障害物回避ロボットのRealtime Roboticsに三菱電やオムロンが12億円超を投資

ロボットテクノロジーの開発で最も困難な課題のひとつは、ダイナミックな環境で動作するロボットが人間や他の障害物に衝突するのを防止することだ。ロボットは予期せぬ障害物を検知し、それらを避けて移動する経路を発見しなければならない。

ボストンに本拠を置くスタートアップ、Realtime Roboticsはこの問題の解決に当てるためにシリーズAのラウンドで1170万ドル【約12億7200万円)の資金を調達したことを発表した。

SPARX Asset Managementがラウンドをリードし、三菱電機、現代自動車(ヒュンダイ)、オムロン・ベンチャーズなどの企業が戦略的投資を実施した。トヨタ自動車グループのToyota AI Venturesをはじめ、Scrum Ventures、Duke Angel Networkなどが既存投資家だ。米国時間10月15日には、今年に入ってから実施された数回の総投資額が1290万ドル(約14億円)と発表された。

Realtime RoboticsのCEOであるピーター・ハワード氏はTechchCrunchに対し、同社のソリューションは高度なロボティクス・テクノロジーを利用しているとして次のように述べた。

我々のソリューションは2016年にデューク大学でロボティックモーションプランニングと呼ばれるプロジェクトで開発されたテクノロジーをベースとしている。これは6ないし7自由度を持つロボットが障害物を避けながら空間を移動する方法を発見するテクノロジーだ。

それ自身としても難しい課題だが、人間の作業者や他のロボットなどが付近で動きまわるダイナミックな環境では解くのがことに困難となる。これは障害物いつどこに割り込んでくるか予測できず、従ってロボットがどのように行動すべきか事前に決定できないからだ。Realtime Roboticsはこれに対してRapidPlanとRapidSenseという2つのテクノロジーによる解決を図っている。同社ではこのダイナミックな衝突防止テクノロジーにより「複数のロボットを同一の作業区域内で協調動作させることが可能となる。これには高価なセーフティーシステムや時間のかかる複雑な事前のプログラミングを必要としない」という。このソリューションには同社独自のハードウェアとソフトウェアが用いられてロボットを安全に動作させる。

開発はまだ初期段階にあり、13社の顧客と共同でコンセプトの有効性を実証する作業が進められている。最終的には現在の顧客がOEMとして同社のプロダクトを製造販売できるようになることが最終目標だ。ハワードCEO氏によれば、有力ロボティクス企業と同時に自動運転車を開発している自動車メーカーとも協力しているという。自動運転の実現には有効な衝突回避テクノロジーが欠かせない。実際、トヨタが最初期からの投資家であり、今回のラウンドには韓国の現代自動車も加わっている。

「衝突回避テクノロジーは農業、食品製造、土木建設など他の産業分野でも有効だ。人間が自身の身体能力を使って仕事をしている分野ならどこでもわれわれのテクノロジーが利用できる。(この種のテクノロジーにとって市場への)参入の機はかなり熟している」とハワード氏はビジョンを述べた。

【Japan編集部追記】Realtime RoboticsはScrum Connect 2018に参加し、ハワードCEOが来日して講演、デモを行っている。TechCrunch Japanでも詳しいレポートを掲載している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

OpenAIの人間的なロボットは片手でルービックキューブを解く

ルービックキューブをもっと速く解く変わったやり方という話題には、いつも独特のかったるさがある。目隠しをしたり、ジャグリングをしながらだったり、片手だったり、やり方はさまざまだが、やってる人は真剣でも、どことなく目立ちたがり屋の雰囲気が伴う。

OpenAIも、目立ちたがり屋の仲間入りをしたかったようだ。彼らが作ったロボットハンドDactyl(ダクティル、動物の指)も、ルービックキューブを解けるのだ。

イーロン・マスク氏などが支援するこの非営利団体は、ロボットハンドがルービックキューブを片手で解くことを学習した、と発表した。その偉業は、このロボットがとくにキューブ(立方体)を上手に扱うことのデモンストレーションでもある。この前は、このロボットが現実世界での訓練なしで、仮想シミュレーションだけで未知のオブジェクトと対話するところを見た。そして今度のDactylは、その能力をベースに、新しい技を学習した。

関連記事:OpenAI’s robotic hand doesn’t need humans to teach it human behaviors(OpenAIのロボットハンドは人間がいなくても人間の動きを教えられる、未訳)

ロボットがルービックキューブを分析してその解き方を見つけることと、さまざまな条件下で実際にその動きができることは次元が違う話題だ。しかし、解き方を「学習する」ということは、例えば指が全部縛られているなどの深刻な障がいがあっても、システムが自分で自分を調整してパズルを解く過程を見つけることだ。Dactylにはそれができる。

まだ欠陥はあるし、人間の世界チャンピオンに勝つのはまだ無理だが、下のビデオではロボットハンドがルービックキューブを4分足らずで解いている。やはり相当すごい。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

たこ焼きロボがイトーヨーカドー幕張店に実戦配備、今川焼きロボ、食洗機ロボの導入も視野に

コネクテッドロボティクスセブン&アイ・フードシステムズは10月16日、千葉・幕張にあるイトーヨーカドー幕張店にコネクテッドロボティクスが開発した、たこ焼きロボット「オクトシェフ」(愛称:ハッピー)2体とアイスクリームロボット「レイタ」(愛称:ワンダー)1体を導入したことを発表した。3体のロボットは10月17日朝9時から稼働する

「まずは幕張店へ導入・検証したうえで他店への展開も考えていく」と語るセブン&アイ・フードシステムズの小松雅美社長

実際に3体のロボットが配備されるのは、イトーヨーカドー幕張店の1F奥にあるフードコート。イトーヨーカドー店舗内を中心に営業しているファストフード店のポッポ幕張店だ。同店では、お好み焼きやラーメン、たこ焼き、ソフトクリームなどを販売しており、今回のロボット導入でたこ焼きとソフトクリームの提供作業が省人化される。

「2020年に100台、2022年に1000台のロボットの普及を目指す」と語る、コネクテッドロボティクス創業者の沢登哲也氏

たこ焼きロボットのハッピーは、コネクテッドロボティクスが長崎・ハウステンボスに導入しているオクトシェフをベースにポッポ仕様にカスタマイズされた機体だ。具体的には、ロボットのスキルアップ(制御部分のチューニング)、業務用厨房機器メーカーのタニコーとの協力により安定性・信頼性を持たせた。そのほか、アームの先に取り付ける器具などの消耗品の耐久性も向上させている。

たこ焼きの生地や具材、油などをあらかじめ所定位置にセットしておくことで、鉄板への油入れ、生地の流し込み、具材の投下、たこ焼きをひっくり返す、たこ焼きをピックアップするという操作をロボットが代行してくれる。店舗スタッフは、ロボットがピックアップしたたこ焼きを小皿に取り分けて、ソースやマヨネーズ、かつお節などのトッピングを追加すればいい。たこ焼き製造のためのスタッフの教育コストや時間を削減できるうえ、高温の鉄板の前にスタッフが常駐する必要がなく労働環境の改善にもなる。もちろんスタッフの人員も削減できるので労働力確保が問題となる飲食店としては強い味方となるだろう。

たこ焼きの焼き加減はロボットに搭載されたカメラで取り込んだ画像を解析して最適な状態を判別。約20分で96個(12人ぶん)のたこ焼きを製造できる。ロボットの操作はタブレットと一元管理可能で、何時に何個作るまでを細かく指定できる。

さらにポッポでは今回のロボット導入にエンターテインメント性を持たせ、「ポッポサーカス上陸!」として盛り上げる。たこ焼きロボットのハッピーはたこ焼きピックの色をタコに合わせて赤色に統一しているほか、アイスクリームロボットのランダーは犬の外装をまとう。

なお、セブン&アイ・フードシステムズの小松雅美社長によると、たこ焼きロボットとソフトクリームロボットの実戦配備だけでなく、今後は第2フェーズとしてポッポで提供している今川焼き(黄金焼き)製造へのロボット導入、第3フェーズとして食洗機ロボットの導入を計画しているという。幕張店が第1号店になった理由としては「若年層、ファミリー、シニア層など幅広い客層が来店する店舗である」と語った。

コネクテッドロボティクスの特徴は、比較的安価な汎用アームロボットをソフトウェアでチューニングして調理ロボットに変身させている点。数千万円する専用ロボットに比べて開発コストが抑えられる。さらに同社はロボットをサービスとして提供するRaaSモデルとして提供するため、店舗側は初期導入コストやランニングコストを抑えられ、常に最新のロボットを導入できるというメリットがある。

Eureka Roboticsの新ロボットアームは、光学レンズとミラー用に設計

我々は、まだ自動運転におけるコラボレーションの段階で、消費者が日常的に利用できるようになるのはかなり先のことだ。つまり、米国時間10月9日に発表された新しい「オートノマス・ビークル・コンピューティング・コンソーシアム」(AVCC)のような団体が形成される機会はたくさんある。

AVCCにはARM、Bosch(ボッシュ)、Continental(コンティネンタル)、GM、トヨタ、Nvidia、NXP、デンソーが含まれ、今日の自動車業界をリードするチップメーカーや一流サプライヤー、自動車メーカーが集まった。

AVCCの目標は「自動運転車を大規模に展開するために最も重要な課題を解決する」ために協力することで、これは自動運転が商業的に利用可能な技術になり、最大の利益を得ようとする努力を結集し、商業化を加速させるためのものだ。自動運転技術はここ数年、熱心な投資と注目を集めてきた分野だが、これらの企業が投資から本当に利益を得られるようになるまでには、まだ時間がかかる。

では、この目標の達成にはなにが必要だろうか。まず、AVシステムのアーキテクチャとコンピュータが遵守すべきサイズ、温度、消費電力、および安全基準を概説した、推奨仕様を定義する。この基準を守ることで、高価で少量しか生産できないプロトタイプから、商業規模でのAVシステムの製造と展開へと移行できるようになる。

しかしこのグループの目標は、単にシステムの仕様を定義するだけではない。参加企業は「共通の技術的課題を研究」し、実際に自動運転車を路上で走らせる際に克服すべき根本的な技術的課題を克服するために、力を合わせることになる。

もちろん、グループの初期メンバーには上記の企業しか含まれていないが、新しいメンバーにも門戸は開かれている。

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(翻訳:塚本直樹)

コンピュータービジョンでごみ処理を改善するGreyparrot

英国ロンドン拠点のGreyparrot(グレイパロット)は、ごみ処理の改善を目指している。とくに同社は、ごみ処理の各段階における選別を、コンピュータービジョンを利用して効率化する。GreyparrotはTechCrunch Disrupt SFで、Startup Battlefieldのワイルドカードに選ばれた。

同社は機械学習のモデルを訓練して、ガラスや紙、段ボール、新聞、紙、プラスチックなどを見分ける。プラスチックはPET、HDPEなど、その素材も識別する。

そしてGreyparrotはシンプルなカメラをコンピューターに接続し、個々のごみを一瞬で選別する。

このような技術にはいろいろなユースケースがあるが、特に有望なのはごみの分別施設だ。分別施設はすでに多くの機械を使って、ごみの大小や、金属とプラスチックの違いなどを分別しているが、でも最終的には人間の目が、機械が犯す間違いを修正している。

分別を100%正しく行うことは不可能だが、できる限り100%に近づきたいものだ。分別施設ではPETプラスチックの巨大なキューブを作って地球の裏側の国々に送り、そこでいろんなものに加工されている。

そのキューブが、汚れていることがよくある。そこでたとえばインドネシアなどは頻繁に、ごみのコンテナを米国やヨーロッパに送り返している。

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Greyparrotは、分別工程の特に最後の段階を助ける。そのプロダクトは、コンベアベルトの汚れをチェックできる。また問題のあるオブジェクトを見つけた場合は分別ロボットを調整して、不純物や汚れたごみを自動的に拾い上げるようにする。同社はそのソリューションを、英国と韓国でテストしてきた。資金はこれまで、120万ドルを調達している。

Greyparrotには、今後の新しいユースケースのアイデアがある。例えば、ごみ集積容器がその技術を組み込めば、最初の時点でごみを自動的に分類できる。また、自動販売機の隣りにある空き瓶空き缶返還器をGreyparrot化すれば、ユーザーのアカウントにごみの種類に応じてお金が入るだろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

3Dのコンピュータービジョンと特製のロボットアームでイチゴの収穫を自動化

近い将来Traptic(トラプティック)のロボットは、もっといろんな種類の作物を収穫できるだろう。でも今のところ、このサウスベイに拠を置くチームはもっぱらイチゴにフォーカスしている。

米国では、果物の約88%がカリフォルニアで穫れる。その中でもイチゴ類はディスラプトの機会が大きい。労働力の不足に移民政策の引き締めが加わって、畑には大量の未収穫作物が放置されている。人手不足のために農家は、実った作物の約5分の1を失っている。

もちろん今すでに、さまざまな主要商品作物にオートメーションが適用されている。小麦やトウモロコシの収穫は、相当前から機械化されている。しかし、イチゴなどのフルーツには、独特の難しい側面がある。あまりにも繊細なので機械化に向かず、ピッカーと呼ばれる人間の摘果労働者の器用な手を必要とする。

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しかし今年のDisrupt Battlefieldに出たTrapticは、専用機のロボットでこの問題に挑戦している。ロボットアームは一般市販品だが、グリッパーとソフトウェアは自社製で、同社のそのデバイスはもっぱらイチゴの収穫作業の介助が目的だ。

アームはカートの上部のスペースに、そのスペースを囲むように5ないし6本ある。視覚系は3Dカメラとニューラルネットワークを利用してイチゴを見つけ、その熟度を判断する。そしてイチゴの位置を1mmの精度で判断して摘み取る。

でもこのロボットの最もユニークな部分は特製のグリッパー(Gripper、つかむ部分)だろう。ロボット用のグリッパーも、今ではいろんな市販品がある。でも上述の理由により、Trapticはイチゴの摘み取りに厳密に適したグリッパーを必要とした。それは正確であると同時に、熟したイチゴをキズつけない優しさも必要だ。

そこで同社が最終的に到達したのは、完全に厳密でもなく、完全に柔軟でもないグリッパーだ。爪が収まる金属製の基部はゴムバンドで覆われて、一定性のない果実の形に適応する。しかしそれと同時に果実をぴったりと保持して、植物本体から取り去る。

Trapticの現在のマシンはケレス(Ceres)と呼ばれ、トラクターの後ろに取り付けて牽引される大きな箱だ。現在、カリフォルニアの北部と南部の農家がテストしているが、極端に違う両方の気候でうまく行けば、イチゴ農家が年間を通して利用できるだろう。

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同社は当面、ロボットが人間ピッカーをリプレースするのではなく、彼らを助けると定義している。でも最終的にはこんなデバイスが人間の労働者をリプレースするのだろう。Trapticがマシンのリース料金を人間労働者の賃金と同じく収量ベースにしているのも、そんな未来を展望しているからだ。しかし労働力不足と言いながら人口は増加している現状では、それはまだまだ遠い未来の話だ。

Trapticは今後、オレンジやメロン、トウガラシなど、そのほかの作物の自動収穫機も開発していくつもりだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

inahoがアスパラ自動収穫ロボの正式サービス開始、初号機は佐賀県の農家に導入

inahoは10月3日、自動野菜収穫ロボットの従量課金型のビジネスモデル(RaaS、Robot as a Service)を正式にスタートさせ、佐賀県の農家に第1号となるロボットを導入した。市場の取引価格×収穫量の一部を利用料として徴集する従量課金の料金体系を採っており、農家は初期導入費を抑えられるほか、故障によるメンテナンス費が不要なのが特徴だ。

ロボットのサイズは、全長125×全幅39×55cmで、重さは約65kg。バッテリーで駆動し、フル充電で最大10時間の連続駆動ができる。バッテリーは家庭用コンセントに接続して充電可能だ。このロボットでアスパラガス1本を12秒ほどで収穫できるという。

ロボットは、移動、探索、収穫という一連の流れで自動運転する。具体的には、畑に設置した白い線に沿ってルート走行するため、ビニールハウス間の移動や夜間の利用もOK。操作には専用アプリをインストールしたスマートフォンを使うが、遠隔でコントロール可能だ。また、ロボットが詰んでいるカゴが収穫物でいっぱいになった場合はスマーフォンに通知が届く。収穫する野菜の大きさはセンチメートル単位で指定できるほか、収穫対象となる野菜はロボットが内蔵するAIを活用した画像認識により枝や茎と判別したうえで、設定したサイズ以上のものだけがカゴに入れられる仕組みだ。

収穫するための手には医療用のロボットアームをカスタマイズしたもので、収穫物にキズを付けずにカゴに入れられるとしている。同社では収穫できる野菜の種類を増やすことを計画しており、将来的にはアスパラガスのほか、トマトやイチゴ、キュウリなど目視が必要な野菜を中心に対応作物を広げていく。今後さまざまなデータを収集し、農家へ生産性向上のアドバイスなども実施していくという。

同社は今後の目標として、ロボットの生産台数を今年中に数十台、2020年に数百台、2022年には約1万台を目標としており、九州を中心に新たに拠点を開設していく。さらに2020年にオランダに拠点を開設し、グローバル展開も目指すという。

農林水産省が公開している「農業構造動態調査報告書」や「農林業センサス」によると、基幹的農業従業者数は2010年の205万人から、2020年には152万人、2030年には100万人と20年間で半減しているうえ、施設園芸農家数、面積ともに過去15年で約25%減少。1戸当たりの施設面積も規模拡大が進んでいないなど、国内農業を取り巻く現状は非常に厳しい。

同省の「農業労働力に関する統計」や「2017年農業構造動態調査」によると、農業就業人口や基幹的農業従事者の平均年齢は約67歳、49歳以下の割合は約10%というデータもある。これらのデータから、国内農業は高齢の現役世代に支えられており、後継者がいないため年を追うごとに従事者が減るという悪循環に陥っていることが浮き彫りになってくる。

inahoは、農業従事者数の減少と高齢化を食い止めるため、開発したロボットの初期導入コストやランニングコストを抑えられる従量課金のRaaSモデルを選んだ。初期導入費用が高額になればなるほど、跡継ぎ問題の解決を含めて農家側に長期的な経営展望が必要だが、それを高齢の現役世代に求めるのは難しい。従量課金であればとりあえず導入してみることも容易だ。まずはロボットを導入してみて人件費や労働時間の削減、収穫量の安定化が図れれば、作付面積の拡大などに着手できるだろう。ロボットとの共働で農業で安定的な収益を確保できるようになれば、後継者問題も自然と解決するはずだ。

Boston Dynamicsからイヌ型四脚ロボが登場、お値段は高級車程度

4脚ロボットの開発を続けてきたBoston Dynamicsだが、同社のロボットを身の回りで見かけるようになる日はまだ遠いと思っていた。しかしBoston Dynamics(ボストン・ダイナミクス)は小型で高機能なロボット「Spot」の市販を開始した。実は一部のユーザーはすでにリースで利用中だという。価格は明らかでないが「高級車程度」という情報がある。

Boston Dynamicsはロボットをテーマにした昨年のTechCrunch SessionsでSpotをお披露目した(このときはSpotMiniという名称だった)。今年5月の同じカンファレンスではBoston Dynamicsとして初の商用を目指すプロダクトが登場した。障害物の多い環境でも踏破でき驚くほど多機能だった。このプロダクトがSpotというモデル名でついに販売が開始された。

Boston Dynamicsのビジネス開発担当バイスプレジデントを務めるMichael Perry(マイケル・ペリー)氏はTechCrunchにインタビューに対してこう語った。

Spotは現在すでに実用に使われている。先月、から アーリーアダプタープログラムのパートナーにロボットを届け始めている。こうしたパートナーには「Spotが役に立つのはどういう場面ですか?」と尋ねている。もちろん我々自身の考えはあるわけだが、なんといっても重要なのは現実のユースケースだ。

現在アーリーアダプタープログラムはリースをメインとしているが、ストレートな買い切りでSpotを所有したいという希望が殺到しているという。オプションなどによって価格は大幅に変わってくるが、数万ドル(数百万円)のレベルらしい。もちろんこれはホビーロボットではない。

「アーリーアダプタープログラムについていえば、費用総額は自動車と同じくらいのレベルだ。ただし自動車といってもいろあるので(簡単に言えない)」とペリー氏は語る。

つまりあるユーザーはいちばんシンプルな骨格部分だけを必要とし、必要なセンサーなどを搭載したいというが、別のユーザーは既存のオートメーションの流れに組み込めるようなフル装備を必要とする、ということらしい。

どちらの場合でもカスタマー側にそれなりのエンジニアリング能力があることが前提だ。残念ながらSpotはスイッチを入れるだけで石油のパイプラインや精製施設を検査できるプロダクトではない。Spotは強力、多機能なロボットだが、Boston Dynamicsは特定の作業をただちに実行できるようなターンキー・サービスを提供する会社ではない。Perry氏はこう説明する。

ロボットと一緒に技術者を10人つけなくてもいい段階まで来た。ロボットを人間の近くで作業させたいケースも多い。安全性を確保するためには人間を検知、認識し、動作を変更する必要がある。我々のロボットではこれが完全にできるようになった。我々はGitHubのレポジトリに誰でもアクセスできるようにしている。しかし誰かかがプログラムを書いてロボットに組み込みたいというなら、現実として何ができて、何がまだできないかデベロッパーはよく理解している必要がある。

とはいえ、「何をさせたいか」を逐一列挙したホワイトペーパーを用意する必要はない。多くの企業はGitHubのレポジトリからプログラムをダウンロードしてしばらくテストしてみる程度でうまくいっている。条件があまり複雑でない特定のオペレーションを実行させたいのであればBoston Dynamicsに相談してみるといいだろう。

ペリー氏によれば「問い合わせのメールが殺到している。中にはペットにして冷蔵庫からビールを取ってこさせるのに使いたいというメールもある。それは楽しそうだが、我々のプロダクトはまだそこまで行っていない」という。

今のところ台の上にジャンプできる2脚ロボットであるAtlas(下の動画)の購入可能性についてはいまのところ情報がない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

巨大戦闘ロボ開発のMegaBotsに未来開けず、ついにeBayでオークションに

MegaBots(メガボッツ)が倒産した。ベイエリアで戦闘ロボットを作っていた同社がビデオで「現在の形のMegaBotsはこれで終わる」と声明し、これを機に15トンのEagle PrimeロボットをeBayに出品した。そのオークションは1ドルから始まったが、現在(日本時間9月25日午後6時)は数十名が入札し5万ドル(約540万円)を超えている。

画像クレジット:SN Jacobson/MegaBots Inc.(画像は一部変えている)

eBayのページには、「ロボットは機能する。会社が倒産したのでオークションに出しただけである」と書かれている。FAQには、この特殊なロボットの特徴と扱い方が以下のように記載されている。

ダート(未舗装の道)は得意でない。平滑な硬い面が好きだ。泥のような柔らかいダートだと、足がのめり込んでしまって、自分で足を上げられない。ダートでない普通の地面なら前進後退OKだが、上手に向きを変えられるのは舗装面の上だけだ。75%の人が「これをバーニングマンに連れていくかい?」と尋ねるだろう。そのたびにあなたは、上記を説明しなければならない。実際に一番多い質問がこれだった。

MegaBotsによると、このロボットの制作には約250万ドル(約2億7000万円)かかっている(多くはクラウドファンディングでまかなった)。だからeBayで5万ドルは超安い。落札者は送料も負担しなければならないが、おそらく西海岸では4000ドル(約43万円)以上、東部なら1万7000ドル(約180万円)以上はするだろう。

もちろん、この新品みたいな巨大戦闘ロボットでお金を稼げるだろう。MegaBotsによると、米国内のショウで7000ドル稼いだこともある。今ならもっと稼げるかも。

会社はどうなったのかというと、ここ数年利益が出ずジリ貧が続いた。クラウドファンディングでは派手に人気者になったが、それが利益にはつながらなかった。

公開されたビデオで共同創業者のMatt Oehrlein(マット・オーレイン)氏は「また資金切れになった。この製品で利益を上げることができなかった。3年前にローンを組んだが、その利息の支払いがこれ以上できない。だから会社の資産を売り払って銀行にできるかぎり借金を返したい。その後、倒産の手続きに入れるだろう」とコメントしている。

オーレインは会社の将来について含みを残すが、しかし資産売却とその後の倒産処理にそれほどの将来性は感じられない。一方共同創業者のGui Cavalcantiはソフトロボットの企業Breeze Automationを作り、4月のTC Sessions: Roboticsに初登壇した。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ヒューマノイド型ロボAtlasが床運動のルーティーンをこなす

Boston Dynamics(ボストンダイナミクス)は、手持ちのロボットを鍛え直してきた。2足歩行のヒューマノイド型ロボAtlas(アトラス)に、体操の床運動のルーティーンを教え込んだのだ。前転からの逆立ち、側転やジャンプツイストまで、驚くほどエレガントな動きを見せる。このようなレベルのアスリート魂(ロボットが「アスリート魂」を持てるかどうかは別として)は、見ているだけで感動的だ。なにしろ体重が330ポンド(約150kg)もあるロボットなのだ。2013年に初めてプロトタイプが開発されたときには、「やっと歩ける」程度の動きしかできなかった。

このルーティーンでAtlasが見せる動きは、信じられないほど人間的なもの。人間を超えた動きさえ感じられる。特に、最初の前転の前にカメのような姿勢を取るところはどうだろう。Atlasがパルクールのスキルを披露したのは今回が初めてではない。しかしBoston Dynamicsによれば、現在では、このような運動をプログラミングするプロセスを簡略化するための、新たなテクニックを採用しているという。細かな動きの記述を、実際の動作に自動的に変換するもので、新たに開発した最適化のアルゴリズムも適用している。それにより、ロボットは自分の可動範囲の制限を考慮した上で、目的の動作を実現できる。

その結果、以前よりもはるかに素早く、新しいルーティーンを作成できるようになった。だいたい8割程度は、狙った通りのルーティーンを完成させることができるという。これは人間の体操選手と比べても、非常に高い確率だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

既存の建機を後付けキットで自動運転車にするBuilt Robotics

建設機械の自動化を志向しているBuilt Roboticsが、シリーズBのラウンドで3300万ドルを調達したことを米国時間9月19日に発表した。

建設業界は世界的に人手不足だが、Builtの狙いは、一人のオペレーターが同時に複数の自動化建機をコントロールし、自分自身は機械にはできない作業のために何かに乗るというやり方だ。これなら、例えば従来5人のチームを要した現場を1人で担当できるだろう。

Built Roboticsは建機をイチから作るのではなく、あちこちの現場でよく使われている建機を自動化する。同社は、掘削機やブルドーザーやスキッドステアローダーなどに取り付けるキットを売っている。そのキットはライダー(Lidar)やGPSやWi-Fiなどのテクノロジーをマシンの内奥に組み込み、自動化のための脳を与える。あるいは建機メーカー企業がBuilt Roboticsの変換ボックスを買って自社製品に取り付け、マシンが自動運転モードで動いた時間ぶん使用料を払うという方式もある。

操縦者のいない重さ20トンのマシンが、回りの人に注意せずに建設現場を走り回ることは誰も望まない。そこで同社の自動化マシンは、自分のまわりを常時監視する。TechCrunchの4月の記事では、次のように書いた:

建機に搭載された複数のカメラが人の接近を絶えず監視している。何かの不具合で機体が傾き始めたり、地中に何かがあると、センサーがそれを感知し電源を切る。マシンの背後には大きな赤い緊急停止ボタンがあり、またオペレーターのデスクにもワイヤレスの停止ボタンがある。

数カ月前には、Builtを搭載した建機のデモを見た。

今回のシリーズBラウンドは、ヨーロッパの大企業Siemens(シーメンス)の投資部門Next47がリードし、Building Venturesとこれまでの投資家であるFounders Fund、Presidio Ventures、Lemnos、そしてNEAが参加した。これによりNext47のT.J. Rylander(T・J・ライランダー)氏がBuiltの取締役会に入る。

同社は2017年にシリーズAで1500万ドルを調達しているので、調達総額は4800万ドルになる。Builtの共同創業者であるNoah Ready-Campbell(ノア・レディ-キャンベル)氏によると、社員数がここ数か月で倍増し、今では40名近くなっているとのこと。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Amazon GoのライバルTrigoが約24億円を調達

従来、スーパーのレジでは店員が精算していたが、バーコードリーダーとタッチスクリーンによる自動化が世界のいたる所で広まりつつある。その次のシステムとして多くの人が予想するのは、コンピュータービジョン技術をベースにしたプラットフォームだろう。客が棚から取ったものを画像認識し、買い物中に金額を自動集計する。客は店を出るときに何もせずに済む。9月16日、このような次世代精算システムを開発するスタートアップが資金調達を実施した。調達した資金によってシステムの開発を継続し、食料品小売業者に売り込む。ターゲットとして想定するのは、先行するAmazon Goを横目にしながらも、Amazonに頼らずにAIを使ってアクションを起こしたいと考えている業者だ。

精算不要の食料品購入システムを特に大型スーパー向けに開発するテルアビブのコンピュータービジョンスタートアップであるTrigo(トリゴ)は、シリーズAラウンドで2200万ドル(約24億円)を調達した。Red Dot Capitalがラウンドをリードし、既存株主であるVertex Ventures IsraelとHetz Venturesも参加した。これまでのTrigoの調達総額は2900万ドル(約31億円)となった。

Trigoはバリュエーションを公表していないが、すでにイスラエル最大の食料品店であるShufersal(シュファーサル)やヨーロッパのチェーン(会社名未公表)などの食料品チェーンと多くの取引を行っているという。

Shufersalは早くも今後5年間で280店舗にTrigoのシステムを導入する計画だが、Trigoはまだ開発の初期段階にあり、Trigoの強気の見通しに期待する計画と言える。Trigoは現在、約460平方mの店舗でカメラとセンサーをテストしているという。Amazon Goの典型的な店舗の2倍の広さだが、大規模なスーパー(約3300~4200平方m)だけでなく、Trader Joe’sやLidl(約1900平方m)などと比べてもまだまだ小さい。

Amazon Goと同様にTrigoも、店舗に張り巡らしたカメラが、買い物かごの中身を記録する。カメラは単に商品を見分けるだけではない。三角測量システムによって、同じ商品に対する二重請求を防ぎ、また客が店を出る前にカゴから棚に戻した商品を合計金額から除くことができる。

物事をスピードアップするだけでもない。買い物体験を再び楽しくすることがテーマだ。

「人々が食料品のeコマースを本当に望んでいるとは思わない」とマーケティング担当副社長のRan Peled(ラン・ペレド)氏は語った。「スーパーで買い物をするという体験がどんどんつまらなくなっているからeコマースを利用しているだけだ。実在店舗が、数十年前のスーパーに行くのが楽しかったあの時代の魅力を取り戻すのをお手伝いしたい。コンピュータービジョンベースのまったく新しいOSを店舗に導入したら何が起こるだろうか?」。

Amazon Goとは違いTrigoは特定の小売業者と利害関係があるわけではないため、小売業者同士の競争関係を気にせず、どの業者にも売り込むことができる。Trigoのシステムは店にポイントカードがあっても問題なく導入できる。

ただ、Amazonが世界で最も価値ある企業の1つに成長したのは、さまざまな企業のライバルであると同時にパートナーでもあったからだ。Amazon Goのシステムを競争相手に提供したとしても、Amazon Goの成長を妨げる要因になるかどうかはわからない。それはTrigoにも言える。

「Amazon Goを支える技術は、約10年前から業界に存在していた」とペレド氏は述べる。Trigoは2018年にMichael(マイケル)とDaniel(ダニエル)のGabay(ガベイ)の3兄弟によって設立された。「しかし、弊社のシステムを構築したその時がまさに、『ああ、これは上手くいくかもしれない!』と気づいた瞬間だった」。今となって彼が思うのは、タイミングが良かったということだ。食料品小売業者は自動化の流れに乗りたいと思っている。AmazonがGoを自身のビジネスに使うだけでなく競争相手の小売業者が購入できるサービスとして売り出しても使わない業者は一定数いるだろう。Trigoにチャンスはある。

精算にかかる時間をゼロにするという課題に、違う方法で挑むスタートアップもある。ちょうど先週、スマートなカートを開発するCaperが資金調達を実施した。ショッピングカートのセンサーが商品を記録し、買い物金額に加算する。スマートカートは客のショッピングカートの中身をより近くから確認できる利点があるが、Trigoのような店舗全体のシステムは運用コストをより低く抑えることができそうだ。例えば、ソフトウェアは既存の店内カメラのものが使える。

一般的に特許は企業が知的財産を守る重要な方法の1つだが、興味深いことにTrigoは別のアプローチを取る。「特許は申請しない。テクノロジーを公開したくないからだ」とペレド氏は言う。「誰にも見せたくない部分がある」。皮肉にもコンピュータービジョンを開発する会社のコメントだ。

世の中のすべての問題またはプロセスをテクノロジーによって解決する動きが加速する中、新しいテクノロジーの力で食料品店を21世紀へ導く者がいる。Trigoはそんな会社の1つであり、食品小売ビジネスが切望する存在だ。

「世界をリードするTrigoのコンピュータービジョンチームがこのテクノロジーを世界規模で拡大し、食料品小売業界全体に革命を起こす最初のチームになると信じている」。Red Dot CapitalのマネージングパートナーであるBarak Salomon(バラク・サロモン)氏は語る。「精算時に各商品のバーコードを人間がスキャンするプロセスには時間がかかるし時代遅れだ。Trigoのテクノロジーは実在店舗を救う。店で買い物をするという体験に新しい命を吹き込む一方、今なお残っている良い部分は生かしたい」。

 画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

クソロボット製作者のシモーネ・ギールツがDisrupt SFに登壇

来月は楽しいゲストがやってくる。クソロボット(Shitty Robots)で有名なSimone Giertz(シモーネ・ギールツ)氏が、米国サンフランシスコのMoscone Center(もスコーン・センター)で10月2日から4日まで行われるDisrupt SFに登場するのだ。

彼女は米国に住むスウェーデン人の発明家で、YouTubeのチャンネル登録者が192万人もいる。テクノロジーとアートの結びつきを奇抜なレンズを通していろんな角度から実験しまくる、創意豊かなDIYビデオが好評だ。

ギールツ氏は自称クソロボットの制作で有名なだけでなく、いろんな発明がある。スープと朝食を食べさせてくれたり、クリスマスカードを描いてくれたり、口紅を塗ってくれるアームは、出来不出来の落差が大きくて笑えた。もっと最近の口コミで広まった傑作は、電動工具を持ち出して自分のTesla車をピックアップトラックに変えてしまったやつだ。

サンフランシスコのステージで見せてくれる作品の中には、毎日カレンダーのようなすごく面白いものがあるだろう。このLED点灯カレンダーは昨年Kickstarterで60万ドルを集めたもので、ユーザーがいい習慣を身につけることが目的だ。瞑想、必ずデンタルフロスで歯を磨く、ブログを書く、あるいは、チューロ(メキシコ風揚げパン)を食べるとか。

Disrupt SFには、ギールツ氏のほかにもおもしろいゲストがいっぱい。キティホークのSebastian Thrun(セバスチアン・スラン)氏や、元国家安全保障局長官のMike Rodgers(マイク・ロジャーズ)氏、遺伝子編集技術CRISPRのRachel Haurwitz(レイチェル・ハウルウィッツ)氏、そしてSalesforceのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏やBoxのAaron Levie(アーロン・レヴィ)氏などなど、数十名が登壇する。

今からチケットを買いたい人は、ぜひここで!。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

人によるコントロールと機械学習を融合したスマート義手

義肢は年々良くなっているが、それらの強度と精度が使いやすさや能力(実際にできること)に貢献していないこともあり、とくに手足を切断手術した人たちがごく初歩的な動作しかできない場合が多い。

スイスの研究者たちが調べた有望と思われるやり方では、手動では制御できない部分をAIが引き受ける。

問題の具体的な例として、腕を切断した人が膝の上でスマート義手を制御する場合を考えてみよう。残存する筋肉に取り付けられたセンサーなどからの信号で、義手はかなり容易に腕を上げ、ある位置へ導き、テーブルの上の物をつかむ。

でも、その次はどうなる?指をコントロールするたくさんの筋肉と腱はない。そして義手の人工的な指を、ユーザーが望む曲げ方や伸ばし方ができるように解析する能力もない。ユーザーにできることが、単に総称的な「握る」や「放す」の指示だけなら、実際に手でできていたことを実行するのほぼ不可能だ。

そこが、スイス連邦工科大学ローザンヌ校(École polytechnique fédérale de Lausanne、EPFL)の研究者の出番だった。義手に「握れ」と「放せ」と命令したあと、それから先の動作を特に指示しなくても最良の握り方を見つけられるなら問題はない。EPFLのロボット工学の研究者たちは長年、「握り方の自動的な見つけ方」を研究してきた。だから今の義手の問題を解決するには、彼らがうってつけなのだ。

epfl roboarm

義手のユーザーは、本物の手がない状態でさまざまな動きや握りをできるだけうまく試みながら、そのときの筋肉信号を機械学習のモデルに解析・訓練させる。その基礎的な情報で、ロボットの手は自分が今どんなタイプの把握を試みているのかを知り、目的物との接触領域を監視して最大化することによって、手はリアルタイムで最良の握りをその場で作り出す。落下防止機構も備えており、滑落が始まったら0.5秒以内に握りを調節できる。

その結果、目的物はユーザーが基本的には自分の意思でそれを握ってる間、しっかりとやさしくその状態を維持する。目的物の相手をすることが終わってコーヒーを飲んだり、ひと切れのフルーツをボウルから皿に移したりするときは、その目的物を「離し」、システムはこの変化を筋肉の信号で感知して実際に離す行為を実行する。

関連記事:SmartArm’s AI-powered prosthesis takes the prize at Microsoft’s Imagine Cup【AIで動く義肢がMicrosoftのImagine Cupを勝ち取る、未訳)

MicrosoftImagine Cupを取った学生たちのやり方を思い出すが、それは手のひらにカメラを付けた義手の腕が目的物のフィードバックを与え、正しい握り方を教えていた。

一方こちらはまだまだ実験段階で、サードパーティ製のロボットアームと、特別に最適化していないソフトウェアを使っている。でもこの「人とAIとの共有コントロール」には将来性が感じられ、次世代のスマート義手の基盤になるかもしれない。チームの研究論文はNature Machine Intelligence誌に掲載されている。

画像クレジット:EPFL

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

商品棚をスキャンする在庫管理ロボ開発のSimbeが28億円を調達

サンフランシスコを拠点とするロボティクスのスタートアップであるSimbe RoboticsがシリーズAで2600万ドル(約28億円)を調達したと発表した。このラウンドはVenrockが主導し、Future Shape、Valo Ventures、Activant Capitalが参加した。Simbeは小売店の在庫管理の自動化を目指す企業のひとつだ。

Simbeは、今回の資金を人員の増強、新たな市場の開拓、既存のロボットの配備拡大に充てたいとしている。NestのTony Fadell(トニー・ファデル)氏、VenrockのDavid Pakman(ディヴィッド・パックマン)氏、Pathbreaker VentureのRyan Gembala(ライアン・ゲンバラ)氏がSimbeの役員になることも発表された。

Simbeの共同創業者でCEOのBrad Bogolea(ブラッド・ボゴレア)氏は、発表の中で次のように述べた。「以前からの投資家も新たな投資家も、資金だけにとどまらない支援をしてくれている。我々のビジネスのあらゆる面について貴重な知見を提供する支持者であり信頼できるアドバイザーだ。エクイティファイナンスのパートナーとソフトバンクロボティクスのチームは、データを通じて小売業を活性化するというSimbeのビジョンと深く協調している。我々は成長の重要な段階を迎えており、世界規模で小売業を変革し続けている我々にとって彼らの支援は価値のあるものだ」。

Simbeは商品棚をスキャンするロボットのTallyを2015年に公開した。ハードウェアベンチャーファンドのLemnosは、早い時期に同社に投資した。2019年4月、ウォルマートがSimbeのライバルでピッツバーグに拠点を置くBossa Nova Roboticsのロボットを試験導入すると発表した。その数日後に、米国スーパーマーケットチェーンのGiant Eagleが、一部のストアでTallyの試験導入を開始する計画を発表した。

ほかにSimbeのロボットを使っている小売業者には、スーパーマーケットチェーンのSchnuck Markets、スポーツ用品チェーンのDecathlon Sporting Goods、フランスの小売大手のGroupe Casinoなどがある。シリーズAに加え、ソフトバンクロボティクスとは製造規模を拡大するためにインベントリーファイナンス(在庫融資)契約も交わしている。

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(翻訳:Kaori Koyama)

たこ焼きロボでおなじみのコネクテッドロボティクスが食洗機協働ロボを開発

コネクテッドロボティクスは9月13日まで東京・お台場にある東京ビッグサイト青海展示棟にて開催中の「フードシステムソリューション2019」に2種類の食洗機ロボットを出展している。業務用厨房機器を開発・販売しているタニコーとホシザキのブースでデモを見られる。

同社は、汎用のアームロボットを使って、たこ焼きロボット「Octo Chef」やソフトクリームロボット「レイタ」を開発している2014年2月設立のロボティクス系スタートアップ。

関連記事:器用にたこ焼きを返す調理ロボットを開発、コネクテッドロボティクスが6300万円調達

Octo Chefはセブン&アイ・フードシステムズとの提携が決まっており、関東近郊のイトーヨーカドー内に出店しているファストフード店「ポッポ」に、Octo Chefとレイタを展開することを発表済みだ。10月をメドに関東近郊の1店舗にまず導入し、その後に他店舗に広げていく方針とのこと。

関連記事:たこ焼きロボ開発のコネクテッドロボティクスが8.5億円調達、イトーヨーカドー内へロボ設置も

タニコーのブースでは、ホテルや病院、給食センターなどに適したフライトコンベアタイプの大型食洗機と協働するアームロボットを出展。レーンに流れてくる複数の食器の形状をカメラが認識し、アームロボットがそれぞれの食器をレーン上の適切な場所に移動する。

そのあと洗浄されて形状が同じ食器ごとに集められる。

アームロボット自体はコネクテッドロボティクスではおなじみとなる、デンマークのユニバーサルロボット製だ。

通常、洗い物がコンベアで流れてくるタイプの洗浄機は、洗い工程に入る手前で人の目と手で食器の位置を並べ替えるという単純作業が必要だ。この誰にでもできて退屈な仕事をアームロボットが代行する。アームロボットの先にはコンプレッサー内蔵の吸盤が付いており、この吸盤で食器を吸着して位置を調整する仕組みだ。

ホシザキのブースでは、ホシザキのシステム洗浄機「SJW-S530」とコネクテッドロボティクスのアームロボを組み合わせたソリューションが参考出品されていた。SJW-S530は、キャリーテーブルと食洗機、リフト、ワゴンが一体化した業務用食洗機システムで、すでに製品化されているもの。まずは、アームロボットが食器を並べるためのラックを洗い場に配置する。アームロボがラックの位置を微調整するなど芸が細かい。

次に、シンク横に置かれた皿やコップを吸盤に持ち上げ、シンクに溜めた水に浸けて複数回水切りを行ったあと(デモでは水には浸けていない)、ラックに適切に配置する。こちらもカメラが食器やコップの形状を認識して底面中央に吸盤を吸着させて持ち上げる。ラック側にはカメラはついていないが、最適な配置場所を計算して順番に置いていく。

アームロボットの仕事はここまで。洗い物が並べられたラックを食洗機に入れる作業や、洗い上がった食器類をラックごと棚に移動・保管する作業などはSJW-S530が請け負う。

エンターテイメントロボットのReach Roboticsが業務停止

もしかするとApple Storeで売られているのを見かけたこともあるかもしれないが、クモのような形のMekaMon(メカモン)ロボットを作っていたReach Robotics(リーチロボティクス)が、業務を停止する。

「世界初のゲームロボット」と称されたMekaMonは、ビデオゲームであると同時にSTEMツールとしての側面を持っている。カーペットの上にポンと置いて、携帯電話をそれに向けて仮想拡張現実の敵と戦ったり、マルチプレイヤーバトルで他のMekaMonオーナーと対決したり、あるいはAppleのSwift Playgroundsでロボット用のカスタムプログラムを作ったりすることができた。

以下に示したビデオは数年前にReach Roboticsを取り上げたときに撮影したものだ。

Reach Roboticsは2013年に設立された。彼らがMekaMonロボットを2017年11月にリリースしたのはシリーズAで750万ドルを調達したわずか数カ月後のことだった

業務停止のニュースは、Reach Roboticsの共同創業者であるSilas Adekunle(サイラス・アデカンネ)氏のLinkedInで明かされた(もっともすでにThe Robot Reportが指摘していたが)。そこで彼は以下のように書いている

「消費者向けロボット分野は、特にスタートアップにとっては、本質的に挑戦的な領域です。過去6年間にわたって、私たちは変わらない情熱と工夫と共に、この課題に取り組んできました。開発の最初のトライアルからアクセラレーターそして資金調達ラウンドに至るまで、私たちはMekaMonに命を吹き込み、次世代の技術パイオニアたちの手に渡そうと、戦ってきました。

しかし残念ながら、Reach Roboticsは、少なくとも現在の形では、今日その旅の終わりを迎えることになりました」。

とはいえアデカンネ氏がロボットそのものを完全に諦めてしまうわけではないようだ。Instagram上の公開投稿の中で、彼は「Reach Roboticsは厳しいビジネス環境によって今日業務を停止しますが、現在は刺激的な新しいロボットベンチャーをヨーロッパで、そしてアフリカと中東では教育に関われることを楽しみにしています」と書いている。

一方、共同創業者のJohn Rees(ジョン・リース)氏は、LinkedInに次のように書いている

「現在全体の評価を続けてはいますが、端的に言うならば世の中で言われるように「ハードウェアはハードである」ということです。そしてクリスマスセール期間に依存する消費者向けハードウェアは、輪をかけてハードなのです」。

2019年は、消費者向けロボットにとっては、かなり厳しい年となっている。3月には、快活で楽しい振る舞いを目指したソーシャルロボットのJiboが、なんとも重苦しい内容のもうすぐ終了してしまうというニュースを、オーナーたちに対して個人的に配信した。

「いつの日か、今よりもずっと進化したロボットが現れて、誰もがそれを家庭の中に持つようになった日には」とロボットは語ったのだ「『Jiboがよろしくと言ってたよ』とお伝え下さい」と。

自律運転ラジコンカーと、WALL-Eのような友達ロボットCozmoを作り上げたAnki(アンキ)は4月に閉鎖された。

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(翻訳:sako)

レストラン向け料理運搬ロボのBear Roboticsが資金調達中

放射線治療医からトラック運転手ジャーナリストまで、仕事の内容のたとえ一部であっても、スマートマシンに取って代わられる可能性があり、そのような仕事の数が際限なく増え続けているような気がする。レストランのフレンドリーなウェイターやウェイトレスに泣きついて相談したくなるかもしれないが、待って!それもロボットだ!

カリフォルニア州レッドウッドシティに拠点を置く25人のスタートアップであるBear Robotics(ベア・ロボティクス)がそんな状況を実現しつつある。創業して2年になる同社は「役立つロボット」(Robots that help)、具体的にはレストランで客に料理を運ぶのを手伝うロボットを作っている。

ディスラプションが起こりそうなマーケットだ。自社の会社概要に記述されているように、同社は「賃金、人手確保、コスト効率面で外食産業が直面している高まるプレッシャー」に対処するために設立された。

元インテルのリサーチ・サイエンティストであるCEOのJohn Ha(ジョン・ハー)氏は、Googleで長年技術リーダーを務めた。自身のレストランを開店したこともあり(その後閉店)、飲食店の苦労を目の当たりにした。筆者はレストラン経営者の子(および孫)として、費用のこと、そしてもっと厄介な、売上高のことを考えると、レストランを所有・運営することが難しい試みであるとはっきり言える。

投資家はロボットサーバーを使うというアイデアに乗っているようだ。SECに新しく提出された書類によると、Bearは今回のラウンドを3580万ドルでクロージングする目標だが、これまで12の投資家から少なくとも1020万ドルを確保した。今日の多くのスタートアップにとってはそれほど大きな金額ではないが、フードサービスロボットのスタートアップとしては注目に値する。最初のモデル「Penny」はR2-D2のように回転し、料理が出来上がると、キッチンからテーブルへ運ぶ。

Bearがレストランと契約すると、少なくともそのような情景が見られると想定される。レストランはBearに毎月使用料を支払う。使用料には、ロボット、レストランのセットアップとマッピング(Pennyが物と衝突しないように)、技術サポートが含まれる。

Bearは支援者が誰なのか明らかにしていないが、支援者たちはAlibabaから少しヒントを得られるかもしれない。Alibabaが昨年開店した上海のレストランは高度に自動化されており、小さなロボットが専用トラックを滑り客へ食事を運ぶ。

Bearとその支援者たちは、レストラン内のすべてが自動化されるというもっと大きな青写真を描いているかもしれない。食材を揚げるロボットシェフからテーブルに取り付けられたセルフペイタブレットまで。ロボットサーバーがパズルの最後のピースの1つとなる。

だからといって、Bearや志を同じくする他のスタートアップが、未来的な体験を提供していないレストランですぐにビジネスを始められるというわけではない。人間がレストランに行く理由の1つは、古き良き人間との交流のためだ。テイクアウトの注文が増えている昨今、ウェイター、バーテンダー、ダイニングルームの周りを飛び回って挨拶をするレストランオーナーなど、人間こそが客を店にひきつける唯一の理由になるかもしれない。

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(翻訳:Mizoguchi)

MITのヒモ型ロボットは脳血管の中を通って手術を安全にする

MITが開発したヒモ型ロボットは、脳外科手術の侵襲性を軽減し、動脈瘤や脳卒中の原因になる脳血管の閉塞や損傷の治療を効果的かつ容易にする可能性がある。

MITの研究チームが新たに開発したのは、ロボット工学と血管内手術技法を組み合わせることで、極細ワイヤーを脳血管の複雑な経路を通す際のリスクを軽減する。現在この種の治療は過去の脳手術と比べてはるかに侵襲性が低くなってはいるが、ワイヤーを手作業で通すために著しく熟練した外科医が処置する必要がある。外科医にとっては非常に困難な手術であるだけでなく、患者の脳内の経路を見るために必要なX線に曝されるリスクもある。

MITが開発した新しい「ロボスレッド」(ヒモ型ロボット)は、「ヒドロゲル」と呼ばれる物質の研究から発展して生まれた。ヒドロゲルは成分のほとんどが水からなり、人体内での利用に適している。ヒモ型ロボットの中核をなすのが「ニチロール」と呼ばれる合金で、よく曲がり、反発力があるため、曲げられた時もとの形に戻る性質をもっている

金属材料はインクのような材質で被覆したあとヒドロゲルと結合させることで、磁気的に操作可能でかつ人体内で使用できる。研究者は大きな磁石を使って、手術時の状況を再現したデモ用障害物コースの中を進めていくところを見せた。

MITによると、ロボスレッドの材質を別のものに変えて、異なる機能をもたせることもできるので、ニチロールの代わりに光ファイバーを使い、レーザー光を通して脳血管内の閉塞を破壊することも考えられるという。

この新技術を使えば、外科医がロボスレッドを安全な距離(遠隔地でも)から操作できる可能性もある。これは医師にとって安全であるばかりでなく、患者は特別な技術をもつ専門医に診てもらえる可能性が高くなるという意味でもある。。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

MITの自動操船ロボは複数の船の自動編隊が可能に

完全自動操縦のロボット船、ここで駄洒落を言うなら「ロボート」を作る努力がMITで続いている。今回彼らが試みたのは、個々の船が自分の位置を自分で変えて、全体として船隊の形を自動的に変える能力だ。

この前TechCrunchが「ロボート」を見たときは、ふつうの航行ができるほどの自律性は持っていたし、複数の船がお互いをつかまえて基本的な形の船隊を作ることができた。しかし今度は、相手をつかまえて接続するだけでなく、相手から離れて違う形の船隊を自力で作れる。

自動編隊を実現するロボートのために研究者たちが考えたアルゴリズムは、ロボット船がお互いから離れて、他船に衝突しない航路をたどり、他の船と再接続して別の形の船隊を作るまでの過程を、すべて自分で計画する。彼らはそれを、シミュレーションとMITのプールの両方で見せてくれたが、そこでは上図のような矩形の平底船のロボットが、自分たちを直線状や矩形、そしてL字形にさえも編成した。

つまり彼らはテトリスの基本形をマスターしたのだが、でもそれは、ロボット船が自分たちの力で、いろんな形とサイズの橋や海に浮く台座、はしけなどになれるための、重要なステップだ。容易に海上作業ができるようになれば、都市再開発の仕事もはかどるだろう。

船隊の形を自由に変える能力には、「ワーカー」と「コーディネーター」という2つのタイプのロボット船が貢献している。両者が組み合わさることによって船隊の形が決まり、そのときGPSと測定器のあるコーディネーターが、お互いの相対的な向きや移動速度を決める。ワーカーにはアクチュエータがあって、船全体の操縦を助ける。コーディネーターはお互いに協調しながら、現在の並び方を常時チェックし、目標とする形と比較する。比較に基づいて各船に動きの指示を出し、新しい隊形を達成する。

実験に使われたロボット船は90cm×45cm程度の大きさだが、今後はその4倍になる。でも、船が大きくなってもアルゴリズムは変わらない。アルゴリズムが一定であることは、今後巨大な実用船を作って動かす場合などにとても重要だ。その当面の目標は、アムステルダムのネモ科学博物館の60mの運河の上を、歩いて渡れる浮橋を来年作ることだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa