バイデン政権が米国内テロ対策の「最前線」と呼ぶソーシャルメディアとの情報共有を拡大へ

バイデン政権は国内テロと戦う新たな計画の概要を発表した。1月6日の米国議会議事堂襲撃を受けてのもので、ソーシャルメディア各社にはそれぞれの役割が与えられている。

米国時間6月15日、ホワイトハウスは国内テロに対抗するための新たな国家戦略を発表した。計画は、オンラインプラットフォームが凶暴な考えを広める中心的役割を演じていることを認識し、ソーシャルメディアサイトを国内テロ戦争の「最前線」とまで呼んでいる。

「国内テロリストの勧誘がオンラインで容易に行える状況は、国家安全保障への脅威であり、その最前線の大部分を民間オンライン・プラットフォームが担っている状態です。我々はプラットフォーム各社がその前線を安全に保つためにいっそうの努力を重ねるよう促すことに注力します」とホワイトハウスは述べた。

バイデン政権は、オンライン過激主義の流れと戦うために、テックセクターとの情報共有を拡大することを約束している。これは過激派が凶暴集団を構成するよりもずっと前に介入する行動の一環だ。新たな対国内テロ計画の概況報告によると、米国政府は「テクノロジーセクターとの情報共有拡大」の優先度を高める予定であり、具体的には過激主義が醸成、組織化されているオンラインプラットフォームが対象だ。

「民間セクター、特にテクノロジーセクターに提供する国内テロ関連情報の拡大を続けていくことでこ、テロリストによるインターネット上のコミュニケーションプラットフォームを利用した暴力行為への勧誘に対抗する政府外の活動が強化されるでしょう」とホワイトハウスの計画書に書かれている。

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国内テロ戦略の発表に合わせて発表された所見でMerrick Garland(メリック・ガーランド)司法長官は、テック業界との協力は、オンラインプラットフォームで組織化と勧誘を行う過激派を阻止する上で「特に重要」であると断言し、潜在的国内テロ脅威に関する情報共有を強化する計画を強調した。

こうした新たな取り組みにも関わらず、国内テロの勧誘情報がオンラインに残ることは不可避であることをバイデン政権は認めている。削除の優先度を挙げていないプラットフォームでは特にそうだ。2021年1月以前のソーシャルメディアプラットフォームのほとんどがそうだったように、そしてエンド・ツー・エンド暗号化アプリには、ソーシャルメディア各社が米国内で過激派の取締りを強化した後、多くのユーザーが流れ込んでいる。

「つまり供給への対応は必要ですが十分ではありません。需要にも目を向ける必要があります」とホワイトハウスはいう。「今のデジタル時代が米国民に求めているのは、インターネットを利用するコミュニケーションプラットフォームの本質的側面を活用するだけでなく、国内テロリストの勧誘行為やその他の有害コンテンツに対する脆弱性を回避できる能力です」。

バイデン政権はオンライン過激派に対する脆弱性対策として、デジタルリテラシープログラムの利用も考えている。例えば米国人に国内過激派の勧誘を予防する「教材」や「技能強化オンラインゲーム」で、誤情報、偽情報全般への対応も含まれていると思われる。

計画書は、QAnon(キューアノン)や「Stop the Steal(選挙泥棒をやめろ)」運動といった国内テロ要因を具体的に名指しすることまではしていないが、小さな非公式集団から民兵組織まで、国内テロを起こす方法にはさまざまな種類があることを指摘している。

3月に国家情報長官官房が発表した報告書は、2021年の国内テロによる米国への脅威の高まりを認識し、国内過激派が大手ソーシャルメディア・サイトを活用して新規メンバーの勧誘、リアルイベントの開催、さらには暴力につながる資料の配布を行っていることを指摘した。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデンアメリカソーシャルメディアテロ

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ランサムウェアの脅威を過大評価か、2021年5月の米企業へのサイバー攻撃に対する身代金を米司法省がほぼ回収

米国時間6月7日の午後、米司法省は、米国でパイプラインを運営するColonial Pipeline(コロニアル・パイプライン)が2021年5月にロシアのDarkSide(ダークサイド)と呼ばれるハッカー集団側に支払った暗号資産の身代金のうち、大半を回収したと発表した。支払われた暗号資産がハッカーグループの所有する複数のアカウント間を経由した動きを追跡し、連邦裁判所判事の承認を得て、そのアカウントの内の1つに侵入できたことで回収に成功したものだ。

2021年5月、同社へのサイバー攻撃により、主要なパイプラインが閉鎖を余儀なくされ、それが元でガソリンの買い占めによる燃料不足が引き起こされた(加えて、内部サーバーのオーバーロードとやらが原因で、その後パイプラインが再度閉鎖されたため苦境に陥った)ことを考えると、身代金回収の発表は気味の良い話であった。

しかし、実績のある連続起業家であり、政府や企業への攻撃を追跡して、独自のメディア手腕を発揮するセキュリティインテリジェンス企業Recorded Future(レコーデッド・フューチャー)を創設したChristopher Ahlberg(クリストファー・アルバーグ)氏によると、米国人はダークサイドを最初から過大評価してきたという。先に行われたインタビューの中で、同氏はダークサイドの運営方法について詳しく説明している。インタビューはここから視聴できるが、長いので会話の抜粋を以下に紹介する。

TechCrunch(以下「TC」):貴社の技術的な取り組みを大まかに教えてください。

Christopher Ahlberg(クリストファー・アルバーグ氏、以下「CA」):当社で行っているのは、インターネットをインデックスすることです。インターネットに書き込まれたすべてのデータを、電子の動きまで含めて把握しようとしています。いわば悪質なハッカーの頭の中に入り、どこで活動しているのか、彼らがデータを送信し不正なインフラを運営しているネットワーク上で何が起こっているのかを突き止めようとしているわけです。また、悪質なハッカーがさまざまな興味深い場所に残した痕跡を妨害するようにもしています。

TC:どのような顧客をお持ちですか。

CA:国防総省から世界有数の大企業まで、全部で1000ほどです。おそらく、3分の1は政府関係、別の3分の1は金融関係、残りは輸送機関を含むさまざまな業種です。

TC:貴社が提供するのは、攻撃を予測するサポートですか。それとも、手遅れになった事態で何が起きたかを突き止めるのでしょうか。

CA:両方です。

TC:どうやって危険を察知していますか。

CA:まずは、敵つまり悪質なハッカーを理解することです。大きく分けて2つの括りがあります。サイバー犯罪者と敵対する情報機関です。

ここ1、2カ月の間に世界や我々が注目している犯罪者は、ランサムウェアギャングです。彼らはロシアのギャングです。「ギャング」と聞くと、大きなグループ集団をイメージしがちですが、(しかし)通常は1人か、2~3人です。こういったギャングの規模を過大評価することはありません。

(一方で)情報機関は、非常に装備が整っており、大勢の人が(関与)しています。(我々の仕事は)1つには敵を追跡すること、もう1つは彼らが運営するネットワークを追跡すること、最後に、オンプレミスで実際のシステムにアクセスしなくても、サイバー攻撃のターゲットとなりうる人物のデータを入手することです。これら3つを、すべて自動化された方法で行います。

TC:情報機関と、これらロシア系ギャングの連絡係の間に交信があると見ていますか。

CA:簡単にいうと、我々の見解としては、これらのグループがロシアの情報機関から毎日、毎月、あるいは毎年のように任務を受けているわけではないと思います。しかし、世界の一連の国々、ロシア、イラン、北朝鮮は少し異なりますが、中国でもある程度は、政府がハッカーの成長を後押ししていることが観察されてきました。主にロシアでは、サイバー犯罪が規制されることなく野放しになっています。そして徐々に、FSB(エフエスビー)、SVR(エスブイアール)、GRU(ジーアールユー)といったロシアの情報機関が、それらのハッカーグループから人材を引き抜いたり、実際に任務を与えたりするようになりました。公式文書を見ると、長い時間をかけて、情報機関とこれらのグループがどのように結び付き、手を取り合ってきたかが分かります。

TC:サイバー攻撃の後、ダークサイドがBitcoin(ビットコイン)や決済サーバーにアクセスできなくなり、シャットダウンすると言った際には、どう思いましたか。

CA:もし、あなたがこのハッカー攻撃を仕かけた人だとしましょう。その時には、おそらくコロニアル・パイプラインが何かを全然知らなかったでしょう。「やばい、米国のあちこちの新聞に取り上げられてしまった」と思ったでしょう。そして、ロシアでおそらく数本の電話がかかってきて「なんてことをしてしまったんだ、どうやって隠そう」と考えたはずです。

一番簡単なのは「私はやっていない」というか「もうそのお金は失われた、サーバーにアクセスできなくなった」ということです。ですから、私はあれはフェイクだったと思います。痕跡を隠すために全部行っていたと思います。(そう仮定すると)後で、別の方法を試みていたこともわかっています。私たち、米国政府がすぐにこれらハッカーに反撃できると過大評価していたと思います。純粋にそう思い込んだわけですが、そんなにすぐにはできないでしょう。もちろんこれは、政府の内部情報か何かを見て言っているわけではありません。

TC:DarkSide(ダークサイド)は、フランチャイズのように運営されていて、個々のハッカーがソフトウェアを受け取り、ターンキープロセスのように使っていると書かれていました。これは新しい流れですか。今後もっと大勢の人がハッキングに関わるようになると思いますか。

CA:その通りです。ロシア系のハッカーがすごいのは地下で分散する性質を持っていることです。「すごい」というのは少し皮肉も込めてですが、実際ランサムウェアを書く人たちもいれば、彼らが提供したサービスを使って、システムに入り込みハッキングをする人たちもいます。また、ビットコインのタンブリングを通じて、ビットコインの取引を行う人もいるでしょう。興味深い点の1つは、エンドゲームで現金を手に入れるには、これらの換金処理を通らなければならないので、最終的により洗練されたビジネスになることです。マネーミュールが関係している可能性もあり、そのマネーミュールを運営する人たちもいます。彼らの多くは、クレジットカード詐欺を行っており、カードが有効かを確認したり、どうやってお金を引き出すかを考えたりするなど、一連のサービスを提供しています。これには、おそらく20種類ほどのサービスが関わっているでしょう。すべて、非常に高度に特化されています。これが、彼らが成功を収めている理由であり、対応するのが難しい理由でもあるのです。

TC:彼らは利益を分けているのでしょうか。もしそうなら、仕組みはどうなっていますか。

CA:はい、利益を共有しています。かなり効果的なシステムが運営されています。支払い方法が存在するという点で、ビットコインが、これを可能にする大きな要因となっていることは明らかです。(しかし)eBay(イーベイ)の出品者のような、ランキングや評価システムも持っています。整備された地下フォーラムが存在していて、これまでずっと彼らの運営場所となってきましたし、もしサイバー犯罪者内で詐欺を働く人がいるとすれば、それを告発することができるようなサービスも提供されています。これはインターネットと同じです。なぜインターネットがうまく機能するのか、それは非常に広く分散しているからです。

TC:貴社の顧客以外でも、安全を守りたいと思っている方々に何かアドバイスがありますか。

CA:どの業界がランサムウェアの攻撃を受けているかを示す円グラフを同僚が作ってくれました。興味深いことに、20の異なる業界にわたり、攻撃は非常に幅広く分布しています。コロニアル・パイプラインに関しては、多くの人が「ああ、石油関係ね」と思ったかもしれませんが、ハッカーはそこまで業界を気にしていません。一番動きが鈍いターゲットを狙ってきます。ですから、簡単に攻撃できるターゲットにならないことが大切です。

多くの企業が、基本を守り、システムにパッチを行い、(加えて)アップデートを確実に行っているのは良いことです。危険にさらされないよう、インターネットに置いておく情報をできるだけ減らすことです。外界と接する表面積をできるだけ狭めてください。すべての事に、取り扱うものにはすべて、強力なパスワードと二要素認証を使ってください。

簡単に狙われないための10項目から成るチェックリストを用意しました。昨今の非常に高度なギャングに対応するには十分ではないので、さらにしっかりとした対策を講じる必要がありますが、チェックリストにある基本を押さえておけば、かなりの効果が見込めます。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:米司法省ランサムウェアハッカー暗号資産アメリカロシアRecorded Future

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

【コラム】多様性、公平性、包括性の面から評価した現在米VC業界の進歩

編集部注:Maryam Haque(マリアム・ハケ)氏はVenture Forwardのエグゼクティブディレクター。Bobby Franklin(ボビー・フランクリン)氏はNational Venture Capital Associationの社長兼CEOで、以前CTIA-The Wireless Associationのエグゼクティブバイスプレジデントを務めていた。

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これまでベンチャーキャピタル業界が多様性に欠けていたことは明らかだが、業界が改善に取り組んでいることは喜ばしい。

そもそもベンチャーキャピタルは業界として、筆者らが測定したものを改善することしかできない。2016年、筆者らは、ベンチャーキャピタルの多様性、公平性、包括性(DEI:Diversity, Equity and Inclusion)の進捗状況を追跡するための厳密な方法論を開発し、2年に1度開催されるVC Human Capital Surveyで、これらのデータを測定し、ベンチマークとすることに着手した。

この調査はNVCA(National Venture Capital Association:全米ベンチャーキャピタル協会)、Venture Forward(ベンチャ―フォワード)、Deloitte(デロイト)の協力を得て実施され、あらゆる種類、規模、ステージ、セクター、地域のベンチャーキャピタル従業員の人口統計データを収集すること、および企業のタレントマネジメントや採用活動の傾向を把握することを目的としている。これまでの調査では、進歩が遅く、落胆させられることもあったが、すべての分野ではないとはいえ、一部の分野では多様性(および多様性を促進するための会社の取り組み)が高まっている証拠を得ることができた。

繰り返しになるが、業界としてのベンチャーキャピタルの改善は、筆者らだけが測定できる。

筆者らは2016年、2018年、2020年に調査を実施し、2021年3月に2020年の成果を発表した。この調査では、2020年6月30日時点で378社の企業から収集したデータを掲載しており、203社だった2018年から大幅に増加している。さらに、145社以上の企業が#VCHumanCapital pledge(誓約)に署名し、DEIのデータを提出することを約束した。

ざっくりとまとめるとデータからは、投資パートナーにおける多様性の改善は、主に女性投資家の採用と昇進によってもたらされていて、黒人やヒスパニック系の投資パートナーの公平な代表性にはほとんど進展がなかったことがわかる。

しかしながら、若手投資家の人口構成が多様化し、多様性を重視したタレントマネジメントや採用手法の導入が進んでいることから、楽観的な見方もできるようになった。業界の前進にはまだ先が長いが、今回の調査で明らかになった重要なインサイトと変化をいくつか紹介する。

多様性の改善に向けた取り組み

多様性および包括性の推進を社内で明確にする企業が増加し、50%の企業がこの課題に責任を持つスタッフやチームを擁している(2018年は34%、2016年は16%)。同時に、多様性戦略と包括性戦略も普及し、43%の企業が多様性戦略を導入(2018年は32%、2016年は24%)、41%が包括性戦略を導入している(2018年は31%、2016年は17%)。

この取り組みは多様性の改善につながる。専任のスタッフ、戦略、プログラムを持つ企業では、投資チームや投資パートナーの性別や人種の多様性が向上している。DEIの重要性が増していることも、より広範なエコシステムにつながっている。過去12カ月の間に、リミテッドパートナー(有限責任パートナー)や投資先企業からDEIの詳細を求められたと報告する企業が増えている。

人材の採用と育成に明るい兆し

ベンチャー企業は比較的規模が小さく、離職率は一般的に低いが、2020年には21%の企業がシニアレベルの投資担当者ポジションが増えたと回答し、43%がジュニアレベルのポジションが拡大したと回答している。ジュニアレベルの投資担当者の人口構成は、性別や人種の多様性が高くなっており、将来の投資パートナーの多様性を示すポジティブな先行指標となっている。

全体的にEI戦略が普及するにつれ、より多くの企業がDEIに焦点を当てた採用・雇用プログラムを開発するようになった。正式なプログラムを持つ企業は33%、非公式なプログラムを持つ企業は74%で、いずれも2016年から着実に増加している。また、企業は2018年に比べて、空席が出た際の候補者を外部に求めることが多くなったと回答している。

しかし、企業は依然として、採用活動の大部分を社内ネットワークで行っていて、(人口構成上)同質な採用結果に結びつくことが多い。外部の候補者を採用するためのパイプは細く、2018年と2020年の調査でほとんど変化は見られない。VC業界の同業者を頼る(78%)、会社の内部で採用をかける(59%)が最も多く挙げられた戦略だった。例外的に、LinkedInなどのサードパーティのウェブサイトやニュースレターへの掲載は、2020年には54%の企業が回答しており(2018年の37%から大幅に増加)、既存のネットワーク以外のより幅広い候補者にアプローチするための手段の1つもなっている。

未だ困難な包括性の評価

人材の獲得後は、包括的な文化と定着率がDEIの進捗を測る重要な指標となる。リーダーシップ開発、メンターシップ、定着に特化したプログラムを実施する企業が増えており、約3分の2の企業が非公式のプログラムを提供し(2016年と比べて20ポイント増)、20%の企業が正式なプログラムを提供していると回答している。

VC Human Capital Surveyで包括性を評価することは困難である。なぜなら、この調査は1社につき1人を代表として行っていて、1人では他の人が感じている包括性の度合いを回答することができないからである。2020年の調査では、企業自体が包括性をどのように評価しているかを測るために、新たな質問を追加した。41%の企業が包括性戦略があると回答した一方で、包括性を評価するために従業員を対象とした調査を行っていると答えたのは26%に留まった。

依然主観的な要素が昇進における重要な考慮事項

多様な人材が業界の最高レベルの意思決定者になるためには、キャリアアップのための十分に構造化され、一貫して適用されるポリシーが欠かせない。昇進に焦点を当てた正式なDEIプログラムを提供していると回答した企業は約20%(2016年の5%から増加)、非公式なプログラムを提供している企業は65%(2016年の39%から増加)である。

昇格に焦点を当てたDEIプログラムは広まっているものの、主観的な要素は依然として昇格決定の重要な考慮事項であり、不平等で偏った結果につながる可能性がある。

ほぼすべての企業が、昇進を検討する上で「ファンドのパフォーマンスへの貢献」(90%)と「取引の組成」(82%)が「非常に重要」または「重要」な要素であると回答した。しかし、最も重要と回答されたのは「ソフトスキル」であり、94%の企業が「非常に重要」または「重要」と回答している。このような主観的な要素は、無意識のバイアスが入り込む可能性が高く、より明確にパフォーマンスに関連する客観的指標による重みづけを損なう可能性がある。

推進力の維持

2020年の調査結果は、社会正義と人種的公平性が国を挙げて注目され、政策立案者がサービスの行き届いていないコミュニティからの資本へのアクセスを向上させようとし、VC業界が新たにDEIに着目し始めた1年の直後という時宜を得たものとなった。今回の調査は、VC業界がどこに注力すべきかを示すとともに、DEIにフォーカスした取り組みの共通のニーズを思い出させる重要な指摘となった。

データは、疎外された複数のコミュニティを代表する人を見ると、1つの人口統計要素内の進歩がより小さくなる可能性があることを示している(例えば女性である投資パートナーの割合は着実に増加しているが、有色の女性である投資パートナーの割合は増加していない) 。

DEIの進歩のペースは遅く、不均一な部分もあるが、楽観できる根拠もある。4月6日、NVCA、Venture Forward、Deloitteは、最新の調査結果をさらに検討し、DEIの課題、機会、業界の戦略について議論するために、業界のリーダーとの討論会を開催した。社内での、また公の場における業界の同業者との建設的な会話を優先事項と考え、協調的な精神で行動し、熟考した具体的なDEI戦略を採用し、意欲的かつ緊急性を持って行動する企業が増えている。

業界がDEIの取り組みに対して勢いを持ち続け、結果を出すことができれば、有意義な進展につながる転換点に到達し、今後の調査に反映されることになるだろう。

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カテゴリー:VC / エンジェル
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(文:Maryam Haque、Bobby Franklin、翻訳:Dragonfly)

TikTokが米国ユーザーの「顔写真や声紋」を含む生体情報の収集を表明

米国時間6月2日水曜日に発表されたTikTok(ティックトック)の米国におけるプライバシーポリシーの変更では、同社のソーシャルビデオアプリがユーザーのコンテンツから「生体識別子および生体情報を収集する場合がある」という項目が新たに追加された。これには「フェイスプリント(顔写真)やボイスプリント(声紋)」などが含まれると説明されている。TikTokにコメントを求めたところ、製品開発におけるどのような理由でユーザーから自動的に収集する情報に生体情報を加える必要が生じたのかは確認できなかった。しかし、そういったデータ収集活動を始める場合には、ユーザーに同意を求めると述べている。

生体情報収集の詳細については、同ポリシーの「自動的に収集する情報」の下に新たに追加された「画像および音声情報」セクションの項目として記述されている。

これは、TikTokのプライバシーポリシーの中で、アプリがユーザーから収集するデータの種類を列挙している部分であり、すでにかなり広範囲にわたっている。

新しいセクションの最初の部分では、TikTokがユーザーのコンテンツに含まれる画像や音声に関する情報を収集する場合があるとし「ユーザーコンテンツに含まれる物体や風景の識別、顔や体の特徴と属性の画像内の有無や位置、音声の特徴、テキスト化した会話内容など」と説明している。

気味が悪いと思うかもしれないが、他のソーシャルネットワークでは、アクセシビリティ(例えば、Instagramの写真の中に何が写っているかを説明する機能)の強化やターゲティング広告のために、アップロードされた画像の物体認識を行っている。また、AR(拡張現実)効果の演出のためには、人物や風景の位置を認識する必要があり、TikTokの自動キャプションは話し言葉をテキスト化することで実現している。

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また、このポリシーでは、新たなデータ収集は「映像の特殊効果、コンテンツモデレーション、人口統計学的分類、コンテンツや広告のリコメンデーション、個人を特定しないその他の処理」を可能にするためとも述べている。

新しい項目の中でも特に気になるのは、生体情報の収集計画の部分だ。

そこには次のように書かれている。

当社は、お客様のユーザーコンテンツから、フェイスプリントやボイスプリントなど、米国の法律で定義されている生体識別子および生体情報を収集することがあります。法律で要求される場合、当社は、そのような収集を行う前に、お客様に必要な許可を求めます。

この声明自体は、連邦法、州法、またはその両方を対象としているのかどうかを明確にしていないため、曖昧なものとなっている。また、他の項目と同様に、TikTokがなぜこのデータを必要とするのか説明しておらず「フェイスプリント」や「ボイスプリント」という言葉の定義さえもない。加えて、どのようにしてユーザーから「必要な許可」を得るのか、同意を得るプロセスは州法や連邦法を参考にするのかについても言及はない。

これは憂慮すべきことだ。というのも、現在のところ、生体認証情報プライバシー法を制定しているのはイリノイ州、ワシントン州、カリフォルニア州、テキサス州、ニューヨーク州など、ほんのひと握りの州にすぎないからだ。TikTokが「法律で要求される場合」にのみ同意を求めるのであれば、他の州のユーザーはデータ収集について知らされる必要がないということになりかねない。

TikTokの広報担当者は、生体情報の収集における同社の計画や、現在または将来の製品にどのように関わるかについて、詳細は明らかにしていない。

「透明性に対する継続的なコミットメントの一環として、当社が収集する可能性のある情報をより明確にするために、今回プライバシーポリシーを更新した」と同担当者は述べる。

そして、同社のデータセキュリティへの取り組みに関する記事、最新の透明性レポート、アプリ上でのプライバシーの選択についての理解を深めることを目的として最近立ち上げたプライバシーとセキュリティのページを紹介した。

画像クレジット:NOAH SEELAM/AFP via Getty Images

今回の生体情報に関する開示は、TikTokが一部の米国ユーザーの信頼回復に取り組んでいる時期と重なる。

Trump(トランプ)政権時、連邦政府は、TikTokが中国企業に所有されていることから国家安全保障上の脅威であるとして、米国内での運営を全面的に禁止しようとした。TikTokは、この禁止令への対抗として、TikTokの米国ユーザーのデータは、米国内のデータセンターとシンガポールにのみ保存していることを公表した。

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同社はまた、北京を拠点とするByteDance(バイトダンス)が所有しているにもかかわらず、TikTokのユーザーデータを中国政府と共有したことも、コンテンツを検閲したこともないと述べている。また、頼まれても絶対にしないとしている。

TikTokの禁止令は当初、裁判所で却下されたものの、連邦政府はその判決を不服として控訴した。しかし、Biden(バイデン)大統領が就任すると、同政権はトランプ政権の措置を再検討するため、控訴プロセスを保留した。そして、6月4日現在、バイデン大統領は、監視技術に関連する中国企業への米国の投資を制限する大統領令に署名しているが、同政権のTikTokに対する立場は不明のままだ。

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しかし、今回の生体情報収集に関する新たな開示は、ソーシャルメディアアプリがイリノイ州の生体認証情報プライバシー法に違反したとして、2020年5月に提起されたTikTokに対する集団訴訟における9200万ドル(約100億円)の和解を受けたものであることは注目に値する。この集団訴訟は、TikTokがユーザーの同意なしに個人情報や生体情報を収集・共有したことをめぐる、同社に対する20件以上の個別訴訟とも併合されていた。具体的には、特殊効果を狙ったフェイスフィルター技術への使用に関するものだ。

そういった状況のため、TikTokの法務部門は、アプリによる個人の生体情報収集に係る条項を追加することで、将来の訴訟に対する予防策を手早く講じたかったのかもしれない。

今回の開示は、米国向けのプライバシーポリシーにのみ追加されたものだ。EUなど他の市場では、より厳しいデータ保護法やプライバシー保護法があることも忘れてはならない。

この新しいセクションは、TikTokのプライバシーポリシーの広範な更新の一部であり、他にも旧版のタイプミスの修正から、セクションの改訂や新規追加まで、大小さまざまな変更が加えられている。しかし、これらの調整や変更のほとんどは、簡単に説明できる。例えば、TikTokのeコマースへの意欲を明確に示す新しいセクションや、ターゲティング広告に関するApple(アップル)の「App Tracking Transparency(アプリのトラッキングの透明性)」に対応する調整などが挙げられる。

