空席情報配信サービスのバカンが資金調達、海外展開に向け加速

前列左から2人目がバカン代表取締役社長の河野剛進氏

レストランなどの空席情報配信サービス「VACAN」を提供するバカンが、サンフランシスコを拠点にベンチャー投資を行うスクラムベンチャーズおよびREALITY ACCELERATORから資金調達を実施した。

調達金額は非公表とされているが、これまでの累計調達額は約1億円程度だと思われる。

同社は2016年10月にトイレ空席検索サービス「Throne」、2018年1月に空席検索プラットフォームVACANのサービス提供を開始。

VACANはレストランなどの混雑状況をセンサーやカメラを使って解析し、電子看板に表示するサービスだ。すでに商業施設の相鉄ジョイナスや日比谷シャンテに提供されているほか、駅ナカ施設などへの試験導入も行われている。相鉄ジョイナスと高島屋横浜店では、スマホやパソコンでも空席情報を確認することが可能だ

河野氏はVACAN開発の理由を「世の中から混雑や行列をなくすため」だと説明。「家族で出かけた時、ランチタイムでどこの店もいっぱいで、待っているうちに子供が泣いてしまい帰宅することに。そういうことを技術で解決できないかと思い、開発をスタートした」とそのきっかけについて話している。

河野氏いわく、「Throneは有楽町マルイや企業のオフィスにも採用されているが、類似サービスが出てきてしまった」とのこと。しかし同社は他にはない技術を持つことで、サービスを評価され採用されているという。

バカンが保有するのは混雑の条件によって表示を最適化する「VDO(Vacant-driven Display Optimization)」という技術の特許だ。この技術により、混雑の状況をフックに、デジタルサイネージの表示をリアルタイムに切り替えることができる。

例えば「レストランであれば、空きがあればそのまま表示し、混雑しているのであれば持ち帰りをおすすめする」ということができるそうだ。また「広告コンテンツに切り替えたり、リアルタイムでクーポンを発行したり」といったことも可能。「これは他社には真似できない」と河野氏は言う。

同社は今後、調達した資金をもとに海外展開に向けた準備を加速させていくという。

「開発体制を整えていくというのが大きなところ。あとは海外展開を見据えて例えば海外特許を出願していくということもあるし、営業も強化していく」(河野氏)

ロボアドバイザー「THEO」を提供するお金のデザインが総額59億円を調達——東海東京フィナンシャルの関連会社へ

AIを活用した個人向け資産運用サービス「THEO(テオ)」を提供するお金のデザインは6月27日、東海東京フィナンシャル・ホールディングスを引受先とする50億円の第三者割当増資と、三井住友銀行、りそな銀行からの融資により、総額59億円の資金調達を実施することを発表した。

東海東京フィナンシャル・ホールディングスは今回の出資により、お金のデザインの株式の20%を取得。お金のデザインは同社の持分法適用関連会社となる。第三者割当増資の発行予定日は6月29日。

お金のデザインは2013年8月の創業。2015年12月より、複数のVCや銀行、銀行系VC、事業会社から資金調達を実施しており、今回の資金調達で、創業からの累計資金調達額は104.8億円となる。

これまでにお金のデザインが実施した資金調達については、以下の通り(カッコ内は出資者)。

  • 2015年12月 約15億円(東京大学エッジキャピタル、グロービス・キャピタル・パートナーズ、伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、電通デジタル・ホールディングス、伊藤忠商事など)
  • 2016年9月 約8.1億円(ちばぎんキャピタル、静岡キャピタル、ふくおかテクノロジーパートナーズ、丸井グループ、ベネフィット・ワン、東京短資など)
  • 2017年2月 15億円(Fenox Venture Capitalなど)
  • 2017年7月 5億円(新生銀行)
  • 2017年10月 7.8億円(NTTドコモ、第一生命保険、OKBキャピタル)

今回の第三者割当増資はお金のデザインにとってシリーズEラウンドのファーストクローズとなる。同社はシリーズEラウンドで追加の資金調達も進めているという。また同社は、東海東京フィナンシャル・ホールディングスと別途、業務提携契約の締結も予定している。

THEOは5つの質問に答えると、ユーザーの年齢や金融資産額、投資傾向に基づき、世界の約6000種類のETF(上場投資信託)の中から最適な組み合わせを提案、運用するというロボアドバイザーサービスだ。月々1万円という少額から始められ、運用報酬は1%(年率・税抜)。20代・30代を中心に利用が広がり、5月末現在で運用者は4万3000人を超えたという。

2017年4月からは、地方銀行と協業してロボアドバイザーサービスを提供する「THEO+(テオプラス)」を開始。2018年5月にはNTTドコモのユーザー向けに、運用額に応じてdポイントが貯まり、dカード利用の「お釣り」相当額を自動積み立てできる「THEO+ docomo」の提供もスタートした。

お金のデザインでは今回の調達資金を、開発体制の強化やマーケティング活動へ投資。THEOのサービス向上と新しい金融プラットフォームの構築に取り組むとしている。

近鉄グループが20億円規模のCVC設立へ

近年、大企業とスタートアップの距離が急速に縮まってきている。本体やコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)を通じた出資、事業間の連携・協業、アクセラレータープログラムの実施など、関連する話題に触れる機会が増えた。

TechCrunch Japanでは日本国内のスタートアップの資金調達ニュースを日々紹介しているが、出資先の顔ぶれを見ても、大企業の名前を頻繁に目にするようになってきている。

そして6月26日、また1社国内の大企業がスタートアップとの協創に力を入れていく方針を示した。その企業とは鉄道事業を中心に、複数のビジネスを手がける近鉄グループホールディングス。同社は8月にCVC「近鉄ベンチャーパートナーズ」を設立することを明らかにした。

近鉄グループが展開する運輸、旅行・レジャー、流通・飲食、ホテル、不動産、広告・情報サービスといった各事業とシナジーが見込めるスタートアップが投資の対象で、出資枠は20億円。具体的には「グループ事業とのシナジーの観点」と「新事業創出の観点」で投資先を決めていくようだ。

・グループ事業とのシナジーの観点

  • あらゆる事業分野で必要となる運営の効率化・省人化
  • グローバル&ICT社会でのマーケティング、プロモーション、コミュニケーション力強化
  • 顧客ニーズの多様化に対応するサービスの高度化、付加価値向上

・新事業創出の観点

  • 高齢化・人口減少などに対応する新事業・サービス、地域活性化策
  • 環境・エネルギー、農業、健康・医療などの社会課題の解決を目指す新事業
  • Fintechなど、テクノロジーの進化そのものが創出する新事業

近鉄グループが各事業分野において保有するデータや顧客基盤、沿線社会などのリソースをスタートアップに提供することで、事業領域の拡大や新たな事業の創出も目指していく方針だ。

なお鉄道会社ではJR東日本が2018年2月にCVCのJR東日本スタートアップを設立。駐車場シェアの「akippa」や腰痛対策アプリ「ポケットセラピスト」のバックテックに出資をしているほか、JR西日本もJR西日本イノベーションズを通じて荷物預かりシェアの「ecbo cloak」を展開するecboなど複数社に出資している。

民泊を含めた400万件以上の宿泊施設を検索できる「Stayway」が正式リリース

写真中央がStayway代表取締役の佐藤淳氏

6月15日に住宅宿泊事業法(民泊新法)が施行され、日本でも民泊ビジネスが盛り上がりの兆しを見せている。

最近では民泊分野のメインプレイヤーとも言えるAirbnbが新たなパートナーシップ制度を発表し、宿泊予約のReluxが民泊施設の取り扱いを始めた。

そんな中「トラベルをシンプルで、フレンドリーに」をミッションとするStaywayが6月26日、民泊とホテルを含めた宿泊施設検索・比較サービス「Stayway」を正式にリリースした。

