大規模なログデータの処理コストをクラウド利用で削減するHydrolixが10.7億円シード資金獲得

ログのデータを処理し、メトリックスを追跡することに、多くの企業が相当な量のお金とリソースを費やし、集めて保存できる量に何らかのトレードオフを強制している。そこで新進のスタートアップHydrolixが米国時間2月24日、1000万ドル(約10億7000万円)のシードラウンドを発表して大規模なロギングの問題に挑戦し、またユニークな技術によりそのデータの保存とクエリのコストを下げようとしている。

Wing Venture Capitalがこのラウンドをリードし、AV8 VenturesとOregon Venture FundそしてSilicon Valley Data Capitalが賛助した。

HydrolixのCEOで共同創業者のMarty Kagan(マーティ・ケイガン)氏によると、彼は前の仕事で、大量のログデータやメトリックスやそれらの追跡が、社内のさまざまな部分で重視される企業を数多く見てきたが、しかしそれらの企業のほとんどが、データ量があまりにも多いため、長期的な保存のための費用は高すぎて賄えないと感じていた。彼がHydrolixを始めたのは、そのようなネガティブな経済性を変えて、貴重なデータの保存とクエリを容易にしたいと考えたからだ。

ケイガン氏は「そうしたクラスター形式のデータベースの古典的な問題は、ストレージがローカルであることだ。だからデータセットが大きくなると、大金を投じてクラスターを大きくするか、ホットなデータとコールドなデータを区別してコストを一定範囲に収めようとする」と述べている。

さらに彼によれば、クエリともなるとBigQueryやSnowflakeのような既存のソリューションは、この種のデータにあまり適していない。「それらは巨大なキャッシングを行うし、カラムをバルクでスキャンする。だからそれらは、こういう、ライブのストリームを取り入れてアドホックでデータの探査をやりたいインフラストラクチャ方面の仕事では役に立たない」と彼は主張する。

Hydrolixがやりたいのは、ログデータの保存とクエリの、もっとコスト効果の高い方法を作ることだ。しかもそれを、単一のツールで実現したい。ケイガン氏は「そこで私たちは、ストレージの新たな層を作り、クラウドストレージとディスクレスのスポットインスタンスしか使わないのにSSDのようなパフォーマンスを提供できるようにした」と説明する。彼によると、この方法ならキャッシングやカラムのスケーリングは要らず、インデックス検索ができる。「クラウドストレージの低コストと無制限のリテンションの利点を享受できるが、完全なインデックス検索による対話的パフォーマンスも得られる」と彼は付け加える。

Wing Venture Capitalの創業者パートナーである投資家のPeter Wagner(ピーター・ワグナー)氏によると、このツールが見事なのは、量によるトレードオフが要らなくなることだ。しかもそれでいて、顧客のデータ処理費用を全体的に下げる。ワグナー氏は、声明で次のように述べている。「Hydrolixのチームが作ったリアルタイムのデータプラットフォームは、現在のアナリティクスソリューションのコストの数分の一で優れたパフォーマンスを提供するだけでなく、データの量が桁違いに大きくなっても同じアドバンテージが得られる」。

なお、過去2週間内にSentinelOneはログ高速処理プラットフォームのScalyrを1億5500万ドルで買収し、その後CrowdStrikeがやはり高速ロギングのHumioを4億ドルで買収したから、今やこの分野は注目のマトのようだ。

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Hydrolixのプロダクトは現在AWSで利用でき、Amazon Marketplaceから提供されているが、しかしケイガン氏によると同社は現在AzureとGoogle Cloud用のバージョンも開発中で、2021年後半には提供できる。同社は2018年の終わりに創業され、今は20名の社員が6カ国に広がっている。本社は、オレゴン州ポートランドにある。

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タグ:Hydrolix資金調達

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

自律型ドローンメーカーのSkydioが約181億円を調達、ユニコーンの仲間入り

SkydioはAndreessen HorowitzのGrowth Fundが主導するシリーズDで1億7000万ドル(約181億円)を調達した。これによりSkydioの調達金額の合計は3億4000万ドル(約362億円)となり、調達後のバリュエーションは10億ドル(約1065億円)を超えて、ユニコーンの仲間入りを果たす。同社は2020年にエンタープライズ市場に参入し、今回の資金調達はそれに続いて実施された。調達した巨額の資金はグローバルな事業拡大と製品開発の加速のために使われる予定だ。

2020年7月にSkydioはシリーズCで1億ドル(約106億5000万円)を調達したと発表し、初のエンタープライズ向けドローンであるX2も公開した。商用およびエンタープライズの顧客向けに一連のソフトウェアも公開し、2014年の創業以来取り組んできたコンシューマ向けドローン市場から初めてエンタープライズ市場に乗り出した。

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Skydioの最初のドローンであるR1はその自律機能が高く評価され、賞賛を浴びた。レジャー用ドローンメーカーのDJIなどその当時に他社から出ていたコンシューマ向けドローンとは異なり、R1は人間が操作をしなくても障害物を避けながら目標を追いかけて撮影することができる。その後Skydioは2019年に2つ目の製品であるSkyedio 2を発売し、自律的な追跡とビデオ機能を強化しつつ価格を2分の1以下にした。

2020年後半にSkydioはエンタープライズや政府機関の顧客に対応するために上級職の人材を迎えた。Teslaや3Dプリンティング企業のCarbonで経験を積んだソフトウェア開発責任者の他、製品とエンジニアリングに携わるSamsaraのエグゼクティブ2名を同時に雇用した。Samsaraは大企業がクラウドベースで業務用車両を管理するプラットフォームを提供する企業だ。

商用、公共事業、エンタープライズ向けに利用されるSkydioのテクノロジーは多岐にわたる。すでに同社は公益企業、消防、建築会社などの多くの組織と、遠隔調査や緊急対応、都市計画などの分野で連携している。また米国で実績を上げていることから、防衛分野への応用に対する関心の高まりを優位に利用できる立場にある。

Andreessen Horowitzは以前にSkydioのシリーズAラウンドを主導した。今回のシリーズDには、Lines Capital、Next47、IVP、UP.Partnersが参加した。

カテゴリー:ドローン
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画像クレジット:Skydio

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Kaori Koyama)

エンジニアリングチームのスケジュール管理をサポートするAcumenが約7.5億円調達

エンジニアリングのチームは、スケジュールどおりに開発を進めていくと厳しい課題に直面することがあり、そのスケジュールの遅れは組織全体に影響を与える。この問題に取り組むために、エンジニアリングオペレーションを専門とするイスラエルのスタートアップ、Acumen(アキュメン)は米国時間2月24日、700万ドル(約7億5000万円)のシード資金を調達したと発表した。

このラウンドには、Hetz(ヘッツ)、10D、Crescendo(クレッシェンド)、Jibe(ジャイブ)が参加しており、同スタートアップが継続して製品の発展と市場投入を行うための資金を提供する。約1年前からベータ版の顧客と協力を続けてきた同社はこの日、ステルスモードからの脱却を発表した。

Acumenの共同創業者でCEOを務めるNevo Alva(ニーボー・アルバ)氏は、経験豊富なスタートアップ創業者だ。同氏はこれまで、エンジニアリングチームが成長するに連れて、データやチームのパフォーマンスに関する洞察力が不足し、苦戦するのを何度も見てきた。そのような企業に欠けている可視性を提供するため、同氏とその共同創業者はAcumenを起ち上げた。

「エンジニアリングチームの規模が大きくなると、チーム内で何が起こっているのかが見えなくなるため、課題に直面することになります。急にタスクの優先順位付けが難しくなるのです。人々はスケジュールに影響を与える相互依存関係を毎日のように経験しています」と、アルバ氏は説明する。

同氏によれば、これは生産性と速度の低下を引き起こし、そして最終的には会社全体に影響を与える納期に間に合わなくなることで現れるという。Acumenがやることは、まずさまざまな計画やコミュニケーションのツールからデータを収集し、それから機械学習を使用してスケジュールに影響を与える可能性のある潜在的な問題を特定。そしてその情報をカスタマイズ可能なダッシュボードに表示する。

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このツールは、さまざまなプロジェクトを期限内に完了させる責任を負ったエンジニアリングチームのリーダーを対象としており、彼らがボトルネックの可能性を認識するための助けとなることを目的とする。このソフトウェアの機械学習アルゴリズムは、どのような状況が問題を引き起こすのかを時間をかけて学習し、大きな問題にならないようにするための提案を示してくれる。

2019年7月にAcumenを設立した後、創業者たちは最初の10カ月で、十数社のパートナーとともに製品の最初のバージョンを構築し、SOC-2などさまざまな標準化団体の審査に合格できるかどうかを確認した。2020年からクローズドプライベートベータの段階に入っており、2月の最終週に正式発表された。

Acumenは現在20人の従業員を抱えており、2021年中に10人の増員を計画している。2020年のほとんどをリモートで仕事した後、もはや新規雇用に場所はまったく重要ではないと、アルバ氏はいう。「どこに住んでいる人を雇用するかということは、明らかに重要ではなくなっています。リモートで仕事をする上で、タイムゾーンはまだ考慮すべきだと思いますが」と、同氏は語っている。実際、同社の20人の従業員はイスラエル、米国、東ヨーロッパに住んでいるという。

アルバ氏は、従業員が孤立して仕事をしていると感じることがあると理解しているため、Acumenでは毎日ビデオ会議を行っており、その最初には仕事以外のことについておしゃべりするという。それが連帯感を維持するための方法になるからだ。Acumenはこれから、本格的に市場参入に向けて力を入れていく。Harness(ハーネス)やPinpoint(ピンポイント)のような競合製品があることをアルバ氏は認識しているが、データと機械学習の活用が差別化に役立つと考えている。

カテゴリー:ソフトウェア
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画像クレジット:Jetta Productions Inc / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ダイバーシティとインクルージョンの促進に注力する投資会社Kapor Capitalが約133億円調達

有色人種の創業者やソーシャルインパクトベンチャーへの資金提供に力を入れている投資会社のKapor Capital(ケイパー・キャピタル)が「Fund III(ファンド3)」と呼ばれる1億2500万ドル(約133億円)の資金を調達していると、事情に詳しい関係者がTechCrunchに語った。

このファンドで注目すべきは、Kapor Capitalがファンドのために投資家から外部資金を受け入れるのは初めてということだ。これまで資本は、Kapor Capitalの創業者であるMitch Kapor(ミッチ・ケイパー)氏とFreada Kapor Klein(フリーダ・ケイパー・クライン)氏から直接もたらされてきた。

