「underbanked」であることは、金融サービスへのアクセスがない人を意味するわけではない。その代わり、従来の銀行口座やクレジットカードを持たないことを往々にして指す。しかしインドネシアのようなマーケットでは、多くの人がデジタルウォレットやeコマースプラットフォームを使っている。これは運転資本や他の財務ツールを確保するのに役立つユーザーデータの別のソースになっている。シンガポール拠点のオープンファイナンススタートアップFinantier(ファイナンティア)は、ユーザーデータへの金融サービスアクセスを提供する1つのAPIでそうしたデータを合理化したいと考えている。ここにはクレジットスコアやKYC(与信審査)の認証を可能にする機械学習ベースの分析も含まれる。
20超のクライアントを抱え、現在ベータ版を展開しているFinantierは正式立ち上げに向けた準備で忙しい。同社は米国時間12月22日、Y Combinatorの2021年冬季スタートアップとして受け入れられたと発表した。同社はまた、額は非公開ながらこのほどプレシードの資金を調達した。本ラウンドはEast Venturesがリードし、AC Ventures、Genesia Ventures、Two Culture Capitalなどが参加した。
Finantierは2020年初めにDiego Rojas(ディエゴ・ロハス)氏、Keng Low(ケン・ロウ)氏、Edwin Kusuma(エドウィン・クスマ)氏によって設立された。3人とも新興マーケットでオープンファイナンスを可能にすることを目的としたフィンテック企業向けのプロダクト構築の経験がある。
オープンファイナンスは、オープンバンキングから生まれた。PlaidとTinkが構築されたのと同じフレームワークだ。これは、ユーザーの金融データを銀行や他の機関の中に格納する代わりにユーザーがよりコントロールできるようにすることを意図している。ユーザーは自身の銀行口座やクレジットカード、デジタルウォレットなどを含むオンライン口座の情報へのアクセス権をアプリやウェブサイトに付与するかどうかを決定できる。オープンバンキングは主に決済アカウントと称されるが、その一方でFinantierが専門とするオープンファイナンスは商業融資、住宅ローン、保険引受などを含むさまざまなサービスをカバーする。
Finantierはまずシンガポールとインドネシアに注力するが、他の国にもサービスを拡大し、Plaidのようなグローバルフィンテック企業になる計画だ。すでにベトナムとフィリピンに目をつけていて、ブリュッセルで提携も結んだ。
Finantierを興す前にロハス氏はP2Pの融資プラットフォームLending ClubやDianrong向けのプロダクトに取り組み、東南アジアのいくつかのフィンテックスタートアップでCTOを務めた。同氏は多くの企業が他のプラットフォームや銀行からのフェッチデータを統合したり、異なるプロバイダーからデータを購入したりするのに苦戦していることに気づいた。
「人々はオープンバンキングや埋め込み型金融などについて話し合っていました」とFinantierのCEOであるロハス氏はTechCrunchに語った。「しかしそれらはもっと大きなもの、すなわちオープンファイナンスの構成要素です。特に大人の60〜70%が銀行口座を持たない東南アジアのような地域では、消費者や事業所が複数のプラットフォームに持っているデータを駆使するのをサポートしていると確信しています。それは絶対に銀行口座である必要はなく、デジタルウォレットやeコマースプラットフォーム、その他のサービスプロバイダーだったりします」。
消費者にとって意味するところは、クレジットカードを持っていなくても、たとえばeコマースプラットフォームでの完了した決済のデータを共有することで信用力を構築できるということだ。ギグエコノミー労働者は、毎日の乗車や他のアプリを通じてしている仕事についてのデータを提供することで、より多くの金融サービスやディールにアクセスできる。
東南アジアの金融インフラを構築する
東南アジアに注力している他のオープンバンキングスタートアップにはBrankasやBrickがある。ロハス氏はFinantierがオープンファイナンスに特化していること、エンドユーザー向けのサービスを構築するために金融機関向けのインフラを作っていることで差異化を図っていると述べた。
金融機関にとってのオープンファイナンスのメリットは、より消費者に適したプロダクトを作ることができ、売上高共有モデルの機会を得られることだ。これは東南アジアでは銀行口座などをもたず、さもなくば金融サービスへのアクセスがない人々にリーチできることを意味する。
Y Combinatorのアクセラレータープログラムに参加する一方で、Finantierはインドネシア金融サービス庁の規制緩和制度にも参加する。このプログラムを終了したら、大手機関を含むインドネシアのさらに多くのフィンテック企業と提携することが可能になる。
インドネシアには、銀行口座を持たないなど金融サービスを十分に利用できていない大人が1億3900万人いる、とEast Venturesの共同創業者でマネジングパートナーのWilson Cuaca(ウィルソン・クアカ)氏は話した。
インドネシアを専門とする同社はEast Ventures Digital Competitiveness Indexという年次調査を行うが、金融排除が現在存在する最大の格差の1つだと指摘した。ジャカルタが立地するジャワのような人口の多い島で利用できる金融サービスの数と、他の島々のものとではかなりの差がある。
金融インクルージョンを促進し、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックの経済影響を軽減するために、政府は1000万の零細・中小企業が年末までにデジタルに移行するという目標を打ち出した。オンラインで販売する零細・中小企業は現在800万で、インドネシアの零細・中小企業のわずか13%にすぎない。
Finantierに出資するというEast Venturesの決定について、クアカ氏は「金融サービスへの平等なアクセスを提供することは、インドネシア経済に乗数効果を及ぼすことができます」とTechCrunchに語った。「現在、金融サービスを多くの人に提供するために何百という企業が独自のソリューションに取り組んでいます。そうした企業がより多くのプロダクトやサービスを、金融サービスを活用できていない人々に提供するのをFinantierがサポートすると確信しています」。
画像クレジット:Finantier
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(翻訳:Mizoguchi)