自転車用GPSロガーであり盗難防止にも役立つConnected Cycleの「スマート・ペダル」

いつもブログにも書いているのだが、自転車に乗るのが大好きだ。もちろん自転車そのものも好きだ。サンフランシスコにある職場にも、たいてい自転車で通っている。ほぼ車を必要としないというライフスタイルが、自分ではとても気に入っているのだ。

但し。いつでも自転車が使えるというわけでもない。乗って行く場所によっては、大いに盗難の危険性にさらされることになってしまうのだ。これを解決しようという新しい試みが、Connected Cycleというフランス企業による「ペダル」だ。盗難防止機能を備える上に、自転車活動の記録を取ることもできるようになっている。

仕組みは(現代社会においては)単純で、このペダルを装着した自転車が移動された場合、モバイルアプリケーション経由でアラートが送られるようになっている。クラウドに接続するGPS機能を備えているわけだ。誰かが想定外に自転車を移動させればすぐに検知することができる。

あるいはそうした盗難防止よりも、モバイルアプリケーションで自転車を使った活動のログが取れることに魅力を感じる人も多いかもしれない。一定の期間内での移動距離や、移動ルートなどを振り返ることができるし、消費カロリーの計算なども行なってくれる。

自転車活動のログはとりたいと考えているものの、しかし活動開始時にアプリケーションを起動してスタートボタンを押すといったことを忘れてしまいがちな人にも便利だろう。あるいは貸自転車サービスを行う際にも便利かもしれない。盗難防止と活動記録の二兎を追った、手軽なソリューションと言えるだろう。

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(翻訳:Maeda, H


見よ、この自作3Dプリント製コーンスターチ火炎放射器を操る男を

日頃Ivan Owenはどちらかといえば平和主義者だ。彼は、子供用人工装具を作っていることでよく知られているが、今回はややクールさに欠けるものの、ずっと面白いものをひっさげて帰ってきた。

この自作3Dプリント製コーンスターチ火炎放射器は、バッテリー駆動のリーフブロワー、粉ふるい、およびプロパンバーナーで作られている。”The Conflagulator” と名付けられたこの装置は、舞い上がるコーンスターチの雲をバーナーで着火して巨大な火のかたまりに変える。決してご家庭ではやらないように。

Owenはデザイナー兼作り手であり、このプロジェクトは(実に危険ではあるが)既製の道具と食材を使ってどれだけ楽しめるかを見せてくれる。彼の他のプロジェクト(この驚異の巨大ロボティックハンドを含む)は、OwenのこのYouTubeページで見ることができる。

via 3Ders

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


Samsung、容量1テラバイトの超小型SSDドライブを発表


今日(米国時間1/5)の午後ラスベガスで、Samsungが新しいストレージ製品を発表した。SSD T1は、名刺サイズ、重さ約25gのデバイスで最大1テラバイトのデータを収納できる。

SSD T1には、256 GBおよび500 GBの機種もある。価格は容量に応じて179ドルから599ドルまで。今月中に出荷される。

クラウドストレージが遍在しかつ無料の時代に、Samsungが強化版USBメモリーとも言える製品を作ることに違和感を覚える人もいるだろう。しかし、コンテンツをWiFiネットワーク経由でアップロードするのが苦痛に感じることもあり、LTEネットワークではなおさらだ。つまり、こと大量データに関しては、旧式メディアがよりよい選択肢になることもある。

(ハードディスクを満載して高速道路を走る車の転送速度を過小評価する古いジョークがここではぴったり来る)

果たして、巨大ファイルを持ち歩いたりシェアしたりする必要のあるクリエィティブ専門家たち以外で、T1に魅力を感じる市場が存在するのか、興味深い。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


CES:Nvidia、モバイル・グラフィックス・カード、Tegra X1を発表―パワーはA8Xの2倍のモンスター

ラスベガスで開催中のCESで今日(米国時間1/5)、Nvidiaが発表したTegra X1モバイル・チップセットはモンスター級のパワーだ。消費電力は同程度のままでiPad Air 2に採用されているA8Xチップセットの約2倍のグラフィックス能力を発揮する。Tegra X1はすでに量産に入っており、このチップセットを搭載したタブレットが市場に登場する日は近い。

ベンチマークによればTegra X1は、タブレットをデスクトップ・コンピューターなみのゲームマシンにできそうだ。X1は最新のGeForce GTXデスクトップ・グラフィックスカードにも採用されているMaxwell GPUマイクロアーキテクチャーを採用しているのだから不思議ではない。またX1はデスクトップ版のゲームAPIを利用できるのでデベロッパーはゲームのモバイル化が容易になる。

X1は256コアのMaxwell GPUと8コアの64bit ARM CPUを搭載し、Nvidiaによれば「史上初のテラフロップスモバイル・グラフィックス・プロセッサー」だという。 X1はH.265またはVP9コーデックを利用して60fps 4KウルトラHD動画を再生できる。AppleのA8Xと同じ20nmプロセスのチップなのでAppleのタブレットとグラフィック・ベンチマークを比較しやすい。NvidiaはX1とiPadおよびNvidia自身のTegra K1チップセットを搭載したNvidia Shieldタブレットを比較する各種のベンチマークテストをデモした。

それによると、X1のパフォーマンスはTegra K1、iPad Air 2のほぼ2倍、3Dmark 1.3 Icestorm UnlimitedとBasemarkX 1.1の1.5倍だった。またX1はエネルギー効率もすばらしい成績で、K1の2倍のパフォーマンスで消費電力はほぼ同等、A8Xと同等の電力消費の場合1.7倍のパフォーマンスを示した。

Nvidiaの新グラフィック・チップセットの驚異的な能力はNetflixを始め、多くのコンテンツ・プロバイダーに大きな影響を与えるだろう。これで60fps、4Kビデオのストリーミングが急速に現実化する。60fps能力はゲームやスポーツの中継に重要だ。またバーチャル・リアリティーの進歩にも大きく寄与する。