関連記事:ついにアップルが導入開始した「アプリのトラッキングの透明性」について知っておくべきこと

大局的に見れば、TikTokは、たとえ生体情報がなくても、ユーザーやコンテンツ、デバイスに関するデータをふんだんに持っている。

例えば、TikTokのポリシーには、ユーザーのデバイスに関する情報を自動的に収集するとすでに記載されている。その情報には、SIMカード・IPアドレス・GPSに基づく位置データ、TikTok自体の利用状況、ユーザーが作成・アップロードしたすべてのコンテンツ、アプリから送信したメッセージのデータ、アップロードしたコンテンツのメタデータ、クッキー、デバイス上のアプリやファイル名、バッテリーの状態、さらにはキーストロークのパターンやリズムなどが含まれている。

これは、ユーザーが登録したり、TikTokに連絡したり、コンテンツをアップロードしたりしたときに送られる「ユーザーが提供することを選択した情報」とは別だ。この場合、TikTokは、ユーザーの登録情報(ユーザー名、年齢、言語など)、プロフィール情報(名前、写真、ソーシャルメディアアカウント)、プラットフォーム上でユーザーが作成したすべてのコンテンツ、電話やソーシャルネットワークの連絡先、支払い情報、加えてデバイスのクリップボードにあるテキスト、画像、動画を収集する(Apple iOS 14の警告機能により、TikTokや他のアプリがiOSのクリップボードのコンテンツにアクセスしていることが発覚したことはご記憶にあるだろう。今回のポリシーでは、TikTokは「ユーザーの許可を得て」クリップボードのデータを「収集する場合がある」としている)。

プライバシーポリシーの内容自体は、一部のTikTokユーザーにとっては、すぐに気がかりになるものではなく、むしろ、バグだらけのロールアウトに関心が集まった。

一部のユーザーは、プライバシーポリシーの更新を知らせるポップアップメッセージが表示されたものの、そのページを読もうとしても読めなかったと報告している。また、ポップアップが繰り返し表示されるという報告もあった。この問題は全ユーザーに共通ではないようだ。TechCrunchによるテストでは、このポップアップに関する問題は発生しなかった。

【追加レポート】Zack Whittaker(ザック・ウィッタカー)

カテゴリー:ネットサービス
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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

テクノロジーと災害対応の未来4「トレーニング・メンタルヘルス・クラウドソーシング、人を中心に考えた災害対応スタートアップ」

災害がすべて人災というわけではないが、災害に対応するのはいつも人間である。対応する緊急事態の規模が小さいとしても、さまざまなスキルと専門性が必要となる。防災計画や災害後の復旧時に必要となるスキルを除いたとしても、必要なスキルや専門性は多岐にわたる。ほとんどの人にとって割に合う仕事ではないし、ストレスからくる精神的な影響が数十年にわたって続くこともある。それでも、この終わりなき戦いへと多くの人が立ち向かい続けるのは、最も必要とされているときに人を助けるという、この仕事の究極の使命があるからこそだろう。

テクノロジーと災害対応の未来に関するこのシリーズでは、3回にわたってテクノロジーを中心に取り上げてきた。具体的には、新製品の販売サイクルモノのインターネット(IoT)が全面的に普及することによるデータの急増データをどこにでも拡散できる接続性について考えた。一方で、それに関わる人たちという側面についてはあまり触れてこなかった。つまり、災害に実際に対応する人たち、そうした人たちが直面している課題、およびそうした課題をテクノロジーで解決する方法といった点だ。

そこで、シリーズ4回目で最終回となるこの記事では、災害対応時に人とテクノロジーが交差する4つの分野(トレーニングと開発、メンタルヘルス、クラウドソーシングによる災害対応、非常に複雑な緊急事態が発生する可能性)と、この市場の今後の可能性を取り上げる。

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災害に対応するためのトレーニング

大半の分野では、トレーニングに対して線形的なアプローチをとる。ソフトウェアのエンジニアになるには、コンピューターサイエンス理論を学び、プログラミングの実践練習をすればよい(個人差はあるが)。医師になるには、学部のカリキュラムに加えて生物学や化学を履修し、医学部で本格的な解剖学などのクラスを2年間みっちりこなしてから、臨床研修ローテーション、研修医、必要に応じて研究職などを経験する。

では、緊急事態に対応する要員をトレーニングするには、どうすればよいか。

緊急電話対応オペレーター、EMT(緊急医療チーム)、救急救命士、緊急時計画策定者、さらには現場で災害対応を行う緊急救助隊員などが任務を適切に実行するために必要なスキルは数え切れない。ハードスキルに含まれるような、緊急隊員派遣用ソフトウェアの使い方や災害現場からの動画のアップロード方法に関する知識だけでなく、正確に意思を伝達する能力、冷静さ、高い敏捷性、臨機応変な対応と一貫性のバランスといったソフトスキルも極めて重要だ。一貫性がないという要素も非常に重要である。1つとして同じような災害は発生しないので、情報を入手することが難しく、極度のプレッシャーがかかる状況でも、これらのスキルを直感的に組み合わせて発揮する必要がある。

こうしたニーズに応えるのが「EdTech」と呼ばれるサービスだ。しかも、EdTechが役立つのは緊急事態の対応時だけではない。

コミュニケーションには、チーム内で意思の疎通を図ることに加えて、さまざまな地域でコミュニケーションを取ることも含まれる。RAND Corporation(ランド・コーポレーション)の社会科学者Aaron Clark-Ginsberg(アーロン・クラークギンズバーグ)氏は「このようなスキルは、ほとんどがソーシャルスキルです。さまざまな背景の人たちと、文化的にも社会的にも適切な方法でやり取りできるスキルです」と説明する。同氏によると、緊急時管理の分野ではこの問題に対する関心が近年高まっており「我々が必要としているスキルとは、災害発生現場に存在しているコミュニティとやり取りするためのもの」だという。

ここ数年のテック業界でも見られることだが、異文化とコミュニケーションを図るスキルは乏しい。経験を積むことでこのようなスキルを習得することは可能だが、共感するスキルや理解力を育むために、ソフトウェアを使ったトレーニングは可能だろうか。あらゆる条件下でコミュニケーションを効果的に取る方法について、緊急時対応要員(に限らずあらゆる人たち)を教育するために、効果的で良い方法を開発できないか。スタートアップにとっては、この問いに挑むことが大きなビジネスチャンスとなる。

緊急時対応は、キャリアパスとしても十分に成長している。「この分野の歴史は大変興味深く、今や専門性が高まっており、さまざまな認定資格も用意されている」とクラークギンズバーグ氏はいう。こうした職業化によって「緊急時対応が標準化されたため、さまざまな資格を取得することで、習得したスキルと知識の範囲が明確になる」という。認定資格を取得すると特定のスキルを証明することになるが、全体的な評価にはならい。そのため、新しいスタートアップにとっては、より良い評価を行う機会を提供するビジネスチャンスとなる。

誰にでも経験があることだが、緊急時対応要員は何度も繰り返して作業することで慣れてしまっているため、新しいスキルの習得がさらに困難でなる。緊急時データ管理プラットフォームRapidSOS(ラピッド・エス・オー・エス)のMichael Martin(マイケル・マーチン)氏によると、緊急電話対応オペレーターは作業を体で覚えてしまっているため「新しいシステムに切り替えるのはリスクが高い」という。インターフェイスがどんなにお粗末な既存ソフトウェアでも、新しいソフトウェアに変更すると個別対応が遅くなるだけでなく、エラーが発生する危険性も高まる。ラピッド・エス・オー・エスが年間25000時間のトレーニングやサポート、インテグレーションを提供している理由もそこにある。スタッフのトレーニングやソフトウェアの切り替えに関連するサービスの需要は依然として非常に高く、個別に提供されていることが多い。

このようなニッチ市場は別として、この分野では教育の抜本的な見直しが全面的に必要である。私の同僚のNatasha Mascarenhas(ナターシャ・マスカレーナス)は先に、Duolingo EC-1(デュオリンゴ・イー・シー・ワン)というアプリに関する記事を公開した。このアプリは、第2外国語の学習に関心がある学生がゲーム感覚で参加できるように設計されており、非常に魅力的なサービスである。初期対応救助員が取り組めるような、このようなトレーニングシステムはない。

Art delaCruz(アート・デラクルーズ)氏は、災害発生時の救助隊員を志望する退役軍人のチームを構成している非営利団体Team Rubicon(チーム・ルビコン)のCOO兼社長である。同氏の組織はこの問題について、これまでより多くの時間を割いて考えるようになったという。「災害復旧に不可欠な要素は、教育に加えて情報にアクセスできることです。我々は、このギャップを埋めていけるように取り組みます。(学習管理システムよりも)シンプルに情報を提示する方法を考えています」と同氏は説明し、定期的に新しい知識を提供すると同時に既存の考え方もテストする「フラッシュカードのような短期集中型の訓練」が救助隊員には必要だとする。

また、ベストプラクティスを世界中に急いで拡大する必要もある。Tom Cotter(トム・コッター)氏は、被災地や貧困地域の医療従事者をバックアップする非営利団体Project Hope(プロジェクト・ホープ)の緊急時対応準備担当ディレクターを務めるが、新型コロナウイルス感染症が拡大している状況では「さまざまな教育が(まず初期段階に)必要でした。臨床レベルで大きな情報格差があり、情報をコミュニティ全体に伝える方法を教える必要がありました」と話す。プロジェクト・ホープはBrown University(ブラウン大学のWatson Institute(ワトソン研究所)と、パワーポイント形式の対話型カリキュラムを開発した。このカリキュラムにより、最終的に新型ウイルスについて10万人の医療従事者を教育するために使用されたという。

利用できるさまざまなEdTech製品について考えると、1つ特殊なことに気づく。製品の対象が非常に狭いことだ。アプリには言語学習用、数学学習用、読み書き能力開発用などがある。医学生に人気のAnki(アンキ)などのフラッシュカードアプリ、よりインタラクティブなアプローチとしてLabster for science experiments(科学実験用ラブスター)Sketchy for learning anatomy(解剖学の学習用スケッチー)などもある。

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しかし、シリコンバレーで提供されているさまざまな短期集中トレーニングでも、本物の新入隊員訓練プログラムのような方法で学生を根本から訓練するようなEdTech企業は存在しない。ハードスキルを習得しながら、ストレスに対処するスキル、急速に変化する環境に対応するために必要な適応性、共感を持ってコミュニケーションを図るスキルも習得できるプログラムを提供するスタートアップは、いまだかつて存在したことがない。

こういう訓練は、ソフトウェアでは不可能なのかもしれない。あるいは、教育に対する考え方に革新を起こす気概をもって、全力で取り組む創業者がまだ現れていないのかもしれない。必要とされているのは、次世代の緊急時対応管理プロフェッショナルの教育、また最前線の作業員と同じくらい民間企業でストレスに対処するための教育、すばやく決断する必要があるすべての社員の教育を抜本的に変える方法である。

公的安全企業Responder Corp(レスポンダー・コープ)の社長兼共同創業者Bryce Stirton(ブライス・スタートン)氏が考えているのは、まさにその点だ。「私が個人的に気にいっている分野は、VRによるトレーニング空間です」と同氏はいう。消火活動などの「大きなストレスがかかる現場の環境を再現するのは非常に難しい」が、新しいテクノロジーを使えば「トレーニングで心拍数の上昇を体験することができる」。同氏は「VRの世界は大きなインパクトを与えることができる」と結論づける。

災害後の癒やし

トラウマという点では、緊急時対応の現場ほど大きなトラウマに直面する分野はあまりない。緊急時の現場では、想像し得る最悪の悲惨な光景に、作業員は直面せざるを得ない。死と破壊は当たり前だが、忘れられがちなのが、初期対応救助員がしばしば経験する、自分ではどうしてよいか分からない状況だ。例えば家族を救助できないため、最後の慰めの言葉をいうしかない緊急電話対応オペレーターや、現場に到着したものの必要な機器がないため、対応できない救急救命士などだ。

心的外傷後ストレスは、初期対応救助員が直面する精神異常として、おそらく最もよく知られた一般的なものだが、精神面に現れる異常はそれだけではない。こうした異常を改善し、場合によっては治療するサービスは投資対象となる急成長分野で、多くのスタートアップや投資家が事業を拡大している。

例えばRisk & Return(リスク&リターン)は、メンタルヘルスおよび社員の一般的なパフォーマンス改善に取り組む企業に特化したベンチャー企業だ。私が先に書いた同社の紹介記事で、代表取締役社長Jeff Eggers(ジェフ・エガーズ)氏は次のように語っている。「私はこの種のテクノロジーが気に入っています。というのは、現場の初期対応救助員に役立つだけでなく、コミュニティにもメリットがあるからです」。

リスク&リターンのポートフォリオ企業から、このカテゴリーで異なる成長経路をたどった2社を紹介しよう。まず、Alto Neuroscience(アルト・ニューロサイエンス)を紹介する。この会社は、Stanford(スタンフォード)大学で神経科学者および精神科医として学際的研究を行っているAmit Etkin(アミット・エトキン)氏によって創業された。水面下で活動してきたスタートアップで、脳波データに基づいて心的外傷後ストレスやその他の症状を治療する臨床治療法を新たに開発している。治療法に注力しているため、治験や規制当局による承認はおそらく数年先になると思われるが、これはイノベーションの最先端を行く研究である。

2つ目の会社は、アプリを使って患者のメンタルヘルスを改善するソフトウェアスタートアップNeuroFlow(ニューロフロー)だ。この会社のツールは、継続してアンケートやテストを実施し、開業医との協力を得ることで、精神面の健康をよりアクティブに監視し、最も複雑なケースでも症状や再発を特定する。ニューロフローのツールはどちらかというと臨床に近いが、近年はHeadspace(ヘッドスペース)Calm(カーム)などのメンタルウェルネス関連のスタートアップも頭角を現している。

治療法やソフトウェア以外の分野では、メンタルヘルスの最前線としてサイケデリックスのようなまったく新しい分野もある。これは、筆者が2021年始め、2020年の投資対象の上位5つとして挙げたトレンドの1つであり、この考えは今も変わっていない。また、サイケデリックスを重視した患者管理臨床プラットフォームであるOsmind(オスミンド)というスタートアップについても記事を掲載している

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リスク&リターン社はサイケデリックス分野に投資していないが、同社の取締役会長で9/11 Commission(米国同時多発テロ事件に関する調査委員会)の前共同議長、およびネブラスカ州知事と上院議員も務めたBob Kerrey(ボブ・ケリー)氏は「政府機関がサイケデリックス分野に投資するのは難しいですが、民間企業であれば簡単に投資できます」という。

EdTech同様、メンタルヘルス系スタートアップは最初は初期対応救助員のコミュニティをターゲットにしているものの、対象を限定しているわけではない。心的外傷後ストレスやその他のメンタルヘルス疾患は、世界中で多くの人を悩ませる症状であり、あるコミュニティで効果があった治療法を別のコミュニティにも幅広く適用できる可能性は大いにある。市場規模は非常に大きく、大勢の人たちの生活が大幅に改善される可能性を秘めている。

話を進める前に、興味深い分野をもう1つ挙げておきたい。それは、治療に大きな影響を及ぼすコミュニティの構築だ。初期対応救助員や退役軍人たちは、現役時に使命感や仲間意識を感じることができるが、再就職後や社会復帰前の回復期には、そうした感覚が欠落してしまうことが多い。チーム・ルビコンのデラクルーズ氏によると、退役軍人を被災地の救援活動に参加させる目的の1つは、彼らがアイデンティティを取り戻し、コミュニティとの関わりを取り戻してもらうことであり、国に奉仕したこうした人たちはとても貴重な人材であると指摘する。患者ごとに1つの治療法を見つけるだけでは十分ではない。大抵の場合、目をさまざまな人たちに向けて、精神面の健康を損なう要因を確認する必要がある。

そのような人たちが目的を見つけるのを支援するのは、スタートアップが簡単に解決できる問題ではないかもしれないが、多くの人にとって重要な問題であることは間違いない。ソーシャルネットワークの評価がどん底まで落ちた今、この分野に新しいアプローチが次々と芽生えている。

クラウドソーシングによる災害対応

近年、テクノロジーの世界では分散化が主流となっている。TechCrunchの記事でブロックチェーンという単語に言及しただけで、トイレの染みに関する最新のNFTに関するPRメールが少なくとも50通は届く。さまざまな情報が混在していることは明らかだが、災害対応の分野でも分散化が役立つ。

新型コロナウイルス感染症のパンデミックが証明したものがあるとすれば、それはインターネットの強みだ。インターネットには、データを収集して、データを検証し、ダッシュボードを構築して、複雑な情報を分かりやすく効果的に視覚化し、専門家と一般向けに配信できるという強みがある。このようなサービスは、世界中の人たちが自宅でくつろいでいる時に開発しており、問題が発生したときに対応できる腕を持つユーザーをクラウド上で迅速に集めることができることを実証している。

Columbia(コロンビア)大学の地球研究所国立防災センターのプロジェクト統括責任者Jonathan Sury(ジョナサン・シュリー)氏は「新型コロナウイルスは、我々の想像をはるかに上回る最悪の事態をもたらした」と話す。しかし、オンラインで共同作業するさまざまな方法を利用できるようになったことについては「大変ワクワクしているし、実践的で非常に役に立っている」と指摘する。

ランドのクラークギンズバーグ氏は、この状況を「災害管理の次世代フロンティア」と呼んでいる。同氏は「テクノロジーを使って災害管理や災害対応に参加できる人数を増やせるなら」、災害に効果的に対応する革新的な方法を確立できるだろうと語る。「プロの現場作業員の形式的な体制が強化されることで人命が救われ、リソースを節約できているものの、一般人の緊急時対応要員を活用する方法については、まだまだ取り組むべき余地が残されています」と主張する。

クラウドソーシングによるさまざまな取り組みを支えているツールの多くは、災害対応を目的としていない。シュリー氏は、リモートで活動する一般人の初期対応救助員が使用しているツールの例として、Tableau(タブロー)とデータ視覚化ツールプラットフォームFlourish(フローリッシュ)を挙げる。表形式データを扱う極めて堅牢なツールはあるが、危機発生時に必要となるデータのマッピングを処理するツールの開発はまだ初期段階だ。筆者が2021年初めに紹介したUnfolded.ai(アンフォールデッド・アイ)は、ブラウザ上で動作するスケーラブルな地理空間分析ツールの構築に取り組んでいる。他にもさまざまなツールが開発途上だ。

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新型コロナに苦しむ人を救う開発者の卵が作ったDevelop for Goodが学生と非営利団体を繋ぐ

多くの場合、コーディネーターをまとめるにはさまざまな方法がある。筆者が2020年注目したDevelop for Good(デベロップ・フォー・グッド)という非営利団体は、野心のあるコンピューターサイエンス専攻の学生と、パンデミックで人手が不足している非営利団体および政府機関のソフトウェアプロジェクトやデータプロジェクトと結びつけることを目的としている。こうしたコーディネーターが非営利団体の場合もあれば、Twitter(ツイッター)のアクティブなユーザーの場合もある。分散的な方法でさまざまな取り組みを調整しながら、プロの初期対応救助員や公的機関と関わり合う方法については、試験的な取り組みが続いている。

分散化と言えば、災害対応や危機対応にブロックチェーンが役立つことさえある。ブロックチェーンを証拠の収集や本人確認に使用できる場合がある。たとえば今週始め、TechCrunchの寄稿者Leigh Cuen(リー・クエン)氏は、Leda Health(レダ・ヘルス)が開発した家庭内性的暴行の証拠収集キットについて詳しく報告している。このキットではブロックチェーンを使用して、サンプルが収集された正確な時刻を確認できる。

クラウドソーシングと分散化を利用する方法には他にもいろいろな可能性があるが、そうしたプロジェクトの多くは、災害管理自体とはまったく異なるさまざまな応用事例がある。これらのツールは実際の問題を解決するだけでなく、災害自体とはほとんど無縁だが他者を助ける活動に参加することには熱心な人たちのために、本物のコミュニティを作ることも可能だ。

未曾有の災害に備える

スタートアップに関して筆者が紹介した3つの市場(トレーニングの質の向上、メンタルヘルスの向上、クラウドソーシングによる(データ関連の)コラボレーションツールの向上)は、創業者にとって価値があるだけでなく、ユーザーの生活の質を向上させることができるため、極めて魅力的な市場となっている。

Charles Perrow(チャールズ・ペロー)氏は著書「Normal Accidents(普通の事故)」の中で、複雑さと癒着度が高まる現代の技術システムにおいては、災害が確実に発生するであろうと述べている。さらに、温暖化と毎年発生する災害の大きさ、頻度、異変性を考えると、人類はこれまでに対応したことがないまったく新しい形の緊急災害に直面する可能性が高い。最近では、テキサスの大寒波で送電網が弱体化し、数時間にわたって州全体が停電する事態となり、一部の地域では数日間続いた。

クラークギンズバーグ氏は「我々が目にしているこうしたリスクは、単なる典型的な山火事のようなものではありません。通常の災害であれば対応体制も整っており、容易に準備して危機を管理できます。よく発生する災害管理にはノウハウがあります。しかし最近では、これまでに経験したことがないような緊急事態が発生することが多くなっており、そうした事態に対応する体制を構築するのに苦戦しています。パンデミックはまさにそうした例の1つです」と説明する。

同氏はこうした問題を「境界線を越えたリスク管理」と呼んでいる。つまり、役所、専門性、社会性、行動や手段といった境界を越えた災害のことだ。「こうした災害に対応するには、敏捷性、迅速に行動する能力、お役所体制にとらわれずに作業する力が必要となります。これは大きな問題です」。

災害とその対応に必要となる個々の問題に対しては解決策を立てられるようになってきたものの、こうした緊急事態によって表面化する体系的な取り組みが無視されている現状を見逃すことはできない。最大の効果をあげる画期的な方法で人材を迅速に集めると同時に、ニーズに応える最善のツールを柔軟かつすぐに提供する方法を考える時期にきている。スタートアップ企業がこの問題を解決するというより、利用可能な情報を用いて斬新な災害対応を構築するという考え方が必要だろう。

Natural Resources Defense Council(天然資源保護協議会)の政策アナリストAmanda Levin(アマンダ・レヴィン)氏は次のように語っている。「温室効果ガスを削減したとしても、地球温暖化から受ける圧力と影響は極めて大きいものがあります。温室効果ガスの排出をゼロにしたとしても、その影響は続きます」。筆者がインタビューした政府関係者の1人は匿名を条件に、災害対応について「常に何か物足りない結果に終わっています」と語った。問題は難しくなる一方だ。人類は自分たちが作り上げてしまったこの試練に対応するために、今よりはるかに優れたツールを必要としている。それは、今後100年間の厳しい時代の課題であると同時に、試練を克服するチャンスでもある。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:気候テック自然災害気候変動アメリカメンタルヘルストレーニングクラウドソーシング

画像クレジット:Philip Pacheco/Bloomberg / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

【コラム】核廃棄物のリサイクルはエネルギー革新の最重要手段だ

編集部注:本稿の著者Tristan Abbey(トリスタン・アビー)氏は、Comarus Analytics LLC社長。米国上院エネルギー天然資源委員会の上級政策アドバイザー、および国家安全保障会議の部長を務めた。

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米国のエネルギー・環境政策を語る上で、核廃棄物ほど悩ましいものはない。そう、気候変動は邪悪な問題かもしれないが、一方で膨大な数の苦悩を打ち消す話題が注目を浴びている。

この話題を正面から語るのは難しい。まず、物語の3つの要素から始めよう。

第1に、米国内の原子力発電所は年間約2000トンの核廃棄物(「使用済み燃料」とも)を生み出している。それらは生来の放射能ゆえに、国内のさまざまな場所に、注意深く保管されている。

第2に、これをどうすべきかの責任を負っているのは連邦政府である。実際、原子力発電事業者は核廃棄物基金に400億ドル(約4兆3900億円)以上をつぎ込んでおり、そのおかげで政府は対応が可能になっている。それは、ネバダ州ユッカマウンテンにある「地層処分処理場」に埋めるという考えだったが、政治的に不可能であることが証明された。にもかかわらず、事前調査やヒヤリングなどに 150億ドル(約1兆6470億円)が費やされた。

第3に、エネルギー省の廃棄物管理能力欠如のために、核廃棄物は蓄積される一方である。同省の最新公表データによると、およそ8万トンの使用済み燃料(数百万本の燃料棒を擁する数十万基の燃料集合体)が最終目的地を待っている。

そして、予想外の結末はこれだ。問題の原子力発電事業者らは政府を契約違反で訴え、2013年に勝訴した。毎年何億ドル(何百億円)という賠償金が、一連の和解と判決の一環として米国財務省から支払われている。支払総額は80億ドル(約8780億円)を超えている。

このストーリーが少々どうかしていることに私は気がついている。私は次のようなことを本当に言っているのだろうか?米国政府は核廃棄物を処理するために数十億ドル(数千億円)を集め、次に数億ドル(数百億円)を実現可能性調査に費やしながら埃をかぶらせ、今度はこの失敗のために数十億ドルの上を行く金額を支払っている。そのとおり、そう言っている。

幸い、集められた廃棄物のすべては比較的少ない場所を占めており、一時的保管場所は存在している。行動を起こす緊急な理由がなければ、政策立案者は動かないのが普通だ。

長期的保管場所を見つける試みを続ける一方で、政策立案者はこの「廃棄物」を使用可能な燃料にリサイクルすることを考えるべきだ。実はこれ古くからあるアイデアだ。発電のために消費されるのは核燃料のごく一部でしかない。

再利用推進者らは「再処理」使用済み燃料を使って燃焼後に残ったエネルギーの90%を抽出する原子炉を構想している。批判派たちさえも、リサイクルを支える化学、物理学、および工学は技術的な実現可能であることを認めており、批判の矛先は、経済性の疑問と安全性の潜在リスクに向けられている。

いわゆる第4世代原子炉と呼ばれるものが、あらゆる形とサイズで存在する。その設計は古くからあるが(ある部分は核エネルギーの夜明けにさかのぼる)、政治、経済、および戦略的理由によって軽水炉がこの分野を支配してきた。例えばSouthern Company(サザン・カンパニー)がジョージア州で建設中の2基の従来型加圧水型原子炉は、それぞれ1000MW(1GW)をわずかに超える能力を有しており、これはウェスティングハウスのAP1000設計の標準的な値である。

それに対し、次世代原子炉設計は大きさも容量も数分の一で、さまざまな冷却方法を利用可能だ。オレゴン拠点のNuScale Power(ニュースケール・パワー)の77MW小型モジュール式原子炉、カリフォルニア州サンディエゴ拠点のGeneral Atomics(ゼネラル・アトミックス)の50MWヘリウム冷却高速モジュール式原子炉、カリフォルニア州アラメダ拠点のKairos Power(カイロズ・パワー)の140MW溶融フッ化物塩冷却炉など、企業や政策の目的に合わせてさまざまな構成が可能だ。

多くの第4世代設計が、再生使用済み燃料専用あるいは使用する構成が可能になっている。米国時間6月3日、TerraPower(テラパワー、ビル・ゲイツ氏が出資)、GE Hitachi(日立GE)、ワイオミング州の3者は、ナトリウム冷却高速炉である345MW Natrium設計の実証炉建設に合意した。

Natrium設計は、再生燃料を発電に使用する技術的能力をもっている。すでにカリフォルニア州拠点のOklo(オクロ)は、Idaho National Laboratory(アイダホ国立研究所)とともに、使用済み燃料を使う1.5メガワット「マイクロ原子炉」の運用で合意している。ニューヨーク拠点のElysium Industries(エリシウム・インダストリーズ)による溶融塩炉設計は、自称「優先燃料」として、使用済み核燃料を使用しており、アラバマ州拠点のFlibe Energy(フライブ・エナジー)は、自社のトリウム原子炉設計の廃棄物燃焼能力を宣伝している。

次世代原子炉の成否は、行き詰まり状態にある核廃棄物問題の解決には依存してない。新たな原子炉は使用済み燃料を消費する能力をもってはいるが、必ずしも使わなくてはいけないわけではない。それでも、廃棄物リサイクルを奨励することで経済性を改善できるだろう。

ここでいう「奨励」は「金」を意味している。政策立案者は、再生燃料を使ったほうが、カナダやカザフスタン、オーストラリア、ロシアなどの諸外国から燃料を輸入するより発電所が儲かる仕組みを政府が作る方法を考えるべきだ。

リサイクルを含む次世代核技術に対する政治的支援は、想像以上に奥が深い。2019年、上院はRita Baranwal(リタ・バランワル)博士をエネルギー省(DOE)原子力エネルギー担当次官補に任命した。材料科学の教育を受けた同氏は、すぐリサイクル推進者なった

バイデン新政権は、新型原子炉に対する支援を広く超党派的に継続してきたことに加えて、会計2022年度予算要求ではエネルギー省原子エネルギー部の予算を3億5000万ドル(約384億2000万円)近く増額する提案を出した。提案には原子炉コンセプトの研究開発(3200万ドル[約35億1000万円]増)、燃料リサイクルの研究開発(5900万ドル[約64億8000万円])および新型原子炉実証実験(1200万ドル[約13億2000万円]増)、多目的試験炉の予算3倍増(前年の4500万ドル[約49億2000万円]から1億4500万ドル[約159億2000万円]へ)など具体的な予算増が盛り込まれている。

2021年5月、エネルギー省のエネルギー高度研究計画局(ARPA-E)は、高度原子炉の廃棄物処理「最適化」の研究を支援する4000万ドル(約43億9000万円)の新たなプログラムを発表した。重要なのはこの発表が、現在の核廃棄物ソリューションの欠如が、第4世代原子炉の未来に「難題を突きつけている」ことを明確に表明していることだ。

この議論は、一般にリサイクルが非常に厄介なプロセスであることのリマインダーである。それは化学、機械、エネルギーすべてが集約されたプロセスだ。希少鉱物からPETボトルまで、あらゆるリサイクルは新たな廃棄物も生み出す。現在、連邦および州政府はさまざまな廃棄物のリサイクルに極めて積極的だが、核廃棄物にも同じように関与すべきだ。

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カテゴリー:その他
タグ:原子力 / 核電力エネルギーアメリカコラム

画像クレジット:Micha Pawlitzki / Getty Images

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(文:Tristan Abbey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

北米フォルクスワーゲンの販売業者から330万人分の個人データ流出

Volkswagen(フォルクスワーゲン)によると、北米のある販売業者が顧客データのキャッシュをインターネット上に保護されていない状態のまま放置していたことで、330万人以上の顧客の情報が流出したという。

同社の北米事業本部であるVolkswagen Group of America(フォルクスワーゲン・グループ・オブ・アメリカ)は書簡の中で、フォルクスワーゲンおよびその傘下のAudi(アウディ)の米国とカナダの正規ディーラーが提携している販売業者が、2014年から2019年の間に収集された顧客データを、2019年8月から2021年5月までの2年間にわたり、保護されていない状態のまま放置していたと述べている。

販売やマーケティングのために収集されたというこれらのデータには、氏名、郵便番号、メールアドレス、電話番号など、顧客や購入希望者の個人情報が含まれていた。

さらに約9万人のアウディの顧客および購入希望者においては、ローンやリースの審査に関する情報など、よりセンシティブなデータも流出したという。フォルクスワーゲンの書簡によると、流出した詳細な個人データのほとんどは運転免許証番号などだが「少数の」データには生年月日や社会保障番号も含まれていたとのこと。

フォルクスワーゲンは、データを漏えいさせた販売業者の名前を明らかにしていない。同社の広報担当者は「法執行機関や規制当局を含む適切な当局に通知し、外部のサイバーセキュリティ専門家と当該販売業者とともに状況の判断と対応にあたっています」と、危機管理会社を通して述べている。

運転免許証番号に関するセキュリティ事件は、他にもこの数カ月の間に何度か起きている。保険大手のMetromile(メトロマイル)とGeico(ガイコ)は2021年前半に、運転免許証番号を入手しようとする詐欺行為に見積もりフォームが悪用されたことを認めた。他のいくつかの自動車保険会社も、運転免許証番号の盗難に関わる同様の事件を報告している。これらの犯罪者は他人の名前で不正な失業手当を申請し、現金を得ようとしたのではないかと、Geicoは述べている。

だが、フォルクスワーゲンの書簡には、流出したデータが悪用されたという証拠があるかどうかについては書かれていなかった。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Volkswagenアウディ個人情報データ漏洩アメリカカナダ

画像クレジット:Jens Schlueter / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米国でFacebook MessengerにQRコードによる個人間送金機能追加

2021年4月にFacebookはアプリ内でVenmoのようにQRコードで個人間送金をするテストを米国で実施していることを認めた。米国時間6月10日、同社はこの機能を米国の全ユーザーに公開し、Facebookの友達でない相手ともFacebook Payを通じて送金や請求ができると発表した。

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QRコードはVenmoなどの決済アプリと同じように動作する。

この機能は、Messengerで画面左上のプロフィールアイコンをタップして設定を表示すると、その中の「Facebook Pay」セクションにある。ここに自分専用のQRコードが表示される。一般的なQRコードと同様のものだが、中央に自分のプロフィールアイコンがある。

その下に、自分のFacebook Pay URLが「https://m.me/pay/UserName」の形式で表示される。請求をするときに、これをコピーして他のユーザーに送ることもできる。

Facebookは、このコードは米国のMessengerユーザー同士なら誰でも利用でき、他の決済アプリは不要で連絡先の入力やアップロードもせずに使い始められると説明している。

Messengerで送金と受け取りができるのは18歳以上で、決済機能を利用するためにVisaかMasterCardのデビットカード、PayPalのアカウント、対応するプリペイドカードか政府発行カードのいずれかが必要だ。また、アプリ内で優先して使用する通貨を米ドルに設定する必要がある。

セットアップが完了すると、デフォルトの支払い方法を選んだり、オプションでPINコードを設定して決済を保護したりできる。

QRコードは、Facebookアプリ上部にあるカルーセルの「Facebook Pay」セクションからも利用可能だ。

Facebook Payは2019年11月に、個人間送金だけでなく寄付やストリーミング収益化のFacebookスター、eコマースなど同社のアプリ全般にわたって利用できる決済システムとして初めて登場した。QRコードの利用はVenmoなどに追随するかたちだが、今回発表されたサービスは必ずしも決済アプリのライバルになるものではない。Facebookは対応する決済方法の1つとしてPayPalと連携しているからだ。

決済機能はFacebookのデジタルウォレットであるNoviとはつながっていないが、将来的には変更されるかもしれない。

画像クレジット:Facebook

個人間送金機能は、メインのチャットのスレッドに戻らなくても写真やビデオに簡単に返信できるクイックリプライバーなど、Messengerのいくつかのアップデートとともに紹介された。チャットの新しいテーマとして、女優のOlivia Rodrigo(オリビア・ロドリゴ)のファン向けのテーマ、世界海洋デーにちなんだテーマ、新作映画「ワイルド・スピード / ジェットブレイク」のプロモーション用テーマも追加された。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:FacebookQRコード決済モバイル決済アメリカFacebook PayFacebook Messenger

画像クレジット:Facebook

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

グーグルが米国とアルゼンチンを結ぶ新海底ケーブル「Firmina」発表、電力供給能力で前進

Google(グーグル)は米国時間6月9日、米国東海岸とアルゼンチンのラス・トニナスを結び、さらにブラジルとウルグアイにも陸揚げされる新しい海底ケーブルの建設計画を発表した。これは南米のユーザーに、Googleのコンシューマー向けサービスやクラウドサービスへの低遅延アクセスを提供することを狙いとしている。

この地域で最も近いGoogleのデータセンター(南米では唯一のデータセンター)はチリのサンティアゴ付近にあり、GoogleのCurie(キュリー)ケーブルで米国西海岸と結ばれている。

ブラジルの奴隷制度廃止運動家で作家のMaria Firmina dos Reis(マリア・フィルミナ・ドス・レイス)氏にちなんで名づけられた「Firmina(フィルミナ)」ケーブルは、この地域におけるGoogleの既存のケーブル投資を強化するものだ。例えば、ウルグアイ政府所有のテレコムAntel UruguayとGoogleのジョイントベンチャーであるTannatケーブルはすでに同じ場所を結んでおり、Monet(モネ)ケーブルは米国とブラジル、そして同社のJunior(ジュニア)ケーブルもすでにブラジル各地を結んでいる。

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この新しいケーブルは、Googleの既存ネットワークに容量だけでなく耐障害性も加える。具体的には、12組の光ファイバーペアで構成されるこの新しいケーブルで特筆すべき技術面の偉業は、シングルエンドの電源からケーブルに電力を供給できるというシステムだ。

Googleは次のように説明している。「海底ケーブルでは、データは光ファイバの中で光のパルスとして伝わります。その光信号を、100kmごとに各国の陸揚げ局で供給される高圧電流で増幅します。短いケーブルシステムの場合、シングルエンドからの給電の可用性は高くなりますが、最近の光ファイバーペアの数が多い長いケーブルでは、これが難しくなっていました」。それを実現するために、Firminaケーブルには、これまでのケーブルよりも20%高い電圧のケーブルが供給されている。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

バイデン大統領がトランプ氏時代のTikTok、WeChat禁止令を廃止

Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領は、トランプ政権時代の遺産を撤回することで中国テック企業が米国で直面している不確実性を減らしている。ホワイトハウスが米国時間6月9日に発表した声明によると、バイデン大統領は前大統領のDonald Trump(ドナルド・トランプ)氏によるTikTokとWeChatをターゲットとした禁止令を廃止する大統領令に署名した。

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そしてバイデン大統領は、国家安全保障上のリスクをもたらす「敵対国の管轄」に結びついているアプリを商務省がレビューする新しい大統領令にも署名した。

米国でTikTokとWeChatを禁止しようとしたトランプ氏の大統領令は連邦裁判所によって阻止された。これとは別に、TikTokの米国事業の売却を強制する試みも棚上げされた

米商務長官が中国を含むと定義した「敵対国が抱えている人や敵対国にコントロールされている人、敵対国の管轄下にあったり指示を受けたりしている人によってデザイン、開発、製造、あるいは供給された特定のコネクテッドソフトウェアアプリケーションの米国での使用の増加」は「米国の安全保障や外交政策、経済を脅かし続けている」。

中国テック企業に対する厳しい調査は米国の当局にとって優先順位は高いままだが、ジョー・バイデン政権下では政策はより秩序だったものになる。米国マーケットを切望している中国企業はデータコンプライアンスの課題によく準備しなければならないだろう。

大統領令では国務長官や国防長官、司法長官、保健福祉長官、国土安全保障省長官、国家情報長官、その他の機関のトップと協議して「外国の敵」によって所有あるいはコントロールされているプラットフォーム上の米国人のデータを保護する行動を120日以内に考えるよう商務長官に指示している。

FacebookやGoogleのような米国のテック企業もかなりの量のユーザーデータを収集していることはよく知られているが、TikTokアプリのデータ収集の「範囲と規模」は中国のスパイが米国市民に関する「あらゆる種類の知的な質問」に簡単に答えられるようにしている、と米国家安全保障局のサイバーセキュリティ担当ディレクターAnne Neuberger(アン・ノイバーガー)氏はDisrupt 2020でTechCrunchに語った。そして「特に中国が自国外の人々から集めた情報をどのように使うのかについて大きな懸念」がある、と話した。

中国テック企業は米国でトップランキング入りした多くのアプリを制作してきた。米政府が使用を禁止しようと試みたことを受け、シンガポールを足がかりにしようと取り組んできたTikTokは、この記事執筆時点で米国App Storeの無料アプリ部門で第2位にランクインしている。TikTok同様にByteDanceが所有するビデオ編集アプリCapCutもこのところ米国でかなりダウンロードされている。Tencentや中小のスタジオが展開しているモバイルゲームも引き続き米国でかなりのユーザーを集めていて、ファストファッション買い物アプリのSheinは米国でAmazonをしのぐペースで成長している。

米商務省、Tencent、ByteDanceからすぐにはコメントを得られなかった。

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カテゴリー:ネットサービス
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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

米サイバーセキュリティ庁CISAがハッカー向けにセキュリティバグを報告用プラットフォーム開設

米国土安全保障省(DHS)のサイバーセキュリティ・インフラストラクチャ・セキュリティ庁(CISA、Cybersecurity and Infrastructure Security Agency)は、倫理的なハッカーが米国連邦機関にセキュリティ上の脆弱性を報告できる脆弱性開示プログラム(VDP、vulnerability disclosure program)を開始した。

このプラットフォームはサイバーセキュリティ企業であるBugcrowdとEndynaの協力を得て立ち上げられたもので、米国政府の民生機関が、より広範なセキュリティコミュニティからセキュリティ脆弱性の届け出を受け、トリアージし、修正することを可能にする。

CISAとして知られる連邦サイバーセキュリティ機関がその監督下にある民生部門に対し、独自の脆弱性開示ポリシーを策定・公開するよう指示してから1年弱でこのプラットフォームは立ち上げられた。これらのポリシーは、どのようなオンラインシステムをどのようにテストしてよいのか、またはしていけないのかを示し、セキュリティ研究者の活動ルールを定めることを目的としている。

民間企業では、ハッカーがバグを報告するためのVDPプログラムを運営することは珍しくない。多くの場合、ハッカーに報酬を支払うバグバウンティ(報奨金)を併用している。米国防総省は長年ハッカーとの関係を受け入れているが、米国政府の民生機関は遅れをとっていた。

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2020年にシリーズDで3000万ドル(約32億8500万円)を調達したBugcrowdは、このプラットフォームによって「企業のセキュリティギャップを特定するために現在使用されているのと同じ商用テクノロジー、世界レベルの専門知識、助けになる倫理的ハッカーのグローバルコミュニティへのアクセスを、政府機関に提供することができる」と述べている。Bugcrowdの創業者であるCasey Ellis(ケイシー・エリス)氏は、今回の(CISAからの)指示についてTechCrunchにこう語った。「ハッカーがインターネットの免疫システムとして果たす役割にとって、これは新たな分岐点となるでしょう。Bugcrowdのチームは、CISA、DHSと提携して米国政府とこの取り組みを進めることを非常に誇りに思っています」。

CISAが今後、他の政府機関とセキュリティ上の脆弱性に関する情報を共有するのにもこのプラットフォームは役立つ。

このプラットフォームの立ち上げは、政府機関のサイバーセキュリティがここ数カ月で何度も大きな打撃を受けた後でのことになる。その中には、ロシアのスパイ活動によって米国の大手ソフトウェア企業SolarWindsの技術にバックドアが仕込まれ、少なくとも9つの連邦政府機関にハッキングされた事件や、中国政府に支援を受けたハッカーに関連して何千ものMicrosoft Exchangeサーバーが悪用された事件などが含まれていた。

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

アマゾン傘下Ringが警察に映像を取得されたユーザー数についての情報開示を拒否

Ring(リング)は、家庭用ビデオドアベルの大規模な監視ネットワークや、問題のあるプライバシーセキュリティ運用に対してだけではなく、ドアベルの映像を法執行機関に提供していることでも、多くの批判を受けている。同社は透明性を追求しようとしているものの、これまで何人のユーザーのデータが警察に提供されたかについては開示を拒否している。

2018年にAmazon(アマゾン)に買収されたビデオドアベルメーカーのRingは、少なくとも1800の米国警察部門と、警察がRingのドアベルからのカメラの映像を要求できる提携を行っている(その数は現在も拡大中だ)。今週行われた変更の前には、Ringが提携している警察署であれば、捜査のためにドアベルカメラの映像を、顧客には無断で要求することができていた。今回Ringは、提携先の警察警察が同社の「Neighbors」(ネイバーズ)アプリを通じて、顧客からのビデオ映像の提供を公に要求するように変更した

この変更は、表向きには、警察がドアベルの映像にアクセスできるタイミングをRingのユーザーがコントロールできるようにするものだが、警察が令状なしにユーザーの映像にアクセスできるというプライバシー上の懸念は無視されている。

市民の自由の擁護者や議員たちは、Ringのドアベルカメラの広大なネットワークは個人ユーザーが所有しているため、警察は合法的な裏口を使ってRingのユーザーのカメラ映像を入手できると長い間警告を行ってきた。いまでも警察は、犯罪の証拠がある場合には、基本的なユーザー情報の提出要求や、ビデオコンテンツに対する捜査令状や裁判所命令などの法的要求をRingに対して行うことができる。

Ringが2021年1月にひっそりと発表した透明性レポートによれば、2020年の間にRingが受けた法的要求は1800件を超え、その前年の倍以上となっている。Ringは販売台数を公表していないが、「数百万人」の顧客がいると述べている。しかし、この透明性レポートでは、Ringが法的要求を受けて映像を警察に提出したユーザー数やアカウント数などの、ほとんどの透明性レポートには含まれている内容が省かれている。

Ringに問い合わせたところ、何人のユーザーの映像が警察によって入手されたのかについては開示を拒まれた。

検索の対象となるユーザーやアカウントの数は、本来は秘密ではないが、政府がユーザーデータを要求したときに企業がそれをどのように開示のするか(もし開示するならばだが)、は曖昧な領域である。義務ではないものの、ほとんどのハイテク企業は、年に1、2回、ユーザーデータが政府に取得された頻度を示す透明性レポートを発表している。

透明性レポートは、データ要求を受ける企業が、政府による強制的な大規模監視疑惑に対して、政府の要求に応えているのは企業のユーザーのほんの一部であることを示して反論するための手段だった。

しかし、そこでは実際の対応が肝心だ。Facebook(フェイスブック)Apple(アップル)Microsoft(マイクロソフト)Google(グーグル)Twitter(ツイッター)の各社は、法的要求を受けた数を明らかにすると同時に、データが提供されたユーザーやアカウントの数も明示している。場合によっては、影響を受けるユーザーやアカウントの数が、受け取った要求数の2倍から3倍以上になることもある。

Ringの親会社であるAmazonは、大手ハイテク企業の中では珍しい例外で、情報が法執行機関に引き渡されたユーザーの具体的な数を公表していない。

電子フロンティア財団(EFF)の政策アナリストであるMatthew Guariglia(マシュー・ガリグリア)氏は、TechCrunchに対して「Ringは、表向きにはユーザーの家に設置できる機器を作る防犯カメラの会社ですが、犯罪捜査や監視を行う国家のツールとしての側面も強くなって来ています」とTechCrunchに対して語った。

ガリグリア氏は、Ringが法的要求の対象となったユーザー数だけでなく、過去に何人のユーザーがアプリを通じて警察の要請に応じたかについても公表できるだろうと付け加えた。

Ringユーザーは、オプトアウトを行い警察からの要請を受けないようにすることができるが、たとえこのオプションを選択しても、法執行機関が裁判官から法的命令を受けてユーザーのデータを入手することは止めることができない。ユーザーは、エンド・ツー・エンドの暗号化をオンにすることで、ユーザー以外がビデオにアクセスすることを防ぐことができる(Ringも例外ではない)。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:RingAmazonプライバシー個人情報警察アメリカ透明性監視

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(文:Zack Whittaker、翻訳:sako)

警察のDNAデータベースアクセスを制限する法律が米メリーランド州とモンタナ州で成立

メリーランド州とモンタナ州は、警察がDNAデータベースにアクセスするのを制限する法律を可決した米国初の州となった。

何百万人という米国人の遺伝に関するプライバシーを守るための新しい法律は、23andMeAncestryGEDmatch、FamilyTreeDNAといった消費者DNAデータベースにフォーカスしている。これらサービスでは人々に自分の遺伝子情報をアップロードさせ、遠い親戚とつなげたり家系図をたどっていくのに遺伝子情報を使っている。23andMeのユーザーは300万人超、GEDmatchは100万人超と人気がある一方で、多くの人はこうしたプラットフォームの一部が遺伝子データを製薬業界やサイエンティストから法執行機関に至るまでさまざまなサードパーティと共有していることを知らない。

法医学の遺伝子系図捜査(FGGS)として知られる手法を通じて警察によって使用されるとき、警察は容疑者についての手がかりを探すために犯罪現場で見つかったDNA証拠をアップロードできる。この手の捜査で最も知られている例は2018年のゴールデン・ステート・キラー(黄金州の殺人鬼)の特定だろう。この事件では、捜査チームは連続殺人犯につながる1980年の殺害現場で採取したDNAサンプルをGEDmatchにアップロードし、その後容疑者の遠い親戚を特定し、これが犯人Joseph James DeAngelo(ジョセフ・ジェームズ・ディアンジェロ)逮捕への重要な突破口となった。

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警察は犯罪捜査のために消費者DNAデータベース使うことで成功を収めてきたが、その一方でプライバシー擁護派は長い間こうしたプラットフォームの危険性を警告してきた。DNAプロフィールが遠い祖先をたどっていくのに使えるだけでなく、膨大な量の遺伝子データはその人の病気の傾向を暴いたり、中毒や薬物反応を予想したりでき、さらにはその人がどんな外観なのかイメージ図を作成するのに企業によって使われさえする。

Ancestryと23andMeは、令状を持たない警察には自社の遺伝子データベースを利用させていない。GEDmatch(2019年12月に犯罪現場DNA会社に買収された)とFamilyTreeDNAは以前、警察とデータベースを共有していた。

被告人と、その人の親戚の遺伝子プライバシーを確保するために、メリーランド州は10月1日から遺伝子系図を使う前に裁判官から令状を取得することを警察に課し、遺伝子系図の使用は殺人や誘拐、人身売買など重大な犯罪に限定する。また、ユーザーに情報が犯罪捜査に使われることがあるかもしれないとはっきりと伝えているデータベースのみを捜査当局は使用できる、としている。

新しい法律で使用をさらに限定するモンタナ州では、ユーザーがプライバシー権を放棄していなければ警察はDNAデータベースを使用する前に令状を取る必要がある

法律は「政治的立場の異なるさまざまな人々が、法執行機関による遺伝子データの使用が恐ろしく懸念されるものであり、そしてプライバシーを踏みにじるものだと気づいたことを示している」とメリーランド州の法律学教授Natalie Ram(ナタリー・ラム)氏は話した。「今後より多くの州が法執行機関のテクニックに関する堅牢な規制を擁するこを望みます」。

こうした法律の導入は、電子フロンティア財団(EFF)などのプライバシー擁護派には歓迎されている。EFFで監視訴訟ディレクターを務めるJennifer Lynch(ジェニファー・リンチ)氏は規制について「正しい方向へのステップ」と表現したが、より多くの州、さらには連邦政府がFGGSをさらに厳格に取り締まることを求めた。

「我々の遺伝子データは、保護を民間企業に任せたり、警察に自由に検索させたりするにはあまりにもセンシティブで重要なものです」とリンチ氏は述べた。

「GEDmatchやFamilyTreeDNAのような企業は警察の捜査を許し、促進さえしました。このため警察は米国中の犯罪捜査でますますこうしたデータベースにアクセスするようになっています」。

23andMeの広報担当はTechCrunchに次のように述べた。「消費者にさらに強固なプライバシー保護を提供する法律を当社は完全に支持します。実際、当社は消費者の遺伝子プライバシー保護を高めるために多くの州で法制化に取り組んでいます。顧客のプライバシーと透明性は、23andMeの法的要請対応と顧客の信頼維持へのアプローチをガイドする基本原則です。当社はすべての警察や当局の要請を綿密に調べ、裁判所の命令や召喚状、捜査令状、その他法的に有効だと判断した要請だけに対応します。これまで当社は警察に顧客の情報をまったく開示していません」。

Ancestryは「当社の顧客のプライバシーを守りながら公共政策の目標を達成している」法律をつくるのにメリーランド州の議員と協業したと述べた。

「顧客のプライバシーを守ること、顧客のデータの良き管理者となることはAncestryの最優先事項であり、当社は自ら進んで警察と協業しません。裁判所の命令や捜査令状など有効な法的プロセスでそうせざるを得ない限り、当社は警察といかなる情報も共有しません」とAncestryの広報担当は話した。

デフォルトでユーザーが警察の捜査の対象となるようにしているGEDmatchと FamilyTreeDNAはニューヨークタイムズ紙に対し、新しい法律への対応でユーザーの同意に関する既存の規則を変更する計画はないと語った。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:警察DNAアメリカメリーランドモンタナプライバシー個人情報電子フロンティア財団

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

米国の2021年第1四半期のPC出荷台数は73%増、Chromebookが好調

パンデミックによる需要増を受け、米国の2021年第1四半期のPC出荷台数は前年同期比73%増となった、とCanalysは発表した。計3400万ユニットが販売された。Appleの出荷台数は36%増と好調だったが、HPが1100万ユニットを販売して年間成長率は122.6%とAppleを上回った。

Canalysが指摘したように、ホリデーシーズン後の第1四半期はAppleのハードウェアは苦戦する傾向があるが、これはHPにとっては追い風だ。出荷台数を大きく伸ばしたその他の企業には、116%増のSamsung、92.8%増のLenovoがある。Dellは29.2%増で、他社に比べると控えめな成長だった。

PCは飛ぶように売れ、全体的にはすばらしい四半期だった。Canalys ResearchのアナリストBrian Lynch(ブライアン・リンチ)氏は、これは部分的には人々が2020年に在宅ワークやオンライン教育に移行し、新しいPCを必要としたことによる需要増が貢献したと指摘した。しかし成長が歴史的に比類ないものだったにもかかわらず、2021年第1四半期は業界のこれまでで最も好調だった第1四半期の1つという位置づけだ。メーカーは供給問題が世界の他のエリアで解決される前に米国の不足していた在庫の補充を優先した、とリンチ氏は発表文で述べた。

画像クレジット:Canalys

おそらく驚くことではないが、PC買い換えを検討し、特に教育目的だった人がPCマーケットのローエンドに目を向けたため、低価格のChromebookが最も人気だった。この傾向は高価格のApple製品にマイナスの影響を及ぼしたはずで、 Appleは出荷台数トップの座を失った。

そしてSamsungや他のChromebookメーカーが躍進した。2020年Chromebookの売上高は548%増加し、なかでもSamsungが1963%増と驚異的な数字で成長をリードした。ASUS、HP、LenovoもChromebookの売上を900%超増やした。

そうした数字にはデスクトップ、ノートブック、タブレット、ワークステーションが含まれるが、中でもノートブックが前年比131%と目覚ましく増加するなど、その大半はノートブックとタブレットだった。タブレットの売上はノートブックと同様の増加率ではなかったが、販売台数は51%増の1100万ユニットに達した。

教育部門の需要が継続し、マーケットが今後数四半期で急激に落ち込むことはないとCanalysは予想する。パーツ、特にチップの不足は引き続き業界に影を落としているが、これは今後の四半期の需要につながるだけだと同社はとらえている。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

米空軍が地球規模のロケット貨物輸送プログラムを計画中、SpaceX以外の民間企業も選択肢見込む

米空軍が地球規模のロケット貨物輸送プログラムを計画中、SpaceX以外の民間企業も選択肢見込む

Gene Blevins / reuters

米空軍が、民間の航空宇宙企業の大型ロケットを使い世界のどこへでも貨物を輸送することを想定した小規模な開発プログラムを継続していると述べました。

米国防総省は”Rocket Cargo”と称するこの実験的プログラムはアメリカ宇宙軍(USSF)が主導することになると説明し「これまで陸送や空輸、船便では困難だった場所への貨物輸送を実現させるためにロケットの着陸能力や、大気圏再突入後に貨物を空中投下するための分離可能なポッドを設計し運用する能力を実証する」と予算案に記しています。

宇宙ロケットを使う輸送や旅行は2地点間を短時間で結ぶことを可能します。よりわかりやすく言えば、地球の裏側まで行くにしても、ほんの1時間ほどの時間で到着できる可能性があるということです。

この計画は2022年の予算案で約5000万ドルの要求と規模こそ小さいものの、昨年からのSpaceXとExploration Architecture Corporation(XArc)との契約による研究開発作業を継続します。

Rocket Cargoプログラムでは具体的には言及していないものの、30〜100トンの貨物を輸送でき、完全に再利用可能なロケットとしては、現在はSpaceXのStarshpが唯一の選択肢でしょう。

SpaceXはこれまでにStarshipのプロトタイプSN15を高高度まで上昇させ、地上に垂直着陸させるテストを成功させています(それまでにはいくつもの爆発がありましたが)。SpaceXはロケットを素早く再利用して再び宇宙飛行に送り出し、それを宇宙経由の定期便に発展させるという、これまでの使い捨てによるロケット運用とは全く異なるコンセプトの実現を目指しています。

ただStarshipプロトタイプであっても、まだ一度も軌道には到達できていません。また、空軍はこのプログラムにおける選択肢をより広くしたいと考えています。

米空軍でRocket Cargoプログラムのリーダーを務めるGreg Spanjers博士は、SpaceXの他にこのプログラムに対し潜在的にロケット供給が可能な民間企業として、NASAの月着陸船契約を競っていたBlue OriginやDyneticsの名を挙げました。さらにほかにもいくつかの企業と話をしており、まずはより多くの企業がこの分野に参入することを奨励するため、窓口とロードマップを整備するとしています。

(Source: CNBCEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:安全保障(用語)XArc(企業)軍事(用語)SpaeceXDynetics物流 / ロジスティクス / 運輸(用語)Blue Origin(企業)米宇宙軍 / USSF(組織)

米バイデン政権が中国テック・通信企業への投資禁止措置を拡大

バイデン政権は、中国政府による監視や軍事機器に貢献していると見なされる中国企業への投資を制限するトランプ時代の規制を修正、強化した。大統領命令に挙げられた最初の59企業の中には、テック、宇宙、通信の大手企業の名前もあり、財務省の命令によってさらに追加される見込みだ。

「中国による中国国外における監視技術の使用、および抑圧を促したり深刻な人権侵害につながる中国監視技術の開発と利用、異常かつ並外れた脅威にあたるものです」と、大統領行政命令の発令に際してバイデン氏は述べた。

この大統領令は、トランプ政権の長期に渡り追加され続けた中国企業ブラックリストに由来する。リストは政府調達、米国企業による民間投資、その他の目的に使用されてきた。大手テック企業のZTEとHuawei(ファーウェイ)は2019年に当初から載せられ、他の企業も定常的に追加されていった。

バイデン大統領の命令はこれを精緻化したもので、一部を改訂あるいは拡張し、中でも何が危険な行為あるいは中国当局との協業を構成するかの定義が変更された。中国のウイグル人イスラム教徒および香港その他の反体制派の監視に関与している企業を含むように定義を拡大している点が注目される。

新たな企業リストには、過去2年間に掲載された企業の多くが含まれるほか、数多くが追加されている。China Mobile(中国移動通信)、China Aerospace(中国航天科技集団)、Hikvision(ハイクビジョン)から半導体メーカーのSMICまで、IT、通信、航空宇宙に関わる主要企業がリストに載る危機にさらされているようだ。これらの企業に対する直接投資だけでなく、禁止された企業を含むインデックスファンドなどの仲介手段への投資も禁止される。

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財務省は、従来の国防省に代わってリストの保守と更新の責任を持ち、追加および抹消を行う。

「一連の課題に真正面から取り組むことは、米国国家安全保障の根本的関心事と民主主義の価値を守るというバイデン政権の公約と一致するものであり、今後も政権は中国企業のリストを適宜更新していく」と大統領令に付随した概況報告書に書かれている。

ホワイトハウスがトランプ大統領が始めた中国との貿易戦争を継続し、精緻化しようとしていることは明白だ。米国による圧力が中国の政策に十分な影響を与えるのか、また国際社会の支持が必要になるのかは、近々大統領が本件ならびに他の法令への支持を求めて同盟国を訪問することで明らかになるだろう。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
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画像クレジット:Blake Callahan / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

今も米国の自治体は中国共産党に関連する監視技術を購入している

この記事は、映像監視ニュースサイトIPVMとの提携により発表された。

TechCrunchが入手した契約データから、米国の少なくとも100の郡や町、そして市が、米国政府が人権侵害と関連づけた中国製の監視システムを購入していることがわかった。

米国政府は、2019年にHikvision(ハイクビジョン)とDahua(ダーファ)という中国のテクノロジー企業2社を経済ブラックリストに追加したが、一部の自治体は、その後、数万ドル(数百万円)以上を投じて両社の監視装置を購入している。この2社は、ウイグル族のイスラム教徒が多く住む新疆ウイグル自治区の少数民族に対する、中国の継続的な弾圧と関連している。議会はまた、中国政府によるスパイ活動を助長する恐れがあるとして、米国の連邦政府機関がハイクビジョンとダーファのテクノロジーを新たに購入したり、契約を更新したりすることを禁止した

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しかし、このような連邦政府の措置は、州や市のレベルにまでは適用されていない。連邦政府の資金が使われていない限り、地方自治体はビデオカメラや赤外線スキャナーをはじめ、そういった中国製の監視システムを特に制約なく購入できる。

この契約の詳細は、連邦政府や州政府の支出を追跡しているGovSpend(ガヴァスペンド)が、IPVM(アイ・ピー・ヴイ・エム)を通じてTechCrunchに提供したものだ。IPVMは、映像監視に関する主要なニュースサイトであり、ハイクビジョンとダーファの禁止令を注視している。

今回のデータ、およびIPVMが以前に報告したところによると、最大の支出はジョージア州Fayette(フェイエット)郡の教育委員会によるもので、2020年8月に公立学校での体温チェックに使用されるハイクビジョンのサーマルカメラ数十台を49万ドル(約5400万円)で購入している。

フェイエット郡公立学校の広報担当者Melinda Berry-Dreisbach(メリンダ・ベリードライスバッハ)氏の声明によると、カメラは、ハイクビジョンの正規販売店でもあり、以前から取引のあるセキュリティベンダーから購入したという。この声明では、教育委員会がハイクビジョンの人権侵害との関連性を認識していたかどうかについては触れられていない。また、ベリードライスバッハ氏は、フォローアップの質問には答えていない。

ハイクビジョンやダーファのモデルを含む多くのサーマルスキャナーについては、IPVMの調査により、測定値が不正確であることが判明し、誤った測定値による「深刻な公衆衛生上の潜在的リスク」があると、米国食品医薬品局(FDA)が、公衆衛生上の警告を発するに至っている。

人口9万5000人のノースカロライナ州Nash(ナッシュ)郡は、2020年9月から12月にかけて4万5000ドル(約490万円)以上を投じてダーファのサーマルカメラを購入した。郡長のZee Lamb(ジー・ラム)氏は、購入とその機材が郡内の公立学校に配備されたことを認めるメールを転送してきたが、それに対するコメントはなかった。

また、ニューオーリンズ市の一部を含むルイジアナ州のJefferson(ジェファーソン)郡は、2019年10月から2020年9月にかけて、ハイクビジョンの監視カメラとビデオストレージを3万5000ドル(約380万円)で購入したことがデータからわかっている。しかし、郡の広報担当者からのコメントはない。

連絡を取った自治体のうち、購入したテクノロジーと人権侵害との関連性について答えたのは1地区だけだった。カリフォルニア州のKern(カーン)郡は、2020年6月、保護観察局のオフィス用としてハイクビジョンの監視カメラとビデオ録画機器に1万5000ドル(約160万円)以上を支出した。契約のデータによると、地元の業者であるTel Tec Security(テル・テック・セキュリティ)がハイクビジョンの製品を同郡に販売していた。

カーン郡の最高行政責任者であるRyan Alsop(ライアン・アルソップ)氏は、ハイクビジョンと人権侵害との関連性について問われると「ハイクビジョンに関する問題についてはまったく知らない」という。

「繰り返すが、当郡はハイクビジョンと契約したのではなく、テル・テック・セキュリティと契約したのだ」とアルソップ氏は答えた。

カーン郡では、郡の保護観察所で使うハイクビジョンの機器購入に1万5000ドル(約160万円)以上を費やしている。(データ提供:GovSpend

フロリダ州Hollywood(ハリウッド)市では、ハイクビジョンのサーマルカメラに3万ドル(約330万円)近くを費やしたが、同市の広報担当者は、中国のこのテクノロジーメーカーが「すぐに納品可能で、規定のプロジェクトスコープに合致し、プロジェクト予算内でソリューションを提供する唯一の大手メーカーだった」と述べている。このカメラは、新型コロナウイルス感染症の拡散を抑制するために、従業員の体温の測定に使用された。広報担当者は、人権侵害との関連性については言及しなかったが。連邦政府の禁止令は同市には適用されないと述べている。

Human Rights Watch(ヒューマン・ライツ・ウォッチ)のシニア研究員であるMaya Wang(マヤ・ワン)氏は、地方レベルでのプライバシー規制が不十分であることが、自治体がこのテクノロジーを購入する一因になっていると指摘する。

「問題の1つは、この種のカメラが、原産国や人権侵害に関連しているかどうか以前に、プライバシー基準に準拠しているかどうかを確認するための規制がないまま、国内のさまざまな地域、特に州や市のレベルで導入されていることだ」とワン氏は電話で語り、そして「また、企業の実績に基づいて、その企業が人権を侵害していないかどうかを厳密に調査し、より良い企業を選択することにより、プライバシー保護を重視する企業が勝ち残るような規制の枠組みもない」と付け加えた。

ウイグル族を抑圧する中国政府の継続的な措置の一環として、ウイグル族を監視するための監視テクノロジーの供給をハイクビジョン、ダーファなどに大きく依存していると米国政府は強く主張しているが、中国政府はこれを繰り返し否定している。

国連の監視機関によると、中国政府は近年、100万人以上のウイグル人を収容所に拘留しており、これが米国における監視テクノロジーメーカー2社のブラックリスト入りにつながっている。

米国商務省は、政府の経済ブラックリストに両社を加える際、ハイクビジョンとダーファが「中国政府によるウイグル人、カザフ人、その他のイスラム系少数民族に対する弾圧、恣意的な大量拘束、ハイテクを駆使した監視などの活動が行われる上で、人権侵害や虐待に関与してきた」と述べている。Biden(バイデン)政権は、この人権侵害を「ジェノサイド(大量虐殺)」と呼んだ。

この報道について、上院情報委員会の委員長を務めるMark Warner(マーク・ワーナー)上院議員は、TechCrunchに次のように述べている。「中華人民共和国の企業は、本当に『独立』しているわけではない。そのため、米国の団体が中国企業の機器を購入する際には、中国での民族抑圧を助長する企業を支援しているだけでなく、この監視機器を介して収集されたデータが中国共産党と共有される可能性があることを認識するべきだ。以前から、企業や大学を含むアメリカの団体が、新疆ウイグル自治区などに対する中国共産党の監視・検閲活動を助長していることに心を痛めていた」。

「しかし、これは問題の一部に過ぎない。米国人は、中国共産党がさまざまな手口でアメリカ市民のデータ収集に取り組んでいることにも関心を持つべきだ。このような機器を購入することのリスク、そして人権や安全保障との密接な関係について、地方自治体を含めアメリカ人を啓蒙する必要がある」とワーナー上院議員は述べる。

IPVMは、各社の監視技術がウイグル人の弾圧にどのように使われているかも大きく報じてきた。ダーファ製品には、警察に「リアルタイムのウイグル人警告」を提供するために人種検知のコードが含まれていることが判明した。

2021年初め、Thomson Reuters(トムソン・ロイター)財団は、ロンドンの議会の半数と英国の最大20都市が、ウイグル人の虐待に関連した技術を使用していることを明らかにした。また、Guardian(ガーディアン)紙は、英国の学校でハイクビジョンの監視技術が使用されていることを報じた

ダーファは、この報道を受けて、ブログに声明を掲載し「メディアでの一部報道とは異なり、当社は特定の民族をターゲットとするテクノロジーやソリューションを開発したことはない」と主張した。そして声明には「これに反する主張は単なる誤りであり、そのような主張を裏付ける証拠は、これまで確認されていないと認識している」と付け加えられている。

ハイクビジョンは、コメントの要請に応じていない。

Signal(シグナル)とWhatsApp(ワッツアップ)で安全にヒントを送るには、+1 646-755-8849まで。また、当社のSecureDrop(セキュアドロップ)を使ってファイルや文書を送ることもできる。詳細はこちら

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タグ:アメリカ中国プライバシー個人情報監視

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

米アマゾンが従業員の薬物検査項目からマリファナを除外

Amazon(アマゾン)は、同社の薬物検査プログラムからマリファナを除外することを短いブログ記事で発表した。つまり、今後会社はマリファナをアルコールと同様に扱い、仕事時間以外に従業員は、ビールやマリファナたばこを安心して楽しめるという意味だ。もちろんアルコールと同じく、業務上事故が起きた際には、機能検査および薬物スクリーニングを行うとAmazonは述べている。

唯一の例外は、運輸省の規制を受けている職種、すなわちトラック運転者と重機操縦者だ。これらの仕事の求職者は、引き続きマリファナのスクリーニング検査を受ける。

この変更は、米国社会が国の大麻合法化に急速に寄り添い始めたことを受けたものだ。全米の有権者は、保守の牙城を含め、市民の大麻使用を許す法案を次々と通過させている。医療から娯楽的使用まで、米国は合法薬物に目覚めつつあり、Amazonも歴史に逆行したくない。

Amzonは、Worldwide Consumer(全世界消費者)部門CEOのDave Clark(デーブ・クラーク)氏の書いた声明で、政治状況が変化したことで大麻の合法化と犯罪記録抹消への道が開かれたとの認識を示した。

そして私たちはこれがAmazonだけにとどまらない問題であることを認識し、当社のパブリックポリシーチームは、The Marijuana Opportunity Reinvestment and Expungement Act of 2021(MORE Act)を積極的に支持いたします。これはマリファナを国レベルで合法化し過去の犯罪記録を抹消するとともに影響受けた人々に投資する連邦法案です。他の雇用者も我々に合流し、立法府が迅速に動いてこの法案を通過させることを願っています。

このポリシー改訂は、同社の労働者による組合結成が近づく中、Amazonが実施している最新の取り組みだ。

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タグ:Amazon大麻アメリカ

画像クレジット:Bloomberg Creative / Getty Images

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(文:Matt Burns、翻訳:Nob Takahashi / facebook

草の根運動グループ「インディヴィジブル」が政治的な誤報を無力化するボランティア隊の訓練を開始

写真は2021年4月27日、米国ワシントンD.C.の連邦議会議事堂の外にある米国旗。バイデン大統領と下院民主党議員は、児童税額控除の延長をどれだけ優先させるかで衝突している

民主党の草の根運動グループ「Indivisible(インディヴィジブル)」は、誤った情報に対抗するために、独自のステルス・ ファクト・チェッカー・チームを起ち上げようとしている。これは、政治的メッセージを発信する兵隊を訓練し、情報の塹壕に送り込む実験だ。

「Truth Brigade(真実の旅団)」と名づけられたこのボランティア部隊は、右派が好みそうな誤解を招く情報に対抗するためのベストプラクティスを学ぶことになる。彼らは隔週で組織と連携し、政治的な誤報をかき消すための進歩的なメッセージの波動を放ち、その過程でBiden(バイデン)氏の立法計画を後押しする。

1月6日に行われたソーシャルメディアの大掃除の後にも誤報が広範囲に残っていることを考えると、このプロジェクトは確かに大変な仕事になるだろう。

「これは、ソーシャルメディアのプラットフォームによる非常に無責任な行動によって生じたギャップに、ボランティアの力を投じようという試みです」と、Indivisibleの共同設立者で共同執行役員であるLeah Greenberg(リア・グリーンバーグ)氏は、TechCrunchに語った。「彼らに最終的に対処する責任があるものに、私たちが立ち向かおうとしているのは非常に残念なことです」。

グリーンバーグ氏は、2016年の選挙後に夫とともにIndivisibleを設立した。この組織は、グリーンバーグ夫妻と他の2人の元下院職員が、議員に働きかける市民活動のためのハンドブックを出版した際に、大きな反響を呼んだことから発展した。このハンドブックの内容は、トランプ元大統領とその政策に反発することを米国人に呼びかける左派の「抵抗」時代の活動の中で旋風を巻き起こした。

IndivisibleのTruth Brigadeプロジェクトは、コロラド州で行われた試験的なプログラムから発展したもので、グループのシニアオーガナイザーであるJody Rein(ジョディ・ライン)氏が、自分の州で見たものに懸念を抱いたことが発端となった。2020年秋に始まったパイロットプログラムは、現在45州で2500人のボランティアが参加するまでに成長した。

メッセージの中心となるのは、バイデン氏の野心的な立法案である米国救済計画(American Rescue Plan)、選挙改革法案(HR-1)そして近々予定されているインフラ投資計画(Infrastructure Package)だ。ボランティアチームは、これらの法案に関する政治的な誤報を直接否定するのではなく、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)など既存のソーシャルメディア世界の中で、法案を宣伝し、誤った主張を否定するメッセージを発信する。

Indivisibleの中で組織化されたこのネットワークは、多くの偽情報キャンペーンが自分たちのコンテンツを拡散させる時に使うのと同じ戦術を用いて、これらの半有機的なコンテンツをクロスプロモーションする(自分たちの起源を隠すためにあからさまな努力をしているグループの場合、Facebookはこれを「組織的非真正行動」と呼んでいる)。これらの投稿はボランティア活動の一環であり、ターゲットを絞った広告ではないため、ラベル付けされないが、中にはTruth Brigadeのキャンペーンに関連するハッシュタグが付くものもある。

ボランティアは、進歩的な話を「真実でサンドイッチ」にして提供するように訓練されているが、その際には、反論しようとする誤った情報を増幅させないように気をつけなければならない。Indivisibleにとって、政治的な誤った情報をさらに焚きつけることがないようにボランティアを訓練することが、この活動の重要な部分を占めている。

「私たちが知っているのは、実際に偽情報を広め、悪者の仕事を代行している者たちがいるということです」と、グリーンバーグ氏はいう。「私たちはそのような者たちとの戦いに参加せずに、人々が実際に賛同できるように話を進めることで、人々の反応を得ようとしています。言い争いになれば、それは彼らの思う壺ですから」。

真実のサンドイッチ
1. 真実から始める。最初のフレームを取ることが有利になります。
2. 嘘を示す。できれば具体的な言葉の増幅は避ける。
3. 真実に戻る。常に嘘よりも真実を繰り返す。
詳しくはGil Duranと一緒にFrame​Lab(フレームラボ)のエピソード14でお聞きください。

グリーンバーグ氏は、2022年に民主党が再び直面するであろう問題の前兆として、ジョージア州選出の下院議員であるMarjorie Taylor Greene(マージョリー・テイラー・グリーン)氏がソーシャルメディア上で繰り広げた怒りの連鎖を挙げている。テイラー・グリーン氏は、QAnon(キューアノン)を支持したことで知られているが、議会におけるすべての委員会の役割から外され、マスクの必要性をホロコーストになぞらえる発言によって、一部の共和党員からも彼女の除名を求める声が上がった。

グリーン氏のような政治家は、突拍子もない主張や簡単に論破されてしまう陰謀論で、しばしば左派を刺激している。グリーン氏のようにネット上で左派を刺激する政治家は多くのエネルギーを消費しているが、それに対抗するエネルギーは、怒りに任せたリツイートの衝動を抑え、進歩的な政治メッセージを広めることに費やす方が良いと、グリーンバーグ氏は考えている。

「事実を確認するだけでは十分ではありませんし、反応するだけでも十分ではありません。なぜなら、基本的に私たちは、防御的な立場で活動しているからです」と、グリーンバーグ氏は語っている。

「私たちは、人々が本当に信じて受け入れることができるような、偽の情報や陰謀論から人々を守ることができるような、ポジティブなメッセージを積極的に広めていきたいと思っています」。

Indivisibleにとって、このプロジェクトは長期的な実験であり、ターゲット広告を超えた新しいタイプのオンライン草の根政治キャンペーンへの道を開く可能性がある。そしてそれは、ノイズの海の中でシグナルを高めるものになることが期待される。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Indivisibleジョー・バイデンソーシャルメディア民主党ファクトチェックアメリカ

画像クレジット:Stefani Reynolds/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ツイッターがストーリーズ機能「フリート」に縦型全画面広告を試験導入、米国でパイロットテスト開始

ストーリーズ機能のTwitter(ツイッター)版である「Fleets(フリート)」に広告が登場する。同社は米国時間6月1日、米国でFleets広告のパイロットテストを開始することを発表した。これにより、Twitterに初めてフルスクリーンの縦型広告が導入され、Facebook(フェイスブック)、Instagram(インスタグラム)、Snapchat(スナップチャット)、TikTok(ティックトック)などのソーシャルメディアプラットフォームで提供されている縦長の広告に対抗できるようになる。

新しいFleet広告は、ユーザーがフォローしている人々のFleetsの間に表示され、9:16フォーマットの画像と動画の両方に対応している。動画広告は最大30秒のコンテンツをサポートし、ブランドは広告内に「スワイプアップ」するCTA(コールトゥアクション)を入れることもできる。

動画の場合、Instagram(最大120秒)やTikTok(最大60秒)よりも短いが、広告は短い方が良いとするベストプラクティス沿ったものでもある。

TwitterはスワイプしたときにFleet広告が表示される頻度については言及しておらず、ユーザーのエンゲージメントを知るために、この分野で「イノベート、テスト、ニーズへの適応を続けていく」とだけ述べている。

一方、広告主サイドでは、インプレッション数、プロフィールアクセス数、クリック数、ウェブサイトへの訪問数など、Fleet広告に関するTwitterの標準的な広告指標を受け取ることができる。また、動画広告については、動画再生回数、6秒動画再生回数、動画開始回数、完全再生回数、四分位レポートなどの指標が表示される。

画像クレジット:Twitter

このパイロットプログラムは、テック系、リテール系、飲食系、CPG系などを含むわずか10社の広告主を対象に米国で開始される。

Twitterはパイロットプログラムによって、この種の広告のTwitterでのパフォーマンスはどの程度か把握し、今後のFleet広告の最適化方法だけでなく、将来的にフルスクリーン広告を開始する可能性のある他のエリアにも役立てたいとしている。また、テストを続ける中で、フルスクリーン広告に対する人々の印象やエンゲージメントを知りたいと考えているという。

Twitterは2020年春に、ユーザーが一時的なコンテンツを投稿できるストーリーズのような製品体験を提供する方法として、Fleetsの実験を始めた。当時同社は、Fleetsが24時間後に消えることで、直接投稿することにともなうパフォーマンスのプレッシャーを軽減し、躊躇しているユーザーがコンテンツを同プラットフォームにより共有しやすくなることを期待していた。またFleetsはリツイートや引用ツイートのようにTwitter上に広まることもなく、検索やモーメントにも表示されない。

画像クレジット:Twitter

この機能は、2020年11月に全世界のユーザーに展開された。当初Fleetsは、ソーシャルアプリがどれも同じように見えてきたことの一例だと批判された。とはいえ、Fleetsは今やTwitterの中核的存在となっている。

今日では、人々は自分が投稿した他のツイートを紹介したり、個人的な近況や写真、コメントを共有するためにFleetsを利用している。しかし、SnapchatやInstagramのような他のプラットフォームのストーリーズとは異なり、Fleetsはクリエイターのツールという点では、まだかなり簡素で物足りない。背景の色を変えたりステッカーやテキストを追加することはできるが、それだけだ。

Twitterは現在Fleetsを採用しているアクティブユーザーの数や割合については言及を避けたが、Fleetsを投稿しているユーザーの73%が、他のユーザーが共有しているコンテンツも閲覧していると述べている。同社は、Fleetsへの投資を継続しながら、今後も新たなアップデートや機能を展開していく予定だという。

Fleet広告は、米国で本日6月1日よりiOSとAndroidの両方で提供開始される。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Twitter広告アメリカSNS

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)