保険テック系スタートアップBackNineの過失で米大手保険会社の数十万件の申込書が流出

保険テクノロジーのスタートアップ企業であるBackNine(バックナイン)のセキュリティ上の過失により、同社のクラウドサーバーがインターネット上に無防備に放置され、数十万件の保険申込書が流出した。

BackNineという社名に聞き覚えはないかもしれないが、過去数年の間に保険を申し込んだことがあるなら、あなたの個人情報も処理していたかもしれない。カリフォルニアを拠点とする同社は、大手保険会社が生命保険や障害保険を販売・維持するためのバックオフィスソフトウェアを構築している。また、中小企業や独立系のファイナンシャルプランナーがウェブサイトで保険プランを販売する場合には、ホワイトレーベルの見積もりウェブフォームを提供している。

しかし、Amazon(アマゾン)のクラウド上でホストされていた同社のストレージサーバーの1つが、誤って設定されていたため、そこに保存されていた71万1000件のファイルに誰でもアクセスできる状態になっていた。その中には、本人とその家族の非常に機密性の高い個人情報や医療情報が含まれている作成済みの保険申込書もあった。さらに個人の署名の画像や、その他BackNineの社内ファイルも含まれていた。

TechCrunchは、調査した書類の中に、氏名、住所、電話番号などの連絡先情報の他、社会保障番号、医療診断、服用している薬、申込者の過去と現在の健康状態に関する詳細な記入済みアンケートなどがあることを発見した。血液検査や心電図などの検査結果も含まれていた。運転免許証の番号が記載されている申込書もあった。

無防備に放置されていた書類は、2015年にまで遡り、最近では今月に入ってから作成されたものもある。

バケットと呼ばれるアマゾンのストレージサーバーは、デフォルトでは非公開に設定されているので、バケットを管理している誰かがその権限を公開に変更したのだろう。データはいずれも暗号化されていなかった。

セキュリティ研究者のBob Diachenko(ボブ・ディアチェンコ)氏は、公開状態となっていたストレージバケットを発見し、2021年6月初旬に同社にメールでこの過失の詳細を伝えていたが、最初の返事を受け取った後、返信はなく、バケットは公開されたままだった。

TechCrunchは、ディアチェンコ氏が連絡して無視されたBackNineのバイスプレジデントであるReid Tattersall(レイド・タッターソル)氏と連絡を取ろうとしたが、TechCrunchも無視された。しかし、タッターソル氏に(同氏のみに)公開状態になっていたバケットの名前を伝えてから数分後に、それらのデータはロックされた。TechCrunchは、タッターソル氏からも、同氏の父親でBackNineの最高経営責任者であるMark(マーク)氏からも、まだ返事をもらっていない。

TechCrunchはタッターソル氏に、同社が州のデータ漏洩通知法に基づいて地元当局に通報したかどうか、データ漏洩の影響を受ける個人に通知する計画があるかどうかを尋ねたが、回答は得られなかった。サイバーセキュリティ事件の開示を怠った企業は、厳しい財政的・民事的な罰則を受ける可能性がある。

BackNineは、いくつかの米国の大手保険会社と取引をしている。今回公開されてしまったバケットには、AIG、TransAmerica(トランスアメリカ)、John Hancock(ジョン・ハンコック)、Lincoln Financial Group(リンカーン・フィナンシャル・グループ)、Prudential(プルデンシャル)の保険申込書が多く含まれていた。本記事掲載前に連絡を取ったこれらの保険会社の広報担当者はコメントを控えた。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:データ漏洩個人情報保険アメリカAWS

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アマゾンが購入したトークンで1話ずつ読み進めていく連載小説プラットフォーム「Kindle Vella」を米国で開始

Amazon(アマゾン)は2021年6月に約束したとおり、アプリ内課金で連載小説の各話を読み進めていく「Kindle Vella(キンドル・ヴェラ)」ストアを起ち上げた。この新しいプラットフォームは、読者が新しい小説を発見するための方法であると同時に、作家がKindle Direct Publishing(Kindle ダイレクト・パブリッシング)サービスから収益を得るための新しい方法でもある。

Kindle Vellaは、その名前から想像するのとは違い、アマゾンの電子書籍端末「Kindle(キンドル)」では利用できない。ウェブブラウザでAmazon.comにアクセスするか、KindleのiOSアプリ(Androidアプリは今のところ対応していない)でのみ利用可能だ。当初は、英語で物語を出版している米国在住の作家のみに限定される。

1話(エピソード)あたりの語数は600〜5000語程度で、最初の3話は無料で読むことができる。それ以降の話を読み進めるためには「トークン」を支払わなければならない。トークンの価格は、200トークンで2ドル(約220円)、1700トークンで15ドル(約1650円)。後者で約34本程度のエピソードを読むことができるが、1話を読むために必要なトークンの数は語数によって異なり、語数が多ければ多いほど費用がかかる。

一方、著者は収益の50%と、アプリのソーシャルメディア的な機能による人気度に応じたボーナスを受け取ることができる。読者は作品をフォローして新しいエピソードの公開時に通知を受けたり、気に入ったエピソードに「いいね」をつけたり、その週の好きな作品に「Fave(お気に入り)」を付けたり(トークンを購入して読み進めた作品に限る)、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)などのソーシャルメディアで共有したりすることができる。読者とのつながりを高めるために、著者はエピソードの最後に読者に直接語りかけて「ストーリーの洞察や舞台裏のコンテンツを共有することができます」と、アマゾンは書いている。

アマゾンは、3カ月前にVellaを作家たちにオープンして以来「何千人もの作家」が「数十にわたるジャンルで、何万本ものエピソードを」公開しているという。作家たちも興味を持っているようだ。ベストセラー作家のAudrey Carlan(オードリー・カーラン)氏は「私はこれまで30冊近くの小説を出版してきましたが、この新しいフォーマットで『The Marriage Auction(結婚オークション)』を書くという冒険を楽しんでいます」と、声明の中で述べている。このフォーマットが流行るかどうかは読者次第だが、あなたも試しにここからVellaにアクセスしてみてはいかがだろうか。

【編集部注】本記事はEngadgetに掲載されたもの。著者Steve Dent(スティーブ・デント)は、Engadgetの編集者。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AmazonAmazon Kindleアプリ電子書籍アメリカ

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(文:Steve Dent、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックがFTCのリナ・カーン委員長を独禁法違反訴訟から除外するよう要求

Facebook(フェイスブック)がAmazon(アマゾン)の仲間に加わって、反トラストのタカ派であるLina Khan(リナ・カーン)氏が突然FTCの委員長になったことに警戒を示し、氏を同社に関するすべの決定から外すよう要求した。その主張はAmazonの場合とほぼ同じで、就任前のカーン氏のプロフェッショナルとしての意見が、このような企業は反トラストのルールに違反しているという、あまりにも過激なものだった、と両社は述べている。

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今回はFTCに提出された書簡をWSJが入手したが、FTC自身はコメントを断っている。書簡でFacebookは、カーン氏の最近数年間の学術的刊行物や他のメディア上の記事は、すべてが積もり積もって、氏を同社に関する決定から排除すべき根拠になる、と述べている。現在、Facebookに陳情書のコピーを求めているため、届き次第この記事をアップデートしたい。

WSJの記事によると、陳情書では次のように述べられている。「カーン委員長は一般的に公表される声明の中で一貫して、弊社自身が認めていない行為でFacebookを非難するだけでなく、その行為が反トラストの侵害に該当するという彼女の信念を述べてきた。新しい委員がすでに事実と法に関する結論を描き、ターゲットを事前に違法者と見なしているとき、デュープロセス(適正手続)はその個人が自己を除外することを要求している」。

FTCとカーン氏には、FacebookとAmazonからの除外要求に応じる能力がない。彼女は自分の指名議事の中で、このような除外要求があった場合にはケース・バイ・ケースで解決するとと述べている(金銭的ないし個人的関心なら自動的な除外になる)。おそらく彼女は今すでに、部内の倫理専門家と相談しているのではないだろうか。

たしかにカーン氏は、自らの政策の立ち位置を多くの記事や論文で発表してきた。その多くは、反トラストの規制当局が自分たちの法的権力の解釈と実行においてあまりにも保守的で、また、今日隆盛を極めている巨大テクノロジー企業の監督においてはあまりにも甘いと論じている。競合他社を買収したり、価格を人為的に下げて市場に圧力を加えたり、顧客データの収集と利用に関して虚偽を述べたりといった行動は、見逃されたり過小な罰で済まされていた。

特に彼女は、下院が2020年秋発行した反トラスト報告書で顧問弁護士を担当している。1966年から1970年までの事件ではAmazonとFacebookの圧力でFTCの委員が、彼が参加した議会の調査の間に「偏見」で除外された。たしかにそれは、訴えを取り上げるための有望な契機にはなるが、状況は決して当時と同じではない。私は法律家ではないがそんな私から見ても、今やいかなる訴えも、具体的な申し立ても事前審理すら為されず、ただFacebookやApple、Google、Amazonなどはすべて独占であるか、または市場に対する力を持っているという一般的な風説があるだけだ。そのため下院の2020年の報告書も、彼らにとっては痛くも痒くもない。

むしろ下院の報告書が見つけたメインの事項は、既存の法と規制が不備があり、いかなる訴訟もありえないということだ。確かにカーン氏はここ数年、まさにこのことを屋根の上から叫んできた。でもその結論は法律の問題であり、FTCの仕事ではない。まだ書かれてもいない法律が定義している反トラストの訴訟をカーン氏が事前審理することは、おそろしく難しいだろう。

カーン氏のFTCは、同委員会が抱えていたFacebookに対する反トラストの訴件の一部が棄却され、彼女の就任直後という初期にやや躓いたが、しかしそれは彼女のせいではない。それは、Facebookがソーシャルメディアを独占的にコントロールした、という訴件に十分な証拠がないため、判事がFTCにもう一度出直せと告げたものだ。それに対しカーン氏の意図は、補足文書を提出するか、または負けを認めて来年か再来年の別件のために力を結集するかのどちらかだろう。しかしいずれにしても、彼女に対して言われている「偏見」の問題を解決してから決定を発表するのがベストだ。なお、除外要求が現在行われている訴訟に影響を及ぼすか、という推測をFTCは断った。

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しかしFTCは、バイデン大統領の大統領命令という形で、ホワイトハウスから明示的な支持を得た。大統領令が優先的に取り上げているのは「支配的なインターネットプラットフォームの、特に若い競合他社の買収や連続的な合併、データの集積、『無料』のプロダクトによる競争、そしてユーザーのプライバシーへの影響」だ。これでカーン氏もおそらく前述の法的チャレンジに対してあまり痛みを感じないだろう。

AmazonとFacebookが提出した陳情は、同社自身がひとかけらもリスクを負わない(訴訟ではない)ものであり、単純に除外の挑発という外部的チャンスに賭けている。だから、陳情という形になっているのであり、それは彼らが今後必然的に独占的慣行をFTCとカーン氏から訴えられた場合に備えるパン屑でもある。法的反動は予測が難しいが、通常は訴状が最初からテーブルの上にあった方が後から持ち出すよりも良いというわけだ。

カーン氏の委員長着任により、FTC自身も改革が必要であり、Facebookのような企業を相手にできるだけの強さが必要だ。そして、これが、今後の長い々々勝負の最初の一手にすぎないことは、誰の目にも明らかだ。

関連記事:バイデン氏がビッグテックの「悪質な合併」阻止目指す大統領令に署名、過去のM&Aにも異議の可能性

カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookFTC独占禁止法アメリカ

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Electrify Americaが電気自動車の市場投入増加に合わせ北米で充電ステーション倍増へ

Volkswagen(フォルクスワーゲン、VW)が、ディーゼル車の排ガス不正問題に関する米国の規制当局との和解の一環として設立したElectrify America(エレクトリファイ・アメリカ、EA)は、2025年末までに米国とカナダにおける電気自動車用急速充電ステーションの数を倍増すると発表した。

この取り組みが成功すれば、それまでに1800カ所の急速充電ステーション(充電器にして1万台)が設置・運用されることになる。その大部分(約1700ステーション)は米国に設置され、残りはカナダに設置される予定だ。これは、2021年末までに米国内に約800カ所の充電ステーションと約3500台の充電器を設置するというEAの計画に基づいている。7月13日現在、Electrify Americaは米国内に635カ所の充電ステーションを設置している。

この計画は、親会社であるVWグループが米国時間7月12日に発表した、北米、アジア、欧州における公共の充電インフラを増やすことの一環だ。この拡大で、150キロワットと350キロワットの充電器、つまり急速充電器の数を増やすことを目指す。VWとEAは、この新計画達成に向けどれだけ資金を費やすのかを明らかにしていない。しかし、EAの広報担当者は、20億ドル(約2200億円)を上回る金額を投じると認めた。これは以前同社が、2017年に始まる10年間のクリーンエネルギーインフラへの投資として約束した金額だ。

Electrify Americaの社長兼CEOであるGiovanni Palazzo(ジョバンニ・パラッツォ)氏の声明によると、北米での充電インフラを2倍にするという決定は、ほぼすべての自動車メーカーが電気自動車に関して見込む急速な成長が背景にある。

EV市場は、かつてはテスラや日産リーフ、GMのシボレー・ボルトEVなどが主役だった。現在、道路を走っている自動車の大半はガスやディーゼルエンジンを搭載しているが、フォード・マスタング・マッハE、ポルシェ・タイカンとクロスツーリスモシリーズ、ヒュンダイ・コナ・エレクトリック、ジャガー・Iペース、リヴィアンのR1TピックアップトラックとR1S SUV、VW ID. 4など、市場に登場した、あるいは登場しようとしている他のEVモデルが増えている。

Electrify Americaの当初の計画では、10年間で20億ドル以上(約2200億円)をクリーンエネルギーのインフラや教育に投資することになっていた。そのうち約8億ドル(約880億円)は、北米最大のEV市場であるカリフォルニア州に割り当てられた。今回の投資は、カリフォルニア州をはじめとする米国のEV地域での充電器増設に加え、ハワイ、ノースダコタ、サウスダコタ、ウェストバージニア、ワイオミング、バーモントなど新たな州への進出にも使われる。

また、中西部の高速道路にも充電器を設置し、国をまたいだ移動を促進する取り組みも行っている。子会社のElectrify Canadaは、サスカチュワン、マニトバ、ニューブランズウィック、ノバスコシア、プリンスエドワード島を含む9つの州にネットワークを拡大する。また、Electrify Canadaは、すでに進出しているブリティッシュ・コロンビア、アルバータ、オンタリオ、ケベックにもステーションを増やしていく。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Electrify America電気自動車充電ステーションアメリカVolkswagen

画像クレジット:Electrify America

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

バイデン氏がビッグテックの「悪質な合併」阻止目指す大統領令に署名、過去のM&Aにも異議の可能性

バイデン政権は米国経済の一部の寡占化が進む分野、中でもハイテク業界に、大統領令によって強制的に競争を導入する大規模かつ野心的な計画を発表した。

「バイデン大統領は本日、企業統合の傾向を緩和し、競争を促進して、米国の消費者、労働者、農家、中小企業に具体的な利益をもたらすために、断固たる措置をとります」と、ホワイトハウスが公表した今回の大統領令に関するファクトシートには記されている。

バイデン氏が米国時間7月9日に署名したこの大統領令は、連邦レベルで12以上の異なる機関を巻き込み独占を規制し、消費者を保護し、世界最大級の企業の悪行を抑制するという、包括的な「政府一丸」のアプローチを開始するものだ。

このファクトシートの中でホワイトハウスは、大企業を取り締まる問題を連邦レベルで自らの手で解決しようとする計画を掲げている。テック分野に関しては、反トラスト法の施行権限を持つ連邦機関であるFTC(連邦取引委員会)と司法省の力を強めることが主な目的だ。

すでに規制の脅威にさらされているビッグテックにとって最も注目すべき点として、ホワイトハウスはここで、これらの機関は「過去の政権が以前に異議を唱えなかった悪質な合併に異議を申し立てる」法的手段を持っていると明確に主張している。つまり、一握りのハイテク企業を今日の巨大企業に育て上げた過去の買収案件を巻き戻す可能性があるということだ。大統領令は、反トラスト法を「精力的に」執行することを反トラスト当局に求めている。

連邦政府の監視は「支配的なインターネットプラットフォームに焦点を当て、とりわけ新興の競合企業の買収、連続的な合併、データの蓄積、『無料』の製品による競争、ユーザーのプライバシーへの影響などに注意を払う」としている。Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)が特にこの警告の矛先だが、Apple(アップル)も連邦政府の注意を免れることはできないだろう。

ホワイトハウスはファクトシートの中でこうも述べた。「過去10年間で、大手テクノロジー企業は数百社を買収しており、その中には潜在的な競争上の脅威を排除するための『キラーアクイジション』と呼ばれるものも含まれている。連邦政府機関は、これらの買収を阻止したり、条件を付けたり、場合によっては意味のある調査さえしなかった場合があまりにも多かった」。

最大手のテック企業各社は、競合他社を買収するという長年の戦略を当時は何の摩擦もなく行うことができたため、後から違法と見なすべきではないと主張してきた。しかし、今回の大統領令は、バイデン政権がそれを認めていないことを明確にしている。

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ホワイトハウスはまた、インターネットサービスプロバイダー(ISP)を具体的に挙げ、消費者の選択を優先し、速度の上限や隠れた料金を明記したブロードバンドの「栄養ラベル」を制定するようFCCに命じている。こうしたラベルはオバマ政権下でFCCが取り組み始めていたが、トランプ大統領の就任後に廃止された。

大統領令はさらに、2017年に撤廃されたネット中立性ルールを復活させることをFCCに直接求めている。ルール撤廃の動きは、オープンインターネットの支持者や、恩恵を受けることになるサービスプロバイダー以外のテック業界のほとんどに広く恐怖を与えたものだった。

また、ホワイトハウスはFTCに対し、FacebookやYouTubeなどの無料サービスが巨大な帝国を築くために利用してきた、監視や「非常に多くのセンシティブな個人情報の蓄積」から消費者を守るための新しいプライバシールールを作成するよう要請する予定だ。ホワイトハウスはFTCに対しさらに、大規模なプラットフォームの寡占により成長を抑制されないよう、中小企業を保護するためのルールを策定するよう求めている。大企業は新進気鋭の競合他社を打ち負かすために、別の形のデータに基づいた監視で市場の優位性を乱用するケースが多いからだ。

最後にこの大統領令は、DIYや第三者による修理を阻害するような制約から消費者を解放する「修理する権利」ルールを導入するようFTCに促している。国家経済会議(NEA)長官の下に新設されたホワイトハウス競争評議会(White House Competition Council)は、新大統領令で示された提案を連邦政府が実行するための調整を行うとのこと。

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行政府の反トラスト法への取り組みは、FTCや議会での活動と並行して行われている。FTCサイドでは、バイデン大統領はLina Khan(リナ・カーン)氏という恐れられている反トラスト運動家を任命した。カーン氏はAmazonを激しく批判する若い法学者であり、連邦政府が独占を定義する方法を哲学的に見直すことを提案している。同氏は現在、委員長としてFTCを率いている。

米国議会では、テック業界を抑制することを目的とした超党派の法案が、多くのハードルを残しながらも法制化に向けて徐々に動き出している。2021年6月に下院司法委員会は、ハイテク業界のロビー活動に対抗するために別々に作成された6つの法案を審議した。これらの法案は、巨大なインターネットベース企業の現代のリアリティに対応できていない独占禁止法を近代化しようとするものだ。

今回の大統領令について、ハイテク分野の反トラスト法改革を主導しているAmy Klobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員はこう述べている。「米国の独占問題に対処するためには、競争政策に新たなエネルギーとアプローチが必要です。それは、独占禁止法を更新するための法律を制定することを意味しますが、同時に、現行の法律の下で競争を促進するために連邦政府ができることを再考することも意味します」。

ホワイトハウスは、ここ数十年で企業統合が加速していることを挙げ、ひと握りの大企業が医療、農業、ハイテクなどの業界を支配しており、消費者、労働者、中小の競合企業は、それら大企業の過剰な成功の代償を払っていると主張している。バイデン政権は、これらの産業の一角にある企業に対して独占禁止法の執行に力を入れるとともに、労働市場や労働者保護を全体的に評価していくという。

「不十分な競争は、経済成長とイノベーションの妨げとなります。【略】経済学者たちは、競争が減ると、生産性の伸びが鈍化し、企業投資やイノベーションが減少し、所得、富、人種の不平等が拡大すると指摘しています」とホワイトハウスは述べている。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデンアメリカ反トラスト法FTC

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

【コラム】テックコミュニティにおけるメンタルヘルスの偏見をなくすために

編集部注:本稿の著者Nigel Morris(ナイジェル・モリス)氏はQED Investorsの共同ファウンダーでマネージングパートナー。

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アントレプレナーシップ(起業家精神)への道のりは決して容易ではない。そのプロセスは、ストレスが多く、とてつもない規模の精力的行動、リスクテイク、そして不確実性の中で前進していくことが求められる。犠牲は計り知れないものがあり、時には精神面における健康を代償にすることもある。

創業者たちは、リソースが不足していて、過度にコミットしている状況に陥ることも多い。夢を追い求めることは心躍る魅力的な体験である一方、従業員、投資家、顧客に対する責任の重さに圧倒されることもあるだろう。

この問題をさらに複雑にしているのは、多くの創業者たちが「失敗者」と見なされたり、仕事をする能力がないと思われたりすることを恐れて、最も近しい人たちに自分がどのように感じているかを明らかにしたがらないことだ。会社経営にともなう要求事項や重圧のために、創業者が依存症や薬物乱用に苦しんでしまうことを少しの間想像してみて欲しい。そして、投資家にそうした状況を明らかにしなければならないことにより、その心配と不安が一層増してしまうことを考えてみよう。

精神科医で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部の教授を務め、CEO職の経験を持つMichael Freeman(マイケル・フリーマン)氏は、起業家の間の、心の健康状態に関する罹患率と特性について調査を行った。

創業者は、人口統計的に適合した比較対象と比べて、うつ病にかかる可能性が2倍、ADHD(注意欠陥多動性障害)を患う可能性が6倍、薬物乱用に陥る可能性が3倍、自殺念慮に至る可能性が2倍高くなっている。

創業者は、人口統計的に適合した比較対象と比べて、うつ病にかかる可能性が2倍、ADHD(注意欠陥多動性障害)を患う可能性が6倍、薬物乱用に陥る可能性が3倍、自殺念慮に至る可能性が2倍高くなっているとフリーマン氏は結論づけている。起業家はメンタルヘルスの問題を抱えている可能性が50%高くなっており、創業者の間で驚くほど蔓延している特定の状況があることが、同氏の調査で明らかになった。

この統計には目を見張るものがあるが、実際に目に見えるインパクトは、真に衝撃的なものになる可能性がある。

私は、腕や肩に痛みがあるときには、仕事に出向いてそのことについて弱音を漏らすこともある。しかし、昨晩眠れなかったり、外出を不安に感じたり、あるいは睡眠薬を飲みすぎたり、ワインを飲みすぎたりした場合には、その話題に触れることはないだろう。

かかりつけの医者に肩を治療してもらうつもりだと伝えることはあっても、セラピストに相談するつもりであることは口にしないと思う。

QED Investorsでは、この沈黙がもたらした悲惨な結果を目の当たりにしている。私たちは2018年、パートナーのGreg Mazanec(グレッグ・マザネック)氏を失った。薬物乱用との長い闘いの末のことだった。それ以来、私たちはグレッグの家族と協力して、VCやスタートアップの世界にいる人々が同じ運命をたどるのを防ぐために、どのように自分たちの役割を果たせるかを検討してきた。

個人的な友人としても、また同僚としても、グレッグについて十分に語り尽くすことはできない。彼は、自らを通してすばらしい人間を定義づけているような人物だった。直交性のある思想家で、粘り強く、聡明で、斬新さを兼ね備えていた。私たちは彼をあまりにも早く失った。今もなお、私たちは彼の存在を傍らに置いている。

その当時の当社のチーム構成は15人だったことから、お互いがどれだけ親密であったかを想像していただけると思う。私は、機会があればいつでも彼の話をしようと、自分自身、そして彼の家族に誓った。だから、LPやポートフォリオ企業の前に出るたびに、この問題を表に出して、この腐食性を帯びたスティグマと正面から向き合うことにしている。

心の健康に関する議論を影の外に持ち出すことで、結果の軌道を大きく変えることができる。ベンチャーキャピタルの世界には、新型コロナウイルスのパンデミックが人々の不安や心配を増幅させる前から、このような困難を経験している人がたくさん存在する。人々は孤立感、抑うつ、不安、無力感を募らせており、オピオイドやその他の形式の依存症、または薬物の乱用に向かってしまった人もいる。

友人、仲間、同僚からの支援は、心の病を克服する上で極めて重要だ。企業がオフィス勤務を再開、あるいは自宅とオフィスのハイブリッド勤務を導入し始める中、経営陣は、自社の文化に再び焦点を当て、依存症に対する偏見を取り除き、メンタルヘルスを優先事項にする真の機会を手中にしている。それは、この問題に重点を置くためのまたとない好機である。

マザネック家は、グレッグのような創業者や起業家のコミュニティにとって最も大切なエコシステムにおける、薬物乱用や依存症の問題に取り組む目的で、Operation Lighthouseを設立した。このすばらしいイニシアティブを強力に支援することは、当社QEDにとって極めて自然な決断だった。

2021年の初めに、QEDはポートフォリオ企業3社とともに、Just Fiveと呼ばれるプログラムを試験的に導入した。Just Fiveは、全国的なメンタルヘルス非営利団体であるShatterproofによって作成されたもので、依存症に関する重要な概念と事実について、1レッスンにつき5分程度で伝えている。

そして、QEDの米国拠点のポートフォリオ企業50社すべての1万6千人を超える従業員に、同じ自己学習型の匿名制教育プログラムを無料で提供するに至り、大変喜ばしく思っている。

このプログラムは、メンタルヘルス教育を提供し、情報に基づく議論を促進することで、最終的にスティグマを低減することを目的としている。

2021年中にこのプログラムの対象を、海外のポートフォリオ企業や、創業者を支援したいと考えているその他のVCにも拡大していく意向である。スペイン語版はすでに計画段階に入っている。

レッスンは6つあり、それぞれにテーマが設定されている。最初の2つのレッスンでは、依存症の科学について触れ、初めて使用した年齢や、遺伝学、環境などの特定の要因によって、なぜ一部の人が依存症になり、他の人はそうならないのかについて説明する。

中間のレッスンでは、オピオイドの有害性、および薬物乱用の徴候、症状、治療の選択肢について説明し、最後の方のトピックでは、人々がどのように手助けできるかについて触れていく。私たちがこれまでに受け取った圧倒的にポジティブなフィードバックの大部分は、最後の2つのレッスンに集中している。私たちは、逸話的にすでに把握していたことから、大切なことを学び取った。人々は助けを求めているが、最も助けを必要としている人々は、助けを求める方法を常に知っているわけではないということを。

私はここ数年、メンタルヘルスについてあらゆる機会をとらえて議論してきた。心の健康に対する偏見を取り除くことで、人々はそれに対処できると心から確信している。これは解決可能な問題である。肩の痛みと同じように、治すことができるのだ。人々が最初の一歩を踏み出し、それについてオープンに話すことができる文化を作ることにおいて、より良い仕事をしなければならないと、私たちは強く感じている。

変化を起こすことはできるし、そうしなければならない。あなたの発する声を、私の声につなげて欲しい。

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カテゴリー:その他
タグ:コラムメンタルヘルス健康アメリカ

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(文:Nigel Morris、翻訳:Dragonfly)

【コラム】パンデミックによる米国の労働力不足はAIニーズを呼び起こす大きなチャンスとなるのか?

編集部注:著者のChetan Dube(チェタン・ドゥベ)氏は、Amelia(アメリア)の創業者でCEOである。ニューヨーク大学の元助教授で、自動制御、コグニティブ・コンピューティング、デジタル・ワークフォースの将来的な影響に関する専門家でもある。

ーーー

パンデミックが引き起こした米国の文化や社会への地殻変動は、まだまだ終わりそうにない。その中でも特に目立つのは、米国の労働市場が完全に混乱してしまっていることだ。

何百万人もの人びとが失業しているのに、小売業やカスタマーサービス、航空会社などの企業が十分な労働力を確保できていない。Uber(ウーバー)の料金が高騰したり、飛行機がキャンセルされて延々と待たされたりする背景にあるこの不可解なパラドックスは、単に私たちにとって不便というだけではなく、パンデミック後の米国の労働側からの明確なメッセージでもあるのだ。多くの人が、現在の仕事では給料が低く、過小評価され、存在感が希薄になっていて、キャリアを変えたり、ある種の仕事からは完全に足を洗ったりしたいと考えている。

なお、低賃金労働者だけではなく、ホワイトカラーの退職者も過去最高となっていることにも注目する価値がある。パンデミックの際に実施された失業手当の延長が、一部の労働者の様子見を促している可能性もあるが、従業員たちの燃え尽きや仕事への不満も主な原因となっている。

私たちの目の前には賃金問題と従業員の満足度の問題が横たわっていて、議会はこれからの長い夏の間に解決策を見つけなければならない。しかし、その間に企業は何をすればいいのだろうか?

今、企業が必要としているのは、新型コロナウイルスによる救済措置や失業手当が期限切れとなる9月までの一時しのぎの解決策か、もしくはエンジンをただ動かし続けるだけでなく船を前進させるような、より長期的で頑丈な解決策だ。AIの採用は、その両方の鍵となり得る。

「私たちはAIの目覚めの瀬戸際に立ち会っている」と宣言したところで、おそらく2021年目にしたものの中で最も衝撃的な言葉ではないだろう。しかし、ほんの数年前までは、自動化やAIの進歩により、遠い想像からごく個人的な現実へと変化し始めたことが、膨大な数の人々を怯えさせていたのだ。人びとは、ロボットやバーチャルエージェントの登場で、命の綱である仕事を失うのではないかと、本気で心配していた(今でも一部の人は心配している)。

しかし、この「AIが仕事を奪う」というストーリーは、現在私たちが置かれている文化的・経済的な状況に適用されるのだろうか?

誰もその仕事が好きじゃないのに、AIが仕事を奪っていると言えるのだろうか?

この「人手不足」に明るい面があるとすれば、それは現実の世界にある「組み分け帽子」(ハリーポッターに出てくるクラス分けを行う帽子)の役割を果たしているということだ。雇用の問題からお金を取り除いてみると、人々がどのような仕事を好ましいと思っているのか、さらには、何を好ましくないと思っているのかが明らかになってくる。具体的には、製造業、小売業、サービス業が最も厳しい労働力不足の打撃を受けていて、こうした仕事に関連するタスク(反復的な業務、報われない接客業務、肉体労働)が、ますます多くの潜在的な労働力を遠ざけていることが明らかになっているのだ。

製造業におけるAIの導入は、パンデミックの間にサプライチェーンの変動に対応するために加速したが、今や「試験的な苦行」から広い導入へと移行しなければならない。この業界におけるAIの最適なユースケースは、品質検査、一般的なサプライチェーン管理、リスク / 在庫管理など、サプライチェーンの最適化に役立つものたちだ。

最も重要なことは、AIが機器の故障や破損の可能性を予測し、コストを削減し、ダウンタイムをほぼゼロにできることだ。業界のリーダーたちは、AIは事業継続に有用であるだけでなく、既存の従業員を置き換えるのではなく、彼らの仕事や効率性を増強することができると考えている。AIは、リアルタイムのガイダンスやトレーニングを提供して従業員を支援したり、安全上の危険を警告したり、組み立てラインの潜在的な欠陥を検出するなどの作業を引き受けることで反復的でスキルの低い作業から人間の従業員を解放することができる。

製造業において、現在のような人手不足は今に始まったことではない。米国この業界は、長い間認識の問題に直面してきた。主に若い労働者が製造業を「低技術」で「低賃金」だと考えているからだ。AIは、既存の仕事をより魅力的なものにして、収益の向上に直結させると同時に、テーマに沿った人材や専門知識を集める企業に新たな役割を生み出す。

小売業やサービス業では、過酷な接客業務と低賃金が原因となって、多くの従業員が離職している。それでも頑張っている人は、仕事に不満があっても現在受けている福利厚生のために手をこまねいているのだ。自然言語処理と機械学習を活用して人間のように人と対話できる会話型AIが、従業員を多くの単調な顧客体験のやりとりから解放することで、従業員たちはより頭を使い人間的な入力をもとに、販売やサービスブランドを高めることに焦点を当てた役割を担うことができるようになる。

多くの小売業やサービス業の企業が、パンデミックの際に、オンラインでの大量処理に対応するためスクリプト付きのチャットボットを採用した。だがそうしたチャットボットは固定されたディシジョンツリーで動作しているので、文脈を無視した質問をすると顧客サービスプロセス全体が破綻してしまう。高度な会話型AI技術は、人間の脳をモデルにしている。さらに、AIは運用を通して学習することで、より熟練した技術を身につけ、小売店やサービス業の従業員たちを煩雑な作業から解放し、顧客満足度と収益を向上させるようなソリューションを提供する。

職場におけるAIに対する躊躇と誤解が、長い間普及の障壁となってきた。しかし、人手不足に悩む企業は、AIが従業員の生活をより良くより楽にすることができる場所を検討すべきであり、それは収益成長のためにはメリットにしかならない。そしてそれが、おそらくAIが必要とする大きなチャンスなのだ。

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(文:Chetan Dube、翻訳:sako)

Beyond Meatが植物ベースのチキンテンダーを米国のレストラン400店で展開

Beyond Meat(ビヨンドミート)は米国時間7月8日、新しい植物ベースのChicken Tenders(チキンテンダー)を米国のレストラン400店で展開すると発表した。この新商品のニュースは人工肉大手であるカリフォルニア州拠点の同社が引き続き成長している中でのものだ。同社はすでにWalmartの店舗やTaco Bellの店舗へ進出し、2020年は中国でも積極的に展開した。

似ている名前を冠しているにもかかわらず、Chicken TendersはこれまでのChicken Stripsとは異なる、とBeyond Meatは話す。Chicken TendersはBeyond Meatの広く人気を博しているBeyond Burgerパティよりも前に登場したが、他の商品に比べて人気がなかったために2019年に打ち切りになっていた。

新しいChicken Tendersは主にソラマメとエンドウマメからできていて、1食分あたり14グラムのタンパク質が含まれ、飽和脂肪酸は普通のチキンテンダーより40%少ない。Beyond Meatは、コレステロール、抗生物質、ホルモンを含んでいないと話し、これは大手鶏肉生産社の多くが口にできないことだ。

「当社のすべてのプロダクトと同様、当社のChicken Tendersはすばらしい味と卓越した食体験、そして豊かな栄養を提供します」とCIOのDariush Ajami(ダリウシュ・アジャミ)氏はプレスリリースで述べた。「イノベーションがBeyond Meatの真髄です。Beyond Chicken Tendersは人々と地球にとってより良い、画期的で美味しい選択肢を創造するという当社のミッションの最新例です」。

発表されたBeyond Chicken Tenders取扱店舗に全国展開チェーンは含まれていない。提供は7月8日から始まり、取扱店舗の一部リストは以下の通りだ。

  • Bad Mutha Clucka
  • Bird Bird Biscuit
  • Blissful Burgers
  • Burger Patch
  • Detroit Wing Company
  • Dog Haus
  • Duke’s on 7
  • Epic Burger
  • Fire Wings
  • Flyrite Chicken
  • JAILBIRD
  • Melt Bar and Grilled
  • Milwaukee Burger Company
  • Next Level Burger / Next Level Clucker
  • Nuno’s Tacos & Vegmex Grill
  • Plant-Based Pizzeria
  • Plow Burger
  • Pub 819
  • Romeo’s Pizza
  • Sarpino’s Pizza
  • Stanley’s Northeast Bar Room
  • Syberg’s
  • The Bar Draft House
  • The Block Food & Drink
  • The Howe Daily Kitchen & Bar
  • Toppers Pizza
  • Verdine

変わった名前のチキン料理提供レストランが多いものだ。

人工鶏肉マーケットでは競争が激しくなっている。ナゲット製造業社のSimulateは6月、競合相手に追いつくために5000万ドル(約55億円)のシリーズBラウンドを発表している

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カテゴリー:フードテック
タグ:Beyond Meat植物由来肉レストランアメリカ

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンが米国で自社ブランドのコロナ検査キットの販売を開始、価格は約4400円

米国時間7月6日、Amazon(アマゾン)は米国で自社ブランドの新型コロナウイルス感染症(COVID-19)在宅検査キットの販売を開始すると発表した。検査キットは米国の利用者を対象にAmazon.comのウェブサイトで販売され、処方箋なしで購入できる。価格は39.99ドル(約4400円)。この新型コロナウイルスPCR検査キットはAmazonプライムで顧客の自宅に配送され、鼻腔を綿棒で拭う検査に必要なものがすべてセットになっている。利用者は綿棒を回収容器に入れ、キットに同梱の箱で返送する。Amazonは、検査機関で検体を受け取ってから24時間以内で結果を通知できるとしている。

検体はAmazon社内の検査機関で処理される。この検査機関は、同社が現場で勤務する従業員向けに社内COVID-19検査プログラムの一環として設けたものだ。同社はこれまでに米国と英国の検査機関で、従業員のうち75万人以上を対象に数百万回の検査を処理したと述べている。今回発売する新しい在宅検査キットで、同社は米国の検査機関の処理能力を顧客に拡大する。

Amazonによれば、検査は正確性に優れるRT-PCRという手法を用いているため、検査機関で処理をする時間が必要だという。このキットは米国食品医薬品局の緊急使用許可(EUA)を受けている。

画像クレジット:Amazon

Amazon.comの販売ページによれば、このキットには綿棒、生理食塩水の入った回収容器、吸水剤付きのビニール袋、返送用ラベルが貼られた箱が同梱されている。返送にはUPSが使われ、顧客の追加費用負担はない。検体はCAP(米国病理学会)認定とCLIA(臨床検査室改善法)認証を受けたケンタッキー州ヘブロンにあるAmazonの検査機関に送られる。

キットには、AmazonのセキュアなウェブサイトであるAmazonDx.comで検査結果を確認する方法の説明と検査の証明に必要な書類へのアクセスも含まれている。Amazonは、この検査はハワイを除く米国内、および米国から多くの海外諸国へ旅行する際に求められる要件を満たすとしている。このキットは米国医療費免税制度のFSAとHSAの対象となる。

Amazonで新型コロナウイルス検査業務を担当するバイスプレジデントのCem Sibay(ジェム・シバイ)氏は「ワクチン接種が進んではいますが、手頃な価格で信頼できる検査は感染拡大と戦うために依然として欠かせません。Amazonの検査キットは必要に応じていつでもどこでも新型コロナウイルスの検査を受けられるもので、お客様がAmazon.comに期待する利便性を提供します。この検査キットは極めて正確に短時間で結果が得られ、お客様は自信を持って安全に旅行や仕事、学校、日常生活に戻れるようになります」と述べている。

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グーグルのアップデートで新型コロナワクチン接種記録と検査結果をAndroid端末に保存
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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Amazonアメリカ新型コロナウイルス

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

グーグルのアップデートで新型コロナワクチン接種記録と検査結果をAndroid端末に保存

Googleは、新型コロナウイルスの検査結果とワクチンカードをAndroidデバイスにデジタルで保存できるようにしている。米国時間7月1日の発表で、同社は現在、Passes APIをアップデートしており、それによりヘルスケア団体や政府機関、および公衆衛生当局が認可しているその他の団体のデベロッパーは、検査やワクチンカードの情報のデジタルバージョンを作成し、それをユーザーのデバイスに直接保存できるようになる。Passes APIは通常、搭乗券やポイントカード、ギフトカード、チケットなどをユーザーのGoogle Payウォレットに保存するために使われている。ただし今回の場合では、Google Payアプリは要らない。

Google Payアプリのない人は新型コロナウイルスカードのデジタル版をデバイスに直接保存可能で、ホーム画面のショートカットからアクセスできる。Googleにカードのコピーはないので、複数のデバイスに新型コロナウイルスのカードを保存する必要のある人は、ヘルスケアプロバイダーなどのアプリからそれぞれにダウンロードしなければならない。

カードの上部にはヘルスケアプロバイダーのロゴや名前があり、その下に本人の名前と誕生日、そしてワクチンのメーカーや接種または検査した日付などの情報がある。Googleが提供している文書によると、ヘルスケアプロバイダーや関連団体は、カードをメールやテキストメッセージ、モバイルのウェブサイト、アプリなどからダウンロードできることをユーザーに伝えてもよい。

事例写真でGoogleは、ロサンゼルス郡で患者管理サービスを提供しているHealthvanaの新型コロナウイルスワクチンカードを例示している。ただしこの新しい技術に関心があったり採用する計画のあるヘルスケアプロバイダーの案内はない。この件でGoogleに問い合わせると、すでに大手のパートナーや州からの利用申し込みはあるが、現時点ではその名前を公表する許可がないという。数週間後に、いくつかの名前が公表されるようだ。

Passes APIが更新されても、Androidのユーザー自身が新型コロナウイルスのワクチンカードのデジタル版を作れるわけではない。これまで多くの人が、バックアップの手段としてカードの写真を撮ったり、良くない例としてカードをラミネートしていた。2回目以降の接種でもカードが必要なので、ラミネートはしない方が良い。

APIの更新では、デベロッパーが自分のシステムにある新型コロナウイルスの検査や予防接種のデータを、Androidデバイス上のローカルなデジタルカードにエクスポートするツールを作れるようになる。なるべく広く使われているデジタルカードを選んで採用することが、デベロッパーの仕事になる。

この機能の利用には、Androidのバージョンが5以上、そしてデバイスがGoogleの真正のアプリを使っていることを証明するライセンスプログラムであるPlay Protectの証明が必要だ。ユーザーはまた、セキュリティを確保するために、画面をロック画面にセットする必要がある。

Googleによると、APIのアップデートは米国に始まり、その後、他の国でも行われる。

ワクチンカードのデジタル化では、米国は他の国に後れを取っている。今日では、個人のワクチン接種状態や検査結果、発病後の回復状態などを示すEUの新型コロナウイルス証明書が使われている。そのEUDCCと呼ばれる証明はすべてのEU加盟国が認識し、国境を越える旅を可能にする。またイスラエルは2021年の初めにワクチンパスポートというものを発行して、予防接種が要件となっている場所で提示する「通行証」を提供している。日本も、海外旅行用のワクチンパスポートを2021年7月中に発行するようだ。

米国では、ごく一部の州がワクチン証明アプリを提供している。その他の多くの州は、ワクチンパスポートそのものを否定したり、それが政治問題になっているので不採用を検討している。

Googleのデジタルワクチンカードもこんな状況を反映して、紙のカードのデジタルコピーだ。政府のその他の計画との連係はなく、「ワクチンパスポート」でもない。

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タグ:Googleワクチン新型コロナウイルスアメリカ

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】21世紀型の搾取となっている「ギグエコノミー」

編集部注:本稿の著者Rebecca Dixon(レベッカ・ディクソン)氏はNational Employment Law Projectのエグゼクティブディレクター。

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昨今のアプリベースのギグエコノミー、すなわちインターネットやスマートフォンを通じて単発の仕事を受注する働き方や、それによって成り立つ経済形態は、しばしば「現代のイノベーション」や「21世紀型のワークスタイル」という美辞麗句で語られるが、これは羊の皮をかぶった狼のようなものだ。

低賃金で不安定な仕事は今に始まったものではない。安い賃金かつ危険で「スキルがない」として解雇される仕事は昔からあった。有色人種の労働者は常に(そしてこれからも)、組織的な人種差別と歴史的に搾取的な経済が故に、最もブラックな産業に集中している。

従来と異なるのは、現在ではUber(ウーバー)、DoorDash(ドアダッシュ)、Instacart(インスタカート)などの企業が、デジタルアプリを使って労働力を管理(アプリベース)しているので規制に従う必要がないと主張している点にある。

いわゆる「ギグエコノミー」における労働者の権利は、現代的課題として位置づけられることが多い。しかし、ギグエコノミーやアプリベースの労働者(主に有色人種)が直面している問題を考えると、私たちは過去から学んで公正な経済に向けて前進する必要がある。

連邦政府は長期にわたり、労働者の大規模な搾取への対処に失敗している。全国労働関係法(米国)が成立してからも、有色人種の労働者が従事していた農業や家事などの仕事は、労働権や保護の対象から除外されてきた。今日の「独立請負人」も、その多くが有色人種の労働者で、同じカテゴリー、すなわち労働法で保護されない労働者である。黒人とラテン系の労働者の合計は、全米の総労働力の29%以下だが、アプリベースの企業の労働者に絞れば約42%を占めている。

ギグカンパニーは、自分たちのビジネスを構成し、指示を受け、自分たちが設定する賃金を受け取るドライバーや配達員、独立請負人などの労働者は、極小ビジネスの何百万もの集合体であり、基本的な手当や保護は必要ないと主張する。これにより、これらの企業は現場の労働者に対する責任を負わず、最低賃金、医療保険、有給休暇、損害賠償保険など、従業員にとって必要不可欠な基本的コストの支払いから逃げている。このような状況は、全国的な不平等を助長し、最終的には労働者の搾取と犠牲の上に成り立つ大きな欠陥のある経済につながっている。

アプリベースの企業は、ますます不穏な傾向を示している。過去40年間、連邦政府の政策により、労働者の交渉力は大幅に低下し、企業やすでに大きな富と力を持つ者に権力が集中するようになった。これにより、人種間の賃金や貧富の格差は悪化の一途をたどり、あまりにも多くの人たちの労働条件が劣悪になっている。

すべての人にとって働きやすい経済を構築するためには、ギグカンパニーやアプリベースの企業が「イノベーション」を口実に労働者を搾取することが許容されないことは明らかだ。これらの企業は、労働者自身が独立した契約者であり続けることを望んでいると主張するが、労働者が望んでいるのは、適切な賃金、雇用の安定、柔軟性、そして連邦法に基づく完全な権利である。これは合理的で正当な要求であり、世代間のジェンダーや人種による貧富の差を解消するためにも必要なことだ。

アプリベースの企業は、労働者を搾取するモデルを後押しする政府の政策を続けさせるために、多大な資金を投入している。Uber、Lyft(リフト)、DoorDash、Instacartなどのアプリベースの企業は、州議会、市議会、連邦政府でロビー活動を行い、誤った情報を大々的に売り込んでいる。選挙で選ばれたリーダーたちはあらゆるレベルで、これらの政策が自分たちに有利なように法律を書き換えようとする企業の企みであることを認識し、労働者を普遍的な保護から切り離す政策の庇護にある企業の利益を拒否する必要がある。

議会も、有色人種を基本的な雇用保護から締め出す除外規定を拒否し、アプリベースの労働者を含むすべての労働者に保護を拡大する法案を通過させねばならない。PRO法(Protecting the Right to Organize Act:団結権保護法)は、雇用主によって悪意を持って「独立請負人」と分類された労働者に交渉権の保護を拡大する、すばらしい第一歩だ。

アプリベースの労働者は、全米で健康と安全を保護するための組織を立ち上げ、労働者としての権利が認められ、保護されることを要求している。選挙で選ばれたリーダーたちは「21世紀型」のモデルを主張する企業のプロパガンダに騙され続けてはいけない。21世紀であろうとなかろうと仕事は仕事であり、アプリベースであろうとなかろうと、仕事は仕事なのだ。

私たちは議会に対し、すべての労働者の労働権と保護を認め、アプリベースの企業が「柔軟性」や「イノベーション」の名のもとに労働者の平等な権利を阻むことがないよう、大胆に行動することを求める。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ギグエコノミーギグワーカーアメリカコラム

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(文:Rebecca Dixon、翻訳:Dragonfly)

米政府による顧客データ要求の3分の1が秘密保持命令をともなう、マイクロソフト幹部が乱用に警鐘

Microsoft(マイクロソフト)の顧客セキュリティ責任者によると、同社が受ける顧客データに関する政府の要求のうち3分の1が、令状の対象者に捜査内容を開示できない秘密保持条項付きで発行されているという。

この数字は、トランプ政権下の米司法省がニューヨークタイムズ紙、ワシントンポスト紙、CNNの記者に機密情報が漏洩した事件の調査の一環として、通話記録や電子メール記録を秘密裏に入手しようとしたことを受け議員たちが立法措置を検討している中、米国時間6月30日の下院司法委員会に先立って行われたMicrosoftのTom Burt(トム・バート)氏による証言で明らかにされた。

バート氏は、このような秘密保持命令は「残念ながらありふれたものになっている」と述べ、Microsoftは「法的または事実的に意味のある分析に基づかない形式的な秘密保持命令」を定期的に受け取っていると語った。

バート氏は証言の中で、2016年以降、Microsoftは毎年2400~3500件、1日に7~10件の秘密保持命令を受け取っていたと述べた。同社は透明性レポートの中で、2020年、米国当局から1万1200件近くの法的命令を受けたと述べている。

一方、米国の裁判所が10年前の2010年に承認した秘密保持条項付き令状の数は全体で2395件であり、バート氏によると、これは過去5年間のいずれかの期間においても、Microsoft1社が1年に受けた秘密保持命令の数よりも少ないという。

「これは、クラウドサービスプロバイダーの1社であるMicrosoftが受けた要求にすぎません。この数字を、データを保持または処理するすべてのテクノロジー企業に掛け合わせれば、政府による秘密監視の乱用の範囲がわかるかもしれません」とバート氏は証言している。「私たちは、秘密保持命令を無理な基準でしか得られないように提案しているわけではありません。意味のある基準であることを求めているだけです」。

秘密保持命令をめぐる論争の多くは、ここ数週間でApple(アップル)、Google(グーグル)、Microsoftに出された秘密保持命令が失効し、トランプ政権下の司法省がデータをホストするハイテク企業にデータを要求することで記録を極秘に入手しようとしていたことを、各社が報道機関に開示できるようになったことに端を発している。

バイデン米大統領は、ジャーナリストの電話や電子メールの記録の収集を中止することを約束するとともに、機密保持に関する条項を一部削除した。しかし議員たちは、この政策を法制化するには法改正が必要であると指摘するだろう。

バート氏は、Microsoftは「秘密保持命令の乱用を防ぐために、できる限りのことをする」と述べている。ソフトウェアとクラウドの巨人は、2016年にも秘密保持命令の合憲性を問うために司法省を提訴した。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:アメリカマイクロソフトプライバシー透明性

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

フェイスブックがニュースレター配信プラットフォーム「Bulletin」始動、まずは米国中心ベータ

Facebook(フェイスブック)の新しいクールな試みは、Mark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が自らLive Audio Rooms(ライブオーディオルーム)で製品ニュースを発信することだ。ザッカーバーグ氏は米国時間6月29日、同社のClubhouse(クラブハウス)競合機能を通じて、次の新製品であるニュースレタープラットフォーム「Bulletin(ブレティン、Bulletin.com)」を発表した。

Bulletinは、Facebookとは別のプラットフォームで構築されている。ウェブサイトのFAQによると「クリエイターがFacebookのプラットフォームだけに依存しない方法でオーディエンスを増やすことを可能にするため」と記載されている。ニュースレターを購読するのにFacebookアカウントは必要ないが、BulletinはFacebookのインフラに依存しており、プレミアムサブスクリプションの購入や、購読者限定のグループやライブオーディオルームへの参加にはFacebook Payを使用している。

Substack(サブスタック)のような競合他社は、コンテンツのモデレーションに「干渉しない(hands-off)」アプローチをとっており、誰でもニュースレターを始めることができる。現在FacebookのBulletinに掲載されているライターは、すべて同社により厳選されたクリエイターたちだ。しかしSubstackは、特定のライターにSubstackでの執筆を依頼する物議を醸した「Substack Pro」プログラムを通じ、反トランスジェンダーのレトリックを助成していたとして批判を受けている。このように、Bulletinはキュレーションされたモデルであっても、Substackを悩ませる問題と無縁ではないだろう。

Bulletinの初期のライターには、ジャーナリストのMalcom Gladwell(マルコム・グラッドウェル)氏、作家・ジャーナルストのMitch Albom(ミッチ・アルボム)氏、スポーツキャスターのErin Andrews(エリン・アンドリュース)氏「Queer Eye(クィア・アイ)」で知られるデザイナーTan France(タン・フランス)氏などが名を連ねている。FAQには、ベータプログラムは米国中心で、海外のライターは現在のところ2名のみであると記されている(Bulletinは「ベータプログラムのローンチ後、より多くの海外クリエイターを含めることを検討しています」と述べている)。Facebookはこれらのライターの貢献に対して前払いをしており、今のところ、ライターの利益に割り込む予定はないという。また、ライターがプラットフォームから離れる場合、購読者リストは維持することができる。

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Aya Nakazato)

フェイスブックが音声SNS「Live Audio Rooms」とポッドキャスト向け新サービスの提供を米国で開始

2021年4月、Facebook(フェイスブック)は、ライブ音声SNSサービスClubhouse(クラブハウス)のFacebook版をはじめとする、一連の新しい音声関連サービスに投資する予定であることを発表した。そして米国時間6月21日、Facebookは予定されていた一連の新サービスの提供を正式に開始した。手始めとして、Live Audio Rooms(ライブ・オーディオ・ルーム)のサービスが米国で開始されたのだが、現時点では「ルーム(特定の話題について話すための部屋)」をLive Audio Rooms内で設立できるのはiOSアプリからのみで、設立できるユーザーも一部の著名人やFacebookグループに限定されている。Facebookは同時に、米国内のポッドキャストパートナー第一陣によるポッドキャスト配信も開始した。

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Facebookによると、Live Audio Roomsを設立できるのは、Facebookが認めて許可を与える米国内の著名人またはクリエーターのみで、iOSでプロフィールまたは新しく導入されたFacebook Pages(Facebookページ)を作成している必要がある。Facebookグループについては現時点でも「多数のグループ」が同機能を利用できるとのことだ。

Live Audio Roomsとポッドキャスト用新サービスのどちらについても、今後数週間から数カ月の間にもっと多くのユーザー、ポッドキャスト、グループが追加されて、より広く利用可能になる予定だ。一方、Live Audio Roomsのルームに参加したりポッドキャストを視聴したりするだけであれば、すべてFacebookユーザーが今週から利用可能である。

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FacebookのLive Audio Roomsにも、Clubhouseやそれに類する音声SNSと同様の標準的な機能が備わっている。

Live Audio Roomsのイベントホストは画面上部に円形のプロフィールアイコンで表示され、リスナーは画面の下半分にホストよりも小さいアイコンで表示される。発話中のスピーカーのアイコンは光るようになっており、承認されたスピーカーの名前の横にはチェックマークが付く。

ライブキャプション(字幕)を有効化するオプションや、発言したいときに使う「挙手」ツール、Facebookのニュースフィードやグループへの投稿を通じて特定のルームを共有するツールも用意されている。

画像クレジット:Facebook

Live Audio Roomsには他の類似サービスとは異なる機能もいくつかある。例えば、ホストはセッション開始前に前もってスピーカーを招待できるし、セッション中にリスナーの誰かをスピーカーに指定することもできる。Facebookによると、1つのセッションでスピーカーを最大50人まで指定でき、リスナー数の制限はないとのことだ。

自分が参加しているルームのセッション中に自分の友だちやフォロワーが参加すると、それも通知される。

ルーム参加中に画面下部の「サムアップ」ボタンを押すと表示されるFacebook用の絵文字アイコンを使って「いいね!」や他のリアクションでコンテンツへの反応を示すことができる。今回の正式サービス開始にともない、リスナーはLive Audio Roomsを開設している著名人に投げ銭機能の「スター」を送って支援することも可能になった。Facebook Liveのコンテンツと同様に、スターはルームでの会話中に購入でき、好きなときに送ることができる。

スターを送ると、スターを送ったリスナーがハイライトされる特別席である「Front Row」にアイコンが表示される。これによりイベントのホストは、どのリスナーが支援してくれているのかを簡単に認識でき、望むならイベント中にそのようなリスナーに対して名指しで感謝のコメントを述べることもできる。

画像クレジット:Facebook

ホストが会話中に支援したい非営利団体やファンドレイザーを選び、リスナーやスピーカーがそれらの団体に直接寄付できるようにする新機能も追加された。そのセッション中は、寄付の集まり具合が進捗バーで表示される。

画像クレジット:Facebook

Facebookグループの場合は、モデレーターやグループメンバー、他の管理者のうち誰がルームを設立できるようにするかを、管理者がコントロールできる。公開グループのルームにはメンバーもビジターも参加できるが、プライベートグループのルームへの参加はメンバーに限定されている。

ルームが新しく設立されると、その旨がニュースフィードに表示され、通知も届く。また、Facebookユーザーは、興味があるルームにサインアップし、そのルームがライブになったときにリマインド通知を受け取れるように設定することが可能だ。Live Audio Roomsは対象のFacebookグループ内から見つけることもできる。

画像クレジット:Facebook

さっそくFacebookのLive Audio Roomsを始めた著名人には、グラミー賞にノミネートされたエレクトロニックミュージックのTOKiMONSTA(トキモンスタ)氏、アメフトの有名クォーターバックであるRussell Wilson(ラッセル・ウィルソン)氏、オーガナイザー兼プロデューサーで独立系ジャーナリストでもあるRosa Clemente(ローザ・クレメント)氏、ストリーマー兼デジタルエンターテイナーのOmareloff(オマレロフ)氏、社会起業家のAmanda Nguyen(アマンダ・グエン)氏が名を連ねる。間もなく開始することを計画している著名人には、D Smoke(D・スモーク)氏、Kehlani(ケラーニ)氏、Reggie Watts(レジ―・ワッツ)氏、Lisa Morales Duke(リサ・モラレス・デューク)氏、Dr. Jess(ドクター・ジェス)氏、Bobby Berk(ボビー・バーク)氏、Tina Knowles-Lawson(ティナ・ノウレス-ローソン)、Joe Budden(ジョー・バドゥン)氏(Spotify初の大物人気ポッドキャスターだったが、Spotifyは2020年、彼との専属契約を失った)、DeRay Mackesson(ディレイ・マッケソン)氏などがいる。

画像クレジット:Facebook

また、Dance Accepts Everyone、Vegan Soul Food、Meditation Matters、Pow Wow Nation、OctoNation(なんと、最大の「タコ」専門ファンクラブだ)、Space HipstersなどのFacebookグループがLive Audio Roomsを試し始めている。

画像クレジット:Facebook

Facebookは、Live Audio Roomsのサービス開始と同時に、計画していたポッドキャスト用サービスを一部のクリエーター向けに提供し始めた。例えば、「The Joe Budden」のJoe Budden(ジョー・ボドゥン)氏、The Black Effect Podcast NetworkとiHeartRadioで「Carefully Reckless」を配信しているJess Hilarious(ジェス・ヒラリアス)氏、「The LadyGang」のKelti Knight(ケルティ・ナイト)氏、Becca Tobin(ベッカ・トービン)氏、Jac Vanek(ジャック・ヴァネック)氏、「Side Hustle Pro」のNicaila Matthews Okome(ニケイラ・マシューズ・オコメ)氏などだ。夏には他のポッドキャスターにも門戸が開かれる予定とのことだ。

画像クレジット:Facebook

誤解のないようにいうと、Facebookのこの新しいポッドキャストサービスは、Spotifyと連携して、Spotifyの音楽やポッドキャストをFacebookアプリ上のミニプレイヤーで再生可能にした最近の新サービスとは異なる。Facebookの新しいポッドキャスト機能では、ポッドキャストを、公開RSSフィードを使ってFacebook上で直接配信できるため、Spotifyを通す必要はない。しかし、Facebook内で使うポッドキャスト用ミニプレイヤーは、Spotifyと連携したミニプレイヤー(Project Boomboxとも呼ばれる)と外見も挙動もそっくりだ。それでも、この2つは異なる別のものである。

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今回の新しいポッドキャスト機能により、ユーザーはFacebook上で直接、ミニプレイヤーまたはフルスクリーンでポッドキャストを視聴できる。再生オプションもいくつかあり、スマートフォンの画面がオフになってもポッドキャストの再生を続けることが可能だ。これにより、SpotifyやApple Podcastsなどのサービスを介さなくてよくなるため、Facebookはある意味、ポッドキャスト配信用のネイティブアプリのようになる。

Facebookは以前に、ポッドキャストを視聴するためにFacebookページに接続しているユーザーが1億7000万人を超えていると述べたことがある。Facebook上でポッドキャストを視聴したいユーザーが多いことは明らかだ。

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Facebook Podcastのサービス開始にともない、Facebookはポッドキャストクリエーターたちに、ポッドキャストをFacebookのサーバーにキャッシュする許可を求めている。これは、コンテンツがFacebookのコミュニティ規定に抵触しないようにするためだという。しかし、RSSフィード経由で配信されることに変わりはないため、ポッドキャストは、クリエーターが利用しているホスティングプロバイダーのメトリクスで表示される。

Facebookは先週、ポッドキャストページのオーナーに宛てて配信したメールの中で、Facebook上でポッドキャストを配信する詳しい方法と、各エピソードのRSSフィードをリンクさせてニュースフィードに自動的に投稿できることについて説明した。この機能は、Facebookページの「ポッドキャスト」タブからも使用できる。Facebookのポッドキャスト利用規約では、クリエーターは「派生コンテンツ」を作成する権利をFacebookに付与することが定められている。おそらく、今後展開されるクリップ機能を想定してのことだろう。

Facebookは夏の終わり頃までに、ポッドキャストを短いクリップにして共有する機能や、キャプションを付ける機能などを追加する予定だという。長期的には、ポッドキャストを中心としたSNS体験を構築する計画だ。Facebookはまた、クリエーターと協力して、短いクリエイティブ音声クリップによるSNSサービス「Soundbite」を新たに開発している。サービス開始は2021年終わり頃になる予定だ。

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Facebookが準備中の他の音声関連機能には、さまざまな音声コンテンツをFacebookで一元的に楽しめるようにする機能や、動画をオーディオ再生する機能などがある。

Facebookによると、この新機能により、ポッドキャストだけでなく、Facebook上にあるあらゆる種類のオーディオコンテンツを一元的に聴けるようになり、ユーザーは新しいトピックあるいは新しいクリエーターの音声コンテンツを発見しやすくなるという。この機能に関するさらなる詳細は2021年夏ごろに公開される予定だ。

本日のサービス開始に先立ち、Facebookはひそかに台湾と社内でLive Audio Roomsのテスト運用を行った。このテスト運用は今後も継続される。先週、FacebookのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は米国で、自身がホストになってLive Audio Roomsの初回テストを行った。このテストには、Facebookの幹部社員やFacebook Gamingのクリエーター数人が参加した。

ザッカーバーグ氏は、Facebookにおける音声コンテンツの可能性に強い自信を持っている。同氏はその点について、Clubhouseに数回登場して語ったことさえある。FacebookがいわばClubhouseのライバルサービスであるLive Audio Roomsを発表したのは、その直後のことだった。

ザッカーバーグ氏は同サービスを初めて発表した際にPlatformer(プラットフォーマー)の取材に応じて次のように語っている。「私がFacebookで最も期待している分野は、基本的に、数多くのコミュニティやグループが存在することです。興味のあることを中心に構成されたコミュニティにすでに参加されている方は多いと思いますが、さらにそれらの人々が集まって話ができるルーム(部屋)を持てるようになることは、非常に有益なことだと思います」。

Facebookはこれらの新しい音声関連サービスを今後数カ月の間に米国以外の国々にも展開していく予定だ。

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

【コラム】サイバーテロを終わらせるために政府は民間セクターとの協力を強化すべきだ

編集部注:本稿の寄稿者はMark Testoni(マーク・テストニ)氏とJoseph Moreno(ジョセフ・モレノ)氏。テストニ氏は、SAP National Security Services, Inc.のCEO。それ以前はSAPおよびOracleで指導的立場を務め、米国空軍に20年間勤務した。モレノ氏はSAP National Security Services, Inc.の法律顧問。それ以前は連邦検事およびFBIの9/11レビュー委員を務めた。米国陸軍予備軍中佐。

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次の戦争に負ける最善の方法は、今の戦いを続けることだという。中世における要塞が効果的な防御であったのは、火薬と大砲が攻囲戦のやり方を永久に変えるまでだった。単純な兵士の数に基づく戦場の優位性は、大砲と機関銃の威力に取って代わられた。

第一次世界大戦中、戦車は19世紀のテクノロジーで作られた要塞を文字通り踏み潰す革新だった。軍事史を通じて、革新者たちが戦果を享受する一方で、順応の遅かった者たちは押しつぶされ、敗れ去った。

サイバー戦争も何ら変わらない。伝統的兵器は、我々の経済と国家安全にとっても同様に致命的なテクノロジーに屈している。軍事的優位をもち、サイバー分野でも先端を行っていながら、米国はデジタル敵と今もアナログ的思考で戦っている。

これを変えなくてはならない。そのために政府はまず困難な選択を決断する必要がある。その攻撃力を影の中に潜む敵に対してどうやって使うのか、民間部門とどう協力していくのか、そして、私たちの日常生活を脅かす悪役から国を守るにはどうすればよいのか?

コロニアル・パイプラインは一歩前進、二歩後退

Colonial Pipeline(コロニアル・パイプライン)に対するランサムウェア攻撃の後、ロシアと繋がりのあるハッキング・グループDarkSide(ダークサイド)は活動を休止し、Federal Bureau of Investigation(連邦捜査局、FBI)は支払われた身代金4400万ドル(約48億7000万円)の一部を取り戻したと報じられた。これは明るい展望であり、我が国の政府がこの種の攻撃を深刻に捉えている証だ。しかしそれは、何年も前から知られている技術を使って罰を受けることなく敵対国で活動するサイバーテロリストが、国で最大の石油パイプラインを機能停止に陥れ数百万ドル(数億円)の身代金を持ち去ることに成功したという事実を変えるものではない。彼らはおそらく永久に裁かれることがなく、ロシアは結果を正視することなく、こうした攻撃は間違いなく続いていくだろう。

現実はといえば、企業はサイバー防御に関してより賢くなり、ユーザーは自分たちのサイバー衛生行動をより慎重にできるようになったものの、テロリストの活動を止める権力をもっているのは政府だけである。

国境内でサイバー犯罪者の活動を許している国々は、即刻犯人を引き渡し、さもなければ厳しい経済制裁を与えられるべきだ。そのような個人やグループに対し、避難場所やその他の支援を与えている国は、認定テロリスト組織を支援する者と同様に物質的支援の罪に問われるべきだ。

規制当局は、暗号資産(仮想通貨)取引所とウォレットが違法な取引や組織の捜査に協力することを強制し、従わなければ米国金融システムから除外すべきだ。警察や軍部、諜報機関は、サイバーテロリストの活動を著しく困難で危険で利益のないものにすることで、米国の産業や重要インフラに対して次の攻撃を仕かける意欲を失せさせるべきだ。

政府は民間セクターとの協力を促進すべきだ

我が国最大の脆弱性であり、逸している機会は、公民一体となってサイバー戦争に対する統一戦線を組めていないことだ。政府と民間セクターがサイバーリスクと事象情報をリアルタイムで共有することは、防御と攻撃どちらにとっても極めて重要だ。現在それは行われていない。

企業は、脆弱性を明らかにすることで、本来攻撃から守ってくれるべき政府自身から、訴訟され、捜査され、さらに被害を受けることを恐れすぎている。連邦政府は、情報の過剰な機密扱い、官僚制度の重複、民間産業と積極的に情報や技術を共有するインセンティブを与えないカルチャーの壁といった諸問題に対して、未だに答えを持っていない。

その答えは、強大な企業がやってきて一方的な情報の流れを要求することではない。民間人が自発的に名乗り出て、訴訟や規制措置を恐れることなく情報共有できるようにすべきだ。リアルタイムに自己開示されたサイバーデータは秘密を守られ、防御と応戦のために使用されるべきであり、被害者をさらに傷つけるべきではない。相互協力のためにあってはならないことだ。

そしてもし、連邦機関や軍部や諜報機関が、将来の攻撃やその防御方法に関する知識を手に入れたなら、用無しになるまでじっとしているべきではない。民間セクターと安全で、時宜を得た、双方に利益をもたらす方法で情報を共有する方法は必ずある。

企業は、サイバー事象情報の交換だけにとどまるべきではない。民間セクターと学術界はサイバースペースの膨大な発展に貢献しており、過去20年間に研究開発に費やされた金額の民間と公共セクターの割合はおよそ90%対10%だ。

我々の民間セクターは、シリコンバレーからテキサス州オースチン、バージニア北部のテクノロジー地域にいたるまで、最優秀な人材を擁し、政府に与えるられる膨大な資源をもっているが、そのほとんどが活用されていない。民間セクターの利益を押し上げているのと同じ革新が、国家安全保障の強化にも使われるべきだ。

中国はすでにこれを認識しており、もし我々が民間セクターの革新と米国の若い才能を活用する方法を見つけられなければ、後れをとることになる。バイデン政権と議会の民主党と共和党が政治的駆け引きをやめて採用すべき超党派的ソリューションを要請することがあるとすれば、これこそがそうだ。

軍事防御産業モデルを見よ

ありがたいことに、さまざまな形でうまくいっている公共・民間の活動モデルがある。現在兵器システムはDefense Industrial Base(防御産業基盤)がほぼ独占的に製造しており、戦場に配備された際には、脆弱性、脅威、効果の改善点などについて、兵士と定期的な双方向会話がなされている。この関係は一夜にしてできたものではなく、完璧にはほど遠い。しかし数十年にわたる努力の結果、堅牢な協業プラットフォームが開発され、セキュリティ検査の基準が制定されたことで、信頼が築かれた。

同じことを、連邦政府のサイバー担当機関と民間セクター全体の人々との間でも行うべきだ。金融機関もエネルギー企業も小売業も製造業も製薬業も、政府と協力してサイバーデータをリアルタイムに双方向で共有できるはずだ。政府はもし攻撃グループや脅威となる技術を見つけたら、攻勢に出て封鎖するだけでなく、その情報を安全かつ迅速に民間セクターに伝えるべきだ。

FBIや国土安全保障省や軍部に、プライベートネットワークをサイバー攻撃から守ることを求めるのは現実的ではないが、政府はそのための密な協力パートナーになれるし、なるべきだ。我々は、これを共同の戦いでもあり責務でもあることを認識した関係を受け入れるべきであり、正しく行うための年数は多くない。

政府は行動を起こせ

戦争の歴史を見ると、優位は常に最初に革新した者にもたらされている。サイバー戦争に関して、答えは人工知能や量子コンピューティングやブロックチェーンなどの先端技術だけにあるのではない。現代のサイバーテロリズムに対する戦争における最も強力な進歩は、幼稚園で習うほど簡単なものかもしれない。共有と協力の価値だ。

政府とテクノロジー産業、そして広く民間セクターの人々は、我々の競争優位性を維持し、クラウドコンピューティングや自動運転車や5Gなどの先端技術を利用するだけでなく、私たちの生活様式を守り持続していくために一致団結すべき。これまでこの国は公共と民間の協力体制構築に成功しており、アナログな関係からデジタルへと進化することが可能だ。しかし、そのためには政府が先頭に立って道を開く必要がある。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:コラムランサムウェアサイバー攻撃アメリカ

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(文:Mark Testoni、Joseph Moreno、翻訳:Nob Takahashi / facebook

UFOあらため「UAP」報告書が公開、米情報機関を統括する国家情報長官室ODNIが5つの可能性を挙げる

UFOあらため「UAP」報告書が公開、米情報機関を統括する国家情報長官室ODNIが5つの可能性を挙げる

US Navy

米国の情報機関を統括する国家情報長官室ODNIが、国防総省の動画公開で話題となったUFOあらため「UAP」に関する報告書を公開しました(Unidentified Aerial Phenomena、未確認空中現象)。

報告書によれば、2004年から2021年にかけて主に米軍内で記録された目撃・観測事例144件について、国防総省のUAPタスクフォースが調査したところ、1件のみ空気の抜けた気球であったと結論づけたものの、残りはデータ不足から解明に至らず。

大部分は複数の種類のセンサーや目視報告があることから実在の物体であると考えられること、うち18の事例については空中での静止や風に逆らうなど不自然な動きが観測されたこと、さらに一部は推進手段が確認できないにもかかわらず高速での移動、急激な方向転換、加速、あるいは観測を妨げる能力もしくは性質など、発達した技術をうかがわせるものがあったとしています。

報告書ではこうしたUAPについて、未確認の自然現象、ロシア・中国または別の国家や組織の技術によるもの、米国内の秘密計画により作られたものなど5つの可能性を挙げ、航空や国防への脅威となる可能性を認めつつ、解明には今後のさらなる調査・分析に向けた取り組みが必要となると結んでいます。

UFOあらため「UAP」報告書が公開、米情報機関を統括する国家情報長官室ODNIが5つの可能性を挙げる

説明のつかない飛行物体や空中の現象は歴史を通じて目撃されてきましたが、20世紀以降は特に軍事的要請からの観測が飛躍的に進んだこともあり、世界中で多数の証言が残るようになりました。

未確認飛行物体の頭文字「UFO」は、1950年代の米空軍がそうした事象を指すために用いた言葉。しかし宇宙人の乗り物説がSF映画などのメディアを通じて浸透した結果、現在のいわゆるUFOのイメージが定着しました。

米軍や情報機関がこの「UFO」を調査してきたことは公式の記録から分かっていますが、今回改めて話題になったきっかけは、そうした調査計画に関わった職員が2017年に3つの動画をメディアにリークしたこと。

動画は2004年から2015年にかけて、空母ニミッツとセオドア・ルーズベルト所属の戦闘機が記録したもの。高速に移動する正体不明の物体をパイロット含む数名が数分間にわたり目撃したほか、複数のセンサーに記録が残っています。

動画は世界でニュースになりましたが、半世紀以上にわたって「米軍が隠匿するUFOビデオ」ネタに慣れた世間は特に恐慌を来すこともなく、関係者の証言とともにスクープしたニューヨーク・タイムズは怪しい動画をセンセーショナルに伝えて世間の注目を浴びようとしている、UFO陰謀論者にお墨付きを与えると非難される始末でした。

しかしその後、国防総省は上院情報委員会からの照会に対しUAP調査計画の存在を認め、先にリークされていたものを含む動画を正式に公開。今回の報告書はこれを受けて、一連の「UFO」調査と航空・国防上のリスクについて、国家情報長官室が予備的な評価を伝える目的で作成しました。

こうした性格から中身はごく短く、本格的な分析の結論を伝えるというより、現状でどこまで把握しているのか、情報収集はどのような状態なのか、今後の方針はどうすべきか簡潔に伝える内容となっています。

短い内容をさらにまとめるなら、

  • とにかく情報が少なすぎて分からない。情報収集の体制が不十分
  • 技術的には、軍が備える各種センサーはミサイルや軍用機など既知の対象に最適化されているため、想定外の観測には不適切であり充分なデータが記録できていない
  • 制度的には、各軍や情報・諜報機関にはUAP目撃を正式に報告する仕組みも、情報集約の制度もなかった
  • 逆にUAPを目撃した場合も、報告したり話題にすることで不利な扱いを受けるとの証言がパイロットや諜報・情報機関の分析官から寄せられた。こうしたスティグマ(烙印)効果については、有力な科学者や政治家、軍や情報機関の高官が公の場でUAPを真摯な話題として扱うことで軽減されつつあるが、目撃者の多くは組織内での低評価を恐れ沈黙している可能性がある
  • UAP目撃時の正式な報告の仕組みは海軍が2019年3月に、空軍が2020年11月に導入するまで存在しなかった。このため、今回の報告で評価した2004年から2021年にかけての事例144件の大半は2020年と2021年に発生している
  • UAP調査タスクフォースは他の目撃例についてもたびたび伝聞的に情報を得ているものの、今回は上記の報告システムに寄せられた軍関係者からの証言のみを対象とした
  • 144件中、高い確度で正体を推定できたものは空気の抜けたバルーンと思われる1件のみ
  • 144件中、80件が複数のセンサーに記録されている
  • データセットが少なすぎ、傾向やパターンについて分析は難しい
  • うち18のUAPについて不自然な動きが報告されている(同じ対象について別々の目撃報告があったため、報告としては21件)
  • 推進手段が見あたらないにもかかわらず、空中での静止、高速移動、急な方向転換などが報告された
  • いくつかの例では、UAPと関連すると思われる電波が観測されている
  • わずかながら、UAPが加速やある程度のシグネチャーマネジメントと思われる挙動、性質を示したデータがある
  • こうしたデータが意味するところや信頼性については、複数の専門家チームによる分析が必要

軍事用語でのシグネチャーマネジメントはいわゆるステルスや熱光学迷彩など、識別を妨げる能力のこと。おそらくUFOの目撃証言にある変形や消失といった現象、センサーへの不自然な反応について述べているものと思われます。

目撃報告のスティグマ効果については、UAP(未確認空中現象)という用語自体も、軍や諜報関係者に忌避されるUFOという言葉を使わず「現象」としてニュートラルに扱う意味があります。

5つの可能性

データ不足としつつ、報告書では考えられる説明として5つの分類を挙げています。

  • バルーンやドローンなど、大気中の障害物
  • 自然の大気現象
  • 米政府または民間の非公開プロジェクトの産物
  • 中国、ロシア他の国家、あるいは非政府組織のテクノロジーによるもの
  • その他

その他は「分析、特定にさらなる科学的知識が必要になると考えられるもの」「理解には現在以上の科学的進展を待つ必要があるもの」という分類。

空のゴミや自然現象や秘密兵器ならば、原理はともかくそれが何なのかは分かりますが、「その他」は正体がわれわれの知らないものである場合の分類です。報告書では一切言及していませんが、もし仮に本当に宇宙人の乗り物だった場合はここに入ることになります。

脅威の評価

・UAPは航空の安全を脅かす。国防上の脅威となる可能性もある (他国の偵察機であった場合を含む)

・パイロットがUAPとニアミスした報告は11件

さらなる調査に向けた取り組みと提案

  • UAPタスクフォースの長期的な目標は、従来以上に広範な目撃証言や観測記録を収集し、分析対象となるデータセットを拡充すること
  • 当初の注力点として、人工知能 / 機械学習を用いてデータの類似点やパターンの発見を目指す
  • UAPタスクフォースは各軍や情報機関を横断した情報収集・分析ワークフローの開発を開始した
  • 観測範囲が軍事施設や訓練エリアに偏っていることが課題。解決策として、蓄積されてきたレーダーのデータを先進的なアルゴリズムで精査する提案
  • UAPタスクフォースの予算増やして

今回の報告書はあくまで予備的な報告であるため、議会はこれをもとにさらに詳しい説明や報告を求めるはずです。ODNIは議会に対し、今後90日以内に改めて情報収集戦略の改善策について、収集・分析に必要な新テクノロジー開発のロードマップについて報告する見込み。

宇宙人だったとして、わざわざ米軍の近くを堂々とウロチョロする理由についてはやはり分からずじまいですが、警戒システムの不備を含め、潜在的に国防上の懸念がある現象を目撃・観測しても、うっかり口に出したら「ああ、例のUFOの人(笑)」扱いになったり職務不適格な陰謀論ビリーバー扱いになって出世に響くことを恐れ見なかったことにせざるを得ないという、地球人の課題については納得感が高い報告書です。

Engadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:安全保障(用語)ODNI(組織)軍事(用語)テロ / テロリズム(用語)UAP / 未確認空中現象(用語)アメリカ(国・地域)

米議会が警察による携帯電話の「基地局シミュレーター」使用を制限する法案を提出

【編集部注】本稿はEngadgetのライターであるIgor Bonifacic(イゴール・ボニファシック)氏による寄稿。

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BuzzFeed News(バズフィード・ニュース)によると、民主党のRon Wyden(ロン・ワイデン)上院議員とTed Lieu(テッド・リウ)下院議員は米国時間6月17日、警察によるIMSI(国際携帯電話加入者識別番号)キャッチーの使用を制限する法案を提出した。その装置はStingrays(スティングレイ)の呼称で知られており、警察はIMSIキャッチャーと基地局シミュレーターを使って容疑者の情報収集や通話、SMSメッセージその他あらゆる形態のコミュニケーションを傍受している。現在、米国の警察機関がこのテクノロジーを使うために令状は必要ない。Cell-Site Simulator Act of 2021(2021年基地局シミュレーター法)はそれを変えることが目的だ。

IMSIキャッチャーは基地局を偽装して携帯電話に接続させる。一度接続されれば、デバイスから送られるデータや位置情報、加入者識別番号を収集できる。基地局シミュレーターには二重の問題がある。

まず、これは監視の鈍器である。混み合った場所で使うと、IMSIキャッチャーは傍観者のデータを収集する恐れがある。第2に市民の安全上のリスクを高める恐れもある。なぜなら、IMSIキャッチャーは基地局のように振る舞うものの、本来の機能は果たさないため、通話を公共無線ネットワークに転送できない。このため、通話を911(警察への緊急電話)につなぐことができない。こうした危険をはらんでいるにも関わらず、Stingrayは広く使われている。2018年にAmerican Civil Liberties Union(米国自由人権協会)は、27の州およびワシントンD.C.の少なくとも75の機関がIMSIキャッチャーを保有していることを突き止めた。

こうした懸念に対応するために、提出された法案は、警察機関がこの技術を使うべき理由を裁判所で論証することを義務づけている。さらに警察は、他の監視手段が有効でない理由も説明しなくてはならない。また法案は、警察が令状に書かれていない対象から集めたデータをすべて削除することを保証するよう求めている。

法案はIMSIキャッチャーの利用について期限を定めていないが、機器の使用を最小限に留めるよう要求している。警察が令状なしで同技術を利用できる例外も詳しく書かれている。例えば爆破予告事件などでIMSIキャッチャーに遠隔爆破を防ぐ可能性がある場合の使用は制限していない。

「私たちの超党派法案はStingrayをはじめとする基地局シミュレーターを巡る秘密や疑念を払拭し、政府がこの種の侵略的監視装置を使用できる場面を定めた明確で透明な規則で置き換えるるものです」とワイデン議員がBuzzFeed Newsに話した。

同法案は一部の共和党議員からも支持されている。モンタナ州のSteve Daines(スティーブ・デインズ)上院議員とカリフォルニア州のTom McClintock(トム・マククリントック)下院議員は同法案を共同提案している。Electronic Frontier Foundation(電子フロンティア財団)とElectronic Privacy Information Center(電子プライバシー情報センター)などの組織も法案に賛成している。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:警察アメリカ民主党

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米上院議員が「データ保護局」新設を提案、米国人のデータを取り戻せ

民主党のKirsten Gillibrand(カーステン・ギリブランド)上院議員は、テック企業が自分の庭で行う自由な侵入行為から米国人を守るべく、新たな連邦政府機関を設立する法案を再提出した

ギリブランド議員(民主党・ニューヨーク州)は2020年、データ保護法を提案した。プライバシーおよび既存政府機関が十分に対応できないことがわかっているテック企業に関する法的措置を講じるための法案だ。

「米国はプライバシーとデータ保護のための新しいアプローチを必要としています。そして議会は、人命より利益を重んじる民間企業から米国人を守る有効な解決策を見つける努力をする義務があります」とジリブランド議員は言った。

改定された法案は「データ保護局」の新設を約束した主旨を維持しており、オハイオ州のSherrod Brown(シェロッド・ブラウン)民主党上院議員との共同提案で、いくつかの修正が加えられた。

現在進行中のあらゆるテック企業反トラスト規制を巡る議論の精神を受け、2021年バージョンの同法案は、大手テック企業によるデータ収集業者の関わる合併や、5万人以上のユーザーデータの移動をともなうその他の取引を審査する権限をデータ保護局に与えようとしている。

他に「データの正義を前進させる」公民権機関の設立や、アルゴリズム、バイオメトリック・データの利用、子どもなど立場の弱い人々からデータを収集するなどの高リスクなデータ利用行為を、同局が審査、処罰できる権利が追加されている。

ギリブランド議員は、最新技術に対応した規制改革を「極めて重要」と述べており、それは彼女だけではない。2021年に民主党と共和党はほとんど一致点を見つけていないが、数多くの超党派反トラスト法案は、テック業界で最強の諸企業を抑制することがいかに重要であり、さもなくば止めようがなくなることを、ようやく議会が認識したことを示している。

データ保護法は、一連の新テック法案のような超党派の支持を受けていないが、史上最高値のビッグテックとの戦いへの関心の高さから、多くの支持を得られる可能性がある。テック業界を標的にした法案が数多く進められ中、超党派の支持を増やすことなく本法案が前進することは考えにくいが、だからといってこの考えが考慮に値しないわけではない。

議会で検討中の他の提案と同じく、本法案はFTC(連邦取引委員会)がビッグテック企業の不品行に対して意味のある罰を与えていないことを認識している。ギリブランド議員の構想では、データ保護局はFTCにできなかった規制強化を実現できるという。別の法案では、FTCに新たな強制力を与えられたり、吠えるだけでなく噛み付くための資金を注入して強化しようとしている。

連邦政府機関の使える道具を現代風に変えるだけでは十分でないかもしれない。テック業界のデータ巨人たちが10年以上をかけて異常増殖させたものを削減するのは容易ではない。これらの会社をここまで裕福にした米国人データの備蓄は、すでに野に放なたれているのだからなおさらだ。

強力なテック企業の持つそのデータを規制する戦に特化した新たな政府機関は、欧州独自の強力なデータ保護法とこれまで米国に欠けていた連邦規制のギャップを埋めるかもしれない。しかし、何かが起きるまでは、シリコンバレーのデータ亡者たちが熱心にその権力の真空を埋めようとするだろう。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ボルボの高級EVブランドPolestarが初のフル電動SUV「Polestar 3」を米国で生産へ

Volvo Car Group(ボルボ・カー・グループ)の独立したEVパフォーマンスブランドであるPolestar(ポールスター)が、初のフル電動SUVを米国で製造することになった。

同社は中央ヨーロッパ時間6月16日、この「Polestar 3(ポールスター3)」の組み立てを、サウスカロライナ州リッジビルにあるVolvo Cars(ボルボ・カーズ)との共同工場で行うと発表した。Polestar 3は、EVセダン「Polestar 2(ポールスター2)」と、ハイブリッドグランドツアラー「Polestar 1(ポールスター1)」に続くモデルとなる。Polestar 3の生産は、2022年にグローバルで開始される予定だ。

PolestarのDennis Nobelius(デニス・ノベリアス)COOは、米国での生産により、納期の短縮、世界各地への車両輸送にともなう環境負荷の低減、Polestar 3の価格低減が可能になると述べている。

「これらすべてが、重要な米国の販売市場において、ブランドの競争力をさらに高めます」とノベリアス氏は語った。

また、Polestarは2021年、米国内に約25カ所のリテールスペースを開設し、顧客が同社の車両を試乗できるようにするとともに、無料のピックアップ&デリバリーサービスや出張サービスを提供する予定だという。

Polestar 3は米国の顧客向けに設計されており、同ブランドの車両としては初めて米国で製造されるモデルになる。今回の発表は、PolestarがChongqing Chengxing Equity Investment Fund Partnership、Zibo Financial Holding、Zibo Hightech Industrial Investmentが主導した最初の外部ラウンドで5億5000万ドル(約607億円)を調達してから2カ月後のことだ。そのラウンドには韓国のグローバルコングロマリットであるSK Inc.(SKグループ)をはじめ、さまざまな投資家が参加した。

Polestarは、かつてVolvo Cars傘下のハイパフォーマンスブランドだった。2017年には、Tesla(テスラ)が最初に満たしそれ以来席巻しているニッチ分野である、エキサイティングで運転するのが楽しい電気自動車の生産を目的としたEVパフォーマンスブランドとして再編成された。Polestarは、Volvo Car Groupと中国のZhejiang Geely Holding(浙江吉利控股集団有限公司)が共同で所有している。Volvo Carsは2010年にGeely(ジーリー、吉利汽車)に買収された。

Polestarは設立以来、中国に製造施設を開設し、グローバルな販売・流通体制を構築して、Polestar 1とフルEVのPolestar 2で2車種を発売してきた。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Polestarアメリカ電気自動車

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Aya Nakazato)

ウクライナ警察がClopランサムウェアの容疑者6人を逮捕、米・韓国企業を攻撃

Clopランサムウェアのギャングにつながっているとされている複数の容疑者が、ウクライナ、韓国、米国の当局による合同捜査を経てウクライナで逮捕された。

ウクライナ国家警察のサイバー部門は、首都キエフと周辺で21カ所の家宅捜索を行い、6人を逮捕したことを明らかにした。容疑者らがランサムウェア一味の仲間なのか、あるいは中心的なデベロッパーなのかは明らかではないが「二重の脅迫」スキームを展開していた罪に問われている。このスキームでは、身代金の支払いを拒んだ被害者らはファイルが暗号化される前にネットワークから盗まれたデータを公開すると脅される。

関連記事:ランサムウェアの脅威を過大評価か、2021年5月の米企業へのサイバー攻撃に対する身代金を米司法省がほぼ回収

「被告6人は米国と韓国の企業のサーバーで『ランサムウェア』のような悪意あるソフトウェアの攻撃を実行したことが立証されました」とウクライナの国家警察は声明文で主張した。

疑わしいClopランサムウェアのギャングから機器を押収した警察は、金銭上の損害は約5億ドル(約554億円)弱になると述べた。押収したものはコンピューター備品、数台の車(TeslaとMercedes含む)、現金500万ウクライナグリブナ(約2046万円)などだ。当局はまた、ギャングのメンバーが攻撃するのにこれまで使っていたサーバーインフラをシャットダウンしたと主張した。

「法執行機関が協力して、なんとかウイルスを拡散するインフラをシャットダウンし、犯罪で得た暗号資産(仮想通貨)を合法化するためのチャンネルをブロックしました」と声明文にはある。

これらの攻撃は2019年2月に始まった。韓国企業4社を攻撃し、810もの内部サービスとパソコンを暗号化した。以来「Cl0p」と表記されることが多いClopは数多くの有名なランサムウェア攻撃に関与してきた。ここには2020年4月の米製薬大手ExecuPharmの情報流出、小売店舗のほぼ半分を閉鎖することを余儀なくされた同11月の韓国eコマース大手E-Landへの攻撃などが含まれる。

Clopはまた、Accellionのランサムウェア攻撃とデータ流出にも関与している。この件ではハッカーたちはITプロバイダーAccellionの何十もの顧客からデータを盗むのに、Accellionのファイル転送アプライアンス(FTA)の脆弱性を悪用した。情報流出の被害者にはシンガポールの通信会社Singtel、法律事務所Jones Day、スーパーチェーンのKroger、サイバーセキュリティ会社Qualysなどが含まれる。

この記事執筆時点で、Clopが盗んだデータを共有するのに使うダークウェブポータルはまだ稼働中だが、数週間アップデートされていないようだ。しかし、法執行当局は通常、取り締まりがうまくいったときはターゲットのウェブサイトをロゴに変えるため、ギャングのメンバーがまだアクティブかもしれないと思わせる。

「Clopオペレーションは通信、製薬、石油・ガス、航空宇宙、テクノロジーなどさまざまな分野の世界中の組織をディスラプトし、恐喝するのに使われてきました」とMandiantの脅威インテリジェンス部門で分析担当バイスプレジデントを務めるJohn Hultquist(ジョン・ハルトキスト)氏は話した。「攻撃グループ『FIN11』はランサムウェアや恐喝などのオペレーションに強く関係してきましたが、逮捕者の中にFIN11のメンバーや、オペレーションに関係している他の人物が含まれているかどうかは不明です」。

ハルトキスト氏は、ウクライナ警察の取り組みは「ウクライナがサイバー犯罪との戦いで米国の強固なパートナーであり、ウクライナの当局が犯罪者の非難港を否定しようと努力していることのリマインダーです」と述べた。

容疑者たちはコンピューター、自動化システム、コンピューターネットワーク、通信ネットワークでの不正な干渉と、犯罪的な手段で入手した資産のロンダリングの罪で懲役8年が科される可能性がある。

逮捕のニュースは、国際法執行機関がランサムウェアギャングを厳しく取り締まっている結果だ。先週、米司法省はColonial PipelineがDarkSideのメンバーに支払った身代金の大半を回収したと発表した。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:ウクライナ逮捕警察ランサムウェアハッカー暗号資産アメリカ韓国犯罪サイバー攻撃

画像クレジット:Cyber Police Department of the National Police of Ukraine / supplied

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi