オンデバイスAIでプライバシー保護とパーソナライズを両立させる検索エンジン「Xayn」

TechCrunchの読者もご存知のように、現在のWebにはプライバシーと利便性のトリッキーなトレードオフがある。この「非常に私的な情報(プライバシー)の盗難」をうまく成功させるために登場したのが、オンライン追跡だ。インターネットユーザーが見ているものを大規模に監視することが、Google(グーグル)の圧倒的な検索エンジンとFacebook(フェイスブック)のソーシャル帝国を支えている。この2社は、広告から資金提供を受ける最も知名度の高いビジネスモデルだ。

TechCrunchの親会社であるVerizon(ベライゾン)もまた、モバイルデバイスやこのようなメディア資産など、さまざまなエンドポイントからデータを収集して、独自の広告ターゲティング事業を強化している。

他にも数え切れないほどの企業が、知覚価値を抽出するためにユーザーデータを取得している。これらの企業の中に、どのような種類の個人情報をどの程度集めているのか、あるいは実際にそれを使って何をしているのかを完全に開示している企業はほとんどない。しかし、Webはこんなことのために存在しているのではない、としたらどうだろう。

ベルリンを拠点とするXayn(ゼイン)はこのダイナミクスを変えたいと考え、パーソナライズとプライバシー保護を両立させるWeb検索を、まずスマートフォンで始めることにした。

本日同社は、(AndroidおよびiOS向けの)検索エンジンアプリをローンチする。このアプリでは、検索結果のパーソナライズによる利便性は確保されるが、通常のショルダーサーフィンは行われない。これが可能なのは、アプリが、ローカルで学習するオンデバイスAIモデルを搭載しているからだ。データがアップロードされることは決してない(ただしトレーニングされたAIモデル自体がアップロードされることはある)。

このアプリを開発したのは、博士号を持つメンバーが30%を占め、核となるプライバシーと利便性の問題に約6年前から取り組んでいるチームだ(同社は2017年に設立されたばかり)。当初は学術研究プロジェクトとしてスタートし、XayNetと呼ばれる、マスクされたフェデレーションラーニングのためのオープンソースフレームワークを提供するようになった。Xaynアプリは、このフレームワークをベースにしている。

同社はこれまでに、アーリーステージで950万ユーロ(約12億円)の資金を調達している。出資元は、ヨーロッパのVC企業Earlybird(アーリーバード)、Dominik Schiener(ドミニク・シーナー)氏(Iota(アイオータ)の共同創業者)、スウェーデンの認証および決済サービス会社Thales AB(タレスAB)だ。

同社は現在、XayNetテクノロジーをユーザー向け検索アプリに適用することによりXayNetを商品化しようとしている。CEOかつ共同創業者のLeif-Nissen Lundbæk(レイフニッセン・ルンドベーク)博士によると、無料・有料のユーザーを対象とするユビキタスなビデオ会議ツールである「Zoom」のようなビジネスモデルを目指しているとのことだ。

つまり、Xaynの検索エンジンは広告に頼らない。検索結果に広告が表示されないのだ。

その意図は、この消費者向けアプリを、広告を表示するためではなく、同じコアAIテクノロジーを搭載するB2B製品向けのショーケースとして機能させることにある。商用データのプライバシーを損なうことなく、企業・社内検索を高速化することが、企業・公共部門の顧客へのアピールポイントだ。

ルンドベーク氏は、企業は自社のデータに(安全に)適用するための優れた検索ツールを切実に必要としていると主張し、一般的な検索に掛かるコストは、世界的に見ると作業時間のおよそ18%になることが調査からわかったと述べている。同氏はまた、職員が勤務時間の37%を文書やその他のデジタルコンテンツの検索に費やしているとする調査にも言及した。

ルンドベーク氏はまた、「これはGoogleが試みたが成功しなかったビジネスモデルだ」と主張し、「当社は、普通の人々が抱えている問題だけでなく、企業が抱えている問題も解決する。人々や企業にとって、プライバシーはあると嬉しいオプションのようなものではなく、必須事項だ。プライバシーが確保されていなければ、なにも使うことできない」と付け加えた。

消費者側では、アプリ向けにいくつかの有料アドオンも提供されるため、フリーミアムのダウンロード版で提供される予定だ。

スワイプしてアルゴリズムを微調整

注目すべき重要な点は、Xaynが新たにローンチしたウェブ検索アプリでは、閲覧しているコンテンツが自分にとって有用かどうかをユーザーが自分で決められることだ。

これは、ユーザーがパーソナライゼーションアルゴリズムを適切に調整できる、Tinder(ティンダー)スタイルの右スワイプ(または左スワイプ)の仕組みによって実装されている。ホーム画面にニュースコンテンツ(国別にローカライズされる)を表示することはもちろんのこと、検索結果ページも表示できる。

もう1つの注目すべき機能は、ニュースにフォーカスしたホーム画面だ。将来的に、有料ユーザーはホーム画面にさまざまなフィードを表示させることができるようになるかもしれない。

このアプリのもう1つの重要な機能は、検索結果のパーソナライズのオン・オフを完全に切り替えられることだ。右上にある脳の形のアイコンをタップするだけでAIをオフ(またはオン)に切り替えることができる。AIをオフにしていると、検索結果はスワイプできない。ただし検索結果のブックマーク・共有は可能だ。

他にも、このアプリはデフォルト設定で過去7日間の検索結果を一覧表示する履歴ページを備えている。設定を変えれば、「今日」の検索結果、「過去30日間」の検索結果、「すべての履歴」も表示でき、「ごみ箱」ボタンで検索結果を削除することもできる。

また、ブックマーク用のフォルダを作成してアクセスできる「コレクション」機能もある。

検索結果をスクロールしながら、右にスワイプしてブックマークアイコンを選択すると、追加先を選択するプロンプトが表示され、コレクションにアイテムを追加できる。

スワイプ式のインターフェイスは親しみやすく直感的だが、TechCrunchがローンチに先駆けて調査したTestFlightベータ版では、コンテンツの読み込みにわずかな遅れがあった。

コンテンツを左にスワイプすると、警告の 「x」 が付いた明るいピンクのカラーブロックが開く。続けるとスワイプする項目が消える。おそらく今後はそのような項目を目にする機会が少なくなるだろう。

一方、右にスワイプするとコンテンツが有用だと認めたことになる。つまり、そのコンテンツはフィードに残り、Xaynグリーンでアウトライン表示される(右にスワイプすると、ブックマークオプションと共有ボタンも表示される)。

米国のDuckDuckGo(ダックダックゴー)やフランスのQwant(クワント)など、プライバシー重視・非トラッキングの検索エンジンは既に市場に出回っているが、そのようなライバル企業の検索エンジンは、検索結果の関連性と検索にかかる時間という点で、Googleのようなトラッキング検索エンジンで得られるユーザー体験には遠く及ばない傾向にある、とXaynは主張する。

簡単に言うと、求めている具体的な結果を「DuckDuckGo検索」や「Qwant検索」 で得るには、おそらくGoogle検索より多くの時間がかかる、つまり、Web検索時のプライバシー保護に関連する便益コストが発生するということだ。

Xaynの主張によると、「仮想的な隠れみの」を被ったまま(身元を隠したまま)オンライン検索をする第三のスマートな方法がある。この方法では、デバイス上で学習し、プライバシーを保護しながら組み合わせることができるAIモデルを実装する。そうすることで、人々のデータを危険にさらすことなく、結果をパーソナライズできる。

ルンドベーク氏はXaynチームが取り組んでいる、AIを利用した分散型・エッジコンピューティングのアプローチについてこう説明する。 「最も重視するのはプライバシーだ。つまり他のプライバシー対策と同様に、当社は何も追跡せず、何もサーバーに送信しない。もちろん何も保存しないし、何があっても追跡はしない。また、これは言うまでもないが、検索時の接続はどんな場合も基本的に安全性が確保されており、トラッキングを一切許可しない設計になっている」。

オンデバイスでの再ランキング

ルンドベーク氏によると、Xaynは、Microsoft(マイクロソフト)のBing(ビング)を含む(ただしこれに限定されない)数々の検索インデックスソースを利用しており、(独自のウェブクロールボットを持つ)DuckDuckGo(DDG)に「比較的似ている」という。

大きな違いは、Xaynではプライバシーに配慮したパーソナライズされた検索結果を生成するために、独自の再ランキングアルゴリズムも適用していることだ。一方、DDGはコンテクスト広告ベースのビジネスモデルを採用している。このモデルでは、位置情報や検索キーワードなどの単純なシグナルを見て広告のターゲティングを行うため、ユーザーをプロファイリングする必要がない。

ルンドベーク氏によると、この種のアプローチの欠点は、広告がユーザーに押し寄せる可能性があることだ。ターゲティングをよりシンプルにした結果、企業はクリックの機会を増やそうと、より多くの広告を提供する。また、検索結果に大量の広告が表示されたからといって、優れた検索体験を得られないことは明らかだ。

「Xaynではデバイスレベルで多くの結果を得ることができるが、アドホックなインデックス作成も行っており、デバイスレベルとインデックスレベルで検索機能を構築している。このアドホックなインデックスを使用すると、検索アルゴリズムを適用して結果をフィルタリングし、関連性の高いものだけを表示し、それ以外はすべて除外できる。また、基本的に機能は少し落ちます。しかし、当社は最新の機能を常に探究し続けようと努めています。Xaynの検索結果は関連性が著しく高いものではないかもしれません。しかし、ユーザーがフィルターバブルにとらわれて何も見えない状態に陥ることを防止します」。

Xaynは、フェデレーションラーニング(FL)の分野にも取り組んでいる。Googleも近年、FLに取り組んでおり、サードパーティーのトラッキングクッキーを置き換えるための「プライバシー保護」提案を推進している。しかし、Googleがデータ事業に高い関心を示しており、たとえ検索にFLを適用したとしても、Google自体がユーザーデータパイプへのアクセスを単純に遮断するわけではない、とXaynは主張する。

一方、ドイツを拠点とするプライバシー重視の小規模なスタートアップとしてのXaynの関心はまったく異なるところにある。同社が長年にわたって構築してきたプライバシー保護テクノロジーErgoは、人々のデータの保護に重きを置いている、というのがXaynの主張である。

「Googleでは、実際にフェデレーションラーニングに取り組んでいる人の数が当社のチームよりも少ない」とルンドベーク氏は言う。そして「当社はTFF(Googleが設計したTensorFlow Federated)をさんざん批判してきた。TFFはフェデレーションラーニングだが、実際にはまったく暗号化されていない。しかもGoogleのTFFには多くのバックドアがある」と付け加えた。

ルンドベーク氏はさらに次のように説明する。「ユーザーは、GoogleがTFFで実際に何をしたいのかを理解する必要がある。Googleは、トラッキングクッキー、特にユーザーに同意を求めるというような煩わしい処理を置き換えたいと考えている。もちろんGoogleがユーザーのデータを求めていることに変わりはない。Googleは、ユーザーにこれ以上プライバシーを与えたくないのである。そして最終的にはユーザーのデータをもっと簡単に手に入れたいと考えている。純粋なフェデレーションラーニングでは、実際にプライバシーを保護するソリューションを構築することはできない」 。

「プライバシーを保護するには、やるべきことが多くある。純粋なTFFは、確かにプライバシーを保護するものではない。そのためGoogleは、基本的にユーザー体験に関するあらゆることに、例えばCookieなどのテクノロジーを使うことになる。しかし、もしGoogleがCookieを検索に直接使うとしたら、私は非常に驚くだろう。たとえそうなっても、Googleのシステムには多くのバックドアがあるため、実際にはTFFを使用して非常に簡単にデータを取得できる。そのため、TFFはGoogleにとって都合のいい回避策なのである」。

「データは基本的に、Googleの基盤となるビジネスモデルである。Googleが何をするにしても、もちろん正しい方向への良い一歩だと私は確信している。Googleは、度が過ぎない程度に行動するという、非常に賢明な動き方をしていると思う」。

ところで、Xaynの再ランキングアルゴリズムはどのように機能するのだろうか。

アプリはデバイスごとに4つのAIモデルを実行し、それぞれのデバイスの暗号化されたAIモデルを、準同型暗号を使用して非同期に集合モデルに結合する。2番目のステップでは、この集合モデルを個々のデバイスにフィードバックして、提供されたコンテンツをパーソナライズするようだ。

デバイス上で実行される4つのAIモデルはそれぞれ、自然言語処理、関心のグループ化、ドメイン設定の分析、コンテキストの計算を実行する。

「ナレッジは維持管理されるが、データは基本的にデバイスレベルで保持される」と、ルンドベーク氏は説明する。

「スマートフォン上で多種多様なAIモデルをトレーニングすることにより、例えば、このナレッジの一部を組み合わせるかどうか、ナレッジをデバイス上にも維持するかどうか、といった点をを決められるようになる」。

ルンドベーク氏は、「Xaynは4つの異なるAIモデルが連携して動作する非常に複雑なソリューションを開発た」と述べ、このAIモデルでは、各ユーザーの「興味の中心と嫌悪の中心」を、これもまた彼が言うところの「非常に効率的でなければならない」スワイプに基づいて設定できること、そしてAIモデルは基本的に長い時間をかけて、ユーザーの興味に基づいて機能すべきものであることに言及した。

ユーザーがXaynを使えば使うほど、デバイス上での学習の結果、パーソナライゼーションエンジンの精度が増す。さらに、スワイプして好き・嫌いのフィードバックを与えることで、積極的に関与できるユーザーの層が厚くなる。

Xaynのパーソナライゼーションは個人に高度に特化しており、ルンドベーク氏はこれを「ハイパーパーソナライゼーション」と呼んでいる。XaynのパーソナライゼーションはGoogleのような追跡検索エンジンよりも高度である。ルンドベーク氏によると、Googleはユーザー間のパターンを比較し、どの結果を提供するかを判断しているという。Xaynではこのようなことは絶対にない。

ビッグデータではなくスモールデータ

「Xaynは個々のユーザーに集中しなければならないため、ビッグデータの問題ではなく『スモールデータ』の問題を抱えている。そのため、非常に速いスピードで学習しなければならない。8から20のやりとりだけで、ユーザーの多くを理解する必要があるためだ。ここで重要なのは、このような迅速な学習を行う場合には、いつも以上にフィルターバブルに注意を払う必要があるということである。検索エンジンがある種の偏った方向に進むのを防がなければならない」とルンドベーク氏は説明する。

このエコーチャンバーまたはフィルターバブルの影響を避けるために、Xaynチームはエンジンを、切り替え可能な2つの異なるフェーズで機能するように設計した。「探索」と呼ばれるフェーズと「搾取」といういうフェーズだ(「搾取」というのは残念な言い方だが、「エンジンはユーザーに関する何らかの情報を既に持っているため、かなり関連性の高いものを提供できる」という意味である)。

「我々は、常に新しい情報を取り入れ、探求を続けなければならない」とルンドベーク氏は語る。それが4つのAIうちの1つ(コンテキストを計算するための動的コンテキスト多腕バンディット強化学習アルゴリズム)を開発した理由である。

Xaynは、このアプリのインフラストラクチャがユーザーのプライバシーをネイティブに保護するよう設計されていること以外にも、多くの利点があると主張している。たとえば個人から非常に明確な興味の兆候を引き出せたり、追跡サービスのせいでユーザーが委縮する効果(将来の結果に影響を与えることを避けるために、特定の検索を行わないようになる)を回避できることなどがある。

「ユーザーは、スワイプするだけで、もっと詳しい検索結果を表示させるかどうか、つまりアルゴリズムに学習させるかどうかを決めることができる。操作は非常に簡単で、システムを手軽にトレーニングできる」とルンドベーク氏は説明する。

しかし、アルゴリズムが(オンの場合に)デフォルトで何らかの学習を行うと仮定すると(すなわち、ユーザーが好き/嫌いのシグナルを発しない場合)、このアプローチには若干のマイナス面もあるかもしれない。

なぜなら、Xaynから最良の検索結果を得るために、(フィードバックをスワイプして)やりとりするという負荷がユーザーにかかることになるからだ。スワイプはユーザーに対する積極的な要求であり、Webユーザーが慣れ親しんでいる、Googleのようなテック大手が提供する一般的な受動的なバックグラウンドデータマイニングやプロファイリング(プライバシーに関しては恐ろしい機能)とは異なる。

つまり、Xaynアプリを使うため、少なくとも最も関連性の高い結果を引き出すためには「継続的な」 やり取りという形の「コスト」が発生するということだ。例えば、山ほどのオーガニック検索結果がまったく役に立たず、関連性も低い場合に、最後までスクロールしながら見ることはお勧めしない。

Xaynアプリがその利便性を最大化するには、最終的には各項目を慎重に重み付けし、有用性の判定をAIに提供する必要があるだろう(オンラインの利便性に関する競争においては、少しのデジタルフリクションでも足枷になる)。

この点について具体的にルンドベーク氏に尋ねたところ、次のような答えが返ってきた。「スワイプしなければ、AIは、嫌いなものではなく非常に関心度の低い好みのみに基づいて学習する。そのため、(AIをオンにすると)学習は行われるが、学習量は非常にわずかで、大きな効果はない。これらの条件は非常に動的であるため、ウェブサイトにアクセスした後に何かを気に入ると、その経験からパターンが学習される。また、4つのAIモデルのうち1つだけ(ドメイン学習モデル)が純粋なクリックから学習する。残りの3つのモデルはこの学習は行わない」。

Xaynは、スワイプの仕組みがアプリの操作性を悪くしてしまうリスクを認識しているようだ。ルンドベーク氏によると、チームは将来的に「何らかのゲーミフィケーションの側面」を追加し、スワイプのメカニズムを単なるなフリクションから「何か楽しいこと」へと変えたいと考えている。Xaynが具体的にどんな方法でそれを実現するのかはまだ不明だ。

Xaynの使用には、Googleに比べて少しばかりのタイムラグが伴う。Xaynの場合は、オンデバイスAIのトレーニングを行わなければならないからだ(一方Googleは、ユーザーのデータをクラウドに集め、特注のチップセットを搭載した専用のコンピューティングハードウェアを使って超高速で処理する)。

「当社はこのプロジェクトに1年以上取り組んできました。最も優先してきたのは、Xaynを市場に出すこと、Xaynがユーザーの役に立つことを示すことだった。もちろん、XaynはGoogleよりも遅い」とルンドベーク氏は認めている。

「Googleは、デバイス上の処理を行う必要はない。そればかりか独自のハードウェアまで開発し、さらにこの種のモデルを処理するためにTPUを開発した。この種のハードウェアと比較して考えると、当社がスマートフォンでもXaynのオンデバイスAI処理を提供できたのは素晴らしいことだと思う。もちろんGoogleよりも遅いですが」とルンドベーク氏は続けた。

ルンドベーク氏によると、チームはXaynのスピードアップに取り組んでおり、この種の最適化にさらに注力することで、現在のバージョンよりも40倍高速になり、ユーザーにさらなるメリットがもたらされることを期待しているという。

ルンドベーク氏は次のように説明する。「Xaynが最終的に40倍高速になるわけではない。なぜなら、より広い視野を提供するために、分析するコンテンツが今後さらに増えるためだ。しかし時間の経過とともに速度は向上する」。

検索結果の精度についてGoogleと比較した場合、エッジAIが「スモールデータ」を適切に操作して獲得できる検索結果を考えると、Xaynが、Googleのネットワーク効果の競争上の優位性(より多くのユーザーを擁していることで得られる検索結果の再ランキングのメリット)に太刀打ちできないわけではない。

しかし、繰り返しになるが、今のところは検索のスタンダードであるGoogleの背中を追いかけている状況であることに変わりはない。

他の検索エンジンとのベンチマークの結果について尋ねると、ルンドベーク氏は次のように答えた。「現在当社は、XaynをBingやDuckDuckGoなどと比較しており、明らかに、Googleと比較した場合よりもかなり良い結果を得ている。しかし言うまでもなく、Googleはマーケットリーダーであり、非常に強力なパーソナライゼーションを使用してる」。

「しかし興味深いのは、Googleはパーソナライゼーションだけでなく、ネットワーク効果の一種も利用していることだ。PageRank(ページランク)は正真正銘のネットワーク効果である。PageRankはユーザーが何かをクリックする頻度を追跡し、ユーザーが多ければ結果の精度が向上する」。

「現在、例えば当社が使っているようなAIテクノロジーによって、ネットワーク効果が徐々に重要性を失っている、という興味深い現象が生じている。つまり、純粋なAIテクノロジーと本当に勝負したいのであれば、ネットワーク効果はもはや実質的に存在しないと言える。そのため、当社は今でも、Googleと同程度に関連性の高い結果を得られる。また、やがてはさらに優れた結果や、Googleと競り合える結果を、Googleとは違う方法で得ることができるようになるはずだ」。

ベータ版アプリを(簡単に)テストした際、シンプルな検索では、Xaynの検索結果は大きく期待を裏切るものではなかった(おそらく使用しているうちに改善されるだろう)。ただしこの場合も、通常の検索では、わずかな読み込みの遅れで多少のフリクションが発生することがすぐに明らかになった。

これもアリだろう。検索で期待されるパフォーマンスを実現するのは簡単ではないことに改めて気づくきっかけになる(たとえCookieを使用しないと断言できたとしても)。

競争のチャンスはあるか

「Googleにはこれまで、ネットワーク効果という強みがあったが、このネットワーク効果の優位性が徐々に弱まっており。Googleに代わるものがすでに次々と現れている」とルンドベーク氏は主張し、プライバシーへの懸念が、検索分野における競争を活発化させていることを示唆した。

「Facebookなどのように、誰もが1つのネットワークに所属しなければならないという考え方はもう通用しない。競争は技術革新にとっても、さまざまな顧客のニーズを満たすためにも有益なので、現在の状況は実にすばらしいと思う」とルンドベーク氏は語る。

もちろん、(欧州では90%を超える市場シェアを獲得している)Google検索に対抗しようとする企業の最大の課題は、Googleユーザー(の一部)をいかにして引き抜くかということだ。

ルンドベーク氏は、現時点ではマーケティングに数百万ドル(数億円)を投入する計画はないと言っている。実際、早期利用者の「緊密なコミュニティ」とともに製品を「一歩一歩」進化させていくことを目指しており、プライバシー保護技術分野の他者によるクロスプロモーションや、関連するインフルエンサーへの働きかけにより、持続的に利用を拡大させていきたい、と同氏は述べている。

ルンドベーク氏はまた、主流メディアはプライバシーの話題に興味があるため、ある程度はXaynの製品を後押ししてくれるのではないかと考えている。

「特に今の時代、当社にはとても重要な使命があると思っている。当社は、検索でプライバシー保護を実現できることを自身のためだけに示したいのではなく、どんな場合でもプライバシー保護を実現できるという優れた実例を示したいと考えている」とルンドベーク氏は言う。

「ユーザーのデータを当然のようにすべて取得してプロファイルを作成する、米国のいわゆる『最大手』企業は、ユーザーから必ずしも必要とされているわけではない。一方でユーザーは、小規模で魅力的なプライバシー保護ソリューションを利用できるが、そのようなソリューションはユーザーのデータを使用しない代わりに、ユーザー体験は良くない。だからこそ当社は現状で満足することなく、欧州の価値観に基づいた代替手段の構築を開始すべきだということを示したい」とルンドベーク氏は語る。

確かに最近、EUの議員たちがテクノロジーの主権について熱心に議論しているが、欧州の消費者のほとんどが大規模な(米国の)テクノロジーを受け入れ続けている。

もっと具体的に言えば、欧州地域のデータ保護要件により、米国ベースのサービスを利用してデータの処理を行うことがますます困難になっている。企業が考慮すべきもう1つの要素には、GDPRというデータ保護の枠組みへの準拠がある。そのため「プライバシー保護」テクノロジーに注目が集まっている。

ルンドベーク氏によると、Xaynのチームは、B2B側のビジネスを成長させることで、プライバシー保護の信条を一般ユーザーにも広めたいと考えている。そのため、最新のスマートフォン(および自分のデバイスを職場に持ち込む人々)を原動力としていた企業のコンシューマライゼーションの傾向を少し逆行させる形で、従業員が職場を通して便利なプライベート検索に慣れてくれれば、ある程度、家庭での利用が増えるのではないかと期待している。

「Xaynはこうした戦略をコミュニティ内で着実に実践して、評判を広げることができると思う。そのため、より多くのユーザーを獲得するために、マーケティングキャンペーンに何百万ユーロ(数億円)も費やす必要はない」とルンドベーク氏は付け加えた。

Xaynの市場投入第一弾としてモバイルアプリのリリースを目指してきたが、来年の第1四半期にはデスクトップ版をリリースすることも計画中だ。

課題は、このアプリをブラウザーの拡張機能として使用できるようにすることだ。チームは明らかに、Xaynを動作させる独自のブラウザーを構築することは避けたいと思っている。Google検索との競争は登り甲斐のある山である。Chrome(やFireFoxなど)を目指そうとする必要はない。

「当社は、安全な言語であるRustでAI全体を開発した。そしてセキュリティと安全性を非常に重視している。素晴らしい点は、Xaynは組み込みシステムからモバイルシステムまでどこでも動作することだ。またWebアセンブリにコンパイルできるため、あらゆる種類のブラウザのブラウザ拡張子としても動作する」とルンドベーク氏は語り、「もちろんInternet Explorerは除きますがね」と付け加えた。

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タグ:プライバシー 検索エンジン

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業務自動化のUiPathが新規上場のための書類を米証取委に非公開で提出

ものすごい勢いで成長しているロボットプロセスオートメーション(RPA)のスタートアップUiPath(ユーアイパス)が、今後予想されているIPOに先立ち、米国時間12月17日米国証券取引委員会(SEC)に非公開で書類を提出した。

同社は声明の中で「UiPath,Inc.は本日、米国証券取引委員会(SEC)にA種普通株式の公開に向けた登録届出書の草案を、非公開で提出したことを発表しました。A種普通株式の売出株式数および公開時の売出価格帯は未定です。UiPathは、SECによる審査プロセスの完了後、市場やその他の条件を勘案して、公募を開始する予定です」と述べている。

同社はこれまでAccel、CapitalG、Sequoiaなどの投資家から、12億ドル(約1240億円)以上の資金を調達している。これまで最大の調達額は70億ドル(約7230億円)という印象的な評価額で2019年4月にCoatueが主導した5億6800万ドル(約586億9000万円)だった(未訳記事)。2020年7月に評価額が102億ドル(約1兆500億円)に急騰した際には、Alkeon Capitalが主導して2億2500万ドル(約233億円)を調達した

7月の増資時には、CEOで共同創業者のDaniel Dines(ダニエル・ダインズ)氏は、IPOの考えを包み隠さず私に話した。

市場の状況を評価している最中ですし、漠然としたことはいいたくないのですが、この日に上場するという日はまだ選んでいません。市場の機が熟したときには自分たちの準備が整っているべきだというのが本心ですが、それがこれから12~18カ月後のことになっても不思議ではありません。

今回の動きは間違いなくその予想された期間の中に入っている。

RPAとは、企業が反復性の高いマニュアルタスクを取り込んで自動化する作業を支援する。たとえば請求書から数字を取り出して、スプレッドシートにその数字を記入し、買掛金としてメールを送信するタスクを、人間が触れることなく行うことができるようにするサービスだ。

企業が既存システム(レガシーシステム)を、崩したりリプレースしたりすることなく、自動化を活用することができるので、現在大きな魅力を持っている技術なのだ。同社は多くの資金を調達し、その評価額が急上昇してきたが、Airbnb、C3.ai、Snowflakeのような企業と同じように、好意的な市場の反応を得られるかどうかは興味深いところだ。

関連記事:評価額1.1兆円超に急増した業務自動化のUIPathがシリーズEで約241億円を追加調達

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画像クレジット:Visual Generation / Getty Images

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(翻訳:sako)

ライブ配信によるオークションとトレカ販売が好評なWhatnot、約4.1億円を調達

筆者が2月に初めて記事にしたWhatnot(ホワットノット)は、この数カ月の間に機能面とユーザー数の両面において、急速に成長を遂げている。米国時間12月17日朝、この会社はシードラウンドで400万ドル(約4.1億円)の資金を調達したと発表した。

Whatnotは当初、「FunkoPop!(ファンコ・ポップ)」のビニール製フィギュアを安全に転売することに焦点を当てたプラットフォームだったが、その後は他の収集品、例えばポケモン・カード、スポーツ・カード、FiGPiNなどにも対象を拡大している。

同社はまた、単純な売買の仕組みだけでなく、新型コロナウイルスに襲われる前にすでに人気を博していたトレンドを取り入れ、その後も成長し続けている。ライブストリーミングビデオによる販売とオークションだ。

コレクションにハマったことがない人は、この種の販売を見たことがないだろう。しかし一度ハマってしまったら、なかなか止めることはできない。例えばディズニーのピンバッジ・コレクターのような人達の間で人気のあるライブビデオオークションは…まさにそういうものだ。ホストはライブストリームを起動して、コレクター仲間のファン・グループに販売を報せる通知を送信し、携帯電話のカメラを商品に向ける(多くの場合、商品は状態がよく見えるようにターンテーブルの上で回転している)。ホストの仕事は部分的にオークショナーであり、また部分的に誇大広告マンだ。彼らは売り出されるアイテムについて豊富な知識を持ち、チャットで人々と交流し、そして大抵は見ている人を惹き付けるためにエネルギーを高く保ち続ける。

これらのオークションの多くは、Instagramなどのプラットフォーム上で行われているが、これらのプラットフォームはそのために構築されているものではない。そこでアイテムを販売するということは、手動で買い手とつながり、事後には支払いを計算し、誰も約束を破らないように願うことを意味する。Whatnotはこの用途に特化したいと考え、それに応じたライブ配信ツールを構築するために最近の数カ月を費やした。Whatnotのストリーミングは、出品から支払いまですべてのプロセスが、直接同社のアプリを通じて行われる。私は昨夜、いくつかのストリーミングをランダムに覗いてまわってみたが、いずれも数十から数百人の人が視聴し、Mumm-Ra(マムラ)のFunkoPop!のようなアイテムに入札したり、次に何が出品されるのかと待ち構えたりしていた。

画像クレジット:Whatnot

Whatnotで人気が高まっているもう1つのライブストリーミングのコンセプトは、「カードブレーク」だ。ユーザーたちは皆、トレーディングカードのパックをまるごと一箱買うために自分のお金をプールする。多くの場合、これらのカードはもはや製造されておらず、ボックスで買うためには数十万円の費用が必要になる。各ユーザーは番号を取得し、各番号はそれぞれボックス内のパック(またはパックス)に紐付けられている。各パックはライブストリーム上で開封され、中身のカードはそのパックに割り当てられた番号を持つ(おそらく)幸運なユーザーの手元に渡るという仕組みだ。

Whatnotの共同創設者Logan Head(ローガン・ヘッド)氏は、この数カ月間における会社の成長を「爆発的」と表現し、このライブストリーミングのような付加機能が、最近の「少なくとも月々100%以上」にもなる成長の助けとなったと、私に語ってくれた。

Whatnotのチームも成長している。現在は12人が勤務しているが、さらに積極的により多くのエンジニアを探している。会社の成長に伴い、従業員も増やす必要があるのだ。同社がシードラウンドで調達した400万ドル(約4.1億円)は、Scribble Ventures、Operator Partners、Wonder Ventures、Y Combinator、そして多くのエンジェル投資家から支援を受けたものであるという。

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画像クレジット:Whatnot

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Apple Silicon対応の仮想化ソフトParallels Desktop for Mac with Apple M1 chipのプレビューが登場

macOS上でWIndowやLinuxなどOSを動かすことができるホスト型仮想化ソフトを開発するParallels(パラレルズ)が、ArmアーキテクチャのApple Silicon(Apple M1)に対応したParallels Desktop for Macのテクニカルプレビュー版を公開した。ダウンロードするには、Parallelsでのアカウント登録が必要だ。

テクニカルプレビュー版で動かせるのは、Arm対応OSのディスクイメージ(ISO、VHDX)。テクニカルプレビューでは以下の制限がある。

  • 仮想マシンにx86 ベースのOSをインストール・起動できない。
  • 仮想マシンを中断したり再開できない(「実行中の状態」のスナップショットに戻すことを含む)。
  • 仮想マシンの実行中に「close」ボタンは使えない。
  • ARM32アプリは仮想マシンでは動作しない。

なお、Windows Insider Program登録すれば、Windows 10 on ARM Insider Previewをダウンロード可能だ。

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機械学習で被写体を自動で切り抜く写真背景除去アプリPhotoRoomにAndroid版登場

米国時間12月17日、フランスのスタートアップのPhotoRoomがAndroid版アプリをリリースした。同社は写真から背景を除去したり別の背景に置き換えたり写真を編集したりする便利な写真アプリを開発している。

iOS版のアプリはすでにリリースされている。Y Combinatorに参加した同社は、年間経常収益が200万ドル(約2億600万円)へと倍増し、シードラウンドでは120万ドル(約1億2500万円)を調達した。

PhotoRoomはインフルエンサー、そして衣料品やファンションアイテムを販売している人々に愛用されている。メインの創作プラットフォームとしてスマートフォンを使っている人々だ。他のプロ向け写真アプリと同様に、PhotoRoomもサブスクリプションで収益を上げている(月額9.49ドル[約980円]、または年額46.99ドル[約4800円])。

PhotoRoomは機械学習で被写体を特定し、被写体とそれ以外の部分を分ける。こうして写真の特定の部分を操作することができる。

画像クレジット:PhotoRoom

PhotoRoomはY Combinator参加後にシードラウンドで資金を調達した。その際にNicolas Wittenborn(ニコラス・ウィッテンボーン)氏のAdjacent fundとLiquid2 Ventures、そして以下の2グループの投資家から支援を受けた。

  • 機械学習に特化したビジネスエンジェル。Facebook(フェイスブック)チーフAIサイエンティストのYann LeCun(ヤン・ルカン)氏、Twitter(ツイッター)の機械学習研究グループCortexの責任者でMagic Poney共同創業者のZehan Wang(ゼハン・ワン)氏、Perceptio創業者のNicolas Pinto(ニコラス・ピント)氏など。
  • モバイルサブスクリプションに特化したビジネスエンジェル。BlinkistのHolger Seim(ホルガー・セイム)氏、RevenueCatのJacob Eiting(ジェイコブ・エイティング)氏、CalmとSpotifyのアドバイザーであるJohn Bonten(ジョン・ボンテン)氏、TangoのEric Setton(エリック・セットン)氏。

このラウンドの資金を得て、PhotoRoomは社員を3人から8人に増やし、ディープラーニングのアルゴリズムに取り組む。PhotoRoomアプリに興味をお持ちの方は、筆者が以前に公開した記事をお読みいただきたい

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画像クレジット:Johan Mouchet / Unsplash

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(翻訳:Kaori Koyama)

風景とポートレートの編集に強いAIフォトエディターLuminar AIをSkylumが発売

Skylumはここ数年、Aurora HDRやLuminarなどの写真編集アプリで名を知られるようになった。その同社がまったく新しい写真エディタのLuminar AIを発売した。価格は79ドルから(日本では株式会社ソフトウェア・トゥーが税込1万1980円で販売)。MacとWindowsでスタンドアローンのプロダクトとして動作するほか、LightroomやmacOSの写真アプリのプラグインとしても使える。この新しいアプリはゼロから開発され、Lightroomなどでおそらくおなじみの従来からある写真編集機能を多く備えている。しかしこのアプリのポイントは新しいAIベースのツールで、特に風景(と空全般)やポートレートの編集に力を入れているところだ。

このアプリには全部で13種類のAI機能が搭載されている。AI機能によりスライダーをいくつかドラッグするだけで、構図の改善、画像中の空の変更(それに応じてシーンのライトも調整される)、霧・もや・霞の追加、ポートレートの被写体の顔やボディの調整をすることができる。

このようにして、初心者にとっては極めて簡単により良い写真にすることができ、プロにとっては望む結果を短時間で得るツールとなる。

SkylumのCEOであるAlex Tsepko(アレックス・ツェプコ)氏は「AIに対する我々のアプローチは、この分野における最高の頭脳のアプローチと方向性は一致しています。ただし違うのは、この驚くほどパワフルなテクノロジーを我々はヒューマンセントリックに応用していることです。私の経験では、実際にクリエイティブなことに費やしている時間はわずか30%です。Luminar AIは人工知能を使ってこの数字を逆転させます。我々の作ったLuminar AIによって、ユーザーは編集のプロセスにわずらわされることなく成果と写真に集中できます」と説明する。

画像クレジット:Skylum / Jeong Kyu Kim

画像クレジット:Skylum / Iurie Belegurschi

初心者はまずLuminar AIのテンプレートから始めよう。Instagramのフィルターをはるかに超える進化版という感じだ。アプリが自動で画像を分類し(風景かポートレートか、など)、それに合うテンプレートを提案する。仕上がりはクールで出発点としては良いが、この種のツールに投資するならもっと細かくコントロールしたくなるだろう。

Luminar AIの看板機能が、わずか数回のクリックで画像の空を変えるスカイAIだ。空を変えるには、夕暮れなどあらかじめ用意されている空の種類からいずれかを選ぶか、自分でライブラリを作る。どちらの場合も、適用するとアプリが空に応じてシーン全体のライトを調整する。これは驚くほど見事に機能する。もう少しギミックっぽい拡張スカイAIもあり、鳥や飛行機、バルーンを空に追加できる。筆者は使いそうもないが、近いうちにあなたの好きなインフルエンサーの写真にバルーンがたくさん浮かぶだろう。空を少しだけ調整するスカイエンハンサーAIを選ぶこともできる。

画像クレジット:Skylum

よく使われる編集機能としては明るさ、コントラスト、カラーを調整できるアクセントAIツールがかなり便利だ。ストラクチャAIは画像を明瞭にする。

Skylumはこうした調整は不自然にはならないとしているが、一概にはいえないだろう。実際、これは個人の好みによるが、筆者はスライダーをわずか10か20ポイント動かすだけでベストの結果になることが多いと感じた。調整しすぎると過剰に加工された画像になってしまう恐れがある。

ポートレート向けの機能にはボディAI、アイリスAI、フェイスAI、スキンAIがある。これらの機能を使うと、Photoshopなら時間がかかることが多いレタッチ作業を極めて簡単に実行し、被写体の目を際立たせたり歯を白くしたり肌のシミを消したりすることができる。

画像クレジット:Skylum

風景の雲を変えたり写真にボケを追加したりするツールはよほど極端な写真純粋主義者でない限りは問題視するようなものではないが、ボディや顔をわずか数回のクリックで簡単にスリムにできるツールはちょっと話が別だ。

ここでポートレートのレタッチに関する倫理やソーシャルネットワークで容姿を批判することの有害性を議論するわけではないが、特にLuminar AIはボディや顔を簡単にレタッチできる効果的なツールであることを考えれば気をつけておいた方がいいことではある。筆者の場合は、Luminar AIのこうしたツールを使うと不安な気持ちになりがちだ。

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画像クレジット:Skylum

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(翻訳:Kaori Koyama)

blueqatとコーセーが量子コンピューティング活用し化粧品の製品特徴分布を多次元解析する独自アルゴリズム開発

blueqatとコーセーが量子コンピューティング活用し化粧品の製品特徴分布を多次元解析する独自アルゴリズム開発

コーセーは12月17日、量子コンピュータソフトウェア開発ツールおよびクラウド環境提供のblueqatと共同で、ハイブリッド量子コンピューティング技術を応用して化粧品の製品特徴の分布を解析する独自アルゴリズムを開発し、特許出願を行ったと発表した。

これは、製品特徴のポジショニングについて、従来一般的であった2次元マッピングではなく、多次元空間で捉えて解析する手法という。多次元空間において既存品が多く存在する「実現性の高い」領域と、既存品の少ない「新規性の高い」領域の探索を行う。

加えて、量子コンピューティング技術の応用により、これまで困難であった多次元での製品ポジショニングマップの解析を可能にした。

同技術によって、既存領域を可視化すると同時に、未知の製品領域が明らかになり、人間が思いもよらなかった新しい化粧品設計への可能性を拓くことができたとしている。

またハイブリッド量子コンピューティング技術は、複雑な計算に対して、量子コンピューターと従来型コンピューターを段階的に組み合わせて計算方法を最適化するという技術。それぞれのコンピューターに得意な計算分野があるため、役割分担をすることで全体の計算を大幅に高速化する可能性を持つとしている。

コーセーによると、化粧品の新製品開発においては、ブランドや製品のポジショニングマップを作り、既存製品の官能など品質の位置関係を可視化して着想を得ることが一般的という。人間は平面での広がりを最も効率よく認識できることから、ポジショニングマップは平面図(2次元)で作成することが多く、平面図で既存製品を分布させると、既存品が多く存在する「実現性の高い」領域と、既存品が少ない「新規性の高い」領域が可視化される。

しかし、化粧品開発で考慮すべき製品特徴は「しっとり」「さらさら」といった「官能項目」に加えて、「処方報」「効果効能」やSPF値のような「スペック」から粘度のような「物理特性」まで非常に多岐に渡るため、これらを複合的に考慮するためには多次元のポジショニングマップ作成が必要となるとしている。

これは複数の図を同時に解析するようなものであるため、現実的には人間が認識できる範囲を超えており、熟練研究者のバランス感覚に頼っているのが現状という。また、コンピューターによる統計的手法を用いることで多次元のポジショニングマップ解析は可能なものの、解析対象の軸を増やすほど計算時間がかかるため、従来のコンピューターのみでの実運用は困難としている。

今後コーセーは、今回の技術を応用し、新しい美の価値、未知の驚き、ワクワクする化粧品を提供することを目指す。同社はこれからも、blueqatとの取り組みのように、既存の価値観や技術分野に捉われない、新しい顧客価値に向けてより一層積極的に取り組んでいくとしている。

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最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテストの結果発表

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表
日本IBMは、11月9日から11月30日までの3週間にわたり開催した、量子コンピューターの競技型プログラミング・コンテスト「IBM Quantum Challenge」(The Quantum Challenge Fall 2020)の結果を発表した。東京大学工学部物理工学科の長吉博成氏が、全問クリアに加えて、最後の問題を解く際に最も低い量子コストを達成し最優秀者となった。

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表

同コンテストは、参加枠2000名限定に対し、85ヵ国から3320人以上の応募があったという。最も申し込みが多かった国はインドで、日本は2番目だった。また男性は75%で、女性は25%という比率だった。

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表
コンテスト参加者は、毎週難易度が上がる形で新しい課題を与えられ、2000名の参加者のうち、第1週目の演習課題をすべて解けた者は1091名、第2週目が576名だった。最後の最も難しい本戦課題を含め、すべての演習課題を正解できた者は227名だった。

優勝者の長吉氏は、問題の制約条件のユニークな特徴を利用した戦略を適用することで、最も少ない量子コストで解を得ることに成功した。

最終週の本戦問題については、問題作成者のIBM Quantumの松尾篤史氏が執筆した解答例長吉氏の解法と解説のどちらも、Github上で公開されている。さらに、トップチームの解法解説も掲載されており、アプローチや駆使したテクニックを学べる

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表

コンテストの内容は、qRAM(量子ランダムアクセスメモリー)を使って近未来の量子データ構造を実装し、データベース探索を行うGrover(グローバー)のアルゴリズムを使って量子ゲームソルバーを設計する方法を学ぶというもの。qRAMとGroverのアルゴリズムの組み合わせは、将来の量子システムを使った量子機械学習や複雑な意思決定問題の分野で、実生活の問題を解決するために数多くの応用が見込まれている。

参加者のスコアは、「コスト=S+10C」という式に基づいて、回路の実装コストを測定することで決定。

(Sは1量子ビットゲートの数、CはCNOT(CX)ゲートの数で)任意の量子回路は、1量子ビットゲートと2量子ビットゲートに分解できる。現在の誤り(エラー)耐性のないNISQ(ニスク。Noisy Intermediate-Scale Quantum)デバイスでは、CNOTのエラーレートは、一般的に1量子ビットゲートのものと比較して10倍となる。そのため、回路の実装コストを評価するために、CNOTゲートを1量子ビットゲートの10倍に設定。今回のチャレンジでは少ないゲートコストで正解にたどり着くことがゴールとなっている。

日本IBMによると、今回のコンテストの大きな成果は、量子コンピューティングと、量子コンピューター向けPython用フレームワーク「Qiskit」に関する知識とスキルレベルの向上といった学習体験にあるという。参加者の事前と事後アンケートの結果を比較したところ、より高いレベルの経験とスキルを身につけた様子がうかがえるとした。

量子コンピューティング

量子コンピューティングに関する知識の変化

Qiskitに関する知識とスキルレベルの変化

Qiskitに関する知識とスキルレベルの変化

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Turing、エンジニアをリモートで調達・管理するAIベースのプラットフォームに3200万ドルを確保

リモートワークが今日のビジネスの重要な側面としての地位を確立し続けている中、企業向けにエンジニアのカテゴリーに特化してリモートスタッフの調達とオンボーディングを支援するプラットフォームを構築したスタートアップが、その需要に応えるため、さらなる資金調達を行っている。

遠隔地にいる有望なエンジニアを評価して企業に代わってマネジメントを行う、AIベースのプラットフォームを手がけるTurin(チューリング)が、WestBridge Capital(ウエストブリッジキャピタル)主導のシリーズBラウンドで3200万ドル(約33億円)を調達した。同社の計画は、対応する世界と同様に野心的だ。AIプラットフォームによって企業が成長のためにIT関連の人材を調達するための、未来の方法を定義するというものだ。

チューリング共同創設者兼CEOのJonathan Siddharth(ジョナサン・シダース)氏は、主要投資家について、先日のインタビューで「彼らはCognizant(コグニザント)やGlobalLogic(グローバルロジック)のようなグローバルITサービスへの投資に豊富な経験を有しています。彼らにとって、チューリングはそのモデルの反復だと私たちは考えています。ソフトウェアがITサービス業界を席巻すると、Accenture(アクセンチュア)はどうなるでしょうか?」。

同社のデータベースには現在、約18万人に上るエンジニアが登録されており、React、Node、Python、Agular、Swift、Android、Java、Rails、Golang、PHP、Vue、DevOps、機械学習、データエンジニアリングなどを含む約100種類のエンジニアリングスキルに対応できる。

ウエストブリッジに加えて、今回のラウンドにはFoundation Capital(ファウンデーション・キャピタル)、Altair Capital(アルテイア・キャピタル)、Mindset Ventures(マインドセット・ベンチャーズ)、Frontier Ventures(フロンティア・ベンチャーズ)、Gaingels(ゲインジェルズ)などの投資家が名を連ねている。また、著名なエンジェル投資家が数多く参加しており、創設者自身が蓄積してきたネットワークが顕著に示されている。その中には、名前を明らかにしていないが、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Twitter(ツイッター)、Microsoft(マイクロソフト)、Snap(スナップ)などの幹部を始め、フェイスブック初のCTOであり現在はQuora(クオラ)のCEOを務めるAdam D’Angelo(アダム・ディアンジェロ)氏、Gokul Rajaram(ゴークル・ラジャラム)氏、Cyan Banister(サイアン・バニスター)氏、Scott Banister(スコット・バニスター)氏、Upwork(アップワーク)の創設者Beerud Sheth(ビーラッド・シェス)氏も含まれている(本記事の下に全リストを提供する)。

チューリングは評価額を公表していないが、ファウンデーション主導のシードラウンドで1400万ドル(約15億円)を調達したのが8月に過ぎないことがその勢いを示している。シダース氏によると、同社はその評価中に十分な成長を遂げており、評価額と関心の高さから、シリーズAを完全にスキップしてシリーズBに進んだという。

同社のプラットフォームに登録している開発者は、8月時の15万人から18万人とさらに数を増やし、その拠点は1万もの都市に広がっている。そのうち約5万人がチューリングのプラットフォーム上での自動審査を通過しており、今後はこうした人材を活用する企業の数をさらに増やすことに取り組む。

シダース氏はこの状況を「需要に束縛されている」と表現した。同時に、同社の収益は増加を続けており、顧客ベースも拡大している。収益は10月の950万ドル(約9億9000万円)から11月には1200万ドル(約12億5000万円)へと急増し、14か月前に一般公開されて以来17倍に達した。現在の顧客には、VillageMD(ビレッジMD)、Plume(プルーム)、Lambda School(ラムダスクール)、Ohi Tech(オーハイテック)、Proxy(プロキシ)、Carta Healthcare(カータヘルスケア)などがいる。

リモートワーク = 即時の機会

新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、多くの人がオフィスに出社することができなくなっている今日の状況の中で、リモートワークについて語られる機会も増えている。しかし実際には、もう何十年も前から、別の形でそのワークスタイルは存在してきた。

アクセンチュアやその他のシステムインテグレーターなど、サードパーティの支援によるオフショアリングとアウトソーシングの2つは、雇用、規模の拡大、場合によっては労働力そのものを縮小するために必要な運営コストを負担するのではなく、任意の機能を実行し、特定の分野を構築するこれらのサードパーティに一定の金額を支払うことによって企業の事業規模の拡大と運営を推進する方法である。

チューリングは実質的に両方のコンセプトを採用している。エンジニアに特化した人材チームの調達を代行し、チームを運用する新しい方法を創出した。その一方で、事業立ち上げの昨年来、この機会を活用して、以前はオフィスに人材を派遣することを強く希望していたであろうエンジニアリングマネージャーなどに対して、リモートで働いてもオフィスにいる場合と同様の生産性を維持できるという意識の変換を促している。

シダース氏と、共同創設者でCTOを務めるVijay Krishnan(ヴィジェイ・クリシュナン)氏は、その背景を十分認識している。両氏ともインド出身で、最初は学生としてシリコンバレーに移り住み(スタンフォード大学の大学院を修了している)、その後働いている。当時は、彼らのような野心家にとって、大規模でグローバルなテクノロジー企業に就職したり、スタートアップ企業を立ち上げたりするためには、事実上シリコンバレーに移住することが唯一の選択肢だった。

シダース氏は今年初め、その状況について「才能は普遍的なものですが、機会はそうではありませんから」と筆者に語った。

過去に両氏が共同設立したスタートアップであるコンテンツ発見アプリRoverは、市場のギャップを浮き彫りにした。遠隔地に分散したエンジニアチームを中心にスタートアップを構築したことで、コストを抑えながら優秀な人材を確保することができた。その間、ライバルたちはシリコンバレーでチームを構築していた。「パロアルトや周辺地域の競合他社は多額の現金を投じていましたが、状況は悪化するばかりです。給与水準が急上昇しましたから」と同氏は言う。

TaboolaやOutbrainなどと競合するレコメンドプラットフォームRevcontentにRoverを売却した後、両氏は、かつて自分たちがスタートアップを築きあげた方法に基づいて、新たなスタートアップを築くことに目を向けた。

リモートで働く機会のさまざまな側面を活用して人材の調達と管理方法に取り組む企業は、数多く存在する。

そうした企業には、11月に3500万ドルを調達したRemote(リモート)、9月に3000万ドルを調達したDeel(ディール)、同様に9月に4000万ドルを調達したPapaya Global(パパイヤグローバル)、7月に4500万ドルを調達したLattice(ラティス)4月に1600万ドルを調達したFactorial(ファクトリアル)などが挙げられる。

チューリングの興味深いところは、新しい人材を見つけるためのさまざまな段階に対応し、サービスを提供しようとしているところだ。まず、AIプラットフォームを使って候補者の情報を集め、精査する。そして、機会と人材をマッチングし、そのエンジニアのオンボーディングを行う。彼らの仕事と生産性を安全な方法で管理する手助けをし、請負業者、あるいは将来的にはフルタイムのリモート従業員として、最も準拠した方法で労働者を管理する最善の方法についてガイダンスを提供する。

同社はフリーミアムではないが、プロジェクトにコミットする前に2週間の試用期間を与える。チューリングは、アクセンチュアとは異なり、ある程度の弾力性を顧客に約束するのではなく、自社製品に持たせようとしている。

今では素晴らしいアイデアに思えるが、印象的なことに、このアイデアが本格的に軌道に乗り始めたのは、今年の3~4月ごろにリモートワークが一般的になってからだ。

ウエストブリッジキャピタルのマネージングディレクター、Sumir Chadha(スミル・チャダ)氏は、インタビューで、「コロナ禍がもたらしたことには驚かされます。それはチューリングにとって大きな機運となりました」と語っている。さらに、テクノロジーチームを立ち上げようとしている人たちにとって、「もはやエンジニアを見つけて顧客にマッチングする労力は不要になりました。これらはすべてクラウドでできるのです」とも述べている。

アルテイア・キャピタルのマネージングパートナー、Igor Ryabenkii(イゴール・リャベンキー)氏は声明の中で「チューリングのビジネスモデルは非常に興味深く、今の時節においてはとりわけ重要です。世界中の優れた人材にアクセスでき、適切に管理されたコスト効率の高いサービスの提供は、多くの企業にとって魅力的です。創設チームのエネルギーは同社に急速な成長をもたらし、Bラウンド後、その成長はさらに加速するでしょう」と述べている。

追伸:前述したように、今回のラウンドの完全なる長い投資家リストを掲載する。コロナ禍の時代において、今後しばらくの間はこれが最大のリストの1つとなるだろう。上記で既に挙げた投資家に続く、深いため息が出るほど長い一覧は次のとおり。Founders Fund(ファウンダーズファンド)、Chapter One Ventures(チャプターワンベンチャーズ)のJeff Morris Jr.(ジェフ・モーリス・Jr.)氏、Plug and Play Tech Ventures(プラグアンドプレイテックベンチャー)のSaeed Amidi(サイード・アミディ氏)、UpHonest Capital(アップオネストキャピタル)のWei Guo(ウェイ・グオ)氏、Ellen Ma(エレン・マー)氏、Ideas & Capital(アイディアズアンドキャピタル)のXavier Ponce de León(ハビエル・ポンセ・デ・レオン)氏、500 Startups Vietnam(500スタートアップス・ベトナム)のBinh Tran(ビン・トラン)氏、Eddie Thai(エディー・タイ)氏、Canvas Ventures(キャンバスベンチャーズ)のGary Little(ゲイリー・リトル)氏、B Capital(Bキャピタル)のKaren Appleton Page(カレン・アップルトン・ペイジ)氏、Kabir Narang(カビール・ナラン)氏、Peak State Ventures(ピークステートベンチャーズ)のBryan Ciambella(ブライアン・キャンベラ)氏、Seva Zakharov(セーバ・ザハロフ)氏)、Stanford StartX Fund(スタンフォードスタートエックスファンド)、Amino Capital(アミノキャピタル)、Spike Ventures(スパイクベンチャーズ)、Visary Capital(ビサリーキャピタル)のFaizan Khan(フェイザン・カーン)氏、Brainstorm Ventures(ブレインストームベンチャーズ)のAriel Jaduszliwer(アリエル・ジャドゥスリワー)氏、Dmitry Chernyak(ディミトリ―・チェリニャック)氏、Lorenzo Thione(ロレンゾ・ティオーネ)氏、Shariq Rizvi(シャリク・リズビ)氏、Siqi Chen(スィーキー・チェン)氏、Yi Ding(イー・ディン)氏、Sunil Rajaraman(スニル・ラジャラマン)氏、Parakram Khandpur(パラクラム・カンドプール)氏、Kintan Brahmbhatt(キンタン・ブランバット)氏、Cameron Drummond(キャメロン・ドラモンド)氏、Kevin Moore(ケビン・ムーア)氏、Sundeep Ahuja(サンディープ・アフジャ)氏、Auren Hoffman(オーレン・ホフマン)氏、Greg Back(グレッグ・ベック)氏、Sean Foote(ショーン・フット)氏、Kelly Graziadei(ケリー・グラジアデイ)氏、Bobby Balachandran(ボビー・ブラキャンドラン)氏、Ajith Samuel(アジス・サムエル)氏、Aakash Dhuna(アカーシュ・ドゥーナ)氏、Adam Canady(アダム・キャンディ)氏、Steffen Nauman(ステフェン・ニューマン)氏、Sybille Nauman(シビル・ニューマン)氏、Eric Cohen(エリック・コーエン)氏、Vlad V(ブラッド・V)氏、Marat Kichikov(マラット・キチコフ)氏、Piyush Prahladka(ピユーシュ・プララドカ)氏、Manas Joglekar(モナス・ジョーグレイカー)氏、Vladimir Khristenko(ウラジミール・クリステンコ)氏、Tim/Melinda Thompson(ティム/メリンダ・トンプソン)氏、Alexandr Katalov(アレクサンダー・カタロフ)氏、Joseph/Lea Anne Ng(ジョセフ/リーアン・イング)氏、Jed Ng(ジェド・イング)氏、Eric Bunting(エリック・バンティング)氏、Rafael Carmona(ラファエル・カルモナ)氏、Jorge Carmona(ホルヘ・カルモナ)氏、Viacheslav Turpanov(ビチャスラフ・トゥルパノフ)氏、James Borow(ジェームス・ボロー)氏、Ray Carroll(レイ・キャロル)氏、Suzanne Fletcher(スザンヌ・フレッチャー)氏、Denis Beloglazov(デニス・ベログラゾフ)氏、Tigran Nazaretian(ティグラン・ナザレティアン)氏、Andrew Kamotskiy(アンドリュー・カモツキー)氏、Ilya Poz(イルヤ・ポズ)氏、Natalia Shkirtil(ナタリア・シキルティル)氏、Ludmila Khrapchenko(ルドミラ・クラプチェンコ)氏、Ustavshchikov Sergey(ウスタブシチコフ・セルゲイ)氏、Maxim Matcin(マキシム・マッチン)氏、Peggy Ferrell(ペギー・フェレル)氏。

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(翻訳:Dragonfly)

口コミで大流行の顔交換ビデオアプリRefaceにa16zなどの有名投資会社が約6億円を出資

Reface(リフェイス)は、ボタンをタップするだけで、自分のセルフィーを不気味なほどリアルな有名人のビデオクリップに変えて有名人気分を味わえるエキサイティングな顔入れ替えビデオアプリだ。そのRefaceがシリコンバレーのベンチャー投資会社Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)の目に留まり、a16zは米国時間12月9日、このテック系エンタテイメントスタートアップのために550万ドル(約5億7200万円)を調達するシードラウンドをリードすると発表した。

リフェイスによると、今年1月の創設以来、RefaceアプリはiOS版Android版合わせて7000万ダウンロードを記録しているという。ちなみに、今年8月に同社の共同創業者7人のうちの1人にインタビューしたときは2000万ダウンロードだった。また、米国を含む約100か国中でトップ5に入るアプリとして評価され、Google Playの年間最優秀アプリ賞も獲得している。2020年は同社にとって忘れられない年になった。

このように口コミで急拡散するビデオクリップは、多方面で注目を集めている。リフェイスはシードラウンドのリードとしてa16zの支援を得ているだけでなく、ゲーム、ミュージック、映画・コンテンツ制作、テック業界の著名なエンジェル投資家の多くからも資金を引き出している。

ゲーム業界からは、Supercell(スーパーセル)のCEO Ilkka Paananen(イルッカ・パーナネン)氏、Unity Technologies(ユニティ・テクノロジー)の創業者David Helgason(デイビッド・ヘルガソン)氏がラウンドに参加している。ミュージック業界からは、Scooter Braun(スクーター・ブラウン)氏(TQ Ventures(TQベンチャーズ)のマネージングパートナーで、Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)やAriana Grande(アリアナ・グランデ)などの一流ポップスターのマネージメントでも知られる)とAdam Leber(アダム・リーバー)氏(Britney Spears(ブリトニー・スピアーズ)とMiley Cyrus(マイリー・サイラス)のマネージャーでUber (ウーバー)にも投資している)が参加している。

映画・コンテンツ制作業界から参加したエンジェル投資家として、Matt Stone(マット・ストーン)氏、Trey Parker(トレイ・パーカー)氏、Peter Serafinowicz(ピーター・セラフィノヴィッツ)氏(以上3名はDeep Voodoo(ディープ・ブードゥー)経由)、K5 Global(クライアントにBruce Willis(ブルース・ウィルス)、Jesse Eisenberg(ジェシー・アイゼンバーグ)、Eric Stonestreet(エリック・ストーンストリート)がいる)の創業者であるBryan Baum(ブライアン・バウム)氏とMichael Kives(マイケル・カイブス)氏、およびモデル、女優で慈善家でもあるNatalia Vodianova(ナタリア・ヴォディアノヴァ)氏がいる。

また、テック業界からは、Josh Elman(ジョッシュ・エルマン)氏(Greylock (グレーロック)の前投資パートナーで、Medium、Operator、Musical.ly、Jellyの取締役)とSriram Krishnan(シュリラーム・クリシュナン)氏(投資家でマイクロソフト、フェイスブック、スナップ、ツイッターの前製品開発リーダー)といったのエンジェル投資家が参加している。

これはまさに、ノーコードやバイラルソーシャルビデオなどのホットなトレンドが広まるときに業界を超えて発生する、あの熱狂的な反応だ(少なくとも、ノーコードの定義をRefaceのプッシュボタンにまで拡大するなら、Refaceはプロ仕様コンテンツ制作用AIツールと言えるだろう。ノーコードという用語は通常、アプリ構築を単純化するB2Bツールを指すが、どちらにも共通しているのはプログラマ以外の人間でも簡単に使える高い利便性である)。

アーリーステージの支援者に上記のようなそうそうたる面々を揃えたリフェイスのウクライナ人創業者たちは、ディープテックが、諦めずに追究する価値のある分野であることを証明している。今年の夏に書いた記事で取り上げたように、リフェイスの創業者のうち3人は、ほぼ10年前に共同作業を始め、大学卒業後すぐに機械学習の才能に磨きをかけていった。彼らの不屈の精神は今、確実に実を結びつつある。

アンドリーセン・ホロウィッツのConnie Chan(コニー・チャン)氏は今回の出資を発表する声明の中で次のように述べている。「リフェイスは非常に洗練された機械学習テクノロジーを、気構えることなく使え、友人とシェアして楽しめるコンシューマーエクスペリエンスという形に作り変えた」。

「彼らのコア・テクノロジーは、コンシューマー、エンタテイメント、マーケティングなど、広範なエクスペリエンスに応用できる潜在力を備えており、Refaceアプリはその発端にすぎない。リフェイスのチームは、そうした未来を形成できる創造性と専門知識を兼ね備えている」と同氏は付け加えた。

「リフェイスは、映画、スポーツ、ミュージックビデオ、その他人々が熱狂するさまざまな分野のゲーミフィケーション(参加者の意欲をかき立てるためにゲームの手法を応用すること)を実現する次世代のパーソナライゼーションプラットフォームとなる潜在性を備えていると確信している。リフェイスが成長し、人々がお気に入りのコンテンツを通して、アーティストとつながったり、お互いにアクティブな個人的つながりを形成したりできるコミュニティへと発展することを期待している」。

リフェイスの共同創業者Denys Dmytrenko(デニス・ドミトレンコ)氏、Oles Petriv(オレス・ペトリブ)氏、Ivan Altsybieiev(イワン・アルツィービーイエブ)氏、Roman Mogylnyi(ローマン・モジリニ)氏、Yaroslav Boiko(ヤロスラブ・ボイコ)氏、Dima Shvets(ディマ・シュベッツ)氏、Kyrylo Syhyda(キリオ・シャイダ)氏(画像クレジット:Reface)

リフェイスは、今回のシードファンドで成長の波に乗れると考えている。Reface自体の偽物を検出できるツールを開発する取り組みも進んでいる。このツールの目的はRefaceアプリのテクノロジーが乱用されるリスクを軽減することだ。

今年始め、リフェイスはこの検出ツールは秋までには完成すると言っていたので、予定より少し時間がかかっているのは明らかだ。しかし、有名人ビデオの顔入れ替えで成長を実現したことで、優先順位が少し変わったことも理解できる。

秋に予定されていた、顔交換を使ったUGC(ユーザー生成コンテンツ)ビデオサイトの立ち上げもまだ完全には実現していない。

制作価値の高い有名人ビデオクリップを作成および共有することで現在発展しているコミュニティには、自分の顔と弟や祖父母の体と組み合わせることが自由にできるといったものとはまったく違った種類の「不気味なリアリティ」があるように思える(顔交換前の写真の品質管理を行わなければ広範なリスクが発生することは言うまでもない)。したがって、時間をかけてしっかりとした管理体制を築くことはビジネス的に大きな意味がある。また、コンテンツパートナーを満足させて、新しい有名人コンテンツでこのブームに拍車をかけることに注力することも重要だ。

リフェイスによると、UGCビデオサイトの立ち上げが遅れてはいるが、ユーザーは現時点でもGIFをダウンロードできるので、「部分的には立ち上がっていると言える」という。「今はまだ、コンテンツの乱用を防止するために、検出システム、モデレーション、ユーザーとのやり取りについてテストと改良を行っているベータ段階だ。ビデオについては、当社に直接コンテンツを提供してくれるたくさんのクリエイターたちがいる。このようにして、UGCの仕組みをすべてテストできる。第1四半期の終わりまでにはUGCオプションを公開する予定だ」と同社は述べている。

開発中の検出ツールについては、UGCと並行してリリースする予定だという。

「現在、検出のクオリティを最大限にするためモデルをトレーニングしている」最中で、2021年の4月には完成させたいとしている。

リフェイスにとっての最大の野心は、「パーソナライズされたコンテンツの最大プラットフォーム」を構築し、コンテンツ所有者および有名人とパートナー関係を築いて、人が思わず振り向くような「創造的なデジタルマーケティングソリューション」を提供して収益を上げることだ。

このパンデミックで面白いソーシャルコンテンツを使ってくれるユーザーがほぼ自宅監禁状態になっていることは、このミッションの実現を大いに後押ししている。同時に、Snapのようなソーシャルメディアのライバル企業も業績を伸ばしている。

今年は自宅でスマホをいじりながら退屈している子どもがたくさんいるため、ソーシャルメディア業界全体で成長の機会が生まれている(a16zは、リフェイスの他にも、オーディオベースのソーシャルネットワークClubhouse(クラブハウス)、子ども向けのソーシャルゲーミングプラットフォームRoblox (ロブロックス)など、多数のソーシャルメディア企業に出資している)。

2020年8月、リフェイスは口コミで急成長を遂げ、米国のAppStoreで1位に輝いた。一時的にではあるが、TikTokとInstagramを凌ぐ勢いだ。Justin Bieber(ジャスティン・ビーバー)、Snoop Dogg(スヌープ・ドッグ)Britney Spears(ブリトニー・スピアーズ)Joe Rogan(ジョー・ローガン)、Chris Brown(クリス・ブラウン) Miley Cyrus(マイリー・サイラス)、Dua Lipa(デュア・リパ)などの有名人が今年、自分たちの顔がRefaceで加工されたビデオをソーシャルメディアでシェアしていることも注目に値する。

今年、リフェイスはBieber(ビーバー)、Cyrus(サイラス)、John Legend(ジョン・レジェンド)などのエンタテイメント業界の有名人とパートナー契約を結んで新しいビデオの制作を促すと同時に、Amazon Prime(アマゾン・プライム)とも提携してプレミア作品『ボラット』も宣伝しており、数百万を超えるシェアおよびリフェイスを獲得している。

「アンドリーセン・ホロウィッツから出資を受けたことで、当社は現在の成長を加速させ、チームを新しい人材で強化し、テクノロジーを改良していくことができる。また、当社のAIテクノロジーの責任ある利用を保証するため、偽ビデオ検出ツールの開発も継続していく」と共同創業者のデニス・デミトレンコ氏は付け加えた。

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タグ:資金調達 a16z

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(翻訳:Dragonfly)

SupabaseがFirebaseのオープンソース代替製品のために6.2億円を調達

Supabase(スーパベース)が、米国時間12月15日Coatueが主導する600万ドル(約6億2000万円)の資金調達ラウンドを発表した。同ラウンドにはYC、Mozilla、約20人のエンジェル投資家グループも参加している。Supabaseとは、Google(グーグル)のFirebase(ファイアーベース)や、それに類似したプラットフォームのオープンソースの代替製品を提供するYCインキュベートのスタートアップだ。

現在Supabaseには、PostgreSQLデータベース認証ツールのサポートが含まれており、ストレージならびにサーバーレスソリューションが間もなく登場する。また、データベースを操作するための通常のツールや、データベースの変更を監視するツール、そしてデータベースを管理するためのウェブベースのUIが提供されている。開発チームは、グーグルのFirebaseと比較されることは避けられないものの、1対1で置き換えることを意図したものではないことを、最初に指摘している。そして、NoSQLデータベースを利用しているFirebaseとは異なり、SupabaseはPostgreSQLを利用している。

実際、このチームは既存のオープンソースプロジェクトに大きく依存しており、可能な限りそれらに貢献している。たとえばSupabaseのフルタイム従業員の1人は、データベース上にAPIを構築するためのPostgRESTツールをメンテナンスしている。

「私たちは、また別のシステムを構築しようとしているわけではありません」と語るのは、Supabaseの共同創業者でCEOのPaul Copplestone(ポール・コプルストーン)氏だ。「私たちは、信頼性が高く、拡張性のあるエンタープライズ向けオープンソース製品は、すでに存在していると考えています。私たちが提供しようとしている、ユーザビリティを向上させるためのコンポーネントが不足しているだけなのです。ということで、実際には現在のSupabaseは6つのツールの集合体です。すぐに7つになりますけれど。その中には私たち自身が開発したものもあります。市場に出ていったときに、もしスケーラブルで、本当に問題を解決できそうなものが見つからない場合には、自分たちでそれを構築してオープンソース化することになります。ですが、それ以外の場合には既存のツールを使います」。

画像クレジット:Supabase

オープンソースのツールを市場に出すための伝統的なルートは、ツールを作成してから次にホストされたバージョンを立ち上げることだ 。おそらく作業に対する収益を得るために追加機能も加えられるだろう。Supabaseはこれとは少し違ったルートを取り、すぐにホストバージョンを立ち上げた。

もし第三者が自分でサービスをホストしたい場合には、そのコードを利用可能だが、自分自身でPaaSを運用するのは明らかに大きな挑戦だ。だがそれこそが、チームが今回のアプローチを採用した理由でもある。Firebaseが便利なのは、数クリックですべての設定ができることだと彼は指摘した。Supabaseは、同じような体験を提供できるようにしたいと考えている。「それは自分でホスティングをしている場合には得られないものの1つです」と彼はいう。「私たちが提供するような、文字通りワンクリックで数分後にはすべての設定が完了するようなホスト型プラットフォームと同じような感動を、セルフホスティングでは得ることができません」。

さらに彼は、同社が開発している安定したツールの成長をサポートできるようにしたいと考えており、そのためにはデータベースサービスをベースにしたツールを商業化することが最も簡単な方法だとも述べている

他のY Combinatorスタートアップと同様に、Supabaseは8月に開催されたアクセラレーターのデモデーの後に資金調達ラウンドをクローズした。チームは当初SAFEラウンド(未訳記事)の実施を検討していたが、創業者に有利な条件を提供してくれる機関投資家のグループを見つけたので、この機関投資家ラウンドを実施することにしたのだ。

「Firebaseが提供している手厚い無料ティアに対抗するためには、かなりのコストがかかるでしょうね」とコプルストーン氏は述べた。「そしてそれはデータベースですからね。使っていないからといって、状態を無効のままにしたり、シャットダウンしたりすることはできません。今回の資金調達ラウンドは、長期に渡って余裕のある資金を提供してくれます。さらに重要なのは、私たちのプラットフォーム上で開発してくれる開発者にとっては、好きなだけ時間をかけて、後から自分たちでマネタイズを始めることができるということです」。

同社は今回の新たな資金を活用して、成長をサポートするために、今後も様々なツールへの投資や採用を行っていく予定だという。

Coatueのジェネラルパートナーであり、Facebook(フェイスブック)の元グローバルコミュニケーション担当副社長でもあるCaryn Marooney(カリン・マルーニー)氏は、「週末に開発してすぐにスケールアップできるSupabaseの価値提案は、すぐに心に響きました」と語っている。「このチームと一緒に仕事ができることを誇りに思い、彼らの開発者に対する鋭いフォーカスと、スピードと信頼性へのコミットメントに大いに期待しています」。

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タグ:Supabase資金調達

画像クレジット:GettyImages

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(翻訳:sako)

FirefoxがApple Silicon Macにネイティブ対応、最大2.5倍高速に

Mozilla(モジラ)は、Apple Silicon(Apple M1)にネイティブ対応したFirefox 84をリリースした。これまでApple M1搭載のMacBookやMacBook Proでは、macOS Big Sur上ではRosetta 2のエミューション環境で動作していたが、84からはネイティブ対応となり、ブラウザ向けベンチマークのSpeedoMeter 2.0では前バージョンに比べて2.5倍高速になったという。

macOS向けのFirefox 84はアプリはUniversal Binaryとなっており、Intel(インテル)、Apple Siliconベースの両方でネイティブ動作する。

そのほか、マルチコアCPU/GPUを活用して描画を高速化するWebRenderが、macOS Big Sur、インテル第6世代のGPUを搭載したWindowsデバイス、Windows 7と8を搭載するインテルCPU内蔵のノートPCでも使えるようになる。

Linux/GNOME/X11にも高速レンダリングパイプラインが実装されたほか、Linux上でのDockerとの互換性が向上しているとのこと。

そして、FirefoxとしてはAdobe Flashに対応する最後のバージョンとなる。バージョン85以降はFlashは完全に使えなくなる。

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タグ:MozillaFirefox

AdobeのドキュメントサービスでデベロッパーはPDFが扱いやすくなる

この1年、Adobe(アドビ)はデベロッパーが自分のアプリでPDFを使うためのツールを、静かに拡張してきた。2020年4月には、現在PDF Embed APIおよびPDF Tools APIと呼ばれている(Adobeブログ)ものを発表し、それと共にAdobe Document Servicesプラットフォームも公開した。狙いは、アプリケーションとワークフローにPDFを組み入れるための使いやすいツールをデベロッパーに提供することにある。米国時間12月16日、同社はMicrosoft(マイクロソフト)と新たな提携を結び、Document Serviceをマイクロソフトのローコードワークフロー自動化プラットフォームであるPower Automateと統合することを発表した。

「このビジョンは1年半ほど前、『自分たちのアプリを便利にしているものをサードパーティーアプリにも提供するというのはどうだろうか』と話したときに始まりました」とアドビのDocument Service担当上級マーケティングディレクターであるVibhor Kapoor(ビブホル・カプール)氏はいう。「Acrobatの機能をマイクロサービスに分解し、APIとしてデベロッパーやパブリッシャーに提供しようというごく単純な発想で、なぜなら、正直なところデベロッパーやパブリッシャーにとってPDFは、よくいっても苦痛だったからです。それでこうしたサービスを公開することになりました」。

開発チームは、PDFをウェブ体験に埋め込む方法を改善することなどに取り組んだ(そしてカプール氏は、これまでのデベロッパー体験は「あくまでも次善の策」であり、ユーザーにとっても直感的な体験とはいえなかった、と率直に語った)。これからはDocument ServiceとEmbed APIを使えば、JavaScriptを数行書くだけでPDFを埋め込める。

画像クレジット:Adobe

カプール氏は、一連の機能をSDKやAPIで公開することはちょっとした挑戦だったことを認めた。理由は単純で、もともとチームはこうした利用場面を考えたことがなかったからだ。しかし、技術的課題に加えて、これは発想自体を変える問題でもあった。「私たちはこれまでデベロッパー指向の製品を提供したことがなく、それはデベロッパーを理解し、これらのAPIをどうやってパッケージにして公開するかを考えるチームを作らなければならないことを意味していました」。

新たなPower Automateとの統合によって、PDFを中心とした20以上の操作がPDF Tools APIからマイクロソフトのプラットフォームで利用できるようになる。その結果ユーザーは、たとえばOneDriveフォルダーにある文書からPDFを作ったり、画像をPDFに変換したり、PDFにOCRを適用したりできる。

アドビがこのプラットフォームを公開して以来、約6000のデベロッパーが利用していて、カプール氏によると、使われているAPIコールの回数は「著しく増加」している。ビジネス面では、Power Automateの追加が、新たなデベロッパーを呼び込む新たな経路になることは間違いない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Googleフォトに記憶を鮮明なものにする3D写真や新「思い出」機能などの機能追加

Googleフォトは、過去に撮った最高の写真を表示する「思い出(Memories)」機能のアップデート(Googleリリース)を公開した。同社によると、3Dシネマティック写真、最新のコラージュデザイン、新しいタイプの「思い出」機能などは今後1カ月で拡大されるという。これらの新しいタイプの「思い出」には、ユーザーがアップロードした写真に基づいて、人生で最も重要な人々の写真やお気に入りのもの、たとえば夕日、パン作りやハイキングのようなアクティビティ、そのほかユーザーにとって最も重要だと思われる写真が含まれるかもしれない。

Google(グーグル)によると、自分の写真履歴の一部に「思い出」に表示されたくない場合は、特定の人物や期間を非表示にもできるという。また、この機能が気に入らない場合は、「思い出」をに関する通知オプションをオフにすることも可能だ。

画像クレジット:Google

この新しい機能は、新型コロナウイルスのパンデミックの影響でユーザーが家に閉じこもり、コンサートやパーティーといった集まりに足を運んだり、飛行機でどこか行ったりする代わりに多くの人が家を中心に家族とともに過ごしていたこの1年を経て登場する。新たな「思い出」機能は個人的な写真がこれまでほど多く撮れなかったであろうこの1年に、私たちが行った「お気に入りのアクティビティ」が何だったのか、その一部を明らかにするのに役立つだろう。

一方、Googleフォトの新しい3Dシネマティック画像は、画像の奥行きを予測してシーンの3D表現を生成する機械学習を使って作成されている。グーグルによると、オリジナルの写真にカメラからの奥行き情報が含まれていなくても適用されるという。この機能はバーチャルカメラをアニメーション化して滑らかなパンを実現し、思い出より鮮明なものにすることを目的としている。

画像クレジット:Google

Googleフォトが新しい3Dシネマティック画像を作成すると、ユーザーには通知が届く。新しい写真はフォトグリッドの上部にある最近のハイライトセクションに表示される。その後、その写真を友人や家族と共有したり、ビデオとして送信することも可能だ。

新しいコラージュのデザインは、2020年12月の初めから一部のGoogleフォトユーザーに公開され始めている。

画像クレジット:Google

コラージュでは写真を使ってスクラップブックのようなデザインを作ることができるが、紙や装飾を使う代わりに、GoogleフォトではAIを使ってレイアウトをデザインする。これには写真の選択のほかに背景の選択や、似た色を見つけたり、フォントとコラージュの背景にアクセントをつけることなどが含まれると同社は述べている。

グーグルによると、すべての機能は2021年1月中に公開されるとのこと。機能拡張を確認するには、Googleフォトアプリのアップデートを行う必要がある。

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タグ:GoogleGoogleフォト

画像クレジット:Jaap Arriens/NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Googleフォトに記憶を鮮明なものにする3D写真や新「思い出」機能などの機能追加

Googleフォトは、過去に撮った最高の写真を表示する「思い出(Memories)」機能のアップデート(Googleリリース)を公開した。同社によると、3Dシネマティック写真、最新のコラージュデザイン、新しいタイプの「思い出」機能などは今後1カ月で拡大されるという。これらの新しいタイプの「思い出」には、ユーザーがアップロードした写真に基づいて、人生で最も重要な人々の写真やお気に入りのもの、たとえば夕日、パン作りやハイキングのようなアクティビティ、そのほかユーザーにとって最も重要だと思われる写真が含まれるかもしれない。

Google(グーグル)によると、自分の写真履歴の一部に「思い出」に表示されたくない場合は、特定の人物や期間を非表示にもできるという。また、この機能が気に入らない場合は、「思い出」をに関する通知オプションをオフにすることも可能だ。

画像クレジット:Google

この新しい機能は、新型コロナウイルスのパンデミックの影響でユーザーが家に閉じこもり、コンサートやパーティーといった集まりに足を運んだり、飛行機でどこか行ったりする代わりに多くの人が家を中心に家族とともに過ごしていたこの1年を経て登場する。新たな「思い出」機能は個人的な写真がこれまでほど多く撮れなかったであろうこの1年に、私たちが行った「お気に入りのアクティビティ」が何だったのか、その一部を明らかにするのに役立つだろう。

一方、Googleフォトの新しい3Dシネマティック画像は、画像の奥行きを予測してシーンの3D表現を生成する機械学習を使って作成されている。グーグルによると、オリジナルの写真にカメラからの奥行き情報が含まれていなくても適用されるという。この機能はバーチャルカメラをアニメーション化して滑らかなパンを実現し、思い出より鮮明なものにすることを目的としている。

画像クレジット:Google

Googleフォトが新しい3Dシネマティック画像を作成すると、ユーザーには通知が届く。新しい写真はフォトグリッドの上部にある最近のハイライトセクションに表示される。その後、その写真を友人や家族と共有したり、ビデオとして送信することも可能だ。

新しいコラージュのデザインは、2020年12月の初めから一部のGoogleフォトユーザーに公開され始めている。

画像クレジット:Google

コラージュでは写真を使ってスクラップブックのようなデザインを作ることができるが、紙や装飾を使う代わりに、GoogleフォトではAIを使ってレイアウトをデザインする。これには写真の選択のほかに背景の選択や、似た色を見つけたり、フォントとコラージュの背景にアクセントをつけることなどが含まれると同社は述べている。

グーグルによると、すべての機能は2021年1月中に公開されるとのこと。機能拡張を確認するには、Googleフォトアプリのアップデートを行う必要がある。

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画像クレジット:Jaap Arriens/NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

SaaS購入・管理支援スタートアップのCledaraが約3.5億円の追加資金を調達

企業の膨大なソフトウェア・サブスクリプションの実行可能性を高め、その管理を支援するSaaS購入・管理プラットフォームのCledara(クレドラ)は、340万ドル(約3億5000万円)の追加資金調達を行った。

このラウンドはNauta Capitalが主導し、既存の投資家であるAnthemisが参加。その背景には、このスタートアップが2020年に20倍も収益を成長させていることがある。Cledaraは具体的な数字を公開していないが、2020年8月からだけで7倍も伸びている。

Cledaraは、2018年7月にCristina Vila(クリスティーナ・ヴィラ)氏が設立した会社で、企業がSaaSの利用状況や支出を追跡・管理できるようにするためのソフトウェアを開発しており、その中には資金が十分に使われているかどうかを理解するのに役立つ分析も含まれる。ヴィラ氏は、ロンドンのフィンテックであるDopayで働いていたときにSaaSの管理問題を直接経験した。また、彼女の共同創業者でCOOを務めるBrad van Leeuwen(ブラッド・ヴァン・ルーウェン)氏は以前、バンキングプラットフォームを展開するRailsbankの重役だった。RailsbankもCledaraの顧客の1つだ。

Cledaraのもう1つの特徴は、従業員や外部のチームが適切なSaaSを自由に購入できるようにするための無制限の仮想デビットカードを発行していることだ。これには、管理者が事前にすべての購入を承認し、全員が何を購入しているかリアルタイムで更新される情報にアクセスできるオプションが含まれる。Cledaraの収益の一部は、このカードの利用による交換手数料と、有料サブスクリプションによるSaaSモデルによって得られている。

Cledaraを利用している顧客は全部で100社を超え、その中にはFlorence.co.uk、Unmind.com、Butternut Boxなどが含まれる。Cledaraの顧客は、ソフトウェアの使用量を最大30%削減できる一方で、SaaSの請求書との格闘や簿記、「一般データ保護規則や決められたフィンテックに対するアウトソーシング規制への準拠」など、手作業で管理すれば膨大な時間が掛かる作業を毎月「何時間も」節約できると、同社は主張している。

画像クレジット:Cledara

Cledaraの製品は英国、フランス、アイルランド、ドイツ、スペインなど欧州20カ国以上で販売されている。今回の投資はその製品の成長を加速させ、米国への進出計画を含むさらなる国際的な拡大のために活用すると、同社では述べている。

「成長を加速し続けるためは、チームの成長が不可欠ですが、先月はいくつかのボトルネックのために、顧客のオンボーディングを遅らせなければなりませんでした」とヴァン・ルーウェン氏はいう。「 来年半ばまでにサポート、サクセス、プロダクト、エンジニアリング、コンプライアンス、マーケティング、セールスなど、ビジネスのあらゆる部分でチームを4倍に成長させる予定です。今回のラウンドでは、そのための資金を調達することができました」。

その新たな従業員の半分以上は、バルセロナで雇用することになるだろう。Cledaraは4カ月前にスペインオフィスを開設し、英国のEU離脱以後に英国以外の国からも人材を確保できるようにしている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Cledara資金調達SaaS

画像クレジット:Cledara

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(翻訳:TechCrunch Japan)

277億ドルのSlack買収をめぐる世間の意見とは

先日、Salesforce(セールスフォース)とSlack(スラック)の取引が正式に発表されたが、その数字はにわか信じがたいものだった。Salesforceは270億ドル(約2兆8000億円)以上を投じてSlackを買収し、Salesforceのファミリー製品へと取り込んだ。Salesforceに欠如している重要な鍵をSlackが握っていると同社は見ており、Slackを手に入れるために驚くほどの金額を費やした理由はそこにあるという。

Slackの獲得によってSalesforceは、CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏が「すべてへのインターフェース」と呼び、長年熟考を重ねてきたものを手に入れることができた。同社は2010年に自社で解決しようとソーシャルツールChatterの構築を試みたものの、それが大々的に日の目を見ることはなかった。しかし、Slackでそれがついに実現することになる。

「私たちは10年以上前から常に、ソーシャルエンタープライズに対するビジョンを持っていました。弊社のCustomer 360と統合された、アプリケーションとエコシステムを備えた協同的で生産的なインターフェイスとはどのようなものなのか、という課題に特化したDreamforcesを開催したこともあったほどです」とベニオフ氏は振り返る。

皮肉にもSalesforce Parkのすぐ隣のビルにSlackの本社があるという。コラボレーションにはもってこいのロケーションである(あるいは、単にSlackを使うという手もあるが)。

Chatter から Slackへ

Battery Ventures(バッテリーベンチャーズ)のジェネラルパートナーであるNeeraj Agrawal(ニーラジ・アグラワル)氏によると、ベニオフ氏は何年も前からエンタープライズソーシャルに関心を持っており、今回の方法はそれに対する同氏なりの答えだという。「Chatterを覚えていますか?ベニオフ氏はこのトレンドに非常に的確でした。彼は約7~8年前にYammerをMicrosoftに奪われ(Microsoftが12億ドル/約1250億円で買収)、その後Chatterを立ち上げました。これは大きな賭けだったもののうまくいかなかった。SlackはChatter 2.0と呼んでも良いでしょう」とアグラワル氏は言う。

Tact.aiのCEO兼共同創業者であるChuck Ganapathi(チャック・ガナパティ)氏は、2009年にSalesforceでChatter製品のプロダクトリーダーを務めていた。同氏はTechCrunchに共有してくれた近日公開予定のブログ記事で、Chatterの失敗要因には様々な理由がるものの、大きな要因はやはりSalesforceがしょせんデータベース専門家の集まり以外の何者でもなく、エンタープライズソーシャルは大きく異なる分野だったからだと書いている。

「問題の多くは技術的なものでした。SalesforceはOracle(オラクル)出身者がリレーショナルデータベースを基盤に設立したデータベース中心の会社です。DBアプリケーションとChatterやSlackのような構造化されていないコミュニケーションアプリケーションは、コンピュータサイエンスの全く異なる分野であり、重複している部分がほとんどありません」と同氏は書いている。そのため、アプリケーションを正しく構築するための専門知識が欠落していた上に、当時市場には多くの類似製品が出回っていたため、Chatterが日の目を見ることはなかったのだと同氏は感じている。

しかし、Salesforceプラットフォームにソーシャルを組み込むというベニオフ氏の野心が失われることはなかった。ただ、それを実現するためにはさらに10年ほどの歳月と莫大な資金が必要だったわけだが。

相性の良し悪し

以前SalesforceでAppExchangeを運営していたOperator Capital(オペレーターキャピタル)のパートナーLeyla Seka(レイラ・セカ)氏は、SlackとSalesforceの統合には将来性があると見込んでいる。「SalesforceとSlackが一つになることで、世の中の企業がより効果的に連携して仕事をするために役立つ強力なアプリケーションを提供することができるでしょう。COVID-19によって、従業員が仕事をするためにはデータがいかに重要かが露わになっただけでなく、仕事を成功させるためにはコミュニティと繋がれることが非常に重要であるということが明確になったと思います。この2社の融合によってまさにそれが実現するのではないでしょうか」とセカ氏は言う。

CRM Essentials(CRMエッセンシャルズ)のプリンシパルアナリストBrent Leary(ブレント・リアリー)氏もその買収価格には驚きを隠せないようだが、今回の買収には、たとえそれを手に入れるために多額の金額を払わなければならないとしても、欲しいものを追い求めることを決して恐れないSalesforceの姿勢が表れていると述べている。「Salesforceはこの取引きに関して微塵の恐れもないということが分かります。彼らのプラットフォームにこの製品を追加することで大きな見返りがあると確信しているからこそ、この買収にこれだけの大金を投じるのでしょう」。

Slack側にとっては、企業のビッグリーグへの近道だろうとリアリー氏は考える。「Slackについては、AMOSS(Adobe、Microsoft、Oracle、SAP、Salesforce)と競合していた立場からそのうちの1社となったわけで、またチームを組む上で最も理にかなっていたのがSalesforceだったのだと思います」。

SMB Group(SMBグループ)のアナリスト兼創設者のLaurie McCabe(ローリー・マッケイブ)氏もリアリー氏の見解に同意しており、Salesforceは価値を見出したら躊躇しないのだと話している。「今回のケースでは、Slackが非常に強力な力を発揮することになります。Salesforceは、CRMやTeamsなど成長を続けているMicrosoftのクラウドポートフォリオに対抗し、より効果的に競争することが可能になるでしょう」と同氏は言う。

今後のお金の流れ

Battery Venturesのアグラワル氏は、収益の創出がこのディールにおける全目的であり、だからこそ大きな変化をもたらすために10億ドル単位の非常に高額なプライスを支払うことも厭わなかったのだろう言う。最終的にはMicrosoftに追いつくか、少なくとも時価総額で1兆ドル(約104兆円)に到達することが目標だと同氏は予測する。

ちなみに今のところ投資家らがこの取引きを好意的に受け止めている様子はなく、株価は記事執筆時の12月3日だけで8%以上下落しており、先週の感謝祭休暇前にSalesforceがSlackに興味を持っているという噂が浮上して以来16.5%下落している。これは180億ドル(約1兆876億円)以上の時価総額の損失を意味しており、おそらく同社が期待していたような反応ではないだろう。しかしSalesforceの規模は十分に大きく、長期戦を闘う余裕があるため、Slackの助けを借りて財務目標を達成することができるだろう。

「時価総額1兆ドルに到達するためにSalesforceは今、MSFTに正面から挑まなければなりません。これまで同社は製品面ではほとんどの場合、独自のコースに留まることができました。[…]市場規模1兆ドルを達成するためにSalesforceは、2つの巨大市場での成長を試みる必要があります」とアグラワル氏は述べている。この2つとは、ナレッジワーカー/デスクトップ(2016年のQuip買収を参照)かクラウド(Hyperforceの発表を参照)のことである。同社の最善の策は前者であり、それを手に入れるために並外れた額を支払うことも厭わないだろうとアグラワル氏は言う。

「今回の買収により、Salesforceは今後数年間において20%以上の成長率を維持できるようになるでしょう」と同氏。最終的にはそれが収益の針を動かし、時価総額を上昇させ、目標達成に貢献すると同氏は見込んでいる。

注目すべきは、Salesforceの社長兼CEOであるBret Taylor(ブレット・テイラー)氏が、SlackをSalesforceの製品ファミリーにしっかりと統合する計画がある一方で、スタンドアロン製品としてのSlackの底力と有用性を認識しており、それを妨げるようなことは何もするつもりはないと述べたことだ。

「基本的には、Slackがテクノロジーにとらわれないプラットフォームであり続けられるようにしたいと考えています。Slackは毎日何百万人もの人々に利用されており、地球上のあらゆるツールをつなげてくれていることを理解しています。非常に多くの顧客が独自のカスタムツールを統合しており、これを使用するチームの中枢神経系にもなっています。私たちは決してそれを変えたくはありません」とテイラー氏は述べている。

ここまで大規模な取引きの良し悪しを現時点で判断するのは難しい。テイラー氏が言うようなSlackの独立性を確保しつつ、両社がどのように調和をとっていくのか、またSlackをSalesforceのエコシステムに上手く組み込むことができるのかなどを見極める必要がある。もし両社が呼吸を合わせることができ、SlackがSalesforceのエコシステムを完成させることができるのなら、この取引が成功に終わる可能性は十分にある。しかしもしSlackがイノベーションを止め、企業の重鎮の重圧に耐えられなくなってしまったら、今回の金額は無駄使いに終わってしまうかもしれない。

どちらに向かうかは、乞うご期待である。

関連記事:SlackとSalesforceの幹部が一緒になったほうがいいと考えたワケ

カテゴリー:ソフトウェア

タグ:Slack Salesforce 買収

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(翻訳:Dragonfly)

企業の「調達」を現代化、購入コストも10%削減させるFairmarkitが約31億円調達

パンデミックが猛威を振るう中、特に特定の分野での調達の重要性にスポットライトが当たっている。そんな中、ボストンのスタートアップであるFairmarkit(フェアマーキット)が、企業向けに現代的なデジタル調達システムを導入しようとしている。米国時間12月10日、同社は3000万ドル(約31億2000万円)のシリーズBを発表した。

ラウンドを主導したのはGGV CapitalとInsight Partnersで、既存の投資家の1984 VC、NewStack、NewFundも参加した。同社によれば、今回のラウンドにより調達総額は4200万ドル(約43億7000万円)になったという。

Fairmarkitの共同創業者でCEOのKevin Frechette(ケビン・フレシェット)氏は、同社はOracleやSAPのような、数十年前からある企業が提供する大規模な調達ソフトウェアシステムを置き換えることを望んでいるのだという。数年前に周囲を見回した彼は、この領域がレガシーベンダーでいっぱいであり、ディスラプションの機が熟していることに気がついた。

さらに、そうした既存のシステムは、50万ドル(約5200万円)とか100万ドル(約1億400万円)といった価格を超える、大きな購買だけを追跡するように設計されているという。それ以下の金額の購買は、テールスペンド(都度購買費)と呼ばれているものだ。「調達は、たとえば100万ドルを超えるような企業の最も大きな購買に焦点を当てていますが、それ以下の規模のものは忘れ去られ、無視されているのです。それはテールスペンドと呼ばれているもので、買うものの8割、ベンダーの8割、予算の2割を占めているのです」とフレシェット氏はいう。

こうした支出は数十億ドル(数千億円)を占めているものの、良い追跡システムを欠いているのだとフレシェット氏はいう。そこに商機を見出した彼は、共同創業者と一緒にソリューションを構築した。その最初の顧客は、ボストンの公共交通機関のMBTAである(より効率的にするためなら、手に入るものは何でも採用するというシステムだ)。現在では、様々な業界に50社以上の顧客を持ようになった。

このシステムは、ベンダーのためのマーケットプレイスとして機能し、顧客が100万ドル以下の価格帯で商品やサービスを見つけることができる中央購買システムとなっている。システムは顧客のベンダーデータをインポートし、これを他のデータと組み合わせて巨大な購買情報データベースを構築する。そこから、システムは顧客が何を必要としているかを判断し、AIを使って特定の注文に最適な価格を見つけることができる。

フレシェット氏は、このシステムは単に費用を節約する方法を提供するだけではなく(顧客は彼のシステムを使って購入コストを10%削減することができたと述べている)、女性、有色人種、退役軍人が経営するビジネスや地元企業など、多様なベンダーを発見できるようにする方法も提供しているいう。

彼によれば、こうしたベンダーたちが通常の調達部門での精査にかけられることなく、そのまま無視されていることがしばしば起きているという。だがFairmarkitはこうした企業を浮かび上がらせ、ビジネスチャンスを与えることになる。「私たちの技術の中核はベンダー推奨エンジンなので、【略】多様なベンダーを取り込むことができ、公平な機会を与えることができるのです」と彼はいう。

2020年の初めに40名の従業員を数えた同社には、その後30名が加わった。2021年にはその数を倍増させる計画だが、それに応じて多様な従業員基盤を構築することで、フレシェット氏は製品の多様性に反映させたいと考えている。

「本当にそれを前面に押し出しています。多様性や包含のために自分たちがどのようにすべきかを調査しているだけでなく、それを支援するためのプログラムを用意しています。これは私が本気で情熱を持って取り組んでいることなのです、なぜなら多様なベンダーの役に立つこともとても拘っている点なのですから」と彼はいう。

フレシェット氏は、社員をオフィスに入れることが許されないパンデミックにもかかわらず、なんとか会社を成長させ、その文化を築いてきたという。将来的には、オフィスが必須になるような世界は彼の視野には入っていない。

「今年、私たちは変曲点にさしかかりました。もはや全員が1つのオフィスにいる必要がある世界ではありません。【略】私たちは(地理的に)狭いセクターに縛られているわけではありませんから、それは私たちのビジネスを加速させるだけです。私たちは(どこからでも)横断的に活動することができるのです」と彼いう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Fairmarkit資金調達

画像クレジット:Martin Barraud / Getty Images

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(翻訳:sako)

理髪店向けマネジメントツール「Squire」が最新ラウンドで評価額が3倍の261億円に

Squireは理髪店のためのソフトウェアを売るスタートアップだ。このほどIconiq Capitalのリードで5900万ドル(約61億7000万円)の調達ラウンドを完了した。調達金額のうち4500万ドル(約47億円)は株式、1500万ドル(約15億7000万円)は負債融資による。

この調達ラウンドは、SquireがCRVのリードで3400万ドル(約35億5000万円)のシリーズBラウンドを終えてからわずか数カ月後のことだ。新たな資金を得てSquireの評価額は2020年6月の8500万ドル(約88億8000万円)から現在の2億5000万ドル(約261億2000万円)へと3倍近く増えた。ほかにTiger GlobalとTrinity Venturesが出資した。

何が起きたのか?Squireの売上は理髪店が軒並み休業した2020年3月のゼロから、わずか10カ月足らずの間に年間経常収支1000億~2000億ドル(約10兆5000億〜20兆9000億円)へと成長した。この成長は、次世代の理髪店がいかにオフラインプロセスからデジタル・クノロジーへと拠り所を変えているのかを示している。

「私たちは稲妻のように飛び立ちったばかりです」と共同ファウンダーのDave Salvant(デイブ・サルバント)氏はTechCrunchに語った。

サルバント氏は、もう1人の共同創業者であるSonge LaRon(ソンゲ・ラロン)氏とともに、2016年に独立事業者のためのバックエンド理髪店管理ツールとしてこのビジネスを始めた。Squireは店舗の予約管理を行い、メンバープログラムを導入し、非接触やキャッシュレスの支払いシステムを提供する。同社によると、理髪店の運営は他のどんな小規模店舗よりも複雑で、それは複数の相手と取引が行われたり、顧客が異なる店の異なるサービスを一度にチェックアウトすることもあるからだという。

そこに登場するのがSquireだ。決済からそんて複雑な取引まですべてをこなす。

新型コロナウイルス(COVID-19)は、中小規模事業者の生活を脅かし、苦境を乗り切るためのローンや資金繰りを困難にした。サルバント氏によると、Squireは1500万ドル(約15億7000万円)の負債融資を行うことで、そういう事業主向けに「サービスとしてのバンキング」機能を作ろうとしている。

「この市場は伝統的金融機関から十分なサービスを受けていません」とサルバント氏はいう。「金融ツールを使ってそんなオーナーたちを助けるチャンスが私たちにはあると思うのです」。

今後Squireはオーストラリア、カナダ、英国などの新規市場への拡大を計画している。調達した資金の大部分は営業とマーケティングの専門家を雇用するために使われる。

Squireの従業員数は現在100名だ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Squire資金調達美容

画像クレジット:Squire

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

2020年のアプリ消費額は過去最多の約12兆円、ダウンロードは1300億回

モバイルデータ分析会社App Annieの年末推計によると、2020年に消費者はApple(アップル)のApp StoreとGoogle Playで前年比10%増の1300億回アプリをダウンロードした。この2つのアプリストアでの消費額は、年末までに前年比25%増の1120億ドル(約11兆7000億円)に達するとApp Annieは予想している。

通常、ダウンロード回数の増加は主に新興マーケットが主導するが、2020年は状況が異なる。

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックのために、モバイルの浸透が2、3年分加速した。その結果、消費者は仕事、教育、エンターテインメント、買い物などのためのデジタルソリューションとしてアプリに向かった。これが、モバイルマーケットの成熟にもかかわらず、ダウンロード回数やモバイル使用時間、消費額の増加につながった。

画像クレジット:App Annie

Google Playの2020年のダウンロード回数はiOSを160%上回った。しかしいずれも10%の増加だ。一方、ダウンロード回数におけるゲームのシェアは40%増えた。Google Playでは全ダウンロード回数におけるゲームの割合は45%で、前年より5%増えた。しかしiOSでのゲームの割合は30%を維持した。2つのアプリストアでの消費額に関しては、1ドルあたり0.71ドルがゲーム関係だった。

また新型コロナのために消費者はこれまで以上にデバイスを使用した。Androidの使用時間は2019年比25%増の3兆3000億時間だった(App AnnieはiOSデバイスの使用時間は測定できない)。

画像クレジット:App Annie

デバイス使用時間の増加は消費額の増加につながり、2020年は過去最多の1120億ドル(約11兆6800億円)となった。1ドルあたり65セントがiOSでのものだが、Google Playでの支出額は引き続き増えている。今年は30%近くになるとApp Annieは予想している。

iOSでの消費額が多かったマーケットは米国、日本、英国だ。このリストは2018年と2019年のものと異なる。過去2年は米国、中国、日本だった。Google Playの方のリストは米国、韓国、ドイツだった。過去2年と比較すると、成長という点で韓国とドイツは日本と英国の座を奪った。

App Annieのレポートではまた2020年のトップアプリのリストも紹介され、TikTokがダウンロード回数において第1位、消費額で第2位だった。しかし、月間アクティブユーザー数においてはFacebook(フェイスブック)には敵わなかった。ロックダウンにもかかわらず、デートアプリTinderが消費額で第1位だった。

InstagramやMessenger、WhatsAppといったフェイスブックのほかのアプリはダウンロード回数やアクティブユーザー数のチャートで上位を維持した。新型コロナのおかげでZoomはダウンロード回数のチャートで第4位に入った。Appleがこのほど発表したように、iOSではZoomはダウンロード回数第1位で、TikTokがその後に続いた。Google Meetもランクインし第7位だった。

画像クレジット:App Annie

App Annieが発表したこうした数字がモバイルマーケット全体を表しているわけではないという点は注意すべきだろう。というのもこのレポートは中国のサードパーティのアプリストアをカバーしていないからだ。中国の数字は、年初めに発表されるApp Annieのより広範をカバーしている「State of Mobile」レポートに含まれている。

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(翻訳:Mizoguchi