また、同社はエウレカ創業者の赤坂優氏からの出資、および元Expedia日本代表、三島健氏のアドバイザー就任を併せて発表した。出資額は明らかにされていない。

同社いわく「Stayway」は民泊とホテル等の宿泊施設を同時検索・価格比較できる国内初のサービスだ。Booking.com、Expedia、Agoda、Ctrip、HomeAway、楽天トラベル、じゃらん、一休、Hotels.com、Wimduなど国内・海外の大手予約サイトの最新情報をもとに、3ステップで簡単に最安値を検索できる。現時点で世界100か国・2万都市以上の400万件を超える宿泊施設が対象になるという。

同サービスは2018年1月のベータ版ローンチ以降、同社運営の「Stayway Media」と合わせて約5か月で10万人のユニークユーザーを達成した。正式リリースを終え、代表取締役の佐藤淳氏は年内に月間50万ユニークユーザーの獲得を目指す。

「競合のTRAVELKOは月間のユニークユーザーが約400万。そこにどんどん追いついていきたい」(佐藤氏)

同氏は競合としてTRAVELKOやtrivagoなどをあげつつも、「合法的な民泊を含めたかたちで横断検索」できるのがStaywayの強みだと説明した。また、若い世代に使いやすいよう、UIをシンプルにし、どんなワードでも検索できるようにしたという。

政府が2020年に4000万人の訪日外国人客数を見込むなか、同社は今後、外国語対応に向けた準備を加速させるという。加えて、「Stayway」とは別に、2018年7月には旅行領域に特化したインフルエンサーを活用した高品質動画・ドローン撮影サービスをリリースするそうだ。

アプリ運営プラットフォーム「Yappli」が外部サービス連携を強化、APIを順次公開

Yappli(ヤプリ)」は、直感的なUIを使ってプログラミングなしでiOSやAndroid対応のネイティブアプリが開発できる、クラウド上のアプリ運営プラットフォームだ。2013年に正式公開され、現在では専任の開発チームを持たない一般企業など、小売・アパレル領域を中心に200社以上に利用が広がっている。

サービスを提供するヤプリは6月26日、開発者向けのポータルサイト「Yappliディべロッパーサイト」を公開した。ヤプリでは情報提供に加えてYappliの外部サービス連携を強化し、第1弾として、ポイント連携APIとプッシュAPIを公開する。

ポイント連携APIでは、YappliとのAPI連携により、自社システムで管理する顧客情報とアプリ端末とのひも付けが可能。ポイント照会やログイン、新規会員登録など、Yappliで作ったアプリをポイントカードとして利用することができる。

プッシュAPIでは、ポイント連携機能のログインAPIとあわせて利用することにより、自社システムで持つユーザーのステータスに応じて「再入荷のお知らせ」「配送状況のお知らせ」などのプッシュ通知を配信することができる。

ヤプリによれば「ポイントカード機能は、ECやサービスなどをアプリで提供する際、最近では必須の機能となってきている」という。またプッシュ通知についても、タイムセールの全体配信や位置情報によるエリア別、セグメント別での通知はこれまでも可能だったが、「さらにパーソナライズさせたい」との要望が多かったそうだ。

このため、これまではYappliの基本機能にこうした機能を追加でカスタマイズする形で提供されてきた。しかし需要の多さから、ヤプリがカスタマイズ対応するにはリソースに限りがあり、開発の待ち時間が課題となっていた。

ヤプリでは、Yappliを開かれたサービスにすることで、開発ベンダーや顧客のシステム担当がこれらの機能追加を早く、簡単に行えるようにと、APIの公開と開発者向け情報を集約したデベロッパーサイトの開設に踏み切った。

今後ヤプリでは、ECの商品情報や在庫情報、決済システムなど、連携できるAPIを増やしていく予定。APIを利用することで、アプリ内でのブラウザ表示(WebView)を使わず、ネイティブアプリで決済まで完結できるようにするのが、当面の目標とのことだ。

「アプリのユーザーがより快適に買い物を完了できるように、また開発パートナーがよりスムーズにアプリのカスタマイズができるようにしていく」とヤプリの担当者は述べている。

さらにヤプリでは、Yappli独自のSDKも開発中とのこと。自社サイトなどへSDKを組み込むことで、アプリ経由の売上や在庫状況などをサイト横断で分析したり、接客に生かせるように可視化することを目指す。

「ヤプリでは、今後データにも重きを置いていく」と担当者は述べている。自前で機能を用意することで、プラットフォーマーとして、アプリを利用するユーザーのデータ収集やノウハウの蓄積も狙う。

クックパッド、料理道具やうつわを作り手から直接買えるマルシェアプリ「Komerco」公開

最近はあまりやっていないのだけど、以前はスーパーやコンビニで買った惣菜や冷凍食品をわざわざお気に入りのうつわに移してから食べたりしていた。おそらく味自体が変わることはないのだけど、なんとなくその方がテンションがあがるし、美味しくなるような気がするからだ。

僕のどうでもいい個人的な話はさておき、クックパッドが6月26日に公開した「Komerco(コメルコ)」は、料理をするなら道具道具やうつわにもこだわりたい、という人にとってピッタリなサービスと言えそうだ。

Komercoは簡単にいうと、クリエイターが出品した料理系のクラフト作品を買えるマルシェアプリ。クラフト作品のマーケットプレイスでは「minne」や「Creema」などがあるが、その料理系アイテムに特化したサービスだと考えるとわかりやすいかもしれない。

Komercoに並ぶのは、クリエイターが自ら手がけたこだわりの作品のみ(製作者かプロデューサーでなければ出品できない)。提供開始に合わせて100名を超えるクリエイターが参加し、約1500品が出品されている。

僕もアプリをざっと見てみたが、食器やプレートだけでなく包丁やまな板、鍋といった調理器具、エプロンなど作品の種類も豊富だった。

ユーザーはこれらの作品をKomerco上で購入できるほか、作品のストーリーを紹介する記事コンテンツ「コメルコバナシ」を楽しめる。一方のクリエイターにとっては料理を楽しみたい人に自分の作品をアピールする新たなチャネルとなりうる。

ショップの開設や出品の登録はクリエイター専用のアプリから各自が行う。月額利用料や出品料は無料で、作品が売れた際に15%の販売手数料が発生する仕組みだ。

なおクックパッドでは同サービスのリリースに際して「『料理道具やうつわなどモノとの出会いをきっかけに、料理がもっと楽しくなる』という体験を、Komercoの提供を通じて広げていき、毎日の料理を楽しみにする人を増やすことを目指します」とコメントしている。

今後はクックパッドのレシピを参考にしながら、Komercoで買った調理器具を使って料理を作り、同じくKomercoで買ったうつわに盛り付けて楽しむ、といったユーザーも増えていくのかもしれない。

時間や場所の制約越えるオンラインのライブヨガ教室「SOELU」が8000万円を調達

前列中央がワクテク代表取締役CEOの蒋詩豪氏

近年エンタメやコマースをはじめ様々な領域で「ライブ動画」というフォーマットが広がってきているが、これからはフィットネスのレッスンもライブ動画化される時代になっていくのかもしれない。

女性限定のオンラインヨガサービス「SOELU(ソエル)」を展開するワクテクは6月26日、複数の投資家を引受先とした第三者割当増資により8000万円を調達したことを明らかにした。

同社では今回調達した資金をもとにプロダクトの開発体制を強化するとともに、SOELUブランドの構築や会員の最大化を目指すほか、インストラクターやトレーナーの人材育成にも力を入れる方針。

なお今回のラウンドに参加した投資家は以下の通りだ。

  • KLab Venture Partners
  • iSGSインベストメントワークス
  • ANRI
  • THIRDPARTY
  • 赤坂優氏
  • takejune氏
  • 大湯俊介氏
  • 花房弘也氏
  • 安田直矢氏
  • 水谷寿美氏
  • 飯田くにこ氏

ビデオチャットを活用、いつでもどこでもヨガレッスン

オンライン英会話サービスがマンツーマンの英会話レッスンをWeb上で手軽に受講できるようにしたように、SOELUはジムやスタジオで開かれる少人数のヨガ教室をオンライン化したサービスだ。

レッスンはビデオチャットシステムのZoomを使ってリアルタイムに実施。インスタラクターが画面越しに受講者の様子を見てフィードバックをくれるため、オンラインではあるものの孤独を感じづらく、臨場感も味わえる。

初級〜上級までレベルに応じたヨガレッスンの他にも、マタニティヨガや産後ケアヨガ、ママ&ベビーヨガ、ピラティス、骨盤トレーニング、全身引き締めトレーニングなど約30種類のプログラムを用意。オンラインの利点を活かし、これらのレッスンを朝5時から深夜24時台まで開催している。

レッスン時間は1回あたり30分〜60分ほど。多くても10名程度の少人数レッスンとなっていて、月に8回受講できる月額3980円(税抜)のプラン、1日2回を上限にレッスンが受け放題となる月額7980円(税抜)のプランがある。

長く継続できるフィットネスサービスを作る

「自分たちが作りたい健康サービスは、ライフステージが変わっても長く続けられるもの。一過性ではなく、継続できる仕組みこそ価値があると考えている」——そう話すのは、ワクテク代表取締役CEOの蒋詩豪氏だ。

ワクテクは2014年4月の設立。当初運営していたオタクコンテンツを扱うキュレーションメディア事業を2017年に譲渡し、同年9月頃から現在手がけるオンラインヨガサービスを検証してきた。その中で体験レッスンを受講した女性約100名にヒアリングしたところ、既存の手段における課題が見えてきたのだという。

「できればジムやスタジオに行きたいけど、時間などの制約があって継続して通うのが難しいという声が多い。その一方でyoutubeの動画やDVD教材ではよほどストイックな人でなければ、孤独で飽きてしまう。特に仕事や家事、育児をしながら美容や健康にも気を配りたい女性には、同じような悩みを抱えている人が多いにもかかわらず、しっかり解決できるソリューションがなかった」(蒋氏)

何もオンラインでヨガのレッスンを受ける仕組み自体は真新しいものではない。試しに「ヨガ オンライン レッスン」などのキーワードで検索すると、いくつか該当するものがでてくる。

ただそれらの多くは録画したレッスンを配信するオンデマンド型のものか、パーソナルトレーニングに近いマンツーマン型のもの。何よりも「楽しく、続けられること」を重視した結果、蒋氏は少人数のライブレッスンという方式が最適だという結論に行き着いた。

「もちろんマンツーマンのレッスンもニーズはあると思うが、レッスンフィーが変わらなければ必然的に生徒が支払う単価は高くなり、負担も大きい。自分たちがやりたいのは一部の人をターゲットにしたものではないので、コスト面も含めて続けにくくなる要因をとにかく取り除いていきたい」(蒋氏)

複数人制をとることで価格を抑え、ライブレッスンにすることで安心感だけでなく多少の強制力を持たせる。

他にも子どもを寝かしつけてから参加できるように予約なしで途中入室できる仕組みや、赤ちゃんが泣いてしまってレッスンが続けられなくなったら無償でチケットを補填する制度を導入。使い切れなかったチケットは繰り越せるなど、忙しくても続けやすい環境を整えている。

レッスンの時間帯も大きく影響するポイントのひとつ。SOELUに多くの受講者が集まるのは、子どもが起きていない早朝や深夜のレッスンなのだそうだ。

この時間帯でも受けられるプログラムはリアルな場だとなかなかないだろうし、仮にあっても自宅を抜け出して通うのは困難。実はインストラクター側にもこの時間帯で講師業をしたいというニーズがあるため、双方にとっていい仕組みだ。

今後は自作のライブレッスンシステムも

SOELUは誰でもインストラクターとしてヨガを教えられるC2Cのプラットフォームではなく、B2C型。仮に予約が0名でもSOELU側で賃金を保証するため、インストラクターは安定的な収入が見込める。集客面でも自分ひとりでやるよりかなり楽だ。

現在SOELUには研修中も含めて約30人のインストラクターが在籍。プログラムのラインナップも30種類ほどで、1日平均15〜20のレッスンが開催されている。

今回調達した資金も活用しながら今後はプログラムを100種類くらいまで増やし、ユーザーが好きな時間に好きなレッスンを受講できるような体制を目指す。また現在はZoomを活用しているが、今後は自社で独自システムを構築する計画だ。

ちなみにSOELUは女性限定のサービスだが、ライブ×フィットネスという軸で他のターゲット層向けのサービスも展開できそうな気もする。その点について蒋氏に聞いてみたところ、直近はSOELUに集中しながらも「ゆくゆくは男性向けのフィットネスサービスなども検討していく予定」(蒋氏)とのことだった。

連続起業家の家入一真氏らが50億円ファンド設立へ、「僕たちはエンジェル投資家のスタンスを貫く」

写真左より、NOW共同代表の梶谷亮介氏と家入一真氏

CAMPFIRE代表取締役で連続起業家の家入一真氏と、VCや証券会社においてスタートアップ投資やIPO支援を行ってきた梶谷亮介氏は6月26日、最大50億円規模のベンチャー投資ファンド「NOW」を設立した。

同ファンドのアドバイザリーボードには、グリー代表取締役の田中良和氏やフリークアウト・ホールディングス取締役の佐藤祐介氏など業界の第一線で活躍する起業家らが名を連ねる。

「これまで行ってきたエンジェル投資を、もっとシステマティックにできないかと考えていた」と話す家入氏。これまで個人で起業家を応援するつもりでエンジェル投資を行ってきたが、それには限界があると感じ、家入氏が2004年に立ち上げたpaperboy&coが上場する際の主幹事証券会社でIPO支援を行っていた梶谷氏とタッグを組むことにした。

そんな彼らが重要視するのは、“VCだけれどVCではない”という姿勢を貫くことだ。「大抵のエンジェル投資家は、みずからも起業家であるからこそ、投資先の気持ちが分かる。VCがお金を投資してアドバイスを行うということは役割であり、それを口実に起業家の時間を奪ってはいけないと思う。僕の特技は人生相談。起業家の悩みにのってあげたり、迷ったときには背中を押してあげる存在になりたい」(家入氏)

投資領域も特に制限をかけていない。家入氏にはC向けサービスの相談が来ることが多く、必然的に投資先もC向けサービスが多いというが、同ファンドでは基本的にインターネットで“居場所”を作る企業に投資をするという。

「僕自身、中学生のときにいじめられて学校に行けなくなったという経験がある。それ以降、自分の居場所になったのがインターネットです。SNSやシェアエコノミーなど、(誰かの心の拠り所になる)居場所をつくる企業を軸に投資をしていく」と家入氏は語る。

「日本経済全体が縮小していくなか、これまでの大きな経済からこぼれ落ちてしまう人たちがいる。そうした人を救うためには、彼らの救命ボートとなるような小さな経済をたくさん作っていく必要がある。少子高齢化などの課題がある日本で、なぜ自分が起業するのか、という課題感をしっかりと持つ起業家に投資をしたい。PLやBSで判断できないスタートアップ投資では、“人”を見るしか方法がないんです」(家入氏)

NOWはすでにファーストクローズを実施しており、LINE、グリー、セプテーニ・ホールディングスなどの企業がLPとして同ファンドに参加している。NOWは年内〜来年春をめどに目標金額である50億円を集め、ファイナルクローズを実施する予定だ。

中小企業の若手後継者の支援を目的とする一般社団法人、ベンチャー型事業承継が発足

中小企業庁によると、今後10年の間に、平均引退年齢である70歳を超える中小企業・小規模事業者の経営者は約245万人となり、そのうち約半数の127万人(日本企業全体の1/3)が後継者未定という。

中小企業庁長官の安藤久佳氏は2018年1月の年頭所感で、「現状を放置すると、中小企業・小規模事業者廃業の急増により、2025年頃までの10年間累計で約650万人の雇用、約22兆円のGDPが失われる可能性がある」と述べていた。

このように後継者不在による廃業が深刻化する中、中小企業の若手後継者の支援を目的とする一般社団法人、ベンチャー型事業承継が本日6月25日、発足した。

同団体は、官民さまざまな組織と連携し、家業の経営資源を活かして新たな事業を起こす若手後継者の挑戦を後押しするプラットフォームを構築することを目標にしているという。

発起人で代表理事を務める千年治商店の代表取締役、山野千枝氏は都内で開催された記者会見で「家業というフィールドで新しい挑戦をする全国各地の後継の方々を応援したい」と意気込んだ。

ベンチャー型事業承継とは「若手後継者が、先代から受け継ぐ有形・無形の経営資源をベースに、リスクや障壁に果敢に立ち向かいながら、新規事業、業態転換、新市場参入など、新たな領域に挑戦することで、永続的な経営をめざし、社会に新たな価値を生み出すこと」だと山野氏は説明する。

同氏いわく、若い世代は家業を継ぐことを「なんとなく後ろめたい」「かっこ悪い」と感じていることが多いそうだ。そこで「中小企業の新規事業として片付けられていたことをあえてベンチャーと呼んでいく」ことで「起業家もかっこいいけど、後継社長もかっこいいと若い世代が思えるカルチャーをつくる」のが同団体のねらいだ。

「若手後継者の人たちの取り組みをベンチャーと呼んでいきましょうというような考え方。家業の有形・無形の経営資源に自身が持ち込むノウハウとか経験とかをかけ算し、新しいビジネスを起こしていく」(山野氏)

一般社団法人ベンチャー型事業承継の代表理事、山野千枝氏

会見に出席した経済産業省 新規事業調整官の石井芳明氏は「日本の中小企業の技術力であったり、商流であったり、商人のこころ。そういったところからベンチャーが出てきてほしい」と語った。

ベンチャー型事業承継の主な事業内容は以下のとおりだ。

  • 若手後継者対象の研修事業
  • 若手後継者対象の新規事業開発支援
  • 若手後継者対象の事業化サポート
  • ベンチャー型事業承継事例の収集・蓄積・発信
  • ベンチャー型事業承継政策への提言

初年度は、協賛企業を開拓するとともに、金融機関や自治体に向けて、若手後継者を対象としたベンチャー型事業承継支援サービスの導入を働きかけていくという。

また、アイデアソンやピッチイベントなどのイベント支援なども行っていくようだ。

4年越しの夢の実現へーー電力小売向け基幹システムのパネイルが約19億円調達

電力小売事業者向けの基幹システム「Panair Cloud(パネイルクラウド)」を展開するパネイルは6月25日、Ad Hack Ventures、インキュベイトファンドなどから総額19億3000万円を調達したと発表した。これにより、同社の累計資金調達額は31億1000万円となる。

今回のラウンドに参加した投資家は以下の通り:

  • Ad Hack Ventures
  • インキュベイトファンド
  • SMBCベンチャーキャピタル
  • NCBキャピタル
  • 七十七キャピタル
  • 千葉功太郎氏
  • DG Daiwa Ventures
  • 山口キャピタル
  • 横浜キャピタル
  • りそなキャピタル
  • YJキャピタル

パネイルは、2016年4月に実施された電力小売全面自由化によって急増した電力小売業者向けに基幹システムを提供するスタートアップ。同社はこの基幹システムの開発のほか、北は札幌から南は福岡まで、全国7ヶ所に電力小売会社をグループ子会社として抱え、みずから電力を供給するプレイヤーとしても活動している。

パネイルが提供するPanair Cloudは、これまで人力で行なっていた作業をコンピューターや人工知能が行うことで大幅な業務効率化を実現したクラウドベースの基幹システム。顧客管理や需給管理など、電力小売事業に関わる一連の業務を一気通貫して行うことができる。Panair Cloudについては以前もTechCrunch Japanで紹介しているので、こちらの記事も参考にして頂きたい(当時のサービス名は「Odin」)。

でも、パネイルはこれまで長い間そのPanair Cloudを外部に提供してこなかった。いや、できなかったという方が正しいだろう。

「これがずっとやりたかった」

パネイルは2012年12月の創業で、当時は太陽光発電を始めたい一般消費者と施工業者をつなげるマッチングサービスを提供していた。しかし、その事業は結局上手くいかずピボットせざるを得なくなった。2014年頃のことだ。そして、代表取締役の名越達彦氏が次に目をつけたのが、自由化を控え注目の真っ只中にあった電力小売事業だった。

電力という生活インフラを扱う電力小売事業では、そのビジネスの根幹を支える基幹システムの導入は必須だ。しかし、大手ITベンダーが提供する基幹システムは導入費用だけでも数億円かかる代物。これでは、せっかく電力小売自由化が実施されて新規参入が促進されたとしても、資本を持たない企業にとっては参入障壁が大きすぎる。それに、それらの基幹システムは自動化された部分が少なく、多くの人の手を必要とするものだった。

そこで、パネイルはRPA(ロボットによる自動化)技術を駆使したクラウドベースの基幹システムを自社でゼロから開発し、それを小売業者に販売することを目指す。開発費も他社と比べて「数十分の1」(名越氏)に抑え、より安価なソリューションを提供できるはずだった。

しかし、この基幹システムの販売事業も上手くいかなかった。電力小売事業者にとっては、生活インフラを扱うからこそ、実績もないスタートアップの基幹システムを導入する気にはならなかったのだ。実績を作らなければ売れない。でも売れないから実績も作れなかった。

そこで名越氏は、みずからが電力会社となり運用実績を作ることを決心する。そうして立ち上げられたのが前述した全国7ヶ所にある電力子会社だ。「自分の祖母にでも受け入れられやすい名前を」(名越氏)ということで、各電力会社の名前は「札幌電力」や「東海電力」など、あたかも創業100年級の企業のような名前にして、地道に電力の小売を続けてきた。

この地道な努力は2018年4月に実を結ぶ。同社は東京電力エナジーパートナーと共同でジョイントベンチャーのPinTを設立。この新会社は、パネイルの基幹システムを導入して電力やガスの供給を行う企業。ジョイントベンチャーではあるが、パネイルにとってこれが自社システムを外部に提供する初めての事例となった。同年5月にはPanair Cloudの外部向けソリューションである「Panair Energy Automation」も発表している。

「僕たちはこれがずっとやりたかった」と名越氏は話す。パネイルが今回大型調達を実施したのも、外部へのソリューション提供をさらに加速するためだ。同社は今後も電力小売業者とともにPinTのようなジョイントベンチャーを立ち上げ、レベニューシェアすることによって収益基盤を拡大する方針。PinTの場合、資本金8億円のうち3億2000万円(40%)はパネイルが出資しており、これを続けていくにはお金がかかる。だからこそ、同社はここでアクセルを踏んで大型調達に踏み切ったというわけだ。

名越氏は取材のなかで、「僕たちは当初、お金がなくて人が雇えなかった。人が雇えなければ技術でなんとかしよう、ということで進化を続けていったのがPanair Cloudだ」と話した。驚くべきことに、全国7ヶ所の電力会社を含むパネイルグループの総従業員数はわずかに50名ほど。この人数でも全国的な電力小売を行えるほど、Panir Cloudによる業務効率化の効果は大きい。ピボットから約4年。Panair Cloudは苦労の末にやっと実った果実だ。

Uberとは違う、日本らしいやり方でタクシーを変えるーー楽天子会社の元CEOが手がける相乗りアプリ

写真左よりNearMe代表取締役の高原幸一郎氏、同CTOの細田謙二氏

郊外の地域では、終電後のタクシー乗り場に長蛇の列ができることが多い。なんとか終電で最寄り駅まで辿り着いたのはよいものの、もうすでに最終バスもない。そんな人は自分だけじゃないから、タクシーを求めて長い列ができるのだ。

海外にはUberがあり、自分がどこにいてもUberドライバーを気軽に呼ぶことができる。向かう方角が同じ他のユーザーとライドシェアして、運賃を浮かすこともできる。でも、日本ではいわゆる「白タク」は違法行為であり、海外でUberを経験したTechCrunch Japan読者のみなさんは「日本はまだまだ」と悔しい思いをしたこともあるだろう。

そんななか、白タクとは違うやり方でこの課題を解決しようとするスタートアップがいる。ニッセイ・キャピタルのアクセラレーションプログラム「50M」の“特待生”として5000万円の資金調達を実施し、本日6月25日にタクシー相乗りアプリ「 nearMe.(ニアミー)」を東京エリアで先行リリースしたNearMeだ。

同じ方角に向かうユーザーをマッチング

先ほどUberの名前を挙げたばかりの僕が言うのもなんだけれど、Uberの仕組みを理解している人は、まず頭をまっさらにしてほしい。nearMeはUberとはまったくの別物だからだ。nearMeは自社でタクシードライバーを抱えていないし、指定されたポイントにタクシーを配車することもない。彼らがやるのは、同じ方角に向かうユーザー同士をマッチングすることだけだ。

ユーザーはまず、nearMeのアプリを開いて目的地を入力する。すると、自分の近くにいて、かつ同じ方角に向かう“相乗り候補”と、その人と相乗りする場合のルート、相乗り運賃がアプリに表示される。その条件にユーザーが納得した場合、アプリ内のチャット/音声通話機能でマッチングした相手とコミュニケーションをとり、相乗りするための待ち合わせをするという流れだ。待ち合わせと言っても、そこにタクシーが配車されるわけではなく、ユーザーは自分でタクシーをつかまえる必要がある。

ユーザー間の清算は以下のようになる。まず、タクシーを最後に降りる人(ライドリーダー)は通常通りタクシーの運転手に運賃を支払う。その一方、途中で降りる人(ライドメンバー)はアプリに登録したクレジットカードを通してマッチング時に表示された“相乗り運賃”をライドリーダーに支払う。その後、ライドリーダーの銀行口座に相乗り運賃が入金される仕組みだ。もちろん、相乗りなのでユーザーは1人で乗車したときよりもお得にタクシーを利用できる。

ただ、注意すべきなのは、この時にライドメンバーがライドリーダーに支払う金額は、実費ベースで計算したものではなく、相乗りする前に表示された想定運賃だということ。つまり、タクシーが実際に走ったルートによっては事前に想定した相乗り運賃と実際の運賃のあいだに多少のズレが生じてしまう。

Uberとは違う、日本らしいやり方

今お伝えしたように、ユーザーが自分自身でタクシーをつかまえなければならなかったり、想定金額と実際の運賃とのあいだに多少のズレが生じる可能性があるなど、nearMeにはスマートじゃない部分もたくさんある。でも、それは日本の規制をクリアして、かつスケーラブルにビジネスを拡大するために彼らがあえて採用した戦略でもある。

まず、日本では白タク行為は禁止されているから、Uberのように自社でドライバーを抱え込んでタクシーサービスを提供することはできない。では、既存のタクシー業界と組んで相乗りサービスを展開するのはどうか。そうすれば、ユーザーの位置情報をもとにタクシーを配車することもできるし、支払いシステムも現状よりスマートになるだろう。

しかし、それも将来的なスケーラビリティを考えると微妙な選択肢となってしまう。国土交通省の調べによれば、全国のタクシー車両台数の合計は約23万台(平成28年時点)。その一方、タクシー大手の第一産業交通が抱える車両台数は約8400台であることからも分かるように、日本では1つのタクシー会社が持つ市場シェアは極めて小さい。

このような背景もあり、ある特定のタクシー会社と手を組んでサービスを提供しようとすれば、マッチしても利用できるタクシーが限られるなど、ユーザーの利便性を損ねてしまう。かといって、スタートアップであるNearMeが群雄割拠のタクシー業界を1つに束ねるプラットフォームを構築するのは至難の業だ。だからこそ同社は、タクシー業界との正式なパートナーシップを必要とせず、最初からどんなタクシー会社にも対応する現在のビジネスモデルを選択したのだ。

楽天グループのケンコーコム執行役員、同じくグループ会社の仏Aquafadas CEOなどを歴任したNearMe代表取締役の高原幸一郎氏は、nearMeが既存のタクシーサービスを補完する存在になり得ると主張する。「相乗りという選択肢なければ、タクシーを利用することを諦めていた人がいるはず。タクシーの実車率(全体の走行距離のうち、乗客をのせて走行した距離)は40%代と言われるなか、そのようなユーザーをタクシー会社に送客できるという意味で、nearMeとタクシー会社は協力する関係になれるはずだ」(高原氏)

タクシーという日本の既存資産を利用し、ライドシェアとは異なる方法で新しい移動方法を実現することを目指すNearMeはまず、終電と終バスの時間に開きがあり、タクシー乗り場に列ができやすい地域などに的を絞って局地的にPR活動を展開。その後は随時利用地域を拡大していく構えだ。

製造業の街にスタートアップエコシステムは生まれるかーーMisoca代表らが地元名古屋でインキュベーション開始

写真左より、Misoca代表取締役の豊吉隆一郎氏、同執行役員の奥村健太氏、IDENTITY共同代表の碇和生氏

スタートアップ業界が成長するためには、人と人との繋がりが欠かせない。世の中を変えるアイデアを具現化し、みずからリスクをとって成功した起業家たちが、その過程で手に入れた知見や資金を次の世代に渡していく。知恵やお金が何世代にも渡って循環することで、エコシステムが徐々に大きくなっていくのだ。

これまで、自動車産業を中心とした従来型製造業のイメージが強い名古屋が“スタートアップ”という文脈で語られることは少なかったように思う。でも、その名古屋でもやっと知恵とお金の循環の芽が生まれようとしているみたいだ。

2018年6月、名古屋を拠点とするインキュベーターのMidland Incubatorsは、名古屋駅からほど近い名古屋市亀島にインキュベーション施設の「Midland Incubators House」を設立した。

Midland Incubators Houseは無料のコワーキングスペースとして開放するほか、東京のVCや起業家との交流会など各種イベントを開催していく。また、大きな金額ではないものの、Midland Incubatorsとして名古屋のスタートアップへの投資も行うという。

Midland Incubatorsを運営するのは、クラウド請求管理サービスのMisocaの代表取締役である豊吉隆一郎氏と執行役員の奥村健太氏。2011年のTechCrunch Tokyoの卒業生でもあるMisocaは、2016年2月に会計ソフトの弥生が買収した名古屋発のスタートアップ。広報戦略パートナーとして同施設のPRを行うのは、地方企業を対象にしたデジタルエージェンシーのIDENTITYだ。

Midland Incubatorsの運営資金は、おもに豊吉氏の個人資産によって賄われる。まさに冒頭に述べた循環システムの典型例だ。Midland Incubators設立の経緯について豊吉氏はこう語る。

「2011年にMisocaを創業する前、私はフリーランスのWeb開発者として活動していました。ただ、当時は24歳で仕事もないし、家もないし、パソコンもないっていう状態。そこで手を差し伸べてくれたのが、今では上場企業となったスタートアップの経営者でした。会社の寮に住んでもいいし、机もパソコンも使っていいと言ってくれたんです。そこでスタートアップの経営に触れたことで、起業に興味をもちました」(豊吉氏)

豊吉氏はエコシステムからの恩恵を受け、みずから起業する道を選んだ。その恩返しのつもりで、自己資金でインキュベーション施設を立ち上げることを思いついたのだそうだ。

でも、名古屋のスタートアップ業界の規模はまだまだ小さい。奥村氏は「私がMisocaに入社したのは約4年前。名古屋のスタートアップで働きたいと思っても、当時は片手で数えられるほどしか選択肢がなかった」と語る。そんな状態からインキュベーションを始めるのだから、結果が出るのは時間がかかるだろう。

それでも、誰かが始めなければならない。Midland Incubatorsの取り組みが、文字通り名古屋スタートアップエコシステムの孵化装置(Incubator)となるのだろうか。数年後が楽しみだ。

製造業の街にスタートアップエコシステムは生まれるかーーMisoca代表らが地元名古屋でインキュベーション開始

写真左より、Misoca代表取締役の豊吉隆一郎氏、同執行役員の奥村健太氏、IDENTITY共同代表の碇和生氏

スタートアップ業界が成長するためには、人と人との繋がりが欠かせない。世の中を変えるアイデアを具現化し、みずからリスクをとって成功した起業家たちが、その過程で手に入れた知見や資金を次の世代に渡していく。知恵やお金が何世代にも渡って循環することで、エコシステムが徐々に大きくなっていくのだ。

これまで、自動車産業を中心とした従来型製造業のイメージが強い名古屋が“スタートアップ”という文脈で語られることは少なかったように思う。でも、その名古屋でもやっと知恵とお金の循環の芽が生まれようとしているみたいだ。

2018年6月、名古屋を拠点とするインキュベーターのMidland Incubatorsは、名古屋駅からほど近い名古屋市亀島にインキュベーション施設の「Midland Incubators House」を設立した。

Midland Incubators Houseは無料のコワーキングスペースとして開放するほか、東京のVCや起業家との交流会など各種イベントを開催していく。また、大きな金額ではないものの、Midland Incubatorsとして名古屋のスタートアップへの投資も行うという。

Midland Incubatorsを運営するのは、クラウド請求管理サービスのMisocaの代表取締役である豊吉隆一郎氏と執行役員の奥村健太氏。2011年のTechCrunch Tokyoの卒業生でもあるMisocaは、2016年2月に会計ソフトの弥生が買収した名古屋発のスタートアップ。広報戦略パートナーとして同施設のPRを行うのは、地方企業を対象にしたデジタルエージェンシーのIDENTITYだ。

Midland Incubatorsの運営資金は、おもに豊吉氏の個人資産によって賄われる。まさに冒頭に述べた循環システムの典型例だ。Midland Incubators設立の経緯について豊吉氏はこう語る。

「2011年にMisocaを創業する前、私はフリーランスのWeb開発者として活動していました。ただ、当時は24歳で仕事もないし、家もないし、パソコンもないっていう状態。そこで手を差し伸べてくれたのが、今では上場企業となったスタートアップの経営者でした。会社の寮に住んでもいいし、机もパソコンも使っていいと言ってくれたんです。そこでスタートアップの経営に触れたことで、起業に興味をもちました」(豊吉氏)

豊吉氏はエコシステムからの恩恵を受け、みずから起業する道を選んだ。その恩返しのつもりで、自己資金でインキュベーション施設を立ち上げることを思いついたのだそうだ。

でも、名古屋のスタートアップ業界の規模はまだまだ小さい。奥村氏は「私がMisocaに入社したのは約4年前。名古屋のスタートアップで働きたいと思っても、当時は片手で数えられるほどしか選択肢がなかった」と語る。そんな状態からインキュベーションを始めるのだから、結果が出るのは時間がかかるだろう。

それでも、誰かが始めなければならない。Midland Incubatorsの取り組みが、文字通り名古屋スタートアップエコシステムの孵化装置(Incubator)となるのだろうか。数年後が楽しみだ。

住宅診断の効率化を目指すNon Brokersが診断結果のクラウド管理システムをリリース

写真右がNonbrokers代表取締役の東峯一真氏、左がCTOの寺田洋輔氏

建物の信頼性を調査する住宅診断をアプリで完結できる「Rインスペクターズ」を提供するNon Brokersは6月25日、新たにSaaS型「インスペクション管理システム」を正式にリリースした。

また、同社はサービスリリースの発表とともに、既存投資家のジェネシア・ベンチャーズ、および新規投資家のみずほキャピタルを引受先とした総額6,000万円の第三者割当増資を実施したと併せて発表した。同社は今後、調達した資金を活用して開発、運営体制の強化に取り組む。

2018年1月リリースの「Rインスペクターズ」は住宅のインスペクション(診断)作業を大幅に効率化するためのアプリ。そして、本日新たにリリースした「インスペクション管理システム」では、更にその調査結果をクラウド経由で管理会社に送信することでデータの一元管理、編集、報告書出力などをスムーズに行うことを可能にした。

インスペクションは基礎や壁にひびや雨漏りなどの劣化がないかどうか調べる作業だ。専門知識が不可欠な上、国土交通省が用意する紙のチェックリストは難透難解で、目を通すとまるで運転免許の試験でも受けているかのような気持ちになってしまう。一方、「Rインスペクターズ」を使えば、アプリに従って必要な情報をタッチ操作で入力し写真を撮影するだけで診断作業が完了する。作業にかかる負担を大幅に軽減することが可能だ。

 

診断を行うインスペクターは、現場調査の後にも写真整理や報告書作成を行う必要があったが、「Rインスペクターズ」はその無駄で不毛なプロセスをも排除した。現場調査が終わった段階で調査結果の書類作成は完了しており、「インスペクション管理システム」により管理会社に自動送信される。Non Brokers代表取締役の東峯一真氏によると、これによりインスペクターの作業時間はおよそ半分に短縮され、紙からエクセルへデータ入力する手間が省かれた事で報告ミスも削減されるという。

東峯氏は「不利になる情報は調べないというのが業界の慣習」だと説明するが、2018年4月に施行された改正宅地建物取引業法により仲介業者が売買主に対するインスペクションのあっせんを義務付けられたことで、同社サービスのニーズが「どんどん伸びていく」ことを期待している。

また、同氏は雨漏り跡が見つかるなどの問題が住宅売買の契約後に多発していると述べた上で、インスペクションの重要性・必要性を強く訴えた。10軒のリノベ物件にインスペクションを行ったところ、4軒で雨漏りが確認されたそうだ。

「車検をしていない車を買う日本人はいないが、中古住宅に関しては現状引き渡し。インスペクションをやったほうが良いのかやらなくても良いのかというと、必ずやったほうが良いに決まっている」「検査好きの日本人からすると、インスペクション済みの物件が並んでいる状態で安心して選べる時代に倒れるのではと考えている」(東峯氏)

僕の周りにも入居直後に床下浸水を見つけ激高していた友人がいる。確かに、起こり得るトラブルの根源を事前に潰しておく事は仲介業者にとってもメリットとなるだろう。

日本ではまだまだ新築物件の購入が一般的だが、総務省によると2013年度の空き家の総戸数は820万にもおよび、国交省は中古物件の流通を後押しする方針を掲げている。

ミクシィ代表の森田氏ら書類送検ーー急遽“モンストの立役者“が代表就任

6月22日、ミクシィ代表取締役の森田仁基氏が商標法違反の容疑で書類送検されたことが分かった。NHKの報道によると、書類送検されたのは森田氏のほか、ミクシィ子会社のフンザ前代表取締役、同社前取締役の3名で、法人格としてのフンザもその対象だという。

森田氏の在任中にあたる2015年3月、ミクシィはチケット売買仲介サービスの「チケットキャンプ」を運営するフンザを買収した。だが同社は2017年12月、そのフンザが商標法違反および不正競争防止法違反の容疑で捜査当局から捜査を受けていることを発表。ミクシイはその後にチケットキャンプの事業終了と関係者の処分を決定していた。

書類送検されたことを受け、6月の株主総会と取締役会で退任する予定だった森田氏は、急遽本日付で代表取締役を辞任2017年2月の時点で森田氏の後任として選任されていた“モンストの立役者”木村弘毅氏が新たに代表取締役へと就任することが決定した。

ミクシィは「商標法違反に対する認識はない」とコメントしたうえで、「このような事態に至りましたことにつきましては、厳粛に受け止め、引き続き捜査に協力をして参ります」としている。

ビットフライヤーが新規ユーザーのアカウント作成を一時停止、金融庁が6社へ業務改善命令

仮想通貨の取引所や販売所を運営するbitFlyer(ビットフライヤー)は6月22日、金融庁より業務改善命令を受けたこと、および内部の管理体制が整うまでの期間は新規ユーザーによるアカウント作成を一時停止することを明らかにした。

同社の発表では、一定のユーザーに対して実施が義務付けられている「本人確認プロセス」に関して、運用の不備が認められたとのこと。事態が発生した原因調査をした結果、適正な管理体制を構築するための改善プランとして、既存ユーザーへの本人確認状況の再点検を行うことを決定。登録情報に不備や不足が認められたユーザーについては、本人確認プロセスを再度実施する方針だ。

合わせて、冒頭でも触れたとおりbitFlyerでは既存ユーザーの本人確認状況の再点検が完了し、内部管理体制の強化が整うまでの間、新規ユーザーによるアカウント作成を一時停止する。

新規申込受付の再開目途や改善プランの実施状況については、同社のホームページにて報告するという。なお同社に対する業務改善命令の内容については以下のとおりだ。

(1) 適正かつ確実な業務運営を確保するための以下の対応

① 経営管理態勢の抜本的な見直し
② マネー・ローンダリング及びテロ資金供与に係るリスク管理態勢の構築
③ 反社会的勢力等の排除に係る管理態勢の構築
④ 利用者財産の分別管理態勢及び帳簿書類の管理態勢の構築
⑤ 利用者保護措置に係る管理態勢の構築
⑥ システムリスク管理態勢の構築
⑦ 利用者情報の安全管理を図るための管理態勢の構築
⑧ 利用者からの苦情・相談に適切に対応するための管理態勢の構築
⑨ 仮想通貨の新規取扱等に係るリスク管理態勢の構築
⑩ 上記①から⑨の改善内容の適切性や実効性に関し第三者機関の検証を受けること

(2) 上記(1)に関する業務改善計画を平成 30年 7月 23日までに、書面で提出

(3) 業務改善計画の実施完了までの間、1ヶ月毎の進捗・実施状況を翌月10日までに、
書面で報告

(bitFlyer「当社への行政処分に関するお詫びとお知らせ 」より)

また数日前に一部の報道機関により報じられていたが、金融庁では本日付でbitFlyerのほかテックビューロ、ビットポイントジャパン、BTCボックス、ビットバンク、QUOINEに対して業務改善命令を発出している。

“ググって調べる”ではなく“LINEで気軽に相談” ーージラフが通信やインフラ領域にLINE相談サービス拡大へ

格安スマホに興味はあるけれど、わざわざ店舗に行ったりいちいち比較サイトなどで調べたりするのは面倒——そんなユーザーがLINEのチャットを通じて、気軽にスマホの乗り換え相談をできるサービス「携帯かえるくん」。

6月15日にジラフが「ズボラ旅 by こころから」にならって開発した同サービスは、10時のリリース直後からユーザー登録が増え、すぐに数百人に到達。対応キャパシティの限界もあり当日16時時点で新規の受付を一時停止していた。

そしてジラフは6月22日、携帯かえるくんの新規受付を再開することを発表。合わせて複数のLINE相談サービスを水平展開する「かえる群構想」を明らかにした。

ジラフ代表取締役社長の麻生輝明氏によると、携帯かえるくんには当初の想定を超えて約800名からの相談申し込みがあったという。新規の受付を一度停止して以降は、相談があったユーザーの対応を進めつつ、急ピッチで体制を整備してきた。

相談内容については「かなりおおざっぱなものが多く、ユーザーは単純に安いものを求めつつも、実際にはほかにも要望がある」そうで、ユーザーごとに提案内容もバラつきがあるとのこと。相談を聞いてみると「今の携帯料金を自覚してる人は少ない」ともいう(そういえば僕自身も毎月いくら携帯料金を払っているのか、大ざっぱにしか把握していない)。

数百人のユーザーとやりとりを重ねる中で、LINEを活用した相談サービスに可能性を感じたということなのだろう。ジラフでは今後このモデルを格安スマホだけでなく、プロバイダーやポケットWiFiといった通信回線の乗り換え、電気やガスの乗り換えといった他の領域にも広げていく方針を発表している。

「可能性を感じているのは潜在ニーズの大きさ。(格安スマホの買い替えだけでなく)おそらくほかの領域もそうだろうなと。特にいわゆるモバイルでの比較領域はリプレイスする余地があるとずっといわれていて、(LINEを用いた相談サービスが)それに相当するものになるのではないかと考えている」(麻生氏)

確かにこの話については思い当たるふしがある。近年さまざまな分野で比較サイトやレビューサイト、体験ブログ、まとめサイトのようなものが登場し、ひとまずググればたくさんの情報がでてくる時代になった。

ただ、PCであればまだしも、スマホから同じような流れで気になるトピックを検索し、ひとつひとつ比較サイトなどで情報を見比べて意思決定をするというのは、「正直面倒」だと感じる人も多いのではないだろうか。

もはや検索するのですら面倒くさいと思う人や、検索して調べるほどではないという潜在顧客に対して、気軽に、かつズボラに相談できるチャネルを作るというのは一定のニーズがありそうだ。冒頭で紹介したズボラ旅だけでなく、少し仕組みは違うもののLINEも自社で恋愛やダイエットの相談ができるチャットサービス「トークCARE」を提供していたりもする。

最近では格安スマホの登場、通信や電気などの市場自由化・サービスの多様化、シェアリングエコノミーサービスの普及などによって、安くスマートに消費する選択肢が格段に増えた。これらの選択肢を認知してはいるものの、消費スタイルの転換にまだ不慣れな潜在層をジラフでは「スマート消費潜在層」と定義。LINEの相談サービスを複数展開することで、意思決定のサポートをしていく狙いだ。

まずは体制を整えながら、7月前半にプロバイダーやポケットWi-Fiなど通信サービスの乗り換えに関するサービスを、同月後半には電力・ガスの乗り換えに関するサービスをリリースする予定。麻生氏いわく「カカクコムの比較を代行してくれるようなイメージ」だという。

もちろん人員体制の構築やコスト構造を含め、このモデルにもまだまだ未知数な部分はある。麻生氏も「契約の最後のクロージングまでとなると現状は検証しきれてない」と今後の課題をあげる(各サービスのマネタイズについては制約時の送客手数料を想定していて、現時点でユーザー課金等はまだ考えていないそうだ)。

ただこのスマホ時代において、そして日本国内ではLINEがインフラとなっている時代において「自分であれこれ検索するよりも、ひとまずLINEで相談してみる」というスタイルが、多方面に広がっていく可能性は十分にありそうだ。

位置情報からライフスタイルを推測して広告を配信するジオロジックが1億円を資金調達

位置情報データをもとにした広告配信サービスなどを提供するジオロジックは6月22日、総額約1億円の第三者割当増資を実施したことを発表した。引受先はGenesia VenturesLINE子会社のLINE Venturesが運用するファンド、東急エージェンシーの各社・ファンド。ジオロジックにとって今回の資金調達はシリーズAラウンドに当たる。

ジオロジックが提供するアドネットワーク「GeoLogic Ad(ジオロジック・アド)」は、スマートフォンユーザーの行動を解析することで、ライフスタイルや興味などを推定して広告を配信するサービスだ。

「今近くにいるユーザー」だけでなく、ある地点を過去に訪問したユーザーを対象に広告を配信できるほか、大学、ショッピングセンター、工場などの施設の訪問者や、鉄道路線の利用者などにターゲティング配信ができる。

GeoLogic Adの面白いところは、「お店の近くに来たことがあるユーザーにクーポンを配る」といった従来の位置情報を使ったスタイルの広告配信だけでなく、「この行動パターンを持つユーザーはどういう人か」を推測して広告配信が行える点だ。

ジオロジックではアドネットワークのほかに、マーケティングのための独自の地理情報データベース「GeoGenome(ジオゲノム)」を保有している。

GeoGenomeは国勢調査などのデータをもとに、どの住所にどのような人がすんでいるか、町丁目単位で地域傾向を分類。住所に対して「超高級住宅地のエグゼクティブ」「子育てマイホーム」「超高齢化が進む農村」など36の地域クラスターが割り当てられている。

GeoLogic Adでは、この地理情報とスマートフォンの位置情報データを掛け合わせることで、ユーザーをプロファイリングする。

たとえば、同じ「六本木に夜いる人」であっても、一人暮らしなのかファミリーなのか、都心住まいなのか近郊に住んでいるのか、などで趣味嗜好は異なるはずだ。それらを行動データから推定することで、従来より広い範囲のユーザーに対して広告配信を行う。

またリアル店舗を持たないアプリやサイトなどの提供者でも、位置情報を活用してターゲティングを行い、広告を配信することが可能となる。

ジオロジックを設立した代表取締役社長の野口航氏は、NTTコミュニケーションズからサイバーエージェントに転職し、アドネットワークのアルゴリズム開発やマーケティングに従事。事業拡大にともない分割して設立されたマイクロアドでは京都研究所所長を務めていた。

その後2014年11月にジオロジックを創業。2015年2月に地理情報データベースGeoGenomeの提供を、2016年2月からはGeoLogic Adの提供を開始した。

写真前列中央:ジオロジック代表取締役社長 野口航氏

ジオロジックではこれまでに、乗り換え案内サービス「駅すぱあと」を提供するヴァル研究所から2017年3月に資金調達を実施している。

GeoLogic Adは現在、広告主数300社を超え、同社の主力サービスとして成長。位置情報広告事業の伸びにより、同社は既に黒字化しているが、資金調達に至った理由について野口氏はこう話している。

「今回の調達は、事業会社であるLINE、東急エージェンシーとの連携の性格が強い。LINEと東急エージェンシーとの事業シナジーに加え、今年の位置情報広告市場の立ち上がりを確信し、そこで勝つための布陣を整えるため、資金調達に踏み切った。調達資金はGeoLogic Adの販売・開発体制の拡充に投資する」(野口氏)

各社との連携内容については「具体的にはまだ言えないが」としながらも、「LINEとは特にネット広告事業と連携し、O2Oの分野で協業を検討していく」と野口氏は言う。

また東急エージェンシーについては「チラシ広告のクライアントが多い点が強み」とし、「デジタル内でのチラシ的な商品の共同開発を考えている。また東急グループの持つ位置情報との連携や、投資先となっているスタートアップとの連携も検討していきたい」と野口氏は述べていた。

位置情報データ関連のスタートアップでは、データをAIも利用して統合的に解析し、施策の提案も行うプラットフォームを開発するクロスロケーションズが6月20日に数億円規模の資金調達を行ったばかり。今後も既存の地理情報データや位置情報プロダクトをちょっとひねった視点から、新たなサービスが生まれそうな分野だ。

テクノロジーで水産養殖の課題解決へ、ウミトロンが9.2億円を調達——IoTでエサやりを最適化

テクノロジーの活用によって水産養殖の課題解決を目指すUMITRON(ウミトロン)は6月21日、産業革新機構、D4V、藤代真一氏、松岡剛志氏ら個人投資家を引受先とする第三者割当増資により約9.2億円を調達したことを明らかにした(実施したのは6月8日)。

ウミトロンの設立は2016年。JAXAにて人工衛星の研究開発に従事した後、三井物産で農業ベンチャーへの新規事業投資や事業開発支援をしていた藤原謙氏。大学大学在学中に超小型衛星開発に携わり、三井物産やメタップスで働いていた山田雅彦氏。グリーやメタップスでエンジニアとして活躍していた岡本拓麿氏の3人が共同で立ち上げた水産分野のスタートアップだ。

現在はシンガポールに本社、日本に開発本部を持ち、IoTや衛生リモートセンシング、AIなどの技術を使って持続可能な水産養殖の仕組み作りに取り組んでいる。

ウミトロンが現在展開しているのは、データをもとに魚のエサやり(給餌)を最適化するIoTサービス「UmiGarden(ウミガーデン)」だ。

ユーザーは生簀にウミガーデンを設置後アプリにユーザー情報を登録しておく。するとセンサーによって飼育状況が自動でモニタリング・記録され、得られた魚群データを解析すればエサやりの最適なタイミングや量が把握できるようになる。

ウミガーデンではスマホを通じて遠隔からエサやりをコントロールできるので、リアルタイムで量を調整することも簡単。エサ代はもちろん、生産者の負担を削減する効果もある。2018年6月には愛媛県愛南町と技術検証のための研究契約を締結。ウミガーデン20台を養殖生産者に提供し、エサ代の削減と働き方改革に向けた実証実験に取り組む計画だ。

ウミトロンによると現在の水産養殖において給餌が事業コスト全体の50%以上を占め、生産者の利益を圧迫する要因になっているという。加えて過剰な給餌は海の富栄養化や赤潮の原因にもなるなど、海洋資源にも影響を及ぼすそうだ。

同社では今回調達した資金をもとに既存サービスの事業基盤と研究開発体制を強化していく方針。世界中の養殖ノウハウを集積したコンピュータモデルを開発・提供することで、水産資源の持続可能な生産環境の構築を目指す。

「位置情報3.0」時代を支えるデータ活用プラットフォームへ、クロスロケーションズが数億円を調達

位置情報データ活用プラットフォーム「Location AI Platform」を開発するクロスロケーションズは6月20日、NTTドコモ・ベンチャーズ、アイリッジ、アドインテより資金調達を実施したことを明らかにした。具体的な調達額は非公開だが、数億円規模になるという。

今回調達した資金をもとにLocation AI Platformの開発体制を強化し、機能拡充や調達先各社との協業に向けたシステム開発を進める。

位置情報3.0時代へ

近年スマホを始めとする新しいデバイスやメディア、テクノロジーの登場によって、さまざまな領域でパラダイムシフトが起こり始めている。

クロスロケーションズが取り組む「位置情報データ」もまさにそのひとつ。同社で代表取締役を務める小尾一介氏は「世の中が『位置情報3.0時代』へと向かっている最中であり、全く新しいデータの世界へ突入しようとしている」という。

位置情報データがビジネスで活用される一例としてイメージしやすいのが、1990年代の後半から普及したGPS搭載のカーナビだ。小尾氏はこのような仕組みを位置情報1.0と説明する。その後スマホの普及で2.0の時代が到来。そして今、日本版GPS「みちびき」の本格運用や各種センサー、IoTデバイスなどの進化によって3.0時代を迎えようとしている。

1.0の時代は地図関係の情報などがメインで、そこに人の要素がでてくることはなかった。それが2.0以降になると、スマホのGPSからとれる位置情報データによって「特定地域にいる人に対して広告を出す」といったことも可能に。今後ビーコンやIoTデバイスが広がることで、位置情報の利用分野はあらゆる産業や公共サービス、家庭、個人へ拡大することも見込まれている。

クロスロケーションズのLocation AI Platformは、各種位置情報やGIS(地理情報システム)関連データを統合し、統計的なモデル化を実行。その上でAIによる特性把握やデータ活用の提案までをカバーするプラットフォームだ。

たとえば出店計画を立てる際や自社に来店する顧客を分析する際に、位置情報データを活用することで「このエリアにはどのような顧客層が普段訪れているのか」「自社店舗にはどのエリアから、どんな顧客が、どれくらい来店しているのか」といったことが分析できるのだという。

さまざまな位置情報データを統合・分析し、新しい発見を

Location AI Platformでは蓄積したデータの解析や統計、モデリングだけでなく、活用方法のレコメンにもAIを利用する計画。位置情報をもとに状況や目的に応じて適切な施策を提案する、といった機能を盛り込んでいく。

小尾氏の話では昨今、地図ナビゲーションやスマホゲーム、スマホ広告など各分野ごとに位置情報が独自の形で活用されてきたようだ。そのためGPSからの緯度経度情報、ビーコンなど特定地点に設置されたセンサーからの情報、携帯基地局の加入者情報など位置情報の種類や形式が別々に。結果として蓄積されたデータを統合的に管理したり、活用したりすることは難しかった。

もちろん各分野で集めた情報はビジネスに活かせるが、「データを重ね合わせることでより新しい発見や価値が生まれてくる」というのが小尾氏の見解だ。

クロスロケーションズはシンガポール発のスタートアップNearと、Google Japanの執行役員やデジタルガレージ取締役を務めた経験を持つ小尾氏ら、現経営陣の合弁により2017年11月に設立された。

Nearはかねてから位置情報データを活用した広告配信プラットフォーム「Allspark」を、日本を含むグローバルで展開。小尾氏は日本事業のアドバイザーを務めていたそうで、日本市場にある程度フォーカスしたプロダクトを作るため、Nearの日本チームのメンバーを中心にクロスロケーションズを立ち上げた。

同社ではNearが保有するデータと、ビーコンなどから取得したデータを持つパートナー企業から集めた情報をLocation AI Platformに統合し、位置情報3.0時代のスタンダードとなるプラットフォームを目指す方針。

今回のラウンドも純投資ではなく、ユニークな位置情報データやプロダクトを持つ3社との協業も含めた資金調達になるという。