脳でコントロールするロボットやコンピューターが手術不要で実現する

カーネギーメロン大学とミネソタ大学の共同研究グループが、ブレインコンピュータインタフェース(Brain-Computer Interface、BCI、脳とコンピューターのインタフェイス)およびロボット工学における大きな突破口を開いた。彼らが開発したのは、人間が自分の心でロボットアームをコントロールする方法だ。手術のような侵襲的な手続きは要らない。

この実験のマインドコントロールロボットは、高度な運動制御能力も示した。画面の上で動くコンピューターのカーソルを、追うことができたのだ。これは言うまでもなくロボット工学の分野における大きな前進であり、個別ケースではなく一般的に、コンピューターを脳で制御できる可能性を実証している。それにはありとあらゆる用途がありえるが、麻痺などで運動能力に制約のある人でも、コンピューター化されたデバイスを操作できるようになるだろう。

これまで成功した高精度のBCI技術は、脳の信号をピックアップするインプラントを必要とした。インプラントを埋め込むのは危険であるだけでなく、高価であり、人間への長期的な影響も解明されていない。そのため広く普及することはなく、少数の人たちだけが恩恵に与っていた。

研究グループが開発した画期的な技術では、体内に装着するのではなく皮膚に貼ったセンサーからの低品質な信号を利用する。彼らは皮膚感覚と機械学習を結びつけて、ユーザーからの信号を捉える。その信号の起源は脳の内奥だが、捉えた信号には非侵襲的なテクニックにありがちなノイズがない。

この画期的な発見は、医療現場での実用化に向けてそう遠くないかもしれない。チームは、近く臨床試験を始めたい意向だ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルが睡眠モニター「Beddit」のベータプログラムを米国で開始

アップルBedditのベータプログラムを開始した。アップルはオンラインストア/直営店のApple StoreでBeddit製品をしばらく販売し、その後の2017年にBedditを買収した。ベータプログラムのウェブサイトによると、このプログラムに登録した参加者には、Bedditアプリの新しいバージョンが一般公開に先駆けて提供される。参加者はデータを共有しアンケートに回答することで、アップルにフィードバックを提供することもできる。

ベータプログラムの参加者は、アプリの利用状況、アプリの設定、睡眠の結果に関するデータに加え、診断データも提供する。こうしたデータは個人的な特性であるため、同意書に署名することが必要だ。

アップルは、ベータプログラムへの参加は完全に自発的なものであり、いつでも参加を取りやめることができるとしている。取りやめると、それ以降はデータを収集されない。もし取りやめた後で気が変わったら、ベータプログラムの実施中は再度参加することもできる。

ベータプログラムへの参加にはいくつか条件がある。米国在住であること、Beddit Sleep Monitorモデル3.5を所有していること(145.95ドル、日本のApple Storeでは1万5800円)、22〜75歳であることだ。ベータプログラムに関するメールをアップルから受信することに同意する必要もある。

アップルはiOS 10で時計アプリに「ベッドタイム」機能を追加して以来、睡眠トラッキングに取り組んできた。時計アプリの「ベッドタイム」とは、決まった時刻に就寝するためのリマインダーと、決まった時刻に起床するためのアラームを繰り返し設定する機能だ。よりよい睡眠のために、「おやすみモード」の時間を決める、アプリの使用を時間で制限する、iPhoneから発するブルーライトを減らすためにNight Shiftの時間を決めるといった設定をすることもできる。自然な睡眠パターンの妨げとなるおそれのあることを避けるためだ。

しかしコネクテッドデバイスメーカーのBedditを買収することで、アップルは睡眠トラッキングに大きく一歩前進した。

今後、アップルはベータ参加者から収集したデータをもとにBedditアプリを改良していくと思われる。このアプリのApp Storeでの評価は5点満点中2.0点(日本のApp Storeの本稿翻訳時点のスコア)で、レビューではデザインや動作に対する不満が見られるので、今後に注目だ。

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(翻訳:Kaori Koyama)

インスタリムが3Dプリント義足事業をフィリピンで開始、総額8400万円の調達も

インスタリムは、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)およびディープコアへの第三者割当増資により、総額8400万円の資金調達を実施したことを発表した。今回の資金調達により、フィリピンのマニラ首都圏で設立した現地法人を通じ、3Dプリントによる膝下義足事業を本格開始する。また、3Dプリントによる大腿義足などの新製品の研究開発も進めるという。

3Dプリント義足「Instalimb」

インスタリムは、義肢装具の製作に最適化された3Dプリンタや独自のアルゴリズムによる形状レコメンド機能などを備えた3Dモデリングソフトなどを活用して、義肢装具の低コスト・短期間での量産を可能にするソリューションを開発している、2015年12月設立のスタートアップ。

同社のソリューションにより、従来の約10分の1となるコストダウンや納期短縮を実現できるという。大幅なコストダウンによって、新興国や開発途上国を含む多くのユーザーに義足を提供することが可能となる。なお、アルゴリズムについてはAIを用いた全自動モデリング機能を開発中で、これが完成すればさらななるコストダウンと納期の短縮も目指せるという。

今回のフィリピンでの事業開始は、フィリピン大学総合病病院と共同で3Dプリント膝下義足の実証実験進めてきた成果。被験者50名に対する実生活試用などの各種テストや製造プロセスの検証を完了し、製品化準備を完了させた。

約8億円を調達したWilloの口腔ケアデバイスは歯磨きのスタイルを変えるか

歯ブラシの基本的なコンセプトはこれまで進化していないし、きっとこれからも進化しない。おそらくみんながそう思うだろう。確かに、多くの人が電動歯ブラシを使うようにはなったが、スティックの先にブラシがついていることには変わりはない。

このままでは不十分だと考えたWilloは、歯垢の除去に着目した口腔ケアデバイスを開発している。同社によれば、基本的なプラッシングで落ちる歯垢は42%、電動歯ブラシでは46%だという。

スタートアップ企業のWilloは、製品を歯科医と共同開発している。製品に関する情報がまだほとんど公開されていないので謎が多い。現時点で公開されている製品イメージは、上に載せた写真だけだ。

