アマゾンのマーケットプレイス出品者に売上金を毎日支払うInstaPay、支払いサイトの長さを改善

Amazon(アマゾン)のマーケットプレイスの売上を支えているは、サードパーティの売り手だ。全売上の58%を占めており、今でもシェアは伸びている。ご存知にように新型コロナウイルスのパンデミックはアマゾンにとっては追い風となりネットで買い物をする人が増え、第1四半期の売上を前年比で26%も押し上げた。

しかしながら、サードパーティの売り手にとってアマゾンとの決済条件は便利とはいえない。アマゾンの売り手に対する支払いサイト(売上金が支払われるまでの期間)はほぼ2週間のうえ、返金に備えて相当額を預託させられる。そのため、財務体力のない企業は成長と在庫の積み増しのために十分な投資ができない。

この支払いサイトの長さを解決するためにPayabilityというスタートアップは、アマゾンのマーケットプレースの売り手に融資するサービスを提供している。なお、手数料はアマゾンからの受取金額ではなく総売上をベースに計算する。

今回紹介するInstaPayは、パンデミックの影響で売り手が苦しんでいるのを見て編み出された新しいサービスだ。需要が短期的にどれだけ増えても、アマゾンからの売上金の支払い日は短縮されないので、需要増に対応した仕入れができない。さらに売り手は仕入れ先に前金で払うため、2週間のタイムラグでキャッシュフローのギャップが生じる。InstaPayの新しいプロダクトはこの問題を解決し、売り手は売上金を毎日受け取れるようになる。

もちろん、InstaPayへの手数料の支払いは必要だが、同サービスは売上の50〜80%を融資し、売上の1〜2%の手数料を徴収する。アマゾンからの支払いがあると、InstaPayは自動的に未決の勘定を控除する。これなら小規模な売り手でも手元資金を使って在庫の積み増しができる。

InstaPayのCOOを務めるSam Bokher(サム・ボカー)氏は声明で「グローバルなロックダウンのために人々はオンラインの買い物が増え、多くの企業がアマゾンなどのeコマースプラットホームに集まっています。InstaPayの新しいサービスにより、売り手にアマゾンのマーケットプレースとともに成長する機会を提供し、2週間の支払いの遅れを排除しています」と語る。

このプロダクトは意外な業界からヒントを得ている。これまでInstaPayは、運送業とトラック企業に運転資金を提供し、定率の売掛金融資と当日支払いを行っていた。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

使い捨てバーチャルカード決済スタートアップのPrivacy.comが約10.9億円調達

米国時間7月15日、バーチャルカード決済スタートアップであるPrivacy.comはシリーズAで1020万ドル(約10億9000万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはTeamworthy Venturesで、Tusk Venture Partners、Index Ventures、Quiet Capital、Exor Seeds、Rainfall Venturesが参加した。

なじみのない読者のために説明すると、Privacy.comは無料でバーチャルの使い捨て決済カード番号を生成するため(未訳記事)、実際のクレジットカード番号は安全な状態のまま使え、銀行口座と取引先企業を切り離すこともできる。データの漏洩がしょっちゅう発生し疑わしくないウェブサイトを標的とするクレジットカードのスキミング(未訳記事)も起きる時代に、Privacy.comを利用するとハッカーは実際のクレジットカード情報を取得することが難しくなる。このアイデアは人気を得ており、同社はこの3年間で500万個のバーチャルカード番号を発行した。

Privacy.comのCEOであるBo Jiang(ボー・ジャン)氏はTechCrunchに対し、新たに調達した資金は昨年ベータテストをしていたカード発行APIの公開に役立てると述べた。このAPIによって法人顧客はバーチャルカードを発行し、自社のバックエンドシステムで従業員の支出を管理できるようになる。

「我々は、開発者が前もって透明性のある収益分配を確認し、サインアップしてプログラムによって同日中にカードを作れるようにする最初の企業だ」と同氏。Privacy.comは主に「元来、軽いソリューションでオンライン決済をする必要のある」アーリーステージの企業を対象にサービスを提供していくとジャン氏は言う。「この市場ではサービスがまだ行き届いていない。既存の企業の大半が、月々の最低利用額が決まっていてタイムフレームが長い大企業を対象にしているからだ」。

ジャン氏は、法人顧客に対するサービスをさらに強化するために、今回のラウンドの資金によって「人材を雇用して製品開発のペースをこれまでよりずっと速めたい」とも述べた。

画像:Cnythzl / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

使い捨てバーチャルカード決済スタートアップのPrivacy.comが約10.9億円調達

米国時間7月15日、バーチャルカード決済スタートアップであるPrivacy.comはシリーズAで1020万ドル(約10億9000万円)を調達したと発表した。このラウンドを主導したのはTeamworthy Venturesで、Tusk Venture Partners、Index Ventures、Quiet Capital、Exor Seeds、Rainfall Venturesが参加した。

なじみのない読者のために説明すると、Privacy.comは無料でバーチャルの使い捨て決済カード番号を生成するため(未訳記事)、実際のクレジットカード番号は安全な状態のまま使え、銀行口座と取引先企業を切り離すこともできる。データの漏洩がしょっちゅう発生し疑わしくないウェブサイトを標的とするクレジットカードのスキミング(未訳記事)も起きる時代に、Privacy.comを利用するとハッカーは実際のクレジットカード情報を取得することが難しくなる。このアイデアは人気を得ており、同社はこの3年間で500万個のバーチャルカード番号を発行した。

Privacy.comのCEOであるBo Jiang(ボー・ジャン)氏はTechCrunchに対し、新たに調達した資金は昨年ベータテストをしていたカード発行APIの公開に役立てると述べた。このAPIによって法人顧客はバーチャルカードを発行し、自社のバックエンドシステムで従業員の支出を管理できるようになる。

「我々は、開発者が前もって透明性のある収益分配を確認し、サインアップしてプログラムによって同日中にカードを作れるようにする最初の企業だ」と同氏。Privacy.comは主に「元来、軽いソリューションでオンライン決済をする必要のある」アーリーステージの企業を対象にサービスを提供していくとジャン氏は言う。「この市場ではサービスがまだ行き届いていない。既存の企業の大半が、月々の最低利用額が決まっていてタイムフレームが長い大企業を対象にしているからだ」。

ジャン氏は、法人顧客に対するサービスをさらに強化するために、今回のラウンドの資金によって「人材を雇用して製品開発のペースをこれまでよりずっと速めたい」とも述べた。

画像:Cnythzl / Getty Images

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(翻訳:Kaori Koyama)

シンガポール金融管理局のブロックチェーン構想「Project Ubin」が商業化に向けて始動

シンガポール金融管理局(MAS)と国営投資会社のTemasek(テマセック)は米国時間7月13日、ブロックチェーンを基盤とするマルチカレンシー決済ネットワークであるのProject Ubinが40社以上の企業とのテストを経て、商業運用が可能であることを証明したと発表した(Monetary Authority of Singaporeリリース)。

この取り組みは2016年に始まり(The Business Times記事)、TemasekとJ.P.Morgan(J.P.モルガン)によって開発されたプロトタイプのシステムは、商用ブロックチェーンアプリケーションとの統合性を確認するために2019年からテストを受け付けていた。

MASとTemasekの委託を受けて本日発表されたレポート(Monetary Authority of Singaporeリリース)によると、Project Ubinのプロトタイプは40社以上の金融・非金融企業とのワークショップを通じて検証されたという。潜在的な用途には迅速かつ低コストなクロスボーダー取引、外貨両替、エスクローや貿易のためのスマートコントラクトなどが含まれている。

報告書によればProject Ubinのプロトタイプは、中央銀行や他の金融機関と国境を越えたより良い決済ネットワークを構築するために、より多くの連携を可能にする道を開く可能性があると述べている。

TemasekのChia Song Hwee(チア・ソン・フウィー)副CEOは声明で「これはデジタルアイデンティティ、デジタル通貨、金融資産トークン化に焦点を当てたブロックチェーンのソリューションでの探索と構築におけるTemasekの努力を証明するのだ。我々はブロックチェーン技術のさらなる普及を促進する観点から、Project Ubin及び他の応用分野から生じる商業化の取り組みをサポートすることを期待している」と述べている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

メルペイが送金機能を実装、メルカリ売上金や有償ポイントを1円単位で送れる

メルペイは7月13日、メルカリの売上金や有償ポイントを1円単位で家族や友人などに送金できる機能を発表した。「メルカリ」アプリの「メルペイ」機能から各種メッセージサービスを利用して送金が可能だ。

受け取り側はメッセージサービス内に記載されたリンクを開くことで受け取れる。不正使用を防ぐために、送金側、受け取り側とも本人確認が必須となる。

メルカリは現在、月間のアクティブユーザー数が1650万人超、メルペイの利用者数は600万人超、メルペイ対応加盟店はコード決済、iD決済の合算で170万カ所となっている。

6月からはNTTドコモのdポイントの連携を開始。9月にはd払いとのQRコード共有化を進める予定だ。

メルペイが分割払いに対応、年利15%はクレカ並みだが月支払い額を柔軟に変更可能

メルペイは7月7日、コード決済サービスの「メルペイ」に新たに分割払いのサービス「メルペイスマート払い(定額払い)」を追加した。1カ月のメルペイでの利用料金をまとめて翌月に後払いできる「メルペイスマート払い」のオプション機能で、これまでは一括払いだった利用代金を定額で2カ月以上に分割して支払えるようになる。手数料はスマート払いと同様の年率15%で、一般的なクレジットカードで分割払いした際の年利とほぼ同じ。

なお同社は、10月31日までに精算する決済金額について定額払いの手数料(年利)がゼロになる「定額払い手数料0円キャンペーン」を実施する。

メルペイスマート払いは、顔写真付きの免許証などと本人の顔をスマートフォンで一緒に撮影して本人確認を電子的に実施するeKYC(electronic Know Your Customer)である「アプリでかんたん本人確認」、もしくは銀行口座登録を済ませたユーザーが利用できる支払い方法。クレジットカードの翌月一括払いに相当し、メルペイ残高からの支払う場合は手数料は無料、コンビニやATMなどを使った返済の場合は1回あたり300円の手数料がかかる。

同社によると、メルペイ残高からの都度決済だと1カ月でどれぐらい使ったか把握しづらいという理由で、メルペイスマート払いを積極的に使うユーザーも多いとのこと。サービス開始当初は、メルペイやメルカリの利用実績に応じてAIがユーザーごとに限度額を判断し、月あたり最大5万円をスマート払い(後払い)にできたが、現在は限度額が20万円に拡大している。

なお、1カ月の限度額はメルペイがAIで判断した上限額(与信枠)以下にユーザーが自由に設定可能など、使いすぎを各自で防止する仕組みもある。実際に多くのユーザーは3〜4万円を上限に設定しているそうだ。

定額払いを利用するには別途申し込みが必要となり、所定の審査が行われる。定額払いのサービスを実現するために、メルペイはクレジットカード会社と同様に包括信用購入あっせん業者として登録済み。定額払いの審査についてもクレジットカード会社と同様に指定信用情報機関(CIC)への照会が含まれるため、「クレジットカードを止められてもメルペイの定額払いは使える」といった抜け道になることはないとのこと。もちろん、定額払いを延滞してしまうとCICにもその情報が記録されるため、ほかのクレジットカードなどの利用にも制限がかかる可能性がある。

また、メルペイスマート払いとは別に定額払いには上限が設けられるほか、定額払いを選べるのは最大で3つの決済取引(3商品)のみとなる。つまり、メルペイで10回決済しても分割で支払えるのは3回の決済のみというわけだ。

さらに月ごとの返済金額はあとから自由に変更できるので、臨時収入があった月だけ多く払う、金欠のときはミニマムで払うといった変更も可能だ。使えば使うだけ数千円から数万円の定額払いが延々と続くクレジットカードのリボ払い(リボルビング払い)に比べると、無間地獄を見る確率は低いと言える。

また、定額払いはあくまでもスマート払いのオプション機能なので、定額払いの上限がスマート払いの上限を超えることはない。定額払い中の残債はスマート払いの残枠(利用可能金額)から差し引かれるため、利用可能額は最大でもスマート払いの上限である20万円となる。

さらに、20歳未満は定額払い自体を使えないようになっている。ちなみにメルペイスマート払いも、18歳未満は利用できないほか、18歳と19歳は保護者の同意のうえで上限が1万円と低く抑えられているなど未成年の使いすぎ防止策も講じている。

メルペイは、dポイント連携を果たし、9月からはd払いとのQRコードを共通化も始まって利用できる店舗がさらに拡大する。そして今回の分割払いの対応で、ある程度の計画性のもとでより柔軟な支払いが可能になった。使いすぎにはくれぐれも注意だが、コード決済サービスとして使い勝手がさらに高まったと言えるだろう。

Apple Cardをウェブから管理可能に、ただしリモートロックや交換の要求はWalletアプリ限定

米国時間7月2日、Apple(アップル)はゴールドマン・サックスが発行している同社ブランドのクレジットカードであるApple Cardのためのオンラインポータルをローンチした。このポータルでは、アカウント保有者が残高を管理したり、明細書や決済スケジュールを見たりできるようにした。URLはcard.apple.comで、iPhoneを紛失もしくは行方不明になったとき、カードの管理や決済に便利だ。これまでは、それらのためにゴールドマン・サックスに直接コンタクトする必要があった。

しかも、自分のデスクトップやラップトップからでも毎月の支払いなどを済ませることができる。わざわざiPhoneを使う必要がない。

card.apple.comを利用するには、カードの所有者が自分のApple IDでログインする。すると、自分のカードの残高や使えるクレジット、期日が迫っている決済などをホーム画面で見られる。メインのページでは、決済のスケジュールを指定できる。それは、Walletアプリでは「…」メニューの「more」の下に埋もれていたから、あることを知らなかったカード保有者もいるだろう。

左の画面へ行くと、過去の明細を見たりPDFでダウンロードしたりできる。その他の設定では、銀行口座へのリンクを設けたり、それらを解除したりできる。サポートへの問い合わせやカードの利用規約を読むことも可能だ。

ただし、カードをなくしたり盗まれたときのためのカードのリモートロックや交換の要求については実装されていない。これらの機能はWalletアプリにしかない。Express Transitの設定やプッシュ通知の管理も、やはりWalletアプリ上で行う。

アップルによれば、Apple Cardのすべての体験ができるのは、あくまでもiPhone上であり、ウェブサイトは決済の実行やスケジューリングなど頻繁に行うタスクだけだ。

カード管理のためのウェブサイトがないことは、アップルのモダンなクレジットカードの欠点のひとつだった。カードの管理や決済がiPhoneから直接できるのは便利だが、クレジットカードの保有者は自分のカードにウェブからもアクセスしたいと考えるのが一般的だ。

オンラインポータルのローンチの直前にアップルは、Path to Apple Cardをデビューした。これはもっと多くの消費者にApple Cardを持ってもらうための信用改善プログラムだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

TRUSTDOCKが福岡市の実証実験プロジェクトに採択、デジタル身分証による行政手続きを検証

TRUSTDOCK

TRUSTDOCK(トラストドック)は7月2日、福岡県福岡市の実証実験プロジェクト「Beyond Coronavirus」(ビヨンド コロナウイルス)において、同社提案の「デジタル身分証による行政手続き」が採択されたと発表した。

同実証実験では、行政手続きのオンライン化を促進することで、自治体窓口の三密緩和、事務方の業務効率化、同時に住民がリアルな身分証を持ち歩くことなくスマホだけで手続きが可能になることを検証する。Withコロナ時代のニューノーマルを形作る、デジタルガバメントにおけるデジタルアイデンティティの課題検証を目指す。

TRUSTDOCK

TRUSTDOCK

TRUSTDOCKは、オンライン本人確認が可能になるeKYC(electronic Know Your Customer)および公的個人認証に日本で唯一両対応するデジタル身分証アプリ「TRUSTDOCK」と、各種法律準拠のeKYCおよび本人確認APIサービス基盤を展開するスタートアップ。

同サービスでは、犯罪収益移転防止法をはじめ、携帯電話不正利用防止法、古物営業法、労働者派遣法、出会い系サイト規制法、民泊新法などに準拠したKYCをAPI組み込みのみで実現可能。これによりサービス事業者は、本人確認(KYC)用管理画面の開発や、オペレーターの採用や教育、24時間体制でのシフト管理を行うことなく、低コストでKYCを実施可能となる。

また犯収法改正対応のTRUSTDOCKは、施行規則六条一項の「ホ」「ヘ」「ト」「チ」をはじめ、公的個人認証による「ワ」などあらゆる本人確認手段を内包。運転免許証や運転経歴証明書、パスポート、マイナンバーカード、住基カード、在留カード、特別永住者証明書など幅広い本人確認書類に対応している唯一のデジタル身分証アプリとなっている。

TRUSTDOCK

福岡市と福岡地域戦略推進協議会(FDC)は、AI やIoTなどの先端技術を活用した社会課題の解決につながる実証実験プロジェクトを全国から募集。優秀なプロジェクトの場合、福岡市での実証実験をサポートする「福岡市実証実験フルサポート事業」を実施している。

Beyond Coronavirusとは、福岡市の官民協働型スタートアップ支援施設「Fukuoka Growth Next」(FGN)の協力のもと日本全国からスタートアップ企業の実証実験を募り、現在進行させているプロジェクト。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大によって顕在化した、様々な社会課題を解決するための新しいサービスやプロジェクトの創出を目指している。

関連記事:TRUSTDOCKのeKYCサービスが国内でMastercard Awardを受賞、ドバイでの最終選考会へ

アップルがApple Cardの審査に落ちた人のための信用度改善プログラム「Path to Apple Card」をスタート

Apple(アップル)は、Apple Cardの審査に落ちた人たちのために独自のプログラムを開始する。

拒否されたApple Card申請者は、米国時間6月29日中に端末に通知が送られ、「Path to Apple Card(Apple Cardへの道)」プログラムの案内が届く。これはオプトインプログラムで、最長4カ月間継続する。プログラムはGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の情報を元に申請者の信用度を算出、拒否された理由の概要を説明して、次回承認される可能性が高くなるように財務的な指標を改善する手助けをする。

プログラムにオプトインすると、レーティングに応じてパーソナライズされた行動指針の改善状況が送られてくる。

行動指針には例えば次のようなものがある。

  • 未払い残高を解消する。
  • 有担保、無担保の債務を期日までに返済する。
  • クレジットカードと個人ローンの負債額を減らす。

通知にはこうした指標を改善するための具体的な方法も書かれている。

プログラムを完了した利用者は、Apple Cardの再申請に招待される。

画像クレジット:Apple

上に挙げたポイントは、信用度の基本的な仕組みを理解している人にとってはごく当たり前のものに違いない。しかし私は、これを簡単だと感じる人たちに対していかに「多く」の人たちが、金融機関の審査プロセスで申請の承認と拒否を決定する要因を知る手段を持って「いない」かをよく考えて欲しいといいたい。このような対話型プログラムは、私の知る限りかつてクレジットカードの世界に存在したことがない。

通常、クレジットカードの申請を断られると、なぜ拒否されたかの「理由」が書かれたメールが近々送られるという通知を受け取る。しかし、多くの場合それは、山ほどの書類の中に、何が問題だったかを示すあまり役にたたない一文が入っているだけだ。積極的な行動につながるものではない。

画像クレジット:Apple

プライバシーに関しては、あなたがプログラムに勧誘されたとこを知っているのはアップルだけだ。アップルが個人を特定できる情報を持ち続けることはなく、参加者の詳細な財務状態を知ることもない。ゴールドマン・サックスも、このデータを広告やマーケティングのために第三者に渡すことはない。Apple Card自身とほぼ同じ条件だ。

画像クレジット:Apple

財務状態の透明化に関するApple Cardの扱い方を私は楽観的に見ている。Apple CardのiOSアプリにある 「payment wheel(支払いホイール)」は、これまでのクレジットカード向けインターフェースの中で最も明快でよくできている。利用者がどうしてもそうしたいと思わない限り、購入金額の利子を「支払わない」ようにすることに徹底した仕組みであり、業界標準とは大きく異なっている。

この財政健康ツールはアップルの全体的哲学とも一致している。副次効果として、こうした手順は利用者の全体的信用度を改善する結果を生んでいることも間違いない

さらにアップルは最近新たなウェブサイトを立ち上げ、ゴールドマン・サックスがカードの申請承認と利用限度の決定に使っている正確な基準を詳しく説明している。このサイトにはどうやって利子を計算しているのかなども書かれている。

画像クレジット:Apple

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

女性向け金融教育のABCashが約4億円の資金調達、累積調達額約8億円に到達

ABCash Technologies

女性向け金融教育サービスのABCash Technologies(エービーキャッシュテクノロジーズ)は6月29日、シリーズBラウンドの第三者割当増資および融資として、総額約4億円の資金調達を発表した。引受先は、日本郵政キャピタル、SV-FINTECH Fund、SMBCベンチャーキャピタル、リード・キャピタル・マネージメント、iSGSインベストメントワークス、みずほキャピタル。累積の調達額は約8億円となった。

調達した資金は、オンライン学習プログラム関連テクノロジーへの投資、採用とブランディングの強化に利用する。

ABCash Technologiesは、ミレニアル世代の女性を中心に、金融教育を提供するフィンテックベンチャー。お金の不安をなくし、豊かな人生を送れるきっかけを提供するため、2018年6月よりお金のトレーニングスタジオ「ABCash」を展開している。

オンラインと都内6拠点(渋谷・表参道・銀座・丸の内・池袋・新宿)での専門コンサルタントによるマンツーマンのトレーニング、お金の健康状態に関するデータ分析を行えるアプリケーション開発など、テクノロジーを取り入れ日本における金融教育の普及に貢献するという。

ファイナンシャルリテラシーを身に着け行動する人が増えることで、消費や投資を通じて経済に新たな活力を与え、日本の次の成長につながるとしている。

ソフトバンク本体が出資の独フィンテック企業Wirecardが破産申請、不正会計で債務超過

不正会計が疑われているドイツの決済サービス企業であるWirecard(ワイヤーカード)の信用は完全に失墜した。ドイツ時間6月25日、同社は「切迫した破産と債務超過」のために、ドイツ法人Wirecard AGがミュンヘン地方裁判所に破産手続きを申請すると発表(Wirecardリリース)した。6月30日が支払い期限となっている8億ユーロ(約960億円)と7月1日が期限の5億ユーロ(約600億円)の貸付金について貸し手側との協議がまとまらず、同社は「事業継続能力は保証されない」とする声明も出した(Wirecardリリース)。

同社はまた「暫定破産のもとでの再建を望む」とも述べた。一方で、Wirecard  Bank AGは申請には含まれていない。「BaFin(金融サービス監視当局)はすでにWirecard Bank AGの特別担当を指名した。今後は、Wirecard Bankの全決済の発表プロセスはグループレベルではなく同行内で行われる」。

Wirecardの破綻は、同社の債務返済期限が迫っているという状況に加えて、新型コロナウイルスのパンデミックのために全世界が不況に直面している中でのものだ。パンデミックは多くの産業に連鎖反応を引き起こした。一部の企業は繁盛していても、その他の企業は事業を完全に停止したり、事業を縮小したりしていて、これは決済手数料で稼ぐというビジネスモデルを取っている企業に直接的な影響をもたらす。

ソフトバンクからの出資を受けている上場企業のWirecardは、Wirecard Groupの子会社にも破産手続きを適用すべきか決めかねている。Wirecardはオンラインと店頭での決済サービスをドイツ国外の小売事業者に提供している。直近ではメキシコに子会社(Wirecardリリース)を設立し、そのほか28都市にオフィスを置いている。

上場しているドイツ証券取引所での同社の株価は6月25日、前日の下げに続いて77%近く急落し、時価総額は3億5000万ドル(約375億円)となった。Enron(エンロン)と同じ構図の破綻だ。ソフトバンクが昨年10億ドル(約1070億円)を出資した当時、Wirecardのバリュエーションは190億ドル(約2兆365億円)ほどだった。

破綻のニュースは残念だが驚くものではない。同社監査人のErnst & Youngが21億ドル(約2250億円)もの不明金に気付き、その後、前CEOのMarkus Braun(マークス・ブラウン)氏が詐欺容疑で逮捕されるなど、かなり激動の週となっている。

先週以前から同社に注意を払っていた人なら、ここ数カ月の動きも思い出すかもしれない。KPMGが主導し、4月に公開された別の調査(Wirecardリリース)では「バランスシートを操作したという告発を裏付ける証拠は見つからなかった」と結論づけている。

Wirecardは、大損となっているソフトバンクの数多くの投資案件の1つだ。テックと投資の日本の大企業ソフトバンクは2019年4月にWirecardに10億ドルを投じた(未訳記事)。

トラブル続きのWeWorkやUberを含め、うまくいっていない他の案件と異なり、Wirecardへの投資はビジョンファンドではなく、ソフトバンクグループからのものだった。Uberは、未公開企業だったときにソフトバンクや他の企業から期待されたバリュエーションを上場後も達成できていない。

Wirecardは損失や経営状況をオフセットすることができず、破綻することとなった。同社は数多くの顧客を抱えており、Olympus(オリンパス)、Getty Images(ゲッティ・イメージズ)、 Orange(オレンジ)、KLM(オランダ航空)などが含まれている。

画像クレジット: Christof STACHE/AFP / Getty Images

関連記事:独フィンテック企業Wirecardの前CEOが詐欺容疑で逮捕、約2240億円が不明に

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(翻訳:Mizoguchi

独フィンテック企業Wirecardの前CEOが詐欺容疑で逮捕、約2240億円が不明に

ドイツ警察はミュンヘン拠点のフィンテック企業Wirecard(ワイヤーカード)の前CEOであるMarkus Braun(マークス・ブラウン)氏を詐欺疑いで逮捕した。ミュンヘンの検察当局が現地時間6月23日に発表した。

ブラウン容疑者は同日出頭し、Wirecardは同社が決算で報告した21億ドル(約2240億円)が不明になっていることを認めた。ブラウン容疑者は保釈金500万ユーロ(約6億円)で釈放された。

逮捕発表の3日前に、ブラウン容疑者は10年以上率いてきた同社のCEOを辞任し、4日前にはWirecardは監査法人Ernst & Youngから21億ドルが不明だと指摘されたことを発表していた。

同社は、ベルリン拠点のInfoGenie(インフォジニー)との逆さ合併を通じて2005年に上場し、当時はドイツ国内で高い評価を得ているフィンテック企業の1社だった。Wirecardはアジアマーケットへの進出の費用を賄うために、2019年4月にSoftbank(ソフトバンク)から10億ドル(約1065億円)の出資を受けた。ただ、Financial TimesのようなメディアはWirecardのアジア事業を疑問視していた

関連記事:SoftBank to invest $1B into German digital payments provider Wirecard in new fintech partnership(未訳記事)

2019年1月以来、Financial TimesはWirecardの胡散臭いビジネス手法について何回もスクープした

そしていま、Wirecardの監査委員会は「信託銀行口座にあるはずだった19億ユーロ(約2290億円)が存在しない」という事実に直面していて、Softbankは他社のスキャンダルにまたも引きずり込まれている。

WirecardはすでにCOOのJan Marsalek(ヤン・マーサレク)氏、そして2002年から同社でCTOとCEOを務めたブラウン容疑者を解雇した。

Wirecardの問題はFinancial Timesが報じるようになってから注目を集めていた。そして6月18日に同社は4回目となる2019年会計年度決算の非公表を明らかにした。監査人のErnst & Youngが不正会計を指摘し、KPMGによる独立監査調査でも結論が出なかったためだ。

Wirecardのオペレーションにはシンガポールに拠点を置くアジア事業部門が含まれる。Softbankの資金はアジア事業部門の拡大と、Citigroupのプリペイドカードサービス事業の買収を通じて取り組む米国事業に使われる予定だった。

事業拡大はWirecardの株価を大きく押し上げ、同社をドイツテック業界の寵児に仕立てた。しかし残念なことに、同社が計上した評価益はフィクションのようなものだった。

同社は循環取引で売上高を水増しした。不正取引は地元の監査人の精密な調査を回避し、正当なものと見せかけるためにドイツ国外で行われたようだ。Financial Timesの報道によると、同社はまたドバイとダブリンにある子会社の売上高と利益も水増しした。

これらすべてが明るみに出たことで、かなりの額だったWirecardのバリュエーションは急減した。かつて270億ドル(約2兆9000億円)もあった価値は6月23日時点で18億ドル(約1900億円)となった。

Wirecardの没落はまたもSoftBankと孫正義氏の評判を落とすものとなる。Wirecardへの投資はSoftBank従業員とアブダビの政府系ファンドMubadala(ムバダラ)が融通したコンバーチブルノートによるもので、この損失はSoftBankにとって新たな失策となる。

「この取引はすべてにおいて企業ガバナンスのお手本と呼べるものではない」とシンガポールのUnited First Partnersでアジア研究の責任者を務めるJustin Tang(ジャスティン・タン)氏は先週Bloombergに語った。「Wirecardの件はビジョンファンドの損失に対処している孫氏にとって最も避けたいものだろう」。

画像クレジット:Christof STACHE/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

クレジットカード決済のSquareがスペインのP2P決済アプリVerseを買収

Square(スクエア)は、ヨーロッパで使えるスペインのピア・ツー・ピアの決済アプリVerse(ヴァース)を買収した(Squareリリース)。条件は非公開だ。Crunchbaseによると、VerseはSpark Capital、eVentures、Greycroft Partnersなどから3760万ドル(約40億円)を調達している。

SquareはCash Appで多くのユーザーを引きつけている。P2P決済アプリのCash Appではユーザーはスマホでお金の送受信が簡単にできる。ただしCash Appは、米国と英国でのみの提供だ。

Verseの買収は、ヨーロッパでSquareの存在感を高めるのにうってつけのようだ。VerseのチームはSquare内のCash App部門に加わる。

Cash AppとVerseの間には多くの類似点がある。Verseの主要機能は、モバイルアプリでお金を送受信できるようにすることだ。ユーザーは一切手数料を払う必要がなく、送受信はわずか数秒で完了する。

Verseのユーザーは電話番号でサインアップできる。つまりアドレスブックに電話番号がある人に送金が可能だ。もしあなたのVerseアカウントに十分な残高がない場合は、アプリはあなたのデビットカードに直接課金できる。そしてVerseアカウントからお金を引き出したい場合は、銀行口座に送金することができる。

また、Splitwiseのようなアプリからのグループ費用を追跡したり、貯蓄口座を開いたり、チケット発行機能を使ってイベントを準備したりできる。

直近では、Verseアカウントから直接お金を使えるVisaデビットカードをスペインで立ち上げた。為替手数料を払う必要はなく、毎月2回まで無料でATM引き出しができる。VerseはVisaの為替レートに準拠している。

Verseはしばらくユーザー数を公開していないが、App Annieによると、現在スペインのApp Store全カテゴリーでのダウンロード数ランキングで247位となっている。P2P決済は小さな企業が多数参入している。例えばフランスのスタートアップLydia(リディア)は、フランスにユーザー300万人を抱える。

「現時点で、我々の優先事項はVerseが引き続き欧州で成功するようにすることだ。Verseは今後も独立して事業を続け、さしあたって既存のプロダクトや顧客オペレーションに何ら変更はない」とSquareは発表文で述べている。

発表文の中で最も重要な表現は「at this point(現時点で)」だ。Squareは壊れていないものには手を加えたくない。しかしVerseが徐々に欧州におけるCash Appになったとしても驚きではない。

画像クレジット:Square

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(翻訳:Mizoguchi

メルカリでのdポイント利用が本日から可能に、20%還元祭やdカード特典で囲い込み狙う

Mercari D point

メルカリは6月11日、フリマアプリ・サービスの「メルカリ」で、dポイントが利用可能になったことを発表した。また、6月15日より「dポイント+20%還元キャンペーン」を実施する。

アカウントと連携させたユーザーは、メルカリでの購入金額に対して最大1.5%のdポイントが付与される永続的な特典も加わる。さらに、ドコモが発行するクレジットカードであるdカード(dカード、dカードGOLD、DCMX、DCMX GOLD)をメルカリで使うと、dポイントが税込100円ごとに1ポイント付与されるだけでなく、税込200円で最大3ポイントが貯まる。

2013年7月からサービスが始まったメルカリは、累計出品数15億品超(2020年1月時点)、月間利用者数は1650万人超の巨大な中古品・新古品のマーケットプレイス。一方のドコモIDであるdアカウントの登録者数は7500万件超。今回のポイント連携で、メリカリのアクティブユーザーの増加、マーケットプレイスのさらなる活性化に繋がると考えられる。

dポイント最大+20%還元キャンペーンの詳細は以下のとおり。なお、メルカリで取引をする前にdアカウントとの連携が必要で、キャンペーン期間内に支払いが完了していることが条件となる。詳しくはキャンペーンサイトで確認できる。

  • キャンペーン内容:メルカリとdアカウントを連携した状態でメルカリで商品を購入すると、通常ポイントに加えて購入金額の20%ぶんのdポイントを付与
  • キャンペーン期間:2020年6月15日~7月31日
  • ポイント付与時期:ポイント付与時期2020年8月下旬(予定)
  • ポイント種別:期間・用途限定ポイント
  • ポイント有効期限:付与日から約3カ月
  • 還元上限:1000ポイント(1000円相当)

そのほかのキャンペーンの詳細は以下のとおり。

dカード特約店スタートキャンペーン

  • キャンペーン内容:メルカリアカウントとdアカウントを連携し、対象カードでメルカリの商品を購入すると、dポイントの税込利用額200円につき3ポイントを付与
  • キャンペーン期間:2020年6月15日~8月31日
  • 対象カード:dカード、dカード GOLD、DCMX、DCMX GOLD(VISA、Mastercard)※iD、d払い(iD)、dカード mini、dカード プリペイドは対象外

dカード新規入会キャンペーン(メルカリ利用者限定dカード入会キャンペーン)

  • キャンペーン内容:メルカリアカウントとdアカウントを連携してdカードにウェブ経由で新規入会すると最大1万6000円ぶんの期間・用途限定dポイントを付与
  • キャンペーン期間:2020年6月15日~8月31日
  • 対象カード:dカード、dカード GOLD ※DCMX、DCMX GOLD、d払い(iD)、dカード mini、dカード プリペイドは対象外、家族カードの入会は対象外

d払い毎週おトクなd曜日キャンペーン

  • キャンペーン内容:期間中キャンペーンにエントリーし、対象日にd払いを利用してメルカリの商品を購入すると通常のポイントに加えて最大で購入金額の10%ぶんの期間・用途限定dポイントを付与
  • キャンペーン期間:2020年6月30日までの金・土曜日

 

インド・モバイル決済市場を徹底解説:優勢のグーグル、成長鈍化のソフトバンク、規制に苦しむフェイスブック

インドでは、Google(グーグル)と、Walmart(ウォルマート)傘下のPhonePe(フォンペ)がモバイル決済市場トップの座を狙ってしのぎを削っている。一方で、Facebook(フェイスブック)はWhatsApp Pay(ワッツアップペイ)の展開にあたって規制の迷路から抜け出せずにいる。

「今年5月、Google Pay(グーグルペイ)アプリで取引したユーザーは7500万人を超え、PhonePeの6000万人を上回った」と両社の業績に詳しい関係者はTechCrunchに語った。さらに、TechCrunchが調べた内部データによると、SoftBank(ソフトバンク)が出資しているPaytm(ペイティーエム)のアプリで取引する1日あたりのユーザー数は1000万人を超えている。

加盟店の数では今でもPaytmに後れをとっているグーグルだが、ここ数か月、世界でも最も厳しいロックダウンが実施されているインドで他社が勢いを失う中、総合的には優位を保ってきた。

しかし先月、Reuters(ロイター)は、グーグルがその市場優位性を乱用して自社のモバイル決済アプリのシェアをインドで不当に拡大しているとして、インド当局が独占禁止法違反の疑いで捜査していると報じた

Paytmはかつてインド最大手のモバイル決済業者だったが、ここ2年ほどはユーザーベースの維持に苦戦している。詳しい情報筋によると、昨年1月にはPaytmの取引ユーザーは約6000万人いたという。

インドの生え抜き企業であるPaytmの広報担当者はTechCrunchの取材に対し、5月の月間アクティブユーザー数は5000万人を超えたと答えた。また、この記事が公開された後にも、同担当者は「Paytmのアプリでは毎月5000万人を超えるユーザーが取引を行っている」と話した。しかし、The Informationが2020年1月に発表したレポートによると、2019年12月のPaytmの取引ユーザー数は4000万人に満たなかった。

データセットでは、月に最低1回でもアプリで決済すると取引ユーザーとみなされる。これは誰もが使いたがる測定基準だが、さまざまな企業が業績を発表する際により広く採用しているMAU(月間アクティブユーザー)やDAU(1日あたりのアクティブユーザー)などの測定基準とは異なる。MAUとしてカウントされた人の中には、そのアプリで一度も決済していない人も一定数含まれている。

Paytmがここ数年思うように成長できず苦しんでいる理由の一因として、インド中央銀行がユーザーと銀行の間に入るモバイルウォレット会社に対して、ユーザーのKnow Your Customer(顧客確認)を義務づけていることが挙げられる。関係者によると、この指示が多方面で混乱を引き起こしているらしい。Paytmは30億ドル(約3835億円)以上もの資金調達に成功したのにも関わらず、こうした難題に悩まされているのである。

Paytmの広報担当者はある声明の中で、「モバイルウォレットに関していえば、PaytmこそがKYCを実行するためのインフラを整え、顧客と対面して1億回を超えるKYCを実行してきた企業であることを忘れてほしくない」と語った。

Paytmは長い間、Uber(ウーバー)や食品配達スタートアップのSwiggy(スウィギー)などの人気サービスとの統合から利益をあげてきたが、ここ数か月は、このような統合機能のためにPaytmを利用した取引ユーザー数は月間1000万人未満となっている。

Paytmの2人の幹部が、取材時によくある「報復の可能性があるため匿名で」という条件で、「PaytmはUnified Payments Interface(統合決済インターフェース、UPI)を採用するという考えに反対していた」と話してくれた。UPIはインドの銀行連合によって約2年前に開発・導入された決済システムだ。このシステムを使うと、異なる銀行の口座間で直接送金できるため、モバイルウォレットは不要になる。

PaytmによるUPI採用が遅れたため、UPIを早期に採用したグーグルとPhonePeに、市場シェア獲得のチャンスが訪れた。

Paytmは、グーグルとPhonePeより1年遅れてUPIを採用し、PaytmはUPIエコシステムへの参加を拒否していた、という世間の見方を覆した。

「当社は数百万人の生活に変革を起こすイノベーションと技術を育んできた。金融テクノロジーの重要さもよく理解している。だからこそ、常にUPIを擁護し支持してきた。PaytmでのUPIの採用が同業者よりも遅れたのは、UPIベースのサービス開始の承認を得るのに想定よりも少し時間がかかったからだ」と広報担当者はいう。

2017年2月4日土曜日、インドのベンガルールの道路沿いにあるアクセサリ店に掲げられている、One97 Communications Ltd.提供のPaytmオンライン決済が利用可能であることを示す看板。画像クレジット:Dhiraj Singh/Bloomberg via Getty Images

この競争に姿を見せていないのがフェイスブックだ。ユーザー数ではインド市場が世界最大だと考えている同社は、Credit Suisse(クレディ・スイス)の試算では2023年までに1兆ドル(約109兆円)に達すると予測されているインドのモバイル決済市場にWhatsAppを使って参入しようと、早くも2017年に銀行と交渉を始めた。WhatsAppはインドで最も人気のあるスマートフォンアプリで、ユーザー数は4億人を超える

翌年、WhatsApp Pay(ワッツアップペイ)で100万人のユーザーにサービスを開始したが、その後、規制との戦いから抜け出せなくなり、残りのFacebookユーザーに決済サービスを拡張できないでいる。フェイスブックCEOのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は「WhatsApp Payは昨年末までにインド全国に導入予定だったが、まだすべての承認を得ることができずにいる。また新たな課題も出現していると話している。フェイスブックは今年4月、インド最大手の通信会社Reliance Jio Platforms(リライアンス・ジオ・プラットフォームズ)に57億ドル(約6246億円)を投資したが、この件についてはコメントを拒否している。

PhonePeが生まれたのは、WhatsAppがインドのモバイル決済市場に注目するわずか1年前のことだったが、以来、複数のサードパーティサービスを追加して確実に成長を遂げてきた。こうしたサービスには、大手食品雑貨配達サービスのSwiggyやGrofers(グロファーズ)、ライドシェア大手のOla(オラ)、チケット購入ホテル予約サービスのIxigo(イクシゴ)やOyo Hotels(オヨホテルズ)など、いわゆるスーパーアプリ戦略を採用している企業が含まれる。昨年11月のPhonePeのアクティブユーザー数は約6300万人で、そのうち4500万人がアプリを使って取引した。

TechCrunchがPhonePeの経営者Karthik Raghupathy(カーシク・ラグパティ)氏に、同社の取引ユーザー数について確認したところ、上述の数字で間違いないという回答があった。

同氏は、PhonePeの成長に寄与した3つの要因について、「ここ数年でスマートフォンとモバイルデータの利用が急速に拡大したこと、インドのモバイル決済会社が仮想モバイルウォレットモデル一本に絞っていたときにUPIをいち早く採用したこと、オープンなエコシステムアプローチを採用したことだ」とインタビューで答えた。

「早くから当社の消費者ベースをすべての加盟店に開放した。目的は、映画や旅行のオンラインチケット販売といった分野に参入することではなく、そうしたサービスの入り口を仕切っている市場リーダーたちと提携することだった」とラグパティ氏は語っている。

また同氏は、「さらに、完全にオープンで相互運用可能なQRコードで市場に参入した。つまり、加盟店や企業が1つのQRコードで、当社のアプリだけでなくすべてのアプリによる決済を受け付けられるようにした。それまでは、近所の商店に行くと、さまざまな決済アプリに対応するため複数のQRコードが用意されていた。この数年で、当社のアプローチが業界標準になった」と述べ、PhonePeは他のモバイルウォレットや決済方法に対しても同様にオープンであると付け加えた。

成長を遂げ、オープンなアプローチを採用しているPhonePeだが、最近の四半期決算では投資家の信頼を勝ち取るのに苦戦している。インドのモバイル決済企業には明確なビジネスモデルが欠けている点が、投資家の不安をあおっているのである。

PhonePeの経営陣は昨年、資金調達について話し合った。成功していれば、PhonePeの企業価値評価は80億ドル(約8767億円)となるはずだったが、交渉は決裂した。また、事情に詳しい3人の情報筋によると、報道されていないが「今年前半も同様の話し合いがあり30億ドル(約3287億円)の企業価値評価を得られるはずだったが、これも決裂した」とのことだ。ラグパティ氏とPhonePeの広報担当者に、同社の資金調達計画についてコメントを求めたが返答は得られなかった。

現時点では、ウォルマートはPhonePeへの融資を継続することに同意している。PhonePeは2018年、ウォルマートによるFlipkart(フリップカート)の買収によりウォルマートの傘下となった。

インドではUPIが市場に浸透したため、銀行は、モバイル決済業者にとって数少ない収益源の1つである販促インセンティブの支払いを廃止してしまった。

昨年末にベンガルールで開催されたイベントで、Google PayおよびNext Billion User Initiatives(ネクスト・ビリオン・ユーザー・イニシアティブズ)の責任者およびビジネスチーフであるSajith Sivanandan(サジット・シヴァナンダン)氏は、現在のインドでの国内規則では、Google Payはクリアなビジネスモデルなしで運営することを余儀なくされている、と語った。

新型コロナ渦の影響はモバイル決済企業にも

新型コロナウィルスのパンデミック発生をうけて、インド政府が3月末から全国的なロックダンを実施したたため、その後数週間のモバイル決済取引は、予想どおり著しく減少した。しかし、Paytmはまだ回復できずにもがいている一方で、PhonePeとGoogle Payは、一部規制が緩和されたこともあり完全に通常の状態に復帰している。

TechCrunchは、UPIの監視機関であるNPCIがまとめたデータを入手した。このデータによると、5月のPaytmのUPI取引数は約1億2000万件で、4月の1億2700万件、3月の1億8600万件を下回った(Paytmはモバイルウォレットサービスも続けており、その利用分も取引総数にカウントされている)。

UPI決済のみに対応しているGoogle Payの5月の取引件数は5億4000万件で、4月の4億3400万件、3月の5億1500万件に比べて増加している。PhonePeの取引件数は、3月の4億5400万件から4月の3億6800万件へと減少しているが、これで底を打って、5月は4億6000万件と回復している。これについてNPCIの広報担当者にコメントを求めたが回答は得られなかった。

PhonePeとGoogle Payは先月、2社合計で、インドのすべてのUPI取引の約83%に達したと発表した。UPI自体のユーザー数は1億1700万人を超えている。

競合会社の幹部たちは、かつてはインドのモバイル決済市場の最大手だったPaytmを敗者として片付けるのは間違っていると指摘する。

Paytmはマーケティング費用を切り詰め、ここ数四半期で積極的に加盟店へのサービス拡充を行っている。今年前半に、同社はさまざまなガジェットを発表した。たとえば、電卓とUSB充電器付きの決済用QRコード表示スタンド、音声確認機能で取引を行えるスピーカー、在庫管理を簡単にできるデバイスなどだ。

「加盟店にはこのようなデバイスをサブスクリプションサービスとして提供している」と、Paytmの共同創業者でCEOのVijay Shekhar Sharma(ヴィジェイ・シェカール・シャルマ)氏は今年初めにTechCrunchが行ったインタビューで語った。Paytmは映画や旅行のチケット販売、レンタル、ゲーム、eコマースなど、複数のビジネスにも参入しており、ここ数年でデジタル決済銀行も設立した。

「Paytmは誰もが知っている。インドでは、Paytmはデジタル決済の代名詞として使われており、インド国外では、インドのAlipay(アリペイ)だと思われている」と競合会社の幹部は語った。

関連記事:加熱するインドのモバイル決済市場で奮闘するスタートアップ

Category:フィンテック

Tag:モバイル決済 インド

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(翻訳:Dragonfly)

勝者総取りの労働経済でいいのか?9億円を賭けたPandoの挑戦

今は勝者総取り経済の時代だ。労働市場はますます宝くじ化し、そこではまったく同じスタートラインから出発したはずなのに、ひと握りの「スーパースター」従業員だけが、同僚と比べて格段に高額な報酬を手にしている。

テック業界では、2人のJavaScriptエンジニアが単にそれぞれ別のスタートアップに就職したというだけの理由で、報酬に数十億ドル(数千億円)もの差が生じることがある。この極端な収入格差は、法律や金融といった職業にも伝播し、私のジャーナリスト仲間の間にすら及んできている。

Charlie Olson(チャーリー・オルソン)氏とEric Lax(エリック・ラックス)氏にとって、この力学は本能的に受け入れられないものだった。「自分の未来は100パーセント自分のものです。しかしひとたび職業人生が始まるや、仕事のリスクか報酬かの選択に拘束されるようになります」とオルソン氏はいう。宝くじに当たれば報酬は青天井だ。だがそれ以外の大多数にはセイフティーネットすらない。スーパースターの座を勝ち取るべく全力でレースを戦おうとしても、自分を守ってくれる保険もない。

Pandoの創設者エリック・ラックス氏とチャーリー・オルソン氏(画像クレジット:Pando)

2人の創設者は、スタンフォード大学経済大学院の在学中に出会い、周囲の仲間たちを監察するようになった。そのうち何人かは、数年のうちのビジネス界のスーパースターになるかもしれない。彼らは、いくつものアイデアを検討したが、いつも決まってひとつのアイデアに帰結した。職業人生のためのプール型の保険というアイデアだ。

彼らの考えは、2017年中ごろにサンフランシスコを拠点とするPando(パンド)として実を結んだ。まさにそんな職業人生のための保険プールを、仕事仲間のグループで構築できるプラットフォームだ。「私たちは、グループのメンバーが集まっていっしょにプールを選び、グループを選び、グループの各メンバーが、まだどうなるかわからない将来の収入から一定の割合を仲間のために提供することに同意してもらうというマーケットプレイスを作りました」とオルソン氏は説明する。

つまり、例えばビジネススクールの1人の学生の成績が、他の大勢の同級生と書類上は似ていたとする。統計的に、そのうちの1人が仕事で大成功するが、今のところそれが誰なのかはわからない。そこで彼らがつながって、将来の報酬を共有できるようにするというのがPandoの狙いだ。

支払いのルールは、そのプールのメンバー間で決めるのだが、Pandoはこれを製品化するにあたり新しくガイドラインを設定した。そこには通常、収入という経済的なハードルがあるため、収入が特定の閾値以下の場合は支払う必要はない。収入が閾値を上回ったメンバーは、大きなプールなら収入額の1〜2パーセント前後、小さなプールなら収入額の7〜10パーセント前後の割合で資金提供を行う。プールに集められたお金は、すべてのメンバーに公平に分配される。

Pandoは当初、プロ野球選手のグループでプールを作るという顧客プロファイルに注力していた。新聞紙面を飾る巨額契約金を獲得した選手とは対照的に、野球選手の多くは世間に注目されることもなく、それでもメジャーリーグで一発当てようと希望を抱き、最低の賃金で頑張っている。「無一文で球界を離れるか、大金を手にするかのどちらかです」とオルソン氏はいう。

この場合は、野球チーム内の極端な給与の差を緩和できると同時に、人々の関心を集めることもできる。「人々が手を結んで経済的な協力関係を築くという誘因のもとにグループを作るという考え方は、お互いに成功を願う本当の動機になります」とオルソン氏は話す。Pandoの標準的なプールのサイズは5.7人。野球選手の場合は、プールの対象となるのは各選手がチームから直接受け取る契約金だが、コマーシャル契約料などの副収入は含まれない。

ここまででほぼ理解できたが、1つだけ釈然としない点がある。意欲と才能のある人間に収入の一部を提供するようにPandoはどうやって説得するかだ。結局、メジャーリーグを目指す者は、自分が次のA-Rod(アレックス・ロドリゲス)になるという野望を持っているはずだし、次なるFacebook(フェイスブック)を立ち上げようという者は、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)を目指さないわけがない。

オルソン氏は2つのことを指摘した。1つはデータだ。それは、1つの分野での成果の分布と、収入を確保したいという人間の欲求を緩和させるプールの必要性を示している。2つめの指摘は、将来の家計を自分のたった1つの職業に依存するよりも、利益が出ているポートフォリオを持つことのほうが、いつだって望ましいという点だ。

「Warren Buffett(ウォーレン・バフェット)は自信家ですが、それでも彼が投資した企業のポートフォリオを持っています。ベンチャー投資企業は成功する企業を選ぶ自分たちの目を信じていますが、それでもポートフォリオ戦略にたった1つの投資先しなかいなんてことはありえません」とオルソン氏。「エージェントがあなたを高く評価していたとしても、彼は安定したクライアントを多く抱えていて、最も稼ぐ人から利益を得ています。それでもあなたは、自分の利益を丸ごと独り占めしようと思っているのは、あなただけかも知れません」。そうした根拠と、プールの協調的な感覚が決め手になると彼はいう。

同社は2017年の秋に正式に発足し、Ulu Ventures、Pear VC、Avalon、Nimble Ventures、Stanford StartX Fundから330万ドル(約3億5000万円)のシード投資を受け取っている。そして米国時間6月9日の朝、2019年に850万ドル(約9億1000万円)のシリーズA投資を獲得していたことを発表した。これはCore Innovation CapitalのKathleen Utecht(キャサリン・ユーテクト)氏が主導し、Slow VCと、そのシード投資家たちが参加している。

Pandoのスタッフ(画像クレジット:Pando)

この資金を使い、Pandoは当初のターゲットであるプロスポーツ選手から、ビジネススクールの学生、起業家、ハイリスクで高収入な職種を目指す若者たちにもターゲットの範囲を広げてきた。

まだ初期段階であり、勝者総取りの労働経済への移行は崩しがたいトレンドであるものの、Pandoはこの問題に新しい流れを示している。そしてそれは、思いやりのある革新的なプラットフォームだ。

関連記事:LeverEdge wants to get you and your friends a volume discount on student loans(未訳記事)

画像クレジット:Robert Daly / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

個人がビットコインでアフリカのソーラー発電インフラに投資できるSun Exchange

南アフリカを拠点とする再生可能エネルギーのスタートアップであるSun Exchange(サン・エクスチェンジ)は、300万ドル(約3億2000万円)を調達してシリーズAラウンドをクローズし、投資額は合計で400万ドル(約4億3000万円)となった。

同社は、世界中の誰もが個人でアフリカのソーラーインフラに投資できる、ピアツーピアの仮想通貨(暗号通貨)に対応した事業を展開している。どういう仕組みなのだろう?

「あなたは個人としてSun Exchangeから購入したソーラーパネルを通じて、南アフリカの学校に電力を販売するのです」と同社のCEOであるAbe Cambridge(エイブ・ケンブリッジ)氏は説明する。「私たちのプラットフォームは、あなたのソーラーパネルの発電量を測定します。その電気を、あなたが指定した電力消費者が購入できるように調整し料金を徴収して、Sun Exchangeのあなたのウォレットに利益を振り込みます」と続ける。

参加するには、ソーラーセル1基あたりおよそ5ドル(約540円)かかる。取引はSouth African Rand(ランド)またはビットコインで決済する。

「私たちがビットコインを選んだ理由は、米1セントの100万分の1まで扱うマイクロトランザクションを可能にする全世界共通の支払いシステムが必要だったたからです」とケンブリッジ氏はTechCrunchの電話取材で話した。

彼はアフリカの再生エネルギーインフラを発展させようと、2015年にケープタウンに本社を置くこのスタートアップを共同設立した。「ソーラーの可能性は膨大だと気づきました。南アフリカだけでの話ではありません。アフリカ大陸全体です」とケンブリッジ氏。「必要なのは、アフリカをソーラーパワー化するための新しいメカニズムでした」。

国際エネルギー機関(IEA)によると、サハラ以南のアフリカの広大な土地には、およそ10億人が暮らしているが、電気が使えるのはその約半数に過ぎない(IEAのレポート)という。

このところ、Sun Exchangeの主要マーケットであり、その地域でも最高のインフラを誇る南アフリカは頻発する停電に悩まされている(Bloomberg記事)。

画像クレジット:Sun Exchange

Sun Exchangeのデータによると、同社には南アフリカ中の学校、企業、施設のためのソーラー発電プロジェクトに投資した会員が全世界に162名いるという。

Sun Exchangeの400万ドルのシリーズAをクローズした300万ドルは、ロンドンのARCH Emerging Markets Partners(アーク・エマージング・マーケッツ・パートナーズ)のAfrica Renewable Power Fund(アフリカン・リニューアブル・パワー・ファンド、アフリカ再生可能電力基金)からの投資だ。

この資金で、同社は新しい市場の開拓を計画している。「私たちは、サハラ以南の別の国々にも進出します。私たちのロードマップには、いくつもの明確なチャンスが記されています」とケンブリッジ氏は、Sun Exchangeが調査した市場のひとつであるナイジェリアを引き合いに語った。

ケニヤやナイジェリアといったアフリカ最大クラスの経済とテクノロジーの拠点では、豊富な資金を有するソーラーエネルギースタートアップ数社が事業展開している。東アフリカでは、M-Kopa(エムコパ)が家庭用のソーラー発電ハードウェアキットをクレジットで販売し、設置代金は携帯電話からM-Pesa(エムペサ)のモバイル送金を使って支払えるようにしている。このベンチャーは、Steve Case(スティーブ・ケイス)氏やRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏を含む投資家から1億6100万ドル(約174億円)の支援を受けている。

ナイジェリアでは、Rensource(レンソース)が住宅用ハードウェアのビジネスモデルから、より大きな市場や商業施設向けのソーラー発電によるマイクロユーティリティーの構築にシフトしている。

関連記事:Nigeria’s Rensource raises $20M to power African markets by solar(未訳)

Sun Exchangeはソーラーパネルの設置や製造を行う他の企業とは異なり、資産を持たないモデルで運用されている。

「私たちは供給業者にはまったく依存していません。アフリカ大陸で事業をしているソーラーパネルの設置業者のほうから、私たちにアプローチがあります。その中で最良の企業と提携しています」とケンブリッジ氏。彼は2017年にベルリンで開催された米国TechCrunchnのStartup Battlefield(未訳記事)でそのビジネスモデルを紹介していた。

「私たちは、ソーラーパネルのユーザーをソーラーパネルのオーナーやソーラーパネルの設置業者につなぐマーケットプレイスなのです」。

Sun ExchangeでCEOを務めるAbe Cambridge(エイブ・ケンブリッジ)氏

Sun Exchangeはソーラーパネルの販売マージンと、購入と発電したキロワット時あたり手数料から利益を得ていると、ケンブリッジ氏はいう。

アフリカでの事業拡大に加え、同社は中南米と東南アジアでの中長期的な展開も視野に入れている。

「これらの地域も、展開の早さと、ソーラーが牽引する環境の改善といったソーラーエネルギーの恩恵を大きく得られる場所です」とケンブリッジ氏は話していた。

関連記事:ジンバブエで日産リーフを利用したタクシー配車システムを展開するVaya Africa

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(翻訳:金井哲夫)

会計事務所の仕事をクラウドサービスで現代化するSilverfinがシリーズBを調達

Silverfinは会計のソフトウェアだが、中小企業の会計経理事務を助けるというものではない。同社は大小の会計事務所のためのクラウドサービスで、いわば会計経理のSalesforceだ。

同社はこのほど、HgがリードするシリーズBの資金調達ラウンドを完了した。なおシリーズAはIndex Venturesがリードした。今回のラウンドの詳細は公表されていないが、情報筋によると調達額はおよそ3000万ドル(約32億円)のようだ。

Silverfinは、会計業務において最も時間がかかる部分、すなわちデータの収集を自動化して会計処理の生産性を上げる。同社はXero、QuickBooks、Sage、SAPなどクライアントが使っている会計ソフトにダイレクトに接続してそのデータをインポートする。

その後、Silverfinはデータセットを標準化し、ユーザーがデータを手作業で追加できるようにする。それによりSilverfinはユーザー企業のためのメインのデータリポジトリになる。

このようにデータがシステムに入ったら、次はその処理だ。Silverfinはユーザーが提供する構成とテンプレートに基づいて自動的に処理を行い、その間のデータの追加やコンプライアンスのチェックは会計事務所の誰でもできる。SalesforceなどのSaaSプロダクトと同じく、複数の人がこのサービス上でコミュニケーションでき、過去の編集や変更の履歴を見られる。

最後は財務データを視覚化し、報告書などを作成する。これにより会計事務所の仕事が、以前と大きく異なってくる。分析ツールやアラートシステムもあるので、会計事務所は顧客企業へのアドバイスサービスに注力することができる。

同社はベルギーのゲントで創業されたが、今ではロンドンとアムステルダム、コペンハーゲンに拠点がある。現在の顧客数は650社で、そこにはヨーロッパと北米の大手会計事務所が含まれている。

難しい要求を抱える顧客を最優先するSilverfinは、それらの企業が利用しているXeroやQuickBooksなどには手を付けない。まず最初に、それら既存のソフトウェアとの統合を行う。今後は、会計経理部門が非力な中小企業にも市場を広げたい、と同社は述べている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

固定資産税の節税を自動化するTaxProperが2億円超を調達

あなたは持ち家の固定資産税をどのくらい払っているだろうか。高すぎると思ったことはないだろうか?

自分の払っている税金に不満があるときは、再査定を要請することができる。しかし、そうする人はほとんどいない、おそらくできることを知らないか、弁護士や書類作成に充てる資金や時間がないからだろう。

Y Combinator2019年夏クラス(未訳記事)出身のTaxProper(タックス・プロパー)は、その手続きを簡単にすべく、このほど200万ドル(約2億1600万円)を調達した。調達ラウンドをリードしたのはKhosla Ventures(コースラ・ベンチャーズ)で、Global Founders Capital(グローバル・ファウンダーズ・キャピタル)、Clocktower Ventures(クロックタワー・ベンチャーズ)ほか数人のエンジェル投資家が出資した。

利用者が住所を入力すると、TaxProperのアルゴリズムが、家の大きさ、部屋の数、建築資材などの要素に基づいて周辺地域の似たような物件の査定額を調べる。

もし、あなたの支払っている固定資産税が高すぎるとアルゴリズムが判定すると、必要な書類を自動的に作成して国に申請してくれる。同社によると、システム側の手続きに必要な時間は3~5分ほど。そのあとは国からの連絡を待つ必要があり、実際には6~8週間かかる。

料金には2種類のモデルがあり、前払い手数料149ドル、または1年目の節税額の30%のどちらかを支払う。税額を減らせないとアルゴリズムが判定したときや、申請が却下された場合は支払う必要がない。同社によると、現在顧客1人あたり平均700ドル程度節税しているそうだ。

TaxProperの二人の共同創業者は、税金と政府に関わる豊富な経験を持つ。Geoff Segal(ジェフ・セガール)氏は保険統計学と調査分析の専門家として保険会社のState Farm(ステート・ファーム)に勤めていた。Thomas Dowling(トーマス・ダウリング)氏はシカゴのLori Lightfoot(ロリ・ライトフット)市長の財務顧問だった。

なお、現在TaxProperは一部の地域でのみ活動している。どこの地域にも完璧に対応するために、いくつかの戦略を試しているからだと同社は説明する。現在利用できるのはシカゴおよび近隣のクック郡で、「数カ月のうちに」ニューヨーク州とテキサス州にも進出する計画だ。。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ニューヨークの地下鉄やバスでの非接触決済の全面導入が新型コロナにより延期

昨年5月にニューヨーク市のMetro Transit Authorityは、初めて非接触型決済システムを一部の地下鉄駅の改札口に設置した。そして地下鉄駅とバスを含む交通網全体への展開は、今年10月に完了することになっていた。しかしその他の事柄と同じように、新型コロナウイルス(COVID-19)が計画を台なしにした。

OMNY(One Metro New York)の計画は遅れており、現時点では12月までに完成する見込みだ。このニュースを最初に報じたThe Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)は、公共交通機関で乗客が物理的な接触を減らすことができる新たな技術が遅れるという、残念なタイミングに言及している。

乗客がこの技術を定期券のように往復で使えるようになるまで、このテクノロジーが採用される可能性は低い。今のところは、スマートフォンとおなじみのMetro Cardを交換することを意味する。もちろん多くのニューヨーカーはここ数カ月、地下鉄をまったく利用していない。電車は主に労働者の領域であり、MTAは毎晩車両の消毒に尽力しているが、それを避けることができる人はリスクを冒す価値はない。

このシステムはApple(アップル)、Google(グーグル)、Samsung(サムスン)、Fitbit(フィットビット)などのモバイルデバイスとスマートウォッチで利用可能な、幅広いモバイル決済機能をサポートしている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter