われわれを分断しているのはフェイクニュースだろうか?

すべてインターネットのせいだそうだ。イギリスのEU離脱派対残留派、アメリカの共和党対民主党などの対立する層は互いに別種の現実に住んでおり、相手陣営に向かってあらゆる機会をとらえて「フェイクニュース!」と叫んでいる。メディアも政治的立場によって分裂し、FacebookとGoogleが圧倒的な地位を占めるにつれてユーザーは自分の好むニュースや検索結果しか目にしないというフィルターバブル現象も生じている。現実に対するコンセサスが失われてしまった等々…。

しかし、今週私は映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』を見て、そもそもわれわれは現実のあり方に対するコンセンサスなど持っていたことはなかったのだと感じた。われわれがコンセンサスと思っていたのは、実は押し付けられたものだった。マスメディアや政権は常にわれわれの前にあり、大衆に届けられるべきニュースはどれとどれであるかについて暗黙の合意があった(ノーム・チョムスキーの『マニュファクチャリング・コンセント マスメディアの政治経済学』も参考になる)。現在の倫理的な危機は政府がメディアでウソをついていたことに発しているが、実はそれははるか以前からのことだった。

大昔の歴史の話ではない。イラクの政体はベトナムとそう異なるものではなかったが、ホワイトハウスは(それに英国政府も)真っ赤なウソをつき、メディアもそれを承認して拡散した。イラクを巡る戦争は何十万もの命を犠牲にし、何兆ドルもの金が投じられた。ドナルド・トランプはなるほど嫌う人間がいちばん多い大統領かもしれないが、トランプ政権は(今のところ)リチャード・ニクソンやジョージ・W.ブッシュの政権のような戦争を始めていない。

ただし、違いもある。伝統的なジャーナリズムでは、自分たちの仕事はアメリカ市民に対して判断の材料となる証拠を提供することだというのが密かな信条だった。市民はこれに基いてそれぞれの見解を作り、投票する。つまり人々のマインドセットはエンジニア的である、新たな証拠が得られた場合は見解を修正するはずだと考えられていた。たとえそれが現在の見解に反するものであっても、新たな証拠を検討し、必要であれば見解を修正するという姿勢こそ科学、工学が成功した基礎だ。おそらく民主主義の基礎でもあるだろう。

この態度はフェイクニュースに対しても有効だ。証拠を捏造するというのは今に始まったことではない。アメリカ政府はベトナム戦争当時、都合の悪い証拠を発表しないことによってフェイクニュースを作ってきた。政治的におけるセンセーショナリズム、いわゆる政治的イエロージャーナリズムの歴史は控えめに言っても19世紀にさかのぼる。しかし人々はニュースにおける偽りや矛盾を見つけようとする、すくなくともはっきりと指摘されたときはそれを喜んで受け入れるということが前提されていた。フェイクニュースはたしかに問題ではあるが、正しい情報を得ようとする性向が広く存在することによって十分に修正され得るものと考えられた。

本当の問題はフェイクニュースが存在することではない。人々が正しいニュースを探す努力を放棄したとするなら、それこそが問題だ。エンジニアリング的マインドセット、手に入れた証拠を検討し、信頼できるものであるなら現在の見解に反するものであっても新しい証拠を受け入れるという姿勢が現在ほど希薄になった時代はない(私はこうした姿勢が常に大勢だったと言っているわけではない。民主主義がなんとか機能する程度にはこうした姿勢が社会に存在したと主張しているに過ぎない)。

しかし現状は違う。エンジニアリング的マインドセットは影を潜め、弁護士のマインドセットが優勢になってきた。このマインドセットはまず最初に対立する陣営のいずれか選ぶ。そして相手側の証拠を無視し、信用を失わせ、却下させるためにありとあらゆる努力を傾ける。逆に自陣に有利なるようならどんなガラクタであろうとモーゼの十戒を刻んだ石版であるかのように麗々しく提示する。もちろん私は現実の法律家の職務にケチをつけたいわけではない。私の友人には弁護士が大勢いるし、第一は私は弁護士と結婚している。弁護士のアプローチは激しく対立する主張から真実を発見するための優れた方法だ。

しかしこれには重要な前提がある。弁護士のマインドセットが有効なのは、十分な知識があり、慎重かつ公平な判事によって双方の主張が検討される場合に限られる。しかし民主主義一般についていえばそうした法廷は存在しない。あるいは、民主主義が機能するならそれが法廷だといえるだろう。だから民主主義が機能するためにはエンジニアリング的マインドセットが必須だ。アメリカにせよイギリスにせよ他の民主主義国にせよ、こうしたマインドセットセットが一定の水準以下に衰えるなら、それは多大なコストを伴う損失だ。

だからこそ、現代の政治的、社会的危機の原因としてテクノロジーを責めるというのは皮相だ。テクノロジーに多くの欠陥、弱点があるのはもちろんだが、「自分の見解は間違っているかもしれない。そうであるなら、それを示す証拠を検討してみたい」というエンジニアリング的マインドセットこそ(少なくとも理論の上では)民主主義を機能させる最後の拠り所として賞賛されるべき美点のはずだ。

こうなったのは冷戦終結後、共通の敵と呼べる存在を失ったことが原因かもしれない。強力な帝国も次第に衰えるのは歴史の趨勢かもしれない。世界の複雑さ、理解の難しさが増すことに対する自然な反応かもしれない。富の大部分を独占する1%の富裕層と金融ビジネスが寄生的支配体制から目をそらすために対立を仕組んでいるのかもしれない。しかし原因がどうであれ、フェイクニュースは問題そのものではない。私の見るところ、それは結果の一つであって、この根深い危機の原因ではない。

〔日本版〕カット写真は映画からメリル・ストリープ(ワシントン・ポスト社主ケイ・グレアム)とトム・ハンクス(ベン・ブラッドレー記者)。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebook、米国選挙用広告の購入希望者に「はがき」を送って身元確認

Facebookの国際ポリシー責任者は、米国選挙に関係する広告購入者の身元を確認するためにはがきを郵送することを決めた。先週末行われたNational Association of Secretaries of State主催のカンファレンスでこの計画を説明したKatie Harbathは、11月の中間選挙前にするとReutersに伝えた。

はがきは連邦議員に立候補する旨に言及する広告の購入希望者に送られ、議論に基づく政府広告は対象外であるとHarbathは言った。はがきには広告購入者が米国内にいることを確認するための暗証コードが書かれている。同プログラムはGoogle My BusinessおよびNextdoorで、ビジネスオーナーやユーザーが近隣のクローズドグループに参加したいときに用いられている方法と似ている。

HarbathはReutersに、はがきを送ることで「すべて解決できるわけではない」が、身元を偽って広告を出すことを防ぐ方法として同社が思いついたもっとも効果的な方法だと語った。昨年10月、Facebookの広告担当副社長、Rob Goldmanがブログ記事を書き、広告に関する透明性を高めるために、連邦選挙広告の検索可能なアーカイブの作成、および政治広告購入者の身元を明らかにすることを目標に掲げた

