iPhone 13バッテリー性能だけでなくはカメラ機能も向上、税込9万8800円から

噂は正しかった。米国時間9月14日に開催された大々的なAppleイベントの目玉は最新iPhoneだ。同社のサプライチェーン面はいくぶん落ち着いてきており、前モデルが発表されてからまだ1年も経っていない中での最新iPhoneの登場だ。2020年に発表されたiPhone 12はスマートフォン販売の停滞という傾向に反してかなり売れた。これは部分的には予期せぬ遅延が販売のボトルネックになっていたためだが、Appleのモバイル商品にようやく5Gが搭載されたからでもあった。

ラッキーナンバーiPhone 13(迷信のためにこの数字がスキップされることはなかった)はお馴染みのデザインだ。フロントのノッチは前モデルに比べて20%小さくなり、リアカメラのシステムは再設計された。iPhone 13、13 miniともにスクリーンは28%明るいSuper Retina XDRディスプレイで、最大輝度は1200ニトだ。

iPhone 13は6.1インチのスクリーンを搭載し、 miniは5.4インチだ。これは2020年発表のモデルと変わらない。ディスプレイはセラミックシールドコーティングで保護されており、防水・防塵性能はIP68となっている。

iPhone 13はAppleの新A15 Bionicチップで駆動し、5nmプロセッサーを搭載。CPUは同社が「あらゆるスマホで最速のCPU」と呼んでいる6コアだ。新しい4コアのGPUでは高度なグラフィックスが楽しめる。

背面のデュアルカメラシステムは、光を最大47%多く取り込むことができる12MPの広角カメラを搭載している。そして、新しいシネマティックモードでは、機械学習を使って被写体へのフォーカスを調整するフォーカススタイルの撮影ができる(タップしてマニュアルでフォーカスを調整したり、被写体を切り替えたりすることも可能だ)。iPhone 13いずれのモデルもナイトモード撮影に対応し、プロレベルのビデオ向けにはProResコーデックが用意されている。

2020年の5G導入に続き、Appleはより高度なアンテナを加えた。大容量のバッテリーと省エネソフトウェアの組み合わせにより、バッテリーはこれまでよりiPhone 13で2.5時間、miniでは1.5時間長持ちすると同社はいう。

iPhone 13 miniは699ドル(日本では税込8万6800円)から、iPhone 13の方は799ドル(日本では税込9万8800円)からとなっている。カラーはピンク、ブルー、ミッドナイト、スターライト、(PRODUCT)REDで、容量は128GBからとなっている。

全体として大きなアップデートではなく、同社はそうした要素を iPhone 13 Proのためにとっておいたようだ。iPhone 13 Proは120Hzのディスプレイ(常軌を逸して噂されていた機能だ)を搭載し、画像システムを大幅にアップデートした。ProとPro Maxのバッテリーは13のものと同様のアップデートとなっている。iPhone 13シリーズは日本時間9月17日午後9時から予約が始まり、同24日に発売される。

同社はまた、「探す」機能が使える新しいMagSafe Walletなど一連のアクセサリーも発売する。

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

新iPhone?Apple Watch?AirPods?アップルの9月15日午前2時からのバーチャル新製品発表をチェックしよう

Appleは今晩、iPhoneの新モデルを発表する予定だ。同社は、米国太平洋標準時9月14日午前10時(日本時間9月15日午前2時)から(バーチャル)基調講演を開催する。イベントはのライブ配信はここで見ることができる。

では、iPhoneの新世代モデルが登場するといわれている。報道によれば、同社はこれを「iPhone 13」と呼び、2020年と同様、4モデルを用意する予定だという。今回は「iPhone 13」「iPhone 13 Mini」「iPhone 13 Pro」「iPhone 13 Pro Max」についての情報が期待される。

関連記事:来週のAppleイベントで何が発表される?iPhone 13、Apple Watch 7そして新AirPodsとMac登場のウワサ

新機能といえば、カメラの大きなアップグレードがあるだろう。2021年は、特に動画のアップグレードに力を入れているようだ。また、新iPhoneには、より優れたディスプレイとより高速なチップが搭載されるはずだ。

しかし、それだけではない。Appleは、この機会にApple Watchのニューモデルを発表すると考えられている。シャープなエッジを持つApple Watch Series 7では、より大きなデザイン変更が行われるだろう。

また、AppleはAirPods 3の開発に取り組んでいるため、さらに多くのプロダクトが発表される可能性もある。オーディオのラインナップでは、エントリーモデルの「AirPods 2」に代わる製品、または補完する製品となるだろう。「AirPods Pro」と「AirPods Max」は今のところ変更はありません。

最後に、カスタムデザインのApple製チップを搭載した新しいMacや、iPadの新モデルについての情報が得られる可能性もわずからながらある……。

AppleはYouTubeでカンファレンスの様子を配信しているので、このページで直接ライブストリームを見ることができる。

Apple TVを持っている人は、TVアプリを起動して「Apple Special Event」の項目を探して欲しい。これで今回のイベントをストリーミングしたり、昔のイベントを再視聴したりすることができる。

また、Apple TVを持っていない人やYouTubeを利用したくない人は、同社ウェブサイトの「Apple Event」ページからイベントをライブストリーミングすることもできる。この動画配信はSafari、Mozilla Firefox、Microsoft Edge、Google Chromeの主要ブラウザで動作するようになった。

画像クレジット:Qi Heng / VCG / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:Katsuyuki Yasui)

iPhone内蔵カメラが高出力バイクエンジンの振動で性能が低下する可能性をアップルが警告、原付も振動減衰マウントを推奨

iPhone内蔵カメラが高出力バイクエンジンの振動で性能が低下する可能性をアップルが警告、原付も振動減衰マウントを推奨

humanmade via Getty Images

アップルはiPhone内蔵のカメラが、高出力オートバイのエンジンから発生する特定の振動周波数に晒されると性能が低下する恐れがあると警告するサポート文書を公開しました

この件が影響する可能性があるのは、光学式手ぶれ補正(OIS)クローズドループ方式のオートフォーカス(AF)機能を搭載した一部モデルです。これらiPhoneのカメラレンズは、写真やビデオを撮影する際の動きや振動を補正するためにジャイロスコープや磁気センサーを使用しているため、この損傷を受けやすくなっているとのことです。

iPhone搭載のOISやクローズドループAFは耐久性を考慮して設計されているものの「OISのようなシステムを採用している多くの家電製品と同様に」(つまりiPhone内蔵パーツが特に脆弱というわけではなく)特定の周波数範囲内での高振幅振動に直接、長時間さらされると性能が低下し、写真や動画の画質が低下することがあると述べられています。

こうしたリスクから、アップルは振動が直接伝わってくる可能性あるシャーシやハンドルバーにiPhoneを直接取り付けないようユーザーに推奨。また原付や電動スクーターのような小型エンジン機器でも、直接iPhoneを取り付ける場合には振動を軽減するマウントを使い、損傷のリスクを減らすよう呼びかけています。

いきなりアップルがサポート文書を掲載した理由は不明ですが、これまでもマウンテンバイクでさえ取り付けたiPhoneのカメラが壊れたOISが機能しなくなったとの報告は多数ありました。

またOISやクローズドループAFについては、今年初めに磁石を内蔵したアクセサリを使うと一時的にカメラの性能が低下する可能性があると公式に警告されていました。こちらは(一般的には)磁石をiPhoneから離せば直りますが、物理的な振動の場合は永久的に壊れる可能性があり、より注意が必要と思われます。

OISやクローズドループAFはiPhone 7以降の全モデル、およびiPhone 6 PlusとiPhone 6s Plusに搭載されており、古めのモデルを持つ人も振動の激しい乗り物には直接取り付けないほうがよさそうです。

(Source:Apple。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

来週のAppleイベントで何が発表される?iPhone 13、Apple Watch 7そして新AirPodsとMac登場のウワサ

来週、米国時間9月14日(日本時間9月15日午前2時)に開催されるAppleのイベント「California Streaming」に向けて、最新のウワサやリーク情報を精査し、発表会で何が準備されているのか考えてみよう。ママス&パパスの曲を流しながら。

1週間前に送られてきた招待状には、無料ゲームはないようだが、モバイル版Safariからアクセスできる非常にクールなARの仕掛けがあった。これはカメラのアップグレードを示唆しているのかもしれないが、拡張現実(AR)はAppleの招待状ではちょっとした定番の仕掛けになっている。

「California Streaming」というイベント名は、Apple TVに関連するものというよりも、発表会がすべてバーチャルで行われるその性質にちなんだものだと思われる(もちろん、過去にも同じようなことがあったが)。また、同社はモントレーに移ったが、シエラネバダ山脈の美しい写真はmacOSにちなんだものかもしれない。また、前述のイベント名を参考にしている可能性もある。

関連記事:次のアップルイベントは日本時間9月15日バーチャルで開催、iPhone 13、Apple Watch 7、AirPods 3発表か

何を期待すべきかという問いに対する最大かつ最もシンプルで重要な答えは、新しいiPhoneだ。2020年のモデルは、新型コロナウイルス(COVID-19)の影響によるサプライチェーンのボトルネックで、大幅な遅れが生じた。もちろん、サプライチェーンの問題は続いているが、誰に聞いても、Appleはパンデミック前のリリースサイクルに戻っているようだ。

iPhone 12における最大のアップグレードは、いうまでもなく待望の「5G」への対応だった。それが遅れたこともあり、モバイル市場全体が広く失速していった中、Appleはかなりの売上を記録した。他のメーカーが、不吉だという迷信的な理由でこの数字を避ける中、AppleはiPhone 13というモデル名を採用するようだ(後継機種であるiPhone 14のレンダリング画像がすでにリークされている)。

画像クレジット:Getty Images / Qi Heng/VCG

最近の報道によると、iPhone 13は、先代モデルと同様に「iPhone 13」「13 Mini」「13 Pro」「13 Pro Max」という4種類の構成で登場するようだ。画面サイズも同様で、5.4、6.1、61.、6.7インチになるはずだ。一方、別のレポートによると、カラーが追加され、ブラック、ホワイト、ブルー、パープル、ピンク(グリーンではなく)、(PRODUCT)REDのフルラインナップになるという。しかし、市場ごとに異なるカラーを提供する可能性がないわけではないので、ご注意を。

意外にも、カメラのアップグレードが今回の最大のニュースになりそうだ。アナリストのMing-Chi Kuo(ミン-チー・クオ)氏によると、2020年のPro Maxモデルの仕様が他のラインにも適用されるという(LiDARも含まれる可能性がある)。ProRAWに続いてProResビデオモードが追加され、セミプロのビデオ撮影機材としての地位をさらに高めるといわれている。一方「Cinematic Video(シネマティックビデオ)」は、動画にポートレート風の効果をもたらすとのこと。また、クオ氏は、QualcommのX60をベースにした緊急時の衛星電話を可能にする機能が端末に搭載されることを示唆しているが、これは一部の市場でしか利用できないという。

もちろん、Appleの最新チップであるA15も搭載され、120HzのProMotionディスプレイとの組み合わせになるといわれている。また、Appleはバッテリー寿命への影響を最小限に抑えつつ、画面の常時点灯機能を実現する可能性がある。外観的には、前モデルとほぼ同じになると予想されている。ただし、前面のカメラノッチはやや小さくなるが「Ted Lasso iPhone」のような偽物にはならないとのこと。一方、背面のカメラ部分は大きくなり、望遠レンズが搭載されるのではないかという。

Appleが積極的にアピールする新機能の1つではないことは明らかだが、iPhone 12よりも高価になるともいわれている。

画像クレジット:Apple

Apple Watch 7は、イベントのもう1つのビッグニュースになるようだ。大人気のApple製ウェアラブルデバイスは、ディスプレイの大型化にともない、ケースサイズが「40mmと44mm」から「41mmと45mm」へと若干大きくなるという。しかし、今回はベゼルを小さくするとのことで、全体のサイズはそれほど大きくは変わらないだろう。

Apple Watchに関する最もエキサイティングなウワサは、大幅なバッテリー駆動時間の実現だろう。この点は、競合するスマートウォッチと比較して、長い間、弱点だと考えられてきた。特に、Appleが睡眠トラッキングを大幅に改善した後はそうだ。ほとんどの人が、今回のApple Watchに大きな健康に関する新機能が搭載されるとは考えていない。健康とフィットネスがAppleの重要な基盤であることを考えると、これは少し意外なことだ。

画像クレジット:TechCrunch

AirPods 3は、それなりに期待できそうだ。エントリーモデルであるAirPodsの最新版(およびケース)は、バッテリー駆動時間を向上させるための新チップを搭載し、よりProスタイルのデザインに変更されるという。なお、アクティブノイズキャンセリング機能や交換可能なチップなどは、2つのモデルの差を維持するために採用されないようだ。

このように自社製品のアップグレードが順調に進んでいることから、新しいMacが続々に登場しても不思議ではない。噂では、新しいMacBook Pro、Mac Mini、そしてARMを搭載したiMacの27インチの大型バージョンが発表されるという。

画像クレジット:https://techcrunch.com/2021/09/10/what-we-expect-from-next-weeks-apple-event/

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

次のアップルイベントは日本時間9月15日バーチャルで開催、iPhone 13、Apple Watch 7、AirPods 3発表か

米国太平洋時間時間9月14日午前10時(日本時間9月15日午前2時)に予定されているApple(アップル)の次期大型イベントの招待状が届いた。招待状には、美しいシエラネバダ山脈を背景にしたネオンのロゴと「California Streaming」という形で「ママス&パパス」を連想させる言葉が書かれているだけで、これから何が起こるのかはあまりわからない。「Beats CaliforniPhoneication」よりも良いと思うが、いかがだろう。その名が示すように、このイベントはまたしてもバーチャルなものとなるだろう。

Appleはホリデーシーズンに向けて多くのハードウェアを準備していると言われているが、たしかにiPhone 13については確実にタイミングが良い。2020年は、業界を広く悩ませたサプライチェーンの大問題のために、同社には珍しく遅延となった。

そのため、例年どおり発売に向けてさまざまな憶測が飛び交っている。業界全体が低迷する中、待望の5Gが登場したことで、同社は2020年に大きな利益を得ることができた。iPhoneにとって、買い控えをしていた人たちがついに引き金を引いたかのような大規模な数四半期だった。

関連記事:アップルの第3四半期決算はiPhoneと各種サービスが牽引し36%増、ただし翌四半期の鈍化予想も

では、Appleは次期iPhoneにどのような機能を搭載するのだろうか。最近のリーク情報によると「Emergency Message via Satellite(衛星経由の緊急メッセージ)」という機能があるという。この機能は、携帯電話ネットワークに一時的にアクセスできなくなった電話機に、短い衛星電話を提供するものだが、正直なところ、この機能に関する情報は今のところ不明だ。

その他のアップデートとしては、120Hzディスプレイの搭載が期待されている。多くの人がこのアップデートはiPhone 12に搭載されると予想していたが、iPhone 12のすべてのバージョンでリフレッシュレートは60Hzのままだった。また、新しいA15チップ、改良されたセンサー、より大きなバッテリーが搭載されると予想されている。さらに、新しいMagSafe充電器もFCCを通過しました

また「Apple Watch 7」と「AirPods 3」も早々にリリースされる予定だ。しかし、バーチャルイベントの時代になって、Appleはそれを分割しているが。

画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

ドイツ政府がEUに対しスマホメーカーによる7年間のセキュリティ更新・パーツ供給の義務づけを提案

ドイツ政府がEUに対しスマホメーカーによる7年間のセキュリティ更新・パーツ供給の義務づけを提案

sigoisette via Getty Images

ドイツ政府が欧州委員会に、スマートフォンメーカーにセキュリティアップデートやスペアパーツを7年間提供するよう義務づけることを提案したと報じられています。

ドイツのニュースメディアHeise.de(ハイス・オンライン)によると、ドイツ連邦政府はスマートフォンやタブレットの修理・サービスに関する規制を変更するために、欧州委と交渉を開始したとのことです。欧州委はスペアパーツの供給につきスマートフォンでは5年間、タブレットでは6年間を義務づけることを計画していますが、ドイツはこれらを7年間に延長したいかまえです。

そうした期間の延長に加えて、ドイツ政府はスペアパーツを「妥当な価格」で提供されるのを望んでいるとのことです。これにはメーカーがスペアパーツの価格を公表し、時間の経過とともに値上げしないことも含まれています。

さらにスペアパーツが目的地に到着するまでの期間についても、欧州委の案では最大で5営業日に対して、ドイツはより短い期間の配送を義務づける意向とのこと。それに加えて修理期間が長くかかる場合は、顧客は修理ではなく本体の交換を選べる可能性にも言及されています。

しかしスマートフォンメーカーが望んでいるのは、それとは真逆のことです。Googleやサムスンのほかアップルも加入している業界団体DigitalEuropeはセキュリティアップデートを3年、機能アップデートを2年に限ることを提案。それに加えて、スペアパーツの提供義務もディスプレイやバッテリーに限り、カメラやマイクなどは「故障することはほとんどない」として除外を求めています。

今回の提案はiPhoneも対象としていますが、アップルはたいてい5年間もの機能およびセキュリティアップデートを提供しています。

かたやAndroidデバイスメーカーの多くが提供するセキュリティアップデートは、多くが3年以下に留まっており、もしもドイツ案が通れば影響はより大きいと思われます。サムスンは今年初めにセキュリティアップデートを最低4年間提供する(2019年以降の端末に限り)と発表しましたが、それ以前は2年ないし3年でした。

数年前のデバイスを末永く使い続けられることはユーザーにも有り難く、また電子廃棄物を減らすことにつながり環境保護にも貢献できると思われます。が、スマートフォンメーカーにしてみれば旧製品が修理され続ければ新製品を売る妨げにもなりかねず、また過去モデルの部品を確保する負担ものし掛かってくるはず。今後もスマートフォン業界からロビー活動など、政治的な働きかけが続けられるのかもしれません。

(Source:Heise.de。Via AppleInsiderEngadget日本版より転載)

クアルコムがBluetooth用の新音声コーデック「aptX Lossless」を発表、CDロスレスオーディオを伝送可能に

クアルコムがBluetooth用の新音声コーデック「aptX Lossless」を発表、CDロスレスオーディオを伝送可能に

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クアルコムが、Bluetooth用の新音声コーデック「aptX Lossless」を発表しました。CDのサンプリング仕様である44.1kHz / 16bit PCM信号をロスレスで伝送することが可能な高音質コーデックです。音源の送信側(プレーヤー)と受信側(イヤホン / ヘッドホンまたはBluetoothスピーカー)双方がこのコーデックに対応していれば、CDの音質を劣化させることなくワイヤレスで再生することが可能です。

aptX Losslessはクアルコムが3月に発表した「Snapdragon Sound」という高音質オーディオ伝送技術およびソフトウェア群の一部として提供されます。Snapdragon SoundではaptX Adaptive機能によって最大96Hz / 24bitまでの音源伝送を可能としますが、この場合は不可逆圧縮を加えるため音質の劣化が発生します。aptX LosslessはaptX Adaptiveの拡張として提供され、44.1kHz / 16bitまでの音源であればロスレスでの伝送を行います。つまりCDが採用する仕様のPCMデータならそのままの音質で伝送し、ロスレス再生が可能ということです。

Snapdragon Soundでは、Bluetooth High Speed Link技術の改良によってCDロスレスオーディオ信号を送信可能なするだけのスループットを提供すると述べています。もしCDロスレス以上の音質のデータをスマートフォンから伝送する場合は、最大96kHz / 24bitの圧縮伝送を使用するとのこと。なお、ユーザーは設定により手動で44.1kHz / 16bitにするか96Khz / 24bitにするか選択もできますが、ソース音源がCDロスレスまでの場合は自動的に44.1kHz / 16bitになります。また通信環境が悪くスループットが出ない場合は、圧縮伝送に切り替え140kbpsにまで伝送速度を下げます。

技術仕様は以下のとおり。

・44.1kHz / 16bit CDロスレスオーディオ品質をサポート
・Bluetoothリンク品質に基づいてCDロスレスオーディオにスケールアップ
・ユーザーはCDロスレスの44.1kHz / 16bitと、96kHz / 24bitロッシーから選択可能
・ソース音源がロスレスの場合にCDロスレスオーディオを有効にする自動検出
・正確なビットレートは約1Mbps

クアルコムはSnapdragon SoCにaptXコーデックをデフォルトで搭載するため、今後発売される北米や欧州で流通するスマートフォンのほとんどは、音楽プレーヤーとしてaptX Losslessに対応していくはずです。発表によれば、このaptX Losslessは今年後半に利用可能になり、搭載する製品もその時期当たりには最初のものが発表されるとのことです。

これまで、Bluetooth経由でのオーディオ再生でもっとも高音質とされたのはソニーの独自コーデック「LDAC」でした。これとアップスケーリング技術のDSEE HXを組み合わせることで、LDACは96Khz / 24bit相当の音質での伝送は可能ですが、これもやはり不可逆圧縮で、厳密に言えば音質の劣化は避けられません。また当然ながらLDACも、プレーヤー側とイヤホン / ヘッドホン、スピーカー側の双方がLDACに対応していなければなりません。

ちなみに、Apple MusicやAmazon Music Ultra HDなどはすでに楽曲のロスレス / ハイレゾ配信を行っており、Spotifyも今年後半にロスレス配信を提供する予定です。近々、Androidスマートフォンを新しくしようと思っている人は、Snapdragon SoCを搭載しaptX Losslessに対応する機種が出るまで待つ方が得策かもしれません。一方、アップルのiPhoneは、Bluetooth音声伝送には伝統的に自社のAACを使用しておりBluetoothでの音楽再生はロスレスオーディオに対応していません

(Source:Qualcomm 2021 State of SoundEngadget日本版より転載)

噂のアップルiPhone衛星通信は緊急通報・メッセージ限定、との報道

噂されている次期iPhone向けの衛星通信機能は、BloombergのMark Gurman(マーク・ガーマン)氏の記事によると緊急時の使用に限定されているようだ。数日前、よく知られているアナリストMing-Chi Kuo(ミン・チー・クオ)氏は記事で次期iPhoneは低軌道衛星通信による通話とメッセージをサポートすると述べていた。しかしガーマン氏の情報源は、Apple(アップル)は少なくとも今はiPhoneを実際の衛星電話にはしないと述べた。衛星通信ネットワークを活用する少なくとも2つの緊急関連機能を開発中、とのことだ。

1つ目の機能は衛星経由の緊急メッセージで、iMessage 、SMSに続くプロトコルとしてメッセージアプリに追加される。社内コードネームはStewieで、ユーザーは電波が届かない場所でも緊急サービスにテキストを送ることができる。これは山中や森の中など人里離れた場所での緊急事態時に特に重宝する機能だ。

衛星通信機能ではまた、受信側のラインに緊急SOSをタイプすることで緊急連絡先にテキストを送ることもできる。メッセージは短い文字数に制限されるが、発信者の連絡先の人にはiPhoneがおやすみモードに設定されていても通知が届く。衛星メッセージは認識しやすいよう、青や緑ではなくグレーのバブルで表示される。ゆくゆくは衛星通信で通話にも対応するようになるかもしれない。

Appleはまた、ユーザーが航空機事故や火事など危機的状況を報告できるという2つ目の衛星通信機能にも取り組んでいると報道されている。このシステムでは、ユーザーは長々と事故を報告でき、そして捜索救難サービスが必要な人がいるか、周辺に武装している人がいるか、といった詳細も尋ねられる。また、自動的に通報者の位置情報と既往歴、年齢、薬の服用、身長・体重などヘルスアプリにある詳細を当局に送ることができる。そして通報者の緊急連絡先に通知することも可能だ。

いずれの機能も有用なようだが、利用できるかどうかは衛星の位置とカバー範囲によって制限される。一部の地域では利用できないかもしれず、またiPhoneが衛星と通信できるところでは屋外に出なければならないケースもあるかもしれない。加えて、ガーマン氏の情報源の人物はこれら機能が年末までに使えるようにはならないだろうと述べた。これは、9月発表が予想されている次期iPhoneではまだ衛星通信を使ってメッセージを送ることはできないことを意味する。

編集部注:本記事の初出はEngadget。Mariella Moon氏はEngadgetの共同編集者。

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画像クレジット:Apple

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(文:Mariella Moon、翻訳:Nariko Mizoguchi

iPhoneのセキュリティ対策もすり抜けるスパイウェア「Pegasus」のNSOによる新たなゼロクリック攻撃

2021年初め、バーレーンの人権活動家のiPhoneが、国家に販売されている強力なスパイウェアによってハッキングされ、Apple(アップル)が不正アクセス対策のために設計した新セキュリティ保護機能が破られたとCitizen Lab(シチズン・ラボ)の研究者らが発表した。

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匿名希望の同活動家は、湾岸諸国の人権を促進する非営利団体として受賞歴のあるBahrain Center for Human Rights(バーレーン人権センター)に所属しており、現在もバーレーンを拠点としている。同センターは2004年に当時の首相を批判したディレクターが逮捕された後、バーレーン王国から禁止令が出されたものの、現在も活動を継続している。

トロント大学のインターネット監視機関であるCitizen Labは、同活動家のiPhone 12 Proを分析。ユーザーの操作を一切必要としない、いわゆる「ゼロクリック攻撃」を用いて2月からハッキングされていたという証拠を発見した。ゼロクリック攻撃は、AppleのiMessageに存在する未知のセキュリティ脆弱性を利用したもので、これがイスラエルのNSO Groupが開発したスパイウェア「Pegasus」を同活動家のiPhoneに送り込むために利用されたとみられている。

Citizen Labの研究者によると、攻撃者は当時最新のiPhoneソフトウェアであるiOS 14.4とAppleがその後5月にリリースしたiOS 14.6を悪用してゼロクリック攻撃を成功させているため、今回のハッキングはなおさら重要な意味を持つという。今回のハッキングでは、iOS 14のすべてのバージョンに組み込まれ、iMessageで送信された悪意のあるデータをフィルタリングすることでこの種のデバイスのハッキングを防ぐことを目的とする新しいソフトウェアセキュリティ機能(BlastDoorと呼ばれる)が回避されているのだ。

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BlastDoorを回避できることから、研究者らはこの最新のエクスプロイトを「ForcedEntry」と呼んでいる。

Citizen LabのBill Marczak(ビル・マーザック)氏がTechCrunchに話してくれたところによると、最新のiPhoneをターゲットにして悪用しようとする試みが起きているという事実を研究者らはAppleに伝えてあるという。TechCrunchの取材に対してAppleは、NSOが悪用している脆弱性を発見して修正したかどうかについて明確に言及していない。

Appleのセキュリティ・エンジニアリング・アーキテクチャ部門の責任者であるIvan Krstic(イヴァン・クルスティッチ)氏は、米国時間8月24日に再度発表された定型的なステートメントの中で次のように述べている。「Appleはジャーナリストや人権活動家、その他の世界をより良い場所にしようとしている人々に対するサイバー攻撃を強く非難します【略】今回のような攻撃は、開発に莫大な費用がかかる非常に高度なもので、有効性が短いことが多く、また特定の個人を標的にしています。そのため圧倒的多数のユーザーにとってこれは脅威ではないといえますが、私たちはすべてのお客様を守るためにたゆまぬ努力を続けており、お客様のデバイスやデータを守るための新しいセキュリティ機能を常に追加して参ります」。

Appleの広報担当者は、iMessageの安全性を確保するため、同社はBlastDoor以外の対策にも取り組んでおり、2021年9月以降にリリースされる予定のiOS 15では防御をさらに強化していると伝えている。

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2020年6月から2021年2月の間にバーレーンの人権活動家をはじめとする8名のバーレーン人活動家が標的にされた背景には、バーレーン政府が存在する可能性が高いとCitizen Labは話している。

バーレーンは、サウジアラビア、ルワンダ、アラブ首長国連邦、メキシコなどと並び、Pegasusの政府顧客として知られている権威主義国家の1つである。ただし、NSOは機密保持契約を理由に、数十社にのぼる顧客名の公開を繰り返し拒否し続けている。

対象となったバーレーン人のうち5名の電話番号が、スパイウェアPegasusの監視対象となりうるとしたPegasus Project の5万件の電話番号リストに掲載されていた。つまり政府顧客は対象者のデバイスにほぼ完全にアクセスでき、個人データ、写真、メッセージ、位置情報などを取得できるということである。

これらの電話番号のうちの1つは、バーレーン人権センターの別のメンバーのもので、Citizen Labによると、同センターはForcedEntryよりも前から存在する、Kismetと呼ばれる別のゼロクリック・エクスプロイトの標的に数カ月前からなっていたという。Citizen Labによると、BlastDoorが導入されて以来KismetはiOS 14以降では動作しなくなっているものの、iPhoneの古いバージョンを使用しているデバイスにはまだリスクがあるとのことだ。

現在ロンドンに亡命している他の2人のバーレーン人も、iPhoneをハッキングされている。

以前、バーレーン政府に販売されたスパイウェア「FinFisher」の標的となったフォトジャーナリストのMoosa Abd-Ali(ムーサ・アブドアリ)氏は、ロンドン在住中にiPhoneをハッキングされている。Citizen Labは、バーレーン政府のスパイはバーレーン国内と隣国のカタールでしか確認されていないとし、Pegasusにアクセスできる別の外国政府がハッキングを行ったのではないかと伝えている。最近の報告では、バーレーンの友好同盟国であるアラブ首長国連邦が、英国内の電話番号を選択している「主要な政府」であることが判明している。アブドアリ氏の電話番号もまた、5万件の電話番号リストに含まれていた。

バーレーン人活動家であるYusuf Al-Jamri(ユスフ・アルジャミリ)氏も2019年9月より前に、バーレーン政府によるものと思われるiPhoneのハッキングを受けているが、同氏のiPhoneがバーレーンにいるときにハッキングされたのか、ロンドンにいるときにハッキングされたのかはわかっていない。アルジャミリ氏は2017年に英国への亡命が認められている。

人権侵害、インターネット検閲、広範な抑圧が長年にわたって行われてきたにもかかわらず、この7名のバーレーン人は同王国で活動を続けている。国境なき記者団は、バーレーンの人権問題を、イラン、中国、北朝鮮に次ぐ世界で最も制限の厳しい国の1つとして位置づけている。米国務省が2020年に発表したバーレーンの人権に関する報告書では、同国がかなりの違反や乱用を行なっており、同政府が「コンピュータープログラムを使って国内外の政治活動家や反対派のメンバーを監視している」と指摘している。

NSO Groupに問い合わせたところ、彼らは具体的な質問に答えることはなく、またバーレーン政府が顧客であるかどうかについても言及することはなかった。NSOの広報担当者とされる人物が外部の広報会社であるMercury(マーキュリー)を通じて発表した声明の中で、同社はCitizen Labの調査結果を見ていないとし「システムの悪用に関連する信頼できる情報」を受け取った場合には調査を行うと述べている。

NSOは最近、人権侵害を理由に5つの政府顧客のPegasusへのアクセスを遮断したと主張している

バーレーン政府の広報担当者であるZainab Al-Nasheet(ザイナブ・アルナシート)氏は、TechCrunchに対して「これらの主張は、根拠のない主張と見当違いの結論に基づいています。バーレーン政府は個人の権利と自由を守ることを約束します」と伝えている。

バーレーンで逮捕され、拷問を受けたというアブドアリ氏。英国に来ればこれで安全だと思っていたが、スパイウェアの被害者の多くがそうであるのと同様に、同氏も未だデジタル監視だけでなく物理的な攻撃にも見舞われているという。

「英国政府は私を守るどころか、イスラエル、バーレーン、アラブ首長国連邦という3つの同盟国が共謀して私や他の数十人の活動家のプライバシーを侵害している間、ただ沈黙を貫いているのです」と同氏はいう。

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画像クレジット:Jaap Arriens / NurPhoto / Getty Images

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Dragonfly)

テスラのiPhone用アプリが久々の大規模アップデート、機能やデザイン面に多くの改良

Tesla(テスラ)が、iOS向けスマートフォン用アプリのメジャーアップデートを配信開始した。これによって新たな操作が可能になった他、管理機能の改善や、クールなビジュアル面の更新などが行われている。また、このバージョン4.0では、iPhoneのホーム画面に表示するウィジェットのサイズを2種類から選択できるようになった。「Tesla Software Updates(テスラ・ソフトウェア・アップデート)」の説明によると、どちらを選んでも、車名、バッテリー残量、位置情報(または充電施設情報)、ロック状態、車両の画像、情報の最終更新時刻という同じ情報が表示されるようだ。テスラは以前「Today」という機能拡張をiOS向けに提供していたが、今回新たに導入されたウィジェットほど総合的な機能はなかった。

操作面では、車両の起動を待たずに、アプリを開いたらすぐにコマンドを送信できるようになった。また、スマートフォンがクルマのキーになる「Phone Key(フォンキー)」の機能も拡張され、基本的に複数のテスラ車のロック解除に対応した。

ビジュアル面の更新ですぐに気づくのは、車両の3Dレンダリングが新しくなったことだ。充電時の状態を示す画面や、車両各部のコントロールパネル、空調設定の表示にも、新しいアニメーションが追加されている。デザイン的な改善としては「充電」セクションが廃止され、車両が充電プラグにつながれている時に、その情報を表示するようになった。また、アプリ内でスーパーチャージャーの充電履歴を確認できるようにもなっている。速度制限、車両を駐車場の係員に預ける際に制限を加える「バレーモード」、周辺の不審な行為を監視する「セントリーモード」などの設定は、新たに設けられた「セキュリティ」というカテゴリーに移されており、そこではBluetooth、フォンキー、位置情報サービスの使い方のヒントも見ることができる。

要するに今回のアップデートは、テスラのiOSアプリでは久しぶりに大がかりなものとなっている。最近のテスラは、7月にVirtual Power Plant(バーチャルパワープラント)を導入した以外では、主にバグフィックスや改善に注力してきた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Saqib Shahは、Engadgetの寄稿ライター。

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画像クレジット:Tesla

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(文:Saqib Shah、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電子フロンティア財団が「アップルの大規模な監視計画に反対」と声明発表、請願書への署名を呼びかけ

電子フロンティア財団が「アップルの大規模な監視計画に反対」との声明を発表、請願書への署名を呼びかけ

EFF

アップルは今月初め、児童虐待対策をiPhoneやMacに導入するとして、2つのしくみを発表しました。ひとつは「子供がメッセージアプリで性的な写真を受信したり送ろうとすると、本人に警告しつつ親に通報する」、もうひとつは「iCloudに保存されるCSAM(子供を巻き込んだ性的に露骨な活動を描くコンテンツ)画像を検出し、当局に通報することもある」といったものです。

これに対してEFF(電子フロンティア財団)が「アップルの大規模な監視計画に反対する」との声明を発表し、iPhoneユーザーらに請願書への署名を呼びかけています。

EFFとは米国に拠点を置く非営利組織であり、デジタル世界での市民の自由を擁護することを目的とする団体です。先日もiOS 14でのアプリトラッキング制限については支持を表明しており、特に反アップルの色合いはありませんが、アップルが上記のCSAM対策を発表した直後に「私生活にバックドアを開く」として反対を表明していました

EFFは今回の声明で「大量の監視は、それがどんなに善意のものであっても、犯罪撲滅のための戦略として容認できるものではありません」と主張。その上でアップルの新方針を「次のバージョンのiOSがすべてのiPhoneに監視ソフトウェアをインストールする」とみなし、憤慨している人々に声を上げるよう訴えかけています。

この声明によれば「昨年EFFの支援者たちは、オンライン上のすべてのメッセージのスキャンを可能にする可能性があった政府の計画であるEARN IT法案を阻止しました」とのこと。ここでいうEARN IT法案とは、2020年3月に米上院議員らが提出したものであり、法執行機関が令状を取得した場合に、テクノロジー企業が暗号化データの解除を支援するよう義務づける内容でした。要は暗号解読バックドア法案ということで、否決に追い込まれています。

そしてEFFはアップルの計画を「すべてのiPhoneで写真のスキャンを可能にする」と定義し、EARN IT法案と同じように受け入れられないことを表明すべきだとの趣旨を述べています。

EFFいわく、アップルがiPhoneに導入しようとしている「スキャンシステム」は2つ。ひとつは「iCloudにアップロードされた写真をスキャンし、法執行機関が子どもに対する犯罪を調査する」ために準政府機関である全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)を初めとした団体が持つCSAMデータベースと比較するシステムです。

もう1つは、保護者(iCloudファミリー共有が設定されている場合)が選んだ場合に作動するもので、未成年者が送信したiMessagesを調査し、あらゆる種類の「性的に露骨な」素材を探すアルゴリズムと照合するもの。その類の画像が検出された場合、iPhoneは本人、場合によっては親に年齢に応じた通知を行うーーといったEFFの解釈は、アップルの説明とも一致しています。

ちなみにアップル幹部はCSAM対策に批判が湧き起こった直後、この2つの施策を一度に発表したことで「アップルがメッセージアプリを検閲している」との誤解を招いてしまったと認め、もう少し違いをハッキリさせれば良かったと反省を述べていました

さてEFFの声明に戻ると「これらのシステムは、私たちのプライバシーとセキュリティを脅かすもの」であり、iCloud画像のスキャンについては「すべてのiCloud写真ユーザーのプライバシーを侵害」し、「政府が作成したCSAMの秘密データベースと照合する」と批判。かたやメッセージアプリでの保護者通知スキャンには「エンドツーエンドの暗号化の約束を破るもの」との見解を述べています。

締めくくりにEFFは、アップルの施策を「虐待する親のことを考慮していない」と分析し、ひいては「権威主義的な政府がその拡大(画像スキャンやメッセージの検閲など)を推し進めようとする」危険があると指摘しています。

これまでの批判に対してアップルは、iCloud写真スキャンは動画には適用されず、政府による利用もあり得ないと反論しています。しかし、一度そうしたしくみを作ってしまえばバックドアに転用される可能性を完全には否定しがたく、また一企業に過ぎないアップルが現地の法律に従わざるを得ないことはすでに証明済みです

そもそも一連の批判や混乱は、アップルが外部の児童虐待対策団体などに(少なくともNCMECや一部組織以外は)相談せず、すでに世界的なプラットフォームになったiPhoneについて、一方的にプライバシーに踏み込む施策を打ち出したことが大きな原因とも思われます。今後アップルはさらなる説明を追加するか、譲歩を迫られるのかもしれません。

(Source:EFF(1)(2)Engadget日本版より転載)

タリバンが米軍の生体認証装置・データを押収し現地協力者に報復リスク、人権団体が「Face ID」利用の防御策助言

タリバンが米軍の顔・指紋認証装置とデータベースを押収し現地協力者に報復リスク、人権団体が基本的な防御策を助言

Man using mobile phone for facial recognition. imaginima via Getty Images

アフガニスタンでは米軍が撤退開始後、反武装勢力タリバンが首都カブールを制圧し、16日には勝利宣言。日米や各国が支えてきたガニ政権は崩壊し、タリバンが実権を掌握したことで大変な混乱のもとにあります。

その中で憂慮すべき事態のひとつは、米軍の顔認証・指紋認証装置とデータベースがタリバンに押収されたことです。これらには軍関係者だけでなく、連合軍に協力したアフガニスタンの人々の身元データも含まれており、タリバンから報復される恐れがあるためです。

こうした事態に関して、ある人権団体が、iPhoneのFace IDが身を守るために活用できる、との見解を表明しています。

まず「米軍が使っていた生体認証キットがタリバンに押収された」ことを伝えたのが、米インターネットメディアのインターセプト(The Intercept)でした。同メディアは、かつてCIA元職員のエドワード・スノーデン氏が持ち出した米政府の機密文書(いわゆるスノーデン文書)を公開したことで知られています。

米統合特殊作戦司令部(JSOC)関係者と3人の元米軍関係者によると、このキットはHIIDE(Handheld Interagency Identity Detection Equipment)と呼ばれる装置であり、虹彩スキャンや指紋などの生体認証データおよび経歴情報が含まれており、大規模な中央データベースにアクセスするために使用されるとのことです。

こうした生体情報は軍関係者だけでなく、外交関係者からも集められていた模様です。たとえば最近の米国務省の請負業者による求人広告では、HIIDEなどの使用経験がある生体認証技術者を募集しており、米国大使館や領事館が雇い入れる人材の審査や現地のアフガニスタン人の登録の支援が謳われていたとのことです。

そして人権団体のHuman Rights Firstによると、この技術には顔認識も含まれており、これを欺くことは極めて困難だと述べられています。つまり、従来は協力者が米軍や連合軍などと働くための顔パスとされていた生体情報が、一転して「タリバンへの敵対者をあぶり出す」ことに利用されてしまう可能性があるわけです。

Human Rights Firstいわく、一般的な監視カメラに対する基本的な防御策は「下を向くこと」であり、照合が成功する確率が下がるそうです。また顔かたちを変えるために化粧品を使うことも推奨。ただし、それでも成功するのは難しいとしています。

そして、こういった対策が有効かどうかを確かめる簡単なテストとして有効と紹介しているのが、Face IDというわけです。

ただしここでも、iPhoneのFace IDを欺ければ絶対に安全だ、と言っているわけではありません。同団体はFace IDを「かなり原始的な技術」と評しつつ「スマートフォンを欺くことができなければ、より高度な技術を用いた顔認証技術を欺くことはできないでしょう」として、最低限クリアすべき水準だと示唆しています。

米国の顔認証装置により支援者のデータベースを作成することについては、タリバンなどの敵勢力にハッキングされる危険性があるとして、以前から懸念が表明されていたようです。まして、それらが敵の手に渡った場合のさらなるリスクに関してはあまり考慮されてなかったと思われますが、今回のHuman Rights Firstの助言が必要な人々の元に届くよう祈りたいところです。

(Source:The InterceptHuman RIghts First。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

NetflixがiPhoneとiPadで空間オーディオ導入へ、同業他社に対抗

もしあなたがAirPods ProあるいはAirPods Maxを使っているのなら、モバイル端末でのNetflix視聴がこれまでよりもう少し投入感ある体験になる。Redditユーザーによる発見を受け、Netflix(ネットフリックス)は米国8月18日、iOS 14で動くiPhoneとiPadで空間オーディオのサポートを開始したと認めた。

Netflixはこの機能の導入でHBO Max、Disney+、Peacockのようなストリーミング競合他社の仲間入りを果たす。その一方で、Amazon Prime VideoやYouTubeといった人気のアプリはまだこの機能を取り入れていない。ただし、同機能はすぐには導入されない、とNetflixは述べた。アップデートのお知らせがきたユーザーはコントロールセンターで同機能のオン・オフができるようになる。

直近では、Appleが空間オーディオを売り込んでいる。同社は2020年に開かれたWWDC会議でAirPods Proで空間オーディオを利用できるようにすると発表した。そして2021年のWWDC会議では、追加料金なしでApple Music購読者に空間オーディオとロスレスオーディオでストリーミングを提供すると明らかにした。この機能の追加ではダイナミックヘッドトラッキングもサポートしており、頭の動きに応じてサウンドを調整する。Apple MusicアプリのAndroid版も空間オーディオとロスレスオーディオをサポートしている。2021年2月にSpotifyはハイエンドなサブスクSpotify HiFiを展開すると発表した。このサービスはロスレスオーディオが利用できるものだが、発表以来新たな動きはない。

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Netflixは7月、オリジナルの映画やテレビシーリーズに加えて、モバイルゲーミングにも取り組み始めたことを明らかにした。すでに「Black Mirror:Bandersnatch」や「Stranger Things」ゲームのようなプロジェクトでインタラクティブエンターテインメントを実験している。

「当社は、オリジナルの映画やアニメ、台本なしテレビなどへの拡大と同じく、ゲーミングを新たなコンテンツ部門ととらえています」と同社は四半期決算発表で述べた。

空間オーディオはビデオゲームプレイヤーの間で人気だ。なので、今回のアップデートでiPhoneとiPadでのビデオストリーミング体験が向上する一方で、おそらくゆくゆくは同様の機能が今後展開される同社のモバイルゲームでも利用できるようになる。

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Nariko Mizoguchi

アップルがiPhoneエミュレーションソフトメーカーCorelliumへの訴訟を取り下げ

Apple(アップル)が2019年のCorelliumとの訴訟を解決した。Corelliumは仮想iOSデバイスを開発しており、Washington Postの記事によるとセキュリティ研究者たちはそれらを利用して、iPhoneやその他のiOSデバイスのバグを見つけていた。解決の内容や条件は公表されていないが、その合意が為される前にAppleは、2020年後期の紛争で重要な敗訴を経験していた。

ユーザーはCorelliumのソフトウェアを使って、コンピューターのブラウザ上で仮想iPhoneを動かし、実機がなくてもiOSに深くアクセスできる。Appleは、CorelliumはAppleの著作権を侵犯しただけでなく、その製品を無差別に売ることによってプラットフォームのセキュリティを危殆化した、と主張した。

特にAppleは、Corelliumがその製品を政府に売って、Apple製品の欠陥を調べられるようにしたと非難した。Corelliumの共同創業者であるDavid Wang(デビッド・ワン)氏は、別の会社の社員だったときに、サンバーナーディーノ銃乱射事件の犯人であるテロリストが使っていたiPhoneの、FBIによるアンロックを手伝った

しかしながら判事は、著作権侵犯の訴えは「不誠実とはいえないまでも当を得ていない」として棄却した。その判決よると「法廷の所見ではCorelliumは公正使用の達成という難題を満たしており」、そのかぎりでのiOSの使用は許される、としている。

Corelliumは2021年の初めに、そのプラットフォームの個人サブスクライバーへの提供を開始しており、それまではエンタープライズのユーザーのみ可としていた。同社によると、アクセスのリクエストは個々に審査して悪用を防いでいる、という。

編集者注記: この記事の初出はEngadget。Steve DentはEngadgetの編集者。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AppleiPhoneiOSエミュレーション裁判Corellium

画像クレジット:Kiichiro Sato/AP

(文:Steve Dent、翻訳:Hiroshi Iwatani)

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電子フロンティア財団などが批判する中、アップルの児童虐待対策用iCloud写真スキャンに関する社内メモ流出か

電子フロンティア財団などが批判する中、アップルの児童虐待対策iCloud写真スキャンに関する社内メモ流出か

Apple

アップルが予告した次期iOS 15等での児童の性的虐待対策は、メッセージアプリに添付された写真やiCloudに保存される画像をスキャンすることから、複数の方面からプライバシー侵害や監視の恐れがあると批判を集めています。

こうした反発に対して、アップルが新機能を「誤解」を招きやすいと認めつつも、これらの新機能は子供たちの安全を守るための「重要な使命」の一部だと信念を強調した社内メモが流出したと伝えられています。

アップルが5日(米現地時間)に発表した「子供のための保護機能の拡張(Expanded Protections for Children)」への反発とは、具体的にはエドワード・スノーデン氏(米国国家安全保障局の情報を持って逃亡し、米政府が個人情報を監視していることを暴露した人物)や電子フロンティア財団(EFF)など著名な関係者からも寄せられているものです。

批判の対象となっているのは、主にアップルがiCloud画像をスキャンして児童性的虐待資料(CSAM)のデータベースに照合して一致するかどうかチェックする計画であり、わずかな変更により他の個人データも監視できるようになる可能性です。

さて米9to5Macが入手したのは、アップルのインテリジェントシステムエクスペリエンス担当副社長 セバスチャン・マリノー・メス(Sebastien Marineau-Mes)が社内スタッフ向けに書いたメモです。そこでは、アップルは「子供のための保護機能の拡張」に含まれる「機能の詳細を説明していく」ことを続けていくと述べられています。

マリノー・メス氏は、これら新機能に対して「多くの好意的な反応」を確認している一方で、どのように機能するのかを「一部の人々が誤解している」ことや、「少なからずその影響を心配している」ことも認識していると述べています。それでも、これらの機能は「子どもたちを守る」ために必要であり、同時に「ユーザーのプライバシーに対する深いコミットメント」を維持するものであるというアップルの信念を強調しています。

そのメモの全文は、次の通りです。

本日、「子どものための保護機能の拡張」が正式に公開されました。この数年間の皆さんのご尽力に感謝するために、この場をお借りしたいと思います。皆さんのたゆまぬ努力とたくましさがなければ、このような節目を迎えることはできませんでした。

子どもたちの安全を守ることは、とても重要な使命です。アップルらしく、この目標を達成するためには、エンジニアリング、GA、HI、法務、プロダクトマーケティング、PRなど、部門を超えた深い関与が必要でした。本日発表した製品は、この素晴らしいコラボレーションの成果であり、子供たちを守るためのツールを提供すると同時に、ユーザーのプライバシーに対するアップルの深いコミットメントを維持するものです。

今日は多くの好意的な反応をいただきました。誤解をされている方や、その影響を心配されている方も少なからずいらっしゃると思いますが、私たちが作ったものを理解していただけるよう、今後も機能の詳細を説明していきます。また、数ヵ月後に機能を提供するために多くのハードワークが待っていますが、本日NCMEC(全米行方不明・被搾取児童センター)から受け取ったこのメモを共有したいと思います。私自身、非常に刺激を受けましたし、皆さんにもぜひ読んでいただきたいと思います。

このような素晴らしいチームと一緒にアップルで働けることを誇りに思います。ありがとうございました。

このメモには上記の通り、NCMECからのメッセージも含まれています。

そこでは「全員がみなさん(アップル)を誇りに思っており、子供の保護を優先するという名目で行った信じられないような決断を称賛したいと思い、励ましの言葉をお伝えします」と称賛が述べられるとともに、激しい批判に晒されているアップルに対して「この長い日と眠れない夜の間、御社のおかげで何千人もの性的搾取の被害を受けた子供たちが救出され、癒しと彼らにふさわしい子供時代を過ごすチャンスを得ることができることを知って、慰めにしていただきたいと思います」という励ましの言葉も添えられています。

ほかアップルは、米国外でのCSAM検出機能の拡大は、現地の法律や規制に応じて国ごとに行われると9to5Macに対して確認したとのことです。ただし、いつ、どの国や地域に拡大するのかは具体的なスケジュールは提供されていません。

アップルやNCMECが言うとおり、新機能が本当に「プライバシーを守りつつ、子どもを保護するための道筋」となり、その他の使い道へと逸脱するおそれがあり得ないのか。今後もアップルに対しては技術の詳細につき説明が求められ、専門家らの厳しい精査にさらされる展開となりそうです。

Engadget日本版より転載)

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タグ:iOS(製品・サービス)iOS 15(製品・サービス)iPhone(製品・サービス)iPadOS 15(製品・サービス)Apple / アップル(企業)子ども / 子ども向け(用語)機械学習 / ML(用語)電子フロンティア財団 / EFF(組織)プライバシー(用語)

スパイウェア「Pegasus」が政府批判を行う女性ジャーナリストのスマホから写真を盗むために使われた疑惑が浮上

スパイウェア「Pegasus」が政府批判ジャーナリストのスマホから写真を盗むために使われた疑惑が浮上先日、イスラエル企業NSOグループが開発・販売するスパイウェア「Pegasus」が、人権活動家や弁護士、ジャーナリストを標的に使用されているとのアムネスティ・インターナショナル報告がありました。その続報として、政府が女性ジャーナリストの持つスマートフォンからプライベートな写真を盗み出すことに使われたことが報じられています。

問題のPegasusは、感染したデバイスがスマートフォン内に保存されているメッセージや写真をひそかに送信したり、電話の通話を本人に知られずに録音できるというもの。2020年末には37人のジャーナリストが持つiPhoneが政府等によりハッキングされた証拠が見つかったと報告されたことに続き、先月アムネスティはiOS 14.6に存在していたゼロクリック脆弱性、つまりユーザーが何もしなくてもマルウェアをがインストール可能な抜け穴が利用されていたと発表していました。

さて米NBCニュースの報道によると、アルジャジーラ(中東カタールの国営テレビ局)のレバノン人放送ジャーナリストであるGhada Oueiss氏は2020年6月、自宅で夫と一緒に夕食を食べていたところ、同僚からTwitterをチェックするようにとメッセージを受け取ったとのことです。そこでTwitterをチェックしたOueiss氏は、ジャグジーでビキニを着ているときに撮影されたプライベートな写真が「上司の家で撮影された」というウソの情報と共に、複数のアカウントにより拡散されていたことにがく然としたと述べられています。

その後は数日にわたって、Oueiss氏のジャーナリストとしての信頼性を攻撃する何千ものツイートやDMが殺到し、彼女を売春婦、あるいは醜くて年老いた女と罵っていたそうです。それらメッセージの多くは、サウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマーン・アル・サウード皇太子(MBS)の支持者らしきアカウントから発信されており、政府関係者の認証済みアカウントも含まれていたとのことです。

これは単なるOueiss氏の憶測ではなく、彼女のスマートフォンがデジタルフォレンジックの専門家により調査され、Pegasusが写真へのアクセスに使われたとの診断結果(2020年末にMBS皇太子や写真を拡散したTwitterユーザー相手に起こされた裁判にて、提出された訴状で言及)に基づいてのことです。

Oueiss氏は「私の携帯電話がハッキングされたことはすぐにわかりました」と語り、サウジアラビア政権への批判的な報道を封じるために標的にされたとの考えを語っています。また、問題の写真はどこにも公開されたことがなく、自分のデバイス内にしかなかったことも強調しています。

流出させられた写真は、日本や欧米の感覚では特に問題ないように思われます。しかしNBCニュースは、こうした類の写真でも、中東諸国では被害者がダメージを受ける可能性があることを指摘しています。すなわちサウジアラビアのような保守的な社会では、水着写真でさえもスキャンダラスなものとみなされ、女性たちを公に辱めて評判を落とすために利用されたというわけです。

アップルは7月末にiOS 14.7.1を配信し、そのセキュリティアップデートではNSOが過去に使用した脆弱性を塞いだと推測されます(アップルは明言していませんが)。が、NSO社はこれまでもiOSで対策が施されるたびに対応してきており、現在も新たな抜け穴を探していることは確実と思われます。

アップルはアムネスティの報告に対して、Pegasusgaが特定の個人を標的にしていると認めつつ「圧倒的多数のユーザーにとっては脅威ではないことを意味します」として、ほとんどのユーザーには関係ないと示唆していました。が、WhatsAppのCEOが英The Guardianの取材で述べていたように、より本腰を入れた対策が望まれそうです。

(Source:NBC News。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:Apple / アップル(企業)iPhone(製品・サービス)NSO Group(企業)スパイウェア(用語)スマートフォン(用語)プライバシー(用語)個人情報 / 個人情報保護(用語)差別(用語)

アップルの第3四半期決算はiPhoneと各種サービスが牽引し36%増、ただし翌四半期の鈍化予想も

Apple(アップル)にとってこの四半期もすばらしいものだった。売上高は814億ドル(約8兆9400億円)と、前年同期比で36%の増加であり、ウォール街が予想した733億ドル(約8兆500億円)を大幅に上回った。

「当社の4〜6月期の営業成績は、各地域セグメントで売上高の新記録を達成し、各製品カテゴリーで2桁の成長を遂げ、アクティブ端末数はインストールベースで過去最高を記録しました」と、Luca Maestri(ルカ・マエストリ)最高財務責任者(CFO)はリリースの中で述べている。「当四半期には、210億ドル(約2兆3000億円)の営業キャッシュフローを生み出し、290億ドル(約3兆2000億円)近くを株主に還元しました。そして長期的な成長計画を支えるために事業全体にわたって多額の投資を継続しました」。

すべてにおいて同社にとって好調な数字が並んでいるが、引き続きこれらを牽引したのはiPhoneの販売とサブスクリプションサービスだ。これまで同社の四半期決算を追ってきた人にとってはお馴染みの話だろう。

iPhoneの売上高は、260億ドル(約2兆8600億円)から395億ドル(約4兆3400億円)に増加した。これは、同社が待ち望んでいた5G回線の導入が、引き続き強みを発揮したことによるものだ。一方、サービスによる売上高は131億ドル(約1兆4400億円)から175億ドル(約1兆9200億円)に増加。アップルはサービスの拡大を続けており、現在はApple Music(アップル・ミュージック)、Apple TV+(アップルTVプラス)、iCloud(アイクラウド)、Apple Arcade(アップル・アーケード)、News+(アップル・ニュース・プラス)、Fitness+(アップル・フィットネス・プラス)などのサービスを提供している。同社は明らかに、サブスクリプションサービスの取り揃えを収益モデルの将来像と見なしている。

この第3四半期に中華圏はアップルにとって強力な市場であることが証明された。同地域の売上高は147億6000万ドル(約1兆6210億円)と、前年同期比50%以上の増加となった。一方、米州地域では270億ドル(約2兆9650億円)から358億9000万ドル(約3兆9410億円)に増加した。

Tim Cook(ティム・クック)最高経営責任者(CEO)は決算報告の中で、新型コロナウイルス関連の問題に言及し、同社のより広範な社会的関心を強調した。

「当四半期、私たちのチームは比類なき革新を続け、テクノロジーを使ってあらゆる場所の人々をつなぐことがかつてないほど重要になっている中、パワフルな新製品をユーザーのみなさまにお届けしました」と、アップルのティム・クックCEOは語った。「私たちは、新しい世代の開発者にコードを学ぼうとするやる気を奮起させ、2030年の環境目標に近づき、より公平な未来を築くための切迫した課題に取り組むことで、私たちを定義する価値観をすべての製品に吹き込むための取り組みを、引き続き推し進めていきます」。

同社は、新型コロナウイルス流行による不確実性を理由に、業績見通しの提示を今回も断った。しかしながら、引き続き行われた投資家たちとの電話会見で、マエストリCFOは「収益の成長は第3四半期よりも低くなると予想しています」と言及し、その理由として、米ドルとの為替レート、各サービスの成長率の鈍化、ハードウェア製品に影響を及ぼす半導体不足など、さまざまな問題を挙げた。

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カテゴリー:その他
タグ:Apple決算発表iPhoneTim Cook

画像クレジット:Apple

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルがiOS 14.7で「悪意SSIDに繋ぐとWi-Fi機能破壊」バグを修正、公式なセキュリティ文書公開

アップルがiOS 14.7で「悪意SSIDに繋ぐとWi-Fi機能破壊」バグを修正、公式なセキュリティ文書公開今年5月に配信されたiOS 14.6では、iPhoneが特定のSSID(ネットワーク名)を持つWi-Fiネットワークに接続するとWi-Fi機能が無効化される不具合が報告されていました

この不具合は先日から配信されたiOS 14.7での修正が噂されていたのですが、今回、アップルがiOS 14.7での解決を公式に認めるセキュリティ文書を公開しました

これはiOS 14.7およびiPadOS 14.7のセキュリティアップデートに関する文書の中で言及されています。以下、該当する箇所の抜粋です。

対応機種:iPhone 6s以降、iPad Pro(全モデル)、iPad Air 2以降、iPad 第5世代以降、iPad mini 4以降、iPod touch(第7世代)。

影響について:悪意のある Wi-Fi ネットワークに参加すると、サービス拒否や任意のコード実行が発生する可能性があります。

説明:この問題はチェックを改善することで対応しました。

問題のバグは、6月初めにセキュリティ研究者のCarl Schou氏が初めて発見して報告したものです。

Schou氏は「%p%s%s%s%s%n」というSSIDを持つWi-Fiネットワークに繋ぐとiPhoneのすべてのWi-Fi機能が無効になり、再起動しても症状は直らず、復旧するにはネットワーク設定をリセットするしかない、と警鐘を鳴らしていました。

さらに、新たな有害SSIDが発見されたとの続報もありました。これらに限らず「%」記号を含むSSID一般にメモリ破壊バグなどを引き起こす可能性が指摘されており、警戒が呼びかけられていた経緯があります。

その後、iOS 14.7ベータ版ではこれらのバグが解決しているとの検証もありましたが、アップルは表向きには沈黙を守ったままでした。また正式版iOS 14.7の公式リリースノートでもなぜか言及されておらず、今回ようやく公式声明が出たしだいです。

ほかiOS 14.7およびiPadOS 14.7は、オーディオファイル、「探す」アプリやPDF、Webイメージなどに関連する他のセキュリティ脆弱性も修正されているため、iPhoneとiPad のユーザーは速やかなアップデートが推奨されます。

アップルがiOS 14.7で「悪意SSIDに繋ぐとWi-Fi機能破壊」バグを修正、公式なセキュリティ文書公開

(Source:Apple。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:iOS(製品・サービス)iPad(製品・サービス)iPhone(製品・サービス)Apple / アップル(企業)OS / オペレーティングシステム(用語)バグ / 脆弱性(用語)

アップルがiPhoneやiPad、Apple Watchの消毒に過酸化水素水(オキシドール)を使わないよう注意を呼びかけ

アップルがiPhoneやiPad、Apple Watchの消毒に過酸化水素水(オキシドール)を使わないよう注意を呼びかけアップルは製品のお手入れ方法に関するサポートドキュメントを更新し、iPhoneやiPad、MacやApple Watch、HomePodやAirPodsを含む自社製品を消毒するために過酸化水素水(オキシドール)は使わないように注意を追加しました。その一方で、75%エチルアルコール含有ワイプを使って消毒しても問題ないことを確認しています。

以下、サポートドキュメントに追加された箇所の抜粋です。

70%イソプロピルアルコール含有ワイプ、75%エチルアルコール含有ワイプ、クロロックス除菌ワイプ (Clorox Disinfecting Wipes) を使い、Apple製品の通気性のない硬い表面、たとえばディスプレイやキーボードなどの外表面を優しく拭き取る分にはかまいません。漂白剤 (ブリーチ) や過酸化水素を含む製品は使わないでください。開口部に湿気や水分が入り込まないようにご注意ください。また、洗剤類の中に Apple製品を浸さないでください。布製や革製の表面には使わないでください。

これ以前にも漂白剤を使わないようにとの注意はありましたが、過酸化水素水への言及は今回が初めてのことです。

ほかiPhoneやiPad、iPodやMacおよびアクセサリー類など製品カテゴリ毎に注意書きが細々と書かれていますが、共通しているのは製品を消毒する際には開口部に水分が入らないようにすること、いかなる洗剤にも浸さないこと、スプレー式の液体クリーナーなどは使わない、といったところです。また拭き掃除するときは糸くずの出ない柔らかい布を使い、研磨布やタオル、ペーパータオルを使わないことも以前から呼びかけられていました。

いまだに新型コロナ禍が収束しないなかでは、ふだん使っているアップル製品を消毒する習慣は普及していると思われます。が、一般的な家庭用消毒剤の多くには過酸化水素水が含まれているため、含有成分を書いたラベルを読むように心がけたいところです。

アップルがiPhoneやiPad、Apple Watchの消毒に過酸化水素水(オキシドール)を使わないよう注意を呼びかけ

(Source:Apple。Via MacRumorsEngadget日本版より転載)

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自分のスマホがNSOのPegasusスパイウェアにやられたか知りたい人はこのツールを使おう

米国時間7月17日、国際的なニュース配信コンソーシアムが、メキシコやモロッコ、アラブ首長国連邦などの独裁的政府が、NSO Groupが開発したスパイウェアを使って、ジャーナリストや活動家、政治家、企業の役員など、強硬な批判勢力に対してハッキング行為を行ったと報じた。

監視対象になったと思われる5万人の電話番号を、パリの非営利ジャーナリズム団体Forbidden StoriesAmnesty International(アムネスティインターナショナル)が入手し、Washington PostThe Guardianなどと共有した。被害者の電話機数十台を分析した結果、それらがNSOのスパイウェアPegassusに侵されたことがわかった。そのスパイウェアは個人の電話機のすべてのデータにアクセスできる。報道は、NSO Groupが堅固にガードしている政府顧客についても明らかにしている。たとえばEUの一員であるHungaryは、基本的人権の一部として監視からのプライバシーの保護があるはずだが、NSOの顧客として名を連ねている。

報道は、NSOのデバイスレベルの侵入的な監視の対象になった者の人数を初めて明かしている。これまでの報道は、被害者の数を数百名または1000名以上としていた。

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NSO Groupは、これらの報道に厳しく反論している。NSOは長年、顧客のターゲットが誰であるかも知らないと述べていた。米国時間7月19日のTechCrunch宛の声明でも、同じことを繰り返している。

アムネスティの調査は、その結果をトロント大学のCitizen Labがレビューしている。その発見によると、NSOは被害者にリンクを送り、それを開けば電話機に感染する。またiPhoneのソフトウェアの脆弱性を悪用して無言で侵入する「ゼロクリック攻撃」というものもある。Citizen LabのBill Marczak(ビル・マルザック)氏によると、NSOのゼロクリックが悪さをするのは、iOSの最新バージョンであるiOS 14.6の上だという。

アムネスティの研究者たちは、詳細な調査報告とともに、電話機がPegasusuのターゲットにされたかを調べるツールキットを発表した。

そのMobile Verification Toolkit(MVT)とよばれるツールキットは、iPhoneとAndroidの両方で使えるが、動作はやや異なる。アムネスティによると、侵入の痕跡が見つかるのはiPhoneの方がAndroidより多いため、発見もiPhoneの方が容易になっている。MVTはまずユーザーにiPhone全体のバックアップ(ジェイルブレイクしている場合には完全なシステムダンプ)を取らせ、NSOがPegasusを送り込むために使っていることがあらかじめわかっている、侵犯の痕跡情報(indicators of compromise、IOCs)をフィードする。例えばテキストメッセージやメールでNSOのインフラストラクチャのドメインネームを送ることもある。iPhoneの暗号化バックアップがあるなら、全体の新しいコピーを作らなくてもMVTにそのバックアップを解読させてもよい。

MVTのツールキットの端末出力。iPhoneとAndroidのバックアップファイルをスキャンして侵入のIOCを探す(画像クレジット:TechCrunch)

ツールキットはコマンドラインなので、洗練されたUXではないし、端末の使い方の知識が多少必要だ。10分ほど使ってみたが、iPhoneのフレッシュなバックアップを作るつもりならさらに1時間はかかるだろう。そのツールキットに電話機をスキャンさせてPegasusの兆候を見つけるつもりなら、GitHubにあるアムネスティのIOCsをフィードする。IOCファイルがアップデートされたら、ダウンロードしてアップデート版を使おう。

作業を始めたら、ツールキットはあなたのiPhoneのバックアップファイルをスキャンして、侵入の証拠を探す。その処理に1〜2分かかり、その後、フォルダに吐き出す複数のファイルが、スキャンの結果だ。ツールキットが侵犯の可能性を見つけたら、出力ファイルがそういっている。私の場合は「detection」が1つあったが、それは偽陽性だったので、アムネスティの研究者たちにひと言告げてからIOCsから削除した。アップデートしたIOCsで再スキャンすると、侵入の兆候は返されなかった。

Androidの汚染を見つけるのは難しいため、MVTはもっと簡単な方法として、Androidデバイスのバックアップ中にリンクのテキストを探す。それがNSOのドメインだったら怪しい。また、デバイス上に悪質なアプリケーションがインストールされていないかも、スキャンして調べる。

このツールキットは、コマンドラインツールの常として、使い方は簡単だが、オープンソースなのでいずれ誰かがユーザーインタフェイスを作るだろう。プロジェクトの詳しいドキュメンテーションがあるので、私だけでなく多くの人が助かると思う。

チップスを安全に送りたい人はSignalやWhatsAppで+1 646-755-8849まで。ファイルやドキュメントは、SecureDropで送ることができる。詳しくはここで

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カテゴリー:セキュリティ
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画像クレジット:TechCrunch/PhotoMosh

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)