ショーン・パーカーのがん研究所、治療の有効性がわかる血液検査法を発見か

ITビリオネアSean Parkerが設立したパーカーがん免疫療法研究所の協力を得た科学者チームは、腫瘍内のPD-1(プログラム細胞死タンパク質-1)経路を標的とする治療が、メラノーマ(悪性黒色腫)患者に有効かどうかを単純な血液検査で判定する方法を発見したと、科学論文誌Natureで発表した。

元FacebookプレジデントのParkerは、自分の名前を冠した研究所を設立し、米国内の様々なトップレベルの研究大学から数百人の一流科学者を集めて最先端免疫治療を使ってがんと戦う連合組織を結成するために、30億ドルの資産の中から2.5億ドルを投入した。

この発見は病気を治癒するものではないが、Parkerの研究所の動向を見守る人たちにとって意義は大きい。Parker Instituteの業績が主要科学雑誌に載るのはこれが初めてであり、研究者と大学が一体となって病気の治療にあたる同研究所の方法の今後が期待される。

ペンシルべニア大学とメモリアル・スローンケタリングがんセンターの研究者が、プロジェクトで初めて共同作業を行った(ただし、発見の説明は微妙に異なっている)。彼らは血液バイオマーカーの値と突然変異荷重(全身腫瘍組織量)を比較することで、がん患者が治療に応答するかどうかを判定できることを発見した。

詳しい仕組みは専門外の人間には少々難しいが、興味があればNature誌の論文を読むことをお薦めする。

なおこうした取り組みは、シリコンバレーなどで数多く行われている人間の苦しみを取り除く試みのひとつにすぎない。Illuminaからスピンアウトしたバイオ技術会社のGrailも、血液検査でがんを検出する長期プロジェクトに取り組んでいる。Alphabetの生命科学子会社、Verilもこの分野でいくつかプロジェクトを立ち上げた。スタートレックを思わせる診断装置のTricorderは、体内のがんが転移する前にいち早く検知することができる。

IT業界で際立った存在であるParkerは、大規模な共同研究に必要な費用と人材を提供している。これは彼のビジョンが具体化するかもしれない最初の希望の光だ。

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23andMeにパーキンソン病など10種類の遺伝子リスク情報の提供がやっと許可された

米食品医薬品局(Food and Drug Administration, FDA)が今日(米国時間4/6)23andMeに、一般消費者に対して有料で行った遺伝子テストの結果として、10種類の疾病(下表)のリスクは報告してもよい、と決定した。その中には、後発性アルツハイマー病とパーキンソン病も含まれる。

2013年11月にFDAは、23andMeが個人のゲノム検査をして、その結果としての健康情報を提供する行為の、一時的な停止を命じた。その後2015年10月にFDAは同社に、きわめてまれな遺伝病の遺伝子を子に伝えるかもしれない検体に関しては、彼らの健康および担体(保因者)状態を提供してもよい、とした。この決定のきっかけとなったのは、それより少し前に23andMeが、Bloom Syndromeと呼ばれる遺伝性疾病の検査に成功したことだ。この非常にまれな劣性遺伝子疾患は、低い身長とがんの素因のあることが、その特徴である。

今朝の発表でFDAは23andMeに、以下の10の疾病に関する情報を消費者に提供してもよい、とした:

“消費者は特定の遺伝子リスク情報に直接アクセスできるようになる”、とFDAのDevices and Radiological Health担当ディレクターJeffrey Shurenが声明文で述べている。“しかし遺伝子リスクは大きなパズルのピースの一つにすぎない、と理解することが重要である。遺伝子リスクがあるからといって、必ず疾病を発症するとは限らないのである”。

FDAが23andMeにこれまで情報の提供を禁じていたのも、消費者間における上記のようなネガティブな誤解の蔓延を恐れたからだ。しかしながら消費者は、乳がんなど一部の遺伝子病については、自分がその予防策をとるべきか、知りたいだろう。遺伝子健康リスク(genetic health risk, GHR)検査のねらいも、まさにそこにある。ご存知のように女優のAngelina Jolieは、母からBRCA遺伝子を継承していることを知ってから、乳がん予防のために切除手術を行った。

この発表によって23andMeは、医師の処方がなくても消費者に遺伝性疾患の検査結果を渡してもよい、唯一の企業になる。すでに23andMeの顧客であるアメリカの住人は、今月後半以降に報告を受け取ることができる。ほかの国に関しては、規制の問題などがあるだろう。

23andMeのスポークスパーソンによると、これらの報告提供事業は今後長期にわたるが、今月は後発性アルツハイマー病、パーキンソン病、遺伝性血栓性素因、α1-アンチトリプシン欠乏症、そしてゴーシェ病の担体ステータスレポートの提供が開始される。そのほかの疾患は、そのあとになる、という。

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血液検査スタートアップのセラノス、創業者の持ち株を投資家に提供

Theranosが生き残る望みのひとつは、投資家に持ち株を倍増させる提案をすることであり、ファウンダーであるElizabeth Holmesの持ち株も供出する。ただし投資家が訴訟しないことが条件だ。

Theranosは、投資家と消費者による相次ぐ訴訟で窮地にたたされている。昨年Theranosの血液検査製品は、精度に問題があり自身の基準に達していなかったことが発覚したためだ。主要パートナーである薬局チェーン大手のWalgreensは販売を中止し損害賠償訴訟を起こした。

Wall Street Journalによると、2月にTheranosの取締役会は、投資家を鎮静化させるためにファウンダー、Elizabeth Holmesの持ち分を含めて自社株を供出することを承認した。

2015年にTheranosが6億ドルを調達した最後の投資ラウンドの投資家が対象となる模様で、同ラウンドで購入した株の2倍の株を入手することになる。 BlueCross BlueShield Venture Partners、Continental Properties Co.、Esoom(台湾企業)、Jupiter Partners, Palmieri Trust、Dixon Doll、Ray Bingham、およびB.J. Cassinら後期段階の投資家も対象となる可能性がある。Wall Street Journalが報じTheranosも認めた。

「これは従業員、投資家その他の利害関係者と今後の関係を築くための積極的施策だ」とTheranos取締役のDaniel J. WarmenhovenがTechCrunch宛ての声明で語った。「Holmesは他の株主の持ち株が希薄化されることを防ぐために自身の持ち株を提供することを申し出た。私の経験上これは特別に配慮された提案であり、当社の経営状況への理解を示しているだけでなく、Holmesの無私無欲と会社の成功に対する思い入れを反映したものだ」。

Holmesがどれだけの株式を手放すつもりなのかは明らかにされていないが、少なくとも何人かの投資家は受け入れていない。TheranosはNews Corp21st Century Fox Inc.の執行会長であるRupert Murdochと個別の契約を交わしている。Murdochは他の投資家と同じ条件に同意しなかった ― 税金に関わる理由と考えられる。代わりにTheranosはMurdochの株を1ドルで買い戻すことになるだろうと同紙の情報筋は伝えている。

サンフランシスコ拠点のヘッジファンドでTheranosに投資しているPartner Fund Management LPも条件に同意していない。10月にTheranosを訴えた。同社はシリーズCラウンドで1.98億ドルを投資しており、かつてTheranosの評価額が90億ドルになるきっかけとなった。

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BenevolentBioの人工知能はALSのもっと良い治療法を見つけるかもしれない、新薬開発よりもデータの発掘で

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あの、バケツ一杯の氷水を頭から浴びるキャンペーンで大きく知名度を上げた麻痺性の神経症状、 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)の治療に有効な薬が、すでに存在しているとしたら、どうだろう?

それが、BenevolentBioのCEO Jackie Hunterが直面している疑問だ。Hunterは人工知能企業BenevolentAIの生物医学部門を任され、医学研究の膨大なデータベースに機械学習を適用して、データを高速にスキャンし組織化しようとしている。過去の科学研究を掘り返して新たな発見にたどり着くことなど、ありえないように思えるが、しかし生命科学の分野では新しい研究が30秒に一本の割合で公開されており、そのあまりにもの多さのゆえに、価値ある研究が見過ごされることも少なくない。

Hunterは今日(米国時間12/6)の本誌TechCrunch主催Disrupt Londonのステージで、BenevolentBioのAIがすでに成功している、と語った。BenevolentBioのAIは、ALS治療に関する未知の情報があるかもしれない研究を探しだす。“最終的に5種類の化合物をテスト対象として選定した”、とHunterは説明した。BenevolentBioはその5種類の化合物を、ALSの患者の細胞からクローンした細胞に対してテストした。

“ある化合物は、だめだった。二つは効果があり、それらはALS治療の基準としては最高の水準だった。そして他の二つはさらに良好で、これまでの研究の中では最良だった。5つの化合物のうち4つは、これまでの研究者たちがまったく見ようとしなかった化合物だった”、とHunterは語る。

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BenevolentBioがテストした薬はすでに開発が始まっているので、実際に患者に対して使えるようになるのは一般の新薬より相当早いと期待される。

“私も前は製薬業界にいたが、そのR&Dのやり方は数十年前からまったく変わっていない。ひとつの新薬の開発に、20億ドルの費用を要している”、とHunterは述べる。薬の開発者たちがAIを利用すると、既存の薬の別の用途を見つけることができるので、新薬に膨大な投資をするよりも効率的である。またAIは、研究者たちにより早く、もっとも有望な発見の方向性を示すことができる。

しかしながらAIは、それ自身で新しい科学的突破口に到達することはできない。Hunterは、そう主張する。データをチェックするためには依然として、経験豊富な人間科学者が必要である。“しかしAIは科学者たちの〔発想の方向性の〕健康診断ができる。AIは科学者を補助しその能力を拡張するが、科学者をリプレースすることはない”、と彼女は語る。

BenevolentBioはそのAIをさらに拡張して、親会社を介して他の分野にも応用したい、と期待している。Hunterによると同社の技術は、コンピューティングのパワーとデータ分析と、インサイトと、そして需要の理想的な組み合わせであり、“イノベーションのパーフェクトな波を作り出して、本当にこの業界を変えてしまう、と私は思っている”。

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人工肉スタートアップのMemphis Meatsは感謝祭のターキーも人工肉にしたいと願う

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Memphis Meatsは、今年の初めに人工肉のミートボールでスタートアップ世界の話題になった。今度同社は、ほかの肉にも挑戦しようとしている—たとえばターキー(turkey, 七面鳥)だ。

同社はこのほどIndiegogoのクラウドファンディングキャンペーンを立ち上げ、未来の肉の姿とその味を一般大衆に教育することによって、毎年の感謝祭に屠殺される5000万羽近くの鳥たちの一部を救おうとしている。

私はIndiegogoのキャンペーンを記事にすることに、それほど熱心な方ではないが、同社の場合は、目的はターキーなどの肉を作るための資金を得ることではなく、啓蒙のためだ、という。資金に関してはMemphis Meatsはすでに、採取した動物の細胞をペトリ皿の中で培養するために、300万ドルのシード資金を獲得している。

動物をめぐる産業複合体は、この惑星と人類にとって非常に有害だ、とMemphis Meatsは言う。一個のハンバーガーを作るために660ガロンの水を消費し、そしてCDC(疫病管理センター)によれば、生肉は食品が媒介する疾病を起こす細菌の、主要な発生源である。そこで同社は、動物の細胞を培養して生物学的に同一の肉を作り、本物の肉だけど残酷さとは無縁で地球環境にフレンドリーな、食肉を提供しようとしている。

Memphis Meatsによれば、その“クリーンミート”が、スーパーの棚に並ぶようになるのは、5年後だそうだ。

Memphis Meatsには、その5年間にやることが、たくさんある。菜食主義者の友人たちに、人工肉を食べたいか聞いてみると、分からない、とか、気持ち悪いという人が多い。でもMemphis Meatsのような、培養によって作った動物製品は、菜食ではなく肉をふつうに食べたいけど、健康や環境上の理由から今は食べていない、という人たちには、理想的かもしれない。

しかしながら同社は、多くの消費者がその気になるためにはかなりの準備期間が必要だ、と認めている。同社は啓蒙活動の一環として、支援者からの寄付を募っており、その一口は3ドルから1000ドルまでだ。3ドル寄付すると–それはふつうのファストフードのバーガーの値段だが–、その人はMemphis Meatsから“チャンピオン”(champion, 主義主張の擁護者)の称号をもらえる。金額に応じて、ロゴ入りのステッカーや水筒、フーディー (hoodie, フード付きトレーナー)なども、もらう。1000ドルの人は、すべての賞品をもらって、Webサイトに名前が載る。

現在までに集まった寄付金は、700名近くの支援者から計52000ドル近い。これもまた、同社がベイエリアのラボで作っているターキーなどの人工肉の、将来的な市場化を支援する。

感謝祭に多くの人たちが人工肉のターキーを買うようになるのは、まだ遠い未来の話だと思うが、でも、もしかして、それほど遠くないかもしれない。

同社のスポークスパーソンはこう語る: “最初は挽肉状の人工肉を開発するが、成型肉も計画している。チキンブレストや、ステーキ、そしてまるまる一羽のターキー(“七面鳥の丸焼き”用)も、需要があれば作るだろう”。

同社からもらったビデオでは、グリルの上でビーフのようなものを焼いている。これの次がターキーか? では、あなたが生まれて初めて見る、Memphis Meats製のビーフ・ ファヒータ(fajita)をご覧いただこう:

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海の魚を全部3Dスキャンする、教授のあくなき探求

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もし、mottled sculpin(カジカの一種)がどんな魚かを知りたければ、ネットでいくらでも写真を見ることができる。しかし、それで物見高い干潟マニアを満足させられたとしても、目利きの魚類学者の要求はそれに留まらない。ワシントン大学の教授が、海の魚 ― あらゆる魚の〈種〉だが ― をフル3Dスキャンしているのはそれが理由だ。

34万ドルのCTスキャナーと数人の実験助手と山ほどの魚を使って、Adam Summersは2万5000種以上の魚の完全カタログを作ろうとしている。彼は昨日今日のマニアではない。教授は1990年代から魚をスキャンしていて、この種のデータの持つ科学的価値も知っている。

ミリ単位精度のデジタルモデルがあることによって、異なる種、あるいは同じ種のいくつかの標本の正確な比較が可能になる ― 骨格、尾、脊椎、あるいは魚全身を3Dプリントして実世界の標本と比較することもできる。これは極めて価値あるツールであり、Summersが彼の研究室で作ったデータを無料で提供することにこだわる理由もそこにある。

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「このスキャナーのおかげで、正しく理解すればこのシステムが驚くべき能力を持つことを確信した」とSummersが大学のニュースリリースで語った。「このスキャンデータは、3Dデータとその利用方法に対するわれわれの考え方を変えるだろう」。

研究室はワシントン州の美しいピュージェットサウンド地区のサンファン島にあり、今Summersの水のパラダイスには、自分の魚をスキャンしてほしい人々が次々と訪れてくる。もちろん大物を釣った人だけではなく、生物学者や美術館の学芸員が膨大なコレクションをデジタル化するためにやってくる。

Summnerは、全部をスキャンするのに2~3年かかると考えているが、それで彼の仕事が終るわけではない。次の計画は、残る5万種ほどの地球上の脊椎動物をスキャンすることだ ― いくつもの意味でずっと大変な作業だ。

現在までに500種以上の魚がスキャンされており、 ここOpen Science Frameworkで見ることができる。全ファイがフル解像度で自由にダウンロードできる。

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MITの新しいコンパイラーが、アナログコンピューティングと生物学シミュレーションを進化させる

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人生は、何とかなる。そして多くの場合、その方法はアナログだ。インパルスのような脳の活動電位でさえ、コンピューターの1と0より複雑だ ― そして細胞や系のデジタルシミュレーションは容易ではない。アナログ電子回路はこうした難問に太刀打ちするための強力なツールだ ― そしてMITの新しいコンパイラーは、プログラミングを大幅に簡易化する。

アナログ回路はバイナリー信号を通さないが、事実上無限種類の値を持つ入力を扱うことができる。そして、そのような数多くの独立した値 ― 化学濃度、pH、温度等々 ― を伴う細胞のシミュレーションには、特に適している。

そうした複雑な関係を、科学者は微分方程式でモデル化することが多い。もちろん解はデジタル的に求められる ― しかしデジタルコンピューターは同じ作業を連続して何十億回も繰り返さなくてはならない。データを薄くスライスすればするほど精度は高くなる。

しかしアナログ回路では、方程式の各値に相当する電圧が正しく設定され、それぞれがこの電流やあの電流に影響を与え、電気力学の法則の要求に応じることによって自ら答を出す。完全かつ連続的な解が、すばやく簡単に求められる ― しかしそうした回路をどう構成すべきかを知ることは、簡単とはほど遠い。実際それは、複雑さが増すにつれ、並外れて困難になっていく。

MIT CSAILの大学院生、Sara Achourは彼女の指導教授であるMartin Rinardおよびダートマス大学のRahul Sarpeshkarと共に、Acroと呼ばれるコンパイラーを作った。これは実質的に、人間が読めるデジタルコードをアナログコンピューター回路の構成に変換するものだ。

Example of a diagram describing an analog circuit.

アナログ回路を記載した図面の例。

いくつかのトランジスタを使うことで、細胞形態アナログ回路は複雑な微分方程式 ― ノイズの影響を含む ― を解くことができ、そのためには何百万ものデジタルトランジスターと、何百万ものデジタルクロックサイクルが必要だ」とMITのニュースリリースでSarpenshakarは言った。

コンパイラーは関連する数式を見て、正しい結果を生む回路を生成する ― 数式1つにつき14~40秒かかるが、これは人間が解を求めるのに比べて大幅な改善だ。そして、改善されたのは時間だけではない。アナログ回路の構成はどんなに大きなアナログ回路にもスケーリングが可能で、単一の細胞だけでなく、器官や組織全体にも使える。

バイオインフォマティクス(生物情報学)の仕事をしているのでない限り、アナログコンピュータを直接見ることはないだろうが、生物プロセスのシミュレーションの進歩は、それ自身に加えて医療分野の研究を進める一手段でもある。

彼らの書いた新しいコンパイラーの論文はAssociation for Computing Machineryカンファレンスで先週発表された。

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シリコンバレーの偉大なメンター、ビル・キャンベルが逝去。愛情あふれる追悼文が寄せられる

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フットボールの古い諺がある。「重要なのは注ぎ込んだ時間ではなく、その時間に何を注ぎ込んだかだ」。

ビル・キャンベル ― 誰からも畏敬された元コロンビア大学アメリカンフットボール
部コーチは、1990年代にIntuitのCEOを4年間務め、今年1月まで会長だった。彼は数多くの起業家たちに魔法を注ぎ込んだに違いない。

その大勢が今日悲しみにくれている。ビル・キャンベルは今日(米国時間4/18)、75歳で逝去した。家族によると死因はがんだった。

今日、起業家・投資家のBen Horowitzは、多くのファウンダーがキャンベルとの関係を表現しようとしたことを受け止めたかのような文章を書いた。「人生で苦闘に直面したときには必ず、ビルに電話をかけた。かけたのは彼が何か不可能な質問の答えを持っているからではない。かけたのは彼が私の感じていることを100%理解してくれるからだった。彼は私を理解してくれた。ビルのようにそれができる人を他に誰も知らない。どんな時でも私を理解してくれる人物。100回は電話をかけたに違いない。彼なら私の気持ちを感じてくれるとわかっていたから」

気持ちは広く伝わった。ペンシルバニア州生まれのキャンベルは、長年にわたり地元の学区に 2000万ドル近くを寄付し、後にカリフォルニア州アサートンのSacred Heart Schoolで中学2年生を指導した。彼はシリコンバレーの優れた人々の「コーチ」として知られていた。

その中には、Alphabet会長のEric Schmidt(キャンベルをGoogleの取締役に何年も誘い続けたが失敗した)やAppleの共同ファウンダー、スティーブ・ジョブズのように人より幸運な人たちもいる。

2014年のFortune誌のインタビューによると、ジョブズとキャンベルはパロアルトの近所同志で、ジョブズはしばしばキャンベル家を訪ね、ドアをノックしたり、バックヤードのプールサイドに座ったりしていた。1997年のApple復帰後すぐ、ジョブズが「ある日やってきて、プールサイドのベンチにふたりで腰かけた」とキャンベルはFortuneに語った。「そして彼はこう言った、『Appleの取締役になってくれないか』と」。

キャンベルはこう付け加えた。「あんな切迫感は、コロンビア大学の理事を依頼された時以来だった。私はためらうことなく言った。『もちろん』」

Forutuneの2008年の記事でキャンベルはジョブズについて、「彼には非常に人間的なところがある」と言った。

Appleは今日本誌に送った声明の中で、キャンベルについてこう書いている。「Appleの多くの人々にとってコーチであり、メンターであり、何十年にもわたって幹部としてわれわれ家族の一員であり、アドバイザーであり、最終的には取締役だった。彼は他の人が信じない時にAppleを信じた、良い時にも悪い時にも。彼がわが社に与えた貢献は言い尽せない。彼の英知、友情、ユーモア、そして人生への愛を忘れることはできない」

Eric Schmidtはキャンベルへの賛辞の中でこう書いている。「ビル・キャンベル。われわれの非常に親しい友人が今日午前に亡くなった。巨大なハートの持ち主で、会う人全員を抱きしめ、メンターを越えた存在だった。われわれがGoogleを作るのを数え切れない方法で手伝い、成功をもたらした。われわれは彼を外部コーチとしてスタートしたが、すぐに彼は経営のエキスパートになった。スタッフミーティングに参加し、幹部と会い、会社のリーダーたちと長い時間を過ごした。取締役会設立を手伝い、会社のカルチャー構築にも手を貸してくれた。わが社のファウンダーたちとは非常に密接にあらゆる方法で共に仕事をした」

「Google、そして今のAlphabetの成功に対する彼の貢献は計りしれない。彼の遺産は全員の顔に彼がつくった笑願と、彼がコーチしたシリコンバレーの偉大なリーダーたちだ。ビルは真に才能ある人物であり、世界は今日、偉大なリーダーを失った。」

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この生きている「昆虫とコンピュータのハイブリッド」は、速度や歩幅を調節可能

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「自然界の既製ロボットプラットフォーム」。シンガポールのナンヤン工科大学の研究者らは最新の論文で、昆虫をそう説明する ― それは、人間が到達した「神の領域」を表わす理想的な省略表現だ。たとえそれに興味をひかれても、嫌悪感をもようしても。もちろんこれは、創造を支配する人間の力を誇示するだけではなく、昆虫学、神経科学から人工装具工学にいたる様々な分野にとって極めて重要な研究だ。

Journal of the Royal Society Interfaceで3月30日に発表されたその論文には、昆虫の神経系を制御するシステムについて記載されており、それはロボゴキブリの類のはるか上を行く、より学術的な取り組みだ。

「筆者らの知る限り、この論文は生きている昆虫の運動を制御して、歩き方、歩幅、歩く速さをユーザーが調節できる最初の実践報告である」と要約に書かれている。

これまでにも、ゴキブリやクモに運動を促したり、進行方向を操作する実験は行われていたが、高いレベルの制御方法を使用して、前方に歩く抑え難い衝動を誘発するものであり、足が自発的に動くように誘導する「博士の異常な愛常」スタイルではなかった。この最新研究は、ある程度限定された形ながら、後者の演示に成功した。

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The remote-controlled beetle takes a (carefully measured) step.

昆虫は、Mecynorhina torquataと呼ばれるハナムグリの一種で、その巨大な胴体はリード線の接続に有利だ(ショウジョウバエで試してみるといい)。チームはまず様々なタイプの動きに関わる筋肉と張力パターンを詳しく観察した。方法は、モーションキャプチャー技術および古き良き解剖による。次に、それらの筋肉に配線し、近くの(虫の上ではない)マイクロコンピュータで発生したパルス幅変調信号で刺激を与える。

この実験では前方の2肢のみに配線しているため、移動の種類は制限されているが、研究者らは、6脚類が実際に2足歩行する場合もあることを指摘している。

足の筋肉をプリセットされたリズムで刺激するプロセスは大きな成功を収め、実験結果は、昆虫の行動および解剖学分野の既知知識を発展させると共に、この技法が「昆虫・コンピュータのハイブリッドロボット」を創造する可能性を示した。

このようなキメラは、人工的に作られた同様のロボットと比べて、数々の利点を持ち、研究者らは楽しそうに列挙している ― 3Dプリントではなく昆虫の足を利用した研究や、動物自身からエネルギーの供給を受けるインプラントのハイブリッド化の研究のために予算申請書を書くペンの音が聞こえてきそうだ。

たしかに薄気味悪い。しかし、同時に非常に興味深く、もう少しの努力で十分実用になる。ゴキブリに指向性マイクロフォンと追跡ユニットを装着して災害地を走り回れるようにして、閉じ込められた人間の声に向かうよう強制する研究が既に行われている。トンボに100ドルのサイバーバックパックを付けて神経系を制御できるなら、1万ドルのドローンを配備する必要はない。

そのような可能性は十分な予算を持つDARPAのような機関にとって実に魅力的であり、彼らがこの種の方法を探究するための予算を申請していることはほぼ間違いない。

ちなみに、Feng Cao、Chao Zhang、Hao Yu Choo、Hirotaka Satoらによるこの論文は、技術的知識を持たない人にも非常にわかりやすく書かれている ― 是非読んでみて、驚きを味わってほしい。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Bento Labは、個人で遺伝子分析ができるDIYキット

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自分が「アスリート遺伝子」を持っているか、あるいは、親戚だと名乗る変人と本当に血が繋がっているかを知りたいだろうか。市民科学者諸君、試験管を準備されたし! Bento LabのDIY DNA分析キットを使えば、自宅が実験室になる。

通常は、23andMe等にキットを注文し、試験管に唾を吐いて郵送すると6~8週間で結果が返ってくる。しかし、ロンドン拠点のBento Labは、どこでもテストができる世界初のDIY DNAラボを謳っている。バックパックに入る大きさで、唾液、毛髪、動物細胞組織、さらにはビールやワインからでもDNAを分析できる。

やり方はこうだ:

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試料物質を採取したら、DNA抽出装置の中心にある遠心分離機に入れる。次に右側にあるPCR装置が遺伝子をコピーして、ゲルユニットでDNAを視覚化する。

通常この種の作業に必要な装置は非常に高価で、DNAの専門家が様々な機械を操作する必要があるが、Bento Labの価格はおよそパソコン1台分の739ドルだ ― 外部に委託すれば何十万ドルも費用がかかる、様々な製品のテストにも手が届くようになる。

現在Bento LabsはKickstarterで、22日を残して目標額の2倍以上を集めている。チームは、英国王立工学アカデミー、Makerversity、Imperial College SynbiCITE、およびUCL Advancesの支援を受けている。

セットには、Bento Labキットの他にピペット、試薬、採取用綿棒、操作説明書が付属しており、ネット上のコミュニティーもある。Bento labは、市民科学者たちをつないで、研究や発見を共有できるアプリを開発していると話した。

Bento Labで行う実験がいくつか提案されている。

  • ハンバーガーに馬肉が含まれているかどうかをテストする
  • 遺伝子操作された生命体(GMO)を識別する
  • 自分の味蕾が苦味を感じるかどうかをPTC遺伝子ACTN3の変異から調べる
  • 耐久力を持って生まれてきたかどうかを知るために、「アスリート」遺伝子ACTN3の変異を調べる
  • 血液型遺伝子分類のしくみを調べる
  • 有毒キノコと無毒キノコを識別する
  • 自家製ビールの遺伝子コードを識別する

この個人用ラボは既に世界中でベータテストが行われている。下のビデオでこのクールなDIY遺伝子ラボについてもっと知ることができる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

バイデン副大統領、国のがん撲滅イニシャティブの革新を求めてシリコンバレーを訪問

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バイデン副大統領は今日(米国時間2/27)午前、サンフランシスコ大学のジェネテックホールで、がんのない未来への取り組みについてIT業界の人々と語る円卓会議に参加した。

バイデン氏は昨年瞬46歳の息子をがんでなくしており、オバマ大統領は、バイデン副大統領が予算10億ドルの国家がん撲滅挑戦プロジェクトの責任者になることを、1月に行われた最後の大統領一般教書演説で発表した。

「#CancerMoonshot に世界中から寄せられたすばらしい反応に驚いている」とバイデン氏は今日サンフランシスコ大学に集まった報道陣と医療専門家に語った。

副大統領は発表以来、米国の様々な都市を巡回してこの取り組みについて議論してきた が― 昨日はユタ州のハンツマンがん研究所を訪れた ― 今回のシリコンバレー訪問は、この病気を長期的に根絶させようとする彼の取り組みにとって極めて重要だ。

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サンフランシスコ湾岸地域は様々なアプローチを促進する革新と文化に満ちあふれている。シリコンバレーのVC会社の中には、既にこの病気に取り組むスタートアップに出資し支援したところがいくつかかある。Atomwise Ixchel、およびNotable LabはいずれもY Combinator出身で、治療の可能性に向けて着実に進歩している。CRISPRは、バークレーで発見された比較的新しいテクノロジーで、遺伝子の一部を切り出して他の遺伝子に移す遺伝的に発病傾向のある人を救う可能性がある。

「ITは著しく進歩を促進している」とバイデンは語る。「3Dプリンターががん治療に役立つ。そんなことを想像してみてほしい」

副大統領は、遺伝子治療、エンジニアリング、”Precision Medicine”[個別化医療]、ビッグデータ研究、その他のがんと戦う興味深い試みについて講演で強調した。

そう遠くない昔、多くの人々が免役学をブードゥー教のように見ていた」とバイデンは言った。「今われわれは変曲点にいる」と彼は言い、現在の治療方法を「野蛮だ」と評した。

副大統領によると、助言する人の方が自分よりずっと知識が深いのは職歴上初めてのことだそうだ。「力になってくれそうな人々と接触していくつもりだ」と彼は言った。

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新型バイオセンサーは、皮膚の下から体液を採取して喉の渇きを検出する

ご存じの通り、植物(および人間)は電解質を必要としている。しかし、これまで私たちは、体が少し不調を感じた時、自分の感性を信じてペットボトル飲料を買いにいかねばならなかった。しかし、この新しいセンサーは、微小な針を使って貴重な体液を少しばかり盗み取り、あなたが補給を必要としているかどうかを見極めてくれる。

Sandia National Laboratoriesの研究者、Ronen Polskyのチームが作ったそのシステムは、腕時計に収まるほど小さく、皮膚の表面に置かれる。そして間質液 ― 細胞の間にある液体 ― を採取する。血液ではない。針は体のいかなる神経も活性化させないため痛みはない。装置は患者の電解質レベルを一定に保つ必要のある医師、および、いつ補給すべきかを知りたいアスリートの両方を想定して作られた。

わずかな変更によって、同システムは体内のナトリウムおよびカルシウムのレベルを測定することもできる。将来は、センサーによるフィードバックに基づいて、利用者が必要に応じて適切なミネラルと電解質の投与を受けることも可能になるかもしれない。非侵襲性かつ無痛で、血液自体を採取しないため、現在のバイオセンシング手法よりはるかに効率的だ。

「私たちは装置をウエラブルで非侵襲的にすることによって、リアルタイムに測定値を読み取り、通常なら検査質検査に出すようデータを、医師が連続して測れるようにしたい」とPolskyは語った。

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骨折の治療を40%早める3Dプリンター製ギプス

それはまるでスタートレックのボーグから飛び出してきたかのよう(=クール)に見えるが、実は骨折を治療するためのギプスだ。

トルコの学生Deniz Karasahinが作ったOsteoidは、3Dプリンティングと超音波技術を利用して骨折治療の苦痛を少なくする。

超音波振動を使って骨折(および他の創傷)を治療するというアイデアは以前からあった。しかし、問題は石膏ギプスの上からでは医師が振動治療を施せないことだった。

下の写真でわかるように、Osteoidはスケルトンデザインのおかげで、超音波発生装置を直接皮膚に装着することが可能だ。

Osteoidは現時点ではまだプロトタイプにすぎない。しかし、将来の製品では個々の患者がカスタム版ギプスを持てるようになる。


このギプスを、低出力超音波パルス(LIPUS)骨刺激装置(上の写真左側)と組み合わせることによって、Karasahin曰く、

1日20分の間このシステムを使用すれば、非癒合骨折の治療期間を最大38%減少し、治癒率を最大80%向上させることができる。

唯一の難点は、友達にサインしてもらえなくなることだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook