株取引をゼロから変える——調達資金60億円をスマートプラスへ投資するFinatextの構想

FinTechスタートアップのFinatext(フィナテキスト)は7月30日、総額60億円の資金調達実施を発表した。第三者割当の引受先はKDDI、ジャフコ、未来創生ファンド。また、同時にFinatextでは、KDDIとの業務提携についても明らかにしている。

2013年12月設立、創業5年のFinatextは、金融サービス提供、ビッグデータ解析、証券サービス提供を3柱に、「金融を“サービス”として再発明する」というビジョンを掲げる。

今回の調達について、今朝の速報に続き、Finatext代表取締役CEOの林良太氏と取締役CFOの伊藤祐一郎氏への取材で詳しい話を聞けたので、お伝えしたい。

ユーザー視点サービスで金融の変革を目指す

今回の資金調達のリードインベスターはKDDI。持分法は適用されないが、60億円の出資の大半をKDDIが引き受けるという。創業5年以内の独立した企業としては、Prefered Networksに次ぐ規模の評価額となるのではないかと推測される。

その調達資金は、今年1月に証券業参入を発表した子会社スマートプラスへの投資に充てるという。

スマートプラスが提供する株取引アプリ「STREAM」は、コミュニティ機能と株取引機能がひとつになったプロダクト。4月にSNS機能限定版をローンチし、7月18日から現物取引サービスをスタートした。

STREAMは“従来型”の株式委託手数料が無料、というかなり振り切ったサービスだ。従来型は無料、というからには新方式の取引もある。東京証券取引所(東証)の立会外取引で、東証の株価気配値よりも有利に約定できた場合に、気配値と実際の約定価格の差額の50%を手数料とする「SMART取引」だ。つまり「お得に取引できた分だけ、手数料を払えばいい」という仕組みである。

林氏は「近年、FinTechスタートアップ各社は、これまで投資をしなかった層の人たちにアプローチしてさまざまなサービスを提供してきている。だが、各社の打ち出すサービスは手数料が高い」と話す。

「ある意味、投資したことがない人に高い手数料でサービスを提供するのは、よいのだろうかと。今まで投資しなかった人たちにこそ、障壁を下げて、より安いフィーでサービスを提供しようと、他社よりもう一歩踏み込んだ取り組みが、STREAMだ」(林氏)

ユーザーに寄り添う、という観点から、よりよいUI/UXやコミュニティ機能、加えて手数料0円という施策を打ち出すスマートプラス。その「ユーザーに寄り添う」発想は、そもそも金融サービスの参入障壁の高さから来る、ユーザーの利便性をないがしろにしてきた状況から生まれたと伊藤氏は説明する。

金融業界の近年の動向としては、ベンチャーによるテーマを絞ったニッチなサービス(ロボアドバイザーやテーマ投資など)への進出と、既にほかの顧客基盤を持つ非金融会社(LINEやNTTドコモなど)による参入の2つが挙げられる。「共通するのはユーザーを起点としたサービス設計と、データとテクノロジーの活用だ」と伊藤氏は言う。

「規制への対応やインフラに多額の費用がかかることから、これまでの金融サービスは、ユーザーが接する画面やサービスを高めることができずにいた。Finatextでは、モバイルサービスの設計力とグループ会社のナウキャストが持つビッグデータ解析技術などのテクノロジーを生かして、サービスをユーザー目線から見直す。それを『金融を“サービス”として再発明する』という言葉で表現している」(伊藤氏)

日本の株取引をゼロから変えたい、と話す林氏と伊藤氏。米国で先行する手数料0円の株取引アプリ「Robinhood」を引き合いに、今後のSTREAMの展開について、こう説明する。

「Robinhoodにはコミュニティ機能はなく、投資が初めての人でも使いやすいシンプルさがウリだが、非常にうまくいっている。5年弱で400万以上の口座数を獲得しているが、これは米国No.1のネット証券e-tradeと同水準。評価額も約6000億円と成長している。STREAMはコミュニティ型という違いはあるが、これから5年以内にミレニアル世代で市場シェアNo.1の地位を確立したい」(伊藤氏)

またKDDIとの提携については、スマートプラスだけでなく、グループ全体で取り組んでいく予定だ、と林氏は述べている。「Finatextグループの持つ、UI/UXデザインとサービス構築力、データ解析力と、KDDIグループが提供する幅広い金融サービスラインアップ、顧客基盤やデータとを活用することで、ユーザーへの新しい情報・サービス提供を共同で行っていく」(林氏)

ソフトバンク傘下のARMが米データ分析企業Treasure Dataを6億ドルで買収か

7月30日、ソフトバンクグループ傘下のコンピュータチップ設計企業ARM Holdingsが米国のデータ分析企業Treasure Data(英語サイト。日本のサイトはこちら)を買収することに合意したとBloombergが報じた(英語)。記事によれば、買収金額は約6億ドル(約666億円)。関係者の情報によるもので、ARMおよびTreasure Dataは正式なコメントを発表していない。

Treasure Dataはカリフォルニア州マウンテンビューに本拠を置く、ビッグデータ分析企業。2011年にシリコンバレーでCEO兼共同創業者の芳川裕誠氏らにより設立された。購買履歴やIoTセンサーからの情報分析を行うSaaSプロダクトを提供。自動車、小売、IoT、エンターテインメントなどの業界で利用されている。

ソフトバンクは2016年7月にARM買収の意向を表明し、同年9月に240億ポンド(表明当時のレートで310億ドル)で買収を完了している。今回の買収はARMのIoT分野進出への一環として行われるものとみられている。

証券ビジネスをプラットフォーム化するFinatextがKDDIなどから60億円を調達

金融サービス開発やビッグデータ解析、証券サービス提供を行うFinTechスタートアップのFinatextが7月30日、KDDIジャフコ未来創生ファンドを引受先とした総額60億円の資金調達を実施したことが明らかになった。

Finatextは今年1月に子会社スマートプラスを通して証券業に参入することを発表。委託手数料0円のコミュニティ型株取引アプリ「STREAM」を提供している。またブローカレッジ、証券取引の執行機能をプラットフォーム化する「BaaS(Brokerage as a Service)」という考え方に基づき、証券ビジネスを効率化し、多様な証券サービスを低コスト・短期間で構築できる環境を展開している。

今回調達した資金はスマートプラスの財務基盤強化に充てられる。顧客のニーズに合わせたさまざまな証券サービスを提携パートナーと協力して提供し、5年以内に「ミレニアル世代向け証券会社No.1」となることを目指すという。

またFinatextは増資を機にKDDIと業務提携契約も締結。Finatextの持つUI/UXデザインやサービス構築力を生かし、「au WALLET」をはじめとしたKDDIグループ企業の金融・決済分野を中心に、スマートフォンアプリを通じてユーザーごとにあったライフデザイン提案を行う予定だ。

また、KDDIが持つ3900万人超の顧客基盤や豊富なデータ、KDDI子会社ARISE analyticsが持つデータ利活用ノウハウと、FinatextのAI/ビッグデータ解析技術を掛け合わせ、FinTech領域で新たな事業を生み出すことも検討していくという。

Finatextは2013年12月創業。2017年5月にジャフコから14億2500万円の資金調達を実施している。

同社は株式市場の予想アプリ「あすかぶ!」や仮想通貨を使ったFXの予想アプリ「かるFX」といったコンシューマー向けの投資アプリを手がけてきた。また、2016年4月からは日本アイ・ビー・エムと共同でロボアドバイザーのエンジンを金融機関に提供するビジネスも行う。

2016年8月にはナウキャストを買収し、機関投資家向けビッグデータ解析サービスを展開。2018年から子会社スマートプラスで証券業、証券ビジネスプラットフォーム事業を行っている。

TechCrunch Japanでは今回の資金調達について、Finatext代表取締役の林良太氏に取材を行い、調達の意図や今後の事業展開などについて詳しい話を聞く予定だ。

SoftBankの投資戦略を検討する――WeWorkへの5億ドルもテーマの一つに過ぎない

〔この記事はJason Rowleyの執筆〕

今週、WeWorkは中国における子会社、WeWork ChinaがSoftBankTemasek Holdings他から5億ドルの追加投資を得たことを発表した。これにより中国法人の価値は1年前の10億ドル(投資後会社評価額)から50億ドルにアップした。WeWork Chinaは前回の投資ラウンドをほぼ1年前、2017年の7月に発表している

SoftBankが同一会社に複数回投資することはめったにない。この記事の執筆時点で、Crunchbaseのデータによれば、SoftBank自身は144社に175回の投資を行っている。このうち、2回以上SoftBankから投資を受けた会社は23社だ。 このうちWeWorkは、中国法人も加えて、合計4回の投資を受けており、SoftBankの投資として最多となっている。

こうした実績から判断すると、SoftBankの戦略は各ビジネス分野におけるトップ企業に投資することのようだ。株式の持ち分として会社評価額の何パーセントにあたるのか外部から判断しにくい場合もあるが、SoftBankからの投資は各企業における最大の投資であることが多い。

たとえばWeWorkの場合を見てみよう。WeWork本体と現地法人、WeWork China、WeWork Indiaなどを含め、SoftBankの投資は単独出資であるか、投資ラウンドをリードしているかだ。また投資シンジケートの一員である場合もその中で最大級の金額を出資している。

特に市場拡大のチャンスが大きい分野の場合、SoftBankはその地域でリーダーの会社に投資することが多い。 なるほど世界征服というのは難しい企てだが、SoftBankは非常に巨大なので、ある事業分野について各地域のトップ企業の相当部分を所有することができる。結果としてSoftBankがその分野の世界のシェアのトップを握るチャンスが生まれる。

これは大胆な戦略だ。リスクも大きいし、巨額の資金を必要とする。しかしSoftBankは多くの急成長市場で最大の金額をコミットする投資家となっている。

不動産は投資テーマの一つに過ぎない

WeWorkはSoftBankの不動産投資の一例だが、下に掲げた表に同社の不動産、建設関係の投資の代表的なものをまとめてある。 順位はSoftBank(単独の場合、シンジケートの一員の場合双方を含む)の投資額だ。また関与したラウンド中に占めるSoftBankの投資額の比率も掲げておいた。

しかし、成長中の大型市場で成功を収めているトップ・スタートアップに巨額の投資を行うというSoftBankの戦略は不動産分野に限られない。オンライン・コマース、ロジスティクス、保険、ヘルスケア、そして大きな注目を集めたところではライドシェアとオンデマンド交通機関にもSoftBankは大型投資を行っている。

また人工知能スタートアップ分野で大きなポートフォリオを持っていることも見逃せない。SoftBankはNvidiaImprobableBrain CorporationPentuumなどに投資している。またMapboxCruise Automationに投資していることはSoftBank自身の自動運転車プロジェクト、SB Driveにも有利だろう。

SoftBankは古いものもすべてリニューアルしていく戦略の一例だ。 1990年代後半、SoftBankとファウンダーの孫正義はすでにテクノロジー分野で最大の投資家の一人だった。当時も現在同様、孫正義はSoftBankのポートフォリオをいわばバーチャル・シリコンバレー化しようとしていた。つまり投資先企業同士が協力することによってビジネス上のシナジー生むプラットフォームの構築だ。投資テーマを絞り込むSoftBankの戦略を見ると、今日、こうした大胆で愛他的な構想が実現する可能性は十分にある。しかし孫正義はテクノロジー投資の第1ラウンドではドットコム・バブルの崩壊で多額の損失を被ったことが知られている。第2ラウンドでSoftBankが成功するかどうかは今後に待たねばならないだろう。

画像:Ufuk ZIVANA / Shutterstock

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

「WOVN.io」がスマホアプリ対応版の多言語化ツール「WOVN.app」提供開始

ウェブサイトの多言語化をたった1行のコード追加で実現するツール、それが「WOVN.io(ウォーブンドットアイオー)」だ。サービスを運営するWovn Technologies(旧ミニマル・テクノロジーズ)は7月30日、スマホアプリに対応した多言語化ツール「WOVN.app(ウォーブンドットアップ)」のベータ版提供を開始した。

Wovn.ioについてはTechCrunch Japanでも何度か紹介してきた。2014年秋に開催したTechCrunch Tokyo 2014 スタートアップバトルでは、PayPal賞、マイクロソフト賞を獲得。既存の1言語のサイトがあれば、簡単に多言語化できる点が特徴だ。言語ごとにページを用意したり別サーバを立てる必要はない。

Wovn.ioでは、翻訳したいページのURLを管理画面に入力すると、翻訳すべきテキストが抽出され、リストアップされる。テキストは機械翻訳で一括して翻訳することが可能。またリストの1つ1つを任意で訳すこともできるので、誤訳を修正することや、固有名詞や意訳など独自の翻訳コンテンツを用意することもできる。サイト内で共通して頻出する用語は用語集に登録することで、同じ言葉に翻訳してくれる。

対応する言語は約30言語。翻訳先の言葉が分からず自分で校正できない場合は、管理画面からプロの翻訳者に直接翻訳を依頼することができる。1語5円、通常24時間から48時間で翻訳が可能だそうだ。

翻訳が完了したら保存・公開を行って、サイトとWOVN.ioを連携させる。サイトとWOVN.ioとの連携は、1行のコードをHTMLに追加するだけ。JavaScriptのコードスニペットのほか、PHPやRubyのライブラリなどにも対応している。

料金体系は、ページ数やPV数を制限し、基本機能を無料で利用できるWOVN.ioと、大規模サイト向けに個別見積りで機能拡張にも対応する、有料版のWOVN.io PRIMEの2通り。エイチ・アイ・エスや東京急行電鉄など大手を含む1万以上の企業で導入されているという。

Wovn Technologies代表取締役の林鷹治氏によれば「一般向けの公開サイトだけでなく、企業内のワークフローシステムなど、日本に在住して働く外国人向けの利用も増えている」とのこと。カスタマイズが可能な有料版は、テーマパークのチケット予約サイトなどでの利用事例もあるそうだ。

小売やチケット販売などで有料での利用が伸び、売上ベースで前年比400%を超える勢いだと林氏は言う。その背景について「多言語化SaaSはニーズが高い。(サイトなどの)プロダクトが大きければ大きいほど、多言語化は困難だ」と林氏は説明する。

「多言語化では翻訳費用だけでなく、システム対応費用も発生する。WOVN.ioを使えば、1つのシステムで言語を切り替えて国際化することができ、開発コストを下げることができる」(林氏)

既存サイトに後付けで多言語ページが用意できるWOVN.ioでは、大規模サイトで従来発生していた数千万円単位の開発コスト、数カ月単位の開発期間を圧縮できる。「大きな組織ほど効果が評価され、大きな予算で利用してもらっている」と林氏は述べる。

「CDNサービスのAkamaiや、DBをベースにソフトウェア製品を出すOracleのように、大手企業の多言語化されたサービスの後ろでは、実はどれもWOVNが動いている、という状況に持っていきたい」(林氏)

そうした構想を強化すべく、今回新たに投入されることになったのが、スマホアプリ向けの多言語化ツールWOVN.appだ。

若年層を中心に、PCよりスマホなどスマートデバイスの存在感が増していること、スマホ内ではブラウザよりスマホアプリのほうが利用時間が長いという調査もあり、WOVN.ioを利用する顧客からもアプリの多言語化についての相談が増えていたという。そこで開発されたのが、WOVN.appだ。

7月30日よりクローズドベータ版として、まずはiPhoneアプリ用SDK(Swift)を提供開始。今秋には正式版としてローンチする予定だ。

「モバイルアプリは言語のローカライズをするだけでも、いちいちApp StoreやGoogle Play ストアに申請が必要だが、SDKをアプリに組み込むことで、WOVN.ioと同様に管理画面から翻訳ができるようになる」(林氏)

対応する言語はWOVN.ioと同じく、約30言語。これから開発する予定のアプリだけでなく、リリース済みのアプリに組み込むことも可能だ。「EC」「予約」「ニュース・メディア」「SaaS」「交通」などあらゆるアプリに組み込むことができるという。

「アプリの多言語運用は本当に大変。翻訳データをエンジニアに渡してビルドしてアップし、ストアへ申請する、ということをアップデートの度にやらなければならない。特にECサイトなど(コンテンツの多いプロダクト)では大変で、独立した部署や別会社を作るぐらいの体制で対応しなければならない。そうした企業でWOVN.appを使えば、運用コストが下がるのではないか」(林氏)

林氏は「WOVN.appは動的アプリの多言語化に強いサービスだ。まずはウェブサイトとアプリの両方があるプロダクトから、利用をお勧めしたい」と話している。

アップル、水没iPhone・Macなど無償修理 豪雨被災者が対象

eng-logo-2015アップルは、「西日本豪雨」(平成30年7月豪雨)被災者を対象に、特別修理サービスを提供すると発表しました。

豪雨で直接的な被害を受けた製品に関して、無償の配送修理サービスを提供するとのこと。

対象製品は、同豪雨で直接的な被害をうけ、かつ修理可能なMac、iPhone、Apple Watch、iPad、iPod、およびApple製のディスプレイ。アクセサリ類やBeatsなどは対象外となります。

対象となるユーザーは、同豪雨による災害救助法の適用地域に居住している一般消費者のユーザー。販売店や業者、個人消費者以外は対象外となります。災害救助法の適用市町村については内閣府のページから確認できます。

受付期間は2018年9月末まで。なお、地域によっては集荷・配送サービスが一時停止しているとして、集荷・配送に通常より時間を要する場合があるとしています。

Engadget 日本版からの転載。

金融情報分析AI開発のゼノデータラボがダウ・ジョーンズと提携、企業の業績予測サービス開発へ

金融情報分析AI開発のゼノデータラボは7月27日、ウォール・ストリート・ジャーナルなどで知られるダウ・ジョーンズと業務提携し、将来予測AIの開発、営業を開始したと発表した。

開発中の新しいプロダクトはSaaS型のWebサービス、「xenoBrain(ゼノブレイン)」。これはダウ・ジョーンズ社の持つ過去10年以上分のグローバルニュースデータに、ゼノデータラボの保有する自然言語処理技術を応用することで、ニュース記事に含まれる過去の経済事象の連関から企業の利益影響を自動で分析し、企業の業績予測を行うAIだ。β版はこの秋にリリースされる予定だという。

同社には「xenoFlash(ゼノフラッシュ)」というサービスがある。これは高度な自然言語処理を用いたAIを使って決算発表資料の全自然文データを解析し、財務数値の背景となる文章を自動で解析、解説文を出力するものだ。

今回のxenoBrainは何が違うのか。代表取締役社長の関洋二郎氏は「xenoFlashがなぜ増益だったのか、なぜ減益だったのか、という過去の分析に焦点を当てているのに対し、新サービスでは将来どうなっていくのか、今後増益なのかというところを解析する」のだと説明した。

「我々の自然言語処理は現在、決算短信だけだが、これからはニュースを含めて自然言語処理対象にし、分析を広げていく」(関氏)

xenoBrain上では左側にニュースが流れ、好きなニュースをクリックすると、「ニュースがどの企業のどの会計科目にどうインパクトを及ぼしうるのか」というところを、理由や背景なども含めて自動で解析する。

xenoBrainのイメージ画像

今後ゼノデータラボの株主でもある三菱UFJ銀行でxenoBrainの実証実験をする予定。三菱UFJ銀行の法人取引の部門に同サービスを展開し、上場企業の分析業務効率化に役立て、企業分析シーンにおける早期の実用化を目指すのだという。また、同サービスの最初期ユーザーとしてレオス・キャピタルワークスの先行利用が決定している。

「(ターゲットユーザーは)毎日のニュースから株式ポートフォリオの影響を分析するファンドマネージャー、担当顧客に対してより付加価値のある提案を模索する大企業営業やコンサルタント、より説得力のある提案で個別銘柄の取引を活性化させたい証券営業担当」(関氏)

関氏はxenoBrainで「風が吹けば桶屋が儲かるをビジュアライズ化した」と語っていた。

CAやDeNAらが「シブヤ・ビットバレー」プロジェクト開始、渋谷をIT分野の世界的技術拠点へ

つい先日、freeeやマツリカなど五反田に拠点を置くスタートアップ6社が共同で一般社団法人「五反田バレー」を設立したことを紹介したばかりだけど、今度は渋谷の番のようだ。

サイバーエージェント、ディー・エヌ・エー、GMOインターネット、ミクシィの4社は7月27日、渋谷をIT分野における世界的技術拠点にすることを目的とした「SHIBUYA BIT VALLEY(シブヤ・ビットバレー)」プロジェクトを開始した。

ビットバレーと聞いて「いつの話だよ」とか「なんで今更?」と思ったあなたはおそらくIT業界通なのだろう。ビットバレーという言葉が世に出回ったのは今から約20年前の2000年前後。僕も当時は田舎の小学生だったので人づてに聞いたことしかないのだけど、ITビジネス黎明期に多様なベンチャーが集積して切磋琢磨していたという。

そんな渋谷には現在もメガベンチャーからスタートアップまで様々なIT企業が集い、「日本のインターネットの発展を牽引する最先端テクノロジーの集積地」として事業を展開している。このような背景もあり、創業から長く渋谷に拠点を構えるIT企業が力を合わせて「渋谷をIT分野における世界的技術拠点」にするべく企画したのが、今回のSHIBUYA BIT VALLEYプロジェクトだ。

最初の取り組みとしてエンジニアを目指す学生やIT業界に携わる若手エンジニアを対象にしたテックカンファレンス「BIT VALLEY 2018」を、渋谷区の後援を受けて9月10日に開催する予定。その後も渋谷区と連携を深めつつ、テックカンファレンスの開催を中心に、渋谷のIT企業のコミュニティ強化や交流の活性化を目指して継続的に活動していく方針だという。

ソフトバンクとヤフー、今秋にスマホ決済サービス「PayPay」開始へ

ソフトバンクとヤフーの合弁会社はPayPay(ペイペイ)は7月27日、2018年秋よりバーコードやQRコードを使って決済ができるスマホ決済サービス「PayPay」を開始することを明らかにした。

同サービスを提供するにあたって、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの出資先であるインドの決済サービス事業者Paytm(ペイティーエム)と連携。すでに3億人以上のユーザーと800万店の加盟店にサービスを提供している同社のテクノロジーも活用しながら、新たなスマホ決済サービスを構築していく方針だ。

ソフトバンクとヤフーでは日本国内でキャッシュレス決済の普及を促進することを目的に、2018年6月に合弁でPay株式会社を設立(7月より現在のPayPayへと社名を変えている)。利用者と加盟店の双方に利便性の高いサービスの実現に向けて動き出していた。

リリースを予定しているPayPayではユーザーがアプリを使って店舗のレジ付近などに提示してあるQRコードを読み取る方式(ユーザー読み取り方式)と、バーコードやQRコードを提示して店舗のレジでスキャンしてもらう方式(店舗読み取り方式)の2つの手段を提供する予定。支払方法はクレジットカードと電子マネーから選択できるという。

ヤフーは6月より「Yahoo!ウォレット」の新機能としてスマホ決済サービスを提供していたが、こちらについては今後提供を終了(時期は未定)。PayPayとYahoo! JAPAN IDを連携させ、「Yahoo! JAPAN」アプリからPayPayの機能を利用できるようにする計画だ。

またPayPayでは加盟店獲得の施策として店舗側が負担する決済手数料を開始から3年間無料とするほか、店舗にユーザーを集客するための施策を実施予定とのこと。ソフトバンクや口座数が4000万件を超えるYahoo!ウォレットの顧客基盤、営業ノウハウなども用いながら「スマホ決済におけるユーザー数ナンバーワン、加盟店数ナンバーワンのサービス」を目指していく。

Preferred Networksが中外製薬と東京エレクトロンから9億円を調達、深層学習技術を用いた共同研究へ

深層学習技術、機械学習技術の研究開発を行うPreferred Networks(PFN)。これまでもトヨタやファナックを始めとした大企業から出資を受け、各業界の課題解決に向けて共同研究を進めてきたこのAIスタートアップが、また新たな企業とパートナーシップを組むようだ。

同社は7月26日、中外製薬と東京エレクトロンから総額で約9億円を調達することを明らかにした。内訳は中外製薬から約7億円、東京エレクトロンの子会社から約2億円。2018年8月に出資を受けることで合意したという。

調達した資金を基にPFNでは組織体制や財務基盤の強化、計算環境の拡充を進める計画。また中外製薬とは医薬品研究の分野において、東京エレクトロンとは半導体製造分野において深層学習技術(ディープラーニング)を用いた共同研究に取り組む。

PFNは2014年3月の設立。これまでも何度か紹介しているが、代表取締役社長の西川徹氏が2006年に立ち上げたPreferred Infrastructure(PFI)からスピンオフする形で始まったスタートアップだ。

2017年10月にトヨタから約105億円の資金調達を実施した際には話題となったが、それ以前にも日本電信電話(NTT)やファナックから出資を受けているほか、直近では2017年12月に博報堂DYホールディングス、日立製作所、みずほ銀行、三井物産にファナックを加えた5社から20億円を超える資金を集めている

PFNではこれまで「交通システム」「製造業」「バイオヘルスケア」という3つのドメインを重点事業領域として設定。トヨタやファナック、日立、国立がん研究センターなどと各分野の研究開発を進めてきた。具体的には自動運転やコネクテッドカーに関する技術、ロボティクスや工作機械への応用、医用画像の解析や血液によるガンの早期診断技術といったものだ。

今回出資を受けた2社とも同様に事業面での連携を進めていく方針。東京エレクトロンとは半導体製造分野で最適化・自動化などをテーマに深層学習技術を用いた共同研究をすでに開始している。

中外製薬とも革新的な医薬品・サービスをはじめとする新たな価値創出を目的とした包括的パートナーシップ契約を締結。深層学習技術を活用して医薬品研究開発の解決を目指すとともに、より探索的な取り組みも含めて複数の共同プロジェクトに取り組む方針だ。

「そのサービスはメルカリを超えるか」ソウゾウ代表、サービス停止の背景と新事業の構想を語る

新サービスで取り組む「旅行」をイメージした服に身を包むソウゾウ代表の原田大作氏

つい先日の7月20日、メルカリグループのソウゾウは「メルカリNOW」、「teacha」、「メルカリ メゾンズ」のサービスクローズを発表した。なかでもteachaに関しては2018年4月のサービスリリースからわずか4ヶ月というタイミングでの判断だった。

それを報じた記事に対するTechCrunch Japan読者のSNSの反応をみても、同社の仮説検証のスピードに関心する声とともに、早すぎるとも感じるサービス停止に対して驚きの声も多くあがっていた。

TechCrunch Japanでは、2018年4月1日よりソウゾウ代表取締役に就任した原田大作氏にインタビューを行い、サービスクローズの背景、そしてこれからのソウゾウが取り組む新サービスについて聞いた。

怪物「メルカリ」の存在

原田氏が代表に就任した2018年4月の時点では、サービスのクローズについては何も決まっていなかった。「当然これからも伸ばしたいという思いはあったが、代表に就任した当時は、既存のサービスをどうするのかについては未定だった」と原田氏はいう。

「これまでスピード感をもってさまざまなサービスを立ち上げてきたが、ソウゾウとして何を目指すべきかという部分については手探りでやってきた感もある。メルペイがソウゾウから生まれたいま、ソウゾウとして何をすべきかというものを改めて考えたとき、メルカリに近しいものと遠いものを整理することになった」(原田氏)

その整理のなかで、原田氏はフリマアプリの「メルカリ」と近い性質をもつサービスについては、その機能をメルカリ本体に集約するという判断を下す。その例の1つが、ブランド品特化型のフリマアプリであるメルカリ メゾンズ(以下、メゾンズ)だ。この種のサービスについては、サービス独自の機能を切り出し、すでに大きなユーザー基盤をもつメルカリにその機能を追加することで、レバレッジを効かせたサービス運営が可能になるというのが、サービスクローズの理由だ。

「スマートフォンの時代は終盤に差しかかっていると思う。そのなかで、さまざまなサービスをアプリ単位で運営し、マーケティングをするというよりは、メルカリに機能を追加していく方が良いと思った。それぞれのサービスの機能的な部分が効果的だというのは分かっていたので、レバレッジを効かせた方が事業としても良いし、メンバーとしても良いだろうという判断だった」と原田氏は話す。

メルカリ本体と性質が似ているメゾンズについては、本体に機能を集約する。では、メルカリとは性質が大きく異なる、スキルシェアサービスの「teacha」即時買取サービスの「メルカリNOW」についてはどのような判断だったのだろうか。

teacha、メルカリNOWをクローズした具体的な理由について、原田氏は「teachaは“学び”をテーマにしたもので、もちろんそれなりのトランザクションも生まれていたが、この市場は時間がかかるという印象だった。メルカリNOWについては、100円のものから1万円のものまで扱うというサービス形態では、商品状態のボラティリティが大きく、それを判定するのに今のAI技術では難しいというところに壁を感じた」と話す。

こう原田氏が話すとおり、それぞれのサービスを継続していくうえで課題があったことは確かだ。しかし、サービスクローズの判断材料は最終的に1つの問いに集約される。「はたして、そのサービスはメルカリを超えるのか」という問いだ。

「ユニコーン級と言われるようなサービスが生まれるときには、それだけ初動の数字の伸びも大きい。これまで立ち上げたサービスが、メルカリに取って代わるサービス、メルカリを超えるサービスになるかどうかというのは、サービスをクローズするときの判断材料の1つだった」と原田氏は語る。

メルカリという怪物サービスを抱える彼らにとっては、新規事業が超えるべきハードルもそれ相応に高い。そして、これからもメルカリグループの新規事業を担うソウゾウは、その“怪物”を作り出すという目標がある。そのために原田氏は、あえてメルカリという存在から距離をとるという選択をした。

スタートアップとしてサービスをつくる

ソウゾウは現在、「旅行」分野の新サービスを開発中だ。残念ながら、この新サービスの全貌はまだ明らかになっていない。しかし、原田氏によれば、この新しいサービスはC向けのもので、最終的にはAI、フィンテック、ブロックチェーン、準天頂衛星、5Gなどのテクノロジーを活用したものになるという。

C向けサービスを作り、テクノロジーを中心にサービスを作る。ここまでは、これまでのソウゾウと変わらない。しかし、原田氏が代表を務める新生ソウゾウが掲げるのは、より“スタートアップらしい”サービス開発の方針だ。

これまでメルカリが発表してきた新アプリは、メルカリIDによるログインが必要というサービス設計になっていた。大きなユーザー基盤をもつ本体サービスを活用し、いわゆる“経済圏”を作り出すためには合理的な選択であり、他社でも同じようなシステムを採用することも多い。

しかし、今回の新サービスではメルカリIDによるログインを必要としない設計になる予定だと原田氏は言う。これはすなわち、メルカリ本体からの送客など、ソウゾウがこれまで得てきた恩恵を手放すことを意味する。

その理由として原田氏は、「メルカリのIDと連携していて、送客もしてもらえるなんてスタートアップは存在しない。スタートアップとしてのソウゾウは裸で勝負すべきだし、スタートアップは日々、そういう戦いをしている。メルカリのIDありき、送客ありきとなってしまうと、サービスが愛されているかという本質から少しずつズレてしまう。伸びないサービスでも伸ばせてしまうんです」と語る。

今や、メルカリの累計ダウンロード数は1億件を超える。でも、そのメルカリが誕生した2013年7月当時、メルカリIDなんて言葉は存在しなかったし、送客してくれるサービスもなかった。本当の意味でメルカリを超えるサービスを生み出すためには、本家からのサポートを断ち切り、当時のメルカリと同じ土俵で戦う必要がある。だからこそ原田氏は、メルカリという存在からあえて距離をとるという選択をしたのだという。

ソウゾウの新規事業チームは、メルカリ本社とは別のところにオフィスを構えている。上場企業メルカリのグループ会社ともあろうソウゾウがオフィスを構えるのは、コワーキングスペース「WeWork」の小さな一画。原田氏を含む約10名の新規事業チームは、そこで日々仕事をしている。この点からも、スタートアップとして事業をつくるという原田氏の意思が感じられるだろう。

ソウゾウは“スタートアップ”に、原田氏は“起業家”に立ち返る。その彼らが手がける新サービスは、今年秋をめどにリリースされる予定だ。

「Omiai」のネットマーケティング 、新アプリ「QooN」で日本のデーティング市場の開拓目指す

近年国内でも市場規模の拡大と合わせて様々な企業が参入している恋活・婚活マッチングアプリ業界。国内にまだ文化が根付いていなかった2012年に「Omiai」を立ち上げ、現在に至るまでサービスを拡大してきたネットマーケティングは業界の先駆者のような存在と言えるかもしれない。

そのネットマーケティングが6月から新たなサービスを始めているのは知っているだろうか。

今回紹介するデーティングアプリ「QooN(クーン)」がまさにそれなのだけど、ネットマーケティング代表取締役社長の宮本邦久氏が「欧米の市場の伸びなども踏まえると、何年後かにはOmiaiを超える規模のサービスになるかもしれない」と期待を寄せるサービスだ。

6月28日に先行リリースしていたAndroid版に続き、7月26日にはiOS版の提供もスタート。これから日本のデーティングアプリ市場の開拓に向けて、本格的に力を入れていく。

安心かつ安全なデーティングアプリで新たな市場の開拓へ

日本に比べて早くからオンラインマッチングサービスが普及してきたアメリカでは、「Match.com」を始めとする恋活・婚活マッチングアプリに加えて、より気軽に相手を探すことのできるデーティングアプリが盛り上がってきている。

その代表が特徴的なUIでおなじみの「Tinder」。一般的なマッチングアプリが長期的な交際や結婚を見据え、年齢や身長、収入、趣味などの条件で異性を検索するのに対し、デーティングアプリはもっと敷居が低い。Tinderがそうであるように、顔写真と簡単なプロフィールから直感でスワイプをして繋がるのが特徴だ。同サービスの累計マッチング数は200億件に及ぶ。

ネットマーケティングが運営する2つのサービスの関係性もこれと同様だ。Omiaiが恋活・婚活マッチングアプリ、新しく始めたQooNがデーティングアプリに該当する。

QooNのベースとなる機能はTinderに近く、表示される異性の写真を左右にスワイプすることで気軽にアプローチできるというもの。ここにOmiaiの運営を通じて培ってきた安心面や安全面を担保するための機能と、スピーディーに相手と出会えるための仕掛けを取り入れた。

具体的には身分証明書の提出に基づいた厳格な年齢確認と本人確認を始め、24時間365日のメッセージ監視、不正ユーザーの強制退会処分、ユーザーからの違反申告機能といった仕組みを採用。Omiaiと同水準の環境を整えているという。

QooNの独自機能としてはデートに直結することを重視して、直感スワイプのQooNモードに加えて「Qdish(キューディッシュ)「Qtoday(キュートゥデイ)」という2つのマッチング方法を提供する。

Qdishは相手にアプローチする際に、初回のデート先候補として飲食店を一緒に提案するというもの。飲食店のチョイスによって相手の好みや性格などマッチングの参考になる情報がわかる上に、マッチング時には初回のデート先が決まった状態なので会うまでの流れもスムーズだ。

この点はちょうど昨日紹介した「Dine」とコンセプト的に似ている部分もある。ただ詳細を見ていくと、Dineが選べる飲食店を絞っている一方でQdishの場合は全国のさまざまな店舗が対象になっていることを始め、思想や細かい機能面では違う点も多い。

もうひとつのQtodayは当日出会える相手とマッチングする機能。「今日の時間を持て余している人は多い。その人たちが自分の空き時間を上手く活用できるもの」(宮本氏)であり、マッチングしたその日にすぐ会うため、デートまでの間隔が短いのも特徴だ。

またマッチングできるのは21時まで、メッセージのやりとりは22時まで、デートの終了時刻は23時までといった深夜帯での時間制限を設定。Qdishと同じく事前に飲食店を指定して会うような仕組みもある(これについては男性から場所を指定して女性にきてもらう場合)。

「(サービスの性質上)Qtodayは一見不安なイメージをもたれる可能性もある。安心かつ安全なサービスにする上で、たとえばデートは何時に終わるのか、女性に来てもらう場合にはどのお店で会うのかまで前もって決めておくことを必須にしている」(宮本氏)

なお飲酒の可能性を排除する目的で、QdishとQtodayは未成年の利用が不可。また登録とデート相手探しは無料で、カップル成立後のメッセージ送信については男性のみ有料となる。1ヶ月、6ヶ月、12ヶ月単位で購入でき、1ヶ月プランの場合だと税込で3800円だ。

OmiaiとQooNでマッチングサービス国内No.1目指す

宮本氏によると、実は2016年からデーティングアプリへの参入を真剣に検討していたという。上述したようにアメリカを筆頭に世界では恋活・婚活マッチングアプリに加えてデーティングアプリが急速に成長。2015年頃には本格的に新しい潮流が生まれていることを感じ、ここ数年間のホットトピックスとして捉えていたそうだ。

「この2年間は日本でデーティングアプリの市場を切り開いていくにはどのような仕様が適しているのか、ずっと社内で温めてきたと同時に参入のタイミングを図っていた。その中で去年頃から今年にかけて、当社も含めFacebookのアカウントを利用したマッチングサービスが、非Facebookユーザーに対してもサービスを解放する動きが業界内で広がり始めたことが大きい。デーティングアプリは広く全ネットユーザー向けに使われるものだと感じていたので、今がベストタイミングだという結論に至った」(宮本氏)

今後ネットマーケティングではこれまで運営してきたOmiaiと今回リリースしたQooNの2ブランドを通じて、マッチングサービス国内No.1を目指していく方針だ。

6年の歳月を経て少しずつ認知度を高めてきたOmiaiの有料会員数は、2018年3月末の時点で約4万7000人。メインターゲットとなる20〜30代の男性だけでも日本には約1400万人存在し、それを踏まえると「まだまだ少ない」(宮本氏)状態で、市場の伸びとともに今後さらに成長が見込めるという。

「一方で海外の市場を見て入れば、デーティングアプリが恋活・婚活マッチングアプリ以上の規模になってきている。(日本でも)ゆくゆくはデーティングアプリがマッチングサービス全体の中で1番大きなシェアを占めるようになると思っている。QooNはその先導を切れるようなアプリにしていきたい」(宮本氏)

フードトラックと空きスペースをつなぎランチ難民救う「TLUNCH」

都心のオフィス街では、昼12時ごろになるとどこのお店も混み合ってしまう。せっかくのリフレッシュ時間を無駄にしないために、お昼は結局コンビニ弁当で済ませてしまう人も多いだろう。僕もその1人だ。そんな人たちは“ランチ難民”とも呼ばれていて、TechCrunch Japanではその課題に取り組む、月額定額制のランチテイクアウトサービス「POTLUCK(ポットラック)」を紹介したりしている。

そのPOTLUCKとは違うかたちでこのランチ難民問題に取り組むスタートアップがいるので紹介したい。トラックを改装した飲食店の“フードトラック”とオフィスビルの空きスペースなどをマッチングする「TLUNCH(トランチ)」を提供するMellowだ。

フードトラックは、店舗型の飲食店を開業するのに比べて初期費用が安く済むことなどから新しく飲食業を始めたい人たちにとっては魅力的な選択肢。しかしその一方で、特に都心では営業できる箇所がすくないなどの課題がある。

その課題の解決を目指すのが、フードトラックのオーナーと、空きスペースを有効活用したい土地のオーナーとをマッチングするTLUNCHだ。同サービスを利用すれば、フードトラックのオーナーは営業可能なスペースを簡単に見つけることができる。また、オフィスビルなどのオーナーは空きスペースを使って追加的なマネタイズが可能になるだけでなく、オフィスの近くにおいしいフードトラックがあるという環境づくりをすることで、入居を考える企業へのアピールにもなる。

フードトラックのランチを楽しむ一般ユーザーは、TLUNCHのアプリをダウンロードすることで、どの空きスペースにどのフードトラックが来ているのかを確認することが可能だ。同じ空きスペースでも、曜日ごとに別々のフードトラックを配車することも可能なので、一般ユーザーがフードトラックのメニューに飽きることもないだろう。

TLUNCHは出店料としてフードトラックから売上の15%を受け取り、そのうちの5%が空きスペースのオーナーの取り分となる。2016年にサービスを開始したTLUNCHには現在、350店のフードトラック、約80箇所の空きスペースが登録されているそうだ。

このように、空きスペースとフードトラックのマッチングサービスを展開するMellowだが、同社は今後、空きスペースで提供するサービスカテゴリーの幅を広げていくという。2018年3月、同社はオイシックスドット大地と手を組み、フードトラックでミールキットを販売する「Kit Oisix」を提供開始。また、つい先日の7月17日には東京・恵比寿のプライムスクエアタワーにて移動型マッサージ店舗の営業も開始した(今回は7月31日までの限定オープン)。

Mellowのマッサージカー

当初は、空きスペースにフードトラックを配置することで都心のランチ問題を解消するサービスとして生まれたTLUNCH。同サービスは、さまざまな場所にある空きスペースに、必要とされるサービスを必要なときに提供するというモビリティサービスのプラットフォーム事業へと徐々に進化を遂げているようだ。

アップル、App Storeに「Search Ads」提供開始。検索に応じたアプリ広告を表示

eng-logo-2015アップルが日本国内でSearch Adsサービスを開始すると発表しました。Search AdsとはApp Store用の課金制検索広告プラットフォームで、アプリをユーザーに届けたい開発者がこれをうまく活用すれば、アプリを探すユーザーの目にとまりやすい場所にアプリの広告を表示できます。

ユーザーが手持ちのiPhoneやiPadに入れたいアプリを探すとき、だいたいの場合はApp Storeの検索欄にキーワードを入れて探します。このとき、Search Adsを使っていれば、ユーザーの検索ワードに応じて開発者は自分のアプリを優先的に上位に表示できます。

もちろんあくまで広告であるため、アプリの表示は通常のカードとは違って薄青色の背景色が付けられ、広告である旨のバッジも表示されます。それでも、ユーザーの興味を惹きつけるために最初に表示されるメリットは、開発者からすれば何にも代え難いはずです。

Search Adsは、2016年10月に米国で導入されました。2017年12月からはSearch Ads BasicおよびSearch Ads Advancedの2階建てになり英国、スイス、カナダ、メキシコ、オーストラリア、ニュージーランドといった国々に提供範囲を拡大しています。今回は日本だけでなく、韓国、フランス、ドイツ、イタリア、スペインで新たにSearch Adsの提供が開始され、合計13か国での展開となります。

日本では、7月26日午前8時にまずSearch Ads Advancedが、そして日本時間8月23日午前2時からはSearch Ads Basicが使えるようになります。

Search Ads Advancedでは開発者がアプリを検索してもらうためのキーワードを設定します。キーワードは検索マッチの結果を見て調整することもできます。さらに、ターゲットとなるユーザーの属性を新規、既存、類似アプリユーザーで指定したり、性別や年齢、地域などで細かく絞り込んだりと多様な設定が可能となります。また分析機能も充実しており、わかりやすいデータ表示で大規模なマーケティング戦略にも活用できる機能を備えます。

一方、Search Ads Basicは難しい設定操作を極力省きたい、どちらかと言えば小規模企業や個人開発者向けのサービス。広告を出したいアプリを指定して月額予算を入力すれば、あとはお任せでApp Storeにアプリ広告が表示されるようになります。管理機能もひと目で確認できる簡単なものが用意され、広告予算の変更や広告の一時停止などを自由に行えます。

もちろん、広告を出すには費用がかかります。しかし、せっかく作った渾身のアプリがなかなかApp Storeでユーザーに見てもらえないと悩む開発者にとっては、もしかするとSearch Adsは状況を一変させるツールになるかもしれません。

なお、広告費用の発生はAdvancedの場合はユーザーがその広告をタップした時のみ発生し、Basicではユーザがアプリを実際にインストールしたときに発生するとのこと。またユーザーの個人情報はAppleのプライバシー基準を遵守しており、広告主に開示したり、第三者に販売するようなことはないとのこと。

Engadget 日本版からの転載。

デーティングアプリ「Dine」にレストランの自動予約サービスが登場、「ペコッター」と提携

レストランデートを軸にしたデーティングアプリ「Dine」を提供するMrk & Co。同社は7月26日、グルメコンシェルジュサービス「ペコッター」運営元のブライトテーブルと提携し、Dineの日本版ユーザー向けにレストランの自動予約サービスを始めた。

Dineは2016年3月にアメリカとカナダからスタートしたサービス。「実際に会うこと」にフォーカスをしていて、登録時に自分が行きたいレストランを選んでおく仕組みがユニークなポイントだ。

以前Mrk & Co代表取締役の上條景介氏に取材した際に、細かい設計も含めて「Dineでは実際に会うために障壁となるものを徹底的に取り除くことを意識している」という話があった。実際Dineではユーザーがマッチングした時点で「どのお店で会いたいか」まで決まっているので、それ以降は日程調整をしてお店の予約をするだけ。マッチングしてから会うまでのスピード感がDineの特徴になっている。

同サービスの軸とも言えるレストランについても、自由に選べるのではなくあえて約400店ほどに限定(東京、大阪、福岡を合わせて)。運営がファーストデートにお勧めできる店舗だけを厳選する。デートで外さないお店だけが載っているという意味で「デート版のミシュランを目指している」(上條氏)そうだ。

2017年11月の日本版ローンチから約8ヶ月が経ち、累計で50万デートのマッチングが成立。ユーザー層としては25〜39歳の社会人が多く、中でもIT系や金融系、商社に務める会社員や経営者が中心になっているそう。このあたりはもともと「忙しくて何度もメッセージのやりとりをするのは大変だけど、出会いは欲しい人」に向けて作っていることもあり、意図したターゲット層に刺さっているという。

一方で今後さらにグロースさせていく上で解決しなければならない課題点も浮かび上がってきた。

「自分たちがこだわっている部分でもある『マッチングからデートに至るまでのスムーズさ』に関してはまだ足りない。特にアメリカではほとんど起きなかった問題として、日本のユーザーはマッチングしてから考え出し、結局デートまで至らないという傾向がある」(上條氏)

理由としては改めてプロフィールを確認すると情報量が足りず不安になったり、マッチングしたレストランに空席がなく別の店舗を検討しているうちに流れてしまったりなどいくつかあるそうだが、日本人の方が細かい離脱ポイントが多いという。

今回リリースしたレストランの自動予約サービスは、まさにこの離脱ポイントをなくすための施策のひとつだ。

従来はユーザーが自らレストランの予約をする必要があったが、これをDineと累計10万件のレストラン予約を担ってきたペコッターが代行。希望していたレストランが満席だった場合には、近隣にある似たような条件のレストランを探し出し、予約するところまでをカバーする。

具体的には場所・価格帯・ジャンルという3点を軸に、Dineに掲載されている別のレストランを提案する仕組みだ(これに関してはあらかじめユーザーが同機能の設定をオンにしていた場合のみ対象)。

上條氏によると約1ヶ月ほど一部のユーザー限定でテストを実施した結果、評判が良かったため他のユーザーにも提供することになったそう。このサービスによってユーザーの予約手続きの手間をなくすとともに、予約前日のリマインド通知などとも合わせてマッチング後のデートキャンセルの削減を目指すという。

自動予約と言ってもAIが自動で予約するわけではなく人の手を介すので、運営側から見れば新たなコストが発生することにもなるが、ユーザーにとっては便利な仕組みと言えそうだ。

写真左からMrk & Co 代表取締役の上條景介氏、ブライトテーブル代表取締役の松下勇作氏

モバイルファクトリーがブロックチェーン関連の新会社「ビットファクトリー」設立へ

位置情報連動型ゲーム「ステーションメモリーズ!(駅メモ!)」などで知られるモバイルファクトリーは7月25日、ブロックチェーン関連事業本格化にあたり新会社、「ビットファクトリー」を設立すると発表した。代表取締役はモバイルファクトリー代表取締役の宮嶌裕二氏が務める予定だ。

新会社ビットファクトリーはDapps(分散型アプリケーション)の普及を目指しており、そのプロジェクトを「Uniqys(ユニキス)Project」と呼んでいる。手軽にDappsで遊べるモバイルユーザー向けサービス「Quragé(クラゲ)」と、手軽にDapps開発が可能となるデベロッパー向けサービス「Uniqys Kit」を包括する「Uniqys Network」を構想している。

新会社設立の発表と同時に、プロジェクト第一弾となるウォレット機能付きモバイルDappsブラウザQuragéのAndroid版を同日にリリース。iPhoneユーザーは年内には同サービスが使えるようになるという。また、Dapps紹介メディア「Quragé Magazine」も同日にリリースされ、Uniqys Kitの開発者向けプレビュー版もGitHub上で公開された。

Uniqys Kitは2018年の冬にベータ版を公開予定。2019年には正式リリースを目指している。同ツール上では一般的なWebアプリと同様に作りやすい言語でDapps開発が可能となり、トランザクション手数料やブロック報酬を無料、定額も含めて自由に選択できるようになる。また、Ether(ETH)またはデベロッパーによる独自トークンを流通させることも可能になるという。

同社は「ゲーム事業に留まらず、SNSやシェアリングエコノミーなど、多くのサービスがDappsに置き換えられていく力を秘めている」と感じている。だが、「日本発のDappsはまだまだ少ないのが現状」のため、「そのような次世代のインターネットとも言うべき可能性を秘めたDappsを普及するため、Dappsを身近に、そして、容易に開発できる環境を提供すべくUniqys Projectを発足した」と説明している。

モバイルファクトリー代表取締役の宮嶌裕二氏は、ブロックチェーンを「次世代のインターネットのようなものだと思った」と説明。だが、「イーサリアム(をはじめとしたブロックチェーンプラットフォーム)は数年後、もう1つのインターネットになる」と期待している一方、現状のままでは「一般には普及しない」とも説明した。

新会社の設立以前、モバイルファクトリーがブロックチェーン関連サービスの開発に着手した当初、ゲーム分野での進出を構想していた。だが、イーサリアムに代表されるブロックチェーンプラットフォーム上に先行してリリースされている複数のゲームを研究した結果、トランザクションの手数料が高かったり、モバイル環境での動作が想定されていないゲームが大半であったり、といった課題があることがわかったという。また、デベロッパーにとってもイーサリアムのままでは作りにくい、というところがもう1つの課題だと話した。

その課題を解決するためのソリューションがQuragéとUniqys Kitだ。

取材中、宮嶌氏は「企業がこぞってホームページを提供しはじめた、20年前を思い出して欲しい」と繰り返した。「それから数年をかけて会社概要を掲載したホームページだけでなくユーザーとの重要な接点としてインターネットがECなどに活用されるようになった。当時と同じように、これから2~3年内に多くの企業がユーザー接点のひとつとして分散型アプリを当たり前に提供するようになり、ある程度のユーザーを持つ企業は、独自トークンを発行しはじめる世界がやってくる」(宮嶌氏)

新会社ビットファクトリーに関しても、Uniqys Network内で使える独自トークンを構想中だという。

Global Informationの「ブロックチェーン技術の世界市場予測2022年」によると、世界のブロックチェーン技術の市場規模は、2017年の4億1150万米ドルから2022年までに76億8730万米ドルへ拡大すると予測されている。また、IDC Japanの「2017年国内ブロックチェーン関連ソリューション市場ビジネス動向:分散アプリケーションプラットフォームの可能性」は、内におけるブロックチェーン関連ソリューション市場は、2016年〜2021年の年間平均成⻑率133.0%、2021年市場規模は298億円と予測している。

今後もUniqysをはじめとする新たなブロックチェーン関連サービスに注目したい。

写真左がモバイルファクトリー代表取締役の宮嶌裕二氏、右が取締役の深井未来生氏

ウェアラブル端末なしでも動きを計測、元テスラ日本法人代表が手がけるUpliftが約1.3億円調達

写真中央がUplift Labs CEOで、元テスラ日本法人代表の樺山資正氏

米国に拠点をおくAIスタートアップのUplift Labsは7月25日、ソフトバンクグループでAI特化型のインキュベーションを行うディープコア、スパークス・グループが運営する未来創生ファンド、および複数のエンジェル投資家などから総額120万ドル(約1億3000万円)を調達したと発表した。これが同社にとって初の外部調達となる。

Uplift Labs(以下、Uplift)は、米国パロアルトに本社をおくAIスタートアップ。同社を率いるのは日本人CEOの樺山資正氏だ。同社は現在、ステルスでプロダクトの開発を進めており、その全貌はまだ明らかになっていない。ただ、樺山氏の話によれば、同社はセンサーとしてウェアラブル端末を使用せずに人間の動きを解析できるような運動解析ツールの開発を進めているという。同プロダクトを利用することで、運動フォームの改善やけが防止のためのアドバイスをリアルタイムに受けることが可能になる。

「ウェアラブル端末では計測できる領域がランニングや水泳に限られるが、Upliftではウェイトリフティングなども含め、さまざまな運動に適応できることが強みだ」と樺山氏は話す。

同社はまず、このプロダクトを米国のフィットネスクラブやプロスポーツチームに月額課金のSaaSとして販売する予定だという。

Upliftの創業メンバーは3人。CEOの樺山氏は以前テスラの日本法人社長を務めており、モデルSが日本に進出する際に同社の陣頭指揮をとっていた人物だ。CTOのジョナサン・ウィルス氏は以前、画像認識技術に強みをもつスタートアップのLumificを創業し、2016年に同社をGoProに売却したシリアルアントレプレナー。そして、チーフ・サイエンティストのラフル・ラジャン氏は、カーネギーメロン大学で機械学習の博士号を取得している。

創業の経緯について、樺山氏は「私とCTOのジョナサンには年をとった両親がいて、介護を必要としない健康な人生を送るために、もっと早くから運動をしておけばよかったという話をよく聞く。人間がテクノロジーに合わせるのではなく、人間がストレスを感じない形で、テクノロジーが人間に合わせて機能するという世界をつくることで、運動効果を最大限にあげられる仕組みを構築したかった」と話す。そこから生まれたのが、ウェアラブル端末を使用しない運動計測技術のアイデアだった。

Upliftは2018年末までに、複数のパートナー企業とともに製品やサービスの提供を始める計画で、サービスの全貌についてもその時に明らかにする予定だとしている。

チャット小説アプリのtaskeyが1.5億円を調達ーー「21世紀、最も読まれる物語を生み出す」

チャットを見る感覚で小説が読めるアプリ「Peep」を提供するtaskeyは7月25日、Global Catalyst Partners Japan、グッドスマイルカンパニー、サイバーエージェント・ベンチャーズ、コルク、BASE Partners Fund、三井住友海上キャピタルなどから総額1.5億円を調達したと発表した。調達した資金をもとに、peepの新たなコンテンツ制作・プロモーションを加速させるという。

「21世紀、最も読まれる物語を生み出す」ことをミッションとしている同社のアプリ、peepは、チャット型UIを使用することで、スマホを使う特に若い世代にとって読みやすい形でコンテンツを提供している。画面をタッチするごとにセリフが出てくるので、ストーリーを目で追うのが非常に簡単だ。僕もかつては文学少年だったが、今の時代、なにも縦読みにこだわる必要はないのだな、と痛感させられた。

同社の強みについて、代表取締役CEO大石弘務氏は、自身が経営者としてだけでなく作家としても活動していることだと答えた。大石氏の腕は、2017年に沖縄国際映画祭で募集が行われた「原作開発プロジェクト」にて、Amazonプライムドラマの原作小説である「エスカレーターボーイ」で大賞を受賞しているほどだ。

peepの掲載作品数は約700作品、掲載話数は約1500話。これらは大石氏や契約作家によるオリジナルコンテンツだ。ユーザー投稿型のチャット小説アプリが主流な中、大石氏が作家として作品の目利きを出来る点が他社・他サービスにはない強みだ。

同アプリは2018年7月4日の時点でApp Storeの国内チャット小説アプリにおいて課金売上第1位を獲得している。また、2018年5月に新たな取り組みとして漫画をチャット小説化した「タップコミック」の提供を開始しており、コルク提供の漫画「ドラゴン桜」のタップコミック版は提供開始当初よりユーザーから高い評価を得ているという。

taskeyは2014年の創業。2015年2月に小説投稿SNS「taskey」のブラウザβ版をリリースした同社がpeepのサービス提供を開始したのは2017年12月からだ。

peepの開発について、大石氏は「taskeyを通じて知り合った作家さんのコンテンツでマネタイズできないかとずっと考えていて、出会ったのがチャット小説というインターフェイスだった」と語った。

また、「縦書きで書かれている小説っていつまで読み続けられるんだろう、と思っていた」と説明した上で、チャット小説であれば「若い世代にもテキストのコンテンツでちゃんと届けられると実感した」と話した。

同社は設立当初から海外展開を目指していたという。taskeyでは小説を投稿したり、投稿された作品を読んだり、という小説投稿サイト的な機能に加えて、作品をユーザーが自ら翻訳して公開するという機能がある。だが、「小説の翻訳をするのはハードルが高かった」と大石氏は語った。

だが、チャット小説は小説と違い、「1つ1つのセリフが短いので、機械翻訳でも意味が理解できる程度の翻訳ができる」という。

今回調達した資金をもとに、同社は今後、チャット小説の提供のみならず、イラスト・動画を使った新たなコンテンツ制作に注力する。大石氏は新たにインハウスの編集者を採用し、ノウハウを伝授することにも積極的だ。さらに、日本のみならず、peepの海外への展開も予定しているという。

大石氏はpeepのコンテンツを「年内には海外に出そうと思っている」と述べていた。

“物置き版Airbnb”の「モノオク」がANRIから数千万円を調達、トランクルームのリプレイス目指す

荷物を預けたい人と、空いたスペースを活用して荷物を預かりたい人をマッチングする物置きのシェアリングサービス「モノオク」。同サービスを運営するモノオクは7月25日、ベンチャーキャピタルのANRIを引受先とする第三者割当増資により数千万円を調達したことを明らかにした。

同社では今回調達した資金により開発人材を中心に組織体制を強化するとともに、モノオクを通じて荷物を預けることのできるスペース数の拡大を目指す方針。また双方のユーザーの利便性向上に向けてモノオクが荷物の中継地の役割を担う「モノオクハブ」の準備も進めていくという。

空きスペースを活用した物置きのシェアリングエコノミー

冒頭でも説明した通り、モノオクは個人間で荷物を預けることのできるシェアリングエコノミー型のサービスだ。Airbnbを知っている人であれば、”物置き版のAirbnb”と言った方がすぐにピンとくるかもしれない。

モノオクに登録することができるのは部屋の一角にある押し入れやクローゼット、使っていない倉庫や空き部屋を始めとした個人が保有しているスペース。ホストと呼ばれる荷物の預かり手となるユーザーは、これらの空きスペースを活用して荷物を預かることで収益をあげることができる。

一方で荷物を預けるユーザー側の視点に立つと、モノオクは物置きのシェアサービスという打ち出し方をしているように、家具や家電などダンボールに収まらないような大型の荷物でも預けられることが特徴だ。

モノオク代表取締役の阿部祐一氏いわく「トランクルームやコンテナをリプレイスするようなもの」であり、従来のトランクルームに比べて低価格で荷物を預けられる点がウリ。相場感としては都心部だと一畳のスペースが1ヶ月7000円ほどになるそうで、敷金や礼金といった初期費用も不要だ(トランクルームの場合は同じエリアだと1〜1.5万円かかるスペースも多く、かつ初期費用が別で加算されるようなものもあるという)。

これまでもTechCrunchでは荷物を預けられるサービスをいくつか紹介してきたけれど、例えばコインロッカーを代替する「ecbo cloak」とは預ける荷物のタイプや期間の点で大きく異なる。専用のボックスに荷物を詰めて送るだけのクラウド収納サービス「サマリーポケット」は一見近しいようにも思えるが、実際の利用シーンは違ってきそうだ。

サマリーポケットの場合はクラウド収納サービスという表現をしているように、預けた荷物を1点ずつ管理したり取り出したりすることができる。一方のモノオクは上述した通り物置きだ。荷物を頻繁に取り出したり、預けたものをクラウドで逐一管理したりといった使い方にはマッチしない。

阿部氏によると、今のところユーザーのニーズとしては「引越し時などに2〜3ヶ月間だけ荷物を預けるパターン」と「倉庫代わりに長期間保管するパターン」の2つが多いそう。前者の場合は家具一式や家電、後者の場合は書類やレジャー用品などが中心になるという。

もっと簡単に預けられる場所に向けて「モノオクハブ」構想も

モノオクはもともとLibtownという社名で2015年4月にスタート。過去に阿部氏が家電の置き場所に困っている知人から相談を受けて、数日間荷物を預かったことがモノオクを開発するきっかけとなった。

ベータ版の開発、テスト期間を経て2017年3月に正式リリース。当初は短期間の利用も想定していたものの、ユーザーの要望を受けて9月には1ヶ月以上の中期〜長期利用にも幅を広げ、それ以降は長期利用を軸としたサービスとして拡大してきた。

4月には社名をモノオクに変更するとともに、料金の見積もり機能などサービスのリニューアルを実施。メディアに取り上げられたことも重なって、特に空きスペースを運用したいホストユーザーが増加。現在掲載されている預かり場所は1000箇所を超えているという。

モノオクは預かり料金の20%が手数料となるビジネスモデル。そのため「どれだけ成約数を増やせるか」が成長の鍵となる。阿部氏によると今回の調達も踏まえて、今後1年を目標に預かり場所の数を1万箇所まで増やしていくことを目指すとともに、成約率を上げるための改善に力を入れていく計画だ。

その一つが近々実装を予定している「モノオクハブ」という機能だという。

「モノオクでは値段の相談やスケジュールなど、メッセージ機能を通じた個人間でのやりとりが必要になる。そのためホスト側の返信がなかったりスピードが遅かったりすると機会損失を生むことになり、それが課題にもなっていた。今後はユーザーから預けたいというリクエストがあった時点で”運営が一時的に荷物の中継地の役割”を担い、さらにユーザーの利便性を上げていきたい」(阿部氏)

モノオク代表取締役の阿部祐一氏

AI活用の3Dプリント義足で「義足を持てない患者」救出へ、インスタリムがフィリピンで実証実験を開始

3Dプリンティングと機械学習技術を活用することで、低価格な新しい義肢装具を開発するインスタリム。同社は7月25日、フィリピンにて3Dプリント義足の製品化に向けた実証実験を始めたことを明らかにした。

インスタリムについては同社が採択されている「東大IPC起業支援プログラム」を取り上げた際にも少し紹介したけれど、これまで義足を持つことができなかった患者に対して、新しい選択肢を提供しようとしているハードテックスタートアップだ。

同社では義足の開発に3DCAD(3Dモデリングソフト)や3Dプリンタを活用。問診時にスキャンした患部データを元に、3DCADで身体と接触する部分(ソケットと言うそう)の形を作りながら、3Dプリンタを通じて仮ソケットを出力する。

次の工程では仮出力したソケットを実際に試着。専門の義肢装具士が、痛みを感じる部分など形状の細かい修正をした後、もう一度3Dスキャンしデータをインポートする工程を繰り返すそうだ。この時点では患者にフィットして全く痛くないものができているので、3Dプリンタを使って最終版を出力するという流れになる。

インスタリム代表取締役CEOの徳島泰氏によると、ここでポイントとなるのが途中で「義肢装具士の修正」が必要になること。

これは従来の義足でも同様。義足を作るとなると、多大な設備や専門家の手が必要になり、それが販売価格や製作期間にもそのまま反映されてきた。徳島氏によると一般的なものでは通常1本あたり30〜100万円で販売され(寄付などでほぼ無償で提供されているものを除く)、製作期間も2〜3週間程度かかるという。

インスタリムの場合も初期は仮ソケットの修正時に専門家の手が必要になるが、ある程度のデータが貯まってきた段階で徐々にその部分をAIに移行。「最終的には人手による修正がいらなくなるレベル」(徳島氏)を実現し、従来の約10分の1のコストで、かつ短期間で納品することを目指している。

現地での実証実験の様子

もう少し補足すると、インスタリムでは義足を作るたびに「1番最初にスキャンした患部データ」と「形状を修正した後のデータ」の2種類のデータが貯まっていく。この2つを機械学習にかけることで「●●のような患部データが入ってきた場合には、××のように修正すればいい」といった情報をAIでレコメンドするというわけだ。

「義肢装具士の技術を学習していくようなイメージ。これが実現すれば義肢装具士がいないような場所でも義足を作れるようになる。また義肢装具士がいても、今までは単価が高くて義足を手に入れられなかった人に安く提供することもできる」(徳島氏)

前回の記事でも紹介した通り、徳島氏は大手医療機器メーカーでAEDや医療系ソフトウェアの開発に従事した後、青年海外協力隊としてフィリピンに2年半滞在。そこで糖尿病が原因で足を切断し、義足を必要とする人が多いことを知ってこのビジネスを始めた。

左から2番目がインスタリム代表取締役CEOの徳島泰氏

JICAが公開している「フィリピン国3Dプリント義足製作ソリューション事業基礎調査」を見ても、同国で膝下義足を必要とする障害者・足切断患者に、潜在的な義足ユーザーとされる糖尿病性壊疽患者を加えると120万人以上に上ることがわかる。このうちすでに義足を得ているとされるのはわずか数万人だ。

そもそも義肢装具士の絶対数が少なく、ゼロから義足製作所を作るにはコストがかかる一方で、収益性などの観点を考慮するとものすごく儲かるビジネスというわけではない。だからこそ義足を開発するコストを抑え、多くの患者が手の届く価格で提供する仕組みができれば、大きなマーケットポテンシャルがあると言えそうだ。

「(取り組んでいる領域的にも)いわゆるスタートアップのビジネスっぽくはないと見られることもあるが、潜在的な市場も含めるとフィリピン1国の義足市場だけでも100億円の規模があるとされている。患部データを集めて仕組みが構築できれば他の国での展開も考えられるので、スタートアップが取り組む市場としても十分魅力がある」(徳島氏)

義足の顕在市場は約2000億円、義肢即具全般では約2.2兆円の規模にも及ぶそう。途上国はもちろん比較的義足が行き渡っているような先進国でも、価格が安くなれば用途に合わせて2本目、3本目の義足として提供するチャンスもあるという(例えばサンダル用、ヒール用といった具合だ)。

今後同社の構想を実現する上で鍵を握ってくるのが「いかに患部データを集めていけるか」ということ。今回の実証実験ではフィリピンのマニラ首都圏地域にて、被験者50人に対して義足を製作。6ヶ月間のテストをしながら、並行して各ソリューションの検証や医師・義肢装具士に対するユーザービリティテストも実施する計画だ。

徳島氏の話ではこれを皮切りに今後1年ほどで1000人ぐらいのデータが集まる見込みなのだそう。2019年の春頃を目処に、まずはフィリピンで本格的に事業を開始する予定だという。