宇宙内衛星サービスが成功を見せつけて軌道上の宇宙船操作の記録を破る

Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)が初めて行うMission Extension Vehicle(ミッション延長用宇宙船, MEV-1)のデモンストレーションミッションの成功が証明され、Intelsat(インテルサット)の衛星の寿命を5年延ばすことができた。そのミッションには、2月25日にノースロップのMEVがインテルサットのIS-901衛星と軌道上でドッキングすることが含まれ、そのあとインテルサットの軌道が変えられて稼働時間を延長できた。

最初のドッキングは2月の終わりごろ行われたが、MEVはそれまでの時間をIS-901の軌道を変えることに費やし、その後インテルサットはさらに、一部の顧客をそれまで使われていなかった衛星に移して、通信サービスに使えるようにした。両社の発表によると、今それは「フルサービス」を提供しており、それが今後5年続く。そのあとMEVは使われなくなっていた軌道に戻って最終的に引退する。そのときMEV−1は再び、ほかのスペースタグ(space tug, 宇宙のタグボート)ミッションで使えるようになり、ほかの衛星のために同じサービスを実行できる。

これは、軌道の持続可能性(サステナビリティー)と宇宙内サービス、および寿命延長の点で画期的であり、とくにNorthrop Grummanはこれをサービスとして提供できるようになる。一方Intelsatにとっては、中断のないサービスを継続できる点で「コストパフォーマンスが良くて効率的」であり、まったく新しい衛星を作って打ち上げなくても顧客のニーズに対応できる、とプレスリリースで言っている。

今、業界には変化が起きつつあり、巨大な静止衛星から、低地球軌道を飛ぶアジャイルな小型衛星の艦隊へ移行して、コストを下げようとしている。今回のような軌道サービスはもう一つのオプションを与えるが、しかし今のところは、新しい人工衛星コンステレーションのスタートアップではなく、レガシーの宇宙産業の衛星事業者にアピールするものだろう。

Northropは、インテルサットの別の衛星のための第二のMEV宇宙船の打ち上げを計画しているから、短期的にも市場性があるわけだし、また将来的には大型宇宙船の経済性を変えてしまうだろう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

提携拡大でNASAが出資するプログラムにおけるPlanetの衛星画像を地球科学者が利用可能に

NASAとPlanet(プラネット)はパイロットパートナーシップを成功させた。その結果、同宇宙機関はPlanetとの契約を延長し、Planetの地球観測衛星の画像をNASAが出資するすべての研究プログラムに提供することになった。NASAは2019年4月に、Essential Climate Variables(ECV)の追跡に取り組む35人の研究者チームに同社の画像を提供する、最初の契約をPlanetと結んでいる。

ECVのトライアルではPlanetの画像が、ヒマラヤでの山崩れなど地球上のさまざまな環境現象を追跡し、洞察を得るのに役立つことが示された。研究者たちが早期警告の兆候を検出する上で重要な要素の1つは、Planetのコンステレーションの高い再訪率、つまり特定の地域を撮影する頻度だった。

Planetのデータは地球全体を少なくとも1日に1回はカバーしており、これには北極のような他の衛星による地球観測範囲にない地域も含まれている。その頻度とカバーする範囲、詳細さは地球科学にかかわるすべての人にとって貴重なリソースとなり、また数十以上のプロジェクトに関わる何百人もの科学者が利用できるようになったことを意味する。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

遠い恒星の可住周回軌道上に地球サイズの惑星が見つかった

アメリカ航空宇宙局(NASA)とエイムズ研究センターの研究者たちが、太陽系の外の恒星を周回している地球大の惑星を発見した。その惑星はKepler-1649cと呼ばれ、地球の1.06倍の大きさしかなく、物理的な寸法ではわれわれの惑星によく似ている。それはまた、その恒星にとても近くて、地球が太陽から得ている光の約75%が得られる距離を周回している。

その恒星は赤色矮星で、星というよりフレアに近く、われわれのお隣さんとは違って、その岩だらけの衛星の表面で生命が進化するのは難しかっただろう。軌道は恒星にとても近くて、1年がわずか19.5地球日だ。ただし恒星の熱は太陽よりも相当少ないので、場所によっては液状の水がありうるだろう。

Kepler-1649cは、2018年に引退したKepler宇宙望遠鏡のこれまでの観測データを科学者たちが掘り返しているとき見つかった。そのデータから惑星らしいものを見つけるアルゴリズムは失敗したが、情報を見直していた研究者たちがKepler-1649cに気づいた。

その外惑星には、大気はどんなのかなど、これから知るべきことがたくさんある。Kepler-1649cの生命をサポートする能力に関しても、問題は山ほどあり、また、それが地球に似ているとか、恒星の周囲の正しい可住ゾーンにあるという判断も、元のデータにエラーがあるかもしれない。でもとにかく、そのサイズと、それが乗っている軌道帯の温度だけで言えば、これまで見つかったものの中でいちばん生命をサポートする可能性のありそうな太陽系外惑星だ。

地球のような特徴のある外惑星の発見は、今後の調査の良い候補を提供する。地球や宇宙にある観測機器を何に向けるべきか、という問題の解にもなる。生命のサポートについて確実なことが何か言えるまでには、長い時間を要するだろう。でも、その可能性のある外惑星が見つかっただけでも嬉しい前進だ。

画像クレジット: NASA/Ames Research Center/Daniel Rutter

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

新型コロナに翻弄されながらもNASAは商用宇宙飛行と火星探査車の計画を敢行

米国中のNASAの施設は、ほとんどが閉鎖された。一部のチームは自宅勤務(そして火星探査車を操作)しているが、その他の人たちは、重要なミッションを敢行しようと懸命に頑張っている。さもなければ、5億ドル(約540億円)もの延滞金を支払わされることになると、NASAのJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官は言う。

米国時間4月15日に発行されたPlanetary Society誌のインタビューに応えて、ブライデンスタイン長官は、いろいろな興味深い話を聞かせてくれている。だが、新型コロナウイルスのパンデミックほど、NASAの業務に影響を与える緊急で突出した問題はない。

10年にも及ぶ暫定スケジュールで進められているプロジェクトの場合は大幅に余裕がある。しかし、そんな贅沢なミッションばかりではないと長官は話す。中でも特に重要とされるもの、そのために従業員に出勤を許可しているミッションが2つある。Commercial Crew(コマーシャルクルー、商用有人飛行)プログラムと、Mars Perseverance Rover(パーセベランス火星探査車)だ。なおパーセベランス火星探査車は、以前はMars 2020と呼ばれていたが、子たちの名称コンテストでパーセベランスと改名された。パーセベランスとは忍耐という意味だ。

コマーシャルクルーは、SpaceX(スペースX)とBoeing(ボーイング)が米国製有人宇宙船の開発を競っているプロジェクトだ。2011年にスペースシャトルが引退して以来、米国は国際宇宙ステーション(ISS)との宇宙飛行士の往来をソユーズのみに依存している。

「ひとつの理由によって、これは絶対に不可欠な機能なのです。我々には、国際宇宙ステーションに行ける独自の手段を確保する必要があり、これには米国人納税者からの資金1兆ドル(約107兆円)が投資されています。なのでミッションは敢行しなければならないのです」とブライデンスタイン長官は話す。

実際、世界中の工業界が厳しい状況に置かれているにも関わらず、早くも来月の日程ががっちり固められている。プログラムでは、空論的に設けられた締め切りがいくつも近づいては通り過ぎてゆく。

関連記事:コマーシャルクルーは今も最優先だがジェームズ・ウェブ望遠鏡のテストと他の活動は一時停止するとNASAが発表(未訳)

インタービューの後半で、長官は、Crew Dragon(クルードラゴン)とStarliner(スターライナー)の両カプセルは、ソユーズとロシアのロケットと完全かつ永久に入れ替わるものではないが、確かな代替手段を確保し、依存関係だけがロシアとの唯一のつながりという状況をなくすものだと明言した。昨年はソユーズが打ち上げに失敗し、ISSは運用開始以来初めて無人の状態となった。だが迅速な調査が行われ、すぐに元通りになった。ISSに行くための手段が複数あれば、こうした危機的状況を招く危険性を低減できる。

もうひとつの非常に重要とされるミッションは、次期火星探査車のパーセベランスだ。

「このミッションは、ひとつの理由から重要視されています。つまり、火星への打ち上げウィンドウが非常に限られていることです」とブライデンスタイン長官。

軌道を回る人工衛星や、月ミッションであっても、長期の定期的な打ち上げウィンドウが用意される。だが火星へ向かう宇宙船を、短い飛行時間で狙った軌道に正確に投入するためには、地球と火星の位置が最適な時期にまとめて打ち上げなければならない。惑星間飛行は、非常に高い精度を要する科学技術だ。パーセベランスを予定通りに完成させなければ(この場合は7月17日)、悲惨なことになる。

関連記事:Mars 2020火星探査車の名称は忍耐を意味するPerseveranceに決定

「その打ち上げ時期を逃すと、2年間で5兆ドル(約540億円)を超えるコストが掛かることになります。ミッションが全滅するわけではありませんが、そんな事態には遭遇したくありません」とブライデンスタイン長官は言う。

だが長官は、NASAの従業員の健康を犠牲にしてまで達成しようというのではないと、安全には気を遣っている。

従業員には、できる限り多くの予防策を講じた中で働いてもらうことになります。私たちは、従業員を分離しています。同時に働くことがないよう、シフトをずらしました。また必要なとき、必要な場所でPPE(個人用保護具)を使用しています。

NASAの従業員の中で、仕事のやり方に納得ができない者が一人でもいれば、その旨を知らせてもらいたい。そして、気兼ねな違う仕事に就いて欲しいと考えています。他の業務に就けるよう、我々が実際に手配します。働きづらい場所や危険な場所で働かせたくはないのです。従業員は、NASAにとって最重要の存在です。この非常に特異な状況で、すべての人が安心できるようにしたい。そのため私たちは、従業員が安心して働けるように自由意志を尊重し、それによって評価が変わるようなことが絶対にないように努めます。

それでも遅延が心配されるプロジェクトに関して、ブライデンスタイン長官は、次世代ロケットのSpace Launch System(スペース・ローンチ・システム、SLS)が「厳しい状況」にあると認めた。その初号機Altems I(アルテミス1)のテストは2021年末に予定されているが、2022年にずれ込む公算が高いという。だが、SLS2号機となるアルテミス2は独立して準備が進められており、初号機のスケジュールにはほとんど左右されないとのことだ。

2024年に月面に人類を立たせるという野心的な計画は、以前から大ばくちだと見なされていた。パンデミックは、それをさらに先延ばしにするだろう。しかし少なくとも短期的には、NASAの本当に重要な業務は継続され、事態が好転したなら(そう祈るが)、この春と夏には、歴史的なミッションが成功を飾る予定だ。

ブライデンスタイン長官のインタビュー全編は、Planetary Societyのポッドキャストで聞くことができる。

関連記事:NASAのキュリオシティー・チームは火星探査車を自宅から操作(未訳)

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(翻訳:金井哲夫)

NASAでもリモートワーク、Curiosityチームが自宅から火星探査機を運用中

何百万マイルも離れた惑星に存在する、天文学的に高価なローバーを運転するのは、そもそも極めて困難だ。しかしNASAのCuriosityチームはそれを成し遂げている。

NASAは米国時間4月15日、数百人が参加する重要かつ現在進行系のミッションを直接会わずに管理しなければならないという前例のない状況に、チームがどのように適応してきたかについて投稿した。

「通常、我々は全員が1つの部屋で画面や画像、データを共有する」と、チームリーダーのAlicia Allbaugh(アリシア・オールボー)氏は語る。「今では別々の部屋にいるだけでなく、スケジュールやコンピュータのセットアップも異なる。「私は15ほどのチャットチャンネルを常時監視している。通常よりも複雑な状況だ」。

もちろんビデオ通話も利用され、ときには数ストリームが同時進行する。一方、これまで高性能ワークステーションで行われていた処理は、現在はラップトップとウェブサービスで処理される。複雑さが増したことでプロセスの効率は低下しているが結果は出ている。

3月中旬には、カリフォルニア州パサデナにあるジェット推進研究所(JPL)のオフィスは空となり、別の場所での作業は中断していた。しかし、Curiosityはまだ稼働している。探査者は岩まで走り、サンプルを採取し、チームに確認のメールを送った。そして今も作業は続いている。

「火星は我々を待っておらず、また我々も探査を続ける」とオールボー氏は語る。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

日本の宇宙系スタートアップのシンスペクティブ製造の衛星をRocket Labが軌道に運ぶ

資金的に余裕のある日本の宇宙系スタートアップのSynspective(シンスペクティブ)は、最初の地球観測衛星を軌道に乗せるため、打ち上げプロバイダーであるRocket Labに声をかけた。そして実際に2020年後半に打ち上げられることになった。その際は、同社の衛星StriX–αが唯一のペイロードとなる。

画像クレジット:Synspective

Synspectiveは2018年に創立され、2019年半ばまでに約1億ドル(約107億円)を調達した。これは最近の日本において、最も成功した資金調達例の1つとなった。とはいえ、地球全体を常に撮影し続ける25の衛星からなるコンステレーションを運用するという野望を実現するには、そのすべてを注ぎ込んでもまだ足りないだろう。

この25という数は、地球全体をカバーするために数百、あるいは数千もの衛星を必要とするPlanetやSpaceXと比べて少ないと思われるかもしれない。それというのもSynspectiveの衛星は、視覚的な観測やインターネットアクセスを提供するものではないからだ。その代わりに、合成開口レーダー(SAR)と呼ばれるものを使用して、地球の表面を画像化する。

この高度な技術は、衛星の動きを利用して大きなアンテナを使用したのと同じ効果を得る。雲がかかっていたり障害物があったりしても、非常に詳細な像を生成することができる。また、光学式のカメラや地上の衛星アンテナに向けてデータを送信する無線アンテナよりも、ずっと広い領域をカバーできる。

Synspectiveの衛星は、1個の重量が100kgほどで、従来のSARシステムのものよりも小さい。そのため、Rocket LabのElectronのような小型のロケットを使って宇宙まで運ぶことができる。

打ち上げの日程はまだ確定していないが、Synspectiveが単独の顧客となるので、打ち上げ時刻や目標軌道の設定の自由度は大きい。「ロケットベンチャーのパイオニアであるRocket Labと一緒に仕事ができることを非常にうれしく思います」と、Synspectiveの創立者でCEOの新井元行氏はプレスリリースで述べている。「また衛星の軌道と打ち上げ時間帯に関して、私たちのリクエストに応えてくれる柔軟性にも感謝しています」。

現在わかっていることは、この計画が「2020年後半」に予定されているということと、米国内に新設された打ち上げ施設ではなく、ニュージーランドにあるRocket LabのLaunch Complex 1から打ち上げられるということだけだ。打ち上げが間近に迫れば、さらに詳しいことがわかるだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

民間初の月面貨物輸送を行うIntuitive Machinesがその着地点と打ち上げ日を決定

民間企業として初めて、NASAに代わって月への科学機器輸送を担当するIntuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)が、着地点とミッションの目標日付を決定した。同社の月面着陸機、Nova-C(ノヴァC)は、Vallis Schröteri(シュレーター谷)と呼ばれる月面最大の谷への着地を目指している。そこは比較的平坦で十分な太陽光が当たり、着地を妨げる大きなクレーターや岩石はない。

Intuitive Machinesは2021年10月21日の打ち上げを目指しており、不可能だった場合のための予備日も決められている。同社はSpaceXと契約し、Nova-CをFalcon 9(ファルコン9)ロケットでNASAのフロリダ州ケネディ宇宙センターから発射する。このミッションではNASAの科学実験機器(有人月面探査を目指すアルテミス計画準備のための情報収集に使用される)だけでなく、商業貨物もいくつか運搬する。

Intuitive Machinsが本ミッションを与えられた商業月面輸送サービス(CLPS)プログラムの主目的は、NASAがアルテミス計画のための準備を行ったり資材を運ぶパートナーを民間企業の中から探すことにあり、そのパートナーがミッションの費用を負担してくれる他の民間組織を集めてくれることにも期待している。現在NASAは、Jim Breidenstine(ジム・ブライデンスタイン)長官の下、公民連携を積極的に推進する方針を打ち立てており、宇宙の商業化を通じて費用対効果を追求している。

Nova-Cに積載される主要貨物の1つは、高精度自動着陸システムで、着陸機が月面の障害物を回避するために設計されている。これは2024年(NASAのアルテミス計画が延期されなければ)に人間が再び月面に降りるときにも利用される極めて重要なシステムだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

空中水平発射のVirgin VOX Spaceが米宇宙軍の契約獲得、最終テストへ

Virginグループの政府機関向け宇宙企業、VOX Spaceは米国が新設した宇宙軍から契約を得るという重要な成果を挙げたと発表した。米国時間4月10日の発表によれば、同社は実際の打ち上げを向けて最終テストに進むという。

米宇宙軍との契約は総額3500万ドル(約38億円)で3回の衛星打ち上げのためのものだ。 プログラムS28と呼ばれる米国防省の低軌道を周回するテクノロジー実証衛星のための打ち上げを行う。衛星総数は36基が予定されており、「宇宙における識別と通信の進歩を図り、宇宙軍の将来の発展の基礎を構築する」ものとなるという。

米宇宙軍および英国政府イスラエル政府向けの同種の打ち上げはスケジュールとして必ずしも差し迫ったものではない。VOXはまだテスト段階にあり、衛星打ち上げは2021年となる予定だ(詳細についてさらに取材中なので新たな情報が得られればアップデートしたい)。

Virginグループの宇宙企業、VOX SpaceVirgin Orbitは、他の衛星企業とは異なり、ロケットをボーイング747に吊り下げて上空に運ぶ。この発射方式はまだ実証されていないが、地上施設としては発射台を必要とせず747が離陸できる滑走路さえあればよい。打ち上げスケジュールの柔軟性、迅速性に優れている有望なテクノロジーだ。

長年にわたる開発とテストの後、Cosmic Girl(発射母機)とLauncherOne(ロケット)はほぼすべての準備を完了させた。

Voxは極低温搭載吊り下げ飛行という最後のリハーサルを計画している。 この飛行ではロケットのタンクに極低温の液体酸素が搭載されるなどほぼすべてが実際の打ち上げ時と同様となる。エンジンに点火し実際に衛星を打ち上げるテストは2020年後半に予定されている。

もちろん世界的な新型コロナウイルス(COVID-19)の流行は、Vox Spaceにも影響を与えている。同社は、次のテストの準備が完了したことを発表するブログ記事でこの点についても説明している。

他のビジネス同様、Vox Spaceの計画も大幅に混乱させられており、スケジュールには未定部分が多くなっている。しかしVOXの最終テストと最初の商用打ち上げの具体的なスケジュールも近く発表されるはずだ。

画像クレジット:Virgin Orbit

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASAは月面ロボット探査車隊に搭載する超小型科学装置のアイデアを募集

NASAのジェット推進研究所(JPL)は、アルテミス計画やその他の月面ミッションで使用する超小型月面探査車に搭載できる科学装置のアイデアの一般公募を開始した。このアイデアチャレンジは、クラウドソーシング・プラットフォームであるHeroX(ヒーローエックス)にて「Honey, I Shrunk the NASA Payload」(ねえ、NASAのペイロードを縮めちゃったよ)と、31年前の映画「ミクロキッズ」(原題「Honey, I Shrunk the Kids」)のタイトルを現代風にもじった見出しで公開されている。求めているのは、最大で100×100×50mm、または「新しい石けんぐらいの大きさ」の装置だ。

なぜこんなに小さくする必要があるのか?NASAは、かつて大型ロケットと大型オービターと大型着陸船でのみ実現できた科学調査を以前では不可能だった短い周期で、ずっと低コストで行いたいと考えているのだ。人類の月着陸とその後の居住までの長い道のりを整備し、補給ミッションの費用を賄うために「月の資源を利用する実用的で経済的な方法」が必要になるとNASAは話している。地球の周回軌道を回る国際宇宙ステーションへの輸送ですら、すでに高額な経費が掛かっているが、はるか遠いまでとなるとそれは天文学的な数字に膨らんでしまう。

目標は、超小型探査車を早急に運用可能にして、1年から4年以内に月に送り込むことだ。JPLは、国際的コミュニティーの専門知識や経験を借りて、既存の材料と技術でどこまで可能かを探りたいと考えている。今回のアイデアチャレンジは、あくまでコンセプト段階のデザインを募集するものだが(賞金として準備されているのは16万ドル=約1700万円)、長期的にはそれを出発点として実際の技術的パイプラインを構築し、月面探査車にその技術を採り入れ、月に送り込む計画だ。

チャレンジには簡単に参加できる。応募した内容の権利、つまり知的所有権はすべて応募本人に帰属する。ただし、最終選考まで残った際には、アメリカ政府が適切と判断したいかなる目的にもそのアイデアを使えるよう許諾する事実上永久的なロイヤリティーフリーのライセンス契約を、新たに米政府と結ぶことが条件となっている。

もし、宇宙のルンバに搭載できるミニサイズの環境センサーとデータ収集装置のアイデアをお持ちなら、このJPLのアルバイトを除いて、NASAの深宇宙探査計画に貢献できる道はない。もし、そのアイデアが本当に優れている場合だが。

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(翻訳:金井哲夫)

長期間の隔離を終え次期クルーが国際宇宙ステーションに到着

在宅勤務は楽な人もいれば難しい人もいるが、まったく不可能なのが国際宇宙ステーションだ。パンデミックがあろうとなかろうと、次のクルーはそこへ行くしかない。最新ミッションの宇宙飛行士たちは無事に打上げに成功して到着した、ただし、長期の隔離期間の後に。

念のために言うと、ISS乗組員はどのミッションでも、インフルエンザを持ち込むことがないように隔離されている。しかし、新型コロナ流行の中、いまは特別な状況だ。隔離は3月から始まり、乗組員の家族でさえ一緒に過ごすことはできなかった。打上げ時には必要最小限の関係者のみ立ち会いが許された。

私はNASA(米航空宇宙局)に、今回および将来のミッションについて、新型コロナに関連する特別な措置の詳細を尋ねている。

今回のミッション、Expedition 63は現行クルーと約一週間同時に滞在した後に交代する。その間のISSがかなり混雑することは間違いない。

本クルーには通常任務以外に、最初の商用有人飛行ミッションでやってくる宇宙飛行士たちを出迎えるという特別なしごとがある。彼らはSpaceX(スペースエックス)のCrew Dragon(クルードラゴン)カプセルに乗り、Falcon 9(ファルコンナイン)ロケットに打ち上げられてやってくる。このミッションもパンデミックの中、5月打上げに向けて計画通り進んでいる。

関連記事:
NASA still tracking towards mid-to-late May SpaceX crew launch despite parachute mishap

ここ数年のミッションでは常に、ロシアの由緒あるソユーズ宇宙船が使われていた。ソユーズは何十年にもわたって改修され続けてきたが、「繰り返し飛行した実績」のあるテクノロジーであること以上のものはほとんどない。

有人ミッションのために最先端技術の宇宙船を作る取組みは何年も続いたあと、SpaceXとライバルのBoeing(ボーイング)がゴールに向かってホームストレッチを走っている。両社とも再度の遅延に悩まされてきたが、Boeingはほかにもいくつかのトラブルを抱え、打上げ時期は年末かそれ以降になりそうだ。一方のSpaceXは準備完了だ。

この商用有人ミッションは、来月であれ少々遅れるにせよ、何年にもわたる競争の集大成であり、アメリカ製宇宙船で宇宙飛行士が軌道に行くのはスペースシャトル引退以来初めてのことだ(民間宇宙旅行会社のVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は自社の宇宙船を宇宙の端まで飛ばしたが、この有人宇宙船は軌道周回機ではない)。

すべてがうまくいけば、NASAのChris Cassidy(クリス・カシディー)氏、Rscosmos(ロスコスモス)のAnatoly Ivanishin(アナトリー・イワニシン)氏とIvan Vagner(イワン・ワグナー)氏の各宇宙飛行士は、近々ISSで歴史的ミッションを出迎えることになる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAが月での採鉱や太陽レンズなど奇抜な研究開発に7億円超の助成金

NASAのInnovative Advanced Concepts(NIAC、革新的で高度なコンセプト)事業は、宇宙探検と観測のための、リスクとそれから得られるリターンがてつもなく大きいユニークなアイデアを求めている。今年の助成金は総額700万ドル(約7億6000万円)で、中にはとても現実的なプロジェクトもある。実際に作れそうなほどの!

そのための助成金はフェーズ1、2、そして3の3段階があり、フェーズ1は助成金の額が12万5000ドル(約]1360万円)、そのコンセプトがデタラメでないことを9か月かけて証明しなければならない。2のフェーズは50万ドル(約5440万円)もらって2年間で概念実証を示す。そして最後のフェーズ3は、200万ドル(2億1760万円)でコンセプトを本物のプロジェクトとして開発する。

その長い歴史の中でも、フェーズ3の助成金をもらったコンセプトがこれまで2つしかなかったことは、NIACの心の広さを物語っている。そのほかのフェーズ3申請コンセプトはどれも、実現性がない、あるいは理論的におかしいとして却下された。今年は3つ目の助成金の合格例で、NASAのJet Propulsion Laboratory(ジェット推進研究所)のプロジェクトであり、2018年に選ばれたときにTechCrunchでも取り上げた

関連記事:From fungal architecture to shape-shifting robo-swarms, here are NASA’s latest moonshots(キノコで家を作ったり形を変えるロボットの大群などNASAの最新珍アイデア集、未訳)

アーティストが模擬的に描いた結果の画像の姿

その「Solar Gravitational Lens」(太陽重力レンズ)プロジェクトは、遠方の外惑星から来る光が、太陽の近くで曲がることをレンズに利用する。チームが2年かけて理論化に努めたその結果は、ものすごく遠方の暗いオブジェクトの高精度の画像を作る。それにより、我々が住む銀河系の隣にある銀河系の惑星を、わずか1画素か2画素の画像で示すのではなくて、100万画素の素晴らしい高精細画像で示せるのだ。

研究者は「このミッションは、居住可能性のある外惑星を詳細に見る唯一の方法なので、すでに一般からの大きな関心と熱気が集まっている。それが、必要な資金を政府や民間が出す動機になるだろう」と書いている

フェーズ2のプロジェクトにも、面白いものがある。例えば、月の恒久的に暗い部分にある氷土を恒久的に明るい部分の高さ数百mの塔で作った電力で採鉱する。あるいは土星の水のある衛星エンケラドスに穴を探すコンセプトカー。そして2018年に見たのは、宇宙服の重い生命維持装置を友達ロボットに移して宇宙飛行士に常時同行させる。

フェーズ1のプロジェクトはかなり多様でバラツキがあり、反物質推進や太陽風航行の最大化などは、まだ科学とは呼べない非現実的なアイデアのようだった。

NIACが助成する事業の完全なリストは公開されている。突飛なアイデアでも、読み物としては面白い。どれも一応、本物のエキスパートの作品なのだ。

画像クレジット: NASA

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAが2022年の月への貨物輸送にMasten Space Systemを指名、同社の月着陸船XL-1と連携

NASAは月面探査プロジェクトのパートナーとして、Commercial Lunar Payload Services(商用月輸送サービス、CLPS)参加企業の中から、カリフォルニア州モハベを拠点とするMasten Space System(マステン・スペース・システム)を指名した。同社はNASAの依頼を受けて、科学以外および技術機器など8つの積載物を2022年に月の南極に運ぶ。

Mastenは、CLPSプログラムの下で月輸送契約を結んだ4番目の会社であり、NASAは2019年5月に、Astrobotic(アストロボティック)、Intuitive Machines(インテュイティブ・マシンズ)、Orbit Beyond(オービット・ビヨンド)の3企業が月への積載物輸送を担当すると発表した。その後Orbit Beyondは契約を取り下げたが、AstroboticとIntuitive Machinesは今も、各社が製作した着陸船を使って来年それぞれの貨物を運ぶことを目標にしている。

今回のMastenとの契約は、CLPSプログラムの他の企業と同じく、月面に再び人間を送り込むNASAのプログラムであるアルテミス計画の一環だ。同プログラムでは恒久的な科学調査基地を設置し、究極的にはそれを火星やその先へと人間を送り込む足場として利用する。NASAはCLPSプログラムを通じて行っているような官民提携によって、月や火星のミッションを可能にするとともに、旅客輸送への商業的関心を引くことに焦点を合わせている。

Mastenの契約金額は7590万ドル(約82億7264万円)で、そこには積載物運搬作業すべてと、同社の月着陸船であるXL-1との連携が含まれている。月に着陸した後も最低12日間作業を続ける必要がある。XL-1が運ぶ貨物の中には、月面温度や放射能の測定とマッピング、水素その他水の存在を示す気体を検知するための機器がある。

Mastenが開発したXL-1は、その革命的デザインで2009年にNASAの100周年記念ノースロップ・グラマン月着陸船 Xプライズ・チャレンジに参加して優勝した。さらにMastenは、何種類もの垂直離着陸(VTVL)ロケットをNASAに代わって開発・飛行させており、テスト機のXaeroもその一つだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Rocket Labが使い捨てElectronロケットのヘリでの空中キャッチに成功

Rocket Labは使い捨て用に設計されたたロケットを降下中に回収する方法を開発している。米国時間4月7日、同社は空中捕捉プロセスのカギとなる部分を実証するためのテストに成功したと発表した。予告なしに公開された動画にはヘリコプターがElectronロケットを空中でキャッチするところが撮影されている。

ロケットは打ち上げ後、大気圏外で衛星を搭載したキックステージ段を切り離し、大気圏に再突入する。回収プロセスのカギはElectronの1段目に誘導システムを搭載して操縦する点にある。これによって再突入角を調整し、1段目が大気との摩擦で損傷することを防ぐ。その後、1段目はパラシュートを展開して降下する。ヘリコプターが降下するロケットを空中でキャッチし、機体から吊り下げてRocket Labの発射基地に戻る。

今回公開されたRocket Lab空中キャッチのテストは、新型コロナウイルス(COVID-19)の流行にともなう社会的隔離の実行が要請される前の3月に実施されたものだ。同社はElectronの1段目と形状、重量が同等のダミーを使い、ニュージーランド沖の洋上でヘリコプターから落下させた。1段目がパラシュートを展開すると2機目のヘリコプターが落下地点に急行し、高度約1500メートルでダミーをキャッチした。

Rocket Labは再突入部分の回収システムのテスト2019年12月に開始していた。打ち上げテストを2019年12月と2020年1月に行っている。どちらの打ち上げでもロケットには誘導とナビゲーションのシステムが搭載され、データが収集された。2度目の打ち上げではロケットには、大気圏への再突入角度を調整して降下速度を遅くするシステムも搭載されていた。

重要なプロセスが意図した通りに機能することが証明されたため、実際に第1段を回収するという次のステップに進むことになったわけだ。Rocket Labではさらに次のステップとして第1段を実際に操縦し、パラシュートを展開させるテストを2020年後半に予定している。ただしこのテストでは空中キャッチは行われない。Rocket Labでは1段目を着水させた後、洋上で回収する計画だ。ロケットは地上施設に戻され、再利用可能な状態に整備される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Relativity Spaceは3Dプリントとクラウドベースのソフトウェアで新型コロナの嵐をやり過ごす

他のどの業界とも同様に宇宙関連の若いスタートアップや企業でも、新型コロナウイルス危機の煽りを受けてレイオフが相次いでいる。しかし、Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、なんとかレイオフを回避できた。それどころか、世界的パンデミックにも負けず、新規に従業員を雇用している。RelativityのCEOで創設者のTim Ellis(ティム・エリス)氏は、大型3Dプリントと、クラウドベースのツールとテクノロジーの導入にフォーカスしたことが、会社を苦境に追い込まなかった大きな要因だと話している。

Relativityが間もなく完成させるロケットは、エンジンから胴体、さらにはその中間にあるものまで、ほとんどが3Dプリント部品で構成されるため、基本的にほぼ途切れることなくプロトタイプの製造を進めることができた。Relativityは、航空宇宙と防衛に携わる企業の例に漏れず、必要不可欠な事業と認知されているのだが、相当早い時期から新型コロナウイルスの潜在的な危険性に対処し、従業員の健康と安全を確保すべく手を打ってきたとエリス氏は言う。米国でこの病気が問題視され始めた3月9日、公式な規制や自宅待機の要請が出される以前に、Relativityでは早くも従業員に自宅勤務を勧めていた。

「それができたのは、一部には私たちの自動プリント技術のおかげです。工場にはごくごくわずかな人間しかいませんが、それでもプリンターを動かし続けることができます」とエリス氏はインタビューで話してくれた。「現に今はたった1人で数台のプリンターを見ていますが、実際にプリントが行われています。文字通りワンマン運転です。その一方、この2週間ほどの間に、会社の業務の大半を自宅で処理できるようにしました」。

たった1人の現場担当者で工場全体を管理できる能力は、現在の状況において、競争上、非常に大きな強みであり、同時に従業員の健康と安全を大切に守る方策でもある。エリス氏によると、同社はすでに複数の地域で業務を行っているという。ケープ・カナベラルとフロリダに加えて、ミシシッピ州のジョン・C・ステニス宇宙センターとロサンゼルス本社だ。Relativityではまた、米国内の離れた場所からも数名の従業員がテレワークしている。同社は早くから、全員が一箇所に集まらなくてもデザインや開発が行えるように体制を整えていたのだ。

「私たちはワークフローを円滑にするために、独自のソフトウェアツールを開発しました。それが大変に優れています」とエリス氏。「しかも、ITAR(国際武器取引規制)と複数の暗号プロトコルに準拠しつつクラウドに深く対応した企業ということだけでも、本当に有利なのです」。

自社開発のソフトウェアとクラウドベースのツールに集中したことに加え、エリス氏は、一番新しい資金調達ラウンド 、 2019年10月にクローズした1億4000万ドル(約152億円) のタイミングも、新型コロナウイルス危機への備えに貢献したと考えている。Relativityはレイオフを回避し、新たな求人も開始しただけではない。パートタイムも含め、全従業員に給与を全額支給し続けている。これはすべて、今思えば先を見通したビジネスモデルのおかげなのだが、現在の国際的ビジネス状況におけるこの目覚ましい優位性は、実際のところ単に幸運の賜物だとエリス氏は言う。それでもこれまでのRelativityの回復力は、一部には新型コロナウイルスのパンデミックに起因する大きな永続的変化の現れだと彼は信じている。

「それによって本当に変わるもの【中略】は、国際的なサプライチェーンへのアプローチです」と彼は言う。「もっと多くのものを米国内で生産して、サプライチェーンの過度なグローバル化への依存を減らそうという圧力が高まると思います。私たちがずっと3Dプリンターを使ってきたのは、そのためでもあります。それは、ごくわずかな作業員で、今のような状況下でもロケットの第1段が作れてしまう自動化のテクノロジーというだけではありません。サプライチェーンに関して言えば、限られた数の供給業者と、いくつもの製造方法からなる簡素なサプライチェーンを持つことで、供給業者やサプライチェーンの停止による大打撃を大幅に減らせるのです」。

新型コロナウイルス危機が、2021年に最初の3Dプリントロケットを飛ばすという予定を含めた打ち上げスケジュール全体に、どこまで影響を与えるかはまるで予測できないが、テレワークと社会的隔離指示に難なく添える製造ラインで多くの業務がこなせるとエリス氏は期待している。ジョン・C・ステニス宇宙センターのエンジン試験場といった提携施設が閉鎖されれば、確かに打撃にはなる。だがRelativityの回復力は、この危機的状況が去ったあかつきには、あらゆる種類の製造業の模範となるだろう。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXの初期型Dragonカプセルが最後となる20回目のミッションを完了

SpaceX(スペースX)は2012年にNASAに代わって貨物輸送ミッションを開始し、それ以来国際宇宙ステーション(ISS)への補給を続けてきた。そして現在、最初のミッションから使用されているバージョンのDragonカプセルが、米国時間4月7日の火曜日午後に予定どおりISSから帰還して大西洋に着水、引退した。

これはCRS-20こと、スペースXによるNASAのための20回目となる商用補給ミッションが完了したことを意味する。Dragonは3月7日にケープ・カナベラルから打ち上げられた後、3月9日からISSにドッキングしていた。またこれは、ISSの宇宙飛行士が操作するロボットアームの補助によりDragonがドッキングした最後の機会となった。Crew Dragonを含む新しいDragonでは、ISSへのドッキングに自動プロセスが採用される。

今回使用されたDragonは帰還に先立ち、地上の研究者が調査するための実験材料や結果を積み込んでいた。このカプセルは以前にもCRS-10とCRS-16の2回のISSへの飛行ミッションを経験しており、今回の引退飛行は補給船にとってハットトリックとなっている。

スペースXの次のミッションは5月中旬から下旬に予定されている、初となる乗員を乗せたDragonによるISSへの飛行となるDemo-2だ。もちろん貨物輸送ミッションも継続され、次回は2020年10月に暫定的に予定されている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Swarmが米国での衛星インターネットサービスに関する承認をすべて取得

2018年に衛星スタートアップのSwarm(スワーム)がFCC(米国連邦通信委員会)の規則に違反して複数の衛星を打ち上げていたことが判明したが、異例の形でステルスモードから抜け出した。規制当局は当時、同社の衛星はほとんどのCubeSat(超小型衛星)よりも小さく、また既存の技術では確実に追跡できないサイズだと主張していた。2年後となる2020年、Swarmは米国で商業サービスを開始するために必要な規制のハードルを、すべてクリアしたと発表している。

2019年にSwarmは、当初のコンステレーションで計画していた150機の衛星と最大600機の衛星を打ち上げる許可をFCCから認証され、衛星から地球へのデータ送信に必要な無線周波数帯を使用する許可を得ていた。さらに同社は英国やニュージーランド、ドイツ、スウェーデン、南極大陸、国際水域での事業を行うための規制当局の承認を追加して得ている。また米国や英国、南極大陸、ニュージーランド、およびアゾレス諸島では地上局の設置許可を得ており、2020年中にはさらに多くの設置許可を得る予定で、すべてが計画どおりに進んだ場合、夏の終わりまでに地上局のネットワーク全体が30拠点に到達する予定だ。

Swarmの最終的な目標は、海上や地上の物流の追跡、農業などのIoTアプリケーションや、地上のインフラが不十分な地域での基本的な通信サービスに適した手頃な価格の衛星インターネットネットワークを世界的で提供することだ。現在、すでに軌道上にある9基の衛星を使ってサービスが開始できる段階にあり、さらに多くの国での運用をカバーするために、規制当局の認可を拡大している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

ホワイトハウスが新たな「国際月協定」推進を示唆

国際社会は宇宙や月の資源を収集、利用することに関する規則の制定で何十年も苦闘を続けている。米国をはじめとする宇宙開発国はすべて、最もよく知られた試みである1979年の「月協定」を却下したが、月探査の新たな競争によって、ホワイトハウスは新しい国際協定を受け入れる意志があることを発表するにいたった。

米国時間4月6日に発行された大統領命令でトランプ政権は 、これを「宇宙資源の国および民間による回収と利用の国際的支援の促進」を進める政策であることを示唆した。

命令は何かを強制するものではなく単なる政策の表明なので、第一歩にすぎない。しかしこれは、米国が宇宙資源の利用に関する新たな枠組みづくりを進める意思を示すものだ。

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ひとたび地球を離れた後、どの法律(財産法、国境協定など)が適用されるかは複雑な問題だ。そうでなくても、この件に関して数多くの法律や規則が、大きく異る宇宙時代とさまざまな形態の冷戦の中で検討、想像されてきた。現在の宇宙ビジネスのブームや、月あるいは小惑星などの近地球天体の差し迫る植民地化を考えると、新たな規則が必要であることは明らかだ。

現状はといえば、月で収集された物、月に持ち込んだ物、他の国と分けあった物などに関する正式な法的見解はないも同然だ。いったい地球のどの機関が論争を仲裁するのか? 商業採掘によって月面の表土が軌道に吹き飛ばされ月の外見が損なわれることをどうやって防ぐのか?

通信衛星が空を埋め尽くすことを巡る規則がないために世界中で怒号が飛び交っているのと同じように、何か手を打つ必要があることは明らかだ。しかし、ルールの範囲さえ問題なる。月における財産権のようなものを検討する必要はあるのか? 問題の複雑さを踏まえると、その規則が目的としている紛争の解決に間に合うのか? 必要ないというならそれはなぜか? だったらいつ考えるのか?

想像できるように、米国が始めようとしていることは恐ろしく複雑な解決困難な問題であるが、遅かれ早かれやらなくてはならない。

そのために、米国は「宇宙資源の国および民間による回収および利用の安全で継続可能な運用に関して、諸外国との共同声明と二国間、多国間の合意を目標に努力」すると、大統領命令に記している。

高官レベルの話し合いがすでに進んでいることは間違いない。さもなければ、宇宙規制への新たなアプローチ指示を公に宣言するという手段を政権が選ぶはずはない。宇宙の商業利用を計画している各国が参加することは間違いないだろう。だがそれは、交渉が単純で簡単であるという意味ではない。

画像クレジット:NASA

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スペースXの最新Starship試作機が圧力テストに失敗

まったく新しい宇宙船を設計、テストし建造するプロセスは確かに困難で、いくつかの問題に直面するに違いないものだ。SpaceX(スペースX)が建造する、完全に再使用可能な巨大宇宙船であるStarshipも例外ではない。「SN3」と名付けられた最新のStarshipのプロトタイプは、試験飛行中に宇宙船が体験する圧力をシミュレートするための極低温実証試験の最中に、致命的な失敗を起こしてしまった。

SpaceXの最初のプロトタイプであるMk1も、燃料タンクの圧力試験中に破壊され、次のフルスケールのプロトタイプであるSN1も、2月下旬の圧力試験中に破壊された。もう1つのプロトタイプであるSN2は、極低温試験のために簡素化され極低温試験を通過したが、次のフルスケールのプロトタイプであるSN3は、テキサス州ボカチカにあるSpaceXの発射台での極低温試験中に再び失敗した。

NASAspaceflightのMary(@BocaChicaGal)によるYouTube動画では、極低温圧力テストの最中にSN3型の機体が崩れる瞬間を確認できるが、このプロトタイプを作り直して再利用することはおそらくないだろう。当初の計画では、SN4を高高度飛行用のプロトタイプにすることになっていたが、今回の試験結果を考えるとその可能性は低い。

スペースXの創設者かつCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、SN3の失敗は宇宙船自体の問題ではなく「テスト設定のミスだった可能性がある」とTwitterで語った。マスク氏は、午前中に一度だけデータレビューを受けると述べている。

これは確かに後退ではあるが、宇宙船開発では珍しいものではない。スペースXはこれまでの開発プログラムで成功を収めており、その中にはStarshipや最終的にはSuper Heavyブースターの推進力に使用されるRaptorエンジンの基本性能を証明した「Starhopper」のサブスケールプロトタイプのテストも含まれている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAのレトロなワームロゴが初の有人ミッション用Falcon 9に入る

NASAとSpaceX(スペースX)は、宇宙飛行士を米国の民間ロケットで初めて宇宙へ運ぶため、Crew Dragon宇宙船によるDemo-2の打ち上げにむけ注力している。そしてCrew Dragonを宇宙へと打ち上げるFalcon 9ロケットには、1992年から退役していたNASAのロゴが入った。

1970年代に誕生した「ワーム」ロゴは20年以上もの間、NASAの記念品でしか確認することができなかった。キャップやトレーナー、ステッカー、その他のグッズで見たことがあるかもしれないが、NASAの宇宙船が退役してからは、打ち上げミッションには使用されていない。NASAが現在使用している「ミートボール」ロゴは、実はワームよりも前の1950年代後半にデザインされたものだが、ワームのほうがレトロな感じがする。

このワームロゴは、現在5月上旬から中旬に打ち上げが予定されている、NASAのDoug Hurley(ダグ・ハーレー)飛行士とBob Behnken(ボブ・ベンケン)飛行士を宇宙空間の国際宇宙ステーション(ISS)へと運ぶSpaceXのDemo-2ミッションで、再び大々的に使用される。これは、宇宙飛行士の輸送ミッションでCrew Dragonを定期的に運航するための認定の最後のステップだ。

NASAはフロリダでミッションを準備中しているFalcon 9ロケットの側面に描かれた、赤いワームロゴの画像を共有し、さらに公式ミッションでロゴが使用されるのはこれが最後にはならないだろうと述べている。ただし、ミートボールロゴのファンも心配する必要はない。NASAによると、たとえワームロゴが復活したとしても、ミートボールロゴはまだその主要なシンボルだとしている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Virgin Orbitが大分空港にアジア初のスペースポートを整備へ

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)は現在、新型コロナウイルス(COVID-19)と対峙する医療従事者をサポートするために人工呼吸器の製造に注力しているが、それとは別に小型衛星の打ち上げ事業を支えるインフラの構築にも取り組んでいる。そして同社は新たに大分県と提携し、水平発射ロケットの母機を離着陸させるためのスペースポートを整備すると発表した。

同社はANAホールディングスとスペースポートジャパンの協力を得て、アジア初となる発射場として大分空港を想定しており、早ければ2022年には同空港からのミッションを開始する予定だという。

大分空港での計画が実現するまでには、地元自治体との連携による技術調査や候補地の利用に関する可能性を判断するための調査など、いくつかのステップを踏まなければならない。大分にはすでに東芝や新日鉄、キヤノン、ソニー、ダイハツなど多くの企業の施設があるが、宇宙産業への進出は初めてで同県は今後も同分野へと注力したいとしている。

「日本で初めてとなる水平離着陸型のスペースポートの整備に期待している。そして、小型衛星を使って地球規模の問題を解決している勇敢なテクノロジー企業と協力できることを、光栄に思う」と、大分県の広瀬知事はプレスリリースで述べている。「ヴァージン・オービットとのコラボレーションを皮切りに、大分県での宇宙産業の集積を促進していきたいと考えている」。

同社は今年中に軌道への小型衛星輸送の初の実証ミッションを準備しているが、その取り組みをさまざまな方法で世界中に拡大しようとしている。同社は、英国市場向けにコーンウォールのスペースポートからの打ち上げサービス計画を発表し、グアムでの拠点の設置も検討している。

同社が採用している水平打ち上げモデルは、従来の空港のインフラやプロセスを活用してずっと簡単に発射場を設置できることを意味し、これにより小型衛星の打ち上げサービスを検討している国に対して、基本的にはオンデマンドでの打ち上げ能力を提供できる。これは大きなセールスポイントであり、大分との提携によってアジア初の同社のスペースポートが開設されることは、日本にとっても大きな利益につながる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter