2020年の歴史的な気温が高さは気候変動のリスクが高まっている証拠だ

これは公式だ。米国の政府機関のデータによると、2020年は記録上最も暖かい年の1つであり、記録上最も暖かかった2016年をしのぐか、わずかに届かない水準だった。米航空宇宙局は2016年とほぼ同じだったとしているが、 米海洋大気庁(NOAA)は2016年にわずかに届かなったとしている。

ニューヨークとワシントンD.C.に本拠を置くNOAA内にあるNASAのゴダード宇宙科学研究所(GISS)の科学者らによると、順位はともかく、気候に関する趨勢は良いものだとはいえない。

「過去7年間は、記録上最も暖かい7年間でした。進行中の劇的な温暖化傾向を象徴しています」とGISSディレクターのGavin Schmidt(ギャビン・シュミット)氏は声明で述べた。「ある1年が記録的であったかどうかはそれほど重要ではありません。重要なのは長期的な傾向です。こうした傾向と、人間が気候に与える影響が増大するにつれ、私たちは記録が破られ続けると予想しなければなりません」。

2020年に記録を更新した22件の気象・気候災害のコストを考えると、それは国家に対する厳しいメッセージだといえる。NOAAによると、気候関連の災害により少なくとも262人が死亡し、さらに多くの人が負傷した。

また山火事、干ばつ、熱波、竜巻、熱帯低気圧、テキサス州の雹の嵐や中西部を破壊したデレチョ(と呼ばれる嵐)などの悪天候などにより、国は950億ドル(約9兆9000億円)の損失を被った。

2020年8月19日のLNU(the Sonoma-Lake-Napa Unit) 落雷複合火災でカリフォルニア州バカビルの住宅が炎に包まれた。2020年8月18日の深夜時点で、ヘネシー地域の火災は少なくとも7つの火災と合流し、現在はLNU落雷複合火災と呼ばれている。火元が薄く広がり、北カリフォルニア全体で数十の火災が制御不能に陥った。(画像クレジット:JOSH EDELSON/AFP via Getty Images)

いずれの政府機関も気温の傾向を追跡し、人間の活動、特に温室効果ガスの排出が地球に与える影響を何らかのかたちで把握している。注目すべきは、19世紀後半に産業革命が始まって以来、人間の活動がすでに地球の平均気温を華氏2度(摂氏1.1度)以上上昇させてきたということだ。

科学者にとって最も厄介なのは、2020年の記録的な気温が、エルニーニョとして知られる気候現象による後押しなしに起こったことだ。エルニーニョは大規模な海洋と大気の気候相互作用で、周期的な温暖化に関連がある。

「前回記録的に暖かかった2016年は、強力なエルニーニョが強く影響しました。2020年はエルニーニョが同じようには寄与していません。これは温室効果ガスにより気候そのものが温暖化し続けている証拠です」とシュミット氏は声明で述べた。

NASAによると、文字通りの温暖化傾向は北極圏で最も顕著だ。北極圏の気温はここ30年間で世界の他の地域の3倍の速さで上昇したとシュミット氏はいう。北極海の海氷が失われると(年間最小面積は10年で約13%減少している)、この地域の反射が少なくなる。そして、より多くの太陽光が海に吸収され、気温がさらに上昇する。

テキサス工科大学のKatharine Hayhoe(キャサリン・ヘイホー)教授は、気候変動の加速影響は世界全体にとって危険となる可能性があると、ワシントンポストに電子メールで寄せた

「私たち気候科学者が真夜中も眠ることなく考えているのは、地球の気候システムにおける自己強化または悪循環について私たちが知らないことは何かということです」とヘイホー氏は書いている。「私たちがこの惑星の人類文明の歴史で経験した以上の速さで進めれば、深刻で危険な結果を招くリスクが高まります。そして2020年、私たちはそれを目の当たりにしました。気候変動の影響がいつ現れるかというのはもはや問題ではありません。それはすでに今、目の前にあるからです。残っている唯一の問題は、それがどれだけ悪化するのかということです」。

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(翻訳:Mizoguchi

UberがEVを推進する「Uber Green」プログラムを北米1400都市に拡大

Uber(ウーバー)は、ドライバーに電気自動車またはハイブリッド車の利用を促進するインセンティブプログラムを北米1400都市へと拡大した。新たに加わったのは、テキサス州のオースティンとヒューストン、フロリダ州マイアミ、ニューヨーク市などで2040年までに排出ゼロプラットフォームを目指す同社の取り組みの一環だ。

Uber Green(ウーバー・グリーン)と呼ばれるこのプログラムでは、乗客がEVまたはハイブリッド車を指定するオプションを与えられる。ドライバーはUber Green乗車が完了する毎に、乗客が払う1ドル(約104円)の追加料金から0.50ドル(約52円)を受けとる。米国時間1月12日Uberは、同プログラムをUber Passメンバーシップサービスと統合し、「Uber Green」に乗車したメンバーに10%割引を適用すると語った。

もちろん、Uber Greenの成否はドライバーこの切り替えを起こさせる力にかかっている。同社は2025年までにドライバーが電気自動車を使うようにするために、8億ドル(約828億5000万円)を準備している。

このほど同社は、プログラムのインセンティブを強化するべく自動車メーカー、充電ネットワーク提供者、およびEVレンタル・運行会社などとの提携を開始した。Uberによると、ロサンゼルスのドライバーはAvis(エイビス)との提携によって電気自動車をレンタルできる。プログラムは2021年中に全世界に拡大される予定だ。

UberはAmple(アンプル)とも提携した。2021年1月からサンフランシスコのドライバーは、Ampleのバッテリー交換テクノロジーを備えた車両をレンタルできるようになる。電気自動車のバッテリーを数分のうちに交換できる仕組みだ。

同社はEVgoとも提携し、同社ライドシェアリングプラットフォームのドライバーが、米国内800カ所以上の充電ステーションを割引料金で利用できるようにした。

Uberのゼロエミッションの目標達成には、ドライバーや乗客にEVを使わせるだけでは足りない。同社は他のプログラムも展開しており、公共交通機関利用者のための移動計画機能がその1つだ。この機能は現在世界40都市以上で提供されており、ユーザーはUberアプリを通じて公共交通機関による移動を計画することができ、駅への歩行経路の案内やリアルタイムスケジュールなども使える。同社は12日、同機能がジョージア州アトランタ、オークランド(ニュージーランド)、ブリスベン(オーストラリア)、ブエノスアイレス(アルゼンチン)、グアダラハラ(メキシコ)、ペンシルベニア州フィラデルフィア、インドのバンガロール、チェンナイ、ムンバイの各都市でも利用できるようになったことを発表した。

Uberは、メキシコシティとロンドンで、ライドシェアリングと徒歩経路案内と市バス、地下鉄、鉄道の乗り換えを組み合わせたマルチモーダルトリッププランナーを提供することも発表した。同機能はシドニー(オーストラリア)とイリノイ州シカゴですでに提供されている。

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タグ:UberEVUber Greenゼロエミッション

画像クレジット:Uber

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SilviaTerraはカーボンオフセットの恩恵を世界中すべての土地所有者にもたらしたい

カーボンオフセット企業であるSilviaTerra(シルビア・テラ)の共同創業者であるZack Parisa(ザック・パリサ)氏とMax Nova(マックス・ノバ)氏は過去10年間、収益を生み出すカーボンオフセットへのアクセスを民主化する方法に取り組んできた。

森林クレジットがビジネスとして活況を呈している。ビジネスの脱炭素化に取り組む複数の世界最大級の企業による数十億ドル(数千億円)のコミットメントが背景にある。2人の創業者が10年間の人生を捧げ築き上げてきたテクノロジーは価値を増す一方だ。

すでに利益を計上している同社が外部から440万ドル(約4億6000万円)を調達したのはそうした理由による。資金調達はUnion Square VenturesVersion One Venturesがリードした。Salesforce(セールスフォース)の創業者であり、One Trillion Trees Initiativeを推し進めるMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏も参加した。

「気候危機に対処するための鍵は、いわゆる炭素循環のバランスを変えることです。私たちは現在、毎年約5ギガトンの炭素を大気中に追加しています。大気中の炭素は温室効果ガスとなり、宇宙に放射されずに留まるエネルギーが増え、地球が熱くなります」と、Union Square VenturesのマネージングパートナーであるAlbert Wenger(アルベルト・ウェンガー)氏はブログ記事に書いている。「減らす方法はたくさんあります。今後数週間でさまざまなアプローチについて説明します(二酸化炭素の直接回収や海のケルプの成長など)。私たちがよく理解している方法で、すぐに行動できる対象の1つは森林です。今日の世界の森林は、大気から年間1ギガトンを少し超えるCO2を吸収し、バイオマスに変えています。既存の森林の伐採や焼却(大規模な山火事の防止を含む)を止め、より多くの新しい樹木を植え始める必要があります。そうすれば、森林の潜在力は年間約4〜5ギガトンになります(ある推定では9ギガトンにもなります)」

2人の創業者にとって、新しく得た資金はパリサ氏が育ったアラバマ州北部の森で始まった長い旅の最新のステップだ。

ミシシッピ州立大学で森林科学を学んだ後、パリサ氏はイェール大学の大学院に通い、ケンタッキー州ルイビル出身のコンピューターサイエンスの学生であるマックス・ノバ氏と出会い、パリサ氏と一緒に後にSilviaTerraとなる会社を創業した。

SilviaTerraの共同創業者であるマックス・ノバ氏とザック・パリサ氏(画像クレジット:SilviaTerra)

2人は衛星画像とフィールド測定を組み合わせて、1エーカー(約4047平方キロメートル)ごとに森の木の大きさと種類を特定する方法を開発した。

最初のステップは米国内のすべての森林の地図を作成することだったが、2人の最終的な目標は、炭素市場を木材産業と対等な立場に置く方法を見つけることだった。地主は現金を得るために、木を切る代わりに森林を維持することがどれだけの価値になるかを知ることができるようになった。同社が指摘するように、森林の管理は以前は木材収穫の経済性が推進力となっており、米国では毎年100億ドル(約1兆400億円)以上が費やされていた。

SilviaTerraの創業者らは炭素市場も同じくらい大きくなる可能性があると考えていたが、ほとんどの土地所有者にとってアクセスが困難だ。カーボンオフセットプロジェクトを成立させるには20万ドル(約2100万円)もの費用がかかる可能性がある。これはパリサ氏自身の家族のような土地所有者が関わる小規模なオフセットプロジェクトやアラバマ州で彼らが所有する40エーカー(約16万1874平方キロメートル)の森の価値を上回っている。

パリサ氏とノバ氏は、小規模土地所有者が炭素市場から利益を得るには、より良い方法が必要だと考えた。

炭素経済を生み出すには、米国内のすべての木を記録する単一のソースが必要だった。SilviaTerraにはそうした地図を作成する技術があったが、地図を作成するための計算能力、機械学習の能力とリソースが不足していた。

そこで、Microsoft(マイクロソフト)のAI for Earthプログラムが登場した。

SilviaTierraはAI for Earthと協力して最初の製品であるBasemapを作成した。この製品はテラバイトの衛星画像を処理して、米国の森林地帯の1エーカーごとに木の大きさと種類を特定する。同社はまた米国森林局と協業し、そのデータにアクセスした。このデータは米国の森林資産の全体像作成に利用された。

Basemapのデータを使用して、同社は自然資本取引所と呼ばれるものを立ち上げた。このプログラムは、地域の森林に関してSilviaTerraが持つ比類のない情報へのアクセスと、そうした森林が現在どのようにプロジェクトに使用されているかについての情報を利用する。各プロジェクトは、もしオフセットマネーが入ってこなければ森に覆われていなかったであろう土地を示している。

現在、多くの森林プロジェクトは、そもそも森林に覆われることがなかったであろう土地を利用した合法的なオフセットとして購入者に提供されている。二酸化炭素排出量のオフセットとして、そうしたプロジェクトは実際には無意味で役に立たないものになっている。

「そこは血まみれです」と、業界における不正オフセットの問題の規模についてノバ氏はいう。「私たちは既存の森林炭素プロジェクトを再パッケージ化したり、需要側を既存のプロジェクトと結び付けようとしたりはしていません。テクノロジーの力で森林カーボンオフセットの新しい供給を解き放ちます」。

最初の自然資本取引所プロジェクトは、実際には2019年にマイクロソフトが始め、資金も提供した。その中で、20人のペンシルベニア州西部の土地所有者がプログラムを通じて森林炭素クレジットを生み出した。プログラムはオフセットが40エーカーの土地所有者にとって機能しうることを示した。

SilviaTerraのカーボンオフセットパイロットプログラムに関与する地主はマイクロソフトから支払いを受けた(画像クレジット:SilviaTerra)

「私たちは、すべての土地所有者の年間経済計画サイクルに参加しようとしているだけです」とノバ氏は述べた。「木材経済学にはあらゆる分野があります。そして私たちは次の質問に答える手伝いをしています。炭素の価格と木材の価格を踏まえると、計画されている木材の収穫を減らすことは理に適っているだろうか」。

2人の創業者は最終的に、森林の潜在的なカーボンオフセット値に関するデータを作成することで、土地全体の価値に対して支払える方法を見つけたと信じている。

炭素市場だけではない。SilviaTerraが作成したツールは、山火事の軽減にも使える。「私たちは適切なデータと適切なツールを持ち合わせて、適切なタイミングで適切な場所にいます」とノバ氏は述べる。「データをこれらすべての意思決定と経済性に結び付けるということです」。

SilviaTerra取引所の立ち上げにより、大規模な購入者はカーボンオフセットのために十分に調べられた情報源を得る。それはある意味でWrenようなスタートアップによって行われている仕事にとっては、企業として当然の帰結だ。WrenはUnion Square Venturesの別の投資先であり、消費者の日々の二酸化炭素排出量をオフセットすることに特化している。同様の森林オフセットを大規模に提供しようとしているPachama、3Degrees IncSouth Poleなどの企業の競争相手でもある。

バイデン政権下でカーボンバンクを設立するための議論が進行中であることから、オフセット企業にはさらに多くの機会があるとSilviaTerraの創業者らは述べた。米農務省が運営する既存のCommodity Credit Corp.を通じて設立されたカーボンバンクは、米国全土の農家と土地所有者に林業と農業のカーボンオフセットプロジェクトの費用を支払う。

「こうしたシステムには私たちが今利用している以上の価値があることを誰もが知っています」とパリサ氏はいう。「そのメリットを私たちが切り取って市場に送りだすものと同じレベルに置くまでは【略】価値は上がっていきます【略】絶対にそれは意思決定に影響を及ぼし、キャッシュで回収できます。これは必要とされているものを作るための米国沿岸部から米国中部への送金ポンプです」。

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タグ:SilviaTerraカーボンオフセット資金調達二酸化炭素排出量

画像クレジット:Roine Magnusson/DigitalVision

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(翻訳:Mizoguchi

リチウムイオン電池のリサイクルに挑戦するRedwood Materialsが古いスマホなどの受け入れ開始

Redwood Materialsは、Tesla(テスラ)の元CTO、JB Straubel(J・B・ストラウベル)氏が創業したリサイクルスタートアップだ。これまで特にメディアに報じられることもなかったが、これからは一般消費者にも門戸を開き、彼らのガラクタだらけの引き出しに眠っているすべての古い電子製品を集めようとしている。

ネバダ州カーソンシティに本社を置くRedwood Materialsは、これまで主にPanasonic(パナソニック)やAmazon(アマゾン)といった企業顧客の、バッテリーセルの生産や消費者電子製品からのスクラップをリサイクルしていた。

同社ウェブサイトには「recycle with us(私たちでリサイクルしましょう)」というタブがあり、「リチウムイオンバッテリーや電子製品のゴミはありますか?私たちは、あなたのスマートフォンやタブレット、電動工具など、リチウムイオンバッテリーを使用するすべてのデバイスをリサイクルします」と書かれている。そのウェブサイトには住所以外の情報はほとんどなく、消費者はそこに自分の電子ゴミを送る。ウェブサイトには、「contact us(お問い合わせ)」ボタンもある。

ストラウベル氏は2020年10月にTechCrunchに対して、そのうちRedwood Materialsのビジネスモデルは、消費者も含めるようになる。すでに、消費者からの問い合わせがとても多い、と語っていた。その時が来たようだ。

同社の広報担当者によると、Redwood Materialsは消費者が送ることができるものに厳しい制限を設けていない。ケーブルでも受け入れているというだ。同社はTechCrunchに対して、消費者事業をもっと形式化して、箱やラベルを定型化し処理を容易にするなど、今後は消費者の考えも取り入れて、事業の拡張方向を探りたいと語っている。

当面、Redwoodはとにかく門戸を大きく開き、成り行きを見守りたいという。

スマートフォンなどの消費者電子製品に使われているリチウムイオンバッテリーは大半がリサイクルされず、所有者の引き出しにしまわれて忘れ去られたり、ゴミとして埋め立て地へ行っている。

Redwood Materialsは、循環的なサプライチェーンを作ることでこれを変えようとしている。同社はオパナソニックのバッテリーセルの生産やスマホ、ラップトップコンピューター、電動工具など消費者電子製品からスクラップを集める。そこから同社は、通常は採鉱されているレアメタルを取り出し、パナソニックなどの顧客に供給している。

ストラウベル氏は最終的に、Redwood Materialsを電気自動車のバッテリーの寿命を延ばすソリューションの一部にしたいと考えている。CEOは、このニーズを満たすために、世界中の戦略的な地域拠点に施設を設置することを望んでいる。現在のところ、カーソンシティにあるレッドウッドの2つの施設でリサイクルおよび処理された製品のほとんどは、パナソニックや他の匿名の家電関連企業のためのものだ。

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タグ:Redwood Materialsリサイクルバッテリー

画像クレジット:Redwood Materials

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

古いデバイスに新しい役割を与えるサムスンのアップサイクルプログラム

毎年の更新サイクルの世界では、すぐに捨ててしまう古いテクノロジーをどうするかという大きな疑問が常につきまとっている。レアアースや、時には有害物質も含まれるこれらのデバイスを廃棄したり、リサイクルしたりする方法はいくつかある。「アップサイクル」という概念も、古いテクノロジーに新たな命を吹き込むという意味で、さらに人気の選択肢となっている。つまり3年前のスマートフォンは最新で最高というわけではないかもしれないが、だからといって必ずしも価値がないというわけではない。

米国時間1月11日朝のCESの開幕記者会見で、Samsung(サムスン)は新しいGalaxy Upcycling at Homeプログラムの概要を説明した。今のところこのプログラムは概要しか判明していないが、今週、米国時間1月15日に行われるイベント「Galaxy Unpacked 2021」で、さらに詳しい情報が得られるだろう。「新しいプログラムは、古いGalaxyスマートフォンのライフサイクルを再考し、便利なIoTツールとしてデバイスを再利用する方法について、消費者に選択肢を提供します」と同社は述べている。

例としてベビーモニター、リモートから照明をつけるためのペットケアセンサー、そしてSamsung Knoxを使った「デジタル・セーフ・ホーム」などがある。サムスンがこの分野で何を用意しているのかを見るのは、興味深い。そしてデバイスが計画的に陳腐化した後でも、使い道があるあるのも確かだ。

パズルのもう1つのピースは、サムスンが近年導入した家庭用品に変換できるデバイスを使ったより楽しい取り組みの1つだ。同社は米国時間1月11日朝、QLED、UHD TVとオーディオプロジェクトのすべてにパッケージを採用すると発表した。

サムスンは次のように述べている。

環境意識への継続的な取り組みの一環として、サムスンは持続可能性を中核とした製品やソリューションを開発している。たとえば部分的に再生プラスチックで作られた新しい太陽電池リモコンは、太陽光や室内照明で充電することができ、バッテリーの無駄を削減する。

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カテゴリー: EnviroTech
タグ:SamsungCES 2021アップサイクル

画像クレジット:Samsung

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

テックを駆使して世界規模でのサンゴ礁回復を目指すCoral Vitaが2億円調達

世界中のサンゴ礁の生存が危ぶまれている。そしてサンゴ礁に頼っている何百万という人々、そして何十億ドル(何千億円)という事業も、そうした重要なエコシステムを失うという根本的な悲劇を抱え、危機にさらされている。Coral Vita(コーラルビタ)はサンゴ礁回復のテクニックと、サンゴ礁回復にかかる経済の両方を現代化することを目指していて、同社は本格的に事業を展開すべくシードラウンドで200万ドル(約2億1000万円)を調達した。

筆者は2019年後半にCoral Vitaの創業者Gator Halpern(ゲイター・ハルパーン)氏にSustainable Ocean Alliance’s Accelerator at Sea(未訳記事)で出会い、記事を書いた。当時、オペレーションはずっと小さく、バハマにあるチームのサンゴ養殖場を壊滅させたハリケーン・ドリアンの影響を受けていた。そしてその後起きたパンデミックは当然のことながら、多くの人の計画同様にチームの2020年の計画を台無しにした。

しかし昨年の全体的な混乱にかかわらず、Coral Vitaは大きくなって、そしてさらにより良いスタートアップになって戻ってきた。この分野における新しいグローバルモデルを示そうという意気込みでなんとか事業を開始し、最終的に200万ドルのラウンドをクローズした。

「我々の試験養殖場をただ試験レベルに再建するのではなく、次のレベルへと進めることにしました。サンゴ礁復興経済をジャンプスタートさせる機会だと信じています」と共同創業者でサンゴ礁責任者のSam Teicher(サム・タイシャー)氏は述べた。

現代のサンゴ礁復興がどのようなものなのか把握するために、海岸近くにある水中庭園を想像してほしい。ロープや構造物が浮いていて、そこではサンゴの断片が育っている。そうした断片は採取され、若いサンゴを必要としているエリアに移植される。

画像クレジット:Coral Vita

「しかし問題の規模を考えたとき、水中施設だけに頼ることはできません。世界のサンゴ礁の半分は死んでいて、残り半分の90%も30年以内に死滅すると予想されています」と同氏は話した。

Coral Vitaの計画は、海での養殖から陸上施設へ移行させるというものだ。陸上施設では、よりサンゴの増殖を拡大させ生き残らせることができる。サンゴの成長をスピードアップして生存率を高めるために高度なテクニックを使っている。そうしたテクニックの1つがサンゴ復元に取り組んでいるコミュニティが開発したサンゴのマイクロフラジメンティングだ。この手法ではサンゴをバラバラにする。小さなピースは全体として50倍速く成長できる。陸上で行うことで、サンゴの性質をより生かすことができる。

「我々はきれいな海水をポンプで注ぐタンクを陸上に設置しました。最大の特徴はコンディションを管理できることです」とタイシャー氏は説明した。「40〜50年後のグランド・バハマ島の海岸がどうなっているか考えるとき、そうしたコンディションに対してサンゴが丈夫になっているとシミュレーションできます。正直なところ、海洋ベースの施設の方がコストはずいぶん安いのですが、何百万、何十億という世界中のサンゴを育てる必要があることを考えると、陸上施設はより現実的なものに感じられます。展開規模が大きくなるとコストは下がります。海洋ベースの施設のコストはサンゴ1つあたり30〜40ドル(約3100〜4100円)です。100あるいは1000のタンクを展開するとコストは10ドル(約1030円)に下げられます」

左の写真はバハマの観光当局者(左側)がサム・タイシャー氏の説明を聞いているところ。右の写真はパンデミック前に創業者ゲイター・ハルパーン氏(中央)が話しているところ(画像クレジット:Coral Vita)

現在は、実際に展開している規模だけでなく、収入源も限られている。無尽蔵のプライベートキャッシュの代わりに政府の資金に頼っている。Coral Vitaはサプライと収入を増やして多様化することでそうした状態を変えることを望んでいる。

世界が元に戻り始めたら、再び人々がサンゴ養殖場に来て、孵化や自然の生態を観察するエコツーリズムに頼れるようになることをCoral Vitaは願っている。エコツーリズムは、地元の人を含めた広範におよぶ収入とプロジェクトのバランスをとるのに役立つ(そして同社が拠点を置く小さなコミュニティと同社をつなげる)。

まだ自由ままならない状況ではあるが、同社は機会を利用して「サンゴ受け入れ」キャンペーンを拡大することで遠距離からローカルオペレーションをサポートしている。絶滅寸前の動物や荒廃した森のために活動したことのある人ならそれがどういう仕組みになっているか知っているだろうが、2021年初めまでCoral Vitaは積極的にそのコンセプトを追求してこなかった。

「我々は補助金や支援金なしにこの分野を変革しようとしています。サンゴ礁のエコシステムに頼っている顧客に販売しています」とタイシャー氏は話した。「もしあなたがスキューバダイビングやシュノーケルを楽しむ観光客に頼るホテルの経営者、あるいは海岸近くにある不動産のオーナー、保険会社や政府、開発銀行、クルーズ会社の人間だったら、あなたが頼っているサンゴ礁を回復させるためにCoral Vitaを雇うことができます」。

もちろん、もし政府や産業界がこうした取り組むべきサンゴ礁の問題を体制的に無視してこなければ、商業的に重要なサンゴ礁が優先されるという表面的に報酬目当てのビジネスモデルは必要なものではない。民間資金によるプロジェクトは基本的にはさほど腐敗していないが、この手の回復取り組みは非営利機関と政府機関の領域とみなされる傾向にある。Coral Vitaのアプローチを直接的で政府の仲介を切り離すものと考える人もいるだろう。

これは、適切な保全基金が関係者によって集められれば5年、10年以内ではなく今すぐ始める必要がある世界的に重要な取り組みだ。サンゴ礁の状態が悪化しているいま、一刻を争う事態であり、なすべきことをすばやく大規模展開するのに民間資金が唯一の現実的なオプションだ。加えて、コストが下がれば、プロジェクトの資金集めもしやすくなる。

画像クレジット:Coral Vita

「その上、イノベーションを起こす能力があります」とタイシャー氏は付け加えた。「今回の資金調達で何をしようとしているかというと、取り組みで活用している3Dプリントやロボティクスを含む科学やエンジニアリングの向上です。サンゴ礁回復のためだけでなく保護のためのR&Dプロジェクトも立ち上げます」。

同氏は業界を農業と比較しながら、ロボティクスが現在変革的な効果をもたらしている自動車業界で自動化を押し進めた人物でありGoogle Xの共同創業者でCoral Vitaの初期アドバイザーかつ投資家のTom Chi(トム・チー)氏に言及した。

必要とされるところにサンゴを運ぶのにかかるコストとリードタイムを削減し、大規模展開できる陸上養殖の効果を証明することで世界的に存在感を示すことにつながる。

「適応について、そしてどのように資金をまかなうかを再考する時期にきています」とタイシャー氏は話した。「2カ年計画では他の国々でより多くの養殖場を立ち上げます。究極的には我々はすべての国にサンゴ礁があるようにしたいと考えていて、これまでで最大のサンゴ会社になるでしょう」。

もちろん多くの人と同じように、同氏は回復作業がまずもって不要であることが好ましいと考えている。サンゴ礁を殺すような行動を止めれば、そちらの方が断然役立つ。だが、グローバル規模の多くの問題と同様、そうした行動を止めることは問題解消を意味しない。サンゴ養殖はサンゴ礁回復のために不可欠であり、自然がバランスを取り戻すのをサポートするために、少なくともバランス状態に近づくために、保全行為と資金が必要とされる。

今回の200万ドルのラウンドは環境を専門とするBuilders Collectiveがリードし、Apollo ProjectsのMax Altman(マックス・アルトマン)氏、野球のMax and Erica Scherzer(マックス・シャーザーとエリカ・シャーザー)夫妻が参加した。初期投資家にはSustainable Ocean Alliance、前述のトム・チー氏、Adam Draper(アダム・ドレイパー)氏、イェール大学、Sven and Kristin Lindblad(スヴェン・リンドブラドとクリスティン・リンドブラド)夫妻が名を連ねる。

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タグ:Coral Vitaサンゴ礁資金調達

画像クレジット:Coral Vita

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(翻訳:Mizoguchi

ビル・ゲイツ氏が支援するBoston Metalが金属産業の脱炭素化を目指し51.6億円調達

地球規模の気候変動に寄与する炭素排出量の約8%を鉄鋼生産が占めていいる。それは現代経済の根幹に位置する産業の1つであり、脱炭素化から最も程遠いものの1つだ。

世界中の国々が環境への影響を減らし、より持続可能な生産方法を採用しようと競争する中で、金属ビジネスから炭素を除去する方法を見つけることは、その努力に対する最も重要な貢献の1つとなるだろう。

この問題に対処するために新技術を開発しているスタートアップの1つが、Boston Metal(ボストンメタル)だ。Bill Gates(ビル・ゲイツ)が出資するBreakthrough Energy Venturesファンドが支援してきたこの新会社は、米国証券取引委員会(SEC)への提出書類によれば、事業拡大のための約6000万ドル(約51億9000万円)の資金調達ラウンドのうち、約5000万ドル(約51億6000万円)を調達したところだ。

コンサルティング会社McKinsey & Co.(マッキンゼー・アンド・カンパニー)が引用した調査によれば、世界の鉄鋼業界は環境への影響を削減できなければ、潜在的な価値の約14%が損なわれる可能性があるという。

2019年には2000万ドル(約20億6000万円)を調達したBoston Metalは、溶融酸化物電気分解(MOE、molten oxide electrolysis)と呼ばれるプロセスを利用して合金鋼を作り、最終的にはエミッションフリーの鉄鋼を生産する。同社CEOのTadeu Carneiro(タドゥ・カルネイロ)氏によれば、実際の資金調達は今から2年前の2018年12月に行われたのだという。

その最後の調達から月日は流れ、Boston Metalは当時の8人体制から今では50人近くの規模へと成長した。マサチューセッツ州ウォバーンに拠点を置く同社は、合金鋼を生産する3つのパイロットラインを1カ月以上継続的に稼働させることができている。

鉄鋼生産プログラムが最終的な目標であることに変わりないものの、同社は合金生産プログラムの商業化に向けて急速に進んでいる。カルネイロ氏によれば、従来のインフラやサンクコストに依存していないからだという。

Boston Metalの技術は、紀元前1200年の鉄器時代の幕開け以来、大きく変わっていない業界の技術を根源的に再考するものだと、カルネイロ氏は語る。

最終的には、技術開発者として鉄鋼を生産する鉄鋼メーカーやエンジニアリング会社にその技術をライセンスし、部品を販売することが目標だ。

Boston Metalにとって、製品ロードマップの次のステップは明確だ。同社は、2022年末までにウォバーンで準工業的小規模ラインを稼働させ、2024年か2025年までには最初の実証プラントを稼働させたいと考えている。「その時点になれば、私たちはこの技術を商業化することができるようになるでしょう」とカルネイロ氏は述べている。

同社のこれまでの投資家の顔ぶれは、Breakthrough Energy Ventures、Prelude Ventures、MITが支援する「ハードテック」投資会社のThe Engineなどだ。彼らは全員、投資会社Devonshire Investorsとともに、最新の現金注入に投資するために戻ってきた。Piva Capitalや別の匿名投資家とともに、金融サービス大手Fidelityが今回の投資を主導したが、Devonshire InvestorsはそのFidelityの親会社であるFMRと提携している。

SECへの提出書類によれば、今回の投資の結果、Shyam Kamadolli(シャム・カマドリ)氏が同社の取締役会の席に就くことになるという。

MOEは、金属を酸化物のままの状態で取り出し、溶融金属製品へと転換する手法だ。MITのDonald Sadoway(ドナルド・サドウェイ)教授の研究に基づいて、マサチューセッツ工科大学で発明された手法を使うBoston Metalは、特定の原料や製品に合わせた溶融酸化物を製造している。電子を利用してスープを溶かし、対象の酸化物を選択的に還元するのだ。精製された金属は容器の底部に溜まり、高炉技術から適応されたプロセスを使用して容器に穴を開けて取り出される。穴は塞がれ、その後処理が続行される。

同社によれば、この技術の利点の1つは、そのスケーラビリティにあるという。生産者はより多くの合金を作る必要性に応じて、生産能力を高めることができる。

同社の最高経営責任者(CEO)であるカルネイロ氏は、2019年に行った2000万ドル(約20億6000万円)の資金調達の際に「溶融酸化物電気分解は、幅広い金属や合金を生産できるプラットフォーム技術ですが、当社の最初の産業展開は、当社の最終目標である鉄鋼への道筋である合金鉄をターゲットにします」との声明を出している(Business Wire記事)。「鋼鉄は現代社会の必需品であるとともに、これからもそうあり続けるでしょう。しかし現在、鋼鉄の生産によって2ギガトン以上のCO2が生産されています。何千年も前から、鉄鋼を製造するためには同じ基本的な方法が使われてきましたが、Moston Metalは石炭を電子に置き換えることでそのパラダイムを打ち破ります」。

テック業界における最高の著名人であるビル・ゲイツ氏自身も、金属事業の脱炭素化の重要性を強調している。

ゲイツ氏は自身のブログであるGatesNotesの中で「Boston Metalは石炭の代わりに電気を使って、同じように安くて強い鉄鋼を作る方法を開発しています」と書いている。一方ゲイツ氏は「もちろん、クリーンな電力を使ったとしても、電化は排出量の削減を助けることができるだけです。それがゼロカーボンの電気(GatesNotes投稿)を手に入れることが重要であるもう1つの理由なのです」という注意も喚起している。

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(翻訳:sako)

エネルギー貯蔵システム開発のFluenceのバリュエーションが1030億円以上に

カタール投資庁(QIA)は、エネルギー貯蔵システムインテグレーターであり、電力管理技術開発会社であるFluence(フルーエンス)に1億2500万ドル(約130億円)を投資する。この取引におけるバリュエーションは10億ドル(約1030億円)を超える。

Fluenceは米国の独立系発電事業者であるAES Corp(AESコープ)とドイツの産業コングロマリットSiemens(シーメンス)の合弁事業。同社の戦略および提携担当副社長であるMarek Wolek(マレク・ウォレク)氏によると、取引前にすでに9億ドル(約930億円)の評価がついていた。

Fluenceは新しく得た現金でソフトウェアとサービスの開発および取得を目指す、とウォレク氏は話す。同社の中核クライアントである電力会社や独立系発電事業者に提供するメニューを増やせるという。

そして、同社が公開市場から追加の流動性を求めるまでそれほど長くはないかもしれない、とウォレク氏は語る。QIAはすでにバッテリー会社のQuantumScapeに投資していると同氏は指摘した。QuantumScapeは2020年11月下旬に特別目的買収会社に買収されて以来、株価が急上昇している。

QIAによる投資後、AESとSiemensは引き続き過半数を持つ株主として留まる。2社はそれぞれ44%の持ち分を保有する。

「世界的な気候変動の問題は、世界中の技術者と投資家の能力を組み合わせて初めて取り組めるものだと信じています」と、Fluenceの最高経営責任者であるManuel Perez Dubuc(マニュエル・ペレス・デュブク)氏は声明で述べた。「エネルギー貯蔵は脱炭素グリッドの要です。QIAを国際的な株主として加えることで、Fluenceはさらに迅速にイノベーションを起こし、大規模バッテリーを基礎とするエネルギー貯蔵の巨大な世界市場に打って出ることができます」

ワンプラネット・ソブリンウェルスファンド・イニシアチブの創設メンバー6社の1つであるQIAは数十億ドル(数千億円)規模の投資ビークルだ。Fluenceのような気候関連のテック企業への支援継続に必要な多額の資本を有する。

ウォレク氏によると、Fluenceはすでに約5ギガワットのエネルギー貯蔵および管理システムを幅広い顧客に導入している。

Fluenceは自社とそのエネルギー貯蔵事業を世界的な脱炭素化の重要な一部分であると考えている、とウォレク氏はいう。脱炭素化は気候変動との戦いで不可欠だ。だが、必要な技術は電力の貯蔵だけではない。

「エネルギー市場と1つのテクノロジーを見て、その1つのテクノロジーがすべてを解決するというのは難しい」とウォレク氏は述べる。

むしろ同社の役割は、同社が展開するバッテリー技術を、業界や社会が必要とする電力供給に求められる他の技術と統合できるようにすることだ、とウォレク氏はいう。「私たちは絶対にバッテリーベースのストレージの専門家になりたいと思っています」とウォレク氏は述べる。「同時に、ストレージにとどまらず給電機能を拡張するため、デジタル面にかなりの投資を行っています」。

それは将来、水素燃料プロジェクトの開発者のような他のエネルギー供給業者と協力することを意味するかもしれない、と同氏はいう。

「私たちはバッテリー側のエネルギーの部分をマスターしたいのです」とウォレク氏は会社の究極の目標について語った。

その目標は同社をElon Musk(イーロン・マスク)氏のTesla(テスラ)が手がけるエネルギー事業と衝突するコースに置くことになるかもしれない。

現在のFluenceの10億ドル(約1030億円)という評価額と、QuantumScapeの366億ドル(約3兆7700億円)という時価総額は、テスラの価値が6500億ドル(約67兆円)を超えると見られている理由を説明している。

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(翻訳:Mizoguchi

iPodの生みの親トニー・ファデルが語るスタートアップの未来はネット接続性と持続可能性

Tony Fadel(トニー・ファデル)氏はテクノロジー界の「次」を考えずにはいられない。

iPodの生みの親と称され、iPhoneを作り上げ、スマートホームの企業Nest(ネスト)を創設したこの人物は引退を決め込んでいたのだが、どうにも引退が性に合わず、新たなベンチャーFuture Shape(フューチャーシェイプ)を創設した。

そして51歳のデザイナー、エンジニアにして投資家の彼は、コアな協力者たちと3年を費やし、公的および非公開の数々の投資を受けつつ、テクノロジーの未来の姿を模索してきた。ファデル氏の挑戦は、自身の個人的興味(彼は腕時計マニアの情報サイトHodinkeeにも出資している)と、彼が思い描く技術革新の次なる波を追いかけることだ。

「私たちは資金提供できるメンターを自称しています」とファデル氏はこの最新の冒険について語っている。その理念は「本当に難しいことをやろうとしているすべての企業の支援」だ。

ファデル氏とその仲間たちは、将来大きな投資分野になると見込んだ本当に難しい事業をいくつか特定した。それには、すべてのものの電動化、あらゆるもののデジタル接続、バイオマニュファクチュアリングの推進、廃棄物の廃絶などがある。

同社の広報担当者によれば、これらのテーマがFuture Shapeのポートフォリオに含まれる200社を超える企業との活動の、すべてではないまでも一部を突き動かしているという。

ファデル氏の取り組みの中でも、あらゆるものをプログラマブルに電動化するというものがよく知られている。この分野には、ファデル氏が大きく期待を寄せる企業がいくつかある。マイクロLEDを製造するRohinni(ロヒンニ)、デジタルモーターを製造するTurntide(ターンタイド)、ミクロ電子工学用のスイッチを製造するMenlo Micro(メンロー・マイクロ)、冷却用半導体チップセットを製造するPhononic(フォノニック)だ。

こうしたテクノロジーはどれもが、機械工学技術がデジタル化されプログラム可能になってきたこの数十年間の進歩の中で、電球のような大きな関心を集めることがなかったものだ。

ファデル氏は、Apple(アップル)とGoogle(グーグル)に所属していたころから培ってきた製造業界での自身の経験が活かせるFuture Shapeは、これらのテクノロジーを商品化できる独特な立ち位置にあると話す。

「私たちは原子と電子(ソフトウェア)のギャップを埋め、これらのシステムをそこへ適合させます」とファデル氏はいう。

その方針は、ほぼあらゆるものに広がるネット接続性とデジタル化の力を借りた技術開発に当てはまる。

「世界のあらゆる地域に、4Gまたは5Gの接続が拡大します。【略】そして、情報収集ができる安価なセンサーをスマートフォンに搭載し、ソフトウェアやクラウドサービスと統合できるようになります。【略】そこから新しい産業の誕生を可能にするデータが得られるのです」。

低コストのセンサー、バッテリー、電力の普及が拡大すれば、農業から建築までさまざまな新市場に活用可能なデータ収集の機会が増え、金融や保険といったすでにデータ依存度の高い産業が、よりよいサービスを生み出せるようになるとファレル氏は話す。

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それが、Understory Weather(アンダーストーリー・ウェザー)に同社が投資する理由の1つでもある。気候変動駆動の次世代保険会社とファレル氏が呼ぶ、スマート気象観測所とデータで事業を開始した企業だ。

Future Shapeのポートフォリオには、この他にもファレル氏のバイオマニュファクチュアリングや廃棄物の廃絶に賭ける気持ちを反映した企業がある。Impossible Foods(インポッシブル・フーズ)の初期投資者でもあるファデル氏は、たとえば代替タンパクを使った代替肉の開発に使われている数々の合成生物学的手法は、代替皮革の製造や現在使われている化学物質に取って代わる新たなバイオプラスティックの開発に発展させることが可能だと考えている。

Future ShapeがMycroWorks(マイクロワークス)に投資したのも、そのためだ。数多くのセレブや業界の支援者も参加して2020年11月にクローズした資金調達では、4000万ドル(約41億円)を集めた。

「バイオマニュファクチュアリングは始まっています。しかも驚異的な速度で始まっています。なぜなら私たちはこの惑星の大きな力、つまり生命を味方に付けているからです」とファレル氏。「市場は、進むべき方向に進めるべきです。そうすれば、みんな追従します。Impossible Foodsがしているように」

さらにファデル氏は、廃棄物の流れに関連するサプライチェーンの見直しという膨大な好機と、循環経済の創造における数多くの好機を見すえている。Sweetgreen(スイートグリーン)に代表されるレストラン産業と、製品のパッケージに革新的なバイオプラスティックを使用する企業がこれに当てはまる。

「もう1つ私たちが注目しているのは廃棄物です。どのように廃棄物を減らし、どのように廃棄物をリサイクルするか。私たちはそこを追究していますが、廃棄物は大きな問題です」とファレル氏は話す。

そこにおける数々のチャンスは、経済研究を行い、企業の二酸化炭素と物質的物理的な副産物の排出に関するライフサイクル分析を実施する企業から成長していく。「地球を掘らずに、廃棄物を採掘する」とファデル氏は、数十億ドル(数千億円)規模の採掘産業に取って代わる可能性を語った。

Future Shapeのポートフォリオに含まれる企業はほとんどがアーリーステージだが、エグジットを果たした企業もいくつかあり、さらに多くの企業がその準備中であるとファデル氏はいう。

「お金のためではありません。私たちは変化のために行っています」とファデル氏。「これを正しく行えば、お金がついて来ます。私の仕事はリミテッドパートナーを説得することではありません。【略】私たちは信念に基づいて活動しているのです」。

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(翻訳:金井哲夫)

購入品ごとの二酸化炭素排出量を自動計算し地球への影響をすぐに確認できるアプリYAYZY

新年を前に、多くの人が環境のために何かできないと考えている。そしていま、英国のスタートアップは環境への影響を個人的なものにしたいと望んでいる。

Yayzy(イェイジー)は、ユーザーが購入するものの環境への負荷に取り組むために、文字通り銀行口座にリンクするiOSアプリ「YAYZY Track Carbon Footprint」を立ち上げた(Android版も準備中だ)。ユーザーが購入するもののCO2排出量を自動で計算し、そのトータルの月間CO2排出量をユーザーに示すのにオープンバンキング基準を通じた決済データを使っている。これによりCO2排出量の算出がより正確で、個人に合ったものになり、ユーザーは自身の買い物支出額を地球への影響とすぐさま結びつけられる。

YayzyはAntler Venture Capital、SeedrsそしてCoreAngels Impact Fundから90万ポンド(約1億2600万円)を調達した。ユーザーは購入したもののCO2排出量を確認し、すぐさまアプリで提供されているCO2排出オフセットのEcosphere Plusを使ってCO2排出相殺を選ぶことができる。アプリではユーザーはまた、CO2排出を減らすためのヒントや近所のエコフレンドリーな小売店の情報、最も環境への負荷が大きいライフスタイルについての知見を得ることができる。

Yayzyの競合相手は、リアルタイムのCO2排出トラッカーCoGoDoconomyそして間もなく展開が始まるTredなどだ。

Yayzyはライバルと違うアプローチをとっている。ユーザーのすべての支出を1カ所に集め、アイテムごとのCO2排出量を表示する。これまでのところ競合他社にこの機能はないとのことだ。

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これは随時、またはアイテムごとに実行でき、あるいはCO2排出オフセットプロジェクトかユーザー自身の気候ポートフォリオへの月間サブスクにサインすることでも行える。ポートフォリオではより「全体的」影響のために複数のプロジェクトをまとめることもできる。こうしたプロジェクトはすべて厳格な基準に基づいて注意深く選ばれ、国際連合の持続可能な開発目標を前進させる。

基本的な炭素データに関しては、YayzyはGoogle(グーグル)やMicrosoft(マイクロソフト)、英国政府、米国政府などが活用しているVital Metricsを利用している。

Yayzyの共同創業者でCEOのMankaran Ahluwalia(マンカラン・アルワリア)氏は声明文で下記のように述べた。「ロックダウンが緩和されるにつれCO2排出は少しずつ増えましたが、YAYZYは環境への影響を管理するためにみんなにコントロール席に座ってほしいと考えています。多くの調査で、人々の大半は手遅れになる前に気候変動を解決したいと考えていることが明らかになっています。しかしそうした考えを阻むものが多々あります。当社のソリューションは、環境への影響を『身近なもの』にして極めて簡単に取り組めるようにするもので、すべてはスマホ経由でできます」。

アルワリア氏ははかつてInfosysのテクノロジーアナリストで、オルタナティブクレジットのための貸付プラットフォームを構築した。共同創業者でCTOのCristian Dan(クリスチアン・ダン)氏は以前ディスカウントプラットフォームを構築し、同じく共同創業者でCFOのPedro Cabrero(ペドロ・カブレロ)氏はUBSCitigroupで株式売買に携わり、大手オンライン薬局をメキシコで共同設立した。

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(翻訳:Mizoguchi

Klimaは一般消費者が二酸化炭素排出量を簡単に把握できるカーボンオフセットアプリをリリース

Klima(クリマ)は消費者が二酸化炭素排出量を把握し、相殺(オフセット)することを支援するアプリだ。共同創業者であるAndreas Pursian(アンドレア・プルシアン)、Markus Gilles(マークス・ジル)、Jonas Brandau(ジョナ・ブランドー)の3氏は、最初に起業家としてHyperで成功を収めた。

彼らが開発したモバイル雑誌出版ツールキットは2017年にMicに売却されたが、それは10年近く前から始まった一連のコラボレーションの最新の成果にすぎなかった。

Klimaの最高経営責任者であるジル氏は2020年初めのインタビューで「私たちはテクノロジーや、社会を改善するためにできるあらゆる素晴らしいことに魅了されました」と述べた。

2020年12月に立ち上げられたKlimaは、ある意味その努力の集大成だ。

ジル氏とプルシアン氏は最初大学で出会い、後にブランドー氏も合流し、最初のアプリであるPinoを立ち上げた。これは、ドイツのAngela Merkel(アンゲラ・メルケル)首相もプラットフォームの初期の寄稿者として参加した、モバイルベースのビデオ論説ページだ。

政治やメディアとのつながりはMicに売却された出版プラットフォームHyper、そしてKlimaでも継続された。このアプリで3人の共同創業者は、メディアに精通した強みを消費者の行動の変化とオフセットにより二酸化炭素排出量を削減および中和させる目的に利用した。

「私たちが社会を再建している間、私たちにはオフセットという救済手段が与えられ、時間を稼ぐことができます」とジル氏はいう。「今後10年間で50%の排出削減を達成する必要がありますが、これは非常に困難な作業です。あらゆる気候変動の解決策をただちに駆使する必要があります」。

Klimaは他のアプリと同様に、排出量を削減する重要な個人的なステップの1つが食事だと考えている。クルマを自転車や電気自動車に置き換えたり、ファストファッションを減らして古着を購入したりすることもインパクトがある。

Klimaのアプリには二酸化炭素計算機が含まれており、カーボンフットプリントを測定し、ユーザーはパーソナライズされた月額サブスクリプションをカーボンオフセットに使える。同社のアプリは、排出量を削減するためのライフスタイルのヒントも提供する。最後にこのアプリはソーシャルシェアリング機能も提供し、気候変動の戦士の候補が温室効果ガスの排出と気候変動を減らすための戦いへ参加することを可能にする。

「私たちはいま、特別な状況に置かれています」とジル氏はいう。「私たちが創業者として行っていること。私たちは、パンデミックだからといって気候危機が一時停止しているわけではないことを知っています。私たちは、パンデミックが終わったときに、なおそこにいるために十分な資金を調達しました」。

同社にはWoogaの創業者であるJens Begemann(イェンス・ベグマン)氏、Blinkistの共同創業者であるNiklas Jansen(ニクラス・ジャンセン)氏、Pitchの創業者であるChristian Reber(クリスチャン・レーバー)氏、そしてe.ventures、HV Holtzbrinck Ventures、468Capitalなどの機関投資家が投資している。

これまでにKlimaは580万ドル(約6億円)を調達した。同社はユーザーに3種類のオフセットを提供している。1つ目は、植樹プロジェクトのような自然の解決策。2つ目は、太陽光発電設備のような技術ベースの解決策。3つ目は、薪ストーブを家庭用の電気ストーブまたはガスストーブに置き換えるなどの社会的解決策だ。

「これまでのところ、このアプリは大きく前進しています」とジル氏は述べた。同社のアプリは現在、米国、カナダ、豪州、ニュージーランドを含む18カ国で公開されており、現在市場に出回っている気候オフセットアプリの中で最大のユーザーベースを持っていると同社は語った。

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(翻訳:Mizoguchi

住宅用再生エネ開発を行うSwell Energyが分散型電力プロジェクト建設に向け470億円調達

住宅用再生可能エネルギー、エネルギー効率、貯蔵技術に関する設備据え付け及び管理を行うSwell Energy(スウェルエナジー)が4億5000万ドル(約470億円)を調達する。調達によって建設する4つの仮想発電所は、太陽光発電能力とともに大量のエネルギー貯蔵能力を備える。

これは、再生エネ開発の分散性と、僻地から電力網へ供給する大規模な発電プロジェクトから実際の消費地に散らばる小規模な点としてのソリューションへの移行の兆候だ。

このプロジェクトは、200MWhの分散型エネルギー貯蔵と100MWの太陽光発電能力の組み合わせだと同社は述べた。

ロサンゼルスを拠点とするSwellは3つの州の電力会社から、分散可能なエネルギー貯蔵施設を確立するよう委託を受けた。同社は、約1万4000の太陽エネルギー発電および貯蔵システムの構築と集約を通じて達成する予定だ。目標は地域の電力網をより効率的にすることだ。

上記のプロジェクトや同社が今後開始を見込むプロジェクトに資金を供給するため、SwellはAres Management CorpおよびAligned Climate Capitalと契約を結び、4億5000万ドル(約470億円)を目標とする仮想発電所の融資ビークルを組成した。

この融資会社は、全米で太陽光発電と蓄電池の複合契約のような電力プロジェクトの開発を支援する。

Swellは今後20年間で、3000GWh以上のクリーンな太陽光エネルギー発電の開発を目標としている。顧客は後で使用するために1000GWhを貯蔵し、貯蔵されたエネルギーから200GWhを電力網に送り返す。

カリフォルニアのような州を悩ませてきた電力不足や計画停電の影響を受けにくい、より弾力性のある電力網を構築できる可能性がある。

「電力会社は貴重な『グリッドエッジ』資産として分散型エネルギー資源にますます注目しています」と、Swell EnergyのCEOであるSuleman Khan(スールマン・カーン)氏は声明で述べた。「個々の家や企業を仮想発電所のネットワークに組み入れることで、Swellは顧客の所有コストを削減し、電力会社が電力網全体の需要を管理できるよう支援できます」とカーン氏はいう。「SwellからGridRevenueを受け取ることで、VPPプログラムに参加している顧客は、太陽光エネルギー発電と貯蔵システムにかかる費用を削減しながら、地域の停電リスクを軽減し、停電後も家庭や企業に安全に電力を供給できます」。

Swellは、仮想発電所への融資ビークルの立ち上げに加え、住宅所有者の住宅エネルギーシステムに融資する方法を提供する。発電所を稼働させるには住宅所有者からの賛同が必要となる。住宅所有者の場合、電力をグリッドに供給することでいくらかお金を取り戻すことができる。

これは企業、顧客、Swellのシード投資家であったUrban.usのようなアーリーステージの投資家いずれにもメリットがある。

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(翻訳:Mizoguchi

Sidewalk Infrastructure Partnersが104億円の投資でカリフォルニア州の電力網の信頼性向上を目指す

Alphabet(アルファベット)のSidewalk Labs(サイドウォークラボ)からスピンアウトした企業で、次世代のインフラへ資金提供し、インフラを開発・所有する企業であるSidewalk Infrastructure Partners(サイドウォーク・インフラストラクチャー・パートナーズ)が、電力網の効率性と信頼性の向上に焦点を当てる最新のプロジェクトであるResilia(レジリア)を発表した。

Sidewalk Infrastructure Partners(SIP)は、スタートアップのOhmConnect(オームコネクト)への2000万ドル(約21億円)の株式投資と、カリフォルニア州全体でOhmConnectのテクノロジーとサービスを活用するデマンドレスポンスプログラムの開発への8000万ドル(約83億円)のコミットメントを通じて、デマンドレスポンステクノロジーの領域で先行し、全国で安定したエネルギー網を確保するための足がかりとする狙いだ。

「私たちは仮想発電所を作ろうとしています」と、Sidewalk Infrastructure Partnersの共同CEOであるJonathan Winer(ジョナサン・ウィナー)氏はいう。「発電所は典型的にプロジェクトファイナンスによりますが、仮想発電所では基本的にスマートデバイスの展開に助成金を提供します」。

ウィナー氏自身がインタビューで認めたように、人々がグリッドからの信号に応答するという考えは新しいものではない。しかし、Sidewalk Infrastructure PartnersがOhmConnectと並んで、プッシュ通知と支払いの組み合わせにより個人住宅の顧客にインセンティブを展開するために取っているアプローチは斬新だ。「人々が最初に焦点を当てたのは、商業用および工業用の建物です」と同氏は説明する。

SidewalkがOhmConnectのアプローチに引き付けられたのは、OhmConnectの経営陣が持つエンドユーザーに関する知見だった。同社の最高技術責任者はZyngaの元最高技術責任者だったとウィナー氏は指摘した。

「OhmConnectプラットフォームの優れている点は、参加を促進することです」とウィナー氏はいう。「誰でもこのプログラムに登録できます。あなたがOhmConnectユーザーだとします。停電が発生した場合に、その後2時間サーモスタットを止めると5ドル(約520円)がもらえます」

Sidewalk Infrastructure PartnersのResilia発電所のイラスト(画像クレジット:Sidewalk Infrastructure Partners)

サンフランシスコに本拠を置くデマンドレスポンスの会社であるOhmConnectは、すでに同社のプラットフォームに15万人のユーザーを抱える。過去1年間にカリフォルニアの電力網を襲った電圧低下と停電の際、顧客に約100万ドル(約1億円)を支払った。

Resiliaの旗の下でのOhmConnectとSidewalk Infrastructure Partnersの最初のコラボレーションは、2社が「Resi-Station」と呼んでいるものだ。これは、スマートデバイスによりエネルギー削減目標を達成する容量550MWのデマンドレスポンスプログラムだ。

本格稼動の際には、このプロジェクトは世界最大の住宅用仮想発電所になると2社は述べた。

「OhmConnectは、多くの個人消費者の節約分をつなげることで、グリッドへのストレスを軽減し、停電を防ぐことができることを示しました」と、OhmConnectのCEOであるCisco DeVries(シスコ・デブリーズ)氏はいう。「SIPによるこの投資により、数十万人の新たなカリフォルニア州民にエネルギー節約の恩恵をもたらすことができ、同時に将来のスマートエネルギープラットフォームを構築することができます」。

カリフォルニア州の電力会社は、得られる限りすべての助けを必要としている。夏の間、州の過去最高気温に何日か直面したとき、熱波と計画停電が州全体に広がった。カリフォルニア州の住民は、すでに住宅用電力価格としては米国内で最も高い1kWh当たり21セント(約22円)を払っている。全国平均は13セント(約14円)だ。

2020年の初めにストレスがピークに達したとき、OhmConnectは総エネルギー使用量のほぼ1GWhを削減するよう顧客に働きかけた。これは、60万戸を1時間グリッドから外すのと同じだ。

Resiliaプロジェクトが大規模に展開された場合、2社は5GWhのエネルギーを節約できると見積る。これは、2020年の停電によるエネルギー不足全量であり、380万ポンド(約1700トン)の石炭を燃やさないことに相当する。

今後、エネルギーグリッドが集中型電力から分散型・非集中型電源に移行するにつれ、Resiliaのエネルギー効率とデマンドレスポンスプラットフォームが他のインフラのイノベーションも進めると思われる。OhmConnectはそのプラットフォームの不可欠な部分であるように見える。

「以前はエネルギーグリッドは単方向でした。近い将来、グリッドは双方向で応答性が高くなると考えています」とウィナー氏は説明する。「私たちのアプローチでは、投資はこれに限られません。複数の投資を行う可能性があります。ビークルトゥグリッド、マイクログリッドプラットフォーム、ジェネレーティブデザインが重要になります」。

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(翻訳:Mizoguchi

カーボンオフセットを推進するドイツの自動車サブスクプラットフォームfnn.autoが25.2億円調達

所有する代わりにサブスクリプションで自動車を提供し、カーボンオフセットを推進するFinn.auto(フィン・オート)は、シリーズA投資ラウンドで2000万ユーロ(約25億2000万円)を調達した。Tier Mobility(ティア・モビリティー)にも出資しているWhite Star Capitalと、Zalando(ザランド)の共同創設者Rubin Ritter(ルービン・リッター)氏、David Schneider(デイビッド・シュナイダー)氏、 Robert Gentz(ロバート・ジェンツ)氏が今回このラウンドに新規に参加している。以前からの投資者も全員参加した。

この資金は、設立1年に満たず、自動車サブスクリプションをわずか1000件販売しただけの時期にもたらされた。同社は、Deutsche Post AG(ドイツポスト)とDeutsche Telekom AG(ドイツテレコム)とも提携している。

同様のサブスクリプションサービスは、 Drover(ドローバー)、LeasePlan(リースプラン)、Wagonex(ワゴネクス)といったプロバイダーを通じて数多くの自動車メーカーからも提供されている。

英国に拠点を置くスタートアップDorverは、5つのラウンドを通じて合計4000万ドル(約4160万円)を調達した。最新のシリーズB投資ラウンドには、Shell VenturesとCherry Venturesも参加している。さらに、Audi on Demand(アウディ・オン・デマンド)、BMW、Citroën(シトロエン)、DS、Jaguar Carpe(ジャガー・カルペ)、Land Rover Carpe(ランドローバー・カルペ)、Mini(ミニ)、Volkswagen(フォルクスワーゲン)、Care by Volvo(ケア・バイ・ボルボ)といったブランド自動車メーカーによるサービスも存在している。

デジタルで推進されるサブスクリプションサービスには、従来型の自動車販売モデルを崩壊させる潜在力があり、常に新しいスタートアップが市場参入を果たしている。

finn.autoのモデルは、環境意識の高いミレニアル世代に訴えるものとなっている。サブスクリプション1件ごとに、同社はその車両の二酸化炭素排出量をオフセットする。つまり、利用者はカーボンニュートラルなかたちでクルマに乗れるということだ。現在同社は、純電気自動車の車種も増やし、ClimatePartner(クライメットパートナー)と組んで、一部地域の気候保護や開発プロジェクトを支援している。

ミュンヘンを本拠地とするこのスタートアップで重要な役割を果たしているのが、車両管理工程と顧客対応の自動化だ。つまり、こうしたサブスクリプション関連の作業を、ずっと簡単かつ安価で行うこgとができる。

Finn.autoのCEOであり創設者のMax-Josef Meier(マクス・ヨーゼフ・マイヤー)氏はこう話す。「このような高い手腕を持つ投資家に参加してもらえたこと、そして以前からの支援者である投資家のみなさんが今回のラウンドで信頼を固めてくれたことに、大変にうれしく感じています。自分のクルマで移動することは、インターネットで靴を買うのと同じぐらい手軽なものとなります。私たちはすでに、豊富なブランドの自動車を取り揃えていますが、どれも私たちのプラットフォームで、わずか5分で柔軟なランタイム環境からオンライン注文いただけます。その後も、車をご自宅の玄関先までお届けする利便性を誇ります」。

White Star CapitalのジェネラルパートナーであるNicholas Stocks(ニコラス・ストックス)氏は「自動車販売分野には、時代遅れの顧客体験を全体的に洗練させる、また自動車業界のAmazon(アマゾン)になるという大きなチャンスがあります。その点において、利便性、柔軟性、価値、持続可能性を提供するFinn.autoは、投資対象として秀でています」と付け加えた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Finn.autoサブスクリプションカーボンオフセット

画像クレジット:finn.auto

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(翻訳:金井哲夫)

ビル・ゲイツ氏が米国が気候変動対策のリーダーになるための案を公表し3630億円規模の予算を提言

Microsoft(マイクロソフト)の共同創設者で世界有数の富豪であり、世界有数の貢献を果たした慈善事業家であるBill Gates(ビル・ゲイツ)氏は、自身のブログで気候変動との戦いで米国がリーダーシップを取るための広範な新提案を公表した

「私たちは世界の物理経済を変革しなければならず、それが、他のさまざまな物事と相まって、創意工夫、資金、連邦政府の関心を強力に呼び込みます。必要な研究を推進できる資源を持つ国は、この国以外にはありません」とゲイツ氏は書いている。

Joe Biden(ジョー・バイデン)新政権が政府を引き継ごうというこの時期は、ゲイツ氏が提言を行うには絶好のタイミングだった。引退間際のDonald Trump(ドナルド・トランプ)政権は、ことさら気候変動対策に抵抗して規制を緩和し、気候変動対策を目的とした国際協定からも脱退(未訳記事)し、人為的な気候変動の脅威を認めれば多くのものを失う産業界のまことしやかな論拠に傾倒し、科学を一蹴してしまった。

ゲイツ氏は、クリーンエネルギー研究のための支出を25億ドル(約2600億円)と大幅に増やして、政府の医療向け支出と並ぶ35億ドル(約3630億円)に引き上げるよう訴えている。それによりクリーンエネルギー化計画を進めつつ、37万件以上の雇用を創出(Breakthrough Energy記事)できるとゲイツ氏は指摘する。

ゲイツ氏によれば、米国人は政府が気候変動関連の研究に充てている予算よりも多くの金額を、わずか1カ月で消費しているという。

単に研究予算を増やせというだけでなく、マイクロソフトで身を立てたこの大富豪は、「エネルギー改革のための国立研究所」のネットワーク構築も呼びかけた。

「気候変動解消のためのイノベーションを導く上で米国が世界に貢献できることの中で、これがもっとも重要」だとゲイツ氏は書いている。

世界のバイオ医療研究に最も多く出資しているゲイツ氏は、米国立衛生研究所をモデルにした特定分野の個別の研究所をとりまとめるエネルギーイノベーション研究所の設立を提言した。1つは輸送の脱酸素化研究所が想定されるが、その他にも、エネルギー貯蔵、再生可能エネルギー、二酸化炭素の回収と管理などが考えられるとゲイツ氏。

さらに同氏は、各団体は研究所から生まれたイノベーションの商品化を推進すべきだと話す。「研究所の中で電気の新しい貯蔵方法を開発するだけでは不十分です。何らかのインパクトをもたらすためには、現実社会で実用性のある手に入れやすいものでなければなりません。それを確かなものにする最良の方法は、研究者たちに、エンドユーザーを念頭に置いて研究を開始するように促すことです」。

そして、こうした研究所を国中に作るようゲイツ氏は求めている。それはちょうど、米エネルギー省やNASAが、米国各地に研究施設を分散させているのと同じだ。

研究施設の設立と予算の倍増に加え、ゲイツ氏は税制優遇措置と、より多くのクリーンエネルギーのためのツールの市場を創設できるエネルギー基準作りも提案している。

現在すでに、Clean Energy Innovation and Jobs Act(クリーンエネルギー改革および雇用法、Breakthrough Energy記事)やAmerican Energy Innovation Act(アメリカエネルギーイノベーション法)(Breakthrough Energy記事)が米国議会で成立されようとしている。これらは米国連邦政府を、より集中的な対策へ迅速に向かわせる助けとなるとゲイツ氏は考えている。しかし、この2つの法案はどちらも膠着状態にある。

ゲイツ氏の気候変動対策の提言書には、米国の大手企業40社も署名し、より強力に気候変動対策をとるよう訴える次期バイデン政権への公開書簡も添えられている(Breakthrough Energy記事)。

「私たちのコミュニティも、私たちの経済も、破壊的なパンデミックのみならず気候変動によるコスト上昇を耐え忍んでいます」と署名した企業は訴える。「前代未聞の山火事、洪水、ハリケーンなどの異常気象は、命と生活に深刻な影響を与えています。今行動しなければ、未来の世代は、環境、経済、健康の面でさらに大きな損害を被るこになると科学が証明しています」。

米国時間12月3日、医学雑誌The Lancet(ザ・ランセット)は、環境激変、公害、気候変動に関連する健康被害の大規模調査の報告書を公開した。

熱波、大気汚染、異常気象は人間の健康被害を増大させていると報告書は伝えている。National Public Radio(npr記事)も伝えていたが、同報告書では死亡、疾病、化石燃料の燃焼との間に明確な因果関係があることを示している。

「炭素を排出する活動や政策は大気汚染、食品の品質低下、住宅の質の低下を招き、それが恵まれない人々に特に過大な健康被害を与えている」とThe Lancetの報告書の著者は分析している。

分断された政府であっても、米国の温室効果ガス排出量削減に向けてバイデン政権にできることは多い。

TechCrunchでもお伝えした(未訳記事)が、インフラ関連の刺激策には、そのすべてにおいて、気候変動緩和関連テクノロジー導入のための予算を大きく取ることが可能だ。

「短期的に発生が予想される大量の深刻な気候関連の問題に【略】実際には再生可能エネルギーは影響しません」と、次期大統領のアドバイザーは話している。

だが、2021年1月、ジョージア州の決選投票の結果、現在は共和党優位の上院で、民主党が与党の座を奪取できたなら、強力な気候変動対策(ゲイツ氏の提言も含まれる可能性がある)が議題にのぼることが期待される。

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画像クレジット:Mark Lennihan / AP

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(翻訳:金井哲夫)

京大発スタートアップ「バイオーム」が環境省「気候変動いきもの大調査(冬編)」に協力

京大発スタートアップ「バイオーム」が環境省「気候変動いきもの大調査(冬編)」に協力

環境省は11月26日、バイオーム提供のいきものコレクションアプリ「Biome」(バイオーム。Android版iOS版)を用いた「気候変動いきもの大調査(冬編)」を発表した。開始は2020年11月28日。同企画は、地球温暖化の影響で分布(住む場所)が変化している可能性がある生物をスマホアプリで記録していき、地球温暖化の影響を明らかにしていくとともに、地球温暖化対策アクションを呼びかけるというもの。また企画開始となる28日18:30~20:00から、キックオフライブを配信する

  • 主催:環境省
  • 提供:バイオーム
  • 実施期間:2020年11月28日~2021年1月31日(結果公表は3月末)
  • 予定実施エリア:全国
  • キックオフイベント:2020年11月28日18:30~20:00予定(詳細
  • 特設サイト:環境省COOL CHOICE 気候変動いきもの大調査

参加方法

  1. Biomeアプリ(Android版iOS版)をインストール
  2. ホーム画面で気候変動いきもの大調査のバナーをタップ
  3. 気候変動いきもの大調査に(アプリ内で)参加
  4. 対象のいきものを撮影してアプリに投稿
  5. クエストを達成してバッヂを獲得すると賞品に応募できる

「気候変動いきもの大調査」は、Biomeアプリ内で参加できるイベントとなっており、参加者は「クエスト」と呼ばれる様々な課題に挑戦できる。クエストは、全25個、「調査クエスト」と「啓発クエスト」の2カテゴリーに分かれている。

調査クエストは、気候変動の影響を受けている可能性のある生物種を見つけて課題のクリアを目指すクエスト。ユーザーが集めた生物のデータを過去のデータとあわせて解析し、地球温暖化の影響を調査する。

啓発クエストは、エコな生態を持つ「いきもの」を取り上げ、その生態や行動から我々人間がまねて地球温暖化対策を学ぶというコンセプトのクエスト。実際に対象のいきものを発見し、その賢い生き方を観察して、日々の暮らしに活かしてほしいとしている。

なお、いきもの探しをする際には、新型コロナウイルス感染症対策として、3密の回避、マスクの着用、うがい・手洗い、温かい服装の実践を呼びかけている。

京大発スタートアップ「バイオーム」が環境省「気候変動いきもの大調査(冬編)」に協力

Biomeは、日本国内のほぼ全種(約9万種)の動植物を収録したいきものコレクションアプリ。最新の生物名前判定AIに加えて、図鑑・地図・SNS・クエストなどいきものにまつわる様々な機能を採用している。誰でも無料で使用できることから、今後も、多種多様な生き物の情報収集・調査・研究への展開が期待されているという。

バイオームは、世界中の生物・環境をビッグデータ化し「生物多様性市場」を創り出すことを目指し、2017年に京都大学技術イノベーション事業化コース最優秀賞の受賞を経て、2017年5月に設立された京都大学発のスタートアップ企業。

生物多様性の価値を社会に浸透させることを目指して、スマホカメラでいきものを撮影して記録するBiomeの開発・運営を手がけている。同アプリは、2019年4月末の正式版リリース以来、現在までに22万人以上のユーザーが利用しているという。

またアプリ内で投稿されたデータは、生物多様性の基盤情報として活用しており、保護団体や研究機関などの要望に応じデータを提供している。

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石油由来樹脂・合成紙の使用量を大きく削減可能な新素材「LIMEX」開発のTBMが20.6億円を調達

石油由来樹脂・合成紙の使用量を大きく削減可能な新素材「LIMEX」開発のTBMが20.6億円を調達

TBMは11月24日、第三者割当増資として、20.6億円の資金調達を実施したと発表した。

引受先は、アデランス、島精機製作所、Spotlight 1号(日本テレビ放送網、博報堂グループのquantumによる共同出資)、摂津倉庫、DCMホールディングス、電通グループ、日本コルマー、薬王堂、ヨドバシホールディングスなど(五十音順)。

今回の第三者割当増資の目的は、循環型社会の実現に向けた事業の発展を目指し、石灰石など無機物を主原料とするLIMEX(ライメックス)素材や、再生材料を50%以上含む資源循環を促進する素材「CirculeX」といった環境配慮素材の用途拡大、資源循環を実現するサプライチェーンの強化。関連領域における豊富なリソースを有する事業会社と連携することで、シナジーを創出し、資源循環のシステム構築を進める。

具体的には、同社の環境配慮素材を活用したパッケージなど製品の共同開発や導入、店頭など販売チャネルにおける販売拡大、市場における弊社素材の認知拡大のためのマーケティング、回収・再生に向けたサプライチェーンの構築などにおいて連携を進める。

LIMEXは、炭酸カルシウムなど無機物を50%以上含む、無機フィラー分散系の複合素材。日本でも自給自足可能で枯渇リスクの低い石灰石などの無機物を主原料としており、耐水性を備えることからプラスチックや紙の代替素材として、国内で5300以上の企業・団体で導入されているという。従来の素材の製造に必要な石油由来プラスチックや水、木材などの資源量を大きく抑制できることから、メニュー表(印刷物)やマスクケースなどで活用されているそうだ。単価の安い石灰石を主原料とすることで価格競争力を有する点も特徴としている。

また、昨今のプラスチック問題を背景に、世界中の既存設備で製造と活用ができる「LIMEX ペレット」の海外生産を本格的に開始。中国・河南省やモンゴル、東南アジアなどにおいて地産地消型のサプライチェーンを構築しながら、グローバル展開を推進している。

TBMは2020年、再生材料やプラスチック代替素材の世界的なニーズの高まりに対して、排出された廃プラスチックを適切に再生利用することを目的にした、再生材料を50%以上含む資源循環を促進する素材「CirculeX」を立ち上げ。これまで、LIMEX素材の回収・資源循環については、企業や自治体と協働して仕組みづくりを進めてきたが、さらに効率の良い循環型社会の実現に向けて、CirculeXも含めた資源循環モデルを構築していくとしている。

2020年10月には、再生材料を98%使用し、従来品と比較してCO2削減が可能なCirculeX製のごみ袋を販売開始。さらにTBMグループのバイオワークスとTBMは、ポリ乳酸の繊維でつくられた植物由来で肌に優しいマスク「Bio Face」を共同開発した。

またTBMは、一般消費者向けのEC「ZAIMA」を開始し、「Bio Face」やLIMEX製品などを販売している。

同社は今後も、企業や団体だけでなく、一般消費者も含めた様々なステークホルダーの環境配慮行動を支えるために、エコロジーとエコノミーの両立を追求し、サステナビリティ領域におけるイノベーションを推進していくとしている。

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タグ:環境問題(用語)CirculeXTBM代替プラスティックLIMEX資金調達(用語)日本(国・地域)

バイオ素材のGenomaticaがナイロン加工のAquafilとの提携し再生可能な消費者製品生産

バイオ素材の製造技術を開発しているGenomaticaと、ナイロン素材を大量生産しているAquafilが、新たなデモンストレーション用施設で提携した。この動きは消費者向け包装製品の持続可能性という世界的な問題に、大きな意味を持つかもしれない。

ナイロン6は、歯ブラシの毛やパンティストッキングや、カーペットのような産業素材、その他の丈夫さを要求されるファブリックなど、あらゆるものに使われている。

しかしGenomaticaの素材を使えば、再生可能な製品を開発可能になる。多くの企業がクリーンなサプライチェーンと製品寿命が尽きても環境にネガティブな結果をもたらさない製品を求めている中で、そんな市場に送り出すにふさわしい商品を作れるだろう。

両社の契約はGenomaticaの生産能力を50倍にし、同社の能力を大きく拡張する。

繊維産業は9600億ドル(約99兆6000億円)のビジネスで、世界最大の汚染源の1つでもある。その害は、化学的処置と温室効果ガスの排出の両面にある。世界経済フォーラムが引用しているデータによると、繊維産業は毎年、12億トンの二酸化炭素を排出し、自動車産業と肩を並べている。業界のデータによると、ナイロンの製造だけでも年間に約6000万トンの温室効果ガスを排出している。

ヨーロッパの企業であるAquafilとの複数年の協定により、両社の既存の関係が拡張される。2020年始めに両社は、バイオナイロン6の前身となる素材の最初の1トンをパイロット事業で作った。今回はそれが、パイロットからデモンストレーションスケールに移行し、Genomaticaは数社のブランドに製品を供給できるまでに前進する。

その中の1社である衣料品メーカーのFar Eastern New Centuryは、Genomaticaの製品を同社の衣料に使っている。同社によると現在は、その他のパートナーシップの確立にも努めているという。

Genomaticaを支えるのはCasdin CapitalとViking Global Investorsで、後者はいまでもGenomaticaの最大の株主だ。また有機体工学のGinkgo Bioworksともパートナーしている。

「バイオナイロンは、今何百万種類もの応用製品に使われている素材をリプレースできる。私たちの調査によると(Genomaticaリリース)、現在、健康と経済の両面で大混乱があるにもかかわらず、米国民は依然として持続可能性を優先している。米国民という大きなスケールで私たちはブランドパートナーたちに、持続可能性という目標を満たす重要な方法を提供し、彼ら自身を他社と差別化して、盛り上がっている消費者の要求に応えることができる」とGenomaticaのCEOであるChristophe Schilling(クリストフ・シリング)氏は語る。。

Aquafilはいま、プラントをスロベニアに作っている。そこでGenomaticaのバイオ素材の前身的素材を、バイオナイロン6の糸や、フィルム、工業用プラスチックなどに変換する。

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タグ:GenomaticaAquafilファッション持続可能性

画像クレジット:Getty Images under a GraphicaArtis license.

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(翻訳:iwatani、a..k.a. hiwa

2020年に全世界で増えた発電能力の約90%が再生可能エネルギー

国際エネルギー機関(IEA)によると、新型コロナウイルスのパンデミックへの対応によって引き起こされた電力セクターにおける減速にも関わらず、再生可能エネルギーは2020年にしっかりと成長し、2020年増えた発電能力の約90%を占めた。

IEAの「Renewables 2020」によると、中国と米国で新しい再エネプロジェクトが急増し、世界の新規電力のうち約200ギガワットを占めた。

増加したのは主に水力、太陽光、風力だ。風力と太陽光の発電資産は中国と米国の両方で30%増加する見込みで、これは開発業者が期限切れ予定のインセンティブを利用するためだ。

IEAはインドと欧州連合でも再エネ発電能力が10%増加すると見込む。これは2015年以来業界で最も速い成長だ。

供給増加の一因は新型コロナのパンデミックにより遅延していたプロジェクトの試運転開始であり、これによりサプライチェーンが混乱し、建設が停止された。

IEA事務局長のFatih Birol(ファティ・ビロル)博士は声明で「再生可能エネルギーは、パンデミックが引き起こした困難に立ち向かい、力強い成長を示しました。他のエネルギーは苦戦しています」と述べた。「このセクターの回復力と前向きな見通しは、投資家からの継続的な強い意欲にはっきりと反映されています。今年と来年、発電能力の増加により新たな記録が樹立され、将来はさらに明るいものになるでしょう」。

2020年1月から10月までの10カ月間で、中国、インド、EUでオークションにかけられた再エネの発電能力が15%増えた。IEAによると、上場再生エネ機器メーカーやプロジェクト開発業者の株価は、ほとんどの株価指数やエネルギーセクター全体を上回った。

IEAは、この成功の多くが続くためには継続的な政治的支援が必要だと指摘する。インセンティブの期限切れにともない需要が減る可能性があるが、政府が補助金プログラムの継続についてある程度の確実性を示せば、太陽光と風力は2022年までにさらに25%増加する可能性がある。適切な政策があれば、太陽光発電設備は2022年までに記録的な150ギガワットに達する可能性がある。わずか約3年で40%の増加だ。

「再生可能エネルギーは、新型コロナ危機に対しては回復力がありますが、政策の不確実性に対しては回復力がありません」とビロル博士は声明で述べた。「政府がこれらの問題に取り組めば、持続可能な回復をもたらし、クリーンエネルギーへの移行を加速することができます。例えば米国で次期政権が提案するクリーン電力政策が実施されれば、太陽光発電と風力発電のより迅速な展開につながり、電力セクターのより迅速な脱炭素化に貢献する可能性があります」。

ビロル博士によると、IEAの予測通りなら再エネは2025年までに世界最大の電力源になる可能性がある。

「その時までに再生可能エネルギーは世界の電力の3分の1を供給すると予想されており、その発電能力は現在の中国における総発電能力の2倍になるでしょう」とビロル博士は声明で述べた。

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タグ:再生可能エネルギー

画像クレジット:Westend61 / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

水質と配水を監視するソフトのKENTOSが合計約20億円を調達

水質と水の物流を監視するソフトウェアのKETOSは、より良い水管理ツールと技術に対する需要の高まりを利用して、投資家のグループから1500万ドル(約15億7000万円)を調達した。

地方自治体、州政府、連邦政府による工業用水の使用と廃水管理に対する規制監督がより厳しくなる可能性があり、企業の環境管理の改善に対する消費者および投資家の要求の高まりが相まって、業界全体の環境保全の向上と廃棄物の削減を目的とした技術とサービスの前例のない導入が推進されている。

水のモニタリングはまた、集団における病気の発生やその他の健康問題について、行政に適切な情報を提供することができる。

最近では、廃水の流れを監視することが新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルスの発生を検出するために行われている。

Ketosへの新たな投資家として、銀行大手のCitiがMotley Fool VenturesやIlluminated Funds Groupなどと並んで今回登場したのも、改めて水への関心が高まっているためだ。彼らはAjax StrategiesやBetter Ventures、Broadway Angels、Plum Valley Ventures、Rethink Impactなどの既存の投資家グループに加わった。

またSilicon Valley Bankは、同社に300万ドル(約3億1000万円)を融資した。

同社はこの資金を、水質に関する情報を提供し、配水や排水のために配水管が損傷する可能性をなどの情報を提供するハードウェアとソフトウェアを組み合わせたサービスの新機能開発に充てるとしている。

同社の創業者でCEOのMeena Sankaran(ミーナ・サンカラン)氏は、「重金属の有害物質に関する情報と、位置情報に基づいた地図作成、汚染源の可能性など、水質に関する洞察を集約した世界最大級のデータレイクを構築することで、機械学習と人工知能が実現できる可能性は無限大です」と述べている。

同社のセールスポイントの1つは、機械学習を利用して水系の問題が起きそうな場所を予測できることだ。しかもそのために、インフラへの巨額な投資は必要ない。

「KETOSは自律的に収集したデータ(遠隔操作で)によって、水情報業界を真の意味で破壊しており、COVIDとの戦いで世界的に注目されている水管理問題の予測を顧客に提供しています。0ドルの資本インフラ投資により、予測モデリングと必要とされるミッションクリティカルな知見を活用して、水道ネットワークの構築、行動、情報に基づく意思決定を行うことが初めて可能になりました」とMotley Fool VenturesのマネージングディレクターであるOllen Douglass(オレン・ダグラス)氏は、KETOSへの投資について声明で述べている。

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タグ:KETOS資金調達

画像クレジット:Paul Taylor / Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa