【編集部注:Alan DunnはCrunch Network寄稿者。NameCorpのマネージング・ディレクターで、デジタルネーミングの専門家、ブランドコンサルタントでもある。】
短いドメイン名の価値は常に高いものだが、今の企業が短いドメイン名を取ろうとすると、非常に高くつく。非常に。
今、殆ど知られていない市場が現れつつあり、毎月何千万ドルもの金が動いている。過去2年間で中国は最大のドメイン名バイヤーとなり、インターネット始まって以来のドメイン名投資物語が始まっている。
中国の投資家(および他のドメイン採鉱者)は、数字や短いドットコムを恐ろしい速さで買い漁っている。
ICANNポリシーに詳しいGeorge Kirikosは11月14日に、「676の2文字 .com ドメイン名のうち136を中国人登録者が所有しており、20%の壁を越えた(正確には20.1%)」とツイートした。
同じ週にTheDomains.comは、最近Verisignが、直近の3週間に320万件の新たなドットコムドメインが登録され、第2四半期全体よりも多かったと報告したという記事を書いた。
かつてドメイン名所有者が企業からのアプローチを待って持ち続けていた市場は、にわかに流動性の高い市場へと変わりつつある ― 過去10年間パズルに欠けていたピースだ。
伝統的に価値が低いとされる文字からなる3文字ドットコムは、1万~1万5000ドル程度で販売されていた。今は、5万ドルを超える勢いだ。
ドメイン名に対するこの新たな需要は容易には理解できない。
欧米の投資家は未だにこの中国市場に追いつき理解しようとしている段階だ。英語であまり使われない文字 ― q、z、j 等 ― は中国ではプレミアと考えられている。一方母音はプレミアではない。母音や v を含むドメイン名の価値は低い。
DNJournalを発行するRon Jacksonは、Give.com、Amber.com、Classic.com等の販売について定期的に報告している。しかし、現在の報告は殆どが短いドメイン名だ。実際、今年の販売トップ10(いずれも50万ドル以上)のうち9件が3文字以下だ。
買い手との接触方法さえも変わった。殆どの取引は中国でQQ ― 中国最大のインスタントメッセージングシステムだが北米では殆ど知られていない ― を通じて成立している。eNamingのTracy Fogartyがこう説明している:「殆どの提示はQQを通じて送られる。メールを使う人はおそらく10人に1人で、電話はもっと少ない」。
この爆発は多くの大金持を生んだが、それは一般に想像される人々ではない。多くの業界古参が乗り遅れた ― 何が中国人にとって魅力かを分析する方法を理解できなかった。この市場の長期的価値を疑う者もいるが、多くはこの先に倍賭けしようとしている。ハリウッド物語のあらゆる要素がたった今起きている。
市場動向調査の優れたサイトの一つがChaomi.ccで、販売履歴をグラフで見せている(外為や金等の相場と同様)。香港のドメイン投資家、Franky Tongの説明によると「chao mi」の文字通りの意味は「炒飯」だが、「ドメイン投機」の意味もある。ここからも、欧米投資家がデータ分析で手一杯らしいことがわかる。
過去5年間、ドメイン名登録の驚くべき節目がいくつか達成された。
- 数字5桁の .com がすべて登録された。
- 数字5桁の .net がすべて登録された。
- 数字6桁の .com がすべて登録された。
- 数字7桁の .com のうち、888で始まり888で終るか、ほぼあらゆる繰り返しパターンのものがすべて登録された。
- 中国のプレミア文字を含む4文字 .org がすべて登録された。
数字8桁の .com ドメイン(1億種類ある)でさえ、0または4を含まない人気パターンを探すことは今や困難になりつつある。
一時の流行か、それとも歴史のはじまりか?
中国は米国とは全く異なる文化であり、富に関しては特にそうだ。中国の国民は貯蓄と富を築くことの重要性を習って育ち、われわれの消費者中心社会とは対照的だ。
裕福な人々は投資を好み、中国人投資家は移動可能な富に貪欲だ。Bitcoinの台頭はすぐに中国市場と結び付けられたが、中国規制当局が中国元による預金を禁止したため長くは続かなかった。Bitcoinは北米以外の多くの所有者にとっても(未だに)流動性の問題を抱えている。
しかしドメイン名は違う。まず、ドメイン名の稀少性は完全であり測定可能だ。2文字 .comや3文字 .comや8を含む4桁数字 .com の数は予め決まっている。
事実、何百万もあるように思えるドメイン名も、Bitcoinでは起きたこともないような稀少供給のプレミアムドメイン名へと容易に絞り込める。
ドメイン名に対するこの新しい需要を理解するのは容易でないが、それができた一部の人々はこの一年でほぼ一世代分の富を手に入れた。数十万ドルを稼いだ人々も数多い。
短いドメイン名は今やコモディティーとなった。流行は現れては消えるが、私にはこれが一時の流行とは思えない。今後浮き沈みは起きるのか?もちろん。しかし、われわれは歴史の始まりを目撃しているかもしれない ― 誰も予想していなかった確固たる市場を。
たぶん、あのドメイン名を買っておけばよかったということなのだろう。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)