Oracle敗訴―陪審員はGoogleのAndroid中のJava APIを「公正使用」と評決

2016-05-27-oracle-google

多くのモバイル・アプリのデベロッパーが安堵のため息をついたはずだ。陪審員はGoogleの37件のJava APIのAndroidのコードへの利用を公正使用〔fair use〕と認めた。ただしOracleの弁護士はいち早く控訴の意向を明らかにしている。

Googleの広報担当者は「GoogleによるJava APIの利用を公正仕様と認めた今回の評決はJavaのプログラミングのコミュニティーだけでなく、オープンかつ無償のプログラミング言語を信頼して革新的なプロダクトを消費者に届けようとするあらゆるソフトウェア・デベロッパーにとっての勝利だ」と述べた。

もしこの訴訟でJava言語を所有するOracleが勝っていれば、デベロッパーはサードパーティーが開発したAndroidプログラムのJava APIを再利用することを恐れるようになっていたはずだ。これはきわめて一般的な慣行となっている。

OracleがGoogleを訴えたのは2010年にさかのぼる。 Oracleは「GoogleはOracleが所有権を持つJavaプログラミング言語を許可なく利用した」としてGoogleに対する訴訟を起こした。一審ではGoogleの行為は著作権侵害に当たらないと判決されたが、控訴審はこの判決を破棄し、争点となっているAPIには著作権が及ぶと認めて事件を下級審に差し戻した。このため争点はGoogleのAPI利用が一定の条件の下で使用が認められる公正使用に該当するかどうかとなった。

OracleにはJava言語をライセンスする権利がある。しかしGoogleは問題の37件のAPI利用は、オリジナルの内容を独自に改変して別のプラットフォーム、つまりAndroidで使用しているため公正使用に当たると主張していた。もしOracleが勝訴していれば、約90億ドルの損害賠償を得られるはずだった。

EEF(Electronic Frontier Foundation)の上級スタッフで弁護士のMitch Stoltzは著作権問題を専門としているが、「これはソフトウェア開発ビジネス全体の勝利だ。この評決でAPIを再利用するソフトウェア・デベロッパーは訴えられる心配をする必要がいくらか減った」と述べた。しかし Stoltzは「(APIに著作権が及ぶとした)上級審の判決は依然有効であり、小規模なデベロッパーがテクノロジーの巨人から訴えられる危険性は残っている」と指摘した。

この訴訟では、Googleの共同ファウンダーでAlphabetのCEO、ラリー・ペイジが証言し Oracleの主張に反駁した。ペイジは陪審員に対し、「私は著作権がAPI宣言に及ぶという定義に反対する。Java APIの宣言コードの利用はデベロッパー間に広く行われている慣行だ」と述べた。

William Alsup判事は前回のOracle対Googleの訴訟も担当しているが、「判断に当たってきわめて思慮深いアプローチを取っている」としてたびたび陪審員を賞賛している。またいささか異例ではあるが、Alsup判事は最終弁論の前に陪審員が事実を検討する時間を得るためにメモを自宅に持ち帰ることを許可した。

しかしOracle側は控訴の意向を明らかにしているため、訴訟はこれからも続くことになる。【略】

進行中の事件のため、この記事はアップデートされることがある。

画像:: corgarashu/Shutterstock

〔日本版〕記事末の画像をクリックするとOracle対Google訴訟関連のTechCrunch記事(英文)の一覧を読むことができる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

労務管理クラウドの「SmartHR」がAPI公開、社内システムなどと連携可能に

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社会保険や雇用保険など労務手続き自動化をするクラウドサービス「SmartHR」。サービスを提供するKUFUは5月25日、開発者向けに「SmartHR for Developers」を公開した。

SmartHR for Developersでは、他社製クラウドサービスとのデータ連携を実現するためのAPIやWebhookを提供しており、すでにマネーフォワード、キメラなどクラウドサービスを提供する4社と連携、もしくは連携に向けて協議を進めている。概要は以下の通り。

マネーフォワード:クラウド給与計算ソフト「MFクラウド給与
従来は給与計算ソフトには社会保険関係の情報を含む膨大な従業員データの入力が必用だったが、本連携により、入社手続きを行った従業員情報を1クリックでMFクラウド給与に取り込むことが可能になる。※すでに実装済み

キメラ:クラウド型採用管理サービス「Talentio

Talentioはキメラが提供する採用管理クラウドサービス。SmartHRとの連携により、入社が決定した内定者のデータを1クリックで同期し、そのまま入社手続を行えるような仕組みを提供する予定。将来的には在籍期間まで含めた採用KPIの分析機能の追加も視野に入れる

ソネット:クラウド型勤怠管理システム「AKASHI
本日公開のクラウド型勤怠管理システム。SmartHRとの連携では、勤怠データを1クリックで取り込み、勤務実績に応じて必用な手続きの有無を自動判別、そのまま手続を作成、役所へウェブ申請まで行えるような仕組みを提供する予定

ヴェルク:受託ビジネスに特化したクラウド型業務サービス「board
受託ビジネスに特化したクラウド型業務システム。連携では、SmartHRが持つ人事情報を活用し、人件費まで考慮された案件単位の損益管理機能を予定する

またSmartHR導入企業であれば、内製の社内システムとSmartHRの自社アカウントをシステム連携できるようになる。すでにSmartHRを利用するメルカリ、VASILYなどが社内システムとの連携を進めている。

各種クラウドサービスとSmartHRのシステムを連携することで、例えば従業員の入退社をトリガーにして各種クラウドサービスへ従業員情報を登録するなど、登録されている従業員データを様々な活用が可能になる。将来的には、外部サービスからデータを取り込んで必要手続きを自動作成したり、シングルサインオンを活用した各種クラウドサービスのアカウント管理をしたりと昨日を拡張させていく予定だ。

「クライアント企業からも『社内システムとSmartHRで従業員データのマスタを二重に持つことは面倒だ』という声があったことからAPI提供に至った」(KUFU代表取締役の宮田昇始氏)。もともと中小規模向けにサービスを提供してきたが、現在では1000〜4000名規模の企業もSmartHRの導入検討を進めているのだという。そういった背景もあり、API提供によるシステム連携に加えて、IP制限や二段階認証など、大企業のニーズにも応えられる機能開発を進めていくとしている。

AlphabetのCEO(Googleの協同ファウンダー)Larry Pageが法廷でAndroidによるJava APIの使用を公正と擁護

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AlphabetのCEOでGoogleの協同ファウンダーLarry Pageが今日、Oracleとのあいだで続いている法廷闘争で、同社のAndroidプラットホームの開発を擁護した。Oracleは2010年にGoogleを訴えて、Androidの開発者はJavaからプロプライエタリな部分のコードをコピーした、と主張した。Googleは、問題のコードはオープンソースであり、同社の技術者は無料で使用できる、それに、AndroidにおけるJavaコードの実装は十分に変形しており、公正な使用と見なされる、と主張した。

Pageの証言によると、この訴訟はすでに5年も続いているにもかかわらず、彼自身はAndroidの、この裁判で問題になっている技術的詳細についてほとんど何も知らなかった。しかしながら彼は、GoogleがAndroidの中でJavaの宣言コードを使ったときGoogleはOracleの知財を盗んだ、とするOracleの断言に反論した。“SunがJavaを作ったとき、彼らはそれをオープンソースのものとして作った”、とPageは述べた。“弊社は無料でオープンなものに対して支払いを行っていない”。

彼は、後日Oracleに買収されたSun Microsystemsからライセンスを取得せずにAPIを使う、というGoogleの決定を擁護して、問題のAPIをコピーして新たに実装することは業界の標準的慣行だった、と述べた。Pageは、APIのGoogleによる実装はオリジナルかつ変形しており、したがって彼の会社のコーディングは公正使用の範囲内に入る、と主張した。

“知財の問題に関しては、弊社は十分な責任感を持ち、注意深く行動した”、とPageは説明した。

Oracleの弁護士はPageにGoogleのスライドデッキを見せたが、その中ではAndroidのエコシステムが毎年、430億ドルの収益を生成している、とある。しかしPageは、スライドが述べている巨額な収益はGoogleの収益ではなく、電話機のメーカーやキャリアらの収益だ、と応じた。“Googleの関与部分がどれだけであるか、私は知らない”、とPageは証言し、さらに、Verizonのようなキャリアは“巨額な収益を得ているが、それがGoogleの収益に結びついていることはありえない”、と付言した。

Pageは、Googleの創設とAndroidの買収についても述べた。彼によると、市場に出回っているスマートフォンに不満を感じたとき、スマートフォンを自社で作ることに関心を持った。

“当時のスマートフォンにはものすごく不満だったが、それらの多くはJavaを使っていた。しかし性能も機能もお粗末だった。写真を撮って誰かと共有することもできない。あらゆる製品を試用したから、クローゼットが100台ほどのスマートフォンで満員になった。どの機種もそれぞれ違いがあるから、弊社のソフトウェアがそれらの上で動かない。それが、ものすごく不満だった”、とPageは説明した。

彼によると、Googleでスマートフォンを開発しようと思ったのは、できるだけ多くの人びとが彼の検索エンジンにアクセスできるようにしたかったからだ。“弊社の収益のほとんどがGoogle Searchからだから、お金のあまりない人たちでもそれにアクセスできるようにしたかった”、と彼は述べた。

今日OracleとGoogleはこの裁判における最後の証言を提示した。最終弁論の開始は月曜日の予定で、陪審は来週、GoogleによるJava APIの使用が公正使用にあたるか否かを審議する。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

司法省、対Apple訴訟を取り下げ―テロ容疑者のiPhoneはFBIがアンロックに成功

2016-03-29-unlockingiphone

FBIはサンバーナーディーノにおける銃乱射事件でファルーク容疑者が所有していたiPhone 5cのロックを解除することに成功した。このため司法省はAppleに対してロック解除を要求する訴えを取り下げる。当局はロックを解除した具体的な方法についての情報の取り扱いには慎重で、新たな情報は公表されていない。

取り下げの文書は非常に簡単だった。「政府はファルークのiPhoneのデータにアクセスすることに成功したので2016年2月16日付けで裁判所によってApple Inc.に命じられたiPhoneのロック解除に関して捜査当局を援助せよとの命令はもはやその必要を失った」と連邦検事、Eileen M. Deckerと司法省次官補、Tracy L. Wilkisonは書いている。

5週間にわたってAppleと司法省は激しいやり取りを繰り広げてきた。勢いの赴くところ、両者はサンバーナーディーノを管轄するカリフォルニア州リバーサイドの連邦裁判所で対決することなるはずだった。しかし先週、FBIは、ぎりぎりの瞬間になって、Appleの助力は結局必要なかったと発表した。司法省は審理の延期を要請した。Appleは抗弁せず、審理は延期された。

司法省は4月5日までにFBIがFarookのiPhoneのデータにアクセスできたかどうか捕捉意見を提出することになっていた。期限を1週間残して政府は前述の見解を示した。

当初、2月に政府がAppleに援助を要求する根拠となったのはAll Writs Act〔全令状法〕だった。しかしAll Writs Actはそれ以外に利用可能な手段がある場合には有効ではない。そこで政府はiPhoneのロックロック解除が可能なのはAppleのみであることを立証しなければならないこととなった。

実はこれが今回政府が訴訟を取り下げた理由だ。FBIはAppleの手助けなしに容疑者のiPhoneのデータにアクセスすることに成功した。つまりAll Writs Actの適用対象外となり、当初の訴えは根拠を失った。

アメリカ政府を苦境から救ったサードパーティーの身元は依然として謎に包まれている。政府もまた今回データを入手した「代替手段」については沈黙している。Appleは将来のOSのアップデートでセキュリティーを強化するためにロックがどのように突破されたのか詳細を知りたいだろう。しかし現状ではAppleがそうした情報を入手できるかどうかは不明だ。

CNNによると、司法省は「代替手段はこの特定のiPhone〔のデータ取得〕のみに有効」と語ったという。しかし同じバージョンのiOSを搭載した別のiPhones 5cをFBIがクラックできないと信じるのは難しいだろう。またFBIがiPhoneの何らかの脆弱性を利用したのであれば、Secure EnclaveとTouch IDセンサーで守られているとしても、同じ脆弱性を持つあらゆるiPhoneが同じ方法でロックを解除されてしまうだろう。【略】

All Writs Actは重大な条文であり、軽々しく持ちだされるべきではない。政府はその前にあらゆる手段を尽くすべきだ。もし政府がテロリストの攻撃を利用してAppleにプライバシー侵害の前例を作らせようとしているのなら、そのような方針は恥ずべきであり是認することはできない。

画像: Arsgera/Shutterstock

〔日本版〕AppleがTechCrunchに送ってきた声明および司法省の訴訟取下げにかかる文書は原文を参照。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ブロックチェーンを利用してアーチストが自分の知的財産権を保護するサービスBlockai

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ブロックチェーンをめぐる議論は、デジタル通貨などお金のことが中心だったが、Blockaiは視点が違う。同社は、写真家などのアーチスト〜クリエイターたちのための、著作権を侵される心配の少ない作品登録サービスとして、ブロックチェーンの利用を考えている。

CEOのNathan Landsはそのサービスを、作品を国会図書館に登録することと、何もしないこととの中間だ、と表現する。厳密にいうと、作品には、それが作られたときから著作権が存在するが、誰かを著作権侵犯で訴えるためには登録が必要なのだ。

しかしLandsによると、サンフランシスコのベイエリア周辺のアーチストたちにインタビューした結果では、自分の作品を国会図書館に登録している人はわずかに10%だった。でも、そのほかの人たちも、登録が必要と感じている。そこでBlockaiの目的は、時間と費用を投じて公式に登録しなくても、一般公開されているデータベース、すなわちブロックチェーンに、自分の作品であるという証拠を作っておこう、というものだ。

Blockaiでは、自分の作品をドラッグ&ドロップするだけで登録ができ、登録証明書をもらえる。そして、誰かがその写真などを作者の許可無く使おうとしたら、そいつに証明書のコピーを送る。

Blockai Certificate

それは、法的にも有効なのだろうか? Landsによると、まだ実際に訴訟が起きたことはないが、Blockaiを使ってブロックチェーンの上に作られた記録は、法廷で十分な証拠になると信ずる、ということだ。そして彼の期待としては、証明書を送ることはInsagramの写真を送ることとは違うから、訴訟に持ち込まなくても効果はある(だろう)。

“創造の証拠を提供する方法としてブロックチェーンは完璧なソリューションだ”、とLandsは語る。“それは恒久的で不変な記録だ。一度記録がそこにできたら、それは永久に存在するし絶対に変えられない”。

有効性について尋ねると、Landsはdigital rights management(デジタル権利管理)の話を持ちだした。それはメディアの共有のされ方を規制する、往々にして面倒な、ときには役立たずのシステムだ。どうやら彼はゲーム業界にいた経験から、厳格なDRMは適正なソリューションではない、しかも画像などでは適用不可能、と確信したのだ。

“未来の理想的なシステムは、普遍的なデータベースがあって、そこで作品の権利を主張でき、 ロイヤルティー支払いのベースにもなる、という方式だ”、とLandsは述べる。“人びとが正しく使えるためには、できるかぎりシンプルなシステムであるべきだ”。

BlockaiでLandsは、その理想の方向へ進もうとしている。同社は、Scott and Cyan Banister(とそのAngelListの仲間たち), Social Starts, Sterling VC, Vectr Ventures, Brian Cartmell, そしてRamen Undergroundらから、54万7,000ドルの資金を調達した。

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AppleはiPhoneアンロックの事案で延期を獲得、返答の期限は2月26日に

SAN FRANCISCO, CA - OCTOBER 22:  Apple CEO Tim Cook speaks during an Apple announcement at the Yerba Buena Center for the Arts on October 22, 2013 in San Francisco, California.  The tech giant announced its new iPad Air, a new iPad mini with Retina display, OS X Mavericks and highlighted its Mac Pro.  (Photo by Justin Sullivan/Getty Images)

FBIのためにiPhoneを改造せよ、という裁判所命令にAppleが答えるべき締め切りの期日が、延期された。最初は火曜日が締め切りだったが、金曜日、2月26日までに延びた、という。

Appleは、iOSの特殊なバージョンを作れというFBIの要求が、負担が大きすぎ、200年の歴史をもつ法律All Writs Actの枠を超えていることを、証明する必要がある。延期のニュースは、さきほどBloombergが報じた

FBIの要求には、三つの要請がある。それはAppleに、間違ったパスワードを何回も入力するとその電話機のデータを消してしまう自動消去機能を無効化またはバイパスすることを求めている。またそれはAppleに、パスワード誤入力の際の遅延を取り去るよう求めている。遅延とは、次のパスワード入力(試し入力)までロックにより数分とか数時間待たされることだ。遅延をなくすことによりFBIは、自分たちによるパスコードの試行を短時間で済ませられる。第三に、いちばん問題なのが、それがAppleに、パスコードの入力をBluetoothやWi-Fiのような無線プロトコルまたはデバイス上の物理的ポートからできるような、新しいバージョンのiOSを作るよう、求めていることだ。

AppleはTim Cookの強い口調の言葉で要求を断ったが、今度は法に従って答えなければならない。そして裁判所が、応諾を強制すべきか否かを決定するだろう。

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GoogleのCEO、スンダル・ピチャイ、「当局が企業にハッキングを命じることはユーザーの利益を損なう」

2016-02-19-sundarpichai

GoogleのCEO、スンダル・ピチャイは「FBIの要求には従わず、iOSにバックドアを設けることはしない」というAppleの決断を支援するメッセージを公開した。Google CEOとして初の連続ツイートの中でピチャイは「顧客のデバイスないしデータをハッキングせよと企業に命じてよいとなれば不都合な先例になる」という意味の警告をした。おそらくそのとおりだろう。

ピチャイの5回連続のツイートは全文を下にエンベッドしてある。〔連投の末尾に日本語仮訳を付した〕

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連続ツイート

1/5 @tim_cookの発言は重要だ。企業に顧客のハッキングを強制することはプライバシーの侵害になるおそれがある。
2/5 司法当局と情報機関は犯罪を防ぎ公衆の安全を守る上で極めて困難な戦いに直面している。
3/5 われわれはユーザーの情報の安全を守るプロトコルを開発しているが、同時に合法的な命令に従って司法当局が必要な情報にアクセスすることを許している。
4/5 しかし顧客のデバイスないし情報をハッキングせよと企業に命じるのは全く別のことだ。これは不都合な前例になり得る。
5/5 非常に重要な問題であるので、この件に関して十分に考え抜かれたオープンな討論が起きることを期待している。

AppleのCEO、ティム・クックが判事の命令に従わないと決定した理由を詳細に述べた公開状を発表した翌日にこのツイートが投稿された。連邦判事はFBIがサンバーナーディーノ乱射事件の容疑者が所持していたiPhone 5CのデータにFBIがアクセスできるよう特定の技術的援助をすることをAppleに命じていた。

反論しているのはティム・クックだけではない。Whatsappのファウンダー、Jan Koumは今日(米国時間2/17)、Facebookのニュースフィードに短い投稿を行いg、「このような危険な先例が確立されるのを防がねばならない。今、われわれの自由と人権が危機に瀕している」と述べた。ACLU(米国自由人権協会)とEFF(電子フロンティア財団)もAppleを支持する声明を発表している。

Featured Image: LLUIS GENE/AFP/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

傷害事件の原告が超安すぎる示談金で引き下がらないための資金を提供するMighty

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裁判の原告の経験のある人はよくご存知と思うが、訴訟は長くて遅々として進まない過程になることが多い。とくに個人の傷害のケースでは、本人が働けない、収入がないことも多いから、よけいにつらい。

弁護側はよく、この点に目をつける。低額な示談を提示して、すぐにでもお金が必要な原告側の弱みにつけ込むのだ。その結果、傷害の被害者が不利、という歪んだ司法システムになってしまう。被害者は、法廷で十分な期間闘えるだけの財務基盤を、持っていないからだ。

そこで、Mightyが登場する。同社は、原告の資金調達を助けることによって、この不利をなくそうとする。そして、“訴訟の示談の額とその間の生活費との落差”の、解消を目指す。

この、ニューヨークの原告に対する金融プラットホームは最近、シリーズAで525万ドルを調達した。同社の発表によれば、9月に立ち上がったばかりの同社は、すでに原告たちに100万ドルあまりを投資した。

Mightyが一人の原告に投資する額は平均で5000ドルだ。最大で、示談金の見積額の10%までしか投資されない。同社自身も案件を審査するが、最終的に投資の可否や額を決めるのは同社への投資家たち(多くが副収入を求める弁護士)だ。

Mightyの原告への投資はノンリコース投資なので、原告が敗訴した場合、債務はいっさい残らない。

このプラットホームは一種のマーケットプレースにもなっていて、投資をする弁護士たちはなるべく低いリターン率で原告を魅(ひ)きつけようとする。しかしMightyの平均のリターン率は20から30%なので、従来のローンやカードローンなどよりも高い。

しかしあくまでもノンリコースで、原告が敗訴したとき債務が残らないから、どうしても高いリターン率になりがちだ。が、また、原告がこの投資を唯一の支えにして、公正で高い金額の示談にこぎつけることもある。原告としてはリターン率が高くても、最終的に相当額が手元に残るのだ。

30%のリターン率は一見暴利のようだが、でも重要なのは、これで従来の、原告への実質的差別がなくなることだ。しかも、往々にして弱き個人である原告は、敗訴しても借金の重荷に苦しむことはない。

結局のところ、Mightyのようなプラットホームの存在は司法産業にとって良いことだ。これもまた、テクノロジの力で司法の不公平が正される例の一つだ。

〔訳注: 原文がinvestなので投資と訳しているが、この場合の実態は融資だと思う。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

特許訴訟でウィスコンシン大学に敗れたAppleは$862Mの損害賠償に直面

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Appleは特許訴訟と無縁な企業ではないが、最近ウィスコンシン大学マディソン校の許認可部局が興した訴訟は、同社にとって大きな損失になるかもしれない。

合衆国陪審は、iPhone 5SとiPhone 6 、iPhone 6S、およびiPadの一部の機種に存在するAppleのA7、A8およびA8Xのチップに、Wisconsin Alumni Research Foundation(WARF, ウィスコンシン学友会研究財団)が1998年に申請した特許に該当する技術が含まれている、と評決した。

裁判長の合衆国地裁判事William Conleyは、Appleは最大で8億6200万ドルの損害を償う義務がある、と述べた。

Reutersの記事によると、この裁判は負担義務、損害、および意図的侵害の三つの部分に分かれ、後日下される後者への判決によってAppleの賠償額はさらに増える可能性がある。

問題の特許、U.S. Patent No. 5,781,752は、“並列処理計算機のための表を用いるデータ推測回路”と題され、それは分岐予測を使ってコンピュータの電力効率を上げる、とされている。

そしてこの訴訟は、とうてい、Appleが抱える特許問題の最後のものではない。Reutersによると、WARFは先月再び訴訟を興し、Appleの最新チップA9とA9Xがやはり特許を侵害している、と主張している。

2009年にWARFは同じ特許侵犯でIntelを訴訟し、示談を獲得した

2015年1月に提出された訴状の原文を、ご覧いただこう:

WARF v. Apple

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

コミュニティの公益訴訟資金をクラウドファンディングで支えるCrowdJustice、沖縄にもあればよいかも

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イギリスの総選挙後の新政権はHuman Rights Act(人権法)を破り捨てようとしているし、司法扶助の予算はすでに削られている。逆説的に今は、コミュニティによる法的扶助を一層充実していくための、絶好の好機だ。

国連の弁護士だったJulia Salaskyがロンドンで立ち上げたCrowdJusticeは、人びとが起こしたいと願っている“公益のための”訴訟を、クラウドファンディングで支えようとする。つまり訴訟資金をKickstarter方式で集めることによって、お金のない人でも公共の正義のためのたたかいができるようにする。

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Salaskyは次のように説明する: “たとえば地域の病院の廃止決定をコミュニティが合法的に廃案にさせたいと思ったとき、そのための法廷闘争資金をCrowdJusticeで募集することができる。コミュニティの誰かが、人権問題で不当扱いを受けているときなども、有志が訴訟のために立ち上がることができる。政権が変わるたびに司法へのアクセスはますます困難で費用のかかるものになっているが、クラウド(crowd, 人びと)の力でその流れを食い止めたい”。

“この前の連立政権のときもそうだったが、今度の保守党政権でも国民に対する法的援助の予算は大幅にカットされるだろう。また、人びとの政府の決定に対抗する能力を抑えるための、法律が作られるだろう。だから、弱者だけでなく一般の人びとも、司法へのアクセスがますます困難になる。とくに、重要だけれど解決に費用を要する問題が、無視されがちになる”、と彼女は語る。

CrowdJusticeで訴訟資金を集めるのが好適、とSalaskyが考えている問題は、バードサンクチュアリの保全のようなきわめてローカルな問題や、逆に、拷問や(政府による)大量監視のような、社会の全体に関わる問題だ。
“これらの問題は、実質的な原告の数が数十万から数百万にのぼることもありえる。しかし今は、それだけのコミュニティが資金を集めて立ち上がり、公益のためにたたかっていくための方法がない。今は、重要な公益的問題でも、勇敢な個人の頑張りと限られた資金能力に頼っている。だから私たちは、司法のシステムをハックして、コミュニティが自分たちの未来のために投資できるようにしたい”。

司法システムをハックする、というと聞こえは良いが、でも、公益のためやコミュニティの利益のために訴訟資金や活動資金を集めるというアイデアは、時代を超えて当たり前のことのようにも思える。それなのに、なぜ今まで、イギリスでは誰もそれをやろうとしなかったのか?

“法律の世界にクラウドファンディングが浸透するのに、こんなに長い時間がかかったなんて、とてもおかしい。CrowdJusticeの売り込みで走り回ったとき、法律家たちは異口同音に、‘今までそれがなかったなんて信じられないね’とか、‘何百年も昔からみんなそれを考えていたんだよ’、と言う。法律の世界には、ふつうの人たちが司法にアクセスする方法に関して絶望感と諦めがあり、とくにここ数年は、政府の施策や予算の面でもますます無視される存在になっていた”、とSalaskyは述べている。

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日本の裁判所が問題のレビューをGoogle Mapsから削除するようGoogleに命令

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日本で困ったニュースが生まれた。Googleが同社のGoogle Mapsサービスから、今訴訟案件となっている、顧客からのレビューを、削除するよう命令されたのだ。

今日(米国時間4/10)千葉地裁は合衆国のインターネット企業に、この国の某医院に対する二つの匿名レビューの削除を強制する仮差止命令を発行した。それらは同診療所におけるネガティブな顧客体験を記しているが、どちらのレビューも、Mapsサービス内のユーザ生成コンテンツに対してGoogleが課しているポリシーに違反していない。

本日の決定は医院からの名誉毀損訴訟に基づくもので、訴状には匿名のレビュワー(複数)を診療して、彼らの主張を否定している医師からの、宣誓供述書も含まれている。

裁判所はGoogleに、コンテンツを日本だけでなく全世界的に取り去るよう、命じている。

Googleは本誌TechCrunchに提供した声明で、“対応を検討している”と言っている。その中には命令に対する控訴も含まれるのだろう。

“弊社はビジネスのオーナーがレビューに応答できるためのツールを提供しており、また弊社のポリシーに違反するポストは取り下げているが、オンラインのレビューは人びとがビジネスに関する直接のフィードバックを掲出したり読んだりするための重要なツールであると信じている”、と同社は書いている。

公開されているコンテンツの削除は、つねに問題になる。とくに、その背後にあるプロセスがほとんど公式の否定だけという場合は、その否定がまた問題になる。救命や治療を職務とする医療専門家に関するフィードバックがWebから安易に消し去られるなら、本当に悪いことをしたビジネスや個人に対する正当なネガティブレビューも、Webから消し去られてしまう懸念が、当然ながら生ずる。

最近Googleは日本で、プライバシーや言論をめぐる失態をいくつか犯している。昨年は日本の裁判所が、ある人を犯罪に結びつけている検索結果を削除するよう、Googleに命じた。2012年に同社は、その自動補完機能が日本のプライバシー関連法に抵触すると判決され、修正を命じられた

以下は裁判所の仮処分決定書だ(日本語である):

Japan: Chiba District Court Google Injunction – 10 April

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

私はこうしてパテント・トロル(特許ゴロ)を撃退した―みんな立ち上がれ!

編集部: Chris Hullsは家族向けSNSのLife360の共同ファウンダー、CEO

いじめと戦うのは中学でおしまいかと思っていた。大人しくおくてだった私は小さい頃、かっこうのいじめの的だった。しかしある日、敢然と反撃するともう誰からもいじめを受けることはなくなった。それがまた始まったのだ。私はテクノロジー起業家として新たないじめに直面した。パテント・トロル(特許ゴロ)だ。

これは法律の抜け穴を巧みに利用し、他人の成功にたかって生き血を吸おうとする貪欲非道なヒル的存在である。 こいつらは無用ないし無効な特許を盾にとって「ライセンス料」を取り立てようとする。

学校のいじめと同様、たいていの人はいじめを恐れて反撃しない。ほとんどの場合、連中に金を払う方が訴訟より安くつくからだ。

去年の5月、私の会社、Life360が5000万ドルの資金を調達すると同時にパテント・トロルに襲われた。

このケースでわれわれを特許権侵害で訴えてきたのはAdvanced Ground Information Systems Inc.(AGIS)という会社で、最初はパテント・トロルであるかどうかはきりしなかったが、その行動はパテント・トロルそっくりだった。この会社を調べてみるとまともな会社にしてはおかしな点がいろいろ浮かび上がった。LinkedInに登録した社員が一人もいない。本社がフロリダのビーチの家だ。

AGISの主張によれば、地図の上にユーザーの位置をマーカーで表示したり、スマートフォンの位置情報をSNSに利用したりすればすべて彼らの特許の侵害になるという。

給料日に強盗に襲われたようなものだ。それまでにトロルと示談したことはあったが、私はもう黙っていないぞと決意した。いじめに屈すれば、さらなるいじめの標的になるだけだ。背中に「私はカモ」ですというドル印をつけて歩き回るようなものだ。

そこで「金を払うかサービスを停止しろ」という要求に対して私はこう答えた。

クソ野郎どの:

われわれは弁護士と相談しながら問題を調査している。そちらのいう金曜日の最終期日までに金を払うことはできない。弁護士と相談した後で迅速に対応するつもりだ。

今晩のところはあなた方にカルマが報いる〔自業自得の目に遭う〕ことを願っておこう。

クリス

私の言葉づかいはだいぶ過激だったが、意味は明白に通じた。われわれはすぐに連邦裁判所で顔を合わせることになった。連中は和解を望んだが、私は「1ドルたりとも支払う気はない。すべての特許をすべてのスタートアップに対して無料で公開するか、そうでなければわれわれはそちらのすべての特許の無効を申し立てる」と答えた。

AGISはわれわれがブラフをかませているのだろうと思ったらしい。大間違いだ。先週、陪審員が決定を下した。特許権侵害の訴えはすべて退けられた。トロルは死んだ。

トロルとの対決で私は3つの非伝統的戦略を取った。トロルに襲われた会社は参考にしていただきたい。

それで必ず勝てるという保証はできないが、「いいなりに和解金を払うつもりはない」という強いメッセージを伝えることはできる。それがトロルどもにとっては痛いのだ。他のトロルにもあなたが従順な被害者ではいないということを伝えることができる。

情報の公開

パテント・トロルやその後押しをする法律事務所にとって、自分たちの存在や活動が公けにされるぐらい嫌なことはない。だまって金を払ってくれることを望んでいる。われわれはAGIS Inc.とKenyon and Kenyon LLP法律事務所の弁護士、Mark Hannemann、Thomas Makinが陰に隠れることを許さなかった。訴訟の継続中、われわれは有力メディアや業界で影響力のある人々に向けてトロルどもの役割を公表した。

情報と資源の共有

AGISに襲われている他の会社を助けるためにわれわれはAGISの主張を無効にするためにわれわれが収集した情報を公開し、いわば訴訟をオープンソース化した。さらに調達資金が2500万ドル以下で同様の問題でAGISに訴えられている会社に対しては無料で訴訟援助を申し出た。これはAGISの主張に根拠がないことに広く注目を集めさせると同時に、われわれを訴えればトロルの他の訴訟にも悪影響が及ぶことを知らせるのが目的だった。

腹を据えてやり通す

これは正と邪の戦いだ。それだからやりがいがある。正義のために戦っているのだということをしっかり腹に据えておかねばならない。いささかおもはゆい言い方のような気がするかもしれないが、状況が苦しくなってきたときにこの自覚は大きな差を生む。

「訴訟は金が掛かり過ぎる、それより少額で和解した方が得だ」と勧める人もいた。しかしそれはおそろしく近視眼的な見方だ。トロルのいいなりにならず、断固として戦って撃退したという記録は他のトロルに狙われる危険性を大きく下げるのだ。

たしかにコストのかかる対処法ではあるが、われわれの強硬策が正解だった有力な証拠がある。AGISが特許権侵害の訴訟を起こした後、われわれはさらに2件の特許権侵害の通告を受けたが、AGISが壊滅的な敗北を喫したのを見ると、どちらも取り下げられた。

起業家、ベンチャーキャピタリスト、その他テクノロジー・コミュニティーの皆さんにお願いする。どうか和解に逃げないで欲しい。NewEggのLee Cheng、Findthebestの Kevin O’Connor たちに加わり、断固としてノーと言って欲しい。多くの被害者が立って反撃すればいじめはなくなる。テクノロジー・コミュニティーの宿痾ともいうべきパテン・トロルといういじめも同じだ。

画像: EFF Photos/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


gumi、韓国子会社で数千万円規模の横領か–社内調査で事実を確認中

gumiは3月19日、韓国の一部メディアにて、「同社子会社のgumi Koreaで役員による数十億ウォン(数億円)規模の横領がなされた可能性がある」との報道があったことを明らかにした。

gumiによると、横領は子会社役員ではなく子会社従業員の関与の疑いが強いとのことで、金額についても現時点では数千万円程度だと見込まれているという。

同社では現在、社内調査チームを組成し事実確認を進めており、公表すべき事実が確定したら遅滞なくこれを開示するとしている。


グノシー木村氏が代表退任、真相は「任期満了」ではなくグリーとの訴訟リスク回避か

木村新司氏

ニュースキュレーションアプリを提供するスタートアップの大型調達が続き話題になっているが、「Gunosy」を提供するグノシー代表取締役で共同最高経営責任者の木村新司氏が、8月28日付で退任した。弁護士ドットコムトピックスが報じ、TechCrunchでも事実を確認した。今後は創業者であり、代表取締役の福島良典氏が引き続き経営にあたる。

木村氏は起業家としても投資家としても知られる人物。グノシー創業期のエンジェル投資家でもある。2013年11月にはグノシーの代表に就任し、福島氏ととも事業をけん引してきた。グノシーでは木村氏の代表就任と時を同じくして広告販売を開始しており、マネタイズの基盤を作ってきた。またKDDIなどから合計24億円の資金を調達しているが、ここにも木村氏の経験やノウハウが大きく寄与したと言われている。

グノシー取締役CFOの伊藤光茂氏は木村氏の退任について、「もともと予定していたもの。任期満了に伴って8月28日の株主総会で決定した」と説明する。木村氏は今後、株主という立場でグノシーを支援していく。

同社は8月29日の官報で2015年5月期第2四半期決算を発表している。売上高は3億5905万円と、広告事業の立ち上がりは見えている一方、純損失が13億9367万円の赤字となっている。

この赤字決算と退任の関連性を考える人もいるかも知れないが、この赤字はあくまでテレビCMをはじめとした「勝負をかけたプロモーション戦略」の結果と見るべきだろう。同社も調達時に「広告宣伝目的」と語っていたし、それは同社に出資する投資家も想定していたはずだ。実際テレビCMが奏功したGunosyは現在500万ダウンロードを達成しているという。伊藤氏も赤字決算と木村氏の退任は「関係ない」と断言する。

競業避止義務をめぐる訴訟の可能性

伊藤氏は「赤字と結びつけて考えられるので、なおさら唐突な感じもするかもしれない。だが人材もそろい始めたタイミング。退任はポジティブな決断だ」と続ける。赤字ながらも広告ビジネスの基盤ができたため、木村氏は創業メンバーをはじめとした若い起業家にその道を託したということになる。

そう思って業界関係者への取材を続ける中で、「実はこのタイミングでの退任発表には、グリーとの競業避止義務でのトラブルを回避する目的があるのではないか」という話を何度か聞くことになった。

木村氏はかつてスマートフォン向けアドネットワーク事業を手がけるアトランティスを立ち上げ、2011年1月にグリーに売却した経験を持つ。木村氏は2013年9月に同社を離れ、同年11月にグノシーの共同代表となった。だがそれから1年も経たない2014年7月、グノシーもスマートフォン向けに(ネイティブ広告の)アドネットワークを展開していると日経デジタルマーケティングが報じた。前職を離れて、また同様のビジネスを展開するという報道があったわけだ。だが通常、取締役が退任する際は、競業避止義務(競業に就いてノウハウや顧客を奪うような行為を禁止すること)を2〜3年負うことがほとんどだ。

これは何を意味するのだろうか。もちろん複数の業界関係者から話を聞いた上ではあるが、あくまで可能性として考えるのであればこういうことだ。広告事業の基盤もでき、IPOへの道が見えたグノシー。しかし木村氏が代表となっていることで「競業を手がけている」としてグリーから訴訟を起こされるかもしれない。つまり、IPOを考えた際のリスクになりえてしまう。しかもグリーはグノシーの競合であるスマートニュースへ出資しているという関係なわけだ。

そう考えれば、グノシーの言う「(木村氏の退任は)もともと予定していたもの」という言葉の意味が、単純に「体制や広告ビジネスの基盤ができたことから若き起業家に道を託す」というものではなくなってくるのではないだろうか。この可能性についてグノシー側にも尋ねたところ、「(木村氏の競業避止義務に関する契約といった)個人のことについては分からないこともある」としつつも、「そういった話は聞いていない」(伊藤氏)という回答を得た。

いずれにせよグノシーが短期間で広告ビジネスの基盤を作り、大型調達を実現し、その資金を元にしたプロモーション施策でユーザーを拡大させたことは間違いない。木村氏はとあるイベントに登壇した際、「当初スマートニュースに遅れをとっていた」と語っていたが、現在公開されているダウンロード数では、同社を追い抜いている(Gunosyは500万ダウンロード、スマートニュースは450万ダウンロード)状況だ。今回の木村氏の退任はグノシーにどういう意味をもたらすのか。今後も引き続きその動向に注目していきたい。


スタートアップの会社設立時の法律事務を助けるStartupDocuments、79ドルの低料金から

法律事務所のサービスの、安価な定番既製品化(コモディティ化)があちこちで進んでいる。

スタートアップ専門の弁護士Leila Banijamaliが勤める法律事務所Bedrock はこれまで、Foodspotting、AdStack、RewardMeなどを手がけてきたが、このほどStartupDocumentsと名づけた新しいサービスを立ち上げた。

それは、スタートアップのためのオンラインの会社設立サービス、そして文書作成サービスだ。法人設立認可証だけなら79ドル、デラウェア州本格的に会社登記するような場合は200ドルとちょっとぐらいだ。Banijamaliは、後者で二つのサービスを担当している。

“スタートアップを立ち上げるときの障害の一つが法務だが、ふつうそれはものすごく高い”、と彼女は言う。“でも最近のクライアントは賢くなってるし、テクノロジも進歩してるから、法律サービスも変わらざるを得ないのよ”。

すでにオンラインの法律サービスはLegalZoomなどいろいろあるけど、彼女によるとスタートアップに特化しているところはない。“LegalZoomみたいに山のように大量の文書を抱えたくはない。スタートアップは、ほんとにニッチな市場だから”、と彼女は語る。

さらに彼女によると、Y Combinatorが支えている法律サービススタートアップClerkyなんかは、カスタマイゼーションの幅があまりない。

Orrickなどの大手法律事務所は、スタートアップのためのフォームのライブラリを提供している。またY Combinatorには最近、シード資金を得るための共有文書集がある。

Banijamaliは、BedrockもやりながらStartupDocumentsもやる、と言っている。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))