不眠症治療用アプリ開発のサスメドが7.2億円を資金調達——医療機器としての承認目指し、治験開始へ

医療機器として不眠症治療用アプリの研究開発を行うヘルステックスタートアップのサスメドは6月4日、総額7.2億円の第三者割当増資を実施したと発表した。引受先は既存株主のBeyond Next Venturesに加え、SBIインベストメント第一生命保険エムスリーSony Innovation Fund東京センチュリーの各社。

サスメドは2016年2月の設立(2015年7月に合同会社として創業)。2017年2月にはシリーズAラウンドでBeyond Next Venturesから約1億円を調達しており、今回の資金調達はシリーズBラウンドにあたる。

写真右から3人目:サスメド代表取締役 上野太郎氏

サスメド代表取締役の上野太郎氏は、睡眠医療を専門とする医師で、診療のほか睡眠の基礎研究も行ってきた。サスメドが開発する不眠症治療用アプリは薬を使わず、プログラムで睡眠障害の治療を行うというもの。ソフトウェア医療機器としての承認を目指して、2016年9月から複数の医療機関との臨床試験を進めてきた。

上野氏によれば開発・検証は順調に進んでいるとのこと。臨床試験の結果を受け、PMDA(医薬品医療機器総合機構)との協議や厚生労働省への届出を経て、6月からアプリの治験を開始する予定だ。

今回の調達資金の使途はこの治験実施にかかる割合が大きいということだ。そのほかにエンジニアを中心とした開発体制を強化し、アプリ開発やデジタル医療の開発を進めるという。

また上野氏は治験で得る実データを活用して、ブロックチェーン技術を臨床応用する実証実験も行っていくと話している。「医療データは重要なデータだが、過去に医薬品開発などで改ざんが行われたケースもあり、厚生労働省による規制が厳しくなった。ブロックチェーンを活用することで、データの信頼性を低コストで担保することができる。これは医療費の低減にもつながると考える」(上野氏)

上野氏は「ICTを医療の現場へ取り入れることで、医療の質を保ちつつコストを最適化し、持続可能な医療を目指していく」と語る。サスメドでは2020年をめどに、不眠症治療用アプリの医療機器としての承認を目指す。また治療効果のあるプロダクトを実現した上で、健康経営など法人向けサービスの提供にも応用していきたい考えだ。

医療機器としての治療用アプリ開発では、医療機関向けのニコチン依存症治療用アプリなどを開発するキュア・アップが2月に15億円の資金調達を実施している。また医療機器ではないが、法人向けに睡眠改善プログラムなどを提供するニューロスペースは2017年10月に約1億円の資金調達を行っている

AIでラストワンマイルの配送ルートを最適化、名古屋大発のオプティマインドが数億円を調達

名古屋大学発の物流AIスタートアップであるオプティマインドは6月1日、自動運転ソフトウェアを開発するティアフォー寺田倉庫を引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。調達額は公開されていないが、関係者によると数億円規模になるという。なお調達を行ったのは5月とのこと。

オプティマインドが取り組むのは、物流業界におけるラストワンマイルの配送最適化だ。具体的には組み合わせ最適化や機械学習、統計の技術を用いて「どの車両が、どの訪問先を、どの順に回るべきか」を効率化するクラウドサービス「Loogia」を開発中。7月のリリースを予定している。

近年、物流業界ではドライバーの高齢化や人材不足が課題となっている一方で、AmazonなどECの拡大によって物流量の増加や配送の複雑化、小口化が進行。今後この流れがさらに加速する可能性も踏まえると、限られたリソースを最大限に生かすためのシステムは不可欠だ。

オプティマインドで開発を進めるLoogiaでは、2段階のプロセスを経て最適な配送計画を割り出す。

まず機械学習や統計の技術を用いて、取得したデータから物流に特化した地図を構築するのが第1段階。たとえば「マンションの出口はどちらにあるか、車幅はどれくらいか、走行速度はどのくらいになるのか」といった規則や傾向が溜まった地図のようなものだ。そして第2段階でその地図データと核となるアルゴリズムを用いて、個別の条件下における最適な配送ルートを提示する。

同社代表取締役社長の松下健氏によると、これによって「配送ルートを作る時間の削減と(人力で作成していた時よりも効率的なルートが作れることで)実際の配送にかかる時間の削減が見込める」という。

オプティマインドは2017年秋から2018年にかけて日本郵便とサムライインキュベートが実施したインキュベーションプログラムに採択され、Demo Dayでは最優秀賞を受賞。その際に郵便局で実証実験を実施したしたところ、特にノウハウや経験が少ない新人配達員の業務時間が大きく削減されたのだという。

日本郵便との実証実験の結果。資料はオプティマインドより提供

「配達員はまず配送ルートを作成した上で、それが最適なのか不安を抱えながらも配送しているというのが現状。Loogiaではルート作成という属人的な業務を人工知能を使って効率化するとともに、(組み合わせ最適化技術により)人間では考慮できないレベルでの最適化を実現することで、配送業者をサポートする」(松下氏)

もちろん配送効率化を支援するシステム自体は以前からあるが、松下氏によると買い切り型で導入コストが高く、かつアップデートがされない仕様のものも多かったそう。

Loogiaのターゲットは宅配に限らず、弁当や食材、メンテナンスや引っ越しなど、ラストワンマイルの配送を手がける幅広い業者。小口の配送業者でも継続して使いやすいように、SaaSモデルで車両台数に応じて課金する仕組みを用いる。

名古屋大学の研究をプロダクトに落とし込んで展開

オプティマインドのシステムは名古屋大学の組み合せ最適化技術を活かしたもの。特に配送最適化の分野では高レベルの研究実績とアルゴリズムを持っているそうで、社員の中には松下氏を含め同大学院の博士課程に在籍するメンバーも多い。また技術顧問という形で情報学研究科の柳浦睦憲教授も参画している。

同社はもともと2015年に合同会社としてスタート。当初は物流に限らず、最適化技術を活かしたコンサルティング事業をやろうとしていたそう。松下氏いわく「その時に1番属人的で、変えるのが難しそうだったのが物流業界だった。だからこそ業界が抱える課題を自分たちが解決していきたいと思った」ことと、自身が研究していた領域が配送計画問題だったこともあり、物流領域に絞った。

今までは個別の企業ごとにコンサルという形で配送ルートの効率化サポートをしていたそうだが、より多くの企業の課題を解決するため、これからはクラウドサービスとして広く提供する。また「新しいサービスを展開したい人に対して配送計画というノウハウを提供する会社(プラットフォーム)」を目指し、SaaSに限らず計算エンジンのAPI連携やR&D事業も進めていく方針だ。

「今は最適システムの基盤作りの段階。その上に実配送データを収集・解析してGoogleなどがもっていないような『物流に特化した生データの地図』を構築していく。将来的にはライドシェアや自動運転が普及した時に、どのように回ればいいのかという部分においては、プラットフォーマーとしての立ち位置を確立したい」(松下氏)

今回の調達元である寺田倉庫では物流APIを企業やスタートアップに提供。エアークローゼットサマリーなどにも資本参加をした実績もある。同社にとっても配送ルートの最適化は重要で、オプティマインドとは事業シナジーもあるだろう。また松下氏の話す自動運転が普及した後の展望も踏まえると、このタイミングで自動運転ソフトウェアを開発するティアフォーから出資を受けている点も興味深い。

「今はぐっとアクセルを踏むタイミング」(松下氏)ということで、まずは調達した資金と元に組織体制も強化し、Loogiaの開発と導入企業の拡大に取り組むという。

AI文書読み取りエンジンでホワイトカラーの生産性向上へ、シナモンが約9億円を調達

不定形のドキュメントでも読み取ることのできるAIエンジン「Flax Scanner」などを展開するシナモン。同社は6月1日、SBIインベストメントの運用するファンドなどを引受先とする第三者割当増資と、みずほ銀行、三井住友銀行からの融資により総額9億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回の投資家リストは以下の通り。内訳は第三者割当増資による調達額が約8億円、融資による調達額が約1億円となる。

  • FinTechビジネスイノベーション投資事業有限責任組合(SBIインベストメントの運営ファンド)
  • SBIベンチャー投資促進税制投資事業有限責任組合(SBIインベストメントの運営ファンド)
  • FFGベンチャー投資事業有限責任組合第1号
  • 伊藤忠テクノソリューションズ
  • Sony Innovation Fund
  • TIS

今回のラウンドはシナモンにとってシリーズBにあたるもの。同社では本ラウンドで第三者割当増資により総額10億円の調達を予定していて、2018年8月末日を最終クローズ予定日に追加の調達を進めるという。

なお同社は2018年2月にもMTパートナーズ、マネックスエジソン、ベクトル、RPAホールディングス、複数の個人投資家から資金調達を実施している。

シナモンの主要株主

独自開発のAIエンジンでホワイトカラーの生産性向上へ

シナモンは2016年10月の設立。代表取締役CEOの平野未来氏は2011年にmixiの子会社となったネイキッドテクノロジーの創業者でもある、シリアルアントレプレナーだ。

同社ではホワイトカラーの生産性向上をテーマに、文書を読み取るAI OCRサービスのFlax Scannerのほか、AIチャットボット「Scuro Bot(スクロ・ボット)」、レコメンデーションエンジン「Lapis Engine(ラピス・エンジン)」など独自のAIエンジンを軸にした複数のプロダクトを展開している。

主力サービスであるFlax Scannerは、PDFやWord、手書きの文書などを情報を抜き出し、データベースに自動で取り込めるというもの。手書き文字の読み込み精度が実データで95〜98%と高いことに加え、不定形のドキュメントにも対応しているのが特徴だ。

「たとえば運転免許証のように共通のフォーマットがあるものであれば、そこに記載されている氏名や生年月日といった情報をAIが抽出することはできていた。一方で住民票のように自治体ごとにフォーマットが異なる場合、同じような情報であっても既存のAIでは自動で抽出することが難しかった」(平野氏)

Flax Scannerの場合はディープラーニングを利用して文書を読み取り、テキスト情報がどの情報に属したものなのかを分類(これは「住所」、これは「名前」といったように)。整理をした上でシステムに自動で入力する。

契約書から要点を抽出する、請求書の情報を登録する、手書きの文書をデータ化するといったシーンを中心に、幅広い用途で利用可能。現在は金融・保険業界での利用が多く、特にデータ入力業務におけるニーズが高いという。

平野氏の話では、大手企業の場合データ入力に毎月1億円ほどのコストがかかっているケースも珍しくないそう。今までは人力で頑張っていた作業を人工知能が肩代わりできれば、コスト削減や業務スピード改善を実現しうるだけでなく、人間が本来やるべき仕事に時間を使えるようにもなる。

また直近では特化型の音声認識プロダクト「Rossa Voice(ロッサ・ボイス)」の開発にも着手。これは「コールセンターのやりとりや会議の議事録を自動で書きおこす」システムだ。

「一般的に音声認識というとGoogleを始めIT業界の巨人がやっているイメージが強いが、これらは汎用型の音声認識技術。一方でシナモンで開発を進めているのは、特定のシーンで使える特化型のもの。実際に企業で使うシーンを想定すると、業界ごとの専門用語などを正確に認識できる必要があるので汎用型では難しい面もある」(平野氏)

現在は実証実験を実施している段階。正式なローンチ時期は未定だが秋頃を目標にしている。

2022年までにAIエンジニア500人体制目指す

ベトナムに構える人工知能ラボの様子

シナモンでは今回調達した資金をもとに各プロダクトの基盤技術を強化するほか、人材採用を進める方針。プロダクトのラインナップもふやしていく計画で、大企業以外でも導入しやすいようなパッケージの開発や、新規プロダクトのR&Dにも取り組む。

なお同社はベトナムに人工知能ラボを構えており、大量のAIエンジニア(シナモンにおいてはディープラーニングをゼロから組める人のことを指すそう)を採用できる仕組みを構築。同社には現在40名ほどのAIエンジニアが在籍しているが、2022年までに「AIエンジニア500人構想」の達成を目指すという。

世界最高の評価額をつけるAIスタートアップである中国のSenseTimeが、6億2000万ドルの追加ラウンドを完了

45億ドル以上という世界最高の評価額を持つSenseTimeが、再び資金の話題の世界に戻ってきた。

先月発表された、Alibaba主導によるファイナンシングラウンドで6億ドルを調達したばかりだが、今回は本日(米国時間5月30日)発表された「シリーズC+」ラウンドで6億2000万ドルを追加したのだ

前回の取引を主導したのはAlibabaだが、今回はより多くの旧来の投資家たちが参加している、例えばFidelity International、Hopu Capital、Silver Lake、そしてTiger Globaなどだ。前回投資を行ったQualcommも、再び今回のラウンドに参加したことをSenseTimeは認めている。

今回の調達によって、これまでSenseTimeが投資家たちから集めた資金は16億ドルに達した。同社によれば、直近のこの2つのラウンドを経て、評価額は45億ドル「以上」に留まっているということだ。昨年シリーズBで4億1000万ドルを調達したときには、その評価額は15億ドルだった。

Alibabaは先月の投資時点で、SenseTimeに対する最大の単一投資家となったと述べていた。今回の新たな資金注入を経て、それが変化したのか否かははっきりしていない。SenseTimeの広報担当者はTechCrunchに対して、「Alibabaと他の主要投資家の状況は変わっていない」と語っている。

SenseTimeによれば、同社には様々な産業分野(フィンテック、自動車、スマートフォン、スマートシティ開発など)にまたがる700社以上の顧客がいるということだが、その中にはホンダ 、Nvidia、UnionPay、Weibo、China Merchants Bank、Huawei、Oppo、Vivo、Xiaomiなどが含まれている。

おそらく最も目立つパートナーは、国民監視システムにそのシステムを使用している中国政府だ。中国国内に設置された1億7千万のCCTVカメラや新システムで撮影されたデータをSenseTimeは処理している(その新システムには警察官が街頭で着用するスマートグラスなども含まれている)。

中国は技術開発に重点を置いており、AIはその重要な柱の一つである。

政府の計画では、2030年までに同国をAI技術の世界的リーダーにすることを目指していると、New York Timesはレポートしている。その時までには業界は年間1500億ドル以上の価値を持つだろうと予測されている。SenseTimeの継続的な開発は、その野望に直接注ぎ込まれる。

SenseTimeは最近、その存在感を高めようとしている。同社はMIT Intelligence Questに参加した最初の会社となり、Alibabaと共に香港にAIラボを立ち上げた。同社は、中国の高校生向けのAIの教科書も策定していると述べた。それは程なく40の学校で採用されるだろう。

[原文へ]
(翻訳:sako)

画像クレジット:Photographer is my life

GIF業界がさらにヒートアップーGIFとスティッカーのプラットフォームEmogiが1260万ドル調達

ユーザーが簡単にGIFを利用できるようにするスタートアップへの資金流入が続いている。Emogiは今日、新たな投資ラウンドで1260万ドルを調達したと発表した。

GIF分野はすでに動きが活発だ。今年初めにGoogleが、いくつかのメッセージアプリにまたがって使える(最近LINEを追加)GIF検索エンジンのTenorを買収した。以前、Tenorは毎月120億回のGIF検索があると明らかにしていた。一方、クリエイターツールにフォーカスしているGfycatでは、毎月のアクティブユーザー数は約1億8000万人で、月5億件超の閲覧があるという。最大のGIFプラットフォームの一つ、Giphyの1日のアクティブユーザー数は3億人としている(最近、大規模な投資ラウンドの交渉を行ったと聞いている)。

つまり、全体的にかなりホットな業界といえる。これには理由がある。iMessageやその他のメッセージサービスが今や主要なコミュニケーション手段となり、ユーザーはその狭いスペースにたくさんの情報を詰め込む方法を探しているのだ。LINEのスティッカーやiMessageのアニ文字はさておいて、メッセージサービス企業は、ユーザーが大好きなゲームや映画、バスケットボールの試合のいい場面のクリップに感情を盛り込むのをサポートする新たな、またはクリエイティブな手段を探すのが不得手だったりする。

「私たちは消費者の行動を観察し、その結果、消費者はコンテンツを読んでいないことに気づいた」とファウンダーのTravis Montaqueは語る。「彼らは文字通り絵文字に反応している。それだけ。そうした行動は私たちにとって非常に興味深いものだった。私、そして何人かのエンジニアとデータサイエンティストによるチームだった当時、私たちは自分を表現する方法が求められていると判断した。そして、そうしたフォーマットに周囲がどう反応するか注意深く見ることにした。その結果、Emogiというビジネスに移行することになった。Emogiでは主要投資家とともに、カメラやキーボードのどんなアプリでもコンテンツ操作を充実させる手法の提供に取り組んでいる」。

協力する企業は、キーボードにEmogiのSDKを取り込み、それからユーザーの文脈についての情報を送る。タイピング内容や他の特質なことについての情報だ。それは、どんなGIFを一番使っているかを理解するのが目的だ。この点について、Montaqueは、ユーザーの会話をサーバーに送ることはなく、ユーザーのキーボードにモデルを送り、分析してきたと強調している。Facebookがプライバシー関連でかなりの混乱の最中にあるだけに、コミュニケーション企業はそうした点を強調しがちになっている。使用していた情報とは、意見やシェア、どんなコンテンツを何回も無視するのか、どんなタイプのコンテンツを扱っているのかといったものを含む。

Emogiのアプリにはコンシューマー向けの側面もあり、ユーザーはメッセージサービス内でスティッカーやGIFを動かせる。Emogiのゴールは、Tenorのような検索エンジン機能を提供するのではなく、文脈に基づいてコンテンツをカバーすることだ。GIF検索は、Googleが買収しただけあって、明らかに魅力的なものだ。ただ、そのTenorもまた、文脈にぴったりのGIFをいいタイミングで探し出せる方法を模索した。GIFを探すのにあちこちクリックするのを減らし、難なくGIFを引っ張ってくるというのはメッセージ分野では大事なことだからだ。

他のGIFプラットフォームのように(Tenor含む)、Emogiもブランドと協力している。Procter&Gambleのようなブランドに、広告以外のところでの消費者の行動を理解することができるマーケティングを目的とした縦断的手法を提供している。そうしたブランドのいくつかは複数のところと契約してマーケティングを行っているが、明らかにFacebookは含んでいないようだ。Emogiのようなアプローチはまだ実験段階ではあるものの、従来のやり方を展開してきた企業にとってこれまでリーチできなかった新しいユーザーを見つける、次なる手段となっている。

これが何を意味するかというと、Emogiが競争が激しくなっている分野へと進出しつつあるということだ。この分野における大手はそのことを用心し始めている。FacebookやLinkdInのようなプラットフォームがTenorのような企業をとりこもうとしているということは、つまり彼らは感情を狭いスペースに押し込むための方策を見つけることがメッセージ分野においてかなり重要であることに気づき始めている。TenorやGiphyはコンテンツのベースを構築するだけに終わるかもしれないが、Gfycatはまだ成長の余地を示している。Montaqueは、Emogiのコンテンツは1カ月に10億回もメッセージアプリに登場すると言っており、少なくともこれは今後サービスを展開するうえで幸先のいいスタートといえそうだ。

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi)

古着ファンメディア「古着女子」運営のyutoriが元エウレカ赤坂氏らからエンジェルラウンドで資金調達

古着情報メディア「古着女子」を運営するyutoriは5月30日、エウレカ創業者の赤坂優氏、クラウドワークス元CFOの佐々木翔平氏、フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長の佐藤裕介氏から、エンジェルラウンドで資金調達を実施することを明らかにした。調達金額は公開されていない。

古着女子は、おしゃれに古着を着こなす女性をピックアップして紹介する、Instagramアカウントだ。開設から5カ月でフォロワー10万人を突破、月間のいいね数は50万を超え、現在もフォロワー数は月1万人ずつ増えているという。

yutori代表の片石貴展氏はアカツキ出身。高校時代から古着がずっと好きだった片石氏が、趣味の延長線上でInstagramのアカウントを作成したところ、思ったより反響が大きく、4月にサムライインキュベート出身の副代表・松原俊輔氏らと合同会社を設立した(資金調達にともない6月26日に株式会社へ改組予定)。

事業は自己資本で進めるつもりだった、という片石氏。今回のラウンドに参加した投資家について「エグジットありきではなく、事業に共感し、投資してもらえた」と話している。

6月7日には古着をテーマにしたECサービスのリリースも予定しているyutori。「古着はそもそも1点もの。大量生産・大量破棄でなく、1着に物語を込めて扱っていく。時代とは逆行しているが、古着の持つ本質的な価値に出会えるサイトにしていきたい」と片石氏は語る。

yutoriでは今後、下北沢エリアをキーにメディアと連動したポップアップ出店の準備も進める。またネット通販だけでなく、古着を通した人との出会いづくり、リアルなコミュニティ運営にも力を入れていくという。

コミュニティ運営については、古着屋さんと自身の関わり方が原体験となっている、と片石氏は述べている。「古着屋さんというのは特殊な場所で、服を買うのより店員さんと仲良くなるのが先にあって、結果として服を買っているようなところがある。そういったコミュニティやリアルなつながりの原点となる体験を、古着屋にあるそのままの形ではなくて、Instagramなどで広めたくなるような場として作りたい」(片石氏)

さらに「古着が好き、という子にとって、クラスに同じような格好をしている子はそんなにたくさんいない。マイノリティであることは、ある種大変なこと。そうした古着好きの子が『私たち間違ってないよね』と確かめ合える場所でもありたい」とも片石氏は話す。

下北沢をキーエリアとするのは「yutoriや古着女子の持つ世界感と合っているから」と片石氏。「下北沢はプラスの部分を大きく見せる原宿系とも違い、日常的で、いいところも悪いところも含めて表現しているところがある。そんな下北沢カルチャーを巻き込んで、世の中に存在感を放っていければ」と語っていた。

写真左から、エウレカ創業者 赤坂優氏、yutori代表 片石貴展氏、副代表 松原俊輔氏、フリークアウト・ホールディングス代表取締役社長 佐藤裕介氏

細胞培養技術で“人工フォアグラ”実現も、インテグリカルチャーが3億円を調達

細胞培養技術を用いた食料生産に取り組むインテグリカルチャーは5月25日、リアルテックファンドなど複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額で3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。同社にとってはシードラウンドとなる位置付けで、投資家は以下の通りだ。

  • リアルテックファンド(リード投資家)
  • Beyond Next Ventures
  • 農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)
  • MTG
  • ユーグレナ
  • 北野宏明氏(ソニーコンピューターサイエンス研究所代表取締役社長)
  • その他非公開の投資家

今後は同社の細胞培養システムの大規模化と価格低減の実現に取り組みながら、組織体制を強化し事業化(商品化)に向けて舵を切っていく方針。まずはコスメやサプリメント向けの原材料から始め、その後は人工フォアグラなどさまざまな細胞農業製品を売り出していく計画だ。

世界で注目浴びる“クリーンミート”

インテグリカルチャーが取り組んでいるのは、特定の細胞を培養することで食肉などを生産する「細胞農業」と言われる領域。特に細胞培養で作られた食肉「クリーンミート(純肉)」は、動物を殺さずに生産できる持続可能なタンパク源として期待されていて、世界的に関連のスタートアップが生まれてきている。たとえばビルゲイツ氏らが出資しているMemphis Meatsはその一例だ。

培養肉を作るには細胞を培養液の中で増やし、肉の塊へと固めていくことになる。ただインテグリカルチャー代表取締役の羽生雄毅氏によると、これまで培養液の価格がひとつの課題となっていたそう。同社では現行の培養液に含まれる牛胎児血清(FBS)を、一般食品を原料とする「FBS代替」で置換する技術を開発。動物由来成分を不使用にすることで、低価格の培養液を実現した。

同社のコアテクノロジーである汎用大規模細胞培養システム「Culnet System」とともに利用すれば、細胞培養に必要な培養液のコストを1リットルあたり10円以下、従来の1万分の1以下にまで抑えることができるのだという。

なおCulnet Systemは外部から成長因子を添加せずに、さまざまな細胞を大規模に培養できるのが特徴で特許も取得している。この技術を用いてすでに鶏肝臓細胞の大規模培養により「鶏フォアグラ」を試作するなど、コンセプト実証を実施済み。従来の方法では細胞質100gで数百万円のコストがかかっていたが、同社の技術により一部の種類の細胞については100gで1万円以下相当まで原価を下げることができ、複数の事業会社から引き合いを受けているという。

また同社の技術は何も食肉を作ることだけに限定したものではないため、再生医療に繋がる研究として人の細胞を試したりもできるそうだ。

数年後には細胞農業製品が続々と市場にならぶ?

冒頭でも触れた通り、同社では今後さらなる価格低減と生産システムの大規模化を段階的に実現し、2018年中にパイロットプラントを製作、2019年末から2020年初頭にかけて商業プラント1号機を建設する予定。

商品化については、2020年を目処に化粧品・健康食品向けの原材料からスタート。その後はフォアグラを含め化粧品・健康食品・一般食品など、さまざまな細胞農業製品を販売していく計画だ。

「(人工フォアグラについては)実際に市場に出すとなると、規制当局との話し合いや販路の獲得なども必要になるので2023年頃を目処に考えている。(現時点では)最初は既存の製品より2割ほど高い価格での販売を考えているが、2020年代半ばには同等の価格で提供したい」(羽生氏)

市場にだすタイミングでは「ものすごく硬い、苦い」といったようなことはなく、食品として成立している状態が前提。またアレルゲン物質を含まない肉など、成分をアレンジすることで安全面などに配慮したものが作れるのだという。

インテグリカルチャーのメンバー。写真右から4人目が代表取締役の羽生雄毅氏

インテグリカルチャーは代表取締役の羽生氏が東芝研究開発センターを経て2015年10月に創業したスタートアップ。オックスフォード大学出身の羽生氏を含め、理系の大学院で博士号を取得したメンバーも数名在籍する。

もともとは培養肉の実用化を目指し、研究者やバイオハッカー、学生らが集ってできた有志プロジェクト「Shojinmeat Project」が始まり。産業化を推進する目的でインテグリカルチャーの設立に至ったのだという。

今後はNPOなどとも協力し、細胞農業の分野を盛り上げるためのエコシステムを形成。その中でインテグリカルチャーでは同社の技術を製品化し「増加を続ける世界の食肉需要に対して、持続可能な供給手段」の実現を目指す。

 

1.5万施設が登録する民泊管理ツール提供のmatsuri technologies、数億円を調達

民泊管理ツール「m2m Systems」など、民泊事業者向けのサービスを複数展開するmatsuri technologies。同社は5月23日、DasCapital(連続起業家の木村新司氏が代表を務める投資会社)、ファンドクリエーション、リンキンオリエント・インベストメントが運営するファンドより、数億円規模の資金調達を実施したことを明らかにした。

なおファンドクリエーションとは資本業務提携を行い、共同で民泊マンスリーファンドを組成。資金面でも民泊事業者をサポートしていく方針だ。合わせて複数社と協業し、民泊借り上げ事業にも取り組む予定だという。

matsuri technologiesが提供しているm2m Systemsは、複数のAirbnbアカウントを登録・一元管理できる民泊管理システムだ。ゲストからのメッセージ対応を始め、事業者が民泊運営において抱える課題を解決する機能を複数搭載する。

メッセージの自動送信、清掃状況の確認と手配、複数アカウントの一元管理などを通じて、事業者の業務効率化に加えて物件の稼働率の向上もサポートするのが特徴。2018年5月には登録件数が1万5000施設を突破した。

また6月に施行される民泊新法(住宅宿泊事業法)では民泊営業の上限が年間180日とされ、事業者は残りの期間を住宅利用することが必要だ。業界内ではこの180日以外の期間を、短期の賃貸物件として運用する「二毛作民泊」が注目を浴びていて、matsuri technologiesでも民泊とマンスリー賃貸の併用管理システム「nimomin」を手がけている。

今回の資金調達を踏まえ、同社ではm2m Systemsをはじめとする民泊運営支援ツールの機能拡充を進めるとともに、ファンドクリエーションと共同で組成する民泊マンスリーファンドなどを通じて、民泊事業者を支援していく方針だ。

より安価にIoTを実現する「BLEルーター」開発のBraveridge、5億円を資金調達

無線技術を軸にIoTデバイスなどの開発・製造を行う福岡市のスタートアップBraveridgeは5月23日、BLE(Bluetooth Low Energy)端末をLPWAやLTEなどの広域通信網に中継できる「BLEルーター」シリーズを発表した。インターネット環境のない場所でも安価なBLE端末を設置して、BLEルーター経由でIoTサービスを使うことができるようになる。

IoT普及にあたっては、“あらゆる場所”に機器を用意するための費用やインターネットへの接続コスト、消費電力が課題となる。Braveridgeでは、最新のBT5.0-Long Rangeモジュールを開発。低コスト・低消費電力・1Kmまでの長距離通信を実現した。

最大20台まで接続可能なBLE端末が取得したデータは、BLEルーターに集約された後、LTE網(3G、LTE、Cat-M1/NB-IoTなど)や各種LPWA網(LoRa、Sigfoxなど)へと中継され、インターネットにダイレクトにつながる。OSではなく独自ファームウェアで制御するため、ハッキングや不正侵入の心配もないとのことだ。

利用料金は、LTEと接続する「BLE to LTEルーター」の場合で2年間のSIM通信費込の価格が1万5000円から(月額契約は不要)といったモデルを検討しているという。

BraveridgeではBLEルーターの導入で、ネット環境がない場所での高齢者や児童の安否確認、火災検知、開閉探知、牧場管理などが安価に実現できるとしている。たとえばオフィスビル内の複数(20カ所まで)のトイレの使用状況をスマートフォンから確認するといったことが数万円のハードウェア投資で可能になるという。

BLEルーターシリーズの発表と同時にBraveridgeでは、ジャフコが運営するファンドを引受先とする総額5億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにしている。

Braveridgeは資金調達により、各種デバイスやサービスの開発・提供を加速し、実証実験不要で「真のIoT」を容易に実現できるシステム提供を目指す。

VR空間でAI講師が英会話を教える「Smart Tutor」開発元がDBJキャピタルとD4Vから150万ドルを資金調達

AI×VR技術を応用した英会話学習ツール「Smart Tutor」を開発するPlusOneは、5月16日にDBJキャピタルD4Vを引受先とする総額150万ドル(約1億6500万円)の第三者割当増資を実施していたことを明らかにした。

PlusOneは2016年8月、サンフランシスコを拠点に創業した。2017年3月にHTCのアクセラレータプログラム「Vive X」でエンジェルラウンドの資金調達を受けており、今回の調達は同社にとってシードラウンドにあたる。

PlusOneが英会話スクール向けに提供するSmart Tutorは、VR空間上で生徒がレッスンを受けられる英会話学習ツールだ。AIを搭載したヒューマン・ホログラム「Holosapiens」が生徒のスピーチを、発音・流暢さ・スピーチペースなど7つの評価指標でリアルタイム分析。スピーチ内容を客観的にスコア化することができる。

また、Holosapiensが発音などの基本的な指導や練習相手を不足する語学講師に代わって行うことで、講師の業務負担が軽減され、限られた時間でより多くの生徒を指導することができるという。

PlusOneでは、VR空間でのシナリオを作成するツール「WebTool」も提供。英会話スクールは自社コンテンツをVR内のコンテンツに手軽に変換でき、生徒へ割り当てることが可能だ。また、先生がWebTool上から生徒の練習状況や評価指標のトラッキングを行い、指導に生かすこともできる。

PlusOne CEOのJon Su氏は、ディズニー米国本社、日本支社、中国支社で6年間アートディレクターを務め、ディズニー ツムツムなどの人気アプリ作成にも携わった人物。自身の体験から「仕事の傍ら語学スクールに通うのはお金も時間もかかる。もっと効果的で、時間・空間に縛られない学習方法が必要だと強く感じた」と述べ、将来的に「誰もが手軽な値段で、時間・場所など物理的な制限に縛られることなく、良質な語学教育を受けられる世の中にしたい」と語っている。

また、プラスワンジャパン代表の栗原聡氏は英会話スクールの社長を務めてきた経験から、「既存の英会話教育は労働集約型で、良い先生を獲得するための採用コストや給料が経営を圧迫し、生徒の負担となる」と英会話スクールの経営課題について語る。「Smart Tutorは、AI技術により、先生のスキルに頼らない客観的評価を提供する。英会話教育を劇的に変えるソリューションだと感じた」(栗原氏)

Smart Tutorの料金は、組織用に1アカウント、講師用に5アカウント、生徒用に30アカウントが含まれているマスターライセンスで月額30万円から。

PlusOneでは今後、エンドユーザーへのVR浸透率やハードウェアの改良をみて、エンドユーザーが自宅からコンテンツにアクセスできるよう、Smart Tutorのプラットフォーム化も視野に入れていくとしている。

“電子トレカ”がスポーツチームの収益源になる「whooop!」発表、1500万円の資金調達も

ここ数ヶ月の間に、個人や団体(企業)が資金やファンを集めることのできるプラットフォームが急速に増えてきている。

たとえば先日TechCrunchでも紹介した「SPOTSALE(スポットセール)」や「BASE」の取り組みは、店舗がサービス上で“独自のコイン”を発行し、初期のファンや資金を調達できるというもの。ほかにもコミュニティが“コミュニティコイン”を発行して支援者を募る「fever」や、少し方向性は違えど、設定した特典と交換可能な“ポイント”を無料配布しファンと交流できる「MINT」のようなサービスもある。

もちろんクラウドファンディングもそうだし、プラットフォームではないけどICOも同じような目的で活用される仕組みだ。

そして今回紹介する「whooop!」もこれらに近く、スポーツチームやアスリートがファンから資金を調達できるプラットフォーム。ただしwhooop!の場合は独自のコインでも、ポイントでもなく“電子トレーディングカード”を用いている点が最大の特徴だ。

開発しているのは現役東大生を中心とした若いメンバーが集まるventus。同社は5月23日よりwhooop!の事前登録を開始するとともに、谷家衛氏や高野真氏を含む個人投資家などから、総額1500万円を調達したことを明かした。

電子トレカが変える、チームとファンの関係性

whooop!はスポーツチームやアスリートがオンライン上でトレーディングカード(以下トレカ)を発行することで、ファンとの関係性を深めたり資金を集めたりできるサービスだ。

トレカにハマったことがある人にはイメージがつきやすいと思うが、スポーツチームは複数枚の選手カードをランダムに集めてパックにしたものをファンに販売。ファンはチームから直接購入するほか、オークションやトレード機能を使ってファン同士で取引することもでき、カードを集めながらお気に入りのチームを支援する。

各チームごとに「ファンランキング」が導入されているほか、チームの運営方針に関する投票など、カード保有量に応じた「特典」も設定が可能。ランキングによって自らの“ファン度”をアピールでき、特典を使うことでより一層深くチームに携わることができる。

一方で収入に悩むスポーツチームにとっては、電子トレカが新たな収益源にもなりうる。whooop!ではカードを販売した際に販売額の90%がチームの収益となるほか(10%がwhooop!の取り分となる)、ファンの間でカードを売買した際にも取引手数料として2.5%がチームに支払われる仕組みだ(同じくwhooop!にも2.5%が支払われる)。

ここまで読んで「カードを売買できる以外はクラウドファンディングとあまり違わないのでは」と思う人もいるかもしれない。

この点についてventus代表取締役CEOの小林泰氏に聞いてみたところ、「(単発的になりやすいクラウドファンディングとは異なり)カードはシーズンやイベントごとに発行できるので、継続的な支援を受けやすいのが特徴。グッズなど物のリターンだけではなくチームに関わる体験をファンに提供でき、ファンの視点ではカードを保持しておけば支援したことを証明することもできる」のがウリだという。

各カードのサンプル画面。

whooop!では琉球アスティーダ(卓球)、宇都宮ブリッツェン(自転車)のほかプロサッカーチームや個人アスリートと連携し、βテストを行っていく計画。6月中を目処にこれらのチームに関してカードの購入、特典の獲得ができるようになる予定だという。

また連携チームを増やしながら、2018年夏頃にwhooop!の正式版をリリースする方針だ。

スポーツチームが継続的に収益をあげられる仕組みを

ventusは2017年11月の設立。代表の小林氏と取締役COOの梅澤優太氏を中心としたチームで、2人は現役の東大生だ。

ventusのメンバー。写真左から1人目が取締役COOの梅澤優太氏、3人目が代表取締役CEOの小林泰氏

小林氏は学部生時代にアイスホッケー部に所属。その傍ら、アイスホッケーを広めるために大学リーグの全試合を生中継するメディア「Tokyo IceHockey Channel」を立ち上げ、3年以上運営してきた。

「生中継をしていて感じたのが、本質的な価値は現場体験にあるということ。その価値をあげるためにはどうすればいいか、その体験に参加してお金を払ってくれる人を増やすにはどうすればいいかを考えたのがひとつのきっかけ。またメディアを運営する過程で自分たちでクラウドファンディングをやるなど、多くの人から支援してもらった。その支援を何らかの形で可視化して、蓄積できると面白いと思っていた」(小林氏)

一方の梅澤氏も3歳の頃からサッカーに打ち込んできたスポーツ好き。スポーツベンチャーでのインターンも経験し、スポーツ業界で事業をやることを考えていたところ小林氏と会ったという。

「スポーツだけに限った話ではないが、ただ1つのことに打ち込み勝負をしている人たちと、その人たちを支えたいと思う人が繋がれる場所を作りたいと考えていた」(梅澤氏)

もともと2人が考えていたのは、ちょっとしたベッティング要素やゲーム性を取り入れること。たとえばwhooop!でとあるチームのカードを購入する。そのチームを応援し続けた結果、チームの価値が上がれば自分の保有するカードの価値も高まるといった具合だ。

これによって何となくカードを購入したことをきっかけにそのチームを熱狂的に応援する人がでてくるかもしれないし、その結果チームにきちんと資金が入る仕組みになっていればファンもチームもハッピーだろう。「もともとスポーツにはトレカという文化があるため、ファンだけでなくスポーツチーム側にとってもわかりやすい」(梅澤氏)こともあり、電子トレカを活用したwhooop!のアイデアに固まったそうだ。

今後whooop!では中長期的に様々な種目、レベルのチームをプラットフォーム上に展開することで、スポーツファンが集まる「スポーツ横断型のコミュニティ」を形成を目指す。収入源をチケット代やスポンサー料、放映権料に依存しがちなプロスポーツチームやアスリートにとって「電子トレカが継続的に資金を得られる収入源のひとつになること」を目標に事業を成長させていきたいという。

400を超える縫製工場などと連携、衣服生産プラットフォームの「シタテル」が数億円規模の調達

衣服生産プラットフォーム「シタテル」を提供するシタテルは5月22日、既存株主やスパイラル・ベンチャーズ・ジャパンなど複数の投資家を引受先とする、第三者割当増資を実施したことを明らかにした。今回のラウンドはシリーズBに相当するもので、具体的な調達額は非公開だが数億円規模になるという。

シタテルへ出資した企業は以下の通りだ。

  • スパイラル・ベンチャーズ・ジャパン
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ
  • 朝日メディアラボベンチャーズ
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • オプトベンチャーズ(既存株主)
  • 三菱UFJキャピタル株式会社(既存株主)
  • その他非公開の投資家

同社は2016年6月にシリーズAでオプトベンチャーズと三菱UFJキャピタルから数億円を調達しているほか、2014年10月にも三菱UFJキャピタル、日本ベンチャーキャピタル、リブセンスから資金調達を実施している。

シタテルは2014年3月創業の熊本県発スタートアップだ。運営する衣料生産プラットフォームでは提携する400以上の縫製工場の技術や、サプライヤーのリソースをデータベース化。グッズを制作したいファッションブランドやセレクトショップの要望と工場の稼働状況などを考慮し、適切にマッチングすることで、「小ロット・高品質・短納期」で衣服を生産できる仕組みを構築してきた。現在は7000を超えるクライアントが登録する。

また直近では受注から生産までをワンストップで管理できるECシステム「SPEC」や、メンバー制のコミュニティプラットフォーム「Weare」を公開するなど、衣服に関する新しい取り組みも行っている。

シタテルでは今回調達した資金を用いて、同社の基盤システムである「SCS(シタテル・コントロール・システム)」の強化を進めるほか、SPECや工場・サプライヤー向けのオペレーションツールの開発、Weareのコミュニティ構築に取り組むという。

駐車場シェアを超えたモビリティプラットフォーム目指す「akippa」、住商らから8.1億円を調達

駐車場シェアリングサービス「akippa」を運営するakippaは5月22日、既存株主の住友商事など7社を引受先とした第三者割当増資により、総額で8.1億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

今回の調達は既存事業の拡大とともに、同社が今後見据えるMaaS(Mobility-as-a-Service)を軸としたモビリティプラットフォームの構築に向けたもの。調達先7社および各社との業務連携の内容は以下の通りだ。

  • 住友商事 : 2016年9月に業務提携、2017年にakippaへ出資。モビリティ部門と連携しカーシェアの駐車スペースやEVの充電スポットなど、中長期的にakippaの駐車場を活用。海外展開のサポートも
  • 日本郵政キャピタル : 郵便局等の駐車場や遊休地の貸し出しを検討
  • JR東日本スタートアップ : 2018年3月より保有する駐車場をakippaで貸し出し開始。今後もJR東日本沿線の駐車場をakippaを通じて提供、鉄道と2次交通とのシームレスな連携へ
  • ニッポンレンタカーサービス : 2018年内を目標にID連携を進めレンタカーと駐車場をセットで予約できる仕組みを目指すほか、カーシェアステーションとしてakippaの駐車場を活用
  • FFGベンチャービジネスパートナーズ : 九州エリアでのakippaの展開支援
  • 中部日本放送 : 東海エリアでのakippaの展開支援とグループの各種事業との連携
  • 千島土地 :大阪中心に関西エリアでのakippaの展開支援

なおakippaはこれまでに約16億円を調達していて、今回のラウンドで累計の調達額は約24億円となる。

会員数70万人、累積の駐車場拠点数も2万箇所を突破

akippaは2014年4月にリリースされた、駐車場のシェアサービスだ。貸し手側は空いている駐車場を貸し出すことで駐車料金の50%を収入として得られる点が大きなメリット。導入時に精算機や車止めなど初期投資が不要で、時間帯や日数も柔軟に選択できる。

一方の借り手はアプリから15分単位で駐車場を予約することが可能だ。もともとが空きスペースなので料金がリーズナブルなことに加え、事前予約制・キャッシュレス方式を採用(クレジットカードもしくは携帯料金と合算で支払う)。当日現地でコインパーキングの空きが見つからず焦ることもないし、支払いの手間もない。

akippa代表取締役社長の金谷元気氏によると、2018年4月時点で会員数は70万人以上、累積の駐車場拠点数も2万箇所を超えているという。特に1年で倍以上になったという拠点数については、個人のものだけでなく大手企業が提供する駐車場が増加傾向にある。

1月には東京都内のタクシー会社の車庫を貸し出す実証実験も実施するなど、幅広い業界との繋がりを強化。またコインパーキングやSUUMO月極駐車場を提供するリクルートなど、同業他者との連携も積極的に行ってきた。

「前回のラウンド(2017年5月)以降はとにかく駐車場を増やすことにフォーカスしてきた。それまでは需要に対して供給が全く追いついていない状況で、キャンセル待ちが多発するスペースも少なくない。駐車場がなくて困っている人が確実にいるのに、その課題を解消しきれていなかった」(金谷氏)

そこで明確な供給不足の打開策としてakippaが着手したのが、これまで導入が難しかったゲート式駐車場の開拓だ。ゲート式駐車場はコインパーキングや商業施設などでよく見かける、入り口で駐車券を取り、出口で清算するタイプの駐車場のこと。

akippaでは先日、このゲート式駐車場をakippaに対応できるようにするIoT端末「シェアゲート」を発表した。ゲート式駐車場でも事前予約・スマホ決済ができるようになるということなのだけど、これが同社にとって大きな意味を持つのだという。

「akippaに登録されている拠点数は順調に伸びてきているものの、拠点あたりの台数は5台くらいの所が多くすぐに埋まってしまう。一方のゲート式の駐車場は通常の駐車場と比べて規模が違う。200〜300台規模の駐車スペースを持つ拠点も珍しくなく、ニーズのあるエリアで開拓できた場合のインパクトが大きい。今後はシェアゲートを通じて1施設あたりの駐車台数を増やしていくことにも取り組む」(金谷氏)

金谷氏いわく、ARPU(アープ / ユーザー1人あたりの平均売上高)を増やす1番の方法は駐車場を増やすこと。特に東京ドームなど「予約ニーズの多い場所に、いかにたくさんの駐車スペースを持っているか」が重要だという。

引き続き多方面での連携も進めながら、2020年に拠点数を10万箇所まで増やすことが目標。シェアゲートについても2019年末までに1000箇所での導入を目指すという。

駐車場シェアに留まらない、モビリティプラットフォーム構築へ

ここからは少しだけその先の話をしてみたい。冒頭でも触れたように、akippaが見据えているのはMaaSを軸としたモビリティプラットフォームだ。これは駐車場や車といった移動に関連するツールを「モノ」としてではなく「サービス」として提供するということ。カーシェアや駐車場シェアがまさにその一例だ。

「akippaが考えるMaaSの第1フェーズは、車を持っていなくてもカーシェアと駐車場シェアを使って家から目的地まで快適に移動できるもの。ここではカーシェアを提供するプロバイダーのサービスに加えて、自社でC2Cのカーシェアをやることも視野に入れつつ、一連のサービスがakippaIDで予約決済できるようにする」(金谷氏)

金谷氏によると70万人のakippa会員のうち約50万人が車を保有しているそう。ただし約8割の時間は車を使わず持て余しているとのことで、その時間を使って残りの20万人にC2Cで車を貸し出すというモデルが成り立つと考えているようだ。

とはいえ、それだけではプラットフォームとしては車が足りないので、プロバイダーのサービスもakippaから利用できるようにする。その第一弾が調達先である日本レンタカーであり、今後の住友商事だ(住友商事は2018年4月に北米のカーシェア事業者Turoに出資。日本を含むアジアでサービス展開を進めていく方針を明らかにしている)。

もちろん車だけでなく駐車場も各地で必要になる。この点についても「日本でたくさん土地を持っているJR東日本や日本郵政と連携をとっていきたい」(金谷氏)とのこと。今回の資金調達は金谷氏が何度も言及していたが、足元の駐車場シェア事業の拡大だけでなく、その先にあるモビリティプラットフォームを見据えたものになっている。

「2020年までは駐車場シェアを中心に事業を成長させていく方針。そこから徐々にMaaSの第1フェーズに取り組む。最終的にはカーシェアの車が自動運転車に変わり、akippaで呼び出すと現地まで迎えに来る。そして目的地で人を降ろした後は車だけが駐車場兼充電spotにいく、という世界観を実現したい。akippaは困りごと解決屋。2030年に世界最大のモビリティプラットフォーマーになるということをビジョンに、モビリティに関する課題を解決していきたい」(金谷氏)

集団訴訟をプロジェクト化して支援する「enjin」公開、運営会社は6000万円を資金調達

士業の中ではIT活用がなかなか進まないイメージのある弁護士、法務の世界でも、このところ新しいサービスが増えてきた。契約書の作成・締結が行えるクラウドサービス「Holmes」や、AIを使った契約書レビューサービスの「LegalForce」、「AI-CON」などがそれだ。

5月21日にベータ版がリリースされた「enjin(円陣)」もそうしたリーガルテックサービスのひとつ。集団訴訟を起こしたい被害者を集めて弁護士とつなぐ、集団訴訟プラットフォームだ。プロジェクトに賛同する人を集めるという点ではクラウドファンディングのようでもあるし、事件に適した弁護士とつなぐという点ではマッチングプラットフォームのような仕組みでもある。

enjinを運営するのは、2017年11月に弁護士でもある伊澤文平氏が創業したクラスアクションだ。クラスアクションではサービスリリースと同時に、500 Startups Japanと個人投資家を引受先とする総額6000万円の資金調達をJ-KISS方式で実施したことを発表している。出資比率は500 Startups Japanが5000万円、個人投資家が1000万円で、今回の調達はシードラウンドにあたる。

代表取締役CEOの伊澤氏が弁護士となったのは20代前半のこと。弁護士として、いろいろな詐欺事件の相談を受けてきたという伊澤氏は「詐欺事件の多くに共通するのは、1件あたりの被害額はそう大きくないことだ」と話す。

「たとえば社会人サークルなどでネットワークビジネスに勧誘されて、払ったお金が何も返ってこない、というケースはよくあるが、1人あたりの被害額は10万円とか20万円。一方訴訟を起こすとなると、弁護士のほうもボランティアではないので弁護士費用がかかるが、その費用は1件あたり30万円を超える。そうなると、弁護士は被害者を救いたくても事件を受けることができない」(伊澤氏)

消費者庁による2016年の調査(PDF)では、消費者被害で年間約4.8兆円の被害が出ているが、30万円ぐらいまでの少額被害者の多くは泣き寝入りをしているのが現状だ。

伊澤氏は「少額被害者は多いが、それを助けられないのが歯がゆかった」という。そうした中で、法改正をきっかけに集団訴訟の手続きについて調べる機会があり、「集団訴訟にすることで被害者を救えるのではないか」と考えた。

水俣病訴訟に関わった弁護士とも話してみて、集団訴訟では被害者1人あたりの訴訟負担額を激減できることがわかった、という伊澤氏。「30万円の弁護士費用でも、30人集めれば1人あたり1万円にすることができる。被害者にとっても弁護士にとっても、双方にメリットがあるサービスが作れると思った」とenjin開発のいきさつについて語る。

enjinではまず、被害者が集団訴訟プロジェクトを立ち上げて、同様の被害に遭った人にプロジェクトへの参加を募る。一定数の被害者が集まったところで、enjinに登録した弁護士にプロジェクトが紹介され、弁護団を形成することができる。その後は弁護士主導で裁判外、裁判内での解決を目指していく。

6月には直接の被害者だけでなく、被害者以外からの支援が受けられる寄付機能も追加予定。集団訴訟プロジェクトに賛同する人をスポンサーとして、活動することができるようになるという。

また集団訴訟では、被害者が多数いることから事務手続きやコミュニケーションが煩雑になる。そうした事務やコミュニケーションを円滑にするようなシステムの提供も9月に検討しているそうだ。

現在、enjinでは無料でサービスを公開しているが、今後、登録した弁護士からシステム利用料や広告料の形で費用を受ける予定だという(弁護士法上、事件ごとの紹介料という形は取れないため)。

クラスアクションでは今回の資金調達により、集団訴訟に関する情報提供のためのコンテンツ制作や、サービス開発・運営体制の強化を図っていく。具体的にはエンジニアや編集者などの採用を強化していくという。

クラスアクションはenjinの利用が広まることで、これまで泣き寝入りしていた被害者を救い、表に出なかった事件を顕在化すること、さらに事件の顕在化により加害者への抑止力となることを目指している。

伊澤氏は「埋もれた被害にスポットライトを当てると同時に、弁護士に対する(世の中の)見方を魅力的にしていきたい」とも話している。「司法制度改革で弁護士は増加しているが、事件がそれに比例して増えているわけではなく、限られた事件のパイを取り合うのが今の状況。弁護士は儲からない、といったネガティブな見方をなくすためにも、弁護士の仕事を増やしたい」(伊澤氏)

そういう意味では、ニュースが取り上げる以前に、enjinを起点として問題を発信していきたい、という伊澤氏。詐欺事件のほかにも、労働問題、製造物責任、個人情報漏えい、環境問題、夫婦別姓、株主賠償や著作権侵害など広く社会問題を扱い、「何かあったらenjinに来る、というサービスになっていければ」と語った。

写真:前列左から2番目がクラスアクション代表取締役CEO 伊澤文平氏。後列左端は500 Startups Japan代表 James Riney氏。

飲食店向けSaaS運営のウェリコが5000万円を資金調達、ニッセイの「50M」プログラム第1期採択企業

飲食店向けSaaSを複数展開するウェリコは5月16日、ニッセイ・キャピタルおよび個人投資家を引受先とした第三者割当増資を4月に実施していたことを明らかにした。今回の調達はシードラウンドにあたり、調達金額は総額5000万円だ。

ウェリコは2017年4月の設立。代表取締役CEOの荒木れい氏はJPモルガン証券で投資銀行部門に所属し、M&A、資金調達などのアドバイザリーに従事した後、同社を創業した。

ウェリコが提供するのは、飲食店向けのウェブサービス群だ。「Menu Maker(メニューメーカー)」は、スマートフォンでおすすめメニューを作成できるサービス。手書きメニューに代わりデザインされたメニューを月額980円で何度でも作成でき、PDFやFaxで出力することが可能だ。

Oroshiru(オロシル)」は、飲食店が卸業者へのFax発注をスマートフォンで行えるサービス。今使っている発注書を利用でき、卸業者へはメールやFaxで従来通りに発注書が送られるので、業者との調整をすることなく導入可能だ。一度登録した商品は保存されて、再発注の際は入力の手間が省ける。また過去の発注情報を確認できるので、発注ミスを防止し、仕入を最適化することができる。こちらも無制限に利用可能なベーシックプランが月額980円で提供されている。

今回の調達は、先日第1期採択企業のデモデイがあったニッセイ・キャピタルのアクセラレーションプログラム「50M」の継続支援先として採択されたことによるもの。

ウェリコでは、今回の資金調達をもとに、サービス開発・拡大と人材獲得の強化を図るとしている。

フィールドセールス向けCRMを提供するUPWARDが約3億円調達

クラウドCRMサービスを提供するUPWARDは5月15日、Draper Nexus Venture PartnersSalesforce Ventures日本ベンチャーキャピタルアーキタイプベンチャーズを引受先とする第三者割当増資により、総額約3億円を調達したと発表した。

UPWARDは、CRMと位置情報を連携したフィールドセールス向けのクラウドサービスだ。従来のフィールドセールスでは、CRMにある情報をもとに準備をし、そこに書かれた住所に訪問するというのが一般的。一方、CRMと位置情報を組み合わせたUPWARDでは、例えば自社製品の資料請求を行った企業のオフィスがたまたま営業員の近くにあれば、ツールが自動的に「訪問すべき」というリコメンドを行う。

UPWARDはスマホアプリなので、急な案件でも出先からCRM情報を確認することもできる。営業計画の立案や効果的な訪問ルートの計算などもツール上で行うことが可能だ。活動報告や、実際の活動履歴をもとに自動でレポートを作成する機能もあるので、フィールドセールスに関わる作業を一括して行うことができる。

UPWARDの設立は2002年で、サービスは2011年からリリース。現在の導入社数は約200社だ。導入企業で多いのは、クルマや機械など単価が高い製品を扱う企業で、かつルート営業を行う企業なのだという。同社は今回調達した資金を利用して、フィールドセールスで必要となる入力作業をAIで自動化する機能などを開発する予定だ。

電子薬歴システムのカケハシが9億円調達、売上はすでに月4000万円

電子薬歴システム「Musubi」を提供するカケハシは5月14日、グロービス・キャピタル・パートナーズ伊藤忠テクノロジーベンチャーズSalesforce VenturesSMBCベンチャーキャピタルDraper Nexus Venture Partnersグリーベンチャーズ500 Startups Japanより、シリーズAラウンドで総額9億円の資金調達を実施したと発表した。

Musubiは、薬剤師が患者に対して行う服薬指導で利用するクラウドサービスだ。指導の内容は自動でクラウド上に蓄積されるため、コミュニケーションと同時に薬歴記入ができることが特徴。この時間短縮の効果は大きく、毎日2〜3時間の業務負担を大きく削減することが可能であるほか、患者の疾患、年齢、性別、アレルギーなどの情報や過去の薬歴などを参照して最適な指導を行うことができる。

カケハシは2018年3月に行われたB Dash Campピッチアリーナで優勝したスタートアップだ。壇上に上がった代表取締役の中尾豊氏は、同社の月次売上高はその当時すでに4000万円に達していると話し、会場を驚かせた。現在、Musubiには約8000店舗からの問い合わせがあり、それらの店舗への導入率は約6割だという。

カケハシは今回調達した資金を利用して、エンジニアとカスタマーサポートの人員を大幅に強化することを目指す。このタイミングで大型調達を行い、人員強化を行うことでサービスの改善点やニーズを現場から汲みあげることが必要であると考えたようだ。

カケハシは2016年3月の設立。これまでに2度の資金調達を行い、合計で約2.5億円を調達した。今回のラウンドを含む累計調達金額は約11.5億円となる。

遠隔診療アプリとAI医療サービス開発の情報医療が三菱商事などから11億円を資金調達

このところ、ヘルステック分野のスタートアップによる資金調達が活発だ。5月7日にはAI問診システムと病名予測アプリ開発のUbieが3億円を調達を発表したばかり。そして今日5月14日、さらに3社のヘルステック関連ベンチャーが資金調達の実施を明らかにしている。

1つは健康管理アプリ「カロミル」を運営するライフログテクノロジーによる6000万円の調達。もう1つは電子薬歴システム「Musubi」を提供するカケハシ(詳しくは別の記事で紹介予定)。そして残る1社は、AIを活用した各種医療サービスと医療機関向けのオンライン診療サービス「curon(クロン)」を提供する情報医療だ。

情報医療が本日発表したのは、4月末までに実施された三菱商事など4社を引受先とする、総額11億円の第三者割当増資の実施。三菱商事以外の3社については社名が公開されていないが、いずれも事業会社とのことだ。同社にとって今回の資金調達はシリーズAラウンドにあたる。

情報医療は2015年11月、代表取締役CEOで医師でもある原聖吾氏らにより設立された。創業メンバーにはGunosyやREADYFORの創業にも関わり、ディープラーニングに関する著書も出版する、巣籠悠輔氏もCTOとして参画している。

写真左から代表取締役CEO 原聖吾氏、取締役CTO 巣籠悠輔氏、取締役COO 草間亮一氏。

同社が2016年より展開するcuronは、予約から問診、診察・処方、決済など、遠隔医療に必要な機能が一式そろった医療機関向けのオンライン診療サービス。初期費用・固定費なしで、PCだけでなくタブレットやスマートフォンなどからも利用できる。患者側も利用は無料。スマホアプリでいつでも診察・処方が受けられる。リリースから2年で約500の施設に導入されているという。

またAIを用いたサービスとしては、画像や患者行動からの疾病識別エンジンや、個々人の健康状態の将来予測エンジン、疾病・健康状態の維持管理をサポートするソリューションなどを開発・提供している。

3月には日本生命とともに糖尿病予備軍向けの予防プログラムの開発を開始。日本生命済生会付属・日生病院でのトライアルを経て、curonを使った、個々人に合わせた患者支援を展開していく予定だ。

冒頭でも触れたが、ヘルステック分野のスタートアップの台頭はめざましい。2018年4月から診療報酬が新設されたオンライン診療では、メドレーの「CLINICS(クリニクス)」やシェアメディカルの「MediLine(メディライン)」などの競合サービスがある。またAIを活用した医療ソリューションは、医療画像の診断支援技術を提供するエルピクセルや、医療画像解析、血液によるがんの早期診断技術を提供するプリファード・ネットワークス、医療、特に介護分野でAIを取り入れるエクサウィザーズなどのほか、スタートアップ以外でもさまざまな企業が参画する激戦区だ。

こうした中、情報医療では医療とAIの両方のプロフェッショナルがそろっている点を強みとして、事業を展開していこうとしている。またAIに関してはスペシャリストによる技術力に加え、curonを核として、大企業や大病院との提携により、精度の高いデータを蓄積できることも特色としている。

「他社のオンライン診療サービスでは、販売したところで終わる企業が多い。我々は医師と患者のやり取りをデータ化し、効果的な治療につなげていく」と情報医療ではコメント。「オンライン診療サービスとAIによる医療サービスを両輪として成長を目指す」と担当者は話す。

今回の調達資金は、機械学習や深層学習のエンジニアを中心に採用を強化するために投資していくとのこと。情報医療では今後、さらに多くのデータを持つ企業とタッグを組み、医療現場に合ったAIを提供していく考えだ。

週末や1週間の“短期ルームシェア”で新しい発見を、住の選択肢広げる「weeeks」が資金調達

週末や1週間の“短期ルームシェア”体験を通じて、普段の暮らしにはない新しい発見を得たり、ちょっとした刺激を取り入れられるサービス「weeeks(ウィークス)」。同サービスを運営するteritoruは5月14日、ANRIKLab Venture Partnersを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。具体的な調達金額は非公開だが、数千万円規模になるという。

調達した資金は組織体制の強化とサービスのさらなる成長に繋げる方針。その一環として6月には就活生100名を限定とした無料企画なども実施しながら、ユーザー拡大を目指していく。

冒頭でも触れたとおり、weeeksは短期間のルームシェア体験ができるサービス。ルームシェアをしたい人を探すサービスや、ルームシェアのできるスペースを探せるサービスは存在するが、weeeksの場合は人とスペースをまるっとコーディネートしているのが特徴だ。

ルームシェアを希望するユーザーには開始時期や期間などをチャットでリクエストする方法と、サイトに掲載している企画に申し込む方法を提供。個別でリクエストをした場合はヒアリングシートの回答からマッチ度が高いユーザーをレコメンドし、ルームメイトをマッチングする。weeeksでは民泊物件の管理会社と提携を結んでいるので、メンバーが決まったら提携先が持つホスト不在型の物件から適切なものを提供するという仕組みだ。

teritoru代表取締役の日置愛氏は「少しの間でも住む場所を変えて他者と暮らしてみると、気分転換になるだけでなく、会社と職場を往復する日常とは違った刺激や新しいつながりを得るきっかけにもなる」のがweeeksの価値だと語る。実際2月下旬にクローズドβ版を公開して以降、20〜30代の社会人を中心に利用が進んでいるという。

weeeks発案の企画は「週末限定のクッキングweeeks」や「1週間短期集中のプログラミング合宿」などがある。同じような趣味や共通の目的を持つユーザとの新たなつながりができるきっかけにもなりそうだ。

短期間ルームシェアで新たな「暮らしの選択肢」を

teritoruの創業は2017年の11月。日置氏がweeeksを立ち上げた背景には、ニューヨークの新聞社で飛び込み営業をしていた時の体験があるそうだ。

「場所を変えるだけでは人はなかなか変わらないと気づいた。場所は変化の入り口であって、そこで誰と出会い、どんなコミュニティに入っていくかこそが重要なのだと。その点ルームシェアは場所を変え、他者と暮らすことで価値観を広げたり、自分自身を変える機会になると考えた」(日置氏)

とはいえ経験もないのに、いきなり長期間知らない人とルームシェアをするのはハードルが高い。weeeksでは誰でも気軽にこのような体験をできるようにするため、リリース前に取った街頭アンケートをもとに期間は1週間に設定。現在は社会人ユーザーが多いこともあり、週末のみのルームシェアにも対応している。

1週間の相場はだいたい2万〜3万円、週末の場合はもっと安くなるので「地方在住者が東京での拠点として使う」なんてケースもあるそう。ちなみに日置氏自身も自分の家を持たず、weeeksを使って住まいを変えながら生活しているのだという。

クローズドβ版を公開してからの約2ヶ月間は、物件の築年数や主要駅からの距離・時間、ルームメイトの人数など各要素の検証に時間を使ってきた。今後はそこで得られた知見をもとに、ユーザー拡大へ向けて機能改善や新たな施策を実行していく段階になる。

6月には就活生100人を限定にした無料企画を実施するほか、コミュニティを盛り上げる“プロウィーカー“のような要素も検討しているそう。日置氏の話では「weeeksはコミュニティビジネスの要素が大きい」とのことで、人や特定のコミュニティを起点にした取り組みにも力を入れていくという。

「やりたいのは『住』の選択肢を増やしていくこと。ゆくゆくは気分によって好きな場所に住める、暮らしを選べるプラットフォームのようなものを作りたい。(weeeksを通じて)まずはユーザーも利用しやすい短期ルームシェアという形から、新しい選択肢を広げていく」(日置氏)

食事の写真からカロリーや栄養素を自動算出、健康管理アプリ「カロミル」が約6000万円を調達

AIを活用した健康管理アプリ「カロミル」を運営するライフログテクノロジー。同社は5月14日、電通サイエンスジャム(DSJ)、CSAJファンドFFGベンチャービジネスパートナーズを引受先とした第三者割当増資を実施したことを明らかにした。

ライフログテクノロジーでは2018年1月にもDG Daiwa Venturesが運営するDG Labファンドから資金調達を実施。これらを合わせた総額の調達額は約6000万円になるという。

調達した資金により組織体制を強化し、AIの精度向上や食事データの取得、アスリートや疾病向けなどの新規事業開発に取り組む方針。また出資先であるDSJとは双方が保有するデータや知見を活用した共同研究を進めるべく、業務提携も始める。

スマホで食事を撮影すれば、カロリーや栄養素が自動で測定

カロミルは日々の食事や運動のログを、ダイエットや健康管理に活用できるヘルスケアアプリ。カロリーはもちろん、たんぱく質や脂質、糖質など細かい栄養素を残せるのが特徴だ。

栄養素の算出方法は登録されているメニューから選ぶ、自分で計算する、栄養士に分析依頼する(月10 回まで無料で依頼可能)、食事の写真から判定するなどいくつかある。その中でもカロミルが強化しているのが、食事の写真から自動的にカロリーや栄養素を算出する機能だ。

この機能は以前TechCrunchでも紹介したとおり、2017年9月からアプリ内に搭載しているもの。自社開発の食事画像解析AIにより、スマホで撮影した写真を「そもそも食事の画像かどうか」「(食事の場合)具体的なメニューは何か」を2段階で解析。該当するメニューのカロリーや栄養素を算出する。現在は約1000品目の食事メニューを識別でき、識別率は82%ほど。コンビニで販売されている商品やファミレスなど飲食店のメニューも含まれる。

ライフログテクノロジー代表取締役の棚橋繁行氏によると、この機能を搭載したことでユーザーの年齢層や幅が広がったそう。「もともとは特に20〜30代の女性によく使ってもらえていたが、20〜50代の男女であまり差がなくなってきた。いぜんより年齢層が上の人にも使ってもらえるようになったほか、疾病患者の方の利用も広がってきている」(棚橋氏)

現在もこの機能のコアとなる画像解析AIの精度向上に注力しているとのこと。今回の資金調達も、体制を強化しさらに研究開発を進めていくことが目的だ。

食事関連データを軸に事業拡大へ

今回ライフログテクノロジーでは資金調達と合わせて、調達先であるDSJとの業務提携を発表している。今後カロミルを通じて蓄積した食事(栄養素)データと、DSJが解析知見を持つ感性や脳波といった生体信号データの関連性を研究することで、食事がメンタルヘルスや労働生産性に与える影響を探っていく予定。これによってヘルスケア領域で、新たな未病対策や疾病予兆への改善助言なども可能になると考えているそうだ。

また将来的には食事関連データとさまざまなパーソナルログを連携し、マーケティング活用やスポーツ領域での事業展開も見据えているという。

「(自社にとって)食事データが1番コアになる部分で、それを活用した新たな事業展開を進めていく。ただ食事データをメインとしつつも、画像解析技術を軸にその他のライフログデータももっと管理しやすい仕組みを目指している。たとえば血圧や血糖、運動の記録なども写真を撮っておきさえすればデータ化できるようになると、ユーザーの利便性もサービスの可能性も広がる。今後は今まで以上にライフログを貯めていく時代になると思うので、まずはデータを残す煩わしさや手間を(画像解析AIなどの)技術を通じてなくしていきたい」(棚橋氏)