Googleがジカ熱情報を検索に加え、UNICEFとパートナーして世界の発病地域を同定努力中

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Zika virus(ジカ熱ウィルス)が南米から世界へと広がりつつある。しかしそのほかの広域的疫病と違って、発病とその地域を同定することが意外と難しい。Googleは今日(米国時間3/2)、同社が今UNICEFと協働してプラットホームを構築し、そこにさまざまなソースからのデータを集めて、発病の可能性を予測し地図に落とす作業をしている、と発表した。

Googleの通常の検索エンジンでも、このウィルスに関する情報を充実し目立たせる努力が行われている。またGoogle.orgはUNICEFへの100万ドルの寄付を行い、それにより診断技術やワクチンの開発を一層促進してもらうことになった。

Googleによると、UNICEFとの協働には技術者、デザイナー、そしてデータサイエンティストたちのボランティアのチームを当て、UNICEFが伝染のリスクを同定できるための、新しいプラットホームも作っている。また、“UNICEFや各国政府やNGOたちが、彼らの時間とリソースをどこにどのように向けるべきかを決断できるための手助け”も、やっている。今Googleのそのツールはジカ熱に焦点を当てているが、今後の疾病の発生にも役立つようなプラットホームを構築することがねらいだ。

Google.orgのディレクターJacquelline Fullerは今日、次のように書いている: “人びとの情報発見を助けることを使命とする企業としてわれわれは、大量のデータを分析する経験を大量に積んでいる。そのためわれわれは、そのスケールとスピードにおいて、援助を提供するのに適した位置にいる。そこで今日われわれは、GoogleのエンジニアたちをUNICEFと協働させてデータを分析し、ウィルスの発生地域とその今後の予測努力に助力を提供している。また弊社のプロダクトもアップデートして、ジカ熱の情報によりアクセスしやすいようにした。UNICEFには100万ドルを寄付して、彼らの、ネット上ではなく地上における努力を支援している”。

もちろんGoogleはすでに、検索結果のページのサイドバーに、大量の保健医療データを載せている。しかし今日のアップデートにより、ジカ熱に関するさらに豊富な情報を16の言語で表示している。これには、ウィルスによる症状の概要や、新たな情報で随時アップデートされる公共的な健康情報、などが含まれている。

同社によると、Sesame Streetなど、何名かの人気YouTuberたちとも協働して、ジカ熱とその予防に関する知識を広める努力をしている。

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睡眠時の子どもの夜驚症の発生を自動的に防ぐ小さなデバイスSleep Guardianがアップデート

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Lullyをこの前取り上げたときは、このYC出身のスタートアップが210万ドルのシード資金獲得を発表したときだった。もちろんそれは、同社の旗艦製品Sleep Guardianのためだ。このプロダクトは2015年の6月にローンチしたが、今日(米国時間2/9)早くもそのアップデートバージョン、Sleep Guardian Plusがリリースされた。

Sleep Guardian Plusは、子どもの敷布団の下に置く小さなデバイスだ。振動によって不健康な睡眠サイクルを中断させ、夜驚症を未然に防ぐ。それ以外の睡眠パターンは、中断しないようだ。つまりSleep Guardian Plusは、いわゆる計画的覚醒(scheduled awakenings)を自動的に行う。

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ハードウェアとしては、Bluetoothモジュールの位置を変えることによってやや小型にした。

ソフトウェアとしては、次のような改良が行われた:

  • 子どもの睡眠パターンを長時間追跡
  • 睡眠履歴をアプリのダッシュボードで見られる
  • 夜驚症の治癒過程を見られる
  • ほかの人(シッターなど)がスマートフォンからコントロールできる
  • 睡眠学の専門家に質問できる

Lullyによると、同社の199ドル新型機を使えば、子どもの夜驚症の発生がそれまでの20%近くにまで抑えられるそうだ。

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グラフェンを電極として使用すると効果的な脳移植が可能になる…二つの大学の研究より

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厚さ1炭素原子の超薄炭素結晶シート、グラフェン(graphene)は、それを通常のバルク材から取り出せるようになって以来この10年あまり、科学者たちを興奮させてきた。なぜなら、この特殊な炭素結晶体により、電子工学と生物学の混合が可能と思われてきたからだ。

Cambridge Graphene Centreとイタリアのトリエステ大学が行い、ACS Nano誌に載った最新の研究は、有効性が高くて柔軟性に富む脳移植が、この素材により可能であることを示唆している。今日の、シリコンやタングステンなどの剛体でできている電極には、術後痕における信号の喪失という問題があったが、グラフェンを使用するバイオデバイスでは、それがないことが期待される。

この研究の中心命題は、人間の脳は柔らかい組織でできているから、電極にもそのような可撓性があるべきだ、という点にある。またグラフェンは、生体適合性(biocompatibility)が優れている、と見なされている(ただしその毒性については、現段階で結論が出ていない)。

この、ケンブリッジ大とトリエステ大の研究が含意しているのは、将来的にはグラフェン製の電極を安全に脳に移植できるのではないか、という点だ。それによりたとえば、失った感覚を取り戻したり、四肢の麻痺を治癒できるのではないか、と思われる。癲癇やパーキンソン病などの治療も、可能になるかもしれない。このような将来の可能性はきわめてエキサイティングだが、現状はまだ理論の段階にすぎず、実用化は遠い先だ(ラットの脳の培養試験ではグラフェンの利用がすで成功している)。

研究者たちの注記によると、以前、ほかの研究集団が、特殊処理をしたグラフェンと脳内のニューロン(脳の神経細胞)を対話させる可能性を示したが、しかしその特殊処理をしたグラフェンはS/N比がきわめて低いという問題があった。何も処理をしないグラフェンは、グラフェンの重要な特性のひとつと言われているように、伝導性がとても高いので、良質な電極を作れる。その脳細胞との相性も、ラットの脳のニューロンでは良好だった。

トリエステ大学のLaura Balleriniは、声明文の中で次のように述べている: “われわれは初めて、グラフェンをニューロンに直接インタフェイスすることに成功した。そのときわれわれは、ニューロンが脳の活動を示す電気信号を生成することをテストし、それらのニューロンがその神経信号伝達特性を正常に保持していることを確認した。これは、被覆をしないグラフェンを用いる脳神経接合部(シナプス)の活動に関する、初めての機能研究である”。

科学者たちは、この研究が、神経とインタフェイスするための電極としてグラフェン製の新しい素材を使っていくための研究開発道程の、“最初の一歩”にすぎない、とほのめかしている。だから、グラフェン製のバイオデバイスが来年のCESに登場することはありえない。登場はおそらく、20年後か。

彼らが次の研究課題としているのは、グラフェンのさまざまな形状による、対ニューロン効果の違いだ。また、生物学的応答性を良くする(シナプスの性能と神経の活性化能力)ための素材の調整も、課題となる。

“この研究が、より良い脳深部移植技術の道を拓(ひら)き、脳の活力増進とコントロールを可能にする高感度で無用な副作用のない技術の実現に、つながることを期待したい”、とBalleriniは付言している。

 

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新薬開発をデータ分析で助け実験を効率化するElemental Machinesがシード資金$2.5Mを獲得

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ケンブリッジのElemental Machinesは、ウェットラボのソフトウェアシミュレーターを作っていて、とくに、新薬開発など薬の研究開発をデータによって行うことにより、その時間と費用を低減することをねらっている。

同社は、ラボで得られたデータで、シミュレーションにおける実験の再現性を改良することを目指しており、その新しい考え方に目をつけた投資家のFounders Fundは、同社に250万ドルのシード資金を提供した。

Founders Fundは、SpaceXや、Lyftの車の相乗りサービス、寿命延伸の研究など、未来をラジカルに変える可能性のあるアイデアに、よく投資をする。

Elemental Machinesの場合は、データをクラウドベースのソフトウェアプラットホームに適用することにより、ウェットラボの実験や研究を効率化して、新薬や治療法の改善方法の発見をスピードアップ〜短時間化する。研究者たちは、それらのデータが集められたコンテキストを十分に理解しながら、研究結果を解釈できる。

Elemental MachinesのCEO Sridhar Iyengarは、そういうデータ分析をベースとする実験や研究のことを、ラボにX線撮像装置があるようなものだ、と言う。“われわれは、テクノロジーを、これまでの世界から別の世界へ持ち込もうとしている。われわれは科学者たちに、さまざまな重要データを集めて視覚化するための容易で強力な方法を提供する。これまでのラボや、とくにラボのデバッグでは、データの積極的な利用ということは、まったく考えられていなかった。”、と彼は語る。

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同社のやり方は、ラボのコストも大幅に削減する。Deloitteのデータによると、生命科学のグローバルな研究開発に投じられる金額は、これまでのやり方を前提として推計すると2020年には1630億ドルに達する。しかし、実験とその結果を…データを利用して…正しく複製するやり方があれば、そのR&Dが必要とする費用は長期的には大幅に削減されうる。

ラボといっても非常にさまざまだから、一概にコスト削減を言うのは大雑把すぎるが、Iyengarが挙げる同社の顧客の例では、同社のソフトウェアとそれによるデータ分析により、研究に要する期間を大幅に減らすことに成功している。

Elemental Machinesのチームには、ウェアラブルの研究開発やデータ分析の履歴と実績を持つ科学者たちがいる。彼らはこれまでウェアラブルのMisfitを作ってそれを最近Fossilに売り、その後消費者対象のヘルステク企業AgaMatrixを作り、そのあと、ウェットラボに焦点を定めた。

同社の考え方は、同じくFounders Fundが投資しているEmerald Lab Therapeuticsに似ている。Emeraldはクラウド上でオーダーメイドのデータ分析を提供しているSaaS企業だ。Iyengarの考えでは、両社は競合するというよりむしろ共生的であり、とくにElemental MachinesはSeimensやGEのような大企業から、大規模データ処理の市場を奪おうとしている。

同社は1年近く前にひそかにローンチし、今ではLab Centralなど約30社を顧客にしている。

このラウンドに参加したそのほかの投資家は、Max Levchin, Project 11 Ventures, 2M Companies, そしてRock Healthだ。

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男女の会話の声の質から二人の将来(結婚するか・しないか)を予測するアルゴリズムの精度が人間セラピストより高かった

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“言った事よりも、言い方が良くないわ!”

コミュニケーションを支えるのは言葉じゃない、とよく言われる。そして今や、声のトーンから男女の仲とその将来を判定するアルゴリズムがある

サウスカロライナ大学工学部ビテビ校とユタ大学が共同開発したコンピュータプログラムは、関係治療のセラピーに訪れた100あまりのカップルの何百もの会話を、2年あまりにわたって分析した。

そしてそれらのカップルの、5年後の結婚の状況を調べた。

その結果、カップルの声の「ピッチ」や「強さ」や「震え」や「かすれ」などを分析するそのアルゴリズムが、79%の精度で、それらのカップルの将来を予言できていたことが分かった。5年後に、そのアルゴリズムがポジティブと判断したカップルの多くがめでたく結婚し、ネガティブと判断したカップルの多くは別れていた。

しかもこの79%の精度は、人間セラピストの判断よりも高い精度だった。

男女が互いに、相手の言葉を“受け入れた”か、“非難した”かなどをもとに、行動分析を行う人間エキスパートによる判断よりも、声質を直接調べるこのアルゴリズムの方が、カップルの将来をより正確に予見した。

一般的に、コミュニケーションの55%は身体言語(ボディーランゲージ)、38%が声のトーン、そしてわずかに7%が言葉の意味によって行われる、という。

このアルゴリズムを開発した研究者たちは今後、残る二つの要素…実際の言葉と身体言語…も取り入れた関係治療プログラムを作る計画だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

Omixyで手軽に遺伝子検査と医師からのフィードバックが受けられる

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Omixyはステルスのスタートアップで、ヨーロッパの医療検査を改善しようとしている。Theranosのように過剰なものではなく、Omixyはユーザーが自身の健康情報を長期に渡ってシームレスに管理できるようにする。

OmixyはSGH CapitalTheFamilyの助けで150万ドルを調達したばかりだ。2016年の第2四半期にロンドンでローンチする予定だという。

Omixyに登録すると、看護士がユーザーの自宅を訪れて遺伝子サンプルを採取する。そして、全ゲノム解析と専門的な医療を合わせた検査を行う。アメリカの23andmeのように、Omixyはユーザーが簡単に遺伝子検査を利用できるようにする。

このスタートアップはゲノム解析とメタボローム解析イクロバイオームを駆使する。多くの医者はこれらの解析手法を避けるため、Omixyがその役割を担っているのだ。Omixyの方法論を詳しく知りたい場合は彼らのサイトを確認してほしい。

Omixyは検査を行った後、ユーザーに検査結果をそのまま提示するのでなく、医師がそれらの情報を解釈して伝えるという一段階上の付加価値を提供している。Omixyのチームには医師や生物学者も参加している。もし検査結果に懸念点があり、さらに詳細な検査が必要な場合は、Omixyはユーザーを信頼できるパートナーのネットワークにつなげる。

ユーザーがOmixyのようなスタートアップを利用する理由はまだある。そもそも医師の予約を取るのは手間だ。最適な医師を探し、時間を作って、実際に足を運んで、待合室で待たされる。遺伝子検査をする場合は、研究機関に行ってから医師の元を訪れなければならない。Omixyの手順は簡単であることから、毎年検査を受けることができる。

これは病気を素早く検出することができる良い方法でもある。また、それに加えOmixyは検査結果に基いて健康な生活を送るためのアドバイスも提供する。

今後新しい検査ツールが登場した時には、Omixyは解析テクノロジープロバイダーとエンドユーザーとをつなぐAPIの役割を担うことを計画している。それは簡単に実現できることではないが、ユーザーは包括的な医療検査を簡単に受けられるべきだろう。

正式なローンチはまだ数ヶ月先だが、この付加価値のあるマーケットプレイスのアプローチが機能するかどうかにとても期待している。検査だけでなく、実際の医師からのフィードバックを提供することは、このサービスのローンチを難しいものにする。だが、そこが最も興味深い部分でもあるだろう。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

盲導犬のオーナーが犬の体調を手に伝わる振動で知るためのデバイス(まだ名前はない)

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ノースカロライナ州立大学の研究者たちが、盲導犬が苦しんでいたり病気のとき、そのことをユーザに伝えるデバイスを発明した。犬は通常、具合が悪いことやストレスを、呼吸や姿勢、心拍などで伝えるので、視覚障害者などにはそれが分からないことが多い。このデバイスは犬の呼吸と心拍を測り、ユーザが手に持つハンドルを振動させて異変(病気、熱中症など)を知らせる。

プロジェクトを率いたコンピュータ科学の准教授David Robertsはこう語る、“犬は主に動きや姿勢でコミュニケーションするから、視覚障害者などは、異変が起きたときすぐにそれを感知することが難しい。盲導犬については、前からこのことが課題とされてきた。彼/彼女らはおとなしくあるよう、しつけられているから、路上などでも人びとの注意を惹きにくい”。

このシステムは、犬のストレスと不安の両方を伝える。この二つは、盲導犬の引退時期を告げる兆候でもある。このシステムのおだやかな振動が、オーナーに犬の状態の変化を知らせる。親指の位置にある小さなモーターが犬の心拍のペースを伝え、もう一つのモーターが呼吸のペースを伝える。どちらかの振動がとても頻繁になったら、オーナーは立ち止まって状態をチェックできる。

このプロジェクトのペーパーは”Towards the Non-Visual Monitoring of Canine Physiology in Real-Time by Blind Handlers”と題され、マレーシアのジョホールで行われたSecond International Congress on Animal Computer Interactionで発表された。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

心理療法の面談という面倒な束縛をディスラプトしたTalkspaceが、テキストに加え音声とビデオを導入

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毎週25ドルの料金で、ユーザがセラピスト(療法士)に無制限にメッセージングできるサービスTalkspaceが今日、これまでのテキストだけに加えて、非同期のオーディオとビデオの使用を可能にした。

このいわゆる‘視聴覚メディア’が使えるようになると、患者とセラピストとのあいだに一定の信頼関係があれば、コミュニケーションの深化によって心理療法の効果も上がり、またTalkspace自身は他社との競合で優位に立つ。

まだベータの現状では、Talkspaceのユーザの3〜4%がビデオメッセージング、6〜7%がオーディオメッセージを使っているにすぎない。CEOのOren Frankは、SMSの利便性は主にテキストメッセージングにある、と認めている

Talkspaceは2012年の6月に、デジタル時代の心理療法を目指して創業された。バックエンドでIBM Watsonを利用しているTalkspaceは、ユーザにもっとも合ったセラピストを見つけ、両者のあいだにコミュニケーションのチャネルをセットアップする。

Talkspaceを使うと、毎週1時間セラピストに会うという束縛から解放され、週の料金25ドルでセラピストにメッセージをいくらでも送れる。セラピストへのアクセスが気軽になるだけでなく、通信の完全な記録が作られるので、治療効果も上がる。

セラピストの側では、スケジュールが楽になるだけでなく、より多くの患者に対応できるようになる。今年の5月の時点では、250名あまりの専門(==有資格)療法士がTalkspaceを利用していた。

同社はこれまで、4回のラウンドで計1300万ドルを、Spark、Metamorphic、Softbankなどから調達している。

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新生児の微細な血管や臓器を傷めないカスタムメイドの医療器材を3Dプリントで作るNortheastern大学

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医療用ハードウェアの多くが、既製品だ。カテーテルもインプラントも、単純に手近にあるものを使う。でも、未熟児用のとても小さなコネクタや、特殊な形のブレースが必要なときはどうするか? 3Dプリントの出番だ。

Northeastern大学の研究者たちが、個々の患者に合わせたプラスチックやセラミックのインプラントを作り始めている。それがあれば医師は、微細な組織を傷つけたりしないし、またどんなインプラントを挿入するときでもダメージを防げる。

“新生児の場合は、個体によるサイズの違いが大きいし、また抱えている問題もさまざまだ”、とNortheasternの准教授Ran­dall Erbは語る。“でもこれからは、個々の患者に合った形やサイズのカテーテルをプリントして、患部への正確な挿入ができる。静脈に穴をあける心配もなく、薬剤等を迅速正確に移送できる”。

研究者たちの最新の研究論文がここにある

そのシステムはプラスチックとセラミックのファイバを使って、精度の高い剛体オブジェクトを作る。セラミックファイバを使っても、穴やカーブを作れるし、耐久性はプラスチックより高い。研究者たちによるとそれは、木や骨のような丈夫な自然オブジェクトを作るやり方と同じだそうだ。

チームは光造形法と磁力を使ってセラミックファイバの位置と方向をコントロールする。最初にファイバを磁化するやり方はFDAも認可しており、その合成素材の各部に超微弱な磁界を与え、液状プラスチックに浸したセラミックファイバを最終製品の仕様に従って整列させる。それは、強度のある素材を押出成形によらずに成形する、巧妙なやり方だ。

システムはまだ試験中だが、実用化はもうじきだ。

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スタンフォード大学の研究者らは自閉症の治療にGoogle Glassを取り入れる

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GoogleがGlassの実証研究を再検討するなか、スタンフォードの研究者らはこの端末を自閉症の子供が感情を認識し、識別するのを助けるために活用している。

スタンフォード大学の事務所ビル内にひっそりと存在する小さなオフィスでCatalin VossとNick Haberは、自宅でも自閉症の治療を続けられるよう、顔を認識してトラックする技術と機械学習を組み合わせる研究を行っている。この Autism Glass Project(自閉症治療のGlassプロジェクト)は、スタンフォード医科大学院のWall Labの取り組みの一つで、月曜日の午前中に研究の第2フェーズをローンチしたと伝えた。

このソフトウェアは機械学習を活用して、Vossが顔の「アクション・パーツ」と呼ぶ特徴を検知して抽出する。

プロジェクトの第2フェーズでは、100人の子供を対象とし、自閉症を自宅で治療するためのシステムの有効性を調査する。Autism Glass Projectのソフトウェアは、端末が向けられた人の顔の感情を識別し、端末を装着しているユーザーに対してその人の表情を言葉で表す。

画像認識を活用して感情を子供たちのために翻訳することは、ほんの最初のハードルに過ぎない。チームが取り組んでいるさらに大きな課題は、子供たちが端末から学び、最終的に端末がなくても良いようにすることだ。

「いつも装着していなければならないものにはしたくありませんでした」とHaberは強調する。

端末がない状態での学習を検証するため、チームはプロジェクトの第1フェーズを昨年ローンチした。その間、研究所内で40の研究を行った。当初、Wall Labは一台のGoogle Glass端末しか所有しておらず研究には制限があったが、Google がさらに35台の端末を寄付したこと、そして今年の6月初旬にはPackard Foundationが37万9408ドルをこのプロジェクトを補助金として寄付したことで状況は好転した。

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子供たちとコンピューター画面とのインタラクションを研究した後、チームは子供たちが「周囲の環境と関わる」ことができる第2フェーズを設計したとVossは話す。彼らのチームは、MITのMedia Labが開発した「Capture the Smile(笑顔をつかまえよう)」というゲームを研究に採用した。

このゲームでは、Glassを装着した子供たちは特定の表情の個人を探す。このゲーム内のパフォーマンス、そして動画分析とクイズ内容を合わせてモニタリングすることで、各研究参加者の持つ自閉症の「数量的な自閉症状の表現形」を導き出すことができる。自閉症状の身体的な表れを数値的に観察することで得られるものだ。それを長期間トラックしていくことで、チームは端末を利用することで子供たちの感情認識を助けていることを実証することができるだろう。

研究の第2フェーズは数ヶ月間に渡って行う予定だ。このプロジェクトの独自のテクノロジーにより自閉症の治療プロセスに保護者が深く関わることが可能となる。

「子供が母親にどれくらいの割合で話をしているかや、子供が母親を見ている時間などを知ることができます」とVossは言う。

この研究で子供たちは、Google Glassの端末を日に3回、毎回20分ほど装着する。Wall Labの研究者にとってそれだけの時間でも、子供たちが何を見ているかを分析することで視覚的な関わりが感情を認識するプロセスにどのような役割を果たしているかを深く理解にすることにつながるという。

プロジェクトの第2フェーズはおおがかりのようだがVossと彼のチームにとってこれはまだ多くあるステップの内の最初の方だという。Wallはこの治療法が補償され、広く利用できるようにするためには、臨床データを集め、米国医師会の承認を得る必要があるという。

Wall はこのテクノロジーが広く臨床の場で使用が認められれば、このチームの自閉症治療のボトルネックを広げるという目標を達成できると話す。現在この研究には100名ほどの参加者がいるが、研究を続けることでこれまでにない広範なデータセットを獲得し、ソフトウェアと技術を改良していくことができるだろう。今日から彼らのウェブサイトで、プロジェクトの参加希望者の受け付けを開始している。

彼らのテクノロジーが広まるのはもう少し先のことだが、この技術は自閉症のスーパーヒーローを描いた小説のシリーズにも取り上げられている。Alexei Russell著の「Trueman Bradley」シリーズの2つ目の本で、主人公は感情を「見る」ことができる眼鏡を受け取る。これは、Voss、Haberと彼のチームへの賞賛だ。

「考えてみると、私たちは自閉症の子供たちにスーパーパワーを与えているのとそう違わないようです」とVossは話す。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

AppleのResearchKitが新たに自閉症、てんかん、メラノーマの研究調査に対応

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AppleはResearchKit のプログラムにおいて新たに3校の大学とパートナーシップを組み、3つの研究に対応する。今回Appleは 自閉症てんかんメラノーマの調査研究を手助けすることとなった。

ResearchKitのおさらいだが、これは研究者が特定の研究目的のために患者の同意を得て、アンケート調査や参加者にタスクを行うように依頼できる一連のツールだ。ResearchKitで研究者はAppleの端末を研究に活用することができるようになる。

ユーザが情報を共有することに同意した場合、研究者はiPhoneやApple Watch、さらにはiPadやiOSのアクセサリからデータを収集することができるようになる。血圧や血糖値などを簡単に計測することができる。研究者は端末に内蔵されている加速度計、ジャイロスコープ、心臓モニター、GPSセンサー、マイクなども活用することができる。

デューク大学は自閉症の研究を行っている。彼らは、前面のiPhoneのカメラを利用して、幼い子どもの動画に対する反応を感情を検知するアルゴリズムで測定する。それにより、子どもがまだ幼い年齢でも自閉症のサインを早期に発見できるようになる。

ジョンズ・ホプキンス大学はEpWatchアプリを開発した。Apple Watchにも加速度計を搭載しているため、てんかん発作の始まりと継続時間を計測するのに最適だ。発作を検知した場合には、家族などに通知することができる。発作のデータを他の患者の大量のデータセットと比較することは、病の理解につながる。

オレゴン健康科学大学はメラノーマの研究を行っている。写真を使用して、ほくろの拡大とメラノーマのリスクについて詳細な研究を行う。最終的に同大学は多くのほくろの写真を解析することで、メラノーマの検出アルゴリズムを構築する予定だ。

ResearchKitには新しく能動的に行う共通タスクのモジュールもフレームワークに追加された。ResearchKitで聴力の衰えの検出、刺激に反応するまでの時間、歩行テスト、記録テストといったタスクを製作して、研究に活用することができる。

ResearchKitの目的は医療研究への参加をもっと身近にすることだ。そして現在、研究者がユーザーと協力したい場合、そしてユーザーがApple端末を保有していればそれができるようになった。ResearchKitはすでに喘息、糖尿病、パーキンソン病などの研究のために用いられている。10万人がすでにResearchKitの調査に登録している。

これが重要なのは大手コンシューマー向け電子製品企業しか、大規模なデータに基づいた研究に必要なコンシューマーへのリーチを実現できないからだ。世界中でiOS端末は何千万台と利用されていて、そのユーザーベースのほんの数パーセントしかResearchKitの研究に登録しなかったとしても、医療研究において意味のある影響をもたらすことができるだろう。

AppleはResearchKitから何も得ることはない。Appleはフレームワークに定期的に新機能を追加するなど改善のためにリソースを提供している。AppleがResearchKitを重要な取り組みに位置づけていることでResearchKitはなおさら素晴らしい取り組みになっている。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

手を切断した子どもたちのためにディズニー映画のキャラクターを模したバイオニック義手を作るOpen Bionics

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バイオニックハンズ(bionic hands, 生体工学で作る手)のOpen Bionicsが、手術で手を切断した子どもたちのために、Iron Man的やElsa的な手と腕を作っている。〔アイアンマンとアナ雪のエルサ。〕

Open Bionicsは、義手のデザインがMarvel(コミック)やFrozen(「アナ雪」)、Star Warsのデザインなら子どもたちが喜ぶ、と期待している。

“子どもたちは退屈な理学療法が嫌いだけど、ヒーローになるための訓練なら楽しいだろう”、とOpen BionicsのWebサイトの声明文は述べている。“単なる医療器具ではなくて、彼らの大好きなキャラクターを模したバイオニックハンズを子どもたちはもらうのだ”。

Walt Disney Companyが美術チームを同社に無償で派遣し、またMarvelとFrozenとStar Warsの無料ライセンスが、このプロジェクトのためにOpen Bionicに提供された。

“子どもたちは理学療法を受けるのではなくて、ジェダイのトレーニングを経験する。すばらしいと思うね”、とDisneyの人が本誌TechCrunchに語った。

このスタートアップは、Techstarsが今展開しているDisney Acceleratorプログラムから生まれた。本誌TechCrunchはチームにインタビューできたので、下のビデオをご覧いただきたい。

 

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa)。

ニコチン依存症の治療アプリを開発するキュア・アップが1億円を調達

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本日、ニコチン依存症向けの治療アプリを製作するキュア・アップBeyond Next Venturesから約1億円を調達したと発表した。今回TechCrunch Japanは、キュア・アップの代表を務める佐竹晃太氏に話を聞いた。キュア・アップは、佐竹氏が2014年7月に立ち上げたスタートアップだ。佐竹氏は呼吸器内科医として日本赤十字社医療センターなどに勤めた経験のある医師でもある。また上海の中欧国際工商学院でMBAを取得し、さらには米国のジョンズ・ホプキンス大学で医療インフォマティクスを修めている。

キュア・アップは医薬品や旧来の治療方法ではなく、患者の身近にあるスマートフォンを治療の一環に取り入れるアプリを開発している。現在着手しているのは、慶応義塾大学呼吸器内科学教室と共同開発している「CureApp禁煙」アプリだ。このアプリは現在、医療機器として承認されるための臨床試験を行っている最中だという。「アメリカでは医療にITを活用することが進んでいて、医療とITを組み合わせたサービスの効果が実証されています」と佐竹氏は言い、キュア・アップのアプリでも高い効果が得られるよう開発を進めているという。近い将来、患者が禁煙外来を受診すると、処方の一環としてアプリが提供できるようになることを目指している。

アプリの仕組みとしては、患者はその日の体調をアプリに登録すると、アプリに組み込まれたアルゴリズムが医師の代わりに入力した情報と患者の禁煙ステージを鑑みて、適切な医療情報やガイダンスを提供するという。ガイダンスの具体的な内容について佐竹氏は言及しなかったが、アプリは診療行為を担うと強調する。患者の担当医師は、患者がアプリに登録したログを確認することで体調の変化を知り、治療計画の策定に役立てることができるそうだ。

「スマートフォンを介した治療により、これまで病院の中でしか提供できなかった医療を患者がどこにいても届けられます」と佐竹氏は言う。これまでのヘルスケアアプリの多くは病気の予防に特化したものが多かったが、キュア・アップは治療に特化したものを提供していくそうだ。

Apple端末のヘルスケアアプリやNoomなどの食生活や運動をトラックできるアプリが普及し始め、ヘルスケアの分野に注目が集まっている。ニコチン依存症を含め、うつ病などの精神疾患、あるいは糖尿病やパーキンソン病などの慢性疾患は長期に渡る体調管理が治療にとって重要だ。今後もモバイルやウェブを活用し、便利でそれぞれの患者に応じた医療サービスが登場してきそうだ。

テクノロジーが心身の健康のためにメンタルヘルスと身体面の医療を結びつける

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編集部記Arun Guptaは、Crunch Networkのコントリビューターである。Arun GuptaはQuartet HealthのファウンダーでCEOである。Quartet Healthは、行動習慣上の健康管理テクノロジー企業で、医療提供者と行動習慣における医療従事者のシームレスなコラボレーションを可能にする。

電子医療記録(EMR)は普及してきているが、まだ必要なことがある。EMRは医療の改善やデータのやりとりを前提に設計されているが、各記録をつなげるレイヤーがまだ欠如している。医療提供者は相変わらず電話やFAXでコミュニケーションを取っている。患者も個人の医療履歴を病院の予約の度に持ち歩いたり、記憶を頼りに伝えている。

しかし、私はヘルスケアに起きるだろう次世代のイノベーションの見通しは明るいと考えている。EMRの上を横断するアプリができるだろう。EMRは「閉鎖的」であるべきだと多くの人は考えているが、サードパーティーのソリューションと上手く連携することができると証明した者もいる。Athenahealthはその内の一社だ。彼らは外部のアプリとEMRを連携させた先駆者だ。更には、医療提供者のパートナー向けのサードパーティー・ソリューションのマーケットプレイスを構築している。

アプリがiPhoneをタクシーを呼んだり、心拍のモニタリングをしたり、食料品の配達依頼をしたりするツールに変えたようなことがEMRでも起きる。EMRの上に広がるアプリは、医療提供者が自身のワークフローを管理し、情報共有を円滑にすることで、患者に遅滞なく整った医療を提供することが可能となる。インターネットに接続したヘルスケアのテクノロジーで最も重要な部分は、医療関係者同士のコラボレーションが可能になることだ。

医療提供者のコラボレーションは医療のどの分野においても重要なことだ。しかし、行動習慣の健康管理(メンタルヘルス、そしてアルコール依存などの物質使用障害)の分野においてもそれは揺るぎない事実だ。コラボレーションの欠如がもたらすコストは非常に高くなる。その理由は、多くの場合、人の行動習慣の状態と身体の健康状態が密接に関連しているからだ。

 

いくつかの企業は、スマートフォンで行動の変化を検知する方法を開発した。行動の変化からユーザーの精神状態について多くのことが分かる。

最近の研究で、喘息を持つ人がうつ病を発症する確率は2.5倍になることが分かった¹。別の研究では、タイプ1と2の糖尿病患者は、生涯の内に大うつ病を患う確率が2倍高いことを示唆した²。

他にも多くの証拠が、行動習慣の状態と身体の健康状態が相互に関連することを裏付けている。身体的な疾患はメンタルの不調を引き起こすことがあり、メンタルヘルスの悪化は病を発症するリスクを高めるのだ。

慢性的な病の患者で、更に行動習慣上の疾患を持つ者はヘルスケアシステムに大きな影響を与える。医療費にかかる金額は、行動習慣に問題のない同様の慢性病の患者より平均で50から175%以上増加する。これは患者にとってもヘルスケアシステム全体にとっても負担となる。また、現在アメリカにおけるうつ病と認められるケースの半数近くは治療を受けていない。プライマリーケアの場面で病に気づき、指摘された場合でも、診断が混同される場合もある。

一方、私たちの研究分析では、行動習慣分野の医療提供者から治療を受けた患者の場合、総額の医療費は最終的に低くなることが分かった。またMillimanは、身体面の医療と行動習慣のヘルスケアサービスを統合した商業マーケットには年間で合計1620億ドル規模のビジネス機会 があると予測している。重要なことは、業界がテクノロジーの力を借りて、フィードバックのあるコラボレーションを促す時が来たということだ。

メンタルヘルスの治療を求める患者はこれまで高額で手続きが面倒な上、偏見の目で見られるシステムを利用しなければならなかった。しかし、遠隔医療のイノベーションが市場の力学を変えている。1DocWayは、遠隔の精神医療のプラットフォームをブラウザベースで提供し、イノベーションを促進している。

ウェブカメラとインターネット接続さえあれば、患者はプラットフォームにアクセスしてメンタルヘルスの医療提供者とつながることができる。患者が望む形で、彼らが最も安心できる環境から利用できる。また、医療環境が整備されていない場所や郊外のコミュニティーにいる患者にとって、そもそも治療を受ける術がないということが問題で、それが医療を受ける際の障害になっていた場合が多い。

また、医療提供者の視点からも、テクノロジーを採用するコストはその効果に見合うものだと言える。サウスカロライナ州のメンタルヘルス部門でジェネラル・カウンセルを務めるMark Binkleyは、US Newsに多くの緊急救命の患者は、対面で精神科医とのコンサルティングを行うまで、そこに留まることが許可されることについて詳しく説明した。

どの緊急救命医に尋ねても、これは大きな課題であると答える。この問題を解決するためにサウスカロライナ州は、インターネットで精神科医との面会を行うリアルタイムの診察を導入し、成果を上げてきた。これまで2万2000回の診察が行われ、参加病院の医療費の累計削減額は、患者の一つの病の治療につき1400ドルになった。また多くの場合、実際の面会より、遠隔医療の方が患者の満足度が高いことが分かった。

他にも多くの証拠が、行動習慣の状態と身体の健康状態が相互に関連することを裏付けている。

もう一つ、行動習慣のヘルスケアテクノロジーで進化した部分はツールだ。スマートフォンのアプリ、ウェアラブル端末、オンラインの自助コミュニティーなどが挙げられる。患者はこれらを利用することで、自分の行動習慣の状態と慢性的な疾患の健康状態を管理することができるようになった。認知行動療法(CBT)は、これまで面会する形式のセラピーを行ってきたが、myStrengthのような企業は近年、この治療法をコンピューターからでも利用できるようにした。

CBTは、患者に自身のネガティブな思考や行動を認識して再構築する技術を教えるもので、うつ病、不安や不眠症の改善に高い効果を発揮する。病への偏見や地理的な理由で対面での治療を躊躇していた患者は現在オンラインCBTといった治療に向かっている。多くの保険会社もこれらの治療法に対応し始めている。

いくつかの企業は、スマートフォンで行動の変化を検知する方法を開発した。行動の変化からユーザーの精神状態について多くのことが分かる。Ginger.ioは、動き、テキストや電話のやりとりのパターンといった情報をユーザーのモバイル端末のバックグランドで収集 する。その情報から、特定のメンタルヘルス障害につながる危険性のある行動を検出することができる。

例えば、ユーザーが他の人と連絡せずに孤立するパターンを示したり、何日か続けて仕事を休み自宅から離れなかった場合、会社はその人がうつ病のリスクに晒されていることを検出できる。それを元に、治療のために適切な処置ができるように介入することができる。

特定の市場に向けた電子健康記録(EHR)システムの登場により、行動習慣のヘルスケア提供者はテクノロジーの恩恵を受けている。行動習慣の医療機関は、他のプライマリーケアを提供する医療機関とは異なるワークフローで運営しているため、既存のEHRのベンダーはこの分野の医療従事者のニーズを満すほどには成熟していなかった。Qualifactsといった企業は、行動習慣医療に特化したEHRのソリューションを牽引し、メンタルヘルスケアの対応や医療サービス管理の市場に変化をもたらしている。

簡単に言えば、医療が価値を主軸とした方向に転換することで、ヘルスケアのステークホルダーは、医療機関が協力しないがためにかかるコストを受け入れることができなくなったということだ。遠隔医療のソリューション、モバイルアプリ、EHRといった行動習慣向けのテクノロジーがそれぞれをつなぐことになるだろう。

中核となるシステムを設置し、絶えず進化を促していくことで、テクノロジーは医療システムが患者と向き合う方法を再構築する強大な力となるだろう。行動習慣上の健康と慢性疾患の治療のためのマネジメントは今に統合することになる。患者の生き方、そしてそれぞれの組織は、それを必要としている。

参照:
1 Strine TW, Mokdad AH, Balluz LS, Gonzalez O, Crider R, Berry JT, Kroenke K. “Depression and Anxiety in the United States: Findings from the 2006 Behavioral Risk Factor Surveillance System.” Psychiatric Services, vol. 59, no. 12, 2008.
「アメリカにおけるうつ病と不安障害:2006年の行動習慣リスク要因調査システムからの考察」
2 Gonzalez JS. Depression. In: Peters A, Laffel L, eds. Type 1 Diabetes Sourcebook. 2013:169-179.
「タイプ1糖尿病ソースブック」
3 Quartet Health Analysis, 2015.
2015年、Quartet Healthによる分析結果
4 Quartet Health Analysis, 2015.
2015年、Quartet Healthによる分析結果
5 “Economic Impact of Integrated Medical-Behavioral Healthcare.” American Psychiatric Association and Milliman, Inc. April 2014.
「医療と行動習慣ヘルスケアの統合が与える経済的な影響」アメリカ精神医学会とMilliman, Inc、2014年4月

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

Alphabetが国立精神衛生研究所の長年(13年)の所長をGoogleのライフサイエンスチームに招聘

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Alphabetが同社のライフサイエンス・グループのために、国立精神衛生研究所の所長Thomas Inselをスカウトした。同研究所が発表した声明文が、そう述べている。
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Inselは13年間務めた所長の座を11月1日付けで下りることになる。この大物スカウトは、 Alphabetが精神医学に関心を持っていることのサインだ。心の病は世界的に、医療や介護などのサービスが極端に不十分な分野のひとつだ。

Googleは本誌宛に、次のような声明をくれた:

Tomには、Googleのライフサイエンスチームが、精神障害の理解と診断と治療という大きな課題にいかなる貢献ができるか、を探求するために、参加していただいた。チームへの彼の参加はきわめて喜ばしく、今後、彼から多くのものを共有できることを、期待している。

Inselが実際に何をやるのかは、まだ明らかでないが、この分野の最高の権威であるだけに、Alphabetの支援でこれまでよりもさらに強力に、自身の研究を続けるものと思われる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Eko Coreは、発明されてから200年間変わっていない聴診器をデジタル化する

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聴診器は数カ月後に200才の誕生日を迎える。医療に大きなブレークスルーがあった1816年から聴診器は今でも医者に訪れた際には必ず目にするものだ。聴診器は医療を象徴するものにもなっている。

この200年間、聴診器はほとんど変わっていない。今使用されているものは、17世紀に使用されていたものとさほど違わないのだ。心拍音を聞く方法はマニュアルなままで、心拍音の異常を判別するのは医者の耳を頼りにしている。

しかし、バークレーに拠点を置くEko Devicesというスタートアップのお陰でそれも過去のこととなるだろう。彼らが開発した機器は、Class Ⅱの医療機器としてFDA(アメリカ食品医薬品局 )に承認された。このように承認された中で、彼らが最も若いチームだ。共同ファウンダーのConnor Landgraf、Jason BelletとTyler Crouchは、カリフォルニア大学バークレー校を最近卒業し、200才になる医療機器にデジタルな機能を与えた。

Eko Coreと呼ばれるこの機器は、一般的な聴診器に付けて使い、クラウドに心拍音のデータをストリームするソリューションを提供する。これにより、医師は心拍音を分析するのにより豊富な情報を得ることができる。

「細かい心雑音を聞き取るのは難しいのです。心拍の速い患者を診断する場合は特にそうです」とLandgrafは言う。「心臓の専門医も、心臓の音を聞くのは音楽的な耳を培うのと一緒で、習得するには5年から10年の経験が必要です」。

Eko Coreを使用すれば、医師はモバイル端末から心拍音の音波を目で確認することができ、また音量を大きくして聞くことができる。視覚と聴覚の2つの側面からデータを記録することができ、それを他の医師や病院と簡単に共有することもできる。

医師が心雑音を検知し、心臓弁の問題、動脈の塞がりを当てずっぽうではなく、特定するために役立つのだ。

疑わしい心雑音のある小児科の患者の70%は心臓の専門医を受診する必要はないという。Ekoを使うことで、何万ドルとかかる不要な超音波心臓診断を避けることができ、節約にもつながるだろう。

「医師は聴診器による診断に自信がもてない状況に度々直面し、本来必要でないにも関わらず、心臓の専門医への受診を薦めています」とLandgrafは言う。

Ekoはスタンフォード病院とパイロット検証を行っていて、全員がEko Coreの機器を研修用ツールとして使用しているという。今日からEkoは、一般向けに機器単体を199ドル、聴診器とのセットを299ドルで自社から販売する。

これから数ヶ月、チームはEko端末で集めたデータを分析するアルゴリズムの開発を進める予定だ。このアルゴリズムで心拍音から病状をリアルタイムで特定できるようになる。「心拍音用のShazam」と医師の間では呼ばれているとLandgrafは言う。

「患者の身体を傷つけずに済む方法で、医師に患者の心臓で何が起きているかを伝えることができます。これは患者と医師を結びつける強力なツールです」とLandgrafはいう。「現在、患者の心臓の圧力を知るためにカテーテルを体内に入れる方法などがありますが、手術で切開しなければならず、効率的ではありません」。

病状を検知する機能は、来年のQ1内にローンチする予定だという。LandgrafはEkoから今後、患者の身体を傷つけずに医師が患者の心臓の動きを知ることのできる他のプロダクトも展開すると示唆した。

Ekoは2013年に創業し、これまでにスタンフォード大学のStartX Fund、FOUNDER.orgのファウンダーであるMichael Baum、Shazamの共同ファウンダーなどから合計280万ドルを調達している。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

抗生物質依存を防ぎつつ女性を尿路感染症から守るUqoraのサプリ・ドリンク、セックスの後に飲むと良いって

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合衆国では、お医者へ行く人が一日に約1000万人いるが、その二番目に多い理由が尿路感染症(urinary tract infection, UTI)だ。ものすごく不愉快で、抗生物質による治療を必要とし、治療せず放置すると感染が膀胱や腎臓に広がって命にかかわることもある。

女性の50%がUTIの不快さを知っている、と言われるが、今日バークリーでローンチしたUqoraは、その50%の女性にソリューションを提供する。

UqoraのファウンダSpencer Gordonは説明する: “UTIになると、細菌が尿路に入り込み尿道壁に付着する。当社のプロダクトは、細菌が尿道壁に付着することを防ぎ、細胞への侵入を阻む”。

製品としてのUqoraは、感染を防ぐことが実証されているさまざまなサプリメントの成分を抽出した、Crystal Light(ローカロリー粉末ジュース)ふうの無糖粉末ドリンクで、UTIに感染する可能性を75%減らす、という。

UTIの90%は、セックス、サイクリング、スパンデックスを着用した状態でのスポーツなど、細菌が入り込みやすい長時間の運動が原因だ。そういう運動をしてから1時間以内に、Uqoraを飲むとよいそうだ。

Gordonによると、臓器の位置・形状や免疫系には個人差があるので、UTIも、なりやすい人とそうでない人がいる。とくに、20%ぐらいの女性は、UTIになるたびに免疫系の反応がより激しくなり、苦痛や不快感が増すそうだ。

Uqora粉末ドリンクは10包入り一箱が25ドルで、今日からUqoraのサイトで買える。同社は今後、このような、人体を抗生剤の濫用から守るための製品を、いろいろ開発していくという。

この件についてGordonは曰く、“抗生物質は対症療法にすぎないし、たしかに効くことは効くけど、体内のそのほかの有益細菌も殺してしまうから、人体はそのほかの感染に対してより弱くなる。また抗生物質を多用すると、それに対する耐性ができてしまうので、ほかの深刻な感染症に罹患したとき、抗生物質が効きにくくなる”。

同社は来年、抗生物質を必要とする女性のそのほかの感染症を防ぐ、一連の製品を、出していくそうだ。

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IBMはMerge Healthcareを10億ドルで買収し、Watson Healthに医療用画像解析を加える予定

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本日、IBMは大型取引行うことを発表した。医療用画像解析を行うMerge Healthcareを10億ドルで買収し、Watson Healthに加える計画だ。

Mergeの技術は、アメリカ中の7500の医療機関で使用されていると、IBMは情報を開示した。同社はこれまで合計300億ものレントゲン写真、MRI、CTスキャン画像を解析してきた。日に日にその数字は増えている。IBMの研究者は、現在の医療データの90%は画像形式であると推測している。

これまでWatsonは、自然言語処理の開発を中心に注力してきた。話し言葉や書き言葉を解析し、一定の成果を出してきた。最近、IBMはWatsonの画像や動画の理解を進める研究を始めたとIBMのソリューションとリサーチ部門のsenior vice presidentであるJohn KellyがTechCrunchに話した。

IBMがMerge Healthcareを買収に乗り出したのは、特にこの機能を披露し、診断放射線学での分野の理解と研究を促進するためだ。

IBMはWatson Healthを今年の春に発表した。データ・ドリブンのヘルスケアを促すことが目標で、医療の専門家らが協力してWatsonを活用し、ヘルスケア体験の最適化(少なくても理論上は)を目指す。

情報が多すぎる

一日に医療従事者が取り扱う情報は、人の頭脳では把握できない量になっている。医療記録は、何百、何千ページに及ぶこともあり、人間がそれら全てのコンテンツを素早く読んで理解することは実質不可能だ。

とても複雑な医療画像に至っては、訓練された医者でも、その画像と最新の医療研究、患者の医療記録などとどのように関連するかを理解するのは容易なことではない。

「スキャンと画像を映す機械は素晴らしく改良されました。とても精細な画像や動いている映像を生成できる場合もあります。医師は、あまりに膨大な画像コンテンツに圧倒されてしまいます。Watsonはこのような複雑な画像を翻訳し、医師の理解を助けます」とKellyは話した。

レントゲン技師は特に増大する情報量への対応が課題であると、IBMと協力し、Watsonの開発の初期段階から関わっている医師のElliot Siegel博士は話した。Siegelはメリーランド・スクール・オブ・メディスン大学、診断放射線医学部の副理事で教授であり、Affairs Maryland Healthcare Systemの放射線学のチーフを務めている。

レントゲン技師が扱う画像の数は、ここ20年から25年の間に100倍にもなり、医師の中には一日10万の画像を見る場合もある。全ての画像情報を処理し、正しい診断を行うには、患者のこれまでの医療記録、研究データ、更には遺伝子情報と照らし合わせる必要がある。Siegelは、これだけ多くの情報に直面する場合、コンピューターが助けになることは明らかだと話した。

「自動的に病気を検出し、測量して病を数値で表すことができます。コンピューターの助けでそれが実現できます」とSiegelは言う。

機械が医療判断をしていると懸念を覚える必要はないとKellyは説明する。これは、人同士が協力する方法に焦点を当てていて、大量の情報を翻訳して理解するために機械の力を借りるということだと言う。

Siegel博士も賛同する。「一段と早く、賢くなるコンピューター技術をどのように活かせば、素早く診断ができるかを検証しています」。更に研究を進めば、医療の専門家の役に立つためにいかにこのようなツールを活用すべきか、そして人間が得意とすることと機械が得意とすることの双方を学ぶことも必要だと話した。

Merge Healthcareの買収はまだ完了していない。規定上の問題を解決し、株主の承認を得る必要がある。これらのハードルを超えれば、年内にも取引が完了する予定だ。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

子どもたちのために3Dプリントによる義手義足を広めるボランティア団体e-NABLE

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先週ロサンゼルスで行われた2015年スペシャルオリンピックス日本サイト)で、Ariという名前の5年生の女の子が、Googleのブースを訪れた。そのブースには、Googleの障害者サポート事業”インパクトチャレンジ“に関する情報がある。でもAriが知らなかったのは、この大会の前と後とでは自分の人生が変わることだった。

AIO Roboticsのボランティア数人がブースに立ち寄って、生まれつき指のない彼女の左手に、カラフルな義手を取り付けた。実はそれは、3Dプリントによる子どものための義手や義足を広めようとしているボランティアネットワーク“e-NABLE”のデモ行事で、事前の手配によりマスコミも大きく取り上げた。

明るいピンク色の義手をつけてもらったときの、Ariの大きなスマイルがすばらしい。何度でも、見たくなるね。

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もちろん、こんな例はもっともっとある。下のビデオでは、8歳のIsabellaが、やはりe-NABLEの努力で新しい義手をつけてもらっている:

テクノロジって、ときには、ほんとにすばらしいよね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

もっと簡単に誰もが医者になれるべきだ…医学教育のインターネット化に向かう第一歩BoardVitals

Medicine doctor hand working with modern computer interface as medical concept

BoardVitalsは、基本的には難問をたくさん集めたレポジトリで、これから医師試験を受ける人たちが勉強のために利用するサイトだ。しかし同社は、医師資格試験を主宰する州の医事委員会(medical board(s))と、そこが行う試験を変えることによって、医学教育そのものを変えたいと願っている。

同社は小額のシード資金を獲得したあと、Rock Creek CapitalからシリーズAで110万ドルを調達した。同社はこれまで3万名あまりの医師を教育し、150の教育機関で利用されている。

学生と医師は、同社のサービスを利用して、事前に選ばれた何千もの質問を使って試験の練習をする。質問はすべて、これまで医事委員会の試験で使われた本物の質問に基づいており、この練習で自分の知識を洗いなおし、試験に備える。

“質問集をコンピュータ化/ネット化しただけじゃない。最終的には、医学教育の新しいエコシステムを作りたいんだ”、と協同ファウンダのDan Lambertがプレスリリースで言っている。“うちのプラットホームは、すべてのコンテンツがたえず評価され、毎週何百ものフィードバックが来るから、コンテンツを頻繁に確実にアップデートせざるをえないのだ”。

これでお分かりと思うが、究極の目標は医事委員会の試験を完全にネット化し、そしてさらに究極的には、基礎的医学教育をWeb上で行うことだ。YouTubeで頭蓋開口術や放血について教えるのは無理でも、瘴気理論や水銀治療の基礎なら、実証済みで信頼に足るソースから学べるだろう。精神医学や腫瘍学の基礎も。BoardVitalsのようなツールは、その方向へ向かう第一歩だ。

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