同社についてわかっているのは、Kleiner Perkinsが主導し、BpifranceやNestの共同創設者のMatt Rogers氏も参加したラウンドで750万ドル(約8億円)を調達したことだ。同社を設立したのはHugo de Gentile氏、Ilan Abehassera氏、Jean-Marie de Gentile氏で、Refinersのアクセラレータープログラムに参加していた。

この口腔ケアデバイスはどのように動作するのか、価格はいくらか、人々は歯を磨く方法を変えたいと思うのか。今後に注目しよう。

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(翻訳:Kaori Koyama)

世界を飢えから救う農業技術コンペの初受賞者決まる

世界の食糧危機を解決するイノベーションを懸賞付きコンペで募集している財団FoodShot Globalが、そのコンペ「Innovating Soil 3.0」の初回の受賞者を決定した。

受賞者Trace Genomicsは、土の健康を分析して農地の使い方の最適化を推奨するスタートアップで、賞金としてFoodShotのVCパートナーS2G Venturesからの投資を受領した。その金額は非公開だ。

ほかに25万ドルの賞金が、再生可能農業に計数管理と情報管理を導入するためのツールCOMETの普及にむけて活動しているKeith Paustian氏と、長期的な生物多様性の研究家Gerlinde De Deyn氏に贈られた。

また、農業技術に関する知識をカタログ化して無料でその情報を全世界の農家コミュニティに配布する、オープンソースのデータプロジェクトを開発しているDorn Coxに、3万5000ドルの賞金が贈られた。

FoodShot Globalの創設者で理事長のVictor Friedberg氏は次のように述べる。「FoodShot Globalを作ったのは、世界中の指導的立場にある人々によるイノベーションと資本と協力精神によって変化を起こしたいからだ。最初に土、土壌を選んだのは、将来の世界の100億の人口が、維持可能なかたちで健康的に食べていくためには、健康な土を必要とするからだ。今日選んだ3名の受賞者はすべて画期的な仕事をしており、今の文明が直面している緊急事態に対する、次世代のソリューションの基盤になりうる。立ち上がったばかりのFoodShot Globalの最初の受賞者たちは最高に素晴らしい人たちであり、彼らがやっていることをもっと広範にシェアしていきたい」。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

腸内細菌の正常化で病気を治すWhole Biomeが2型糖尿病向け製品をリリース

マイクロバイオーム(体内微生物相)の応用企業Whole Biomeが、シリーズBで3500万ドル(約37億8000万円)を調達した。投資家はSequoia、Khosla、True Ventures、Mayo Foundation、AME Venturesなどなど、大物揃いだ。資金調達の目的は、微生物の力で人間を健康にし、病気を治すことだ。

数年前から医学は、マクロバイオティックスとしても知られるこれらの微生物によって確保促進される腸の健康の重要性に着目してきた。そして今ではスタートアップたちがベンチャー資金を使って、新しいアイデアを次々と生み出している。

Whole Biomeの協同ファウンダーでCEOのColleen Cutcliffe氏はこう語る。「今は人類の歴史の上で、今しかないと言えるほどの希少かつ貴重な時期だ。そこではマイクロバイオームが最先端のテクノロジーおよび生物情報科学(バイオインフォマティクス)と合体して、まったく新しい分野の革新的な健康産業が生まれようとしている」。

DNA配列企業Pacific BiosciencesにいたCutliffeが、パートナーのJim BullardやJohn Eidと共に作ったプラットホームは、マイクロバイオームのさまざまな母集団の情報を計算によって求め、それらの遺伝子解析により、患者のフローラの欠陥と健康問題の関連を見つけ出そうとする。

今回の新たな資金の用途は、2型糖尿病を管理するプロダクトを立ち上げることだ。

市販されている糖尿病の処方薬の多くが、胃の不調やめまい、発疹、アルコールの消化不能など、副作用を伴う。しかしWhole Biomeによると、同社の製品には副作用がまったくない。

すでに本格的な治験を済ませ、2020年に発売予定のその製品は、特殊なプロバイオティクスを患者の腸にリリースし、血糖値スパイク(食後過血糖)を減少させる。

SequoiaのパートナーRoelof Bothaは語る。「Whole Biomeは新しい病気治療目的のマイクロバイオーム投与法を作り出しつつある。それによって、今日の人びとが直面している多くの重大な健康問題を改善できるだろう。彼らが作り出した学際的で統合的な方式による研究開発および商用化の手法により、複雑なマイクロバイオーム的生物学が開錠され、臨床効果と他に類のない安全性を併有する製品が作られている」。

Whole Biomeのこれまでの調達総額は5700万ドル(約61億5600万円)である。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルがヘルスケアアプリにヘッドフォン難聴の防止機能新設

最近のWHOITUの共同調査によれば、世界の12歳から35歳までの人々のほぼ半数が聴力に深刻な障害を受けるリスクにさらされている。これは11億人という驚くべき数だ。

問題はスマートフォンの普及とともにパーソナルリスニングデバイス、つまりヘッドフォンやイヤフォンの利用も拡大したところにある。若い層はヘッドフォンなどのボリュームを目一杯にアップして大音量で音楽を聞きたがる。これがヘッドフォン難聴と呼ばれる回復不可能の外傷性難聴を引き起こす大きな原因になっている。

昨日(米国時間6月3日)のWWDCのキーノートでアップルが触れなかったヘルスケアアプリの新機能の1つがヘッドフォンのボリュームコントロールだ。この機能はAirPods、Beatsなどのヘッドフォン類のボリューム・レベルをモニターし、音量が大きすぎるとユーザーに警告を発する。

Apple WatchのノイズアプリはWatch内蔵のマイクで環境ノイズを測定する。ヘルスケアアプリはこの情報とヘッドフォンのボリュームを比較し、音量が90dBに達している場合、「音量が大きすぎる」と通知する。このレベルの音量に長時間さらされると聴力の喪失を招く危険がある。

残念ながらこの音量モニターの動作はプロアクティブではない。まずユーザーは音量モニター機能にオプトインする必要がある。それでもこうした機能が設けられたのは良いことだ。私自身、ジムで運動をしているとき、不快なBGMが流されていたのでついヘッドフォンのボリュームをアップして対抗していたことがある。このときの音量は長時間聴くには危険なレベルに達していた可能性がある。

