユーザー体験としても管理側としても、同一ページで複数言語が切り替えられるといって良く、非常にシンプルだ。WOVNのダッシュボードから多言語のリソース(テキスト)を管理、更新することができるという意味で、WOVNは一種のCMSとして機能する。オリジナルのHTMLやサイト構成、サーバ設定などに変更を加える必要がないのがポイントだ。

ちなみに、ちょっと技術的なことを書くと、WOVNではWebページにおけるテキスト要素をXPathで管理していて、これを動的に差し替えているそうだ。動的差し替えといっても、多言語のテキストは最初にまとめてクライアント側に持ってくるので、UIの応答性は極めて良い。

人間による翻訳も提供

「なるほど便利そうだ、でも機械翻訳じゃ翻訳精度が……」と思う人もいると思う。まず1点は、翻訳後の訳文は自由に編集ができるので、あくまで機械翻訳をスタート地点とすることができるというのがWOVNの良さと思う。もう1点、WOVNでは人間による翻訳の「リクエストボタン」も用意するそうだ。WOVNはMVP(ミニマム・バイアブル・プロダクト)としてローンチしたばかり。今後、たとえばAPI経由でクラウド翻訳が可能なGengoなどのサービスへつなぎ込みを行うとか、背後にプロの翻訳者や、あるいはボランティア翻訳者をプールしておいて、翻訳の納品日数によって料金プランを変えるようなことも考えているという。

まだ、訳文のバージョン管理機能などはなく、たとえば人間が翻訳した高品質の訳文があるページにコンテンツを追加して、誤って全翻訳ボタンを押すと、せっかくの訳文が機械翻訳で上書きされて吹っ飛ぶという「その辺は運用でカバーしてね」という仕様や、「本文」「段落」などと認識してほしいテキストブロックが、全てP要素でバラバラに表示されてしまうといった荒削りなところはある。翻訳についてもURL単位なので、ドメイントップを指定して3階層まで翻訳するなどといったオプションもない。

とはいえ、元サイトに変更をほとんど加えることなくサイトを多言語化できて、何よりもオリジナル言語のコンテンツの更新に合わせて多言語をまとめて管理できるサービスとしてみると、ぼくは潜在市場は大きいと思うし、デモを見る限り、すでに十分な利用価値があるように思う。読者の中には、「Google Chromeの翻訳でいいんじゃね?」と思う人もいるかもしれないけど、提供者側が用意できることとか、肝心のところは人間の翻訳を入れられるというのがポイントだと思う。もっとも、まだ翻訳テキストのGoogleクローラー対策などは、これから考慮に入れないといけないという話なので、検索流入に効果があるのかなど未知数なところもあるけどね。

林氏は「スモールビジネスのオーナーの需要があるのではないかと見ている」という。たとえば、外国人向けサービスを提供する行政書士の事務所が、中国語、韓国語、ロシア語などのページを用意するといったケースがある。あるいは自治体のWebサイトなどでは、現在冒頭に書いたようなWeb制作会社や翻訳事務所への外注コスト、メンテナンスコストがかさんでいるといった状況はありそうだ。WOVNでは、オリジナルのHTMLに変更を加えると、ダッシュボード上で該当URLがピンクになるので、それを確認して翻訳ボタンを押し直すだけで良く、メンテンスコストを大幅に下げられるだろう。

ほかにもWebコンテンツの翻訳ということでは、KickstarterとかAirbnbのようなサービス系のサイトだとか、ブログプラットフォームでの利用ということも想定しているそうだ。ブログだと、Tumblrまで含めて、JavaScriptのスニペットを埋め込めるサービスであれば、ほとんどどんなブログサービスでも利用可能という。個人ブログに入れるのもありだ。

なんで今までWOVNみたいなサービスがなかったのか? というと、実はこれまでにも類似サービスは存在していたそうだ。たとえば、TolqというサービスがWOVNに近いそう。ただ、こうしたサービスは少数派で、多くの「多言語化サービス」はDakwakのようなタイプ。Dakwakでは翻訳コンテンツをDakwak側でホストして翻訳コンテンツについてはページ全体を提供するというモデル。だから、利用者はDNS設定を変更してサブドメインがDakwakのIPアドレスに振り向けられるようにしておく必要がある。つまり、サーバ管理ができるドメイン保持者ではないと利用が難しいということ。

まだWOVNにどの程度市場性があるのか良く分からないけど、ぼくは今すぐTechCrunch Japan主催のイベントページの多言語化に利用してみたいと思ったね。


サイバーエージェント・ベンチャーズが50億円規模の新ファンド–藤田ファンドとの違いは?

直近では企業向けの総菜販売サービス「オフィスおかん」を提供するおかんや、モノづくりプラットフォーム「rinkak」を提供するカブクなどに出資しているサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)。同社が新しいファンドを組成した。

新ファンドの名称は「CA Startups Internet Fund 2号」。これまで運用してきたファンドは総額24億円だったが、新ファンドは総額50億円のものとなる。CAVではこれまで、IT分野のシード、アーリーステージ向けに数千万円出資するということが多かったが、新ファンドでは、同様の分野、ステージにおいて追加投資も含めて最大1億円程度の出資を予定するという。ただし、同社はこれまでも「株式の20%以上を持たないようにする」というスタンスだったそうで、今後もそれは続けたいそうだ。

またCAVではこれまで、クラウドワークス(の吉田浩一郎氏)やKAIZEN Platform(の須藤憲司氏)といった、比較的事業経験の豊富な起業家に対しての出資を重視してきたが、今後はより広い人材に投資をしていくという。

新ファンドの立ち上げにともなって、CAVでは今後、起業家や起業準備中の人物を対象にしたオフラインイベント「Startup Workout」を定期的に開催する。第1回は7月2日の予定で、15人程度の参加を募集中だ。このようなイベントをする背景には、CAVがどうしてもCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)に見られがちだということがあるようだ。CAVは事業会社の子会社だし、当然「CVCか?」と言えばCVCなのだが、「事業会社とのシナジーがあるかどうか」という点にこだわって投資をするわけではなく、キャピタルゲインを求める純投資をしている。そこを改めて伝えていきたいのだという。

CAVと藤田ファンドの立ち位置の違い

ところで以前から、CAVのファンドと“藤田ファンド”ことサイバーエージェント投資事業本部の関係性がいまいちはっきりしないところがあったので、改めてその点について聞いてみた。やはり基本的にはCAVはシード、アーリーステージが対象、そこから先のステージが藤田ファンドの投資領域となるそうだ。シード期にCAVから資金調達し、その後のラウンドで藤田ファンドから資金調達しているクラウドワークスなどはその例とも言える。

ただ一方で、藤田ファンドでは非公開の投資先も含めて比較的若いステージに出資しているケースもあったため、CAVのファンド出資者周辺からは、「(CAVと藤田ファンドは)競合になっており、利益が相反するのではないか」という不満の声が挙がっていた。

このあたりについて、僕は以前サイバーエージェント代表取締役社長 CEOの藤田晋氏から「藤田ファンドでは起業家、創業者を見て出資をする」という話を聞いているし(もちろん市場も事業も見ている上での話だ)、先日新日本有限監査法人が開催したイベントに登壇したCAV代表取締役社長の田島聡一氏が「サイバーエージェントはグループ会社にも独自の文化を認めている。藤田が『ノー』と言っても、CAVで投資できるといったいい文化がある」とグループの多様性に触れている。2人の話は、グループ内で競い合って成長してきたサイバーエージェントの風土そのものが表れているようにも見える。

ただしそんな風土もファンド出資者からすれば不安になりかねない話だ。複数関係者から聞いたところでは——もちろんそういった問題を防ぐためだけでもないようだが——新ファンドは事業会社1社から大半の資金を集めているそうだ。


モバイルでもいつもGIFを見ていたい人のためのアプリケーション「Nutmeg」登場

大好きな読者の方々に、素晴らしいアプリケーションの情報をお届けしようと思う。通常は記事を公開しない曜日ではあるものの、これはぜひともお伝えする価値のあるアプリケーションだと思うのだ。GIF動画を、とっても簡単にシェアすることのできるアプリケーションだ。

名前をNutmegという。モバイル版のGiphyだと思えばだいたいお分かりいただけるかと思う。アプリケーションを開くと、そこにはHello、Ugh Fail、Awesome、あるいはHaHaHaなどというメニューが並ぶ。もしこれらメニューの意味がよくわからなくても、メニューを選択すればどういう意味かがすぐわかることだろう。それぞれはカテゴリ名となっていて、カテゴリに属するGIFがまとめられている。

カテゴリを選んだ段階では多くの画像が表示されているが、その中から特定の画像を選ぶと、GIFアニメ再生がはじまる。そこで2度クリックするとメッセージ送信モードとなる。送り先を指定すれば、即座に表示されていたGIFを友達に送ることができるのだ。

まだできたてのアプリケーションで、GIFの枚数にも不足を感じる。現在、一所懸命にコンテンツの充実に向けて努力しているところであるそうだ。

尚、アプリケーションのトップには現在進行中のイベントに関するカテゴリも用意されている。もちろん、現在はワールドカップ関連のGIFを集めたカテゴリとなっている。

いろいろなGIFを見てみたいのに、なかなか良いものが見つからないという人は、ぜひともアプリケーションを試してみては如何だろうか。iOS版がこちらで公開されている。

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(翻訳:Maeda, H


【動画】思わずムキになる!? リアルタイム対戦型脳トレ「BrainWars」創業者の高場氏に聞く

リアルタイム対戦型「脳トレ」という、ちょっと聞き慣れないジャンルのゲーム「BrainWars」で起業したのは、サイバーエージェントで開発リーダーをしていたエンジニアの高場大樹氏らだ。BrainWarsを提供するトランスリミットは、まだ創業5カ月。プロダクトローンチも5月中旬と、まだスタートしたばかりだけど、すでにユーザーは15カ国にまたがり、1日1000ダウンロード、ユーザー数は2万を超えているといい、順調な滑り出しのようだ。

「世界を夢中にさせる新たなコミュニケーションを生み出す」というビジョンの元に、言語に依存しない中毒性の高いゲームをということで目をつけた「脳トレ」。ぼくもときどき起動してやっているのだけど、10代の若い人に反射神経で露骨に負けそうなのがイヤだなと思いながらも、ムキになってやっていたりする。脳「トレ」というだけあって、コッソリ練習を積めば結構強くなれるという面もあって、なおさら「負けてられない」と思ってしまうゲームでもある。

BrainWarsとは、どういうゲームなのか、対戦は実際にどういう風に行われるのか。マネタイズや潜在的な狙いはどこにあるのかといったことを、TechCrunch Japanでは高場氏に聞いた。以下の動画は、前半はデモを含むゲームの紹介、後半は実際の対戦のマッチングシステムやマネタイズ、起業の背景、今後の狙いといったことを聞いている。


本文の最後まで読まれている記事ってどんなもの? 新指標READでの調査結果

最近オンラインメディアの記者や編集者と会った際、「ページビュー(PV)の質」という話題になることが少なくない。例えば新聞社だと月間数億PVになるが、ライセンスを取っているのかどうか分からない翻訳記事が並ぶブログメディアだって、2ちゃんねるまとめブログだって、月間で1億前後のPVだったりする。また国内トップクラスのバイラルメディアは、ローンチ数カ月で1500万〜2000万PVにまで成長していると聞く。ネット上にさまざまなコンテンツがあふれる中で、果たして各メディアの1PVというのは同じ性質のものと考えていいのだろうか、という話だ。

東大発スタートアップのpopInでは、そんなPVの質を計測すべく、新たな指標「READ」を4月に発表。現在オンラインメディアへの導入を進めている。

READはオンラインメディアのコンテンツの読了状況を図るための指標だ。導入したメディアの本文領域を自動で解析し、本文領域での滞在時間や、本文のどの位置までを読んだのかという読了率、サイトからの離脱率を計測できるようになる。これによって、読者がその記事を熟読したのか、それともさらっと流し読みたのか、はたまたタイトルと冒頭数行の内容を読んだだけだったのかといったことが分かるのだという。popIn代表の程涛氏は、「バズるタイトル、釣りタイトルが増えている中で、それに合わせた評価基準はない。ウェブが進化するなら評価指標も進化すべき」と語る。READの詳しい説明については、下の動画をご覧頂きたい。

 

5月末時点でYOMIURI ONLINE、毎日新聞、ダイヤモンド・オンライン、All About、ギズモード・ジャパンなど計75媒体に導入されているというREADだが、今回5月1日~5月31日の期間の計測値を解析したレポートを発表した。

レポートでは75媒体を横断的に調査しているため、媒体ごとの特性は省かれている。だが全体としては、やはり読了率が高い記事の場合は離脱率が低く(読み終えても同じ媒体のほかの記事に遷移する)、サイト外に離脱することが少ないのだそうだ。

僕は程氏に一部の媒体ごとのデータ(媒体名ではなく新聞、CGMといったカテゴリで)も見せてもらったのだけれども、新聞やビジネス系ニュースサイトでは記事を熟読している、つまり本文領域での滞在時間が長く、読了率が高いユーザーが多い一方で、CGMやエンタメ色の強いコンテンツでは、流し読みしてサイトを去るユーザーが多いという傾向が見られた。popInでは今後もREADをブラッシュアップしつつ、レポートを発表していくという。利用は無料で、大手メディアを中心に導入を進める予定だが、問い合わせフォームも用意しており、そこで申し込みを受け付ける。

ではなぜpopInはREADを提供するのか。それは当然彼らのビジネスに繋がっているからだ。popInでは以前からオンラインメディア向けに関連記事や人気記事を表示するエンジンを提供してきた(実はTechCrunch Japanにも導入されている)。現在はこれを「DISCOVER」の名称で運用しており、READのテクノロジーを用いて関連記事の精度を高めるほか、関連記事内と同時にネイティブ広告を配信するという取り組みを行っているのだ。この領域は、米Outbrainが先行しており、最近になって日本でも活動を開始している。また、ヤフーも米Taboolaと組んで「Yahoo!コンテンツディスカバリー」を発表するなどしている。


オイル交換および洗車に特化したカーメンテナンスサービスのCarHero

車は便利な乗り物だが、一定の距離を走るたびにオイル交換などを行う必要もある。このオイル交換を面倒だと感じる人は多いようだ。これをなんとかしようとして生まれたスタートアップがCarHeroだ。定期的に、車を停めてある自宅ないしオフィスを訪問してくれるもの。現在はダラスなど一部地域のみの対応だが、アメリカ中で展開したいと画策中だ。

サービスの内容自体は非常にシンプルなものだ。サイトからオイル交換のスケジュールを指定する。すると「CarHero Specialist」と呼ばれる担当者が訪問して、オイル交換、洗車、内装のちょっとした手入れを行ってくれるというもの。価格は現在57ドルとなっている。

運営は自己資金により賄われているが、すでに利益を出しているのだとのこと。今のところはダラスおよびフォートワースでサービスを展開中。共同ファウンダーのCarlton Greenによると、サービスは確実な利益をもたらしており、他地域の展開も積極的に行っていきたいと考えているそうだ。

言ってみればYourMechanicがオイル交換に特化したサービスであると考えることもできるかもしれない。CarHeroは既存の車修理/メンテナンスサービスから複雑な要素を取り去って、サービスをシンプルにしたわけだ。提供するサービスを限定したおかげで、部品やツール類を用意しておいたりする必要もなくなったわけだ。必要なものが、オイルと洗車道具などに限られるというわけだ。

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(翻訳:Maeda, H


IVPが起業家支援向けの”寺修行”プログラムを開始–門下生1号はEmaki

Infinity Ventures LLP(IVP)といえば、アーリーステージ以降の企業に対して数千万円から数億円の規模で資金を提供してきた独立系ベンチャーキャピタルだ。彼らが新たにスタートアップを対象にしたインキュベーションプログラム「TechTemple」を開始した。IVPでは2013年に同名のコワーキングスペースを中国・北京にも設立している。

