アプリケーションとライブラリをハードウェアの特性に合わせて最適化・高速化するBitfusion…元Intelの三名が起業

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今日のコンピュータは一般的にとても高速だが、アプリケーションの多くは、自分たちがその上で動くハードウェアプラットホーム向けに最適化されていない。ほとんどのライブラリがジェネリックなプラットホーム用にコンパイルされており、たとえば個々のCPUの固有の機能を有効に利用していない。

今日(米国時間5/1)TechCrunch Disrupt NYでデビューしたBitfusionは、デベロッパに代わってそのような最適化を行い、そのソリューションの最初の一回の適用でアプリケーションのスピードを10%から最大で60%は向上させる。それは、多くのアプリケーションが依存している著名なオープンソースのライブラリの、すでに最適化されているバージョンを選んでビルドするだけ、というソリューションだ。同社がねらっているターゲットは、製薬企業や生物情報科学関連の企業、それにデータ分析のソフトウェアなどだ。

同社はテキサス州オースチンで、元Intelの社員三人が創業し、今日はData CollectiveとResonant VC、およびGeekdomから145万ドルのシード資金を調達したことを公表した。Geekdomは、RackSpaceのファウンダや投資家たちが運営している投資企業だ。

ファウンダたちはIntel時代に、チップの設計からパブリッククラウドのインフラストラクチャ、スーパーコンピュータなど、あらゆるものを手がけた。CEOのSubbu Ramaが前に創ったSocialStockは、2012 Disrupt NYのBattlefieldでファイナリスト(決勝進出)になった。

Ramaは曰く、“ハードウェアとソフトウェアを一緒に同じテーブルの上に乗せたいのだ。うちは、ハードウェアの最大有効利用という、これまでみんなが避けてきた分野に挑戦している”。

Bitfusionは、ライブラリの再コンパイルや再編纂、それに特殊なバージョンの収集などにより、各プラットホーム向けの最適化を行う。でもそれは、顧客基盤を築くための最初のステップにすぎない。Ramaはそのステップを、“簡単な部分”と呼ぶ。

チームは今後、CPUだけでなくGPUやFPGAも最適化の視野に入れて、パフォーマンスの向上を10%ではなく10倍にすることを計画している。同社によると、今日のハードウェアメーカーは、自分たちのチップのより強力な機能にアクセスするためのスタンダードに合意している。

たとえばいくつものグループが、ハードウェアアクセラレータと科学計算とのあいだの標準インタフェイスとして、OpenCLをプッシュしている。でも今日の現実としては、デベロッパたちはOpenCLのサポートに傾くことなく、CUDA、HAS、AVX2などなど、多様な競合APIに向かっている。Bitfusionのチームは、同社がアプリケーションとライブラリを、そういうデベロッパのために、そして彼らの往々にして特殊なチップのために最適化することによって、そのバラバラの世界に橋渡しができる、と信じている。

今後に関してチームがとくに期待しているのは、プログラマブルなチップFPGA日本語)だ。FPGAは特定の問題に合わせてプログラムできるし、また一般的にソフトウェアよりもハードウェアの方が高速だから、デベロッパは大きなスピードアップを実現できる。今日のFPGAは標準性に乏しいが、しかし大手半導体メーカーの一部は真剣にFPGAについて検討しており、CPUすら、一部をFPGA化することによってスピードアップとユーザの自由性の拡大を図ろうとしている。

もうひとつ、Binary translation日本語)も、アプリケーションのスピードアップのためにBitfusionが注目している技術の一つだ。

同社は主に企業を顧客にして、彼らの特定のニーズやアーキテクチャに合ったソリューションを提供しようとしている。今後はそういう顧客のデータセンター用として、ハードウェアアクセラレータを組み込んだアプライアンスを提供して行く計画だ。そして今同社は、RackSpaceと協働して、ユーザがアプリケーションのスピードアップを実現できるための高速化クラウドの構築にも取り組んでいる。

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Disrupt Q&A:

Q: 市場規模はどれぐらい?
A: 社内にそういう技能のない中小の企業はたくさんある。アプリケーションの高速化が重要な、メディアや仮想現実の企業が、とくに狙い目だ。

Q: ビジネスモデルは?
A: 三つのビジネスモデルがある。ソフトウェアと、アクセラレータを組み込んだアプライアンスと、RackSpaceとの協働による高速化クラウドだ。

Q: それはプラグ&プレイか?
A: うちが開発している技術は、ソフトウェアで高速化を図ったライブラリの、世界最大の集合だ。それらのライブラリを、たとえば、機械学習や生物情報科学の分野のアプリケーション向けにデプロイしている。デプロイプロセスはすべて自動化されている。

Q: 大企業は相手にしないのか?
A: 大企業はハードウェアを自作できるし、自分たちの特殊なアプリケーションを最適化する技能もある。でも、大型データセンターの最適化、というレベルでは今すでに大企業の顧客もいる。

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もはや国境は意識しない、日本発IoTスタートアップの強みと課題

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新経済連盟が開催するカンファレンス「新経済サミット2015」が4月7日から8日にかけて東京で開催された。初日となる4月7日には「世界を担う日本発のIoT 〜グローバルマーケットで日本企業はどのように闘うのか〜」と題するセッションが開催された。IoT(モノのインターネット)の時代、世界で勝つ為に求められるものは何か。官民それぞれの立場から意見が交わされた。

登壇したのは総務省 情報通信国際戦略局 通信規格課  標準化推進官の山野哲也氏、経済産業省 商務情報政策局 情報経済課長の佐野究一郎氏、WiL 共同創業者ジェネラルパートナーの西條晋一氏、イクシー代表取締役社長の近藤玄大氏、Cerevo代表取締役の岩佐琢磨氏の5人。モデレーターはABBALab代表取締役の小笠原治氏が務めた。

国はIoTをどう見ているか

総務省や経産省は、IoTをどう捉えているのだろうか? 経産省の佐野氏は、ドイツの国策である「インダストリー4.0」やアメリカGE社のIoTプラットフォーム「Predix」といった、生産工程の自動化・デジタル化、センサー・人工知能(AI)を使った開発パフォーマンス向上施策を例に挙げ、海外でのIoTの急速な広がりを説く。

では日本はどうなっているのかというと、産業競争力会議においてビッグデータやIoT、AIの推進に取り組む事が決まった段階であり、具体的な政策のあり方は検討中とのこと。今後は「ベンチャー企業の力をいかに増やすかが重点事項」と課題を語る。

山野氏は総務省の観点から標準化について解説。IoTには4つの要素があるという。

・センサーで情報を集める技術
・収集した膨大なデータをネットワークに送る技術
・膨大なデータを解析し、意味あるデータを発掘する技術
・得られた意味をデバイスにフィードバックする技術

それぞれの要素別に見ると国際標準化は進みつつあるとし、M2Mの標準化団体oneM2Mを例として挙げた。ただ国内における標準化作業は出遅れている感が否めないとのこと。

IoTビジネスはに国境はない

「世界と戦う」という意味について、実際にIoTでビジネスを立ち上げているスタートアップはどう考えているのだろうか。

Cerevoの岩佐氏は、日本、海外という意識は全くしていないと言う。インターネットという世界共通プロトコル上で動作する「モノ」を販売しているため、発表すればおのずと世界中から注文が来るとのこと。むしろわざわざ「グローバル」と意識をすることなく、それで世界で成功できるのがハードウェアの良い点だと持論を述べた。

筋電義手「handiii」を手がけるイクシーの近藤氏は、「モノは分かりやすいので、コンテンツが良ければどこでも売れる」と説明。handiiiをSouth by Southwest(SXSW)でデモした時の反響の大きさを例に挙げた。handiiiは医療分野のプロダクトであり、国によって法律が異なるためローカライズは困難を極めるプロダクトだ。だがイクシーでは極力データも公開し、各国の研究機関と共同で開発を進めていきたいとした。

ベンチャー投資を手がける傍らでソニーと合弁会社「Qrio」を立ち上げ、スマートロックの開発しているWiLの西條氏も、「モノ(ハードウェア)は非言語なのでイメージされやすく、世界展開はしやすい」と語る。

日本でビジネスを行う3つメリット

スタートアップ側の登壇者3人が「国境はあまり意識していない」と語るが、モデレーターの小笠原氏は、日本でビジネスをすることの利点を尋ねた。

「そもそも僕ら(日本でビジネスをするスタートアップ)は有利」——岩佐氏はそう語る。その理由の1つめは「Japanブランド」。先代の方々(これまでの日本のメーカー)が築き上げてきた信頼のおかげで、全く同じ製品だったとしても日本製が選ばれるのは大きいとした。2つめは「家電設計者の多さ」。これだけ家電開発者が多い国は世界を見渡してもほかにない。これがIoT時代の武器になると話す。3つめは「時差」。家電やハードウェアのほとんどの工場は現在アジアに集中しており、時差も少なくいざとなれば3〜4時間で行ける距離にある日本は欧米と比較して地理的にも有利だとした。

また近藤氏は、「長期的に日本に留まるかは分からない」とは言うものの、「日本人のこだわり、職人気質はプロトタイプを開発する上でメリットになった」と言う。

IoTスタートアップ、挑戦するには「いい時期」

セッション終了後の囲み取材で、西條氏、岩佐氏、近藤氏から、ハードウェア、IoTスタートアップに挑戦する人に向けたメッセージを貰ったので、以下にご紹介する。

WiL 西條氏

起業するにもいろんな方法がある。イクシーやCerevoのように自力でやる方法もあれば、WiLのように大企業とコラボレーションする方法もある。「メンバーが不足しているからできない」と諦めて欲しくない。自分は文系人間でものづくりの経験も無かったが、今は非常に良いチームができている。いろんな山の登り方がある。やりたいという気持ちを大事にしてほしい。

Cerevo 岩佐氏

基本は「やりたいと思った時がやり時」だが、ここ1〜2年急激にハードウェアスタートアップがやりやすくなった。2007年当時はハードウェアスタートアップとか言うと笑われる時代だったが、今はDMM.make AKIBAの様なシェアオフィスもあり、興味を持ってくれる投資家も増えた。始めるにはいい時期。あと、ITでの起業というとエンジニアが起業するイメージが強いが、自分の周りでは文系、調整型の人間が立ち上げた企業が成功している。ぜひ文系の人にも挑戦してほしい。

イクシー 近藤氏

むしろ今の学生はすでに起業している。大学の研究室の成果をクラウドファンディングに乗せて製品化を目指すような流れが普通になってきている。逆に、定年退職したベテラン職人が起業するようになると面白いと思う。

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左から小笠原氏、山野氏、佐野氏、西條氏、岩佐氏、近藤氏

 

必要な処理のすべてをWeb上のREST APIにやらせるIoTボードOnion OmegaはRaspberry Piの1/4のサイズ

Raspberry Piによって、コンピューティングを伴うハードウェアとソフトウェアの実験の、敷居がとても低くなった。そして今日ここでご紹介するのは、そのコンセプトをさらに徹底させて、Raspberry Piの1/4ほどのサイズにLinuxとWiFiを搭載したマイコンボードだ。

このOnion Omegaと呼ばれるボードは、ソフトウェアデベロッパがハードウェアを自分で作らなくてもIoTアプリケーションを作ったり、ほかのプロダクトを改造したりできるための開発プラットホームだ。Onion Omegaを利用すると、既存のハードウェアプロジェクトにちょっと何かを加えることも容易にできる。WiFiとLinuxのほかに、16MBのローカルストレージと64MBのRAM(400MHz, DDR2)、USB 2.0対応のピン、100MbpsのEthernetなどを備える。

Onion Omegaの制作チームはボストンや、トロント、深圳などに分散していて、かねてから、IoTの開発を容易化する、新しい開発スタイルを学ばなくてもWeb開発と同じ要領でそれができる、拡張が容易である、メインのコンピューティングはすべてクラウドから提供する、を目標に掲げて努力を積み重ねてきた。Onion Omegaにはいくつかの拡張モジュールのオプションがあり、最初からさまざまなサービスに接続でき、それらのREST APIsに無料でアクセスできる。またこのボードをいろんなハードウェアに対応してプログラミングするための、既製アプリケーションやライブラリも‘アプリストア’から提供する。

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Onion Omegaを使ったプロジェクトの実例がすでにいくつかあり、たとえば上のピンポン投擲機は、誰もがWebからその‘射撃’をプレイできる。

Onion Omegaの構想は多くの人の関心を呼び、Kickstarterですでに55000ドルを集めた。それは、目標額15000ドルの4倍近い。予約購入したい者は、25ドルでOmegaとDock(専用ドック)、あと10ドルでお好みの拡張モジュールを選べる。支援者に実物が届くのは、今年の8月の予定だ。

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Asusのゲーム用ノートブックRepublic Of Gamers G501は4Kディスプレイで厚さ2センチ

AsusのRepublic of Gamers G501は、ゲーム用ポータブル機の水準を一気に上げた。主要仕様を列挙すると: グラフィクスカードはNvidia GeForce GTX 960M、プロセッサはIntel Core i7、ディスプレイは15.6インチの4Kだ(画素密度は282 PPI)。これらをすべて収めたノートブックだが、重さはわずか4.54ポンド(ほぼ2kg)、閉じたときの厚さは0.81インチ(ほぼ2cm)だ。

そのIPSディスプレイはAsusのROGシリーズとしては初めてFHD(1080p)を超え、ゲーム向けPCで競合するRazer Blade(14インチ、3200 x 1800 )と肩を並べた。視野角は178度、解像度は本物の4K(3840×2160)だから、Bladeより上だ。

ゲーム向けノートブックはプラスチックケースが圧倒的に多い中で、ROG G501はアルミボディだ。キーボードの押し下げ動程1.6mmも、なかなかよろしい。キーボードにバックライトがあってWASDが高輝度なのも、ゲーマーに喜ばれそう。

超薄で超強力なラップトップがきゅうりのように冷たいのは、Asusの’Hyper Cool’技術のおかげ、2台のファンと銅製のヒートパイプ(導熱管)で熱を逃し、しかもファンのノイズはほとんどない。CPUとGPUにはそれぞれ独自の冷却機構を設けて、騒音源の大型ファンを使わずにすんでいる。

ストレージは512GBのSSDで、データ伝送速度は最大で1400MB/s、Thunderboltを使えるから、ゲームだけでなく、ビデオの編集や制作にも向いている。

お値段は1999ドルからで、合衆国では4月に発売の予定だ。現時点で最良のゲーム用ノートブックはROG G751だが、ROG G501は市場でどんな成績になるだろうか。

 

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GoogleがハードウェアだけのストアGoogle Storeを開店

Googleが今日(米国時間3/11)、Googleとそのパートナー企業が作ったハードウェア製品を売るオンラインストアGoogle Storeを、従来のアプリやコンテンツのストアPlay Storeとは別に開店する。この“お店”には、GoogleのNexusスマートフォンや、各社のAndroid Wareデバイス、Nestのデバイス、GoogleおよびパートナーのChromebook、各種アクセサリ、ケース、キーボード、充電器などが出品される。

ここで売られるデバイスに関しても、アプリやコンテンツはこれまでどおりPlay Storeで売られる。そしてGoogleとパートナーのハードウェアは、もうPlay Storeでは売られずに、新開店のGoogle Storeで売られることになる。そして当分は、何を買っても送料無料だ(ただしいちばん遅い便のみ)。

Play Storeでハードウェアを買ったことのある人は、それらに関するすべての情報が自動的にGoogle Storeへ移送される。

Googleは新規開店の理由を、“プロダクトの増加に伴い、それらをもっと分かりやすく提示する仕組みが必要と考えた”、と言っている。たしかにハードウェアの売り場は、Play Storeでは、知られざる隠れた存在だったし、アプリやムービーやマガジンなどの山の中では、異質な存在でもあった。

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ポートが1つの新MacBook、ACにつないでiOS機器を充電するには別売りのアダプタを利用

Appleは本日、新しいMacBookをアナウンスした。いかにもAppleらしく、「全く新しい」スタイルが採用されている。充電、データのインプット、およびビデオ出力を、すべてひとつのUSB-Cポートで行うというスタイルだ。MacBookをACにつなぎながら、同時にiPhoneを充電したい場合にはどうすれば良いのだろう。もちろん対策は用意されている。Apple製の別売りアダプターを購入するのだ。

新しいMacBookのUSB-C用にさまざまなアクセサリーが用意されている。通常のUSBを使いたいのなら2200円のアダプターを購入する。Digital AV MultiportアダプターおよびVGA Multiportアダプターはいずれも9500円だ。MultiportアダプターにはUSBポートおよびUSB-Cポートも搭載されている。

間違いのないように書いておこう。新MacBookでは、アダプターなしにiOSデバイスを充電することはできない。AppleがUSB-C Lightningケーブルをリリースする可能性もあるわけだが、今のところは2200円のアダプターを使う以外に選択肢はない。

Appleはしばしば、利用者の都合を無視する形で「未来」に突き進んでいくことがある。1998年にはiMac G3からフロッピードライブおよびシリアルポートを失くしてしまった。FirewireおよびCD-ROMドライブを捨て去ってしまったこともある。

今回の「単一ポート化」も「未来」への一歩だということなのかもしれない。確かにポートをひとつだけにすれば、シンプルかつエレガントになるだろう。ただ、ノートパソコンの使い方としては、ACから電源供給しながら外部モニタにつなぎ、そして他のデバイスの充電をするというのは「基本的」な用途だと思うのだ。消費者のニーズを無視した「進化」だと思うのだが、どうだろうか。

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(翻訳:Maeda, H


モジュール化スマートフォンProject Araの肯定的な未来を見せてくれたVestigenの多機能センサ機器

Project Ara(プロジェクトAra)は、徐々に商用製品の発売に近づいている。シンガポールで行われたカンファレンスが、この、‘モジュール的パーツ任意組立/取り替え型’スマートフォンの、近未来の姿を垣間見せてくれた。たとえばVestigenという企業は、さまざまなテストストリップ(下図)を使って、水の水質(飲用適性)や血液の血糖値など、いろいろな検査ができる製品を披露した。

VestigenのCEO Alexander Kriskoの説明によると、このようなツールによってAraはホビイストのおもちゃの域を脱し、世界中の人びとの生活の質を良くしていくための本格的なソリューションを提供できる、という。〔たとえば低開発国における飲み水の衛生状態の改善。〕

Araのアドバンテージは、起業や研究開発の初期費用が低いことだ。モジュールの費用は、本格的な検査機器などに比べると大幅に安い。部品としてのセンサは今とても安くなっているし、コンピューティングや通信の機能に関してはAraの既製のモジュールをそのまま利用できる。

Araは今年プエルトリコで消費者テストを行う予定だが、今後は世界中のエンジニアや医師やエイドワーカー(人道支援活動家)、それにコンピューティング==モバイルである人びとが、Araのきわめて安いハードウェアコストをベースに、今まで一部の先進国でしか得られなかった技術的果実を、いろいろ実らせていくだろう。 Vestigenの製品を見ていて、そう思った。

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家庭内のWiFiネットワーキングをストリーミングサービス向けに最適化するスマートルーティングシステムEero

最近、ワイヤレスのルータを買ったりインストールしたことある? ぼくはあるけど、あれは地獄だね。

まず、Amazon.comのようなサイトや地元のBest Buyなどへ行って、Wireless Gigabitのスピードやレンジを調べ、自分の家(うち)で最良の結果を得るためには、あの、蛸の足のようなアンテナがいくつ必要かを決める。

次は、そいつのインストールだ。アドミンのパスワードを設定して、外部からのハッキングを防ぐ、などなどの作業をする。全部終わっても、これでよいのかどうか、分からない。ぼくは廊下が長くて壁の厚いアパートに住んでるが、ぼくの今のWiFiのセットアップではカバーできてないところがある。

そこで新進のスタートアップEeroは、われわれ一般人のワイヤレスルータ観を変えようとする。同社は、Nestがサーモスタットに対してやることや、Sonosがホームオーディオに対してやることを、WiFiルータに対してすることによって、安上がりでスマートなワイヤレスネットワーキングシステムを作ってくれる。

Eeroはユーザのワイヤレスネットワーク上のデータトラフィックをインテリジェントにルートして、バッファリングを少なくし、家の中のデッドゾーンをなくす。製品はスタンドアロンのボックス(上図)または家の中にメッシュネットワークを作るための複数台のセットとして提供される。

ユーザのワイヤレスネットワーキングを変える、という作業をやる前にEeroのソフトウェアが、今ルータに接続しているデバイスや、そこにやってくるトラフィックのタイプなど、ネットワークの現状を調べる。ホームネットワーク上でほかに何が行われていても広帯域のアプリケーション…ビデオやゲームのストリーミングなど…をシームレスに楽しめるためには、このソフトウェアの仕事が重要だ。

Eeroはとても使いやすく作られているので、一般消費者がすぐにネットワークを作り、友だちと共有できる。EeroをケーブルTVやDSLのモデムにつなぐと、ユーザのスマートフォンとBluetoothで対話をして、5分でセットアップを終える。そしてそこにEeroのルータをつなげば、それでネットワークは完成する。

Eeroのルータは強力でスマートで使いやすいだけでなく、ビューティフルだ。カウチの下や本の中に隠さなくても、どこに置いてもサマになる。エイリアンのようなアンテナや、奇妙なフラッシュライトが、あなたを困らせたりしない。

同社を創業したCEOのNick Weaverは、前はMenlo VenturesとMcKinseyにいて、さらにその前はスタンフォード大学のスタートアップアクセラレータStartXのファウンダの一人だった。Eeroにはさらに、元TaggedのエンジニアAmos SchallichとParastructureのエンジニアNate Hardisonが加わった。

Eeroのルータをデザインした工業デザイナーFred Bouldの会社は、スマートサーモスタット/煙検出器Nestをはじめ、消費者電子製品をいろいろ手がけている。またEeroのアドバイザーのJon RubensteinはPalmの元CEOで、Apple在籍時にはiMacやiPodの開発に加わった。

同社は創業資金として、First Round Capitalが率いるラウンドにより500万ドルを調達した。そのほかの投資家は、スタンフォードのベンチャーファンドStartX、Menlo Ventures(Weaverがかつて在籍)、AME Cloud Ventures、Homebrew Ventures、Garry TanとAlexis OhanianのInitialized Capital、そしてTrae Vassalloだ。

予約販売価格は、単体のEeroデバイスが125ドル、三つのセットで299ドルだ。これらは最終小売価格では199ドルと499ドルになる。

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オムロンのインキュベーションプログラムでは”ものづくりの匠”が技術支援をしてくれる

もはやIT系のメディアで「IoT」という単語を聞かない日はないんじゃないだろうか。実際IoTを含むハードウェア関連スタートアップのニュースに触れることは多くなっている。

そんな中、2014年に立ち上がった京都の老舗メーカー、オムロンのCVCであるオムロンベンチャーズがハードウェアに特化したインキュベーションプログラムを開催する。名称は「コトチャレンジ」。締め切りは週明けの2月2日。ちなみにプログラム名の「コトチャレンジ」だけれども、コトには事業の「事」、古都京都の「古都」、琴線に触れるものをという「琴」の3つの意味をかけているそうだ。

プログラムの参加対象となるのは、ハードウェアがキーになるようなサービスを作っているスタートアップ。プログラムが始まる3月からの3カ月でプロトタイプの完成を目指す。プログラムは京都での開催を前提としており、京都市内の「京都リサーチパーク」にオフィススペースを用意するほか、オムロンの事業企画担当者によるメンタリング、オムロンのものづくりの匠たちによる技術サポートなどが行われる。プログラムの最後にはデモデイを開催し、3カ月の成果を披露する。優秀なプロダクトに対してはオムロンベンチャーズからの投資も検討する。

ただ、「ディールソーシングのためのイベント」というよりかは、まずはテクノロジーを持つハードウェアスタートアップの掘り起こしという側面が強いのだそう。オムロンベンチャーズ代表取締役社長の小澤尚志氏は、「フルサポートするかというとまた違うかもしれないが、我々のようなメーカーの能力を持ったところがハードウェアスタートアップののエコシステム作りをしていきたい」と語る。

小澤氏はメーカーという立場から、「ホビーとしてはいいが、BtoB、BtoG(government:政府、官)に対してシビアに応えるには、さらなるテクノロジーの精度が必要。リアルなビジネスと組むのはこれからだ」と世のハードウェアスタートアップについて語る。プログラムでは、BtoB、BtoGのニーズにも応えられる製品の企画や設計での支援をするのだそうだ。

小澤氏いわく、オムロンにはスタートアップが簡単に使えない試験器もあるし、「歴史がある企業だからこそできるアドバイス」もあるそうだ。例えば今では一般的な血圧計も、ただ「血圧計を作りました!医療機器です」なんて言っても認められるワケではない。膨大な臨床試験や学会、WHOなどへの働きなど、さまざまなステップを経て初めて血圧計と認められたのだ。こういった経験に基づいたノウハウは、正直スタートアップだけではどうにもならないものだろう。

メーカーの技術者を巻き込んだハッカソンなどは時々見かけるようになったが、インキュベーションプログラムはそうそう多いものではない。スタートアップが集まる東京からすれば開催場所の遠さなどの課題はあるが、老舗メーカーだからこそできる支援には期待したい。


Sony若手チームが「物のメッシュネットワーク」でクラウドファンディング…”事前知名度”をねらう

昨年、シンプルなeペーパースマートウォッチをクラウドファンディングしたSonyが、またIndiegogoにプロジェクトを出している。どうもSonyにとってクラウドファンディングは、新しいアイデアの有効性を、宣伝しながらテストする試験紙なのかもしれない。

その最新のプロジェクトMeshは、すでに目標額の半分近い22000ドルを集めている。それはセンサを使うDIYのためのプラットホームで、複数のデバイス上のセンサはBluetoothで互いに通信し、またiPadのアプリとワイヤレスで対話する。それら物のネットワークの機能を、アプリのドラッグ&ドロップインタフェイスで構成する。その用途例は、Indiegogoのページの最初の方に書かれている。

MeshのセンサコンポーネントはTagと呼ばれ(上図)、LEDと動き検出センサとワイヤレスのボタンとデジ/アナ入出力用のGPIOなどが用意されている。システムはそこから、対象デバイス(照明器具、モーターなど)のセンサと対話することになる。

またソフトウェアのTagもあり、たとえば天気予報のサービスからアラートを送ったり、カメラやマイクなどタブレット上のハードウェアを使ったりする。

複数のMesh Tagが接続され、iPadアプリで構成される。アプリのインタフェイスがシンプルなので、複数のTagが接続されたプロジェクトを技術者でない人でも作れる。またMeshのSDKがあるので、デベロッパは独自のソフトウェアTagを作って、より高度なカスタムプロジェクトを作れる。

いわば複数の多機能なTag群をメッシュネットワークで接続して一つのプロジェクトを仕上げるのだが、具体的にはどんなプロジェクトだろうか? Sonyが例として挙げているのは、たとえば、ドアが急に開いたらその瞬間に、びっくり顔の自己像を撮る写真撮影システムとか、何かが持って行かれそうになったら通知をするシステムなどだ。あるいはゲーマーの動きをTagが感知して、それにふさわしい効果音を発する、とか。要するにいろんなTagを組み合わせた作った一つのメッシュネットワークが、特定の、ユーザやデベロッパが狙った機能を発揮するのだ。アイデアやニーズは、無限にありえる。

クラウドファンディングの目標額が得られれば、Meshのキットは5月にまず、合衆国と日本で発売される。Indiegogoの支援者なら、ベーシックなキットが105ドル、GPIO Tagはやや高くて、別途55ドルだ。

過去に類似製品として、ワイヤレスのセンサキットSAMや、デベロッパ向けにはrelayrのWunderBar、健康とフィットネス専門のBITalinoなどがあった。しかし何よりも興味深いのは、今回のように消費者電子製品の大企業が、クラウドファンディングに頼るスタートアップのような形で、社内の創造性を育てようとしていることだ。

MeshのチームはIndiegogoのページ上で、“Sonyの社内起業育成事業から生まれた熱心な技術者たちの小さなチーム”、と言っている。Bloombergの記事によると、Sonyは昨年から、既存の組織分けになじまないような新しいプロジェクトを見つけて、スピーディーにそれらを育てるための、新しい部署を作った。いわばSonyの社内の起業家的社員たちが、Sonyという名の社内VCにアイデアを売り込んで、必要な資金とともにゴーサインをもらう、という形だ。最初のアイデア売り込み大会は、昨年6月に行われたそうだ。

このMeshも、その最初のピッチ大会から生まれて、その後のプロトタイピング等により実現のめどが立ったので、今年の前半までに製品化できる、という確信を持ったのだろう。クラウドファンディングの目標額は5万ドルで、期限まであと53日ある。

でも、Sonyほどの有名大企業が、なぜクラウドファンディングを頼るのか。それは、このところ企業イメージがひたすらダウンしている旧タイプの古参企業が、スタートアップ全盛のこの時代に、そういう新しい世界の一員になって、AppleやSamsungに負けないフレッシュな企業イメージを確立したいからだ。言い換えるとクラウドファンディングを利用することによって、Sony自身からも体にたまった垢が落ち、自分自身も、若い熱心な技術者チームが引っ張る若い企業になれる。少なくともイメージ的には。

しかもクラウドファンディングには、資金が得られるだけでなく、コミュニティが形成されるメリットがある。そこでは彼らは、エリート企業のエリート社員ではなく、ふつうの若者として、コミュニティの一員になれるのだ。しかも、忌憚のないフィードバックが、無料で得られる。

“Meshをさらに良くしていくための、どんなアイデアでも歓迎します。あなたならどんなものを作るか、それを知りたいのです”、とチームはIndiegogのページのオーディエンスに語りかけている。

Sonyという老朽企業が、滝に打たれて若返るための、謙虚な修行の場。それが、彼らにとってのクラウドファンディングと、スタートアップ界隈のコミュニティだ。それは、世の中に対して教える企業から、世の中から教わる企業への、180度の変身だ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


電子回路のプロトを手軽に作成できるAgIC、1億円の資金調達を実施

昨年開催した「TechCrunch Tokyo 2014」のスタートアップバトルで見事に優勝に輝いたAgIC。同社が約1億円の資金調達を実施した。

調達した資金のうち3600万円は借り入れ、6000万円が第三者割当増資となっている。第三者割当増資の割当先はIoT関連の投資を手掛ける鎌田富久氏が率いるTomyKのほか、East Ventures、中国のYoren、その他事業会社と個人投資家6人となっている。なおTomyKは前回のラウンドでもAgICに出資しており、今回は追加投資となる。またYorenとは、中国での広告関連事業における業務提携を実施。ちなみに日本のスタートアップとしては珍しいのだけれども、同社はプレスリリースでプレマネーバリュエーション(増資前評価額)5億円、優先株での資金調達だとも発表している。

AgICは、導電性の銀ナノインクを使ったペンと専用紙を使って電子回路を描き、電子工作をしたりハードウェアのプロトタイプを作成したりできるキットを日米で販売している。このインクと家庭用プリンタでも回路の作成が可能だ。同社では今後、電子工作向けのキットを始めとした製品ラインナップの拡充、電子工作のレシピ共有サービスの開発などを進めるとしている。


PCB(プリント回路基板)を数分で作る回路基板専用プリンタV-One

回路基板を作るのは楽しいけど難しい。プラスチックの板とエッチング液があれば家でも作れるが、Voltera社が今度作った回路専用のプリンタV-Oneがあれば、全工程をもっと簡単にできる。

このプリンタを作ったJames PickardとJesus ZozayaとAlroy Almeidaの三人は、全員カナダのウォータールー大学で電子機械工学(メカトロニクス工学)を専攻し、一緒に、ラピッドプロトタイピングをもっと簡単迅速にやる、という課題に挑戦した。

“このプリンタがあれば、すべてのハードウェアデベロッパがこれまでの制作工程に感じていたフラストレーションがなくなり、開発期間を数か月から数日に短縮できる”、とAlmeidaは言う。

〔ここにスライドが表示されない場合は原文を見てください。〕

“これまでは、回路基板ができてくるまで二週間もぼーっとして待つなんて余裕のない仕事が多かった。ホビーとしてやるときも、一部はどうしても外注になるから、けっこう高くつく。3Dプリンタが機械的なプロトタイピングに革命をもたらし始めたちょうど同じ時期に、ぼくらは回路基板プリンタのアイデアを発想し、電子工学のプロトタイピングにも同じ革命をもたらしたい、と思った”、と彼は語る。

 

プリンタの製造はアジア等でなく北米でやるつもりだ。彼らは今、ユーザの可能性のある人たちに、家庭用PCBプリンタに必要な要件を聞き取り調査している。想定しているユーザは、大学、メーカー企業、それにハードウェアスタートアップたちだ。

“VolteraのV-Oneは、紙の上の回路図のような単層の回路をプリントするだけでなく、FR4の上に二層の回路をプリントができる。このサイズと費用で二層ができるのは、これが初めてだと思う。しかも小さな部品はすべて基板上に焼結するから、半田が要らない”、とAlmeidaは述べた。

同社はラスベガス(CES)で本誌が主催したHardware Battlefieldのステージでローンチし、発売は来年を予定している。これまでハードウェアホビーを諦めていた人も、全員、大急ぎでトランジスタの勉強をした方が良いね。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))