デジタル人材派遣のJobandtalentが米国進出に向けソフトバンクから129億円調達

スペインのデジタル人材派遣スタートアップJobandtalent(ジョブアンドタレント)がシリーズDの資金調達でソフトバンクのビジョンファンド2から1億ユーロ(約129億円)を獲得した。Jobandtalentはeコマースや倉庫業、ロジスティック、製造などの分野で臨時労働者を必要とする雇用者と人材をマッチングするツーサイドプラットフォームを運営している。

同社の既存投資家にはAtomico、Seek、DN Capital、InfraVia、Quadrille、Kibo、FJ Labsなどがいる。

今回の資金調達は、TechCrunchが1月に報じた1億800万ドル(約117億円)のシリーズCラウンドにすぐさま続くものだ。2009年の創業以来、同社がこれまでに調達した額は3億1000万ユーロ(約400億円)になった。

Jobandtalentはまた、BlackRockからの最大1億ドル(約108億円)のデットによる調達も発表した。

現時点ではデットとエクイティの組み合わせの方が、資本が少ない場合よりも速くマーケットプレイスの成長を加速させることができ、より多くのリソースをプロダクトやテック開発に注ぐことができるとJobandtalentは話す。

テック面についていうと、同社のプラットフォームは人材と仕事をマッチングするのに学習アルゴリズムを使って雇用プロセスをスピードアップしている。また雇用者向けに、労働者のパフォーマンスをリアルタイム追跡して分析するのに使えるCRM(顧客関係管理)も提供している。このCRMは労働者の満足度をモニターし、労働者の自然減を抑制し、欠勤や遅刻のようなメトリックスを追跡するのを手伝うとJobandtalentは話す。

人材向けには、着実にそして簡単にシフトワークを獲得できると約束している。Jobandtalentは求職申し込み管理と給与支払いを1カ所に統合しているために、マーケットプレイス / ワークフォース・アズ・ア・サービスのモデルが人材に継続雇用(例えば連続した一時的な業務を通じて)を提供することができると示唆する。

マーケティングでも、こうした労働者に通常フルタイムの雇用にともなう雇用保障と、年金や有給傷病休暇、健康保険(一部のマーケットでのみ)、訓練コースといった福利厚生を提供するとしている。

共同CEOで共同創業者のJuan Urdiales(ホアン・ウルディアレス)氏によると、新たに調達した資金でJobandtalentは「来年」米国マーケットに参入し、現在展開している8つのマーケット(スペイン、英国、ドイツ、フランス、スウェーデン、メキシコ、コロンビア、ポルトガル)の外に事業を拡大する。

ウルディアレス氏は欧州でさらに2つのマーケット、イタリアとオランダに目を付けていることも認めた。

「米国ではまだ、当社が専門とする分野(eコマース、ロジスティックなど)で大規模に複数の州で事業展開する競合相手を目にしていません。これが、当社が米国で大きなチャンスを手にしていると確信している理由の1つです」と同氏はTechCrunchに語った。

「米国は開拓するのにかなり難しいマーケットになるかもしれません。しかし、多くの欧州企業が米国に事業を拡大し、成功する例が増えています(SpotifyやKlarna、Adyenなど)」と付け加えた。

「当社にもそれが当てはまると信じています。かなりの労働者の権利と複雑な規制環境をともなう欧州で当社のモデルを展開し、当社は米国でプラットフォームを立ち上げて労働者や雇用者に価値の大きな提案を提供する絶好の位置にいます」。

ウルディアレス氏によると、Jobandtalentのプラットフォームは米国でも他国と同様の特典や福利厚生を労働者に提供する。

「当社のマーケットプレイスで提供されている特典や福利厚生はどこの国の原則も満たし、それらはすべて労働者に正規従業員と同じ種の福利厚生や特典を提供することを目的としています。これを実行するにはどの国でもいくらか調整が必要で、米国でも同様でしょう」と述べた。

2020年は労働者8万人超が臨時の仕事を探すのにJobandtalentを活用した、と同社は話す。そしてXPO、Ceva Logistics、eBay、Ocado、Sainsbury’s、Bayer、Santanderなどを含む企業850社超が臨時労働者を確保するのにJobandtalentを使った。

Jobandtalentの売上高ランレートは2016年の500万ユーロ(約6億5000万円)から2020年には5億ユーロ(約646億5000万円)に成長した。これはEBITDAでの黒字につながった、と同社は話す。同社はまた、前年比で100%を超える成長率もうたっている。

声明でのコメントで、ソフトバンクのマネージングパートナーYanni Pipilis(ヤニー・ピピリス)氏は次のように述べた。「Jobandtalentは、フレキシビリティと高品質、信頼できる就業機会のバランスをどうとるかという、現代の労働力に関する重要な問題を解決しています。同社は、労働者のために安定収入と福利厚生を確保しつつ、補充すべき臨時労働職を抱える事業者への高達成と低欠損の人材派遣を提供する追跡記録を持つ、データに基づくプラットフォームを開発しました。同社の成長の次段階でホアンとフェリッペ、そしてチームと提携することにかなり興奮しています」。

シリーズDでソフトバンクからの投資を受けるという決断について、それはソフトバンクが提供できる規模によるものなのか、それともJobandtalentがソフトバンクの他のポートフォリオ企業との潜在的な相乗効果を期待しているのか尋ねると、ウルディアレス氏は次のように語った。「ビジョンファンドは当社と同じような規模の企業と多くの経験を持っており、ビジョンファンドのチームが今回の新たな投資ラウンドで当社に多くの価値を追加してくれると確信しています。当社はビジョンファンドが過去数年に出資した企業やマネジメントチームから多くのことを学ぶことができます。ビジョンファンドは起業家的なマインドセットとテクノロジーやAIがどのように多くの産業をディスラプとするのかについて明らかなビジョンを持っていて、当社のカテゴリーに関して同じビジョンを共有しています」。

カテゴリー:HRテック
タグ:Jobandtalent資金調達ソフトバンク・ビジョン・ファンド

画像クレジット:Jobandtalent

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソフトバンクなどから総額約1710億円調達した不動産仲介スタートアップ「Compass」が上場申請

総額16億ドル(約1710億円)のベンチャー資金を調達したニューヨークに拠点を置く不動産仲介のスタートアップCompassがが新規上場のために証券取引委員会にS-1申請書を提出した。新型コロナウイルスによるパンデミックで経済活動が急減速したこととにともない、スタッフの15%のレイオフを余儀なくされたのはちょうど1年前のことだ。

同社は現在、SoftBank Vision FundがCompassの3分の1強を保有して筆頭株主となっている。Crunchbaseによれば他の投資家にはカナダ年金投資委員会、Fidelity、Wellington Management、Qatar Investment Authority(カタール投資庁) どが含まれている。

同社が最新の資金調達は2019年7月で、会社評価額64億ドル(約6835億5000万円)で3億7000万ドル(約395億2000万円)のラウンドを実施した。同社はハイテクアルゴリズムにより売手、買手、仲介者の三方を益する不動産業界向けマーケットプレイスを構築している。

企業が上場を申請すると我々は、その財務状況を非常に詳しく知ることができるようになる。Compassは通年ではまだ赤字だがここ数年、売上は急増している。

S-1上場申請書によれば、同社の収入は2016年の1億8680万ドル(約199億5000万円)から2020年にはなんと37億ドル(約3951億9000万円)に膨張している。売上増加は主として直近の2年間の成長によるものだ。Compassは多数の不動産エージェントと契約するビジネスモデルであるため、売上の大部分は代理店に直接支払われる。2020年には約30億ドル(約3204億3000万円)の手数料が支払われた。Compassは2020年の純損失は2億7000万ドル(約288億4000万円)で、これは過去2年間とほぼ同額だ。

プラットフォームを利用した取引総数は2018年の2万7000件から2020年には14万5000件に急増し、総取引額(同社が仲介した不動産の価値)も340億ドル(約3兆6320億円)から1520億ドル(約16兆2360億円)へ約5倍に増加した。手数料は不動産価値に対する一定の割合で計算されるためトランザクションの額は売上に直接反映されることになる。2020年12月31日現在、同社のラットフォーム上に登録しているエージェントは1万9385人となっている。

ただしCompassはパンデミック以前からもそれなりのトラブルを抱えていた。2019年9月にWall Street Journalは過去18カ月間に最高財務責任者、最高マーケティング責任者、最高技術責任者を含む多くの幹部社員が同社を離れたと報じている。

【更新】この記事はCopassプラットフォーム上のエージェントの数をアップデートしている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:CompassIPO不動産Softbank Vision Fund

画像クレジット:Smith Collection/Gado / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo, Danny Crichton、翻訳:滑川海彦@Facebook

ソフトバンク・グループがビジョン・ファンド幹部へのインセンティブを半額に

Softbank Group(ソフトバンク・グループ)は米国時間2月8日、2021年3月期第3四半期の決算を発表した。その中には運用額986億ドル(約10兆370億円)のVision Fund(ビジョン・ファンド)の業績も含まれる。最近上場したDoorDash(ドアダッシュ)が数十億ドル(数千億円)の利益をもたらしたこともあり、その数字は魅力的なものだった。これは同ファンドにとって本当の意味での最初の大ヒット投資の1つである。同社は現在18件の投資を回収しており、そのうち10件は全部エグジットし、8件は現在公開市場で取引されている。

だが、同社の決算短信を注意深く見ると、ビジョン・ファンドのリーダーシップに割り当てられていたインセンティブを50億ドル(約5256億円)から25億ドル(約2628億円)に半減させたことが記されている。

この50億ドルのインセンティブ・スキームは、2018年4月にFinancial Times(フィナンシャル・タイムズ)などの出版物が最初に報じたときに物議を醸した。このモデルでは、基本的にソフトバンクが従業員に融資してビジョン・ファンドに出資させるという仕組みで、1000億ドル(約10兆5100億円)の資金調達のクロージングを加速させるためのものだった。同社は2018年第2四半期の決算で初めてインセンティブ・スキームに関する文言を追加し、こう記している。

2018年10月19日、ソフトバンク・ビジョン・ファンドは中間クロージングを行い、追加の出資コミットメント50億米ドルを取得しました。これにより同ファンドの累計出資コミットメント総額は967億米ドル(約10兆1470億円)となります。なお、当該追加出資コミットメントは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの運営に係るインセンティブ・スキームの導入に向けたものです。

それ以来、同社は四半期ごとの決算報告書で50億ドルという数字について一貫した表現をしてきた。しかし、今回の最新の2020年度第3四半期決算では、インセンティブは「25億米ドル(前回の50億米ドルから減額)」になったことが記されている。

ソフトバンクのインセンティブ・スキームは、業界関係者の間で大きな論点となっている。2週間前のフィナンシャル・タイムズ紙の報道によると、ソフトバンクの4人のトップ幹部であるRajeev Misra(ラジーブ・ミスラ)氏、Marcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏、佐護勝紀氏、宮内謙氏は、ビジョン・ファンドに出資するために6億ドル(約631億円)をまとめて貸し付けられたという。その資金の一部は50億ドル(現在は25億ドル)のインセンティブ・スキームから出たものだが、全額がこの特定のプールからのみ充当されたのかどうかは明らかではない。

ソフトバンクがビジョン・ファンドのインセンティブを引き下げたのは、同ファンドの全体的な業績の低迷と、グループに大幅な損失をもたらしたWeWork(ウィーワーク)への悲惨な投資に対応したためと思われる。ビジョン・ファンドとしては最近のパフォーマンスははるかに良くなっているが、これらのインセンティブの一部を排除することで、ファンド全体の業績が向上し、最終的にはソフトバンク・グループの収益が改善されるはずだ。

ビジョン・ファンド1は2020年の時点で新規企業への投資を停止している。第2のファンドは、すべてソフトバンク・グループ自身からの出資で100億ドル(約1兆510億円)の資本を持ち、定期的に投資を行っている。ビジョン・ファンドはまた、2020年12月の1社目に続き、先週末に新たな2つのSPAC(特別買収目的会社)の申請も行っている

関連記事:ソフトバンクがSPACをさらに2社申請

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Softbank GroupSoftbank Vision Fund決算発表

画像クレジット:Carl Court / Staff / Getty Images / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ソフトバンクがSPACをさらに2社申請

SPAC(特別買収目的会社)を巡る熱狂は衰えることなく続いており、時には新しいSPACがほぼ1時間ごとにSECに申請されることがある。

巨大なビジョンファンドとその後継ファンドを運用する日本の通信コングロマリットであるSoftbank(ソフトバンク)は取り残されたくないと考えている。同社は米国時間2月5日、2つの新しいブランクチェック(白紙小切手)会社に関して連続してSPAC登録届出書を提出した。

SVF Investment Corp 2(SVF2)は2億ドル(約210億円)、SVF Investment Corp 3(SVF3)は3億5000万ドル(約370億円)のビークルだ。それぞれのSPACには標準で約15%のオーバーアロットメントオプションがある。つまり、引受会社がオプションを選択したと仮定すると、最終的なサイズはそれぞれ2億3000万ドル(約250億円)と4億ドル(約420億円)になる可能性がある(計算していただくとわかるが、SVF3のオーバーアロットメントは15%よりわずかに小さい)。

2社の興味深い要素の1つは、ソフトバンクのビジョンファンド2に関連する先渡購入契約と呼ばれるものがあることだ。ビジョンファンド2はこの契約に基づき、対象となるスタートアップとの企業結合が始まるときにSPACの株を購入できる。つまり合併に参加する権利が与えられる。ビジョンファンド2はSVF2と1億ドル(約105億円)、SVF3と1億5000万ドル(約160億円)の契約を結んだ。

すべてのSPACと同様、登録届出書は単に資金を調達する意図で提出されているが、最近では大部分の申請が後になってクローズしている。

数字が示すように、ソフトバンクは以前SPACの申請を行っていた。これは2020年12月に申請され、2021年1月7日に正式にクローズした。このビークルは引受人のオーバーアロットメントオプションを含め合計6億400万ドル(約630億円)の資金調達を目標としていた。また、最新のビークル2社と同様、ビジョンファンド2との2億5000万ドル(約260億円)の先渡購入契約も含まれていた。

SPAC2社が探しているのは何か。提出書類によると「私たちはテクノロジーを利用するセクターでの事業を探索、買収、経営する意図があります。その分野で私たち経営陣は他とは異なる経験と洞察を有しています。モバイル通信技術、人工知能、ロボット工学、クラウドテクノロジー、ソフトウェア全般、計算生物学およびその他のデータ駆動型ビジネスモデル、半導体およびその他のハードウェア、輸送テクノロジー、消費者向けインターネットおよび金融テクノロジーが含まれますが、これらに限定されません」。

多くをカバーしているように見えるが、念のために、提出書類では「しかし、私たちは異なるまたは関連する業界の企業との取引を完了するかもしれない」と述べている。つまり基本的に何でも対象になる。

SPACがクローズされるタイミングついて決まった予定はまだないが、市場平均を考えると通常は4〜8週間だ。

カテゴリー:その他
タグ:Softbank GroupSPACSoftbank Vision Fund

画像クレジット:Alessandro Di Ciommo/NurPhoto / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Nariko Mizoguchi

ソフトバンクが375億円のラウンドで中国発のフィットネスアプリKeepに投資、評価額は2082億円に

フィットネスクラスを提供している中国発のアプリ「Keep」は、Peloton(ペロトン)のようなバイクや健康志向のスナックなど、提供するサービスの多様化を続けており、その野心に資金を注ぎ込むために新たな投資家を迎え入れている。

中国時間1月11日、Keepは最近、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが主導する3億6000万ドル(約374億8000万円)のシリーズF資金調達ラウンドを終了したと発表した。このラウンドには、既存の投資家であるGGV Capital、Tencent(テンセント)、5Y Capital、Jeneration Capital、Bertelsmann Asia Investmentsに加え、Hillhouse CapitalとCoatue Managementが参加した。

この最新の資金調達では、設立6年の同社はポストマネー約20億ドル(約2082億円)で評価されていると、関係者がTechCrunchに語った。Keepの広報担当者がTechCrunchに語ったところによれば、同社は現在、株式公開の予定はないという。

Keepは2014年に在宅ワークアウト動画を提供することでスタートし、3年で1億人のユーザーを獲得した。同社によれば現在では、3億人以上のユーザーにサービスを提供しているという。時間をかけて、動画でライブレッスンを行うフィットネスインフルエンサーのエコシステムを育成し、現在ではコースデザイナー、ストリーミングコーチ、動画ストリーミングビジネスに特化した運営スタッフからなるチームを運営している。

同社の主な収益源は、パーソナライズされたサービスを受ける1000万人のユーザーからの会費だという。また、コンシューマー向けの製品ラインも拡大している。例えば昨年同社は、Pelotonのようにビデオ指導ができる、インターネットに接続されたステーショナリーバイクを発表した。また、アパレル、トレッドミル、スマートリストバンドも展開している。

同社は2018年、海外のホームフィットネス市場を狙ってKeepアプリの海外版を発売した。2019年春まではInstagramやFacebook、Twitterなど欧米のソーシャルネットワークに熱心に投稿していた。

Keepによると、今回の資金調達の目的は、中国政府の「国民フィットネス」キャンペーンを背景に、ユーザーへのサービスや商品の改善、フィットネスのプロへのサービス提供など、近年同社が注力してきた取り組みを継続させることにあるという。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドのマネージング・パートナーであるEric Chen(エリック・チェン)氏は、次のように述べている。「中国の人々の所得が増加し、健康意識が高まるにつれ、フィットネスは人々の日常生活に欠かせないものになっていると考えています」。

関連記事:ランナー向けSNSアプリを中心にメディア/ECサービスを運営するラントリップが6000万円を調達

カテゴリー:ヘルステック
タグ:資金調達 フィットネス Softbank Vision Fund

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(翻訳:Nakazato)

ソフトバンク出資のNuroが自動運転トラックのスタートアップIkeを買収

自動運転配達会社のNuro(ニューロ)がIke(アイク)を買収した。Ikeは自動運転トラックの商品化を目指してApple(アップル)、Google(グーグル)、Uber Advanced Technologies Group(ウーバー・アドバンスト・テクノロジーズ・グループ)の卒業生が創業したスタートアップだ。

買収と統合で忙しいシーズンを送った自動運転車業界におけるこの最新の取引は、深い関係と共有するテクノロジーを持つ2社を結びつけた。また、Nuroはローカル配送、Ikeは長距離貨物という異なる分野に自動運転車のテクノロジーを応用しようとしているが、2社の創業者は物流の分野で共通のビジョンがあると言う。

取引の金銭的条件は明らかにされていない。

2社の関係の中でNuroは巨人だ。バリュエーションは50億ドル(約5200億円)、従業員数は600人を超える。情報筋によると、Ikeは約60人の従業員を抱え、昨年時点のポストマネーのバリュエーションは約2億5000万ドル(約260億円)だった。ただし2社の創業者らは、これを古典的なシリコンバレーのアクハイヤー(人材獲得を目的とする買収)だとは捉えていない。Jur van den Berg(ジュール・バン・デン・ベルグ)氏およびNancy Sun(ナンシー・サン)氏と会社を共同で創業したIkeのCEOであるAlden Woodrow(アルデン・ウッドロー)氏によると、Ikeの従業員55名以上と創業者3名がNuroに合流する予定だ。

「会社創業時に掲げた原則をいくつか実現する明確な機会でした」とウッドロー氏は述べた。同氏は12月23日にMediumのブログ投稿で買収を発表した。

ウッドロー氏はTechCrunchに対し、Ikeにはまだランウェイ(資金調達なしで経営できる期間)が残っており、独立経営を続けるために必要な資金があると語った。それでも、自動運転車の会社を商業ベースに乗せるには、5200万ドル(約55億円)を超える資金のプールだけでなく提携が必要だ。Ikeは今秋、DHL、Ryder、NFIの車両にテクノロジーを提供することで合意に達したが、それらはまだ初期段階にすぎない。

Nuroの共同創業者で社長のDave Ferguson(デイブ・ファーガソン)氏はTechCrunchに、「Ikeのチームがどれほど素晴らしいか、そして彼らが開発したテクノロジーの質がどれほど素晴らしいかは極めて明白だと思います」と語った。「Nuroにとって特に魅力的なのはIkeが数年前にNuroのテクノロジースタックのライセンスを取得したためです。Ikeが開発したすべてのテクノロジーはそのスタック上にあり、共通のDNAがあります。Ikeが開発したテクノロジーは非常に簡単に移転することができ、ほぼプラグアンドプレイでシステムに組み込むことができます」

NuroはIkeが開発したテクノロジーを活用して、自社のローカル配達システムに取り込むだけでなく、将来の応用にも利用できるかもしれないとファーガソン氏は付け加えた。

将来の応用とは何か、という問いに答えは出ていない。Nuroによる特許出願は、熱々のホットピザやラテの配達から小型ロボットまでさまざまなアイデアを網羅している。Ikeのチームが加わったことで、Nuroはローカル配達だけでなく、スタートアップのGatik AIが注目を集めた領域である中距離の配達、その他のトラックを使った用途など他の種類の物流への応用へ拡大する可能性がある。ファーガソン氏は、R2と呼ばれるNuroのローカル配達ボットが最初の主要製品であると直ちに指摘した。

NuroはIkeにとって最高の家のように見えるかもしれないが、2つの情報筋はTechCrunchに、Ikeが少なくとも他の自動運転車の会社1社と取引について協議していたと語った。同情報筋は、その話はあまり進展しなかったと付け加えた。

創業物語

2社の創業者は、IkeをNuroのスピンアウトと表現することを好まない。技術面では正しいかもしれないが、2社のルーツは絡み合っている。

Nuroは、元Google(グーグル)のエンジニアのDave Ferguson(デイブ・ファーガソン)氏とJiajun Zhu(ジアジュン・ジュー)氏が2016年6月に創業した。同社は当初ファーガソン氏とジュー氏が独力で経営していたが、2017年6月にはGreylockとBanyanからの投資で9200万ドル(約96億円)をAラウンドで資金調達し、NetEaseの創業者であるDing Lei(別名William Ding)氏にNuroの取締役会の席を与えた。

一方、バン・デン・ベルグ氏とサン氏は2人ともAppleの特別プロジェクトグループで働いていたが、2016年にAppleを去り、Uberに買収された自動運転トラックのスタートアップであるOttoに加わった。Google XのMakaniプロジェクトの製品リーダーであったウッドロー氏も2017年2月、自動運転トラックプログラムのグループ製品マネージャーとしてUber ATGに移った。

2018年にはOttoの創業者のうち最後の1人がUberを去り、自動運転トラックプログラムはひたすら落ちて行った。サン氏、ウッドロー氏、バン・デン・ベルグ氏は2018年春にはUberを離れた。数カ月後、Uberは自動運転トラック部門を閉鎖して自動運転車に集中した。

3人は当初、配達ボットと成長中のチームを収容するには小さすぎるNuroのオフィススペースで働いた。当時、サン氏のフォルクスワーゲンのキャンピングカーがIkeの会議室として使われていた。3人が7月に正式にIkeを設立する前にNuroのチームと数カ月間緊密に連携していたことが、カリフォルニア州とデラウェア州のビジネス記録が示している。Ikeという社名は、ドワイト ・D・アイゼンハワー大統領と彼が連邦補助高速道路法に署名して整備を後押しした米国の州間高速道路システムにちなんでいる。

最初のコラボレーションのポイントは、Nuroが開発したものをトラック輸送の新しい用途にどう応用するかを考えることだった。「これは私たちが独自の方向へ進む機会であり、Nuroがローカル配達に集中する間、私たちはそちらに真剣に取り組みました」とウッドロー氏は最近のインタビューで述べた。

Ikeは、Nuroのテクノロジー、特にハードウェアのデザイン、自動運転ソフトウェア、データの記録、地図、シミュレーションのライセンスを供与される。その見返りに、NuroはIkeのマイノリティ持ち分を取得した。

2018年10月にIkeがステルスモードから抜け出したとき、NuroはIkeとの関係を提携と位置づけ、「Ikeに自動運転とインフラのソフトウェアのコピーを提供し、その代わりにNuroはIkeの株式を取得しました」。

Ikeは小さく始め、仕事を進めるにあたりに穏便なアプローチを選んだ。2019年2月までにIkeは約30人を抱え、最終的にはBain Capital VenturesがリードするシードとシリーズAの資金調達ラウンドで5200万ドル(約55億円)を調達した。Redpoint Ventures、Fontinalis Partners、Basis Set Ventures、Neoもこのラウンドに参加した。Bain Capital VenturesのパートナーであるAjay Agarwal(アジェイ・アガワル)氏がIkeの取締役会に加った。

自動運転トラックに携わる他社とは異なり、Ikeの創業者は当時のブログ投稿で、最初の自動運転トラックを走らせることにこだわっていたわけではなかったと述べた。自動運転トラック配送業界の複数の情報筋によると、Ikeはシステムエンジニアリングのアプローチ、モーションプランニング、シミュレーションツールで業界内で高い評価を得ていた。

Ikeが静かに仕事を進めている間に、Nuroの方は2019年2月にソフトバンク・ビジョン・ファンドが9億4000万ドル(約980億円)を投資したおかげで注目を集めた。Nuroはチームを600人以上に拡大し、2018年にKrogerと提携しアリゾナで配送サービスを試験的に実施した。当初トヨタのプリウスを使用していたが、R1配達ボットに移行した。Nuroは、CVS、Domino’s、Walmartといった企業とも提携している。同社は、レストラン、食料品店、その他の企業向けのローカル配達サービス向けに設計されたR2と呼ばれる第2世代の車両を開発した。R2は今年初めに連邦政府から自動運転車の運用を許可する安全規定適用除外の認可を受けた。

投資家はNuroから離れたわけではなかった。新型コロナウイルスのパンデミックがシリコンバレーの多くのスタートアップの計画を遅らせた。しかしローカル配達の可能性など明るい点もある。Nuroは11月、シリーズCラウンドで5億ドル(約520億円)を調達した。ポストマネーのバリュエーションは50億ドル(約5200億円)だった。T. Rowe Price Associates, Incのアドバイスを受けたファンドや投資家がリードし、Fidelity Management & Research CompanyやBaillie Giffordなどの新しい投資家が参加した。このラウンドにはソフトバンク・ビジョン・ファンド1やGreylockといった既存投資家も参加した。

次に起こるのは何か

2社はNuroでよりシニアな役割を担うIkeの多くのエンジニアとの融合を始める。ウッドロー氏はCEOではなくなり、同氏の新しい役職は決まっていない。同氏の仕事は、自身の経験に基づく製品開発になると思われる。

Nuroがローカル配達に重点を置いているため、トラックを商品化するというIkeの使命は今のところ棚上げになっている。ローカル配達に目を向けるというその決定は、Ikeの創業者らがトラックへの情熱について何度も語った多くのコメントと対立するようにみえる。

「私たちが家で食べたり、触れたり、持ったりするものはすべて、おそらくどこかの時点でトラックに乗せられていたはずです」とサン氏は10月のTC Sessions: Mobilityイベントで述べた。「トラック輸送が実際に私たちの日常生活へ与える影響の大きさがまだまだ理解されていません」

しかし、ウッドロー氏と共同創業者らは、製品を世に送り出し、「私たちの多くが何年にもわたりさまざまな企業で取り組んできた自動化の約束を果たすこと」について語っている。

「結局のところこれは、Nuroはその約束を果たし、すぐにそれを実行し、非常に大きな規模で実行するという、信じられないほどユニークで本当に説得力のある立場にあると私たちは考えています」とウッドロー氏は言う。「それがNuroの申し出を受け入れ、こうして前進すると決めた原動力でした」

カテゴリー:モビリティ
タグ:Nuroソフトバンク・ビジョン・ファンド買収 / 合併 / M&A自動運転

画像クレジット:Bryce Durbin

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(翻訳:Mizoguchi

中南米のフィンテック投資ブームに乗りブラジルのオンライン金融会社Creditasが264億円調達

中南米全域で金融サービスのスタートアップが巨額の資金を集め続ける中、ブラジルでオンライン融資事業を展開するCreditas(クレディタス)は、新たに2億5500万ドル(約264億1000万円)の資金調達を行った。

同社の与信ポートフォリオは10億レアル(約203億円)を超え、これまで5回のラウンドで5億7000万ドル(約590億5000万円)の外部資金調達を行っているため、新たなラウンドでは17億5000万ドル(約1812億8000万円)の企業価値になる。

Creditasは、中南米全域における金融サービス系スタートアップ投資ブームの恩恵を受けた最新の企業だ。CB Insightsのレポートによると、2020年になってから、ラテンアメリカにおけるフィンテック系スタートアップへのベンチャー投資は、2014年の5000万ドル(約51億8000万円)から2020年には139件で21億ドル(約2175億3000万円)を超えるまでに成長しているという。

今回のラウンドの投資家にはLGT Lightstone、Tarsadia Capital、Wellington Management、e.venturesAdvent Internationalの関連会社であるSunley House Capitalなどの新規投資家が含まれている。これまでに出資していたSoftBank Vision Fund 1、SoftBank Latin America DFund、VEF、Kaszek、Amadeus Capital Partnersもまた、同社にさらなる資金を投入するために戻ってきた。

「Creditasは、ブラジルとメキシコの巨大な未開拓の有担保融資市場に参入するための初期段階にあるところです」と、SoftBank Latin America DFundのマネージング・パートナーであるPaulo Passoni(パウロ・パッソーニ)氏は声明で述べている。

同社の成長は、ラテンアメリカ全域における新しい金融商品のニーズと、ラテンアメリカの金融サービスに取り組むスタートアップへの投資で大きな勝利を収めてきたKaszek Venturesのような投資家の洞察力の両方を証明するものだ。

「シリーズAでの投資以来、我々の道のりは本当に素晴らしいものでした。チームはビジョンを実行し、Creditasは顧客の生涯にわたる主要な金融ニーズに応えるアセットライトなエコシステムへと進化しました」と、Kaszek Venturesのマネージング・パートナーであるNicolas Szekasy(ニコラス・セカシ)氏は声明の中で述べている。

レッドポイントのe.venturesファンドも、ここ数年ラテンアメリカへの投資に注力し、成功を収めてきた。

「Creditasは、ブラジル人がリーズナブルなレートで金融ニーズをコントロールできるようにすることで、顧客や投資家に大きな価値をもたらす、愛される消費者向け商品を生み出しています。レッドポイントであるe.venturesを通じてシード段階から関与してきた私たちは、ブラジルのフィンテック業界に変革をもたらすCreditasを、我々のグローバル成長ファンドでサポートできることに興奮を感じています」と、e.venturesの共同設立者でありマネージングパートナーであるMathias Schilling(マティアス・シリング)氏は述べている。

Creditasはこの資金を利用して、住宅ローンや自動車ローンのほか、顧客の給料を担保にするベイデイローンや小売オプションとしての後払いローンなど、サービスの拡大を計画している。

同社は他の市場への進出も視野に入れており、その足がかりとしてメキシコ市場に目を向けている。

2012年にサンパウロのベリーニ通りにある5平方メートルのオフィスで創業したCreditasは、現在では数百人の従業員を擁し、担保付き融資のマーケットプレイスと独立した住宅・自動車融資事業を基盤とした強固な事業を展開している。

また、同社は初めて四半期決算を発表し、前年同期の7,490万ブラジル・レアル(約15億2000万円)から4050万レアル(約8億2000万円)に損失が縮小していることを示した。

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タグ:Creditasラテンアメリカ資金調達ソフトバンク・ビジョン・ファンド

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(翻訳:TechCrunch Japan)

ソフトバンクグループが同社初の特別買収目的会社のIPO申請を米国時間12月21日に行うとの報道

Axiosによると、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズ)は米国時間12月21日月曜日にも、同社初の特別買収目的会社(SPAC)の新規株式公開(IPO)を通じて、5億〜6億ドル(約518〜621億円)の資金調達を申請する可能性があるという。

ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズは2つのビジョンファンドを運用しており、今後もさらに2つのSPACを計画していることが報じられている。

ソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズのRajeev Misra(ラジーヴ・ミスラ)CEOがMilken Institute Global Conferenceで講演した際に、SPACを計画していること(CNBC記事)を明らかにしたのは2020年10月のことだった。特別買収目的会社によりビジョンファンドが民間企業に投資する別の方法を提供できるだけでなく、一般の投資家がSoftBank(ソフトバンク)のポートフォリオに投資することを可能にする。

特別買収目的会社は他の企業の合併や買収を目的に設立される非上場企業であり、伝統的な株式市場への上場への上場に代わるものとして、2020年になって人気を集めている。

これはソフトバンクにとって初のSPACとなるが、同社の投資先企業の1つである不動産プラットフォームのOpenDoorは、最近SPACを通じて上場した。もう1つの投資先であるインドネシアのeコマース大手のTokopediaも、パンデミックの影響でIPO計画が中断した後、Richard Li(リチャード・リー)氏とPeter Thiel(ピーター・ティール)氏が支援するSPACを通じての上場を検討している(Financial Times記事)。

TechCrunchはソフトバンク・インベストメント・アドバイザーズにコメントを求めている。

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カテゴリー:その他
タグ:ソフトバンクソフトバンク・ビジョン・ファンド特別買収目的会社

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

運送業者の積荷共有を手配するFlock Freightが119億円調達、ソフトバンクやボルボらが出資

何千、何万台というトラックが毎日貨物を載せて米国の幹線道路を走り、消費財、電子機器、自動車、農作物を配送センターへ、最終的には家庭へと送り届けて経済を支えている。そのトラックの内側はほとんどが半分空っぽだ。カリフォルニア州サンディエゴの設立5年のスタートアップFlock Freight(フロック・フレイト)は、その場所が業界を変えると信じている。

そしていま、それを試して実行するための資金を手に入れた。

米国時間12月2日にFlock Freightは、シリーズCラウンドでSoftBank Vision Fund 2(ソフトバンク・ビジョンファンド2)から1億1350万ドル(約118億6000万円)調達したと発表した。既存出資者のSignalFire、GLP Capital PartnersおよびGoogle Venturesも参加し、戦略パートナーであるVolvo Group Venture Capitalが新たに少額を出資した。SoftBank Investment AdvisersのマネージングパートナーであるErvin Tu(アービン・トゥ)氏がFlock Freightの取締役に就任する。これまでに同社は総額1億8400万ドル(約192億2000万円)の資金を調達し、資金調達後の会社価値は5億ドル(約522億3000万円)になる、と本件に詳しい情報筋がBloomberg(ブルームバーグ)の速報を裏付けた。

ここ数年、テクノロジーでトラック輸送を変えようとするスタートアップが数多く出現している。トラック輸送は米国内の輸送の70%以上を受け持つ米国経済の柱であり、彼らはそれをもっと効率の良いマシンに変えようとしている。ほとんどのスタートアップは、トラック運転手と運送業者を結ぶデジタル運送ネットワークを作ることに焦点を合わせている。

しかしFlock Freightは、貨物そのものに注目した。この会社はさまざまな貨物を1つの共有積載として集約することで貨物輸送の効率を高める。Flock Freightによると、同社のソフトウェアは、多くのトラックが積載量の半分以下しか貨物を載せていない(業界でLTLと呼ばれている)伝統的な「ハブとスポーク」システムを回避する。同じ方向に行く貨物を1台のトラックにまとめることによって、運送関連の二酸化炭素排出量を40%減らせると同社はいう。

新たな資金は従業員を増やすために使われる。現在同社には129名の従業員がいる。

「テクノロジーによるワークフローの自動化によって効率を改善するデジタル貨物マッチング方式と異なり、Flock Freightはテクノロジーを使って、貨物輸送の効率を高める新しい運送モデル(共有積載)を作りました。Flock Freightのアルゴリズムによって、運送業者は長さ44フィート(13.4m)までの荷台のLTL(空きスペース)問題を心配しなくてよくなります。代わりに 「shared truckload」(共有積載)として利用できるのです」とFlock FreightのファウンダーでCEOのOren Zaslansky(オーレン・ザスランスキー)氏が声明で語った。「運送業者はFlock Freightの効率のよい共有積載ソリューションを利用して需要の増加と高まる緊急性に対応できます」。

このうたい文句には、VolvoやSoftBankをはじめとするさまざまなベンチャーキャピタルや企業投資家を引きつけるだけの説得力があった。

「Flock Freightは何十万という運送業者のサプライチェーン効率を改善します。私たちの投資は同社が事業規模を拡大し、より大きな市場シェアを獲得する能力を加速することが目的です」とSoftBank Investment Advisersのマネージング・パートナーであるトゥ氏は語った。

関連記事:トラック輸送の改善に取り組むサンディエゴのFlock Freight

カテゴリー:モビリティ
タグ:Flock Freight物流SoftBank Vision Fund資金調達

画像クレジット:Flock Freight

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

電動キックスクーターのTierがソフトバンクがリードするシリーズCで263億円調達

ベルリン拠点のマイクロモビリティスタートアップであるTier(ティア)がシリーズCラウンドで2億5000万ドル(約263億円)と巨額の資金を調達した。本ラウンドをリードしたのはSoftBank Vision Fund 2で、同ファンドのチームがまだリスクとポテンシャルの高い賭けにフォーカスしていることを物語っている。

念のために記しておくと、SoftBank(ソフトバンク)はVision Fundを通じて多くのレートステージ企業に投資してきた。ポートフォリオにはNuro、Getaround、GetYourGuide、DoorDash、Grab、WeWorkなどの名が並ぶ。しかしスクーターシェアのスタートアップに投資するのは今回が初めてだ。

Tierの既存投資家であるMubadala Capital、Northzone、Goodwater Capital、White Star Capital、Novator、RTP Globalも今回のラウンドに参加している。Financial Timesによると、Tierのバリュエーションは10億ドル(約1054億円)を少し下回る。

Tierは米国ではあまり知られていないが、欧州で急速に事業を拡大してきた。現在10カ国80都市で展開している。利用できる電動キックスクーターの数は6万台だ。

LimeやBird、Dottなど他の電動キックスクーターレンタルスタートアップと同様、Tierでもアプリを使ってスクーターの施錠・解錠ができる。請求書は数分もせずに届く。

新たに調達した資金で、Tierはサービス提供都市と車両を増やし、新たなプロダクトも投入する。同社はまた、車両を増やすのに重要な融資限度額を決める過程にある。

そしてTierは競合相手と差別化を図ろうとしている。例えば、同社はユーザーがバッテリーを交換できる第4世代のスクーターの開発に取り組んでいる。

画像クレジット:Tier

ほとんどのスクータースタートアップがすでにデッキ部分に交換可能バッテリーを搭載し、マイクロモビリティ企業がそうしたバッテリーの取り替えのために町中を徘徊している。しかしTierはそうしたバッテリーをユーザーたちが取り替えられるよう、目のつくところにバッテリーを設置したいと考えている。

だからこそTierは欧州でのエネルギーネットワーク構築を視野に入れている。小規模店はTierと提携して4つのスロットがあるバッテリードックを提供することができる。ユーザーはライドの終わりにバッテリー交換と無料クレジットを獲得するためにそうした店に立ち寄ることができる。このバッテリーネットワークはGogoroが台湾で展開している充電ステーションネットワークを彷彿とさせる。

DottのようにTierも、自社をシェアリングエコノミー企業ではなくロジスティック企業と認識している。十分な支払いを受けていないフリーランスのパートナーに頼ってコストを下げる代わりに、同社はプロセスを最適化し、一元化されたシステムを採用しようとしている。

他に差異化を図っている点として、Tierはユーザーのために折りたたみ式ヘルメット(未訳記事)をハンドルバー下のボックスに用意している。古いスクーターが交換時期にきたときは、Tierは改装してmyTIER上でドイツの消費者に販売する。同社はまたベルリンの電動モペッドの会社も買収した。

Business Insiderによると、Tierの2020年第3四半期決算はEBITDAベースで黒字だった。しかし同社は2020年上半期に赤字を計上している。人々は夏にスクーターによく乗る傾向があるため、スクーター利用には季節性要素がある。

また、現在も続いている新型コロナウイルスパンデミックのためにマーケットがどのように進化するか予想するのは難しい。しかしTierはいま、当面展開するだけの十分な資金がある。

カテゴリー:モビリティ
タグ:TierSoftBank Vision Fund資金調達

画像クレジット:Tier

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(翻訳:Mizoguchi

ゴーストキッチンの動きを探るソフトバンク・ビジョン・ファンド2がOrdermarkに約125億円を投入

「私たちは分散型のゴーストキッチンを構築します」という一文には、無数の投資家を呼び寄せるものがある。Ordermark(オーダーマーク)を支える最高経営責任者Alex Canter(アレックス・キャンター)氏も、そこをよくわかっていた。

29歳のこのCEOは、実際に分散型ゴーストキッチンを作った。そして、ソフトバンクの最新のビジョン・ファンドの説得に成功し、1億2000万ドル(約125億円)の投資を調達したことを米国時間10月27日に発表した。

「私たちは、Nextbite(ネクストバイト)というこのサービスを通じて、さらに多くの注文がレストランに入る機会を公開しました」とキャンター氏。「Nextbiteは、UberEats(ウーバーイーツ)、 DoorDash(ドアダッシュ)、Postmates(ポストメイツ)にのみ存在するデリバリー専門レストランブランドのポートフォリオです」。

Nextbiteの話を聞いた直後のソフトバンクは、あまり乗り気ではなかった。

最新のビジョン・ファンドの投資家たちが初めてキャンター氏と会ったのは、2019年、Ordermarkが前回の資金調達を発表した後だった。キャンター氏がちょうどNextbiteの実験を開始した時期だったのだが、いまではその事業は同社に大きな収益をもたらすまでになり、2021年には同社の事業の柱になると期待されている。

Ordermarkの先進的な技術プラットフォームと革新的な仮想コンセプトレストランが、レストラン業界を変革すると私たちは信じています」と、SoftBank Investment Advisers(ソフトバンク・インベストメント・アドバイザー)の業務執行社員Jeff Housenbold(ジェフ・ハウゼンボルド)氏は声明の中で述べている。「アレックスとOrdermarkのスタッフは、独立系レストランが直面している問題を深く理解しています。独立系レストランのオンラインでの注文受け付けを最適化し、空いているキッチンで収益を倍増させるという彼らのミッションを支援できることに、私たちは胸を躍らせています」。

これは興味深い方向転換だった。なぜなら同社はGrubHub、PostmatesUber Eatsといったさまざまな配達サービスにオンラインで入ってくるデリバリーの注文を、レストランに代わって一括管理する集中型ハブとしてスタートしているからだ。

キャンター氏は、レストラン事業の新参者ではない。彼の家族は、ロサンゼルスで最も有名なデリカテッセンの1つであり、家族の名前を冠したCanters(キャンターズ)のオーナーだ。そしてOrdermarkは、多種多様なデリバリーの注文で大混乱に陥っているレストランの裏方を助けて管理する企業としてスタートしている。

現在キャンター氏は、1つのレストランブランドの所有者ではなく、15のブランドを運営している。Cloud Kitchens(クラウド・キッチンズ)、Kitchen United(キッチン・ユナイテッド)、Reef(リーフ)などと違い、Ordermarkは新しいキッチンの建設や運営は行わない。その代わりに、準フランチャイズとして機能するよう厳選したレストランの使われずに遊んでいるキッチンスペースを利用している。

Ordermarkの一部のデリバリー専用コンセプトレストランのロゴ(画像クレジット:Ordermark

レストランのコンセプトはほとんどが内部で開発されているが、Ordermarkはセレブのスポンサーも受け入れていることもある。同社のNextbiteサービスは、ラッパーのWiz Khalifa(ウィズ・カリファ)が経営する「大麻でラリった人のためのスナック」が売りのデリバリー専門レストランHotBox by Wiz(ホットボックス・バイ・ウィズ)と提携している。

キャンター氏が立ち上げた最初のブランドは、The Grilled Cheese Society(ザ・グリルド・チーズ・ソサエティー)だ。ロサンゼルスのナイトクラブや、東海岸の個人経営のレストランの空いているキッチンを利用して足場を築き、現在では米国内に100カ所を数えるまでになった。

Nextbiteがどのような成長をもたらすのか、それを示してくれたのは、おそらくHotBoxの成長だろう。キャンター氏によればこのブランドは、10月初めに立ち上げられ、同月末には50の都市に拠点を築くまでに大きくなったという。

Nextbiteは、Ordermarkのデリバリー集約技術がなければ存在し得なかったともいえる。「Ordermarkの技術は、オンラインの注文をデバイスで集約するだけでなく、いくつものブランドもデバイスに集約できるようデザインされています」。

キャンター氏によれば、Nextbiteブランドとしてフルフィルメントパートナーの契約を結んだレストランは、追加の初期費用はほとんどかからず、相応の利益が得られるという。レストランは、Ordermarkのブランドとして受けた注文1つにつき30%のマージンを受け取ることができるとキャンター氏は話す。

Nextbiteのレストランネットワークに加わるには、Ordermarkによる事業の審査に通る必要がある。同社では、異なる地域でもうまくやっていけるレストランか、時々の流行に合わせたメニュー開発ができるか、といった点を参考にする。例えばNextbiteは先日、ホットチキンサンドのブランドを立ち上げたが、それがいくつものデジタルデリバリーサービスで人気上昇中の品目であることを事前に調査していた。

選ばれるのは、OrdermarkのNextbite事業が生み出すデリバリー専門ブランドのスタイルに即したメニューを提供できるレストランだ。

メニュー開発には、デンバーで活躍するシェフのGuy Simsiman(ガイ・シムシマン)が、新メニュー開発責任者として参加している。

「私たちは、拡大できるとわかったものを作っています。そして、適切なタイプのフルフィルメントパートナーを探すために、大量の事前審査を行っています」とキャンター氏。「フルフィルメントパートナーとしてレストランと契約するとき、私たちは彼らを審査し、彼らが行うべきことをトレーニングします。……コンセプトに合致したフルフィルメントパートナーになれるよう、彼らを導くのです。かなり大量のトレーニングを実施します。その後は、品質をモニターするための覆面調査やレビューの調査も行います」。

NextbiteはOrdermarkの事業の未来を担うことになるだろうが、健全性は全体に安定している。同社のシステムを通じて処理される注文の総額は、10億ドル(約1040億円)を超える勢いだ。

「現在は、私たちのレストランが新型コロナ禍を生き延びることにピンポイントで集中しています。そこで私たちにできる最良の方法が、Nextbite事業の収益増にすべてを賭けることなのです」とキャンター氏は、同社の重点は今後どこに置かれるのかとの質問に答えていった。

「Nextbiteは、長い時間をかけて開発してきました。2019年の新型コロナウイルスが流行る前に、私たちはこれを市場投入しています。米国中のすべてのレストランが、新型コロナの打撃を受け、高い創造性が求められるようになりました。客が店に歩いてこなくなった穴を埋める代替手段を、彼らは求めていました」と彼は話す。Nextbiteがその答となった。

カテゴリー:フードテック
タグ:OrdermarkフードデリバリーゴーストキッチンSoftBank Vision Fund資金調達

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(翻訳:金井哲夫)

ハイテク創薬技術のXtalPiがソフトバンク主導の巨額シリーズCラウンド336億円を調達

米国と中国を拠点とするAIを活用した創薬バイオテック企業XtalPi(晶泰科技)は、ソフトバンク・ビジョン・ファンド率いる熱烈な投資家たちによるシリーズCラウンドで3億1900万ドル(約336億円)を調達した。明らかに価値が高く魅力的な分野でのこの9桁のラウンドには、他にも多くの投資家も参加している。

XtalPiは、新薬になり得る有望な分子を特定し、それに関するできるだけ多く知識を得る必要性に迫られたPfizer(ファイザー)などの大手製薬会社に協力している。そこはまさに競争の世界。AIでそのプロセスをスピードアップすると主張する企業には、巨額の資金が集中する。だがこの分野では、これといって際立ったブレイクスルーはいまだ見られない。とはいうものの、重要なプレイヤーたちがそれを我慢できるとは、とうてい思えない。

2014年に創設されたこの企業は、目標とする分子の非常にローレベルのシミュレーションと予測の提供を目標としている。どちらも原子レベルでの物理特性のシミュレーションと伝統的なデータ科学に基づく作業により、行き詰まりを回避し、より実りある方向へ探索の道を延ばしている。

こうした進展はデジタル世界でのことだが、結果の検証と前進のためには、どの企業もいまだに大勢の経験豊富の科学者の手と、さらにはそれを支える施設が必要となる。それが、歩みの遅い製薬業界のスピードアップに貢献するのだが、安く簡単に行えるものではない。

AI(実際には機械学習の手法だが)に支えられたバイオテック企業は、製薬大手が賭けを行う中で、巨額の資金調達ラウンドや大きな利益をもたらす(またはその可能性のある)提携を獲得してきた。Insitro(インシトロ)の創設者Daphne Koller(ダフニー・コラー)氏も、ほんの2週間前にDisruptでそんな話をしていた

ご想像に違わずXtalPiは、現在の事業をアルゴリズムの改良し、より多くのデータ、より強力なコンピューターパワーで拡大するために今回の資金を活用する計画だ。

「AIは、製薬の生産性という課題を解決する鍵を握っていると、私たちは確信しています」と、会長で共同創設者のShuhao Wen(温书豪、ウェン・シュハオ)氏は広報資料で述べている。「具体的には、XtalPiのAIを原動力とするプラットフォームは、製薬業界の研究の効率性と成功率を高め、新薬の発見と開発のコストを削減します。私たちはより多くのファースト・イン・クラス(画期的医薬品)をもたらし、飛躍的に進歩した薬を市場に送り出し、未解決の医療問題に対処して全世界規模で患者に恩恵を与えるこのプラットフォームを、クライアントに提供できる日を心待ちにしています」

関連記事:まったく新しい手法で新薬開発を進めるInsitro、「デジタル生物学は素晴らしい分野」と創業者が力説

カテゴリー:バイオテック

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(翻訳:金井哲夫)