SpaceX、Starlinkのハードウェアとサービス料金を全面的に値上げ

SpaceX(スペースエックス)は、Starlink(スターリンク)のハードウェアキット自体の価格とサービス月額料金を含め、値上げを実施する。キットの価格はすでに予約している場合でも上昇するが、新規注文ではさらに跳ね上がる。

Starlinkのハードウェアは、予約に対して50ドル(約6000円)追加され、価格は499ドル(約6万円)から549ドル(約6万6000円)になる。まだ予約していない人はStarlink受信アンテナ、モデム、ルーターを含むキットに599ドル(約7万2000円)払うことになる。サービス月額料金は99ドル(約1万2000円)から110ドル(約1万3000円)へと11ドル(約1300円)アップする。ここに記載している価格はすべて米国の料金だが、その他の地域でも値上げされる。

SpaceXは、新しい料金体系の背景にはインフレがあるとしている。「この価格調整の唯一の目的は、インフレ率上昇に対応することです」と既存顧客に送った電子メールには書かれている。同社はまた、サービスを利用して1年未満の顧客がハードウェアの返品をともなう解約をした場合、200ドル(約2万4000円)返金し、30日以内であれば全額返金するとしている。

電子メールでは、Starlinkが打ち上げ以来、軌道上衛星の数を3倍に、接続を中継する地上局の数を4倍に増やすなど、インフラを大幅に拡張したことも指摘されている。

経済状況の変化で製品の予約に対しても価格を引き上げる企業はSpaceXが初めてではない。Rivian(リビアン)は2022年3月初めに予約者向けに価格を戻す前に、電気自動車R1TとR1Sの大幅な値上げを発表した。

画像クレジット:Starlink

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウクライナの副首相が語る企業制裁と戦時中の政府運営について

ロシア軍がウクライナに侵攻を開始したのは3週間前だ。紛争は初日から多面的な様相を見せている。地上戦に加え、ウクライナ政府はデジタル戦線にもすばやく対応した。国家の代表者が暗号資産の寄付を求め、ハイテク企業にロシアでの販売やサービスを停止するように呼びかけ、デジタルレジスタンスを組織した。

ロシアの侵略に対する政府の反応を体現している公人の1人が、Mykhailo Fedorov(ミハイロ・フェドロフ)氏である。2019年、28歳でウクライナ初のデジタル変革担当大臣に就任した。またウクライナの副首相でもある。Oleksandr (Alex) Bornyakov(オレクサンドル[アレックス]ボルニャコフ)情報変革(Information Transformation)担当副大臣も、ウクライナ政府で重要な役割を果たしている。先週TechCrunchのIngrid Lunden記者は、ボルニャコフ氏にインタビューを行っている

ミハイロ・フェドロフ氏は、米国時間3月15日未明のTechCrunchによるインタビューで「戦争前のことですが、Zelensky(ゼレンスキー)大統領と一緒に考えていたのは、デジタル利用できる公共サービスという点で、世界で最も便利な国作りでした」と述べている。

現在、これらのプロジェクトの多くは保留されているが、ウクライナ政府はデジタル変革の取り組みによる効果をすでに実感しているところだ。フェドロフ氏は、デジタル外交の面でも積極的に活動している。彼は、ビッグテック企業が国際関係においてかなりの力を持つようになったことをよく理解している。だからこそ、彼らにウクライナの味方になってもらうために、あらゆる手を尽くしているのだ。

Zoomを使った幅広いインタビューの中で、フェドロフ氏は通訳の助けを借りながら、戦時中に政府に参加することがどのようなものかについての洞察を語った。なおインタビューの内容は、わかりやすく簡潔にするため、若干の編集が加えてある。

TechCrunch:いまどちらにいらっしゃいますか?現在のご自身の状況について教えてください。

ミハイロ・フェドロフ氏:私は活動のまさに中心にいます。セキュリティの関係上、所在地をお伝えすることはできませんが、すべてのプロジェクトについて、24時間休みなく、大統領のチームと連絡を取り合っていることは断言します。

数カ月前と今とでは、日常生活が大きく変わっていると思います。対ロシア戦争時の、日々の仕事と役割について教えていただけますか?

我々は非常に若い省庁です。ゼレンスキー大統領が当選したときに、彼のプログラムの重要な部分を実行するために設立されました。選挙前、私は大統領のデジタルキャンペーンの責任者でした。彼が当選した後、私たちはデジタル国家という共通のビジョンを実現するために力を合わせたのです。

ゼレンスキー大統領との戦争前のビジョンは、デジタルで利用可能な公共サービスという点で、世界で最も便利な国を作ることでした。私たちが目指したのは、ダブルタップでサービスが受けられるような行政です。お役所の干渉をできるだけ受けないように、半自動化するのです。つまり、みなさんが期待するような政府というよりも、Uberに近い存在になろうとしていたのです。

この危機的状況の中でウクライナの人々を支援するために、そうしたデジタル公共サービスを活用する方法はないのでしょうか?

公共サービスを立ち上げるための工場のようなものを作りました。それを可能にしているのが、1500万人のユーザーを持つ私たちのアプリです。また、この期間を通じて実装することができた、政府が運営するすべてのデータベースの相互運用と、新しいサービスを立ち上げて提供するために微調整された管理組織も、それを可能にしています。

例えば、この戦時中に、戦闘で大きな被害を受けた地域からの移住を余儀なくされた人たちに、現金を支給するなどのサービスを開始することができました。また、無料の公共テレビと無料のラジオを埋め込むこともできました。また、公式なルートで軍への募金を行えるようにしました。

敵の動きも追跡して報告できるサービスもあります。基本的にはクラウドソーシングによる情報提供ですが、戦争が勃発してからわずか数日でそれを開始することができました。

なぜなら、私たちの内部諜報機関は非常に特殊であり、誰もが持っているようなものではないからです。また戦時中に、誰であろうと、どこにいようと、どんな身分であろうと、内部移動と公共サービスを受けるための重要な情報をすべて網羅した追加書類を公開することができました。また、将来の手続きのために、基本的に戦争で損害を受けたり破壊されたりした場合に備える資産目録サービスにも取り組んでいます。

これらのサービスは、今いる場所からインターネットサービスにしっかり接続できることを意味しています。携帯電話、固定電話ともに接続の現状はどうでしょう?

通信産業のおかげで、今のところ非常に安定しているし、自信も持てるのだと言えるでしょう。24時間体制で働く彼らは、真のヒーローです。停電が発生すると、すぐに修理に駆けつけてくれます。

そのため、国土の大部分において安定したインターネット接続を維持することができているのです。また、EU圏内で最も多くのStarlink(スターリング)端末を保有しています。

軍と政府の両方から預かっている機密データについては、どうなさるつもりですか?現在データの拠点はウクライナ国内にあるのでしょうか?また、最悪の事態に備え、データを海外に移動する計画はあるのでしょうか?

デジタル国家を構築すると、露出度や攻撃界面が増えます。つまり、私たちは常にサイバーセキュリティに細心の注意を払い、真剣に取り組んできたのです。また、デジタル国家を構築していく中で、ロシア連邦から常にサイバー攻撃の標的にされてきました。

詳しくいうまでもなく、私たちのデータは安全だと言いたいと思います。バックアップもあります。データの整合性と安全性を確保する手段を備えています。つまり、何が起きようとも、ウクライナ国民のために信頼性の高いサービスを提供し続けることができるのです。

話題を変えて、対ロシアの企業制裁の話をしたいのですが、大臣はTwitter(ツイッター)やメディアで「欧米の企業は今すぐロシアでの販売を停止すべきだ」と企業に呼びかけていますね。このアイデアはどこから来たのでしょう、そして効果的だと思いますか?

私たちはこのプロジェクトをデジタル封鎖と呼んでいます。そして、この戦争に勝つためには、これが非常に重要な要素であると考えています。そして、将来的には、政府は古典的な政府ではなく、ハイテク企業に似てくるだろうと思っています。

デジタルプラットフォームは、複数の重要なサービスを提供しています。社会の仕組みにしっかり組み込まれてしまっているのです。このようなサービスを攻撃者から1つずつ取り除いていけば、彼らの社会構造に実際のダメージを与え、日常生活を送る上で非常に不愉快な思いをすることになるのです。

私たちはこれを、まったく新しい未踏の戦場と考えたいと思っています。そしてこれは、ロシアの発展を何十年も後戻りさせることになると予想される制裁を、補完する措置でもあるのです。

また、ハイテクビジネスは非常に大きな付加価値を生むと思っています。だからこそ、Tesla(テスラ)はGazprom(ガスプロム、世界最大の天然ガス企業)よりも価値があるのです。こうした付加価値を生み出す技術系の人材は、実はとても身軽でノマド的なのです。このような不利な条件をロシア内に生み出してしまえば、技術系の人材は他に移ってしまうことになるでしょう。

これが今回のデジタル封鎖を可能な限り徹底的かつ包括的に行う理由です。ロシアの戦車と兵士がわが国から撤退し、わが国民の殺戮を止める瞬間まで続けます。

副大臣のご意見として、ロシアでの販売停止やビジネス停止などが十分でなく、もっとやるべきことがある企業はあるでしょうか?

特に名前を挙げたいのはSAPですね。銀行や大企業にERPを提供しているドイツの会社です。基本的に、彼らはロシア企業にITインフラを提供し、またロシアで税金を納めることで侵略戦争に貢献しているのです。こうして彼らは、ウクライナ国民や民間人を殺害している軍隊を支持しているのです。

現在のウクライナのハイテク産業、ハイテクコミュニティについて教えてください。私たちは技術コミュニティで起きていることを多く取り上げていますので、ウクライナの技術者たちが今どのように反応しているのかを知りたいのです。

ウクライナには約30万人の技術系人材がいます。国際企業のほとんどは、ウクライナでの事業を安定させ、事業継続を確保することができました。難しいことではありますが、ほとんどの人が何とかやっています。

ブロードバンドインターネット、安全な場所、税制優遇、移動手段などを提供し、技術系企業のニーズに応えようと考えています。つまり基本的に、彼らに何か問題があったときに、ワンストップで対応できるような存在になることを目指しています。

昨日(米国時間3月14日)には、ウクライナ軍がClearview AI(クリアビューAI)の顔認識技術を利用しているという報道がありました。このClearview AIとの提携について、詳しくお話ししていただけますか?

現在、このプロジェクトは非常に初期の段階にあると言えます。進捗状況についてコメントする立場にはありませんが、結果が出れば、喜んで結果をシェアしたいと思っています。

Clearview AIを活用する場合、どのようなユースケースを想定なさっているのでしょうか。

まず最初に、これらのユースケースのほとんどは非公開のもので、公にお知らせできるものではないということをお断りしておきます。

でも、ちょっとだけお話しするなら、総務省との仕事があります。ウクライナ国内で殺害されたり、捕虜になったりしたロシア軍を特定しようとするものです。ご存知のように、ロシア政府は彼らの存在を否定し始め、書類なしで送り込んだりしています。

もう1つは、検問所を通過する人をチェックするユースケースです。もう1つは、行方不明者の捜索です。

関連記事:ウクライナ情報変革副大臣インタビュー「IT軍団と29億円相当の暗号資産による寄付」について語る

暗号資産による寄付についてもお聞きしたいのですが。暗号資産に関する戦略について、最新情報を教えていただけますか?

現時点で、5500万ドル(約65億2000万円)を調達することができました。そして、そのすべてがウクライナ軍へ振り向けられました。

我々は暗号資産にやさしい国家も目指しています。具体的な内容もお伝えできます。国会で仮想資産に関する法律が採択されました。数日のうちに大統領が署名して法制化されると思います。ですから、私たちはできるだけ仮想資産にやさしくするように努めています。そして、戦時中もこの取り組みを続けています。

ウクライナで暗号資産に関する新しい法律が程なく成立するというお話が出ましたね。政府のメンバーとして、現在どれくらい緊密に働いていますか?新しい法律をどのように成立させ、政府の他の部分とどのようにチームとして働いているのでしょう。

それはすばらしい質問です。戦時中は、政府は基本的にオーバードライブモードで動いています。私たちは24時間、土日も関係なく働いています。戦争前は会議は毎週開催でしたが、現在は毎日開催しています。

ちょうど、軍隊の勇敢な軍人たちが、土日祝日もなく昼夜を問わず国を守っているようなものです。私たちも同じようにやっています。

私たちは、軍事面でも、技術面でも取り組みを行っています。また、経済面でも取り組んでいます。わが国の政府は、経済の自由化を進め、経済におけるあらゆるハードル、障害、ボトルネックを取り除くことに特に力を注いできたのです。税制の簡素化も進めています。私たちは税関を開放していて、ああ、戦争にもかかわらず経済的に国を発展させようとさえしています。

現状で知りたかったことは、すべてお尋ねしたつもりです。もしよろしければ、毎週、あるいは2週間おきに定期的にお話しして、近況を共有しましょう。ひとます今回は、ご回答ありがとうございました。

もちろん、フォローアップ会議を企画したいと思います。あと、結論として、以下のことを記事に書いていただければと思います。

技術コミュニティ全体に感謝したいと思います。技術コミュニティが私たちの側、明らかに善い側を選んでくれたと信じているからです。私たちはそれを心で感じ、技術者コミュニティの行動で感じることができています、とても感謝しています。

画像クレジット:Future Publishing / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

スペースXが「米国のほうき」でさらに48基のスターリンク衛星を打ち上げ

SpaceX(スペースX)のStarlink(スターリンク)ミッションがまた1つ、高く高く遠くへ飛んでいった。米国太平洋標準時3月9日の午前5時45分、フロリダ州ケープカナベラルの宇宙軍施設第40発射施設からFalcon 9(ファルコン9)ロケットが打ち上げられ、地球を周回してインターネットを提供しているSpaceXの2000基に及ぶ衛星群に、新たに48基の衛星が追加された。

今回の打ち上げはブースターにとって4回目で、ミッション開始から数分後に大西洋に浮かぶ無人のドローン船「A Shortfall of Gravitas(厳粛さが足りない)」に着陸した。

2022年に入ってから7つのStarlinkミッションに加え、他の3つのミッションも打ち上げているSpaceXにとって、今回の飛行は目新しいものではなかったが、打ち上げのシークエンスにおいて、おもしろい一節が含まれていた。

「米国のほうきを飛ばし、自由の音を聞く時が来ました」と、SpaceXの打ち上げディレクターは打ち上げの「ゴー」を出す前に呼びかけた。

このコメントは、ロシアの国営宇宙機関Roscosmos(ロスコスモス)を率いるDmitry Rogozin(ドミトリー・ロゴージン)氏が先週、両国間の緊張が高まる状況を受けて、米国へのロシアのロケットエンジンの販売を禁止した後に述べた嫌味にちなんでいる。同氏は国営放送で「何か他のもの、自分たちのほうきにでも乗せて飛ばせばいい」と語っていた。

Falcon 9はSpaceXが開発したMerlinエンジンを搭載しているが、米国の他のロケット(United Launch AlliancesのAtlas VとNorthrop GrummanのAntares)はロシアのエンジンを搭載している。ULAは今後の打ち上げに十分なエンジンの在庫があると発表しているが、Northrop Grummanは、禁輸措置が同社のミッションにどのような影響を与えるかについて声明を出していない。

いずれにせよ、米国のロケット打ち上げの大半を占めるのはSpaceXであり、9日の打ち上げが示したように、同社のほうきも好調だ。

SpaceXの次の打ち上げは、Starlinkのミッションではなく、有人ミッションだ。3月30日に打ち上げられる予定のAxiom-1ミッションは、国際宇宙ステーション(ISS)への初の民間飛行となる。SpaceXは、すでにNASAのクルーを4人ISSに送り込み、民間人だけのクルーがCrew Dragonカプセルで数日間地球を周回したInspiration 4ミッションも行っており、有人ミッションの分野ではかなりの経験を積んでいるといえる。

画像クレジット:SpaceX / Flickr under a CC BY-NC 2.0 license.

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Den Nakano)

スペースXがさらに47基のスターリンク衛星打ち上げに成功

SpaceX(スペースX)は2022年に、過去のどの年よりも多くのロケットを打ち上げることを目指している。米国時間3月3日にStarlink(スターリンク)の打ち上げを成功させたことは、その目標達成に向けて順調に進んでいることを示している。

今回のStarlink 4-9ミッションは、米国東部標準時の午前9時25分にフロリダ州にあるケネディ宇宙センターの39A発射施設から打ち上げられた。これは、同社が2022年打ち上げを予定している52回のミッションのうち、9回目にあたる。この1週間に1回という驚異的なペースは、SpaceXのElon Musk(イーロン・マスク)CEOが力を入れている「迅速な再利用性」によるものだ。

今回のミッションでは「B1060」とナンバリングされたFalcon 9(ファルコン9)ブースター(1段目ロケット)が使われた。B1060は打ち上げから約9分後に、大西洋に浮かぶ「Just Read the Instructions(説明書を読め)」と名付けられた無人のドローン船に着地した。今回の打ち上げと着陸の成功により、B1060は2020年6月の初打ち上げ以来、SpaceXのロケット再利用回数で最多タイとなる11回の飛行を完了した。

B1060は今回、47基のStarlink衛星を軌道に乗せ、地球を周回している他の2000基を超える第一世代衛星群に加えることに成功した。これらの衛星コンステレーションは、地球の遠隔地にも高速・低遅延のインターネット接続サービスを提供することを目的としている。Starlinkの衛星は、現時点で1万2000基まで拡張することが承認されているが、SpaceXはさらに3万基の打ち上げを申請している。

4-9ミッションは、SpaceXによる2022年6回目のStarlinkの打ち上げだが、そのすべてのミッションが完全に成功したわけではない。2月3日の打ち上げでは、49基のStarlink衛星が打ち上げられたが、そのうち38基が地磁気嵐のために目的の軌道に到達できず、地球の大気圏に再突入した際に燃え尽きてしまった。SpaceXでは、この問題は大きな後退ではないと主張している。

同社は2月22日、Starlinkの持続可能性と安全性について発表した声明の中で「当社には1週間に最大45基の衛星を製造する能力があり、1カ月で最大240基の衛星を打ち上げています」と述べている。

というわけで、SpaceXによる次のStarlinkの打ち上げは、3月8日にケープカナベラル宇宙軍基地の第40発射施設でから予定されている。

画像クレジット:SpaceX / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Stefanie Waldek、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

イーロン・マスク氏率いるスペースX、ウクライナの要請に応じスターリンク通信と端末提供―ただし有効性に疑問の声も

イーロン・マスク氏率いるスペースX、ウクライナの要請に応じスターリンク通信と端末提供―ただし有効性に疑問の声も

ロシア軍が侵攻してその動向が世界に注目されているウクライナ情勢に絡んで、イーロン・マスク氏はSpaceXの衛星インターネットサービスStarlinkをウクライナに導入したことを明らかにしました。マスク氏いわく「すでにウクライナでStarlinkサービスは有効になっている」「さらに多くの端末を送る用意がある」とのこと。

ウクライナではロシアによるサイバー攻撃でインターネット環境が利用できなくなるとの観測が出ており、ウクライナ副首相兼デジタル担当相のムィハーイロ・フョードロフ氏はTwitterでマスク氏にStarlinkによる支援を呼びかけていました。

実際にすでにStarlinkはウクライナで利用可能になっており、この動きに対して、熱狂的なマスクファンなど一部の人々は反射的にSNSで称賛しているようすです。しかしその一方、専門家らからは、Starlinkの有効性について疑問の声もあがっています。

The VergeはStarlinkをレビューした際、安定した通信を得るにはヒマワリのようにアンテナを衛星の方に向け、さらに間に遮蔽物がないようにしなければならず「誇大に宣伝されたミリ波5Gと同様」に建物はおろか電柱や立木ですら、簡単に信号を遮断してしまうと報告していました。つまり、人々がインターネット環境を利用したいであろう都市部は、遮蔽物がそこかしこにあり、衛星インターネットが効果を発揮するのは難しいだろうということです。

また「さらに多くの端末を」とは言っても、それをどうやってキエフなど都心に持ち込むのかが問題です。ウクライナの主要な都市にはロシア軍が集結しており、持ち込む途中で奪われ、逆に利用される可能性も否定できません。

インターネットの通信状況を監視するサイバーセキュリティ企業NetBlocksは、ウクライナのバックボーンプロバイダーGigaTransの通信状況をTwitterで報告し、一時的にそのトラフィックが20%程度にまで落ち込んだと伝えました。しかしその直後には通常レベルまで復旧したことも報じているため、少なくともウクライナ国内ではまだインターネット通信は生きており、大規模な停電なども発生していない模様です。

もちろんStarlinkのサポートも、ないよりはあるに越したことはありません(トンガでもStarlinkが離島で開通したと報じられています。ただ海底ケーブルもすでに復旧していますが)。いずれにしても、ウクライナの人々が家族や大切な人々と連絡を取り合うのが困難になるかわからない状況に変わりはなさそうです。

(Source:Elon Musk(Twitter)Engadget日本版より転載)

画像クレジット:ANIRUDH on Unsplash

スペースX、初の商業宇宙遊泳を年内に計画

SpaceX(スペースX)は、初の民間人のみによる宇宙飛行を開始するだけでなく、近い将来、本格的な民間宇宙プログラムの本拠地となる見込みだ。The Washington Postによると、Shift4(シフト4ペイメンツ)の創業者でInspiration4ミッションのリーダーを務めたJared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏は、SpaceXによる「最大3回」の有人飛行を含むPolaris Program(ポラリスプログラム)の構想を発表した。最初のフライトである「Polaris Dawn(ポラリスの夜明け)」は2022年の第4四半期に予定されており、初の商業宇宙遊泳が含まれるはずだ。この取り組みは理想的には、人間が乗った最初のStarship(スターシップ)の飛行で終わる。月旅行を期待していた方たちには申し訳ない。

Polaris Dawnチームは、史上最高の地球周回軌道を目指し、健康研究を行い、レーザーを使ったStarlink(スターリンク)通信のテストも実施する予定だ。アイザックマン氏はミッションコマンダーとして復帰し、Inspiration4のミッションディレクターで空軍経験者のScott Poteet(スコット・ポティート)氏がパイロットを務める。また、SpaceXのリードオペレーションエンジニアであるAnna Menon(アナ・メノン)氏とSarah Gillis(サラ・ギリス)氏の2名も搭乗する。メノン氏の役割は、昨今の民間宇宙飛行へのシフトを象徴している。彼女の夫であるAnil Menon(アニル・メノン)米空軍中佐はNASAの宇宙飛行士に選ばれているが、彼女はその配偶者よりも先に宇宙に到達する可能性が高いのだ。

このプログラムの実現は、SpaceXとパートナー企業がいくつかの問題を解決することにかかっている。SpaceXは宇宙遊泳に必要な宇宙服を開発中であり、アイザックマン氏のグループはクルーのうち何人が宇宙船の外に出るかをまだ決めていない。また、Starshipには不確定要素もある。十分なテストが行われ、多くの進歩を遂げているが、この次世代ロケットシステムの開発は必ずしも計画通りには進んでいない。Polaris Programは、比較的緩やかなスケジュールで、場合によってはいくつかの挫折を経験することになるだろう。

それにしても、これは民間宇宙飛行の常態化を意味する。Polaris Programは、億万長者が率いる民間宇宙飛行の最近の「慣習」を引き継ぐものだが(アイザックマン氏も例外ではない)、宇宙遊泳や新しい宇宙船のテストなど、これまで政府の宇宙飛行士だけが行っていたことが商業化されることも見込まれる(SpaceXのDemo-2は、NASAの宇宙飛行士が操縦した)。近い将来、民間宇宙飛行士が他の役割を果たすようになっても不思議ではない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Jon Fingas(ジョン・フィンガス)氏は、Engadgetの寄稿ライター。

画像クレジット:Polaris Program / John Kraus

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(文:Jon Fingas、翻訳:Aya Nakazato)

スペースX、スターリンク衛星コンステレーションによるサービスをインターネット断絶のトンガに提供すべく活動中

SpaceXがStarlink衛星コンステレーションによるサービスをインターネット断絶のトンガに提供すべく活動中

New Zealand Defense Force via Getty Images

SpaceXは、1月15日に発生した大規模噴火で甚大な被害を受けたトンガのインターネット環境回復のために、Starlinkの衛星コンステレーションによるブロードバンドサービスを提供すべく協力していると報じられています。

現在、SpaceXはフィジーに衛星インターネット通信局を設置している最中で、ここを中継点としてトンガへインターネット回線を延伸させようとしているとのこと。インターネットが通じたとしてトンガの人々がどのようなサービスを期待すれば良いかはよくわかりませんが、現在世界25か国でパブリックベータサービスを提供しているStarlinkサービスにとって、トンガやフィジーへの接続は、回線敷設の手間が大きく省ける衛星ブロードバンドの利点を広く宣伝する良い機会になると考えられます。

噴火で途切れた海底インターネットケーブルの復旧にはまだ数週間ほどかかるとされており、トンガ政府にそれまで通信環境の回復を待てない事情があるのであれば、SpaceXにさらなる支援を求めることもありそうです。また海底ケーブル復旧後も今回の災害のような不測の事態に備えるためのバックアップとして、衛星インターネット環境はトンガのような絶海の島国でこそ求められるインフラとも言えそうです。

ただし、トンガは1月下旬に契約の解釈のもつれからサービスを提供していなかった衛星通信企業Kacific Broadband Satellitesに対して通信開通の許可を出しており、SpaceXがそこへ割り込む格好になることであらぬ競争が発生することになる可能性もないわけではありません。

(Source:Wall Street JournalEngadget日本版より転載)

スペースX、スターリンク衛星コンステレーションによるサービスをインターネット断絶のトンガに提供すべく活動中

SpaceXがStarlink衛星コンステレーションによるサービスをインターネット断絶のトンガに提供すべく活動中

New Zealand Defense Force via Getty Images

SpaceXは、1月15日に発生した大規模噴火で甚大な被害を受けたトンガのインターネット環境回復のために、Starlinkの衛星コンステレーションによるブロードバンドサービスを提供すべく協力していると報じられています。

現在、SpaceXはフィジーに衛星インターネット通信局を設置している最中で、ここを中継点としてトンガへインターネット回線を延伸させようとしているとのこと。インターネットが通じたとしてトンガの人々がどのようなサービスを期待すれば良いかはよくわかりませんが、現在世界25か国でパブリックベータサービスを提供しているStarlinkサービスにとって、トンガやフィジーへの接続は、回線敷設の手間が大きく省ける衛星ブロードバンドの利点を広く宣伝する良い機会になると考えられます。

噴火で途切れた海底インターネットケーブルの復旧にはまだ数週間ほどかかるとされており、トンガ政府にそれまで通信環境の回復を待てない事情があるのであれば、SpaceXにさらなる支援を求めることもありそうです。また海底ケーブル復旧後も今回の災害のような不測の事態に備えるためのバックアップとして、衛星インターネット環境はトンガのような絶海の島国でこそ求められるインフラとも言えそうです。

ただし、トンガは1月下旬に契約の解釈のもつれからサービスを提供していなかった衛星通信企業Kacific Broadband Satellitesに対して通信開通の許可を出しており、SpaceXがそこへ割り込む格好になることであらぬ競争が発生することになる可能性もないわけではありません。

(Source:Wall Street JournalEngadget日本版より転載)

スペースX、地磁気嵐でスターリンク衛星40基を失う

SpaceX(スペースX)のFalcon 9ロケットで米国時間2月3日に大気圏外に運ばれたインターネット衛星Starlink(スターリンク)のほぼすべてが、目的の軌道に達しない。SpaceXは、打ち上げの翌日に発生した地磁気嵐により衛星に深刻な影響があり、最大で40基が地球の大気圏に再突入するか、すでに突入していることを明らかにした。米地質調査所は、地磁気嵐を、一般的に太陽風の強いうねりによって引き起こされる「急激に磁場が変動する」期間と説明している