昨年秋、Facebook、Twitter、Google各社の幹部は、2016年米大統領選挙の結果を左右する誤情報を拡散するためにロシアがどのような方法を用いたかを、上院で証言するよう招集された。各社は偽広告を防ぐために十分努力していないと非難されている。この件は、先週ロバート・ミュラー特別検察官が、偽ソーシャルメディア・アカウントを用いて大統領選挙に干渉したとしてロシア市民13名およびボットファームを含むロシア企業3社を訴追したことで問題が大きくなった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

2ステップでマーケ用チャットボット作成、「chatbook」がSalesforceと資本業務提携

チャットボットによるマーケティングオートメーションサービス「chatbook」を提供するチャットブックは2月19日、Salesforce VenturesイーストベンチャーズYJキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は非公開だが、数千万円規模と見られる。

chatbookは、マーケティング用のチャットボットをプログラミングの知識なしでも簡単に作成できるサービスだ。必要なのは2ステップだけ。あらかじめ用意されたテンプレートを選べばボットが完成する。Facebookと連携したデータによってマーケティングに活用でき、その後のフォローアップにも対応。ユーザーへの情報提供やアンケート機能も備える。

今回の調達ラウンドで米Salesforce.com(以下、Salesforce)との資本的な関係を築いたことは、チャットブックにとって大きな意味をもつ。同社はこの資本業務提携により、2018年上旬頃からSalesforceのSFAサービスである「Salesforce Sales Cloud」とchatbookの連携を始めるとしている。すでに幅広い顧客基盤をもつSalesforceと手を組むことにより、chatbookの普及促進を目指す。

chatbookは本日より正式にサービスを開始。個人利用は無料だ。法人利用では10日間のトライアル期間を設け、その後は月額6万円〜の料金で利用できる。これまでは招待制で提供されてきたchatbookだが、現在のユーザー企業数は数十社だという。バイトルを運営するディップや、石川県加賀市の観光事業などの自治体などにも利用されている。

同社は今回調達した資金を利用して営業体制を強化するほか、今後は「一つのチャットボットでFacebookメッセンジャーボットとウェブボットを作れるサービスを展開する予定で、そのための人材採用やデータ解析を手がける開発人員も強化する」(チャットブック代表取締役の小島舞子氏)としている。

チャットブックは2016年9月の創業で、TechCrunch Tokyo 2016のスタートアップバトルにも出場している(創業当時の社名はヘクトだった)。また、同社は既存投資家のYJキャピタルとEast Venturesが運営するアクセラレータプログラム「コードリパブリック」の卒業生でもある。今回のラウンドは、同プログラムへの参加時に調達した約700万円に続く、2度目の外部調達となる。

自宅の家電をスマート化する「Nature Remo」、開発元が1億円を調達、今後はエアコンの電力使用最適化も

家電をインターネットに接続することで“スマート化”できるIoTプロダクト「Nature Remo」。同製品の開発元であるNatureは2月19日、大和企業投資を引受先とする第三者割当増資により1億円を調達したことを明らかにした。

同社は代表取締役の塩出晴海氏がハーバード大学のMBA課程在籍中に立ち上げた、ハーバード大発ベンチャーだ。2016年5月にクラウドファンディングサイトKickstarterでNature Remoを発表。その後MakuakeやIndiegogoでもプロジェクトを開設し、総額2000万円以上を集めた。

2017年8月にも一度紹介したが、Nature Remoの特徴は普段使用している家電製品をスマートにできること。WiFiや赤外線の送受信機能に加えて、人感、温度、湿度、照度などのセンサーを備えている。

スマートフォンアプリとのペアリングおよびWiFi設定、リモコンの学習(Nature Remoに向けて赤外線リモコンを発信し、信号を認識させる)といった設定をすれば、アプリ経由でリモコンの操作が可能になる。帰宅前にアプリで室内の温度を確認してエアコンの電源を入れたり、出先で消し忘れたテレビを消すなんてことが可能。スマートフォンのGPSを使って、特定エリアに入る・出るタイミングで家電の電源を操作するといったこともできる。

また、強力なのが「IFTTT」を経由したスマートスピーカーとの連携だ。IFTTTはさまざまなウェブサービス同士を繋げることができるサービス。このIFTTTを利用することで、例えばスマートスピーカーの「Google Home」や「Amazon Echo」など(厳密にはこれらのスピーカーで利用できるAIアシスタント)を経由してNature Remoの機能を利用することができる。

設定には一手間かかるが、例えば「OK Google、暖房を付けて」とGoogle Homeに話しかければ、普通の家電(赤外線リモコンで操作するという意味で)だってスピーカーを通じて操作することが可能になる。2018年に入ってからAPIも公開。Nature Remoを使った様々なサービスの構築もできるようになった。

クラウドファンディングサイトだけでなく、2017年10月からは正式発売を開始。ただスマートスピーカーの日本上陸と重なったこともあり、塩出氏によると「直近まではバックオーダーがたまり、品薄状態になっていた」という。

現在はそれにあわせて家電量販店(ビックカメラ、コジマ)やAmazonでの販売も開始。今回調達した資金をもとに、開発・製造体制を強化し、プロダクトの改良を進める。

今後は「インターネットとセンサー技術を活用しエネルギーを自給自足できる未来をつくる」というビジョンのもと、まずはエアコンのIoT化により電力使用の最適化を目指す方針。昨年に続き関西電力とのバーチャルパワープラントの実証事業に参画し、電力関連事業でのアライアンスの実現に向けて取り組むという。

Uber、Googleらの社員グループが “Black Excellence” 連合を結成

様々なテクノロジー企業の黒人社員グループが集まると、ブラックマジックが起きる。正確には、黒人の優秀さを讃える「ブラックエクセレンス」活動だ。

Coalition of Black Excellence Week(CBE)[ブラックエクセレンス連合週間]は、Uberの訴訟担当弁護士、Angela Johnson が、Facebook、Google、Ebay、Lyft、Microsoftを始めとするIT企業40社以上の黒人社員グループと協力して推進している。月曜日(米国時間2/19)にサンフランシスコで活動を開始する。

CBE週間のアイデアはJohnsonがワシントンDCで生活する中での体験に基づいており、連邦黒人幹部会が主催するイベントにも参加できる、と今週Uber本社で彼女が話した。

「ベイエリアに移ったとき、IT分野にも同じような体験の場があればいいと強く思った」とJohnsonは言った。「そのために様々な企業の黒人社員グループや多様性・一体性委員会、さらに黒人コミュニティーが熱心に取り組む問題に興味のある人々が集まれば、プラスの変化や影響を数多く与えられると思った」

CBE週間は、黒人の優秀さを広く訴え、有色人種コミュニティーづくりを推進し、各種の非営利団体を支援するために14種類のイベントが開催される。Zendeskの有色人種社員グループが主催する、Wise and Woke: Wellness for the Black Community、Twilioによる映画『ドリーム』(Hidden Figures)の鑑賞会、 Googleで行われるSuperPhoneのファウンダー、Ryan Leslieとの討論会、オークランドで行われるBlack Joy Paradeなどだ。

有料イベントについて、各企業は収益の一部を非営利団体のBUILD、Oakland Digital、Level Playing Field Instituite、Yes We Codeなどに寄付することを約束している。

Uberの黒人社員コミュニティーであるUber Hueが主催するCodeBlack Tech Galaというイベントは、黒人コミュニティーで活躍するリーダーであるBlavityの共同ファウンダー・CEO Morgan DeBaunや、500 Startupsのパートナー、Monique Woodardらの業績を讃えている。イベント週間が終了したら来年に向けて突き進む予定だとJohnsonは言った。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

テレビ視聴率ならぬ「視聴質」を計測するTVISIONが1.5億円を融資により資金調達

インターネット広告の伸びに押され、最近伸び悩んでいるといわれるテレビ広告市場だが、それでも約2兆円を推移し続けている。ただ、その効果を測定する方法としてこれまで使われてきた「視聴率」には、課題もあるとの認識が広がってきた。これを踏まえて、ビデオリサーチがリアルタイムでの視聴に加え、タイムシフト視聴率の計測を2016年から始め(厳密には2012年から試験的に実施していたものを拡大)、また世帯ではなく個人視聴率へ発表する数値を切り替えるなどの動きも出ている。

そうした変化の中で、TVISION INSIGHTS(以下TVISION)は、テレビの視聴率ではなく「視聴質」を計測する企業として2015年3月に創業したスタートアップだ。TVISIONは2月19日、日本政策金融公庫、みずほ銀行、りそな銀行から、総額1.5億円の融資による資金調達を2017年末までに実施したことを明らかにした。

TVISIONが提供する視聴質データは、人体認識アルゴリズムを利用して、テレビに取り付けたセンサーから、視聴者の顔や人体のデータをリアルタイムでトラッキングし、テレビの「視聴態勢」を数値化して提供する、というもの。これまでのテレビのオン・オフに加えて、「テレビの前に誰がいるか(滞在度)」「テレビに誰の顔が向いているか(注視度)」を指標として出すことができる。

TVISIONは2018年2月現在、関東エリアの800世帯、地上波6局7チャンネルの全番組を毎秒レベルで計測(2018年2月現在)。またボストン・ニューヨークにも拠点を持ち、グローバルでの展開も行っている。

TVISION代表取締役の郡谷康士氏は「テレビ業界でも『このままではいけない』との認識から、変化の動きがあり、TVISIONのプロダクトに対してポテンシャルを評価してもらっている」と話す。「創業から3年で、国内のテレビ広告主トップ20社のうちの14社、広告代理店の大手3社と、テレビ局キー6局のうちの5局で採用され、市場でも評価されていると考える」(郡谷氏)

また海外での展開についても「兄弟会社を日米同時に立ち上げ、アメリカでもトップネットワークに採用され、社数は言えないが多くの顧客に利用していただいている。テレビ視聴の測定に関わる変化にうまくはまった形だ」と郡谷氏は述べている。

ただ、軸足は今のところ日本に置いていると郡谷氏は言う。その理由を「関東は都市圏として見れば世界最大級の1.2兆円のテレビ広告市場を持っている。これは英国1カ国分の6000億円よりも大きい。また米国は、全体では大きな市場を抱えるが、地域によるばらつきが大きい。より大きなデータで、早いPDCAを回していくことができる東京圏は、マザーマーケットと考える」と説明している。

今回の資金調達の目的について郡谷氏は「データサイエンティスト、アナリスト、開発エンジニアを中心に人員拡大を図りたい。また、顔認識や音声認識のシステムアップデートを現在も進めているが、次世代システムへのアップデートを完了し、実際のパネル世帯へのシステムと機材の適用を行っていく」と話している。

さらに郡谷氏は「メンバー増強により、より優れたプロダクトを提供し、データ分析の深掘りによる番組作りの最適化に寄り添っていきたい。業界でのプレゼンスをより大きくし、業界全体の最適化に役立てていきたい」と今後の展望について語った。

【2月19日 14:43 訂正】関東地方のテレビ広告市場規模の数値に誤りがあったため、訂正しました。

TVISION代表取締役の郡谷康士氏

“声のブログ”として注目集める「Voicy」が16人の投資家から2800万円を調達

僕の周りにいるのは、比較的新しいアプリやWebサービスを試すのが好きな人が多いからなのかもしれない。周囲でボイスメディア「Voicy(ボイシー)」を使い始めたという話を聞く機会が増えた。実は僕も1年ほど前から始めて、今では移動中を中心にほぼ毎日何かしらのコンテンツを聞いている。

最近はインフルエンサーや著名な起業家も配信を始めて、一気にユーザー層が広がっているように思えるVoicy。同サービスを提供するVoicyは2月19日、16人の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、2800万円を調達したことを明らかにした。

今回同社に出資したのはヘイ代表取締役社長の佐藤裕介氏やDeNA共同創業者の川田尚吾氏のようにTechCrunchの記事でもたびたび個人投資家として登場するメンバーもいれば、ホリプロ代表取締役の堀 義貴氏のようにあまりスタートアップ界隈では名前を聞かないような起業家もいる。各投資家は事業メンターとしてVociyをサポートする予定だということだ。

なお同社は2017年3月にも12人の個人投資家から数千万円の資金を調達している(公開されている株主については末尾で別途紹介)。

「声と個性を楽しむこれからの放送局」というテーマで2016年の9月にリリースされたVoicy。当初は大手メディアや雑誌などから提供を受けた「活字」コンテンツを、音声に置き換えて届けるという色が強かったように思う。

ただ最近はこれまでになかった「声のブログ」として使われ始め、活字メディアをベースとはしない、自由な形式のコンテンツが増えてきた。配信者も多様化してきていて、ブロガーのはあちゅう氏やイケダハヤト氏、起業家の家入一真氏や佐藤裕介氏もチャンネルを開設する。

この点についてはVoicy代表取締役CEOの緒方憲太郎氏も「声のブログという世界観を年始に立ち上げて、家入さんやはあちゅうさんがはじめたところ『声で聞くとこんな感じなんだ!』と話題になった。発信者も思いを十分に届けることができるし、最後まで聞いてくれるリスナーはポジティブな人も多いので喜んでもらっている」と話す。

また今後スマートスピーカー市場が拡大を見込まれている点も同社にとっては追い風になるだろう。すでに「Google home」上ではニュースコンテンツの配信を開始。「Amazon Ehco」でもアルクの外国語教材の配信支援を行うほか、中京TVとの新しい音声体験の開発を進めているという。

Voicyでは今回調達した資金をもとに組織体制を強化し、「VoiceTechカンパニー」として成長する音声市場でさらなるサービス拡大を目指す。

なお、公開されているVoicyの株主陣は以下の通りだ。

  • 秋山勝氏(ベーシック代表取締役)
  • 伊藤将雄氏 (ユーザーローカル 代表取締役社長)
  • 川田尚吾氏 (DeNA 共同創業者)
  • 佐渡島庸平氏(コルク代表取締役社長)
  • 佐藤裕介氏(ヘイ代表取締役社長)
  • 島田亨氏 (USEN-NEXT HOLDINGS 取締役副社長COO)
  • 高梨巧氏 (favy 代表取締役社長)
  • 為末大氏 (侍 代表取締役)
  • 千葉功太郎氏(個人投資家)
  • 平澤創氏 (フェイス 代表取締役)
  • 堀義貴氏(ホリプロ 代表取締役)
  • 松本大氏(マネックスグループ 代表執行役CEO)
  • 山田尚貴氏 (エニドア 代表取締役)
  • 柳澤大輔氏 (カヤック 代表取締役CEO)

イーロン・マスクのテスラとスターマンはここにいる――軌道追跡サイトでチェックしよう

先日、イーロン・マスクのSpaceXの最新大型ロケット、Falcon Heavyで宇宙に飛び立ったチェリーレッドのTesla Roadsterとその運転席に座ったダミー、スターマンは火星と地球の軌道を横切りながら太陽を周回する巨大な楕円軌道を描いている。しかし搭載バッテリーが切れて、通信が途絶した今、Teslaとスターマンがどこにいるかの知るにはどうしたらよいだろう?

SpaceXの大ファンで、航空宇宙産業でエンジニアとして働いているBen Pearsonが、Where is Roadster(ロードスターは今どこ?)というサイトを開設している。これはJPL(NASAジェット推進研究所)の Horizonsシステムを利用してTeslaの軌道を表示している。これによればTeslaとスターマンのコンビは火星だけでなく、太陽や他の惑星にも接近することがわかる。

このサイトではスターマンの任意の時間における位置や速度も示してくれるので、火星に近づきつつあるのか遠ざかりつつあるのかなどもわかる。このサイトは公式にSpaceXやTeslaと提携しているわけではないが、イーロン・マスクがツイートで取り上げているのが面白い。

たしかこのあたりに駐めたはず。 ―イーロン・マスク

Falcon Heavyが飛び立った後も、このサイトがあればマスクは自分のTeslaをパーキングした場所を探してうろうろせずにすむわけだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

「とりあえずAIで何かやりたい」ではダメ――AIベンチャーと東大研究室が企業向けの支援事業

ここ1〜2年の間で「AI(人工知能)」という言葉はごく当たり前に使われるようになった。もちろん概念や技術自体は以前からあったものだけど、ほんの数年前まではTech界隈のメディアやSF映画などで目にする、”ちょっと未来感のある”専門用語的な存在だったように思う。

近年はビジネスにおける「AI活用の成功事例」が取り上げられることも増えたせいか、AIを取り入れたいという企業も多い。ただ実際のところ、多くの現場ではAIを導入するにあたってさまざまな課題に直面しているのが現実らしい。

そのような企業を支援するべく、AIスタートアップのストックマークが新たに始めるプロジェクトが「AI Alchemist」だ。

AI導入から自走にむけたトレーニングまでを6ヶ月で

AI Alchemistは企業がAIを導入するところから、開発したシステムの運用を担う担当者の育成までをトータルで支援するプログラムだ。「デザイン思考」→「プロトタイピング」→「マッチング」→「トレーニング」という4つのステップを設定し、約6ヶ月間に渡って企業に伴走する。

一緒にユーザーが求めているものを掘り起こし、AIの活用方法を試すプロトタイピングのフェーズでは東京大学の矢谷研究室と共同でサポート。システムに落とし込む際には最先端の技術を持つAIベンチャーも巻き込む。顧客が自走できるように、AIに精通した人材の育成までをカバーする。

もしかすると、ここまで読んで「いわゆるAI導入コンサルティングのことで、別に珍しくないのでは?」と思った人もいるかもしれない。正直僕も最初に概要を聞いた時、少しだけそう思った。ただ実際に話を聞いてみるといくつかユニークな点があるようだ。

AIスタートアップと東大研究室のコラボ

まずストックマーク自体がAIを活用した自社サービスを展開していること。同社の強みであるテキストマイニングの技術を用いたニュースサービス「StockMark」(個人向け)や「Anews」(エンタープライズ向け)は以前TechCrunch Japanでも紹介した。

同社にはAIが現在ほど脚光を浴びる前から、機械学習やビッグデータ解析の研究を進めてきたメンバーも多い。そもそも創業のベースとなっているのも、CTOの有馬幸介氏が東大の研究室で取り組んでいたテキストマイニング、ディープラーニングの研究だ。そこから各メンバーが大企業にてエンジニアやコンサルタントとして経験を積んだ上で、ストックマークを創業した。

「ビジネス経験と、大学での研究をベースとした最先端のAI技術の両方をもっているのは強み。自社サービスの開発・運営、クライアント企業のシステム開発を通じて培った(AIに関する)知見も提供できる」(ストックマーク代表取締役CEOの林達氏)

AI Alchemistの中心メンバーでチーフアルケミストの森住祐介氏は、前職の日本IBM時代に開発者向けサイト「developerWorks」の日本語版編集長を務めた人物。大企業やスタートアップとのつながりも深く、森住氏の持つ広いネットワークも同サービスの特徴だ。

また上述した通りプロトタイピングの段階では、東京大学の矢谷研究室もサポートに加わる。ストックマークの技術アドバイザーも務める矢谷浩司氏は、ヒューマン・コンピュータ・インタラクションとユビキタスコンピューティングの研究者で、いわゆるUI・UX領域の専門家だ。

Microsoft Research Asiaでの勤務経験もある矢谷氏の研究室と一緒になって、「AIをどのように使っていくのか」をデザインしていくという。

「とりあえずAIで何かやりたい」ではうまくいかないケースも

「Anewsなどエンタープライズ向けの事業を展開するうちに、AIの導入や活用で悩んでいる大企業が多いことに気づいた」——森住氏はAI Alchemistの構想が生まれた背景についてこう話す。

トップが「とりあえずAIで何かやりたい」と考えている企業は多いが、AIによって何が変わるのか、どのような価値が生まれるのかを深く理解しているケースは限られる。結果として実際に担当することになる現場のスタッフに、大きな負担がかかっているという。

「AIについて聞いたことはあるが『どう使っていいのかわからない』という声が多い。本気で取り組むのであれば、既存のビジネスの延長で考えてしまっては上手く進まないし、時には文化的なところから変えていかなければいけない場合もある。担当者1人では難しいので、経営陣や社内のキーマン、外部の企業を巻き込むところまでサポートしていくことが必要」(森住氏)

AIの導入コンサルティングをしている企業はすでにあるが、社内の担当者を育成するといった点まで含めてサポートしているところは多くない。森住氏は「(理論だけではうまくいかない部分も多く)AIの導入って思いの外めんどくさい、泥臭いもの」だという。

すでに商社系の大手企業とプロジェクトが動き出しているそうで、まずはニーズの多い大企業を中心にサービスを展開していく方針。いずれは中小企業にも広げていきたいという。

RightEyeのポータブル視線追跡検査器は、脳震盪の影響や読書の学習障害などを素早く検査できる

世の中では「目は心の窓」だと言われているが、生理学的に言うならば「目は脳の窓」が正しい表現だ。

RightEyeはその窓を通して、脳震盪やその他の脳の障害からもたらされる、一般的だが微妙な問題を発見する。その高速でポータブルな視線追跡ステーションは、数分のうちに、医者に行くべきか、プロの球技選手になるべきかを判定してくれる。

人間の目がどのように動いているのかを見ることで、多くのことを知ることができることがわかった。人びとは自分自身では気が付いていないかもしれないが、数多くの基本的な動作(目をキョロキョロさせたり、動く目標を目で追ったり)を私たちがどのように(巧みに)行うかは、個々人の間でかなり異なっている。例えば、あなたの目は、直線に沿って視線を移動させようとするときに、過剰なほどきっちり進んだり、まっすぐ移動できなかったり、あるいは上下にふらつくことがある。

健康な人たちなら、これらの変動は安全な範囲内に収まる、それは個体間に普通に見られる違いの一部だ。しかし、ベースラインを外れた特定のパターンは、脳震盪や目の筋肉の問題、さらにはパーキンソン病や自閉症スペクトラム状態などの強い指標となる。

RightEyeは、こうした動きを、オールインワンのデスクトップのように見えるカスタムデバイスで追跡する。このデバイスは、単一目的のコンピュータに組み込まれたTobii視線追跡モジュールを使用する。またデバイスには単純な検査用ライブラリが組み込まれている。基本的なEyeQ(と彼らは呼んでいる)検査の実施に必要なのは5分ほどだ。特殊な検査を追加しても少し増える程度である。そして結果はすぐに得ることができる。

どんなものかという雰囲気を掴んでもらうために説明すると、例えばゲーム仕立ての1つの検査では、あなたは宇宙船を守らなければならないが、そのためには迫ってくる他の宇宙船を見ることによって破壊する必要がある。しかし、特定の色の船は破壊してはならない。つまり、周辺視野でそれらを検知しし、それらを見ることは避けなければならないということだ。また別の検査では、画面の両端に現れる2つのターゲットの間で目を素早く往復させて、正確で機能的な眼球運動(目の筋肉による微調整)を検証する。

それぞれの目は独立して追跡され、ペアとしてのパフォーマンスが即座に評価される。わかりやすい結果シート上には、それらの実際の動きと、ベースラインからどのように逸脱したかが示される。

デバイスはコンパクトでバッテリーで約8時間動作する、そのため病院の外での使用に理想的なものである。たとえば学校の保健室から、NFLの試合場、そして家庭などに至るまで、あらゆる場所で利用可能となる。

私はCESで、デバイスを使って自分をテストしてみた(私の視覚は正常だったが、再検査してみたい)、そしてその後でRIghtEyeの社長であるBarbara Barclayに話を聞いた。この技術の最もエキサイティング(というのは彼女の熱意から判断してのことだが)な2つの応用分野は、子供たちの視覚に関連した認知障害の特定と、スポーツを行う人のための一種の視力検査を作成することだ。

例えばある子どもに、読むことを学ぶことや、注意力に問題があったとしよう。今日では、このような場合にすぐ想起されるのはADDである。しかしそれが視覚の問題である可能性も決して少なくはない。視線の動きの微妙な違い、おそらく1行のテキストを読んでいく時に、水平から外れてしまうことは、ページや黒板を読むことを、困難で苦しいものとしてしまうだろう。3年生の子供がそれを続けることができるだろうか?

読書集中検査では、視線がテキストの行に沿ってどのように動くかを追跡する。

これは画期的な新しいアイデアではないが、個人の眼球運動を信頼性をもって客観的に評価することは、通常はある振舞に対する説明がつけられず、最後に専門家に会いに行った場合のみ可能になることだ。RightEyeの検査は基本的に自動的に実行され、数分のうちに視力障害の可能性を検出または排除することができる。正直なところ、子供もこれを楽しいと思うのではないかと思う。

Barclayはこれに関する個人的な経験をしている。彼女の娘が何度かスポーツでフライングを重ねたあと、その原因がシステムの示唆した単純な視覚上の問題にあるという、健康上の課題が判明したのだ。

RightEyeは2016年に、目の動きのパターンをパーキンソン病やハンチントン病、自閉症スペクトラムの状態に結びつける研究に基づいて、一対の検査実施の権利を取得した。それは魔法の弾丸ではないが、その検査の迅速かつ容易な特性は、日常的なスクリーニングには理想的だ。

自閉症スペクトラム検査は、1歳から3歳の子供のためのもので、人びとの画像と幾何学的形状の画像との間の眼の動きを見るものだ。人びとよりも図形により興味を抱くことは、少なくともその子供が少くともさらなる検査を受けた方が良いことを示す、優れた指標である。

パーキンソン病とハンチントン病の検査では、これらの症状に見られる運動の変性に伴う、より知られたパターンを観察する。それらは、任意の年齢の人びとに適用することが可能であり、(視線追跡設定を用いて)病気同定に大いに寄与する。

全く違う観点ながら、おそらくより直接的な便益となっていることとして、Barclayが私に語ってくれたのは、検査は逆に優れた人物を発見するためにも用いることができるということだ。すなわち優れた視覚の持ち主の発見だ。

ある人物が検査を受けて、その結果、より速く、より正確な眼球運動や、より素早い対象の補足、そして通常よりも優れた対象追跡能力を持つことが判明することがある。もし打撃、守備、ゴールキープなどのタイトなプレーをしているならは、それは本当に貴重な資産となる。

健康な眼球運動の報告例(左)と脳震盪を起こした状態のもの(右)。

もしあなたがスカウトかコーチであれば、それもやはり持つべき貴重な資産となる。もしある選手がフィールドでは左翼側の球をよく捕えることができて、右翼側はそうでもないという場合には、もしかすると彼は自分の左側に飛んできた球を追うことに問題があるのかもしれない、彼の目が右の方を向いているのだ。

それだけではなく、トラブルが発生している場合は、現場で脳震盪やその他の外傷の影響を検査することができる。このような怪我がどれほど広範囲に及ぶか、そして繰り返された脳震盪の危険性が大きいことを考えると、早期の頻繁な検査は文字通り命を救うだろう。

Barclayによれば、現在7つのMLBチームが、RightEyeの技術を使ってプレーヤーの評価を行っていると語った。医療面の用途に関しては、現在同社は200の顧客を抱えていると語った。新しいハードウェアはその数を増やすのに役立つ筈だ。

おそらくもっと重要なのは、米国最大の視力保険会社であるVSPの後援を受けていることだろう(それゆえに影響力も大きい)。それは、とてつもなく大きな信任投票であり主流になるための力となる。既存の保険によってカバーされるということを知ること以上に、人びとがシステムを使うことを動機付けることはないのだから。

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(翻訳:sako)

大型書店チェーンBarnes & Nobleが自死へ向かう、コミュニティ型地域書店から学ぶこともなく

もう何年も前から、B&Nのゆっくりとした死をぼくは記録している。ぼくの目の前で同社は、血を一滴また一滴と失い、今や殻だけしかない牡蠣になった。B&Nは、文化センターがないところの文化センターだった。それは、ニューヨークやシカゴ、クリーブランドでは雨の日にちょっと立ち寄るところだった。そしてそれは、子どもに最初の本を買ってやる場所だった。

今それは、ほとんど終わった。月曜日(米国時間2/12)に、同社は1800人をレイオフした。これによって、4000万ドルの経費を節約した。しかしそれは、とりわけ興味深い。4000万ドルということは、一人の社員が平均22000ドルの年俸を稼ぎ、ふつうならポストホリデーの不振時に解雇される時間給労働者は15000ドルもらっていたことになる。というより実際には、B&Nはその781の店舗のフルタイム社員を全員解雇したのだ。元社員の一人が述べている:

月曜日の朝、Barnes & Nobleのすべての店で、フルタイム社員は荷物をまとめて去るよう言われた。なくなった職掌は次のとおり: キャッシャー(お金を取り扱う人たち)、荷受管理者(配本を受け取り正しい場所に陳列する人)、デジタル係(Nookの問題解決を担当)、ニューススタンド係(雑誌の販売を担当)、バーゲン係(大量のディスカウントを担当)。一部の大型店にはキャッシャーと荷受管理者が残ったが、その数は多くない。

昨年のホリデーの前後には多くの入出荷管理者をレイオフしたから棚は空になり、顧客はAmazonへ逃げた。2017年の12月には、通常はB&Nのかきいれどきなのに、売上は6%減の9億5300万ドルになった。オンラインの売上は4.5%落ちた。

同じく巨大小売店のCircuit City(家電量販店)は、高給の社員を全員解雇して、時給制(最低賃金)のキャッシャーや、棚出し、店員に置き換え、終わりの始まりを告げた。


[17年勤めて毎週の読書会はとても人気があった。しかし一瞬にしてクビになった。]
  
  
  


[これが二日前の読書会だ。]
[妻もここで見つけた。今では5人子どもがいる。20年近くB&Nにいたのはここですばらしい家族を作れたからだ。そして彼らは突然ぼくを解雇した。彼らはぼくを投げ捨てた。]

書店のストリーミング化は理論的にはありえるが、しかし実際には、書店は印刷物の補給所以上のものだ。そこは遊び場であり、カフェであり、立ち読みする場所だ。地域の小さな書店は、そのことをよく知っていて、店頭店内のスペースを、おもしろくて居心地の良い場所にしている。

海賊の服を着て子どもたちに本を読んでやる人〔上図〕のいないBarnes & Nobleは、本しか商品のないWal-Martだ。自分の一生をB&Nで本を売ることに捧げた人たちは、お金のためにそうしたのではなく、本への愛のためにそこで働いたのだ。今同社は、そんな人たちを永遠に失った。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Twilioがコンタクトセンター構築のためのビルディングブロック集Flexを近く立ち上げ

デベロッパーが新しい顧客体験を作るための一連のプロダクトをまとめたTwilioのスイート、Engagement Cloudに、新しい機能が加わる。本誌情報筋によれば、今度ベータでローンチするそれは、3月のEnterprise Connectカンファレンスに集まる企業のための、完全なコンタクトセンターソリューションだ。Twilioに確認を求めたが、ノーコメントだった。

われわれが垣間見たTwilioの社内メールによれば、同社は、一部の顧客がエンタープライズに売っているコンタクトセンターソリューションとの競合を避けようとしている。しかしそんな顧客も、Twilioのサービスにとって重要なユーザーだから、気を使うのも当然だ。

これまでのTwilioの立ち位置は、新しいコンタクトセンターソリューションを開発するためのビルディングブロックとなる、さまざまなAPIの提供だ。今度の新しいコンタクトセンターソリューションは、それらをワンセットでまとめて、デベロッパーにとってずっと使いやすくしたものになるのだろう。

Twilio Flexと名前まで漏れている今度のTwilio自身のコンタクトセンター用プロダクトは、これまでのそのほかの同社製品と同じくデベロッパー体験を重視するだろう。たとえばシステムインテグレーターはFlexを利用して、独自にカスタマイズしたコンタクトセンターソリューションを作ったりできるだろう。

Twilio Flexは、そういう人たちが、強力な通信体験と、シングルサインオン、会社のワークフォース管理との統合、ワークフォース最適化スイート(通常のコンタクトセンターの便利機能…通話記録、エージェント指導、談話分析など)を構築するときの、基本的なビルディングブロックを提供する。そしてまた、彼らのバックオフィス社員のスケジューリングシステムとの統合も、サポートするだろう。

Flex(柔軟)という名前が示すように、このサービスはユーザーによるカスタマイズの最大化をねらっている。しかしもちろん、ユーザー企業独特の統合化ニーズについては、顧客の創意と努力が必要だ。企業の、コンタクトセンターの最適化ニーズとは、そういう柔軟なカスタマイズにある、とTwilioは主張しているようだ。

本誌情報筋によると、公式の発表は3月12日だ。それはオーランドで行われるEnterprise Connectカンファレンスの初日で、このカンファレンス自体、コンタクトセンターやコーリングセンターがフォーカスとなる。

画像提供: Twilio/Flickr

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大統領選に干渉したロシアのボットファームがMueller特別検察官により訴追

昨年の大統領選挙のときの、ロシアの行動を調べている特別検察官Robert Muellerが今日(米国時間2/16)、13名のロシア人と3つのロシア企業に対し、彼らの2014年までさかのぼる行為により、アメリカの大統領選挙を妨害した廉(かど)で起訴状を発行した。

起訴状は、アメリカ社会に分裂を作り出すための、偽(にせ)のアカウントの出所(でどころ)の一つとして、サンクトペテルブルグのボットファームで偽情報の〔載っている広告の〕散布も行っているInternet Research Agencyを指名している。それらのアカウントは当時、Facebook, Twitter, およびInstagram上でアクティブであり、起訴状は、これらのテクノロジー企業が議会に提出した内部レビューの具体的な例も引用している。

議会はこれらの広告とにその散布に関わった企業に強い関心を持ち、10月にはFacebookとGoogleとTwitterのトップを上院の司法委員会に喚(よ)んで証言をさせた。選挙妨害についてそれぞれ独自の捜査をしている下院と上院の諜報委員会は、これらの偽アカウントの中身と、それらの拡散に至った状況について調査した。

Muellerは、2016年のアメリカ大統領選挙を現在、広範囲に調べている。これら早期の訴追はロシア国民を対象としているが、Muellerはトランプの選挙運動に加わったメンバーにも関心を持っている。今マネーロンダリングで起訴されているかつての選挙参謀Paul Manafortも、その一人だ。

今回の起訴は、彼らが、外国の個人や法人がアメリカの連邦選挙に影響を与えるために金を拠出してはならない、というアメリカの法律に違反している嫌疑が中心だ。その訴追案件は複数にわたり、アメリカに対する詐欺行為の陰謀や、通信と銀行に関わる詐欺、6件の加重的本人性窃盗〔いわゆる‘なりすまし’〕、などが含まれている。

訴状の原文を、ここに転載しよう:

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

ニューヨーク連邦裁判所が埋め込みツイートは著作権侵害となり得ると判断

ニューヨーク連邦裁判所が出した最近の判決は、著作権法の適用に関して重大な影響を与える可能性がある。

この判決は、 Justin Goldmanが、Breitbart、Time、Yahoo、Vox Media、Boston Globeなどの出版社を相手取って起こした裁判で下されたものだ。出版社たちがその記事の中に、New England PatriotsのクオーターバックTom Bradyを撮影したGoldmanの写真が含まれたツイートを引用して、著作権を侵害したという主張である。Goldmanは写真をSnapchatに投稿したが、それは口コミで広がり、その後他のユーザーたちが写真をTwitterにアップロードしていたのだ。

Hollywood Reporterによれば 、問題の写真は、BradyとBoston CelticsのゼネラルマネージャーDanny Aingeらの写真であり、BradyがCelticsによるKevin Durantのリクルートに手を貸しているのかもしれない、というストーリーとして投稿されたものだ。

出版社たちは、この訴訟に対し、「サーバーテスト」として知られる根拠(著作権侵害の責任の有無は、画像が出版社のサーバー上に保存されているか、あるいは単に他のサーバー上のイメージを埋め込みあるいはリンクで提供しているかで決まる)を用いた略式判決を求めていた(この場合出版社は画像を所有せず、第三者のツイートにリンクしているだけなので、出版社側は著作権侵害をしていないという主張)が、その申立が却下されたのだ。

裁判官のKatherine Forrestは、「サーバーテスト」は第九巡回裁判所(アラスカ、ハワイを含む西部地域)外では広く適用されていないと主張した。彼女は以下のように書いている

著作権法の平易な言葉、制定の根底にある法律の歴史、そしてその後の最高裁判所による法体系は、画像の物理的な場所や所有が、誰が著作権法の定める手段で著作物を「表示」できる/できないかに影響するという根拠を与えていません。著作権法のどこを見ても、画像の表示とみなされるためにはそれを所有する必要があるとは書かれていません。実際、法の目的と言葉は反対の意見を支持しています。

この判決は、出版社が訴訟に負けたことを意味するものではなく、略式判決の申立を単に却下しただけのことである。しかし、すでにこの判決は、サーバーテストを「現代インターネットの基礎」と呼ぶ電子フロンティア財団(The Electric Frontier Foundation)からの批判を受けている。

EFFのDaniel Nazerは「私たちは今日の判決が有効とならないことを望みます」と述べた。「もしそうなったならば、毎日何百万人ものインターネットユーザーに便益をもたらしている、インラインリンクの普遍的な慣行を脅かすことになるでしょう」。

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(翻訳:sako)

FEATURED IMAGE: TECHCRUNCH

iPhoneやMacのアプリがクラッシュするユニコード文字のバグ、Twitter上でいたずらが急増

【抄訳】
昨日(米国時間2/15)本誌TechCrunchが報じたユニコードのバグを悪用して、iPhoneやMacの上で動いているアプリを一瞬でクラッシュさせる馬鹿たちが急増している。その様子は昔のAlt+F4のいたずらや、スクリプト坊やの愚行に近いが、結果は、迷惑行為ですむものから、デバイスが使用不能になるのまで、さまざまだ。

そのバグは、南インドのテルグ語の二つの文字を表示しようとすると多くのiOSやMacのアプリ/アプリケーションをクラッシュさせる。その文字を見ないようにすればいいのだが、誰か悪意のあるやつがメールや通知などで送ってくると避けられない。

大量のTwitterユーザーが昨日(きのう)からその文字に、“read this to log off instantly”(これを読めば一瞬でログオフできる)とか“retweet this to crash anyone using an Apple device”(これをリツイートすればAppleのデバイスを使っている誰でもクラッシュする)、などのメッセージをつけてツイートしている。しかし幸運にも、彼らのフォロワーは少ない。でも、@のリプライや、ツイートをいいねした誰かのハンドルにその文字があれば、今開いているアプリは即死する(MotherboardのライターJoseph Coxが、自分の痛い体験からこのことを学んだ)。本誌が知ったかぎりでは、アプリは最初から再インストールしないと正常に動作しない。何度も何度もやられているときは、再インストールに時間がかかってたいへんだ。

Twitter上では、あるセキュリティ研究家が自分のUberのハンドルにその文字を加えて実験をした〔下図〕。“スマートフォンがクラッシュすると次のドライバーに回されるが、それもまたクラッシュする。まるでUberのルーティング・ワームのように”、と彼は書いている。今Uberに問い合わせているので、返事があったらこの記事をアップデートしたい。

【中略】
〔このバグを起こす文字は二文字よりももっと多い…Mozillaの技術者の実験より〕

Appleは、もうすぐ“マイナーアップデート”(小数点以下のバージョンナンバーのアップデート)をリリースすることを確認した。ただしそれがiOS 11.2.6になる、とは言わなかった。なお、iOS, tvOS, macOS, watchOSの現在のバージョンでは、このバグは解消しているそうだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Apple本社で社員が「ガラスの壁」に衝突する被害が出ている

ガラス張りオフィスというのはモダンだが注意を要する点もある。ガラスの壁に衝突する可能性は十分ある。Bloombergによれば、クパチーノの4億2700万ドルのApple新本社で従業員が壁にぶつかって痛い思いをする例が多数出ているという。

「事情に通じた関係者」が明かしたところによれば、事故の正確は数は不明だが、いつも社員が手にしたスマートフォンを見ながら歩いているような環境ではガラスの壁は明らかに不利益をもたらしているという。事故を防止するために、特に危険な部分には、ポストイットを貼っておくという自衛手段に出ている社員もいるそうだ。かなり原始的な拡張現実といえる。

私自身、始終ガラス壁にぶつかっているので断言するが、こうした場合、悪いのは人間ではなくガラス壁だ。にもかかわらず衝突した人間は痛い目にあった上にばつの悪い思いをしがちだ。記事も指摘しているとおり、今のところOHSHA(労働安全衛生局)の介入を必要とするような重大な事故は起きていない。しかし問題の解決にあたっては「透明性への配慮」が重要だろう。

これらはAppleに特に深刻なダメージを与えるような話ではないだろうが、この件は2012年にAppleが訴えられた事件を思い出させる。これは83歳の女性がAppleストアのガラス壁に衝突して怪我をした件でAppleを訴えたもので、原告は「Appleには透明なガラスのドアないし壁を設置するにあたって必要な危険防止の措置を取ることを怠った過失がある」と主張した。.訴訟は法廷外の和解で終了した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

州間Hyperloop交通システムの実現に向けてHTTと公的セクターが契約

減圧チューブ内を高速でポッドを走行させる輸送システム、Hyperloopの実現に取り組んでいる主要な企業は、HTT(Hyperloop Transportation Technologies)とH1(Hyperloop One)の2社だが、その前者、HTTが州間高速輸送システムの構築に向けて公的セクターから初の契約を得た。

この契約はHTTとオハイオ州北部の経済活動を調整するNOACA(North Ohio Areawide Coordinating Agency)、イリノイ州交通局(IDOT)との間で結ばれたもので、システムの実現性を探るフィージビリティ・スタディーの実施を内容とする。この調査の主たる目的はオハイオ州クリーブランドとイリノイ州シカゴを結ぶ複数の路線についてそれぞれHyperloop建設の可能性を探るというものだ。

HTTではオハイオ州州議会は今年1月にHyperloopの建設促進を決議しているという。またHyperloopによる高速交通ネットワーク建設に連邦政府の補助を求める書簡をいくつかの州から選出された議員が共同でトランプ政権に送った。

HTTのCEO Dirk AhlbornがTechCrunchに送った声明で「れらの動きは民間と公的セクターが共同する最初の例であり、Hyperloopによる旅行をアメリカにもたらすために大きな役割を果たすだろう」と述べている。

HTTはインド、ヨーロッパを含む世界各地で国や自治体とパートナー契約を結んでいる。そのほとんどは計画段階だが、今回の契約は実際の建設に向けて一歩を進めた例だろう。これが他の計画にも追い風になることが期待される。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

タニタ、PS4「とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)」用ツインスティック開発でゲーム事業に参入

eng-logo-2015体組成計などを手がけるタニタが、ゲーム事業への参入を発表しました。第一弾として、PS4ソフト「とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)」(SEGA)に対応するツインスティックを開発を目指すとしています。

谷田千里社長は「ゲームで楽しく遊ぶことは健康につながります」と参入の意義を説明。なお、公開された動画には、社長の背後に同作品のフィギュアも飾られています。

「とある魔術の電脳戦機(バーチャロン)」は、セガが2月15日に発売した対戦型3Dロボット・バトルアクションゲーム。バーチャロンシリーズ15年ぶりの新作で、電撃文庫の「とある魔術の禁書目録(インデックス)」とコラボし、同作品のキャラクターがロボットを操ります。

詳細については、公式Twitterで順次公開するとのこと。

Engadget 日本版からの転載。

MongoDBがマルチドキュメントのACIDトランザクションをサポート、三年がかりの大工事で

MongoDBがついに、マルチドキュメントのACID日本語)トランザクションをサポートすることになった。MongoDBのコミュニティは長年これを求めていたが、このプロジェクトを支えている企業(製品と同名のMongoDB, Inc.)がやっとその実装に取り組んだのだ。

発表は今日(米国時間2/15)の午後になるようだが、ACIDのサポートはこのNoSQLデータベースが夏にリリースするバージョン4.0でローンチする。しかしデベロッパーはそれまでベータを利用できるから、その使い方などを勉強できる。

基本的にMongoDBはドキュメントデータベースであり、デフォルトでは、この種のデータベースはACIDではない。マルチドキュメントのトランザクションなら、なおさらだ(ドキュメントのレベルではMongoDBはすでにACIDトランザクションをサポートしている)。しかし、マルチドキュメントに同時にライトするようなMongoDBの使い方をする企業はそう多くないから、それはこれまで、重要な案件ではなかった。

しかしそのために、MongoDBのユーザーの多くは今だに、リレーショナル・データベースをドキュメントデータベースと併用している。

むしろ、MongoDBの協同ファウンダーでCTOのEliot Horowitzによると、それこそがこのプロジェクトのメインの動機のひとつだった。“われわれがこれを必要としなかったのは、ドキュメントモデルはACIDトランザクションの必要性をなくすからだ。すべてではないが、ほとんどのね”、と彼は語る。しかしそれと同時に、ミッションクリティカルなユースケースのためのトランザクションが必要な場合も、明らかにある。またHorowitzによれば、MongoDBのユーザーの中にも、“いずれそれが必要になるのではないか”という不安をずっと抱えているデベロッパーがいる。今日のローンチは言うまでもなく、そんな不安を取り去る。

RedMonkの主席アナリストStephen O’Gradyはこう言う: “トランザクションのACIDが保証されることは何十年にもわたってリレーショナル・データベースの重要な特長だった。しかしそのためにユーザーは、トランザクションの確実性か、ノンリレーショナル・データベースが提供する柔軟性と多機能性か、という選択を強いられてきた。今回、マルチドキュメントのACIDトランザクションがサポートされたことにより、MongoDBは、ケーキを作るだけでなくそれを食べたいという顧客にも、奉仕できるようになった”。

Horowitzが強調するのは、単純にこの機能をデフォルトにするデベロッパーはいないだろう、ということ。むしろ多くのデベロッパーは、非常に特殊なユースケースの場合のみ、それを有効にするだろう。“これがMongoDBにライトするときのふつうの方法になるとは、思わないね”、と彼は言う。

この新しい機能の構築は複数年にわたる努力であり、三年前に、データベースのストレージエンジンの技術を持つWiredTigerを買収したことから始まった。しかしそれを有効にするためには、データベースシステムのほとんどあらゆる部位に手を加える必要があった。

試してみたい人は、ここでベータに参加しよう。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

すでに1000社以上が参入、インバウンド業界のカオスマップとレポートをナイトレイが公開

インバウンド対策支援サービス「inbound insight」を提供するナイトレイは2月16日、国内のインバウンド業界のトレンドに関するレポートと、インバウンドソリューション企業をまとめたカオスマップを公開した。 

同レポートによると観光庁の発表では2017年の訪日外国人数は2800万人を超え、消費額も4.4兆円にのぼる。これはどちらも過去最高の数値だ。

日本政府でも「世界が訪れたくなる日本」を実現するため、2016年に「明日の日本を支える観光ビジョン」を策定。訪日外国人数の目標値を2020年に4000万人、2040年に6000万人と設定している。

平成30年度の観光庁の予算をみても、約300億円と前年比で15%増加。デジタルマーケティングやビッグデータを活用したプロモーション強化、WiFi環境整備や手ぶら観光実現など受入環境整備へ多くの予算を充てるほか、民泊の整備やコンテンツの掘り起こしなどに向けて予算を確保しているとされる。

このような背景もありインバウンドソリューションサービスを提供している企業は1000社を超え、同社の言葉を借りるとまさに「カオスな状態」だ。

もちろんすべてのサービスが上手くいっているということはないが、2015年に楽天に買収されたVoyagin、2016年にフジ・メディア・ホールディングス傘下に買収されたジャパンインフォなどエグジットの事例もでてきている。同様にMATCHAが星野リゾートとの資本業務提携を締結したように、提携や資金調達の案件も増えてきている(ナイトレイも2017年に複数のVCから1.3億円を調達している)。

なお本レポートの完全版はナイトレイのサイトからダウンロードできる。