猫用トイレの下に置くだけで体重やトイレ回数・量・滞在時間を自動記録するIoTデバイス「Catlog Board」の一般販売が開始

猫用トイレの下に置くだけで体重やトイレ回数・量・滞在時間を自動記録するIoTデバイス「Catlog Board」の一般販売が開始

RABOは8月23日、普段利用しているトイレで猫の体重とおしっこやうんちの量・回数などを自動で記録する健康管理デバイス「Catlog Board」(キャットログ・ボード)の一般販売を開始したと発表した。またiPhoneアプリAndroidアプリの機能アップデートを行った。

デバイスの本体価格は1万6280円(税込)で、アプリ利用料月額580円(税込)の猫バカプランの利用が必須。首輪型デバイス「Catlog」およびCatlog Boardどちらも1つの共通のアプリで利用可能で、デバイスを併用しても月額料金は1オーナーにつき月額580円となる(複数の猫がいる場合も月額料金の追加課金はない)。猫用トイレの下に置くだけで体重やトイレ回数・量・滞在時間を自動記録するIoTデバイス「Catlog Board」の一般販売が開始

RABOによると、猫の場合7匹に1匹以上が泌尿器の病気にかかっているというデータもあり、排尿の状態を管理することは、すべての猫にとって重要という。しかしトイレを変えるだけでおしっこやうんちをしてくれなくなったり、別の場所で粗相をしてしまったりする例があるそうだ。そこでCatlog Boardでは、トイレや猫砂などを変えることなく、普段利用しているトイレの下に置くだけで毎回自動で猫様の体重データと排泄量・トイレ回数のデータを取得し、インターネット経由でCatlogアプリに表示するようにした。

猫用トイレの下に置くだけで体重やトイレ回数・量・滞在時間を自動記録するIoTデバイス「Catlog Board」の一般販売が開始猫用トイレの下に置くだけで体重やトイレ回数・量・滞在時間を自動記録するIoTデバイス「Catlog Board」の一般販売が開始

またCatlog Boardは、これら体重推移などの計測データを記録しておくことが可能。子猫の成長記録から、シニア期の体重コントロールまで、一生涯利用できるとしている。また、避妊去勢手術の後に太ってしまった猫や、糖尿病や関節炎などの病気でやせなければならない猫のダイエット管理も行えるとしている。

さらに同社調査によると、猫と一緒に暮らす世帯の約4割が多頭飼い、つまり2匹以上の猫と暮らしていることから、Catlog Boardは多頭飼いに対応しているという。それぞれのお気に入りトイレの下にCatlog Boardを置いておくと、猫個別の体重や排泄量、トイレの使い方のクセなどの複数の指標から、識別タグやカメラがなくてもCatlog BoardのAIがどの猫がトイレを使ったのかを学習して判定する。猫用トイレの下に置くだけで体重やトイレ回数・量・滞在時間を自動記録するIoTデバイス「Catlog Board」の一般販売が開始

ちなみに、1世帯あたりの平均飼育頭数も年々増えており現在は約1.8匹と、猫は多頭飼いの傾向にあり(ペットフード協会 全国犬猫飼育実態調査)、トイレの数は猫様数×1.5が理想の数といわれているという。

このほかCatlog Boardは、市販の乾電池や充電池で約6ヵ月間利用可能。また防水対応のため、万が一おしっこが漏れてしまった時にも安心という(完全防水・完全防塵対応ではない)。完全コードレスのため、紐状のものが大好きな猫が、電源コードにじゃれついたりかじったりする不安もないとしている。猫用トイレの下に置くだけで体重やトイレ回数・量・滞在時間を自動記録するIoTデバイス「Catlog Board」の一般販売が開始

サムスンが2021年「Unpacked」イベントで発表した新製品まとめ

最近の記憶の中では大げさな前宣伝が控えめなガジェットの発表会の1つではあったが、Samsung(サムスン)は先週米国時間8月11日の朝早くから、恒例の「Unpacked(アンパックド)」イベントで、一連の新製品を公開した。

忙しくて見られなかった人、まだ寝ていた人のために、知っておくべきことを簡潔にまとめて一挙にご紹介しよう。

Galaxy Watch 4(ギャラクシー・ウォッチ4)

画像クレジット:Brian Heater

サムスンがまた新たなスマートウォッチを発表した。ただし、今回はこれまでの製品とは少々異なる。近年は独自OS「Tizen(タイゼン)」に力を入れていたサムスンだが、この最新ウォッチではGoogle(グーグル)のOSに戻っている、というか、少なくともGoogleの「Wear OS(ウェアオーエス)」を採用している。そのソフトウェアは「Wear OS Powered by Samsung」と呼ばれ、Wear OSを核としながら、Tizenの良いところを取り入れたものになっているのだ。

サムスンは今回、健康指標の面に力を入れており、Galaxy Watch 4の発表では、血圧、血中酸素、身体組成などを継続的にモニターできる機能に焦点が当てられた。

2021年のサムスンの時計は「Galaxy Watch 4」と「Galaxy Watch 4 Classic」という2種類が用意されている。標準モデルのGalaxy Watch 4は、やや薄くて軽量で、ベゼルにタッチセンサーが搭載されており、インターフェースを操作できるようになっている。Galaxy Watch 4 Classicはやや大きくて重く、物理的に回転するベゼルを備えている。Galaxy Watch 4は40mmと44mmという2種類のサイズから選べ、米国での販売価格は249.99ドル(約2万7600円)から。Galaxy Watch 4 Classicは42mmと46mmが用意されており、価格は349.99ドル(約3万8600円)からとなっている。

関連記事:サムスンは「Galaxy Watch 4」でWear OSに回帰、ヘルスケアにもフォーカス

Galaxy Z Fold 3(ギャラクシーZフォールド3)

画像クレジット:Brian Heater

初期の折りたたみ式スマートフォンは、価格も高く、問題も多かったため、世界を席巻するまでには至っていない。それどころか、おそらくほとんどの人は、まだ折りたたみ式スマートフォンというものを実際に見たことがないだろう。しかし、サムスンはまだこの分野で終わっていない!

今回、同社が発表した「Galaxy Z Fold 3」は、ホットドッグスタイルの折りたたみ式携帯電話に対するサムスンの3度目のアプローチだ。価格は先代「Galaxy Z Fold2」の1999ドル(約22万円)から1799ドル(約20万円)へと少し下がっている一方で、全体的な製造品質は向上している。Galaxy Z Fold 3は、より強固なアルミニウムフレームと、耐久性が改善された折りたたみ式ディスプレイ、そしてIPX8等級の防水性能(折りたたみ式携帯電話では世界初!)を備えている(1つ注意:この「X」とは、もし誤って浴槽に沈めてしまっても大丈夫という意味だが、粉塵やゴミが内部に侵入しないように気をつける必要はある)。

Galaxy Z Fold 3は、サムスン初のアンダーディスプレイカメラを搭載したデバイスとなる。これは凄い仕掛けだが、一般的に写真の画質は犠牲になることが多い。背面には超広角、広角、望遠の3つのレンズが(隠されずに)搭載されており、それぞれ1200万画素となっている。さらにサムスンのスタイラス「Sペン」にも遂に対応した。

米国では8月26日に出荷が始まる予定。

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Galaxy Z Flip 3(ギャラクシーZフリップ3)

画像クレジット:Brian Heater

今回発表された折りたたみ式スマートフォンで、注目を集めているのはフラッグシップモデルのFold 3だが、サムスンの相対的にエントリーレベルに位置づけられる折りたたみ式(クラムシェル!)スマートフォンも、Galaxy Z Flip 3へとアップデートされた。

Flip 3は、前述のFold 3と同じように、強固なアルミニウムフレームの採用、耐久性が増したディスプレイ、IPX8防水など、耐久性の面で多くの改良が施されている。内側には10MPのセルフィーカメラ、外側には2つの12MPカメラ(超広角と広角)を搭載。価格は999ドル(約11万円)と、先代よりも400ドル(約4万4000円)近く安くなっている。サムスンが折りたたみ式スマートフォンを初めて1000ドル以下の価格帯に引きずり込んだのだ。カバースクリーン(デバイスを折り畳んだときに表示されるスクリーン)は、前世代の1.1型に対して1.9型と大きくなっている。

今回発表された他の製品と同様、Galaxy Z Flip 3は米国では8月26日に発売される。

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Galaxy Buds 2(ギャラクシーバッズ2)

画像クレジット:Brian Heater

サムスンは今回、エントリーレベルのワイヤレスイヤホンの新世代モデルも発表した。必要な情報はすべて次の1文に含まれる。より小さく軽くなり、アクティブノイズキャンセリング機能を搭載し、8月26日に149ドル(約1万6500円)で発売される。

もっと詳しく知りたい? それならこちらの記事に書かれている

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これは最後に少しだけ紹介されたことだが、注目に値するものだ。サムスンは、2025年までに携帯電話のパッケージから使い捨てのプラスチックをすべて排除することを約束し、同年までに携帯電話製品全般におけるリサイクル素材の使用を大幅に増やすことを計画しているという。サムスンは、地球上の他のどの企業よりも、四半期あたりの携帯電話出荷台数が多いことを考えると、これは非常に大きな意味がある。他の企業が追随することを願いたい。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:SamsungSamsung GalaxyスマートウォッチWear OS健康フォルダブルスマートフォンイヤフォンGalaxy WatchGalaxy Buds

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

サムスンは「Galaxy Watch 4」でWear OSに回帰、ヘルスケアにもフォーカス

Samsung(サムスン)の腕時計は、長い間、例外的な存在だった。同社は当初、巨大なGear LiveでWear OS(当時はAndroid Wear)を採用していたが、すぐにTizenに移行している。Tizenは、Samsungがウェアラブルデバイスやスマートテレビの多くに採用しているオープンソースのOSだ。

スマートウォッチ市場の重要な部分を占めることに苦労してきたGoogle(グーグル)にとって、これは一種の悩みの種だったに違いない。一方、Samsungは、独自の取り組みを進めながら自社製品で一定の成功を収めてきた。しかし、市場シェアを獲得するには、常に多くの課題があった。

サードパーティアプリは、Apple以外のすべてのスマートウォッチメーカーにとって長い間、問題となっており(これがFitbitがPebbleを買収した主な理由だ)、SamsungがGoogleとのパートナーシップを再構築するチャンスとみていたことは明らかだ。I/Oで初めて言及され、最近ではMWCでも議論されたこの提携は、新しいGalaxy Watch 4とGalaxy Watch 4 Classicで日の目を見ることになった。

画像クレジット:Brian Heater

両社はこれを「the new Wear OS Powered by Samsung(Samsungの新しいWear OS)」と呼ぶ。つまりWear OSがコードベースになっているということだ。Tizenのデザインやその他の要素も含まれている、実質的にはGoogleのウェアラブルOSをSamsungがカスタマイズして構築したものになる。

Samsungは、後者の部分を重要な点として強調している。それは、このOSは新しいペイントを施しただけでのものではないということだ。Samsungのモバイルデバイスとウェアラブルデバイス間で統一されたユーザー体験を実現するために「One UI Watch」がその上に存在している。

リリースは以下のとおりだ。

Galaxy Watch 4シリーズは、Wear OS Powered by Samsungを搭載した最初の世代のスマートウォッチであり、スマートウォッチ体験のあらゆる側面を向上させる新しいプラットフォームです。SamsungとGoogleが共同で開発したこの最先端のプラットフォームでは、GoogleマップといったGoogleの人気アプリや、Samsung Pay、SmartThings、BixbyなどのGalaxyの人気サービスを利用して、幅広いエコシステムを手首に巻くだけで活用できます。この新しいプラットフォームは、Adidas Running、Calm、Strava、Spotifyなどの主要なサードパーティ製アプリにも対応しています。

今朝のブログ記事で、Googleはパートナーシップの内容を次のように説明している。

私たちはWear OSとTizenから学んだことを活かして、スマートウォッチユーザーが必要とするものを共同で開発しています。Galaxy Watch4は、これまでのWear OSスマートウォッチと比較して、セットアップ時間が2.5倍短く、バッテリー駆動時間が最大40時間となり、パフォーマンスが最適化され、アプリの起動時間が従来よりも30%速くなり、膨大なアプリやサービスのエコシステムにアクセスできるようになりました。

また、Wear OSではより多くの機能が追加され「Googleマップ」「メッセージ」「Google Pay」の各アプリには、デザイン言語「Material You」をベースにしたより多くの機能と斬新な外観が導入され「YouTube Music」アプリもリリースされます。また、Wear OSには新しいアプリやタイルが登場し、お気に入りのアプリにすばやくアクセスできるようになります。

今回の発表では「Googleマップ」での道順案内「YouTube Music」での曲のダウンロードと視聴「Google Play」でのアプリの検索機能の改善が挙げられている。またベルギー、ブラジル、チリ、クロアチア、チェコ共和国、デンマーク、フィンランド、香港、アイルランド、ニュージーランド、ノルウェー、スロバキア、スウェーデン、台湾、ウクライナ、アラブ首長国連邦など、16カ国でWear OSのGoogle Payが利用できるようになる。

もう1つの重要な焦点は引き続き健康であり、これは現在すべてのスマートウォッチが競合している分野でもある。モニタリングは同社の「BioActive Sensor」の小型版を中心に構成されており、光学式心拍数、心電図検査(ECG)、生体電気インピーダンス分析を測定する。この3つのセンサーは、血圧、心房細動のモニタリング、血中酸素、そして今回の体組成 / BMIなど、さまざまな指標を測定する。つまり、良くも悪くも、体脂肪率(パンデミック後の不機嫌な顔の絵文字)がわかるようになっている。Samsungによると「約15秒で、時計のセンサーは2400のデータポイントを取得する」とのことだ。

画像クレジット:Brian Heater

2つのモデルの主な違いはデザインだ。Galaxy Watch 4はより薄く、より軽く、Galaxy Watch Activeに近いものとなっている。また、Classicでは物理的な回転ベゼルを採用していたが、Galaxy Watch 4ではタッチベゼルを採用している。

また、両モデルとも2つのサイズが用意されている。これは私にとって、Samsung Watchではいつもそれがネックになっていた。デバイスが大型でサイズが1種類しかない場合、顧客のかなりの部分を最初から排除していることになる。Watch 4には40mmと44mmがあり、Classicには42mmと46mmがある。価格はそれぞれ250ドル(約2万7600円)と350ドル(約3万8600円)。さらに50ドル(約5500円)を追加すると、LTE接続が可能になる。

これらのモデルは、本日より予約を開始し、8月26日から出荷が開始される。予約注文をすると、50ドルのSamsung Creditがもらえる。また、9月にはThom BrowneバージョンのClassicが限定発売されるが、こちらはほぼ確実に高価になるだろう。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:SamsungSamsung GalaxyスマートウォッチWear OSヘルスケア

画像クレジット:Brian Heater

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(文:Brian Heater、翻訳:Katsuyuki Yasui)

個人に合わせた更年期障害緩和のためのアプリを開発するVira Health

スタートアップの世界では、次々と新しいトレンドが生まれており、その多くは早すぎるということはない。なぜ、上級職に就く女性は少ないのだろうか?その理由として、更年期を迎えた女性は、一般的にリーダーシップを発揮できなくなるということが知られている。英国での調査によると、更年期は約1400万日の労働損失と100万人の早期退職の原因となっているという。実際にTechCrubchでは、従業員の健康管理によってこの問題に取り組んでいる新しいスタートアップ「Peppy(ペピイ)」について報じたばかりだ。

そして今回、Vira Health(ヴィラ・ヘルス)というスタートアップ企業が、LocalGlobe(ローカルグローブ)とMMC Ventures(MMCベンチャーズ)から150万ポンド(約2億3000万円)のシード資金を調達した。この投資ラウンドには、Hearst Ventures(ハースト・ベンチャーズ)のイケダ・メグミ氏、Elvie(エルビー)のAndrea Zitna(アンドレア・ジトナ)氏、Sophia Bendz(ソフィア・ベンズ)氏、Matt Robinson(マット・ロビンソン)氏、Simon Lambert(サイモン・ランバート)氏などのエンジェル投資家も参加した。

Andrea Berchowitz(アンドレア・バーチョウィッツ)氏とRebecca Love(レベッカ・ラブ)氏が2020年に設立したVira Healthは、個人に合わせた更年期ケアを目的とする会社だ。同社の最初の製品である「Stella(ステラ)」は、12週間の更年期障害治療計画、ヨガクラスや婦人科医とのQ&Aなどのコンテンツやバーチャルイベントを主な特長とする、更年期障害緩和のためのアプリである。

Vira Healthの共同設立者であるバーチョウィッツ氏は、次のように述べている。

女性の健康問題は、歴史的に研究や投資が十分ではなく、現在もその傾向が続いています。今こそテクノロジーを利用して、ヘルスケアにおける女性のデータの収集や使用法を改善し、このバランスを是正する好機です。今回の第1回目のシード資金調達ラウンドは、私たちのビジョンを実現するための一歩です。

LocalGlobeの投資パートナーであるRemus Brett(リーマス・ブレット)氏は次のように述べている。「更年期障害は女性の人生の大きな局面に当たりますが、現在の医療システムでは、女性が必要とする多面的かつ長期的なサポートを提供することが困難です」。

MMC Venturesの投資家であるAlexia Arts(アレクシア・アーツ)氏は、次のように述べている。「MMC Venturesにおいて、ヘルスケアは研究と投資の重要な分野です。私たちは、ヘルスケアの実践と提供の仕方を再構築するために、データ分析を取り込み、活用することに、大きな可能性を見ています。これは特に、性差によるデータの偏りがあることが立証されており、その解決が求められる女性のヘルスケアにとって大きな意義があります」。

Vira Healthを設立する以前、バーチョウィッツ氏はMcKinsey & Company(マッキンゼー・アンド・カンパニー)のアソシエイト・パートナーとして、官民を問わず女性の健康に関わる仕事をしていた他、Bill and Melinda Gates Foundation(ビル&メリンダ・ゲイツ財団)の中東地域における活動を率いていた。

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カテゴリー:フェムテック
タグ:Vira Health女性更年期資金調達ヘルスケア

画像クレジット:Vira Health

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

カウンセリングなど対人援助のオンライン相談室を開設できる「ソラハル Client First」のソラハルが1500万円調達

カウンセリングなど対人援助のオンライン相談室を開設できる「ソラハル Client First」のソラハルが1500万円調達

コーチング、カウンセリング、対人援助のオンライン相談室を開設できる「ソラハル Client First」(クライアントファースト)を開発するソラハルは7月21日、エンジェルラウンドにおいて、第三者割当増資による1500万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はSK Impact Fund Japan、SEVEN、エンジェル投資家。調達した資金を活用し、ソラハルClient Firstの開発体制強化を図る共に、事業拡大を見据えた組織基盤を構築する。

創設者で代表の北村健氏は、大学や専門学校で学生支援に従事していたときに、紙ベース、口頭報告、関係部署との調整など、非効率で属人的なやり方に限界を感じていた。その経験が、カウンセリングなど人を支援する事業を改善したいという思いにつながり、ソラハルを起業した。その主要サービスとなるソラハル Client Firstは、小規模企業や個人向けのSaaS型オンラインコーチング、カウンセリングプラットフォームという位置づけで、小規模事業者のカウンセラーなどが相談室を開設でき、同時に業務の「ムリ・ムダ・ムラ」を省けるというもの。

現在、日本のカウンセラーは「非常勤や有期雇用が半数以上」であり、「一人職場」も多く、燃え尽きや過労が問題視されているという。ソラハルは、カウンセラーの負担を軽減することで、カウンセラーがクライアントに寄り添う時間を増やし、カウンセリングのスキルアップに取り組む時間的余裕が取れるようになり、ひいては「社会全体のウェルビーイングを高める」と考えている。

現在はまだ開発中だが、ソラハル Client Firstでは先行登録を受け付けている(対象は、心理支援に関わる資格・身分を有する者)。「世界中の相談と援助の窓口が、すべてソラハルに代わる日を目指して、開発の加速とマーケットローンチにむけて走り続けます」と北村氏は話している。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:カウンセリング(用語)健康 / 健康管理 / ヘルスケア(用語)コーチング(用語)ソラハル(企業)メンタルヘルス(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

【コラム】テックコミュニティにおけるメンタルヘルスの偏見をなくすために

編集部注:本稿の著者Nigel Morris(ナイジェル・モリス)氏はQED Investorsの共同ファウンダーでマネージングパートナー。

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アントレプレナーシップ(起業家精神)への道のりは決して容易ではない。そのプロセスは、ストレスが多く、とてつもない規模の精力的行動、リスクテイク、そして不確実性の中で前進していくことが求められる。犠牲は計り知れないものがあり、時には精神面における健康を代償にすることもある。

創業者たちは、リソースが不足していて、過度にコミットしている状況に陥ることも多い。夢を追い求めることは心躍る魅力的な体験である一方、従業員、投資家、顧客に対する責任の重さに圧倒されることもあるだろう。

この問題をさらに複雑にしているのは、多くの創業者たちが「失敗者」と見なされたり、仕事をする能力がないと思われたりすることを恐れて、最も近しい人たちに自分がどのように感じているかを明らかにしたがらないことだ。会社経営にともなう要求事項や重圧のために、創業者が依存症や薬物乱用に苦しんでしまうことを少しの間想像してみて欲しい。そして、投資家にそうした状況を明らかにしなければならないことにより、その心配と不安が一層増してしまうことを考えてみよう。

精神科医で、カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部の教授を務め、CEO職の経験を持つMichael Freeman(マイケル・フリーマン)氏は、起業家の間の、心の健康状態に関する罹患率と特性について調査を行った。

創業者は、人口統計的に適合した比較対象と比べて、うつ病にかかる可能性が2倍、ADHD(注意欠陥多動性障害)を患う可能性が6倍、薬物乱用に陥る可能性が3倍、自殺念慮に至る可能性が2倍高くなっている。

創業者は、人口統計的に適合した比較対象と比べて、うつ病にかかる可能性が2倍、ADHD(注意欠陥多動性障害)を患う可能性が6倍、薬物乱用に陥る可能性が3倍、自殺念慮に至る可能性が2倍高くなっているとフリーマン氏は結論づけている。起業家はメンタルヘルスの問題を抱えている可能性が50%高くなっており、創業者の間で驚くほど蔓延している特定の状況があることが、同氏の調査で明らかになった。

この統計には目を見張るものがあるが、実際に目に見えるインパクトは、真に衝撃的なものになる可能性がある。

私は、腕や肩に痛みがあるときには、仕事に出向いてそのことについて弱音を漏らすこともある。しかし、昨晩眠れなかったり、外出を不安に感じたり、あるいは睡眠薬を飲みすぎたり、ワインを飲みすぎたりした場合には、その話題に触れることはないだろう。

かかりつけの医者に肩を治療してもらうつもりだと伝えることはあっても、セラピストに相談するつもりであることは口にしないと思う。

QED Investorsでは、この沈黙がもたらした悲惨な結果を目の当たりにしている。私たちは2018年、パートナーのGreg Mazanec(グレッグ・マザネック)氏を失った。薬物乱用との長い闘いの末のことだった。それ以来、私たちはグレッグの家族と協力して、VCやスタートアップの世界にいる人々が同じ運命をたどるのを防ぐために、どのように自分たちの役割を果たせるかを検討してきた。

個人的な友人としても、また同僚としても、グレッグについて十分に語り尽くすことはできない。彼は、自らを通してすばらしい人間を定義づけているような人物だった。直交性のある思想家で、粘り強く、聡明で、斬新さを兼ね備えていた。私たちは彼をあまりにも早く失った。今もなお、私たちは彼の存在を傍らに置いている。

その当時の当社のチーム構成は15人だったことから、お互いがどれだけ親密であったかを想像していただけると思う。私は、機会があればいつでも彼の話をしようと、自分自身、そして彼の家族に誓った。だから、LPやポートフォリオ企業の前に出るたびに、この問題を表に出して、この腐食性を帯びたスティグマと正面から向き合うことにしている。

心の健康に関する議論を影の外に持ち出すことで、結果の軌道を大きく変えることができる。ベンチャーキャピタルの世界には、新型コロナウイルスのパンデミックが人々の不安や心配を増幅させる前から、このような困難を経験している人がたくさん存在する。人々は孤立感、抑うつ、不安、無力感を募らせており、オピオイドやその他の形式の依存症、または薬物の乱用に向かってしまった人もいる。

友人、仲間、同僚からの支援は、心の病を克服する上で極めて重要だ。企業がオフィス勤務を再開、あるいは自宅とオフィスのハイブリッド勤務を導入し始める中、経営陣は、自社の文化に再び焦点を当て、依存症に対する偏見を取り除き、メンタルヘルスを優先事項にする真の機会を手中にしている。それは、この問題に重点を置くためのまたとない好機である。

マザネック家は、グレッグのような創業者や起業家のコミュニティにとって最も大切なエコシステムにおける、薬物乱用や依存症の問題に取り組む目的で、Operation Lighthouseを設立した。このすばらしいイニシアティブを強力に支援することは、当社QEDにとって極めて自然な決断だった。

2021年の初めに、QEDはポートフォリオ企業3社とともに、Just Fiveと呼ばれるプログラムを試験的に導入した。Just Fiveは、全国的なメンタルヘルス非営利団体であるShatterproofによって作成されたもので、依存症に関する重要な概念と事実について、1レッスンにつき5分程度で伝えている。

そして、QEDの米国拠点のポートフォリオ企業50社すべての1万6千人を超える従業員に、同じ自己学習型の匿名制教育プログラムを無料で提供するに至り、大変喜ばしく思っている。

このプログラムは、メンタルヘルス教育を提供し、情報に基づく議論を促進することで、最終的にスティグマを低減することを目的としている。

2021年中にこのプログラムの対象を、海外のポートフォリオ企業や、創業者を支援したいと考えているその他のVCにも拡大していく意向である。スペイン語版はすでに計画段階に入っている。

レッスンは6つあり、それぞれにテーマが設定されている。最初の2つのレッスンでは、依存症の科学について触れ、初めて使用した年齢や、遺伝学、環境などの特定の要因によって、なぜ一部の人が依存症になり、他の人はそうならないのかについて説明する。

中間のレッスンでは、オピオイドの有害性、および薬物乱用の徴候、症状、治療の選択肢について説明し、最後の方のトピックでは、人々がどのように手助けできるかについて触れていく。私たちがこれまでに受け取った圧倒的にポジティブなフィードバックの大部分は、最後の2つのレッスンに集中している。私たちは、逸話的にすでに把握していたことから、大切なことを学び取った。人々は助けを求めているが、最も助けを必要としている人々は、助けを求める方法を常に知っているわけではないということを。

私はここ数年、メンタルヘルスについてあらゆる機会をとらえて議論してきた。心の健康に対する偏見を取り除くことで、人々はそれに対処できると心から確信している。これは解決可能な問題である。肩の痛みと同じように、治すことができるのだ。人々が最初の一歩を踏み出し、それについてオープンに話すことができる文化を作ることにおいて、より良い仕事をしなければならないと、私たちは強く感じている。

変化を起こすことはできるし、そうしなければならない。あなたの発する声を、私の声につなげて欲しい。

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カテゴリー:その他
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画像クレジット:olaser / Getty Images

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(文:Nigel Morris、翻訳:Dragonfly)

NASAが宇宙空間でゲノム編集技術「CRISPR」実施に成功、微重力下でのDNA損傷修復メカニズム研究

ASAが宇宙空間でのゲノム編集技術「CRISPR」実施に成功、微重力下におけるDNA損傷の修復メカニズムを研究する方法を開発

Sebastian Kraves and NASA

NASAの宇宙飛行士クリスティーナ・コック氏は、CRISPR-Cas9と呼ばれる遺伝子編集を宇宙空間で行うことに初めて成功しました。

この実験では、ISS内で培養した酵母の細胞のDNAに、二本鎖切断と呼ばれる特に有害なDNA損傷を生じさせ、放射線などによる非特異的な損傷では得られない、微重力状態におけるより詳細なDNA修復メカニズムを観察しました。コック飛行士は2020年2月に地上へ帰還しており、実験もそれ以前に完了していたものの、その結果が出るのについ最近までかかったとのこと。

重力のない、またはほとんどない場所での長期間の生活は、様々な場面で生命活動に変化をもたらす可能性があります。とくに地磁気による保護のない宇宙空間では飛行士は常に宇宙線(地球外の宇宙空間からの放射線で、生物へ大きな影響をもたらす重粒子線を多く含む)に晒されることになり、それによるDNAへの影響は避けられません。

そのため、この実験を足がかりに宇宙空間でのDNA修復にまつわるさらに多くの実験研究への道が開かれ、十分な知見が蓄積されれば、将来の有人火星探査やさらに深宇宙への有人探査が現実的なものになるかもしれません。

今回の研究は、宇宙でCRISPR-Cas9によるゲノム編集に成功した初めての例であり、生きた細胞に外部からの遺伝物質を取り込ませる形質転換に成功した初めての例でもあります。そして将来の研究で、電離放射線によって引き起こされる複雑なDNA損傷をよりよく模倣してさらに研究を重ねられるようになることが期待されます。人類が火星やその先へと向かうのに、CRISPR-Cas9が重要な役割を担うことになるかもしれません。

(Source:EurekAlertEngadget日本版より転載)

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スマホでセラピストを選んで呼べる訪問型リラクゼーションマッチングアプリ「HOGUGU」が総額2億円調達

スマホでセラピストを選んで呼べる訪問型リラクゼーションマッチングアプリ「HOGUGU」が総額2億円のプレシリーズA調達

リラクゼーションマッチングアプリ「HOGUGU」(ホググ。iOSカスタマー用アプリiOSセラピスト用アプリ)を手がけるHOGUGUテクノロジーズは7月5日、プレシリーズAにおいて、第三者割当増資による総額2億円の資金調達を実施したと発表した。引受先は田川翔氏(ギフト代表取締役)など個人投資家数名。

調達した資金は、HOGUGUの認知促進に向けたマーケティングの強化、サービスエリアの拡大、Android版アプリやウェブ予約などの拡張と、事業の成長スピードを加速するための体制強化や人材の採用などにあてる。

HOGUGUは、アプリを使った訪問型リラクゼーションサービス。自宅や出張先のホテル、オフィスなどに、アプリを使って手軽にセラピストを呼ぶことができる。現時点で国内インストール数は2万人を突破したという。

また需要拡大に伴い、東京・神奈川、大阪・兵庫の既存サービスエリアに加え、埼玉・千葉でも一部エリアでサービス提供を開始した。

HOGUGUテクノロジーズによると、成熟市場であるリラクゼーション業界では「業務委託契約で完全歩合」という厳しい労働環境を強いられることが多く、セラピストの賃金低下や離職率の高さが問題となっているという。

そのため、リラクゼーション業界全体で、セラピストの労働条件と環境の改善が急務となっており、集客を含めたビジネスモデルの転換が必要と考えられるとしている。

不要不急の外出自粛要請により、飲食業のデリバリー需要増加のようにリラクゼーション業界もシフトしており、セラピストの新たな働き方として店舗や時間・シフトに縛られない働き方に急速に移る傾向にあるという。

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創業者が資金調達中にメンタルヘルスを管理する10の方法

編集部注:本稿の著者Adonica Shaw(アドニカ・ショー)氏は、健康とウェルネスに焦点を当てたプロフェッショナルな女性のためのソーシャルメディアプラットフォーム「Wingwomen」の創設者。

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パンデミック渦中、起業家のメンタルヘルスやストレスマネジメントが広く議論されるようになった。しかし多くのベテラン起業家にとってこの話題は未だタブーなトピックとなっている。世の中がニューノーマルに向かおうとしている今、創業者や投資家、メンタルヘルス専門家らは、パンデミック前には問題視されていなかったメンタルヘルスを今後考慮する必要があるのではないかという疑問を抱き始めている。

筆者もその1人である。実際、パンデミック前から問題だったのである。さらにいうと、起業家がリスクを受け入れる傾向にあるというのも、メンタルヘルスを助長させる原因だ。

「起業家は自分の仕事にさまざまな弱さを抱え込んでいますが、避けることのできないリスクとそれが相まって、リスクがうまくいかなかった際に悪化することがあります」。カリフォルニア大学サンフランシスコ校医学部の精神医学臨床教授であり、Econa(エコナ)の創設者であるMichael Freeman(マイケル・フリーマン)氏はそう話す。「そして実際、ほとんどの場合はうまくいかないため、傷つき、精神的な症状を感じたり、下降線をたどったりしやすくなるのです。その逆も同様で、うまくいっているときはうまくいっているときで、別の種の精神衛生上の問題が発生しやすくなります」。

それでは、例えば資金調達中に困難な状況に陥ったとき、起業家はこのような問題にどう対処し、どのようにして精神を研ぎ澄ませてそれを維持すれば良いのだろうか。

答えはシンプル、予防と認識の2つである。予防という点では、起業家のメンタルヘルスにおける違いを受け入れ、起業家のメンタルヘルスの優れた能力を称え、ダウンサイドを防ぐライフスタイルを取り入れることに尽きるとフリーマン氏はいう。

「あらゆる医療に同様のことが言えますが、メンタルヘルスにおいても、ほんの少しの予防は多大な治療に値します」とフリーマン氏。「起業家がメンタルヘルスの問題を予防したいなら、まずライフスタイルのリスク要因を評価することから始める必要があります」。

フリーマン氏によると、起業家がメンタルヘルスをサポートする方法は5つあるという。

  1. 睡眠をとる。睡眠の最も重要な役割は、脳をリチャージし、日中に起きていられるようにすることである。心と体を回復させるということには非常に大きな予防効果がある。目を開けていられないようではプレゼンなどできるはずがない。
  2. 運動をして汗をかくこと。起業家は最低でも1日45分間の運動をすべきであり、かつそのうち週2回は汗をかくほどの激しい運動であるべきだ。運動は健康に良いだけでなく、実行機能も高めてくれる。つまり集中力を高め、物事を成し遂げる能力を高めてくれるのだ。また、自身の気持ちをコントロールできるようになるため、たとえVCに自分のアイデアをめった斬りにされようと、電話をきってから落ち込むことがなくなる。資金調達の際にイエスかノーどちらを得られるかは、明確な思考能力が左右するだろう。
  3. ビジネスとは関係のない友人を得て、維持する。起業家は時に孤独な職業でもある。仕事とは別に友人や愛する人とのコミュニティを持つといい。また、人間関係が仕事のモヤモヤと混合してしまわないように気を付けたい。人間関係を維持し、仕事が大変な時には彼らが心の支えとなるような関係が理想である。
  4. 健康的かつ戦略的に食べる。多くの起業家はその道のりの中で、貧困生活を体験することがあるだろう。限られたリソースの中でプレッシャーにさらされているとき、ジャンクフードやファストフードを食べるのは間違ったトレードオフに他ならない。認知機能にも悪く、その他多くの健康上の影響がある。
  5. メンタルヘルスに関する懸念には、数カ月ではなく数週間単位で対処する。懸念事項を迅速に管理しない場合、好まざる結果に繋がってしまうことがある。「メンタルヘルスの症状が長引くと【略】より深刻なメンタルヘルスの状況につながる可能性があります」とフリーマン氏は述べている。「個人的な悪影響としては、より深刻なメンタルヘルス問題の発生、社会的な人間関係の崩壊、仕事上でのパフォーマンス低下などが挙げられます。ビジネス面では、倒産、従業員の流出、戦略的提携パートナーとの関係悪化、潜在的な投資家の喪失などが考えられます」。

認識に関しては、自分のストレスレベルを悪化させ、資金調達を成功させる能力に悪影響を与える可能性のある要因を理解し、それに応じた計画を立てることから始めるといい。ストレスレベルを上昇させる要因には、資金調達前の経済的状況や健康状態、性別、人種、業界のあり方、制度上の障壁、さらには市民権を得ているか否かなどが含まれる。

「有色人種、移民、女性の起業家はガラスの天井に対する懸念が非常に多い」とフリーマン氏はいう。「資金調達中のメンタルヘルス悪化の要因にもなります。【略】何らかの形で除け者にされてきたグループの人々は、メンタルヘルスの観点からだけでなく全体的に見ても、克服するのが困難な異なるハードルを抱えています」。

SaaSプラットフォームのMixtroz(ミクストロズ)の共同設立者であるKerry Schrader(ケリー・シュレイダー)氏は、こういったことがどのように資金調達に影響するかをよく知っている。同氏と同氏の娘であるAshlee Ammons(アシュリー・アモンズ)氏は最終的に100万ドル(約1億1000万円)以上の資金を集めることができたが「次の黒人女性」になるかもしれないというプレッシャーは相当のものだったという。

「100万ドル以上の資金を調達した37番目と38番目の黒人女性、というプレッシャーにとらわれるのをやめました」と同氏はいう。「もし私たちが成功しなかったら、他の黒人女性が資金調達できない原因になるのではないかと考えてしまいました。しかし正直なところ、私たちはそのような余分なストレスを排除することにし、人々に支持されるような収益性の高いビジネスを行うことに集中したのです。そして失敗したときには、白人男性と同じように、次のチャンスと資金を得れば良いと考えることにしました。もちろんそれが普通に得られるものではないということは分かっていましたが」。

シュレイダー氏によると、資金調達活動中におけるメンタルヘルスの管理方法に関する情報はほとんどなく、同親娘はさまざまな方法を試した結果、納得のいく方法を見つけることができたという。

同氏の経験をもとに、起業家が資金調達をしながらメンタルヘルスを管理する方法についてさらに5つ紹介したい。

  • カウンセラーやセラピストに相談して、ストレスレベルをコントロールする。セラピーについて、精神的に打ちのめされた時の対処法という考え方から、生き生きと生活するための予防的な方法という考え方に起業家らはゆっくりとシフトしてきているという。「私はBetterHelp(ベターヘルプ)を活用して資金集め中に誰かと話すようにしました」とシュレイダー氏は振り返る。「第三者に伝えることで、何でも言えるようになりました。プライベートで気持ちを吐き出すことで、投資家との会話もより効果的に伝えることができるようになりました。資格を持った専門家に相談してから、『私はあなたに助けてもらっている』という考え方から『私にはエキサイティングなチャンスがあるので、あなたには早期に投資してもらいたい』という考え方に変えることができました。カウンセリングはとても役に立ちました」。
  • 出口を用意しておく。目標設定は物事を軌道に乗せるためのすばらしい方法だが、有限の終着点を設定しなければ、決して成功できないような錯覚に陥ることもある。「当初、私たちはあるマイルストーンに到達しなかった場合、どのような行動を取るかという基準を置くようにしました。失敗するかもしれないと恐れるのではなく、ビジネスを終了して自分のキャリアに戻る時のルールを決めたのです。共同出資者との間で合意された『終了』の条件を設定するというのは私の精神衛生上すばらしいことでした。そして数年後の今、私たちはまだ戦っていますし、ほぼ正気も保っています」。
  • チームを頼る。1人で戦うことはできない。スタートアップを前進させ、自分の健康を守るためにチームを積極的に活用すべきである。「友人や家族からの資金調達を終えた直後に、私は乳がんと診断されました。資金調達をしながら放射線治療、手術、治療を受けていましたし、病院のベッドからもプレゼンをしました。しかし資金集めをしているときに、終わりなどありません。それがきっかけで、娘がフルタイムで取り組んでくれることになりました。家族として、長期的に成功するためには、お互いに助け合う必要があるということを実感しました」とシュレイダー氏は話す。
  • 計画に柔軟性を持たせる。起業したばかりの頃は、どうしても決められたプランに集中してしまいがちになる。しかし、著名な起業家たちの経歴を見てみると、彼らは必要に応じて方向転換を行い、常に学びを得ているということが分かる。「資金調達時には、週単位、日単位、さらには1時間単位で計画が変更され、それに常に対応しなければならない時期がありました」とシュレイダー氏は振り返る。「それは飛行機を買い、操縦を学び、燃料補給のための格納庫を同時に探すようなものだと私は思っています。好きなだけ計画を整理しようとすることはかまいませんが、どの程度計画ができるかなど計り知れません」。
  • お金のためにどの程度のストレスに対応できるか考える。当然のことながら、資金調達は小切手を確保することが目的だ。しかし起業家の中には、資金を得るために不可能な条件を飲んでしまう者もいる。資金調達の場に足を踏み入れる前に、自分の限界を知っておくことが大切だ。「自分が優位に立っていると感じている場合、人はどれだけ多くのものを得られるか試してみるものです。自分の理由を忘れてはいけません。自分を見失わずにできることがわかったら、やってみたら良いでしょう」とシュレイダー氏はいう。「そして覚えておいて欲しいのは、たとえ起業家であっても断るという選択肢は常にあるということです。特に、断るという決断が自分の正気を守ることにつながるのであれば、なおさらです」。

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(文:Adonica Shaw、翻訳:Dragonfly)

【インタビュー】アップルがiOS 15で明らかにした「ヘルスケア」の未来、同社VPが語る初期Apple Watchから現在まで

Apple(アップル)が最近開催した世界開発者会議(WWDC)の基調講演には、iPhone、Mac、iPadの新機能が詰まっていた。2014年に最初のヘルスケアアプリがデビューして以来ほぼ一貫してそうだったように、それらの新機能には、個人のヘルスケアや健康を中心としたアップデートが含まれている。Appleがこの分野で行っている取り組みの影響は、すぐには評価できないことが多い。例えば、ヘルスケア関係の新機能は一般に、Appleのデバイスのソフトウェアで行われるユーザーインターフェイスの全面的な見直しほど目立つことはない。しかし全体として見ると、Appleは、個人が利用可能な、最も強力でわかりやすいパーソナルヘルスケアツールスイートを構築したようだ。そして、その勢いが衰える兆しは見えない。

筆者は、Appleの技術担当VPであるKevin Lynch(ケヴィン・リンチ)氏にインタビューする機会を得た。実はリンチ氏は、2014年9月のAppleの基調講演イベントにおいて、世界の舞台ではじめてApple Watchのデモを行った人物であり、Apple Watchが大きく成長するのを見てきただけでなく、Apple Watchにおけるヘルスケアの取り組みの進展に欠くことのできない人物でもある。Apple Watchがどのようにして今日の姿になったか説明してくれた。また、将来の展望のヒントも与えてくれた。

「これまでの進展ぶりに驚いています」と、最初のヘルスケアアプリについてリンチ氏は語った。「このアプリは実は、Apple Watchから始まりました。Apple Watchで、カロリー消費アクティビティと『アクティビティ』のリングを完成させるための心拍数データを取ったため、心拍数データを保存しておく場所が必要でした。それで、データを保存する場所としてヘルスケアアプリを作りました」。

Appleのヘルスケアアプリは2014年に、Apple Watchのアクティビティデータを保存する簡単なコンパニオンアプリとして始まった(画像クレジット:Apple)

そこでAppleは、中心になる場所ができれば、他の種類のデータも保存できるシステムを開発して、プライバシーを尊重した方法で開発者が関連データをそこに保存できるAPIとアーキテクチャも構築できることに気づいた、とリンチ氏は語る。最初の頃、ヘルスケアアプリは基本的にまだ受け身の格納庫で、ヘルスケア関係のさまざまな情報の接点をユーザーに提供していたが、Appleは間もなく、それをさらに発展させて他にも何かできることはないか、と考え始めた。そして、アイデアのきっかけはユーザーからもたらされた。

ユーザーに導かれた進化

ヘルスケアに対するAppleのアプローチの主要な転換点は、ユーザーがApple Watchの機能を使って、Appleが意図した以上のことを行っていることにAppleが気づいたときに訪れた、とリンチ氏はいう。

リンチは次のように説明する。「私たちは、ユーザーに心拍数を示そうとしており、実際、ユーザーは自分の心拍数を見ることができました。私たちは、心拍数を消費カロリーの測定に使っていました。しかしある時、こんなことがありました。ワークアウトをしていないときに心拍数を見て、心拍数が高いことに気づいた一部のユーザーが【略】医師に診てもらうと、心臓の異常が発見されたのです。Appleはそのようなユーザーから手紙を受け取るようになりました。今でも、私たちがしている仕事について手紙が来ます。それはとてもうれしいことです。しかし、初期のそうした手紙の中にはヒントを与えてくれたものがありました。『待てよ、実は同じことをバックグラウンドで自分たちでできるんじゃないか』ってね」。

その後Appleは、心拍数が高い場合にアラートを通知する仕組みを開発した。ユーザーがあまり動いていないときにApple Watchが異常に高い心拍数を検出すると、それをユーザーに知らせることができる。休息時の高い心拍数は、潜在的な問題に関する良い指標である。Appleは後に、異常に低い心拍数の通知も加えた。これはすべてユーザーがすでに利用できるデータであったが、Appleは、目ざといApple Watchオーナーがすでに享受しているメリットを、先を見越して機能として提供できることに気づいた。

2017年、心拍数が高いことを知らせる通知がApple Watchに導入された(画像クレジット:Apple)

そこでAppleは、似たようなインサイトを探り出せる検討対象の分野を増やすための投資を大きく増やし始めた。ユーザーの行動によって研究対象の新たな分野が特定されるのを待つのではなく(リンチ氏によれば、これはチームにとって依然として重要であるが)、ヘルスケア機能の発展への道筋を切り開くために、臨床医や医療研究者の採用を増やし始めた。

その成果の一例が、WWDCで発表された「Walking steadiness(歩行の安定性)」である。これは、Apple Watch装着者の平均的な歩行の安定度を簡単なスコアで示す新しい基準だ。

リンチ氏は次のように説明する。「歩行の安定性【略】は実は、転倒の検出から得られたものです。私たちは転倒の検出に取り組んでいました。本当にすばらしい取り組みだったのですが、進めていくうちに、ただユーザーの転倒を検出するだけでなく、ユーザーが実際に転倒しないようにサポートする方法についてブレインストーミングを行うようになりました。転倒するその瞬間にサポートするのはかなり困難です。実際に転倒し始めたら、できることは限られています」。

リンチ氏は、Appleが2018年に導入した転倒検出機能のことを言っている。モーションセンサーのデータを使って、突然の激しい転倒と思えるものを検出し、転倒した装着者をできれば助けるために緊急アラートを送る機能である。Appleは、10万人が参加した心臓と運動に関する研究でユーザーの転倒検出データを調べ、それを歩行の基準に関する同じ研究でiPhoneから収集したデータと結び付けることができた。

「(心臓と運動に関する研究のデータ)は、この機械学習に関する仕事の一部でとても役立っています」とリンチ氏は述べた。「それで私たちは、特に転倒と歩行の安定性を中心とした研究に重点を置き、歩行の安定性に関する従来の測定データ一式を、真実を語る資料として使いました。アンケート調査、臨床観察、受診と医師による歩行の様子の観察も同様です。そして1~2年の間、研究対象の人が転倒することがあれば、転倒に先立つ測定基準をすべて調べて、『転倒の可能性を測る本当の予測因子は何か』を理解することができました。その後、それを基にモデルを構築できました」。

iOS 15におけるAppleのヘルスケアアプリの「歩行の安定性」に関する測定基準(画像クレジット:Apple)

実はAppleは、歩行の安定性の機能によって、ヘルスケアやフィットネスの業界では非常にまれなことを成し遂げた。個人のヘルスケアを中心として、臨床的に検証された、意味のある新しい測定基準を作ったのだ。ヘルスケアアプリでは、AppleのiPhoneのセンサーを通して受動的に収集されたモーションセンサーのデータに基づいて「とても低い」から「低い」または「OK」までのスコアが示される(リンチ氏の話では、iPhoneの方が、腰の位置にあるので測定基準をより正確に検出できるという)。おそらくこのデータは、ユーザーが本当に意味ある改善を実際に行うのに役立つだろう、とリンチ氏はいう。

「別のすばらしい点は、すぐに使えるということです」と氏は述べた。「変えるのが難しいものもある中で、歩行の安定性に関しては、改善するためにできるエクササイズがあります。それで、私たちはそうしたエクササイズをヘルスケアアプリに組み込みました。ビデオを見てエクササイズを行い、転倒する前に、安定性を改善するために努力できます」。

歩行の安定性というのはおそらく、ヘルスケアに関してAppleが重視する分野を最も効果的に具現化した機能である。持ち歩くデバイスが、周囲を取り巻く一種のプロテクターに変わるのだ。

「インテリジェントな保護者」

Appleのヘルスケアアプリは、追跡対象の測定基準を概観するのにうってつけである。Appleは、目に映るものを理解することを容易にする、入念に吟味した状況認識情報のライブラリを着実に構築してきた(例えば、研究室のアップデートされた新しいディスプレイでは、結果がiOS 15でわかりやすい言葉に変換される)。しかし、革新の点でAppleが比類のない位置にいる分野の1つは、先を見越した、または予防的なヘルスケアである。リンチ氏は、歩行の安定性の機能はそうした努力の進展の結果であることを指摘した。

「歩行の安定性に関する取り組みは、私たちが『インテリジェントな保護者』と考えているこのカテゴリーに属します。『どうすれば、他の方法では見ることも気づくこともないかもしれないデータを使ってユーザーを見守るサポートができるだろうか。そして、変化の可能性を知らせることができるだろうか』ということです」と同氏は語る。

「インテリジェントな保護者」のカテゴリーは実のところ、当初はApple Watchとヘルスケアの計画に含まれていなかったことをリンチ氏は認めている。

「最初の頃は、『インテリジェントな保護者』について今のような考え方はしていませんでした。Apple Watch初期にユーザーから寄せられた手紙によって、私たちは、本当に意味のあるアラートをユーザーに通知できることに気づきました。ユーザーからの手紙のおかげで、本当に意義深いひらめきを得られました」。

Apple Watchの転倒の検出(画像クレジット:Apple)

そのような手紙は、ヘルスケアの機能に取り組むチームに今もひらめきを与えており、チームに動機付けを与えてその仕事が正しいことを証明するのに役立っている。リンチ氏は、Appleが受け取った1通の手紙を引用してくれた。ある人が父親にApple Watchを買ってあげたが、父親は自転車で外出中に自転車から溝に落ちてしまった。Apple Watchはその転落を検出し、父親の意識がないことも検出した。幸いにも、Apple Watchは緊急連絡先と911番に通知するように設定されていて、その両方に通知が送信された。Apple Watchによって地図上の場所が息子に通知されたので、息子は現地に駆けつけたが、現場ではすでに救急医療隊員が父親(幸い大事には至らなかった)を救急車に乗せているところだった。

リンチ氏は次のように語る。「『人について私たちが感知して知らせることができることとして、他に何があるだろうか』と考えたことはたくさんあります。ヘルスケアに関する取り組みの中で、私たちは、臨床的な観点から人について知るべき真に意味のある事柄とは何か、という点について常に話し合っています。また、人について感知できることについて科学的な観点からどう考えるべきか、という点についても話し合っています。この2つの点が重なる部分にこそ、収集データを理解して活用するための鍵があります。あるいは、疑問に対して臨床的にしっかりとした根拠に基づく回答を出すためのデータを構築する新しいセンサーを開発するヒントが得られる可能性があります」。

個人のヘルスケアに対するコミュニティとしてのアプローチ

iOS 15でAppleのヘルスケアアプリに加えられる別の大きな変更は共有だ。ユーザーと家族や、医師など世話をする人の間で、ヘルスケアのデータを非公開で安全に共有できるようにする。ユーザーは、共有するヘルスケアのデータを正確に選ぶことができ、いつでもアクセスを無効にできる。Apple自体がデータを見ることは決してなく、データはデバイス上でローカルで暗号化され、受信するデバイスのローカルメモリーで復号化される。

iOS 15でのAppleのヘルスケアアプリの共有(画像クレジット:Apple)

ヘルスケアの共有は、インテリジェントな保護者に関するAppleの取り組みの自然な拡張である。これによって、個人のヘルスケアは、常にそうであった状態、つまり個人がつながっているネットワークによって管理される状態に引き上げられるからだ。しかも、現代のテクノロジーとセンサー機能によって拡張されている。

リンチ氏は次のように説明する。「見守り対象の相手はその情報を見たり、変化の通知を受け取ったりすることができ、見守る人は小さなダッシュボードで情報を見ることができます。特に年配者やパートナーの世話をする人にこれが大いに役立つことを願っています。一般的に言って、ヘルスケアの過程で相互にそうしたサポートができるようになります」。

リンチ氏は、単に他の方法では見いだせなかったデータを明らかにすることが目的ではなく、実際には、ヘルスケアに関連した家族間のコミュニケーションを活発にしたり、普通なら決して生じないような個人的なつながりの扉を開けたりすることが目的だということを指摘している。

「最近どれくらい歩いたかとか、よく眠れるかといった話を自然にすることがないような状況で、会話が促されます。そうしたことを共有する気があるなら、さもなければしなかったような会話ができます。医師とのやり取りでも同じです。医師とやり取りするとき、医師は患者の普段の健康状態をあまり見ていないかもしれません。サイロ思考になって、その時の血圧など、部分的にしか診ません。では、医師と話すときに、どうすれば短い時間で全体像を伝えて、会話の内容を豊かにするサポートができるでしょうか」。

医師との共有は、医療提供者の電子医療記録(EHR)システムとの統合に依存するが、リンチ氏によれば、そのシステムでは相互運用可能な標準が使用されていて、さまざまなプロバイダーがすでに米国を広くカバーする準備を整えている。この機能を利用する医療従事者は、ユーザーが共有するデータをWeb表示のEHRシステムで見ることができる。データは一時的に共有されるだけだが、医療従事者は患者のために、簡単に特定の記録に注釈を付けて、永続的なEHRに保存し、必要に応じて診断結果や治療過程をバックアップできる。

EHRには導入と相互運用性の点で困難な問題に直面してきた歴史がある。この点についてリンチ氏に尋ねると、同氏は、Appleが何年も前にEHRとの連携に取り組み始めた当時は、実際に機能させるためにApple側に多大の技術的な負担が求められたと語った。幸い、業界は全般的に、もっとオープンな標準の採用に向かった。

「業界は、もっと標準化された方法でEHRに接続する方向に大きく変化してきました。確かにAppleは、EHRに関するすべての問題に取り組み、改善を支援するために努力してきました」とリンチ氏は語る。

ユーザーとの長期的な関係を築くメリット

ユーザーと医師の両者にとって、Appleのヘルスケアアプリが持つ大きな潜在的メリットの1つは、長期にわたって大量のデータにアクセスできることである。Appleのプラットフォームにこだわり、ヘルスケアアプリを使ってきたユーザーは、少なくとも7年ほど心拍数のデータを追跡してきたことになる。その理由で、iOS 15の別の機能であるHealth Trends(健康のトレンド)は、将来に向けてさらに大きな影響力となる可能性を秘めている。

iOS 15のAppleの健康のトレンド機能(画像クレジット:Apple)

リンチ氏は次のように説明する。「トレンド機能では、長期的な変化を調べ、各分野で統計的に重要な変化の特定を開始します。最初は20ほどの分野が対象となります。注意すべきトレンドが現れ始めたら、それを強調表示し、その様子を表示することができます。例えば、休息時の心拍数に関する現在と1年前のデータを比較できます」。

これもまた、Appleの心臓と運動に関する研究と、Appleがその研究から継続的に引き出したインサイトの結果である。Appleはこの研究の間、提供するインサイトの微調整に大いに力を注いだ。活用できるインサイトをユーザーに提供すると同時に、過剰な負荷や混乱の増大を回避するためだ。

「健康のトレンドのような機能を扱う場合、インサイトでユーザーを圧倒したいとは思いません。しかし、示すべき関連情報がある場合は、それを抑えたいとも思いません。どのように調整すべきか考えました。私たちは、心臓と運動に関する研究で得たデータを調整することに力を注いだので、それが公開されている様子を見ると胸が高鳴ります。これは何度でも言います。これは長期的な変化を理解する本当に強力な方法になると思います」。

ヘルスケアの未来は「融合」にあり

Appleのヘルスケアに関する今日までのストーリーは主に、iPhoneやApple Watchに搭載されている、最初は別の目的を持っていたセンサーを通じてヘルスケアに関するすばらしいインサイトが継続的に提供されたことによって成り立っている。以前はまったく不可能で、実際的ではなかったことだ。その状況は、Appleが、Apple WatchやAppleの他のデバイスに統合できる新しいセンサー技術を探し出して、日常のさらに多くの健康問題に取り組むという、意図的な戦略へと進展した。また、Appleは引き続き、既存のセンサーを使う新しい方法を見つけ出している。iOS 15に追加された、睡眠中の呼吸数の測定が主な例である。一方で、さらに多くのことを行うため、次なる新しいハードウェアの開発にも取り組んでいる。

しかし、将来のヘルスケア機能の観点から見ると、さらに可能性を探るべき分野は、センサーの融合である。歩行の安定性は、iPhoneとApple Watchが単に独立して機能する結果ではなく、Appleがそれらを組み合わせて活用するときに得られる成果である。Appleのソフトウェアとハードウェアの緊密な統合によって強化される分野もある。そのような分野は、デバイスとそのデバイスに搭載されているセンサーで構成されるAppleのエコシステムとして増殖し、成長を続ける。

インタビューの最後に、AirPodsのことを考慮に入れるとどんな可能性が開かれるのか、リンチ氏に尋ねた。エアポッドにも独自のセンサーがあり、iPhoneやApple Watchでモニタリングされるヘルスケア関連データを補完できるさまざまなデータを収集できるためだ。

「現在すでに、いくつかのデバイス間でセンサーの融合を行っています。ここには、あらゆる種類の可能性があると考えています」とリンチ氏は語った。

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カテゴリー:ヘルステック
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(文:Darrell Etherington、翻訳:Dragonfly)