代替タンパク質の次なる大きな波は植物由来や細胞培養のシーフード

国連食糧農業機関(FAO)によると、魚は、世界で消費される動物性タンパク質の16%を占めており、その需要は高まっているという。その原因は、可処分所得の大幅な増加にある。

しかし、乱獲の問題は深刻だ。持続可能性がないため、今ある姿を保てなくなっている。本来の数の4%までに数が減少した太平洋クロマグロをはじめ、魚の個体数は減少している。産業漁業では、大型の機械を使ったトロール漁を行っており、クジラやイルカなど、魚以外の生物も捕獲し殺してしまう。

他の国々と比較して水産物の需要が飛び抜けて高い中国においてすら、需要は急速に伸びている。その原因のひとつに、アフリカ豚コレラが養豚業者を襲ったことがある。豚肉の流通量が減り、人々が他のタンパク源に目を向けたのだ。加えて、拡大を続ける中国の遠洋漁業業界が水産資源を激減させ、紛争を引き起こしていることも関係している。

しかし、私たちが食べる魚は、2030年までには、ほとんどが養殖になる。管理の悪い養魚場では、化学物質による水質汚染を引き起こしたり、バクテリアや病気を拡大させて結果的に自然の生態系に影響を及ぼすことがある。養殖の鮭は、野生の個体と混じったときに貴重な生態系を乱す恐れがあり、環境に深刻な被害をもたらす。

魚は、人口が増加し、食糧不足が深刻化した際に、非常に重要なタンパク源となる。しかし、天然資源を枯渇させず、水域環境を破壊せずに魚を安定的に供給することは、継続的な課題だ。魚は、プラスティック、水銀、抗生物質で汚染されている。しかも魚の養殖は、食糧不足にはあまり貢献していない。本当に必要としている地域には魚が届いていないのだ。

また、以前から続いてきた魚の幸福に関する論議もある。魚には知覚力があるのか。また、捕らえられたときや殺されたときに苦痛を感じるのかという問題だ。だが研究により、この議論には終止符が打たれた。魚の種の多くに長期記憶があり、社会的なつながりや子育ての技能を持ち、道具を使ったり、伝統を学んだり、他の種と協力し合うこともできることがわかっている。ほとんどの研究者は、痛みや恐れを含む感情を抱く能力があることも認めている。

トルコ、イズミルにて – 4月25日。イズミル県カラブルンの養殖場の航空写真。ここではエゲリー(Egeli)と呼ばれる、タイとヨーロッパレンコダイの交配種が育てられている。1年以内の出荷を予定している(写真:Mahmut Serdar Alakus/Anadolu Agency/Getty Images)

一部の国の養魚場では、人道的な食肉処理のガイドラインに従っているところもあるが、野生の魚に対してはそうした基準がない。しかも、そのガイドラインも名ばかりだ。養殖魚の伝統的な処理方法は、空気中や氷の中で仮死状態にするというものだ。これは長時間にわたり苦痛を与える工程で、やがては失神することもある。

魚は狭い場所に押し込められて、劣悪な環境で生活し、餌も与えられないことが多い。過密状態の魚は病気にかかりやすく、ストレスを感じて攻撃的になり、その結果、喧嘩をして傷つけ合うこともある。囲いの中は、フナムシや病気、または寄生虫の温床にもなる。このように、魚に関する問題は数え切れないほど存在する。それでも、養殖魚は毎年1200億尾が処理されていると見積もられている。

Impossible BurgerやBeyond Burgerといった植物由来の牛肉の代替品、またはImposter Burgerのような鶏肉の代替品が増えてきているものの、魚肉は遅れをとっている。魚は、陸上の動物と同じく大切な食材だ。そのため、植物由来のシーフードという選択肢を、従来品の量を減らしたいと考える人たちに提供することで、それは初めて商売として成り立つようになる。

だが、潮目は変わろうとしている。植物由来の魚肉の代替品が大きく注目され始めているのだ。スタートアップのImpossible Foodsは、植物由来の代替魚肉は「優先度が高い」と話している。他の企業も数多くの魚製品を開発しており、その味はどんどん本物に近づいている。Good Catchは植物由来のマグロを販売している。Ocean Hugger Foodsは植物由来の生のマグロを開発した。New Wave Foodsは植物由来のエビを開発した。植物由来の寿司を提供するレストランも出始めている。

細胞培養による魚肉にも技術革新がある。スタートアップのWild Typeは、鮭の幹細胞を使って研究室内の環境で育てられる鮭を開発した。同社は価格を下げて一般販売することを目指している。シンガポールのShiok Meatsは、エビ、カニ、ロブスターなど細胞培養の甲殻類を開発している。Blue Naluは細胞培養シーフード、Finless Foodsは研究室でクロマグロの飼育に焦点を当てている。同社は、2017年に最初の細胞培養の魚を完成させたが、今年中に高級レストランに向けて出荷したいと話している。これには水銀が含まれないという利点もある。

漁業をより人道的に、より持続可能にするには、まだまだ解決すべき課題が数多くあるが、同時に需要を減らす努力も必要だ。植物由来または細胞培養の肉を製造する企業は、牛肉や鶏肉の摂取量を減らしたい人たちを奨励しサポートを続けているが、同じことを魚でも行おうと視野を広げつつある。ぜひとも代替魚肉を普及させ、魚の需要の高まりによるダメージに気がついた人々を取り込まなければいけない。

【編集部注】著者のBrian Kateman氏は、
Reducetarian財団の共同創設者であり理事長。

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(翻訳:金井哲夫)

世紀の詐欺スタートアップ・セラノスの裁判が2020年夏に開始、最高20年の懲役刑の可能性も

すでに解散したバイオテックユニコーンのTheranos(セラノス)の創業者であるElizabeth Holmes(エリザベス・ホームズ)の裁判は来夏に連邦裁判所で始まり、最高20年の懲役刑と数百万ドルの罰金を受ける可能性がある。

裁判が2020年8月にサンノゼ連邦地方裁判所で始まることを6月28日朝に発表した米地方裁判所判事Edward J. Davila(エドワード・J・ダビラ)氏によると、陪審員の選定は2020年7月28日に始まる。

ホームズと前Theranos会長のRamesh “Sunny” Balwani(ラメシュ・バルワニ)は昨年6月に計11件の罪で大陪審に起訴された。11件のうち2つの罪は通信詐欺を行った共謀罪(投資家に対してと、医師・患者に対して)だ。残り9つは実際の通信詐欺で、額はラボテストのコストから1億ドルまで幅広い。

Bloomberg(ブルームバーグ)によると、ホームズの弁護団は、ウォール・ストリート・ジャーナルのJohn Carreyrou(ジョン・キャリロー)記者が「連邦当局者に大きな影響力を持っていた」ことと、「Theranosのニュースを報道する以上の行為を行った」ことを指摘する計画だ。

ブルームバーグはさらに、「陪審員は調査報道としてニュースをすっぱ抜いて詳細を報じたい外部のアクターがTheranosに対する当局のフォーカスを覆い隠し、おそらく当局の見解を偏らせる方法で規制プロセスに影響力を働かせていたことを認識するべきだ」とホームズの弁護団は書いている。 「ゆえに、キャリロー記者と当局のやり取りは核心となる」。

スタンフォード大学をドロップアウトした19歳のホームズによって2003年に創業されたTheranosはプライベートマーケット投資家から7億ドル超を調達した。これについて証券取引委員会は「誇張、または社の技術や事業、業績について嘘の報告をすることによる精巧で長きにわたる詐欺」と言及した。

キャリロー記者は同社の血液テスト技術の効果に疑問を投げかける多くの調査記事を書いたが、その最初の記事が掲載された2015年10月にTheranosはまず最初の調査を受けた。当時、Theranosは企業価値が90億ドルとなり、またTim DraperやRupert Murdochといった名だたる投資家のサポートもあり、シリコンバレーで最も注目を集める企業の1つだった。

キャリロー記者の報道の結果、Theranosは公衆衛生にとって脅威となることがわかった。そして、Theranosのテクノロジーはわずか数滴の血液でさまざまな疾病を検査できるものにほど遠いことが明るみとなった。

ウォール・ストリート・ジャーナルによると、検察は証拠として200万ページ以上を集めた。十分な証拠にもかかわらず、ホームズは昨年の起訴以来、一貫して無実を主張している。

起訴を受け、ホームズは昨年Theranosを辞めた。ほどなくしてTheranosは解散した。一方のキャリロー記者はというと、Theranosの秘密と嘘をつづったベストセラー本「Bad Blood」を発刊した。ホームズとTheranosの栄光と没落を描いたドキュメンタリーは2019年にHBOからリリースされた。Jennifer Lawrence(ジェニファー・ローレンス)がホームズを演じる映画の制作も進行中とのことだ。

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(翻訳:Mizoguchi)

超抜ハエ技術のムスカが新生銀行と戦略的パートナーシップ、丸紅・伊藤忠に続き3社目

イエバエの幼虫を活用して畜糞を1週間程度で肥料化できる技術を擁するムスカは6月25日、新生銀行との戦略的パートナーシップを締結した。新生銀行のCVCである新生企業投資ではなく、本体との締結だ。つまり、新生銀行自体がムスカに出資する。出資金額は非公開。

ムスカは2016年12月設立のスタートアップ。同社は現在、約100トンの家畜排せつ物や食品残渣といった有機廃棄物を、45年1100世代の選別交配を経たイエバエの幼虫を使って1週間で肥料化し、そのイエバエの幼虫を飼料化する、100%バイオマスリサイクルシステム「ムスカプラント」の建設に向けて全力で動き出しており、今年度中に着工を予定。ちなみに畜糞を肥料化する際、通常のイエバエを利用した場合は3〜4週間、イエバエを使わずに畜糞を発酵させた場合は数カ月かかる。

新生銀行は、同行グループが制定した「グループESG経営ポリシー」のもと、持続可能な社会の形成を目指しつつ、同グループの収益成長機会の可能性を高めていくことを目標としている。中期経営戦略ではSDGs(Sustainable Development Goals、持続可能な開発目標)への貢献も目標の1つ。ムスカとの戦略的パートナーシップは同行のこのような経営方針と合致しており、ムスカとの協業を通じて循環型社会の実現に向けたエコシステムの創造に取り組んでいくとしている。

同行としては、強みである金融ノウハウと、同行やその顧客が有するネットワークを活用した金融ソリューションをムスカに提供し、ムスカプラントの展開や事業拡大に向けたサポートを進めていくという。

新生銀行といえば、もとは長期信用銀行(長銀)。顧客には一次産業も多い。同行はムスカのソリューションを、これらの顧客に紹介することも視野入れている。ネット(SaaS)系ビジネスとは異なり、ムスカプラントを建設して利益を生み出すには長い期間を要する。長期資金の安定供給を目的として設立された長銀の系譜を受け継ぐ新生銀行としては、原点回帰とも言える出資となる。

新生銀行からのコメントが到着次第、記事をアップデートする予定だ。

植物の生育に必要な栄養素を効率よく散布する研究結果

カーネギーメロン大学は植物の根に重要な栄養素を供給する新しい方法を発見した。植物を育てる土壌にあらかじめ必要な成分が含まれている必要はない。

この画期的研究によって、植物に肥料や農薬を散布する作業効率が著しく向上する。現在、作物に噴霧される薬剤は、その大部分(CMUのブログによると最大95%)が周囲の土壌に濃縮沈殿物として残留するか、地下水に溶け込む。いずれも長期的に蓄積されると負の連鎖反応を起こす原因となるばかりでなく、本来の目的からみても著しく効率が悪い。

今回新たに学術論文で発表された方法は、肥料と殺虫剤をナノ粒子(直径50 nm以下。人間の毛髪は約7万5000 nm)として植物の葉に噴霧することで効率を高め100%近く吸収させる。噴霧されたナノ粒子は植物の維管束を通って根系に送られる。

この方法を用いることで、農業従事者は植物への抗生物質投与の効率を大きく改善することが可能になり、作物収量に影響を及ぼす植物病に簡単かつ費用効率良く対処できる。植物が吸収する効率が高くなることによって、意図した効果を得るために必要な薬剤の量がが大きく減るため、栄養素や殺虫剤のコスト削減にもなる。

この研究は既存の農地を最大限に活用し、農地に損害を与える薬品の必要量を減らすことで、世界的な食料供給問題に大きな影響を与える可能性を秘めている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebook創業者夫妻の慈善団体が人体細胞地図プロジェクトに約73億円寄付

人間の体の細胞の地図を作る、現在進行形のグローバルなプロジェクトが、Chan-Zuckerberg Initiative(CZI、チャン・ザッカーバーグ・イニシアティブ)から6800万ドル(約73億円)を寄贈された。文字どおり人間の細胞の地図を意味するHuman Cell Atlasプロジェクト(HCA)を構成する数ダースもの個別プロジェクトを、このお金が支えるだろう。

Human Cell Atlasは複数のプロジェクトの集まりで、それぞれが健康な人間の細胞を詳細かつ実用性のあるレベルで記録しようとしている。CZIはこれまでも数年間、いろんなやり方で支援してきた。それは、同団体の基礎研究における継続的慈善事業の一環だ。

実はCZIはかなり前に、期間3年のプロジェクトを38件、期間1年のプロジェクトを85件、今回と同様に支援することを発表している。しかし審査と承認のプロセスが長引いたため助成金の交付は遅れた。科学者や研究機関が、何をしてもいい白紙小切手のようなお金をもらうことはまれだ。

しかし今回の6800万ドルは、CZIのHCAとの関わりの範囲をより明確化している。支援が決まったプロジェクトの一覧がここにあり、関わっている研究者と研究機関も明記されている。

仕事の結果とそのために作られたツールは、ほかの研究者たちが無料で利用できる。CZIのプライオリティには、オープンソースやデータセットも含まれている。

CZIの科学部のトップCori Bargmann氏はプレスリリースで「Human Cell Atlasの最初の草案を目指す進歩を加速する学際的なコラボレーションをさらに支援し構築していくことに、喜びを感じている」とコメントしている。とても大きな仕事だから、数年後にその進捗をチェックしてみたい。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

伊藤忠が超抜ハエ技術のムスカと提携した理由、畜糞処理からプラント建設までの壮大な構想

ムスカは3月1日に丸紅と、4月23日に伊藤忠商事とそれぞれ戦略的パートナーシップを締結した。両社ともムスカに資本参加し、畜糞処理や食料危機などの世界的問題の解決に取り込んでいく方針だ。

ムスカは、2016年設立のスタートアップ企業。45年間1,100世代の交配を重ねたイエバエの幼虫を活用し、糞尿などを約1週間で肥料化、そしてその幼虫を飼料化する技術を擁する。昨年TechCrunch Japanが主催したイベント「TechCrunch Tokyo 2018」内のピッチコンテスト「スタートアップバトル」で100社超の応募企業の頂点、最優秀賞を獲得した企業でもある。

このようにムスカには卓越した技術があるものの、10億円超のコストがかかると試算されている、1日100トンの糞尿処理能力を有するバイオマスプラントの建設は始まっておらず、現時点ですぐに結果を出せない。そんな設立間もないスタートアップ企業となぜ大手商社が組んだのか。TechCrunchでは、それぞれの商社に個別取材してその理由と狙いを聞いた。2回目となる今回は、伊藤忠商事の岡野聡太氏を取材した。

関連記事:タンパク質危機の回避を目指す丸紅がイエバエ技術のムスカと組んだ狙いとは?

伊藤忠商事の岡野聡太氏

岡野氏は2015年から同社でベンチャー投資業務に従事し、現在はビジネス開発・推進部にて全社のCVCを務める人物だ。

最初にムスカを知った経緯について岡野氏は「伊藤忠商事で取引のあるベンチャーキャピタルから紹介を受けた」とのこと。続けて「伊藤忠商事は幅広い業界・地域でビジネスを行っており、ムスカの提供するエコシステムは各領域でシナジーを生むと考え、パートナーシップを組むことになりました」と語る。

糞尿を処理するバイオマスプラントが未着工の状態でのパートナーシップ提携については、「イエバエの育成及び保管技術、優秀なイエバエそのものを有していることを実際に確認したうえでの提携です。伊藤忠としてはムスカが描くビシネスモデルは成立可能で、かつ伊藤忠の事業とのシナジーが十分にあると考えて投資に踏み切りました」と岡野氏。

今後については「まずはムスカのプラント建設を支援する」とのこと。支援内容としては資金だけでなく、関係業者の紹介も含まれるという。プラント建設後は、そこで生産される飼料・肥料の販路開拓、海外へのプラント輸出なども検討していく考えだ。

岡野氏によると「伊藤忠商事は、繊維、金属、機械・エネルギー・化学品、住生活、情報・金融、食料の7つカンパニーに分かれており、ムスカに対しては食料以外のカンパニーも興味を示しています」とのこと。具体的には、「プラント建設時の土地の選定、建築資材の提供、物流網の構築など、さまざま新規事業が生まれるかもしれない」と語る。

【編集部注】伊藤忠商事は6月12日、既存7カンパニーから多様な知見・経験を有した人材を選抜して組織する第8カンパニーを新設することを発表した。第8カンパニーのプレジデントには、食料カンパニーにエグゼクティブバイスプレジデントを務めていた細見研介執行役員が就任する。同カンパニーでは、消費者のニーズをより重視した商品・サービスの企画・開発を進めるほか、若手の起用による組織の活性化を狙うとのこと。通常、社内で新規事業開発を進めるグループは、営業部傘下の課であったり、役員直下の部であることが多い。社長/COO直属の組織として新規事業開拓のカンパニーを新設した今回の組織変更は、伊藤忠の強い意気込みを感じる。

また出資額については「建設費が10億円ほどかかる1号プラントの建設に協力という文脈から出資額は10億円超と報道されましたが、金額は非公開です。ただし、伊藤忠の各カンパニーが協力して建設を支援すれば、もっと低い費用でプラントを建設できる可能性もある」とのこと。

丸紅の参入について聞くと「丸紅さんは我々よりも早いタイミングで参入されていますが、丸紅さんがいるから入らないという意思決定はしません。むしろ、伊藤忠が得意なところ、丸紅さんが得意なところそれぞれで協業し、ムスカさんの企業価値の向上につなげることができれば両者がWin-Winになると考えています。昨今は各商社スタートアップへの投資を実施しており、このようなパターンは決して稀ではありません」とのこと。具体例として、伊藤忠商事は、三井物産(三井物産オルタナティブインベストメンツ)と再生医療事業を展開しているオーガンテクノロジーズに共同出資している。

オーガンテクノロジーズの事業内容(出典:オーガンテクノロジーズ)

さらに岡野氏によると「伊藤忠商事がスタートアップ企業に投資することも特に珍しいことではない」とのこと。歴史をさかのぼると、90年代には国内企業としてはいち早く、北米にてベンチャー投資を開始。投資活動を継続し、米国VCのa16z(Andreessen Horowitz)などとも関係が深い。

2000年代に入ってからは伊藤忠テクノロジーベンチャーズを立ち上げ、「スタートアップ企業への投資が現在のように活発化する前から積極的に国内外で投資をしてきた」と岡野氏。最近の事例としては、2018年12月にデジタル広告事業を展開するフリークアウト・ホールディングスとの資本提携を発表したほか、2017年12月にはDELISH KITCHENのサービスを提供しているエブリーへの資本参加もあった。

伊藤忠では、2019年4月に組織改変を実施し、CDO・CIOを新設。さらにCDO・CIO管轄下に次世代ビジネス推進室を創設し、投資事業のアクセルを踏んでいく。岡野氏によると「昨年で次世代関連の投資は300億円程度、今年は1000億円超の投資を検討しており、スタートアップ企業を含め今年も積極的に投資を実施していく」とのことだ。

世界を飢えから救う農業技術コンペの初受賞者決まる

世界の食糧危機を解決するイノベーションを懸賞付きコンペで募集している財団FoodShot Globalが、そのコンペ「Innovating Soil 3.0」の初回の受賞者を決定した。

受賞者Trace Genomicsは、土の健康を分析して農地の使い方の最適化を推奨するスタートアップで、賞金としてFoodShotのVCパートナーS2G Venturesからの投資を受領した。その金額は非公開だ。

ほかに25万ドルの賞金が、再生可能農業に計数管理と情報管理を導入するためのツールCOMETの普及にむけて活動しているKeith Paustian氏と、長期的な生物多様性の研究家Gerlinde De Deyn氏に贈られた。

また、農業技術に関する知識をカタログ化して無料でその情報を全世界の農家コミュニティに配布する、オープンソースのデータプロジェクトを開発しているDorn Coxに、3万5000ドルの賞金が贈られた。

FoodShot Globalの創設者で理事長のVictor Friedberg氏は次のように述べる。「FoodShot Globalを作ったのは、世界中の指導的立場にある人々によるイノベーションと資本と協力精神によって変化を起こしたいからだ。最初に土、土壌を選んだのは、将来の世界の100億の人口が、維持可能なかたちで健康的に食べていくためには、健康な土を必要とするからだ。今日選んだ3名の受賞者はすべて画期的な仕事をしており、今の文明が直面している緊急事態に対する、次世代のソリューションの基盤になりうる。立ち上がったばかりのFoodShot Globalの最初の受賞者たちは最高に素晴らしい人たちであり、彼らがやっていることをもっと広範にシェアしていきたい」。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

最近のバイオ企業はどこで資金調達しているのか?

最近のバイオテクノロジー系スタートアップはどこで資金調達しているのだろうか? データを駆使して検討した結果、ある答えにたどりついた。

Crunchbaseの調達ラウンド情報に基づき、登録されている多数のバイオテクノロジー企業が実施したベンチャーラウンドの回数をグラフにプロットしたのが下の図だ。画像をクリックした先で個々のデータポイントにマウスをかざすと2018年から2019年5月までに米国の各都市圏で実施されたベンチャーラウンドの回数が表示される。バイオテクノロジー企業は全世界にあるが、ここでは対象を米国内に絞った。

USA_Biotech_2018-May2019

ソフトウェア分野では、ニューヨーク(および周辺地域)が総調達金額で全体の2番目につけているが、バイオベンチャーの分野ではボストンエリアがニューヨークを上回っている。サンフランシスコ・ベイエリア(サンフランシスコおよびサンノゼ北西のシリコンバレー地域の街を含む)はバイオテクノロジーの調達規模でボストンを上回っているが、もちろん地理的にもずっと広く、スタートアップの密度も高い。

バイオテクノロジーのビジネスモデルが大型ラウンドを生む

最近Crunchbase Newsで、免疫治療の新興企業、AlloVirが実施した1.2億ドル(約130億円))の調達ラウンドを報じた。ソフトウェアの世界ではこの規模の資金調達は目を引くが、バイオビジネスの世界ではさほどでもない。

参考までに、米国で2018年から2019年5月までの間に企業向けソフトウェア・スタートアップが実施したシリーズBラウンドの平均金額を計算するとおよそ2270万ドル(約24億4000万円)だった。同じ期間にバイオテック企業が実施したシリーズBラウンドの平均は金額はちょうど4000万ドル(約43億円)だった。

実験室で細胞をいじりまわすためにはコストも技術も必要であり、実験結果がモノになる可能性は、ソフトウェアフレームワークを実装した結果よりも低い。そこに臨床試験と規制の壁を越えるための膨大な費用が加わり、医者と患者の前に出ていくまでにはさらに多額の営業・マーケティング費用がかかる。多くのバイオテック企業がスタートアップサイクルの早い時期に巨額の費用を調達しなければならない理由がよくわかる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

タンパク質危機の回避を目指す丸紅がイエバエ技術のムスカと組んだ狙いとは?

ムスカは3月1日に丸紅と、4月23日に伊藤忠商事とそれぞれ戦略的パートナーシップを締結した。両社ともムスカに資本参加し、畜糞処理や食料危機などの世界的問題の解決に取り込んでいく。

ムスカは、2016年設立のスタートアップ企業。45年間1100世代の交配を重ねたイエバエの幼虫を活用し、糞尿などを約1週間で肥料化、そしてその幼虫を飼料化する技術を擁する。TechCrunch Japanが主催したイベント「TechCrunch Tokyo 2018」のスタートアップバトルで100社超の応募企業の頂点、最優秀賞を獲得した企業でもある。

このようにムスカには卓越した技術があるものの、10億円超のコストがかかると試算されている1日100トンの糞尿処理能力を有するバイオマスプラントの建設はまだ始まっておらず、現時点ですぐに結果を出せない。そんなスタートアップ企業となぜ大手商社が組んだのだろうか。

TechCruchでは、それぞれの商社にその理由と狙いを個別に取材した。1回目となる今回は、丸紅の食料・アグリ・化学品グループに属する、食料本部の穀物油糧部、穀物油糧事業課の川野栄一郎氏と高田大地氏に話を聞いた。

丸紅・食料本部の穀物油糧部・穀物油糧事業課の川野栄一郎氏

丸紅の食料本部がスタートアップ投資に本格的に興味を持ち始めたのはここ1年ぐらいのこと。ムスカの存在を知ったのは、2018年6月に日本経済新聞社主催で開催されたAG/SUM(アグリテック・サミット)だったという。ムスカはこのイベントで、最高賞の1つである「みずほ賞」を獲得している。

丸紅は、その後にすぐにムスカとコンタクトを取り、同社の担当者が宮崎県児湯郡都農町にあるムスカの実験場を視察。45世代1100交配を重ねたイエバエのポテンシャルを実際に確かめたあと、2018年9月に出資を決め、2019年3月に戦略的パートナーシップを提携した。

丸紅・食料本部の穀物油糧部・穀物油糧事業課の高田大地氏

実は丸紅としては、電力・エネルギー・金属グループに属する電力本部がアクセラレータープログラムとして「丸紅アクセラレーター」を実施しているほか、2018年12月には社会産業・金融グループの建機・自動車・産機本部が米国で自動運転配送を手がけるスタートアップであるudelv社に出資している。このように丸紅全体としては、スタートアップ企業との協業や支援を進めている。このように丸紅全体としては、スタートアップ企業との協業や支援を進めているのだが、食料本部としてスタートアップ企業と組むのはここ数年では初めての事例だったという。

丸紅では、世界的な肉食が進むことで近い将来に発生するタンパク質危機を強く認識しており、川野氏によると「穀物トレードを通じて代替タンパク質の必要性を痛感していた。日本の水産養殖は天然資源である魚粉の価格高騰で苦戦しており、魚粉に代わる代替タンパクの必要性が議論されてきた。こういった現状でハエの幼虫を動物性タンパク質の飼料として生産可能なうえ、畜産の最も大きな問題である畜糞の処理を解決できるムスカの技術は画期的だった」とのこと。一方で高田氏は「環境先進国である海外の取り組みを、当社は数年前より独自に調査・コンタクトし、知見を積み上げてきた。そのような背景があったからこそ、ムスカのビジネスモデルが当社の課題認識、戦略的方向性とマッチしていることを短い時間軸で確認できた。また、経営陣のビジョンにも強く共感した」とコメント。


丸紅では今後、ムスカの技術を利用した畜糞の処理と、そこから生み出される飼料としての動物性タンパク質(ハエの幼虫)を、同社の幅広いネットワークに組み込んでいくこと予定とのこと。つまり、畜産によって排出された糞尿の処理をムスカに依頼し、そこで生産された飼料を買い取って丸紅の販売網に載せていくというわけだ。「ムスカとの事例を同社のオープンイノベーションの成功事例となるように進めていきたい」と高田氏。

将来展望としては「当チームは全ての可能性に対してオープンであり、ムスカを皮切りに今後もスタートアップを含むさまざまな企業と協業することで、より強固で持続可能なサプライチェーンを共に構築していきたい」と川野氏。今回のムスカとの協業による畜糞処理と飼料の生産だけでなく、穀物の生産や魚の養殖、運搬などの案件で他企業をタッグを組んでさまざまな問題の解決を進めていく方針だ。

DNA製造をより速くそしてより簡単に、DNA Scriptが42億円強を調達

DNA Scriptは、新たに3850万ドル(42億円強)の資金調達を行った。遺伝物質の製造における、史上初の大きな飛躍であるという触れ込みのプロセスを、商業化することが目的である。

産業を医療から農業へと改革していく合成生物学の革命は、同じように重要な3本の柱に支えられている。

その3本とは、(1)分析:ゲノムをマップし異なる遺伝子の機能を理解する能力、(2)合成:ある特定の機能を達成するためにDNAを製造する能力、(3)遺伝子編集:遺伝コードを足したり引いたりすることを可能にするCRISPRベースの技術である。

ゲノムの分析と編集を変革する新しい技術はすでに導入されていいたが、遺伝物質の製造方法に関しては過去50年間にわたってほとんど進歩してこなかった。それこそがまさに、DNA Scriptが取り組んでいる問題である。

従来は、DNAを製造するためには、化合物を用いて、せいぜい200個程度のヌクレオチド塩基で構成されるDNAの鎖を合成する(もしくは書き出す)ことが必要だった。こうして合成された遺伝子コードの断片が、その後集められ組み立てられて遺伝子になるのだ。

DNA Scriptの技術は、DNAが細胞内で組み立てられる酵素プロセスを模倣することで、エラーは少なく、そして化学的廃棄物は伴わずに、ヌクレオチドのより長い鎖を作ることを約束する。この酵素利用プロセスは、ヘルスケア、化学製造、および農業における商用利用を加速することができる。

「工程を加速できる技術は、どんなものでもとても有意義なものとなり得ます」とNatureで語っているのはMITの合成生物学者であるクリストファー・ボイト(Christopher Voigt)氏である。

市場の中で、酵素を利用したDNA生産において、飛躍的な前進を遂げようとしているのは、DNA Scriptはだけではない。ハーバード大学の有名な遺伝学者ジョージ・チャーチ(George Church)氏と協業するNuclearや、カリフォルニア大学のジェイ・キースリング(Jay Keasling)氏のバークレー研究所系列のスタートアップであるAnsa Bioなども、同じ技術を推進している。

しかし、パリを拠点とするDNA Scriptは、商業的に展開し最初に市場に参入することを可能にする、ある程度のマイルストーンを達成している。

少なくともそれこそが、今回の新しい投資家であるLSPとBpifranceの両者が、そのLarge Ventureファンドを通じて期待していることだ。DNA Scriptに対する最新のファンディングに対して、この両者と共に、これまでの投資家であるIllumina Ventures、M. Ventures、Sofinnova Partners、Kurma Partners、そしてIdinvest Partnersが参加している。

DNA Scriptによれば、調達した資金は、最初の製品の開発を加速させ、米国でのプレゼンスを確立するために使われる。

「今年初頭のAGBT(最先端ゲノム生物学と技術)会議で発表したように、私たちDNA Scriptは、今日使用されている最高の有機化学プロセスと同等の平均合成効率で、200merのオリゴヌクレオチドを酵素方式で合成した、最初の企業なのです」と語るのはDNA ScriptのCEOで共同創業者のトーマス・イベール(Thomas Ybert)氏だ。「私たちの技術は、最初の商用製品として十分な信頼性を保つことができるようになりました。このことにより、ほんの数時間で完了するDNA合成技術を使って、世界中の研究者に1日で結果を返すという約束を果たすことができるようになると考えています」。

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(翻訳:sako)

バーガーキングの動物肉不使用バーガーは年内に全米で発売

バーガーキングは、エイプリルフールのジョーク的にデビューさせたインポッシブル・ワッパーを年末までに全米で展開する。4月1日にバーガーキングがセントルイスの58カ所のレストランで提供を開始したインポッシブル・バーガーは、間もなくそれ以外の店舗のメニューにも登場し、年末までに全店舗で提供されるようになる。

バーガーキングはインポッシブル・バーガーを展開することで、主力のワッパー販売を鈍らせることなく新たな客を呼び込むことができる。

これは選択を提供するという話であり、「バーガーを毎日食べたいけれどビーフを毎日食べたいわけではない、という人がバーガーキングの店舗に頻繁に来れるようにすることができる」とバーガーキング北米の会長Chris Finazzo氏はCNN Businessに当初のテストについてこう語った。

バーガーキングはベジタリアンパテをしばらくの間販売していたが、全米ラインアップへのインポッシブル・フーズバーガー追加により、バーガーキングは新たなプロテイン(成長中の消費カテゴリーだ)を取り入れる最大の全国ファーストフードチェーンとなる。

大成功となったセントルイスでのインポッシブル・バーガーデビューのニュースは、バーガーキングの親会社Restaurant Brandsのかなり低調だった決算報告の中では明るい要素だった(Associated Pressの報道によると、第1四半期の純利益は店舗販売の伸び悩みで9%減の1億3500万ドルだった)。

Markets and Marketsのレポートでは、肉の代用品マーケットは2023年までに64億3000万ドルに達すると予想されている。ベンチャー・キャピタリストやコーポレート・インベスター、そしてパブリックマーケットは肉代用品の会社に熱い視線を注いでいる。そしてインポッシブル・フーズバーガーの全米展開は、この産業が成熟しつつあることを示すBeyond Meatの株式公開とつながっている。

どちらの会社も動物由来のプロテインを含む食品に代わるものの実験を行なっている先駆者で、その他のいくつかの企業は傍で待機している。Crunchbaseが最近行った企業投資調査では、コーポレート・インベスターがいかに肉マーケットを意識しているかが明らかになっている。

「食品テックと農業テック1.0はというと、これらは主に生産者のためのものだ」と、アグリフードベンチャー投資プラットフォームのAgFunderの設立パートナーRob Leclerc氏はCrunchbaseに語った。「この新世代の企業は、消費者が何を欲しているのかに本当にフォーカスしている」。

より多くのファーストフード企業が意識している。実際、バーガーキングはインポッシブル・バーガーを数百もの店舗で展開しようとしている初のファーストフードチェーンではない。映えある第1号はWhite Castleだ。

イメージクレジット: Burger King

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(翻訳:Mizoguchi)

FBIがマイクロバイオーム関連のスタートアップuBiomeのオフィスを捜索

FBIのエージェントが、個人のマイクロバイオーム(微生物叢、腸内に存在するバクテリア)の分析情報を販売している医療検査会社uBiomeのオフィスを捜索した。ウォールストリートジャーナル(WSJ)が報じた。

「FBIサンフランシスコの特別捜査官が、サンフランシスコの360 Langton Streetにいて、裁判所の承認を得た法執行活動を行っている。まだ調査が続いているため、現時点で追加の詳細情報を提供することはできない」とFBIのスポークスパーソンは話した。360 Langton streetはuBiomeのオフィスがある住所だ。

マイクロバイオーム分析の臨床的妥当性と有効性をめぐり、多くの疑問が残されているが、uBiomeが調査を受けているのは、医者が注文した、もしくは消費者が要求したテストキットを提供しているからなのかもしれない。

uBiomeの広報担当者は「我々はこの件に関して連邦当局に全面的に協力している。私たちは医療提供者と患者のニーズに応え続けられることを期待している」とメールで綴った。

uBiomeは、消費者向けおよび臨床用途のためにマイクロバイオームという新生分野の研究を行う、多くのスタートアップのうちの1つだ。

Jessica Richman氏が2012年に創設。クラウドファンディングで35万ドルの資金を調達することでマイクロバイオーム関連の試験を開始し、去年は8300万ドルを調達したと報道されている。

uBiomeがおそらく連邦政府との間で法的問題に直面しているように、他のマイクロバイオーム関連のスタートアップも同様に苦労を強いられている。

遺伝子とマイクロバイオームの検査とコーチングを組み合わせ、消費者のロングタームでの健康状態を改善を目指すArivaleは、Maveron、Polaris Partners、Arch Venture Partnersを含む投資家から5000万ドル以上を集めた後、その消費者向けプログラムを強制的に廃止させられた。

Arivale氏は「残念ながら、私たちは消費者向けプログラムを打ち切りました。 その決定は、サービスを提供する費用が、顧客が支払うことができる金額を超えるという単純な事実に起因します」とホームページでアナウンスした。

「プログラムの基盤となる遺伝子、血液、およびマイクロバイオームを集める費用は、最終的には、プログラムを費用対効果の高い方法で消費者に提供できる程度まで低下すると考えられます。 しかし、私たちはその時が来るまで赤字で活動を続けることはできません」

uBiomeの顧客の中には、保険会社に支払わせることで、これらのコストを回避することができた人もいた。 政府は「それらの保険金請求が不正であったかどうか」を調査している可能性が高い。

(本稿は米国版TechCrunchの記事を翻訳・編集したものです)

[US版TechCrunchの記事はこちら]

UCサンフランシスコ校の脳外科医が脳から直接発話を引き出すことに成功

科学者たちが健康な被験者の脳に直接接続を行い、言葉を生成して音声として再生することに成功した。これは深刻な医学的状況にある人たちが、発話できる可能性につながって行く素晴らしい技術だ。この技術は実用からはまだ遠い段階だが、科学的成果は本物で、見込みは確かにある。

カリフォルニア大学サンフランシスコ校の脳神経外科医であり、米国時間424日にNatureで発表された論文の共著者でもあるエドワード・チャン(Edward Chang)氏は、プレスリリースの中でチームの成果のインパクトを次のように説明している。「今回初めて、この研究によって、個人の脳の活動から完全な発話の文章が生成できることが示されました。これは、発話機能を失った患者さんに対して、すでに手の届くところにある技術を使って臨床的に実現可能なデバイスを作ることができるということを示す、勇気付けられる証明なのです」。

はっきりさせておきたいのだが、これは単に機械の前に座れば、頭の中の思考をスピーチに変換してくれる魔法の機械ではない。正確に言えばこれは、対象が考えていることではなく、実際に話していることをデコードする、複雑で侵襲的な手法なのだ。

発声科学者のゴパラ・アニュマンチパリ(Gopala Anumanchipalli)氏に主導されたこの実験は、他の医学的処置のために既に脳に大きな電極が埋め込まれていた被験者に対して行われた。研究者たちはこの、運のいい被験者たちに、数百の文を大声で読んでもらい、同時に電極が捉えた信号を詳細に記録した。

脳に装着された電極

すると、言葉を考えて並べようとした瞬間から、最終的に信号が運動野から舌や口の筋肉に送られるまでの間に起きる脳のアクティビティ(ウェルニッケ野やブローカ野などの大脳皮質領域で起きるもの)に、ある種のパターンがあることに研究者たちは気が付いた。アニュマンチパリ氏と彼の共著者である大学院生のヨシュ・シャルティエ(Josh Chartier)氏が、以前解析していたものと関連する信号が存在していたため、彼らはそれを発話の再構成の目的に利用できるかもしれないと考えた。

音声を直接分析することで、チームはどの筋肉と動きがいつ必要になるか(これは良く確立された手法だ)を判断することができ、これを使ってその人物の発声システムの、一種の仮想モデルを構築した。

次に彼らは機械学習システムを利用して、セッション中に検出された脳のアクティビティをその仮想モデルに写像した。すなわち本質的には脳の記録を使って、口の動きの記録を制御することができたということだ。繰り返すが、これは抽象的な思考を言葉にしているのではない、ということを理解することが重要だ。このシステムが理解しているのは脳が顔の筋肉に対して送っている具体的な命令であり、その命令による動きが生み出すであろう言葉を決定しているのだ。これは脳を読んでいるのであって、心を読んでいるのではない。

結果として得られる合成音声は、はっきり明瞭なものではないが、確かに理解することは可能だ。そして正しく設定することで、他の方法ではおそらく話すことができない人から、毎分150ワードを引き出すことが可能になるかもしれない。

「話し言葉を完全に真似るには、まだまだ時間がかかります」とシャルティエは語る。「それでも、私たちがここで生み出した正確さのレベルは、現在使える他のリアルタイムコミュニケーション手法と比べて、驚くほど改善されたものとなるでしょう」。

たとえば進行性筋疾患に罹って苦しんでいる人の中には、視線によって文字を1つずつ入力して単語を綴ることで発話しなければならない人も多い。1分あたり5〜10単語がせいぜいで、より重度の障害者のために使われる他の方法は、さらに遅くなる。コミュニケーションを取ることができるという意味では、それはある意味奇跡だが、こうした時間がかかりあまり自然とは言えない手法は、実際の発話のスピードや表現力と比べると段違いなのだ。

より良い「双方向」脳=コンピューターインターフェイスの研究が進んでいる

もしこの手段を使うことができたなら、完全な正確さは無理かもしれないが、遥かに普通の喋り方に近付くことができるだろう。しかし、これは問題を一撃で打ち砕く魔法の弾丸ではない。

この手法の問題点は、健全な音声システムに近いものから慎重に収集された、脳から舌先に至るまでの大量のデータを必要とすることである。障害が既に起きてしまったひとにとって、このデータを集めることはもはや不可能だし、それ以外の人の場合でもデータ収集のための(脳に電極を装着する)侵襲的なやり方は、医師から推奨されない可能性がある。そして、ある人が話すことをそもそも妨げてきた条件は、この手法が機能することも同様に阻害するだろう。

良いニュースは、これは始まりに過ぎないということで、理論的には上手くいく条件が沢山あるということだ。そして、脳卒中や病気の進行の危険性が高いと考えられる場合には、脳と発話の重要な記録データを、事前に収集しておくことができるだろう。

[原文へ]

(翻訳:sako)

超抜イエバエ技術のムスカがiCEO職を廃止、新経営体制を発表

暫定CEO(iCEO、Interim CEO)と言えば、1996年にアップルに復帰した故スティーブ・ジョブズ氏を思い浮かべる読者が多いことだろう。実は日本のスタートアップ業界にも暫定CEOとして活躍していた人物がいる。その人物が所属するムスカは4月23日、新経営体制を発表した。

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ムスカのイエバエを活用したバイオマスリサイクルシステム

同社は、45年1100交配を重ねた超抜イエバエを駆使して、通常は2〜3週間かかる生ゴミや糞尿の肥料化を約1週間で処理できる技術を擁する、2016年12月設立のスタートアップ。廃棄物を肥料化するのはイエバエの幼虫だが、その幼虫はそのまま乾燥させることで飼料にもなる。2026年に到来すると予想されている飼料としての魚粉の供給限界に向けて、このタンパク質(=幼虫)はその代替として注目されている。

ムスカはこれまで、広報部門の責任者だった流郷綾乃氏が代表取締役暫定CEOに就任していたが、新経営体制では暫定CEO職を廃止。流郷氏は新たに代表取締役CEOに就任する。これまで「できるだけ短い期間で暫定CEOの座を降りて、次のリーダーに託すのが私の目標」と話していた流郷氏だが、事業化フェーズへの移行に伴って、経営執行体制の明確化と意思決定の迅速化を図るため方針を転換したようだ。

また、代表取締役会長だった串間充崇氏はファウンダー/取締役会長ヘ、元三井物産の安藤正英氏は取締役暫定COOから取締役COOヘ、元ゴールドマン・サックスの小高功嗣氏は取締役から取締役CFOにそれぞれ就任する。串間氏は、ムスカのハエ技術を駆使した工場建設に注力。そして流郷氏、安藤氏、小高氏の執行体制により、事業を推進していくという。

この発表に併せて、これまではコワーキングスペースを間借りしていた東京オフィス(東京事業所)を西麻布に移転。海外での工場立ち上げ経験がある人材の募集も開始している。

詳しくは別記事で報じているが、伊藤忠商事と戦略的パートナーシップ締結も発表した。これは3月1日に発表された丸紅に続く大手商社との提携だ。伊藤忠商事は、ムスカのバイオマスリサイクル施設の1号プラントの参画を予定しており、十数億円をムスカに出資する見込み。今回の人材募集は、1号プラント建設後を見据えたものだと考えられる。

100社超の応募の中から20社がファイナリストとしてTechCruch Tokyo 2018のスタートアップバトル本戦に進出。投資家や経営者の審査で、その20社から最優秀賞に選ばれたのがムスカだ

2018年に11月に開催したTechCrunch Tokyoのスタートアップバトルで100社超の企業の頂点、最優秀賞を受賞したムスカ。それから5カ月あまりで経営体制を大幅強化し、大手商社と組んで事業を大きく拡大させることになる。

飼料と肥料に革命を起こすハエ技術のムスカ、丸紅に続き伊藤忠と提携し10億円超調達へ

ムスカが有する超抜イエバエは羽化する前に収穫・飼料化されるが、ムスカは遂に飛翔することになる。同社は、TechCrunch Tokyo 2018の「スタートアップバトル」で応募100社超の頂点、最優秀賞に輝いた2016年12月設立のスタートアップ。

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伊藤忠商事は4月23日、ムスカに出資し、戦略的パートナーシップを締結することを発表した。大手商社との提携は、3月1日に発表された丸紅との戦略的パートナーシップ締結に続く快挙だ。

伊藤忠商事の出資額は明らかになっていないが、建設費用10億円と言われるムスカのバイオマスリサイクル設備の第1号プラントへ参画することも併せて発表されたため、十数億規模と見られる。これにより同社はムスカの新株予約権を取得することになる。

ムスカのイエバエを活用したバイオマスリサイクルシステム

現在、世界の深刻な食糧危機により飼料としての魚粉が供給限界に達すると言われているほか、人口増加によって有機肥料市場が今後高騰することも確実。伊藤忠商事はこういった現状を打破するためにムスカとの提携を決めた。

ムスカは45世代1100交配を重ねたイエバエの繁殖技術を擁する

ムスカが擁する45年1100回以上の交配を重ねた超抜イエバエは、通常は2〜3週間かかる生ゴミや糞尿の肥料化を約1週間で処理できるのが特徴。しかも、イエバエの幼虫が出す消化酵素により分解されるため、温室効果ガスの発生量も抑えられるという。

伊藤忠商事の食料カンパニーは、食糧原料から製造加工、中間流通、小売りまで幅広いネットワークを有する

前述のように伊藤忠商事はムスカの1号プラントへ参画するが、そのほか国内外における伊藤忠グループのネットワークを駆使して、既存事業やビジネスとの相乗効果を創出し、将来の食糧危機解消の一翼を担う狙いだ。伊藤忠商事や丸紅のネットワークを活用できることで、日本国内はもちろんムスカの海外への展開も現実のものとなってきた。

培養肉から発酵菌まで食品系CVCが夢中になるスタートアップ

食通が夢に描くのは、健康的で、職人気質の農家やパン屋やシェフが提供する、加工食品ではない料理をみんなが味わえる世界だ。しかし現実は、ひと握りの巨大食品複合企業体から供給される食品が摂取カロリーの大半を占めている。そのため、そうした企業の都合によって選ばれた素材や加工方法が、私たちの日々の食事に大きなインパクトを与えることになる。

このことを踏まえ、Crunchbase Newsでは、食品関連のコーポレートVCと、そこが投資するスタートアップを調査し、その取り引き関係から見えてくる私たちの食べ物の将来を探った。私たちは、一部の大手食品製造業者や清涼飲料水製造業者によるベンチャー投資のリストを作成した。その内容は文字通りフルコースだ(ランチョンミートと飲み物付き)。

巨大食品企業から投資を受けたスタートアップの内容は、その投資元と同じように多岐にわたる。最近、資金を獲得した企業は、代用タンパク質からバイオスペクトルの視覚化、発酵菌などさまざまだ。しかし、重要なトレンドをピンポイントで狙いたいならば、安さよりも、消費者に優しい方向へ転換する必要がある。

「フードテックやアグテック1.0を思い浮かべるかも知れませんが、それらは基本的に生産者に利益をもたらすものです」と農業食品投資家ネットワークAgFunderの創設パートナーRob LeClerc氏は言う。「新しい世代の企業は、消費者が欲しがっているものに重点を置いています」

では、消費者は何を求めているのだろう?消費者の私に限って言えば、カロリーゼロのホットファッジサンデーだ。しかし、LeClercはもっと広い視野で一般的なトレンドを見ている。より健康的で、よりおいしくて、より栄養価が高く、満足感があって、倫理的に問題のない材料を使い、環境への影響が少ないものだ。

ではここから、このトレンドについて、投資を受けたスタートアップ、活発に動いている投資家、そしてそこから生まれてくる食品について詳しく見ていこう。

新しいニュープロテイン

大量市場の食品も改善されてゆくだろうが、同時にますます謎になっている。その傾向は、フードテック投資の世界で変わらずホットな分野である代用プロテインで顕著に見られる。高タンパク食品の需要は動物を消費するという倫理的なやましさと相まって、長年にわたり投資家やスタートアップに植物由来で肉のような味のする製品を作らせてきた。

だが近年になって、食品大手は、大豆やエンドウ豆の遙か先を見るようになった。一時はひとつ1000ドルのミートボールという見出しで世間を驚かせるだけだった人工培養の肉の研究も、今では巨額の資金を集めるようになっている。昨年以来、その分野の少なくとも2つの企業が、米国の最大手食肉製造業のベンチャー投資部門Tyson Venturesからの投資ラウンドを決めている。その中には、高価なミートボールを作ったMemphis Meats(でも本社はカリフォルニア)もある。同社は2000万ドル(約22億3800万円)を調達した。動物由来でない肉を開発しているイスラエルのFuture Meat Technologiesというバイオテックスタートアップは、2万ドル(約2億2380万円)を調達した。

もし、研究所で培養された肉と聞いてドン引きしてしまった人にも、火山性温泉に棲息する微生物からタンパク質を得るというオプションがある。それを大きな目標としているSustainable Bioproductsは、ADMやDanone Manifesto Venturesを含む投資企業からシリーズA投資として3300万ドル(約36億9300万円)を調達した。このシカゴの企業は、イエローストーン国立公園の火山性温泉に棲息する極限環境微生物の研究から、食用タンパク質を作り出す技術を開発した。

また、本物の牛乳は欲しいが牛をいじめたくないという人には、その解決策を研究するスタートアップPerfect Dayがある。同社のウェブサイトにはこう書かれている。「牛に苦労をかけないために、私たちは微小植物と前世代の発酵技術を使い、牛から搾乳されるものとまったく同じ乳タンパクを製造しています」。その努力の甲斐あり、このバークレーの企業はADMより、2月にシリーズB投資3500万ドル(約39億1700万円)を獲得した。

発酵食品

発酵技術で大きな投資を受けたのはPerfect Dayだけではない。フードテック向けのコーポレートVCは、長い間あまり注目されていない微生物や人気のない穀物から需要の大きな食材を作り出す加工技術に興味を示してきた。LeClercによれば、最近は、発酵という一世代前の技術を新しい形で応用する方法を研究するスタートアップに投資家たちが夢中になっているという。

発酵と聞くと、大抵の人が思い浮かべるのは、穀物とイーストと水を混ぜたぐちゃぐちゃしたやつが、ビールという飲み物に変化するプロセスだろう。しかし、より広義には、発酵は酵素の働きによって有機基質に化学変化を起こさせる代謝過程ということになる。つまり、何かと何かを混ぜると反応して、新しい何かができるということだ。

食品分野で最も多くの資金を調達し大きな話題になった企業は、発酵技術を応用しているとLeClercは言う。Perfect Dayの他に、LeClercが指摘するスタートアップには、ユニコーン企業のGinkgo Bioworks、もうひとつの代替プロテイン企業Geltor、キノコに特化したMycoTechnologyがある。

とくに最近では、コロラドのMycoTechnologyが投資家の興味を惹いている。同社は複数の企業や古くからのベンチャー投資家から8300万ドル(約92億8900万円)を調達した。これには、1月のTysonとKelloggのベンチャー投資部門Eighteen94 CapitalからのシリーズC投資3000万ドル(約33億5700万円)が含まれている。6年前に創設されて以来、同社は発酵菌の利用方法を幅広く探ってきた。それには、味覚を高めるもの、タンパク質の補給、保存性を高めるものなどがある。

サプライチェーン

家の食料棚に新しい奇妙な食材を並べさせること以外にも、フードテック向けのコーポレートVCは、既存のサプライチェーンの安全性と効率性を高める技術やプラットフォームにも資金を投入している。

新しい食材もそうだが、食品安全技術というのも聞き慣れない。シリコンバレーのImpactVisionは、Campbell Soupのベンチャー投資部門Acre Venture Partnersからシード投資を受けたスタートアップだが、汚染、食品品質、熟成度といった情報を把握するためのハイパースペクトル画像の研究をしている。

同じくAcreのポートフォリオに入っているボストンの企業Spoiler Alertは、食品企業のための売れ残った在庫の管理を行うソフトウエアと分析技術を開発している。また、AIを使った自律飛行ドローンで店内の在庫を記録する技術を持つPensa Systemsは、今年、シリーズAのラウンド投資を、Anheuser-Busch InBevのベンチャー投資部門から受けている。

風変わりならいいのか?

食品向けのコーポレートVCが支援する企業をいくつか紹介したが、これ以外にも注目株はある。健康ドリンクのGoodBellyをはじめとする、プロバイオニクスを利用した企業にも投資家は関心を高めている。タンパク質以外の新しい食材にも資金が集まりつつある。消化が遅い新しいタイプの炭水化物で作られた健康スナックのスタートアップUCANなどがそうだ。こうした企業はまだまだある。

私たちが新しい食品に熱狂してすぐに飛びつきたくなる心理は、既存の食材を食べ過ぎて幻滅してしまったことが関係している。しかしLeClercは、新製品は、最初はいいかも知れないと思えたものでも、長い目で見ればそうではないものもあると指摘する。

「私たちの脳裏には、こんな疑問があります。ずっとマーガリン2.0を作っているのではないか?」と彼は言う。「植物由来だからって、体にいいとは限らないのです」。

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(翻訳:金井哲夫)

マイクロバイオームの研究成果をいち早く消費者に届けたいスタートアップの挑戦

2009年、米国立衛生研究所は、ヒトの腸に棲息する無数の微生物とヒトの総体的な健康との関係を解明する新分野の医療研究を促進するために、1億5000万ドル(約168億円)規模のプロジェクトを立ち上げた。

さらにその10年前から発達を遂げた遺伝学を採り入れ、この新分野の研究者は、ヒトのゲノムだけでなく、ヒトの体内に棲息する微生物の遺伝子配列をマッピングして、その機能と、宿主であるヒトの健康を保つ役割の特定を進めてきた。

10年後、投資家たちはその結果を商品化しようと、 uBiome、Viome, Finch Therapeutics, Kallyope, Second Genome, Human Longevity, Maat Pharma, Seedなどなどといった数多くのスタートアップ企業に多額の資金援助を行っている。

全体としてそれらの企業には、5億ドルを超える資金が投入された。

そうしたなかで、uBiomeViomeFinch TherapeuticsKallyopeSecond GenomeHuman LongevityMaat PharmaSeedといった企業は、大手製薬企業の世界に正面から乗り込み、正道の研究技術や治験を通して病気の治療法を開発している。

その一方で、uBiomeやViomeなどは、まずは消費者と直接向き合うことにした。一般消費者向けのマイクロバイオーム解析キットを使って、マイクロバイオームに関する知識体系を積み上げようというのだ。このキットを使うと腸内微生物のサンプルを採取でき、それを元にした健康改善のための食事に関する基礎的なアドバイスが受けられる。

ViomeのCEOおよび共同創設者Naveen Jain。

これらの企業は、サプリや栄養補助食品を管轄する規制のグレーゾーンで活動しているため、規制当局の認可は受けていない。

しかし彼らも、認可を受けて、小売店や科学雑誌に受け入れてもうために、医学的に有効な臨床試験を行い、アドバイスの科学的な裏付けを固める方向に転じた。それは、薬品開発へつながるバリューチェーンを一気に登ることでもある。23andMeの、遺伝学の知識体系を固める戦略もこれに通じる。現在同社は、薬品メーカーにその情報を提供し、病気の新しい治療法を共同で開発できるまでになっている。

今年の始め、uBiomeは、2012年に発売を開始したマイクロバイオーム検査キットを支援している投資家から1億ドル(約111億9800万円)の資金を調達し、50人以上の従業員を一時解雇した。同社によれば、薬品開発事業に力を向けるための改革だという。

現在、250万ドル(約2億8000万円)を調達したViomeも、約15件の臨床試験を行い、独自の治療法開発に移行したいと考えている。

この臨床試験の目標は、「私たちが推奨する治療介入が、実際に結果を生むことを示すため」と、ViomeのCEO、Naveen Jainは話している。

最近の科学調査では、マイクロバイオームを健康に保つことで、うつ病変形性関節症機能性腸疾患多発性硬化症などの病気の苦痛を軽減したり進行を遅らせることが可能だと判明している。

写真提供:Andrew Brookes/Getty Images

その一貫として、Viomeは、大腸癌、乳がん、うつ病と不安症、糖尿病と肥満、クローン病、大腸炎、消化系障害に焦点を当てている。

特許や論文の数で他社に遅れを取っているViomeだが、今回の250万ドルの投資で形勢が変わるかも知れない。この投資には、Khosla Ventures、Bold Capital、Marc Benioff、Physician Partners、Hambrecht Healthcare Growth Venture Fund、Matthew Harris of Global Infrastructure Partnersという、旧知の、または新規の投資会社が参加している。

一般消費者を対象としたマイクロバイオーム分野で、Viomeが他社と異なるのは検査技術だとJainは言う。同社は、全米に広がるさまざまな国立研究所で放棄された技術を商品化するためのベンチャーJain’s BlueDotの最初のスピンアウト企業だ。

Viomeの検査技術は、BlueDotがロスアラモス国立研究所から引き継いだもので、細胞に何を生産すべきかを伝える伝達メカニズムであるリボ核酸のシークエンシングの変型だ。

Jainとその研究者チームは、こう考えている。RNAをシークエンシングすることで、健康に寄与したり害を与えたりする化学物質を微生物が体内で生産する際の、伝達経路と代謝経路が見えるようになるという。

ViomeもuBiomeも、「クオンティファイド・セルフ」、バイオハッキング、そしてホメオパシーによる健康の最適化や、自然療法でのさまざまな病気の治療を目指す健康コミュニティの恩恵を受けている。

写真提供: Shutterstock

「3年前、マイクロバイオームは非常にニッチな市場でしがが、今は主流になっています。主流となれば、人に貢献するのが筋です」とJainは話す。「単に、自分自身を数量化したい人だけのツールであってはいけません。価値を届けるのです」

だからこそ、同社は独自の臨床試験方法を開発した。そこに至るまでには、成長の痛みがあったとJainは言う。

利用者の意見を掲示した同社のウェブサイトで、製品に関する利用者の声にざっと目を通すと、Viomeの製品とサービスを誰もが信頼しているわけではないことがわかる。それの意見を力に、JainはCLIA(米国臨床検査基準)の認証を受けることを決意した。臨床試験を行うために必要だとJainが考えるものだ。

「昨年の11月と12月には成長痛を経験しました。私たちは急速に成長し、公認の臨床研究所になりたいと願っていました。(中略)認証には1カ月を要し、連邦政府からの認証を受けた後、州の認証も受けなければなりませんでした」とJainは話す。「その3カ月の間、多くの顧客の不満を買いました」

この業界の一部の観測筋は、マイクロバイオームに焦点を当てたスタートアップの苦悩の原因は、臨床への移行よりもむしろ、科学的な裏付けがほとんどない状態で、あまりも早く市場へ参入してしまったという単純な事実にあると見ている。

「マイクロバイオームの分野も大変に重要です。しかし、いまだに解明されていない科学的要素が大量にあり、同時に、この分野を前進させるためには、そのデータを集積して理解することが欠かせません」と。消費者向け健康市場のある起業家は話す。「いずれにせよ、消費者向けは時期尚早です」

写真提供:Getty Images

「キットの販売は、収支がとんとんか、損をすることになります」とJainは言う。「人がなぜ不眠症や糖尿病やうつ病になるのかが解明されれば、個人の必要に合わせた栄養素の組み合わせを考えることができます。(中略)新しいタイプの体に良い細菌や前生物的なものになる可能性もあります」

一方、uBiomeは、サービスの裏付けとなる本物の科学を証明する独自の特許ポートフォリオを宣伝している(ただし、特許のほとんどはマイクロバイオームの解析結果に基づく治療プロトコルではなく、その配列決定や健康状態の解析に関連する技術だ)。

同社の最高責任者と研究者たちは、マイクロバイオーム分野の第一級の発明者のポートフォリオのサイズにおいて、1、2、3番の地位を保持しており、特許品質では2、3、4番の地位を保持している。この調査結果は、特許を深く分析することで、テクノロジーの早期指標と大きな特許データベースでの投資傾向の特定を行うケーススタディを提供したと、uBiomeは先月発表した記事に書いている。

uBiomeの特許は、マイクロバイオーム検査キットの方式と分析方法から、心血管疾患、内分泌疾患、自己免疫疾患、神経疾患などの診断と治療の方法まで網羅していると同社は話している。

Jainも、uBiomeのCEO、Jessica Richmanも、マイクロバイオームを利用した治療法を開拓する先駆者ではない。どちらも科学の専門家ではないからだが、科学の恩恵をいち早く消費者に届けるべきだという強い信念で共通している。

米国立衛生研究所が立ち上げたHuman Microbiome Project(ヒトマイクロバイオームプロジェクト)は、2007年から2012年8月までの5年間で1億7300万ドル(約194億円)をかけ、ヒトのマイクロバイオームの解析を試みました。私たちは、それが終了した直後の2012年11月に、Indiegogoでクラウドファンド・キャンペーンを立ち上げています」とY Combinatorのウェブサイトに掲載されたインタビューで、Richmanは話している。「私たちはヒトマイクロバイオームプロジェクトの結果を、一般の人々に直接届け、すべての人たちがマイクロバイオームのことを学び、できるだけ早くこの科学の世界に参加できるようにしたいと考えました。何年も何年もかけてその研究結果がトリクルダウンしてきて、ようやく一般向けの製品やサービスになるのを待ってなどいられませんでした」

JainにとってViomeは、父親への恩返しと、その命を奪った病の治療法開発の機会を与えてくれる場所でもある。

「私にとってそれは、ひとつの企業である以上に、使命でもあります。有効な治療法を見つけるという父との約束です」とJainは言う。「これは恩送りでもあります」

[原文へ]
(翻訳:金井哲夫)

スナックバーの破壊的創造、完全食を目指すSoylentが米国1兆億円規模の市場に参入

完全食を目指すSoylent(ソイレント)は、これまでの液状製品(飲み物)を捨てて、スナックバー的なパッケージ商品を発売する。

その熱量100カロリーのバーは植物性たんぱく質5グラムと36種の栄養素、そして消化を助けるプロバイオティクス(乳酸菌など)を含んでいる。チョコレートブラウニー、シトラスベリー、塩キャラメルの三種類がある。

それは同社の今年2つめの新製品だ。1月には食事の代わりになるシェーク製品としてSoylent Bridgeの1食バージョンを出した。スナックサイズのバーには、シェークや飲み物より大きな市場があるだろう。Research and Marketsのデータによると、スナックバーの2023年の売上は米国だけでも88億ドル(約1兆円)だそうだ。

CEOのBrian Crowley氏はこう言う。「これでかなり前進したと思うよ。持続可能な栄養をもっといいかたちで人々に届けられるんだから、大きな一歩だし、すごくうれしい。バー食の世界の破壊的創造だ。最初はドリンク製品で朝食を狙ったけど、今度の製品は完全な栄養をいつでもどこでも摂れる」。

Soylentのスナックバー

スナックバーへの進出はHuelのようなコンペティターとのSoylentの差別化にも寄与する。なお、Soylentという名前は、1960年代のSF小説「Make Room! Make Room!」に登場する大豆(soy bean)とレンズ豆(lentil)で作った食べ物に由来しており、のちに劇場で原作を有名にしたバージョンとは無縁だ(とファウンダーは強調したいのだ!)。

Huelはイギリスでローンチしたが、今ではロサンゼルスでよく見かける。昨年Highland Europeから2600万ドルを調達して、その栄養ドリンクとパウダーを主に米国市場で拡販したいらしい。一方フランスには固形スナックとシェークを売っているFeedがあり、ヨーロッパにおけるSoylent的スタートアップだ。

関連記事: Feed raises $17.4 million for its Soylent-like food products(Feedの資金調達、未訳)

ただしSoylentは今後も、機能性サプリのような世界へ赴く気はない。Crowley氏はこう言う。「Bulletproofsのようなものは、良質な科学の裏付けがあるんだろうけど、でもお金持ち相手だね」。

Crowley氏が望むのは、Soylentがすべての消費者のための安価で栄養価の高い代替食であり続けることだ。同社によると、バーの原料はこれまでのドリンクやパウダーと同じで、 多量養素(たんぱく質、炭水化物など)+26種のビタミンとミネラル、9種のアミノ酸、2種の必須脂肪酸、そしてオメガ-3とオメガ-6を含む。

さらに、消化を助けるためのプロバイオティクスと、3グラムの砂糖を加えている。現在、バーはケース入りでネット販売のみ。1ケースに30個入っている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

蚊を根絶させることの意味とは?

「blitzscaling」(劇的成長、有名なビジネス書のタイトルでもある)から「move fast and break things」(素早く動いて破壊せよ、Facebookの当初のモットー)に至るまで、スタートアップたちは成長と速度に集中してきた、それは大きな変化を伴う。私のアクセラレーターに属するスタートアップたちや、南カリフォルニア大学の私のクラスの学生たちが、そうした集中を行っていることは目にしている。だが、私たちが滅多に真剣に討論することのないトピックが、そうした成長や、スピード、そして変化が、既存のシステムの一部に何を引き起こすのかということだ。それは私たちの心配すべき事柄の外にあるものと見なされている。

変化のビジネス上および社会上の影響は、より気が付かれやすいかもしれないが、今回私が話したいことは、大規模で迅速な変化が引き起こしかねない、健康上の影響(いいものも悪いものも)についてだ。

予防可能ではあるものの、未だに多数の人々を死に追いやっている病気の1つが、蚊によって媒介されているマラリアである。人類は何世紀もの間、この病気と戦い続けてきた。米国でさえ、マラリアが根絶されたのは1951年だったのだ。

マラリアに罹患する人数は多いものの、年間死亡者数は大幅に減少した。2015年には2億1200万人のマラリア患者と42万9000人の死者が報告されているが、そのわずか20年前には、その数ははるかに多く、推定3億人から5億人の患者がいて300万人が死亡していた。

マラリアによる死亡数の減少には多くの要因が関わっているが、その中心となるものは主に以下のような取り組みである。殺虫剤で処理された蚊帳や、当座を凌ぐことのできるより良い薬の配布、そして溜まり水などの蚊を繁殖させる場所を減少させることなどだ。

蚊帳と薬は、マラリアによる人間の苦痛と死を減らすことを助けてきたが、次のステップとして、マラリアを完全に撲滅しようと考えることは当然だ。しかし、蚊によって広がるマラリア原虫に対する有効なワクチンはまだ存在しないため、マラリア排除計画が立てられる際にはしばしば、蚊の駆除、特にヒトのマラリア株を媒介するハマダラカ種の駆除が求められることになる。

病気の媒介種を標的として根絶しようとするアプローチは、どちらかと言えば稀なやり方だ。こうしたアプローチに疑問を投げかける人は、そのような試みの意図しない結果に対して警告を発している。そうした人たちは、より大きな影響を理解したいのだ。そこで次の質問は、私たちはこの決定をどのように下せば良いのだろうか?ということだ。蚊を根絶できるのにしない私たちは残酷なのだろうか?もし現在も米国でマラリアが問題であったとしても、この決定を遅らせるのだろうか?だがそもそも意図的に種の根絶を試みる権限が私たちにあるのだろうか?どうやってこれらの決定を下せばよいのだろうか?

最後の質問に対して通常引き合いに出されるのは、天然痘の根絶である。1980年に、この病気が人間の集団から排除されたと宣言されたとき、それは何十年にもわたるワクチン接種と流行への迅速な対応による勝利だった。

サンパウロ、ブラジル(3月4日撮影):デング熱、チクングンヤ熱、ジカ熱を媒介するネッタイシマカ(写真:William Volcov/Brazil Photo Press/LatinContent/Getty Images)

ハマダラカの根絶を試みるいくつかの方法が存在している。蚊は様々な種類の殺虫剤に対する耐性を獲得し、そしてマラリア原虫も抗マラリア薬に対する耐性を有するので、他の方法が使用される。

1つの手段は、多数の去勢雄を放つやり方である。このやり方は、1950年代に米国で発生したラセンウジバエには効果があった。蚊についても同様のアプローチが取られる可能性がある。だが、去勢されていない雄が少数でも残っていて、なんとか交配できる場合には、再び数を増やすことができるので、このやり方は一時的なソリューションに過ぎない。Debugプロジェクトは、ジカ熱、黄熱病、およびデング熱を媒介するネッタイシマカを使って、この技術の試行を続けている。不妊症の遺伝子を蚊の集団に導入するために、CRISPR遺伝子編集を使用するプロジェクトも存在している。

天然痘に対して取られた、ワクチンを使って病気を撲滅するアプローチは、少なくともまだマラリアに対してはうまくいかないのだ。現在のワクチンでは、数週間に分けた4回の接種が必要とされているし、それでも有効率は39%に留まっている(そしてワクチン接種は、マラリアに感染していない人間を蚊が刺し続けることは放置したままだ)。ということで結局私たちは、蚊を排除するという考えに戻ることになる。

その決定を評価するための出発点は、蚊を(蚊を取り除くことで変化してしまう)システムの一部として捉えることである。全体システムアプローチを採用しても解決はそれほど大幅に遅れることはない、なぜならそれは、上に示したようなアクションを拙速に適用することで新しい問題が引起こされてしまう事態を、回避しようとするものだからだ。

別の方向から眺めると、マラリアを媒介する蚊は他の動物にとって主要な食料源ではないということが挙げられる。刺すことをしない雄は、さまざまな種類の植物に授粉する多くの昆虫のうちの1種だが、主要な授粉媒介者として振る舞うのは、ある特定のに対してだけである。なお生物学者のエドワード・オズボーン・ウィルソン博士が蚊の根絶には賛成していることも指摘しておこう。

しかし、マラリアを媒介する蚊の駆除が行われると、他にマイナス影響が及ぶ可能性がある。少なくともそのうちのひとつは、現在マラリアで死亡している人間の数よりもより多くの人間に影響を与える可能性がある。

それは人びとの習慣を変えてしまうということだ。沼や熱帯雨林のような、主要な蚊の生息地から、人間の集団を遠ざけている蚊がいなくなってしまったら、より多くの人々がこれらの地域に移住するかもしれない。すると人びとは他の動物を追い出して、現在は誰のものでもない土地を伐採や農業のために使うようになるだろう。また、人びとはエボラやエイズを含む、複数種間疾病の原因である多くの「野生動物の肉」を、狩って食べるかもしれない。

マラリアを撲滅させることによる潜在的なマイナス要因を、マラリア感染地域の外からあれこれ語ることは容易だ。私たちはそれぞれの選択肢を選んだ場合の、考えられる死者数を推定することを試みることができるだろうか?

【編集部注】著者のポール・オーランド氏は3つの大陸でスタートアップ・アクセラレーターを運営し、起業家精神を教え、南カリフォルニア大学で学内インキュベーターを運営している。彼は意図しない結果とスタートアップについてのブログを書いている。

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(翻訳:sako)

クラウド養豚システム「Poker」の販路拡大、Eco-Porkが伊藤忠飼料と協業へ

モバイル養豚経営支援システム「Porker」を開発・販売しているEco-Porkは4月12日、伊藤忠飼料との協業を発表した。この協業により、伊藤忠飼料はPorkerの優先取扱権(有期契約)を国内飼料メーカーとして初めて取得。5月1日から伊藤忠飼料の販売ルートでの提供を開始する。

「Porker」は、スマートフォンなどのモバイル端末を用いて農場現場で発生するさまざまなデータを現場で入力することで、繁殖や肥育の状況把握から経営分析までを可能にするシステム。2018年9月から提供を開始しており、2019年3月現在で全国20農家、母豚規模で3万5000頭ぶんの農場で稼働中とのこと。

Eco-Porkは、昨年11月にTechCrunch Japanが開催したTechCrunch Tokyo 2018のメインイベント「スタートアップバトル」で、書類選考100社超から選ばれた20社のファイナリストの1社。そして、ファイナリスト20社からさらに6社だけが進出した決勝ラウンドにも残った1社。TechCrunch Tokyo 2018での最優秀賞は、選抜されたイエバエによって生ゴミや糞尿を約1週間で肥料・飼料化する技術を擁するムスカが獲得したが、実は最後までムスカと競っていたのがEco-Porkだ。

Eco-PorkのPokerは、養豚におけるさまざまなデータを記録することで効率的な作業を実現するサービス。記録したデータはクラウドに保管され、スマホやタブレット端末などでいつでも参照できる。具体的には、種付けや妊娠官邸などを同一の母豚でグループ化しておくことで、一度の入力でグループ単位の管理が可能になる。

HACCP認証に必要な記録項目や、さまざまな業務帳票のテンプレートも用意されている。HACCP認証とは、食品の衛生管理の各種ルールを遵守している企業などに与えられるもので、スーパーなどの小売業や食品メーカーだけでなく、最近では養豚業界など第一次産業にも認証取得が求められているそうだ。

Pokerは、体重測定装置や温度センサー、飲水センサーのなどのIoT機器との連携を考えたデータベース設計になっており、将来的にはこれらのIoT機器から取得したデータも駆使して、AIや統計解析による養豚場の経営分析なども進めていくという。現在の利用料金は、母豚1頭あたり年額600円+初期導入費用20万円〜。

伊藤忠飼料は、従来のアナログな養豚経営を効率化するためにPokerの優先取扱権を取得。養豚業界では、豚舎で母豚カードと呼ばれるプレートやノートに産子数や離乳頭数などを手書きしたあと、事務所にあるパソコンに転記という作業が一般的だそうだ。また、養豚農家からの情報収集はFAXやパソコンに入力されたデータの参照など人の手を介して行うため、タイムラグや人的ミスが生じるという問題もある。Pokerの導入により、豚舎や母豚、同じ母豚から生まれたグループ化された子豚などの情報がクラウドに保存されるため、即時に情報を収集・分析できるほか、転記によるミスなども防げる。