炭素会計プラットフォームのPersefoniが10.6億円調達

炭素会計と管理のプラットフォームを開発するPersefoniは、国際的な事業展開や製品開発、採用活動を支援するために970万ドル(約10億6000万円)の資金を追加調達した。

このラウンドをリードしたのはRice Investment Groupで、NGP ETPが参加している。NGPは石油・ガス・電力にフォーカスした投資ファンドの、電力、再生可能エネルギー、持続可能性に特化した投資部門で、8月にローンチしてからわずか6カ月後での調達となった。

2020年1月に設立されたばかりのPersefoniは、組織の二酸化炭素排出量を収集し、計算し、管理し、報告するツールを提供している。

Persefoniのソフトウェアはスコープ1から3の排出量(企業の直接操業、電力の購入、およびサプライヤーの排出によって発生する排出量)をリアルタイムで報告することができる。

「世界中の政府、資産運用会社、および組織からのネット・ゼロを宣言したこの年に、私たちはベンチャーおよびソフトウェア投資家のコミュニティがSarbanes Oxley(サーベインス・オクスレー)法の導入以来、最大の規制コンプライアンス・ソフトウェア市場の形成に目覚めたのを目の当たりにしました」と、PersefoniのCEO兼共同創業者のKentaro Kawamori(ケンタロウ・カワモリ)氏は声明で述べている。「私達は炭素および気候に関する開示要件を導入している世界中の金融規制当局の努力を賞賛します。このような規制は、企業が二酸化炭素排出量を算定し、削減するための最も効果的な方法の1つです」。

PersefoniのサービスにはTPGのようなプライベート・エクイティ・ファームが参加しており、NGPのプリンシパルであるGreg Lyons(グレッグ・ライオンズ)氏はが同社の取締役会に就任する。

他の投資家には、Carnrite GroupとSallyport Investmentsが含まれる。

Sallyport Investmentsの創業者かつオーナーのDoug Foshee(ダグ・フォシー)氏は「Sallyportは業界に大きなインパクトを与えるために、成長著しい企業との提携を目指しています」と声明で述べている。

Persefoniの顧問にはSustainability Accounting Standards Boardの創設者であるRobert G. Eccles(ロバート・G・エクルズ)氏が就任し、同社の環境・社会・コーポレート・ガバナンスへの貢献が期待されている。

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タグ:Persefoni資金調達炭素

画像クレジット:Luke Sharrett/Bloomberg / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter

廃棄木材を活用し二酸化炭素を大規模に除去するCarbo Cultureが6.7億円を調達

農業や林業から出る廃棄木材を使った大規模な二酸化炭素除去を構築するための工業工程に取り組んでいるCarbo Culture(カーボ・カルチャー)が、シリコンバレーVCのTrue Venturesがリードするシードラウンドで620万ドル(約6億7500万円)を調達した。本ラウンドは欧州のアーリーステージベンチャーファームCherry Venturesと共同でリードし、スイスの気候投資家Übermorgen Venturesも参加した。調達した資金はチームとプロダクト開発の拡大、そして欧州最大の二酸化炭素除去施設を建設するのに使われる。

太陽からのエネルギーは植物に光合成を促し、CO2を最終的に分解されて大気に再び戻る植物性物質に変える。Carbo Cultureはこの既存のプロセスを模倣していて、ただし早く行われるようにしている。

Carbo Cultureは自社のプロセスを「超急速コンバージョン」と表現する。このプロセスでは木質残留物が極めて高温で機能的なバイオカーボンに変わる。そして二酸化炭素を1000年間は分解されない木炭のようなものに「閉じ込める」。

木からCO2を除去するのと同様、廃棄木材からこのバイオカーボンを生み出す全プロセスは、文字どおり住宅を温めるのに使ったり発電するためにタービンを回したりするのに使うことができる再生可能な熱を生み出す。バイオカーボンの残りはバイオマテリアルや環境工学に使うことができ、他の汚染物質に置き換えたりガス化装置に使ったりし、また温室効果ガスの削減やおそらく土壌を改善するために農業で活用したりもできる。

このように、Carbo Cultureは主要プロダクトとして2つのものを販売する。二酸化炭素除去クレジットとバイオカーボンそのものだ。

CEOで共同創業者のHenrietta Moon(ヘンリエッタ・ムーン)氏は次のように述べた。「何十億トンという二酸化炭素を分離するために我々は時間との戦いを繰り広げています。そして我々は世界最大の削減メカニズムの1つである自然の炭素循環を完全に利用してすらいません。Carbo Cultureではバイオマスで二酸化炭素を分離し、1000年閉じ込めるものに変える画期的なテクノロジーで取り組んでいます」。

ラウンドをリードしたTrue VenturesのパートナーであるToni Schneider(トニ・シュナイダー)氏はこう語った。「ベンチャーキャピタルは持続可能な地球を作り出すという点で大きな役割を果たすべきだと信じています。そしてCarbo Cultureは地球が抱えている最も差し迫っている問題の1つを解決するために正しい要素を多く持っています。二酸化炭素の回収に対する需要は高まっていて、こうした需要に応えるには再考が必要です。ヘンリエッタと彼女のチームは経験、テクノロジー、情熱、そしてこの大きなアイデアを真に影響力のあるものに変える明白なビジョンを持っています」。

Cherry VenturesのパートナーであるSophia Bendz(ソフィア・べンズ)氏は次のように述べた。「Carbo Cultureは特許を取得したテクノロジーを通じて最も効果的なネガティブエミッション技術(二酸化炭素の排出を削減し、また過去に排出され蓄積している分も回収・除去する技術)の1つを作り出しました。同社が事業を拡大し、大量の二酸化炭素を大気から除去するのを心待ちにしています。ヘンリエッタとクリス、そしてチーム全体が創作力、テクノロジー面のノウハウ、スケール展開するのに必要な度胸、そして最も重要なものとして皆に影響を及ぼす大きな環境問題に取り組むという意思を持っています。このすばらしいチームと提携し、CO2を除去するという彼らのミッションをサポートすることにこの上なく心を躍らせています」。

Carbo Cultureの競合相手としてはClimeworks (1億4500万ドル、約158億円を調達)、Carbon Engineering、CarbFix、Charm Industrial、CarboFexなどがいる。

CTOで共同創業者のChristopher Carstens(クリストファー・カーステン)氏は「我々はなんとか生産能力をボリュームで8倍に拡大し、システムをさらに開発し、そして民間研究機関、顧客、大学とともにテストを開始することができました。現在、輸送用コンテナ規模のパイロットプラントをカリフォルニア州のセントラルバレーで動かしています。そこでは1時間あたり200ポンド(約90kg)超のバイオマスを処理できます」と述べた。

共同創業者2人は2013年にNASAのエイムズ研究センターであったシンガラリティ大学の3カ月のプログラムで出会った。

基礎的なテクノロジーはハワイ大学からライセンス提供されてきたが、共同創業者らはカーボンネガティブマーケットプレイスのPuro.earthによって独立して承認されてきたと話す。

Carbo Cultureはこのほど、初となるSouth Poleによる二酸化炭素除去クレジットの大規模(プレ)購入を発表した。

ムーン氏は「当社の二酸化炭素除去にかかるコストは現在、1トンあたり600ドル(約6万5000円)を上回っていて、2022年末までに400ドル(約4万3000円)に下げ、2024年までに200ドル(約2万1000円)を達成することを目指しています。当社は今後18カ月で大規模な施設を建設し、それは欧州最大の二酸化炭素除去施設の1つとなります」と説明した。

Carbo Cultureの新たな投資家にはAlbert Wenger(アルベルト・ウェンガー)氏、Gold&Green Foodsの創業者Maija Itkonen(マイヤ・イトコネン)氏、Geltor副社長Alex Patist(アレックス・パティスト)氏、既存投資家にはDavid Helgason(デビッド・ヘルガソン)氏、Moaffak Ahmed(モアファック・アーメド)氏、Lifeline Ventures、Paul Bragiel(ポール・ブラギエル)氏とDan Bragiel(ダン・ブラジエル)氏がいる。

科学者の大半は、二酸化炭素排出を抑制しながら大気から二酸化炭素を除去し、グローバルの気温上昇を摂氏2度以下に抑えて壊滅的な気候変動を避けるために2050年までにネットゼロエミッションを達成する必要があると信じている。

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タグ:Carbo Culture資金調達木材二酸化炭素温室効果ガス

画像クレジット:Carbo Cultureの共同創業者。写真:Miikka Pirinen Copyright © 2021 Miikka Pirinen / Carbo Culture /

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

ブラウザの拡張機能で商品購入時のカーボンオフセットを提案するEcoCartが約3.3億円調達

EcoCart(エコカート)は、提携するオンラインショップで消費者が商品を購入する際に、排出される二酸化炭素を相殺する方法を無料で提案する(ブラウザの拡張機能を使用して!)会社だ。同社はBase10 Partners(ベーステン・パートナーズ)から300万ドル(約3億2800万円)の資金を調達した。

店舗のウェブサイトを運営する企業は、標準的なアフィリエイトのマーケティングモデルに基づいてEcoCartに手数料を支払い、同社はその収益の一部を消費者の二酸化炭素排出量のオフセットのために使う。