こうした嵐は、電子機器や軌道上の人工衛星にダメージを与える可能性がある。今回のケースでは、大気が暖み、大気抵抗(衛星の動きに対する摩擦)がこれまでの打ち上げに比べて最大で50%増えた。SpaceXの説明によると、Starlinkチームは、新たに配備された衛星を救おうと、抵抗を最小限に抑えるためにセーフモード(紙のように飛ぶよう動きを調整するモード)にした。しかし、抵抗が増し、セーフモードを終了できなくなった。

軌道から外れた衛星は衝突の危険はなく、大気圏に再突入する際に完全に燃え尽き、軌道上のデブリも発生しない、とSpaceXは説明している。また、衛星の部品が地上に落下することもない見込みだ。「この特殊な状況は、Starlinkのチームが、軌道上のデブリ軽減の最先端を行くシステムを確実なものにするために、多大な努力を払ってきたことを示しています」と同社は発表文に書いている。

SpaceXは2022年1月時点で、第1世代のStarlink衛星を2000基以上打ち上げている。Starlink衛星をペイロードとする打ち上げは、同社にとって日常的なものとなっていて、世界をカバーするインターネット提供を目的とした最大3万個の衛星からなる第2のコンステレーション形成が承認されれば、さらに頻繁に行われるようになるはずだ。

Starlinkは遠隔地にいる人々にもインターネット接続を提供することができるが、天文学者たちは、巨大なコンステレーションは都市の光害よりも研究にとって深刻な脅威になっているという。実際、国際天文学連合は「衛星コンステレーションの干渉から暗くて静かな空を守るためのセンター」を設立したばかりだ。望遠鏡が衛星コンステレーションによって反射された光を拾い、宇宙の観測を困難にすることが大きな問題であるため、センターは観測所が実行できるソフトウェアや技術的な緩和策に焦点を当てることにしている。SpaceXは2020年にStarlink衛星に「サンシェード」を追加し、明るさを抑えている。Sky & Telescopeによると、現在は確かに暗く見えるが、望遠鏡ではまだ見えるという。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のMariella MoonはEngadgetの共同編集者。

画像クレジット:Starlink

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(文:Mariella Moon、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpaceXが月額約5.7万円の「プレミアム」Starlinkプランを発表、最大500Mbpsの速度を実現

SpaceX(スペースX)は、同社の衛星インターネットサービスStarlink(スターリンク)において、より高いパフォーマンスと目を疑うような価格の新サービスプランを発表したとThe Vergeが報じた。「Starlink Premium(スターリンクプレミアム)」と名づけられたこのサービスは、150〜500Mbpsの速度を20〜40msの遅延で提供するとのこと。従来の50〜250Mbpsから速度はアップし、同じ遅延ということになる。アップロード速度も、標準プランの10〜20Mbpsから、プレミアムでは20〜40Mbpsに向上している。

だが約2倍のパフォーマンスアップのためには、5倍の料金を支払わなければならない。標準プランの月額99ドル(約1万1300円)に対し、Starlink Premiumプランは月額500ドル(約5万7200円)となる。また、アンテナなどのハードウェアには、標準プランの499ドル(約5万7100円)に対し、2500ドル(約28万6000円)が必要となり、Premiumアンテナの予約には500ドル(約5万7200円)の保証金が必要となる。

SpaceXによると、この新サービスは「極端な気象条件」でもより確実に機能し、顧客は優先的に24時間年中無休のサポートを受けることができるという。このサービスは、多くの遠隔地で利用できる高速インターネットの唯一の選択肢となる可能性が高く、そうした環境で優れた耐候性は重宝されるだろう。

SpaceXは、2021年10月にStarlinkのベータ版を発表し、同年11月には、オリジナルの円形衛星アンテナよりもはるかに小さく薄い長方形の新しい衛星アンテナを発表した。新しいPremiumアンテナはそれよりも大きく「ネットワークの使用量がピークに達したときでも、重要な業務のための帯域幅を確保するのに役立つ」とSpaceXは述べている。

Starlinkは、1月中旬時点で2000基以上の衛星を打ち上げており、約1500基が運用軌道に乗っている。現行システムでは、現在の約3倍となる最大4408基の衛星運用が認められている。Premiumプランは2022年第2四半期に納入開始を予定しており、現在注文受付中だ。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Steve Dent(スティーブ・デント)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Starlink

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(文:Steve Dent、翻訳:Aya Nakazato)

テスラがEV充電施設にスターリンク衛星インターネットアンテナを配備

Tesla(テスラ)のEV充電網Supercharger(スーパーチャージャー)で番組をストリーミングで観たいが、Premium Connectivityにはお金を払っていない、という人も絶望しないで欲しい。公式な代替手段があるかもしれない。Electrekによると、Teslaの電気自動車(EV)のオーナーがSuperchargerステーションでStarlink衛星インターネットアンテナを見つけた。その数や、ドライバーがアクセスできるかどうかはまだ明らかになっていないが、少なくともフロリダには配備されている。

Teslaはこの展開についてコメントしておらず、広報チームも解散したとみられている。

SuperchargerでのStarlinkのブロードバンドは、複数の用途が考えられる。少なくとも、支払いや充電器の状態などの基本的な処理を行う既存の接続を代替または補完することができる。実際に活用すれば、Superchargerをより早く、より多くの遠隔地に設置するのにつながるかもしれない。Tesla以外のEVの充電を可能にし、ステーションネットワークの規模を3倍にしたいと考えている同社にとって、これは重要なことだ。

とはいえ、取引を処理するだけならそれほどの帯域幅は必要なく(米国のStarlink接続の中央値は約97Mbps)、TeslaがSupercharger利用者にWi-Fiを提供するために衛星接続を利用しても不思議ではない。通常、車を充電するのにはテレビ番組を見られるほどの時間がかかる。Premium Connectivityをサブスクしたり、携帯電話をホットスポットとして使用したりしなくても、テレビ番組をストリーミングすることができるかもしれない。充電器の使用が多い場合にはネットワークの混雑が問題になるかもしれないが、便利になり、自宅でStarlinkサービスを利用する顧客が増える可能性もある。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Tesla

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

SpaceXの衛星ブロードバンドStarlinkが従来より小型・軽量化された長方形アンテナを発売

SpaceX(スペースX)の衛星インターネット事業であるStarlink(スターリンク)は、顧客がスターターキットで入手できる新しいユーザー端末を導入した。The Vergeが最初に報じたところによると、同社は、当初の円形モデルよりも小型・軽量化された長方形のオプション(PDF)を提供開始した。Starlinkの衛星インターネットサービスを利用するには、屋根の上など、空がよく見える場所にアンテナを設置する必要がある。

オリジナルバージョンは幅23インチ(約58.4cm)の標準的なパラボラアンテナだが、新型の長方形バージョンは幅12インチ(約30.5cm)、長さ19インチ(約48.3cm)しかない。また、重さも9.2ポンド(4.2kg)と、円形モデルに比べて約半分になっている。小型化されたことで、ユーザーは設置場所の選択肢が増えた。また、長方形の端末には、地面に刺すだけでアンテナを屋上に設置する必要がない長いポールなど、アクセサリーのオプションも増えている。

SpaceXは2020年末にベータサービスとしてStarlinkを開始し、月額99ドル(約1万1300円)で同社の衛星インターネットへのアクセスを顧客に提供した。ただし、アンテナ、スタンド、電源ユニット、WiFiルーターを含むハードウェアキットには、499ドル(約5万6800円)の追加費用がかかる。SpaceXのGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)社長は8月、オリジナルバージョンのアンテナの製造コストは当初3000ドル(約34万1600円)で、それを1300ドル(約14万8000円)にまで下げることができたものの、それでもキットの販売は赤字だったと語っていた

ショットウェル氏は当時、2021年発売する端末は、現在のユーザー端末の「およそ半分の価格になる」とも述べ、同社はそれを再び半額にすることができるかもしれないと語っていた。だがVergeは、ハードウェアキットが長方形アンテナをつけても以前と同じ499ドルで販売されていることを指摘しており、SpaceXは将来的により低価格で販売するかどうかをまだ明らかにしていない。同じ値段を払っても構わないという潜在的な新規顧客は、米国内であれば、キットを注文する際に長方形の端末を選ぶことができる。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Mariella Moon(マリエラ・ムーン)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

画像クレジット:Starlink

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(文:Mariella Moon、翻訳:Aya Nakazato)

SpaceXのStarlinkがインド法人を設立、2022年末までにターミナル20万台の展開を目指す

KDDIがイーロン・マスク氏率いるSpaceXのLEO衛星通信サービスStarlinkをau通信網に採用

関係者によると、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が率いるSpaceX(スペースX)の子会社Starlink(スターリンク)はインドで法人登録を行い、現地政府へのライセンス申請の準備を進めている。

Starlinkのインド担当ディレクターであるSanjay Bhargava(サンジェイ・バルガヴァ)氏は、11月1日にLinkedInへの投稿で「SpaceXがインドに100%出資の子会社を設立したことを喜んでお伝えします」と述べた。Starlinkのインド現地法人は、Starlink Satellite Communications Private Limitedという社名で登録されている。

インターネット企業がインドでサービスを提供するためには、現地法人が必要だ。ライセンスを取得すると仮定して、Starlinkは2022年12月までに16万以上の地区で20万台のターミナルを提供することを計画している。これは、8月時点で14カ国でユーザー10万人にターミナルを出荷した同社にとって野心的な目標だ。

PayPalの元幹部であるバルガヴァ氏は、10月初めに新しい役職に就いた。Starlinkはここ数カ月で、AMDのインドにおける政策活動を監督していたParnil Urdhwareshe(パーニル・ウルドワレシェ)氏をインド事業のマーケット・アクセス・ディレクターとして採用するなど、現地で重要な幹部を多数採用してきた。

SpaceXの広報担当者は、バルガヴァ氏の起用について9月に送った問い合わせに回答しなかったが、同社の最高経営責任者であるマスク氏は、週末にツイッターでこうした展開を認めた。

小型衛星を打ち上げて地球低軌道ネットワークを構築し、低遅延のブロードバンドインターネットサービスを提供している代表的な企業の1つであるStarlinkは、インドの農村地域へのサービス提供を目指していると、マスク氏はツイッターで述べ「サンジェイはX/PayPalを成功に導き、賞賛に値します」と付け加えた。

バルガヴァ氏はLinkedInへの別の投稿で「Starlinkは、十分なサービスを受けられない人々にサービスを提供したいと考えています。ブロードバンドプロバイダーの仲間や、志の高い地区のソリューションプロバイダーと協力して、人々の生活を改善し、救っていきたいと考えています」と述べた。週末には、インドの有力シンクタンクであるNiti Aayogと協力して、Starlinkの初期展開に向けて国内12地区を特定すると発表した。

インドでは、5億人以上がインターネットを利用しているにもかかわらず、同じくらい多くの人々がいまだにインターネットを利用していない。業界の推計によると、農村部に住む何億人ものインド人が、ブロードバンドネットワークにアクセスできていない。

「政府の承認プロセスは複雑です。今のところ、政府に申請中のものはありません。我々が取り組んでいる申請については、我々の側にボールがあります」とバルガヴァ氏は述べた。

「全インドでの承認に時間がかかる場合は、パイロット版の承認を迅速に得るというのが我々のアプローチです。今後数カ月のうちにパイロットプログラムの承認または全インドの承認を得られると楽観的に考えています」とバルガヴァ氏は先月話し、もし政府の承認を得られなかった場合、来年末までに配備する実際のターミナル数は目標よりはるかに少ないか、あるいはゼロになる、と付け加えた。

画像クレジット:Joan Cros / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

Verizonがアマゾンと提携し米国の農村部に衛星インターネットを提供

Amazon(アマゾン)のインターネット衛星が、農村部におけるブロードバンド提供拡大のために投入される。CNBCの報道によると、Verizon(ベライゾン)はAmazonと提携して、米国の農村部における固定無線インターネット接続を改善しようとしている。この提携ではまず、Amazonの「Project Kuiper(プロジェクト・カイパー)」を「バックホール(基地局と基幹通信網をつなぐ回線)」に利用してベライゾンのLTEおよび5Gサービスを拡大することに注力し、高速データがほとんどあるいはまったくない地域でのカバレッジを高める。


その後、両社はスマートファームや交通機関など、世界中の産業に一元管理されたインターネットアクセスを提供したいと考えている。現時点では、すでに開発されているProject Kuiperのアンテナ技術を用いて、農村部のブロードバンドの技術要件を確立中だ。

両社はこの衛星を使ったサービスのスケジュールについて明らかにしていない。AmazonはこのほどProject Kuiperのためのロケット打ち上げを明らかにしたが、衛星の半分が地球低軌道に乗るのは2026年になると予想している。遅くとも2029年7月には完全なコンステレーションが完成する見込みだ。

2社の提携には「敵の敵は友達」という側面がある。AmazonとVerizonは、急速に発展しているSpaceX(スペースX)のStarlinkサービスに対抗しようと競い合っている。Starlink が強固に足場を固めると、Google(グーグル)などの法人クライアントを含む顧客を失うリスクがあるからだ。とはいえ、米国人にとっては、より多くの地域で高速インターネットが利用できるようになるというのはどうでもいいのかもしれない。FCC(連邦通信委員会)が5Gに数十億ドル(数千億円)を投資しているにもかかわらず、地方におけるインターネット提供は完全とは程遠い。今回の提携により、以前のように農村部に回線を引くことなく、インターネット格差を埋めることができるかもしれない。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のJon FingasはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Amazon

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(文:Jon Fingas、翻訳:Nariko Mizoguchi

KDDIがイーロン・マスク氏率いるSpaceXのLEO衛星通信サービスStarlinkをau通信網に採用

KDDIがイーロン・マスク氏率いるSpaceXのLEO衛星通信サービスStarlinkをau通信網に採用

KDDIは、イーロン・マスク氏率いるSpaceXの地球低軌道(LEO)衛星通信サービス「Starlink」(スターリンク)を、au基地局のバックホール回線(基地局と制御局・交換局などのコア網設備を結ぶ伝送路)に利用する契約を締結したと発表しました。

この契約によって、これまでサービス提供が困難とされていた山間部や島嶼地域、災害対策においても、auの高速通信を提供をめざします。2022年度をめどに、全国1200か所から順次導入を開始します。

「Starlink」は、従来の静止衛星に比べて地表からの距離が65分の1と近いため、衛星から低遅延かつ高速な通信を実現するサービスです。すでに地球低軌道衛星を1500基運用しており、βユーザーは10万人を抱えています。

KDDIは、光ファイバーに接続した通常のau基地局に加え、Starlinkをバックホール回線としたau基地局を導入し、山間部や島嶼のエリアを補完することで、日本中どこでもauの高速通信を利用可能とすることを目指します。KDDIがイーロン・マスク氏率いるSpaceXのLEO衛星通信サービスStarlinkをau通信網に採用

この提供に先立ち、KDDIは総務省より実験試験局免許の交付をうけ、Starlinkの衛星通信と地上のインターネット網を接続するゲートウェイ局を山口衛星通信所に構築しました。現在、品質と性能を評価するため、SpaceXと共同で一連の技術検証を行っています。

地球低軌道(LEO)通信をめぐっては、ソフトバンクが低軌道通信衛星OneWebと成層圏にソーラー発電の電気飛行機を用いて浮かべた携帯基地局の組み合わせによって、過疎地域のエリア化を目指しています。また、楽天モバイルは低軌道衛星からスマートフォンに直接電波を飛ばすAST Space Mobileに出資し、宇宙から日本全域100%のエリアカバーの実現を目指しています。

SpaceXの衛星インターネットサービス「Starlink」、端末出荷数が早くも10万台に到達
楽天モバイル、宇宙に携帯基地局 日本全土をエリア化する「スペースモバイル計画」22年開始めざす

(Source:KDDIEngadget日本版より転載)

SpaceXがStarlinkの端末10万台を出荷、今後の打ち上げにはStarshipを利用する計画

Elon Musk(イーロン・マスク)氏のStarlinkプロジェクトは、人工衛星のコンステレーションにより、グローバルなブロードバンド接続を提供する。当プロジェクトがこのほど、10万台の端末を顧客に出荷した。

10万台の端末を出荷した。

2019年の11月に衛星の打ち上げを始め、翌年2020年には一部の顧客に月額99ドル(約10870円)でベータアクセスの提供を開始したが、その1年後に端末10万台は資本集約型のサービスにとって驚くべきペースだ。SpaceXはこれまでに1700基以上の衛星を打ち上げており、出荷された10万台の端末に加えて、50万台以上のサービスの追加注文を受けている。

同社は衛星の打ち上げに自社のFalcon 9ロケットを使っているため、ペースが速いのも意外ではないかもしれない。今や時価総額が最大の宇宙企業である同社にとって、このような垂直的統合こそが中心的な戦略だ。

Starlinkのベータ版顧客の多くは、従来のブロードバンドへのアクセスが限られているか、存在しない遠隔地や田舎に住んでいる。Starlinkは499ドルの初期費用がかかるが、その中にはサービスの利用開始に必要なユーザー端末(スペースXは「Disy McFlatface」と呼ぶ)、Wi-Fiルーター、電源、ケーブル、三脚などのスターターキットが含まれている。

画像クレジット:Starlink

しかしStarlinkの急速な成長は同社の積極的な戦略を反映したものだが、プロジェクトとしてはまだ始まったばかりだ。SpaceXにいわせれば、これは本プロジェクトの始まりに過ぎない。同社は最終的に、約3万個のスターリンク衛星を軌道上に打ち上げ、ユーザー数を数百万人にまで拡大したいと考えている。米国時間8月18日に連邦通信委員会(FCC)に提出した次世代Starlinkシステムの申請書によると、コンステレーションの構成を2つに分けて提案しており、そのうち1つは、同社の次世代重量物打ち上げ用ロケットStarshipを使用する。

完成後のコンステレーションは総衛星数2万9988基となり、SpaceXの提案によると、同社のFalcon 9ロケットを使用する別の構成もある。しかしいうまでもなく、ペイロードの大きさで有利なのはStarshipだ。

「SpaceXは新しい打ち上げ機Starshipの進んだ能力を有効利用する方法を見つけました。同機はより多くの質量を速く、効率的に軌道へ運ぶ強化された能力を持ち、また上段の再利用性も増しているため効率性はさらに良い」と同社の修正申請書にある。

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画像クレジット:SpaceX

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

SpaceXが88機の衛星を軌道に乗せ、2021年初めて1段目の地上着陸に成功

SpaceX(スペースエックス)は、米国時間6月30日外部顧客向けの衛星85基とStarlink(スターリンク)衛星3基を軌道に打ち上げ、同社のライドシェアミッション(相乗りミッション)で2回目の成功を収めた。このTransporter-2(トランスポーター2)ミッションは、1回目のライドシェアミッションよりも宇宙に送り出す物体の数は少なかったものの(Transporter-1では143個の衛星を打ち上げ、新記録を達成した)、全部を合わせた質量はより大きなものになった。

このTransporterの打ち上げは、同社のライドシェアビジネスモデルの一環である。2019年に発表されたこれらのミッションは、ロケットのペイロード容量を複数の顧客に分配することで、それぞれの顧客のコストを低減させる。多くの顧客は、こうした手段を使うことなしには、軌道に乗せるための費用を支払うことが不可能な中小企業だ。それでも今回SpaceXは、ロケットを満載にし、運用をまかなうための収入を手にすることができた。

今回のFalcon 9(ファルコン9)ロケットは、米国東部時間6月30日午後3時31分(日本時間7月1日午前5時31分)頃、フロリダ州のケープ・カナベラルから離陸した。これは2021年における、20回目のFalcon 9の打ち上げで、ロケットの1段目を海上の無人船ではなく陸上に戻すことを狙った2021年最初の打ち上げだった。1段目のブースターは米国東部時間6月30日午後3時34分(日本時間7月1日午前5時34分)頃に分離してケープカナベラルに戻り、発射から約8分後には着地に成功した。今回は同ブースターにとって8回目の飛行となる。

画像クレジット:SpaceX

このミッションには10社近くの顧客が参加しており、その中には14社の顧客に代わって36機の小型衛星を打ち上げるSpaceflight(スペースフライト)のような顧客のペイロードを編成する打上げサービス事業者や、同社のSherpa-LTEという名の電気推進機なども含まれている。また、宇宙情報企業Umbra(アンブラ)の初の打ち上げ衛星や、Loft Orbital(ロフト・オービタル)の「ライドシェア」衛星であるYAM-2とYAM-3も搭載されている(それぞれの衛星には、別々の顧客のための5つの独立したセンサーが搭載されている)。

今回の打ち上げはSpaceXにとって2021年20回目にあたるものだったので(これまでの総ミッション数としては127回目)、2021年の打ち上げ回数は2020年の記録である26回をはるかに上回ると考えても良いだろう。

今回のTransporter-2の打ち上げは、当初米国時間6月29日に予定されていたものが延期された2回目の試行だった。1回目の打ち上げは、プロペラ機がフライトゾーンに侵入してきたために、発射11秒前に中止された。このことを受けて、SpaceX CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は、規制システムが壊れていると発言した。

残念ながら、無闇に巨大な「立入禁止ゾーン」に他の航空機が侵入してしまったため、本日の打ち上げは中止となりました。

大規模な規制改革なしに、人類が宇宙飛行文明を手に入れることはできません。現在の規制システムは壊れています。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXFalcon 9Starlink人工衛星

画像クレジット:SpaceX

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(文: Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)

「Starlink衛星通信端末は製造コストの半値以下で提供」とマスクCEO、黒字化までもうしばらく時間がかかりそう

Starlink(スターリンク)が黒字化するまでには、もうしばらく時間がかかりそうだ。この衛星ネットワークを利用して世界中に高速ブロードバンドを提供するというSpaceX(スペースX)のプロジェクトは、顧客にベータ版キットを約500ドル(約5万5300円)で販売しているが、実際にはそれ以上の製造コストがかかっていると、Elon Musk(イーロン・マスク)CEOは米国時間6月29日のインタビューで語った。

このベータ版キットには、顧客が衛星に接続してブロードバンドアクセスを可能にするユーザー端末(アンテナのようなもの)が含まれている。「率直に言って、現時点ではその端末で損しています」と、マスク氏は語った。「この端末のコストは1000ドル(約11万500円)以上するので、当然ながら私がその費用を補助しています」。SpaceXではそれと同じ機能を持ちながら、より低コストで製造できる次世代端末の開発に取り組んでいると、マスク氏は続けた。

このプロジェクトに対するSpaceXの全体的な投資額は、当初は50億〜100億ドル(約5530億〜1兆1055億円)の間になると見られていたが、長期的には300億ドル(約3兆3164億円)に達する可能性があるとのこと。それは同社が今後も改良を続け、携帯電話通信網の技術に対して競争力を維持していくためだと、マスク氏は語った。

バルセロナで現地時間6月29日に開催されたMobile World Congress(モバイルワールドコングレス)のバーチャル基調講演で、このように語ったマスク氏は、Starlinkの現在の状況について他にも詳細を述べている。このプロジェクトは今後12カ月以内に50万人以上のユーザーを獲得できる見込みで、約12カ国で運用されており、それは「毎月増えている」とのこと。

SpaceXは衛星バージョン1.5の打ち上げも間近に控えているが、これはレーザーによる衛星間リンクを備え、高緯度や極地での継続的な接続を可能にする。来年にはバージョン2の打ち上げが予定されており「性能は格段に向上する」とマスク氏は強調した。

望遠鏡で観測すると光の筋に見えるStarlink衛星(画像クレジット:SpaceX)

このプロジェクトでは、2つの大手通信会社との提携に取り組んでいるというものの、マスク氏はその社名を明かさなかった。

Starlinkは、SpaceXが成し遂げた再利用可能なロケットの飛躍的向上抜きには考えられないプロジェクトだ。「しかし、まだ私たちは、Starship(スターシップ)の開発によって、これを次の段階へと進化させる必要があります」と、マスク氏はいう。この新型ロケットは、迅速に再利用できることを目指している。つまり現在の航空機のように、一度の飛行を終えたら地上でそれほど時間を要せず、すぐに再発射が可能になるということだ。

Starshipは、月面に基地を建設したり火星に都市を建設するというマスク氏のビジョンの鍵となるものだ。SpaceXでは今後数カ月以内に、Starshipによる初の軌道への打ち上げを試みたいと考えていると、マスク氏は語った。SpaceXは、Starshipの打ち上げシステムと地上との間で「高データレートの通信を実証する」ために、Starlink端末を新しい宇宙船に搭載して飛行させる承認申請を、連邦通信委員会(FCC)に提出した。

関連記事:SpaceXがStarship軌道試験でStarlinkインターネットを使った接続品質の実証を行う予定

カテゴリー:宇宙
タグ:イーロン・マスクMWCMWC 2021StarlinkStarshipSpaceX

画像クレジット:Mobile World Congress

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

SpaceXがStarship軌道試験でStarlinkインターネットを使った接続品質の実証を行う予定

SpaceX(スペースエックス)が予定しているStarship(スターシップ)軌道試験飛行は、同社の技術力を示す正真正銘の見本市になるだろう。なにしろ今回SpaceXは、連邦通信委員会(FCC)に対して、Starlik(スターリンク)端末を宇宙船に搭載し、宇宙へ往復する間に地上との「高速通信の実証」を行うための承認を申請したのだ。

SpaceXの計画は、再突入時に大気中の「イオン化したプラズマ」の存在によって通常は通信信号が失われる部分であっても、地球低軌道衛星Starlinkのネットワークが「これまでにない量のテレメトリーを提供し、大気圏再突入時の通信を可能にする」ことを示すことだ(Michael Baylor[マイケル・ベイラー]氏のツイートより)。もしこれが成功すれば、SpaceXの試験飛行中に、これまで以上に優れたライブデータを提供することが可能になり、StarshipやSuper Heavy(スーパーヘビー)ローンチシステムの開発に役立つはずだ。そして、よりよい画質でさらに壮観な光景を、ライブで私たちに見せてくれることだろう。

打ち上げ時のテレメトリーやその他の通信手段にStarlinkを利用することは、もし説明通りに機能するならばSpaceXにとっては間違いなく機能向上となるが、Starlinkの能力をアピールするという意味では、それ以上に役立つものとなる。FCCに提出した資料によると、宇宙船に搭載される端末は、基本的には既存の民生用端末に新しい外装を施したものだ、すなわちこれがうまく機能すれば、より多くの民生用ブロードバンド顧客の注目を集めることができるだろう。

さらにSpaceXは、Starlinkの機能を、旧式でより遠い距離にある静止衛星ネットワークに代わって、飛行機や船、その他の輸送手段に対する接続を可能にするシステムだと饒舌に語っている。ロケット打ち上げ時にもしっかりとした性能を発揮することを示すことで、その分野でのパートナーを増やすことになるだろう。

申請によれば、Starship上のStarlink運用の免許は米国時間8月1日から始まるとされている。これは、SpaceXのGwynne Shotwell (グウィン・ショットウェル)社長が「7月中に打ち上げたい」と発言したものの次の打ち上げを意味しているか、あるいは、その打ち上げそのものがすでに翌月にずれ込んでいる可能性があることを示唆している。

関連記事:SpaceXが開発中の新型宇宙船「Starship」初軌道投入試験の7月実施を目指す

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceX FCC / 米連邦通信委員会StarlinkStarship

画像クレジット:Starship

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(文: Darrell Etherington、翻訳:sako)

テクノロジーと災害対応の未来3「接続性、地球が滅びてもインターネットは不滅」

インターネットは、神経系のように世界中で情報伝達を司っている。ストリーミングやショッピング、動画視聴や「いいね!」といった活動が絶えずオンラインで行われており、インターネットがない日常は考えられない。世界全体に広がるこの情報網は思考や感情の信号を絶え間なく送出しており、私たちの思考活動に不可欠なものとなっている。

では機械が停止したらどうなるだろうか。

この疑問は、1世紀以上前にE.M. Forster(E・M・フォースター)が短編小説で追求したテーマである。奇しくも「The Machine Stops(機械は止まる)」と題されたその小説は、すべて機械に繋がれた社会においてある日突然、機械が停止したときのことを描いている。

こうした停止の恐怖はもはやSFの中だけの話ではない。通信の途絶は単に人気のTikTok動画を見逃したというだけでは済まされない問題だ。接続性が保たれなければ、病院も警察も政府も民間企業も、文明を支える人間の組織は今やすべて機能しなくなっている。

災害対応においても世界は劇的に変化している。数十年前は災害時の対応といえば、人命救助と被害緩和がほぼすべてだった。被害を抑えながら、ただ救える人を救えばよかったとも言える。しかし現在は人命救助と被害緩和以外に、インターネットアクセスの確保が非常に重要視されるようになっているが、これにはもっともな理由がある。それは市民だけでなく、現場のファーストレスポンダー(初動対応要員)も、身の安全を確保したり、ミッション目的を随時把握したり、地上観測データをリアルタイムで取得して危険な地域や救援が必要な地域を割り出すため、インターネット接続を必要とすることが増えているからだ。

パート1で指摘したように、災害ビジネスの営業は骨が折れるものかもしれない。またパート2で見たように、この分野では従来細々と行われていたデータ活用がようやく本格化してきたばかりだ。しかし、そもそも接続が確保されない限り、どちらも現実的には意味をなさない。そこで「テクノロジーと災害対策の未来」シリーズ第3弾となる今回は、帯域幅と接続性の変遷ならびに災害対応との関係を分析し、気候変動対策と並行してネットワークのレジリエンス(災害復旧力)を向上させようとする通信事業者の取り組みや、接続の確保を活動内容に組み入れようとするファーストレスポンダーの試みを検証するとともに、5Gや衛星インターネット接続サービスなどの新たな技術がこうした重要な活動に与える影響を探ることとする。

地球温暖化とワイヤレスレジリエンス

気候変動は世界中で気象パターンの極端な変化を招いている。事業を行うために安定した環境を必要とする業界では、二次的・三次的影響も出ている。しかし、こうした状況の変化に関し、通信事業者ほどダイナミックな対応が求められる業界はほぼないだろう。通信事業者は、これまでも暴風雨によって何度も有線・無線インフラを破壊されている。こうしたネットワークのレジリエンスは顧客のために必要とされるだけではない。災害発生後の初期対応において被害を緩和し、ネットワークの復旧に努める者にとっても絶対的に必要なものである。

当然ながら、電力アクセスは通信事業者にとって最も頭を悩ませる問題だ。電気がなければ電波を届けることもできない。米国三大通信事業者のVerizon(ベライゾン、TechCrunchの親会社のVerizon Mediaを傘下に擁していたが、近く売却することを発表している)、AT&T、T-Mobile(Tモバイル)も近年、ワイヤレスニーズに応えるとともに、増え続ける気象災害の被害に対処するため、レジリエンス向上の取り組みを大幅に増強している。

Tモバイルにおいて国内テクノロジーサービス事業戦略を担当するJay Naillon(ジェイ・ナイロン)シニアディレクターによれば、同社は近年、レジリエンスをネットワーク構築の中心に据え、電力会社からの給電が停止した場合に備えて基地局に発電機を設置している。「ハリケーンの多い地域や電力供給が不安定な地域に設備投資を集中させている」という。

通信3社すべてに共通することだが、Tモバイルも災害の発生に備えて機器を事前に配備している。大西洋上でハリケーンが発生すると、停電の可能性に備えて戦略的に可搬型発電機や移動式基地局を運び入れている。「その年のストーム予報を見て、さまざまな予防計画を立てている」とナイロン氏は説明する。さらに、非常事態管理者と協力して「さまざまな訓練を一緒に行い、効果的に共同対応や連携」を図ることで、災害が発生した場合に被害を受ける可能性が最も高いネットワークを特定しているという。また、気象影響を正確に予測するため、2020年からStormGeo(ストームジオ)とも提携している。

災害予測AIはAT&Tでも重要となっている。公共部門と連携したAT&TのFirstNetファーストレスポンダーネットワークを指揮するJason Porter(ジェイソン・ポーター)氏によれば、AT&Tはアルゴンヌ国立研究所と提携し、今後30年にわたって基地局が「洪水、ハリケーン、干ばつ、森林火災」に対処するための方策と基地局の配置を評価する気候変動分析ツールを開発したという。「開発したアルゴリズムの予測に基づいて社内の開発計画を見直した」とポーター氏は述べ、少なくとも一定の気象条件に耐えられるよう「架台」に設置された1.2~2.4メートル高の脆弱な基地局を分析して補強していると語った。こうした取り組みによって「ある程度被害を緩和できるようになった」という。

またAT&Tは、気候変動によって不確実性が増す中で信頼性を高めるという、より複雑な問題にも対処している。近年の「設備展開の多くが気象関連現象に起因していることが判明するのにそれほど時間はかからなかった」とポーター氏は述べ、AT&Tが「この数年、発電機の設置範囲を拡大することに注力」していると説明した。また可搬式のインフラ構築も重点的に行っているという。「データセンターは実質すべて車両に搭載し、中央司令室を構築できるようにしている」とポーター氏は述べ、AT&T全国災害復旧チームが2020年、数千回出動したと付け加えた。

さらに、FirstNetサービスに関し、被災地の帯域幅を早急に確保する観点から、AT&Tは2種類の技術開発を進めている。1つは空から無線サービスを提供するドローンだ。2020年、記録的な風速を観測したハリケーン・ローラがルイジアナ州を通過した後、AT&Tの「基地局はリサイクルされたアルミ缶のように捻じ曲がってしまったため、持続可能なソリューションを展開することになった」とポーター氏は語る。そして導入されたのがFirstNet Oneと呼ばれる飛行船タイプの基地局だ。この「飛行船は車両タイプの基地局の2倍の範囲をカバーする。1時間弱の燃料補給で空に上がり、文字通り数週間空中に待機するため、長期的かつ持続可能なサービスエリアを提供できる」という。

ファーストレスポンダーのため空からインターネット通信サービスを提供するAT&TのFirstNet One(画像クレジット:AT&T/FirstNet)

AT&Tが開発を進めるもう1つの技術は、FirstNet MegaRangeと呼ばれるハイパワーワイヤレス機器である。2021年に入って発表されたこの機器は、沖合に停泊する船など、数キロメートル離れた場所からシグナルを発信でき、非常に被害の大きい被災地のファーストレスポンダーにも安定した接続を提供できる。

インターネットが日常生活に浸透していくにつれ、ネットワークレジリエンスの基準も非常に厳しくなっている。ちょっとした途絶であっても、ファーストレスポンダーだけでなく、オンライン授業を受ける子どもや遠隔手術を行う医師にとっては混乱の元となる。設置型・可搬型発電機から移動式基地局や空中基地局の即応配備に至るまで、通信事業者はネットワークの継続性を確保するために多額の資金を投資している。

さらに、こうした取り組みにかかる費用は、温暖化の進む世界に立ち向かう通信事業者が最終的に負担している。三大通信事業者の他、災害対応分野のサービスプロバイダーにインタビューしたところ、気候変動が進む世界において、ユーティリティ事業は自己完結型を目指さざるを得ない状況になっているという共通認識が見られた。例えば、先頃のテキサス大停電に示唆されるように、送配電網自体の信頼性が確保できなくなっていることから、基地局に独自の発電機を設置しなければならなくなっている。またインターネットアクセスの停止が必ずしも防げない以上、重要なソフトはオフラインでも機能するようにしておかなければならない。日頃動いている機械が停まることもあるのだ。

最前線のトレンドはデータライン

消費者である私たちはインターネットどっぷりの生活を送っているかもしれないが、災害対応要員はインターネットに接続されたサービスへの完全移行に対し、私たちよりもずっと慎重な姿勢を取っている。確かに、トルネードで基地局が倒れてしまったら、印刷版の地図を持っていればよかったと思うだろう。現場では、紙やペン、コンパスなど、サバイバル映画に出てくる昔ながらの道具が今も数十年前と変わらず重宝されている。

それでも、ソフトウェアやインターネットによって緊急対応に顕著な改善が見られる中、現場の通信の仕組みやテクノロジーの利用度合いの見直しが進んでいる。最前線からのデータは非常に有益だ。最前線からデータを伝達できれば、活動計画能力が向上し、安全かつ効率的な対応が可能となる。

AT&Tもベライゾンも、ファーストレスポンダー特有のニーズに直接対処するサービスに多額の投資を行っている。特にAT&Tに関してはFirstNetネットワークが注目に値する。これは商務省のファーストレスポンダーネットワーク局との官民連携を通して独自に運営されるもので、災害対応要員限定のネットワークを構築する代わりに政府から特別帯域免許(Band 14)を獲得している。これは、悲惨な同時多発テロの日、ファーストレスポンダーが互いに連絡を取れていなかったことが判明し、9.11委員会(同時多発テロに関する国家調査委員会)の重要提言としてまとめられた内容を踏まえた措置だ。AT&Tのポーター氏によれば、777万平方キロメートルをカバーするネットワークが「9割方完成」しているという。

なぜファーストレスポンダーばかり注目されるのだろうか。通信事業者の投資が集中する理由は、ファーストレスポンダーがいろいろな意味でテクノロジーの最前線にいるためだ。ファーストレスポンダーはエッジコンピューティング、AIや機械学習を活用した迅速な意思決定、5Gによる帯域幅やレイテンシー(遅延)の改善(後述)、高い信頼性を必要としており、利益性のかなり高い顧客なのだ。言い換えれば、ファーストレスポンダーが現在必要としていることは将来、一般の消費者も必要とすることなのだ。

ベライゾンで公共安全戦略・危機対応部長を務めるCory Davis(コリー・デイビス)氏は「ファーストレスポンダーによる災害出動・人命救助においてテクノロジーを利用する割合が高まっている」と説明する。同氏とともに働く公共部門向け製品管理責任者のNick Nilan(ニック・二ラン)氏も「社名がベライゾンに変わった当時、実際に重要だったのは音声通話だったが、この5年間でデータ通信の重要性が大きく変化した」と述べ、状況把握や地図作成など、現場で標準化しつつあるツールを例に挙げた。ファーストレスポンダーの活動はつまるところ「ネットワークに集約される。必要な場所でインターネットが使えるか、万一の時にネットワークにアクセスできるかが重要となっている」という。

通信事業者にとって頭の痛い問題は、災害発生時というネットワーク資源が最も枯渇する瞬間にすべての人がネットワークにアクセスしようとすることだ。ファーストレスポンダーが現場チームあるいは司令センターと連絡しようとしているとき、被災者も友人に無事を知らせようとしており(中には単に避難するクルマの中でテレビ番組の最新エピソードを見ているだけの者もいるかもしれない)、ネットワークが圧迫されることになる。

こうした接続の集中を考えれば、ファーストレスポンダーに専用帯域を割り当てるFirstNetのような完全分離型ネットワークの必要性も頷ける。「リモート授業やリモートワーク、日常的な回線の混雑」に対応する中で、通信事業者をはじめとするサービスプロバイダーは顧客の需要に圧倒されてきたとポーター氏はいう。そして「幸い、当社はFirstNetを通して、20MHzの帯域をファーストレスポンダーに確保している」と述べ、そのおかげで優先度の高い通信を確保しやすくなっていると指摘する。

FirstNetは専用帯域に重点を置いているが、これはファーストレスポンダーに常時かつ即時無線接続を確保する大きな戦略の1つに過ぎない。AT&Tとベライゾンは近年、優先順位付け機能と優先接続機能をネットワーク運営の中心に据えている。優先順位付け機能は公共安全部門の利用者に優先的にネットワークアクセスを提供する機能である。一方、優先接続機能には優先度の低い利用者を積極的にネットワークから排除することでファーストレスポンダーが即時アクセスできるようにする機能が含まれる。

ベライゾンのニラン氏は「ネットワークはすべての人のためのものだが、特定の状況においてネットワークアクセスが絶対に必要な人は誰かと考えるようになると、ファーストレスポンダーを優先することになる」と語る。ベライゾンは優先順位付け機能と優先接続機能に加え、現在はネットワークセグメント化機能も導入している。これは「一般利用者のトラフィックと分離する」ことで災害時に帯域が圧迫されてもファーストレスポンダーの通信が阻害されないようにするものだという。ニラン氏は、これら3つのアプローチが2018年以降すべて実用化されている上、2021年3月にはVerizon Frontline(ベライゾン・フロントライン)という新ブランドにおいてファーストレスポンダー専用の帯域とソフトウェアを組み合わせたパッケージが発売されていると話す。

帯域幅の信頼性が高まったことを受け、10年前には思いもよらなかった方法でインターネットを利用するファーストレスポンダーが増えている。タブレット、センサー、接続デバイスやツールなど、機材もマニュアルからデジタルへと移行している。

インフラも構築され、さまざまな可能性が広がっている。今回のインタビューで挙げられた例だけでも、対応チームの動きをGPSや5Gで分散制御するもの、最新のリスク分析によって災害の進展を予測し、リアルタイムで地図を更新するもの、随時変化する避難経路を探索するもの、復旧作業の開始前からAIを活用して被害評価を行うものなど、さまざまな用途が生まれている。実際、アイディアの熟成に関して言えば、これまで大げさな宣伝文句や技術的見込みでしかなかった可能性の多くが今後何年かのうちに実現することになるだろう。

5Gについて

5Gについては何年も前から話題になっている。ときには6Gの話が出てレポーターたちにショックを与えることさえある。では、災害対応の観点から見た場合、5Gはどんな意味を持つだろうか。何年もの憶測を経て、今ようやくその答えが見えてきている。

Tモバイルのナイロン氏は、5Gの最大の利点は標準規格で一部利用されている低周波数帯を利用することで「カバレッジエリアが拡大できること」だと力説する。とはいえ「緊急対応の観点からは、実用化のレベルはまだそこまで達していない」という。

一方、AT&Tのポーター氏は「5Gの特長に関し、私たちはスピードよりもレイテンシーに注目している」と語った。消費者向けのマーケティングでは帯域幅の大きさを喧伝することが多いが、ファーストレスポンダーの間ではレイテンシーやエッジコンピューティングといった特徴が歓迎される傾向にある。例えば、基幹ワイヤレスネットワークへのバックホールがなくとも、前線のデバイス同士で動画をリレーできるようになる。また、画像データのオンボード処理は、1秒を争う環境において迅速な意思決定を可能とする。

こうした柔軟性によって、災害対応分野における5Gの実用用途が大幅に広がっている。「AT&Tの5G展開の使用例は人々の度胆を抜くだろう。すでに(国防省と協力して)パイロットプログラムの一部をローンチしている」とポーター氏は述べ、一例として「爆弾解体や検査、復旧を行うロボット犬」を挙げた。

ベライゾンは、革新的応用を戦略的目標に掲げるとともに、5Gの登場という岐路において生まれる新世代のスタートアップを指導する5G First Responders Lab(5Gファーストレスポンダーラボ)をローンチした。ベライゾンのニラン氏によれば、育成プログラムには20社以上が参加し、4つの集団に分かれてVR(仮想現実)の教育環境や消防隊員のために「壁の透視」を可能とするAR(拡張現実)の適用など、さまざまな課題に取り組んでいるという。同社のデイビス氏も「AIはどんどん進化し続けている」と話す。

5Gファーストレスポンダーラボの第1集団に参加したBlueforce(ブルーフォース)は、最新のデータに基づき、できるかぎり適切な判断を下せるようファーストレスポンダーをサポートするため、5Gを利用してセンサーとデバイスを接続している。創業者であるMichael Helfrich(マイケル・ヘルフリッチ)CEOは「この新しいネットワークがあれば、指揮者は車を離れて現場に行っても、情報の信頼性を確保できる」と話す。従来、こうした信頼できる情報は司令センターでなければ受け取ることができなかった。ブルーフォースでは、従来のユーザーインターフェース以外にも、災害対応者に情報を提示する新たな方法を模索しているとヘルフリッチ氏は強調する。「もはやスクリーンを見る必要はない。音声、振動、ヘッドアップディスプレイといった認知手法を検討している」という。

5Gは、災害対応を改善するための新たな手段を数多く提供してくれるだろう。そうはいっても、現在の4Gネットワークが消えてなくなるわけではない。デイビス氏によれば、現場のセンサーの大半は5Gのレイテンシーや帯域幅を必要とするわけではないという。同氏は、IoTデバイス向けのLTE-M規格を活用するハードやソフトは将来にわたってこの分野で重要な要素になると指摘し「LTEの利用はこのさき何年も続くだろう」と述べた。

イーロン・マスクよ、星につないでくれ

緊急対応データプラットフォームのRapidSOS(ラピッドSOS)社のMichael Martin(マイケル・マーティン)氏は、災害対応市場において「根本的な問題を解決する新たなうねりが起きていると感じる」といい、これを「イーロン・マスク効果」と呼んでいる。接続性に関しては、SpaceX(スペースX、正式名称はスペース・エクスプロレーション・テクノロジーズ)のブロードバンドコンステレーションプロジェクト「Starlink(スターリンク)」が稼働し始めていることからも、その効果は確かに存在することがわかる。

衛星通信はこれまでレイテンシーと帯域幅に大きな制約があり、災害対応で使用することは困難だった。また、災害の種類によっては、地上の状況から衛星通信接続が極めて困難だと判断せざるを得ないこともあった。しかし、こうした問題はスターリンクによって解決される可能性が高い。スターリンクの導入により、接続が容易になり、帯域幅とレイテンシーが改善され、全世界でサービスが利用できるようになるとされている。いずれも世界のファーストレスポンダーが切望していることだ。スターリンクのネットワークはいまだ鋭意構築中のため、災害対応市場にもたらす影響を現時点で正確に予測するのは難しい。しかし、スターリンクが期待通りに成功すれば、今世紀の災害対応の方法を根本的に変える可能性がある。今後数年の動きに注目していきたいと思う。

もっとも、スターリンクを抜きにしても、災害対応は今後10年で革命的に変化するだろう。接続性の高度化とレジリエンス強化が進み、旧式のツールに頼り切っていたファーストレスポンダーも今後はますます発展するデジタルコンピューティングを取り入れていくだろう。もはや機械が止まることはないのだ。

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カテゴリー:EnviroTech
タグ:気候テック自然災害気候変動アメリカ地球温暖化ネットワーク電力5Gイーロン・マスクStarlink衛星コンステレーション

画像クレジット:Justin Sullivan / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)