【レビュー】電動自転車VanMoof X3、ハイテクだが手頃な値段であらゆる人を信奉者にしてしまう

自転車レーンでそよ風に吹かれながら電動自転車をこぎつつ、新たに手に入れた自由についてあれこれ思いを巡らす。こんな経験をするまでは、過去10年の間に生まれた最高の消費者向けテクノロジーのいくつかに対してと同様、筆者は自分に電動自転車が必要だとは思っていなかった。

Nintendo Switchを購入する前は、簡単にバックパックに収納してしまえるこのキャンディーのような色をしたゲームコンソールが、長時間のフライトをこんなにも楽しいものにしてくれるとは想像だにしなかった。電動自転車、特にこの 電動自転車VanMoof X3についても、まったく同じように感じている。

筆者はオレゴン州はポートランド市に住んでいる。ここは自転車レーンが多く設けられていて、ネイキッドバイクライドイベントが開催される町。ポートランド市に引っ越して来た当初は、筆者も自転車に乗ってあちこち足を伸ばしたものだが、時間の経過とともに自転車に乗る機会が減っていった。というのも、週末のキャンプ旅行のために購入した自動車が、徐々に毎日の用事をこなすのに使われるようになっていったからだ。

引っ越してから数年後、ある慢性疾患の診断を受け、突如として自分が何をできるか、どこまでなら安全に行けるのか自信がなくなってしまった。その後筆者が自転車に乗るのは、すばらしい天気に恵まれた日に限られるようになり、シーズン中に数えるほどの日数になってしまった。そんな時、もっと自転車に乗れたら、本当に楽しいだろうに!と考えため息をついたものだ。

X3に試乗してみるまで、筆者は短い距離でも自転車に乗らずに自動車を使用する言い訳を見つけたものだ。往きは良くても疲れてしまって、自転車で家に帰って来られなくなったらどうする?雨が降り始めたら?職場についた時、汗だくでは困るのでは?電動自転車は、こうした心配の大部分を一気に解消してくれる。

気温が35℃以上あったとしても、X3は快適な乗り心地で筆者をさっと職場まで連れて行ってくれる。急な嵐がきてもスピードで乗り切れる。一日を汗だくの状態で始めるのが嫌なら、すてきなすてきな電動機能に頼ることで、汗の一滴もかかずにオフィスへ到着することも可能だ。

そして、これはぜひ強調したいのだが、自転車で風を切って進むこと(自分に適した労力を使って)、これは本当に、本当に楽しい。あなたがまだ電動自転車に乗ったことがないのなら、是非実地で試してもらいたい。というのも、かすかな電動音を感じながら、快適にすいすい進むこの感覚を言葉で伝えることは難しいからだ。

VanMoofの誇るハイテク自転車のペア、X3および同系統でやや大型のS3は、もちろん市場に出回っている唯一の選択肢というわけではない。その利点の一部はどの電動自転車にも当てはまるものだ。しかし、だからといってVanMoofがありふれた存在であるかというと、そうではない。VanMoof X3は、ある種の乗り手(私自身を含む)にパーフェクトにマッチする非常に特殊な外観、感触、機能を備えている。しかし、電動自転車をこれから購入予定の方々は、さまざまな側面を検討したいと考えておられるだろう。そこで、以下に詳しく特徴を掘り下げてみようと思う。

数値ディスプレイにはバッテリー寿命、スピード、その他の重要な情報が表示される

外見

筆者はVanMoof S3ではなくX3(写真では形状がやや奇抜に見える)に試乗した。これは、好みでそうしたというよりも、筆者の身長が162.5センチメートルであるからだ。X3は、身長が150~195.5センチメートルの人向けで、身長が172.5センチメートル以上の人向けのS3よりも少し小型でデザインもやや変わっている。X3のタイヤはS3の28インチと異なり24インチで、フロント部にバンジーコード付きの台座があり、どのように使うのかは定かではないが、何かしら運べるようになっている(別売りのバスケットを購入してフロント部に取り付けても素敵だと思われる)。

他の電動自転車と同様、X3は一般の公道用自転車や通勤用自転車と比べると、ずっと重たい。公表されている重量は約21kgで、仮にそれを遠くまで運ばなければならない場合、その重さは大変なものに感じられるだろう。筆者はオレゴン州ポートランド市の一軒家に住んでいて、X3に乗るために玄関からほんのわずかな距離を運ばなければならなかったが、まったく問題はなかった。

筆者はブルックリン市でエレベーターの無い建物の5階に住んでいた事があるが、X3を抱えて階段を上り下りすることは不可能だったろうと思う。充電のためにX3(または他の電動自転車)を一階に保管することができない場合は、この製品はあなたには適さないかもしれない。(あとから説明するが、写真では、チェーンの上部に、オプションの外付けバッテリーパックを装着できる小さな台座があるのに注意して欲しい。この台座は取り外し可能)。

紙の上で見た場合、筆者にはS3の方が好ましいと感じるが、実際には、駐車中でも誰かが乗っている場合でも、X3が不格好というようなことはまったくない。キュートで、未来的でありながら目立たず、多くの称賛を得ている。筆者の妻は、その外見を「デス・スターっぽい」と表現していて、その意味するところを筆者が完全に理解しているわけでないにしても、彼女は間違ってはいない。通勤途中、清掃トラックの運転手がトラックの窓を下げて「その自転車、とっても格好いいね!」と声をかけてくれた。どうもありがとう!

VanMoofの現行の電動自転車はマットペイントでコーティングされていて、クラシックでセクシーなマットブラック、または心地よい陽気なマットライトブルーのどちらかを選ぶことができる。以前のバージョンでは光沢のあるコーティングだったが、マットの方が傷がつきにくいと思われる。爆弾の破壊力に完全に耐えられるというほどではないにしても、ペイントはかなりしっかりしているように見える。ハンドルバーになぜか小さなキズがついていてペイントが剥げているがどうしてそれがついたのかはまったくわからない(フクロウのせい?)。

ちょっと重要だと思うのは、VanMoof X3やS3が電動自転車のようには見えないということだ。フレームから醜い膨らみが突き出ているということもないし、トップチューブとダウンチューブは厚みがあるが均一で、その厚みもそう気になるほどではない。

電子部品はフレーム内に収納されており、ドライブトレーンも収納され密閉されている。トップチューブに埋め込まれたLED指標ディスプレイがあるが、これはほぼ乗っている人からしか見えない。電動自転車であることを大声で喧伝しているかのような外見の電動自転車を探しているわけでなければ、VanMoofはベストの1台ではなくとも、ベストチョイスの1つだ。外見がすばらしい電動自転車というだけではなく、自転車として見てもすばしいのだから。

乗り心地

VanMoof X3は見栄えの良い自転車だ、ということはおわかりいただけたと思う。しかし、乗り心地の方はどうだろう?筆者は自信を持って、次のようにお伝えすることができる。通勤のために初めてX3に乗ってから20回目になるまで、X3はすばらしく楽しい時間を提供してくれるということを。

電動自転車が初体験の筆者には、ちょっと躊躇する気持ちもあった。電気の助けを借りたら、自転車に乗ることのすばらしさが安っぽいものになってしまうのではないか?シフトチェンジを自動でしてくれる自転車を自分は本当に欲しいのだろうか?しかし、ふたを開けてみれば、そのような心配はまったくいらなかったことがわかった。

VanMoof X3(とその兄弟のS3)は乗り手がペダルをこいでいるのを電気でサポートしてくれる。つまり、乗り手は自分の力でペダルをこいでいるのだが、電気の力も同時に借りてとても楽に少ない労力でより速く進むことができるのだ。X3のハンドルバーの右側には、ターボブーストボタンがついていて、米国では、通常のなめらかな電気アシスタンスを超えた強力なブーストを1時間に20分まで得ることができる。

乗り手は必要なアシスタンスのレベルを選ぶことができる。VanMoofアプリ(後で説明する)を使って、または実際のボタンを使って、必要なパワーアシストのレベルを0から4まで選ぶ事ができるのだ。0は電気によるアシストはまったくなく、乗り手がまったくの自力でペダルをこいている状態(これはよろしくない)で、4では、まったく汗さえかかない、労力のいらない楽な状態になる。

筆者がX3を試乗していた時は、ちょっとペダルを重くしてエクササイズしたい気分の時には「2」を使い、朝コワーキングスペースへ急いでいる時は「4」、それ以外の、例えば週末にブランチに行く、というような時には「3」にしていた。ペダルアシスタンスのレベルを選べるというのは大変大きな利点で、これによって自転車をフレキシブルにさまざまな場面に合わせて調整できる。

どのモードであっても、ターボブーストボタンは強力なサポート機能である。これによって急な坂はあたかも平面のようになるし、クルマの運転手が周囲に気を配っているか定かでないような混んだ交差点を横切る時など、ずっと安全に渡れる気がする。X3は、危険を避けた安全な街乗りにはもってこいの、楽しくすばらしい電動自転車である。

自動電気シフトに慣れるのにはやや時間がかかるが、それは本当にスムーズである。冷蔵庫やランプ、バイブレーターに、ナンセンスで無駄な「スマート」ハイテクが搭載されるまでは、それらが完璧に機能していたものだが、筆者は最初それと同じように、この電気を使った技術が邪魔に感じられるほど頻繁に不具合を起こすのでは、と予想していた。

長期間にわたって調査した結果、筆者はX3は今までにないほどスムーズでシームレスであるということができる。たまにペダルを踏み込む際スムーズでなかったり、ギアが瞬時に機能しなかったりするが、それはごく稀である。アプリを使って自転車が上下に移動するタイミングをカスタマイズすることもできるのだが、自分にピッタリあった自転車が手に入るのだから、それを試してみる価値は十分にある。

他には特筆すべきことは?米国におけるX3の最大アシスト速度は20 mph(時速32km)であるが、ヨーロッパでは15.5 mph(時速25km)に制限されている。米国で許可されているこの速度はすばらしく、X3で20mphまで速度を上げ維持するのは造作のないことだ。通常の自転車でそんなことをしようとするなら、筆者が所有する小回りのきくロードバイクですら、大腿四頭筋を痛めてしまいかねない。

それ以外にも、シートは非常に心地よく、乗り心地も快適にまっすぐでナチュラルである。X3にしばらく乗っていたせいで、筆者の愛すべきビアンキに戻るのが大変で、慣れ親しんでいたはずの快適な感覚を取り戻したいと切に願う羽目になった。

未来型テイルライト

価格

VanMoof X3はすべてを考慮するとすばらしい価格である。この会社は価格をいじくり回す変わった癖があるのだが、2020年に設計変更が行われ、大幅な価格の下落(3398ドル[約37万5000円]から一時は1998ドル[約22万円]に設定された)があって以降、X3は大変お買い得感のある値段がつけられている。現在の値段は2298ドル(日本では税込27万5000円)で以前の価格より300ドル(約3万3000円)高いが、それでもフル機能を備えた電動自転車を2000ドル(約22万円)程で手に入れたいと考えている人にとってはよい取引である。

この金額は、VanMoofの気の利いた付加機能がついていない、通常の新しい自転車を買う場合と比べてもそれほど大きく違わない金額である。ハイエンドの自転車を購入しようとしている場合には、この金額はさらにずっと低いものに感じられるはずだ。そして現実的な側面で言えば、電動自転車を購入するということは、従来の自転車の代りということではなく、車や公共交通機関など、目的地へ移動するのにお金を払うものに今ほど頼らなくても済むようになるということである(米国で2000ドル[約22万円]以下の自転車を探す場合は、Rad Power BikesおよびCharge でよいオプションを探して欲しい)。

VanMoofの価格設定は、高品質で機能豊富なハイエンド電動自転車に比べると、はるかに低額である。しかし同社の製品は、見栄えの点でも機能の点でもそれらのハイエンド製品に太刀打ちできている。しかし、VanMoofがすでに世に出ている自転車の価格をひそかにいじくりまわしているのはいただけない。狙いを定めて購入しようとした矢先に値段が吊り上がる、などということになったら最悪である。

この件について同社はもっと透明性ある対応をし、今後予定されている価格変更日についての情報を開示すべきである。自転車の世代交代もあるようで、現在購入できるX3は2020年のX3とは異なる可能性がある。これらは紛らわしいので、ウェブサイトにはっきりした情報を掲載するべきである。

VanMoofアプリのアプリ内ライドトラッキングとサマリースタッツ

航続距離

電動自転車(またはeと名のつくものすべて)で最も考慮しなければならない事の1つが航続距離である。VanMoofによると、X3の航続距離は「フルパワー」で走った場合は37マイル(約60km)、エコノミーモードでは最大93マイル(約150km)となる。93マイルまで行けたなら、ペダルアシスタンスをまったく使わないで走行していた可能性もあるので、その場合は、93マイルという数値を気にする必要はないだろう。最も低い37マイルという見積もりだが、これは、4番目のパワーアシストモードで走り頻繁にターボブーストを使用する人にとってはちょっと甘めの見積もりかもしれない。筆者の経験(通常モード3か4で、たまに2、ターボボタンは軽く使用)からいくと、35~45マイル(約56~72km)が順当なところだろう。

航続距離は問題ないと感じる。X3を週のうちほとんど毎日使用しても、充電は煩わしく感じるほど頻繁にしなくてもよい。筆者の場合、毎日短距離(通常2~2.5マイル[約3~4km])を走行し、たまに長距離(10~20マイル[約16~32km))も走行する。X3やS3を使用してもっと長距離を通勤する人の場合はもう少し頻繁に充電することになる。そうであっても、家から遠く離れたところに来ているのに、バッテリーがあがってしまうのではないかと心配するようなことには決してならないだろう。仮にそのような状況になったとしても、自転車なのでペダルをこぐことはできる(ただペダルがとても重いだけである)。ほとんどの人は一晩かけて充電を行うと思うが、必要なら4時間でバッテリーをフルの状態にすることができる。

注意すべきなのは、壁取付け型充電器を直接自転車につないで充電する点である。X3を1階で充電したり保管したりできない場合、自転車を抱えてコンセントのあるところまで運ばなければならない。取り外しできるバッテリーがない点が、エレベータのない建物や小さなアパートに住んでいる人にとってのVanMoof自転車のネックになるかもしれない。しかし適切な保管場所がある人には、迷うことなくお薦めできる自転車だ。

内蔵バッテリーによる航続距離もほどんどの場合十分だが、VanMoofでは、X3とS3向けに別売りの外付けバッテリーパックを発売したところだ。バッテリーは下の写真にあるように、小さな台座にはめ込むことができ、試乗用の自転車に取り付けられている。これによりX3の航続距離を大幅に伸ばすことができる。VanMoof はこのPowerBankアクセサリーを348ドル(約3万8000円)で販売している。このバッテリパックは小さくはないし、重さは約2.7kgある。しかしVanMoofによると、これにより28~62マイル(約45~100km)も航続距離が伸びるそうである。この上限値に到達する人はほとんどいないだろうが、下限の値であっても元の航続距離のほぼ2倍になっている。

VanMoofの外付けPowerBank

PowerBankは大きく、かなりかさばっている。ひどく不格好というわけではないが、そのためにX3は間違いなく電動自転車に見える。超ハンサムな電動自転車、Cowboyの取り外し可能バッテリーのようなエレガントさは無いが、それでも問題になるレベルではない。VanMoofの他の点はパーフェクトだがもう少し航続距離が必要だ、という場合、ある程度のお金は払わなければならないが、このオプションがあるのはありがたい。

技術的特徴

VanMoofのX3とS3の付加技術は、その他の電動自転車からX3とS3を大きく際立たせている。X3の価格は、信用ができ、見栄えのよい電動自転車の価格としては納得のいくものだが、それに加えうれしいのは、小技の効いた電動自転車を手に入れることができる点だ。

  • 数値ディスプレイ:自転車のトップチューブには、メタルディスプレイに組み込まれたLEDライトが、速度、バッテリー寿命、その他の役立つ情報を表示してくれる。これはキラー機能で、本当にいかしている!
  • アラーム:あなたの自転車に危険を及ぼしかねない相手には「文字通りうなる」アラームを発動することができる。アラームは強烈でかなり音が大きい。
  • キックロック:小さなフィジカルボタンをキックすると後輪にロックをかけることができる。自転車泥棒がいるような町に住んでいる場合、泥棒はトラックにひょいと自転車を投げ込んでしまうだろうから、キックロックがあればセキュリティは万全、というわけではないけれども(筆者は小型のクリプトナイトロックを使用していたが、これは効果を発揮した)。
  • iOSのFind My:iOSを使用している人の場合は自分の自転車がどこにあるか簡単に追跡することができる。しっかり自転車にロックをかけておけばこれは必要ないかもしれないが、すばらしい機能である。

VanMoofはiOSの「Find My」アプリに対応している

  • ライト:VanMoof X3は、フロントにもバックにも優秀な内蔵ライトがついている。
  • アプリ:驚くべきことに、このアプリは大変優れものである。細々したこと(ベルの音量、アラームのオン・オフ、設定の変更)をカスタマイズでき、走行状況などの情報を表示することもできる。また、最も基本的な、自転車をこぐ、ロックを解除する、電気アシスタンスのレベルを変更するといったことは、自転車をアプリに接続していないくても実行できる。接続がうまくいかないことが時たまあったが(そのほとんどはAndroidで)、問題を解決するのは簡単で、そのために自動で走行記録が取れないことはあっものの、自転車の使用に支障をきたすことはなかった。またこのアプリを使って自転車がどこにあるかを追跡することもできる。VanMoofは、この機能とアラームシステムおよび盗難復旧チームを組み合わせることで、自転車をなくした人々が自転車を取り戻せるよう支援することができると宣伝している。

全体として、X3がすばらしいのは、その技術的機能がただの凝った機能ではなく、実用的でユーザー体験を大幅に向上させてくれるものである点だ。そして、これらはオプションである。アプリを使わなくても、パワーアシスタンスに助けられながら自転車に乗ることができる。普通のロックを使いアラームシステムをスキップする選択もできるし、実際のボタンコードを使って手動でこれを無効化することもできる。このボタンを使ってパワーアシスタンスモードを変更することもできる。これは優れた機能で、これにより電動自転車を自分の使いたいように使うことが可能になる。個人的には、インターネット、スマートフォン、アプリに接続が必要な電気自動車は購入するつもりはない。そういったものはトラブルの元だからである。

その他の考慮事項

  • 配送と組み立て:VanMoof X3およびS3は大きなボックスに入って郵送されてくる。組み立てはいたって簡単である。ただし1カ所だけ難しいところがあり、VanMoofのサブレディットを検索して(つまり、この箇所につまづいたのは筆者1人ではないということ!)これに小一時間ほど費やす羽目になった。
  • 追加サポート:VanMoofは自転車を正常な状態に保ち、持ち主が自転車を所有し続けることができるよう、3つの有料プランを提供している。3年間のメンテナンスプランは348ドル(約2万6000円)、3年間の盗難復旧プランは398ドル(約3万円)、またはこれらを組み合わせたプランは690ドル(約5万3000円)となっている(以下のVanMoofによる内訳)。

  • メンテナンス:VanMoofの自転車を購入する際、最も考慮すべきなのはどこに住んでいるかだろう。筆者は長期間にわたりX3が信用に足るか試乗していたわけだが、問題はほとんど起こらず、これには驚くほどであった。ブレーキパッドが擦れてしまったため、ある時点で前輪の中心を再設定しなければならなかったが、アプリの接続問題がたまに起こることを除き、この出来事以外の問題は起きなかった。もちろん、経年劣化はどの自転車にも起こるだろうから、そのモデルをよく知っているプロにチューンナップしてもらうのは良いことである。

VanMoofはアムステルダム、ロンドン、パリ、ベルリン、ニューヨーク、サンフランシスコ、シアトル、東京に本格的な店舗を構えている。この本格的な店舗以外にも、同社は同社自転車の整備のために大規模なサービスセンターおよび「認定ワークショップ」のネットワークを構築しているので、お近くにサービスショップかあるか確認するようにしよう。個人的には、2000ドル(約22万円)以上の投資とX3に備わった多くの技術的要素をパーフェクトな状態に保つことができるよう、VanMoofの店舗または少なくともサービスセンターの近くにいることが望ましいと考える。誰も修理のために、自転車を送り返したいとは思わないだろう。特にそれが重く技術的に複雑な要素を持った自転車ならなおさらのことである。

X3を試してみるまでは、筆者は電動自転車についてそれほど考えることがなかったし、電動自転車がそもそも誰を対象としたものだかよく知らなかった。数年前に初めて、筆者よりずっと自転車に熱心な親しい友人が、長い散歩に飼い犬(とってもいい女の子である)を連れて行くのに電動自転車を購入した時に、VanMoofの社名を耳にした。一緒にファーマーズマーケット(農産物の直売所)に行き、彼女のVanMoofをすばらしいと褒めたものの、これほど多くのテクノロジーを内部に備えた自転車が、時間が経過しても信頼に足るものであるのか、懐疑的だった。

自転車とは機械的でシンプルなものである。それこそが自転車のすばらしいところである!電動自転車は自転車に乗ることのすばらしいシンプルさを、ハイテクであるなにかに本当に置き換えることができるのだろうか?結果としてわかったのは、それは可能だ、ということである。VanMoof X3を試してみてそれが信用に足るものであることを確認し、その機能が日々の使用の中でどのように維持されるかを理解してみると、筆者は自分が以前懐疑心を抱いていたことを後悔するほどである。

筆者は、VanMoof X3を試している間どんなにか電動自転車、特にこの電動自転車が生活の細々したところを良い方向へと変えてくれたかを、十分言い尽くせないように感じている。自転車にもっと乗ること(そして電気自動車はより多くの人が自転車に乗るような流れを作っている)は、筆者をより幸せに、より健康にしてくれる。自転車にもっと乗ることで、運動不足になりがちなパンデミックの時期から抜け出し、周囲の世界との結び付きを感じさせてくれる新しい習慣を身に付けることができた。自分の住む町を新鮮な目で見、一度も足を踏み入れたことのない新しい近隣地域を訪れ、当たり前に思っていた小さな物事を大切に感じることができている。筆者が電動自転車について後悔していることがあるとすれば、それはどうしてもっと早く電動自転車に乗ってみなかったのか、ということだけである。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:電動自転車VanMoofレビュー

画像クレジット:電動自転車、VanMoof、レビュー

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】大型化し手書きメモもできる電子書籍リーダー「Kobo Elipsa」

Kobo ElipsaはAmazonのライバルである電子書籍リーダーの最新モデルで、大型の製品だ。iPadに匹敵する大きさの10.3インチ電子ペーパーディスプレイが採用され、reMarkableやBooxの直接の競合となる。Elipsaは読書がしやすく、メモをとったり絵を描いたりすることができるが、汎用性にはやや欠ける。

Koboはここ数年、高価格帯の市場に少しずつ進出してきた。筆者は低価格のClara HD(税込1万5180円、以下カッコ内は日本での販売価格)が今もおすすめだと考えているが、Forma(税込3万4980円)やLibra H2O(税込2万5080円)はKindleのラインナップのライバルと言える。400ドル(税込4万6990円)のElipsaはサイズ、機能、価格が大きくアップしていて、いずれも妥当だ。ただし気をつけなくてはならない点がいくつかある。

Elipsaはよくできているが派手さはない。FormaとLibraは筐体の1辺のベゼルだけ幅と厚みがあるが、Elipsaでは1辺だけ幅が広く厚みは変わらない。1辺だけが広いデザインは筆者はあまり気にならないし、競合製品の多くも非対称だ(ちなみに筆者のお気に入りはBooxの超小型デバイスでフロントライト付きのPoke 3だ)。

10.3インチディスプレイの解像度は1404×1872で、227dpiだ。300dpiのClaraやFormaよりは低く、注意深く見れば文字のギザギザがわかる。しかしそれがわかるほど近づいて見ることはないだろう。Elipsaはデバイスが大きいので目から離して見るし、おそらく文字サイズも大きくして読むと思われるからだ。筆者は申し分なく読みやすいと感じた。227dpiは最高ではないが、悪くない。

フロントライト内蔵で、画面左側で指先を上下にスライドして簡単に調整できる。しかしKoboの他のデバイスとは異なり、色温度を変えることはできない。筆者は色温度を変えられるデバイスにすっかり慣れて、以前に長年付き合ってきたデフォルトのクールグレイでは快適に感じられなくなってしまった。周囲が暖色系の照明のときは特にそうだ。重要なのは画面全体の明るさが一貫していることと暗く調整できることで、筆者の目はそれで大いに助かっている。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

Elipsaにはアクセサリがいくつか付属していて、それがない状態はちょっと考えづらい。実際「スリープカバー」とスタイラスペンなしでElipsaだけを購入することはできない。カバーとペンが揃って完全なパッケージとなる。かなり重くてかさばるが。Elipsaだけなら標準的なiPadより軽く小さく感じるが、カバーを装着し、驚くほど重いスタイラスペンを収納すると、重くて大きなものになる。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

カバーは、少し硬いかもしれないが良いデザインで、デバイスが壊れないように確実に保護されるだろう。カバーは本体下部に磁石で取り付け、ノートのページをめくるようにデバイスの背面にもっていくと反対側の端も磁石で固定される。カバーの途中の部分を2カ所折ると、折ったところも磁石で固定され、低くてしっかりとした使いやすいスタンドになる。カバーの外側は滑りにくいフェイクレザーで、内側は柔らかいマイクロファイバーになっている。

カバーを開けるとデバイスの電源がオンになり、閉じるとオフになるが、ここでちょっとした問題がある。電源ボタン、充電ポート、幅の広いベゼルがどうしても右側になってしまうのだ。Elipsaからカバーをはずせば、1辺が厚いタイプと同様に好きな向きで置くことができ、コンテンツはそれに応じて即座に回転する。しかしカバーを取り付けるとほぼ右利きモードに固定されてしまう。これが気になることかどうかはわからないが、念のためお伝えしておく。

左がForma、中央がElipsa、右がreMarkable 2(画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch)

上述の点以外は、読書の使い心地はKoboの他のデバイスとほぼ同じだ。最近利用したコンテンツが表示される比較的すっきりとしたインターフェイスでとまどうことはないが、広告は依然としてうんざりするほど多数表示される(「次に読むすばらしい本を見つけよう」のような)。無料や有料の電子書籍がよく表示されるが、そのようなものを大きな画面で読むのはまったく筆者の好みではない。筆者は、画面の大きい電子書籍リーダーは横向きに置いてページを見開き表示できるようにして欲しいと心から願っている。そのほうが本っぽいでしょう?

Pocket経由で同期したウェブの記事は見やすく、この形で読むのは楽しい。オンライン版で読むのに適した雑誌のページのようだ。シンプルで見やすく、よく統合されている。

Kobo初の手書きメモ機能

新機能は「ノート」だ。箇条書き、落書き、授業のメモなどのノートブックを作成し、スタイラスペンを使って書く。

書き心地は十分満足できる。筆者が使い慣れているreMarkable 2はタイムラグの短さと高い精度を誇り、表現力も豊かだ。KoboはreMarkable 2にはまだ届かず、機能は基本的なものでタイムラグが気になるが、精度は高い。

ペン先、線の幅、線の濃さがそれぞれ5種類ずつあり、どれも使いやすい。スタイラスペンは適度な重さがあるが、もっとグリップ感のある素材だと良いと思う。ペンにボタンが2つあり、現在のペンと、ハイライトまたは消しゴムをすばやく切り替えることができる。消しゴムはストロークを消すか、ブラシモードがある。通常のノートには方眼、点線、罫線、無地があり、ページ数は無制限だが、拡大や縮小はできない(絵を描く人には向いていないだろう)。

手書き文字認識などの機能を利用したい場合は「多機能ノート」を作成する。多機能ノートに引かれているガイドラインに従って書き、ダブルタップすると即座にテキストして認識される。多機能ノートの所定のエリアに図を描いたり数式を書いて計算したりすることもできる。

手書きのアップ(画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch)

手書き文字認識は高速でざっと書き留めるには十分だが、そのまま他の人に送れるほどではない。図形のツールも同様で、手書きの図形やラベルをフローチャートのような図に仕上げることができるが、ガタガタした図よりはましではあるもののラフな下書き程度のものだ。よく考えられたショートカットやジェスチャーで余白の追加や削除など頻繁に使う操作ができるようになっていて、Elipsaを使ううちにすぐに慣れることができるだろう。

「スマート」なノートブック上でのページの移動や上下の動きはきびきびとしていているが、iPadのデザインソフトやアート用ソフトの流れるような動きではない。しかしでしゃばった動作ではなく、パームブロッキングも効いていて、アクションは快適だ。書くときのタイムラグは確かに弱点だが、書いた結果が多少雑になっても気にしないのであれば慣れると思う。

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

電子書籍をマークアップすることもできる。ハイライトは便利だが、単にテキストを選択するよりもはるかに優れているというわけではない。またスタイラスペンの制限により、周囲の余白には書けない。

メモの書き出しには、DropboxのアカウントをリンクするかUSB接続を利用する。ここでもreMarkableのほうが優位だ。アプリに若干の制限はあるもののリアルタイムで同期されるので、reMarkableのシステム内にある限りはバージョンの違いを気にする必要がない。Koboのほうが方式が古い。

reMarkableとは異なりKoboは日々の読書が簡単にできるプラットフォームなので、読書がメインで落書きやメモをオプションとして考えている人にとっては良い選択だ。一方、スタイラスペンを重視するタブレットでもっと良いものをと考えているなら、他の製品を探した方がいい。文字や図を書くことについては、市場にある他の製品よりもreMarkableのほうが優れている。そしてBooxのタブレットなどと比べると、Elipsaのほうがシンプルで焦点が絞られているが、Androidのアプリやゲームを追加することはできない。

400ドル(税込4万6990円)という価格は、カバーとスタイラスペンがセットになった価格であるとはいえ結構な投資で、間違いなく汎用性が高いデバイスであるiPadとあまり変わらない。しかし筆者はiPadでは記事や書籍をあまり楽しめず、メモをとるときもシンプルな電子書籍リーダーの方が集中できる。電子書籍リーダーは違う目的を持つ違うデバイスであり、万人向けではない。

しかし複雑で高価なオプションもある「大型電子書籍リーダー」の沼に足を踏み入れるなら、現時点ではおそらくElipsaが最適だろう。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:レビューKobo読書電子書籍電子書籍リーダー電子ペーパー楽天

画像クレジット:Devin Coldewey / TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Kaori Koyama)

【レビュー】アップルがmacOS 12 Montereyのパブリックベータ版配信開始、Safariやクロスデバイス機能を一新

Apple(アップル)は米国時間6月30日、iOS 15、iPadOS 15、watchOS 8の新しいパブリックベータ版を一斉に公開した。そして米国時間7月1日、同社は6月のWWDCで発表されたソフトウェアのうち、もう1つの大きなパズルピースをたずさえて戻ってきた。

関連記事:アップルが最新iOS 15のベータ版をすべての人に公開、開発者アカウント不要

このたび3週間にわたる開発者向けベータ版に続き、macOS 12.0 Monterey(モントレー)のパブリックベータ版が配信開始された(つまり、すべての人に行き渡るまでに多少時間がかかることが多いロールアウトを開始した)。

OSのベータ版にはいつもの警告があり、プライマリマシンにダウンロードしないように注意する必要があるが、少なくとも、6月に開発者向けに最初に配布されたものよりは十分に安定しているはずだ。筆者はあなたの生き方に口出しするつもりはない。

画像クレジット:Brian Heater

この種の記事の冒頭にシステムの互換性を取り上げることはあまりないのだが、Montereyの場合は言及しておくべきだろう。何しろ、2020年に初めてApple Siliconを搭載したMacを発売して以来、初めての完全な新OSのリリースなのだから。当然のことながらMontereyは、Appleのファーストパーティー製プロセッサーを搭載したすべてのシステムで利用可能だ。

Intelプロセッサー搭載のMacは数年前からサポートされているが、福袋のようにまちまちだ。以下のリストをまとめてくれたMacrumorsに感謝する

  • iMac(Late 2015以降)
  • iMac Pro(2017以降)
  • MacBook Air(Early 2015以降)
  • MacBook Pro(Early 2015以降)
  • Mac Pro(Late 2013以降)
  • Mac mini(Late 2014以降)
  • MacBook(Early 2016以降)

Big Surの互換性の内訳から日付が1年ほど上にずれているので、まあ妥当といえるだろう。

さて、ひるまず早速ダウンロードしてみると、何が変わるのだろうか?最も大きく変わるのはSafariとFaceTime、そしてデバイス間で周辺機器を統一する「ユニバーサルコントロール」機能と、macOSの主力機能であるAutomaterに代わるiOSの機能「ショートカット」が追加される。

画像クレジット:Brian Heater

最初の印象をいくつか挙げる。まずはSafariから始めよう。このブラウザはmacOSの大幅な刷新のたびにいくつか重要なアップデートが行われるが、今回は最近の記憶の中でも最大級のものだ。(WWDC)基調講演の後、このアップデートは多くのユーザーに混乱をもたらすだけではないかという懸念があった。確かに、ユーザーはワークフローの中断を嫌う。私が毎日使うデフォルトのブラウザをSafariに切り替えようと真剣に考えたことがないのは、このような理由からかもしれない。習慣を変えることは難しい。もちろん、進化するためにはときには変化も必要だ。いずれにしても、私はまだMontereyを十分に使いこなしていないので、Safariの使い心地について決定的なことはお伝えできない。

前置きが長くなったが、すぐにかなりの違いがある。

Brian Heater

大したことではないと思われるかもしれないが、何世代にもわたってタスクバーが原動力となってきた後で、ブラウザの中心にかなり大胆な変更が施されたといえる。もちろん好みは分かれると思うが、このアイデアの根底にあるのは、フィールド(フォーム)をより恒常的に存在させるのではなく、個々のタブに結びつけることだ。「タブグループ」を使えば、複数のサイトをまとめてブックマークすることができ「家」と「職場」というようにグループ化することができる。

Appleがどのようにソフトウェアを作っているかを知っているユーザーなら、これらのグループがSafariアカウントを介してデバイス間で同期されることは驚くことではないだろう。この機能はユーザーにとって、整理整頓になるか、あるいは無限のタブを持つ新しいグループを大量に作るか、どちらかになる可能性があるものだと思う。

画像クレジット:Apple

FaceTimeに追加された機能は、パンデミックの中で悩む必要のない決断であり歓迎すべきアップデートだ。最大の追加は、2020年に多くのサードパーティが解読しようとしたコードだ。この新機能では、友人とのFaceTime通話で映画やテレビ番組をストリーミングして一緒に観ることができる。繰り返しになるが、これは非常にパンデミックに適した製品であり、遠隔会議がなくなることはないので、今後も魅力的な製品となるだろう。

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TV+やMusicなどのApple製品に加え、Disney+、Hulu、HBO Max、NBA、Twitch、TikTok(ティックトック)、MasterClass(マスタークラス)、ESPN+、Paramount+、PlutoTVなど、Montereyは数多くのローンチパートナーと連携する。また、AppleはAPIを開発者に公開している。というのも、正直なところ、この製品にはYouTubeとNetflix(ネットフリックス)が必要だからだ。

画像クレジット:Brian Heater

「フォーカス」設定は、既存の「Do Not Disturb」機能をベースに、特定の通知パラメータを作成する機能を追加したものだ。Appleは、デフォルトで「仕事モード」や「睡眠モード」などを提供しているが、一部の通知を許可し、他をブロックする独自のカスタムバージョンを作ることもできる。

画像クレジット:Apple

ハードウェアの観点からは「ユニバーサルコントロール」が最も興味深い追加機能だろう。この機能により、互換性のあるMacやiPadでワイヤレスキーボードやマイク / トラックパッドを共有できるようになる。これはSidecar(サイドカー)を置き換えるものでも、その技術をベースにしたものでもない。SidecarがiPadを実質的にセカンドスクリーンとして利用できるようにするのに対し、ユニバーサルコントロールでは標準的なiPadの機能を維持しながら、デバイス間でカーソルを移動させることができる。どちらもクリエイターや頻繁に旅行に出かける人には魅力的だが、これらの一方が他方をカニバリゼーションするかどうかはこれから興味深いところだ。

クロスデバイス機能といえば「なぜこんなに時間がかかったのだろう」と思うような機能が「AirPlay to Mac(MacへAirPlay)」だ。これにより、iPhoneやその他のAppleデバイスのコンテンツを、大画面のMacで直接共有することができる。また、コンピュータをAirPlayスピーカーとして使用し、デバイスからシステム上に音楽を流すこともできる。

画像クレジット:Brian Heater

前述の通り、Mac版「ショートカット」の登場は、Automaterの終わりの始まりを意味する。Appleはユーザーからのフィードバックを収集しながら、しばらくの間このアプリを存続させるとのこと。これまでのように、新機能を導入したらすぐにバンドエイドをビリっと剥がす(すばやくやれば痛くない!)というやり方ではなく、このような方針をとったことは評価できる。Automaterは非常に多機能だったが、慣れないユーザーにとっては非常にわかりづらいものだった。使い始めるために、同社はショートカットのギャラリー(上図参照)を用意している。

OSの基本的なタスクから「Gifを作成する」というようなものまで、さまざまなショートカットが用意されているため、これで一部のサードパーティー製Mac用アプリが不要になってしまう可能性も大いにある。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:アップルmacOSmacOS 12ベータ版レビュー

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

英国の競争・市場庁がアマゾンとグーグルのフェイクレビュー対応の調査を開始

英国の競争監視当局である競争・市場庁(CMA)がテック大企業に対する新たな調査を開始した。Amazon(アマゾン)とGoogle(グーグル)がどのようにフェイクレビューに対処しているかに的を絞ったものだ。

英国のCMAは2015年からオンラインレビューに関心を向けてきた。

CMAはまた、マーケットプレイスで横行しているとして、フェイクレビューの取引を取り締まろうと2019年にeBay(イーベイ)とFacebook(フェイスブック)に目をつけた。これらのプラットフォームに圧力をかけ続けた結果、CMAは両社からこれまでよりも対策に注力するとの約束を取り付けた。にもかかわらず、Facebookの場合、フェイクレビューを取引していた1万6000ものグループを取り締まったのは2021年4月のことだった。CMAはFacebookが意義ある行動を取るまでに1年以上かかったことに失望を表明した。

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そして現在、CMAはAmazonとGoogleをそのレーダーにとらえた。2社ともユーザーレビューを含むプラットフォームを運営している。これら2社がフェイクレビューから買い物客を守るために十分な行動を取らないことで英国の法律に反したかどうかを決定する証拠を集める、とCMAは話している。

消費者をミスリードする、あるいはミスリードから消費者を守る行動を取らなかった企業は、不正取引から消費者を守るための英国の法律に違反していることになる。

CMAはAmazonとGoogleの調査は2020年5月に開始した初期調査に続くものだと話す。初期調査ではいくつかのプラットフォームの内部システムとフェイクレビューを特定して対処するプロセスの評価にフォーカスしていた。

この調査により、テック大企業であるAmazonとGoogleが下記のことに十分に取り組んできたかどうか懸念が浮かび上がった。

  • フェイク、そしてミスリードするレビュー、あるいは疑わしい行動パターンを検知する。たとえば同じユーザーが似たようなプロダクトや会社を似たような時間帯にレビューしているもの、プロダクトや会社と関係がないもの、あるいはレビュワーが肯定的なレビューを書いて支払いやインセンティブを受け取っていることをうかがわせるものなど
  • 調査し、必要ならばすぐさまフェイクでミスリードするレビューをプラットフォームから削除する
  • フェイクレビューをなくすためにレビュワーや企業に十分な制裁を科す。ここにはこうした種のレビューを何回も書いたり公開したりした人物や企業が含まれる

当局はまた、Amazonのシステムがたとえば他のプロダクトより肯定的なレビューを組み入れるなどして「一部のセラーがプロダクトリストを操作するのを十分に防いだり抑止したりしてこなかった」と指摘した。

結局のところ、問題の販売アイテムとは明らかに無関係の製品特性に真剣に言及しているレビュワーによるプロダクトレビューだけに接しようと、Amazon上のプロダクトレビューをブラウズしたことがない人なんているだろうか。

ローカルビジネスを検索した後にたとえばGoogle Mapsに表示されるユーザーレビューは「スター5つ(あるいはスター1つ)の行動の「特殊なパターン」も表示する。

AmazonとGoogleがフェイクレビューの問題に十分に対応をとってこなかったという懸念を調査していることに関し、CMAのCEOであるAndrea Coscelli(アンドレア・コシェリ)氏は声明で次のように述べた。

我々の懸念はオンラインで買い物する何百万という人々がフェイクレビューを読んでミスリードされ、その後にそうしたレコメンデーションに基づいて金を使うことにあります。と同時に、自社のプロダクトやサービスを最も目立つようにするために一部の会社がスター5つのレビューをつけることができ、法を守っている会社が負ける、というのは純粋に公正ではありません。

我々はAmazonとGoogleが顧客や正直な会社を守るために十分にフェイクレビューを防いだり削除したりしてこなかったという懸念を調査しています。これらテックプラットフォームが責任を取ることは重要で、2社が十分に取り組んでいないことがはっきりすれば何らかの措置を取る準備はできています」

AmazonとGoogleにコメントを求めた。

Googleの広報担当者は次のような声明文をTechCrunchに送ってきた。

当社の厳しい規則は、レビューは実体験に基づくべきだと明白にうたっていて、規則違反を見つけた場合、当社は不適切なコンテンツの削除から、ユーザーアカウントの凍結まで、行動を起こします。ユーザーが関連する有用な情報をGoogleで見つけるのをサポートすべく、業界の先端をいく当社のテクノロジーとレビューのチームがいかに取り組んでいるか共有するために、引き続きCMAに協力することを楽しみにしています。

Amazonの広報担当は以下のように述べた。

顧客の信頼を得るために、フェイクやインセンティブが与えられたレビューがストアに表示されるのを防ぐのにかなりのリソースを注いでいます。顧客がプロダクトで得たエクスペリエンスがレビューに正確に反映されるよう、懸命に取り組んでいます。当社は引き続きCMAの問い合わせに協力します。当社の事業に対して何も結論は出ていないことを言い添えておきます。当社は絶え間なくストアを保護し、レビューを乱用しようとする人の規模やロケーションにかかわらずフェイクレビューを阻止するために行動を起こします。

2021年6月初めのブログ投稿で、おそらくCMAのこの問題に関する意図に気づいているAmazonは「当社のストアで本物のプロダクトレビューだけが許されるよう、絶え間なく刷新しています」と主張し、偽オンラインレビューの問題について語った。そして、実例の統計を示した(2020年だけで2億件超の「疑わしいフェイクレビュー」を顧客が目にする前に「プロアクティブな検出」を使用して阻止した)。

しかしブログ投稿はかなり守勢に立っていた。Amazon外で、特にソーシャルメディアサービスを通じてフェイクレビューを勧誘しようとする悪意ある行為が次第に増している」と述べるなど、フェイクレビュー問題の責任を拡大することを模索している。

Amazonはフェイクレビューを、調整された業界全体のソリューションを要する、業界にまたがる問題にしようとした。その一方で、(名指しはせず)「ソーシャルメディア会社」に矛先を向け、ソーシャルメディアがチェーン内の弱点であると指摘した。

フェイクレビューを促進するのに使われるているサービスを運用しているソーシャルメディア企業が積極的に詐欺やフェイクレビューの抑制に投資し、これらの悪行を阻止するために我々と提携し、消費者が自信を持って買い物できるようにサポートする必要があります。消費者と正直な販売パートナーを完全に守るには、絶え間ないイノベーション、そして業界と法執行当局間の提携が欠かせません。

Amazonのブログ投稿はまた「レビューを買う人やレビューを提供するサービスプロバイダー」などの「悪行」に対して訴訟を起こす既存の取り組みをサポートするために「世界中の」消費者保護規制当局の総合的な援助を求めた。

Amazonはまた、欧州でフェイクレビュープロバイダーに対する「何十もの」差止命令を勝ち取ったとTechCrunchに語った。加えて同社は法的措置を取ることをためらわない、とも付け加えた(例えば差止・強制命令を求めてAMZ Tigers、TesterJobというウェブサイトのオーナーに対する訴状を1月9日にロンドン商事裁判所に出したと同社は述べた)。

CMAの調査が行われていることを考えると、フェイクレビュー供給者に対する訴訟をサポートするよう規制当局の援護を求めるAmazonのブログ投稿は、CMAの視線をFacebookのマーケットプレイスに視線を向けさせようとする先制攻撃のようにみえる。

AmazonとGoogleに対する調査が、おそらく問題を悪化させているソーシャルメディアプラットフォーム上などでのレビュー取引グループの役割にも及ぶのかどうか、TechCrunchはCMAに問い合わせた。

CMAはこの点についてのコメントは控えた。しかしTechCrunchはAmazonとGoogleに対する調査は別物だと理解している。

今後何が起こり得るのかという点に関して、CMAは調査でAmazonとGoogleがさまざまな執行力を持つ英国消費者保護法を遵守しなかったかを考慮する。フェイクレビューの対処方法を変えるために正式なコミットメントを確保したり、必要に応じて裁判に発展させたりすることがあり得る。

しかし差し当たってAmazonとGoogleが法律を守らなかったどうか結論は出ていない。

CMAは予定されている英国の独占禁止法の刷新に準備するためにデジタルマーケットへ注意を次第に向け、テック大企業の規制で積極的に動いてきた。新たな独禁法では、競争を損なうプラットフォームのパワーに対処する体制を敷く模様だ。

CMAはテック大手に対し多くの調査を展開している。ここには、Googleが予定している閲覧追跡クッキーの廃止も含まれる。そしてCMAは最近、AppleとGoogleのモバイルエコシステムの独占に関するマーケット調査も開始した。

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CMAが主要プラットフォームにフォーカスしていること、そしてフェイクレビューに対して長らく注意を向けてきたことを考えると、Appleがこの問題に関して英国の調査に直面するかどうかを思索するのはおもしろい。

App Storeでのフェイクのレーティングやレビューに関する懸念は提起されている。

たとえば2021年初め、iOSアプリデベロッパーのKosta Eleftheriou(コスタ・エレフテリオ)氏は、App Storeが安全で信用できる場所だと主張することでAppleはアプリを制作するようデベロッパーを勧誘してきたが、デベロッパーの懸命な取り組みから利益を得る詐欺師たちから正当なデベロッパーを守らなかったと主張し、Appleを相手取って訴訟を起こした

CMAはすでにAppleのApp Storeについて取り調べている。Appleが不公正あるいは反競争的な条件をデベロッパーに課しているかどうかを調査すると3月に述べていて、CMAは今後App Storeを注視する。もし反競争的な条件を課していれば、これは最終的にはユーザーの選択肢が少なくなったり、アプリやアドオンに高い料金を払ったりすることになる。

しかし差し当たってCMAのフェイクレビュー問題での注意は公には他のところに向けられている。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

【レビュー】ソニー新型「WF-1000XM4」は高性能ワイヤレスイヤフォンの新基準、2年待っただけの価値がある

「WF-1000XM3」をレビューしてから2年弱になるが、その間ずっと、Sony(ソニー)のワイヤレスイヤフォンは高性能イヤフォンのスタンダードであり続けてきた。真面目な話、1カ月ほど前に別の新製品をレビューしたのだが、その時もやはり習慣で参照したぐらいだ。

これは、1年ごとのアップグレードサイクルが主流の昨今では珍しいことだ。ワイヤレスイヤフォン分野ではなおさらだ。ソニーが2019年半ばに本格的に参入したときには、市場はすでに混雑していると感じたし、状況は悪化する一方だ。しかしM3は、業界に新風を吹き込んだ。多くのメーカーがミドルエンドとローエンドを競っている中で、ソニーは真にプレミアムなものをリリースした。

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AirPods Proが発売される半年前に、M3は優れたサウンドとノイズキャンセリング機能を引っさげて市場に登場した。後者は今でこそ標準化されているが、ソニーがM3に搭載したときには、ほとんど例のない機能だった。しかし、このヘッドフォンは好評を博したにもかかわらず、ソニーはその次の製品を出すのに2年もかけた。それも無理はない。非常に良いものをさらに改善するのは難しいことだ。

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「WF-1000XM4」は待っただけの価値がある、とご報告できてうれしく思う。ソニーは高級ヘッドフォンを得意としているが、この製品も例外ではない。今回のワイヤレスイヤフォンは、さまざまな面で以前のモデルよりも進化している。残念ながら、価格もそれに見合ったものになっている。もしあなたが、M3の230ドル(約2万5200円)は高いと思っていた場合、悪いニュースがある。新バージョンは、さらに50ドルを上乗せした280ドルだ(約3万700円、国内価格は税込3万3000円前後)。

その結果として生まれるいいニュースは、新しいヘッドフォンのリリースで、古い機種(M3)の価格は下がるということだ。軽く検索してみると、さまざまな場所で178ドル(約1万9500円)前後で販売されており、一般的なワイヤレスイヤフォンの価格に近いものとなっている。AirPods Proよりも30ドル(約3300円)高い新価格は、ソニーがスペクトルの中のプレミアムグレード側にあえて踏み込んでいることを意味する。価格を抑えるためのリソースと規模を持っている企業があるとすれば、それはソニーだ。

WF-1000XM4は価格に見合うだけの価値があるのだろうか?もちろん、これはかなり主観的な質問だ。間違いなくいえるのは、現在購入可能なワイヤレスイヤフォンの中で最高の音質を持っている部類に入るということだ。今のところ、オーバーイヤー型ヘッドフォンの体験をイヤーバッドで完全に再現できるとは思えない。しかし、ワイヤレスイヤフォンを使うことには確かな利点がある。それは携帯性と、言葉にできないほど暑い夏の日々に、耳を呼吸させるチャンスがあるということだ。

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ワイヤレスイヤフォンはもちろん、フィットネスにも適している。とはいえ、特にワークアウト用のヘッドフォンを探しているのであれば、おそらくこれを第一候補にすべきではない。IPX4相当の防滴性能を備えているので汗をかいても大丈夫だが、このイヤフォンはどちらかというと、飛行機に長時間乗るときや、デスクに座ってジャズのレコードを楽しむようなときに向いている。

その理由の1つは、この製品の大きさだ。前作よりもかなり小さくなったのは確かで(本体はサイズ10%減)、パドル型から外耳道の上にコンポーネントを配置するようになったのは効果的だが、長時間の使用にはまだ少し大きすぎる。また、これは個人差がかなりあるかと思うが、私は長時間装着していると耳が痛くなる傾向があった。MサイズのイヤーピースをSサイズに交換すると圧迫感が少し和らいだが(私はほぼすべての種類のイヤーピースでMサイズを使用する)、Sサイズにすると、アクティブノイズキャンセリング(ANS)機能を最大限に活用するためには必要不可欠な耳への密閉性が非常に悪くなった。それでも、最終的には鈍い痛みがないわけではなかった。

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ただ筆者は個人的に、フォームチップイヤーピースであまり良い経験をしたことがないという事実もお伝えしておくべきだろう。シリコンに比べて摩耗しやすく、耳垢がたまりやすい傾向があるのも影響している(この仕事はきれいごとばかりではない)。しかし、高級メーカーがこのルートを採用する理由は、快適性の観点から理解できる。

また、ソニーがサステナブルな紙製パッケージを採用したことにも賛辞を送りたいと思う。見た目は地味かもしれないが、あなたは自分のエレクトロニクスが入っていたパッケージをどれだけ頻繁に見るだろうか?私の中では、地球にとって少しでも良いものはネットプラスだ。そして、この充電ケースは見た目が非常に美しい。

ケースはM3より大幅に小さくなった(40%減)。前機種と比べ、ポケットに入れても邪魔にならないサイズだ。控えめなマットブラックで、上部にはかなり目立つSONYロゴが入っている。マグネットは強力で、イヤーバッドは小気味良くしっかりとケースに収まる。また、お互いにもくっつく。蓋の真下にある薄いLEDストリップは、充電状態に応じて緑または赤に光る。ケースは縦長なので、USB-Cポートは背面に配置されているが、Qi充電器を使ってワイヤレス充電することもできる。

画像クレジット:Brian Heater

興味深いことに、電池持続時間の公称値はM3と同じだが、数字がシフトされている。オリジナルの前機種では、本体のみで6時間、それにケースが18時間を足していた。今回は本体のみで8時間、ケースでプラス16時間となっている。どちらにしても1日は使える計算だが、私は確かに、実際のイヤフォンに2時間追加されている方を好む。

イヤフォン本体は、ケースよりも少し派手なデザインだ。2つの円が交差するデザインで、上部は耳にぴったりと沿うように設計されている。外側は金属製のマイクがアクセントになっており、上部には2つ目のフラッシュマイクが設置されている。

画像クレジット:Brian Heater

音質は本当にすばらしい。質の低いイヤーバッドでは聞き逃していた馴染みのある曲のディテールを新たに発見できるような、楽器の分離感がある。また、デフォルトのバランスもすばらしい。ソニーは低音を強調する必要がないので、そこに寄りかかってはいない。このヘッドフォンは、さまざまな種類の音楽やポッドキャストなど、幅広い分野ですばらしいサウンドを提供してくれる。

ノイズキャンセリング機能は、再び業界をリードしている。左のイヤーバッドをタップするだけで、ANCとアンビエントサウンド(外音取り込み)モードが切り替わるが、その違いはまるで昼と夜のようだ。非常に大きな音を出す野菜ジューサーも含め、この製品が遮断できる音には本当に感動した。また、このイヤフォンのBluetoothの範囲にも感心した。

イヤフォンに関しては、品質は値段相応というのが本当のところだ。今回も然り。ソニーは「WF-1000XM4」で再び、高性能ワイヤレスイヤフォンの基準を打ち立てることに成功した。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Sonyイヤフォンレビュー

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

【レビュー】グーグルの99ドルワイヤレスイヤフォン「Pixel Buds A-Series」はコスト削減努力の結晶

99ドル(約1万800円)という価格を実現するために機能を絞り込んだお値打ちイヤフォン

Google(グーグル)は多くのことをうまくやっている。しかし、これまでハードウェア戦略は真の意味ではその中に入っていなかった。だがここ数年同社は、少なくともPixel(ピクセル)やNest(ネスト)といったデバイスでは、ある程度の一貫性を保とうとしてきた、しかし特に前者は、すでに競争相手に溢れた市場の中で足場を固めるのに苦労し続けてきた。

Googleは2017年に、第1世代の「Pixel Buds」(ピクセルバッズ)でワイヤレスイヤフォンの分野に参入した。この製品は、デザイン的にも機能的にも、このカテゴリーの中では斬新なものだった。にもかかわらず、最終的には失敗に終わった。しかし、その努力に対しては「A査定」を与えても良いと思う。2020年4月に発売された第2世代の製品は、前作の多くの問題点を修正し、よりストレートなアプローチを追求した。

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米国時間6月3日に発表された「Pixel Buds A-Series」(ピクセルバッズAシリーズ)は、Googleのスマートフォンラインで成功を収めたアプローチを利用したものだ。最初のPixel Aスマートフォンが登場したのは、同社が携帯電話の販売不振をなんとかすべく対処を行っているときだった。この廉価版ラインへのアプローチは成功を収めて(Googleスマートフォンの基準では)よく売れ、苦境に立ったラインに明るいニュースをもたらすのに役立った。

再確認になるが、格安スマホと同じように、価格がものをいうのだ。ここで示された価格は99ドル(約1万800円、日本での価格は未定)だ。この価格は、新しいEcho Buds(119ドル、約1万3000円))やSamsung Galaxy Buds(110ドル、約1万2000円))よりも下で、さらにはAirPods 2(159ドル、約1万7000円)よりもはるかに安い。基本的に、中位クラスの完全ワイヤレスイヤフォンの価格設定の中では低価格帯を占めている。これよりも下位クラスではさらに競争が激しく、たとえばAnker(アンカー)のイヤフォンを40ドル(約4400円)前後で購入することができる。しかし、ブランド名から期待する相対的な基準で考えると、その価格設定はかなり大胆なものだ。

また、希望小売価格が170ドル(約1万9000円)の標準的なPixel Budsに比べても大幅に値下げされている(ただし、少し探せばずっと安く手に入れることができる)。今回のシリーズAは、標準的なPixel Budsに取って代わるものではなく、Pixel Budsを補完するものだ。このやり方は、価格帯では開きがあるもののApple(アップル)がAirPodsで行った戦略と同じだ。新しいイヤフォンが発売されたことで、多くのオンラインショップでの製品間の価格差がさらに縮まることを期待している。この記事を書いている時点では、Pixel Budsの2代目を99ドル(約1万800円)で販売しているところが少なくとも1カ所ある。

画像クレジット:Brian Heater

当然のことながら、コストを下げるためには、多少の簡易化、あるいは必要のないものを取り除くことが必要だ。最終的には、あるユーザーにとっての価値は、低価格化と引き換えに何を失っても良いかによって決まる。失われるもののうち特に大きなものは以下のようなものだ。

  • ワイヤレス充電なし
  • センサーの低価格化により、アテンションアラート(サイレン、赤ちゃんの泣き声、犬の鳴き声などが聞こえると一瞬音量が小さくなる機能)なし
  • 通話や風に対するノイズ低減機能なし
  • 限られたタップジェスチャー

それ以外の点では、シリーズAはPixel Buds 2とよく似ていて、同様の12mmダイナミックスピーカードライバーや、デザインもほぼ同じものを採用している。実際、個人的にはあまりにも似ていることに驚かされた。大きさや形なども……・ここですぐにわかる唯一の違いはカラーリングだ。そのあたりには特に問題がなかったので、Googleは修正しなかったのだ。これまでのような大胆なマットカラーはない。今回のヘッドフォンには、光沢のある2つのカラーが採用されている。クリアリーホワイトとダークオリーブだ。Googleが私に送ってきたのは前者で、AirPodsよりも少しオフホワイト(Echo Budsのカラーリングに少し近い)で、濃いグレー部と組み合わせられている。もしもっと大胆なカラーがお好みなら、オレンジ(日本未発売)またはミントグリーンを使用した従来のイヤフォンを選ぶこともできる。私はオリジナルのマットなカラーリングの方が好きなのだが、会社としては何らかの差別化を図らなければならなかったのだろう。

画像クレジット:Brian Heater

ケースは、従来のバージョンと同じ縦長の楕円デザインだ。AirPods Proと同程度の体積なので、ポケットに入れても違和感はない。USB-C充電ポートが底面にあり、前面のライトで充電状態を確認でき、同期ボタンは背面下部にある。上部の蓋を開けると、おなじみの2つのイヤフォンが現れる。

サイズと形状はPixel Budsとほぼ同じだが、うれしいことに長時間の使用でもかなり快適だ。そうした性質は、すべての競争相手に当てはまるものではない。シリコンチップはより良いフィット感を得るためにユーザーが交換可能することが可能だが、小さなシリコンイヤーチップはガッチリとはまりこんでしまう。私はそれでいいと思うが、人によって意見は異なるかもしれない。

今回のAシリーズ(まったくの余談だが、何度も資金調達ラウンドについて書いたせいでどうしても「シリーズA」と書きたくなってしまう)のサウンドは、これまでのものと同様にほどほどの仕上がりになっている。(なかなか休む時間が取れなかったような場合には)AirPods ProやSONY WF-1000XM3のような高級イヤフォンから、より高品質なサウンドを得ることができるが、日常的なリスニングや通話には、マイクの性能は多少落ちたとしても、今回のイヤフォンで十分対応できる。

画像クレジット:Brian Heater

ノイズキャンセリング機能は搭載されていない。まあ標準のPixel Budsにもこの機能は搭載されていないので、それは当然予想されることだ。ノイズキャンセリングの標準搭載がだんだん進んでいることを考えると、当然Pixel Buds 3にはこの機能が搭載され、格安モデルとの差別化が図られることだろう。

1回の充電で5時間(通話2時間30分)、ケースを使うと12時間利用できるが、これもPixel Budsと同じだ。同様にIPX4の防水性・防汗性を備えている。Bluetooth接続はかなり強力だ。通常のイヤフォンでは別の部屋に移動した際に接続が切れることがよくあるが、今回の製品ではそのようなことはなかった。

画像クレジット:Brian Heater

Android(6.0+)またはiOSデバイスにペアリングできる。当然ながら、Androidでは「Fast Pair」(ファーストプレイ)機能を使うことで便利に使うことができる。一方、Appleの携帯電話に対しては、ペアリングボタンを使用する必要がある。目玉機能の1つであるGoogleアシスタントも、Androidデバイスでしか使うことができない。これは、通知を有効にしたり、Google翻訳をリアルタイムに利用するためには、もっとも便利な手段だ。

Pixel Buds Aシリーズは、イヤフォンの世界に騒動を巻き起こすようなものではない。そのことはあまり重要ではないのだ。何よりもこの製品は、100ドル(約1万900円)以下でしっかりとした体験を提供するために、脂肪を削ぎ落としたものだ。その基準では、ほぼ成功している。

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

Lyftの新しい電動自転車を試してみた、2021年6月からパイロットテスト中

私が混沌とした道路工事だらけのマンハッタンの路上を走ったその自転車に、見慣れたロゴはついていなかった。外観はいかにもプロトタイプという感じでつなぎ目にはハンダ付けの跡が見え、未完成のAVシステムを載せていた。しかし、走りは快調で、交通の流れに問題なく出入りできた。つまるところ、それは最も重要なことだ。

Lyft(リフト)の新しいeバイク(電動アシスト自転車)のパイロットテストは2021年6月に始まった。このライドシェアリング会社は、同社が運用している都市で車両を提供していく。まずサンフランシスコ、続いてシカゴとニューヨークだ。場所はほぼランダムな「イースターエッグ」方式なので、ユーザーはピカピカの新しい電動自転車とランダムに出会うことになる。幸運にも遭遇することができれば、Lyftはあなたにメールを送り、どんな体験だったを尋ねる。

私の体験は全体的にかなりよかったが、走っている途中にデリバリートラックと接触した。しかしそれが大都市の生活というもので、たぶん私が大きく曲がりすぎたのだろう。私にとって初めての80ポンド(36kg)の電動自転車だ(前車種より20ポンド、約9kg重い)。この重さ(主にダウンチューブ内の新型巨大バッテリーによる)は当初私を心配させたが、自転車の動きは驚くほど快適だ。電動アシストは自然でスムーズだ。巡航速度で走行中は、1ブロックに数回ペダルを踏むだけだった。

画像クレジット:Lyft

試乗は限定的で、ほぼ全部が平坦地だったので、橋の入り口ランプやサンフランシスコの有名な坂道で電動アシストを試すことはできなかった。

新しい電動自転車は、Lyftが前回の電動自転車軍団を展開(問題がないわけではなかった)してから比較的すぐだった。しかし会社は、この新型車を実質的にゼロから作ったと述べている。

「eバイクを作っているところは、家内工業から巨大消費者メーカーまで山ほどあります。しかし、業務走行用のeバイクはまったくの別物です」とプロダクトマネージャーのGary Shambat(ゲーリー・シャンバット)氏がTechCrunchに語った。「外観は同じように見えますが、摩耗や破損や破壊行為は著しく異なるので、既存製品にいくつか手を入れて、通信モジュールを載せておしまいというわけにはいきません」。

画像クレジット:Lyft

電動アシストを駆動する500Wのモーターとかなり巨大なバッテリーは60マイル(96km)の走行が可能だと同社はいう。つまり、1回の充電で何回か乗れるという意味だ。走行状態はすべてセンサーシステムによって監視されていて、バッテリーやブレーキに問題があれば警告が発せられる。

白い車体は光沢があり、前方のLEDリングライトは色を変えることができる。ヘッドライトと安全灯以外のさまざまな使い方を試験中だと会社はいう。リングは分割されていてさまざまな色に変化するので、方向指示器などに使うことが考えられる。全体的にちょっとした工夫が見られる。ハンドルバーグリップは小さな口ひげのようなデザインで、同社サービスの黎明期の装備を彷彿させる。

  1. PressKit_Beacon_Pink_HighRes

  2. PressKit_Display_HighRes

  3. PressKit_Fleetvehicle_HighRes

  4. PressKit_Hero_3_4_HighRes

  5. PressKit_RetroReflectiveView_Side_HighRes

  6. PressKit_Station_Locking_HighRes

  7. 20210501_Lyft_Ebike_Details_0006

  8. 20210501_Lyft_Ebike_Details_0056

  9. 20210501_Lyft_Ebike_Night_0950_V2 (2)

  10. 20210501_Lyft_Ebike_Pink_Window_0872

  11. 20210501_Lyft_Ebike_Terrace_0596

  12. 20210501_Lyft_Ebike_Building_0709

  13. PressKit_DayView_Side_HighRes

現在、Lyftは9つの都市でバイクシェアリングを展開している。

関連記事:LyftがMotivateを買収、Lyft Bikes実現へ

カテゴリー:モビリティ
タグ:Lyftレビュー電動自転車

画像クレジット:Lyft

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(文:Brian Heater、翻訳:Nob Takahashi / facebook

【レビュー】新「Fire HD 10 Plus」は純正キーボードカバーでPCっぽく使える10.1型フルHDタブレット

【レビュー】新「Fire HD 10 Plus」は純正キーボードカバーでPCっぽく使える10.1型フルHDタブレット

5月26日に出荷予定の新世代10.1インチのフルHDタブレット「Fire HD 10」(1万5980円〜)と「Fire HD 10 Plus」(2万2980円〜)を一足早く触れることができたのでインプレッションをお届けします。

【レビュー】新「Fire HD 10 Plus」は純正キーボードカバーでPCっぽく使える10.1型フルHDタブレット

まず簡単にアップデート点と特徴をご紹介します。Fire HD 10は、2.0 GHzのオクタコアプロセッサと3GB RAMの搭載により前世代機に比べてメモリが50%増量。HD10 Plusでは、2.0GHzのオクタコアプロセッサと4GBのRAMを搭載しています。ディスプレイは前モデル比で10%明るくなった10.1インチの1080p(1920 x 1200)フルHDデ ィスプレイを搭載しています。

ボディは前世代機のFire HD 10より7%薄く、8%軽くなり、強化アルミノシリケートガラスのスクリーンを採用。持ち運びやすく、耐久性も強化しています。

カメラはフロントが2M、リアは5Mを採用。ビジネス用途としてのビデオ通話ではZoomやSkype、 Microsoft Teams(近日提供開始予定)にも対応します。

【レビュー】新「Fire HD 10 Plus」は純正キーボードカバーでPCっぽく使える10.1型フルHDタブレット

Facebook MessengerやPrime Videoのような2画面表示に対応している2つのアプリを同時に表示できるFire OSを搭載しています

【レビュー】新「Fire HD 10 Plus」は純正キーボードカバーでPCっぽく使える10.1型フルHDタブレットFire HD 10 Plusのみの特徴は、外観にスレートカラー(濃い灰色)を採用。Anker製のワイヤレス充電スタンド(別売り、5980円)でワイヤレス充電が可能です。また、スタンドに設置するとタブレットのShowモード が起動し、Alexaを搭載したスマートディスプレイとして利用できます。

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付属品はACアダプター、ケーブル、説明書。外装は相変わらずシンプル

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スレートカラー(濃い灰色)

  1. 【レビュー】新「Fire HD 10 Plus」は純正キーボードカバーでPCっぽく使える10.1型フルHDタブレット

 

専用キーボードを試す!

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「Mader for Amazonキーボード付きカバー」(5980円)は、マグネットで取り外し可能なBluetoothキーボードを備えたカバー。日本語配列で、設計は数多くのスマホ・タブレットアクセサリを開発してきたFintieによる製品です。500mAhのリチウム電池を搭載しており400時間継続動作が可能です。

Fire HD 10 Plusだけでなく、Fire HD 10にも対応しています。

ひとまず装着してみました。

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ポリウレタンレザーでコーティングされたポリカーボネート素材を採用。本体保護の面では十分活躍してくれそうな剛性と質感があります

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開くとキーボド部がせり上がるリフトアップヒンジ

【レビュー】新「Fire HD 10 Plus」は純正キーボードカバーでPCっぽく使える10.1型フルHDタブレット

キーボード部を取り外し可能

【レビュー】新「Fire HD 10 Plus」は純正キーボードカバーでPCっぽく使える10.1型フルHDタブレット

私は100均で買ったタブレットスタンドと組み合わせて、タブレットから少し距離を空けて利用しました

パフォーマンス面では、Primeビデオを再生しながらの、ながら作業でも処理が重くなるシーンはなく、もくもくと文字を打ち込む作業に専念できました(ながら作業ですが)。

コンパクトなキーボードということで、キーピッチは1.7mm(実測)。また、重さはFire HD 10 Plus本体が460g、キーボードカバーが629g、計1089g(実測)でした。

【レビュー】新「Fire HD 10 Plus」は純正キーボードカバーでPCっぽく使える10.1型フルHDタブレットFire HD 10+キーボードカバーで常用する際に引っかかったのはロック解除でした。Fire HD 10はPINかパスワード入力でのロック解除なのです。顔認証や指紋認証でのロック解除に慣れてしまった筆者にはここがとてもストレスでした。

とはいえ、このスタイルが2万1960円(Fire HD 10の32 GBモデル+キーボードカバー)〜で実現できてしまうのは大変魅力的。Fire OS端末であることやカットされた機能などを十分に理解した上ならば、サブ機や子供の教育用などでの購入はおすすめです。

仕事用にWord等を利用したいのであれば、「Fire HD 10・Fire HD 10 Plus」+「Made for Amazon キーボード付きカバー」+「Microsoft 365 Personal 1 年版」が1つになった「エッセンシャルセット」を展開します。2万4980円から購入できます。

Engadget日本版より転載)

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タグ:Amazon / アマゾン(企業)Amazon Alexa(製品・サービス)Skype(製品・サービス)Zoom(製品・サービス)Fire HD(製品)Microsoft 365(製品・サービス)Microsoft Teams(製品・サービス)レビュー(用語)日本(国・地域)

【レビュー】マイクロソフトのSurface Laptop 4は予想どおり堅実な進化を遂げている

最近では、ノートパソコンのデザインで最も簡単なやり方は、Apple(アップル)のMacBook(マックブック)をそのまま模倣することだと言われている。確かにこの数年の間には、酷いケースも目にしてきた。しかし、Microsoft(マイクロソフト)はその製品ラインアップ全体の工業デザインにおいて、独自の道を挑戦的に切り開いてきた。同社の製品は概して非常に興味深く、革新的だ。最近こんな言葉はすべてのハードウェアメーカーに対して言えるものではなくなっているが。

しかし、マイクロソフトのやることが常に正しかったとは限らない。例えば、Surface Duo(サーフェイス・デュオ)では非常に大胆な試みに打って出た。確かに革新的ではあったものの、誰もに推奨できるとは言えない部分があったのも事実だ。その一方で、Surface Laptop(サーフェイス・ラップトップ)は、シリーズで最も画期的な製品というわけではないが、Windows対応のタッチスクリーンと、より標準的なノートブックのデザインを併せ持つ、一貫して最も優れた製品の1つであり続けている。

ここ数世代のモデルは堅実で、2021年のモデルも(おそらく大方の予想通り)大きな変化はなかった。約1年半ぶりの大きなアップグレードは、新しいチップ(AMD Ryzen、Intel Core i5またはi7のいずれか)の搭載と、8時間30分も長くなったバッテリー駆動時間の大幅な向上だ。基本的には、モデルの定期的な刷新時に予想される(あるいは期待される)種類の改良に過ぎない。

画像クレジット:Brian Heater

デザイン言語はほとんど変わっていない。Surface Laptopは、テーパードした側面やフェルト(アルカンターラ素材)で覆われたパームレストなど、その面では類を見ない独自性を備えている。素材の感触は良く、特に寒い日にはメタル素材製のものを明らかに凌ぐが、しかし短期間使用しただけで、すでに少し摩耗していることに気づいてしまった。

キーボードは従来と同じくソフトな感触で、驚くほどの弾力性がある。これまで私が見たノートパソコンの中で最高のキーボードというわけではないが、最悪のキーボードでもない(あのアップルの粗雑なキーボードの動きを忘れることができるだろうか?)。他のすべてのキーボードと同じように、慣れるには少し時間がかかる。

また何度も同じことを繰り返すと思うかもしれないが、おそらく毎回マイクロソフトが気候の良い時期にSurface Laptopを発表するせいだろう、私はいつもこれを外に持ち出したくなる。そして毎回、残念に思うのがあのディスプレイの反射だ。ほとんど集中できない。もちろん、多くのノートパソコンに光沢(グレア)スクリーンが採用されているが、マイクロソフトは特にその傾向が強い。この点において、Surface Laptopを陽光の下で使うことはおすすめできない。たとえ輝度を最大にしても、スクリーンは反射を打ち消すことができないからだ。

画像クレジット:Brian Heater

見える環境に持って来れば、画面の表示はきれいだ。マイクロソフトが送ってくれたのは、2サイズが用意されているうち小さい方の13.5インチで、解像度は2256×1504px、201ppiとなる(15インチでも画素密度は同じ)。我々は新色のアイスブルーを選んだ。しかし、これは微妙な色合いだ。正直なところ、私にはブルーというよりシルバー / グレーに近ように見える。スピーカーの音は素晴らしく、ウェブカメラも問題ないが、依然としてビデオ会議が多く行われている現在、そろそろ(現在の720pから)1080pにアップグレードする時に来ていると言っていいだろう。

13.5インチのモデルの価格は1000ドル(日本では税込12万8480円)からで、8GBのRAMと256GBのストレージ(SSD)、そしてAMD Ryzen 5 4680Uプロセッサを搭載する。我々の手元にあるモデルは、RAMとストレージを2倍に増やし、プロセッサをAMDからIntelのCore i7に変更した仕様で、価格は1700ドル(日本では税込21万6480円)となる。さらに600ドルを足せば、RAMとストレージがさらに2倍になる(プロセッサは同じCore i7、日本では税込29万3480円)。Geekbenchのスコアでは、シングルコアで1378、マルチコアで4876という堅実な数値が出た。パフォーマンスは全体的に安定しているものの、アップルのM1を長時間使用した後では、Intelに大変な仕事が残されていることは明らかだ。

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    画像クレジット:Brian Heater
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    画像クレジット:Brian Heater

マイクロソフトは、依然として独自のマグネット式充電ポートの採用にこだわっている。熱狂的なファンがいることは承知しているが、個人的にはUSB-Cポートをもう1つ追加するなど、より一般的な方法を採用してもらいたいと思う。だが、それでは他のSurface用のさまざまなアクセサリーとの互換性に影響が出てしまう。反対側には、USB-A、USB-C、そしてヘッドフォンジャックが備わる。これは良い組み合わせだが、ポート数が増えればさらに強化されることは間違いない。

2020年のSurface Laptop Goでは、さまざまな機能が削減されており実に失望させられた。もちろん、エントリーレベルの13.5インチLaptopは、12インチLaptop Go(日本では税込8万4480円)よりも300ドルも高い。しかし、基本的な作業以上のことをやりたいと思うのであれば、これはおそらく賢明な投資になるはずだ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:MicrosoftSurfaceノートパソコンレビュー

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】アマゾンの新Echo Budsはまずまずのアップグレード、ただし依然として卓越性は感じない

完全ワイヤレスイヤフォンほど急速に成熟化した家電カテゴリーはなかなか思い浮かばない。1、2年の間に、ひと握りの果敢なスタートアップから事実上あらゆるハードウェアメーカーまで、その流れを加速させた。Amazonがこの分野に参入したとき、すでに過密状態になっていたことは間違いない。

遅れて参入する場合に考えるべきは、何を強みとするかだ。結局のところ、初代Echo Budsには、40ドル(約4350円)でAnkerのイヤフォンを買うことができる世界で選択するに値する説得力は感じられなかった。他にも少々の懸案事項があったものの、筆者の同製品の評価記事は、結局かなり詰めが甘い内容に終わってしまった。

関連記事:アマゾンのAlexaイヤフォンの新モデルEcho Buds2はさらに小型化、ワイヤレス充電対応

1年と少しが経ち、Budsが再登場した。そしてもちろん、Amazonが初代モデルの懸念の一部に対処し、かなり堅実なアップグレードを提供したことは評価できる。さらに同社は、他社がProモデル用に控え置く機能をいくつか追加しながら、価格を129ドル(約1万4000円)に抑えている。

数日前からEcho Budsを主力ヘッドフォンとして使用しており、全体的に満足感を感じている。この製品はある意味中間的な位置づけにあるが、それでも私は「Price Is No Object」カテゴリーの他の製品をいくつか推奨しているし、Budsはローエンドに適合する価格というほどでもない。

画像クレジット:Brian Heater

新しいEcho Budsは、SamsungのGalaxy Buds Plusと同等の価格で、ほとんどの面で遜色ない。最も注目に値するのは、アクティブノイズキャンセリング(ANC)機能が搭載されたことだ。このAmazonの最新製品は、最良のANCを提供しているわけではないし、他に最高レベルのものを備えているということもないが、価格面ではバランスの取れたサービスを実現している。

Alexaで経験してきたように、Apple、Google、Samsungといった自社のハンドセットに直接接続するデバイスを構築できる企業と競合するにあたり、Amazonは不利な立場にある。同社はこれまでのところ、独自の端末を開発しようとする試みに失敗しており、差別化のための別の方法を模索せざるを得なくなっている。

それは主にAlexaを象徴している。そして実際のところ、Echo Budsは同社のスマートアシスタントを充実させるもう1つの方法である。組み込みのAlexaは、そのエコシステムにすでに投資しているユーザーにとってはセールスポイントだ。私はGoogleアシスタントを好む傾向がある。特にGoogleの他のソフトウェアと統合されていることを勘案すればなおさらだが、多くの意図や目的において、そのパーソナルアシスタントは互換性が高い。

画像クレジット:Brian Heater

新しいBudsは前機種よりかなり小さくなっているが、実際は小さいとは言えない。まだ少しかさばるし、室内で使っているときには問題はなかったが、週末に出かけた5マイル(約8km)の散歩では何度か緩んでしまった。そうした場合は、シリコン製のカバー(ウィングチップ)を装着するのがいいだろう。運動することを考えた場合にも、それがおそらく最適な選択肢だ。

しかし、ここでデザイン上の奇妙な見落としを発見した。カバーを付けると充電ケースが完全に閉じない。カチッと閉まらず、充電が微妙であることを昨晩痛感した。実際、右耳には「バッテリーが10%以下」という警告が表示され、左耳は90%台後半となっていた。ウィングチップを使うことになった場合は、ワークアウトの後に外すのがベストだ。また、あまり長く使いすぎると少し窮屈に感じてくる。

関連記事:アマゾンの最新Echo Buds 2は恥知らずなアップルの模造品

画像クレジット:Brian Heater

TechCrunchのライターMattが最近指摘したように、このケースはAppleに強く触発されている。2つを並べれば違いは顕著になるものの、似ていることは否めない。

ケースは長めで、手触りは少し安っぽく感じる。形状が違うだけに、縦にまっすぐ収まるというメリットもある。このため充電ポート(USB-C)は、底面ではなくケースの背面に位置している。ワイヤレス充電ケースのオプションもあるが、20ドル(約2180円)プラスになる。ケースの上にはAmazonの矢印のロゴが施されているが(同社のブランディング力はあまり高くないかもしれない)、その印象はさりげなく最小限に抑えられている。イヤフォンにも目立たない程度に矢印がついている。

Amazonから届いたのは「グレイシャーホワイト」で、実際には薄いグレーだ。これもAirPodsとの違いが顕著な点だろう。Appleのデザインとの差別化を図る巧妙な手法なのだろうか?何とも言えない。

画像クレジット:Brian Heater

ペアリングはかなり簡単に行える。AirPodsをiPhoneで、Galaxy BudsをSamsungで使うような感覚ではないが、Alexaアプリを何回かタップするだけだ。すべてのAlexa対応デバイスで実行するすべてのことに対してゼロ地点として機能する。しかし、ある時点で、アプリを少し分割したいと思うようになるかもしれない。もろ刃の剣とも言える。あまり多くのアプリは必要ではないのに、現時点でかなり騒がしい感じがある。

Budsを開いてペアリングすると、デバイスが前面に表示される。タップして、ANCモードとパススルーモードを切り替えたり(困ったことに筆者がBuds装着時に使わなかったモードがデフォルトになることがしばしばあった)、マイクのオン/オフを切り替えたり、オプトインのワークアウトモードを開始したりできる。より一貫性のあるワークアウトのトラッキングを求めている人にとっては、バンドや腕時計のような常時装着型のウェアラブルの方が好ましいだろう。

以前のモデルに比べて音が良くなっている。ノイズキャンセリングと同じように、より高価なシステムではより高音質の音を得ることができるが、この価格帯では、音楽、ポッドキャスト、通話などに安定した音質が得られる。デフォルトでは低音への依存度が高すぎて好みに合わなかったが、数回タップするとイコライザーのスライダーが表示されるので、そこで調整が可能だ。

画像クレジット:Brian Heater

Bluetooth接続はかなり安定している。iPhoneを1カ所に置いた状態で家の中を歩き回ることができた。しかし屋外で長い距離を歩いていると、左右の間で時折同期の問題が起こり、エコーが生じた。また、耳から外したときにすぐにスイッチが切れるわけではないので、隣り合わせにして持つと鋭いフィードバックが返ってくる。

バッテリーはBuds本体で最大5時間(ANCオフなら6時間30分)、ケースに入れると15時間になる。AirPodsとAirPods Proではそれぞれ4時間30分と5時間、ケースを装着した場合は24時間だった。ケースに1度か2度入れておけば、丸1日使用できた。

新しいEcho Budsは、ほぼすべてのレベルにおいて以前のものよりアップグレードされており、中価格帯の堅牢なイヤフォンに仕上がっている。実際のところは、前の世代が失敗した「要因」の観点においてあまり対処されていない。Amazonにとっては、Alexaをより多くの製品に搭載することだろう。消費者にとっては、答えはそれほど単純なものではない。

関連記事:Amazon Echo Budsはノイキャンワイヤレスの価格破壊

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AmazonイヤフォンノイズキャンセリングAlexaノイズキャンセリングレビュー

画像クレジット:2021/05/13/amazons-new-echo-buds-are-a-nice-upgrade/

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(文:Brian Heater、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】アップルの24インチM1 iMac、明るい色とコンパクトさで「キュート」だが最重要ポイントは「M1」

2020年9月、私たちは27インチiMac(アイマック)のレビューをこのように締めくくった

「ここでの大きな疑問は、iMacの未来がどうなるのか――そしてそれを見るために私たちはどれくらい待たなければならないのか、というものだ。それはもちろん、何年も続くハードウェアのアップグレードに関する疑問だが、Arm(アーム)ベースのシステムが差し迫っていることや、再設計にまつわる噂があることで、それはさらに切迫したものになっている」。

このような状況から、このとき発表されたAppleの最新のオールインワンマシンは全面的に支持できるものではなかった。このような評価をしたのは私たちだけではなかった。それはこのコンピューターにとっての、そしてMac一般にとっての、奇妙なポジションだったのだ。2020年6月のWWDCでは、インテルから自社製チップへの移行という異例の発表が行われたが、その際にはハードウェアは一切用意されていなかった。

関連記事:AppleのM1搭載MacBook Proは特にバッテリー駆動時間が驚異的

その理由はもっともなものだった。開発者たちが実際の発売前に先立って対策をできるようにと、Appleが考えていたからだ。2005年以来、Macのラインがこのように大きく変化するのは初めてのことで、それはかなり困難なものになると思われた。15年というのは長い時間であり、それだけ多くのレガシーソフトウェアと闘うことになるからだ。すべてのmacOS(マックOS)ソフトウェアが完全に壊れてしまうわけではないが、開発者にとっては、同社が提供するMac Mini(マックミニ)開発者キットを使って、新しいハードウェアに最適化することが、最重要の方法であることは間違いなかった。発表時、新しいAppleシリコンへの完全な移行には2年を要するとAppleは語っていた。

画像クレジット:Apple

2020年11月には、Appleは最初のM1 Macとして、新しいMac Mini(マックミニ)、MacBook Air(マックブックエア)、13インチMacBook Pro(マックブックプロ)を発表した。TechCrunchは3つのシステムのレビューにはそれなりの文字数を費やしたが、最終的にMatthew(マシュー)記者が「Appleの新しいM1搭載MacBookは、Intelのチップを一夜にして陳腐化させるほどの印象的なパフォーマンスの向上を見せた」と簡潔に表現している。

関連記事:AppleのM1搭載MacBook Proは特にバッテリー駆動時間が驚異的

これは、そのわずか2カ月前に発売されていたオールインワン(iMac)に対して、厳しい印象を与えるものだった。根本的な再設計がしばらく行われていなかったシステムであっただけに、その厳しさもなおさらだ。発売から2カ月が経過したiMac 2020は、その時点ですでに古さを感じさせ始めていた。

画像クレジット:Brian Heater

そして2021年4月になって、Appleは立て続けに行ったハードウェアニュースの中で、新しいiMacを発表した。これこそが、私たちがずっと待ち望んでいたiMacだったのだと思えた。この新システムは、この10年間で最も根本的な再設計が行われたもので、超コンパクトな新フォームファクターの提供、リモートワーク時代の大きな考慮点であるオーディオとビデオの改善とともに、おそらく最も重要なものとして新しいM1チップが導入された。

画像クレジット:Brian Heater

2020年版iMacの最大の特徴は、まあ要するに「大きい」ということだった。パンデミックの間、日々の仕事の多くを27インチiMacで行っていた私は、今回の24インチiMacを前にして、この3インチ分の余剰がどれほど恋しいものかを思い知った。当初私は、20インチを超えたら、画面の大きさの違いは無視できるだろうと考えていたのだが、実際には他のものと同様、慣れるのには時間がかかることがわかった。

もちろん、すぐにわかる良い点もある。これまでのiMacと比較して、新しいデザインがいかにコンパクトであるかに、本当に驚いた。これまでの21.5インチから2.5インチサイズアップしたにもかかわらず、新システムは11.5mm(スタンドを含めると14.7mm)という超薄型を実現している

このシステムを包み込むテーマは「キュート」(cute、カワイイ)だ。この言葉を、私がテクノロジーに当てはめることは滅多にない。こういったときに一般的好まれるのは「クール」(cool、カッコいい)や「スリーク」(sleek、均整美がある)といった言葉だ。しかし、iMac G3の精神を真に受け継ぐものと感じさせるこの製品を表現するのに、これ以外の適切な言葉を見つけることができない。あのカラフルなiMac G3たちは、フォルクスワーゲンのニュービートルによって象徴される世紀末の年に、Steve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏がAppleで2度目の成功を収めるきっかけとなった。

もちろん、最初のiMacが登場してから約四半世紀の間に、スタイルの変化や、当然ながら縮小を続ける部品サイズなどにより、デザイン言語は劇的に進化してきた。フラットパネルのデザインは今世紀初頭に登場し、2012年頃に最新のデザインへと落ち着いた。確かに、その後も多くのアップデートが行われてきたが、Appleのデザインが大きく更新されないまま9年が経過したのはとても長かった。

画像クレジット:Brian Heater

Appleは、これまでの一見インダストリアルなデザインから、より温かみと受容性のあるデザインへと変化させている。ここでは色が大切だ。これは、TechCrunchの(仮想)オフィスで最も頻繁に議論された疑問だった。みんなが、どの色を選ぶかということを知りたがった。私はイエローを選んだ。明るく春らしくていい色だ。正直なところ、思っていた以上にゴールドがかっていて、明るい輝きがある。このシステムを購入するつもりなら、もし近くに行きやすいアップルストアがあれば、実際に訪問することをお勧めしたい。可能なら、実際に目でみることが本当に意味があるような製品なのだ。

そして、なんともすごいのがAppleはそのテーマを徹底していることだ。キーボードも、ケーブルも、かわいらしいパッケージもテーマにマッチしているし(そういう意味では開封するのも楽しい)、デスクトップの壁紙も、そしてOSボタンのようなちょっとした工夫もマッチしている。最後の2つは、当然ながら自分で少しずつ変えていくことができる。しかし、本体やキーボードまでもが、少しばかり強いこだわりを持っている。結局のところ、これはおそらく何年も持ち続けたいと思うようなものなので、決定を下す前に照明と室内装飾の両方を検討する価値がある。デスクトップパソコンの話をしているときに、このようなことを考えようというのは奇妙だとは思うが、まあ、iMacだからね。

同社は、新しいiMacが周囲の環境にどのようにマッチするかを確認するためのAR iOSアプリを提供している。これは巧妙な、そしておそらく有用なアプローチだ。また、このシステムの重さは10ポンド(約4.54kg)以下だ。これは正直なところ、これまでのデスクトップでは考えられなかった軽さだ。デスクトップの大きさを形容するのに「ポータブル」という表現は奇妙だが、特に他のデスクトップシステムと比較してみた場合は、ぴったりな表現かもしれない。少なくとも、必要に応じて部屋から部屋へと移動させる可能性が、まったくないとはいえない。

画像クレジット:Brian Heater

大まかに言えば、フロントデザインはこれまでのiMacと同様だが、ボトムパネルと大きなAppleロゴは、色のついたものに変更されている。ガラス面はスクリーンとそれを縁取る白いベゼルに高さが合わされている。ベゼルと下部のパネルを合わせると、ディスプレイの下にはそれなりの場所がとられているが、ここは内蔵部品や、コンピューターの底部全長にわたって配置されている下向きのスピーカーグリルが収納されている場所だ。一番上部には、新しくアップグレードされた1080pのHDウェブカムが装備されているが、これは全Macを通して初めてのことだ。

これまでのiMacと同様に、本体はスタンドに装着されている。少なくともイエローモデルの場合には、このスタンドはシステムの前面に比べて明らかに暗い色をしている。購入時にVESAマウントオプションを選ぶことができるが、スタンド自身はユーザーが交換できないように設計されている。ヒンジの動作はスムーズだ。ウェブカムのフレームに自分がよく収まるように、システムをしばしば上下に動かしたが、それも簡単に行うことができた。

画像クレジット:Brian Heater

左側には、昔からのお馴染みである3.5mmのヘッドフォンジャックがある。私は、ケーブルを側面や底面から迂回させる必要がある、ジャックの背面への配置よりも、この側面への配置の方が好きだ。

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スタンドには、特に電源ケーブルを通すための穴が開けられている。Magsafe(マグセーフ)――おっと、マグネット式充電コネクタだった――は、思いがけない登場だった。昔のMacBookで提供されていたもののような簡単な接続解除が目的ではなく、ケーブルを簡単にカチリと固定させることが主眼だ。だが移動されない(少なくとも滅多に移動されない)デスクトップのケーブルにつまずく人は少ないのではないかと思う。

画像クレジット:Brian Heater

電源ケーブルの状況への大きな変化は、もちろん、電源アダプター本体にEthernetポートが追加されたことだ。特に、MacBookに慣れているユーザーには、このアダプターはかなり大きく感じられるだろう。とはいえ、たぶん邪魔にはならないだろう。このことによって、システムの背面からさらに余分なものがなくなり、コンピュータ自体の厚さをより薄くすることができた。有線接続にアクセスできる場合には、ほとんどの人にとってうれしい追加機能だ。

画像クレジット:Brian Heater

一方で、本体のポートそのものの状況は、あまりうれしいものではない。私はポート好きだ。なにしろコンピュータの背面に接続する必要があるものをたくさん持っているのだが、ポートはそれらを接続するのに最も便利な手段だ。エントリーモデルでは、Thunderbolt / USB(サンダーボルト / USB)ポートが2つ搭載されている。これは4つまでアップグレードできる。絶対にそうすべきだ。本心からそう言っておこう。そうしておいて悔やむことはない。

私はワイヤレスキーボードやトラックパッド / マウスをほとんどの時間、接続したままにしている人間だ。それがワイヤレスという目的に反していることはわかっているが、しかし、充電器の心配は、今の私には不要のストレスなのだ。これで2つのポートが必要となる。そこでAVアクセサリーをいくつかつないだら、ほーら!もうポートがないのだ。

1299ドル版(日本では税込15万4800円)のシステムには、Magic Keyboard(マジックキーボード)が同梱されている。これは最近のMagic Keyboardsとほとんど同じものだ。万人向けというわけではないと私は思っている。メカニカルキーボードが好きな人にとっては、触り心地に不満があるかもしれない。しかしそれはMacBookのものよりはステップアップしているし、私がそれを使い慣れているのも事実だ。ベースモデルにはテンキーがついていないが、カラーリングはMac本体とマッチしている。

画像クレジット:Brian Heater

1699ドル(日本では税込19万9800円)以上のモデルでは、デスクトップシステムでは長らく実現されてこなかったTouch ID(タッチID)を搭載したバージョンにアップグレードされる。他のMac(および古いiPhone)と同様に、指紋認証によるログインはほぼ瞬時に行われる。しばらく前からApple Watchを身に付けていれば、それでログインすることもできるようになってはいたが、デスクトップにTouch IDが追加されたのはすばらしいことだ。基本バージョンにはMagic Mouse(マジックマウス)が付属している。トラックパッドへのアップグレードは50ドル(日本では税込5000円)、両方注文すると129ドル(日本では税込1万3800円)だ。私はトラックパッドを気に入っているのでそのアップグレードを行うだろう(両方を必要とする人は多くないと思う)。

画像クレジット:Brian Heater

これまで同様、同社が製品ラインをUSB-Cに移行させてきたたくさんの理由を私は理解している。特に、デバイスの背面にどれだけのスペースが解放されたかを見ればそれは明らかだ。でも私には、2020年版のiMacにあったレガシーなUSB-Aポートが失われたことが残念だ。ともあれ、注文確定の前に、AからCへのUSBアダプターを2つほどカートに入れておくとよいだろう。ともあれ、それがAppleとともに生きるということだ。100%勇気あるのみ。

これは、AppleがiMac Pro(アイマックプロ)の復活に向けてM1ラインを位置づけていることを意味しているのだろうか。これまでもより奇妙なことは起きてきた。もちろん今は、AppleははるかにハイエンドのMac Pro(マックプロ)に注力している。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

期待どおり、新しいM1チップがシステムに新たな息吹を吹き込んだ。Geekbench 5のスコアを見てみよう。シングルが1720、マルチコアが7606だ。これは、21.5インチシステムの、平均1200と6400という結果を吹き飛ばすものだ。当然、Rosetta(Intel)版ではそれぞれ1230、5601と落ち込むが、トランスレーションレイヤーを介してもしっかりとした性能を発揮している。しかし、Appleが開発者たちに対して、新しいAppleシリコンへの移行を積極的に呼びかけてきた理由もこれで明らかになった。全体的に、これまでに発表された他の新しいM1システムと同様の成果が得られている。これはMacの未来に向けた、健全ですばらしい飛躍といえるだろう。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

自分のワークフローにどの程度の影響があるのかを知りたい場合は、この資料から調べ始めると良いだろう。全体的には、私の日常的なアプリのほとんどは問題ないことがわかった。もちろん、問題も多少はある。Spotify(スポティファイ)とAudacity(オーダシティ)がそれに当てはまる。どちらもパフォーマンスに影響があるものの、全体的にはRosettaを使って動作できている。しかし、使用にはより多くのリソースが必要となる。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

Spotifyの場合は、このApple Musicの競合会社が新バージョンにどれだけのリソースを投入したいかという問題だし、Audacityの場合は会社が自由に使えるリソースがどれだけあるかという問題だろう。もしMicrosoft(マイクロソフト)やAdobe(アドビ)のような大手企業でなければ、徐々に不確実性は増えていく。しかし、大手企業のサポートにも問題がある。たとえば私は、Zoom(ズーム)をAppleシリコン版にアップグレードしたのだが、私が使っている「Canon EOS」のウェブカメラソフトのインテルバージョンが動作しないことがわかったので、結局Zoomをダウングレードした。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

これは非常に特殊な問題であるとわかっているし、ワークフローも非常に特殊なものだ。しかし、M1システムがMacの主流になるに従い、最終的には開発者にも選択の余地がなくなる。Appleシリコンに対応していないと、時代遅れになるリスクがあるからだ。このような変化にともなう成長の痛みは避けることはできないが、結果がその痛みを正当化してくれる。AppleシリコンはMacの未来であり、それはまさに、起動が速くスムーズに動く未来なのだ。

私が仕事でビデオを撮るときに使っている外部マイクやカメラの話をすると、Appleチームから怒られるのが目に浮かぶ。なにしろ新しいiMacは、これらの機能に対して久しぶりの大きなアップグレードを行ったからだ。パンデミックによって仕事や会議のやり方が変わり始めていた2020年なら、新しいマイクシステムや、Macに搭載された初の1080p HDカメラを導入するのには最善な時期だっただろう。次善の時期は、もちろん今だ。

Appleは2020年のMacBookではカメラシステムの改善を宣伝していたが、それはチップ上の画像信号処理に関係するものだった。それはホワイトバランスなどの改善にもつながるものの、本当に意味のある映像の改善には、一般にカメラの新しいハードウェアが必要となる。以下の画像を見て欲しい。

画像クレジット:Brian Heater

左が2020 iMac、右が新しいM1 iMacだ。(できれば)私のたわんで半分麻痺したような顔(2020年だよな?)は一瞬忘れて欲しい。画像は夜と昼のものだし、この後、パンデミックの日々を重ねて、多少ましになったからというわけでもない。720pから1080pへのアップグレードによる変化は、画質の違いとしてすぐに現れている。今やテレビ会議は生活の一部になっているので、Appleが全面的にシステムをアップグレードすることを期待していた。

iMac 2020

iMac 2021

カメラに加えて、マイクシステムも改良された。2020年11月に旧システムで録音したものと同じ内容のものを再び録音してみた。3つのマイクアレイはより鮮明で、バックグラウンドノイズの多くを取り除き、よりクリアなものとなった。また、6スピーカーのオーディオシステムも改善されている。音楽や映画の再生には適しているものの、リモート会議では相手のマイクの質によってはクリアさに欠けることがあった。オーディオは、私の好みとしては少し低音が強いかもしれない。

全体的に見て、ほとんどの人が日常的に使用するには、今回のオーディオとビデオのアップグレードは十分だと思う。たまにZoom通話をしたり、音楽を聴いたりする程度の用途であれば、問題ないだろう。だが、これらの製品から何を得ようとしているのかにもよるが、適切な外付けカメラ、マイク、スピーカーを買うのは決して悪い投資ではない。

新型iMacは、デスクトップ型オールインワンの基本的な部分で大きな飛躍を遂げていて、長い間改良の必要性が指摘されてきた同社の最も人気のあるシステムの1つに、新たな息吹を吹き込んでいる。繰り返すが、私は失われたポートを懐かしんでいるし、今では2020年のモデルにSDリーダーが搭載されていたことを夢のようだったと思い返している。いずれは27インチのシステムも登場して欲しいと思う(つまりiMac Proのリブートということ。賛成の人いるよね?)。全体的にみて、これまでの他のモデルに比べて、クリエイティブなプロをターゲットにしたシステムではないものの、それでもM1と搭載されたML(機械学習)は、オーディオ、ビデオ、静止画に対するすばらしい編集機能を備えている。

しかし、カラーコーディネイトされたキュートなデザインや、長い間待れていた遠隔会議機能のアップグレードはさておき、これまでのMacBookやMac Miniと同様に、ここでもApple Siliconが主役を果たしている。このシステムの価格は、発表当初、周辺ではちょっとした騒動のもととなった。すべての機能を搭載した最上位レベルでは2628ドル(日本では税込30万1600円)となるが、最小限のモデルは1299ドル(日本では税込15万4800円)なのだ。

最も基本的なレベルとして、3つの主要な構成が選べる。

  • 1299ドル(税込15万4800円):8コアのCPUと7コアのGPU、8GBのRAM、256GBのストレージ、2つのUSBポート、標準のMagic Keyboard
  • 1499ドル(税込17万7800円):GPUを8コアにアップグレード、Ethernetと2つのUSBポートを追加、キーボードにTouch IDを搭載
  • 1699ドル(税込19万9800円):ストレージを512GBにアップグレード(私たちが試用した構成)。

このシステムは現在予約を受け付けており、今週の金曜日以降顧客の手元に届く予定だ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleiMacApple M1Appleシリコンレビュー

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:sako)

【レビュー】アップルのiPad Pro 2021は今回もすばらしい、だが……

これまでに複数の場所に住んだことがあるなら、新しいアパートや家に引っ越したときの感覚を知っていると思う。その部屋や空間が可能性に満ちあふれた真っ白なキャンバスのように感じられるのだ。だが大抵の十分なお金を持っていない場合には、結局その場所を古い家具で埋め尽くしてしまうことが多い。

私は何年にもわたって、このような経験を何度もしてきた。実家を出てから、私が手に入れた家具はすべて、安物を買ったり、リサイクルしたり、誰かにもらったりしたものだった。時代もスタイルもごちゃまぜだったが、私が手に入れたときには十分使えていた。結婚して引っ越しをしてからも、同じ家具をたくさん持ち歩いていた。

しかしそのうちに、多くのものに違和感を感じるようになって、それらを譲り渡し、自分たちの家庭を表現するような、そして自分たちの心に響くようなものを注意深く買ったり作ったりするようになった。しかし、表面の凹んだダッチモダンのコーヒーテーブルのように、一風変わったものもまだ持っている。それを見ると、20代の頃のカラオケパーティー後のベタベタしたカクテルの散乱や、30代の頃の子どものおやつ(これもやはりベタベタだが)を思い出す。

それが今のiPadなのだ。これは、毎年おそろしい勢いで働き続けている、Appleのエンジニアリングチームとハードウェアチームによる美しく新しいモニュメントだ。だがそこには、まだ使えはするものの、古さを感じさせるiPadOSソフトウェアが詰めこまれているのだ。そしてそれらは日に日に場違いな感じを増している。

この記事は、もちろんAppleが現在出荷している、現在注文すると手に入る製品について書いている。しかし、Appleの世界開発者会議(WWDC)がわずか2週間強後に迫っている現在、私は基本的にこのiPad Proを、もう一度新たな視点でレビューしたいと考えている。

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画像クレジット:Matthew Panzarino

皮肉なことだが、このモデルの最大のハードウェアアップグレードの1つに対する反応は、私の中では比較的控え目なものとなる。M1チップは本当にすばらしいものだ。ベンチマークテストでは、M1 MacBook Pro(M1マックブックプロ)と同等の性能を発揮しており、この意味でもAppleのラインナップは、パワーよりも大きさとユースケースの違いと考えることができる。しかし、率直に言って、たとえ2020年のモデルでも、私がテストしたほとんどすべてのアプリケーションや、私の日常的なワークフローのすべてにおいて、同じくらい速かったと感じている。

確かに新製品は超高性能で、最新のシリコンを搭載しているが、アップグレードしてもすぐには違いがわからないだろう。これはある意味、意図的なものだ。2021年4月、AppleのJohn Ternus(ジョン・テルヌス)氏とGreg Joswiak(グレッグ・ジョスウィアック)氏に、iPad Proについてインタビューした際に、彼らは新しい統一されたプロセッサー戦略と極めて優れたディスプレイは、開発者が活用することを期待して余裕を持たせているのだと語っていた。

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画像クレジット:Matthew Panzarino

新しいiPad Proのカメラはとてもすばらしく、前面と背面の両方が非常に使いやすくなっている。特に新しい前面カメラは、解像度の向上と新しい広角光学系の恩恵を受けている。この広角のおかげで、iPad Proを使ったビデオ通話がよりリラックスして行えるようになった。

これに加えて、Appleの新しいML(機械学習)駆動機能であるCenter Stage(センターステージ)が、ユーザーの頭と肩を捉えて自動的に中央に配置し、カメラの視界内で、ユーザーが体を傾けたり、立ったり、さらには部屋の中を移動したりしても、スムーズでまあまあなレベルのパンとズームでユーザーを追いかけ続ける。この機能は、機械学習フレームワークを使って、カメラフレーム内の人物のシルエットを検出し、フレーム内での移動に合わせてそのビューに「カメラムーブ」を適用するというものだ。他で見られるような自動ズーム機能とは異なり、Center Stageでは、あたかもバーチャルカメラの操作者が、適切なフレーミングを手助けしてくれているように感じられる。これは実に巧妙で、非常にうまくできており、iPad Proの使い勝手を向上させる今回の最大のポイントの1つとなっている。

画像クレジット:Matthew Panzarino

そしてまた、ご想像のように、この機能はiPad Proのカメラ配置の問題を大幅に軽減してくれる。カメラは、垂直方向に置かれたiPad Proの「上部中央」に置かれているので、キーボードを使う水平方向の配置ではカメラは「中央左」にあることになる。このため、iPadのビデオ通話にはぎこちなさがつきまとっていた。まあCenter Stageを使っても、これらの問題を完全に取り除くことはできず、手の置き場所が問題になることもあるが、より使いやすくするための大きな役割は果たしている。新しいAPIは、この機能をすべてのビデオ通話アプリで利用できるようにしている。また、Zoom(ズーム)アプリの利用中にビデオ通話を空白にすることなくマルチペイン設定が使用できるように、マルチタスクが若干改善されている。

Appleの「Pro Display XDR」で外付けのThunderbolt(サンダーボルト)接続をテストしたところ、問題なく動作した。この2つのディスプレイは非常に近い能力を持っているので、スケーリングは別として、色補正のためにXDRディスプレイを使うパイプラインで作業するプロにとって、この機能は非常に便利なものになるだろう。だがiPad Proがミラーモードにしか対応していないというソフトウェア上の制限は残念ながらまだそのままで、ほとんどの状況でこの機能の使い勝手を少し疑わしいものとしている。

画面について言えば、ミニLEDを採用したLiquid Retina XDRディスプレイは、これまでモバイルコンピューターに搭載されたディスプレイの中で、おそらく最も優れたものだ。とにかくすばらしい。日常的に使用する輝度も平均で最大600ニト(カンデラ平方メートル)と良好だが、動画や写真などのフルスクリーンのHDRコンテンツでは、平均で1000ニト、ピーク時には1600ニトまでディスプレイを明るくすることができる。これはとても「明るい」。昼光下におけるHDRコンテンツの視聴が大幅に改善されている。さらに、120Hz ProMotion(プロモーション)機能などの標準的な機能もすべて搭載されている。

1万個のミニLEDをディスプレイに搭載することで、黒の定位がより正確になり(それらを完全にオフにすることができるため)、過度の反射(ブルーム)も少なくなった(ただし極端なテストを行うとまだ表示される)。また、画面の端から端までの輝度の均一性が格段に向上し、画面上のコンテンツの斜め方向からのビューが改善された。すべての面で優れている。間違いなくディスプレイのすばらしい標準だ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Appleの新しいMagic Keyboard(マジックキーボード)は、基本的には従来のものと同じだが、新たにホワイトが加わった。またうれしいことに、これまでのMagic Keyboardが、新しいiPad Proモデルでもまったく問題なく動作したことを報告したい。2つのデバイスの寸法が同じではないため、古いキーボードが完全にフィットしない可能性があることをAppleが発言したために、ちょっとした騒ぎがあった。だが基本的にはまったく同じフィット感で、機能も同じなので安心して欲しい。両者の違いに気がつくのは、ケースを閉じて、開いている方の端をとても注意深く見たときに、ケースの縁とiPad Proの端の間のクリアランスが約1mm短くなっていることがわかったとき位だ。Appleは、ともかく過剰なほどの情報開示をしておいた方が良いと考えたのだろう、しかし実際には問題はない。

特にシルバーモデルのiPad Proとの組み合わせでは、ホワイトカラーの見栄えは素晴らしく、白いアンテナウィンドウがアクセントになっている。とても「2001年宇宙の旅」的だ(キューブリック監督のiPadは黒だったが)。しかし、私はこの製品がすぐに傷つき汚れていくことが予想できる。箱に「color may transfer」(色落ちすることがあります)という注意書きがあるが、私もそうだろうと思う。私のデモ機には、まだ目立った汚れはついていないが、それも時間の問題だと思う。

キーボードの全体的な使用感はこれまで同様に素晴らしく、とても快適なタイピングができる。またiPad Proの購入を計画する際には、このキーボードが必要不可欠であることを考慮に入れて価格を考慮すべきだ。

さて、あまり輝いていないコインの裏側が、老朽化したiPadのソフトウェアだ。それらは2020年にiPad Proのレビューを書いたときと同じようなままだが、その時点での私の結論は要するに「慣れることはできるが、もっと良くできたはずだ」だった。それが1年前のことだ。この2年半の間、iPad Proを唯一のポータブルマシンとして使用してきた私には、ソフトウェア機能の大きな飛躍をずっと待ち続けているのだという資格がある。

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iPadのソフトウェアには、とてもシンプルな願いがある。ハードウェア側が見せてくれるようなエネルギーの躍動感や、ピークパフォーマンスのための純粋な能力を感じたいのだ。

AppleのiPad Proのハードウェアは、まるで身体3つ分リードしている絶好調のアスリートのようなパフォーマンスを見せてくれる。M1チップとミニLEDディスプレイは得難いものたちだ。これほどの優れたものが1つのデバイスに詰め込まれていることには感動する。

だが残念ながらソフトウェアがその能力を活かすことができないので、このiPad Proはまるで同じ古い家具を備えた完成した家のように感じられるのだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Appleは、2021年版iPad Proのハードウェアについては、文句なしにすばらしい仕事をしたが、ソフトウェアについてはレベルアップが必要だ。1年の大半をiPad Proを使って過ごしている「パワー」ユーザーとして、私はその場しのぎの解決法や動きの癖には慣れている。しかしここで、必要とされているのはiPadのパラダイムにじっくりと時間をかけて取り組むことだ。現在のペインスタイルのインターフェイスは、非常に高速で流れるような作業方法として推奨できる点が多いのだが、最後までの連続性が存在していない。「これが新しい仕事のやり方だ、このやり方を学ぶべきだ」という熱意が感じられないのだ。

現在のiPad Proのソフトウェアの多くが、あまりにも「アフォーダンス(表現)の谷」にはまり込んでいる。そこでは、いまでもユーザーが、あたかもタッチファーストの仕事のやり方を習得する能力がないかのように扱われている。むしろ、そうしたアフォーダンスのやり方が逆に進歩の妨げになっているのに。

これは、iOS 7時代の頃に行われた「アニメーションを減らす」アフォーダンスを思い起こさせる。かつてAppleがiOSを刷新したとき、新しいペインベースのインターフェイスをタップしているときに何が起こっているのかをユーザーに明確に伝えるために、アニメーションを大幅に増やし過ぎたことがある。ハードウェア的には「遅い」ということはなかったが、彼らが入れたアニメーションのアフォーダンスが凝りすぎていて、遅く感じられたのだ。それらのアニメーションをオフにすると、瞬時にインターフェイスが軽快になり、使いやすくなった。

Appleは最終的に、人びとがより高度なタッチユーザーになる準備ができているのかもしれないと認めることで、これらのアニメーションを抑制した。

これが現在のiPad Proの置かれている状況で、最も腹立たしいのはそのハードウェアとソフトウェアの格差なのだ。iPad Proはこれまでに製造された中で最も優れたコンピューティングハードウェアの1つであり、現在見せているもの以上の能力を持っていることを私たちは知っている。Appleはソフトウェアに関して常に編集者的な視点を持っており、私はその点は評価している。しかし現在、iPad Proに関しては、その姿勢があまりにも保守的であるように感じられる。

だからこそ、私は固唾を飲んでWWDCを待っているのだ。ハードウェア側でこれだけの成果を上げているのだから、iPadのソフトウェア側でもAppleが真に次のステップに進む時期が来ていると考えるべきなのではないだろうか。もしそれが本当に起こり、iPadの次の仕事に対するAppleのビジョンがしっかり見えてきたら、私はまた新しい視点で議論したい。

画像クレジット:Matthew Panzarino

カテゴリー:ハードウェア
タグ:AppleiPadiPad OSApple M1レビューUI / UX

画像クレジット:Matthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:sako)

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

いよいよ発売となりますApple新iPad Pro 2021年モデルに少し早く触れる機会がありましたので、動画も交え、実機の細部を一緒にチェックしていけましたらと思います。

新しいiPad Proは、これまで同様11インチ(第3世代)/12.9インチ(第5世代)の2サイズあり、それぞれシルバー/スペースグレイの2色、Wi-Fiモデル/セルラーモデルが用意されています。価格は11インチが9万4800円〜、12.9インチモデルは12万9800円〜となっています。

本稿で紹介するのは12.9インチ、シルバーのセルラー(5G)・メモリー1TBモデルで、価格は23万1800円(税込)

本稿で紹介するのは12.9インチ、シルバーのセルラー(5G)・メモリー1TBモデルで、価格は23万1800円(税込)

パッと見は2020年発売の第4世代とさほど変わりませんが……

パッと見は2020年発売の第4世代とさほど変わりませんが……

セルラーモデルはついに5G対応。引き続きeSIMもサポートしますので、キャリアだけでなくMVNOの豊富なプランから選択できるわけですね

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最新Macと同じM1チップを搭載

AppleのM1チップを搭載し、2020年ProのA12Z Bionicと比較しパフォーマンスは約2倍、グラフィック性能は40%向上しています。2020年10月に発売されたiPad Air(第4世代)はA14 Bionicを搭載し、一部ベンチマークテストでiPad Proを超えることで話題となりましたが、M1チップの搭載で首位奪還です。

Geekbench 5によるテスト結果(平均値ではありません)

Geekbench 5によるテスト結果(平均値ではありません)

内蔵ストレージの容量は128GB、256GB、256GB、512GB、1TB。それに加え、今回は2TBのモデルも用意されます。価格は跳ね上がりますが、1TB・2TBモデルはRAM(メモリー)がほかのモデルの2倍となる16GBに。

私のような仕事(記者)で、16GBのRAM(メモリー)をフル活用するシーンがなかなか思い浮かばないのですが、解像度の高い動画を何本も編集したり、レイヤーを何重にも重ねて作業したりするプロ・クリエイターの方にとって、上位モデルはより魅力的となったのではないでしょうか

私のような仕事(記者)で、16GBのRAM(メモリー)をフル活用するシーンがなかなか思い浮かばないのですが、解像度の高い動画を何本も編集したり、レイヤーを何重にも重ねて作業したりするプロ・クリエイターの方にとって、上位モデルはより魅力的となったのではないでしょうか

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60万円相当の画質

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん
12.9インチのモデルは、Liquid Retina XDRディスプレイ(ミニLED)を搭載しています。すごく簡単に言うと、液晶と有機ELの「いいとこ取り」をしたモノです。ピーク輝度は1600ニト、100万対1のコントラスト比となっており、60万円近くするAppleのPro Display XDR(32インチ)とほぼ同じクオリティーで映像を楽しんだり、実物に近い色味で写真や動画の編集作業が行なえたりします。

Liquid Retinaディスプレイを液晶を搭載した前モデル(右)と並べると、黒の部分とその周囲がよりハッキリ出ているのがわかります。肉眼だと部屋を暗くしなくてもわかるくらい結構違っています

Liquid Retinaディスプレイを液晶を搭載した前モデル(右)と並べると、黒の部分とその周囲がよりハッキリ出ているのがわかります。肉眼だと部屋を暗くしなくてもわかるくらい結構違っています

繰り返しになりますが、このLiquid Retina XDRディスプレイを搭載するのは、大きいほうの12.9インチモデルのみ。ミニLEDを採用したことで、12.9インチは従来より0.5ミリほど本体の厚みが増しています(左が新モデル)

繰り返しになりますが、このLiquid Retina XDRディスプレイを搭載するのは、大きいほうの12.9インチモデルのみ。ミニLEDを採用したことで、12.9インチは従来より0.5ミリほど本体の厚みが増しています(左が新モデル)

関連記事:12.9インチM1 iPad Pro、「Liquid Retina XDR」採用。1万個以上のミニLEDバックライト搭載

なお、厚みが増したことで、12.9インチ用の純正キーボード・カバー類に関しては、第3世代のものは非対応となっています(第4世代のものは第3世代にも対応)。

……のはずですが、第3世代用Magic Keyboardを第4世代で試したところ、問題なく使えてしまいました。カバーもちゃんと閉まります。経年劣化で緩んでいた可能性もありますし、Appleが非対応としているのですから、お高いですが本体を買い替えた方は、一緒に新バージョンを買っておくのが無難かと

……のはずですが、第3世代用Magic Keyboardを第4世代で試したところ、問題なく使えてしまいました。カバーもちゃんと閉まります。経年劣化で緩んでいた可能性もありますし、Appleが非対応としているのですから、お高いですが本体を買い替えた方は、一緒に新バージョンを買っておくのが無難かと

カメラもiPhone級に

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん
背面のメインカメラは、2020年モデルと同じ仕様のデュアルレンズ構成ですが、iPhone 12と同じSmart HDR 3に対応。AIが細部を自動調整してくれます。

空などをAIが判別し、より自然に見えるよう処理してくれます

空などをAIが判別し、より自然に見えるよう処理してくれます

ビデオ会話が快適に

フロントカメラは従来の700万画素から1200万画素になりました。視野角も122度と広くなっています。新たにセンターフレーム(一部地域ではセンターステージ)という機能が備わり、FaceTimeやZOOMなどのビデオ会議で、発話者が自動で中央に表示されるようになっています。

センターフレームはデフォルトでオンに(設定でオフにもできます)

センターフレームはデフォルトでオンに(設定でオフにもできます)

実際に、お友達と試してみました。

FaceTime

FaceTime

Zoom

Zoom

センターフレームは、サードパーティアプリ向けにAPIが公開されていて、ZoomやWebexなどがすでに対応しています。純正アプリのFaceTimeでは、話者に向かって迫っていく感じで、インタビュー映像のようになりましたが、Zoomだと左右調整がメインに行なわれるようです。ユーザーはオン・オフしかできませんが、デベロッパーは細かくカスタマイズできるのかもしれません。

センターフレームは、カメラが広角になり、かつ解像度が上がったため、自動で顔をトリミングしても画質が荒くならないよう常に調整できるようになったため実装できた機能です(なので、オフにすると画角が広角になります)。

モバイルデータ通信の設定で、5Gのデータ使用量を「より多く」に許可し、FaceTimeで会話してみたところ、遅延がなく画質も綺麗、そのうえ自然に顔がフォーカスされてるので、まるで実際に会って話しているような感覚。ほとんどストレスを感じませんでした。ビジネスでFaceTimeを使うシーンは少ないかもしれませんが、ご家族やお友達とぜひ試していただきたいです。

LAN直差しで10Gbps

端子は最大転送速度40GのThunderbolt 3対応に

端子は最大転送速度40GのThunderbolt 3対応に

USB端子がThunderbolt 3対応になり、外部ストレージからの高速転送や6Kディスプレイへの出力も行なえるようになりました。また、LANアダプターを介せば有線イーサネットも10Gbpsの速度で接続できます。

Magic Keyboardにホワイトが新登場

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん
アクセサリーは、これまで通りApple Pencil、Magic Keyboard、Smart Folioカバー、Smart Keyboard Folioが用意されます。このタイミングからMagic Keyboardのホワイトが登場しました。

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

ホワイトになっただけで、雰囲気がずいぶん違ってきますね

ホワイトになっただけで、雰囲気がずいぶん違ってきますね

一緒に持ち歩くと1.4キロ近くと相変わらず重量級ではあるのですが、5Gも搭載しているので性能から考えたら十分コンパクトなモバイルワークマシンと言えるかと

一緒に持ち歩くと1.4キロ近くと相変わらず重量級ではあるのですが、5Gも搭載しているので性能から考えたら十分コンパクトなモバイルワークマシンと言えるかと

【レビュー】新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさんニューiPad Pro、ポイントはM1になったことによるパフォーマンスの向上と細部のパワーアップ、5G対応、そして12.9インチは液晶と有機ELのいいとこ取りとしたミニLEDを初登載している点です。

私は個人的に音楽のライブ配信をよく見るのですが、音質、画質、それと互換性(サービスによってはTVなどに飛ばせない)といったあらゆる面から、この新しい12.9インチのiPadが現状、最もライブ配信の視聴環境として優れていると確信しています。また、ゲームもよくするのですが、暗所の表現が多いゲームは、より引き締まった絵で楽しめるので大迫力です。

World of Demons - 百鬼魔道

World of Demons – 百鬼魔道

よりモバイルの機動力を重視する方には11インチモデルもオススメです。iPad Airと迷いそうですが、さらに高パフォーマンス、5G、4スピーカーシステムにセンターシフト、パワーアップポイント満載です。

<オマケ情報その1>

動画には入れてない細かいお話。フロントカメラ周りのセンサー類は、微妙に位置が変わっています。保護フィルム等を貼られる方が多いと思いますが、お買い求めの際は「2021年モデル対応」の表記を確認されることをオススメします。

前モデル用を貼ると、センサーに少し被ってしまいます

前モデル用を貼ると、センサーに少し被ってしまいます

<オマケ情報その2>

iMacに付属するMagic Keyboardを、新iPad Proとペアリングしたらフツーに使えました。ただ、Touch IDは動きません(M1 Macなら動きますが、M1 iPadはNGのようです)

いずれにせよ単体売りはされないキーボードなので、あまり意味はありませんが……

いずれにせよ単体売りはされないキーボードなので、あまり意味はありませんが……

新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義

iPad Pro 2021 はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台

Engadget日本版より転載)

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新iPad ProもApple M1チップ搭載

カテゴリー:ハードウェア
タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)レビュー(用語)日本(国・地域)

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義iPad Pro 12.9インチ(第5世代)をアップルから借用し、ひと足早く試す機会を得た。

12.9インチモデルを触る前は、正直言って「次に買い換えるとしたら、11インチモデルで十分かも」と思っていた。そもそも、12.9インチは携帯するにはちょっと大きすぎる。かつて12.9インチモデルを購入して持ち歩いていたが、その大きさを持て余していた。結局、出先で気軽に使うには11インチの方がしっくり来るというのが結論に辿り着いたのだ。

しかし、実際に第5世代のiPad Pro 12.9インチモデルを触ってみると、その信念が大きく揺らいでしまった。

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【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
12.9インチが持ち歩くにはちょっと大きいというのは間違いのない事実だが、使い勝手の面において、やはり「大画面は正義」と感じてしまう。ここ最近、増えてきた動画処理をする上でも画面は大きい方がいいに決まっている。

今回、12.9インチモデルを実際に触って、信念が揺らいだ理由の一つがLiquid Retina XDRディスプレイだ。ミニLEDを1万個以上内蔵し、コントラストを100万対1に引き上げている。実際に触る前は大したことないとたかをくくっていたが、実物を目にすると確かに良い。

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
映像や写真などでは暗い部分がしっかりと暗くなっており、明暗がハッキリした表現になっているのだ。自分で撮った映像や写真のみならず、動画配信サイトの映画やドラマ、さらにビデオ会議や記者会見の映像までもパッキリと見えるから不思議だ。

今までのiPad Proと見比べてみると、全体的に明るくなってしまっているのだが、新しい12.9インチモデルは、黒い部分がしっかり黒い。有機ELディスプレイのiPhone 12シリーズに近いといえよう。もちろん、iPad Proの方が大画面なので、視聴しやすいメリットもある。

すでに新しい11インチモデルを予約済みであり、「12.9インチの方が良かったなぁ」とかなり迷い始めた。

そしてもう一つ、iPad Pro 12.9インチモデルを触って、悩ましいと感じたのが処理のレスポンスだ。

新しいiPad Proは、11インチと12.9インチ、いずれもM1チップを搭載している。もともと、iPadOSはサクサクと処理をこなせるのが魅力だが、チップセットがMacBook Proと同等になったことで、さらにサクサク度が増した。

LumaFusion利用イメージ

LumaFusion利用イメージ

実際にすでに使い倒しているiPad Pro 11インチモデル(第2世代、メモリ容量6GB)と、新しいiPad Pro 12.9インチモデル(第5世代、メモリ容量16GB)で動画編集(LumaFusion)を比較してみると、第5世代iPad Pro 12.9インチモデルの方が遥かに快適に動く。

第2世代iPad Pro 11インチモデルでは、写真や動画を読み込む際、最初にボケた状態で出たのちにクッキリとした写真や動画が表示されるのだが、第5世代iPad Pro 12.9インチモデルであれば、最初からクッキリとした写真が動画が出てくるのだ。一瞬の違いなのだが、このストレスがあるかないかは意外と大きい。

ちなみに今回のiPad Proは、本体容量が128GB、256GB、512GB、1TB、2TBの5モデルが存在する。容量の小さい3つはRAM容量が8GB、1TBと2GBは16GBだ。

文書作成やメール処理などであれば8GBで十分だろうが、アプリを頻繁に切り替える、例えば、写真アプリで加工し、その画像や映像などの素材を動画編集アプリで編集する、といったiPad Proの性能をフルに引き出す使い方をするのであれば、本体容量1TB以上を選ぶのが望ましいのかもしれない。

個人的にこれまでiPad Proを長年使ってきているが、iCloudを活用していることもあり、256GBモデルであっても、あと100GB以上の容量が余っている。今回も11インチモデルの256GBで十分かな、と思いつつ、今触っている12.9インチ 1TBモデルの快適さを実感すると、どれを買うべきか、改めて悩ましくなってしまっているのだ。

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
さらにiPad Proを選ぶ上で、絶対に揺らがないのが「買うならセルラー版」という信念。人によっては「Wi-Fiのみか、セルラーも使える方か、どちらかにしようか」と悩む人も多いだろう。

価格差が2万円弱あるので、コストを考えたらWi-Fi版となるかもしれないが、使い勝手を考えるとやはり携帯電話のネットワークに繋がった方が便利なのは間違いない。

今回のiPad Proは5Gにも対応する。自宅ではかろうじてソフトバンクの5Gが繋がるのだが、だからと言って、劇的に高速というわけでもない。どうやら、4G周波数帯の転用らしく、5Gと表記はされるが、中身は4Gみたいなものだ。とはいえ、4Gでもそれなりの速度が出るから快適だ。

今は緊急事態宣言で、自宅で5Gに繋いで喜んでいるだけだが、あと数か月もすれば、街中に出て、5Gに繋ぎ、iPad Proで仕事をしまくることだろう。公衆Wi-Fiはセキュリティ面でどうしても不安があるだけに「いつでもどこでも安心して繋がるキャリアネットワーク」にすぐにアクセスできるiPad Proのセルラー版が手放せないのだ。

【レビュー】新iPad Pro 12.9を試す、大画面とLiquid Retina XDRディスプレイは正義
iPad Proには「センターフレーム」というテレビ会議の際、自分をセンターに映し出してくれる機能が備わった。これまで自分を正面に映そうとする場合、パソコンやiPad Proを机の上だけでなく、さらに台を持ってきて、その上に置くなどの工夫が必要だった。しかし、センターフレーム機能があれば、そうした努力は不要。自動で自分の顔をセンターにして相手に映し出してくれる。コロナが落ち着いても、ビデオ会議は続きそうなだけに、これからも便利な機能として使えそうだ。

今回のiPad ProはM1チップが載り、本体容量も2TBまで選べるなど、もはやパソコンと比較する製品となった。iPadシリーズ全体で見ると幅広い価格帯となっており、エントリーモデルは、それこそ、GIGAスクール構想など、文教市場を狙った製品と言える。一方で、iPad Proはその名の通り、Proユースを意識したスペック、使い勝手となっている。

1秒でも無駄にしたくない、出先でも俊敏に仕事をこなしたい人には、iPad Proが心強い相棒になってくれることだろう。

iPad Pro 2021 はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台
新しいiPad Pro 12.9インチモデルを動画でチェック!M1、5G、ミニLEDなど進化点盛りだくさん

(文:石川温、Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)レビュー(用語)日本(国・地域)

【レビュー】iPad Pro 2021 はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台

12.9インチ版のiPad Proで、5G通信機能を試した

12.9インチ版のiPad Proで、5G通信機能を試した

MacBook Airなどと同じM1チップを採用し、5Gにも対応したiPad Proの発売が迫ってきています。発売に先立ち、筆者も実機を試用することができました。パフォーマンスの高さやディスプレイの美しさは別の記事に譲るとして、ここでは、シリーズ初となる5G対応に関してあれこれレビューしていきたいと思います。筆者が今回、もっとも注目していたのもこの機能です。
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と言っても、ユーザーが何か特別なことをする必要はありません。セルラー版を購入して、5Gに対応するキャリアのSIMカードを挿せばOK。ドコモ、au、ソフトバンクの大手3キャリアの場合、スマホのメイン回線と組み合わせることができる「データプラス」などのいわゆるシェアプランがあるため、料金的にはそれを利用するのが手っ取り早いでしょう。2枚目のSIMカードは1枚目と容量をシェアする形ですが、主回線が無制限の場合、30GB前後の制限があります。

設定項目は、ほぼほぼiPhone 12シリーズと同じ。「設定」の「モバイルデータ通信」で「通信のオプション」を選ぶと、「データ」と「データモード」で5G接続の挙動を変更することができます。前者のデータは、5G対応のSIMカードを挿すと、常時5Gが有効になる「5Gオン」と、自動で5Gをオフにすることがある「5Gオート」を選択可能。何らかの理由でオフにしたい時には、「4G」を選択すればOKです。

5Gの設定項目は手順などが少々異なるものの、ほぼiPhoneと同じ

5Gの設定項目は手順などが少々異なるものの、ほぼiPhoneと同じ

「データモード」は、5G接続時にコンテンツの画質を自動的に向上させるための項目です。初期設定では、データ容量を節約するためか、「標準」になっていましたが、「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5Gで接続している際に、FaceTimeやビデオの画質が向上します。おそらくこの初期設定は、キャリアや加入しているプランによって変わるはずで、iPhoneと同じだとすると、KDDIの無制限プランに加入している場合は、デフォルトで「許容」になると思われます。

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5G接続時に一部アプリの画質などが自動的に上がる

「5Gでより多くのデータを許容」をオンにすると、5G接続時に一部アプリの画質などが自動的に上がる

設定をオンにしていると、高画質化するコンテンツは、以前より増えています。この機能をプッシュするKDDI関連のサービスが多い印象ですが、スポーツコンテンツでおなじみのDAZNも、動画品質の自動アップグレードに対応しています。試しに、編集長とWi-Fi環境下でFaceTimeを使って雑談してみましたが、肌の質感までよく分かるほどの映像で、通常のFaceTime以上に臨場感が高いと感じました。試用したiPad Proは、12.9インチと画面サイズが大きいため、迫力はiPhone以上。スマホ以上に、5Gエリアで通信することの重要性を感じました。

編集長とFaceTime HDで楽しい時間を過ごした。大画面のiPad Proなら、iPhone以上に画質の違いが分かりやすい

編集長とFaceTime HDで楽しい時間を過ごした。大画面のiPad Proなら、iPhone以上に画質の違いが分かりやすい

そのメリットを体感するには、5Gのエリアが広い必要があります。現時点では残念ながら、4Gのように全国くまなくというわけではありませんが、KDDIやソフトバンクについては、以前とは様相が変わってきています。4Gから5Gへの周波数転用を開始したからです。iPad Proには主にソフトバンクのSIMカードを挿していましたが、筆者の事務所がある渋谷では、様々な場所で5Gがつながります。路上はもちろん、よく行くカフェや事務所の喫煙所(屋外)も、5Gのエリアになっていました。

転用のため、通信速度に関しては4Gとそこまで変わらず、数十Mbpsという場所も多々ありましたが、上記のような、画質向上機能がオンになるのはメリットの1つと言えるでしょう。逆に、周波数転用を現時点では導入していないドコモは、5Gにつながったときの速度には以下のように、目を見張るものがあります。一方で、元々の5Gの周波数は4.5GHz帯や3.7GHz帯と非常に高く、屋内浸透もしにくいのが難点。KDDIやソフトバンクのように、とりあえず入ったカフェの中で5Gを使うというシチュエーションには、なかなか出くわさない印象があります。

転用5Gのエリアは広く、導線がしっかりカバーされている印象を受ける。ただし、速度は4Gと大差なし

転用5Gのエリアは広く、導線がしっかりカバーされている印象を受ける。ただし、速度は4Gと大差なし

【レビュー】iPad Pro 2021はスマホ以上に5Gの重要性を感じた1台(石野純也)

ドコモはエリアこそ狭いが、つながると爆速になるケースが多い。同じ場所でも、4G(下)と5G(上)では速度がこれだけ違う

ドコモはエリアこそ狭いが、つながると爆速になるケースが多い。同じ場所でも、4G(下)と5G(上)では速度がこれだけ違う

iPad Proの利用シーンや、上記のように5Gでコンテンツの画質を向上させる機能があることを踏まえると、やはり転用であっても、エリアが広い方が嬉しいのではないでしょうか。いくら高速でも、スマホと違って、iPad Proを路上で使うことはあまりありません。最近は、駅などで歩きタブレット(!)をしている人を見かけることもありますが、あくまでレアケース。カフェなどに入って、Webや動画を見たり、ビデオ会議をしたりするシーンの方が、シチュエーションとしてリアリティがあります。

そもそもの話として、通信速度ではなく、4Gか5Gの区分だけでコンテンツの品質を分けてしまうのはどうなのかという議論もありますが、同様の機能はiOSだけでなく、Androidにも採用され始めていて、業界標準になりつつあります。特に腰を据えてじっくり使うiPad Proでは、その恩恵が大きいため、ドコモは屋内対策をぜひともがんばってほしいと思いました。ただ、iPad Proは作成した動画をアップロードするといった用途も考えられるため、ほか2社も転用だけに頼らず、Sub-6のエリア整備は強化してほしいところです。

ここまで、あえて名前を挙げていませんでしたが、4月にiPhoneの取り扱いを開始した楽天モバイルも試してみました。オチのように使ってしまうのは大変恐縮ですが、残念ながらiPad Proは、同社の5Gには非対応のようです。楽天モバイルのeSIMプロファイルをインストールしてみたところ、iPhone 12シリーズを取り扱っていなかったころと同様、設定メニューに5Gの文字が現れませんでした。

楽天モバイルのeSIMを設定してみたところ、「データ」で5Gを選択できなかった

楽天モバイルのeSIMを設定してみたところ、「データ」で5Gを選択できなかった

選択できるのは4Gのみで、アンテナピクトの表記は「LTE」になります。また、APNは入力なしで通信できましたが、空欄のままだとインターネット共有(テザリング)の設定も表示されません。これは、楽天モバイルがiPad ProやiPadを取り扱っていないためだと思われます。キャリア設定も降ってこなかったため、取り扱いを開始するまで、同社の5Gはお預けということになりそうです。段階制の料金プランは、サブデバイスとしてのタブレットと相性がよさそうなだけに、今後の展開に期待したいところです。

APNは空欄のままでもつながったが、インターネット共有を利用する際には手動での入力が必要

APNは空欄のままでもつながったが、インターネット共有を利用する際には手動での入力が必要

M1チップを搭載したiPad Pro発表。Thunderboltに5G対応

M1搭載の新 iPad Pro vs 前世代比較。12.9インチ版はLiquid Retina XDR搭載

(文:石野純也、Engadget日本版より転載)

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新iPad ProもApple M1チップ搭載

カテゴリー:ハードウェア
タグ:iPad(製品・サービス)Apple / アップル(企業)Apple M1(製品・サービス)Appleシリコン / Apple Silicon(製品・サービス)レビュー(用語)日本(国・地域)

【レビュー】新iMac パープル先行動画レビュー。周辺機器まで統一されたカラーデザインに感動

【レビュー】新iMac パープル先行動画レビュー。周辺機器まで統一されたカラーデザインに感動

Appleが4月20日に発表、7色展開が目を惹いたiMac 2021年モデル。24インチの画面にM1チップを搭載したこの新iMacが、いよいよ5月21日に発売となります。ひと足早く実機に触れる機会がありましたので、音を出せる環境の方は、ぜひ動画をご覧いただき、感動体験を共有できたらうれしいです。

SKUドンと来い?

ご紹介するのはパープルの実機になります。今回、ボックスもとても凝っています。飛び出す絵本みたい

ご紹介するのはパープルの実機になります。今回、ボックスもとても凝っています。飛び出す絵本みたい

Magic Keyboard、Magic Trackpad、Magic Mouseも、きちんと色がそろえてあるんです

Magic Keyboard、Magic Trackpad、Magic Mouseも、きちんと色がそろえてあるんです

付属品を充電するために同梱されたLightningケーブルもパープル。iPhone 12 パープルの充電に使いたくなってしまいますね

付属品を充電するために同梱されたLightningケーブルもパープル。iPhone 12 パープルの充電に使いたくなってしまいますね

同色のアクセサリーはAppleCareサポートによる保守は可能ですが、単品での販売予定はないとのこと

同色のアクセサリーはAppleCareサポートによる保守は可能ですが、単品での販売予定はないとのこと

いや〜、これらすべてに7色のカラーバリエーションがあるのかと思うと、ちょっとスゴイですよねぇ。「SKUドンと来い」なんて誰かが言ったのも頷けます。

まさに機能美

iMacの背面。コバルトブルーに近い濃い目の色です

iMacの背面。コバルトブルーに近い濃い目の色です

向かって左下にUSB-C、Thunderboltがそれぞれ2基の計4つ。大きな端子(Aとか)なんて、もうApple製品にはあり得ない? とにかくスッキリしています

向かって左下にUSB-C、Thunderboltがそれぞれ2基の計4つ。大きな端子(Aとか)なんて、もうApple製品にはあり得ない? とにかくスッキリしています

向かって右下に電源ボタン

向かって右下に電源ボタン

中央の電源プラグ回りも新設計の機構。電源プラグのケーブルはiMac本体とマグネットでピタッとくっつきます

中央の電源プラグ回りも新設計の機構。電源プラグのケーブルはiMac本体とマグネットでピタッとくっつきます

ACアダプターと電源プラグは一体型。ケーブルは本体と同色で、編み込みされた頑丈なタイプです

ACアダプターと電源プラグは一体型。ケーブルは本体と同色で、編み込みされた頑丈なタイプです

ACアダプターには有線LANの端子があります(一部モデルはオプション扱い)。アクセサリー類はすべてBluetoothによりワイヤレス接続なので、電源プラグ1本だけでスッキリとしたデスク周りを実現できます

ACアダプターには有線LANの端子があります(一部モデルはオプション扱い)。アクセサリー類はすべてBluetoothによりワイヤレス接続なので、電源プラグ1本だけでスッキリとしたデスク周りを実現できます

ワイヤレスでTouch IDを初搭載

キーボードのデザインも一新。Spotlight、音声入力、おやすみモード、絵文字キーがあります

キーボードのデザインも一新。Spotlight、音声入力、おやすみモード、絵文字キーがあります

右上にロック解除やApplePayの支払いなどを指紋認証で利用できるTouch IDを搭載しています。Touch IDのワイヤレスでの実装は初(一部モデルはオプション扱い)

右上にロック解除やApplePayの支払いなどを指紋認証で利用できるTouch IDを搭載しています。Touch IDのワイヤレスでの実装は初(一部モデルはオプション扱い)

ファーストユーザースイッチをオンにすれば、家族でiMacを共有する際、ロック画面から指紋認証でサクッとユーザーを交代できます

ファーストユーザースイッチをオンにすれば、家族でiMacを共有する際、ロック画面から指紋認証でサクッとユーザーを交代できます

同色アクセは超貴重品

Touch ID搭載Magic Keyboardは、M1搭載のMacであればminiなどほかのモデルでも利用できるとのことですが、単品販売はされません。ほかの同色アクセサリーも同様、AppleCareによる保守部品としては入手可能ですが、単体では手に入らないので貴重です!

Touch ID搭載Magic Keyboardは、M1搭載のMacであればminiなどほかのモデルでも利用できるとのことですが、単品販売はされません。ほかの同色アクセサリーも同様、AppleCareによる保守部品としては入手可能ですが、単体では手に入らないので貴重です!

関連記事:Touch ID内蔵Magic Keyboard、当面は新iMacとのセット販売のみ

真っ平な画面

24インチと言うとテレワーク向けにピッタリなサイズですが、意外にもiMacでは初となるディスプレイサイズ。解像度は4480×2520ドットの4.5Kで、27インチモデルの5Kディスプレイと画素密度は、ほぼ同等です

24インチと言うとテレワーク向けにピッタリなサイズですが、意外にもiMacでは初となるディスプレイサイズ。解像度は4480×2520ドットの4.5Kで、27インチモデルの5Kディスプレイと画素密度は、ほぼ同等です

デザイン上のアクセントとなっている顎の部分に施されたカラーリングですが、画面とベゼルからこの部分は完全にツライチになっています

デザイン上のアクセントとなっている顎の部分に施されたカラーリングですが、画面とベゼルからこの部分は完全にツライチになっています

FaceTimeカメラは1080pに。暗所での画質もアップしました。マイクもスタジオ品質でインプットでき、ビデオチャットが対面で会話しているかのようにストレスなく行なえました

FaceTimeカメラは1080pに。暗所での画質もアップしました。マイクもスタジオ品質でインプットでき、ビデオチャットが対面で会話しているかのようにストレスなく行なえました

ノートPCより場所取りません

ニューiMac、なんといっても、この「佇まい」ですよね。わずか11.5ミリの薄型ディスプレイとシンプルなスタンドに、電源以外のすべてが詰め込まれているなんて、ちょっと信じられません

ニューiMac、なんといっても、この「佇まい」ですよね。わずか11.5ミリの薄型ディスプレイとシンプルなスタンドに、電源以外のすべてが詰め込まれているなんて、ちょっと信じられません

iPhoneより少し厚みがあるくらいです

iPhoneより少し厚みがあるくらいです

ファンレスではないのですが、ノイズは10dB以下に抑えられていて、動作音らしいものを感じることは一時もありませんでした。

スタンドの底部のゴム足までパープル。個人的には、もう少し滑りにくい素材にしてほしかった気もしました

スタンドの底部のゴム足までパープル。個人的には、もう少し滑りにくい素材にしてほしかった気もしました

短期間ですがニューiMacを実際に使ってみた印象は……冒頭の動画で語っているので、ぜひそちらを再生してご覧いただきたいのですが、画面のインパクト、音質、デザイン性、どれを取っても「洗練」という言葉がピッタリと思いました。あと、カラバリの表現に対するAppleの異常とも言える細部へのこだわりですね。ほかのカラーもすべて細かく見てみたくなっております。

デスクトップというと置き場所が……となりがちですが、ぶっちゃけノートパソコンより面積取らない印象ですので、外ではスマホやタブレットで十分という人は、せっかくなら自宅では大きな画面、最高の音質を備えたニューiMacで贅沢三昧してほしいです。

より詳しい使い勝手やベンチマーク結果など掲載していますので、引き続きEngadget 日本版にご注目いただけましたらと思います。

グリーンのiMacに想う──新しいiMacは「見た目で選んでいいMac」だった
ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準

Engadget日本版より転載)

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アップルがカラフルな新iMacを発表
アップルが「Spring Loaded」で発表した新製品まとめ、新iMac、iPad Pro、AirTagなど
アップルがMagic KeyboardにTouch IDを搭載
新型iMacがついに高画質なウェブカメラを搭載

カテゴリー:ハードウェア
タグ:iMac(製品・サービス)Apple / アップル(企業)レビュー(用語)日本(国・地域)

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準

IntelからArmへ。昨年6月、Mac搭載プロセッサの変更を発表したApple。M1と名付けられたSoCはさまざまな製品に搭載されているが、MacBook Pro、MacBook Airへの採用に続き、このたびデスクトップ機のiMacにも搭載された。

さらに驚かされたのは7つものカラーバリエーションが選べることだ。選んだカラーに合わせ、本体色はもちろん、付属キーボード、マウス、トラックパッド、付属ケーブルなども同じカラーテーマで揃えられている。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
本体のみのカラーバリエーションはありがちだが、付属品のほとんどが選んだカラーに統一され、それがさらに7色も用意されているということには素直に敬意を表したい。

しかし、ポップなカラーリングとは裏腹に11.5ミリ、ぱっと見はただのディスプレイとも思えるスリムなボディながら、コンピュータとしてはパワフルかつ洗練された使い勝手と完成度を誇る。それが今回のiMacだ。

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薄型ディスプレイにM1 Mac miniが内蔵されただけではない24インチiMacの価値

高精細ディスプレイ+Mac mini=24インチiMacではない

24インチ(正確には23.5インチ)の4.5Kディスプレイは市販品で探しても見つからない。このサイズではもっとも高精細なディスプレイのひとつで、他のApple製品と同じように事前に色調整が行われたDisplay-P3対応の広色域に対応している。この点は期待通りの仕上がりとなっている。

最大500nitsの範囲でHDR表示も行えるため、iPhone 12シリーズで撮影したHDR動画を美しく表示できる。標準に準拠していながらも、異なるApple製品との互換性がきっちりと取られているので気持ちいい。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
本体の配色に関しては、ベゼルがホワイトであるため、見づらさなどに繋がらないか懸念していたが、実際には明るいグレー。ディスプレイの輝度が適度であるならば特に気になることはない。むしろ一般的な家庭の室内の白系の壁紙であれば、部屋の壁などと馴染んでベゼルの存在感を和らげると感じられるチューニングだ。

同様に、ディスプレイ下の部分(この中にメイン基板が入っている)がテーマカラーごとの明るい色合いで組み合わされ(側面と背面は濃い配色)、ベゼルの明るいグレー(あるいはやや暗めの白)と馴染む濃度で、こちらもカラフルな外観を損ねない範囲でアクセントとなっている。

側面と背面のヴィヴィッドな配色は好みもあるだろうが、ウェブページ上で見るよりも実物は落ち着いた印象で、筆者が評価したブルーが鮮やかすぎるとは感じなかった。もちろん、もっと透明感のある選択をしたいならばシルバーという選択肢を選べばいい。

付属品を含めたトータルのデザインコーディネートを考えれば、その佇まいだけでも価値があると感じる。とはいえ、そうした感覚でパソコンを選ぶわけではないと思う人もいるだろう。

スタンドや角度調整のヒンジなども含め、アルミとガラスだけで包まれたiMacだが、カラーバリエーションや4.5Kディスプレイを必須と思わないならば、手持ちのディスプレイ+Mac miniでいいのではと考える人がいるかもしれない。後述するが、24インチiMacの性能はMac miniとほぼ同じであり、ソフトウェアの実行速度という観点では全く同じとなる。

しかし、Appleが独自に設計したAppleM1の活用という側面で、Mac miniでは得られない体験が一体型のiMacには用意されている。トータルコーディネートに興味がなくとも、iMacならではの良さがそこにはあるのだ。

iPhone 12向けの開発成果がiMacにも

M1はMac向けに性能と高速インターフェイス、メモリアーキテクチャなどを強化されているが、マイクロプロセッサとしての基本はiPhone 12シリーズ向けのA14Bionicと共通する回路が搭載されている。このためiPhoneを磨き上げる中で活用されてきた技術が、そのままMacでも使えるようになるわけだ。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
そのもっとも端的な例がTouch IDボタン付きのキーボード。M1にはiPhone向けのAシリーズと同じく指紋認証を行うための処理回路とセキュリティ機能が搭載されているので、iPhoneで実績のある指紋認証システムがそのまま利用できる。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
裏を返せば、Touch ID付きのBluetoothキーボードはM1との組み合わせで動作するということ。M1を搭載していればどのMacでも利用可能で、Mac miniなどでも利用できるという。ただし、現時点では単体での発売は予定されていない。単体発売されないのはマウス、トラックパッド、ライトニングケーブルのカラーバリエーションも同じだ。(※いずれもiMacオーナーならば保守部品としては入手できる)

関連記事:Touch ID内蔵Magic Keyboard、当面は新iMacとのセット販売のみ

次に体感できるのが1080p解像度に対応するFaceTime HDカメラの画質。iPhoneと同じ映像処理のプロセスをそのまま活かすことで画質が高められているのだ。

なお、1080p対応の新しいセンサーだけならば、昨年発売された27インチiMacにも搭載されている。27インチiMacのFaceTime HDカメラもかなり高画質だったが、映像処理はT2チップで行っていた。実はこの部分でのM1の貢献も大きく、内蔵する映像処理プロセッサの世代が異なるため、画質が上がっているのだ。T2チップは世代としてはA10世代と目されているが、M1を搭載するMacではiPhone 12シリーズの内蔵カメラと同水準の映像処理が施されることになる。

暗部ノイズの少なさやダイナミックレンジの広さ、質感表現の深さ、オートホワイトバランスの的確さなどiPhone向けの開発成果がそのまま活かされており、外部接続の高画質カメラとして発売されている最新のUSBカメラよりも画質が良い。

本体サイズを感じさせない音質

“iPhone向けの開発成果”に関しては、音質面にも現れている。

マルチマイクを用いてビームフォーミング(話者の方向に指向特性を合わせる)するため、オンライン会議にヘッドセットなしで参加しても生活音を拾いにくく、話者の声にフォーカスしてくれるのはありがたい。声のトーンもイメージを崩さずに拾ってくれ、外部マイクが必要だとは感じないはずだ。

カメラの信号処理と同じくこの音声処理もT2チップ搭載以降のMacでは一部導入されてきていたものだが、信号処理の世代が上がっている。本体サイズやレイアウトの制約が少ないためか、M1搭載のMacBook Proよりも良好に仕上がっていると感じた。

しかし、やはり驚くのはスピーカーの音質と高音質なスピーカーを活用した空間オーディオ(仮想立体音響)の完成度の高さ。何しろ本体の厚みは11.5ミリしかない。本体下部の空間は大半の容積をスピーカーで使っているだろうが、音波の出口は本体下のスリット。とても良い音が出てくるイメージはない。ところが、本機から出てくる音は驚くほどバランス良く、低域も豊かだ。

形式で言えば、iMacのスピーカーは2ウェイ3スピーカーのステレオ構成。低域を担当するウーファー2基がたがい違いの方向に搭載され、振動をキャンセルする構造になっている。豊かな低音が出せるのは振動をキャンセルする構造にすることで、積極的に低音を出せるためだろう。

音は真下に出し、机から反射させて耳に届くことになるが、驚くことに周波数特性や位相特性がよく調教されており、アンバランスなイメージはない。中でも位相特性の整え方は空間オーディオのサポートからも感じられる。

空間オーディオは、いわば仮想サラウンドの一種だが、仮想サラウンドはサラウンドチャンネルの音を、左右の耳に位相を変えて届けることで実現する。位相とは音が耳に届く時間軸の差のようなものだが、iMacのような音が出てくる経路が複雑なシステムでは、周波数帯ごとに差が生まれがち。ところがiMacの空間オーディオは素晴らしく、音の移動感が感じられる効果的なサラウンド効果を発揮してくれた。空間オーディオが利用できるのは、Apple TV+のコンテンツなど一部だが、今後はサポートが広がることも期待できる。

少なくとも別途、スピーカーを購入して接続する必要がない程度には、優れたスピーカーを内蔵していると考えていい。

AppleM1搭載による体験価値

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
一方、SoCとして採用されているAppleM1の能力に関しては、昨年登場したMac miniやMacBook Proとほぼ変わらないと考えていい。冷却ファンは動作していることに気づくことはほとんどなく、その点ではSoCに関連した性能、および体験の質はMac miniと同一と考えていいだろう。

……と言うと、少しあっさりとしすぎかもしれないが、 21.5インチiMacと比べると8割以上もCPUが高速になり、GPUに至っては2倍程度。27インチiMacと比べてもCPUだけならば凌駕する。

ここまで紹介してきたハードウェア設計と一体となった体験価値、機能などもM1の価値ということができるだろうが、長期的に見ればM1に内蔵されるNeural EngineやMLアクセラレータなどのCPU、GPUとは別の処理回路がもたらす価値が、Mac用アプリにもたらす価値のほうが大きい。

その一部はmacOSでも動作可能なiPad用アプリの存在からもたらされるだろう。さらにMac用アプリで積極的に機械学習処理を活用する動きも強まっている。もちろん、macOSに標準添付されているアプリではすでに活用が始まっており、例えば写真アプリでは写真の分析処理をM1内蔵のNeural EngineやMLアクセラレータで行っている。

Intelプロセッサからの移行で心配された互換性問題やネイティブアプリへの移行速度といった懸念は、この半年ほどですっかり解消されたと言っても過言ではない。多くのアプリがM1対応となり、先日はAdobeのクリエイティブツールもほぼ移行が完了した。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
M1の弱点といえば、それはシステムスペックの選択肢が少ない(搭載メモリ、Thunderbolt 3のポート数、独立GPUが選べない)ことぐらいしか思いつかないが、これらは今回の24インチiMacの位置付けからすれば大きなマイナスとは言えないだろう。だからこそ、Appleは27インチモデルにM1を搭載していない。

関連記事:新24インチiMac vs 旧27インチiMac比較。M1チップ搭載で極薄化

Boot Campや仮想化ソフトでWindowsを動かせなくなったことを残念に思うユーザーもいるかもしれないが、長年、両方のプラットフォームを併用してきた筆者でも、その必要性はほとんど感じなくなってきているというのが正直なところだ。

なお、ご存知の通りParallels DesktopがARM版Windowsの動作をサポートした。パフォーマンスは良好で、ブラウザの互換性などをチェックしたり、一部のWindowsでしかないアプリ(例えば筆者の環境では弥生会計)を動かしたりする程度ならば十分だと感じた。

ただし、ARM版Windowsの製品版を入手する手法がなく、開発者向けのプレビュー版をテストする場合にしか利用できないのが現状だ。マイクロソフトが一般向けにライセンスを始めない限り、公式なサポートは受けることができない点に留意しておきたい。

家庭向けデスクトップの新しい基準に

ディスプレイ一体型デスクトップパソコンというジャンルは、ディスプレイやスピーカーなどをトータルで設計できるため、ディスプレイ別売りのコンピュータよりもユーザー体験を演出しやすいという利点がある。

かつては、高品位ディスプレイが高価、かつパソコンの性能面での進化が速かったこともあり、エントリーユーザー向けの低価格製品というイメージがあったが、そうした考え方は古くなっている。

代表例がiMacで27インチモデルに5Kディスプレイが搭載されたこと。これにより新たな基準点が生まれた。製品ごとにカラー調整が施され、単体で購入すると高価な5Kディスプレイだが、それを搭載したことで、一体型を単なるお買い得モデルから体験価値の高い製品にしたわけだ。

【レビュー】ひと足先に触れたブルーのiMacに感じる家庭向けデスクトップの新基準
今回の製品ではさらに一歩踏み込み、独自プロセッサとハードウェア設計の組み合わせでの体験価値向上をもたらしている。狭額縁や薄型筐体などもあって21.5インチモデルからの置き換えでもむしろスッキリとした佇まいになる。

価格に関してもその質感や性能を考えれば決して高くはなく、むしろ安いと感じる人が多いのではないだろうか。家庭向けのデスクトップコンピュータの基準点として、今後、さまざまな製品を評価する際の指標となる定番製品に仕上がっていると思う。

グリーンのiMacに想う──新しいiMacは「見た目で選んでいいMac」だった

新iMac パープル先行動画レビュー。周辺機器まで統一されたカラーデザインに感動

(文:本田雅一、Engadget日本版より転載)

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【レビュー】GMの最先端技術を戦略的な価格で実現したシボレー・ボルトEUV、「スーパークルーズ」追加でテスラModel Yと互角に

2022年型Chevrolet Bolt EUV(シボレー・ボルトEUV)は、Chevrolet Bolt EV(シボレー・ボルトEV)よりもわずかに長くて大きく見えるが、その少し角ばった車体には数多くの最先端技術が手の届く価格で詰め込まれている。シボレー・ボルトEUVと、オプションで追加できる先進運転支援システム(ADAS)の発表により、GM(ゼネラルモーターズ)はADASと電気自動車を大衆の手が届く価格で提供する自動車メーカーになる。

今回発表された改良型「ボルトEV」と新型「ボルトEUV」(EUV:SUV型電気自動車)は、GMが声高に宣言してきた「今後4年間で30車種の電気自動車を発表する」という目標の一環である。筆者は、GMの先進運転支援システムSuper Cruise(スーパークルーズ)を搭載したボルトEUVのプロトタイプ車両に2回試乗する機会を得た。

ボルトEVとボルトEUVは基本的に似ている部分もあるが、互いにまったく異なるモデルである。ボルトEUVの方が車体が大きめで、スーパークルーズなど、利用できる機能がボルトEVよりも多い。ちなみにスーパークルーズとは、認可されている道路区間でハンズフリー運転を可能にする先進運転支援システムだ。ただし、このシステムは標準装備ではないため、2200ドル(約24万円)の追加料金を支払ってアップグレードする必要がある。ちなみに2022年型ボルトEVはスーパークルーズには対応していない。

ボルトEUVの基本概要

ボルトEUVには288セル、65キロワット時(kWh)のバッテリーパックが搭載されている。最高出力は200馬力(hp)、最大トルクは360ニュートンメートル(Nm)だ。メーカー推定航続距離は満充電時250マイル(約402キロメートル)で、急速充電(DC充電器で30分充電)すればさらに95マイル(約152キロメートル)走れる。

住宅用の電源(240V)を使った場合、100%充電できるまで約7~8時間かかる。ほとんどのボルトEUVオーナーは住宅用電源で充電するとシボレーは想定している。そのようなオーナーをサポートするために、シボレーは家庭用のEV充電器設置サービスを提供するQmerit(キューメリット)と提携し、ボルトEVまたはボルトEUVの新車を購入またはリースする顧客に、通常であれば2000ドル(約22万円)かかる家庭用EV充電器の設置サービスを無料で提供することを決めた。これはかなりのインセンティブになると思う。

GMがHmmer EV(ハマーEV)やCadillac Lyric(キャデラック・リリック)をはじめとするEVに搭載すると発表した新しいUltimum(アルティウム)バッテリーは、ボルトEUVには採用されていない。ボルトEUVの車台は2021年型ボルトEVと同じく「BEV2」と呼ばれる電動プラットフォームだ。前述したように、スーパークルーズは標準装備ではないため、追加したい場合はオプション料金を支払う必要がある。

スーパークルーズは、2017年に導入されて以来、2018年にはCT6、2021年にはCT5と、キャデラックのモデルにのみ搭載されてきた。有料アップグレードが必要ではあるが、ボルトEUVはGMがラグジュアリー車以外でスーパークルーズを導入した初のモデルである。

ボルトEUVのベース価格は3万3995ドル(約370万円)で、現在ディーラーに並んでいる2021型ボルトEVより2500ドル(約27万円)安い。2022年型ボルトEVも3万1995ドル(約348万円)で、2021年型ボルトEVより4500ドル(約49万円)安い。シボレーの広報部によると「誰でも手が届く価格でEVを提供する」ことを目指しているとのことだ。もちろん、7500ドル(約82万円)の連邦税控除の対象となっていた前身モデル各種と価格面で整合させる目的もあるのだろう。この連邦税控除は各自動車メーカーの米国内納入台数が20万台に達すると廃止されるのだが、GMはその上限台数をすでに超えているからだ。

初期限定モデルLaunch Edition(ローンチ・エディション)のメーカー希望価格は、オプションでスーパークルーズを追加でき、照明付き充電ポートとスペシャルバッジが付いて、4万3495ドル(約474万円)だ。この記事の執筆時点でローンチ・エディションの予約枠はすでに完売しているが、LTトリムまたはプレミアトリムであればまだ予約可能だ。しかし、2200ドル(約24万円)の有料アップグレードでスーパークルーズを追加できるのは、ベース価格3万8495ドル(約419万円)のプレミアトリムのみである。ちなみに、ここで紹介した価格はどれも州または地方自治体によるEV対象の税控除や割引を考慮する前のものだ。

対照的に、Tesla(テスラ)のModel Y(モデルY)の中で最もお買い得なロングレンジモデルでも、インセンティブを考慮する前のベース価格は4万1990ドル(約457万円)だ。テスラの「Full-Self Driving(完全セルフ運転)」機能(実際はセルフ運転ではなく運転支援システムなのだが)を追加するには、さらに1万ドル(約109万円)かかる。

スーパークルーズの使用感

スーパークルーズはすばらしいシステムなのだが、実用面ではまだエラーが多い。スーパークルーズとは、米国各地の認可された道路区間(合計すると約32万キロメートル以上)で、ハンドルから手を、ペダルから足を離して自動運転することを可能にするシステムである。

筆者が2回目に試乗したとき、ボルトEUVのエンジニアリング、開発、検証、テスト、製造を統括するチーフエンジニアのJeremy Short(ジェレミー・ショート)氏は次のように語ってくれた。「渋滞や衝突事故をゼロにする可能性を持つ完全自動運転の技術は開発しがいがある。自動運転は今後10年が本当に楽しみな分野だ。スーパークルーズが今実現している機能を本当に開発できるなんて、5年前には想像もしていなかったはずだよ」。

とはいえ、スーパークルーズには改善の余地があるため、GMは今後も開発を継続していく予定であり、それはボルトEUV用のスーパークルーズも同じだ。筆者がボルトEUVの1回目の試乗でマリーナ・デル・レイからバーバンクへ行き、ラッシュアワーのロサンゼルスに戻ってきた際、スーパークルーズは「少し調子が悪い」感じがした。ハイウェイの広い車線の中で大きく蛇行することが多く、時速30マイル(約50キロメートル)以下になると、交通量が非常に多い認可道路の1つである405号線で、まるで車線を見失ってしまったかのように隣の車線に寄ってしまい、手動運転に切り替わったことが何度もあった。

2022年型シボレー・ボルトEUV(画像クレジット:GM)

それから数週間後、2回目のプロトタイプ試乗でカーソンから出発して50マイル(約80キロメートル)ほど走行したときは、スーパークルーズはかなり安定して作動した。しかし、筆者も、別のプロトタイプ車両で筆者の後ろを走っていたショート氏も、時速10マイル(約16キロメートル)以下になるとボルトEUVのスーパークルーズがおかしな動作をすることに気づいた。前を走っているクルマが減速すると、ボルトEUVも適宜減速するのだが、その後にクルマが流れ始めて加速すると、まるで車線を見失ってしまったかのように車線から逸れてしまい、そのうちに、手動運転に切り替えるための警告音が鳴ってスーパークルーズがオフに切り替わるのだ。

試乗を終えたショート氏も「低速時に蛇行しましたね、私も気づきました」と言っていた。そして、蛇行せずに走行することをスーパークルーズのシステムに教え込むために、もっとエンジニアを呼んで、同じ車両で同じ道路を走らせないとだめだな、なんてジョークを飛ばしていた。同氏によると、低速走行時には、カリフォルニア州の車道でよく見かける奇妙なコンクリート路面加工をAIが車線区分線だと誤認識し、それがスーパークルーズに影響する可能性があるとのことだ。「これは、軌跡がわかる曳光弾のようなものです。インプットされるデータが多いほど、車両はより正確にデータに沿って動こうとします」と同氏は述べる。

スーパークルーズは、すでにキャデラックCT5やCT6などのモデルに広く搭載されているとはいえ、継続的に学習し更新されていくシステムだ、とショート氏は語る。車の重量、可能速度域、寸法、ステアリング、ブレーキ、センサーまでの距離やその機能は、モデルによって異なる。そのため、スーパークルーズを新しいモデルに採用する際は、その都度センサー、ソフトウェア、データ処理機能に手を加えて更新することが必要だ。例えば、2022年型Cadillac Escalade(キャデラック・エスカレード)に搭載されたスーパークルーズには自動的に車線を変更する機能が含まれている。しかし、2022年型ボルトEUVには対応するセンサーが搭載されておらず、自動的に車線変更する機能は備わっていない。

ショート氏は次のように説明する。「スーパークルーズの詳細はモデルによって異なるため、処理するデータや提供する機能も異なります。ボルトEUVに搭載されたスーパークルーズは、エスカレードに搭載されるスーパークルーズと同じタイミングで開発されましたが、この2つのモデルはステアリングもブレーキもまったく異なるため、それぞれのスーパークルーズもやはり異なってきます」。

スーパークルーズは、先進的なレベル2の自動運転システムとして認定されている。ドライバーは依然として油断せずに周囲の状況に注意を払う必要があるが、スーパークルーズが利用可能な道路では、ハンドルから手を離したり、ペダルから足を離したりできる。ハンドルに搭載されたセンサーがドライバーの視線を追跡し(夜間や色の濃いサングラス着用時にも追跡できる)、ドライバーが映画を観たり、居眠りしたり、スマホを見たりしていないか、きちんと前方に注意を払っているかどうかを監視する。スーパークルーズの起動中でも、前方の道路からあまり大きく外れた場所を見ることはできない。例えば、時速65マイル(約105キロメートル)で走行している場合、10.2インチのインフォテイメント画面に手を伸ばしてラジオのチャンネルを変えることくらいはできるのだが、それでも、視線が数秒以上逸れただけで警告音が鳴る。

ショート氏は筆者からの質問に答えて次のように説明してくれた。「ロサンゼルスからラスベガスまで長距離ドライブをする場合、ドライバーはまるで『前列シートに座っている同乗者』になったように感じると思います。ドライバーも同乗者も道路状況に注意を払い、危険がないかどうか前方を見ることでしょう。私もスーパークルーズを使ってこの区間を走ってみましたが、同乗していた友人と同じ程度の疲労しか感じませんでした。つまり、ドライバーとしてずっと運転するときほど疲れなかったのです」。

その他の機能

通常はまる1週間かけて試乗して余すところなくレビューするのだが、今回の2022年型ボルトEUVではそれがかなわなかった。とはいえ、このクルマが持つ特徴の一部をレビューする時間は取ることができた。

シボレーの車載インフォテイメントとナビゲーションをつかさどるシステムを動かすのは、GMのInfotainment 3ソフトウェアだ。このシステムの音声制御には自然言語処理が実装されているため、筆者は最寄りの充電ステーションを音声制御ですばやく検索できた。

ただし難点があった。音声で検索すると同システムに複数の充電ステーションが表示されたのだが、どのステーションが利用可能か、営業時間中なのか、営業時間外なのか、GMが提携している充電サービス企業EvGoのネットワークに加盟しているかどうか、といった情報は表示されなかったのだ。さらに、スーパークルーズの使用中は検索結果の表示ページを移動できない。なぜなら、ドライバーの視線が前方の道路から逸れると、モニタリングシステムがそれを検知するからだ。

EvGoの充電ステーションを見つけるにはmyChevroletアプリを使う必要があり、見つかった充電ステーションまでの道順を車載ナビゲーションシステムに送信しなければならない。運転中は一部の機能がロックされて使えなくなる。また、ショート氏が指摘するように、myChevroletアプリのページを移動することもできなくなる。

ボルトEUVが市場に出てしばらく時間が経った頃にこの問題がどのような展開を見せているのか、楽しみに待ちたいと思う。そうは言っても、テスラの充電ステーションほどシームレスな体験は難しそうだ。

総評として、2022年型シボレー・ボルトEUVは、現在利用できる自動運転支援テクノロジーの中で最先端の機能を電気自動車に搭載し、それを入手しやすい価格で提供しているモデルだと思う。1回4時間のプロトタイプ試乗を2回体験してみて、コンパクトでありながら広い車内スペースが確保されているボルトEUVは、パワーの面でもテクノロジーの面でも、テスラのモデルY、ボルボのXC40リチャージ、フォードのマッハE、フォルクスワーゲンのID.4などと互角に渡り合えるモデルだと感じた。

関連記事:2021年フォルクスワーゲンID.4はただ1点を除けばかなりいい仕上がり、高度な技術と長い航続距離を手が届く価格で実現

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タグ:Chevrolet電気自動車レビューSUVGM

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(文:Abigail Bassett、翻訳:Dragonfly)

あらゆるテクノロジーが詰め込まれたメルセデス・ベンツEQS 2022年モデル、350ものセンサーで実現された数々の新機能

Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)は、数週間かけてじらし広告、発表、生産開始前の試乗イベント(TechCrunchも参加)を重ねた後、ついに米国時間4月15日、カモフラージュを取り去り、テクノロジーを詰め込んだフラッグシップ超高級セダンEQS(メルセデスSクラスの電気自動車版)を公開した。

注目の大半はその外観に向けられているが、TechCrunchが注目しているのは、そのテクノロジーだ。マイクロ睡眠警告システム、142cmのハイパースクリーン、超大型のHEPAエアフィルター、運転者の要望やニーズを直感的に学習するソフトウェアなど、さまざまな技術が搭載されている。No.6 MOOD Linenと呼ばれる新しい香料まで採用されており、その香りは「イチジクの新緑とリンネルに包まれている」ような感じ、と説明されている。

「何か1つを取り上げることはできません。この車は100の様々な要素で構成されているからです」とDaimler AG(ダイムラー)の取締役会会長でメルセデス・ベンツ社長のOla Källenius(オラ・ケレニウス)氏はいう。「そして、その100の小さな要素にこそ、メルセデスのメルセデスたる所以があります」。

メルセデスは、このテクノロジーにパフォーマンスとデザインを組み合わせれば、買い手は惹きつけられると確信している。この車はメルセデスにとっていちかばちかの賭けだ。同社は、北米でEQSが成功を収めることによって、全米での販売開始時に問題を起こした(今はすべて解決済み)EQCの記憶を払拭できると踏んでいる。

基本概要

最新のテクノロジーについて説明する前に、基本事項について概説しておこう。EQSは、メルセデスの新しいEQブランドとなる超高級純電気自動車で、米国市場に導入される最初のモデルは、329馬力のEQS 450+と516馬力のEQS 580 4MATICだ。メルセデスはこれらのモデルの価格を公開していないが、パフォーマンス、デザイン、レンジについて詳細な情報を提供している。

米国で販売予定のEQSの車長は5.2mを若干超える(正確には5.217m)くらいで、メルセデスSクラスのバリエーションに相当するサイズだ。

メルセデスEQS 580 4MATIC

このモデルの空気抵抗係数は0.202で、Tesla Model SとLucid Motors Airより若干低く、世界で最も空気抵抗の少ない量産車となっている。すべてのEQSモデルは後車軸に電動パワートレインを備えている。EQS 580 4MATICは前車軸にも電動パワートレインを備えており、全輪駆動を実現している。EQSの最高出力は329~516馬力で、車種によって異なる。メルセデスによると、最大630馬力の高パフォーマンス車種の生産も計画されているという。EQS 450+とEQS 580 4MATICのどちらも、最高速度は時速209kmだ。EQS 450+の時速96kmまでの加速時間は5.5秒だが、高出力の上位車種は4.1秒で同じ速度に達する。

EQSでは、2種類のバッテリーのどちらかを選択できるが、メルセデスが詳細を明らかにしているのは1つのバッテリーのみだ。最高負荷構成のEQSには使用可能エネルギー含有量107.8 kWhのバッテリーが搭載されており、European WLTP(国際調和排出ガス・燃費試験方法)による概算では1回の充電で769キロメートルまで走行できる。より厳しい基準であるEPAによる概算では、この数字を下回る可能性が高い。

メルセデスによると、EQSは、直流高速充電ステーションで最大200kWまで充電できるという。自宅または公開の充電ステーションでは、オンボードの充電器を使用して交流で充電できる。

それでは、EQSで使用されている注目すべきテクノロジーをいくつか紹介しよう。

ADAS(先進運転支援システム)

EQSにはさまざまな運転者支援機能が搭載されている。この機能を実現しているのは、車に組み込まれている超音波、カメラ、レーダー、ライダーなどの多様なセンサーだ。ADAS機能として、適応走行、加速動作調整機能、車線検知、自動車線変更、ハンドル操作補助(最大時速209kmで車線走行)などが組み込まれている。このシステムは、速度制限標識、オーバーヘッドフレームワーク、工事現場の標識も認識し、一時停止や赤信号を無視すると警告する機能もある。

さらに新しい機能として、時速19kmに達すると自動的に作動するマイクロスリープ警告機能がある。この機能は、運転車のまぶたの動きをドライバー用ディスプレイのカメラで分析することで実現されており、MBUX Hyperscreen搭載車種でのみ利用できる。

必要に応じて運転操作に介入するアクティブ補助機能もある。アクティブ死角補助では、時速9.6~199kmの速度範囲で側面衝突の可能性があることを視覚的に警告する。それでも運転者が警告を無視して車線変更を開始すると、速度が時速30kmを超えている場合は、衝突直前に一方的にブレーキ操作を介入させて修正操作を実行するという。この機能は駐車中でも作動し、車や自転車が近くを通過している場合に車を発進させないよう警告する。

緊急停止補助機能も用意されており「運転者が交通状況に反応しない時間が続いている」とセンサーとソフトウェアが認識すると、ブレーキを稼働して走行中の車線で車を停止させる。ブレーキ操作は急には行われない。運転者が反応していない場合は、まず音声で警告し、その後、計器群に視覚的な警告が表示される。車が徐々に減速される間、これらの警告が継続的に発出される。ハザードランプが点灯し、触覚による警告として運転席のシートベルトが一瞬締まる。最後に、追加の警告としてメルセデスのいう「短く強いブレーキ操作」が適用され、車は減速して停止する。必要に応じて、1回車線変更することもある。

また、オプションでDRIVE PILOT(ドライブパイロット)機能も用意されている。これは、SAE Level 3対応の条件付き自動運転システム機能で、これによりハンズフリーの運転が可能となる。欧州では規制により、公道を走行する量産車にこのレベルの自動化を実施することは禁止されている。この件について、ケレニウス氏はドイツのメディアに次のように語っている。「2021年下半期にドイツで最初の量産車向けLevel 3システムの認可を取得する寸前まできている」(Automotive News Europeの記事より抜粋)。

関連記事:【レビュー】2022年のメルセデス・ベンツEQSはラグジュアリーEVの未来に賭ける、ただし賭金は高い

学習するクルマ

EQSには驚くべき技術的な仕かけが数多く搭載されているが、その多くは運転者の動作を学習するよう設計された基盤AIに依存しており、ソフトウェアと、驚くほど多数のセンサーで実現されている。メルセデスによると、機器にもよるが、EQSには最大350のセンサーが組み込まれる予定で、距離、速度、加速、ライト点灯条件、降雨、気温、座席専有率、運転者のまばたき、同乗者の話し声などが記録される。

これらのセンサーによって取得された情報は、電子制御ユニット(コンピューター)によって処理され、その後、ソフトウェアアルゴリズムが処理を引き継いて判断を下す。TechCrunchの試乗レビュー担当者Tamara Warren(タマラ・ウォーレン)によると、半日試乗しただけで、EQSが運転者の好みを学習する能力に気づいたという。

メルセデスは、これらのセンサーとソフトウェアの連係動作について、例えば、対話型で、さまざまなパラメーター(アクセルの位置、速度、回復動作)に反応するオプションの走行音など、さまざまな例を使って説明した。

直感的な学習機能が明白にわかるのは、MBUX情報システムとのやり取りを介して学習される場合だ。このシステムは、ユーザーにしかるべき機能をしかるべきタイミングで予測的に表示する。センサーは環境とユーザーの動作の変化を感知し、変化に応じて反応する。メルセデスは、第1世代MBUX(2019年型Mercedes A Classに搭載)から収集したデータで学習した結果、大半のユースケースはナビゲーション、ラジオ / メディア、電話の各カテゴリーに当てはまることがわかった。

このユーザーデータに基づいて、第2世代MBUZ(EQSに搭載されるもの)のレイアウトが決められた。例えば、ナビゲーションアプリは常に、ビジュアルディスプレイユニットの中央に表示される。

画像クレジット:Mercedes-Benz

MBUXでは自然言語処理を採用しているため、運転者はいつでも自分の声でラジオ局を選択したり、社内環境を制御したりできる。しかし、メルセデスは、EQSの直感的学習機能を強く推奨している。この機能では、運転者がクルマを使い込むにつれて、通常はメニューの深い階層に埋もれている項目が前面に表示されるようになったり、時間や場所に応じて前面に出てきたりする。

「このクルマは運転者を人として認識し、運転者の好みや動作を学びます。次に使いたいオプションを、運転者が考える前に提示してくれるような感じです」とケレニウス氏は説明する。

「お腹が空く前にピザが配達されるようなものです」とケレニウス氏は冗談交じりに続け「直感的という意味ではまさに画期的です」と付け加えた。

メルセデスによると他にも20を超える機能があるという。例えば誕生日リマインダー機能は、ユーザーに関係のある人の誕生日を人工知能の助けを借りして自動的に知らせてくれる。階層なしのインターフェイスに表示されるこうした提案モジュールは「マジックモジュール(Magic Modules)」と呼ばれ、次の原理で動作する。運転者が数日続けて、夜帰宅途中に特定の友人や親戚に電話すると、今日この時刻にこの相手に電話をするかどうか提案してくる。名刺は、連絡先情報と写真(保存されている場合)付きで表示される。MBUXが行うすべての提案は、ユーザーのログインプロファイルと関連付けられる。つまり、他の誰かが自分のプロファイルでログインして、同じ夜にそのEQSを運転したとしても、この推薦は表示されないということになる。

運転者が帰宅途中にいつも特定のラジオ番組を聴く場合は、その番組を聴くかどうかが提案される。定期的にホットストーンマッサージを利用している場合は、低温でマッサージ機能を作動させるかどうか自動的に提案してくる。

こうした提案は運転機能にも適用される。例えば、自宅車庫までの私道が急勾配だったり、同じような減速バンプを通過して自宅近くに入っていく場合、MBUXはそのことを記憶する。そして、GPSの位置がその区域に近づくと、車体を上げて地面からの距離を確保するよう提案してくる。

健康とウェルネス

上述の各種センサーにはさらに高度な用途がある。運転者はさらに一歩進めて、スマートウォッチ(Mercedes-Benz vivoactive 3、Mercedes-Benz Venu、またはその他のGarmin互換ウォッチ)をEQSの「エナジャイジングコーチ」に接続できる。エナジャイジングコーチは運転者の動作に反応し、1人ひとりの気分に応じて「Freshness(リフレッシュ)」「Warmth(暖かさ)」「Vitality(活力)」「Joy(喜び)」などの中から1つのプログラムを提案してくる。スマートウォッチは、Mercedes meアプリを介して、ウォッチ装着者のバイタルデータ(心拍数、ストレス度、睡眠の質など)をエナジャイジングコーチに送信する。組み込みのGarminウェアラブルによって記録された心拍数は中央ディスプレイに表示される。

これが実際にどのような役に立つかというと、実は、ユーザーの要望とAIシステムが判断したユーザーの要望に合わせて、ライト、車内環境、サウンド、座席などが調整されるのだ。もちろん、これはすべて、音声アシスタント「Hey Mercedes(ヘイ、メルセデス)」に統合されているため、運転者は、自分の気分をいうだけで望みのプログラムを起動できる。

運転者が「ストレスを感じている」というと「喜び」プログラムが起動され「疲れている」というと「活力」プログラムで休憩をとるよう促される。

メルセデスSクラスのオーナーには、こうしたオプションはすでにお馴染みかもしれないが、メルセデスによると、EQSではシステムがさらに強化されているという。具体的には、新しい3つのエナジャイジングネイチャープログラムとして、森の中の空き地、海の音、夏の雨が追加され、トレーニングとヒントも用意された。各プログラムでは、音響生態学者Gordon Hempton(ゴードン・ヘンプトン)氏の助言を受けて作成された、異なる没入型サウンドが再生される。例えば「森の中の空き地」では、鳥のさえずり、葉の擦れる音、そよ風を組み合わせた音が再生され、温かみのある音風景と淡い香りが車内に満ちる。

海の音では、柔らかい音楽風景、波の音、カモメの鳴き声が生成される。これに空調システムからの風が加わってプログラムが完成する。一方「夏の雨」では、落ち葉の積もった屋根に落ちる雨粒の音、遠くの雷鳴、パタパタと音を立てる雨、環境音景などが生成される。

画像クレジット:Mercedes-Benz

さらに、休憩が必要な長距離ドライブ向けに、パワーナップ(積極的仮眠)機能が追加された。パワーナップを選択すると(間違っても運転中に選択しないよう注意)、入眠、睡眠、目覚めの3つのフェーズからなるプログラムが実行される。運転者の座席は安静位に移動し、窓とパノラマサンルーフが閉じて、空気イオン化が起動される。心地よい音と中央ディスプレイに映し出される満天の星空によって入眠が促される。目覚めの時刻がくると、音楽景が起動され、香りが立ち、簡単なマッサージと座席シートの通気が開始される。座席が元の位置に戻り、サンルーフの裏張りが開く。

音声

先ほど述べたとおり「へイ、メルセデス」音声アシスタントは、自然言語処理を使用しているため、多くの要求を処理できる。メルセデスによると、音声アシスタント機能はさらに強化され「へイ、メルセデス」という起動キーワードを言わなくても電話を受けるなどの特定のアクションを実行できるようになったという。また、クルマの機能説明もできるようになった。

音声アシスタントは同乗者を音声で識別することもできる。実際、車内の各座席には個別のマイクが設置されている。同乗者の音声を学習したアシスタントは、そのユーザーの個人データと職務を参照できる。

EQSの音声アシスタントは後部座席からでも使用だ。

これらの個人プロファイルは「Mercedes me」の一部としてクラウド上に保存される。つまり、プロファイルは新世代のMBUXを搭載した他のメルセデス車でも使用できるということだ。セキュリティは組み込まれており、PINも使用でき、顔認識と音声認識を組み合わせて認証を行う。これにより、個人設定へのアクセスやデジタル決済処理の確認を車から実行できるという。

スクリーンとエンタテイメント

最後に、画面について触れておこう。すべての画面についてだ。142cmのハイパースクリーンが最も注目を浴びているが、EQSでは車内に複数の画面が設置されている。重要なのは、これらの画面が相互にやり取りする方法だ。

ハイパースクリーンは実は3つの画面で構成されているのだが、3つとも共通のガラスカバーに接着されているため、見た目には1つのディスプレイに見える。運転席ディスプレイは31cm、中央ディスプレイは45cm、助手席のディスプレイは31cmだ。MBUXハイパースクリーンはタッチスクリーンになっており、触感フィードバックと力フィードバックを返すこともできる。

「最初のデザインと実際の完成品についてときどき考えるのですが、『1メートル41cmの曲面ガラスを車内に搭載するなんて、突拍子もないアイデアだ』と思うことがあります」とケレニウス氏はいう。「それ自体が1つの作品であり、テクノロジーアートなのです」。

画像クレジット:Mercedes-Benz

後部座席に多くの注目が集まっているが、これはEQSが同グレードのSクラスと同様、オーナーが運転手を雇って使うことが多い車だからだ。後部座席はすべてシステムに接続されているため、メルセデスはこれを後部座席エンタテイメントシステムとは呼ばず、マルチ座席エンタテイメントシステムと呼んでいる。

運転者が2人の後部座席同乗者に異なる映画を見せたい場合は、メインスクリーンで映画をドラッグし、それを見たい同乗者の方へスワイプするだけで、後部座席のプログラムが調整される。後部座席の同乗者も、隣の同乗者のスクリーンに映画をいわば「投げる」ようにスワイプして渡すことができる。

関連記事:メルセデス・ベンツが高級EVセダンEQSの湾曲56インチ「ハイパースクリーン」発表

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画像クレジット:Mercedes-Benz

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Dragonfly)

【レビュー】2022年のメルセデス・ベンツEQSはラグジュアリーEVの未来に賭ける、ただし賭金は高い

2022年に発売予定のMercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)EQSを1日試乗して過ごし、このドイツの自動車メーカーが、電動化に数十億ドル(数千億円)を投じて成し遂げたことの詳細を間近で見ることができた。

EQSは、メルセデス・ベンツのMBUXインフォテインメントシステム、新しいエレクトリックプラットフォーム、および性能の向上を組み合わせた入念に設計されたフラッグシップセダンだ。EVであることを付加的な要素とするフルサイズの高級セダンの新たなベンチマークを確立することは、容赦ない探求といえよう。

この高級セダンは、メルセデスがEVで将来何を提供できるか、そしてその先のさらなる可能性を米国の消費者に示そうとしている。大きな賭けだが、同社は北米でのEQSの展開が成功すると見込んでいる。

画像クレジット:Mercedes-Benz

「これは完全なる新時代の始まりです。当社はこれまでに、ハイブリッド車、ICE、BEVで完全にフレキシブルなプラットフォームを構築してきたからです」とEQブランドの責任者であるChristophe Starzynski(クリストフ・スタジンスキ)氏は語り、メルセデスは2025年までにEQEと2台のSUVを含む3台の電気自動車を米国のポートフォリオに追加すると付け加えた。「私たちが徹底して設計、開発し、すべての技術をバッテリー電気自動車に搭載したのは、これが初めてです」。

EQSは、メルセデス・ベンツの最高級ラグジュアリーセダン、Sクラス(基本価格11万ドル、約1200万円)から派生した全長17フィート(5m超)のフラッグシップモデルだ(これまでのところEQSの価格は公表されていない)。このクルマには同社史上最高の技術が搭載されている。多くの顧客は搭載されているあらゆるオプション機能に関心がないかもしれないが、すべてが広大なインフォテインメントクラウドに保存されているか、1度のソフトウェアアップデートで実現するというのは知って損のない事実である。

ファーストドライブ

フル装備のEQSは飛躍的な前進を遂げており、この新しいSクラスはもはや次の時代を感じさせる。

筆者が試乗したEQS 580 4MATICモデルは、56インチ(142cm)のHyperscreen 、ヘッドアップディスプレイ、音響ガラス、後部座席のエンターテインメント、空気濾過システムを搭載していた。スタジンスキ氏によるとこれらの仕様は新型コロナウイルスのパンデミック発生前から存在したそうだが、その新鮮な輝きを感じずにはいられない。

関連記事:メルセデス・ベンツが高級EVセダンEQSの湾曲56インチ「ハイパースクリーン」発表

本稿執筆時点では、この車の外観の詳細は4月15日に公開されるまで非公開となっている。筆者が試乗した車両には部分的に覆いがかけられていたため、Aピラーの彫刻的なニュアンスについてはあまり説明できない。

画像クレジット:Mercedes-Benz

5歳の娘を連れて、EQSが店頭に並べられたメルセデス・マンハッタンのディーラーに足を運んだ。試乗車に近づくと、運転席のドアが自動的に大きく開いた。ブースターシートの見晴らしの良い場所から、娘は目の前に浮かぶ後部座席のスクリーンで遊び、そして「キラキラした虹の乗り物」と娘が称するピンクと紫の環境照明をキャビンに選んだ。

今後10年のEV販売の中心となる中国において、運転手付き車というのは高級車の前提条件でもあるため、後部座席での体験がどうなのかはかなり重要な要素だ。

画像クレジット:Mercedes-Benz

その一方で、筆者のような背の高い者にとっては、首の付け根を支える枕がアクセントになっている広々とした運転席はこれまでで最も快適な乗り心地だった。シートベルトを締めると車の雰囲気が一気に盛り上がる。照明とサウンドのデザインの魅力にぜひ注目して欲しい。

EVの控えめな駆動音を補うためのソフトな音響の波を楽しむこともできたが、私たちはほどなくして、15台のBurmesterスピーカーから5歳児のお気に入りのBarbieのサウンドトラックを聴くことにした。(5歳の子どもを連れてくることには残念な妥協がともなう。)

EQSで起きていることすべてが56インチのHyperscreenのOLED(有機EL)で映し出される。スクリーンはドアからドアまでの間に3つのディスプレイに分かれているが、実際に見てみると写真で見るほど邪魔には感じない。楕円形の輪郭はゲーマーのコックピットのような雰囲気を醸し出している。

MBUX機能は、ハンドルの右側にある17.7インチ(45cm)のメインOLEDスクリーンに組み込まれている。自分でタッチスクリーンをカスタマイズすることも可能だ。この高性能コンピューターシステムには、24ギガバイトのRAMと46.4ギガバイト / 秒のRAMメモリ、8個のCPUコアが搭載されている。

画像クレジット:Mercedes-Benz

ユーザーエクスペリエンス

Apple製品が象徴するように、シンプルさは優れたデザインの特徴である。それとは対照的に、メルセデスは常に驚くほど多様なユーザーエクスペリエンスのオプションを提供し、情報にアクセスするための複数のアプローチを提供することに力を入れてきた。この傾向は、ハンドル、アームレスト、メインスクリーンのコントロール機能を通じてEQSに引き継がれている。テストドライブでは、コントロールに関する複数のオプションが気になった。スマートフォンの新機能に慣れるのに2週間かかるのと同じように完全に適応する時間がなかったからなのか、それとも単純にやり過ぎなのかはわからない。ヘッドアップディスプレイには気づいたが、車の中で見るには多すぎる感があった。

画像クレジット:Mercedes-Benz

筆者が興味をそそられたのは、MBUXシステムが時間の経過とともにドライバーの行動を学習していることだ。乗車が終わる頃に、スクリーンモジュールがアクティブシートのマッサージをもう一度使いたくないかと筆者に思い出させてくれた。つまり、他のコントロール機能を無視して、最も使いたいものに集中することができた。音声コマンドはまずまずだったが、筆者の高音テノールはこのシステムの足を引っ張った。筆者を常に理解してくれる自動車の音声システムにはまだ出会っていない。

EQSのエクスペリエンスにはアナログの空間は存在しない。グラフィックスはシャープで、立体的かつ鮮明だ。残念だったのは、タッチスクリーンに指紋がついてしまったことだ(写真を撮る前に良質のスクリーンスプレーとクロスを持ってくること)。もう1つの難点は、ハンドルが筆者よりも大きな手を持つ人向けに設計されているようで、ハンドルに内蔵されているすべての機能にアクセスするのが少し面倒に感じられたことが挙げられる。そのため、筆者は下を向いて適切な場所を探さなければならなかった。最終的にはMBUXのセンター画面で設定を調整することに落ち着いた。

EQSのユーザーエクスペリエンスで筆者が最も気に入った点は、レンジに関するメッセージングだ。ダッシュボードの多様なスクリーンには常に残りの走行距離、目的地までの計算が現実的かどうか、充電可能な場所などが表示されていた。

レンジ

そのバッテリーについて。筆者が運転したモデルには107.8kWhのバッテリーパックが搭載されており、全輪駆動システムで使用される2つの電気モーターに電力を供給していた。欧州のテストによると航続距離は470マイル(約750km)だが、米国EPAのテスト基準ではこれより低くなる可能性がある。マンハッタンからビーコンという小さな町まで往復125マイル(約200km)ほど運転し、充電する心配もなく戻ってくることができた。

画像クレジット:Mercedes-Benz

スクリーンを開いてクリック1つで表示されるChargePointオプションを見てみた。200kWのDC急速充電器が設置されているステーションも識別でき、それによると充電時間は15分ほどだという。バッテリー寿命に関する消費者の不安を解消するために、メルセデスは購入後10年間、または15万マイルまでバッテリーの容量低下を補償する保証を付けている。

各種の機能

このドライブ自体は、517馬力と406ポンドフィートのトルクが作動したかのようなパワフルな性能を発揮した。EQSは空気抵抗係数0.20を実現し、競合他社を凌駕している。これはクルマ愛好家にとってうれしい事実だが、一般ドライバーには必須の知識ではないかもしれない。

長いセダンを快適に操れるようになるには往々にして時間がかかるものだが、Sクラス同様、EQSはそのプロポーションを優雅に扱い、標準的な後輪ステアリングのおかげで簡単に方向転換できる。これはSクラスの安全機能とADASシステムを反映している。ドライブの設定にはクラシックとスポーツが用意されていて、ハンドルコントロールやアームレストを介して実現できる。筆者は概してスポーティなドライバーであり、このモードがもたらす軽快なフィードバックが気に入った。

「もちろん、さらに進化させていくつもりです」とスタジンスキ氏は述べ、ADASの機能はソフトウェアアップデートによって改善される予定であると付け加えた。ライト設定などのカスタマイズ可能な更新もダウンロードできる。

EQSドライブの最大の差別化要因は、バッテリー回復システムだろう。インテリジェント回復モードは、バッテリーを最適化し、ドライバーの動作を制御する。通常の回復でインターフェアレンスが減少している。筆者は高速道路でワンペダルドライブを楽しんだ。このサポートをまったく選択しないことも可能である。

画像クレジット:Mercedes-Benz

米国でEVが主流になる時期は間近に迫っており、バイデン大統領のインフラ計画が承認されれば、予想以上に急速に普及する可能性がある。しかし、自動車メーカーが米国の消費者の注目を集め、売り上げを伸ばそうとするなら、テスラを追い抜く以上のことをする必要があるだろう。Automotive Newsに掲載されたExperianの調査によると、2020年の米国自動車販売台数に占めるEVの割合はわずか1.8%だったという。

抜本的な変革には、時間と資金、そして長期的なコミットメントが必要だ。次世代のメルセデス・ベンツEQSは、EVの部分はもはやニュースバリューではなく、ラグジュアリー車への期待という転換点に一歩近づいている。

【追記】筆者は2018年にメルセデス・ベンツが主催したサミットシリーズのプログラムでメルセデス・ベンツEQフェローを務めており、EQのホームページでも紹介されている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:メルセデス・ベンツレビュー電気自動車

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(文:Tamara Warren、翻訳:Dragonfly)