スタートトゥデイがファッションアプリ「IQON」運営のVASILYを子会社化

スタートトゥデイは10月19日、ファッションコーディネートアプリ「IQON」などを提供するVASILYの全株式を取得し、完全子会社化することを明らかにした。金額やスキームは非公開。

VASILYの主力サービスであるIQONは、提携する200以上のECサイトのファッションアイテムを、ユーザーが自由に組み合わせてコーディネートを作成、共有できるアプリ。当初はウェブサイトのみだったが、モバイルアプリでも展開してユーザー数が拡大。現在IQONには250万件以上のコーディネートが登録されていて、ユーザは気に入ったものをお気に入り登録や購入できる。

2017年3月にTechCrunchではVASILY代表取締役の金山裕樹氏を取材している。その時点で月間アクティブユーザーは200万人を超えていて、同年1月には売上最高値を記録するなど一定の評価を得ているという話だった。

また3月に第2弾のサービスとして、人気インスタグラマーと提携した「SNAP by IQON」もリリースしている。SNAPは自社開発のディープラーニングによる画像解析エンジンを活用して、インスタグラマーのコーディネートに似たアイテムを購入できるアプリ。金山氏は「IQONよりも広がるのではないかと期待している」とも話していた。

VASILYは「ZOZOTOWN」や「WEAR」を提供するスタートトゥデイグループに参画することで「これまで培ってきたテクノロジーとスタートトゥデイグループの持つファッションに関 する資産やデータを融合させ、両社のミッションを実現する事業展開に挑戦してまいります」とコメントしている。

VASILYはCEOの金山氏、CTOの今村雅幸氏がヤフーを経て2008年に創業。その後2011年に伊藤忠テクノロジーベンチャーズとGMO VenturePartnersから1.4億円、2013年にその2社とグロービス・キャピタル・パートナーズから3億円、2014年にKDDIから10億円以上の資金を調達していた。

Whole Foods買収はAmazonの利益にどのような影響をもたらすのか

【編集部注】執筆者のAlex WilhelmはCrunchbase Newsの編集長で、VCに関するTechCrunchのポッドキャストEquityの共同司会者でもある。

Amazonは成長を重視するあまり利益を生み出していない(もしくは赤字でさえある)というのはシリコンバレーでよく聞く話だ。しかし同社は、以下のふたつの理由から常々このコメントを否定している

  1. 成長のために巨額の赤字を垂れ流す必要がなくなった。
  2. 最近(あくまでAmazonの企業としての歴史から言っての”最近”)誕生したビジネスの利益が順調に伸びている。

ここにWhole Foodsが加わることで話はさらに面白くなってくる。一般的に食料品小売業は利幅が薄いことで知られているが、既に指摘されている通り、Amazonの利益率はWhole Foodsを下回る。それでは、Whole Foodsの買収はAmazonの利益にどのような影響を及ぼすのだろうか?

私たちの計算には限りがあるということを予め理解しておいてほしい。Whole Foodsの商品が値下げされた後とは言え、Amazonが買収によって新しく発生するコストをどうするのか正確に予測するとなると、推測がかなりの部分を占めてしまう。つまり、値下げはこれから始まる長い物語の序章でしかないのだ。

Amazonを構成する三要素

Amazonの利益(もしくは損失)について議論する際には、同社のコア事業3つを頭に入れておかなければいけない。ひとつが北米でのEC事業、もうひとつが自称”海外”EC事業、そして最後がクラウドコンピューティングサービスのAWS事業だ。

同社は事業ごとの営業利益を決算書に記載しているため、(GAAPベースの純利益の方が指標としては望ましいとは言え)各ビジネスの成績をここから確認できる。以下が2017年第2四半期(リンク先PDF)のEC事業の業績だ。

  • 北米売上:223.7億ドル
  • 北米営業利益:4.36億ドル
  • 海外売上:114.9億ドル
  • 海外営業利益:-7.24億ドル

数字を見ればおわかりの通り、北米EC事業は営業利益を生み出しながら成長を続けている一方、海外EC事業は利益を犠牲に成長しているように見える。しかし、長期的なプランを重視することで知られるAmazonは、国内事業が海外事業の成長を(概ね)支えるような構図に満足している可能性が高い。

3つめとなるAWS事業は北米EC事業よりも好調で、海外EC事業によって生まれた営業利益の穴を埋めるほどだ。

  • AWS売上:41億ドル
  • AWS営業利益;9.16億ドル

上記全てを勘案すると[4.36億-7.24億+9.16億>0]となり、Whole Foodsを計算に入れる前の段階でAmazonの営業利益は黒字だとわかる。

(もっと丁寧に説明すると、Amazonの国内EC事業はもはや海外EC事業を(2016年第2四半期のようには)支えきれていないため、Amazon全体としての営業利益を確保する上で、AWS事業の重要性が増してきている)

それでは、Whole Foodsの売上と営業利益を計算に加えてみよう。

Whole Foods買収の影響

Whole Foodsの買収が完了したところで、同社がAmazonの利益にどのような影響を及ぼすのか考えてみよう(Whole Foodsの数字は、直近の四半期報告書からとったもの)。

  • 売上:37.2億ドル
  • 営業利益:1.8億ドル

まず、Whole Foodsの営業利益率は5%弱だ。しかしGadflyの指摘通り、Amazonの利益率はこれを下回っている。つまり、Whole Foodsの買収に伴ってAmazonに4つめの要素が加わることで、全社的な利益率は向上するかもしれないのだ。

ではWhole Foodsが加わることで、Amazonのビジネスモデルは変わるのだろうか? 変わったとしてもそこまで大きな変化はないだろう。というのも、AmazonはWhole Foodsよりもかなり規模が大きいため、1.8億ドルという営業利益がもたらすメリットもそれなりでしかないのだ。

先述の[4.36億-7.24億+9.16億]という式によれば、Whole Foods買収前のAmazon全体の営業利益は6.28億ドルになる。ここにWhole Foodsの数字を加えると[4.36億-7.24億+9.16億+1.8億=8.08億ドル]になる。

営業利益が8.08億ドルに増えることで、何か変化が起きるかどうかはわからない。ただ、営業利益が29%増え、売上が9〜10%増えるというのは確かだが、それを受けてAmazonが各事業への投資のあり方を変えるというのは考えが飛躍し過ぎているように感じられる。

AmazonがWhole Foods商品の値下げを行ったことで、Whole Foodsの営業利益は今後減少することが予想されるため、結果的に同社がAmazonの営業利益に与える影響も少なくなる。そのため、Whole Foods買収によるAmazonの事業戦略への影響も限定的だと言えるだろう。

結論として、Whole Foods買収によるAmazonの営業利益への影響は軽微で、恐らく買収のメリットは他事業へと広がること(プライムメンバーの増加など)になるだろう。また、Amazonの営業利益が既に黒字であることも注目に値する。結局のところ、巨人Amazonの前ではWhole Foodsも小人に過ぎず、その利益も取るに足らないものだということだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

Snap、ソーシャルマップのZenlyを最高3億5000万ドルで買収――新機能Snap MapはZenlyそっくり

Snapchatの最新機能Snap Mapは、ソーシャルマッピング企業Zenlyの買収と深く関係しているようだ。TechCrunchでは、Snapchatが5月末にZenlyを2億5000万〜3億5000万ドルで買収していたという情報を入手した。買収金額の大方は現金で支払われ、残りは株式の譲渡でまかなわれたようだ。また、買収後もZenlyは独立した企業として運営され、FacebookとInstagramのような関係になると見られている。

Zenlyのアプリでは、バックグラウンドでGPSが常に位置情報を把握しており、ユーザーは友人の居場所を地図上で確認できるようになっている。そして、近くにいる友人にメッセージを送って、遊ぶ計画を立てることができるのだ。

Sensor Towerのデータによれば、パリに拠点を置くZenlyのアプリはこれまでに400万回もダウンロードされており、その28%がフランスのユーザーによるものだが、アジアでも人気を呼んでおり、ダウンロード数の12%が韓国、8%が日本のユーザーによるものだとわかっている。メインのユーザー層は10代の若者で、街中や学校やコンサート会場などで友人とリアルタイムでコミュニケーションをとるのに使われている。さらにZenlyはこれまでに合計で3510万ドルを調達しており、昨年9月に行われた2250万ドルのシリーズBでは、シリコンバレーの名門VCであるBenchmarkがリードインベスターを務めていた。

Zenlyのソーシャルマップ(左)は、Snapchatの最新機能Snap Map(右)に酷似している……その理由はSnapがZenlyを買収したからだった。

今朝(現地時間6月21日)Snapchatは、ユーザーが位置情報を共有したり、自分の近くに何があるかを発見したりするのに使える新機能Snap Mapをローンチした。Snapchatはアプリが開かれた状態でないと位置情報を取得しないので、仕組みに若干の違いはあるものの、それ以外に関してはSnap MapとZenlyは酷似しており、私たちはSnapchatがZenlyのサービスをコピーしたのではないかと考えている。情報筋によれば、Snapから買収の話を持ちかけたようだが、当初Zenlyはそれを断ったという。

さらに本件について探ったところ、買収についてよく知る関係者から、Snapが実際にZenlyを買収したという情報を手に入れた。5月25日にはZenlyのサービス利用規約が変更されており、これはSnapによる買収と関係しているのかもしれない。さらにSnapの社員が、Zenlyのファウンダーをお祝いする内容のツイートをリツイートしている様子も確認された

SnapはZenlyをシャットダウンしてSnapchatに組み込むのではなく、ある程度独立した企業として扱っていくようだ。買収について両社にコンタクトしたが、Snapはコメントを控えており、Zenlyからは返答を受け取っていない。代わりに、昨年Londonで行われたDisruptにおけるZenly CEO Antoine Martinのインタビューの様子を以下にお届けしたい。

Snap MapとZenlyを共存させることで、Snapはソーシャルコンテンツの分野におけるリスクをヘッジしようとしているようだ。InstagramやFacebookをはじめとする他社のアプリが、Stories機能を次々にコピーしていることもあり、ユーザーがオフラインで会うのを促進するような方向に機能を拡大したのはSnapchatの賢い選択だったと言える。しかも、今や消費者のスマートフォンのホームスクリーン上に、Snapのアプリが2つインストールされている可能性さえあるのだ。

友人との予定には色々な活動(食事やアクティビティなど)が含まれているため、将来的には広告掲載やパートナーシップなどさまざまな可能性が考えられる。例えば飲食店や映画スタジオであれば、ZenlyもしくはSnap Mapのユーザー向けに広告を掲載したいと感じるだろう。

Zenlyアプリの概要

2億5000万〜3億5000万ドルという金額はZenlyの買収額としては高く感じられるが、Snapchatはこれまでにも大型買収をプロダクトとしてうまく昇華してきた。例えば、1億5000万ドルの現金とボーナスで買収したLookseryは、Snapchatの代名詞となるARフェイスフィルター機能の原動力になり、6420万ドルで買収したBitstripsは、ユーザーの顔を型どった絵文字Bitmojiのローンチに繋がった。さらにSotiresの検索機能やSnapcode(QRコード)、Spectaclesも、それぞれVerb、Scan.me、Vergence Labsの買収から生まれた機能やプロダクトだ。

Zenly自体は、カメラ企業になるというSnapのミッションにはマッチしないように見える。しかし、ユーザーが友人とオフラインで会うためのアプリを買収したことで、Snapchatはカメラにおさめたくなるような瞬間を生み出そうとしているのかもしれない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

AmazonのWhole Foods買収の勝者と敗者――InstacartからSlackまで

Amazon137億ドルをWhole Foods Marketの買収に投じることで、生鮮食料品ビジネスに深く食い込もうとしている。この買収の話自体はAmazonとWhole Foods Market間のものだが、実際に買収が成立すれば、両社以外にもたくさんの企業が影響を受けることになる。

食べ物とテクノロジーの融合はここ数年で活発化し、さまざまなスタートアップが誕生したほか、大手テック企業が食べ物に関連した取り組みを始めたり、逆に大手食品小売企業が次世代の消費者や彼らがどのようにお店を選ぶかを見逃さないためにテクノロジーを利用し始めたりしている。その中でも特に業界への影響力や規模が大きい企業(+それ以外の数社)に関して、Whole Foods MarketのM&Aがどのようなインパクトを与え得るかについて以下に考察を記している。

Instacart

2012年にY Combinatorのアクセラレータープログラムから誕生したこのスタートアップは、まだ宅配サービスを行う生鮮食料品店がほどんど存在しない頃に、商品をアプリ経由で販売・配達するというサービスを開始し、アメリカの食料品配達業界の草分け的な存在となった。自分たちのことをAmazonの競合と捉えているInstacartは、主要都市で大きな利益を上げ、投資家も同社の力を信じている。その証拠に、Instacartはこれまでに約6億7500万ドルを調達しており、同社のバリュエーションは34億ドルにのぼる

そんなInstacartの株主であり食品小売パートナーでもあるのが、他ならぬWhole Foods Marketなのだ。

つまり、AmazonによるWhole Foodsの買収が完了すれば、これまで1番の競合相手だった企業がInstacartの株主になってしまうのだ。問題はAmazonがこの状況にどう対応するかだ。まず、Instacartを完全に買収して競合企業の数を減らすというシナリオが考えられる。さらに、金融投資としてInstacartの株式はそのまま保有しつつ、Whole Foodsの全デリバリー事業をAmazon Primeに移管するというのもあり得るだろう。

Whole FoodsとInstacartの契約期間はあと4年残っており、情報筋によれば今回の買収によって契約内容が変わることはないため、後者はすぐには起きないかもしれない。

そうなると、Instacartが買収のターゲットとなる可能性もあり、CostcoやWalmartのようなAmazonの競合候補であればそれに興味を示すだろう。また、Whole Foodsとの契約がなくなれば、他の食品小売企業から見ても、Instacartはデリバリーパートナーとして魅力的に映ると考えられる。

Instacartの計画について知る情報筋によれば、どうやら市場はその方向に進もうとしているようだ。つまり、最大のライバルを株主の座に座らせておく代わりに、InstacartはAmazonが持つ株式(割合的には1%未満)を買い戻す可能性が高い。

Instacartは今年の終わりまでに、アメリカ国内市場の約80%をカバーするようになる予定で、先週にはPublixやWegmans、Ahold Delhaizeと新規契約や契約内容の拡充を行った。さらに先述の情報筋によれば、Instacartの売上全体に占めるWhole Foods Marketの割合は10%にも満たないというのも注目に値する。

Instacartのこれまでの道のりは決して平坦ではなかった。事業の成長に伴い、不透明な料金体系にフラストレーションを感じていた顧客や配達人やからは数々の反発があり、資金的にも同社にダメージを与えていた。しかし、依然としてInstacartは成長を続けており、Amazonが求めているものよりも大きなものを築いてきた。

Google Shopping

Googleは早くから小売業に進出しようとしており、2013年のGoogle Shopping ExpressのローンチでAmazonと競合することになった。その後同社は食品を主に扱うようになり、それにつれて段々とパートナー企業の数も増えていった。その中の1社がWhole Foodsなのだ。Amazonが親会社になることで、Whol FoodsはGoogleが扱っている商品をAmazonに移動させる可能性がある。

これを受けて、Googleは今後タッグを組む食品小売企業の数を増やしていくことになるのだろうか? また、CostcoやTargetといったパートナーが扱う商品の宅配対象品目を拡大してくのだろうか?

小売業界におけるAmazonの力は年々増してきているように感じられる。そんな中、インターネットと関わりがほとんど(もしくは全く)ないような食料品店にもチャンスが生まれるかもしれない。大型買収とは無縁な小さなお店が、パートナーとしてのWhole Foodsを失い在庫の確保に必死なGoogleで商品を販売できるようになるかもしれないのだ。その一方で、Googleは販売網の拡大を狙う小売店と優位な契約を結べるかもしれない。

Shipt

競合といえば、Instacartがやっていることをもっとうまくできると考えているスタートアップは未だに増え続けている。そんな企業のひとつであるShiptは、今年に入ってから4000万ドルを調達し、まだGoogleやAmazon、Instacartが手を出せていない”非沿岸地域”の顧客を狙っている。

彼らもWhole Foodsとパートナーシップを結んでいるが、Googleのように最終的には同社との協業関係が崩れてしまうかもしれない。また、Whole Foodsからの売上と他のパートナー企業(アメリカ中部の小売大手が名を連ねている)からの売上の割合も気になるところだ。しかし、Amazonの傘下にない小売企業ができるだけ同社から距離を保つために、Shiptとパートナーシップを結びたいと考える可能性も十分にある。というのも、良くも悪くもInstacartはAmazonと資本的な繋がり(たとえAmazonが単なる株主に留まるとしても)を持つことになるのだ。

同じことがStorePowerGrubmarketに関して言える。両社はどちらもInstacartのようなサービスを提供しており、StrePowerは食料品店を、Grubmarketは生産者や農家を対象に、顧客から注文をとったり、商品を配送したりする手助けを行っている。さらに、どちらもこれまでにかなりの金額を外部から調達してきた。

現在Instacartと取引をしている小売企業が、今後Amazonとの関係が複雑化するかもしれないということを受けて、Instacart以外のオプション(パートナーとしても買収対象としても)に気づくようになれば、StorePowerやGrubmarketのような企業に追い風が吹く可能性もある。そうすれば、資金調達時の彼らの交渉力も上がってくるだろう。

Costco

Costcoにはさまざまな手札が揃っている。テクノロジーという意味ではそこまで名が通っていない同社だが、スーパーマーケットチェーンとしては世界第3位(1位:米Walmart、2位:仏Carrefour)で、Amazonに対抗するためのパートナーを求めている。そんな彼らには多くの選択肢が残されている。

Blue Apron、Sunbasketなどの食材宅配企業

Whole Foodsのメインの商品は生鮮食料品だが、同社は加工食品も扱っているため、その中間に位置する食材宅配サービスを始めるのもそこまで難しいことではない。つまり、Whole Foodsの買収で生鮮食料品や加工食品(ミレニアル世代が好むブランドの商品を含む)を扱う店舗網を手に入れることになったAmazonには、Blue Apronのような事業を始めるチャンスがあるのだ。なお、Blue Apronはこのサービスで大成功をおさめ、健全なバランスシートをもってIPOを控えている。AmazonはBlue Apronが既に解決し終えようとしている規模の経済性の問題に対処しなければならないが、その一方で、食材宅配企業にとってメインの市場となる大都市にWhole Foodsが持つ店舗網のきめ細かやかさ(そして各店舗にある新鮮な食材を販売するためのリソース)を無視することはできない。今後どうなるかについてはまだ静観するしかないが、もしもAmazonにその気があれば食材宅配企業にとってはかなりの脅威になるだろう。

Walmart

WalmartにはWhole FoodsとAmazonのニュースに関するコメントを現在求めているところだが、彼らの眼前にもCostcoと同じようにさまざまな可能性が広がっている。TechCrunchライターのSarah Perezが既に指摘している通り、WalmartがAmazonになる前にAmazonはWalmartになりたいと考えている。そして、Walmartは既に食料品のピックアップサービスを提供している一方で、まだ宅配サービスには手を付けていない。

Walmartがこのギャップを埋めるようとしているならば、今回のニュースを受けて、同社は物流のノウハウを持つ企業を買収することになるかもしれない。さらに、顧客層にまでWhole Foods買収の影響がおよぶ可能性もある。Sarahの分析記事でも触れられている通り、AmazonはAmazonプライムで中間〜富裕層の消費者を重点的に攻めている。高級スーパーとして知られるWhole Foods(Whole Paycheckという名前で呼ばれることがあるほど)の買収でその傾向はさらに強まるだろう。そんな中、Walmartが富裕層に対してどのような動きを見せるのかというのはとても気になるところだ。”Amazon効果”を心配する企業が増えることで、Walmartは優位に交渉を進められうようになるかもしれない。

Jana Partners

投資会社Jana Partnersの努力がこの度ようやく報われた。彼らは今年の4月からWhole Foodsにプレッシャーをかけ続けており、遂にAmazonとの話がまとまったのだ。今回の買収はWhole Foodsの株主に大きな利益をもたらし、Jana Partnersも今年に入ってから取得したWhole Foodsの株でかなりのリターンを稼ぎ出した。これを受けて、今後食料品業界で「物言う投資家」の動きが活発化する可能性がある。

Ocado、Bigbasket、Conershop

食料品配達企業の中には各地域に特化したプレイヤーもいるが、一様にAmazonの競合と表現されており、今後Amazonがそのうち何社を買収するのか気になるところだ。Whole Foodsに大金を投じたことで、しばらくの間Amazonは財布の紐は締めることになるかもかもしれない。しかし、だからといって各地で活躍する企業を買収する気が全くないということはないだろうし、買収対象となる企業もAmazonのような大きな枠組みの中で、各種の有用なデータを利用しながら事業を展開する方がうまくいく可能性もある。その一方で、InstacartやPostmates(以下で触れている)のような評価額が彼らにつくかどうかというのはまた別の話だ。

Postmates

現在Postmatesはフードデリバリーサービスを主な事業をとしているが、オンデマンドのデリバリーネットワークというもともとの構想もなくなったわけではない。他のデリバリーネットワークや特定の地域に特化したプレイヤーと同じように、PostmatesはInstacartとの関係性が今後複雑化するであろう小売企業と、より良い関係を築けるようになるかもしれない。InstacartとWhole Foods(Amazonとも読み替えられる)の親密な関係は、他の小売企業にとってはある種の障害となる可能性が高く、これはInstacartの競合企業にとっては喜ばしいことだ。さらに大手小売企業がPostmatesのような企業のことをAmazonに対抗する上での重要なパートナーと捉えることで、彼らの価値自体が高まる可能性もある。

Slack

Amazonはこれまでにも数々の大型買収を行ってきたが、Whole Foodsほどの規模のものはなかった。先述の通り、Whole Foodsの買収が連続大型買収のひとつめということでもない限り、Amazonはしばらくの間M&Aの手を緩めることになることになるだろう。その一方で、先週AmazonがSlackの買収に興味を持っているという噂が浮上した。どうやら結局Slackは別の道を歩むと決めたようで、代わりに5億ドルを調達しようとしていると報じられている。しかし、CiscoがIPO直前のAppDynamicsを買収したように、ギリギリのタイミングで物事が変わることはよくあり、Microsoftも同社には注目しているようだ

いずれにしろ、Slackの値段は公知のものとなり、しかもかなりの高値がついている。もしかしたら、Whole Foodsの買収に大金を費やしたAmazonが買収競争から外れると見た、テック業界とはそこまで関係の深くない企業が急にSlackの買収に乗り出すということもあるかもしれない。これに関しては、これまでに比べてかなりはっきりとした金額が明らかになったということを考慮し、今後の行く末を見守るしかない。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

AmazonのWhole Foods買収でリテールのライバルの株価急落

Amazonが137億ドル〔1.5兆円〕という金額で高級生鮮食料品スーパーのWhole Foods Marketを買収したことは投資家を恐慌に追い込んだ。Wal-Mart、Target、Costco、Krogerを始めスーパーマーケット・チェーンの株価は軒並み急落した。

Amazonのビジネス帝国の規模、洗練されたロジスティクス、先進テクノロジー、それにもちろん巨額の資金はWhole Foodsのライバルを旧態依然たる存在に見せるのに十分なものがある。

東部標準時で 11:45amにおけるリテール・ビジネスの現状は惨憺たるものだ。

  • Amazon: +2.91% to $992.21
  • Wal-Mart: -6.02% to 74.16
  • Target: -9.52% to $51.14
  • Costco: – 5.89% to $169.48
  • Kroger: -12.34% to $21.53
  • Dollar General: -5.17% to $68.58
  • SuperValu: -13.56% to $3.25
  • Sprouts Market: -6.38% to $20.99
  • Smart & Final Stores: -14.96% to $9.52
  • Weis Markets: -5.30% to $48.22
  • Ingles Markets: -4.57% to $33.40

テクノロジーの巨人、Amazonがアメリカを代表する生鮮食料品スーパーを買収したことは、将来さらに多くの店舗ないしテクノロジーに投資する可能性を感じさせる。Amazonは世界の大きな部分を支配することが現実的な可能性だと気づいただろう。AWSのサーバーはわれわれがいつも使うアプリを走らせている。Amazon Primeは各種商品からストリーミング・コンテンツまであらゆるものを提供する。そして今や現実店舗の大きな部分もAmazonの支配下に入った。

Image Credit: CNBC via Will Oremus

〔日本版〕株価を12%以上下げたKroger(クローガー)は1883年創業の老舗大型スーパーで2016年には売上1153億ドルを記録しスーパーマーケットとしては全米トップだったという。記事原文のリンクがfoodcapypsse(食料品アポカリプス)であることでもシリコンバレーに与えた衝撃が大きいことがわかる。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

速報:Amazon、高級スーパー、Whole Foodsを137億ドルで買収へ

Amazon は高級生鮮食料品スーパー、Whole Foods Marketを137億ドルという驚くべき価格で買収することで同社と最終的に合意したと発表した

買収は全額キャッシュが予定されている(Whole Foods Marketの純負債額も含まれる)。 この買収はあらゆる業種のあらゆる企業に影響を与えるだろう。これによりオンライン、実店舗を問わず小売ビジネスの光景が一変する。

Amazonのファウンダー、CEOのジェフ・ベゾスは「何百万もの顧客がWhole Foods Marketを愛している。ここではアメリカで最高品質の自然食品、有機食品が手に入るからだ。人々はヘルシーな食生活を楽しむようになった。Whole Foods Marketは人々を喜ばせ、満足させる栄養豊かな食品を40年近くにわたって提供してきた。まさに驚くべき達成だ。われわれはWhole Foods Marketの成功が今後も継続されることを望んでいる」と声明で述べた

買収後もWhole Foodsのブランド、運営は従来どおり続けられる。店舗、社員、パートナーにも変化はない。

John MackeyはWhole FoodsのCEOに留まる。本社は引き続きテキサス州オースティンに置かれる。

この買収は今後、Whole Foodsの株主及び規制当局の承認を受ける必要がある。万事順調に進めば手続きの完了は今年の第二四半期中となる見込み。

このニュースはBloombergが第一報を伝えたが、影響は生鮮食料品小売業だけでなくスタートアップも含めてほとんどらゆるビジネスに及ぶだろう。

Amazonは今や現実店舗の巨大なネットワークにアクセスが可能となった。とはいえ、Whole Foodsのブランドや店舗に変更が予定されていなということは(少なくとも当面は)両者は比較的独立を保って運営されるのだろう。

画像:: Amazon

〔日本版〕大きなニュースのためTechCrunchではShieber記者が速報記事を公開した。この記事はこの後アップデートされる可能性がある。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Verizon、45億ドルでYahoo買収完了――AOL含めメディア事業はOathに統合

VerizonのアメリカYahoo買収が正式なものとなった。先週、Yahooの株主は買収を承認していたが、Verizonは今日(米国時間6/12)、Yahooの買収手続きを完了したと発表した。Verizonは既存AOLと買収したYahooの資産をOathというグループに統合する。Oathにはメディア・ブランドが(TechCrunchを含め)50社前後含まれる。ユーザー総数は世界で10億人に上る。Oathの責任者には現AOLのCEO、ティム・アームストロング(Tim Armstrong)が就任する。

予想されていたとおり、長年YahooのCEOを務めてきたマリッサ・メイヤー(Marissa Mayer)は辞任した。メイヤーは最近 2300万ドルの「ゴールデン・パラシュート」ボーナスを受け取っている。

マリッサ自身のコメントはTumblrのこの投稿を参照。簡単にいえばこのメモはこの5年間の成果の自慢だが―残念ながら―行間を読めばこの期間Yahooがいかに困難な状況に置かれていたかが分かる。

いずれにせよこの買収完了はインターネットの記念碑的な存在であった独立企業の終焉を告げるものだ。Yahooはもっとも歴史あるインターネット企業であり、西部の荒野のような混乱状態だったインターネットに秩序をもたらし検索事業を現在のような重要なビジネスとした会社だった。しかしGoogleの登場とともにYahooは後退し、自己改革の試みが何度も行われたが、そのつど非常に高価な失敗となった。結局、いまわれわれが眼前にしているような他の大企業グループの傘下に入るという結果となったわけだ。

Yahooの買収はオンライン・メディアにおける集中化のトレンドを象徴するものでもある。Verizonのような巨大企業は多数のメディアブランドのオーディエンスを一箇所にまとめて規模の経済をフルに利用しようとしている。広告経済でGoogleやFacebookのような強力なライバルに対抗していくには規模が重要となってくる。

Oathを管轄する,Verizonのメディアおよびテレマティクス担当プレジデント、Marni Waldenは、「〔Yahoo買収の〕完了はわれわれがグローバルなデジタルメディア企業としての地位を確立する上で重要な一歩だ。今やVerizonとOathの資産にはVRからAI、5GからIoT、パートナーおよび独自のコンテンツが含まれる。これらはグローバルなオーディエンスを獲得するすばらしい手段となるだろう」」と声明で述べた

キャリヤの伝統的ビジネスは衰退ぎみであり、それを補う努力に懸命だ。とはいえばVerizonは現在でも紛れもなく巨大企業だ。社員は16万1000人、2016年の売上は1260億ドル、モバイルビジネスでは1億1390のリテール・コネクションを持っている。

われわれが先週書いたとおり、今回のYahooとAOLの統合ではマーケティングや管理業務を中心に15%の人員カットが行われる。今日の発表ではこの点についての言及がなかったが、TechCrunchでは引き続き取材していく。

またマリッサ・メイヤーとともに退任する幹部のリストもまだ発表されていない。われわれが得た情報ではメイヤーにきわめて近かったYahooの上級副社長、Adam
Cahanも辞任し、CISO〔最高情報セキュリティー責任者〕のBob LordもYahooを去る。ただLordは問題の大規模な情報漏えいが起きた時点では責任者ではなかった。この情報漏えいによりVerizonはYahooの買収額を数億ドル減額したという。

AOL/Oathの広報担当者は他の退任者について明かすことは避け、Oathのグローバルな役割を強調するに留まった。

特に意外の感はないが、これに先立って、David Filo、Eddy Hartenstein、Richard Hill、Marissa Mayer、Jane Shaw、Jeffrey Smith、Maynard Webb Jr.はYahooの取締役をすでに辞任している

新組織に残る人材については、Jared Grusdがニュース部門(yahoo.comaol.com、 HuffPost、Yahoo Newsなど)、Geoff Reissがスポーツ部門、David Karpがピープルおよびコミュニティー部門(Tumblr、Polyvore、Cabana、Yahoo Answers、Yahoo View、Kanvas)、Andy Serwerがファイナンス・メディア(Yahoo Finance、Autoblog)、Michael LaGuardiaがファイナンス・プロダクト、Ned DesmondがTechCrunchとEngadgetをそれぞれ担当する。 【略】

Oathは単に統合されたメディアブランドというだけでなく、こうしたメディアを支える広告テクノロジーもOathに統合される。おそらくOne byAOLBrightRollのマーケティング、広告テクノロジーに力が注がれ、モバイルからビデオ、検索、ネーティブ、プログラムなど広告の全分野をカバーすることを目指すのだろう。

さらに取材中。

〔日本版〕ティム・アームストロングのメモは原文に掲載。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

ハイテク企業の買収狂想曲はまだ続く?

PwCとThomson Reutersが発表したデータによれば、今年はハイテク関連の買収事案にとって良いスタートが切られたようだ。第1四半期には486件の米国ハイテク取引が発表され、その総額は428億ドルとなった。

取引件数と取引金額の両面で、今年は米国のハイテクM&Aにとって、2014年以来の好スタートとなった。ただ昨年の同時期に比べて28%多い取引件数があったものの、価値という面では2%多く上回っただけだった。すなわち取引の平均額が下がっていたということを意味する。

Intelによるイスラエルの自動車技術会社Mobileyeに対する154億ドルの買収その中でも飛び抜けて最大の取引であり、自動運転車に関連する買収の勢いを生み出した。思い起こせば、ほぼ1年前にGMは、自動運転技術向上のために、Cruise Automotiveを10億ドルで買収していた。

CiscoによるAppDynamicsの37億ドルでの買収は、この四半期で2番めに大規模な買収であり、その条件は計画されていたIPOのほんの数日前に合意された。その他にもDigitalGlobeの24億ドルの買収や、同じく24億ドル規模のCapitol AcquisitionとCisionの合併があった。10億ドルを超える取引は7件を数えた。

ソフトウェアは当四半期で最もアクティブなセクターで、その取引数は227件に及んだ。ITサービスは167件の買収で2位に入った。

伝統的なビジネスがイノベーションのためにスタートアップに頼り続ける中で、非デジタル企業たちが143件のテクノロジー企業を買収している。この傾向は、一般的にまだ続くと予想されている。

しかし、国境を越えた買収には失望すべき案件もあった。PwCのレポートによれば「アジア/パシフィックの投資家の活動は、2017年第1四半期には顕著に減少した、これは新政権による米国市場の不確実性を反映したものである」。法律事務所Morrison&Foersterによる最近の調査も同様の報告を出していて「世界の2大経済国である米国と中国の間のM&Aは、今後数年間特に困難になると予想されている」。

中国人バイヤーたちの困難は「トランプ政権によってもたらされた不確実性と、中国当局による中国からの資本流出規制の組み合わせによるものです」とMorrison & FoersterのGlobal M&A Practice Groupの共同議長であるRobert Townsendは語る。しかし、米国における多数の技術取引は今後も継続する見込みだ。

第2四半期も引き続き活発で、PetSmartがChewy.comを、e-コマースの買収額としては最高記録の33.5億ドルで買収したと言われている。私たちはこれまでにも、幾つかのe-コマース買収を見てきた。その中にはRetailMeNotの6億3000万ドルの取引IACによるAngie’s Listの5億ドルでの買収なども含まれている。e-コマースは「特に対応するブリックアンドモルタル企業(昔ながらの店舗を抱える業態の企業)から新たな関心を寄せられやすい領域です」と言うのはPwCのU.S. Technology DealsのリーダーであるTodson Pageだ。

現四半期におけるその他の注目すべき買収には、Oracleによるアドテック会社Moatの買収買収額は850億ドルと伝えられている )、Uber競合のGettによるスタートアップ企業Junoの2億ドルでの買収、そしてAureaによるコラボレーションソフトウェアJiveの4億6200万ドルでの買収などが挙げられる。

MoFoという名でも知られているMorrison&Foersterは、150人以上の投資銀行家、M&Aエグゼクティブ、ベンチャーキャピタリスト、弁護士などを対象に調査を行い、その半数以上である52%が、世界のハイテク取引の数は昨年を上回るものと期待しているという結果を得た。減少を予想しているのはわずか15%である。

PwCのページも同様に、今年の残りの部分については楽観的だった。彼は「技術的M&Aの勢いが続くことを確信している」と語った。特にソフトウェア分野では強気のようだ。

MoFoのTownsendは、多くの専門家たちがセキュリティ業界の統合を予測していると述べている。「サイバー脅威の増加と、特に(いずれかの)国家の後押しするハッカーたちによるサイバー攻撃の並外れた脅威」がこの分野での買収を加速することになる、と彼は予想している。MoFoはまた、IoT、人工知能、およびビッグデータのカテゴリでの統合も予測している。

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(翻訳:Sako)

FEATURED IMAGE: PRESSMASTER/SHUTTERSTOCK

Caterpillarが、建設機器マーケットプレイスを提供するYard Clubを買収

建築などに用いる重機を、より効率的に利用する手段を提供するスタートアップであるYard Clubが、Caterpillarに買収された。契約条件は明らかにされていないが、Yard ClubのCEOであるColin Evranはこの取引が週の始めに締結されたことを明らかにした。

この取引は、かつてCaterpillarがYard Clubへの戦略的投資を発表してから、ほぼ2年後に行われたものだ。そのときの投資の一環として、Yard ClubはCaterpillarネットワークのディーラーと協力して、請負業者や建設作業員たちに機器を販売するだけではなくレンタルする手助けも始めていた。

その時以来、Yard Clubはそのレンタルビジネスを拡大しながら、ユーザー向けの機能も追加してきていた。同社のウェブサイトによると、Yard Clubは2016年の時点で、2500社の請負業者ならびにレンタル会社との間で1億2000万ドルの取引を行っている。

時間が経過するにつれ、そのプラットフォーム上で行われるレンタル取引から利益を得るビジネスから、顧客が所有もしくはレンタルしている全ての機器の管理を可能にするSaaSプラットフォームの提供へと力点がシフトしてきた。この中には、検査と保守管理のためのツールに加えて、機器の割り当て、スケジューリング、可視化などのツールも含まれている。

この分野の競争相手にはEquipmentShareGetableのようなスタートアップが含まれている。しかし、これらの企業と比較すると、Yard Clubは比較的少額のベンチャー投資を受けてきた。全体として、同社はCaterpillar、Andreessen Horowitz、Harrison Metal、Dorm Room Fund、Fred Poses、そしてAndy Rachleffなどの投資家から510万ドルを調達している。

いまやCatapillarの一部となったことで、Yard Clubはこれまでテクノロジーに欠けていた業界に、より多くのテクノロジーを持ち込むことが可能になる。

「私たちのビジョンは一致しています。私たちは既にCaterpillarの流通ネットワークの中で仕事をしていますし、彼らは私たちの会社の投資家の一員だったのです」とEvranは私に語った。契約の一環として、Yard Clubの13人の従業員はCatapillarに異動し、サンフランシスコにおける同社のデジタルプレゼンスとして振る舞うことになる。

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(翻訳:Sako)

M&Aなしに大企業は競争力を維持できるのか?

【編集部注】執筆者のJoanna GlasnerCrunchbaseのリポーター。

目まぐるしく変化するテクノロジー集約型のビジネスを行っている大企業が、スタートアップを買収するというのはよく見る光景だ。結局のところ彼らは、新市場に参入するためや革新的であり続けるために起業家精神溢れる人材を必要としており、そのために必要なお金も持っている。

これがベンチャーキャピタルやスタートアップの界隈でのM&Aに関する通説だ。もっと言えば、これこそがベンチャービジネスの在り方なのだ。IPOの方が注目を集めがちな一方で、事業売却がスタートアップのエグジット、そしてベンチャー投資のリターンの大半を占めている。

しかし、もしもこの考え方が間違っているとしたらどうだろうか?もしも血気盛んなスタートアップを買収することなく、日々変化する環境にうまく順応しながら競合に打ち勝ち、巨額の時価総額を維持することができるとしたら……

この仮説を検証するため、私たちはCrunchbaseのデータを使い、買収した企業の数が少ない大企業をリストアップした。なお、リストの作成にあたってはテック企業にフォーカスを当てながらも、テクノロジーへの投資を積極的に行なっている企業であれば、小売や消費財、物流など業界を問わず調査の対象とした。

調査結果からは、革新的だとされている企業の多くが、実際はあまりM&Aを行なっていないということが明らかになった。中には以前M&Aを行なっていた企業もあったが、彼らも最近ではその数を減らしているか、もしくは全く企業買収を行わなくなっている。さらに、これまでに一度も他社を買収しようという動きさえ見られない企業も存在した。

以下が、あなたのスタートアップを買収する可能性が少ない大企業のリストに含まれている有名企業の例だ。

Netflix

どちらかと言えば、Netflixはたくさん企業を買収していそうな感じがする。600億ドルの時価総額や革新的でリスクを恐れない企業文化に加え、さらに彼らには利益の何倍もの価格で株式を売買する投資家がついている。それでもCrunchbaseのデータによれば、カリフォルニア州ロスガトスに拠点を置く動画ストリーミングサービス大手の同社は、これまで一度もスタートアップを買収したことがない(少なくとも公開されている情報をもとにすると)。

Netflixは企業買収を行っていない一方で、コンテンツやライセンス関連の契約には多額のお金をつぎ込んでおり、4月にはストリーミングプラットフォームのiQIYIと、中国初のライセンス契約を締結した。さらに彼らは、NBC Universalを含むハリウッドのスタジオとも多数のライセンス契約を結んでいる。

Nvidia

昨年グラフィックチップメーカーの株価が急騰し、Nvidiaの時価総額も最近600億ドルを超えた。

しかし同社が過去6年間で買収した企業の数はたった1社だ。それ以前は1年に1社のペースでM&Aを行っていたNvidiaだが、公開されている情報のかぎりだと、最後に企業を買収したのは2015年のことで、しかもその内容は、TransGamingと呼ばれるシードステージのクラウド・ゲーム・スタートアップを375万ドルで買収したという小規模なものだった。

Crunchbaseの情報によれば、Nvidiaは2002年から2011年の間に、大型買収を含め1年に1回M&Aを行っていた。最後の大型案件は2011年のことで、彼らはモバイル・ブロードバンド・モデムを開発するIceraを3億6700万ドルで買収していた。

もしもスタートアップを買収していなかったらNvidiaの競争力に悪影響が出ていたかどうかというのは、なかなか証明するのが難しい。最新の収益報告書によれば、同社は2クォーター連続で売上が50%伸びており、昨年の純利益は約17億ドルだった。

Texas Instruments

Texas Instrumentsは、シリコンバレーで話題にあがらない企業のひとつだ。おそらくこれには、ダラスに拠点を置いているということや、同社が1950年代から営業しており、1970年代にリリースされた計算機のブランドとしてよく知られていることが関係しているのだろう。とは言っても、Texas Instrumentsはセミコンダクターの分野では一大企業であり、時価総額は約800億ドル、年間利益は約80億ドルを記録している。彼らも最近はM&Aに消極的だ。

最後にTexas Instrumentsが企業を買収したのは、2011年のことだとCrunchbaseには記されている。当時同社はNational Semiconductorを65億ドルで買収しており、もしかしたら彼らは未だにこの大型買収を消化している最中なのかもしれない。それ以前は、Texas Instrumentsもある程度M&Aを行っており、2002年から2011年の間には、VCから投資を受けたスタートアップを含め10社を買収している。しかし、しばらくの間彼らはM&Aの世界には戻ってきていない。

Applied Materials

Applied Materialsも昔は積極的にM&Aを行っていたが、しばらくの間新しい企業買収の話を聞かない。Texas Instruments同様、彼らの最後の買収はかなり規模の大きなもので、2011年にセミコンダクターの加工機器を製造するVarian Semiconductorを49億ドルで買収した。もともと彼らのM&Aの数は、時価総額が400億ドル強の企業としては多い方ではないが、それにしても6年間というのは長い休息期間だ。

しかしスタートアップを買収しない一方で、Applied Materialsはスタートアップへの投資は行っている。同社の傘下でVC事業を行うApplied Venturesは、2006年以降少なくとも46回も投資ラウンドに参加しており、昨年だけでも数件の投資案件に関わっている。

The Home Depot

The Home Depotといえば、フローリングやドリルをはじめとする各種ツールを販売している企業として知られているため、同社が量子コンピューティングのスタートアップを買収するとは誰も思っていない。しかし、小売業界でイノベーションを起こそうとしてるスタートアップはたくさん存在するため、1800億ドルの時価総額がついている小売企業が、競争力を保つためにスタートアップを数社買収していてもおかしくないと思う人もいるだろう。

しかし実際はそうではない。Crunchbaseによれば、最後にThe Home Depotがスタートアップを買収したのは5年前のことだった。そのとき同社はBlackLocusと呼ばれる、それまでに数百万ドルの資金を調達していた、値決めソフトを開発するアーリーステージのスタートアップを買収した。さらに同年The Home Depotは、Redbeaconという業者探し・見積もりサイトを買収している。

その他に時価総額が大きいながらも最近スタートアップを買収していない企業としては、UPSやProcter & Gamble、Citigroupなどが挙げられる。どの企業もM&Aに必要な資本はあるが、単純に企業買収に積極的ではないのだ。

M&Aを積極的に行っていない企業の情報から分かるのは、スタートアップの買収はあくまで戦略上のオプションであり、必ずしも必要ではないということだ。つまり、GoogleやMicrosoft、Oracle、Facebookといった時価総額の大きな企業が、多数のスタートアップを買収しながら株価を保持している一方で、M&Aがトップの座を守るための唯一の方法ではないということだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

KDDI、高級宿泊予約サイト「Relux」運営のLoco Partnersを子会社化へ

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数日前にグリーが3ミニッツを買収したニュースをお伝えしたが、また1つ、スタートアップのイグジットに関するニュースがあったようだ。KDDIは2月7日、会員制の宿泊予約サイト「Relux」を運営するLoco Partnersと株式譲渡契約を締結したことを明らかにした。今後は2月末をめどにLoco Partnersの過半数の株式を取得し連結子会社する予定だ。

Loco Partnersは2011年9月の設立。代表取締役の篠塚孝哉氏は、2007年にリクルート旅行カンパニーに新卒入社。大手宿泊施設の企画やマーケティングを担当したのちに起業した。Loco PartnersはこれまでリクルートホールディングスやKDDIなどから出資を受けている。

同社が手がけるReluxは、日本から厳選した一流の旅館やホテルを掲載した宿泊予約サイト。宿泊施設の品質に加えて、満足度や最低価格の保証、会員限定特典などを特徴としている。最近では外国語対応や海外代理店、宿泊予約サイトなどとの連携を実施。インバウンド需要への対応を進めてきた。

グリー、女性向け動画メディアやマーケティングを手がける3ミニッツを43億円で買収

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「動画元年」という言葉はインターネット業界では過去に何度も使われていて、一体いつなんだという状態ですが、弊社にとっては2016年が間違いなく元年です——サイバーエージェント代表取締役社長の藤田晋氏は2016年初のブログでこんなことを書いていた。同社は2016年4月にAbemaTVを正式にオープンしたので、それを踏まえてのコメントであることは間違いないが、上場企業だけでなく、動画関連のスタートアップも2016年に数多く活躍したのは紛れもない事実だ。

そして今回、グリーがそんな動画関連スタートアップの1社の買収を発表した。グリーは2月2日、InstagramやYouTube向けのプロダクションや動画メディア、ECなどを展開する3ミニッツの子会社化を発表した。買収額は43億円。

3ミニッツは、ファッション動画メディアの「MINE BY 3M(マインバイスリーエム)」のほか、InstagramやYouTubeを通じた動画マーケティングやインフルエンサーマーケティングなどを手がけてきた。各メディアを合計した月間のべリーチ数は7500万、月間再生回数1億回超で、MINE BY 3Mは25歳〜34歳の女性を中心に累計利用者数200万人を突破。さらにプライベートブランド「eimy istoire」も展開しており、その初動売上は2000万円を記録したという。

ゲーム事業全体でみると縮小傾向にある同社。新たな収益の柱となる事業を求め、これまで住まいやヘルスケア、広告、動画といった領域に参入していた。グリーでは今回の買収の意図について、「この度の株式の取得により、当社グループの持つインターネット事業に精通した人材と安定した財務基盤といった経営資源を3ミニッツに投入することで、動画広告市場において更なる成長を実現できると判断し子会社化することを決議いたしました」とコメントしている。

DMM、クラウドストレージアプリ「POOL」と音楽アプリ「nana」の運営元を買収

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2016年12月に、ピクシブ創業者・代表取締役社長である片桐孝憲氏の社長就任を発表して話題を集めたDMM.com。体制を新たにした同社がスタートアップの買収を発表した。DMM.comは1月27日、クラウドストレージアプリ「POOL」を開発、運営するピックアップ、 音楽アプリ「nana」の開発、運営を行うnana musicの株式を取得し、子会社化したことを明らかにした。買収額はいずれも非公開。

160万人、34億枚の写真を扱う「POOL」

ピックアップは2014年設立。代表取締役社長の宮本拓氏はBASEに勤務したのち、独立した人物。同社が提供するPOOLは、手軽な操作で利用できる画像、動画用のクラウドストレージアプリだ。

screen696x696-1TechCrunchの読者であれば「そんなの、iCloudだってあるし、DropboxもGoogle フォトもある。それでいいじゃないか」なんて思うかも知れないけれど、これらのプロダクトすら使えないような若い世代をターゲットにしているという。

宮本氏に以前聞いたところだと、当時好きだった女の子から「スマートフォンで写真を撮り過ぎてデータの容量が増えて困っている。どうすればいいのか?」といった質問を受けたのがPOOL開発のきっかけだという。

当時宮本氏は「Twitterで『写真 容量』で検索すると、若い世代の悩みがいろいろ出てくる。それで調べてみると写真と動画が一番容量を取っている。それを解決したかった。だがiCloudすら分からないし、PCを持っていない人はバックアップに困っていた」なんて語っていた。

POOLのユーザー数は現在160万人で、34億枚の写真が保管されているという。広告やプレミアムユーザー向けの課金を行ってマネタイズを進めているとのことだが、今後はPOOLのマーケティングを強化するのに加えて、新アプリの開発も進めるという。

世界300万ダウンロードを達成した「nana」

screen696x696-2一方のnana musicは2013年の設立。同社が提供するnanaは、音楽のセッションやコラボレーションを楽しめるアプリだ。アプリを立ち上げ、スマートフォンのマイクで歌や楽器演奏を録音して投稿できるのだが、キモとなるのは投稿された音楽に重ね録りをできるという機能だ。この機能によって、伴奏だけを投稿するユーザーと、その伴奏に歌声を重ね録りして投稿するユーザー…といったようなコラボレーションが実現するのだ。投稿にはFacebookの「いいね!」のような「拍手」やコメントを付けることも可能。

サービスは法人登記前の2012年8月にスタート。2016年12月には世界累計300万ダウンロードを達成した。累計楽曲再生数は12億回、累計楽曲投稿数は3000万曲以上となっている。僕は前職から何度かnana musicの取材をしているが、代表取締役社長CEOの文原明臣氏はnanaを開発したきっかけについて、名曲「We Are The World」を世界中のユーザーで歌えるようにしたいといつも語ってくれていたのが印象的だった。

ユーザーの7割が18歳以下という若いコミュニティを持ったサービスとなっており、伴奏と歌だけでなく、声まねや朗読、Q&A形式の投稿など、ユーザーが新しい楽しみ方を自ら作り出しているのも特徴だという。マネタイズに関しては企業とのタイアップを中心に進めていたが、2016年10月から課金サービスも開始した。

なお買収した2社とも代表は引き続き会社に残り、サービスの成長を支えていくとしている。

 

 

成功と失敗は「紙一重」ではない——投資家が語ったスタートアップの“光と影”

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スタートアップ、起業、ベンチャー――最新テクノロジーと親和性の高いウェブメディアだけでなく、最近ではテレビなどでも成功事例が華々しく取り上げられるようになったが、そんな成功の裏には失敗もある。光と影、表裏一体なのだ。とはいえ、その結果に至る要因を探ると、紙一重ではないことが見えてくる。

2016年11月17日から18日に東京・渋谷で開催された「TechCrunch TOKYO 2016」のプログラム「投資家から見たスタートアップの『光と影』」では、グロービス・キャピタル・パートナーズCOOの今野穣氏とiSGSインベストメントワークス代表取締役の五嶋一人氏がパネルディスカッションを行った。

「資本施策」「人事・労務」「パートナー」「学生起業」「イグジット」「投資家」の6つの側面に、“光”を当てられた影。見えてきた「起業家たちの心がけるべきこと」とはなんだったのだろうか。

不確実性を恐れるな。シェア、バリュエーション、事業計画は綿密に

最初のテーマに選ばれたのは「資本施策」。なにが良くてなにがいけないのか、陥りやすい罠とはなにかを今野氏、五嶋氏が投資家という立場で語った。

iSGSインベストメントワークス代表取締役の五嶋一人氏

iSGSインベストメントワークス代表取締役の五嶋一人氏

「資金供給プレーヤーは増えているため、調達できる金額は上がってきている」と今野氏。「とはいえ、ステージに合った金額で集めていかないと、次のラウンドでの調達が難しくなる」という。

「例えば、コンセプトの段階で期待値の高さから、数十億円の時価総額で投資家が投資をしても、時間の経過とともに期待値に実績が追いついてくるかどうかが次第に明らかになってくると、次のファイナンスで身動きが取れなくなります他方、早期の段階で非常に多くの割合の株式を外部に希薄化してしまい、それ以上の希薄化を防ぐために、事業計画と資本政策やバリューエーションの相関性を説明できないプレゼンテーションを聞くと、『ああ、こういう資本政策をしてしまうリテラシーの持ち主なんだな』と考え、その経営者は見切られてしまいます」 (今野氏)

五嶋氏も「スタートアップは、不確実性があって当然。でも、『将来へのビジョン』が抜けていてはダメ。資本政策と事業計画をバラバラに考えている起業家をかなりの頻度で見るが、『シェア』『バリュエーション』『事業計画(KPI)』を連動させ三位一体として考え、パワーポイントで1枚のグラフにまとめられる程度の計画性必要じゃないでしょうか。そうすれば不確実性に対応した、そのときどきに合った資本施策を検討できます」と補足した。

学生のうちに起業したほうが成功する?

「人生のできるだけ早いうちに起業という経験をしておいたほうがいい」との風潮がある昨今。果たして、デメリットはないのだろうか。

「孫正義氏やマーク・ザッカーバーグ氏などの例もあるので、いいも悪いもない、と思っています」と語り始めた五嶋氏。「とはいえ、投資案件としては『キツい』場合がほとんどです。体感的に成功する確率が低いから。そもそもビジネスモデルが『人材』か『イベント』多いというのも、投資を難しくしている要因のひとつです。加えて、上下関係をうまくコントロールできない、という問題であったり、個人のビジネス能力ではなく友情をベースにして仲間を集めてしまう、といった『学生起業あるある』な問題で、事業が崩壊しやすい。少なくとも私自身は、『若いうちにどんどんやったほうがいい』と焚き付ける立場ではないかなぁと思っています」と持論を展開した。

モデレーターを務めたTechCrunch Japan副編集長の岩本有平が「『金をやるから起業しろおじさん』もいましたよね」と挟むと、「サポートするのであれば、最後までサポートしてあげて欲しいですよね」と五嶋氏は付け加えた。

今野氏は、昔と比べ、資金調達のことも含め情報を比較的容易に得られるこの時代にあって「『こういう事業計画で起業するんですけど、どうやりましょうか』という“勝つ”ための相談なら乗る。でも、起業しようかな、どうしようかな、と悩んでいるのであればやめたほうがいい」と活を入れた。

さらに、「今はどうしようか悩んでいるけれど、将来起業したいというのであれば、まだ従業員規模が数十人で、経営者と経営判断を間近に見られるスタートアップ企業にジョインしてみれば?」と勧める。理由は「起業家の経営手腕や苦悩を見られるから。社会人経験のないところからいきなりはじめるより、実例を目の当たりにしておいたほうが、自分が同じような壁にぶち当たった際、『ああ、これか』と納得できるようになる」と説明。加えて、「起業して失敗したとしても、うまく失敗してほしい。クローズの仕方が上手であれば、2回目、3回目が必ずあるので、そこは諦めないでほしい」と会場内で起業しようとしている若者たちにエールを送った。

……ときれいにまとまるはずだったのだが、岩本から「学生起業の失敗で一番最悪のパターンは?」と聞かれた両氏はそれぞれ「行方不明」「仲間割れ」と即答。会場には笑いが起こっていたが、最悪パターンにだけはならないようにしよう、と心に誓った人もきっといただろう。

世の中の優秀な人材の99%は大企業に、残り1%を見逃すな

話は「人事」と「労務」に。採用関連で相談を受けることも多いというモデレーターに対し、「はっきり言ってしまえば、『スタートアップには新卒でも中途採用でも、優秀な人は来ないという前提で採用活動をする必要があります」と五嶋氏。その理由を聞かれると「実際に大学時代から優秀な人まず大企業に就職しているでしょう?」と質問で返し、会場をうならせた。

とはいえ、次のようにも補足した。「現実として、日本では優秀な人材のほとんどは大企業を目指し、大企業に入社し、大企業から出てきません。でも、ごくまれにそうではない人材もいる。優秀な人の中の1%くらいでしょう。変人ともいえます。そういう人材を見極めて、絶対に逃さないことがスタートアップの採用には大事」(五嶋氏)

今野氏は「スタートアップでは、スーパーマンのような人を想定したあらゆるスキルを盛り込んだ募集要項を記載することが多い。でもそんな人はいない」と、採用がうまくいかない原因を一刀両断。その解決法として「ひとりひとりのジョブディスクリプションを明確にして、募集要項に反映させること」を挙げた。そして、次のような注意点も加えた。「創業当初は創業者の持つアントレプレナーシップが必要かもしれませんが、人材募集をしている、ということはステージがもはや組織化のフェーズに進んでいるんです。それにもかかわらず、社長がオペレーションに関わる前提で現場レベルの人を採用し過ぎると社長のキャパシティがボトルネックになり、むしろ企業の伸びは失われます。そして、その段階に来たのであれば、社長はオペレーションに携わるのをやめましょう。それも成長を止める一因になるからです」(今野氏)

グロービス・キャピタル・パートナーズCOOの今野穣氏

グロービス・キャピタル・パートナーズCOOの今野穣氏

労務に関しては、「多くのことで周りの目が『あそこはスタートアップだから』と温かい目で見てくれるかもしれないが、法律はスタートアップも大企業も関係ないので、法律をしっかり学び、労務マネジメントの知識を持ってほしい」と五嶋氏。今野氏も「レイヤーが3つ(編集注:経営者、マネージャー、現場の3レイヤーで、経営者が直接全ての業務を把握できない規模になってからということ)ほどの規模になった際、見ていないところで“何かが”生じがちなので、時間を捻出して対策を講じておくといいですね」とアドバイスした。

「目指せないM&A」より計画を立てて最善を尽くす

「イグジット関連で『こういう考えは改めたほうがいい』ということについて」話題が変わると、「IPOの目的のひとつは資金調達。一般的に資金調達した場合は事業に投資したりM&Aをしたり将来の成長に当てますよね。上場時の事業計画と資金調達後の資金使途の整合性をきちんと取る必要があるのではないか」と今野氏。「上場したときにたかだか数億程度の営業利益では、将来のための投資をするとすぐ吹っ飛んでしまう規模だから、マーケットデビュー時のストーリー作りは大事」と続けた。

五嶋氏はそれを補完して「成長の絵が全く描けていない中で、創業者のイグジットのための『上場ゴール』を目指す人もおり、僕からはそれをいいとか悪いとかは判断しません。市場の投資家が決めることですから。ただ、上場後に『やっぱり業績を下方修正します』というような事態が最近頻発していることは、正直違和感を感じますが、業績が計画に届かないのは、ある意味仕方ない、それは結果ですから。でも「市場との対話」は?「は? と問いたいですね。業績計画を含む市場との対話、事業の成長、本当に最善を尽くしきったたかどうか、それが問われるのではないかと思います。市場を軽視し、成長への志がない上場を『上場ゴール』と呼ぶのです」と語った。

また、M&Aに関して今野氏は「IPOのセカンドオプションとして考えるのはやめたほうがいい。市場環境や競争環境の変化によって、その事業のサステナビリティや産業のライフサイクルが変わったりするから」と語り、五嶋氏は「M&Aは相手あってのもの。『芸能人のだれそれさんと結婚することを目指します!』と言うのと『Googleに買ってもらうことを目指します!』と言うのはなんら違いがなく、数十億円規模のM&Aになると買い手も限定的で、現実として能動的に目指せるものではない。能動的に目標にできるのは先ずIPO」とバッサリ切り捨てたが、「M&Aによるイグジットを検討する局面が訪れた時には、みんながハッピーになれるようにはこだわってほしい」と応援する言葉も添えていた。

互いに対するリスペクトが成功の鍵

5つめのテーマは「パートナー」。特に大企業が新規事業としてスタートアップと組む場合を前提に「べき・べからず」が論じられた。

今野氏は「大企業のオープンイノベーションの流れを掴んで成功にこぎつけるスタートアップは、大企業側のキーマンと繋がっている。その見極めが重要。それから、大企業のもつデータやアセットを最適化するテクノロジーを持っているスタートアップは、複数の大手企業からのそれぞれ受託案件をこなすような事業計画を立てていることがあるが、その時点ではそれで良いとしても、大企業側からすれば、あるタイミングから自分たちのデータなりを出すのであれば資本も入れたいと思うはず。将来的に上場したいという思いを持つ起業家は、ではその場面になったらどうするのか、という踏ん切りを付ける時が必要になるでしょうね」と2つの注意事項を挙げた。

「期待値コントロールを失敗させない」と語るのは五嶋氏だ。「大企業からは『全面的にバックアップしますよ、ふんわり』、スタートアップからは『なんでもやります、ふんわり』では具体的ではない。到達すべき数値目標、撤退ラインをはっきりさせていない場合が多いので、それぞれの役割分担をはっきりさせ、期待値コントロールをしっかりする必要がある」と説明。

さらに重要なこととして「根底のところで大企業の中の人とスタートアップの人はお互いに尊敬しあっていない」とズバリ。「お互いに尊敬の念を持たないと絶対に成功しないので、いいところを探し合って学び合ってほしい」とアドバイスした。

耳の痛いことを言う投資家を大切に

資金調達という面でのパートナーを語る上で、避けられないのは「投資家」についてだろう。最後に、組むことによって失敗してしまう、あるいは成功できる相手=投資家について2人に考えを聞いた。

五嶋氏はこれまでの経験から「お金を使うだけ使って売り上げが立たず、資金が足りなくなってしまうのは、シードの時期しっかりとした事業計画とこれに連動する資本政策・バリュエーションを詰めていないから」と警告。「最初に事業計画が無理なものかどうかを見極めない投資家、見たことのない桁のお金を手にして浮かれてしまう起業家、その両方に問題がある。よく確認もせずにお金をくれるより、『ここはどうなっているのか』『こうするべきなのではないか』と耳が痛くなるようなことを言ってくれる、相談に乗ってくれる投資家を大切にしてほしい」とアドバイスした。

そして、シード時期の起業家に投資をしていない今野氏からの次のようなリクエストでトークセッションは締められた。

「シードの段階で相談に来てください。『ここではこのようなバリュエーションで集めたほうがいい』など具体的でストレートな話ができるのは、利害関係のない間だけですから。できるだけ早いステージのうちにみなさんとお会いしたいですね」(今野氏)

Snapchatがイスラエルのスタートアップを3000万から4000万ドルで密かに買収

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Calcalist Newsによれば、Snapchatは今週イスラエルでの最初の買収を行った。買収したのは設立して4年のCimagineである、その拡張現実プラットフォームを使えば、消費者は買いたい製品を希望する場所で簡単に視覚化することができる。Catalistによれば買収金額は3000万から4000万ドルの間である。

そのLinkedInのページによると、Cimagineは現在、南カリフォルニアの家具フランチャイズのJerome’s;英国のデジタル小売店のShop Direct;そして世界企業であるコカコーラなどのブランドと協業している。そのモバイルプラットフォームはこれらの企業のサイトやモバイルアプリの拡張や、オンラインコンバージョン率の引き上げ、店内販売の向上などを目指している。

おそらく、Snapchatはこの技術を使ってキャンペーンを強化するつもりだ、私たちがこれまでに見た、例えばStarbucksと一緒に行ったものでは、昨年の夏にSnapchatはサマードリンクキャンペーンを行い、そこではStarbucksを飲む人たちがアイスフラペチーノの写真を合成して友人たちに送る機能を提供していた。

これはまた、Cimagineの4人の共同創業者である、Ozi Egri、Amiram Avraham、Nir Daube、そしてCEOのYoni Nevoという才能を獲得するための動きにも見える(全員がコンピュータビジョンと画像処理専門家である)。

この動きはまた、Snapchatに、必要に応じてイスラエルの開発センターを設立する手段を与えるようにも見える。

Crunchbaseでは、Cimagineが、iVentures Asia、OurCrowd、およびPLUS Venturesからの非公開のシード資金を調達したことが示されている。

また伝えられるところによれば、Snapchatは、同社を200億〜250億ドルの価値にするであろうIPOを進めているらしく、早ければそれは3月に行われる予定だ。

最近Snap社として改名したSnapchatは、今年約半ダースのより小規模な買収を行ったことが知られている(他の案件がメディアのレーダーの下を飛んでいる可能性もあるが)。これらに含まれるのは、アドテック企業のFlite(この契約は雇用のための買収(acquihire)だったと言われている); Snapchatが1億1100万ドルを支払った言われているモバイル検索アプリのVurb;利用者に3次元のセルフィー写真を撮らせるコンピュータービジョンのスタートアップSeene(買収条件は非公表);そしてbitmojiという名で知られるパーソナライズド絵文字メーカーのBitstripsなどである。Snapは最後の会社に1億ドルを支払ったと言われている。

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(翻訳:Sako)

中国最大のオンライン旅行会社Ctripが、フライト検索会社のSkyScannerを17億4000万ドルで買収

skyscanner

スコットランドを拠点とするフライト検索会社Skyscannerが、中国の大手オンライン旅行会社Ctripによって買収された。価格は14億ポンド(およそ17億4000万ドル)である。

買収は主に現金で行われ、今年の終わりまでには完了する予定だ。買収完了後も、SkyScannerはCtripとは独立して運営されることを、双方が表明している。

1999年に設立されたCtripは、中国最大のオンライン旅行会社だ。本日発表された2016年第3四半期の売上は、前年比75%増の56億人民元(8100億ドル)で、利益はわずかに400万ドルである。最近Ctripは、転換社債の販売で10億ドル近くを調達しているが、この調達はSkyscannerの取引のために行われたものと思われる。

このニュースは、10箇所の事業所に700人以上のスタッフを抱えるSkyscannerが、今年の1月に世界展開を目指して1億9200万ドルの資金調達ラウンドを行ってから1年足らずの内にやってきた。それは、2年以上にわたる同社の歴史の中で初めての資金調達だった。そのときの投資家には、Khazanah Nasional Berhad、マレーシア‐政府の戦略投資ファンド、ヤフー・ジャパン、ファンドマネージャーArtemis、投資ファームBaillie Gifford、未公開株式ファームのVitruvian Partnersなどが名を連ねていた。Sequoiaは既存の支援者だ。

そのラウンドでは、SkyScannerの価値は16億ドルと報告されていた。同社は2017年のIPOを広く期待されていたので、以前の評価額とさほど変わらない価格での今回の買収は、一種の驚きをもって迎えられた。Skift のレポートによれば、SkyScannerの収益の成長はゆっくりとしたペースだった、しかし同社はそれをマーケティングではなく、増大するプロダクトへの投資のせいだと見なしている。

いずれにせよ、これは欧州における、これまでで最大のトラベルテック買収である。SkyScannerはアジアに力点を置いていた — ヤフージャパンと提携し中国の旅行検索スタートアップYoubibiの買収も行った — しかし、今回の取引はCtripがビジネスを国際市場に広げることを助けることになる。

「Skyscannerは世界レベルにおける私たちの位置付けを補完するものとなるでしょう、そしてCtripは私たちの経験、技術、予約能力をSkyScannerに活用する予定です」と、Ctripの共同創業者兼会長のJames Jianzhang Liangが声明の中で述べている。

ビデオ声明の中で、SkycannerのCEO兼共同創業者のGareth Williamsは、この取引によって、旅を「より簡単な」ものにするための豊富なリソースに、彼の会社がアクセスすることが可能になると述べている。

拡大のためのM&Aを追求してきたCtripにとって、ここ1年ほどは忙しい年だった。最大のライバルQunarとの株式交換合意から1年以上が経過した、それによってCtripは自身の議決権の25パーセントと引き換えに、Qunarの45パーセントの議決権を獲得した。

今年の1月には、Ctripは、インドのMakeMyTripの約4分の1を購入するために1億8000万ドルを使い、その一方で、9400万人の乗客を運んでいると主張する、国営航空会社中国東方航空の一部を取得するために、4億6300万ドルを豪気に支払っている

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(翻訳:Sako)

消費財業界で起きようとしているM&Aの雪崩

Small avalanches forming on the snow covered slopes

【編集部注】執筆者のRyan Caldbeckは、消費財・小売企業の投資マーケットプレイス、CircleUpのファウンダー兼CEO。

もしもあなたが、「イノベーションか死か」という決まり文句を信じているとしたら、大手の消費財・小売企業のことを末期患者のように考えているかもしれない。KraftやCloroxなどの大手企業は全て、イノベーションを起こすには動きが遅すぎ、株主の言いなりになってしまっているように映る。同時に、彼らのような企業は潰れるには規模が大きするような気もする。少なくとも今の段階では。

現在、消費財業界ではM&Aの雪崩が起きようとしているのだ。

主要な消費財(Consumer Packaged Good=CPG)メーカーは、新世代の消費者の獲得に苦しんでいる。さまざまな製品の売上を見てみると、有名ブランドの売上が段々低下してきていることがわかる。Jefferiesによれば、食品業界で重要視されているトップ54カテゴリーのうち42カテゴリーについて、過去5年の間に小企業が大企業のマーケットシェアを上回ったことがわかっている。消費財のほぼあらゆる分野で、これまでの業界構造が崩壊しようとしているのだ。

自分たちの好みに合った、ユニークで信頼できるブランドを消費者が次第に求めるようになった結果、消費財メーカーがマーケティングや流通にかけるお金は劇的に減ってきている。つまり、消費者は製品広告に反応するのではなく、自分で欲しいものをリサーチし探し求めるようになったのだ。

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出典: CircleUp

大手消費財メーカーは、何十億ドル分ものマーケットシェアシェアを失う一方で、現状を打開するような対策を積極的にとっているわけではない。誰かの目にとまるような革新的な製品が、最後に有名な消費財メーカーからリリースされたのはどのくらい前のことだろうか?研究開発はこれまでにないほど重要なはずだが、実際には過小評価されてしまっている。

消費財メーカーの研究開発に関する問題の深刻さ

CircleUpでは、消費財業界における研究開発軽視の問題を物語るようなデータを最近発見した。このデータによれば、大手消費財メーカーは平均して、売上の2%未満しか研究開発に使っていない一方で、マーケティング・広告には売上の約15%にあたる資金を投じていることがわかったのだ。なお、イノベーション第一のテック業界ではこの数字がほぼ逆転し、売上の約13%が研究開発に、2%がマーケティング・広告に使われている。

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出典: CircleUp

大企業も自分たちの課題には気づいている。それでは何故彼らは新製品の開発に投資しないのだろうか?

大企業にはこれまでイノベーションの必要がなかった

大企業は何十年にもわたって、消費財業界の資金的な参入障壁に守られてきた。ソーシャルメディアやAmazonが存在しなかった頃、流通網の確保や製品の宣伝というのは小企業には手の届かないものだった。そのため、消費者は小売店で毎回同じ商品を見かけても何とも思わず、イノベーション自体に対する需要も極めて低かった。

イノベーションにはリスクが伴う

製品を開発して、それをテストして、市場の反応を測る、というイノベーションが誕生するまでのプロセスはリスク以外の何物でもない。イノベーションを追求すれば、四半期や年間の業績が赤字になるかもしれないばかりか、新たな製品が売上に貢献するまでには何年もかかる(そもそも売上が立てばの話だが)。そのため、研究開発部門のマネージャーにはリスクをとらないという、短期的なインセンティブが働きがちだ。四半期の目標達成を目指した方がいいのか、何年後かに自分が他の部署に異動するタイミングまで売上に貢献しないような新製品を開発した方がいいのか、という問いが彼らの頭を駆け巡っているのだ。

大企業には変化を起こす力を持った社員がいない

これまで何かを変えるためのインセンティブがほぼ無かったことから、ほとんどの大手消費財メーカーは、しっかりとした研究開発チームや十分な経験を持っていない。単に彼らには、市場の動向を見て素晴らしい製品を生み出すために必要なものが揃っていないのだ。

さらに、このような企業には何十年もの(ときには1世紀近い)歴史があり、彼らは変化に慣れていない。この時間のスケールを考えると、ダンスフロアで踊る若かりしころの祖父の姿や、このトレンドを指摘していたClay Christensenの「イノベーションのジレンマ」が頭に浮かんでくるかもしれない。大企業は既存の製品を売るのに必死で、将来のことを考えることができず、結果的に自分たちが不得意な分野にシフトしようと苦しむのだ。

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出典: CircleUp

研究開発の代わりとしてのM&A

M&Aは、実質的に大手消費財メーカーの研究開発を代替している。シェアの急激な減少や成長の鈍化、潤沢な現金資産を背景に、大手メーカーによるM&Aの件数が今後も増加していくのは確実だ。さらに、企業の成長過程に関わっていけるよう、アーリーステージの企業への投資も今後増えてくるだろう。

Unileverの昨年の研究開発費は売上の1.9%でしかなかったが、買収にはためらうことなく資金を投じ、Dollar Shave ClubSeventh Generationをそれぞれ10億ドル、7億ドルで買収した。スタートアップを出し抜くことのできない大手消費財メーカーは、イノベーションを生み出すことが仕事と言って良いスタートアップに、研究開発をアウトソースし、さらにはそのリスクを負わせようと、M&Aに積極的に取り組んでいる

このトレンドは、製薬業界には既に深く根を下ろしている。製薬業界のコングロマリットは、研究開発のほぼ全体をスキップして、新薬の権利を狂ったように購入している。そして、自分たちがもつ広範な流通網に新製品を流し込み、その合間に広告を打ったり、規制対応を行ったりしているのだ。消費財企業も彼らと同じ道を辿ろうとしている。

しかし、大企業が新たな製品や企業を買収した際に重要なのが、どれだけ上手く買収したブランドのキャラクターや信頼性を保つことができるかということで、まだこれについてはハッキリわかっていない。オーガニックであれ、環境の持続可能性であれ、フェアトレードや民族の多様性であれ、人々は次第に、自分にぴったり合った商品を求めるようになっている。シンプルに見える洗剤選びでさえ、今や一種の自己表現なのだ。そのため、主要消費財メーカーが、もしも買収先のオリジナリティを保てなければ、その買収資金は無駄になってしまう。

M&Aの雪崩は一夜にして起きるわけではなく、その気運は何年もの期間を経て高まってきた。昨年だけで消費財・小売業界のM&A合計額は2380億ドルに達し、これはテック業界に比べ2倍近い規模だ。このようにM&Aの雪崩の兆候はすでに見られており、今後はそれが顕著になっていく一方だ。この波に乗り遅れないように。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

ユナイテッド、コンプレックス系メディア「ハゲラボ」など運営のゴローを8.1億円で子会社化

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オンラインプログラミング講座事業を手掛けるキラメックス、iOSアプリの課金プラットフォーム事業を手掛けるSmarpriseと、スタートアップを立て続けに子会社化してきたユナイテッドがまた新たなスタートアップを自社のポートフォリオに加えたようだ。

ユナイテッドは9月29日、スマートフォン向けのアドテク事業やコンテンツ事業を展開するゴローを子会社することを取締役会で決議したと発表した。ユナイテッドはゴローの株式3527株(所有割合は60%、ゴロー代表の花房弘也氏が所有する残り40%の株式は議決権のない種類株に転換するため、議決権ベースではユナイテッドが100%になる)を取得する。取得額は8億1067万円。なおゴローはこれまでサイバーエージェントおよびEast Venturesからの資金を調達している。両者の株式はユナイテッドが譲受する60%の株式に含まれる(所有割合はサイバーエージェントが18.7%、イーストベンチャーズが13.1%)。

ゴローの設立は2014年1月。当初は複数ファッションECサイトを一括で閲覧し購入できるアプリ「melo」を提供していたが、その後ピボット。現在は薄毛対策・治療に特化したメディア「ハゲラボ」などを運営している。

ユナイテッドはゴローの子会社化に関するリリースの中で、「収益性の高い個人の悩み解決型のニッチなウェブメディアを複数手掛け、足元順調に事業を拡大しております。今後、当社グループの持つ人材などの経営資源をゴローに積極的に投入し、既存メディアを継続的に拡大するとともに、新規メディアも積極的に立ち上げ、その成長スピードを上げてまいります」としている。

実は最近、こういったニッチでコンプレックスに関わるような領域のメディアが成長しているという話を聞く機会が増えている。ディー・エヌ・エーが提供する「WELQ」やドウゲンザッカーバーグが提供する「NICOLY」なんかもそうだろう。怪しいアフィリエイト目的のサイトが乱立していたような領域に対して、これまでとは異なるアプローチをする新興メディアが続々生まれているということだろうか(ただし中には情報の不正確さなどをブログやソーシャルメディア上で指摘されているケースもあるようだが)。

フリマアプリの元祖「Fril」運営のFablic、楽天が数十億円で買収へ

Fablic代表取締役社長の堀井翔太氏(写真は2014年9月撮影)

楽天がフリマアプリ「Fril」を手がけるFablicを買収する。日経新聞が9月3日に報じた。関係者に確認したところによると、週明けにも正式な発表がなされる予定だという。

楽天はファブリックの全株を経営陣などから取得。取得額は数十億円になるという。また今後も楽天の完全子会社として存続させる。

Fablicは2012年4月の設立。OpenNetworkLabの第4期に参加している。2012年7月にはフリマアプリの元祖とも言えるFrilをスタートした。当初は女性に限定してサービスを提供してきたこともあり(現在はその制限はない)、若い世代の女性を中心にサービスを展開している。また最近ではバイクに特化したフリマアプリ「RIDE」の提供も開始した。楽天もフリマアプリ「ラクマ」を2014年11月から提供しているが今後Frilとラクマのユーザーを補完していくことで、月間流通総額を30億円程度を目指すという。

現在国内のフリマアプリ市場を牽引しているのは、Frilより後発、2013年2月にローンチした「メルカリ」だ。2016年3月に84億円の大型調達を発表した際の取材でも「国内月間流通総額100億円を超えた」と語っている。メルカリのようなサービスが現れる一方で2013年頃立ち上がったフリマアプリの中にはすでに終了しているものも少なくない。2013年12月にスタートした「LINE MALL」も、2016年5月にサービスを終了している。TechCrunch Japanでは現在、Fablicに本件に関するコメントを求めている。コメントが得られ次第、情報をアップデートする予定だ。

クラウドソーシングを使った翻訳事業を展開するエニドア、ロゼッタが約14億円で買収へ

クラウドソーシングを使った人力翻訳サービス「Conyac」を運営するエニドア。同社がM&Aによるイグジットを果たしたようだ。翻訳事業を手がけるロゼッタは8月10日、株式取得および簡易株式交換により、エニドアを完全子会社化すると発表した。

ロゼッタはエニドアの発行済み株式1263株のうち633株(議決権ベースで50.12%)を8月15日付けで7億3200円にて取得。残りの630株を株式交換で取得する(エニドア1株に対してロゼッタ311株を割り当てる。合計19万5930株。1株3414円で算定し、6億6891万円)。合計すると約14億円でのM&Aとなる。

ロゼッタはこれまでプロ翻訳者による「翻訳通訳事業」と機械翻訳による「MT事業」、プロ翻訳者と機械翻訳を活動する「GLOZE事業」を展開してきた。エニドアの提供するConyacがこのGLOZE事業とMT事業の間の領域を補完するとしている。なお、エニドア代表取締役の山田尚貴氏らは引き続きConyac事業を担当する。

エニドアは2009年2月の設立。スカイライトコンサルティング主催のビジネスプランコンテスト「起業チャレンジ2009」で最優秀賞を受賞し、その賞金をもとに起業した。これまでにサムライインキュベートのほか、スカイライトコンサルティング、ベンチャーユナイテッド(当時はngi groupで、ファンドもngiベンチャーコミュニティ・ファンド2号からの出資)、ANRI、East Ventures、三菱UFJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタルなどから出資を受けている。同社の2016年3月期業績は売上高5億6900万円、営業利益が2億7000万円、経常利益が2億6900万円、純利益が2億2300万円となっている。