クアルコム出資のチップメーカーKneronがフォックスコンからも資金を調達

サンディエゴと台北に拠点を置くスタートアップがエレクトロニクス業界の最大手数社からひっそりと資金ならびに契約を獲得している。エネルギー効率の良いエッジAIチップを専門とするKneron(クネロン)は、台湾の製造大手Foxconn(フォクスコン)と集積回路メーカーWinbond(ウィンボンド)から戦略的資金を調達した。

本ラウンドの1年前に、Kneronは香港の大富豪Li Ka-Shing(リ・カシン)氏のHorizons Venturesがリードした4000万ドル(約42億円)のラウンドをクローズした。他の主要投資家としては、Alibaba Entrepreneurship Fund、Sequoia Capital、Qualcomm、SparkLabs Taipeiなどが含まれる。

KneronはFoxconnとWinbondの投資額については両社からの要望を受けて非公開としたが、創業者でCEOのAlbert Liu(アルバート・リュー)氏はTechCrunchとのインタビューで「8桁」のディールだったと述べた。

2015年に設立されたKneronの最新プロダクトは洗練されたAIアプリをクラウドに頼ることなく動かすことができるNPU(ニュートラルネットワークを組み込んだ人工知能専用のプロセッサー)だ。KneronはIntel(インテル)とGoogle(グーグル)のチップを直接引き受けており、それらは自社の製品よりもエネルギー消費が大きいとKneronは主張する。同社は最近、Qualcomm(クアルコム)台湾の元エンジニアリング責任者Davis Chen(デイビス・チェン)氏を採用し、人材の強化を図った。

Kneronの顧客には中国のエアコン大手Gree(グリー)やドイツの自動運転ソフトウェアプロバイダーTeraki(テラキ)が含まれ、そして今回の資金調達で世界最大の電気機械メーカーをクライアントに持つことになる。戦略的提携の一環として、KneronはFoxconnのスマートマニュファクチャリング、それから新しく導入された電動車両向けのオープンプラットフォームで協業する。その一方でWinbondとの協業はMCU(マイクロコントローラー)ベースのAIとメモリーコンピューティングにフォーカスする。

「低電力のAIチップはセンサーを埋め込むのが簡単です。我々はみな、一部のオペレーションラインではセンサーがかなり小さいことを知っています。なので大きなGPU(グラフィックスプロセッシングユニット)やCPU(セントラルプロセッシングユニット)を使うのは、特に電力消費が大きな懸念材料である場合においては簡単ではありません」とリュー氏は述べた。同氏はKneronを設立する前、QualcommとSamsung(サムスン)のR&D部門に在籍していた。

競合他社と異なり、Kneronは製造からスマートホーム、スマートフォン、ロボティクス、監視、決済、自動運転までさまざまなユースケース向けにチップをデザインする。チップをただ作るだけでなく、チップにAIソフトウェアを埋め込む。SenseTimeやMegviiといったクラウドを通じてAIサービスを実現している中国のAI寵児たちと差異化を図る戦略だ、とリュー氏は述べた。

Kneronは、他の企業に比べると資金調達に関してはそれほど積極的に動いてはこなかった。巨大なラウンドを通じての資金は事業を急拡大する財源となる。創業6年のSenseTimeはこれまでに26億ドル(約2700億円)を調達し、創業9年のMegviiは約14億ドル(約1454億円)を銀行口座に確保した。それに比べ、KneronはシリーズAラウンドでわずか7000万ドル(約73億円)を調達したにすぎない。

Kneronは、中国のAI新興企業のようにIPOを検討している。同社は2023年に黒字化達成を予想していて、「おそらくIPOにはいい頃でしょう」とリュー氏は述べた。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:Kneron資金調達FoxconnQualcomm

画像クレジット:Kneron

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(翻訳:Mizoguchi

SNSでのオンラインハラスメントや虐待に対抗するBlock PartyがTwitterでサービス開始

米国時間1月15日、PinterestのエンジニアだったTracy Chou(トレイシー・チョウ)氏は、ソーシャルメディア上で人々がより安全に感じられるようにすることを目的としたアンチハラスメントのスタートアップBlock Partyを設立した。同社のサービスは現在、Twitter(ツイッター)でのみ利用可能で、人々が自分が見たくないコンテンツをフィルタリングして、Block Partyが「ロックアウトフォルダ(Lockout Folder)」と呼ぶものに保存するというものだ。それは、ユーザーが後でそれを確認したい場合にフィルタリングされたコンテンツのすべてを見つけられる場所となる。

「(そうしたくなくても)これらの人々が存在することを認めるのは重要だと考えています」とチョウ氏はTechCrunchに語った。

存在しないふりをしていると、有益な情報や本物の人脈を逃してしまうかもしれない。

「そこには、失われてしまうかもしれない良いものがたくさんあり得ます」と彼女はいう。「私たちが、Twitterのような公共のプラットフォームを使うのには理由があります」。

よりネガティブな側面があるとすれば、と彼女は説明を続けた。それでもあなたは、あなたの物理的な安全を脅かす誰かがいるかどうかを確認するために定期的にチェックする必要があるかもしれない、と。

「ヘルパー」は、Block Partyのユーザーエクスペリエンスの中で大きな役割を果たしている。ユーザーは信頼できるヘルパーにロックアウトフォルダへのアクセスを許可して、彼らはそこに何か役に立つ情報があるかどうかを知らせたり、単にトロールをブロックしたりすることができる。

「誰か他の人が処理するのを助けてくれたり、懸念される情報にフラグを立ててくれたりすることで、とても気が楽になります。その負担を共有できるのは良いことです。ほとんどのプラットフォームの現在の設計では、虐待を受けている人だけに対処の負担を強いることになっていますから」と彼女は語った。

ロックアウトフォルダは、会社や弁護士などにハラスメントの証拠を提示する必要がある場合に記録を残すツールとしての役割も果たしている。

画像クレジット:Block Party(スクリーンショット)

「人々の生活をより楽にしようとしているのです」とチョウ氏はいう。「報告書を提出するたびに、再び虐待を見なければならないのは、とてもつらいことです」。

Block Partyは、Facebook(フェイスブック)やQuoraのようなプラットフォーム企業で働いていたチョウ氏自身の経験そして、テック業界における多様性とインクルージョンのため積極的に発言する活動家としての彼女の経験から生まれた。Quoraでは、ブロックボタンは、プラットフォーム上で嫌がらせを受けた後、彼女が最初に作ったものの1つだったとチョウ氏は筆者に話してくれた。

「内部にいて、製品やエンジニアリングチームがどのように動いているかを見てきたという視点もあります。」とチョウ氏は語る。「しかし、DEI(Diversity・Equity・Inclusion、多様性・公平・インクルージョン)の活動家としての経験から、チームがマイノリティーを欠く場合に製品の決定にどのように影響を与えるかを見てきました」。

Block Partyは今のところTwitterユーザーだけが利用できるが、目標は他のプラットフォームを追加して、複数のプラットフォームで自分をターゲットにした嫌がらせに対処できるようにするという。またBlock Partyは現在無料だが、サブスクリプションプランを導入する予定だ。それでも, チョウ氏は、無料版が常に存在することを想定していると述べた。

現在までにBlock Partyは150万ドル(約1億5000万円)弱の資金調達を行っている。プレシードラウンドは、Precursor VenturesのCharles Hudson(チャールズ・ハドソン)氏が主導した。他の投資家には、元TechCrunch共同編集長のAlexia Bonatsos(アレクシア・ボナトソス)氏、元RedditのCEOであるEllen Pao(エレン・パオ)氏、Facebookの元セキュリティ最高責任者Alex Stamos(アレックス・ステイモス)氏などがいる。

カテゴリー:パブリック / ダイバシティ
タグ:Block PartyDEI資金調達SNSハラスメント

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(翻訳:Nakazato)

米政権交代と大統領就任式時のTwitterの対応が明らかに

Twitter(ツイッター)は、Joe Biden(ジョー・バイデン)氏が第46代米国大統領に就任し、Kamala Harris(カマラ・ハリス)氏が副大統領になる米国時間1月20日水曜日の就任式に向けた計画を明らかにした。

Twitterはトランプ政権の終焉にともなう政権移行をプラットフォーム上でどのように扱うか詳細をつづったブログ投稿の中で、「今年、複数の困難な事情により、ほとんどの人はこの歴史的なセレモニーをバーチャルで体験することになります」と述べた。

「Twitterはこの政治イベントを人々が視聴して語り合うための場所を提供し、また公式な政府コミュニケーションチャンネルの移行で主要な役割を果たします。当社は、人々がTwitter上でどんなものを目にするべきなのか、明確にしておきたいと思います」。

もちろん就任式は報道機関や公式の就任式アカウント、@JCCIC(大統領就任合同委員会)、そして@BidenInauguralなど複数のアカウントによってTwitter経由でライブストリームされる。

Twitterはまた就任式を同社のUS Elections Hubでもストリーミングする。このハブではキュレートされたモーメント、リスト、フォローすべきアカウントをシェアする、としている。

就任するとバイデン氏とハリス氏は、@POTUSと@VPのTwitterアカウントを運用できる。就任式の日に新政権に移行する他のアカウントには@WhiteHouse、@FLOTUS、@PressSecといったものが含まれる。

Twitterはまた、ハリス氏の夫であるDouglas Emhoff(ダグラス・エムホフ)氏が@SecondGentlemanという新しい公式アカウントを使うことも明らかにした(なぜ「SGOTUS」ではないのかは明らかではない。それはそうと、この頭字語は魅力的ではない。

【更新】Twitterの広報担当は「@SecondGentleman」アカウントは本人の選択によるものだとTechCrunchに語った。

オバマ大統領がオフィスを去ったときにそうしたように、Twitterはトランプ政権の現在の組織アカウントを米国立公文書記録管理局(NARA)に移す。つまり、同政権の奔放なツイートとアカウント履歴は公開されたままとなる(アカウントのユーザーネームはアーカイブ用ステータスを反映したものに変わる。たとえば@POTUSは@POTUS45として保管される)。

しかしながら、すべて大文字で怒鳴ったり、習慣の自己憐憫を吐き出したりと政治的な棍棒として頻繁に使われたトランプ大統領の個人アカウントはすでに削除された。行動規範を繰り返し破ったとしてTwitterは先週トランプ大統領を永久停止にした。なので、NARAに保管されるトランプ大統領のアーカイブとは大きな違いがある。

「アーカイブ化と移行プロセスは公式の政府Twitterアカウントでのみ行われます」とTwitterは認めた。

@POTUSと組織アカウントの移行では、前政権のフォロワーを自動的に引き継がないことを我々は2020年後半から知っていた。しかしそれがなぜなのか、Twitterは明らかにしていなかった。

米国時間1月15日、@POTUSと他の公式アカウントの現在のフォロワー(3330万人)は、アカウントの新しい持ち主をフォローする「オプション」を含むアーカイブプロセスについてのノーティフィケーションを受け取る、とTwitterは繰り返した。

これはトランプ大統領が当時のオバマ大統領の@POTUSから1400万人のフォロワーを受け継いだ2017年から大きな変更だ。

この件についてTechCrunchが尋ねると「フォロワーの移行について、このブログにある以上のことはコメントしません」と広報担当は述べた。

奔放な大統領のサポーターが議事堂と議会下院で大混乱を起こそうと警察の警戒線を破り、米議会議事堂で起こった米国時間1月6日のカオス的な事件を考えると、恐怖をともなう2021年の政権移行でテックプラットフォームが自社のツールを別の歴史的暴動(あるいはより悪いもの)をライブストリームするのに使われないようにするのは当然だ。

暴動後もトランプ大統領は、不正投票によって選挙が盗まれたと虚偽の主張を展開し続けた。

しかしトランプ大統領は今週初めのTwitterによる個人アカウント停止を、自身が語る新しい動画を公式の@WhiteHouseアカウントに投稿することで出し抜いたとき、大きな嘘への直接的な言及は避けた。

大統領は動画で「議事堂襲撃」と表現し、「先週目の当たりにした暴力をはっきりと非難する」と主張し、団結を呼びかけた。しかしTwitterは大統領の投稿を削除することなく、プラットフォーム上で大統領が発言できることに厳しい制限を設けた(また公式の@POTUSチャンネルへの投稿も制限した)。なのでトランプ大統領は発言に関する紐をかなりきつく縛られている状態だ。

また大統領は動画で、「直近にあった自由なスピーチへの前代未聞の暴力」と表現したアカウント停止に対する言葉による攻撃をいくつかの発言に制限している。発言ではテックプラットフォームの検閲を「間違って」いて「危険」とし、「今必要とされているのは互いに耳を傾けることであり、黙り込むことではない」とも付け加えた。

この文言にはいろいろとあるが、トランプ大統領の苦痛と譲歩、最後の結束の求めが、自分から力が失われているのを感じているときに出てきたということを見逃すべきではないだろう。

最も注目すべきは、力のあるテックプラットフォームが大統領のヘイトメガフォンを無効にした後に結束の要求があったことだ。プラットフォームはトランプ大統領が民主党全国大会をラフに扱い、市民の規則を破ることを許してきた特別免除の日々に終止符を打った。

2021年の大統領就任式がいかにこれまでと異なるものになるか推測したり、Twitterのようなプラットフォームが最初から一貫してトランプ大統領にルールを適用していたらどうだっただろうかと思い巡らしたりするのはかなりおもしろい。

我々はロックダウンという状況にあり、バイデン氏が政権を握るまでの日を数えている。そして何よりもスムーズな政権交代を願う。

TwitterのCEOであるJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は今週、Twitterは「健全な会話を促進する」というミッションで失敗したと述べたが、それは極めて正しい。Twitterは何年もの間、オンライン上の有害性についての警告を無視してきた。少なからず、トランプ大統領は有害で分裂的なプロダクトだった。

Twitterの政権移行対応についてブログ投稿の中の「公共の会話の保護」というタイトルのわずかな部分で、同社は今後しばらく「暴力の扇動、攻撃の計画、選挙結果についての誤情報の故意的なシェア」のためにプラットフォームが使われるのを防ごうと取っているステップを提示した今週初めの投稿に言及している。

こうした対策には、主にQAnon陰謀論に関連するコンテンツ共有のための7万ものアカウントの停止、市民活動の阻害に関するポリシーの一層の強化、ラベルを貼ったツイートに関するインタラクションの制限の適用、トレンドや検索に登場する暴力的なキーワードの阻止が含まれる。

「法執行当局とのコミュニケーションを含め、こうした取り組みは就任式まで続き、必要に応じて状況の変化にリアルタイムに対応します」と付け加え、さらなる騒ぎの可能性に備えている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Twitterアメリカドナルド・トランプ米国大統領選挙ソーシャルメディアSNS

画像クレジット:Patrick T. Fallon/Bloomberg via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

今週の記事ランキング(2021.1.10〜1.14)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「GoogleのAIが新たなハイブリッド焼き菓子レシピを考案」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

広告効果測定のiSpotが同業のAce Metrixを買収して広告の感情効果を重視

ISpot.tvが今日(米国時間1/14)、Ace Metrixを買収したことを発表した。テレビやビデオの、広告効果の測定を行う二社が、これで合体する。

ISpotの創業者でCEOのSean Muller氏によると、両社にはお互いを補完するソリューションがある。氏は曰く、「単純に言うと、企業が広告を買う理由は二つしかない。ひとつは事業の成果を伝えることであり、もうひとつはブランドの知名度と好感度とインパクトを上げるためだ」。

氏によると、これまでのiSpotは最初の部分で強く、テレビとストリーミングの両方で広告のリーチと会話率を測定してきた。一方Ace Metrixは、広告が消費者の感情に与える効果を測定する。そこで、両社が合体すれば「一つのプラットホームで完全なソリューションを提供できる」。

Muller氏によると、マーケターたちは、控えめに言っても、目まぐるしく変化するニュースの情況に対応しようと苦労しているから、広告が与えるブランドのインパクトを測定することがこれまでになく重要になっている。

氏は曰く、「今の企業は政治をはじめ、ありとあらゆることに何かを言うことを強制されている。しかも、そんなメッセージがどのように受け止められているかを理解することが決定的に重要だ。クリエイティブの作品に投資するときには、メッセージの照準がぴったり合っていることと、狙ったとおりの感情を喚起することがとりわけ重要だ」。

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Crunchbaseによると、Ace MetrixはHummer Winblad Venture PartnersやWPP、Palomar Ventures、Leapfrog Venturesなどから、これまでに2500万ドルを調達している。

買収の財務的条件は公表されていないが、iSpotによると、Aceの45名の社員は同社に入り、総勢で240名の社員数になる。AceのCEO Peter Daboll氏は、iSpotのチーフ・ストラテジー・オフィサーになる。Aceのロサンゼルスのオフィスは、そのまま残る。iSpotの本社はワシントン州ベルビューにある。

Muller氏によると、AceのSaaSの年商は「数千万ドルの上半分の方(5千万ドル以上)であり、キャッシュフローは黒字」だ。両社の顧客を合わせると、500社以上になる。

Muller氏曰く、「両社の統合はさっさとやりたい。すでにその作業を始めている。われわれは、ワン・カンパニーでワン・ビジョンの会社になり、AceのプロダクトはiSpotのプロダクトの一環になる。ただし、それらのプロダクトからAceの名前は外さない」。

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(未訳、有料記事)

画像クレジット: iSpot.tv

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

創業2年のNUVIAがQualcommに約1460億円で売却される

素晴らしいことはと言えば? 2年でユニコーンになることだ。もっと良いことは? 2年以内にユニコーンステータスのままイグジットすることだ。

Qualcomm(クアルコム)は米国1月13日、高性能コンピューティングのスタートアップNUVIA(ヌビア)を、運転資金と負債の一部を除いて14億ドル(約1460億円)で買収すると発表した。

TechCrunchは、NUVIAが2019年後半の創業時にシリーズAで5300万ドル(約55億円)を調達し、また数カ月前にMithril(ミスリル)からシリーズBで2億4000万ドル(約250億円)を調達した際に詳細に紹介した。同社はApple(アップル)の多くのスターチップエンジニアのアイデアで生まれた。エンジニアらはコンピューティングの巨人のAシリーズのチップに取り組んだ。そのチップがAppleのiPhoneとiPadを強力にした。

(これまでは)ラップトップコンピューター用だったAppleの新しいMシリーズチップはその目がくらむようなエネルギー効率とパフォーマンスの点でほぼ革新的と言えるような組み合わせだ。NUVIAの創業者は、高性能を実現し、それをデータセンターにも反映しつつ、パワーエンベロープを管理した経験を活用したいと考えていた。データセンターが機能するために必要な電力の規模が非常に大きく、クラウドでのAIアプリケーションの需要に応じて必要な電力も増加していることから、NUVIAがそのケーキを手に入れて食べることができる、つまり、クラウドコンピューティングの電力とコストを削減しながら高い性能を実現できるとと期待されていた。

Qualcommのプレスリリースによると、NUVIAのテクノロジーはQualcommのチップのラインナップに組み込まれる予定だ。5Gに焦点を合わせたSnapdragonチップを中心にQualcommが統合を主導する。NUVIAの創業者と従業員はQualcommに合流する模様だ。取引は米国の規制当局の承認を得る必要がある。

NUVIAは次世代シリコンスタートアップの新星の中で最も魅力的な企業の1つだったが、創業者の1人と有名な元AppleエンジニアのGerald Williams III(ジェラルド・ウィリアムズ3世)氏、そして同氏の元雇用主との間の法廷闘争に巻き込まれた。Appleは2019年、ウィリアムズ氏に対し民事訴訟を起こし(カリフォルニア州サンタクララ上級裁判所、19-cv-352866)、Appleとの契約上の義務に違反して以前の同僚をNUVIAへ勧誘しようとしたと主張した。ウィリアムズ氏は自身の動議で反撃し、それ以来両者は証拠開示の手続き中だ。先月最新の動きがあり、訴訟が進む中、Appleとウィリアムズ氏は特定の文書を互いに引き渡すよう要求した。

その訴訟のタイミングがNUVIAの迅速なイグジットにどう影響したか、またQualcommとサプライヤーとしてのAppleとの非常に深い関係がより迅速な和解に寄与するのかどうかは不明だ。TechCrunchはNUVIAの広報担当者にコメントを求めた。

訴訟はNUVIAにかかる暗雲だったが、最終的な結果としては、約2年間でベンチャーキャピタルから3億ドル(約310億円)をわずかに下回る金額を調達した、14億ドル(約1460億円)の価値を持つユニコーンのイグジットとなった。Mithrilにとっては短期間での方向転換になるため、おそらくそれほど興奮しているわけではないと思われるが、Capricorn Investment Group、Dell Technologies Capital(DTC)、Mayfield、WRVI Capitalなどの初期からの投資家の投下資本からのリターンはもっと良いはずだ。そしてもちろん、創業者のリターンはさらに良いに違いない。

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画像クレジットArtystarty / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

米議事堂暴動後、代替ソーシャルアプリと暗号化メッセンジャーがアプリストアの上位に躍進

MeWe(ミーウィ)、CloutHub(クラウトハブ)を始めとするテック巨人に取って代わろうとするソーシャルメディアがアプリストアの上位を占めている。最近トランプ大統領がFacebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)などの主要ソーシャルプラットフォームから追放され、直近には保守系ソーシャルアプリのParler(パーラー)がApple(アップル)App StoreGoogle Playの両方から削除された結果だ。Parlerが削除されて以来 “free speech”(言論の自由)を謳うソーシャルネットワークが急速にダウンロード数を伸ばしている。

2012年5月にスタートした次世代ソーシャルネットワークのMeWeは、その中でも最大の新規インストール数増加を享受している。

このアプリは米国大統領選挙とそれを巡るFacebookやTwitterといった巨大プラットフォームによる誤情報管理が始まって以来、安定した成長を続けている。主要ソーシャルネットワークは自社のポリシーを強制し、 新たなルールを作ってまでトランプ氏とその支持者がシェアするコンテンツを制御しようとした。そこには、選挙に不正があったという、数十件の訴訟にも関わらず立証されていない彼らの根拠なき主張も含まれている。

現在までにMeWeは世界で1600万回インストールされていると、アプリ調査会社のApptopia(アップトピア)は報告している。しかし、先週水曜日(米国時間1月6日)以降だけみてもアプリは世界で20万回近くダウンロードされている。新規ダウンロードの大部分は米国ユーザーによるもので、14万3000回近くを数える。

そのユーザーの大半は、Parlerがアプリストアを追われた結果MeWeにやってきた人々だ。Appleは1月9日土曜日にPartlerを排除し、その結果MeWeのランクは急上昇した。土曜日と日曜日だけで、MeWeの米国における新規インストール数は11万200回に達した。

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同社が本誌に伝えたところによると、直近の72時間で100万人のメンバーが新規登録し、その後も1時間あたり2万人以上の新規メンバーが増えている。

アプリストアのトップチャートは、ダウンロード総数だけでなく新規インストールの速度も反映しているので、MeWeは最近のトレンドを受けて非常に早くトップ10に躍り出た。

1月10日時点で、MeWeは米国App Storeの無料アプリ部門で7位にランクされていた。今日11日にはすでにそれを上回っている。

これは、昨年10月にはApp Storeのトップチャートに名前すらなかった非主流のソーシャルアプリとして異例の伸びだ(ランク外というのは1500位以下で、事実上順位の追跡が不可能という意味だ)。ただしMeWeは、その期間にソーシャルネットワーク部門でチャート入りしたことはあった。

画像クレジット:App Storeのスクリーンショット

Parler禁止を含め最近の出来事の恩恵を受けているもうひとつのアプリが、比較的新参のCloutHubだ。

2019年1月にスタートしたこのアプリは、「社会・市民・政治ネットワーク」のための言論の自由を切り口としたソーシャルネットワークと自称している。同サービスのウェブ・サイトには、「誰もが自分の考えを主張できる場」を提供したいと書かれている。

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現在までのCloutHubの有効インストール数は25万5000回にすぎないが、先週、正確には6日水曜日以降だけで3万1000回以上増えている(CloutHubは新規ユーザーの急増に苦闘しているようで、新規登録やログインがしばしばタイムアウトになった)。アプリは米国App Storeで現在11位にランクされている。

画像クレジット:App Storeのスクリーンショット

トップチャートに入った次の2つのアプリは名前間違いによる。

Mashable(マッシャブル)の最新記事は、”Parlor”という名前のアプリが、,禁止された “Parler” と間違えられていると報じている。記事に引用されているSensor Towerのデータによると、”Parlor” は12月だけで4万回ダウンロードされている。

Apptopiaによると、このソーシャルチャットアプリは2011年5月に開業し、全世界のダウンロード数は860万回だ。しかし6日水曜日から日曜日までだけで、11万5846人の新規ユーザーを獲得した。その多くは”Parler”を探していたと思われる。そのうちの9万9220人以上が土曜日と日曜日に登録しており、Parlerの削除が始まった時期と一致する。AppleがParlerに対する措置を講じたのは土曜日の遅くだったが、スペリング違いで “Parlor” に遭遇したユーザーはたくさんいただろう。

10日日曜日時点で、”Parlor” は米国iOSアプリ全体トップチャートのナンバー4になっている。

一方、”Gab News”(ギャブニューズ)というアプリは、ワシントンDC、ジョージタウン地区専門のローカルニュースアプリであるにも関わらず、流行している。これは、以前のParlerユーザーが代替として推奨していた”Gab”というずっと前に禁止されたアプリと間違えたためだ。Appleは2016年にポルノコンテンツを理由にGabの配布を拒否し、後にヘイトスピーチを含むアプリの提供を禁止するポリシーのために再度拒否した。Gabは2017年にGoogle Playで公開することができたが、すぐに同じくヘイトスピーチを理由に削除された

しかし、”Gab News” は本稿執筆時点でApp Storeトップ無料アプリチャートの44位に入っている(ダウンロード数は入手できなかった)。

次はRumble(ランブル)という保守派のためのYouTube相当品だ。このアプリは2020年1月に公開して以来全世界で240万回インストールされたとApptopiaは推計している。6日水曜日以来、9万1916回の新規ダウンロードがあり、そのうち7万3700回以上が米国内だった。これも米国App Storeで78位となり、2020年12月19日の1484位から急上昇した。

ただし、一連の動きのきっかけになったのはParlerの禁止だけではないことを言っておかなければならないだろう。

画像クレジット:Google Playのスクリーンショット

大型テック企業に対する反発は常に存在しており、力が大きくなりすぎたと、党派を問わず多くの人たちが感じている。

政府は昨年来、Apple(アップル)、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)などの企業について、ビジネスモデルや業務慣行を反トラストの視点から全世界の市場で調査している。FacebookとGoogleは、プライバシー方針についてユーザーからも監視の目を向けられている。特にAppleが、全アプリにユーザーデータの扱い方を開示するプライバシー・ラベルを付加することを各社に義務付けて以来、いっそう圧力が高まった。

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その結果、一部の人たちは自分が保守派であるからだけでなく、プライバシーを重視しているという理由で代替ネットワーキングアプリに目を向け始めた。その結果、Signal(シグナル)やTelegram(テレグラム)といった暗号化メッセージングアプリや、Googleに代わる検索エンジンであるDuckDuckGo(ダックダックゴー)が最近人気を呼んでいる。

これらのアプリもこの一週間に勢いを増した。Signalは現在米国App Storeの第1位であり、Telegramが2位、DuckDuckGoは8位だ。2020年10月中頃、それぞれの順位は618位、79位、715位だった。Apptopiaによる。DuckDuckGoは2019年から2020年にかけて前年比62%成長し、米国、英国、カナダ、オーストラリアで第2位の検索エンジンになったことも本誌に伝えた。

連邦議会議事堂の暴動を受け、FBIが反乱者の逮捕を始めたことで、プライベートメッセージング・プラットフォームを探しているユーザーがいることも注目に値する。Signalは7日木曜日以来32万5000人の新規インストールがあり、Telegramは33万600人以上だった。

代替ソーシャルネットワークや代替メッセージングアプリへの急速な転換は、今後アプリストアがポリシーを徹底させるのがいかに困難であるかの予兆だ。プラットフォームはヘイトスピーチを配信したり暴力の助長を許しているアプリに対して断固たる措置をとっているが、その動きは人々が次の代替アプリをダウンロードするよりも遅くなりがちだ。

同時に、人気の出たアプリはコンテンツの管理に苦労するかもしれない。たとえばすでにMeWeでは、行き過ぎたヘイトスピーチや暗殺要求が見られている。同社が公式声明でその種のコンテンツを調査、削除すると言っているにも関わらずだ。

これらの言論の自由を謳う代替アプリの将来はどうなるのか。Amazon(AWS)がホスティングを拒否し、つい最近トランプ陣営との繋がりを断ったStripe(ストライプ)のような決済サービスも将来オンライン支払いの処理を拒否する可能性があるなか、先行きは不透明だ。そうなったときは、民間資金を募って独自のインフラストラクチャーを構築したり、ユーザーに届けるための代替配信システムとしてウェブやサイドローディングを探し求めて生き残りを図るのかもしれない。

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画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

IPOを果たしたWishの投資家、ウルフソン氏は初日の株価を気にしない

Founders Fund(ファウンダーズファンド)がまだ非常に若いベンチャー企業だったとき、ジャスティン・フィッシュナー・ウルフソン氏を初代社長として迎え入れたことには、何の不思議もないだろう。スタンフォード大学から2つの学位を取得し、学校の学生団体に資産管理サービスを提供する組織のCEOとして2年間過ごしたフィッシュナー・ウルフソン氏は、ベンチャーファンドでためらうことなく自分の意見を述べた。実際、フィッシュナー・ウルフソン氏は、ファウンダーズファンドがSpaceX(スペースX)に対して当初計画していたよりもずっと大きな投資を行ったのは、同氏がスペースXへの投資を推し進めたからだと言っている。

フィッシュナー・ウルフソン氏は、Facebook(フェイスブック)の2012年のIPO以前にフェイスブックで働いていた友人のおかげでもっと良いチャンスを見つけるまでの3年間、ファウンダーズファンドに留まった。その友人たちは所有している株を清算する方法を探し始めていた。選択肢はあったが、同氏の中では適切な選択肢ではなかった。さらに同氏は、フェイスブックのような多くの企業がもっと長く未上場のままでいると予測していたと言っている。フィッシュナー・ウルフソン氏はファウンダーズファンドに別れを告げ、137 Ventures(137ベンチャーズ)を設立して、創業者、投資家、従業員から追加発行分の株式を取得した。

これは10年前のことで、同社は順調にいっているようだ。2019年、同社は4回目のファンドを2億5000万ドル(約259億円)の資本コミットメントでクローズし、運用資産は10億ドル(約1035億円)を超えた。1回の投資をおよそ10社から12社にしぼって行うという同社のアプローチも功を奏しているようだ。2020年9月末以降、同社の投資先企業3社(パランティア、エアビーアンドビー、ウィッシュ)が公開市場に参入した。

TechCrunchは、フィッシュナー・ウルフソン氏から長時間にわたって話を聞き、137ベンチャーズの事業の仕組みや、企業の選別方法から、従業員に既得ストックオプションを長く保有させている企業が及ぼす影響まで詳しく聞いた(「期限が切れようとしている膨大な量の株式を持っている人たちからの絶望的な電話がなくなりました。私は、このような電話がかかってこないことにすっかり満足しています。そういった状況にいる人たちにはとても申し訳なく思うからです」と同氏は語っている)。

私たちは、137ベンチャーズの投資先に含まれているスペースXの早期取引についても話した。

読者はこちらから会話全体を聞くことができるが、今回は、その会話からウィッシュを中心とした内容を抜粋して紹介する。ウィッシュはディスカウントeコマース企業で、2020年に行われたIPOは不発だったと言われている。

TechCrunch(以下TC):137ベンチャーズの投資先企業の2社(パランティアとエアビーアンドビー)は公開市場に参入し、非常にうまくいきました。これとは別に、ウィッシュは上場初日に株価が急落しました。ウィッシュのIPOをどう判断しますか。投資家はこの会社を誤解していると思いますか。

ジャスティン・フィッシュナー・ウルフソン氏(以下JFW):投資界が新規上場企業を理解するには長い時間がかかると思います。結局のところ、IPOは1日だけなんですよね。本当に重要なのは、その企業が今後10年、20年の間にどのように業績を上げていくかです。

私はMicrosoft(マイクロソフト)やAmazon(アマゾン)、もっと最近ではフェイスブックに注目しています。フェイスブックの株価は株式提供後の1、2週間で50%下落しましたが、素晴らしいビジネスを続けています。明日、明後日、市場がどうなるかはまったくわかりません。しかし10年にわたって拡大していく持続可能な優れたビジネスを構築できれば、最終的にうまくいきます。

ウィッシュはビジネスを拡大し、業績を向上させています。 共同創業者兼CEOのPeter Szulczewski(ピーター・シュルチェフスキー)氏は、私がこの業界で出会った中で最高の経営者の1人だと思います。そしてウィッシュはモバイルに関して多くのイノベーションを成し遂げてきました。ウィッシュのプラットフォームには多くの発見があります。店舗でのピックアップの仕組みは非常に革新的でした。ウィッシュは、何百万平方フィートもの倉庫を購入する必要がないアセットライトな方法を採用し、消費者が商品を迅速に入手できるように支援しています。

TC:米国とヨーロッパにある小規模店との間でウィッシュが開始したパートナーシップについてお話ししていましたね。このパートナーシップでは、収納スペースに余裕のある店がウィッシュの商品の引き渡し場所となり、購入者が商品を受け取りに来たときに、その店の客足が少し増えるということですね。これは、ウィッシュのかつての運営方法からの大きな転換です。以前のウィッシュはUSPS経由で中国から非常に安く商品を出荷していましたが、中国の経済状況は今は変わってきています。そうですよね。

JFW:その通りです。ウィッシュは中小企業の客足が伸びるように支援しています。客足は常に大切でしたが、現在の環境ではこうした種類の企業にとってさらに重要になるでしょう。またウィッシュはその地域の消費者が何を求めているかを把握しているため、企業がウィッシュのプラットフォーム全体に蓄積されたデータを活用し、より高い販売収益を上げられるように支援しています。また1か所に商品を出荷するため、非常に多くの人々からの注文を集約できます。これにより物流や出荷にかかる時間、コストが削減されます。消費者は、徒歩または車で5分から15分かけて店舗に出向き、ウィッシュから届いた商品を簡単にピックアップすることができます。こうした仕組みによりウィッシュは、時間は少々かかっても構わないので、商品をより良い価格で手に入れたいという価値観を持った消費者をターゲットにしています。

TC:ウィッシュは中国から安価な商品を手に入れられる場所として知られています。ウィッシュは、主力商品をより多く展開しようとしている今、市場での認識をどう変えていこうとしていますか。

JFW:ウィッシュはまだ市場全体に浸透していないと思います。ですから、その認識を変えるために、多くの取り組みが求められるかどうかはわかりません。率直に言って、ウィッシュのことを知らない人たちはまだたくさんいます。そして市場の進化を見ていると、小売業者がますます増え、小売業者と商品の両者の品質について顧客から返されるデータも増加していることがわかります。そうしたデータはすべて、ウィッシュの非常に優れたシステムで処理されるため、小売業者はそのデータを活用して商品の品揃えを改善し、顧客が求めるものを販売できるようになります。

TC:会社の収益が一定しないのは、サービスの品質にバラツキがあるからだと思いますか。ウィッシュは2018年におよそ57%の成長を遂げ、2019年には10%と成長が落ち込みましたが、今年の最初の9か月で再び成長が上向きました。このような成長の変動があったのはどうしてだと思いますか。

JFW:あらゆる企業は、こうした成長サイクルを経て、効率性に重点を置くようになります。成長だけを重視すると、成長を遂げた後に、それまでの取り組みを台無しにし、効率が低下してしまうという傾向があります。しかし、目を向ける必要があるのは、経営効率を上げる仕組みです。ですから基礎となる指標に注目すれば、2018年から今年にかけての、ウィッシュの成長サイクルにおいても経営効率が改善していることが確認できると思います。

TC:ウィッシュの株式は「急騰」しませんでした。一方、Snap(スナップ)の元幹部であるImran Khan(イムラン・カーン)氏がCNBCに語ったことによると、エアビーアンドビーやDoordash(ドアダッシュ)などが行った最近のIPO後の株価急騰は、株式を引き受けた銀行家の「言語道断な無能力さ」によるものです。これらの株が急騰したのは、銀行家の無能力さが原因だと思いますか、それとも単に市場の不安定性によるものだと思いますか。

JFW:この質問の答えを実際に知っている人はいないでしょう。このケースが示しているのは、結局のところ、初日の株価から有意義な情報は得られないということです。

TC:これらの企業への絶大な支持が流通市場の株価を押し上げているのでしょうか。どのように思いますか。

公開株価は確かに重要です。公開株価は最終的には非公開市場に影響しますし、その逆もまた然りです。非公開市場での評価と公開市場での評価が同時に大きく異なることはありません。ですから、市場が動けば、必ず投資尺度も変わります。ただ、こういったことは平均値で語られる場合がほとんどです。人々は1社または1つの尺度だけに注目しますが、必ずしもすべての企業について調べたうえでそうしているわけではありません。すべての企業に注目することは非常に難しいですからね。

しかし株価が法外な例は必ず存在します。同時に割安な例もあります。確かに投資家としては、より低価格の優良企業により多くの資金を投資したいでしょう。しかし焦点を当てるべきなのは常に優良企業です。長期的に事業を拡大しようとしている企業を見つけることができれば、投資尺度や評価額を気にし過ぎない限り、その企業は投資にうってつけの企業になるでしょう。

TC:現在どの企業を調査していますか。まだWebサイトに掲載されていない投資は何ですか。

JFW:Snapdocs(スナップドックス)です。同社は不動産業者が住宅ローンの処理やその他の文書業務をデジタル管理するのを支援する会社で、2020年10月に6000万ドル(約63億円)の資金調達をクローズしました

同社の創設者兼CEOであるAaron King(アーロン・キング)氏は、人々が本当に求めている製品を開発し、本当に素晴らしい仕事をしてきました。そして今が、同社の成長を大きく加速させる絶好のタイミングです。スナップドックスは2020年、優れた業績を上げました。

関連記事:初期投資家がDoorDashを高評価、10倍の成長が見込めると期待

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュー IPO

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

今週の記事ランキング(2021.1.3〜1.7)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「TechCrunch Japan編集長 吉田博英、逝去のお知らせ」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

YouTubeが新型コロナポリシーに違反した英TalkRadioの追放処分を撤回

YouTubeは、ニュースと時事問題をカバーするNews Corp(ニューズコープ)が所有する英国の全国ラジオ局であるTalkRadio(トークラジオ)のアカウントに関して、物議を醸していた追放処分を撤回した。

TalkRadioは米国時間1月5日、YouTubeのチャンネルが削除されたことを明らかにしたが、説明は受けていないと述べた。

広く知られた全国放送局のアカウントを一時停止するという決定は、新型コロナウイルス(COVID-19)についての誤った情報に関するYouTubeのポリシーに関連しているようだ。ロイターによると、TalkRadioのプレゼンターの何人かが新型コロナの拡散を遅らせる政府の措置について過剰または間違った方向性だとして批判的だったとのことだ。

しかし、全国放送局を追放するというテック大手の決定は、閣僚であるMichael Gove(マイケル・ゴーヴ)氏によってすぐに批判された。同氏は1月5日、TalkRadioについて触れ、新型コロナに対する政府の政策について質問する権利を擁護した。

i newspaperによると、この追放措置はNews CorpのRupert Murdoch(ルパート・マードック)会長からの介入も招いた。マードック氏はGoogle(グーグル)が所有するYouTubeに対し「危険な前例」「言論の自由と合法的な全国的議論の検閲」と非難したという。

YouTubeの広報担当者は、TalkRadioのアカウントを復活させたことを認めた1月6日の声明で次のように語った。

TalkRadioのYouTubeチャンネルは一時的に停止されていましたが、さらに検討した結果、現在は復活しています。YouTubeは、コミュニティーガイドラインに違反するとしてフラグを立てたコンテンツを迅速に削除します。その中には各国の保健当局や世界保健機関の専門家のコンセンサスと明確に矛盾する新型コロナウイルスに関するコンテンツを含みます。教育、ドキュメンタリー、科学、芸術目的で投稿されたまたはそう見なされた資料は例外とします。

YouTubeが、TalkRadioの復活を正当化する際にどの例外を適用したのかははっきりしない。ラジオでの主張はコンテンツによってあらゆるカテゴリーに渡るためだ。

iによると、TalkRadioは以前、YouTubeのポリシー違反で2020年10月と12月に処分を受けていた。短い停止につながった3回目の違反は、ホストの1人であるJulia Hartley-Brewer(ジュリア・ハートリー・ブリューワー)氏と元国立教育連合会会長のAmanda Martin(アマンダ・マーティン)氏の間で行われた、新型コロナワクチンの最優先権を教師に与えるべきかどうかについてのインタビューに関連していると考えられる。

TalkRadioの追放の取り消しは、表現の自由への懸念と衝突してきたテック大手のモデレーション(コンテンツのモニタリング)に関する決定、という長い物語の最新例だ。プラットフォームが残すと選択するものは、多くの場合、物議を醸す可能性がある。新型コロナに関する誤った情報がオンラインで拡散・増幅されることによる公衆衛生のリスクへの懸念は、間違いなくいつものようにプラットフォームモデレーションビジネスにとって新たな落とし穴となった。

共通する懸念事項は、力を持つ民間団体だ。それらは(英国の)報道機関と同じような統制を受けておらず、「許容できる言論」のレバーの上に手を置いて引き続き自分たちでコントロールしている。

ただし、英国では変化が起こりつつある。政府は、ビッグテックをOfcomの規制下に置く法案を準備している。そしてTalkRadioが以前の声明で指摘したように、その放送はすでにOfcomによって規制されている。

2021年に議会へ提出される予定のオンライン安全法案は、違法で有害な幅広いコンテンツからユーザーを保護するため、テックプラットフォームの「注意義務」を提案している。

この計画では、Ofcomはプラットフォームのコンプライアンスを監視し、コンプライアンスに準拠していないデジタルサービスへのアクセスをブロックする権限と、違反に対して巨額の罰金を課す能力を付与される予定だ。

関連記事:2021年提出予定の英国オンライン危害法案の注意義務違反への罰金は年間売上高10%

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TalkRadioYouTubeイギリス新型コロナウイルス

画像クレジット:Olly Curtis/Future / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Boseの最新睡眠イヤフォンSleepbuds IIは現時点で最も洗練されている

2020年は睡眠という点で不思議な年だった。筆者の睡眠レベルは「少なすぎる」と「多すぎる」の間を行ったり来たりしたが、多くの場合、前者に近づく傾向があった。2020年は、個人的なストレスからより大きな社会的懸念まで、睡眠不足のいい訳に事欠くことがなかった。

そしてありがたいことに、過去数年間、不眠の問題に対する技術的解決策が不足することもなかった。もちろん、時として根底にある問題を特定するのは難しいし、治すのはさらに難しい。特効薬はない。筆者がこの仕事でいつも得ている教訓だ。1つのテクノロジーですべての病気を治すことはできない(何年にもわたる大がかりで高額の治療で解決できないことは何もないと確信している)。

スリープイヤフォンはそれ自体新しい現象ではまったくない。Bose(ボーズ)は2018年半ばに本格的にこの分野に参入し、このカテゴリーに洗練された(そして高価な)アプローチを提示した。同社は、たとえばオーバーイヤーソリューションを提供するKokoon(コクーン)とはまったく異なる方向に進んだ。

Sleepbudsはその名が示すように完全ワイヤレスのイヤフォンだ。第2世代のこの製品は、Boseがオリジナルで抱えていた大きな問題をいくつか克服した。その中にバッテリーに関する深刻な苦情もあった。250ドル(日本では税込3万3000円)のイヤフォンへの影響はかなり大きく、それは文字通りひと仕事だった。

バッテリーと接続に関する苦情は、こう表現しても良いと思うが、すぐに解決されたようだ。筆者が数週間、就寝時に着脱したユニットは現在大きな接続の問題はない(電話をベッドの近くに置いているものと仮定する)。概ねバッテリーは一晩中もち、残量は20%弱となる。目を覚ましたらケースに入れて、数時間で充電される。

画像クレジット:Bose

とにかく作りはしっかりしている。会社名とそれから連想する価格からそう期待されているはずだ。スライド式のフタがついたランプ内蔵の金属製充電ケースからイヤフォン自体まで、デザインを全体的にきちんと掘り下げて見ていきたい。ささいなことが眠りの大きな障害になると思う人間として、筆者はイヤフォンが煩わしく感じられないことに好意的に驚いた。イヤフォンは快適に耳に滑り込み、耳と同じ高さに保たれるため、何かに引っかかることはない。柔らかくてゴムのようなウイングも、イヤフォンを所定の位置に保つ素晴らしい仕事をしている。

イヤフォンの最大の制限は、実際にはデザインによるものだ。オリジナルと同様、Sleepbuds IIは付属のアプリでのみ動作する。アプリでイヤフォンをペアリングして位置を特定し、Boseの音楽ライブラリーを提供する。同社のスリープサウンドのキュレーションは全般的に成功している。サウンドは、雨や風のような自然の音から、同社が選んだアンビエントトラック(環境音楽)まである。毎晩「Moby Dick(白鯨)」を読みながら海の音を聞く習慣がついた。とにかくこれは眠りにつくかなり良い方法だ。

機能をある程度限定するという判断を評価したい。筆者はおそらく、デバイスでポッドキャストやテレビ番組を聴き始めると思う。だが、バイノーラルビートやアンビエントセレクションなどにより、イヤフォンで何が達成できるのかを見極めたい。究極的には、消費者に選択肢を与えることは正味ではプラスになると思う。

とはいえ、イヤフォンは限られた(しかし拡大する)サウンドライブラリーに対応できるよう調整されている。アクティブノイズキャンセリングはないが、イヤフォン自体のパッシブキャンセリングとオンボードサウンドが、環境ノイズやいびきなどをうまく遮断する。おそらく、たとえば建設現場の騒音には適さないが、睡眠を妨げる微妙な障害にはうまく機能する。また長距離フライトにも適している。再開された時には。

睡眠市場向けイヤフォンは現在何点かあるが、Boseは現時点で最も洗練されたパッケージだと思う。価格は当然のことながら多くの人にとって障壁となると思われる。そして限られたサウンドライブラリーが断念する理由になる人もいるだろう。だがお金があり、眠りにつくのが難しいなら検討する価値がある。

関連記事:ボーズが睡眠に特化したイヤフォン新製品「Sleepbuds II」を発表

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Boseレビューイヤフォンレビュー

画像クレジット::Bose

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(翻訳:Mizoguchi

2021年を占う今年のTC人気記事(ハードウェア)

2020年も数多くの技術とアイデアの結晶であるハードウェアが登場した。TechCrunchでも多くの紹介、レビュー記事を掲載している。

その中から人気となった記事をご紹介しよう。

Apple Watchかと見まがうようなOppo Watchが登場

このOppo Watchは注目に値する。Apple(アップル)の製品から多くのものを取り入れているスマートウォッチは少なくないが、ここまで大胆不敵に実行したのはOppoくらいのものだろう。FitbitもVersaシリーズでは角の丸い四角形の形を真似したではないか、と思われるかもしれないが、そうした漠然とした類似性を言い出したらキリがない… 続きを読む

6.8型液晶ディスプレーも搭載、ラズパイ3対応キーボード一体型PC「DevTerm」が2021年4月発売

Clockwork Techは11月20日、Raspberry Pi コンピュートモジュール 3+(CM3+ LITE)を内蔵可能なキーボード一体型小型PC「DevTerm」のプレオーダーを開始した。6.8インチIPS液晶ディスプレーを搭載し、発売は2021年4月予定。組み立てキットの体裁になっており、12歳以上対象としている… 続きを読む

Pixel 4とiPhone 11 Proのカメラを徹底実写比較、買うならどっち?

iPhoneのユーザーだが、毎日かなりの時間を携帯カメラで写真を撮ることに費やしている。私にとってはカメラの性能が購入にあたって重要な要素だ。同僚のBrian Heater(ブライアン・ヒーター)記者のPixel 4は進化したカメラで勝負という記事を読んで乗り換えも検討することにした… 続きを読む

5G、OLED、トリプルカメラを搭載し約6.5万円の高コスパスマホ「AQUOS zero5G basic」

シャープは、リフレッシュレート240Hzの有機ELディスプレイを搭載したAndroidスマホ「AQUOS zero5G basic」を10月9日にソフトバンクより発売した。本製品には5Gモデムを統合したSoC「Qualcomm Snapdragon 765 5G mobile platform」が採用されており、端末価格は6万5520円と比較的低価格に抑えられている… 続きを読む

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Apple(アップル)との長期におよぶ有益な関係は間もなく終わるかもしれないが、IntelはいまだにPC市場でかなり大きな立ち位置を占めている。とはいえ、決してそれで満足していい時期ではない (同社はモバイル機器市場の前線でそれを嫌というほど思い知ったはずだ)… 続きを読む

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インドのスタートアップは2020年に合計9660億円を調達、記録更新ならずも後半回復

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックやその他いくつかの要因により、2020年はインドのスタートアップの投資契約がスローダウンした。

2019年の記録的な145億ドル(約1兆6000億円)の資金調達と比較して、インドのスタートアップは合計調達約93億ドル(約9660億円)で2020年を終えようとしている。コンサルティング会社Tracxnによると、世界最大級のスタートアップコミュニティであるインドのスタートアップが1年間に100億ドル(約1兆400万円)未満の資金調達を行ったのは、2016年以来初めてのことだという。

案件数は2019年の1185件から2020年には1088件に減少した。より大きなサイズの資金調達ラウンドも減った。1億ドル(約104億円)以上のサイズの資金調達ラウンドは2019年の26件から20件に減少し(これらのラウンドは昨年の75億ドル(約7800億円)に対し、今年は36億ドル(約3700億円)を調達した)、同様に5000万ドル〜1億ドル(約52億円〜104億円)のディールサイズのラウンドは27件から13件に減少した。この数字には、今年だけで200億ドル(約2兆770億円)以上を調達した通信大手のJio Platformsへの投資は含まれていない。

景気減速にもかかわらず、インドのスタートアップは2020年の下半期に大幅な回復を経験した。Tracxn社によると、世界第2位のインターネット市場であるインドのスタートアップは、上半期に約461件の契約からわずか42億ドル(約4362億円)の資金調達を行ったという。

世界中のスタートアップに影響を与えた新型コロナウイルス以外にも、投資に影響を与えたもう1つの要因は、大手投資家の一部が参加していなかったこと、または参加が減ったことだ。

中国の巨大企業Alibaba(アリババ)や、その関連会社Ant Group、そしてTencent(テンセント)などは、中印間の緊張中で、今年はインドのスタートアップへ小切手を切ることが減った。そしてソフトバンクも、Paytm、Oyo Rooms、Olaなどの知名度が高いポートフォリオ企業の多くが資金調達をしなかったため、出資が少なくなった。

しかし、ウイルスは一部のスタートアップの成長を加速もさせた。EdTech企業Byju’sの評価額は、2020年1月の80億ドル(約8310億円)から(未訳記事)増え110億ドル(約1兆1425億)を超えた。オンライン学習分野で注目を集めているもう1つのスタートアップUnacademyは、パンデミックが最も激しかった時期に2回の資金調達を行い(未訳記事)、今年2月には約5億ドル(約519億円)だった評価額を20億ドル(約2077億円)以上に引き上げた

Mary Meeker(メアリー・ミーカー)氏ら注目度の高い投資家が立ち上げたベンチャーキャピタルファンドのBondは2020年、Byju’sに投資している(未訳記事)。Bond社の概要を把握している人物がTechCrunchに語ったところによると、同社は3年後には、Byju’sの評価額は300億ドル(約3兆1000億円)を超えると考えているという。インドではSaaSモデルで運営され(未訳記事)、世界中の顧客にサービスを提供しているいくつかのスタートアップも2020年は勢いを増している(未訳記事)。

RazorPay、Unacademy、DailyHunt、Glanceなど11社のインドのスタートアップが今年はユニコーン企業になった(余談だが、GoogleとFacebookは2020年、インド企業にいくつか小切手を書いている。Googleは先にGlanceとDailyHuntを支援し、FacebookはUnacademyに投資した。両社とも今年はJio Platformsにも投資している)。

Better Capitalの創業者兼専務理事であるVaibhav Domkundwar(ヴァイブ・ドムクンドワール)氏はこう語る。「私は(残念ながら!)2001年と2008年の不況を見てきた年齢なので、新型コロナウイルスが押し寄せて来て、あちこちで破滅的で陰気な話ばかりだったとき、過去の不況の際に何が起きていたかを思い出しました。それは次世代の企業を構築する、新世代のチームの始まりでした」。インドでアーリーステージのスタートアップを支援するBetter Capitalは、2020年に43件の投資とフォローオン投資をしている。

今年はM&Aも加速した。Byju’sはWhiteHat Jrを3億ドル(約311億4000万円)で買収し(未訳記事)、Unacademyは7月に医学生向けの講座を提供するPrepLadderを5000万ドル(約51億9000万円)で買収した(未訳記事)。また、同社は500万ドル(約5億2000万円)の投資ラウンドを主導してMastreeの過半数の株式を取得した。

Reliance Industriesは、オンライン薬局のNedmedsを買収したほか、破格の値段でUrban Ladderを買収した

インドのスタートアップはここにきて、異なる種類の出口も見えてきた。2021年の株式公開を計画しているスタートアップの中にはZomatoFlipkart、Policybazaarなどが含まれている。Bernsteinのアナリストは2022年までに株式を公開する可能性のある企業の中にPaytm、Byju’s、PhonePe、Delhiveryを挙げている。

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カテゴリー:その他
タグ:インド資金調達

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Nakazato)

子供向けのインタラクティブで教育的なビデオライブラリのTappityが1.4億円を調達

現代の子どもたちが、興味を持っている新しいトピックについて学びたいと思ったときに目を向けるのは、YouTube(ユーチューブ)であることが多い。しかし、子供たちが出会うYouTube上の個別教育コンテンツの品質には、当たり外れがある。130万ドル(約1億4000万円)のシードファンディングを受けた、デジタル教育スタートアップのTappity(タピティ)は、そこに代替手段を提供することを目指している。そのビデオライブラリは、子供が楽しめるインタラクティブなアニメーションビデオを提供していて、コンテンツ自体も最新の教育基準に沿うものになっていいる。

創業2年の同スタートアップを共同で起業したのは、CEOのChad Swenson(チャド・スウェンソン)氏、兄弟でCTOのTanner Swenson(タナー・スウェンソン)氏、そしてCPOのLawrence Tran(ローレンス・トラン)氏の3人だ。

画像クレジット:Tappity

(チャド・)スウェンソン氏によれば、Tappityのアイデアはインタラクティブな学習体験をデザインすることへの自身の関心から生まれたという。この関心は8年前に、高校生が進化について学習するためのインタラクティブコンテンツの制作につながった。それからの数年間、彼はこの領域でさまざまなコンセプトの実験を始めたものの、ベンチャー規模のものを計画したことはなかった。

しかし、やがてスウェンソン氏は、次世代科学スタンダード(NGSS)に基づいてコンテンツを開発する可能性に気付いたという。NGSSは、米国の複数の州が参加するコンソーシアムによって開発されたK-12(高校生まで)の科学コンテンツ基準で、現在全米での採用が拡大している。

「多くの親がYouTubeに代わるより健全な選択肢を探していました」とスウェンソン氏は言う。「私はそれが、もっと大きなものになると信じるようになったのです」。

また、子供たちが一般的に興味を持つ科学トピックは、宇宙、恐竜、地質学といった、NGSSが教えようとしていることに沿ったものであることが多いことにも気が付いた。

「Amazon(アマゾン)の上で子供たちに最も人気の高い本を見ただけで、おおきな気付きを得ることができました」とスウェンソン氏は付け加える。こうした書籍の大部分がSTEM(科学、技術、工学、数学)関連の題材に焦点を当てたものなのだという。

スウェンソン氏はフィンテックのスタートアップBill.com(ビル・コム)のコンサルティングをしていた時に、共同創業者となるローレンス・トラン氏と出会い、彼と弟のタナー・スウェンソン氏を説得してスタートアップの取り組みを始めた。

数年の間にTappityは、インタラクティブで教育的なビデオコンテンツを簡単かつ効率的に制作するためのツールを開発してきた。現在では、数千本のビデオで構成される、4歳から10歳までの子供向けの200以上の科学レッスンを用意している。

ビデオクリップ自体は事前に録画されたものだが、子供たちには画面上のキャラクターと1対1の対話をしているような感覚を与えることができる。たとえば、アプリの中の先生が何かを作っていてドライバーが必要となったときに、子供たちは先生の求めに従って、アプリ内でそれを手渡すことができる。だが同時に、子供たちにはそれ以外の楽しいオプションも与えられている。たとえばドライバーではなくテープを渡したり、ピザを投げつけたり。そうしたことに対して、先生は反応してくれる。アプリの中の先生は、たとえば、アプリ上で描いたものに反応するなど、他のやり方でも子供たちと関わることができる。

画像クレジット:Tappity

現在、Tappityの先生を務めるヘイリー・ザ・サイエンス・ギャル ことHaley McHugh(ヘイリー・マッキュー)氏は、10年以上の経験を持つ子供向けエンターテイメントの専門家で、宇宙、生命科学、地球科学、物理科学などのトピックにまたがるレッスンを指導している。

ビデオレッスンに加えて、子供たちはアクティビティの完了を促すアプリ内ポイントシステムに参加している。また、アプリは保護者向けのフォローアップメールも提供していて、親たちは子供たちが何を学んでいるのかを追跡して、さらに子供たちの興味をかきたてることができる。

COVIDの大流行と、バーチャルスクーリングによる視聴疲れを考慮して、Tappityはいくつかのレッスンにオフライン活動を取り入れるようにした。たとえば紙とペンを使ったお絵かきなどだ。また日曜日には、Tappityは親子で一緒にできるより多くのアクティビティを提供する。たとえばクッキーを焼いて、古代の大陸や火山を作ったりといった活動だ。

Tappityでは来年末までに1000時間以上、再来年末までには4000時間以上の動画コンテンツを作り出せると見込んでいると、スウェンソン氏はいう。

3人のチームがスタートアップアクセラレーターのY Combinator(Yコンビネーター)に応募したとき、月平均9ドル程度のアプリ内サブスクリプションのおかげでTappityはわずかながらでも利益を出していた。現在同社は、5000人以上の有料顧客と2万人以上のウィークリーアクティブユーザーを抱えており、これまでに修了されたレッスンの数はのべ3000万回に及ぶ。

今回同社は、Y Combinator、Mystery Science(ミステリー・サイエンス)創業者のKeith Schacht(キース・シャハト)氏、Toca Boca(トカ・ボカ)創業者のBjörn Jeffery(ビョルン・ジェフェリー)氏、Brighter Capital(ブライター・キャピタル)(Yun-Fang Juan、ユンファン・ジュアン氏)、元Spotify CTOのAndreas Ehn(アンドレアス・アーン)らから130万ドル(約1億4000万円)のシード資金を調達した。

近い将来、Tappityはチームを拡大し、現在iOSでしか利用できないそのレッスンを、ウェブで利用可能にする予定だ。長期的な同社の目標は、インタラクティブな教育コンテンツの大規模なライブラリを作成することだ。

関連記事:VCs pour funding into edtech startups as COVID-19 shakes up the market(未訳記事)

(新型コロナウィルス感染症)COVIDの大流行により、VCはより多くのエデュテックスタートアップに投資するようになった(未訳記事)が、ポストCOVIDの世界におけるそうしたビジネスの継続性はまだ未知数だ。Tappityが、多くの遠隔学習システムや学校向けにデザインされたスタートアップと異なる点は、同社が学校システムへの販売に焦点を当てていない点だ。

「先生たちは、それを自主的に採用してきました。私たちは現在、それを学校に無料で提供しています」とスウェンソン氏は説明する。「でも、私たちが重視するのは親御さんとお子さんのニーズですので、学校向けには特別なリソースを割いてはいません。ニーズがかなり違いますので」と彼はいう。

TappityのアプリはiOSで利用可能(Apple AppStore)で、サブスクリプションなしでも使える無料コンテンツもいくつか含まれている。

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画像クレジット:Tappity
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(翻訳:sako)

Teslaが2021年「早期に」インドでEV事業開始へ、生産も視野

Tesla(テスラ)は2021年「早期に」インドで事業を開始する。テクノロジーを駆使している車メーカーTeslaが、世界で2番目に人口が多いインドのマーケットに来年参入すると確信していると述べた翌12月28日、インドの大臣が明らかにした。

Teslaの事業は2021年早期に販売で始まり、その後車の組立・生産も「おそらく」検討する、とインドの運輸大臣Nitin Gadkari(ニティン・ガッカーリ)氏がIndian Express(インディアン・エクスプレス)紙に述べた。来年の早期とはいつなのか? 絶対に来月ではない、とTeslaのCEO、Elon Musk(イーロン・マスク)氏はツイートした。

同社は何年もの間、インド進出に関心を示してきた。しかし2018年のツイートで、同氏はインドの「政府規制」が障壁となっている、と述べていた。

世界の他の国でもそうだが、マスク氏はインドに数千万人のファンを抱える。ほんの一握りの人だけが2016年に1000ドル(約10万円)を払ってModel 3をプレオーダーした。後に同氏はインドの顧客への納車遅れに関してインドの規制を非難した。

「おそらく私は嘘を吹き込まれたのだろうが、パーツの30%はインドで調達したものでなければならないと伝えられ、それに応えるだけのサプライはインドには存在しない」と2017年にツイートした。

Teslaは長年グローバル展開に注力していて、今ではオーストラリア、カナダ、中国、日本、メキシコ、それから欧州各国にショールームを設置し、2013年にはオランダのティルブルフに最終組立工場を開所した。しかし同社が米国外での車両生産を開始したのは2019年だ。同年後半にTeslaは上海の工場で電気自動車の生産を開始した。同社はベルリン、そしてテキサス州オースティンにも工場を建設中だ。

米国、韓国、そして中国の企業にとってインドは世界最大の激戦地の1つとなっている。そうした企業はユーザー・顧客ベースを拡大させるために南アジアのマーケットに注目している。たとえば、ユーザーの数という点でインドを最大のマーケットとしてとらえているFacebook(フェイスブック)と Google(グーグル)は今年、インドの通信大手Jio Platforms(ジオプラットフォームズ)に数十億ドル(数千億円)規模の額を出資した。Apple(アップル)は近年、インドのスマホマーケットのシェアを拡大すべくインドでの生産を増やしてきた。インドのスマホマーケットの70%超を中国スマホメーカーが牛耳っている。

ここ何年かの間で1000以上の「古い法律」を廃止したと主張するインド政府は以前、マスク氏が指摘した悩みの種を認めていた。過去3年でインドは、電動車両への移行を促し、また石油消費を減らし大気汚染を抑制するのに役立つバッテリーの生産やイノベーションを加速させるために、車メーカーに対し数十億ドル(数千億円)ものインセンティブを提案してきた。

インドはまた、配車サービスのUber(ウーバー)とOla(オラ)に、同国で展開する車両の40%を2026年4月までに電動タイプに換えることを提案した。

今年初めにアムステルダム拠点のEtetgoを買収したインド企業のOlaは今月、インド南部のナミルナドゥ州に「世界最大のスクーター工場」を設置するために3億2700万ドル(約340億円)を投資する計画だと述べた。同社によると、工場設置で新たに1万人以上の雇用を生み出し、初期生産能力は年間200万台だ。

インドのナレンドラ・モディ首相が支援しているシンクタンクNiti Aayogが今年初めにまとめた提案書には、電動車両が広く浸透すれば、今後10年で石油輸入費用を400億ドル(約4兆1500億円)削減できるかもしれない、と書かれている。

ガッカーリ氏はインドのメディアに対し、インドが5年内に車生産の最大のハブになると期待している、と述べた。

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画像クレジット: Patrick T. Fallon / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

今週の記事ランキング(2020.12.20〜12.24)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「「サイバーパンク2077」が大量のバグで販売停止、開発元CD Projekt Redとソニー、マイクロソフトが返金受付中」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。

AI駆動エネルギースタートアップの英オクトパスが、東京ガスから208億円の投資を受けて評価額2000億円超え

チャレンジャーバンクという言葉を耳にしたことはあるだろうか?今度はチェレンジャーエネルギーサプライヤーの登場だ。英国のOctopus Energy(オクトパス・エナジー)は、合弁会社の立ち上げに向けて、9.7%の株式と引き換えに東京ガスから1億5000万ポンド(約208億円)の出資を受けた。この結果同社の評価額は15億ポンド(約2082億円)となった。合弁会社の株式の30%はOctopusが保有し、過半数を東京ガスが保有する。これまでの5年間の運営を経て、Octopusは、British Gas(ブリティッシュ・ガス)のオーナー企業であるCentrica(セントリカ)の評価額に近づいている。

Octopusは、革新的なAIとデータベースのプラットフォームを使ってグリッド周りの負荷をバランスさせる100%再生可能電力運用をトレードマークに、日本でのブランドをスタートする。同社のソフトウェアであるKraken(クラーケン)は、Origin Energy(オリジン・エナジー)、nPower(エヌパワー)、E.On(イーオン)、Good Energy(グッド・エナジー)、Hanwha Corporation(ハンファ・コーポレーション)などにもライセンスされており、世界中で1700万のエネルギーアカウントにサービスを提供している。

「この合弁会社は、当社の再生可能エネルギーと技術に関するエキサイティングなアプローチを、世界最大の競争の激しいエネルギー市場に持ち込みます。また今回の投資は、世界的なエネルギー革命を起こすという当社の使命をさらに加速するものです」とOctopus CEOのGreg Jackson(グレッグ・ジャクソン)氏は声明の中で語っている。

オーストラリアのOrigin Energyもまた、2020年4月に株式の20%を購入した際の大きな投資に続き、Octopusの3700万ポンド(約51億4000万円)分の株式を購入する。

Octopusは2027年までに全世界で1億人の顧客を目指す意志を表明しており、最近では米国、オーストラリア、ドイツ、ニュージーランドでもサービスを開始している。

同社によれば、英国では、Octopusはエネルギー供給市場で5%のシェアを持ち、小売ポートフォリオには180万世帯が含まれているという。

東京ガスの内田高史社長は「本提携を通じて、お客さま1人ひとりに合わせて価値を創出・提供し、お客さまの豊かな暮らしに貢献してまいります」と述べている。

日本の再生可能エネルギーの普及は英国の半分ほどであり(2019年時点での電力に占める日本の再生可能エネルギーは18.9%なのに対し、英国では37.9%)、成長の可能性は大きい。日本の菅義偉首相は、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにするという目標を掲げている。

また、英国においてOctopusは、電気自動車のローミングネットワークElectric Juice(エレクトリック・ジュース)を立ち上げ、Tesla(テスラ)と提携してTesla Power(テスラ・パワー)を立ち上げている。

【参考】東京ガスプレスリリースをここで確認できる。

関連記事:住宅用再生エネ推進のSwell Energyが分散型電力プロジェクト建設に向け470億円調達

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Octopus Energy東京ガス再生可能エネルギー電力網資金調達

画像クレジット:Octopus

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(翻訳:sako)

IBMがマルチクラウドのコンサルティング充実のためNordcloudを買収

IBMは10月に、同社のレガシーであるインフラ管理ビジネスをスピンアウトする計画を発表し、ハイブリッドクラウドに総賭けすることになってから、すごく忙しくなった。今日(米国時間12/21)はその忙しさに輪をかけて、ヘルシンキのマルチクラウドコンサルティング企業Nordcloudを買収した。買収の価額は公表されていない。

IBMはすでに500社の公認コンサルタントをAWSとAzureとGoogle Cloud Platformに揃えており、Nordcloudもその一環だ。これによって同社は顧客をこれまでのIBM中心のソリューションから、各社に合ったクラウド戦略へ移行させていく。Nordcloudもそのための、教育訓練の行き届いたエキスパートスタッフの一員になる。

このようなハイブリッド方式は、2019年に同社が340億ドルを投じたRed Hatの買収にさかのぼる。それがまさに、このアプローチへの進路を決定した。先月のインタビューでCEOのArvind Krishna氏は、CNBCのJon Fortt氏にそう語っている。Krishna氏は今、彼の会社の全面的な変身努力の渦中にいて、今回のような買収がそのプロセスをスピードアップする、と考えている:

Red Hatの買収は私たちに、その上にオープンソースをベースとするハイブリッドクラウド技術を構築するための技術基盤を与えた。しかもそれは、顧客がこの船出に乗り出すときにさまざまな選択ができることが、ベースになる。その買収の成功が今の私たちに火をつけ、次の大きなステップに進むことができるようになり、マネージドインフラストラクチャサービスを外すことができる。そして会社に今後残るものは、ハイブリッドクラウドと人工知能への完全なフォーカスだけだ。

関連記事: IBM is acquiring APM startup Instana as it continues to expand hybrid cloud vision(未訳)

IBM Global Business ServicesのCOOでクラウドアプリケーションイノベーション担当上級副社長、John Granger氏によると、IBMの顧客は最近ますます、複数のベンダーとオンプレミスの全域にまたがるリソースの管理でヘルプを求めている。

Granger氏は、声明でこう述べている: 「Nordcloudの買収で、私たちのクライアントのデジタルトランスフォーメーションを駆動し、IBMのハイブリッドクラウドプラットホームのさらに幅広い採用をサポートする、深い専門家技能を得られる。Nordcloudのクラウドネイティブツールと方法論の体系と人材が強い信号を送出し、IBMはそれを、クライアントのクラウドへの旅路の成功のためにお届けする」。

買収は当局の承認を得て、来年の四半期に完了する予定だが、NordcloudはIBM傘下の企業になり、IBMのハイブリッドクラウド戦略の継続を支援する。

なお、この買収の前には、いくつかの小さな契約が実現している。たとえば先週はExpertusを買収、そして先月はTruquaInstanaを買収している。これら三社は、デジタル決済とSAPコンサルティング、およびハイブリッドクラウドのアプリケーションのパフォーマンスモニタリングを、それぞれ提供する。

Nordcloudはヘルシンキに本社があり、アムステルダムにもオフィスがある。 PitchBookのデータによると、同社は2011年創業で、これまで2600万ドルあまりを調達している。

関連記事: IBM CEO Arvind Krishna wants to completely transform his organization(未訳)

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

インドのフードデリバリーZomatoが682億円調達、業績は急回復

インドのフードデリバリースタートアップZomato(ゾマト)は2021年の上場に向け、昨年開始した投資ラウンドで6億6000万ドル(約682億円)を調達した。

シリーズJとなる本ラウンドにはTiger Global、Kor、Luxor、Fidelity (FMR)、D1 Capital、Baillie Gifford、Mirae、Steadviewが参加したとZomatoは述べた。ポストマネーでのバリュエーションは39億ドル(約4030億円)だ。同社は以前、シリーズJラウンドの一環でAnt Financial、Tiger Global、Baillie Gifford、Temasekからの2億1200万ドル(約220億円)の調達を明らかにしていた。

Zomatoの共同創業者でCEOのDeepinder Goyal(ディーピンダー・ゴヤル)氏は、創業12年になる同社が第2次取引の1億4000万ドル(約145億円)をクローズする過程にある、と述べた。「取引の一環として、当社はすでに3000万ドル(約31億円)相当の流動性資産を元従業員に提供しました」と同氏はツイートした。

Zomatoはもともと今年1月までに約6億ドル(約620億円)で本ラウンドをクローズするつもりだった。しかし現在も続くパンデミックを含め、いくつかの障害により資金調達が難しくなった。加えて、本ラウンドに1億5000万ドル(約155億円)の出資を約束していたAnt Financialが3分の1の額の拠出にとどまった、とZomatoの投資家であるInfo Edgeが今年始めに明らかにした。

今年初めにUberのフードデリバリーのインド事業を買収したグルガーオンに本社を置くZomatoは、Prosus Venturesが支援するSwiggy(スウィギー)とインドで競合している。サードプレイヤーとしてAmazon(アマゾン)もこの分野に参入した。ただし同社は現在、バンガロールの一部でのみフードデリバリーを提供している。

インドのフードデリバリーマーケットは2022年までに120億ドル(約1兆2000億円)規模に膨らむとBernsteinのアナリストは予想している。マーケットシェア約50%のZomatoが現在この分野のリーダーだとアナリストはレポートに書いた。

Zomatoは今年、財政状況の改善と新型コロナウイルスパンデミックを生き抜くために、何百人もの社員をレイオフした。パンデミックはインドのフードデリバリー産業に著しいダメージを与えた。ゴヤル氏は、フードデリバリーマーケットは「急速にCOVID-19の影から脱しつつあります。2020年12月の販売総額は当社の歴史の中で最高となりそうです。この前にピークだった2020年2月の販売総額を25%超上回っています」と付け加えた。「今後について、そして顧客やデリバリーパートナー、レストランパートナーへの影響について非常に興奮しています」

9月に、ゴヤル氏は従業員に対し、Zomatoが「2021年上半期のどこか」でのIPOに向けて準備を進め、「将来のM&Aへの備えと、競合他社からのちょっかいや価格戦争を撃退する」ための軍資金を調達していると伝えた。

フードデリバリーで儲けることはインドではかなり難しい。バンガロール拠点の調査会社RedSeerによると、配達される料理の1品あたりの価格が約33ドル(約3400円)である米国のような西欧マーケットと異なり、インドでは似たような料理の価格は4ドル(約410円)だ。

「問題は、毎日フードデリバリーを注文するだけの財政的余裕がある人はインドではかなり少ないということです」とIndia Quotient,のベンチャーキャピタリスト、 Anand Lunia(アナンド・ルニア)氏は今年初めのTechCrunchとのインタビューで述べた。

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画像クレジット: Nasir Kachroo / NurPhoto / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

今週の記事ランキング(2020.12.13〜12.17)

今週もTechCrunch Japanで最もよく読まれた5つの記事を紹介しよう。今週の1位は、「アダルト動画配信のPornhubが数百万本の投稿を凍結、違法動画掲載の非難を受けて」というニュースだ。他のランキングについても振り返ってみよう。