Tegra X1と在来モデルを並べて4Kビデオを再生するとその違いは大きい。60fpsの4Kがバターのように滑らかな動きなのに対して、30fpsは明らかにガクガクとして見える。もっとも現状では60fps、4Kのソースを見つけるのは難しい。しかし最近発表されたGoPro Hero 4 Blackは60fps、4Kの動画撮影能力がある。またX1の登場によってこのクラスのコンテンツ供給は急速に拡大するはずだ。

もちろんNvidiaはこのパワーを活かせるソフトウェアの確保に努める必要がある。そしてこれはフラグメント化に悩むAndroidプラットフォームの場合は難事業だ。このことがNvidiaが独自のShieldシリーズを始めとする独自のタブレット製品を開発している理由でもある。

いずれにせよX1が量産体制に入っている以上、近々X1に最適化されたハードウェアが登場するだろう。消費者がX1のパフォーマンスを体験する日は近そうだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


CES:Gogoroはバッテリーレンタルの電気スクーター・システム―調達資金は1億5000万ドル

2011年にGogoroは5000万ドルを調達した。3年後にさらに1億ドルを調達。しかし誰もGogoroが何をしている会社か分からなかった。

今日までは。

これほど長い間秘密をほぼ完全に守り通すことができたとは驚くべきことだ。そして今朝、CESで正式発表があった。実はわれわれは数週間前に取材を許されていた。

昨日までGogogroについて知られていたのは次のような点だけだった。

  • なにかエネルギー関連の事業である
  • HTCに関連が深い。エンジニアの多くはHTCから来ている。共同ファウンダーの1人、Horace LukeはHTCの最高イノベーション責任者を2007年から2011年まで務めた。1億5000万ドルの資金の相当部分はHTCの女性会長、Cher Wangの出資。

一言で要約すれば、GogoroはSmartscooterと呼ばれる電動スクーターとユニークなバッテリーレンタル・インフラを開発していた。

スクーターとバッテリー・ネットワークは一枚のコインの裏表だ。ただしスクーターはバッテリー・レンタル・ネットワークを利用する最初のデバイスなのだろう。このネットワークを利用するさらに多様なデバイスが計画されてるに違いない。

バッテリーとGoStation充電ハブ

Battery Closeup

まずバッテリーから説明しよう。これがGogoroのコアとなる部分だ。

バッテリー自体はパナソニックの18650リチウム・イオン・セル(Tesla Model Sにも採用されている)を利用し、いくつかのセンサーが付加されている。バッテリー・ユニットのサイズは靴箱よりやや大きい程度で重量は9kg前後だ。

充電する際には専用アプリが最寄りのGoStation充電ハブの位置を示してくれる。GoStationのユニットは1.8mほどで、屋外に設置できる。 ユニットは写真のように横にいくつでも連結できる。

ユーザーは空いているスロットに空のバッテリーを挿入する。6秒すると、他のスロットから満充電されたバッテリーがポップアップする。ユーザーは専用アプリから事前にバッテリーを予約しておくことができる。

重要なのは、Gogoroのユーザーはバッテリーを所有するのではなく、あくまでレンタルするシステムだという点だ(家庭で充電することはできない)。

ただし、われわれが取材した時点ではバッテリー・レンタルの料金については未定ということだった。

当然ながらこのGoStationハブの設置数、設置位置がGogoroシステムが成功するか否かの鍵となる。当然ながらユーザーは充電のためにわざわざ遠くまで行きたがらない。カバーする都市圏のサイズに応じて十分な数のハブを設置する必要がある。Gogoroでは当初の設置場所としてガソリンスタンドを考えているようだ。しかし220Vの電力が得られる場所ならどこにでも設置は可能だ。

私の取材に対して共同ファウンダーのHorace Lukeは、「トラック1台分のハブで大学のキャンパスや小都市をカバーできる」と語った。

Smartscooter

GogoroのSmartscooterは、フレームから電気モーターまで完全にオリジナルだ。

時速30マイル〔48.2kmh〕までの加速が4.2秒、最高速度は時速60マイル〔96.5kmh〕だという。バッテリー2個を搭載し、満充電で100マイル〔161km〕走れる。スマートフォン・メーカーに関連が深いスタートアップの製品として予想されるとおり、このスクーターは名前のとおり非常にスマートだ。

このスクーターは30個もの自己診断センサーを備えており、スマートフォンを通じてクラウドに接続している。考えつくかぎりほとんどの故障は即座に探知、分析される。修理やメンテナンスが必要になれば、アプリにその内容が表示される。またバッテリーを交換するとスクーターのディスプレイにも情報が表示される。

一方でセンサーは最大の航続距離を得られるようユーザーにアドバイスする。たとえば坂道で無駄にスロットルを開けていると、そのことを指摘する。.

ロック、アンロック、バッテリー交換の認証はBluetoothLEを利用したリモートキーで行う。

さて、肝心の価格は? それはまだ検討中ということだ。

バッテリー充電ハブ・インフラの構築という大きなハードルを抱えているGogoroのような会社を現時点で評価するのは非常に難しい。しかし、 現在私の目に映った限りでいえば、このスクーターはすばらしい。今まで見た中で最高に美しいスクーターだ。専用アプリもよく出来ている。このスクーターの美しさには本当に感心した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


Garmin、250ドルのVivoactiveでスマートウォッチ市場に本格参入

Garminが、ついにApple WatchやFitbit Surgeなどのスマートウォッチに対抗するプロダクトを投入してきた。名前をVivoactiveという。後発であることをメリットに、確かになかなかの魅力を備えたデバイスだと言えそうだ。

歩数計としての機能などをもっていて心拍計デバイスとも連携でき、GPSおよびタッチスクリーンを備えたデバイスとなっている。Garmin曰く、スクリーンは太陽光のもとでも可読性を備えたものとなっているのだとのこと。バンドは交換可能で、また用途に応じたバンドを用意しているとGarminはアピールしている。デザインおよび機能面ではモトローラーのMotoActive風でもある。実際、今はなきMotoActiveがもっていたゴルファー用機能も備えている。

Garminはこれまでにも安価なVivofitやスマートウォッチ風のVivosmartというプロダクトを投入してきた。今回のVivoactiveは、こうしたラインアップの中における最新機種として位置づけることも可能だろう。

直接的にはFitbit Surgeと競合するプロダクトとなる。価格は同程度ながら、それぞれに特徴的な面ももっている。たとえばFitbitは心拍計機能を内蔵している。Garminの方は50ドルほどのチェストストラップを別に購入する必要がある(正確性ではGarminに軍配が上がる)。またGarminはゴルフモードなども用意していて、より広い利用者層を想定しているようでもある。さらにGarminはConnect IQという開発者向けプラットフォームも用意していて、ウェアラブルデバイスの外観を変更したり、あるいはアプリケーションを開発できるようにもしている。

このジャンルについては、2015年にさまざまなメーカーからのプロダクト投入が予定されている。しかし搭載する機能によってはいろいろなプロダクトが出てくる余地はあるものと思われる。

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(翻訳:Maeda, H


Cerevoがスノボ用バインディング「SNOW-1」を発表、荷重を可視化

ネット家電スタートアップのCerevoが、スポーツ用品分野でちょっと楽しげな新製品を発表した。

スマート・スポーツ用品のブランド「XON」(エクスオン)を立ち上げ、第1弾としてスノーボードのバインディング「SNOW-1」を発表した。左右それぞれの足元に4カ所、合計8カ所に荷重センサーを搭載していて、スノーボーダーの荷重のかけ具合や重心位置を計測して、リアルタイムでスマホで確認できる。ボードの前後2カ所にしなり検知用の曲げセンサーも搭載している。

計測データのスマホへの転送はBluetoothで行う。これまで主観的な言葉による説明や、動画撮影による姿勢の確認程度しかできなかったものが、より詳細なデータとともに滑りの分析ができるようになる。面白いのは、GPSで測位した滑走軌跡や、以下のように撮影した動画と合わせて見ることもできること。

つま先には高輝度なLEDが搭載されていて、スノーボーダーの動きに合わせてLEDが光るという。電飾に凝るクルマ・バイク野郎を想像してしまって、個人的にはイケてないなと思ってしまったけど、これは、設定値の荷重を超えた時に光らせるフィードバック用のデバイスとしても機能するんだとか。

発売は2015年内というから来シーズンには間に合いそう。海外での販売想定価格は400〜600ドルの予定というから、国内でもそのくらいの値段になりそう。一般的なスノボのバインディングより2〜3倍のお値段だけど、ガジェットとしてみれば高くはない。

リリース時のメッセージでは、Cerevoは「上達に役立つ」というところに力点をおいているようだけど、数値化してみることが楽しいという層にもアピールしそう。上達に血道を上げる人たちといえば、ゴルフやテニスも思い浮かぶけど、このぐらいメジャーなスポーツジャンルだと、すでに色々な商品が市場に出ているそう。だから、「グローバルニッチ」(ニッチ市場だけど、グローバルに見ればそこそこの規模)を標榜するCerevoとしては、スノーボードに照準を合わせたんだとか。確かにスノーボーダーなら平均年齢もスマホ世代に合いそうだし、いいかも。XONシリーズの第2弾も楽しみだね。

ちなみに、荷重を見て実際に上達に役立つのか? という疑問もありそうなので、個人的な感想を書いておこう。

ぼくはかなりヘビーなスキーヤーで、腰まで埋まるような新雪が好きだったりする。先日行った新潟では積雪が205cmと激しかったのだけど、このとき友人の1人が雪に埋もれてしまって身動きが取れなくなる事態が発生した。スキー板を外すと1メートルも動けないし、スキーをはくとあっという間にバランスを崩して雪に溺れてしまう。新雪も深すぎると沼のような感じになるのだ。特に新潟のように湿った雪だと。ということで、「雪の浮力」とか「板の上にちゃんと乗らないと板先が雪に飲まれる」ということを言葉として説明するわけだけど、これも実際のところ本人には乗れてるかどうか分からないもの。難しい条件、とくに深い新雪に出たときに初めて分かるようなところがある。ちゃんと荷重のバランスが分かっている人は深い雪でも水上スキーのように滑っていけるけど、前後の荷重バランスが崩れた人には新雪は滑れない。というように、荷重の具合というのは本人の主観だけでは分からないことがあるので、数値化して可視化できれば上達に寄与することもあるのじゃないかと思う。


iPadをセカンドディスプレイ化したい人にはOne Designの「Mountie」がおすすめ

MacBookやiMacをモバイル環境で利用する際、一層効果的に2画面化を実現することができるようになりそうだ。One Designの産みだしたMountieを使えば、MacBookないしiMacのベゼル部分を利用して、iPadやiPhoneをセカンドディスプレイとして装着することができるのだ。しかもMountie本体は上着のポケットや、ノートPCケースのアクセサリ収納用ポケットに入れておくこともできる。

もちろんこうした機能を持つガジェットは他にもある。ただ、Mountieこそデザイン的に最も優れたものだと言って良いのではないかと思う。ラバー状の内張りにより、取り付けるモバイルデバイスを傷つけてしまうこともない。それでいて、どのような組み合わせであっても、デバイス同士をしっかりとクリップしてくれる。作業中に緩んで落ちてしまうようなこともなさそうだ。また、縦長の接続部設計で、繋いだデバイスがぐらぐらと揺れて不愉快に感じてしまうこともなさそうだ。

Mountieというのはカナダの騎馬警察の名前と同じなので親しみはある(筆者はカナダ出身だ)。しかし2週間前なら、Mountieの情報を得ても見過ごしていたかもしれない。だが、iPadやiPhoneを「実用レベル」のセカンドディスプレイとして活用するDuetなどの登場もあり、改めて注目すべきデバイスジャンルになっているように思う。ぜひとも(広告のようになってしまっていることはお詫びしよう。ただ、性能的に本心からお勧めできるガジェットなのだ)Mac系モバイル利用者の方々におすすめしたいと思う。

