検索結果に位置データを入れるYextが赤字持続のままIPOを申請

検索結果に位置データをつけているYextが、IPOを申請したことを公表した。上場の予定は、4月と早い。

調達目標は1億ドルとされているが、それは今後変わるかもしれない。今後の方針変化等については、その都度お伝えしよう。

Best Buy, McDonald, Marriottなどが同社の顧客だが、Yextのおかげでこれらの企業の検索結果やソーシャルメディア、地図などには位置情報が入る。同社は当初、その企業のWebサイトへ行かなくても近くのお店の場所が分かることを、目標としていた。

昨年の、10月で終わる9か月の売上は8860万ドル、損失が2860万ドルだった。売上は前年同期の6400万ドルよりアップ、しかし損失も1820万ドルからアップした。

同社はIPO申請書のリスク要素のところで、“弊社はこれまで一貫して損失を計上しており、今後も利益を上げないこともありえる”、と言っている。サードパーティのリセラーへの依存にも言及しており、それが売上の大きな部分を占める、と言っている。

協同ファウンダーはその多くがSalesforce出身者で、Yextの一部の社員はカリスマ的リーダーHoward Lermanを尊敬し、SalesforceのトップMarc Benioffに似ている、と言っている。

2006にローンチしたYextは、数年前から上場の噂があった。これまでは、5億ドルの評価額で1億1700万ドルあまりを調達している。

Yextの23.6%を握るSutter Hill Venturesが、IPOの幹事会社となり、またInstitutional Venture Partners, Marker Financial Advisors, Insight Venture Partnersらの持ち分も大きい

この申請によりYextは、スタートアップから株式市場への旅路を歩んだニューヨークの数少ない企業の仲間入りをする。EtsyやOnDeckも、最近の仲間だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

PFIから自然言語処理と機械学習の部門がスピンアウト、新会社「レトリバ」が2.5億円を調達

日本のソフトウェア・エンジニアなら「プリファードインフラストラクチャー」(PFI)を知っていることだろう。2006年設立のこの東大発ベンチャー企業は、高い技術力でその名をIT業界内に轟かせてきた。大規模データ分析基盤技術の「Jubatus」や、深層学習フレームワークの「Chainer」といったオープンソースプロジェクトも有名だし、彼らの発する自然言語処理や機械学習に関する技術情報や多くの発表スライドを、エンジニアであれば何度かは見ているはずだ。

ネット系ビジネスパーソンなら、「プリファードネットワークス」(PFN)のほうをご存じかもしれない。NTTも出資する形で2014年にPFIが設立した深層学習とIoTに特化したスタートアップ企業だ。複数のラジコンカーが徐々に自動運転を学ぶ「分散深層強化学習」のデモで知っている人も多いと思う。

そのPFIが成長に向けた岐路に立っている。すでに書いたPFNと、2016年8月にスピンアウトする形で誕生した新会社の「レトリバ」が、それぞれに外部資本を入れて別々に成長を目指す形になった。PFNは会社法でいうPFIの子会社ではないが、2つのコアとなって成長を目指す、ということだ。

レトリバはUTEC 3号ファンドから資金調達を2月24日付けで行ったことを発表している。TechCrunch Japanの取材に応じたレトリバ代表の河原一哉氏によれば調達額は2.5億円。PFIからの独立の話は2016年3月頃から始まったそう。8月には法人登記、11月1日にはPFIから事業譲渡を受ける形で、PFIの14名中製品事業部の11名がレトリバに移籍して独立した形になるという。ここでいう「事業」とは自然言語処理と機械学習関連の一連のプロダクト「Sedue」(セデュー)シリーズと、その事業を担う人員や顧客すべて。現状の顧客としては良品計画など10社前後あるという。

立ち上がったばかりのスタートアップ企業としては大きめの2.5億円の資金調達となっているが、これは事業譲渡の資金を得る目的もあったため。もともとPFIとして販売してきた製品群があり、ユーザーベース獲得の立ち上げ初期フェーズも終わっている事業なので、むしろシリーズA前後の資金調達とみるべきかもしれない。

河原氏はスピンアウトの背景には、PFI創業者で代表の西川氏がレトリバに継承されたPFIの事業と、PFNの事業の両方を見るのは大変だからという理由があり、「喧嘩分かれしたわけではない」と話している。

レトリバは、これまでPFIが開発してきた、以下の製品群の譲渡を受けている。

・統合検索プラットフォーム:Sedue
・リアルタイム大規模データ分析基盤:Sedue for BigData
・オンライン機械学習プラットフォーム:Sedue Predictor
・キーワード抽出プラットフォーム:Sedue Extractor

これらを新たにコールセンター向けソリューションとしてパッケージし直して販売していく。具体的には以下の2つだ。

Voc Analyzer:コールセンターのデータ分析を担う。機械学習を使って顧客ニーズの分析や、問い合わせで待ち時間が発生しているところなど課題を探し出してきて分析するツール。
Answer Finder:コールセンターの会話の履歴から似た質問を見つけてくる。

これらに共通しているのは機械学習と検索の技術で、PFIが培ってきた自然言語処理の技術が活きるのだという。レトリバに移籍した11人のうちエンジニアは6人、技術的知識を背景に顧客へのシステム提案を行う、いわゆるプリセールスエンジニアも入れると9人がエンジニアという技術ドリブンなスタートアップ企業だ。河原氏は、直近ではコールセンター市場にターゲットを絞ってビジネスを大きく育てていくことを考えているが、研究開発も続けると話している。例えば「音声認識→自動要約」を行うことで、膨大な会話データを機械的にまとめて加工していくような技術へ投資したいとしていて、いわゆる開発者だけではなく、研究者も積極的に採用したいという。

競合はIBM Watson、でも「負けているのは政治力だけ」

レトリバの競合製品といえば、Apache SolrやElasticSearchなど全文検索にはいろいろあるし、機械学習フレームワークや各種DWHなども競合するだろう。ただ、こうしたソフトウェア群は自前でシステム開発ができることが前提。レトリバがターゲットとするのはソフトウェアをコアとしていない事業会社だ。ここでの競合にはIBM Watsonがあるが、河原CEOに言われせると「われわれがWatsonに負けているのは政治力だけ」と技術的優位性に自信をみせる。

エグジット率の高いVCとして知られるUTECの投資を受けたことで、ビジネスとしてのスケールを目指す覚悟をしたように見えるレトリバだが、エグジットのイメージはどう考えているのか。

「出資時の事業計画では5年後のIPOを目指すとしています。VCとしてのUTECに期待しているのは、しっかりハンズオンしてくれることですね。これを(VC選択の)大きな条件としていました。助けてください、というニュアンスです。例えば採用支援です。UTECは技術系VCとして成功した事例も、失敗した事例もたくさん見ているはずです。われわれにはすでに顧客がいますから、失敗しなければうまく行くはず。だから失敗のデータベースが大事だと考えました」(河原CEO)

河原CEOは電気通信大学卒業後の2001年にサン・マイクロシステムズに入社。Solaris 10の仮想化技術の普及やWeb2.0企業担当などを経て2008年からはシーエー・モバイルでケータイ向け電子書籍の開発・運営を担当。これまでのキャリアで自分が経営トップになる日が来ると考えたことがなかったそうだ。

創業の2006年から10年あまり、エンジニアの間では一目も二目も置かれる存在のPFIだが、社会的インパクトやビジネスのスケールという点では、情報科学の英才たちを集めた「東大発ベンチャー」としては存在感に乏しかった。Googleのように強烈なキャッシュエンジンがあって初めて可能な技術的エッジの利いたテックビジネスの展開というものがあるだろうから、レトリバの門出には注目したい。

ふるさと起業の典型Skuidがプログラミング不要アプリケーション開発ツールで$25Mを調達

ユーザーインタフェイスを“コードレス”で作れるので、一般社員でもBI(business intelligence, ビジネスインテリジェンス)アプリケーションを作れる、というSkuidが、新たに2500万ドルの資金を調達した。

テネシー州チャタヌーガに本社を置くSkuidは、シリコンバレーやサンフランシスコ、ボストン、ロサンゼルス、ニューヨークなど従来のイノベーションハブ以外の場所で生まれつつあるスタートアップの、ひとつの典型だ。

本誌TechCrunchは3年前に、投資家たちが予言している“逆ゴールドラッシュ”〔Uターン起業、ふるさと起業〕を取り上げたが、同社はある意味でその代表的な例でもある。

アパラチア山脈の内陸側山麓丘陵地帯がテネシー川で区切られるあたりに位置するチャタヌーガは、西半球で最速のインターネット接続を誇り、ガス・水道などと同じ公共サービスとして提供されるギガビットアクセスは、この都市(まち)を “救った”と言われる。

名曲チャタヌーガ・チュー・チューを産んだこのSouthern Railway鉄道沿いの工業都市は、もはやチャタヌーガの今の姿ではない。今やヘルスケア産業を中心に脱工業化を図るとともに、Volkswagenがこの小さな南部の都市に10億ドルを投じた大工場も抱えている。

SkuidのCEOでファウンダーのKen McElrathにとって、競争の激しいシリコンバレーではなく、のどかな田舎で起業することのメリットの大きさは、計り知れない。また1ギガのインターネットサービスに毎月250ドル払うことと、ウェストコーストで数千ドル払うことを比べれば、その違いは自明だ。

今回の25万ドルはMcElrath一家の資産管理会社Iconiq(Mark Zuckerbergにもそんな会社がある)と、前からの投資家K1 Investment Managementからだ。その主な用途は、今後の技術開発、企業のふつうの社員が、ツールバーやデータの視覚化を駆使したビジネスインテリジェンスアプリケーションを作れるようになるための、Skuidを作ることだ。

ユーザーがSkuidで作るアプリケーションは、もっぱらRest APIを駆使して、その会社が使っているBI用アプリケーション、すなわちOracle, Microsoft, Salesforce, Slackなどなどを統合する。

この、McElrathが“Skuid Model”と呼ぶ方式では、ユーザーがそのアプリケーションを一二箇所クリックするだけで、目的のデータソースを呼び出せる。そして目的のデータオブジェクトをさまざまな視覚化タブへドラッグ&ドロップすると、会社のデータを見ることができる。

McElrathによると、Skuidの次のバージョンでは、AmazonのAlexaやAppleのSiriに似た技術を導入して、音声によるインタフェイスが可能になる。

McElrathは語る: “まるでそれは、Alexaに表を作らせたり、何かの基準でデータをフィルタさせたりするような、アプリケーションになるだろうね。たとえば自動車販売店の営業なら、車を運転しながらSkuidのアプリケーションに、‘これから行くお客さんの会社のホームページを見せてくれ’、なんて…音声で…言えるだろう。そして、‘そこの担当者のXXXさんに電話をかけてくれ’、とかね”。

こうやって誰でもアプリケーションを作れるのが、プログラミングの未来だ、とMcElrathは語る。“それは、そんなに遠い未来ではない。こういったいろんな機能を統合するのは、今ならきわめて容易だ。音声機能は、来年の製品に実装できるだろう”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

不動産スタートアップのイタンジがKDDI、いちごと資本業務提携—法人向けサービスで拡大

イタンジ代表取締役の伊藤嘉盛氏(左)とKDDIバリュー事業本部 新規ビジネス推進本部 戦略推進部、KDDI∞Labo長の江幡智広氏(左)

「不動産×IT」の領域にチャレンジするスタートアップは数多いが、そのほとんどは不動産仲介会社、つまりは「物件を紹介してくれる街の不動産屋さん」の置き換えにチャレンジしている。だが今日ご紹介するイタンジは、不動産仲介会社や不動産管理会社向けのソリューション提供に主軸を置いたスタートアップだ。同社は3月8日、KDDIおよび不動産事業を展開するいちごとの資本業務提携を実施したと発表した。資本提携については、2社を割当先とした第三者割当増資を実施している。調達額や出資比率は非公開としているが、イタンジは2月26日付けで資本金を1億7251万円から2億2381万円に変更している。

イタンジは2012年創業の不動産スタートアップ。当初はC向けに不動産仲介サービスから事業をスタートした。C(コンシューマー)向けサービスは現在「nomad(ノマド)」の名称で提供中だ。nomadはスマートフォン向け・ネット完結(無店舗)型の不動産仲介サービスで、チャットUI上で物件に関する希望を送れば、AIおよびオペレーターが条件にマッチする物件の紹介をしてくれるというもの。仲介料は一律3万円となっている。

もちろんC向けの事業も展開しているのだが、同社の中核となっているのはB(法人)向け事業。nomadをベースにした仲介会社向けクラウドサービスの「nomad cloud(ノマドクラウド)」や管理会社と仲介会社向けの物件確認システム「物確くん(ぶっかくん)」などを展開している。

「不動産業界は建築業よりもIT化が遅れている業界。逆に言うとイノベーションがまだまだ起こる可能性がある業界だ」——イタンジ代表取締役の伊藤嘉盛氏は語る。

nomadでは、これまでユーザーからの会話データ20万件を解析してきたという。この解析結果をベースにAIとオペレーターを組み合わせた顧客対応を実現。これによってスタッフ1人あたりの月間対応顧客数が1000人(一般的な店舗型の仲介会社であれば1人あたりの顧客数が40人程度)になった。この実績をもとに展開するnomad cloudは、現在9万件の導入実績がある。

また、仲介会社と顧客を結ぶサービスだけでなく、不動産の管理会社と仲介会社を結ぶサービスも展開している。現状、仲介会社が紹介する物件というのは、管理会社が「REINS(レインズ)」や「ATBB(アットビービー)」といった業者向けデータベースに登録しているものが中心となる。だが業者向けのデータベースとは言っても、リアルタイムに更新されている訳ではないため、仲介会社は入居希望者が現れる度に管理会社に電話をして空室確認をするという手間が発生する。

この電話対応が管理会社には大きな負荷(電話対応の約5割が空室確認というケースもあるそうだ)になっているのだという。この物件確認作業を電話の自動応答で実現したのが物確くんだ。管理会社が空室データをcsvなどのファイルでアップロードすると、それぞれの物件に固有のID(物確くんナンバー)が割り振られる。仲介会社は指定の番号に電話をし、音声ガイダンスにしたがってそのIDを入力すれば、自動応答で即座に空室状況が分かる。管理会社は問い合わせの履歴などを閲覧することも可能だ。現在は大手の管理会社を中心に60社100拠点が利用。登録される空室は26万戸で、月間50万コール・4万5000社以上の仲介会社が利用している。

「もともとはC向けのビジネスが売上の8〜9割だった。だがC向けは競合が多く、またデータベースも外部に依存しているため、手数料を下げるといった『安売り』をせざるを得なくなり、単体でスケールすることは大変だった。そこで2015年1月からB向けに事業の舵を切った」と伊藤氏は振り返る。管理会社、仲介会社の負荷を減らし、仲介会社であれば来店者数増加、管理会社であれば事業効率化といった目的を実現刷るソリューションを提供することで、事業を拡大しているという。

イタンジでは今回調達した資金をもとに、nomad cloudや物確くんのサービス開発を強化する。また3月以降は両サービスの物件情報を統合し、リアルタイムに更新可能な物件データベースの構築を進めるとしている。そのほかKDDI総合研究所の技術を活用した物件提案サービスの展開、KDDIおよびいちごとのソリューション販売協力などを進めていく。

株式投資型クラウドファンディングサービス「FUNDINNO」、運営元がラクーンなどから資金調達

CAMPFIREMakuakeを筆頭に盛り上がりを見せているクラウドファンディング市場。矢野経済研究所の調査によれば、2015年度の国内の市場規模は前年度比68.1%増の363億3400万円にまで拡大しているという。

国内のクラウドファンディングサービスといえば、購入型、寄付型、貸付型が一般的だったが、ここ数年で変化も起きている。米国で2012年4月に成立した新規事業活性化法(JOBS法)に続き、国内でも2015年5月に改正金融商品取引法が施行。新たに“株式投資型”のクラウドファンディングが解禁となり、未上場企業による1年間1億円未満の資金の募集がインターネット上で可能になった。

そんな環境の変化にいち早く目をつけ、ビジネスを展開しようとしているのが日本クラウドキャピタルだ。同社は、日本初(金融商品取引法における第一種少額電子募集取扱業者の登録が国内で初めて完了したという意味で)の株式投資型クラウドファンディングサービス「FUNDINNO(ファンディーノ)」を3月中にも開始する。サービス開始に先駆け、2月28日にはラクーン他2社を引受先とした第三者割当増資(金額は非公開)を実施したことを明らかにした。

投資家として中小・ベンチャー企業への投資が可能に

 

FUNDINNOはインターネットを通じて、非上場株式を発行する企業と日本中の投資家を結びつけるクラウドファンディングサービス。

投資家となるユーザーは気になった中小、ベンチャー企業に1人あたり1社50万円以下の金額を投資することができ、投資先企業の株主になれる。実際、株式上場をして株価が上昇した場合には、キャピタルゲインを得られたり、投資先企業が配当や株主優待をしている場合にはそれを受けとったりすることができる。一方、中小、ベンチャー企業は非上場株式を発行することで、日本中の投資家からインターネットを通じて少額ずつ資金を集められる。

日本クラウドキャピタルによると、FUNDINNOの立ち上げのきっかけは、代表取締役CEO柴原祐喜氏の米国への留学経験にあるという。同氏が米国に留学中、コーポレートファイナンスの勉強をする他、ベンチャーキャピタルでもインターンをしていて、米国では株式投資型のクラウドファンディングを通じて資金調達をするのが当たり前になっている。そんな状況を目の当たりにしたそうだ。

帰国後、「株式投資型のクラウドファンディングサービスを日本でも展開したい」と思っていたところ、タイミング良く改正金融商品取引法が施工。株式投資型クラウドファンディングサービスを立ち上げることにしたという。

まもなく第1号案件がスタートの予定

FUNDINNOの投資家として活動するには、サービスの登録(無料)を行い、審査を通過した人のみ気になる中小、ベンチャー企業に投資可能となっている。投資以降の仕組みは従来のクラウドファンディングサービスと変わりなく、期限内に募集金額を達成したら株式を得ることができ、失敗したら投資したお金は手元に戻ってくる。

ただし、デフォルトは過去3年でゼロ件という実績を持つソーシャルレンディングサービスとは異なり、あくまで“株式投資”型のサービスであるため、株式の価値が損失するといったリスクはあらかじめ認識しておく必要がある。

資金調達を考えている中小、ベンチャー企業は日本クラウドキャピタルのホームページから連絡。決算書、事業計画書、資金の使い道などの情報を提供し、厳正な審査を通過した企業のみが掲載されるそうだ。

投資家の募集自体は2016年12月から開始し、現時点で個人投資家を含め1600人から事前申込みがあるという。ちなみに募集ページはまだ存在していないが、日本クラウドキャピタルによれば、まもなく第1号案件がスタートする予定とのこと。

今回調達した資金は、FUNDINNOの広告に充て、認知度向上を狙っていくとしている。また、4〜5月に向けて投資家同士での交流ができる機能の実装を予定しているそうだ。

モバイル専門銀行Atom Bankが1億ドル超を調達―、ミレニアル層をターゲットにしたサービスを展開

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イギリス発のスタートアップで、18〜34歳の消費者をターゲットとしたモバイル専門銀行を立ち上げたAtom Bankは、スペインの銀行BBVAが中心となったラウンドで新たに8300万ポンド(1億200万ドル)を調達した。なお、BBVAはAtomと似たサービスを提供している米Simpleの親会社でもある。今回のラウンドをうけて、Atom Bankの評価額(ポストマネー)は2億6100万ポンド(3億2000万ドル)に達したことが、同社との確認の結果わかった。またBBVAは、2015年11月に行われたAtomの1億2800万ドルのラウンドでも、リードインベスターを務めていた。

調達資金は、ユーザーベースとサービスの拡大、さらには貸出の原資として使われる予定だ。Atomは2016年4月に正式にローンチし、顧客はiOSAndroidの両OSに対応したアプリから同社のサービスを利用している。今日では、中小企業に対して住宅ローンやFixed Saver口座(金利固定の定期預金口座)、担保貸付といったサービスも提供されている。

今回のラウンドに関する発表の数週間前には、自分でスタートアップまで設立し、イノベーションの力を使ってファンを築こうとしている、テック起業家兼ミュージシャンのWill.i.amが、Atomの株式と引き換えに、コンサルタント兼顧問として同社に参加しようとしていると報じられていた。さらにこのニュースを報じたSky Newsは、Atomが1億ポンド近い資金を調達中だとも記していた。

Atomの広報担当者は、Will.i.amの件についてはコメントを控えているが、近々さらなる資金調達について発表予定だと話しており、もしかしたら追加調達元の投資家にWill.i.amが含まれているのかもしれない。

リードインベスターのBBVAは2940万ポンドを出資し、ポストマネーでも29.5%の持株比率を維持すると話している。前回の資金調達時の評価額は1億5250万ポンド(2億ドルちょっと)だったため、今回はかなりのアップラウンドだった。これでAtomの累計調達額は、2億1900万ポンド(2億6800万ドル)になる。

BBVAの持株比率が30%を下回っているのには理由がある。イギリス法のもとでは、30%以上の株式を保有している株主は、強制的に買収オファーを提示しなければならないのだ。

ブレグジットの影響で、イギリスの金融機関の行く末は未だハッキリしていないながらも、BBVAが限界点ギリギリで株式を保有し続けていることから、まだ何かが起きる可能性がある。

フィンテックはイギリスのテック業界の中で1番将来有望な分野だ。多くのスタートアップがその波に乗って、インターネットや携帯電話など新しいチャンネルを利用してプロダクトを提供しつつ、コスト削減を図っている。Atomにいたっては、マーケティング資料の中で初期の顧客のことを「ファウンダー」と呼んで彼らの機嫌を伺っているくらいだ。

Atom以外に類似サービスを提供している企業としては、Monzo(先日大型の資金調達を実施)、Starling、Tandemなどが存在する。

しかし全て企業にチャンスが残されている。イギリスの消費者は貯蓄講座などの金融商品に対して、長らく積極的に手を出してこなかったため、Metro Bankのような競合企業を含め、フィンテックスタートアップが従来の銀行に挑戦しようとしているのだ(AtomのCEOであるMark Mullenは、いわゆる「チャレンジャーバンク」のオンライン専門銀行First DirectのCEOを以前務めていた)。

Atomはサービスの利用状況に関して何の指標も公開していないが、まだサービスは初期段階にあり、ユーザー数もそこまで多くはないようだ。TechCrunchの取材に対し、現在のユーザー数は1万4000人で、その数は急速に伸びていると同社は語っていた。ちなみにイギリスの人口は6600万人で、Atomが特定の層を狙っているとはいえ、他の消費者の利用を制限しているわけではない。

いずれにせよ、将来的にユーザーベースを拡大できるよう、今のところ彼らは資金力の増強に力を入れているようだ。

「投資家からの反応には大変満足しています」とAtomのファウンダーで会長のAnthony Thompsonは語る。なお彼はAtom以前にも、Metro Bankを立ち上げてイギリスの銀行業界にディスラプションを起こそうとしていた。「Atomが著名な投資家からの支援を受けているということは、顧客にとってもプラスになります。彼らからの投資は、Atomの成長と将来へのプランに対する期待の表れです。これまでいくつかの施策に取り組んできましたが、銀行取引に対する私たちの新しいアプローチの革新性はまだ発揮されはじめたばかりです。Atomにはまだまだこれからも期待してほしいですね」。

今回のラウンドには、既存株主のWoodford Investment ManagementやToscafund Asset Management、他にも名前が公表されていない複数の投資家が参加していた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

終わらない中国の配車サービス戦争―、DidiのライバルUCARが10億ドルを調達へ

ucar

【編集部注】オリジナルの英語記事は、中国におけるTechCrunchのパートナーメディアTechNodeからの転載。

Uberの中国事業買収を経て、Didi Chuxingは中国の配車サービス業界に残った唯一のプレイヤー、つまり広大な中国市場を掌握する企業になったと考えられていた。しかしDidiの成功は、同時に競合企業に新たなチャンスをもたらすことになった。たとえDidiであっても、どうやらひとつの企業が中国市場全体を支配するというのは不可能なようだ。

Didiの中国における有力なライバルUCARは、中国の銀行システムを運営しているUnionPayを含む4社から、合計46億中国元(6億7000万ドル)を調達したと今週発表した。同社の株主には、Warburg PincusやJack Maといったビッグネームも含まれている。

さらにUCAR会長のLu Zhengyaoは現地メディアに対し、追加調達資金を含めた合計調達額は70億中国元(10億2000万ドル)を超える予定だと話している。彼によれば、調達資金はマーケティングや採用、オフラインでのプレゼンス向上や車両の購入に充てられるという。

UCARは過去にも巨額の資金を調達しており、昨年10月には100億中国元(14億5000万ドル)をプライベートプレースメント(私募)で調達した。これは素晴らしい数字である一方、資金調達に関してDidiは他社に大きくリードしている。同社は最近行われた73億ドルのラウンド(Apple、Tencent、Alibaba、Softbankなど大手IT企業が参加)を含め、これまでに105億ドルを投資家から調達しているのだ。

Didiはドライバーをクラウドソースで集め、個人の車を使って営業しているのに対し、UCARは自社で車を保有し、タクシー業のライセンスを持ったドライバーが業務にあたっている。認可を受けたドライバーを売りに、UCARは今後利益を拡大できる可能性があると共に、彼らは規制面でのトラブルを回避するという重要な役割も担っている。

Shenzhou Zhuancheと呼ばれる配車サービスに加え、UCAR傘下で香港株式市場に上場しているCar. Incが提供しているレンタカーサービス、その他にも自動車のオンラインマーケットプイス、自動車ローンとUCARは現在4種類のビジネスを運営している。業務内容には既にかなり広がりがあるように見えるが、CEOのCharles Luはさらに新しい分野へ進出していきたいと言う。現状のまま行けば4つのビジネス全てが今期黒字になる予定で、新たなビジネスとしては自動車製造業という案が挙がっている。

多くの中国発テック系スタートアップ同様、UCARも中国の店頭取引(OTC)市場に上場している。彼らは昨年9月に、配車サービス企業としては初となる上場を果たし、現在の時価総額は409億3000万中国元(59億5000万ドル)に達している。一方Didiはまだ上場しておらず、具体的なIPOの計画についても発表されていない

厳しい競争環境や政府の締め付けにも関わらず、中国の配車サービス市場を狙う現地企業は後を絶たない。LeEcoの投資先であるYidaoは、長引いているDidiのUber中国事業買収が完了したタイミングで生まれるギャップを狙っており、2015年には10億ドルの評価額で7億ドルを調達した。

他には、中国トップのネット企業Meituanも、最近自社のアプリに配車機能を追加し、自動車メーカーのGeelyは、Caocao Zhuancheと呼ばれる配車サービスの営業範囲を拡大させた。

2015年のDidi DacheとKuadi Dacheの合併や、現在進行中のDidiとUberの話など、大手企業の統合が進む中、中国の配車サービス業界における戦いは終わったというのが大方の見方だった。しかし、UCARの資金調達のニュースからもわかる通り、市場は成熟しつつありながらも、戦いはまだ終わっていないようだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

企業がアーティストのパトロンに―、伝説のCMの立役者が考える新しい音楽PRの仕組み

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Volkswagenは1990年代の後半に、Rykodiscというレコード会社にある提案を持ちかけた。彼らは、Rykodiscが版権を持っていた当時無名のシンガーソングライターの曲を、新しいカブリオレのCMに使いたいと考えていたのだ。

そのシンガーソングライターの名はNick Drake。結局カブリオレがどのくらい売れたかはわからないが、このCM(VWにとっては初のオンラインCM)は大きな話題となり、Nick Drakeの音楽は、彼の死からかなり時間をおいて再び注目されはじめた。さらにこのCMは、ヒット曲に頼り切るのではなく新しい(そして知られていない)音楽を消費者に届けるという、音楽と広告の新しい組み合わせ方のモデルとなった。

このCMの成功に関わっていた人物のひとりで、当時Rykodiscの社長を務めていたGeorge Howardは、オンラインマーケティング会社ReachLocalの共同ファウンダーでチーフ・レベニュー・オフィサーのNathan Hanksと一緒に、現在ブランドとアーティストをシステマティックに結びつける手段を作り出そうとしている。

ふたりがダラスで設立したMusic Audience Exchange(MAX)は、この度MATH Venture PartnersKDWC Venturesが中心となったラウンドで、600万ドルを調達したと発表した。他にもG-Bar VenturesやAware RecordsのファウンダーでCEOのGregg Lattermanがこのラウンドに参加していた。

彼らの狙いは、まだ一般に知られていない才能あふれるアーティストを、特定のターゲット層にリーチしたいと考えている国内もしくは国内外で有名なブランドの目に触れさせることだ。

著名なアーティストは考えられないくらいの大金持ちになることができる一方で、地元のバーで演奏するバンド売れっ子になるために必要な露出を得るのは、段々難しくなってきている。作曲ツールやオンライン流通網が一般に広がる中、音楽業界では細分化が進んでいるのだ。

実際のところ、Spotifyでは一回も再生されたことがない曲の方が、再生されたことがある曲よりも多いとHanksは話す(Forgotifyを試せばその雰囲気がわかるだろう)。

またCDビジネスの落ち込みやストリーミングサービスの興隆が、アーティストやレコード会社に違った形で影響を与えている。スタートアップの幹部の中には、レコード会社はA&Rよりも一定数のファンがいるバンドやアーティストにマーケティング力を投入していると主張している人もいる。

さらにアーティストの中には、スタジオでの録音というプロセスさえすっとばして成功を勝ち取った人もいる。3枚の(素晴らしい)ミックステープでキャリアを築き上げたChance the Rapperがその好例だ。

Chance the RapperやG Eazyのようなアーティストは、これまでの業界の常識から外れながらもキャリアとファンベースを築きあげることができたが、全てのミュージシャンがそこまで恵まれているとは限らない。

実際に、40歳間近の現在まで何度も起業を経験し、多数のミュージシャンの面倒を見てきてたHanksは、音楽業界の恐ろしさを知っている。「私はずっと音楽業界を観察してきましたが、業界で門番のような役割を担っている人たちの行動を理解できずにいました」。

アーティストが大事なチャンスを逃してしまっているという思いはHanksの中に残り続け、彼がマーケティング会社を立ち上げた後に確固たるものへと変わった。「当時(インターネット)検索やディスプレイ(広告)がデジタルの世界を支配していましたが、ブランドはもっと物語を伝えられるような場所を必要としていて、しかも(彼らには)昔発表されたコンテンツを探す手立てがありませんでした」。

ミュージシャンは成り上がりや忍耐力に関する物語など、ブランドが伝えようとしている思いに沿ったストーリーを作り上げることができるとHanksは語る。

その後、彼が立ち上げたReachLocalが上場しGannettに買収されると、Hanksは新たな挑戦をはじめる準備ができたと感じ、翌年MAXを設立した。

Hanksや共同ファウンダーのHowardの目から見ると、MAXは3つの大きなトレンドが交わる場所にいる。ひとつめは、コンテンツの中に散りばめられた、製品を宣伝するだけの広告に飽き飽きしている消費者の思い。ふたつめは、レコード会社の売上を侵食しているデジタル音楽プラットフォーム。そして最後が、音楽の制作・流通に素晴らしいチャンスを持たらすと同時に、音楽ファンが困惑するくらい楽曲数が増える原因となった音楽出版用ツールの普及だ。

HanksがReachLocalで開発していたツールと似たようなものを使い、MAXは765ジャンルにわたる240万人のアーティストをもとに、音楽ファンを200種類以上もの層に分類することができる。

FordやTwix、Dr. Pepperといったブランドは、MAXのサービスを使えば、特定の消費者層(皮肉屋で厭世的な考えに浸っている40歳前後の毒舌記者といった感じで)にリーチするような広告キャンペーンを打つことができる。MAXは彼らのターゲット層に人気のアーティストを特定し、ブランドの予算を考慮しながら両者をマッチさせるのだ。

ブランドのスポンサー契約の中には、アーティストをCMに出演させたり、地元や国内でのツアーの支援をしたり、スポンサーした曲を一定回数かけたりといった内容が含まれているのが一般的だ。

ミュージシャンが内容に合意した後に実際の契約が結ばれるが、中には合意に至らないケースもある。ある有名アーティストは、MAXがアレンジしたスポンサーシップ契約を、同じカテゴリーの競合製品の方が好きだという理由で断ったこともあった。これまでにMAXを通じてスポンサー契約を獲得したアーティストの中には、EEDTOBREATHEやLeela James、Aaron Watson、さらに2017年のグラミー賞にノミネートされたLa Maquinaria Norteñaなどがいる。

ブランドとアーティストのペアリングの中には、下のミュージックビデオのように全くの偶然で生まれるものもある。

「私はこれまでずっと、音楽業界でアーティストとファンの間にいる人たちを省こうとしてきました」とHowardは自身のキャリアを振り返りながら話す。

ブラウン大学在学中にミュージシャン兼Slow River Records(私の青春時代のサウンドトラックのひとつであるVivadixiesubmarinetransmissionplotをリリースしたレコード会社)のファウンダーとしてキャリアをスタートさせた彼は、その後Rykodiscの社長とバークリー音楽大学の講師を務めており、キャリア全体を通してミュージシャンとお金の間に立ちはだかる障害を取り除く努力を続けてきた。

「コンテンツをつくる人と、それを消費する人の間にあるものは、少なければ少ないほど良いと考えています」とHowardは言う。「MAXはコーディネートエージェントであって、中間業者ではありません。私たちの狙いはアーティストとブランドの結びつけて、両者の目的を揃えることにあります」。

さらにHanksは、ミュージシャンだけでなく、映画スターやユーチューバー、俳優など、さまざまなジャンルのインフルーエンサーにもMAXの戦略が応用できると考えている。

Facebook上に500万人ものフォロワーを抱えているインフルーエンサーが、自分を売り込むのにお金を払わなければいけないというのは確かにおかしな話だ。

「ブランドにはファンを構築するお金があり、メディアにはコンテンツをファンに届ける力があり、アーティストにはファンに物語を伝える力があります」とMAXのシステムについてHanksは説明する。

彼らのやり方こそが未来の音楽業界のあり方かつ、アーティストに収益をもたらす方法なのかもしれない。「アーティストの後ろにブランドがいるという形こそ、新時代のパトロンの在り方です」とHanksは言う。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ピザを3D”プリント”―、BeeHexが100万ドルを調達

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「3Dプリンター」というフレーズを耳にすると、普通の人はプラスチック製のアクセサリーやおもちゃ、ハードウェアのプロトタイプまたは人工装具といったものを作る機械のことを思い浮かべるだろう。しかし3Dフードプリンターを開発しているBeeHexは、この度シードラウンドで100万ドルを調達し、最初の製品となるピザプリンターの「Chef 3D」をローンチしようとしている。

当初BeeHexは、地球から長期間離れることになる宇宙飛行士が、バラエティー豊かな食事を楽しめるようなフードプリンターを開発しようとしていた。しかし共同ファウンダーの4人(Anjan Contractor、Chintan Kanuga、Jordan French、Ben Feltner)は、既に地球上に存在する市場に向けて、当初のコンセプトを作り替えることにした。彼らのプリンターは材料をあちこち動かさなければいけないので、プリント方式は従来のアディティブ・マニュファクチャリング(AM)方式ではなく、空気圧式を採用している。

The BeeHex 3D food printer at the TechLovesFood conference.

Food Loves Tech 2016の会場に展示されていたBeeHexの3Dフードプリンター。

長期的には、複数の3Dプリンターをつなぎ合わせて、その場でお客さんの要望に合った軽食や料理を作れるようなシステムを開発していきたいとFrenchは話す。将来的には、お客さんがアプリ上で食べたいものを選ぶことができるようになったり、もしかしたらネットにつながった医療機器やフィットネス系のウェアラブルデバイスから受け取ったデータを使って、BeeHexのプリンターがお客さんの健康上のニーズに沿った料理を作れるようになったりするかもしれない。

今回のラウンドでは、フードオートメーションの専門家であるJim Groteがリードインベスターを務めていた。彼はピザチェーンDonatos Pizzaの創業者で、2013年にはCBSの番組「Undercover Boss」にも出演していた。さらにGroteは、1960年代後半から調理をスピードアップする機械の開発を行っており、製造された機械は自らの名前を冠したGrote Companyを通じて販売している。これまでには、「Peppamatic」という可愛い名前のついた、自動でペパロニをスライスして並べる機械などが開発されている。

BeeHexの共同ファウンダーでCEOのAnjan Contractorによれば、同社は今年中にChef 3Dをソフトローンチし、まずは食品企業数社と共にパイロットプロジェクトに取り組んでいく予定だ。さらに、最近BeeHexはR&D拠点をオハイオ州のコロンバスに移転した。この街の経済開発に取り組んでいるColumbus2020によれば、コロンバスには170社近い食品・飲料製造企業が拠点を置いており、特に製パン所の数が多いという。

「企業は顧客ひとりひとりの要望に沿った商品を提供したいと考えていますが、それを実現するために必要な従業員のトレーニングにはそこまで時間を割きたくないとも考えています」とContractorは話す。BeeHexのChef 3Dのような機械があれば、特にスタッフが特別なスキルを身につけなくても、企業は作りたての美味しいピザを提供すると同時に、例えば子どもには、お気に入りのキャラクターの形をしたものを、セリアック病の人にはグルテンフリーのものを、といったように個々の顧客のニーズを満たすことができる。

A rendering shows the BeeHex 3D food printer in a retail kiosk.

BeeHexの3Dフードプリンターを導入した売店のイメージ図。

先述のJim GroteはTechCrunchに対し、BeeHexは販売ボリュームのあるピザチェーン(特にDominosやLittle Caesars、PizzaHutなどの大手チェーン)だけを相手に3Dプリンターを開発したとしても、長期的に利益を生み出し続けるできるかもしれないと語った。市場調査会社Packaged Factsの調査では、ピザレストランの市場規模は世界中で年間430億ドルに達するとされている。

さらにGroteは「ピザの次は、他のさまざまな食品にもBeeHexのテクノロジーを応用できる可能性があります。彼らは、作るのがとても難しい生地まわりの技術をマスターしているので、ピザ以外の焼き物の分野に進出してもうまくやっていけるでしょう」と話す。また、買い物客にその場で食べ物を提供したいと考えている小売やレストラン、さらにアミューズメント施設やフェスティバルを運営している企業も、従来の方法ではなく、3Dプリンターを使ってピザを焼くようになるかもしれないと彼は付け加える。これまでのやり方でピザを作ろうとすると、かなりのスペースと労力が必要になるのだ。

BeeHexの製品はまだ一般には販売されていないが、量産前のプロトタイプはFood Loves Tech 2016オハイオ州立大学のホームカミングデーといった展示会や催し物でお披露目されている。次にChef 3Dの登場が予定されているのは、3月27〜29日にラスベガスで開催されるInternational Pizza Expoだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

中国で新たなユニコーン企業が誕生―、オンデマンドレンタサイクルのOfo

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ユニコーン企業なしに業界は盛り上がらない。最近中国で投資が集中している、オンデマンドで自転車を借りられるサービスを提供する企業の中から、初めて評価額が10億ドルを超える企業が誕生した。

オンデマンドレンタサイクル業界には、今年だけでもこれまでに3億ドル以上のお金が集まっており(しかもその投資は1社に集中している)、Ofoはついに誰もが待ち望んでいた、この業界初となる評価額10億ドルを達成した。北京に拠点を置く同社は、DSTが中心となったシリーズDで4億5000万ドルを調達したと本日発表した。

配車サービスで中国トップのDidi Chuxingは、昨年Ofoと投資契約を結んでおり、今回のラウンドでもその存在感を発揮していた。Didi以外でOfoのシリーズDに参加した投資家は、全てDidiにも投資したことがある企業だったのだ。具体的には、リードインベスターのDST、Matrix China、CITICがそうで、今回のラウンドではDidi自体も投資を行った。

Ofoと競合サービスの戦いは、DidiとUberの戦いと似ている部分が多いため、Ofoへの投資はDidiらしく映る。なお、DidiとUberの対決の結果はご存知の通りで、Uberが負けを認め中国事業をDidiに売却することになった

一方Ofoは、Tencent、Xiaomi、Sequoia China、シンガポールの政府系ファンドTemasekなどから資金を調達したライバルMobikeと、助成金・資金調達バトルを繰り広げている。Mobikeは、年明け1月にシリーズDで2億1500万ドルを調達し、その後FoxconnTemasekからの戦略的投資として少なくとも8500万ドルを追加調達した。MobikeはOfoに先んじて、レンタサイクル業界でもっとも多くの資金を集めたスタートアップだと主張していたが、今度はOfoが「初のユニコーン企業」というタイトルで反撃した。

あまり深い意味を持たない形だけのタイトルや自賛は置いておいて、彼らのビジネスモデル自体にはさまざまな疑問が浮かんでくる。Uberが考案しDidiが中国でスケールしたライドシェアサービスには、長期的な利益率に関して問題があると思っている人もいるかもしれないが、MobileとOfoの話は全く別物だ。

両社とも表向きは、テクノロジーを使って誰でも自転車を借りれるような環境をつくろうとしている。自転車にはGPSチップが搭載されているので、どこかにまとめて駐輪しておく必要がなく、ユーザーはモバイルアプリを使って簡単に自転車を借りられる。この仕組みは、ロンドンの「Boris Bikes」や世界中の国々で公的機関が提供しているレンタサイクルサービスとほぼ同じだ。

仕組み自体は大変便利だが、1時間当たり1中国元(0.15ドル≒17円)という利用料でどのくらいの利益が出ているのかはよくわかっていない。さらに自転車を壊そうとする人(どこにでも嫌な人はいるものだ)の問題やデポジットの取り扱いに関する問題もある。TechCrunchのパートナーサイトTechnodeの最近の報道によれば、レンタサイクルを提供している規模の小さな企業の中には、デポジットを資金繰りに利用しているところまであるという。

スケールに関しては、昨年6月からこれまでに2000万人の登録ユーザーに対して、100万台を貸し出したとOfoは発表している。さらに同社は中国の40都市で営業しており、現在はアメリカ、イギリス、シンガポールなどへの進出に向けた初期段階にあるという。

一方Mobikeは、これまでに1000万人のユニークユーザーが、2億回以上も同社のサービスを利用したと最近発表した。彼らは大都市を対象にサービスをスタートさせたが、その後拡大を続け、今では北京、上海、広州、深センを含む国内21都市をカバーしている。さらにOfo同様、Mobikeも今年中にアジア、ヨーロッパ、北米といった海外市場へ進出しようとしている。

Uberの中国事業の買収によって、Didiはひとつの戦いを終わらせることができたかもしれないが、またすぐに新たな戦いが起きようとしている。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

「ほとんどのタスクは100%自動化可能」 ― チャットボットのPypestreamが1500万ドルを調達

pypestream

Pypestreamは現地時間28日、シリーズAで1500万ドルを調達したと発表した。

同社が創業した約1年前、創業者兼CEOのRichard Smullen氏はピッチの中でテキストメッセージが顧客と企業とのベストなコミュニケーション手段であると主張した ― もっと具体的に言えば、Pypestreamのアプリを使ったメッセージングだ。このアプリでは、企業は1つのアカウントに異なる「パイプ(pype)」をつくって、それぞれを用途に応じて使い分けることが可能だ。

その後、Pypestreamは企業がもつアプリにメッセージング機能を組み込むというサービスにもビジネスを拡大した。ここでやり取りされるのはテキストや画像だけではない ― ユーザーはそこで料金の支払いもできるし、スケジュール調整や直接ファイルをやり取りすることもできる。

もちろん、ここ最近、特にFacebookを中心としてチャットボットにかなりの注目が集まっていることは確かだ。しかし、Smullen氏はFacebookのようなチャットボットと人々がコミュニケーションをする時代が来るのはまだ先のことだと話す。

「『たとえ目的やニーズがはっきりしていなくても、人々は企業と何気ない会話をすることを望んでいる』。このように企業やエージェントは考えています」とSmullen氏はいう。「でも、消費者の視点から考えてみれば、何も用がないときにNikeと何気ない会話をする気にはなりませんが、自分のスニーカーが壊れてしまったときには、そのような会話が重要になるということが分かります」。

だからこそ、Pypestreamはこれまで企業がコールセンターなどで対応してきた数々のプロセスを人工知能と機械学習によって自動化することを目指してきたのだ。この界隈では、AIや機械学習という言葉を耳にタコができるほどよく耳にする ― Smullen氏は「それを実現するためには、WatsonやCortanaのようなレベルでディープラーニングを利用する必要はなかった」と話している。しかし、それでもPypestreamはほとんどのタスクを自動化するには十分な程スマートだと彼はいう。

「何度も繰り返し行なわれるタスクを出来る限り自動化することを目指しました」とSmullen氏は話す。「ほとんどのタスクは機械が完全に解決できるものです。機械が解決できない問題が出てきた場合には、その会話を人間に投げ、人間が機械に代わって解決します。私たちのシステムは、その時に人間がとった行動を記憶します。なので、次に同じタスクが与えられたときには、システムは人間の手を借りることなくそのタスクを完了することが可能です」。

Pypestreamはこれまでに、Insurance Thought Leadership、Lynx Services、Discovery Healthなどの企業を顧客として獲得している。Smullen氏は同社が連邦政府とも契約を交わしたことを明らかにしたものの、その件はまだ公式に発表されていない。

同社はこれまでにシードラウンドで200万ドルを調達している。今回のシリーズAをリードしたのは元Priceline CEOのRick Braddock氏だ(彼はCitibankの元COOでもある)。その他にも、The Chatterjee Groupや同社が言うところの「大規模で、誰もがよく知るヘッジファンド」も本ラウンドに参加している。同時に、Braddock氏がPypestreamの経営執行役会長に就任することも発表されている。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

1200万人の科学者が集うソーシャルネットワーク―、ResearchGateが5260万ドルを調達

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プロフェッショナルの世界では、LinkedInがソーシャルネットワーク最大手の座に君臨し続けているが、それぞれの業界に絞ってLinkedInに対抗しようするサービスも増えてきた。ベルリン発のスタートアップResearchGateは、科学者たちがつながり合い、研究に関する議論を交わせるようなソーシャルネットワークサービスを提供している。同社はシリーズDで5260万ドルを調達したと本日発表し、これでResearchGateの累計調達額は1億ドルを超えた。

最新のラウンドには、戦略投資家から金融機関までそうそうたる顔ぶれが揃い、Wellcome TrustやGoldman Sachs Investment Partners、Four Rivers Group、Ashton Kutcher、LVMH、Xavier Niel、Bill Gates、Benchmark、Founders Fundなどが参加していた。なお、この中には(Bill GatesやBenchmarkFounders Fundなど)以前のラウンドに参加していた投資家もいる。

ResearchGateは、既に調達資金を使ってProjectsなどの新機能を開発し、プラットフォームの機能拡大に努めている。

「既に調達資金を使って」というのは重要なフレーズだ。というのも、ResearchGateの共同ファウンダーでCEOのIjad Madischによれば、実はシリーズDは2015年の11月の時点でクローズしていたのだ(さらに、科学者が進行中の研究をアップロードしたり更新したりできる先述のProjectsという機能は、2016年3月にローンチされていた)。それにも関わらず、同社はこれまで資金調達には触れず、この度2015年の決算をまとめなければいけない段階(ドイツでは全ての企業が対象となっている)になって初めて詳細が明らかになった。

ユーザー数という観点で見れば、ResearchGateの1200万人という数字は、LinkedInのユーザー数4億6700万人には遠くおよばない(なお、ResearchGateのサービスは全て無料で、同社は求人などの広告から収益を挙げている。そして広告主はResearchGateを利用することで、自分たちがリーチしたいと考えているターゲットに直接広告を表示することができる)。

しかしユーザー数で劣っている部分は、エンゲージメントの高さや素晴らしいターゲット層、さらには科学論文に対する新たなアプローチ、情報共有といったサービスの質でカバーされている。ResearchGateのユーザーである科学者には、一般的に「科学」というカテゴリーに含まれるさまざまな分野をカバーした、営利・非営利両団体の学者や学生、研究者や博士が含まれており、月々にアップロードされる論文の数は250万本におよぶ。

Madischは同社が急速に成長を続けていると話しており、実際に250万本という研究論文の数はResearchGate設立から4年間の間にアップロードされた論文の数と同じだ。そういう意味で、同社は科学者向けのソーシャルサービスでありながら、データのレポジトリとしても利用されている。

(そう考えると、科学者にとってResearchGateは、LinkedInのようなサービスに比べると大変便利なものだ。というのも、LinkedInのコンテンツは、彼らの仕事の核となるデータよりも、仕事探しであったり、考えやイメージを形作るところに重きが置かれている)

次に重要なのがコンテンツの性質だ。科学者がアイディアを共有したり、議論を交わしたり、他の科学者の研究内容にアクセスしたりできるようなサービスは、もちろんResearchGate以外にも存在する。具体的には、オンライン・オフラインの学術誌や、Google Scholarなどが彼らの競合にあたるだろう。しかし、これまでの科学の世界では、成功した研究を公開することが重視されてきた一方で、ResearchGateは失敗した研究の内容も共有できるプラットフォームであり、そこが他のサービスとは違うのだとMadischは説明する。

「ResearchGateのファウンダーは全員科学者で、私たちは今日の学術誌の問題点を理解しています。数ある問題の中でも1番大きなものが、一般に知れ渡っている成功例ではなく、公になっていない失敗例が共有されていないことなんです。ResearchGateはまさにその問題を解決しようとしています」と彼は話す。それを可能にする機能のひとつがProjectsだ。ユーザーは現在取り組んでいる実験内容をアップロードし、その進捗を公開することができるため、結果がどうなるかは誰にもわからない。

なぜこれまで誰も失敗に終わった研究を公開してこなかったのだろうか?「それは難しい質問ですね。少なくとも言えるのは、科学者としてどの研究を発表して、どれを発表しないかというのを決めなければならず、これまでは失敗したものよりも、成功したものに価値があると考えられてきました」と彼は語る。「しかし個人的には、その考えはおかしいと思っています。失敗経験は、成功経験と同じくらい大切で、これこそ私たちが変えようとしている考え方なんです」。

ResearchGateは、これからも科学者の考え方を変えることに注力していく傍ら、将来的には他のどのような分野に進出していきたいかということについても考えはじめている。そしてターゲット候補には、教育や法律以外にも、テクノロジーなどの分野が含まれている。その一方で彼らが進出を検討している分野は決して目新しいものではなく、ある分野「専門」のソーシャルネットワークというもの自体も以前から存在しており、釣りからコーディングまで、共通のトピックについて語り合ったり、データを収集・共有したりしている強固なコミュニティは見渡せばいくらでもある。

しかし、それだけ他のサービスが存在するということはチャンスがある証拠でもあり、投資家はそこに注目しているのだ。

「ResearchGateは革新的かつ広範に利用されているプラットフォームで、世界中の研究者たちをつなぎ合わせています。研究のアイディアや結果を共有できるスペースを提供することで、彼らは科学者が研究を発展させ、社会のためになる応用方法を開発する手助けをしているんです」とWellcome Trustの投資部門のシニアメンバーであるGeoffrey Loveは声明の中で語った。

「科学の世界におけるイノベーションの発生過程は、個々人による実験からネットワークを活用したコラボレーションへと急速に変わってきています。1200万人ものユーザーを武器に、ResearchGateはこの変化を促進する主要なプレイヤーへと成長しました」とGoldman Sachs Investment Partners Venture Capital & Growth Equityの共同代表であるIan Friedmanは声明の中で語った。「研究方法と同じくらい重要な事項に変化をもたらそうとしているチームとパートナーを組むというのは、めったにない機会ですし、科学の進歩のスピードを加速させるというミッションをResearchGateが実現していく手助けができることを、大変光栄に思っています」。

「ResearchGateのように、ネットワーク効果がビジネスモデルの核にあるような企業が成功するためには、いかに提供するサービスがユーザーのためになるかということを常に念頭に置かなければいけません」とBenchmarkジェネラルパートナー兼ResearchGate取締役のMatt Cohlerは声明の中で語った。「そして同時に、彼らは収益もあげなければいけません。ResearchGateは自分たちのミッションに忠実に、科学が進歩する場としてのネットワークの成長に寄与する、持続可能なビジネスモデルをつくり上げてきました」。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

クラウド・人工知能を搭載した電力小売供給基幹システム「Odin」、運営元が11.8億円の資金調達

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2016年4月にスタートした電力自由化。これまでは地域で決められた電力会社としか契約できなかったが、いまでは契約先や料金プランを自由に選べるようになった。そのような背景から、大手通信キャリアを筆頭に電力サービスの提供に乗り出すなど小売電気事業者の数も少しずつ増えてきている。

そんな中、小売電気事業者を対象にしたサービスも誕生している。電力小売供給基幹システム「Odin(オーディン)」を展開するパネイルは2月28日、インキュベイトファンドSMBCベンチャーキャピタル大和企業投資DGインキュベーションドーガン・ベータ広島ベンチャーキャピタルみずほキャピタルYJキャピタルを引受先とする総額11.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

電力小売供給業務の効率化を目指す

電力小売供給基幹システムと言っても、ピンと来ない人がほとんどだろう。Odinは小売電気事業者を対象に、顧客管理や需給管理、請求管理といった電力小売業務に必要な機能を一括で提供することで、電力小売供給業務の効率化を目指すというもの。

パネイル代表取締役の名越達彦氏によると、電力自由化の開始以降、小売電気事業者の数は増え続けており、現在(2017年2月28日時点)では300社を超えているという。市場環境は大きく変化しているものの、これまで10社が独占していた領域とあってアナログな部分は多く残る。

例えば、顧客の契約状況や問い合わせ状況を一元管理できずにいたし、何より発電量と顧客の消費電力量のバランスを人の目で常に管理しなければならず、とても非効率だった。Odinはこうした問題をクラウドコンピューティング環境と人工知能を活用し、顧客管理機能、需給管理機能、請求管理機能を提供することで課題を解消。電力小売供給業務の効率化を目指している。

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CRM機能内包することで顧客情報を一元管理でき、請求書の作成、送付も全自動で行うことができる。また特筆すべきは日本初(2016年4月時点)のRubyベースで構築されていること。電力の30分確定使用量データを自動で取り込め、リアルタイムに処理できるという。

同社が提供している人工知能(AI)を活用した電力の需給予測エンジン「Odin Gungnir(オーディン グングニル)」と組み合わせれば、人を使わずとも電力の需給管理が行えるようになる。

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今後、パネイルは調達した資金をもとに、需給予測の精度向上などOdinの開発強化を行っていくとしている。

訪日外国人旅行者解析「inbound insight」運営のナイトレイが1.3億円の調達、今後はより幅広いサービスを提供

Inbound insightの「SNS解析」のデータの一部

Inbound insightの「SNS解析」のデータの一部

東京に住んでいると、この数年で旅行者らしき外国人を見かける機会が確実に増えたのを感じる。実際のところ訪日外国人旅行者は増加の一途にあり、2016年には過去最高の2403万人超という数字を記録した。政府は2020年の訪日外国人旅行者4000万人という数字を掲げており、インバウンド対策のニーズは高まるばかりだ。

そんな彼らの行動をSNSや各種データから解析するのが「inbound insight」だ。サービスを提供するナイトレイは2月27日、ニッセイ・キャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、レジェンド・パートナーズを引受先とした総額1億3000万円の資金調達を実施した。

ナイトレイ代表取締役の石川豊氏

ナイトレイ代表取締役の石川豊氏

inbound insightはSNSへの投稿(公開情報)をもとにして訪日外国人観光客の位置や移動の情報を可視化する独自のSNSデータ解析に加え、ドコモ・インサイトマーケティングやヴァル研究所などのパートナー企業、経済産業省などの官公庁が持つデータを元にした訪日外国人の統計データなどを提供している。現在、無料プランを含めて約4400社が利用中だ。

「現場で訪日外国人に大して製品やサービスを提供する企業のほか、決済や広告などを企業に提供したい人達が利用している。国ごとの旅行者の滞在傾向までを読み解くことができると、『ある国の旅行者が増加するタイミングで、どんなアクションをすべき』というところまで明確にしてソリューションを提供できるようになる。これまではインバウンドに関して、仮説を立てることができてもその裏付けや効果検証が難しかった。ナイトレイはそういったこれまで難しかった部分をお手伝いしている」(ナイトレイ代表取締役の石川豊氏)

ユーザーからの声でインバウンド解析に挑戦

ナイトレイの設立は2011年。当初から「ロケーションデータの解析で未来をつくる」というコンセプトを掲げてSNS解析サービスを手がけてきたが、ビジネス的には苦戦。「ニーズや新しさは評価されて売上こそ挙げていたが、上場や資金調達を目指せるまでではないという状況だった」(石川氏)という。そんな中でユーザーの提案でインバウンドに特化した解析サービスの提供について相談を受け、inbound insightの開発に着手した。「データフォーマット自体は既存サービスとそんなに変わるモノではなかったが、例えば英語でのSNS投稿について、ただそれだけではどの国の人か判断できないが、そこまでを解析すると言うモノにしたのが強み」(石川氏)

ナイトレイでは今回の調達をもとに、inbound insightの開発を強化するほか、カープローブや各種の位置情報や移動情報を解析するロケーションインテリジェンス事業、さらにはアプリ事業(すでに外国人観光客向けの日本情報提供アプリ「ZouZou」と、日本人向けの昼食提案アプリ「AbcLunch」をリリースしている。いずれも無料)を展開。3つの領域での事業の拡大を目指すとしている。

今後の事業展開のイメージ

今後の事業展開のイメージ

「アプリやセンシングデバイスなど、ロケーションデータはナイトレイだけで取得できない範囲にもたくさんあるので、パートナーらとそれを解析していく。ロケーションは特殊なデータ。時間と緯度経度というシンプルなものだが、どういう意味を持つかの判断が難しい。ナイトレイには、SNSを元にして『どこでどんなことが起こっているか』という情報がリアルタイムに集まっている。これを前提にしてデータを解析すると、単独のデータでは分からないことが見えてくる。1つの例だが、『駐車場に3時間車を止めていた』という1つのデータから、その周辺にゴルフ場があって、さらにその場所が盛り上がっていたというデータがあれば、『その3時間は車を止めてゴルフに行っていた』というところまで分かる」(石川氏)

ちなみに石川氏に東京オリンピック開催後——2020年以降のインバウンド需要に聞いたところ、「世界的に見れば、フランスなどの外国人旅行者は約8000万人。日本でも国として現実的に受け入れられる気がしている。またオリンピックが終わったからといって『もうその国はいいよね』となると考えるのは理論的でない。一方で為替の影響はある。円高になると日本には行きづらい。だが、口コミも含めて『日本ってすごい、また行きたい』と思う人は増えている」という回答があった。

ニューヨークで野菜を地産地消―、ハイテク農業のBoweryが750万ドルを調達

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環境汚染や異常気象、人口過密によって、大規模な屋外農場の存続が危ぶまれている。Bowery Farming Inc.と呼ばれるスタートアップは、この度のラウンドで750万ドルを調達し、都市部でも屋内で食物を栽培できるよう努力を重ねている。同社は、ロボット工学やLED照明、コンピュータビジョンやセンサー、データ解析といったハイテク技術を駆使し、農薬ゼロかつ少量の水を使って葉物野菜を栽培している。

Boweryは、自社で栽培したレタスやケール、ほうれん草、バジルなどの野菜を、業務用スーパーやレストラン、食料品店などに販売して収益を挙げている。同社の技術を使えば、1年を通して野菜が栽培でき、収穫量は同じ作付面積の従来の屋外農場と比べて100倍以上にもなる上、水の量は95%も少なくてすむ。

Boweryの共同ファウンダーでCEOのIrving Fainは、「過去10年間のテクノジーの進歩によって、今では農作物を安定して生産できるようになりました。私たちは2年前から、この進化したテクノロジーの活用に取り組みだし、近いうちに世界の人口は90億人に達すると言われ、そして約35年後には世界中の70%の人が都市部に住むことになると言われている状況で、人々に食べ物を供給するにはどうすれば良いのだろうと考えはじめました」と話す。

Leafy greens growing at a Bowery indoor farm.

Boweryの屋内農場で育つ葉物野菜。

Boweryがつくった「現代的な屋内農場」を使えば、都市部でも新鮮な野菜の地産地消が実現できるとFainは言う。「LED照明など人工の光源を使った屋内栽培は、既に何年間も行われています。しかし照明機器の値段が下がったことで、商業目的での屋内農業ができるようになったんです」

Boweryの施設のほとんどは市販の製品から構成されているが、同社が開発した「FarmOS」とよばれる自前のシステムで全てが管理されている。Boweryはコンピュータビジョンの技術やセンサーを使って、作物の様子や屋内の気候をモニタリングし、作物に影響のある数値を何百万というデータポイントからリアルタイムで集めることで、何が作物の成長度合い、もしくは色、質感、味といった個別の要素に変化をもたらすかというのを把握することができる。

First Round Capitalがリードインベスターを務めた今回のラウンドには、Box GroupLerer Hippeau Ventures、さらにはショートリブの蒸し煮が看板メニューのシェフで、レストラン経営者としても人々に愛されており、その上Bravoのテレビ番組Top Chefで審査員も務めるTom Colicchioが参加していた。Fainによれば、Colicchioが経営するレストランの中にも、既にBoweryの野菜を使っているところがいくつかあるという。同社の作物は、それ以外にもWhole Foods Marketsなど、ニューヨークを含むトリステートエリア(3つの州の境界が交わる地域。この場合だとニューヨーク州、ニュージャージー州、コネチカット州)のお店で販売されている。

Greens grown at a high-tech indoor Bowery farm.

Boweryのハイテク屋内農場で生産された野菜。

First Round CapitalのパートナーRob Hayesは「今すぐにとは言わずとも、仮に15年もすれば水の値段は上がり、作物を育てられるような土壌は貴重な存在になり、屋内よりも屋外で作物を育てるほうが高くつくようになるというのは、農業に携わっている人たち全員が考えていることです。そこで、わざわざ悲劇が起きるのを待つ必要もないだろうと私たちは考えました」

自称楽天家のHayesの言っていることは、決して誇張ではない。California Climate and Agriculture Network(CalCAN)によれば、「サラダボール州(salad bowl state)」とも呼ばれるカリフォルニア州の農地は、開発のせいで毎年平均5万エーカーも減少しており、この状況が過去30年間続いている。昔は作物の栽培や家畜の育成に使われていた土地が、ここまで舗装されてしまっているとは驚きだ。

Boweryの競合には、葉物野菜の生産大手のEarthboudやFarms、Doleがいるほか、屋内での持続可能な農業に取り組んでいるスタートアップとしてはAerofarmsや、温室栽培のBrightFarmsなどが存在する。しかしHayesは、ただソフトを開発して、他人の農場で作物をリスクにさらしながらビジネスを展開するよりも、「種からお店まで」のアプローチで、自社の農場を使って実際にシステムに効果があることを証明してきたBoweryのやり方に惹かれたと話す。

今回の調達資金は、新しい屋内農場の設置や、他の作物を屋内で育てるための新しいテクノロジーの開発・テスト、そして引き続き食料品店やレストラン、食品EC企業などへの営業に使っていく予定だとFainは話す。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

スポーツチーム向けの動画編集・共有サービス「Spoch」、運営元が6000万円の資金調達——画像認識を強化

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スポーツチーム向けの動画編集、分析、共有サービス「Spoch(スポック)」を運営するSPLYZAは2月22日、ベンチャーラボインベスメント、静岡キャピタル、⼤和企業投資、PE&HRを引受先とした第三者割当増資により、総額約6000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社は静岡県浜松市に拠点を置くスタートアップ。同社はこれまでにベンチャーラボインベスメントから100万円の出資を受けているほか、日本政策金融公庫の資本制ローンで4000万円を調達している。増資に伴いベンチャーラボインベストメントの代表取締役である⼭中唯義⽒が社外取締役に就任する予定だ。

スマホからシンプルな操作で動画編集

Spochはアマチュアスポーツチームの利用を想定した、動画の編集、共有サービスだ。サービスは2016年9月にリリースした。

大きな特徴は動画の編集がスマホからシンプルな操作でできることと、チーム関係者以外に非公開であるということ。従来、撮影した動画を編集する場合はPCが一般的であったため、そもそもPCを使えるスキルがないと編集できないし、結果的に特定の人の負担が大きかった。学生時代に運動部やスポーツサークルに所属しており、動画編集の経験がある人ならその大変さがわかるだろう。

SPLYZA代表取締役の⼟井寛之氏も約10年前からウィンドサーフィンを本格的にやっており、動画を撮影して仲間と掲示板やブログを通じてフィードバックをしあっていたそうで、自身でも動画編集の大変さを痛感してたという。

その点Spochはスマホアプリ上で動画に字幕を入れたり、図形やコメントを書き込んだりできるため、スマホしかもっていない中高生でも動画の編集が可能だという。2画面で動画を比較したり、タグ付けの機能も備えている。

⼟井氏によれば動画の編集機能に加えて好評なのが、クローズドなSNSである点だという。「従来はYouTube上に動画を非公開でアップロードし、それをチームのLINEグループで共有するというのが多かった」(土井氏)らしいが、URLがわかれば動画にアクセスできてしまうし、LINEもアカウントの乗っ取り問題があったから不安に思っていたチーム関係者もいたそうだ。

今後はサッカー動画の自動戦術分析機能を開発

SPLYZAは2016年にKDDIのアクセラレータプログラム「KDDI∞ Labo」の第10期に参加し、トライアル段階で約100のチームで導入。さまざまな種目のチームで活用されているが、特にヘビーユーザーが多かった「サッカー」にまずは焦点を絞り、画像認識による自動戦術分析機能の開発を進めていくという。

「ボールの支配率や攻守の切り替わり、個々の選手のプレイ状況などを自動で分析できる機能を追加し、これまでは可視化されていなかったデータを形式知化していきたい。それによって、選手の発掘や指導者不足といった課題解決に貢献できればと思う」(土井氏)

同社は画像認識や機械学習を用いたサービスを以前から開発しており、スポーツの残像動画を撮影できるClipstroというアプリについては過去にTechCrunchでも紹介している。今回調達した資金を元に開発体制をさらに強化し、サービスを改善していく予定だ。

SPLYZAのメンバー。右から3人目が代表取締役の⼟井寛之氏

SPLYZAのメンバー。右から3人目が代表取締役の⼟井寛之氏

イギリスのMonzoがシリーズCのクローズへ―、ヨーロッパで増え続ける”チャレンジャーバンク”

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最近増えているネット専門銀行(またはチャレンジャーバンク)のひとつで、イギリスに拠点を置くMonzoは、現在シリーズCのクローズ間近で、早ければ今週中にも資金調達が完了する予定だ。

複数の情報筋によれば、アメリカのThrive Capitalがこのラウンドのリードインベスターを務めているようだ。しかし調達額についてはまだわかっておらず、3000万ポンドという情報もあれば、それより少ないが2000万ポンドは超えるという情報もある。さらに、Monzoが近いうちに2回目のエクイティクラウドファンディングのキャンペーンを開始するということもわかっている。

Monzoの共同ファウンダー兼CEOのTom Blomfieldに、シリーズCの存在やリードインベスターについて尋ねたところ「現段階ではコメントすることはできません」という反応が返ってきた。

興味深いことに、イギリス人のシンガーソングライターTom OdellがMonzoに投資しているかもしれないという情報も入ってきている。ラッパー・プロデューサー兼テック起業家のWill.I.amが、イギリスの別のチャレンジャーバンクAtomとチームを組もうとしており、さらにAtomへ投資するかもしれないというSky Newsの報道を考えると、この話は一層面白くなる。

Monzo以外にも、ニューヨークに拠点を置くThrive Capitalから投資を受けたヨーロッパのフィンテック企業は存在する。Josh Kushnerが設立したThrive Capitalは、最近行われた独RaisinのシリーズCでもリードインベスターを務めていた。なおRaisinは、ヨーロッパ全体で利用できる貯蓄口座を提供している

Monzo(以前はMondoという名前で活動していた)はインターネット専門銀行、もしくはBlomfieldの言葉を借りれば「スマートバンク」として、今年中にユーザーが当座預金口座を開設できるよう準備を進めており、昨年8月にはイギリスの規制団体FCAおよびPRAから「条件付きで」バンキングライセンス取得した。

現在のところ、10万人以上のユーザーがMonzoのプリペイド版のMasterCardと、iOS・Android両OSに対応したモバイルアプリを利用している。Monzoユーザーは、リアルタイムでの出金記録や、カードの利用場所の地図表示、支出金額のカテゴリー別け、全ての出金情報がまとまったタイムラインといったサービスも利用できる。

Monzoはこれまでの資金の一部をクラウドファンディングから、そして大部分をロンドンのアーリーステージVCであるPassion Capitalから調達しており、累計調達額は1280万ポンドに及ぶ。昨年10月に公表されたブリッジファンディング(つなぎの資金調達)では480万ポンドを調達しており、その際の評価額は5000万ポンドだった。

一方で昨年末には、Monzoが大手銀行からの巨額買収提案を却下したと噂されていた。先週のインタビュー中にBlomfieldにこの件を尋ねたところ、彼はこの話が真実だと認めた。

提案を却下した理由について彼は、「彼らには別の目的がありましたし、そもそもとても厄介な会社なんです」とその銀行の古びたITシステムや、文化、考え方などを例に挙げながら話した。「古い体制が残っているとリスクをとらなくなり、根本的にはイノベーションが止まってしまいます。これこそが問題なんです」

さらにBlomfieldは、売却の可能性は完全には否定できないものの、スタートアップ銀行にとって早い段階で他社に事業を売却するということは、救済策をとることに等しいと言う。「早い段階での売却は、設立当初の目的を達成できなかったと言っているも同然です」

一方でシリーズCは依然進行中のため、Blomfieldや彼のチームの前にはまだ長い道が続いている。

Monzo共同ファウンダーTom Blomfieldとのインタビューの様子はこちらから。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

セキュリティや特化型クラドソーシングを展開するココン、SBI FinTechファンドなどから総額5億円を調達

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サイバーセキュリティ事業と特化型クラウドソーシング事業を展開するココン。同社は2月21日、SBIホールディングスの子会社のSBIインベストメントが運用するFinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合などのファンドを引受先とした第三者割当増資を1月31日付で実施。総額5億円の資金調達を完了していたことを明らかにした。ココンによると、同社はこれまでにVCや個人投資家から合計12億円以上の資金を調達しているという。

調達した資金は、サイバーセキュリティ分野でのプロダクト開発の強化、既存事業における投資およびM&Aに充てるとしている。また、同社が展開するモバイルアプリ、Webサイト、IoTデバイスのセキュリティ診断サービスなどがSBIグループ各社およびSBIグループの提携先の企業に導入される見込みだ。

ココンは2013年2月の創業。当時はPanda Graphicsという社名で、2Dイラストと3Dコンピューターグラフィックスの特化型クラウドソーシングサービス「Panda Graphics」を手がけていた。2014年6月に3DCGモーション制作を展開するモックス、2015年1月にUX設計、UIデザイン事業を展開するオハコと資本業務提携。2015年5月にGroodが展開していた音声クラウドソーシングサービス「Voip!」を譲受するなど、事業領域を拡大してきた。

事業の多角化に伴い、2015年6月に社名をPanda Graphicsからココンに変更。その後、セキュリティ診断事業を展開するイエラエセキュリティ、セキュリティなどの情報技術における研究開発支援、コンサルテーションを行うレピダムを完全子会社化。サイバーセキュリティ事業に進出するとともに、Panda Graphics、Voip!を運営するクラウドソーシング本部を分社化し、Panda Graphics(旧社名と同じだが別法人)を新設。両事業を主力事業と位置付け、事業展開を行ってきた。

メニューはわずか数種類 ― マレーシアのフードデリバリー「Dah Makan」が1300万ドルを調達

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東南アジアのフードデリバリー企業として今年初めて大型の資金調達を果たしたのは、Dah Makanとなった。同国の投資家から浴びていた批判を跳ね返したかたちだ。

Dah Makanは現地時間19日、シードラウンドでNFQ Capital、East Ventures、Asia Venture Group、Gruparaなどから1300万ドルを調達した。Nestléの前CEOもエンジェル投資家として本調達ラウンドに参加している。

Dah Makan(現地の言葉で「もうご飯は食べた?」)は、2年前にクアラルンプールで生まれたサービスだ。どうサービスはアジアにおける「フルスタック」サービスの1つであり、業務のすべて(調理、配送、支払いなど)を自社で行っている。これは、創業初期のフード系サービスとしてはめずらしいことだ。Rocket InternetのFoodPandaは、地域のレストランと共同でビジネスを行い、レストランと顧客を結びつける大きな役割を果たしている。しかし、プロセスの中に外部関係者を多く含めれば含めるほど、プロセス全体の複雑性と不確実性が増す可能性がある。FoodPandaはサードパーティにプロダクトのクオリティ管理や配送を委託しているにもかかわらず、ユーザーの期待に応えるサービスではあるだろう。一方で、その同類のDah Makanは、サービスとシステムの管理がしやすい体制を整えている。

例えば、Dah Makanはランチとディナーのあらかじめ決められた時間にしか配送を行なわない。そして、その時間の45分前に注文された分だけを受け付ける。顧客にとってはかなり制限のあるサービスだということだ(ランチとディナーのメニューは日ごとに決められた数種類の料理しかなく、ビッグブランドの料理は取り扱っていない)。しかし、そのトレードオフによってDah Makanは徹底的なプロダクト管理を可能にしている。

配達ルートも最適化されている。注文が入るごとに配達用のバイクを送り出すのではなく、Dah Makanはその日の注文数と顧客の位置情報をもとに最適化された配達ルートを計算する。Dah Makanにとって、これは金銭的なメリットにもつながる。従来のフードデリバリーサービスでは、ある注文が利益を生む一方で、またある注文では損失を生むというのが一般的だった。しかし、同社のサービスではすべての注文から利益を得ることができると彼らは話している ― ただし、マーケティングや給与などのコストはユニットごとの損益計算にはもちろん含まれてはいない。

Dah Makanでは1回かぎりの注文をすることもできるが、同社は顧客に会員オプションに加入することを奨励している。彼らの会員サービスは固定されたプランというよりも、どちらかというとポイント制プランのようなものだ。99MYR(22ドル20セント)で5回、379MYR(85ドル)で20回、999MYR(225ドル)で50回分の注文をすることができる。しかし、ユーザーが数日のあいだ街を離れていたり、その日のメニューが気に入らない場合は、そのポイントを後々のためにとっておくことが可能だ。

同社のファウンダーたちはTechCrunchの取材に対して、会員制サービス「Dah Makan Prime」からの収益が「大半を占めている」と話している。

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Dah MakanとFoodPandaのサービスが似ているので、Dah Makanの共同創業者たちが元FoodPandaの従業員だったと言われてもそこまで驚かなかった。Dah Makan CEOのJonathan Weins氏とCOOのJessica Li氏は、2014年に同社のアイデアを考えつくまではFoodPandaの香港チームに所属していた。そして、後にCTOのChristian Edelmann氏が加わったことでアイデアが現実化した。

Weins氏は「フードデリバリーをもっと手軽な価格で提供し、もっと便利なサービスにしたかった」と語る。

Dah Makanは現在、1日あたり1000件の注文を獲得しているという。しかし、同社はマレーシア全土にビジネスを拡大するつもりはない。その代わり、彼らは今年のおわりまでに他の東南アジア諸国へと海外展開を進める予定だ。

「今回調達した資金はクアラルンプールに投下する予定です。この市場は非常に大きいからです。この市場にはまだ、私たちがリーチできる潜在顧客がたくさんいます」とWeins氏は説明する。彼によれば、クアラルンプールでリーチ可能な潜在顧客は約600万人だという。

「テクノロジーにも大きく投資していきます。ルーティングやクラスタリング、そしてドライバーの配送場所を決める機械学習などがその例です」と彼は加えた。

同社は「今年末をめどに」シリーズAの調達ラウンドも実施する予定だ。その資金を利用することで、人口密度、現地の購買力、競合関係などのファクターを考慮しながら海外展開を進めていくという。そうなれば、シンガポールのGrainなど、他の「フルスタック」フードデリバリー企業と直接的に競合する可能性が非常に高い。

Grainと同じように、人々がヘルシーな食べ物や利便性にどれだけ魅力を感じるのか、そして彼らがFoodPandaのメニューにあるようなビッグネーム企業の食べ物にどれだけ飽き飽きしているのか、という点が勝負の分かれ目となるだろう。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

5秒の声サービス「Baby」のDoki Dokiが京大VCから5000万円追加調達で外国語学習に応用

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Doki Dokiのメンバー。右真ん中が井口尊仁CEO

2008年のセカイカメラ、2013年のTelepathy Oneとテック業界の話題をさらった井口尊仁氏のスタートアップ企業Doki Dokiが今日、京都大学イノベーションキャピタルからプレシード投資として5000万円の追加資金調達を行ったと発表した。2014年6月に米国拠点で設立されたDoki Dokiは、これまでにSkyland Venturesサイバーエージェント・ベンチャーズのほかエンジェル投資家らから約6000万円の資金を調達していて、累計調達額は1億1000万円になるという。

声のコミュニケーションアプリ「Baby」は2016年10月の米国ローンチ時にTechCrunch Japanでも取り上げたが、Twitterようにパブリックなタイムラインに見ず知らずの人たちの5秒の声が流れるというプラットフォームだ。Babyはローンチから4カ月ほど経つが、Doki Dokiの井口CEOによればユーザー数などはベータ版のため非公開。近々大幅なバージョンアップを控えているという。

今回の資金調達をきっかけに、京都大学学術情報メディアセンターとの共同学術研究を推進するという。初期段階では5秒間の音声コミュニケーションを使った外国語学習のユースケース検証を行い、その後は今後は感情分析や機械学習を用いた音声コミュニケーションの進化を促進する共同研究を実施予定だという。

Amazon EchoやGoogle Home、AirPodsなど音声を使ったユーザーインターフェイスへの注目は高まる一方なので、音声データを集めることができれば有用な研究ができるだろう。それもこれもBabyがそもそも「使いたくなる理由」を提供できていてこそ。ECやホームコンピューティングのUIとしての有用性は多くの人が体感し、指摘しはじめている。果たしてBabyのように「声」をパブリックなタイムラインに流すことが楽しかったり、有用だったりするのかどうか。Doki Dokiは、まだこれからそれを証明しないとならないのだろう。一方、スマホ時代になって消費に時間のかかる旧来型パッケージのコンテンツが重たいなと感じている人は多いだろう。そうしたことからマイクロ学習にも注目が集まっているので「5秒音声による学習」というのに面白い展開もあるのかもしれない。