Alphabetの成長株投資部門CapitalGがインドAye Financeの30億円の調達ラウンドをリード

Google(グーグル)の親会社のAlphabet(アルファベット)の成長株投資部門であるCapitalG(キャピタルG)は、中小企業向けのデジタル融資プラットフォームを運営するインドのスタートアップであるAye Finance(アイファイナンス)へ追加出資する。

インドのグルガオンに拠点を置くAye Financeは6月24日、CapitalGがリードしたシリーズEラウンドで2750万ドル(約30億円)を調達したと発表した。CapitalGは前回ラウンドもリードした。既存投資家からLGT Lightstone、Falcon Edge Capital、A91 Partners、MAJ Investも参加した。創業6年目となる同社の調達総額は9100万ドル(約97億円)となった。当局への申請によると、Aye Financeの現在の価値は2億5000万ドル(約270億円)を超える。

Aye Financeは、運転資本を必要としているが銀行など従来の貸し手から資金を確保するのが難しいか不可能な小規模企業を対象としている。同社は数年間、そうした企業に合計4億ドル(約430億円)近くを貸し出してきたという。

銀行が貸さない小規模企業に小切手を切ることは危険を伴う。Aye Financeによれば、Lendingkart、Capital Float、Indifi Technologies、InCredなどの南アジアの多くのスタートアップと同様、同社は統計モデルと予測分析により借り手の信用力を判断している。

同社は、20万以上の中小企業に対し、正式な融資エコシステムへの参加を支援してきたという。

CapitalGのパートナーでありAye Financeの取締役も務めるSumiran Das(スミラン・ダス)氏は、同社が「現場の知見に基づくデータサイエンスと審査の方法論により、これまで融資が受けられなかった層を開拓し、市場をリードしている」と語った。

Aye FinanceのマネージングディレクターであるSanjay Sharma(サンジャイ・シャルマ)氏は、世界的なパンデミックの中で大規模な資金調達ラウンドを完了できたという事実が「Aye Financeに対する投資家の評価を裏付ける」と語った。

「困難な時期にこそ優れた貸し手なのかが本当に試される。過去数カ月で顧客の返済額に大幅な改善が見られ始めた」とシャルマ氏は述べた。「Aye Financeは必要とする以上の資金を確保し、パンデミックを乗り切る財務的余裕が生まれた」

同社は3月に企業への貸し出しを一時停止したが、来月から小口融資を再開し、企業の事業再開を支援する計画だという。インド政府は3月下旬に全国的なロックダウン(都市封鎖)を発表している。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

筑波大学発のAI運動解析スタートアップSportipがオンラインフィットネスサービス「Sportip Meet」の事前登録を開始

整体師やトレーナー向けのAI解析アプリ「Sportip Pro」(スポーティッププロ)を開発・提供しているSportipは6月25日、同年5月にマネックスベンチャーズ(MV1号投資事業有限責任組合)、DEEPCORE、Deportare Partnersを引受先とする第三者割当増資により、数千万の資金調達を実施していたことを明らかにした。

写真に向かって左から、Sportip高久侑也氏、Deportare Partners為末 大氏、マネックスベンチャーズ和田誠一郎氏、DEEPCORE渡邊 拓氏

マネックスベンチャーズは、証券会社などを傘下にもつ金融持株会社であるマネックスグループのCVC(コーポーレート・ベンチャー・キャピタル)。DEEPCOREは、ソフトバンクグループ傘下でAI関連のベンチャー、スタートアップへの投資を進めているVC。Deportare Partnersは、アスリートである為末大氏が代表を務めるVCで、同VCとしてはSportipが投資第1号案件となる。資金調達に併せて同社は、オンライン上の総合型フィットネスジムサービス「Sportip Meet」をリリースし、利用者先行登録(LINEアカウントが必要)とトレーナー・フィットネスジムの先行登録を開始した。Sportip Meetは、Sportip Proで培った解析技術を応用して、個人の身体や姿勢の状態をチェックし、AIが最適なトレーニングメニューを提案してくれるサービス。フォームを点数化して友人などとの競争を可能にする機能もある。

トレーニングの内容は、トレーニング、ストレッチ。ヨガなどを予定しており、大手フィットネスジム、個人のパーソナルトレーナー、整体師、理学療法士、健康経営に関心のある企業などへの提供を計画している。Sportip Proと併用することで、オンラインとオフラインの指導をより効率的に実施可能になるとのこと。

同社の既存サービスであるSportip Proは、セラピストやトレーナー、コーチなどの指導者をコーチングするアシスタントAI。具体的には、受講者それぞれの筋力トレーニング、立位やトレーニング時の姿勢の解析、可動域の測定などが可能で、受講者各自に最適なトレーニングメニューを自動生成してくれる。なおSportip Proについては、以前から実施していた期間限定の無償利用を継続。利用登録から2週間は無償で利用できる。

同社は今回調達した資金を、Sportip Meetの開発強化と人材採用に投下するほか、サービスのUI/UX、サービスオペレーションの改善を進めていくという。

 

無人カフェロボ「root C」運営が1.7億円を調達

需要予測AIを搭載した無人カフェロボット「root C」を開発するNew Innovationsは6月24日、DEEPCORE、THE SEED CAPITAL、社名非公開の事業会社(関係者によると金融系の大手企業とのこと)および個人投資家を引受先とする第三者割当増資により1.7億円を調達したことを明らかにした。

New Innovationsでは昨年7月にDEEPCOREとTHE SEED CAPITALから7000万円を調達したことを発表しており、今回のラウンドも含めた累計調達額は2.4億円となる。

同社が手がけるroot Cは専用のスマホアプリと連動したカフェロボットだ。アプリから自分の好みのコーヒーをオーダーして決済を済ませておけば、指定して時間にサクッとテイクアウトできるのが特徴。コーヒーの需要を事前に予測して抽出を開始する需要予測AIも搭載する。

昨年8月に大阪・なんば、今年3月には東京・丸の内(新東京ビル)にて実証実験を実施。主にオフィスワーカーがオフィスのデスクでコーヒーを楽しむ際の手段として利用された。

今回の調達はそこで得られたフィードバックなどを基にプロダクトの改良を行うためのものだ。アプリのUI/UXの一新やユーザーにあったコーヒーを提供するためのレコメンデーションエンジンの強化、サブスクリプションモデルの実装などを進めていくという。

New Innovationによると新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響もあり、直近では人を介さずにサービスを提供できる非対面販売ソリューションとしてのニーズも高まってきているそう。「現在すでに『root C』の設置に関する問い合わせに加えて、店舗の無人化などOMOソリューションについても複数の企業様からの引き合いをいただいています」とのことだった。

関連記事:自動野菜収穫ロボのinahoが実証事業・補助金プロジェクト3種類に採択

カテゴリー:ロボティクス

タグ:New Innovations 資金調達 日本

インドの通信会社Reliance Jio Platformsが総額1.6兆円調達、5年以内に上場へ

もしあなたのベンチャーファンドが、ここ数週間でReliance Jio Platforms(リアイアンス・ジオ・プラットフォームズ)に投資(未訳記事)した10の投資家の1つではないなら、急成長しているインドの通信ネットワークに少なくとも数四半期は現金を投入することができなくなった。同社はもはや資金調達取引を求めていないからだ。

過去9週間で152億ドル(約1兆6300億円)を調達したReliance Jio Platformsは6月19日、前日のサウジアラビアのPIFからの15億ドル(約1600億円)の投資(未訳記事)により「現段階でのJio Platformsによる資金面でのパートナー勧誘は終了となる」と発表した。

Jio Platformsほか多数の会社の親会社であるReliance Industries(リアイアンス・インダストリーズ)を束ねるMukesh Ambani(ムケシュ・アンバニ)氏は、Jio Platformsと国内最大の小売チェーンであるReliance Retail(リアイアンス・リテール)が「戦略的投資家および金融投資家から高い関心を集めた」と語った。だが次は「今後2〜3四半期の間に両社へ世界的な人材を招き入れる」。

インド最大の資産家である同氏は、今後5年以内にJio PlatformsとReliance Retailの両方を上場する予定だと付け加えた。「上場を実行すれば、間違いなく世界で最も強力なバランスシートを持つことになる」

2019年8月12日月曜日、インド・ムンバイで開催される年次総会に出席するReliance Industries Ltd.の会長兼マネージングディレクターであるムケシュ・アンバニ氏(写真家:Dhiraj Singh / Bloomberg via Getty Images)

本日の発表により、3カ月近く続いた一連の騒々しい資金調達のニュースはおそらく終わりを告げる。4年足らずで3億8800万人以上の加入者を獲得したReliance Jio Platformsは4月、Facebookから57億ドル(約6100億円)を調達したと発表した。

それから数週間で、同社はSilver Lake(シルバーレイク)、KKR、General Atlantic(ジェネラル・アトランティック)を含む9つの著名な投資家からさらに95億ドル(約1兆200億円)を調達した。

Bloomberg(ブルームバーグ)によれば、今年の世界的なパンデミックの間に続いた巨額の資本注入は、世界全体の通信会社への投資の半分以上を占めた。アンバニ氏が「スタートアップ」と表現するJio Platformsは152億ドル(約1兆6200億円)の調達により、昨年だけでインドのハイテクスタートアップエコシステムを全部あわせたよりも多くの資金を調達した。

アンバニ氏は6月19日、そもそもReliance Jio Platformsがなぜ資金調達しているのかという市場の憶測についても確認した。同氏は、調達した資金により、Reliance Industriesの正味の借入金210億ドル(約2兆2000億円)を予定より早く返済できたと語った。2012年に無借金であった石油と小売の巨人は、再び正味の借入金がゼロになったと同氏は述べた。

アンバニ氏は昨年8月、インドで最も重要な企業であるReliance Industriesが2021年初頭までに借入金をすべて返済すると株主に約束していた。

「本日、当初計画していた2021年3月31日よりも大幅に前倒しでRelianceの正味の借入金をゼロにし、株主への約束を果たしたことを発表できることを嬉しく思う」

画像クレジット:Sanjit Das / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

建設資材を現場により早く届けるGoFor Industriesが10億円超を調達

GoFor Industriesは、建設資材を顧客が必要とするタイミングで届けるビジネス、つまり建設資材のラストマイルデリバリーを展開している。建設はまさに「時は金なり」の業界であり、待ち時間が生じずに納期に間に合うということが極めて重要だ。

そこで今回は、Builders VCがリードしCEMEX VenturesやMucker Capital、Plug and Play Ventures、Panache Ventures、I2BF Global Ventures、そしてCapital Angel Networkなどが参加する投資家グループが同社のビジネスに950万ドル(約10億160万円)を投じた。

同社によると、いまやベンダーもゼネコンも現場も建設の工程全体を見直そうとしており、同社のラストマイルロジスティクスのサービスが資材調達のデリバリーモデルを変えるいい機会になっているという。

同社CEOのBrad Rollo(ブラッド・ロロ)氏は 「これまで資材の運送は各社それぞれが担っていたので、固定費も変動費も非常に高価だった。また、求められる需要とサービスのレベルに合わせてスケールすることが十分にできなかった」と語る。同社によると、今回調達した資金で立ち上げるGoFor Dispatchでは、資材搬送の運用と管理を自動化して近代化する。また、同社のサービスエリアを北米全体に広げるためにも資金を使う予定だ。

カナダのオンタリオ州オタワに本社を置く同社は、The Home Depo(ホームデポ)のカナダの店舗の多くを顧客にしているが、今後は米国への展開を狙う。「GoFor Industriesのプラットホームは、Home Depot Canadaの全店のラストマイルデリバリーを担当している。カナダ全体で150カ所あまりだ」と同氏。

リード投資家のBuilders VCは、新しいテクノロジーの採用に抵抗してきた業界への投資に特化したファンドなので、建設業界はまさにうってつけだろう。Builders VCのパートナーであるMark Blackwell(マーク・ブラックウェル)氏は「競争が非常に厳しい建設資材の市場ではラストマイルデリバリーが共通の必要要件になりつつある」と説明する、創業からわずか18カ月で同社は、5つの都市からカナダと米国の60あまりの都市に商圏を拡大した。

建設業界のラストマイルデリバリーに投資価値を見出しているのはBuilders VCだけではない。セメントなどを扱う大手メーカーのCEMEX(セメックス)の投資部門であるCEMEX Venturesと、ロサンゼルス拠点のアーリーステージ投資企業であるMucker Capitalも、GoFor Industriesに投資している。CEMEX VenturesのGonzalo Galindo(ゴンザロ・ガリンド)氏は「建設現場への資材の効率的な配達は、建設業界の最大の課題だ。GoForが販売業者と建築業者の両方を信頼性の高い透明で柔軟な配達で助け、顧客に素晴らしい体験を提供しているのを見て、とてもエキサイトしている」と述べている。

画像クレジット: GoFor Industries

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

公共事業向けの現場安全情報を提供するUrbinが20億円超を調達

産業労働者向けの現場安全情報を開発するUrbintは、研究開発能力の拡大、国際的な成長、新しい産業分野向けサービスの開発を目指して、新たなラウンドの資金調達で2000万ドル(約21億4000万円)を調達した。

北米の公益事業市場ですでに大きなシェアを持つ同社が海外に進出するにはいいタイミングだ。このたび、英国の公益企業であるNational Gridのベンチャー部門が同社への投資家に加わったことによって、それが現実になろうとしている。2000万ドルの調達ラウンドのそのほかの投資家は、Energy Impact Partners、Piva、そしてSalesforce Venturesだ。

同社の創業者でCEOのCorey Capasso(コーリー・カパソ)氏がは「公共事業の現場は、インフラの老朽化や極端な悪天候、労働者の不足などによって、数年前から圧倒的な数の脅威に直面していました。しかも、リスク回避のための正しい情報に基づく安全性を確立するための適切なツールがありませんでした。我々は予測AIを活用してこの問題を解決するためUrbintを創業しました。新型コロナウイルスのパンデミックは、インフラと必要不可欠な労働力に対する危険性を増加させ、リソースも逼迫させたことで、我々のサービスのニーズが高まっています。今回の投資により、より多くのコミュニティの安全を守るために、我々の事業が拡がることでしょう」と語る。

カパソ氏はTechCrunchのインタビューで「リソースの配置の適正化のためにはダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(無差別化)を強化しなければならない」ともコメントしている。

同氏によるとUrbintは、大量の情報を集めて分析し、天候や今後の建設計画、事故や感染症や災害、疾病など、現場の労働者が今後直面するかもしれないさまざまなリスクを評価することだ。昨今の米国では、これらに新型コロナウイルスによるパンデミックが加わる。現在同社は米国の40社の公益企業が顧客だが、カパソ氏は顧客ベースをもっと拡大したい意向だ。

National Gridのベンチャー部門であるNational Grid Partnersの創業者で社長のLisa Lambert(リサ・ランバート)氏は「このパンデミックの間のリスクを軽減するには、AIを利用する安全性技術が極めて重要である。そのため、Urbintへの投資を増やしていることに、大きな期待と確信を持っている」と語る。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

新世代の細胞治療のために、あらゆるヒト細胞の再現を目指すBit Bioが約44億円を獲得

「生命ソフトウェアのキーボードのEnterキー」を売り込むスタートアップBit Bio(ビットバイオ)は、最近の4150万ドル(約44億5000万円)の資金調達に3週間しかかからなかった。

もともとBit Bioは、Elpis Biotechmologyというギリシャ神話における希望の女神にちなんだ社名で知られていた。英国のケンブリッジにある同社は、2016年にMark Kotter(マーク・コッター)氏が創業した。ヒト細胞株のコスト削減と生産能力向上のための技術の商業化を目指している。ヒト細胞は、製薬会社の創薬や標的遺伝子療法を加速する手段として利用できる。

同社の目標は、あらゆるヒト細胞を再現することだ。

「現代は生物学と医学において非常に重要な時期だ。明らかになった本当のボトルネックは、ヒト細胞の大量かつ安定的な供給源だ」とコッター氏は語る。「これは創薬にとって重要だ。臨床試験の失敗率を見ると、史上最高となっている。研究所や臨床現場におけるバイオテクノロジーの大幅な進歩とは正反対だ」。

科学者が人間のゲノムを完全にマッピングしてから17年、CRISPRと呼ばれる遺伝子編集技術で遺伝物質を編集し始めてから8年で、病原体が生物内に広がるメカニズムを正確に狙う新薬や個々の患者の遺伝物質に基づく治療法が急増した。

病原体の広がりを防止したり疾患の影響を軽減したりする治療法や低分子薬の開発には、市場に出す前にかなりの試験が必要となる。Bit Bioの創業者は、同社が市場投入までの時間を短縮し、患者に新しい治療法を提供できると考えている。

Richard Klausner(リチャード・クラウスナー)氏のような投資家が、Bit Bioの事業に投資するチャンスに飛びついた仮説はそれだ。同氏は有名なバイオテクノロジー関連の連続起業家であり、国立癌研究所の元ディレクターで、Lyell Immunopharma、JunoGrailといった革新的バイオテクノロジー企業の創業者でもある。

クラウスナー氏の他にも、有名なバイオテクノロジー投資会社であるForesite Capital(フォーサイトキャピタル)、Blueyard Capital(ブルーヤードキャピタル)、Arch Venture Partners(アーチベンチャーパートナー)が加わった。

「Bit Bioは美しい科学に基づいている。同社のテクノロジーは、幹細胞の応用に、エンジニアリングに対して切望されている精度と信頼性をもたらす可能性がある」とクラウスナー氏は声明文で語った。「Bit Bioのアプローチは、新世代の細胞治療を可能にし、数百万人の生活を改善する生物学のパラダイムシフトを象徴している」。

画像クレジット:Andrew Brookes / Getty Images

Bit Bioの事業の中心にある技術の開発にあたるコッター氏自身の道は、ケンブリッジ大学の研究所で10年前に始まった。同氏はそこで、科学者らにヒトの成熟細胞を胚性幹細胞に変換することを可能にした(UCSFリリース)山中伸弥氏の革命的な発見に基づき研究を開始した。

「我々がやったことは、山中氏がやったことだ。すべてをひっくり返した。知りたいのは各細胞がどのように定義されているか。それがわかればスイッチを押すことができる」とコッター氏は語る。「ある細胞をコードする転写因子を見つけ、そのスイッチをオンにする」。コッター氏によると、この技術は胚性幹細胞に新しいプログラムをアップロードするようなものだという。

同社はまだ初期段階だが複数の重要な顧客を獲得しており、その技術に基づく姉妹会社を立ち上げることに成功した。Meatable(ミータブル)というその会社は、同じプロセスを利用してラボで育てた豚肉を製造している。

関連記事:動物を殺さずに肉の細胞を得る、培養肉生産技術開発のMeatableが10億円超を調達

Meatableは、動物を殺さずに細胞の分化と成長を利用して、肉の細胞を製造する商業的に実行可能で特許取得済みのプロセスを初期から提唱している会社だ。

他社は細胞分裂と培養を刺激するためにウシ胎児血清またはチャイニーズハムスターの卵巣を利用してきたが、Meatableは動物から組織をサンプリングして多能性幹細胞に戻し、その細胞サンプルを筋肉と脂肪へと培養し、おいしい豚肉製品を作るプロセスを開発した(Cell Based Tech記事)という。

「当社は、初期段階の細胞が筋細胞になるとき、どのDNA配列が寄与するのか理解している」とMeatableの最高経営責任者であるKrijn De Nood(クリジン・デ・ヌード)氏は述べた。

Bit Bioと似ているように見えるのは、それが同じ技術だからだ。ただ、人間の細胞ではなく動物を作るために使用されているだけだ。

画像クレジット:PASIEKA  / SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

Meatableが細胞分化技術を商業化する形の1つなら、Bit Bioと創薬会社であるCharles River Laboratories(チャールズリバーラボラトリーズ)との提携はまた1つの形だ。

「当社は研究と創薬のためにヒト細胞を使用して実際に収益を生み出すビジネスの顔を持っている。大規模な前臨床受託研究機関であるCharles River Laboratoriesと提携している」とコッター氏は述べた。「この提携により、Charles Riverに対し当社のテクノロジーへの早期アクセスを提供した。彼らには、創薬を手助けして欲しいという通常のビジネスクライアントがいる。現在の大きなボトルネックは、ヒト細胞へのアクセスだ」。

新薬の試験が失敗するのは、開発された治療法が人間にとって毒であったり、人間には作用しなかったりするからだ。違いは治療がどれほど効果的であるかを証明するための実験のほとんどが、人間の試験に移る前に動物実験に頼っているということだ、とコッター氏は説明する。

コッター氏によると、同社はまた独自の細胞療法を開発する準備を進めているという。最大のセールスポイントは、Bit Bioが精密医療にもたらす精度の向上だ。「細胞療法では細胞の混合バッグを使う。機能するものもあれば危険な副作用をともなうものもある。当社は正確性をもたらすことができる。安全が現時点で最も大きい」。

同社は、他社の細胞培養の混合バッグと比較して、1週間未満で100%の純度の細胞株を生産できると主張する。

「当社の究極の目標は、あらゆるヒト細胞を生産できるプラットフォームを開発すること。これは人間を形作る『生命のオペレーティングシステム』としての細胞の動きを支配する遺伝子を理解すれば最終的に可能だ」とコッター氏は声明で述べた。「癌、神経変性疾患、自己免疫疾患に取り組む新世代の細胞療法や組織療法の可能性を解き放ち、さまざまな状態で効果を発揮する薬の開発を加速する。主だったディープテクノロジーやバイオテクノロジー投資家の支援が、生物学と工学のこのユニークな融合を促進する」。

画像クレジット:KTSDESIGN / SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

新世代の細胞治療のために、あらゆるヒト細胞の再現を目指すBit Bioが約44億円を獲得

「生命ソフトウェアのキーボードのEnterキー」を売り込むスタートアップBit Bio(ビットバイオ)は、最近の4150万ドル(約44億5000万円)の資金調達に3週間しかかからなかった。

もともとBit Bioは、Elpis Biotechmologyというギリシャ神話における希望の女神にちなんだ社名で知られていた。英国のケンブリッジにある同社は、2016年にMark Kotter(マーク・コッター)氏が創業した。ヒト細胞株のコスト削減と生産能力向上のための技術の商業化を目指している。ヒト細胞は、製薬会社の創薬や標的遺伝子療法を加速する手段として利用できる。

同社の目標は、あらゆるヒト細胞を再現することだ。

「現代は生物学と医学において非常に重要な時期だ。明らかになった本当のボトルネックは、ヒト細胞の大量かつ安定的な供給源だ」とコッター氏は語る。「これは創薬にとって重要だ。臨床試験の失敗率を見ると、史上最高となっている。研究所や臨床現場におけるバイオテクノロジーの大幅な進歩とは正反対だ」。

科学者が人間のゲノムを完全にマッピングしてから17年、CRISPRと呼ばれる遺伝子編集技術で遺伝物質を編集し始めてから8年で、病原体が生物内に広がるメカニズムを正確に狙う新薬や個々の患者の遺伝物質に基づく治療法が急増した。

病原体の広がりを防止したり疾患の影響を軽減したりする治療法や低分子薬の開発には、市場に出す前にかなりの試験が必要となる。Bit Bioの創業者は、同社が市場投入までの時間を短縮し、患者に新しい治療法を提供できると考えている。

Richard Klausner(リチャード・クラウスナー)氏のような投資家が、Bit Bioの事業に投資するチャンスに飛びついた仮説はそれだ。同氏は有名なバイオテクノロジー関連の連続起業家であり、国立癌研究所の元ディレクターで、Lyell Immunopharma、JunoGrailといった革新的バイオテクノロジー企業の創業者でもある。

クラウスナー氏の他にも、有名なバイオテクノロジー投資会社であるForesite Capital(フォーサイトキャピタル)、Blueyard Capital(ブルーヤードキャピタル)、Arch Venture Partners(アーチベンチャーパートナー)が加わった。

「Bit Bioは美しい科学に基づいている。同社のテクノロジーは、幹細胞の応用に、エンジニアリングに対して切望されている精度と信頼性をもたらす可能性がある」とクラウスナー氏は声明文で語った。「Bit Bioのアプローチは、新世代の細胞治療を可能にし、数百万人の生活を改善する生物学のパラダイムシフトを象徴している」。

画像クレジット:Andrew Brookes / Getty Images

Bit Bioの事業の中心にある技術の開発にあたるコッター氏自身の道は、ケンブリッジ大学の研究所で10年前に始まった。同氏はそこで、科学者らにヒトの成熟細胞を胚性幹細胞に変換することを可能にした(UCSFリリース)山中伸弥氏の革命的な発見に基づき研究を開始した。

「我々がやったことは、山中氏がやったことだ。すべてをひっくり返した。知りたいのは各細胞がどのように定義されているか。それがわかればスイッチを押すことができる」とコッター氏は語る。「ある細胞をコードする転写因子を見つけ、そのスイッチをオンにする」。コッター氏によると、この技術は胚性幹細胞に新しいプログラムをアップロードするようなものだという。

同社はまだ初期段階だが複数の重要な顧客を獲得しており、その技術に基づく姉妹会社を立ち上げることに成功した。Meatable(ミータブル)というその会社は、同じプロセスを利用してラボで育てた豚肉を製造している。

関連記事:動物を殺さずに肉の細胞を得る、培養肉生産技術開発のMeatableが10億円超を調達

Meatableは、動物を殺さずに細胞の分化と成長を利用して、肉の細胞を製造する商業的に実行可能で特許取得済みのプロセスを初期から提唱している会社だ。

他社は細胞分裂と培養を刺激するためにウシ胎児血清またはチャイニーズハムスターの卵巣を利用してきたが、Meatableは動物から組織をサンプリングして多能性幹細胞に戻し、その細胞サンプルを筋肉と脂肪へと培養し、おいしい豚肉製品を作るプロセスを開発した(Cell Based Tech記事)という。

「当社は、初期段階の細胞が筋細胞になるとき、どのDNA配列が寄与するのか理解している」とMeatableの最高経営責任者であるKrijn De Nood(クリジン・デ・ヌード)氏は述べた。

Bit Bioと似ているように見えるのは、それが同じ技術だからだ。ただ、人間の細胞ではなく動物を作るために使用されているだけだ。

画像クレジット:PASIEKA  / SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

Meatableが細胞分化技術を商業化する形の1つなら、Bit Bioと創薬会社であるCharles River Laboratories(チャールズリバーラボラトリーズ)との提携はまた1つの形だ。

「当社は研究と創薬のためにヒト細胞を使用して実際に収益を生み出すビジネスの顔を持っている。大規模な前臨床受託研究機関であるCharles River Laboratoriesと提携している」とコッター氏は述べた。「この提携により、Charles Riverに対し当社のテクノロジーへの早期アクセスを提供した。彼らには、創薬を手助けして欲しいという通常のビジネスクライアントがいる。現在の大きなボトルネックは、ヒト細胞へのアクセスだ」。

新薬の試験が失敗するのは、開発された治療法が人間にとって毒であったり、人間には作用しなかったりするからだ。違いは治療がどれほど効果的であるかを証明するための実験のほとんどが、人間の試験に移る前に動物実験に頼っているということだ、とコッター氏は説明する。

コッター氏によると、同社はまた独自の細胞療法を開発する準備を進めているという。最大のセールスポイントは、Bit Bioが精密医療にもたらす精度の向上だ。「細胞療法では細胞の混合バッグを使う。機能するものもあれば危険な副作用をともなうものもある。当社は正確性をもたらすことができる。安全が現時点で最も大きい」。

同社は、他社の細胞培養の混合バッグと比較して、1週間未満で100%の純度の細胞株を生産できると主張する。

「当社の究極の目標は、あらゆるヒト細胞を生産できるプラットフォームを開発すること。これは人間を形作る『生命のオペレーティングシステム』としての細胞の動きを支配する遺伝子を理解すれば最終的に可能だ」とコッター氏は声明で述べた。「癌、神経変性疾患、自己免疫疾患に取り組む新世代の細胞療法や組織療法の可能性を解き放ち、さまざまな状態で効果を発揮する薬の開発を加速する。主だったディープテクノロジーやバイオテクノロジー投資家の支援が、生物学と工学のこのユニークな融合を促進する」。

画像クレジット:KTSDESIGN / SCIENCE PHOTO LIBRARY / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

消防設備点検業務のプラットフォームを運営する名古屋拠点のスマテン総額1.3億円を調達

建物の消防設備点検業務に特化したプラットフォームを運営する名古屋を拠点とするスマテンは6月17日、総額1.3億円の資金を調達した。第三者割当増資による調達で、引受先は環境エネルギー投資。

スマテンは、2018年4月設立のスタートアップ。法令点検でありながら、現状49.8%にとどまっている消防設備点検の実施率を100%にすることをミッションとしており、現在は主に消防設備点検を主軸としたサービス提供している。具体的には、消防設備点検管理業務をウェブ上で完結できる利用料無料のツールを提供。

建物管理者は、パソコンやタブレットなどの端末とネット環境があれば「スマテン」の管理画面から点検や改修を依頼できるほか、各種書類をクラウドに保存可能でき、複数物件を所有している場合の一元管理が容易になる。

一方、消防点検事業者では、点検報告書を自動作成できるほか、不動産管理事業者とのマッチングの機会が得られる。同社は今後、建築設備点検や防火設備点検など、その他の法令点検も取り扱いにも事業を広げていく計画だ。スマテンのパートナー事業者は現在160社超で、サービスエリアは全国的に広げているという。

なお今回スマテンへの投資を決めた環境エネルギー投資は、その名が示すように環境やエネルギーに特化したベンチャーキャピタルで、直近では、スキルシェアサービスのZehitomo、法人向けグリーン電力・ソリューション事業などを進めるクリーンエナジーコネクト、製造から販売までの工程を自社で行い「寝かせ玄米」をD2Cで販売している結わえるなどに出資している。

中国のBYDが「電気自動車のCPU」とも呼ばれるIGBTの生産で120億円相当を調達

米国の投資家であるWarren Buffett(ウォーレン・バフィット)氏が投資している中国の自動車大手BYD(比亜迪)は、電気自動車の生産で中国を自給自足にさせようと急いでいる。米国時間6月15日、同社は投資公告書面で半導体部門のBYD Semiconductorが8億元(約120億円)のシリーズA+を確保したことを発表した(BYDリリース)。

BYD Semiconductorの中核的製品である絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(Insulated Gate Bipolar Transistor、IGBT)は、EVの電力管理システムにシリコンコンポーネントで、その開発競争が問題となっている。この電子スイッチは電力損失の低減しと信頼性向上させるため業界の専門家たちは「電気自動車のCPU」と呼んでいる(蔚来記事)。EVの部品の中でバッテリーに次いで2番目に高価な部品で、市場調査によると総コストの7〜10%を占めている(CCF-GAIR2020記事)。

BYDはドイツの半導体大手であるInfineon Technologies AGと激しく争っており、2019年時点で中国の電気自動車で使用されるIGBTの58%がInfineonの製品だった。この年のBYDのシェアは、Citic Securitiesの記事によると18%だった

IGBTの生産には明るい未来があり、現在ブームになっているEVだけでなく、エアコンや冷蔵庫、高速列車など、その他の高エネルギー用途でも広く利用されている。IGBTの世界市場は2020年で100億元(約1520億円)近いと推計されている。同じくCiticの記事によると、2025年にはその4倍の400億元(約6070億円)になる。

この特大サイズの投資のわずか2カ月前には、深圳で上場しているBYDがそのチップ部門を分離し、独立の企業として上場した。投資家たちからの応募超過のため、この新子会社は19億元(約290億円)のシリーズAの直後に新たにA+のラウンドを調達した。

2回のラウンドの結果、親会社のBYDがBYD Semiconductor株の72.3%を所有することになり、同社の時価総額は102億元(約1550億円)となった。

IGBTを独自に開発できる唯一の中国企業である同社は、多方面から有力な投資家を集めている(CHINA SECURITIESリリース)。A+ラウンドにおける同社の投資家はSequoia Chinaを筆頭にシリーズAに参加した国営のCICC Capital、韓国の複合企業SK Group、スマートフォンメーカーのXiaomi(シャオミ)、Lenovo Group、ARM、中国最大の半導体ファウンドリSMIC、中国の自動車メーカーの共同投資となったSAICとBAICなどとなる。

BYDが電子部品の製造を始めたのは1995年で、主に自動車と再生可能エネルギーの分野に拡張してきた。本社は深圳にあり、同市の電動バスとタクシーのすべてに電力を提供している。同社はまた、電気自動車に対する政府補助の衰退にともない、海外市場への拡張も目指している。

画像クレジット:BYD’s new design center

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

オープンソース開発者を暗号資産で支援するフレームダブルオーが資金調達

フレームダブルオー(FRAME00)は6月15日、マネックス・ベンチャーズ、MIRAISEを引受先としたシードラウンドの資金調達を完了したと発表した。

また、暗号資産イーサリアムを基盤とするDApps(分散型アプリ)として、オープンソースソフトウェア(OSS)を資産として見立て、ステーキングによる収益化を図れる「Stakes.social」サービスを開発。参加を希望する開発者向けに先行リリースした。

フレームダブルオーは、オープンソースソフトウェア(OSS)開発者を暗号資産で支援するプロジェクト「Dev」を展開。開発者は、自分のOSSを登録しておくと、同社独自暗号資産「Dev」(イーサリアムのERC-20規格準拠トークン)をダウンロード数に応じ報酬として獲得できる。またユーザーは、登録済みOSSをダウンロードしたり、Devを売買することで開発者をDevで支援できる。

Stakes.socialのステーキングとは、自分が保有している暗号資産を任意のサービス・個人・組織などに預ける体裁で、その運営・管理を委任するという、ブロックチェーン関連技術のひとつ。預け入れた見返りとして、利子・配当などの報酬を得られるという仕組みとなっている。

例えば、ユーザーが任意のOSS(開発者)に対してDevによるステーキング(預け入れ)を行うと、開発者側は潤沢な開発資金としてDevを得られたことになる。開発が活発化しダウンロード数や利用者数が増えるとOSSの資産価値が向上するため、ステーキングを行ったユーザーに報酬として還元される可能性が高まる。

経営破綻の米レンタカー大手のHertzが最大1070億円の新株発行へ、なぜ?

米連邦破産法11条に基づく手続き中のHertz(ハーツ)は現在、最大10億ドル(約1070億円)相当の株式を発行できる。同社が狙うマーケットは、投機的な短期の賭けを好むトレーダーだ。

米デラウェア州破産裁判所による米国6月12日の決定は、Hertzに最大2億4680万株の未発行株を投資銀行のJefferies(ジェフリーズ)に売却することを認めた。6月11日に緊急要請を行ったHertzは「Jefferiesとの契約を結んでいない」と同社は米証券取引委員会への提出書類に記載した。

そう、ニューヨーク証券取引所と上場廃止を巡って争っている同社が、間もなく完全に消滅する可能性のある株式を新しく発行することができるのだ。そしてこのスキームに喜んで飛びつく用意がある個人投資家が多数いるようだ。

Hertz株は6月12日金曜日に2.83ドル(約300円)で取引を終え、前日終値から37.38%上昇した。同社の株価は、5月26日に終値で過去最低の0.56ドル(約60円)まで下げた後、400%以上上昇した。

Hertzは先月、米連邦破産法11条に基づく破産保護を申請(Hertzのプレスリリース)した。申請は決して驚きではなかった。レンタル業を営む同社は新型コロナウイルスのパンデミックに押しつぶされた。旅行や企業の出張がなくなり、Hertzには突然、未使用の資産、つまりたくさんの車が残された。収入の口がなくなっただけではない。中古車価格も下落の一途をたどり、車両の価値をさらに下げた。

同社は5月の申請で、破産手続き中は手元にある10億ドル(約1070億円)以上の現金を使って事業を運営し続けると説明した。その後、注目すべき資金源が現れた。株取引アプリのRobinhood(ロビンフッド)を使っているトレーダーらだ。

Hertzは今週、Robinhoodのデータを分析するウェブサイト「Robintrack」の人気チャートで2位になった。このチャートは、特定の銘柄を1日、3日、1週間、1カ月間保有しているユーザーの数を示す。今週、トレーダーの増加数で最も人気のあった株は電気自動車メーカーのNikola Motor(ニコラモーター)だった。Nikola Motorは少なくとも2021年まで売上がまったくないと予測されているものの、株価は急上昇した。

この不可解なトレンドにどっぷり浸かるために、TechCrunchのタイムマシンで2020年2月21日に遡ってみたい。Hertz株は、2018年1月以来の最高値である20.29ドル(約2200円)で取引を終えた。このとき、約1064人のRobinhoodユーザーがHertz株を保有していた。

新型コロナウイルスのパンデミックが景気を後退させ、Hertz株もそれに追随し2月21日から3月18日までの間に83%超下落した。その後株価は一瞬上昇し、再び下落を始め、5月26日には0.56ドル(約60円)で取引を終えた。2月の最高値から97.24%の下落だ。一方Robinhoodでは、Hertz株が購入するタイミングを迎えたように見え始めていた。株価が下がったため、RobinhoodのトレーダーはHertzに投資し始めたのだ。3月18日までに3500人を超えるRobinhoodユーザーがHertz株を保有していた。1カ月後、その数は1万8000人を超え、5月21日にはほぼ倍増して4万3000人を超えた。

画像クレジット:Robintrack

Hertzは5月22日、米連邦破産法11条の破産申請を行った。6月12日金曜日の時点で、17万46人のRobinhoodユーザーがHertz株を保有している。

はっきり言えば、Robinhoodは個人投資家が利用する多くのツールの1つにすぎない。Robinhoodで人気がある銘柄には幅広い投資家の市場心理が反映されていない可能性がある。だが、そこには若い投資家や新しい投資家の関心が投影されている。

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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メールをチャット風に扱えるようにするSpikeがシリーズAで約8億円を調達

Slackのような非同期のチャットアプリが頑張ってメールを亡き者にした。しかし「チャットでメールを置き換えるのならいっそ、メールをチャットみたいにしたらどうだ?」と考えたSpikeは、メールをチャットの複数のバブルにまとめるアプリを作り、それに、ユーザーが短くてシンプルなテキストだけを書きたくなるようなインターフェイスをくっつけた。

Spikeのソフトウェアは、最初はメールの外見を変えただけのように思えたが、今ではコラボレーションの会話をサポートし、そのインターフェイスの中で仕事ができるようにして、彼らが目標とする統合された生産性ツールに近づいてきた。統合と言うだけあって、1つのウィンドウからアクセスできる機能がとても多い。同社によると、いろんなアプリが一本化されていたほうが、ユーザーがあちこちのウィンドウをさまようより時間の節約になり、仕事もたくさんできるという。

同社CEOのDvir Ben-Aroya(ドビル・ベン-アロヤ)氏は「メールは仕事の集まりだから、ほかの仕事がわざわざほかの場所にある必要はないのでは?」と語る。

新たな機能によってより意欲的なソフトウェアになった一方で、完全なビジネスユースケースへというフォーカスも明確になった。同氏も認めるように、これまでは収益化にあまり熱心でなく、むしろ無料ユーザーのユーザーベースを拡大することに注力してきた。個々の企業内における、Spike利用のスケールアップを狙ったからだ。しかし中小企業や大企業向けの有料アカウントを導入したときに無料のティアは残したが、メッセージの履歴やノートとタスクの生成のニーズが大きいユーザーは、月額7.99ドルのプランにアップグレードしなければならないようにした(年額なら月あたり5.99ドル)。

本日同社はプロダクトに関するニュースと並んで、シリーズAラウンドによる800万ドル(約8億6400万円)の資金調達を発表した。ラウンドをリードしたのはInsight Partnersで、これにWix、NFX、Koa Labsらが参加した。資金は主に新規の雇用に充て、年内に社員数を倍にしたいと言っている。

Insight Partnersの副社長であるDaniel Aronovitz(ダニエル・アロノヴィッツ)氏は「個々の具体的な企業がこのニーズを抱えているから、市場はとても大きい。彼らが望むのは、コミュニケーションのハブを中央に置いて、そこにありとあらゆるメッセージングチャネルを接続することだ。デジタルのコラボレーションツールの需要は、リモートワークのブームも追い風になって今や急増している」と声明の中で語っている。

Spikeのプラットホームは既存のメールサービスとの互換性が高く、アプリはAndroid、iOS、macOS、そしてWindows向けがそろっている。メールサービスのスタートアップはユーザーの機密データに触れることも多く、プライバシーに関してさまざまな要求を突きつけられる。その結果、ベン-アロヤ氏によれば「Spikeは安全性に関して他社よりもはるかに強力だ。さまざまなメールクライアントのアプリがあるが、Spikeはユーザーデータのいかなる部分にも触らないし、変更や利用、販売することもない」とのこと。

Spikeの調達総額は、これで1600万ドル(約17億1000万円)になる。

画像クレジット: Spike

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新型コロナ需要で空前の成長をみせるInstacartが240億円調達

これまでにない成長をみせているInstacart(インスタカート)は、需要に対応するため新たに資金を調達した。サンフランシスコ拠点の同社は米国6月11日、DST GlobalとGeneral Catalystがリードするラウンドで2億2500万ドル(約240億円)を調達したと発表した。本ラウンドには既存投資家のD1 Capital Partnersも参加し、Instacartのバリュエーションは137億ドル(約1兆4600億円)になった。

Instacartの創業者でCEOのApoorva Mehta(アプオルワ・メフタ)氏の声明によると、調達した資金はショッパーとパートナーに投資し、広告事業と法人事業を打ち切る。そして顧客エクスペリエンスに注力する。また、顧客が時間通りにグローサリーを受け取れるよう、技術・オペレーションのインフラにも投資する。グローサリー注文は対前年比500%増となっている。

今回の調達ラウンドは、武器を所持していなかった黒人のGeorge Floyd(ジョージ・フロイド)氏が警察に殺害されたことを受けて人種問題の緊張が高まっている最中に行われた。フロイド氏の死亡から間をおかずして多くのテック企業がこの悲劇について意見を表明した。Instacartは「実行可能な変化をサポートするため」内部チームに100万ドル(約1億円)を投資する、とメフタ氏は先週ツイートした。100万ドルのうち50万ドル(約5000万円)は店舗内のショッパーとチームにあてられる。そして残りはEqual Justice Initiativeのような非営利組織に提供する。

Instacartのショッパーで活動家のVanessa Bain(ヴァネッサ・ベイン)氏の上記ツイートで言及されていた1000万ドル(約10億円)という数字は、ショッパーが引き続き独立請負業者と分類されるよう、無記名投票対策にInstacartが費やした総額だ。

消費者のためにグローサリーを買って届けるというサービスを独立請負業者にかなり頼っているInstacartは、ショッパーを250%近く増やす計画を発表した。同社のサービスは米国とカナダの3万店で利用可能だ。

Y Combinator卒業生のInstacartは、米国の世帯の85%、カナダの世帯70%超が同社のサービスを利用できるとしている。

新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックでは、同社のサービスは人々にグローサリーを届けるために命をかけて業務を行ったエッセンシャルワーカーによって、重要なものとなった。何百万という家庭がグローサリーストアに行き健康をリスクにさらすことなくグローサリーを入手するのにInstacartのプラットフォームを利用した。その間、同社は需要に対応するため多くのショッパーを雇用している。売上高が増え同社は初の黒字となった、とThe Informationは報道している。しかし急激すぎる成長の中で、多くのショッパーはInstacartとその運営方法に対し納得できずにいる。

ショッパーは何年間も、少なくとも2016年からInstacartに不満を募らせてきた。2016年に独立請負業者はチップ廃止をめぐってInstacartアプリのボイコットを行った。それ以来、独立請負業者と分類されるフルサービスのショッパーは絶えずInstacartに対し声をあげてきた。昨年10月にショッパーは、賃金アップとチップのデフォルト設定を少なくとも10%にするよう求めて抗議活動を行った。新型コロナパンデミック中には、安全を確保するための備品、報酬、疾病手当ポリシー延長を求めて全米でストを行った。これまでにInstacartは一部変更を加えたが、要求の多くはそのままだ。

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スキルマッチングのZehitomoが総額8.2億円を調達、中小企業や個人事業主の集客支援を強化

Zehitomo(ゼヒトモ)は6月11日、シリーズBラウンドで総額8億2000万円の資金調達を完了したことを明らかにした。第三者割当増資による調達で、引受先は以下のとおりでリード投資家はDG Daiwa Ventures。今回調達した資金は、中小企業や個人事業主のオンラインでの集客支援の施策のほか、人材採用に充てる予定だ。

新規引受先

  • DG Daiwa Ventures
  • 環境エネルギー投資
  • 三菱地所
  • PERSOL INNOVATION FUND合同会社
  • エアトリ

既存引受先

  • SMBCベンチャーキャピタル
  • みずほキャピタル
  • Coral Capital(旧500 Startups Japan)
  • DNX Ventures
  • KVP
  • アコード・ベンチャーズ
  • Social Starts
  • ベクトル

写真に向かって左からZehitomoでCOOを務めるジェームズ・マッカーティー氏、CEOを務めるジョーダン・フィッシャー氏

Zehitomoは、カメラマンやヨガ講師から、パーソナルトレーナー、出張シェフ、リフォームや工事事業者まで1000種類以上の職種の事業者と依頼社(一般ユーザー)をマッチングするサービス。同社によると、現在20万社以上の事業者が登録しており、2019年には累計100億円以上の仕事依頼が発生したとのこと。

同サービスの特徴は、事業者が仕事の依頼に対して見積もりを送る際に課金する仕組みを採っており、依頼者からは手数料を取らない点。事業者が見積もりを送る際に課金される金額も平均500円程度で、契約成立後に依頼者から支払われる報酬は事業者が全額を受け取れる。データベースの中から、依頼者が指定した地域や納期、予算や頻度などに合致する事業者を判断し、依頼主に最適な提案を送る「スピードマッチ」機能も特徴の1つだ。

なお、三菱地所が再開発施行者として事業を進めている2021年6月末竣工予定の「東京駅前常盤橋プロジェクトA棟1」に入居する企業の就業者向けサービスについても協業を進めていくという。

データベースセキュリティのjSonarがゴールドマンサックスから約55億円調達

データベースセキュリティのスタートアップであるjSonar(ジェイソナー)がGoldman Sachs(ゴールドマンサックス)から5000万ドル(約55億円)の新規資金を調達した。

同社は、米国マサチューセッツ州ウォルサムとカナダブリティッシュコロンビア州バンクーバーにオフィスを構える。調達した資金でデータベースセキュリティサービスを拡大する予定だ。ゴールドマンはその見返りに、幹部のDavid Campbell(デイビッド・キャンベル)氏がjSonarの取締役に加わる。

jSonarのデータベースセキュリティプラットフォームは、顧客のデータベースがオンプレミス、クラウドのいずれにあっても、すべてを一目で監視することができる。スタッフがインフラ全体のデータベースを簡単に監視し、有益な洞察が得られるよう設計されている。普及しているデータベースプラットフォームすべてをサポートしており、異なるネットワークやデータベースで複数のツールを使用する必要はない。

同社は明らかに正しいことをしている。このプラットフォームは複数の大手銀行、金融機関、保険会社、医療機関の間で人気があり、同社の大きな収益源となっている。

jSonarの共同創業者で最高技術責任者のRon Bennatan(ロン・ベナタン)氏は今回の投資に「興奮した」と語った。

「クラウドの採用、データベースプラットフォームの急増、単なるコンプライアンスにとどまらないデータセキュリティに対する緊急の必要性、暴走するコストへの長年の不満など、企業を取り巻く環境は急速に変化し、当社が急速に拡大する大きな機会を生み出した」と同氏は述べた。

画像クレジット:Andriy Onufriyenko / Getty Images

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半導体メーカーEswinが中国でのチップ生産加速のため約305億円調達

半導体のデザインとソリューションを手がけるBeijing Eswin Computing Technology(ベイジン・エスウィン・コンピューティング・テクノロジー)は新たな投資ラウンドで2億8300万ドル(約305億円)を調達した。世界最大の人口を抱える中国が、チップセットに関して米国や英国に依存している状態から脱却しようと模索している中での資金調達となる。

設立4年の同社によると、今回のシリーズBラウンドはコンピューターメーカーLenovo(レノボ)の投資部門であるLegend CapitalとIDG Capitalがリードした。そしてRiverhead Capital Investment Management、Lighthouse Capital、海寧市、浙江省が参加した。

Eswin Computingはディスプレイやビデオ、AIデータ処理、無線接続向けの集積チップとソリューションを開発している。同社を率いるのはWang Dongsheng(ワン・ドンシェン)氏で、同氏は以前テレビやスマートフォンのディスプレイを製造し、Huawei(ファーウェイ)を顧客に抱える中国の大企業であるBOE Technology Group(BOEテクノロジーグループ)の会長を務めていた。

中国のメディアCaixinによると、BOEはEswinとのビジネス関係を維持(Caixin記事)している。刊行物には、BOEがEswinのチップ関連事業の株式37.35%を保持しているとある。

発表文の中でEswinは今回調達した資金をR&D、製造、人材採用にあてるとしている。これは中国国内でのチップ製造の推進に役立つと考えられる。中国は現在、チップに関して米国と英国の企業にかなり依存している。2019年、米国はセキュリティの懸念と中国との貿易摩擦によりHuaweiをブラックリストに載せた(未訳記事)。

画像クレジット:Getty Images

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全国のベーカリーをD2C化する群馬拠点のパンフォーユーが九州パン市場に参入、アジア圏も狙う

群馬県を拠点とするパンフォーユーは6月9日、福岡県を拠点とするベンチャーキャピタルであるGxPertnersからの資金調達を発表した。第三者割当増資による調達で調達額は非公開。

今回の資本提携により、GxPertnersがGP(無限責任組合員)を務めるファンド(九州オープンイノベーション1号投資事業有限責任組合)のLP(有限責任組合員)をはじめとする九州地域の事業会社との連携を進め、同地域での事業拡大を目指す。さらにアジア圏で日本のパンの需要拡大を見越し、九州地区の流通の利用を検討しつつ海外展開も計画している。

パンフォーユーは、独自のパン冷凍技術と物流網を持つ2017年1月設立のスタートアップ。月額3996円で全国各地のベーカリーから月1回パンが届く個人向けのパン宅配サービス「パンスク」、月替わりで最大8種類を届けてくれる企業の福利厚生を利用した法人向けパンサービス「オフィス・パンスク」、小ロットから冷凍パンを発注できるOEMプラットフォーム「パンフォーユーBiz」などの事業を手掛けている。

一般社団法人日本食品分析センターの検査によると、同社のパン冷凍技術は焼成のあとに1日常温で置いたパンよりも品質が高いことが実証されているとのこと。ベーカリー側は、冷凍庫を用意して同社の技術使ってパンを冷凍すれば、品質を保ったまま全国の消費者に届けることが可能になる。現在25店のベーカリーと提携しており、2020年中に47都道府県の各地域で営業しているベーカリーとの提携を目指す。

レントゲンに代わる低コストのスキャン装置を開発、富士フイルムなどが出資するイスラエル拠点のNanox

医療テクノロジー分野においてはいま、新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックとの戦いに役立つツールやイノベーションに多くの注意が注がれている。そして米国6月4日、とあるスタートアップが新型コロナウイルスとその他の病気の臨床評価をよりアクセスしやすいものにする革新的イノベーションのために資金調達したというニュースが入ってきた。

イスラエルのスタートアップNanox(ナノックス)は小型で低コストのスキャンシステムと「サービスとしての医療スクリーニング」を開発した。これは、高価で大型の装置、それらに対応するレントゲンやCAT、PETなど身体画像サービスに使われるソフトウェアに置き換わるものだ。同社は戦略的投資家の韓国通信会社SK Telecomから2000万ドル(約22億円)を調達したと発表した。

出資に伴いSK TelecomはNanoxの技術を搭載したスキャナーと、スキャンした分だけ課金される画像サービスNanox.Cloudの展開、それらを運用するための5Gワイヤレスネットワーク容量をサポートする。Nanoxは現在、自社技術のライセンスを富士フィルムのような画像業界のビッグネームに許可している。Foxconnはまた、ドーナッツ型のNanox.Arcスキャナーを製造している。

今回の資金調達は厳密には、前回シリーズBラウンドの延長だ。2600万ドル(約28億円)をFoxconn(フォックスコン)や富士フイルムなどから調達すると今年初めに発表した。そしていま同ラウンドは5100万ドル(約55億円)でクローズされ、Nanoxによると約10年前の2011年の創業以来の累計調達額は8000万ドル(約87億円)だ。

Nanoxのバリュエーションは公開されていないが、イスラエルのメディアは12月に、Nanoxが考えているオプションの1つがバリュエーション5億ドル(約545億円)でのIPO(GLOBES記事)だと報じた。我々の情報筋によると、バリュエーションはいま1億ドル(約109億円)超だ。

Nanoxのシステムはデジタルレントゲン検査に関連する専用テクノロジーに基づいている。デジタル放射線撮影法は画像の世界では比較的まだ新しいエリアで、画像をとらえて処理するのにX線プレートではなくデジタルスキャンに頼っている。

Nanoxによると、放射線量は70Bq/kgで、これに対し平均的なCTスキャナーの放射線量は2000Bq/kgだ。製作コストはCTスキャナーが100〜300万ドル(約1〜3億円)するのに対し、Nanoxのものは1万ドル(約100万円)ほどだ。

CEOで創業者のRan Poliakine(ラン・ポリアキン)氏によると、小型の装置で安く、画像の処理のほとんどをクラウドで行えるのに加え、Nanoxシステムは1秒の何分の1かのうちに画像を作ることができ、これにより放射線被曝という点において従来の手法よりかなり安全だ。

画像はこのところかなりニュースで取り上げられている。というのも、新型コロナウイルス患者の症状の進行状態や、新型コロナウイルスに罹っているかもしれない人の肺やその他の器官にCOVID-19がどのくらい影響を及ぼしているのかを確認するために画像が今のところ最も正確な手段の1つだからだ。Nanoxの装置の普及はそうしたケースの対応で役割を果たすが、その一方でNanoxの最終目標はそれよりも大きなものだ。

究極的には、同社はかなり多くの人に病気の早期発見や予防のスキャンを行えるよう、装置とクラウドベースのスキャンサービスをユビキタスのものにしたいと考えている。

「現在、癌と闘うベストな方法は何だろうか。早期発見だ。しかし世界の3分の2が画像へのアクセスがなく、スキャンを受けるために数週間、あるいは数カ月も待たなくてはならない」とポリアキン氏は話した。

Nanoxのミッションはこのギャップを埋めるべく、今後数年間で同社の装置1万5000台を届けることだが、パートナーシップを通じてこのミッション達成に近づいている。SK Telecomとの提携に加え、Nanoxは3月にGateway Groupという企業とのパートナーシップでオーストラリア、ニュージーランド、ノルウェーに装置1000台を配置するための1億7400万ドル(約190億円)の契約書にサイン(Radiology Business記事)したことも明らかにした。

SK Telecomの投資は、通信企業が企業や個人にどのような種類のサービスを再び販売し、提供するかに立ち戻る機会として5Gをいかにとらえているかを強調する興味深いものだ。そしてSK Telecomは中でもヘルスケアを重要な機会として選んだ。

「通信会社は5Gの販売方法をめぐり、機会を模索している」とSK Telecomの会長Ilung Kim(イルウン・キム)氏はインタビューで述べた。「そしていま、5Gデータを使いながら救急車の中で使用されるほどのサイズのスキャナーを思い描くことができる。業界にとってゲームチェンジャーだ」

今後の展望として、Nanoxは同社のハードウェアの納入と、スキャン処理用のクラウドベースのサービスを販売するために提携パートナーを引き続き増やす。しかし、生データから洞察を得るためのテクノロジーの開発は予定していない、とポリアキン氏は述べた。そのため、同社はサードパーティ、現在はAI企業3社と協業していて、今後はこのエコシステムをさらに増やす予定だ。

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(翻訳:Mizoguchi

成功報酬型でコロナ時代の飲食業を支援、「シンクロライフ」運営が2.8億円を調達

写真右からGINKAN代表取締役CEO 神谷知愛氏、同CTO 三田大志氏

グルメレビュー投稿や加盟店利用で暗号通貨が貯まるグルメSNS「シンクロライフ」を運営するGINKANは6月2日、MTG Ventures、ギフティ、オリエントコーポレーションなどから総額約2.8億円の資金調達を実施したことを明らかにした。今回の調達は同社にとってシリーズAラウンドに当たり、これまでの累計調達額は約4億円となった。

シンクロライフはグルメSNSとして、レストランの口コミ投稿・閲覧機能のほか、AIが口コミを分析してユーザーの嗜好に合ったレストランをレコメンドする機能を備える。ユーザーは、投稿やレストラン利用により暗号通貨「シンクロコイン(SYC)」をアプリ内のウォレットに貯めることができ、貯まったシンクロコインをギフティが提供する「giftee for Business」のeギフト購入に使うことが可能だ。

「シンクロライフ」アプリ画面イメージ

飲食店側は、初期費用・月額費用0円、売上の5%の成功報酬で加盟店として参加ができる仕組みとなっている。

シンクロライフのスキーム

インバウンド重視からリピーター見直しへシフトした飲食業界

新型コロナウイルス感染拡大にともなう自粛要請や、緊急事態宣言の発令により、特に都市部の飲食店では営業を自粛したり、テイクアウト販売への転換を余儀なくされていた。

GINKANでは5月1日から、シンクロライフへのテイクアウト商品情報の無料登録を受付開始。同時にユーザーが、情報を掲載した飲食店のテイクアウト利用やレビュー投稿などで飲食店を応援することで、将来のイートイン来店時に利用できる優待券を受け取ることができる機能を追加した(優待券配布はシンクロライフ加盟店が対象)。

また5月28日には、テイクアウト対応店舗をAIがレコメンドする機能も追加。食レビューにもテイクアウト情報の投稿が可能になったほか、タイムラインにもテイクアウト特設フィードを追加した。

テイクアウト情報、レビュー掲載に対応したシンクロライフ

GINKAN代表取締役CEOの神谷知愛氏は、この3月から5月にかけての消費者・飲食業界それぞれの変化について、次のように述べている。

「まず消費者のほうでは、テイクアウト対応店舗が増えたこともあり、“食”の消費方法として、あまり経験がなかった人でもテイクアウトを体験する機会が増えた。またSNSユーザーの動向は緊急事態宣言前の3月から既に変化していて、アクセスの良い街から住居の多いエリアへと投稿・行動はシフトしていた」(神谷氏)

飲食業界の方でも2つの変化があったと神谷氏は言う。「飲食業界というのは従来売上が大きく変動しない業界だが、コロナショックのスタートからウィズコロナに続く過程で大きく売上が変動したことで、固定費が注目されるようになった」(神谷氏)というのが1つ目の変化だ。

「固定費が必要なマーケティングの需要が低下している中で、成果報酬でマーケティングが可能なシンクロライフのような仕組みの需要は上がっている」と神谷氏。実際、4〜5月はリモートのビデオ会議で営業を行っていたGINKANだが、営業活動は増えたそうだ。

もう1つの変化は、飲食店から見た顧客のターゲットだ。「感染拡大前は、一見客、特にインバウンドの顧客に対する戦略が立てられてきたが、今は固定客・リピーターが見直されて、一定以上の割合がないといけないという見方になっている」(神谷氏)

コロナ禍で飲食店の状況は2極化していると神谷氏は言う。「固定客やファンがついている店、地域密着型の店はこの状況でも強い。緊急事態宣言で大幅な営業自粛が始まるまでは、それほど大きく売上を落としていない。4〜5月の緊急事態宣言発令はさすがに影響が大きかったが、宣言解除後、売上が戻らない店もあれば、100%近くまで戻したところもある」(神谷氏)

今後、緊急事態宣言が解除されたとしても、公的な会食などが一気に戻るわけではないだろう、と神谷氏は見ている。「宣言解除で『まずどこへ行こうか』となったときは、好きな店、いつも通っていたところが選ばれる。せっかく外食するなら質を重視したい、という動きは5月後半ごろからあり、しばらく続くのではないか」(神谷氏)

アフターコロナまで活用できるサービス提供で飲食業界に貢献

「消費者・飲食業界両方の変化に対して、GINKANとしては、成功報酬で利用できるCRMプラットフォームとして対応していけると考えている」と神谷氏は話している。新型コロナ感染拡大の影響についても「我々はまだ駆け出しで、これから伸びるところなので、インパクトもそう大きくなかった。指標などもそれほど変わっていない」という。

神谷氏は、今回の調達資金の使途について「アプリ機能、飲食加盟店向けサービス拡充のための開発と、サービス認知、ユーザー獲得のためのマーケティング費用などに充てる」とコメント。また、「新型コロナウイルスの感染拡大で大きな影響を受ける飲食業界のためにも、アフターコロナまでを一気通貫で活用いただけるサービス提供に取り組み、飲食業界の未来に貢献していきたい」とも述べている。

GINKANの本ラウンドにおける第三者割当増資の引受先は以下の通りだ。

  • MTG Ventures
  • ギフティ
  • オリエントコーポレーション
  • セレス
  • 三生キャピタル
  • オークファン
  • DDホールディングスベンチャーキャピタル
  • 三菱UFJキャピタル
  • エスエルディー

GINKANは、2月18日にギフティのeギフトとの連携を発表しているが、「今後さらに各社との連携を深めていく」としている。神谷氏は「大手との事業連携も進んでおり、近く発表できるだろう」と述べており、「株主とはシナジーもある。我々だけでは取り組めない課題に、今ラウンドでは全力で取り組む」と語った。