ぴったりの建築家やリノベ業者を探せるSUVACOが1億8000万円を調達

理想通りの家を作るためには、それを実現できる建築家やリノベーション会社を見つける必要がある。SUVACOは注文住宅やリノーベションを依頼したい施工主と住宅のプロを結びつけるマッチングサイトを提供している。

本日、SUVACOは中部日本放送(CBC)、モバイル・インターネットキャピタルが運営するファンドから総額1億8000万円の第三者割当増資を実施した。

SUVACOのサイトでは、依頼したい仕事(注文住宅かリノベーション/リフォームか)と地域を選択して、建築家やリフォーム会社を検索することができる。気になる建築家や会社を見つけたら、プロフィールから対応可能な業務や特徴、手がけた住宅事例などを確認し、資料請求や問い合わせができる仕組みだ。

SUVACOでは専任のアドバイザーによる専門家の紹介サービスも提供している。これは例えば、「自然素材に詳しい専門家を教えてほしい」といったユーザーの要望を聞き取り、アドバイザーが適任の専門家を数社紹介するサービスだ。

他にもSUVACOでは扶桑社とリノベーション事例や体験談、セミナー情報などを発信するリノベーション情報サイト「リノベりす」を運営している。

今回、調達した資金は経営基盤を強化と機能、コンテンツの拡充に充てる予定、とSUVACOはリリースに記載している。また、SUVACOは本格的な全国展開を目指し、まずは東海・名古屋地区に拠点を設立する計画だという。今回の調達ラウンドには東海、名古屋地区に強い基盤を持つCBCが参加しているが、SUVACOは彼らと協働して、リノベーションの魅力について情報発信を行っていくとしている。

SUVACOは2013年4月設立。2014年3月にフジ・スタートアップ・ベンチャーズとモバイル・インターネットキャピタルより総額1億2000万円の第三者割当増資を実施している。

ファッションの着回し提案アプリ「クローゼット」運営元が1.8億円を調達

頻繁に会う同級生や同僚に毎日同じ服を着ていると思われたくないと思う女性は多いだろう。同じトップスを着るにとしても、合わせるボトムスや小物を変えて、様々なバリエーションを作る「着回し力」が大事になるが、毎朝新しい洋服のコーデを考えるのは負担だ。

STANDING OVATIONが提供するクローゼットアプリ「XZ(クローゼット)」は、ユーザーが互いに着回しアイデアを共有できるようにすることでこの悩みを解決しようとしている。

本日、STANDING OVATIONは総額1.8億円の第三者割当増資を実施した。引受先はファッション&テクノロジー1号投資事業組合(大手繊維商社である豊島系列のファンド)、D4V(デザインコンサルティング会社IDEOとGenuine Startupsの合弁VC)、ボルテージ、 メサイアキャピタル、エンジェル投資家、既存投資家のアイスタイルグループだ。

XZは、自分の持っているファッションアイテムを登録して、コーデを作成、共有して楽しむアプリだ。カレンダー機能では、毎日の洋服のコーデを記録することができ、過去に何を着たかを把握できる。

ただ、XZは自分のクローゼットのみをデジタル化するアプリではなく、「ユーザー間で1つのデジタルクローゼットを共有しているイメージ」とSTANDING OVATION代表取締役CEOを務める荻田芳宏氏は説明する。ユーザーは、自分も手持ちアイテムに限らず、他のユーザーが登録したアイテムを使ってコードを作成することができる仕組みだ。

2014年9月にアプリをローンチ以来、アプリダウンロード数は43万、アイテムの登録数200万点、コーデのアイデア提案は約60万点以上になったという。

XZはこれまでユーザーコミュニティーの拡大に注力してきたが、今後はB2CとC2Cのコマース機能を搭載することでアプリ上だけでなく、実際にファッションアイテムがユーザー間で流通するようにしたい考えだと言う。最終的に目指しているのは、「ファッションアイテムの持続可能な循環モデル」と荻田氏は言う。

日本での洋服の廃棄量は年間100万トンに及ぶと言われていて、たんすの中にしまわれて活躍していない服も多くある。XZではコーデを切り口に洋服を着回す方法を提案したり、ユーザー間でアイテムを売買できるコマース機能を搭載したりすることで、こうした使っていないファッションアイテムを流動化できるようにしたい考えだ。今回調達した資金は、この構想を実現するためにサービス開発と運営費に充てる予定、と荻田氏は言う。

STANDING OVATIONは2014年1月設立。「TechCrunch Tokyo 2014」のスタートアップバトルのファイナリストでもある。シードラウンドでSkyland Venturesから調達し、2015年7月にはgumi ventures、DBJキャピタル、アイスタイルグループより総額1.4億円の調達を行なっている。

STANDING OVATION代表取締役CEOの荻田芳宏氏

お金の貸し借りメモアプリ「よろペイ」、運営元が4億円調達——ICO関連事業の展開も視野に

グローバル・ブレイン代表取締役の百合本安彦氏(左)とPopshoot代表取締役CEOの大山敏浩氏(右)

お金の貸し借りを「メモ」として残したり、そのメモの通りにお金を請求・支払いしたりできるアプリ「よろペイ」。サービスを提供するPopshootがグローバル・ブレイン、グリー、マネックスグループ代表執行役社長CEO松本大氏(松本氏は、East VenturesとSkyland Venturesとともにシードラウンドで出資している)、その他エンジェル投資家数名から総額4億円の資金を調達したことを明らかにした。

LINE PAYやpaymo、Kyashなどさまざま手法で個人間での決済や送金を実現するサービスが登場しているが、よろペイはお金の貸し借りをメモするという特性からか、ライブなどのチケットや、旅行の宿泊費・交通費などのメモ、請求に使われるのが多いという。「メモされた金額の総額も伸びていますが、個人間決済のGMV(Gross Merchandise Value:総流通総額)も順調に推移しています」(Popshoot代表取締役CEOの大山敏浩氏)

Popshootでは今回調達した資金でよろペイのユーザー数拡大と新サービス導入に向けた研究開発を進める。また、個人間決済事業を起点に周辺領域の事業に参入する予定だとしている。「レンディングや株式投資、暗号通貨などの領域に参入する予定です。話題のICO関連事業も上場企業をパートナーに迎えて準備を進めています。貸し借りを記録したメモというのはある種デジタルな通貨の一種とも考えられるので、法定通貨を一部リプレイスすることが可能ですし、様々な事業の展開余地があると感じています」(大山氏)

“24時間待てば無料”のマンガアプリ「マンガトリガー」が資金調達

iOS向けマンガアプリの「マンガトリガー」を運営するナンバーナインは8月28日、パチンコ遊技機などを開発する東証1部上場のフィールズから資金調達を実施したと発表した。金額は非公開だが、調達額は億単位に上るという。同社は今回のラウンドで、総額2億円規模の調達を目指すとしている。

同社は今回の資金調達を通じ、フィールズが持つ知的財産やマンガ制作のノウハウを活かしたコンテンツ開発力の強化、およびレコメンドシステムの開発を目指す。

マンガトリガーのコンセプトは「漫画のセレクトショップ」。毎年1万点以上の新刊が市場に並ぶと言われるマンガ市場だが、その膨大な数の中から厳選したオススメ作品をユーザーに届けるというのがそのコンセプトの意味だ。

編集部からのオススメだけでなく、サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏や堀江貴文氏(自身もファウンダーとして参画)といった「マンガ好き」の著名人たちのオススメ作品を読めるというのも特徴の1つだ。

ナンバーナイン代表の小林琢磨氏は「マンガトリガーはあえて掲載する作品を絞る事で、他の漫画アプリでは埋もれてしまっている良質な作品をピックアップし、著名人のオススメなどの後押しをすることで、出会った事の無い面白い漫画に出会える機会を作っている」と語る。

現在、マンガトリガーには約100作品が掲載され、同アプリのダウンロード数は現在約5万6000件。MAUは約1万4000人だ。

読者ごころをくすぐる料金体系

広告を表示する代わりに無料でマンガを読めるという競合アプリも存在するが、マンガトリガーは1枚120円のコインを購入する課金方式を採用している。そのため購読中に広告は表示されない。

ただし、マンガトリガーでは一部作品を除いて、「24時間待てば1話分を無料で読める」という機能を導入している。これはいわば本屋での“立ち読み”的な機能だ。

「どんな内容なのか分からないから、ちょっと見てみたい」というユーザーの希望をかなえながら、「面白ければ早く読むために課金する」というアクションを起こさせるうまい仕組みだと思う。

今後の展開について小林氏は、「今後は性別や年齢、趣味嗜好に合わせてTOP画面に掲載される作品を変えたりといった独自のレコメンド機能を実装していく。レビューなどのキュレーションメディアとしての側面も強化したい。」と語る。

ナンバーナインは2016年11月の設立。2017年4月にはEast Venturesと個人投資家などから3500万円を調達している。

住宅ローン借り換えで平均480万円節約――「モゲチェック」が2.5億円調達

住宅ローンの借り換えサービスなどを展開するMFSは8月28日、オプトベンチャーズグロービス・キャピタル・パートナーズを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は2億5000万円だ。

同社は今回調達した資金を利用して、新サービスの開発、人員拡大、マーケティングの強化、全国対応のオペレーション構築に注力するとしている。

MFSの主力サービスは、2015年6月にリリースした住宅ローンの借り換え支援サービス「モゲチェック」だ。

低金利がつづく日本ではローンの借り換えによってメリットを得られる人が多いものの、「面倒くさい」「分からない」などの理由で借り換えを行っていない人が多い。MFSのリリースによれば、日本の住宅ローン残高は200兆円、1200万件の規模だというが、そのうち過半数の600万件が割高な金利のまま運用されつづけているという。

そういった人たちが得られるであろうメリットを視覚化し、借り換えを促すのが「モゲチェック」の役割だ。

また、MFSは2017年1月、この「モゲチェック」に続く新たなサービスである「モゲスコア」をリリースした。これは、年収や家族構成など10項目を参考にして、ユーザーが住宅ローンをいくらまで借りられるのかを算出するサービスだ。「モゲスコア」の詳細については以下の記事を参考にしていただきたい。

住宅ローンいくらまで借りれる? 10項目による自動診断をMFSが開始

リアル店舗モデル vs B2B2Cモデル

日本のスタートアップ業界にはMFSと同様のサービスを展開する競合が存在する。2017年6月に8000万円の資金調達を発表したWhatzMoneyだ。

でも、両社のアプローチにはちょっと違いがある。

MFSのリアル店舗

「モゲチェック」をローンチした直後のMFSは、エンドユーザーに借り換え支援アプリを直接提供するというビジネスモデルだった。

しかし、その後同社はリアル店舗を利用したビジネスに方向転換する。

コストはかかるが、直接相談できる対人コンサルを起用することでコンバージョン率をできるだけ高めようというのがMFSのアプローチだ。

TechCrunch Japanが前回取材したときの話では、店舗に来店した人の6〜7割が実際にローンの借り換えを行っているのだとか。現在は新宿、銀座、横浜の3店舗が稼働中で、累計相談件数は1000件、金利削減額の平均は480万円だ。

一方のWhatzMoneyは、ユーザーとのあいだにリフォーム会社などの事業会社を挟んだ“B2B2Cモデル”を採用。事業会社をエンドユーザーとの接点として利用しながらマーケティング費用を抑えるための戦略だ。

同じ住宅ローンの借り換えというビジネスを展開する両社だが、このアプローチの違いは非常におもしろいと思う。

2009年に創業のMFSは、2015年9月にマネックスなどから9000万円を調達。2016年6月には今回のラウンドにも参加したグロービス・キャピタル・パートナーズから2億円の資金調達を実施している。

今回を含むMFSの累計調達金額は約5億4000万円となる。

楽天出身・出張手配サービスのAIトラベルが4000万円を資金調達、法人向けサービスも開始

出張が決まったとき、地図アプリ、乗換案内や航空会社サイトの時刻表、ホテルや航空券の予約サイトなどを駆使してプランを決め、交通手段を確保し、最適な場所と価格のホテルを予約するのは、楽しいという人もいるかもしれないが、なかなか手間がかかることは間違いない。「AI Travel」は、国内外への出張時に、出発地と目的地、行き帰りの日時と、大体の宿泊予算を入力するだけで、AIが最適なホテル・飛行機・新幹線を調べてくれて、そのまま予約までできる出張手配・予約・管理サービスだ。

このサービスを提供するAIトラベルは8月23日、旅費の申請・精算機能や、部門やプロジェクトごとの経費の一元管理・分析機能を追加した、AI Travelの法人向けサービスの提供を発表、申し込み受付を開始した。法人向けサービスでは、海外出張時のビザの手配代行やリスク管理のサポート、主要な会計ソフトへのデータ入力などにも対応するという。AIトラベルは法人サービスでは、出張者の手配効率の向上だけでなく、総務・経理の業務の自動化・効率化による管理コストの削減、出張経費の可視化も図れる。「TechCrunch Tokyo 2016」のスタートアップバトルでファイナリストにも選ばれている

また同日、AIトラベルはプレシリーズAラウンドとして、ジェネシアベンチャーズベンチャーユナイテッド、TLMを引受先とした総額約4000万円の第三者割当増資を実施したことも明らかにしている。

サービス開始当初から、出張の多いビジネスマンにとっての利便性もうっていたAI Travel。だが実際にユーザーへのヒアリングを進めていくと、「予約のプロセスが楽になっても、出張者の多くは(会社のルール上の)申請フローにおける雑務に対してまだ不満を強く持っているということが分かってきた」(AIトラベル代表取締役の藤原由翼氏)という。また同時に、出張者を管理する総務・経理部門にも課題感があった。

「上司からは業務効率の改善やコスト削減を依頼され、現場からは面倒なプロセスに対する不満が出たり、出張報告書の依頼や経費精算に関するやりとりでのストレスなどがあったりする。もっと効率的にできるはず…と思っても最適なサービスが分からないという意見が多かった」(藤原氏)

実際藤原氏が法人向けの旅行サービスを調査したところ、観光向けサイトに多少の機能が追加されただけ、もしくは逆に多大なコストのかかる大規模なシステムしかなかったのだという。

「米国ではトラベルマネージャーという出張管理を専門とした役職があり、インハウスで雇っている例が多いことも分かりました。既存のプレイヤーのように旅行代理店として予約を増やすことを目的とせず、企業の出張を(まるで優秀なトラベルマネージャーがいるかのように)適切にマネジメントできるサービスを目指しています」(藤原氏)。トラベルマネージャーは、実際経費削減や業務改善といった観点まで含めて出張を管理する。AI Travelも単なる代理店機能でなく、そこまでの機能を提供したいという。すでに、月間50〜100件程度の出張が発生する会社を中心に試験的な導入も行っている。

AIトラベル代表の藤原氏は楽天出身で、インキュベイト・ファンドのデザインフェローを務めた後、2014年に起業した。今回の調達資金により、サービス開発と運営体制をより一層強化する、としている。

全ゲノムのサービスプラットフォーム「GENOMIC EXPLORER」が正式ローンチ、運営元は5000万円を調達

ゲノムスタートアップのAWAKENSは8月21日、総額約5000万円の資金調達を実施した。今回のエンジェルラウンドに参加したのは500 Startups Japan、エムスリー、日本医療機器開発機構、エンジェル投資家の鎌田富久氏、西野恒五郎氏(マーソ代表取締役)、北野 宏明氏(ソニーコンピュータサイエンス研究所代表取締役社長兼所長)、その他複数の個人投資家だ。

AWAKENSは2017年1月にサンフランシスコに設立し、コンシューマー向けの「GENOMIC EXPLORER」と法人向けの「GENOME LINK」の2つのサービスを準備している。GENOMIC EXPLORERは米国でベータ版を先行リリースしていて、米国時間8月22日に正式版をリリースした。日本では今年秋以降に提供を開始する予定だ。

コンシューマー向けのGENOMIC EXPLORERは自身の全ゲノムデータを見える化し、ゲノムデータの網羅的な解釈情報へのアクセスするためのサービスだ。

自身の全ゲノム情報を取得するにはGENOMIC EXPLORERで遺伝子検査キットを注文するか、あるいはすでに米国の遺伝子検査サービス23andMeAncestry.comを受けたことのあるユーザーはその検査結果をアップロードして利用することもできる。ただ、23andmeやAncestry.comの検査は全ゲノムの解析ではないので、一部のデータしか閲覧できない。

GENOMIC EXPLORERの特徴は全ゲノム配列の生データを見たり、世界中の論文から自分のゲノムのどこにどのような傾向が出ているか調べたりできる点だ。また、レポーティング機能では、自分が朝型か夜型なのかや体質的に不足しやすい栄養素、味覚、性格の傾向などを知ることができる。

現在、数万円で受けられる遺伝子検査は複数あるが、そうしたサービスはゲノムデータ全体の0.01%から0.03%程度の配列データでしか解析していないものが多く、遺伝子検査サービスごとに解析結果が異なることもあると共同ファウンダーでCEOを務める高野誠大氏は説明する。

GENOMIC EXPLORERでは、まずユーザーにとって信頼できる情報にアクセスできる場を提供し、ユーザーが自分のゲノムについて知りたいことを調べ、理解できるようにしたい考えだという。ただ、最終的にAWAKENSが目指しているのはゲノムのビジュアライズツールに留まらず、「ユーザーがそのデータを他のサービスで活用できるプラットフォームになること」と高野氏は説明する。

現状では、全ゲノムの遺伝子検査は十数万円程度かかるが、今後5年から10年でその費用は数万円台まで下がることが見込まれている。そうなれば、ほとんどの人が人生のどこかの時点で自身のゲノムデータを取得し、そのデータを例えば、医療、ヘルスケア、フィットネス、教育サービスなどで活用するようになると高野氏は考えている。それは例えば、ユーザーが自身のゲノムデータをフィットネスサービスと連携することで、より自分の体質や性格に合ったサービスを受けられるような世界だ。

AWAKENSではそうした未来の実現のために、ユーザーのゲノム情報を個別化サービスに連携するためのB2B事業GENOME LINKを準備している。GENOME LINKは日本で医療やフィットネスといった分野企業とのパートナーシップを進めていると高野氏は言う。

高野氏は前職で医療ベンチャーのエムスリーにおいてゲノムビジネスの新規事業に携わっていた。同社の共同ファウンダーでCOOを務める松田祐太氏もDeNAにて遺伝子検査MYCODEの立ち上げに携わっていたそうだ。全ゲノムデータを用いるサービスは彼らが週末プロジェクトとして始めたものだったが、投資家のサポートもあり起業に至ったのだという。

今回の調達した資金は主にサービス開発と法人パートナー企業との連携構築を進める計画と高野氏は話している。

日本では8月21日に遺伝子検査サービスなどを提供するジェネシスヘルスケアが楽天から総額14億円を調達したとTechCrunch Japanでも報じた。他にもDeNAライフサイエンスやユーグレナの完全子会社となることを発表したGenequestなどの遺伝子検査サービスがある。遺伝子検査が一般的になるほど、その先データをどのように活用するかが重要な部分になりそうだ。

大学別スタートアップ数&調達額ランキング

【編集部注】執筆者のJoanna GlasnerCrunchbaseの記者。

会社を立ち上げてVCから資金を調達する上で有名大学を出ている必要はない。しかし実際のデータを見てみると、出身校と資金調達には深い関係がありそうだということがわかる。

この記事では、スタートアップ投資を受けた起業家という観点から、アメリカの有名大学をランク付けしている。注目したのは卒業生が立ち上げたスタートアップの数、そして調達資金額だ。

もしも意外な結果を期待してこの記事を読んでいる人がいれば、ここで読むのをやめた方がいい。というのも、スタートアップエコシステムにいる人であれば、ほとんどの内容が想定の範囲内に収まるだろうからだ。もっと具体的に言えばスタンフォード大学がトップで、アイビーリーグや有名工科大学、研究大学がその後に続く、という結果だった。

もっとも多くのスタートアップを輩出した大学

ひとつめのランキングでは、過去1年間に100万ドル以上を調達したスタートアップのファウンダーの数を大学別にまとめている。先述の通り全くの予想外と思われるものはないが、前年比で数値が伸びた大学がいくつかあるのは注目に値する。マサチューセッツ工科大学(MIT)の卒業生によって設立され、100万ドル以上を調達した企業の数は134社だった(昨年は108社)。ワシントン大学も2015〜2016年の35社から2016〜2017年は41社に数を伸ばし、イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の数値も同時期に39社から44社へと増加した。

ビジネススクールの状況

Crunchbaseではビジネススクールが他の教育機関と分けて記録されているので、ランキングも別のものを用意した(対象期間は2016年8月1日〜2017年8月1日)。スタンフォード大学が1位ではないということを除くと、このランキングにも大きなサプライズはない。スタンフォードの代わりにトップの座に輝いたのがハーバード大学だ(スタンフォード大学ビジネススクールの生徒数が800人強で、ハーバード大学ビジネススクールは1800人以上というのも関係しているだろう)。

調達金額は?

卒業生が立ち上げた企業の調達額合計は、これまでのランキングとは少し違う。というのも、ユニコーン企業や準ユニコーン企業の調達額はかなり大きくなるため、1社か2社そのような企業を輩出している学校が結果をかき乱しているのだ。

ニューヨーク市立大学バルーク校がその好例だ。同校の卒業生が設立したスタートアップで、過去1年間に100万ドル以上を調達した企業は4社しかない。しかしそのうちの1社が、公表されている情報だけを参照しても対象期間に40億ドル近くを調達したWeWork(ファウンダーのAdam Neumannが同校の卒業生)なのだ。シカゴ大学も同様で、東南アジアの配車サービス大手Grabが同校の合計調達金額の75%以上を占めている。

とはいっても、どの学校から調達額の多いスタートアップが輩出されているのか見るのはなかなか興味深い。以下が上位をまとめたランキングだ。

1社が合計調達額の半分以上を占めている学校の例は次の通り:カーネギーメロン大学(Argo AI)、ニューヨーク市立大学バルーク校(WeWork)、ハーバード大学ビジネススクール(Grab)、シカゴ大学(こちらもGrab)。

全体を見てみると、出身校によってスタートアップの規模が決まるということはなさそうだが、特色のある学校に通うというのはスタートアップをはじめる上でメリットがあるようだ。特にSTEM(科学・技術・工学・数学の教育分野)やビジネスの分野で名の通った学校出身のファウンダーが目立った。さらに強固なテックエコシステムが存在し、ベンチャーキャピタルが集中する都市部の学校も良い成績を残している。

調査方法

Crunchbaseの出身校に関するデータでは、ビジネススクールとそれ以外が区別されている(ハーバード大学ビジネススクールのみを卒業した人はハーバード大学の卒業生とはカウントされていない)。しかし一部のデータにはこれが反映されておらず、ビジネススクールの卒業生がその大学の卒業生とカウントされている場合やその逆のケースもある。ランキングへの影響はほとんどないが、これにより多少の誤差が生まれている。

さらに、多くのビジネススクールは、従来のMBA以外にもハーバードのAMP(Advanced Management Program:学位なしの経営人材養成プログラム)のようなサーティフィケートや追加的な学位を授与している。ビジネススクール卒業生が設立したスタートアップ数のランキングでは、学位とサーティフィケートの区別はせず、データベース上の記載内容に則ってデータを分類した。しかし、調達額のランキングには短期プログラム修了生のデータは含まれていない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

現場主義SFA「Senses」運営のマツリカが総額1.3億円を資金調達、中規模企業向け新プランも提供開始へ

クラウド型営業支援ツール「Senses」を提供するマツリカは8月21日、第三者割当増資による総額約1億3000万円の資金調達実施を発表した。引受先はDraper Nexus Venturesアーキタイプベンチャーズニッセイ・キャピタルの3社。

Draper Nexus Venturesとアーキタイプベンチャーズは、2016年4月のシードラウンドでも約5000万円をマツリカに出資済み。今回の出資に伴い、Draper Nexus VenturesのManaging Directorで、セールスフォースベンチャーズの元日本投資責任者を務めていた倉林陽氏が社外取締役に就任する。倉林氏はテラスカイSansanなどへの投資実績も持つ人物だ。

現場営業の目線にこだわって作ったSFA「Senses」

マツリカは2015年4月の設立。共同代表を務める黒佐英司氏は「NewsPicks」でおなじみのユーザベースで、経済情報検索サービス「SPEEDA」の販促・保守、営業・マーケティング戦略の立案・執行を担当していた。もう1人の共同代表である飯作供史氏も、ユーザベースで技術統括執行役員としてプロダクト運営、製品開発に携わっていた。

黒佐氏は、マツリカで営業支援ツールを手がけることにしたきっかけについて、こう話す。「ユーザベースにいた当時、上場準備に伴って営業やマーケティングの人員が増える中、SFA(Sales Force Automation:営業支援ツール)やCRM(Customer Relationship Management:顧客管理)ツールを入れたいということで導入を検討したが、既存のツールではしっくり来なかった。何がかというと、現場にメリットがない点だ。管理者にとってはメリットがあるのだが、現場の営業担当にとっては『入力させられる』ツールになっている。BtoBツールとはいえ、実際に使うユーザーに価値が届いていないのは、もったいないなと感じていた」(黒佐氏)

そうして開発されたのが、クラウド型SFA/CRMツール、Sensesだ。案件や顧客の管理、レポーティング機能など、既存のSFA/CRMツールが持つ基本的な機能に加えて、「現場目線の機能や操作性にこだわって作った」と黒佐氏は言う。「これまでのツールとの違いはまず、入力しやすく使いやすい、という点。G SuiteやOffice 365、サイボウズ、Sansanとの連携機能があって、メールやカレンダーなどの情報を自動で取り込めるので、入力の手間を省き、簡単に情報をためることができる。UI/UXについても、3〜4クリックを費やしていたところを1〜2クリックで操作できるようにするなど、画面にとことんこだわった」(黒佐氏)

また「たまった情報を記録するだけでなく、活用できるようにした」点も、現場目線を重視した結果だと黒佐氏は続ける。「AIを使った情報解析で、担当者に次の行動を提案する機能を搭載した。過去の案件から似たような例で成功した行動をサジェストしてくれる」(黒佐氏)

Sensesは、2016年4月にサービスを公開し、2017年初からはより本格的にサービスを展開。現在、有料の基本プランとして「スタータープラン」を1ユーザーあたり月額5000円で提供し、利用企業数は100社に届く勢いだという。そしてマツリカでは今回の資金調達と同時に、中規模以上の企業を対象にしたアップグレードプランとして、「Growthプラン」の提供を発表している。

Growthプランでは、AIでのデータ解析機能を強化。現場担当者の次の行動をアシストするスタータープランの機能に加え、部門全体での売上や成約数などの目標達成に対するアラートを通知するなど、経営管理サイドのニーズにも応える機能を準備しているそうだ。また、営業担当が一定数以上となる中規模企業を想定し、営業組織の階層化にも対応する予定だという。

Growthプランは、まずは2017年内にベータ版として提供を開始。2018年には本格展開を行う予定だ。黒佐氏は「今後、スタータープランに代わる主力サービスに育てていきたい」と述べている。

「SMB向けのSFAとして競合と戦っていく」

今回の資金調達の目的について、黒佐氏は「まずは開発に投資する。現在開発中のGrowthプランを仕上げていくことと、既存ユーザーが増える中、新規機能だけでなく、サービスの安定運用に向けてもリソースを割いていく」と話している。また、営業、マーケティングの強化も図る考えだ。「2017年初のサービスの本格展開から半年以上を経て、販売のサイクルが整ってきた。どの程度マーケティングに(費用)投下すれば、どのぐらい成果が上がる、というのが見えてきたので、いよいよ拡販体制に入り、成長速度を上げていく」(黒佐氏)

なお、中規模企業向けとしてGrowthプランの提供を予定してはいるものの、黒佐氏は「今後の競合サービスとの戦い方としては『SMB(中小企業)向けのSFAならSenses』とまず思い浮かぶようなサービスにしたい」とも語っている。「今までならSFAといえばSalesforceしか選択肢がなく、小規模の企業では導入をためらっていたかもしれない。そこでSensesを第一の選択肢として考えてもらえるようにしたい」(黒佐氏)

また、中期的には「グローバル展開も考えている」と黒佐氏は言う。「SFAは国によって違うというところがあまりなく、ローカライズもそれほど要らないので、英語化して販売することも検討している」(黒佐氏)。さらに、営業支援ツールとしてのSensesを、人事や広報部門向けにチューニングすることで、新サービスラインアップとして提供する構想もあるという。社員や採用候補者、あるいはパブリックリレーションを図るメディアなどを、社内外の“顧客”と見立ててアプローチすることを考えれば、当然の発想かもしれない。「実際、Sensesの顧客の中に、既に人事・広報部門で利用しているケースがある。意図しない使い方を、ユーザーが見つけてくれている形だ。実はマツリカでも、新規営業開拓と既存顧客管理のほかに、採用や広報でSensesを使っている。自分たちでもナレッジをためたところで、プロダクトとして出したいと考えている」(黒佐氏)

筑波大発、水中ドローンの空間知能化研究所が1.9億円を資金調達

テレビのバラエティー番組やYouTubeの動画などでも、今や日常的に目にする飛行型ドローンの空撮映像。国土交通省が建設・土木の生産性向上を目指してICTの活用を進める取り組み「i-Construction」の中でも、ドローンを使った測量作業のマニュアルや安全基準が用意され、建築・土木の現場など、業務での活用も盛んになってきた。

一方、水中撮影や調査はまだあまり手軽といえる状況ではない。GoProなどを使った映像も見かけるが、業務用途では主にダイバーや潜水士による有人撮影が行われている。さらに40メートルを超える深さになると、遠隔無人探査機(ROV)と呼ばれる機材が使われるが、ROVは操作が難しく高価なのが難点だ。とはいえ、近年ダムや港湾などで、水中インフラの維持・管理、高寿命化のニーズは高まっていて、より手軽に、安価で水中を撮影・調査する方法が求められている。

筑波大学発のベンチャー、空間知能化研究所の水中ドローンは、そうしたニーズに応えるべく、開発が進められている。日本では初の水中ドローン専業メーカーである空間知能化研究所は、8月21日、Beyond Next Ventures三井住友海上キャピタルおよびSMBCベンチャーキャピタルが運用するファンド、フリービットインベストメントを引受先とする、総額1億9000万円の資金調達の実施を発表した。調達により、資本金の合計は2億2180万円(資本準備金を含む)となる。

空間知能化研究所の設立は2014年6月。メカ・回路・組込みソフトウェアを一気通貫で開発する技術バックグラウンドを持つ、筑波大学出身の伊藤昌平氏を代表取締役に、またセンサー、クラウドシステムの専門家で筑波大学教授の中内靖氏を取締役会長として、共同で設立した企業だ。

空間知能化研究所が現在開発を進める、業務用の水中ドローン「SPIDER」は、母船上から電源を供給して操作していた従来のROVと比べて、小型・軽量でバッテリー駆動式。電源供給が不要な分、ケーブルを細くすることができ、取り回しやすくなっている。特別な専用コントローラーは不要で、PCとゲームパッドがあれば操作ができる。また、搭載された8つのスラスターで深度・姿勢を自動維持する機能や、画像処理による機体の位置保持機能を実装予定で、潮流などがある程度強い海でも映像撮影がより簡単に実現できるという。

SPIDERの潜行性能は300メートル。ダムや近海でのインフラ整備に必要な深度は十分にクリアしながら、従来のROVを利用した場合にかかる導入コストや運用コストを数分の1に削減できる、と空間知能化研究所では説明している。2017年11月にはSPIDERのレンタルを開始。レンタル費用は、1日あたり20万円程度となる予定だ。また2018年春には、機材自体の販売も予定している。

空間知能化研究所では今回の調達資金で、SPIDERの開発と製品化を進めるという。また、現在は市場ニーズの高い潜行性能300mのドローン開発に専念しているが、将来的には深海の探査にも使えるような製品開発を行いたいという。「構造的には1000メートルの水深にも耐えられる設計となっており、相模湾での実証実験では水深350メートルの潜行実績がある。今まであまり見られたことがなかった水中の撮影・探査が手軽にできる取り組みとして、まずはSPIDERを試しに気軽に利用してみてほしい。SPIDERのレンタル、製品化で一歩一歩、水中ドローン普及・開発のための実績を重ねていきたい」(空間知能化研究所)

楽天、遺伝子検査サービスのジェネシスヘルスケアに14億円出資

遺伝子検査サービスなどを提供するジェネシスヘルスケアは8月21日、楽天を引受先とした第三者割当増資を実施し、総額14億円を調達したと発表した。これにより楽天CEOの三木谷浩史が同社の社外取締役に就任する。

ジェネシスヘルスケアは今回調達した資金をシステム・研究開発、広告活動、人材開発・育成の強化などに充当するとしている。

約3万円の費用で360項目の疾患リスクを判定

ジェネシアヘルスケアは、個人向けの遺伝子検査キットを販売するほか、法人向けの遺伝子検査サービス、医療機関向けの生活習慣リスク判定サービス、「Genebank」というDNA保存サービス(万一の際の身元確認などに利用)などを展開している。

同社が2017年8月1日にリリースしたばかりのプロダクトが、遺伝子検査キットの「GeneLife Genesis2.0」だ。価格は2万9800円。360の検査項目でユーザーがもつ疾患リスクや身体的特徴を判定する。

具体的には、生活習慣病や心筋梗塞などの疾患リスク、シミやシワが出来やすいなど肌のタイプ、自分の体質に適したダイエット方法などを知ることが可能だ。

検査結果はGenesis2.0の専用アプリ(iOS/Android)で見ることができる。

ジェネシスヘルスケアによる遺伝子の累計解析回数はこれまでに50万回以上。同社は遺伝子解析サービスの提供を通じて約52万人分の遺伝情報データを保有している(2017年8月現在)。

今回の出資に際し、楽天CEOの三木谷氏はプレスリリースのなかで、「日本が抱える医療費削減や健康意識向上などに向けた課題解決には、ジェネシスヘルスケアの遺伝子解析のような未来技術を活用し、社会にセルフメディケーションの概念を浸透させていくことが必要」だとコメントしている。

ジェネシスヘルスケアは2004年の設立。外資系投資銀行に勤務していた佐藤バラン伊里氏が、夫のデビット・バラン氏とともに共同創業した。

ジェネシスヘルスケアと同様に遺伝子検査サービスを行う企業として、国内ではDeNAライフサイエンス、先日ユーグレナの完全子会社となることを発表したGenequestなどがある。

ジェネシスヘルスケアは2015年7月にも資金調達を実施。同ラウンドに参加した投資家は三井物産Founders Fundで、総額6億2000万円を調達している。

建設業の『人』の100%有効活用めざす――職人の手配アプリ「助太刀くん」が5000万円調達

建設現場ではたらく職人を手配するアプリ「助太刀くん」を開発する東京ロケットは8月21日、リード投資家であるジェネシア・ベンチャーズKLab Venture Partnersから総額5000万円を調達したと発表した。

同社は調達した資金を利用して、エンジニアの採用を積極的に行い開発・運営体制の強化を図る。

助太刀くんは2017年9月にWeb版が先行リリースされる予定だ。

写真左より、COOの謝宣真氏、CEOの我妻陽一氏、CTOの金田悠一氏。

旧態依然とした建設業に注目

「2020年といえば?」と聞かれたら、東京オリンピックと答えるか、ドラマ「Doctor Who」でサイルリアンが覚醒する年だと答える人がほとんどだろう。

その東京オリンピックを控えた日本では今、建設需要が活発だ。

しかし同時によく聞くのが、建設業界の人手不足という問題。つい先日の7月14日には、建設業の「人手不足倒産」が高水準に達しているというニュースもあった。

東京ロケット代表の我妻陽一氏は、「建設業界で働く人の絶対数は足りていない。でも、今あるリソースを100%有効活用できていないのもたしか。助太刀くんは、そのためのアプリだ」と語る。

現状のリソースを100%有効活用できていないのは、この業界に古くから存在する「囲い込み」という慣習が原因だ。

我妻氏によれば、建設業界のいわゆる「元請け」は、繁忙期に必要な職人を確実に確保するために職人を囲い込み、他の元請けからの仕事の情報が職人に届きにくいような構造ができてしまっている。

これは、職人が契約上そのように縛られているということではない。職人は社員ではないが、社員集会のようなものを開いて「仲間意識」を高めるというような方法で囲い込みが行なわれているそうだ。

そんななか、職人が幅広い案件の情報にリーチできるようにすることを目的に生まれたのが助太刀くんだ。

2つの情報入力で簡単登録、案件がプッシュ通知で届く

助太刀くんの機能は大きく分けて2つある。建設現場の監督が職人を募集する機能と、職人が募集中の案件に応募する機能だ。

職人がアプリをダウンロードして自分の「職種」と「居住地」を入力するだけで、仕事の案件がプッシュ通知で届く仕組みだ。

また、助太刀くんには現場監督と職人がおたがいを評価するシステムや、請求書代行サービスなどの機能も備えている。

「建設業界では、基幹システムや現場管理のICT化は進んでいるが、最大のリソースである『人』に関わるシステムは昔から変わっていない。人や仕事を探すのは仲間からの紹介が頼りで、仕事の依頼は電話で連絡するのが通常だ」(我妻氏)

東京ロケット提供資料より

でも、そもそも高齢化が進む建設業界でスマホアプリなんかウケるのかと疑問に思うTechCrunch Japan読者もいることだろう。

それについて我妻氏は、「メインターゲットとなる20代から40代の職人は、建設業従事者全体の約55%ほどを占める。その年代のスマホ普及率は高い。また、最近では50代のスマホ普及率も約49%ほどにまで上がっている」と答えた。

また、アプリの離脱率を限りなく減らすために、「居住地」と「職種」の2つの情報を入力するだけで登録が完了するようにしたのだそう。

助太刀くんのマネタイズ方法は3つ。仕事の発注に対する課金、広告収入、そしてペイメントだ。

「当初は助太刀くんが請求書を送付し、発注者が職人に直接支払うというかたちだが、将来的にはエスクローやファクタリング機能を取り入れて、そこでもマネタイズしていく」と我妻氏は説明する。

我妻氏は東京ロケットを創業する以前、大手電気工事会社で現場監督として働いたあと、電気工事会社を11年経営した経験をもつ。

これは僕も取材して分かったことなのだけれど、建設業界は古くからの慣習や“しきたり”に溢れていて、複雑だ。その点、この業界に長年関わってきた我妻氏の知見は、東京ロケットがもつ強みの1つになるだろう。

日本の建設業は生産額が29.4兆円、就業者数が500万人の巨大マーケット。そして、このマーケットに狙いを定めたスタートアップも近年増えてきている。これまでにTechCrunch Japanで紹介したものだけでも、写真管理アプリの「Photoruction」、チャットアプリの「stacc」、施工管理アプリの「ANDPAD」などがある。

Alibaba、インドネシアのEC企業Tokopediaに投資――ラウンド総額は11億ドル

Alibabaが東南アジア市場への攻勢を強めている。この度インドネシアのEC企業Tokopediaは、Alibabaを中心とする投資家から合計11億ドルを調達したと発表した。

評価額は公表されていないが、両社共にAlibabaがTokopediaの少数株主になったことを認めた。

2009年に設立されたTokopediaは、小規模小売店や大手ブランドが(東南アジア最大の経済規模を誇る)インドネシアの消費者に向けて商品を販売できるマーケットプレイスを運営している。同社は2014年にソフトバンクとSequoiaから1億ドルを調達しており、East Venturesやサイバーエージェント、Beenos Partnersも初期からの株主だ。Tokopediaによれば、名前が明かされていない既存株主の多くも今回のラウンドに参加したとのこと。

「Alibabaとのパートナーシップを通じてサービスのスケールや質を向上させ、小売店やパートナー企業がインドネシアはもちろん、国外でも円滑にビジネスを運営できるようにしていきたい」とTokopediaは声明の中で述べた。

「Alibabaのことは私たちの師匠かつロールモデルのような存在として考えている」とTokopediaの共同ファウンダーでCEOのWilliam Tanuwijayaは同声明の中で語った。「そんなAlibabaを株主として迎えることができ、大変嬉しく思っている。テクノロジーを活用して商業を民主化するというTokopediaのミッションの実現に向けて、今回のパートナーシップが大きな追い風になるだろう」

東南アジアには現在注目が集まっている。Googleが共著したレポートでは、同地域の年間オンライン消費額が2015年の55億ドルから2025年には880億ドルに増加すると予測されている。さらに人口世界第4位のインドネシアが、その半分を占めるようになるとも言われているのだ。

最近Tokopediaには中国からの投資に関する噂が立っており、先月にも同社がAlibabaやTencentの投資先であるJD.com(Tokopediaの競合企業)と会談を行ったと言われていた。

本日(現地時間8月17日)発表されたAlibabaの四半期決算は第1四半期に続いて好調で、海外ECビジネスの伸びは目を見張るほどだった。同社は前年比136%増の26億元(3億8900万ドル)という海外ECビジネスの売上の原動力として、これまでに20億ドルを投じてきた東南アジアのマーケットプレイス企業Lazadaを挙げた。502億元(74億ドル)の総売上額と比べるとそこまで大きな金額とは言えないが、Alibabaが東南アジアを攻め込んでいるのは間違いなく、今回のTokopediaへの投資がそれを証明する形となった。

インドネシア発のスタートアップに対する大型投資は過去1ヶ月でこれが2つめだ。Alibabaの前には、Expediaが予約プラットフォームのTravelokaに3億5000万ドルを投じ、同社の評価額は10億ドルを突破した。それ以前には、Go-JekがTencentを中心とするラウンドで12億ドルを調達したと報じられていた。本件は正式には発表されていないが、近いうちに公表されることになるだろう。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

「セカイラボ」提供元のモンスター・ラボが7億円の資金調達、M&Aも実施し海外展開を加速

海外の開発チームに仕事を依頼できるオフショア開発サービス「セカイラボ」などを展開するモンスター・ラボは8月17日、YJキャピタルを含む複数の投資家による第三者割当増資により、約7億円を調達したことを明らかにした。

セカイラボを立ち上げてから4度目となる今回のラウンドに参加したのは、YJキャピタルのほか新生企業投資、山陰中央テレビ、Fenox Venture Capital、田部(島根県雲南市に本社を構える事業会社)および既存投資家だ。

モンスター・ラボは昨年11月に島根県のごうぎんキャピタル、りそなキャピタルなどから2.5億円の資金調達を実施しているほか、2015年11月にデジタルガレージとパソナテックから4億円、2014年8月にEast Ventures、SMBCベンチャーキャピタル、三菱UFJキャピタルなどから1.2億円を調達。今回調達した資金をもとに欧米企業からの受注拡大に加えて、日本企業が海外展開する際のサポートなどにもさらに力を入れていく。

モンスター・ラボはアジア、北米、欧州にそれぞれ開発拠点を持っているため、顧客はニーズに応じて最適なチームへ依頼できる点が同社のオフショア開発事業の特徴。世界の最適な場所、最適なチームにITサービス開発のプロセスをアウトソーシングできることから、同社では「グローバルソーシング」という打ち出し方をしている。

今月8日にはデンマークに本社を構えるアプリ開発会社Nodesを買収したことを発表。すでに事業展開していた北米とアジアに加え、今後は欧州でも事業を拡大していく予定だ。またこの買収によりモンスター・ラボは9ヶ国17都市に拠点を構えることとなった。

モンスター・ラボでは2019年を目処に、グループ全体の売り上げの約50%を海外市場から獲得することを目指していくという。

Nayutaがジャフコらから1.4億円を調達、ブロックチェーン上のレイヤー2技術開発へ

福岡市に本拠を置きIoTとブロックチェーン分野に取り組むスタートアップ企業Nayutaが、ジャフコおよび個人投資家を引受先とする第三者割当増資により1億4000万円の資金を調達したことを明らかにした。調達実施日はこの2017年7月28日、出資比率は非開示。同社が外部から資本を調達するのはこれが最初である。

調達した資金は主に研究開発に振り向ける。現時点では同社のフルタイムスタッフは2名だが、Nayuta代表取締役の栗元憲一氏は「人員を増やしエンジニアを5〜6名にしたい。Biz Devの人材も採りたい」と話している。また、同社の取り組みにはハードウェア開発が関係することもあり大きめの資本が必要と判断したとのことだ。

同社が注力するのは、ビットコインを筆頭とするブロックチェーンの上に構築するレイヤー2(あるいは2nd Layer)技術だ。ブロックチェーンの上に「ペイメント専用のレイヤー(層)」を構築する試みである(下の図を参照)。現状のビットコインでは難しい「単位時間あたり取引能力の拡大」、「リアルタイムな取引」、「マイクロペイメント」を可能とする技術群を開発していく。

今までのNayutaの取り組みとしては、ビットコインのブロックチェーン上のOpen Asset Protocolを応用したスマートコンセント(発表資料(PDF))や、BLE(Bluetooth Low Energy)に基づく人流解析システム、大型放射光施設「SPring-8」の測定データの有効活用を図るためブロックチェーンを応用して構築したデータ流通インフラシステムのプロトタイプ(発表資料)などがある。この7月28日に開催した「MUFG Digital アクセラレータ」第2期のDemo Dayでは「準グランプリ」を受賞している。

レイヤー2で世界の最先端と実装を競う

レイヤー2に関連しては、ビットコインのLightning Networkが知名度も高く注目されている。Nayutaは、このLightning Networkと同様の機能を実現する層と、その上のアプリケーション層の両方を開発していく。同社が開発したビットコインの「レイヤー2」を用いる決済技術については以前TechCrunch Japanで報じている。同社はこの時点で、Lightning Networkの既存実装とは独立に、自社による実装に基づくマイクロペイメントを実現している

ブロックチェーンとレイヤー2は、どちらも必要とされる技術だ。この2017年8月には、レイヤー2プロトコル実装に必要となるSegWit仕様がビットコインのブロックチェーンでアクティベートされることが決定した。最近、いわゆる「ビットコイン分裂」の懸念が盛んに報道されたが、この騒動の実態はSegWit有効化をめぐる動きだった。SegWit仕様が使えるようになれば、レイヤー2技術の実装と応用が加速することは間違いない。

このように聞くと「すでに登場しているLightning Networkの実装を使ってその上のレイヤーを開発した方が効率的ではないか」との疑問を持つ人もいるかもしれない。この疑問に対して、同社では「レイヤー2はどの実装が標準になるのか、まだ分からない段階。Lightning Networkだけではなく、様々なパターンの技術が出てくるだろう。IoT分野に取り組む上で、自分たちで作ることでレイヤー2の技術を身につけておくことは大事だ」(栗元氏)と話す。特に大事な部分はリアルタイム性に関連する部分だ。

「IoT分野では、ほとんどのものにリアルタイム性が要求される。レイヤー2がうまく構築できれば、(リアルタイム性に欠ける)パブリックブロックチェーンでもIoT分野で新しいソリューション、ガバナンスを作っていける可能性がある」(栗本氏)。

Nayutaが狙うのは特にIoTと関連するレイヤー2分野だ。リアルタイム性を筆頭にIoT分野(あるいは組み込みシステム分野)では、技術をブラックボックスとして利用するだけでなく「中身」を把握していることが競争力につながる場合が多い。同社が自社による独自実装にこだわっている理由はそこにある。

ブロックチェーン、レイヤー2、IoTの組み合わせは世界的に見ても最先端の取り組みだ。その最先端のソフトウェアテクノロジー分野で日本のスタートアップが正面から世界との技術競争に挑む形となる。資金調達のタイミングと同時にSegWit仕様の有効化が重なったことは幸運でもあるが、競争も激しくなるだろう。今後の同社の取り組みは要注目といえる。

生鮮食材を最短1時間で届ける「VEGERY」、PR会社のベクトルから資金調達

生鮮食品のデリバリーサービス「VEGERY」を運営するベジオベジコは8月9日、東証一部上場のPR会社であるベクトルから資金調達を実施した。

TechCrunch Japanはベジオベジコ代表取締役社長の平林聡一郎氏に調達金額を問い合わせたが、「金額については非公開」との回答だった。

写真左がベジオベジコ代表取締役社長の平林聡一朗氏

2017年1月の正式リリースの際にはTechCrunch Japanでも紹介したVEGERYは、自社で直接契約した農家の野菜をユーザーが指定した場所に最短1時間で配送するサービス。

運営会社のベジオベジコは宮崎県に本社を置いており、ユーザーに届く野菜も九州産のものが中心だ。

リリース当初は都内の一部地域のみで利用可能だったが、2017年4月よりその地域を関東全域にまで拡大している。それまで、ベジオベジコは渋谷区にある自社の配送拠点を中心としたデリバリー体制を整えていた。しかし、利用地域の拡大とともに佐川急便との提携も発表した。

現在、VEGERYのアプリはiOSAndroidで利用できる。

ユーザー数は非公開だが、平林氏によれば顧客単価は5000円程度で、利用頻度が上位10%のユーザーは4〜5日に1度のペースでリピートするという。全体的に言えば、月に2〜3回程度のリピートが平均なのだとか。

「正式リリースから現在まで、ユーザーのニーズに合わせた商材選定と、満足度の向上にフォーカスしてきた。実際、リリースからの半年間でユーザーの56%がリピート購入するまでになった」(平林氏)

これまで、ベジオベジコは積極的なPR活動を行ってこなかった。しかし、今後本格的にPR活動を進めていくにあたって、PR会社であるベクトルとの連携を強めることが今回の資金調達の目的だという。

平林氏は今後の展開について、「VEGERYに事業を集中し、都内を中心とした地域でさらなる顧客獲得を目指していく」と語った。

モバイル決済のコイニーが三井住友海上キャピタル、三菱UFJキャピタルなどから3億円の資金調達

モバイル決済サービス「Coiney」を提供するコイニーは8月9日、三井住友海上キャピタル三菱UFJキャピタルがそれぞれ運営するファンドを引受先とした第三者割当増資、および日本政策金融公庫からの融資により、合計約3億円を資金調達したと発表した。今回の調達は2017年2月に、産業革新機構やSBIグループ、電通グループなどから実施した総額約8億円の調達に続くもので、このシリーズでの調達資金の総額は約11億円となる。

コイニーはペイパルの日本法人立ち上げに参画していた佐俣奈緒子氏が2012年3月に設立。今年2月の調達の際の記事にも詳しいが、Squareが日本でサービスを展開を始める前の2012年10月にはモバイル決済サービスCoineyをローンチしていた。その後、2015年秋にスマートフォンやタブレットと連携した専用カードリーダーで決済ができる「Coineyターミナル」、2016年8月に手軽に決済ページを作成できる「Coineyペイジ」を提供開始。2016年9月には、AIと決済データを活用して企業評価・融資審査を行う「Coineyエンジン」サービスも始めている。今年に入ってからは、4月に訪日中国人観光客向けにモバイル決済「WeChat Pay(微信支付)」に対応したQRコード決済サービス「Coineyスキャン」の提供も始め、事業を順調に拡大してきた。

コイニーでは一連の資金調達により、これら各サービスのさらなる事業拡大と新サービス提供に必要な開発、およびセールス・マーケティング人員の強化を進めるとしている。

今後開発を予定する新サービスについては、代表取締役社長の佐俣氏が2月の資金調達の際、TechCrunch Japanの取材に対し、「今までも『現金がなくなる世界が来る』といわれていたが、将来はカードも、ひょっとしたらスマートフォンもなくなって、手ぶらで生活する社会が来ると思う。新しいサービスも開発していきたい」と話している。

高知発・AI対話システム開発のNextremer、産業革新機構などから4.7億円の資金調達

AI対話システムの研究・開発を行うベンチャー企業のNextremerは8月8日、産業革新機構(以下、INCJ)および高知銀行を引受先とした第三者割当増資により、総額4億7000万円の資金調達を実施したと発表した。INCJが4億円、高知銀行が7000万円を引き受ける。また出資に伴い、INCJマネージングディレクターの鑓水英樹氏が社外取締役に就任している。

Nextremerは2012年の設立。設立当初から取り組んできた、AIを活用した対話システムの研究・開発を軸に、文字や音声も含んだ自然言語処理機能を持つ対話システム「minarai」を提供している。独自で開発した深層学習をベースに、各業界に特化したシナリオデータベースを組み合わせることで、応答精度の高い対話システムの開発を行っているという。

最近では、空港や駅の案内システムや24時間自動応答のカスタマーサポートサービスにminaraiを提供して、人とAIが協業で対話するシステムの実証実験を実施・支援するなど、公共施設を中心に大手事業会社との共同研究や開発受託を行っている。2017年2月にはHaneda Robotics Labが行った実証実験「羽田空港ロボット実験プロジェクト2016」に第1期事業者として参加。羽田空港のデジタルサイネージに対話システムを提供した。また今夏は、凸版印刷と東武鉄道が検証する訪日外国人向けの観光案内サービスにもminaraiを提供している。

同社は高知県に開発拠点や子会社を持ち、若者の雇用などを通じた産業振興に加えて、AI対話システムの社会実装にも取り組む。子会社のdataremerでは、AI技術開発のためのデータ収集と対話シナリオのプランニングを専門に行い、事業者に提供。dataremerでは2017年3月に、高知銀行、オーシャンリース、REVICキャピタルが共同設立した「こうぎん地域協働ファンド」から資金調達を実施している。

今回の調達資金でNextremerでは、高知県の開発部隊の人員を現在の30名から100名に拡大して、研究・開発体制を強化。現行のカスタマーサービスや受付案内などの対話システムの質の向上を目指すとともに、自動車やロボティクス分野への適用を進めていくという。

モビリティやロボティクス分野のAI技術活用は、8月4日にトヨタ自動車から約105億円の資金調達を実施したPreferred Networksをはじめ、ベンチャーから大手までさまざまなプレイヤーが競い合うフィールドとなっている。対話システムから始まったNextremerでは、新たなプレイヤーとしてこの分野に参画するにあたって、「自然にコミュニケーションできる対話システムが我々の強み。ゆくゆくは、ナビゲーションシステムなどへの組み込みにより、例えば渋滞情報だけでなく、代わりの立ち寄り先をプラスアルファで提案してくれるような、会話ができるシステムが提供できれば、と考えている」という。

さらにNextremerでは、少子高齢化社会における労働人口減少などの課題解決に向けたAI対話システムの社会実装モデルの構築も実現していく、としている。

出資に関して、INCJ代表取締役社長の勝又幹英氏は「Nextremerの取り組みは、人と協業するAI対話システムの社会実装モデル構築へのチャレンジ。AI関連サービス事業の拡大やAI技術搭載製品の普及は労働人口減少、インバウンド需要等への対応として非常に重要であり、同社の今後の成長を期待するとともに、継続的な支援を行う」とコメント。

また、高知銀行取締役頭取の森下勝彦氏は「AIを高知の新産業とするNextremerのビジネスモデルに共感するとともに、今回の投資を通じて成長をさらに後押しできることを大変嬉しく思う。人とAIの協業によるサービスや製品が社会に実装されていくことが、人口減少最先端にある高知県における雇用の創出ひいては地域経済の活性化につながるものと大いに期待している」と述べている。

[正式発表]Sansanが42億円調達――取り込んだ名刺データは約3億枚に

TechCrunch Japanでは、Sansanが約42億円を調達した“らしい”と4月5日の記事でお伝えしていたけれど、それは事実だった。

Sansanは4月7日、未来創生ファンドDCM VenturesSalesforce Venturesから約42億円を調達したことを正式発表した。

Sansanが提供するのは、個人向けの名刺管理アプリ「Eight」と法人向けの「Sansan」だ。そのうちEightは、これまでに180万人以上のユーザーを獲得し、取り込まれた名刺データは約3億枚に到達したという。

競合アプリとして考えられるのは、ウォンテッドリーが提供する「Wantedly People」だ。

同社が公表した最新の数字によれば、Wantedly Peopleはこれまでに100万人のユーザーを獲得していて、約2000万枚の名刺をデータ化している。ただし、Sansanは2012年サービス開始なのに対し、Wantedly Peopleは2016年11月のサービス開始と、ローンチ時期には違いがある。

今回の資金調達額はSansanにとって過去最大のもの。これにより、今回を含む累計調達金額は約84億円となる。うち約4割が海外投資家からの出資だ。

Sansanはプレスリリースのなかで、「当社はこの資金を、名刺アプリ『Eight』の国内およびアジアでのマーケティング活動へ投じ、アジアNo.1のビジネスプラットフォームを目指します」とコメントしている。同社は2017年9月からEightの海外版をリリース予定。名刺がビジネスで日常的に使われるアジア、インド地域へ展開を開始する。

エンジニアと案件とを直接結ぶ企業間マッチング「PRO-SESS」運営が1億円を資金調達

システム開発とエンジニアプラットフォーム運営を行うメイプルシステムズは8月7日、エボラブルアジアKLab Venture Partnersが運用するファンド、大和企業投資が運用するファンドを引受先とする第三者割当増資と、金融機関借り入れによる総額1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

メイプルシステムズは2009年4月の設立。社員は全員エンジニアという体制で、受託開発や客先常駐型のシステムエンジニアリングサービス(SES)を中心に提供してきた会社だ。そのメイプルシステムズが新サービスとして注力しているのが、エンジニアプラットフォーム「PRO-SESS」だ。

エンジニア業界では、急なエンジニア需要に対応するために、企業間でのエンジニア派遣の仕組みとして、SESが利用されてきた。数億円規模などの大きな開発案件では特に、案件の立ち上がりから収束に向けてエンジニア需要の波が大きい。その急な需要に応えるため、エンジニアを紹介する仲介企業が存在しているのだが、業務に必要なスキルがはっきりしなかったり、また紹介先の企業が別の企業へさらにエンジニアを送り込んだり、と透明性に問題があって、建築業界のような多重下請け構造を生んでいる。

メイプルシステムズ代表取締役の望月祐介氏は「PRO-SESSは、仲介企業なしで、エンジニアが所属する企業と顧客企業とを直接結び付ける取り組みだ」と言う。ランサーズクラウドワークスなどのクラウドソーシングとは違い、PRO-SESSでは、フリーランスエンジニアのマッチングは対象ではない。「フリーランスの場合、どうしても在宅や遠隔地でできる案件が中心となる。セキュリティが厳しくて客先オフィス内での開発が必要な仕事や、規模の大きな仕事では、やはり企業所属のエンジニアが求められる」(望月氏)

これまでは、そうした企業所属エンジニアを大規模案件向けにテンポラリで集めるには、仲介業者を通すのが普通だった。PRO-SESSでは、エンジニア所属企業と顧客企業とのBtoBのつながりをオープンプラットフォーム化。顧客側は案件にマッチしたスキルを持つエンジニアがいる企業を探して、検索結果からチャットを使って面談実施、見積書・契約書のやり取りまで、オンラインでシームレスに行うことができる。もちろん、エンジニアをかかえる企業の側が、案件を探すことも可能だ。

PRO-SESSへの登録は無料。メイプルシステムズは、登録ユーザーがプラットフォームを利用してマッチングした場合に、成果報酬型で手数料を受け取る。現在はオープンベータ版としてサービスを公開中で、利用企業を募集中だ。現時点で登録企業は50社、登録エンジニア数は3500名を超えているという。登録企業には、コンシューマー系のゲーム会社、広告代理店、基幹系業務を扱う大企業やウェブ系企業などが顔をそろえる。「上場企業がほとんどで、コンプライアンスを重視する会社が多い。多重下請けや労働環境などでの問題が起きないようにしたい、ということで利用してもらっている」(望月氏)

今回調達した資金について、望月氏は「営業やマーケティング、広報の体制強化を行う」と話している。また今後、案件情報やエンジニア情報をデータベース化し、企業やエンジニアのスコアリングによる情報提供、エンジニアのキャリアプランのコンサルティング、エンジニア教育事業を行う企業との提携など、エンジニアのための事業展開も進める、としている。

写真奥・中央左:メイプルシステムズ代表取締役 望月祐介氏、中央右:取締役CTO 西山大輔氏