AI活用の水泳コーチングシステム「スマートスイミングレッスンシステム」を全国約100カ所のコナミスポーツクラブが導入へ

AI活用の水泳コーチングシステム「スマートスイミングレッスンシステム」を全国約100カ所のコナミスポーツクラブが導入へソニーネットワークコミュニケーションズは3月29日、映像とAIを活用したスイミングスクール向けコーチングシステム「スマートスイミングレッスンシステム」について、コナミスポーツが導入を決定したと発表した。4月1日より「運動塾デジタルノート」の名称で、コナミスポーツクラブの「運動塾スイミングスクール」で使われる。まずは東京の本店に導入し、2023年3月末までに全国約100店舗に順次導入してゆく。

スマートスイミングレッスンシステムは、撮影と動画編集、クラウドによる配信、コーチ用アプリケーションという技術で構成されている。撮影は、プールの水上と水中に設置した複数台のカメラで行われる。通常は、水面の揺れ、光の反射、屈折などにより難しいとされる泳ぐ人の画像認識と追従を独自開発のAIアルゴリズムで実現した。さらにAIは、複数の水面・水中映像から最適なものを選び出して自動編集を行い、動画コンテンツにまとめる。この映像は、プールサイドに設置したタブレットで自動再生されるため、プールから上がった生徒は、タブレットを操作することなく、すぐに見ることができる。コーチ用のアプリケーションは、レッスン中にも使いやすい画面デザインとなっていて、進級テストでは、動画とともに結果とコメントをまとめて個人用ページに配信できるようになっている。これは保護者の端末にも配信され、親子で共有できる。

ソニーのセンシング技術・AI活用の「スマートスイミングレッスンシステム」を全国約100カ所のコナミスポーツクラブが導入へこのシステムでは、レッスン前に個人ページに配信されるお手本動画での予習が可能であり、レッスン中はコーチがお手本動画を示しながら説明が行えるという特徴がある。自分の泳ぎの映像と合わせることで、生徒は自分の課題を視覚的に理解しやすく、自発的な行動が促されるという。また、上達を実感できるためモチベーションが向上し、積極的な学びにつながるとのことだ。

カメラは、防水対応を施したソニーの小型リモートカメラ(SRG-XP1)が使われている。水中カメラは約4kgという軽量の4Kカメラで、持ち運ぶことも可能。これまで特別な施設でなければ水中撮影は難しかったが、このシステムなら、どのスイミングスクールでも4Kの水中映像の撮影が可能になる。

スマートスイミングレッスンシステムは、2021年5月からルネサンスが運営するジュニアスイミングレッスンに導入され、現在約80店舗に展開されている。そこでは、生徒の意欲向上が見られるほか、コロナ禍で見学ができない保護者からはレッスンの様子が見られることが評価されている。スクール運営者やコーチにも支持されているそうだ。ソニーネットワークコミュニケーションズでは、指導ノウハウのデジタルコンテンツ化やレッスンの品質管理にも役に立つこのシステムを、スイミングスクールのDXを支援するソリューションとして広く展開してゆくと話している。

大阪大学、薬剤耐性菌・非耐性菌を電子顕微鏡画像と深層学習により形で判別することに成功

薬剤耐性菌(左)と非耐性菌(右)の電子顕微鏡画像。耐性菌は外膜の形状が変化し、一部ブレブ構造(矢頭)も認められる。白矢印は異染顆粒

薬剤耐性菌(左)と非耐性菌(右)の電子顕微鏡画像。耐性菌は外膜の形状が変化し、一部ブレブ構造(矢頭)も認められる。白矢印は異染顆粒

大阪大学は3月16日、薬が効かない薬剤耐性菌を画像で判別できることを明らかにした。顕微鏡画像と深層学習により、耐性の獲得による形態の変化を検知し、さらにその特徴に寄与する遺伝子の紐付けにも成功した。薬剤耐性化の過程での細菌の形態変化、遺伝子や耐性化因子の変化が、機械学習によって複合的に理解できるようになるという。

抗菌薬に長い間さらされることで耐性を獲得した薬剤耐性菌による感染症が問題になっている。薬剤耐性菌が出現するメカニズムについては盛んに研究されているものの、耐性化の抑制に欠かせない総合的な理解は進んでいない。大阪大学産業科学研究所の西野美都子准教授、青木工太特任准教授、西野邦彦教授らによる研究グループは、複数の薬が効かなくなる多剤耐性に関する研究を行っており、その過程で、耐性を獲得した細胞は遺伝子だけでなく形も変化させていることを発見した。そこで細菌の顕微鏡画像と深層学習を用いて形態からの薬剤耐性菌・非耐性菌の判別を試みた。

電子顕微鏡解析の流れ

研究グループは、薬剤耐性菌であるエノキサシンを用いて、急速冷凍固定法で凍結して電子顕微鏡用のサンプルを作り、細菌の細胞内部構造が観察できるようにした。これを1万枚以上撮影し、深層学習で判別したところ、90%以上の正解率で耐性菌と非耐性菌の判別ができた。Grad-CAM(勾配加重クラス活性化マッピング)法で耐性菌の形態学的特徴を可視化すると、外膜領域に注目領域が集中していて、目視の所見と一致した。さらに、抽出された画像的特徴量と遺伝子発現データとの相関を計算すると、外膜を構成するリポタンパク質など、膜の構成に関わる遺伝子との高い相関が認められた。

Grad-CAMによる特徴の可視化。判別の根拠となった注目領域をヒートマップにて可視化。耐性菌(図左)の外膜に注目領域が集中している。非耐性菌(図右)は顆粒に集中している

顔認証など深層学習による画像判別技術は発展しているものの、微生物(肉眼では見ることのできない生物)、特に薬剤耐性菌を対象にした研究は、ほとんど例がないという。将来的には、細菌の形態から薬剤耐性能を自動的に予測する技術の開発につながることが期待されると研究グループは話している。

農研機構、栽培施設内を無人走行し果実の収穫量をAIで予測する「着果モニタリングシステム」

農研機構、栽培施設内を無人走行し果実の収穫量をAIで予測する「着果モニタリングシステム」

農業・食品産業技術総合研究機構(農研機構)は施設栽培向けに、着果を監視し収穫量を予測するAIシステム「着果モニタリングシステム」を開発。従来対象のトマトに加え、パプリカにおいて実用化の目途がたったと3月1日に発表した。モニタリング装置を施設内で無人走行させ、収穫可能な果実数を推定することで、管理や収穫に必要な人員を効率的に配置できるようになる。

施設園芸の大規模化が進んでいるが、大規模生産法人では生産コストの約3割が人件費とされている。特に収穫には多くの時間がかかるため、収穫作業の効率化が経営改善に大きく影響する。だが作業を効率化するためには、収穫に必要な人員の数や配置を適切に計画する必要があり、それには収穫できる果実の位置や数を適切に予測することが重要となる。

農研機構が開発したこのシステムは、着果モニタリング装置を搭載した高所作業車を施設内で無人走行させながら植物を撮影し、その画像をつなげた展開画像をAIで分析することで、収穫可能な果実を自動検出するというものだ。深層学習により構築した果実検出モデルにより、画像から果実を検出。画像の色から果実の成熟度を評価し、成熟順に分類。そこから収穫可能な果実の数と位置を割り出し、管理や収穫に必要な人員の効率的な配置を策定できるようにする。

この技術はトマトを対象に開発されてきたが、パプリカでも実用化の目途がついた。大規模パプリカ生産法人で試験を行ったところ、同システムが収穫可能と判断した果実の数と、翌週の実際の収穫量とがほぼ一致した。そこで農研機構は、3月9日から12日まで東京ビッグサイトで開催される「国際ロボット展2022」にこのシステムを出展することにした。

同開発機は、2022年度以降の実用化を目指すという。また今後は、作業者の違いによって生じる収穫作業時間の予測誤差の低減、予測適応時間の拡大を図り、トマトとパプリカ以外の作物の適用可能性、着花計測、病害虫や整理障害株の検出、葉面積計測など、汎用的な画像収集装置としての利用も検討する予定。

東京大学と農研機構が作物の品種改良を行う育種家の感性を解明、柑橘類の皮の剥きやすさと実の硬さを深層学習で定量化

Pythonを用いることで、カンキツの果実断面の画像から、果実のさまざまな形態的特徴を定量的かつ自動的に評価する技術を開発

Pythonを用いることで、カンキツの果実断面の画像から、果実のさまざまな形態的特徴を定量的かつ自動的に評価する技術を開発

東京大学農研機構は2月10日、育種家(作物の品種改良を行う人)が独自の感性でもって評価してきた柑橘類の剥皮性(皮の剥きやすさ)と果実の硬度を、AIによる画像解析などにより定量化することに成功したと発表した。これにより、効率的な品種改良が可能になるという。

東京大学大学院農学生命科学研究科(南川舞氏・日本学術振興会 特別研究員、岩田洋佳 准教授)と農研機構(野中圭介氏、浜田宏子氏、清水徳朗氏)からなる研究グループは、柑橘類の果実の剥皮性と硬度を、果実断面のAIの深層学習を用いた画像解析などから、自動的に、定量的に評価する技術を開発した。そうした評価は、これまで育種家の感性に頼ってきたものであり、何を持って評価を行っているかは当事者にしかわからない「ブラックボックス」状態だった。

育種家の感性による達観的評価の方法

育種家の感性による達観的評価の方法

深層学習による剥皮の難易もしくは果実の硬軟の分類と、分類に寄与した特徴の可視化

深層学習による剥皮の難易もしくは果実の硬軟の分類と、分類に寄与した特徴の可視化

柑橘類の果実は、外皮(フラベド)、中果皮(アルベド)、じょうのう(袋)、果肉、種子、果芯(中心部)で構成されている。その断面画像を解析したところ、果芯の崩壊(空間ができること)が進んだ果実ほど皮が剥きやすく実が柔らかいという関係性がわかった。このほか、種子の面積と硬度の関係、アルベドの崩壊の状態も剥きやすさと柔らかさに寄与することもわかった。こうした関係性の推定には、変数間の因果関係を推定するベイジアンネットワークが用いられている。

ベイジアンネットワークにより推定された、カンキツ果実の形態的な特徴と剥皮性・果実硬度との関係

ベイジアンネットワークにより推定された、カンキツ果実の形態的な特徴と剥皮性・果実硬度との関係

この技術により果実の形態的な特徴のデータを自動的に大量に収集できるようになれば、ゲノム情報を活用した効率的な品種改良が可能となる。また、「果芯の崩壊程度や種子面積を改良することで、望ましい剥皮性や果実硬度を有する新品種」の開発も可能になるという。今後は、剥皮性と果実硬度の総合的な遺伝システムの解明を目指すとのことだ。

どんどん増える画像や動画に特化したデータベースを開発するApertureDataが約3.5億円のシード資金を調達

Vishakha Gupta(ビシャカ・グプタ)氏と、後に共同創業者になるLuis Remis(ルイス・レミス)氏は2016年にIntel Labsでともに働いていた頃、どんどん増えるビジュアルデータ(画像やビデオ)をどう管理するかを解決する業務を任されていた。2人はこの問題に精力的に取り組み、研究者やデータサイエンティストとも協力して、大量のビジュアルデータに適したインフラの開発を始めた。

結局、画像を扱い、データサイエンティストが利用する要件を満たす新しいデータベースが必要であるとの結論に達した。データサイエンティストは画像データを処理するために複数のシステムを扱う必要があり、これは非効率で時間がかかることがわかった。2人はもっと良い方法があるはずだと考え、Intelにまだ在籍していた2017年に、1カ所であらゆる処理ができるデータベースを構築するためのシステムに取り組み始めた。

2人はこの仕事がスタートアップになる素地を備えていると考え、2018年にIntelを退社してApertureDataという企業を始めた。正式に創業したのは2018年後半で、現在も引き続きこの問題に取り組んでいる。

最終的に開発したソリューションはApertureDBという名前のクラウドアグノスティック(特定のシステムに依存しない)データベースで、画像を処理することに関連するあらゆるデータ(メタデータなど)を1カ所で扱うことに特化して設計され、自動化することで手作業でデータを検討する時間のかかるステップを省くことができる。

グプタ氏は「もし私がデータサイエンティストで、データを見て何が起きているかを把握する立場だとしたら、データの検討に(相当長い)時間を費やさなくてはならないでしょう。(これまでは)このようなタイプのデータやこのようなタイプのユーザーを理解できるデータベースがなかったからです」と説明する。

さらに同氏はこう続ける。「それがこの問題を解決しようとするきっかけになりました。私と共同創業者はIntelにいたときにこの問題に直面していました。そして自分たちのためにこの問題を解決するのであれば、このインフラを構築している間にどうすればもっと多くの人のためにこの問題を解決できるかを探ろうと考えました。その結果としてApertureDataを創業し、ApertureDBをプロダクトとして提供することになりました」。

同社の従業員数は現在8人で、2022年末までに15〜20人にすることを目指している。グプタ氏は、女性創業者として多様性のあるチームを構築することの重要性を、そして2人の子を持つ母としてワークライフバランスの重要性も強く認識している。

同氏は「スタートアップで働くなら私的な部分は犠牲にしなくてはいけないというシリコンバレーの古い考え方があることをご存じでしょう。(私たちの考えでは)実はバランスをとることもできるし、多様性も実現できます。最初から多様であることが重要です」と述べた。

米国時間2月8日、ApertureDataはプロダクト開発を継続するための300万ドル(約3億4500万円)のシード資金調達を発表した。このラウンドを主導したのはRoot Venturesで、他にWork-Bench、2048 VC、Graph Ventures、Alumni Ventures Group、Magic Fundと、業界のエンジェルも参加した。

このラウンドがクローズしたのは2021年10月だった。それ以前は、全米科学財団の助成金、友人や家族からの資金、そして昔ながらのブートストラップでプロダクトを開発していた。

画像クレジット:Dimitri Otis / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

クラウド録画サービスSafieが渋谷区のスマートシティ化を目指す「データ利活用事業」に採択、宮下公園で実証実験

クラウド録画サービスSafieが渋谷区のスマートシティ化を目指す「データ利活用事業」に採択、宮下公園で実証実験

カメラとインターネットをつなぎ、いつでもどこでも映像を確認できるクラウド録画サービス「Safie」(セーフィー)を運営するセーフィーは、東京都渋谷区がスマートシティ化のための提案を募集する「データ利活用促進にむけた技術実証・実装支援事業」に採択されたと発表。東京都・宮下公園において、公共空間利用の分析のための実証実験を同日より実施している。

Safieは、単に映像を録画するだけでなく、防犯や遠隔からの状況確認、異常検知・予測、映像解析による業務効率化といった用途に利用されている。セーフィーはこの機能を活かし、渋谷区に「クラウドカメラと映像解析AIを活用した利用者データの解析事業」を提案し、採択された。具体的には、公共空間の利用傾向や利用者の属性を把握することで、より便利で快適な公共空間の整備に役立てるというものだ。

実証実験は、渋谷区「Miyashita Park」の宮下公園内において2月8日から2月24日まで実施される。セーフィーは、同社のカメラ「Safie Go」4台を宮下公園の「パークセンター前エリア」「中央階段前エリア」「カフェ前エリア」の3カ所に設置し、利用者数や利用者の属性推定データ(性別/年代:子供・大人・年配者)を取得し分析する。このデータを、「より便利で快適な公共空間整備」の参考にするということだ。

AI解析には、セーフィーの「Safie AI People Count」と、フューチャースタンダードが提供するAI交通量調査サービス「SCORER Traffic Counter」が使われる。個人が特定される映像データは、上記解析以外には利用せず、利用状況を測定した後保存期限(3月31日)までに削除し、統計情報のみを保持するとのこと。

都市のスマートシティ化が進む中、セーフィーは「生活者の第3の目として1歩先の未来を見据えた意思決定の機会を実現し、多様化するニーズに応えてまいります」と話している。

NTTコミュニケーションズ、山形県との連携のもとAIで積雪状況を分析し除雪業務の効率化を目指す実証実験を開始

NTTコミュニケーションズ、山形県との連携のもとAIで積雪状況を分析し除雪業務の効率化を目指す実証実験を開始

NTTコミュニケーションズ(NTT Com)は2月4日、山形県との連携のもと、米沢市と高畠町において、車載カメラで収集した画像データからAIで積雪状況を分析する実証実験を同日開始した。これは除雪業務の効率化を目指す実験で、積雪状況をリアルタイムに「可視化プラットフォーム」の地図上に表示する。

同実証実験はNTT Comの社内ビジネスコンテスト「DigiCom」および社内新規事業創出プログラム「BI challenge」にて創発されたビジネスアイデアで、その事業化に向けた取り組みの一環。

山形県は豪雪地帯として知られているが、なかでも米沢市と高畠町は国土交通省から「特別豪雪地帯」に指定されており、除雪の緊急度把握が特に重要な地域となっている。今回実験を行うNTTコミュニケーションズのシステムは、様々な車両の車載カメラで撮影された道路の映像をクラウドに集め、地図上にマッピングするというもので、積雪状況のリアルタイムの可視化、状況把握の効率化、緊急度に応じた除雪車の早期手配などに役立つ。

これには、NTT Comが提供するクラウド録画カメラサービス「coomonita 」(コーモニタ)」と、ネット地図サービス企業HERE Technologies(ヒアテクノロジーズ)の位置情報システム「HERE Maps API」が用いられる。AI画像分析は、東大・松尾研発のAIスタートアップACES(エーシーズ)と協力し実施する。

実証実験は、2つのステップで実施される。2月28日まで実施されるステップ1では、道路などの積雪状況の画像データを集め、個人情報をマスキングした上でリアルタイムに「可視化プラットフォーム」の地図上に画像を表示し、可視化データを自治体に提供する。2022年12月に実施予定のステップ2では、積雪状況、道路の幅、事故、道路陥没状況などをAIで画像分析し、結果を自治体に提供する。

今後は、積雪アラートなどの機能を追加すると同時に、道路の損傷検知や地域防犯など、積雪地域以外の全国にも同システムを展開を目指すとのことだ。

海洋研究開発機構と鹿児島大、デジカメ撮影による海岸の写真からAIで漂着ごみの被覆面積を高精度に推定する新手法を開発

セマンティック・セグメンテーションを用いた、海岸の写真からの海ごみ検出のイメージ図。写真に対して、ピクセル単位でのクラス分類が行われる。訓練用に2800枚、評価用に700枚の画像データを用いた(写真は山形県提供)

セマンティック・セグメンテーションを用いた、海岸の写真からの海ごみ検出のイメージ図。写真に対して、ピクセル単位でのクラス分類が行われる。訓練用に2800枚、評価用に700枚の画像データを用いた(写真は山形県提供)

海洋研究開発機構鹿児島大学は2月4日、ディープラーニングを用いた画像解析で、デジカメなどで普通に撮影された海岸の写真から、海岸の漂着ゴミを検出する手法を開発したと発表した。

海岸漂着ゴミの実態調査は世界中で行われているが、ゴミの現存量の定量化が行える、汎用性と実用性の面で優れた技術がなかった。人による調査では、経済的負担、時間的制約、さらに範囲も限定されてしまい、精度にも課題があった。ドローンや人工衛星を使う技術も開発されているが、それではコストがかかりすぎる。そこで、海洋研究開発機構の日高弥子臨時研究補助員、松岡大祐副主任研究員と、鹿児島大学の加古真一郎准教授からなる研究グループは、地上においてデジカメなどで簡易的に撮影された画像から、高精度で海洋漂着ゴミの定量化ができる技術の研究に着手した。

ここで採用されたAI技術は、セマンティック・セグメンテーションと呼ばれるもの。ディープラーニングを用いた画像解析技術で、画像内のすべてのピクセルにラベル付けを行い、ピクセルごとに、人工ゴミ、自然ゴミ、砂浜、海、空といったクラスを出力する。そのクラス特有のパターンの学習には、山形県庄内総合支庁から提供された海岸清潔度モニタリング写真3500枚が利用された。そこから正解となるラベルを作成し、AIの訓練や判断の評価を行った。

入力画像、正解ラベルおよびAIによる推定画像の例

入力画像、正解ラベルおよびAIによる推定画像の例

今回の研究では、海岸漂着ゴミを検出した後の画像を、真上から見た構図に変換(射影変換)して、ゴミの被覆面積を推定することも可能であることがわかった。ドローンによる空撮画像から推定した被覆面積と比較したところ、誤差は10%程度だった。

セマンティック・セグメンテーションと射影変換による人工ごみの被覆面積推定結果。海岸漂着ごみ検出後の画像を真上から撮影した構図に射影変換することにより、海岸全体のごみの被覆面積が推定可能であることを示したもの。同手法の精度は、ドローンによる空撮から得られた正解値との比較により検証している

セマンティック・セグメンテーションと射影変換による人工ごみの被覆面積推定結果。海岸漂着ごみ検出後の画像を真上から撮影した構図に射影変換することにより、海岸全体のごみの被覆面積が推定可能であることを示したもの。同手法の精度は、ドローンによる空撮から得られた正解値との比較により検証している

今後は、海岸漂着ゴミの堆積の推定や、プラスチックゴミの個数のカウントもできるように発展させるという。今回の研究から生まれた学習用データセット(The BeachLitter Dataset v2022)は、非商用の研究目的に限って公開される。汎用性の高いシステムなので、多くの人がデータを集め学習させることで、それぞれの地域特有の、目的に合ったAIの開発が可能になり、全世界で活用できるようになるとのことだ。そこで、研究グループは、アマチュア科学者をはじめ多くの人々が参加する市民科学に期待を寄せている。

クラウド録画のセーフィーと秘密計算・AI開発のEAGLYSが製造現場の生産ライン不具合検知に向けAI画像解析サービス開発

クラウド録画のセーフィーと秘密計算・AI開発のEAGLYSが製造現場の生産ライン不具合検知に向けAI画像解析サービスを共同開発

クラウド録画サービス「safie」を展開するセーフィーと秘密計算とAI開発でデータ利活用を推進するEAGLYS(イーグリス)は1月25日、製造現場の生産ラインの不具合検知のためのAI画像解析サービスの共同開発に着手したことを発表した。実証実験では24m先の異物を91%の精度で検知できた。

人材不足が深刻化する製造現場では、産業用ロボットやFA(ファクトリーオートメーション)の導入が叫ばれているが、工場設備のレイアウトなど空間的な事情からロボットの設置が難しい工場では、製造工程の異物や残留物の確認・判断は人手に頼らざるをえない状況が続いている。

そこで、セーフィーとEAGLYSは、撮影した映像データにAI解析を組み合わせることで、生産ラインの不具合や異物検知が行えるAI画像解析サービスの開発に着手した。このサービスを利用すれば、AI画像解析カメラで不具合や異物を容易に検知できるだけでなく、映像を通じた確認作業の記録や、遠隔からの管理・実行、振り返りにも活用できるという。

両社は、実際の製造工場で同サービスの実証実験を行ったところ、現状の生産設備や従業員の作業導線を変えることなく、目視では検知が困難な24m先のライン上の異物を91%の確率で検知できた。

本格実装に向けて、工程や製品に合わせた画角やAIアルゴリズムをチューニングすることで、さらに高い精度での検知が期待できるとのことだ。

混雑情報のバカンが初詣など分散参拝を支援、福岡県太宰府天満宮や三重県伊勢市主要観光地の混み具合を可視化

混雑情報プラットフォーム「バカン」が初詣など分散参拝を支援、福岡県太宰府天満宮や三重県伊勢市主要観光地の混み具合を可視化

AI×IoTを活用してあらゆる空き情報を配信するスタートアップ「バカン」は12月27日、福岡県太宰府市および三重県伊勢市観光協会との観光DXに関する取り組みを発表した。

福岡県太宰府市

太宰府天満宮は、日本屈指の人気観光スポットであるとともに初詣期間は参拝客が集中しやすく、三が日には毎年200万人が訪れるという。ただ昨今、国内外での新型コロナウイルスのオミクロン株感染拡大もあり、参拝者の快適性向上や感染拡大防止に向けて「分散参拝」の重要性が増しているという状況にある。

太宰府市との取り組みでは、太宰府天満宮参道のリアルタイム混雑情報の検知・配信(12月28日開始)を行う。太宰府市内の太宰府天満宮参道に定点カメラを設置し、リアルタイムの混雑情報を24時間自動で検知。またAIなどでそれら情報の映像解析を行うことで、混雑情報を可視化し配信する(カメラによる混雑の可視化は、個人が特定されない形で実施)。参拝者が、任意のタイミングでリアルタイムの混雑情報を把握できるなど、分散参拝しやすい環境の構築を支援する。また、同取り組みを推進し参道の混雑を抑制することで、観光客の満足度の向上や地域住民の理解につなげていくことも目指す。

混雑情報の可視化は、リアルタイム空き情報配信プラットフォーム「VACAN」を活用。VACANには混雑情報をマップ上に表示する機能「VACAN Maps」があり、今回参拝者は、専用ページとVACAN Mapsから混雑情報を確認できる。スマートフォンやPCを通し誰でも閲覧可能。

また今後、得られた混雑データを用いて混雑予測や人流解析といった新しい活用方法を含む観光DXの推進についても、太宰府市とともに検討するという。

三重県伊勢市観光協会

混雑情報プラットフォーム「バカン」が初詣など分散参拝を支援、福岡県太宰府天満宮や三重県伊勢市主要観光地の混み具合を可視化三重県・伊勢市観光協会との取り組みでは、同協会による非接触型デジタルサイネージを活用した混雑状況配信(12月27日開始)をサポートし、配信を実施する。非接触デジタルサイネージには、市内の主要観光地9カ所とそれらのリアルタイムの混雑状況が表示される。筐体に設置された赤外線センサーにより指の動きを検知することで、画面に触れることなく操作でき、各場所の詳細情報を閲覧可能。混雑状況などはすべて多言語対応しており、海外の方も利用できるそうだ。混雑情報プラットフォーム「バカン」が初詣など分散参拝を支援、福岡県太宰府天満宮や三重県伊勢市主要観光地の混み具合を可視化

伊勢神宮は、年間600万人以上が参拝し、三が日には毎年50万人の参拝客が集中するという(数値はコロナ禍前のもの)。やはり日本屈指の人気観光スポットだが、コロナ禍により分散参拝を重視するようになっている。2020年よりVACANは、伊勢市との観光DXの一環として、市内観光地の混雑情報を可視化する混雑状況配信サイト「空きです、伊勢♪」の配信・運営をサポートしてきた。

伊勢市の取り組む主要観光地の混雑データは、市内9カ所にカメラなどを設置し、リアルタイムに混雑状況を検知しAIなどを用いた画像解析により混雑状況を可視化したもの(カメラによる混雑の可視化は、個人が特定されない形で実施)。今回の取り組みでは、「VACAN Maps」および専用ページを介した混雑情報の提供に加えて、非接触型デジタルサイネージを通して混雑を確認できるようにしたという。これにより、スマートフォンやPCを持っていない方や、それらデバイスを使いにくい状況でも、利用者の利便性向上が期待できるとしている。従来以上に手軽に混雑情報を把握できるようにすることで混雑の抑制を促し、感染症などのリスクを抑えた安全な観光地の実現を目指す。

非接触型ディスプレイの設置場所

  • :JR伊勢市駅(三重県伊勢市吹上1-1-4 JR伊勢市駅構内)
  • 案内所
    ・宇治浦田観光案内所(三重県伊勢市宇治浦田1-10-25 内宮B2駐車場横)
    ・宇治山田駅観光案内所(三重県伊勢市岩渕2-1-43 近鉄宇治山田駅構内)
    ・二見浦観光案内所(三重県伊勢市二見町茶屋111-1 二見生涯学習センター内)
    ・伊勢市駅手荷物預かり所(三重県伊勢市吹上1-1-1 JR伊勢市駅正面右側)

 

大日本印刷とイリモトメディカル、肺がん早期発見支援など遠隔画像診断・遠隔読影ワークフローのAI活用に向け提携

大日本印刷(DNP)と、健康診断画像の診断支援や遠隔読影システムの運用などを行うイリモトメディカルは12月21日、健康診断の画像診断における事業競争力の強化と拡大を目指して資本業務提携したことを発表した。

DNPでは、2000年代からメディカルヘルルケア分野の研究開発や事業化を進めており、画像解析技術の開発に加え、診断支援サービスの提供も行っている。イリモトメディカルは、健康診断における画像診断の分野で全国139の医療機関(2021年12月現在)から年間77万件の読影依頼を受ける遠隔読影の大手事業者だ。遠隔読影とは、例えば胸部X線画像のデータを放射線診断専門医のいる施設が受け取り診断を行うことをいう。その需要は増加傾向にある。

そんな大日本印刷とイリモトメディカルが提携することで、AIの活用により画像診断のワークフローが最適化され、診断精度の向上が期待される。具体的には、イリモトメディカルが行っている遠隔読影のワークフローにAIを取り入れ、効果的・効率的な読影支援システムや業務支援システムを開発し導入することとしている。第1弾の取り組みとしては、肺結節を検出するAI診断ソフトを活用し、胸部X線画像の読影による肺がんの早期発見の支援を挙げている。今後は、画像診断できる部位や疾病を増やしてゆくという。

これによりイリモトメディカルは、読影のさらなる高速化、高品質化を目指し、診断精度の向上と、読影医師の業務負担の軽減を図るということだ。

東芝、ズームレンズと単眼カメラで撮影した複数写真のみで遠隔地にある対象物のサイズ計測が可能なAIを開発

東芝、ズームレンズと単眼カメラで撮影した写真のみで遠隔地にある対象物のサイズ計測が可能なAIを開発

東芝は11月22日、ズームレンズと一般的な単眼カメラ(一眼レフカメラ)で撮影位置などの条件を変えて撮影した写真のみから、遠隔地にある対象物のサイズを3次元計測できる技術を世界で初めて開発したことを発表した。インフラ点検などにおいて、高所や傾斜地など危険な場所に近づくことなく計測が可能になる。

国内のインフラ設備の平均年齢が35年を超えるなど、道路・橋・トンネルといったインフラの老朽化が問題となり、早急な対応が求められているが、効率的な工事を行うには、補修箇所の正確なサイズ計測が重要となる。だが、高所や斜面など危険な場所では目視による計測が難しい。そこで東芝は、危険な箇所に近づくことなく、遠くからズームレンズで撮影した写真から簡単にサイズ計測ができるAI技術を開発した。異なる位置から撮影された複数の写真(多視点画像)から割り出された相対的な奥行き情報と、画像のボケ情報を組み合わせ、スケール情報と焦点距離を未知パラメータとする最適化問題を解くことで、撮影画像のみでサイズの絶対値がわかるというものだ。

カメラの画像でサイズが計測できるアプリはスマートフォンにも搭載されている。これには、多視点画像から得られた相対値に絶対値を与えるジャイロセンサーと、あらかじめ学習されたAIモデルが必要となる。そのため、学習の範囲を超える遠距離となると精度が落ちてしまう。

東芝が開発したシステムでは、7m離れたひび割れのサイズを高精度に計測できた。屋外の11カ所で、5〜7m離れた対象物のサイズを計測したところ、サイズ誤差は3.8%に抑えられた。この精度は、公益社団法人日本コンクリート工学会が定めるコンクリートのひび割れ補修指針に基づく数値シミュレーションで「高精度の補修の必要性を判別できる」と確認された。さらに、2mm以下のひびのサイズの絶対値の計測も行えた。

この技術は、インフラ点検のみならず、製造、物流、医療など、カメラによるサイズ計測が行われる分野に応用ができると東芝では話している。今後も様々なカメラやレンズを使った実証実験を進め、早期の実用化を目指すということだ。東芝、ズームレンズと単眼カメラで撮影した写真のみで遠隔地にある対象物のサイズ計測が可能なAIを開発

EBILABが日本で初めて伊勢海老の脱皮をAIで検知するシステムを開発、映像解析で食材の「最旬」の見極め目指す

EBILABが日本で初めて伊勢海老の脱皮をAIで検知するシステムを開発、食材の「最旬」の見極め目指すEBILAB(エビラボ)は10月7日、日本で初めてAI映像解析により伊勢海老の脱皮を検知するシステムを開発し、10月1日から実証実験を行っていることを発表した。これは、伊勢海老の水槽を暗視カメラで監視し、AIが伊勢海老の脱皮を検知するとユーザーのモバイル端末に通知されるというもの。実験終了後は、三重県伊勢市の老舗伊勢海老料理店「倭庵黒石」(やまとあんくろいし)に導入される予定。EBILABが日本で初めて伊勢海老の脱皮をAIで検知するシステムを開発、食材の「最旬」の見極め目指す

エビの香の大部分は皮に含まれているため、皮ごと食べるのがおいしいとされている。皮が非常に固い伊勢海老も、脱皮直後なら柔らかい。その瞬間が伊勢海老がもっともおいしくなる最旬とされている。このシステムを導入予定の倭庵黒石でも、脱皮直後にさばいた伊勢海老を「幻の伊勢海老」として提供している。ところが、伊勢海老の脱皮には特定の周期がなく、生育環境や個体差によるばらつきもあり、その時期を見極めるには、現状では職人の勘と経験に頼るしかない。しかも夜行性のため、寝ずの番になることもある。そんな苦労が、このシステムを使うことで軽減されるという。EBILABが日本で初めて伊勢海老の脱皮をAIで検知するシステムを開発、食材の「最旬」の見極め目指すこのシステムでは、映像解析にMicrosoftの「Azure Cognitive Services」を利用している。これは、言語や音声や視覚など、人の認知を模した機能をウェブAPIとして簡単に利用できるAIサービスだ。このサービスを導入したことで、開発コストや運用コストを、飲食店が導入しやすいレベルにまで抑えることができた。

EBILABは、三重県伊勢市で150年の歴史を誇る老舗「ゑびや」の経営メソッドから生まれたサービス産業のためのシンクタンク。飲食店向けのクラウドサービスの開発、提供を行っている。このシステムは、「人の経験や勘に頼らず正確かつ効率的に食材の『最旬』を見極める仕組み」として、伊勢海老以外にも応用できると、EBILABは話している。

Solafuneと日本マイクロソフトが衛星画像データを超解像度化する技術コンテスト実施、英語版公開しグローバル展開も開始

Solafuneと日本マイクロソフトが衛星画像データを超解像度化する技術コンテスト実施、英語版リリースしグローバル展開も開始

衛星データ解析コンテストプラットフォームを運営するSolafune(ソラフネ)は9月14日、日本マイクロソフトと共同で衛星データの実用化に向けた「超解像技術」を開発するデータ解析コンテストの開催を発表した。

これは、「市街地の高解像度画像を活用した超解像度画像の生成」を競うもの。衛星などから撮影された地理空間データは解像度が低いために実用化が遅れている。また、高解像度の衛星写真は高額で、なかなか利用が難しい。そこで、Solafuneと日本マイクロソフトは今回のコンテストを実施して超解像技術を募り、そうした課題に取り組むという。

参加者は、Solafuneから提供される1m程度の評価用データを25cm解像度の超解像度画像に向上させ、所定のサイトから投稿する。すると画像評価指標SSIMによって評価され、スコアが比較される。コンテスト開催中は、その暫定スコアがリーダーボードで公開される。上位入賞者は、後に超解像度化に使われたソースコードを提出することになっている(実装の環境や言語に制限はない)。

解像度化の例。左が解像度1m、右が25cm

このコンテストを通して、「衛星データや航空写真などの地理空間データの社会実装が加速することを期待しています」とSolafuneは話している。

コンテスト概要

  • 開催期間:2021年9月14日午前9時〜12月23日午前9時(日本時間)
  • データの提出期限:2021年12月23日午前8時59分(日本時間)
  • 賞金:1位は3000米ドル(約33万円。総額は5000米ドル以上)と日本マイクロソフトからの特典
  • 開催場所および詳細https://solafune.com/competitions/3c7a473f-61f4-472f-a812-92eb07cc4541
  • ハッシュタグ:#MScup

Solafuneは、2020年10月のサービスリリース以降、衛星データや地理空間データの活用をテーマにしたデータ解析コンテストの運営を通して、アルゴリズムライセンス事業を展開。2021年8月には日本マイクロソフトと衛星データのビジネス利用の促進を目的とした協業を発表した。また同社は、今回のコンテスト開催に合わせて英語版をリリース。早期のグローバル展開を見据え、世界中のエンジニアが利用する体制を整えるとしている。

リクルートと信州大学農学部が農地情報整備の共同研究、航空写真から特定農地区分を高精度で検出するAI開発

リクルートと信州大学農学部が農地情報整備の共同研究、航空写真から特定農地区分を高精度で検出するAI開発

リクルートの研究開発機関アドバンスドテクノロジーラボは9月9日、信州大学農学部との共同研究「水田活用における畦畔(けいはん)管理の効率化に関する取り組み」を2020年12月より開始。今回、約半年間にわたる研究の成果と今後の見通しについて発表した。

畦畔(けいはん)とは、水田に流入させた用水が外にもれないように、水田を囲んで作った盛土などの部分のこと。AIの活用により、手作業では計測が難しかった畦畔の面積や傾斜角などの情報を可視化する技術を開発し、中山間地域(農業地域類型区分のうち、中間農業地域と山間農業地域を合わせた地域)における農業課題の解決を目指す取り組みを進めてきたという。

リクルートと信州大学農学部が農地情報整備の共同研究、航空写真から特定農地区分を高精度で検出するAI開発

赤い枠内が畦畔(けいはん)

同共同研究では、リクルートが培ってきたAI技術および画像処理技術と、長野県林務部が作成した「航空写真×数値標高モデル」でAIモデルを作成する技術を確立。水田の畦畔面積・傾斜角、農地に占める畦畔の割合(畦畔率)を計測し可視化、長野県全域の水田約5万haに対し、畦畔データ(GIS用座標付ポリゴンデータ)の作成に成功した。この研究結果は、農業工学分野やシステム農学分野の学術学会での報告、さらに各学会誌への論文投稿を行う予定。

また今後、畦畔データの作成技術を、リクルートから信州大学農学部へ移転することによって研究を継続する。

信州大学農学部では、作成したデータをベースに水田1枚ごとの畦畔データを作成することで、農家が所有する水田ごとの畦畔の面積・傾斜角、畦畔率の計測を可能にするとしている。また、予測モデルの精度を上げることで、長野県以外の地域においても、同様の結果を得られる高い汎用性を目標とする。さらには、水田の畦畔を含めた全国の農地のGISオープンデータの公開を通じて、県・市町村など地域行政と連携した「農地・畦畔見える化プロジェクト」の発展を目指す。

中山間地域では、若手農家や農業法人の新規参入が進まず、経営規模を拡大しようとしても、平地と比べ傾斜地が多いという条件不利性から、労働費用が多くかかり農業機械の効率化が進んでいない。その課題の1つである畦畔管理作業にかかる費用(人件費・機械費・燃料費)を「見える化」することによって、より適切な耕作管理方法や機械の導入の検討を可能にし、新規参入や経営規模の拡大につなげていくことを最終的な目標に据えている。

一方リクルートでは、今後共同研究で得られた「低解像度イメージに情報を付加することで高解像度化する技術」と「精度の高いAIモデルを作成するノウハウ」をビジネスに活用することも視野に入れているという。

信州大学農学部との共同研究の概要

畦畔は、水稲栽培に必要な水を田んぼにためる重要な役割を果たしており、大雨時の一時的な貯留などの役割も担っている。これを維持するため、漏水を防ぐための畔塗りなどの管理とともに、畦畔の崩落を防ぎ病虫害の発生を抑えるため、定期的な草刈りの作業が必要となる。

しかし、傾斜地の多い中山間地域の水田では、平地と比べて畦畔斜面の面積や角度が大きく、そこでの過大な労働負荷や管理コストの負担が課題となっているそうだ。また、畦畔斜面の傾斜角度を考慮した実質的な畦畔面積を測量することは多大な時間と費用を要するため、畦畔農地情報は整備されておらず、中山間地域の水田農業の経営改善が進まない一因となっているという。

農林水産省や地方自治体がまとめる農地基盤情報では、農地面積や圃場(ほじょう。農地の中で耕作可能な部分)面積については整備されてきているものの、畦畔斜面を含めた実質的な畦畔の面積や角度、畦畔率といった情報は未整備であり、畦畔管理にかかる費用の算出・実態の把握が困難であるという課題は残されたままになっている。

信州大学農学部は2020年、畦畔の正確な地形情報を計測すべく、地理情報システム(GIS)上で畦畔ポリゴンと圃場ポリゴンを作成し、長野県林務部が作成した精密標高データ(DEM。Digital Elevation Model)を用いて、畦畔の面積・傾斜角、畦畔率の測定を開始した。しかし、手動でポリゴンを作成していたため、煩雑な作業負荷が課題となっていた。

この解決策として、リクルートは、ディープラーニングを中心としたAI技術と画像処理技術を提供し応用できると判断。信州大学農学部との共同研究を通じ、長野県が保有する航空写真とDEMを組み合わせることで、水田圃場部分の「水張領域」と「畦畔領域」を判別し、それぞれの領域のポリゴンを自動作成するAIの開発を目指し共同研究に取り組んできたという。リクルートと信州大学農学部が農地情報整備の共同研究、航空写真から特定農地区分を高精度で検出するAI開発

生成したAIモデルの評価では、エリアや特徴の異なるデータを無作為で抽出した上で、正解データ(1308イメージ)を作成、「畦畔領域」「水張領域」「その他領域」の3つのクラスによる特定農地区分を97.7%の精度で検知したという。リクルートと信州大学農学部が農地情報整備の共同研究、航空写真から特定農地区分を高精度で検出するAI開発

設置工事不要なAIカメラ「ManaCam」14台を利用した福岡・スタートアップ施設の利用状況の可視化実証実験

設置工事不要なAIカメラ「ManaCam」14台を利用した福岡・スタートアップ施設の利用状況可視化実証実験

スマートIoTトイレットペーパーホルダー「カミアール」など手がけるFutuRocket(フューチャーロケット)は8月19日、福岡市のスタートアップ施設「Fukuoka Growth Next」において、ビジネス向けAIカメラ「ManaCam」(マナカム)を使ったオフィス空間の利用状況を可視化する実証実験を開始すると発表した。

ManaCamは、「誰でも簡単に扱えるシンプルなAIカメラ」として開発されたデバイス。USBケーブルによる電源供給以外にも電球のソケット(E26)に入れて給電できるため、配線や取り付け工事の必要がなく、個人で設置できる。Fukuoka Growth Nextでも、実際に工事業者に依頼することなくManaCamを14台を低予算で導入できた。

オープンソース設計のCPU「RISC-V」(リスク ファイブ)マイコンを使用し、機能を絞り込むことで作られたManaCamは、本体価格1万1000円で、年間利用料は9900円(すべて税込)。またManaCamは、オープンソースの画像認識アルゴリズムで、カメラから見える範囲の滞在者数を一定間隔でクラウドに送信する。画像は送信せず、人数のみが送られ、画像は一切保存されない。人数は、専用のダッシュボードにグラフと数値で示される。

この実証実験は、ワークプレイスコンサルティング事業などを展開するAnyWhereが、利用状況を把握したいというFukuoka Growth Nextの要望を受け、そこにAnyWhereが着目していたManaCamを活用するという形で実現した。

「ManaCam」実証実験の概要

  • 導入先:Fukuoka Growth Next(福岡県福岡市中央区大名2-6-11)
  • 期間:2021年7月8日から順次開始、2022年6月30日(予定)
  • 目的:コワーキング利用スペースの利用状況把握、コワーキングスペースの最適化を検証
  • 収集データ:利用人数カウント、滞在状況
  • 実験概要:1階イベントスペース、コワーキングスペース、3階会議室などに合計14台のAIカメラを設置し、各エリアの利用状況を把握

FutuRocketは、「デジタルではページビューなどで当たり前となっている利用者数の把握を、リアルの世界でも、手軽に利用者数の集計ができるようにする」ことを製品開発の目的としており、「小さな取り組みからスマートシティー化への一歩を踏み出せられる製品として開発を推進していきます」と話している。

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カテゴリー:IoT
タグ:AnyWhere(企業)オープンソース / Open Source(用語)画像解析(用語)Fukuoka Growth NextFutuRocket(企業)RISC-V(用語)日本(国・地域)

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

さくらインターネットは8月19日、衛星データとAI画像認識技術を活用して駐車場として利用できそうな場所を検出するツール「Tellus VPL」のα版を、衛星データプラットフォーム「Tellus」(テルース)の公式ツールとして、無料提供を開始した。

同ツールは、さくらインターネットのほか、ディープラーニングをはじめとするAI技術で課題を解決するRidge-i(リッジアイ)、駐車場予約アプリ「akippa」を運営するakippa(アキッパ)の3社で研究開発した。

衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

「Tellus VPL」の新規駐車場用スペース解析結果イメージ画像

衛星データから駐車場として活用できそうな空き地などを見つけ出す同ツールは、空いている月極や個人の駐車場、空き地などを駐車場として一時利用するシェアリングサービスを展開するakippaの提案から生まれた。通常は、そうしたスペースを足で探さなければならず、大変な労力とコストがかかる。そこで、さくらインターネットがプロジェクトの取りまとめと衛星データの提供を、Ridge-iが機械学習とディープラーニング技術を使った候補地検出プログラムの開発を担当し、開発を進めた。akippaは、このツールの本格活用に向けて駐車場開拓パートナーとの連携を進めることにしている。

このツールが利用できるTellusは、さくらインターネットが経済産業省の「政府衛星データのオープンアンドフリー化・データ利活用促進事業」として開発・運用を行う日本初の衛星データプラットフォーム。衛星データの提供のほか、衛星データを活用するためのツールや関連コンテンツなども提供している。実際にこれを使って駐車場候補地が検出されているかを検証した記事が、Tellus公式メディア「宙畑」(そらばたけ)に掲載されている。衛星データプラットフォームTellusが衛星データとAI画像認識技術による駐車場検知ツール「Tellus VPL」α版を無料提供

さくらインターネット、Ridge-i、akippaは、「Tellus VPL」の改良を重ね、衛星データの実用化に向けて取り組んでゆくと話している。

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カテゴリー:宇宙
タグ:akippa(企業・サービス)画像解析(用語)さくらインターネット(企業・サービス)人工衛星(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)リッジアイ(企業)日本(国・地域)

医師・看護師が遠隔管理できる在宅透析用AIモニタリング「PD Doctor’s Eye」のMETRICAが1億円調達

在宅腹膜透析用AIモニタリングツール「PD Doctor’s Eye」のMETRICAが総額1億円の資金調達を実施

「医療の常識をアップデートしよう」をミッションに、AIとエッジコンピューティング技術を中心とした医療ITソリューションを開発・提供するMETRICA(メトリカ)は8月11日、第三者割当増資による総額1億円の資金調達を実施したことを発表した。引受先は、D4V、山口キャピタル、SFCフォーラムファンド、スカイランドベンチャーズ、インキュベイトファンド、ライフタイムベンチャーズ。

末期腎不全の患者は、血中の老廃物や余分な水分を取り除くために人工透析を行う必要があるが、腹膜透析(PD。Peritoneal Dialysis)は患者が自宅で行える治療法として、特にコロナ禍で在宅療養が求められる現在注目が集まっているという。しかし、日本におけるPDの普及率は、血液透析を含めた全透析患者の3%に過ぎないそうだ。そこでMETRICAは、「PD現場の課題を解決することでPD普及を促し、日本の透析現場の最適化を目指す」と話す。

METRICAは、医師と看護師がPD患者を遠隔で管理できるAI搭載モニタリングツール「PD Doctor’s Eye」を開発し、東京都内の病院や訪問看護ステーションなどに導入してきた。腹膜透析は、お腹にカテーテル(管)を設置して腹膜内に透析液を流し込み、腹膜から染み出た老廃物や余計な水分とともに排出することで透析を行うという仕組みで、PD Doctor’s Eyeの場合カメラによる画像解析により、液交換手順を支援したり異常を検知したりできる。また、カテーテルが外に出る部分(出口部)の状態も画像解析で数値化し評価できるようにする。病院と患者との遠隔での連携や、訪問看護師や介護士への患者補足情報の提供なども行えるというものだ。

今回調達した資金で、全国各地の医療機関、訪問看護ステーションにこのサービスを導入し、「臨床研究とモデル創り」を進めてゆくとのこと。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療 / 治療(用語)遠隔医療(用語)画像解析(用語)METRICA(企業)資金調達(用語)日本(国・地域)

1050社超が利用するAI搭載不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」開発・運営のTHIRDが3000万円調達

1050社超が利用するAI搭載不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」開発・運営のTHIRDが3000万円調達

AI搭載の不動産管理SaaS「管理ロイド」を開発・運営するTHIRDは8月5日、新株予約権付社債による3000万円の資金調達を7月30日に実施したと発表した。引受先は、野村不動産ホールディングスのCVCファンド「NREG イノベーション 1号投資事業有限責任組合」。また同社は2020年8月、双日商業開発、東急不動産ホールディングス、森トラスト、東京建物、阪急阪神不動産CVCファンドより資金調達済みで、これにより累計調達額は4億7000万円となった。

THIRDは、前回の資金調達以降、「AIによる自動検針」に限定した契約プランの導入、多言語化(日本語、英語、中国語、ベトナム語、インドネシア語)、電子押印への対応を実施。管理ロイドの機能拡充を通じて、不動産管理業界のDX推進に貢献してきたという。今回の資金調達では、引受先および不動産管理会社における管理ロイド導入拡大に資する人材採用などはじめ、管理ロイドに蓄積されたデータを活用した、修繕工事の自動見積査定機能の開発などに対し積極的な投資を行う。

管理ロイドは、ペーパーレスによる管理、AIによる画像解析でミス防止、各種報告書作成の自動化、不具合管理の自動化を提供するSaaS型ソフトウェア。2019年にリリースし。コロナ禍における不動産管理業務の抜本的な効率化、省人化、ペーパーレス化や現場情報の遠隔確認のニーズの高まりも追い風となり、2020年8月末時点では550社の不動産管理会社が利用しており、2021年7月末時点には1050社以上に利用社数が増加したという。

1050社超が利用するAI搭載不動産管理プラットフォーム「管理ロイド」開発・運営のTHIRDが3000万円調達

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AI / 人工知能(用語)画像解析(用語)THIRD(企業)多言語化(用語)不動産 / 不動産テック(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

豆腐業界初の検品業務AI自動化・省人化、日本IBMが徳島県・四国化工機の豆腐生産工場スマートファクトリー化に向け支援

日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は7月28日、徳島県・四国化工機の割れや欠けのある豆腐を自動判定し検品する、豆腐業界では初めてとなるAIラインピッキングシステム「STI-ALPS」 (エス・ティー・アイ – アルプス。Shikokukakoki Tofu Inspection – AI Line Picking System)の開発を支援し、2021年6月から稼働を開始したと発表した。

近年豆腐業界は、原材料の値上がりや後継者不足などの理由から地域密着型の個人商店から広域流通に対応できる企業に集約する流れが顕在化しているという。また2020年、国の基準改正により国内で常温流通が可能になったことで、無菌充填豆腐の製造技術を有する四国化工機への需要が増加していたそうだ。

そのため四国化工機では、主力製品の豆腐の品質向上と増産を目指したAIの活用に加え、複数のロボット装置や無人搬送のフォークリストを備えた阿南食品工場新棟を新設し、スマートファクトリー化を推進してきた。新棟では全機器の状況が一元管理できるIoTを導入し、2021年6月から本格的に稼働を開始したそうだ。

また四国化工機では、これまでも画像検査装置の導入を試みたことがあったものの、良品・不良品を判定する項目すべてをルール化し設定する必要があり、豆腐の割れ目やくぼみ、欠けの大きさ・数・深さといった決まりのない形を設定し判別するのは非常に困難で、目視による検査を必要としていたという。

一方今回開発のSTI-ALPSは、大量の画像データをAI学習して良品・不良品の「特徴」をモデル化し製造ラインから自動的に取り除くものとなっており、負荷の高い検品業務を自動化・省人化しているという。また、複数カメラを活用することで、上面・側面・底面に加え、分割パックの内側も検査が可能。これまで長年の経験が必要だった検品の自動化で、作業の速度や精度の向上、品質の安定、コスト削減を目指すとしている。

さらに、ロボット装置や無人搬送のフォークリフトをSTI-ALPSと連動することで、不良品を排除して良品を箱詰めし、冷蔵倉庫へ移動する作業の省人化を推進する。例えば、これまで実施していた目視検査は1ライン3名体制で稼働していたが、無人稼働が可能になり、職場の働き方改革を促進したとしている。

なおSTI-ALPSでは、AIの学習と実行に最適なサーバー「IBM Power System AC922/IC922」と、コーディングや専門的なスキルを必要とせずウェブブラウザー操作でAIの開発・実行が可能な「IBM Maximo Visual Inspection」を利用しているという。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:AI / 人工知能(用語)画像解析(用語)食品 / 食料品 / 食材 / 食品加工(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)