EcoCartと直接パートナーシップを結んでいる企業や、受動的なアフィリエイトマーケティングサービスを通して同社と提携している企業は、約1万社に上る。共同設立者のPeter Twome(ピーター・トゥオミー)氏とDane Baker(デーン・ベイカー)氏によると、EcoCartは企業向けの炭素計算ツールやオフセットサービスも提供しているという。

サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップは、ClimeCo(クライムコ)やBlueSource(ブルーソース)などのサービスを利用して、企業が融資可能なオフセットプロジェクトを調達・集約している。

サンディエゴ大学で出会った2人の共同創業者は、以前にToyroom(トイルーム)というスタートアップを起ち上げ、不必要な消費を減らすためにアウトドア用品を顧客に貸し出すという事業を行っていた。

「私たち自身がこの問題に直面しています。持続可能性という理念を維持することは、非常に難しいと我々は認識しました」と、ベイカー氏は述べている。

EcoCartは、ブラウザの拡張機能を利用する仕組みによって、Cloverly(クローバーリー)のような他のオフセットサービスとは一線を画している。その一方で、企業向けサービスでは、購入にともなう二酸化炭素をオフセットするオプションがチェックアウトフローに直接組み込まれる機能などを提供している。

EcoCartは、2020年6月にB to B(企業間)統合を開始し、現在では500社のベンダーが顧客となっている。これまでに、消費者の約4分の1が購入した商品を会計する際にオフセットすることを選択しており、その結果、約2500万ポンド(約1万1340トン)の二酸化炭素を削減することができたという。

同社を支援する投資家には、PopSugar(ポップシュガー)の共同創業者であるBrian Sugar(ブライアン・シュガー)氏が運営するアーリーステージの企業を対象としたベンチャーファンドのBase10 Partners(ベーステン・パートナーズ)をはじめ、Privy(プリヴィ)の創業者であるBen Jabbawy(ベン・ジャバウィ)氏、Klaviyo(クラビヨ)のグローバルパートナーシップ担当VPであるRich Gardner(リッチ・ガードナー)氏、Chubbie(チャビー)の共同創業者であるKyle Hency(カイル・ヘンシー)氏、Blue Bottle Coffee(ブルーボトルコーヒー)会長であるBryan Meehan(ブライアン・ミーハン)氏、BarkBox(バークボックス)の共同創業者であるCarly Strife(カーリー・ストライフ)氏などのエンジェル投資家が含まれる。

オンラインショッピングというと環境に悪いイメージがあるが、2020年Nature(ネイチャー)誌に掲載されたある研究によると、実際には実店舗での買い物より環境に優しくなる場合もあるという。

消費者によるオフセットは、善行ではあるものの、企業が実際に温室効果ガスの排出を抑制し、事業を脱炭素化することに比べると、同等の効果を得ることはできない。実際のところ、消費者のカーボンフットプリントや、地球汚染に対する消費者の個人的な責任という概念は、石油・ガス会社や消費財メーカーに頼まれて、広告会社の幹部が商品を売り込むために考え出したものだ。

しかし、何もしないよりは良いし、環境のために必要なプロジェクトの資金調達に役立つことは確かだ。

EcoCartは、数カ月かけてオンライン注文のカーボンフットプリントを計算する独自のアルゴリズムを開発したという。電子商取引用プラグインとブラウザ拡張機能のいずれも、商品への材料投入量、配送距離、パッケージの重量など、各注文の特徴を利用して、その注文から発生する二酸化炭素排出量を推定しているという。

「EcoCartは、ブランドが顧客と対話しながら、環境への影響を大規模に管理・対処する方法を再構築するものであると、我々は確信しています」と、Base10 PartnersのプリンシパルであるChris Zeoli(クリス・ゼオリ)氏は述べている。「EcoCartは、何十年にもわたって続いてきた有害な気候変動を元に戻すために役立つソリューションです。Base10は、EcoCartの創設者たちが、カーボンニュートラルなショッピングを、小売、マイクロモビリティ、フードデリバリーなどの業界で新しいチェックアウトの基準にしていくための活動に、パートナーとして協力できることを誇りに思います」。¥

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

気候変動重視の個人投資家向け投資アプリを発表したClim 8が7pc Venturesから8.8億円調達

エシカル(倫理的な)投資はいまだに混乱した迷路のようなもので、多くの「グリーンウォッシング」が行われている。一方で英国の新しいスタートアップが個人投資家向けの新しいアプリとプラットフォームをローンチすることで、この問題を解決しようとしている。

Clim8 Investhasは7pc Ventures(Facebookに買収されたOculusの初期の支援者)、British Business Bank Future Fund、そしてMoneseのMarcus Exall(マーカス・エグザル)氏、N26のMarcus Mosen(マーカス・モーセン)氏、Lego DigitalとMcKinseyのPaul Willmott(ポール・ウィルモット)氏、RedbrainのDoug Scott(ダグ・スコット)氏、Thought MachineのMatt Wilkins(マット・ウィルキンス)氏、SkyscannerのAndrew Cocker(アンドリュー・コッカー)氏、RedbrainのSteve Thomson(スティーブ・トムソン)氏、NeyberとGoldman SachsのMonica Kalia(モニカ・カリア)氏、AdzunaのDoug Monro(ダグ・モンロ)氏、LimejumpのErik Nygard(エリック・ナイガード)氏ら数多くのテクノロジー起業家やエグゼクティブから800万ドル(約8億8000万円)を調達した。

これにより、消費者は気候変動に取り組む企業やサプライチェーンに投資できるようになる。この分野で競合するスタートアップにはロンドンのTickr(Ada Venturesから300万ドル、約3億3000万円を調達)、パリのHelios、チューリッヒのYovaなどがある。

Clim 8のDuncan Grierson(ダンカン・グリアーソン)CEOは声明で「私たちは持続可能な投資にとって刺激的な時期にビジネスを立ち上げます。2020年は投資家が気候関連の投資機会に目を向けていたため、環境に焦点を当てた投資にとって例外的な年でした。新型コロナウイルス(COVID-19)の危機以降も持続可能な投資は市場を上回る成果を上げており、今後も継続すると考えています」と述べた。

グリアーソン氏は環境業界で20年の経験を持ち、EY Entrepreneur of Year Cleantech賞を受賞している。

Clim8はサステイナブルな投資ファンドの情報開示に関するEUの新しい高いルールを活用する。ユーザーは株式型ISA(2万ポンド、約300万円まで)、または課税対象となる一般投資口座のいずれかを選択できる。

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タグ:Clim8気候変動資金調達

画像クレジット:Clim8 Invest

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(文:Mike Butcher、翻訳:塚本直樹 / Twitter

京大発スタートアップのバイオームがいきものコレクションアプリ「Biome」投稿数100万件突破記念イベント開催

京大発スタートアップのバイオームがいきものコレクションアプリ「Biome」投稿数100万件突破記念イベント開催中

京都大学発スタートアップのバイオームは4月10日、「いきものコレクションアプリ「Biome」(バイオーム。Android版iOS版)の投稿数100万件突破を記念したイベント「バイオーマーランド」の開催を発表した。開催期間は4月10日から5月31日。イベントでは、ユーザーからのアイデアを基にした25個の特別クエストを配信する。

バイオームによると、Biomeを2019年4月に正式リリースしており、2020年12月20日にユーザー投稿による「いきもの発見情報」が累計100万件を突破したという(2021年4月8日現在約117万件)。これを記念して同社では、アプリ内で遊べるクエスト機能を用いた特別イベント「バイオーマーランド」を2021年4月10日から5月31日の期間で開催する。

このクエストとは、テーマに沿って選別された対象のいきものを見つけ、写真を撮影・投稿することで課題の達成を目指すゲーム機能。

同イベントの特徴は、ユーザー自身がクエストの依頼主になれることという。今回の場合は、開催前に1月21日から2月20日までユーザーからクエスト内容を募集しており、100件超の応募があったそうだ。その中から厳選に厳選を重ね、選び抜いた25個のクエストを配信するという。25個のクエストの詳細は、同社特設ページで確認できる。参加方法や遊び方を紹介している「バイオーマーランドの遊び方」も開設されている。

京大発スタートアップのバイオームがいきものコレクションアプリ「Biome」投稿数100万件突破記念イベント開催中

Biomeは、生物の分布状況を把握し、生物多様性保全の基盤情報として活用していくために開発されたスマートフォン向け無料アプリケーション。日本国内のほぼ全種(約9万2800種)の動植物を収録しており、最新の名前判定AIによって撮影画像から生物の名前の判定を行える。アプリ内で投稿されたデータは、保護団体や研究機関などに要望に応じ提供しているそうだ。

また図鑑・地図・SNS・クエストなど充実したサポート機能があり、「いきものを見つける」という体験をより楽しく、より身近なものにするとしている。

バイオームは、世界中の生物・環境をビッグデータ化し「生物多様性市場」を創り出す事を目指し、2017年に京都大学技術イノベーション事業化コース最優秀賞の受賞を経て、2017年5月に設立された京都大学発のスタートアップ企業。SDGs(Sustainable Development Goals。持続可能な開発目標)の社会的ニーズを背景に生物の分布データを取り扱った生物情報プラットフォームを構築し、情報収集ツールとしてBiomeを提供している。

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タグ:京都大学(組織)SDGs(用語)生物多様性(用語)バイオーム(企業・サービス)日本(国・地域)

油井の排出メタン監視技術のAndiumが大手石油企業から巨額の資金を調達

油井やガス井の遠隔フィールドモニタリングに注力しているAndium(アンディウム)は、OGCI Climate Investments(石油・ガス気候変動イニシアチブ気候投資)が主導した投資ラウンドで、少なからぬ資金を調達した。

世界最大手のエネルギー企業で構成されるOGCIは、世界の温室効果ガス排出量を抑制するためのパリ協定で定められた目標を「支援」するために2014年に設立された。これまでに21のプロジェクトに投資している。

同イニシアチブに加盟する石油メジャー各社は、Citadel Securities(シタデル・セキュリティズ)や、Talis Capital(タリス・キャピタル)の元最高投資責任者であるTom Miglis(トム・ミグリス)氏などの既存の投資家とともに、天然ガスのフレア監視、タンクの遠隔測定、物体検知などの技術を開発している企業のAndiumを支援することになった。

同社は、石油・ガス会社に遠隔地からのリアルタイム情報を、他のソリューションに比べてはるかに低いコストで提供できるとしている。

センサーや監視装置と聞いてもあまり刺激的なテクノロジーとは思えないかもしれないが、温室効果ガス排出の流れを食い止めるために、これほど重要な技術サービスはないだろう。再生可能エネルギーに投資するEnergize(エナジャイズ)のパートナーであるMark Tomasovic(マーク・トマソビッチ)氏は、(筆者に向けて)次のようにツイートしている。「採掘中の石油・ガス井から排出されるメタンの監視と削減に取り組んでいる企業がいくつかあります。米国には100万以上の石油・ガス井があり、メタンは二酸化炭素の28倍もの温室効果があることを考えると、これらのスタートアップ企業はTesla(テスラ)よりも地球の気候変動に影響を与えていると言えるでしょう」。

Jon Shieber
Twitter(ツイッター)ユーザーのみなさん、全般的に言って、温室効果ガスの排出削減に最も影響を与えると思われる気候テクノロジー投資の新しいカテゴリーは何でしょうか(風力・太陽光以外で)?

Mark Tomasovic
採掘中の石油・ガス井から排出されるメタンの監視と削減に取り組んでいる企業がいくつかあります。米国には100万以上の石油・ガス井があり、メタンはCO2の28倍もの温室効果があることを考えると、これらのスタートアップ企業はテスラよりも地球の気候変動に影響を与えていると言えるでしょう。

AndiumのCEOであるJory Schwach(ジョリー・シュワッチ)氏は、声明で次のように述べている。「変革のリーダーシップと卓越したオペレーションには、可視性が最も重要であると我々は考えています。当社の遠隔監視技術は、企業が持続可能性の目標を達成するための迅速な道筋を提供するために、特に設計されたものです」。

シュワッチ氏は、太陽電池による全地球測位システムを開発したGlobalRim(グローバルリム)や、オフライン通信サービスのMeshMe(メッシュミー)などの事業を、これまでてがけてきたシリアルアントレプレナーで、当初は物流業界向けの電池式トラッキングシステムの開発を行っていた。

「私は2年間の大半を、長距離トレーラー用のバッテリー駆動のトラッキングソリューションを構築することに費やしました。それによって市場がブローカーに代わって『共有財産』を管理できるようになるからです。ハードウェアの開発には何度も失敗しましたが、本当の価値は、継続的に変わる製品要求の中にあり、それはソフトウェアの変更ではるかに簡単に解決できることに気づきました」と、シュワッチ氏はMedium(ミディアム)出版社のAuthority Magazine(オーソリティ・マガジン)に語っている。「ハードウェアとインフラをクライアントに代わって管理しながら、変化するユースケースに基づいて製品をカスタマイズするためにOSを活用するのであれば、小型デバイス用の新しいタイプのOSを構築することは大きなビジネスになると考えました」。

Andiumの技術は、市販のカメラやマイクに人工知能を重ね合わせて、あらゆる産業資産のリアルタイムなモニタリングを実現する。

「メタンを監視・測定することで生まれる透明性は、排出量の削減に不可欠です」と、OGCI Climate InvestmentsのCEOであるPratima Rangarajan(プラティマ・ランガラジャン)氏は語っている。「Andiumの低コストで革新的なソリューションは、あらゆる規模の事業者がベストプラクティスを採用・実施する障壁を低くするものであり、我々は彼らの成長を支援できることをうれしく思います」。

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オーシャンテックを育てるOcean Solutions Acceleratorが2021年から後期段階のスタートアップも対象に

Sustainable Ocean Alliance(SOA)の地球を愛する人びとが数年前に始めたアクセラレーターは、極めて初期的な段階の企業を対象にしていたが、2021年は事業を拡大して最初の資金調達ラウンドを完了した企業も受け入れる。実験的な試みとある程度実証された事業とのこのような混成は、このアクセラレーターの目下成長中のネットワークのメンバーを多様化するだろう。

アクセラレーターの共同創業者であるCraig Dudenhoeffer(クレイグ・デュデンホッファー)氏は、次のように語る。「2020年はパンデミックと、海の状態がこれまでで最も悪く対策の緊急性が増したため、Ocean Solutions Acceleratorの仕事もこれまでになく増えました。そして私たちにとってこれまで以上に明らかになったのは、オーシャンテック(海洋テクノロジー)の企業には強力なコミュニティのサポートとメンターシップ、そして事業推進のための稀有な機会に恵まれることが必要だということです。私たちはアクセラレータープログラムをこれまでの倍にすることに決め、2つの育成グループで21のイノベーターを支援ます」。

2020年のグループには、魚のロボットやケルプ由来の食品、人工珊瑚礁、海洋栽培による動物飼料など、興味深くて画期的とも思われる企業がいた。しかし2020年までの彼ら育成対象企業全員の共通点は、極めて初期段階であることだった。

プロトタイプを作って大きな問題に取り組み、成果を市場に出すことはスタート地点として重要だが、そこで終わりというスタートアップも多い。例外的にCoral Vitaのような企業はハリケーンやパンデミックなど度重なる災難にもめげず、資金を調達してスケールアップを目指した。

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しかし環境保全という分野はまだ多くのVCたちから過小評価されていて、彼らがこれはリスクを賭ける価値があると認めるまでは、まだ先が長い。問題に着目している投資家がほとんどいないし、自分の目でソリューションの可能性を至近距離で見たり、熱心で理想主義に燃える若き創業者たちと個人的な関係を築いているVCもあまりいない。しかし、私がアラスカで会った人たちは、そうではなかった

2021年初めて2グループとなる育成対象は、6月のクラスがプレシードの初期段階の企業、9月がシードやAラウンドを経て「強力なMVP」がある企業になる。どちらも応募は4月12日までで席は21ある。月曜日だから、忘れないように。

「2021年はアクセラレーター事業を拡大して2グループに分けたため、提供するコンテンツもよく練られていますし、支援策も対象の海洋が抱える重要な問題の解決に向けて、資金や技術確保などの必要性で彼らが今どんな段階にあるかという特性に合わせて調整しています」とデュデンホッファー氏はいう。

対象企業はまだ小規模で、アクセラレーターは比較的単純明快な事業だが、彼らが今いるこの分野は拡大しつつあり、投資家の信用も得つつある。バイデン政権になってから、気候変動や生態系の保護、代替エネルギー源などの施策が見直され予算配分も良くなっているため、関連業界のスタートアップやサービスにとっても状況が変わっている。2年前には無謀と見なされたアイデアが、まともに検討されている。幸運により、世界を救おうとしている起業家たちの帆にも、少しは風が当たるようになるだろう。

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タグ:Sustainable Ocean Allianceアクセラレータープログラム

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hiroshi Iwatani)

全日空や三井物産が支援する再生可能ジェット燃料のLanzaJetにShellも出資

アルコールをジェット燃料に変えるプロセスの商業化を図っているLanzaJet(ランザジェット)には全日空、Suncor Energy、三井物産、British Airwaysなどが戦略投資家として出資している。その投資家リストにエネルギー大手Shell(シェル)も加わった。

LanzaTechからのスピンオフで、最初のクリーンテックブームの最後の生き残り企業の1社である未上場企業LanzaJetは、法人から段階的に出資を受けるアプローチを取っている。これにより、LanzaJetが生産施設を拡大するにつれ、投資家は追加でLanzaJetに出資することができる。

Shellの出資の取引条件、出資後のLanzaJetの評価額は明らかにされなかった。

LanzaJetは、航空業界がネットゼロエミッションを達成するのをサポートできると主張する。パリ協定で設定された温室効果ガス削減目標を世界が達成するのを支えるための長い道のりだ。

「LanzaJetのテクノロジーは、ATJプロセスを使ったSAF(持続可能な航空燃料)生産に向けた新しいエキサイティングな道を切り開いていて、航空部門の差し迫ったSAF需要を解決します。これは、我々が力を合わせた時に業界が機敏に動いてより多くのSAFを供給できることを意味します」とShell Aviationl社長のAnna Mascolo(アンナ・マスコロ)氏は声明で述べた。「需要と供給の両方を推進するための適切な政策メカニズムと規制に関して業界、政府、社会が協業するこで、航空業界はネットゼロエミッションを達成できます。LanzaJetと戦略が一致するのはすばらしいことです」。

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LanzaJetは現在、アルコールをジェット燃料に変える施設をジョージア州ソパートンに建設中だ。完成すると、持続可能な合成ジェット燃料のための初の商業規模プラントとなり、年間1000万ガロンを生産できる。

燃料はエタノールを使って作られる。エタノールはShellが詳しいものであり、供給する用意も整っている。ブラジルの合弁企業Raízenを通じてShellはバイオエタノールを10年以上生産してきた。

LanzaJetは、二酸化炭素の排出を抑制する方法で飛行機を飛ばすために、持続可能燃料を従来の化石ジェット燃料に混ぜることを想定している。生産する燃料の約90%が航空燃料で、残り10%は再生可能ディーゼルだと同社は話した。

LanzaJetのSAFは化石ジェット燃料に最大50%混ぜることがASTM(米試験材料協会)に認められていて、エンジンや航空機、インフラに変更を加える必要のないドロップイン燃料だ。加えて、LanzaJetのSAFは従来の化石ジェット燃料と比べ、ライフサイクルベースで温室効果ガスの排出を70%超削減する。エタノールの汎用性、そして低炭素でゴミを材料とし、食品や餌をソースとしないこと、またエタノールが世界どこでも入手できることと併せ、LanzaJetのテクノロジーはSAFの永続的な解決策となっている。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:LanzaJet投資全日空三井物産Shell二酸化炭素二酸化炭素排出量

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロンドン大学の研究者が生物のDNAを空気サンプル中から見つけ出すeDNA分析技術を発表

ロンドン大学の研究者が生物のDNAを空気サンプル中から見つけ出すeDNA分析技術を発表

Andrew Brookes via Getty Images

ロンドン大学クイーン・メアリー校の研究者が、空気サンプルのなかから、そこにいた生物のDNAを採取する方法についての研究を発表しました。学術誌PeerJに掲載されたこの実証研究は、これまで主として水圏生態系の調査で使われた環境DNA(environmental DNA:eDNA)を生態学や健康科学、医学の分野に応用できる可能性を示すものです。

植物や動物などの生物は、周囲の環境との関わりの中でDNAを排出することがわかっていて、これをeDNAと呼んでいます。eDNAは主に水、または土壌のなかに含まれるものを調べる研究がこれまでに進められて来ました。しかしこの新しい研究では空気サンプルからeDNAを集めて、動物種の同定に利用できるかどうかを検討しました。

研究者は、地下に巣を作り繁殖するハダカデバネズミを飼育していた部屋の空気サンプルから既存の技術でeDNAを採取し、その配列を調べることで、このネズミだけでなく、作業している人のDNAまでも検出できることを確認しました。

この技術はもともと生態学者が生物学的環境を研究するために使われてきたものでしたが、主任研究者のエリザベス・クレア博士によれば、実験で人のDNAを検出できたことで、このサンプリング技術がさらに進歩すれば法医学の分野でも応用できる可能性が示されたとのこと。わかりやすく言えば、犯罪の現場で科学捜査班がeDNAを調べ、現場に居合わせた犯人の痕跡を追跡することもできうるということです。また、細菌・ウイルス学者がこの技術を利用できれば、新型コロナなどのようなウイルスがどのように感染を広げるのかを理解できるかもしれません。

ただ、まだこの技術の実用化には時間がかかりそうです。研究チームはNatureMetrics社など民間企業と協力して実用化に向けた取り組みを行っていますが、混雑していた場所などでは種種雑多なDNAが検出され、必要なものが埋もれてしまう可能性もありえます。とはいえ、まったく証拠が見つからないような状況でこの技術が使えれば、決め手となるDNAが発見され、それが何かを解決するのに役立つことも十分に考えられるでしょう。

(Source:PeerJ、via:ScienceFocusEngadget日本版より転載)

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二酸化炭素ゼロの再エネ100%電力を提供するCleenTechの「アスエネ」が3億円調達、脱炭素社会を目指す

(左から)グロ ラクマツーラ/VPoE、西和田浩平CEO、岩田圭弘COO、江森靖紘Sustainable Leader

(左から)グロ ラクマツーラ/VPoE、西和田浩平CEO、岩田圭弘COO、江森靖紘Sustainable Leader

再生可能エネルギーの電源を特定し、電力の地産地消を進めるCleenTechスターアップのアスエネ(旧リフューチャーズ)が事業展開を加速させている。地元産の再生可能エネルギーから電力をまかなえるサービスが企業に評判がいい。

クリーン電力サービス「アスエネ」を提供するアスエネは4月2日、シリーズAラウンドで第三者割当増資により3億円の資金調達を行ったと発表した。引受先はインキュベイトファンド、環境エネルギー投資、STRIVEとなる。2019年10月に創業したアスエネは、同年12月に行ったシードラウンドの資金調達と合わせ、今回で累計調達額が3億7500万円となった。なお、同社は2020年8月に会社名をアスエネに変更したことに合わせ、サービス名も「アスエネ」に統一している。

アスエネは二酸化炭素排出量ゼロとなる再生可能エネルギー100%の電力を、製造業の工場や企業の店舗・施設などに提供してコスト削減を図るサービスとなる。また、再生可能エネルギーの供給元となる地域・発電所を選べるようにして、地域貢献をするサステナブルな企業としてのブランディングに繋げている。

この他、アスエネは顧客施設の電力使用量や二酸化炭素削減量などを見える化し、パソコンやスマホ経由でブラウザからいつでもデータを確認できるようにしている。電力料金が高い月や時間帯を予測して事前に通知するアラート機能などもある。

サービスの特徴は、再生可能エネルギー100%の電力を地産地消できる仕組みだ。これまでは、発電所から工場に電気が流れる過程で電力が混ざってしまうため、再生可能エネルギーなどの電源特定は難しかった。つまり、企業は地域の再生可能エネルギーを使おうにも、どこの電気がどこで使われるかをトラッキングできていなかったのだ。

アスエネは、パブリックブロックチェーンを活用した非改ざん性の高い独自のトラッキングシステムを用いて、この課題を解決している。同システムにより、発電所側と顧客施設のスマートメーターで測定される電力使用量データを30分毎にマッチングさせることで、どこからどこに電力が流れたかをトラッキングし、電源を特定できるようにした。

二川工業製作所が持つ太陽光発電所

アスエネは2020年5月にサービスを始めてからの10カ月間、導入契約・受注数は毎月平均で約100%の成長率を記録し、20以上の業界で導入されるなど急成長している。サービスの対象エリアは東京電力エリア(関東地方)のみでスタートしたが、現在は東北電力エリアと中部電力エリア、関西電力エリア、中国電力エリア、九州電力エリアが加わり、全国6エリアにサービスを展開。今後は北陸電力エリア、四国電力エリアへの進出も視野に入れている。

直近では、アスエネは兵庫県の建設機械装置・部品メーカー二川工業製作所と連携し、同県にある二川工業製作所の全8工場の電力を、再生可能エネルギー100%の電力でまかなえるようにした。同県の二川工業製作所が持つ太陽光発電所2カ所からの電気をアスエネ独自のトラッキングシステムで電源特定することで、電力の地産地消を実現させている。二川工業製作所は約600万キロワットの電力をアスエネに切り替えたことで、年間の二酸化炭素排出削減量が約2900トンに上るという。

今回の調達資金は、人材採用や組織強化やシステム開発、販促・広告費などに充てる。アスエネの西和田浩平CEOは「次世代に向けた脱炭素社会の創造に挑戦していきます」と意気込みを語った。

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アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表

アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表

Apple

アップルは31日、世界中の製造パートナー110社以上がアップル製品の製造に用いる電力を100%、再生可能エネルギーに振り替えていくことを発表しました。この計画により約8GW(ギガワット)分がクリーンエネルギーにより調達可能になったあかつきには、CO2換算で年間1500万トン分の温室効果ガスの削減に寄与し、道路から毎年340万台以上の自動車を排除するのに匹敵する効果を上げられると謳われています。

昨年7月、アップルは2030年までにサプライチェーンの100%カーボンニュートラル達成を約束すると発表していました。あの発表以降、再生可能エネルギーへの移行を決めたサプライヤー(製造パートナー)の数を著しく増やしたとのことです。

すでにアップル本体の事業所は全世界における企業活動でカーボンニュートラルを達成しており、2030年を期限とする新たな目標は、アップルが販売する全デバイスについて気候変動への影響をネットゼロ(クリーンエネルギーへの移行等により相殺して実質ゼロ)にする取り組みであると述べられています。

そして最近も、アップルはグリーンボンドを通じて調達した資金47億ドルの投資先の内訳を発表し、この資金を世界中の環境プロジェクトの支援に投じることを明らかにしています。グリーンボンドとは、地球温暖化対策や再生可能エネルギーなど環境改善効果のあるプロジェクトに要する資金を調達するために発行する債券のこと。こちらは米国内やデンマーク等に陸上風力発電やソーラープロジェクト拠点を建設し、道路から約2万台の自動車を排除することに匹敵するとされていました。

アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表

Apple

またアップルは、サプライヤー各社が再生可能エネルギー目標を達成するのを支援するため、新たなツールを継続的に開発しているとのことです。欧州ではDSMエンジニアリングマテリアルズの風力購入契約がオランダ国内の電力グリッドに新しいクリーンエネルギーをもたらし、モロッコではSTマイクロエレクトロニクスが国内に設置したソーラーカーポートが地域のエネルギー生成を支援しているなど。

そしてアップルが提唱するSupplier Clean Energy Programも広がりを見せており、中国でも過去半年間に15社が参加したと報告されています。

次々と対策を打ち出すなかで、アップルが次の目標と設定しているのが新たなエネルギー貯蔵プロジェクトです。風力および太陽光発電は世界の多くの場所で利用できるもっとコスト効果の高い電力源ながら「発電の中断」が普及する上で大きな壁となっています。そのため日中に生成された余剰エネルギーを貯蔵しておき、電力が最も必要な時間に活用できるバッテリープロジェクト「California Flats」への取り組みにも言及されています。

アップルが世界中の製造パートナー110社以上が製品製造に利用する電力を100%再生可能エネルギーに変更と発表

Apple

総合的にはアップルは純利益を増加させながら、カーボンフットプリント(商品やサービスの原材料調達から廃棄・リサイクルに至るまでのライフサイクル全体を通じて排出される温室効果ガスの量)を一貫して削減しており、2030年の目標に向けて着々と進んでいるとのこと。もしも世界中の企業が利益の追求と地球温暖化対策を両立できるようになれば、人間と自然との共生が実現する日が近づきそうです。

(Source:AppleEngadget日本版より転載)

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リサイクルのRedwood MaterialsがProterraと提携しEV用バッテリーの原材料を持続可能なかたちで供給

この数年間で、電気自動車(EV)用バッテリー市場の廃棄物削減を目的とした企業が数多く現れた。なかでもその代表格がRedwood Materials(レッドウッド・マテリアルズ)だ。2017年にTesla(テスラ)の共同創設者J.B.Straubel(J・B・ストラウベルストラウベル)氏によって北米最大のリチウムイオンバッテリーのリサイクル企業を目指して創設されて以来、急速な拡大を遂げてきた。このほど同社は、商用EVのメーカーProterra(プロテラ)と手を組み、米国内のバッテリーのサプライチェーンを強化することで協力し合うことになった。

Redwoodと他の自動車メーカーとの提携が公表されたのは、これが初めてだ。

契約に従いProterraは、すべてのバッテリーをネバダ州カーソンシティーにあるRedwoodのリサイクル施設に送ることになる。両社は2021年1月にこの提携に合意したが、協議はそのリサイクル工程を詳しく知りたいとProterraがRedwoodに話を持ちかけた2020年夏から続いていた。その中でProterraは、Redwoodのネバダのリサイクル施設に足を運び、Proterraのバッテリーパックの処理が可能かどうかを確かめた。

「実に順調にいきました」とProterraのCTOであるDustin Grace(ダスティン・グレース)氏はTechCrunchに話した。グレース氏は、Teslaのストラウベル氏のもとで9年間働いていた人物だ。「その作業を見て最高に興奮しました。そこから、供給の本契約に向けて作業を開始したのです」。

提携関係を結んでからProterraは、およそ11.8トンのリサイクル用バッテリー素材をネバダに送り込んでいるが、これは将来の供給ペースを示すものではない。全体としてRedwoodは、1日60トン、年間2万トンのバッテリーを受け入れることができる。

Proterraの車両を動かすバッテリーは、車両の寿命が尽きるまで使えるように設計されているのだが、同社では6年後のバッテリーを交換を約束するリースプログラムも提供している。その時点でバッテリーには80〜90パーセントの充電容量が残されており、まだまだ十分に使える状態にある。この容量を活用するためProterraは、ネバダに送る前に、バッテリーに第二の人生を送らせる計画を立てている。例えばProterraの充電設備のための固定型蓄電システムでの利用だ。

「まずは、Proterraの再製造エンジニアリングチームがバッテリーの評価を行います。第二の人生が送れる状態だと認められると、そのための施設で利用されます。評価が低ければ、リサイクルに回されます」とグレース氏は話す。

耐用寿命を迎えたとき初めて、バッテリーはRedwoodに送られ、廃棄物処理によって価値ある原材料に再生される。商用EVの市場は2025年までに、年間の全売上げの50パーセントに達するとの予測もあり、膨大な数のバッテリーの再処理が必要となる。

このニュースは、Redwoodが電動バイクのメーカーSpecialized(スペシャライズド)とバッテリーのリサイクル契約を交わしたことを発表してから、わずか数週間後に届いた。Redwoodはすでに、Nevada Tesla Gigafactory(ネバダ・テスラ・ギガファクトリー)でパナソニックが行っているバッテリー生産による廃棄物の処理に加え、Amazon(アマゾン)ともEV用バッテリーやその他の廃棄物の処理でも合意している。こうした企業間提携を通じて、Redwoodは、原材料をメーカーに戻す循環型のバッテリー・サプライチェーンを構築しようとしている。同社はまた、一般消費者向け製品の電子部品やバッテリーの処理も受け入れており、利用者はRedwoodのウェブサイトにある住所に郵送できることになっている。

関連記事:リチウムイオン電池のリサイクルに挑戦するRedwood Materialsが古いスマホなどの受け入れ開始

今回の提携は、両社とも大規模で長期的な事業を考えている証拠だ。Redwoodの広報担当者はTechCrunch宛の声明で「EVバッテリーの完全閉ループのリサイクリングのためのソリューション開発」に注力すると話していた。つまり、コバルト、リチウム、銅などの原材料の供給源を、採鉱から、本当の意味での持続可能な、長期的に利用できるリサイクルに移行させるということだ。またストラウベル氏はかつて、Redwoodを世界最大のバッテリー原料メーカーにするという野望を公言していたこもある。

関連記事:アマゾンとパナソニックが注目するバッテリーリサイクルスタートアップRedwood Materials

米国内で調達できる、バッテリーに使用可能なグレードの原材料が増えれば、Proterraは、やがてはバッテリーセル製造の分野に拡大する機会を得るだろう。

「まだ始まったばかりですが、私たちはこの市場の大きくなった未来の姿に目標を定めていきます。それこそが、今このパートナーシップが存在する最大の意義だからです」とグレース氏。「我々の観点では、Proterra向けのセルの国内生産は、今後数年にわたる私たちのロードマップにおいて、実に重要な部分を担います。北米でバッテリーに使えるグレードの原材料を生成するというアイデアは、米国内でバッテリーを生産するというコンセプトの拡大に直接寄与します。そのため、今これを始めることが、近い将来のセルの国内生産計画を間違いなく支えることになると思っています」。

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画像クレジット:PRNewsFoto/Proterra

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:金井哲夫)

カナダ最高裁が炭素税を支持、関連スタートアップの爆発的な増加に期待

カナダ最高裁判所は2021年3月第4週、政府による炭素排出に課税する計画を合法であると裁定した。気候変動に焦点を当てているこの国のスタートアップにとって極めて大きい意味を持つ決定だ。

この裁定は、約2年にわたった法廷闘争に終止符を打ち、温室効果ガス排出削減技術を開発するカナダのスタートアップに対する投資と商業支援の基盤を作るものだと、世界最大級の公益事業・石油化学企業の投資家や起業家は述べている。

「炭素にかかる費用の増加は、カナダを脱炭素のブレークスルー技術のスケールアップや炭素捕捉などのソリューションの展開、産業の電化、電気分解による水素生成などの重要拠点にする可能性があります」と、大手エネルギー企業を代表してスタートアップを支援するファンドに関わる投資家はいう。

この2018年温室効果ガス価格づけ法案は、Justin Trudeau(ジャスティン・トルドー)首相が推進するカナダ気候政策の中心をなすものだ。同法案は全州が従うべき最低基準価格を設定しているが、州はさらに高い価格を設定することもできる。これまでに同国の13州のうち7州が、国の設定した「最低税額」を設定している。

その価格は1炭素トン当たり30カナダドル(約2620円)だが、2030年までに170カナダドル(約1万4830円)まで上がることが決まっている。この数字はカリフォルニア州民が州の炭素価格プランの下で支払う金額より少し高く、Northeastern Regional Greenhouse Gas Initiative(北東地域温室効果ガスイニシアチブ)が設定している炭素価格の約4倍だ。

画像クレジット:Gencho Petkov / Shutterstock

この計画では、カナダ政府が課税した金額のほとんどが、温室効果ガス排出を削減するプロジェクトや技術の支援、および業界の持続可能な取り組みの推進に用いられる。

「気候変動は現実です。これは人間の活動による温室効果ガス排出が原因であり、人類の未来に深刻な脅威をもたらします」と、最高裁判所のRichard Wagner(リチャード・ワグナー)長官が判決文に書いた。

アルバータ州、オンタリオ州、サスカチュワン州の3州では、温室効果ガス政策の合法性に対する異議申し立てがなされており、アルバータ州では訴えが最高裁判所に持ち越され、国の価格政策の施行を停滞させていた。

障壁が取り除かれたことで、世界の起業家や投資家は、この炭素政策がカナダのスタートアップの未来を直ちに後押しすることを期待している。

「これは政府による根本的な支援と多額の資金調達の可能性を意味しています。気候変動緩和に取り組むテック企業の意義を立証、支援するであろう分野別開発に向けた包括的支援を望むなら、政府がその重要性を公言し、金の心配はいらないと言ってくれるほどすばらしいことはありません」とBeZero CarbonのファウンダーであるTommy Ricketts(トミー・リケッツ)氏はいう。「カナダのスタートアップにとってこれ以上の条件はありません」。

カナダ炭素税の恩恵を直接受ける企業の中には、廃熱発電を含む脱炭素プロジェクトを進めているKanin Energyや、現在、Xprize炭素コンテストに参加中で二酸化炭素をエチレンに変換する方法を研究しているCERT、おなじく二酸化炭素変換技術に取り組んでいるSeeO2などがある。

地熱技術のQuaiseとEavorや、カナダの輸送産業の電化に焦点を当てている企業も後押しを受けるだろう。

さらに別の分野では、Panetary Hydrogenのように水素生成と炭素捕獲を組み合わせることで海洋の脱酸に寄与しようとしている会社も好影響を受けるだろう。

「スタンドで売られるガソリンのことを考えてみてください。そこには追加料金がかかることになります」と世界最大級の石油・ガス会社のベンチャー部門で働く投資家が非公式な発言として語った。「クリーンなエネルギーは、間違いなく価格が下がります。そしてこの税金の行き先を考えてみてください。そのほとんどは政府によるクリーンエネルギー技術や気候変動技術会社への資金提供に使われます。つまり、炭素排出削減分野のスタートアップは二重に恩恵を受けるのです」。

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook

WaterfundがOurCrowdと提携、水・農業技術関連の企業に約54.4億円を投資

水関連インフラ資産の取得・管理に特化した投資・取引会社であるWaterfund(ウォーターファンド)は米国時間3月22日、イスラエルを拠点とするクラウドファンディングプラットフォーム「OurCrowd(アワークラウド)」との契約を発表。Waterfundのチームは、水や農業の技術に注力する15社に投資するため、5000万ドル(約54億4000万円)を拠出する予定だ。その第1弾は、多くの資金を集めている垂直農法のスタートアップ企業であるPlenty(プレンティ)に投資される。

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このような直接的な投資に加え、両社は「Aquantos(アクァントス)」という水に特化した新しいプラットフォームを共同で立ち上げ、Blue Bonds(ブルーボンド)と呼ばれる水事業関連の金融商品の発行を目指す。Blue Bondsは、10年以上前から存在する環境改善に特化した事業を対象としたGreen Bonds(グリーンボンド)に匹敵する新しいアイデアで、海に貢献できる事業を対象とするものだ。

「私たちは、国家や地方自治体の債務者から気候変動対策債として認証され、支援されるブルーボンドの発行に取り組んでいます」と、WaterfundのScott Rickards(スコット・リカード)CEOは述べている。「この新しい金融ツールなどにより、中東の水事業は、水不足に対処するための先進的な技術を、根本的に新しい方法で獲得できるようになるでしょう」。

リカード氏は、民間資本の不足が水分野のイノベーションを妨げており、今回の新しいパートナーシップと、それによってもたらされるエクイティおよびデットファイナンスの機会が、この状況を変える助けになるだろうと主張している。

一方、OurCrowdは、現在約15億ドル(約1631億円)の資金をコミットしており、25のファンドで約250社に投資を行っている。同プラットフォームが投資した企業の中には、Lemonade(レモネード)、Jump Bikes(ジャンプ・バイクス)、Beyond Meat(ビヨンド・ミート)などがある。OurCrowdのポートフォリオには、既存の農業テクノロジー関連のスタートアップ企業も多数含まれており、2020年11月には、(ポートフォリオの1つである)Sprout Agritech(スプラウト・アグリテック)と提携し、ニュージーランドで新たな農業関連のアクセラレーターを運営している。

「アブラハム合意は、中東全体における水不足の課題に、新しい水・農業テクノロジーをもたらす大きな機会を呈出します」と、OurCrowdの創業者でCEOのJon Medved(ジョン・メドベジ)氏は語る。「Waterfundとともに、画期的な技術を持つ企業に投資し、その設立を支援することが我々の使命です。Waterfundと協力して、水に関する重要な課題に取り組む民間資本を増やすための働きができることをうれしく思います」。

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画像クレジット:TechCrunch

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

牛に海藻サプリを与えるとメタンガス排出が82%減少、豪連邦科学産業研究機構とカリフォルニア大学が報告

牛に海藻サプリを与えるとメタンガス排出が82%減少、豪連邦科学産業研究機構とカリフォルニア大学が報告

SilvaPinto1985 via Getty Images

牛のゲップ(や、おなら)にはメタンガスが含まれていて、世界中の牛がゲップをすることが地球温暖化の原因のひとつになっているというのは冗談みたいなほんとうの話で、牛が排出するメタンガスを減らす研究もいろいろと行われています。

国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が示した2015年の統計では、メタンは世界の温室効果ガス排出量の16パーセントを占めています。またメタンはCO2の28倍もの温室効果があるとされ、われわれの生活から発生するメタンガスの37%は家畜が排出しています。

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)とカリフォルニア大学デービス校 (UCD)の研究チームは、ここ数年の研究から、牛に与える餌に少量の海藻を混ぜるだけで、牛の健康や牛肉の味を損ねることなく、メタンの排出を大幅に削減できる証拠を発見したと報告しました。

最近の研究では、実験期間を2週間から5か月に拡大しました。そしてその間、21頭の牛にカギケノリと呼ばれるオーストラリアの熱帯海域に生育する海藻をさまざまな量で加えて与えました。その結果、1日4回、約80gの海藻を加えた試料を食べた牛は、通常の餌を与えた牛と同様に体重が増加したにも関わらず、メタンの排出量は82%も減りました。5か月の間、効果は低下することもなく、またミルクや肉の味にも変化はなかっったとのことです。

研究の著者エルミアス・ケブリーブ教授は「牛の飼料に海藻を混ぜると温室効果ガスの削減に効果があり、その効果は時間が経っても衰えないという確かな証拠が得られた」と述べました。

では、カギケノリを世界中の牛に与えればメタンガスの発生量を大きく抑えられる…かといえばまだそんなに簡単な話ではない模様。この海藻を大規模に養殖するのは難しく、また放牧牛にはどうやって与えればよいかなどといった問題を解決していく必要があります。

牛のゲップからメタンを99%減らす海藻がみつかる。エサに混ぜれば温室効果ガス削減に期待

(Source:PLOS ONE、via:UC DavisEngadget日本版より転載)

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ロサンゼルスが気候変動対策でカーボンアカウンティングを導入

ロサンゼルス市は2021年3月初め、同市のカーボンフットプリント(二酸化炭素排出量)を把握する新たなソフトウェアとモニタリングのテクノロジーを展開するために、実行可能性調査の準備をさまざまな部門に課した最新の都市となった。

議員Paul Koretz(ポール・コレッツ)氏が主導したロサンゼルスの市議会イニシアチブは、カリフォルニア州の動きに続くものだ。同州は州内で事業展開する年間売上高が10億ドル(約1089億円)を超える全事業所に温室効果ガスの排出量を公開し、排出を減らすための科学ベースの目標を設定することを義務付けた。

カリフォルニア州はグローバル気候変動の破壊的な影響を実感している唯一の州ではないが、原因に取り組もうという試みにおいては最も積極的だ。その試みが電力供給から化石燃料を排除するかなりの努力なのか、気候変動への影響に対して事業所に責任を持たせる提案なのかはさておき、カリフォルニア州は気候変動の影響を和らげ、温室効果ガスの生産を反転させることができる新たなテクノロジーやサービスの受け入れを促進しているという点でリーダーだ。

ロサンゼルスは今回の取り組みで、そうした勢いに乗りたいと考えており、積極的にカーボンアカウンティング(事業活動における二酸化炭素の排出量や削減量を計算すること)でサポートを得られるテック企業を探している。

これは、CarbonChainPersefoniClimateViewSINAI Technologiesといった企業にとってはいい取り組みだ。これらの企業はカーボンアカウンティングとマネジメントをサポートするプロダクトを展開している。

これは、10億ドル規模の予算を持つ一部の大都市が、市民を脅かす気候変動にどれくらい関与しているかをこれまで以上にコントロールするのに必要なツールにその対価を支払うことを示している。

ロサンゼルスでは市議会が、同市のカーボンフットプリントの正確な把握を提供するテクノロジーの開発または購入の実行可能性を報告するよう、ロサンゼルス衛生局と主任立法分析官にタスクを課した。

「ロサンゼルス市は照明から市庁舎、施設、街灯の維持、道路の舗装、輸送車両の展開、送水、再生処理施設の運営に至るまで数多くのサービスを提供しています。これらはすべて環境負荷をともないます」と議員のコレッツ氏は2021年3月初めの声明で述べている。「もし我々が二酸化炭素削減の目標に真剣に取り組み、ロサンゼルス国際空港やロサンゼルス港の周辺の問題に直面しているコミュニティの暮らしに真の違いをもたらしたいのなら、より良い、そしてより一貫性があり、さらに透明性のある二酸化炭素排出のアカウンティングが必要です」。

ロサンゼルスは気候変動と気候に優しい政策を政治的な議論の中心に持ってこようと着実に取り組んできた。約2年前の2019年7月にロサンゼルスは気候非常事態の部署を設け、Eric Garcetti(エリック・ガーセッティ)市長は市民団体の指導者と市長室、市議会の活動を調整するために気候非常事態動員事務所を立ち上げた

説明責任の計画に予算は配分されなかったが、市議会の計画に詳しい人は2021〜2022年の予算から配分が始まると予想している。

ロサンゼルスは過去にカーボンフットプリントの解決を試みたが、それは成功しなかった。過去の排出量データを使って調査が行われ「スコープ3」排出量は含まなかった。スコープ3は市の事業向けのサービスプロバイダーが出している温室効果ガスに関連している。

ロサンゼルス市は気候変動への助長についての説明責任とメトリクスを提供する能力の改善に目を向けていて、ニューヨーク市が設定した基準を参考にするのも悪くない。ブルームバーグ政権下では、カーボンアカウンティングと復元性のある対策が最優先事項になった。ニューヨーク市が気候や天候関連の災害にかなりさらされていることをハリケーン「サンディ」が明白にした前のことだ。

2012年のハリケーン「サンディ」ではカリブ諸国からカナダにいたるまでの8カ国で700億ドル(約7兆6248億円)の被害をもたらし、233人が亡くなった。

この大災害によってニューヨーク市は気候変動対策に一段と積極的に取り組むと固く決心した。同市は市の事業から出る排出量のしっかりとしたアカウンティングプログラムを持っており、既存の環境、輸送、産業から排出される温室効果ガスを削減するために市全域に政策を適用して前に進めている。

「データは決定の原動力となり、データなしではゼロエミッションの未来に向けた道を描くことはできません」と議員のJoe Buscaino(ジョー・ブスカイノ)氏は述べた。「今日の世代のリーダーたちは引き続き緊急性を持って気候変動に取り組み、ロサンゼルスのために設定した目標に対して責任を持たなければなりません。そしてこの動きはそうした取り組みへと導きます」。

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画像クレジット:Getty Images under a license.

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

「Natureスマート電気」が基本料金0円で電気を使った分だけ支払う固定単価新プランの先行受付開始

「Natureスマート電気」が基本料金0円で電気を使った分だけ支払う固定単価新プランの先行受付開始

Natureが提供する「Natureスマート電気」は3月18日、基本料金0円で電気を使った分だけ料金を支払う新プラン「固定単価プラン」を2021年5月より提供すると発表。先行受付を開始した。提供エリアは東京電力エリア、関西電力エリア。

また、先行申込を行った新規契約ユーザーを対象に、スマートリモコン「Nature Remo mini 2」をプレゼントするキャンペーンも同時開催している。キャンペーン期間は3月31日15時まで。

固定単価プランは、基本料金0円で電気を使った分だけ電気料金を支払うというプラン。東京電力エリアは26.4円/kWh、関西電力エリアは22.4円/kWhと1kWhあたりの電力量料金単価が決まっており、電力市場価格に連動して単価が変動する市場連動プランは不安という場合でも、気軽に始めやすいシンプルな料金体系としている(燃料調整費額・再生可能エネルギー発電促進賦課金は別途かかる)。
「Natureスマート電気」が基本料金0円で電気を使った分だけ支払う固定単価新プランの先行受付開始

またNatureスマート電気では、電力需要のピークを分散し、火力発電所の不要な稼働を減らすことで、温暖化の原因となる温室効果ガスの排出削減に取り組んでいるという。固定単価プランにおいても、電力使用量が多いピーク時間を避けて電気を使う顧客には、特典が受けられるデマンドレスポンスの仕組みを提供予定としている。

デマンドレスポンスとは、電気の需要・供給のバランスをとるために、電気料金価格の設定や、インセンティブの支払に応じて、需要家(消費者)側が電力の使用を抑制するよう電力の消費パターンを変化させることを指す。

5月には、市場連動プランから固定単価プランへの変更も可能になり、契約ユーザーはライフスタイルに合わせてプランを選択できるという。

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すでにある技術を利用して、「お金になる方法」で気候変動の危機に対処しよう

著者紹介:本稿を執筆したBertrand Piccard氏は、Solar Impulse Foundationの創始者であり、 ソーラー駆動の飛行機で歴史上初の世界一周飛行を成し遂げた人物だ。

ーーー

5年前、私は航空史上初となる太陽光エネルギーのみを動力とした世界一周飛行を終えて、Solar Impulse 2をアブダビに着陸させた。

エネルギーとテクノロジーの歴史的なマイルストーンでもあった。 Solar Impulseは実験用飛行機で、重量は自家用車と同程度であり1万7248個の太陽電池を使用していた。それは空飛ぶ実験室のようなもので、創成期のテクノロジーが満載で、再生可能エネルギーを作り出し、保管し、必要なときに最も効率のよいやり方で使用できた。

再びテクノロジーを利用するときが来た。私たちの誰もが影響を受ける気候変動の危機に対処するためだ。気候変動に関するアクションにとって最も重要な10年間、そして地球温暖化を1.5℃に制限するおそらく最後のチャンスを、私たちは迎えている。クリーンな技術が唯一の受け入れ可能な規範であることを、ここで確実にしておく必要がある。こうしたテクノロジーはすでに存在するし、今この重大な時期に、収益を上げるやり方で実装することができる。

ここで説明する4つのイノベーションは私たちの太陽光発電飛行機が生み出したもので、市場は今すぐこれらを利用し始めればよい。手遅れにならずに済むようにだ。

操縦室の断熱から住宅の断熱へ

建築セクターは世界中で最も大きなエネルギー消費者のひとつだ。冷暖房を二酸化炭素排出量の多い燃料に依存していることに次いで、断熱性能の低さとそれにまつわるエネルギー損失が主な理由に挙げられる。

Solar Impulseのコックピットの内側の断熱は、飛行機が非常に高い高度を飛行するために決定的に重要だった。オフィシャルパートナーのCovestroが超軽量の断熱素材を開発してくれた。コックピットの断熱性能は当時の標準よりも10%も向上した。断熱フォームの孔の大きさを40%小さく、マイクロメーターでなければ計測できないほどのサイズにまでしたからだ。密度は40kg/立法メートルと非常に低く、おかげでコックピットは超軽量になった。

この他にも多くのテクノロジーが存在する。市場のあらゆる参加者が自ら進んで、極めて効率の高い建物断熱を標準的な作業手順に組み込むことを、ここで確実にしておく必要がある。

電気航空機の推進からクリーン・モビリティの推進へ

Solar Impulseは最初にして最高の電気航空機だった。4 万3000キロメートルを一度も燃料不足を起こさず飛行した。4つの電気モーターの効率は記録的な97%、標準的な熱エンジンの27%という残念な数字に比べはるかに高い。これはつまり、使用したエネルギーのわずか3%しか失われなかったのに比べ、燃焼による推進では73%が失われたということだ。現在、電気自動車の売り上げが上昇している。国際エネルギー機関によれば、Solar Impulseが2016年に着陸したとき、路上を走行する電気自動車の数はおよそ120万台だった。この数字は現在では500万台を越えている。

しかしながら、このような加速で十分とはまったく言えない。電源ソケットが給油ポンプに取って代わるには今もってほど遠い。運輸セクターは依然として世界中のエネルギーに関連する二酸化炭素排出の4分の1を占めている。電化をもっと迅速に引き起こして、排気管からの二酸化炭素の排量を削減しなければならない。それには、政府が明確な税制上のインセンティブを与え、ディーゼル車とガソリンエンジンを禁止し、大規模なインフラストラクチャー投資を行うことで、電気自動車の採用を押し上げる必要がある。2021年は私たちがゼロエミッション車へと向かう一方通行に入り、熱エンジンを行き止まりに追いやる年であるべきだ。

航空機マイクログリッドはオフグリッドコミュニティにも使える

何日間か昼も夜もなく飛行し、理論上の無限の飛行能力に達すると、Solar Impulseは日中に集めて貯蔵しておき夜間のエンジン駆動に使用していたエネルギーに依存していた。

Si2で小規模ながら利用可能になったものが、将来にわたって有効な、完全に再生可能エネルギーだけの発電システムへの道を開くはずだ。それまでの間は、Si2で使われたようなマイクログリッドが地方のコミュニティのオフグリッドシステムに役立てたり、あるいはエネルギーアイランドによってディーゼルなどの二酸化炭素を多く排出する燃料を今日からでも廃止できたりする。

大規模には、スマートグリッドを模索している。すべての「愚かなグリッド」がスマートグリッドに置き換えられたら、たとえば街は、エネルギーの生産、保管、配送、消費を管理できるようになり、エネルギー需要のビークを下げることで、二酸化炭素の排出量は劇的に減少するだろう。

空中と陸上のエネルギー効率

Solar Impulseの理念は、エネルギーを増産しようとせず、エネルギーを削減することだった。だからこそ、比較的少量の太陽光エネルギーを収集しただけで昼夜の飛行に十分だったのだ。したがって、航空機のあらゆるパラメーター、たとえば翼長、空力、スピード、飛行プロファイルとエネルギーシステムなどは、エネルギー損失を最小化するように設計されていた。

残念ながら、今日のエネルギー使用の大半にある非効率を見ても、このアプローチは未だに際立っている。国際エネルギー機関(IEA)は2000年から2017年にかけてエネルギー効率が推定13%向上したことを明らかにしたが、これは十分とは言えない。投資家を勇気づけるには、政治家の勇気ある行動が必要だ。そのための最も優れた方法のひとつは、エネルギー効率の厳格な基準を導入することだ。

たとえば、カリフォルニア州は建物とコンシューマーエレクトロニクスや家電製品などの機器について、エネルギー効率の基準を定めており、これによって消費者は公共料金の支払額を100ドル(約1万500円)以上節約したと推定されている。環境にも家計にもやさしい対策だ。

Si2は未来だったが、今こそ現在を定義する

こうしたさまざまなイノベーションを使用して制作した当時は、Solar Impulseは先駆的で未来的だった。今、これらは現在を定義するものであって、これらを規範としなければならない。上述のテクノロジーに続く何百ものクリーン技術ソリューションが存在し、お金を生む方法で環境を保護している。そのような技術の多くが「Solar Impulse 高エネルギー効率ソリューションラベル」を保有している。

Si2テクノロジーと同じように、こうした技術がメインストリーム市場に参入することを、ここで確実にしておかなければならない。その規模拡大が迅速であるほど、パリ協定の目標達成と持続可能な経済成長の実現に向けて、より迅速に経済を軌道修正できるだろう。

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タグ:再生可能エネルギー 環境問題 コラム

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(文:Bertrand Piccard、翻訳:Dragonfly)

再生可能エネルギーSwell EnergyのNY新規プロジェクトは調達した490億円の用途を示す

2020年12月、Swell Energy3つの州における分散型電力プロジェクトの開発を支援するために、4億5000万ドル(約490億円)を調達すると発表した。そして今、ベンチャーにより支援された同社とニューヨーク市の電力会社ConEdとの契約が発表されたことで、これらのプロジェクトがどのようなものになるのか、業界関係者の目に触れることになった。

関連記事:住宅用再生エネルギー推進のSwell Energyが分散型電力プロジェクト建設に向け470億円調達

ロサンゼルスに本社を置くSwell EnergyはConEdと共同で、クイーンズの住宅所有者を対象に太陽光発電とエネルギー貯蔵を組み合わせた新しいプログラムを展開する予定だ。

これはConEdの顧客を対象に、太陽光発電を利用した家庭用バッテリーを設置するプロジェクトだ。

ニューヨーク州は2040年までに州全体の電力網をゼロエミッションにすることを目標に、2030年までに3GWのエネルギー貯蔵設備を導入することを目指している。

ConEdプロジェクトでは、ニューヨーク市はクイーンズの顧客がエネルギーグリッドのリソースから独立して利用できるバックアップ電力を利用できることを望んでおり、これはエネルギー貯蔵設備を持たない顧客の電力を確保することになる。

プロジェクトに参加する住宅所有者は、システムのコストを下げるためのインセンティブを受けることができる。システムは当初はフォレストパーク、グレンデール、ハンターズポイント、ロングアイランドシティ、マスペス、ミドル・ビレッジ、リッジウッド、サニーサイド、クイーンズの近隣地域の一部住民を対象としている。

Swellの広報担当者によると、ニューヨークのバーチャルパワープラントは同社の他の取り組みとは異なり、ネットワークの過負荷時に顧客の電力需要を減らすために、グリッド上の特定の配電回路に空き容量を提供するという。

バーチャルパワープラントの導入により、ConEdは新たな送配電インフラを構築する必要がなくなり、ネットワークの信頼性を確保することができる。Swellの広報担当者によると、これは需要の問題に対する「ノンワイヤーソリューション」と呼ばれるものだという。

対照的に、Swellのハワイでのプロジェクトはシステムレベルの容量と周波数調整を提供し、Southern California Edisonとのカリフォルニアでのプログラムは、ベースロード時のエネルギー管理と操業地域の全体的な負荷増加のための需要応答能力を提供する。

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タグ:Swell Energy再生可能エネルギー太陽光発電エネルギー貯蔵電力網

画像クレジット:Don Emmert / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter

テキサス大寒波から学ぶ3つのエネルギー革新

本稿の著者Micah Kotch(ミカ・コッチ)氏はURBAN-Xのマネージング・ディレクターだ。

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気候変動の総合的危機に対する個別なソリューションがいくつも登場している。非常用ディーゼル発電機、Tesla(テスラ)のPowerwall、地下シェルターの「Prepper」などがある。しかし、現代文明が依存しているインフラストラクチャーは相互につながり、相互に依存している。エネルギー、輸送、食料、水、ごみのシステムは、気候による緊急時に対していずれも脆弱だ。私たちのエネルギーインフラ危機を救う唯一の孤立したソリューションは存在しない。

2005年のHurricane Catarina(ハリケーン・カタリナ)、2012年の巨大暴風雨SANDY(サンディ)、2020年のカリフォルニアの山火事、そして最近のテキサス大寒波以来、大多数の米国市民はいかにインフラが脆弱であるかを認識しただけでなく、それを適切に規制しその復旧に投資することがいかに重要であるかを思い知らされた。

今必要なのは、インフラを考える際の発想の転換だ。具体的には、リスクをどう評価するか、維持をどう考えるか、気候の現実に沿った政策をどう作るかだ。テキサスの大寒波は、異例の寒波に備えていなかった電気・ガスインフラを壊滅状態にした。もし私たちがインフラへの緊急な(超党派?)投資を、特に異常気象が当たり前になりつつある今行わなければ、この惨劇は今後も続くばかりだ(そして最前線の人たちは特に重荷を背負う)。

テキサスの記録的暴風から1カ月が過ぎ、焦点は生活を取り戻そうとしている数百万の住民を助けることに正しく向けられている。しかし、短期的未来に目を向けには電気自動車への転換点の兆しが見える現在、この国のエネルギーインフラと公共事業の大転換というツケを払うことを優先しなくてはならない。

エネルギー貯蔵の重要性

テキサス州の電気の75%が化石燃料とウランから生まれており、州内で起きた停電の約80%がこれらのシステムに起因していた。同州と国は、時代遅れの発電、通信、および配送技術に依存しすぎている。2030年までにエネルギー貯蔵のコストが75ドル/kWhまで下がると期待されていることから「需要管理」およびグリッドを「(排除しようとするのではなく)支える」分散エネルギー源に今以上に重点を置くことが必要だ。小規模なクリーンエネルギー発電と家庭内貯蔵電力を蓄積、集約することで、2021年は「バーチャル発電所」が全潜在能力を発揮する年になるかもしれない。政策立案者は、家庭のメーターの内側に設置する新たな分散エネルギーリソースを普及させるための刺激策と報奨金制度を施行させるべきであり、カリフォルニア州の自家発電奨励プログラムはその一例となる。

労働力開発への投資

エネルギー大転換が成功するためには、労働力開発が中心的要素になる必要がある。石炭、石油、ガスからクリーンエネルギー源へと移行するためには、企業と政府(国から市レベルまで)は、労働者がソーラー、電気自動車、バッテリーストレージなどの新興分野の高賃金職に就くための再教育に投資すべきだ。エネルギー効率(エネルギー大転換で最も手をつけやすいところ)に関して、都市は株価に基づく労働力開発プログラムを建物エネルギーベンチマーキング条件と結びつける機会を利用するべきだ。

これらのポリシーは、この国のエネルギーシステムの効率と老朽化する建物の利用率を高めてより生産的な経済を作るだけでなく、 21世紀の成長産業における雇用の拡大と労働の専門化にもつながる。 Rewiring Americaの分析によると、国の野心的な脱炭素宣言によって、今後15年の間に2500万の高賃金職が生まれるという。

信頼性のためにマイクログリッドをつくる

マイクログリッド(小規模発電網)は、主要グリッドと繋ぐことも切り離すこともできる。非常時だけでなく、日常の「青空」運用の日々にも運用することで、マイクログリッドは主要グリッドが停止した際に途切れなく電力を供給できる。そして、主要グリッドにつなげた場合、グリッドの制約とエネルギーコストを減らす。かつては軍事基地と大学だけの領域だったマイクログリッドは年間15%成長し2022年の米国市場は180億ドルに達する

グリッドの回復力と信頼性の高い電力源を確保のためには、重要インフラ施設を近隣の住宅と商業負荷と結びつけるコミュニティ規模のマイクログリッドに勝るソリューションはない。実現性調査と高度な設計に資金提供し、コミュニティがゼロコストで高品質な建設プロジェクト実施できるようにすることは、ニューヨーク州が NYプライズ・イニシアティブでやったように、コミュニティをエネルギー計画に参加させ、民間セクターを低炭素の回復力あるエネルギーシステムの構築に携わらせる有効な方法であることが実証されている。

予測不能性と複雑さが急速に高まり、テクノロジーは居場所を見つけたが、それは単なる個別の安全策や偽りの安心感としてではない。テクノロジーは、リスクを高精度で計算し、システムの回復力を高め、インフラの耐久性を改善し、コミュニティの人々同士のつながりを深めるために使われるべきだ。緊急時もそうでない時も。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:コラムテキサス自然災害電力網エネルギー貯蔵エネルギー

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(文:Micah Kotch、翻訳:Nob Takahashi / facebook