レシカがブロックチェーン活用の医療データ共有サービス開発、千葉大医学部附属病院と共同研究

レシカ ブロックチェーン 分散型医療データ共有サービス

ブロックチェーン(分散型台帳技術)基盤のソリューションを提供するレシカは6月26日、千葉大学医学部附属病院検査部遺伝子診療部研究チームとの共同研究により、医療従事者間または医療従事者と患者間において、患者の診療データを所有・共有する仕組みを開発した。研究内容は、文部科学省基盤研究事業・研究課題の「中央集約型と分散型の併用による医療情報共有のためのトラスト(信頼関係)の評価法」(研究代表者:松下一之)。また今回の検証では、千葉大学医学部発のゲノム・DNA解析ベンチャーのゲノムクリニックが遺伝子データを提供した。

同研究では、将来的に医療業界において医療従事者同士や医療従事者と患者間での医療データの情報共有が進んでいくこと、さらに診療情報のデータ化に伴う患者自身による診療データの保持が進められていくとしている。今回の取り組みの初期段階において、レシカは、秘匿性の高い診療情報が改ざんされることなく、限定された者のみが情報にアクセスできること、また誰がアクセスしたかという履歴について透明性を持って検証できる仕組みとして、ブロックチェーン技術を活用したPoC(概念実証)アプリケーションラットフォームを開発した。

ブロックチェーン技術について、患者自身による医療データの安全な管理、かつ第三者との共有を両立可能にするインフラと位置付けており、医療情報へのアクセス権限に関して、医療従事者などへの信頼度(トラスト)を患者本人が設定することを特徴として挙げている。

今後レシカは、同プラットフォームをベースとした医療現場への実サービス活用、医療に限らず患者のクオリティオブライフ(QOL)を高めるユースケースを検討していく。外部の医療機関および企業の関係者と新たなアプリケーションを開発し、患者の幅広い診療データの有効活用と安全な共有を目指していく。

オープンソース開発者を暗号資産で支援するフレームダブルオーが資金調達

フレームダブルオー(FRAME00)は6月15日、マネックス・ベンチャーズ、MIRAISEを引受先としたシードラウンドの資金調達を完了したと発表した。

また、暗号資産イーサリアムを基盤とするDApps(分散型アプリ)として、オープンソースソフトウェア(OSS)を資産として見立て、ステーキングによる収益化を図れる「Stakes.social」サービスを開発。参加を希望する開発者向けに先行リリースした。

フレームダブルオーは、オープンソースソフトウェア(OSS)開発者を暗号資産で支援するプロジェクト「Dev」を展開。開発者は、自分のOSSを登録しておくと、同社独自暗号資産「Dev」(イーサリアムのERC-20規格準拠トークン)をダウンロード数に応じ報酬として獲得できる。またユーザーは、登録済みOSSをダウンロードしたり、Devを売買することで開発者をDevで支援できる。

Stakes.socialのステーキングとは、自分が保有している暗号資産を任意のサービス・個人・組織などに預ける体裁で、その運営・管理を委任するという、ブロックチェーン関連技術のひとつ。預け入れた見返りとして、利子・配当などの報酬を得られるという仕組みとなっている。

例えば、ユーザーが任意のOSS(開発者)に対してDevによるステーキング(預け入れ)を行うと、開発者側は潤沢な開発資金としてDevを得られたことになる。開発が活発化しダウンロード数や利用者数が増えるとOSSの資産価値が向上するため、ステーキングを行ったユーザーに報酬として還元される可能性が高まる。

ブロックチェーンを活用して複数デバイスでシームレスな個人情報管理を実現するMagicとは?

自分のアプリケーションにアイデンティティ(個人情報)管理を組み込もうとすると、既存の手ごろな選択肢はインターネット上の最大で最もデータに飢えているプラットホームが提供していることが多い。

米国サンフランシスコの小さなスタートアップであるMagicは、ブロックチェーンを利用する分散アイデンティティ管理を提供しており、SlackやMediumのように提供されたリンクをクリックすればすぐにログインできるログインのシームレスなワークフローを作ろうとしている。MagicのSDKを使うとMediumやSlackのような体験を、それをスクラッチ(ぜロ)から作らなくても実現でき、ブロックチェーンのキーペアによる認証を利用してユーザーに、複数のデバイスにまたがる安全なログインを提供する。

MagicのCEOであるSean Su(ショーン・スー)氏は「今やアイデンティティといえば、FacebookやGoogleに管理されていることが多い。でもうちのアイデンティティ管理がクールなのは、それが分散アイデンティティであることだ」と語る。

ステルスを終えようとしている同社は、社名を以前のFortmaticから変えた。そしてPlaceholderがリードするラウンドで400万ドル(約4億3500万円)のシード資金を調達した。このラウンドに参加した投資家はとても多く、Lightspeed Ventures、SV Angel、Social Capital、Cherubic Ventures、Volt Capital、Refactor Capital、Unusual Ventures、Naval Ravikant、Guillermo Rauch、そしてRoham Gharegozlouが名を連ねる。

スー氏は大衆市場に訴求するために、同社の技術のブロックチェーンの部分をあまり強調しないようにしているが、でも同社の初期の顧客はブロックチェーン関連の企業、中でもEthereum(イーサリアム)のアプリケーションが多い。Magicはユーザーが250名未満の企業なら無料で、サブスクリプションは月額79ドルからだ。また完全にホワイトレーベルのエンタープライズ向けカスタムインテグレーションもある。同氏によると、MagicのプラットホームはSOC 2に準拠している。

同社のセキュリティドキュメンテーションによると、ユーザーキーはすべてMagicのサーバーをバイパスし、AWSのKey Management Serviceに暗号化されて保存される。Magicがユーザーのプライベートなキーを見ることはない。同社が今作っているSDKは、認証アプリと、USBキーによるハードウェアベースの認証をサポートする。

同氏によると「Mediumなどとの大きな違いは、ラップトップ上でリンクをクリックしてスマートフォン上のリンクからあらためてログインするのではない。それはとても面倒だから、Magicのリンクのログインではラップトップでログインすればそのリンクをどこからでもクリックできることだ」と説明する。

資金調達のニュースと並んでMagicは、フロントエンドのデベロッパープラットホームであるVercel、CryptokittiesのメーカーのDapper Labs、およびMax Planck Society研究所とのパートナーシップを発表した。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

成功報酬型でコロナ時代の飲食業を支援、「シンクロライフ」運営が2.8億円を調達

写真右からGINKAN代表取締役CEO 神谷知愛氏、同CTO 三田大志氏

グルメレビュー投稿や加盟店利用で暗号通貨が貯まるグルメSNS「シンクロライフ」を運営するGINKANは6月2日、MTG Ventures、ギフティ、オリエントコーポレーションなどから総額約2.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達は同社にとってシリーズAラウンドに当たり、これまでの累計調達額は約4億円となった。

シンクロライフはグルメSNSとして、レストランの口コミ投稿・閲覧機能のほか、AIが口コミを分析してユーザーの嗜好に合ったレストランをレコメンドする機能を備える。ユーザーは、投稿やレストラン利用により暗号通貨「シンクロコイン(SYC)」をアプリ内のウォレットに貯めることができ、貯まったシンクロコインをギフティが提供する「giftee for Business」のeギフト購入に使うことが可能だ。

「シンクロライフ」アプリ画面イメージ

飲食店側は、初期費用・月額費用0円、売上の5%の成功報酬で加盟店として参加ができる仕組みとなっている。

シンクロライフのスキーム

インバウンド重視からリピーター見直しへシフトした飲食業界

新型コロナウイルス感染拡大にともなう自粛要請や、緊急事態宣言の発令により、特に都市部の飲食店では営業を自粛したり、テイクアウト販売への転換を余儀なくされていた。

GINKANでは5月1日から、シンクロライフへのテイクアウト商品情報の無料登録を受付開始。同時にユーザーが、情報を掲載した飲食店のテイクアウト利用やレビュー投稿などで飲食店を応援することで、将来のイートイン来店時に利用できる優待券を受け取ることができる機能を追加した(優待券配布はシンクロライフ加盟店が対象)。

また5月28日には、テイクアウト対応店舗をAIがレコメンドする機能も追加。食レビューにもテイクアウト情報の投稿が可能になったほか、タイムラインにもテイクアウト特設フィードを追加した。

テイクアウト情報、レビュー掲載に対応したシンクロライフ

GINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏は、この3月から5月にかけての消費者・飲食業界それぞれの変化について、次のように述べている。

「まず消費者のほうでは、テイクアウト対応店舗が増えたこともあり、“食”の消費方法として、あまり経験がなかった人でもテイクアウトを体験する機会が増えた。またSNSユーザーの動向は緊急事態宣言前の3月から既に変化していて、アクセスの良い街から住居の多いエリアへと投稿・行動はシフトしていた」(神谷氏)

飲食業界の方でも2つの変化があったと神谷氏は言う。「飲食業界というのは従来売上が大きく変動しない業界だが、コロナショックのスタートからウィズコロナに続く過程で大きく売上が変動したことで、固定費が注目されるようになった」(神谷氏)というのが1つ目の変化だ。

「固定費が必要なマーケティングの需要が低下している中で、成果報酬でマーケティングが可能なシンクロライフのような仕組みの需要は上がっている」と神谷氏。実際、4〜5月はリモートのビデオ会議で営業を行っていたGINKANだが、営業活動は増えたそうだ。

もう1つの変化は、飲食店から見た顧客のターゲットだ。「感染拡大前は、一見客、特にインバウンドの顧客に対する戦略が立てられてきたが、今は固定客・リピーターが見直されて、一定以上の割合がないといけないという見方になっている」(神谷氏)

コロナ禍で飲食店の状況は2極化していると神谷氏は言う。「固定客やファンがついている店、地域密着型の店はこの状況でも強い。緊急事態宣言で大幅な営業自粛が始まるまでは、それほど大きく売上を落としていない。4〜5月の緊急事態宣言発令はさすがに影響が大きかったが、宣言解除後、売上が戻らない店もあれば、100%近くまで戻したところもある」(神谷氏)

今後、緊急事態宣言が解除されたとしても、公的な会食などが一気に戻るわけではないだろう、と神谷氏は見ている。「宣言解除で『まずどこへ行こうか』となったときは、好きな店、いつも通っていたところが選ばれる。せっかく外食するなら質を重視したい、という動きは5月後半ごろからあり、しばらく続くのではないか」(神谷氏)

アフターコロナまで活用できるサービス提供で飲食業界に貢献

「消費者・飲食業界両方の変化に対して、GINKANとしては、成功報酬で利用できるCRMプラットフォームとして対応していけると考えている」と神谷氏は話している。新型コロナ感染拡大の影響についても「我々はまだ駆け出しで、これから伸びるところなので、インパクトもそう大きくなかった。指標などもそれほど変わっていない」という。

神谷氏は、今回の調達資金の使途について「アプリ機能、飲食加盟店向けサービス拡充のための開発と、サービス認知、ユーザー獲得のためのマーケティング費用などに充てる」とコメント。また、「新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響を受ける飲食業界のためにも、アフターコロナまでを一気通貫で活用いただけるサービス提供に取り組み、飲食業界の未来に貢献していきたい」とも述べている。

GINKANの本ラウンドにおける第三者割当増資の引受先は以下の通りだ。

  • MTG Ventures
  • ギフティ
  • オリエントコーポレーション
  • セレス
  • 三生キャピタル
  • オークファン
  • DDホールディングスベンチャーキャピタル
  • 三菱UFJキャピタル
  • エスエルディー

GINKANは、2月18日にギフティのeギフトとの連携を発表しているが、「今後さらに各社との連携を深めていく」としている。神谷氏は「大手との事業連携も進んでおり、近く発表できるだろう」と述べており、「株主とはシナジーもある。我々だけでは取り組めない課題に、今ラウンドでは全力で取り組む」と語った。

ブロックチェーン技術活用で業務プロセスのDX化を目指すLayerXが30億円を調達

LayerXは5月28日​、総​額約30億円を調達したことを明らかにした。第三者割当増資による調達で、引受先はジャフコ、 ANRI、YJキャピタル。同社はGunosyとAnyPayによる合弁会社で、非改竄性の高いブロックチェーンを利用し、各種業務プロセスのデジタル化を推進する2018年8月設立のスタートアップ。

同社のミッションは「すべての経済活動を、デジタル化する」。2019年10月にEthereum Foundation Grants Programの対象企業に選定されたほか。同年11月には三菱UFJフィナンシャル・グループとの協業、2020年4月には三井物産と三井物産デジタル・アセットマネジメントを設立するなど、サービスの商用化を進めている。今回調達した資金は、商用化のための事業会社設立や、付随する事業・プロダ クト開発、人材採用に投下される。

関連記事
GunosyとAnyPayがブロックチェーン関連事業を行う合弁会社LayerX設立へ
LayerXの取締役に元ユナイテッド手嶋氏、元Aiming CFO渡瀬氏が就任
ツクルバの社外取締役にLayerX代表福島氏、アトラエCFO鈴木氏が就任へ

フェイスブックはLibraのウォレットCalibraをNoviに改名し独立させようとしている

Facebook(フェイスブック)が、独自の暗号通貨プロジェクトであるLibraを発表した際、そこには2つの独立した要素が含まれていた。その1つはLibraアソシエーションで、Libraに関するすべてを監督する非営利団体だ。もう1つはCalibraで、こちらはLibraベースのウォレットを開発するフェイスブックの子会社となる。このウォレットは、WhatsAppやMessengerにも統合される。米国時間5月26日、フェイスブックはCalibraをNoviに改名すると発表した

CalibraをNoviブランドに変更することにより、フェイスブックはいわばLibraプロジェクトがフェイスブックのプロジェクトではないことを明白にしようとしている。フェイスブックは単なるLibraアソシエーションのメンバーであり、その点ではAndreessen Horowitz、Coinbase、Iliad、Lyft、Shopify、Spotify、Uberなど数十の他のメンバーと同じだ。

Libraのブロックチェーンはフェイスブックから独立して運営されることになるが、NoviはDavid Marcus(デイビッド・マーカス)氏が率いる、純然たるフェイスブックプロジェクトだ。同社によれば、Noviはラテン語で「新しい」を意味する「novus」と、「道」を意味する「via」に由来する合成語だという。

Novi最初の製品は暗号通貨ウォレットになるはずだ。独立したNoviというアプリをスマホにダウンロードできるようになるだろう。Noviのアカウントを作成するために、フェイスブックやWhatsAppのアカウントは必要ないが、MessengerとWhatsAppから直接アクセスすることも可能となる。その場合、ボタンをタップしてNoviメニューを表示し、Noviウォレット経由の送金や受け取りの操作ができるはずだ。

Noviではマネーロンダリングや本人確認規則についても、安心して利用できるものにしたいと考えている。Noviにサインアップする際には、公的な身分証明書の写真を撮影しなければならない。Noviでは、匿名による送金は受け付けない。

ただしNoviは、送金が即刻実行されることを保証し、国境を越える送金にも地元での支払いにも、「隠された手数料はない」ことを約束している。これはそもそも手数料が発生しないという意味なのか、発生する手数料を明確にするという意味なのか今のところは不明だ。

Libraアソシエーションは、最近になってホワイトペーパーを更新し、暗号通貨プロトコルに重大な変更を加えた。もはや同協会では、法定不換通貨と証券類のバスケットに紐付けられたグローバルなステーブルコインを開発しようとはしていない。

Libraが発行されると、複数のステーブルコインが流通することになる。それぞれ、USD(米ドル)、EUR(ユーロ)、GBP(英ポンド)、SGD(シンガポールドル)など、単一の法定不換通貨に裏打ちされたものだ。Noviのユーザーあるいは他のLibra対応ウォレットを利用するユーザーはLibraUSD、LibraEUR、LibraGBP、あるいはLibraSGDで送金したり、受け取ったりできるようになる。またNoviは法定不換通貨を暗号資産に変換したり、逆に暗号通貨を既存の法定不換通貨として現金化するための媒介としても機能する。

Noviは、Libraネットワークの稼働に合わせてウォレットをリリースする予定だ。当初はそのサービスにアクセスできる国は限られることになる。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

クーガーがイーサリアム財団の支援でコミュニティ「ETH Terakoya」を展開

AI、IoT、VR/AR、ブロックチェーンなどの技術を組み合わせた人型AIエージェントの開発を行うクーガーは、5月25日、イーサリアム財団(Ethereum Foundation)の援助を受け、日本のエンタープライズブロックチェーン活性化のための活動を開始すると発表した。コミュニティ「ETH Terakoya(イーサテラコヤ)」を展開し、ワーキンググループの開催、アウトプット共有やノウハウ・スキルの提供を、オンライン・オフラインの双方で行っていくという。

エンタープライズユースで注目高まるEthereum

クーガーはホンダへのAI学習シミュレータ提供や、Amazonが主催するロボットコンテストAmazon Robotics Challenge(ARC)上位チームへの技術支援、NEDO次世代AIプロジェクトでのクラウドロボティクス開発統括などで知られ、ゲームAI、画像認識AI、ブロックチェーンの分野に強みがある企業。現在は、これらのテクノロジーを統合する形で、人型AIアシスタント「Connectome(コネクトーム)」の開発を進めている。

ブロックチェーンの領域では、クーガーはこれまでにも大企業との連携による実証実験を行ってきた(関連記事:KDDIとクーガーがブロックチェーン技術Enterprise Ethereumを修理業務に適用する実証実験を開始)。

また2018年には米国のブロックチェーン企業ConsenSysと共催で、日本の大手企業も協賛・後援する形で、インバウンド向けブロックチェーンサービスのハッカソンを実施している。

同社ではほかにも、チーフブロックチェーンアーキテクトの石黒一明氏が2018年、ワールドワイドでブロックチェーンの社会実装を目指す企業連合、Enterprise Ethereum Alliance(EEA)の日本支部代表に就くなど、企業のブロックチェーン活用につながる活動を続けている。

「こうした流れもあり、今回、イーサリアム財団の支援を得て、日本のエンタープライズブロックチェーンの活性化を進めていくことになった」とクーガー代表取締役CEOの石井敦氏は話している。

イーサリアム財団は、Ethereumと関連テクノロジーのサポートに特化した非営利団体だ。非中央集権、分散型のEthereumエコシステムを支える取り組みに対して、助成金などの財政面で支援するほか、エコシステム成立に必要と考えられるアクションへの助言、サポートも行っている。

イーサリアム財団エグゼクティブディレクターの宮口あや氏は、「Ethereumは、企業ではスケーラビリティやプライバシーの面で課題があり、使いやすい状態ではなかった。それが最近では、Etereumプロトコル上で利用できるツールなどの研究・開発が進んだことで、企業でもメインネット、パブリックチェーンを使いやすい環境になり、エンタープライズユースへの注目、ニーズが高まっている」と語る。

「当初は開発に力を入れていた財団メンバーだが、現在はコミュニティのコーディネートや助成金でEthereumをサポートするようになっており、研究・開発支援のほか、教育にはより力を入れるようになっている。日本では特に事業者側が『勉強してからしっかり取り組む』という傾向があるため、教育の仕組みはあった方がいいと考えていた。クーガーのメンバーとは、これまでにもブロックチェーン社会実装への取り組みで面識があった。Ethereumコミュニティとしても、企業のニーズが増える中で、クーガーが日本での教育、勉強する場を展開してくれるというのは、ありがたい」(宮口氏)

技術だけでなくビジネス、法律面でも課題を洗い出し

企業のブロックチェーン活用といえば、暗号通貨取引や証券取引など、フィンテック領域での浸透が最も進んでいるが、GA technologiesが不動産取引にブロックチェーン技術を取り入れるなど、他業種からも注目されるようになっているのが現状だ。日本では、ブロックチェーンを物流やサプライチェーンに織り込む流れも出てきている。

クーガー自身も人型AIエージェントの開発において、エージェントが扱う情報の信頼性を担保し、安全にデータを扱うためにブロックチェーン技術を活用している。また、KDDIとはEnterprise Ethereumを活用したスマートコントラクトの実証実験を実施。携帯電話の修理業務を対象に、ショップでの修理申し込みから修理完了までの情報共有とオペレーション効率化や、他事業とのシステム連携の可能性について、検証を行っている。

石井氏は「企業のブロックチェーン活用においては、技術、ビジネス、法律のそれぞれの面で課題がある。しかも産業によって、その課題は変わる」と述べている。

「ETH Terakoyaでは毎回、テーマを決めてワーキンググループで協議した結果をワークショップで発表していく予定だ。そこで技術的な面だけでなく、ビジネスとして成立するのか、法律的に問題がないのかといったフィードバックが数多く得られるだろうと考えている。場合によってはテーマをさらに深掘りして、続きを協議していくこともあるだろう」(石井氏)

日本の場合は「大企業が集まっており、特に自動車、家電、ゲームやアニメなどのコンテンツ分野では競争力の高い企業も多い」と石井氏。「産業ごとに連携して、業界内で『意味のある課題』を見つけることができるのではないか。また、日本からスタートして世界へ広げていくこともできるのではないかと思う」と期待を寄せている。「イーサリアム財団やコア開発者からのフィードバックや連携も受けながら、ガラパゴス化しないような取り組みも並行していく考えだ」(石井氏)

中国ではBATと呼ばれる3大IT企業、Baidu、Alibaba、Tencentの各社が独自のブロックチェーンサービスを提供し、自らもバックエンド技術として取り入れるという動きがある。

石井氏は「物流やサプライチェーンなど、同じ課題に対して別々の取り組みをするのは効率が悪いと考えている」と話す。「日本では文化的にブロックチェーン技術を取り入れるのは難しいという論もあるが、Linuxの例もある。初めはオープンソース由来のシステムを企業サーバで利用することに躊躇があった日本でも、今やほとんどの大企業でLinuxが使われている。標準化されたものを使った方がよいという流れはあり、今は活用を検討するのには、よいタイミングだと思う」(石井氏)

また、これまで企業ユースではEthereumのようなパブリックチェーンではなく、プライベートチェーンを利用する動きが強かったが、先の宮口氏の発言のとおり、企業でもパブリックチェーンを使いやすい環境が整ってきている。今年3月には大手会計事務所EYと、Consensys、Microsoftが提携し、Ethereumのパブリックメインネットを安全かつプライベートに活用できるプロトコル「Baseline」を発表するなど、メインネット、パブリックチェーンへの大きなトレンドが出てきているところだ。

宮口氏はこの流れを「イントラネットからインターネットへの流れと同じようなことが起きている」として、こう述べている。「(ブロックチェーン活用に際して)長い目で見なければ、ビジネスチャンスとして限界があるのではないかと考える企業が出てきている。Ethereumに限らず、(安全性、スケーラビリティといった)課題さえ解決されれば、パブリックチェーンを使えた方がビジネスチャンスは大きいとして、大企業も早めに取り組もうとしている。現実には(コンソーシアムチェーンなどパブリックとプライベートの)ハイブリッド型が多いし、私もいきなり大きなビジネスコンソーシアムが100%Ethereumでやると言ったら現時点では勧めないと思うが、インターネットの爆発的普及を見てきた事業者なら、誰しも長期的にはパブリックチェーンを取り入れたいと考えるのではないだろうか」(宮口氏)

石井氏は「日本が独自システムでやってこられたのは、企業買収・売却や人が辞めることが少なかったから。開発した人がそのままメンテナンスできてきたので、仕組みとして信頼性が維持されることへの価値にピンと来ていなかったのだろう」と述べ、「今後の人口減少や海外人材の活用、転職者の入れ替わりなどは避けられない。(運用でカバーするだけでなく)仕組みとして安定していることや信頼性は必要になってくる。使う技術やツールも個人に依存しない形にしなければならない」と標準化されたテクノロジーを重視する理由を語る。同時に「ほかの事業者といかに連携するかについても、考えざるを得ないだろう」とも話している。

ワーキンググループ最初のテーマはマイナンバー活用

石井氏は、ETH Terakoya展開に当たって「クーガーとしてのメリットは、あまり考えていない」と話している。

「クーガーでは、もともとAIの信頼性を生み出す手段としてブロックチェーンを使えると考えてきた。このため、ほかの事業者よりは中立的な立場にあると思う。Industry 2.0といわれる流れの中で、今後さまざまなものが自動化していくということが起きていくだろう。コロナ禍でも明確になったが、情報源の信頼性や、その情報を使って自動化したものが信用できるかといった考え方はより加速するだろう。クーガーでは、ブロックチェーンとAIの両方が分かっているチームも抱えており、中立性とあわせて、コミュニティに貢献できるのではないかと考えている」(石井氏)

石黒氏も「クーガーがハブとなってコア開発者による支援やレビューを受け、メインネット、パブリックチェーンを目標に、長期的目線でブロックチェーン活性化につながる活動をETH Terakoyaでは行っていきたい」と述べている。

ワーキンググループが最初にテーマとするのは、ブロックチェーンによるマイナンバー活用だ。「コロナの影響もあり、情報の信頼性や個人が行った行動を証明すること、複製防止などの文脈を考えると、マイナンバーのID特定やブロックチェーンでそれを生かす具体的な課題解決といったテーマも出てきている」と石井氏はいう。

「まず技術的にどう解決するのかを議論した上で、ビジネスにマイナンバーを生かしたときにインパクトがどれくらいあり、何が解決できるのか、今は気づかれていない価値を探る。それらとセットで、技術的に解決できても法律が追いついていないという部分を洗い出し、解決の道筋を考えていく」(石井氏)

ETH Terakoyaのコミュニティ運営を担当する、クーガー プロダクトマーケティングディレクターの田中滋之氏は「新型コロナ感染拡大で話題となっている例では、健康保険証とマイナンバーの関連付けといったものがある」とテーマに関連したトピックを挙げる。

「シンガポールなどの例でも、国は感染者を特定したいはずで、今後日本でも同じ議論が出てくる可能性があるが、一方でプライバシーの問題がある。マイナンバーを活用するときにプライバシーをどうコントロールするのか、これをブロックチェーンを活用することで『いかに個人を特定せず、IDをオープンに活用することができるか』といった、面白い議論ができるのではないかと考えている」(田中氏)

石井氏も「秘匿化と行為の証明を両立することは、これまでは矛盾するものと考えられてきたが、ブロックチェーンを使うことによって両立できる可能性がある。ここを深掘りしたい」と述べている。

また石黒氏は「テーマに関連することでは、ほかにも給付金申請の仕組みなど『どこが問題か分からない』のが問題となっているものがある。ワーキンググループ内の議論でこうした課題も洗い出せるのではないかと考えている。マイナンバーは日本特有のものだが、マイナンバーだけでなく、他の国や似たようなシステムでも使えるよう、議論を続けたい」と話している。

ブロックチェーンやCO2排出削減量表示システムを活用した再エネ100%電力小売サービス「EARTH ENERGY」がスタート

リフューチャーズは5月21日、再生可能エネルギー100%を使え、故郷を選んで地産地消を実現する電力小売サービス「EARTH ENERGY」(アースエナジー)のサービスを開始した。温暖化・気候変動の問題の解決に取り組みたい、法人・行政・自治体向け家庭向けのサービスが用意されている

既存電力会社からの切り替えはネットで数分で完了し、初期費用は0円で1カ月の電気代は従来(既存契約会社)ほとんど変わらない。現在の対象知識は、東京電力(東京電力エナジーパートナー)の営業エリアである、東京都、千葉県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、神奈川県、静岡県、山梨県。今後は、東北電力、中部電力(中部電力ミライズ)への販売エリアを拡大する予定だ。

同社は、世界では二酸化炭素が年間約340億トン、日本は世界5位の年間約12億トンの量が排出されており、これらの温室効果ガスの排出が台風などの異常気象の原因の1つとなっていることを問題視。今後も深刻化が予測される中で、CO2排出量ゼロの再生可能エネルギーの普及を目指す。法人向けサービスとなるが、都心だけでなく地方での地産地消を実現する電気を提供できるのも特徴だ。具体的には、ブロックチェーン(イーサリアム)を活用した非改竄性の高い独自のトレーサビリティシステムを用いて、希望する発電所の地域を選ぶことで「地産地消」を実現して地方創生に貢献するとしている。

こちらも法人向けだが、自社開発「GREEN PLATFORM」で電力使用量、電源、地域、CO2排出削減量などを参照できるサービスを利用できる。電力料金が高い月や時間帯を予測した省エネ通知、最新の環境サービスなどと連携する。また同社は今後、ブロックチェーンや機械学習などを活用して、環境と社会面を重視した電力小売の追加機能の実装を目指すとのこと。
リフューチャーズは、2019年10月設立のクリーン電力の小売サービス事業、小売プラットフォームSaaS事業を手掛けるスタートアップ。株主には、独立系VCのインキュベイトファンドが加わっている。

ブロックチェーン事業者向けサービスを提供するGincoがDBJキャピタルから資金調達

写真左:Ginco代表取締役 森川夢佑斗氏

ブロックチェーン技術による事業者向けサービスや暗号通貨ウォレットを提供するGincoは4月8日、DBJキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、資金調達を実施したことを明らかにした。金額は非公開だが、関係者によれば「億単位」の調達とのこと。今回の調達はプレシリーズAラウンドに当たり、2018年1月発表の1.5億円の資金調達に続くものとなる。

ブロックチェーン事業者の規制・セキュリティの課題を埋める

Gincoは2017年12月の設立。創業当初はクライアント型のウォレットアプリ「Ginco」を個人向けに開発・提供しながら、非中央集権の分散型サービスへの入口としての役割を目指していた。Ginco代表取締役の森川夢佑斗氏は「ブロックチェーン技術の社会実装・普及は、仮想通貨から始まるという見立てだった」と個人向けウォレットサービスから事業をスタートした理由を説明する。

個人向けウォレットアプリGinco

「この見立ては正しかった」と森川氏。ただ、ブロックチェーンの主軸がパブリックチェーンといわれるオープンなものから、エンタープライズユースへと移り、急激に伸びていく中で、「法人向けのシステム提供へと大きく事業の舵を切った」と語る。現在Gincoでは、暗号資産やセキュリティトークンの業務用管理システムを提供してブロックチェーン技術を活用したサービスを開発・提供する事業者を支援する、法人向けのサービスを主力事業としている。

個人向けウォレット開発を通して、ブロックチェーンサービスを提供するためのシステム基盤を構築してきたGincoでは2019年1月末より、ブロックチェーンの鍵管理やAPI、ノードなどの技術をモジュール化。他のサービス開発事業者でも利用できるようにした。

2019年2月には、仮想通貨取引所向けの暗号資産管理システム「Ginco Enterprise Wallet」の提供を開始。ブロックチェーンノードの導入・運用サービスや業務用ウォレット、事業者独自のユーザー用ウォレットの開発など、仮想通貨取引所を運営する事業者がサービスづくりに集中できるよう支援を行う。

また同月、日本マイクロソフトとの提携により、ブロックチェーンサービス事業者向けのクラウド型ブロックチェーン環境「Ginco Nodes(ギンコ ノーズ)」の共同開発も開始しており、インフラとしてのノード提供にも取り組んでいる。

他業種に比べて大きくブロックチェーン活用が進んでいるのは、仮想通貨取引所をはじめとする金融領域の事業者だ。「日本ではこの1年ほど、特に『規制』と『セキュリティ』が、金融領域でブロックチェーンサービスが社会に受け入れられるための課題としてあった。事業者の課題とのギャップを埋めるソリューションとして、我々はいろいろなプロダクトを提供するようになった」(森川氏)

革新的サービスと規制・セキュリティ対応は両取りできる

2019年6月に公布された改正資金決済法では、交換業者のユーザーの資産保護に加えて、暗号資産の管理のみを行うカストディ業務についても規制が強化された。森川氏は「規制強化により、システム面のほか、オペレーションのスタッフやエンジニア増といった体制面でも、事業者は対応を迫られ、ビジネス規模とは別の部分でコストが大きくかかるという問題に直面している。スタートアップなどの小規模なところでは撤退する事業者も現れているが、私たちは(革新的なサービスと規制・セキュリティへの対応は)両取りできると考えている」と述べている。

「でなければ、テクノロジーの発展の意味はない。ブロックチェーンはそもそも、安全性や信用をこれまでより安価で効率よく構築できる技術として現れたもので、我々もそこに期待してこの領域で取り組んでいる。イノベーションと安全・安心の両取りができるようなソリューションを事業者へしっかり提供していくことで、真にブロックチェーンの技術的な価値を社会に適用させたい」(森川氏)

森川氏は「元々は、仮想通貨のウォレットで秘密鍵を個人が持ち、非集権的な個人主導の経済・金融の実現を描いていた部分もある」としながら、直近の事業展開については「実際に社会適用の観点で見ると、仮想通貨、特にビットコインについては2018年ごろから規制がきちんとでき、そこから取引高が日本でも大きく伸びた経緯がある。規制準拠とマーケット拡大とは、なかなか切っても切り離せないところがある。となると、事業者を通じてブロックチェーンが利用されるケースが多いということになる」と述べている。

また「一般向けでブロックチェーンを使った新しい顧客体験を生み出すようなサービスが登場するには、まだ数年かかるのではないか」という森川氏。まずは法人向けソリューション提供にフォーカスするとして、次のように語った。

「ブロックチェーンのエンタープライズユースは増えているが、ほとんどは業務改善・業務効率化といった文脈で活用されているケースが多い。金融業でいえば、発行社債の効率化や不動産登記への活用などが日本では進んでいるところ。また海外では医療系で電子カルテへの活用といったユースケースが増えており、適用されるユースケースはある程度、決まってきている。その中でまずは、我々が培ってきた技術を適用して、ソリューションとして提供していく。実際に進む領域に合わせて、事業者にブロックチェーンを使ったしっかりしたソリューション、社会適用できる、ギャップを埋められるソリューションを提供していきたい」(森川氏)

暗号通貨を担保にステーブルコインを融資するサービス

暗号通貨をたくさん持っているが、市場で売りたくはないときはどうすればいいか?Blockchain(ブロックチェーン)という会社が方法を見つけたと言っている。同社のウォレット(Blockchain Wallet)の中にある暗号通貨の額に応じて融資を受けられる仕組みだ。

ウォレット内の暗号通貨をロックするとすぐにUSD PAX(パクソス)を受け取れる。USD PAXは米ドルに連動したステーブルコイン(価値の安定した暗号通貨)だ。あとはそのステーブルコインを自由に換金するなり送金するなりできる。借金はいつでも返済できる。

融資の最小単位は1000ドルで、同社は200%の担保率を要求する。つまり、5000ドル借りたければ、1万ドル相当の暗号通貨を担保として提出しなければならない。

Blockchain社は融資に対して利息を取る。利率は変動制だが、融資を受ける前に利息がわかるようにする予定だ。通常同社は、差し出した担保から利息を徴収する。暗号通貨の価値には注意が必要だ。なぜなら米ドルの借金がまだ残っているのに、担保の価値が大幅に下がっていることもあるからだ。

舞台裏で同社は機関投資家向けに融資業務を行っている。同社は昨年8月にこの新しいシステムをスタートした。同社は一般投資家を活用した強力な換金システムを構築できたと考えている。

米国、カナダ、および英国のユーザーは現時点で同機能を利用できない。現在同社は、担保をBTC(ビットコイン)でのみ受け付けている。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images(画像は加工済み)

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ブロックチェーンでゲーム内アイテムを管理するHorizonが5.1億円を調達

オンラインゲームのプレイヤーがゲーム内でアイテムをゲットしたとき、そのアイテムの保有者は誰だろう? プレイヤー? それともゲームを作った会社?

ほとんどの場合、その答えはおそらく後者だろう。アイテムはプレイヤーのデジタル目録に入るだろうが、会社はアイテムを取り上げたり、プレイヤーが売ったり誰かにあげたりするのを阻止したりすることができる。

Horizon Blockchain Gamesは、まず自社のタイトルから、ゲームにおける所有権の問題に取り組んでいる。これを実現するために、同社は追加で500万ドル(約5億1000万円)を調達した。

Horizonは2つの事業に並行して取り組んでいる。ひとつ目は「Arcadeum」というイーサリアムベースのプラットフォームを構築してゲーム内のアイテムを扱うことだ。アイテムのインスタンスを取得したら、そのアイテムを実証できるかたちでプレイヤー間で交換、販売、贈与できるようにする。プレイヤーが所有したアイテムはそのプレイヤーのもので、使用、交換、販売をすることができる。Horizonが取り上げることはできない。ゆくゆくはこのプラットフォームをほかのデベロッパーが利用できるように公開する計画だ。

もうひとつは、自社でのゲーム開発だ。「SkyWeaver」というデジタルトレーディングカードゲームは、同社を成長させるものであるのと同時にプラットフォームの見本でもある。

SkyWeaverはファンタジー系のトレーディングカードゲームで、Blizzardの「Hearthstone」に似ているといえばわかりやすいだろう。Windows、macOS、Linux、iOS、Android版があり、無料でプレイできる。

SkyWeaverのプレイヤーは購入、取得、交換で得たカードでバトルをする。現在は約500種類のカードがあり、それぞれのカードに「銀」と「金」がある。

ゲーム内のカードはすべて、基本の「銀」を2ドル(約205円)で購入できる。同社によれば、数ドルあれば誰もが最も強いと思われるカードを獲得できるようにしており、フィールドを公平にしているという。一方、「金」カードは、見た目だけが違うもので能力や使い勝手に変わりはないが、戦って手に入れるか、オープンなマーケットでほかのプレイヤーから購入する必要がある。「銀」のカードは常に2ドル(約205円)で買えるが、「金」カードの価値はレア度や需要によって激しく変化する。

SkyWeaverのカードは、ブロックチェーンを利用したプレイヤーのArcadeumウォレットに保管される。ただしシンプルにするために、ブロックチェーンの複雑な部分は表面的には見えない。プレイヤーが自分で扱いたいと思えば、カードをイーサリアムベースの別のウォレットに送ることができる。

SkyWeaverは2019年7月ごろからプライベートベータが運用されている。HorizonのチーフアーキテクトのPeter Kieltyka(ピーター・キルティカ)氏はTechCrunchに対して、このゲームのプレイヤーは現在1万2000人ほどで、ウェイトリストには9万2000人が登録されていると語った。

Horizonは2019年のシードラウンドで375万ドル(約3億8000万円)を調達した。同社は今回の調達を、最初のラウンドの拡張と位置づけている。今回のラウンドは前回も投資したInitialized Capitalが主導し、Golden Ventures、DCG、Polychain、CMT Digital、Regah Ventures、ConsenSysも支援した。

Horizonは、SkyWeaverのパブリックベータを2020年後半に公開する予定だとしている。

[原文へ]

(翻訳:Kaori Koyama)

暗号通貨ウォレットのZenGoが貯蓄口座機能の提供を開始

ZenGoが暗号通貨資産を保持したり、送受信したりといったウォレットの基本的な機能を超えたサービスを提供する。利子を稼ぐために、暗号通貨資産を分けて保持できる。言い換えれば、ZenGoは貯蓄口座としても機能するようになった。

同社はこの新機能のために2つのDeFiプロジェクトと提携した。DeFiは「decentralized finance(分散ファイナンス)」を意味し、暗号通貨業界では今話題のものだ。DeFiプロジェクトは従来の金融商品と同じブロックチェーンで、たとえばお金の貸し借りができたり、デリバティブに投資したりといったことができる。

話をZenGoに戻そう。ZenGoのウォレットに暗号通貨資産を保有しているとき、ユーザーは貯蓄タブを開いてDaiのような資産を選び、保有する資産の何%を分けて保有するかを決める。

その後は、ただ待つだけだ。貯蓄“口座”の概要はいつでも見ることができる。そして稼いだ利子の総額もチェックできる。利子は自動的に再投資される。そしてユーザーはいつでも好きな時にDeFiプロジェクトのお金をウォレットに動かすことができる。

このサービスを提供するのにZenGoはCompound(複利計算)プロトコルを使っている。LendingClub(編集部注:P2Pの貸出プラットフォーム)のような仕組みだが、ブロックチェーンで提供する。流動性プールを確保するためにCompoundに送金するユーザーもいれば、プールからお金を借りるユーザーもいる。

利子率は需要と供給に基づいて変動する。だからこそ、CompoundにDAIやUSD コインを入れると現在より多くの利子がつく。

ZenGoはTezosをサポートするためにFigmentを使う。今回は貸出マーケットプレイスではない。ステーキングプロジェクトに金があれば、それは特定のブロックチェーンのオペレーションをサポートすることを意味する。プルーフ・オブ・ステークに基づく必要があるために、わずかなブロックチェーンがステーキングをサポートする。

エンドユーザーにとっては、CompoundやFigmentに頼っているときはいつでも貯蓄口座のように映る。Coinbase WalletArgentのように、DeFiプロジェクトアクセスできる別のウォレットアプリもある。しかしそれらは普通のユーザーにとっては複雑すぎるとZenGoは考えている。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

韓国が世界に先駆けて包括的暗号通貨法案を可決

米国時間3月5日、韓国国会は暗号通貨および暗号化取引の規制と法制化の骨格を決める新法案を可決した。

新型コロナウィルスの状況が悪化する中で召集された特別議会で、同国の金融サービス法修正案が満場一致で可決された。これで韓国の金融当局は、この新興分野を事実上監視し、反マネーロンダリング関連の規則制定が可能になる。

韓国は過去数年、暗号通貨のにわか景気と不景気の中心にあり、暗号化技術を大規模に取り入れている少数の国々のひとつだ。暗号通貨ブームのピークだった2017年に行われた調査によると、韓国労働人口の駅前にあるパーティションで区切られいない路上喫煙所の移転、時期未定の延期になった。毎朝大量の紫煙をくぐり抜けて駅にたどり着く通勤から解放されると思ったのに残念。3分の1以上がBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)などの暗号通貨に積極的に投資していた。同国最大の都市であるソウルでは政府が狂乱の時代精神を取り込むべく設計した独自の暗号通貨S-Coin(エスコイン)を導入する取組みが始まった。

その間韓国政府はブロックチェーンの普及を取り締まる新たな規則をすばやく制定し、その結果投資家が市場の反応を見守るなか、Bitcoinの価格は大きく乱高下した。

わずか数年後の現在の議決は、規制当局の動きとしては比較的早く、ブロックチェーン、具体的には暗号通貨の導入が国内外の金融サービスで進んでいることを示している。韓国最大級のテクノロジー企業であるKakao(カカオ)は今もブロックチェーンへの取組みに力を入れており、地域のエコシステムも業界のイノベーションへの順応性は比較的高い。

暗号通貨法案の成立は、韓国スタートアップエコシステムにとっては大歓迎だが、他の業界については未だに大きな課題だ。

今日最も注目されたのが、現地のライドシェアリング・スタートアップで規制下にある伝統的タクシー業界と競合しているTada(타다、タダ)の運命だ。2018年末に開業した同社は、規制当局による中止命令の脅威に直面してきたが、数週間前に最高憲法裁判所が営業を認可したことで危機を免れた。

しかし、暗号通貨法案が可決された同じ特別議会で、Tadaを事実上禁止し政府の営業許可を必須とする法案が承認された。今後数週間のTadaの動きが注目される。

暗号通貨法案の可決後、ムン・ジェイン大統領が署名すると、数カ月にわたる法制化手続きが始まり、その間に既存のスタートアップや交換所は法の新しい規制方法に対応することになる。

韓国の議会選挙をわずか数週間後の4月15日に控え、地元新聞の見出しを新型コロナウィルス関連の話題が独占する中、テック関連法案に対する賛否は、候補者が自らの立場を表明する手段のひとつとなっている。

画像クレジット:Republic of Korea/ Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

インド最高裁が中央銀行による暗号通貨取引の禁止命令を覆す判決

インドの最高裁判所は4日、中央銀行が2年前に出した暗号通貨取引の禁止命令をひっくり返す判決を下した。多くの人が判決を「歴史的」と受け止めている。

インド準備銀行(RBI)は2018年4月に暗号通貨の取引禁止を命令した。銀行や他の金融機関が“バーチャル通貨に関連するあらゆるサービス”を行うことを禁止するというものだ。

当時、RBIはインドの金融システムを”囲って守る”ために必要な措置と述べた。また、Bitcoinや他の暗号通貨は金属でつくられておらず、また物理的に存在せず、政府によってスタンプも押されていないため、通貨として扱うことはできない、とも主張した。

中央銀行の2018年の通達は、暗号通貨取引サービスを提供するいくつかのインドのスタートアップや企業をパニックに陥れた。そしてそれらのほとんどが店じまいした。

今日の判決では、裁判長のRohinton F. Nariman(ロヒントン F. ナリマン)氏は中央銀行の通達は不適切として無効にした。

インターネット・モバイル協会といった取引団体を含む原告グループは、暗号通貨取引を許可しているだけでなく、独自のバーチャル通貨を立ち上げようとしている多くの国にインドは目を向けるべきだ、などと主張して中央銀行の通達に異議を申し立てた。

テック投資家のNitin Sharma(二ティーン・シャーマ)氏は、最高裁の判決は“歴史に残るもの”であり、この問題にようやく決着をつけることができた、と話した。

「インドの暗号通貨にとって歴史的な日だ。これでインドはブロックチェーン革命に参加できる」とBitcoin取引プラットフォームWazirXの創業者でCEOのNischal Shetty(二シャル・シェティ)氏は述べた。

画像クレジットAvishek Das / SOPA Images / LightRocket / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

デジタル裁判所の構築を目指すAragonが1億円超を調達

暗号通過とブロックチェーンの薄暗闇の世界では、昔ながらの法廷に論争を持ち込むと、原告と被告の両方が牢屋に入れられるか、法廷が混乱して思考停止状態に陥るかのどちらかに終わる。こんな感じだ。

「DAOとは何ですか?」
「分散型自律組織です、裁判長」
「人間の言葉でお願いします!」

また、ブロックチェーン固有の「コミュニティー」も似たような調子で、旧来型の法廷での紛争を収める役には立たない。しかし、資本主義は法律の上に成り立っている。そのため、こうしたことがインターネットで事業を行おうという気持ちを抑えてしまう。なんと皮肉なことか。

数年前、Aragon(アラゴン)というプロジェクトが立ち上がった。Aragonは、数千人規模のユーザーを対象とするものから、数名規模のシンプルなものまで、幅広いストラクチャーに対応する分散型自律組織(DOA)の構築のためのフレームワークとツールを提供してきた。これは「法廷システム」とも呼ばれ、「人間の陪審員の判断を必要とする主観的な紛争」に対応できるとものだと彼らは話している。いい話なのだが、そこには高い見識を持つ本物の投資家が必要だ。

彼らは米国時間2月19日、Tesla(テスラ)、SpaceX、Coinbase、Baidu(バイドゥ)などを以前に支援し、数年前は暗号通貨に多額の投資を行った大富豪ベンチャー投資家であるTim Draper(ティム・ドレイパー)氏から少額の支援を受けたと発表した。

Draper Associates(ドレイパー・アソシエーツ)は、AragonネットワークのANTトークンを実際の100万ドル(約1億1000万円)で購入する。ハイテク分野での「普通」の投資額からすると規模は小さいが、いまだ発生段階にあるブロックチェーンの世界ではかなりの額だ。ニューヨークを拠点とするPlaceholderとCoinFund、そしてシリコンバレーを拠点とするBoostVCといった支援者の中に、ドレイパー氏が最後に加わった。

ドレイパー氏は暗号通貨の強力な支持者だ。2014年にSilk Roadから押収された資産の政府主催のオークションで、3万ビットコイン近くを購入している。それにより、彼はさらに金持ちとなり、ブロックチェーン界の比較的切れる予測家にもなった。

起業家のLuis Cuende(ルイス・スエンド)氏とJorge Izquierdo(ホーヘイ・イスクエアド)氏が設立したAragonは、彼らが呼ぶところの世界初の「デジタル管轄区域」を設定し、デジタル組織の管理のためのツールと、インターネットでの紛争解決サービスを提供することを目指している。

2018年末の設立から現在までに、そのプラットフォーム上には1000件を超える組織が作られている。単にデータベースに企業を登録するのとは違い、ここには法的な争いが生じたときのために信頼できる第三者が存在する。

Aragonのトークン「ANT」は、ネットワークの管理運営に利用される。このネットワークの紛争解決サービスAragon Court(アラゴン裁判所)は、プラットフォーム上に247名の実際の人間の陪審員がいて、その数は増え続けている。彼らは独立した存在とされている。Aragon裁判所は2月10日に業務を開始した。「毎日新しい管轄区域を作ることなど不可能です。Aragonによって、この世界の統治は一変します」とドレイパー氏は声明の中で述べている。

ドレイパー氏は、行政改革の推進者としてもよく知られている。カリフォルニアを6つの州に分割しようというSix Californias運動を立ち上げたり、エストニアのeResidency(電子国民)プログラムに参加するなどしている。さらにティム・ドレイパー氏は、Aragonの諮問委員会に加わり、同プロジェクトを継続的に支援することになっている。ANTを持っている人なら、Aragon裁判所に参加できる。運用開始までに、すでに100万ANT以上が積み立てられた。

「Aragonは、インターネットの事実上の標準管轄区域になることを目指しています。その屋台骨になるのがAragon裁判所です。私たちは、ティムと仕事ができることを大変に嬉しく感じています。新しい管轄区域を作るとき相談すべき人物と言えば、ティムです」とスエンド氏は言う。彼が以前にビットコイン業界で立ち上げたスタートアップも、ドレイパー氏が支援している。

Aragonはまた、イーサリアムに問題が発生したことを受けて構築したAragon専用のブロックチェーン、Aragon Chain(アラゴン・チェーン)も発表している。

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

 

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

グルメSNS「シンクロライフ」が「giftee」と連携、貯めた暗号通貨でeギフト購入が可能に

ユーザーレビュー投稿や加盟店利用で暗号通貨が貯まる、グルメSNS「シンクロライフ」を運営するGINKANは2月18日、ギフティが提供する「giftee for Business」と連携したことを発表。連携により、シンクロライフのアプリ内で貯めた暗号通貨「シンクロコイン(SYC)」で、コンビニやマッサージなど、7ブランド・24商品のeギフト購入が可能になった。また対象ブランドの実店舗でアプリ内のチケットを示して、eギフトを利用することもできるようになっている。

シンクロライフはグルメSNSとして、レストランの口コミ投稿・閲覧機能のほか、AIが口コミを分析してユーザーの嗜好に合ったレストランをレコメンドする機能を備える。シンクロライフでシンクロコインを集めるには、「1. レビュー投稿やレストラン情報作成などによる、SNSへの貢献」「2. 加盟店で支払った飲食代金からの還元(1〜5%、キャンペーン時最大20%)」といった方法がある。現在の加盟店は首都圏を中心に200店舗超。2020年内に3000店舗に拡大する予定だという。

これまでは、ユーザーは集めたシンクロコインの使いどころがなかったのだが、今回の連携で「サーティワン アイスクリーム」「上島珈琲店」など、下の画像にある7つのブランドでeギフトの購入が可能になった。

eギフトは自分で商品交換して利用することもできるが、人にプレゼントもできる。取扱商品は「giftee for Business」のラインアップから、および新規開拓により順次ブランドを追加していく予定だという。

なお、ギフト購入に必要なシンクロコインは、市場取引レートによって一定期間ごとに変動する。ユーザーは従来通り、アプリ内のウォレットにシンクロコインを貯めたまま、価値変動を待つこともできる。GINKANでは今後、ほかにもシンクロコインが利用できる範囲を広げていくもくろみだ。

大量のトランザクションをブロックチェーンで一元管理するClearが約14億円を調達

Clearは野心的なアーリーステージのスタートアップだ。同社は、通信企業間の決済など大量のトランザクションを処理するためのブロックチェーンを構築しようとしている。米国時間2月5日、シリーズAで1300万ドル(約14億円)を調達した。

このラウンドはEight Roadsがリードし、Telefónica Innovation VenturesとDeutsche TelekomのTelekom Innovation Pool、HKT、そしてSingtel Innov8が参加した。

今回のラウンドに参加した投資家が通信企業であることは偶然ではない。Clearのブロックチェーンによるトランザクションネットワークの初期のユースケースは、世界中の通信企業間の決済の移転だ。今それは、手作業のエラーになりがちなやり方で行われている。

Clearの共同創業者であるGal Hochberg(ガル・ホッホバーグ)氏によると、同社のミッションはこれまでのビジネスの各種契約をデジタルに置き換えること。これは、デジタル台帳の用語ではスマートコントラクトと呼ばれている。

同氏は「Clearが実現するのは、ビジネスパートナと信頼できる状態を作ることだ。なぜなら彼ら全員が、料金もユーザーの利用状況も同じもの、同じ情報を見るからだ。Clearを導入すれば、彼らはどんな問題でもリアルタイムで見つけられる。商用の情報でもサービスのデリバリーでも、それらの問題をClearのプラットホームの中で実際に解決できる」と語る。

複数の国境にまたがる大量のトランザクションをブロックチェーンで処理すると、そのスマートコントラクトは規約の自動的な執行者となり、月末まで待たされてエラーが見つかり解決プロセスを開始するといった非効率さがなくなる。問題の発見と解決がリアルタイムで行われるからだ。決済までの時間が短縮され、対立の解決もスピードアップする。

同氏は「ブロックチェーンを使えば、そういう対話的な操作を監査可能で、暗号化により安全、そして当事者たちが同期して全員同じ情報を見ている状態で進められる」と説明する。

繰り返すと、同社は世界中の通信企業の膨大な量のトランザクションを支えている。その国境横断性は良いテストケースだ。しかしホッホバーグ氏によると、それはスタート地点にすぎないという。まだ完全に完成した姿ではないが、何億件もの課金を伴うイベントを処理できることは実証された。

今回の資金により同社は、今年の前半にはキャリアクラスのプロダクションを完成させたい。また、これだけ資金があれば、通信以外の分野にも進出できるだろう。

関連記事:Kadena fulfills hybrid blockchain vision with launch of public chain(パブリックチェーンでハイブリッドブロックチェーンを目指すKadena。未訳)

画像クレジット: Clear

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

オープンソースの分散型台帳「Hyperledger Fabric」がリリース2.0に

Hyperledger Foundationは米国時間1月30日、オープンソースの分散型台帳技術(Distributed Ledger Technology)であるHyperledger Fabric 2.0の公開したことを発表した。初のオープンソースによる試みが2.0リリースに到達した。

これは記念すべき出来事だ。ビジネスツールとしてのブロックチェーンは過去数年苦難の道を歩んできたが、コンプライアンスの自動チェック機構を内包するスマートコントラクトには大きな期待が寄せられている。Hyperledger Fabric 2.0にはそうした点を考慮した新機能が数多く盛り込まれている。

最大の変更点は、台帳に新たなデータを追加する前に関係者全員の合意を必須とする、スマートコントラクトの分散ガバナンスと呼ばれるしくみを導入したことだ。具体的には、トランザクションに関わる全員の合意がなければ、システムが誰にも台帳に書き込みを許さないというもので、ブロックチェーンの基本的信条の一つだ。

これが必要なのは、分散型台帳の特徴は良くも悪くも記録の変更ができないことにあるためだ。ひとたび何かが台帳に書き込まれると、その取引きに関与した全員の合意がなければ変更することが極めて困難になる。台帳に何かを記録するときは間違いがないことを確実にする必要がある。

その目的で、デベロッパーは自動的にチェックするしくみをつくることができる。そうすることで、関係者は「トランザクション申請を承認する前に、別の情報を検証する」ことが可能になる、と開発者は言う。

Hyperledgerのエグゼクティブディレクターでオープンソース分散型台帳技術の熱烈な支持者であるBrian Behlendorf(ブライアン・ベーレンドルフ)氏は、これはプロジェクトにとっても分散型台帳技術の普及を担う同組織にとって大きな節目であると語った。

「Fabric 2.0は新しい世代のフレームワークであり、分散型台帳の能力を事業の中心に据えようという各企業が自分たちのために開発したものだ。この新しいリリースは、Fabricコミュニティーの開発、展開いずれの体験にも反映され、エンタープライズ向けブロックチェーンの普及期到来を告げるものだ」とBehlendorf氏が声明で語った。

それはこれからわかるだろう。ビジネス界でのブロックチェーン普及はスローペースで動いてきたが、このリリースは、オープンソースコミュニティーがエンタープライズ水準の分散型台帳技術の開発に意欲を持ち続けていることを示している。本日の発表はその新たな一歩といえる。

画像:Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

イーサリアムの従業員が北朝鮮の制裁逃れに協力したとして逮捕

米国時間11月29日、ニューヨーク州南部地区検事局は、イーサリアム財団の職員であるVirgil Griffithバージル・グリフィス)氏が逮捕されたことを発表した。北朝鮮に出向き「平壌ブロックチェーンおよび暗号通貨会議」でプレゼンテーションしたことで、謀議を企てたという嫌疑がかけられている。

具体的には、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)に対し、米国財務省の対外資産管理局からの承認を得ることなく、労務を提供したとされている。訴状によれば、グリフィス氏は事前に米国国務省に連絡を取ったものの、北朝鮮に対する経済制裁のため許可は得られなかった。それでもグリフィス氏は中国経由で北朝鮮に入国した。さらにグリフィス氏は「制裁の回避と資金洗浄のための暗号通貨技術」について議論したとされている。

FBIの特別捜査官は、2019年5月にグリフィス氏と面談した。これは任意の事情聴取であり、同氏の「ブロックチェーンと平和」というタイトルのプレゼンテーションについて捜査官と話をした。彼は訪朝時の写真を見せて、来年もまた同じ会議に参加したいと述べたという。

またグリフィス氏は、メッセージングアプリを使って、他の人ともプレゼンテーションについて話し合っている。「A氏は、要約すると、北朝鮮は暗号通貨についてどのような関心を持っているのか、と尋ねた。それに対してグリフィス氏は、要約すると『恐らくは制裁を回避するためだろうが、知ったこっちゃない』と答えた」と訴状は記している。

イーサリアムの創立者であるVitalik Buterin(ビタリック・ブテリン)氏は、グリフィス氏の逮捕についていくつかツイートしている。「私は、北朝鮮が悪事を働くのを、バージルが実質的に手助けしたとは思っていません。彼は『オープンソースソフトウェアに関して公開情報に基づいてプレゼンテーションした』だけなのです。ハッキングのための『高度な個別指導』をしたというようなことはありません」と書いている。

またブテリン氏は、イーサリアム財団は、グリフィス氏が北朝鮮に出向いたことと何の関係もないと主張している。「イーサリアム財団は金を出してもいないし、何の支援もしていません。みんなが止めたのに、バージルは個人として行ったのです」とブテリン氏は書いている。

米国時間12月3日、裁判官はこの裁判を進めるための十分な証拠がそろっていると裁定した。グリフィス氏は仮釈放される予定だ。

原文へ

(翻訳:Fumihiko Shibata)

最近、暗号通貨疲れを感じる

暗号通貨に奇妙な事態が起きている。サトシ氏がBitcoin(ビットコイン)という福音を我々に授けて以後、この奇妙かつ刺激的な分野が、なんと言ったらいいかある種の懸念を抱かせるものになってきた。

もちろん暗号通貨の真の擁護者は「暗号通貨は大股で前進を続けている。メインストリームになるのは目前だ」と言うだろう。こういう主張はずいぶん前から繰り返されているので、そろそろ「本当にオオカミは来るのか」という疑問を抱いてもいい頃だと思う。

いや、落ち着いていただきたい。中国では習近平主席、米国ではFacebookのCEOがともにブロックチェーンの信奉者になったときにこんなことを言い出すのはタイミングがまずいかもしれない。

しかしもう少し詳しく観察してみれば、中国の暗号通貨は(もし実現するなら)国民を監視するパノプティコン(全展望監視システム)を目指していることがわかる。本来、暗号通貨というエコシステムは国家権力による追跡が難しいので、権力の分散化を図れる。中国が目指す暗号通貨システムは、共産党による中央集権的支配をさらに強化するツールにしようとするもので本来の目的とは正反対だ。

一方、FacebookのLibraはテクノロジー面では順調に進歩を続けている一方、有力パートナー多数を失い、敵は増えている。

暗号通貨コミュニティはDeFi、つまり非中央集権的金融(Decentralized Finance)というコンセプトに興奮している。簡単にいえば、暗号通貨を単に検閲に強い通貨から検閲に強い金融システムへと発展させようというものだ。例えばら分散的なピア・ツー・ピア・ローン、デリバティブやオプションでない実態のある投資やステーキングなどが挙げられる。

ステーキングは暗号通貨をロックすることにより発生した手数料の分配を受けることで、正確にいえばDeFiではないが、その一種とみなされることが多い。暗号通貨の世界ではこうしたDeFiが金融革命の主役となりいつかウォールストリートに取って代わるだろうと期待されている。しかし暗号通貨の外の世界では「針の頭で何人の天使が踊れるか」というスコラ哲学の議論のように思われている。つまり修道院の外では誰もそんな議論は気に留めていない。

さらに外の世界では暗号通貨コミュニティは金融工学のために本来のエンジニアリングを犠牲にしたという印象を受けている。「口座を持てない人々に金融サービスを」という当初の称賛すべき目的が忘れられ、「口座を持てない人々」とはそもそも無縁な「高度のテクノロジーを利用した金融サービス」が発明されている、というわけだ。残念ながらこういう見方が完全に見当外れだとは言い切れない。

もちろん本来のエンジニアリングにおいても進歩は見られる。ただしスピードは遅く、ほとんどの場合、外に出てこない。その代わりDeFiの世界では野次馬とソシオパスばかりが目につくことになる。

目に見える進歩もなくはない。ZCashは本来の暗号通貨テクノロジーのインフラでブレークスルーを達成している。Tezosは暗号通貨ガバナンスのアルゴリズムの改良で成果を挙げている。

アプリでいえば、Vault12にも興味がある。 これは「暗号通貨のパーソナル金庫」で、家族や親しい友だちとで作るネットワークに暗号通貨を保管することでセキュリティリスクに備えようというものだ。暗号通貨をコントロールする鍵を交換所その他のサードパーティにあずけてしまうのは金を銀行に預けるのとさして変わりない。

これに対してVault21ではカギを個人的に信頼できる人々に分散して預け、「シャミアの秘密分散法」と呼ばれるアルゴリズムで回復できるようにしておく。たとえば秘密鍵を10人で分散保有し、そのうちの7つの分散鍵を回収できれば秘密鍵が復元できるという仕組みだ。この方式はしばらく前からVitalik ButerinChristopher Allenなどのビジョナリーが「ソーシャル・リカバリー・システム」と呼んでいる。これがシリコンバレーのスタートアップらしいスマートなデザインのアプリで使えるようになったのは興味深い。

しかし現在進行中なのははるかに根本的な変化だ。これはブロックチェーンを利用したトランザクションを現在とはケタ違いに増やそうとする試みだ。例えば現在、規模として2位の暗号通貨であるEthereum(イーサリアム)はEthereum 2.0になるために完全な変貌を遂げた。Bitcoinはもっと保守的で安定しているものの、エコシステムにはまったく新しいLightning Networkが付加されている。正直、こうした動きに私は懸念を感じる。

【略】

懸念の理由の1つはセキュリティだ。LightningであれPlasmaであれ、ブロックチェーンを大規模にスケールさせようとする試みはブロックチェーンテクノロジーの根本的な部分を改変する。これによってセキュリティは従来の堅固で受動的なもの(ハッシュのチェック、巨大なコンピューティグパワーを必要とする台帳への取引の記錄など)からwatchtowersfraud proofsなどの能動的セキュリティが導入されている。このような変更は攻撃にさらされる側面を大きく増やすものというのが私の受ける印象だ。

これらの課題は解決途上にある。なるほど、暗号通貨バブルについてコミュニティの内側からと世間一般の認識のズレはかつてないほど大きくなっている。その間、
Tetherという黒い影がコミュニティの頭上に垂れ込めている。OK、疑いは状況証拠に過ぎず、そうした薄弱な根拠で高貴な目的を台なしにすべきではないのだろう。しかし状況証拠の数が多すぎる気がしないだろうか?

以前私は「暗号通貨コミュニティには詐欺や不祥事が続発し、怪しげな薬売りが万能薬を売ると称している。しかしこれらは個々のスタートアップには逆風であっても、全体としてみれば暗号通貨コミュニティの弱さでなく、強さから派生したものだと分かるかもしれない」と主張したことがある

しかし、暗号通貨はある時点でコミュニティを出て普通の人が使うようにならねばならない。それができなければ、所詮はカルトのまま消えていくことになる。そのティッピングポイントはいつ起きるのだろうか?というより、それは起きるのだろうか?その答えは、5年前と同様、はっきりと見えない。

原文へ

(翻訳:滑川海彦@Facebook