電子レンジで温めるだけの植物由来食品を宅配するAllplantsが59億円を調達

ベジタリアン向け食事宅配サービスを提供するAllplants(オールプランツ)は、Draper EspritがリードするシリーズBラウンドで3800万ポンド(約59億円)を調達した。英国の消費者に、家で温める、植物由来のおいしい食事を提供することを目指す。

今回のシリーズBラウンドの規模は、ヨーロッパの植物由来食品の企業としては過去最大とのことだ。

ロンドンを拠点とするAllplantsは、2018年にシリーズAで750万ドル(約8億5500万円)を、またエクイティ・クラウドファンディング・プラットフォームのSeedrsを通じても資金を調達している。

同社によると、2017年の創業以来、収益は毎年2倍以上で推移しているという。

シリーズBに参加した他の新規投資家には「パーパス・ドリブン」の消費財ファンドThe Craftory、シリコンバレーを拠点とするTriplePoint Capitalに加え、イングランドの国際的なサッカー選手であるChris Smalling(クリス・スモーリング)氏とKieran Gibbs(キーラン・ギブス)氏、英国の独立系スナック菓子会社Proper Snacksの創業者でMBE(大英勲章第5位)のCassandra Stavrou(カサンドラ・スタブロウ)氏などがいる。

また、既存の投資家からFelix Capital(オートミールベースの代替ミルク「Oatly」を開発したベンチャー企業)とOctopus Venturesも参加した。

近年、欧米では、食肉生産にともなう気候変動への懸念が高まり、植物由来の代替品への関心が高まっている。

さまざまなスタートアップが肉に代わる便利な製品を幅広く開発してきた。Allplantsのような消費者に直接届ける食事や、Heuraのような植物由来の肉代替製品などの選択肢がそうだ。後者の製品はAllplantsの食品の原材料になるかもしれない。

関連記事:スペインの100%植物由来チキンのスタートアップ「Heura」が英国に進出

Alplantsは「植物由来の食品に興味がある人々」、つまりフレキシタリアンの消費者市場が急速に拡大していることが同社の成長要因だと分析する。同社によると、現在、英国だけで100億ポンド(約1兆6000億円)、先進国市場では年間1000億ポンド(約16兆円)の市場規模があるという。今のところ英国のみの展開だが、同社のウェブサイトには、世界進出も視野に入れているとある。

今回の資金は、ロンドン北部のウォルサムストウにある植物由来食品のキッチンを現在の6倍に拡張するために使用するという。急増する国内需要に対応する。

現在、同社のキッチンでは140人のシェフが24時間体制で働く。冷凍された状態で消費者に届けられるため、従来の電子レンジ食品と同様、食べる前にオーブンや電子レンジで再加熱する必要がある。

現在のメニューは、朝食、昼食、スナック、おやつ、夕食をカバーし、カレーやチリ、パスタやリゾットなど、さまざまな種類の世界の料理を提供している。肉の代替品としてはビーガンのタンパク源となる、ビーガンチーズ、豆腐、豆、ビーガンチョリソーなどが含まれている。

ユーザーは、宅配用に用意された料理の中から、1人分または2人分の量を選び、6食入りの箱を作る。

また、好みに合わせて「肉の代替品」のみの食事(いつも肉の塊がお皿にのっていることに慣れている人向け)や「最もチーズの効いた」料理(100%ビーガンのチーズを使用)のセレクションなど、バラエティに富むセットを販売している。

同社は、肉を使った食事を植物由来の食品に変えることが、環境への負荷を減らす最も効果的な方法の1つだと指摘する。植物由来の食事を週に1日増やすだけで、英国の平均的な消費者の食品からの二酸化炭素排出量を年間10%以上削減できるとしている。

さらに、シリーズBにおける計画として、他の販売チャネルへ迅速に進出する能力を構築するという。つまり長期的には、スーパーマーケットなどの小売店を含めたマルチチャネルでの販売を視野に入れているようだ。

今回の資金調達は、チームの大幅な拡大にも充てられる。料理学校で研修を受けたシェフをはじめ、オペレーション、イノベーション、マーケティング、テクノロジーなど、ビジネスのあらゆる機能に関して採用を予定している。

また、シリーズBの計画には、拡大する顧客層の好みに合わせて食事の範囲を広げることや、より幅広いカテゴリーの製品を開発することなどが含まれる。

Allplantsの創業者兼CEOであるJonathan Petrides(ジョナサン・ペトリデス)氏は、声明の中で次のように述べた。「我々が料理に関わり始めてからの5年間で、植物由来食品の需要が爆発的に増加していることを実感しています。我々には、このムーブメントをより多くの人々のキッチンに届けるためのエキサイティングな計画が多数あり、今回の投資はそれを可能にしてくれます」。

「食品の選択は非常に個人的なものです。ですから、品質と味は常に我々の最優先事項です。それが我々のすべての活動の原動力であり、顧客が妥協することなく、より多くの植物を食生活に取り入れることを可能にしています」とペトリデス氏は付け加えた。「我々は今、より多くのおいしいレシピや製品を想像して創造し、そして提供することができます。そして最終的には、植物由来の生活が我々の地球の未来にもたらす変革を加速させることができるのです」。

Draper EspritのパートナーであるNicola McClafferty(ニコラ・マクラファティ)氏は投資にともなう声明で次のように述べた。「今回の投資は、Draper Espritにとって非常にエキサイティングです。Allplantsは、今日の食品消費において最も急速に成長している複数の分野が交差する場所で、ユニークな位置にいます。消費者にとって非常に便利な方法で、味、持続性、栄養に配慮しながら高品質の植物性食品を提供しています」。

「ペトリデス氏と彼のチームは、非常に明確な価値観を持ち、信じられないほど力強い成長と忠実な顧客ベースを持ちあわせた、すばらしいブランドを確立しています。Allplantsは、消費者への直販ビジネスを拡大すると同時に、英国内および海外の新しいチャネルにも進出する可能性を秘めています。植物由来の食品に興味がある消費者に栄養、味、利便性を提供する、世界的なブランドになれると信じています」。

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

アマゾンが米国外で初の4-Star Storeをオープン、評価4つ星以上の商品が並ぶ

Amazon(アマゾン)は、ロンドン中心部の南東に位置するモール、ブルーウォーターに4-Star Store(フォースターストア)をオープンした。このストアは米国外で初の4-Star Storeというだけでなく、同社が英国で初めて、非食品・非生鮮品を販売する店舗でもある。ニューヨークや米国の他の都市にあるAmazonの4-Star Storeと同様に、ブルーウォーターの店舗では、4つ星以上の評価を受けた商品や、eコマース大手の英国サイトでトップセラーになっている商品、トレンドになっている商品を販売する。

Amazonがオンラインで販売している評価の高い商品をすべて取り扱うことはできないため、店舗での品揃えは厳選されたものになるが、家電、玩具、ゲーム、書籍、キッチン、ホームなどのトップカテゴリーの商品を取り扱う予定だ。また、Kindle電子書籍リーダー、Fireタブレット、Echoスピーカーなどの自社製品だけでなく、英国内の中小企業の製品も販売する予定だ。

このストアには、ウェブサイトの特定のセクションに対応したセクションが設けられており、例えば「Most Wished For」では「欲しい物リスト」に登録された商品が紹介されている。また「Trending in Bluewater」では、地元のカスタマーが購入した商品が紹介され「Most Gifted」では、ギフトとして注文の多かった商品が紹介される。Amazonは、カスタマーのフィードバックや最新のトレンドに合わせて、定期的に商品を入れ替えていくとしている。

ストア内の商品には、商品の価格、平均星評価、カスタマーレビューの数が記載されたデジタルタグが付けられる。また、プライム会員でなくても、そのストアで買い物はできる。ただし、この店舗には、ロンドンのFresh食料品店のようなAmazonのJust Walk Out技術は搭載されない。Just Walk Outは、買い物客が棚から必要なものを手に取り、有人レジやセルフレジで支払いをすることなく、そのまま外に出られるというものだ。しかし、Amazonの英国サイトから購入し、翌日に店舗で注文品を受け取ることはできる。

編集部注:本記事の初出はEngadget。執筆者のMariella Moon(マリエラ・ムーン)氏はEngadgetのアソシエートエディター。

画像クレジット:Bluewater

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(文:Mariella Moon、翻訳:Yuta Kaminishi)

Appleマップが3Dビューを展開、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコで

Apple(アップル)は、「マップ」アプリ内で、ロンドン、ロサンゼルス、ニューヨーク、サンフランシスコなど、多くの都市に3Dマップを導入する。iOS 15で提供されるこの体験は、市場をリードするGoogleマップとの競争力を高めるためにAppleのマッピングプラットフォームに数年にわたって行われた投資の結果だ。このアップデートには、現在主要な市場に導入されているような3Dマップの追加だけでなく、全体的により詳細な地図、改善された交通機関の機能、AR表示モードなども含まれている。

関連記事:AppleマップがiOS 15アップグレードでより詳細な地図、交通機関ナビ、ARビューなど追加

これらの機能の多くは、充実した機能を得るためまず米国および世界の主要都市で導入され、時間をかけて展開してきた。例えばARビューイングは、2021年に入ってから一部の都市で開始された

画像クレジット:Apple

Appleによると、3Dマップでは、ユーザーは近隣地域、商業地区、マリーナ、ビルなどの詳細を見ることができ、標高の詳細、新しい道路ラベル、さらにはカスタムデザインされたランドマークも表示されるという。

例えば、サンフランシスコのコイトタワー、ロサンゼルスのドジャー・スタジアム、ニューヨークの自由の女神、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールなど、有名なスポットのレンダリング画像がマップに表示され、今後さらに多くのランドマークが追加される予定だ。

画像クレジット:Apple

2021年後半には、フィラデルフィア、サンディエゴ、ワシントンD.C.でこの種の3Dマップが利用できるようになるとAppleは述べている。そして2022年には、モントリオール、トロント、バンクーバーでも利用できるようになる。

Appleは、より明確に表示されるターンレーン、中央分離帯、バス・タクシー用レーン、横断歩道などによって、道路レベルでのナビゲーションも強化している。これらは3D表示モードで表示されるため、交通状況に応じて最適な車線を選択したり、より良いルート計画を立てたりすることが容易になる。また、Googleマップと同様に、現在の道路状況に基づいた到着予定時刻も表示される。Appleは、これまで2021年のリリースが発表されていたこの新しいナビゲーションが、具体的な期限はなしに2021年後半にCarPlayに搭載される予定であると述べた。

画像クレジット:Apple

同様に、2021年初めに発表されていた他の地図のメジャーアップデートも現在展開中だ。これには、Citymapperのような、交通機関を利用する人たちに好まれるサードパーティのアプリケーションに対して、Appleマップがより競争力を持つように設計された機能が含まれている。近くの交通機関の駅が画面上部に大きく表示され、ユーザーはお気に入りの路線をマップにピン留めして簡単にアクセスできるようになった。また、Apple Watchでもできるように、路線を選択すると、降りる時間になるとマップが自動的に通知する。

Appleマップは、拡張現実(AR)を利用したステップ・バイ・ステップの案内で、より臨場感のある徒歩ルート案内を提供する。これは、ユーザーが携帯電話をかざして周辺の建物をスキャンすると、マップがより正確な位置を生成し、より詳細な案内を提供するというものだ。この機能は、2021年に入ってから一部の市場で提供されている。

iOS 15のユーザーは、新しい3D地球儀を見ることができる。また、マップの「ガイドを詳しく見る」ボタンをタップすると、Time Out、The Washington Post、The National Park Foundation、Complex、The Infatuationなどが提供する厳選されたガイドにアクセスすることがでる。これらのガイドは世界中の都市での観光ガイドを提案する。また、ユーザー自身がガイドを作成し、友人や家族と共有することもできる。

画像クレジット:Apple

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

巧妙化する金融犯罪と戦うAIベースのビッグデータ分析ツール開発Quantexaが約168億円を調達

金融犯罪の巧妙化が進むにつれて、それと戦うために使用されるツールも高度化している。Quantexaは、マネーロンダリングや詐欺などの違法行為を検知して阻止するAIベースのソリューションを開発してきた興味深いスタートアップだが、このほど1億5300万ドル(約168億円)の成長ラウンドを獲得した。この資金調達は、金融分野での事業拡大の継続と、同社のツールをより広範なコンテキストに展開すること、つまりすべての顧客データとその他のデータを取り巻く点を結びつけていくことに充てられる。

「当社は金融サービスに止まらない多様化を進めており、政府機関や、ヘルスケア、電気通信、保険業界と協働しています」と創業者兼CEOのVishal Marria(ヴィシャール・マルリア)氏はインタビューで語った。「そのことは非常に大きな意義を醸成しています。より大規模なデジタル変革の一環として、市場がコンテキストに基づく意思決定インテリジェンスに取り組んできたことを考えると、その流れは必然的なものでした」。

このシリーズDでは、ロンドンに拠点を置く同スタートアップの価値は8億〜9億ドル(約880億~990億円)と評価されている。これはQuantexaが2020年、サブスクリプション収入を108%成長させたことに続くものだ。

Warburg Pincusがこのラウンドを主導し、既存の支援者であるDawn Capital、AlbionVC、Evolution Equity Partners(サイバーセキュリティ専門のVC)、HSBC、ABN AMRO Ventures、British Patient Capitalも参加した。2020年7月のシリーズCでのQuantexaの評価額は、2億〜3億ドル(約220億~330億円)の間だった。これまでの調達総額は2億4000万ドル(約264億円)になる。

マルリア氏はErnst & Youngでディレクターを務め、マネーロンダリングなどの不正行為への対策についてクライアントを支援する役割を担っていた。Quantexaは、マルリア氏がそのときに特定した市場のギャップを出発点としている。同氏が認識したのは、潜在的な詐欺、マネーロンダリングなどの違法行為に関する有意義なインサイトを迅速かつ正確に得ることができる、真に有用なシステムが市場に存在しないということだった。企業の内部情報と外部公開データの照合・解析を通じて、利用可能なデータの世界を効率的に活用する、インサイトの導出に必要なツールが整備されていなかった。

Quantexaの機械学習システムは、この課題に対して典型的なビッグデータの問題としてアプローチしている。人間が自分で解析するにはデータが多すぎるが、特定の目的のために大量のデータを処理できるAIアルゴリズムにとっては小さな仕事だ。

Quantexaのいわゆる「Contextual Decision Intelligence(コンテキストに基づく意思決定インテリジェンス)」モデル(Quantexaという名前は「quantum」と「context」を想起することを意図している)は当初、金融サービス向けに特化して開発された。リスクとコンプライアンスの評価と金融犯罪行為の特定を行うAIツールを用いて、Quantexaが有するAccenture、Deloitte、Microsoft、Googleといったパートナーとのリレーションシップを活用し、より多くのデータギャップを埋めていくものだ。

同社のソフトウェア(データではなくこのソフトウェアが企業に販売され、企業独自のデータセットに使用される)は、単一のエンゲージメントで最大600億件のレコードを処理した実績があるという。処理を経た後、ユーザーが異なるエンティティ間の関係などをよりよく理解できるように、わかりやすいグラフやその他の形式でインサイトが提示される。

マルリア氏によると、現在、同社の事業の約60%を金融サービス企業が占めており、顧客には英国とオーストラリアの銀行上位10行のうち7行、北米の金融機関上位14行のうち6行が含まれているという。(このリストには、戦略的な支援を行うHSBCの他、Standard Chartered BankとDanske Bankも名を連ねている)。

しかし同時に、Quantexaの他のセクターへの進出は一層顕著な伸びを見せている。より広範なデータセットに大きく依存するようになった市場の大幅なシフト、近年における各企業のシステム更新、そして過去1年間でオンラインアクティビティが「唯一の」活動になることが多くなったという事実がそれを加速させている。

「(2007年の)金融危機は、金融サービス企業がよりプロアクティブになるための転換点でした。そして、パンデミックは、ヘルスケアなどの他のセクターがよりプロアクティブになる方法を模索する転換点となっています」とマルリア氏はいう。「その実現には、より多くのデータとインサイトが必要です」。

そのため、Quantexaは特にこの1年で、ヘルスケア、保険、政府機関(例えば税務コンプライアンス)、電気通信 / 通信手段など、金融犯罪に直面している他のバーティカルへの拡張を進めてきた。加えて、KYC(顧客確認)コンプライアンスに向けたより完全な顧客プロファイルの構築、カスタマイズされた製品の提供など、さらに多くのユースケースをカバーするための多様化を続けている。政府機関と協働し、人身売買の追跡や特定のような、違法行為の他の分野にも同社のソフトウェアが適用される見通しだ。

Quantexaは、70にわたる市場に「数千」もの顧客を抱えている。金融犯罪とより全般的なKYCの両方を含むこの種のサービスの市場規模は、年間約1140億ドル(約12兆6000億円)に上るとのIDCの予測を、Quantexaは引き合いに出している。

「Quantexaが独自に開発した技術により、クライアントは個人や組織の単一のビューを生成して、グラフネットワーク解析で可視化し、最先端のAI技術でスケールすることができます」とWarburg Pincusのヨーロッパ共同責任者であるAdarsh Sarma(アダーシュ・サルマ)医学博士は声明で述べている。「このケイパビリティはすでに、世界最大の金融機関や政府機関によるKYC、AML(マネーロンダリング対策)、不正行為プロセスの運営方法に革命的な変化をもたらしており、業界における重要性を増しつつある大きなギャップに対処しています。これまでの同社の目覚ましい成長は、利用可能な市場全体における計り知れない価値の提案と、新規セクターや地域への継続的な拡大を反映しています」。

興味深いことに、同社は大手テック企業などから買収のターゲットとしてアプローチを受けていることを、マルリア氏は筆者に認めた。それほど驚くことではない。しかし、長期的には、マルリア氏の視野の先には自立した未来があり、Quantexaが独自の成長を続けることを念頭に置いているという。

「確かに、大手テック企業などに買収されることは十分あり得ますが、私はIPOに向けて準備を進めています」とマルリア氏は語った。

画像クレジット:piranka / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

Index Venturesが従業員のストックオプションを計算するウェブアプリを発表

スタートアップにとって、ストックオプションの提供は非常に重要だ。ストックオプションがあれば、すでに大企業となったテック企業が提示できるような高い給与を払えないスタートアップでも、優秀な人材を入社させることができる。

だが、競争力のあるストックオプションプランを開発するには複雑な計算が必要だ。幸いなことに、ロンドンに拠点を置くベンチャー企業のIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)は現地時間9月15日、計算に使える手軽なウェブアプリと、欧州と米国のスタートアップが重要な従業員にどのような報酬を与えているかについて、新しい調査結果を発表した。

OptionPlan Seedは、シードステージの創業者がESOP(従業員自社株保有制度)を設計するためのウェブアプリだ。これは、Index Venturesが実施したシードステージ企業のオプション付与に関する分析がベースになっている。同社は1000社以上のスタートアップから得たデータを分析に使った。

このウェブアプリは、さまざまなポジションを網羅し、6段階の配分ベンチマークがあり、各チームメンバーの金銭的なアップサイド(税金を含む)を計算し、米国、カナダ、イスラエル、豪州、欧州20カ国の政策の枠組みに応じて調整を行う。

これは、Index Venturesが数年前に発表したシリーズA企業向けの「OptionPlan」をベースにしている。

Index Venturesによると、新ツールのための調査の結果、シードステージ企業の従業員のほぼ全員がストックオプションを受け取っていることがわかったという。だが、米国ではシードステージのスタートアップの技術系従業員の97%、技術系以外の若手の80%に達しているのに対し、欧州では技術系の75%しかオプションを受け取っておらず、技術系以外の若手では60%にとどまっている。

とはいえ、Index Venturesによると、ストックオプション付与の規模は拡大している。特に「技術的なDNAを多く持ち、ベイエリア志向」のスタートアップで増加している。一方、電子商取引やコンテンツなど、技術的要素が少ない分野では、付与額はあまり変化していない。一方、ここ数年でシードのバリエーションが上昇しているため、付与の規模は全体的として拡大し続けている。

Index Venturesは、シードステージの企業でESOPの割合が上昇していることを発見した。これは、採用のスピードが速く、従業員1人当たりの付与割合が大きくなっているためだ。同社は、シードステージでのESOPの割合を、従来の10%ではなく、12.5%または15%に設定することを推奨している。これは、スタッフの維持と誘致が目的だ。

また、今回の調査では、欧米でシード時の資金調達額が2倍になった一方、評価額は2.5倍になったことがわかった。

さらに、シードステージの給与は「劇的に上昇」しており、平均給与は60%以上も上昇した。米国のシードステージのスタートアップ企業におけるシニア技術職の給与は現在、平均18万5000ドル(約2035万円)で、3年間で68%増加した。22万ドル(約2420万円)を超える者もいる。だが欧州で給与の上昇が最も著しいのは、技術系・非技術系を問わず若手従業員だ。

しかし、Index Venturesの調査によると「欧州の技術系人材の間で、依然として報酬格差があり」、欧州のシードステージ企業の技術系社員の平均給与は、米国に比べ40〜50%低いという。同社の調べでは、この格差は2018年以降拡大しているという。「技術系以外のポジションでは格差が縮小しているにもかかわらず」だ。

また、欧州では、ロンドンのような高コストの拠点と、ブカレストやワルシャワのような低コストの都市があることから、給与のばらつきが「米国よりもはるかに大きい」ことがわかった。

人材獲得競争は今やグローバルなものだ。技術系人材の米国との給与格差は20〜25%に縮小している。

Index Venturesは「欧州の野心的なシードステージの創業者は、特に技術職において、採用する人材の水準を高めるべきだ」と結論づけている。また、給与面で競争力を高めるためには、より多くの資金を調達して、より経験豊富で高い能力を持った候補者を狙うべきだとしている。

画像クレジット:OptionPlan web app

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

現在も成長する石油化学分野でバイオベースの代替品を創造するFabricNanoが13.7億円を調達

DNAを「ウェハー」と表現するのを耳にすることはあまりないが、セルフリーのバイオ製造企業FabricNanoの創業者であるGrant Aarons(グラント・アーロンズ)氏は、自社の主要製品を説明する際にアナロジー的な表現としてこれを使用している。このDNAが、化石燃料とその副産物に目下依存しながら成長を続ける世界の石油化学産業に資することを、同社は期待している。

FabricNanoはロンドンを拠点とする会社で、2018年にテクノロジースタートアップアクセラレーターのEntrepreneur Firstによって設立された。FabricNanoは、セルフリーのバイオ製造における創案に注力している。バイオ製造は、単純に、細胞または微生物内の酵素を使用して最終産物を産生する。FabricNanoのアプローチは、その酵素をDNAウェハー上に置くことだ(このプロセスは「酵素固定化」と呼ばれる)。

アーロンズ氏によると、これらの酵素は、薬品やプラスチックの製造に使用されるような化学物質を、細胞ベースのシステムに比べて高効率で生成できるという。化学物質の大量生産に現在使用されている化石燃料に依存することはない。同社の核となるのはDNAの骨格で、反応をスケールアップするのに十分な酵素を収容できる。

FabricNanoは先にシリーズAで1250万ドル(13億7000万円)を調達したことを発表した。このラウンドはAtomicoが主導し、Twitterの共同創業者であるBiz Stone(ビズ・ストーン)氏、女優で国連のSustainability Ambassadorを務めるEmma Watson(エマ・ワトソン)氏、そしてBayerの元CEOであるAlexander Moscho(アレクサンダー・モショー)氏が出資した。

「会社に適したエンジェル投資家を積極的に獲得しようと努めました」とアーロンズ氏。「また、テクノロジー界のエンジェル投資家にも目を向けました。つまるところ、私たちが作っているものは、製造業者にとって有効なテクノロジーとなるからです」。

「バイオマスプラスチックやバイオマスモノマーを十分な規模で製造することを意図してはいません」と同氏は続ける。「(製造業者が)十分な低コストで大量生産できるテクノロジーを提供することを私たちは目指しています。それは、バイオプラスチックのような低価額の分子を生産するための、スケーラブルで持続可能な方法です」。

FabricNanoのアイデンティティの一端は、成長する石油化学分野において、バイオベースの代替品を創造することにかかっている。

現在、世界の石油需要の約14%がプラスチックの製造に向けられている。国際エネルギー機関(International Energy Agency)による2018年の予測では、プラスチックやその他の材料の製造に利用し得る石油化学製品、すなわち石油とガスから得られる化学物質は、2050年までに世界の石油需要の約半分を占めると推定されている。

石油化学産業の主要な最終製品であるプラスチックは、石油やエタンを加熱して製造されることや、廃棄物として焼却されることなどにより、ライフサイクルのほぼすべての段階で気候変動に影響を及ぼしている。プラスチックの生産と利用が現在のペースで続けば、2030年までに排出量は1.34ギガトン(石炭火力発電所295基分)に達すると、国際環境法センター(Center for International Environmental Law)は予測している。

もちろん、プラスチックの生産量を増やせば、それがどのように生産されたものであっても、それ自体が生態系の破壊につながる(科学者たちは、2040年までに「未使用」プラスチックの生産を段階的に廃止するよう求めている)。

また「バイオプラスチック」という漠然とした用語は、生分解性プラスチックから、化石燃料を使わずに作られたプラスチック(生分解性でないものも含む)まで、あらゆるものを指すことができる。それゆえ「環境に優しいプラスチックの世界」をグリーンウォッシュに向かいやすくしている。

残された問いは、バイオ製造が石油化学による気候変動への影響をどの程度減らすことができるかということである。現時点ではそれは明らかではない。アーロンズ氏は、セルフリー製造が持つ強みの一端が、プラスチックなどの汎用化学品の製造に石油(あるいは米国ではエタノール)を使うことから業界を遠ざける可能性があると主張する。

「私たちが真に検討しているのは、コモディティセクターの大部分を掌握し、石油ベースの製品の多くを石油から切り離してバイオの領域に引き込むことにつながる、新しいテクノロジーです」とアーロンズ氏は語る。

とはいえ、プラスチック生産の現状には明らかな懸案事項も存在している。既存の石油化学産業に取って代わるだけの拡張性とコスト効率を実証できるなら、代替品を生み出す余地は残されるだろう。

セルフリー製造がすでに順調に拡大している証拠がいくつかある。例えば、高果糖コーンシロップはコーンスターチが酵素によってブドウ糖に分解されるときに生成される。最終段階にはグルコースイソメラーゼという酵素が必要である。アーロンズ氏は、高果糖コーンシロップ製造を「世界最大のセルフリー化」と評している。

そのコンセプトを踏まえて、FabricNanoはより多くの化学物質を提供しようとしている。Fabric Nanoは現時点ですでに「1,3-プロパンジオール」のような化学物質を作ることができる。1,3-プロパンジオールは、歯磨きやシャンプーに含まれるポリエチレングリコールの代わりに使用できる成分だ。この製品を作るのに必要な材料は、バイオディーゼル製造の主要な廃棄物であるグリセリンであり、コストの抑制、そして化石燃料の代替原料の提供に寄与する可能性がある。

アーロンズ氏によると、FabricNanoはさらに4つの製品を製造できることを実証済みだが、その種類は明らかにしていない。FabricNanoは「医薬品分野」と汎用化学品に注目していると同氏は述べている。「私たちが製造できる汎用化学品は数多くあります。1,3-プロパンジオールは氷山の一角にすぎません」。

それでも、FabricNanoの際立ったアプローチは、おそらく今までに開発した汎用化学品ではなく、実在するDNAの骨格であろう。DNAウェハーに付着して化学物質の生成を助ける酵素がソフトウェアなら、DNAの骨格はFabricNanoのハードウェアだ。

このハードウェアは、同社が汎用化学品の世界にセルフリーをもたらすための主要な道筋を形成するだろう。

「実際に欠けている部分、そして(セルフリー製造が)長い間ニッチなテクノロジーであった理由は、こうしたタンパク質をすべて固定化する一般化可能な技術が存在しなかったことにあります」とアーロンズ氏は語っている。

今回の資金調達で、FabricNanoは従業員を12人から30人に増員し、ロンドンの新しいオフィスに移る計画だ。同社への投資総額は1600万ドル(約17億6000万円)になる。

画像クレジット:chabybucko / Getty Images

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(文:Emma Betuel、翻訳:Dragonfly)

プロお墨付き音楽スタートアップのROLI、財政難を経て「Luminary」として再出発

2013年のSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)で、創業者兼CEOのRoland Lamb(ローランド・ラム)氏がSeaboardの鍵盤を叩いているのを見た途端に、私はROLI(ロリ)に魅了された。ロンドンを拠点とするこの会社は、2016年に発表したモジュール式のBlocksシステムをはじめ、長年にわたって独創的な音楽ソリューションを提供し続けている。

もちろん、クリエイティビティとスタートアップの爆発的な成功は、我々が思うほど一致しないものだ。Business Insiderによる同社のプロフィールは、ROLIの最近の苦境について「ニッチ」な製品群に言及しているが、これはおそらく妥当なことだろう。音楽業界や技術系メディアで知名度の高いファンを獲得したにもかかわらず、同社のデバイスはメインストリームでの成功を運命づけられていなかったようだ。

コロナ禍も相まって、ROLIは英国での管財申請という回避策を取らざるを得なくなった。ラム氏と彼の70人ほどの従業員は、Luminary(ルミナリー)というスピンアウト企業によってROLIの夢を生かし続ける。

画像クレジット:Roli

LuminaryがROLIの知的財産とその負債の両方を引き継ぐことはすでにわかっていたが、これが正確に何を意味するのか、ラム氏と彼の仲間にコメントを求めた。ROLIは、これまで総額7500万ドル(約82億円)超の資金を調達している。

Lambはインタビューでこう語った。「結局のところ、我々が最初に開発したプロ向けの製品は、その市場の範囲内では成功したものの、ベンチャーとしての軌跡を考えると市場の規模が十分ではなかったのです。急成長を目指していましたが、それは難しいことがわかりました」。

最近では、ROLIは「LUMI」キーボードを発表した。これは、ライトアップされた鍵盤を使ってユーザーにピアノを教えることを目的とした、従来よりもメインストリームの製品だ。この製品は、同様の名前を持つLuminaryのフォーカスとなる。また、オリジナルのSeaboard製品ラインも、新会社で引き続き提供する予定だ。

画像クレジット:Roli

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

それぞれの犬に合わせた新鮮なドッグフードを配達するロンドンのButternut Box

ロンドンで新鮮なドッグフードを提供しているサービスButternut Boxは、テクノロジーを利用したHelloFresh的なプラットフォームで、自社で調理したドッグフードを出前風に配達している。同社はこのほど、消費者向け企業を対象とするプライベートエクイティ企業のL Cattertonがリードするラウンドで5540万ドル(約61億1000万円)を調達した。これには、White Star CapitalやFive Seasons Ventures、そしてPassion Capitalが参加した。同社の初期のラウンドをTechCrunchは、2017年に報じたことがある。

2016年に設立されたButternut Boxは、独自の技術プラットフォームによって「パーソナライズされた食事の提供」を行う「人間の食事のような新鮮なドッグフード会社」を自称している。

L Catterton Europeのパートナーで同社のロンドン支社長であるJean-Philippe Barade(ジャン-フィリップ・バラード)氏は、次のようにコメントしている。「英国でブランドイメージと、ペットのオーナーたちのブランドへの信頼を築いてきたButternut Boxの、長年の努力には感銘を受けている。同社は今もその革新的なデジタルプラットフォームを活かして、成長市場であるペットフード市場のバーの高さを上げ続けている」。

ゴールドマン・サックス出身のKevin Glynn(ケビン・グリン)氏とDavid Nolan(デビッド・ノーラン)氏が率いる同社は、その独自のアルゴリズムにより、犬の年齢や体重、犬種、活動レベル、体調などに基づいて適正カロリーを計算し、それに基づいて日々の食餌の提供量を決めている。

また同社は、同社自身が独自の自然食ドッグフードを作っている。なぜなら、これまでの研究調査によると、自然食を食べた犬は工業生産された缶詰製品を食べていた犬よりも長寿だからだ。その寿命の差は3年と言われているが、犬の3年は長い。英国の犬のオーナーは年間およそ2億ポンド(約306億円)近くを動物病院に費やしているが、その大きな原因は過食と不健康なフードだと言われる。

しかしながら英国の自然食ドッグフード企業はButternut Boxの他にもLily’s KitchenやTails.com、Natural Instinctなどの競合企業が多く、すべてがその成長市場をめぐって競走している。

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カテゴリー:その他
タグ:ロンドンイギリスペットButternut Box資金調達

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

UXチームのためのDesignOps(デザイン運用)プラットフォームを目指すzeroheight

ウェブサイトやアプリの高品質なUXは、企業が成功する上で、あった方が良いといったものではもはやなく、なくてはならないものになっている。だが、UXチームの影響力を拡大することは容易ではない。近年、UXチームはDesignOps(デザイン運用)プラットフォームと呼ばれるものに注目している。

このたび、UXチームにとって重要なDesignOpsプラットフォームとなることを目指し、そのスケールアップのための資金を調達したスタートアップが登場した。

zeroheight(ゼロハイト)は、Tribe CapitalがリードするシリーズAラウンドで1000万ドル(約11億円)を調達した。ラウンドには、Adobe、Y Combinator、FundersClub、Expaの他、エンジェル投資家からTom Preston-Werner(トム・プレストン・ワーナー)氏(GitHubの共同創業者)、Bradley Horowitz(ブラッドレー・ホロウィッツ)氏(GoogleのVP Product)、Irene Au(アイリーン・オー)氏(GoogleでUXデザインを開発・運営)、Nick Caldwell(ニック・キャルドウェル)氏(TwitterのVP Engineering)などが参加した。

ロンドンを拠点とするzeroheightは、今後、サンフランシスコ・ベイエリアにも進出し、チーム全体を拡大する。これまでは、UXにおける文書化に注力してきたが、今後はデザインと開発のギャップを解消するなど、他の分野にも取り組む。

共同創業者のJerome de Lafargue(ジェローム・ド・ラファーグ)氏は次のように述べた。「zeroheightがUXにもたらすのは、GitHubのようなDevOpsプラットフォームがコードの開発とリリースに果たしている役割と同じです。UXコンポーネントを文書化・管理するための中心的な場所を提供し、デザインAPIと組み合わせることで、チームはデザインの受け渡し段階を完全に省略し、UXの提供プロセスを高速化できます」。

同社はUXチームのスケーリング問題に対処していると同氏は語る。「UXチームがここ数年で劇的に成長したことにより問題が発生しました。ほとんどの企業にとって、競争に勝つためにUXが非常に重要になっているからです。そのため、集中化や再利用可能なコンポーネントが必要となり、チームがリリースを続けても効率性や品質を落とさずに済むようになりました」。

zeroheightの1300社を超える顧客の中には、AdobeやUnited Airlines(ユナイテッド航空)などのフォーチュン500企業も含まれている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:DesignOpsUXzeroheight資金調達ロンドンデザイン

画像クレジット:zeroheight team

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

クロスボーダー送金のWiseがロンドン証券取引所に直接上場へ

TransferWise(トランスファーワイズ)として知られていたフィンテック企業Wise(ワイズ)はロンドン証券取引所に上場する計画を明らかにした。従来のIPOルートは取らず、直接上場で公開する。ロンドン証券取引所で最大の直接上場となる見込みだ。

Wiseのことを知らない人のために説明すると、同社はクロスボーダーの送金を専門としている。あなたが別の国に暮らしている人に送金する場合、従来のリテールバンクは為替手数料や外国取引手数料などかなりの手数料を取る。

もちろん、Western UnionやMoneyGramなどよく知られている別の選択肢もある。そうした企業は便利なオンランプとオフランプの手法を提供しているが、それでもWiseより手数料がかかる。

Wiseではユーザーはまず、銀行振替やデビットカードを使ってWiseアカウントに送金する。すると別の通貨で受け取り手の銀行口座に送金できるようになる。固定手数料や変動手数料に関し、Wiseは可能な限り透明かつ正直であろうとしている。

2011年創業のWiseはかなりの成長を遂げてきた。直近の会計年度では、売上高は前年の4億2200万ドル(約465億円)から5億8600万ドル(約646億円)に増えた。税引前利益は5700万ドル(約63億円)だ。同社によると、2017年から黒字となっている。

同社は毎月、約70億ドル(約7718億円)のクロスボーダー取引を行う顧客1000万人を抱える。直近では、新しいプロダクトを追加して売上を多様化させた。

例えば顧客はWiseアカウントにお金を56の通貨で保有できる。10の異なる通貨、そしてデビットカードで口座番号が発行される。この機能は、他国から支払いを受けたいフリーランサーや1、2年海外で過ごすという人にとって特に便利だ。

同社はWise BusinessでB2C以外にも事業を拡大してきた。そうした口座は通常のWise口座と少し似ているが、複数の人が使うことができ、また別の機能も持っている。Wiseはまた、MonzoやN26などサードパーティのサービスでのクロスボーダー取引も動かしている。

直接上場の選択は興味深い動きだ。米国ではSpotify、Coinbase、Slackなど数社が直接上場を行った。銀行がサポートしない直接上場を選択するというのは、投資家から十分な関心を集められると自信があることを意味する。

また、直接上場では追加の資金を調達できないため、Wiseがさらなる資金を必要としていないことにもなる。

他の多くのテック企業と同様、Wiseは2種類の株式を発行するデュアル・クラス・ストラクチャーを採用する計画だ。これによりWiseの既存の株主はしばらくの間、より多くの株式あたりの議決権を得ることになる。Wiseの直接上場は欧州のフィンテックシーン、そして英国のテックエコシステムにとって重要なものになる。投資家がWiseをどうとらえるか、見てみよう。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Wise送金ロンドンIPO

画像クレジット:Wise

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

AmazonがARなどのリテールテクノロジーをテストをロンドンにオープンしたヘアサロンで開始

Amazon(アマゾン)は米国時間4月20日、同社初のヘアサロンであり、新しい技術を一般の人たちに対してテストすることを目的としたAmazon Salon(アマゾン・サロン)をオープンすることを発表した。このサロンは、ロンドンのスピタルフィールズにあるブラッシュフィールド・ストリートに設置され、床面積は1500平方フィート(約139.4平方メートル)以上となる予定だ。Amazonはまず、拡張現実(AR)技術と「ポイント・アンド・ラーン」(指差しで知る)技術の使用を試験的に開始すると発表している。ポイント・アンド・ラーン技術とは、顧客が陳列棚の商品を指差す(ポイントする)ことで、ディスプレイ画面にビデオやその他のコンテンツが表示されて、商品の詳細を知ることができるシステムだ。

その後その商品を注文するには、棚のQRコードを読み取れば、その商品に対応するAmazon.co.ukのショッピングページが表示されるので、商品をカートに入れて注文することができる。

画像クレジット:Amazon

一方、AR技術は、顧客が新しいヘアカラーを購入する前に、仮想的に異なる髪色を試してみることができるようにするものだ。

すでにAmazonは、コンビニエンスストアや食料品ビジネスなどの実店舗ビジネスに参入しており、レジなし精算スマートショッピングカート生体認証システムなどの新しい技術でイノベーションを実践している。とはいえ、Amazonが実際のサロンビジネスそのものに関心を持っているかどうかは不明だ。むしろこのサロンは、アマゾンが将来的他の小売業者に販売したいと考えている新技術の実験場としての役割が大きいと思われるが、自社の店舗に導入される可能性もある。また、ARに関しては、Amazonは顧客の体験データを集めて、自社のショッピングサイトでも利用したいと考えているのではないだろうか。

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今回の目的が、サロンビジネスそのものではないだろうと思わせるヒントは、Amazonがこのサロンを「新製品や新技術を紹介する体験型の場」と表現しており、現時点では他のサロンを開設する予定はないとしていることだ。

またAmazonは、サロンを長期的に運営するために新たなスタッフを雇うのではなく、既存のサロンオーナーであるNeville Hair & Beauty Salon(ネビル・ヘアー&ビューティ・サロン)のElena Lavagni(エレナ・ラヴァーニ)氏を採用している。ラヴァーニ氏と彼女のチームは、これまでにもパリ・ファッション・ウィークやカンヌ映画祭などの他のイベントでも、ヘアドレッシングサービスを提供してきた。

画像クレジット:Amazon

Amazonは、このサロンを利用する顧客からどのようなデータを収集するのかの詳細は明らかにしていないが、新しい小売技術が実際の環境でどのように機能するのかを試すためのものであることは明らかだ。しかし、Amazonがヘアカラーのバーチャル試行を行う顧客の画像を撮影しているという事実は、新しいサロンから収集したそうしたデータをどうするつもりなのかという疑問を抱かせる。テストしようとしている特定の技術に関する学習のためだけに使われるのか、それとも他の用途にも使われるのだろうか?

多くの人が記憶しているように、Amazonは顔認識や生体認証などの技術の利用に関して複雑な歴史を持っている。同社は米国の法執行機関に生体認証の顔認識サービスを販売してきた一方で、同社の顔認識技術がデータプライバシー訴訟の対象となったこともある。また、同社のRingカメラは警察との連携を続けている顧客は、新しいテックプロダクトを楽しむだけでなく、Amazonの研究プロジェクトに参加しているかどうかを伝えられるべきだろう。

他のAmazonの実店舗と同様に、このサロンはまずAmazonの従業員にのみ開放され、その後数週間のうちに一般の人々からの予約も受け付け始める予定だ。

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Amazonロンドン美容店舗

画像クレジット:Amazon

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

侵害されたネットワークを徹底して厳密な調査するプラットフォーム開発のCado Securityが10.9億円調達

コンピュータシステムがますます大きく、複雑になるにつれて、組織がシステムをより安全に保護するために、フォレンジック(徹底して厳密な調査)が重要な要素となってきている。最近起きたSolarWinds(ソーラーウィンズ)の情報漏洩事件でも明らかになったように、データ流失を特定したり、ハッカーの侵入を防いだりすることだけが大切なのではない。ネットワークがすでに侵害されている場合、何が起こったのか、侵害がまだ続いているのか、悪意のあるハッカーが再び攻撃できるのかなどを特定するためには、徹底した調査を行うことが唯一の方法であることがしばしばだ。

そうした優先順位の高まりを示す兆候として、徹底した調査を行うための、クラウドネイティブなフォレンジック技術を構築してきたスタートアップのCado Security(カド・セキュリティ)が、事業拡大のために1000万ドル(約10億9000万円)の資金調達を発表した。

現在、Cadoのツールは、企業が直接使用するだけでなく、Redacted(リダクテッド)のようなセキュリティ企業にも使用されている。Redactedは、Facebookの元チーフセキュリティオフィサーであるMax Kelly(マックス・ケリー)氏とLookout(ルックアウト)の共同創業者であるJohn Hering(ジョン・ヘリング)氏が一緒に創業したサンフランシスコを拠点とする、まだあまり注目されていないセキュリティスタートアップだ。Redactedはフォレンジックの部分にCadoを採用している。

ロンドンを拠点とするCadoへの今回の資金提供は、Blossom Capitalが主導し、既存の投資家であるTen Eleven Venturesなども参加している。今回のシリーズAは、Cadoがシードラウンドで資金を調達してからわずか6カ月後のことで、このこともこの分野の需要があることを示している。

デジタルネットワーク上のデータを保護する仕事は、年々複雑になってきている。単にデバイスの数やデータの量が増えて、その構成や使用方法が多岐にわたっているだけでなく、ネットワークの内部に侵入して汚れ仕事をする、悪意あるハッカーたちのアプローチもますます巧妙になってきているからだ。

また、クラウドへの移行も複雑さの増加する大きな要因となっている。クラウドの移行によって、多くの組織が次々に事業を拡大し、業務の一環としてより大規模なコンピューティングプロセスを実行できるようになった一方で、いわゆる攻撃界面が拡大し、調査が非常に複雑になっている。特に多くの組織が能力を増減させる弾力的なプロセスを実行していることで、何かがスケールダウンされた際に、それ以前のログが消去されてしまうことが多い。

CadoのプロダクトであるResponse(レスポンス)は、インストールされるとネットワークとそのすべてのアクティビティを積極的に調査するがクラウド、オンプレミス、ハイブリッドなどの環境を問わず動作するようになっている。現在は、AWS EC2、Docker(ドッカー)、Kubernetes(クバネティス)、OpenShift(オープンシフト)、AWS Fargate(AWSファーゲイト)などのコンテナシステムに対応しており、まもなくAzure(アジュール)にも拡大する予定だ(なお、Google Cloud Platform(グーグル・クラウド・プラットフォーム)は、現在の顧客や見込み顧客の間ではほとんど話題に上らないため、現時点では優先度が低いとCEOのJames Campbell(ジェームズ・キャンベル)氏は述べている)。

キャンベル氏は、2020年4月に現CTOのChristopher Doman(クリストファー・ドーマン)氏と共同でCadoを創業した。この会社のコンセプトは、PwCでともにセキュリティサービスに取り組んだ経験から生まれたもので、それぞれ政府機関(オーストラリアのキャンベル地区)とAlienVault(エイリアン・ボルト。AT&Tが買収したセキュリティ会社)のために働いていた。その中で、2人がずっと直面していた問題は、最も複雑な侵害を追跡するために不可欠な、適切なフォレンジックデータの取得だった。

従来のフォレンジックツールの多く、特にクラウド上の大量のデータに対処するものは「オープンソースツールでデータを処理し、スプレッドシート上で分析をまとめていました」とキャンベル氏はいう。「クラウド時代に向けて、この状況を近代化する必要があります」。

一般的な侵害事件では、何が起こっているのかを解明するための徹底的な調査に1カ月ほどかかることがある。これは、ドーマン氏が説明するように、フォレンジックが「ディスクのあらゆる部分、バイナリシステムのファイルを調査する」からだ。ドーマン氏は重ねて「そうしたレベル、そうしたログに行かずに、必要なものを見つけることはできないのです。すべてを精査することになります」という。

しかし、それには大きな問題があった。キャンベル氏は「とはいえ何か手を打てるまでに、ハッカーを1カ月間野放しにしておくことは、到底許されません」と付け加えた。その結果、他のフォレンジックツールでは、組織のデータの5%程度しか調査できないというのが一般的なのだ。

2人によれば、特許出願済のCadoのソリューションは、基本的には、すべての活動ログのバイナリデータの中から、異常に見えるものを見分けて、パターンを見つけるという、非常に手間のかかるプロセスを、自動化して高速化するビッグデータツールの開発を含むという。

キャンベル氏は「これにより、セキュリティチームには、ハッカーが何をしようとしているのかに集中して、修復の側面に注力する余裕が生まれます」と説明する。

おそらくSolarWindsのような事態は、もしより優れていて迅速な追跡・調査技術を持っていたなら、もっと良いレベルで緩和されたはずだ。

今後は、より多くの種類のシステムをカバーするために統合を進め、一般的にIaaS(Infrastructure as a Service)に分類されるようなものへと展開していく予定だ。

Blossom CapitalのパートナーであるImran Ghory(イムラン・ゴリー)氏は次のように語る。「過去1年間に、多くの企業がリモートワークを可能にするアプリケーションを保護しながら、クラウド導入スケジュールを短縮してきました。それでも、SolarWindsのような有名な侵害事件が示すように、一般的にセキュリティアナリストはクラウドの専門家としてのトレーニングを受けていないために、クラウド環境の複雑さが迅速な調査と対応を困難にしているのです。Cado Securityは、セキュリティチームがより速くより効率的に動けるようにするために、フォレンジックのためのクラウドデータの取得などの、時間のかかる作業を自動化するエレガントなソリューションで、この問題を解決します。Blossom Capitalにとって、Cado Securityの迅速な拡大を支援する機会を得られたことはすばらしいことです」。

カテゴリー:セキュリティ
タグ:Cado Security資金調達ロンドンデータ漏洩ハッキング

画像クレジット:MR.Cole_Photographer / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

その求人情報からNYCとロンドンの電動キックスクーターパイロット参加企業が見えてきた

Twitterでのつぶやき、そして求人情報からLime(ライム)やSuperpedestrian(スーパーペデストリアン)といった企業が、スクーターシェアリングサービスにとって最後のフロンティアであるロンドンとニューヨーク市でのサービス展開の準備を進めていることがうかがえる。

求人情報をチェックすると、企業のウェブサイトやLinkedInでLimeやDott(ドット)がロンドンでのサービス開始を準備していて、一方でLimeとSuperpedestrian、そしておそらくSpin(スピン)もニューヨークでの立ち上げを準備している。求人情報はこうした企業が切望している事業許可を与えられたという決定的な証拠ではないが、どの企業が許可を勝ち取りそうかは示している。

都市居住者が社会的距離が取れる移動手段を模索していた2020年夏に、ロンドンの交通当局とニューヨーク市議会はそれぞれ電動スクーターのパイロット事業を承認した。ロンドンのパイロット事業は2021年初めに開始するはずだった。そしてNYCはもともと3月1日に立ち上げられる予定だった。しかしいずれの都市もどの企業に許可を与えるかまだ決まっていない。情報筋によると、ロンドンは5月6日の市長選が終わるまで発表しないようだ。NYCの交通当局はコメントを却下した。

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ロンドンではDott、Tier、Lime?

ロンドンのパイロット事業では、Dott(ドット)とLime、そしておそらくTier(ティア)が展開することになるとの憶測がある。DottとLimeのウェブサイトにある情報、LinkedInプロフィール、そして採用ページでロンドンのポジションで募集をかけている。業界情報筋はTechCrunchに、すでになくなっているが、Tierのホームページにはロンドンでの求人が掲載されていたと話した。

英国でまだ事業を展開していないDottは「英国でゼロから事業を立ち上げる」ための英国居住のオペレーションマネジャーを募集している。同社はまた「Dottの英国マーケットのための声」となる公共政策マネジャーも募集している。

Dottのウェブサイトにあるサービスエリアを示すマップでは、ロンドンのところに小さな黄色い旗が立っている。旗をクリックすると「ページが見つかりません」のエラーメッセージが表示される。

世界をあっという間に席巻しているようにみえるモビリティ企業Limeは、すでにJumpの電動自転車という形態で昨夏からロンドンで事業を展開している。LinkedInの新たな求人からするに、Limeは事業拡大の準備をしているようだ。

関連記事:需要増を受けLimeがJumpの電動自転車をロンドンに再配備

同社のLinkedInページではロンドン拠点のゼネラルマネジャーを募集していて、業務には「英国のマーケット成長を支える運用インフラ」の構築・実行がある。この求人は1週間前に投稿され、同社は積極的にLinkedInで人材募集をかけている。

約1カ月前に、Limeはロンドン拠点のオペレーション・マネジャーの職の募集をかけ、まだリクルート中のようだ。

LinkedInでの求人からするに、Voiもまだパイロット事業のレースに残っているかもしれない。4月8日に同社はロンドンで6カ月限定のアンバサダーとスーパーバイザーの募集を追加した。これは現場での役割のようで、その職務が一時的であるというのはロンドンでの1年間のパイロット事業と関係があるかもしれない。同社が展開している英国の他の都市を管理するためにロンドンに置く人材を探しているだけ、ということもあり得る。

Birdはすでにロンドンのオリンピック公園で夏からサービスを展開しており、道路や歩道でのスクーター使用に関するロンドンの規制を変更するためのロビー活動を積極的に行った。オリンピック公園で展開しているためにBirdのサービス展開マップはロンドンを目立たせているのかもしれないが、同社がロンドンでのオペレーションと英国全体のオペレーションを管理するオペレーションアソシエートを募集していることがことをややこしくしている。

ニューヨークはLime、Superpedestrian、その他

画像クレジット:Lime

LimeはNYCにすでに馴染みがある。同社jは電動自転車をクイーンズのロックアウェイで展開してきた。そして現在、メカニックオペレーションスペシャリストの2つの職種で求人をかけている。Lime電動スクーターのマネジメント、メンテナンス、展開・回収と業務説明にはある。

マサチューセッツ州ケンブリッジ拠点のSuperpedestrianは自社ウェブサイトとLinkedInで4件の求人をかけている。NYC居住を理想とするCEO補佐役を探している。また、ゼネラルマネージャーの職も募集していて、この職には「ニューヨークとニュージャージーにおけるスクーターシェアリングを成長・成功させること」が求められている。

LinkedInでSuperpedestrianはNYCでの2つの職種で求人を出している。まず1つが1週間ほど前に投稿された、スクーター充電や安全点検、スクーターの展開、スクーターの修理・組み立てを管理するオペレーションアソシエートだ。もう1つが1カ月前に投稿されたスクーターメカニックだ。しかし公平を期していうとこの求人には「当社がNYCでのオペレーションを許可された場合」という注意書きが含まれる。

Spinもまた(1週間ほど前)ニューヨーク拠点のオペレーション人材の求人を出した。職務は「Spinの日々のオペレーション、ドライバーとメカニクスの管理、高効率なオペレーションチームの構築」だ。Ford傘下のSpinがNYCのパイロット事業の認可を得たことを正確に示してはいないが、募集をかけている職は立ち上げ業務に関わっているようにみえる。求人情報はまた、新規採用がSpin車両の構築・展開につながっていることをにおわせている。

欧州では大規模に展開しているが米国では今からというVoi(ボイ)はNYCが米国参入の足がかりとなることを望んでいる。同社はNYCの業務の求人を一切出していないが、求人情報にある勤務地のドロップダウンメニューにはNYCが含まれている。

最後にBirdだが、同社はニューヨーク勤務の求人2件をLinkedInに出し、推測の混乱に輪をかけている。4週間前に投稿され、今も積極的採用をかけているゼネラルマネジャーの職はかなりニューヨークに関われる人物を求めているようだ。4月7日に投稿されたオペレーションアソシエートの職務がNYCでの勤務になるのかどうかについては、やや曖昧なものとなっている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:電動キックスクーターロンドンニューヨークLimeSuperpedestrianLinkedIn

画像クレジット:Photo by TOBIAS SCHWARZ/AFP via Getty Images / Getty Images

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

「ダークストア」から食料雑貨を20分以下で届ける英ZappがLightspeedとAtomicoに支援されシリーズA調達

現在ロンドンを中心に、食料雑貨をオンデマンドで注文できる宅配サービス専用店舗(ダークストア)を展開している数多くのスタートアップの1つであるZapp(ザップ)が、大手VCから新たな資金調達を行ったことがTechCrunchの取材で明らかになった。

複数の情報筋によると、シリコンバレーのLightspeedとヨーロッパのAtomico(Skypeの創業者Niklas Zennström〔ニクラス・ゼンストローム〕氏が立ち上げたVC)が、Zappの未発表のシリーズAに投資したという。同じ情報源から、Zappが初期のシードラウンドを含めて総額約1億ドル(約110億7000万円)を調達したことも確認されている。

今回のラウンドにはLightspeedとAtomicoに加え、468 Capital、Burda、さらにはMPGIのCEOであるMato Peric(マト・ペリク)氏、元Amazon UKのCEOであるChristopher North(クリストファー・ノース)氏、WestwingのCEOであるStefan Smalla(ステファン・スマラ)氏などの著名なエンジェルが出資している。ある情報筋によると、ZappのシリーズAは、Atomicoのコンシューマー向け事業パートナーであるSasha Astafyeva(サーシャ・アスタフィエバ)氏が、同VCに加わってから初めて担当した案件だという。

TechCrunchがシリーズAと投資家のリストについて取材を求めたところ、Zappは声明でこう述べた。「当社はお客様に喜んでいただくことに絶え間なく注力しており、通常、資本構造についてはコメントしません。2021年、ロンドンをはじめとする何百万人ものお客様にZappをお届けできることをうれしく思います」。

2020年夏に設立されたZappの創設者は、Jumia(ジュミア)の創設チームの一員としてオンデマンドサービス事業をIPOまで導いたJoe Falter(ジョー・ファルター)氏と、Amazon(アマゾン)のシアトル本社でプロダクトリーダーを務めた後、GoButlerを創設し、Rocket Internetでいくつかのベンチャー企業のスケーリングを手がけたNavid Hadzaad(ナヴィド・ハドザード)氏だ。リーダーシップチームには他にも、Deliveroo、Just Eat、Domino’s(ドミノ・ピザ)、Tescoなどの出身者が名を連ねている。

Zappは独自の小規模なフルフィルメントセンターを設置することで、垂直型の「ダークストア」モデルを展開している。ロンドンには、すでにいくつかの拠点がある。Kensington、Chelsea、Fulham、Notting Hill、Hammersmith、Shepherd’s Bush、Shoreditch、Islington, Angelなどだ。

Zappは、Deliverooのようなギグエコノミーモデルを採用せず、配達要員を直接雇用している。また、持続可能性を重視しており、すべて電気車両を使用している。

オンラインの情報や関係者の話を総合すると、Zappは生鮮食品や食料品よりも米国のgoPuffのような利便性を重視しており、従来の食料品店を駆逐するというよりも、衝動的な購入をターゲットにしているようだ。これは他の多くのダークストアとは対照的だが、複数のプレイヤーが提供する商品は明らかにクロスオーバーしているのも確かだ。

ロンドンではZappの他に、Getir(ゲッティアー)、Gorillas(ゴリラズ)、Jiffy(ジフィー)、Dija(ディジャ)、Weezy(ウィージー)、などのダークストア事業者がしのぎを削っている。また、陣取りが加速する中で、場合によっては大幅なディスカウントを行うなど、調達した多額の資金を投じて展開しているところもある。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:Zappロンドン資金調達フードデリバリーダークストア

画像クレジット:Social media

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Aya Nakazato)