Ideal Flatmate、デートサイトのようなフラットメイト検索サービス

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一緒に住む家族や友だちがいないため、嫌々ながら新しいフラットメイトを探さなければ行けないロンドン在住者には、Ideal Flatmateのサービスがぴったりだ。

同社は、デーティングサービスのようにユーザーの趣向をもとに、ひとりひとりに合ったフラットメイト探しをサポートするサービスを提供している。ユーザーはまず、候補者を絞るために予め用意された文章にどのくらい同意するか(強く同意する〜強く反対する)を答えるようになっている。

既にアメリカでは、大学生に特化したroomsurfのように、似たようなサービスがいくつか存在するが、イギリスでこのようなサービスを提供するのは、Ideal Flatmateが初めてだと同社は話す。さらにIdeal Flatmateは学生以外もターゲットにしているが、今のところロンドン在住者だけが対象になっており、今年中にはイギリス全土にサービス網を広げようとしている。

昨年10月にソフトローンチされ、最近正式ローンチされたIdeal Flatmateには、現在3000人のユーザーと1000軒の物件が登録されており、これまでに3万人もの人が同社のサイトを訪れている。

現在までの運営資金は、ファウンダーと数名の個人投資家によって賄われており、「今年中には初めての投資ラウンドを開催しようと思っています」と共同ファウンダーのTom Gatzenは話す。

「2025年までには20〜39歳の人口の半分以上が、民間の物件を借りると予測されているので、市場規模はかなり大きくなるでしょう」と彼は付け加える。

確かに過去10年の間に、イギリスでは家を購入する人よりも借りる人のほうが増えており、この社会経済的な変化は「賃貸時代」と呼ばれることもある。この背景には、住居の需要が供給を上回っていることによる家賃の急激な上昇を含め、さまざまな要因がある。

今のところユーザー層に関して何かトレンドが見られるかという質問に対し、Gatzenは「サイトを利用しているユーザーや、物件をアップロードしている大家の層は多岐にわたっています」と答えた。「1番多いのは20〜35歳の層ですが、40才以上のユーザーもかなり多く、社会的な変化の結果、中年層でもシェア物件に住む人が増えているというのがわかります」

マッチメイキングのためにユーザーが最初に答える質問の中には、人との交際の仕方や掃除に対する考えなど、家の中の平和を維持するのに欠かせないものが含まれている。その一方で、外交的か内向的かを答えさせるような、ユーザーの人間性を確認するものもある。なおIdeal Flatmateは、ケンブリッジ大学の心理学者2名との協力を通じてこの質問集を作成した。

「私たちはフラットシェアをしている人たち500人を対象に、自分にあったフラットメイトを探す上で重要だと思われる100個の質問を投げかけました。その後、ケンブリッジ大学の教授と要因分析を行って回答を解析した結果、100個あった質問のうち20個が特に重要だということが分かりました」

まだ彼らのアプローチが正しいと断定できるほど、その有効性を証明するデータはないが、Ideal Flatmateは、「似たような人」とマッチしていると「感じる」という好意的なフィードバックをユーザーから受け取っているとGatzenは話す。

「今後の成長に向けて、マッチメイキングの機能を改良していき、ユーザーが自分に合ったフラットメイトを確実にみつけられるようにすることが重要だと考えています」と彼は言う。

まだ設立間もない同社だが、最近有料オプションをローンチし収益化にも取り組んでいる。その一方で、物件探しというのはとても短い期間しか発生しないイベントだ。何年にもわたってデートを繰り返す人はいるかもしれないが、ほとんどの人は長くとも1、2ヶ月以内には「家なき子」状態を脱したいと考えるものだ。

さらにロンドンで物件をシェアする場合、1年単位の契約を結ぶことがほとんどなため、収益機会にかなりの穴が空いてしまう。「賃貸時代」にあるとは言え、どう考えてもデーティングサービスのような市場規模は狙えないだろう。

そのため、Ideal Flatmateの閲覧自体は無料だが、ユーザーはフラットメイト候補と連絡をとるには有料会員登録しなければならない。1週間のアクセス権は4.99ポンドから準備されており、有料会員には条件(場所、予算、趣向)に応じて「ユーザーに合ったフラットメイトと物件候補」の情報が送られてくる。

さらに有料会員はサイト上のメッセージ機能も利用できるので、マッチしたユーザーやグループは、チャットを通じて交流を重ね、実際に顔を合わせてフラットシェアの相談をすることもできる。

新たな収益源となる仕組みも近々ローンチ予定で、今年の春から大家や不動産会社は、サイト上への物件情報掲載に対して料金を支払うようになるとGatzenは話す。

フラットメイトや物件を探している側、物件を提供している側の両方に課金するという同社の動きは、Ideal Flatmateのサービスを意味あるものにするために必要なユーザーに対して、同社のサービスにはお金を払う価値があると考えさせようとしているように見える。長期的にビジネスを継続させるには、ユーザー数を増やし十分な収益を獲得する必要があるが、このIdeal Flatmateの戦略は、ユーザー数の増加に歯止めをかける危険性をはらんでいる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

100万円超の借入が5分で完了ーN26の新サービス

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N26はヨーロッパで1番の先進的な銀行になるべく、最近ものすごいペースでプロダクトの改良を行っており、新機能も多数追加されたほか、サービスを提供している地域も段々と広がってきている。そして新機能はいつも同じ「今あなたが使ってる銀行はダメだ。全てもっとシンプルにできるはず」というスローガンと共に導入される。そんなN26が小口融資の新機能を発表した。

数週間前にこの新機能のデモを見たときはなかなか感動した。ドイツに住んでいる人はアプリ上で融資申請をすることができ、アプリが基本的な質問をユーザーに投げかけながら、順番にフォームを埋めていくような仕組みになっている。

借りたい額や配偶者の有無、家を所有しているかといった質問に答えていき、クレジットチェックが終わると、年利と実際の返済額が表示される。さらにローンの返済期間もカスタマイズ可能だ。

例えば1万ユーロ(約120万円)借りたい場合、N26のアプリ上でクレジットチェックを終えると利率(例えば年利4.59%)と返済額(1万475ユーロ)が表示される。とても分かりやすく、N26はユーザーから何も隠そうとはしていない。そしてユーザーが表示された条件を受け入れると、特別な書類の提出も無しに約1時間後には、N26のアカウントに申請した金額が入金される。

現在のところ、この機能はドイツ国内でのみ利用可能で、借入額の範囲は1000〜2万5000ユーロ、利率が年利で2.99〜8.00%、返済期間は最大5年間となっている。このサービスの裏側では、N26自体が貸出を行っているローンもあれば、サードパーティーの金融機関がN26経由で貸し出しているものもある。

これこそがN26の強みで、同社は複雑なインフラをまとめつつ、消費者に対しては極めてシンプルな機能を提供しているのだ。N26のユーザーにとっては、返済金額さえ把握できれば、お金がどこから来ようが関係ない。

ドイツ以外の状況はどうだろうか?もしもN26の動向を追っている人であれば、同社がEU全体で有効なフルバンキングライセンスを取得したと知っているかもしれない。N26の共同ファウンダー兼CEO Valentin Stalfは、TechCrunch Disruptにて今後ヨーロッパの17ヶ国に進出すると話していた。そしてその17ヶ国に住む人たちは、既にN26で口座を開設できるようになっている。

しかしまだこれは序章に過ぎない。N26は将来有望な市場に注目し、既存のプロダクトを凌駕できるようなものをつくろうとしている。最初のターゲットはフランスだ。現在のところフランス国内のユーザー数は3万人しかいないが、1日あたり1000人のペースで増えている。さらにStalfは、フランスの商業銀行はヨーロッパの中でも最も利用料が高く設定されていると話す。

今の勢いが続けば、すぐにフランスのユーザーは何十万人という数になるだろう。そのためN26は、ベルリンのオフィスで主要諸国の国別担当マネージャーを採用中だ。フランスは、Jérémie Rosselliが担当することになっている。さらにN26はフランスの地元フィンテック企業と協力し、現在ドイツのユーザーが利用中の機能全てを、フランスでも使えるようにしようとしている。

ヨーロッパ中で金融商品を展開するというのは、単にスイッチをONにするよりも少し複雑な話だが、投資や貸出、当座貸越といった機能がそのうちフランスでも利用できるようになるだろう。そしてスペインやイタリアなど、他の国もその後に続くことになる。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ロボットが自動で資産管理 ― フランスのYomoniが540万ドルを調達

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フランスのスタートアップ、Yomoniロボアドバイザーを開発する有望なスタートアップだ。貯蓄の一部を預けると、あとはロボットが自動的に株式や債券を売買してあなたのポートフォリオを管理してくれる。Yomoniは現地時間1日、既存投資家のCrédit Mutuel ArkéaとIéna Ventureから540万ドルを調達したと発表した。

同時に、Yomoniのマネジメントチームは自社株を買い戻して保有比率を引き上げている。

ロボアドバイザーという言葉に馴染みがないのであれば、Yomoniのことをフランス版のWealthfrontやBettermentと考えれば分かりやすいかもしれない。これらの米国企業は成長しつつあるが、フランスではロボアドバイザーは比較的新しい概念だ。

Yomoniは今回調達した資金を利用して人員の強化を図るとともに、サービスに新機能を追加する予定だ。その例としてYomoniが挙げたのは、子どもの将来のために資産を築いておきたい親に向けた新しいプロダクトだ。また、モバイルアプリの開発についても言及があった。

Yomoniを利用して資産運用を始める場合、自分が安全志向の投資をしたいのか、または逆にリスキーな投資をしたいのかを選ぶことができる。この選択によってポートフォリオの運用成果が変わることになる ― そしてもちろん、損失を出す可能性もある。しかし、これまでのところYomoniのポートフォリオは良い成績をあげている。2016年、Yomoniが管理するポートフォリオの資産価値は2.3〜7.1%上昇しているのだ。

Yomoniは今後、手数料によるマネタイズ方法を採用する予定だ ― 手数料率は、年間1.6%程度になるとのこと。先ほど述べたパフォーマンスは手数料を差し引いた後の成績だ。

Yomoniはこれまでに2000人のユーザーを獲得している。管理するポートフォリオの総額は1290万ドルだ(ユーザー1人あたり約6500ドル)。しかし、このトレンドは加速しており、Yomoniは2020年までに運用額を10億8000万ドルまでに引き上げたいとしている。同社はこの目標達成のためにヨーロッパ各国へビジネスを拡大することも考えているようだ。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

モバイルファーストな調査会社Daliaが700万ドルを調達

Dalia founders: Nico Jaspers and Fernando Guillen

Dalia共同ファウンダーのNico JaspersとFernando Guillen

ベルリンに拠点を置くDaliaは、スマートフォン向けのマイクロサーベイを使って、リアルタイムで市場動向や消費者の意見を収集するサービスを提供している。この度同社はシリーズAで700万ドルを調達したと発表した。Balderton Capitalがリードインベスターとなった今回のラウンドには、既存投資家のWellington PartnersとIBB-Betも参加していた。

世論調査の意義が問われている今、Daliaはモバイルテクノロジーを利用して、市場や消費者に関する調査の精度を高めようとしている。

サードパーティーのアプリや、モバイル出版社のウェブサイトに掲載された広告を主なチャンネルとして利用し、同社は従来の調査サービスよりも母数が多く、調査範囲の広いサービスを提供している。さらにスマートUXを使うことで、対象者がアンケートを途中でやめそうになったときは、内容が縮小されたり変更されたりするようになっている。

Balderton CapitalのSuranga Chandratillakeは、消費者が何を考え、なぜ特定の行動をとるのかを理解するという、現代社会が抱えている「根本的な問題」をDaliaは解決しようとしていると電話インタビューの中で語った。

「2016年に起きた事件を見ると、私たちがどのくらい消費者のことを理解できていないかということがよくわかります」と彼は言う。「イギリスのEU脱退に関する国民投票やアメリカ大統領選の結果を、世論調査は予測することができず、今年行われるフランスやドイツの大統領選でも同じような間違いを繰り返す可能性があります」

従来の市場調査会社や世論調査会社が使っている調査方法では、十分な数の意見を取り入れられず、質問の内容も不適切で、人々の判断のもととなる考えを明らかにすることができていない、とChandratillakeはその理由を説明する。

一方Daliaは、スマートフォンを利用し、モバイルに特化した調査方法を採用することで、前述のような問題を乗り越え、若者や新興国の人々など一般的にはリーチしづらい人の声も反映することができ、さらにDaliaのユーザーインターフェースは「調査対象者が楽しみながら、素直に、素早く質問に答えられるようにできている」と彼は話す。

Daliaによれば、同社は2013年のローンチ以降、96カ国に住む人々から10億以上の回答を集めることに成功しており、そのトピックはブランドイメージから「マクロ経済に関する市場心理」まで多岐にわたる。

彼らの顧客には、NielsenやIpsos、Kantar/WPPなど有名な調査会社や調査団体のほか、シンクタンクやUNICEFのようなNGO、スタンフォード大学、Bertelsmann Foundation、欧州外構評議会(ECFR)などが含まれている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ヨーロッパ史上最高額 ー Rocket Internetが10億ドルのファンドを組成

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Rocket Internet自分たちの事業や投資先企業を黒字化できないでいるため、将来的には資金を調達しづらくなるのではないかと考えている人がいるとしたら、考え直した方が良い。今週、ベルリンに拠点を置くRocket Internetが、これまでにヨーロッパのVCがテック系ファンドとして調達した中で最高額だと同社が言う、10億ドルのファンドを組成したと発表した

Rocket Internet Capital Partnersファンドと呼ばれるこのファンドでは、アーリー・レイターどちらのステージにある企業へも投資を行っていく予定で、これはRocket Internet自体の方向性の転換も示唆している。

Rocket Internetは、他の企業が作り上げたビジネスモデルを利用した(”クローン”という言い方をされているのを聞いたことがあるかもしれない)世界中のEC企業の成長をサポートするインキュベーターとして知られており、今回組成したファンドでは既存の投資先企業のほか、新しいスタートアップへも投資を行っていく予定だ。

今月に入ってからRocket Internetは、ロンドン発のソーシャルレンディングスタートアップであるFunding Circleの1億ドルのラウンドに参加していた。担当者によれば、同社はRocket Internet Capital Partners(RICP)を通じた投資を既に1年以上行っている。

「RICPは、2016年1月に第一号ファンドのクロージングをむかえて以降、いくつかの企業へ投資してきました。このファンドでは、マーケットプレイスやEC、フィンテック、ソフトウェア、旅行といった分野に集中して投資を行っています。投資先には、Rocket Internetの傘下にある企業もそうでない企業も含まれています」と担当者は話す。

現在どんな企業がRICPのポートフォリオに含まれていて、今後どんな企業を狙っていくのかということについて彼女は話してくれなかったが、一部の情報は既に公に知られている。最近の話で言えばFunding Circle以外にも、RICPはリクルートサービスUShiftのシードラウンドに参加し、Rocket Internet傘下のオンラインファション企業を統括するGlobal Fashion Groupへは3億6500万ドルという大金をつぎ込んでいたほか(ファッションもRocket Internetの問題のある事業のひとつで、結果的にこのラウンドもダウンラウンドとなった)、エンタープライズ向けにケータリングサービスを提供しているCaterWingsの小規模ラウンドにも参加していた。

これまでにも、投資先企業や上場企業であるRocket Internet自体の財政状況が問題になったことはあったが、投資家は今でも長期的にはそれなりのリターンが見込めると考えているようだ。いくつかの企業が大ヒットすれば状況は大きく好転する可能性があり、実際にRocket InternetはこれまでにもGrouponやeBayなどに対して、巨額の売却を行ってきた。

今回のファンドの組成にあたり、Rocket Internetは全体の14%にあたる1億4000万ドルを投じ、残りの資金は「金融機関や年金機構、資産管理会社、基金、個人の高所得者といった世界中のさまざまな投資家」から集められた。

「10億ドルの壁を越えたということが、RICPが提供する魅力的な投資チャンスに熱意を感じている一流投資家の強い興味を表しています」とRocket Internet CEOのOliver Samwerは声明の中で語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

フランスがテック関係者を対象に特別なビザの発行をスタート

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国内のスタートアップ業界を盛り上げるため、フランス政府が大統領選前最後の施策を打ち出した。French Tech Visaと呼ばれるこの新しいプログラムのもと、EU圏外のテック系人材とその家族を対象として4年間のビザの発行に関する規制が緩和される。

フランスのデジタル大臣Axelle Lemaireは、今月行われたCESにおけるTechCrunchのステージで、このプログラムについて簡単に触れていた。

フランス政府は2015年にもFrench Tech Ticketと呼ばれる、ビザ、少額の助成金、事務処理のサポートがセットになったパッケージをローンチしている。これまでに2グループのスタートアップが対象企業として選ばれフランスでビジネスを展開しており、このプログラムはうまくいっているようだ。

しかしもしもあなたが優秀なエンジニアやデザイナー、VCもしくはレイトステージにある企業を運営しているとしたら、French Tech Ticketよりも新しいFrech Tech Visaの方が理にかなっている。

EU圏内の市民であればフランスで生活するにあたりビザは必要ないが、EU圏外からの移住を考えている人はこのプログラムに応募することで、ビザ発行までのプロセスを簡素化できる可能性がある。申請者の滞在が許可されればその家族もビザを受け取ることができ、これまでにわかっている限りでは特にビザの上限数も設定されていない。

起業家向けには、French Tech Ticket以外にもアクセラレーターやスタートアップコンテストとの共同プログラムが実施される予定で、プログラムに参加すればビザが発行される可能性がある。

被雇用者に関しては、フランス政府が今後発行予定の”注目のフランススタートアップ100(+α)社”に含まれる企業に採用されれば、自動的にビザが発行される。これはエンジニアやデザイナー、マーケターなどにとっては喜ばしいニュースだ。さらに一旦ビザが発行されれば、その期間中ずっと同じ会社に勤める必要もない。

その他のテック企業は、これも比較的新しい”Passeport Talent”の制度を利用してビザを申請できる。アメリカのO-1ビザに似たこの制度を利用すれば、工学、美術、科学の分野で卓越した能力や実績を持っている人にビザが発行される。

投資家に関しては、フランス国内のVCか、新たにフランスでオフィスを構えようとしている海外のVCに勤めている人であればビザを入手できる。さらに前述のPasseport Talentも利用可能だ。

フランスのスタートアップが最近活躍しているのを考えると、これは素晴らしい動きだ。最近フランス国内だけで有能な人材を獲得することが難しくなってきており、新たなプログラムでフランスのスタートアップエコシステムが再び活発化していくだろう。

フランスのスタートアップ界にいる人からは、これまでビザの取得にまつわるトラブルの話を何度も聞いたことがあった。アメリカでのビザ取得には時間がかかり提出する書類の数も多いが、フランスでもその状況は変わらないようだ。新しい制度を利用すると本当にビザの発行が早まるのか、実際に申請者からフィードバックを聞くのが楽しみだ。

そしてもちろん、次の政府がどのような移民政策を打ち出すのかはわからないため、現フランス政府は大統領選前にこのプログラムをローンチしたいと考えている。というのも、一旦プログラムがスタートしてうまくいけば、それを止める方が難しくなってしまうからだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Facebook、偽ニュース対策をドイツでも導入予定

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Facebookが現在アメリカでテスト中の偽ニュース対策をドイツでも導入しようとしている。昨日公開されたブログポストの中で同社は、「数週間のうちに」ドイツでプラットフォームのアップデートを行うと発表した。

また、先月News FeedのヴァイスプレジデントであるAdam Mosseriは、偽ニュースの拡散を防止する方法についての詳細を説明していた。

これには、アメリカ大統領選中にNews Feedを通じて嘘の情報が広まっていたにも関わらず、Facebookは十分な対策をとらなかったとして、たくさんのコメンテーターから非難を受けていたという背景がある。アメリカの成人の過半数がニュースをソーシャルメディア上で読んでいると示唆するPew Research Centerの2016年の調査を考慮すると、この問題の影響力がわかる。

ようやくMark Zuckerbergも、Facebookには「ただ情報を流すためだけのテクノロジーを開発している企業よりも大きな責任」があると認め、Facebookをメディア企業ではなくテック企業だとする以前の発言を撤回した。

「ユーザーが読み、シェアしているニュース記事を私たちは実際に書いてはいませんが、同時にニュースを広めるだけの存在でもないということを認識しています。つまりFacebookは情報公開のための新しいプラットフォームであり、ユーザーが有意義な会話を交わし、有益な情報を得られる場を提供するにあたって、これまでの企業とは違う責任を負っているのです」と彼は12月15日のステータスアップデート内で述べた

現在アメリカではテスト中で、間もなくドイツに導入予定の偽ニュース対策は、以下の3点にフォーカスしている。

  • ユーザーが偽ニュースを通報しやすいようにする(現状の対策だと、ユーザーは右上の角をクリックすることで怪しいポストを通報できる)
  • 疑いのあるコンテンツに”truth warnings(信頼性に問題あり)”という印をつけ、情報が拡散しにくいようにコンテンツの表示順位を下げる。偽ニュースの特定にあたり、FacebookはPoynterの国際ファクトチェッキング綱領(International Face Checking Code of Principles)に署名した外部のファクトチェッカーと協力している。
  • 「有名ニュースサイトの真似をできないようするとともに、現在のポリシーをもっと積極的に施行することで」広告収入目的で偽ニュースをつくっているスパム業者のインセンティブを減少させる(昨年11月にFacebookとGoogleは、偽ニュースからの広告収入を断ち切るため、両社の広告ネットワークを偽ニュースサイトが使えないようにした)。

なぜアメリカの次にドイツで偽ニュース対策が導入されるのかついては、今年ドイツで行われる総選挙が関係している可能性が高い。

ロシアのトロールが、リアルタイムでメルケル陣営に攻撃を仕掛けてくる様子を見るのはなかなか興味深い。ほとんどが新しい矛先をみつけた親トランプ派のアカウントのようだが。

また最近ドイツ政府は、ヘイトスピーチの拡散という別の問題への対応についても、Facebookを非難していた。

そしてFacebookがドイツで協業するファクトチェッカーとして選んだのが、Correctivだ。同社は(まだ)Poynterの綱領には署名していないように見える一方、FacebookはCorrectiveが「ガイドラインへの署名を進めているところだ」と話していた。

TechCrunchが直接Correctivに確認をとったところ、広報担当者は同社が今まさに署名プロセスの真っ只中にあるものの、「技術的な理由(Poynterは現在ウェブサイトを作り変えている)からプロセスの完了までに時間がかかる」と回答した。さらに、コンテンツが偽ニュースかそうでないかを判断する方法について尋ねると、彼は「私たちはまだこのプロジェクトの初期段階にいるため、具体的な方法についてはまだ分かっていません。しかしすぐに答えがでるのは間違いありません」と語った。またCorrectivがどの国内メディアを信頼しているのかという問いに対して彼は、Spiegel、Süddeztsche Zeitung、FAZの3つを例として挙げていた。

Correctivによって偽ニュースだと判断されたポストには警告ラベルが貼り付けられ、それが偽ニュースの疑いがあるコンテンツだということをユーザーがわかるようにするとFacebookは話す。しかし偽ニュースの可能性がある元記事へのリンクは、警告ラベルが貼られたポスト内に残ってしまう。

さらにFacebookは、偽ニュースの疑いがある情報はNews Feed上での表示順位が下がることになると話す。ユーザーは警告ラベル付きのポストを引き続きシェアすることができる一方で、元記事を”信頼性に問題あり”という印無しでシェアすることはできなくなる。

「ドイツでのテスト結果を通して、今後ツールの改良と拡大を進めていきます」(英語原文はドイツ語の文章をGoogle翻訳で訳したもの)とFacebookはドイツでの偽ニュース対策導入に関するブログポストの中で述べた。

「私たちにとって、Facebook上のポストやニュースが信頼できる情報かどうかというのは重要な点です。偽ニュース対策の導入は喜ばしいニュースである一方、まだまだやるべきことはたくさんあります。今後も問題解決に努め、近日中に他国でも対策を導入していく予定です」ともブログには記載されている。

News Feed上のコンテンツの取り締まりにあたり、Facebookが外部の(具体的にはPoynterの綱領に署名済みの)ファクトチェッカーの専門性に大きく依存した対策を発表した後、Poynterは加盟を希望している企業に対する審査プロセスの見直しをはじめた。Poynterのウェブサイトには、見直し後の手続きが整うまで、新規の加盟は受け付けないと記載されている。

Poynterは「アメリカのファクトチェッカーの中間監査は実施済みで、全ての加盟企業に対してレポートを数週間のうちに提出するよう要請する予定です。Facebookのプログラムのテストは既にはじまっていますが、加盟を希望する企業は私たちにオンラインフォーム経由でその旨を伝えることはできます。しかし最終的な審査システムが出来上がるまで、実際の審査は行いません」とし、Q&A形式の記事でFacebookのテストにおける彼らの役割について説明している。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Facebookの決済ライセンス取得で危ぶまれる銀行の存在意義

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【編集部注】執筆者のChristoffer O. Hernæsは、チャレンジャーバンクかつノルウェイ初のオンライン専門銀行であるSkandiabankenのチーフデジタルオフィサー。

Facebookはアイルランドで電子マネーと決済サービスのライセンスを取得したことを、昨年12月頭にようやく明らかにした。しばらく前にFacebookが送金ライセンスを申請したという報道がなされた頃から、同社がヨーロッパで決済市場に新規参入するかもしれないとは噂されていた。さらにPayPalの前社長David MarcusをFacebook Messengerのトップとして迎えたことから、Facebookが決済市場参入の野望を抱いていることは明らかになりつつあった。Mark Zuckerbergが昨年1月に「私たちは決済サービスを提供している会社全てと提携していくつもりです」と話していた通りだ。

アメリカでは既にFacebook Paymentsが提供されており、ヨーロッパでも同サービスを展開するという戦略がまず頭に浮かんでくる。そしてFacebookがMessengerプラットフォームのスティッキネスを高めるためにシンプルなP2P決済サービスを提供することで満足するのか、はたまた5000億ドルを超える世界の送金市場を狙っていくのか、というのはこれから明らかになってくるだろう。

決済を他のサービスと組み合わせて考えると、Facebookが決済サービスを提供し始めることで、従来の銀行は現在の地位が危ぶまれることになるかもしれない。

改正後の決済サービス指令(PSD2)のもと、ヨーロッパの各銀行は金融系のサードパーティに対して決済APIを提供しなければならなくなる。さらにユーザーはサードパーティに1)支払指図と2)口座情報の抽出を委任できるようになる。

Facebookはコンシューマー市場における最も強力なデジタルエコシステムを誇る企業として、リテールバンクを省くことができるポジションにいる。

Facebookは既にFacebook Marketplaceのローンチでクラシファイド広告市場を変革しており、PSD2がヨーロッパ各地で法制化されれば、Facebook自体が支払指図サービス事業者(PISP:Payment Initiation Service Provider)として決済処理を行い、APIを通じて口座情報を直接Facebookのプラットフォーム上に引っ張ってこれるようになる可能性がある。そうすれば、Facebookは支払い関する情報を取得するため、消費者に対して銀行情報にアクセスする許可を求めるられるようになり、一旦アクセスが許可されれば、Facebookはセキュアに消費者の口座へアクセスし、代金を回収できるようになる。

FacebookがPISPになることで、コスト削減以外にも複雑な支払プロセスが省略され、繰り返しサービスを利用する顧客に対しては“ワンクリック”支払のオプションも準備されるだろう。さらにPSD2のもと、顧客の銀行口座から代金を直接回収できるようになれば、支払にかかる時間が短縮されるほか、従来の業界構造も大きく変わってくることになる。

さらにFacebookは、口座情報サービス提供者(AISP:Account Information Service Provider)にもなれる。PSD2では複数の口座にまたがった情報をAISPが取りまとめられるようになっているので、AISPは消費行動の分析サービスを提供したり、複数の銀行の口座情報をひとつにまとめ、ひとつひとつの口座に紐づいた旧来のモバイル・オンラインバンキングソリューションを代替したりできるようになる。

またチャットボットが銀行サービスに大きな変化をもたらすことになるのは既に周知の事実だ。というのも、銀行サービスの大部分は、「次の給料日までに使える金額はいくら?」や「まだ払ってない請求書の支払処理行って」といったシンプルなメッセージを利用して自動化することができるのだ。Facebook Messengerで全てセキュアに行うことができれば、銀行のアプリにわざわざログインする必要はなくなる。

一方、決済ライセンスを持った企業として、Facebookがソーシャルレンディングプラットフォームを運営するためには、一部地域で決済リスクに関する規制対応を行わなければいけない。ヨーロッパ中で300以上の企業が類似サービスを提供しているソーシャルレンディング業界の競争は厳しいが、Facebookは膨大なユーザーベースやユーザーデータ、リスク・信用査定のための口座情報を武器にすることができる。

Facebookはコンシューマー市場における最も強力なデジタルエコシステムを誇る企業として、リテールバンクを省くことができるポジションに既にいる。同社が現在の地位を維持するためには、日々変化する消費者行動に沿って進化していかなければならない。この点に関し、これまでのところFacebookは素晴らしい実績を残している。またFacebookが持つデジタルエコシステムとしての大きな力は、全てのユーザーの個人情報を管理しているという事実に支えられており、上手く行けばFacebookを利用することで電話番号やメールアドレス、口座番号さえ不要になるかもしれない。

その結果、将来的には今私たちが知っている銀行のサービスはコモディティ化し、送金やECのほか日常的な銀行業務含む顧客とのやりとりは全てFacebook PaymentsやFacebook Messengerを通して行われるようになるかもしれない。PWCが行った調査によれば、銀行員の68%が今後顧客との結びつきをコントロールできなくなるのではないかと心配している。Facebookがきちんと規制に対応すれば、その心配は間違いなく現実のものとなるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

.meの歴史、モンテネグロが独立で勝ち取った大きな資産

Montenegro Kotor Bay at Sunset

【編集部注】執筆者のAlan DunnはNameCorpのマネージング・ディレクターでありながら、シニア・デジタル・ネーミング・エキスパート兼ブランドコンサルタントでもある。

10年前、国民投票で賛成派が規定の割合を1%未満の僅差で上回り、モンテネグロはセルビアから分離して独立を果たした。そしてこの独立は、コネチカット州ほどの大きさの同国にとって様々な変化を意味した。数ある重要な変革の中でも、当時あまり注目されていなかったのが、モンテネグロのドメインの変更だった。

ほぼ全ての国がユニークなドメインを持っており、これはccTLD(country code top-level domains=国別コードトップレベルドメイン)と呼ばれている。例えばカナダであれば.ca、イギリスであれば.uk、デンマークであれば.dkというドメインが割り振られている。しかし国民投票以前のモンテネグロは独立国家ではなかったため、(ユーゴスラビアの一部として)cg.yuというドメインを使用していた。2003年のユーゴスラビア解体の結果、新たにモンテネグロには.csというドメインが割り当てられたが、新たなドメインへの移行は活発に行われていなかった。

前述の国民投票の結果を受け、2007年にモンテネグロ政府は公式なRFP(提案依頼書)を発布し、GoDaddy.com、Afilias Limited、ME-net, Ltdのジョイントベンチャーであり、モンテネグロに拠点を置くdoMEn Ltdを指定業者に選んだ。同社は5年間にわたって.meのレジストリとなる契約をモンテネグロ政府と交わし、その後契約は2023年まで10年間延長された。

一見すると、.meドメインとはモンテネグロに関することだと思うかもしれない。しかしこのドメインはその後もっと多くの人々をひきつけ、WordPressやFacebook、PayPalを含むグローバルブランドにも採用されることになった。結果的にこの短いドメインは、ドメイン名そしてモンテネグロの様相を一変させることになる。

100万件の登録

2016年3月に、.meの登録件数が100万を超えた。これは香港とアイルランド、シンガポールのccTLD登録件数を足し合わせた数よりも多い(Domain Toolsの情報)。

.ukや.deといったccTLDの登録件数はもっと多いものの、.meほど世界中に広まったccTLDというのはあまり存在しない。

輸出額の2%

モンテネグロの統計局であるMONSTATによれば、2015年の同国の輸出総額は3億1720万ユーロだった。

それと比較して、doMEn LtdでCEOを務めるPredrag Lesicは「2015年の.meドメインからの売上総計は650万ユーロでした」と話す。さらにLesicは、モンテネグロ政府の会計制度上、ドメイン名からの収益は通信収益としてカウントされているが、「現在.meドメイン登録者の99%以上が国外にいる(=輸出されている)」と付け加える。

つまり.meアカウントはモンテネグロの輸出総額の2%以上に相当するのだ。

誰が.meドメインを購入しているか?

.comや.netのように、.meドメインの所有者の多くはアメリカと中国にいる。doMEn Ltdによる2016年Q3の.meドメイン所有者の内訳は以下の通りだ。

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出典: .me registry

サービス・プロバイダー(登録申請を代行する指定業者)でさえ、ほとんどがモンテネグロ国外に拠点を置く企業だ。2016年Q3時点で、.meドメインを扱う業者の76.45%がアメリカか中国にいるとされている。

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出典: .me registry

モンテネグロは世界中で需要のあるデジタルプロダクトを手に入れただけでなく、ドメインをマネタイズし国内の経済を潤すと共に、産業にも大きな変化をもたらすことに成功した。例えばDomain.meのCSRプログラムの一部として、Spark.meと呼ばれるカンファレンスが2013年にスタートした。

海辺のリゾート都市Budvaで毎年開催されているこのカンファレンスには、テック業界の全ての分野からさまざまな人が参加している。過去にはMatt Mullenweg(WordPress創始者)、Peter Sunde Kolmisoppi(The Pirate Bayの共同ファウンダー)、Christopher Fabian(ユニセフ・イノベーションユニットの共同ファウンダー兼共同リーダーであり、TIME紙が選ぶ2013年版『世界で最も影響力のある100人』のひとり)がスピーカーとして同カンファレンスに参加していた。

一夜にして10年分の成功を掴む

現在世界中には何千という数のドメインが存在するが、10年前に.meが作られたときの状況は今とはかなり違っていた。アメリカ大統領はTwitterアカウントを持っておらず、新しいgTLD(generic top-level domains=ジェネリックトップレベルドメイン)は遠い存在であり、Uberは単なる形容詞でしかなかった。

.meによってccTLDという言葉が一般に広まっただけでなく、.meは.coと共にドメインのマーケティング戦略を大きく変えたと言われている。

モンテネグロが自国で貨幣を発行しておらず、コネチカット州ほどのサイズしかない国だと考えると、全く大したものだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ロシア政府がJollaのSailfish OSを初のAndroid代替OSとして認可

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残り少ない独立系モバイルOSプラットフォームのひとつである、JollaのSailfish OSの未来が少しずつ見え始めてきた。他社へのライセンシングを目的に、Sailfish OSのコアコードの開発・保守を行っている、フィンランド生まれのJollaは、本日同OSがロシア政府および企業で利用されるために必要となる認証を取得したと発表したのだ。

近年ロシア政府は、AndroidとAppleのiOSの複占市場となっているモバイルOS界で、2つのOSを代替できるようなシステムの開発を奨励しようとしており、SailfishとTizenがその候補に挙げられていた。現状では、SailfishがTizenよりも、Androidの代替OSとして優位に立っているようだ。

さらにロシア政府は、海外製モバイルOSへの依存度を抜本的に減らしたいと語っている。具体的には、2015年の段階でAndroidとiOSが市場の95%を占めているところ、2025年までにはこの数字を50%以下にしたいと考えているのだ。

Sailfishがロシアの認証を取得する前に、今年に入ってからOpen Mobile Platform (OMP)と言う新たな会社が、ロシア国内の市場向けにSailfishプラットフォームのカスタマイズ版を開発する目的で、同OSのライセンスを購入していた。つまり、ロシアにとって極めて重要な”Androidの代替OS”は、現在Sailfishをもとに開発が進められているのだ。

OMP CEOのPavel Eygesは声明の中で「私たちは、オープンソースベースで作られ、他のOSに依存していないSailfish OSこそが未来のモバイルOSプラットフォームだと考えています。このOSは、ロシア以外の地域でも活躍できる可能性を秘めています。Sailfish OS RUSは、さまざまな人の参画やパートナーシップの上に成り立っており、ロシアを新たな高みに導くようなイニシアティブに向けて、私たちは積極的にパートナーやディベロッパーコミュニティに協力を働きかけていきます」と語っている。

他の独立系OSとは違って、SailfishはAndroidアプリと互換性を持っているため、MozillaのFirefox OSなど、なかなかユーザーが増えないOSに比べ、利用できるアプリの数において優位に立っている。なお、TizenでもいくつかのAndroidアプリが使えるようになっている。

Jollaは、TechCrunchの取材に対し、同社の投資家に今回Sailfishのライセンスを購入したOMPが含まれていることを認めた。そのため、昨年シリーズCを期間内にクローズできずトラブルに見舞われた(その後復活した同社は、今年の5月に再度資金調達を行い、1200万ドルを無事調達した)Jollaは、今後間違いなくB2Bのビジネスに注力せざるを得なくなる。

つまり今後Jollaは、インドのIntexのように、消費者に対してSailfishが搭載されたデバイスを販売している企業にOSをライセンスすることよりも、企業や政府に対してデバイスを販売している企業へのライセンシングに注力していくことになる。世界的にみれば、消費者向けデバイスにおけるAndroidの支配率はかなり高く、企業や政府の方が、データ・セキュリティについて専門的かつ差し迫った問題を持っている上、政府のサービスインテグレーションに対するニーズなどを考慮すると、この戦略にも納得がいく。

さらにJollaは、最近Sailfishが、ロシアのソフトウェアやデータベースに関する統一登録簿に追加されたと話す。これにより、今後ロシア政府やロシアの公企業は、モバイルデバイス関連のプロジェクトを行う際に、SailfishをOSとして利用することができるのだ。

Jolla会長のAntti Saarnioは、この登録プロセスに2015年の春から1年半近くかかったと語る。「登録プロセスは大がかりかつ長期に渡り、私たちもかなり力を入れてきました。まずは、ロシア情報技術・通信省が作成した代替モバイルOSの長いリストからスタートし、その後数が絞られていった結果、最終的に2つのOSが技術分析の対象となりました。ひとつがTizenで、もうひとつが私たちのSailfish OSでした」

「数ヶ月間におよぶ徹底的な技術審査を終え、彼らはようやくSailfish OSをコラボレーションの相手に選んだのです。その後、ロシア政府がSailfishベースでありながらも、独立したOSを利用できるように、Sailfishのロシア版のようなものを、私たちは現地企業と共同開発しました」

「ロシア政府は、監査・認証のプロセスを経た国家ソフトウェアのリストを持っているんですが、現在のところSailfishだけが、モバイルOSとしてそのリストに含まれています」と彼は付け加える。

ロシア版のOSは、Sailfishの派生物にはならないとSaarinoは強調する。むしろこのモデルは、ライセンシングパートナーのニーズにあわせて、Jollaがそれぞれのバージョンを開発するための土台となるものなのだ。ただし、コアコードは全てのバージョンで同じものが使われることになる。

同時にJollaは、拠点をロシアへ移し、アメリカ以外のひとつの国でだけ、AndroidとiOSに太刀打ちできるようなOSを開発するつもりもない。同社は、フィンランドにヘッドクオーターを置き続け、現在ロシアで取り組んでいるようなプロジェクトを、他のBRICs諸国へも展開していきたいと話しているのだ。

「私たちの使命は、OSをさまざまな目的に適合させ、その効率性を保つことです」とJollaのCEO兼共同ファウンダーであるSami Pienimäkiは話す。

「基本的に、私たちはSailfishをオープンソースのままにして、(ライセンス先に対して)常に最新のバージョンを提供しようとしています。ここでのJollaの責務かつ役目は、Sailfishの派生OSをつくらずに、ライセンス先企業とのコラボレーションを通じてのみ、Sailfishのカスタマイズ版を開発するよう徹底することです。私たちは、このモデルが他の市場でも成功すると信じています」と彼は付け加える。

「Jollaがロシアで成し遂げたのは、国家に対して自社のコードをベースにした独立モバイルOSを、自分たちのリリース方法で提供するという実例を作ったことです。私たちが知る限り、このような例は現在世界中で他には存在しません」とさらにSaarnioは続ける。

「世界中にはたくさんの国家が存在しますが、私はそのうちの多くが自分たち専用のサービスを求めていると考えています。そして、相手がロシアであるかそれ以外の国であるかに関わらず、実際に彼らにサービスを提供する方法について、少なくとも私たちにはノウハウがあります。今後は新たな顧客や国にアプローチして、ロシアで構築したモデルを他国で再現していきたいと考えています」

Sailfishは、大企業の支配が及ぼない独立系かつオープンなOSであるため、目的に応じてコラボレーションやカスタマイズをするのに最適です

「ある国が、自分たちのデータを管理するために、独自のモバイルOSを必要としているとしましょう。そして、彼らは既にクラウドソリューションなどへ投資しているとした場合、彼らの頭の中にすぐに疑問が浮かんできます。『それじゃ、専用のモバイルOSの開発には、どのくらい時間がかかって、いくらぐらいの資金が必要になるんだ?』これは普通であれば、答えるのが大変難しい問題ですが、今の私たちであれば、半年でここまでできると回答することができます。既にロシアでの実施例があり、予算感も把握しています。そのため、ロシアでのパイロットテストが完了すれば、私たちの顧客候補となる国は、具体的な情報をもとに判断を下すことができるんです」

2015年2月に、ロシアの情報技術・通信大臣であるNikolai Nikiforovは、「グローバルITエコシステムの非独占化」を求める発言をし、国内のディベロッパーが、SamusungのTizenとJollaのSailfishをサポートするよう、両社のプラットフォームへのアプリの移植に対して助成金を交付していた。

さらに同年5月、Nikiforovは、Jollaの株主にフィンランド、ロシア、中国の投資家が含まれていることに触れながら、Sailfishのことを”ほぼ国際企業”だと表現していた。

「私たちは、オープンなOSをベースとした、クローズドなモバイルプラットフォームを独自に開発する必要があると考えています。そのような構想をサポートする準備はできていますし、きっとBRICs諸国のパートナーもその計画に賛同してくれることでしょう。インド、ブラジル、南アフリカの戦略投資家も、いずれSailfishに参加することを私たちは願っています」と彼は当時語っていた。

また、フィンランドとロシアの物理的な距離がロシア政府の好感につながり、SailfishがTizenに勝つ要因のひとつとなった可能性も高い。

「Sailfishは、大企業の支配が及ぼない独立系かつオープンなOSであるため、目的に応じてコラボレーションやカスタマイズをするのに最適です」とPienimäkiは、Sailfishが選ばれた理由について話す。

OMPのロシア版Sailfishには、カスタマイズの結果、追加でセキュリティ機能が搭載される予定だ。Sailfishのプラットフォーム自体は既にロシア語をサポートしているため、ローカリゼーションは必要ない。「現在私たちはセキュリティ機能の強化にあたっています。さらに、顧客のニーズに合わせてOSのセキュリティレベルを上げられるように、OS用のセキュリティ・イネイブラーの開発も進めています」とPienimäkiは言う。

Jollaは以前、セキュリティ機能を強化したSailfishのバージョンを開発するため、どこかの企業とパートナーシップを結ぶ意向を示していた。Pienimäkiは、OMPとの協業がその結果だと言う。

「私たちは顧客の望む機能を実現し、OS用のイネイブラーを開発し、ソースコードや、システムの透明性、ライセンシングモデルなどを提供していますが、最終的なソリューションの実装は、その地域ごとの規制やアルゴリズムなどを理解した、地元企業が行うことが多いです。さらに、地元に根づいたテクノロジーを利用するほうが好まれるということも理解できるため、その地域のテクノロジーとの統合についても、地元企業に一任しています」と彼は話す。

Sailfishを搭載したデバイスが、実際にロシア市場に投入される時期については、未だ明確になっていないが、Pienimäkiは2017年中には実現するだろうと話している。さらに彼は、市場に製品が出るまでの最初のステップとして、公企業でパイロットプロジェクトが行われる予定だと付け加えた。

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またSaarnioは、長期的に見て、消費者もプライバシー機能が強化されたAndroidの代替OSを求めるようになると自信を持っているが、現段階では市場がSailfishを求めてはいないと認め、Indexが次の(上図のような)Sailfishデバイスを発売する予定もないと言っている。だからこそ、Jollaはビジネスモデルを、B2BやB2B2Gのライセンシングパートナシップモデルへと切り替えたのだ。

さらにJollaは、現在中国や南アフリカ政府ともSailfish導入に関する議論を進めている。

「中国はロシアよりも、交渉が難しい国です。しかし今回のロシアの例が、中国政府にとってかなり具体的なプロジェクト提案になると言え、さらに彼らは明らかにSailfishのようなソリューションを必要としています」とSaarnioは語る。

「さらに私たちは、他のBRICs諸国とも話を進めており、南アフリカとの議論や交渉も進行中です。しかしもちろん、普通の企業である私たちには、政治的な意図はありません。そのため、独立系OSの必要性や課題を持っている国であれば、どんな国とも喜んで議論をしていくつもりです」

また資金面に関し、Jollaは次の投資ラウンドを検討してはいるものの、新しいビジネスモデルのおかげで資金ニーズは減っているとSaarnioは話す。

「ライセンス先となる法人顧客へとターゲットを変更した結果、Jollaのキャッシュフローも増加しています。そのため、私たちはエクイティ過多の財務体質から脱却しました。しかし当然新たな資金は必要となるため、新しいライセンス先の獲得に努め、新たな顧客からの収益でキャッシュフローがポジティブになるよう願いながら、外部資金調達の計画も立てています」

また、JollaはSailfishを”オープンソース”と表現しているものの、プラットフォームの一部の要素は依然として公開されていない。同社によれば、この部分についても出来る限り公開しようとはしているものの、リソース不足から計画は思うように進んでいない。

「私たちは、プラットフォームの非公開箇所の公開に向けて努力を続けており、今はUIやアプリケーションのレイヤーを優先して、段階的に情報を公開していくつもりです。具体的な計画の詳細については、準備ができ次第発表します。いずれにせよ、私たちはこの課題に本気で取り組んでいきます」とPienimäkiは話す。

「私たちが採用している、ライセンス先企業とのコラボレーションモデルからも恐らく分かる通り、顧客もライセンシングとオープンソース、コラボレーションを組み合わせた形を望んでいます」

「オープンソースとは、実は私たちにとっての投資でもあるんです。ただソースコードを公開したからといって、みんながハッピーになるわけではありません。私たちがそのプロセスをサポートすることによって初めて、コミュニティ内の人たちが公開されたソースコードから意味のあるものを作ることができるんです」とSaarnioは語る。

「そして私たちのような企業にとって、これは大きな投資だと言えます。しかし、Jollaは今の道をこのまま進んでいくつもりでいると同時に、この投資が無駄になることがないよう、きちんとそのプロセスを管理しようとしています」

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ブレグジットで陰るイギリスのフィンテック業界にGoCardlessが見た一縷の望み

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イギリス政府は依然としてブレグジットの計画に関する詳細を明らかにしておらず、そもそも計画の存在自体を疑う人もいる中、イギリスに拠点を置く企業は、ブレグジットが持つ意味について分からないままでいる。

首相の「ブレグジットはブレグジットでしかない」という主張は上手い表現だが、ビジネスプランをつくろうとしている人にとっては何の意味もなさない。

イギリスのEU離脱による予算への影響を予測しようとしている予算責任局(OBR)にとってもそれは同じだ。

OBRよ、まさにその通りだ。「私たちが政府にブレグジットの意味を尋ねたところ、ブレグジットはブレグジットでしかないと、何の役にも立たたない回答が返ってきた」

しかし、ロンドンに拠点を置くGoCardlessは、少なくとも国内のフィンテク業界には一縷の望みがあると考えている。11月23日に財務大臣が発表した秋季財務報告書の中には、(ブロードバンドのインフラ、自動運転車、電気自動車、VCなどを強化する施策と並んで)フィンテックをサポートするいくつかの施策が明記されていたのだ。

その施策には、スタートアップ向けの特別予算年間50万ポンドや、各地域におけるフィンテック特使の任命、“State of UK fintech(イギリスフィンテック業界の現状)”年間レポートの発行、電子ID認証の近代化に関するガイダンスなどが含まれていた。

ブレグジットの広範囲に及ぶ影響を考慮すると(OBRはブレグジットにより、イギリスの公共財政に590億ポンドの悪影響があるとの概算を示している)、フィンテック業界に投じられる年間50万ポンドという額は大したことがないように映る。とはいえ、ブレグジットの悲劇の中でも、イギリスのスタートアップにとって何か良いことがあるべきだ。

「政府は、フィンテックが高成長を見込める業界で、多くの可能性を秘めていると示唆しようとしているのだと、私たちは考えています。数十億ポンドの予算を見込んでいれば、イギリス中の注意をフィンテックに向けようとしているサインになりますが、少なくとも政府自体がこの業界に注目しており、成長を促そうとしているのがわかります」とGoCardlessで法務部門のトップを務めるAhmed Badrは語る。

現行政府は、これまでにイギリスのフィンテックスタートアップの経済的な可能性に注目したことがあるのだろうか?という問いに対して、彼は「政府の公式な文書にそれが現れたのは、恐らく今回が初めてのことでしょう。しかし、財務報告書のように公式かつ重要な文書としてではないものの、これまでにも政府は、Innovate Financeのような団体を通じて、フィンテック業界の発展を促進しようとしていました。その活動は今でも続いており、これ自体はとてもポジティブなことです。今回そのような動きが、きちんと財務報告書の中に反映されたというのは、もちろんさらに喜ばしいことです」と答えた。

さらにBadrは、金融サービスへのアクセスに利用される(紙ベースのIDチェックとは対照的な)テクノロジーをサポートする目的で、政府が金融サービスの業界団体であるJoint Money Laundering Steering Groupと共に、電子ID認証システムの近代化を図っていることを、”極めて明るい話題”だと歓迎する。

そして「電子認証システムが導入されれば、サービス利用開始時やデュー・デリジェンスの業務がかなり効率化する可能性があります。利用者の中には本人確認のプロセスを面倒だと感じている人もいるため、カスタマーエクスペリエンスの向上に努めている私たちのようなフィンテック企業にとって、この施策は極めて重要です」と続ける。

「電子ID認証は、詐欺や身元詐称を阻止する上でも大変有効なツールです。古臭い紙の文書から、便利かつ正直なところ信用性も高い電子IDへのシフトが早く実現することを私たちは願っています」

もちろん、ブレグジットに関してフィンテック業界が1番心配しているのは、EU離脱に関する条件交渉をイギリス政府が進める中で、同国が金融パスポートを失うことになるのかどうかということだ(数年におよぶ条件交渉は、来年3月末までにスタートする予定)。金融パスポートとは、欧州経済領域(EEA)加盟国のいずれかで金融サービスを提供することを許された企業が、長期に渡る複雑な認証プロセスを繰り返すことなく、他加盟国でも同じサービスを提供することができる権利を指す。

Badrは、秋季財務報告書の内容から今後イギリスのフィンテックスタートアップにとってポジティブな流れが生じると考えているが、フィンテック業界を支える金融パスポートを、イギリス政府がなんとしても保持しようとしているかについてまでは確証を持っておらず、長引いているブレグジットの条件交渉に触れながら「現段階では、金融パスポートについて何も言うことはできません。何が起きるか全く分からないことについて無責任な予測もしたくないですしね」と語っていた。

「もちろん私たちは、政府に対して金融パスポートがフィンテックにとってどれだけ重要かという説明を行ってきました。恐らく私たちが言うまでもなく、継続的にヨーロッパ市場へアクセスできることが金融サービスにとって大切だということは政府も認識していると思います。金融パスポートであれ、他の形であれ、もしも政府高官の間でどのようにヨーロッパ市場へのアクセスを保つことができるかという議論が行われていないとすれば、むしろ驚きです」と彼は付け加える。

しかしGoCardlessは、ブレグジットの影響で金融パスポートが失効してしまったときのためのバックアッププランも用意している。最悪の場合同社は、他のEU加盟国のどこかに子会社を設立し、金融パスポートを保持しようとしているようで「必要であればそれも辞さない」とBadrもそれを認めている。

同時に、設立から5年が経ったGoCardlessは、イギリスから国外へ完全に脱出する必要もないと今の段階では考えている。ロンドンという街には、住みやすさや、例えば教育水準が高い大学のおかげで、優秀な人材へアクセスしやすいことなど、不変の良さがあるとBadrは話す。「このようなロンドンの長所は、ブレグジット後も無くなってしまうことはありません。本当に金融パスポートを保持することだけが、GoCardlessが後回しにしていたかもしれないことを、恐らく前進させるきっかけになると思っているんです」と彼は主張する。

ヨーロッパのフィンテック中心地としてのロンドンの地位が、ブレグジットによって危ぶまれることになると彼は考えているのだろうか?その答えとしてBadrは、ヨーロッパ中でフィンテック業界の競争が激化することで、ビジネスを国外へ移動させる動機が増えるだけでなく、イギリス国内の金融サービスのイノベーションが活発化すると期待している。

「誰も金融サービス企業にとっての金融パスポートの重要性を疑っていはないでしょう。ただ、それはイギリス企業だけの話ではなく、イギリス以外のヨーロッパ諸国に拠点を置く数々の企業が、イギリス市場で金融ビジネスを行う上でも同じです」と彼は語る。

「他国の金融サービス企業も、イギリス企業と同じを動きをとることになると思いますか?もしもイギリスの金融パスポートがなくなり、何の代替手段もないとすれば、きっと双方向に同じ動きが起きると私は思います。つまり、これまでヨーロッパ諸国で営業するために金融パスポートを利用していたイギリスの金融サービス企業は、他国に子会社を設立するでしょうし、イギリス国外の企業で、これまで金融パスポートを使って、イギリス市場にアクセスできていた企業についても、イギリスに子会社を設立して、営業を行うことになると思うんです」

「現在のところ、GoCardlessの売上の大半はイギリス国内で発生しているため、外国に子会社を設立してもしばらくの間は、小規模なオペレーションにとどまると思います。しかし同時に、イギリスでそうだったように、他国の子会社も急成長することを願っています。もしかしたら、将来的にはイギリス以外にも、フィンテックの”中心地”となるような国や都市が突如誕生したり、現在ある程度力を持っている地域が、徐々にヨーロッパ内での地位を高めていったりするかもしれません。また、イギリス企業が国外に出ていくにあたり、全ての企業があるひとつの街や地域に集中して移動するというのは考えづらいです。むしろ、移転候補先になりえる都市が、これからいくつか誕生してくるでしょう」

ブレグジットに関して明らかになっていない点は多々あるものの、Badrは現時点でGoCardlessが、この困難を乗り切る”ひそかな自信がある”と語っている。「困難という意味では、スタートアップはこういった問題に直面する運命にあります。私たちは、新しい環境や社内の変化に適応するのに慣れているので、今後も引き続き、私たちの順応性を証明していければと思います」と彼は話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ロシアのSpotify、Zvooqが社員の引き抜きを理由にYandexを相手取り2900万ドルの賠償請求

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西欧の主要レーベルを味方につけ、ロシアと独立国家共同体(CIS)で音楽ストリーミングサービスを提供しているZvooqが、Yandexに2900万ドルの賠償金を求める裁判を起こしている。同社は、ロシアの検索エンジン大手Yandexが、今年の2月に両社の間で結ばれたとされる秘密保持契約書(NDA)に反し、自社の音楽ストリーミングサービスのために、Zvooqのキーメンバーを引き抜いたと主張しているのだ。

モスクワを拠点とし、キプロスに登記されているZvooqは、Yandexを不正競争とNDA違反で訴えている。なお、問題となっているNDAは、YandexがZvooqの戦略的投資家になる意向を示したことを契機に締結されていた。

NDAの中では、調印日から6ヶ月以内に、YandexがZvooqの社員を自社に勧誘することや、社員に解雇を促すことが禁じられていた。

しかし今春、同社のマーケティングディレクターを務めるVarvara SemenikhinaがYandexから勧誘を受けた結果、同社の音楽ストリーミングサービスであるYandex.Musicのマーケティングディレクターに就任したとZvooqは主張しているのだ。

2014年7月からZvooqに勤めていたSemenikhinaは、同社のプラットフォームの開発に”密に関わって”おり、さらには将来的なビジネスプランにも通じていたとZvooqは話す。

またZvooqは、Yandexによる引き抜きが、Zvooqの大型資金調達計画のタイミングと重なっていたため、投資家や同社の買収を検討していた人たちがZvooqから離れていってしまったと語っている。

Zvooq共同ファウンダーのVictor Frumkinは、「不正競争や不正な商習慣が業界全体に与える影響を考慮して、私たちは今回訴訟に踏み切りました。これは特に、公正なビジネス環境が整っていないロシアでは重要なことだと考えています。自由で開けたマーケットは、主要なプレイヤーが適正競争に関する基本的なルールを守ってこそ、効果的に機能するものです。そうすることでしか、Zvooqのように素晴らしいビジネスモデルと革新的なアイディアを持った企業が、消費者の生活を良くすることはできません。もしも企業の行いや市場原則に関する基本的なルールが守られなければ、また、もしも締結済みの契約書の内容が履行されなければ、政界に繋がりを持ったモラルの低い企業だけが市場で生き残ることになってしまいます。昨今の地政学的な状況を鑑みて、保護貿易主義が台頭しているロシアではなおさらです」と話す。

「Yandexによる引き抜きは許されざる行為であり、彼らはその報いを受けるべきだと考えています。というのも、今回の事件によってYandexは、世界中の人々に対して、ロシアの商習慣はまだ未発達で投資には高いリスクが伴うと言っているようなものです。私が知る限り、YandexはZvooq以外の企業にも同じようなことを行ってきており、業界全体のためにも、不正な商習慣がこれ以上悪影響を生み出さないように、私たちはこの状況に歯止めを掛けたいと考えています」と彼は続ける。

Zvooqのリーガルステートメントは、NDAの締結地でもあるリマソール(キプロス)の地方裁判所に提出されているため、英国法に基いて裁判が進められることになる。

Yandexの広報担当者は、TechCrunchに対し「私たちは、この裁判の知らせにとても驚いています。Zvooq社員の引き抜きは起きていないため、YandexはNDAにも違反していませんし、ここ数日の彼らの発言には、現実の状況が反映されていません。私たちは法的な立場を十分に理解しておりますので、裁判でそれを守るだけです。ZvooqとYandexの関係についてのこれ以上の詳細は、企業秘密のためお答えすることはできません」と語った。

ZvooqからYandexに引き抜かれたとされる、Varvara Semenihinaは「私の転職とヘッドハンティングは全くの無関係です。私がYandexにCVを送るずっと前に、Zvooqは私が辞めることに合意していました」と話す

ZvooqもZvooqで、Yandexがロシアの地元メディアに対して一方的な説明をしていると語っている。

ロシアのテックシーンに詳しい情報筋は以下のように語っている。「Yandexは以前ロシアのテック界の申し子でしたが、Googleによってロシア第2位の地位へと徐々に押し込まれてきています。さらに地政学的、経済的にも孤立しはじめたことから、現在同社は暴君のように振る舞っています。そのため、Zvooqのような小さなスタートアップは、以前にも増して今回の引き抜き事件のような集中攻撃を受けて、彼らにねじ伏せられてしまっているんです」

Zvooqによれば、同社の音楽ストリーミングサービスには現在2500万曲が登録されており、Zvooqはユーザーに対して、Universal Music GroupやSony Music Entertainment、Warner Musicといった大手レーベルからライセンスを受けた楽曲を提供している。

今年の6月にZvooqは、500万ドルの資金を調達すると共に、大手携帯電話オペレーターのTele2とパートナーシップ契約を結んでいた。さらにZvooqは、Yandex.Music、Google Play、Apple Musicに続く、ロシア第4の音楽ストリーミングサービスと考えられている。

また、2014年の8月にZvooqは、シリーズAで2000万ドルを調達しており、ロシアの小売企業Ulmartがリードインベスターとなったこのラウンドには、フィンランドのプライベート・エクイティ・ファンドEssedel Capitalが参加していた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ブレグジット後のヨーロッパで人材サービス市場に挑むスタートアップYborder

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ブレグジットが、善かれ悪かれイギリスメディアの”お気に入り”のトピックとなった今、イギリス国内に拠点を置く企業が、国外へ脱出するか否かについて、大いに興味が寄せられていると考えている人もいるだろう。それはもちろんのことなのだが、それ以上に見定めるのが難しいのは、人材がどこへ移動する、または移動しようとしているかということだ。特に”ミレニアル”世代の人材は、流動性が高くノマド気質なため、その判断はより一層難しくなる。人材動向は、次のアツい市場はどこであるかや、向こう数年間でどの国や都市の力が弱まるのかという重要な情報を掴むための早期警告システムとしての機能を担うことができる可能性があるという意味で、企業の動向よりもずっと興味深い。

しかし、テック系の人材が国をまたいで移動する際に浮上してくる問題がある。それは、言語だ。ドイツの求人の63%は英語に翻訳されておらず、フランスの求人の81%はもちろん(Mai, oui!)フランス語で書かれている。そのため、この市場で求められているのはテック系の人材が移住するための手段なのだ。

パリに拠点を置くスタートアップのYborderが、この問題を解決しようとしている。他にも多数存在するリクルートメントプラットフォームのように、Yborderはヨーロッパ中のヘッドハンターのネットワークを通じて、プラットフォーム上で人材を認証し、彼らの希望勤務地を可視化することで、人材を探し求めている企業のサポートを行っている。

というのも、エンジニアのスキルを学ぶ学生の数を国策で増やしたところで、全てが解決するわけではないのだ。

Yborderが本日発表したデータを見ると、転職希望者の勤務地の検討状況に、ブレグジットがどのような影響を与えているかについての示唆を得ることができる。

今年の7月の時点では、Yborderプラットフォームの利用者の20%がイギリスを希望勤務地として選択していた。しかし9月には、この数字が8%にまで減少した

その後10月には14%に落ち着いたが、11月(本日発表されたデータ)には12%まで微減した。

Yborder共同ファウンダーのMaya Noëlは「ブレグジット以降、グローバルで見たときのイギリスの魅力は低下しました。ブレグジット以前、イギリスを希望勤務地として選択する人の割合は20~25%で安定していましたが、今後は12~14%付近にとどまると予想しています」と語る。

つまり、テック系の人材にとってのイギリスの魅力は、ブレグジット以降ほぼ半減したのだ。

とは言っても、イギリス人気は他の欧州諸国に比べれば依然高く、アメリカの方が若干勝っているものの、ほぼアメリカと同じレベルだ。平均すると、テック系の転職候補者の6%がドイツへ、3%がフランスへ積極的に移住したいと考えている(なお、アメリカへ積極的に移住したいと考える人の割合は14.5%だった)。

興味深いことに、候補者の約25%がカナダへ移住したいと考えている一方、アメリカに移住したいと考えている人の割合は20%だった。「今後恐らくアメリカに住みたいと考える人の数が減り、カナダに住みたいと考える人の数が増えてくるでしょう。しかし、まだそれを判断するには早く、もう少し様子を見なければいけません」とNoëlは話す。

巷では明らかに人材獲得競争が巻き起こっている。一般的に、優秀なエンジニアは普通のエンジニアの3~10倍生産性が高く、2桁パーセント(場合によっては20~30%)の投資節約効果をテック企業にもたらすと言われている。

ヘッドハンターがYborderプラットフォーム上で候補者を認証すると、彼らは求人情報を閲覧したり、企業からオファーを受け取ったりできるようになる。

さらにYborderは、プラットフォームとSmartRecruitersなどのATS(採用管理システム)をAPI経由で連携させている。そのため、既に何らかのATSを利用している企業は、Yborderにログインしなくても、ATSのポータルを介して自動でアラートメールを作成することができるのだ。

Yborderのサービスの背景には、ヘッドハンターや企業が、より多くの人材にひとつの窓口からアクセスできるようにするという考えがある。

6人のメンバーから構成されるYborderのサービスは、現在ヨーロッパ中から360人の月間アクティブユーザーと220人のヘッドハンターに利用されており、これまで6000件のアラートが送付されているほか、ユーザーがサービスの利用を開始してから雇用されるまでの平均期間は3週間を記録している。

もちろん同じ業界で活躍する競合企業は存在し、サイズで言えば、VetteryTalent.iohired.comの方がYborderよりもずっと大きい。しかしYborderは、各国のリクルートメント専門家のネットワークや、広範囲に渡る採用実績、そして候補者に対する厳しい選定基準で差別化を図っている。

ビジネスモデルとしては、一般的な手数料モデルをとっており、候補者がYborderを通じて採用されると給与の12%が同社に入ってくるようになっている。Yborderはヨーロッパ中に約1500万人のディベロッパーがいると推定しており、この分野の求人数は10~15%の割合で増加しているという。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

コワーキングスペースのTalent Gardenが1300万ドルを調達

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今では至る所にコワーキングスペースが設立されている。しかし、WeWorkTechHubといった企業が主要国の首都圏にフォーカスする一方で、コワーキングスペースという分野がまだ発展途上の国にある「豊かな土地」に目をつけてきた企業もある。

コワーキング・ネットワークのTalent Gardenは、Endeavor Catalyst(LinkedInが支援するVC)、500Startups、そしてイタリア最大の投資銀行であるTamburi Investment Partnersなどから、1200万ユーロ(1300万ドル)を調達したことを発表した。今回の資金により同社は、イギリスやアイルランド共和国を初めとしたヨーロッパ各地への事業拡大を目指す。同社の事業拡大モデルは、北欧や東欧にある「将来有望な都市」にフォーカスするというものだ。

イタリア北部にあるBresciaという小さな街からスタートしたTalent Gardenは、過去5年間ヨーロッパ各地にコワーキングスペースを設立してきた。

実際のところ、これまで同社は運営コストが低いイタリア各地にコワーキングスペースを設立しており、アルバニア共和国の首都であるTiranaやルーマニアのBucharestにも拠点を構えている。

現在、同社はヨーロッパの5カ国(イタリア、スペイン、アルバニア、ルーマニア、リトアニア)で17のコワーキングスペースを運営しており、会員数は1500人だ。今後はドイツ、オーストリア、スイス、フランスなどにも拡大し、スペインにある施設数も増やしていくという。

同社は「TAG Innovation School」と呼ばれる教育プログラムも運営しており、コーディングやUX、Eコマースなどを学べるコースを提供している。

Talent Gardenの創業者兼CEOのDavide Dattoliは、同社は従来のコワーキングスペースのようにテック系のスタートアップのみにフォーカスするのではなく、小規模のデザイン会社やマーケティング会社などにも注力することでネットワークを築いてきたと話している。

彼によれば、同社が狙うのは「第2のマーケット」であり(つまり、ロンドンやベルリンは含まれない)、彼らのターゲット顧客はそこで働くクリエイティブ系のフリーランスや企業だという。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

ロシア発のThngsはモノのWikipedia

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モスクワに拠点をおくThngsは、形のあるものを対象にしたWikipediaのようなサービスを開発している。しかし、現在同社がマネタイズの方法を模索していることを考えると、Wikipediaの哲学に共感している人はこの対比に納得がいかないかもしれない。

まずは美術館をターゲットとしているThngsは、高画質な写真や説明と共にモノをデジタルに保管することで、その情報を永遠に保存できるようなサービスをつくろうとしている。

同社は既に、ロシア国内のふたつの美術館(Polytechnic MuseumMoscow Design Museum)と契約を結んでいるほか、美術館やメーカーがオンラインコレクションを作成する際に使えそうな”Shows”を何十種類も準備している。

「Thngsは、モノ(Things)に関する情報を集めて共有するためのサービスです」とCEO兼共同ファウンダーのDima Dewinnは説明する。「Thngs上では、簡単かつ快適にモノの情報を発見し、共有し、保存できるようになっています。美術館やコレクター、ブランド、メーカーは、Thngsを使うことで、現実とほぼ同じようなエクスペリエンスを提供し、ターゲット層にリーチすることができます」

Dewinnによれば、Thngsの資金調達はこれまで上手くいっておらず、事業に必要なお金は全て自己資金からまかなわれてきた。「私たちはこれまで何度かロシアの投資家とミーティングの場を設けてきました。といってもロシアの投資家という存在自体、神話みたいなものですけどね」と彼は話す。「ロシアの投資家からは、Thngsのような複雑なサービスを構築するのは不可能だし、万が一サービスが完成しても儲からないと言われました。一方アメリカのVCからは素晴らしいサービスだと言ってもらったんですが、彼らの投資を受けるにはアメリカに拠点を移さなければいけないんです」

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外部から投資を受ける代わりに、Thngsは主要な機能の開発に注力し、それをマネタイズする方法を編み出した。実は美術館は、コレクションの電子化や電子化されたコンテンツを効果的に使うためのツールという、まさにThngsが提供可能なサービスを必要としていたのだ。「メーカーも同じニーズを持っています」とDewinnは話す。

そのような企業のために、Thngsは、高画質な写真や360度画像の制作をサポートするとともに、一般の人に馴染みがある形式でコンテンツを公開できるツールを提供している。さらにThngsは、Getty Imagesとパートナーシップを結び、顧客(美術館、ギャラリー、コレクターなど)がコレクションの写真や360度画像、3DモデルなどをThngs経由で販売できるようなサービスを間もなくローンチする予定だ。

「全てのモノを物理的に保存することはできませんが、私たちはモノに関する情報であれば保存できます。モノのWikipediaとして開発されたThngsには、全てのアイテムに個別ページが割り当てられるほか、誰でも編集可能なメタデータや画像、関連ファイルを追加するためのスペースも用意されています。私たちはモノを発見し、収集し、購入できるようなツールの開発を目指しているんです。例えるならば、モノで溢れる現代に誕生したノアの方舟といったところでしょうか」とDewinnは付け加える。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

小惑星採掘のPlanetary Resourcesがヨーロッパの小国ルクセンブルクで2800万ドルを調達

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ヨーロッパの小国(しかし裕福な国)のルクセンブルク。みずからを商業の味方だと呼ぶこの国で、小惑星採掘企業のPlanetary Resourcesは有望な鉱脈を探り当てたようだ。ルクセンブルクは同社に対して1200万ユーロの直接投資を行うと発表し、同時に民間の投資銀行であるSNCIも1300万ユーロを出資すると発表した。

この話は突然現れたわけではない。ルクセンブルクとPlanetary Resourcesは今年6月、両者のパートナーシップに関する合意に達したことを発表しているが、その時は出資規模や契約内容を明らかにしていなかった。そして本日、その詳細が公式に発表されたというわけだ。

ルクセンブルクの副総理を務めるÉtienne Schneiderは、「ルクセンブルク大公国はPlanetary Resourcesのシェアホルダーとなることで彼らとパートナーシップを結び、これからの両者の協力関係の礎を築くことができました」とプレスリリース(PDF)の中でコメントしている。

今回の出資は特定の採掘場やテクノロジーに対する投資ではなく、企業そのものに対する投資だ。森林と山々に囲まれた、ロードアイランド程の面積しかないルクセンブルクが、みずから大規模な調査を開始するのは難しいのだ(観光に行くことはおすすめする。とても美しい国だ)。

同社が今回調達した2500万ユーロ(約2770万ドル)は、2020年にローンチが予定されている小惑星調査システムの開発費用となる。また、同社は5月にも2100万ドルを調達している。

だが、ルクセンブルクは他の選択肢も手元に握ったままだ。同国はPlanetary Resourcesの競合企業(まだ両者ともプロジェクトを開始していないので、潜在的な競合とも言うべきか)であるDeep Space Industiesともパートナーシップに関する合意に達しているのだ。しかし、この出資内容の詳細はまだ明かされていない。

もしルクセンブルクと宇宙関連企業とのパートナーシップの動向に興味があれば、この公式サイトでチェックすることができる。

[原文]

(翻訳:木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Foodpandaが1億ドルでロシアのフードデリバリー事業をMail.Ruに売却

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Rocket Internetの投資先で、フードデリバリー事業を営むFoodpandaが、海外事業のさらなる処分を進めている。本日同社は、ロシアにある子会社のRussian Delivery ClubをMail.Ru Groupに1億ドルで売却すると発表した。

売却益を他の事業に投じることで「コアとなる地域にさらにフォーカスできる」とFoodpandaは話す。今回の売却は、Mail.Ruがロシアの顧客に売れるような他のサービスがないか探しているタイミングで起きた。Mail.Ruによれば、mail.ruやFacebookのようなSNSのVK.com、ICQといったサービスを通じて、同社はロシア国内のインターネット人口の94%と繋がりをもっている。

Foodpandaのロシア事業は短期間で終わりを迎えることとなった。2012年に同社はロシア市場へ参入し、2014年には現地企業のDelivery Clubを買収してロシア事業を増強したばかりだった。

Develiry Club単独での評価額は不明だが、FoodpandaはDelivery Clubが全売上の10%を占めていたと話す。さらにFoodpandaは今回の売却を成功と捉えており、彼らの言葉を引用すれば「素晴らしいリターン」を得ることができた。

しかし、Foodpandaの株式の49%を保有する親会社で、今では上場企業となったRocket Internetは、広範囲に渡る投資先の中から赤字事業を切り続けている。対象となっているのは、芽が出はじめた、もしくは成長を続ける世界中のECスタートアップだが、なかなか上手く進んでいない。なお、Foodpandaは今回の売却によって、今後20の市場でビジネスを展開することになる。

今年に入ってから、Foodpandaは他にもスペイン、イタリア、ブラジル、メキシコの子会社をJust-Eatに1億4000ドルで売却し、インドネシアを含む東南アジア事業も売却した。

さらにDelivery Clubの売却は、Rocket Internetが(いつものようにカリスマ性のある名付け方で)Global Online Takeaway Groupと呼ぶ、事業統合計画の一部でもある。その一環としてRocket Internetは、以前は競合相手であったDelivery Heroに投資し、アセットスワップも実行している。

Foodpandaのロシア事業単体が黒字であったかどうかは分からないが、一般的に言って今回の売却は、オンラインテイクアウェイ・デリバリーサービス市場で利益を増やすことの難しさ、そしてギャップを埋めるために必要な外部資金を調達するのが最近難しくなってきていることを表している。

実際にFoodpandaも「今回の売却益は、アジア、中東、東欧といったFoodpandaのコアとなる地域で、引き続き事業を拡大するために投資される予定です」と発表しており、Delivery Clubの売却は確かに自分たちで資金を調達するための手段だったとも考えられる。

そして、Foodpandaはコア地域に注力せざるを得ない状況にある。というのも、FoodpandaとDelivery Heroの関係が良化したところで、DeliverooUber Eats、そして新たに加わったAmazon Restaurantsといった競合の影が既に見え始めているのだ。

Uber Eatsは、シェアライド界の雄であるUberにとって重要な新規事業で、今年の夏には新たな幹部をアジアで採用していた

なお、Foodpandaはこれまでに外部から3億1800万ドルの資金を調達したと発表している。”発表”としたのは、Rocket Internetがインキュベーターとなったスタートアップは、資金情報を進んで公開していないため、調達額がこれ以上である可能性があるためだ。3億1800万ドルというのは、これまで公にされている調達資金の合計額ということになる。

「Deliery Clubの売却はFoodpandaにとっての大きなマイルストーンであり、市場をリードするようなフードデリバリー事業を立ち上げてスケールさせる力をFoodpandaが持っている、ということの証明でもあります」とFoodpandaグループのファウンダー兼CEOのRalf Wenzelは声明の中で語った。「私たちの事業を現地のネット業界のリーダーであるMail.Ruに移管することで、Foodpandaはアジア、中東、東欧市場での事業拡大に集中でき、結果として私たちのマーケットリーダーとしての地位を確固たるものにすることができます」

Mail.Ruは、事業の多角化および、既存のビジネスに新たなサービスを付加しようとしている同社の動きの一環として、Delivery Clubを買収した。Mail.Ruの既存ビジネスには、ロシアで1番の人気を誇るメールクライアントのmail.ruや”ロシアのFacebook”として知られるVK.com、メッセージングプラットフォームのICQなどがある。

ゲームなどのサービス以外にも、Mail.RuはGoogleやYandexからヒントを得て、巨大なカスタマーベースを利用した決済サービスの開発を行っている。

「Mail.Ru Groupがロシアのモバイル界を牽引する中、Delivery Clubの買収によって、私たちのモバイルサービスの幅がさらに広がっていくことになるでしょう」とMail.Ru Groupの会長兼共同ファウンダーであるDmitry Grishinは話す。彼は先週CEOの座から退き、今後は同グループの戦略面にフォーカスした業務を行っていく予定だ。

「フードデリバリー市場は引き続き安定した成長を見せており、私たちのネットワークやリソース、専門性と、Delivery Clubのマーケットリーダーとしてのポジションが組み合わさることで、この市場でさらなる成功を掴むことができるでしょう」

さらに興味深いことに、FoodpandaによるDelivery Clubの売却から、フードデリバリー業界の別のトレンドが浮き彫りになった。それは、もともと保有していた食品関連事業を手放すEC企業がいる一方で、同業界へ真剣に参入しようとしている企業も同時に存在するということだ。

ちょうど昨日も、AmazonのクローンのようなLazada(以前はRocket Internetの傘下にあったが、現在はAlibabaの子会社)が、Instacartのクローンのようなシンガポール企業RedMartの買収を発表した。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

N26がAllianzの旅行保険付きプレミアムカードを発表

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N26には何が欠けているだろうか?同社はゆっくりではあるが確実に、新しい銀行口座を一から作りあげつつある。そして現在、Visa PremierやMasterCard Goldに付帯する保険商品を作り変えようとしている同社は、N26 Blackカードを発表した。

N26はこれまで保険会社と直接交渉を進めてきており、旧来の銀行が上位クラスのMasterCard(Gold、World Eliteなど)に付帯させているような保険商品をついに提供できるようになったのだ。近日中にN26のユーザーは、今持っているカードをN26 Blackカードにアップグレードできるようになる。なお、機能面では既存のカードとほぼ同じN26 Blackカードには、Allianzの保険がついてくる。

1年契約で料金は月々5.9ユーロ(6.4ドル)に設定されており、普通の銀行が発行しているMasterCardやVISAカードの上位クラスの保険とほぼ同じ補償内容になっている。そのため、海外旅行中に病院へ行かなければならない場合、その費用はAllianzがカバーしてくれる。さらにフライトが4時間以上遅れた場合の費用についても払い戻しが申請できるほか、携帯電話が盗まれたときの補償もついてくる。

保険の全容についてはまだ公開されていないため、スキー保険やレンタカー保険が含まれているかは分からない。しかし上位クラスのカードにはこういった保険がついてくることが期待されるため、N26 Blackカードにも含まれる可能性がある。

N26のサービスの良い点は、必要のない保険に対してお金を払わなくてすむということだ。ユーザーがN26の口座をそこまで頻繁に使っていなければ、無料のN26カードを選ぶことができる。ドイツ、オーストリア、アイルランドの希望者には、11月前半にN26 Blackカードが届けられ、フランス、イタリア、スペインのユーザーはその数週間後にはカードを受け取ることができる。

また、興味深いことにN26は今年の夏に銀行のフルライセンスを取得し、同社は今後数週間の間に、20万人のユーザーを自社の銀行インフラ上へと移管させる予定だ。つまり、ユーザーは新しいカードと口座番号を受け取ることになる。

そのため、ユーザーはこのタイミングで、新しいベーシックなMasterCardかN26 Blackカードから希望のものを選ぶことができる。全てのユーザーが新しいカードを受け取るタイミングで、新たなプランを発表するというのは賢い動きだ。この作戦でN26 Blackカードのコンバージョン率は高まるだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Just Eatが350万ポンドをPOS関連システム統合サービスのFlypayへ投資

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オンライン食品デリバリー界の雄Just Eatが、イギリスのスタートアップFlypayへの投資を行った。Flypayは、チェーンレストランやパブが、用途に応じて使い分けている個々のシステムを統合するためのプラットフォームを運営している。350万ポンド規模となった今回のラウンドは、先日英メディアTimeOutがリードインベスターとなって700万ポンドを調達したラウンドAの延長とされている。

”戦略的提携”とも言われているJust Eatによる投資の結果、同社はFlypayが運営するFlytプラットフォームにおける、最新のパートナーテック企業となった。このプラットフォーム上では、予約やロイヤルティープログラムからデリバリーやレビュー管理まで、レストラン・パブ・バーが普段利用しているさまざまなシステムを統合することができる。

Flypayは当初、”ウェイターフリー”で会計ができるようなテーブル会計アプリの開発に注力しており、その後、オーダー・受け取りやテーブルでのオーダー、カウンターでの支払、ロイヤルティープログラムといった機能をそこに追加していった。

しかし、その頃から同社は、飲食業界で使われている個々のシステムと競合するのではなく、それらをまとめるようなプラットフォームを開発した方がサービスの価値が高まるのでは、と考えるようになった。

「私たちが新たに提供する、飲食店の運営会社向けのFlytプラットフォームを使えば、電子取引周りのシステム環境を大幅に簡素化できます。顧客やオーダーの管理を全て独自のアプリに統合することもできれば、私たちのプラットフォームを経由して、情報集積アプリやメッセージ・ボイスコマース、その他最新の技術を利用した他のプラットフォームへ各システムを接続することもできます」とFlypayのファウンダー兼CEO Tom Weaverは語る。

さらに彼は、「私たちの顧客は、さまざまな街に店舗を構えているカジュアルダイニングやパブブランドです。現在はWahaca・GBK・Jamie’s Italian・Fuller’s・Chilangoやその他多くのブランドにサービスを提供しており、最近イギリスでもっとも人気のレストランブランドとも契約を結んだところです。もう少しで情報が公開される予定で、その会社とは今までにないようなお店を作ろうとしています」と付け加える。

この点についてJust EatとFlypayは、今後ブランドを問わず全てのカジュアルダイニングの運営会社に対して”デジタルエクスペリエンス”を提供するために協業していくと話している。このコラボレーションを通して、Flypayはレストランやバーが既に持っているアプリに、Flyt経由でデリバリー機能を追加するサービスを開始予定だ。しかし、まだこれは始まりに過ぎない。

両社はさらに、実店舗での情報とJust Eatの顧客データーベースを紐付け、レストランやパブ、バーの運営会社が”デリバリーシステムを採用・有効活用”しやすくなるような施策を打ち出していく予定だ。

Just Eat CEOのDavid Buttressは声明の中で「Flypayへの投資によって、注文・支払・カスタマーサービス・デリバリー機能などを備えた、飲食サービス利用者のための、シームレスなシステムの開発を私たちは続けることができます。そうすれば、レストラン側はJust Eatを利用してデリバリサービスを提供できるようになりますし、カジュアルダイニングチェーンに対する私たちのサービスの訴求力も高まります。Flytプラットフォームは、カジュアルダイニング界のデジタルな部分を大きく変える力を秘めており、私たちはその可能性を信じています」と語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

仏スタートアップZenly、位置情報共有アプリでBenchmarkから2250万ドルを調達

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フランスのスタートアップZenlyが、この夏にかけてBenchmarkほか数件の投資家から2250万ドルを調達した。このラウンドについては最初にBusiness Insiderが報じ、TechCrunchでも公式な確認を得た。我々がつかんだ詳細は以下のとおりだ。

今回のラウンドのリード投資家はBenchmarkが務め、同社のPeter FentonがZenlyの取締役会に加わった。Fentonはこれまでにいくつかのソーシャルネットワーク企業に投資しており、Twitterの取締役も務めている。本ラウンドでは既存の投資家であるIdinvestとXavier Nielからも追加投資があった。Insight Venture Partnersの共同設立者Jerry Murdockも個人的に出資したという。

さらに興味深いのは、Benchmarkがこのフランス企業に直接投資した点だ。多くのアメリカのVCは米国企業に投資することを希望する。そのため、フランスのスタートアップが多額の費用をかけてアメリカに会社を移すことになる場合もある。そう考えると今回の直接投資の意義は深い。Benchmarkは時間を無駄にしたくなかったようだ。

今回のラウンドはイントロから銀行口座への入金までわずか28日間でスピーディーだった。Zenlyは昨年のシリーズAラウンドで1120万ドル(1000万ユーロ)を調達しており、口座にはまだ潤沢な資金が残っていたはずだが、Benchmarkに「ノー」とは言い難かったに違いない。

「友達が今どこに誰といるのかを可視化できれば、プロダクトとしての機会は大きく拓かれます。今後うまく達成して行ければ、歴史に残る象徴的な企業へと成長するでしょう」とFentonは語る。「Zenlyチームの技術的専門性の深さと、ソーシャルエンゲージメント全般の基礎となるマップ機能についてのビジョンは、即断するだけの説得力があるものでした」。

もしも本件ついての「エピソード1」を見逃していたら、筆者が以前に記した、この前途有望な位置情報共有アプリZenlyの長い長い紹介記事(英語)を読んでみて欲しい。これは新手のチェックインアプリでもなければ「友達は今どこ?」タイプのアプリでもない。それらをさらに超えたアプリなのだ。

Zenlyは位置情報の共有をふたたび「クール」なものにしたいと願っている。同社は基本部分の見直しに莫大な時間を費やしてきた。現行ではZenlyを使うと自分の現在位置を何人かの、あるいは何十人かの友達と簡単に共有できるようになっている。

反応は、というと、ティーンに大好評で、すでにアプリのダウンロードは200万件にのぼるという。しかもこれはまだ「始まり」だ。Zenlyは現在の基本機能に、さらに何層もの有用なデータを追加する予定だ。

たとえば、友達がどこかで集まっていたら通知を受け取り、パーティーに乗り遅れないで済む。同様にZenlyならば他のアプリに先駆けて人気スポットを知ることができる。なぜなら人々がいつそこに行くかを知っているからだ。

Zenlyが勝負するのは非常に競争の激しい分野であるため、その道のりは長くなるだろう。これまでもGoogle、Apple、Uberのようなテック企業が最良の地図サービスを作り上げようと努力を重ねてきている。マップにピンを立てるだけの機能をさらに超えたものを目指すZenlyは、独自の地図データを構築せねばならないだろう。

Zenlyの従業員は現在35名で、向こう数週間でサンフランシスコにオフィスを開設する予定だ。エンジニアリングチームの大部分はフランスに置き、オフィス2か所で運営するつもりだという。この多額の資金調達を果たしたスタートアップは、当面は資金繰りを心配せず、プロダクトに集中できることだろう。

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(翻訳:Ayako Teranishi / website