この資金調達は、Kapor Capitalの共同経営者であるBrian Dixon(ブライアン・ディクソン)氏とUlili Onovakpuri(ウリリ・オノバクプリ)氏が主導することになる。2人は共同マネージング・パートナーを務める。

オノバクプリ氏は2018年に、社長から共同経営者になった。当時、彼女は低所得者への償還や補助金による支払いを通じて、ヘルスケアをもっと利用しやすいものにするテクノロジーに興味があると話していた。人材面では、インクルーシブな文化の創造を支援するスタートアップへの投資に注目していると語っていた。

「多様な背景を持つ人々を受け入れ、幸せにするためには、もっと多くのことをする必要があるとわかりました。だからそのために私は投資するのです」と、オノバクプリ氏は語った。

彼女が最初に投資したのは、世界の格差を特定するためのテキストメッセージプラットフォームとしてスタートしたmSurvey(エムサーベイ)と、企業のインクルージョン化促進を支援することを目的としたtEQuitable(ティーエクイタブル)だった。

彼女の共同マネージャーであるディクソン氏は、2015年にベンチャーキャピタルの共同経営者に昇格した最初の黒人投資家の1人となった。ディクソン氏は当時、Kapor Capitalのポートフォリオの中で、女性や有色人種とされる創業者の数を半数以上に増やすことに注力していると話していた。

「共同経営者として、それを継続していきたいと思っています」と、当時ディクソン氏は語っていた。「私たちは今でも最高の企業を探しています。影響力のある企業を目指しながら、VCのようなリターンを得られる企業を探し続けています。それがKapor Capitalのユニークなところであると私は考えています。アーリーステージの会社でこのような目標を持つ会社は多くないのですが、私たちは非常に上手くやっていると思います」。

現在、Kapor Capitalのポートフォリオに含まれる企業の59%は、創業者が女性や有色人種とされる人々だ。Kapor Capitalは、テック業界におけるダイバーシティとインクルージョンの促進に尽力してきた。例えば、2016年には新規投資先企業に対し、創業者コミットメントの一環として、ダイバーシティとインクルージョンへの投資を義務づけている。

Kapor Capitalはこれまで、Blocpower(ブロックパワー)、Bitwise(ビットワイズ)、Promise(プロミス)、Aclima(アクリマ)などの企業に投資してきた。

この件についてKapor Capitalはコメントすることを辞退した。

カテゴリー: パブリック / ダイバーシティ
タグ:Kapor Capital資金調達

画像クレジット:Photo by Monica Morgan/WireImage / Getty Images

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

短い動画で数学や科学を学ぶインドのエドテックスタートアップDoubtnutが約33億円調達

Doubtnut(ダウトナット)は、生徒が短いビデオを使って数学や科学の概念を学び、習得するのを支援するインドのスタートアップ企業だ。同社はインド最大のEdTech(教育テクノロジー)企業であるByju’s(バイジュース)からの買収オファーを断った数カ月後、新たな資金調達ラウンドで3100万ドル(約33億円)を調達した。

インドのグルグラムに本社を置くDoubtnutは、3年前に設立された。同社の発表によると、今回の3100万ドルを調達したシリーズBラウンドは、SIGとJames Murdoch(ジェームズ・マードック)が設立した投資会社のLupa Systems(ルパ・システムズ)が主導したとのこと。既存の投資家であるSequoia Capital India(セコイア・キャピタル・インディア)、Omidyar Network India(オミダイア・ネットワーク・インディア)、Waterbridge Ventures(ウォーター・ブリッジ・ネットワーク)もこのラウンドに参加しており、同社のこれまでの資金調達額は約5000万ドル(約53億3000万円)となった。

Doubtnutのアプリでは生徒が問題となる写真を撮り、機械学習と画像認識を使用して、短い動画で答えを得ることができる。この動画は、生徒に問題の解くための指示を、ステップ・バイ・ステップで提供する。

このアプリは複数の言語に対応しており、Doubtnutによると、これまで獲得した250万人以上のデイリーアクティブユーザーが、合計で月に6億分をアプリに費やしているという。ユーザーの半数以上は、過去12カ月間に初めてインターネットに接続するようになったと、同社では述べている。

Doubtnutは、第6学年(中学1年生)から高校生までの生徒を対象に、9つの言語で6500万問以上の問題を収録したバンクを開発したという。他のいくつかの人気のあるEdTech企業とは異なり、Doubtnutはそのアプリが、小さな町や都市の学生にも使用されていると述べている。「現在の顧客ベースは、85%がインドの上位15都市以外から来ています。また、60%のユーザーはステートボード学校の生徒であり、そこでは一般的に地元の言語で授業を受けています」と、同社は述べている。

TechCrunchは2020年、Byju’sが1億5000万ドル(約160億円)でDoubtnutを買収しようと交渉中であると報じたがその後、Byju’sは買収額を引き下げ、両社の交渉は終了した。

ジェームズ・マードック氏は先月、Uday Shankar(ウデイ・シャンカール)氏と再び組むことを発表した。シャンカール氏はインドでマードック家が、後にDisney(ディズニー)に買収されたStar(スター)の事業を起ち上げる際に、マードック氏を手伝った人物だ。シャンカール氏はマードック氏と協力して、インドにおけるLupaの取り組みを「加速させる」と、2021年1月にマードック氏は語っていた。Lupaはこれまで、インドでニュースアグリゲータやソーシャルアプリを展開しているDailyHunt(デイリーハント)をはじめ、十社前後のスタートアップを支援してきた。

「Doubtnutは、すべての生徒、特にインドの主要都市以外に住む生徒の学習成果を向上させるというビジョンを持って設立されました。私たちは地元言語によるコンテンツ開発を専門としており、テクノロジーを利用して、この大規模なターゲット層の人々のために、手頃な価格のソリューションを開発しています」と、Doubtnutの共同設立者で最高経営責任者(CEO)を務めるTanushree Nagori(タヌシュリー・ナゴリ)氏は述べている。

「SIGは世界的な教育技術企業に投資してきた経験が豊富で、Lupa Systemsは世界クラスのビジネスを構築し、インパクトの高い技術を活用してきた無類の経験を持っています」と、彼女は続けた。

このスタートアップ企業は、今回の資金を投入することで、より多くの言語サポートを追加し、現在カバーしている科目の範囲を拡大する予定だという。Doubtnutはまた有料コースの導入も計画している。

カテゴリー:EdTech
タグ:インド資金調達Doubtnut

画像クレジット:Sattish Bate / Hindustan Times / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

完全招待制のプロ人材マッチングサービス「WUUZY」が2500万円を調達、正式リリースも発表

完全招待制のプロ人材マッチングサービス「WUUZY」が2500万円を調達、正式リリースも発表

「プロ人材」に特化した完全招待制のマッチングサービス「WUUZY」(ウージー)を提供するWUUZYは3月1日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による2500万円の資金調達を実施を発表した。引受先はbasepartners。累計資金調達額は約3000万円となった。また同日、WUUZYを正式リリースした。

調達した資金は、組織拡充およびプロダクトの開発にあてる。

同社によると、プロ人材の活用という選択肢はポピュラーになっており、現在では「何を任せたら良いのか?」「誰が適切なのか?」といったマッチングの精度に関心が集まっていると考えているそうだ。

そこで、AIを活用した「マッチングアルゴリズム」をはじめ、「プロ人材のリファラル関係から信頼を担保する仕組み」など、プロ人材の持つ強みと企業の課題を適切に結びつけるプロダクトを開発していくとしている。

完全招待制のプロ人材マッチングサービス「WUUZY」が2500万円を調達、正式リリースも発表

WUUZYは、「優秀な人材が欲しいけど、正社員じゃなくてよい」「ジョブ型時代というけど、誰に頼めばいいかわかからない」といった悩みを解決するために生まれたサービス。

また同社によると、WUUZYは人材マッチングではなく、「ソリューションマッチング型」サービスという。企業へのヒアリングの基、課題の因数分解を独自の方法で行っているそうだ。WUUZYにはあらかじめ「9つのパッケージ」(ソリューション)を用意しており、課題とパッケージのマッチングを行うことで、そこに紐づくプロ人材を紹介している。

完全招待制のプロ人材マッチングサービス「WUUZY」が2500万円を調達、正式リリースも発表

WUUZYには、様々な領域のプロ人材が「完全招待制」によって200名以上登録。WUUZYへの新規登録は、既存登録者からの招待がないと行えない。登録時は、招待主からのリファラルとして推薦文が必要で、経歴書では伝わらない信頼を担保しているそうだ。

また企業に対する支援を、オンラインで実施することに特化しており、これにより「時間」や「場所」を気にすることなく「安価」に活用できるという。

多くの企業が副業を解禁している中、「副業人材の数が多くて誰に頼めばいいかわからない」という現状に対して、プロ人材に特化したジョブ型マッチングサービスを展開し、企業の成長を支援するとしている。

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カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:WUUZY(企業・サービス)資金調達(用語)副業リファレンスチェック日本(国・地域)

少人数で多拠点の遠隔接客を実現する「RURA」運営のタイムリープが1.8億円調達

少人数で多拠点の遠隔接客を実現する「RURA」運営のタイムリープが1.8億円調達

遠隔地から店舗での接客を可能にするSaaS型遠隔接客サービス「RURA」(ルーラ)を手がけるタイムリープは3月1日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による総額約1.8億円の資金調達を発表した。引受先は、ジャフコ グループ、HIRAC FUND、VOYAGE VENTURES。

調達した資金により、RURAのさらなる開発および人材費に投資し、事業の拡大を通じてビジョンの実現を目指す。

タイムリープ代表取締役の望月亮輔氏は、「今回参加いただいたジャフコ グループさん、HIRAC FUNDさん、VOYAGE VENTURESさんといった良いVCさんにご出資いただいたと思います。ビジョンやサービス、チームに共感をいただいた、全面的なバックアップをいただいています。皆さんのお力をお借りして、RURAをもっと広めていきたいと考えています」としていた。

少人数で多拠点の遠隔接客を実現する「RURA」運営のタイムリープが1.8億円調達

少人数で多拠点のリモート接客が可能な「RURA」

RURAは、インターネットごしに店舗の接客を行なえるというSaaS型サービス。タイムリープ独自システム(特許出願中)により、少人数で多拠点の接客ができる点に大きな特徴があるという。20人で100店舗の接客を行うといったことが可能になるとしている。

RURAでは、全国各地にいる「RURAワーカー」が、店舗にいる顧客に対して遠隔地からインターネットごしに接客を行う。また顔出しでの接客も可能なほか、バーチャルキャラクターを表示させることもできる(バーチャルキャラクターはあくまで画面表示用で、応対自体は人間が行う)。

少人数で多拠点の遠隔接客を実現する「RURA」運営のタイムリープが1.8億円調達

画面上に地図などを表示しながらの接客も可能

RURA管理画面に複数店舗の画面を一覧表示しており、来客時には任意の店舗の接客画面に移行し、1秒後には接客を行えるという。また、施設・店舗入り口にセンサーなどを設置し来店通知機能と組み合わせることで、スピーディな対応も可能としている。

少人数で多拠点の遠隔接客を実現する「RURA」運営のタイムリープが1.8億円調達

また、ブラックボックスになりがちな接客内容について、接客録音機能や接客分析機能を利用することで、接客の質・様子を後日教育に活かすなども行える。

新型コロナウイルスへの感染対策はもちろんのこと、店舗運営の効率化や、接客業における新しい働き方の実現が可能となるとしている。

望月氏によると、2030年にはサービス業だけで400万人の人手不足に陥る(パーソル総合研究所・中央大学「労働市場の未来推計2030」)と推計されていること、その上で働き方変革を前提とする最適な人材配置が求められることなど、サービス業における生産性の向上が必須となるという。これら課題をRURAで解決するとした。

例えばホテルなど宿泊施設の場合、自動チェックイン機を導入しても、利用法の説明やトラブル対応などのために、ホテル受付など現地スタッフの人件費を削減できているわけではないという。そこで、RURAによりフロント業務やチェックイン機の説明などを一部遠隔化することで、人件費を低減可能とした。

ホームセンターのスタッフの例も挙げた。特定カテゴリーに詳しいスタッフが、RURAにより遠隔で全店舗の特定カテゴリーを担当することで、来店客が一番詳しい者から説明を受けられるようになるという。同様にRURAであれば、外国語対応が可能な人材の遠隔配置を行いやすくなる。

スタッフ側にとっても在宅勤務が可能となるため、企業側は育休や産休に対応しやすく、離職防止にも役立つとしていた。

RURAは1店舗からでも始められる

またRURAでは、まず1店舗のみで導入し顧客などの反応を見つつ、複数店舗に展開するなども可能とした。

ケイアイスター不動産が設立したCasa robotics(カーザロボティクス)では、2021年4月末までに規格型ひら家専門店「IKI」(イキ)の展示場全12カ所にRURAを導入するという。

少人数で多拠点の遠隔接客を実現する「RURA」運営のタイムリープが1.8億円調達

当初ケイアイスター不動産は、無人内覧型モデルハウス「はなまるハウス高崎展示場」において、2020年8月のIKI高崎展示場オープン時にRURAを導入。RURAを組み合わせた無人内覧を体験した顧客の反応から、2021年4月末までにオープンする埼玉県、群馬県、栃木県、茨城県合計12カ所にRURAの導入を拡大したそうだ。

展示場を無人にすることで来店客が自由に内覧する体験を提供しつつ、来店客が質問などを行いたい場合にはRURAにより遠隔で接客しているという。

少人数で多拠点の遠隔接客を実現する「RURA」運営のタイムリープが1.8億円調達

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:資金調達(用語)タイムリープ(企業)日本(国・地域)

メキシコの中低所得者層にクレカを提供するフィンテックStoriが約35億円調達

米国ではクレジットカードは一般的なものだが、他の多くの国、特に南米においてはユビキタスではない。中でもメキシコでは現金が主な決済手段であり、決済の推定86%が現金によるものだ。

しかしかつてなく人々がオンラインで買い物するようになり、クレジットカードの使用は増えている。最近の調査によると、メキシコは世界で最も急速にeコマースマーケットが成長している国だった。一方で、世界銀行の最新統計によると、15歳以上のメキシコ国民で銀行口座を持っている人の割合は37%に留まる。

こうした要因によりメキシコでは明らかにフィンテックイノベーションの時機が熟している。

それはメキシコシティに拠点を置くスタートアップStori(ストリ)の創業者らにチャンスをもたらしている。

Storiの創業チーム。左から順にJuan Villaseñor(フアン・ヴィラセニョール)氏、Marlene Garayzar(マレーネ・ガライザー)氏、Bin Chen(ビン・チェン)氏、Camila Burne(カミラバーン)氏(画像クレジット:Stori)

Storiは2020年1月にメキシコでクレジットカードプロダクトを立ち上げ、これまでのところ100万人超がカードを申し込んだ。

創業チームの一部のメンバーはCapital Oneで何年も働き、金融サービスを十分に受けられていない人々を引き受けるスキルを磨いた。また他のメンバーはメキシコと米国のMastercard、Morgan Stanley、GE Money、HSBC、Intelといったところで働いていた。

Storiは「メキシコで増えつつある中流階級向けの主要クレジットカード発行者になる」という目標を掲げてシリーズBラウンドで3250万ドル(約35億円)を調達した。

本ラウンドはLightspeed Venture Partnersがリードし、2018年初め以来Storiが調達した総額は5000万ドル(約53億円)になった。Lightspeed Venture PartnersのパートナーMercedes Bent(メルセデス・ベント)氏によると、Storiの案件はLightspeedにとって南米における初の大型投資で「投資案件は今後も続く」ことが見込まれている。

既存投資家のVision Plus Capital、BAI Capital、Source Code Capitalも本ラウンドに参加した。

Storiは「100%モバイルアプリベースのエクスペリエンス」となるクレジットカードをメキシコの増えつつある中所得層に提供する。Storiのチームは最初の2年を同社のインフラとプラットフォームの構築に費やした。

共同創業者Bin Chen(ビン・チェン)氏によると、2021年1月のStoriの月間新規顧客数は2020年1月の14倍で、2020年の平均月間新規顧客数の6倍だった。現顧客数を開示するのは却下した。

メキシコマーケットはかなり巨大であるため(同国の人口は1億3000万人近くだ)、Storiは現在メキシコのみにフォーカスしている。

世界の他の国と同様、デジタル決済に対する顧客需要を増やしている新型コロナウイルスパンデミックはStoriにとって追い風となっている。

「メキシコの消費者のeコマース、そして配車サービスやデリバリーのようなアプリベースのサービスの使用は急増していて、クレジットカードはそうしたチャンネルで好まれている決済方法です」とチェン氏は話した。「消費者はキャッシュフローの変動や不定期の支出、短期的な需要に対応できるフレキシブルなクレジットカードにアクセスする必要性をこれまで以上に経験しています」。

そしてもちろん、パンデミックによるロックダウンの間、多くの人が銀行の支店に直接足を運ぶのを回避するためにデジタルの金融商品を活用している。

チェン氏によると、Storiの共同創業者たちの共通点の1つはメンバーそれぞれが「質素な家庭の育ち」だということだ。

「我々はみな、従来の金融サービスの世界から排除されていると感じた経験があります。20年以上前にイリノイ州で修士号を取得しようとしていた学生のとき、学費と生活費を賄うために私はティーチングアシスタントシップ(優秀な学生が補助教員となること)に完全に頼っていました」とチェン氏は回顧した。「しばしばお金が尽き、やりくりが厳しいときがありました。最初にクレジットカードを手にする前に何回も却下されました」。

米国におけるTomoCreditのミッションと同様、Storiの創業者たちは「正式な金融システムを使うのは初めて」という中・低所得の顧客にクレジットカードを手にする機会を提供することに取り組んでいる。

同社は新たに調達した資金を顧客ベースの成長、従業員の増加、プロダクトデザインへの投資、テクノロジーインフラ、リスク引き受けなどに使う計画だとチェン氏は述べた。同氏は以前米国と新興マーケットでCapital OneとMastercardで働いた経験がある。Storiは現在、メキシコ、米国、中国のオフィスに従業員80人を抱え、この数字は1年前の40人から増えている。

「当社の目標は金融サービスが提供されていない人々のための主要なデジタルバンクになることです」とチェン氏は話した。

Lightspeedは1年以上前にStoriの創業者たちに会った。

「我々はStoriの創業者たちの経験の深さに感銘を受けました。米国スタイルの経済刺激策の恩恵を受けることなく、彼らは新型コロナの落とし穴を見事に避けて進み、リスク引き受けのモデルが強固なもので、そして向上しつつあることを示しました」とベント氏は話した。「それはチームの質を反映しています」

中国拠点のVision Plus Capitalのパートナー、Yiran Liu(イーラン・リュー)氏は同社がStoriのAラウンドをリードし「今回のラウンドでも引き続きかなりの比例配分」だとしている。

「デジタルフィンテックモデルに関して構造的な命題があり、当社は世界中、特に新興マーケットでこうしたモデルに投資しています。我々はStoriのチームが達成したことに感銘を受け、急成長で証明されているメキシコのマーケット機会に興奮しています」と声明で述べた。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Stori資金調達メキシコクレジットカード

画像クレジット:Maica / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

Infinitusが医療企業を対象とした「新世代のロボコール」で22.6億円獲得

ロボット・プロセス・オートメーション(RPA)は、人がより複雑な作業に集中できるよう、AIやその他のテクノロジーを効果的に活用して反復的な作業を自動化することで企業のIT分野を支えてきた。Infinitusというスタートアップがこの概念を医療分野に適用し、分断された米国の医療業界における音声通信プロセスを高速化すべく、これまでの沈黙を破り忽然と姿を現した。

例えば、医療提供者や薬局が保険会社へ電話する場合、支払い承認や手続きの前に通常一般的な質問を相手側の人間に尋ねるが、Infinitusは「音声RPA」を用いて音声を機械で生成することでこのプロセスを代行するというサービスを提供している。これらの会話はその後Infinitusのプラットフォームに取り込まれ、関連情報を解析して適切なフィールドに入力され、必要なアクションへと繋げられる。

同スタートアップは「ステルスモード」から脱したところだが、実はすでに数年前から存在しており、医薬品卸大手のAmerisourceBergenなど多くの大手ヘルスケア企業と契約を結んでいる。また、現在のパンデミックをめぐる公衆衛生のための取り組みにもその技術を社会貢献として無償で提供しており、ある組織では現在、ワクチンの入手可能性についての情報を得て最も早くワクチンを必要としている層により早く接種できるようにするため、複数の州にまたがる大規模な通話システムを自動化すべくこの技術を活用している。

同社のシステムは2021年1月だけで1万2000の医療提供者に代わって7万5000件の電話をかけている。

Infinitusは大規模な資金調達とともに公に姿を表した。同社はビジネス構築のため、大物投資家グループからシリーズAの資金調達で2140万ドル(約22億6000万円)を得ている。

同ラウンドはKleiner PerkinsとCoatueが共同でリードしており、Gradient Ventures (Googleの初期AIファンド)、Quiet Capital、Firebolt Ventures、Tau Venturesの参加の他、Ian Goodfellow(イアン・グッドフェロー)氏、Gokul Rajaram(ゴクル・ラジャラム)氏、Aparna Chennapragada(アパルナ・チェンナプラガダ)氏、Qasar Younis(カサル・ユニス)氏などAIおよびビッグテック界で活躍するエグゼクティブからの個人投資も受けている。

CoatueはRPA分野において大規模な投資家になろうと目論んでおり、2月初めにはこの分野の有力企業であるUiPathへの最新の投資を共同で主導したことを明らかにしている。同社は前ラウンドにも参加している。

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「InfinitusのシリーズAをリードすることができ大変光栄です。私たちは、RPAとエンタープライズオートメーションの変革力を大いに信じています。Infinitusの音声RPAソリューションは医療機関にとってコストのかかる手動の電話やファックス作業を自動化し、エンドツーエンドでのプロセス自動化のメリットを発揮してくれることでしょう」とCoatueのジェネラルパートナーYanda Erlich(ヤンダ・アーリック)氏は述べている。

Infinitusが取り組んでいる課題は、特に民営化が進んだ米国市場の医療分野でありがちな、わかりにくく時間がかかるお役所的な手続きの煩わしさである。そしてそのプロセスの中で最も煩わしいのが、エコシステム内の異なる段階での重要なコミュニケーションの基礎となる電話での通話にあることが多い。

電話は、重要な情報を入手したり書類や前回の会話を確認したり、データを渡したり支払いの手続きをしたりと、ほとんどのプロセスを始める際に使用されている。

米国ではこの種の通話が約9億件あり、1回の長さは平均35分となっている。こういった電話をかける必要のある事務職の医療従事者は、1日に平均して約4.5時間を電話に費やすことになる。

そしてこれが結果的に、サービス提供の遅れのみならず、米国の法外な医療コストや領収書上の謎の手数料の数々につながるわけだ(そして同社が取り組んでいるのは、こうした課題のほんの一部である)。

共同設立者兼CEOのAnkit Jain(アンキット・ジェイン)氏は、幾度となく起業家として活躍してきたGoogle出身者で、エンジニアリングの上級職や検索大手Gradientの創業パートナーを務めた経験を持つ。同氏はTechCrunchとのインタビューで、同氏がまだGradientにいた数年前にInfinitusのアイデアを初めて思いついたと教えてくれた。

「当時、テキストを音声に、音声をテキストにする音声通信技術に大きな改善が見られるようになっていました。機械が誰かと完全な会話を行えるような通話の自動化が、そのうち可能になると確信しました」。

実際、その頃にはGoogleがDuplexという同じ原理で作られたサービスを開始していたが、これは消費者を対象としたもので、レストランやその他さまざまなサービスなどの予約のために利用されることを目的としていた。

特殊な専門用語や特定のシナリオが多々ある医療業界のエンタープライズアプリケーションでは、人間のように自然な言葉を話せて理解できるかどうかだけが問題なのではないと同氏は判断した。

「医療分野のために誰かがこれを作るとしたら、医療業界は変わると思いました」と同氏。そして自身でそれを実行に移したのである。

ジェイン氏は、同氏が以前設立したQuettraの他、GoogleやSnapでも勤めた経験を持つShyam Rajagopalan(シャム・ラジャゴパラン)氏とともに同社を共同設立した。同氏によるとInfinitusはパブリッククラウドの音声テキスト化システムを利用しているが、会話から得た情報を格づけして利用するための自然言語処理やフローは社内で構築しているという。

コンテンツやインタラクションの特殊性も、同社が少なくとも今現在はRPA界の大手他社との競合をさほど気にしていない理由の1つだろう。

しかしジェイン氏はこのテクノロジーも競争と無縁ではないと述べている。つまり同社が医療以外の分野にも拡大していく可能性があるということを示唆するのと同時に、他の企業も同社の製品と戦えるようなものを作り出す可能性があるということだ。

まるで「人間のように」聞こえる、いわば新世代のロボコールともいえるこのようなサービスは、消費者向け製品が長らく目指してきたものだ。その試みはあまり順調ともいえないが、例えばDuplexは初期の頃、データを利用しながら回答を記録している機械と話しているということがユーザーには明らかではなかったため、優れた品質がむしろ詐欺的に聞こえると批判を受けていた。しかしInfinitusはロボットらしい声を意図的に選び、電話の受け手にその事実を明確にしているとジェイン氏は説明する。

これはまた「雑談を減らす」役割もあり、ユーザーが内容に集中できるようにするためでもあると同氏はいう。

同社のサービスも他社の音声RPAサービスと同じように動作し、会話が複雑になった場合には生身の人間が通話を引き継ぐことができるものの、実際にはあまり必要でないという。

「我々のシステムは十分に高い成功率を見せているので、人間が関わる必要はありません」と同氏は語る。

医療業界での電話による通話自体を廃止してしまえば良いのではとお考えの読者もいることだろう。通話の行為が時代遅れといわれるような、データ交換の新たな方法が他にいくらでもあるだろう。しかしジェイン氏によると、少なくとも今のところはこれがすぐに変わることはないという。

その理由の1つは、市場が断片化されているため、無数の保険金支払者、医療提供者、製薬グループ、請求書発行および回収組織などに対する新しい基準を全面的に導入することが困難であるということにある。

そして結局のところ、何百種類もの決済会社などを扱う事務職員にとっては、電話での通話が最も簡単な手段なのだ。

「認知的な負荷が高いため、電話をかけるのが結局は一番楽な方法なのです」とジェイン氏はいう。

Infinitusのような音声RPAの導入は、大規模なシステムのアップデートに向けた長期戦のほんの一部である。

「どちらか一方が自動化することで、もう片方の側にも自動化が可能だということを示すことができます。今はあまりにも多くの関係者がいるため同じ基準を採用するよう説得するのは大変な作業ですが、少しずつ成功させていく以外ありません。最終的な着地点は従来の音声による通話ではないはずです。そして大多数が何か別のものを基準とすることに合意できた場合、世界は前進するはずです」とジェイン氏は語る。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:RPAInfinitus資金調達

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

Foresite Capitalがヘルスケアスタートアップを対象とする約1033億円の投資ファンドを組成

ヘルスと生命科学を専門とする投資会社のForesite Capital(フォレサイトキャピタル)がLPからのコミットメントで計9億6900万ドル(約1033億円)という、同社にとって5番目となる新たな資金を調達した。これは同社最大のファンドであり、創業者でCEOのJim Tananbaum(ジム・タナンバウム)博士によると元々の目標を超える申し込みがあったという。資金調達のプロセスはパンデミック初期にゆっくりと始まったが、2020年秋ごろから急速に活気を帯び、最終的には予想を超えたと同氏は筆者に語った。

この最新のファンドは、実際にはForesite Capital Fund VとForesite Capital Opportunity Fund Vの2つの投資ビークルから構成されるが、資金は既存のアプローチに沿って投資されると同氏はいう。対象はアーリーステージからレートステージ、その中間にある会社まで含まれる。Foresiteのアプローチは企業を創業から(同社は社内にインキュベーターも抱えている)上場まで誘導し、そして上場後も面倒をみるというもので、これによって同社はユニークな位置づけとなっている。しかしForesiteはアーリーステージで見逃し、後に目についたスタートアップへの投資にもかなり関心がある、と同氏は述べた。

画像クレジット:Foresite Capital

「当社は数多くのヘッジファンドと競合する後期に参加し、有益でユニークなものを提供することもできます。なぜなら、当社が会社を立ち上げるのに使った付加価値のあるあらゆるリソースを持っているからです」とタナンバウム氏は話した。「ですので、レーターステージのディールでの競争で当社には優位性があります。そして資本市場において高度に機能できるという長所によってアーリーステージのディールでも競争上の優位性を持っています」。

同氏によると、Foresiteの他のアドバンテージは従来型のテック事業メカニクスとバイオテックが交差するところに長らく注力してきたことだ。この2つの間にあるギャップは狭まり続けていて、そうしたアプローチは近年特に成果をあげている。

「テクノロジー、そしてツールやデータサイエンス、機械学習、バイオテクノロジー、生物学、遺伝学、そうしたものが1カ所に集まるだろうと揺るぎない確信を持っていました」とタナンバウム氏は筆者に語った。「起業家のためにテックとバイオテックどちらの言語も本当に話すことができ、多様な人々をいかにしてまとめるかということを知っている組織はありませんでした。だからこそ、当社はそこに特化しており、テックオタクがバイオテックオタクに、そしてバイオテックオタクがテックオタクに話せるよう、多くのリソース、多くのクロスリンガルのリソースを持っています」。

ForesiteはこのアプローチをForesite Labsの立ち上げという会社のフォーメーションにも適用した。Foresite Labsは、スタートアップ起業の可能な限り早いステージで経験を生かすために2019年10月に設立されたインキュベーションプラットフォームだ。Alphabet(アルファベット)のヘルスサイエンス企業Verilyの共同創業者で最高科学責任者だったVik Bajaj(ヴィク・バジャジ)博士によって運営されている。

「過去数十年に、イノベーションサイクルはどんどん早くなってきました」とタナンバウム氏は話した。「ですので、公に本当に大きな勝利を収めている人々は『この真に大きな勝利はイノベーションと品質のサイエンスによってもたらされている。だから品質のサイエンスのもう少し上流の部門にいこう』とどこかの時点で話します」。

これは、テクノロジー全般の改善に支えられてヘルスケアプロダクトの開発サイクルがどんどん短くなっているのと相まっている、と同氏は付け加えた。同氏がForesiteを2011年に始めたとき、ヘルスケア投資のリターンの計画対象期間はかなり長く、ベンチャーエコノミクスの許容範囲を超えるものだった。しかしながら今では、ファンダメンタルな科学的進歩の場合でも一般的なテックスタートアップエコシステムにあるようなものにだいぶ近づいている。

Relay TherapeuticsのオフィスマネジャーStephanie Chandler(ステファニー・チャンドラー)氏が自社開発の新型コロナウイルス感染症検査の扱い方を新型コロナ検査室でデモンストレーションしているところ。2020年12月1日、マサチューセッツ州ケンブリッジ。がん治療開発会社である同社は手荷物部屋を従業員が週に1回検査を受ける部屋に変えた。定期的な検査導入の結果、100人超の従業員がオフィスに戻ってきた。RelayはForesiteのポートフォリオにある企業だ(画像クレジット:Jessica Rinaldi/The Boston Globe/Getty Images)

「基本的に、テック企業を見るのと同じようにバイオテックに目を向けている人々がいます。すぐには売上高にはつながらないかもしれないが、追って機能する中心となるマテリアルを与えるかもしれない浸透速度やその他のものについて、バイオテックに適用されるテックメトリックスがあります」

全体として、Foresiteの投資テーマは、臨床ステージの治療、自動化とデータ生成、そしてタナンバウム氏がいうところの「個人に合わせたケア」の3つのエリアの企業に出資することにフォーカスしている。これら3つはすべてテックに対応したヘルスケアのあるべき状態における連続体の一部で、究極的には「個人レベルで、自身の体質が病気になりそうな傾向にあることを理解できるようにする世界」となる。それはこの手の個人に合わせたケアが毎日のコンシューマーエクスペリエンスとなる、トランスフォーメーションだとタナンバウム氏は暗示した。以前スペシャリストの機能と能力だったテックが、一般の人々が広く利用できるようにしたのと同じだ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Foresite Capital資金調達

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

「ビューティストリーマーのためのTwitch」を目指すNewnessが3.7億円調達

Twitch(トゥイッチ)の元社員が創業したスタートアップのNewness(ニューネス)は、ビューティクリエイターとそのファンコミュニティを対象としたライブストリーミングプラットフォームだ。そのNewnessが、Sequoiaの主導するシードラウンドで350万ドル(約3億7000万円)を調達した。Twitch、YouTube(ユーチューブ)、TikTok(ティックトック)、Instagram(インスタグラム)、Facebook(フェイスブック)などをはじめとして、今日のクリエイターにとってライブストリーミングの選択肢がないわけではないが、Newnessは特にビューティーストリーマー市場に適した形で差別化された、ツールや機能の構築に注力している。例えばパブリックストリームとプライベートストリームの2つのオプションの提供、積極的な貢献に報いるエンゲージメントメカニズム、モデレーション機能、コミュニティへの参加によってファンが無料のビューティ製品へのアクセスが可能になる機能などが含まれている。

新しいラウンドでは、Sequoia Capitalを代表してJess Lee(ジェス・リー)氏が投資を行った。他にNewnessへの投資に名を連ねたのは、Cowboy Ventures(Aileen Lee[アイリーン・リー]氏)、Upside Partnership(Kent Goldman[ケント・ゴールドマン]氏)、Dream Machine(元TechCrunch編集者のAlexia Bonatsos[アレクシア・ボナトソス]氏)、Index Ventures(Nina Achadjian[ニナ・アチャディアン氏)、Twitch共同創業者のKevin Lin(ケビン・リン)氏、元Twitch幹部のJonathan Shipman(ジョナサン・シップマン)氏とJohn Sutton(ジョン・サットン)氏、Eventbrite創業者のKevin Hartz(ケビン・ハーツ)氏とJulia Hartz(ジュリア・ハーツ)氏、Incredible Health共同創業者でCEOのIman Abuzeid(イマン・アブゼイド)氏、その他のTwitchのエンジェル投資家などだ。

Newnessのアイデアは、Twitchの初期の従業員だったCEOのJenny Qian(ジェニー・キアン)氏が思い付いたものだ。彼女は、長年にわたってゲームストリーミングサイトのTwitchで数多くの役職を歴任し、最後はTwitchのビデオプラットフォームのビジネス戦略担当シニアディレクターを務めていた。彼女のチームに加わったのが、TwitchだけでなくBlizzard(ブリザード)やFacebook Gaming(フェイスブック・ゲーミング)にも勤務していたCTOのYouri Park(ユーリ・パーク)氏だ。

自身もずっと熱心なゲーマーだったキアン氏は、30歳を超えてからスキンケアに興味が向くようになったのだという。ほどなく彼女は、ライブストリーミングを使ったビューティスペースの可能性に気付いた。

「Twitchの時代からこのフォーマットには親しんでいました。そして、ある意味では、ライブストリーミングにどっぷりと浸っていたような気もします」と彼女は説明する。ストリーマーたちと交流したり、質問をしたり、彼らから学ぶことができたりすることが、ライブ形式を魅力的なものにしたのだと彼女は考えている。

画像クレジット:Newness

「そこで私は、はたと考えました。どうしてこのようなものがビューティスペースには存在しなかったのか。ゲーム以上とは言わないにしても、同じくらいの情熱を持ったコミュニティですし【略】コンテンツのカテゴリーとしてはとても人気のあるものなのですから、どうしてライブメディアがないのかなと思ったのです」と彼女はいう。

しかし同時に、キアン氏はその内容でTwitchライブを行うことは気が進まなかったのだという。

「私のゲームプレイで楽しんもらうのはそれはそれで大切なことなのですが、私がメイクを落としてどんな風に見えるかを、他の人に楽しんでもらうのは、また別のことだと思うのですよね。完全に新しいレベルへ切り替わる感じなのです」と彼女はいう。

Newnessでは、ある意味Twitch的ではないものが目指されている。同社はビューティクリエイターとファンたちのための、健全でポジティブなコミュニティを真剣に目指しているが、そこではモデレーションが鍵であり、荒らしではなくきちんとした参加をしてくれるファンには何らかの報酬が与えられる。

クリエイターがライブを行う際には、より快適にコンテンツが流れるように、Newnessはクリエイターと社内のモデレーターにペアを組ませてサポートを行う。彼らがより有名なストリーマーになったときには、Newnessはクリエイターと協力して、将来のストリームを支援してもらうために彼らのファンコミュニティからモデレーターを選出する。

一方ファンは、お気に入りのストリームを視聴したり、チャットに参加したりといった、積極的な参加や良い振る舞いをすることで、クリスタルと呼ばれる仮想アイテムを報酬として獲得することができる。Newnessの中では、すべてのチャットメッセージの横にも小さなハートマークが置かれている。また、より質の高いコメントで多くのハートを獲得して行けば、手に入るクリスタルも増える。

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獲得したクリスタルは、Newnessがブランドから入手した、試供品ではないフルサイズのビューティプロダクトと交換することができる。モデレーターはプラットフォーム上でより多くの時間を費やすため、より多くのクリスタルを獲得することができるが、それはプロダクトを手に入れる機会が増えることを意味している。

ベータテストの結果をみる限りは、この報酬システムはうまくいくことがわかった。Newnessの視聴者の平均66%がライブ中にチャットに参加するようになっているからだとキアン氏はいう。

Newnessのもう1つの特徴は、クリエイターがパブリックストリームとプライベートストリームのどちらも提供することができるということだ。このプライベートストリームは、他の会員制ストリーミングサービスであるOnlyFans(オンリーファンズ)のようなものを目指しているわけではなく、クリエイターがより専門的で独占的なライブイベントを開催できるようにすることに焦点が当てられている。プライベートストリームに対してクリエイターは、一般チケットの他に、たとえば美容用品の詰め合わせバッグなどが手に入るVIPチケットを売ることもできる。

Newnessは、イベントの他に、日常のストリーム内でも「ギフティング」という名のアプリ内チップシステムを提供している。

最終的には、Newnessはこうした取引で発生する収益の一部を手数料として受け取ることを計画しているが、まだベータテスト中なのでそれはまだ行われていない。

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現在のNewnessのコミュニティは小さい。そして、ライブストリーミングを許されるクリエイターも、まだ会社側が選別している。

「私たちはプラットフォームに迎えるクリエイターを厳選していますし、招待制を貫いています。これは、最も最初期のクリエイターのみなさんに、私たちのコミュニティの雰囲気作りとカルチャーの醸成に貢献していただきたいからなのです」と彼女はいう。スタートアップは、自身の維持に必要なコミュニティメンバー数は確保したいとは思っているものの、規模が大きくなるにつれて有害なものにならないようにしたいと考えている。

「信じられないくらい健全なコミュニティを育てることが、本当に大切なことなのです。なので、私たちにとっては、安全性とモデレーションが本当に重要なのです」とキアン氏はいう。

クリエイターは、より専門的なアドバイスや製品レビューから、カジュアルな「私と一緒にやってみましょう」といった動画やブログまで、さまざまなコンテンツを制作している。

もちろんNewnessは、YouTubeやInstagramのような既存のストリーマー向けの巨大プラットフォームからの険しい競争に直面するだけでなく、Supergreat(スーパーグレート)のような美容動画に焦点を当てた新参者とも競わなけれなならない。

スタートアップは2020年からベータテストを行っており、当面はウェブ上での公開のみとなっている。今回のシードファンディングを使って、Newnessは、クリエイター向けの現在の専用ストリーミングアプリを補完するために、2021年内にiOS向けのコンシューマーアプリを開発する予定だ(クリエイターは、さらにデジタル一眼レフカメラからのストリーミングを選択することもできる)。

また、エンジニアを採用して、現在サンフランシスコ、ニューヨーク(元Glossierの従業員もいる)、ロサンゼルスに分散している14人のチームを強化することも目指している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Newness資金調達美容

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

セールスとマーケティングを統合したB2BマーケティングプラットフォームのTerminusが96億円調達

セールスとマーケティングはビジネスプラン上、よく1つのカテゴリーと見なされる。だが皮肉なことに、それらの機能を支援するアプリとサービスを開発するときは通常別々の会社が行うことになる。企業の中でセールスとマーケティングに取り組むチームについても同様だ。しかし、アカウントベースのマーケティングを通じてセールスとマーケティングを統合して扱うプラットフォームを構築するTerminus(テルミナス)というスタートアップが資金調達と成長を米国時間2月25日に発表した。これは同社のアプローチが勢いを増していることを示している。

同社はシリーズCを9000万ドル(約96億円)でクローズした。TechCrunchは情報筋から、バリュエーションは約4億ドル(約430億円)との情報を得た。PitchBookのデータによると、これは前回2018年のラウンドでのポストマネーで9600万ドル(約103億円)というバリュエーションを大幅に上回った。

上昇の理由の1つは、特に2020年、デジタルマーケティングに注目が集まったことだ。パンデミックのため、従来の多くのチャネルが見えなくなってしまった。アカウントベースのマーケティングだけでも、2018年には4580億ドル(約49兆円)の市場機会と見積もられていた

特にTerminusに関心が集まるもう1つの理由は同社の顧客リストだ。IBM、Salesforce、Thomson Reutersなど約1000の法人顧客がいる。

「私たちは新しいマーケティングオートメーションを構築しています」とCEOのTim Kopp(ティム・コップ)氏はインタビューで述べた。「アカウントベースのマーケティングは、セールスソフトウェアに起こった最も重要なことだと思います。多くのチームが案件ベースのアプローチからアカウントベースのアプローチに切り替えています。私たちは現在、すべてのエンゲージメントポイントである最新のB2Bマーケティングクラウドに対応しつつあります」。

今回のエクイティラウンドはGreat Hill Partnersがリードした。既存の投資家からAtlanta VenturesとEdison Partners、そして新規の投資家としてHallet Capitalも参加した。この資金により、ジョージア州アトランタとインディアナ州インディアナポリスに共同本社を置くTerminusが調達した総額は約1億2000万ドル(約130億円)になる。

マーケティングの世界はインターネット消費の増加とデジタルサービスの急増により20年間で大きな変化を遂げ、現在では「マーテック」と総称されビッグビジネスを形成している。

Terminusが特に焦点を当てている分野は、アカウントベースのマーケティング。要するにこれは、B2Bの販売およびマーケティングチームが、ビジネスの潜在的なターゲットを個々にではなく集合的なグループとして捉える方法だ。組織全体で作業する、より統合された取り組みを意味する。複数の人に対し何かを売り込む方法を提供し、誰かとつながり、販売する機会を増やす。

Terminusのプラットフォームとアプローチは、CEOのコップ氏が指摘するように、基本的にセールスとマーケティングの機能を統合するものであり、作業を一方から他方に引き継ぐ必要はない(その一環として、グループ内のさまざまなソフトウェア間で作業する手間とコストを削減する)。

「マーケティングと販売の統合には圧倒的な機会があります」と同氏はインタビューで述べた。「マーケティング部隊が営業会議に参加し、営業部隊はクライアントの成功の一部となる。自社の顧客に対してマーケティングを行うわけです。これは顧客が腐るほどに余っている領域です。顧客は通常、セールスまたはマーケティングの一方からアプローチされるためです」。

現在のTerminusのプラットフォームは、セールスインテリジェンス、アカウント情報、その他のデータソースをまとめて、ターゲット候補のリストを作成するのに役立つ「データスタジオ」から構成されている。これに加え、広告、電子メールとWebキャンペーン、およびチャットボット管理を構築する機能を含むマーケティングエンジンも開発している。これらの一部は社内で開発され、一部は買収によってTerminusにもたらされた(例えばチャット機能は2020年4月のRambleの買収によって獲得した)。

この分野で活動している企業はTerminusだけではない。その他には、Adobe傘下のMarketo、6sense、Sendosoなどがある。Terminusのアプローチは、マーケティングとセールスのプロセスのさまざまな側面(分析、オーケストレーション、自動化、実行)を1つのプラットフォームに統合することだ。

同社の社名はアトランタの初期のニックネームにちなむ。顧客のさまざまなマーケティングおよびセールス活動の唯一の選択肢になるという目標を表すものとして採用された。

これが投資家らが同社を訪れる理由の1つだ。

「Terminusは、チームが市場に参入する方法を再定義し続け、企業がデジタルファーストの環境で収益を生み出す方法を革新します」とGreat HillのグロースパートナーであるDerek Schoettle(デレク・ショートル)氏は述べた。「私たちはこのチーム、同社の2020年の大幅な成長、継続的な製品革新、そして今後の巨大な市場機会に非常に感銘を受けました」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Terminus資金調達マーケティング

画像クレジット:Thinkhubstudio / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

仮想通貨のAnchorageが連邦銀行の認可を受けデジタル資産銀行に、約85.3億円の資金調達

Anchorageはシンガポールの政府系ファンドとしても知られるGICが主導するシリーズCの投資ラウンドで8000万ドル(約85億3000万円)を調達した。Andreessen Horowitz、Blockchain Capital、Lux、Indicoも、米国時間2月25日に実施された資金調達ラウンドに参加している。

今回の資金調達ラウンドの背景にある考え方は、非常にシンプルだ。Tesla(テスラ)やSquare(スクウェア)など一部の企業は最近、仮想通貨への投資を選択した。つまり、彼らは現金残高の一部を仮想通貨に変換している。一部の投資家は現金残高に仮想通貨を追加するのに役立つ企業に投資することを選んでおり、Anchorageもそのうちの1社だ。

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このスタートアップは当初、カストディ(保管)ソリューションを提供していた。これにより暗号化通貨を安全に保つことができ、ウォレットとその公開鍵および秘密鍵を管理する必要がなくなる。最近になってAnchorageは連邦銀行免許を取得し、デジタル資産銀行に生まれ変わった。

規制当局から承認のサインを得たことは、間違いなく信頼につながるだろう。機関投資家は、信頼できる仮想通貨パートナーを探し、その分野に参入しようとしている。

Anchorageは現在、カストディ業務に加えてステーキング、仮想通貨融資などの複数の金融商品を提供している。つまり、機関投資家のためのワンストップショップになりたいということだ。

興味深いことに、Anchorageはサービスとしての仮想通貨バンキングのスタートアップにもなりたいと考えている。このスタートアップはチャレンジャー銀行と伝統的な銀行の両方にとって、暗号資産パートナーになり得ると考えている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Anchorage仮想通貨資金調達

画像クレジット:Dan Kitwood / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ブレーキライトになるデジタル看板を商用車後部に設置するRoad Runner Mediaが約67億円調達

南カリフォルニアに拠点を置くRoad Runner Media(ロード・ランナー・メディア)が成功すれば、クルマの運転中にも広告をたくさん目にするようになるだろう。

なぜなら、このスタートアップ企業が、技術屋のバンや配達車両、バス、その他の商用車の後部に、デジタルスクリーンを設置しているからだ。これらのスクリーンには広告が表示されるだけでなく、ブレーキランプとしても機能する。同社創業者で会長のRandall Lanham(ランドール・ラナム)氏によると、車両の後部にスクリーン看板を設置するには、ブレーキライト機能が必要だという。

「我々はこれをデジタルブレーキライトであると考えています」と、ラナム氏はいう。確かに、このブレーキライトには広告が表示されているが「ドライバーがブレーキペダルに足を乗せると、広告は中断されます」。この広告スクリーンには、ウインカー、リバースランプ、緊急時のハザードランプも表示することができる(上の画像はモックアップだが、下の動画では実際の映像を見ることができる)。

このアイデアを追求するために、ラナム氏(自身を「回復弁護士」と表現した)は、Chris Riley(クリス・ライリー)氏を最高経営責任者(CEO)に起用した。ライリー氏の経歴には、PepsiCo Australia and New Zealand(ペプシコ・オーストラリア&ニュージーランド)でCEOを務めた数年間が含まれる。そしてRoad Runner Mediaは先週、Baseline Growth Capital(ベースライン・グロース・キャピタル)から6250万ドル(約67億円)のデットファイナンスによる資金調達を行ったと発表した。

移動体に広告を設置するというアイデアは新しいものではない。もちろん、タクシーの屋根にも広告があるし、Firefly(ファイアフライ)のようなスタートアップ企業は、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)のライドシェア車両の上部にデジタルサイネージ広告を取り付けている。しかし、Road Runner Mediaの頑丈で高解像度の液晶画面は、サイズ、品質、配置場所の点で大きく異るとライリー氏はいう。

関連記事:Uber、Lyftなどのライドシェアタクシー広告のFireflyがStrong Outdoorの屋外広告事業を買収

「(タクシーの屋根に設置されている広告には)色、輝き、鮮明さがありません」と彼は語った。「私たちはスクリーンを使って本物の動画広告を流すことができます」。

ライリー氏によると、広告はGPSと時間帯に基づいてターゲットを設定することができ、最終的には、実際に広告を見ている人のデータを収集するためにセンサーを追加することも、同社では計画しているという。

このような大きくて明るい画面は、後続ドライバーの注意を逸らすことになるのではないかという懸念もあるが、実際にはドライバーの目をあるべき場所に正確に引き付け、見逃すことがはるかに難しいブレーキライトを作り出すものであると、ラナム氏は主張している。

「ドライバーの目線を、床やラジオを見たり、左右を向いたりする動きから、水平方向に固定することになります。これは米国運輸省が望むとおりのことです」と、彼はいう。「目線がダッシュボードの上にあるが、最も安全に運転できるのです」。

実際にラナム氏は、道路をより安全にするという同社の使命に「非常に情熱を注いでいる」と語り、公共サービスのメッセージを広げるために使用できるプラットフォーム作りにも取り組んでいるという。

「私たちには、どんな車両にも取り付けることができ、高速道路をより安全にする能力があります」とラナム氏は語り「私は、実際に、本当に、私たちがこれまで救えなかった命を救うことができるようになると信じているのです」と付け加えた。

同社によると、すでにアトランタ、ボルダー、シカゴ、ダラス、ロサンゼルスで150台のスクリーンを取り付けた車両が走っており、3月にはフィラデルフィアとワシントンD.C.でも起ち上げを計画しているという。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Road Runner Media広告資金調達

画像クレジット:Road Runner Media

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

カスタマーデータプラットフォームのLexerがグローバル展開に向け27億円調達

左からLexer創業者のデイブ・ウィットル氏、アーロン・ウォリス氏、クリス・ブリューワー氏(画像クレジット:Lexer)

新型コロナウイルスパンデミックの間に起きたオンラインショッピングへの大規模なシフトは、小売業者がAmazonのようなライバルと競争するためにカスタマーデータを迅速に分析する必要があることを意味する。豪州メルボルンに本社を置くカスタマーデータプラットフォームのLexerは、データを1つのプラットフォームに整理することでブランドの管理を支援し、中小規模のブランドの分析を容易にする。同社は2月25日、豪州、米国、東南アジアでの事業拡大のためにシリーズBで2550万ドル(約27億円)を調達したと発表した。

このラウンドはBlackbird VenturesとKing River Capitalがリードし、投資家のJanuary Capitalも参加した。これまでにLexerが調達した総額は3300万ドル(約35億円)になった。Blackbird Venturesの共同創業者でパートナーのRick Baker(リック・ベイカー)氏がLexerの取締役会に加わる。

同社は2010年にAaron Wallis(アーロン・ウォリス)氏、Chris Brewer(クリス・ブリューワー)氏、Dave Whittle(デイブ・ウィットル)氏が創業した。クライアントにはQuiksilver、DC Shoes、John Varvatos、Sur La Tableが含まれる。新しい資金はLexerのチームにさらに50人を追加するために使用される。同社は豪州、米国、東南アジアでの人員を2倍にする計画がある。最高経営責任者であるウィットル氏はTechCrunchに、小売業者にエンタープライズグレードのカスタマーデータ、洞察、マーケティング、販売、サービス機能を提供すると語った。

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ブランドはLexerを利用して既存・新規両方の顧客への売上を増やす。Lexerはクライアントのサイトを訪れるさまざまなグループの購買パターンや、将来購入に至る可能性が最も高いカスタマー、最も成果を上げているマーケティング戦略などをクライアントが理解するのを支援する。

Lexerの最も有名な競合他社には、2020年Twilioが32億ドル(約3420億円)で買収したSegmentsやAdobe Analyticsがある。ホイットル氏によると、Lexerの主な差別化要因は、エンドツーエンドのソリューション提供だ。

ブランドは多くの場合、さまざまなソースからのデータを理解するために、複数のデータと分析ソフトウェアを使う必要がある。Lexerの目標は、1つのプラットフォームですべてにアクセスできるようにすることだ。「私たちのクライアントは、戦略、実行、カスタマイズ、プロジェクト管理のために、費用と時間のかかるサードパーティを雇う必要はありません」とホイットル氏は述べた。

Lexerは、シリーズB以前は成長のほとんどが単一のブランド、または中規模の小売ブランドのグループによるものだった。現在は、あらゆる規模のブランドとの連携に重点を置いているとホイットル氏は付け加えた。

パンデミックにより、多くのブランドはオンライン販売を増やし、他のeコマース業者から抜きん出るためにデジタルエンゲージメントをより重視するようになった。

「私たちは顧客に対し文字どおり何百もの戦術を用意し、新型コロナが強いる制限や障壁に適応できるようにしました。例えば、小売業者が買い物をするオフラインのカスタマーをeコマースサイトへとシフトさせる支援をしました」とホイットル氏は述べた。「もう1つの方法として、新型コロナにより供給の制約が生じ、小売業者の在庫が少なくなったときに、彼らの顧客満足度を確保するために高価値で忠実なカスタマーをターゲットにする支援をしました」。

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(文:Catherine Shu、翻訳:Nariko Mizoguchi

まだまだ有効なダイレクトメールをデジタルで効果的に管理するLobが50億円を調達

Lobは、企業が従来の郵便物をもっと迅速に低費用で、しかも、もっと個人化(パーソナライゼーション)をともなって送るための手助けをする。

同社の推計によると、米国で各世帯に配達される郵便物の2つに1つは同社のサービスが使われているという。そして米国時間2月24日、同社は、シリーズCで5000万ドル(約53億3000万円)を調達したことを発表した。

CEOのLeore Avidar(レオーレ・アビダール)氏によると、彼はHarry Zhang(ハリー・チャン)氏とともに10年前にLobを作り「郵便物をプログラミングによって送ること」を目指した。その後同社はエンタープライズに特化するようになり、現在の8500社あまりの顧客の中にはTwitterやExpedia、Booking.comなどがいるが、中小企業向けのプロダクトを提供することは、ずっと念頭にあるという。

アビダール氏の説明では、デジタルの時代にはLobが顧客のためにサポートを続けるべき郵便物の種類が2つあるという。1つは、規制やコンプライアンスのために送られる郵便物で、企業はそれらを印刷物で送ることが法的に決められている。2つ目は、マーケティングとして送られるダイレクトメールだ。Avidarによると、現在、多くの企業がこのダイレクトメールを再発見しつつある。

「マーケティングは常に、訴求が有効に働くためのユニークなチャネルを探している。いろんなチャネルの中で、現在はソーシャルが高い。GoogleのAdWordsなどはとても高額だ。郵便であれば簡単に取り止めもできるし、どんなにダイレクトメールが読まれてもビュー単価などを支払う必要がなく、需給に応じて料金が上がることもない」とアビダール氏はいう。

Lobによると、同社はダイレクトメールキャンペーンの実行時間を95%減らし、90日から1日以内にすることができる。印刷や投函に関しては、国中に張り巡らしたパートナーのネットワークがある。またPostPilotやPostalyticsのように、Lobを利用するマーケティングサービスもある。

同社のこれまでの調達総額は8000万ドル(約85億3000万円)だ。今回のシリーズCはY CombinatorのContinuity Fundがリードした。LobはYCのアクセラレーターを受講したことがあり、またContinuity Fundは同社のこの前の投資ラウンドもリードしてている

アビダール氏によると、2021年は同社の扱い郵便物の量を従来の3倍にしたいという。そのために、今回の資金で同社のPrint Delivery Networkを継続的に拡張、社員数を260人以上に増やしたいとのことだ。

YCのマネージングパートナーでLobの取締役でもあるAli Rowghani(アリ・ロウガニ)氏は、声明で次のように述べている。「LobはダイレクトメールのDXを先導している。それは地球上のすべての企業が利用してきたビジネスプロセスだが、長年、ソフトウェアにとってアンタッチャブルだった。Lobは、ダイレクトメールの費用を下げて配達可能性と追跡、報告とROIを改善するため、世界最大の送り主たちが重宝している。ダイレクトメールの最も複雑高度な送り主にとっても、LobのAPI駆動のプロダクトはレガシーなアプローチよりもはるかに優れている」。

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タグ:Lob資金調達ダイレクトメールマーケティング

画像クレジット:Ron Watts/Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

パンデミックに後押しされて会議の文字起こしサービスOtter.aiが約53億円を調達

音声文字起こし(トランスクライブ)スタートアップのOtter.ai(オッターAI)は、ここ1年ほどの間に、Zoom(ズーム)やGoogle Meet(グーグル・ミート)のような会議アプリに自社の製品を統合することで、リモートワークの未来への投資を強化してきた。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の大流行により、多くの人が在宅勤務を余儀なくされたことで、行われた投資は実を結ぶこととなった。同社は1億回以上のミーティングの、延べ30億分に及ぶ音声の文字起こしを行い、2020年の収益は8倍に増加した。そして今、Otter.aiは新しい5000万ドル(約53億円)のシリーズBラウンドの資金を燃料にして、次のステップを発表しようとしていている。

今回の新規ラウンドはSpectrum Equityが主導し、既存の投資家であるHorizons Ventures、Draper Associates、GGV Ventures、Draper Dragon Fundなどが参加している。5000万ドル(約53億円)という数字には、2020年発表された1000万ドル(約10億6000万円)の転換社債も含まれている。

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Otter.aiのサービスは、会議を簡単に録音できる方法を提供しているが、それは携帯電話のアプリを使った1対1形式でも、または一般的なウェブ会議アプリとの統合を通じたオンライン形式でも可能だ。しかし、2020年に本当に重要な働きをしたのは、後者のオンライン会議だ。突如、全労働力がオフィスから自宅に移動させられ、終わりのないZoom会議を強いられることになったからだ。

結果的に非常に良いタイミングとなったが、Otter.aiはパンデミック初期の2020年4月にZoom統合機能を追加した。現在ではそのZoomが、Otter.aiのウェブ会議ユーザーの間では最も人気のあるプラットフォームとなっている。

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「パンデミックによって消費者の行動に大きな変化が起きていると思います。特に会合と教育に関わる行動における変化が大きく、どちらもOtterの主要なユースケースとなっています」と語るのはOtter.aiのCMOであるKurt Apen(カート・アペン)氏だ。「ビジネスでOtterを使っているチームを多く見かけますし、たくさんの学生や大学も手に入れやすさからOtterを使っています。私たちはそうした行動の変化が恒久的なものになると考えています」と彼は指摘する。

同社は、ユーザー数や収益について話してはいないものの、Zoomを通して利用しているユーザー数を含まないスタンドアローンの製品だけで「何百万もの」ユーザーを抱えていると主張している。そして、最初Otter.aiの無料サービスに出会ったユーザーたちの多くが、後にプレミアムプランにアップグレードしているという。プレミアムプランでは、より多くの録音時間が提供され、その他のビジネスグレードの機能も提供されている。

これまでのところ、企業に対して直接ではなく、まずは個別の従業員を攻略して企業市場に食い込むこうした裏口戦略は、大なり小なり他の人気ビジネスアプリのやり方を真似たものだと同社は考えている。

「実際、ここ数年の私たちの成長の軌跡を見ると、SlackやZoomの成長の軌跡とかなり一致しています」と語るのはOtter.aiの創業者でCEOのSam Liang(サム・ライアン)氏だ。「なので、これからの数年も成長を続けられることに、かなり自信を持っています」。

つまりOtter.aiの利用はパンデミックによって加速したかもしれないが、2020年に起こったビジネスカルチャーへのより大きな影響は、パンデミックが終わっても消え去ることがないということだ。全員が再びオフィスに戻るわけではない。それでもオフィスに戻る人のためにも、Otterは役に立つ。

同社はプロフェッショナルサービス、製薬会社、金融サービス、従業員たちがタイムゾーンを超えて仕事をしている多国籍企業などで、一定の実績を上げている。長期的には、Otter.aiは、会議の文字起こしを超えて「会話のインテリジェンス」と呼ぶ領域に拡大することで、企業向けのユースケースをより良くサポートできるようになることを目指している。

例えばあるトピックに費やされた時間、声のイントネーション、会話の感情に基づいて、何が重要なのかをシステムに学習させることで、AI技術を活用して文字起こし結果から意味を抽出するといったことが考えられている。それは現在行われている程度の手間で、自動的に行われることが想定されている。

とはいえ、Otter.aiは機密性の高い会話を扱うためのサービスではない。録音された会話は、転送中と保存中は暗号化されているが、処理中は復号化されている。またインデックスを作成するためにも会話を復号化する必要がある。さらに、Otter.aiの文字起こしデータは精度を向上させるためのトレーニングデータとしても使用される。トレーニングはユーザーによる手動修正や新しいアクセントなどを使って行われる。

最終的には、このことがより注意を要するビジネスコンテキストでの大規模な採用をためらわせる要因となる可能性がある。とはいうものの、Otterは、当面ポッドキャストのテープ起こし、Clubhouse(クラブハウス)のようなソーシャルオーディオアプリとの統合、オンラインイベントといった同社の技術を利用できる他の多くの分野よりも、当面は企業内の業務に関連したユースケースに焦点を当てる予定だ。Otter.aiはさまざまな市場にサービスを提供しているものの、より多くの企業クライアントを獲得するためにセールススタッフの準備を行っている。

Otterはセールススタッフに加えて、セールス担当の副社長の採用も考えており、さらに現在25人のチームにR&D、マーケティング、AIサイエンス、バックエンドとフロントエンドのエンジニアリング、デザイン、製品管理の人材を加えることも計画している。2021年末までに同社は、新規採用者を加えて従業員数を3倍にしようと考えている。おそらく、その一部はリモートワーカーになるだろう。

Otter.aiはまたソーシャル検索、コンテンツマーケティング、オーガニックソーシャルなどのチャネルを通じてアプリの認知度を高めるために、新しい資金を投資する。そして無料から有料までの会話を継続して行うことで収益の拡大を図り、技術開発を行う。

Spectrum EquityのマネージングディレクターであるJohn Connolly(ジョン・コノリー)氏が新しくOtterの取締役会に参加した。

コノリー氏は声明の中で「職場環境が進化して、オンライン会議がニューノーマルになる中で、Otter.aiは未来へ向かう仕事のシフトとより効率的なオンライン対話の最前線に位置するものとなります」と述べている。「Otter.aiのライアー氏やチーム全体とパートナーを組むことで、同社の市場における継続的なリーダーシップをサポートできることをうれしく思っています。集中的な製品イノベーションと事業の成長を推進するための、ガイダンスと戦略的リソースを提供できることが楽しみです」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Otter.ai文字起こし資金調達

画像クレジット:Otter.ai

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(文:Sarah Perez、翻訳:sako)

クレカ手数料の一部を植林に充てる英フィンテックTreeCardが5.4億円調達

木で作られたクレジットカードを提供し、生み出される手数料を通じて森林再生に資金を提供することを約束している、英国のフィンテックTreeCard(ツリーカード)がシードラウンドで510万ドル(約5億4000万円)を調達した。本ラウンドはEQT Venturesがリードし、SeedcampとEpisode 1が参加した。また、TreeCardのサービスはまだ立ち上がっていない、

GoCardless創業者のMatt Robinson(マット・ロビンソン)氏、Indeed創業者のPaul Forester(ポール・フォレスター)氏、ComplyAdvantage創業者のCharlie Delingpole(チャーリー・デリングポール)氏といったエンジェル投資家も出資している。調達した資金は人材採用、米国と「鍵となる欧州マーケット」への進出に使われる、とTreeCardは話した。

「主要なグリーンファイナンスブランド」になることを目的に、TreeCardはThielフェローのJamie Cox(ジェイミー・コックス)氏(Cashewの共同創業者)、Gary Wu(ゲイリー・ウー)氏、James Dugan(ジェームズ・デュガン)氏によって2020年8月に創業された。チームは社会的影響のあるフィンテックの原動力を生み出すために、ロイヤルティポイントやキャッシュバックを植林に交換するアイデアを思いついた。

サインアップすると、ユーザーはTreeCardアプリを現在持っている銀行口座にリンクし、Mastercardを搭載しているTreeCardを通じて支出のルーティングを開始できる。カードでの購入、具体的には支出により発生するカード決済手数料の一部が、環境に優しい検索エンジンでTreeCardのプレシード投資家でもあるEcosiaが運営する植林プロジェクトに送られる。

「高いレベルで気候危機は過去20万年で人類が直面している、人間を絶滅させる可能性のある最大の危機です。消費者のファイナンスの流れを導くことは変化を促す最もパワフルな方法だと信じています」とCEOのコックス氏は筆者に語った。「消費者が支出によってダメージの少ない行動をとるだけでなく、積極的に世界を改善できるようにするファイナンス会社を構築しています」。

「私たちは消費者が責任を持って使える限度額なしのカードを作っています。カードは消費者の支出に応じて植林するために手数料を使い、どうした支出が健全か、あるいは破壊的なものか消費者が特定できるよう、分析を洗練しました」。

英国や欧州における消費者カード手数料は、米国のものに比べてかなり安い。クレジットカードと口座の提供は、経費がかからないわけではない。そのためTreeCardがどのようにして持続可能になるのかは明らかではない。驚くことではないが、おそらく手数料が高い米国は、TreeCardにとってサービス立ち上げ時の主要なマーケットになると見られている。

「米国の手数料は欧州のものよりかなり高く、これは当社にとって植林投資を行い、マーケティング費用と管理費用をカバーするのに十分な売上高の機会となります」とコックス氏は説明した。「欧州では当社のバンキングインフラを無料で提供する既存のリテールバンクと提携するつもりです。これは、当社の手数料取り分が少なくても、欧州における費用を賄うのに十分なものになることを意味します。銀行名は間もなく発表します」。

一方、初期投資家のEcosiaについて同氏は「親」会社だと表現した。「Ecosiaは当社の最も近しいパートナーであり、成長にともなってEcosiaとかなり緊密に協業するでしょう」と話した。「Ecosiaが最初に小切手を切ってくれ、我々のために当社の植林を引き受けます。Ecosiaのマーケティングチームはかなり経験を積んでおり、今後数年間ユーザーを獲得するために彼らの検索エンジンをコアなチャンネルとして使うのをサポートしてくれます」。

EQT VenturesのディールパートナーであるTom Mendoza(トム・メンドーサ)氏のコメントは以下のとおりだ。「TreeCardは影響力のある財務管理のための実際のプラットフォームを構築するという他のブランドはやっていない分野に足を踏み入れ、主要なグリーンファイナンスブランドになる可能性を秘めています。EQT Venturesは環境と我々の投資が世界におよぼす影響をますます意識しています。地球にとってより良い未来をつくるために金融システムに積極的に取り組んでいるTreeCardのチームをサポートすることに非常に興奮しています」。

カテゴリー:フィンテック
タグ:TreeCard資金調達気候変動

画像クレジット:TreeCard

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Nariko Mizoguchi

ウェブブラウザーだけでXR空間を構築できる「STYLY」を手がけるPsychic VR Labが9億円調達

ウェブブラウザーだけでXR空間を構築できる「STYLY」を手がけるPsychic VR Labが9億円調達

VR・AR・MRクリエイティブプラットフォーム「STYLY」(Android版iOS版)を提供するPsychic VR Labは2月26日、計9億円の資金調達を発表した。引受先は、KDDI Open Innovation Fund 3号(グローバル・ブレイン)、DGベンチャーズ、DG DaiwaVentures、DK Gateほか。累計調達額は約19億円となった。

調達した資金により、様々な空間のXRメディア化を促進すべく組織体制の強化と事業化を推し進める。

ウェブブラウザーだけでXR空間を構築できる「STYLY」を手がけるPsychic VR Labが9億円調達

2016年5月設立のPsychic VR Labは、すべてのアーティストがXR空間を構築できる世界を作ることをミッションに、アート、ファッションからライフスタイルに関わるインターフェイスのXR化を推進。

同社のクラウドサービスSTYLYは、VR・AR・MRの制作負荷を圧倒的に下げることが可能なクリエイティブプラットフォームという。ウェブブラウザーだけでXR空間を構築し、VR・AR・MRコンテンツを配信できるとしている。

クラウド上でコンテンツの制作から配信まで一括管理するため、キャンペーンやイベント対応など、制作から運用まで自社で行うことも可能。制作者は難しいエンジニアリング作業から解放され、空間構築に集中できるという。

これまでの実績としては、渋谷パルコにおいて、商業施設で珍しいXRアート作品の常設展示 XR SHOW CASEを実施。1カ月で2万5000人の来場を記録した。

渋谷5Gエンターテイメントプロジェクトを通じた渋谷駅ハチ公前広場での5G体験イベントや、渋谷区公認「バーチャル渋谷」MR企画のほか、KDDIのコンセプトショップ「GINZA 456 Created by KDDI」でのクリスマスツリーのAR拡張などの取り組みも行っている。

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カテゴリー:VR / AR / MR
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BaaSプラットフォーム運営のHIFが約16億円を調達、AI与信審査システム開発などを進める

HIFが資金調達を実施(画像は同社HPより)

BaaSプラットフォーム「Fimple Platform」を開発・運営するH.I.F.は2月26日、エレメンツキャピタルリサーチなどを引受先とする第三者割当増資で15億9000万円のシリーズBラウンド資金調達を完了したと発表した。今回の資金調達は新たなAI与信審査システムの開発などに充てる。HIFはAI与信審査事業を核としたBaaSプラットフォーム事業の強化を図っていく。

2017年11月に設立されたH.I.F.は、主に信用保証業・決済代行業・銀行代理業を行うBaaS(Banking as a Service)プラットフォーム企業だ。売掛金まで保証する企業間決済サービス「Fimple決済」や売掛金を保証する「Fimple保証」を展開している。今回の資金調達で、H.I.F.の累計調達額は74億3000万円(エクイティ・デット含む)となった。

H.I.F.は創業以来、「Fimple決済」で買い取った債権約1万5700件のうち、デフォルトとなったのは19件、デフォルト率約0.12%と極めて低いデフォルト率を維持しているという。

デフォルト率が低いことが売り

H.I.F.は低いデフォルト率を実現するため、一般的に行われている決算書などによる定量審査に加えて、SNSの情報などを活用したH.I.F.独自の定性審査を行っている。

これらの知見に加え、AIを活用することで、与信審査の精度や再現性・迅速性を向上させている。今回の調達資金による資金使途については、同AI与信審査システムの開発に多くを投入し、「Fimple Platform」上に展開していく狙いがある。

また、SPC(特定目的会社)を活用したリスクオフファンドスキームの導入を進めていく。これまで債権の買い取りについてはH.I.F.が調達した資金を元にしていたが、同社の調達力が債権買い取りの上限となり、迅速な事業拡大が困難になるという問題があった。

SPCを活用したリスクオフファンドスキームのイメージ

H.I.F.がすべてのデフォルトリスクを負うかたちとなっており、負担可能リスクも事業規模の上限を決める要因になっていたため、SPCを活用して同事業に投資する投資家を募ってファンドを設立することとした。リスクを分散することで成長スピードをさらに向上させていく方向だ。

このほか、事業展開におけるリスクを適切に管理するためにリスク管理委員会を設置する。エレメンツキャピタルリサーチ代表の林田貴士氏を顧問に迎え、リスク管理委員会を設立した。同委員会によって定期的に事業リスクの評価や管理を行っていく。

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