小さな企業自らが買収に向かうべきシグナルとは

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【編集部注】著者のChelsea Stoner氏はBattery Venturesのジェネラルパートナーである 。

M&Aが、特にソフトウェア企業のものが、ホットである:大手の未公開株式投資会社たちは、2016年の前半だけで270億2200万ドルの価値のある170のソフトウェア企業への投資を現金で行ったし、悩めるYahooはVerizonによって48億ドルで救い上げられ、Microsoftはプロフェッショナル向けネットワーキングサイトのLinkedInを驚きの260億ドルで買収することを発表した。その取引は、マイクロソフトは自社製品を強化するために、レジュメデータをどのように活用するのだろうか、という多くの憶測を呼び起こした。

しかし、ソフトウェアのM&A狂騒曲はその一方で、小さなハイテク企業がその成長を、高度で戦略的なアドオン的買収により、いかに強力に加速できるかという点にも光を当てている。

筆者は中堅テクノロジー企業に焦点を当てたソフトウェア投資家として、このセグメントにいる会社が新しい方向へ成長する必要があることを示すシグナルに気が付いていない多くのビジネスオーナー達に出会った(シグナルに気が付いているMicrosoftの幹部たちとは好対照である)。それは主として、他の会社を買収することによって、自身のプロダクト系列の穴を埋めることができるとか、補完的なプロダクトやサービスを提供することができるという方向への成長である。こうしたシグナルを見出すことには、単なるスマートなリーダーシップ以上の意味がある。そのことにより成長の機会を見出し ‐ そして、より大きな可能性へと長期的に導いていくこともできるのだ。

更には、未公開テクノロジー企業の評価が下降気味の今日は、こうした成長戦略を考える好機なのである。

気にすべきは顧客数増加「率」だ

M&Aを検討する必要を促すであろう1つの目をつぶることのできないシグナルは、月毎の顧客数増加率の変化(正確に言えば負の変化)である。しかし、このシグナルの観察には注意が必要である。新しい顧客が増え続けている限り、増加の現象は大きな問題ではないような気もするが、どうだろう?規模が大きくなるときに、どんな企業にも起きる典型的な現象ではないのだろうか?

時にはそのようなことも起きるだろう。しかし、顧客数増加率の減少はまた、現在の市場を越えて成長をする必要があることを示すシグナルでもあり、少なくとも現在あなたが提供しているプロダクトの再評価を促すものである筈だ。自らに問いかけなければならない:顧客は更に何を求めているのか?顧客は現在、他の場所では何を買っているのか?この問いは、やがて、新しい顧客増加を後押しする方向へとつながるだろう。

会社はサメのようなものだと思うこと:前に進まなければ、おそらく死んでしまう。

私のビジネスにおける経験則によれば、顧客は収入の1〜2%をソフトウェアに費やしている。たとえば顧客Xにおけるその金額が10万ドルで、そのうちの1万ドルをあなたに支払っているとしよう。そこにはあなたが手にしていない9万ドルが存在している。その支出を手に入れる方法を見つけよう。双方にメリットがある話だが、顧客はしばしばワンストップショップの方が仕事が楽だと思う。古い格言である「絞める首は1つに」は真実なのだ。

Brightree*は、参考になる事例である。当初は家庭用医療機器プロバイダーのビジネス管理ソフトウェア会社だった Brightreeは、その提供するプロダクトを拡大するために、C&S Billing Centerを2009年に買収した。C&S Billingが加わったことにより、Brightreeの顧客たちは課金の悩みから解放されただけではなく、加えて熟練したスタッフが関与するアドオンサービスに対しても、Brightreeへ支払いを行うようになった。買収は、Brightreeの全体的な収益を大幅に押し上げた。

しかし、すべての新規提供が単なるオプション追加によるものというわけではない。あなたのブロダクト系列を拡大することにより、近いところにいる買い手に対してあなたの会社を魅力的に見せ、全体の市場が拡大することが起き得るのだ。例えばBrightreeによる別の買収事例をみてみよう。2013年にCareAnywareを買収した事例であるBrightreeと同様にCareAnywareは、クラウドソフトウェアプロバイダーだったが、在宅医療とホスピスという2つの異なる急性期後市場に対して販売を行っていた。医療分野の新しいセグメントに展開することにより、Brightreeは対象とするパイの潜在的な大きさを大幅に増加させた。ResMed (NYSE:RMD)は2016年4月に8億ドルでBrightreeを買収した。

潜在的なM&Aをあなたが考える際に追うべき、もう一つの重要な指標は、製品の平均販売価格が同じままか低下傾向にあるのかということである。もしあなたが顧客のためのより大きな問題解決を狙って、自社を別のサービスと合わせていたならば、おそらくより大きな収入を上げることができたかもしれない。営業担当者と話をすることで、この評価を開始しよう。彼らは繰り返し、どのような質問を受けているのか?何に顧客は夜も眠れぬほど悩んでいるのか?

理学療法士のビジネスを効率的にすることを助けるWebPT*は、数年前にこれらの問いかけをした企業である。彼らの顧客は、オバマケアによる医療費還元率が最終的には治療成績と結びつくことを認識していた。

WebPTは、短期的には患者の治療成績もセラピストの仕事に役立つだろうということを理解しつつ、長期的に顧客の要求を先回りして助ける方法を探していた。そしてWebOutcomesが仲間に加わった。WebPTが2014年11月に買収を行った会社である。当初は治療成績管理のための、ちょっとした機能だと思われたものが、あれよあれよという間に成長し、会社の核となるサービスの1つとなった。

離れようと考えている顧客を観察せよ

最後に、すべての企業は顧客離れをM&Aに向けてのシグナルとして注意深く追跡する必要がある。のぞむらくは、将来の顧客離れにつながるかもしれない、顧客の不満のシグナルにとても早い段階から敏感でいるべきなのだ。

小さなハイテク企業はその成長を、高度で戦略的なアドオン的買収の追求により、強力に加速できる。

おそらくあなたは顧客サポートまたは電子メールを介しての顧客の声を、しばらく聞いていないかもしれない。もしかすると彼らはサービスプランをダウングレードしているかもしれないし、もしくは ‐ ソフトウェアビジネスの場合なら ‐ ソフトウェアの使い方が変化しているかもしれない。それは彼らがあなたの製品に以前ほど依存していないことを示していて、以前ほどは頻繁に使っていないか、以前ほど多くの機能を使っていないことを意味している。これらはいずれも、プラグを抜く(契約を打ち切る)ことを考えている顧客の、初期のシグナルの可能性がある。

しかし顧客離れはまた、もしあなたがスマートな買収に柔軟であれば、より大きな機会に向けてのシグナルともなる。これを、顧客はどこかに移ろうとしているのか、それは何故なのかを考える機会にするのだ。あなたの営業担当者は既にこの情報を持っているかもしれないし、または改めて顧客に率直に尋ねることもできる。

競合他社があなたのランチをつまみ食いしていることに気がついたら、彼らの提供しているものを評価しよう。こうしたことには、いくつかの対抗手段がある;直接相手を買収してしまう、より優れた技術を使って相手を打ち負かす、あるいは、あなたの方の規模が大きくて、新進のあたらしい玩具と競うというのなら、価格やサービスの組み合わせを変えることができる。資金が潤沢ではなくスタートアップは、気の利いた価格設定変更を行うことのできる余裕ある相手との競争に、耐え切れないかもしれない。

巨大なテクノロジープレイヤーでさえ、しばしばアドオンの買収を経て成長する – 特に業界全体が新しいクラウドベースのソフトウェアに移行する際には。実際、あなたの次の成長段階は、超大物との提携を含むものになるかもしれない。

Oracleは、クラウドソフトウェアの重要さを認めていて、人事ソフトウェア会社のTaleo、マーケティングソフトウェア会社のResponsysとEloqua(クラウド内で営業事務を行うソフトウェアを提供する)、そして最近ではOpowerとTexturaなどを戦略的に買収してきた。

同様に、 Salesforceは的を絞った買収を通じて、CRM専業から、クラウドサービスやマーケティングなどの分野へとビジネス領域を拡大した。同社は、ExactTarget*のような電子メールマーケティングプラットフォームや、Desk.comから名前を変えたAssistlyといった企業の買収を通して、より多くの収入を手に入れ、強力なカスタマーサービスサポートを提供できるレベルアップを行った。今年の6月には、Salesforceは小売業者のためのマーケティングプラットフォームであるDemandwareを買収することを発表している

会社はサメのようなものだと思うこと:前に進まなければ、おそらく死んでしまう。マーケットを見て回ることを怖れてはいけない。そして競合他社や補完企業との提携にいつでもオープンでいること。このことを理解し、適度にビジネスに後押しをしてあげれば、あなたは生き残る(survive)だけではなく、繁栄する(thrive)ことになるだろう。  

*で示したのはBattery Venturesのポートフォリオに含まれる企業である。

[ 原文へ ]
(翻訳:Sako)

アカツキがアクティビティ予約のそとあそびを14億円で買収へ、ゲームからリアルに進出

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3月に上場したばかりのアカツキ。スマートフォン向けゲームを開発する同社がレジャー・アクティビティ予約サイトの「そとあそび」を運営するそとあそびを買収する。アカツキは6月13日開催の取締役会で株式取得を決議したと発表した。アカツキは今後2018年6月まで、4回に分けて株式を取得する。取得価格の合計は14億1004万7000円となる予定。

そとあそびは2004年にスタートした老舗のアクティビティ予約サイト。アウトドア経験豊富な「キュレーター」が体験取材したアクティビティを掲載している。

このサービス、もともとは現在そとあそびのキュレーターとして活躍する山本貴義氏が個人で立ち上げたものだった。2014年には現在代表取締役社長を務める、ガイアックス元代表取締役副社長COOの中島裕氏が株式を取得。株式会社化してサービスを拡大してきた。2015年6月にはB Dash Venturesなどから総額3億円の資金調達を実施している。開示された資料によると、2016年2月期は売上高が3097万6000円(前期比80%増)、営業利益が9254万1000円の赤字(前期は3789万7000円の赤字)、経常利益が9343万1000円の赤字(同3906万1000円の赤字)、純利益が9372万1000円の赤字(同3950万7000円の赤字)。

ところでアカツキと言えばソーシャルゲームの会社。そんな同社がなぜいわゆるアウトドアのサービスを買収するのだろうか? その答えとして、アカツキでは今回の買収発表に合わせて、新たに「ライブエクスペリエンス事業」を開始すると発表している。

ライブエクスペリエンス事業では、生の体験——つまりアクティビティや旅行、インバウンドなどに関わる領域のサービスを展開していく。アカツキでは今日の発表の中で、(1)世界観やストーリーを生かした企画力・プロデュース力、(2)スマホ向けサービス開発の技術力とスピード、(3)データを元にしたマーケティングやPDCAサイクルの実施などを続けてきた運用力、(3)台湾子会社を通じた海外オペレーション力——という自社ゲーム事業での強みが、ライブエクスペリエンス事業でも活用できると説明している。

朝日新聞社がオウンドメディア運用支援を手がけるサムライトを買収

朝日新聞社は4月14日、サムライトの全株式を取得することで合意したことを明らかにした。買収額は非公開。

4月下旬に開催する臨時役員総会を経て創業者で取締役会長の柴田泰成氏、現在代表取締役COOを務める池戸聡氏が再任され、引き続き経営を担当する予定だ。加えて朝日新聞社からは1人取締役が派遣される。サムライトは今後社名変更などを行う予定はないという。サムライトは朝日新聞傘下で既存事業を行うほか、共同での営業・商品企画なども進める。つまり朝日新聞社がグループとして本格的にオウンドメディア分野に参入するということだ。

サムライトは2013年9月の設立。柴田氏は楽天の広告事業の出身。また池戸氏はネット広告のセプテーニの出身で、楽天時代の柴田氏の業務上のパートナーだった人物。なお柴田氏はインキュベイトファンドが開催するインキュベーションプログラム「Incubate Camp 5th」(2013年開催)で優勝。現在はインキュベイトファンドのFoF(Fund on Funds)の1つ、ソラシード・スタートアップスで投資も手がけている。

現在サムライトの社員数は50人。インターンも少なくないようだが、それも含めて(クラウドソーシングなどではない、という意味で)「内製」でのコンテンツ制作に注力することで、コンテンツの品質向上に努めているという。これまでに累計で約100社のオウンドメディアの企画や運用支援を行ってきた。その中にはサッポロビールやアデコといった大手企業も名を連ねる。

このほかネイティブ広告の企画や制作、自社開発したオウンドメディアのネイティブ広告ネットワーク「somewrite ad」をコンテンツ制作とセットで提供。支援するオウンドメディアの価値向上に努めてきた。同社はすでに単月黒字化を達成しているという。

朝日新聞社によると、両社は朝日新聞社が2015年秋に開催したプレゼンテーションイベントで出会ったという。そこから朝日新聞社の新規事業・投資部門である「朝日新聞メディアラボ」を通じて提携や買収までの道を模索した中で100%子会社として買収するに至った。

(追記:4月14日14時10分)なお複数関係者によると、買収額については非公開ではあるものの、投資サイドにもファイナンシャルなリターンのある、かつ気鋭のメディア運用支援の会社と歴史ある大手メディアが連携する非常に好い事例だという話を聞いた(金額は出せないが、スタートアップにありがちな「うまくいかなかった事業を手放す」という救済的な買収ではないということだ)。大手メディアと新興メディアの組み合わせというと、まれに文化面の違いなどで苦労するなんて話もあると聞くが、両社ははたしてどのようなシナジーを生み出していくのだろうか。

スマホ向けゲームメディア運営のAppBroadCast、KDDIグループのmediba傘下に

右からmediba執行役員の小野村嘉人氏、AppBroadCast代表取締役社長の小原聖誉氏、AppBroadCast執行役員の中村啓次郎氏

右からmediba執行役員の小野村嘉人氏、AppBroadCast代表取締役社長の小原聖誉氏、AppBroadCast執行役員の中村啓次郎氏

KDDI子会社で広告事業を中心に展開するmedibaは4月8日、スマートフォンゲーム向けメディア「ゲームギフト」を展開するAppBroadCastの株式を取得。連結子会社化したことを明らかにした。株式の取得数や割合については非公開だが、関係者によるとバリュエーション(評価額)は十数億円になるという。

AppBroadCastは2013年1月の設立。当初はAndroid向けのアプリとしてゲームギフトを展開していた。ゲームギフトはアプリストアで人気のゲームのアイテムの提供のほか、ゲームのニュースや攻略記事、レビューといったコンテンツを配信。現在ではベータテストサービス「サキプレ」、事前予約サービス「ハヤトク」、ゲーム会社公認のコミュニティ「ファンページ」といったサービスも提供している。Androidアプリは410万ダウンロード、これに加えてiOS向けのウェブサービスも提供している。

同社はスマホゲームのユーザーの消費者行動について「PIPAS」というキーワードを掲げている。それぞれP=Pre、I=Install、P=Play、A=Action、S=Sleepの頭文字を取っているのだが、事前予約からユーザーが休眠するまでの行動にあわせて、それぞれ最適なマーケティングソリューションを提供してきた。

実はAppBroadCastとKDDIグループ、両者は以前からは様々なかたちで関わりを持っていたのだそうだ。AppBroadCastは2014年1月にKDDIとグローバル・ブレインが手掛けるベンチャーファンド「KDDI Open Innovation Fund」などを引受先とした資金調達を実施。これと前後してKDDIと業務提携も行っている。また現:Supershipが手がけるモバイルポータル「Syn.」のアライアンスにも参画している。KDDIとの業務提携においては、medibaとも頻繁にやりとりをしている関係性があった。

KDDIグループではすでに定額制のコンテンツサービス「auスマートパス」上でゲームコーナーの「auゲーム」を展開している。auスマートパスのユーザー数は現在1300万人以上。このauユーザー向けに限定したゲーム関連サービス、そしてゲームギフトで培ってきた広くモバイルユーザー向けのゲームサービス、いわば「内」と「外」向けのゲームメディアについて、medibaとAppBroadCastが一体的な運営を進めていく。

「もともとフィーチャーフォンの時代から、広告やポータルに関わってきた。だが今は『メディア』と『広告』を分けるのではなく、一体にしてコミュニケーションやビジネスを考えていく必要がある。また、ユーザーのスマートフォンリテラシーは上がってきている。さまざまなメディアやサービスが出てきている中で、ただ単純に広告を売るだけでは先行きが見えてしまう。ただバナーを出すのではいけない。メディアとして、コンテンツして魅力がないと広告も成り立たない」

今回の子会社化の背景についてこう語ったのは、mediba執行役員の小野村嘉人氏。KDDIグループでのメディア系スタートアップの買収についても、「大きい構想としては(可能性は)ある」(小野村氏)とした。

両者による新事業や具体的な施策についてはこれから発表されることになる。その方向性については「ユーザーが継続してプレイするゲームはせいぜい4タイトル程度。そうなるとゲームの継続率が大事になってくる。それは顧客満足度に繋がる話で、これからの(ゲームメーカーの)課題はそこにある。そうであれば、顧客満足度向上のための手段をmedibaのノウハウもあわせて提供していく」(ゲームギフト代表取締役社長の小原聖誉氏)

将来的にはアジアを中心にしたゲームギフトの海外展開なども想定されるという。「我々はゲーム会社を応援したいという気持ちで起業した。今までアイテムのギフトやベータテストなどをやってきている。国によってゲームマーケターの課題は違う。そこに合わせて提供できるモノはあるはず」(小原氏)

女性特化の動画広告を展開するオープンエイト、制作会社のTHE CLIPを買収

左からTHE CLIP取締役CTOの石橋尚武氏、THE CLIP代表取締役CEOの山本健人氏、オープンエイト代表取締役社長兼CEOの高松雄康氏

左からTHE CLIP取締役CTOの石橋尚武氏、THE CLIP代表取締役CEOの山本健人氏、オープンエイト代表取締役社長兼CEOの高松雄康氏

女性特化のメディアネットワークを持つスマホ向け動画広告サービス「VIDEO TAP」を手がけるオープンエイトがスタートアップ向けの開発・事業支援を手がける制作会社のTHE CLIPを買収する。1月21日に株式譲渡契約を締結しており、4月1日をもってTHE CLIPはオープンエイトの100%子会社となる。買収金額等は非公開。

THE CLIPは、代表取締役CEOの山本健人氏(デザイナー)と取締役CTOの石橋尚武氏(エンジニア)の2人で2013年12月に創業した。現在はスタートアップを中心としたクライアント向けにRuby on Railsなどでのウェブアプリの開発、スマートフォンアプリのUIデザインから開発、グラフィックデザインなどを行っている。

実績としてサイト上で紹介されているのはカウンターワークスの「SHOPCOUNTER」のウェブデザインやlang-8の「HiNative」(そういえば最近日本でもアプリがリリースされている)のプログラミング、Donutsの「Mix Channel」のアプリデザインをはじめ、スタートアップにも数多く関わってきた。

オープンエイトでは現在、シンガポールにエンジニアを置き開発を進めているが、「フロント寄りの開発については、スキルだけでなくコミュニケーションを行う関係もあって国内でリソースを持ちたかった」(オープンエイト代表取締役社長兼CEOの高松雄康氏)ことから国内でエンジニアチームを探していたという。そんな中、社内のメンバー経由でTHE CLIPと出会い、今回の買収に至った。「実績に関しては申し分ない。デザインからUI/UX、開発までできるというのは重要」(高松氏)。THE CLIPの山本氏は「スタートアップ関係の案件を多くやってきて、市場に求められていることは感じていた。だが言っても制作会社。自社の強みを生かしたプロダクト開発も模索していたが、そんな中でタイミングよく今回の話があった」と語る。

THE CLIPでは4月をもってクライアントワークをいったんストップ。オープンエイトが準備中の女性向け動画メディアの開発に注力する。動画メディアは夏までにも公開される予定。

「Tech Academy」運営のキラメックスをユナイテッドが約6億円で買収

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スマートフォンアプリやアドテク領域での事業を展開するユナイテッドは2月3日、エンジニア向けのオンラインスクール「Tech Academy」を運営するキラメックスを買収し、完全子会社化することを明らかにした。買収額は約6億円。

キラメックスは2009年2月の創業。当初はグルーポンモデルのクーポン共同購入サイト「KAUPON」を展開。創業期にエンジェル投資家(現:ヤフー執行役員ショッピングカンパニー長兼CFO室長を務める小澤隆生氏)、その後グロービス・キャピタル・パートナーズなどから資金を調達してサービスを拡大するも、2013年には同事業をサイブリッジに売却。売却を検討していた2012年半ばからは、新事業としてTech Academyを展開してきた。

当初はオフィスの一部を教室にしてオフラインでのスクールを展開してきたが、2015年5月からはスクールをすべてオンライン化。「オンラインブートキャンプ」をうたい、ウェブアプリ、iPhoneアプリ、WordPressの3つのコースを展開してきた。同社によると、インターネット関連上場企業をはじめ100社7000人以上の教育実績を持つという。

ユナイテッドは2015年後半から、スマホ、アドテクに次ぐ新事業を模索していた。「スクラッチで事業を立ち上げることからM&Aまで幅広く検討している中で、Tech Academyと出会った。ユナイテッドの持つオンラインプロモーションのノウハウや顧客基盤を掛け合わせることでTech Academyの成長加速と収益拡大を見込む」(ユナイテッド代表取締役社長COOの金子陽三氏)

「Tech Academyで3年やっている事業。時間は掛かったがオンライン化してしっかりと伸びてきた。ここからスケールするために外部資本を調達することも考えたが、昨年(ユナイテッド)オファーをもらった。ヒト・モノ・カネを一気に得てサービスをここで成長させることがユーザーにとっても重要だと考えた」キラメックス代表取締役社長の村田雅行氏はこう語る。

グロービスからの調達で2億円、当時のバリュエーションも気になるところだが(もちろん資金調達とM&Aではバリュエーションについて同じように考えてはいけないと思っている。すごくざっくり言えば、調達では「未来」を見越した価格になるのに対して、M&Aは「今」の価格になる)約6億円という金額について、「フルタイム6人でここまでのサービス規模まで育てて、今もグロースしている。他のオファーもなかった訳ではないし、グロースしてから売却すると言うことで価格を上げることは正直できたと思う。ただ何よりサービスの成長が重要」(村田氏)だったという。同氏は今後もTech Academyの事業に注力する。またTech Academyのユーザーへの影響はない。

なおユナイテッドでは同日、キラメックスの買収とあわせてトレンダーズ傘下だったSmarpriseへの出資・子会社化も発表している。

株価の不振続くYahoo、2015年度決算発表でコア・ビジネス売却の可能性を示唆

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これはほぼ予期されていたことなので、大きな驚きではない。

コア・ビジネスであるインターネット部門が不振を続ける中、アメリカYahooは「戦略的な選択肢を検討中」だと述べた。これが示唆するところはかなり幅広いが、その中には以前も報じたように、コア・ビジネスそのものを他社に売却する可能性が含まれる。

アメリカYahooは四半期決算の発表資料の中で次のように述べている。

株主価値を最大化するため、Yahoo取締役会は現に確定している経営計画の実行と平行して他の戦略的選択肢を検討するべきだと信じる。われわれ自身が運営する事業からAlibaba株式を分離することは依然として最重点課題であり、企業価値の最大化のためにもっとも直接的に有効な手段だと考える。すでに詳しく検討された通り、各種事業の分離(reverse spin)を進めていくと同時に、Yahooは十分に根拠ある戦略的提案を検討していくことになろう。

要するに、この声明はYahoo本体の事業がうまくいっていないことを自認したかたちだ。アメリカYahooは今日、年間決算を発表した。四半期決算同様、ここでも売上の成長の停滞、メインストリームに入れぬままの数多くのプロダクトなどが目立った。全体として投資家を納得させるにはほど遠い内容となっている。

2012年にMarissa MeyerがCEOに就任した際の目標は会社を再び成長路線に引き戻すという非常に野心的なものだった。Meyerはモバイル・アプリを中心にポートフォリオの整備を進め、Yahooを昔のように人々の生活に不可欠の存在にしようと努力した。

以前TechCrunchが報じた通り、Yahooは2016年には新たなコア・ビジネスの構築に務めると同時に、社員の15%をレイオフし、国外オフィスの多くを閉鎖するとしている。しかしこうした努力にもかかわらず、株価を上昇させる効果は見られなかった。つまりすべては決算の発表前に予想された通りであり、まったく驚きの要素がなかったということだろう。

事実、今日現在のYahooの企業価値の大部分はAlibaba〔とYahoo Japan〕の株式だ。このことがそもそもYahoo取締役会がコングロマリットを解体し、インターネット事業の売却を考えている理由だ。取締役会がこういう方針を検討しているというニュースが報道されただけで、株価は7%も跳ね上がった。長年にわたって株価の下落が続いてきたYahooとしては非常に珍しい事態だった。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

モバイルポータル「Syn.」参画のスケールアウト・nanapi・ビットセラーが合併、新会社は「Supership」に

supership2014年10月にKDDIが主導して立ち上げたモバイルインターネット向けの新ポータル構想「Syn.」。昨年11月には僕らのイベント「TechCrunch Tokyo 2014」でもその詳細を聞くことができたし、参画企業のサイト・アプリにはSyn.の独自メニューが付くなどしていたのだけれども、発表から1年が経過して1つ大きな動きがあったようだ。

Syn.に参画し、KDDI傘下となっているスケールアウト、nanapi、ビットセラーの3社は、11月1日(予定)を効力発生日として合併することを明らかにした。新会社名は「Supership株式会社」となる。新会社の代表には、KDDIにおけるSyn.構想の立役者であり、Syn.ホールディングスおよびビットセラーの代表取締役を務める森岡康一氏が就任する。

今後は各社で展開していた広告、インターネットサービス、プラットフォーム事業等の事業基盤を活用。「すべてが相互につながる『よりよい世界』を実現する」という理念のもとで新サービスを提供するとしている。具体的なサービスについては現時点では明らかにされていない。また、各社で提供するサービスについては、引き続き利用できる。

またSyn.ホールディングスでは同日、あわせてアップベイダー、Socketを子会社化したことも明らかにしている。

“学生起業”の挫折乗り越えたアトコレ、メンバーズ傘下に——今後はインバウンド向けメディアを運営

アトコレの石田健氏(中央)、右からサムライインキュベートの榊原健太郎氏(右)、玉木諒氏(左)

アトコレ(現:マイナースタジオ)の石田健氏(中央)、サムライインキュベートの榊原健太郎氏(右)、玉木諒氏(左)

2011年9月に設立された学生スタートアップのアトコレ(9月に社名をマイナースタジオに変更)。同社をメンバーズが買収することが明らかになった。買収額は非公開。関係者によると数億円程度になるという。

創業間もなくメンバーが会社を離れることに

同社は創業時にはサムライインキュベートからシードマネーを調達。アート作品に特化したまとめサイト「みんなの美術館 アトコレ(現:MUSEY)」を提供していた。だが1年ほど経った頃、当時の代表をはじめとしたメンバーが会社を離れ、サービスを企画した石田健氏だけが代表取締役として会社に残ることとなった。ちなみに当時の代表は、現在クラウドソーシングサービス運営のクラウドワークス取締役副社長兼COOを務める成田修造氏。ほかのメンバーは、女性向けメディア「MERY」運営のペロリ代表取締役・中川綾太郎氏、同社取締役の河合真吾氏。それぞれ新しい場所で活躍をしている。

創業から間もないタイミングでの挫折。「みんなで『互いのキャラが濃すぎるとダメなのか』ということまで話し合った。個人的な視点だが、オペレーションを回すのが得意な人間や市場の方向性に明るい人間がいて個性も違う。一方で僕は研究員をやりたいようなタイプ。みんながひと通り事業を経験した今ならまた違うのかも知れないが、それぞれの(事業への)体重のかけ方が違っていた」——石田氏は当時をそう振り返る。

結局アトコレは石田氏を残して実質的に活動を停止。石田氏も大学院に進学し、その一方で個人プロジェクトとしてニュース解説メディア「The New Classic」をスタートした。この反響が大きかったことからサービスをアトコレに移管して運営することになったが、「広告で月の売上が数十万円程度、それ以外は2年間ほとんど何もしていなかった」(石田氏)のだという。

サムライ榊原氏「環境をリセットしてもう一度挑戦を」

そんな状況だが、石田氏には会社をたたむという選択肢はなかった。「当時は学生起業ブーム。だからといって『学生は勝手』と言われるようなことはしたくなかった。榊原さん(株主であるサムライインキュベートの代表取締役・榊原健太郎氏)にも『自由にやりなよ』と言われたので、すぐにではなくても、勝負できるマーケットを見つけて結果を出そうと思った」(石田氏)。榊原氏も当時を振り返って「全員環境をリセットして、もう一度挑戦してもらうべきだと思った」と語る。

一念発起したのは2014年の春。新たに社内にメンバーを迎え、メディア事業を強化。おでかけをテーマにしたキュレーションメディア「Banq」をはじめとした複数の特化型メディアを立ち上げた。Banq、THE NEW CLSSICは、それぞれ現在MAU(月間アクティブユーザー)数百万人のサイトに成長している。

「Banq」のスクリーンショット

「Banq」のスクリーンショット

メディア運営を通じて、オウンドメディアの運用支援事業にも進出した。「単純にコンテンツを作って納品するのではなく、メディア運営ノウハウをもとにSEOなども支援する。ライターに価値に置くよりも、コンバージョンに価値を置いたメディア作りをしている」(石田氏)。売上高などは非公開だが、メディア運営とオウンドメディア運用支援で黒字化は達成しているという。

アトコレでは、メンバーズの買収に合わせて社名をマイナースタジオに変更している。今後はメンバーズのクライアントをターゲットにしたオウンドメディア運用支援・コンテンツマーケティングを行うほか、新たにインバウンド向けのメディアを立ち上げる予定だという。「Banqはただのキュレーションメディアに見えるかもしれないが、実は裏側で各記事にスポット情報が紐付いている。このスポット情報を生かして、新しい『シティガイド』を作っていきたい」(石田氏)

オークファンがDeNAのBtoBマーケットプレイスを12.5億円で買収

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オークファンが5月26日、ディー・エヌ・エー(DeNA)が手がけるBtoB向けのマーケットプレイス事業(仕入れや卸向けのマーケットプレイスだ)法人向けの商材を売る「DeNA BtoB Market」を買収すると発表した。

DeNAがDeNA BtoB Marketの事業承継会社である「NEATSEA株式会社」を設立。同社の全株式をオークファンが取得する。取得額は12億5500万円(アドバイザリー費用500万円を含む)。ちなみにDeNAは2013年1月に自社サービスのブランドを「DeNA ○○」という名称に再編しているのだけれど、NETSEAというのは、再編前のサービス名だ。

NETSEAは2006年11月にサービスを開始。現在25万人のバイヤー(ユーザー)を抱えており、年間流通総額は卸売価格ベースで60億円。2015年3月期の売上高は5億2000万円、営業利益は2億5000万円となっている。ちなみにオークファンの2015年9月期業績予想では、売上高は15億円、営業利益は1億7000万円となっている。

オークファンでは今回の買収によって、自社サービス間の相互誘導でのユーザー拡大や、フリーマーケット事業などの関連事業での相乗効果が期待できるとしている。加えて、同社がユーザー向けに提供している取引データの拡充にも繋がりそうだ。オークファンではこれまでヤフオク!や楽天市場など、BtoC、CtoCのコマースサイトについて、販売価格・落札価格といった取引データをとりまとめてユーザーに提供してきた。今回これにNETSEAのBtoBのデータが加わることになる。

BtoBの市場については海外を見てみると、Amazon.comが「Amazon Business」を既存サービスと統合して、機能を強化する動きがあったり、中国には「Alibaba.com」のような巨人がいる状況。日本でもファッション・雑貨を中心にしたラクーンの「スーパーデリバリー」や間接資材に強いMonotaROの「MonotaRO」、ヤフー子会社で、オフィス用品を中心に取り扱う「アスクル」などがある。

AutomatticがWooCommerceを買収―WordPressサイトが簡単にオンラインショップになる人気プラグイン

2015-05-20-automattic

WordPressでオンラインショップを作りたいなら、選択肢は事実上一つ、WooCommerceだろう。 750万ダウンロードを誇るWooCommerceはすべてのWordPressプラグインの中でもトップ10に入っている。先ほど発表されたニュースによると、WooCommerceは正式にWordPressファミリーに入った。WordPress.comの運営会社、AutomatticはWooCommerceを買収したことを明らかにした。

Automatticは買収価格を発表していないが、私の取材に対して「これまでの当社の買収の中でも群を抜いて最大」だと明かした。われわれはさらに取材を続けるつもりだ。Automatticが大金を投じてeコマース・プラグインを買収した理由は、それがまさにWordPressユーザーの要望だったからだ。

WordPressのファウンダー、Matt Mullenwegは 買収を発表したYouTubeビデオで「(数年前、あるWordPressカンファレンスの) Q&Aセッションで私は『ウェブサイトを作って公開するのと同じくらい簡単にオンラインストアを作って公開できるようになるのはいつなのか?』と尋ねられた。すると聴衆から自然と喝采が沸き起こった。みんなこのアイディアが気に入ったのだね」と語っている。

WordPressがeコマース分野への参入を狙っていることが今回の買収ではっきりした。eコマースの世界には一大衝撃が走っただろう。 WooCommerceはすでにWordPressベースで60万のオンラインストアを稼働させている。

ではWooCommerceというのはどういうプラグインなのか? 簡単にいえばWordPressをオンラインストアにする仕組だ。開発チームはもともとWordPressのテーマを専門にしていただけあって、WordPressとの一体感が優れている。

商品を追加するのは新しい記事を投稿するのと同じ感覚で簡単にできる。支払は?  デフォールトでPayPalがサポートされている。StripeやAmazon Paymentsなどの支払方法を追加したければそれも簡単だ。エクステンションを追加するだけでよい。クーポンの発行、管理機能も用意されている。配送ロジスティクス、在庫管理、ビジネス・アナリティクスなどもある。要するにオンラインストア運営に必要な機能はすべて揃っている。

こちらのビデオに主要機能が詳しく説明されている。

AutomatticがWordPressプラグインの会社を買収したのはこれが初めてではない。1年前にはWordPressのセキュリティー・プラグイン、BruteProtectを買収している。

私の取材に対してAutomatticは「買収手続きはら来月完了する」と語った。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

宅配クリーニングのバスケット、アパレルのクロスカンパニー子会社に—非IT企業による買収は「スタートアップの1つの道になる」

インターネットを利用した宅配クリーニングサービス「BASKET」を運営するバスケットは、4月28日付けでアパレルブランド「earth music&ecology」などを展開するクロスカンパニーの100%子会社となった。クロスカンパニーによる取得価格は非公開。バスケット代表取締役社長の松村映子氏はBASKETの事業を継続すると同時に、クロスカンパニー執行役員として、同社のECやネット関連の新規事業にも携わる。

一度目の起業は2年以上サービスを続けても鳴かず飛ばずだったという女性起業家。二度目のチャレンジでは、元オプト代表取締役CEOの海老根智仁氏、元enish代表取締役社長の杉山全功氏、DeNA共同創業者で投資家の川田尚吾氏、Genuine Startupsが支援。創業わずか1年で、年商1000億円超のアパレル会社が買収するに至った。

 14歳で起業を決意、最初の起業で苦い経験

BASKETはネットを利用した宅配クリーニングサービスを展開。ネットで注文をして宅配業者が専用のボックスで衣類を引き取り。提携する工場でクリーニングを行い、最短5日でユーザーの元に届ける仕組み。料金はワイシャツで240円から。競合にはYJキャピタルやジャフコが出資するホワイトプラスの「リネット」などがある。

サービスを提供するバスケットの創業は2014年4月。それだけ見ればわずか1年だが、現在32歳の松村氏にとってこれは二度目の起業となる。BASKETはメディア等に露出せず事業を続けていたこともあって、僕も聞いてはいたもののサービスを紹介したことはなく、いきなり買収に関する取材をすることになるというちょっと珍しいパターンだった。

「中学生の頃から友人に頼まれたりして、服を自分でアレンジしたり、作ったりして売っていた」という松村氏。中高生のお小遣い稼ぎにこそなれど、当時はすべての作業を自分で行っていたためその規模は小さい。ものづくりはやはり組織で行わないといけない、と14歳で起業を決意したのだそう。

そして大学で情報工学を学び(そこでTaskRabbit風のクラウドソーシングサービスを立ち上げたがうまくいかなかったそう)、一部上場のコンサルティング会社に入社。IT関連企業のコンサルを4年ほど経験した上で退社。インキュベーションプログラム(松村氏は明言しなかったが、デジタルガレージグループのOpen Network Labだ)に参加したのち、2011年5月に元同僚など4人で女性向けサブスクリプションコマース(定期購入)を展開するスタートアップを立ち上げた。

当時は雨後の竹の子のごとくサブスクリプションコマースが登場し、消えていったのだけれども、松村氏の会社もその1つ。冒頭でも触れたとおり鳴かず飛ばずで「全然うまくいかなかった」(松村氏)のだそう。

「サブスクリプションコマースの仕組みは、事業者がテーマに合った商品をキュレーションし、それを仕入れて送るというもの。だが知名度のないスタートアップでは仕入れにも苦戦した。そうなると結局、仕入れ元にもユーザーにもバリューを提供できるような仕組みを作ることができなかった。同時に私もCTOも開発ができるのだが、そのせいで『作ること』に専念しすぎて、苦手だったことに手が回っていなかった」(松村氏)。3年目には事業は休止状態となりコンサルティングや受託で収益をあげていたが、その会社をいったんクローズ。CTOと2人でバスケットを設立するに至った。

ネットとリアルの融合に期待—著名起業家らが支援

最初にバスケットの創業時に出資したのは、前回の起業でも資金を提供していたGenuine Capital(当時はMOVIDA JAPANのインキュベーション・シード投資部門だった。その後投資部門が独立したかたちになっている)と川田氏。Genuine Capitalの伊藤健吾氏は「MOVIDAの頃からシード投資をしてきたが、数を打って起業家をあおるだけでなく、失敗しても二度目のチャレンジをするのであればその支援をしたいと思っていた。バスケットはその1社だった」と語る。

前回の起業でも投資を検討したという川田氏は、「(ネットで完結するのではなく)リアルに寄ったサービスが伸びると考えていた。そして大きな会社がそのポータルになりたがっている状況。ITが分かるチームが生活関連向けのサービスを手がけるのであれば、いいモノが作れるのではないかと思った」とした。2人の投資から数カ月して杉山氏、海老根氏からも資金を調達をした(金額に関しては非公開だが、「2人のチームで1年ほど事業を回せる程度」(伊藤氏)とのこと)。

杉山氏もザッパラス、enishの前にはリアルビジネスも経験しており「ネットとリアルの融合というのは絶対出てくると思っていたがそこで求められるのは泥臭さ。それをやってのけるチームだと思った」と語る。実際提携するクリーニング工場は電話で問い合わせたり、ネットに情報がないので松村氏が直接出向いたりして口説いていったのだそう。

クロスカンパニーでは、今年度からアパレルに加えてインターネット・ライフスタイル事業へ参入し、生活周辺サービスのプラットフォームを作るとしている。BASKETもそのプラットフォームの一翼を担うことになると同時に、クリーニングにとどまらないビジネスを展開するとしている。

非IT企業の買収は「スタートアップの1つの道」

今後も継続して事業に携わるだけでなく、クロスカンパニーグループのIT部門を統括する立場になるという松村氏。子会社化という選択肢について、次のように語った。

「黒字化はまだこれからだったが、ユーザー数やリピート数は伸びているし、起業経験もある投資家陣にはいつも学ばせてもらっている。正直言うとこのままでも伸ばせた自信はある。でも二度目の起業、それも1年でお声がけ頂いたというのは、スタートアップとしては1つの道になると思う。今後はITではない会社がITスタートアップを買収することもあると思う」(松村氏)

リブセンスが越境・CtoCコマースを展開するwajaを子会社化

リブセンスは3月25日、wajaの発行済株式の71.7%を取得して子会社することを発表した。

wajaは自社にフルフィルメント機能を持ち、CtoC・越境ECの「waja」などを展開。wajaは世界60カ国のバイヤーが現地で仕入れた商品を販売する。

取得株式は429個。議決権ベースで71.7%。取得額は3億9300万円。同社は現在メディア向けのブリーフィングを開催している。詳細は追ってレポートする予定。


リクルートがドイツのQuandooを271億円で買収–EUで飲食店予約サービスを展開

リクルートホールディングスの海外大型買収があきらかになった。同社は3月5日、EU圏で飲食店予約サービス「Quandoo」を展開するドイツのQuandooを買収したと発表した。

リクルートでは、2014年10月に100%出資のコーポレートベンチャーキャピタル「合同会社RGIP」を通じて発行済株式総数の7.09%を取得していたが、今回新たに92.91%の株式を取得。100%子会社化した。買収価格は271億1000万円(アドバイザリー費用5億6000万円を含む)。

Quandoo2012年の設立。ドイツからスタートし、EUを中心に急速に事業を展開。現在高級レストランからローカルダイニングまで13カ国6000 店以上が導入している。ドイツ、イタリア、オーストリア、スイス、トルコ、ポーランドでは、予約可能店舗数ナンバーワンのサービスだという。2014年12月期の売上高は429万ユーロ、純利益は 974万1000ユーロの赤字となっている。同社のこれまでの資金調達やファウンダーなどの情報はCrunchBaseも参考にして欲しい。

リクルートによると、イギリス、イタリア、スペイン、ドイツ、フランスの5カ国における飲食店のオンライン予約数は、まだ電話予約等の総予約数の約16%でしかないそうだ。そのため、今後大きな成長が予測されるとしている。そこでRGIPを経由して投資を実行したが、同社の持つ営業オペレーションやシステムの価格優位性・機能的利便性とリクルートグループの事業運営ノウハウの融合がビジネスの発展に有効であると確認できたため買収に至ったと説明している。


アイスタイルがコスメのサブスクリプションEC「GLOSSYBOX」を買収


2012年頃に急増したサービスに「サブスクリプション(定期購入)型EC」がある。毎月(ときには別の期間の場合もあるが)定額を支払えば、サービス事業者が選んだ嗜好品やファッションアイテムなどが定期的に送られてくるというものだ。

4月に6000万ドルの調達を発表した「Brichbox」のようにコスメを取り扱うサービスや、質問に答えると毎月好みに合った靴を届けてくれる「ShoeDazzle」、さらには毎月髭剃りを提供してくれる「Dollar Shave Club」のような変わり種もあったし、国内では日本酒を扱う「SAKELIFE」などもある。日米ともに同様のモデルのサービスが一気に増加したが、今ではそれも一段落した様子。一部のサービスはすでに終了しており、その勝敗ははっきりしている(すでに2012年時点で、サブスクリプションコマースはピークを過ぎているという話もあったようだけれど)。

そんなサブスクリプションコマースに関するニュースが久々に飛び込んできた。コスメ情報サイト「@cosme」運営のアイスタイルが、コスメサンプルのサブスクリプションコマース「GLOSSYBOX」を日本で運営するビューティー・トレンド・ジャパンの買収を発表したのだ。

GLOSSYBOXはもともとドイツでサービスを立ち上げており、ドイツのベンチャーキャピタルであるRocket Internetなどが出資している。日本では現在、月額1620円で毎月約300ブランドの中から4〜5アイテムのコスメサンプルを届けているそうだ。日本でのサービスインは2011年末。現在はユーザー数を公開していないが、2012年9月時点で首都圏の働く女性を中心に3万1000人を集めているとのことだった。国内では、「VanityBox」「PurunusBox」「My Little Box」などの競合サービスがある。

この手のコスメサンプルのサブスクリプションコマースの多くは、化粧品メーカーから会員へのサンプリング目的で無料ないし安価にサンプルを入手し、これまた安価にユーザーに届けるというビジネスモデルだ。メーカーからすれば美容に興味のあるユーザーに直接サンプリングできるわけだから都合がいいだろうし、事業者側も一般的なサブスクリプションコマースより収益性の高いビジネスを展開できるように見える。アイスタイルでは既存事業で化粧品メーカー約850社とのネットワークがあるし、グループ会員286万人というユーザーベースも持っているので、シナジーも想像できる。買収額は非公開となっているが、つまりは開示義務のない規模とも読めるわけで、同社にとっては「いいお買い物」となるのではないだろうか。

2015年6月期は収益基盤強化に注力

なおアイスタイルは、7月30日に2014年6月期の通期決算を発表している。売上高は71億4100万円(前期比11.4%増)、営業利益は4億7300万円(同35.9%減)、純利益は1400万円(同96.7%減)となっている。

2015年6月期(今期)は収益基盤強化の時期と定めて、ユーザー向けサービスの抜本的改革に注力する。主力メディア@cosmeをタイムライン化するなど大幅刷新するほか、グローバルサイト(英語、中国語簡体、中国語繁体、韓国語)の展開も開始する。2015年6月期の収益予測は、売上高が73億5900万円(前期比3.1%増)、営業利益2億5400万円(同46.3%減)、純利益11億円(同685.7%増)。2016年6月期には、売上高100億円、営業利益15億円を目指す。


Google、Motorola Mobilityを29.1億ドルでLenovoに売却―特許の大部分を手元に残す

GoogleはMotorola MobilityをLenovoに29.1億ドルで売却した。2011年にGoogleがMotorolaの携帯電話事業を保有する特許を含めて買収したときの価格は125億ドルだった。

Motorola MobilityのCEO、Dennis Woodsideによれば、Googleは今後もMotorola Mobilityの特許ポートフォリオの「圧倒的部分を保有する」という。 Lenovoは現在Googleと結んでいる提携関係にもとづき、特許を含むMotorolaの膨大な知的財産の利用を続けることができる。Lenovoは約2000件の特許とMotorola Mobilityのブランド名を含む全資産を譲り受けた。

GoogleがMotorola Mobilityを買収した際に、これはハードウェア製造事業に乗り出すためなのか、特許紛争で自らを防衛するために特許権を取得することが目的だったのかと盛んに議論された。結局答えはその中間にあったようだ。Motorola特許はそれ自身ではGoogleの特許紛争で目覚ましい効果を挙げなかったものの、SamsungなどのハードウェアメーカーにクロスライセンスすることによってGoogleがAndroid陣営のリーダーとしての地位を強化することに貢献した。

同時にGoogleの買収と投資によってMotorolaの自己改革が大きく進んだ。同社は今や優れたスマートフォンを数機種市場に送り出し、好評を得ている。また最近ではDARPA(国防高等研究計画局)の長官を研究開発の責任者にスカウトして注目された。

GoogleはこれまでにケーブルTVのセットトップボックス事業などいくつかのMotorolaの資産を売却している。 その結果Motorolaの特許資産をGoogleは55億ドルで購入したことになる。それが高かったか安かったかの計算はともあれ、戦略的にはおおむねGoogleの勝利と見てよいだろう。アナリスストのBenedict Evansの試算によればGoogleのMotrola購入金額は実際には120億ドルではなく71.5億ドルだったという。そうだとすればGoogleがMotorolaの買収と売却で計上した損失は20億ドルにすぎないことになる。GoogleがMotorolaを再生させた結果、現在世界最大の消費者向けコンピュータ・メーカーであるLenovoの傘下に巨大なAndroidメーカーが生まれた。その一方、GoogleはNestやBoston Dynamicsのような有望なハードウェア・スタートアップを買収し、最高の人材を手に入れている。

GoogleのCEO、Larry Pageは今日(米国時間1/29)のプレスリリースで、 「(Motorolaの売却は)われわれの他のハードウェア事業に大きな路線の変更があることを意味するものではない。たとえばウェアラブルやホームオートメーション市場はまだ成熟しておらずダイナミックな発展の途上にある。これはモバイル事業とは大きく異る状況だ。われわれはこれらの新しいエコシステムの中で驚くべきプロダクトをユーザーに提供していくつもりだ」と述べた。

Motorolaの買収と売却は表面的な算術計算とは異なり、ジグソーパズルのさまざまなピースをしかるべき位置に収めていくと、単に持ち出しに終わったというわけではなさそうだ。

Image Credit: Hades2k

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