暗号通貨スタートアップのPhantomがマルチチェーンウォレット拡大のためa16zから資金調達

2021年、個人投資家がビットコインやイーサリアムなどの暗号資産(仮想通貨)を購入することに慣れてきた一方で、分散型アプリケーションの世界では、主流のユーザーベースを取り込むことに関してまだ多くの仕事が残っている。

Phantom(ファントム)は、暗号資産スタートアップの新しい層の1つだ。ブロックチェーンベースのアプリケーションを合理化するインフラを構築し、暗号通貨の世界をナビゲートするための、よりユーザーフレンドリーなUXを提供することを目指す。開発者ではなく、利用者にとって空間全体をより親しみやすいものにしようとしている。ユーザーは、Phantomウォレットをブラウザにダウンロードすると、アプリケーションとのやりとりやトークンの交換、NFTの収集などができる。

この暗号通貨ウォレットメーカーはシリーズAラウンドで900万ドル(約10億円)を調達した。ラウンドはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)がリードし、Variant Fund、Jump Capital、DeFi Alliance、Solana Foundation、Garry Tanも参加した。今年の夏の初めにクローズしたこのラウンドは、市場全体の不安定な状態が続いているにもかかわらず、暗号資産の未来を受け入れるベンチャーキャピタルが出てきたことを意味する。a16zは先月、22億ドル(約2420億円)の暗号通貨ファンドを発表した。これは業界に特化した同社の投資ビークルとして最大だ。

画像:Phantom提供

CEOのBrandon Millman(ブランドン・ミルマン)氏、CPOのChris Kalani(クリス・カラニ)氏、CTOのFrancesco Agosti(フランセスコ・アゴスティ)氏の共同創業チームは、いずれも暗号資産インフラのスタートアップである0xから移った。

Phantomは現在、Solanaコミュニティーで最もよく知られており、そのブロックチェーン上のアプリケーションとして最適なウォレットとなっている。ミルマン氏がTechCrunchに語ったところによると、同社はより広範なネットワークとのインターフェースに取り組んでおり、現在、イーサリアムとの互換性を構築している。また、他のブロックチェーンの準備もしており、「マルチチェーンの世界」のための製品を目指している。

Phantomは、他のネットワークへの対応を進めると同時に、より洗練されたDeFiメカニズムをウォレットに組み込み、ユーザーが暗号資産に賭けたり、ウォレット内でより多くのトークンを交換したりできるようにしたいと考えている。

Phantom社によると、既存のウォレット製品のユーザー数は約4万人とのことだ。

人気の高いイーサリアムのブロックチェーン上で存在感を示すのは難しいことだが、Phantomの最も大きな課題は、新しい種類の暗号資産に興味のあるユーザーが、主流になるにはまだ長い道のりを必要とするアプリのネットワークにアクセスできるようにすることだ。

「この分野全体が『開発者が他の開発者のために作ったもの』という状態に陥っています」とミルマン氏は話す。「ハードルの高さはそのまま放置されていました。より高いハードルを目指す人はいませんでした」。

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画像クレジット:Phantom

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

分散型金融投資を多くの人にわかりやすく提供するプラットフォームZerionが好調

暗号資産取引所は、一部のメジャーな暗号資産を個人投資家にとって親しみやすいものにしてくれたが、分散型金融(DeFi)がたくさん抱えている込み入った複雑性はその提供実体があまりにも多様なせいもあり、ベテランの投資家すらよくわかっていないことがある。

分散型金融の「インターフェイス」で暗号資産の投資家に提供するZerionが、最近の成長によりVCたちの関心を集めている。暗号資産の新たなゴールドラッシュの中、同社は2021年に行われたこれまでの取引量で約6億ドル(約660億円)を処理し、今や月間アクティブユーザーは20万を超えているとCEOのEvgeny Yurtaev(エフゲニー・ユルタエフ)氏はいう。

同社はまた、Mosaic VenturesがリードするシリーズAのラウンドで820万ドル(約9億円)を調達した。これに参加した投資家は、Placeholder、DCG、Lightspeed、そしてBlockchain.com Venturesなどとなる。Zerionによると、MosaicのToby Coppel(トビー・コッペル)氏とPlaceholderのBrad Burnham(ブラッド・バーナム)氏が同社の取締役会に加わった。

Zerionは同社のアプリを通じて顧客に、Ethereum(イーサリアム)のブロックチェーン上の5万件あまりのデジタル資産と60のプロトコルへのアクセスを提供し、それによってDeFiのUIを簡素化している。ユーザーはそのアプリから、CoinbaseやGeminiなどの取引所と同じ感覚でトークンにアクセスして投資するが、そこで使うのはMetaMaskのような自分のパーソナルなウォレットだ。そのため、ユーザーの資金と秘密鍵をZerionがコントロールしたりアクセスすることはない。長年、暗号資産の普及に努め、その作者でもあるユルタエフ氏が、最もこだわるのはその点だ。

画像クレジット:Zerion

ユルタエフ氏は「DeFiの世界は、トークンやプロトコルの種類が非常にたくさん存在します。理論的には、それらのナビゲートは容易なはずですが、現実はその全体が混乱しています。もっと、わかりやすいものにしていきたいと考えています」という。

イーサリアムとビットコインの価格の大きな成長により、DeFiの扱い額は2021年に急騰し、年初の200億ドル(約2兆1980億円)弱から5月には900億ドル(約9兆8900億円)近くになった。しかしDeFiの市場が全体としてはビットコイン並に不安定であることが立証され、マーケットの大きさは過去2カ月で35%ほど縮み、わずか570億ドル(約6兆2640億円)弱になった。

同社のiOSとAndroidアプリは、暗号資産の投資家たちにとって、マーケットと彼らが支持しているトークンの現状を追跡するための、特に人気の方法になっている。平均的ユーザーは、1日に9回以上アプリを開くと同社は述べている。

2021年の暗号資産の復調により、財貨そのものだけでなく、取引の便宜を提供するプラットフォームにも、投資の対象としての関心が集まった。2021年6月はVCのAndreessen Horowitz(a16z)が、分散型金融も含め、暗号資産分野のプロダクトを開発するスタートアップに投資するための、22億ドル(約2420億円)ほどのファンドを構築している。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Zerion暗号資産分散型金融(DeFi)

画像クレジット:Zerion

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

暗号資産のCircleがSPAC合併経由で上場へ、評価額は約4940億円

Circle(サークル)は公開企業となる計画を発表した。暗号資産会社である同社はSPAC(特別買収目的会社)のConcord Acquisition Corpと合併する。CircleはCoinbase(コインベース)のCentreコンソーシアム創設メンバーの1社として知られている。他の暗号資産パートナーとともに、Circleは人気のステーブルコインUSD Coin(USDC)を発行してきた。

SPACは上場している白紙小切手会社だ。SPACとの合併はテック企業にとって上場企業になるための人気の手法となった。

Circleによると、取引での同社の評価額は45億ドル(約4940億円)だ。合併に関与している投資家は4億1500万ドル(約456億円)の私募増資を約束した。同社はまた、このほど4億4000万ドル(約483億円)を調達した。つまり、Circleは合併完了時に多額の資金を手にする。

2013年創業のCircleはもともと、主流のビットコイン決済プラットフォームを作ろうと考えていた。しかし後にソーシャル決済アプリへと方針転換した。同社はブロックチェーンテクノロジーを持ち、一種のVenmoのクローンのようなものになった。そのうち、ビットコインを送ったり受け取ったりする能力を取り除きすらした。

「自社のことをビットコインのスタートアップだと考えたことはありません。そうしたテクノロジーに関与していたため、メディアは確かに当社をビットコイン会社だと分類しました。3年前に会社を興した日から、当社は新しい消費者金融会社を構築することに注力してきました。インターネットが機能するようにお金を動かす会社です」とCircleの共同創業者でCEOのJeremy Allaire(ジェレミー・アレール)氏は2016年にTechCrunchライターのNatasha Lomasに語った。

消費者向けのサービスはまだ展開されていないが、アレール氏がすでにプログラムによってお金を動かすことについて考えているのは興味深い。2017年と2018年にCircleは暗号資産に注力するために再び方針転換した。大手の暗号資産投資家のための店頭取引デスクを立ち上げた。

同社は、当時米国最大の暗号資産取引所の1つだったPoloniex(ポロエニックス)を買収した。また、わずかな暗号資産を売買できる実にシンプルなモバイルアプリCircle Investもリリースした。

しかしCircleの最も有望なプロダクトはステーブルコインであるUSD Coin(短縮するとUSDC)だった。名称からわかるように、1 USDCは常に1 USDの価値がある。従来の暗号資産と異なり、USDCの価値は狂ったようには変動しない。発行社が常に流通しているUSDCと同額を銀行口座に持っていることを監査法人が定期的にチェックしている。

USDCにより、1つのウォレットから他のウォレットへと金を動かすことは標準のAPIコールを使うほどに簡単になった。CircleはCircle Accountsなど、USDCに関するさまざまなインフラプロダクトを追加した。同社はまた、フィアット通貨と暗号資産の間のギャップを橋渡しするものも構築した。

現在250億USDCが流通していて、Circleは2023年末までに1900億USDCが流通すると予想する。そして同社はUSDCを有効利用する金融サービスを構築するのにUSDCの人気を活用するつもりだ。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Circle暗号資産SPAC

画像クレジット:Chaitanya Tvs / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

国内初IEOの「Palette Token」が開始から6分で調達目標金額9.3億円を突破、コインチェック「Coincheck IEO」発表

国内初IEOの「Palette Token」が購入申し込み開始から6分で調達目標金額9.3億円を突破、コインチェック「Coincheck IEO」発表

コインチェックは7月2日、日本初のIEO(Initial Exchange Offering)プラットフォーム「Coincheck IEO」において、7月1日より購入申し込みを開始した「Palette Token」(PLT)が、開始から6分間で申し込み金額の総額が調達目標金額9億3150万円を突破したと発表した。Palette Tokenは、HashPort子会社Hashpalette(ハッシュパレット)発行によるもの。申し込み金額の総額が調達目標金額を上回ったことから、抽選(申し込みの順番は関係ない)での販売となる。

Hashpalette代表取締役の吉田世博氏は、「Paletteは今回のIEOを起点に、日本発のグローバルなNFT特化ブロックチェーンとして成長しいく所存です」とコメントしている。

「Palette Token」(PLT)関連スケジュール

  • 7月1日 12:00:購入申し込み開始
  • 7月15日 18:00:購入申し込み終了
  • 7月20日 順次:抽選およびPalette Token受渡し
  • 7月27日 12:00:取引所においてPalette Tokenの取扱いを開始

IEOは、トークン発行によるコミュニティの形成・強化や資金調達を暗号資産交換業者(取引所)が支援するという仕組み。企業・プロジェクトなどの発行体がユーティリティ・トークンを電子的に発行することで資金調達を行う仕組み「ICO」(Initial Coin Offering)の中でも、暗号資産取引所が主体となって発行体のトークンの販売を行うモデルとなっている。

コインチェックのCoincheck IEOでは、企業やプロジェクトなどが発行したユーティリティ・トークンの審査・販売をコインチェックが行う。

HashpaletteのPalette(ホワイトペーパー)は、オープンソースの「Quorum」(GoQuorum。GitHub)を基盤とするコンソーシアム型プライベートチェーン。Quorumは、ブロックチェーン企業Consensys(コンセンシス)が手がけているもので、ブロックチェーンネットワークへのアクセス権限を管理可能なほか、許可を得た特定の企業によって運営できるようになっている。

Palette Token(PLT)は、Ethereum上で発行するERC-20規格準拠の暗号資産。クロスチェーン技術(他ブロックチェーンとの接続機能)を用いてPaletteチェーン上でも利用できるようにしているという。同社は、Paletteについてエンターテインメント領域に特化したNFTプラットフォームとしており、PLTは「コンセンサスノード運営報酬」「スマートコントラクトの発行手数料(GAS)」「NFT売買の決済」といった用途の支払いに使用できるユーティリティ性の高いトークンと位置付けている。なおNFTの発行には、EthereumのERC-721規格と同様の仕様として実装した「PRC721」規格を用いるという。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:IEO(用語)暗号資産 / 仮想通貨(用語)ERC-20(用語)Ethereum / イーサリアム(製品・サービス)NFT / 非代替性トークン / クリプトアート(用語)オープンソース / Open Source(用語)Quorumコインチェック(企業・サービス)Hashpaletteブロックチェーン(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

暗号資産投資家が自信を持って分散型金融の世界を航海できるようにする分析会社Nansenが約13.3億円調達

ここ数カ月、暗号投資家がその野心を市場よりも大きく膨らませている一方で、機関投資家は山のようなブロックチェーンデータを抱え、熟成された分析製品を使わずに、その意味を理解しようと躍起になっている。

ブロックチェーン分析のスタートアップ企業であるNansen(ナンセン)は、暗号トレーダーやヘッジファンドが、より自信を持って分散型金融の世界を航海できるようにするための製品を開発している。同社の製品は、約9000万個のイーサリアムウォレットにまたがるパブリックブロックチェーン情報を分析し、ユーザーに発展しつつある好機へ導く手がかりを提供する。

「Nansenの高品質なデータにより、投資家はスマートマネーがどこに移動しているのか、影響力のある投資家がどのポジションを取っているのかを追うことができます。また、投資する新しいプロジェクトを発見して、デューデリジェンスを行うことができます」と、NansenのCEOであるAlex Svanevik(アレックス・スヴァネヴィク)氏は、TechCrunchにメールで語っている。

このスタートアップは、Andreessen Horowitz(a16z、アンドリーセン・​ホロウィッツ)が主導する1200万ドル(約13億3000万円)のシリーズAラウンドをクローズしたばかりだ。a16zは最近、暗号資産市場を収奪するための22億ドル(約2430億円)もの巨大な暗号投資ファンドを発表している。今回の投資ラウンドには、Coinbase Ventures(コインベース・ベンチャーズ)、Skyfall Ventures(スカイフォール・ベンチャーズ)、imToken Ventures(イムトークン・ベンチャーズ)、Mechanism Capital(メカニズム・キャピタル)、QCP Capital(QCPキャピタル)などが参加した。

Nansenの主な製品は、暗号資産の特定の階層を中心に設計されたダッシュボードのネットワークだ。

非常にホットなDeFi(分散型金融)の分野以外にも、Nansenはラベル付けされたデータベースを活用して、イールドファーミング、リクイディティプール、DEXデータにおける投資機会を見出し、さらにはトレーダーが特にホットなNFTコレクションを探し出すのを支援する。人気のあるダッシュボードの1つである「Token God Mode(トークン・ゴッド・モード)」では、投資家が特定のERC20準拠トークンのブロックチェーンデータを利用し、取引所における長期的な動きや、個々のウォレットでの注目すべき取引を見ることができる。

画像クレジット:Nansen

暗号資産業界は主に個人投資家を増やすことを目指しているため、Nansenの価格設定には、幅広い層の顧客を取り込むための努力が反映されている。同社は、トレーダーがさまざまな市場指標のリアルタイム分析を利用できるように意図された月額116ドル(約12800円)のパッケージを販売している他、週1回の電話相談、専用チャットグループ、業種別説明会など、より細やかなサポートを受けることができる月額2500ドル(約27万6000円)のプランも用意している。

チームは高レベルのデータの一部を同社のサイトで公開しているが、より詳細な最新のデータは有料顧客のネットワークのために取ってある。Nansenの顧客には、Polychain(ポリチェーン)、Three Arrows(スリー・アローズ)、Pantera(パンテラ)、Defiance Capital(デファイアンス・キャピタル)などの暗号資産中心の投資ファンドが含まれている。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Nansen資金調達暗号資産投資

画像クレジット:Nansen

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

暗号資産取引所コインチェックが国内初IEOを7月1日から開始

日本の暗号資産業界の歴史に、新たなページが加わる。Coincheck(コインチェック)は、2021年7月1日に国内初のIEOプラットフォーム「Coincheck IEO」を開始。第1弾として、Hashpaletteの発行する「Palette Token(PLT)」の購入受付を同日より実施する。

NFT特化型のブロックチェーン「パレット」

そもそもIEOとは「Initial Exchange Offering」の略で、暗号資産取引所が事前にプロジェクトの審査を行った上で、投資家にトークン販売を行うというもの。2017年頃に話題となったICO(Initial Coin Offering)では、投資家がプロジェクトから直接スマートコントラクトを通じてトークンを購入するため、その危険性が度々が指摘されていた。一方でIEOの場合は、暗号資産取引所が設ける一定の審査基準をクリアしたプロジェクトのみが実施できるため、ICOと比較するとプロジェクトの「スクリーニング」がある程度行われているというメリットがある。

今回、国内初のIEOによる資金調達を実施する「Palette(パレット)」は、日本発のマンガやアニメ、スポーツ、音楽といったさまざまなコンテンツをNFTとしてデジタル化して売買できるようにするブロックチェーンだ。現在主流であるEthereumブロックチェーン上では、DeFiやNFTなど多種多様なdAppsが展開されているので「ガス代(手数料)」が乱高下しがちだ。しかしNFT特化型のPaletteであれば、比較的ガス代は安定しやすく、ユーザーにとって利便性が高くなるという。

このPalette上でのガス代を支払うために使われるのが、Palette Token(PLT)だ。ERC20準拠のPLTは、ガバナンストークンとしての側面も持ち、ホルダーはコンソーシアムメンバーにより分散的に運営されるPaletteの運営プロセスに関わることができる。

今回のIEOでは、Palette Tokenの総発行数10億枚のうち2億3000万枚をコインチェックを通じて投資家に販売する。販売価格は1PLTにつき4.05円で、1口1000PLT(4050円)から、最大2400口(972万円)まで申込可能だ。コインチェックによると、売出総額を超える申込みが行われた場合には、抽選により購入者を決定するという。申込期間は7月1日から同月15日で、上場日は7月27日。

Hashpaletteは、東証1部上場で計1000万MAUのマンガアプリ群を運営するLink-Uと、暗号資産交換業向けウォレットシステムなどを提供するHashPortの合弁会社として2020年に設立された。HashPort代表取締役の吉田世博氏は「日本が誇るコンテンツを世界に発信していくために、NFTは強力な武器になる。今回のIEOをきっかけに、NFT専用ブロックチェーンのPaletteをさらに発展させていきたい」と意気込みを語った。

HashPort代表取締役の吉田世博氏

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Coincheck暗号資産日本NFT

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暗号通貨のCircleが企業のDeFi貸付市場へのアクセスを支援する新しいAPIを導入

暗号資産(仮想通貨)企業のCircle(サークル)は、Circleアカウントを使用して暗号資産、特にステーブルコインのUSDCを管理する企業向けに、新しいAPIを導入予定であることを発表した。この新しいAPIを使って、企業はCompound(コンパウンド)のレンディングプールをはじめとする分散型金融(DeFi)プロトコルにアクセスできるようになる。

Circleは、Coinbase(コインベース)とともにCENTRE(センター)コンソーシアムの創設メンバーの1社としてよく知られている。両社は他の暗号パートナーとともに、人気の高いステーブルコインであるUSDC(米ドルステーブルコイン)を発行している。

ステーブルコインはその名の通り、価格が固定されている暗号資産だ。1USDCは常に1米ドルの価値がある。発行者は流通しているUSDCと同数の米ドルをその銀行口座に保持している必要があり、監査法人から定期的にチェックを受けている。

USDCの背景には、より簡単にお金を操作できるようにしようという考え方がある。USDCの支持者によると、ある人から別の人へ送金することは、あるウォレットから別のウォレットへビットコインを送るのと同じくらい簡単であるべきだという。Circleは、Circleアカウントによる独自のソリューションを持っており、アカウント所有者は標準的なAPIコールを使用して、プログラム的にUSDCを送信、受信、保有することができる。

特に、Circleは不換紙幣と暗号資産の間のギャップを埋めるためのスロープを構築してきた。同社のAPIサービス「Payments(ペイメンツ)」を利用すれば、カード決済、銀行送金、USDC取引を受け入れることができ、すべての取引はUSDCとして顧客のCircleアカウントに届く。同様に「Payouts(ペイアウツ)」では、Circleアカウントから銀行送金を行うことができる。

そして今、Circleは顧客がCircleアカウントに現在保有しているUSDCを使って、より多くの機能にアクセスできるようにしたいと考えている。近日公開予定のDeFi APIでは、USDCトークンを別のウォレットに手動で送信することなく、DeFiプロトコルにアクセスできるようになる。同社はまず、Compoundプロトコルから始める予定だ。

Compoundは、暗号ベースのレンディングサービスを提供している。あるユーザーは暗号資産を提供し、流動性プールに貢献する。別のユーザーは暗号資産を借りるわけだが、それにはまず、別の種類の暗号資産を担保として提供する必要がある。

Compoundでお金を貸し出すユーザーには、金利が支払われる。例えば、Compoundのプロトコルを使ってUSDCを提供すると、1.74%の年率利回り(APY)が得られる。USDCはCompoundプロトコルの一般的な担保であり、Circleがビジネスアカウントでこのプロトコルを採用することは理に適っている。Circleの財務インフラに興味深い機能が加わることになる。

2. 金融市場インフラの未来は、パブリックチェーンと新しい金融プロトコルにかかっています。開発者や企業がこれを安全かつ容易に利用できるようにすることは、非常に大きな好機となります。

3. 私たちは、企業がフィアットフローやUSDCアカウントフロー、利回りのカストディとガバナンストークンの直接統合を自動化するための新しいAPIサービスを作りました。最初のプロトコルはCompoundプロトコルです。さらに多くの他のプロトコルもそれに続く予定です。

ジェレミー・アレール

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タグ:Circle暗号資産分散型金融

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

政府機関など対象に暗号資産犯罪やマネロンの検知・防止ツールを提供するチェイナリシスが約110億円調達

政府機関など対象に暗号資産犯罪やマネロンの検知・防止ツールを提供するチェイナリシスが約110億円調達、評価額約4648億円に

政府機関および民間企業を対象に、暗号資産犯罪やマネーロンダリングの検知・防止のための調査・コンプライアンスソフトウェアを提供するブロックチェーン分析企業Chainalysis(チェイナリシス)は6月28日、シリーズEラウンドにおいて、1億ドル(約110億6800万円)の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、リードインベスターのCoatue、既存出資企業のBenchmark、Accel、Addition、Dragoneer、Durable Capital Partners、9Yards Capital、新規出資のAltimeter、Blackstone、GIC、Pictet、Sequoia Heritage、SVB Capital。また同社は、累計調達額が3億6500万ドル(約403億8500万円)、評価額が42億ドル(約4648億6000万円)に到達したと明らかにした。

調達した資金は、以下ビジョンの実現のため使用する。

  • データ:より多くの暗号資産を対象とし、DeFi(分散型金融)のような新たなユースケースに焦点を当てることでデータの優位性を深化させる。また潜在的な脅威の兆候をより迅速に特定し、対応までの時間を短縮するために、グローバル・インテリジェンス機能を立ち上げる
  • ソフトウェア:同社ソフトウェア・ソリューションに向けてコラボレーション・ツールを開発・実装し、公的機関と民間企業のチームが同じデータセットを使って、一貫した共通理解のもとで共同作業ができるようにする
  • アクセス:政府機関、金融機関、暗号資産交換業者(取引所)などが、Chainalysisのデータと企業内の情報を組み合わせ、より良い意思決定ができるように、APIを通じ同社データに直接アクセスできるようにする

Chainalysisは、世界60カ国以上の政府機関、取引所、金融機関、保険会社、サイバーセキュリティ企業にデータ、ソフトウェア、サービス、リサーチを提供。同社データは、調査、コンプライアンス、マーケット・インテリジェンス・ソフトウェアの強化ほか、刑事事件の解決、暗号資産取引における消費者保護に利用されているという。

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暗号資産で国境を越える面倒な「クロスボーダー決済」を簡単、迅速にできるようにするMercuryo

国境をまたぐ決済のネットワークを作ったMercuryoが、シリーズAのラウンドで750万ドル(約8億3000万円)を調達した。

ロンドン生まれの同社は、「デジタル資産の決済ゲートウェイ」によってブロックチェーンをビジネスにとって便利なものにすることを目的とする「暗号資産のインフラストラクチャ企業」と自らを説明している。具体的には同社は、さまざまな決済ソリューションを集積して、法定通貨と暗号資産による決済や支払を提供する。

もっと簡単にいうと、Mercuryoの狙いは、次世代の国境を越えた送金を暗号資産をツールとして使って推進することだ。同社はそれを「どんな企業でも金融業務の面倒な知識や経験なしでフィンテック企業になれる」と説明する。

Mercuryoの共同創業者でCEOのPetr Kozyakov(ペトル・コジヤコフ)氏は「迅速で効率的な国際決済を、特に企業はこれまで以上に必要としている」と語る。多国間決済サービスを提供している企業はすでにたくさんあるが、暗号資産をその軸に据えることが、同社の差別化要因だ。

コジヤコフ氏は「私たちのチームには、低料金の簡単な手続きで暗号資産を至るところで使えるようにする、という明確なプランがあります。そうなれば、暗号資産という資産を使って、グローバルな送金や大量一括支払などさまざまなサービスを得られるようになります」という。

左からAlexander Vasiliev(アレクサンドル・ワシリエフ)氏、Greg Waisman(グレッグ・ワイズマン)氏、ペトル・コジヤコフ氏(画像クレジット:MercuryO)

Mercuryoが営業を始めたのは2019年の初頭だが、それ以降大きく成長して、4月には年間経常収益が5000万ドル(約55億4000万円)を超えた。顧客ベースは100万に近く、また同社は、暗号資産の大手であるBinanceやBitfinex、Trezor、Trust Wallet、Bithumb、そしてBybitなどとパートナーしている。2020年に同社は売上が50倍に増加し、2021年4月には年商が25億ドル(約2770億円)を超えたという。

この勢いに乗じてMercuryoは、米国などに向けて新市場の開拓を開始し、特に米国では2021年初めにすべての州で、B2Bの顧客のための暗号資産による決済サービスをローンチした。今後は、アフリカや南米、東南アジアなどへの「漸進的」拡張を計画している。

Target GlobalがMercuryoのシリーズAをリードし、またエンジェル投資家たちのグループが投資に参加して、2018年の創業以来の総調達額は1000万ドル(約11億円)を超えた。

同社が今度の資金の用途として考えているのは、暗号資産のデビットカードを立ち上げることと、ラテンアメリカやアジア太平洋地区への市場拡大の継続だ。暗号資産のデビットカードがあれば、世界中どこでも自分のウォレットの暗号資産残高から直接、支出できる。

Mercuryoの多様なプロダクトの中には、複数通貨のウォレットがあり、それには暗号資産の取引機能が内蔵されている。他にもデジタル資産の購入機能やウィジェット、暗号資産の大量取得機能、そしてOTCサービスなどのプロダクトがある。

コジヤコフ氏によると、同社は複数通貨間の換金手数料を取らず、その他の「隠れ料金」もないという。

「パートナーにも、またその顧客にも、瞬間的で容易な、国境をまたぐ送金処理を提供できる。送金サービスには中間搾取者がおらず、取引終了までに余計な手続きがない。私たちが提供するサービスは、わずか2種類に絞られます。1つは送金時の法定通貨から暗号資産への交換であり、もう1つは資金を受け取る際の暗号資産から法定通貨へという変換です」とコジヤコフ氏はいう。

Mercuryoには、暗号資産のためのSaaSプロダクトもあり、そこでは顧客が自分の法定通貨の口座から暗号資産を手に入れ、そのデジタル資産の管理を同社に委託する。

コジヤコフ氏によると「それがバーチャルアカウントであっても、あるいは顧客のサードパーティのウォレットであっても、私たちが扱うのは銀行のための暗号資産関連処理のほとんどすべてであり、顧客は自分たちの本来の仕事に集中できます」という。

Target Globalの共同創業者であるMike Lobanov(マイク・ロバノフ)氏によると、彼の会社はBitcoinを購入する場合の各社のソリューションを実験的に試してみた。ロバノフ氏は「投資家のデューデリジェンスとして我々が計測したのは、暗号資産への変換に要する時間、すなわちApp Storeへ行ってアプリをダウンロードするところから、ウォレットにデジタル資産が収まるまでの時間を計測した」という。

トップはMercuryoの6分間だった。KYCに始まり、送金から暗号資産が得られるまでの時間だ、とロバノフ氏はいう。「2位は20分でしたが、我々のトランザクションを処理するのに時間が無限にかかっているアプリもあった。Mercuryoはこの分野のゲームチェンジャーです。私たちが初期から同社を支援してきたことは、本当に喜ばしいことです」。

同社が次のリリースとして予定しているプロダクトは、大量の複数の顧客とかギグワーカーなどに同時に一瞬にして大量決済ができるサービスだ。受取人は、地球上のどこにいてもよい。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Mercuryo資金調達暗号資産送金クロスボーダー決済

画像クレジット:Liyao Xie/Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hiroshi Iwatani)

暗号資産取引所コインチェックが国内初のIEOを7月1日提供開始、第1弾はハッシュパレット発行のPalette Token

暗号資産取引所コインチェックが国内初のIEOを7月1日実施、第1弾はハッシュパレット発行のPalette Token

コインチェックは6月24日、IEO(Initial Exchange Offering)プラットフォーム「Coincheck IEO」の提供を7月1日に開始すると発表した。またその第1弾として、HashPort子会社Hashpalette(ハッシュパレット)発行の「Palette Token」(PLT)の購入申し込みを7月1日より実施すると明らかにした(購入申し込み参加には暗号資産取引所の口座開設が必要)。IEOによる資金調達は、国内初の試みとなる。同日、HashpaletteがPaletteのホワイトペーパー(PDF)を正式公開した。

  • 7月1日 12:00:購入申込み開始
  • 7月15日 18:00:購入申込み終了
  • 7月20日 順次:抽選およびPalette Token受渡し
  • 7月27日 12:00:取引所においてPalette Tokenの取扱いを開始

暗号資産取引所コインチェックが国内初のIEOを7月1日実施、第1弾はハッシュパレット発行のPalette Token

暗号資産取引所コインチェックが国内初のIEOを7月1日実施、第1弾はハッシュパレット発行のPalette Token

IEOは、トークン発行によるコミュニティの形成・強化や資金調達を暗号資産交換業者(取引所)が支援するという仕組み。企業・プロジェクトなどの発行体がユーティリティ・トークンを電子的に発行することで資金調達を行う仕組み「ICO」(Initial Coin Offering)の中でも、暗号資産取引所が主体となって発行体のトークンの販売を行うモデルとなっている。

コインチェックのCoincheck IEOでは、企業やプロジェクトなどが発行したユーティリティ・トークンの審査、また販売をコインチェックが行う。Coincheck IEOにより、日本の暗号資産投資家が国内外の有望なプロジェクトに参加できる環境を提供することで、暗号資産・ブロックチェーン関連のプロジェクトを支援し、暗号資産市場の発展に貢献するとしている。

オープンソースのブロックチェーン「Quorum」を基盤とする「Palette」と、ERC-20規格の暗号資産「Palette Token」(PLT)

HashpaletteのPaletteは、オープンソースの「Quorum」(GoQuorum。GitHub)を基盤とするコンソーシアム型プライベートチェーン。Quorumは、ブロックチェーン企業Consensys(コンセンシス)が手がけているもので、ブロックチェーンネットワークへのアクセス権限を管理可能なほか、許可を得た特定の企業によって運営できるようになっている。またPaletteは、Quorumで利用できるコンセンサスアルゴリズムのうち「プルーフ・オブ・オーソリティ」(Proof of Authority、PoA)を採用しており、信頼できる複数企業による安定した運⽤を行うとしている。

Palette Token(PLT)は、Ethereum上で発行するERC-20規格準拠の暗号資産となっており、クロスチェーン技術(他ブロックチェーンとの接続機能)を用いてパレットチェーン上でも利用できるようにしているという。同社は、Paletteについてエンターテインメント領域に特化したNFTプラットフォームとしており、PLTは「コンセンサスノード運営報酬」「スマートコントラクトの発行手数料(GAS)」「NFT売買の決済」といった用途の支払いに使用できるユーティリティ性の高いトークンと位置付けている。なおNFTの発行には、EthereumのERC-721規格と同様の仕様として実装した「PRC721」規格を用いるという。

Palette Token(PLT)の用途例

  • 発行されたNFT(Non-fungible token)の購入費
  • Paletteにおけるノード運用報酬の支払い
  • Paletteコンソーシアムメンバーへの委任
  • スマートコントラクトやNFT発行の手数料

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:IEO(用語)暗号資産 / 仮想通貨(用語)ERC-20(用語)ERC-721(用語)Ethereum / イーサリアム(製品・サービス)NFT / 非代替性トークン / クリプトアート(用語)オープンソース / Open Source(用語)Quorumコインチェック(企業・サービス)Hashpaletteブロックチェーン(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

逮捕者を出したランサムウェア犯罪集団「Clop」が活動を再開

ウクライナ警察がランサムウェア犯罪集団「Clop(クロップ)」と関係があるとみられる6人の容疑者を逮捕してから数日後、この悪名高いランサムウェアの活動が再開されたようだ。

関連記事:ウクライナ警察がClopランサムウェアの容疑者6人を逮捕、米・韓国企業を攻撃

先週、ウクライナ国家警察が韓国と米国の関係者とともに行った法執行活動により、ランサムウェア「Clop」に関係しているとみられる複数の容疑者が逮捕された。国家レベルの法執行機関による大規模なランサムウェアグループの逮捕は、これが初めてのことだと思われる。

ウクライナ警察は当時、同グループが使用していたサーバーインフラを停止させることに成功したとも主張していた。しかし、この作戦は完全に成功したわけではないようだ。

逮捕者が出た後、Clopは沈黙を守っていたが、今週になってから、新たな被害者である農機具小売業者と建築士事務所から盗んだとする機密データをダークサイトで公開した(TechCrunchはそれを目にしている)。

もしこれが本物であれば(被害者とされる両者ともTechCrunchのコメント要求に応じていない)、先週行われた史上初の法執行機関による逮捕にもかかわらず、ランサムウェア犯罪集団は依然として活動を続けていることになる。これはつまり、手錠をかけられた容疑者の中に、Clopの活動で重要な役割を果たしている者が含まれていなかったためと考えられる。サイバーセキュリティ企業のIntel 471(インテル471)は、先週の逮捕が活動のマネーロンダリング部分をターゲットとしており、犯罪集団の中核メンバーは捕らえられていなかったとの見解を示している

「Clopの背後にいる中核的な人物が逮捕されたとは思えません」と、Intel 471は述べている。「Clopに与えた全体的な影響は小さかったと思われます。しかし、今回の法執行機関による逮捕は、最近DarkSide(ダークサイド)やBabuk(バブク)のような他のランサムウェアグループで見られたように、Clopブランドが放棄される結果を導く可能性もあります」。

Clopはまだビジネスを続けているようだが、このグループがいつまで活動を続けるかはまだわからない。米国の捜査当局が最近、Colonial Pipeline(コロニアル パイプライン)を攻撃したハッカーに身代金として支払われたと主張される数百万の暗号資産を回収するなど、2021年に入ってから法執行機関の活動がランサムウェアグループに数々の打撃を与えているだけでなく、ロシアは今週、米国と協力してサイバー犯罪者の居場所を突き止める活動を開始することを認めた。

ロシアはこれまで、ハッカーへの対応に関しては傍観主義的な態度を続けていた。だが、Reuters(ロイター)が米国時間6月23日に報じたところによると、ロシア連邦保安庁(FSB)のAlexander Bortnikov(アレクサンドル・ボルトニコフ)局長は、今後のサイバーセキュリティ活動においては、米国の当局と協力していくと語ったという。

Intel 471は、先週の作戦でClopの主要メンバーが逮捕されたとは考えていないと述べていたが、それは「彼らはおそらくロシアに住んでいる」からであり、ロシアは長い間、行動を起こすことを拒否していたため、サイバー犯罪者にいわゆるセーフハーバー(安全港)を与えてきた。

Clopランサムウェアが2019年初頭に初めて発見されて以来、同グループは数々の注目を集めるサイバー攻撃に関与してきた。その中には、2020年4月に発生した米国の大手製薬会社ExecuPharm(エグゼキュファーマ)の侵入事件や、最近発生したAccellion(アクセリオン)のデータ流出事件が含まれる。この事件では、ハッカーがITプロバイダーのAccellionが使用するソフトウェアの欠陥を悪用して、コロラド大学やクラウドセキュリティベンダーのQualys(クオリス)など数十社におよぶ顧客のデータを盗み出した。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:逮捕警察ランサムウェアハッカー暗号資産犯罪サイバー攻撃

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

どの暗号資産でも店舗での支払いで使えるようにする独SALAMANTEX、店側も安心して導入可能

日々の支払いで暗号資産を手軽に活用することはできないか?ドイツのフィンテック企業SALAMANTEXはまさにそうした要望を叶えるプラットフォームを展開している。同社のCOOであるMarkus Pejacsevich(マーカス・ペヤセヴィッチ)氏は「このプラットフォームなら、どんな種類の暗号資産でも、あらゆる店で、オンラインでもオフラインでも使えます」と語る。どのように可能なのか?時代に合っているのか?店舗側に負担はかからないのか?同氏が詳しく語った。

広がる「暗号資産で支払いたい」という声

Harris PollとMasterCardが2021年2月26日から3月10日に行ったオンライン調査によると、ミレニアル世代の回答者のうち40%が今後、暗号資産で決済をしようとしているという。また75%は暗号資産をよりよく理解できたら、決済に暗号資産を使用したいと考えており、さらに93%は新しい決済方法を検討するつもりだという。

ペヤセヴィッチ氏は「コロナ禍によって非接触の決済が好まれるようになったのも、この調査結果の背景にあるでしょう」と見ている。

この他、同氏は世界の中央銀行によるデジタル通貨導入の動きにも注目している。2021年3月、欧州中央銀行(ECB)のラガルド総裁は2025年頃にデジタル通貨を発行できる可能性に言及した。

こうした流れの中でペヤセヴィッチ氏が懸念しているのは、ヨーロッパのフィンテック企業のプレゼンスだ。現在、VISA、Mastercard、Rippleなどが世界中の中央銀行にプロトコルを提供しており、米国企業の存在感が増しているのだ。だからこそ、ペヤセヴィッチ氏はヨーロッパのフィンテック企業として一石を投じたいのだ。

暗号資産で決済するプラットフォームとは?

SALAMANTEXが提供しているのは、単純に「暗号資産を使用するためのサービス」ではない。あらゆる種類の暗号資産を使って取引・決済を行い、ユーザーが使用するさまざまなエコシステムの中でポイント還元を行うプラットフォームだ。

例えば、ユーザーが飛行機でウィーンからフランクフルトに移動し、ホテルに向かい、公共交通機関を使って買い物に行き、レストランで食事をし、その支払いをSALAMANTEXを使って行ったとする。ユーザーはここまでの移動手段、買い物や食事をした店でポイントを獲得することができ、このポイントでまた移動や買い物ができる。さらに、こうした決済にはあらゆる暗号資産を使用することが可能だ。

ここで、SALAMANTEXで実際に買い物をする場合のプロセスを見てみよう。

まず店舗など事業者が支払い内容を現地の通貨で打ち込む。その後事業者が支払いに使用する暗号資産の種類を選択する。この後支払い用のQRコードが作成される。買い物をする客はこのQRコードを自身の端末でスキャンし、取引を確認する。数秒後には決済が確定する。

ペヤセヴィッチ氏は「もちろん、当社のプラットフォームを広く使ってもらうには、事業者に安心してもらうことが重要です。そこで、特に事業者の5つの懸念点に対応しています」と自信を見せる。

1つ目はプラットフォームの管理だ。管理はSALAMANTEXが行い、透明性も担保され、規制も遵守している。事業者はこうしたことを心配する必要がない。

2つ目はボラティリティーのリスクだ。SALAMANTEXではレートが固定されているため、事業者がレートのリスクを考える必要はない。

3つ目は事業者が為替の知識に自信がない点だ。SALAMANTEXでは、事業者は受け取る通貨を暗号資産にするのか、一般的な通貨にするのかを選択することができる。したがって、事業者が暗号資産のレートやリスクに詳しくなくても、導入しやすい。

4つ目がSALAMANTEXのプラットフォームと、既存のシステムの統合だ。統合に大きなコストやリソースがかかるのであれば、事業者の負担は大きくなる。しかし、SALAMANTEXには自社開発のハードウェア、ソフトウェアがあり、それらを事業者の既存のレジシステムやチェックアウトページにシームレスにつなぐことができる。

5つ目は経理作業だ。こうしたプラットフォームでの会計をどうやって経理に反映させるのか?同社は優れたAPIとレポーティングツールを用意しており、経理データの処理はシンプルに行えるという。

「あらゆる暗号資産でお買い物」を実現するエコシステム

では、こうしたプラットフォームの全体像はどうなっているのか。

買い物をする客が取引情報のQRコードをスキャンすると、支払らわれた通貨は事業者のウォレットに送られる。この通貨は固定レートで一般的な通貨に両替され、決済銀行に送られる。ここからドイツのシステムに存在するdisagioというものを引いた額が事業者の銀行口座に送られる。事業者の決済の仕組みによって多少流れに違いが生じるが、基本的にはこのように決済が処理される。

ペヤセヴィッチ氏は「当社は『1つの国で使われるソリューション』以上のものを提供しようとしています。私たちのパートナーシップはヨーロッパの75%をカバーできます」と語る。

一方で、SALAMANTEXのようなプラットフォーム展開には、地域ごとの法令遵守も重要になる。同社はオーストリアではFMA(Finantial Market Authority、金融市場当局)の規制を受けている。また、ドイツではこうしたビジネスの展開に銀行が必要になるため、TEN31というフィンテック銀行とパートナーシップを組んで対応している。

「今、決済サービス提供企業にデジタル通貨のことを知ってもらい、協業することが必要です。お買い物をするお客さまにも、理解を深めていただけるよう働きかけが必要です。何より、ヨーロッパの暗号資産決済プレイヤーが暗号資産の可能性の扉を開くために、ヨーロッパのソリューションを提供していくことが不可欠です」とペヤセヴィッチ氏は今後の展望をまとめた。

【Japan編集部注】本記事はCrypt Asetts Conference 2021中のセッションを再構成したものとなる。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:SALAMANTEXドイツ暗号資産

曖昧だから良い? 米国の暗号資産規制がイノベーションを取りこぼさないワケ

曖昧だから良い? 米国の暗号資産規制がイノベーションを取りこぼさないワケ

Photo by Jon Sailer on Unsplash

編集部注:この原稿は千野剛司氏による寄稿である。千野氏は、暗号資産交換業者(取引所)Kraken(クラーケン)の日本法人クラーケン・ジャパン(関東財務局長第00022号)の代表を務めている。Krakenは、米国において2011年に設立された老舗にあたり、Bitcoin(ビットコイン)を対象とした信用取引(レバレッジ取引)を提供した最初の取引所のひとつとしても知られる。

暗号資産取引所に上場するコインの数は日本の数倍。機関投資家や上場企業による積極的なBitcoin(ビットコイン)投資で今年の強気相場を牽引する。「コンテンツ大国」であるはずの日本よりも先に、アーティストやミュージシャン、スポーツ選手、セレブがデジタルアート販売やバーチャルリアリティ(仮想現実)のインフラ整備を目的としてNFT(ノン・ファンジブル・トークン)のブームを作る。そして、著名電気自動車メーカーCEOが有名なテレビ番組に出演して柴犬がトレードマークの「Dogecoin」(ドージコイン)について語る……。

上記は、2021年に入って米国の暗号資産業界が成し遂げたアチーブメント(実績)の一部です。5月はBitcoinをはじめ暗号資産マーケットは大幅に調整しましたが、米国市場に悲観ムードはあまり見られない印象です。「投機」や「ハッキング」といったネガティブなイメージから脱却できない日本とは雲泥の差で、暗号資産に対する温度差は激しいのは明らかだと思います。

一体なぜなのでしょうか?

もちろん様々な理由が考えられますが、その1つには、暗号資産を含めて新たなイノベーションに対する規制について、日米間で考え方に大きな違いがあるからと考えています。

日本は暗号資産大国だった

驚くことに実は、数年前まで日本は暗号資産のメッカでした。

Bitcoin創設者(または創設グループ)の名前がSatoshi Nakamoto(サトシ・ナカモト)であることに関係しているかどうかは定かではありませんが、Bitcoinの開発者や熱狂的なサポーターが国内外から東京に集まっていました。ニューヨーク・タイムズの記者であるナサニエル・ポッパー氏が2009年~2014年にかけて世界中のBitcoin関係者に直接取材して書いたルポタージュ「デジタル・ゴールド──ビットコイン、その知られざる物語」(ISBN:978-4-532-17601-3)では、東京が重要な舞台として登場します。ハッキング事件が起きるまで世界一のBitcoin取引高を誇った取引所Mt.Gox(マウントゴックス)は、東京に拠点を持っていました。実際、2018年頃までは、円建てのBitcoin取引高が全体の50%以上を占めていました。

何を隠そうクラーケンCEOであるJesse Powell(ジェシー・パウエル)も日本に魅了された1人です。当時、ハッキングを受けたMt.Goxを支援するために、たびたび東京を訪れました。

しかし、現在、東京は暗号資産のメッカとはとてもいえなくなってしましました。シェアの半分以上を占めていた円建てのBitcoin取引高は、7%未満まで落ち込みました。Bitcoin投資だけではありません。DeFi(分散型金融)やNFTブーム、ステーブルコインの台頭といった暗号資産の技術が基盤となるイノベーションについていけず、米国から大きく出遅れてしまっています。

イノベーションを定義できるのか? 日米規制の違い

突然ですが、読者の皆さんは、暗号資産やブロックチェーンの領域にかかわらず、今後、どのようなイノベーションが出現して世の中を変えていくのか完璧に予想することができますか?

どんな著名な起業家や経済学者、歴史学者であっても、答えは「NO」だと思います。また、最先端の研究に携わっている人でも、自分の分野以外のイノベーションを予測することは不可能でしょう。

それにもかかわらず、法律でイノベーションの形を厳格に定義して、基本的には、「その定義に合うイノベーションだけを認める」「定義に合わないものは認めない」といった杓子定規な運用をしている国があります。日本です。

消費者保護・マネロン対策の面では評価されている日本の規制

暗号資産の分野に関していえば、日本では、2017年の4月に資金決済法が改正され、暗号資産が法的に定義され、暗号資産を取り扱う事業者は仮想通貨交換業(現在は暗号資産交換業)としての登録が義務付けられました。この暗号資産規制は、日本が世界に先駆けて導入したものであり、導入当初は、事業者に金融機関並みの投資家保護やマネーロンダリング(マネロン)対策(AML)、テロ資金供与対策(CFT)などを求めたことが暗号資産市場に制度的な安定性を与えるものだと、おおむね好意的に評価されていました。

ただし、2014年のMt.Gox事件以降も、日本では2018年のコインチェック事件をはじめとして、巨額暗号資産の流出事件が相次ぎました。そしてこうした事件が起こる度に当局は事業者に対する規制を強化しており、現行の規制水準は、セキュリティに関するものを中心に一部金融機関の水準を上回っているのではないかと思います。

日本の法律と規制は、イノベーションを進めるという観点からは難点が多い

一方で、現状の規制では、暗号資産の商品性や技術的特殊性がほとんど考慮されていないなど課題が多いのも事実です。具体的には、日本では資金決済法で暗号資産の定義がきっちりと決められているため、定義に当てはまらない場合は、たとえイノベーションとして世界を変えるほどのプロダクトであっても、いくら海外で暗号資産として流通していても、日本国内ではそれが認められません。「やって良いこと」を毎回事前に決めてしまう日本の法律と規制は、イノベーションを進めるという観点からは難点が多いのではないかと感じています。

米国では、必要最低限の事項をリトマス試験紙のように判定し、最初から法令でがちがちに縛ることはしない

対照的に米国では、法律は「原則(プリンシプル)ベース」です。新しいイノベーションに基づくサービスが出てきた時、「すでに存在するサービスに該当しないか?」「犯罪に使われないか?」「詐欺ではないか?」「マネーロンダリングに使われないか?」など、必要最低限の事項をリトマス試験紙のように判定し、最初から法令でがちがちに縛ることはしない、というのが基本スタンスです。

例えば、2013年に米連邦捜査局(FBI)はBitcoinを使った決済を導入していたインターネット上の闇サイト「Silk Road」(シルクロード)の創業者を麻薬取引や詐欺、マネロンなどの罪で逮捕・起訴しました。また2019年、ニューヨーク州南部地方検察局は、北朝鮮で開催されたカンファレンスに参加して暗号資産に関する知識を提供したとしてEthereum Foundation(イーサリアム財団)の関係者を逮捕しました。

米国では、上記のように要所要所で取り締まるべきところは厳格に取り締まっていますが、基本的に、個別具体的なプロダクトやサービスレベルでは原理原則を守る限りは見守る方針があるようです。逆に言えば、企業やスタートアップは原理原則を守りながら新たなイノベーションにチャレンジすることが可能となっていると思います。

さらに米国では国レベルでも規制当局の数が多いこともあり、暗号資産の定義はバラバラです。米証券取引委員会(SEC)は「証券」、米商品先物取引委員会(CFTC)は「コモディティ」、米内国歳入庁(IRS)は「財産」と独自に定義づけをしています。現在の暗号資産はいまだ黎明期にあり、暗号資産というイノベーションが今後どのように進化していくのか、その全貌が把握できない中では、この曖昧さや統一感のなさが逆に柔軟性につながっているのではないかと感じています。

イノベーションを取り込む議論を!

暗号資産のイノベーションは、日進月歩ならぬ「秒進分歩」で進んでいます。日本国外では、DeFi(分散型金融)やステーブルコインといった既存金融サービスをブロックチェーン上で実装する動きが活発化しています。

DeFiの例としては、暗号資産の貸借取引(暗号資産を貸出して報酬を得る取引)のプラットフォームがあります。ここでは、暗号資産を貸出して報酬を得たい人と暗号資産を借入れたい人のマッチングばかりか、貸出・借入と報酬の授受も自動化されています。伝統的な金融では、証券会社、短資会社、証券金融会社、証券取引所といったプレイヤーが複雑に絡み合って成立している貸借取引の世界をプログラム上で実現し、さらに仕組みの改善を恒常的に行っている点は、私のような証券業界に長くいた人間からすると驚きに値します。

ステーブルコインは、法定通貨などを裏付けとして、ブロックチェーン上で発行されるもので、日本円や米ドルといった既存の法定通貨にペッグするように設計されています。こうしたステーブルコインの代表例には、テザー(USDT)やUSDC(USDコイン)があり、暗号資産市場で国際取引を行う際に、銀行を用いた国際送金の代替として活発に利用されています。銀行の国際送金は、資金の到着まで数日必要であり、手数料も高額ですが、ステーブルコインはこうした課題をブロックチェーン上で解決しています。

日本の暗号資産に関する法令が立法当時にどこまでイノベーションを意識していたか定かではありませんが、DeFiやステーブルコインの例を出すまでもなく、暗号資産におけるイノベーションは今後も加速度的に進化していくでしょう。

イノベーション、技術革新には不可逆性があります。つまり、一度誕生したら、過去にさかのぼって消すことはできず、それとうまく付き合っていくほかないのです。この点を念頭におくと、日本の暗号資産に関する法令・規制がイノベーションを取り込むという観点において、投資家の利益になっているか、国際競争上不利な状況になっていないか、法的により柔軟な対応は可能かどうかなどなど、議論を進めていく必要があるのではないかと感じています。

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企業が抱く「暗号資産の恐怖」に打ち勝つために今、考えるべきこと

暗号資産に対し、ある程度のイメージや知識を持っている人も増えてきた。しかし、実際に暗号資産を使っている人や企業はまだ多数派とはいえない。ドイツでデジタル資産に関するプロダクトとAPIを提供しているBloxxonでCEOを務めるJohannes Schmitt(ヨハネス・シュミット)氏は、「現在、暗号資産に対する社会の期待はとても低い」と語る。暗号資産の活用拡大の壁を同氏が詳しく語った。

暗号資産に対する恐怖

シュミット氏は「暗号資産を安心できる形で提供し、もっと活用してもらうために、何が必要なのか」と問う。

同氏はalternative.meが5月21日に分析した「暗号資産市場に関する反応分析:恐怖と欲望インデックス」を披露しながら「現在、社会の暗号資産に対する期待は底抜けに低く、メーターも欲望から恐怖の方向に動き、最大値を振り切っています」という。

alternative.me「暗号資産市場に関する反応分析:恐怖と欲望インデックス」

このような状況で暗号資産に対する恐怖と疑念が広がることに、シュミット氏は理解を示す。ドイツでは、この2〜3カ月の間、メディアで暗号資産に関するポジティブな報道が目立ったものの、同氏がこの話をした直前にはネガティブな報道が再度拡大したからだ。

「暗号資産は終わった」というような論調の記事は俗に「死亡記事」と呼ばれ、こうした「死亡記事」を記録するウェブサイトも登場しているという。

シュミット氏は「死亡記事は市場の心配を反映しているもの」と認識している。

次に同氏はBinanceがツイートした「市場サイクルの心理」という図を見せた。

Binanceがツイートした「市場サイクルの心理」。矢印とコメントはシュミット氏によるもの

この図は、新しいテクノロジーに対して社会がどのようなサイクルで反応するのかを説明したものだ。シュミット氏は、この図を暗号資産に当てはめ、今は「怒り」のフェーズに当たると分析する。

この怒りのフェーズでは、一部のユーザーに対する「どうしてあの人達はあんなことをするのか?」「どうしてあの人たちを止める規制がないのか?」といった怒りが噴出する。

シュミット氏は「おそらく私たちは、図の下の方にしばらくいることになるでしょう。そこから脱するには、市場にある恐怖をしっかり取り除かないといけません。それには半年、短くとも2〜3カ月はかかるでしょう」と考えている。

暗号資産に近寄りたくない5つの理由

シュミット氏は「暗号資産からある程度距離を置いている人たちの疑問は『暗号資産はちゃんとした資産なのか?』ということでしょう。こういう人たちには、暗号資産に近寄りたくない5つの理由があります」と分析する。

1つ目は、暗号資産の極端な変動性だ。暗号資産の価格は頻繁に、大きく変動する。しかしながら、暗号資産に慣れているユーザーは「暗号資産は貯蓄資産として良い」などということもある。

シュミット氏は「こうしたやりとりには、認識の相違があります。暗号資産に慣れているユーザーは、ここでは年単位を念頭に発言しています。一方で、暗号資産に不慣れな人たちは2〜3カ月単位を想定して同じ発言を耳にします。これでは暗号資産に不慣れな人たちは、暗号資産に懐疑的になるのも頷けます。しかし、重要なのは、ここには認識のずれがあるということです」と補足する。

2つ目は、プルーフ・オブ・ワークに関する懸念。3つ目は犯罪のイメージだ。最近では、ランサムウェア攻撃に対する支払いに暗号資産が使われることも多い。犯罪における暗号資産の使用例が増えることで、ネガティブな側面が注目されてしまっている。

4つ目はミームコインだ。ミーム(インターネットで注目された画像)を使って作られた暗号資産の時価総額がS&P500社を上回った時期があった。

「これはちょっと異様ですね。これで投資家が引いてしまったところもあると思います」とシュミット氏は付け加えた。

5つ目は暗号資産コミュニティのインターネット上でのコミュニケーションだ。

「暗号資産関連のコミュニケーションは独特のものがあり、長い経験のある投資家からすれば『一体ここで何が起きているのだろう?』と思ってしまうところもあると思います。そういう理由で距離を置く人もいるでしょうね」とシュミット氏。こうした一種の文化も暗号資産活用拡大の課題になる。

キャズムを超えるために

ここでシュミット氏はイノベーター理論の観点から暗号資産を論じる。

新しいテクノロジーが登場すると、早々にテクノロジーを活用するイノベーター、アーリーアダプターが登場する。しかし、そのテクノロジーが社会に本格的に受容されるかどうかは、アーリーアダプターの後にアーリーマジョリティが登場するかどうかにかかっている。つまり、このアーリーアダプターとアーリーマジョリティの間にあるキャズムを越えられるかどうかが最大の課題だ。

シュミット氏は「いろいろな統計がありますが、暗号資産を使っているのは、全体の14%くらいだと言われています。私たちは今まさにキャズムにいるのです。本格的な暗号資産活用のためには、ここを抜けなければいけません」と強調する。

しかし、ここまで同氏が述べてきたように、暗号資産には逆風が吹いている。今、キャズムを越えることは余計に難しい。

「これまで定着しなかったテクノロジーは、歴史を見ればいくらでもあります。しかし10年後、『暗号資産は失敗だった』と言われるようになって欲しくない。ではどうすればいいのか。鍵となる問いを一緒に考えましょう」と同氏は語り、問いを説明した。

問いは「より多くの消費者と企業による暗号資産活用を推進するために、暗号資産産業は大人しく、退屈なものになった方が良いのか。キャズムを超えるにはそれは必要か」。

同氏は、想定される2つの回答を挙げる。1つは「いいや、そんな必要はない。ジェネレーションZとYはもっと遊び心を持って世界を解釈している」。もう1つは「その通り。投資は真面目なもので、人々の貯蓄に関わる。投資家を怖がらせるようなことはやめるべきだ」。

しかし、シュミット氏自身は「『どちらも一理ある』が私の答えです。暗号資産はほとんどすべての人に利することができます。暗号資産は一部の層や世代の要望だけを叶えるものではありません」と語り、2つの回答の中間が現実的な回答だと述べた。

企業が暗号資産産業に「今」参入する意味はあるのか?

暗号資産と距離を置いている人や企業は、もしかしたら「企業が暗号資産産業に今、参入する意味はあるのか?」と考えているかもしれない。

シュミット氏はこうした疑問に理解を示した上で「暗号資産は今後10年の金融サービス空間の未来を決定するエコシステムであり、多くの企業がこのエコシステムに関わっています。今後10年でビジネスに関わる多くのものがブロックチェーンの上で扱われたり、トークン化されたりするでしょう。これはもはやビジネス上の流行り廃りの問題ではなく、サバイバルの問題なのです」と説明する。

同氏は「デジタル資産サービス市場の大きさを論じるのは難しい」としながら、参考グラフを提示した。

この参考グラフにおける2020年のデジタル資産サービス市場で大きなシェアを占めるのは、CoinbaseやBinanceに代表される暗号資産を扱うサービスだ。その次に大きなシェアを占めるのはUniswapなどの分散化プロトコルを扱うサービスだ。

一方で、2026年に目をやると、分散化プロトコルを扱うサービスがシェアを伸ばしていることがわかる。

「2026年の予測で重要なことは、市場のパイ自体が大きくなる点です」とシュミット氏は要点を示した。

「企業が今考えるべきことは、暗号資産のエコシステムに入りたいのか?今、そのエコシステムに入るためのトランジションを始めたほうが、数年経ってからトランジションを迎えるよりも利益が大きいのではないか?ということです」と語ってシュミット氏は締めくくった。

【Japan編集部注】本記事はCrypt Asetts Conference 2021中のセッションを再構成したものとなる。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:暗号資産Bloxxon

ウクライナ警察がClopランサムウェアの容疑者6人を逮捕、米・韓国企業を攻撃

Clopランサムウェアのギャングにつながっているとされている複数の容疑者が、ウクライナ、韓国、米国の当局による合同捜査を経てウクライナで逮捕された。

ウクライナ国家警察のサイバー部門は、首都キエフと周辺で21カ所の家宅捜索を行い、6人を逮捕したことを明らかにした。容疑者らがランサムウェア一味の仲間なのか、あるいは中心的なデベロッパーなのかは明らかではないが「二重の脅迫」スキームを展開していた罪に問われている。このスキームでは、身代金の支払いを拒んだ被害者らはファイルが暗号化される前にネットワークから盗まれたデータを公開すると脅される。

関連記事:ランサムウェアの脅威を過大評価か、2021年5月の米企業へのサイバー攻撃に対する身代金を米司法省がほぼ回収

「被告6人は米国と韓国の企業のサーバーで『ランサムウェア』のような悪意あるソフトウェアの攻撃を実行したことが立証されました」とウクライナの国家警察は声明文で主張した。

疑わしいClopランサムウェアのギャングから機器を押収した警察は、金銭上の損害は約5億ドル(約554億円)弱になると述べた。押収したものはコンピューター備品、数台の車(TeslaとMercedes含む)、現金500万ウクライナグリブナ(約2046万円)などだ。当局はまた、ギャングのメンバーが攻撃するのにこれまで使っていたサーバーインフラをシャットダウンしたと主張した。

「法執行機関が協力して、なんとかウイルスを拡散するインフラをシャットダウンし、犯罪で得た暗号資産(仮想通貨)を合法化するためのチャンネルをブロックしました」と声明文にはある。

これらの攻撃は2019年2月に始まった。韓国企業4社を攻撃し、810もの内部サービスとパソコンを暗号化した。以来「Cl0p」と表記されることが多いClopは数多くの有名なランサムウェア攻撃に関与してきた。ここには2020年4月の米製薬大手ExecuPharmの情報流出、小売店舗のほぼ半分を閉鎖することを余儀なくされた同11月の韓国eコマース大手E-Landへの攻撃などが含まれる。

Clopはまた、Accellionのランサムウェア攻撃とデータ流出にも関与している。この件ではハッカーたちはITプロバイダーAccellionの何十もの顧客からデータを盗むのに、Accellionのファイル転送アプライアンス(FTA)の脆弱性を悪用した。情報流出の被害者にはシンガポールの通信会社Singtel、法律事務所Jones Day、スーパーチェーンのKroger、サイバーセキュリティ会社Qualysなどが含まれる。

この記事執筆時点で、Clopが盗んだデータを共有するのに使うダークウェブポータルはまだ稼働中だが、数週間アップデートされていないようだ。しかし、法執行当局は通常、取り締まりがうまくいったときはターゲットのウェブサイトをロゴに変えるため、ギャングのメンバーがまだアクティブかもしれないと思わせる。

「Clopオペレーションは通信、製薬、石油・ガス、航空宇宙、テクノロジーなどさまざまな分野の世界中の組織をディスラプトし、恐喝するのに使われてきました」とMandiantの脅威インテリジェンス部門で分析担当バイスプレジデントを務めるJohn Hultquist(ジョン・ハルトキスト)氏は話した。「攻撃グループ『FIN11』はランサムウェアや恐喝などのオペレーションに強く関係してきましたが、逮捕者の中にFIN11のメンバーや、オペレーションに関係している他の人物が含まれているかどうかは不明です」。

ハルトキスト氏は、ウクライナ警察の取り組みは「ウクライナがサイバー犯罪との戦いで米国の強固なパートナーであり、ウクライナの当局が犯罪者の非難港を否定しようと努力していることのリマインダーです」と述べた。

容疑者たちはコンピューター、自動化システム、コンピューターネットワーク、通信ネットワークでの不正な干渉と、犯罪的な手段で入手した資産のロンダリングの罪で懲役8年が科される可能性がある。

逮捕のニュースは、国際法執行機関がランサムウェアギャングを厳しく取り締まっている結果だ。先週、米司法省はColonial PipelineがDarkSideのメンバーに支払った身代金の大半を回収したと発表した。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:ウクライナ逮捕警察ランサムウェアハッカー暗号資産アメリカ韓国犯罪サイバー攻撃

画像クレジット:Cyber Police Department of the National Police of Ukraine / supplied

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

ランサムウェアの脅威を過大評価か、2021年5月の米企業へのサイバー攻撃に対する身代金を米司法省がほぼ回収

米国時間6月7日の午後、米司法省は、米国でパイプラインを運営するColonial Pipeline(コロニアル・パイプライン)が2021年5月にロシアのDarkSide(ダークサイド)と呼ばれるハッカー集団側に支払った暗号資産の身代金のうち、大半を回収したと発表した。支払われた暗号資産がハッカーグループの所有する複数のアカウント間を経由した動きを追跡し、連邦裁判所判事の承認を得て、そのアカウントの内の1つに侵入できたことで回収に成功したものだ。

2021年5月、同社へのサイバー攻撃により、主要なパイプラインが閉鎖を余儀なくされ、それが元でガソリンの買い占めによる燃料不足が引き起こされた(加えて、内部サーバーのオーバーロードとやらが原因で、その後パイプラインが再度閉鎖されたため苦境に陥った)ことを考えると、身代金回収の発表は気味の良い話であった。

しかし、実績のある連続起業家であり、政府や企業への攻撃を追跡して、独自のメディア手腕を発揮するセキュリティインテリジェンス企業Recorded Future(レコーデッド・フューチャー)を創設したChristopher Ahlberg(クリストファー・アルバーグ)氏によると、米国人はダークサイドを最初から過大評価してきたという。先に行われたインタビューの中で、同氏はダークサイドの運営方法について詳しく説明している。インタビューはここから視聴できるが、長いので会話の抜粋を以下に紹介する。

TechCrunch(以下「TC」):貴社の技術的な取り組みを大まかに教えてください。

Christopher Ahlberg(クリストファー・アルバーグ氏、以下「CA」):当社で行っているのは、インターネットをインデックスすることです。インターネットに書き込まれたすべてのデータを、電子の動きまで含めて把握しようとしています。いわば悪質なハッカーの頭の中に入り、どこで活動しているのか、彼らがデータを送信し不正なインフラを運営しているネットワーク上で何が起こっているのかを突き止めようとしているわけです。また、悪質なハッカーがさまざまな興味深い場所に残した痕跡を妨害するようにもしています。

TC:どのような顧客をお持ちですか。

CA:国防総省から世界有数の大企業まで、全部で1000ほどです。おそらく、3分の1は政府関係、別の3分の1は金融関係、残りは輸送機関を含むさまざまな業種です。

TC:貴社が提供するのは、攻撃を予測するサポートですか。それとも、手遅れになった事態で何が起きたかを突き止めるのでしょうか。

CA:両方です。

TC:どうやって危険を察知していますか。

CA:まずは、敵つまり悪質なハッカーを理解することです。大きく分けて2つの括りがあります。サイバー犯罪者と敵対する情報機関です。

ここ1、2カ月の間に世界や我々が注目している犯罪者は、ランサムウェアギャングです。彼らはロシアのギャングです。「ギャング」と聞くと、大きなグループ集団をイメージしがちですが、(しかし)通常は1人か、2~3人です。こういったギャングの規模を過大評価することはありません。

(一方で)情報機関は、非常に装備が整っており、大勢の人が(関与)しています。(我々の仕事は)1つには敵を追跡すること、もう1つは彼らが運営するネットワークを追跡すること、最後に、オンプレミスで実際のシステムにアクセスしなくても、サイバー攻撃のターゲットとなりうる人物のデータを入手することです。これら3つを、すべて自動化された方法で行います。

TC:情報機関と、これらロシア系ギャングの連絡係の間に交信があると見ていますか。

CA:簡単にいうと、我々の見解としては、これらのグループがロシアの情報機関から毎日、毎月、あるいは毎年のように任務を受けているわけではないと思います。しかし、世界の一連の国々、ロシア、イラン、北朝鮮は少し異なりますが、中国でもある程度は、政府がハッカーの成長を後押ししていることが観察されてきました。主にロシアでは、サイバー犯罪が規制されることなく野放しになっています。そして徐々に、FSB(エフエスビー)、SVR(エスブイアール)、GRU(ジーアールユー)といったロシアの情報機関が、それらのハッカーグループから人材を引き抜いたり、実際に任務を与えたりするようになりました。公式文書を見ると、長い時間をかけて、情報機関とこれらのグループがどのように結び付き、手を取り合ってきたかが分かります。

TC:サイバー攻撃の後、ダークサイドがBitcoin(ビットコイン)や決済サーバーにアクセスできなくなり、シャットダウンすると言った際には、どう思いましたか。

CA:もし、あなたがこのハッカー攻撃を仕かけた人だとしましょう。その時には、おそらくコロニアル・パイプラインが何かを全然知らなかったでしょう。「やばい、米国のあちこちの新聞に取り上げられてしまった」と思ったでしょう。そして、ロシアでおそらく数本の電話がかかってきて「なんてことをしてしまったんだ、どうやって隠そう」と考えたはずです。

一番簡単なのは「私はやっていない」というか「もうそのお金は失われた、サーバーにアクセスできなくなった」ということです。ですから、私はあれはフェイクだったと思います。痕跡を隠すために全部行っていたと思います。(そう仮定すると)後で、別の方法を試みていたこともわかっています。私たち、米国政府がすぐにこれらハッカーに反撃できると過大評価していたと思います。純粋にそう思い込んだわけですが、そんなにすぐにはできないでしょう。もちろんこれは、政府の内部情報か何かを見て言っているわけではありません。

TC:DarkSide(ダークサイド)は、フランチャイズのように運営されていて、個々のハッカーがソフトウェアを受け取り、ターンキープロセスのように使っていると書かれていました。これは新しい流れですか。今後もっと大勢の人がハッキングに関わるようになると思いますか。

CA:その通りです。ロシア系のハッカーがすごいのは地下で分散する性質を持っていることです。「すごい」というのは少し皮肉も込めてですが、実際ランサムウェアを書く人たちもいれば、彼らが提供したサービスを使って、システムに入り込みハッキングをする人たちもいます。また、ビットコインのタンブリングを通じて、ビットコインの取引を行う人もいるでしょう。興味深い点の1つは、エンドゲームで現金を手に入れるには、これらの換金処理を通らなければならないので、最終的により洗練されたビジネスになることです。マネーミュールが関係している可能性もあり、そのマネーミュールを運営する人たちもいます。彼らの多くは、クレジットカード詐欺を行っており、カードが有効かを確認したり、どうやってお金を引き出すかを考えたりするなど、一連のサービスを提供しています。これには、おそらく20種類ほどのサービスが関わっているでしょう。すべて、非常に高度に特化されています。これが、彼らが成功を収めている理由であり、対応するのが難しい理由でもあるのです。

TC:彼らは利益を分けているのでしょうか。もしそうなら、仕組みはどうなっていますか。

CA:はい、利益を共有しています。かなり効果的なシステムが運営されています。支払い方法が存在するという点で、ビットコインが、これを可能にする大きな要因となっていることは明らかです。(しかし)eBay(イーベイ)の出品者のような、ランキングや評価システムも持っています。整備された地下フォーラムが存在していて、これまでずっと彼らの運営場所となってきましたし、もしサイバー犯罪者内で詐欺を働く人がいるとすれば、それを告発することができるようなサービスも提供されています。これはインターネットと同じです。なぜインターネットがうまく機能するのか、それは非常に広く分散しているからです。

TC:貴社の顧客以外でも、安全を守りたいと思っている方々に何かアドバイスがありますか。

CA:どの業界がランサムウェアの攻撃を受けているかを示す円グラフを同僚が作ってくれました。興味深いことに、20の異なる業界にわたり、攻撃は非常に幅広く分布しています。コロニアル・パイプラインに関しては、多くの人が「ああ、石油関係ね」と思ったかもしれませんが、ハッカーはそこまで業界を気にしていません。一番動きが鈍いターゲットを狙ってきます。ですから、簡単に攻撃できるターゲットにならないことが大切です。

多くの企業が、基本を守り、システムにパッチを行い、(加えて)アップデートを確実に行っているのは良いことです。危険にさらされないよう、インターネットに置いておく情報をできるだけ減らすことです。外界と接する表面積をできるだけ狭めてください。すべての事に、取り扱うものにはすべて、強力なパスワードと二要素認証を使ってください。

簡単に狙われないための10項目から成るチェックリストを用意しました。昨今の非常に高度なギャングに対応するには十分ではないので、さらにしっかりとした対策を講じる必要がありますが、チェックリストにある基本を押さえておけば、かなりの効果が見込めます。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:米司法省ランサムウェアハッカー暗号資産アメリカロシアRecorded Future

画像クレジット:Getty Images

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

ビットコインの価値はその周りの「ネットワーク効果」で考えるとよくわかる

暗号資産の世界において、Bitcoin(ビットコイン)の価値はどう測れば良いのか?適切な指標はないのか?ドイツのベンチャーキャピタルHigh Tech GründerfondsのAlex von Frankenberg(アレックス・ヴォン・フランケンベルグ)氏はこれらの問いを考えた。暗号資産の価値をStock2Flow(STF)モデルで測るという考え方もあるが、果たしてそれで十分なのか?同氏はビットコインを取り巻く環境がもたらす効果である「ネットワーク効果(ネットワークエフェクト)」こそ重要な観点だと語る。

ビットコインの価値をStock2Flowモデルで考えるのは適切か

フランケンベルグ氏は、ビットコインの価値を測る考え方として、まずSTFモデルを挙げる。

「STFモデルというのは、簡単にいうと次のようになります。フロー(新規に産出される資源の量)に対するストック(これまでに算出された資源の総量)が増加すると、新しい資源の産出量は減少し、新たに産出される資源の価格が上がります。ビットコインの価格はSTFと相互に関連していることがわかっています」とフランケンベルグ氏。

しかし、STFモデルをビットコインに適用することには批判の声も上がっているという。

「STFモデルはすべての資源に当てはまるものではありません。また、このモデルでは供給は考慮されても、需要が考慮されません。さらに、世の中には複数STFモデルがあり、それぞれ良いものですが、導き出される価格が異なります。こうした批判があるのは確かです」とフランケンベルグ氏は説明する。

では、需要の側面から考えるとどうなるのか。同氏はビットコインとビットコインキャッシュを比較する。

ビットコインとビットコインキャッシュの価格評価

ここで注目すべきは、ビットコインキャッシュの価格評価が低い点だ。ビットコインとビットコインキャッシュのSTFに大きな差はなく、ブロックサイズを除けば技術的にも大きな違いはない。

フランケンベルグ氏は「ビットコインとビットコインキャッシュはそれほど離れた資源ではなく、STFも近いのに、価格評価に違いがある。では、STFモデルが失敗だということになるのでしょうか?そうではありません。これは『STFモデルは完全ではない』ということを意味します。では、ビットコインとビットコインキャッシュの差はどこにあるのか?ネットワーク効果です。そしてネットワーク効果こそ私たちが考えなければいけないことなのです」という。

「ダイレクトネットワークエフェクト」と「インディレクトネットワークエフェクト」

では、ネットワーク効果とは何か?フランケンベルグ氏は「ユーザー数が増えると、効用が上がるという効果のことです」と答える。しかし、ユーザー数の増加は必ずしもより良い効用につながるわけではないという。

ネットワーク効果が発生しない例として、同氏は自動車を挙げる。

例えば、フォルクスワーゲンのゴルフ。より多くの人がゴルフを購入すると、修理できる施設が増えたり、ゴルフに関する情報がより広く流れることになる。この場合、ユーザー数の増加が販売台数の増加につながることがあり得る。しかし、ゴルフの機能そのものは、ユーザー数から影響を受けない。つまり、ネットワーク効果は発生しない。

一方で、ネットワーク効果には、ユーザー数の増加がより良い効用に直接つながる「ダイレクトネットワークエフェクト」と、ユーザー数の増加がより良い効用に間接的につながる「インディレクトネットワークエフェクト」の2種類があるという。

同氏が挙げるダイレクト・ネットワーク効果のわかりやすい例は、eメールなどのコミュニケーション手段だ。なぜなら、あるコミュニケーション手段を使うユーザー数が増えると、そのコミュニケーション手段で連絡できる人の数が増える。そのため、ユーザー数の増加が効用を上げるのだ。逆に言えば、ユーザー数の少ないコミュニケーション手段は、ユーザー数が少ないが故にユーザー数の減少を招くことがある。

インディレクト・ネットワーク・エフェクトの良い例は、WindowsなどのOSだという。なぜかというと、OSのユーザー数が増えると、OS上で動かせるアプリケーションの開発が進み、OSを使うことによる効用が上がるからだ。ここでは、OS の効用がアプリケーションを経由して間接的(インディレクト)に上がっている。

ネットワーク効果はなぜ重要なのか

では、ネットワーク効果の何が重要なのだろうか。

フランケンベルグ氏は「既存の製品のネットワーク効果が強い場合、新規参入者がマーケットの中に場所を見つけられない可能性がある。それが重要なのです」という。

フランケンベルグ氏が挙げた例はこうだ。ここにある製品があるとする。この製品で技術的にできることは限られているが、製品を世に出してから時間が経つにつれ、この新製品はネットワークによる効用を上げていく。その後、新規参入者がより優れた技術とともに市場に登場したとする。しかし、新規参入者は、先程の製品に比べてネットワークによる効用が少ない。そうなると「元々の技術+ネットワークによる効用」で比較した時、先に登場した製品の方が市場でより有利となる。そのため、新規参入者はより優れた技術を持っているにもかかわらず、ネットワーク効果が弱いために、市場の競争で不利になるのだ。

「元々の技術+ネットワークによる効用」で比較した時の既存製品と新規参入製品

ビットコインのネットワーク効果

では、ビットコインにネットワーク効果にはどのようなものがあるだろうか。フランケンベルグ氏は「たくさんある」と強調する。

同氏によると、ダイレクトネットワークエフェクトの観点では、より多くのユーザーがビットコインを使えば、ビットコインを送り合うユーザーの数が増え、効用が上がる。インディレクトネットワークエフェクトの観点では、オンランプが増加すればユーザー数が増加し、ネットワーク効果を増加させ続ける。さらに、ビットコインのネットワークの上に決済やメッセージングなどのアプリケーションが数多く構築されれば、ビットコインの価値も上がるのだという。

フランケンベルグ氏は、上の図を使ってビットコインのネットワーク効果の流れを以下のように説明する。

まず、企業でのビットコイン活用が広まれば、ビットコインの価格に影響する。ハッシュレートが増加すればセキュリティが上昇する。こうしたポジティブなフィードバックのループができる。

規制が進めば、透明化が進み、企業のビットコイン活用が進む。ユーザーフレンドリーになれば、企業のビットコイン活用が進む。

ユースケースが蓄積されれば、ビットコインを決済に使用しやすくなり、やはり企業のビットコイン活用が進む。

リテールでのビットコイン活用が進めば、企業でのビットコイン活用が進み、ビットコインの取引ボリュームが増え、ビットコインやフィンテック関連のカンファレンスの価値が上がる。

最終的には、中央銀行がビットコインを活用するようになれば非常に大きなネットワーク効果を見込むことができる。

「ここまで見てきたように、ビットコインのネットワーク効果を見た時、たくさんのポジティブなフィードバックループが見つけられます。しかし、リスクもあります。規制が非常にネガティブに作用する可能性もあります。セキュリティが弱ければやはりネガティブなことを引き起こすかもしれません。ただ、ビットコインの価値を考えるとき、STFモデル単体で考えてはいけません。STFモデルは完全な指標ではないからです。大切なのは、STFモデルとネットワーク効果の成長を組み合わせて考えることです」とフランケンベルグ氏は述べた。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:暗号資産Bitcoinネットワーク効果

USBキーのような暗号資産ハードウェアウォレットLedgerが415.6億円を調達

現地時間6月10日にフランスのスタートアップLedger(レジャー)は、シリーズCラウンドで3億8000万ドル(約415億7000万円)調達した。10T Holdingsがリードしている。この日のラウンドを終え、同社の評価額は15億ドル(約1641億円)になった。

ラウンドには既存の投資家であるCathay Innovation、Draper Associates、Draper Dragon、Draper Esprit、Korelya Capital、およびWicklow Capitalが参加。他にTekne Capital、Uphold Ventures、Felix Capital、Inherent、Financière Agache、およびiAngels Technologiesが新たに参加した。

Ledgerの主力製品は、暗号資産(仮想通貨)を管理するためのハードウェアウォレットだ。外観はUSBキーに似ていて、小さな画面を備えデバイス上で取引を確認できる。この小さな画面が重要な理由は、プライベートキーをLedgerデバイスの外に出さないためだ。

大きい金額の暗号資産を保管する場合、取引所のアカウントには置きたくない。もし誰かがサインインに成功すれば、あなたの暗号資産はすべて引き出されてしまうからだ。ハードウェアウォレットを使っていれば、暗号資産を自分でコントロールできる。

同社が初めて出した製品はLedger Nano Sだった。デバイスをパソコンと繋ぐにはUSBケーブルが必要だった。その後発売されたLedger Nano Xでは、Bluetoothを通じてスマートフォンで資産の受け渡しができるようになった。Ledgerは、貸借対照表に暗号資産を載せたい企業のために企業向けソリューションも提供している。

Ledgerはこれまでに300万台以上のハードウェアウォレットを販売している。そして毎月150万人が同社の暗号資産管理ソフトウェアソリューションであるLedger Liveを使っている。同社は全世界の暗号資産の15%程度を管理しているとまで言っている。

会社設立からの約7年間は平坦な道のりではなかった。2018年の暗号資産ブームが終わるとハードウェアウォレットへの関心は消滅した。さらに、同社は高額な資産を管理していることから、深刻なデータ侵害を受け27万2000人の顧客が影響を受けた。

この日の調達ラウンドを受け、同社は新製品の発売、Ledger LiveのDeFi(分散型金融)機能強化、さらには暗号資産エコシステム全体の成長支援を計画している。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Ledger暗号資産ハードウェアウォレット資金調達

画像クレジット:Ledger

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

すべてのSPACが純粋なゴミというわけじゃない

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

みなさんこんにちは。先週は短い1週間だったが(米国は5月31日月曜日が祝日だった)、ここ数日のうちに扱ったニュースの多さにかなり参っている。そこで、一旦立ち止まって、愚痴をこぼしつつ、ちょっとした気休めにSPAC(特別買収目的会社)の話をしよう。

ただし、米国時間6月6日の月曜日にはBabylon Health(バビロン・ヘルス)のSPACについて掘り下げる予定だが、今回はSPACの投資家向けプレゼンテーションの分析をするわけではない。今回はその代わりに、SoFi(ソーファイ)とBarkBox(バークボックス)の白紙小切手取引(SPACのこと)について話したい。

両社とも、しばらく前に公開が行われた後、先週から取引が開始された。ものごとは順調に進んだのだろうか? SoFiの公開企業としての最初の動きについてCNBCは以下のように書いている。

Social Finance(ソーシャル・ファイナンス)の略称を名前としたSoFi(ソーファイ)が、ベンチャーキャピタル投資家のChamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)氏が所有する白紙小切手会社(SPAC)のSocial Capital Hedosophia Corp Vと合併して上場した。株価は12%以上上昇し、22.65ドル(約2478円)で終了した。

これはSoFiにとっての勝利であるばかりでなく、ここ数カ月やや翳りの見えるSPACへの投資で、いくぶん苦戦しているチャマス・パリハピティヤ)氏にとっても良い結果だ。もちろん、SPACによる公開はすべて投機的なものだが、一部の一般投資家は企業のファンダメンタルズよりもパリハピティヤ氏の評判の方を重視していたようだ。そもそも他に何ができるだろう。

BarkBoxも、Barrons(バロンズ)が報じたように、SPAC統合が完了した後先週取引を開始したときには、まったく問題がなかった。

BarkBox(ティッカー:BARK)の株価は水曜日(米国時間5月2日)には約7.5%上昇し、午後には12ドル(約1313円)前後で取引された。これにより、同社の市場価値は24億ドル(約2627億円)近くになった。

その後、BarkBoxの株価はやや下落したが、SPAC当初の価格を下回ることなく推移している。これは、設立が発表されたときよりも市場の状況が変化していることを考えると、勝利と言えるだろう。

1週間に2つの良い結果が出たことは、SPACの世界そのものや、市場にいる白紙小切手(SPAC)側やスタートアップ側の無数のプレイヤーにとって朗報だ。もちろん、今回の2つの確たる結果がトレンドを生み出すわけではないが、着実に収益を上げている企業にとっては、SPACルートは世間が噂するほどには穴だらけの道ではないということは明らかだ。

暗号資産への賭け

SPACが基本的には胡散臭いと思っているのなら、白紙小切手(SPAC)ブームと暗号資産の組み合わせについて話を聞いて欲しい。以下にお話ししよう。

今週、暗号資産に特化しステーブルコインを特に好むCircle(サークル)が4億4千万ドル(約481億4000万円)を調達した。USDC(USD Coin)というステーブルコインで知られる同社にとって、これは多額の資金であり、SPACのIPOを検討しているとも言われている。

ところでステーブルコインとは何だろう?それは法定通貨と連動している暗号資産(仮想通貨)だ。ご想像の通り、USDCの場合には米ドルと連動している。ステーブルコインは、暗号資産の世界の中での有用な法定通貨代替物で、非常に人気があることがわかっている。

CircleのUSDCは、228億ドル(約2兆4950億円)相当が流通しており、CoinMarketCapのデータによれば、1日の取引額は数十億ドル(数千億円)だという。悪くない!しかし、この会社が一体どのようにして魅力的な粗利益率の下に莫大な収益を上げているのかは、あなたの謙虚なるしもべである私にとってそれほど明確ではない。これは、一度に5億ドル(約547億円)近い民間資金を確保した会社には、当然明確化が期待されることだ。

だから、今度ばかりは、SPACをして欲しい。もちろん莫大な数字の中身を早く見たい、という好奇心からだ。

成長は?

先日Ron Miller(ロン・ミラー)記者と私は、いくつかの公開企業の決算報告書を調査した。その結果、一部の企業では、ご自慢のデジタルトランスフォーメーションの加速本当に実現していることがわかった。

先週のニュースには、その議論の続きがあった。例えば、Zoom(ズーム)の業績は、私たちの仮説を裏づけるものだった。その2022年第1四半期の売上高は、2021年第1四半期と比較して191%増加した。それはまさに目を見張る好成績だ。

その一方で、Dropbox(ドロップボックス)とBox(ボックス)は、先週外部の投資家から新たな圧力を受けた。かつて非公開市場の寵児であった2社は、成長の壁にぶつかり、そのために攻撃を受けている。「成長かさもなくば死を」は、単なるスタートアップ向けの助言ではない。それは、ソフトウェア企業が自らの運命を握り続けるために必要なことなのだ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:The TechCrunch ExchangeSPAC暗号資産ステーブルコイン

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

セキュリティソフト「ノートン360」が暗号資産イーサリアムのマイニング機能「Norton Crypto」を追加

セキュリティソフト「ノートン360」が暗号資産マイニング機能「Norton Crypto」を追加

24K-Production via Getty Images

NortonLifeLock(旧:Symantec)は、PC環境に高度なセキュリティ環境を提供する「ノートン360」でマルウェア対策だけでなく、VPNや保護者機能、25GBのクラウドバックアップ機能といった総合的なサポートを提供しています。そしてノートンは、このソフトウェアに数週間以内に新機能「Norton Crypto」を追加することを明らかにしました。

「Norton Crypto」という名前から推測できるようにこれは暗号資産の採掘(マイニング)機能で、数ある暗号資産の中でも人気の高いEthereum(イーサリアム)を、PCがアイドル状態のときに自動的に採掘します。

ノートンは、このマイニング機能を「顧客の進化し続けるデジタルライフを守る」ための機能として宣伝しています。通常ならセキュリティソフトはマイニングソフトをブロックしますが、Norton Cryptoの場合はノートン自らが追加した機能なので、ウイルス対策と暗号資産の採掘機能両方を同時に扱うことが可能です。

具体的には、この機能はユーザーのPCのがアイドル状態のときに作動し、GPUリソースを使用してEthereumを採掘します。採掘できたコインはハード的な故障で失われたりしないよう、クラウド上に保管されたウォレットに転送することができます。

NortonLifeLockの最高製品責任者Gagan Singh氏は「Norton Cryptoを使えば、お客様は数回クリックするだけで暗号資産を採掘でき、そのエコシステムにおける多くの参入障壁を回避することができます」と述べています。

Norton Cryptoはまず、6月3日にアーリーアダプタープログラムに参加しているユーザーから提供され、数週間後に全ユーザーに展開されるとのこと。

セキュリティソフト「ノートン360」が暗号資産マイニング機能「Norton Crypto」を追加

NortonLifelock

(Source: BleepingComputerEngadget日本版より転載)

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NVIDIAがGeForce RTX 3060での暗号資産マイニング効率を半分に制限、採掘専用GPU発表

カテゴリー:ブロックチェーン
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