課題になっていた創業期スタートアップとの接点

Infinity Ventures LLPは2009年より、ベンチャー投資を開始。また同時に、招待制イベントの「Infinity Ventures Summit(IVS)」や500人の学生が参加するワークショップなどを展開。「本業以外でもスタートアップのエコシステムができてきた」(Infinity Ventures LLP共同代表パートナーの小野裕史氏)状況だという。

だが一方で課題となってきたのが創業期のスタートアップとの接点作りだ。先日成果発表の場であるデモデイを開催したばかりのMOVIDA JAPANのほか、インキュベイトファンド、サムライインキュベート、Open Innovation Lab(Onlab)、最近ではフランス通信企業Orangeの日本拠点であるオレンジ・ジャパンなど、創業間もない起業家のインキュベーションを手がけるプレーヤーは増えている。その一方で「アーリーステージに大きな金額で投資をする」というイメージの強いIVPは、そういった創業期の起業家と接点を持ちにくかったのだという。

とは言え、IVPが投資をすべきステージに成長した頃には、バリュエーションや条件面での折り合いも難しい。IVS内のプレゼンイベント「Launch Pad」でスタートアップとの接点を持っていたが、それについても「今までは生かしきれていなかった」(小野氏)という。

先日ノボット創業者であり、米国でCHANOMAを立ち上げた小林清剛氏とも話をしたのだけれども、Y Combinatorなどでも同じような状況になっているそうで、デモデイを開催する時点ではすでに条件面で出資が難しくなケースも少なくないという。日米問わず、投資家がイケてる起業家を早期に取り合う(とは言い過ぎかも知れないが)状況は加熱しているということのようだ。

条件は「デモがあればOK」。ただし年間5社程度の少数精鋭

TechTemlpleでは、最低500万円からの創業資金のほか、オフィススペース(現在は東京・五反田にあるfreeeのオフィスの一部を提供している)や各種パートナーによる支援プログラムを1年間提供する。採択するのは年間5社程度の少数に設定。Launch Padの登壇に関しては、シード権(あくまで登壇前の最終審査へのシード権であり、すべてのプログラム採択者が登壇できるわけではないそうだ)も与える。大規模なデモデイなどは予定しないが、前述のとおりLaunch Padでの登壇や、IVPのファンド出資者などに向けて説明の場を用意するとのこと。

応募条件は、「最低限デモがあること」(小野氏)とのことで、法人登記の有無も含めて細かい条件は設定していない。また、ほかのプログラムと併せて参加してもよいという。ただし500万円からの投資を受け入れる必要がある。注力領域なども設定しないが、500万円という金額を考慮すると、ハードウェアベンチャーの採択は難しいかもしれない。

第1号の「門下生」は画像共有アプリ開発のEmakiに

採択までのフローはまず、TechTempleのウェブサイトにてエントリーした内容の書類審査から始まり、面談による1次審査とビジネスプランのレビューを経て最終審査となる。プログラムの採択企業は「門下生」呼ぶそうだが、その第1弾に選ばれたのは、写真共有アプリを提供するEmakiだ。

同社の手がける「Emaki」は、あらかじめアプリ上で友人とグループを作成していれば、写真を撮影するだけで当該グループにほぼリアルタイムで共有されるというアプリ。例えば、親しい友人からそれほどでもない知人までがいるFacebookでは、どんな写真でも気軽にアップロードできるわけではない。だが、一緒に旅行をしたメンバーには、旅行の写真はすべて共有したいと思うはずだ。Emakiはそれを実現してくれるアプリだ。同社は今後TechTempleにてサービスの開発を続けるとしている。


ATMや1秒送金サービスも チャンスをうかがう国内ビットコインスタートアップ

ビットコインと聞くと、国内ではビットコイン取引所のMt.Goxにまつわる騒動を思い浮かべる読者も多いのではないだろうか。どうしてもネガティブなイメージがつきがちだが、関係者からは、「Mt.Goxの騒動はあくまで同社のシステムに由来する問題であり、ビットコイン全体の問題とは別だ」という声が聞こえてくる。その意見を裏付けるかのように、ビットコインは国内外を問わずに注目を集め続けている。では日本での動向はどのようになっているのか。

東京にはビットコインATMが登場

5月末には、米国製ビットコインATMの「Robocoin(ロボコイン)」が西麻布のVerandaと六本木のPink Cowという飲食店に設置された。Robocoinは、運転免許証スキャナー、手のひら静脈認証、顔写真撮影といった本人確認機能を備えるビットコインのATMだ。あらかじめデジタルウォレットを作成していれば、円紙幣でビットコインを購入したり、ビットコインを売却して、円紙幣を受け取ることが可能だという。

西麻布にRobocoinを設置したのは、2014年4月に設立したばかりの長崎のビットチェック。同社代表取締役の峰松浩樹氏は、これまでに長崎でシステム開発やビットコインの採掘(計算によってビットコインを得る作業)を手がけてきたという。

ビットコイン販売所のbitFlyerは国内VC2社から資金調達

時を同じくして5月末、国内のスタートアップであるbitFlyerが、ビットコインのオンライン販売所「bitFlyer」を公開した。bitFlyerは、買い手の希望する金額にマッチする売り手がビットコインを販売する取引の場となる「取引所」とは異なり、外貨への交換のように、固定価格でビットコインの売買ができる「販売所」となっている。これまでビットコインの取引所はあったが、販売所を提供するのは日本では初だそうだ。

bitFlyerを利用するには、同社のアカウントを作成する必要がある。手数料は2800円だが、現在は無料化している。アカウント作成に際しては、個人情報や銀行口座を登録したのち、同口座からbitFlyerの指定する口座に実際に入金をするなどして、本人確認を徹底している。

またbitFlyerでは、直近にも「bitWire」と呼ぶ送金機能を提供する予定だ。通常ビットコインを送金する場合、認証までに少なくとも10分、長ければ1時間ほどかかるそうだ。だがそんなに時間がかかってしまうのであれば、通常の店舗では利用が難しい。実際に海外での利用実態としては、認証を待たずにビットコインでの決済を受け付けるケースもあったそうだ。だが将来的に、認証途中に利用者が店舗を去ってしまって「認証できない(支払われない)」となって問題になるかもしれない。しかしbitWireを利用すれば、(仕組みについては教えてもらえなかったが)その処理を約1秒で終わらせることができるのだそうだ。

bitFlyerは2014年1月の設立。代表取締役の加納裕三氏は、以前に外資系投資銀行でトレーダーを務めていた人物。グノシー共同代表を務める木村新司氏は加納氏の古い友人だとのことで、創業時に個人投資家として出資している。

同社は6月6日、国内のベンチャーキャピタル2社(非公開)から約1億2000万円の資金を調達している。「ユーザーのビットコインは(取引時以外)コールドウォレット(ネットワークに繋がっていないデジタルウォレット)に保管しているので物理的に安全な措置をとっている。しかし万が一のトラブルに遭っても対応ができるような、信用できる状況を作りたい。今後はセキュリティにも注力する」(加納氏)

関連事業者への投資も進むが、まずは利用環境の拡大に期待

実は国内ベンチャーキャピタルが、bitFlyer以外のビットコイン関連サービスへの投資を予定しているという話も聞いているし、まだまだプレーヤーは増えてきそうだ。だが一方で、ビットコインを利用できる環境はまだまだ少なく、直近では投機目的の利用者が多くを占めている状況。また、ビットコイン自体を懐疑的に見る人間も多いのが実情だ。加納氏も「bitWireを提供することで手軽な送金を実現して、利用機会を増やしたい」といった話をしてくれたが、まずは安全に利用できる環境がどれだけできるかが普及のカギになりそうだ。


3Dプリント作品プラットフォーム運営のカブクが2億円を調達して海外進出へ

直近ではクラウドワークスが参入を発表したが、「モノづくり」もスタートアップが盛り上がりを見せている分野の1つだ。6月6日にサイバーエージェント・ベンチャーズ、ニッセイキャピタル、フジ・スタートアップ・ベンチャーズを割当先とした約2億円の第三者割当増資を実施したカブクも、そんなモノづくりに挑戦する1社だ。

カブクが運営するのは3Dプリント技術を使ったものづくりマーケットプレイス「rinkak(リンカク)」だ。rikakは自身でアップロードした3Dデータで作成したアイテムを販売できるプラットフォームだ。陶器や金属、ラバーやプラスチック樹脂など多様な素材を使って、アイテムの製造や販売ができる。

rinkakuでは、製造だけでなく、梱包から配送までパートナーが担当するため、ユーザーはデータをアップロードするだけで販売が可能。販売価格の30%が手数料となる。

アップロードされているデータ数は数千件とのことだが、現在18金やプラチナを使ったアイテムも製造できるそうで、最近では「m0ment」という名称でアクセサリーのプライベートブランドも開始している。データをアップロードするのは著名クリエーターから美術系の学校に通う学生まで。さらには「オアシス銅像ファクトリー」やアイドルグループ「アイドリング!!!」メンバーの3Dフィギュア(販売終了)など、タイアップ、コラボレーション案件も増えている。「これまでポートフォリオすら作れなかった学生などにも評判がいい。モノづくりはプロだけのモノでなく、『世の中ごと』にはなりつつある。これを加速したい」(カブク代表取締役 CEOの稲田雅彦 氏)

カブクでは今回の調達資金により開発体制を強化するとしている。今夏をめどに、多言語対応のほか、海外発送や海外クリエーターの商品販売といった海外展開を強化するほか、スマートフォン対応についても進めていく予定だ。


地デジ・ストリーミングのAereoがChromecastに対応

今日(米国時間6/5)、テレビ放送のストリーミング・サービスのAereoがGoogleのChromecastのサポートを開始し、 Androidアプリを公開した。

AndroidデバイスへのAereoのストリーミングは昨年から可能となっていたが、今回のバージョンアップでAereoユーザーはタブレットとスマートフォンだけでなく、Chromecastさえあれば居間のテレビでも番組を楽しめるようになった。

Aereoは各都市に置かれた拠点内でユーザー1人ずつに小型のアンテナを割り振ってレンタルし、さまざまなデバイスに対してほぼライブでテレビ番組をストリーミングするサービスだ。Aereoには録画オプションもある。ユーザーはAereoに月額12ドル払うだけで100ドルのケーブルテレビとほとんど同じサービスを受けることができる。

もちろんAereoがストリーミングできるのは無料の地デジ放送だけだからBravoやESPNは見られない。

テレビネットワークはAereoに対して著作権侵害の訴訟を起こしており、ついに4月には最高裁に持ち込まれた。そのためAereoの将来は最高裁が判断を下すまで不透明な状態だ。

しかしそれとは別にAereoは着実にサービスを拡大している。今回のバージョンアップでAereoのサービス地域の住民にとってChromecastの価値が大きくアップしたことは間違いない。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


今度は”総菜版オフィスグリコ”‒‒「オフィスおかん」運営のおかんがCAVなどから資金調達

TechCrunch Japanでは1カ月ほど前、“野菜版オフィスグリコ”とも言えるようなサービス「OFFICE DE YASAI」を紹介したが、オフィスで商品を置き売りするサービスはほかにもある。「おかん」となんともインパクトのある社名のスタートアップが提供する「オフィスおかん」は、総菜をオフィスで置き売りするというサービスだ。もともと個人向けのEC(置き売りではなく月1回商品を配送していた)としてサービスを開始したが、現在はまず法人向けに注力しているとのこと。

同社は2012年12月の設立。福井県の総菜屋チェーンが持つ技術を採用することで、冷蔵庫で約1カ月保存可能な総菜を提供する。オフィスには専用の冷蔵庫と使い捨ての食器も提供するので、電子レンジさえあれば暖かい総菜を食べることができる。これまでサービス開始から2カ月で、ガイアックスやコイニーをはじめとした10社にサービスを導入している。各社の従業員数は7人から300人程度。従業員数200人の規模で、1回200商品を納品しても1週間で消費されるというケースもあるという。なお現在は、前述の総菜チェーンのほか、各地から送付される商品を一度おかんでとりまとめて、徒歩や公共交通を利用して各社に届けているそうだ。

約1カ月の保存が可能というところで商品の在庫ロスを低減できるだけでなく(正直ここは野菜では難しいだろう)、導入企業の男女比や年齢、商品の消費傾向といったデータを分析することで消費予測を行い、最適な商品数を届けていくという。また総菜屋側では、本業のアイドルタイムにオフィスおかん用の商品を製造することで、効率化を図っているという。今後は総菜屋の持つ保存技術を他社にも提供することで、商品ラインアップも拡充する予定だという。

導入の初期費用は無料で、商品は1個100円、もしくは200円となっている。企業に対して従業員1人あたり200円の月額基本料金と、商品1個あたり220円を徴収する。「あくまで社員食堂など福利厚生のサービスとして利用して欲しいので、企業に料金の一部を負担してもらい、従業員が安価に商品を購入できるようにしている。またこの仕組みによって料金未回収のリスクを下げている」(おかん代表取締役CEOの沢木恵太氏)

そんなおかんだが、サイバーエージェント・ベンチャーズとオイシックスから資金調達を実施したことを明らかにしている。金額は非公開だが、数千万円程度になるという。同社では今回の調達をもとに、サービス開発やアライアンス担当などの人材を強化。「この1年でサービスの体制を整え、5年後には製造から配送、データ解析までの仕組みを作る」(沢木氏)としている。今年度は企業数100社、6000人程度へのリーチを目指す。


コンバージョン率が倍増、クラウド予約システム「クービック」のグロースハック術

ヨガや英会話教室といったスモールビジネス向けのクラウド予約システム「Coubic(クービック)」は、ウェブサイトの知識がない人でも1分で予約ページが作れることをうたうサービスだ。今年4月にローンチしたばかりだが、ベータ期間中はコンバージョン率を上げるために試行錯誤していたそうで、あるグロースハックを実践したところ、その割合が倍増したのだという。その手法とは何だったのか?

クービックは開発当初、ユーザーがヨガ教室やネイルサロンなどの店舗に予約を入れる際、Facebookログインもしくはメールアドレスによるアカウントの新規登録を必須としていた。店舗の予約時に必要な氏名とメールアドレスを入力してもらう前に、クービックのアカウントを登録させていたわけだ。ユーザーからすれば「クービック? 知らんがな!」となって予約ページから離脱し、ビジネスオーナーからすると最悪のケースになりかねない感じだ。

クービック代表取締役の倉岡寛氏によれば、当時は空き会議スペースの予約サービスを想定していて、空き家貸出サービス「Airbnb」をベンチマークしていたのだという。だからこそAirbnb同様、最初にFacebookログインもしくはメールアドレスによる新規登録を求めていた面もあるようだ。

当初のクービックの利用イメージ

しかしその後、現在の予約&顧客管理を実現するビジネス向けツールにピボット。その結果、「我々の存在を消したほうがユーザーとビジネスオーナーのメリットになる」と判断し、予約フローを見直すことに。そこで実施したのが、店舗の予約に必要な情報を入力した後に、クービックの会員登録を「任意」で促すようにしたことだった。会員登録をすると2回目以降の予約がスムーズになる利点も同時に明示しつつも、登録を任意にしたことで予約のコンバージョン率が倍増したのだという。

クービック代表取締役の倉岡寛氏

現在はヨガ教室やネイルサロン、エステ、マッサージ、英会話教室などのローカルビジネスを中心に広がっているクービックだが、6月4日には日本最大級のヨガ情報サイト「YOGA ROOM」を運営するアイオイクスとの業務提携を発表した。YOGA ROOMには全国5000以上のヨガ・ピラティス教室が登録していて、そのほとんどは電話やメールで予約を受け付けているそうで、YOGA ROOMを通じてクービックの導入を進めていく。

これまではネット上のクチコミで広がっているというクービックだが、「ローカルビジネスの経営者でネットに明るい人は肌感覚として10%程度」と倉岡氏。今後も今回のような提携を通じて、自社ではリーチしきれないスモールビジネスの顧客を獲得していきたいそうだ。