個人的には、移動先でマルチディスプレイを使えないというのが、大いに生産性を下げる原因となっていた。しかしこのストレスはMountie + Duetでずいぶん軽減されるだろうと思う。USBで接続するMimoモニターのようなものが出始めた頃からパフォーマンス面やポータビリティの面で不満を感じてきた。本記事で取り上げているMountieのようなガジェットでマルチスクリーンを実現できる時代を夢見ていたわけだ。15インチのレティナMacBookに9.7インチのiPad Airを組み合わせるのは、ひとつの「最適解」であるように思うのだがどうだろうか。

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(翻訳:Maeda, H


Apple、様々な表面への手書きを読み取るスタイラスの特許を取得


今日(米国時間12/30)、USPTO(米国特許標局)に登録されたAppleの特許には(via AppleInsider)、新しいタイプのスタイラスに関する詳細が記載されている。このスタイラスはユーザーが様々な表面に書く手書き入力をキャプチャーすることが可能で、ペン先を交換することによって紙やホワイトボードに加えiPadのタッチスクリーン上に書くこともできる。

このスタイラスは加速度計等のモーションセンサーを利用して移動を追跡し、紙に押しつけられたり、ケースから取り出されたことを検出して起動するため、電力消費を抑えられる。データ送信はリアルタイム、あるいはバッテリーを温存するために一定期間ごとに行うこともでき(一部のフィットネストラッカーと同様の方式)。

特許資料によると、このスタイラスはペンがテーブル、壁あるいは何もない空中に対して使用された時にも、内蔵3Dモーションセンサーのおかげで手書き入力を正確に記録することが可能だ。入力結果をリアルタイムに複数の画面へ反映されることができるため、教室や、少人数のリアルタイム会議のメモなどへの応用が考えられる。

資料には、ペン先を変えて様々な材質の表面に書くために方法が詳しく書かれており、ノートにインクで書いたり、鉛筆書きをしたり、ホワイトボードにマーカーで書いたりできる。静電容量チップを使えば従来のスタイラス同様、iPadやiPhone等の端末でも使用できる。

Appleのスタイルス特許はこれが初めてではない ― 最初の特許は2010年1月に出願されている。本特許に含まれるテクノロジーの中には、実現がやや難しいものもあり、まさにこのタイプの製品を作っているLivescribeという会社でさえ、効果的な利用のために専用メモ帳を必要としている。しかしAppleがこの分野に資源を投入することの意義は大きく、特に噂される12インチiPadにはスタイラス似合いそうだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


Livemapのバイク用カーナビは世界初のヘルメット内蔵ヘッドアップ・ディスプレイ―来夏発売へ

CES(コンシューマー・エレクロニクス・ショー)が近づく中、去年のCESで開催されたTechCrunchのハードウェア・バトルフィールドの参加スタートアップからアップデートを受け取った。

ロシアのスタートアップ、Livemapは、オートバイ用の音声制御のカーナビ内蔵ヘルメットを開発している。画像はヘルメットのフェイスシールドに透過的投影されるため、ユーザーの視野を妨げず、情報を読取るために視線を動かす必要もない。

こちらは2014年1月のハードウェア・バトルフィールドでのLivemapのプレゼンの記事

私の取材に対してCEOのAndrew Artishchevはメールで「この1年、われわれは量産のためのプロトタイプを開発してきた。われわれの光学系は単一の非球面レンズを利用しており、これは明るく、高度な焦点距離制御がでできるだけでなく、マルチレンズ・デザインより製造コストがはるかに安くなる」と説明する。

Livemapは2015年の春にプロトタイプを公開し、夏にはアメリカで市販を開始する計画だ。

プロトタイプ開発の資金としてLivemapはロシア科学省から1470万ルーブル(30万ドル弱)の助成金を受けた。ロシア語に堪能なら(それともGoogle翻訳を解読する根気があれば)、ここにその詳細がある。

ArtishchevはまたSkullyというヘルメット内蔵カーナビのライバルについて、「Skully P1は簡単にいえばヘルメットにGoogle Glassを取り付けただけの製品で、視野は狭小、輝度とコントラストも低く、情報を読取るのにいちいち視線を動かさねならない。また衝突の際にも危険だ」と批判した。

Update: こちらでArtishchevがLivemapとSkully、さらに別のライバルNuvzを比較している

〔日本版〕Livemapのヘッドアップ・ディスプレイ視野画像とTechCrunchハードウェア・バトルフィールドのデモビデオ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


溺れる人を救うためのドローンプロジェクトが始動へ

ドローンという言葉も市民権を得たようだ。

ただ、身近な存在としてはうるさく飛び回り、プライバシー問題を感じさせるようなガジェットだ。今年のクリスマスにはプレゼントにドローンをもらい、そして木や電線、取りに入らせてもらえないような場所に突っ込ませて壊してしまうことになった人も多いことだろう(飛ばす前にはぜひ「初めてドローンを飛ばす人へ」を見ておきたい)。

しかしゆっくりとではあるものの、ドローンの新しい、そして実際に役に立つ使い方も生まれてきつつあるようだ。サイの密猟を防ぐのに利用されたり、雪山で遭難した人の捜査に役立てようとする動きもある。そして、さらに、溺れる人を救うために使おうというアイデアも出てきた。

実現に向けて動き出したのはProject Ryptideだ。自動で膨らむ浮き輪をコンパクトにたたんでドローンに取り付け(GoPro搭載可能なドローンならどれにでも付けられる)、そして溺れている人の上に誘導するのだ。そして操縦者がボタンを押せば救助作戦完了だ。浮き輪は水に触れるやいなやカートリッジにおさめられたCO2が放出され、浮き輪を膨らませてくれる。

キットを製作したのはBill Piedraで、コネチカット州の私立学校であるKing Low Heywood Thomasの子供たちと企画したものだ。来年にはKickstarterでのプロジェクトを組み、DJI Phantom用を99ドルで世に出したいと考えているそうだ。

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(翻訳:Maeda, H


Vizioの4Kテレビの新CMは偽インフォマーシャル―曲面テレビを思い切りおちょくる

曲面ディスプレイのテレビはバカバカしい代物だ。1080pのHD画質が当たり前になり、3Dテレビには誰も見向きもしない。頭打ちに悩む業界が苦心してひねり出した曲面ディスプレイだが、Visioは容赦なくおちょくるCMを制作した。上のスクリーンショットは真正面以外からは曲面テレビは大きく歪んで見にくいいことを茶化した「曲面テレビ鑑賞着座ガイド」だ。

Visioはインフォマーシャルのパロディースタイルの笑えるCMで、Samsung,、Sony、LGその他のメーカーが説く曲面テレビの怪しげなメリットをまっこうから否定している。

このCMは「アンチ曲面スクリーン」と称するヘッドセットデバイス(もちろん架空の製品)のインフォマーシャルの形式を取っている。CM中で表示される電話番号は実在するのだろうか?と気になるところだが、この番号にかけるとこちらのページを案内される。そしてなんとこのページに表示されるクーポン・コードを入力するとVizioの4K Pシリーズの製品が100ドル割引きになる。なかなか凝った仕掛けだ。

もちろん4Kテレビというのも現時点では多少ばからしい―ネーティブの4Kコンテンツがほとんど存在しないからだ。しかし曲面テレビに比べれば、4Kテレビは次第に意味のあるものになっていくだけマシだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


AppleがApple TVからiOSデバイスへの逆AirPlayストリーミングの特許を取得

今日(米国時間12/23)、Appleは米国特許商標局から新しい特許を承認された(AppleInsider)。これは一種の逆AirPlayで、コンテンツをApple TVから各種のiOSデバイスにストリーミングするものだ。

特許概要によれば、「コンテンツを固定デバイスとポータブル・デバイスの双方に同期してストリーミングするシステム」で、これにより、Apple TVが受け取ったインターネット上のコンテンツを、iOSデバイスで同時に表示することが可能となる。またApple TVのユーザー・インタフェースをiOSデバイスに表示することもできる。最近Apple TVのインタフェースが大幅にアップデートされたのはiPhoneなどのiOSデバイスで表示されることを考えた対策だったようだ。

Appleの特許は、パーティーなどでApple TVまたはそれに類する据置型のメイン・デバイスを中心にして多人数が同一のコンテンツを視聴する場合を例にこのシステムのユースケースを説明している。ここで一人のユーザーがその場を離れた場合、メインのストリーミングを停止してそのユーザーが帰ってくるのを待つのではなく、そのユーザーのモバイル・デバイスに同期ストリーミングして、他の場所で続きが見られるようにできるという。

Apple TVがストリーミングするコンテンツをiOSデバイスで表示する場合、パスワードの入力などは特に必要なく、ゲストとして参加できる。

この特許はApple TVに便利な機能を追加するものであることは間違いないが、実装に当たってはコンテンツ所有者から承認を得る必要があるだろう。単一のユーザーによる視聴を前提としているのに、限定的とはいえ、他のユーザーのデバイスでも視聴できるというのは著作権や広告の面で問題が生じる。

Appleはもちろん知財上の問題は認識しているだろう。Apple TVからiOSデバイスの逆ストリーミングはあるいはより広範囲に影響を及ぼす次世代ストリーミング・システムへの準備の一環なのかもしれない。

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スタートアップ御用達のコーヒーメーカー、キューリグが700万台リコール―火傷のおそれあり

Keurigは大量のプラスティック廃棄物と少量のコーヒーを産み出す器具のメーカーだ。さらに自社が販売する専用フィルターを使わせようと一種のDRMを考案したが、即座にハックされてしまったことでも知られる。

さてそのKeurigが700万台にも上るコーヒーメーカーをリコールしている。一部のマシンが消費者を火傷させているからだという。このコーヒーマシンはほとんどすべてのスタートアップ・オフィスの標準備品だ。実はTechCrunchにも1台ある。

米国消費者製品安全委員会によれば、 欠陥マシンの場合、「過熱して熱湯が噴出し、消費者を火傷させるおそれがある」ということだ。

Keurigにはこれまでに約200件の「熱湯が噴出した」という報告が寄せられており、そのうちの半数が火傷に結びついたという。

問題のマシンはKeurig MINI Plusコーヒーマシンで、2009年以来製造販売されている。外観は下の写真のとおり。

Keurigのコーヒーマシンが身近にある読者はこちらでリコール対象製品かどうかチェックできる

画像:m01229/Flickr UNDER A CC BY 2.0 LICENSE

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


直径1フィートの球体から信じれない超低音を出すフランスDevialetのThe Phantomスピーカー

でっかい低音を鳴らしたければでっかいサブウーファーが要る。この説は正しいか? 正しくない。フランスのオーディオメーカーDevialet(デヴィアレ)が発明した画期的なフルレンジスピーカーThe Phantomは、長さ1フィートぐらいの球形で、アンプ内蔵、オーディオファンなら、 2000ドルぐらいで買えるスピーカーの中では最高の音、と思うだろう。

2000ドルは高いし、しかも1基のお値段だ。でも、Sonosの5.1システムも、スピーカーセットとアンプでこれぐらいだ。

The PoliceのStingがこれを聴いたとき、こう言ったそうだ: “みんな、ぼくの音楽はこれで聴いてほしい”。ヒップホップのプロデューサーRick Rubinは、その深い低音がすごい、と言っている。Appleが買収したBeats Musicの元CEO David Hymanは、“小さくてきれいなデザインだが、音は驚異的だ。私が知ってるかぎりでは、これと肩を並べられる製品はほかにない。ありえないことが実際に起きた、という感じだ”、と言っている。

 

Devialetは総合オーディオメーカーとして77の特許を持ち、2010年に発売したアンプはその音とデザインで37の賞を受賞した。2014年には3500台を売り、1500万ドルを稼いだそうだ。フルレンジパワドースピーカーは今回が初めてだが、そこには美と科学と感動が濃密に入り交じっている。

The Phantomの音が美しいのは、ADH(Analog-Degital Hybrid)と呼ばれる技術のおかげだ。それはリッチで自然な原音に近いアナログの音と、デジタルのパワーおよびコンパクトさを結びつけている。アナログアンプのバカでかさを避けると同時に、小さな体から透明でクリアな音を響かせる。ボリュームを最大まで上げても、クリアな音は変わらない。

また、もうひとつの、”Heart Bass Implosion”と呼ばれる技術により、大きなサブウーファーに負けない低音を出す。スピーカーのドームのドライバが横方向についていて、密閉筐体の中は真空、それにより大音量の音を出すことができる。

 

Devialetによると、そのためThe Phantomは“市場に出回っている同口径のウーファーの中ではもっとも強力で、かつ筐体のサイズはそれらの1/6、重量も1/6だ”、という。ドライバが左右対称に置かれているので振動を相殺し、がたつきはない。

下のビデオで、The Phantomの内部の動きがよく分かる。一般市販品は、このような分解はできない。

ぼく自身はThe Phantomをまだ実際に聴いていないが、同社の過去の製品に対するTelegraphや複数のオーディオ雑誌の高い評価と、うるさいオーディオファンである知人のお墨付きから、このスピーカーの威力が感じられてくる。

合衆国には扱い店が約50あり〔日本〕、その一部で1月から発売される。予約は明日(米国時間12/23)からここで受け付けている。スタンダードバージョンが1999ドル、より強力なSilver Phantomは2390ドルだ。

Devialetの技術者たちは、いかにもフランスのオーディオ技術者/科学者らしい自信に満ちた口調で、“物理学の法則を変えることはできないが、それらを極限まで追い詰めると、とても大きなものが得られる”、と言っている。

〔日本代理店: ステラ 東京都板橋区中丸町51-10〕
〔翻訳協力: オーディオスクエアトレッサ横浜店、黒澤さん。〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Blackberry Classicを使ってみた(ビデオ)


それは長い道のりだった:Blackberryが根源に立ち返った。群れを追うのではなく、Blackberryはユーザーが待ち望んでいたものを正確に再現した。使いやすく、楽しく、そして堅牢。しかし、果たしてこれで会社は救われるのだろうか?

私は450ドルのClassicのファンなので、後日本格的レビューを掲載するつもりだが、とりあえず私が少しばかりいじっているところをご覧いただきたい。週末にはもっともっと使う機会があるので、どんなことができるか大いに楽しみだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook


ArduinoやRaspberry Piのプロジェクトで感熱像を使いたい人に朗報…超小型感熱カメラボードが350ドル

数年前までは、映画「プレデター」などでおなじみの感熱カメラといえば、軍用またはお金持ちのホビーに限られていた。

その後FLiRが、センサの小型化と低価格化に成功し、誰もが使える技術になってきた。今やiPhone用のケースでも、感熱像を見られる。

そして今度は、この小さなボードを使って、ArduinoやRaspberry PiのどんなDIYプロジェクトでも感熱像を利用できる。

350ドルは、Arduinoのアクセサリとしては高い方だが、10年前に比べればこのお値段はただ同然だ。昔は、ちゃんとライセンス契約を結んで、ひとつ数千ドルもするでっかい製品をロット単位で買わなければならなかった。

このお値段を見て、買わない決意をした人はあまりいない。SparkFunでローンチしてから数時間後には、現物在庫はすべて売り切れた(今は予約のみ)。

ただし、解像度は80×60と低い(800×600ではない)。得られる画像はそんなに美しくない。上述のiPhoneケースの場合と同じく、ふつうのカメラで撮った高解像度のグレースケールの上に感熱像をオーバレイして、画像のクォリティをやや補っている。

感熱カメラを拡張ボードに取り付けるのは、あなたの手作業だから、細かいハンダ付けがヘタな人は、事前に練習した方がよい。

今から買うと二度目のロットへの予約になるが、開発キットはここで買える

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


1000円ですごいVRを体験できるハコスコ――ANRIが出資、博報堂と提携

 

FacebookのOculus VR買収以降、VR(仮想現実)を取り扱うプロダクトに今まで以上の注目が集まるようになった。同社のOculus Riftもそうだし、Oculusと同じく南カリフォルニア大学の混成現実研究所から生まれたSurviosもそう。サムスンはGalaxy Note 4をセットして使う「Samsung Gear VR」を発表しているし、日本でもFOVEのような製品が登場している。Kickstarterなんかを見るとまだまだ新しいプロダクトは登場しそうだ。

これらの製品の幾つかは僕も体験したことがあって、そのリアルさには驚かされた。Oculusをセットし、イヤフォンをつけてジェットコースターの映像を流すと、急降下のタイミングで思わず叫び声が出そうになってしまった。

ただこれらの製品、まだまだ日本では買えなかったり、買えてもそれなりのお値段だったりと、普及という点では難しい。VRをマーケティングに使いたいなんて声は聞くが、実際に端末を配るわけにも行かず、展示会などでは複数の端末を並べるも、「30分待ちのアトラクション」のようにみんなが順番を待って利用しなければならない。

そんな経験をスマートフォンとたった1000円のキットで実現してくれるのがハコスコの手掛ける「ハコスコ」だ。

プロダクトの素材はダンボール

ハコスコの素材はなんとダンボール。それにレンズが1枚付いているだけというシンプルなもの。折りたたまれた状態で販売されているので、利用するにはダンボールを組み立て、レンズをはめればOK。5分とかからずに完成する。完成したハコスコのスリットに対応アプリ(パノラマ写真、動画、CGなど)を立ち上げたスマートフォンを挿入すれば、VRコンテンツを体験できる。

単眼と二眼(視差を利用した立体視に対応)、スマートフォンのサイズに合わせて複数のバージョンが用意されている。それに加えてダンボール製ということで、ユーザーがいろいろとカスタマイズして使っているそうだ。なお、現在はより簡単なしくみで、かつ視野角の確保できる単眼モデルに注力している。

ほかのVR関連プロダクトを幾つか体験してきた僕なので、正直「ダンボールとスマホだけではたしてどんな体験ができるのか?」と思っていたのだけれど、いざ使ってみるとこれが驚くほどのクオリティだった。視野が覆われ、頭の動きとほぼリアルタイムに画像が追随する。もちろん単眼なので立体映像ではないし、音声まで連動するわけではない。そのあたりの是非はあるかも知れないが、そもそもOculusなんかと比較する意味のあるプロダクトではないと思う。単眼ならスマホで広い角度の画像を見れるし、あまり「VR酔い」をしにくそうなので僕としてはこれで十分だと思う。

ハコスコ代表取締役の藤井直敬氏は、MITの研究員を経て独立行政法人理化学研究所(理研)に務める人物。脳科学総合研究センター適応知性研究チームPIとして、SR(Substitutional Reality:代替現実技術)システムの開発に携わってきた。そんな藤井氏は「工学の人はスペックに向かってしまう。だがSRの研究で分かったのは、スペックではなくて、(脳科学的な観点で)利用者が『本物だ』と信じれるかどうか。Oculusと同じ文脈で考えても仕方ない」と語る。ダンボールというとGoogleも同様のプロダクトを作っていたが、こちらは藤井氏曰く、Oculusをどれだけ安価に再現するかという方向性を持っており「我々とはまた違う」とのことだった。

理研発のベンチャー

藤井氏がもともと手がけていたSRシステムも、これはこれですごい体験ができるそうだが、実際に体験するには最低でも数十万円の機材が必要になる。部屋ごとシステムに対応しようものなら数百万円と普及するような価格ではない。この研究の成果を最大限に簡素化して作ったのが、ハコスコなのだという。

実は理研には「理研ベンチャー認定・支援制度」と呼ぶ制度がある。研究の中で生み出した技術のライセンスを使って起業することを許可しているそうで、藤井氏もこの制度を使ってハコスコを創業した(余談だが、わかめスープで有名な理研ビタミンやコピー機、光学機器メーカーのリコーなど、僕らに身近な製品を出しているメーカーも理研にルーツがあったりする)。

同社の創業は2014年7月。メンバーは藤井氏とその妻でCOOを務める太田良恵子氏の2人で、外部に複数の協力者がいる。ビジネスモデルは(1)ハコスコの販売、(2)配信チャンネルの販売、(3)コンテンツ製作――の3点。すでに企業やブランドとのタイアップが進んでおり、「2人でやっているとは言え、初月から黒字の状況」なのだそう。出荷数もすでに4万台(個?)を超えた。今後は専用アプリの配信チャンネルを拡大するほか、コンテンツの拡大を進める。

ANRIが出資。博報堂との提携も

同社は11月にANRIから3000万円の資金を調達しており、今後はエンジニアをはじめとした人員拡大を進める。「今までも外部に協力者がいたが、一緒に考えてくれる、一緒に作れるという人が欲しい」(藤井氏)。

また12月19日には、博報堂および博報堂プロダクツとマーケティング向けソリューションの共同開発についても発表した。すでに企業のマーケティングなどでマネタイズしているハコスコだが、今回の提携によってその動きを強化する。スマホと1000円のキットでVRを体験できるのだ。前述のとおり展示会で「30分待ちのアトラクション」になっていた体験を、ハコスコを配布して一斉に体験するなんてことができたりするというわけだ。


元AppleのエンジニアがiPadをMacのサブモニターに変えるすぐれものアプリ、Duetをリリース

iPadをMacのサブモニターに使おうという試みはiPadの登場とほとんど同時に始まった。しかしそうしたアプリのほとんどは一度使ったら二度とは使われないようなものだった。Wi-Fi接続を利用しているのでビデオのパフォーマンスは耐えがたいほど悪く、アニメーションはガクガクし、長いタイムラグがあった。新しいiPadアプリ、Duetは元Appleのディスプレイ担当エンジニアが開発したもので、これまでとはまったく別物だ。iPadをMacのサブモニタとすることに初めて成功している。

「リフレッシュ・レートは毎秒60フレーム、ゲームでさえタイムラグを感じさせないパフォーマンス」だというDuetのファウンダー、Rahul Dewanの主張に当初私は懐疑的だった。「おいおい、酔っ払ってるんじゃないのか?」と思ったものだ。しかしDuetのパフォーマンスはまさに主張のとおりだった。またインストールも簡単だ。

ブレークスルーのカギはLightning 30ピン・ドックコネクターによる接続と、iPadをディスプレイとして認識させるMac用ドライバーの開発だ。 このDuet専用ドライバーのインストール後、1回だけMacの再起動が必要になるので、その点だけはやや煩わしく感じられるかもしれない。しかし再起動後はDuetはメニューバーのアプリケーションとして登録される。また最初の起動時には詳しいツールチップが表示されるので使い方で迷うことはないだろう。

iPad側についていえば、App Storeでアプリを購入してインストールするだけだ。LightningケーブルでMacと接続し、アプリをスタートさせればMacの専用ドライバーがiPadを見つけ出し、サブモニタとして認識する。これは他のMac互換モニタをThunderbolt、DisplayPort、HDMIで接続した場合と同様だ。ユーザーはMacのCPUの能力、バッテリーの状態に合せてフレーム・レートと解像度を調整できる。

ただし、現在のバージョンにはDuetを接続すると他の外部ディスプレイにはある種のノイズが出るなど若干のバグが残っている。またMacのCPUの利用率はかなり高い。しかしFinal CutをiMacで使った程度では、Macのパフォーマンスに目立った悪影響は出なかった。ただしノートタイプのMacの場合、バッテリーの消費は激しい。どちらの問題も毎日使うのを妨げるほどの障害ではない。

Dewanは「iPadをMacのモニタに使いたい」という彼の父親の希望でこのアプリを作った。Dewanは集中的な努力でDuetをわずか30日で完成させた。これはAppleでのMacとiPadのディスプレイ・エンジニアとしての経験が大いに役立ったという。

DuetはiPhoneでも利用できる。ただしMacに一度に接続できるデバイスはひとつだけだ。将来は複数デバイスの接続、CPU利用率の低減、Windowsコンピュータとの接続などがサポートされる計画だ。このアプリはApp Storeで9.99ドルで販売されている。Mac用ドラバーは無料だ。過去にMacにiPadを接続するアプリでがっかりしたユーザーも、Duetは試してみる価値があるだろう。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


ウェアラブルデバイス「Telepathy Jumper」発表、だがそれは想像とちょっと違った

SXSW 2013にて「Telepathy One」が発表されてから1年半、2014年6月には創業者であり代表を務めていた井口尊仁氏の退任騒動も起こった(現在井口氏は同社のフェローという肩書で活動している)が、Telepathyがその製品の詳細を発表した。Telepathyの日本法人であるテレパシージャパンは12月18日、ウェアラブルデバイス「Telepathy Jumper」を発表した。同日よりデベロッパー向けの申し込みも受け付ける

Telepathy Jumperはこれまでのデモ機やモックアップにあったように、メガネ状(厳密には耳から後頭部、反対側の耳までをぐるっと回りこむデザインになっている)のウェアブルデバイスではない。カメラやディスプレイ、マイクを備える「ディスプレイユニット」と、バッテリーや操作ボタンを備えた「パワーユニット」をケーブルでつなげた形状で、ケーブル部を首にかけて使うのだという。医者が首からかけている聴診器をイメージすると分かりやすいかもしれない。

ちなみにモニタ部を目の前に固定する場合、専用のアタッチメントが必要となる。アタッチメントのデータはオープンソースとして公開。自身の頭部のサイズに合わせてデータを加工した上で、3Dプリンターで打ち出して利用する。

アタッチメントをつけてTelepathy Jumperを耳にかけたところ

ディスプレイユニットには、qHD(960×540)のディスプレイ、500万画素・オートフォーカスのカメラ、2つのノイズキャンセリング機能付きマイクなどを備える。パワーユニットには操作用のボタンのほか、1000mAhのバッテリー、8GBのメモリなどを備える。OSはAndroid 4.2で、ネットワークはBluetoothとWiFiを利用できる。実際にデモ機を使用させてもらったところ、ディスプレイは非常に明瞭。周辺の光が強い環境でもはっきり見ることができた。ただ、デモ機はモニターに映像を流しているだけだったので、聴診器型(便宜上こう呼んでおく)であるメリットがイマイチ分からなかった。2015年3月に法人向けに販売を開始し、来夏をめどに一般向けの販売を進める。なお価格は未定。

一般向けの販売に合わせて提供予定のアプリケーションも2つ紹介した。1つは、他のユーザーが見ている(カメラで撮影している)景色をあたかも目の前の景色のように閲覧できる「Eye Connect」、もう1つはユーザーが持っている特技などを、Telepathyを使って他のユーザーに教えたり共有したりできる「Talent Buzz」だ。Telepathy Jumperは「共創」をテーマにしているとのことで、そのテーマに沿ったアプリとなる。また仕様の詳細などは明らかにされなかったが、サードパーティーによるアプリケーション開発も検討する。

「以前から開発していた」という聴診器型デバイス

これまでのデモ機でメガネをイメージしていたこともあって、その形状には驚いたのだけれど、テレパシージャパン代表取締役の鈴木健一氏によると、「ユーザーテストで分かったのは、常にディスプレイが目の前に必要ではないこと」なのだそう。このような気付きから、これまでもメガネ型のデバイスと並行して聴診器型のデバイスも研究・開発していたそうだ。

実はTelepathy Jumperのバッテリーの容量は現在主流となっているスマートフォンの半分程度。そう考えると素人目にもメガネに仕込むにはちょっと大きいように感じる。実際以前にも複数の関係者から「メガネサイズでバッテリーの容量を確保するのは難しいのではないか」という話を聞いていた(が、今回の形は想像していなかったのでびっくりした)。なので、バッテリーの容量確保のためにメガネの形状を諦めたのではないかとも鈴木氏に聞いたが、あくまでメガネという形状での不便を解決するために現状の形になったという説明だった。たしかに普段使うメガネの上に、さらにメガネ型デバイスはつけていられない。

テレパシージャパン代表取締役の鈴木健一氏

すでに日立ソリューションズなど複数社での試験利用も始まっている。両手が自由に使えるウェアラブルデバイスは、工事や建築から製造、病院など、さまざまなビジネス現場でニーズがあるのではないかという話は各所で聞く。「聴診器型」である必要性はさておき、Telepathy Jumperのニーズもそこにあるはずだ。

また、鈴木氏は同日の会見でのプレゼンの中で「利用シーン」として東京ディズニーランドの写真を使用しており、質疑では同施設との関係について記者から質問が飛んだのだけれども、「数社とどのようにビジネスが構築できるか話をしている。ディズニーランドはまた後日ということでお願いしたい。(対応は)広報に任せます」(鈴木氏)とだけ回答していた。

ともかく、かつて代表だった井口氏が語った「2014年に届けたい」というスケジュールにはギリギリ間に合わなかったが、少なくとも2014年中にその姿が明らかにされた。この発表について井口氏がどう思っているかも鈴木氏に聞いたが、「海外にいて、ここ(会見)に来る前には話をしていないので心境は分からない」とのことだった(ただし、Telepathyのミーティングなどには参加しており、西海岸の情報などを共有してくれているそうだ)。