SPACE WALKERが5.5億円の資金調達、サブオービタルスペースプレーンの開発や複合材事業の体制強化

SPACE WALKERが5.5億円の資金調達、サブオービタルスペースプレーンの開発や複合材事業の体制強化

SPACE WALKER(スペースウォーカー)は3月31日、シードラウンドとして、コンバーティブル・エクイティおよび社債などによる5億5000万円の資金調達を2022年3月に完了したと発表した。引受先は個人投資家など。累計資金調達金額は12.16億円となった。

調達した資金により、サブオービタルスペースプレーン(有翼式再使用型ロケット)の技術実証、商用機開発、および新たに立ち上げた複合材事業への設備投資、これらに伴う人員強化、広告宣伝費などの運転資金などにあて、さらなる事業拡大を目指す。

スペースウォーカーは、誰でも飛行機に乗るように自由に地球と宇宙を往来する未来を目指し、持続可能な宇宙輸送手段を提供するために、サブオービタルスペースプレーンの研究・開発を行っている東京理科大学発スタートアップ。

また、2021年7月には複合材事業も立ち上げている。同社が宇宙開発において培われた軽量な複合材製容器は、宇宙のみならず、陸海空にまたがる脱炭素化社会に向けた水素サプライチェーン・プラットフォームの構築において、特に重要な要素である水素の貯蔵容器としても注目されているという。

オーロラ観測ロケット「LAMP」が高速に明滅する「脈動オーロラ」に突入、電子・光・磁場の詳細な観測に成功

2022年3月4日(現地時間)、打ち上げ場所のアラスカ州・ポーカーフラットで観測された脈動オーロラ

2022年3月4日(現地時間)、打ち上げ場所のアラスカ州・ポーカーフラットで観測された脈動オーロラ

名古屋大学は3月29日、名古屋大学宇宙地球環境研究所をはじめとする研究グループが、アメリカのアラスカ州よりNASAのオーロラ観測ロケット「LAMP」を明滅するオーロラに向けて打ち上げ、オーロラの中の電子、光、磁場の詳細な観測に3月5日(現地時間)に成功したと発表した。

これは、名古屋大学(三好由純教授、能勢正仁准教授)、宇宙航空研究開発機構(JAXA。浅村和史准教授)、東北大学(坂野井健准教授)、東京大学電気通信大学(細川敬祐教授)、九州大学からなる共同研究によるもの。ロケット実験にはこの他に、NASA、ニューハンプシャー大学、ドートマス大学、アイオワ大学の研究者も参加している。

オーロラは、宇宙から降り込んだ電子が地球の超高層大気と衝突して発光する現象だが、その中に、高速に明滅する「脈動オーロラ」というものがある。近年では日本の人工衛星「れいめい」「あらせ」による観測などで脈動オーロラの研究が進んでいるが、その発光層の広がりや、明滅と電子との関係、脈動オーロラにともなって降ってくる電子の上限エネルギーについては解明されていない。

脈動オーロラといっしょに降り込むキラー電子の想像図

脈動オーロラといっしょに降り込むキラー電子の想像図

研究グループは2020年、脈動オーロラが起きているときは「キラー電子」と呼ばれる数百キロ電子ボルトの超高エネルギー電子が降り注ぐ現象(マイクロバースト)も同時に起きているという仮説を示したが、脈動オーロラとキラー電子を同時に観測した例はなかった。そこで研究グループは、アメリカの研究者とともに「LAMP」(Loss through Aurora Microburst Pulsation)計画をNASAに提案。採択されると、日米の研究機関でロケットに搭載する観測装置の開発を行った。日本側は、名古屋大学が磁力計、東北大学が光学観測系、JAXAが電子観測系を担当した。

ロケットに搭載されたオーロラカメラ

ロケットに搭載されたオーロラカメラ

2022年2月24日、アラスカ州ポーカーフラットリサーチレンジの射場にロケットをセットし、同時に、アラスカ北方のベネタイとフォートユーコンにもオーロラ高速撮像用のカメラ群を展開すると、脈動オーロラの出現を待った。そして待機すること10日目の3月5日、大きなオーロラ爆発が起こり、それに続いて脈動オーロラが発生すると、ロケットが打ち上げられた。LAMPロケットは脈動オーロラに突入。すべての機器が順調に作動し、「理想的な状態」で観測が行われ、観測データの取得が確認された。今後の詳細な解析により、脈動オーロラの変調機構、キラー電子との関係が明らかになることが期待されている。

現在研究グループは、スウェーデンの次世代型三次元大型大気レーダー「EISCAT-3D」が2023年に稼働を開始するのに合わせて、その視野内に観測ロケットを打ち上げる「LAMP-2」の検討を進めている。


画像クレジット:©脈動オーロラプロジェクト

Astraが新規顧客であるSpaceflightの初ミッションで軌道に到達

宇宙スタートアップから今は上場企業となったAstra(アストラ)は、同社の新規顧客であるSpaceflight Inc.のためのデビューミッションで、2度目の軌道到達を果たした。

これは同ロケット打ち上げ企業にとっては大きな収穫だ。Astraは2021年11月に初めて軌道に乗ったが、それ以来、その偉業を再現できていなかった。今までは。

Astra-1ミッションは、アラスカ州のコディアック宇宙港から打ち上げられた。LV0009と名付けられたロケット3.3号機は、教科書通りの(つまり特筆すべきことのない、というのは打ち上げビジネスでは良いことだ)リフトオフとステージ分離を行った。今回の打ち上げでは、アマチュアのロケット愛好家グループであるPortland State Aerospace Society(PSAS、ポートランド州航空宇宙協会)の超小型衛星CubeSatやNearSpace Launchの衛星間通信システムなど、Spaceflightの3組の顧客のペイロードを軌道に乗せた。3番目の顧客は公表されていない。

Astra-1のミッションの飛行経路(画像クレジット:Astra)

同社は、打ち上げライブ配信の終了までに、顧客のペイロード展開を確認することはできなかった。展開が確認され次第、TechCrunchは記事を更新する。

【更新】AstraはTwitter(ツイッター)で、衛星が正常に展開されたことを確認した。

米国時間3月16日に行われた本日の打ち上げは、2025年まで続くSpaceflightとの契約における一連のミッションの最初のものであると、両社は14日に発表した。

Astraは2021年7月、SPAC合併によりNASDAQに上場し、従来のIPOプロセスを回避して株式市場へ参入する宇宙関連企業が増えている中、その仲間入りをした。その後、同社の株価は下落の一途をたどり、2月の直近の打ち上げ失敗の後、26%も下落することとなった。

同社は3月初め、失敗した打ち上げに関する予備的な事後報告を発表した。Astraのミッションマネジメント&アシュアランス担当シニアディレクターであるAndrew Griggs(アンドリュー・グリッグス)氏は、失敗の原因は、フェアリング分離機構の問題でステージ分離に異常をきたしてしまったことと、推力ベクトル制御システムのソフトウェアに問題があったことの2点であると述べていた。

「絶え間ないイテレーションと広範なテストを通じ行った変更により、LV0008で発生した不具合は解消され、ソフトウェア群はより安定しました」と同氏は述べた。

Astraには大きな計画がある。同社は2021年、投資家らに対して、2023年までに週1回、さらに2020年代半ばまでに1日1回の打ち上げを行うことを目標としていると語っている。

打ち上げの様子はこちらでご覧いただける。

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Den Nakano)

NASAの超高額な月ロケットが18日に発射場へ移動

最初に発表されてから12年、NASAの巨大な「Space Launch System(スペース・ローンチ・システム)」がついに公に姿を現すことになる。この超重量級ロケットと「Orion(オリオン)」宇宙船は、米国時間3月17日に、フロリダ州ケネディ宇宙センターの発射場へ向けて搬入が開始される予定だ。遅延と費用高騰に悩まされてきた打ち上げシステムにとって、待望の進展だ。

