問い合わせ対応ソフトShelf.ioが過去1年間でARR4倍に、57.7億円という巨額のシリーズBを完了

上場企業の取材に少々気が重くなることがある。上場企業というものは毎年そこそこ成長し、担当アナリストは粗利益率の改善や営業担当者の効率性について質問攻めにする。やや単調にもなり得るのだ。一方、スタートアップ企業の成長は早く、語るのも楽しい。

それはShelf.io(シェルフ・アイ・オー)にも当てはまる。同社は米国時間8月23日、2020年7月から2021年7月までの間に年間経常収益(ARR)を4倍に伸ばしたことなど、一連のすばらしい指標を発表した。また、Tiger GlobalとInsight PartnersがリードするシリーズBで5250万ドル(約57億7500万円)を獲得したことも発表した。

シリーズA以降のスタートアップとしては早い成長だ。Crunchbaseには、シリーズBの前に820万ドル(約9億円)を調達したとあるが、PitchBookでは650万ドル(約7億円)となっている。いずれにせよ、同社は今回の資金調達の前に、限られた資本で効率的に事業を拡大していた。

同社のソフトウェアは何をするのか。Shelfは、企業の情報システムに接続してデータを学習し、従業員が検索などで情報収集をしなくても、問い合わせに対応できるようにする。

同社はまず、カスタマーサービスをターゲットにしようとしている。ShelfのCEOであるSedarius Perrotta(セダリウス・ペロッタ)氏によると、Salesforce(セールスフォース)、SharePoint(シェアポイント)、従来のナレッジマネジメントプラットフォームや、Zendeskなどから情報を吸収することができるという。そして、モデルやスタッフのトレーニングを経て、サポートスタッフが顧客とリアルタイムで会話をしながら、顧客の質問に対する回答を提供することができる。

また、同社のソフトウェアは、人間のエージェントに向けられたわけではない顧客からの質問に対する回答を提供したり、企業のナレッジを検索可能なデータベースとして提供したりすることで、従業員が顧客の問題を迅速に解決できるようにする。

ペロッタ氏によると、Shelfが次にターゲットにしているのは営業市場で、その他の分野も追いかけるという。Shelfは営業にどうフィットするのだろうか。同社のソフトウェアは、スタッフに対し、すでにある類似案件の提案書やその他の関連コンテンツを提示できるかもしれないという。要するに、Salesforceをクリックしたり、サポートの問い合わせに答えたりと、多くの従業員が同じような仕事をしている企業では、Shelfがそうした活動を学習して、従業員の仕事をより賢く支援できる。ソフトウェアの学習能力も、時間とともに向上していくものと思われる。

現在100人程度のShelfは、年内に規模を2倍にし、2022年にはさらに2倍にしたいと考えている。

そこで新たな資本が投入されることになった。機械学習やデータサイエンスの分野で人を雇うのは、非常に高くつく。また、採用規模を早く拡大したいなら、銀行口座に多額の残高が必要になる。

Shelfが、少なくともそれまでの資金調達額と比較し、今回のような桁違いのシリーズBを確保できた理由は、ARRの急成長だけではない。ペロッタ氏によると、同社は純額で130%の契約保持を達成しており、解約もない。これは、同社の顧客が定着し、有機的に拡大していることを意味している。

現在のShelfは興味深い存在であり、現在の形で販売できるニッチな分野を見つけたことは確かだが、筆者はMerlinAIと呼ばれる機械学習システムをどこまで進化させることができるかに興味がある。もしこの技術が十分に賢くなれば、従業員を促したり、助けたりする機能によって、新入社員研修の時間を短縮し、従業員の研修にかかるコスト全般を削減することができるだろう。それは巨大な市場になると思われる。

これはいかにもTigerが入り込んできそうな取引だ。過去のラウンドと比べて大規模な高成長企業への投資で、その企業が向かう市場には大きな空白がある。Tigerがこの会社の株をいくらで買ったとしても、数年間の継続的な成長があれば、投資のリスクを打ち消すはずだ。筆者の読みでは、Tigerは、ソフトウェア市場の長期的な成長に関して強気なファンドで、その点でまさに市場をリードしている。Shelfはその仮説にきちんと合致しているのだ。

画像クレジット:Vladyslav Bobuskyi / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nariko Mizoguchi

【インタビュー】アップルのプライバシー責任者、児童虐待検出機能とメッセージアプリの通信の安全性機能への懸念について答える

先にApple(アップル)は、同社の端末を使う児童の安全性の向上を目的とした一連の新機能を発表した。この新機能はまだリリースされていないが、2021年後半にはダウンロード配信される予定だ。これらの機能は、未成年の保護と児童性的虐待画像の拡散を抑えることをも目的としており、良い機能として受け入れられているものの、アップルが採用しているやり方に疑問の声が上がっている。

関連記事:アップルがiCloud上の児童虐待画像を検出する新技術「NeuralHash」導入へ

この記事では、アップルのプライバシー担当責任者Erik Neuenschwander(エリック・ノイエンシュバンダー)氏に、アップル製端末に搭載されるこれらの新機能について話を聞いた。同氏は、この機能についてユーザーが抱いている多くの懸念について丁寧に回答してくれた。この機能の導入後に発生する戦術的、戦略的な問題についても詳しい話を聞くことができた。

また、密接に関連しているが、同じような目的を持つ完全に独立したシステム群であるこれらの機能の導入についても話を聞いた。アップルは今回3つの機能を発表しているが、これらの機能はその守備範囲においても、一般ユーザーの間でも、混同されることが多いようだ。

iCloud写真でのCSAM検出NeuralHashと呼ばれる検出システムは、全米行方不明・被搾取児童センターやその他の組織のIDと照合可能なIDを作成し、iCloud写真ライブラリにある既知のCSAMコンテンツを検出する。大半のクラウドプロバイダーでもユーザーライブラリをスキャンしてこうした情報を取得しているが、アップルのシステムは、クラウド上ではなく端末上でマッチングを行う点が異なる。

メッセージアプリの通信の安全性親がiCloudファミリーアカウントで未成年向けにオンにできる機能。画像を表示しようとする子どもたちに、その画像には露骨な性的表現が検出されていることを警告し、親にも同じ警告がなされることを通知する。

Siriと検索への介入:Siriや検索を介して児童性的虐待画像関連の表現を検索しようとするユーザーに介入して、そのユーザーに介入を通知し、リソースを紹介する。

これらの機能の詳細については、当社の記事(上記にリンクがある)またはアップルが先に投稿した新しいFAQを参照いただきたい。

関連記事:アップルがメッセージアプリで送受信される性的な画像を検知し子どもと親に警告する新技術を発表

筆者は、個人的な体験から、上記の最初の2つのシステムの違いを理解していない、あるいは、自分たちの子どもの無害な写真でも何らかのフィルターに引っかかって厳しい調査を受ける可能性があると考えている人たちがいることを知っている。ただでさえ複雑な内容の発表に混乱を生じさせる結果となっているようだ。この2つのシステムはもちろん、組織がすでに虐待画像と認識しているコンテンツと完全に一致するコンテンツを検索するCSAM検出システムとは完全に別個のものである。メッセージアプリの通信の安全性では、すべての処理が端末上で実行され、外部には一切報告されない。単に、端末を使っている子どもに、性的に露骨な画像を表示しようとしている、またはその可能性があることを、その場で警告するだけである。この機能は親によるオプトイン方式となっており、有効化されていることを親も子どもも意識する必要はない。

アップルのメッセージアプリの通信の安全性機能(画像クレジット:Apple)

また、端末上で写真をハッシュ化しデータベースを使って比較対照できるIDを作成する方法についても疑問の声が上がっている。NeuralHashは、写真の高速検索など、他の種類の機能にも使用できるテクノロジーだが、iPhone上では今のところCSAMの検出以外には使用されていない。iCloud写真が無効になっている場合、この機能は、まったく動作しない。これにより、この機能をオプトアウトできるようにしているのだが、iCloud写真がアップルのオペレーティングシステムに統合されていることの利便性を考えると、オプトアウトすることで失うものが非常に大きいことは明らかだ。

エリック・ノイエンシュバンダー氏へのインタビューでは、これらの新機能について考えられるすべての質問に答えているわけではないが、アップルの上級プライバシー担当者による公開の議論としては、最も詳細な内容になっている。アップルがこれらの新機能の内容を公開しており、継続的にFAQを更新し、記者会見を開いていることから、同社はこのソリューションに明らかに自信を持っているように思われる。

この機能については、さまざまな懸念や反対意見があるものの、アップルは、必要なだけ時間をかけてすべての人たちに納得してもらうことに尽力しているようだ。

このインタビューはわかりやすくするために編集されている。

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TC:大半の他のクラウドプロバイダーは、すでにCSAM画像のスキャンをかなりの期間実施していますが、アップルはまだ行っていません。現在、サーバー上でCSAM画像の検出を行うことを強制する規制はありませんが、EUやその他の国では規制による混乱が起こっています。今回の新機能はこうした動きを受けてのことでしょうか。なぜ、今なのですか。

なぜ今リリースするのかという点については、児童の虐待からの強力な保護とユーザーのプライバシーのバランスをとるテクノロジーが実現したということに尽きます。アップルはこの分野にかなりの期間注目してきました。これには、クラウドサービス上のユーザーのライブラリ全体をスキャンする最先端の技術が含まれますが、ご指摘のとおり、アップルはこうした処理、つまりユーザーのiCloud写真を走査するという処理を行ったことがありません。今回の新システムもそうした処理は一切行いません。つまり、端末上のデータを走査することもなければ、iCloud写真に格納されているすべての写真を走査することもありません。では、何をやっているのかというと、既知のCSAM画像が蓄積し始めているアカウントを特定する新しい機能を提供しているのです。

ということは、この新しいCSAM検出テクノロジーが開発されたことが重要な転機となって、このタイミングで今回の機能をリリースすることになったというわけですね。しかも、アップル自身も満足のいく形で、なおかつユーザーにとっても「良い」方法でこの機能を実現できると考えていると。

そのとおりです。この機能には、同じくらい重要な2つの目的があります。1つはプラットフォーム上での児童の安全性を向上させること、もう1つはユーザーのプライバシーを保護することです。上記の3つの機能はいずれも、上記の2つの目的を実現するテクノロジーを組み合わせることで実現されています。

メッセージアプリの通信の安全性機能とiCloud写真でのCSAM検出機能を同時に発表したために、両者の機能と目的について混乱が生じているようです。これらを同時に発表したことは良かったのでしょうか。また、この2つが別個のシステムなら、なぜ同時に発表されたのでしょうか。

確かにこれらは2つの別個のシステムですが、Siriと検索における当社による介入の増加に伴って開発されたものです。アップルのiCloud写真サービスの中の既知のCSAMのコレクションが格納されている場所を特定することも重要ですが、その上流部分を特定することも重要です。上流部分もすでにひどい状況になっています。CSAMが検出されるということは、すでにレポートプロセスの処理対象になったことのある既知のCSAMが存在しており、それが広範囲に共有されて子どもたちが繰り返し犠牲になっているということです。そもそも最初にそうした画像が作成される原因となった虐待があり、そうした画像の作成者がいたはずです。ですから、そうした画像を検出することも重要ですが、人々が問題のある有害な領域に入ろうとするときに、あるいは、虐待が発生し得る状況に子どもたちを仕向ける虐待者がすでに存在している場合に、早期に介入することも重要です。メッセージアプリの通信の安全性と、Siriおよび検索に対する当社の介入は、まさにその部分に対する対応策です。つまり、アップルはCSAMに至るまでのサイクルを遮断しようと試みているのです。最終的にはCSAMがアップルのシステムによって検出されることになります。

iCloud写真システムにおけるアップルのCSAM検出プロセス(画像クレジット:Apple)

世界中の政府と政府機関は、何らかのエンド・ツー・エンドまたは部分的な暗号化を組織内で使用している大規模組織に常に圧力をかけています。政府機関は、バックドアや暗号解読手段に賛成する理論的根拠として、CSAMやテロにつながる可能性のある活動を抑えることを挙げることがよくあります。今回の新機能および端末上でのハッシュ照合を実現する機能をリリースするのは、それらの要求を回避し、ユーザーのプライバシーを犠牲にすることなく、CSAM活動を追跡し防止するために必要な情報を提供できることを示すための取り組みでしょうか。

最初に、端末上での照合についてですが、このシステムはマッチング結果を(通常マッチングと考えられているような方法で)端末または(端末が作成するバウチャーを考えている場合でも)アップルに公開しないように設計されている、という点を申し添えておきます。アップルは個々の安全バウチャーを処理することはできません。このシステムは、あるアカウントに、違法な既知のCSAM画像に関連付けられたバウチャーのコレクションが蓄積した時点で初めて、そのユーザーのアカウントについて調査できるように設定されています。

なぜそんなことをするのかというと、ご指摘のとおり、これはユーザーのプライバシーを保護しながら検出機能を実現するための仕組みだからです。我々の動機となっているのは、デジタルエコシステム全体で児童の安全性を高めるためにもっと多くのことを行う必要があるという事実です。上記の3つの機能はすべて、その方向への前向きな一歩になると思っています。同時に、アップルが、違法行為に関わっていない人のプライバシーを侵害することも一切ありません。

端末上のコンテンツのスキャンとマッチングを可能にするフレームワークを作成するというのは、法的執行機関の外部のフレームワークを作るということでしょうか。つまり「アップルはリストを渡します。ユーザーのデータをすべて検索するようなことはしたくありませんが、ユーザーに照合して欲しいコンテンツのリストを渡すことはできます」ということでしょうか。そのリストをこのCSAM画像コンテンツと照合できるなら、探しているCSAM画像以外のコンテンツとも照合できますよね。それは、アップルの現在の考え方、つまり「アップルはユーザーの端末を復号化できない。端末は暗号化されていて、我々はキーを持っていないのだから」という立場を損なうことになりませんか。

その立場は一切変わりません。端末は依然として暗号化されていますし、アップルは復号化キーも持っていません。今回の新システムは端末上のデータに対して機能するように設計されています。アップルが作成したのは端末側コンポーネントです。プライバシーを向上させる端末側コンポーネントも含まれています。サーバー上のユーザーデータをスキャンして評価するやり方もあったわけですが、そのほうが(ユーザーの承認なしに)データを自由に変更できるし、ユーザーのプライバシーも低いのです。

今回のシステムは、端末側コンポーネントとサーバー側コンポーネントで構成されています。端末側コンポーネントは、バウチャーを作成するだけで何も認識しません。サーバー側コンポーネントには、バウチャーと、アップルのサービスに入ってくるデータが送信され、当該アカウントについて、違法なCSAM画像のコレクションが存在するかどうか調査されます。つまり、サービス機能です。話が複雑になりますが、このサービスの機能に、バウチャーが端末上に作成される部分が含まれているのですが、何度も申し上げているとおり、端末上のコンテンツの内容が認識されることは一切ありません。バウチャーを生成することで、サーバー上ですべてのユーザーのコンテンツを処理する必要がなくなりました。もちろん、アップルはiCloud写真の内容を処理したことも一切ありません。そのようなシステムは、プライバシー保護の観点から、より問題を起こしやすいと思います。ユーザーに気づかれずにシステムを本来の設計意図とは異なるものに変更できてしまうからです。

このシステムに関して大きな疑問が1つあります。アップルは、CSAM画像以外のコンテンツをデータベースに追加して端末上でチェックするよう政府やその他の機関から依頼されたら拒否すると明言しました。アップルには、ある国で事業展開したければ、その国の法律に最高レベルで準拠しなければならなかった例が過去にあります。中国の件が良い例です。政府からシステムの意図的改ざんを要求または依頼されても、アップルは、そうした干渉を一切拒否するという約束は本当に信頼できるのでしょうか。

まず、このシステムは米国内でのみ、iCloudアカウントのみを対象としてリリースされます。ご質問では国全般または米国以外の国からの要請を想定されているようです。少なくとも米国の法律では、こうした要請を政府が行うことは許されていないと思われます。

システムを改ざんする試みについてですが、このシステムには、多くの保護機能が組み込まれており、児童虐待画像を保持している個人を(政府が)特定するにはあまり役立たないようになっています。ハッシュリストはオペレーティングシステムに組み込まれるのですが、アップルは1つのグローバルなオペレーティングシステムのみを所有しており、個々のユーザー向けにアップデートを配信することはできません。ですから、ハッシュリストはシステムを有効にしているすべてのユーザーに共有されます。第2に、このシステムでは、(バウチャーの中身を見るには)画像のしきい値を超える必要があるため、個人の端末または特定のグループの端末から単一の画像を探し出すことはできません。というのは、システムはアップルに、サービスに保存されている特定の画像について一切情報を提供しないからです。第3に、このシステムには手動によるレビュー段階が組み込まれています。つまり、あるアカウントに、違法なCSAM画像のコレクションが保存されていることを示すフラグが立つと、外部の機関に報告する前に、アップルのチームがその画像が確かに違法なCSAM画像と一致していることを確認するようになっています。ですから、ご指摘のような状況(アップルが政府の要請に応じてシステムを改ざんするような事態)が発生するには、例えばアップルに内部プロセスを変更させて違法ではない(既知のCSAM以外の)コンテンツも報告させるようにするなど、本当に多くの作業を行う必要があります。それに、アップルは、そうした要請を行うことができる基盤が米国内に存在するとは考えていません。最後に付け加えておきますが、ユーザーはこの機能を有効にするかどうかを選択できます。この種の機能が気に入らなければ、iCloud写真を使わない選択をすればよいだけです。iCloud写真が無効になっていれば、このシステムは一切機能しません。

iCloud写真が無効になっていればこのシステムは機能しないと、確かにFAQでも明言されています。この点について具体的にお聞きしますが、iCloud写真が無効になっている場合でも、このシステムは端末上で写真のハッシュの作成を継続するのでしょうか。それとも、無効にした時点で完全に非アクティブな状態になるのでしょうか。

ユーザーがiCloud写真を使用していない場合、NeuralHashは実行されず、バウチャーも生成されません。CSAMの検出では、ニューラルハッシュがオペレーティングシステムイメージの一部である既知のCSAMハッシュのデータベースと比較対照されます。iCloud写真を使用していない場合、安全バウチャーの作成やバウチャーのiCloud写真へのアップロードなどの追加部分は、一切実行されません。

アップルは近年、端末上での処理によりユーザーのプライバシーが保護されるという事実に注目しています。今思い浮かぶ過去のすべての事例において、これは真実です。確かに、例えば写真をスキャンしてそのコンテンツを特定し、検索できるようにするといった処理は、ローカルの端末上で実行し、サーバーには送信しないで欲しいと思います。しかし、この機能の場合、外部の使用ケースがなければ個人的な使用をスキャンするのではなくローカルの端末をスキャンするという点で、ある種の抗効果が発生し、ユーザーの気持ちに「信頼性の低下」というシナリオが生まれる可能性があるように思います。それに加えて、他のすべてのクラウドプロバイダーはサーバー上をスキャンすることを考慮すると、この実装が他のプロバイダーとは異なるため、ユーザーの信頼性が低下するのではなく向上するのはなぜか、という疑問が生じるのですが。

アップルの方法は、業界の標準的な方法と比較して、高い水準にあると思います。すべてのユーザーの写真を処理するサーバー側のアルゴリズムでは、どのようなものであれ、データ漏洩のリスクが高くなり、当然、ユーザーのライブラリ上で行う処理という点で透過性も低くなります。これをオペレーティングシステムに組み込むことで、オペレーティングシステムの完全性によって他の多くの機能にもたらされているのと同じ特性を実現できます。すべてのユーザーが同じ1つのグローバルなオペレーティングシステムをダウンロードおよびインストールするため、個々のユーザー向けに特定の処理を行うのはより難しくなります。サーバー側ではこれは実に簡単にできます。いくつかのプロパティを用意しそれを端末に組み込んで、この機能が有効になっているすべてのユーザーでプロパティ設定を統一できることで、強力なプライバシープロパティが得られます。

第2に、オンデバイステクノロジーの使用によってプライバシーが保護されるというご指摘ですが、今回のケースでは、まさにおっしゃるとおりです。ですから、ユーザーのライブラリをプライバシー性の低いサーバー上で処理する必要がある場合の代替策になります。

このシステムについて言えるのは、児童性的虐待画像という違法行為に関わっていないすべてのユーザーのプライバシーが侵害されることは一切なく、アップルがユーザーのクラウドライブラリに関して追加の情報を得ることも一切ないということです。この機能を実行した結果としてユーザーのiCloud ライブラリが処理されることはありません。その代わりに、アップルは暗号的に安全なバウチャーを作成できます。このバウチャーには数学的プロパティが設定されています。アップルがコンテツを復号化したり画像やユーザーに関する情報を取得できるのは、そのユーザーが、CSAMハッシュと呼ばれる違法な画像ハッシュに一致する写真を収集している場合だけです。一方、クラウド処理スキャンサービスでは、まったく状況が異なります。すべての画像を復号化された形式でくまなく処理し、ルーチンを実行して誰が何を知っているのかを決定するからです。この時点で、ユーザーの画像に関して必要なことは何でも確定できます。それに対して、アップルのシステムでは、NCMECおよび他の児童虐待保護組織から直接入手した既知のCSAM画像ハッシュのセットに一致することが判明した画像について知ることしかできません。

このCSAM検出機能は、端末が物理的にセキュリティ侵害されたときにも全体として機能しますか。何者かが端末を手元で操作できれば、暗号がローカルに迂回されることもあります。これを防ぐための保護レイヤーはありますか。

これは難しく、犠牲が大きい問題ですが、非常に稀なケースであることを強調しておきたいと思います。この問題はほとんどのユーザーにとって日常的な関心事ではありませんが、アップルはこの問題を真剣に受け止めています。端末上のデータの保護は我々にとって最重要事項だからです。では、誰かの端末が攻撃されたという仮説の下で説明してみます。その攻撃は極めて強力なので、攻撃者が対象ユーザーに対して行えることはたくさんあります。攻撃者にはアクセス可能なユーザーのデータが大量にあります。誰かの端末のセキュリティを侵害するという極めて難しい行為をやってのけた攻撃者にとって最も重要なことが、アカウントの手動レビューを起動させることだという考え方は合理的ではありません。

というのは、思い出して欲しいのですが、しきい値が満たされていくつかのバウチャーがアップルによって復号化されても、次の段階で手動レビューによって、そのアカウントをNCMECに報告するべきかどうかを決定するわけですが、我々は合法的な高価値レポートであるケースでのみこうした報告を行うべきだと考えています。我々はそのようにシステムを設計していますが、ご指摘のような攻撃シナリオを考えると、攻撃者にとってあまり魅力的な結果にはならないと思います。

画像のしきい値を超えた場合のみ報告されるのはなぜですか。CSAM画像が1つ見つかれば十分ではないでしょうか。

NCMECに対してアップルが報告するレポートは高価値でアクション可能なものにしたいと考えています。また、すべてのシステムについて共通しているのは、その画像が一致するかどうかにある程度の不確かさが組み込まれるという点です。しきい値を設定することで、誤報告によってレビューに至る確率は年間で1兆アカウントに1つになります。ですから、既知のCSAMのコレクションを保持しているユーザー以外の写真ライブラリをスキャンすることに興味がないという考え方に反することになりますが、しきい値を設定することで、レビューしているアカウントをNCMECに報告したとき、法執行機関は効果的に調査、起訴、有罪判決まで持っていくことができると確信できます。

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また批判を浴びるアップルの児童虐待検出技術
画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Dragonfly)

最大15秒の短尺動画を投稿し気の合う人と出会える、Z世代向けソーシャルマッチングアプリ「mow」がリリース

最大15秒の短尺動画を投稿し気の合う人と出会える、Z世代向けソーシャルマッチングアプリ「mow」がリリース

Vチューバーのマネジメント事業を行うV Chuu(ブイチュー)は8月23日、動画を使ったソーシャルマッチングアプリ「mow」(モウ。iOS版)を8月2日にリリースしたと発表した。主にZ世代に向けたアプリで、TikTok・Instagramのストーリー機能やリールズ機能のような感覚で相手を探すことができるという。男女の出会いだけでなく、「同じ趣味を持った友人」「気の合う友人」も探せることを意図しているため、あえて「ソーシャルマッチング」としている。現在mowは、有料会員機能を無料提供している。

最大15秒の短尺動画を投稿し気の合う人と出会える、Z世代向けソーシャルマッチングアプリ「mow」がリリース

V Chuuによると、SNSアプリはすでに数多く存在するものの「声をかける」という行為を前提として作られていないため、フォローはしてもそこからの声かけのハードルが非常に高いと考えているという。一方mowでは、従来からの「マッチングアプリ」の前提で自分の動画をアップロードしたり、相手がアップロードした動画にリアクション(=いいね)を送ることができ、マッチングすればそこからの会話のスタートは非常にスムーズとしている。

またV Chuuは、ソーシャルメディアとしての責任にも重点を置いている(インターネット異性紹介事業届出済み)。たとえば、インターネット異性紹介事業では公的証書による年齢確認が義務づけられているが、それらデータを確認後にすぐに削除している(mowは、18歳未満は利用不可)。通報やブロック機能もリリース当初から備え、利用規約に反する行為や投稿などをパトロールで見張っている。違反者があれば、即刻アカウントを停止するという。

2020年1月設立のV Chuuは、主要メンバーのほとんどがZ世代という若い企業。メンバーは、既存マッチングアプリに対して、「テキストと加工された写真だけでは人柄が分かりにくい」「実際に会ってみると想像と違った」といった不満を抱えていた。そこで、動画投稿に抵抗のないZ世代ならではの発想として、情報量が多く「ありのままを映し出す」動画を使ったマッチングサービスを思いついた。また、「男性が有料・女性が無料」「性別を男性もしくは女性のみしか選べない」という一般的なマッチングアプリに違和感を覚えていたことから、ジェンダー的に自由なアプリを目指した。

最大15秒の短尺動画を投稿し気の合う人と出会える、Z世代向けソーシャルマッチングアプリ「mow」がリリース

今後は、mowのブランドコンセプトにあったインフルエンサーを起用したプロモーションを展開してゆくという。

技術者はもはや時代遅れ?コーディング不要のツールを開発するBubbleが111億円調達

シリコンバレーでは、コンピュータサイエンスや技術教育の不足が世界のGDPレベルをどの程度押し下げているのかを議論するゲームが盛んに行われている。もし何十万人、何百万人もがコードを書けるようになって、起業家としてアイデアを実現できるようになったら、どれだけ多くのスタートアップ企業が誕生するだろうか?すべての企業で開発者が増えれば、どれだけ多くの官僚的なプロセスを排除できるだろうか?

もちろん、答えは「たくさん」だが、実現までには依然として高い障壁がある。コンピュータサイエンスは難易度の高い分野で、教育現場のカリキュラムにコーディングを導入しようとする議会の積極的な働きかけにもかかわらず、現実の市場ではソフトウェアエンジニアリングの需要が供給を大幅に上回っている。

Bubble(バブル)は、誰もがソフトウェアを開発できるようにして、新たなスタートアップの創出に貢献したいと考えている。同社のプラットフォームでは、コードを書ける人も書けない人も、クリック&ドラッグでデータソースや他のソフトウェアを結びつけることができるフルイドインターフェース(fluid interface、流れるような操作性を持つインターフェース)を使って、誰もがモダンなウェブアプリの構築を始めることができる。

これは大胆な夢だろうか。Bubbleも同様に大胆な賭けに乗ったばかりだ。Bubbleは米国時間7月27日、Insight Partners(インサイトパートナーズ)のRyan Hinkle(ライアン・ヒンクル)氏が主導するシリーズAラウンドで、1億ドル(約111億円)を調達したと発表した。ヒンクル氏は、Insight Partnersで長年マネージング・ディレクターを務め、成熟企業のバイアウトや成長期のSaaS企業を専門としている。

このラウンドの規模を大きいと感じるのは、Bubbleが現在の規模に至るまで、自助努力で長い歴史を歩んできたからだ。共同創業者のEmmanuel Straschnov(エマニュエル・ストラスノフ)氏とJosh Haas(ジョシュ・ハース)氏は、2019年6月にSignalFire(シングルファイヤー)が主導するシードラウンドで650万ドル(約7億2000万円)を調達するまで、7年間にわたって資金調達をせずに製品を開発してきた。興味深いことに、2014年、初めてBubbleに接触してきたベンチャー企業はInsight Partnersだった、とストラスノフ氏はいう。それから7年後、2社は契約を締結した。

関連記事:Bubbleは、コーディング経験がなくてもウェブアプリケーションを作れるサービス

シードラウンドで資金調達して以来、同社は同名のツールの機能を拡充してきた。コーディングを要しない(ノーコード)ツールであるBubbleは、機能が十分でなければ、アプリケーションの開発を妨げてしまう。「私たちのビジネスでは、機能が勝負です」「当社のユーザーは技術者ではありませんが、厳しい目を持っています」とストラスノフ氏は話し、同社がプラグインシステムを導入したことで、Bubbleコミュニティがプラットフォームに独自機能を追加できるようになったことを指摘する。

Bubbleはクリック&ドラッグで動的なウェブアプリを設計できるインターフェースを持つ同社のエディタで(画像クレジット:Bubble)

このプラットフォームの成長と、2020年の新型コロナウイルス感染症のパンデミックはタイミングが一致している。パンデミックの中、人々が先行きの危うい雇用市場の中で、新しいスキルや将来性を求めて奔走していた時期だ。ストラスノフ氏によると、Bubbleの利用者は2020年3月、4月に急増し、過去12カ月間で収益が3倍になったという。

Bubbleは過去8年間、人々が自分のアイデアで起業するのを支援してきた。同社の命題は、(大企業のエンジニアリングチームがゼロからコードを書くような多額の費用をかけずに)Bubbleを利用してたくさんの人が起業して、ベンチャーキャピタルから支援してもらえるようにすることだった。

他社のノーコードツールは企業内アプリの構築に注力しているが、ストラスノフ氏は「まだ市場を拡大する予定はありません。5年前にAWS(Amazon Web Services、アマゾンウェブサービス)やStripe(ストライプ)がやったことと同じことをやろうとしています」と話し、これまでと同様、今も新しい企業に焦点を当てていると説明する。Bubbleは(企業内アプリで)企業を支配しようとするのではなく、設立間もない顧客の成長に合わせて拡大していきたいと考えている。

Bubbleは現在、アプリケーションのパフォーマンスとスケールの要件に応じて、さまざまな価格を設定している(無料版、月額25ドル[約2750円]~のプロフェッショナル版、月額475ドル[約5万2190円]の最上位版)。また、企業価格や、学生向けの特別価格も用意されている。

後者については、Bubbleは新たに調達した資金を使って、教育分野に重点的に投資したいと考えている。使いやすいプラットフォームとはいえ、ウェブアプリのデザインは、初めて使う人、特に技術者ではない人にとっては躊躇するものだ。そこで同社は、多くの学生にこのプラットフォームを利用してもらうために、たくさんのビデオやドキュメントを作成して、大学との提携にも積極的に投資していきたいと考えている。

ノーコードの分野には莫大な投資が行われているが、ストラスノフ氏は「ノーコードのプレイヤーはいずれも競争相手ではありません。本当の競争相手はコードです」と話す。ストラスノフ氏は、ノーコードを謳うスタートアップ企業が増える一方で、Bubbleが手がける特定のニッチ分野に参戦する企業は非常に少なく、同社はそのカテゴリーで魅力的な価値提案を行っている、と確信している。

Bubbleはパンデミック以降人員を倍増。約21人だった従業員は現在は約45人となっている。従業員はニューヨークに多少集中しているが、リモートで業務を行っているので、米国15州とフランスで働く従業員も在籍する。ストラスノフ氏によると、今回の資金を使って製品を拡充するために、技術者を積極的に採用したいと考えている、とのことだ。

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画像クレジット:Bubble

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

中国で個人情報保護法が可決

中国で個人情報の保護を義務付ける法案が可決されたと、国営メディアの新華社が報じた。

この法律は「個人情報保護法(PIPL)」と呼ばれ、11月1日に施行される予定だ。

2020年提出されたこの法案は、ユーザー情報の収集に法的な制限を加えることで、商業分野における無節操なデータ収集を厳しく取り締まろうとする中国の共産党指導者の意図を示している。

関連記事:中国のインターネット規制当局は強制的なユーザーデータの収集を標的に

新華社によると、この新法はアプリメーカーに対し、個人の情報をどのように使用するか、あるいは使用しないか、そして使用する場合は個人の特性に基づいてマーケティングを行うか、あるいはマーケティングの対象としないか、といったことについての選択肢を、ユーザーに提供するよう求める。

また、この法律は、生体認証、医療・健康データ、財務情報、位置情報など、センシティブな種類のデータを取り扱う場合、個人から同意を得ることをデータ処理者に要求する。

ユーザーデータを違法に処理したアプリは、サービスの停止または終了を強いられるおそれがある。

中国でビジネスを行う欧米企業が、市民の個人データの処理をともなうビジネスを行う場合、この法律の域外適用に対処しなければならない。つまり、外国企業は、中国国内に代表者を配置し、中国の監督機関に報告しなければならないなどの規制上の要件に直面することになる。

表面上は、中国の新しいデータ保護制度の中核となる要素は、欧州連合(EU)の法律に長年にわたり組み込まれてきた要件とよく似ている。EUの一般データ保護規則(GDPR)では、個人データに深く関係する包括的な権利を市民に提供している。例えば、健康に関するデータなど、EU法が「特別なカテゴリーのデータ」と呼ぶ個人情報を処理する際には、同意に高いハードルを設けている(ただし、どのような個人情報が取り扱いに最も細心の注意を要するとみなされるかについては、各国のデータ法によって違いがある)。

また、GDPRの適用範囲も域外に及ぶ。

しかし、中国のデータ保護法が施行される状況の背景は、当然ながら欧州とは大きく異なる。特に、中国国家が膨大なデータ収集活動を利用して自国民の行動を監視し、取り締まっていることを考えるとなおさらだ。

PIPLが中国政府の各部門による市民のデータ収集に何らかの制限を課すとしても(この法律の草案では、国家機関も対象となっていた)、それはほとんど上辺だけの取り繕いに過ぎない可能性がある。中国共産党(CCP)の国家安全保障組織によるデータ収集を継続させ、政府に対する中央集権的な統制をさらに強化するためであると考えられるからだ。

また、中国共産党がこの新しいデータ保護規則を利用して、どのように国内のハイテク部門の力をさらに規制しようとする(「飼いならす」と言ってもいい)かも注目される。

中国共産党は、規制の変更をTencent(テンセント)のような大手企業に対する影響力として利用するなど、さまざまな方法を使ってこの分野を取り締まってきた。例えば今月初め、北京市はTencentのメッセージングアプリ「WeChat(ウィーチャット)」の青少年向けモードが、未成年者保護法に準拠していないと主張し、同社に対し民事訴訟を起こした

PIPLは、中国政府に国内のハイテク企業に制約を加えるための攻撃材料を豊富に提供することになる。

また、欧米の大手企業では当たり前のように行われているが、中国国内の企業が行うと摩擦が大きくなりそうなデータマイニングの実行に対しても、一刻の猶予も与えず攻撃している。

Reuters (ロイター)によると、全国人民代表大会(全人代)は同日、この法律の成立を記念して、国営メディア「人民法院報」に論説を掲載した。この論説では、この法律を称賛するとともに、レコメンドエンジンのような「パーソナライズされた意思決定」のためのアルゴリズムを使用する事業者は、まずユーザーの同意を得るよう求めている。

論説には次のように書かれている。「パーソナライズはユーザーの選択の結果であり、真のパーソナライズされたレコメンデーションは、強制することなくユーザーの選択の自由を確保しなければならない。したがって、ユーザーにはパーソナライズされたレコメンデーション機能を利用しない権利が与えられなければならない」。

中国以外の国でも、アルゴリズムによるターゲティングに対する懸念は、もちろん高まっている。

欧州では、議員や規制当局が行動ターゲティング広告の規制強化を求めている。欧州委員会は、デジタル市場法(Digital Markets Act)とデジタルサービス法(Digital Services Act)という、この分野を規制する権限を拡大する新たなデジタル規制案を2020年12月に提出し、現在協議を行っている過程にある。

インターネットの規制は、明らかに新しい地政学的な戦いの場であり、各地域はそれぞれの経済的、政治的、社会的な目標に合ったデータフローの未来を形作るために争っている。

関連記事:EUの主管プライバシー規制当局が行動監視に基づくターゲティング広告の禁止を求める
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(文:Natasha Lomas、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

心電図読み取りAIを開発するCardiomaticsが約3.5億円を調達

ポーランドを拠点とするヘルステックAIスタートアップのCardiomatics(カーディオマティクス)が、心電図読み取り自動化技術の普及に向け、シードで320万ドル(約3億5200万円)を調達したと発表した。

このラウンドは、中東欧のVCであるKayaがリードし、Nina Capital、Nova Capital、Innovation Nestも参加した。

シード資金には、ポーランド国立研究開発センターからの100万ドル(約1億1000万円)の非エクイティーの助成金も含まれている。

2017年創業の同社は、心臓専門医や臨床医などの医療従事者が心電図を解釈する際に、診断を迅速化・効率化するクラウドツールを販売している。約20種類の心臓の異常や疾患を検出・分析する作業を自動化し、訓練を受けた人間の専門家が行うよりも早く、スキャンに関するレポートを数分で作成するソフトウェアだ。

Cardiomaticsは、自社の技術がヘルスケアへのアクセスの大衆化に貢献しているとアピールしている。このツールにより、心臓専門医はワークフローを最適化し、より多くの患者を診察・治療できるようになる。また、総合診療医や小規模な診療所では、患者を専門病院に紹介することなく、心電図分析を提供できるとしている。

このAIツールは、これまでに300万時間以上の心電図信号を商業的に分析しており、スイス、デンマーク、ドイツ、ポーランドなど10カ国以上・700以上のクライアントに利用されているという。

このソフトウェアは、現段階で25台以上の心電図モニター機器と統合することができる。既存の医療用ソフトウェアとの差別化を図るため、最新のクラウドソフトウェアインターフェースを提供しているとアピールしている。

AIが読み取る心電図の精度はどのように検証されているのか、同社は次のように話す。「アルゴリズムの開発に使用しているデータセットには、約10万人の患者の100億回以上の心拍数が含まれており、体系的に増やしています。データセットの大部分は当社が独自に構築したもので、残りは一般に公開されているデータベースです」

「データの90%はトレーニングセットとして、10%はアルゴリズムの検証とテストに使用しています。データ中心のAIの常として、テストセットを非常に重要視しており、クライアントからのシグナルを可能な限り表現しているかどうかを確認しています。私たちは、アルゴリズムとデータの両方を継続的に開発する中で、アルゴリズムの精度を月1回の頻度で実験的にチェックしています。当社のクライアントも臨床現場で毎日チェックしています」

Cardiomaticsは、今回のシード資金を、製品開発への投資、既存市場での事業活動拡大、新規市場参入のための準備に使用すると述べている。

「今回のラウンドで調達した資金は、市場をリードするAI技術のスケールアップや、医師への最高の体験の提供など、欧州全域における速いペースでの拡大計画を支えるために使います。新しい市場に投入する製品も準備します。将来の計画には、FDA(米食品医薬品局)認証の取得や米国市場への参入も含まれています」と付け加えた。

このAIツールは、2018年に欧州の医療機器認証を取得した。ただし、欧州連合の医療機器とAIに関する規制は進化を続けており、今年初め(5月)には、欧州連合の医療機器指令(現EU医療機器規則)が更新された。

また、新しいAIアプリケーションのためのリスクベースのフレームワーク(別名「人工知能法」)も登場し、CardiomaticsのようなAIヘルステックツールに対するコンプライアンス上の要求が拡大している。安全性、信頼性、自動化された結果に偏りがないことを実証するなどの要件が導入されようとしている。

規制の状況について同社はこう答えた。「2018年に発売したとき、私たちは欧州で医療機器として承認された最初のAIベースのソリューションの1つでした。ペースに遅れないように、私たちは欧州の状況と、AIのアプリケーションを規制するためのリスクベースのフレームワークの立法化のプロセスを注意深く観察しています。また、近々導入される可能性のある規制や要件の草稿も注視しています。人工知能に関する新たな基準や要件が導入された場合には、直ちに会社や製品の運用へと導入し、製品の信頼性と安全性を確保するための必要な証拠とともに、文書化とアルゴリズムの検証を進めていきます」

だが、心電図読み取りアルゴリズムの有効性を客観的に測定することは困難であることも認めた。

「アルゴリズムの有効性を客観的に評価することは非常に困難です」と同社はTechCrunchに話した。「ほとんどの場合、1台のデバイスで登録された、特定の患者グループの狭い範囲のデータを使って評価します。我々は、さまざまなグループの患者の、異なる記録装置からの信号を受け取ります。私たちは、この効果を評価する方法に取り組んでいます。当社のアルゴリズムなら、記録装置やテスト対象となる社会集団など、研究に伴う様々な要因に関わらず、確実に有効性を評価することができるでしょう」

「解析を医師が行う場合、心電図の解釈は、経験、規律、芸術の産物となります。人間が心電図を解釈するときは曲線を見ます。それは視覚的な層として機能します。アルゴリズムは絵ではなく数字の流れを見るので、タスクは数学的な問題になります。しかし、結局のところ、この領域に関する知識がなければ、効果的なアルゴリズムを開発することはできません」と同社は付け加えた。「私たち医療チームの知識と経験がCardiomaticsの芸術作品です。アルゴリズムは、心臓内科医が生成したデータでもトレーニングされていることを忘れてはなりません。医療従事者の経験し機械学習には強い相関関係があります」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがSiri改善のためフィードバック収集アプリ「Siri Speech Study」をひそかに提供開始

Apple(アップル)は最近、対象ユーザーから音声データを収集するための研究を開始した。2021年8月初め、同社は「Siri Speech Study」という新しいiOSアプリをApp Storeで公開した。このアプリは、オプトインした調査参加者が自分の音声リクエストやその他のフィードバックをAppleと共有できるようにするもの。同アプリは世界の多くの市場で利用可能だが、公開されている「ユーティリティ」カテゴリーを含め、App Storeのチャートには登録されていない。

アプリストア分析会社Sensor Towerのデータによると、このiOSアプリは8月9日に初めて公開され、8月18日に新しいバージョンにアップデートされた。現在、米国、カナダ、ドイツ、フランス、香港、インド、アイルランド、イタリア、日本、メキシコ、ニュージーランド、台湾で利用可能となっており、本調査がグローバルに展開されていることを示している。ただし、App Storeをキーワードで検索しても、Appleが公開しているアプリの一覧を見ても、このアプリは表示されない。

Siri Speech Studyアプリ自体には、この研究の具体的な目的や参加方法はほとんど記載されていない。その代わりに、ごく標準的な使用許諾契約書へのリンクと、参加者がID番号を入力する画面が用意されているだけだ。

Appleにコメントを求めたところ、同社はTechCrunchに対し、このアプリはSiriの製品改良のためにのみ使用されており、参加者がAppleに直接フィードバックを共有する方法を提供している、と述べた。また、この研究に参加するには招待されなければならず、一般ユーザーが参加するために登録する方法はないと説明している。

App Storeのスクリーンショット

このアプリは、同社がSiriを改善するために取り組んでいる数多くの方法の1つに過ぎない。

これまでAppleは、一般ユーザーが録音した音声のごく一部を業者に送り、手作業で採点・レビューしてもらうことで、Siriのミスをより深く学ぼうとしてきた。しかし、ある内部告発者が英国のThe Guardian(ガーディアン)に、このプロセスでは機密事項を盗聴されることがあったと警告した。Appleはその後間もなく、そうした人手によるレビューをオプトイン方式に変更し、音声の採点を社内で行うようにした。このような消費者データの収集は継続されているが、その目的は調査研究とは異なる。

関連記事:アップルはSiriの音声クリップのレビュー方法を抜本的に見直しへ

そうした広範囲で一般的なデータ収集とは異なり、フォーカスグループのような調査では、収集したデータと人間のフィードバックを組み合わせるため、AppleはSiriのミスをよりよく理解することができる。Siri Speech Studyアプリでは、参加者がリクエストに応じて明確なフィードバックを提供するとAppleは述べている。例えば、Siriが質問を聞き間違えた場合、ユーザーは何を聞こうとしていたのか説明することができる。また、ユーザーが「Hey Siri」と言っていないのにSiriが起動した場合は、その旨を伝えることができる。また、HomePodのSiriが複数人の家庭で話者を誤認した場合、参加者はそれを記録することができる。

もう1つの特徴は、参加者のデータが自動的にAppleと共有されないことだ。代わりに、ユーザーは自分が行ったSiriのリクエストのリストを見た上で、どれを選択してフィードバックとともにAppleに送信するかを選べる。また、参加者から直接提供されたデータ以外のユーザー情報は、アプリ内で収集・使用されないと同社は述べている。

Apple WWDC 2021

Appleは、自分のことを理解してくれるインテリジェントなバーチャルアシスタントが競争上の優位性を持つことを理解している。

2021年に入り、Appleは元Google(グーグル)のAI科学者であるSamy Bengio(サミー・ベンジオ)博士を起用し、SiriをGoogle アシスタントの強力なライバルに育てようとしている。一方、家庭内ではAmazon(アマゾン)のAlexaを搭載したスマートスピーカーが米国市場を席巻しており、中国以外のグローバル市場でGoogleと競合している。AppleのHomePodが追いつくには、まだまだ時間がかかりそうだ。

しかし、近年、音声ベースのコンピューティングが急速に進歩しているにもかかわらず、バーチャルアシスタントは特定の種類の音声を理解するのに苦労することがまだある。例えば2021年初め、Appleはユーザーがポッドキャストで話始めにつっかえた際の音声クリップを集め、この種のスピーチパターンの理解を向上させると発表した。また、家庭内に複数の機器があり、複数の部屋からの音声コマンドを聞いている場合にも、アシスタントはミスを犯しやすい。また、家族の中で声を聞き分けようとしたり、子供の声を理解しようとすると、アシスタントはよく失敗する。

言い換えれば音声研究は、同社の現在のフォーカス以外にも、時間をかけて追求できる道筋がたくさんあるということだ。

AppleがSiriの音声研究を行っていることは、必ずしも新しいことではない。同社はこれまでにも、何らかの形でこのような評価や研究を行ってきた。しかし、Appleの研究が直接App Storeで公開されることはあまり多くない。

このアプリをより秘密にしておくために企業向けの配布プロセスを通じて公開することもできたはずだが、Appleは公開マーケットプレイスを利用することを選んだ。これは調査研究がAppleの従業員だけを対象とした社内向けのアプリではないためか、App Storeのルールに沿ったものとなっている。

しかし、一般ユーザーがこのアプリを偶然見つけて混乱することはまずないだろう。Siri Speech Studyアプリは、発見されないように隠されており、アプリのダイレクトリンクがなければ見つけることができない(我々が詮索好きでよかった)。

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画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

Adobeがビデオ・クリエイティブの雄Frame.ioを1400億円超の巨額で買収

米国時間8月19日、AdobeはFrame.ioをキャッシュ12億7500万ドル(約1400億円)で買収したことを発表した。ビデオレビューとコラボレーションを中心とする同プラットフォームは、現在100万以上のユーザーが利用している。

2014年に、ポストプロダクション企業のオーナーEmery Wells(エメリー・ウェルズ)氏と技術者のJohn Traver(ジョン・トラバー)氏がニューヨークで創業したFrame.ioは、駆け出しの映画作家が直面するワークフローの問題を解決することを目的としている。

今やFrame.ioのプラットフォームは、プロのクリエイターたちをサポートし、ビデオの制作過程を合理化、ラッシュや台本、ストーリーボードなどのメディア資産を集中管理したり、フレーム単位のフィードバックやコメント、注釈、リアルタイムの承認などを受け入れる。また同社は、VimeoやBox、Dropboxなどの他社よりもアップロードが速いことが自慢だ。

Frame.ioはこれまで9000万ドル(約98億9000万円)のベンチャー資金を調達し、2019年の11月にはInsight Partnersがリードする5000万ドル(約54億9000万円)のシリーズCを発表している。これには、Accel、FirstMark、SignalFire、そしてShasta Venturesが参加した。2015年に同社のシードとシリーズAのラウンドをリードしたのはAccelだった。

Adobeによると、Frame.ioはPremiere Proやビデオ編集のAfter Effectsなどのようなクリエイティブのソフトウェアと、レビューや承認などの機能性が組み合わさって、ビデオ編集の工程を動かすコラボレーションプラットフォームを作り出す。Frame.ioのウェブプラットフォームは、それが顧客の既存の工程の一部になれるように設計されており、たとえばAdobe Premiere Proのようなノンリニア編集システムの統合もできる。そういう統合があるために編集者はFrame.ioに直接アップロードでき、プロダクトを内部的にも、あるいは外部顧客と共同でも編成したり共有ができる。

Adobeは今日の声明で次のように述べている。「最新の娯楽作品のストリーミングであれ、あるいは運動に点火するソーシャルメディアであれ、また何千人ものリモートワーカーを結びつける企業のビデオであれ、今やビデオの創造と消費はとてつもない成長を経験しています。しかし今日のビデオのワークフローは複数のツールと、ステークホルダーのフィードバックを誘うために使われている複数のコミュニケーションチャネルによって分断されています。Frame.ioは映像のリアルタイムのアップロードとアクセス、そして全作業面にわたる安全でエレガントな体験としてのステークホルダーのインラインコラボレーションを可能にして、ビデオのワークフローの非効率を排除します」。

今回の買収はAdobeの2021会計年度の第4四半期中に完了すると予想され、その過程には規制当局からの承認や慣例的な完了条件が含まれる。完了後にウェルズ氏とトラバー氏はAdobeに加わる。ウェルズ氏はFrame.ioのチームの統轄を続け、Adobeのプロダクト担当最高責任者(CPO)でCreative Cloudの執行副社長でもあるScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏が直接の上司となる。

ForresterのシニアアナリストであるNick Barber(ニック・バーバー)氏は、ビデオは人間の感情にインパクトを与える最強のメディアであり、今後ますます多くの企業がビデオを利用していくと考えている。

バーバー氏によると「Frame.ioがAdobeの傘下に入ったことによって、同僚たちと一緒に行うビデオ編集が、まるでGoogleドキュメント上のコラボレーションのようになるだろう。この買収よってAdobeはクリエイティブの工程の一段高いところに属することになるが、そんなAdobeにとってこの買収における最大のチャレンジは、大型のプロダクションハウスではなくて、ためらいや予算制限のあるブランドにこの買収の成果を積極的に採用してもらうことだ」という。

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画像クレジット:Frame.io

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Hiroshi Iwatani)

サーバーレスCMSのWebinyがサーバーレス開発フレームワーク提供のために資金調達

2019年にオープンソースのサーバーレスCMSを発表した、アーリーステージのスタートアップWebiny(ウェビニー)は、CMSの構築を支援するフレームワークも開発していた。しかし同社はまた、顧客が自身のサーバーレスアプリの構築を支援する環境にも興味を持っていることに気が付いた。米国時間8月18日、Webinyはこの2つの製品の開発を継続するために、350万(約3億8400万円)ドルのシードラウンドを発表した。

今回のラウンドを主導したのは、Microsoft(マイクロソフト)のベンチャーファンドであるM12だ。そしてSamsung Next、Episode 1、Cota Capital、その他無名の投資家たちが参加している。同社は2019年に、34万8000ドル(約3817万円)を調達している。

Webinyの創業者であるSven Al Hamad(スベン・アル・ハマド)氏によれば、同社を立ち上げたときにはサーバーレスが未来になることを予感し、オープンソースのサーバーレスCMSを作ることから始めたそうだが、その後おもしろいことが起きたのだという。

「私たちは、実際に声をかけてきた300社以上の企業さんと話をしましたが、彼らもまた、未来はサーバーレスインフラの上に構築されると考えていたのです。彼らは私たちが構築したCMSにも興味を持っていましたが、それ以上に興味を持っていたのが私たちがそのCMSを構築した方法でした。なぜなら、彼らもサーバーレスを試みながら、満足のいく結果を得られていなかったからです」とアル・ハマドは説明する。

そのことによって、Webinyチームが、CMSを構築するためにその基盤となるサーバーレスフレームワークの構築に大半の時間を費やしていることが明らかにされた。このことからアル・ハマド氏は、フレームワークとCMSの両方をマーケティングして販売するべきなのではないかと考え始めたのだ。

「いまでもCMSに対する興味はたくさん寄せられています。しかし、多くの企業は、コンテンツプラットフォームの一部にCMSを利用するだけでなく、カスタムAPIやカスタムビジネスロジックを構築しすべてをサーバーレスで実現するという、両方の機能を求めていたのです」と彼はいう。

関連記事:サーバーレスとコンテナは両者を一緒に使うのがベストプラクティスだ

こうして、アル・ハマド氏は自分のスタートアップには2つの製品があることに気が付き、会社を成長させるための新たな資本を得ることとなったのだ。彼は今でもコミュニティの構築に取り組んでいて、1000人近い開発者が参加するSlackコミュニティを主催している。この先の目標は、この資金を使って、オープンソースで提供している製品の上に、商用製品の構築を開始することだ。

そうした商用製品には、複雑な環境に対応する管理機能、シングルサインオン、より優れたセキュリティなどを備えた、ある程度のエンタープライズ機能が必要になる。

サーバーレスは、自動化された方法でインフラを提供する方法の1つで、開発者は正確な量のリソースが提供されるかどうかを心配することなく、アプリケーションの構築に集中することができる。しかしそのためには、関数やトリガーを書くなどの、非常に特殊なプログラミング方法が必要になる。Webinyのサーバーレスフレームワークは、開発者がこのような特殊なアプリと、それをすべて機能させるための仕掛けを構築できるように設計されている。

現在同社の従業員は9名で、2021年中に6名程度を追加する予定だ。アル・ハマド氏は、多様性は最重要課題だが、技術系人材のタイトな市場では課題が大きいという。「私たちは多様性について制約抜きに考えていますが、市場で実際にみつかる人材との兼ね合いが、そのバランスを見つけることを非常に難しくしています」と彼はいう。彼は、STEM分野でより多様な人材を育成するために、社会システム全体で努力する必要があるという。しかし彼は、困難にもかかわらず、多様なスタッフを探す努力を続けていくつもりだ。

現在従業員は分散しているというが、オフィスに戻れるようになったら、人が多くいるところにオフィスを開設して、いつでも自由に出社できるようにするつもりだという。

関連記事:理想のCMS開発運用環境としてサーバーレスを目指すWebinyが3700万円超を調達
画像クレジット:imaginima/Getty Images

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(文: Ron Miller、翻訳:sako)

アップルが不評だったSafariの変更点をiOS 15 beta 6で修正、再びアドレスバーの上部表示も可能に

Apple(アップル)は、次期iOS 15でモバイル版「Safari(サファリ)」のデザインを変更し、アドレスバーを画面の下部に移して、ページのコンテンツの上に重ねる(フローティングさせる)としていたが、物議を醸したこの決定から、ゆっくりと後戻りしつつあるようだ。このデザイン変更は、片手でSafariの操作がしやすいようにすることを主な目的としていたものの、実際にはこれによって以前より使いにくくなったという批判を受けていた。今回リリースされた最新のベータ版であるiOS 15 beta 6では、アップルはユーザーからのフィードバックや不満に応え、ページコンテンツの下にタブバーを表示するようにデザインを修正。このアップデートが気に入っていた人にも、標準的な体験を提供することになった。さらに重要なのは、アップルが画面下のタブバーをユーザーに強制しなくなったことだろう。

関連記事:アップルが物議を醸しているiOS 15のSafariの変更を最新ベータで微調整

最新リリース版では、アドレスバーを以前のようにページの上部に表示するオプションが追加されたのだ。今回のアップデートが気に入らなかったユーザーは、これで「普通」に戻すことができる。

タブバーの変更前と変更後(画像クレジット:スクリーンショット)

フローティングしたタブバーに対する大きな不満は、ウェブページによってはクリックしたいボタンやリンクがこのタブバーに遮られてしまうため、ほとんど使えなくなってしまう場合があることだった(タブバーに遮られた箇所をクリックするためには、いちいちタブバーを下にスワイプしなければならなかった。これでは最適なデザインとはとてもいえない)。

iOS 15のSafariでは下のバーのせいでチェックアウトボタンが押せないので、テイクアウトの注文ができない日が続いている。

あのブルスケッタを食べさせてくれないなんて、ありがとうSafari

フェデリコ・ヴィティッチ

iOS 15 beta 6では、これらの問題が解決されている。基本的に、タブバーの外観は以前のように、つまり画面の上部に設置されていた頃と同じように、見慣れたボタンが並んでいる。タブバーがウェブサイトのコンテンツを遮ることもなくなった。

ベータ版をテストした人からは、リロードボタンやリーダーモードなどのよく使う機能を、3つのドットで表示された「その他」メニューの下に隠すというアップルの独自の判断が、Safariを以前よりも使いにくくしているという指摘もあった。iOS 15 beta 4では、この問題を解決するために、リロードボタンと共有ボタンを復活させ、リーダーモードが利用可能な場合は表示されるように修正した。しかし、それでもボタンは小さく、以前よりもタップしにくかった。

新たに変更されたタブバーと、それが画面の上下に関わらず、普通に戻ったことは、この問題に関するユーザーの不満が妥当であると、アップルが事実上認めたことになる。また、これはベータテストの本来の目的である、新しいアイデアを試して、うまくいかなかった点は修正するということのデモンストレーションでもある。

この修正とは別に、beta 6ではタブバーをページの最上部に戻すこともできるようになった。そちらの方が好みであれば「設定」→「Safari」で、デフォルトの「タブバー」と、アドレスバーを画面上部に配置する「シングルタブ」のいずれかを選択できるようになった(ただし後者を選択すると、タブバーでは可能だった、開いているタブをスワイプして切り替える機能が失われる)。

アップルがデフォルト設定の代替となる選択肢を用意するのはよくあることだ。例えばMacのトラックパッドでは、ジェスチャーやクリックがどのように機能するかをユーザーが設定できるようになっているし、かつて物議を醸した「自然な」スクロール方向のオプションをオフにすることもできる。しかし、アドレスバーを最上部に戻すオプションが追加されたことは、iPhoneで最も頻繁に使用されるアプリケーションの1つであるSafariの使い方を学び直したくないと考えるユーザーが相当数いると、認めたということである。もし、そのようなユーザーにこの変更を強要すれば、彼らは代わりに他のブラウザを使うようになるかもしれない。

アップルは通常、iOSソフトウェアの最新版を秋にリリースするため、一般公開に先立って行われるSafariの変更は、今回のアップデートが最後になるかもしれない。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleiOSiOS 15ベータ版ブラウザSafariアプリ

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中小企業向けERPプラットフォームの独xentralがTiger Globalなどから82.2億円のシリーズB調達

エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)システムは、従来は大企業が使うものだったが、近年では中小規模の企業が生成するデータ量が増加し、中小企業(SMB)でもERPの世界に参入できるようになってきた。特にオンラインだけのビジネスでは、その傾向が顕著だ。

年初に、オンラインの中小企業向けERPを開発するドイツのスタートアップxentral(ゼントラル)が行った、2000万ドル(約21億9000万円)のシリーズAラウンドについて取り上げたが、もちろんxentralはそれだけで終わらせるつもりはなかった。

今回xentralは、既存の投資家であるSequoia Capital、Visionaries Club(ベルリン発のB2Bに特化したVC)、Freigeistに続き、Tiger GlobalとMeritechから7500万ドル(約82億2000万円)のシリーズB調達を行った。

今回の資金は、製品の強化、スタッフの雇用、2023年には320億ドル(約3兆5000億円)に達すると予想されるグローバルなERP市場を睨んだ、英国事業の拡大に使用される。

xentralの創業者でCEOであるBenedikt Sauter(ベネディクト・ザウター)氏は、電話で次のように語った。「わたしたちはShopify(ショッピファイ)、eBay(イーベイ)、Amazon(アマゾン)、Magento(マジェント)、WooCommerce(ウーコマース)、そしてPipedrive(パイプドライブ)のようなCRMシステムに接続してソフトウェアを1カ所に集め、企業が本当に業務に集中できるようにバックグラウンドですべてを自動的に行うようにしています。私たちの目標は、金曜日に柔軟なERPが必要だと判断した経営者が、その週末にxentralを導入・設定し、月曜日にはチームに引き渡せるようにすることです」。

同スタートアップは、受注・倉庫管理、パッケージング、フルフィルメント、会計、販売管理などのサービスをカバーしており、現在、1000社の顧客の大半がドイツ国内にいる。顧客には、YFood(ワイフード)、KoRo(コロ)、the Nu Company(ニューカンパニー)、Flyeralarm(フライヤーアラーム)などのダイレクト・トゥ・コンシューマー(D2C)ブランドが名を連ねている。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クーティウス)氏は次のように語っている。「私たちの調査によれば、xentralの顧客から喜びの声が寄せられていること、そして世界中のeコマース事業者にとって真のミッションクリティカルなプラットフォームに進化した製品を提供していることが明らかになりました。今後、ヨーロッパだけでなく世界中のお客様にサービスを提供するために事業を拡大していくにあたって、ベネディクトやクラウディアのような製品のビジョンを持った方々とパートナーになれることをうれしく思っています」。

xentralは、Sequoiaが2021年ヨーロッパで正式に事業を開始して以来、初めての投資案件だ。Sequoiaはこれまでには、Graphcore(グラフコア)、Klarna(クラルナ)、Tessian(テシアン)、Unity(ユニティー)、UiPath(ユーアイパス)、n8n、Evervault(エバーボルト)などの欧州の スタートアップを支援してきたが、これらの取引はすべて米国で行われてきた。Sequoiaとその欧州における新しいパートナーであるLuciana Lixandru(ルシアナ・リキサンドル)氏は、VisionariesのRobert Lacher(ロバート・レイチャー)氏とともにxentralの取締役会に参加すると考えられている。

MeritechのゼネラルパートナーであるAlex Clayton(アレックス・クレイトン)氏は次のように語る「Meritechは、ERPをクラウド化するというビジョンのもと、2008年にNetSuite(ネットスイート)に投資しました。xentralは、何十万もの中小企業に自動化をもたらし、成長を続けるeコマース市場におけるマルチチャネルプロセスとデータ管理を劇的に改善すると信じています」。

ベネディクト・ザウター氏と共同創業者であるClaudia Sauter(クラウディア・ザウター)氏(妻でもある)は、もともとは彼らの最初のビジネスであるコンピューターハードウェア販売のために、xentralの初期プロトタイプを作ったのだ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:xentralTiger Global資金調達中小企業ERPドイツ

画像クレジット:Xentral

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(文:Mike Butcher、翻訳:sako)

現場作業員にスマートモバイルアシスタントアプリを提供するYoureka Labsが約9.3億円調達

モバイルフィールドサービスのスタートアップ企業であるYoureka Labs Inc.(ユーリカ・ラボ)は、シリーズAラウンドで850万ドル(約9億3000万円)の資金を調達した。この投資ラウンドはBoulder Ventures(ボルダー・ベンチャーズ)とGrotech Ventures(グロテック・ベンチャーズ)が共同で主導し、Salesforce Ventures(セールスフォース・ベンチャーズ)も参加した。

メリーランド州を拠点とする同社は、IBM Cloud(IBMクラウド) & Watson Platform(ワトソン・プラットフォーム)でゼネラルマネージャーを務めていたBill Karpovich(ビル・カルポヴィッチ)氏がCEOに就任したことも正式に発表した。

Youreka Labsは、Salesforceをはじめとする人工知能や自動化技術を活用してカスタマー・リレーションシップ・マネジメントの変革に特化したクラウドコンサルティング事業を行っている親会社のSynaptic Advisors(シナプティック・アドバイザーズ)からスピンアウトした会社だ。

同社は、現場で働く人々がより安全かつ効率的に仕事をこなせるようにするためのスマートモバイルアシスタントを開発している。これには、ガイド付き手順書、スマートフォーム、写真やビデオのキャプチャなどが含まれる。また、YourekaはField Service Mobile(フィールド・サービス・モバイル)のような既存のSalesforceモバイルアプリケーションにも組み込まれており、エンドユーザーは1つのモバイルアプリから操作できるようになっている。

Yourekaは現時点では、ヘルスケア、製造業、エネルギー・公共事業、官業という4つのユースケースを特定している。Shell(シェル)、P&G、Humana(ヒューマナ)、Transportation Security Administration(米国運輸保安庁)などの企業や機関と提携しており、同社のテクノロジーは、現場の同僚と知識やプロセスを共有することを可能にすると、カルポヴィッチ氏はTechCrunchに語った。

「例えばヘルスケアの分野では、医師からの複雑な医療評価を、シンプルなモバイルアプリにデータを集約することで役に立つ形にして、現場で働く看護師に送り出します」と、カルポヴィッチ氏は続けた。「これにより、看護師は自分が医師でなくても、優れた仕事ができるようになります」。

カルポヴィッチ氏は、シリーズAの資金調達を実施した理由について「そろそろ自分たちの力でやってみる時期」だからと語っている。同氏のもとには投資家から関心が寄せられており、この資金があれば会社をより迅速に前進させることができる。現在、同社はSalesforceのエコシステムに注力しているが、これは時間の経過とともに変化する可能性があると、同氏は付け加えた。

今回調達した資金は、同社の活動範囲と製品を拡大するために使用される。カルポヴィッチ氏は、今後半年から1年の間にエンジニアリング部門のチームを倍増させることで、そのプラットフォームを拡大することができると期待している。Yourekaは現在、100社の顧客を抱えているが、これをさらに成長させるために、カルポヴィッチ氏はマーケティングにも投資したいと考えている。

すでに特定されているユースケースに加え、金融サービスや保険、特に損害を査定する業務に同社の潜在的需要があると、カルポヴィッチ氏は見ている。同社の顧客は今のところ米国に集中しているが、カルポヴィッチ氏は英国や欧州での展開も計画している。

同社は2020年に300%の成長を遂げたが、これはフィールドサービスにおいて、この種のツールが必要とされているためだと、カルポヴィッチ氏は考えている。Yourekaは、エンドユーザーごとに月額課金するライセンスモデルの他、アプリを作成する人のための管理者用ライセンスも用意しており、こちらもユーザーごとの月額課金制となっている。

「企業が適切なスキルを持った人材を見つけることができないために、現在250万件の求人が出ています」と、カルポヴィッチ氏はいう。「私たちの製品は、これらの仕事にアクセスできるようにします。AIが人の仕事を奪うという人もいますが、私たちはAIを使って人の仕事を強化します。90%の知識を持ち、経験の少ない人に、を与えることができれば、非常に多くの雇用機会を切り開くことができるでしょう」。

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タグ:Youreka Labs Inc.資金調達アプリSalesforce

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

名刺の復活、株式公開はなぜ良いことなのか、BNPLはどこにでもある

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。
みなさんこんにちは。昼食にグリルドチーズを堪能したあと、この記事を書きはじめている。だがアイスコーヒーをたっぷり用意したおかげで、食後の眠気をかわしながら仕事にとりかかることができているというわけだ。今回はまず、かなりすてきベンチャーラウンドについて話し、とある創業者に対象の産業分野の話を聞き、Marqeta(マルケタ)の収益レポートについてとりあげる。ということで、手元にはフィンテックとSaaSと公開企業に関するメモを用意している。では始めよう。

HiHello(ハイヘロー)の野心的なシリーズA

Manu Kumar(マヌ・クマール)氏のことはよくご存かもしれない。彼はK9 Venturesのベンチャーキャピタリストだ。しかし、彼は同時にスタートアップも立ち上げており、今回私たちが興味を寄せるのはそちらの方の取り組みだ。

HiHelloという名のそのスタートアップは、最近750万ドル(約8億2000万円)のシリーズA調達を行ったことを発表した。Foundryがラウンドを主導し、Lux Capitalが参加し、多くのエンジェルたちも小切手を切っている。ここまでは、ごく普通の話だ。しかし、このラウンドがHiHelloのストーリーのおもしろい部分というわけではない。おもしろいのは同社が作っているものだ。

ここで質問。名刺を最後に注文したのはいつだろう?率直に言って私は思い出せないが、最後の仕事からTechCrunchに戻るまでの間のどこかで、新しいカードを入手することをやめてしまった。それは、単に新型コロナの影響や、私が今サンフランシスコから遠く離れて住んでいることだけが理由ではない。実際あまり役に立っていないように見えたので、考えることもなかったのだ。

HiHelloは、インターネット用の未来の名刺といったものを構築している。クマール氏によれば、たとえデジタルの世界であっても、誰もが自分のアイデンティティを示し、自己紹介する方法を必要としているという。もちろん、予定された集会ならば事前に準備することはできるだろう、と彼はいう。しかし、どちらかといえば予定外に人と会うときには、自分のアイデンティティを伝える方法を持っていることは役に立つ。

ということで、HiHelloを使用すれば、一種の仮想名刺を自分で作成することができる。ただし1つだけではなく、ペルソナごとにそれぞれ1種類ずつ、複数の名刺を持てるようにしようというのがアイデアだ。クマール氏は、たとえば私がポッドキャスト(EQUITY)用に1つ、TechCrunch本体用に1つと複数の名刺を持つことができるという。もちろん仕事用ではない個人用名刺も作ることができる。

私は名刺は死んだと思っていたし、二度とそれを用意する必要はないと思っていた。クマール氏の意見は違う。彼は、HiHelloが事実上、コンテキストを中心とした個人的なソーシャルネットワークを生み出すことができる未来を見ているのだ。それは大胆で直感に反する主張だ。言い換えるなら、スタートアップの良いネタだ。

HiHelloは現在、消費者から収益を得ており、ビジネスプロダクトも持っている。このスタートアップがどれだけ早く成長できるか見守りたい。新しい種類のソーシャル製品に期待できる時が来たのだろう。

対象産業を選ぶ

Skyflow(スカイフロー)については何度か書いたことがある。共同創業者のAnshu Sharma(アンシュ・シャルマ)氏は長年の知り合いだ。最初に会ったのは彼がStorm Ventures(ストーム・ベンチャーズ)にいたときのことだ。その後、彼はエンジェルとして投資を続け、何社かを創業した。そのうちの1つがSkyflowだ。このソフトウェアスタートアップは、PII(個人情報)やその他の重要な情報を顧客に代わって保護し、安全な方法でアクセスできるようにする「デジタル金庫」を販売していて、情報セキュリティに全力を注げない企業が、侵害を回避できるようにしている。

このビジネスモデルは成功しており、Skyflowはかなりの速さで資本を調達している。シャルマ氏はこれまでのところ、顧客の広がりを喜んでいるようだ(シャルマ氏はまた、私が先日エッセイを書くのに役立ったメモを提供してくれた)。

そんなSkyflowが最近、ヘルスケア市場向けに特化した製品を発表した。会社の最初の立ち上げから追跡をしてきたので、私は興味を惹かれた。それで、私はシャルマ氏に電話をかけて彼の産業戦略の話を聞いた。彼がどのように追求していく市場を選んでいるのか、そして彼が次に会社をどちらへ連れて行くのかに興味があったのだ。

シャルマ氏は、彼の会社の計画は、複雑な市場でその技術を証明し、その後、時間の経過とともにその力を拡大することであるという。ということからヘルスケアを推進し、財務データの保管をSkyflowの中で扱うのだ。難しい問題を解決し、彼がいうところの複雑な顧客に販売することによって、Skyflowは他の人びとにその技術を提供するための信用を市場から得ることができる。

彼の視点からは、私たちはプライバシーを重視して、インターネットをゼロから「再配線」する必要があるように思えるのだ。初期段階から決済技術を取り込まなかったことがいかに間違いであったかを語るMarc Andreeseen(マーク・アンドリーセン)氏の言葉をシャルマ氏は引用しながら、ウェブの黎明期に2つのことが忘れられていたのだと主張する。そう、支払いプライバシーだ。

したがって、Skyflowの産業戦略は、可能な限り最も困難な問題(医療データはあらゆる種類の規則や規制に関係している)に取り組み、PIIがすべての人にとってより安全になるまで範囲を広げていくことなのだ。これは、インターネットがどこに向かっうかについての、基本的には楽観的な取り組みである。それはプライバシーが理屈の世界に留まりアドテックが永遠に残り続けるFacebookの世界ではなく、データがユーザー自身のものであり、安全に保存され外からは手の届かない世界のことだ。

Skyflowがこの先向かう環境での競争は厳しくなるだろう。しかし、個人にプライバシーを取り戻したいというスタートアップの、たとえ一部だけでも成功するならば、私は満足するだろう。

Marqetaの初の業績報告会

2021年見たIPOの波の中でやや目立たなかったのは、カード発行分野に携わるフィンテックユニコーンのMarqetaのデビューだった。同社は先週、初の公的業績報告会を行った。そこで同社CEOのJason Gardner(ジェイソン・ガードナー)氏と、その内容について電話で大いに話し合った。

簡単にいえば、Marqetaは第2四半期に急速に成長し、期待を軽々と上回った。しかし、同社は市場が予想していたよりも多くの金を失い、その結果IPO後の株価の値上がり分を事実上すべて失った。

電話からのメモをいくつか。第一に、ガードナー氏は公募価格を上回ったことに満足しているようだ。1年半にわたるIPOが終了した今、会社経営に打ち込めるチャンスを取り戻せたという。また、これまでは年に一度話していた取締役会での計画発表が、四半期報告書になったことが楽しかったという。より定期的な情報開示が会社の仕事に緊張感をもたらすからだ。

普段は非公開企業のCEOが、わずらわしい業績報告会などを心配している話を聞くことが多いので、公開企業の経営者が自分の会社の発展を褒めているのを聞くのは、少し新鮮だった。このことを聞いて、公開を好む理由は違っているもののBigCommerce(ビッグコマース)のCEOであるBrent Bellm(ブレント・ベルム)氏から聞いた公開に関するコメントを思い出した。

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しかし、スタートアップの世界を理解する上でより重要だったのは、MarqetaのBNPL(後払い)市場に関するメモだった。Klarna(クラーナ)の台頭をきっかけに、Square(スクエア)がAfterpay(アフターペイ)を買収し、そして数多くのBNPLスタートアップのラウンドを経て、Marqetaが自社の成長市場としてBNPL(今すぐ購入、後で支払い)の分野に注目していることが私たちの関心をとらえた。BNPLが、カード発行プラットフォームの役に立つのは何故だろう?

要するに、Marqetaなどが顧客のために発行したバーチャルカードが、BNPLの取引を可能にするソフトウェアの一部として使用されることが多いことがわかったからだ。フィンテックの世界は、常に予想以上に相互につながっている。ということで、BNPLというカテゴリーを考える際には、その成長が他のどのような分野の成長と関わっているのかにも注目したいと思う。これにより、BNPLの波に乗ることができるスタートアップの数が増えるからだ。

最後にもう1つ。馴染みのない市場のダイナミズムの説明を得るには、公開されている企業のCEOに説明してもらうのが一番早い。ただ、このようなやり方の欠点は、もう少しで理解しかけていたのに、たった1つの重要な要素を見逃していただけという場合に、CEOがささやかな一言で気づかせてくれたときに、自分が理解できなかったことをとても残念に感じてしまうことだ。

とはいえ、実際には自分がとても愚かだという自覚はあるので、何かを知らないことで顔を真っ赤にすることはない。さて、今日はここまでにしよう。

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:The TechCrunch ExchangeHiHello名刺新規上場SkyflowMarqetaBNPL

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

RDBをノーコード化して人気上昇のAirtableが初めての買収でデータ視覚化のBayesを獲得

ノーコードのリレーショナル・データベースを作っているAirtableが今日(米国時間8/11)、同社の初めての買収として、アーリーステージの視覚化スタートアップBayesを獲得することを発表した。買収の目的は、Airtableの上でデータをもっと視覚化できるようにすることだ。両社は、買収の価額を公表していない。

Airtableと同じく、Bayesもノーコードを重視しているので、両社は共に、かつては専門の技術者を必要とした仕事を単純化する、というビジョンを共有している。AirtableのCEOで共同創業者のHowie Liu氏によると、買収を考えていたわけでないが、そんな機会がたまたまやってきてしかも、そのチームとプロダクトがAirtableのノーコードという考え方に沿うものだった、という。

Liu氏は曰く、「チームとプロダクトに一目惚れした。それは、データの視覚化を面白くてユーザーフレンドリーなものにするというビジョンに貫かれていて、これならうちでも使える、と直感した。そんなデザイン思考はAirtableのプロダクトにも合うものであり、顧客が前よりもずっと良いデータの視覚化をできるようになる」。

Bayesの4人の社員はAirtableに加わり、数か月後には製品を閉鎖し、その機能性をAirtableに合体させるつもりだ。

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Bayesの共同創業者であるWill Strimling氏によると、彼のスタートアップはAirtableとの相性がとても良い。そもそも2019年にBayesを創業したときも、Airtableが大きなヒントになったのだ。そして実際に話を始めてみると、これは一緒になった方が良い、という気になってきた。「お互いのロードマップや将来計画を突き合わせてみると、これは一緒にやった方が両社の単なる和以上のものになれる、と直観した。ユーザーにとっては、Airtableから得られる情報がより濃くなるし、レポート機能はワークフローの管理をずっと充実するだろう、と感じられた」、とStrimling氏は言っている。

Airtableは、現状のプロダクトでも若干の視覚化機能はあるが、しかしLiu氏によると、Bayesはやれることのレベルが違う。Bayesがあれば、Airtableのユーザーがその上に独自のインタフェイスを作れる。Liu氏はこう語る: 「データのグラフ化やリポート作成が、もっと高度なやり方でできる。Airtableの本当にカスタムなインタフェイスの作成能力を私たちの顧客に与えるために、投資をしてるんだ」。

Liu氏によると、これまでの同社は買収を考えるほどの大きさではなかったが、社員が500名になった今では、十分に大きいと感じられるし、今では役員たちにも買収を進める能力があるだろう。「自分の会社が小さいと思っている間は、買収という考え方はなかなか飲み込めないが、十分な規模に達したら、人材を取得してロードマップを加速するのも悪くない、と思えるようになる」、という。

Airtableは2013年に創業され、これまで6億ドルを調達している。最近のラウンドは2億7000万ドルのシリーズEで、評価額は57.7億ドルと大きかった。だから、買収へ向かうほどの財務的余裕もあった、と言える。近い将来、もっと買収を検討してもよいだろう。

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)
画像クレジット: ConceptCafe/Getty Images

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アップルがiPhoneエミュレーションソフトメーカーCorelliumへの訴訟を取り下げ

Apple(アップル)が2019年のCorelliumとの訴訟を解決した。Corelliumは仮想iOSデバイスを開発しており、Washington Postの記事によるとセキュリティ研究者たちはそれらを利用して、iPhoneやその他のiOSデバイスのバグを見つけていた。解決の内容や条件は公表されていないが、その合意が為される前にAppleは、2020年後期の紛争で重要な敗訴を経験していた。

ユーザーはCorelliumのソフトウェアを使って、コンピューターのブラウザ上で仮想iPhoneを動かし、実機がなくてもiOSに深くアクセスできる。Appleは、CorelliumはAppleの著作権を侵犯しただけでなく、その製品を無差別に売ることによってプラットフォームのセキュリティを危殆化した、と主張した。

特にAppleは、Corelliumがその製品を政府に売って、Apple製品の欠陥を調べられるようにしたと非難した。Corelliumの共同創業者であるDavid Wang(デビッド・ワン)氏は、別の会社の社員だったときに、サンバーナーディーノ銃乱射事件の犯人であるテロリストが使っていたiPhoneの、FBIによるアンロックを手伝った

しかしながら判事は、著作権侵犯の訴えは「不誠実とはいえないまでも当を得ていない」として棄却した。その判決よると「法廷の所見ではCorelliumは公正使用の達成という難題を満たしており」、そのかぎりでのiOSの使用は許される、としている。

Corelliumは2021年の初めに、そのプラットフォームの個人サブスクライバーへの提供を開始しており、それまではエンタープライズのユーザーのみ可としていた。同社によると、アクセスのリクエストは個々に審査して悪用を防いでいる、という。

編集者注記: この記事の初出はEngadget。Steve DentはEngadgetの編集者。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleiPhoneiOSエミュレーション裁判Corellium

画像クレジット:Kiichiro Sato/AP

(文:Steve Dent、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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CRANQは外部から移入したテキストソースコードのオーサリングを楽にするビジュアルIDE

CRANQの創業者たち

サードパーティー製のソースコードをテキスト状態でコピーしようとすると、それはたいへん面倒な作業になる。デベロッパーたちは現在、1日の大半を費やして「NPM」のパッケージなどをレビューしている。デベロッパーのためのライブラリやテキストコードのプラットフォームとしてJetBrainsやVisual Studioがあるが、それらが問題を完全に解決してくれるわけではない。しかし英国のスタートアップCRANQは、その答えを見つけたという。

CRANQは、ローコードのIDE(Visual Studioのような統合開発環境)で、再利用性の高いコンポーネントオーサリングが可能だという。標準化されたデータタイプとポートに重点を置いているため、意図を簡単に確認することができるという。同社は最近、VenrexとProfoundersから100万ポンド(約1億5000万円)の資金を調達した。

デベロッパーはこのIDEの中で、ドラッグ&ドロップによりビジュアルにコードを作る。これまでそれは、Educai.ioのバックエンドの別バージョンを作るために使われていたが、近くアルファテストを始める予定だ。

共同創業者はToby Rowland(トビー・ロウランド)氏とDan Stocker(ダン・ストッカー)氏で、CEOのロウランド氏は2003年のKing.comの共同創業者として知られている連続起業家だ。最近作ったMangahigh.comは、2018年にWestermann Publishingが買収した。その後ロウランド氏は、運輸輸送業界のための水素市場向けに、RyzeHydrogen.comを創業している。

CTOのストッカー氏は、経験豊富なデベロッパー、ソフトウェアアーキテクトそして発明者だ。中でも特に同氏は、2012年に、FacebookのReactと競合するGiantを作った。

CRANQが今後テストに力を入れていくことによって、必然的にPostman.comと競合することになるだろう。また、ZapierやN8Nのようなワークフローツールも、CRANQと重なる。

しかしCRANQの対象市場はとても大きい。マイクロサービスの市場は2023年に320億ドル(約3兆5314億円)と言われている。一部の予想によると、その年成長率は16%だ。

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タグ:CRANQ資金調達イギリス

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ゲームエンジンUnityがリモートデスクトップ技術のParsecを同社史上最大約353億円で買収

人気の2D/3Dエンジン「Unity(ユニティ)」を開発しているUnity Technologies(ユニティ・テクノロジーズ)は米国時間8月10日、同社史上最大の買収計画を発表した。開発者やクリエイター向けのリモートデスクトップツールを開発しているParsec(パーセク)を、Unityが現金3億2000万ドル(約353億円)で買収するという。

Parsecは、妥協のないリモートデスクトップアクセスを実現する技術で長年知られてきた会社だ。同社のアプリケーションはクリエイター向けにチューニングされており、高解像度のディスプレイを複数台使用していても問題なく動作する。作業中のアートワークを圧縮することなく共同作業者にストリーミングすることができ、感圧式ドローイングタブレットのような優れた入力デバイスとも互換性が高い。

2016年に誕生したParsecは、当初はゲーマーが強力なPCから、他者の(一般的にはそれほど強力ではない)デバイスにゲームをストリーミングすることに焦点を当てていた。しかしその低遅延、高解像度ディスプレイのサポート、さまざまな入力デバイスとの互換性といった、ゲームプレイヤーにとっての利点は、ゲームメーカーにとっても同じように有用であることが後にわかった。クリエイティブな業界における多くのユーザーが、Parsecを利用してワークステーションに映像を送っていることに気づいた同社は、クリエイティブなチームのためのプランや機能の提供を開始した。新型コロナウイルスの影響により、オフィスを離れて自宅で作業するチームが増えるようになると、Parsecの使用率は一気に高まった

「私たちは、クリエイターがどこでも仕事できることが、ますます必要になると考えています」と、UnityのMarc Whitten(マーク・ウィッテン)上級副社長は、今週初めの電話インタビューで語った。「彼らは、距離的に分散したグループで仕事をしたり、時にはオフィスで、時には自宅で仕事をするような、ハイブリッドな環境に身を置くことになるでしょう」。

「そうすると、クリエイターはどこにいても、自分の持っている画面で必要なパワーにアクセスできることを求めるようになると思うのです」と、ウィッテン氏は続けた。「Parsecは、その分野において大きな革新を成し遂げてきたすばらしい企業の1つです」。

ウィッテン氏は、これがUnityにとって、クラウドにより深く取り組む動きの始まりであることも示唆した。「Parsecは、私たちが会社として持っているクラウドに向けた広範な野心の、すばらしい基礎ブロックとなることがおわかりいただけると思います」と、同氏はいう。「この点に関しては、今後も多くのことを期待していただいて構いません」。

Crunchbaseによると、買収前のParsecの資金総額は3300万ドル(約36億5000万円)。直近の資金調達は、2020年12月にAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が主導した2500万ドル(約27億6000万円)のシリーズBラウンドだった

ウィッテン氏によると、Parsecの既存ユーザーにとっては何も変わらない予定だというが、サブスクリプションや価格が変更になる可能性については、まだコメントできないとのことだった。

なお、Parsecの無料サービスが廃止されることを心配しているユーザーのために、同社は「Parsecの無料アプリについて何かを変更する予定はない」とツイートしている。

ああ、それからもう1つ。私たちはゲームを取り巻くコミュニティを愛しています。Parsecの無料アプリについては、今後も変更の予定はありません。プロフェッショナルなクリエイターのみなさんには、次のすばらしい格闘ゲームを作る喜びを、ゲームをプレイする喜びと同じくらい感じていただきたいと、私たちは願っています。

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タグ:UnityParsec買収リモートデスクトップゲームエンジン

画像クレジット:Parsec

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

「Android 12 Beta 4」最終ベータ版が配信開始、プラットフォーム安定性のマイルストーンに到達

Google(グーグル)は、Android OSの最新バージョンとなる「Android 12」のリリースに向けて、さらに一歩前進した。同社は米国時間8月11日、Android 12の第4ベータ版「Beta 4」を公開した。このベータ版で最も注目すべき点は、「プラットフォーム安定性(Platform Stability)」のマイルストーンに到達したことだ。これは、Androidアプリの開発者に影響を与える変更が最終的に完了したことを意味しており、開発者は後続リリースでの互換性を損なう変更を心配することなくアプリをテストすることができる。

今回アップデートされたAndroidバージョンでは開発者は多くの新機能を利用できるが、Googleは開発者たちに、まずはAndroid 12に対応するアップデートのリリースに注力するよう促している。Androidの新バージョンにアップグレードした際にアプリが正常に動作しないことが判明した場合、ユーザーはアプリの使用を完全に止めたり、あるいはアンインストールする可能性もあると同社は警告している。

​​Android 12に搭載されたコンシューマー向けの主な機能としては、「Material You」と呼ばれる、よりアダプティブな新しいデザインシステムが挙げられる。これにより、ユーザーはOS全体にテーマを適用して、Android体験をパーソナライズすることができる。また、アプリがマイクやカメラ機能を使用しているかどうかを示すインジケーターや、iOSと同様にユーザーのクリップボード履歴を読み取ったアプリに関してアラートを発する「クリップボード読み取り通知」など、新しいプライバシーツールも搭載されている。また、Android 12では、Google Play Instant(グーグル・プレイ・インスタント)機能により、ゲームをダウンロードしたら(インストールするステップなしに)すぐにプレイすることができる。その他、クイック設定、Google Pay、ホームコントロール、Androidウィジェットなど、Androidの主要な機能やツールも改善されている。

Googleはこれまでの「Android 12」ベータリリースにおいて、消費者向けのマイナーなアップデートを継続的にロールアウトしてきたが、Beta 4は、2021年秋に予定されているAndroidの一般公開に向けて開発者がアプリを準備することに重点を置いている。

画像クレジット:Google

同社は開発者に対し、設定の中の「プライバシーダッシュボード」でどのアプリがいつどのような種類のデータにアクセスしているかを確認できるようになったほか、マイクやカメラのインジケータライト、クリップボード読み取りツール、すべてのアプリでマイクやカメラへのアクセスをオフにできる新しいトグルスイッチなどのプライバシー機能の変更に注目するよう提案している。

また、従来の「グロー」オーバースクロール効果に代わる新しい「ストレッチ」オーバースクロール効果や、アプリの新しいスプラッシュ画面アニメーションkeygenの変更などにも留意しなければならない。また、開発者が使用するSDKやライブラリの中には、Googleやサードパーティ製のものを含め、互換性のテストが必要なものが数多くある。

新しいAndroid 12 Beta 4のリリースは、サポートされているPixelデバイス、およびASUS、OnePlus、Oppo、Realme、シャープ、ZTEなどの一部のパートナーのデバイスで利用できる。また、Android TVの開発者であれば、ADT-3開発キットを通じてBeta 4にアクセスできる。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Android 12AndroidGoogleスマートフォンベータ版OS

画像クレジット:Google

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(文:Sarah Perez、翻訳:Aya Nakazato)

日本の技術系人材サービス大手テクノプロがインドの老舗アプリ開発会社Robosoftを約119.4億円で買収

インドに本社を置くデジタルソリューションメーカーのRobosoft Technologies(ロボソフト・テクノロジーズ)はインド時間8月10日、日本のITサービス企業であるTechnoPro(テクノプロ)に1億800万ドル(約119億4000万円)で事業を売却することで最終合意に達したと発表した。

1996年に設立されたRobosoft Technologiesは、Macプラットフォームに特化したソフトウェアサービス会社としてスタートし、その後、アプリ開発サービスを提供していた。

Robosoftは、世界で最も早くApple(アップル)からMac OS開発者として認定された企業の1つであり、それ以来、数十年にわたりiPhoneメーカーから繰り返し認定を受けている。

「iPhoneが発売され、App Storeのエコシステムが構築されたことで、モバイルが大きな意味を持つようになると我々は早くから認識していました。それから世界中のクライアントのためにモバイルアプリを作り始め、迷うことなく進んできました」と同社はウェブサイトで述べている。

Ascent Capital(アセント・キャピタル)やKalaari Capital(カラアリ・キャピタル)が出資しているRobosoftは、ゲーム、ニュース、スポーツ、ユーティリティ、ライフスタイルなどの分野で顧客を持ち、さらにプロダクトアドバイザリー、デザイン、エンジニアリング、アナリティクスのためのツールなど、提供するサービスを拡大してきた。

例えば、インドのニュースネットワークであるニューデリーテレビ会社(NDTV)のオリジナルアプリは、Robosoftが開発したものだ。Robosoftのクライアントには、メディア大手のViacom(バイアコム)インドのマクドナルドなどが含まれる。同社は米国や中東にもクライアントを持っている。

2017年以降、Robosoftは自社を「デジタルソリューション」企業として位置づけようとしている。

Robosoftは8月10日に発表した声明の中で、現在の経営陣が引き続き同社を率いていくと述べた。同社の創業者兼マネージングディレクターであるRohith Bhat(ロヒス・バット)氏は次のように述べている。「Robosoftは過去20年間に驚異的な旅をしてきており、その間に飛躍的な成長を遂げました。Ascent CapitalおよびKalaari Capitalとの提携が当社にとって力強い成長期を切り拓いた後に、テクノプロのようなグローバルプレイヤーに会社の手綱を渡すことができて大変うれしく思っています」。

東京証券取引所に上場しているテクノプロ・ホールディングスの代表取締役社長兼CEOである八木毅之(やぎ・たけし)氏は、「テクノプロとRobosoftの間には非常に大きな相乗効果があると期待しており、Robosoftの次の成長段階において、緊密な協力関係を築くことを楽しみにしています」と述べている。

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タグ:テクノプロRobosoft Technologies日本インド買収AppleアプリiOS

画像クレジット:Arijit Sen / Hindustan Times / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

ウェブアプリを検索可能にするCommandBarはエンゲージメントツールとしても人気

CommandBarを創業したJames Evans(ジェームズ・エヴァンス)氏とRichard Freling(リチャード・フレリング)氏、そしてVinay Ayyala(ヴィネイ・アイヤラ)氏は、あるソフトウェアプロジェクトに従事していたとき、ソフトウェアの中に何かの機能を見つけてアクセスしようとすると、それが意外と難しいことに気づいた。

そうひらめいた彼らは、2020年にチームを組んで、ソフトウェアをもっと使いやすくするための埋込み型検索ウィジェットの構築を開始した。

エヴァンス氏はTechCrunchに対して「このようなパラダイムは便利なはずなのですが、実際に作るのは困難でした。そこで、私たちがそれを作ったのです」と述べた。

米国時間8月9日、CommandBarはベータを脱し、Thrive Capitalがリードする480万ドル(約5億3000万円)のシードラウンドを発表した。参加した投資家は、Y CombinatorとBoxGroup、そしてエンジェル投資家のNaval Ravikant(ナヴァル・ラヴィカント)氏、Worklife VenturesのBrianne Kimmel(ブリアンヌ・キンメル)氏、StitchFixの社長Mike Smith(マイク・スミス)氏らだ。

CommandBarのB2Bツールは「command k」と呼ばれ、ソフトウェアをもっとシンプルで速くすることを狙っている。その技術はウェブアプリケーション上に置かれる検索エンジンで、ユーザーはシンプルなキーワードでそのアプリケーションの機能にアクセスできる。また、紹介などの推奨プロンプトで、新規ユーザーをアナウンスすることもできる。

Clubhouseの中のCommandBar(画像クレジット:CommandBar)

ユーザー企業は、1行のコードをペーストするだけでCommandBarを統合でき、構成ツールを使って、そのアプリケーションに関連するコマンドを迅速に加えることができる。このプロダクトは意図的にローコードとして設計されているので、顧客企業のサクセスチームが技術者のサポートなしで構成を加えれられる、とエヴァンス氏はいう。

しかし最初は売りにくかった。初期に特に難しかったのは、顧客企業がその顧客や投資家にCommandBarがやることを理解させることだった。

「電話で説明するのは難しいので、Zoom上で見てもらいました。そうすると、アプリケーションの中でそれが使われる様子がよくわかるので、販売しやすくなりました。そこから、多くの新規ユーザーを獲得できるようになりました」とエヴァンス氏はいう。

CommandBarはすでにClubhouse.ioやCanix、Stackerなども使っており、数十万のユーザーの役に立っている。CommandBarの最も多いユースケースは、新入社員などのソフトウェアの使い方の練習や訓練だ。

エヴァンス氏によると、今回得られた資金はエンジニアリングと営業とマーケティングで人を増やし、チームを大きくすることに使いたい。ベータテストは成功し、初期の顧客から好評が得られた。エヴァンス氏はその結果を、年内に予定している今後の新しいプロダクトや機能性にも活かしたいという。

Thrive Capitalの投資家であるVince Hankes(ヴィンス・ハンクス)氏は、CommandBarのプレシードの投資家の1人からCommandBarを紹介された。

彼はかねてから、B2Bのソフトウェア企業やアプリケーションに関心があり、その分野で彼が最近気になるのは、アプリケーションの単純性と機能性の間に、当然のようにテンションがあることだ。

彼によると、アプリケーションはパワーユーザーにとっても使いづらいことがときどきあるが、CommandBarはユーザー企業による構成が適切なら何でも簡単にできる。たとえばパスワードのリセットの仕方を知りたければ、「password」というワードで検索すればよい。すると、そのページへ直行できる。

「彼らのプロダクトに興味を持っている企業の種類は、とても印象的です」とハンクス氏はいう。「目立たない幅広い企業からの需要が見え始めました。実際、彼らはCommandBarを、より深いカスタマーエンゲージメントのためのツールとして使っているのです」。

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タグ:アプリCommandBar資金調達検索

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)