3Dプリントで作られたTerran 1ロケットの実証打ち上げをRelativity Spaceは2022年初頭に延期

3Dプリントによるロケット開発企業のRelativity Space(レラティビティ・スペース)は、同社の軽量ロケット「Terran 1(テラン1)」の実証打ち上げの日程を、2021年冬から2022年初頭に延期した。同社はTwitter(ツイッター)でスケジュールの変更を発表するとともに、打ち上げがフロリダ州のケープカナベラルから行われることを明らかにした。

#Terran1の最新情報をお伝えします。

ステージ2が、構造試験台で極低温圧力証明+油圧機械式座屈性能試験に合格したとお伝えできることを大変うれしく思います。次は S1の構造テストです。

Terran 1のデモンストレーション打ち上げは、2022年初頭にケープカナベラルLC-16から行われることになりました。

Relativity Space

また、Relativityによれば、ステージ2は極低温圧力と油圧機械式座屈性能の試験に合格したという。今後、ステージ1の構造試験が行われる予定だ。

今回の延期のニュースは、RelativityがTerran 1を2021年の冬に打ち上げると(同じくツイッターで)言ってから、わずか2カ月後のことだった。軌道飛行実証を行うこのロケットにはペイロードは搭載されないが、同社はすでに2022年6月に2回目の打ち上げを予定しているという。そちらのロケットは、NASAとのVenture Class Launch Services Demonstration 2(VCLS Demo 2)契約の一環として、CubeSat(キューブサット)を地球低軌道に運ぶことになる。

同社の広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、打ち上げ日が延期された理由は「1つではない」とのこと。「新型コロナウイルスの影響でいくつかのプロセスを遅らせている間に、Relativityはこの1年間で、Terran 1のアーキテクチャを改良し、まったく新しいエンジンを開発し、素材をアップグレードしました」と、広報担当者は語り「パートナーとの連携を円滑に進めるため、実証打ち上げの日程を2022年初頭に変更しました」と続けた。

今回の打ち上げでは、3Dプリンターで全体が作られたロケットが、世界で初めて宇宙へ飛び立つことになる。Relativityの技術は投資家の関心を集めており、2021年の夏に行われた6億5000万ドル(約714億円)の資金調達で、評価額は42億ドル(約4600億円)にも達したほどだ。同社はTerran 1に加えて、2機目の「Terran R(テランR)」と呼ばれる重量物運搬用の完全再利用可能なロケットの開発も進めており、早ければ2024年の打ち上げを目指している。

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画像クレジット:Relativity Space

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ロケット企業Astra初の商業軌道打ち上げに米規制当局がゴーサイン、8月末にデモミッション

ロケット打ち上げ企業のAstra(アストラ)は、米国航空局(FAA)から重要なライセンスを取得し、2021年8月末に予定されている同社初の商業軌道打ち上げにゴーサインが出た。

AstraのChris Kemp(クリス・ケンプ)CEOはこのニュースを米国時間8月19日にツイートし、FAAからの打ち上げオペレーターライセンスは2026年まで有効であると付け加えた。同社の広報担当者がTechCrunchに語ったところによると、この新しいライセンスは、同社が以前に取得した打ち上げライセンスを変更したもので、同社の現行バージョンのロケットに適用されるという。

FAAのウェブサイトに掲載された同ライセンスは、Astraがアラスカ州コディアックのPacific Spaceport Complex(PSCA、旧Kodiak Launch Complex / コディアック打上げ基地)にある同社の発射台から、Rocket v3の飛行を行うことを許可するものだ。期限は2026年3月9日まで。これにより、Astraは現地時間8月27日に米国宇宙軍のためにデモンストレーションミッションを実施することが可能になり、2021年後半に予定されている2回目の打ち上げにも道が開かれた。

2021年は、Astraにとって躍進の年になりそうだ。8月27日に初の商業軌道打ち上げを行うだけでなく、同社はNASDAQでティッカーシンボル「ASTR」での取引を開始した。同社は、特別目的買収会社(SPAC)であるHolicityと、プロフォーマの企業価値21億ドル(約2305億円)で合併し上場した。

2021年の夏の初めには、Astraは宇宙空間推進システム企業のApollo Fusionを買収した。電気推進システムは物体を低軌道から高軌道に移動させるのに有効であるため、この買収は、Astraが将来の打ち上げについてどのように考えているかを示すヒントとなるかもしれない。

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画像クレジット:Astra / John Kraus

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

さくらインターネットは8月19日、衛星データとAI画像認識技術を活用して駐車場として利用できそうな場所を検出するツール「Tellus VPL」のα版を、衛星データプラットフォーム「Tellus」(テルース)の公式ツールとして、無料提供を開始した。

同ツールは、さくらインターネットのほか、ディープラーニングをはじめとするAI技術で課題を解決するRidge-i(リッジアイ)、駐車場予約アプリ「akippa」を運営するakippa(アキッパ)の3社で研究開発した。

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

「Tellus VPL」の新規駐車場用スペース解析結果イメージ画像

衛星データから駐車場として活用できそうな空き地などを見つけ出す同ツールは、空いている月極や個人の駐車場、空き地などを駐車場として一時利用するシェアリングサービスを展開するakippaの提案から生まれた。通常は、そうしたスペースを足で探さなければならず、大変な労力とコストがかかる。そこで、さくらインターネットがプロジェクトの取りまとめと衛星データの提供を、Ridge-iが機械学習とディープラーニング技術を使った候補地検出プログラムの開発を担当し、開発を進めた。akippaは、このツールの本格活用に向けて駐車場開拓パートナーとの連携を進めることにしている。

このツールが利用できるTellusは、さくらインターネットが経済産業省の「政府衛星データのオープンアンドフリー化・データ利活用促進事業」として開発・運用を行う日本初の衛星データプラットフォーム。衛星データの提供のほか、衛星データを活用するためのツールや関連コンテンツなども提供している。実際にこれを使って駐車場候補地が検出されているかを検証した記事が、Tellus公式メディア「宙畑」(そらばたけ)に掲載されている。衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

さくらインターネット、Ridge-i、akippaは、「Tellus VPL」の改良を重ね、衛星データの実用化に向けて取り組んでゆくと話している。

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カテゴリー:宇宙
タグ:akippa(企業・サービス)画像解析(用語)さくらインターネット(企業・サービス)人工衛星(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)リッジアイ(企業)日本(国・地域)

衛星通信のPlanet LabsとGoogle Cloudがデータ分析契約で提携強化

衛星通信事業者のPlanet Labsは、Google Cloudとの既存のパートナーシップを強化する。新たな契約により、Planet Labsの顧客は、データの保存や処理にGoogle Cloudを利用できるほか、データ分析倉庫BigQueryといったGoogle以外のプロダクトにもアクセスできるようになる。

両社によるコラボレーションの始まりは2017年にさかのぼる。そのときGoogleは、同社の衛星画像事業Terra BellaをPlanetに売却した。その売却協定の一環としてGoogleは、Google Earthの画像の利用をPlanetにライセンスする複数年の契約に署名した。Planetはまた、同社の内部的なデータ処理とホスティングにGoogle Cloudを利用している。

今回の最新合意でPlanetの顧客は、BigQueryを利用して膨大な量の衛星画像データを分析でき「需要が増加している全惑星規模の衛星データの分析を、クラウドの力を利用して行いたい」とPlanetのニューズリリースでは述べられている。

Planetのプロダクトとビジネスを担当するKevin Weil(ケビン・ウェイル)社長は「Planetの顧客はスケーラブルな計算機能力とストレージを求めています。またGoogle Cloudの顧客は衛星データとその分析にもっと広範なアクセスをしたいと願っています。このパートナーシップは両者にとってWin-Winであり、顧客の事業運用のDXを助け、Planetのユニークなデータセットにより、デジタルファーストの世界で競争できるようにします」という。

Planetはおよそ200の衛星のネットワークを運用しており、それはどの国の政府よりも大きい。また集めたデータに対する分析も提供している。2021年7月、同社はSPACのdMY Technology Group IVとの28億ドル(約3085億円)の合併による上場を発表して、その他の多くの宇宙企業の仲間入りをすることになった。この取引でPlanetには5億4500万ドル(約600億円)のキャッシュが入ると思われるが、それにはBlackRockが管理するファンドであるKoch Strategic Platforms、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏のTIME Ventures、そしてGoogleからの公開株へのプライベート投資2億ドル(約220億円)が含まれる。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Planet LabsGoogle CloudGoogle人工衛星衛星コンステレーション

画像クレジット:Planet Labs

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Aurora Propulsion Technologiesの宇宙ゴミ除去技術が2021年第4四半期に宇宙へ

小型衛星用のスラスターや軌道離脱モジュールを開発しているフィンランドの企業Aurora Propulsion Technologies(オーロラ・プロパルション・テクノロジーズ)が、自社の技術を初めて宇宙に送り出す。同社はRocket Lab(ロケット・ラボ)と契約し、2021年第4四半期に、初の「AuroraSat-1(オーロラサット1)」と呼ばれるキューブサットを、Electron(エレクトロン)ロケットのライドシェアミッションに載せて、地球低軌道に送り出す予定だ。

Auroraは2018年に創設されたスタートアップ企業で、その他にあまり類を見ない技術は、私たちの多くにとって「見えないところにある、気に留めないもの」である宇宙ごみという厄介な問題の解決に役立つと考えられている。

宇宙ごみ(軌道上デブリ)とは、宇宙空間に存在する不要になった人工物のことだ。米国防総省は、Space Surveillance Network(宇宙監視ネットワーク)を通じて、約2万7000個の宇宙ごみを追跡し続けているが、地球低軌道上には数百万個のごみが漂っていると推定されている。

打ち上げやその他の技術コストが低下し続けているため、地球低軌道上は今後ますます混雑する傾向にあり、長期的には私たちの周囲に浮遊する不要なごみが増える可能性があるということだ。

2021年末に予定されているRocket Labによる打ち上げは、Auroraが宇宙でその技術を実証する好機である。AuroraSat-1は2つのモジュールを備える予定で、1つ目のモジュールには、6基の「レジストジェット」スラスタが搭載されており、キューブサットの迅速な離脱と姿勢制御(衛星の向き)の調整を行う。また、同社は電荷を帯びたマイクロテザーを用いて衛星の離脱時に抵抗力を発生させる「Plasma Brakes(プラズマ・ブレーキ)」のテストも予定している。

AuroraSat-1は当初、宇宙輸送事業者であるMomentus(モメンタス)によって、2021年初めにSpace X (スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットを使ったライドシェア・ミッションで飛ぶ予定だった。しかし、Momentusが米連邦航空局の承認を得られなかったため、その飛行は中止された。

今回の変更について、AuroraのRoope Takala(ルーペ・タカラ)CEOは「Momentusが難しい状況になったことを踏まえて、私たちは今回発表したRocket Labのフライトに衛星を載せ替えなければなりませんでした」と、TechCrunchに語った。Auroraは2021年3月、2022年6月にMomentusと衛星を打ち上げる契約を結んだと発表していた。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Aurora Propulsion TechnologiesRocket Lab宇宙ごみ人工衛星

画像クレジット:Aurora Propulsion Technologies

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Blue Originは月着陸船のSpaceX発注に抗議し連邦裁判所でNASAと一騎打ちに

億万長者のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏が率いる宇宙企業Blue Originが、NASAを法廷に引っ張り出そうとしている。米国時間8月17日に同社は米連邦請求裁判所に、月着陸船の契約をライバル企業のSpaceXにのみ与えたとして同政府機関を告訴した。

裁判所が受け付けたその訴状は、有人着陸システムの提案に対するNASAの評価が「違法で不適切」であるとしている。

同社の広報担当者はTechCrunchに次のように語っている。「Blue Originは、有人着陸システムのNASAの取得過程に見出される欠陥を修復する試みとして、米連邦請求裁判所に訴状を提出しました。この調達過程と結果に見られる問題は、対策が講じられ、公正が回復され、競争が作り出され、米国の月への帰還が確実に安全になるべきです」。

その有人着陸システム(HLS)は、NASAが次に予定しているアルテミス計画の基幹的な部分であり、Apollo(アポロ)の時代以降初めて、人類を月面に帰還させるものである。NASAの計画では、2024年に人類を月の南極に着陸させることを目指している。

2021年4月、NASAはその契約を、29億ドル(約3170億円)で入札していたSpaceX1社だけに与えた。従来からリスクヘッジを重視してきたNASAが、今回に限って最初から1社に絞ったことは驚きだった。わずか数週間後にBlue Originと、同じく着陸船に入札していた国防関連の契約企業Dyneticsが、それぞれ別々に米会計検査院(GAO)に抗議した。GAOは後にNASAの決定を支持し「契約の発表は、複数の落札または単一の落札、または落札なしとする権利を留保している」と主張した。

GAOがNASAを支持する理由の詳細は、TechCrunchのDevin Coldeweyの記事にある。

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GAOの決定が発表されて、本件はSpaceXの勝ち、Blue Originの負けで一見落着したかに思われた。しかし連邦請求裁判所に提出された今度の新しい訴訟は、ジェフ・ベゾス氏の会社がそれを納得していないことの証拠だ。

NASAとしては、広報担当者がTechCrunchに、申立を受理し「目下、その詳細を調査中」と述べただけだ。

連邦裁判所に提出された書類がBlue Originの厳重な抗議を表しているとすれば、同社はソーシャルメディアに対しても別の攻撃を行っており、SpaceXのStarshipの信用を落とすことを目的とした一連のインフォグラフィックや、月へのミッションに使用するというNASAの決定を発表している。

画像クレジット:Blue Origin

そのインフォグラフィックスの1つはStarshipを指して、画像の横の赤い大きな文字で「あまりにも複雑でリスクが大きい」と指摘する。またその下には「これまで一度も軌道まで飛んだことがなく、まだ設計途上の打ち上げ船」とある。

今回の訴訟番号は1:21-cv-01695-RAHだ。現在、TechCrunchは、NASAにコメントを求めている。返事が届き次第この記事をアップデートしたい。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Jeff BezosBlue OriginSpaceXNASA裁判アルテミス計画GAO

画像クレジット:Joe Raedle/Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

連邦政府はSpaceXがNASAの月着陸船建造を受注したことに対するBlue OriginとDyneticsの異議を退ける

Blue Origin(ブルーオリジン)とDynetics(ダイネティクス)は、NASAがアルテミス計画で使用する有人着陸システムの建造をSpaceXにのみ委託するという決定を下したことに対し、いまだ強く抗議を続けている。この決定に対する抗議は 先日却下されたが、Blue Originが公然と疑問を呈した米国政府説明責任局の主張は誰でも読むことができる。ここでは選定からはずれた企業の訴えから、項目ごとの主要な主張内容を紹介する。

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(2020年は長い年だったので)よく覚えていない人のために説明すると、もともとNASAは、2024年に有人月着陸プロジェクトに向けた月面着陸船の構想・提案を得るため、 上記の3社を選んで早期の資金援助を行っていた。さらに次の段階では、可能であれば2社の案を選んで進めるとしていた。しかし、委託先が決まる時期が来ると、SpaceXのみが契約を獲得した。

DyneticsとBlue Originは、この決定に個別に抗議したが、その理由は共通している。1つ目に、NASAは約束通り2社を選定すべきであり、それをしないことはリスクをともない、反競争的でもあるということ。2つ目に、確保できる予算が少ないことがわかった時点で、選定の条件を調整すべきだったということ。3つ目に、NASAが提案を公正に評価せず、さまざまな点でSpaceXに偏った評価をし、他の2社には不利な評価をしたということだ。

米国会計検査院(GAO)は、これらの懸念をすべて報告書の中で解消している。 それにより、Blue Originの「NASAの権限は限定されているため、抗議に適切に対処できない」という後に続く異議は、負け惜しみのように聞こえることとなっている。

1社に決定

画像クレジット:SpaceX

2社ではなく1社と契約することについては、白黒はっきりとした答えが出ている。今回の提案依頼では、そもそも資金が十分にあることが前提である旨が何度も明言されていた。NASAは2社と契約を結ぶことを好み、望み、見込んでさえいたかもしれないが「最大2社」または「1社以上」と契約を結ぶということははっきりしていた。実際、もし1社だけが要件を満たしていて、他の2社はそれを満たしていなかったとしたらどうだろう。NASAは不適当な候補者に資金を投入する義務があるだろうか。答えは「ノー」だ。そして、それが多かれ少なかれ実際に起こったことだ。

報告書からの引用

提案依頼の段階で複数社との契約を締結する意図があった場合でも、提案を評価した結果、1社との契約のみを締結すべきと判断された場合、必ずしもそうする必要はないと認識しています。例えば、NASAの意図にかかわらず、契約を締結するうえで利用可能な資金を超えることはできません。

GAOの説明によると、NASAの意思決定プロセスでは技術的アプローチを最も重視し、次に費用、そしてマネジメント(組織、スケジュールなど)を重視したという。各社の提案はこれらの基準ごとに個別に評価され、最終的な結果が比較された。以下に各社への評価の重要項目をまとめた。

画像クレジット:GAO / NASA

再び報告書からの引用

技術的アプローチという要素は、総見積額よりも重要であり、総見積額はマネジメント的アプローチという要素よりも重要です。総合すると、費用的要素よりも非費用的要素の重要度の比重が高いと言えます。

抗議者の主張に反し、仮に比較分析が必要であったとしても、SpaceXの提案は3つの評価基準のそれぞれにおいて最高の評価を受けており、費用も最も低くなっています。

NASAの予算が確定したとき、HLSプログラムへの予算は想定より少なく、NASAは厳しい選択を迫られた。幸い、(最も重要な要素である)技術面で他社と同等かそれ以上で、組織的にも他社よりかなり優れており、費用面においても非常に合理的な提案があった。SpaceXとの契約は明確な選択だった。

そうはいっても、NASAは十分な資金を獲得できなかった。それでもBlue Originは、何とかして成功させるために自分たちが協力をするのは当然だと主張した。同社は、NASAが直接交渉に来ていたら、おそらくSpaceXよりも良い提案をできたかもしれない、とほのめかした(ジェフ・ベゾス氏が後に20億ドル(約2200億円)の値引きを大胆にも提案したことは、同社に多少の余裕があったことを示している)。

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しかし、NASAはすでに別の結論を出していたことをGAOが確認している。

NASAは、2021年度の資金不足を埋め合わせるため、提示されている約[削除済み]ドルの目標達成報奨金(または提示されている総額29億4100万ドル(約3240億円)の約[削除済み]パーセント)の支払いを2021年度ではなく、後年に繰り延べするようSpaceXと交渉することは「乗り越えられない」ことではないという結論に達しました。これに対し、SSAの判断では、Blue Origin(59億9500万ドル[約6590億円])とDynetics(90億8200万ドル[約9990億円])が、それぞれの技術的・マネジメント的アプローチを大きく修正することなく、著しく高い提案額を大幅に引き下げることは不可能であるということです。

削除された部分に関わらず、ここでの問題点を理解するのは難しいことではない。SpaceXは、30億ドル(約3300億円)に達した時点ですでに厳しい状態になるであろう財政上の問題に対処するため、数億ドル(数百億円)程度の削減を考えることができ、それを合理的にとらえることさえできた。一方でBlue OriginとDyneticsは、同じように財政上の大きな助けとなるよう、コストを半分以上削減するということは考えられなかった。

当時、NASAの選考グループは次のように説明していた。

SpaceXとの契約締結を考慮すると、残りの利用可能な資金は非常に少ないため、私の意見では、NASAはBlue Originが任務の内容に対して提案した額を、同社との契約締結が可能になる数字まで下げるよう合理的に要求することはできません。

Blue Originは、予算によって選考プロセスが制限される可能性があることを、NASAは事前に告げるべきだったと訴えた。しかしGAOは、連邦予算は秘密にはされていないということを指摘し、さらに同社らが契約締結時まで問題提起を先送りしていたことについても明快に指摘している。このような訴えが真摯に受け止められるためには、時宜を得る必要があるとし、さらにNASAがそれを事前に告げていたとしても、そのことで結果が変わっていたという可能性を示唆するものは何もないとしている。

また、抗議文では提供者を1社のみに絞ることは「反競争的であり、過度にリスクをともなう」と指摘しているが、本当にそうであるかという問題もある。GAOは「これらの重要な政策的問題については、開かれた議論をさらに進める価値があるかもしれない」と認めているが、そもそもNASAには2つ以上のプロジェクトを行う資金がなかったため、こういった訴えは無意味である。有権者として、また宇宙開発に潤沢な予算を投入すべきであると主張する者として、NASAがあと60億ドル(約6600億円)多く予算を得られなかったのは残念だと言えるかもしれない。だからといって、得られた資金を可能な限り最高の目的のために使うというNASAの決定が間違っていたわけではない。

宇宙では叫びは誰にも届かない

画像クレジット:Joe Raedle / Getty Images

Blue OriginとDyneticsは、この選考プロセスがSpaceXに有利に進められ、さまざまな企業の強みと弱点が公平に評価されていないと主張している。しかし、GAOはこのような訴えを甘んじて受け入れる。

1つの例として、Blue Originは提案依頼の際、着陸船が暗闇でも着陸できることは特に求められていなかったと主張している。しかし、まず第1にそれは求められているいうこと、そして第2に宇宙は暗いということだ。その点を考慮した設計でないと、宇宙では苦労することになる。

もう1つの例では、Blue OriginとSpaceXが提案した通信システムはどちらも特定の要件を満たしていないと指摘されたが、Blue Originのシステムについては「重要な弱点」とされ、SpaceXは「弱点」としか指摘されなかった。それこそが優遇措置の証拠であると2社は指摘している。

しかしGAOはそうではないという。「評価の記録をざっと見直しただけでも、それぞれの提案における重要な相違点がはっきりと示されており、NASAが与えた異なる評価結果はその相違点に裏付けられています」ということだ。この例では、Blue Originの通信リンクのうち4つが要求通りに機能せず、5つ目も確実ではない。SpaceXの方でうまく機能しなかったのは2つだけだ。このような大きな差は、抗議している2社それぞれの異議内容の中にも示されている。

実際、報告書には次のように書かれている。

私たちは、契約担当者が提示したBlue OriginまたはSpaceXの提案に関する分析結果に対し、Blue Originが反論していないことに留意します。Blue Originは当初、同社の提案に対する評価に異議を唱えていましたが、NASAの報告書を受け取った後、同意の上、その異議申し立てを撤回しました。

Blue Originが不満に思っているのは、設計上の選択の多くは明示的に要求されていないにもかかわらず、SpaceXがクルーの安全性、健康、快適性を重視した設計をしたことで、追加ポイントを得たということだ。GAOは、NASAがこうしたSpaceXの設計をプラスのポイントとみなすことは専門機関としての裁量権の範囲内であるとし、このような事例において「なぜ裁量権が必要なのかを示す代表的な例」と呼んでいる。それにしても、競合相手の着陸船が 素晴らしすぎるという理由で異議を唱えているのであれば、優先事項を考え直した方がいいかもしれない。

画像クレジット:Blue Origin

報告書は、仮にいくつかの決定に対する異議が認められたとしても、結果は変わらなかっただろうとしている。

SpaceXに対する総合評価は以下の通りである。

  • 技術面:重要な強み3、強み10、弱点6、重要な弱点1
  • マネジメント面:重要な強み2、強み3、弱点2

一方、Blue Originに対する総合評価は以下の通りである。

  • 技術面:強み13、弱点14、重要な弱点2
  • マネジメント面:重要な強み1、強み2、弱点6

重要な要素のほとんどすべてにおいて完敗であると気づかされるのは決して好ましいことではないが、今回は事実それが要因だったようだ。ちなみに、Dyneticsの訴えに関しても同じ運命をたどっているが、もう少し手厳しい扱いを受けている。

NASAの評価に対するDyneticsの異議の一部がわずかに認められる可能性を考慮しても、NASAの評価はほぼ妥当であり、非費用的要素に基づいた同社の相対的な競争力には大きな変化はないだろう、と報告書には記載されています。

異議は却下された。

Blue OriginとDyneticsの欠点について極めて率直に書いたが、両社が負けを認め、NASAが両社を蹴落とそうとしているわけではないことを受け入れていれば、必要のないことだった。両社は公正な評価を受けて敗れた。今は野心的で可能性に満ちた企業でなく、まるで泣き言をいう負け組のようだ。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Blue OriginSpaceXNASADyneticsアメリカアルテミス計画宇宙船米国会計検査院(GAO)

画像クレジット:NASA

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

NASA

NASAの最新の国際宇宙ステーション(ISS)ミッションには、月の土(レゴリス)を使って現地に建物を作るための3Dプリンター実証機が搭載されています。

Redwire Regolith Print(RRP)と呼ばれるこのプロジェクトは、既存のプリンティング機材と連携してレゴリスに見立てた材料を用いて3Dプリントの実証試験を行い、出力されたものが地球とは異なる環境で期待どおりの強度を示すかどうかを確かめます。

月面に飛行士が滞在するための施設を作ることを考えたとき、全ての資材を地球から持っていくのは現実的ではありません。そのため研究者らは何年も前から現地調達できるレゴリスを使った居住施設の建設を研究し、様々なアイデアひねり出しています。NASAもコンペ形式で画期的なアイデアを募集していました

今回の実験は、その実現を真剣に目指すもので、低重力下での土の3Dプリントが上手くいくかを確かめます。まだまだ課題はたくさんあるはずですが、実験がその解決の足がかりになることが期待されます。またそれは月だけでなく将来の火星への進出にも役立つかもしれません。

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

Redwire Space。Redwire Regolith Print(RRP)の3Dプリンター実証機

(Source:NASA。Via Universe TodayEngadget日本版より転載)

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タグ:ISS / 国際宇宙ステーション(用語)宇宙開発(用語)建設 / 建築(用語)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)NASA(組織)

宇宙における製造活動のスタートアップVardaがRocket Labと宇宙船3機の購入契約締結

軌道上で製造を行うスタートアップのVarda Space Industries(バルダ・スペース・インダストリーズ)の動きが早い。4200万ドル(約46億円)のシリーズAを発表後わずか数週間で、最初のミッションに向け、打ち上げ会社のRocket Lab(ロケットラボ)から3機のPhoton(フォトン)宇宙船を購入する契約を締結した。

最初の宇宙船は2023年第1四半期に打ち上げられる。2機目は同年末、3機目は2024年の予定だ。創業8カ月のVardaにとって果敢なスケジュールであり、最初の3つの宇宙での製造ミッションとなる。契約には、4機目のPhotonを購入するオプションが含まれている。

実績ある企業との提携は理にかなっている。Photonの実績を考えればなおさらで、その中には、今年末のNASAから資金提供を受けた月へのミッションが含まれる。また、Rocket Labは、カリフォルニア大学バークレー校の宇宙科学研究所から、火星への1年間のミッションのためのPhoton宇宙船2機の設計下請け契約を獲得した。

画像クレジット:Rocket Lab

元SpaceXのWill Bruey(ウィル・ブリュイ)氏とFounders FundのプリンシパルであるDelian Asparouhov(デリアン・アスパロホフ)氏が創業したVardaは、宇宙でしか得られない製造条件である微小重力に大きな期待を寄せる。彼らは、バイオプリントした臓器、特殊な半導体、光ファイバーケーブル、医薬品など、地上では作ることのできない製品向け市場の潜在力が、宇宙船の製造や宇宙への打ち上げにかかるコストに見合うものだと考えている。

今回の契約では、それぞれのPhotonにVarda製の2つのモジュールを搭載する。1つ目は実際に宇宙で製造を行うための微小重力製造モジュール、2つ目は完成品を地球に持ち帰る再突入カプセルだ。アスパロホフ氏がTechCrunchに語ったところによると、再突入カプセルは、最初の2、3回のミッションでは「40〜60kg程度の材料」を持ち帰るよう設計されており、その後の打ち上げでの速やかな規模拡大を目指している。

Vardaによると、このアプローチはリスクが少なく、段階的に進められるという。「だからこそ、投資家や国防総省、NASAなどから多くの関心が寄せられているのです。これは非常に現実的で、一歩ずつ進んでいくアプローチなのです」とアスパロホフ氏は語る。「私たちは、この最初の宇宙工場を実証します。事業規模が拡大すれば、より大きな宇宙工場を送り込むことができ、最終的には国際宇宙ステーション(ISS)の10倍の大きさのものを作ることができるかもしれません。しかし、私たちはそのような規模から始めようとしているわけではありません。非常に小規模で短期的、かつ実用的なアプローチから始めようとしています」

各ミッションは打ち上げから着陸まで約3カ月間だとRocket Labは声明で述べた。

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画像クレジットRocket Lab

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpaceXが初の買収、衛星ネット接続のSwarm Technologiesを全額出資子会社に

SpaceX(スペースエックス)は衛星接続のスタートアップSwarm Technologies(スワームテクノロジーズ)を買収する。Elon Musk(イーロン・マスク)氏率いる創業19年のSpaceXにとって初の買収となる。

Swarmはサンドイッチサイズの衛星120基から成るコンステレーション​​ならびに地上ステーションネットワークを運用している。買収により、Swarmの保留中のライセンスに加えて地上と宇宙のライセンスの管理はSpaceXに移る。買収が承認されれば、SwarmはSpaceXの「直接の全額出資子会社」となる。

米連邦通信委員会(FCC)への書類提出で明らかになった今回の買収は、SpaceXの確立された社内技術開発戦略からの急な逸脱となる。

買収取引は米国時間7月16日に2社間で合意に達したと報道されている。取り上げられなかったFCCへの提出書類では買収金額や取引条件などの詳細は明らかにされなかった。SpaceX、Swarmどちらにもコメントを求めることはできなかった。

「Swarmのサービスは豊富な資本金と、SpaceXが利用するリソースへのアクセス、そして衛星のデザイン、製造、打ち上げサービスを手がけるSpaceXによる買収に関連する相乗効果の恩恵を受けます」と両社は提出書類の中で述べている。逆にSpaceXは「Swarmのチームによって開発された知的財産と専門性へアクセスでき、またリソース豊富で有能なチームをSpaceXに加えることで同様に恩恵を受ける」ことになる。

SpaceXのオペレーション、特に同社のStarlink衛星ネットワークにとって意味するところは不明瞭だ。というのも、これらの衛星はSwarmの衛星とは異なる周波数帯域で運用されているからだ。短期的には、Swarmは衛星150基のコンステレーションの展開という目標に向けて「まだ歩んでいる」と同社CEO、Sara Spangelo(サラ・スパンゲロ)氏は7月にTechCrunchに語った。

SpaceXと比較すると、Swarmは新しい会社だ。ほぼ3年前になる2018年8月にシリーズAで2500万ドル(約28億円)を調達したが、主要製品で商業展開を開始したのは2021年初めのことだ。Tileというその製品は、ユーザーがIoTデバイスを低コストで動かすことができるよう、さまざままな接続デバイスに埋め込んで衛星ネットワークにつなげられる小型のモデムだ。

SwarmのEvaluationキット(画像クレジット:Swarm)

Swarmはまた、2つめの製品となる499ドル(約5万5000円)のEvaluationキットを7月に立ち上げた。このキットは、Tile、ソーラーパネル、その他いくつかの部品を使って誰でもIoTデバイスを作れるようにするオールインワンのパッケージとなっている。

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SpaceXの大型ロケット「Super Heavy」と宇宙船「Starship」が初めて合体、全高120mは史上最大

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXSwarm Technologies買収衛星コンステレーション人工衛星

画像クレジット:SpaceX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpaceXの大型ロケット「Super Heavy」と宇宙船「Starship」が初めて合体、全高120mは史上最大

SpaceX(スペースX)は、完全再使用型ロケットシステム「Starship(スターシップ)」の開発において、新たに大きなマイルストーンを達成した。同社は、29基のRaptor(ラプター)ロケットエンジンを全搭載したSuper Heavy(スーパーヘビー)ブースターのプロトタイプの上に、6基のエンジンを搭載したStarship宇宙船本体を設置するスタック試験を完了した。合体した宇宙船は、これまで開発されたロケットの中で最も全高の高い組立式ロケットとなる。

テキサス州南部にあるSpaceXの開発拠点で行われたこのスタッキングは、Starshipシステムを構成する2つの要素が初めて1つになったという点で重要な意味を持つ。これは、次のStarshipプロトタイプをテストミッションで打ち上げる際に使用される構成で、軌道到達が期待されている。

この巨大な複合ロケットシステムは、全高が約400フィート(正確には約390フィート、約119m)に達し、それが乗っている軌道発射台と合わせると、全体で約475フィート(約145m)となり、ギザの大ピラミッド(138.74m)よりも高い(牛久大仏は全高120m)。

スタッキングの実現は目覚ましい成果だが、この状態は長くは続かないはずだ。次のステップは、ロケットシステムの2つの部分を再び分離して、より多くの作業、分析、テストを行い、最終的な軌道飛行打ち上げテストに向けて再組み立てすることになると思われる。

軌道投入の打ち上げテストがいつ行われるかについては、現時点では明らかになっていない。解体、試験、再組み立てには時間がかかるはずだが、同社が年内の実現を目指していることは間違いない。

上のストリームはNASASpaceflightが配信したもの。

【更新】SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、Starshipシステムの2つの部分が分離された後の次の作業についての詳細を明らかにした。同氏はツイートの中で、システムの次の課題はStarship宇宙船に最終的な耐熱シールドタイルを追加することであり、この作業は約98%完了していると付け加えた。他にも、ブースターエンジン、地上の推進剤貯蔵タンク、宇宙船のQDアームに熱保護を加えることも今後やるべきことのリストに含まれているという。

もちろん、SpaceXがStarshipを飛行可能な状態にするために越えねばならないハードルはそれだけではない。同社は、米国連邦航空局(FAA)から打ち上げライセンスを取得する必要がある。これは規制当局が環境アセスメントを完了するまで実現できないが、そのプロセスには数ヶ月かかる可能性がある。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXStarshipSuper Heavy宇宙船イーロン・マスク

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

ロケット企業のAstraが初の商業軌道打ち上げを8月27日から9月11日の間に行うと発表

ロケット打ち上げスタートアップ企業のAstra(アストラ)が行った最後のテスト打ち上げは予想以上にうまくいき、軌道速度にあと一歩で達するところだったが、これは特定のミッションのためのストレッチゴールのようなものだ。同社は当時、軌道に到達するためにはソフトウェアを調整するだけでよいと述べていたが、それを証明する機会はいつ到来するのかが判明した。Astraは米国時間8月5日、米国宇宙軍のためのデモンストレーション・ミッションである、初の商業軌道打ち上げのローンチウィンドウが、8月27日より始まることを明らかにした。

Astraが米国宇宙軍と結んでいる契約には、2021年後半に予定されている2回目の打ち上げも含まれているが、その正確なスケジュールはまだ確定していない。

Astraのロケットが宇宙軍のために運ぶペイロードは、同局のSpace Test Program(宇宙テストプログラム)のために飛ばすテスト宇宙機になる。打ち上げは、これまでもテストミッションを行ってきたアラスカ州のコディアックにあるAstraの宇宙港から行われる予定だ。

ローンチウィンドウは、米国太平洋夏時間の8月27日午後1時から始まるが、9月11日まで継続されるため、天候などの条件を考慮した上、この期間内で打ち上げ時間が変更になる可能性もある。

2021年7月1日にSPAC(特別買収目的会社)との合併により上場企業となったAstraは、カリフォルニア州アラメダにある工場でロケットを製造している。この打ち上げプロバイダがターゲットとしているのは、同社の規模と同様、安価で、大量の、質量が小さな打ち上げであり、SpaceX(スペースX)よりも柔軟なサービスを提供し、Rocket Lab(ロケットラボ)に比べてコスト面で優位性がある。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Astraロケット民間宇宙飛行米宇宙軍

画像クレジット:Astra / John Kraus

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

日本のispaceが2023、2024年の月面探査ミッションに向けて新たに約50.7億円を調達

日本の宇宙スタートアップ企業であるispace(アイスペース)は、3年以内に予定している3つの月面着陸機ミッションを完遂させるため、シリーズC投資ラウンドで約50億7000万円を調達した。

今回調達した資金は、2023年と2024年に計画されている2回目と3回目のミッションに充てられる。ispaceが2022年後半の実施を目指している第1回目のミッションは、これまでに調達した資金で賄われる。

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このシリーズCラウンドは、日本のベンチャーキャピタルであるIncubate Fund(インキュベイトファンド)が主導し、Innovation Engine(イノベーション・エンジン)が運営するパートナーシップ、SBI Investment Co.(SBIインベストメント株式会社)、佐護勝紀氏、Hijojo Partners(ヒジョージョー・パートナーズ)が運営する法人、Aizawa Investments(アイザワ・インベストメンツ)、Aizawa Asset Management(あいざわアセットマネジメント)が運営するファンドから追加投資を受けた。インキュベイトファンドは、ispaceのシード期にあたる2014年から同社を支援している。

ispaceの総調達額は現在約213億円となっている。

同社は2021年7月、2022年のミッションに向けた月面着陸機のフライトモデルの組み立てを、宇宙ロケット会社のArianeGroup(アリアングループ)が所有するドイツのランポルズハウゼンにある施設で開始したと発表した。ispaceの月面探査プログラム「HAKUTO-R」の最初のミッションでは、着陸機はコスト削減と推進剤による重量増加を主な理由に、3カ月かけて月に到達する予定だ。この着陸機は、サウジアラビアのMohammed bin Rashid Space Center(モハメド・ビン・ラシッド宇宙センター)から月面探査ローバー「Rashid」(ラシッド)を、日本の国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)から変形型月面ロボットを、そしてカナダの3つの企業からペイロードを、月へ届ける契約を受注している。この着陸機は、SpaceX(スペースX)のFalcon 9(ファルコン9)ロケットで打ち上げられる予定だ。

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高さ約2.3メートルの着陸機は、2023年に予定されている2回目のミッションでも使用され、同社のその後のミッションをサポートするためにデータを収集するispaceの小型探査車を、月へ送り込むことになっている。2024年の3回目のミッションでは、米国でより大きな着陸機を開発する予定だ。

ispaceは、その長期的な目標を「民間企業が月でビジネスを行うためのゲートウェイとなること」と表現している。同社は、月の水資源が「未開発の可能性」を秘めていることをウェブサイトで紹介し、宇宙ベースの経済を促進させることに特に関心を寄せている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:ispace日本資金調達

画像クレジット:ispace

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ネットフリックスが「SpaceX」のオール民間人宇宙飛行ミッション「Inspiration4」のドキュメンタリーを9月配信

ネットフリックスが「SpaceX」のオール民間人宇宙飛行ミッション「Inspiration4」のドキュメンタリーを9月配信

Netflix

Netflixは、SpaceXが計画する、民間人だけで構成されたクルーによる初めての有人宇宙飛行ミッション「Inspiration4」をドキュメンタリー・シリーズとして配信すると発表しました。『Countdown: Inspiration4 Mission to Space』は5話構成となり、最初の2エピソードが9月6日に配信されます。

Netflixはこれまでもいろいろなドキュメンタリーを製作していますが『Countdown: Inspiration4~』は、現在進行している出来事をほぼリアルタイムで追いかける格好になることから、制作側にはチャレンジングな番組になりそうです。

9月6日配信の2エピソードでは、船長の役を担うパイロットでオンライン決済企業Shift4 PaymentsのCEOでもあるジャレッド・アイザックソン氏をはじめとするクルー達の訓練の様子を追ったものとなる一方、最終回は長編エピソードとなり、離陸から帰還までを宇宙船Crew Dragon内の映像も盛り込んで振り返る構成になるとのこと。Inspiration4ミッションの打ち上げ予定日は9月15日ですが、様々な理由で打ち上げが延期になる可能性があります。そのため、フライトの様子を含む最終エピソードの配信日もNetflixは9月下旬とだけ記しています。

なお、このドキュメンタリーは監督のJason Hehir氏をはじめESPNで『The Last Dance Michael Jordan』を制作したチームが携わっています。またNetflixはInspiration4のクルーをフィーチャーした子ども向け単発番組『A StoryBots Space Adventure』も制作します。この番組では子ども達からの質問にクルーが答え、宇宙飛行とはなんぞやといったところを子ども達に指南するとのこと。配信日は打ち上げ予定日の前日、9月14日。

(Source:Hollywood ReporterEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceX / スペースX(企業)動画配信 / 動画ストリーミング(用語)
Netflix / ネットフリックス(企業・サービス)民間宇宙飛行(用語)

JAXAが国際宇宙ステーション(ISS)で宇宙飛行士が利用できる新生活用品のアイデア募集を開始

JAXAが国際宇宙ステーション(ISS)で宇宙飛行士が利用できる新生活用品のアイデア募集を開始

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は8月2日、「第2回 宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」の開始を発表した。宇宙生活での課題をヒントに、宇宙・地上の両方で暮らしを便利にするアイデアを国内企業から募集するとともに企業の開発を支援し、新しい製品やサービスを創出するというもの。今回生み出された製品は、2023年以降の古川聡宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)搭乗ミッションややその後搭乗予定の宇宙飛行士らが使う予定。締め切りは2021年9月30日17:00。応募の詳細はこちら

また、民間事業者とJAXAが協働で新技術の開発実証を行い新事業を創出するプログラム「J-SPARC」(JAXA宇宙イノベーションパートナーシップ)の、暮らしとヘルスケア分野の新規事業創出を担当する部門「THINK SPACE LIFE」が、アイデア創出から具現化へ向けたインキュベーションを行う。

募集にあたっては、宇宙生活の課題や困ったことをまとめた宇宙の暮らしを向上させるヒント集「Space Life Story Book」を参考にして欲しいと、JAXAでは話している。JAXAは、このプログラムに参加することによるメリットとして、次の4つを掲げている。

宇宙ビジネス参入の機会

実際に宇宙で使われる製品やサービスを開発するため、宇宙ビジネスへの展開がしやすくなる。

広告・宣伝への活用

搭載判断されたソリューションは、軌道上で取得した映像・画像の活用や、「ISSでの宇宙飛行士による生活用品の使用」という事実の広報展開が可能(活用条件は内容により異なる)。

地上実証の場

製品やサービスのプロトタイプを「THINK SPACE LIFE」のインキュベーションパートナーが運用する施設などで地上実証実験が行える。

各業界のプロも参画する本格的なインキュベーション体制

アイデア創出を支援するツールの提供や各種ワークショップ開催の支援、ビジネス、投資、有人宇宙分野のプロによるメンタリングを提供。各領域の専門家である「THINK SPACE LIFE」のインキュベーションパートナーとJAXAが連携して、事業創出を支援する。

応募資格は、日本国内で合法的に設立され、存続する法人であること。8月2日から募集を受け付け、締め切りは2021年9月30日17:00。10月に選定を行い、11月からアイデアのブラシュアップ期間に入る。その後は「短期コース」と「長期コース」に分かれ、短期コースは製品を2023年のミッションで使用、長期コースは製品を2024年以降のミッションで使用される予定。

2020年実施された第1回募集から生まれ、2022年のミッションでISSに搭載予定の候補品には以下のようなものがある。

第1回募集のISS搭載候補品(2021年1月21日公表分)

  • 宇宙用靴下:ワコール人間科学研究所
  • Earthian Wear:資生堂、シタテル、スノーピーク、三越伊勢丹
    (飲める成分の口腔ケア製品 株式会社トライフ オーラルピースプロジェクト)
  • デュアルユース・口腔ケアタブレット:TSUYOMI
  • すすぎが簡単なハミガキ:ライオン
  • 宇宙空間の快適生活のための水なし洗髪シート:花王ヘアケア研究所/包装技術研究所
  • ISSで快適に使用できるボディペーパー:マンダム スキンサイエンス開発研究所
  • 清潔ウェアのためのスペースウェットワイパー:花王 ハウスホールド研究所
  • ウェアラブルウォッチ:日本たばこ産業
  • 宇宙空間でモノを固定するテープ:久光製薬

「人が宇宙に進出することで、新たに『暮らし』(衣・食・住)分野のマーケットが宇宙で生まれることが期待されます」とJAXAは話している。ここで生まれた将来の有人探査ミッションや宇宙旅行者向けの生活用品が「持続的なビジネス」になることをJAXAは目指しているという。

「第2回 宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」概要

  • 募集内容:JAXAが公表した宇宙生活での課題や困りごと集「Space Life Story Book」を参考に、自社(関連企業
    など含む)の技術や製品を活かして、宇宙・地上での生活の課題解決や利便性を向上させることができるもの(新規生活用品などのアイデア)
  • 参考文献:「Space Life Story Book」(PDF)
  • 応募締切:2021年9月30日17:00
  • 応募資格:アイデアの事業化に取り組むことができる、日本の法律に基づき適法・有効に設立され、かつ存続する法人
  • 募集要項:「宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集」(PDF)
  • 応募方法・様式(必須):「提案書フォーマット」ファイル(xlsx)に必要事項を記入の上、エントリーフォームより応募
  • 応募方法・様式(任意):1分以内のプレゼンテーション動画も受付。​プレゼンテーション動画提出の場合は、まずは提案書フォーマット「(9)プレゼン動画はありますか?」で「あり」をチェックの上、エントリーフォームより応募する。応募者に対して、後日事務局より動画ファイル返送用メールを送付する。当該メールの内容に沿って、ファイルアップロードを行う
  • エントリーフォームJAXA「第2回 宇宙生活/地上生活に共通する課題を解決する生活用品アイデア募集 」応募フォーム

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カテゴリー:宇宙
タグ:ISS / 国際宇宙ステーション(用語)JAXA / 宇宙航空研究開発機構(組織)有人宇宙飛行(用語)日本(国・地域)

無重力状態が続く「地球外」工場実現を目指すVarda Space Industries

Varda Space Industries(バルダ・スペース・インダストリーズ)は、シリーズAで4200万ドル(約46億2000万円)を調達し、微小重力という地球の外でしか得られない重要な特性をモノづくりに導入する。

創業8カ月のこのスタートアップは、早ければ2023年に最初の製造施設を宇宙空間に建設する。無重力状態が続く環境下でのみ可能な高度な製品を製造し、地球に持ち帰ることを目指している。

今回のラウンドはKhosla VenturesとCaffeinated Capitalがリードし、既存の投資家からLux Capital、General Catalyst、Founders Fundが参加した。2020年12月に行われた900万ドル(約9億9000万円)のシードラウンドを含め、同社のこれまでの累計調達額は5000万ドル(約55億円)を超えた。

Vardaの構想は、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏のそれとは異なる。ベゾス氏は2021年7月初め、自ら宇宙に行った後「すべての重工業および地球を汚染する産業を地球の外へ移したい」と語った。Vardaの共同創業者である元SpaceXのWill Bruey(ウィル・ブリュイ)氏とFounders FundのプリンシパルであるDelian Asparouhov(デリアン・アスパロホフ)氏は、軌道上にセメントミキサーや製鉄所を置こうとは考えていない。むしろ、地上では不可能な製造プロセスを開拓し、バイオプリントした臓器、光ファイバーケーブル、医薬品など、地上とは根本的に異なる条件を必要とする製品を製造したいと考えている。

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未来の宇宙工場を建設

ブリュイ氏とアスパロホフ氏によると、微小重力環境下での製造の価値は、本質的には科学の前哨基地である、国際宇宙ステーションに見出すことができるという。ここ数十年、国際宇宙ステーションから、宇宙で新しい素材や製品が可能であることを示す研究が次々と発表されている。だがこれまでは、軌道上に行き、滞在し、帰還することにコストがかかりすぎ、研究成果の規模を大きくすることができなかった。

ブリュイ氏はTechCrunchの取材に対し「ある意味では、私たちの研究開発の多くはすでに公的機関で行われています。私たちは本質的に、すでに実証された研究を商業化する橋渡しの役割を担っているのです」と語った。

現在、同社は3つのモジュールからなる宇宙船を製造している。既製の衛星プラットフォーム、微小重力下での製造を行うセンタープラットフォーム、材料を地球に持ち帰るための再突入ビークルというモジュールだ。ブリュイ氏によると、最初の10回程度の打ち上げでは、Vardaが自ら製品を製造するという。また、長期的には、宇宙で製品と製造したいと考えている他の企業のための受託製造プラットフォームを目標としている。

アスパロホフ氏は、これをiPhoneとApp Storeに例える。「iPhoneは、App Storeと一緒に登場したわけではありません。Apple(アップル)はその価値を共有するために、最初に10~11個のアプリを開発しました。そこで私たちは、最初の数個のアプリを自分たちで開発し、私たちが市場に持ち込むこの商業的能力の価値を示そうと思いますが、やがてはアプリストアをリリースするようになるでしょう」。

Vardaの計画で重要なのは、製造のすべてを自動化することだ。(少なくとも現時点では)人間の関与をなくし、宇宙船の開発を人間が行うこと(およびそれにともなう有人宇宙船打上げの安全性に関する懸念)を回避し、間接費を大幅に削減することができる。

規制当局や国防総省を招いて行われた予備的なデザインレビューの様子(画像クレジット:Varda Space Industries)

「投資家やNASA、国防総省から私たちのアプローチが高く評価されているのは、これまで『宇宙における製造』を議論してきた他のすべての企業と比較して、私たちが最もゴールに近く現実的で、商業的にも実行可能なアプローチであるからだと思います」とアスパロホフ氏は語る。

さらに同氏は「宇宙における製造」の考え方として、Vardaが微小重力環境にモノを運ぶために必要な費用は単位質量あたり1ドル(約110円)であり、微小重力環境での製造で得られる価値も単位質量あたり1ドルである(約110円)と話す。収益性の鍵は、その2つの方程式の差を最大化する製品を見つけることだ。例えば、新規の医薬品は、無重力から得られるイノベーションの利益が高ければ高いほど、莫大な利益を得ることができる。

同社は2023年に「複数回のミッション」を想定しており、その後は四半期に1回、さらには1日に複数の再突入カプセルが製品とともに戻ってくると想像している、とブリュイ氏はいう。そのくらいの頻度で打ち上げと再突入が予定されたとしても、それを満たすほど宇宙で製造される新しい製品への需要の規模は潜在的に大きい、とVardaの共同創業者らは確信している。

宇宙旅行のような急成長産業に比べ、宇宙における製造は人類により多くの影響を与える可能性がある、とブリュイ氏は話す。

「人類が地球上で経験するさまざまなことに影響を与え、生活の質を大幅に向上させることができるでしょう」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Varda Space Industries資金調達工場製造業

画像クレジット:Varda Space Industries

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

米会計検査院が月着陸船開発契約をめぐるBlue Originの抗議を却下

数十億ドル(数千億円)もの月着陸船開発をSpaceXと契約するというNASA(米航空宇宙局)の判断をめぐるBlue Originの米政府への抗議は却下された。

米会計検査院(GAO)は米国時間7月30日、Blue Originの抗議、そして月着陸船開発案を提出した防衛関連企業Dyneticsによる訴えのいずれも却下する、と明らかにした。GAOは、NASAがSpaceX1社と契約した際、法律や規則に反しなかった、と結論づけた。

「結果として、SpaceXとだけの契約でNASAが不適切な行動を取ったという訴えをGAOは否定しました」と声明文で述べた。

抗議は、アポロ計画以来となる人間の月面着陸を目指している有人着陸船(Human Landing System)プログラムの契約を、当初意図していた2社ではなくSpaceXのみと結んだというNASAの判断についてのものだった。SpaceXの有人着陸船プログラムの提案は29億ドル(約3180億円)で、59億9000万ドル(約6570億円)というBlue Originの提示額のおおよそ半分だった。今週初め、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏はNASA長官のBill Nelson(ビル・ネルソン)氏に、NASAが契約で1社のみを選ぶことになった「短期的な予算の問題」を解決するために20億ドル(約2190億円)の値引きを提案する公開書簡を送った

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1社のみと契約するというNASAの判断はこれまでの習慣から方向転換することになったが、GAOは「複数企業との契約、1社との契約、あるいは契約しない権利が認められています」と記した。

Blue Originは、NASAが2社と契約するだけの十分な資金がないとの結論に至った後に、入札内容を修正する時間が与えられなかった、と主張した。「要件変更についてNASAが意思疎通を図らなかったことにより、Blue Originは明らかに先入観をもたれました」と同社は申し立てに書いている。「Blue Originは提案したアプローチを修正し、NASAの予算に見合う額に減額し、そして(あるいは)スケジュールの代替を提案する、いくつかのアクションを取ることができたはずです」。

Blue OriginとDyneticsは4月にそれぞれ異議を申し立てた。

会計検査院の判断について、Blue Originの広報担当は以下のようにTechCrunchに述べた。

「当社はNASAの決定に根本的な問題があったと強く確信しています。しかしGAOは限られた権限のためにそうした問題を解決することができませんでした。当社は引き続き、正しいソリューションだと信じているプロバイダー2社を主張します」。

広報担当は、上院議員が有人着陸船プログラムで2社を選ぶことをNASAに求める規定を法案に追加したことについてBlue Originは心強く思っている、とも述べた。

一方、Elon Musk(イーロン・マスク)氏は今回の判断について以下のように反応している。

TechCrunchはDyneticsにコメントを求めている。返事があればアップデートする。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Blue Origin宇宙船NASA米会計検査院(GAO)有人宇宙飛行アルテミス計画

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi

再利用可能ロケット開発iRocketがわずか2年以内の商業化を目指しNASAと新たに提携

再利用可能ロケットのスタートアップ、iRocket(アイロケット)は、わずか2年以内に商業化するという目標を掲げて、NASA(米航空宇宙局)と新たな提携を結んだ。

この提携によって、iRocketはNASAの試験施設と技術サポートを、主にアラバマ州ハンツビルのマーシャル宇宙飛行センターで利用できるようになる。会社は最初のロケットエンジンテスト(地上燃焼試験)をハンツビル施設で2021年9月に実施したいと考えている。

iRocketは今後5年間の再利用可能エンジンと打ち上げロケットの試験、開発のために5000万ドル(約55億円)を準備している。NASA施設を利用できるということは、エンジン試験のための制御された環境を提供する重要設備である試験台を利用できることを意味している。iRocketは、オハイオ州のグレン研究センターで真空試験(宇宙環境をシミュレートする)を、マーシャル宇宙飛行センターで海上試験を行う予定だ。

「当社はマーシャル宇宙飛行センターと、非常に綿密な検討を重ねてきました」とiRocketのCEOであるAsad Malik(アサド・マリク)氏はTechCrunchのインタビューで語った。

このエンジンは最終的にiRocketの新しい打ち上げロケットShockwave(ショックウェーブ)の動力になる。ロケットは完全再利用可能な無人小型ロケットで最大積載能力は約300kgおよび1500kg。3Dプリンティングで作られたエンジンは、メタンと液体酸素を燃料とする。「メタンは深宇宙ミッションに最適な燃料になるでしょう」とマリク氏は言った。

ニューヨーク拠点のスタートアップはエンジンを極超音速(hypsesonic)にすることも目標にしている。野心的なゴールだ。そしてiRocketには野心的な計画がある。マリク氏は再利用可能ロケットエンジンとロケット自身、両方の主要サプライヤーになろうとしている。ロケットステージも再利用できる設計(他のロケット開発者との決定的な違い)なので、衛星や貨物の打ち上げミッションだけでなく、いずれ宇宙ごみの除去やバイオテク企業のための回収実験もできるとマリク氏は言っている。

Aerojet Rocketdyne(エアロジェット・ロケットダイン)のLockeed Martin(ロッキード・マーティン)への売却(現在も連邦取引委員会が審査中)は市場に空白を作る、とマリク氏は指摘する。「そうなることで、海外製部品を避けるよう議会が強く押している今、独立系ロケットメーカーのいない米国市場が開放されます」と彼は言った。「つまりこれは、私たちが政府や国防省、NASAなどのパートナーと協力して、私たちに必要な次世代宇宙推進システムを開発するチャンスなのです」。

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カテゴリー:宇宙
タグ:iRocketロケットNASA

画像クレジット:iRocket<

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ヴァージン・ギャラクティックのマイク・モーゼス社長が語る、成長を続ける同社の次なる展開

先にVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)初となる無料乗客が創業者兼CEOのRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏とともに宇宙へと飛び立った。打ち上げの後、筆者は同社社長のMike Moses(マイク・モーゼス)氏に話を聞く機会を得た。同氏は今回のオペレーションについて、またテスト飛行から商業飛行への移行計画についてまで細部にわたって精通している人物である。

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不運なことに筆者のレコーダーが故障してしまったのだが、モーゼス氏は週明けに電話での対談を快く引き受けてくれ、次世代のスペースプレーンや同社が投資すべき分野などについて、再び話をしてくれた。以下にその内容をご紹介したい(このインタビューはわかりやすくするために編集されている)。

TC:まず初めに、テストフライト段階で今後まだ何を検証すべきなのか、そしていつ頃テストフライト段階が完了する予定かについて教えていただけますか?

モーゼス氏:現在私たちが行っている一連のテストフライトは、リチャードが乗ったフライトがその第一回となりましたが、空力特性や軌道、ハンドリングの質の調査などの従来の安全運航範囲テストから、機内での体験やトレーニング手順、後部座席の人々のためのハードウェアや彼らの体験を検証するという、より運用面を重視した点検へとシフトされたものです。

そのため製品の主要なマイルストーンや機能を実証するとともに、機内での体験を繰り返し向上させて最適化するため、具体的には3回のフライトを予定しています。ただし当然、これはあくまでも概念的な予定であり、スケジュールや数字は結果次第で変わります。うまくいけば3回のフライトで済むと思いますが、もしさらに調整が必要なら、学びに基づき必要に応じて追加していくことになるでしょう。

リチャードとクルーが前回のフライトから戻ってきた後に得られた結果によると、課題はいくつかあることがわかったものの、すべてはほぼ満足のいくものでした。

2021年の夏から夏の終わりにかけてこの一連のフライトを行う予定です。その後、前回の決算説明会で発表したように「改造段階」に移行して母船とスペースシップのアップグレードを行い、商用サービスに備えていく予定です。ここでの主な目的は、飛行頻度を向上させるための検証を行うことです。現時点のテストではすべてにおいて慎重になっているため、かなりゆっくりとしたペースで飛行しています [ここでいうペースとは速度ではなく、頻度のことである]。今後はそれを解消していきたいと考えており、そのためにはいくつかの変更が必要になります。改善点も把握しているものの、テストフライトを正式に終了する時期については、具体的には決めていません。

TC:スペースポートでお話しした際、クルーからはまだ正式な体験報告を受けていないとおっしゃいました。今ならリチャードやシリハ、そして実際に行った全員からのコメントについてもう少し情報があるのではないかと期待しているのですが、何か具体的なフィードバックはあったのでしょうか?

モーゼス氏:現在、まさにフィードバックや報告を受けている最中です。ご想像の通り、確認しなければならないデータが山積みです。そういったデータの中には機内に設置した16台のビデオカメラを同期させて、どこで何が起こっているかを確認し、ライブノートやフィードバック、それにともなうオーディオトラックと組み合わせるといった簡単なものもあります。確実に情報を集めていますが、現時点で公開できるようなリストはありません。みなさんには随時お知らせしていきたいと思います。

着陸後の同日も後日も、大まかな感想は「すべては最高だった」でしたね。これは科学的な答えではないですし、科学的な答えが必要なので、報告作業を進めさせるつもりです。

画像クレジット:Virgin Galactic

TC:「改造段階」について触れられていましたが、Unityはいわばプロダクションプロトタイプですね。最初の製品ラインとして、何か特別な維持管理があるのかどうか教えてください。

モーゼス氏:デザインや構造上、特別な手入れが必要な部分はありません。しかしテスト機体として、また我々にとっての最初の製品としてこの機体には特別な注意を払っています。定期的な点検はもちろんのこと、問題が見つかった場合にはテストを行い、寒さや負荷、ストレスの中でシステムがどのように機能するかなど、未知の部分がないということを本当に把握できているかどうかを確認するため、常に目を光らせています。

一連の測定を行い、設計範囲に基づいて機体がどのように動作したかを確認します。そして、設計範囲の限界に近づいたらモデルや予測が正しいかどうかを検証するために追加の検査を行います。この点では、新しい航空機の開発で最初の試作品を作るときに、保守点検プログラムを構築するのとよく似ています。つまり極めて保守的なものです。そして使っていくうちに、ポジティブなフィードバックに基づいて、その保守性を引き出していくのです。

しかし全体的に見ると、たしかにUnityには特別な注意を払っています。そして次の機体には、その一部が反映されていることでしょう。「次の機体では、毎回じゃなくて5回に1度くらいしか見なくてもいいようにこれを変更しよう」というように、私たちはすでにたくさんのことを学んでいます。

TC:以前お話を伺ったときに、少なくとも論理的にはUnityには数百回のフライト数を期待しているとおっしゃっていたと思います。

モーゼス氏:そうですね、何百回かはフライトが可能だと思います。ある程度の寿命を想定して設計し、それに合わせてテストを行ってその後はいつでも延命措置を取ることができます。4万回ではなく1万回のサイクルを行い、1万回の寿命に近づいたら、また戻ってきて他のサイクルを行うというようなこともできます。そしてさらに追加する、という具合です。「崖から転げ落ちる」ような寿命を持つ部品はあまりありません。

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TC:後継機や量産機には改造がいくらか施されるとのことですが、些細なことから大きなことまで、どのような違いがあるのでしょうか?機体の重量がいつ分かるかなど、そういったことを教えてください。

モーゼス氏:すでに機体の重量は決まっており、基本的には工場での大規模な組み立てから地上試験へと移行するロールアウトも完了しています。全システムが設置されたのでこれから地上での統合テストが始まり、コンピュータシステムやフライトコントロールシステムの点検などを行います。まだ地上にいて、飛べる状態ではありませんが、私たちはその統合テストを行っているところです。

ImagineとInspireでは、構造を設計する際、皮膚の下にある骨組みとして考えるとその骨組みを最適化し、スパーにある肋骨を荷重が最もかかる場所に移動させました。UnityはScaled Composites(スケールド・コンポジッツ)の当初の設計意図に基づいて作られていますが、飛行試験の結果、荷重が正確には予想されない場所にかかることがあることがわかりました。その負荷を考慮したため、Unityではかなりの重量増になっています。ImagineとInspireでは構造を最適化し、然るべき場所に配置することができました。

例えばUnityでは、追加作業があったために毎回確認しなければならないジョイントがありますが、Imagineでは最初からあるべき場所に設計されています。それでも確認することはありますが、より簡単にアクセスでき、より短い時間で検査ができるようになりました。

画像クレジット:Virgin Galactic

こういったことにより検査スケジュールが最適化されます。他にも単純なことですが、Unityでは後から追加しなければならなかったアクセスパネルを、初めから必要な場所に設置することができました。そしてクイックリリースファスナーなど、検査時間を短縮するようなものをデザインに追加することもできました。どれも些細なことですが、このようにかなり多くの変更を行い、機体のメンテナンスのし易さに大きな影響を与えています。

そしてデルタクラスの宇宙船の話を以前にもしましたが、次の段階では製造性を高めるための変更を行います。UnityやInspire、Imagineは、いわば一点ものの手作りの宇宙船です。しかし年間400回の飛行を実現するために何十機もの宇宙船を作るとなると、より低価格で、より短い期間で製造できるようにしなければなりません。次の設計では、そのような要素を盛り込むことになるでしょう。

TC:実は私が伺いたかったことの1つなのですが、商業運航に必要な信頼性と定時性をどうやって確保するご予定でしょうか。当然、航空機の数を増やすこともその1つですが、地上でのオペレーションやクルーの数を増やしたり、メンテナンスを充実させたり、そういったことはどうなるのでしょうか。

モーゼス氏:その通りですね。効率性のために複数の機体が必要です。これにより例えば天候などの予期せぬ事態にも対応できるようになるでしょう。さらに労働力です。労働力が増えれば24時間365日体制になり、複数のエキスパートを抱えることができます。1台の機体に注力するクルー、2台目を専門にするクルーという具合に。

我々は少しずつ前進すれば良いと考えています。最初から高い飛行頻度を目指すのではなく、少しずつ多くしていけば良いのです。2022年のUnityの目的は、このような運用スケジュールを検討し、追加の宇宙船ができたときのために、どこに倍率をかけるかを考えることなのです。

このビジネスモデルはすばらしいものなのですが、今後数年はUnityが8便あろうが、10便、12便あろうがあまり変わりません。つまり収益という意味ではそれほど大きな変化がないのです。しかし、オペレーションを学ぶという意味では、これは我々にとって重要なステップであり、その道をどのように進むかについては慎重でありたいと考えています。

 米国モハベ、10月10日(編集使用のみ、テレビ放送のドキュメンタリーや書籍での使用は不可)。2010年10月10日、カリフォルニア州モハベ上空で、初の滑空飛行に成功したヴァージン・ギャラクティック製ビークルSpaceShipTwo。(画像クレジット:Mark Greenberg/Virgin Galactic/Getty Images)

TC:フライトプランをほぼそのままにしておく理由をもう一度教えてください。もしかしたら、後に6人が乗る改訂版では、プロフィールを少し変えなければならない可能性があるのではないでしょうか?

モーゼス氏:それはこのQ&Aの冒頭でお話しした、テスト段階から運用準備段階への移行の話と同様のことです。これに伴いプロフィールも確定しているのです。パイロットが飛行する軌道や使用する技術については、今後も最適化していきますが、大きな修正は行いません。これらはすべて物理学に基づいた結果です。対気速度、角度、到達高度、搭載重量など、すべてが固定された変数であり、この方程式を変えることはできません。

Imagineに搭載される容量が増えることで、明確な軌道の変化はあるでしょうし、それによって若干異なる性能を持つことでしょう。そういった場合はその範囲を検証するということになります。しかしほとんどの場合、簡単に言えば物理学的な方程式によってできることが決まっているので、最初は4人の乗客を運ぶことしかできません。これを変更することもできますし、船内の軽量化も検討する予定ですが、やはり長期的に使用できる機体を建造したいと考えています。

TC:質問はこれですべてです。お時間をいただき本当にありがとうございました。

先に行われたヴァージン・ギャラクティックの打ち上げの様子はここからご覧いただける。

カテゴリー:宇宙
タグ:Virgin Galacticインタビュー民間宇宙飛行

画像クレジット:Virgin Galactic

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Dragonfly)

月着陸船開発を失注したベゾス氏がNASAに約2208億円の「インセンティブ」を打診

Blue Origin(ブルーオリジン)創業者である富豪のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は米航空宇宙局(NASA)に契約と引き換えに月着陸船の開発費用を最大20億ドル(約2208億円)拠出し、パスファインダーミッションを自己資金で実施することを提案している。

当該の契約は、有人着陸船(Human Landing System)プログラムの月着陸船の開発に関するものだ。このプログラムではアポロ以来となる人間の月面着陸を目指している。NASAは2020年4月、契約の第1段階でBlue Origin、SpaceX、Dyneticsが選ばれたと発表し、月着陸船を開発するために競争によって最終的に2社に絞られると考えられていた。TechCrunchのDarrell Etherington記者が指摘しているように、NASAが2社を選ぶのは珍しいことではなく、商業有人飛行プログラムではBoeing、SpaceXの両社と契約した。

関連記事:NASAがアポロ計画以来となる有人月面着陸システムの開発にSpaceXを指名

しかしそれから1年後、これまでの習慣から方向転換し、NASAは契約で1社のみ選んだと発表した。SpaceXだ。Elon Musk(イーロン・マスク)氏が率いる同社は月着陸船の開発費用として28億9000万ドル(約3190億円)を提案していた。これはBlue Originの59億9000万ドル(約6613億円)のおおよそ半分だった。ベゾス氏は現在、この価格から20億ドルの値引きを申し出ている。

ワシントンポスト紙が入手した、月着陸船の契約で1社を選んだ根拠を説明する書類の中で、NASAは「現会計年度の予算は1社との契約金すら満たさなかった」と認めている。これに対し、SpaceXは「NASAの現在の予算内」に収まるように支払いスケジュールをアップデートした。NASAに厳しい予算上の制約があることは皆が知っている。議会は2021年会計年度で有人着陸船プログラムにわずか8億5000万ドル(約938億円)の予算しか認めず、NASAが求めた34億ドル(約3753億円)には遠く及ばなかった。

ベゾス氏がNASA長官のBill Nelson(ビル・ネルソン)氏に宛てた公開書簡では、予算問題を直接解決している。ベゾス氏は、提案したインセンティブは、2社ではなく1社のみを選ぶことを余儀なくされた有人着陸船プログラムで「見受けられる短期的な予算の問題」を取り除く、と書いている。

「元々意図していたように月着陸船の開発を2社に競わせることに投資する代わりに、NASAは複数年、数十億ドル(数千億円)という有利なスタートをSpaceXに与えることを選びました」とベゾス氏は書簡で述べている。「その決定は、意義ある競争に今後何年にもわたって終止符を打つことでNASAの成功的な商業宇宙プログラムの型を壊しました」。

1社のみに絞るというNASAの決定をBlue Originが公然と疑問視するのは今回が初めてではない。Dyneticsとともに、Blue Originは契約が発表された1週間後に米会計検査院に抗議した。同社は契約要件が「有意義に競争する」能力を与えなかった、と主張した。会計検査院は8月4日までに抗議内容について裁定しなければならない。

2社契約を支持するのはBlue OriginとDyneticsだけではない。米上院はこのほど、NASAに月着陸船の開発で2社を選ぶことを求める法案と、そのための追加予算を可決した、とSpaceNewsは報じた。しかし追加予算を含めることについて、すべての議員が好意的ではない。上院議員Bernie Sanders(バーニー・サンダース)氏は追加予算を「ベゾス氏を救済する措置」と呼んだが、最終的に法案から追加の予算を除くことはできなかった。

「当社は、NASAがテクニカルリスクを調整して予算上の制約を解決し、アルテミス計画をより自由競争があるものに、そして信頼でき、持続可能な道に戻すのをサポートする準備はいつでもできています」とベゾス氏は述べた。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Blue Originジェフ・ベゾスNASAアルテミス計画

画像クレジット:Matthew Staver/Bloomberg / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Nariko Mizoguchi