11時間かかると予想される木曜日のロールアウト(移動作業)後、NASAはソフトウェアシステムの検証やブースターの整備など、打ち上げ準備のための多くのテストを実施することになっている。その後、NASAは推進剤を充填した「ウェット・ドレス・リハーサル」と呼ばれる一連の打ち上げ前試験を行う予定だ。Artemis(アルテミス)計画の打ち上げディレクターを務めるCharlie Blackwell-Thompson(チャーリー・ブラックウェル-トンプソン)氏は、米国時間3月14の記者会見で、予定通りにロールアウトが進めば、ウェット・ドレスは4月3日に実施される可能性があると語った。

ここまで長い年月がかかった。米国議会は2010年に、NASAの最初の宇宙輸送システムだったSpace Shuttle(スペースシャトル)に代わるものとして、SLSの開発を同局に指示した。NASAのアルテミス計画の一環として、SLSは人類を再び月に送り込み、さらに将来的には太陽系探査に向かうことも見据えた乗り物として構想されている。

しかし、それ以来、このプロジェクトは度重なる挫折と技術的な問題に直面してきた。1年前、NASAの監察官室は、SLS計画に関連するコストと契約にまつわる厳しい報告書を発表し「コスト上昇と遅延」によってプロジェクトの全体予算が当初の範囲をはるかに超えていることを明らかにした。この混乱で最大の勝者となったのは、間違いなく航空宇宙産業の主要企業だ。特にSLSの開発を指揮するBoeing(ボーイング)や、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)、Aerojet(アエロジェット)は、監察官室によれば、2019年にSLSの全契約に費やされた総資金の71%を、これらの企業の契約が占めているという。

このようなことがすべて積み重なり、非常にコストのかかるプロジェクトになってしまった。3月初め、NASAの監査役は、最初の4回のアルテミスミッションの運用経費がそれぞれ41億ドル(約4850億円)になると報告した。4回の合計ではなく、1回ずつそれだけかかるのだ。

SLS1基の建設費はその約半分の22億ドル(約2600億円)。NASAの探査システム開発担当副長官であるTom Whitmeyer(トム・ウィットマイヤー)は、この金額について、プロジェクトは「国家的投資」であると記者団に語り、暗黙のうちに見解を示したようだ。

「私の観点から言えば、それは強力な国家的投資で、我々の経済への国際的関与である」と、同氏は語った。

SLSのコストが高いのは、第1段、第2段とも再利用できないため、それぞれのミッションに専用のロケットが必要になることも一因だ。SLSとは対照的に、SpaceX(スペースX)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOは2022年2月、同社の超重量級完全再利用型ロケットである「Starship(スターシップ)」の打ち上げコストは、今後数年以内に1回あたり1000万ドル(約11億8000万円)以下になると推定している。SpaceXは2021年29億ドル(約3400億円)の契約を獲得した後、アルテミス計画の一環としてNASAのためにこのロケットの月着陸船バージョンを開発している。

画像クレジット:NASA

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

インターステラテクノロジズと日本旅行、宇宙開発の現場を活かした観光と教育事業でパートナーシップ協定を締結

インターステラテクノロジズと日本旅行が宇宙開発の現場を活かした観光と教育事業でパートナーシップ協定を締結

北海道広尾郡大樹町を拠点にロケット打ち上げ事業を展開するインターステラテクノロジズは3月14日、ロケットの開発と製造という「圧倒的現場感のあるコンテンツ」を軸とした観光と教育の新事業創出を目指し、日本旅行と新たなパートナーシップを締結したと発表した。

インターステラテクノロジズは、観測ロケット「MOMO」、2023年度の初号機打上げを目指す超小型人工衛星打ち上げロケット「ZERO」の開発、製造、打ち上げを行う宇宙スタートアップ。技術開発から打ち上げまでを1社で行うことを特徴とし、国内で初めて、民間企業単独開発でロケットを高度100キロの宇宙空間に飛ばした実績を持つ。また、「みんなのロケット」という価値観を重視し、オープンなロケット開発を志向している。一方、日本旅行は、宇宙開発に関連する観光事業や宇宙を通じた学びができる学校向け探求体験プログラム「ミライ塾」など、宇宙利用のための専門部署を構え、「旅行会社という概念にとらわれない試み」で新たな価値の提供を目指している。

インターステラテクノロジズと日本旅行が宇宙開発の現場を活かした観光と教育事業でパートナーシップ協定を締結

この2社は、2018年にもロケットの打ち上げに関連した旅行商品の提供やイベント開催などを共同で行っているが、今回は宇宙開発を間近で見られるコンテンツや、ロケット工場や射場を活かした観光、教育、地方創生関連事業を共創し、さらなる事業展開を図るためのパートナーシップを結んだ。

観光では、インターステラテクノロジズのロケット開発や製造の現場を中心に、航空宇宙、星空、地域資源を使った観光コンテンツを企画開発し、販売する。開発したコンテンツは、ツアー主催会社など旅行会社に販売し、事業化することを目指す。

教育では、ロケットの開発と製造の現場を体感するほか、牛の糞尿由来のメタンガスから製造した液体バイオメタンをロケット燃料に使うことで、宇宙開発と地球環境問題と地域課題解決とを考える取り組みを教育コンテンツ化して、日本旅行の「ミライ塾」に提供する。

地方創生では、打ち上げ見学場や観光施設で、国内外の観光客やビジネス関係者の受け入れ体制を整える。

インターステラテクノロジズと日本旅行が宇宙開発の現場を活かした観光と教育事業でパートナーシップ協定を締結

「宇宙のまちづくり」を推進する大樹町を起点に、両社は、大人のロマンを満たす観光コンテンツと、子どもが関心を持ち挑戦できる教育コンテンツの開発を進めるとしている。

人気コメディアンのピート・デヴィッドソン氏が3月23日にブルーオリジンのロケットで宇宙旅行へ

Blue Origin(ブルーオリジン)は、New Shepard(ニューシェパード)の亜軌道宇宙への飛行に向けた次のメンバーを発表した。「Saturday Night Live(SNL、サタデー・ナイト・ライブ)」レギュラーのPete Davidson(ピート・デヴィッドソン)氏をはじめ、エンジェル投資家のMarty Allen(マーティ・アレン)氏、非営利団体SpaceKids Globalの創設者Sharon Hagle(シャロン・ヘーグル)氏、彼女の夫でTricorのCEOであるMarc Hagle(マーク・ヘーグル)氏、起業家のJim Kitchen(ジム・キッチン)氏、Commercial Space Technologies創設者のGeorge Nield(ジョージ・ニールド)博士が含まれている。

ピート・デヴィッドソン氏は、2021年、William Shatner(ウィリアム・シャトナー)氏が商業宇宙企業である同社の宇宙飛行に搭乗したのに続き、Blue Originにとって2人目のスター乗客となる。デイヴィッドソン氏は3月初め、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が所有する同社と宇宙へ行くための話し合いを行っていると報じられていた。彼にとって10分間の旅は少なくとも、キムやカニエとのひっきりなしのドラマから解放されるつかの間の休息となるだろう。

今回デイヴィッドソン氏とともに搭乗するクルーは、より伝統的な富裕層や、STEAM・宇宙教育につながりのある慈善家たちだ。ニールド博士は以前、商業宇宙飛行の認可と規制を担当するFAAの部署に勤務していたこともあり、個人的にかつての仕事の成果を体験する興味深い機会でもある。

Blue Originの打ち上げは米国時間3月23日。暫定的な離陸時間は米国中央部夏時間の午前8時30分(東部夏時間午前9時30分)で、テキサス州西部にある同社の発射場から行われる予定だ。

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Den Nakano)

スペースXが「米国のほうき」でさらに48基のスターリンク衛星を打ち上げ

SpaceX(スペースX)のStarlink(スターリンク)ミッションがまた1つ、高く高く遠くへ飛んでいった。米国太平洋標準時3月9日の午前5時45分、フロリダ州ケープカナベラルの宇宙軍施設第40発射施設からFalcon 9(ファルコン9)ロケットが打ち上げられ、地球を周回してインターネットを提供しているSpaceXの2000基に及ぶ衛星群に、新たに48基の衛星が追加された。

今回の打ち上げはブースターにとって4回目で、ミッション開始から数分後に大西洋に浮かぶ無人のドローン船「A Shortfall of Gravitas(厳粛さが足りない)」に着陸した。

2022年に入ってから7つのStarlinkミッションに加え、他の3つのミッションも打ち上げているSpaceXにとって、今回の飛行は目新しいものではなかったが、打ち上げのシークエンスにおいて、おもしろい一節が含まれていた。

「米国のほうきを飛ばし、自由の音を聞く時が来ました」と、SpaceXの打ち上げディレクターは打ち上げの「ゴー」を出す前に呼びかけた。

このコメントは、ロシアの国営宇宙機関Roscosmos(ロスコスモス)を率いるDmitry Rogozin(ドミトリー・ロゴージン)氏が先週、両国間の緊張が高まる状況を受けて、米国へのロシアのロケットエンジンの販売を禁止した後に述べた嫌味にちなんでいる。同氏は国営放送で「何か他のもの、自分たちのほうきにでも乗せて飛ばせばいい」と語っていた。

Falcon 9はSpaceXが開発したMerlinエンジンを搭載しているが、米国の他のロケット(United Launch AlliancesのAtlas VとNorthrop GrummanのAntares)はロシアのエンジンを搭載している。ULAは今後の打ち上げに十分なエンジンの在庫があると発表しているが、Northrop Grummanは、禁輸措置が同社のミッションにどのような影響を与えるかについて声明を出していない。

いずれにせよ、米国のロケット打ち上げの大半を占めるのはSpaceXであり、9日の打ち上げが示したように、同社のほうきも好調だ。

SpaceXの次の打ち上げは、Starlinkのミッションではなく、有人ミッションだ。3月30日に打ち上げられる予定のAxiom-1ミッションは、国際宇宙ステーション(ISS)への初の民間飛行となる。SpaceXは、すでにNASAのクルーを4人ISSに送り込み、民間人だけのクルーがCrew Dragonカプセルで数日間地球を周回したInspiration 4ミッションも行っており、有人ミッションの分野ではかなりの経験を積んでいるといえる。

画像クレジット:SpaceX / Flickr under a CC BY-NC 2.0 license.

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Den Nakano)

ロシアが米国向けロケットエンジン販売禁止、「自分たちのほうき」で宇宙へ飛ぶことを提案

ロシアと米国の間で(他の国はいうに及ばず)緊張が高まる中、ロシアの国営宇宙機関Roscosmos(ロスコスモス)は米国へのロケットエンジンの出荷を停止すると発表した。Roscosmoを率いるDmitry Rogozin(ドミトリー・ロゴージン)氏は、国営放送でこう述べた。「何か他のもの、自分たちのほうきにでも乗せて飛ばせばいい、何になるかは知らないがね」。幸いなことに、我々にはほうきよりも良い方法がある。

今回影響を受ける2つのロシア製エンジンは、ULA(United Launch Alliance)のAtlas V(アトラスV)やAntares(アンタレス)ロケットの主推力として20年間使われてきた信頼性の高い強力なエンジンだ。しかし、ここ数年、AtlasとAntaresの打ち上げ、特に90年代に開発されたエンジンを使った打ち上げは、打ち上げ量と能力において非常に少数派になっていることは、ご存じのとおりだ。

長い時間軸を持つ産業に属するということは、このような事態に前もって備えるということであり、米国はかなり以前からロシアのハードウェアへの依存度を下げる努力をしてきた。具体的には、ULAは2018年に、次世代ロケットVulcan(ヴァルカン)のために、ロシアのRD-180エンジンの代替品を開発するようBlue Origin(ブルーオリジン)に依頼した。

このBE-4エンジンはまだ準備が整っていないが(Blue Originが実証した宇宙旅行フライトは、打ち上げプロファイルがまったく異なる)、ULAのトップであるTory Bruno(トリー・ブルーノ)氏は、The VergeのLoren Grush(ローレン・グラッシュ)氏に対し、ULAはその方向に向かっており、何にしろ移行期間を乗り切るのに必要なRD-180を十分に持っていると語った(同組織にコメントを求めたので、返答が得られたら更新する)。Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)は、今後数年間、RD-181(同じく禁輸となった)を使用するCygnus(シグナス)の飛行を計画していたため、より大きな影響を受けるかもしれない。

しかし、米国のレガシーロケットプロバイダーの備えよりも重要なのは、新しいロケットプロバイダーの急増だ。もちろんSpaceX(スペースX)は誰もが知っているし、Rocket Lab(ロケット・ラブ)も急速にお馴染みの社名になりつつある(あなたの家庭が軌道サービス産業に隣接している場合)。しかし2022年は、Relativityの「Terran 1」3Dプリントロケットの初飛行も見られるだろうし、Astra(アストラ)などの新興企業は、迅速、頻繁かつシンプルな打ち上げを行うことでコストを最低限に抑えようとしている。

さらに、米国政府はハイプロファイルで機密性の高いミッションに、こうしたより新しい商業打ち上げ業者を利用することに急速に抵抗がなくなってきている。国家偵察局(NRO)や国防総省が最新のスパイ衛星を民間のロケットでは軌道に乗せない、あるいは乗せられないという時代は終わりを告げようとしているのだ。

また、広く捉えると、打ち上げの世界は、ロシアとの新たな冷戦が始まらなかったとしても、RD-180が持続可能な選択肢であった時代からすでに脱却しているということだ。Ford(フォード)に辻馬車を売らないぞと脅している馬車メーカーと言ったら言い過ぎかもしれないが、ロケット、カプセル、発射台、インフラに至るまで、ロシアの最新鋭の宇宙技術はすでに市場から見放されていた感がある。

米国が設計し、米国が打ち上げる新世代ロケットや宇宙船に民間や政府の資金が大量に投入されたことは、政治情勢が悪化しなかったとしても、さまざまな面で現実的な判断であったといえるだろう。その投資の成果は今、明らかになりつつある。10年後、ロシアは米国のほうきに乗りたがっているかもしれない。

画像クレジット:Official U.S. Navy Page / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Den Nakano)

Rocket Labのロケット「Neutron」、製造から着陸までを米バージニア州ワロップス島で

Rocket Lab(ロケットラボ)は、同社のロケット製造・発射施設の拡張について最新の状況を発表した。ニュージーランドと米国にある既存の発射場には、引き続き同社の小型ロケット「Electron(エレクトロン)」を配備する。一方、バージニア州では、将来打ち上げる、はるかに大型のロケット「Neutron(ニュートロン)」を格納する新しい施設を建設する予定だ。

Nettronを製造する新しい施設は、NASAのワロップス飛行施設の中にある。施設の28エーカー(約11万3300平方メートル)の敷地には、約25万平方フィート(約2万3000平方メートル)の屋内空間がある。これは大きなスペースだが、当然ロケットも大きい。同社は多数のロケットを製造する予定だ。

ロケットの組み立てだけでなく、それを構成する特殊な炭素複合材もここで製造される。炭素複合材のロールは、いわば「温めたオーブン」から取り出してすぐ、Neutronの周囲23フィート(約7メートル)の胴体を包むことになる。

「ロケット全体をこの施設で製造することを意図しています」とRocket LabのCEOで創業者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、米国時間2月28日のメディアブリーフィングで述べた。「ステージの直径は非常に大きい。私たちはその意思決定を本当に早く行いました。ワロップスとカリフォルニアの間にある一番大きい橋で直径を測るというようなことはしたくなかったのです」。

ベック氏は、Neutronの仕様が最初に公開された12月に、この大口径の利点を語った。

再利用を前提にゼロから設計されたロケットであるNeutronは、ペイロードを運んだ後にワロップスに戻り、生まれた場所と同じ施設で改修される。打ち上げと軌道上運用センターを含むオールインワンの複合施設は、この地域に何百もの仕事を提供し、宇宙産業におけるワロップスの長年の重要性をさらに強固なものにするはずだ。

バージニア州はワロップスNASAの施設の拡張と改善のために約4500万ドル(約52億円)の資金を計上済みだが、まだ議会で審議中だと、バージニア商業宇宙飛行局の代表Ted Mercer(テッド・マーサー)氏(米空軍少将、退役)は電話で述べた。

「もし議会で承認されれば、1500万ドル(約17億円)は施設の建設に、3000万ドル(約35億円)は新しい発射台の建設に充てられます」とマーサー氏は述べ、発射台はNeutron専用ではなく、多目的であることに言及した。

当然、早く建設すればそれだけ早く試せるため、ベック氏は「我々はすぐにでもにこの地で着工することを望んでいます」と述べた。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

Astra、フロリダからの初ロケット打ち上げに失敗

Astra(アストラ)は米国時間2月10日、フロリダ州の「スペースコースト」から初となるロケットの打ち上げを行った。これは当初、2月7日に予定されていたが、技術的な問題で中止されていた。二度目の試みとなった今回、ケープカナベラル宇宙軍基地のスペースローンチコンプレックス46から打ち上げられたロケットは、発射台を離れたものの、残念ながらペイロードは軌道に乗らなかった。

同社によると、ロケットは飛行中に問題が発生し、ペイロードを目的地に届ける機会が得られなかったという。これはロケットに積まれていたNASAの4基のCubeSat(キューブサット)が失われたことを意味する。NASAのLaunch Services Program(ローンチ・サービス・プログラム)に基づきこの契約を獲得したAstraは、小型のペイロードを宇宙に届ける低コストの軽負荷ロケットという代替手段の有効性を示すことを目標としていた。

本日の飛行中に問題が発生し、ペイロードを軌道上に届けられなくなってしまいました。

お客様であるNASAおよび小型衛星チームのみなさまに深くお詫び申し上げます。より詳細な情報は、データの確認が完了した後にお知らせします。

Astra

Astraによる打ち上げライブ中継では、ロケットのメインエンジンが切り離され、ブースターと上段が分離した直後に、何か問題が発生したように見えた。上段が制御不能な状態で転回しているように見えたが、その後、映像は切断された。

Astraのアプローチは、スピードと効率を重視し、業界の競合他社よりも大量に小型ロケットを生産することに重点を置いている。以前、AstraのChris Kemp(クリス・ケンプ)CEOは、より低コストのアプローチには、トレードオフとして競合他社よりも高い故障率を負う可能性があることを十分に認識しており、そのことはビジネスモデルに織り込み済みであると、TechCrunchの取材に対してコメントしている

しかし、これでAstraは、比較的近い時期に二度の失敗を経験したことになり、いずれもSPAC(特別買収目的会社)合併によってニューヨーク証券取引所に上場した後に起きている。前回の失敗は2021年8月、同社の最初の公式な商業打ち上げ(米国宇宙軍のためのテストペイロード輸送)で問題が発生し、軌道に到達することができなかった。しかし、Astraはそれから3カ月後の11月、商業ペイロードの軌道投入に成功している。

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画像クレジット:Astra / John Kraus

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【Max Q】SpaceXが初めて1日に2回Falcon 9を打ち上げ

TechCrunchは、Space 2021イベントを終えたばかりが、宇宙ビジネスに限っては、年末だからといってニュースのペースが落ちることはない。

SpaceXがロケット再利用の新記録を達成、初の1日に2回の打ち上げ

SpaceX(スペースエックス)は、同社のStarlink(スターリンク)衛星の新たな一群を、ヴァンデンバーグ空軍基地の発射施設から米国時間12月18日に打ち上げ、続いてその日の夜遅くにトルコの通信衛星をフロリダ州ケープカナベラルから打ち上げた。これはSpaceXが1日に2回の打ち上げを行った初めての事例だ。また、このStarlinkミッションでは打ち上げロケットのFalcon 9を11回にわたって発射・回収し、SpaceXの打ち上げシステム再利用記録を更新した。

それだけでも十分目覚ましいが、現在SpaceXは、同社の商業再補給サービス(CRS)ミッションの一環として国際宇宙ステーション(ISS)に補給品と実験材料を届けることになっている。予定では米国時間12月21日午前にケープカナベラルから飛び立つ。

画像クレジット:SpaceX

2021年を宇宙投資家の目で振り返る

上に書いたように、我々はTC Sessions:Space 2021イベントを終えたところだが、その中でもスタートアップコミュニティにとって特に興味深かったに違いない話題が、宇宙分野に関心のあるアーリーステージ投資家のパネルとTechCrunchが行ったディスカッションだろう。たとえばSpace Capital(スペース・キャピタル)のファウンダーであるChad Anderson(チャド・アンダーソン)氏は、長年スタートアップに早期投資する中で、宇宙産業が著しく進化してきたことについて語り、現在業界で起きている大きな転換に言及した。Assembly Ventures(アセンブリー・ベンチャーズ)のJessica Robinson(ジェシカ・ロビンソン)氏は、スペーステック(宇宙技術)が他のあらゆる分野に影響を与えその逆も起きていることについて話した。

ディスカッションはTC+サブスクライバー専用サイトでその他の会話とともに公開されている。

画像クレジット:Axiom Space

その他のニュース

Voyager Space(ボイジャー・スペース)はBlue Origin(ブルー・オリジン)のグローバル販売担当VPを新たな最高収益責任者(CRO)として雇った。Clay Mowry(クレイ・モーリー)氏はBlue Originチームのかなり有力なメンバーであり、その以前はArianespace(アリアンスペース)の会長兼社長を務めていた。

NASA(米国航空宇宙局)と各国の提携機関は、民間有人宇宙飛行計画、Axiom(アクシオム)Mission 1の国際宇宙ステーションへの飛行を承認し、2022年2月28日に実施されることが決まった。

ジョージア州カムデン郡のSpaceport Camden(スペースポート・カムデン)は、FAAから正式な打ち上げ許可を受けた。運用に入るまでにはまだいくつかハードルが残っているが、民間打ち上げ会社の新たな打ち上げ場所の選択肢としての役割が期待される。

Rocket Lab(ロケットラボ)は太陽電池、ソーラーパネルその他の宇宙拠点インフラの構成要素のメーカー、SolAero Holdings(ソロエアロ・ホールディングス)を買収する。TechCrunchは先にRocket LabのPeter Beck(ピーター・ベック)氏と、同社の最近の買収ラッシュについて話した(要サブスクリプション)。

The U.S. Space Force(米国宇宙軍)が2歳に!よちよち歩きの武官組織になった。

NASAはJames Web(ジェームズ・ウェッブ)宇宙望遠鏡を米国時間12月24日に打ち上げる予定で、目標打ち上げ時刻は東海岸標準時午前7時20分(日本時間12月24日午後9時20分)だ。フランス領ギアナ、クールーにある宇宙センターから発射され、Arianespaceのロケット、Ariane 5をESA(欧州宇宙機関)との提携で搭載する。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Rocket LabがNeutron打ち上げ機でロケット設計を再考、打ち上げの常識に挑戦

Rocket Lab(ロケットラボ)がついにNeutron(ニュートロン)ロケットの覆いを外した。ニュートロンは、CEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏が「2050年のロケット」と呼ぶ中型機である。Rocket Labは、現在SpaceX(スペースX)が支配する打ち上げ市場でシェア拡大を目指している。

今回、3月のニュートロンのアナウンス以来、同社のプロジェクトに関する最初のメジャーアップデートである。3月以来、Rocket Labは、特別買収目的会社を使った合併による株式公開Electron(エレクトロン)再利用計画の開発継続、宇宙サービス部門の拡大で忙しい。その間ずっと、今に至るまで、ニュートロンに関しては沈黙を保ってきた。

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炭素複合材

ニュートロンの特徴は、運用と開発の両面で同クラスの他のロケットとは異なる、いくつかの意外なイノベーションにある。まず素材である。約40メートルのロケットは、姉妹機のエレクトロン同様、特別な炭素複合材で作られる。

これは興味深い選択である。特に、周知のようにスペースXがStarship(スターシップ)システムで炭素複合材を捨ててステンレス鋼を取ったことを考えるとそうである。しかし、Rocket Labが炭素複合材を使うのはこれが初めてではない。ベック氏は、ニュージーランド政府の研究施設でキャリアをスタートさせて以来、エレクトロンロケットの大部分で使うだけでなく、高度な複合材や素材に取り組んできた。

「金属の扱いに慣れてきた場合、実際に複合材をてがけるのは本当に困難です。でも、ずっと複合材と関わりがあって経験があるなら、実際のところ、複合材はシンプルな素材です」とベック氏はTechCrunchに語った。

金属の構造体は重くてパフォーマンスが低い。高パフォーマンスエンジンで補うことはできるが、再利用の点で大きな余裕や高い信頼性にはつながらない、と氏は付け加えた。構造体が軽くなれば、氏が「ロケットの破綻のスパイラル」と呼んだものを避けることができる。構造体が重くなると必要な推進剤が増え、推進剤が増えると必要な推進剤タンクが大きくなり、タンクが大きくなると重量が増えて必要な推進剤がさらに増える、という終わりのないせめぎ合いだ。際限がない。

「これは、私のキャリアで破綻のスパイラルが逆転する最初の時です。軽量の構造体で破綻のスパイラルが逆転します。このことは、打ち上げの観点から重要なだけでなく、実際のところ再突入の観点からも本当に重要です」と氏は言った。なぜなら、ベック氏によれば、約7メートルというニュートロンの大きな直径と軽い重量によって、弾道係数、つまり空気抗力に対する物体の抵抗の大きさが大きくなるからだ。それで、構造体を重視することで、再突入で消費する推進剤は少なくなり、空気抗力は小さくなり(結果として熱も少なくなり)、エンジンはシンプルになる。

また、ニュートロンは新しいタイプのグラファイト複合材で仕上げられるので、耐熱性が向上する。これは、今後のエレクトロンロケットにも新たに導入される。

「口を大きく開けたカバ」

従来のロケット設計と大きく異なる別の点はニュートロンのフェアリングだ。この機材は、ノーズコーンのように伝統的にロケットの先端に取り付けられ、内部のペイロードを保護する。歴史的には、フェアリングは分離されて地球に落下し、使い捨てになるものと一般に見なされている。もっとも、スペースXでは、修理調整して再利用するために海から回収している。

Rocket Labではその代わりに、4枚のフェアリングが1段目に装着され、機械的に開く(ロボットのような風変わりな花を想像して欲しい)。これもまた、複合素材の使用によって導かれた設計上の決断であるとベック氏は述べた。

画像クレジット:Rocket Lab

「通常、フェアリングを付けたままにしたり、それと似たようなことをしたりする質量上の余裕はない。フェアリングはできるだけ早く切り離さねばならない。そのような寄生質量を抱えている余裕はないからだ。しかし、寄生質量が本当に小さければ、この種のことができる」。

ニュートロンは、最大1万5000キログラムのペイロードを低地球軌道に運ぶことができ、ちょうどスペースXのFalcon 9(ファルコン9)やRelativity Space(レラティビティースペース)が開発中のTerran R(テランR)ロケットと競合する。

しかし、2段目はどうだろうか?

Rocket Labは、ペイロードのノーズコーンフェアリングを無くすだけでなく、2段目も徹底的に見直すことにした。従来のロケットの設計では、1段目とペイロードの間に2段目を入れる。しかし、ニュートロンでは、2段目は1段目の中に置かれる。ロケットがペイロードを展開するときになると「口を大きく開けたカバ」のようなフェアリングが開いて、2段目とペイロードの両方を軌道に送り出す。

Rocket Labは、有人宇宙飛行を含むさまざまなタイプのミッションにニュートロンを使うことを意図している。ベック氏によれば、有人打ち上げの場合は、ただフェアリングを取り外して、クルーを乗せたカプセルを打ち上げることができるということだ。

2段目は使い捨ての設計である。他のロケット企業は完全な再利用に取り組んでいるが、ベック氏によれば、2段目の再利用が理に適っているかどうか、まだ結論は出ていないとのことである。特に、再利用にともなう質量要件の増大と回復に関連する運用コストを考えるとそうである。

地球への帰還

2段目が展開されると、1段目は地球に帰還し、正確に発射台に戻る。つまり、洋上のはしけに降りるのではない。この選択もまた、運用コストを節約するものになる、とベック氏は言った。

ニュートロンは、Rocket Labが開発した7基の新しいエンジンを使って軌道に上がり、戻ってくる。Rocket LabはこのエンジンをArchimedes(アルキメデス)と呼んでいる。この低圧エンジンは液体酸素(LOX)とケロシンではなくLOXとメタンで作動する。ちょうど1段目を打ち上げ場に戻すという決断と同様、推進剤の選択はミッション間のターンアラウンド時間が最小になるように行われた。

「これまで、エンジンには通常膨大な修理調整が必要とされてきました。また、推進剤としてLOXとケロシンが選ばれることから、膨大な修理調整が必要です。ケロシンからは大量のすすとコークスが発生するんです。それで、メタンを使う決定をしました。メタンでエンジンを作動させることは可能で、そうすればエンジンはまったくクリーンで、燃焼後もまだピカピカです」とベック氏は語った。

ニュートロンは結局、米国内のどこかから打ち上げられるだろう。Rocket Labは、打ち上げ場と製造所の選定をめぐる競争のさなかにある。多くのことが行われてきたが、ニュートロン打ち上げの具体的な期日は不明だ。Rocket Labは以前、2024年だと言ったが、今回のアップデートでは言及がなかった。しかし、ベック氏によれば、それは意図的なものではないとのことだ。

「私たちは、2024年にニュートロンを発射台に載せ、2025年に企業顧客を宇宙へ送るつもりです。しかし、私たちはこれがロケットの計画であることも認めています。膨大な仕事ですが、懸命に努力を続けること、それが私たちの計画です」とベック氏は断言した。

ここで、Rocket Labのニュートロンに関するアップデートをもう一度視聴してみよう。

画像クレジット:Rocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Dragonfly)

インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

「低価格で便利な、選ばれるロケット」をミッションに、観測ロケット「MOMO」と超小型人工衛星打上げロケット「ZERO」を独自開発・製造しているロケット開発ベンチャー「インターステラテクノロジズ」は12月17日、シリーズDラウンドとして、第三者割当増資による総額17億7000万円の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、藤田誠氏(INCLUSIVE代表取締役社長)、INCLUSIVE、サイバーエージェント、シリアルインキュベート、セブンスターズキャピタル1号投資事業有限責任組合、サンコーインダストリー、中島瑞木氏(coly 代表取締役社長)、中島杏奈氏(coly 代表取締役副社長)、山本博士氏(スマレジ 代表取締役)

同社「ねじのロケット(MOMO7号機)」「TENGAロケット(MOMO6号機)」は2021年7月に2機連続で宇宙空間に到達。2019年5月の「宇宙品質にシフト MOMO3号機」を含め、3度の宇宙空間到達を達成した。国内民間単独での宇宙空間到達は唯一となっている。MOMOは実証から事業化の段階に入り、並行して2023年度の打上げを目指すZEROの開発を本格化させている。

今回調達した資金は、ZEROの開発をさらに加速させるための研究開発・設備投資・人材採用・材料費などにあてる。「誰もが宇宙に手が届く未来をつくる」というビジョンの実現に向け、今後も低価格、高頻度な宇宙輸送の観点から日本の宇宙産業をリードするとしている。

同社ZEROについては、一般的には複雑で高額となるエンジンシステムを独自設計するなどコア技術を自社で開発。設計から製造、試験・評価、打上げ運用までを自社で一気通貫させた国内唯一の開発体制、アビオニクス(電子装置)への民生品活用などにより、低価格で競争力のあるロケットを実現するという。

ZEROの燃料には低価格で性能が高く、環境にも優しい液化メタンを選定。エア・ウォーターと協力し、牧場から買い取ったメタンガスで製造した液化バイオメタンをロケットに使うことを計画している。インターステラテクノロジズが17.7億円のシリーズD調達、超小型人工衛星打上げロケットZEROの開発を加速

また東と南が海に開かれた世界有数の好立地、かつ本社から7.5kmの近距離に射場を有することも、世界的に見て大きなアドバンテージとしている。2021年1月には人工衛星開発の100%子会社「Our Stars」を設立しており、日本初の「ロケット×人工衛星」の垂直統合による、革新的な衛星サービスの開発を目指す。

 

ロケットエンジン分野における「インテル」的企業を目指すUrsa Major

ロケット打ち上げの分野には、ますます多くの参入が続いている。大手企業の多くは自社でロケットエンジンを製造しているが、宇宙関連スタートアップ企業のUrsa Major(ウルサ・メジャー)は、多くの新規打ち上げ事業者が自社でエンジンを製造するよりも外注したいと考えていることに賭けている。

SpaceX(スペースX)やBlue Origin(ブルー・オリジン)で推進機関エンジニアを務めてきたJoe Laurienti(ジョー・ラウリエンティ)氏が設立してから6年が経過したUrsa Majorは、事業規模を拡大する準備が整っている。そのために過去最大の資金調達をクローズしたばかりだ。8500万ドル(約96億5000万円)を集めたこのシリーズCラウンドは、主導したBlackRock(ブラックロック)が運用するファンドやアカウントに加え、XN、Alsop Louie(アルソップ・ルーイ)、Alpha Edison(アルファ・エジソン)、Dolby Family Ventures(ドルビー・ファミリー・ベンチャーズ)、KCK、Space Capital(スペース・キャピタル)、Explorer 1(エクスプローラー・ワン)、Harpoon Ventures(ハープーン・ベンチャーズ)などが参加した。

「私たちが市場に投入しようとしているものの多くは、その次のステップです」とラウリエンティ氏は説明する。「私たちは、この産業をより速いライフサイクルへと進化させたいと考えています」。

そのためにUrsa Majorは、迅速にエンジンを製造したいと考えており、2022年には週に1基、さらにその後は週に2基のペースでエンジンを製造することを目指している(現在は1人の従業員が1基のエンジンを組み立てるのに約5日、顧客への出荷準備には最大で数週間を要する)。同社はPhantom Space(ファントム・スペース)やStratolaunch(ストラトローンチ)など、いくつか民間企業の顧客を獲得し、政府と研究開発契約を結んでいるが、まだそのエンジンは宇宙に出ていない。

「宇宙には非常に多くのアクセスビリティが必要になるため、打ち上げにはかなり複雑なエコシステムが必要になるだろうということは、6年前からわかってました」と、ラウリエンティ氏はいう。

打ち上げコストが下がっていく一方で、宇宙への打ち上げサービスに対する需要は、この10年の間に増える一方であることが予想される。Fortune Business Insights(フォーチュン・ビジネス・インサイト)では、打ち上げ事業の世界市場規模が、2019年の126億7000万ドル(約1兆4400億円)から、2027年には最大261億6000万ドル(約2兆9700億円)に拡大すると予測している。

しかし、ロケットエンジンは最も開発が困難な装置の1つだ。Blue OriginがUnited Launch Alliance(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)のためにBE-4エンジンを開発した際の労苦や、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が従業員に宛てた「ラプター生産の危機」に関する手紙を見るだけでも、エンジン開発が簡単な仕事ではないことがわかる。

Ursa Majorは2つの製品を持っている。現在生産に入っている推力5000ポンドの液体酸素/ケロシンエンジン「Hadley(ハドレー)」と、その10倍の推力5万ポンドを発生する次世代エンジン「Ripley(リプリー)」だ。2022年には50基以上のHadleyエンジンを納入する予約を受けており、Ripleyエンジンは今後2、3年のうちに生産を開始すると、ラウリエンティ氏は語っている。

同氏はUrsa Majorを、常によりパワフルなプロセッサーを開発し、その専門知識をDell(デル)やLenovo(レノボ)などのブランドに供給しているIntel(インテル)のような企業に例えている。「私たちは、自分たちが技術開発の会社であるという考え方を好んでいます。現在ロケットを飛ばしている企業は、自分たちが10年前に設計したロケットと同じエンジンを飛ばすべきではなかったはずです。それが垂直統合のパラダイムなのです」。

同社はコロラド州にエンジンを製造する施設を持っているが、そのエンジンの大部分は3Dプリントで作られている。施設には3つのテストスタンドが併設されており、各々のエンジンは顧客に納品する前にそこでテストされる。

Ursa Majorは新たに調達した資金を使って、製造規模の拡大とさらなるエンジン開発に取りかかることを計画している。

画像クレジット:Ursa Major

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Astraが2022年1月に初めてフロリダ州ケープカナベラルからロケットの打ち上げを行うと発表

Astra(アストラ)はこれまで、初期のロケット数機をアラスカ州コディアックで打ち上げてきたが、今後は打ち上げ場所を拡大する予定だ。同社は米国時間12月6日朝、クライアントであるNASAから請け負ったミッションを、2022年1月にフロリダ州のケープ・カナベラルから打ち上げると発表した

この打ち上げは、ケープ・カナベラル宇宙軍基地の広大な敷地内にあるSpace Launch Complex 46 (スペース・ローンチ・コンプレックス46)で行われる予定だ。この施設は、かつてミサイル試験用基地として使われていたが、しばらく使用が停止されていた後、1997年に商業宇宙事業のために再開された。以降は2019年に実施された直近のミッションまで、散発的に使用されている。

Astraが計画している打ち上げは、同社にとってだけでなく、米国からの打ち上げに尽力している米宇宙軍のSpace Launch Delta 45(第45宇宙航空団)にとっても大きな価値がある。これまでの宇宙開発では、打ち上げに必要な承認には数年を要していたが、今回のミッションはわずか「数カ月」で承認を得ることができた。

Astraにとっては、打ち上げのために利用可能な選択肢が増えることになり、顧客のペイロードを届ける軌道の幅を広げるという意味でも重要だ。また、フロリダという土地は歴史的に天候が比較的安定していることもあり、打ち上げ場所として人気が高い。

Astraのコアバリュープロポジションの1つは、ロケットが小型であり、現場における打ち上げ業務に必要な装備も軽量であるため、最小限の人員と準備だけでさまざまな場所から効果的に打ち上げを展開できることだ。ゆえに、それを証明するためにも、打ち上げ場所を多様化することは重要になる。

AstraのBenjamin Lyon(ベンジャミン・リオン)氏とKelyn Brannon(ケリン・ブラノン)氏は、来週の「TC Sessions:Space 2021」に講演者として参加する予定なので、2022年の計画についてはそこでより詳しく知ることができるだろう。

画像クレジット:Astra / John Kraus

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

初の軌道打ち上げに成功したAstraが新型ロケットの試験に向けて本格的に動き出す

ロケット開発スタートアップから株式公開企業となったAstra Space(アストラ・スペース)は、米国時間11月19日の夜、同社初の軌道打ち上げに成功。11月22日朝に株式市場が開くと、株価が42%も急上昇した。しかし、本当の仕事が始まるのはこれからだ。商業運行の開始を目指す同社は、2022年の飛行試験に向けて新しい仕様のロケットを準備している。

アラスカ州コディアックのPacific Spaceport Complex(パシフィック・スペースポート・コンプレックス)から打ち上げられた「Rocket 3.3(ロケット3.3)」または「LV0007」ロケットは、米国宇宙軍の宇宙試験プログラムの一環であるペイロード輸送に成功した。これはAstraにとって、軌道に到達したごく少数の民間企業の仲間入りを果たす大きな躍進だ。

関連記事:小型ロケット専門のAstraが前回の失敗を乗り越え初の軌道到達に成功

「これは本当に難しく、1つ間違えるだけですべてが上手くいきません」と、Chris Kemp(クリス・ケンプ)CEOは、米国時間11月22日の会見で記者たちに語った。

Astraでは、機敏かつ反復的なアプローチでテストを行っており、打ち上げ用ロケット(シリアルナンバーによる命名規則がある)を迅速に製造し、比較的短期間で試験飛行を実施している。その結果、最近の「LV0006」の飛行試験では、エンジンの異常により高度約50kmに到達する前にロケットが横に流れてしまうなどの失敗も経験している。

「多くのことは、実際に飛行している状態でないとテストするのが非常に難しいのです」と、ケンプ氏は説明する。「この反復アプローチにより、私たちは記録的な速さで(軌道打ち上げを)達成できました。他の方法では、このスケジュールで達成できなかったと思います」。

今回の打ち上げに向けて、Astraではフライトシミュレーションからではなく、同社が打ち上げ施設を構えるアラスカ州コディアックの氷点下の自然環境から、多くの有益なデータを得たと、チーフエンジニアのBenjamin Lyon(ベンジャミン・ライオン)氏は語っている。

「このような氷点下の環境で運用したことは、今まで一度もありませんでした」と、ケンプ氏は付け加えた。

2人の幹部は、次のRocket 3.3である「LV0008」が打ち上げ可能な状態に近づいていることを認めたが、打ち上げを行う日時や場所などの詳細については、今後発表すると述べるに留まった。

しかし、LV0007の打ち上げが支障なく行われたため、今後の3.3バージョンの変更にはこれ以上あまり力を注がないだろうと、ケンプ氏は述べている。代わりに、Rocket 3.3で運べる50kgのペイロード容量よりも重いペイロードを搭載可能な新バージョン「Rocket 4.0」に集中するという。同社は2022年に、Rocket 4.0の試験飛行を開始する予定だ。

Astraが目指しているのは、この小型ロケットシステムを使って、ゆくゆくは毎日宇宙への打ち上げを行うことである。この目標が最終的に達成できるかどうかはまだわからないが、ケンプ氏によると打ち上げの需要は時が経つに連れて増す一方であるという。

「Astraが上場して以来、宇宙技術企業と呼ばれる会社が10社以上も上場しています」と、ケンプ氏は語る。「これによって各社は、宇宙船や衛星のさらなる開発や反復設計を行うためのリソースが得られます。ここ2、3年で見てきたように、需要は今後も増え続けることが予想されます。そこでAstraは間違いなく、正確なスケジュールで正確な軌道にペイロードを届けることができるようになる立場にあると思います」。

軌道到達。✅Astraは、太平洋標準時2021年11月19日(金)深夜、米国宇宙軍のための最初の商業軌道打ち上げを成功させました。

画像クレジット:John Kraus / Astra

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

NASAのリアル「アルマゲドン」ミッション、小惑星軌道変更「DART」が11月24日13時すぎに打ち上げ

NASA(米国航空宇宙局)にとって、ここ数年で最も刺激的で風変わりなミッションであるDouble Asteroid Redirection Test(DART、二重小惑星方向転換試験)は、地球から数百万km離れたところからやってくる巨大隕石に衝突し方向転換させるべく米国時間11月23日夜(日本時間11月24日13時すぎ)に打ち上げられる。飛行の様子はライブで見ることができるが、実際に大衝突が起きるまでにはしばらく時間がかかる。

関連記事:NASAが「アルマゲドン」のような小惑星軌道変更ミッションの打ち上げを11月23日に予定

DARTは、宇宙を旅する生物にとって、飛来する小惑星の経路を意図的に変える初めての試みだ。心配はいらない、今回のケースは我らの貴重な惑星に危害を加えるものではく、将来そんな危機が訪れた時に必要となる介入の理想的な実験台だ。

「惑星防衛組織はこの問題に、実際、数十年にわたって取り組んできました」とNASAのThomas Zurbuchen(トーマス・ザブーケン)科学局長が説明した。「一連のツールを合体させるときがきました。このミッションはあらゆる利害関係者にとってますます重要になっています。本プログラムへの支持が高まったのはわずかこの5年間に過ぎません。そして、標的はその5年以上前から存在しています。地上から成功を見届けることができるこの完璧な機会について人々は語り合っています。追加調査は必要ありません」。

問題の小惑星は、太陽系を新婚カップルのように旅する二重小惑星の小さい方だ。大きい方の小惑星Didymos(ディディモス)は直径約780mで惑星キラーというわけではないが、近所に落ちてほしくないことに変わりはない。そしてディディモスを周回しているのが今回の標的、Dimorphos(ディモルフォス)で、長辺170mほどのピーナツ型をしている。ちょうど自由の女神がボルダリングするくらいの大きさだ。

DARTがやろうとしているのは、ディモルフォスがディディモスの向こう側から回ってきたその時を狙って飛んで行き、できる限り強く衝突することだ。宇宙船は質量約550 kg で、新しいイオンエンジンが秒速約6.6kmという目から涙が出るような(宇宙船に目があって空気があったとすれば)速度で飛ぶことを考えると、相当に強い衝突だ(衝撃の大きさを計算するのは専門家にまかせておく)。

ディモルフォスの軌道が衝突後にどう変わるかを表す模式図(画像クレジット:NASA/JHUAPL)

ディモルフォスが爆発して当たり一面に破片を飛ばすようなことはない。むしろその正反対で、影響はほとんど目に見えない。しかし、衝撃はディディモスを周回する軌道周期にわずかな影響を与え、速度を落とし、強力な望遠鏡で観察できる程度に周期を拡大する。この変化を観察することによって、科学者らは対象物の質量を知り、重い物体に別の物体を衝突させるこの精緻な技術がどれほど効果的だったかを知ることができる。

ロケットに搭載される前の防護壁の中にいるDART(画像クレジット:NASA/Johns Hopkins APL/Ed Whitman)

それがわかれば、将来たとえば2倍の大きさの小惑星が衝突コースに現れたとき、何が必要になるかを情報に基づいて判断することができる。「この」大きさの力を「この」角度で「この」時間と距離(できる限り遠く、とメンバーの1人が私にいった)から加えることで、地球に衝突しないために必要なだけ惑星の方向を変えられる。DARTはこうした惑星防衛技術の基盤となるだろう。できれば必要にならないことを願うが、石油掘削員を集めて土壇場で小惑星を爆発させるよりも、準備を整えておいたほうがいいことには誰も異論はない。これは、TechCrunchの貴重な年長読者を掴んでおくための「アルマゲドン」への言及だ。

「私たちが今回本当にやりたいのは、迫りくる脅威のサイズに応じてインパクター(衝突体)のサイズを決める方法を知ることです。高い精度をもった衝突体モデルが必要なのです」とザブーケン氏は言った。1回のミッションでは足りないかもしれないし、次の衝突ミッションの計画はまだないが「別のタイプの小惑星に向けた追跡試験が計画されることは容易に想像できます」と同氏は語った。

衝突は比較的小さいかもしれないが、それでもワクワクする。そのために、NASAは衝突前にDARTから分離されるキューブサット、LICACube(リシアキューブ)を送り込んで近くから観察し、宇宙の山にアタックするところのデータと大衆受けするビデオを記録する。それは一陣の埃か瓦礫かソーラーパネルの破片のようなものかもしれないが、見るまでわからない。小惑星には何かが暮らしているかもしれない。もしそうであっても、1094万kmの彼方のことなので差し迫った危険はない。いずれにせよ、小惑星に宇宙船をぶつけるところをカメラに収め「ない」ことなど想像できない。

「これはリスクも衝撃も大きい探査です」とザブーケンしがキューブサットについて言った。キューブサットは衝突の瞬間を綿密に監視するための理想的な位置に置かれる。「これがなくても成功を確認することはできますが、あの映画を見たいんですよ、そりゃあ」。

DARTはSpaceX(スペースエックス)のFalcon 9(ファルコン・ナイン)ロケットを使って、米国太平洋標準時11月23日午後10時20分(日本時間11月24日13時20分)頃からの打ち上げ予定で、ヴァンデンバーグ空軍基地の天候は最新予報で90%良好だ。打ち上げ後、宇宙船がディモルフォスと破壊ランデブーを行うまでには1年近くかかる。衝突は2022年9月末に起こる見込みだが、正確な時間はさまざまな要因が確定するまでわからない。

打ち上げ前中継はNASA Liveで1日中行われるが、直前準備とカウントダウンは午後7時(日本時間24日正午)頃が見どころだ。こちらのリンクから見ることができる。

画像クレジット:NASA/JHUAPL

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Rocket Labは2022年にヘリコプターでElectronロケットブースターの空中キャッチを目指す

Rocket Labが3回目のブースター回収に成功したことを受けて、CEOのPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、次のステップとして、2022年前半にヘリコプターを使ってブースターを空中でキャッチすることを目指していると語った。

Rocket Labは先に、地理空間画像衛星「BlackSky」2基を低地球軌道に運んだあとで洋上に着水したElectron打ち上げ機の第1段を回収した。そのミッションの間、同社はヘリコプターを着水領域の近くに配置したが、その目的は偵察だけだった。一貫して、同社の再利用化計画の究極の目標はブースターを空中でキャッチすることであり、それが今や近づいている。

ベック氏は米国時間11月23日の記者との電話会見で現在からそれまでの間に行われる主な作業は、ヘリコプターの準備だと述べている。空中キャッチに使われる航空機は、先の打ち上げ時に存在したものよりもかなり重く、積載量もかなり多いものになる(第1段の重量は約980kg)。

「また、非常に忙しいスケジュールの中で、フライトのスケジュールを組むことも重要な仕事のひとつです。最優先事項は、常にお客様を時間どおりにお届けすることです。それが次の課題ですが、2022年前半、もしくは可能な限り早くフライトを実現したいと考えています」。

同社は、現在から空中回収を試みるまでの間に、いくつかの商業飛行を計画しているが、これらは回収を目的としないミッションだ。Rocket Labにとって次の大きな学習のチャンスとなるのは、ブースターをキャッチして濡れていない状態で工場に戻すことができたときだとベック氏は付け加えた。

2022年に向けて、ベック氏はRocket Labにとって忙しい年になると予想している。その理由の1つは、ニュージーランドで新型コロナウイルスの規制が続いているため、2021年の同社打ち上げ回数が制限されていたからだ。来年の打ち上げ数については言及していないが、2022年はこれまでで最も忙しい年になるだろうという。

画像クレジット:Rocket Lab

原文

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ブルーオリジン、初の親子を含む乗客6人の宇宙飛行を12月9日に設定

Blue Origin(ブルーオリジン)は、次の有人宇宙飛行を発表した。米国時間12月9日に6人を乗せて実施する。同社が再使用可能なロケットNew Shepardとカプセルに最大定員となる乗客6人を乗せて飛行するのは今回が初めてだ。搭乗するのは、「Good Morning America(グッドモーニング・アメリカ)」の共同司会者であるMichael Strahan(マイケル・ストレイハン)氏、ロケットの名前の由来であるAlan Shepard(アラン・シェパード)氏の娘Laura Shepard Churchley(ローラ・シェパード・チャーチリー)氏、Voyager SpaceのCEOであるDylan Taylor(ディラン・テイラー)氏、Dick Holdingsの業務執行社員Evan Dick(エバン・ディック)氏、そして父子であるLane Bess(レイン・ベス)氏とCameron Bess(キャメロン・ベス)氏だ。

Blue Originは、有人宇宙飛行ミッションで歴史的な「初」体験を好む傾向にあるが、今回は親子が一緒に宇宙に行くのは初となる。Bess Venturesのプリンシパルで創業者のレイン・ベス氏と、コンテンツクリエイターでソフトウェア開発者であるキャメロン・ベス氏がともに搭乗する。

上段左から右へ、レイン・ベス氏、 キャメロン・ベス氏、エバン・ディック氏。下段左から右へ、ディラン・テイラー氏、ローラ・シェパード・チャーチリー氏、マイケル・ストレイハン氏

今回の有人宇宙飛行は、Blue Originにとって3回目であり、また2021年3回目のものでもある。New Shepardはこれまでに、各回とも4人が乗り込んだ有人宇宙飛行を2回実施した。最初の打ち上げにはBlue OriginとAmazonの創業者であるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏も搭乗し、10月にはWilliam Shatner(ウィリアム・シャトナー)氏をはじめ、Blue OriginのAudrey Powers(オードリー・パワーズ)氏、DCVCのパートナーであるChris Boshuizen(クリス・ボシュイゼン)氏、Medidata共同創業者であるGlen de Vries(グレン・デ・ヴリーズ)氏を宇宙に送った。デ・ヴリーズ氏は宇宙飛行の数週間後に飛行機事故で悲劇的に亡くなった。

Blue Originがこうしたペースで打ち上げを行っていることは、特に搭乗券が高価なことを考えると、ものすごいことだ。6人の搭乗となったことで、Blue Originはおそらく利益率を向上させ、その結果、この後に続く人たちにはもう少し手頃価格の座席が提供されるかもしれないが、それでも非常に贅沢なものであることは間違いない。

Blue OriginのNew Shepardは、乗客を宇宙の端まで連れて行き、準軌道上の滞在となるが、数分間の無重力状態と比類のない地球の眺めを提供する。その後、カプセルはパラシュートで減速して西テキサスの砂漠に着陸する。

画像クレジット:Blue Origin

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

小型ロケット専門のAstraが前回の失敗を乗り越え初の軌道到達に成功

軌道に到達した少数の(しかし増えつつある)ロケット打ち上げ会社に、新たに数えられるようになったスタートアップがある。Astra(アストラ)だ。アラメダに拠点を置くこのロケットスタートアップは、現地時間11月19日午後9時過ぎに、アラスカ州コディアックにある発射場からロケットを離陸させ、成功を収めた。

Astraの「LV0007」ミッションは、8月に行われた試みに続くものだ。前回は、離陸直後に短いホバリングと横方向へのストゥレイフ運動という不安定なスタートを切り、軌道に到達することなく終了した。その後、同社は失敗の原因(エンジンの早期停止)を調査し、LV0007の打ち上げを2021年10月末に設定した。しかし、天候の影響で打ち上げは延期された。

今回の打上ちげと初の軌道到達の1年弱前に、同社はRocket 3.2の試験打上げで宇宙に到達した。そのミッションでは軌道の手前までいき、Astraのチームを含むすべての人を驚かせた。

迅速な対応と大量生産というAstraのロケット産業へのアプローチは、まだ満たされていないニッチな分野に適している。SpaceX(スペースエックス)のFalcon 9のような大型ロケットのライドシェアモデルに頼ったり、Rocket Lab(ロケットラボ)のElectronのようなものに比較的高い価格を支払ったりするのではなく、より多くの企業が専用のミッションで貨物を宇宙に運ぶことができるような価格設定で、小さなペイロードのロケットを製造することができる、とAstraは主張している。

AstraのチーフエンジニアであるBenjamin Lyon(ベンジャミン・ライオン)氏は、2021年のTC SessionsのSpace部門に参加する。今回のマイルストーンとなる成功について、話しが聞けるはずだ。

画像クレジット:Astra / John Kraus

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi