自律走行車の知覚能力アップのためのソフトウェアを開発するAnnotellが約27億円調達

自動車業界が自動運転車への道をゆっくりと歩む中、現在の自律走行システムの技術的ギャップを埋めようとするスタートアップが出現している。最新の動きとしては、自律走行システムの知覚能力の性能とその改善方法を評価するソフトウェアを手がけるスウェーデンのスタートアップ、Annotell(アノテル)が現地時間2月3日、事業拡大のために2400万ドル(約27億円)を調達したと発表した。

Annotellの共同創業者でCEOのDaniel Langkilde(ダニエル・ランキルド)氏はインタビューで、同社が行っていることを「自動車が運転免許を取得するための視力検査、あなたが運転に適しているかどうかを判断するために試験を受けるようなもの」と例えた。「Annotellのプラットフォームは、システムの性能を理解し、それを上げることを支援します。どうすれば改善できるかを顧客に指導しています」。つまり、Annotellの製品は、企業のデータの品質をテストし、測定する分析、およびそれらのデータセットを改善するための「正解データ」の生産を含んでいる。

その目的は完璧さではなく、予測可能性であり、現在すでに存在する半自律プラットフォーム(先進運転支援システムなど)にとっても、多くの企業が将来の構築を目指している完全自律型自動車にとっても同様に重要だと、ランキルド氏は付け加えた。「システムが常に正しいとは限りませんが、システムを安全に使用するためには、何ができて、何ができないかを知る必要があります」。

シリーズAラウンドは、Skypeの共同創業者Jaan Tallinn(ジャン・タリン)氏が率いるエストニアのVC、Metaplanetと、日本企業などが出資しているディープテック投資家のNordicNinjaが共同でリードしている。Metaplanetは直近ではStarship Technologiesに投資し、 Googleが買収したDeepMindの初期投資家でもある。AnnotellのシリーズAラウンドには、以前の出資者であるErnström & CoとSessan ABも参加した。ヨーテボリを拠点とするAnnotellの累計調達額は3100万ドル(約35億円)で、評価額は公表していないが、同社の顧客には世界最大の自動車メーカーとその主要サプライヤー、そして自動運転に特化している大手自動車会社が含まれる。

Annotellが埋めようとしている市場のギャップは、かなり重要なものだ。自律走行システムは、膨大な量の走行データと、その情報を処理してプラットフォームに運転の基本を「教える」のに使われている機械学習で成り立っている。

コンピュータビジョンを使って、これらのシステムは赤信号や停止している車、曲がるべき時などを認識することができる。問題は、これらのシステムの反応が与えられたデータに基づいていることだ。自律走行システムは通常「推論」することができず、自動車が実世界で必然的に遭遇するような未知の変数にどう対応するかを決めることができない。

「機械学習は、稀だが重要なことを処理するのが苦手です」とランキルド氏はいう。

Oscar Petersson(オスカー・ペターソン)氏と共同でAnnotellを設立したランキルド氏は(2人とも深層学習を専門とする物理学者)、以前別の会社(脅威インテリジェンスのスタートアップRecorded Future)で働いたときにこの問題に遭遇したと述べた。Recorded Futureでは、脅威をより識別するためにプラットフォームに与える情報データを収集することを任務としていた。悪意のあるハッカーは、隙間を見つけて脆弱性を作り出すことに注力するため、ランキルド氏のチームが将来の攻撃を軽減するためのパターンを特定するために行っていた作業の多くが、事実上台無しになった。

「ミッションクリティカルな仕事をする上で、ブルートフォース(総当り)方式の機械学習には限界があることが浮き彫りになりました」と述べた。

自律走行システムも同じような問題に直面しているが、正しく動作させることがより重要だ。というのも、何か問題が発生した場合に人命が危険にさらされるからだ。また、正しい動作により、企業が製品を市場に投入し、消費者に信頼してもらい、購入・使用してもらうために通過しなければならない安全性と制御のレベルがより高くなる。

「人々が機械学習やAIを信頼するためには、安全性に非常に真剣に取り組まなければなりません」と同氏は述べた。「映画サービスで間違ったレコメンドをすることと、一時停止の標識を無視したり人にぶつかったりすることは、大きな違いがあります。私たちはそのことも真剣に受け止めています。だからこそ、この問題にフォーカスしたかったのです」。安全規制の強化は、Annotellにとって、特定の使用例や市場機会を示すものでもある。顧客のためにシステムを改善するだけでなく、特定の製品の使用許可を与えるために、機関や規制当局が信頼できるデータ群を作成する。

機械学習がシステムに教えることを補完するAnnotellのアプローチは、今日の自律走行システムと同様に進歩的で、その性質上、完全な自律走行に設計されていないシステム(ドライバーに代わるものではなく、アシストするためのシステム)の限界を試し、形式化するものだ。やがて完全自律走行は、因果推論アルゴリズムの構築に用いられるベイジアンネットワークのような、他の種類のAIアプローチも取り込むかもしれない、とランキルド氏はいう(先週TechCrunchが取り上げた因果AIスタートアップはもっとドラマチックで、因果AIこそが自動運転の実現に向けた唯一の希望であり、それは大きな飛躍ではあるが、実現にはかなりの時間がかかると主張していた)。

しかし、今のところAnnotellは、大きなチャンスである、ある程度の自律性がすでに組み込まれたシステムの安全性に技術を注いでいる。

Metaplanetのジャン・タリン氏は声明で「自律走行車の商業展開においては、安全性の確保が主な制約となりますが、Annotellは短期間で大きな進歩を遂げました。我々はAnnotellのソフトウェアだけでなく、それを構築したチームにも感銘を受けており、彼らとこの旅をともにすることに興奮しています」と述べた。

画像クレジット:Jae Young Ju / Getty Images

原文へ

(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

電動スクーターの歩道走行といった危険運転を自動で禁じるテクノロジーをSuperpedestrianがまもなく実装

電動スクーターシェアリングのSuperpedestrian(スーパーペデストリアン)が、「Pedestrian Defense」(「歩行者を守る」の意)という安全システムを大規模に導入する準備を進めている。このシステムは、歩道走行や一方通行を逆方向に走っているといった危険な走行を電動スクーターがリアルタイムで検知し、修正できるようにするものだ。SuperpedestrianはPedestrian Defenseを装備した新しいスクーターを開発し、2022年中に米国とヨーロッパの25都市に展開することを目指している。同社によれば、春の早い時期までに米国と英国の歩行者の多い都市に最初に導入するとしている。

Superpedestrianは2021年7月に、精密なGPS位置情報を使ってマイクロモビリティ事業者が車両の位置を特定しリアルタイムで動きを修正するスタートアップのNavmatic(ナヴマティック)を買収した。その買収以降、Superpedestrianがこの新しいテクノロジーを市場に展開するのは、この計画が初となる。買収によりSuperpedestrianはNavmaticのソフトウェアを自社の安全システムであるVehicle Intelligence(「車両インテリジェンス」の意)に統合することができた。Vehicle Intelligenceは、危険運転の多くを制御して安全を守る機能を提供するためにAI、センサー、マイクロプロセッサを組み合わせたシステムで、危険運転の中には都市で最も嫌われる乗り方が含まれている。それは歩道の走行だ。

Superpedestrianの公共担当シニアディレクターのPaul White(ポール・ホワイト)氏はTechCrunchに対し「ニューヨークやシカゴと違ってもともと歩行者が多くない都市であっても、今は誰もが歩行者の優位性を理解しています。そのため、都市では歩道の走行をまったく認めないゼロ・トレランスのアプローチが望まれています。スクーターが歩道にあることが比較的確実にわかるというだけでは不十分です。我々はスクーターが常に適切な場所に存在するように介入し、制御したいのです」と述べた。

ホワイト氏によれば、Superpedestrianが新しい安全システムを導入する都市の多くはすでにパートナーになっているところだが、同社が獲得した、または獲得する予定の新たなパートナーもある。都市が提案を受ける際に、路上の歩行者を守るテクノロジーを実装するように企業に対して求める動きが始まっている。ホワイト氏は、例えばSuperpedestrianが現在獲得を目指しているサンディエゴとシカゴは制限が厳しくて事業者が少なく、両都市とも歩道走行禁止機能を重要な安全基準にしていると説明する。

SuperpedestrianはシリーズCで株式と債券によって1億2500万ドル(約143億2500万円)を調達しており、この資金で現在の車両の更新と新たな市場への拡大を実現する。このラウンドではJefferies、Antara Capital、Sony Innovation Fund by IGV(ソニーイノベーションファンド)、FM Capitalの他、これまでに支援してきたSpark Capital、General Catalyst、Citi(Citi Impact Fundを通じて)も投資した。Superpedestrianは債券の条件も、どの投資家が株式または債券に投資したかも明らかにしていない。

Superpedestrianは2020年12月に6000万ドル(約68億7600万円)を調達した。シリーズCはそれ以来の調達で、同社にとってこれまでで最大のラウンドだ。今回の資金は、Vehicle Intelligenceソフトウェアスタックの幅広い応用に関する研究開発にも使われる。ホワイト氏によれば、このソフトウェアスタックには小型の配達車両を運営するような輸送関連企業から関心が寄せられているという。

ホワイト氏は次のように述べた。「この機能は実際に都市と連携するスクーター事業を運営する上で極めて関心が高いというだけでなく、歩行者が多く密集している環境で運用されるあらゆる小型車両に関係するものです。歩行者の多い環境で人間のスケールに合わせたきめ細かい制御をすれば、歩行者のエクスペリエンスが損なわれることはありません。私は、このことが今回のラウンドで多くの参加と関心を集めたもう1つの理由であると考えています。このテクノロジーは我々のコアであるスクーター事業に寄与しますが、それだけではなく、同様の課題に取り組んでいる、あるいは自転車用レーンをふさいだり貴重な歩行者用スペースに侵入したりしないようにしたいというあらゆる小型車両にも関連するものだからです」。

関連記事:AIで電動キックスクーターを安全性をリアルタイムでモニターするSuperpedestrianが米国内で事業拡大

画像クレジット:Superpedestrian

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Kaori Koyama)

ボルボが車両のデジタル化が進む今後も「高い安全性」というイメージを維持する方法

現代の自動車において、安全性とはもはや単なるエンジニアリングの課題ではない。センサーやソフトウェアに依存し、ドライバーにとって明確で直感的なユーザーエクスペリエンスが鍵となる、テクノロジーとデザインへの挑戦なのである。

安全性の代名詞ともいえるVolvo(ボルボ)は、どのようにして核となるメッセージを失うことなく、彼らが革新的かつ先進的な考えを持ち、明敏な企業であることを顧客に伝えられるのだろうか。この新世界の目まぐるしい変化についていけなければ、最も高い安全性を象徴する自動車メーカーとしての評判を落とすことになりかねない。

Volvoがどのようにして、機敏かつ革新的でありながらも安全な会社であるというスイートスポットに到達しようとしているのか、そのヒントは伝統的なIPOの道を歩んでいる同社の株式公開へのアプローチや将来の自動車計画に見出すことができる。対照的に、スピンオフした兄弟企業のPolestar(ポールスター)は、ブランクチェックカンパニーとの合併により上場し、テクノロジーとデザインにおけるリーダーとしての地位を確立しようとしている。

Polestarのアプローチは、意図せずしてVolvoが安全性においてより慎重なリーダーであることを際立たせることになる。またVolvoは、Polestarのモデルで実証された最新の革新技術を利用しながら、差別化していくこともできるのである。

VolvoのUX部門の責任者であるThomas Stovicek(トーマス・ストヴィチェク)氏は次のように話している。「今私たちが目にしているのは、少し前にモバイル業界で起こったような業界の変革で、新しい機能や可能性、新しいセンサーなどが常に誕生している非常に興味深い分野だと思います。同時に、ユーザーにとっては複雑にもなりかねません。そのためユーザーエクスペリエンスの話をするときには、お客様にとっての使いやすさや、自動車という環境に置いたときの問題点を理解することについて話すことが多くなっています」。

しかしいくら安全性の先駆者とされるブランドでも、問題を完璧に避けることはできない。現代の自動車の安全性は、車体だけでなくシステムを運用するために必要な膨大なデータにまで及んでいる。Volvoは米国時間2021年12月10日、セキュリティ侵害により研究開発データの一部が盗まれたことを発表した。同社は「現在判明している限りの情報では、顧客の自動車の安全性やセキュリティ、あるいは個人データに影響を与えることはありません」と安全性への懸念に対してすばやく声明を出している。

関連記事:ボルボ、セキュリティ侵害で研究開発データの一部が盗まれる

オラフ vs エルサ

Polestarは企業アイデンティティを定義するにあたり、Volvoとは異なる方向性を示している。Volvoが「安全性と自律性を重視」しているのに対し、Polestarは「技術と性能を重視」している。またVolvoは「安全と責任」を掲げているが、Polestarは「持続可能で進歩的」を謳っている。

Polestarはクールでミニマルだが、 Volvoは暖かくて安心感のあるブランケットのようだ。「アナと雪の女王」で例えるならば、Volvoはオラフのような心地良い魅力を放ち、Polestarは氷の女王エルサである。

Volvoは姉妹ブランドであるPolestarの進化とは逆に、慎重に戦略を進めている。

例えば、VolvoはGoogle(グーグル)と共同でAndroid AutomotiveのOS開発に携わったにもかかわらず、Polestarブランドが先にこれを導入し「Polestar、Volvoには不可能な方法による電気自動車制作を目指す」などという見出しがつけれらている。

新参者であるPolestarは、 Volvoの年間販売台数が50万台であるのに対し1万台程度とまだ比較的小規模であり、その名を知らしめようと機会を模索している最中だ。

Polestarの広報担当者はメールで次のように伝えている。「Polestarはより大きなグループにおける技術リーダーであり、今後もそうあり続けるでしょう。すでに市場に投入されているGoogleのインフォテイメントシステムがその良い例です。Polestar 2が最初にデビューさせ、VolvoはXC40 Recharge、そして今回のXC60でそれに続きました。今後数年の新技術の展開に伴い、Polestarが先駆けてVolvoがそれに続くという形がますます増えていくと思います」。

画像クレジット:Kirsten Korosec

負荷を軽減

Polestarの先進的なメッセージとは対照的に、顧客向けの技術に関してVolvoは車内での体験を「Less is More」の考え方にシフトしている。そしてそのシステムも、Android Automotive OSの登場によって支えられている。

Volvoはこのシステムによってドライバーの認知的負荷を軽減させたいと考えており、人によってどのように情報が変化するかを理解するために、研究チームに行動心理学者を採用しているという。

「高いレベルでの原則として、当社は複雑さを単純化してからユーザーに提供しようとしているのだと思います」とストヴィチェク氏は話す。「まだまだできることはたくさんあります。私たちは衝突事故ゼロを目指していますし、今後プラットフォームに搭載される新機能を使えば、おもしろいことがたくさんできると思います」。

つまり、ドライバーに緊急事態を警告するために使用する場合を除き、鳴動音やブザー音、気が散るような通知は極力減らされるということだ。Volvoの広報担当者は「機能を隠すというのが目的なのではなく、ユーザーエクスペリエンスをシンプルにし、ドライバーの気を散らさないようにするというのが目的です」と伝えている。

「当社は、テクノロジーではなく、使う人を中心に設計、開発しており、可能な限り直感的なユーザーエクスペリエンスを実現できるよう追求しています」。

ここ数年、自動車にスクリーンが搭載されるようになって以来、自動車メーカーはインフォテインメントシステムにありとあらゆるものを投入するようになった。VolvoはXC90を発表した際、いち早く旧式のSensus OSを採用してスクリーンを標準装備している。現在も同社は、ドライバーに提示する情報をさらに厳選するために取り組んでいる他、NVIDIAに依頼して、グラフィック処理を必要とする入力ライダーセンサー、レーダー、カメラの匿名化された安全データを収集し、理解を深めようと試みている。

 完全電気自動車であるVolvo XC40に新しいインフォテイメントシステムを導入

最近Volvo XC60に乗ってみて私が気づいたのは、インフォテイメント画面が先代よりもシンプルで明るくなったということである。また、ワイヤレス充電システムはなかなか作動せず、設定画面を開かなければならなかった。目の前の画面での選択肢の少なさは、ここ10年で出た新型車に対するアンチテーゼとも言える。

Volvoは何十年もの間、道路上で最も安全な車という評判を守り続けてきた。同社がその安全性を主張できるのは、同社の画期的な研究開発によって得られた評価のおかげである。

1959年にはシートベルトが導入され、1972年には後ろ向きのチャイルドシート、1978年にはブースターシートが導入された。1994年には側面衝突防止装置が導入され、また2008年には衝突回避機能、そして歩行者保護機能が導入された。その年、Volvoは「当社の車の中では1人も重傷者を出さない」という目標を掲げている。2021年には米国道路交通安全局の新車評価プログラムにおいてVolvoの11車種が最高の安全性評価を受けた。

ハンズフリー

自動車メーカーたちは今、スマートフォンという運転上最も安全でないものを使って車載システムをコントロールしたがる顧客の欲求に直面している。しかしVolvoはスマートフォンを消費者の手から遠ざける方法を優先しているという。

同社のUX&イベント部門アシスタントトップのAnnika Adolfsson(アニカ・アドルフソン)氏は「ユーザーは車内では提供されていない機能を実現するために携帯電話を使用していますが、それが安全ではない環境を作り出しており、私たちはそれを避けたいと考えていました」。

サードパーティのアプリに対応するため、ソリューションはAndroid Automotiveのアーキテクチャに組み込まれ、運転中でも安全に使用できるプラットフォームとなった。

Volvoは、Android、Google Maps、Google Assistant、Google Play Storiesの各チームと協力し、その結果、シンプルでクリーンなエクスペリエンスが誕生した。「長い間使用し続けられるプラットフォームを開発できたという点が、特にすばらしい点だと思います」とアドルフソン氏は話している。

また、ドライバーが車に乗るとすぐに起動するため、先を見越した安全性が実現する。

「初めてクルマに乗った人がどのような体験をするのか、どうすればその人の助けになるのかを考えてきました。以前の車では、自分でセッティングから探さなければなりませんでした」とアドルフソン氏はいう。

安全第一

スモールオーバーラップ衝突試験。画像クレジット:Volvo

残念なことに、安全性と技術の進歩は、特に人間の判断が介在する場合には、必ずしも一致しない例が多く見受けられる。

「Tesla and self-driving accident(テスラと自動運転の事故)」で検索してみるといい。Teslaは際どい判断を下すことで有名だが、その莫大な価値には影響していないから不思議である(Tesla Model 3の衝突安全性については高い評価を得ていることを付け加えておきたい)。

TeslaもVolvoもその他の自動車メーカーと同様、最先端を行くためにより多くのADAS機能を将来の製品に組み込もうと精を出しているが、新技術の統合は消費者の信頼や一般的な安心感とは必ずしも一致しない。

AAA Foundation for Traffic Safetyの最近の調査によると、完全自律走行車に安心して乗ることができたドライバーは10人に1人しかいないという。

関連記事:【コラム】自動運転車の普及にはまず運転支援システムが消費者に信頼されることが必要

Volvoは自社のウェブサイトで「最近の消費者調査によると、 Volvoは安全な自律走行車を展開できる最も信頼されている自動車メーカーである」と述べている。完全な自律走行車の実現までには、まだ数年かかると同社は伝えている。

自動運転システムをいち早く完成させ、これまで以上に安全性を高めることができると顧客に確信させると同時に、一流の電気自動車メーカーになれると顧客に信じてもらうというのがVolvoの計画である。そのために慎重になっている同社だが、それは正当な考えだろう。

しかしここで、道路をより安全にするための技術がなぜ「技術第一」と呼ばれなければならないのかという疑問も当然起きてくる。これは、安全を守るということの意味を考える上で興味深い問題だ。

画像クレジット:Bryce Durbin

原文へ

(文:Tamara Warren、翻訳:Dragonfly)

現在の自動車に搭載されている先進運転支援技術で、IIHSの新安全性評価を満たすものは「1つもない」

現在の新車に搭載されている先進運転支援システムで、米国道路安全保険協会(Insurance Institute for Highway Safety、IIHS)が策定中の新たな安全基準を満たすものは1つもないと、同協会は述べている。

自動車保険会社が出資する非営利団体であるIIHSが策定中の新しい評価プログラムは「部分的な自動化」機能を備えた車両において、ドライバーが道路に集中していられるように支援するための安全装置を評価することになると、同協会は米国時間1月20日に発表した。

IIHSは、このようなシステムに「good(優)」「acceptable(良)」「marginal(可)」「poor(不可)」の4段階の評価を与える。IIHSによると、最初の評価は2022年に発表予定とのことだが、具体的な時期は明らかにされていない。サプライチェーンの問題により、テスト用に使う車両の入手が困難になっているためだ。

「部分的な運転自動化システムは、長時間のドライブを負担が少ないものにするかもしれませんが、運転をより安全にするという証拠はありません」と、IIHSのDavid Harkey(デイヴィッド・ハーキー)会長は、声明の中で述べている。「実際には、システムが十分な安全装置を備えていないと、逆に危険な状態になることもあるのです」。

IIHSの発表によると「good」の評価を得るためには、ドライバーの目線が道路に向けられており、手が常にハンドルを握っているか、またはすぐに握れる状態にあることを保証するドライバー監視システムが、車両に搭載されている必要があるという。さらにドライバーがこれらの義務を無視し続けた場合、徐々にエスカレートする警告や、緊急措置が取れる機能が備わっていなければならない。

なお、IIHSの新しい評価プログラムでは、カメラやレーダーセンサーによる障害物の識別能力など、事故につながる可能性のある他の機能面については評価を行わない。

自動車メーカーが提供する運転支援システムには「部分的な自動化」機能が多く含まれている。最も一般的なものは、ドライバーが選択した速度と車間距離を維持するために自動的に走行速度を調整するアダプティブ・クルーズ・コントロールと、ドライバーが走行車線の中央に車両を維持し続けるのを補助するためにステアリングを継続的に調整する車線中央維持機能を組み合わせたものだ。自動的に車線変更を行う機能も一般的になってきていると、IIHSは指摘する。

運転自動化システムの評価に乗り出すIIHSの動きは、自動車メーカーを牽制する規制や消費者保護団体の動向に沿ったものだ。Consumer Reports(コンシューマー・レポート、CR)は、十分なドライバー監視システムを備えた部分自動運転システムにポイントの付与を始めるという。IIHSの安全機能評価が提供されるようになれば、CRはそれも考慮に入れる予定だ。

コンシューマー・リポートは、2月17日に発表する2022年の自動車ランキング「Top Picks」で、ドライバー監視システムの評価を盛り込むとしている。テストする車に安全運転を促すシステムが運転支援パッケージの一部として搭載されている場合、CRはその総合得点に2点を加算する。

CRによると、現状でこの追加ポイントを獲得できる先進運転支援システムは、Ford(フォード)の「BlueCruise(ブルークルーズ)」とGMの「Super Cruise(スーパークルーズ)」のみだという。

十分なドライバー監視システムが搭載されていない新型車は、2024年より総合スコアから2ポイントを減点するとCRは述べている。2026年になると減点は4ポイントに増える。

IIHSは、部分的な自動運転システムのほとんどが何らかの安全装置を備えているものの、同組織が策定中の基準をすべて満たしているものは1つもないと指摘。これではドライバーが意図的または無意識に、システムの安全な動作の範囲を大幅に超えてしまう可能性がある。

「これらのシステムの多くは、その機能が実際にできること以上のことが可能であるような印象を人々に与えています」と、IIHSの研究員で新しい評価プログラム策定の指揮を執っているAlexandra Mueller(アレクサンドラ・ミューラー)氏は語っている。「しかし、ドライバーが部分的な自動運転システムの限界を理解していたとしても、気持ちは揺れ動いてしまうことがあります。人間は、すべてを自分で運転しているときよりも、問題が発生するのを見守っているときの方が、警戒心を保つのが難しいのです」。

いわゆる自動運転車はまだ一般に発売されていないが、自動車メーカーが混乱を招いたりシステムの能力を誇張したりするような方法で、そのシステムをブランド化することは止められない。

Tesla(テスラ)は、同社の車両に標準装備されている先進運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」や、1万2000ドル(約136万円)で追加購入できるアップグレード版のソフトウェアパッケージ「FSD(フル・セルフ・ドライビング)」のベータ版のブランディングについて、多方面から批判を受けている。しかし、他の自動車メーカーでも、自社のシステムの能力を誇大宣伝するようなマーケティングキャンペーンは、以前から行われている。

画像クレジット:Veoneer

原文へ

(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

米航空会社、Cバンド5Gが「壊滅的な混乱」を引き起こす可能性を警告

航空業界は、AT&TとVerizon(ベライゾン)が新しいCバンド5Gネットワークを起動する米国時間1月19日に「破局的な」危機をもたらす可能性があると主張している。ロイターが入手した書簡の中で、Delta(デルタ)航空、United(ユナイテッド)航空、Southwest(サウスウエスト)航空など、米国の主要な旅客・貨物航空会社数社のCEOは、5Gセルタワーからの干渉が、航空機に搭載されている繊細な安全装置に影響を与える可能性があると警告した。

この書簡は、ホワイトハウス国家経済会議、連邦航空局(FAA)、連邦通信委員会(FCC)、およびPete Buttigieg(ピート・ブティジェッジ)米運輸長官に送られたもので「主要なハブ空港が飛行可能な状態にならない限り、旅行者や輸送者の大部分が実質的に運行停止となる」と述べている。「航空旅客、荷主、サプライチェーン、必要な医療品の配送への重大な影響を避けるためには、早急な介入が必要」とも。

航空会社は、AT&TとVerizonに対し、米国で最も繁忙で重要な空港の2マイル(約3.2キロメートル)以内で5Gサービスを提供しないよう求めている。また、連邦政府に対しては「壊滅的な混乱を起こさずに安全にサービスを実施する方法をFAAが見極めるまで、タワーが空港の滑走路に近すぎる場合を除いて5Gを展開する」ことを求めている。連邦航空局は1月7日、50の空港で5Gバッファーゾーンを設定した。

今回の書簡は、航空業界とワイヤレス業界の間で続いている一進一退の攻防における最新の進展だ。AT&T、T-Mobile、Verizonの3社は、FCCがオークションにかけたCバンドの再利用周波数を確保するために、2021年初頭に約800億ドル(約9兆1700億円)を投じた。11月、AT&TとVerizonは、FAAが干渉の懸念に対処するために、Cバンドの展開を2022年1月5日に延期することに合意した。両社はその後、空港近くの電波塔の出力を制限することを提案し、1月4日にさらに2週間延期することで合意した。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Igor Bonifacic(イゴール・ボニファシッチ)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:

原文へ

(文:Igor Bonifacic、翻訳:Aya Nakazato)

各アプリの機密情報の取り扱い方を教えてくれるアップルのApp Privacy Reportがベータ版に

Apple(アップル)は「App Privacy Report(アプリ・プライバシー・レポート)」のベータ版の提供を開始した。この新機能は、日常的に使用しているアプリがどれくらいの頻度で機密情報へのアクセスを要求しているか、またその情報がどこで共有されているかといった詳細を、iOSユーザーに提供することを目的としている。この機能は、EメールのトラッキングピクセルをブロックするツールやプライベートVPNなど、プライバシーに焦点を当てた改善が行われているなかで、6月に開催されたAppleの世界開発者会議で初めて紹介された。Appleは当時、この新しいレポートには、アプリがユーザーの位置情報、写真、連絡先などのユーザーデータやセンサーにアクセスした際の詳細や、アプリがコンタクトするドメインのリストが含まれると説明していた。


iOS 15のアップデートの一部として発表されたものの、2021年の秋口に新バージョンのiOSが公表された時点では、App Privacy Reportは利用できなかった。このレポートはまだ一般には公開されていないが、iOS 15.2およびiPadOS 15.2のベータ版のリリースにともない、より広範なベータテストが開始された。

新しいレポートは、アプリがどのような機密データを収集し、それがどのように使用されているかを詳細に示す潜在的に誤る可能性があるApp Privacy(アプリプライバシー)ラベルにとどまらないものだ。開発者は、誤って、あるいはエンドユーザーに誤解を与えようとして、ラベルを正確に記入しないことがあり、AppleのApp Reviewチームがそのような記入漏れを常に見つけられるとは限らない。

関連記事:アップルがアプリのプライバシー方針を明らかにするラベルを全App Storeで公開

その代わりに、新しいApp Privacy Reportは、アプリがどのように振る舞っているかについての情報をより直接的に収集する。

ユーザーがデバイスのプライバシー設定で有効にすると、App Privacy Reportは、アプリの過去7日間のアクティビティのリストを作成する。アプリをタップすると、そのアプリが最後にセンシティブなデータやデバイスのセンサー(例えば、マイクや位置情報など)にアクセスした日時などの詳細が表示される。これらの情報は、各アクセスがタイムスタンプとともに記録されたリストで見ることができる。

別のセクション「App Network Activity(アプリ・ネットワーク・アクティビティ)」では、アプリが過去7日間に通信したドメインのリストを見ることができる。このリストには、アプリ自身が機能を提供するために使用したドメインを含んでいるだけではなく、アプリが分析や広告の目的で提携している第三者のトラッカーや分析プロバイダーのドメインも明らかにする。

「Website Network Activity(ウェブサイト・ネットワーク・アクティビティ)」は、同様のリストを提供しているが、ドメインにコンタクトしたウェブサイトに焦点を当てており、その中にはアプリが提供したものも含まれている。また、最もコンタクトのあったドメインを見たり、いつ、どのトラッカーやアナリティクスが使用しているのか、さらにはどのアプリがいつコンタクトしてきたかを確認するために個別のドメインを掘り下げたりもできる。

ベータ版の公開に先立ち、Appleは「Record App Activity(アプリ・アクティビティの記録)」という機能を提供した。これは、App Privacy Reportが利用可能になったときに、ユーザーに表示される内容を開発者がプレビューできるようにするものだ。このオプションは、アプリが予想どおりに動作していることを確認できるJSONファイルが生成する。この機能は、すでにいくつかの興味深い発見をもたらしている。例えば、中国のスーパーアプリWeChatは、新しい写真を見つけるため数時間ごとにユーザーの携帯電話をスキャンしていることがわかった

App Privacy Reportは、ユーザーにとってデータの宝庫となる一方で、開発者にとっては複雑な問題となる可能性がある。開発者は、これらのデータ要求が、アプリの機能を提供するためのもので、プライバシー侵害ではないということを、ユーザーに説明しなければならなくなるかもしれない。例えば、天気予報アプリでは、旅行の準備のために、嵐の情報など、変化する天気パターンに関するプッシュ通知をユーザーが要求した場合、位置情報を定期的に取得する必要がある。

開発者に提示する際、Appleは、このレポートが、アプリが行っていることについて透明性を提供することで、ユーザーと「信頼関係を築く」機会になると述べた。また、開発者自身がインストールを選択したSDKについて、その動作が開発者の要望や期待に沿ったものであることを確認するための、より良い洞察を与えることができるとしている。

Appleは、この新機能がいつベータ版を終了するかについては言及していないが、iOS 15.2が一般公開されたときに出荷される可能性がある。

画像クレジット:Apple

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

テスラ車15万台が「フルセルフドライビング」へのアクセス権を求めその評価基準「セーフティスコア」ツールを利用中

Tesla(テスラ)の約15万台の車両が、2021年9月に発表された新しい「セーフティスコア」を利用していることが、第3四半期の決算説明会で明らかになった。これは、ドライバーが「フルセルフドライビング」ソフトウェアのベータ版にアクセスできるかどうかを判断するためのツールだ。

「フルセルフドライビング(FSD)」のベータ版登録プログラムには現在15万台のクルマが加入しているが、ソフトウェアへのアクセス権が与えられたドライバーはごく一部である。過去1年間でFSDプログラムを試すことができたドライバーは、わずか2000人だ。10月初め、Teslaはバージョン10.2を、セーフティスコアが満点の約1000人のオーナーに追加で展開した。

Teslaは、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOが何年も前から「いつか完全な自律走行機能を実現する」と約束してきたFSDソフトウェアを1万ドル(約114万円)で販売している。しかし、FSDを搭載したTesla車は、自律運転ではない。FSDは、駐車ツール「サモン」をはじめ、高速道路のオンランプからオフランプまで、インターチェンジや車線変更を含めてクルマをナビゲートするアクティブ支援システム「ナビゲート・オン・オートパイロット」など、多くの自動化機能を搭載した先進運転支援システムだ。

最新のFSDベータ版では、高速道路や市街地での運転を自動化することを想定している。このシステムはまだレベル2の運転支援システムであり、ドライバーは常に注意を払い、ハンドルから手を離さず、コントロールする必要がある。

ベータ版ソフトウェアにアクセスするためには100点満点でなければならないセーフティスコアが、FSDへのアクセスを計るために使用されているが、Teslaは他の用途も考えている。同社はこの機能を、10月初旬にテキサス州で販売を開始したばかりの、成長が著しいテレマティクス保険の情報に利用したいと考えている。セーフティスコアは、ブレーキ操作、旋回、尾行、前方衝突警告、オートパイロットの強制解除などを参考にして、衝突事故の可能性を予測するものだ。

関連記事:テスラ、「リアルタイムの運転行動」が価格を左右する自動車保険をテキサス州でスタート

Teslaの最高財務責任者(CFO)であるZachary Kirkhorn(ザカリー・カークホーン)氏は、これまでに同社が収集した1億マイル(約1億6000km)以上の走行データを分析した結果、セーフティスコアを使用している顧客の衝突の確率は、使用していない顧客より30%低いことがわかったと述べている。

「つまりこれは、製品が機能しており、顧客がそれに反応していることを意味しています」と同氏は語っている。

Teslaの車はコネクテッド・システムを採用しているため、同社は膨大な量のデータを使ってドライバーの属性を評価し、その属性が安全性と相関しているかどうかを判断することができる、とカークホーン氏はいう。Teslaでは、この運転履歴データを用いて、一定期間の衝突確率を予測するモデルを作成した。

「モデルは完璧なものではなく、利用可能なデータの関数です。データセットが増え続けるにつれ、我々は新しい変数を試し続けます。そして、そのモデルで衝突の頻度を予測することができれば、それを価格曲線に反映させることができるのです」。とカークホーン氏はいう。

これによりTeslaは「クルマに組み込まれ、アプリに組み込まれ、お客様の体験に組み込まれた」個別化された価格を提供することができる。また、運転のたびに、衝突の確率を減らすためにどのような運転調整が必要であるかをドライバーに伝えるフィードバックループも備えている。

Teslaが保険についてリサーチを始めたとき、従来の保険会社は、事故歴や配偶者の有無、年齢などの人口統計情報など、静的な既存データに基づいて保険料を算出していることがわかった。その結果、リスクの低い顧客は保険料を払いすぎてしまい、その払いすぎた保険料がリスクの高い顧客の補助に使われてしまうのだとカークホーン氏はいう。

「私たちは、このデータを見て、これは公平ではないと思いました」とカークホーン氏は話している。

Teslaは約2年前からカリフォルニア州で保険を提供しているが、セーフティスコアによって保険料が決定されるのはテキサス州が初めだ。同社は、規制当局の承認を得ながら、保険を提供する州を追加していくロードマップを作成しており、Tesla車が存在するすべての主要市場に参入することを目標としている、とカークホーン氏は語っている。

画像クレジット:Tesla

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Akihito Mizukoshi)

「テスラに対する偏見がある」とマスク氏が非難したNHTSAの顧問任命を、米運輸長官が擁護

Tesla(テスラ)のElon Musk(イーロン・マスク)CEOは、Missy Cummings(ミッシー・カミングス)氏が米国で最上位の交通局の重要な顧問に任命されたことについて、Twitter(ツイッター)で懸念を表明したが、米国運輸長官のPete Buttigieg(ピート・バッティジエッグ)氏は、マスク氏に懸念があるなら直接自分に話すようにと提案した。

Reutersによると、バティジエッグ氏は米国時間10月20日に開催されたイベントで「もしマスク氏が懸念を抱いているのであれば、ぜひ私に電話して欲しい」と、記者団に語ったという。「我々には道路を走るすべての車両が安全であることを確認する責任があります」。

マスク氏は、Duke University(デューク大学)の工学・コンピューターサイエンス教授であるミッシー・カミングス氏が、米国運輸省道路安全局(NHTSA)の安全顧問に任命されたことに憤慨している。「客観的に見て、彼女の実績はテスラに対する甚だしい偏見がある」と、マスク氏は米国時間10月19日に語った。

NHTSAの最近の行動は、政治的な動機があり、テスラに対して強い偏見があるように見えました。今回のミッシー・カミングス氏の起用は、その説を裏付けるものに思えます。イーロン・マスクさん、感想は?
マット・スミス

客観的に見て、彼女の実績はテスラに対する甚だしい偏見があります。
イーロン・マスク

デューク大学で「Humans and Autonomy Laboratory(人間と自律性の研究室)」を率いるカミングス氏は、マスク氏といつでも「喜んで座って話をします」と答えた。

カミングス氏もTwitterを頻繁に利用しており、そこでテスラの運転支援技術とその展開方法についてしばしば懸念を表明している。9月には、テスラがその「Full Self-Driving(フル・セルフドライビング)」ソフトウェアのベータプログラムに参加を認めるユーザーを選別するために「安全スコア」を導入したことを批判する一連のツイートを行った。

しかし、彼女のテスラに対する批判はもっと昔にまで遡る。2年前、カミングス氏は、テスラの先進的運転支援システム「Autopilot(オートパイロット)」について「モードの混乱を引き起こしやすく、信頼性が低くて安全性に欠ける」と(これもTwitterで)述べ、NHTSAはテスラにこの機能を停止するよう求めるべきだと続けた。

カミングスがNHTSAの安全顧問に指名されたことは、NHTSAが今後、先進運転支援システム(ADAS)やテスラに対してより保守的な姿勢をとることを示唆していると考えられる。

もちろん、NHTSAとテスラはこれまで馴染みがなかったわけではない。道路安全局は2021年8月、テスラのクルマが駐車中の緊急車両に衝突した12件の事件を発見し、Autopilotについて安全性調査を開始した。この規制当局はまた、2017年の死者を出した事故と、それ以降にテスラのADASが関与した25件の事故に対しても調査を行っている。

関連記事:米当局がテスラのオートパイロット機能を調査開始、駐車中の緊急車両との衝突事故受け

8月の時点では、テスラのFSDが完全な自動運転を実現できると思うかと尋ねるツイートに対し、カミングス氏は次のように答えている。「私の予想では、絶対無理」。しかしそれは、彼女が必ずしもLiDAR(レーザー光のパルスで距離を測定する光検出・測距技術)こそが解決策だと考えていることを意味するわけではない。カミングス氏は、完全な自動運転はディープラーニングの進化によってもたらされる「不確実性の下で行われる推論の完全な再考」なしには実現できないという考えを述べている。

テスラの支持者たちは「Autopilot Users for Progress(進歩のためのオートパイロット・ユーザーたち)」というバナーの下、Joe Biden(ジョー・バイデン)大統領とNHTSAのスタッフに対し、利益相反や偏見の懸念に関して人事の見直しを求める請願運動をChange.orgで開始した。

画像クレジット:Christopher Goodney/Bloomberg / Getty Images

原文へ

(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Birdスクーターが危険な歩道走行を正確に検知し、ゆっくり停止させる新機能を発表

共有型マイクロモビリティを運営するBird(バード)は、スクーターのADAS(先進運転支援システム)化に乗り出した。Birdは、3年間の研究を経て、スクーターの歩道走行を検知し、ゆっくりと停止させることができる新技術を発表した。

この新技術は、現在、ミルウォーキーとサンディエゴで数百台のスクーターに搭載して試験的に運用されており、2022年初頭にはマドリッド、さらに数カ月後には世界の他の都市にも導入される予定だ。Birdのチーフ・ビークル・オフィサーであるScott Rushforth(スコット・ラッシュフォース)氏は、すべての新車にこの技術が搭載されることになり、現在から2022年初めにかけて「数万台から数十万台」の歩道検知機能付き車両が製造ラインから出荷されるだろうと述べている。

この新機能は、世界中の都市で最も不愉快で危険な、共有型マイクロモビリティの問題を解決するために設計されたもので、無線半導体や高精度測位モジュールを製造するスイスのu-blox(ユーブロックス)との提携により実現した。Birdによると、両社は共同でu-bloxのZED-F9Rモジュールの独自バージョンを開発し、特に共有型マイクロモビリティ業界のニーズに合わせて調整が施されたという。

ラッシュフォース氏はTechCrunchの取材に対し「このモジュールはGPSセンサーからの入力情報を用います。またデュアルバンドのGPSセンサーを使用しているため、GPSの中でも最も優れた性能を誇ります。その上に加えたのがRTKと呼ばれるシステムで、これはリアルタイムキネマティクス(real-time kinematics)の略です。さらにその上に、センサーフュージョンを用いたシステムを追加しました。このシステムは、車輪の移動距離やスクーターが傾いている角度など、車両自体からのデータだけでなく、これらすべてのデータを取得し、GPSの位置情報と融合させることで、GPS信号がうまく機能しない場合でも、車両の位置を極めて正確に把握することができるのです」と語っている。

歩道を走っているライダーは、モバイルアプリケーションと新しい16ビットのカラーディスプレイを介して、違反行為を音声と映像で警告されることとなり、その後スクーターはスロットルを外してスムーズに停止する仕様だ。

Birdは、2019年からさまざまな歩道検知技術を検討してきたというが、それは決してBirdだけではなかった。マイクロモビリティのライダーアシスタンスシステムの世界では、2つのグループがあるようだ。1つ目のグループは、超精密な測位とセンサーフュージョンに頼って、悪質な乗車行動を検出し、それをリアルタイムで修正する技術に頼るグループだ。Superpedestrian(スーパーペデストリアン)は最近Navmatic(ナブマティック)を買収し、同社の代表的なソフトウェアを同様の方法で活用している。

関連記事
電動キックスクーターの安全性をモニターするSuperpedestrianが危険運転を検知・制御のためNavmatic買収
コンピュータービジョンで歩道走行の防止と安全性の向上を目指すマイクロモビリティVoiが50億円を調達

もう一方のグループでは、Spin(スピン)Voi(ボイ)、そして最近ではHelbiz(ヘルビズ)などが、Drover AI(ドローバーAI)やLuna(ルナ)などのスタートアップと協力して、歩道や自転車レーン、歩行者などを検知するカメラを搭載している。

コンピュータビジョン企業は、位置情報を利用したスクーターのADASは、都市の峡谷や地下駐車場のようなGPSのない場所では役に立たないとしばしば主張してきたが、ラッシュフォース氏はその主張に反対している。同氏によると、u-bloxのモジュールは進化したデッドレコニング(推測航法)機能を搭載しているという。これは、基本的には以前にとらえた位置を使用して移動体の現在の位置を計算するプロセスだ。GPSが出発点となる可能性が高いため、車両が衛星の受信を完全に失った場合でも、他のセンサーに頼って、どの方向にどれだけ進んだかを判断することができる。

Birdによると、このモジュールは、車輪の速度、加速度、空間的な方向性、運動学などのデータを処理し、それらを融合することで「恐ろしいほど正確な」位置情報とセンチメートルレベルのマッピングを導き出すそうだ。これらの情報は、車両の回路基板を経由して、同社独自のOSであるBird OSに送られ、Bird OSがデータをどう扱うかを判断する。

これにより、Birdの車両は、市が定めたエリア内に正確に留まることができるだけでなく、高い位置精度を持つことで、関連するさまざまな他の機能にも対応することができる。

「もし、このような追加技術なしで、GPSだけでエリアにいると、駐車場の外にいるのに、車両はその中にいると認識してしまうかもしれません。だからこそ、このように高い精度が得られれば、駐車場での体験が確実に向上するはずです」とラッシュフォース氏はいう。

また、マイクロモビリティ企業の最大のコストの1つであるオペレーションも、車両の位置を正確に把握することで、ゴミ箱の後ろに隠れているかもしれない車両を探す時間や、GPSでは北西に位置しているのに実際には南西の角に位置しているかもしれない車両を探す時間を削減することができ、大きなメリットを得ることができるだろう。

「車両の位置を正確に把握することで、我々のビジネス全体が測定可能な形で改善されると言っても過言ではありません」とラッシュフォース氏は語る。

Birdによると、カメラを使ったものやウルトラワイドバンド(無線技術の一種で、短距離・広帯域の無線通信を行う)など、いくつかのソリューションも検討したが、拡張性の点でこのソリューションが最適であると判断したという。

ラッシュフォース氏は「これで、あまり訓練をしなくても済むソリューションができました。バックエンド側で歩道の位置データを表示するだけで、すぐに拡張することができ、1台あたり10~12ドル(約1100〜1300円)程度の追加費用で済みます」。と語る。

一方、カメラを使ったソリューションでは、ハードウェアとサービスのコストが車両1台あたり約200ドル(約2万2000円)になり、時間の経過とともに1台あたり80ドル(約9000円)まで落とせる可能性はあるが、利益を上げる方法をまだ見いだせていないビジネスにとっては、かなりの金額だ。

「もし私が未来を読める水晶玉を持っているとしたら、今後24カ月の間に誰もがこの方法を真似するだろうというと思いますよ。費用対効果を考えれば、これしかありませんから」とラッシュフォード氏は語っている。

画像クレジット:Bird

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Akihito Mizukoshi)

MITがテスラ車ドライバーは「オートパイロット使用時に注意散漫になる」研究結果を発表

今週末までには、数千人のTesla(テスラ)車ユーザーが、同社の「Full Self-Driving(フル・セルフ・ドライビング)」と呼ばれる機能の最新ベータ版ソフトウェア(バージョン10.0.1)を、公道で試すことになる可能性がある。だが、米国の規制当局や連邦政府は、いくつかの顕著な事故が起きていることを踏まえ、このシステムの安全性を調査している

関連記事:米当局がテスラのオートパイロット機能を調査開始、駐車中の緊急車両との衝突事故受け

テスラの「FSD」や「Autopilot(オートパイロット)」システムは、名前から想像するのとは違い、実際には完全な自動運転が可能なシステムなどではなく、いわゆる先進運転支援システム(ADAS)に過ぎない。マサチューセッツ工科大学(MIT)は、このシステムが実際にはそれほど安全ではないのではないかという懸念を裏づける新しい研究結果を発表した。人間のドライバーが開始させた同社の運転支援システムが解除されるエポックのデータ290件を調査した結果、部分的にこのシステムを使用している場合、ドライバーが不注意になる傾向があることがわかった。

「視覚的な行動パターンは、『Autopilot』の解除の前後で変化する」とこの研究報告には書かれている。「システム解除前のドライバーは、手動運転に移行した後と比較して、路上を見る回数が少なく、運転に関係のない領域に集中している。手動運転に切り替わる前は、視線が道路から外れている割合が大きく、より長く前方に視線を向けて補われることはなかった」。

テスラのElon Musk(イーロン・マスク)CEOによれば、(オプションとして設定されている)FSDソフトウェアを購入したすべての人が、より多くの自動運転機能を約束するこの新しいベータ版を利用できるわけではないという。テスラはまず、ドライバーが十分な注意力を維持していることを確認するために、テレメトリーデータを使って、7日間にわたって個人の運転指標を取得する。このデータは、所有者の車両を追跡する新しい安全性評価ページにも使用される可能性がある。このページは保険にリンクされる。

MITの研究は、ドライバーがテスラのAutopilotシステムを推奨通りに使用していない可能性があることを示すものだ。Autopilotには交通状況に合わせて機能するクルーズコントロールや、自動的にハンドルを制御するオートステアリングなどの安全機能が搭載されているため、ドライバーは注意力が低下し、ハンドルから手を離すことが多くなる。このような行動が起きるのは、ドライバーがAutopilotの機能やその限界を誤解していることが原因である可能性があり、この機能がうまく働くほど、それらの誤解は強化される傾向があることを研究者たちは発見した。タスクが自動化されたドライバーは、視覚的・身体的な注意力を維持しようとすると自然と飽きてしまい、それがさらに不注意を生むと、研究者たちは述べている。

「A model for naturalistic glance behavior around Tesla Autopilot disengagements(テスラオートパイロット解除時の自然な視線の行動モデル)」と題されたこのレポートは、テスラの「Model S(モデルS)」および「Model X(モデルX)」のオーナーの日常生活を、1年以上にわたってボストン全域で追跡調査した後にまとめられたものだ。調査対象となった車両には、CAN-BUSとGPS、そして3台の720pビデオカメラから継続的にデータを収集する「Real-time Intelligent Driving Environment Recording(リアルタイム・インテリジェント運転環境記録)」データ収集システムが搭載されていた。これらのセンサーは、車両の運動、ドライバーと車両制御装置の相互作用、走行距離、位置情報、ドライバーの姿勢、顔、車両前方の景色などの情報を提供する。MITは約50万マイル(約80万キロメートル)分のデータを収集した。

この研究に関わった研究者たちは「自然主義的なデータに基づき、自動運転下におけるドライバーの注意力の変移の特徴を理解し、ドライバーが運転タスクに十分に従事し続けるためのソリューションの開発を支援することができる」という視線行動のモデルを作り上げた。これは、ドライバー監視システムが「不規則な」視線に対処するために役立つだけでなく、自動化がドライバーの行動に及ぼす安全上の影響を研究するためのベンチマークとしても利用できる。

Seeing Machines(シーイング・マシーンズ)やSmart Eye(スマート・アイ)のような企業は、すでにGeneral Motors(ゼネラルモーターズ)、Mercedes-Benz(メルセデス・ベンツ)、Ford(フォード)などの自動車メーカーと協力して、カメラを使ったドライバー監視システムを、ADAS搭載車に導入するだけでなく、飲酒運転や運転障害による問題にも対応している。技術はすでに存在しているのだ。問題は、テスラがそれを使おうとするかどうかである。

関連記事:ドライバー監視システム需要を喚起する米国の新しい飲酒運転規制条項

画像クレジット:Bloomberg / Contributor under a license.

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

HAAS Alertが自動車衝突防止システム拡張のために5.5億円のシードラウンドを実施

リアルタイム自動車衝突回避システムを公道上の車両に提供するSaaS企業のHAAS Alert(ハーズアラート)が、500万ドル(約5億5000万円)のシード資金を調達した。同社はその資金を、販売やマーケティングの拡大、そして車対車間および車対インフラ間(V2X)技術の研究開発 / 提携を加速するために使用するという。

このラウンドは、R^2とBlu Venturesが主導し、TechNexus、Stacked Capital、Urban Us、Techstars、Ride Ventures、Gramercy Fundが参加した。

HAAS Alertは、携帯の電波を使うセンサーを利用して、車両周辺の環境から道路のハザードデータを取り込み、その予測技術によって車両システムを通じてドライバーにデジタルで警告を発する。HAAS Alertが独自に開発したデジタル警告システムSafety Cloud(セーフティクラウド)は、消防車、救急車、警察車両、レッカー車、建設車両、廃棄物処理車両、スクールバスなど、官民を問わずさまざまな車両に搭載されている。

HAAS Alertのコネクテッド・ビークル担当上級副社長のJeremy Agulnek(ジェレミー・アグルネク)氏は、TechCrunchの取材に対し「緊急対応要員、けん引業者、建設・作業現場の作業員、および類似の役割を果たす自治体職員の車両は、衝突による死傷率が極めて高いのです」という。「同時に彼らは、地域社会のバックボーンとなる存在であり、すべてのドライバーが毎日のように道路で出会う存在でもあるのです。これらの仕事の多くはもともと危険をともなうものですが、それでも衝突されることによる事故は、すべての死因の上位にランクされています」。

HAAS Alertは、先進的運転支援システム(ADAS)とV2Xを、課題に対するソリューションとして捉え、道路上で最もリスクの高い人たちからサービスを始めて、そこから発展させていくことを目指している。

「私たちにとって、この活動はコネクテッドビークルをエンターテインメントや一般的なコネクティビティのために使用するということではなく、特に安全性に注力するということなのです」とアグルネク氏は述べている。「こうした人びとをつなぎ、保護することで、すべてのドライバーとインフラ対してコネクテッドビークルの体験をすぐに提供することができ、コミュニティの安全性も高めることができるのです。私たちは、緊急応答者や道路作業者の安全性課題を解決することが、モビリティを次のステージに進めるための最も重要な要素だと考えています」。

現在、Safety Cloudは750以上の公共機関や民間企業の車両に搭載されており、合計で10億回以上の警報を送信している。

HAAS Alertは、V2X技術を活用して衝突のリスクを低減しようとするスタートアップの増加を象徴しており、資金調達はパズルの大きなピースとなるだろう。ソフトウェアの開発や保守にコストがかかるだけでなく、公共のインフラや車内にセンサーを設置するためのハードウェアや人的コストも安くはない。HAAS Alertは、2022年までにドライバー安全警報100億回を達成したいと考えているが、そのためには、自動車業界をもっと巻き込む必要がある。現在、同社は主に緊急 / 専門車両群を相手に仕事をしているが、同社のプラットフォームを利用する車両群が増えれば、より多くの一般自動車顧客を獲得することができ、その逆もまた成り立つだろうという。

「緊急 / 専門車両群や代理店経由のお客様には、Safety Cloud上で路上資産を有効活用するために納得していただける料金をお支払いいただき、一般自動車利用のお客様には、当社が提供する安全警告、ソフトウェア、その他のサービスに対するライセンス料をお支払いいただいています」とアグルネク氏はいう。

同社によれは、緊急車両が点滅信号を作動させた際に、接近してくるドライバーたちに自動的にデジタル警報を一斉に送ることができるハードウェア「HA-5トランスポンダ」を、全国の車両に積極的にインストールしている最中だという。これらの警報は、道路上や道路付近に緊急応答要員がいることを他の道路利用者たちに知らせ、ドライバーに減速や回避の時間を与える。

アグルネク氏によると、彼らのハードウェアのセットアップは迅速かつ簡単に行うことが可能で、ダウンタイムも最小限に抑えることができるものの、車両にすでにインストールされている配車システムやGPSやテレマティクスシステムを介して追加のハードウェアなしでSafety Cloudを統合するオプションも用意されているという。

「Safety Cloudの警報を車両に追加するために必要なのは、車両の既存のテレマティクス機能を介してデータを受信し、インフォテインメント画面や機器部分にドライバーへのアラートを表示するためのソフトウェアアップデートだけです」とアグルネク氏は説明する。「現在、ある自動車メーカーとのプロジェクトを進めていますが、彼らの車にアラート機能を実装するのに1週間もかかりませんでした」。

各種の計算は、クラウドまたはハードウェア内のエッジチップで行われる。つまり、警告ロジックは、HAAS Alertのクラウド、車両OEMのクラウド、車両搭載ユニット、またはハイブリッドのマルチロケーションアーキテクチャ上に配置することができる」とアグルネク氏はいう。

Safety Cloudには車両管理プラットフォームのSituational Awareness Dashboard(状況認識ダッシュボード)が標準提供されており、行政機関同士が管轄区域を超えた連携ができるように設計されている。またHAAS Alertは、特定の業界向けのアドオンも可能だ。例えば、R2R(レスポンダートゥーレスポンダー)は、車内に取り付けられたライトが、他のSafety Cloud搭載車がアクティブレスポンスモードで同じ交差点に近づいてきたときに、レスポンダー(緊急応答要員)に対して通知を送る機能だ。またFleetFusion(フリートフュージョン)は、Safety Cloudのリアルタイムデータを組織内のダッシュボード、サードパーティアプリケーション、交通管理センターに統合することができる。

関連記事
フォードが完全EV版に先駆けてハイブリッドの「2021 F-150」発表、オプション満載モデルから見える同社のEVトラック戦略
ドライバー監視システム需要を喚起する米国の新しい飲酒運転規制条項
米当局がテスラのオートパイロット機能を調査開始、駐車中の緊急車両との衝突事故受け
画像クレジット:HAAS Alert

原文へ

(文: Rebecca Bellan、翻訳:sako)

電動キックスクーターの安全性をモニターするSuperpedestrianが危険運転を検知・制御のためNavmatic買収

電動キックスクーターの運営会社Superpedestrian(スーパーペデストリアン)は、マイクロモビリティ運営会社による車両の位置特定と、その動きのリアルタイム補正を助けるスタートアップNavmatic(ナヴマティック)を買収した。

両社とも、2021年6月に成立した買収の詳細を明かしていない。取引の関係者によると、買収価格はNavmaticによる2020年6月の400万ドル(約4億4100万円)の設立資金調達の、最後の資金調達ラウンドとそう変わらない。

Navmaticの買収は、Superpedestrianにとって車両の安全システムを強化するために当該スタートアップのスーパーフュージョン技術を採用できることを意味する。新しいシステムはPedestrian Defense(ペデストリアン・ディフェンス)と呼ばれ、安全でない乗り方(一方通行の道路を逆走、無茶な進路変更、歩道の走行、急ブレーキの繰り返しなど)を検知する。また、スクーターを減速または停止させてリアルタイムで利用者に知らせるか、その行動を正す。利用者は利用終了時に、カスタマイズされた安全トレーニングに使用する安全評価を受け取る。上手な乗り方をしていれば割引を受けられるが、常習的に安全でない乗り方をする利用者はブラックリストに載ってしまう。

スクーター関連の事故が増える中、クルマが関与する交通事故の大半の場面で活躍するであろう新たなテクノロジー企業を紹介する。Spin(スピン)Voi(ヴォイ)は、同様に利用者を見張り、歩行者を守るためにさらなる技術手段を導入した。といっても、Navmaticのように位置特定ソフトウェアに注力したのではなく、コンピュータビジョンのスタートアップであるDrover AI(ドローヴァーAI)とLuna(ルナ)に目を向けた。非妨害性カメラを搭載したSpinとVoiの車両は、Superpedestrianのものとは違って、ある程度の精度を伴って歩行者を検知する。Superpedestrianの良さは、スクーターの細かい動きに関するデータを通じて利用者の行動を精確に理解するところだ。

「現在の課題はスクーターに関連する弱者、つまり歩行者、障害者、ベビーカーを押す人を守ることです」と、SuperpedestrianのCEOであるAssaf Biderman(アサフ・ビダーマン)氏はTechCrunchに語る。「そのため、非常に正確な位置、利用者の行動の特徴付け、コンテキストアウェアネスが必要です。利用者が他者の通行権を邪魔していないか?利用者がデータを正しくトレーニングすれば、カメラは必要ありません」。

ビダーマン氏は、SuperpedestrianがマイクロプロセッサとNavmaticのソフトウェアをLINKスクーターのオペレーティングシステム上で実行しており、Superpedestrianのすべてのマップがそこで機能していると話す。そのソフトウェアはグラウンドトゥルースで高精度なマップの視界を含め、さまざまなセンサーでトレーニングされている。乗車中、スクーターから取得されたデータを分析するリアルタイム計算がマイクロプロセッサのエッジで行われ、GPS生データ、多次元の慣性感知、車両の動力学を組み合わせて、車両の位置と動きを非常に精確に計算する。

「Navmaticのソフトウェアがあれば、位置検知が著しく向上し、スクーター運転者や小型車両のわずかな動きでさえすぐに分析できるようになります」とビダーマン氏は語る。「現在、その反応時間は0.7秒です」。

Superpedestrianのディベロップメント&パブリックアフェア部門ディレクター、Paul White(ポール・ホワイト)氏によると、車両の位置の正確性向上は局地的な条件に応じて70~90%である。

両社は、そのような精確な位置データを車両動作の制御機能と組み合わせると、視界に関する潜在的に安価で確実に拡張可能な優れた解決策となると話す。

「1台のスクーターに1000ドル(約11万円)や2000ドル(約22万円)のLiDARを搭載するわけにはいきませんよね?」とビダーマン氏はいう。「センサーフュージョンがあれば、夜に視界が悪くなったり、カメラが汚れたり、何度も故障したりするなどの制限や、反射や影の影響を受けるGPSの制限を克服できます。できるだけ多くのセンサーを組み合わせることで、それぞれの良いところを享受し、学習と改善を続けることができるのです」。

参考に、ドローバーAIとルナの技術により、スクーター運営会社はデータに基づき利用者の動きを制御することもできる。しかしこの能力はまだSpinとVoiがコンピュータビジョンを使用しているすべての都市で利用されているわけではない。Navmaticのチップはスクーターとオペレーティングシステムを共有しているが、例えばドローバーAIのものはスクーターのOSと直接通信する個別の車載IoTユニットで稼働する。この機能は現在サンタモニカでSpinにより試験的に利用されている。Voiは警報音を用いて歩道の歩行者に知らせるルナの技術をケンブリッジで試験利用したばかりだが、今度はスクーターを減速する方法を模索している。

Superpedestrianはオペレーティングシステムからハードウェアまでフルスタックを所有することにより、オフザシェルフのオペレーティングシステムを購入する他の運営会社と比べて優れた車両の制御性を誇る。

「当社の技術を他社のものと統合する上で、たくさんの課題がありました。他社はコード行を変える必要があるたびに、製造業者に連絡しなければならなかったのです。変更まで1週間もかかります」。NavmaticのCEOで共同設立者のBoaz Mamo(ボアズ・マモ)氏はTechCrunchに語る。

この買収へのSuperpedestrianのソフトウェアファーストのアプローチは、現在会社への投資者の1人であるEdison Partners(エディソン・パートナーズ)のパートナー、Dan Herscovici(ダニエル・エルスコビッチ)氏にとっても魅力的だった。

「スクーター企業による他の買収のほとんどは、市場シェアにとって遊びのようなものです」と彼はいう。「マイクロモビリティ企業が車両を強化するためにIPとテクノロジーに頼ることは滅多にありません」。

エルスコビッチ氏は、Superpedestrianが歩行者の安全と都市の法令遵守の問題を解決するため市場で多くのソリューションを吟味し、自らも技術を開発することを検討していたと話す。製品化までの時間と速く行動する必要性のバランスを取ると、都市の許可を失う恐怖が絶えず頭をよぎる。Navmaticの買収は正しい判断のように見えた。

「マイクロモビリティ分野については3つの大きな顧客層がいると考えています」とエルスコビッチ氏はいう。「まずは利用者。マイクロモビリティ企業は一番に利用者のことを考えますね。彼らをどうやって惹きつけ、乗り続けてもらうか?次に都市や自治体。最後に忘れられがちなのは利用者以外。道路を共有している人達です。業界は安全規則に基づいて利用者の行動を修正する道を模索していて、この買収はその力を解き放つと思います」。

マモ氏は、都市が利用者の移動方法や、優れたインフラ上の決断を下す方法について見識を得る可能性を、ペデストリアン・ディフェンスが切り開くことも指摘している。

ビダーマン氏は、Superpedestrianが2021年約5万台のスクーターを製造しており、12月からすべての新車に新しいテクノロジーを搭載すると述べた。2022年はアップグレードした車両を新規開拓する都市に展開し、同社がすでに営業活動を行う都市の旧モデルと入れ替え始める。

関連記事
AIで電動キックスクーターを安全性をリアルタイムでモニターするSuperpedestrianが米国内で事業拡大
その求人情報からNYCとロンドンの電動キックスクーターパイロット参加企業が見えてきた
画像クレジット:Superpedestrian

原文へ

(文:Rebecca Bellan、翻訳:Dragonfly)

TikTokが「牛乳ケースチャレンジ」の動画を禁止、危険性からユーザーを守るため

TikTok(ティックトック)は、ユーザーの間で流行している「milk crate challenge(ミルククレート・チャレンジ)」を、このトレンドに参加した人が重症を負う恐れがあるとして、そのプラットフォーム上で禁止することにした。ミルククレート・チャレンジは、牛乳ボトル用のプラスティック製ケースをピラミッド状に積み上げ、その不安定な構造の上を歩いて乗り越えようとするものだ。

同社の広報担当者は、TechCrunchに宛てたメールで次のように述べている。「TikTokでは、危険な行為を助長したり賛美したりするコンテンツを禁止しており、そのようなコンテンツを抑止するために、動画を削除し、検索するとコミュニティガイドラインにリダイレクトするようにしています。私たちは、オンラインでもオフラインでも、みなさまが慎重な行動を取るように促していきます」。

この流行に沿ったほとんどの動画では、TikTokユーザーが、その場しのぎで積み上げられた牛乳ケースの片側から上り、もう片側から降りることを目指しながらも、途中で地面に転がり落ちる様子が見られる。複数の医療従事者が、この流行と参加者の危険性について、ソーシャルメディアで懸念を表明したことから、今回の禁止措置に至った。

現在はTikTokのアプリで「milkcratechallenge」と検索すると「検索結果はありません」という表示が出て「このフレーズはコミュニティガイドラインに違反する言動またはコンテンツと関連している可能性があります。TikTokは楽しく、オープンで健全な環境づくりに努めています」と表示される。しかし、ユーザーが「milk craate」や「milk cratee」のように、ミルククレート・チャレンジに関連するキーワードを誤った綴りで検索すると、このトレンドに沿った一部の動画がまだアプリで表示されてしまうこともある。これらの動画の再生回数はそれほど多くはないものの、禁止措置の隙間をすり抜けてアプリ上に残っていることには注意が必要だ。

TikTokの人気上昇にともない、ここ数年の間に数多くの危険なチャレンジが同プラットフォーム上で流行してきた。2019年に流行した「throw it in the air(空中に投げる)」は、TikTokユーザーが何人かで円陣を組み、誰も動いてはいけないとして、自分たちの上に空中にアイテムを放り投げ、落ちてくるその物が誰に当たるかを、床に置いたスマートフォンで撮影するというものだった。2020年、このアプリで流行した「skull-breaker(頭蓋骨破壊)」は、3人が並んで立ち、一緒にジャンプするように持ちかけながら、(騙された)中央の1人がジャンプすると両側の2人が足払いして中央の人を後ろ向きに転倒させるというものだ。このチャレンジでは10代の若者が入院したため、刑事責任を問われることになった。

最近のミルククレート・チャレンジを含むこれらの危険なトレンドから、TikTokはユーザーに危害が及ぶ状況を防ぐため、行動を起こさざるを得なくなっている。

画像クレジット:Lionel Bonaventure / Getty Images

原文へ

(文:Aisha Malik、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

これぞ「メイド・イン・デトロイト」の実力、現場労働者の安全性を向上させる多数センサーを搭載したGuardhatのスマートヘルメット

デトロイトを拠点とするGuardhat Technologiesの創業者Saikat Dey(サイキャット・デイ)氏は、鉄鋼業界で自身のキャリアを開始した。Guardhatを設立する前にはミシガン州ディアボーンに本社を置く多国籍鉄鋼コングロマリット、Severstal InternationalのCEOを務めていた経験を持つ。

前職ではミシシッピ州、ミシガン州、ウェストバージニア州の炭鉱で3600人の従業員を抱え、数量、売上ともに第4位の鉄鋼メーカーのグローバルビジネスを管理していたデイ氏。その頃から同氏は安全性に大きなこだわりを持つようになったという。

キャッシュフローやEBITDAといった一般的な数値だけでなく、従業員の安全性も報酬に影響を与える指標であるとデイ氏は考えている。「現場の従業員の安全性をいかにして守るかということは、重要な指標の1つです」とデイ氏は説明する。

工場の安全性に対する懸念から組合の幹部に働きかけ、そこから開発が始まり誕生したのが現在のGuardhatの中核となる技術だ。

Guardhatは危険な産業における作業中の事故を検知、警告、防止する、ウェアラブル技術と独自のソフトウェアを統合したインテリジェントセーフティシステムを開発している。

Dan Gilbert(ダン・ギルバート)氏が経営するDetroit Venture PartnersGeneral Catalystの他、Ru-Net Holdingsの共同創業者であるLeonid Boguslavsky(レオニード・ボグスラフスキー)氏が率いるベンチャー投資会社RTP Venturesなどの投資家がデイ氏のビジョンを支援している。また、何よりも重要な関係者である、同社の技術を利用している従業員を代表する組合からの賛同も得ることができている。

Guardhatの産業用ウェアラブルの初日のブレインストーミングのメモ(画像クレジット:Guardhat

世界中の産業労働者のために作られた「メイド・イン・デトロイト」

鉱業、金属、石油、ガスなどの産業分野では、毎日およそ15人の労働者が仕事中に死亡し、毎年300万人が負傷している。この業界の経営者にとってこの問題は、倫理的な問題であると同時に経済的な問題でもある。Severstalではデイ氏の給料の40%が労働者の安全に結びついていたという。

実際、Guardhatのアイデアは同氏がデトロイトにある同社の鉄鋼工場のフロアを歩いているときに思いついたものだった。いつものように工場内を歩いていると、ある機器を操作している男性の前を通りかかった際、その男性が持っていた一酸化炭素警報器が鳴り始めたという。しかしその男性は原因究明をすることなく、モニターの電源を切ってしまったのだ。

「デトロイトの中心部にあるその製鉄所には、北米最大の高炉があります。彼が何をしていたにせよ、大惨事につながる可能性がありました」とデイ氏。

それがGuardhatのテクノロジーが誕生したきっかけとなる。今どこにいるのか、どんな状況に直面しているのか、いつ助けが来るかなど、世界中のどんな工場にも当てはまるシンプルで状況に応じた質問に答えるように設計されている。

「当時、事故を防ぐための有効な手段や、事故が起こった場合にタイムリーな情報を提供する手段がありませんでした」。

経営陣によって設計されたこの技術だが、実際に労働者が使ってくれるようデトロイト地区の組合長と相談しながら作られている。

「2014年の9月にこのビジネスを開始することを決めました。この事業を始めるか否か迷っていたとき、ある組合員がやってみなよと言って背中を押してくれたのです。60億ドル(約6500億円)の損益計算書を見ながら米国の6大鉄鋼メーカーの1つを運営する有色人種の私が、文字通りガレージからこの事業を立ち上げました。勇気と愚かさが必要でしたし、UAW(全米自動車労働組合)の友人たちからは多大な支援を受けました」とデイ氏は当時を振り返る。

従業員が不必要に監視されたり罰されたりしているように感じることなく、情報を生成、保存できるようになったのは、このコラボレーションのおかげである。

Guardhat Technologiesのセンサー機器を詰め込んだセーフティヘルメット(画像クレジット:Guardhat Technologies)

プロトタイプから製品へ

同社の初となる製品は、センサー機器を詰め込んだヘルメット「HC1」だ。「誰もが着用し、着用が義務付けられているものに搭載すべきです」とデイ氏。

当初はウェアラブルの開発だけを考えていたものの、時間が経つにつれてデイ氏とチームはデバイスだけでは十分ではないことに気が付く。「ヘルメットは単なるフォームファクターの1つに過ぎません。【略】フォームファクターが何であれ、従業員を取り巻くすべての情報をプラットフォーム上でどのようにして1つの揺るぎない情報源として確立させるかが重要でした」。

デトロイトを拠点とする数多くのスタートアップ企業と同様、デイ氏とチームも資金調達の必要に迫られた際、ギルバート氏に相談した。

ギルバート氏はプロトタイプを着用してビルの中を走り回り、GuardHatチームが同氏のいる場所を探し当てられるかテストした。

ギルバート氏が加わったことにより、プロダクトデザイン会社であるfrog labsと3Mも協力することになり、そこからプロトタイプのテストが開始された。

「オハイオ州アクロンにある第三者認証機関でテストを行った初日のことを今でも覚えています。彼らは5メートルの高さから金属球を落としていました。1つ3000ドル(約33万円)のプロトタイプ27個が粉々になってしまいました。テストはすべて失敗です。我々はヘルメットの作り方を知らなかったわけです」とデイ氏は振り返る。

frog labsやその他企業の支援を受けて完成したこの装置は、現在5000人以上の作業員に使用され、少なくとも2000件の事故を未然に防いだり、警告を発したりすることができている。

同事業はデトロイトでしか誕生し得なかったとデイ氏は感じている。「デトロイトというのは象徴的なものです」と同氏。それはGuardhat創業チームが重工業のあり方を学んだ、実社会の厳しい試練の象徴でもあるのだ。

関連記事
自動車の都デトロイトは今もハードウェアスタートアップにとってハードモード
キャタピラージャパンが次世代油圧ショベルなどを遠隔操作するCat Commandステーションを2022年発売
パンデミック以降、最もロボットによる自動化が進んだのは倉庫と工場

カテゴリー:ハードウェア
タグ:デトロイトGuardhat Technologies安全工場建築

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)