人気NFTプラットフォーム「OpenSea」がトップ幹部によるインサイダー取引事件を認める

「NFTのeBay」として知られるOpenSea(オープンシー)は、社員の1人が同プラットフォームから得たインサイダー情報を利用して暗号デジタル資産を取引していたことを認め、スキャンダルになっている。

米国時間9月14日、NFTプラットフォームであるOpenSeaのトップ幹部が、NFTコレクションがプラットフォームのホームページに掲載される前に購入し、プラットフォームでの販売を前倒ししたとして告発された。Twitter(ツイッター)ユーザーの@ZuwuTVによると、同スタートアップの製品マネージャーは、秘密口座の暗号資産ウォレットを使用して、OpenSeaのメインページに掲載される前にドロップを購入し、OpenSeaで公開された直後に販売して、その利益を自分のメインアカウントに戻していたという。ユーザーたちは、当時OpenSeaのトップページに掲載されていたNFTドロップを含む、パブリックブロックチェーン上でその幹部に紐づけられたアカウントからのいくつかのトランザクションにリンクしている。

15日、OpenSeaはこの事件を認めたようで、ブログ記事の中で「社員の1人が、当社フロントページに表示されるように設定されていると知っていたアイテムを、公開前に購入していたことを知りました」と述べている。同社はこの社員を特定していないが、事件について「ただちに」調査を行っていると述べた。2021年7月にはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が主導したシリーズBで1億ドル(約109億円)を調達し、15億ドル(約1640億円)の評価を受けた同スタートアップは、署名のないブログ記事の中で、今回の事件は「非常に遺憾なことだ」と付け加えた。

OpenSeaのDevin Finzer(デビン・フィンザー)CEOは、ツイートで「我々は昨日の事件を徹底的に検証しており、OpenSeaのユーザーのために正しい行動を取ることを約束します」と述べている。

2021年8月、34億ドル(約3718億円)の取引量を記録したOpenSeaは、従業員が機密情報を利用して自社プラットフォーム上で自社のユーザーとNFTを売買することを防止するルールを設けていなかったようだ。同社は、チームメンバーが「コレクションやクリエイターを特集・宣伝している間は、それらのコレクションやクリエイターから売買することはできない」、そして「OpenSeaプラットフォームで入手できるかどうかにかかわらず、機密情報を使用してNFTを購入・販売することを禁止する」というポリシーを今では実施している、と詳述している。

SEC(米国証券取引委員会)が暗号資産クラスに関する公式なガイダンスをほとんど出していないにもかかわらず、ほとんどのNFTは一般的には有価証券とはみなされていない。しかし一部では、異なる売買の仕組みや継続的な報酬体系が、NFTの販売をさらに証券の領域にプッシュしているのではないかと疑問視されている。

米上院銀行委員会のSherrod Brown(シェロッド・ブラウン)委員長は14日、暗号資産市場とSECの執行の関係について議論が行われた公聴会(The Blockによる書き起こし)で次のように述べた。「多くの人々が、新しいデジタル資産の価値の劇的な上昇に誘惑されています。プロの投資家や著名人の中には、数百万ドル(数億円)を稼ぐことが簡単に見えるような人もいます。しかし、私たちが何度も思い知らされるように、それは決して簡単なことではありません。そして、あまりにも多くの場合、誰かが手っ取り早く利益を得るために、労働者やコミュニティ全体が犠牲になります」。

TechCrunchはOpenSeaにさらなるコメントを求めている。

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(文:Lucas Matney、翻訳:Aya Nakazato)

米証券取引委はCoinbaseの暗号資産利回り商品を規制したいがCoinbaseは反発

Coinbase(コインベース)のCEOであるBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏は、同社とSEC(米証券取引委員会)との現在の関係に強い反応を示した。同氏によると、SECは、Coinbaseが「Coinbase Lend」と呼ぶ利回り商品の取り扱いを始めた場合、暗号資産取引所である同社を訴えると脅しているという。

Coinbaseはこの新商品で、「Compound」や「Aave」といった人気の分散型金融(DeFi)商品に対抗したいと考えている。同社は、米ドルにペッグされた安定したコインである米ドルコイン(USDC)を取り扱うレンディング(貸し出し)プールを運営したいと考えている。

同社がCoinbase Lendの立ち上げに成功すれば、ユーザーはCoinbase Lendに暗号資産を送り、レンディングプールに拠出することができる。最終的には、集まった暗号資産を貸し出す計画だ。Coinbaseのユーザーは、レンディングプールに拠出した見返りとして高い金利を得る。Coinbaseは、プレビューページで年率4%を約束している。

アームストロング氏によると、同社はリリース前にSECに連絡を取ったという。「彼らは、この貸し出しは証券だと答えた」とツイッターで述べた。

「彼らは、なぜそれが証券だと思うのかを教えてくれず、代わりに私たちに多くの記録を求め(我々はそれに応じました)、私たちの従業員に証言を要求し(それにも応じました)、そして、私たちがこのビジネスを始めるなら、私たちを訴えると言ってきました。その理由については説明せずにです」と付け加えた

また、Coinbaseの最高法務責任者であるPaul Grewal(ポール・グレワル)氏も、同社のブログで今回の出来事について書いている。SECがCoinbaseの貸し出しプログラムは証券だと主張しているにもかかわらず、同社は新機能の事前発表を進めると決めたようだ。

「SECは、Coinbase Lendが証券としての性質をもつと考えていると言いますが、なぜ、どのようにしてそのような結論に達したのかは明らかにしていません。しかし、私たちは落胆することなく、ゆっくりと物事を進めることにしました。6月には、Lendプログラムを公開し、キャンセル待ちを開始しましたが、公の開始日は設定しませんでした」とグレワル氏は書いている。

この記事を読んでいる起業家の方へのアドバイスはこうだ。SECから、それは始められないと言われたら「間もなく」という言葉でウェイティングリストを公開してはならない。

驚きではないが、Coinbaseによると、SECはその後、正式な調査開始を決定したようだ。また、ある従業員はSECの質問に答えるために1日を費やすことになったという。

「彼らは文書や書面での回答を求めてきました。私たちは喜んでそれを提供しました。また、このプログラムについて宣誓証言をしてくれる企業証人の提供も求められました。その結果、当社の従業員の1人が8月に丸1日かけて、Coinbase Lendについて完全かつ透明性のある証言を行いました」とグレワル氏は書いている。

その結果、Coinbaseは頭にきて、SECに対してPRキャンペーンを展開すること選んだ。アームストロング氏の主張は、他社がすでにレンディングプールを提供しているため、一部の企業がそのような商品を提供できて、Coinbaseが提供できない理由はないというものだ。

「他の多くの暗号資産会社は貸し出し機能の提供を続けていますが、どうしたわけかCoinbaseはそれが許されていません」と同氏はツイートした

これは、Coinbaseが暗号資産エコシステム全体を変更することに終わるかもしれないリスクをともなう戦略だ。Sar Haribhakti(サール・ハリブハキ)氏が指摘したように、DeFiに対する監視の目がますます厳しくなり、業界全体により厳しいルールが適用されることになるかもしれない。

「表面上は、SECの目的は投資家を保護し、公正なマーケットを作り出すことです。ですので、この件に関してSECは誰を守り、どこに害があるのでしょうか。人々はこれらのさまざまなプロダクトで利回りを稼ぐことにかなり満足しているようです」とアームストロング氏は述べた

但し書きを読むと、CoinbaseはLendプログラムで投資家を保護しない。Coinbase Lendページの下の方にはこうある。「Lendは高利回りUSD普通預金口座ではなく、Coinbaseは銀行ではありません。あなたの貸し出した暗号資産はFDICやSIPCの保険で保護されません」。

これは投資家にとって、あまり心強いものではない。ツイート合戦は問題を解決しないため、どこかの時点でCoinbaseとSECは暗号資産貸し出しプロダクトを協議するために向き合う必要がある。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

絵文字の列がネット上の「アイデンティティ」になると考えるYat、すでに約22億円の売上達成

私がYatのことを知ったのは4月のことで、友人がグループチャットに、鍵の絵文字が「インターネット上のアイデンティティ」として42万5千ドル(約4667万円)で売られているという記事のリンクを送ってきたのがきっかけだった。彼女は「この世界なんて大嫌い」とチャットに打っていた。

42万5000ドル(約4668万円)の余裕がある人たちがその資金を相互扶助か何かに使ってくれれば、確かに世界はもっと良くなるのだろうが、その数分後、私たちはこのYatというものが一体何なのかを明らかにしようとしていた。そしてさらに数分後、私は5ドル(約549円。暗号資産ではなく米ドル)を使って☕ ❗を購入した。この絵文字の文字列は、私のカフェイン依存症と敏感な胃についての感動的な物語を語っていると思う。その選択をしたときには、自分がこのことを記事にすることになるとは思っていなかった。

KeshaのTwitterのYat URL

Yatは、表面的には絵文字が入ったURLを購入できるプラットフォームだ。Kesha(y.at/ )、Lil Wayne(y.at/ )、Disclosure(y.at/ )までもが自分のTwitterのプロフィールに絵文字を使っている。インターネット上の他のURLと同様に、Yatsは他のウェブサイトにリダイレクトすることもできるし、より人目を引くLinktreeのように機能することもできる。ユーザーはYatではなく、絵文字に対応した独自のドメイン名を購入して使用することもできるが、多くの人は技術的な専門知識も時間もない。その代わりに、Y.atドメインを所有するYatから一度だけ購入すれば、同社がユーザーに代わって専用のy.atリンクを提供してくれるのだ。

しかし、この便利さは高級なものだ。Yatは、アルゴリズムを使ってYatの「リズムスコア」を決定している。これは、絵文字の組み合わせの希少性に応じて価格を決定するための指標だ。絵文字が1つや2つしか入っていないYatは、会社に直接連絡しないと買えないほど高価だが、4つや5つの絵文字を使ったYatであれば、4ドル(約439円)で買えるものが簡単に見つかる。

Y Combinatorの卒業生であり、デジタルマーケティング企業Sparkartの創業者であり、エンジェル投資家でもあるCEOのNaveen Jain(ナビン・ジャイン)は、Yatが究極的にはインターネット上のプライバシーを守る製品であると考えている。ジェイン氏は、人々が支払いやメッセージの送信、ウェブサイトの運営、プラットフォームへのログインなど、現在オンラインアイデンティティを利用できるあらゆる方法でYatを利用できるようにしたいと考えている。

「客観的に見て、奇妙な規範だと思います。インターネットにアクセスし、広告付きプラットフォームにアカウントを登録する時、登録したユーザーネームは普遍的なものではありません。人は多くのアカウント、多くのユーザーネームを持っています。そして、それらをコントロールすることはできません。あるアカウントがあなたのアカウントを停止しようとすれば、停止することができるのです。SNSの運営企業にメールを送っても、返信しなくてもいいからという理由で返信がなかったという話は山ほどあります」。

画像クレジット:Yat

ユーザーはYatを購入する際に製品の代金(4ドル(約439円)であれ40万ドル(約4393万円)であれ)を支払うので、Yatは広告費で賄う予定はない。

YatのCEOは、長期的にはブロックチェーン技術を使って、自己主権型を目指す計画だという。Yatは、非中央集権的な分散型データベース上で供給される資産となるだろう。現在、インターネット規制当局のICANNが管理している現行のドメインネームシステム(DNS)に代わる分散型のシステムを作ろうとするプロジェクトはいくつかある。DNSはインターネット上でさまざまなものを発見する手段だが、中央集中型の階層的なシステムを使用している。ブロックチェーンによるドメイン名システムは、管理主体が存在しないため、これが次世代のウェブ、すなわち「ウェブ3.0」の基盤になると考えられている。

現在、Yatのウェブサイトには「ブロックチェーン」や「暗号資産」といった言葉は出てこない。ジャイン氏が、そうした言葉が一般消費者にとって説得力があるとは思っていないからだ。彼は漸進的な非中央集権を信じており、現在YatがEthereum(イーサリアム)ではなくドルで購入されているのもそのためだ。

ジャイン氏はこう語る。「暗号資産の世界でおもしろいのは、全員がデータベースについて多くの時間を費やして語っていることです。人々はデータベースに関心がありません。ウェブサイトに『MySQLによる提供』と書かれているのを最後に見たのはいつですか?」

しかし、Y.atは、ブロックチェーンではなく、従来のインターネットレジストリに登録されていた。

「これは基礎づくりなのです。ビジョンの中には、現時点では実施よりも社会契約に近い要素があることは確かです。しかし、これは私たちが定めたビジョンであり、その目標に向かって継続的に取り組んでいます」とジャイン氏はいう。

それでも、Yatがより非中央集権的になるまでは、Yatはユーザーに完全なコントロールを与えることはできない。現在のところYatの利用規約では、Yatの判断でユーザーを終了させたり、停止させたりする権限が与えられているが、同社はシステムから追い出された人はまだいないと主張している。

「Yatがより分散化していけば、我々の利用規約は重要ではなくなるでしょう。これが先進的な非中央集権的戦略を追求することの本質です」とジャイン氏はいう。

「ゼロ世代」(オープンベータ)の段階で、Yatは約2000万ドル(約21億9600万円)相当の絵文字アイデンティティを販売したと主張している。Yatを手に入れるためのキャンセル待ちリストが終了した今、Yatはいくつかのレアな絵文字アイデンティティを、最近15億ドル(約1647億1900万円)の評価額に達したNFTマーケットプレイスであるOpenSeaに掲載している。

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Yatのビジュアライザー作成時の静止画像

「今回初めて、OpenSea上でYatsのオークションを行い、Ethereum上でYatsの鋳造を開始する予定です」とジャイン氏は語る。YatsをNFTとして鋳造する前に、ユーザーはVisualizerを通じて自分のYatのデジタルアートを作ることができる。これらの機能と、Yatの絵文字セットにおける新しい絵文字は、Yat Horizonと呼ばれる7月末のオンラインイベントで発表された。

ジャイン氏は、NFTとしてYatを鋳造することができるようになったことについて、「Yatクリエーターはより多くの権利を持つことになります。私たちは、究極の目標である、Yatをすべての人にとって最高の自己管理型、自己主権型のIDシステムにするという目標を達成するまで、漸進的な分散化を追求し続けるつもりです」と語った。

インターネット上でのプライバシーの確保についての消費者の関心が高まっている。iOS 14.5では、ユーザーの96%が広告のトラッキングを拒否したというデータがある。しかし、非中央集権的な動きは、そのプライバシーに関連したメリットを主流派に売り込むことが未だできていない。Yatはこの問題の解決に役立つ。ブロックチェーンの意味を理解していない人でも、個人的な絵文字の文字列を持つのはかなり楽しいということはわかっているからだ。しかし、単一の絵文字によるユーザー名に42万5000ドル(約4667万円)を費やす前に、Yatのビジョンが完全に実現するのはWeb 3.0が出現してからであり、それがいつ、どのように実現するかはまだわからないということを覚えておくべきだ。

画像クレジット:Yat

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

【コラム】その正当性確保のために暗号資産の規制は不可欠だ

編集部注:本稿の執筆者はHenrik Gebbing(ヘンリック・ゲビング)氏とWilhelm Nöffke(ウィルヘルム・ネフケ)氏。ヘンリック・ゲビング氏は機関投資家や企業向けに欧州のデジタル資産のカストディと金融サービスのプラットフォームを提供するFinoaの共同CEO兼共同設立者。ウィルヘルム・ネフケ氏もFinoaのシニア・コンプライアンス・マネージャー。

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過去10年間、欧州や世界各国で顧客確認(KYC)やマネーロンダリング対策(AML)の規制に関するさまざまな構造的変化が見られてきた。有名企業によるマネーロンダリングに関するニュースや不正資金のグローバル市場への浸透が相次ぎ、当然のことながら規制当局や一般市民の注目を集めてきた。

Wirecard(ワイヤーカード)のスキャンダルは、広範囲にわたる不正行為を調査した結果、麻薬やポルノの違法な流通に関わる一連のシェルカンパニーの存在が明らかになったという特に卑劣な例である。Danske Bank(ダンスケ銀行)では、9年間ほぼ気づかれることなく約2270億ドル(約25兆円)がエストニアの子会社を経由してロンダリングされていた

米国では、証券取引委員会がRipple Labs(リップル・ラボ)とその幹部2名に対し、未登録で進行中のデジタル資産証券の募集を通じて13億ドル以上(約1428億円)を調達したとして提訴。この訴訟は現在も継続中である。

規制当局や金融機関がこういった犯罪行為に対する理解を深めるにつれ、AML要件も改善されてきた。しかし、これらの調整はどれも後手後手の対応であり、試行錯誤的なプロセスとなっている。

急速に進化するブロックチェーンエコシステムの課題に対処するため、欧州連合はライセンスモデルを改善するために規制システムをさらに強化するより厳しい金融規制の導入を開始している。現在多くの加盟国が暗号資産を個別に規制しているが、ドイツが暗号資産を最初に規制した国としてリードしている。

これらの個別規制は、規制当局から金融ライセンスを取得および維持するための要件をまとめ、暗号資産企業の道筋を明確に規定している。コンプライアンスは当然、投資家の信頼と保護を高める役割を果たすわけである。

金融犯罪や暗号自体の進化にともない、規制機関の監視、対応、制限の実施の取り組みも変化を遂げている。国際的には金融活動作業部会(FATF)が最も著名な監視機関であり、マネーロンダリング防止やテロ資金対策に関する一般的なガイダンスやベストプラクティスの決定を行っている。

FATFはソフトローと考えられているが、タスクフォースが暗号資産内での実行可能な規制の基準を設定している。特に注目すべきはFATFの勧告16で「トラベルルール」として知られているものだ。これはブロックチェーン取引の参加者の個人データを収集および保存することを企業に要求するもので、理論的には、このデータにアクセスすることで、当局が暗号市場の規制をより適切に監督・執行できるようになる。言い換えれば、誰が何をしているかを当局が正確に知ることができるようになるわけだ。要は透明性である。

トラベルルールの難題

FATFのトラベルルールは、伝統的金融機関(銀行、クレジット会社など)と、仮想資産サービスプロバイダー(VASP)として知られる暗号資産企業の2種類のビジネスに影響を与える。

当初トラベルルールは銀行にのみ適用されていたが、2019年には暗号資産企業にも拡大され、2021年にはFATF加盟国の多くの国が自国のAML法にトラベルルールを組み込み始めた。この規制のシフトは暗号資産分野に衝撃を与えることになる。拒否することによるリスクは高く、トラベルルールを組み込まなかった場合、サービスプロバイダーはコンプライアンス違反とみなされ、ビジネスを行う上で大きな障害となる。

しかし、トラベルルールは暗号技術の新規性を考慮しておらず、大きな障害にもなっている。受取人のKYCデータを入手して日々のビジネスに統合する際に大きな労力を要するため、暗号資産ビジネスを統合する際のハードルとなるのだ。

暗号資産企業が情報を入手して支払いを行うためには、クライアントからデータを提供してもらう必要があるが、これを検証することは事実上不可能だ。これは暗号資産の象徴でもある効率性を大きく阻害するものである。さらにこの方法では、VASPや銀行が受け取るデータの正確性も問われるだろう。また、世界各地でデータサイロが生まれ、データの脆弱性がさらに高まることになる。

特定のコミュニティ内で孤立したものではなく、国際的な標準化手段となると、オンチェーン・ソリューション(特定のブロックチェーン上で記録・検証される取引)と、異なるブロックチェーン間でのやり取りや、オンチェーン取引とPayPalなどの他の電子システムで行われるオフチェーン取引との組み合わせを可能にするクロスチェーン通信との間には大きなギャップがある。

暗号資産の匿名性に対してもっともな懸念を持つ人々と、規制は暗号資産を禁止するものだと考える人々との間で、いずれは中間点を見つけなければならない。どちらの意見にも一理あるが、巨大な金融市場や業界の中で暗号資産の正当性と実行可能性を維持するというのは、すべての当事者にとってプラスになるため、この交渉は非常に重要である。

規制反対ではなく、実行不可能な規制に反対

そのためにはデジタルアセットに特化した法律が必要であり、AML関連の問題を解決することなく市場に支障だけをきたすなどということのないようにしなければならない。

伝統的金融業界はすでにグローバル化しているため、FATFが暗号資産の規制監督のための国際的なフレームワークを発行することの価値と必要性は明確だ。

マネーロンダリング、違法な武器販売、人身売買など、犯罪的な金融取引は国際的なビジネスでもある。そのためこういった犯罪への取り締まりは、必然的に国際的な取り組みとなる。

ブロックチェーンの分散型の性質は、我々に馴染みのあるほぼすべての場所で使用されている中央サーバーの標準に反しているため、手ごわい課題となっている。伝統的金融機関のルールや規制が暗号資産にも実装されるというのは、この経済エコシステムとその基礎となる技術が持つ革新性や新規性を無視した過失であり誤解である。

法定紙幣の世界における従来型の規制を、暗号資産のあらゆる側面やブロックチェーン技術の基本的な性質に適用することはできない。例え善意から出たものであっても、このような押し付け型の規制は古いシステムの上に構築されているため、適応・修正しなければならないのである。

テクノロジーの使用に公平な制限を設けるには、それらのテクノロジーの限界と特性を根本的に理解し、協力しあう必要がある。従来の金融界においてブロックチェーンの話題は今、本当に理解すべきものというよりも熱狂的なレトリックのように扱われているのが実情である。

この問題の核心は、ブロックチェーン取引が匿名または追跡不可能であるという根本的な誤解にある。ブロックチェーン取引は疑似匿名であり、ほとんどの状況において従来の銀行取引よりも追跡可能性と透明性を提供することが可能だ。ブロックチェーン上で行われる違法行為は、例えば現金取引よりもはるかに追跡可能である。

このように計り知れない可能性を秘めたテクノロジーは、規制された上で誰もがアクセスでき、有益なものとなるべきなのである。ブロックチェーンやデジタルアセットはすでに私たちの活動方法に革命をもたらしており、規制措置もそれに倣う必要がある。昔ながらの指示を出し、それに従わせ、不公平な罰を与えるというのは未来のあるべき姿ではない。新しい方法をきちんと実行すべきなのである。

アウトロー時代の終焉

国際的な基準を遵守していることがわかっているユーザーのデータベースを利用して、活動を監視することはすでに可能だ。承認されたユーザーやベンダーを知ることで、業界はより早く違法行為や不正行為を発見することができ、違法なユーザーを特定して制限することができる。

提示された規制をよく考えて調整することで、信頼を確保し、ブロックチェーンの可能性を適切に活用するための検証済みネットワークをまとめて構築することができ、システムを破損したり操作したりしようとする有害因子を排除することができる。これは国際的な金融犯罪を起訴し、世界中で暗号資産の正当性を確保するための大きな一歩となるだろう。

暗号資産のアウトロー時代は終わったものの、暗号資産は今前例のないレベルの正当性を獲得しており、規制当局の監視を遵守することでのみ維持、強化することができる。

そしてその規制当局の監視は、ブロックチェーン取引に旧来のやり方をそのまま丸写しするだけのものであってはならない。むしろ、犯罪行為に対抗し、投資家の信頼を高め、暗号資産を望ましい金融投資にする仕組みそのものをサポートしていくようなものでなければならないのである。

画像クレジット:cokada / Getty Images

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(文:Henrik Gebbing、Wilhelm Nöffke、翻訳:Dragonfly)

double jump. tokyoがビットフライヤーとNFTでタッグ、LINEとの協業強化やバンダイナムコへの第三者割当増資も

double jump. tokyoがビットフライヤーとNFTでタッグ、LINEとの協業強化やバンダイナムコへの第三者割当増資も

double jump.tokyo(DJT)は9月3日、ZホールディングスCVC「Z Venture Capital」(ZVC)、バンダイナムコエンターテインメント(BNE)およびバンダイナムコライブクリエイティブ(BNLC)、bitFlyer Holdingsそれぞれに対して、第三者割当増資を実施したと発表した。調達額は非公開。また、bitFlyer HoldingsとのNFT事業などの協業、LINEおよびLINE Blockchainとの協業強化などを明らかにした。

DJTは、ブロックチェーンゲーム専業開発会社として2018年4月3日に設立。世界第1位の取引量・ETH売上を記録した「My Crypto Heroes」(現在の運営企業はMCH株式会社)、「BRAVE FRONTIER HEROES」「MyCryptoSaga」などのブロックチェーンゲームを開発・運営。ブロックチェーンゲーム開発支援サービス「MCH+」やNFT事業支援サービス「NFT PLUS」、複数人で秘密鍵を管理できるビジネス向けNFT管理SaaS「N Suite」の提供・開発も手がけている。

Z Venture Capital、LINE、LINE Blockchain

ZVCは、「人類は「自由自在」になれる」というビジョンを掲げており、DJTへの出資を通じて、特にゲーム・エンターテインメント業界におけるブロックチェーン技術を通じた新たな価値体験の提供を目指す。

またZホールディングスのグループ会社LINE傘下企業LVCとの連携や、LINEの独自開発ブロックチェーン「LINE Blockchain」の活用など、ブロックチェーン領域におけるLINEグループとの協業関係を強化する。

LINEグループとの協業については、スクウェア・エニックスのIPを用いたNFTデジタルシール「資産性ミリオンアーサー」でLINE Blockchainを採用予定とすでに発表している。同件だけでなく、DJTとLINEグループは、今後もブロックチェーン領域で協業し、NFTをはじめとしたブロックチェーンのエコシステム拡大に取り組むという。

バンダイナムコエンターテインメントおよびバンダイナムコライブクリエイティブ

BNEおよびBNLCが所属するバンダイナムコグループは、「世界で最も期待されるエンターテインメント企業グループ」というビジョンを掲示。DJTへの出資を通じて、エンターテインメント領域における新たな価値創造を目指す。

bitFlyer Holdings

bitFlyer Holdingsは「ブロックチェーンで世界を簡単に。」をミッションに掲げ、傘下には日本・米国・EUの3地域において250万人超のユーザーを抱える暗号資産取引所を運営。また独自開発のエンタープライズ向けブロックチェーン「miyabi」を活用し、ブロックチェーンの社会実装を推進している。

bitFlyer Holdingsは、DJTへの出資を通じ、暗号資産取引所bitFlyerの顧客基盤を活用したNFT事業提携、各種コンテンツのNFT発行支援、DJTのブロックチェーンゲームにおける「miyabi」の活用検討など、NFT事業に関する幅広い協業関係を構築。bitFlyerグループとして新たな事業拡大を図る。

暗号資産取引所ビットバンクがミクシィとセレスより約75億円調達、ミクシィと資本業務提携契約を締結

暗号資産取引所ビットバンクがミクシィとセレスより約75億円の資金調達、ミクシィと資本業務提携契約を締結

ビットバンクは9月2日、ミクシィとの資本業務提携契約締結とともに、同社を引受先とした第三者割当増資で約70億円、および既存株主セレスからの追加出資5億円と合わせ、総額約75億円の資金調達を実施すると発表した。

調達した資金をもとに、顧客資産の強固な保全を目的とした財務健全性の強化、また既存事業のさらなる強化並びにIEO、ステーキング、カストディ、NFT、L2決済など新規事業の創出を目的とした積極的投資を行う。

また今回の第三者割当増資などにより、同社の手元資金(暗号資産を含む)は約150億円、日本暗号資産取引業協会(JVCEA)が定める「資金決済に関する法律に関する自主規制規則」に基づく財務健全性指数(自己資本規制比率に準じる指数)は約400%となった。増資後における上位大株主の持ち株比率は下記の通りとなり、同社はミクシィとセレスの持分法適用関連会社となる。

・廣末紀之氏(代表取締役社長、創業者):31.4%
・ミクシィ:26.2%
・セレス:22.4%

ミクシィは、SNS「mixi」やスマホゲーム「モンスターストライク」をはじめコミュニケーションサービスを多方面に展開。「エンタメ×テクノロジーの力で、世界のコミュニケーションを豊かに」を中期経営方針に掲げ、スポーツ、ライフスタイル、デジタルエンターテイメントセグメントにおいてテクノロジーを活用した多様な事業展開を行っている。

ビットバンクの暗号資産領域における技術力と、ミクシィの多様なサービスのユーザーベース、コンテンツ群とのシナジー効果は大変高く、両社で協議・検討を進めた結果、それぞれの強みを生かし協調関係を築き上げることで、今までにない新たな価値創出が可能になると確信しているという。

ビットバンクの暗号資産取引所「bitbank」は、オーダーブック(取引板)による取引所を中心に、誰でもワンタップで暗号資産を購入することができる販売所や、保有する暗号資産を取引所に貸し出して金利を受け取るレンディングサービスを展開。ビットコイン・リップル・イーサリアムなどの暗号資産を扱っている。

NFTプロジェクト「CryptoPunks」の生みの親がハリウッドの大手タレント事務所と代理店契約

ハリウッド最大のタレントエージェンシーの1つが、NFTゲームに参入する。

CryptoPunksの生みの親Larva Labsは、United Talent Agency(UTA)と、最も初期の、そして最も象徴的なNFTプロジェクトの1つをエンターテインメントとブランディングの世界に持ち込む代理契約を結んだ。

「UTA Digital Assetsの責任者であるLesley Silverman(レスリー・シルバーマン)氏は、The Hollywood Reporterに「暗号世界で生まれたIPが、より広範なエンターテインメント空間に進出する最初の機会の1つであり、彼らはそれを勝ち取りました。彼らは、本当にすばらしい方法で時代の流れに乗ったのです」と語っている。

この契約により、CryptoPunksは、映画、テレビ、ビデオゲーム、その他のライセンス分野で登場することになるだろう。また、Larva Labsの他のアートプロジェクトであるMeebitsとAutoglyphsも、今後UTAが担当することになる。今回の契約の条件は公表されていない。

NFTへの投機的な投資が爆発的に増加する中、CryptoPunksはこの分野で最も認知度が高く、価値のある先駆者の1人であり続けている。Larva Labsは、2017年にEthereum(イーサリアム)のブロックチェーン上で、アルゴリズムによって生成されたピクセルで表現されたフィギュア1万個を発売している。

素人目にも、そしておそらく訓練された目にも、CryptoPunksはさまざまなキャラクターの小さなピクセル化された肖像画にすぎない。ある人は海賊帽をかぶり、ある人はパイロットのメガネをかけてパイプを吸っている。しかし、暗号資産の世界では、CryptoPunksは社会的象徴であり、NFTへの初期の投資、個人的なスタイル、重要なことだが富を伝えるものでもある。

CryptoPunksの価値はゼロから急上昇し(当初は無料で配布されていた)、現在では最も安価なコレクターズパンクでも数十万ドル(数千万円)、最も価値のあるものでは数百万ドル(数億円)で販売されている。5月には、クリスティーズのオークションで、9つのCryptoPunksのセットが1700万ドル弱(約18億7000万円)で落札された。先週は、VISAもこのゲームに参加し、モヒカンで緑色のフェイスメイクをしたデジタルイラストのCryptoPunk #7610に15万ドル(約1650万円)を投じた。

Aリストのセレブリティを担当することで知られる伝統的なタレントエージェンシーがNFTゲームに参入することは注目に値しますが、このグループが暗号資産のワイルドな世界に足を踏み入れるのは初めてではない。2021年8月初め、UTAはRallyという会社と契約を結んだ。この会社は、クリエイターがブランド化されたソーシャルトークンを発行し、ファンが商品や限定コンテンツに使えるようにするプラットフォームを運営している。

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画像クレジット:Lucas Matney/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Katsuyuki Yasui)

NFTマーケットプレイス「Adam byGMO」β版開始、K-1やYouTuberヒカルさんが出品ほか漫画家・東村アキコさんも予定

NFTマーケットプレイス「Adam byGMO」β版開始、立ち技格闘技K-1やYouTuber・ヒカルさんが出品ほか漫画家・東村アキコさんも予定

GMOインターネットグループのGMOフィナンシャルホールディングスの連結会社「GMOアダム」は8月31日、NFTマーケットプレイス「Adam byGMO」β版の提供を開始した。立ち技格闘技K-1やYouTuber・ヒカルさんはじめ、総勢36名の漫画家・イラストレーターによる作品などの多くのファンを持つデジタルコンテンツ計1192点の出品・販売がすでに行われている。また今後は、漫画家・東村 アキコさんの作品の出品も予定。近日中に一般のアーティストを含む、より幅広い方が出品する形で正式版を提供する予定としている。

Adam byGMOは、NFTを活用したコンテンツ流通革命の支援を目的とした、真正性と安全性の高いデジタルコンテンツの決済・流通を実現する、NFT出品・購入のためのプラットフォーム。Ethereum(イーサリアム)による決済ほか、口座振り込みやクレジットカード払いに対応するなど複数の決済手段を備えており、暗号資産の扱いに慣れていない方でもNFTコンテンツを購入しやすいよう配慮している。

また作品購入の都度、NFTコンテンツの作者・クリエイターにロイヤリティを還元する仕組みを採用しており、クリエイターのファンは「Adam byGMO」で作品購入を行うことで、応援するクリエイターへの支援も行えるとしている。

楽天がNFT事業に参入、2022年春「Rakuten NFT」展開し楽天運営の他サービスとも連動予定

楽天がNFT事業に参入、2022年春「Rakuten NFT」展開し楽天運営の他サービスとも連動予定

楽天グループは8月30日、ブロックチェーン技術を活用したNFT(非代替性トークン)事業に国内で参入すると発表した。2022年春、スポーツ・音楽・アニメなどのエンターテインメント分野におけるNFTの取引を行えるマーケットプレイスと、IPホルダーがNFTの発行・販売サイトを構築できるプラットフォームを併せ持つ「Rakuten NFT」を開始する。

Rakuten NFTでは、ユーザー向けには、エンターテイメント分野のNFTを購入したり個人間で取引したりできるマーケットプレイスを開設。IPホルダー(デジタルコンテンツの知的所有権者)向けには、ブロックチェーンの専門知識がなくてもNFTを発行し、販売サイトを構築できる独自のプラットフォームを設ける。

さらに、楽天が運営する他のサービスにおいて、ユーザーが商品の購入や使用条件を満たすとNFTを景品として獲得できるなど、様々なサービスと連動したプラットフォームとしても活用できるようになる予定

NFTは、ブロックチェーン技術を利用して、デジタルコンテンツの一意性、希少性を確保でるようにする仕組み。つまり、デジタルであっても唯一無二のコンテンツを所有したり、売買したりできるようになる。近年ではスポーツやアートの分野で注目を集め、コンテンツ産業が大きく変わる可能性があるとされる。

楽天は、2016年8月にブロックチェーン技術に特化した研究開発組織「楽天ブロックチェーン・ラボ」を開設し、2019年8月から「暗号資産における現物取引サービス」を楽天ウォレットで開始しており、そこで培われた技術を最大限に活かして、「NFTの民主化」を目指すとのこと。

楽曲の所有権をNFTとして販売、ファンがロイヤリティを受け取れるようにする音楽マーケットプレイス「Royal」

音楽とNFTを結びつけて、ユーザーがマーケットプレイスで曲の所有権を買えるようにし、人気が出るとロイヤルティを得ることができるスタートアップへの投資を、Founders FundとParadigmがリードした。

Royalというスタートアップは、「3LAU(ブラウ)」という名前で活躍するEDMアーティストのJustin Blau(ジャスティン・ブラウ)氏と、住宅購入スタートアップ「Opendoor」の共同設立者であるJD Ross(JD・ロス)氏が主導している。ブラウ氏は、NFTコミュニティの中でも特に積極的に活動している人物で、ミュージシャンが暗号資産を利用して作品を収益化する方法を模索する目的で、数多くの新興企業を立ち上げてきた。新型コロナの蔓延によりツアーができなくなってからは、本格的にNFTに取り組み、「クリエイターからすべての価値を奪うプラットフォーム」の力関係を逆転させる方法を探していたという。

Beepleの作品がクリスティーズで6900万ドル(約75億8000万円)で販売され、世の中の人がNFTという言葉を初めて知ったときから数週間も前に、ブラウ氏は自らの記録を作っていた。特製の曲とアートワークを収めたセットが、1170万ドル(約12億9000万円)相当の暗号資産で売れたのだ。

今回のRoyalの投資発表は、CryptoPunksやBored ApesなどのコミュニティNFTプロジェクトに投資家が数億ドル(数百億円)相当の暗号資産を投じるなど、NFT市場の強気の動きが熱を帯びてきた頃に行われた。デジタル作品をブロックチェーン上に置くことに関心のあるビジュアルアーティストは、ここ数カ月の間に、自分のアートを収益化するプロセスを簡素化するためのプラットフォームが数多く登場し、成熟してきているが、ミュージシャンに焦点を当てた取り組みは少なかった。

ParadigmとFounders FundはRoyalの1600万ドル(約17億6000万円)のシードラウンドをリードし、これにロス氏が最近までゼネラルパートナーだったAtomicが参加した。ロス氏と一緒にOpendoorの共同創業者だったKeith Rabois(キース・ラボイス)氏が、Founders Fundの投資をリードした。

関連記事:ジャック・ドーシー氏が「最初のツイート」をNFTとして売るために使った「Cent」が約3.3億円調達

Royalのローンチの詳細やプロダクトの計画は、まだ情報がとても少なく、その分割資産の販売をいつ始めるのかもわからない。しかし最初はブラウ氏の音楽が中心になることは明らかだろうし、彼が音楽業界に占めていた地位がファンや投資家を惹きつけるだろう。ユーザーは今からでもアーリーアクセスでサインアップできる。

NFTのスタートアップはより複雑な所有権分割を追究して、クリエイターたちが成功をファンと共有できるようにする。しかしその複雑さが、規制当局がいずれ介入する原因になるという、さまざまな憶測を招いている。2017年のICOブームでは、多くの創業者たちがSECから書簡をもらって証券詐欺を非難されたが、今回も起業家たちはそれを避けるために相当な努力が必要だ。ブラウ氏によると、同社は法律顧問と密接に協力して、コンプライアンスの完全な達成を目指しているという。

同社にとってもっと大きな課題は、音楽の権利を買うためのアクセスを確実に民主化して、ファンの全員を幸福にし、新しいファンをどんどん作っていくことだ。暗号資産への投機はとても多様化しており、そのための努力が難しい。でもブラウ氏によると、音楽のロイヤリティの所有権の拡散はまだ改良の余地が極めて大きく、現在、目立つのは一般ファンではなく、レーベルやプライベートエクイティ集団やヘッジファンドだ。

「投資家が嗅ぎつけるよりもずっと早く、ファンが所有権を握ることが重要です。アクセスの民主化が、NFTのような暗号資産の未来の鍵を握っている」とブラウ氏はいう。

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画像クレジット:Royal

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(文:Lucas Matney、翻訳:Hiroshi Iwatani)

貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」運営のトレードワルツが9億円追加調達

貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」運営のトレードワルツが9億円追加調達

ブロックチェーン活用の貿易情報連携プラットフォーム「TradeWaltz」を運営するトレードワルツは8月26日、9億円の追加資金調達を発表した。引受先は、東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)、三井倉庫ホールディングス(三井倉庫HD)、日新、TW Linkの4社。累計調達額は30億円となった。

トレードワルツは、NTTデータ、三菱商事、豊田通商、東京海上日動火災保険、三菱UFJ銀行、兼松、損害保険ジャパンの7社の出資により2020年11月から事業開始したスタートアップ企業。改ざんが難しいデータ構造を有するブロックチェーンを採用したTradeWaltzを開発しており、貿易手続きに含まれるアナログコミュニケーションの完全電子化を目指している。

同社は、TradeWaltzの国内普及を進める上では、貿易DXを目指す物流会社の協力を得る必要性、またALL JAPANで貿易DXを実現するには官民に加え「学」が持つ知見を取り込み、産官学で貿易の未来ビジョンやデータを起点とした様々な付加価値サービスを考えていく必要があるとしている。

そのため、三井倉庫HD、日新、TW Linkといった物流会社を新たな株主として迎え、国内物流会社への普及と新たな物流DXサービスの検討に着手するという。また東大IPCを新たな株主として迎え、TradeWaltzに蓄積および許諾を得たデータを活用し、どのような付加価値サービスを生み出せるか、東京大学と検討する。

暗号資産のPaxosがステーブルコインをPAXからUSDPに名称変更

暗号資産(仮想通貨)、Paxos Standard(PAX)の母体であるPaxos(パクソス)は、同社の暗号資産の名称変更を発表した。Paxos Standardは、Pax Dollarとなり、近々みなさんお気に入りの暗号資産取引所やウォレット、エクスプローラーなどで新しいティッカーシンボル「USDP」で識別できるようになる。

名称を除き、USDPは基本的にPAXと同一だ。他のステーブルコインと同様に、USDPは法的通貨と比べて時間とともに変動しないように設計されている。USDPの価値は米ドルに紐付けられている。1USDPの価値は常に1米ドルだ。

ステーブルコインには数多くの利点がある。送金は暗号資産をウォレットからウォレットに移すだけという簡単さだ。仲介銀行の情報を入力することも、現地の規制の心配をする必要もない。世界には銀行口座を持たない人がたくさんいる。ステーブルコインと暗号資産ウォレットには、伝統的銀行口座の代替手段になる可能性がある。

ステーブルコインはDeFiプロジェクト(分散型金融)を活用するためにも使える。例えばDeFiのレンディングプールに拠出して、手持ちステーブルコインの利息を得ることができる。

USDP以外にも人気のステーブルコインとしてUSD Coin(USDC)やTether(USDT)がある。見ての通り、時間とともに命名規則が現れている。実際Paxosは、自社のステーブルコインの名称変更はこの理由からだと言っている。

Paxosは、新たにトークンを発行するたびに、一定の米ドルと米ドル同等物を銀行口座に入金する。現在Paxosは米ドル同等物として短期償還の米国政府債券を利用している。同社の債券は監査法人が定期的に監査している。

Paxosは自社を規制遵守に注力している会社として位置づけようとしている。最近同社はUSDP、USDC、USDTの違いを強調したレポートを書いた。同社によれば、USDCとUSDTはそのリザーブ(裏付け資産)を理由に規制された資産とみなすべきでないという。Paxosは、業界で最も適法な企業となって企業顧客が優先パートナーとしてPaxosを選ぶことを望んでいる。

数日前、Circle(サークル)は、USDCはUSDCリザーブを現金および現金同等物に切り替えると発表した。今後暗号資産各社から、ステーブルコインのリザーブ戦略について話があることは間違いない。

画像クレジット:Kris Hoobaer / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nob Takahashi / facebook

PayPalは英国にまで暗号資産の購入、所有、売却のサポートを拡大

PayPal(ペイパル)は、暗号資産(仮想通貨)の購入、所有、売却を初めて米国以外のユーザーに提供する。同社は米国時間8月23日、英国のユーザーがBitcoin(ビットコイン)、Ethereum(イーサリアム)、Litecoin(ライトコイン)、Bitcoin Cash(ビットコイン・キャッシュ)の4種類から暗号資産を選び、連携している銀行口座またはデビットカードを使って購入できる新サービスを発表した。

同社は2020年秋、Paxos Trust Company(パクソス・トラスト・カンパニー)と提携して、まず米国内で暗号資産サポートをスタートした。サービスは2020年11月中旬には米国の全ユーザーに公開された。PayPal傘下のVenmo(ベンモ)も今春、暗号資産サポートを追加した。

英国で暗号資産を利用したい顧客は、PayPalのウェブサイトまたはモバイルアプリを通じて購入できる。そこでは事前に決められた購入額の中から選ぶか自分で額を入力できる。暗号資産は、ユーザーが望めば、1ポンド(約151円)から購入できる。ただし、 暗号資産の購入または売却には所定の手数料および為替手数料がかかる、と同社は注記している。手数料は売買される暗号資産の額によって異なる。

新しいサービスの内容そのものは米国内のサービスと概ね変わらないが、1つだけ例外がある。PayPalは、英国ユーザーの取引高制限の調整についてTechCrunchに語った。開始当初、1回の暗号資産購入の上限は1万5000ポンド(約225万7600円)に設定されている。米国では開始当初、1週間の購入限度を2万ドル(約219万4300円)に設定していた。しかし、2021年7月に限度額を10万ドル(約1097万1700円)に引き上げるとともに年間購入額制限を撤廃した。

また同社は暗号資産の最初の海外進出先が英国である理由について、当地がフィンテックハブであること、およびPayPalの世界第2位の市場であり、消費者顧客の大規模な基盤があるからだとTechCrunchに話した。

「私たちは英国の暗号資産エコシステムをさらに発展させる手助けができると考えています。米国でこのサービスに高い需要があることはわかっていました。それでも、PayPalのアプリ内暗号資産サービスに対する顧客エンゲージメントの大きさには初日から驚かされました」とPayPal広報担当者は語った。「サービス開始以来、当社ユーザーの驚くべき、かつ持続的なエンゲージメントが続いています。当社の米国プラットフォームで暗号資産を購入、所要、売却する消費者は、以前の2倍の頻度でログオンしています」と広報担当者は付け加えた。

暗号資産は、今後数カ月のうちに公開が予定されているPayPalの来るべき「スーパーアプリ」の主要機能でもある。

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他の暗号資産サービスをいつ、あるいはいつか英国でも展開するかについて同社はコメントしなかった。最近提供を開始した「Checkout with Crypto」(暗号資産でチェックアウト)がその1つで、ユーザーは所有する暗号資産を使って無数のオンラインショップでチェックアウトできるようになる(取引に必要な暗号資産は事前に不換通過に変換しておく)。しかしPayPaylは、英国で追加機能を提供する前に、まず新機能を使った暗号資産の購入、保持、売却を現地顧客がどう受け入れるかを観察、学習したいと語った。

自社アプリでの暗号資産サポートに加えて、PayPalのベンチャーキャピタル部門は過去数カ月間に暗号資産とプロックチェーンにいくつか投資を行った。暗号資産リスク管理ソフトウェアのTRM Labs(TRMラボ)のシリーズAに1400万ドル(約15億4000万円)、デジタル資産取引インフラストラクチャー会社、Talos(タロス)のシリーズAに4000万ドル(約43億9000万円)、および暗号資産税務ソフトウェア会社のTaxBit(タックスビット)のシリーズAに1億ドル(約109億7000万円)を投資している。

「パンデミックは私たちの生活全般にわたってデジタルの変化と変革を加速しました。金銭のデジタル化や消費者のデジタル金融サービス利用の拡大もそうです」とPayPalのブロックチェーン・暗号資産・デジタル通貨担当ゼネラルマネージャー兼パイスプレジデントであるJose Fernandez da Ponte(ホセ・フェルナンデス・ダ・ポンテ)氏が声明で語った。

「PayPalの世界展開力、デジタル決済の専門知識、および消費者と企業に関する知識に、堅牢なセキュリティとコンプライアンス管理が組み合わさることで、英国の人々が暗号資産を探求するのを手助けする独自の機会と責任が当社に与えられました。今後も英国および世界中の規制当局と密に協力することで、当社のサポートを提供し、将来の世界の金融と商業におけるデジタル通貨の役割を明確にするために意味のある貢献を続けていくことに注力します」。

現在PayPalは、英国以外に米国のハワイ、米国海外領土を除く地域で暗号資産をサポートしているが、世界中の認可・規制された暗号資産プラットフォームおよび中央銀行と提携を結ぶことでデジタル通貨の可能性を探求していくと語った。

画像クレジット:Dan Kitwood / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

シヤチハタが日本初の「NFT印鑑」を共同開発、API連携サービスを提供予定

シヤチハタが日本初の「NFT印鑑」を共同開発、API連携サービスを提供予定シヤチハタは8月18日、ケンタウロスワークスおよび早稲田リーガルコモンズ法律事務所と、ブロックチェーンを利用した電子印鑑システム「NFT印鑑」を共同開発することで合意したと発表した。NFT印鑑API連携サービスの提供を予定しており、自社と取引先で互いに別々の電子契約システムを利用しているケースの不便を解消するという。利用シーンとしては、企業だけでなくDXの普及が今後見込まれる行政・自治体への展開を想定している。

NFT(Non-Fungible Token。非代替性トークン)とは、「偽造不可な鑑定書・所有証明書付きのデジタルデータ」のこと。NFT印鑑は、印影データをNFT化することで、印鑑保有者の情報と印影情報を結び付けた、固有性を持つ電子印鑑という。押印された印影から押印者本人の識別や証明を行えるだけでなく、従来の電子印鑑が抱えていた印影の偽造リスクという問題について、ブロックチェーンの特徴である改ざん耐性を活用して解決するという。本人確認機能については今後段階的に実装予定としている。

またNFT印鑑は、Japan Contents Blockchain Initiative(JCBI)が運営・管理するコンソーシアム型ブロックチェーン「Contents Consortium Blockchain Platform」により、印鑑管理で必須となる高度なセキュリティに配慮しつつ、パフォーマンスと信頼性を両立するという。将来的には、パブリックブロックチェーンとの連携も視野に、より透明性の高いオープンなシステムを目指すそうだ。

シヤチハタが日本初の「NFT印鑑」を共同開発、API連携サービスを提供予定

シヤチハタが長年培ってきた電子印鑑に関わるノウハウをベースに、ケンタウロスワークスの持つブロックチェーン技術を取り入れ、早稲田リーガルコモンズ法律事務所の法的知見を基に、様々な電子契約システム間で利用できるサービスとして提供するとしている。

2020年2月発足のJCBIは、日本のメディア・コンテンツ業界のDXを業界横断で加速するための企業連合コンソーシアム団体。2021年8月時点で20社が会員企業として加入している。

会員企業は、ノードサーバーを構築・運用する形でContents Consortium Blockchain Platformを共同運営している。同ブロックチェーン上に、APIを介しメタデータとしてコンテンツの属性情報を記録したり、NFTとしてコンテンツの各種権利を発行・移転したりできるという。

世界最大級の暗号資産取引所「Coinbase」が日本上陸、三菱UFJ銀行が決済パートナー

世界最大級の暗号資産取引所「Coinbase」が日本上陸、三菱UFJ銀行が決済パートナー

Coinbase Global(コインベース・グローバル)の日本法人Coinbase(コインベース)は8月19日、世界最大級の暗号資産取引所「Coinbase」を同日ローンチすると発表した(関東財務局長 登録番号 第00028号)。

同社は「暗号資産取引のグローバルスタンダード」を掲げ、世界最高レベルの安全性、初心者でも簡単に使える操作性とともに、暗号資産の取引を開始する。取引可能な暗号資産は、BTC(ビットコイン)、ETH(イーサリアム)、LTC(ライトコイン)、BCH(ビットコインキャッシュ)、XLM(ステラ)で、さらに取り扱い資産を増やす予定。また今後は、トレーダーや機関投資家向けのサービスなどを展開し、ビジネスを拡大していく方針としている。

世界最大級の暗号資産取引所「Coinbase」が日本上陸、三菱UFJ銀行が決済パートナー

日本においては、世界基準のセキュリティやコンプライアンス基盤に加え、日本最大級の口座保有数を誇る三菱UFJ銀行をパートナーとして迎え入れており、三菱UFJ銀行の口座を持つ利用者は、インターネットバンキングを通した入出金が可能となっている。

Coinbase Globalは、2012年にアメリカ・サンフランシスコで創業以来、世界各国でサービス展開を広げており、現在100カ国以上で暗号資産の購入・売却・管理を行える暗号資産取引所を展開している。2021年4月14日にはナスダック市場に直接上場し、フィンテック業界を中心に注目されている。世界最大級の暗号資産取引所「Coinbase」が日本上陸、三菱UFJ銀行が決済パートナー

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:暗号資産 / 仮想通貨(用語)Ethereum / イーサリアム(製品・サービス)Coinbase(企業)Bitcoin / ビットコイン(用語)ブロックチェーン(用語)三菱UFJ銀行日本(国・地域)

ジャック・ドーシー氏が「最初のツイート」をNFTとして売るために使った「Cent」が約3.3億円調達

Centは、ユーザーが良い投稿やコメントに対し報酬を暗号資産で提供し合うことができる広告なしのクリエイターネットワークとして2017年に設立された。これはRedditの表彰に似ているが、イーサリアムを使ったものだ。しかし2020年後半、Centのサンフランシスコを拠点とする小規模なチームは、ツイートのNFT市場であるValuablesを作成し、3月には、この小さなブロックチェーンスタートアップ企業に思いがけずツキが回ってきた。

CEOのCameron Hejazi(キャメロン・ヘジャジ)氏は「ちょうどその日の仕事を終えて、夕食を食べようとしていたら、たくさんの人がメールを送ってきたんです」と振り返る。それから彼は、TwitterのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏が、CentのValuablesアプリを使ったTwitter史上初のツイートをしたことに気づいた。「私はその夜、ずっと震えていました。チームのみんなで、『よし、戦いに向かおう、やってやるぞ!』と話していました」。

ドーシー氏は結局、290万ドル(約3億1960万円)でNFTを売却し、その収益をGive Directlyによるアフリカの新型コロナウイルス感染症救援対策基金に寄付した。しかしCentにとっては、小さな会社が無料のマーケティングキャンペーンを受け取ったようなものだった。それから約5カ月経った現在、CentはGalaxy Interactive(ギャラクシー・インタラクティブ)、元ディズニー会長のJeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)、will.i.am(ウィル・アイ・アム)、Zynga(ジンガ)創業者のMark Pincus(マーク・ピンクス)などの投資家から300万ドル(約3億3000万円)のシード資金を調達することを発表している。

関連記事:TwitterのCEOが約3億円でサービス初ツイートを売ったツイートNFTマーケットプレイス「Valuables」とは

Valuablesでは、インターネット上の誰もがすべてのツイートにオファーを出すことができ、それに対し他の人が対抗オファーを出すことが可能だ。ツイートをした人がオファーを受け入れると(Valuablesにログインするには、Twitterアカウントの認証が必要だ)、Centはそのツイートをブロックチェーン上に鋳造し、1対1のNFTを作成する。

NFT自体には、ツイートの文章、作成者のユーザー名、鋳造された時間、作成者のデジタル署名が含まれている。またNFTには、ツイートへのリンクも含まれているが、リンク先のコンテンツはブロックチェーンの範囲外だ。

画像クレジット:Cent

ツイートをNFTとして鋳造することに独自性はなく、Centと同じことを他社が行うことも可能だ。Twitterでも、最近、NFTアートの無料配布を始めたが、Centのように実際のツイートをNFTとして販売しようとはしていない。ヘジャジ氏は、ドーシー氏がセントを起用したことを賛同ととらえている — ドーシー氏自身がTwitterで290万ドル(約3億1960万円)を稼いでいることから、Twitterがセントを締め出すことは難しいと考えている。何と言っても、ドーシー氏はCentを選んだのだ(最初のツイートのスクリーンショットを撮って、その.JPGをNFTとして鋳造し、OpenSeaのようなより大きなNFTプラットフォームに投稿するのではなく)。

関連記事:ツイッターがNFTを作り始めたらしい、140点のNFTをユーザーに1日限り無料で配布

「Twitterの人々と話をしました。私たちは健全な関係を築いていると確信しています」とヘジャジ氏は述べている(Twitter社は、それが事実かどうかについてのコメントや確認を拒否した)。「このアプローチをInstagramやTikTokなどの他のSNSプラットフォームに適用することも考えましたが、特にTwitterに適しているという仮説を立てました。なぜなら、Twitterは会話のプラットフォームであり、暗号資産を扱う人々が実際に生活している場所だからです」。

ヘジャジ氏はCentのシード資金を使い、プラットフォームの構築を続けていきたいと考えている。同社の目標は、クリエイティブな人なら誰でもNFTを使って収入を得られるようにすることだ。そのためには、ユーザーがNFTを簡単に作成できるツールを開発するだけでなく、クリエイターに特化した既存のSNSを充実させることも必要だ。Centに投稿されるコンテンツは、短い投稿ではなく、アートや文章などのクリエイティブな作品が多く、RedditというよりもDeviantArtに近いものがある。これらは、300万ドルのシードラウンドでは高い目標だが、Centのベータ版プラットフォームには、将来性を感じさせる側面がある。

「私たちがSNSに投稿するものには、すでに価値があります。それが広告費に取って代わっているだけで、単一の団体に多くの富が集中しなければならないというようなことはありません。その富を分散させるシステムを目指すことができるのです」とヘジャジ氏はいう。「これらのネットワークは、その存在によって配信を独占しているのです。TwitterのユーザーをCSV形式でダウンロードして、全員にメールを送信するというようなことはできません」。

CentのSNSプラットフォームのスクリーンショット

ヘジャジ氏は、独立した配信リストに加えて、広告付きのインターネットからの脱却を目指している。彼はSubstackの例に言及している。Substackでは、クリエイターが自分のリストを管理することができ、同時にプラットフォームの運営資金は、ニュースレターを購読するためにお金を払ってくれるユーザーから得ているため、広告なしの状態を維持することができる(また、ベンチャーキャピタルのサポートもある)。

しかしCentは、ユーザーが、原則自分の使っているプラットフォームで飛躍する可能性があると思うクリエイターに投資できるという点で、他とは異なる。

ユーザーは投稿を「シード」することができる。シードとは、Centのプラットフォームでクリエイターとして参加しているクリエイターを購読する方法のことだ。シードする側は、月々1ドル(110円)以上の定額料金を支払う。新進気鋭のクリエイターの支援には報酬があり、シードする人は、クリエイターの将来の利益の一部を得ることができる。これは、クリエイターが将来もすばらしいコンテンツを作り続けることに賭けるようなものだ。利益の5%はCentに寄付されるが、残りの95%はクリエイターと過去のシーダー全員で50対50で分配される。このプラットフォームに参加することで、クリエイター同士のネットワークやサポートが可能になるが、Patreonのような他のクリエイター向けプラットフォームでより直接的な収益を得ることもできる。

ユーザーは、投稿をシードするだけでなく、他の人の投稿を「スポット」することもできる。Cent版「いいね!」ボタンだ。「スポット」1つにつき、ユーザーの暗号資産から1セント(約1.1円)に相当する金額が支払われる。Centによれば、他のプラットフォームでは、投稿が1000の「いいね!」を獲得しても、名声獲得の漠然とした感覚しか得られない。しかし、Centでは、ユーザーが1000の「スポット」を獲得すれば、それだけで10ドル(約1100円)になる。しかし、このようなプロジェクトは、十分な数の人々がこのプラットフォームを利用しなければ機能しない。

「Centを立ち上げたときに暗号資産を選んだのは、創造力と暗号資産のアドレスだけでお金を稼げるというアイデアが気に入ったからです」とヘジャジ氏はいう。「時間が経つにつれ、暗号資産を実際に所有し、すぐに使えるようにしている人はほとんどおらず、決済手段としては限りがあることがわかりました。私たちは、Centを使ったクリエイターへの支払いをより簡単にする方法に取り組んでおり、暗号資産を使ったものとそうでないものの両方を検討しています」。

この考え方は、Yatのような他のNFTスタートアップにも通じるものがある。Yatでは「革新的な分散化」モデルの一環として、クレジットカードによる支払いが可能だ。これらの企業が成功するかどうかは、最終的に分散化されたブロックチェーンベースのインターネットに対する一般の人々の支持にかかっている。しかしそれまでは、Centのような企業が、クリエーターがオンラインで報酬を得る方法を再構築するための実験を続けていくことになるだろう。

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カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:ジャック・ドーシーTwitterNFTCentValuables資金調達暗号資産SNS

画像クレジット:Cent

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

Coinbaseの第2四半期決算は予測超えも第3四半期の取引高は減少傾向と注記

米国時間8月10日の取引終了後、Coinbase(コインベース)は第2四半期決算報告を発表し、再び印象的な結果を示した。

同四半期中Coinbaseの総売上は22億3000万ドル(約2469億6000万円)に達し、その結果16億1000万ドル(約1783億円)の利益をこの3カ月間に計上した。同社は一時的な項目から7億3750万ドル(約816億7000万円)の利益を得ており、これについてCoinbaseは、四半期初めのダイレクトリスティングによる「税優遇」よるものと説明している。

この結果、本稿では同社の調整後EBITDAを重視するという奇妙な状況になった。この数字はより厳密な純利益よりも割り引かれることが多いが、同四半期の調整後の数字は、会社の定常的収益性をより明確に表わしている。Coinbaseは四半期の調整後EBITDAを11億ドル(約1218億2000万円)と報告した。

会社は予測を優に上回った。市場の予測は売上がわずか18億5000万ドル(約2048億8000万円)、調整後EBITDAが9億6150万ドル(約1064億8000万円)だった。Yahoo Financeによる。

すべてが順調だが、同社は暗号化経済の現状を理解するのに役立つすばらしいデータ群を提供している。詳しく見てみよう。

取引高

Coinbaseの第2四半期に関して我々が必要としているデータセットが2つある。第1は月間取引ユーザー数(MTU)と総取引高に関するものだ。


Coingbaseが第2四半期にMTU、および同社の四半期取引高を増やし続けたことは同プラットフォームの資産価値が減少していることを踏まえると実に印象的だ。つまり、Coinbaseは暗号資産全体の価格が下落していたこの時期に取引高を増やすことに成功したということだ。

「価格変動に関わらず、当社は第2四半期を通じて数十億ドル(数千億円)の純資産流入額を記録し、新規顧客を増やしました」と同社はいう。

次のデータ群は、取引高を発生源と種別で分類している。


2021年第1四半期から第2四半期にかけての小売取引高の成長は目覚ましいが、Coinbaseが同四半期に追加した機関投資家の取引高はさらに強力だ。これは膨大な結果といえる。

暗号資産志向の人々が金融志向よりも増加する中、この2番目の数字はいっそう注目に値する。Ethereum(イーサリアム)の取引高がBitcoin(ビットコイン)を上回っているだけでなく、Ohter cyrpto assets(その他の暗号資産)がBitcoinの2倍以上取引されている。

主役の交代か?同社はこうなった理由を3つ挙げたが、その2番目が最も興味深い。決算書にこう書かれている。

割合の変化は主としてEthereumの取引高のはっきりした成長によるものです。CoinbaseにおいてEthereumが初めてBitcoinの取引高を上回ったのは、DeFi(ディーファイ)およびNFTエコシステム(Ethereumが重要なブロックチェーンとして支えている)の成長がきっかけであり、当社のステーキング・プロダクトであるETH2が需要を高めた結果です。

Ethereumブロックチェーンで興味深いのは、基礎をなすコインであるether(イーサ)の流通量を増加させていることだ。Bitcoinは最古の暗号資産だが、その王座はサビつきつつある。それでもBitcoinはCoinbaseで47%を占める最大の資産だ。

次に売上について話そう。

売上

機関投資家による取引はCoinbaseの印象的な成長の源だが、同社の売上を分析すると今も小売が中心だ。データはこちら。


第1四半期から第2四半期にかけての取引売上の成長は自明の理であり、第2四半期における同社の好調な総合結果の主要因だった。しかし、更に注目すべきは同社のサブスクリプションおよびサービス売上の膨大な変化であり、2021年第1四半期の5640万ドル(約62億5000万円)から最新四半期の1億260万ドル(約113億6000万円)へと100%近く成長した。

たしかにCoinbaseは今も取引中心の会社だが、売上で見ると、サービス部門が重要になりつつある。

ここでちょっと悪いニュース。

2021年第3四半期は?

まず、Coinbaseが第3四半期のスタートをどう説明しているかを見てみよう。

7月の小売MTUと総取引高はそれぞれ630万ドル(約7億円)と570億ドル(約6兆3131億5000万円)だった。暗号資産の価格と変動性が第2四半期と比べて著しく下がったためだ。8月時点の小売MTUと取引高は7月よりやや改善したが、依然として年初より低いままだ。これを踏まえ、第3四半期の小売MTUと総取引高は第2四半期よりも低くなると我々は考えている。

これに対して第2四半期はMTUが880万ドル(約9億7000万円)、四半期の月平均総取引高が1540億ドル(約17兆570億4000万円)に達した。8月が7月よりも好調という傾向にはやや慰められるものの、Coinbaseの第3四半期のビジネス規模は第1四半期や第2四半期よりも小さくなりそうだ。

なぜ強力な第2四半期結果を受けてもCoinbase株が飛躍していないのか不思議に思っている人にはこれが理由だろう。もちろん、暗号資産の本格的な投資家ならだれでも、この分野の数値がいかに変動するかをよく知っている。だから、何回かの好調な結果が続いた後の減少はさほど大きいことではない。

Coinbaseは本稿執筆時点の時間外取引で1株あたり267.55ドル、これはおよそ0.25%ほどの値下がりなのでほとんど誤差の範囲だ。

そういうわけで、Coinbaseの第2四半期はすばらしかった!

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バイデン政権の大規模インフラ法案の「悲惨な」修正提案を暗号資産コミュニティが非難

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

バイデン政権の大規模インフラ法案の「悲惨な」修正提案を暗号資産コミュニティが非難

バイデン政権が発表した超党派のインフラ整備計画は、共和党と民主党の間に、まれに見る協力関係を生んだが、暗号資産(仮想通貨)の規制に関して政権が提案した修正がこの法案の障害となっている。

政権は、インフラ整備計画のうち280億ドル(約3兆800億円)を、これまで規制が緩かったデジタル通貨の税務コンプライアンスを強化することで捻出しようとしている。橋や道路の再建を目的とした法案に暗号資産が登場したのはそのためだ。

特に「デジタル資産移転を実行するサービスに責任を持ち、当該サービスを定期的に提供する者」をブローカーと認定し税務報告義務を課すとしている点が、同法案の大きな批判の的となっている。

この定義は、伝統的な金融の分野ではそのまま当てはまるかもしれない。だが、暗号資産の開発者や企業、さらにはデジタル通貨を採掘する人までもが、ユーザーの情報を集めて報告する義務が生ずる可能性がある。非中央集権的な金融システムでは設計上不可能なことだ。

そして今、この重要な歳出パッケージに加えられた新たな修正が、問題をさらに悪化させる恐れがある

意図しない結果

Square(スクエア)、Coinbase(コインベース)、Ribbit Capital(リビットキャピタル)などの関係者は、法案の内容に関する共同書簡の中で「金融監視」と、暗号資産の採掘者や開発者に対する意図せざる影響について警告した。また、電子フロンティア財団Fight for the Futureというプライバシーを重視するデジタル著作権団体もこの法案を非難した。

暗号資産業界からの反発を受け、有力上院議員2人が、新しい報告ルールを明確にするための修正提案を行った。財務委員会のRon Wyden(ロン・ワイデン)委員長(民主党、オレゴン州)は、同じく財務委員会のPat Toomey(パット・トゥーミー)委員長(共和党、ペンシルバニア州)とともに、法案に反対し、法案の文言に対する修正を提案した。

修正案では新たな報告対象が「ブロックチェーン技術やウォレットを開発する個人を含まない」と定め、この問題に関する法案の曖昧さを解消している。

「ブローカーの定義を明確にすることで、採掘者、ネットワークバリデーター、その他のサービスプロバイダーなどの非金融仲介者(その多くは米内国歳入庁に様式1099を提出するために必要な個人識別情報を持っていない)が、超党派のインフラパッケージで規定された報告義務の対象とならないことを保証します」とトゥーミー氏は述べた。

ワイオミング州選出のCynthia Lummis(シンシア・ランミス)上院議員も、トゥーミー氏とワイデン氏の修正案を支持し、Jared Polis(ジャレッド・ポリス)コロラド州知事も支持を表明した。

勝者と敗者の選択

ドラマはここで終わらない。法案の交渉は続いており、週末には法案がまとまる可能性があるなか、2人の上院議員が競合する修正案を提案したものの、暗号資産コミュニティの支持を得ていない。

Rob Portman(ロブ・ポートマン)上院議員(共和党、オハイオ州)とマーク・ワーナー上院議員(民主党、バージニア州)の修正案は、エネルギーを大量消費する「プルーフ・オブ・ワーク」システムに参加する従来の暗号資産採掘者は新たな財務報告義務が免除される一方「プルーフ・オブ・ステーク」システムを採用する採掘者にはこのルールを適用するというものだ。ポートマン氏は財務省と協力し、インフラ法案の暗号資産に関する部分を作成した。

プルーフ・オブ・ステークシステムは、複雑化する数学の問題を解決するコンピューティングハードウェアへの投資(および電気代)を必要とせず、参加者が特定のプロジェクトの金銭的持ち分を保有し、暗号資産の一部を抱え込み、新しいコインを生成するというものだ。

プルーフ・オブ・ステークは、気候変動に配慮した魅力的な代替案として浮上しており、プルーフ・オブ・ワークのマイニングに必要な重いコンピューティングと膨大なエネルギーを削減できる。そのため、今回の改正でプルーフ・オブ・ワークのマイニングが特別に免除されることになったのは不可解だ。

Cardano(カルダノ)のような人気の高いデジタル通貨の中には、すでにプルーフ・オブ・ステークで開発されたものがある。規模第2位の暗号資産であるEthereum(イーサリアム)は、システムの規模拡大と手数料削減のために、プルーフ・オブ・ワーク方式からプルーフ・オブ・ステーク方式への移行を進めている。ビットコインは、プルーフ・オブ・ワークに頼る最も注目すべきデジタル通貨だ。

ワーナー・ポートマン修正案は「妥協案」とうたわれているが、ワイデン・トゥーミー修正案と現行法案の中間に位置するものではない。多くの暗号資産擁護者が自分たちの活動の存亡をおびやかす新たな危機とみなす問題を招くだけだ。

Square(スクエア)の創業者であり、ビットコインを支持するJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏をはじめとする著名な暗号資産コミュニティのメンバーらは、ワイデン・ランミス・トゥーミー修正案を支持する一方で、第2案は見当違いで有害だと非難している。

暗号資産のシンクタンクであるCoincenter(コインセンター)のエグゼクティブディレクターは、ワーナー・ポートマン修正案を「悲惨だ」と表現した。CoinbaseのCEOであるBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏もその言葉を繰り返した。「マーク・ワーナー氏は11時間が経った時点で、暗号資産の基礎技術をどれにするか、どれにしないかを決める修正案を提案しました」とアームストロング氏はツイートした。「どの種類の暗号資産が政府の規制に耐えられるかを上院が決めることになるかもしれません」。

残念ながら、暗号資産コミュニティ、そしてプルーフ・オブ・ステーク・モデルの約束された将来に対し、ホワイトハウスはワーナー・ポートマン修正案を支持しているようだが「11時間の交渉」が続けば変わる可能性もある。

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

NFT特化ブロックチェーン「パレット」開発のハッシュポートが前澤友作氏より4.8億円調達、同氏と共に新サービス提供予定

NFT特化ブロックチェーン「パレット」のハッシュポートが前澤友作氏より4.8億円調達、同氏とブロックチェーン活用新サービス提供予定

HashPort(ハッシュポート)は8月3日、前澤友作氏(スタートトゥデイ代表取締役)を引受先とし、総額約4億8000万円の資金調達を実施したと発表した。調達した資金は、NFT特化ブロックチェーン「パレット」(Palette)におけるコンテンツの獲得とトークンエコシステムの拡大加速化にあてる。また、今後前澤氏と共にブロックチェーンを活用した新しいサービスを提供予定。

2018年7月設立のHashPortは、「すべての資産をデジタル化する」をミッションに、ブロックチェーンの社会応用を支えるソリューションプロバイダーとして事業を展開。2019年よりNFT領域に取り組み、2020年よりパレットを開発。2021年3月にはテストネット運用を開始した。NFT特化ブロックチェーンとして、世界トップティアのブロックチェーンプロジェクト4社、国内外の大手暗号資産(仮想通貨)取引所3社、東証一部上場企業2社を含む計12社をコンセンサスノードに迎え、共同でネットワークの運営を行なっている。

また2021年7月には、パレットで利用できる暗号資産(仮想通貨)である「パレットトークン」(Palette Token、PLT)が、国内で初めてのIEO(Initial Exchange Offering)として、コインチェックで販売が行われた。同IEOでは、9億3000万円の募集に対し224億5000万円超の応募が集まり、応募倍率は24.1倍を記録。パレットトークンは、7月29日よりコインチェックにおいて二次取引も開始されている。

パレットエコシステムの目標は、日本のコンテンツの世界への発信と、世界市場で戦える日本発のブロックチェーンサービスの創出という。今回、トークンエコノミーに強い関心を持つ前澤友作氏と新しいビジネスを共創すべく、資金調達を実施したとしている。

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イーサリアムデベロッパーの迅速な分散型アプリ開発をサポートするTenderlyが約17億円調達

暗号資産(仮想通貨)は2021年にかなり受け入れられつつあるが、まだ極めて初期段階にあるこの分野の熱意がますます多くのデベロッパーやユーザーを引き込むにつれ、ブロックチェーンインフラのスタートアップは過熱している。

ベンチャーキャピタリストの注意を引いている最新の暗号資産スタートアップはTenderly(テンダリー)だ。同社はEthereum(イーサリアム)デベロッパーが分散型アプリケーションを動かすスマートコントラクトを監視・テストするためのデベロッパープラットフォームを手がけている。同社のCEOであるAndrej Bencic(アンドレイ・ベニシック)氏は、Accelがリードした1530万ドル(約17億円)のシリーズAをクローズしたとTechCrunchに明らかにした。本ラウンドには既存投資家も参加した。セルビア・ベオグラードに拠点を置くTenderlyは、Point Nineがリードした2021年初めのシードラウンドで330万ドル(約3億6000万円)を調達している。

Tenderlyのこれまでの目的は、ユーザーが問題を見つけて苦情を言うというシーンで、ユーザーがこれらのバグを積極的に発見できるようにする代わりに、駆け出しのブロックチェーンデベロッパーがコントラクトエラーを見つけ出せないままにしないことだった。TenderlyのVisual Debuggerはすでに「何万もの」イーサリアムデベロッパーに使用されているが、同社はより多くのデベロッパーがイーサリアムネットワークで頭を抱えたり、惑わされたりすることなく開発できるようにするツールセットに引き続き取り組みたいと考えている。

「Tenderlyは起業当初から我々自身が抱える問題の1つのソリューションでした」とベニシック氏は話す。「イーサリアムや類似するネットワークからの情報の抽出・観察をできるだけ簡単にしたかったのです」

ベニシック氏は、デベロッパーが使いやすさを損なうことなくこれまでよりも早くプロダクトを世に出すのを自社プロダクトでサポートできればと願っている。

これまでにTenderlyの顧客の大半は、ブロックチェーンベースのコンピューティングの世界に飛び込むことを目指す、分散型金融にフォーカスした比較的小さなスタートアップだった。Tenderlyは小さな会社で、セルビアを拠点とする14人のチームだ。今回調達した資金はグローバル展開の拡大、エンジニアリングの構築、他の地域での採用に役立つ、とベニシック氏は語る。

暗号資産の価格上昇はこれまで、ブロックチェーン業界におけるデベロッパーの取り込みとかなり密接に関係していた。なので、ビットコインとイーサリアムの下降気味の価格修正が、現在進む新たなデベロッパーのブロックチェーン受け入れの不安定化につながるという懸念がある。とはいえ、暗号資産の世界では変動性は少しも珍しいものではなく、多くのデベロッパーがその干満の波に乗ることは経験のほんの一部にすぎないことを学んでいる。

「弱気相場の中でenderlyの大半を構築しました。そして我々が気づいたのは、価格が懸念するようなものになっても、テックに興奮している人は通貨が上下しようがテックに興奮しているということです」とベニシック氏は話した。

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画像クレジット: Tenderly

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi