ソフトバンク、米国の黒人やラテン系、ネイティブアメリカンなど多様な起業家を支援するエバーグリーンファンドを発表

日本のコングロマリットSoftBank(ソフトバンク)が米国時間3月14日、同社には米国の黒人やラテン系およびネイティブアメリカンを対象とする、上限を定めないエバーグリーンファンドを発表した。ファンドはSoftBankの1億ドル(約118億円)のマイノリティ向けOpportunity Growth Fundを継続するものであり、それは「人種的公正」が大きく叫ばれるようになった2020年に創立された。

同社によるとこの取り組みは24時間で立ち上がり、現在ではそのすべてが70社に投資されている。最初のポートフォリオ企業は55%が黒人の創業者、40%がラテン系、5%が黒人でラテン系の創業だった。ただし、いぜんとして男性が圧倒的に多く、SoftBank Opportunityのポートフォリオのわずか13%が黒人女性による創業だが、それは全国の率より高くてもまだ同等とはいえない

Opportunityで創業した企業の中で4社は評価額が10億ドル(約1184億円)を超え、2社がエグジットした。ポートフォリオ企業の半数は、初期投資の後、別のラウンドを調達している。このような活気が、同社がその取り組みを継続する理由の一部だろう。換言すれば、(当然ながら)それは実際に効果を上げている。

残る疑問は、なぜSoftBankが歴史的に見過ごされてきた起業家を支援するのに、対象の特定された明確で強力なシグナルとなる資金ではなく、エバーグリーンファンドに目を向けたのかだ。同社には、数字の危惧はない。わずか4カ月前にSoftBankは、ラテンアメリカの企業に30億ドル(約3550億円)ほどの資本を投じた。

エバーグリーンファンドは終了日のない開放的な構造だ。そのため企業は、実現したリターンから際限なく資本をリサイクルし、複数のステージにまたがって投資したり、オーナーの異なる株式に投資したりできる。この場合SoftBankが計画しているのは、アーリーステージのスタートアップシーンへの再投資で、最近のTiger Globalの例に似ている

これらの企業にSoftBankが投資した総額は一定の額ではないので、このような投資がもたらすインパクトを計るのは難しい。SoftBankはForbesに、このファンドのデビュー時には行わなかったほどのより多くの資本を展開したいという。またTechCrunch宛のメールで同社は、1年あたり20〜30社の、それぞれ30万〜70万ドル(約3600〜8300万円)の投資を行い、継続ファンドとしては100万〜500万ドル(約1億1800万〜5億9200万円)を確保するという。

元SoftBankのCOOだったMarcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏は、Opportunityファンドを構想し立ち上げた本人だが、彼以外にマネージングパートナーのShu Nyatta(シュウ・ニャッタ)氏や、TechSquareの創業者でPindropの会長でもあるPaul Judge(ポール・ジャッジ)氏、TaskRabbitのCEOであるStacy Brown-Philpot(ステイシー・ブラウン-フィルポット)氏らも参画した。クラウレ氏は報酬をめぐる争いで同社を去り、今はニャッタ氏がOpportunityファンドを率いて、マネージングパートナーのCatherine Lenson(キャサリン・レンソン)氏とBrett Rochkind(ブレット・ロックキンド)氏を投資委員会に加えた。

画像クレジット:Tomohiro Ohsumi/Getty Images

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テックの多様性を高めるNPO「All Raise」に新CEOが誕生

ベンチャーキャピタルの取引や意思決定に多様性を高めることに注力する非営利団体All Raise(オールレイズ)は、Mandela Schumacher-Hodge Dixon(マンデラ・シューマッハ=ホッジ・ディクソン)氏を新しい最高責任者に任命した。この人事は、Pam Kostka(パム・コストカ)氏がスタートアップの世界に戻るために非営利団体の舵取りを辞めてから5カ月後のことだ。

ディクソン氏は10年以上にわたって、スタートアップの世界でリプリゼンテーションを高めるための活動を続けてきた。All Raiseに参加する前、ディクソン氏は、取り上げられることの少ない創業者のためのオンライントレーニングセンターであるFounder Gym(ファウンダージム)で、6大陸で18のコホートを運営していた。数週間前、ディクソン氏は、Founder Gymの現在のコースが最後の卒業生になることを発表した。Googleとの大きなパートナーシップを獲得したこのプログラムは、閉鎖されることになった。

「私はどこにも行きません」とディクソン氏は今週、TechCrunchのインタビューに答えた。「より公平なエコシステムを作ろうという、これまでやってきたことをまだ続けています。私はこの世界に入る前、シリコンバレーに知り合いがいない6年生の教師でした。私は、橋渡しをすることがすべてであり、そうしてきたのです」。

ディクソン氏は、Founder Gymが閉鎖した理由をTechCrunchに具体的に説明しなかったが、閉鎖はリーダーシップ委員会の全員一致の決定であったと述べている。All Raiseの機会が訪れたとき、彼女は、店を閉じる過程にいたということだ。

この2つの仕事の繋がりは明白だ。ディクソン氏は、歴史的に見過ごされてきた起業家たちが会社を設立する際に、特に資本をより利用できるよう、何年もかけてグローバル企業を立ち上げたのだ。現在、彼女は、ベンチャーキャピタル業界により明確な焦点が当たっているが、同じことを行うより大きな組織で仕事をしている。

現在、2万人以上のコミュニティメンバーを誇るAll Raiseは、女性ベンチャーキャピタリストの幹部によって2017年に設立された。オリジナルの設立チームは、投資家のStacy Bishop(ステイシー・ビショップ)氏、Theresia Gouw(テレシア・グー)氏、Dayna Grayson(デイナ・グレイソン)氏、Kirsten Green(キルスティン・グリーン)氏、Nairi Hourdajian(ナイリ・ホルダジャン)氏、Maha Ibrahim(マハ・イブラヒム)氏、Rebecca Kaden(レベッカ・カデン)氏、Aileen Lee(アイリーン・リー)氏、Jess Lee(ジェス・リー)氏、Jenny Lefcourt(ジェニー・レフクール)氏、Ann Miura-Ko(アン・ミウラ・コ)氏、Sarah Nahm(サラ・ナーム)氏、Stephanie Palmeri(ステファニー・パルメリ)氏、Heidi Patel(ハイディ・パテル)氏、Megan Quinn(ミーガン・クイン)氏、Renata Quintini(レナータ・クインティーニ)氏、Elisa Schreiber(エリサ・シュレイバー)氏、Kristina Shen(クリスティーナ・シェン)氏、Sarah Tavel(サラ・テヴェル)氏から構成されている。

設立以来、1100万ドル(約13億円)の資金を調達し、ベイエリア、ニューヨーク、ボストン、ロサンゼルス、シカゴに地域支部を開設し、まもなくDCとマイアミにハブを立ち上げる予定だ。

All Raiseは、テック分野のリプリゼンテーションを高めるために特別に生まれた非営利団体だが、ディクソン氏は、組織のミッションに新たなレベルの包括性をもたらしたいと考えている。ディクソン氏は、シリコンバレーでベンチャーキャピタルを調達し、ベンチャーキャピタル会社で働いた最初の黒人女性の1人であるという。また、パンデミック時に2人の子どもを出産し、リーダーとしての自分にまた新たな「広がり」が加わったという。

「私も、無意識であれ意識的であれ、ただ1人であることや少数の存在であるという排除のバイアスにさらされた経験をしています」と、ディクソン氏は語る。「私はそれを理解したいと強く意識してきたのでわかるのです。All Raiseでは、このことを私のリーダーシップに反映させ、私たちがサポートするのは、より多様なアイデンティティを受け入れる空間であることを確認することができます」。

ディクソン氏の活躍の場は確かに存在する。All Raiseは、2030年までに女性創業者へのシード資金提供額を11%から23%に増加させ、2028年までに米国企業の意思決定者の女性比率を2倍にするという目標を、女性全体を見ることによって設定してきた。しかし、データが示すように、黒人やラテン系の女性は、白人女性に比べてベンチャーキャピタルからの資金提供が偏って少なく、ノンバイナリーの創業者も、資金調達の際に高いハードルに直面する可能性がある。これらの断絶は、個別に追跡しなければ、見えなくなってしまう可能性がある。

同社は現在のミッションの中で、マイノリティに対してどのような影響を与えたいかという、ディクソン氏が変えていくだろう盲点について明確な目標をまだ持っていない。新CEOは、具体的にどのようなことに注力するかは明らかにしなかったが、All Raiseのリーダーシップチームに多様性を反映させることが優先事項であると述べた。まだ就任して1週間なので、どのような役割を担い、どのような人材を採用すればいいのか、まだ考えている最中だという。

「私たちは、本社をはじめとする本拠地を、多様で、包括的で、公平なものにすることに注意を払っています」と、ディクソン氏はいう。「私は、より包括的で、歴史的に十分に取り上げられていない女性やノンバイナリーのリーダーを受け入れ、幅広い女性やノンバイナリーのリーダーのための帰属意識とコミュニティの安全な空間を作ることが最も重要であると思います」。彼女は、2022年第2四半期にAll Raiseコミュニティ内の多様性指標を発表する予定だ。

ディクソン氏は、代表の定義を増やし、より多くの目標を明示することに加え、非営利団体が提供するバーチャルブートキャンプから、起業家とオープンボードシートの機会を結びつけるプログラムまでの計画を運用することも優先課題としている。これは、ディクソン氏がFounder Gymで築いてきたものに直接つながるものだ。「私たちが定義し、私たち自身に責任を持たせる強力な成功基準を持つこと」は、どんな製品を作るかという明確なロードマップを持つことと並んで重要であると、彼女は語った。

彼女の目には、このNPOの次の章は、タイムリーにより代表的な場所に到達することだと映っている。

「私にとって、時間が最も重要で、動かなければならないんですが、同時に、私たちはこの分野のリーダーですから、慎重に行動しなければいけません」と彼女はいう。「私たちはオピニオンリーダーとして見られたいし、オピニオンリーダーとして見られる権利を獲得し続けたいのです」。

画像クレジット:All Raise

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Yuta Kaminishi)

アルファベット社内の黒人投資家グループ「Black Angel Group」が台頭

Black Angel Groupの設立メンバー。左からジャクソン・ジョージズ Jr.氏、キャンディス・モーガン氏、ジェイソン・スコット氏(画像クレジット:The Black Angel Group)

1年前、巨大企業であるAlphabet(アルファベット)の社内で、黒人のGoogler(グーグル社員)やAlphabet社員が、黒人歴史月間中にエンジェル投資に関する非公式なプログラムに招待された。これはスタートアップ企業への投資がどのように構成されているか、可能性のあるエグジットまでの一般的なタイムラインなどについて、興味のある人が学べるように社員が企画したものだ。

このアイデアは、暫定的なエンジェル投資スクールのようなもので、組織を作り上げるためのものではなかった。それは単に、講演者として参加したGVのゼネラルパートナーであるJessica Verrilli(ジェシカ・ヴェリリ)氏をはじめとする、知識豊富な社員の話を聞きたいと思っているスタッフのための機会だった。

「こんなアイデアがあるけど、一緒に投資しない?という感じでした」と、GVのパートナーであり、エクイティ、ダイバーシティ、インクルージョンに力を入れているCandice Morgan(キャンディス・モーガン)氏は語っている。

このアイデアを実現するために、2週間のうちに5人の参加者が集まった。それから、さらに多くの人が手を挙げて、どうしたら参加できるのかと尋ねるようになった。そして現在、このBlack Angel Group(ブラック・エンジェル・グループ)という組織には、Google(グーグル)、GV、CapitalG(キャピタルG)、YouTube(ユーチューブ)、Gradient Ventures(グラディエント・ベンチャーズ)など、Alphabet社内から35人の黒人リーダーやオペレーターが参加している。

また、元YouTubeのVPで、最近ではPinterest(ピンタレスト)のチーフコンテンツオフィサーに就任したMalik Ducard(マリク・デュカード)氏のような、会社の卒業生もこのグループに参加している。

彼らは強力な個人であり、さらに強力なグループでもある。そのメンバーたちは、プロダクトマネジメント、ソフトウェアマネジメント、ユーザーエクスペリエンス、ピープルオペレーションなど、全員のさまざまな専門知識を駆使して、興味深い案件に参入を始めたところだ。2021年は、Bowery Farming(バワリー・ファーミング)、Polar Signals(ポーラー・シグナルズ)、Matter(マター)、Career Karma(キャリア・カーマ)など、約10社に50万ドル(約5800万円)以上の投資を行った。

いずれの場合も、より小規模な委員会が案件を持ち込み、メンバーはそれぞれ自分自身で決定するように依頼される。これまでのところ、出資した企業の半数は黒人の創業者であり、中にはGoogleの元社員である黒人の創業者もいたが、彼らの目的は黒人の創業者を支援することではなく、元同僚が創業した企業を探すことでもない。そうではなく、シードからシリーズAまでの「エシカル(道徳的)」な企業に焦点を当てていると、CapitalGのグロースパートナーで、この集まりのメンバーであるJackson Georges Jr.(ジャクソン・ジョージズ・ジュニア)氏はいう。

「私たちはブラックエンジェル(黒人エンジェル投資家)です。そしてブラックエンジェルのネットワークは、多くのエンジェル投資家のネットワークよりも、概して多様性に富んでいます」と、ジョージズ Jr.氏は語る。しかし、その最も重要な目的は、メンバーに世代間資産をもたらすための最良の投資先を見つけ出すことである。

だからこそ、Black Angel Groupは、その注目度を高め、より多くの案件に力を注ぐ準備を整えているのだ。

この成長の一部は、ドルという形でもたらされる。2022年のBlack Angel Groupの投資額は、これまでの投資額の「倍」になると、モーガン氏は予想している。

また、その成長の一部は、新しいメンバーからももたらされる。Googleでスタートアップ開発者エコシステムの責任者を務めるJason Scott(ジェイソン・スコット)氏はこう説明する。「2021年のエンジェルプログラムへの参加が、多くのメンバーの基盤となりました。しかし今は、他にも興味を持った黒人のGooglerやAlphabetの社員が参加を申し込めるようなプロセスを立ち上げています」。

全員がミリオネアである必要はない。この集まりを可能な限り包括的なものにするために、メンバーたちは、まだ認定投資家ではないが認定投資家になるための道を歩んでいる人たちにも、取引の流れへの参加を勧めることを計画している。

それは純粋な利他主義ではない。ジョージズ Jr.氏によれば、案件の調達や投資についてもっと知りたいと思っている出世途中の社員やOBを積極的に教育することは、グループにとってもメリットがあるという。数と、そしてネットワークには力があるからだ。

確かに、黒人投資家の世界を広げることは必要だ。現在、黒人投資家はベンチャー企業のパートナーの4%以下、エンジェル投資家の1%に過ぎない。このような数字を見れば、地球上で最も強力な企業の1つで道を切り開こうとしている黒人エンジェル投資家のネットワークが拡大していることは、特に注目に値するだろう。

実際、このグループは、メンバーの経験の蓄積や、より多くの出資を望んでいること、また、スタートアップの創業者たちが、より多様な投資家を資本政策表に加えることに関心を示していることを考えると、今後より多くの案件に登場することが予想される。

モーガン氏はその一例として、パフォーマンス分析を行うスタートアップ企業のPolar Signalsを挙げ、同社のCEO兼創業者であるFrederic Branczyk(フレデリック・ブランズィック)氏は「よく考えて非常に多様性に富んだ資本政策表を用意していた」と述べている。

他の多くの創業者も「かなり明確になっている」という同氏は、これを「すばらしいことだ」と語っている。

「私たちの価値提案で重要な部分は、私たちと価値観が一致する創業者と一緒に仕事をすることです」と、モーガン氏は言及している。多様性を重視することは「そのような創業者について多くのシグナルを与えてくれる」という。

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(文:Connie Loizos、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

地球低軌道で撮影されるハイパースペクトル画像を提供するWyvernが約5.2億円調達、2022年に同社初の打ち上げを予定

衛星画像技術の最先端を行くカナダのWyvernが、450万ドル(約5億2000万円)を調達した。そのうち225万ドル(約2億6000万円)はシードラウンドで、残る225万ドルはプレシードと政府投資の合計となる。同社はハイパースペクトルイメージング(可視光線を含むさまざまな波長において波長の違いを識別する能力で対象物の反射光を撮影し、可視化する技術)に特化して取り組んでいる。同社はまた、Y Combinatorの2022冬季に参加している。

TechCrunchは過去にも、インキュベーターCreative Destruction Lab(CDL)の2019年に行われた学会のようなデモデーに参加したときなど、同社を取り上げてきた。その後、同社は資金調達以外の面でも急速な成長を遂げ、社員は18名となり、航空宇宙業界のベテランで元Airbus(エアバス)のCTOだったChristine Tovee(クリスティン・トビー)氏を招いている。さらにWyvernは、2022年に同社初となる衛星の打ち上げを行う。

共同創業者でCEOのChristopher Robson(クリストファー・ロブソン)氏は次のように語る。「打ち上げは、私たちが楽しみにしている次の大きな事業です。これは私たちの最初の画像製品になります。これは超高解像度のハイパースペクトルを得るための最初のステップとなります。超高解像度のものはまだ数年先ですが、登場すれば、かなりすばらしいものになり、ゲームを変えるものになるでしょう」。

宇宙から捉えたハイパースペクトル画像へのアクセスを商用の顧客に提供できるようになれば、Wyvernの最初のターゲットである農業をはじめ、既存の産業の効率を大幅に上げるだけでなく、まったく新しい事業や産業にも実現の機会を提供する。ハイパースペクトル画像は、例えば捉えたシーンの化学的組成など、これまで隠れていた情報を詳細に提供することができる。

シードラウンドをリードしたMaC Venture Capitalは、ハイパースペクトルの広大なポテンシャルを認識しており、ロブソン氏によると、同VCとこの度新たにWyvernの取締役会に加わったAdrian Fenty(エイドリアン・フェンティ)氏は、若い同社に完璧にマッチしているという。

「最初の会議のときから、両社は波長が合っていました。またそれ以上に重要なことは、MaCにはすでに宇宙産業への投資経験があったことです。同社は、宇宙市場に対して極めて積極的です。彼らは非常に戦略レベルで考えるため、投資に臨む視点の中に顧客と投資家とパートナーからの見方が共存しています。またそれは、宇宙に限定されず、その他の私たちの顧客市場対しても同様です」とフェンティ氏はいう。

若い起業家とエンジニアと科学者たちのチームが創業したWyvernは、その戦略的な利点に加えて最近、トビー氏を招いた。ロブソン氏は、同社のその重要なリーダーシップチームチームメンバーの招聘について、次のように語った。

「クリスティン(・トビー)はかなり前から私たちの技術顧問団の1人です。また両者は、CDLのころからの強固な関係があります。それに、一緒に仕事をすることが楽しい。クリスティンと我々チームとの間には、お互いに対する深い尊敬があります。私たちとしては航空宇宙のベテランを役員が必要で、宇宙産業に対する私たちの理解を深めてもらいたかった。だから彼女が来たことは、戦略的な面でとてもすばらしいことです」。

Tovee氏はまた、ジェンダーのダイバーシティがおそろしく遅れている業界で、同社の2人目の女性上級管理職として迎えられる。2021年のTechCrunch主催セッションTC Sessions:Spaceに出てくれた、Wyvernの共同創業者でCOOのCallie Lissinna氏は、ダイバーシティは最初から同社のプライオリティであり、そのことは投資家や入社志望者たちとの会話でも良い効果を生んでいるという。

「投資家たちはほとんどみんな、宇宙産業で創業時から50 / 50のダイバーシティ、役員チームでは66%の女性上位を実現していることに言及しとてもユニークだといいます。そしてこのことは雇用や募集にも影響を与えています。学生たちは、私たちの創業チームや社内のダイバーシティがとても気に入った、といってくれます。だからこれは、人材獲得と投資調達の両方の面で、私たちの魅力になっているようです」とトビー氏はいう。

画像クレジット:Wyvern

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

従業員の報酬に秩序と公平性をもたらすシステムAssembleが約5.7億円の資金を獲得

どの企業も従業員の給与を決定し、その報酬を何らかの方法で管理していく必要がある。多くの場合、スプレッドシートと、給与計算、財務、人事システムなどの異なるシステム間を行き来しているだろう。また、企業は、同レベルの経験を持つ従業員に対して、同じ仕事に対して同水準の報酬を支払っていることを確認する必要がある。

アーリーステージのスタートアップであるAssemble(アセンブル)は、このプロセスを整理したいと考えており、米国時間1月11日、Susa Ventures(スーザ・ベンチャーズ)、Goldcrest Capital(ゴールドクレスト・キャピタル)および複数の業界エンジェル投資家から500万ドル(約5億7600万円)のシード投資を受けたと発表した。

Assembleの共同設立者であるEnrique Esclusa(エンリケ・エスクルーサ)氏は、同スタートアップが報酬決定のためのエンゲージメントシステムを構築したと述べている。

「これは、通常はバラバラのシステムで管理されている報酬と労働力のデータをすべて1カ所に集め、会社全体のさまざまな関係者がアクセスできるだけでなく、実行可能で理解しやすいようにするためのシステムです」と彼は説明した。

エスクルーサ氏と共同設立者のLisa Wallace(リサ・ウォレス)氏は、ウォレス氏が採用を担当し、エスクルーサ氏が財務と事業運営を管理していた別の企業で一緒に働いていた。そこで2人は、この種の情報を管理することがいかに難しいかを、身をもって知ったのである。

「私たちが気づいたのは、すべてが仮想的にスプレッドシートで管理されていたということです。このデータとフレームワークをまとめ、会社全体の意思決定を行う人々に正しい情報を共有し、人を雇い、引きつけ、失わない競争力を持つだけでなく、財政的な責任と公平・公正さを持った意思決定を行うためには、とても苦痛で時間のかかる方法でした」と、彼は述べた。

そこで2020年、この2人の創業者が集まり、自分たちが経験した問題に対処するための製品を作ることを決めたのだ。

ウォレス氏によると、企業は通常、組織を構築した後に、それを修正するために、コンサルタントがさまざまなシステムから情報を引き出す必要があるため、直接的な方法で公平性を考慮することはないという。Assembleは、最初から報酬体系に公平性を組み込むように設計されている。

「重要なのは、1つの場所で報酬の公平性分析を実施したり、別の場所で管理職に単発の可視性を提供したりすることだけではありません。報酬に関わる複数のステークホルダーからなるエンゲージメントのレイヤーを組織全体に設けることです。Assembleは、報酬システムに公平性を最初から組み込むように設計されています。というのも、報酬にはさまざまなステークホルダーが存在し、各自さまざまな目標があるため、簡単にレールを外れてしまうことがあるからです」と、彼女はいう。

画像クレジット:Assemble

Assembleは現在10名の従業員を持ち、多様な創業チームと給与の公平性に関わるDE&I(多様性、公平性、包摂性)ミッションを掲げており、多様で包摂性のある企業づくりに取り組んでいる。

「私たちは多様な候補者を面接し、評価するために、各採用案件に対してかなり協調的な努力をしてきました。それは、私がとても重視していることです。エンリケと私は、自分たちの時間の3分の1を採用活動に費やしています」と語った。加えて、従業員数は10名と少ないが、多様性の数値は多くの指標でかなり良好であると述べている。

「会社としてのヒスパニック系は40%で、従業員の60%が移民か移民の子どもなんです」と彼女はいう。現在10名の社員のうち、女性はわずか2名だが、ウォレス氏は今後の採用で対応する予定だという。また、歴史的に存在感の薄いエンジェル投資家をキャップテーブルに迎え入れ、資金調達の面でも多様性の確保に取り組んでいるという。

報酬は組織内では単独で存在しえないため、AssembleはWorkDay、Gusto、ADP、Bamboo HRなどの人事・給与ソフトツールと連動して動作するようになっている。

画像クレジット:Golden Sikorka / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【コラム】ダイバーシティに関するデータが透明性を欠いている理由

テクノロジー業界では、ダイバーシティが大きな話題となっている。FacebookやGoogleなどの企業が企業文化の向上を目指し、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンへの取り組みを行っている。しかし分析によると、DEIを推進しているとされるこれらの企業では、こうした取り組みにもかかわらず、過去10年間でダイバーシティに大きな変化は見られなかった。

2010年代に入り、多くのハイテク企業が透明性を示すために年次のダイバーシティに関する報告書を公開したが、データを見てみると問題が浮かび上がってくる。報告書は、ダイバーシティの数値の増減を記載していることが多いが、企業が具体的な変化を起こすのに役立つデータを分析できていないことが多いのだ。

データを活用し、ダイバーシティに影響を与えるシステムを深く掘り下げる

これらの報告書に記載されているデータは、結果を示すものだ。企業がダイバーシティにおける測定分野(人口統計学的コミュニティが一般的だ)において成長したのか、衰退したのかがわかる。しかし、なぜそのような結果になったのか、システムのどの段階で失敗しているのかはわからない。

したがってこれらの報告書は、改善されたプロセスやシステムを測定するという、説明責任の強力な効果を逃しているのだ。

一例として、ある企業のマーケティングデータを見てみよう。

大企業がマーケティングファネルを最適化しようとするとき、マーケティングプロセスのあらゆるレベルのデータを見ることがある。例えば、外部のマーケティング活動から得られるインプレッション数を推定したり、広告からウェブサイトへのコンバージョン数を数値化したり、ウェブサイトの訪問者のうち何人が顧客に転換したかを計算したりする。これらの情報は、パフォーマンスを最適化し、売上を増加させるために定期的に使用される。そしてこれらの情報は、企業が成功するためには収益の創出が不可欠であることをリーダーたちは知っているため、優先的に使用される。

リーダーは採用システムのすべての段階でデータを記録し、分析すれば、採用段階で質の高い分析を行うことができる。データセットには、すべての交流ポイントにおける以下の(しかしこれに限定されない)人口統計学的情報が含まれるだろう。

  • 求人広告のインプレッション数
  • ソーシングチャネルを通じて特定された候補者
  • 面接に来た候補者
  • 面接官による評価結果
  • 内定および承諾された内定

それからリーダーは、プロセスの各段階で、就職可能な人材と少なくとも同等の人口構成のコミュニティを確保することができる。そして結果の改善のために(毎年ではなく)、このデータを利用して、優先的に定期的にシステムに変更を加える必要があるだろう。

採用活動はその一例に過ぎず、他にもさらに有益なダイバーシティデータを活用できるビジネス分野はある。

情報の実用化

リーダーは、説明責任を果たすための情報やより高い公平性と包括性を実現する情報を公開することで、データを実用的なものにするという選択ができる。

以下の各項目の共有を検討してみて欲しい。

  • 人口構成別の給与の透明性と給与の公平性
  • エンゲージメントとインクルージョンのデータ(人口構成別)
  • 人口構成別の昇進率
  • 人口構成別の定着率

このような提言をすると、ジェネラルカウンシルは不安になるかもしれない。しかし、人材、文化、エクイティの分野でイノベーションを起こしている企業は、こうした透明性と説明責任の領域に踏み込んでいる。

さらに、これらのデータを公開することで誠実さを全面的に打ち出している組織は、ダイバーシティを中心とした帰属意識の高い文化の構築に向けて大きく前進している。

データの透明性とデータの説明責任は別物である

私たちはよく、何かを測定できるなら、それを変えることができると信じている。しかし、測定だけでは変化はやって来ない。測定可能な変化に対してステークホルダーに責任を持たせながら、適切なデータ要素を測定することが極めて重要だ。

これが営業ではどうなるのかを考えてみて欲しい。

営業チームは、収益目標の達成に貢献したかどうかで個人の業績を評価する。結果を出さなければ仕事を失うリスクがある。なぜなら失敗すればビジネスに悪影響を及ぼすからだ。

DEIでも同じように、業績評価の目標の一部として、四半期ごと、あるいは毎年、具体的な結果を出すことに責任を持つリーダーが出てくるだろう。だが残念ながら、何が起こったかを報告するだけでは、リーダーたちが結果に有意義な影響をもたらすプロセスを変えるためにさらに行動するようにはならない。

低い数値を基準にしても変化は起こらない

ダイバーシティの報告書では、自社の過去の指標、業界全体、同規模の企業、または地域全体(米国など)に対し、毎年のデータを基準とすることがよくある。このような方法で進捗を測定すると、少しずつの進歩が実際の成果よりも大きく見える。リーダーはこのデータを見て、自分たちは業界標準を満たしているということはできるが、業界の進歩率がごくわずかであれば、それはただ結果を改善する責任がなくなるだけだ。何十年もの間、企業はダイバーシティを正しく理解していなかったのに、なぜその標準以下の実績を基準にするのだろうか?

簡潔にいうと、低い実績を基準にするのはお粗末な行為だ。

基準を設けるなら、少なくとも、ダイバーシティとそのコミュニティに関して上位4分の1に入る成績を収めている企業を基準とすることで、真の意味での改善を目指すことだ。しかしこれによってまたハードルが上がり、リーダーにはより戦略的になることが求められる。

さらに重要なことは、企業は利用可能なタレントプールを(米国の労働統計局のデータや、人口構成や専攻分野別の卒業率を利用しながら)基準として、地理的、業界的、職種的に人材の数が少ない箇所を特定することだ。

例えば、コンピュータサイエンスを専攻した女性の卒業率は、ほとんどの企業における新入社員レベルのソフトウェアエンジニアリング職に就いている女性の割合を大幅に上回っている。

しかし、米国の労働統計局のデータでさえ、誰が雇用対象なのかに関する前提条件に依存しており、真に雇用可能な人々の全体像を除外してしまうという欠陥がある。このことから、これらの基準と地域の人口データを組み合わせれば、効果を示す別のデータセットとして利用することもできる。

もしハイテク企業が、組織内で現在起こっていることについてのデータだけでなく、システミックな偏見が、組織にアクセスできない多様な人材に対してどのような影響を与えているかを示すデータを公開すれば、そのような報告書が行動変革の動機となり、自分たちの組織の成果を向上させたいと考えている他の業界の読者にとって価値のあるものになるかもしれない。

編集部注:本稿の執筆者Fran Benjamin(フラン・ベンジャミン)氏はGood Works Consultingのマネージング・パートナー。Monique Cadle(モニーク・キャドル)氏は、Good Works Consultingの創立パートナーであり、Delfi Diagnosticsの人材担当VP。

画像クレジット:A-Digit / Getty Images

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(文:Fran Benjamin、Monique Cadle、翻訳:Dragonfly)

インドやフィリピンなどアクセントが異なる英語の認識が向上した音声認識モデル「Speechmatics」

ここ数年、スマートスピーカーや運転支援モードの普及に伴って、音声認識は便利なものから重要なものへと変化してきたが、誰の声でも同じようにきちんと認識できるわけではない。Speechmatics(スピーチマティック)は、最も包括的で正確なモデルを持っていると主張する。特に一般的な米国のアクセント以外のスピーチに関しては、Amazon(アマゾン)やGoogle(グーグル)などを凌駕しているという。


同社は、2019年にスタンフォード大学で行われた「Racial Disparities on Speech Recognition(音声認識における人種格差)」と題した研究の内容から精度の問題関心が向いたと説明している。たとえばAmazon、Apple(アップル)、Google、IBM、Microsoft(マイクロソフト)の音声エンジンは「人種による大きな格差が見られている。たとえば平均ワードエラー率(WER)をみると、白人話者に対しては0.19であったのに対し、黒人の話者の場合は0.35だった」とある。つまりイマイチってことだ!

この差の原因は、システムの学習に使用したデータセットに多様性がないことが一因であると考えられる。結局、データの中に黒人の話者が少なければ、モデルはそのようなスピーチパターンを学習することができない。これは、他のアクセントや方言を使う話者についても同じことがいえる。英国はいうまでもなく、米国にはさまざまなアクセントがあるので「すべての人たち」のためのサービスを提供すると主張する企業は、そのことを認識する必要がある。

ともあれ英国のSpeechmaticsは、その最新モデルでアクセント違いの英語を正確に聞き取ることを最優先にしており、他のモデルを圧倒できると主張している。スタンフォード大学の研究で使用されたのと同じデータセット(ただし、最新バージョンの音声ソフトウェアを使用)に基づいて「Speechmaticsは、アフリカ系米国人の声に対して、Googleの68.7%およびAmazonの68.6%と比較して、82.8%という総合的な正確性を達成できた」と同社はプレスリリースに記している

同社によれば、この成功は、音声認識モデルの作成に比較的新しいアプローチを採用したことによるものだという。従来、機械学習システムにはラベル付きのデータが提供されていた。これは、音声ファイルにメタデータやテキストファイルが付随したものだ、通常はそうした付随データの書き起こしは人間が行いチェックもしている。猫の検出アルゴリズムでは、画像とともに、どの画像に猫が写っているか、どこに猫が写っているかなどのデータが付随する。これが教師あり学習で、用意された2つの形式のデータの相関関係をモデルが学習する。

Speechmaticsはデータセット、学習効率、計算能力の向上にともない、近年注目されている自己教師あり学習を採用している。同学習法は、ラベル付きのデータに加えて、ラベルのない生のデータを大量に使用し、より少ないガイダンスで独自の音声「理解」力を構築していく。

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今回のモデルでは、基本的な理解力を得るために約3万時間のラベル付きデータで学習が行われた後、YouTubeやポッドキャストなどのコンテンツから得られた110万時間の公開音声が投入された。こうした収集方法は多少グレーゾーンだ、なぜなら他者の商用音声認識エンジンのトレーニングに自分のポッドキャストが使われることには、誰も明確に同意はしていないからだ。しかし、OpenAI(オープンAI)のGPT-3の訓練に「インターネット全体」が使われたように、多くの人によってそのような使い方が行われている(まあ、まだ私個人の声をマスターしてはいないが)。

Speechmaticsのモデルは、米国の黒人話者に対する精度を向上させただけでなく、子どもの聞き取り能力も向上させ(約92%の精度、これに対してGoogleやDeepgramでは約83%の精度)、インド人、フィリピン人、南部アフリカ人、そしてスコットランド人なども含めた世界中のアクセントの異なる英語に対して、小さいながらも大きな改善が見られたとしている。

このモデルは他にも何十もの言語をサポートしており、その多くで他のエンジンに対する競争力を誇っている。これは単なる英語認識モデルではなく、英語をリンガフランカ(「国際共通語」の意、今となっては失笑を買うほど不適当な慣用句だが)として使うことを考えると、アクセントは特に重要な意味を持つ。

Speechmaticsが挙げた数字は先進的なものだが、AIの世界は信じられないほどの速さで動いているため、2022年以降さらに飛躍することがあっても不思議ではない。たとえばGoogleは、発話の不自由な人でもエンジンを使えるようにするための努力をしている。最近では、インクルージョンはすべてのAIワークにおいて重要な役割を果たしており、企業が互いにしのぎを削るところを見られるのは良いことだ。

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画像クレジット:drafter123/Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

あらゆる肌色の顔を美しく見せるPixel 6カメラのReal Tone、多様性を広げるAI技術

スマホメーカー各社が写真での顔の写り方に特別な注意を払っているのは、理に適っている。米国時間10月19日、Google(グーグル)が発表した新しいPixel 6には、人間をこれまで以上によく見せるための、AIを搭載した新しいツール群が導入されている。その中でも特に注目されているのが、動く顔のブレを軽減する「Face Unblur(顔のぼかし解除)」と「Real Tone(リアルトーン)」だ。後者は、Googleの新しいTensorチップを搭載したAIによる後処理機能で、あらゆる肌色の顔を可能な限り美しく見せることを目指している。

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スマートフォンで撮影される写真の大半は、自撮りであれ、他撮りであれ、人間が写っている。従来、複数の顔が写っている写真、特に顔の肌色がすべて異なる場合、露出をきれいにするのは非常に難しいとされてきた。新しいPixel 6では、コンピュテーショナルフォトグラフィーのレイヤーが加わり、写真に写っている全員ができるだけきれいに見えるようになっている。Pixelチームは、さまざまなエキスパートのイメージメーカーやフォトグラファーと協力して、ホワイトバランス、露出、アルゴリズムの調整を行った。同社は、これにより、どんな肌色の人でもうまく撮れるようになったとしている。

Googleは、リアルトーンをフォトグラファーが直面している課題に対する決定的な解決策ではなく、同社のカメラシステムの改善そして、1つのミッションとして捉えていると強調している。Googleは、すべての人々、特に有色人種が、カメラによる顔の撮影においてよりよく表現されるよう、多大な資源を投入している。

AndroidチームのAdvanced PhotographyプロダクトマーケティングマネージャーであるFlorian Koenigsberger(フロリアン・ケーニヒスベルガー)氏は、Pixel新機種の発売に先立って行われたブリーフィングインタビューで、次のように述べた。「私の母はダークな肌の黒人女性で、父は白人のドイツ人です。私の人生を通じて、ずっと疑問でした。どうしたらみんながきれいに見える写真が撮れるだろう。新しいカメラは、その道のりの一歩です。Googleの多様性の数値はもはやミステリーではありません。当社には、実体験や、この問題に関してオーセンティックに語ることができる人材という点で、明らかに不足しているものがあると理解していました」。

カメラチームは、フォトグラファー、カラリスト、シネマトグラファー、撮影監督、ディレクターなどと協力して、多様な肌色の人々、特により暗い肌色の人々に照明を当てて撮影する際の課題を深く理解しようとした。中でも、ドラマシリーズ「Insecure(インセキュア)」の撮影監督であるAva Berkofsky(アヴァ・バーコフスキー)氏、フォトグラファーのJoshua Kissi(ジョシュア・キッシー)氏、撮影監督のKira Kelly(キラ・ケリー)氏など、幅広い分野のプロフェッショナルの経験を活用した。

「エスニシティや肌の色だけでなく、さまざまな手法を含め、実に多様な視点を取り入れることに注力しました」とケーニヒスベルガー氏は語る。「カラリストたちは、映像制作の過程で起こるサイエンスとして考えているので、実際に話してみると最も興味深い人たちでした」とも。

Googleのプロダクトチームは、画像処理の専門家たちと協力して彼らにカメラを渡し、混合光源、逆光、室内、1枚の画像に複数の肌色を入れるなど、非常に難しい撮影状況に挑戦してもらった。

「私たちは、特にこのようなコミュニティにおいて、どこが問題なのかを学び、そこからどのような方向に進むべきかを考えなければなりませんでした」とケーニヒスベルガー氏は説明する。「イメージングのプロフェッショナルたちは非常に率直で、我々のエンジニアと直接会話をしていました。私はこの会話の進行を手伝いましたが、技術的な学びだけでなく、この空間で起こった文化的な学びも興味深いものでした。例えば粉っぽさ、よりダークな肌のトーン、質感などのことです。ミッドトーンのニュアンスはさまざまです」。

このプロセスは、カメラの顔検出アルゴリズムから始まる。カメラが顔を見ていることを認識すると、カメラはどのように画像をレンダリングすればうまくいくかを考え始める。複数のデバイスでテストを行った結果、Pixel 6は競合メーカーの製品や旧世代のPixelデバイスよりも一貫して優れたパフォーマンスを発揮していることが、Googleのチームによって明らかになった。

この機能が実際にどのように機能するのか、グローバルな編集(画像全体に同じフィルターを適用すること)を行うのか、あるいはAIが編集パスの一部として個々の顔を編集するのかは、すぐには明らかになっていない。近いうちに、カメラのこの特定の側面が実際にどのように機能するのか、より詳しく調べてみたいと思う。

カメラチームは、この分野での取り組みにより、カメラアルゴリズムを作成するためのトレーニングセットの多様性が25倍になったことを強調している。リアルトーン機能は、カメラアルゴリズムの中核をなすものであり、オフにしたり無効にすることはできない。

画像クレジット:Google

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】イーロン・マスクやスティーブ・ジョブズ、「独創的」な考え方を持つ脳多様性な人たちも活かすソフト設計とは

ホモ・サピエンスは実に多様性に富んだ種である。地球上のさまざまな地域に起源を持つ私たちは、出自に基づく区別を呈する姿をしており、コミュニケーション手段には何千もの言語が存在する。そしてそれぞれの経験、伝統、文化に基づいた異なる思考パターンを持ち合わせている。私たちの脳は、そのすべてに独自性がある。このような特性をはじめとするあらゆる機能を駆使して、私たちは問題を分析し、意思決定を行う。

これらの要素はすべて、私たちがビジネスを行う方法と、職務を遂行するためにツールを使用する方法に直接影響している。ビジネスを上手く進めることは、ほとんどの人にとって課題をともなうチャレンジングなものだ。しかし、ニューロダイバース(神経学的に多様)の特性を有する人々、故Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏がかつて述べたような「think different(異なる考えを持つ)」プロフェッショナルたちは、その才能が企業内でしばしば過小評価されるか、未開拓である、独自の類型となっている。こうした企業は、標準化に価値を置き、通常のワークパターンからの逸脱は限定的であることを好む傾向にある。

ニューロダイバーシティ(神経多様性 / 脳の多様性)の役割

ニューロダイバースな資質を持つ(ニューロダイバージェント)人々は、主流派とは異なる方法で情報を処理する。自閉症スペクトラム、失読症、注意欠陥障害(ADD)を持つ人々もその例として挙げられるが、専門家は全人口の40%がニューロダイバージェントであると考えている。

優秀なセールスパーソンほど粘り強さを発揮し「独創的」な考え方をすることが多いことを勘案し、このパーセンテージはセールス専門職ではさらに高くなると思う人も少なくない。あるセールスチームの誰かがスーパースター級のセールスパーソンであっても、彼らが情報や他者とどのようにやり取りするかに影響を与える神経学的変異を持っているという可能性は低い。こうしたことから、ニューロアティピカル(神経学的に非定型)な人々をセールス組織に統合し、彼らを成功に導く知恵についての非常に興味深い議論が生じている。

例えば、セールスパーソンはCRM(Customer Relationship Managementm、顧客関係管理)ソフトウェアシステムを利用している。このシステムでは、すべての記録、ワークフロー、アナリティクスが標準化されており、ユーザーエクスペリエンスはシステムに設定された1つの方法に限定されている。

だが、このような複雑で柔軟性に欠けるシステムを誰もが最適に使用できるわけではない。特に、ユーザーインタラクションレイヤーが非常に厳しく制限されている場合はなおさらだ。ニューロダイバースな人々の多くは、特に「独断的」なアプリケーションを使うことに困難を感じる。このようなアプリケーションでは、ユーザーに特定の作業方法を押し付ける傾向があり、ときにユーザーの人間性のすべての面、つまり情報を処理し、ワークフローをナビゲートするユーザー独自の方法を考慮しないこともある。そのため、ほとんどのセールス組織において、最も高いパフォーマンスを発揮するセールス担当者は、CRMを最低限しか更新していないことが多い。ノートテイキングアプリケーション、タスク、スプレッドシートなどの基本的なツールで取引のパイプラインを管理しているセールス担当者が多いのも、こうした理由からだろう。

ニューロダイバースなプロフェッショナルは、異なる視点と強みをもたらし、しばしば現状に挑戦する。思考の多様性が、特別なやり方で組織に力を与えるのだ。

企業はニューロダイバースの人材から何を得るべきだろうか?

JP Morgan(JPモルガン)は、2015年にニューロダイバーシティのパイロットプログラム「Autism(自閉症)at Work」を立ち上げた。その結果は注目に価するものであった。このプログラムに参加した従業員は、同僚よりも48%早く仕事を完了し、92%生産性が高かった。オーストラリアのDepartment of Human Services(福祉省)の別のパイロットプログラムの結果によると、同組織のニューロダイバースなソフトウェアテストチームは、ニューロティピカル(神経学的に定型)なチームよりも30%生産性が高くなっていた。

自閉症の人の多くは細部にまで強いこだわりを持つことが知られている。例えば、自閉症スペクトラムの7歳の少年は、歴史上のあらゆる難破船の詳細を暗記している。この種の情報への集中と欲求は、適切な役割に利用されることで、驚くべきポテンシャルが生み出される。自閉症の人材は、データアナリティクス、技術サービス、ソフトウェアエンジニアリングなど、知識経済の急成長分野の一部に理想的に適していることも多い。実際、Tesla(テスラ)のCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、自身が自閉症の一種であるアスペルガー症候群であることを最近明らかにしている

ニューロダイバーシティの別の領域として、独創的な考え方をする人は失読症であることが多い。世界を変革した失読症の人々について考えてみよう。Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏、Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏、Bill Gates(ビル・ゲイツ)氏。これはほんの一部の例にすぎない。彼らに共通しているのは、世界を違った目で見る能力である。

ソフトウェアのジレンマ

企業はこうしたメッセージを意識し始めている。ニューロダイバージェントの従業員は才能と貢献の巨大な源泉として評価されるべきであるという認識である。同時に、2020年の出来事をきっかけに、あらゆる種類の社会的不公平に対する意識が高まり、より多くの組織がニューロダイバーシティを多様性、公平性、インクルージョンの取り組みの一環として認識するようになった。

しかしこれまでのところ、焦点が当てられているのは、雇用、トレーニング、オンボーディングプロセス、さらにはオフィス設計(私たちがオフィスに復帰した場合)がどのようにしてニューロダイバージェントの人々にとってより包括的になることができるのかということだ。例えば、SAP(エスエイピー)とMicrosoft(マイクロソフト)は、ニューロアティピカルの従業員をより多く雇用する取り組みを拡大している。

こうしたイニシアティブは重要であるが、ソフトウェア企業は一歩進んで、中核的な設計レベルでアプローチを変える必要があると私たちは考えている。

多くのソフトウェアは、ユーザーの視点からすべてのものがどのように感じられ、どのように流れるかについてほとんど、またはまったく配慮することなく、ユーザーに特定の作業方法を課している。そしてその過程で、この硬直的なシステムは、ニューロダイバースな人々を排除してしまう。その結果、ユーザーは日々の業務で課題に直面することになる。これまで提供されてきたツールは、標準化という名の下に、情報の処理方法やワークフローの操作方法に適合していないのである。そして、組織はツールやシステムの適用状況が不十分であることに悩まされている。

このようなことを意図的に行っているベンダーは存在しない。ただ、実行して良い結果を出すのは難しいということである。しかし、あらゆるユーザーを念頭に置き、すべてのユーザーが同じように効率的かつ生産的になれるような、共感できるソフトウェア設計を追求することは、すべてのソフトウェア企業にとってコアバリューとなるはずだ。それは、すべての「ユーザー」が同じではないことを認識し、尊重することから始まる。そうすることで、より多くの人々が自然に利用できる、より柔軟でアプローチしやすいソフトウェアを設計する道が開けてくるだろう。

セールス組織がニューロダイバージェントの人材を多く擁しているとしたら、間違った種類のツールがもたらす影響を想像してみて欲しい。例えば、ADHD(注意欠陥・多動性障害)を持つ人に大量の単調なデータ入力タスクを要求するCRMソフトウェアのようなものだ。熟練した、ニューロダイバースなセールスパーソンが、自分の潜在能力を十分に発揮するには不適切なツールを与えられたために、フラストレーション、潜在能力の喪失、士気の低下が生じてしまうことを想像して欲しい。

業界全体として、ソフトウェアのユーザーエクスペリエンスについての考え方を広げ、柔軟性を主要な設計原則として組み込む時期がきているといえるだろう。

編集部注:本稿の執筆者Pouyan Salehi(プーヤン・サレヒ)氏は、Scratchpadの共同設立者兼CEO。

画像クレジット:Hiroshi Watanabe / Getty Images

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(文:Pouyan Salehi、翻訳:Dragonfly)

【コラム】パラリンピック選手は金メダルを獲得するが、私たちはウェブアクセシビリティで選手を失望させている

1972年のパラリンピックで初めて金メダルを獲得した後、私は水泳競技チームと一緒にお祝いの夕食に出かけた。世界的なアスリートであるチームメイトたちが、車いすに乗せられて、アクセスの悪いレストランの数段の階段を上っていくという逆説的な光景は、今でも忘れられない。当時は決して珍しいことではなかったが、その日のプールでの勝利とは対照的に、この瞬間は特に際立っていた。

つり器具を装着して階段をゆっくり上がりながら、私はこの状況を皮肉に思った。パラリンピックのチャンピオンである私たちは、何百万人もの人々にインスピレーションを与える存在だった。私たちは固定観念を打ち破り、障害者が成し遂げられることについての一般の認識を変えていたからだ。しかし、社会から称賛される一方で、私たちは社会からは受け入れてもらえなかったのだ。

一般的な商品やサービスを利用するためには、超人的な体力と身軽さを必要とした。物理的な世界に完全に参加しようとすると、ハードルが高く、障害があった。当時、パラリンピックスポーツを通じて障害者の権利を促進しようとしていたパラリンピックムーブメントにとって、まだまだやらなくてはいけないことが残っていたのは明らかだった。それどころか、まだ始まったばかりだったのだ。

その後、私が参加した4つのパラリンピック大会では、よりアクセシブルな都市への移行が徐々に見られるようになってきた。それには、パラリンピックムーブメントが大きく貢献している。世界中のテレビにさまざまな障害者が登場することで、平等なアクセスの必要性がスポットライトを浴びるようになったのだ。

1980年のパラリンピックでのJoseph Wengier(ジョセフ・ウェンギアー)氏とチームメイトたち。左から2番目がウェンギアー氏。(画像クレジット:Joseph Wengier)

また、パラリンピックは開催都市にも要求し、都市のインフラのアクセシビリティを意味のある永続的なものに改善することを求めた。今日、確かにまだまだ改善の余地はあるが、障害者はほとんどの問題を解決し、かつてないほど社会に参加できるようになった。

しかし、インターネットが私たちの日常生活の中でますます中心的な役割を果たすようになると、私たちがこれまで経験し、戦ってきた排他的な物事が、新たな形で再び姿を表すようになってきた。最近の調査では、世界のトップ100万のウェブサイトを調査したところ、97%以上のホームページにアクセシビリティの問題が見つかったという。

キーボード操作に対応していなかったり、スクリーンリーダーが正しく動作しないレストランのホームページでは、これらの技術に頼っている人が料理を注文できないことがある。これは、車イスでの入店ができないのと同じことだ。

新型コロナウイルス(COVID-19)が私たちの日常を変えた今、オンラインへの移行は加速している。より多くの企業がデジタル化を進めており、予約をするにも、食料品を買うにも、仕事に応募するにも、ウェブサイトが唯一の手段となっている。そのため、アクセシブルなウェブサイトの必要性はこれまで以上に高まっているのだ。これは、ちょっとした不便さや、新しい技術やサービスにアクセスできないというレベルの問題ではない。日常の基本的なニーズがオンラインに移行し、その過程でアクセスしにくくなっているのだ。このような状況を目の当たりにして、私は声を大にして自分の体験を伝えたいと思うようになった。

私たちがオンラインで東京でのお気に入りのアスリートのパフォーマンスのハイライトを見たり、ソーシャルメディアでアスリートを祝福したり、お気に入りのスポーツサイトでイベントの報道を読んだりするように、これらの企業が自分たちのウェブサイトをアクセシブルなものに変え、パラリンピックチャンピオンも同じことができるようにすることをみんなで要求しよう。

メダルを背景にパソコンに向かうウェンギアー氏の最近の画像。(画像クレジット:Joseph Wengier)

編集部注:本稿の執筆者Joseph Wengier(ジョセフ・ウェンジャー)氏は、パラリンピックに5回出場し、9個の金メダルを獲得した。現在は、アクセシビリティ技術を提供する企業UserWayのアンバサダーとして、よりインクルーシブなインターネットの発展を推進している。

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画像クレジット:Charly Triballeau / AFP / Getty Images

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(文:Joseph Wengier、翻訳:Akihito Mizukoshi)

【インタビュー】デロイトトーマツのテクニカル・ディレクターが語る「データは客観的」の嘘

DXを語る上で無視できないデータ活用。業界を超えて先進企業が取り組んでいるが、Deloitte Tohmatsu(デロイト トーマツ)でテクニカル・ディレクターを務めるIvana Bartoletti(イヴァナ・バートレッティ)氏は「盲目的なデータ活用は課題解決につながりません」と警鐘を鳴らす。データはどう使われるべきなのか。現在のデータ活用方法にどのような問題があるのか。同氏が詳しく語った。

本記事はB’AIグローバル・フォーラム主催「Power, Politics, & AI:Building a Better Future
の講演をもとに編集・再構成したものである。

「データは客観的」なのか?

近年、DXの必要性が叫ばれ、データとAIの活用を進めようとする機運が高まるばかりだ。AIの機械学習により病気の症状が表出する以前に病気を発見するなど、前向きなデータ活用が拡大している。しかしバートレッティ氏は危機感を覚える。

「多くの人が『データは客観的なものだ』と思っています。だからこそ、意思決定や法整備にデータを活用すべきだという声が上がります。しかし、それではうまくいかないのです」と同氏は話す。

データを読み込んだAIが意思決定に活用されることで、結果として差別が再生産されることがあるからだ。

例えば、銀行などの金融機関が既存のデータをAIに学習させ、顧客の信用を予測させるとしよう。すると、男性の方が女性よりも高い信用があると結論され、その金融機関は男性に有利な方針を採用することがあり得る。なぜなら、これまでビジネス活動の重要ポジションの多くは男性により占有され、それにより女性の収入は男性の収入よりも一般的に少なかったからだ。同様の問題は人種の異なる者の間でも起きるだろう。

バートレッティ氏は「データの問題は、実は政治的な問題なのです」と指摘する。

差別をするのはアルゴリズムか、人間か

こうした議論を聞くと「差別的な結果が出てしまうのはアルゴリズムの問題だから、アルゴリズムを改善すれば良い」と考える人もいるかもしれない。

しかし、バートレッティ氏は「アルゴリズムは差別をしません。差別をもたらすのはシステムを作る人間です」と断言する。

ここで同氏は1つの例を挙げた。大きな都市の中心に1つの会社がある。この会社のCEOが自分の側近を社員の中から選ぼうと考えた。CEOはソフトウェアを使って自分の条件に合う社員を検索した。CEOは自分が午前7時に出勤するので、同じ時間に出勤する社員に絞り込んだ。

これだけでは「午前7時に出勤する社員」というのが検索の条件であるように見える。しかし、実際にはそうではない。

「朝早くに都市の中心の会社に出社できるのはどんな人でしょう?街中にアパートを借りる財力がある若い男性社員でしょうか?あるいは2人の子どもがいる郊外在住の女性社員でしょうか?この場合は若い男性社員でしょう」と同氏はCEOが気づいていない隠れた条件を説明する。その上で「重要なのは、差別やステレオタイプ、バイアスを自動化してしまうシステムに注意を払うことです」と話す。

データで未来は予測できるのか?

「AIは『客観的な』データを摂取することで答えを導き出すと思われています。しかし、客観的なデータ、中立的なデータなどというものは存在しません」とバートレッティ氏はいう。

なぜなら、データというものは「現在」という瞬間の写真でしかないからだ。つまり、データはこれまで積み重ねられてきたあらゆる差別や不平等が「今」どうなっているかということを見せるだけだ。こうした「今」や「今まで」をAIに取り込ませ、未来を予測しようとすれば、今現在起きている問題や差別を自動化し、継続させることしかできない。

「既存のデータで未来を予測することは、今、弱い立場にいる人々を抑圧することにつながります。AIの機械学習は今までのデータをもとにパターンを見つけ出し、方針を決定します。これは未来のあるべき姿を創造することとは異なります」とバートレッティ氏。

同氏はまた「システムは選択されるもので、自然とでき上がるものではありません。先程の金融機関の男女の信用の例で言えば、『データを活用する金融機関が女性に大きな信用を置く』というような状況は自然ともたらされることはないのです」という。

ダイバーシティを取り入れたデータ活用、AI活用に向けて

では、どうすれば前向きに、既存の差別構造を持ち込まずにデータやAIを活用できるのだろうか。

バートレッティ氏は「今、データ活用に関わる決定の場にいる女性の数は多くありません。女性などのマイノリティが意思決定の場にいなければ『これは問題ですよ』という人がいないということです。組織はデータ活用やアルゴリズムに関して公平・公正でなければなりません」と答える。

しかし、これには大きな課題が立ちはだかる。男性が多数派の意思決定の場に女性などのマイノリティを増やすということは、意思決定の場に今いる人々からすれば、自分の特権を手放すことを意味するからだ。既存の意思決定者たちが得るものもなく特権を手放すことは考えにくい。彼らがマイノリティの意思決定の参加を加速させることで得る利益はあるのだろうか。

バートレッティ氏は「彼らには2つの利益があります」という。

1つは自社の評判確保による利益の確保だ。データ活用の場、意思決定の場にマイノリティが参加していなければ、その事実が自社の評判を下げる。評判が下がれば、顧客が自社の商品やサービスを利用しなくなり、経済的な損失になるというのだ。そのため、自身の特権を手放してでも、意思決定の場にマイノリティを呼ぶことで、評判と利益を守る必要がある。

もう1つは人材確保だ。同氏は「IT企業に勤める人々は、テクノロジーを使って社会的に正しいことをしようと思っています。最近では、自社の方針が倫理的でない場合に、デモなどの行動に出る人たちもいます。つまり、優秀な人材に自社に居続けてもらうために、企業は倫理的でなければならないのです」と話す。

IT企業だけではない。例えば建設業界のエンジニア採用にAIを使う場合、これまでのデータをもとに良い人材を探すことになる。エンジニアには男性が多いため、AIは「良い人材=男性」という図式を踏襲してしまう。実際の能力ではなく、性別によって人材が選別されてしまうのだ。意思決定の場に女性が居れば、どのデータをどのように使うのか、良い人材の定義は何かなどを設定し、より適切なデータ活用をできるようになり、より良い人材を確保できる。

最後にバートレッティ氏は「データは万能、テクノロジーは万能と思わないでください。『適切なデータセットとは何か』という問いは政治的なものです。AIを有意義に使うためには、哲学者、歴史家など、多様なバックグラウンドの人材が必要です。『データ活用はすばらしい』かもしれませんが、誰にとって都合が良いのか考えてください。知らないうちに『自分にとって都合が良い』『男性にとって都合が良い』になっているかもしれませんよ」と語った。

ダイバーシティの数字遊びから脱却し、Twilioが反人種差別企業になるため取った取り組みとは

2020年5月にGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏が殺害されたとき、多くの抗議活動が行われ、米国やその他の地域における人種差別の問題にスポットライトが当てられた。これを受けて、多くの企業が有色人種を支援する姿勢こそ表明したものの、実質的な変化を起こせていないのが現状だ。そんな中、口先だけでなく実際に反人種差別企業になるための取り組みを始めたのがTwilio(トゥイリオ)であり、CEOのJeff Lawson(ジェフ・ローソン)氏の決意は固い。

取り組みの一環として、ローソンは企業におけるダイバーシティ推進に長年携わってきたLybra Clemons(リブラ・クレモンズ)をチーフダイバーシティオフィサーに採用し、クレモンズ氏および他の経営陣と連携して、同社が掲げる人種差別撤廃のビジョンを推し進めている。

個人的な偏見や制度的および社会的な人種差別を分析した上で、そうした偏見や差別を解消できる会社作りを進めるのは至難の業だが、ローソン氏とクレモンズ氏はテック業界の手本となるべく本気のようだ。

こうした取り組みの中で、Twilioのダイバーシティレポートが先日発行された。取り組みの進捗状況と、よりインクルーシブな企業を目指す中で得られた知見が示されている。

筆者は、反人種差別に対する想い、個人、ビジネス、社会の各種レベルで差別に対処する方法、そしてそれがいかに終わりのない戦いであるかについて、ローソン氏とクレモンズ氏から話を聞くことができた。

全力で取り組む

クレモンズ氏は、2020年9月に入社したとき、ローソン氏をはじめとする経営陣全体の尽力で反人種差別企業に向けて取り組むことが決まり、彼女の役割は内容の定義付けだったと語った。それには他社が行っている「その場しのぎの対応」からの脱却に加えて、従業員の採用方法や、人種、容姿、出身地に関わりなく1人ひとりを迎え、成功をサポートするためのシステムを刷新することが含まれたという。

「すべての企業でとは言いませんが、(ジョージ・フロイド氏殺害事件の後)その場しのぎの対応が多かったですね」とクレモンズ氏は述べる。「(Twilioでは)反人種差別企業になるとはどういうことか、反人種差別とは何か(を解明する)ということ、私たちが現在取り組んでいることになるわけですが、そして解明したことに基づいてダイバーシティ、公平性、インクルージョンをどのように促進できるか、こういった点に全力で取り組んでいたと思います」。

こうしたテーマについてはジョージ・フロイド氏殺害事件をきっかけに気づいたわけではなく、自身が長い間考えていたことだった、とローソン氏は述べる。Twilioの初期の支援者にKapor Capital(ケイパーキャピタル)があるが、そのプリンシパルであるMitch Kapor(ミッチ・ケイパー)氏とFreada Kapor Klein(フリーダ・ケイパー・クライン)氏は何十年も前からダイバーシティとインクルージョンの推進を説いており、Twilioの2008年の設立当初にはダイバーシティについて話し合う会議に参加するようローソン氏に勧めていた。

ケイパー・クライン氏は2017年のインタビューで、スタートアップのできるだけ早い段階でポジティブな企業文化を醸成することの重要性についてTechCrunchに語っている。会社が大きくなればなるほど、それは難しくなるからだ。

当時のインタビューで、同氏は「初めからポジティブな企業文化を意識的に醸成することの重要性を強調しすぎることはありません。価値観や理念、会社のブランディングを明確にする時間を設けることが重要です。これは本当に大変なことなんですが、大企業に企業文化やダイバーシティとインクルージョンを後付けするのはもっと難しいことです」と述べていた。

ケイパー夫妻をはじめとするスタートアップの創業者たちとの出会いにより、自分が作りたい会社のイメージが固まったとローソン氏は述べる。同氏によれば、スタートアップを軌道に乗せるためのビジネス構築に手一杯だった当初、DEIB(D:ダイバーシティ、E:公平性、I:インクルージョン、B:帰属意識)について考え始める最適なタイミングなどないこと、そして同氏の言葉を借りれば「1000人の白人男性の会社になってしまう」前に、その場で考え始めることがスタートアップのリーダーとしての責任だということに気づいたという。

この考え方が2020年の反人種差別企業に向けた取り組みへとつながっていき、Ibram X. Kendi(イブラム・X・ケンディ)の著書「アンチレイシストであるためには」にヒントを得て、ローソン氏は全力で取り組んでいるのである。

「反人種差別は、どんな社会にも特定の人種を差別する制度化されたシステムがあり、差別は意図的にも無意識的にも行われるという事実に基づいています。そして反人種差別運動とは、そのような制度が何であるかを明らかにし、それにどう立ち向かうかを考えることです」とローソン氏は語った。

証明するためではなく、変化を起こすためにデータを使う

クレモンズ氏によると、2000年代半ばまでのダイバーシティに対する標準的な考え方は、単にデータを見て、目標値を達成していたら喜んで終わりというものだった。とはいえ同氏は、Twilioがさらにその先を行って、データを活用して会社に実質的な変化をもたらせるようサポートしたいと思ったという。

「データは特定の人口層や集団が増加したか、しなかったかを示します。では、実際に企業方針や手法を変えたりシフトしたりする上で、そのデータをどのように活用すればいいのでしょうか」とクレモンズ氏は問う。

「これはレイシズム(人種主義)、コロニアリズム(植民地主義)、カラリズム、ホモフォビア(同性愛嫌悪)といったあらゆる主義に関わる米国および世界の歴史を本当の意味で理解し、それに取り組む道のりです。自社が行っている選択と、その選択における個人的な利害関係を見つめ直した上で、人種差別撤廃に向けた施策や手法を構築していくことで、ダイバーシティ、公平性、インクルージョンの戦略が実際に変化し始めるのです」。

黒人のプロフェッショナルの職場における地位向上を目的として立ち上げられたスタートアップ「Valence(ヴァランス)」について2021年初めに取り上げたが、その記事の中で同社のCEOであるGuy Primus(ガイ・プリムス)は、クレモンズ氏が指摘したような数値遊びから企業が脱却できるようサポートしたいと語っていた。

「誰もが数字を上げたくて、議題には採用、維持、昇進(という概念)があるわけです。問題は、みんなが採用パイプラインばかりに注目して、究極的には採用に影響する維持や昇進に取り組んでいないことなのです。つまり、これはパイプラインの問題ではなく、エコシステムの問題なのです」とプリムスは述べていた。

これこそTwilioが実行可能なプログラムを策定している分野である。ただ人材の採用にとどまらず、1人ひとりの働きが評価され、各自のスキルに応じて昇進でき、帰属意識を持てる会社作りに取り組んでいるのである。

同社のダイバーシティレポートでは、これを実現するための具体的なプログラムがいくつも挙げられている。

1つは、2017年に始動した「Hatch(ハッチ)」と呼ばれるプログラムだ。これはコーディングブートキャンプの参加者で異色の経歴を持つ人材を探し、6カ月間の実習プログラムに参加させるというものだ。実習プログラムでは、より高度なコーディングスキルを習得する他、コーチングやメンターシップを通じて、コーダーとして成功するために必要なことを学ぶことができる。

ローソン氏によると、2020年の時点で、このプログラムを通じて入社した社員の93%が会社に残っているという。これは、従業員の成功をサポートするシステムを導入している会社に人が集まってきていることを示す実績である。

他にも、黒人やラテン系の従業員がリーダーシップ開発プログラムを通じて管理職に就けるようサポートする「Rise Up(ライズアップ)」や、歴史的に排除されてきた集団の出身者にテック企業の面接で成功する方法を伝授して、採用に向けた第一歩をサポートする「Twilio Unplugged(Twilioアンプラグド)」といったプログラムを設けている。

こうしたプログラムは、同社が掲げる人種差別撤廃の目標を達成するために策定されたものだ。ローソン氏は同社のシステムが完璧ではないことを真っ先に認め、クレモンズ氏らのサポートを受けながら、従業員全員が成功を収め、チームの一員であると感じられる会社を作るために、Twilioの経営陣は努力と学習を続けている最中だと述べた。

Twilioは2020年時点で依然男性社員が60%、女性社員が6%増加して38%強だ。全体の人種と民族構成は概算で白人が51%、アジア人が26%、ラテン系が6.5%、黒人が5.5%となっている。アジア人の割合が高いおかげで白人と非白人の比率は上出来だが、歴史的に排除されてきた各種集団についてはまだ課題がありそうだ。

画像クレジット:Twilio

同社もそのことは理解している。ローソン氏は個人、会社、社会の各レベルで取り組んでいくことで、Twilioとしてこの点を改善していきたいと述べた。その一環として、ダイバーシティレポートで知見を共有することで、現状に満足するのではなく社外に向けて課題を発信しているのだ。

Twilioのダイバーシティレポートに添付された動画の中で、クレモンズ氏が述べている言葉に言い表されている。「誰もが良くも悪くもさまざまな経験をしてきており、それを変えることはできませんが、Twilioとしてみんながチームの一員であると感じられる空間を提供することはできます。そのためには反人種差別の枠組みとなるこのダイバーシティレポートを通して、誰もがTwilioですばらしいキャリアを積み、充実したキャリアを歩めると感じられる公平性を確保することが重要なのです」。

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

Twitterが音声ツイートに自動文字起こし機能追加、社内にアクセシビリティ専門チームを用意し取り組む

Twitterが音声ツイートに自動文字起こし機能追加、社内にアクセシビリティ専門チームを用意し取り組む

Anadolu Agency via Getty Images

Twitter社は、音声ツイートに自動文字起こし機能を追加したことを発表しました。2020年6月にiOS版アプリに導入された音声ツイート機能ですが、ようやくアクセシビリティ(心身の機能に制約ある人でも、等しくアクセスできて利用しやすくすること)に配慮されたかっこうです。

記事執筆時点では、サポートされている言語は英語、日本語、スペイン語、ポルトガル語、トルコ語、アラビア語、ヒンディー語、フランス語、インドネシア語、韓国語、イタリア語となっています。

これらの言語でしゃべった音声は、キャプション(文字起こし)が自動生成されるようになっています。ただしTwitter社いわく、キャプションの生成にはデバイスの言語設定を使うため、その設定としゃべる言語が食い違っている場合は正確に動作しないとのことです。

文字起こしを見るには、音声ツイートの右上にある「CC」アイコンをクリックまたはタップします。しかしTwitterがテックメディアThe Vergeに語ったところによると、文字起こしは新しめの音声ツイートのみに表示され、古いツイートには表示されないそうです。

音声ツイートが開始された直後、Twitter社は文字起こし機能がないことに対してアクセシビリティ擁護団体から批判を受けていました。が、当時Twitter社内にはアクセシビリティ専門チームがなく、有志の社員がその仕事をしていることが明らかに。その後9月に、アクセシビリティに特化したチームを結成したことが発表されています。

ちなみにTwitter社は、音声チャット「スペース」では文字起こし機能を提供済みです。Twitterは文字ベースゆえに身体的な条件を超えて様々な人々が交流する場となっていますが、それだけにアクセシビリティが強く求められているのかもしれません。

(Source:Twitter Japan。Via The VergeEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:アクセシビリティ(用語)インクルージョン(用語)ダイバーシティ / 多様性(用語)Twitter / ツイッター(企業)

新世代のエンジェル投資家誕生を支援するHustle Fund

Kara Penn(カラ・ペン)氏は、4人の娘の母であり、マネジメントおよび戦略コンサルティング会社Mission Spark(ミッションスパーク)を経営している。

そして今、彼女はHustle Fund(ハッスルファンド)のおかげで、エンジェル投資家でもある。

Hustle Fundは2021年5月、コロラド州に拠点を置くペン氏のように、より多くの人々がエンジェル投資を利用できるようにする新しいイニシアチブAngel Squad(エンジェルスクワッド)でステルスから抜け出した。

「当社は、スタートアップのエコシステムで多様性を増すためにしなければならないことは、性別、人種、居場所にかかわらず、エンジェル投資家における多様性を増すことだと信じています」と Hustle Fundの共同創業者兼ゼネラルパートナーのElizabeth Yin(エリザベス・イン)氏は語った。

Hustle FundはAngel Squadを通じて、インクルーシブな投資家コミュニティの構築を特に目指しており、最低投資額を低く、利用しやすいように設定し(最低1000ドル、約10万9000円から)、投資家に「エンジェルの心得」とHustle Fundとともに投資する方法を提供する。

イン氏は「エンジェル投資家になるには、大金持ちで2万5000ドル(約270万円)の小切手が切れなければいけないという誤解がありました。少なくとも私はそのように思っていました」とTechCrunchに語った。「でも実際シリコンバレーでは、1000ドルの小切手で投資している人たちがいます。これはほとんどの人が考える額よりもはるかに手に届く額です。少額の小切手をたくさん集めて、企業に対して多額の小切手を切ることができるという点で、このグループを作る価値があります」。

ペン氏はこれまで、不動産、食品、アパレル、金融などさまざまなセクターで5社のスタートアップに投資している。

ペン氏は自身のことをエンジェル投資において「完全な初心者」としており、今のところはこの経験を楽しんでいる。

「すばらしい実業家は誰でもなれ、どこにでもいるというHustle Fundの考え方が気に入っています」とペン氏はTechCrunchに話した。「あらゆるレベルの専門知識が揃い、どんな質問にも答えてくれる協力的なコミュニティの一員でいることを楽しんでいます」。

またこの経験により、彼女はテクノロジーとAI、データの収集と利用、新しい市場の創出など、今までに触れたことのない方法で知識を広めることができるようになった。

「自分の会社で社会的影響力のある組織の戦略に専念する者として、創業者が複雑な問題に対して創造的な解決策を特定して市場に出す方法を探したり、難しい問題をスマートな方法で解決しようとしている革新的な人々のネットワークに触れることを望んでいます」とペン氏。「このように触れる機会があることで、難しい社会問題にこれらのアプローチを適用することについて考えようという気持ちにさせてくれます」。

Hustle Fundはエリザベス・イン氏とEric Bahn(エリック・バーン)氏によって創業されたベンチャー企業だ。両者ともにプレシードソフトウェアのスタートアップへの投資を目標に持つ、500 Startups(500スタートアップス)の元パートナーだ。同社は従来、通常は最低限の有望製品を持つ企業に2万5000ドルを投資し、チームと連携して企業の成長を助けている。同社ウェブサイトによると、年間およそ50件の投資を行っている。

最近、新規ファンドに 3360万ドル(約36億8000万円) 調達した。

「当社にとって最も重要なものの1つは、このスタートアップのエコシステムの方法を変えるという大きなミッションです」とイン氏。「起業家として、そしてアクセラレーターの業務を行うときの両方で、特定の履歴書があったり、特定の学校を卒業しているとか、特定の人種や性別だと、会社を立ち上げて、資金を調達する上で有利だということに気づきました。この項目に当てはまらなければ、多くの人にとって起業はとても困難なことになる可能性があるのです。だから当社はあらゆる階層からの多くの創業者に投資しているのです」。

Hustle FundのベンチャーパートナーBrian Nichols(ブライアン・ニコルス)氏は、AngelList(エンジェルリスト)でLyft(リフト)の元社員のシンジケートを開始した。いくつかの取引を行った後、AngelList以外の人々に対するシンジケートを開いている。

「あらゆるバックグラウンドの世界中の人々が、プライベートマーケットに多様性を求めていることがわかりました」とニコラス氏は話した。「Hustle Fundとは、投資していた企業の趣味が合うので、共同投資という形で関係を築いたのです」。

ニコラス氏は現在、同社のAngel Squadイニシアチブを助けている。これまでに合計で150名以上の投資家を集めたコホートを2回行った。同社のミッションに忠実に、投資家は通常のエンジェルシンジケートよりも多様性に富んでいた。メンバーの46%が女性で9%が過小評価されているマイノリティ、32%が弁護士や医者、アーティストなどのテック以外の専門職であった。シリコンバレーに拠点を置いているのは1/3に過ぎない。

Angel Squadでは毎週、ネットワーキングから、Hustle Fundが投資を検討している機会を密かに伺ったり、創業者とミーティングを行うか否かの理由について話し合ったりするなど、さまざまなイベントを開催している。

ニコラス氏は「ゼロから始めることを考えてみてください。たくさんのステップをスキップできて、スタートアップを評価するプロセスで大金を失う前に、エリザベス(・イン氏)にやり方を教えてもらうことができるのです」とTechCrunchに語った。「Angel Squadはまさに、私が投資に興味を持ち始めた3、4年前に望んでいたものです」。

シリコンバレーは威嚇的なところもあるが、実際はすべてにおけるエキスパートはいないとイン氏は認識している。

「私たちは人々がとても親切な環境を作ろうとしています。『嫌なやつ禁止』ルールがあり、人々が安心して学び、質問でき、エンジェル投資について何も知らなくてよいという環境です。実際ほとんどの人はエンジェル投資について知っていません。私たちは新しい人をこのシステムに招き入れたいのです」。

「嫌なやつ」ではない他、Angel Squadのメンバーになるための他の条件には、価値を高め、公認の投資家になることが含まれる。

「現在の競合的なラウンドで、私たちが投資しているポートフォリオ企業を積極的にサポートしたい人々を求めています」とニコラス氏。「プログラムに参加したい方は全員、当社チームによる面接があり、『あなたが創業者を助けられることは何か』といった質問がされます。受動的な資本は探していません。受動的な資本はエコシステムのこの時点ではさほど役に立ちません」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Hustle Fund多様性インクルーシブ

画像クレジット:Hustle Fund

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

【コラム】「脳の多様性」を活用してサイバーセキュリティのスキルギャップを解消する

編集注:本稿の著者Cat Contillo(キャット・コンティロ)氏は、HuntressのThreat Analyst IIで、誇り高き自閉症のクィア。LGBTQ+の権利、自閉症、神経多様性、DEI、サイバーセキュリティに情熱を注いでいる。

ーーー

組織はさまざまな考え方や視点からサイバーセキュリティのスキルギャップに対処し、さまざまな能力や思考プロセスを持つ人材を取り入れてセキュリティチームを強化する必要がある。その際の最初のステップとなるのがニューロダイバーシティ(脳の多様性、神経多様性)の理解である。ニューロダイバーシティを持つ人には、未開発の可能性があることをご存じだろうか?

ニューロダイバーシティが意味するところは私たち1人ひとりで異なる。ニューロダイバーシティとは、ADHD、自閉症、失読症、トゥレット障害などの認知障害や発達障害などの神経学的差異を、人間の脳の自然なバリエーションとしてとらえ、脳の違いはただの多様性でしかないと考える概念である。

私は、自分が人とは異なるオペレーティングシステムを持っているという自覚を常に持っていた。Mac OSで育てられた、Windows専用OSのような感覚だ。自閉症と診断されて初めて、なぜ自分がこのように感じていたかを理解し、目的を持つことができた。そして社会に出て、ニューロダイバーシティを持つ人々がサイバーセキュリティ業界にとって重要視されることを知ることができた。

自閉症の人には、サイバーセキュリティの分野での業務に適した特性がたくさんある。例えば自閉症の人の多くはパターン思考を持ち、細部にまでこだわる性格である。自閉症の人は、脅威ハンティングで悪意のあるコードとそうでないコードの微妙な違いを見つけ、自動化されたツールが見逃してしまうような脅威をキャッチすることができる。過集中という特性では、問題解決に集中し、他の人が投げ出したくなる複雑な問題にも粘り強く取り組むことができる。

もちろん、私たちが持つ能力、興味、強み、弱点は1人ひとり異なる。しかし、適切なサポートや環境があれば、サイバーセキュリティにプラスに働く特性もある。

自閉症の大人がテクノロジーやサイバーセキュリティに興味を持っていれば、特にその傾向が顕著である。興味があることで細部へのこだわりがさらにアップし、防御チームの優秀なサイバー専門家になることができるのだ。サイバー脅威の数や種類は常に変化している。明らかに排除できるものもあれば、もっと巧妙なものもある。コンピュータにもともと備わっているアプリケーションや実行ファイルのようなネイティブファイルを利用する「Living off the Land(LOTL:自給自足型、環境寄生型)」という攻撃手法もある。このような情報、何を探すべきか、どこに注目すべきかさえわかれば、ニューロダイバーシティ人材は、最も巧妙な脅威に対しても、集中して検査、調査、追跡することができる。

利点を受け入れる

私たちは、ニューロダイバーシティ人材の「違い」に注目するのではなく、異なる考え方や視点がサイバーセキュリティの分野にもたらすメリットを受け入れるべきである。実際、世界はさらに多くのサイバーセキュリティの専門家を必要としている。チームの多様性を確保するには、ニューロダイバーシティを受け入れることが必要だ。細部にこだわる人、規則にこだわる人、論理的な人、人とは違う考えを持つ人など、ユニークな才能を融合したチームは、サイバーセキュリティにおける競争力の源泉であり続けることになる。

サイバーセキュリティ分野でキャリアを積むには、論理性、規律性、好奇心、そして問題解決やパターン発見の能力が必要だ。この業界は、ニューロダイバーシティ人材に、特に脅威分析、脅威インテリジェンス、脅威ハンティングといった幅広いポジションとキャリアパスを提供している。

ニューロダイバーシティ人材は、干し草の中から針を見つけるように、潜在的な脅威を探し出して分析するのに欠かせない、小さな危険信号や細かな情報を見つけることができる。パターン認識、既成概念にとらわれない思考、細部へのこだわり、鋭い集中力、論理的な思考、誠実さなどの長所もある。

チームの多様性が高まれば高まるほど、チームの生産性、創造性、成功率は向上する。また、ニューロダイバーシティ人材が存在することで、サイバーセキュリティを強化できるだけでなく、異なる考え方や視点を採用してコミュニケーションの問題を解決し、チームや企業全体にプラスの効果をもたらすことができる。

米国労働省労働統計局によると、サイバーセキュリティ専門家の一般的なキャリアパスの1つである情報セキュリティアナリストの需要は、2029年までに31%増加すると予想されているが、これは他の職業の平均成長率4%をはるかに上回る。サイバーセキュリティ分野の重要な業務に空席がある一方、その業務に理想的な人材が何百万人も失業したままで取り残されている。

第一歩を踏み出す

今こそ「優秀な人材=神経学的定型(ニューロダイバーシティの逆の意味)」という思い込みを改める時である。職場における包括性と帰属意識を高める方法は数多くある。いずれも、求人情報が最初のステップだ。

求人情報には、求める人材や業務の要件を明確に記載する。より包括な求人情報を作成し、制限を減らしてみよう。配慮を必要とする応募者がアクセスできる連絡先のアドレスを記載し、必要な配慮を提供して、従来の方法とは異なる働きかけを行う。

ニューロダイバーシティ人材にとって一般的な面接は難しく、雇用に向けた最初のハードルになることが多い。面接時の質問のリストをガイドラインとして提供すれば、応募者の緊張を和らげることができるだろう。アイコンタクトの異常で人を判断しないことはさらに重要だ。

職場でニューロダイバーシティ人材を受け入れる包括的な文化を促進するためには、職場でさまざまなニーズに対応できるようにする必要がある。あらゆるレベルの従業員が、多様性のあるチームの力を引き出せる、風通しがよく包括的な職場環境を構築するための知識と理解を持つことが不可欠である。そのためには、全従業員を対象とした多様性、公平性、包括性、帰属意識を目的としたトレーニングが必要である。コミュニケーション手段を変更することも検討しなければならない。ニューロダイバーシティ人材は人によってコミュニケーションの仕方が異なるので、手段を考えないと職場内でのコミュニケーションの断絶につながりかねない。

サイバーセキュリティの分野で活躍したいニューロダイバーシティを持つ人や自閉症者にもアドバイスしたい。学習を続け、サイバーセキュリティの専門家とつながってネットワークを作り、決してあきらめるな。企業の大小を問わず、あらゆる面で意識を高め、包括的な対応を求め続ければ、成功のチャンスは増えるはずだ。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:コラム自閉症多様性LGBTQ+

画像クレジット:Chris Madden / Getty Images

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(文:Cat Contillo、翻訳:Dragonfly)

デジタル障害者手帳「ミライロID」で障害者割引チケットのオンライ購入が可能に、第1号としてガンバ大阪が導入

デジタル障害者手帳「ミライロID」で障害者割引チケットのオンライ購入が可能に、第1号としてガンバ大阪が導入開始

ミライロは6月28日、2033事業者(2021年5月31日時点)が対応するデジタル障害者手帳アプリ「ミライロID」(Android版iOS版)で障害者割引チケットをオンライン購入できる「ミライロチケット」サービスの提供開始を発表した。

これまで、障害者割引を受けようとすると、チケット販売窓口で手帳を提示する必要があった。それには時間がかかり、新型コロナなどの感染リスクも高まる。なにより、オンライン購入ができないという不便さがあった。日本政府は、2021年6月18日「デジタル社会の実現に向けた重点計画」を閣議決定し、「障害者の負担軽減や均等な機会の提供のため、オンラインによる施設等の障害者割引入場券の予約・購入等への対応について、民間事業者等に対して要請を行う」とした。これを受けてミライロは、「ミライロチケット」の提供に至ったという。

ミライロIDに障害者手帳を登録している人なら、クレジットカードで障害者割引チケットが購入できる。イベント会場入場時は、スマートフォンの画面にチケットを係員に表示して、「入場確認」アイコンをタップするだけでよい。第1号として、7月11日からガンバ大阪が「ミライロチケット」の対応を開始し、「ミライロID」で観戦チケットが買えるようになる。

ジタル障害者手帳「ミライロID」で障害者割引チケットのオンライ購入が可能に、第1号としてガンバ大阪が導入開始

なおミライロでは、「障害者」を「障がい者」とは表記しない方針をとっている。コンピューターの画面読み上げでは「さわりがいしゃ」と読まれてしまうことがあるためだ。「障害は人ではなく環境にある」との考えから、「漢字の表記のみにとらわれず、社会における『障害』と向き合っていくことを目指します」とのことだ。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
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パラリンピック公式ゲーム「The Pegasus Dream Tour」登場、ファンの増加、多様性への理解を進める

日本のゲーム開発スタジオJP GAMESは、世界初のパラリンピック公式ゲームとなるスマートフォン用タイトル「The Pegasus Dream Tour(ザ ペガサス ドリーム ツアー)」の配信(iOSAndroid)を開始した。

本ゲームはアバターRPGだ。オンライン仮想都市ペガサスシティを舞台に、プレイヤーが心を持ったキャラクター「Mine」をサポートし、他のプレイヤーと交流しつつ、実在のパラスポーツを楽しみながら、パラアスリートとして成長させることを目的とする。プレイヤーはアバターを操作し、ゲーム内キャラクターであるMineをサポートする。自律的に動くMineに、「他のプレイヤーと話した方がいい」「今日のコンディションを改善するためにこれをやった方がいい」といったアドバイスを行う。

舞台となるペガサスシティには、アスリートカフェ、アスリートジムなど、さまざまな施設があり、プレイヤーのアドバイスでMineがどこに行くか、何をするのかが決まる。

本ゲームでは、パラスポーツで遊ぶことができる。リリース段階で遊べるのは陸上とボッチャ(ジャックボールという白いボールに、赤青各6球を投げたりすることで、どれだけ近づけるか競うスポーツ)の2種目だ。2021年8月には車いすバスケ、車いすレース、ブラインドサッカーが追加予定。以降、順次追加される予定だ。ゲームには実在のパラアスリート9名がペガサスシティで活躍する選⼿として登場する。パラアスリートとの会話や対戦ができるクエストも順次配信予定となっている。

また、ゲームには、ペガサスシティ市長代理としてドラえもんも登場する。オリジナルの秘密道具も登場し、リリース時点ではプレイヤーの写真を撮影し、ペガサスシティ上のMineを⽣み出すアバターカメラと、PEG(Personal Ecosystem Guide)という多忙な市⻑代理であるドラえもんに代わり、Mine1人ひとりにつくパーソナルガイドの2つ。リリース後、他のものも登場する予定だという。さらに、フィギュアスケート選手の羽生結弦選手が本ゲームのアンバサダーに就任している。

ゲームを通してパラリンピックの認知を広めたい

「The Pegasus Dream Tour」の配信に際し、発表会も行われた。JP GAMES COプロデューサー⾨⽥瑛⾥氏、アートディレクターの⽯崎晴美氏、同代表取締役CEOの⽥畑端氏、国際パラリンピック委員会理事⼭脇康氏、ブリヂストンオリンピック・パラリンピック推進部鳥山聡子氏がゲームに対する思いを語っている。

国際パラリンピック委員会理事の山脇氏は「パラリンピックのファンを増やす方法に課題を抱えていました。パラリンピックに興味のない層にリーチすることは非常に難しいことです」と語る。

しかし、ゲームであれば、パラリンピック自体にあまり興味がない層にリーチできる可能性がある。

「このゲームであれば、パラスポーツで楽しんでもらうだけでなく、違いや多様性を認めて共生するというパラリンピックのビジョンにも触れてもらえると思います。ワクワクしながら、楽しみながら、共生社会、ダイバーシティ&インクルージョンを理解を深めて欲しいです」と山脇氏は期待を語った。

本ゲームのファーストスポンサーであるブリヂストンの鳥山氏は「なぜブリヂストンがゲームのスポンサーになったのか、ピンとこない方もいるかもしれません。当社はオリンピック、パラリンピックのワールドワイドパートナーです。ゲームを通してパラリンピックが目指す共生社会を目指す姿勢に共感しました。このゲームでダイバーシティ&インクルージョンを直感的に感じてもらいたいと考えています。ゲームにはブリヂストン・アスリート・アンバサダーが5人参加しています。ゲーム、エンターテインメント、パラリンピックが協力すると何ができるのかを見て欲しいですね」と協力の背景を話した。

また、アートディレクターの⽯崎氏は「パラアスリートからのフィードバックもゲームの中で生かされています。例えば、ギア(義足や義手)のデザインをアスリートに見てもらったところ、「この形はパラアスリート用ではない」「このデザインは古い」といった意見が出てきました。ここからデザインを改善しています。また、ギアの動きにもこだわりました」とゲーム制作に関する話もしてくれた。

ビジネスとしてのパラリンピックゲーム

JP GAMESの田畑氏は「本ゲームを制作するきっかけは前国際パラリンピック委員会のCEOであるハビエル・ゴンザレス氏の言葉でした」と振り返る。

スクウェア・エニックス・グループを離れた後、田畑氏ゴンザレス氏から「パラリンピックのゲームを作らないか」と声をかけられた。だが同時に、ゴンザレス氏は「私自身はあまりゲームに対してポジティブなイメージはない。パラリンピックをゲームにするのはどうなのか、とも思う」と打ち明けられたという。

しかし、この言葉で田畑氏はパラリンピックのゲーム化にチャレンジすることを決めた。

とはいえ、ゲームをビジネスとして考えた時、田畑氏は楽観的な考えはなかったという。

「国際パラリンピック委員会のYouTubeチャンネルの動画の再生数を過去にチェックしたところ、大体200ほどでした。ロンドンパラリンピックなどの注目度の高い動画でも数千程度でした。この状態でパラリンピックのゲームを出しても遊んでくれる人はそんなにいないでしょうし、収益は見込みづらいと考えました」と田畑氏。

そこで本ゲームを「ゲーム」と「ビジネス」という2つの側面で回すことにした。

田畑氏は「ゲームはゲームとして世に出すのですが、本ゲームで培った技術基盤を企業向けのサービスとしてリリースすることで、長期的なビジネスとして回すことにしました。こちらは2020年ベータ版をリリース済みです」と語る。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:JP GAMESパラリンピックオリンピックモバイルゲーム多様性インクルージョン日本

生命保険の約款や学校教材における漢字の誤読を低減、正確なイントネーションで音声合成を自動生成するAIシステム

生命保険の約款や学校教材における漢字の誤読を低減、正確なイントネーションで音声合成を自動生成するAIシステム

大日本印刷(DNP)とグループ会社のDNPコミュニケーションデザイン(DCP)は6月15日、人間の音声を人工的に作り出す「音声合成」の制作時に起きる読み間違いを減らし、人が読むナレーションのイントネーションやアクセント、間合いに近い自然な音声を自動生成できるAI(人工知能)活用音声合成システムを開発したと発表した。

今回開発したシステムは、音声合成の制作時に起きる漢字の「誤読」や、「橋/箸/端」(はし)など同じ読み仮名で異なる「イントネーションの違い」に関し、読み間違いを約50~70%削減したという(従来のDNPの音声合成の制作と比較)。これにより、高齢者や身体障がいの有無に関わらず、誰でも必要な情報に簡単にたどり着けるアクセシビリティの向上が期待される。また、音声合成が利用されている学校教材や電子書籍、生命保険・損害保険の約款や契約書、e-Learningや研修教材などへも広く活用できるとしている。

現在、多様な人々にわかりやすく情報を伝達する機器やサービスの開発が進み、その利用が拡大している。例えば、文字などを読むことが困難な人のための国際標準規格DAISY(デイジー。Digital Accessible Information System)に準拠したデジタル録音図書をはじめ、様々な手法で人間の音声を人工的に作り出す音声合成は、交通情報や施設のナビゲーション、電話の自動音声ガイダンスなどで幅広く利用されている。

ただ、音声合成の精度は年々向上しているものの、漢字の誤読や発音・イントネーションの間違いが依然として発生していることが課題となっているという。この課題に対してDNPとDCDは、多くの企業のマニュアルや約款、研修用コンテンツなどで音声合成を制作してきた技術・ノウハウを活かし、「単語の読みや発音で、間違いのない音声データ」を機械学習させて、誤読が少なくスムーズな発音の音声合成を自動生成できるDNP独自のAIシステムを開発した。

具体的には、DCDが保有する読み間違いのない音声データをAIに機械学習させることで、正確な読みを自動付与できるようになった。これにより、約款や契約書、自治体・行政機関等の公式文書、製品の解説書といった正しい情報提示が必要でテキスト量が多いものへの利用に適しているという。

また、イントネーションとアクセントについて文章の文脈を加味して自動生成するため、従来の方法と比較して、人が読むナレーションに近い自然な音声を生成できる。両社は、特に正しい読みやナレーションを重視する学校教材や電子書籍などに最適としている。

さらに、既存音声データに加え、追加学習によってデータを増やすほど、読みの正確性やイントネーション・アクセントの精度が向上するという。複数の生命保険会社の約款で汎用性の検証を実施したところ、「読み」「アクセント」「間」について約85%以上の正確性を確認したそうだ。

DNPとDCDは今後、AIの精度向上と適応分野の拡大に努めるとともに、AIを活用した音声合成の付加価値を高め、幅広い分野に向けてサービスを提供するとしている。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:インクルージョン(用語)AI / 人工知能(用語)大日本印刷 / DNP(企業)ダイバーシティ / 多様性(用語)日本(国・地域)

【コラム】多様性、公平性、包括性の面から評価した現在米VC業界の進歩

編集部注:Maryam Haque(マリアム・ハケ)氏はVenture Forwardのエグゼクティブディレクター。Bobby Franklin(ボビー・フランクリン)氏はNational Venture Capital Associationの社長兼CEOで、以前CTIA-The Wireless Associationのエグゼクティブバイスプレジデントを務めていた。

ーーー

これまでベンチャーキャピタル業界が多様性に欠けていたことは明らかだが、業界が改善に取り組んでいることは喜ばしい。

そもそもベンチャーキャピタルは業界として、筆者らが測定したものを改善することしかできない。2016年、筆者らは、ベンチャーキャピタルの多様性、公平性、包括性(DEI:Diversity, Equity and Inclusion)の進捗状況を追跡するための厳密な方法論を開発し、2年に1度開催されるVC Human Capital Surveyで、これらのデータを測定し、ベンチマークとすることに着手した。

この調査はNVCA(National Venture Capital Association:全米ベンチャーキャピタル協会)、Venture Forward(ベンチャ―フォワード)、Deloitte(デロイト)の協力を得て実施され、あらゆる種類、規模、ステージ、セクター、地域のベンチャーキャピタル従業員の人口統計データを収集すること、および企業のタレントマネジメントや採用活動の傾向を把握することを目的としている。これまでの調査では、進歩が遅く、落胆させられることもあったが、すべての分野ではないとはいえ、一部の分野では多様性(および多様性を促進するための会社の取り組み)が高まっている証拠を得ることができた。

繰り返しになるが、業界としてのベンチャーキャピタルの改善は、筆者らだけが測定できる。

筆者らは2016年、2018年、2020年に調査を実施し、2021年3月に2020年の成果を発表した。この調査では、2020年6月30日時点で378社の企業から収集したデータを掲載しており、203社だった2018年から大幅に増加している。さらに、145社以上の企業が#VCHumanCapital pledge(誓約)に署名し、DEIのデータを提出することを約束した。

ざっくりとまとめるとデータからは、投資パートナーにおける多様性の改善は、主に女性投資家の採用と昇進によってもたらされていて、黒人やヒスパニック系の投資パートナーの公平な代表性にはほとんど進展がなかったことがわかる。

しかしながら、若手投資家の人口構成が多様化し、多様性を重視したタレントマネジメントや採用手法の導入が進んでいることから、楽観的な見方もできるようになった。業界の前進にはまだ先が長いが、今回の調査で明らかになった重要なインサイトと変化をいくつか紹介する。

多様性の改善に向けた取り組み

多様性および包括性の推進を社内で明確にする企業が増加し、50%の企業がこの課題に責任を持つスタッフやチームを擁している(2018年は34%、2016年は16%)。同時に、多様性戦略と包括性戦略も普及し、43%の企業が多様性戦略を導入(2018年は32%、2016年は24%)、41%が包括性戦略を導入している(2018年は31%、2016年は17%)。

この取り組みは多様性の改善につながる。専任のスタッフ、戦略、プログラムを持つ企業では、投資チームや投資パートナーの性別や人種の多様性が向上している。DEIの重要性が増していることも、より広範なエコシステムにつながっている。過去12カ月の間に、リミテッドパートナー(有限責任パートナー)や投資先企業からDEIの詳細を求められたと報告する企業が増えている。

人材の採用と育成に明るい兆し

ベンチャー企業は比較的規模が小さく、離職率は一般的に低いが、2020年には21%の企業がシニアレベルの投資担当者ポジションが増えたと回答し、43%がジュニアレベルのポジションが拡大したと回答している。ジュニアレベルの投資担当者の人口構成は、性別や人種の多様性が高くなっており、将来の投資パートナーの多様性を示すポジティブな先行指標となっている。

全体的にEI戦略が普及するにつれ、より多くの企業がDEIに焦点を当てた採用・雇用プログラムを開発するようになった。正式なプログラムを持つ企業は33%、非公式なプログラムを持つ企業は74%で、いずれも2016年から着実に増加している。また、企業は2018年に比べて、空席が出た際の候補者を外部に求めることが多くなったと回答している。

しかし、企業は依然として、採用活動の大部分を社内ネットワークで行っていて、(人口構成上)同質な採用結果に結びつくことが多い。外部の候補者を採用するためのパイプは細く、2018年と2020年の調査でほとんど変化は見られない。VC業界の同業者を頼る(78%)、会社の内部で採用をかける(59%)が最も多く挙げられた戦略だった。例外的に、LinkedInなどのサードパーティのウェブサイトやニュースレターへの掲載は、2020年には54%の企業が回答しており(2018年の37%から大幅に増加)、既存のネットワーク以外のより幅広い候補者にアプローチするための手段の1つもなっている。

未だ困難な包括性の評価

人材の獲得後は、包括的な文化と定着率がDEIの進捗を測る重要な指標となる。リーダーシップ開発、メンターシップ、定着に特化したプログラムを実施する企業が増えており、約3分の2の企業が非公式のプログラムを提供し(2016年と比べて20ポイント増)、20%の企業が正式なプログラムを提供していると回答している。

VC Human Capital Surveyで包括性を評価することは困難である。なぜなら、この調査は1社につき1人を代表として行っていて、1人では他の人が感じている包括性の度合いを回答することができないからである。2020年の調査では、企業自体が包括性をどのように評価しているかを測るために、新たな質問を追加した。41%の企業が包括性戦略があると回答した一方で、包括性を評価するために従業員を対象とした調査を行っていると答えたのは26%に留まった。

依然主観的な要素が昇進における重要な考慮事項

多様な人材が業界の最高レベルの意思決定者になるためには、キャリアアップのための十分に構造化され、一貫して適用されるポリシーが欠かせない。昇進に焦点を当てた正式なDEIプログラムを提供していると回答した企業は約20%(2016年の5%から増加)、非公式なプログラムを提供している企業は65%(2016年の39%から増加)である。

昇格に焦点を当てたDEIプログラムは広まっているものの、主観的な要素は依然として昇格決定の重要な考慮事項であり、不平等で偏った結果につながる可能性がある。

ほぼすべての企業が、昇進を検討する上で「ファンドのパフォーマンスへの貢献」(90%)と「取引の組成」(82%)が「非常に重要」または「重要」な要素であると回答した。しかし、最も重要と回答されたのは「ソフトスキル」であり、94%の企業が「非常に重要」または「重要」と回答している。このような主観的な要素は、無意識のバイアスが入り込む可能性が高く、より明確にパフォーマンスに関連する客観的指標による重みづけを損なう可能性がある。

推進力の維持

2020年の調査結果は、社会正義と人種的公平性が国を挙げて注目され、政策立案者がサービスの行き届いていないコミュニティからの資本へのアクセスを向上させようとし、VC業界が新たにDEIに着目し始めた1年の直後という時宜を得たものとなった。今回の調査は、VC業界がどこに注力すべきかを示すとともに、DEIにフォーカスした取り組みの共通のニーズを思い出させる重要な指摘となった。

データは、疎外された複数のコミュニティを代表する人を見ると、1つの人口統計要素内の進歩がより小さくなる可能性があることを示している(例えば女性である投資パートナーの割合は着実に増加しているが、有色の女性である投資パートナーの割合は増加していない) 。

DEIの進歩のペースは遅く、不均一な部分もあるが、楽観できる根拠もある。4月6日、NVCA、Venture Forward、Deloitteは、最新の調査結果をさらに検討し、DEIの課題、機会、業界の戦略について議論するために、業界のリーダーとの討論会を開催した。社内での、また公の場における業界の同業者との建設的な会話を優先事項と考え、協調的な精神で行動し、熟考した具体的なDEI戦略を採用し、意欲的かつ緊急性を持って行動する企業が増えている。

業界がDEIの取り組みに対して勢いを持ち続け、結果を出すことができれば、有意義な進展につながる転換点に到達し、今後の調査に反映されることになるだろう。

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タグ:コラムDEI多様性アメリカ

画像クレジット:Dimitri Otis / Getty Images

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(文:Maryam Haque、Bobby Franklin、翻訳:Dragonfly)

米アップルの一部従業員グループが9月からの週3日出社に反対、柔軟な対応を望む意見書を提出

米アップルの一部従業員グループが9月からの週3日出社に反対、柔軟な対応を望む意見書を提出

Pavlo Gonchar/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

先週、米Appleのティム・クックCEOは新型コロナウィルスのパンデミックによってこれまでリモート勤務にしていた従業員に対し、9月より月、火、木曜の週3日はオフィスに出勤し、水、金の2日はリモートでの勤務とするオフィス復帰計画を従業員にメールしました。ところが、一部の従業員はオフィスへの出社をしたくない場合はそれを認める柔軟なアプローチを求めており、クックCEO宛に意見書を提出したと、The Vergeなどが伝えています。

従業員は意見書の中で「この1年間、私たちはしばしば耳を傾けてもらえないだけでなく、時には積極的に無視されていると感じました」と述べ、会社に対し誰がリモートワークをしたり、または柔軟に仕事場を選ぶことを可能にすること、またリモートやその他の仕事場にも障害者を受け入れるための「明確な行動計画」を作成するよう会社に求めています。また、Appleはこれらの問題について労働者に尋ねるアンケートを定期的に実施すべきだ、と手紙の主は記しています。

意見書を出したグループは少人数ではあるものの、リモートワーク推進の考えを持つ約2800人の従業員がSlackチャンネルを通じて集まったとのこと。

TwitterやFacebookなどは、パンデミック終息後も従業員が望めばリモート勤務を自由に選択できるようにしています。それに比べると週3とはいえ出勤を必須とするAppleは保守的な姿勢と言えそうです。

Appleと同様に、Googleもまた週3日間のオフィス出社を採用していますが、リモートだけで仕事ができるポジションも含まれており、チームのニーズに応じて変更できるようになっています。アップルは、他のIT企業の間で変化している、リモートワークに対する考え方をアップデートし、社内ポリシーを調整しなければならないかもしれません。

(Source:the VergeEngadget日本版より転載)

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