12歳から35歳までの層も当然歳を取る。つまり問題は今後はるかに深刻化するだろう。大音量は聴力に重大な危険を及ぼすことが早急に認識される必要がある。

【Japan編集部追記】日本耳鼻咽喉科学会のページにヘッドフォン難聴の危険性が解説されている。ヘッドフォンなどは1日1時間以上の利用で危険性が増大する。またノイズキャンセリング機能は予防効果があるという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

認知症リモート診断の米スタートアップがみずほ情報総研と提携、高齢者ケアを年内にも事業展開へ

高齢者の認知能力の低下を評価、分析するテクノロジーを開発してきたMyndYouみずほ情報総研と提携して日本国内で同社のプロダクトのテストを開始する。テストが成功すればみずほ情報総研は年内にも全国的なサービスとして事業化することを計画している。

MyndYouのテクノロジーは在宅のまま高齢者の認知能力をの変化は評価し、必要なリモートケアを提供できるという。実験は5月末までに日本の5都市でスタートする。

MyndYouはダウンロードして利用できるアプリを用意している。このアプリは高齢者の行動を受動的にモニターし、動作や発言から脳の機能の変調を発見できる。同社の共同創業者でCEOのRuth Poliakine氏はこう説明している。

現在我々が提供しているのは脳機能の異変全般を検知するテクノロジーだが、特定の異状を分析できるところまで行っていない。異状を詳しく特定し、認知能力の低下を早期発見できるよう実験と研究を重ねていきたい。当初、高齢者をサービスの対象とする計画だ。

MyndYouではアプリの利用に習熟した10人の専門セラピストを用意しており、必要と認められた場合にはヘルスケアを提供できる。同社によれば数百人がMyndYouのテクノロジーの実験的利用に参加しているという。

みずほ情報総研との提携により、MyndYouは社会の高齢化が進展し認知症対策に強いニーズを持つ市場での大規模な実験が可能となった。

最近の調査によれば、日本では世帯を支える働き手の4人に1人が2040年まで75歳以上となると予想されており、認知症も増加中だ。みずほ情報総研事業戦略部の森尾仁部長は声明で次のように述べている。

日本国内における認知症患者数は462万人にのぼり、2025年には約700万人まで増加、うち65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症に該当すると見込まれている。これは医療現場だけでなく社会全体の重要課題とされている。また認知症は進行してから受診する人が多く、早期診断・早期対応が求められるが、高齢単身世帯が増加し他者との接点が少なくなることにより、認知機能の変化を早期に発見する機会が減少している。

MyndYouのサービス料金はユースケースに応じて10ドルから50ドル程度が考えられている。みずほ情報総研との提携に先立って、Amplifyher Ventures、Female Founders Fund、エンジェル投資家のHoward L. Morganらが参加してMyndYouのシード・ラウンドが拡大されたと報じられている。現在までに同社は210万ドルの資金を調達している。CEOのPoliakine氏は次のように述べている。

MyndYouはイスラエルで開発された独自技術を活用しニューヨークに本拠を置くスタートアップだ。我々は日本のみずほ情報総研と提携し、MyndYouのメンタルヘルスケアを広く提供していく。日本の高齢者はAIを利用したデータ分析によるカスタマイズされたリモートケアにより、認知症の再発、悪化の防止だけでなく、自立した生活を長く続けることを助けるテクノロジーへのアクセスが広く可能になる。

画像:WitthayaP /Shutterstock

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【Japan編集部追記】みずほ情報総研のプレスリリースはこちら

(翻訳:滑川海彦@Facebook

アップル、子供の喘息モニター開発のスタートアップを買収

アップルが、スマホと呼気センサーを使い子供の喘息をモニタリングするソリューションを開発するTueo Healthを買収した。CNBCが米国時間5月24日、報じた。買収額は明かされていない。

Tueo Healthは2015創立のスタートアップ。Crunchbaseによるとこれまでに累計で1.1Mドル調達している。共同創業者でCEOのBronwyn HarrisとCOOのAnura PatilのLinkedInページでは、所属先が2018よりアップルとなっている。そのため、この時期に買収が完了した可能性が高い。

アップルのCEO、Tim Cookは5月上旬、同社は2〜3週間に1社のペースで企業を買収していると明かしている。

CNBCによると、アップルはこれまでにTueo Healthに加えてもう2社のヘルスケア領域の企業を買収してきたことが明らかになっている。2016年には健康・診療データの管理プラットフォームを手掛けるスタートアップのGliimpse、2017年には睡眠モニターのBedditを買収している。

1対1ビデオトレーニングのLivekickが約3億3000万円を調達

Livekickは、顧客が自宅(またはホテルの部屋など)からワンオンワン(1対1)のパーソナルトレーニングやヨガセッションを利用できるようにするスタートアップだ。このたび300万ドル(約3億3000万円)のシード資金を調達したことを発表した。

同社は起業家ヤルデン・タドマー(Yarden Tadmor)氏とフィットネス専門家のシャイナ・シュミット(Shayna Schmidt)氏によって創業された。タドマー氏が言うには、出張に行くたびに彼のフィットネス習慣が「本当に崩れていた」ので、彼はシュミット氏に連絡して、彼女から遠隔トレーニングを受けることにしたということだ。彼らはFaceTimeを使って接続し、彼は携帯電話を伴ってジムに入って、彼女は彼のワークアウトを見守りつつ指導した。

「私たちはこのやり方でしばらくトレーニングを重ねていたのですが、やがて、このやり方って他の人達にもとても役立つんじゃないのかな、ということに気がついたのです」とタドマー氏は語った。

ということで、ユーザーがLivekickでサインアップを行うと、1回あたり30分のセッションを、1、2、もしくは3回、遠隔トレーナーと行うことができる。トレーナーとの接続はLivekickのiOSアプリか、ウェブサイトを経由する。なお、2週間のトライアルが終わった後の課金は、週32ドルから始まる。ワークアウトはあなたがアクセスできる場所と機器に合わせて個別にカスタマイズされる、そしてトレーナーは、週の他の日のためのワークアウトも割り当ててくれる。

タドマー氏とシュミット氏は、このやり方をPelotonやMirrorのような会社とは違うものだと語った。この2社は新しいエクササイズ機器を家庭に持ち込み、エクササイズクラスも提供するが、個別トレーナーとのワンオンワンセッションは提供していない。タドマー氏によれば、このパーソナライズされたアプローチは、各ユーザーのニーズに上手く調整されるだけではなく、ユーザーのやる気を引き出すためにも効果的だということだ。そしてシュミット氏は、ライブで対話を行うことによって、人々が正しく安全にトレーニングを受けていることも保証されると語った。

Livekick screenshot

またシュミット氏は、これはトレーナーたちのために(特に空き時間を使って)新しい顧客を開拓する方法を提供すると述べた。

「トレーナーたちにとって、通常昼から午後4時までは予約が入らない時間です。もちろん顧客は仕事中なのですからそうなるのは当然です」と彼女は言う。「そこで、私たちはロンドンのトレーナーたちのその昼の空き時間を、朝のニューヨークのユーザーたちのために与えることができるのです。私たちは、彼らのスケジュールを本当に埋めて、さらなる収入を得てもらうようにできるのですよ」。

個人のサブスクリプション以外にも、Livekick for Workという企業向けプログラムも提供される。そしてここではっきりさせておきたいのは、このサービスは特に出張が多い人に特化したものではないということだ。タドマー氏によれば「もしニューヨークに住んでいるならば、フィットネスオプションは沢山ありますが、多くの人たちはニューヨークに住んでいるわけではありません。通常素晴らしいトレーナーとスタジオで出会うためには、長い距離を通わなければなりません。なので私たちがやろうとしていることには、お客様に自宅の快適な環境でトレーニングを行えるようにすることも含まれているのです」。

私たちは最近Futureと呼ばれる同様のサービスの開始をレポートしたが、Livekickが実際に始まったのは昨年の9月である。タドマー氏によればユーザーの平均持続期間は6ヶ月を超えているという。

調達ラウンドはFirstime VCの主導で行われたが、RhodiumとDraper Frontierも投資に参加している。

「エクササイズをアクセスしやすくお値ごろなものにしようとする、先進的なテクノロジーと情熱によって、Livekickは何百万人もの人たちの生活と健康を改善する能力を秘めていると私たちは信じています」と声明の中で語っているのは、Firmtimeのニール・タロフスキー(Nir Tarlovsky)氏だ。

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(翻訳:sako)

デジタルヘルスチェックのBiofourmisが38億円を調達

テクノロジーを活用した健康状態の解析で先駆け的存在のシンガポール拠点スタートアップであるBiofourmisは、事業拡大のためシリーズBで3500万ドル(約38億円)を調達した。

今回のラウンドは、Sequoia India、MassMutual Ventures、Massachusetts Mutual生命保険会社のVCファンドが主導した。ラウンドに参加した他の投資家はシンガポール経済開発庁コーポレート投資部門のEDBI、中国拠点のヘルスケアプラットフォームJianke、そして既存投資家のOpenspace Ventures、Aviva Ventures、ディープテックスタートアップの支援を行っているシンガポール政府のSGInnovateだ。Crunchbaseによると、今回のラウンドにより、Biofourmisがこれまでに調達した額は4160万ドルとなる。

この記事はTechCrunchでよく取り上げられる典型的な資金調達の話ではない。

BiofourmisのCEOであるKuldeep Singh Rajput氏はPhDを取得するためにシンガポールに引っ越してきたが、2015年に共同創業者のWendou Niu氏と事業を始めるために中退した。というのも、「病気になる前にそれを予知する」ことにポテンシャルを見出したからだ、とTechCrunchとのインタビューで語った。

AIを活用した退院後ケアのスペシャリスト

Biofourmisのプラットフォームはいくつものレイヤーから成り立っているが、本質的には患者から集められたデータと、退院後の患者の治療をカスタマイズするためのAIベースのシステムを組み合わせている。Biofourmisは特定の治療にフォーカスしていて、その中で最も進んでいるのが心臓病であり、心不全や他の心疾患を患い、そして退院した患者に照準を当てている。

心疾患の患者の場合、Biofourmisプラットフォームは、患者の健康状態をモニターし、そして事前に問題を把握して最適の治療法を決めるために、センサー(一般消費者向けのウェアラブルではなく24時間身につける医療用センサー)からのデータとテクノロジーを使う。情報は専用のモバイルアプリを通じて患者とその介護者に共有される。

薬は飲む人によって異なる作用を及ぼすが、データを集めてモニターし、数字を分析することで、Biofourmisは“デジタルピル”を通じて患者の健康を最もいい状態にするのを手伝うためのベストの薬を提供することができる。これは、マトリックスのような未来的なものではなく、リアルタイムに患者のニーズに基づいて展開されるデジタル処方箋のようなものだ。同社は、数時間内に薬を患者に届けるアマゾン傘下のPillPackを含む医薬品配達プラットフォームのネットワークを活用する計画だ。

そう、まだこれは未来の話だ。というのもBiofourmisはサービスを商業展開するためにFDAの承認を待っている段階だからだ。承認は今年末までに得られる見込み、とSingh Rajput氏は語った。20もの異なるサイトで患者5000人以上をカバーした臨床試験を行ったため、彼は楽観的だ。

テック面においては、Biofourmisは予測機能で素晴らしい結果を出してきた、とSingh Rajput氏は話した。90%のセンシティビティで「心不全を14日前に予測した」米国でのテストの例を引用した。これはBoston Scientific社のHeartlogicのように数千ドルもする高度なキットではなく、数百ドルの標準の医療用ウェアラブルを使って成し遂げられた。ただし、数千ドルもするキットの場合、見通す期間がより長い。

Biofourmisのようなこのタイプのディスラプトは、医薬品企業にとっては計画をぶち壊すことのようなものとなるかもしれない。しかしSingh Rajput氏は、薬の効能、そしてそれに伴う価格を評価することが難しいために、業界がヘルスケアに対してより質の面からのアプローチに移りつつある、と主張する。

「今日、保険会社は薬の値段をどのように決めるか透明性がなことに気づいていない。しかしマーケットにはすでに結果に基づいて支払う50もの薬がすでにあり、マーケットはその方向に進んでいる」と語った。

結果に基づく支払いは、保険会社が薬の効果に基づいて、別の言葉で言うと、いかに患者が回復したかにに基づいて費用を払い戻すことを意味する。そのレートは多様だが、免除レートの下げがないことで、薬が思ったほどに効いていないと保険をかける人の支出は少なくなる。

Singh Rajput氏は、Biofourmisが業界をならし、薬の効きという面で透明性を加えることができると確信している。また、製薬会社は他社のプロダクトよりも自社のものが優れていると示すのに熱心だが、これこそがBiofourmisが進めたいモデルだ。

実際、Biofourmisは初めは製薬会社経由で市場開拓するつもりだ。Biofourmisは製薬会社の薬をひとまとめにしてパッケージとしてクリニックに売り込み、その後、引きがあれば保険会社との交渉に移る。そしてデジタルピルを通じて販売された「おすすめの薬」で5〜10%のコミッションを徴収する。

米国での賭け

今回調達する資金で、Biofourmisは拠点をボストンに移し、すぐに商業展開するという賭けに出ようとしている。ソフトウェアとプロダクト開発を行うスタッフ45人を抱えるシンガポールでも存在感を高めることはできるだろう。しかし新しい米国のオフィスは、現在のスタッフ14人から今年末までに120人に成長する見込みだ。

「米国は最初から主要なマーケットだった。顧客に近いところにいること、そして臨床データを蓄積することは極めて重要だ」とSingh Rajput氏は語る。

彼はシンガポールを賞賛し、会社はシンガポールにコミットする一方で(投資家にEDBIを加えるのは明らかにそのサインだ)、彼は自身がかつて学んだボストンが「重要な臨床能力を持つデータサイエンティストを探す主要マーケット」であることを認めた。

米国に拠点を移すのは心疾患のプロダクトを展開するためだけでなく、他の治療をカバーするプロダクトの準備をするためでもある。現在、Biofourmisは痛みや整形外科、腫瘍をカバーする6つのトライアルを抱えている。また、米国外のマーケットに拡大する計画もある。特にシンガポール、そしてBiofourmisがJiankeをリードする計画のある中国だ。

Singh Rajput氏はTechCrunchに対し、同社が次に資金調達をすれば企業価値10億ドルを達成する見込みだと語った。その資金調達は18カ月先とされていて、現在の企業価値については明らかにしていない。

しかしながらSingh Rajput氏は今回のラウンドには募集以上の申し込みがあり、そして“争いを避け中立を保つため”に製薬会社からの投資を断ったことを認めた。

彼はまた、将来的にはIPOを視野に入れていて、2023年を仮目標としている。しかし、その頃までにはBiofourmisは少なくとも2つのプロダクトを展開している必要がある、とSingh Rajput氏は語った。

そこにたどり着くまでの道のりは長いが、今回のラウンドは間違いなくBiofourmisと同社のデジタルピルのアプローチをテック業界のマップに記すものとなった。

イメージクレジット: krisanapong detraphiphat / Getty Images (Image has been modified)

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(翻訳:Mizoguchi)

SmileDirectClubが3Dプリンタで1日5万個の歯列矯正モールドを製作する計画を明らかに

医療業界は工業用3Dプリンタの成長の源として最も有望な分野と長く考えられてきた。ひとりひとりに合わせるにはスキャンとプリントで正確に測定して対応する必要があるのだから、もっともなことだ。ことに歯科は、その推進に重要な役割を果たしている。倉庫のようなスペースいっぱいにプリンタを設置して、透明で取りはずし可能なマウスピース(アライナー)で歯列を矯正するインビザラインを手がけるとなれば、なおさらだ。

米国時間5月21日、デトロイトで開催されたRapid 2019カンファレンスで、SmileDirectClubはHPの工業用Multi Jet Fusionシステムに巨額の投資をしていることを発表した。49台のプリンタを使用するシステムは米国最大で、歯列矯正のモールドを24時間体制で大量に製作するという。

システムが完成して稼働すれば、1日に最大5万個のモールドを製作できる予定だ。計画通りなら、1年に1800万個以上を製作できる。HPによれば、SmileDirectの3Dプリンタ製造のおよそ99%をHPが担当しているという。今回の発表で、このテクノロジーへの投資は事実上2倍になっている。

このテクノロジーに興味を持つ人にとっては注目すべきスペースだ。長年にわたる実験と高い成果を経て、歯列矯正は3Dプリント技術の大規模で現実的な用途となっている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

全身MRIを使ってEzraは11〜13種のガンを発見できる

Ezraが6カ月ほど前に事業を開始したとき、同社は男性の前立腺ガンを調べるためにMRI(磁気共鳴画像)の装置を使っていた。しかし共同創業者のEmi Gal(エミ・ガル)氏はさらに大きなゴールを描いていた。

「ガンに関する最も大きな問題の一つは、体の全部位のガンをスキャンするための正確で早く、そして痛みを伴わない方法がないことだ」と設立当時にガル氏は語っていた。

そしていま、彼は解決策に近づきつつある。往々にしてかなりの副作用を伴うことがある痛い生検を受けなければならない代わりに、ガル氏のソフトウェアは、男性の11種のガン、女性においては13種のガン(女性の方がガン化するかもしれない器官を多く有している)を調べるための全身MRIスキャンのコストを大幅に下げることができる。

スキャンの所要時間は約1時間で、全身MRIスキャンが5000〜1万ドルするのに対しEzraではたったの1950ドルだ。

それでも全額手出しの人にとってはかなりの額だ。保険会社はまだEzraの検査費用はカバーしていない。Ezraは現在、保険会社数社と話し合いを進めていて2019年第4四半期と2020年第1四半期にいくつかのパイロット事業を行う予定だ。ガル氏が言うには、ゴールは保険会社にカバーされるようになることだ。

患者にとって早期にガンスクリーニングを受けることがいかに重要かは、いくら誇張してもし過ぎることはない。

米国ガン協会は2019年に米国で新たに170万人がガンと診断されると推定している。そのうち60万人が余命いくばくもないと診断される。ガン患者のおおむね半分がかなり進行してからがんがわかり、ステージが進んだガン患者で5年以上生きられる人は10人に2人しかいない。

それが患者とその家族にとってどんなものかは、ガル氏は十分すぎるほど知っている。初の会社を20代で興し、30代で売却したこの起業家は故郷のルーマニア・ブカレストにあるホスピスでボランティアをした。そしてガンを初期に見つけられる検査を見つけようと決心した。

ガル氏は、米国立衛生研究所からの患者データ、そして追加で患者150人のガン検査を使って、昨年からEzraのがんスクリーニングツールキットに取り組み始めた。

Ezraは当初、前立腺ガン検査のみで市場に参入した。この検査では、所要時間20分に短縮されたMRIスキャンで得られた画像を診断するのに機械学習を活用した。

Gal氏の会社が使っているMRI検査はすべてFDA承認のものだが、同社が開発した機械学習アルゴリズムについてはまだ承認を得ていない。

Ezraはさまざまな種類のガンを検査できる一方で、診断は提供していない。診断は医師が行い、そして追加のテストを要する。「我々はMRIを診断テストからスクリーニングテストに変えている」とガル氏は話す。

「我々がやったことといえば、スクリーニングに不必要なことを取り除き、肝臓のスキャンを15分でできるようにし、そしてトータルの検査時間を1時間にした」とガル氏は語る。

テストを行うための自前のMRI装置ネットワークを構築するのではなく、EzraはMRI設備ネットワークのRadNetと提携を結んだ。Ezraはまた、ガンと診断された患者が適切な治療を模索するのを手伝う、診断後のコンサルテーションも提供している。

現在のところニューヨークにある9つのセンターでサービスを展開していて、今年後半にはサンフランシスコとロサンゼルスに拡大したい意向だ。

早期のガンスクリーニングに対するガル氏のビジョンは投資家の関心をひきつけ、 Founders Future、Credo Ventures、Seedcamp、Esther Dyson、そしてSoundCloudの共同創業者Alex Ljung氏を含むエンジェル投資家から400万ドルを調達した。

究極的にはEzraの成功は、コンシューマーが直結払うコストを下げられるか、または保険会社が保険を適用する診断ツールになるかどうかにかかっている。

「ゆくゆくは、我々のゴールはさらにコストを下げるために器官ごとにそれぞれのAIを構築することとなる」とガル氏は話している。

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(翻訳:Mizoguchi)

スマホのカメラで心拍数を計測、呼吸訓練アプリ「Resilio」でストレス耐性を強化

「Resilience(レジリエンス)とはストレスを予防し生産性を向上させるということだ」

5月16日にカリフォルニアのメンローパークで開催されたAlchemist Acceleratorの21期生デモデイにて、ResilioのCEO、Anders Søndergaard氏はそう話した。

Resilienceをもう少しわかりやすく説明すると、身体的または精神的な苦境からの「回復力」のこと。

「この単語を覚えておいて欲しい、数年後には誰もがResilienceについて話しているはずだ」(Søndergaard氏)

Resilioは従業員のストレス軽減、モチベーション向上のための「Resilience-As-A-Service」プラットフォーム「Resilio」を開発し提供するヘルステック領域のスタートアップ。

ストレス耐性を強くするには瞑想が効果的だが 、Resilioはそれをアプリで誰でも簡単にできるようにした。

Resilioアプリを使い、ユーザーはスマホのカメラに人差し指をかざし心拍数を計測。そして画面に表示されている心拍数を見ながら呼吸訓練をする。ゲーミフィキケーション要素として、画面の右上にはシンクロ率のスコアが表示される。

呼吸訓練のほかにも、「睡眠の改善」や「緊張状態の緩和」などに関するオーディオベースのレッスンも用意されている。また、ウェブセミナーや社内キャンペーン向けのマーケティングパッケージも提供される。

Resilioは法人向けに提供されており、料金は従業員1人あたり5ドル。Søndergaard氏いわく、Resilioユーザーの実に96パーセントが「ストレスが軽減された」と感じており、86パーセントが「仕事に対するモチベーションが上がった」という。

AI駆使で要介護者見守りや在宅透析治療管理、学生スタートアップが8000万円調達

METRICA(メトリカ)は、インキュベイトファンドとライフタイムベンチャーズ、およびエンジェル投資家を引受先とした第三者割当増資などにより、総額8000万円の資金調達を完了した。

METRICAは、慶應義塾大学に通う現役学生である西村宇貴氏らが立ち上げた医療系スタートアップ。高齢化により医療に対する需要が高まっている半面、国内の約40%の病院が赤字経営。しかも医師や看護師、介護士の労働時間は一般企業に比べて極めて長時間。そのため人件費がかさむ。同社は、この悪循環をAIを駆使して解決することを目指す。

人手不足を補う手段の1つとして海外からのスタッフの受け入れがあるが、言語の問題で情報の共有が難しい。そこでMETRICAは、外国人介護スタッフ向け電子介護記録を開発。具体的には、医療・介護向けにチューニングした自動翻訳機能を備えた介護記録アプリと、サーバーサイドでの翻訳精度の学習機能により、情報の共有を容易にする。

要介護者がベッドにいるか、部屋にいるか、どれぐらいの速度で歩いているか、きちんと歩けているかなどをカメラとAIを駆使して分析し、転倒や夜間の離室、認知症による異常行動を検知するシステムも開発中だ。これにより、介護士が常時監視しなければならない精神的負担を軽減するという。

さらに近年増加傾向にある透析患者向けのソリューションもある。知的財産権を申請中とのことで具体的な仕組みは不明だが、在宅での腹膜透析をAIを利用して効率的に管理するシステムを開発中とのこと。

METRICAでは今後、これらのプロジェクトを提携パートナーと進めていくとのことで、今回の資金調達は開発チームを強化するための人材募集にあてる。

スナックバーの破壊的創造、完全食を目指すSoylentが米国1兆億円規模の市場に参入

完全食を目指すSoylent(ソイレント)は、これまでの液状製品(飲み物)を捨てて、スナックバー的なパッケージ商品を発売する。

その熱量100カロリーのバーは植物性たんぱく質5グラムと36種の栄養素、そして消化を助けるプロバイオティクス(乳酸菌など)を含んでいる。チョコレートブラウニー、シトラスベリー、塩キャラメルの三種類がある。

それは同社の今年2つめの新製品だ。1月には食事の代わりになるシェーク製品としてSoylent Bridgeの1食バージョンを出した。スナックサイズのバーには、シェークや飲み物より大きな市場があるだろう。Research and Marketsのデータによると、スナックバーの2023年の売上は米国だけでも88億ドル(約1兆円)だそうだ。

CEOのBrian Crowley氏はこう言う。「これでかなり前進したと思うよ。持続可能な栄養をもっといいかたちで人々に届けられるんだから、大きな一歩だし、すごくうれしい。バー食の世界の破壊的創造だ。最初はドリンク製品で朝食を狙ったけど、今度の製品は完全な栄養をいつでもどこでも摂れる」。

Soylentのスナックバー

スナックバーへの進出はHuelのようなコンペティターとのSoylentの差別化にも寄与する。なお、Soylentという名前は、1960年代のSF小説「Make Room! Make Room!」に登場する大豆(soy bean)とレンズ豆(lentil)で作った食べ物に由来しており、のちに劇場で原作を有名にしたバージョンとは無縁だ(とファウンダーは強調したいのだ!)。

Huelはイギリスでローンチしたが、今ではロサンゼルスでよく見かける。昨年Highland Europeから2600万ドルを調達して、その栄養ドリンクとパウダーを主に米国市場で拡販したいらしい。一方フランスには固形スナックとシェークを売っているFeedがあり、ヨーロッパにおけるSoylent的スタートアップだ。

関連記事: Feed raises $17.4 million for its Soylent-like food products(Feedの資金調達、未訳)

ただしSoylentは今後も、機能性サプリのような世界へ赴く気はない。Crowley氏はこう言う。「Bulletproofsのようなものは、良質な科学の裏付けがあるんだろうけど、でもお金持ち相手だね」。

Crowley氏が望むのは、Soylentがすべての消費者のための安価で栄養価の高い代替食であり続けることだ。同社によると、バーの原料はこれまでのドリンクやパウダーと同じで、 多量養素(たんぱく質、炭水化物など)+26種のビタミンとミネラル、9種のアミノ酸、2種の必須脂肪酸、そしてオメガ-3とオメガ-6を含む。

さらに、消化を助けるためのプロバイオティクスと、3グラムの砂糖を加えている。現在、バーはケース入りでネット販売のみ。1ケースに30個入っている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

コンピュータービジョン技術で細胞を分析し病原体を見つけるPathAIが67億円超を調達

コンピュータービジョンの技術で病原体を見つけるPathAIのサービスは、臨床現場での実用化まではまだ1年あまりと言われるが、同社は最近の資金調達ラウンドで6000万ドル(約67億円)を獲得した。

医師は、患者から採取した標本細胞を同社の技術を利用して分析し、細菌やウィルス、癌細胞などの病原体の存否を判定する。しかし現時点では、PathAIの技術は病院における患者の診療よりも製薬企業の新薬開発に使われていることが多い。同社の共同ファウンダーでCEOのAndy Beck(アンディー・ベック)博士はそう語った。

ベック博士は語る。「私たちの今日の最大のフォーカスは、(臨床よりもむしろ)難病の新しい治療法を見つけるために使われている研究プラットホームにある。安全で効果的な医薬品の開発を加速することは、患者にとって本当に重要な問題だと考えている」。

製薬企業は新しいテクノロジーに病院よりも大きな額を投じているから、PathAIのようなスタートアップにとっても魅力的なマーケットだ。同社が病理学者たちと協働するときは、彼らは研究目的で技術を使っているとベック博士は語る。しかし臨床での診断のためには治験が必要であり、規制当局が認可するまで時間がかかるとのこと。そして「そのため、直接臨床で使われるようになるまではあと1〜2年はかかる」そうだ。

同社の最新のラウンドはGeneral Atlanticがリードし、さらにこれまでの投資家であるGeneral Catalystや8VC、DHVC、REfactor Capital、KdT Ventures、そしてPillar Companiesも参加したPathAIの社員は昨年60名あまりに増え、そしてBristol-Myers SquibbやNovartisとパートナーシップを結んだ。

新たな投資の結果としてGeneral AtlanticのマネージングディレクターMichelle Dipp(ミッチェル・ディップ)博士が同社の取締役会に座ることになる。General CatalystのマネージングディレクターであるDavid Fialkow(デイビット・フィオーコウ)氏は声明で次のように述べている。「PathAIの技術によって疾病診断の精度と再現性が向上し、それらの疾病を治療する新薬の開発を助けるだろう」。

画像クレジット: Ed Uthman/Flickr CC BY 2.0のライセンスによる

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

スタートアップ向け人間ドックが紀尾井町に誕生、標準価格より2〜3割安価

Coral Capital(500 Startups Japan)は、クリニックチェーンの経営支援を行うCAPSおよびその支援先である医療法人ナイズと提携し、スタートアップ企業の創業者と経営陣向けに人間ドックの格安プログラムの提供を開始した。対象となるのは、Coral Capitalと500 Startups Japanの投資先の創業者と経営陣。

具体的には、医療法人ナイズが運営するキャップス健診クリニック紀尾井町で人間ドックを利用できる。実際の料金は検査項目で変化するが、通常よりも2〜3割安い料金で受診できるとのこと。さらにCAPSが運営する24時間フィットネスクラブ「データフィットネス六本木」も特別料金で利用可能になる。

人手が限られるスタートアップの創業期は自分の限界まで働く経営者が多い印象だが、最近では20代の若手起業家だけでなく、一般企業でキャリアを積んだうえで各業界の問題点を解決すべく起業する30代、40代の経営者も増えている。スタートアップ=若手という構図は崩れており、連日かつ長時間の激務を「若さ」では乗り切れない経営者が増加傾向だ。

とはいえ、数人のメンバーしかいない創業期は報酬も低めなので、高額な人間ドックは敬遠されがち。こうした状況を踏まえて、スタートアップ経営陣向けの人間ドックのアイデアが生まれたそうだ。フィットネスクラブの利用も含め、スタートアップ経営陣の健康を守ることを目指すという。

Coral Capitalは、米ベンチャーキャピタルの500 Startupsの日本向けファンドである500 Startups Japanのメンバーが、新たに設立したベンチャーキャピタル。なおCAPSは、500 Startups Japanの出資先でもある。

CAPSは、かかりつけの医療機関向けの総合支援サービス「プライマリケア・クリニックチェーンマネジメント」のサービスを提供するスタートアップ。クリニックを開業する際の不動産の選定・取得から、経営システム、電子カルテの構築・運用、医師や看護師の募集をまとめてアウトソージングできる。さらに、365日、夜間対応も可能な診療体制を支援する。

自分では若いと思っても、身体のどこかに鈍い痛みが生じ始める30代、40代。今回のような健康支援プログラムが充実してくれば、スタートアップ企業の働き方改革も進むはずだ。

 

伝染病の発生地域を世界地図上にプロットするMetabiota

世界中で発生している健康リスクについて、広く一般の人々に知らせるため(あるいはもともと被害妄想のある人々をぞっとさせるために)、スタートアップのMetabiotaは無料の伝染病トラッカーをリリースした。世界中の誰もが流行状況をくまなくモニターできる。

サンフランシスコに拠点を置くMetabiotaは、このツールを一種の公衆衛生サービスとして考案した。世界経済フォーラムは、世界規模の伝染病の流行によって、世界経済が年間570億ドル(約6兆3800億円)もの損失を被っていると見積もっていること、そして新種の薬剤耐性菌や致死性の疾病が拡散し続けている状況を受けての活動だ。

同社は、殺菌剤および薬剤耐性のあるCandida auris(カンジダ・アウリス)病原体の出現に関する最近の報告まで引用して、このツールをリリースすることにした理由を説明している。

「これまでは、起こりうる健康上の脅威に組織として備え、準備体制を整えるための効果的な方法がありませんでした」と、MetabiotaのCEO、Bill Rossi氏は、声明の中で述べている。「Zika(ジカ)ウイルスの衝撃から明らかになったように、渡航の制限はサービス業界に多大な経済的損失をもたらします。感染症の発生は、健康と経済の両面で困窮の連鎖反応を引き起こすことになります。このトラッカーは、Metabiotaの使命、つまり人間の健康と健全な経済への脅威に対する回復力の強い社会を作る、という使命に沿って作られたものです。それは、集中的かつバランスのとれた表示によって、発生しつつある、あるいは進行中の大発生を公開することで実現できるのです」。

一般的な情報源としては、このトラッカーでも十分だが、それほど精度の高い情報は公開していない。Metabiotaが提供する情報に基づいて、ユーザーが実際に決定を下すために必要なレベルの詳細な情報ではないのだ。そのためには、同社は有料の疾病監視サービスを提供している。それによってこそ、同社は4年前に3000万ドル(約33億6000万円)の資金を調達することができたのだ。

「このトラッカーのデジタルプラットフォームは、世界的な影響を与えている進行中の伝染病の流行について知りたい、と考えているすべての人が利用できるものです」と、Metabiotaの製品責任者、Ben Oppenheim氏は声明の中で述べた。「このトラッカーは、私たちがプレミアムライセンス版として市場に提供している情報の抜粋に過ぎません。プレミア版には、病原体モデルや、より高度な解析、リスク分析のためのインデックスが含まれています」。

したがって、言ってしまえば、これは一般の人々の不安を食い物にする販売ツールなのだ。人々は、伝染病によってもたらされる脅威について、多くを耳にしながら、実際にはほとんど理解していない。

ここにある、カンジダ・アウリス耐性菌を扱った報道の重要性に関するSlateの記事が参考になるだろう。

その耐性菌に関する報道は、保険機関がそれを調査し、その感染を食い止めるために必要なリソースを確保するという意味では必要だった。しかしそれはまだ、大きな健康上のリスクとはなっていなかった。なぜなら、そのバクテリアにさらされて感染するのは、もともと免疫システムがかなりひどく傷害されている人だけだから。

Susan Matthews氏は以下のように書いている。「このような大発生について病院が公表することは危険性をはらんでいます。というのも、至急に治療を必要としていて、感染のリスクが比較的小さい人でも、そうした情報によって治療を受けること自体を恐れてしまうかもしれないからです。待機手術を受けることになっていたのに、手続きをキャンセルしてしまったかもしれない人がわずかながらいたしても、それは公益としては、取るに足らないものとみなされてしまうことなります」。

同様に、Metabiotaの伝染病トラッカーが提供する非常に限られたデータに基づいて、何も決定を下すべきではない。

Metabiotaの新しい無料ツールによって追跡可能な大発生のどれかについて、一般のユーザーが強い興味を持った場合、その人はそれについて詳しく調べればいい。しかし、基本的な情報収集以上の効用があるとすれば、このようなツールの出現が、多くの企業が健康リスクに関する社会的な恐怖を鎮めるよりも、むしろそこから利益を得ようとしていることを象徴している、ということだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

有機食フードデリバリーのTrifectaがBeyond Meatの植物性ミートを採用

有機食のデリバリーサービスTrifecta(3連勝)がBeyond Meatと提携して、後者の植物性獣肉代替食材を前者の献立に利用していく、と両社が発表した。

同じ獣肉代替植物性食材でも、最大のコンペティターであるImpossible Foodsのようにレストランなど業務用を狙うのではなく、Beyond Meatは食料品店の通路から消費者直行を目指している。デリバリーサービスという業務ユーザーを経由するのは、今回が初めてだ。

Trifectaは、新たに食材に植物性蛋白質を採用することによって、ケトン・ダイエッターやヴィーガン、ベジタリアン、古代食ダイエターなどの人々のニーズに対応したい、と考えている。

TrifectaのCEOであるGreg Connolly氏は声明でこう述べている。「Trifectaは健康やフィットネスに関心のある人びとの間で急速に日常的定番のような名前になりつつある。すでに植物性食材の多い製品はあるが、高タンパク、低炭水化物、低飽和脂肪のものはまだない。だからBeyond Meatは、そんな我が社にとってぴったりの会社だ」。

Trifectaの食事セットやお弁当などは、USDA(米農務省)指定の材料で、しかも食肉は冷凍されず野生または草だけを食べていた動物の肉を使用している。また、消費者の多量養素(macronutrient)ニーズにも応じている。同社の食品は冷蔵庫で冷やされたケースに入れられ、完全に調理されすぐに食べられる状態で届けられる。同社の食事製品は米国すべての州で利用できる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa