名刺の復活、株式公開はなぜ良いことなのか、BNPLはどこにでもある

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。
みなさんこんにちは。昼食にグリルドチーズを堪能したあと、この記事を書きはじめている。だがアイスコーヒーをたっぷり用意したおかげで、食後の眠気をかわしながら仕事にとりかかることができているというわけだ。今回はまず、かなりすてきベンチャーラウンドについて話し、とある創業者に対象の産業分野の話を聞き、Marqeta(マルケタ)の収益レポートについてとりあげる。ということで、手元にはフィンテックとSaaSと公開企業に関するメモを用意している。では始めよう。

HiHello(ハイヘロー)の野心的なシリーズA

Manu Kumar(マヌ・クマール)氏のことはよくご存かもしれない。彼はK9 Venturesのベンチャーキャピタリストだ。しかし、彼は同時にスタートアップも立ち上げており、今回私たちが興味を寄せるのはそちらの方の取り組みだ。

HiHelloという名のそのスタートアップは、最近750万ドル(約8億2000万円)のシリーズA調達を行ったことを発表した。Foundryがラウンドを主導し、Lux Capitalが参加し、多くのエンジェルたちも小切手を切っている。ここまでは、ごく普通の話だ。しかし、このラウンドがHiHelloのストーリーのおもしろい部分というわけではない。おもしろいのは同社が作っているものだ。

ここで質問。名刺を最後に注文したのはいつだろう?率直に言って私は思い出せないが、最後の仕事からTechCrunchに戻るまでの間のどこかで、新しいカードを入手することをやめてしまった。それは、単に新型コロナの影響や、私が今サンフランシスコから遠く離れて住んでいることだけが理由ではない。実際あまり役に立っていないように見えたので、考えることもなかったのだ。

HiHelloは、インターネット用の未来の名刺といったものを構築している。クマール氏によれば、たとえデジタルの世界であっても、誰もが自分のアイデンティティを示し、自己紹介する方法を必要としているという。もちろん、予定された集会ならば事前に準備することはできるだろう、と彼はいう。しかし、どちらかといえば予定外に人と会うときには、自分のアイデンティティを伝える方法を持っていることは役に立つ。

ということで、HiHelloを使用すれば、一種の仮想名刺を自分で作成することができる。ただし1つだけではなく、ペルソナごとにそれぞれ1種類ずつ、複数の名刺を持てるようにしようというのがアイデアだ。クマール氏は、たとえば私がポッドキャスト(EQUITY)用に1つ、TechCrunch本体用に1つと複数の名刺を持つことができるという。もちろん仕事用ではない個人用名刺も作ることができる。

私は名刺は死んだと思っていたし、二度とそれを用意する必要はないと思っていた。クマール氏の意見は違う。彼は、HiHelloが事実上、コンテキストを中心とした個人的なソーシャルネットワークを生み出すことができる未来を見ているのだ。それは大胆で直感に反する主張だ。言い換えるなら、スタートアップの良いネタだ。

HiHelloは現在、消費者から収益を得ており、ビジネスプロダクトも持っている。このスタートアップがどれだけ早く成長できるか見守りたい。新しい種類のソーシャル製品に期待できる時が来たのだろう。

対象産業を選ぶ

Skyflow(スカイフロー)については何度か書いたことがある。共同創業者のAnshu Sharma(アンシュ・シャルマ)氏は長年の知り合いだ。最初に会ったのは彼がStorm Ventures(ストーム・ベンチャーズ)にいたときのことだ。その後、彼はエンジェルとして投資を続け、何社かを創業した。そのうちの1つがSkyflowだ。このソフトウェアスタートアップは、PII(個人情報)やその他の重要な情報を顧客に代わって保護し、安全な方法でアクセスできるようにする「デジタル金庫」を販売していて、情報セキュリティに全力を注げない企業が、侵害を回避できるようにしている。

このビジネスモデルは成功しており、Skyflowはかなりの速さで資本を調達している。シャルマ氏はこれまでのところ、顧客の広がりを喜んでいるようだ(シャルマ氏はまた、私が先日エッセイを書くのに役立ったメモを提供してくれた)。

そんなSkyflowが最近、ヘルスケア市場向けに特化した製品を発表した。会社の最初の立ち上げから追跡をしてきたので、私は興味を惹かれた。それで、私はシャルマ氏に電話をかけて彼の産業戦略の話を聞いた。彼がどのように追求していく市場を選んでいるのか、そして彼が次に会社をどちらへ連れて行くのかに興味があったのだ。

シャルマ氏は、彼の会社の計画は、複雑な市場でその技術を証明し、その後、時間の経過とともにその力を拡大することであるという。ということからヘルスケアを推進し、財務データの保管をSkyflowの中で扱うのだ。難しい問題を解決し、彼がいうところの複雑な顧客に販売することによって、Skyflowは他の人びとにその技術を提供するための信用を市場から得ることができる。

彼の視点からは、私たちはプライバシーを重視して、インターネットをゼロから「再配線」する必要があるように思えるのだ。初期段階から決済技術を取り込まなかったことがいかに間違いであったかを語るMarc Andreeseen(マーク・アンドリーセン)氏の言葉をシャルマ氏は引用しながら、ウェブの黎明期に2つのことが忘れられていたのだと主張する。そう、支払いプライバシーだ。

したがって、Skyflowの産業戦略は、可能な限り最も困難な問題(医療データはあらゆる種類の規則や規制に関係している)に取り組み、PIIがすべての人にとってより安全になるまで範囲を広げていくことなのだ。これは、インターネットがどこに向かっうかについての、基本的には楽観的な取り組みである。それはプライバシーが理屈の世界に留まりアドテックが永遠に残り続けるFacebookの世界ではなく、データがユーザー自身のものであり、安全に保存され外からは手の届かない世界のことだ。

Skyflowがこの先向かう環境での競争は厳しくなるだろう。しかし、個人にプライバシーを取り戻したいというスタートアップの、たとえ一部だけでも成功するならば、私は満足するだろう。

Marqetaの初の業績報告会

2021年見たIPOの波の中でやや目立たなかったのは、カード発行分野に携わるフィンテックユニコーンのMarqetaのデビューだった。同社は先週、初の公的業績報告会を行った。そこで同社CEOのJason Gardner(ジェイソン・ガードナー)氏と、その内容について電話で大いに話し合った。

簡単にいえば、Marqetaは第2四半期に急速に成長し、期待を軽々と上回った。しかし、同社は市場が予想していたよりも多くの金を失い、その結果IPO後の株価の値上がり分を事実上すべて失った。

電話からのメモをいくつか。第一に、ガードナー氏は公募価格を上回ったことに満足しているようだ。1年半にわたるIPOが終了した今、会社経営に打ち込めるチャンスを取り戻せたという。また、これまでは年に一度話していた取締役会での計画発表が、四半期報告書になったことが楽しかったという。より定期的な情報開示が会社の仕事に緊張感をもたらすからだ。

普段は非公開企業のCEOが、わずらわしい業績報告会などを心配している話を聞くことが多いので、公開企業の経営者が自分の会社の発展を褒めているのを聞くのは、少し新鮮だった。このことを聞いて、公開を好む理由は違っているもののBigCommerce(ビッグコマース)のCEOであるBrent Bellm(ブレント・ベルム)氏から聞いた公開に関するコメントを思い出した。

関連記事:ローコードの後に来るものは?そして、何故公開をする必要があるのか?

しかし、スタートアップの世界を理解する上でより重要だったのは、MarqetaのBNPL(後払い)市場に関するメモだった。Klarna(クラーナ)の台頭をきっかけに、Square(スクエア)がAfterpay(アフターペイ)を買収し、そして数多くのBNPLスタートアップのラウンドを経て、Marqetaが自社の成長市場としてBNPL(今すぐ購入、後で支払い)の分野に注目していることが私たちの関心をとらえた。BNPLが、カード発行プラットフォームの役に立つのは何故だろう?

要するに、Marqetaなどが顧客のために発行したバーチャルカードが、BNPLの取引を可能にするソフトウェアの一部として使用されることが多いことがわかったからだ。フィンテックの世界は、常に予想以上に相互につながっている。ということで、BNPLというカテゴリーを考える際には、その成長が他のどのような分野の成長と関わっているのかにも注目したいと思う。これにより、BNPLの波に乗ることができるスタートアップの数が増えるからだ。

最後にもう1つ。馴染みのない市場のダイナミズムの説明を得るには、公開されている企業のCEOに説明してもらうのが一番早い。ただ、このようなやり方の欠点は、もう少しで理解しかけていたのに、たった1つの重要な要素を見逃していただけという場合に、CEOがささやかな一言で気づかせてくれたときに、自分が理解できなかったことをとても残念に感じてしまうことだ。

とはいえ、実際には自分がとても愚かだという自覚はあるので、何かを知らないことで顔を真っ赤にすることはない。さて、今日はここまでにしよう。

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

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画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

カーシェアリングのTuroがユニコーンになり秘かにIPOを申請

ピア・ツー・ピアのカーシェアサービスTuroが、秘密裏に米国証券取引委員会(SEC)にIPOを申請した。

このIPOの発行株数や価格範囲は未定、と同社は声明で述べている。TechCrunchにも、それ以上の情報は明かしていない。

創業11年になるTuroのマーケットプレイスはAirbnbと似ており、クルマのオーナーがTuroのアプリやウェブサイトで自分のクルマの貸出を公示する。現在、Turoのカーシェアを利用できる都市は米国、カナダ、英国の計5500都市あまりだ。Turoは元々、Daimler AGのカーシェア子会社Crooveの買収と投資から生まれたドイツの企業だが、今はドイツにはない。

同社は2019年7月にシリーズEで2億5000万ドル(約276億6000万円)を調達し、それが同社をユニコーンに押し上げ、CEOのAndre Haddad(アンドレ・ハダド)氏はブログで「評価額が10億ドル(約1106億3000万円)のラインを超えた」と言っている。Turoは2月に、そのフォローアップとして3000万ドル(約33億2000万円)の拡張ラウンドを調達し、調達総額は5億ドル(約553億1000万円)を超えた。

Turoはパンデミックの間に、BirdやGetaroundなど、その他の交通系スタートアップと同様、かなり苦しんだ。2020年の3月には従業員の30%、108名をレイオフしたと調査会社Layoffs.fyiはいう。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:カーシェアリングピア・ツー・ピアTuroIPOユニコーン企業

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ローコードの後に来るものは?そして、何故公開をする必要があるのか?

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。

第2四半期の業績報告シーズンは順調に進んでいる。つまり、Exchangeのスタッフたちが、重要なトレンドやメモをお届けするために、多くの公開企業のCEOたちにせっせと電話をかけているということだ。ということで、今回はAppian(アピアン)、Paycom(ペイコム)、BigCommerce(ビッグコマース)を取り上げる。

その後、BNPL(後払い)の世界スタートアップの競争への最近の報告を強化してくれる、新鮮な素材を覗き見する。持ち帰りバッグの用意はよろしいだろうか?お土産をどっさりお渡しできますように!

まずAppianから始めよう。私がこの会社を知ったのは、多くの企業が同社のローコード技術を使用してアプリケーションを構築していた、パンデミックの最中だった。当時のAppianの評価額は現在の約半分ほどだった(同社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

それ以降、同社はクラウドへの注力を継続し、プロフェッショナルサービスの売上よりも利益率の高いSaaSによる売上を優先している。似たような変革を実行しているのは同社だけではない。しかし、今回の記事のために、2020年の多くを費やして掘り下げた基本的なローコードの後に何が起こるかについて話してみたい。

Appianは、第2四半期の業績報告に関連して、プロセスマイニング会社のLana Labs(ラナ・ラボ)を買収することを発表した。プロセスマイニングとは何かって?聞いてくれてありがとう。プロセスマイニングとは、自動化でき企業内のプロセスを見つけるためのソフトウェア技術だ。会社のためにRPAサービスを導入するのは結構なことだが、もし何を自動化できるかわかっていない場合には、完全な価値を得ることは難しいかもしれない。

これがAppianの場合とても重要なものになる。なぜなら同社はいまや、企業が同じ屋根の下でアプリケーションを作成するのに役立つ、プロセスマイニング、RPA、およびローコードツールを持つようになったからだ。実際には、これらのパーツは、自動化するものを特定するプロセスマイニングと連携して機能する。そこで特定されたワークフローは、RPAやその他の形式の自動化(AI、人間)の中に取り込まれ、企業が効率的な順序で業務を遂行できるようにする。

AppianのCEOであるMatt Calkins(マット・カルキンス)氏に、ワークフローとアプリケーションの違いについて尋ねてみた。彼はそれらはほとんど同じものであるという。これにより、ローコードの世界をもう少し理解することができる。企業が本当に必要とするアプリケーションの数はいくつなのかと、私はいつも疑問に思ってきた。だが企業が自動化する必要のあるワークフローの数に関する同様の質問には、違う感覚を受ける。もっともっとたくさんの可能性があるように感じるのだ。つまり、より大きな市場の可能性があるということだ。

ローコードについての私の考えを改めたい。このダイナミクスが、単により多くのアプリケーションを作れるというだけではなく、企業が業務をデジタル化し、決まりきったタスクを自動化するのにより役立つというのなら、このソフトウェア手法を私はもっと自信をもって推せる。

次にBigCommerceの話題へ移ろう。このオープンSaaS方式のeコマースプラットフォームはここ数四半期好調で、Shopify(ショッピファイ)のグローバルな知名度が高まっているにもかかわらず、収益の伸びが順調に加速している。株式公開から1周年を迎えたばかりなので、CEOのBrent Bellm(ブレント・ベルム)氏に数分間、この1年で学んだことについて話を聞き、公開には価値があったか否かを尋ねた(会社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

もちろん、と彼は答えた。彼は私が紹介したくなるような、企業上場における2つの効用を説明した。ベルム氏は、会社の最近の業績に貢献したさまざまな要素から主となる要因を分離することは不可能だとはいうものの、それら2つはBigCommerceのより速い成長に貢献している。

ともあれ、株式公開する理由は以下のとおりだ。

  • 信頼性:オープンファイナンスの公開企業であることは、市場での信頼を育むことができる。スタートアップにはやや頻繁に死にやすいという厄介な習性がある。公開企業はそれよりははるかに死ににくい。つまり、顧客が会社を信頼する可能性が高く、おそらく取引を確保する可能性が高まることを意味する。さらに、BigCommerceが公開されたことで、パートナーたちはBigCommerceに対する信頼を深めており、ベルム氏によれば、そのことがより多くのパートナーシップと成長を促しているという。
  • 注目度の向上:私は株式公開にまつわるこの側面を理解していたつもりだったが、ベルム氏が私の視野を広げてくれた。もちろん、株式公開はブランディングイベントの1つだ。しかし、私は話はそこで終わりだと思っていた。だがベルム氏は、公開したことによって、たとえば彼の会社が何かをしたときにアナリストコミュニティが注意を払うようになると説明した。そのために、BigCommerceは、スタートアップのときよりも、公開会社となったときのほうが世間の注目を集めるのが容易になる。良い意味で、自社を取り巻く市場ノイズが強調されるということだ。

ベルム氏はThe Exchangeに対して、株式公開は彼の会社にとって「圧倒的に良いこと」だったと語る。ユニコーン諸君、聞いたかね?

次はPaycom(ペイコム)の話だ。このインタビューで主に話題に出たのは、人材に関する2つの話題だ。まず最初の話題、Paycomは、他のすべての企業と同様に、競争力のある技術人材市場を扱っている。しかし同社は、従来のテクノロジーハブから遠く離れているにもかかわらず、特に必要とする人材の不足に直面している。Paycomはオクラホマ州を拠点としている(会社の第2四半期のレポートはここで読むことができる)。

しかし、現在の人材市場とその全般的な逼迫は、別の意味でPaycomに影響を与えている。このHRテクノロジー企業は、一般企業が人材を確保してその後維持し続けるのに役立つソフトウェアを販売しているからだ。同社のCEOであるChad Richison(チャド・リチソン)氏によれば、企業は採用後の必要な手続きを終えたあと、人材を手放さないことに重点を置くことで恩恵を受けているという。

2つ目の話題は、労働市場はベンチャーキャピタル市場ととても似てきたことがわかったということだ。リチソン氏は、現在は誰かを面接したら2、3日で採用するか否かを決断しなければならないのだという。以前はもっと時間に余裕があったが、現在の状況は、VCが数週間や数カ月ではなく数日で小切手を切る決断をすることを余儀なくされているのに似ている。

暑い(熱い)夏になりそうだ。

BNPL(後払い)市場を狙うスタートアップ

Splitit(スプリティット)のCEOであるBrad Paterson(ブラッド・パターソン)氏によれば、BNPL市場を狙うスタートアップにとって希望はまだ残されているという。Splititを使えば、顧客は現在のクレジットカードを使用して分割払いを行うことができる。つまり、これは従来のクレジットとBNPLの組み合わせなのだ(SplitItのCrunchbaseページはこちら)。

パターソン氏はBNPLスタートアップの現在の市場についてのコメントを話してくれた。Square(スクエア)とAfterpay(アフターペイ)の取引について多くのことを話した後、私はなぜ中小企業が、彼らの市場に参入してくる巨大企業の猛攻を凌いで、生き残ることができるのかについて彼の意見を聞きたくなった。

パターソン氏は電子メールの中で「平均購入価格、分割払いプランの長さ、業界の統合サービスなど」と説明した豊富な要因が、この世界での生き延びる余地を守っているのだと説明した。そして、BNPLソリューションは「小規模な購入から始めて拡大できる」ため、この分野にはスタートアップが入り込める余地があるのだという。

おそらくより良い質問は、消費者の信用と習慣を構築するために、あとどれほどの手間が必要なのかということだろう。それは、BNPLツール自体よりもはるかに広い問題空間のように思える。

スタートアップの競争

スタートアップの競争に関する少し前の仕事に戻ろう。Hustle FundElizabeth Yin(エリザベス・イン)氏が、共有したくなる一覧を送ってきた。スタートアップにとって市場で主導的役割を果たすことの重要性について話し合っていたときに、私たちは主に、若い企業がさまざまな関係者を結びつけようと試みているマーケットプレイス空間のことを話題にした。

たとえば配車の世界では、それは運転手と乗客だ。フードデリバリーではさらに複雑で、配達者、消費者、食品を生産する事業所が関わる。どのような話かは想像できるだろう。イン氏は、下位の市場シェアに満足していることは「一般的に非常に難しい」ことだという。彼女は続けた:

市場の価値は、通常需要と供給の両方が拡大するにつれて増加します。例えばAirbnbでは宿泊施設と顧客の数の増加が起きていますし、Uberでは運転手と乗客の両方が増えています。などなど。実際、多くの場合には、それが唯一の価値なのです。

したがって、市場で3位または4位である場合、顧客の維持は大きな潜在的課題です。なぜならより大きなネットワークを持っている1位または2位の競争相手に、現在の顧客が逃げていかないようにするにはどうすれば良いかを自問しなければならないからです。これが、マーケットプレイスが統合されていく傾向がある理由なのです。

初期からの投資家にとっては、1位または2位への売却によってうまく決着できる可能性があるものの、1位または2位に投資した場合に比べると、結果は1〜2桁低いものになってしまう可能性があります。このため、好調なスタートを切ったマーケットプレイスがすでにいくつかある場合には、アーリーステージの投資家たちは新しいプレイヤーに投資することを躊躇する傾向があるのです。

イン氏はまた、私たちの質問に答えて、スタートアップによるマーケットプレイスの競争は、一般的に少数の主要なプレイヤーがいる市場を生み出し、市場シェアが低いことで小規模な参入者が追い出されてしまうことで、他の競合他社は死に追いやられるという。彼女は資本の影響に関して興味深い視点を追加した:

一般的には、そう、投資家もこの現象に関与しているのです。いくつかの企業が立ち上がると、投資家はそれらの最初のリーダーにより注力する傾向があり、かつ他の人たちは競合他社への投資を敬遠する傾向があります。そして、お金がその分野に溢れたら、顧客獲得コストが問題になるのです。顧客獲得コスト(CAC)がトップ企業によって引き上げられてしまうのです(これは、フードデリバリー企業の台頭とともに見られた現象です)。これが、マーケットプレイス企業を簡単に立ち上げることができない理由なのです。顧客を獲得する余裕を持てないのです。

これは、ある意味で、スタートアップの世界におけるキングメイキングについての質問に対する答だ。ベンチャーキャピタルは、多くの場合誰が勝つかをあらかじめ決めてはいないものの、資本の影響は実際にマーケットプレイスの世界で結果を歪める可能性がある。さて、最初のVision Fund(ビジョンファンド)が、どのように資本を振り分けたかを話し始める前にこの話題はやめておくことにしよう!

ではまた、ワクチン接種が無事に終わりますように。

ではまた。

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画像クレジット:Nigel Sussman

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

今度はRobinhood株がおかしくなった

更新:Robinhood株の取引は乱高下のために停止された。同社の株価はRobinhoodアプリ自身で65.60ドルで止まっている。Yahoo Financeはもっと高い77.03ドルをつけていて、今日は驚きの64.59%高だ。事態は流動的だが、Robinhoodは停止中でも、取引が再開されれば再び上昇するかもしれない。たしかにどうかしている。

米国時間8月4日、消費者向け投資フィンテックのRobinhood(ロビンフッド)が時間外取引で急騰した。2021年になって GameStop(ゲームストップ)やAMC(エーエムシー)などの小さな会社の急騰を呼んだ異常現象は、Robinhood自身の株価にも影響を与えているようだ。投機フィーバーの最中、GameStopとAMCの株取引が行われた投資プラットフォームRobinhoodで起きている皮肉な現象をTechCrunchは認識している。

関連記事:GameStop株を買いまくる個人投資家たち、ボスのボスのボスのボスとの話

この日何が起きたかをYahoo Financeで確かめてみよう。


Robinhoodは予定範囲下限の1株当り38ドルで上場し、早期の取引ではIPO価格以下に沈んだことを思い出して欲しい。今や1株当りの価値は54ドルだ。

すごい。

いつもであればTechCrunchは、ここでジョークを飛ばしてこの小さなニュース記事を終わりにするところだが、RobinhoodのIPOは伝統的株式上場とは一味違っていたので、もう少し仕事をする必要がある。上場したとき、Robinhoodは株式の一部分を自社ユーザーの購入のために取り置きしていた。これによって、上場直後のRobinhood株保有者は、伝統的IPOと比べて一般投資家の割合が多くなった。

Robinhoodの初期のやや低調な取引実績に関する1つの仮説は、同社が自社ユーザーに株を買わせたことによって初期の一般投資家による株式需要が満たされ、結果的に上場時の需要・供給の相違が小さくなったというものだ。

状況は変わった。今何が起きているのか?先週、あるアナリストは同社株に1株当り65ドルという価格目標を設定した。他にも考慮に値する予測がいくつかある。しかし、Robinhoodの本日の急騰は、新たな買いまくりによるものと思われる。同社の株はまるでショートスクイズのように取引されている。市場参加者の中には、会社を限定的な空売り対象と見ていることから、この考えに懐疑的な向きにもある

Robinhood のIR情報をみても何もニュースはない。Robinhoodは最近売上報告をしていない。同社が最近提出したPFOF(payment for order flow、ペイメント・フォー・オーダー・フロー)売上に関する会計基準606号書類は、2021年第2四半期速報に同社が載せた予想売上と一致しているようだ。おそらく暗号資産は予想以上だっただろうが、特別目立ったものはない。

どうやらRobinhoodが上昇しているのは、実際上昇しているからというだけのようだ。これは2021年にはよく起きることであり、慣れる必要があるだけだ。

しかし我々の目的にとって最も重要なのは、IPO株の一部を自社ユーザーに売るというRobinhoodの決断は、公開企業となったユニコーンの異常な取引を抑制効果をもたらすことができなかったことだ。普通と違う方法で上場しても、馬鹿げたことは起きる。これでみんなわかっただろう。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Robinhood新規上場

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ソフトバンクGも出資するインドのオンライン保険アグリゲーターPolicybazaarがIPOを申請

インドのオンライン保険アグリゲーターであるPolicyBazaar(ポリシーバザール)は、8億900万ドル(約880億円)の資金調達を目指す新規株式公開を申請し、インド市場でこの2カ月の間に公開市場を開拓した4番目のスタートアップ企業となった。

PolicyBazaarは、インドの市場規制当局に提出した書類の中で、5億400万ドル(約550億円)を新株発行によって調達し、残りは既存の投資家による株式の売却によって調達したいと述べている。

SoftBank Group(ソフトバンクグループ)、Falcon Edge Capital(ファルコン・エッジ・キャピタル)、Tiger Global(タイガー・グローバル)、InfoEdge(インフォエッジ)から支援を受ける創業12年目のスタートアップは、IPO前のラウンドで約約1億ドル(約110億円)の調達を検討する可能性があるという。ソフトバンクは2億5000万ドル(約275億円)分の価値の株式を売却する予定で、PolicyBazaarの創業者たちは5270万ドル(約57億4000万円分)の価値の株式の売却を検討していると、書類には書かれている。

PolicyBazaarは、生命保険、健康保険、旅行保険、自動車保険、不動産保険などの保険契約を、従来の代理店を通さずにウェブサイト上で比較・購入できるアグリゲーターとしてサービスを提供している。同社はインドの他中東で事業を展開している。

画像クレジット:PolicyBazaar

インドでは現在、13億人の中で保険に加入している人はごく一部にすぎないものの、このようなサービスを大衆に提供するためには、デジタル企業が重要な役割を果たすとアナリストたちは分析している。格付け会社のICRAによると、2017年の時点で保険商品が行き渡っているのは、インドの人口の3%にも満たないという。

World Bank(世界銀行)によると、平均的なインド人の年収は約2100ドル(約23万円)。2017年に保険商品を購入したことのあるインド人が支払った金額は、平均50ドル(約5500円)に満たないと、ICRAは推定している。

「インドの生命保険市場は、良好なマクロ指標、金融商品やサービスに対する意識の高まり、商品やプロセスのデジタル化と簡素化、オンライン販売網、商品のイノベーションとカスタマイズ、政府の政策や規制による後押しが原動力となり、年率18.8%で成長し、2030年度には31.9兆ルピー(約46兆8000億円)に達すると予想される」と、PolicyBazaarはこの書類の中で述べている。

Bernstein(バーンスタイン)のアナリストは、2021年初めのレポートで、PolicyBazaarはインドのオンライン保険販売市場で90%のシェアを占めていると推定している。このプラットフォームは、インドではAcko(アコ)やAmazon(アマゾン)と競合しており、ローンやクレジットカード、投資信託も取り扱っている。同社によると、毎月100万件以上の保険を販売しているという。

「インドは保険市場が浸透していません。その中で、Policybazaarのようなウェブ・アグリゲーターを通したデジタル販売は、業界の1%未満です。これは大きな成長の余地があるということです」と、Bernsteinのアナリストは顧客に向けて書いている。

7月に上場して見事な成果を収めたZomato(ゾマト)をはじめ、フィンテック企業のPaytm(ペイティーエム)やMobiKwik(モビクイック)も、ここ数週間以内に株式公開を申請している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:インド新規上場PolicyBazaar保険ソフトバンクグループ

画像クレジット:Arijit Sen / Hindustan Times / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フィンテックRobinhoodの株価が初日の取引で8%下落

Robinhood(ロビンフッド)は米国時間7月28日の夜に、IPO範囲の下限である1株あたり38ドルの価格で公開を行った。その価格での評価額は約320億ドル(約3兆5578円)だった。

しかし、この米国の消費者向け投資・取引アプリRobinhoodの、株式取引が開始されると、株価は急速に下落し、浮動株としての取引が始まった最初の数時間で10%以上の下落を記録した。その後の取引でRobinhood株はある程度回復したものの、Yahoo Finance(ヤフー・ファイナンス)によれば8.37%減の1株あたり34.82ドル(約3811円)でその日の取引を終えた。

同社はIPOで5500万株を売出し、総売上高は21億ドル(約2299億円)となった。もし引受銀行が利用可能なオプションを購入するなら、この数字はさらに増える可能性がある。とはいえ、同社は現在、十分な資金を有しており、自分たちの思い通りに未来を描くことができる。

では、なぜ株価が下がったのだろう?2020年、多くの大手ブランド、消費者向けハイテク企業の周辺で見られた旺盛な投資騒動を考えると、Robinhoodがその日のうちに80%以上の上昇で終わらなかったことにむしろ驚くかもしれない。なにしろDoorDash(ドアダッシュ)やAirbnb(エアービーアンドビー)は派手なデビューを果たしたのだから。

関連記事:フードデリバリーのDoorDashとエンタープライズ向けAI開発のC3.aiがIPO直後に株価急騰

考えを口に出してみると、いくつかのことに思い当たる。

  • Robinhoodは、IPOの大部分を自社のユーザーに公開した。実質上Robinhoodは、一般投資家やトレーダーに、大口投資家と同じ価格とアクセスレベルで株式を提供することで、初期のリテール需要を縮小したのだ。良いアイデアだ。だがそうしたことで、Robinhoodは、その株式に対する未決済分株式への関心を低下させ、おそらくそれが初期の需給曲線を決定付けてしまったのだろう。
  • もしくは、同社が2021年第2四半期に取引量が減少する可能性があると警告したことで、一部の投資家たちを怖気づけさせたのかもしれない。

とはいえ、このミーム集中砲火型株価決定の時代に、Robinhoodのデビューがやや下降気味なのは、ちょっとした謎である。今後、同社の株価が落ち着きを見せていく中で、将来の業績に対する投資家の動向ををより深く掘り下げていく予定だ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:RobinhoodIPO

画像クレジット:TechCrunch

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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

インシュアテックの評価額を心配すべきだろうか?

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皆さん、こんにちは!素敵な一週間を過ごせただろうか?私は眠りを覚ます胸焼けを感じながら32歳になった。ということで個人的には、ちょっとしたいいことも、悪いこともあった。だが、それでもマーケットは待ってくれない。全く、微塵も揺らぐことがない。つまり、インシュアテック関連株の下落や、この状況がスタートアップ企業にとってどのような意味を持つのか、また多数のIPOについてなどの話題は尽きないということだ。面白い!

さて新規上場企業であるKaltura(カルトゥーラ)、Couchbase(カウチベース)、Enovix(エノビックス)と行ったチャットの詳細に入る前に、まずインシュアテックについて話しておくことにしよう。

ここ1年ほどの間に、Root(ルート、自動車保険)Metromile(メトロマイル、自動車保険)、Lemonade(レモネード、レンタル保険)などの、インシュアテック系のスタートアップが続々と上場している。ここでは、現在の彼らのパフォーマンスがどのように見えるかを簡単なダイジェストでご紹介しよう。

  • Root:1株あたり7.72ドル(約853円)。IPO価格27ドル(約2985円)から71.4%ダウン。
  • Metromile:1株当たり7.26ドル(約803円)。合併後の高値から64.4%下落。
  • Lemonade:1株あたり86.97ドル(約9614円)。IPO価格の29ドル(約3206円)から199.9%上昇。

思い出して欲しいのは、RootとMetromileがLemonadeの後に取引を開始したことだ、つまりその下落は長い時間軸ではなく短い間隔で発生した。だからこそ、この状況が興味深いのだ。

何が起きているのだろうか?さて、(SPAC、IPOなどの)何らかの形で公開したインシュアテックの3社に2社は極めて厳しい状況にある。このことは、まもなく完了予定のSPAC主導の合併を進めているHippo(ヒッポ)にとって、良い兆候とはとても言えない。こうした大幅な下落は、インシュアテックスタートアップにとっては明るい材料ではない。彼らは、自分たちの価値に対する一般投資家からの疑問に答えなければならない。

LemonadeのIPO後の好調な業績は、懸念を払拭するものだろうか?難しい質問だ。同社は、自動車保険をはじめとする新しい市場への拡大に奔走している。最新の決算報告書によると、同社は今年初めにテキサス州の寒波により多少の打撃を受けたものの、その点を除くと、同社が他の2社がやっていないことをやっているのかどうかは明らかではない。ともあれ投資家が注目しているのは、RootやMetromileではなく、Lemonadeなのだ。IPOに向けてまだ規模を拡大している多くのインシュアテックスタートアップにとって、何故そうなるのかや、他の2社よりもLemonadeに近付くにはどうすればよいかを解明することは、重要な鍵となるだろう。

IPOの季節到来

この2週間、The Exchangeは上場する企業のCEOと電話で話し、彼らの最近の状況を学ぼうとしてきた。というわけで、以下に示したのはKaltura、Couchbase、Enovixの人たちとのチャットの電話メモだ。

Kaltura

  • メモ:オンラインビデオに特化したKalturaは、今年初めに株式公開を申請したものの、そのIPOを延期し、また別の資金調達イベントを行った
  • The Exchangeが、KalturaのCEOであるRon Yekutiel(ロン・イェクティエル)氏に話を聞いたところ、同社のIPOのタイミングは、2021年初頭の公開市場の混乱の影響を受けていたという。それは驚きではなかったが、確認できたことはよかった。
  • そしてその停滞の原因の一部は、Archegos(アルケゴス)の破綻によるものだったとイェクティエル氏はいう。それは理にかなった説明だが、私たちは初めて知るニュースだった。
  • イェクティエル氏は、株式公開が遅れたことを決して嬉しくは思っていないと述べた(公開は事前に公表できる唯一の資金調達だからだと彼はいう)。とはいえ初回に彼の会社が話をしていた投資家たちは、二度目のIPOに際しても変わらずKalturaを熱心に応援していると付け加えた。
  • CEOによれば、Kalturaの第2四半期の速報値は、年初に話していたことが実現していることを投資家に示すことになったという。また、継続的な成長のためには、新製品の取り込みが重要であるとも強調した。
  • イェクティエル氏は、20%の高値を記録した初日の値付けと取引結果に満足している。それ以上だと過剰で、それ以下だと不足だとも指摘している。
  • Kalturaの価格が3月のIPO時の価格帯に比べて低かったことについて、イェクティエル氏は「第一印象を与えるチャンスに3度目はない」と述べ、同社としては公開を完了させたかったのだと語った。そして、その通りにやりきった。自分の考えの中で迷子にならないためには重要なことだ。
  • 本記事執筆時点で、Kalturaは1株あたり10ドル(約1105円)のIPO価格から17.5%上昇している。

一つの逸話を紹介しよう。Kalturaはかつて、現在のTechCrunch Disruptカンファレンスシリーズの前身であるTechCrunch50イベントの、さらに前身であるTechCrunch40の初期において、物理的なトークンによる1票の差により優勝した。イェクティエル氏はそのトークンをまだ持っていて、チャットの最中に見せてくれた。素晴らしい!

Couchbase

  • The Exchangeは、NoSQLデータベース企業であるCouchbaseのCEO Matt Cain(マット・カイン)氏に話を聞いた。Couchbaseの価格は1株あたり24ドル(約2653円)で、IPO時の価格帯だった20(約2211円)ドルから23ドル(約2542円)を上回った。
  • この記事を書いている時点では、本日の取引で9.2%上昇し、33.20ドル(約3670円)となっている。
  • カイン氏は、かなり厳密な台本に基づいて受け答えをした。これは、失敗して刑務所に入ることを心配している上場したばかりのCEOとしては、ごく普通の状況だ。ということで求めていた詳細な回答は得られていない。しかしそれでも、Couchbaseもリモートでのロードショーが増加することによって、会議の密度を高めることができた企業だったことなどを知ることができた。
  • CEOは、Couchbaseの前にある機会の規模、すなわちオンライントランザクション処理データベースの世界についての議論に集中していた。彼は、世の中にこれ以上大きな市場を見つけるのは難しいと主張し、そのことが投資家たちに、彼の会社が何かを成し遂げられるかもしれないと期待させているのだ。データベースの世界の市場が、カイン氏が考えている位大きいのであれば、スタートアップ企業の活躍の場はたくさんあるだろうというのが私たちの解釈だ。
  • 私たちは、公開市場の投資家たちがオープンソース企業をどのように見ているのかを知りたかったのだが、彼からはあまり話を聞くことができなかった。それでも、この会社のIPOは非常に強力なものであり、OSSで作られていることは、イグジットを目指す会社にとって必ずしも不利ではないことを示唆している。

Enovix

  • The Exchangeは新しい公開企業Enovixの話を聞きたいと思っていた。同社がSPACで上場したばかりだからだ。なぜそれが重要なのか?なぜなら、SPACで上場を目指すバッテリーに特化した企業が他にもあるからだ。そのため、今回のチャットは後に続く仕事への良い地ならしとなった。
  • それに、公開企業と話すのは大好きだ。嫌いなひとがいるだろうか?
  • 「合併して新しいティッカーシンボルで取引を開始した」日は、彼の会社にとってIPOのようなものかとたずねたところ、創業者でCEOのHarrold Rust(ハロルド・ラスト)氏はそうだと答えた。もっともな答だ。
  • 私たちは、同社のSPAC合併日が第2四半期から第3四半期にずれ込んでいることに気づいた。それはなぜだろう?手短にいえば、会計に関するいくつかのSECの変更に起因している。チャットから受けた印象は大したことではなかったのだが、Enovixの合併日を少し遅らせる原因となった。
  • なぜSPACで株式公開を行うのか?現金だけでなく、その合併に関わるスポンサーも、業務知識という点で重要なリソースなのだとラスト氏は述べている。同社は、SPACスポンサーのネットワークからも採用を行っていて、これは注目に値すると感じられた(ほら、実際の投資家による付加価値だ!)。
  • まだ収益を上げていないもうひとつのバッテリー企業SES(SPAC間近)よりも自社の評価額が低い理由を聞かれたラスト氏は、SPAC取引における自社の評価額は交渉によるものであり、もし会社が成功するなら11億ドル(約1216億円)と評価されようが14億ドル(約1548億円)と評価されようが、実質重要ではないと答えた。
  • Enovixの 興味深い点は、 需要の高まるEV(電気自動車)向けの電池技術に着手していないことだ。 その代わりに、ハイエンドの電子機器をターゲットにしている。その理由は?バッテリーをハードウェアに搭載するためのサイクルが早く、価格競争力を持てるからだ。しかし、いずれはEVにも参入したいと考えている。
  • 同社の1株あたりの価値は17.33ドル(約1916円)で、Yahoo Finance(ヤフーファイナンス)の評価では25億ドル(約2764億円)となっている。これは、予想されていたものよりも良い結果であり、SES自身の将来のデビューに向けての良い兆候だ。

盛りだくさんだった。ここまで私に付き合って、ささやかなThe Exchangeニュースレターを読んでいただき感謝している。世界のベンチャーキャピタル市場やエドテックなどに関する長文記事を読みたい方は、こちらからすべての記事がアクセス可能だ

ではまた、お元気で。

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画像クレジット:Nigel Sussman
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(文: Alex Wilhelm、翻訳:sako)

インドのユニコーン「Zomato」のIPOに世界が注目

フードデリバリーのスタートアップで来週公開市場で取引を開始するZomatoは、ジャーナリストや業界の専門家から、インドで史上最大のテック系株式上場であると言われている。上場によって同社の時価総額は最大86億ドル(約9400億円)に達する可能性があり、投資家は早くから強い関心を示している

同僚のAlex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)とAnna Heim(アナ・ハイム)がTechCrunchコラムに書いたように、ZomatoのIPO後の成り行きには、Paytm(ペイティーエム)とMobiKwik(モビクイック)という、同じく近日中の上場を目指しているインドのフィンテック・ユニコーンの2社を始めとする100社ほどのインド・ユニコーン、そしてもちろんリターンに焦点を合わせたベンチャーキャピタリストたちが注目している。Zomatoの成功は、追加の資金調達や今後のイグジットにつながり、法律や規制による緊張が続く中、成長投資の節目になるだろう。

関連記事:インドがMastercardに新規顧客の受付停止を命令、データ保存規則違反で

Zomotoには、公開市場で押しつぶされることがないようにというプレッシャーがかかっており、それは単なる根拠のない憶測ではない。TechCrunchの現地レポーター、Manish Singh(マニッシュ・シン)は、インドでこの上場に向けて起きているあらゆる兆候について、アーリーステージ・スタットアップで頻発している資金調達から、需要増加のおかげでエンジニアが突如力を得たと感じていることまで詳しく報告している。

Zomatoの成功によって、より多くの投資家がスタートアップ・シーンに注目する可能性があり、彼らは遅れを取り戻そうと躍起になるだろう。インドのスタートアップは2021年前半に新記録となる104億6000万ドル(約1兆1490億円)を資金調達した。2020年同時期の40億ドル(約4390億円)や2019年前半の54億ドル(約5930億円)から大幅に増加している、とデータ予測プラットフォームのTracxnがTechCrunchに伝えた。ちなみにインドのスタートアップは2020年通年で116億ドル(約1兆2740億円)を調達した。

重要なのは、人生においてもスタートアップ世界においても、「最初」の何かが単一の決断の結果で起きるのは稀だということだ。よく見てみると多くの場合、大きな節目はさまざまな勝利と成功や失敗さらにはそれまでの小さな節目の集大成である。これはインド最大のテック系スタートアップの上場(重要かつ稀!)、という偉業にケチをつけるものではなく、その波及効果は単なる資金調達イベントの副次効果ではなく、そもそもIPOを実行するにいたった推進力によるものであることを示唆している。

記事の後半では、新進ファンドマネージャー登用のトレンドについて、およびラウンド完了とは無関係な調達ラウンドに関するアドバイスについてお送りする。

新進ファンドマネージャーの台頭

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

多様な新進ファンドマネージャーたちによる一連のファンドストーリーは、これまで私が見たことのないものだった。先週、Female Founders Fund(フィーメール・ファンダーズ・ファンド)は5700万ドル(約63億円)の女性向けファンドFund IIIの募集を完了、Nasir Quadree(ナシーア・カドリー)氏は最大級のソロGPファンドを組成し、Peter Boyce II(ピーター・ボイス2世)氏はStellation Capitalでまもなく4000万ドルのファンドを完了 H Ventures(Hベンチャーズ)は1000万ドル(約11億円)の初ファンドを立ち上げた

ポイントはここだ:ますます多くの古参ベンチャーキャピタルが新進ファンドマネージャーにディールフローを依頼したり新規パートーとして勧誘している、と同僚のConnie Loizos(コニー・ロイゾス)は言っている。つい先週、 Initialized Partner(イニシャライズド・パートナー)はFounder Collective(ファウンダー・コレクティブ)からParul Singh(パルール・シン)氏を引き抜き、自社の新パートナーに任命した。このトレンドはすぐに止まりそうにはない。

調達ラウンドは珍しくないが、あなたのは違うかもしれない

画像クレジット:Mohd Hafiez Mohd Razali/EyeEm

資金を調達するほうが、資金調達を記事に取り上げてもらうよりも簡単だ。最近TechCrunchがForbes(フォーブス誌)のシニア・エディター、Alex Konrad(アレックス・コンラッド)氏を招いたEquityで話したように「調達ラウンド・ストーリー」へのハードルはかつてないほど高い。

ポイントはここだ:
注目を浴びるために、ファウンダーは競争や業界について率直に語り、記憶に残るような名言や話題を提供する必要がある。Equityでは具体的なアドバイスや、歴史的に見過ごされてきた人々がいかに麻酔効果の影響を受けたかを紹介している。

今週の注目記事

TechCrunch

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タグ:Zomatoインドユニコーン新規上場

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Nob Takahashi / facebook

デジタル・レンディング・プラットフォームのBlendの新規公開での評価額は約4400億円超

住宅ローンはセクシーではないと思われがちだが、ビッグビジネスだ。

最近、デジタルで住宅の借り換えや購入をした人は、その背後でソフトウェアを動かしている会社に気づかなかったかもしれない。だが、その会社がBlend(ブレンド)である可能性は十分にある。

2012年創業のBlendは、住宅ローンテクノロジー業界のリーダーとして着実に成長してきた。Blend社のホワイトレーベルテクノロジーは、Wells FargoやU.S. Bankなどの銀行のサイトで住宅ローンの申請をサポートしている。その目的は、プロセスをより速く、シンプルにし、透明性を高めることにある。

サンフランシスコを拠点とするBlend社のSaaS(Software-as-a-Service)プラットフォームは、昨年7月には1日あたり約30億ドル(約3300億円)だった住宅ローンや消費者ローンの取り扱い額が、現在では50億ドル(約5500億円)以上に達している。

Blendは米国7月16日、ニューヨーク証券取引所に上場企業としてデビューした。「BLND」というシンボルで取引される。米国東部時間の午後早い時間に、株価は13%以上上昇し、20.36ドル(約2240円)で取引されている。

7月15日夜、同社は1株あたり18ドル(約1980円)の価格で2000万株を市場に出すと述べていた。これは同社が36億ドル(約3960億円)のバリエーションを目標としていたことを示している。

1月に行われた前回の資金調達時のバリエーションは33億ドル(約3630億円)だった。それは3億ドル(約330億円)のシリーズGラウンドで、CoatueやTiger Global Managementが参加した。また、Blendがユニコーンになったのは、昨年8月に7500万ドル(約82億5000万円)を調達したシリーズFからであることも忘れてはならない。同社は、7月16日の上場までに6億6500万ドル(約732億円)を調達した。

Blendは、6月21日に提出したS-1で、収益が2019年の5070万ドル(約55億7700万円)から2020年には9600万ドル(105億6000万円)に増加したことを明らかにした。一方、純損失は、2019年の8150万ドル(約89億6500万円)から2020年には7460万ドル(約82億600万円)に縮小した。

サンフランシスコを拠点とする同社は2020年、そのデジタル消費者金融プラットフォームを大幅に拡大した。拡大に伴い、貸し手である顧客に新しい機能を提供し始め、あらゆる消費者向け銀行商品を「数カ月ではなく数日で」立ち上げることができるようになった。

今後の見通しとして、同社は収益成長率が「将来的に低下する」と予想している。また、しばらく成長に重点を置くために、すぐに黒字化を達成することは想定していない。また、開示資料によると、2020年には上位5社の顧客が収益の34%を占める。

TechCrunchは先日、共同創業者でCEOのNima Ghamsari(ニマ・ガムサリ)氏に、ユビキタスなSPACや、まして直接上場でもなく、伝統的なIPOに踏み切った同社の決断について話を聞いた。

ガムサリ氏は、同社が「長く続く企業」であることを顧客に示すために、成長を続けるための十分な資金をバランスシートに残しておきたいと考えていた。

「世界最大級の投資家の方々に当社への投資を納得していただかなければなりませんでした。それは、当社がどれだけ長くお客様にサービスを提供できるかを説明するということでした」と同氏は語った。「つまり、最も規制の厳しい業界の1つであるこの業界で、本当に信頼できるソフトウェア・プロバイダーとしての地位を確立したいという思いと、当社の資金需要が結びついたのです」

Blendは住宅ローンのプロセスを支援するソフトウェア会社であり、住宅ローンを提供する会社ではない、とガムサリ氏は強調する。そのため、住宅ローンを提供するフィンテックの一群と連携している。

「多くのフィンテック企業が、インフラとしてBlendを利用しています」とガムサリ氏は言う。

同氏は全体としてこれはBlendにとって始まりに過ぎないと考えている。

「金融サービスの特徴の1つは、いまだにそのほとんどが紙で行われていることです。だからこそ、Blendの成長の大部分は、数年前に始めたこのプロセスをさらに深めていくことなのです」と語る。前述の通り、Blendは住宅ローン商品からスタートしたが、その後も商品を増やし続けている。現在では、自動車ローン、個人ローン、ホームエクイティローンなど、他のローンにも対応している。

「当社の成長の多くは、他のビジネスラインによって支えられています」とガムサリ氏はTechCrunchに話した。「金融業界ではデジタル化の流れがまだ始まったばかりで、開発すべきものがたくさんあります。この業界は比較的規模が大きく、変化に富んでいます」

5月には、デジタル住宅ローンの貸し手であるBetter.comがSPACと合併し、2021年後半に株式公開すると発表した。

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画像クレジット:Blend

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

2020年に辛うじて黒字化したRobinhoodが上場手続き開始、2021年第1四半期は売上高4倍

米国時間7月1日午後、消費者に人気の投資アプリRobinhood(ロビンフッド)が株式公開を申請した。同社は「HOOD」というシンボルでNASDAQに上場する予定だ。

Robinhoodが本日、S-1書式(上場申請書)提出を発表したことは驚きではない。同社は3月に非公開でIPOを申請しており、スタートアップウォッチングの世界では最終的な申請書のドロップを待っている状態だった。Robinhoodの公募書類には1億ドル(約112億円)の資金調達額が記載されているが、デビューに近づくにつれこの額は変化していくだろう。

関連記事:Robinhoodが株式公開に向け秘密裏に上場申請

同社は急速な成長期を経て株式上場を目指している。Robinhoodの収益は2019年に2億7750万ドル(約310億円)だったものが、2020年には9億8580万ドル(約1100億円)にまで急増した。

同社の第1四半期の数字はさらに驚異的だ。2021年の最初の3カ月間に、Robinhoodは5億2220万ドル(約580億円)の収益を上げ、2020年第1四半期の実績である1億2760万ドル(142億円)から約4倍に増加した。TechCrunchは以前の記事で、RobinhoodがそのPFOF(payment for order flow)事業に関連して提出した過去の出願に基づいて、第1四半期に強い業績を上げると予想していた。

注目すべきは、Robinhoodは2020年に利益を上げており、1年間で約740万ドル(約8億円)の純利益を生み出したという点だ。しかし、同社の直近の期間には「転換社債およびワラント負債の公正価値の変動」に関連する14億9000万ドル(約1662億円)の壮大なコストが含まれており、同社は同年第1四半期に14億4000万ドル(約1607億円)という天文学的な純損失を計上するに至った。これに対し、2019年の純損失は1億700万ドル(約119億)となっている。

2021年3月31日までの3カ月間、Robinhoodは「仲介・取引」費用を含む4億6380万ドル(約518億円)の運用コストを計上している。とすれば同社のビジネスは、公正価値の変更を除けば、収益性の面では良いスタートを切ったといえるだろう。

2021年の第1四半期に、Robinhoodが年間売上にすると20億ドル(約2233億円)以上を達成したことは注目に値する。同社は、株式と暗号資産の両方への投資に対する消費者の関心の高まりを背景に、急速にマンモスサイズに成長した。

Robinhoodは2020年、監視罰金、集団使用、そしてカルチャーの避雷針であることを証明した。また、個人投資家に特に人気があった特定の銘柄の取引に関して運営上の問題が発生した後、2021年は数十億ドル(数千億円)の資金調達を行った。

投資家の結果に目を向けると、DST Global、Index Ventures、New Enterprise Associates、Ribbit capitalが、それぞれ5%以上の株式を保有する株主として記載されているが、これらのグループのほとんどの株式数など、S-1申請書の一部の情報はまだ記載されていない。ただし、DSTのクラスA株式5810万2765株は記載されていいる。

Robinhoodは、1票の議決権を持つクラスA株、10票の議決権を持つクラスB株、0票の議決権を持つクラスC株を含む、3つのクラスの株式を持っている。

TechCrunchはS-1を解析中、次の記事で詳細をお伝えする。【更新】アップデートはこちら

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Robinhood新規上場

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Aya Nakazato)

EdTechユニコーンDuolingoが株式公開を申請

ピッツバーグを拠点とする言語学習ビジネスのDuolingo(デュオリンゴ)が、24億ドル(約2653億円)の評価額とともに、正式に株式公開を申請した

この400人規模の会社は、Severin Hacker(セベリン・ハッカー)氏と、CAPTCHA(キャプチャ)やreCAPTCHA(リキャプチャ)を発明したLuis von Ahn(ルイス・フォン・アン)氏が共同で創業した企業だ。その中でも特に注目すべき点は何だろう?それは、シリコンバレー外の場所に拠点を置く、当時としては珍しいEdTech・コンシューマー・ビジネスが生み出した、収益化への道だ。同社は、完璧なビジネスモデルを見つけるために、試行錯誤を繰り返しながら、遠い道のりを歩んできた。当初は教育を無償で提供するというミッション下に、サブスクリプションには嫌悪感を見せていたものの、最終的はサブスクリプションにたどり着いた。

幸いなことに、S-1申請書を見るとそうした決断が会社の急速な収益増につながったことがわかる

現在Duolingoの収益の大部分は、サブスクリプションによるものだ。たとえば2020年の実績では、同社の総収入の73%がサブスクリプション収入によるものだった。この売上に続いて、2020年の総収入の中では、広告収入とDuolingo English Test(DET)がそれぞれ17%と10%を占めている(特にフォン・アン氏は、2019年までにDETがDuolingoの収益の20%になることを希望していたが、この数字には僅差で届かなかった)。

多岐にわたるビジネスモデルが功を奏しているように見える。同社の売上は、2019年の7080万ドル(約78億4000万円)から2020年の1億6170万ドル(約179億円)と129%の伸びを見せている。もちろん、最近の世界的なパンデミックがなくても、このような成長もある程度は達成されていただろう。しかし新型コロナに関係した加速を数字の中に読み取ることは難しいことではない。また、Duolingoの2021年第1四半期の売上高は5540万ドル(約61億3000万円)で、前年同期に比べて97%の伸びを示した。

同社は先日、調整後ベースでの黒字化を達成したところだ。

しかし、より厳密な会計条件では、Duolingoの純損失は拡大している。例えば、2021年3月31日までの3ヵ月間の純損失は1350万ドル(約14億9000万円)で、220万ドル(約2億4000万円)の純損失を計上した前年同期に比べて急増している。そして、2019年から2020年にかけての同社のGAAPベースの純損失は、1360万ドル(約15億円)から1580万ドル(約17億5000万円)に拡大した。

特筆すべきは、2020年に売上が2倍以上になり、損失の伸びはそれほどでもなかったため、同社の売上純利益率が改善したことだ。今回の上場においては、同社の収益性の高低は問題にならないだろう。

S-1申請では、Duolingoは1億ドル(約110億7000万円)という希望調達金額を提示したが、IPO時にどの程度の資金を調達することができるかは、ロードショー終了にIPOの価格帯を設定した後で知ることができるだろう。

このS1申請が事実上、2021年第3四半期のIPOシーズンのキックオフになるだろう、何人かの投資家がTechCrunchに語ったところによれば、このシーズンはより活発なものになることが期待されるという。

Duolingoは、これまでに1億8330万ドル(約202億9000万円)のベンチャーキャピタル資金を調達している。同社の主要投資家は、NewView Capital、Union Square Ventures、CapitalG、Kleiner Perkins、そして最近セカンダリー取引によって投資家のテーブルに加わったGeneral Atlanticなどである。

関連記事:好調の外国語eラーニングサービス「Duolingo」が10億円超を調達した理由

現在の予想売上高が約2億2000万ドル(約243億5000万円)で成長率が100%以上であることを考えると、独自に設定した24億ドル(約2653億円)という価格をクリアすることは難しくないだろう。それは公開市場の投資家が、EdTech市場の成長がほとんど終わったと懸念していなければの話だが、第1四半期にDuolingoが100%近く成長したことは、そのような懸念を和らげることになるだろう。

その他の興味深いトピック

TechCrunchは、DuolingoのIPO申請書をまだ精査中だが、最近の成長と業績に彩りを添える、いくつかの詳細な出来事を発見した。ここでは、その中からいくつかをご紹介しよう:

  • 2020年の離職率は、従業員の2%に当たる4名のみという「過去最低」を記録した。
  • 同社は最終的に、提供している言語全体で「Duolingo Proficiency Score」(Duolingo習熟度スコア)を開始する予定だ。このことで「広く受け入れられる言語習熟度の指標を作り、Duolingoを世界的な習熟度の基準にしたい」と考えている。
  • 2020年にローンチされテキストの文章や音声を複数の言語間で翻訳できるApple(アップル)のiOS版「翻訳」アプリを「リスクファクター」の項目で競合として挙げている。
  • そして最後に、同スタートアップに補完的なサービスを追加するために、買収候補者を探していることを認めている

Duolingoは、ティッカーシンボルDUOLを使用して、NASDAQ証券取引所に上場する予定だ。

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カテゴリー:EdTech
タグ:DuolingoIPO

画像クレジット:Duolingo

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(文: Natasha Mascarenhas、Alex Wilhelm、翻訳:sako)

クロスボーダー送金のWiseがロンドン証券取引所に直接上場へ

TransferWise(トランスファーワイズ)として知られていたフィンテック企業Wise(ワイズ)はロンドン証券取引所に上場する計画を明らかにした。従来のIPOルートは取らず、直接上場で公開する。ロンドン証券取引所で最大の直接上場となる見込みだ。

Wiseのことを知らない人のために説明すると、同社はクロスボーダーの送金を専門としている。あなたが別の国に暮らしている人に送金する場合、従来のリテールバンクは為替手数料や外国取引手数料などかなりの手数料を取る。

もちろん、Western UnionやMoneyGramなどよく知られている別の選択肢もある。そうした企業は便利なオンランプとオフランプの手法を提供しているが、それでもWiseより手数料がかかる。

Wiseではユーザーはまず、銀行振替やデビットカードを使ってWiseアカウントに送金する。すると別の通貨で受け取り手の銀行口座に送金できるようになる。固定手数料や変動手数料に関し、Wiseは可能な限り透明かつ正直であろうとしている。

2011年創業のWiseはかなりの成長を遂げてきた。直近の会計年度では、売上高は前年の4億2200万ドル(約465億円)から5億8600万ドル(約646億円)に増えた。税引前利益は5700万ドル(約63億円)だ。同社によると、2017年から黒字となっている。

同社は毎月、約70億ドル(約7718億円)のクロスボーダー取引を行う顧客1000万人を抱える。直近では、新しいプロダクトを追加して売上を多様化させた。

例えば顧客はWiseアカウントにお金を56の通貨で保有できる。10の異なる通貨、そしてデビットカードで口座番号が発行される。この機能は、他国から支払いを受けたいフリーランサーや1、2年海外で過ごすという人にとって特に便利だ。

同社はWise BusinessでB2C以外にも事業を拡大してきた。そうした口座は通常のWise口座と少し似ているが、複数の人が使うことができ、また別の機能も持っている。Wiseはまた、MonzoやN26などサードパーティのサービスでのクロスボーダー取引も動かしている。

直接上場の選択は興味深い動きだ。米国ではSpotify、Coinbase、Slackなど数社が直接上場を行った。銀行がサポートしない直接上場を選択するというのは、投資家から十分な関心を集められると自信があることを意味する。

また、直接上場では追加の資金を調達できないため、Wiseがさらなる資金を必要としていないことにもなる。

他の多くのテック企業と同様、Wiseは2種類の株式を発行するデュアル・クラス・ストラクチャーを採用する計画だ。これによりWiseの既存の株主はしばらくの間、より多くの株式あたりの議決権を得ることになる。Wiseの直接上場は欧州のフィンテックシーン、そして英国のテックエコシステムにとって重要なものになる。投資家がWiseをどうとらえるか、見てみよう。

関連記事:IPOに先立ち国際送金のTransferWiseが「Wise」に社名変更

カテゴリー:フィンテック
タグ:Wise送金ロンドンIPO

画像クレジット:Wise

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

ついにソフトバンク、Uber、テンセントが出資する中国ライドシェア「Didi」がIPO申請

長年の憶測を経て、中国のライドシェアの巨人であるDidi Chuxing(滴滴出行)は、ついに米国でIPOを申請した。これを読むと、これまでの赤字の歴史が垣間見える。

Didiは資金調達の規模を公表しなかった。ロイターは、1000億ドル(約11兆円)近いバリュエーションで100億ドル(約1兆1000億円)程度を調達できるはずだと報じたウォール・ストリート・ジャーナル紙は、バリュエーションは700億ドル(約7兆7000億円)以上になるとしている。Uber(ウーバー)の時価総額は現在900億ドル(約9兆9000億円)を超えている。

目論見書によると、Didiの38歳の創業者であるCheng Wei(程維、チェン・ウェイ)氏は、IPO前で同社株式の7%を所有し、15.4%の議決権を支配している。主要株主であるソフトバンク・ビジョン・ファンドは21.5%を所有しており、Uberが12.8%、Tencent(テンセント)が6.8%と続く。

2016年にUberの中国事業を買収したことで有名な創業9年目のDidiは、今ではライドシェアプラットフォーム以上の存在となっている。バイクシェアリング、食料品、都市内貨物、ドライバー向け金融サービス、電気自動車、そしてコスト削減と安全性向上の可能性を秘めた「未来のモビリティのためのデザインの頂点」と定義するレベル4のロボタクシーなど、事業のラインナップは増えている。

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確定:DidiがUber Chinaを買収、Uberブランドは継続
ソフトバンクがリードするラウンドでDiDiの自動運転開発子会社が540億円調達

Didiは2020年5月、ソフトバンクの2つ目のビジョン・ファンドから5億ドル(約550億円)の出資を受けて自動運転車の子会社を設立した。この子会社は現在、500人以上のメンバーで構成され、100台以上の自動運転車を運用している。また、中国では、タクシーやライドシェアリング会社が化石燃料車からの脱却を進める中、同社はライドシェアリング用のEVも設計している。

市場での優位性

2021年3月末までの12カ月間に、Didiは4億9300万人の年間アクティブユーザーにサービスを提供し、1日あたり4100万件の取引を行った。第1四半期の月間ユーザー数は1億5600万人で、Uberの9800万人を大きく上回る。

中国の公式データによると、12月時点で3億6500万人のライドシェアユーザーがおり、Didiがかなりのシェアを占めていることがわかる。

中国でのモビリティーサービスは、一貫してDidiの売上の90%以上を占めている。同社は、ブラジルのライドシェア企業である99 Taxisを買収したように、海外十数カ国でそのプレゼンスを拡大しようとしている。そして、Didiの中国ベースのモビリティー売上の97%以上は、2018年から2020年の間にライドシェアからもたらされたものだ。その中にはタクシー配車、運転手、相乗りなども含まれている。モビリティビジネスは、2件の死亡事故を受けて見直された。

サードパーティのデータもDidiの優位性を物語る。アプリのトラッキング会社であるAurora Mobileによると、Didiの3月のアクティブユーザー数は7760万人だった。最も近いライバルであるGeelyが支援するCaocaoは、その10分の1にも満たなかった。

Didiは2018年から2020年まで赤字経営を続け、2020年は16億ドル(約1760億円)の純損失で1年を終えたが、2021年第1四半期には8億3700万ドル(約920億円)の純利益を計上して流れを変えることに成功した。この純利益は主に、資金を要する食料品のグループ購入を行うChengxin(橙心優選)の非連結化による投資利益と、投資していた株式の売却によるものだと思われる。

また、当四半期の売上高は前年同期比で2倍以上の66億ドル(約7260億円)となった。参考までに、Uberの同四半期の売上高は29億ドル(約3185億円)だった。

Didiは、IPOで得た資金の30%をシェアードモビリティー、電気自動車、自動運転などの技術に使う。また、30%は国際的な事業拡大に、さらに20%は新製品の開発に充てる予定だ。

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:DidiIPO中国配車サービス

画像クレジット:Didi Chuxing

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

AIサイバーセキュリティ企業SentinelOneが110億円のIPOを申請

AIと機械学習を利用して企業などのデータ保護を支援する後期段階のセキュリティスタートアップSentinelOneが、ニューヨーク証券取引所(NYSE)にIPOを申請した。

このセキュリティ企業は、米国時間6月3日に提出されたS-1文書で4月30日に終わる3カ月で売上が3740万ドル(約41億円)で前年比108%増加し、顧客ベースは前年の2700社から4700社に増加したことを明らかにした。パンデミックがもたらした成長にもかかわらずSentinelOneの純損失は2020年の2660万ドル(約29億1000万円)から6260万ドル(約68億6000万円)へと倍以上に増加した。

SentinelOneは同文書で「今後も成長のための投資が継続するため、弊社の営業費用の増加も予想される。主な増加要因は、弊社プラットフォームのさらなる開発を進めるための研究開発の拡大と営業およびマーケティング活動の拡張、隣接市場に拡大していくための機能性の開発、そして新たな国や地域における顧客獲得のための費用だ」と述べている。

マウンテンビューに拠点を置く同社によると、同社はそのクラスAの普通株をティッカーシンボル「S」で発行する意図であるが、IPOのために用意する普通株の発行数や価格範囲については未定だ。S−1文書が挙げている主な引受人は、Morgan Stanley、Goldman Sachs、Bank of America Securities、Barclays and Wells Fargo Securitiesとなる。

SentinelOneは2020年11月に2億7600万ドル(約302億4000万円)を調達して、評価額は2021年2月の10億ドル(約1095億5000万円)から30億ドル(約3286億6000万円)へと3倍になった。当時、CEOで創業者のTomer Weingarten(トメル・ヴァインガルテン)氏はTechCrunchに、同社にとってIPOは「次の論理的なステップだろう」と語った。

SentinelOneは2013年に創業され、これまで8回の資金調達ラウンドで計6億9650万ドル(約763億円)を調達した。IPOによる調達額は最大で1億ドル(約110億円)を目指しており、この資金を利用してサイバーセキュリティのマーケットプレイスにおける企業の知名度を上げ、また製品開発など「一般的な企業プロセス」にも資金を投じたい、と述べている。

そしてさらに「資金の一部は弊社のビジネスを補完する技術やソリューションや事業の買収に当てるかもしれない」という。同社のこれまでで唯一の買収は2021年2月に行った高速ロギングのスタートアップScalyrの1億5500万ドル(約169億8000万円)の買収だ。

SentinelOneが上場を目指すこの時期は、サイバーセキュリティへの一般的な関心が高まっている時期でもある。パンデミックの間には著名な企業に波のように押し寄せるサイバー攻撃があり、ハッカーたちはリモートワークの広範な必然化に乗じている。

最大の攻撃の1つがロシアのハッカーによるIT企業SolarWindsのネットワークの侵犯で、それにより政府機関や複数の企業へのアクセスを彼らは得てしまった。SentinelOneのエンドポイント保護ソリューションは、関連する悪質なペイロードを検出および停止でき、顧客企業を護った。

ヴァインガルテン氏はSECへの提出文書の中で次のように述べている。「世界は犯罪者や国家犯やその他の悪質な行為者で満ちており、彼らはデータの窃盗や悪用の機会を探して、私たちの生活を破壊しようとしている。弊社のミッションは、情報を保存し処理し共有するデータとシステムという現代社会のインフラストラクチャの大黒柱を、保護しその安全を確保することにより、世界を正常に動かし続けることだ。犯人たちは、経営と操業を破壊、データを侵犯、利潤を転覆し、ダメージを与える彼らのクエストを急速に進化させているため、これは終わりなきミッションである」。

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カテゴリー:セキュリティ
タグ:SentinelOne新規上場機械学習人工知能

画像クレジット:Tero Vesalainen/Getty Images

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(文:Carly Page、翻訳:Hiroshi Iwatani)

インド物流市場システムのデジタル化を進める最大手DelhiveryがIPOに向け約304億円調達

インド最大の独立系eコマース物流企業であるDelhivery(デリバリー)は、年内のIPO申請に向けた最終となる見込みの資金調達ラウンドで、2億7700万ドル(約304億円)を調達した。

グルガオンに本社を置くこのスタートアップ企業は、規制当局への提出書類の中で、ボストンに本社を置く投資会社のFidelity(フェデリティ)が主導するラウンドで、2億7700万ドルを調達したことを明らかにした。この名称が特定されていないラウンドには、シンガポール政府投資公社(GIC)、アブダビの投資会社であるChimera(キメラ)、英国のBaillie Gifford(ベイリーギフォード)も参加している(最初にこの申請を報じたインドのニュースサイトEntrackrは、シリーズHラウンドであることを示唆している。しかし、Tracxnによると、DelhiveryにはシリーズGラウンドの記録はない。米国時間5月30日の時点で、このスタートアップはコメントを出していない)。

この新ラウンドで、創業10年目のDelhiveryの評価額は約30億ドル(約3290億円)となった。同社には、SoftBank Vision Fund(ソフトバンク・ビジョン・ファンド)、Tiger Global Management(タイガー・グローバル・マネジメント)、Times Internet(タイムズ・インターネット)、The Carlyle Group(カーライル・グループ)、Steadview Capital(ステッドビュー・キャピタル)なども投資しており、これまでに約12億3000万ドル(約1350億円)を調達している。

Delhiveryは当初フードデリバリーの会社としてスタートしたが、後にインドの2300以上の都市と1万7500以上の郵便番号を対象としたフルスイートの物流サービスにシフトした。

同社は、貨物交換プラットフォームを通じて、物流市場の需要と供給のシステムをデジタル化しようとしている数少ないスタートアップ企業の1つだ。

調査・画像クレジット:Bernstein

そのプラットフォームは、荷主と取扱業者、そして道路輸送ソリューションを提供するトラック事業者をつなぐものだ。Delhiveryは、このプラットフォームによってブローカーの役割が軽減し、(同社にとって最も一般的な輸送手段である)トラック輸送などの資産をより効率的に運用でき、24時間体制のオペレーションを保証すると述べている。

このようなデジタル化は、国の経済を長年にわたって停滞させてきたインドの物流業界の非効率性に対処するために非常に重要だ。インドでは、需要と供給の計画や予測が不十分であることが、輸送コスト、盗難、損害、遅延を増加させていると、Bernstein(バーンスタイン)のアナリストは、インドの物流市場について2021年4月に発表した報告書の中で指摘している。

Delhiveryのウェブサイトによると、同社には10億件以上の注文を配送した実績があり「インド最大のeコマース企業や大手企業のすべて」と提携しており、その顧客の数は1万を超えるという。配送の最後の区間を受け持つ同社の配達員には、2平方キロメートルを超えることのないエリアが割り当てられているので、時間を節約しながら1日に何度も配送を行うことができる。

インドの物流市場のTAM(獲得できる可能性のある最大の市場規模)は2000億ドル(約22兆円)を超えると、Bernsteinのアナリストは述べている。

このスタートアップは2020年後半、新型コロナウイルス感染が流行する中、オンラインで買い物をする人が増えたことから、増大する注文需要に対応するため、2年以内に4000万ドル(約43億9000万円)以上の投資を行い、配達隊の規模を拡大することを計画していると語っていた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Delhiveryインド物流IPO資金調達SoftBank Vision FunTiger Global Managementeコマース

画像クレジット:Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Lucid Motorsが上場を控えWaymoやIntelなどから幹部を引き抜き

Lucid Motors(ルシード・モーターズ)は、公開企業となる準備を進める中、WaymoやIntel、Xperiなどから人材を引き抜き、経営陣とテクニカル面を主導するチームを増強している。Lucid Motorsは米国時間5月5日、Waymoで働いていたSherry House(シェリー・ハウス)氏が最高財務責任者に就任すると明らかにした。

ハウス氏はWaymoで4年過ごし、直近では財務部長およびIR(投資家向け広報活動)責任者を務めていた。Waymoの前は、Visteon Corporationで経営企画担当副社長を、Deloitte Corporate Financeでテクノロジー・メディア・通信担当マネージングディレクターを歴任した。

Lucid Motorsはまた、以前AppleとIntelで役職に就いていたMargaret Burgraff(マーガレット・バーグラフ)氏をソフトウェア検証担当副社長に、Sanjay Chandra(サンジェイ・チャンドラ)氏をIT担当副社長に、Jeff Curry(ジェフ・カリー)氏を販促担当副社長に指名した。バーグラフ氏は直近ではIntelでグローバルデベロッパーリレーションズ担当副社長を務め、エンジニアリングと世界の独立ソフトウェアベンダーがIntelのプロダクトと協業できるようにするのが仕事だった。同氏はまた、主にテックスタートアップを支援するグローバルベンチャーキャピタルとプライベートエクイティの会社Continuous Venturesでパートナーも務めた。

チャンドラ氏は、Lucid Motorsに加わるために情報担当最高責任者とクラウド運用責任者を務めていたTiVo / Xperiを退職した。同氏はPayPal、Virgin Mobile、Workdayでも働いた経験がある。カリー氏の前職はJaguarブランドでの最高マーケティング責任者同等の役職で、FerrariとAudiにも従事した。同氏はSiriusXMでの副社長クラス役職を含め、自動車業界以外でのマーケティングのキャリアも持つ。そしてブランド戦略コンサル会社Mere Mortalsの創業パートナーでもある。

Lucid Motorsの新規採用は、特別買収目的会社Churchill Capital IV Corpとの合併完了が数週間後に迫る中でのものだ。完了すればLucid Motorsは正式に上場企業となる。サウジアラビアの政府系ファンドが引き続き最大株主となる合併会社の取引株式価値は117億5000万ドル(約1兆2800億円)となる見込みだ。私募増資取引では1株15ドル(約1600円)と設定され、見積もり株式価値は240億ドル(約2兆6200億円)となる。Churchillからの出資と現金で、計約44億ドル(約4800億円)がLucidに入る。

上場によってLucidは、同社初の電気自動車となるラグジュアリーなLucid Airの生産を開始するのに必要な資金を手にする。同社は元々、生産と納車を今春開始する予定だったが、2021年後半にずらした。Lucid Airはまず北米にお目見えし、2022年に欧州、そして2023年に中国でも展開する。

Lucidはまた、2種類目の車両となるGravityという高パフォーマンスでラグジュアリーなSUVを2023年に北米マーケットに投入する。車両はアリゾナ州カサグランデに新設した工場で生産される。7億ドル(約760億円)をかけた同工場建設の第1段階は2020年完了し、生産能力は年3万台だ。最終的に同社はもう3段階かけて工場を拡張し、生産能力を年36万5000台とする計画だ。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:Lucid Motors新規上場SPAC

画像クレジット:Lucid Motors

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

インドでUber Eatsを買収したフードデリバリー「Zomato」が1200億円規模のIPO申請

インドのフードデリバリースタートアップであるZomato(ゾマト)は、インド時間4月28日にIPOを申請した。数年にわたる有望な成長を経て、同社はこれにより世界第2位のインターネット市場において、テックユニコーン企業たちの新時代をリードすることになる。

インドのグルガオンに本社を置く創業12年目の同スタートアップは、Info EdgeやAnt Groupを最大の投資家に数えており、IPOで11億ドル(約1198億円/新株発行で約10億ドル、約1089億円)を調達する予定であると、現地の市場規制当局に提出した書類の中で述べている。24の市場で事業を展開している同社は、インドの証券取引所NSE(ナショナル証券取引所)とBSE(ボンベイ/ムンバイ証券取引所)に上場する予定だ。

これまでに22億ドル以上(約2396億円、調査会社Tracxn調べ)の資金を調達し、直近の資金調達ラウンドでは54億ドル(約5880億円)の評価を受けたZomatoは、上場に向けて2億ドル(約218億円)の追加調達を検討する可能性があると述べている。

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Zomatoが最終的にインドの証券取引所に上場するかどうかには、多くのことがかかっている。上場が成功すれば、十数ある他のインドのユニコーン企業が上場に向けた取り組みを加速させることになるだろう。

インドのスタートアップ企業は過去10年間で数百億ドルの資金を調達してきたが、これまで公開市場への参入にはほとんどが消極的だった。ここ数年、IndiaMartやモバイルゲーム企業のNazaraなど、一部の企業の上場が成功したことで、インドの投資家がハイテク株に強い関心を持っていることがわかった。

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  • Zomatoが今回の申請で共有したいくつかの重要なインサイトは以下のとおりだ。

  • Zomatoはインドのフードデリバリー市場において、市場リーダーとしての地位を確立している。
  • 同社は、Prosus Venturesが支援するSwiggy(スウィギー)、そしてDomino’s(ドミノ・ピザ)、McDonald’s(マクドナルド)、Pizza Hut(ピザハット)などのレストランや、Rebel Foodsなどのクラウドキッチン事業者も競合相手として挙げている(Swiggyはソフトバンク・ビジョン・ファンド2/SVF2からの資金調達を交渉中と報じられている)。ただし、2020年にインドのフードデリバリー市場に参入したAmazon(アマゾン)はこのリストに含まれていない。
  • 同社は2020年4月1日から12月31日までの間に、1億8360万ドル(約200億円)の収益を計上した。同期間の損失は9180万ドル(約100億円)だった。

  • 同社は過去に純損失を出したことがあり、今後も経費の増加が予想されるという。
  • Info Edgeは、1億ドル(約109億円)相当の株式を売却する予定であると、証券取引所に提出した書類の中で述べている。
  • Zomatoは、今後の事業に影響を及ぼす可能性のある数十以上のリスク要因の中で「インドにおける規制の変化」「外国資本の調達能力」「政治的変化」を挙げている。
  • 2020年12月31日現在、全世界で3469名の従業員を擁するZomatoは、IPOにより調達する資金の75%を、顧客が追加特典を利用できるZomato Pro会員制度や、同社のB2B用品事業であるHyperpureの成長に投資し、提携レストランとの関係を深めることを計画している。
  • Zomatoによれば、GOV(Gross Order Value、総受注額)という指標で見ると、同社は2020年の第3四半期までにコロナ禍の危機から回復したという。しかし、外食ビジネスを含むいくつかのビジネスラインは「お客様が予防的措置として外食を控える傾向が続いているため、まだ回復途上である」としている。
  • 2020年12月の時点で同社のプラットフォームでは、16万1637人の現役デリバリーパートナーが活動し、35万174店舗の加盟レストランを掲載しており、そのうち13万2769店舗のレストランは顧客に活発にデリバリーを行っている。
  • 過去数年にわたり、Zomatoの広告・販売促進費の総収入に占める割合は下図のようになっている。

  • Zomatoは近年、フードデリバリー事業のユニットエコノミクスを改善してきたとしている。

  • Zomatoは2020年、Uber Eatsのインド事業を買収し、その一環として、米国の配車サービスであるUberにZomatoの株式9.9%を譲渡した(余談だが、Uberがこれまでに利益を上げたのは、一部の市場で事業を地元のライバル企業に売却したときだけのようだ)。1%以上の株式を保有している現在の株主リストは、以下のとおりだ。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:ZomatoインドIPOフードデリバリー

画像クレジット:Nasir Kachroo/NurPhoto / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

ブラジルのモバイル決済アプリ「PicPay」が米国証券取引委員会に登録届出書を提出

ブラジルのモバイル決済アプリ「PicPay(ピクペイ)」は米国時間4月21日、時価総額最大1億ドル(約108億円)となるIPOを行うためのForm F-1を、米国証券取引委員会(SEC)に提出した。同社はティッカーシンボル「PICS」で、NASDAQに上場する予定だ。

PicPayは、主に金融サービスプラットフォームとして運営されており、そのサービス内容にはクレジットカード、Apple Pay(アップル・ペイ)に似たデジタルウォレット、Venmo(ベンモ)型のP2P決済要素、eコマース、ソーシャルネットワーキング機能が含まれる。

PicPayのCEOであるJosé Antonio Batista(ホセ・アントニオ・バティスタ)氏は声明の中で「私たちは、人々や企業の交流、取引、コミュニケーションの方法を、インテリジェントでコネクテッド、かつシンプルな体験で変革したいと考えています」と述べている。

PicPayは現在、サンパウロに拠点を置きブラジル全土で事業を展開しているが、当初は2012年にリオの北に位置する沿岸都市ビトリアで設立された。同社は2015年に、巨大食肉加工企業のJBS SAを所有するブラジルの億万長者、Wesley Batista(ウェスレイ・バティスタ)氏とJoesley Batista(ジョエスレイ・バティスタ)氏兄弟の投資持株会社であるJ&F Investimentos SAグループに買収された。

PicPayの登記簿謄本によると、J&Fは「Operation Car Wash(洗車場作戦)」と呼ばれるブラジル史上最大の汚職スキャンダルに関与しており、2017年にブラジル連邦検察当局と司法取引を行っている。2020年12月には15億ドル(約1600億円)の罰金を支払い、さらに4億4260万ドル(約477億7000万円)をブラジルの社会計画に拠出することに合意した。とはいえ、J&Fは依然として同国の強力なコングロマリットであり、PicPayの強力な支援者として位置づけられている。

2020年はPicPayにとって爆発的な成長を遂げた年となり、同社のアクティブユーザー数は2840万人から2021年3月時点で3600万人にまで増加した。PicPayからTechCrunchに提供された2020年の財務報告書によると、同社の収益も2019年の1550万ドル(約16億7000万円)から2020年には7100万ドル(約76億5000万円)へと飛躍的に伸びている。しかし、同社はまだ利益を出しておらず、2020年にはその成長を後押しするために、1億4600万ドル(約157億2000万円)を投じている。

「当社のエコシステムにおける顧客ベースとユーザーエンゲージメントの成長は、当社のビジネスモデルの規模拡大性を示すものであり、顧客にとってさらなる価値を生み出す大きな好機の現れであると、私たちは考えています」と、声明でバティスタ氏は続けている。

フィンテックは現在、ブラジルで最も注目を集める分野の1つだ。同国では伝統的に4つの大手銀行が支配しているが、これらの銀行はテクノロジーへの対応が遅れ、非常に高い手数料を徴収している。そのため、この分野には大いに改善の余地があるからだ。

PicPayのIPOは、Banco Bradesco BBI(バンコ・ブラデスコBBI)、Banco BTG Pactual(バンコBTGパクチュアル)、Santander Investment Securities Inc.(サンタンデール・インベストメント・セキュリティズ・インク)、Barclays Capital Inc.(バークレイズ・キャピタル・インク)が主導している。

関連記事:ブラジルの無料クレジットマーケットプレイス「FinanZero」が7.7億円を追加調達

カテゴリー:フィンテック
タグ:ブラジルPicPayモバイル決済新規上場

画像クレジット:PicPay

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

半導体IPのカナダ企業Alphawave IPが英国で上場へ、本社も移転

Alphawave IPは、半導体の回路にフォーカスしているグローバルの半導体IP会社だ。5Gデータネットワークが展開され、家庭から産業、自動走行車両まであらゆるものを動かし始めるときに、半導体の回路は重要なものとなる。

それゆえに、トロントで創業した同社が評価額45億ドル(約4842億円)でロンドンでの上場を計画しているというのは興味深い。同社はBlackrockとJanus Hendersonから5億1000万ドル(約548億円)を調達した。また、同社は上場の一環として本社を英国へと移す予定だ。

Deliverooの評価額が英国でのIPO後に悲惨なものになったこともあり、Alphawave IPの動きは英国のテック株式リストウォッチャーに歓迎されている。

CEOのTony Pialis(トニー・ピアリス)氏は「当社は事業を成長させるために英国に来ることを選びました。英国は驚くべきテクノロジーと半導体産業のエコシステムを持っています。知識、経験、そして人材の蓄積が英国にはあります。我々はコネクティビティの専門家です。創業チームは20年以上にわたって一緒に働いていて、半導体イノベーションと投資家のために大きな価値を創造することにおいて長い歴史を持っています」。

Alphawave IPの上場は、別の英国拠点のディープテック会社である半導体設計のArm Holdingsが米国の会社に売却されようとしている中でのものとなる。Arm Holdingsの売却は英国の国家安全保障上の懸念から調査が行わることになり、遅延している。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Alphawave IP半導体カナダイギリス新規上場

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

ビジョナル南壮一郎氏上場インタビュー、創業から12年の道のりとこれから目指す場所

転職サイトの「ビズリーチ」や人材活用プラットフォームの「ハーモス」などを展開するビジョナルが4月22日、東証マザーズに上場した。公開価格をもとに算出した時価総額は1779億円。スタートアップ業界の内外から注目を集める「ユニコーン上場」となった。ビジョナル代表取締役社長の南壮一郎氏に上場までの道のりと、同社がこれから目指す場所を聞いた。

自身の転職活動から生まれた創業アイデア

南氏がビズリーチを創業したのは2009年のことだ。南氏は米タフツ大学卒業後にモルガン・スタンレー証券に入社。その後、2004年に楽天イーグルスの創業メンバーとなった。楽天イーグルスを離れた後、自身の転職活動で感じた経験と、米国で開催されたビジネスセミナーで出会った「LinkedIn(リンクトイン)」に影響を受けた南氏は、企業と求職者を直接つなげるというアイデアでビズリーチを創業した。

2016年、TechCrunch Japanが主催するスタートアップイベント「TechCrunch Tokyo」に登壇した南氏は、ビズリーチのアイデアが生まれた背景についてこう振り返る。

「プロ野球のドラフトでは、『僕、プロに行きたいです!』と誰かが宣言したら、全球団が手を挙げる権利がある。そのように(当時転職活動をしていた)私も、真っ白の状態からせっかく仕事を探すんだったら、『今、仕事を探しています!』と手を挙げたときに、なるべく多くの選択肢と可能性の中から選びたいなと思った。なぜそういう仕組みが転職活動にはないのかな、という自身の転職活動中の発想がビズリーチを創業するきっかけになった」とTechCrunch Tokyo 2016で南氏は話している。

しかし、2009年当時はリーマン・ショックの真っ最中だ。VCによるスタートアップへの出資も冷え込み、本記事執筆時である2021年のような活気はこの業界にはなかった。外部資金による資本の積み上げが期待できないなか、ビズリーチはある意味必要に迫られて「稼ぐ力」を身に着けてきた。それによりビズリーチは、創業から7年目で700名の従業員を抱えるまでに成長。創業から12年目の2021年第2四半期現在では117億円の現金を保有し、これまでの利益の積み上げを表す利益剰余金も61億円まで膨らんだ。直近会計年度(2020年度)の当期純利益は46億円だ。

南氏は2016年のTechCrunch Tokyoにも登壇した

上場を決めたのは2016年

自ら稼ぐ力を持つビズリーチがこのタイミングで新規上場に踏み切った理由はなんだろうか。

新規上場はスタートアップ業界では「エグジット」と呼ばれ、その言葉にはある意味で「目指すべきゴール」のような響きもある。しかし、もちろん上場企業ならではのデメリットもある。広く一般の投資家から資金を調達できる代わりに、投資家の意向によっては、非公開企業と比べ、腰を据えてビジネスの芽を育てにくくなるのも確かだ。南氏もこの点を認識していて、上場までに12年の歳月をかけた理由もそこにあると話す。

「上場を決めたのは、2016年に行ったシリーズAでの資金調達(11億5000万円)の時だ。当時、上場企業としてどうありたいのかを考えたとき、僕たちは『息を吸うように事業を作り、成長させ、社会の課題を解決するようなインパクトを与える』企業になりたいと思った。しかし、上場をすれば株主が増え、事業運営にあたり考慮しなければならない変数が増える。中長期的な視野をもって事業を成長させたいと思っていても、トラックレコードがなければ投資家は納得してくれない。だから、僕たちは2016年のシリーズAを行った際、2021年春に上場をすると決め、そこから逆算して組織や事業のトラックレコードを作りこんできた」と南氏は語る。

この「中長期」という言葉は、南氏へのインタビューのなかで何度も出てきた言葉だ。その姿勢は、今回の新規上場にともなう新株売出しの方法にも表れている。ビジョナルは新規上場にともない約1124万株を売り出すが、その約88.7%にあたる株式は海外投資家に向けて売り出す。これまでにこの「グローバル・オファリング(国内と海外への株式などの募集・売り出し)」で新規上場を果たしたスタートアップには2018年上場のメルカリ、2019年上場のフリー、2020年上場のプレイドなどがあるが、絶対数としてはまだ少ないのが現状だ。

その意図について南氏は「これまでビジョナルは中長期的な視野を持って事業の運営を行ってきたし、これからもその目線をもって経営することがとても大事になる。新規上場を決めたときから投資家についてのリサーチを行ってきたが、海外には中長期的な目線をもつ投資家が多いことがわかった。シンプルに、理由はそれだけだ」と話した。

ビズリーチとハーモス両方を持つからこそできること

では、ビジョナルが中長期的に達成したい事業成長とは何だろうか。同社は有価証券報告書の中で「HR Techセグメント」の中核として人材のマーケットプレイスであるビズリーチと人材管理クラウドのハーモスを挙げている。ビズリーチの導入企業者数は2016年の約5200社から、現在では1万5500社と約3倍に伸び、外部顧客に対する売上高は209億円で、2018年の121億円から70%以上伸びた。同じくハーモスでも、ARR(年間経常収益率)ベースでは2018年第1四半期比で約5倍、利用企業数ベースでは約4倍と急速に成長中だ。

「ハーモスは採用や人材管理などに関わる機能をモジュールとして提供し、人事が欲している機能を一気通貫で提供してきた。今後は人材管理に加え、労務や給与の分野にも広げていく」と南氏はいう。

ハーモスで提供中の機能例

人材管理のハーモスと、人材のマーケットプレイスのビズリーチの両方を企業に提供するビジョナルだからこそできることがある。例えば、人材管理のハーモス上でパフォーマンスがあまりよくない社員がいたとする。その理由はさまざまであるはずだが、採用後の人事政策(つまりハーモスのカバー範囲)にあるのではなく、そもそも採用のミスマッチが原因だということもあるだろう。その場合、導入企業がハーモスとビズリーチの両方を導入していれば、ハーモスのデータをもとに採用プロセスの見直しができるようになる。それだけでなく、ハーモスで、ある社員の「退職の可能性が高い」というデータが出れば、企業は先回りしてそのポジションにふさわしい人材の採用を行うこともできる。人材にまつわるさまざまなデータを、人材採用の川上と川下の間で相互に活用することで、よりデータドリブンな人材戦略を実行することができる。

ビジョナルは今後、今回の新規上場で新たに調達する約106億円と現在保有する117億円を合わせた220億円以上の資金を、主にこの2つの事業のさらなる成長や、領域拡大のためのM&Aに投下していくという。

変わり続ける組織へ

上場の先を見据える南氏の表情は明るい。南氏は、上場した後も「変わり続ける組織」でありたいと話す。

「上場がスタートラインです。ダーウィンの言葉に『生き残る種とは、最も強いものではない。最も知的なものでもない。それは、変化に最もよく適応したものである』という言葉がある。社会の変化のスピードが上がり、ビジネスモデルの賞味期限は短くなった。100年続く企業はすごいと思うが、ビジョナルは100年で100回変わる会社にする。その象徴が(2019年に行ったグループ経営体制への移行にともなう)社名の変更だった。どう考えても、知名度のあるビズリーチという社名のままにした方が良いに決まっている。でも、社員に対して、『社名ですら変えられるのだ』ということを示したかった。何かを捨ててでも、学び続けられる組織にするためだ。変わらないものは、企業ページにも載せている『ビジョナルウェイ』(企業理念)だけ。それ以外は、変わり続けていくだろう」と南氏は語った。

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カテゴリー:HRテック
タグ:ビジョナル新規上場ユニコーン
冒頭画像提供:ビジョナル