米食品医薬品局が15分で結果が出る新型コロナ用検査を複数承認、ただし留意点あり

米食品医薬品局(FDA)は3月26日、新型コロナウイルス(COVID-19)であるSARS-CoV-2の診断検査に関する緊急ポリシーを修正した。FDAは3月16日に行われた変更に続き、多くの民間企業や検査機関が15分程度という短時間で結果を出せる検査方法を開発・提供するための扉を開いた。ただし、検査方法が市場に出回る前に覚えておくべき非常に重要な留意事項が数点ある。

検査方法は「血清学的」で、人の血液中の抗体の存在を特定する方法だ。これは、FDAが承認した検査機関やドライブスルー検査会場で、緊急使用許可(EUA)に基づき実施されているPCR検査(分子検査)とはかなり異なり、血清学的検査では人がSARS-CoV-2に対して抗体を作ったかがわかる。抗体が作られていればSARS-CoV-2と接触した可能性が非常に高いことを意味する。そして感染しているか、感染後すでに回復しているかもわかる。一方、PCR検査は実際には血流中のウイルスDNAの存在を検出する。検出されれば、少なくとも綿棒で採取した時点で実際に感染していたことを示し、血清学的検査による結果よりはるかに決定的な指標となる。

中国、台湾、シンガポールなど、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応の有効性を示した国では、血清学的検査が依然広く利用されている。米国のさまざまなコミュニティでも採用されている方法で、民間検査機関での診断に関する従前のガイドラインに基づいている。FDAは3月26日、必要な通知をFDAに対して行った29の法人を指定し、血清学的検査が実施できるようにした。

FDAの緊急使用カテゴリに含まれている分子検査とは異なり、血清学的検査はFDAによるレビューや検証を受けていないことに注意することが重要だ。その代わり、検査結果に以下の情報を付すことなど、所定の基準を満たす限り、FDAは血清学的検査の「民間製造業者による開発および配布に反対しない」ことを表明している。

  • この検査はFDAのレビューを受けていません。
  • 陰性の結果が出たとしてもSARS-CoV-2への感染の可能性がないわけではありません。 特にウイルスに接触したことがある人はそうです。感染の可能性を排除するためには、PCR診断による追加検査を検討すべきです。
  • 抗体検査の結果を、SARS-CoV-2への感染に関する診断や可能性の排除、または感染状態を通知する際の唯一の基礎にすべきではありません。
  • 陽性の結果は、コロナウイルスHKU1、NL63、OC43、229Eなどの非SARS-CoV-2コロナウイルス株による過去または現在の感染が原因である可能性があります。

FDAは緊急使用に関するFAQの中で、指定法人が血清学的検査を独自に検証していること、指定法人がEUAを求めているわけではない点を断っている。とはいえ、これは指定法人による検査実施を妨げるものではない。つまり、米国人の検査に使用して新型コロナ蔓延の全体像をより的確に描けるようになる。ただし上述したとおり、FDAはSARS-CoV-2に感染したことを確定するため、逆の言い方をすればウイルスに感染していないことを示す確かな指標を得るために、血清学的検査を単独で使うつもりはない。

それでも、EUAのもとで承認された検査が広く利用可能になるなど、もっといい選択肢がない現状では、血清学的検査(その多くは、ほんの少しの血液があれば現場で結果がわかる)が新型コロナの拡散と到達範囲に関する正確な全体像を描くのに役立つ。特に分子検査に必要な機器と備品へ優先的にアクセスできない小規模なクリニック、総合診療医のクリニック、地域の検査機関にとって有用だ。

例えば、今回のリストにある検査の1つ「Healgen Scientific COVID-19 IgG / IgM(全血/血清/血漿)Rapid Test Device」は、機器を必要とせず、わずか15分で結果が出る。ディストリビューターのIdeal Rehab Careは、法定代理人であるFox Rothschildと協力して、「できるだけ早く」使用するためにシンガポールから検査方法を輸入することにした。

FDAが更新したウェブサイトに血清学的検査を使用する意向を通知した法人の1つとしてHealgenが載ったことで、同社は検査方法の販売が可能になった。今回のリストにない法人が検査を実施・販売することは依然として違法だ。FDAはまた、公式ガイドラインに基づき在宅での血清学的検査の使用を引き続き明確に禁止している。

画像クレジット:Pedro Vilela / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

5分間で陽性がわかる米食品医薬局が新たに認可したAbbottの新型コロナ検査

ヘルスケアテクノロジーのAbbottが開発した新しいCOVID-19の検査方法は、結果が出るまでの時間がこれまでで最速で、しかもその場でできるため検査機関への往復がする必要がない。現在、全世界的なパンデミックを起こしている新型コロナウイルスを検査するこの方法は、米国のFDA(食品医薬局)から緊急時使用許可を受けており、来週から生産を開始する。毎日50000セットも生産できるという。

このAbbott ID NOW COVID-19という検査は、診断プラットフォームAbbott ID NOWを使用する。検査装置は小さな台所用品ほどのサイズで、陽性の結果は5分間、陰性は15分間以下で出る。臨床の現場や診療所などでも検査できるようになること、また検査とその結果が出るまでの時間が短くなることから、非常に有用な手段になる。

他の国で使われてきた高速検査や、結果の精度を確認しないFDAの新しいガイドラインによる高速検査方法と違い、この検査は患者から採取した唾液や粘液を使う分子検査法を利用する。

この検査が利用可能になった良いニュースであるのは、検査に使用するAbbottのハードウェアID NOWが、米国ではすでに臨床現場即時遺伝子検査用として広く普及しているためだ。ID NOWは医師のオフィスや救急病院、集中治療室などの医療施設に設置されていることが多い。

Abbottによると、この新しい迅速検査と3月18日にFDAの緊急時使用認可を受けた施設での検査と合わせて4月には500万回の検査が可能になるという。

検査が、新型コロナウイルスによるパンデミックに対処する上で初期の問題の1つだ。1人あたりの検査実施数で、他国に後れをとっていた。そのためウイルスの拡散とそれによる呼吸器疾患を正確に調べることもできなかった。患者は、検査まで待つ日数が長すぎると不満の声をあげており、接触の可能性が高くてそれらしき症状が出ていても、これまでは迅速な対応を受けることができなかった。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

1台の人工呼吸器を4人で同時に使える3Dプリント可能な器具をFDAを認可

米国の病院では人工呼吸器の不足が目の前に迫り、すでに危機的状態となっているが、症状が重篤化し入院が必要な新型コロナウイルス(COVID-19)患者が増加すれば、さらに深刻な事態となる。だからこそ、新たにFDA(米食品医薬品局)から非常用として認可を受けたこのシンプルな器具(ソースコードが無料公開されており病院で3Dプリントできる)が、最前線で対応している人たちの負担を最小限に抑える鍵となるかも知れない。

Prisma Health(プリズマ・ヘルス)のVESper(ベスパー)は、信じられないほどシンプルな3口のコネクターだ。これで1台の人工呼吸器を最大4人までの患者が同時に使えるようになる。この器具は、現在のISO規格に準拠した人工呼吸器本体とチューブに適合する。ウイルスやバクテリアが他の患者に感染しないよう、フィルター装置も接続できる。

VESperは2つ1組で使用する。人工呼吸器の吸気側にひとつ、呼気側にひとつを装着する。またこれをつなげることで、最大で4人の患者の治療が可能になる。ただしすべての患者の酸素供給量、酸素濃度、空気圧などすべての設定要素が同じで同じ臨床治療を行う場合に限られる。

この器具は、緊急治療室勤務のSarah Farris(サラ・ファリス)医師によって考案された。夫でソフトウェア・エンジニアのRyan Farris(ライアン・ファリス)氏は、彼女からこのアイデアを聞くと、最初のプロトタイプをデザインして3Dプリントした。Prisma Healthは、求めに応じてVESperのプリント仕様書を提供しているが、FDAが使用を認めた緊急時に限って使うよう注意していただきたい。つまりこれは、あくまで最後の手段として作られたものなのだ。FDAが定めた基準に適合する人工呼吸器がすべて塞がっていたり、患者の命をつなぐための器具や代替手段がない施設などでの使用に限定される。

FDAの緊急時使用許可(EUA)を受けたこれらの器具は、プロトタイプであること、そして実際に使ってみた結果を報告することが条件であることを十分に理解しておく必要がある。そうしたデータが、その有効性の検証に役立ち、安全と有効性のためのさらなる開発や改善に供されるのだ。

現地で3Dプリントするためのデータを提供するだけでなく、Prisma Healthでは3Dプリンターが使えない医療施設にプリントしたもの送るための資金の募集も行っている。南カリフォルニアの医療系基金Sargent Foundation(サージェント・ファウンデーション)がいちばんに寄付をしてくれたが、Prisma Healthは、研究の継続と新しい器具の開発のためのさらなる寄付を求めている

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナウイルスのワクチンは長期間有効という研究結果

イタリアの研究者による新しい研究によれば、新型コロナウイルスのパンデミックの原因となっているウイルスの変異は比較的遅いという。言い換えれば、人間が感染することを防ぐ効果を持つワクチンが開発されれば地理的に広い範囲で有効なはずで、しかも比較的長期間にわたって効果が続くはずだと考えられる。

画像クレジット:Bloomberg/コントリビューター/Getty Images

この研究は、お互いに独立して仕事をしている2つの異なるチームによって実施された。1つは、ローマにあるLazzaro Spallanzani(ラザロ・スパランツァーニ)国立感染症研究所(IRCCS)、もう1つはAncona(アンコーナ)大学病院の生物医学および公衆衛生局(DSBSP)の法医学部門だ。それぞれ、イタリアの患者から採取したウイルスのサンプルについて、Thermo Fisher Scientificが開発した技術を使って遺伝子の配列を解読した。そして、これらのサンプルを、約2か月前の武漢での流行の際に採取された元のウイルスのサンプルから解読された基準のゲノムと比較した。

遺伝的変異の観点から言えば、これら2つのウイルスサンプルの違いはかなり少なかった。時期的に後となるイタリアのサンプルからは、5種の新しい異型が認められただけだった。この結果からは、SARS-CoV-2コロナウイルスが、複数の個人や集団にまたがる長い感染経路を経ても、それなりに安定した状態を保つことが、今のところは示される。

他のコロナウイルスが、短期間で変異する可能性があることを考えると、これは心強いニュースと言える。一般的な、毎年のインフルエンザを考えてみよう。これは、本質的に絶えず変異しているため、毎年新しいインフルエンザワクチンが開発されている。研究者は、毎年のインフルエンザシーズンには、時間との戦いの中で、どの突然変異株が最大の脅威をもたらすのかを予測し、ワクチンを適応させて、最新の予防接種を受けるよう、人々に促すのだ。

他のウイルスは、非常にゆっくりと変異するか、あるいはまったく変異しないかのどちらかだ。新型コロナウイルスは、どうやら前者に属するようだ。このイタリアの研究だけでなく、John Hopkins(ジョン・ホプキンス)大学や、他の世界中の健康科学研究者によって行われた研究も、同様の見解を支持してる。時間の経過による突然変異を、より包括的に追跡しようという、ある英国のコンソーシアムの取り組みによって、より明確な見解が得られるはずだ。

新型コロナウイルスのパンデミックに関して言えば、それを引き起こすウイルスの遺伝子構造の変化が遅いものであるという説を支持する研究結果は、非常に良い知らせだろう。ワクチンの開発には、まだ少なくとも1年はかかりそうだが、今回の研究結果からすれば、いったんワクチンが開発されれば、その効果は、地球上の広い範囲で、数年間は有効だろうと期待できるからだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Zindiが新型コロナ対策に向け1.2万人のアフリカ人データサイエンティストを活用

ケープタウンを拠点とするクラウドソーシングのスタートアップZindiは、創業以来アフリカ中のデータサイエンティストのデータベースを構築してきた。

複雑な問題を解決するために、AIと機械学習を使用する1万2000人の人材がそのプラットフォームには登録されているが、現在同社は、新型コロナウイルス(COVID-19)へのソリューションに対して賞金を提供しようとしている。

Zindiは、新型コロナウイルスの蔓延と混乱を食い止めることに焦点を当てた、オープンコンペティションを行っており、4月にはハッカソンを開催する予定だ。AI4Dが主催する現在のコンペティションは、データを使用して新型コロナウイルスの世界的な広がりを予測することができるモデルを、今後3ヶ月の間に作成することを、サイエンティストたちに課している。

コンペティションは 4月19日まで受付しており、提案されたソリューションはこの先の実際の数値で評価され、勝者は 5000ドル(約55万円)を受け取る。

このコンペティションは、差し迫った民間または公共部門の課題を集約し、解決策を求める人と問題解決者をマッチングさせることができるプラットフォームを構築するという、Zindiのビジネスモデルに合致している。

2018年に設立されたこのアーリーステージベンチャー企業は、企業、NGO、政府機関がデータ指向の課題を中心とした、オンラインコンテストを開催することを可能にしている。

Zindiのビジネスモデルは、アフリカ内外の著名な企業からの注目を集めている。これまでにコンテストを主催してきた企業として、Microsoft、IBM、そしてLiquid Telecomなどの名前を挙げることができる。南アフリカ政府やユニセフといった、公共部門の関係者も、交通安全や農業改革など、さまざまな課題に向けてZindiを利用している。

ケープタウンのZindiチーム

画像クレジット:Zindi

ZindiのCEOであるCelina Lee(セリーナ・リー)氏は、この新型コロナウイルスのような状況を正確に予想していたわけではないが、今回の事態は、彼女が南アフリカ人のMegan Yates(ミーガン・イェーツ)氏ならびにガーナ人のEkow Duker(エコウ・ダッカー)氏と、Zindiを共同設立した理由の1つなのだと考えている。

アフリカのデータサイエンスの専門知識を応用して、新型コロナウイルスのような複雑な健康危機の問題を解決できる能力の提供こそが、Zindiの存在理由だと、リー氏はケープタウンからの電話でTechCrunchに説明した。

「オンラインプラットフォームとして、Zindiは、データサイエンティストたちを、アフリカ全体および世界中から大規模かつ安全に、自宅から動員できる有利な立場にいます」と彼女は言う。

リー氏は、得られた知見によって、アフリカがエピデミックや病気の被害者であり、また発生源であると考える人が多くなったと説明した。「私たちは、アフリカが実際に、世界のソリューションに貢献できることも示したかったのです」。

新型コロナウイルスの登場によって、Zindiはその創業者、スタッフ、そして世界にも影響を及ぼしている問題を緩和するために利用されている。

南アフリカは3月20日に新型コロナウイルスのためにロックダウンが行われたために、リー氏はケープ・タウンで屋内避難を行いながら、TechCrunchと連絡を行った。Zindiの創業者は、新型コロナウイルスが世界的に広まったために、ニューヨーク在住の義理の家族や、サンフランシスコの家族も同様の状況で暮らしていると説明した。

リー氏は、同社が提供するチャレンジが、新型コロナウイルスの蔓延と共に、アフリカの国々が活用できるソリューションを生み出すことができると考えている。「ケニア政府は、ICTセクターの企業を参画させたタスクフォースを開始したばかりです。なので、関心を寄せて貰えるのではと思っています」と彼女は言う。

また4月からは、Zindiは新型コロナウイルスに焦点を当てた、6回の週末にわたるハッカソンを開始する。

アフリカでの新型コロナウイルスの現況を考えると、それはタイムリーなことかもしれない。大陸の国別感染者数は、3月上旬には1桁台だったが、先週には急増している。これを受けて世界保健機関(WHO)の地域責任者であるMatshidiso Moeti(マティシディソ・モティ) 博士 が、アフリカ大陸でのウイルス感染の急速な拡大に警告を発することになった。

3月25日の時点でのWHOの統計 によれば、サハラ砂漠より南の地域には1691人の新型コロナウイルス症例が確認され、29例のウイルスに関連した死亡が確認されている(先週の3月18日の時点では症例は463人、死者は10人だった)。

アフリカでの新型コロナウイルスの流行を受けて、各国やZindi のようなスタートアップは、より広範な対応の一環として、アフリカ大陸のテック企業を巻き込むように訴えている。ガーナ、ナイジェリア、ケニアの中央銀行とフィンテック企業は、世界保健機関がウイルスの蔓延の経路として注意を促した現金ではなく、モバイルマネーの利用を促進するための対策を採用している。

大陸最大のインキュベーターであるCcHubは、新型コロナウイルスとその社会的および経済的影響を抑制することを目的とした、技術プロジェクトのファンディングと公募を開始した

アフリカ全土を覆うeコマース企業Jumiaは、医療施設や従事者に物資を配送するために、同社のラストマイル配送ネットワークの提供をアフリカの各国政府に対して申し出ている。

ZindiのCEOであるリー氏は、同社の開催する新型コロナウイルス関連のコンペティションが、政策立案者たちがウイルスの蔓延と戦うための追加の手段を提供できることを期待している。

「今開催中のものは、うまくいけば、病気の広がりを予測し、国の高リスク地域をより正確に予測することができるように、政府に対して情報を提供することができるようになるはずです」と彼女は語った。
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画像クレジット: Sam Masikini via Zindi

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(翻訳:sako)

テスラのニューヨークのギガファクトリーが人工呼吸器の生産を再開

Tesla(テスラ)のCEOであるイーロン・マスク氏は3月25日に、米国ニューヨーク州バッファローにある同社の工場を、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの蔓延により供給が不足している、人工呼吸器の生産を行うために「人手が確保でき次第」再開すると語った。

同日にTwitterに流されたマスク氏のコメントは、同氏がすでに発言していた人工呼吸器の寄付、もしくは重要な医療機器の増産を行う計画に続くものだ。こうした機器は、新型コロナウィルスによって引き起こされる呼吸器疾患に苦しむ患者たちに必要とされている。新型コロナウイルスは肺を攻撃し、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や肺炎を引き起こす可能性がある。

そして、まだ臨床的に証明された治療法がないため、患者が呼吸し病気と戦えるように、人工呼吸器が頼られている状況だ。 ニューヨークタイムスの報道によれば、米国には現在約16万台の人工呼吸器があり、さらにNational Strategic Stockpile(国家戦略備蓄機構)には1万2700台の人工呼吸器が備蓄されている。

先週、テスラは声明で、電気自動車を組み立てるカリフォルニア州フリーモント工場とニューヨーク州バッファローのギガファクトリーでの生産を一時停止すると発表した。ただし「サービス、インフラストラクチャー、重要なサプライチェーンに必要な部品と供給品」の生産は停止されない。

マスク氏の声明からは、バッファロー工場がいつ再開するのか、あるいはソーラーパネルの製造に使用されている工場の一部の転用に、どれくらいの時間がかかるのかは明らかではない。マスク氏は、これがMedtronic(メドトロニック社)との提携の一部であるか否かには言及していない。

MedtronicのCEOであるOmar Ishrak(オマー・イシュラック)氏は、3月25日にCNBCに対して、救急医療用人工呼吸器の生産量を増やしつつ、テスラなどの他のパートナーと提携を行っていると語った。Medtronicは、他の人ができる限り迅速に製造を行うことができるように、より急性ではない状況で使える下級グレードの人工呼吸器の1つをオープンソース化すると述べた。こうした下級グレードの人工呼吸器は部品点数が少ないため生産が容易であり、重篤なケア以前の中間的な段階に利用できるという。

テスラは、GM、フォード、そしてフィアット・クライスラーに並んで、人工呼吸器を寄付するか、生産のための資源を提供することを約束した自動車メーカーの1つである。フォードは今週初め、人工呼吸器の生産能力を拡大するためにGEヘルスケアと協力していると述べた。

GMは、Ventec Life Systemsと協力して、人工呼吸器などの呼吸ケア製品の 生産拡大を支援している。Ventecは、GMの物流、購買、製造の専門知識を活用して、より多くの人工呼吸器を生産する。なお、生産数が上昇する時期や、どのくらいの数の人工呼吸器が製造される予定なのかについての詳細は、いずれの会社からもまだ明らかにされていない。

画像クレジット:Yichuan Cao/NurPhoto(opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

3DプリンティングのFormlabsが米食品医薬品局の認可をもらって綿棒の量産へ

米国マサチューセッツ州の3Dプリンターと3Dプリンティングの事業を展開するFormlabs(非上場)が新型コロナウイルス(COVID-19)の検査キット用に設計した綿棒が、近く米食品医薬品局(U.S. Food and Drug Administration、FDA)から認可される見通しだ。

綿棒や試薬など、検査キットのサプライチェーンがグローバルにおよぶので、検査を容易に拡大できないことが米政府が新型コロナウイルスの国内における感染の広がりを知る妨げになっていた。

FormlabsのCPO(チーフ・プロダクト・オフィサー)を務めるDavid Lakatos(デビッド・ラカトス)氏は「昨日FDAから通知を受け取り、これ(同社製の綿棒)がクラスワンの『人道機器向け治験適用免除』になった。ISO 135の非破壊検査でコントロールされる施設と設備で作られる限り、適用免除になる」と説明した。

患者は全米で見つかっているので、検査は疾病の広がりが速い地域が優先され、その他の地域には検査キットなどが行き渡らず、それらの地域では感染の広がりの全貌がなかなか把握できない。

綿棒に関しては問題がもっと複雑で、喉から手が出るほど必要な検査キットの部品なのにメーカーが少なく、これまでは米国で1社、イタリアで1社だけだった。

「約1週間半前に、弊社はこの取り組みに加わった」とラカトス氏は語る。

同氏によると「Formlabsには3Dプリンターが6万台あるので生産量を増やせるし、最近オハイオ州に買った工場では手術用クラスの高品質な製品も作れる」とのこと。

現在同社は、人間を使った試験を終えようとしており、オハイオの生産施設の能力を拡張している。同氏によると、同社が1日に供給できる綿棒の量は10万本だ。「そのプリンティングは開始しているが、検品でOKとなるまでは出荷しない」と説明する。

現在、綿棒の多くはパートナーの病院のマークがついているが、今後は大手流通企業とも協力して彼らの流通チャネルにもアクセスし、全米でおよそ3000病院に綿棒を納めたいという。

「なんと言っても、これら綿棒をぜひ世の中に出したい」と同氏は話す。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米国食品医薬品局が新型コロナから回復した患者の血液を使った重篤患者の治療を許可

FDA(米国食品医薬品局)は、進行中の新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックに対する実験的治療の適用に関する規定を変更し、「回復期血漿」が使えるようにした。これは、患者の生命が緊急かつ深刻な危機にさらされている場合に限られる。また、認定された治療法としての手順の承認ではなく、ケースバイケースで、極端な症状の場合にのみ適用できる緊急認可としてだ。また、いったん新型コロナウイルスに感染し、その後回復した患者から採取した血漿の有効性について、今後の研究のヒントになる手段としても位置付けられている。

画像クレジット:Bloomberg/コントリビューター/Getty Images

血漿とは、人間の血液の成分で、特に液状部分を指す。その中には、身体の免疫反応を生み出す抗体が含まれてる。血漿を、患者に直接輸血する方法は、新型コロナウイルス(およびそれを引き起こすSARS-CoV-2ウイルス)に対して提案されている他のすべての治療法と同様、本当に安全で、疾病と闘うために効果的なのかどうかを確かめるために必要な臨床試験を受けていない。

そうした臨床試験が完了していないにもかかわらず、FDAは、eINDS(Investigational New Drug Applicants、申請新薬治験)の免除を与え、この一時的な承認を認可した。それもCOVID-19が突きつける現状の公衆衛生上の脅威の大きさと性格を配慮してのこと。回復した患者から採取した血漿の使用に関しては、いくつかの前臨床および臨床試験が進行中だ。そこでは、回復期の血漿が実際にSARS-CoV-2に対して有効である、という可能性を示すいくつかの有望な兆候が認められている。

回復期の血漿が疾病を撃退するために提案され、実際に試みられたのは、もちろんこれが初めてではない。何らかのウイルスに感染し、その後回復した人は、通常、それに対する免疫を獲得する。水痘のように長期に渡って有効なものもあるが、毎年流行するインフルエンザのように短期間しか有効でないものもある。論理的には、すでに抗体を獲得している人から抗体を採取し、免疫系が十分な機能を発揮していない患者に輸血するのが、少なくとも理論上は可能であることは、むしろ当然のことと言える。

回復期の血漿を輸血することは、H1N1インフルエンザのほか、SARSやMERSの流行など、これまでも大規模な感染症の発生に対して使用されてきた。ただし、結果はさまざまだ。

新型コロナウイルスに対して血漿を使用する方法については、いくつかの研究プロジェクトが進行中だ。たとえば、中国の医療専門家チームが査読を受けていないドラフト版として発行した研究がある。これは、最近に回復した患者から提供を受けた血漿を輸血した10人の重症患者に関するもの。この研究では、10人のうち5人で、輸血後すぐに抗体レベルが「急激に増加」した。他の4人の患者については、それ以前から比較的高いレベルの抗体を持っていたが、それが維持された。その結果、7人の患者については、1週間以内にウイルスが検出されない状態となった。

これは、まだ正式な臨床研究ではないが、別の小規模の臨床診療の調査でも、同様の結果が示されてる。また、ドナーとレシピエントの両方に対応している医師が使用できるような、一連のプロトコルをまとめた医師と研究者のグループもある。それによって、あちこちで行われている研究の取り組みの足並みを揃え、医学界でこの問題に取り組んでいるすべての人が、共通の戦略で作業できるようにしようというものだ。

ニューヨーク州知事のAndrew Cuomo(アンドリュー・クオモ)氏は、州の保健機関が、回復期の血漿の試験を今週にも開始すると発表した。これについては、FDAの長官、スティーブン・ハーン(Stephen Hahn)博士も、先週のホワイトハウスのコロナウイルスに関するタスクフォースのブリーフィングで、早い段階で期待の持てる領域として言及している。

すべてのドナー患者は、検査を受けて、ウイルスを感染させるリスクがないことを確認する必要がある。また、通常の献血者としての資格を得る必要もある。これは、州および連邦政府の機関によって実施されている既存の規制に基づく検査による。初期の研究には、血漿輸血が予防的な効果を発揮することを示すものもある。つまり、まだウイルスに遭遇する前の健康な人にも有効だという。ただしFDAは、予防的な治療を明確に禁止している。

現在開発中の他のすべての治療法と同様、この方法も、まず効果を確かめ、それが一般的に適用可能であることを検証するためには、多くの試験と研究を必要とする。それでも、多くの研究者が、この課題に取り組んでいる。というのも、これまでのところ、症状がかなり重篤な段階に進んでいなけば、より効果的な方法であることが示されているからだ。回復期の血漿による治療は、けっして新しいものではなく、むしろ古典的な方法だ。それでも、比較的安全であるという利点がある。それは、通常の輸血と同様、ドナーがもはや活性化されたウイルスを保有していないことが確認された場合に限られるのはもちろんだ。というわけで、実用化までにまだ時間のかかる他の開発中の治療技術と並んで、今後の最新情報を見守るべき治療法と言えるだろう。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

安価な新型コロナテストを英研究チームが開発、30分で結果判明

英国のブルーネル・ユニバーシティ・ロンドン、ランカスター大学、サリー大学の研究者が開発した新たなタイプのテストでは、新型コロナウイルス(COVID-19)の感染をわずか30分で調べられる。この検査では、100ポンド(約1万3000円)しかしない手に持つタイプのハードウェアと、1人あたり5ドル(約550円)ほどの綿棒サンプルキットを用いる。ニワトリのウイルス感染をテストするのにフィリピンで使用された既存のテクノロジーを活用していて、今回研究者らが人間での新型コロナウイルス検査向けに作り変えた。研究チームは現在、大量生産に取り組んでいる。

新たなテストは当然のことながら実際に使用されるようになる前に、米食品医薬品局(FDA)のような各国の当局に承認される必要がある。しかしこのプロジェクトに関わっている研究者らは、いい反応が得られると自信を持っていて、「数週間以内に」提供することが可能だとさえ言う。ハードウェアそのものはバッテリーで作動し、スマートフォンのアプリに診断結果を表示する。テストするには鼻もしくは喉に使う綿棒が必要だが、サンプルをラボに提出する必要はない。

同様の手法を用いた現場で使えるテストの中にはすでに承認されたものがある。CepheidMesa Biotechの商品などだ。しかしこれらは高価な専用卓上型ラボを必要とし、ラボはヘルスケア施設に設置される。英国の科学者たちが開発したテストは高価ではないハードウェアを使用するというアドバンテージがあり、しかも1度に最大6人の検査に対応する。また、クリニックや病院に、もしかすると職場や家庭にも配備できる。

欧州や中国の一部の医療現場ではすでに、すぐに結果が得られるテストが使用されている。しかしこれらのテストは往々にして抗体の有無に頼る血清学的なものだ。

一方、英国の科学者たちのテストは分子によるもので、抗体ができる前でもウイルスのDNAの存在を検知できる。このテストは、自宅で自己隔離している無症状の個人のウイルス検査や、他のテストでは現在検査が優先されない不特定多数の人を調べるのに活用できるかもしれない。しかし新型コロナウイルスの市中感染という静かな広がりについての貴重な知見を提供することにもなる。

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(翻訳:Mizoguchi

英国の国民保険サービスが6500万円の資金提供をかけた新型コロナ技術コンペを開催

英国の国民保険サービス(NHS)のイノベーション推進機関であるNHSXは、この新型コロナウイルスのアウトブレイクの間、デジタル技術で人々を支えられるプロジェクトを提案したイノベーターやスタートアップに50万ポンド(約6500万円)を出資するコンペを実施する。この資金は、メンタル面のサポートや公的介護を必要とする人々、さらに長期間の自宅待機によって大きな影響を受ける人々への支援活動に集中的に提供される。

Techforce19(テックフォース19)と題されたことのコンペはNHSXが主催し、GovTech(ガブテック)系ベンチャー企業PUBLIC(パブリック)によって運営される。両者とも、このコンテストからは一切報酬を受け取らないという。

申し込み期限は4月1日午後12時まで。入選プロジェクトは4月3日に発表される。資金は、ひとつの団体につき2万5000ポンド(約330万円)まで。数週間以内にそのソリューションを大規模に展開できることが条件だ。次のようなプロジェクトが求められている。

  • 遠隔介護の提供。例えば、有資格の介護士と介護を必要とする人たちの位置からマッチングを行い、介護施設へ管理とケアを提供する。
  • 介護とボランティアの最適化。たとえば、人材募集、訓練、地域のボランティアを医療ワーカーと非医療ワーカーに選別するためのツールを開発する。または、国中の医療ワーカーとケアワーカーの需要を予測し、人材の派遣と管理を改善するためのツールを開発する。
  • メンタルヘルスの支援を改善。たとえば、メンタルヘルスのためのサービスや支援を探しやすくする。または、メンタルヘルスと心の健康を自己管理できるツールを開発する。
  • その他、この時期にサービス提供者の負担を軽減し、人々の不安を解消できるもの。

英保健大臣のMatt Hancock(マット・ハンコック)氏は、この資金提供についてこう話している。「家に留まり他人との接触を避けることが、このウイルスの感染拡大を低減するためにはぜひとも必要なことであり、結果的に命を守ることになります。しかし隔離は、特に高齢者、独居者、メンタルな問題を抱えている人、誰かを介護している人にとって容易なことではありません。家から出られない人のために、我々は今すぐにでも彼らを助ける方法を見つけなければなりません。そこで本日、私はこの国の強力な革新的テクノロジー分野のみなさんに、その挑戦を受けて頂くよう呼びかけます」。

NHSX長官Matthew Gould(マシュー・ゴールド)氏はこう話している。「テクノロジーは、新型コロナウイルスが引き起こす難題に対処する国家の取り組みにおいて、重要な役割を果たします。このコンペでは、隔離がもたらす問題のうち、デジタル技術で解決できそうなものに焦点が絞られています。これを通じてNHSXは、孤独やメンタル、その他の問題に苦しむ隔離被害者を数週間以内に救済できるよう、解決策の開発を加速化させます」。

英政府は、国内のすべての人たち、とりわけ70歳以上の高齢者、基礎疾患を持つ人、妊婦に対して、ウイルスの拡散を最小限に抑えるために他人との接触を避けるよう強く勧めている。癌患者など、ウイルスによって重大な影響が出る恐れのある人たちは、ウイルスから自らの身を「遮蔽」するために、12週間の自宅待機が求められている。

PUBLICのCEOを務めるDaniel Korski(ダニエル・コースキー)氏はこう話している。「新型コロナウイルスの拡大は、英国人の生活を突如として一変させました。私たちの多くは日常の行動が制限され、他人との接触を避けるために自宅勤務をしています。とくに社会的弱者の場合、社会からの隔絶と孤立には大きな代償が伴います。TechForce19が、今いちばん助けを必要としている人たちを救うための、いち早く展開できる技術の発掘に向けた有意義な一歩になることを期待しています」。

画像クレジット:Scar1984 / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Mesa Biotechのわずか30分で結果が出る新型コロナ用迅速検査をFDAが緊急承認

米国食品医薬品局(FDA)は緊急使用許可(EUA)の権限を利用して、米国内で利用可能なCOVID-19こと新型コロナウイルス感染症の検査資源を拡大しているが、ついにわずか30分で結果が得られる別の迅速検査を追加することになる。Mesa Biotechの検査は診療所や病院を含む医療の最前線で使用できるほど小型で、かつ複数の検査を並行して実行できる。

Mesaの迅速検査は、米国時間3月23日の月曜日に承認されたCepheidに続くものだ。どちらもPCRベースの分子検査で、患者の粘液サンプル中のウイルスDNAの存在を識別する。これらのテストは、実験室レベルの結果が提供でき、より迅速でサンプルを収集し現場から離れた検査施設へと輸送せずに実施できるので、新型コロナウイルスの感染と戦うための重要な技術資源の分散を防ぐことができる。

現場での検査は、利便性と迅速な結果が得られるという点でメリットがあるだけでなく、医療従事者がウイルスにさらされる可能性を制限するという利点もある。現場でテストすることは、物流や配送に関わる人だけでなく、ラボの技術者や専用の診断担当者を含むより多くの人々が、ウイルス感染の可能性を心配しなくていいいことを意味する。

これらの検査には、施設がMesaのAccula検査システムを導入している必要がある。しかしこの装置はインフルエンザの検査だけでなく、それほど深刻ではない他の検査にもすでに使用されており、以前のSARSを含む世界的なパンデミックと戦う最前線での使用に対処するために、特別に設計されたものだった。

新型コロナウイルス 関連アップデート

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(翻訳:塚本直樹Twitter

AIが飲み込む力を計測する嚥下計「GOKURI」開発のPLIMEが1.5億円を調達

PLIMESは3月24日、シードラウンドで1.5億円の資金調達を完了したことを明らかにした。第三者割当増資による資金調達で、引受先はCYBERDYNE(サイバーダイン)。併せて両社の業務提供も発表され、PLIMESが発案した嚥下計「GOKURI」の開発と市場展開を共同で進める。PLIMESは2018年4月創業の筑波大発のスタートアップ。

GOKURIは、筑波大学と筑波大学附属病院の研究成果を基に開発された嚥下計だ。特許取得の頸部装着型嚥下モニターを使い、専用のネックバンドと人工知能技術を組み合わせて嚥下の能力を計測する。具体的には、首に装着したネックバンドで嚥下音と姿勢を計測し、その結果を基にAIが嚥下の能力を分析する仕組みだ。

嚥下機能が低下すると、高齢者を中心に餅やゼリーなどが喉につまって窒息したり、食べ物などが気管に入ってしまう誤嚥などの事故の発生確率が高まる。GOKURIを利用することで各自の嚥下能力を数値化でき、嚥下の能力が低い人に対しては事前に予防処置などを講じられるようになる。

PLIMESは今回調達資金を、資金調達により、GOKURIを利用した嚥下機能検査、モニタリングの研究、医療機器化の開発を進めるほか、言語聴覚士やエンジニアなどの各領域で専門性の高い人材の採用に充てるとのこと。

米国食品医薬品局が医療現場で使える新型コロナ向け新検査方法を認可

米国食品医薬品局(FDA)は、米国の新型コロナウイルス検査能力拡大に役立つ機器や検査システムに対する「非常時使用許可」をより迅速に与える方針だ。米国における検査数は人口の割合と比較して諸外国より遅れている。つい最近認可された検査システムは、患者が受診している最前線の病院や診療所での利用拡大が期待されている。専門の検査機関との往復を必要としない方法だ。

先週FDAが認可したCepheid(セファイド)社の新型コロナウイルス検査は、鼻孔用綿棒を使用してもしなくても検査できるのが特徴で、鼻孔用綿棒の供給が世界的に逼迫している現状では重要な利点だ。利用している遺伝子PCR法は、すでに全米で実施されている専門機関の検査と同等の精度を得ながら、同社のGeneXpertというインクジェットプリンターほどの大きさの診断キットを使用することで医療現場で結果を見ることができる。

Cepheidによると、同社の超小型GeneXpert検査装置はすでに世界で約2万3000台使用されており、米国内には約5000台あるという。同社の装置はすでに何年間もインフルエンザの検査に使用されており、高い精度を示している。同システム向けの新型コロナウイルス検査は、来週カリフォルニア州サニーベールにある同社から出荷開始される。

米国内の検査数はこの1週間で増加しており、特にニューヨーク州など影響の大きい地域で拡大のためのさまざまな努力がなされた結果だ。しかし、検査の需要は今もまだ高まっている。検査能力に限りがあるということは、感染経路や高リスクであることが確認された場合など、最も重篤なケースでのみ検査が行われていることを意味している。

セファイド社のシステムや、Scanwell(スキャンウェル)が近日提供予定の被験者の血液中の抗体を探す方法には、個人が自宅で検査できる可能性がある。これは新型コロナ軽減戦略のために検査能力を拡大する上で重要だ。

画像クレジット:Cepheid

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

15分で終わる新型コロナ家庭用テストをScanwellが開発、FDAの承認待ち

スマートフォンベースでの尿路感染症テストを手掛ける在宅診断スタートアップのScanwellが、新型コロナウイルスの家庭用テストを米国民に提供するべく取り組んでいる。中国の診断テクノロジー企業INNOVITAが開発したこの技術は、FDA(米食品医薬品局)に相当する中国政府の当局にすでに承認され、中国では「何百万」という人が使用している。このテストは家庭で行うことが可能で、遠隔からの医療専門家によるガイダンスに従いながら15分で終わり、結果は数時間で判明する。

ScanwellのテストはFDAの承認が必要だが、FDAの緊急認証プログラムを通じてすでに現在承認を得る過程にあるという。FDAのガイダンスでは承認プロセスには6〜8週間かかるとされている(もっと早くなることもある、とScanwellは話している)。そして現在、Scanwellは承認され次第すぐにテストを出荷できるよう、準備を進めている。FDAが緊急認証プログラムでこれまでに承認したのはPCRテストのみだが、今週初めに血清テストも含めるようガイダンスをアップデートした。Scanwellは「FDAの承認を得るのに何ら心配はしていない」とさえ話す。

Scanwellがローンチしようとしているテストは、患者の血液の中の抗体を探すという、いわゆる「血清学的な」テクニックを使っている。これらの抗体はSARS-CoV-2ウイルスにさらされたときにだけ出現する。現段階では、これらのウイルスに対する自然抗体がウイルスにさらされることなく存在するという証拠は見つかっていない。それとは対照的に、現在米国で使用されているタイプのテストである「PCR」は、ウイルスが粘液サンプルの中に遺伝子として存在するかどうかを確かめる分子ベースのアプローチをとっている。

PCRタイプのテストは、血清学的なものよりも専門学的にはより正確だ。しかし血清学バージョンははるかに扱いが容易で、より早く結果を得られる。また、全体的にはかなり正確で、PCRバージョンよりずいぶん低コストで生産できる。加えて、症状が出ている最もシビアなケースだけに限定せずに検査できるようになるかもしれず、すでに自宅で回復している症状がマイルドな人、無症状だがウイルスを持っていて他人にうつす可能性のある人を含め、ウイルスの存在を見つけ出すのに大きく貢献する。

月曜日からEverlywellが展開する予定のもののように、PCRベースの家庭用テストはすでに存在しているが、これらはテストサンプルの回収が必要で、時間もかかる。また、複雑でコストもかかり、世界的に現在不足している綿棒などの材料を必要とする。

テストが利用できるようになれば、人々はScanwellのScanwell Healthアプリにあるスクリーニングプロセスで申し込みができ、テストは翌日配送で届けれられる。検査を受ける人にはLemonaidの医師や看護師が遠隔から案内し、結果やその後のガイダンスはアプリ経由で数時間以内に示される。このテストは70ドル(約7800円)で、純粋にコストのみの費用とのことだ(Scanwellはまた、必要な人への無料サービスを提供する方法も模索している)。この検査はまずはワシントン州、カリフォルニア州、ニューヨーク州と新型コロナウイルス感染状況が深刻な他のエリアで展開される見込みだ。

テストがマーケットに出てくるまでに6〜8週間かかるとのことだ。しかし現在のCOVID-19の急速な広がりやテスト状況を考えたときに、6〜8週間というのは長いが、おそらくその頃にはこのテストがかなり必要とされているだろう。特に現在行われている他のテストを受けるための条件を満たしていない人のニーズに応えるものになる。

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(翻訳:Mizoguchi

富士フイルム富山化学開発のインフルエンザ薬が中国の治験で新型コロナの治療に効果

中国の医療機関が武漢と深圳の患者に対して行った治験によると、日本製のインフルエンザ薬であるファビピラビルィ(販売名:アビガン)が、この薬で治療を受けた患者の体内新型コロナウイルス(COVID-19ウイルス)の存続期間を減らし、肺の症状を改善する効果を示した。

治験を受けた患者は計340名で、薬はすでに開発されインフルエンザの治療に承認されているので、The Guardianの報道では、米国時間3月18日に中国科学技術省のスポークスパーソンとして記者に語ったZhang Xinmin()氏によると「安全性が高い」。その試験は、患者が新型コロナウイルスの検査で陽性である期間を11日からわずか4日に短縮し、ファビピラビルで治療した患者の約91%で肺の症状が改善した。治験を受けなかった患者の改善率は62%だった。

新型コロナウイルスの治療におけるこの薬の効力を試験しているのは中国だけではない。日本の医師たちも独自の研究を積み上げている。日本の厚生労働省筋が毎日新聞に語っているところによると、この薬は現在、約70名から80名に投与されているが、初期の結果では、ウイルスが大きく増殖している重症患者の治療には効果がないことが示されている。

それでも軽症の患者ではウイルスの存続期間を減らし、中程度の症状の患者にも効力があったことは、現在進行中の新型コロナウイルスとの戦いにとって大きな成果だ。ファビピラビルが承認されるまではもちろんさらなる臨床試験(治験)が必要であり、そのあと、各国政府機関の承認を経て広範な利用が可能になる。

新型コロナウイルスの治療には、そのほかの薬もテストされ、あるいは開発されている。しかし、新型コロナウィルスの治療用として公式に承認された薬はまだない。初期において有望の兆候を示した他の薬の中には、ギリアド・サイエンシズが開発した化合物レムデシビルなどがある。この薬は汎用の抗ウイルス物質として有望視されている。

画像クレジット: Akio Kon/Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ファイザーもBioNTechと共同でCOVID-19ワクチン開発を発表

製薬大手のPfizer(ファイザー)は、米国時間3月17日、BioNTechと共同でCOVID-19ワクチンの開発に取り組んでいると発表した。BioNTechは、新しいタイプの免疫治療法に取り組んでいるドイツの企業だ。この共同の取り組みは同日、署名済みの同意書により確認された。両社はメッセンジャーRNAベースのワクチンを共同で開発し、人間が新型コロナウイルスに感染するのを防止することを目指す。

画像クレジット:Rost-9D/Getty Images

通常ワクチンは一般の人が使えるようになるまでの開発と認証に、最短でも1年から1年半はかかる。したがって、これが短期的な解決策になると期待することはできない。しかしこの提携は、製薬バイオテクノロジーの分野において最も有名かつ最大の会社と、mRNAベースの免疫療法の最前線で仕事をしている若い企業が結びついた、というところに意義がある。

こうした治療法では、一般的なワクチンのようにウイルス自体のサンプルは使わない。通常のワクチンでは、死んだか弱体化したウイルスを使って、自然な免疫機能を呼び覚まそうとする。その代わりこの方法では、RNAを利用してウイルスと十分に類似したタンパク質を作り出す。それによって人体が、本物の標的にも有効な抗体を作るように促すのだ。

この共同作業は、早ければ4月にも臨床試験が開始されることになる。両社はmRNAベースのワクチンの研究に関して、今回ゼロから始めたわけではない。すでに2018年から、インフルエンザの治療薬を開発するための研究開発に共同で取り組んでいた。

またこの共同作業は、米国とドイツにまたがる両チーム間ですぐに開始される。ただし財務上の取り決めや成果をどのように扱うか、といった詳細については、今後詰めていく必要がある。両社がそうした詳細の決定を待たずに共同開発を始めようとしていることからも、今回のプロジェクトの背景にある緊急性が理解できる。

プロジェクトは、mRNAベースによって開発中の唯一のCOVID-19ワクチンというわけではない。今週の初めにModernaは、独自の新型コロナウイルス免疫治療法について、人間を使った臨床試験をすでに開始したと発表した。それはNIH(米国立衛生研究所)と協力することで、開発を加速した結果だった。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

米国で新型コロナウイルスワクチンの人間への臨床試験開始

AP通信によると、新型コロナウイルスのワクチンの人間への臨床試験が、米国時間3月16日に開始される。今回の試験は、NIH(米国立衛生研究所)と医薬品メーカーのModernaが開発した実験的なワクチン注射の効果をテストするもの。一般的なワクチンのように、活性なウイルス、あるいは非活性化したウイルスのサンプルを使ったものではない。その代わりに、ウイルスの遺伝子に含まれるメッセンジャーRNAを利用して、ターゲットの免疫反応を引き出そうというものだ。

画像クレジット:Thana Prasongsin/Getty Images

Wall Street Journalは、2020年2月にModernaが開発中のワクチンについて報告している。同社は、このような遺伝子ベースのアプローチによる薬剤治療法の開発を主業務として設立された、比較的若い会社だ。当時の報告では、テストは4月に開始される予定とのことだったが、2月末から現在までの世界的な状況の変化を考慮して、スケジュールが前倒しされたようだ。とはいえ、公衆衛生当局によると、例え今回の治験で効果が実証されたとしても、ワクチンの最終的な検証には、少なくとも1年から1年半はかかるとのことだ。

COVID-19が突きつける継続的な脅威に対処するために、ワクチンを開発しようという試みは、もちろんこのModernaとNIHによる取り組みだけではない。ワクチンと治療法の両方で官民を問わず、多くの取り組みが進行中だ。今回のテストは、ヒトを対象にした臨床試験プログラムとして迅速に対処されたものとなる。

治験者は、実際にはウイルスを注射されるわけではないので、今回のテストプログラムでCOVID-19に感染するリスクはない。ただし、このプログラムにボランティアで参加しているとされる45人のように、若く健康な治験者でさえ、新たに開発されたワクチンを注射するとなれば、まだ知られていないことが多く存在する。この段階で、NIHとModernaは開発中のワクチンが望ましくない、あるいは危険な副作用を引き起こさないことを確認することを目指し、その後、有効性や別の他の安全性を証明するため、さらなるテストが必要となる。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

心臓血管ケアのHeartbeat Healthが8.9億円を調達

おそらく現在は多くの人が、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)によるパンデミックについて思いを巡らせていることだろう。だがそれ以外の健康課題が消え去ってしまったわけではないことへの注意も大切だ。心臓病は今でも米国における主な死因であることには変わりがない。

Heartbeat Healthは、心臓血管ケアの提供方法の改善に取り組んでいるスタートアップだ。米国時間3月12日、同社はシリーズAで820万ドル(約8億8500万円)を調達したことを発表した。

同スタートアップの共同創業者でCEOのJeffrey Wessler(ジェフリー・ウェスラー)博士は心臓病専門医だ。彼が約3年前に「アカデミックな心臓病の道を外れた」理由を、私に対して次のように語ってくれた。「デジタルヘルスの世界で行われている仕事を見る機会があったのです。それ以来、心臓の健康のために、その世界へ自分でも信じられないほどの勢いでのめり込みました」

ウェスラー博士は、心臓血管ケアの提供方法はほとんど変わっていないと語った。既存の方法は役に立つもので、それが現状維持が続く大きな理由であるのは事実だが、それでも改善の余地はあると言う。

「ここ7年ほどの間に、一度病気をしてしまった人びとを、どのように上手く扱えばいいのかわかってきたのです。新時代に入ったのです」と彼は語る。「しかし、そうした患者の方々の健康を保つという意味では、私たちの現在のやり方はまったく上手くいっていないのです」

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この問題にアプローチするために、Heartbeat Health は、ウェスラー博士が「デジタルファースト」レイヤーと表現するものを開発し、患者が遠隔医療を通して専門家に相談できるようにした。この相談を通して、患者は個人的に適切な治療機関(「Heartbeat推奨パートナー」である場合も、そうでない場合もある)へと誘導されることになる。

この最初のやりとりを通すことで、患者は「多くの無駄」を避けることができると博士は言う。なぜなら患者が不適切な場所へ行くことがなくなるからだ。そして「ミスマッチした医師の、個人的なやり方に身を任せるのではなく、エビデンスとガイドラインに沿った検査に基づいて、正しいケアを始めることができる」ようになるのだ。

さらにHeartbeat Healthは、患者に関連するすべての心臓のデータ(Apple WatchやFitbitなどのウェアラブルデバイスから記録したものかもしれない)を1カ所で収集し、どの治療が最も効果的かに関する結果を追跡しようとしている。

「最終的に私たちは、すべてを支えることができるソフトウェアやテクノロジーを実現したいと考えていますが、そもそも最初の段階で患者を置き去りにしたくありません」とウェスラー博士は語る。

さらに彼は、このプログラムはほとんどの健康保険で扱うことができ、すでにニューヨーク地域の1万人患者の治療に関与していると付け加えた。そしてウェスラー博士によれば、どうやらこのシステムは心臓病専門医たちに受け入れられており、口々に「私たちは信じられないほど分断されたシステムが、こうしたレイヤーによって、便利なかたちで統合されるのを待っていました」と博士に話してくるという。

今回のラウンドは406 VenturesとOptum Venturesが主導し、Kindred Ventures、Lerer Hippeau、Designer Fund、そしてMax Venturesが参加している。

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画像クレジット: Heartbeat Health

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(翻訳:sako)

ChatableAppsは周囲の雑音をリアルタイムに除去して聴力をサポートするアプリを開発

聴覚神経信号処理の研究者であるAndy Simpson(アンディ・シンプソン)博士の研究成果を商業化している、英国のスタートアップChatableApps(チャッタブルアップ)がひっそりとMark Cuban(マーク・キューバン)氏からシードマネーを調達していた。ChatableAppsは、周囲の雑音をほぼリアルタイムに除去することで「聞こえ」をサポートするスマホアプリを開発した。

シンプソン氏のほかに、同社の共同創業者はBrendan O’Driscoll,(ブレンダン・オドリスコル)氏、Aidan Sliney(エイダン・スリニー)氏、George Boyle(ジョージ・ボイル)氏だ。このチームは以前、音楽発見アプリSoundwave(Spotifyに買収された)を手掛けていて、のちにCEOのGiles Tongue(ジルス・タング)氏が加わった。タング氏は以前はウェアラブルテックスタートアップNURVVに在籍し、事業を進める役割を担っていた。

「アンディ・シンプソン博士は我々のCSO(サイエンス責任者)であり、投資家でもある」とタング氏は筆者に説明した。「シンプソン博士は聴覚神経科医学、聴覚認知、神経信号処理、人工知能を融合させた。AI異端者で、へそ曲がりの思想家だ。こうした普通ではないさまざまな要素が組み合わさって、神経科学主導のAIを一から立ち上げることにつながった。彼の数多くの研究は、ステルスモードで取り組みが始まる前に400以上も引用された」と続ける。

それからというものチームは忙しかった(しかしひっそりとほとんどの物事を進めた)。Chatableの聞こえサポートアプリはベータ版をGoogle Play Storeで入手できるが、まだ「正式展開前」だ。

「我々は臨床前の実証段階にある。実証はうまくいくだろう」とタング氏は話した。「アーリーアダプターからは『人生を変えるもの』との声が聞かれ、彼らは目に涙を浮かべていた」と続ける。

Chatableのオドリスコル氏は、同社のテクノロジーとアプローチはノイズフィルタリングや他のDSPテクニックを使用しておらず、「かなりユニークだ」と話す。「実際には、話し言葉とノイズを区分する深層学習ニュートラルネットアプローチだ。オリジナルの音声にフィルターを適用するのではなく、音を聞いてほぼリアルタイムでまったく新しい音声のストリームを再版する」と語った。

Chatableことを「クリック&ゴー」のユニバーサルな聞こえ補助と形容しつつ、オドリスコル氏はこのアプリが現代の100ポンド(約1万4000円)のスマートフォンと普通のイヤホンで使えるようにつくられた、と話した。「ユーザーが会話を聞き取りすいようにアプリはクリアで大きな音声を提供する。アプリには2つのスライダーがあり、1つは音量を上げるためのもの、もう1つは周囲のノイズをコントロールするためのものだ」と説明した。

より広い視点で、タング氏は「世界の聞こえの問題」はAIが大規模に解決できる最大の健康問題であり、Chatableは人生を変えるような手法で何百万人もの人を手助けする機会を有していると信じている。世界保健機関(WHO)によると難聴を抱える人は世界に4億6600万人いる。「Chatableは日々手にするスマートフォンを使ってグローバルの健康問題を解決することができる、世界初のアプリになる力を秘めていると確信している」と述べた。

一方Chatableは、月額9.99ポンド(約1400円)のサブスクで売上を上げる計画だ。これはもちろん事業を継続できるようにするためであり、長期的なプロダクトにも投資を続けられる(例えば、このアプリのiPhoneバージョンは現在プライベートベータだ。ただ、必要としている人にとって真に手頃なものになるよう、今後価格が下がることを期待したい)。

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(翻訳:Mizoguchi

米食品医薬品局は新型コロナに対する認可前の検査方法を許可

FDA(米国食品医薬品局)は米国時間2月29日、全国の有力な大学病院や医療施設で、新しい診断技術を使った新型コロナウイルス(COVID-19)の検査を許可することになると発表した。

このFDAの新たな取り組みは、「さまざまな米国内の政府機関が、新型コロナウイルスが米国内で流行する危険に対してなんら効果的な対策を取っていない」という批評家による非難を受けてのもの。昨年12月上旬に中国の武漢で最初の症例が報告されて以来、潜在的なリスクが認識されていたにもかかわらず、準備ができていないという批判だった。

この新型ウイルスへの感染が、いよいよ米国内でも確認された状況の中、CDC(米国疾病対策予防センター)は、これまでわずか459件の検査しか実施していなかった。一方中国では、1か月前から新型コロナウイルスに対して、5種類の民間による検査が市場に登場し、すでに週に最大160万件の検査の実施が可能となっている。Science Magazineのレポートによると、韓国でもこれまでに6万5000人の検査が実施されたという。米国内での最初の検査は、欠陥のある試薬を含む検査キットが配布されたことで、キットそのものが役に立たなくなり機能しなかった。

ウイルス流行の可能性への対応を誤っているとして非難されているのはCDCだけではない。ワシントンポスト紙の記事によると、米国時間2月27日には、米保健福祉省に対して内部告発者による不平が提起された。それによると、同省は十数人の職員を十分な訓練と装備もなく、武漢に派遣して米国人の救出に当たらせたという。

そしてFDAは、米国内の研究センターに対して、まだ承認されていない新しい技術を利用することを認めることにした。全国の医療機関が実施できる検査数を緊急に劇的に増加させるためだ。

「この施策が、今回の公衆衛生上の緊急事態にあって、適切なバランスをとったものになると信じています」と、FDA長官のStephen M. Hahn(ステファン・M・ハーン)博士は、声明で述べている。「私たちは、臨床試験に先立って科学的なものであることを保証し、FDAから独立した批判的な見解にも耳を傾けていきます。これも、米国内の検査能力を急速に拡大するためです。EUA(緊急使用許可)を認可する基準は変更していません。今回の措置は、重大な公衆衛生のニーズに対して、動的に変貌する状況に迅速に対応し、適応するという私たちの公衆衛生に対するコミットメントを反映したものです」。

新しいポリシーにより、研究機関からのEUAリクエストに対する審査をFDAが完了する前に、同機関は検証されたCOVID-19診断の使用を開始できるようになると、FDAは声明で明らかにした。

HHS(米国保健社会福祉省)が、公衆衛生上の緊急事態、あるいはそうした事態が発生する重大な可能性を認めた際には、FDAはEUAを発行して医薬品の使用を許可し、病気の診断、治療、または予防に当たることができる。HHSの長官は、COVID-19コロナウイルスの流行は、まさにそのような緊急事態であると、2月4日に判断していた。

これまでのところFDAは、COVID-19に対する1つのEUAを認可し、すでにCDCや他の公衆衛生の研究施設で使用されていると、FDAは明らかにしている。

「世界的にCOVID-19が発生していることは懸念事項であり、米国内での検査能力を向上させる、今回のFDAの取り組みに感謝します」と、CDCの国立免疫及び呼吸器疾病センター(NCIRD)のセンター長であるNancy Messonnier(ナンシー・メソニエ)博士は述べた。

新しい診断検査法の開発は、BARDA(Biomedical Advanced Research and Development Authority=生物医学先端研究開発機関)によって管轄されている。これは、HHSオフィスの一部門であり、健康問題に対する準備と対応を担当している。

「このステップは、開発コストを削減し、より多くの検査機関で利用できるようにするためのプロセスを高速化し、民間での開発を促進する可能性があります。そして最終的には、人名の救助に貢献するでしょう」と、BARDAのRick Bright(ディレクター、リック・ブライト)氏は述べた。

カリフォルニア州レッドウッドに本拠を置くゲノムシーケンシング用デバイスメーカーのGenapsysのようなスタートアップや、ソルトレイクシティにある分子診断学のスタートアップ、Co-Diagnosticsは、それぞれすでに中国政府と欧州の検査機関からアプローチを受けている。

米国では、多くの大規模な上場企業やスタートアップが、新型コロナウイルスを検出するために利用可能な新しい診断ツールの開発に取り組んでいる。

「BARDAでは、この業界のパートナーを選定して迅速な診断方法を開発し、民間や病院の研究室、さらには開業医の診療所でも利用できるようにするつもりです。それにより、医療従事者とその患者が、行動を起こすために必要な情報を得られるようにします」とブライト氏は述べた。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)